P「“チカラ”に目覚めたアイドルたち」 (550)

P「はぁ、社長に呼び出されてこんなに朝早くから出勤することになるとは…………ん?」

「……そうだね……で統一して……」
「……じゃあ、入ってきたら……」

P「微かに事務所内からアイドルたちの声が聞こえるな。早朝からの仕事なんて誰もなかったはずだが……」

P「ま、朝早いのは良いことだ。俺もテンション下げてないで、最高のあいさつで入らないとな!」ガチャ

P「おっはよっ、みっんなっ!」

パンッ パンパパパンッ

765プロ一同「「「「プロデューサーさん、お誕生日、おめでとうございます!」」」」

P「……え?」

春香「プロデューサーさん! これ、皆からのプレゼントですよ、プレゼント!」

響「えっへへ、今日はなんと、自分のペット達もみ~んなでお祝いに来たんだぞ!」

真「さあさあ、主役はこっちこっち!」

P「……! そ、そうか、今日は俺の……お前ら覚えて……うう」ジワァ

P(このためにわざわざ皆早起きして……ああ、俺はなんて幸せ者なんだ……もういつ死んでも悔いは無い)

その時!隕石が落ちた!

チュドーーーーン!!

P「な、なんだなんだ!?」

亜美「どわぁ~!い、隕石じゃあー!」

真美「地球の終わりじゃあー! 次回からは宇宙編が始まるぞー!」

伊織「アンタ達なんでちょっと楽しそうなのよ」

社長「うわああああああああああああ私の事務所がああああああああ」

小鳥「隕石×事務所……妄想が捗るわね、ぐふふ」

律子「みっ、みみみ皆落ち着いて! 怪我は無い!?」

やよい「大変です~!美希さんが倒れてます~!!」

伊織「ええっ!? ちょ、美希! しっかりしなさいよ!」ユサユサ

美希「う~んデコちゃんうるせ……あ、ハニー、ハッピーバースデーなの」ニコッ

伊織「寝てたんかい!」

千早「どうやらだれもいないところに落ちたみたいね」

雪歩「うう、怖かったですぅ」ドキドキ

あずさ「こんなこともあるのね~」

P(死ぬかと思った……流石にこの歳で死ぬのは嫌だ絶対に)

真「ねえ響……見てた?」

響「うん、ばっちり見たぞ。隕石が落ちた瞬間自分達を包んだ光……あれなんだったんだろ」

真「そのことなんだけどさ、それ以来、なんか変な感じしない? こう、体が軽いっていうかさ」

響「んー、軽いっていうか、自分はどっちかというと気持ち悪い感じだな。自分が自分じゃなくなるみたいな……うがー!意識すると余計変な感じだー!」

真「うーん……?」スッ

真「!」バチィ

真「……? ??」シュウウウウ

P「とにかくみんな無事で良かったな。しかしこういう時どうしたらいいのか……社長、どうし」

社長「むっ!」

P「……どうしました?」

社長「なんというか、ティンときたと言うべきか……見えたのだよ、未来が……!」

社長「半裸の変質者がここに来る未来が!」

P「はぁ」

P(可哀想に……事務所に穴が空いたことで脳にも重大な欠損が……ん?ドアが開いて)ガチャ

半裸の変質者「ぐぇっへっへ!胸を揉ませろ!」

P「……え?」チラッ

社長「ほうら見たまえ」ドヤァ

変質者「っへへへっひゃぁー!勤め先の会社が先日倒産してもうなんか全てがどうでもよくなった! 今日は欲望のままにおっぱいを揉むぞぉ!」ダッ

雪歩「ひぃ!お、男の人~!?」

やよい「こっちに来ます~!」

変質者「まずはそこの金髪デカ乳を揉むとするか! ちーっちちっちーおっぱ~い!」タタタッ

P「! 美希!」

美希「えっ」

P「くそっ……うおおおおおおおおおお!!」ダッ

ガシッ

変質者「うおっ、なんだぁ? ごめん男はちょっと」

P「誰か今のうちに通報を!」グググ

変質者「てめっ、離れろ」ボコスカ

P「げふぅ」

美希「ハニー!」

変質者「はぁ、はぁ、やっと放したかこいつめ……ん?」

ヒュウウウウウ

変質者「なんだぁ?室内だってのに……風?」

美希「ハニーに……」

変質者「って、だんだん強く……ちょっ……なっ…………」ビュウウウウウウ

美希「何するのーーーー!!!!」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

変質者「どわああああああああ!!!!!」ドンカラガッシャーン

春香「えっ」フワァ

P(見えた!ペンギン!)

春香「ちょっ……~~~っ!」ササッ

律子「な、なんで風が?室内だし窓もしまってるのに……それになんで」

律子(なんで皆……こんなにゆっくり動いているの?)

変質者「いたた……なんだってんだ」

変質者(くそっ、俺はおっぱいが揉みたいだけなのに……こうなりゃ意地だ!)ダッ

P「! は、春香!」

変質者「遠くの巨乳より近くの普乳! っへへ、揉みしだいてやる!」タタタッ

P「今い……くっ」ヨロッ

P「ボコられたダメージが残って……間に合わない……」

千早「春香逃げて!!」

春香「……」

春香(な、なんで風が? うう……プロデューサーさんにパンツ見られたかも)

春香(ああ恥ずかしい……恥ずかしいよぉ……)

変質者「貰ったあああああああ!!」バッ

春香(恥ずかしすぎて……)ボウッ

変質者「!!?」ボウッ

千早「春香が……発火した!?」

変質者「あぢぃいいいぃぃいぃいいいいいいいいいぃいいいよぉおおおぉぉぉおおおお」メラメラ

春香(顔から火が出るよぉ……!)ボウッボウッ

P「…………」

美希「……?」ヒュウウウ

春香「うう……」ボォォォォ

変質者「」プスー

P「帰るか」クルッ

律子「現実から目を逸らさないでください!」ガシッ

P「だって俺の知ってる現実と違うんだもん」

亜美「誕生日を祝われたかと思ったら隕石が落ちてヘンタイおじさんが来てスゴい風が吹いてはるるんがファイヤー……この間わずか1分!」

真美「打ち切り確定の少年漫画だとしてもギリギリアウトなレベルの急展開ですな~」

P「えーっと、どこまでがお前らのサプライズ?」

伊織「隕石の前までよ」

P「じゃああの隕石はなんなの?」

伊織「知らないわよ!」

貴音「そのことなのですが……」

響「知っているのか貴音」

貴音「先程落ちたこの隕石、どうやらただの隕石ではなさそうです」

P「というと?」

貴音「聞いたことがあります。この広き宇宙の何処かには、生物の秘めたる“チカラ”を引き出すことのできるえねるぎぃを宿した石、『すぅぱぁ・えねるぎぃ・すとぉん』があると!」

P「ス……え、なんて?」

貴音「『すぅぱぁ・えねるぎぃ・すとぉん』です」キリッ

雪歩(小学生以下のネーミングセンスですぅ)

やよい「分かりました!さっき落っこちてきたのがそのスーパー・エネルギー・ストーンなんですね!」

貴音「ええ、この隕石、私が聞いたすぅぱぁ・えねるぎぃ・すとぉんの情報と一致しています」

亜美「あ、じゃあ今の風とか火はスーパー・エネルギー・ストーンのチカラ?」

あずさ「正確には、スーパー・エネルギー・ストーンによって引き出された私たちの誰かのチカラじゃないかしら~」

響「なるほどー。あの時自分たちを包んだ光はスーパー・エネルギー・ストーンから出たエネルギーだったんだな!」

真美「事務所にぶつかった衝撃でスーパー・エネルギー・ストーンはエネルギーを放出したんだねっ!」

P「お前ら順応早すぎだろ」

律子「頭が痛い……」

伊織(貴音のことだし、どこ情報なのかとかは聞いても無駄よね、きっと)

貴音「見たところ、先程の風は美希のチカラ、炎は春香のチカラかと思われます」

美希「あはっ、そーみたい」ビュウウ

春香「うん……や、やっと落ち着いてきた」カァァ

社長「まるで夢を見ているようだよ。しかし……現実なんだな」

律子「信じられない話ですけど、実際に目の当たりにしちゃいましたしね……二人とも、具体的に何が出来るの?」

美希「ミキはね、風を操れるの! 風を起こしたり好きな方向に曲げたり、ミキの思い通りにいくって感じ?」

春香「うーん、私はまだ自分でもよく分かってないんですけど……でも、出ろ!って思ったら炎が出るような、そんな感覚はあります」

真美「『風使い』ミキミキと『炎使い』はるるん、か……よかったねはるるん! 超個性的アイドルになれて!」

春香「うう、とてもアイドルの肩書きとは思えないんだけど」

真「へへっ、それなら」ザッ

真「ボクは……『雷使い』ってことになるのかな?」バチバチ

やよい「はわっ、すごいです真さん! 真さんの手から電気がビリビリーって!」

伊織「……ねぇ、こんなワケの分からないチカラに、一体何人目覚めるっていうの?」

貴音「恐らく……そのえねるぎぃはあの瞬間この部屋の全てに行き渡ったでしょうから……」

伊織「ぜ……全員?」

雪歩「あ、あのぉ……」

伊織「……何? アンタもチカラに目覚めたってわけ? 穴掘りか何かの」

雪歩「そ、そうじゃなくって……さっきから、気になってて」チラッ

変質者「」プスー

伊織「ああ、そういえば……アレ、どうするの?」

P「生きてる……よな?」

美希「あはっ、もし死んでたら春香は人殺しなの」

P「春香……き、きっと獄中ではメインヒロインだ!やったな!」

春香「ええっ!? 『獄中でも』じゃ……というか正当防衛ですよ、正当防衛! そもそも元はと言えば美希が」

美希「ジョーダンなの。どう考えてもあれは事故だよ?」

春香「なっ……うん、だよね、あはは」イラッ

律子「心配しなくてもそいつなら生きてるわよ。心臓動いてるし」

P「ん? 触って確かめたのか?」

律子「いいえ、でもよく見れば分かるでしょう?心臓とか筋繊維の動きとか」

P「ふむなるほど何言ってんだお前」

あずさ「律子さんのチカラは、目が良くなることなのかしら~」

律子「ええ、そうみたいですね……物騒なのよりは全然良いですけど」

P「とにかく、生きてるんなら救急車を呼ぶべきか? いや、警察?」

やよい「……」スッ

伊織「や、やよい! 何してるの!?」

千早「高槻さん、そいつから離れて!」

やよい「……いくら悪い人でも、大火傷してるのに何もしてあげないのは可哀想かなーって」

P「何をするつもりだ?」

やよい「えへへ、なんとなくですけど……今の私なら、できるような気がするんです」

やよい「春香さんたちみたいな、特別なチカラが、私にも入ってきた……そんな感覚が、あるんです」スゥゥゥ

P「!! 変質者の体が、癒えてゆく……」

響「おお、すごいなやよい!」

社長「うむ、傷を癒やす……それが高槻くんの“チカラ”のようだね」

やよい「うっうー! こんなチカラなら、とっても嬉しいです!」

P「やよいは良い子だなぁ」ナデナデ

http://i.imgur.com/cD7M4r0.jpg

変質者「本当に、すみませんでした!!!」

P(全快したらしたでなんか嫌だな)

社長「……結果的には(プロデューサー君以外)誰にも被害はなかったとはいえ、キミのしたことは許されることではない。分かっているね?」

変質者「……警察に突き出される覚悟はできています」

律子「とはいえこっちとしても大事にすると面倒なのよね」

社長「うむ……もうこんなことはしないと誓えるかね?」

変質者「はい……誓います!」

社長「……!」ティン

社長「その言葉、信じよう。帰っていいぞ」

P「社長! 良いんですか!?」

社長「プロデューサー君……私が変質者、つまり彼の来訪を言い当てたのを覚えているだろう?」

P「はい、まあ」

社長「恐らくそれが、未来予知こそが、例の隕石によって引き出された私のチカラなのだろう」

P「……つまり?」

社長「私には、見えたのだよ。この男が真人間として立派に働く……そんな未来が、ね」

変質者「あ……ありがとうございます!!」スタコラサッサ

亜美「……あの兄ちゃん、きっと強くなるね」

真美「これから先色んな苦難があるだろうけど、きっと乗り越えていけるよ……」

社長「うむ、これにて一件落着、だな!」ハハハ

P(不当にボコられた俺としてはちょっと納得いかないところもあるが、なんか皆満足気だし黙っとこう)

美希「あ! ハニー見て見て! 空飛べた!」フワフワ

P「おおすごいな」

P(しかしこいつらのチカラ……上手く使えば良いものなのかもしれんが……うーむ)

P「……みんなよく聞け。お前たちのチカラ、絶対に他言するな」

亜美「えーっ! なんでさ!」

P「世間にバレたら恐れられてファン減っちゃうかもしれないだろ」

亜美「でもでも、また別の層からのじゅよーはあるんじゃ?」

P「それで仮に人気アイドルになれても、それはアイドルとしての人気じゃない。お前たちはアイドルとしての実力だけでトップアイドルまで登りつめるんだ」キリッ

P「だから、トップアイドルになるまではこの事は周りには絶対に言うなよ」

P「いいか、絶対にだぞ!!」

一週間後

善永「本日は皆さんのチカラについて記事を書かせていただきます善永です。よろしくお願いします」

P「どうも、代表のプロデューサーです」

P( 何 故 バ レ た )

千早「いつの間にか私たちのチカラのこと、隠し通せないくらい世間中に広まってるわね」ヒソヒソ

美希「ヘンタイさんに口止めしてなかったのが悪かったって思うな」ヒソヒソ

春香「うーん、でもあの人全快してからすごい澄んだ目してたし、言いふらすようなことするかな?」ヒソヒソ

真美「でも真美は誰にも言ってないよ? メールしたり紙に書いて街中にばらまいたりはしたけどさ」ヒソヒソ

亜美「亜美も亜美も、ネットに書き込んで証拠画像うpしたりはしたけど言いふらしたりは決して……」ヒソヒソ

真美&亜美「……はっ!」

P(丸聞こえだ。あいつら……後で教育が必要なようだな)

P「そ、それじゃさっそく応接室へ……」

善永「いや、ここでいいですか? ちょうどこの時間帯はアイドルの皆さんもいるようですし、運が良ければチカラを使う瞬間も見られるかもと思いまして」ニコッ

P「はぁ、まあもうどうでもいいですけど……何があっても驚かないでくださいね」

善永「ありがとうございます!」

善永「では、早速ですが……事務所に落ちた隕石によって彼女たちのチカラは目覚めたそうですが、その時事務所にいた人は皆チカラに目覚めたということですか?」

P「一応、そうなるんですかね。当時ここには僕、社長、事務員の小鳥さん、そしてうちの全アイドルがいたんですけど……まあ、すごいチカラを使えるのはアイドルだけだと思っていただいていいですよ」

善永「というと?」

P「まず社長なんですが、未来が分かる『予知使い』などと呼ばれています」

善永「すごいじゃないですか」

P「でも予知の内容は選べませんし、ぼんやりとしか予知できなかったりするし、そのくせ内容もしょうもないのばかりでほんとクソ使えないんですよ」

社長「ぐすん」

善永「そ、そうですか……いやそれでも私たち一般人からすると十分すごいんですが」

P「いえいえ、クソみたいなもんですよハハハ。さて次は事務員の音無小鳥さんですが……彼女は妄想を現実にする『妄想使い』です」

善永「えっそれとんでもなくないですか」

P「はい、本人があり得ると思った妄想しか実現しないんですが、それでも十分すぎるほどすごい能力でした」

善永「……でした?」

P「彼女の身に何があったのか。それについては例の隕石についてもう少し詳しく話す必要があります。貴音」

貴音「ここからは私が」

善永「え? まあ、手短に」

貴音「私たちはすぅぱぁ・えねるぎぃ・すとぉんによってチカラを得たのですが……」

善永「えっなんて」

P「すいませんスーパーなんちゃらに関してはノータッチでお願いします」

貴音「すとぉんと落ちたその石には、ろっくでもない意思があったのでございます」キリッ

千早「ブフゥッ」

善永「……石に……意思が?」

貴音「知人から聞いた話なのですが……その石は衝撃とともにえねるぎぃを全て放出する際、最期に近くにいる者の中から誰かを選び、唯一無二の特別なえねるぎぃを与えるとのこと」

貴音「我々も得た、ただチカラを引き出すだけのえねるぎぃを『すぅぱぁ・えねるぎぃ』と呼ぶならば……選ばれし者のみに与えられるそのえねるぎぃの名は『すぺしゃる・えねるぎぃ』」

貴音「そのえねるぎぃには、チカラを通常より遥かに強力なものにするという効果があるのですが……代わりに与えられた者には後に高確率で副作用が生じてしまうのです」

貴音「その者の持つ特性の一つが逆転してしまう、という副作用が」

善永「……あっ」

貴音「お気付きのようですね。そう、どうやら選ばれたのは……無類の『妄想好き』で業界でも有名な彼女のようなのです」

貴音「隕石の落下から数日後。彼女は一言『妄想なんてもうしない』と私達に告げまして、それ以来本当に全く妄想をしていないようなのです。副作用が効き始め、妄想が嫌いになってしまったのでしょう」

P「生きがいを失ったんですかね……あの日から彼女は遊ぶことも喋ることもなくただただぼーっとして毎日を過ごしています。まさに悲劇」

善永「そうだったんですか……え、仕事は?」

仕事しろよ

P「そんなわけで、社長と小鳥さんは我々の中では無能力者と言っても過言ではないわけなんですよ。まったく、事務所の恥晒しです」

善永「そ、そうだったんですか……それで、貴方は?」

P「それが……分からないんです。俺だけ未だにチカラに目覚めてないみたいで……何故ですか?」

善永「私に聞かれても」

P「納得いかず一人山にこもり滝に打たれたりしながら、それはもう色んなことを試してみましたよ……」

~回想~

 P『エターナルフォースブリザード!!』
 P『できない』

~回想終わり~

P「けど、無駄でした。きっとすごいチカラだとは思うんですが……現段階では無しということで」

善永「今の回想必要ですかね?」

P「まあ……そんなわけで前置きが長くなりましたが先述した通りうちでまともにチカラを使えるのはアイドルだけ、ということになります」

P「ではそろそろお待ちかねの彼女たちのチカラについて話し……」

春香「美ぃぃ希ぃぃいいいいい!!!!!!」ゴォォォォォ

P「……こんな時に」ハァ

美希「もー、ちょっとからかっただけなのに」ビュウッ

春香「ぐっ、また軽く防いで……今日という今日は、絶対後悔させてやるからっ!!」メラメラ

美希「あはっ、後悔って何? ミキは今が楽しければそれでいいって思うな~」ヒュ~イ

春香「待てぇぇぇい!!!」ゴォォォォォォ

善永「な、何が……」

P「ああ、落ち着いてください。いつものことです」

善永「え!?」

P「炎は風に煽られ激しさを増す。チカラの性質が関係してるのかは知りませんが、美希にからかわれて春香が燃えるっていうのは、もはや日常茶飯事なんですよ」ハハハ

善永「ええっ、ハハハってあんた……だ、大丈夫なんですか?」

P「はい。春香は美希以外に被害が及ばないように炎をコントロールできますし、美希は風で炎を防げます。ちょっと室温が高くなりますが基本的に誰にも被害はありません」

善永「『風使い』美希に『炎使い』春香……噂には聞いてはいましたが、いざ目の当たりにするとすごいものですね」

P「でしょう? せっかくなんでアイドルらしい良い記事お願いしますね」

善永「え? あはは……前向きに善処するよう極力検討する方向で考えておくかもです」

P(よっしゃ!)グッ

P「で、いつも二人の争いを止めるのが彼女、うちのプロデューサー兼アイドル兼事務員兼ツッコミ兼店長兼まとめ役の秋月律子です」

善永「律子さんですか……噂によると彼女が手にしたチカラは、マサイ族を遥かに超える視力だとか」

P「ああ、確かにそういうのも彼女の武器の一つですが……動体視力なんかもすごいですよ」

律子「いい加減に……」スルッ

春香「はっ!?」ガシッ

律子「しなさい!!」ブンッ

春香「わわっ!」ドーン

P「炎を避けながら春香に近付き、炎が出ていないポイントを狙って抑え込む……造作もないことです」

P「律子には、ほとんどの人の動きは止まって見えますからね」

善永「なるほど、律子さんは例にならって呼ぶなら『視力使い』といったところでしょうか」

P「いや律子は『眼鏡使い』ですね」

善永「えっ」

P「眼鏡をかけている間は視力、視野の広さ、動体視力、透視能力等の『視る力』が飛躍的に上昇。また眼鏡を手に取れば強力な武器として使うことも出来る……それが彼女のチカラです」

善永「め、眼鏡使い……ですか……」

春香「なんで私を抑え込むんですか律子さん!悪いのは美希ですよ、美希!!」

千早「もう……困ったものね、春香」スッ

パキィン

P「お、千早も珍しくチカラを使いますよ。あなたラッキーですね」

善永「へえ、どことなく新幹線っぽい色合いの私服を着ていたことからか『B-72系アイドル』の愛称で親しまれている如月千早さんですか」

善永「そういえば彼女のチカラは知りませんね。765プロが誇る歌姫がどんなチカラを手にしたのか……拝見させていただきます」

千早「記者が来てるのよ。少し頭を冷やしなさい、春香」スゥッ

春香「はっ……うう」ピタ

善永「氷の板が天海さんの額に……?」

P「それが彼女のチカラです」

善永「! なるほど、そういうチカラですか」

P「はい、そうです」

善永(氷使い、か……親友である炎使いの天海春香さんとは対照的なチカラなのね。でもだからこそ互いに)

P「千早は『板使い』です」

善永「……」

P「木の板はもちろんのこと、氷、鉄、チョコ等あらゆる板状のものを瞬時に生成可能!」

P「便利でしょう?」

善永「……なんというか、疲れてきました」

ちはやの リフレクター!

P「お疲れですか? 記者って忙しいんですね。やよい、疲れを癒してあげてくれ」

やよい「うっう~!任せてください!!」

善永「そんな、気を使わなくても……」

やよい「ええい!」タッチ

善永「ひゃっ!」

善永(うそっ……何これ……)

善永(この……感覚…………はぁうっ……!)

P「『元気使い』高槻やよいは触れた相手をたちまち元気に出来るんですよ。怪我してても疲れててもすぐに健康状態。また元気を与えて身体能力を向上させたりなんかもできます」

やよい「えへへ、元気があればなんだってできちゃいます。私、元気だけが取り柄ですから」

P「24時間テレビなどに出れば出演者の眠気も覚ませてみんな大助かりですよ。メインパーソナリティに向いてると思いません?」

善永「……」

善永「クゥー!いいですねぇ!」

P「でしょう?」

やよい「あうぅ……ちょっと元気出し過ぎちゃったかも」

響「ハム蔵~! どこ行ったんだ~!!」

善永「ハム蔵って我那覇さんのペットですよねぇ!?探すの手伝いますかぁ!?」

P「大丈夫です。なんですかそのテンション」

響「真美ぃ~!頼む~!」

真美「ガッテンでい♪」

真美「んむむ、あれ、いな……あ! いたよっ!ソファーの下! うまいこと挟まってる!」

律子(私が出るまでもなかったか。透視、ちょっと疲れるし)

善永「真美ちゃんってぇ!ど~んなチカラなんですかぁ!?」

P「真美は『音使い』です。色んな音を出せるのはもちろん、自分の周りの音を支配でき、また様々な音を聞き分けることも出来る音のスペシャリストです」

善永「なっるほどぉ!」

P「超音波の反射を利用して物を探すことも可能。イタズラにさえ使わなければアイドルらしいチカラでしょう?」

善永「確かにぃ!記事にそう書いときますねぇ!」カキカキ

P「ありがとうございます。なんだそのテンション」

響「なんでそんなとこに……待ってろハム蔵!うおおおおおおおおおおお」

響「『響CHANGE』!」シュピーン

ハムスター響「今行くぞ!」ダッ

うるせえ東京湾に沈めるぞ

善永「我那覇さんは変身能力なんですねぇ!!いいですねぇ!」

P「はい、『動物使い』ですんで、知っている動物の要素を自己に取り込むことで色んな動物に変身出来ます」

ハムスター響「うぅ~、ソファーの下暗くてよく見えないぞ~」

伊織「まぁそれはしょうがないわね、このスーパーアイドル水瀬伊織ちゃんが照らしてあげるわ!」チラッチラッ

P「あ、伊織は『光使い』です。おでこからビームとか出せます」

善永「それは知ってます!ずっと前から周知の事実ですよぉ!!」

P「はは、チカラに目覚めたのつい最近のはずなんですけどね」

伊織「んー……あれ? 響しかいないみたいだけど」ピカー

律子「あら、ハム蔵もう普通に自力で脱出してるわね」

ハム蔵「ヂュイ!」ドヤァ

伊織「だそうよ。出てきなさい響」

ハムスター響「……」

ハムスター響「挟まった……」

伊織「……」

ハム蔵(やれやれ、困った御主人だ)

善永「あ、もうこんな時間!! そろそろ失礼します!」

P「えっ、時間ですか?まだ紹介してない子も何人かいるんですけど……」

善永「帰りたいんでまた次の機会にでも!! あっりがとうございましたぁ!」タタタッ

P「えっ、あっ、こちらこそー……」

P「……さて、よっこいしょ」ヒョイ

ハムスター響「あっ」

P「ここなら普通にソファー持ち上げりゃいいだろ……無理にチカラ使わなくても」

響「そ、その手があったか!」

伊織(記者にアピールしようと思ってチカラ使ったけど……やっぱり不自然だったかしら)

P「ったく……まあいいやどうでも。それより」チラッ

真美「ん、どったの兄ちゃん」

亜美「亜美たちのこと見て……はっ! さてはエッチなこと考えてるっしょ~? このHP! 体力!」

真美「んっふっふ~、だめだよ兄ちゃん、中学生に手を出したら犯罪なんだよ?」

P(こいつら……どう教育してやろうか)

社長「あっティンときた」

P「……社長、今こいつらに説教するとこなんで黙っててもらえませんか」

社長「しかしだねキミィ、ティンときたんだから仕方が無いだろう」

亜美「ティンときたんならちかたないね。ここは亜美たちはおいといて社長の話を聞こうではないか」

P「どうせいつもみたく、近くの動物園でライオンの赤ちゃんが生まれるようだよ、やったな!みたいなしょうもない予言でしょう?」

社長「いや、それがだね……」

P「そんなのより秘密をバラした悪ガキたちの教育の方が大切ですよ。亜美真美、覚悟はいいか?」

真美「うえぇっ!? 待ってよ! 話せば分かるって!」

亜美「言いふらさないって約束は守ったじゃん!」

P「そんな屁理屈が」

社長「今日この事務所の誰かが死ぬようだ」

P「通用す……」

P「………………」

P「えっなんて」

社長「今日この事務所の誰かが死ぬ、そう言ったのだよ」

社長「見えてしまったんだ……ついさっき、な」

Oh

P「……マジすか?」

社長「マジだよ。そして私の予知が今まで外れたことがないということは……知っているね?」

P「……」

P「し、死ぬって……誰が?」

社長「それは分からん。今日我々の誰かが死ぬ……私にはその事実が概念として見えただけだからな」

亜美「ちょっ……シャレんなってないって!」

真美「兄ちゃん兄ちゃん、説教とかそんなんもうどーでもいいっしょ!」

P「おっおう、そそそんなことないけどでもやっぱそうっちゃそうだな。ど、どうすれば……」

美希「ねーねー、もし誰か死んじゃったら、やよいのチカラで生き返らせたりできない?」

やよい「うう……いくらなんでもそれは無理かなーって」

春香「ってことは……本当に……!?」

雪歩「い、いやぁあああああ!!!!!」

真「雪歩落ち着いて! 社長、なんとかならないんですか?」

社長「私に聞かれても……何せ私にはただ見えただけなのだからね」

P「くそ……ほんと使えないですね社長のチカラ」

貴音「何か行動を起こせば運命は変えられるかもしれませんが……誰が死する運命なのかが分からなければ対策も取りづらいですね」

千早「……律子。もしかしたらだけれど、あなたのチカラで死相なんて見えたりしないかしら」

律子「んー、分からないけど、見るだけ見てみるわ」

あずさ「なんだか、大変なことになってきたわね……」

やよい「うう、私、皆さんの誰にも死んでほしくないです……でも私が死んだら弟たちが……あうぅ」

P「……律子、どうだ?」スタスタ

律子「うーん……とりあえずざっと皆を見た感じ死相らしきものは無さそうですね。死相なんてものが存在するのかも分かりませんけど」

P「本当か? 念のためもう少しじっくり見てみてくれ」

律子「そうはいってもプロデューサー、そもそもどんなのか分からないものを……」クルッ

律子「!!!!!!!」

P「ん、どうした律子。俺の顔になんかついて……あ!」

律子「い、いや……なんでもないデスヨー」サッ

P「おい、なんで目を逸らした!? なあ! まさか……」

律子「……」

P「え、ウソ……え?」

P

律子「だ、大丈夫! 気のせい!気のせいですから!」

P「じゃあなんで俺の目を見ない! 見えちゃってないよな!? 死相見えちゃってないよな!?」

律子「大丈夫……うん、大丈夫。なんでもありませんよ、プロデューサー」

P「本当か? しっ、信じてもいい、のか?」

律子「当然ですよ。第一死相なんてもの、あるわけないじゃないですか」

美希「……むー」

真美「うう、兄ちゃんのこと、忘れないよ」

亜美「亜美たち、新しい兄ちゃんと一緒にがんばるからね」

P「だだだ大丈夫なんだよな律子!」

律子「もー、だから大丈夫ですってアハハ。私が保証します」

千早「それで、結局どうするの?」

春香「提案なんだけど……今日は皆でこの事務所に泊まるって、どう?」

真「なるほど、いいんじゃないかな。もし何かあっても皆がいれば対応できるかもしれないし」

律子「……いや! 今日は皆もう家に帰りましょう。まっすぐにね」

春香「えっ?」

律子「寄り道せず帰って家にいなさい、と言ったのよ。そうすれば絶対大丈夫だから」

雪歩「し、死ぬかもしれないのに一人なんて怖くて無理ですよぉ!無理無理!」

春香「律子さんが言うからには……何か理由があるんですよね?」

律子「……ええ、実は」

律子「私にも未来が見えたのよ」

社長「なんだと!?」

律子「皆大人しく家にいる限り死なない……曖昧だけどそういう運命が見えたの。だからそうしてくれる?」

P「なるほど、見ることに特化した律子のチカラは未来も見ることができたわけだ。となると社長のチカラの存在意」

社長「言わんでくれ」

律子「そういう訳だから皆、早く帰りましょう」

P「だな。俺と同じくらい仕事の出来る律子が言ってるんなら間違いないだろう」

やよい「あうう、それじゃ……律子さんを信じて、帰ります。皆さん、お疲れ様でした!」ガルーン

雪歩「そういうことなら……お疲れさまでしたぁ」ペコリ

美希(……皆、どーしたんだろ? なんで次々と帰ってってるの?)

美希(律子、どー考えてもウソついてるのに……)

律子「さて……ん?」

美希「……」

律子「どうしたの? もう皆帰ったわよ。あなたも早く……」

美希「律子……なんでウソついたの?」

律子「!!」ドキッ

美希「律子には未来を見るチカラなんてないよね? なんであんなこと言ったの?」

律子「……律子さん、でしょ」

美希「ねぇ!」

律子「……」

律子「なんで、そう思ったの?」

美希「律子がハニーから目を逸らしたとき……あれは死相が見えちゃったから目を逸らしたんだよね」

律子「……だからね、プロデューサーの顔には死相なんて無かったって」

美希「律子が見たのはハニーの顔は顔でも……目、でしょ。律子のチカラなら、そこに映ってた人の死相だって見えちゃうって思うな」

律子「……」

美希「ねぇ律子……律子が見た死相は、律子の死相なんだよね?」

リッチャンハカワイイデスヨ

律子「……考えすぎよ。私は……」

美希「じゃあ」

美希「なんでそんな辛そうな顔してるの?」

律子「っ……!」

美希「ねえ、もしミキの言うことが当たってるなら、このままじゃ死んじゃうんだよ? 皆に話したら、きっとなんとかなるって思うな」

律子「…………」

律子「心配してくれてありがとう。でも……断言する。私は死なないわ」

律子「私ね……この一件が片付いたら、アイドルやめて本格的にプロデューサーをやっていこうと思ってるの」

美希「え、そうなの?」

律子「ええ、やっぱり両方やってみて、それが一番やりたいことだって気付いたから。だから私は……それまではまだ死ぬわけにはいかないの」

律子「だいたい美希が私の心配するなんて100年早いのよ。大丈夫、99%死なないから安心しなさい。このことは私に任せて美希は先に帰って」

律子「もし明日私が生きていたら、いっぱいいっぱいおにぎり作ってあげるから、ね?」

美希「ほんと!?」

美希(あはっ、ここまで言ってるんだし、きっと大丈夫なの。心配して損したって感じ)

美希「うん……分かった。ミキ、帰るね!」

律子「ええ……じゃあね、美希」

美希「うん、バイバーイ! おにぎり、約束だよ?」タタタッ

律子「……」

律子「帰った、か」

律子(ごめんね、美希。あなたを……皆を、巻き込むわけにはいかないから)

律子(何があるのかは分からないけど……死ぬ運命にある私と一緒にいて、無事でいられる保証なんかない)

律子(最悪でも私一人の犠牲で済む上に、誰かを庇って死ぬ危険も回避できるこの選択が私にとっても一番合理的なはず……私は間違ってない……)

律子(間違ってない……はずなんだけど…………)

律子(だけど…………)

律子「……」

律子「うっ……ううっ……」グスッ

律子「うう、ううぅうっ……ぐっ……」ポロポロ

律子(やっぱり、怖い……!)



律子(……ん? 何か、見え……)

雪歩の能力はー?

~翌朝、事務所前~

P「予定よりかなり早く来てしまった」

P「律子はああ言ってたけどやっばり不安なんだよな。とりあえず俺は生きてるが……皆、大丈夫なんだろうか」

P「今日は合同レッスン。皆一旦事務所に集まる予定。……全員来てくれるのを祈るばかりだ」

P「とりあえず事務所に入ろう。俺が一番乗り……かな?」ガチャ

社長「あ……」

P「あ、社長おはようございます」

社長「プロデューサーくぅん! た……大変なのだよ!!」

P「!? ど、どうしたんですか!?」

P(ん、人が倒れ……て……!!!)

社長「律子君が……律子君が……っ!!」

律子の死体「」

社長「ご覧の通りなのだよ!!!」

P「( ゚д゚)」


P「( ゚д゚ )」

P「嘘……だろ……?」

社長「私が来た時には、既に……」

P「みゃっ、脈は!?」

社長「確認、したよ。手遅れだった」

P「そんな……」

P「律子ですよ!? あの律子……あんなに凄いチカラを持った律子ですよ!?」

P「どうやって殺したんですか!!」

社長「へ?」

P「いくら律子のチカラが社長の完全上位互換になってしまったからって……自分の存在価値を守るために殺すなんて……!」

社長「い、いや違う! 誤解だ! 私は殺してなどいない!」

P「嘘付け!」

社長「ひぅ……」

P(とは言ったものの……動機があるとはいえやっぱり社長に……普通の人間に律子を殺せるとは思えない)

P(なら一体誰が? 自殺の可能性は……ないか)

P(律子だと分かる程度ではあるものの、この死体は全身丸焦げ。自殺なんかするはずないし、こんな苦しい自殺の方法を律子が選ぶはずもない)

リッチャンハカワイイデスヨ

リッチャンハカワイイデスヨ……

ガチャッ

やよい「おはようございますっ! 心配で、早く来ちゃいました……!」

春香「私も……プロデューサーさん、生きてますか!?」

P「……ああ、でも……」

やよい「はわっ! 律子さんが死んでます~!」

春香「っええ!? り、律子さん!」ダッ

春香「大じょ……って、あああっ!」

どんがらがっしゃーん!

P「春香今はそういうのいいから」

やよい「うう~どうすれば……とっ、とりあえず春香さん、治しますね……」スゥゥゥ

春香「えぐ、ありがと……って、わっ、私なんかより早く律子さんを!」

やよい「あっはい! まだ生きてるかもしれないのに……私のばか!」ダッ

P「いや、確認済みだ。見ての通り律子はもう死んでるよ。脈も測ったし、何故かメガネもない」

春香「そ、そんなぁ……メガネまで……」グスッ

やよい「律子さぁん……メガネまで……」グスッ

春香「私……律子さんには、色々、教えて、もらって……」

P「……」

春香「まだ……恩返しとか…………何も…………うぐ、ぇう…………っ」グスッ

やよい「は、春香さん、泣かないでください~……」

やよい「そんなに泣いてたら……わ……私まで……うっ」ジワァ

春香&やよい「うわぁああぁあん!!!!」

P「俺も」

春香&やよい&P「うわぁあああああああん!!!!」

社長「こら、どさくさに紛れてアイドルと抱き合うんじゃない」

P「あっはい」

やよい「うう……ううぅう……」グスッ

P(……許せない)

P(律子を殺したやつを……ウチのアイドルを泣かせたやつを、絶対に……!)

P(この胸に込み上げる思い……今の俺なら、チカラを使える気がする……この状況を打破するチカラを…………はぁああああああ!!!!!)ゴォォォォ


P(と思ったけどうんともすんとも。まいるね)ポリポリ

軽い

~会議室~

P「皆、集まったな。悪いが今日のレッスンは中止だ」

雪歩「うぅ……」グスッ

美希「……」

P「知っての通り、律子が死んだ」

伊織「……ッ」ギリ

やよい「伊織ちゃん……」グスッ

千早(高槻さん……)ジーーー

千早「っと、プロデューサー、警察には?」

P「それなんだが、実はまだ……通報はしていない」

亜美「……え? なんでさ?」グスッ

P「状況が状況だ。通報したら俺たちは重要参考人という名の最重要容疑者。元々チカラのせいで警察には警戒されてるし……暫く自由には動けなくなるだろうな」

P「もちろん、それでもいいのならさっさと通報して警察に全部任せてしまっても良いんだが……お前たちには力がある。選択をする権利がある」

P「……なぁ」

P「お前ら……どうしたい?」

伊織「……そんなの、決まってるじゃない」

伊織「律子の命とメガネを奪った奴を、この手で見つけ出してお仕置きしてやるのよ!!!そうしなきゃ、気が済まない!!」バン

あずさ「ええ、そうね。私も……こればかりは、迷ってなんていられないわ」

真美「こんっなに悲しい『音』で事務所を包んだ犯人……ほっとけるほど、真美はオトナじゃないかんねっ!」

響「意味ないかもだけど、自分のチカラで律子の匂いを追ってみるさー!」

真「うん……悪いけどプロデューサー、止めたって無駄ですよ。ボク、器用じゃないから……怒りが抑えきれそうにないんです」バチバチ

雪歩「わ、私のチカラも……ちょっとは役に立つかな?」

千早「……」

P「……ああ」

P「そう言ってくれると思ってたぞ、皆」

P「律子……もう少し我慢してくれ。安置はまださせてやれそうにない」スッ

春香「よーっし……765プロ~~~!」

皆「ファイトー!!!!」

美希「……」

美希(ミキのせい……だ……)

P「……よし、じゃあ犯人捜索組は行動開始だな。何かあったらすぐに携帯取り出しポパピプペで知らせること」

P「俺と社長、小鳥さん、やよい、千早、あずささん、貴音は事務所で待機。連絡が来たら出来るだけ早くそっちに向かうからな」

P「それと……」

P「けしかけるようなこと言っておいてなんだが……無理はするなよ?」

皆「はいっ!」

P「それじゃ、解散!!」

やよい「皆さん、頑張ってくださいっ! パワーアップの、はい、ターッチ!!」スッ

春香「うん! ありがとやよい」パンッ

伊織「やってやるわよ……!」パンッ

亜美「亜美たちにお任せあれ!」パンッ

真美「うう、これ後で筋肉痛キツいんだよね~」パンッ

P(とかいいながらハイタッチするんだもんな、真美も。それだけみんな本気ってことか)

P(一方無力な俺は安定のスルーで筋肉痛回避)

亜美「ありゃ、ひびきんとかは?」

真美「もう行っちゃったっぽいね。早く行こっか!」

まだ力わかってないあずささん

~池の前~

美希「来ちゃった……先生」

カモ「アー」

美希「ごめんね……ミキ、先生みたいにずーっと楽~に生きていたかったけど……もう無理なの」

カモ「?」

美希「ミキが楽な道を選んだから……あそこで簡単に帰っちゃったから、こんなことになっちゃった」

美希「美希が死なせたの。美希のせいで……だから」

美希「ミキは……もう……」

美希「……っ」ポロッ

美希「うっ……えぐっ……律……」ポロポロ

美希「!」

美希「ん……」フキフキ

伊織「ここにいたのね」

春香「探したよ、美希」

美希「……あはっ、春香とデコちゃん。どお?なんか進展あった?」

~事務所前~

雪歩「……」

雪歩「うーん……」

雪歩「事務所入り口に不自然な足跡が残ってたらそれを追おうって思ってたんだけど」

雪歩「大地は、答えてくれないよぉ……」

貴音「どうですか、萩原雪歩」

雪歩「ひっ! ……あ、四条さん」

貴音「なるほど……『大地使い』である貴女ならば見た目には分からない微量な足跡も判別出来る。そう考えたのですね?」

雪歩「はい、私に出来ることって、これしか思い浮かばなくって……でも、私たち以外の足跡が全然見つからないんですぅ」

貴音「……では、気晴らしにらぁめんでも食べに行きませんか?」

雪歩「えっ?」

貴音「思い詰めるほど物事はうまくいかないものです。乱れた心をらぁめんで満たせば、見えてくるものもきっとあるはず」

雪歩(なに言ってるか分からないけど、四条さんの言うことだし……)

雪歩「じゃ、じゃあ、行きましょうか……?」

貴音「ええ、是非に」ニッ

~路地裏~

犬響「くんくん……くんくん……」

犬響「全然わかんない……」

響「解除、っと。んー……犬以外に嗅覚がすごい動物って……そうだ!」

ブタ響「これなら……フゴフゴ……フゴフゴ……」

ブタ響「うがーっ! やっぱり全然わかんないぞー!!」

真美「お困りのようだね、ひびきん」

亜美「亜美たちが来たからにはもうだいじょぶだよ!」

響「あ、亜美真美……ごめん、自分、犯人に律子の匂い付いてるかと思って一生懸命探してたんだけど……見つかんなくって」

亜美「ま、そーだよね。亜美知ってるよ、こーゆーの『灯台も得らしいよ』っていうんだよねぇ」

真美「そーそー、灯台って頑張って周り照らしてるからけっこーお金貰ってるっぽいよね」

亜美「うんうん、ずーっと働きっぱなしだもんね~」

響「……? つまりは、どういうこと……?」

亜美「ん、あれ、どういうことだろ? まいっか、さっさと犯人をぶちのめしますか!」

響「ん、そうだな。まず見つけなきゃだけど、三人で頑張ればなんくるないさー!」

自分達以外の足跡が見つからない→

~事務所~

やよい「あずささんと貴音さん、どこに行ったんでしょう。待機組なのに……」

千早「……ええ、そうね」

やよい「うう~、やっぱり心配です! 探しに行きますかっ!?」

P「いや、やめておけ。お前らがいなくなったら誰が俺や小鳥さんを守るんだ」

社長「そして私も、な。盾と回復……君たちさえいれば犯人が現場であるここに戻ってきてもなんとかなるのだよ」

千早「上から言うセリフですか、それ」ハァ

やよい「でもでも~……」

千早「……」

千早「……高槻さん、ちょっと来てくれるかしら?」

やよい「え?」

P「おい、どこに?」

千早「大丈夫です。すぐに戻りますから」

千早「行きましょう高槻さん……屋上にでも」

やよい「は、はい……わかりました」

~街中~

真「勢いで飛び出してきちゃったけど、どうやって探そっかな」

真「響は匂い、雪歩は足跡から犯人を探そうとしてるけど……ボクのチカラって多分そういうのに向いてないんだよなぁ」

真「……ま、いっか」

真「考えるより動く。捜査は頭じゃなく足でするものって、なんかのドラマで見たし」

真「それに足の速さなら、きっとボクが……」ビリビリ

ビュンッ

真「誰よりも速いだろうし、ね……!」タタタッ

真「……ん?」ピタッ

好きーだよー! 心込めピッ

真「もしもしあずささん?」

あずさ『もしもし~? あの、こんな時に悪いのだけれど……』

あずさ『その……飲み物を買おうと事務所を出たら道に迷っちゃったみたいで……』

真「分っかりました! すぐに行きますね!」ピッ

真「あずささんから僅かに出てる電波、ボクなら探せる……こっちか!」ダッ

~事務所~

P「三人だけになっちゃいましたね」

社長「ああ……そうだな」

P「ねぇ、小鳥さん……妄想、できませんかね?」

小鳥「……」

P「ずっと黙ってないでなんとか言ってくださいよ……俺も、辛いんです。もう好きとか嫌いとかの次元の話じゃないんですよ」

P「あなたが律子の復活を妄想すれば、律子も生き返るかもしれないんじゃないですか? だから……」

社長「やめたまえプロデューサー君。そもそも人を生き返らせるのは音無くんにも……あっティンときそう」

 ―――――『死んだら、楽になれるんじゃないかしら~』『とどめだよ、ひびきん』『アンタを……撃ち殺すわ』『高槻さん、あなたはもう……』『月に代わって、埋めて差し上げます』―――――

社長「!!!」

P「社長、どうしたんですか?」

社長「あ、ああ……うう……見えてしまった…………な……なんということだ……」

P「……社長?」

社長「ああ……あぁぁ……」

社長(戦いが、始まる……或いは、既に――――――)

ハードボイルド

かっか

~謎の森~

真「よっ、と。来たよ、あずささん」

あずさ「悪いわね~、こんなよく分からない人気の少ないところまで」

真「っへへ、お安い御用だよ。さ、事務所までおぶってこうか?」

あずさ「……いいえ、その必要はないわ」

真「ん? 普通に走るより、電流を全身に駆け巡らせて神経がなんかすごいことになったボクがおぶって走った方が速いんじゃ?」

あずさ「いいえ、そもそも事務所に戻る必要もないの。それより……」

あずさ「じゃんけん、ぽいっ」サッ

真「!」

真(なんだいきなり……でもこの指の動き……見える! あずささんはチョキだ! なら……)

真「こうだ!」パッ

ボキボキィ!!

真「!?」

あずさ「まずは……右手」

真「ぐっ……あずささん……?」

あずさ「あらあら、引きつった顔して苦しそうね~真ちゃん」

あずさ「死んだら、楽になれるんじゃないかしら~?」

真(……)

真(落ち着け、ボク。なんでだ? なんで……なんでこうなった?)

真(あずささんは『方向使い』。目に見える全てのものの「方向」を自在に操ることができる)

真(唐突なジャンケン。考える暇を与えずにボクにグーを出させるように仕向け、拳が勢いよく握り込まれる瞬間、指を曲げるその方向を逆にして……)

真(思いっ切り反対側に曲がった僕の右手の指は……全部、折れた)

真(それは分かってる。なんでボクの指がこうなったのかは分かるんだ。ただ、一番分からないのは……)

真「なんであずささんが、こんなことをするのか……どうしてもボクには分からないや」

あずさ「ふふっ、それくらい分かるでしょう。控え目な自分の胸に聞いてみれば……ね?」

あずさ「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

真(様子がおかしい。お酒でも飲んだのか? いや、そうは見えない。じゃあなんであずささんは……)

真「んー…………」

真「やめた、考えるの」

あずさ「?」

あずさ二号

真「あずささんがなんでこんなことするのか……そんなの、頭の悪いボクがいくら考えたって分からない」

真「だからボクはボクの分かる範囲で、ボクのすべきことをすることにしたよ」

あずさ「あら~、それなら、死ぬといいわ」

真「……あずささん、今のあなたの目は、ボクの知っている、ボクの尊敬する三浦あずさの目じゃない」

真「それだけは、分かるんだ。それだけは…………だから」

あずさ「だから……何をする気? 私と、戦うとか?」

真「戦う? 悪いけどそれはできません」

あずさ「そう、それは残念ね~。でもあなたにその気がなくても、私は初めからあなたを殺すために事務所を出……」トンッ

真「失礼。終わりです」

あずさ「……え?」クラッ

ドサッ

真「ふう……あずささんのチカラは確かにすごいけど……見えないほど、捉えられないほど早く動けば何の問題もないんだよね」バチバチ

真「『雷化』は身体への負担が大きすぎるのが難点だけど、これで背後に周り込めば後は左手の手刀で気絶させるだけ。簡単な作業だ」

真「勝負にならなくて悪かったけど、どちらかが死ぬような勝負ならボクはそんなの真っ平御免だ。じゃ、しばらくここで寝ててもらいますよ」

真「いってて……無理しすぎたかなぁ。明日筋肉痛だよ、これ」

真「にしても、んー……嫌な予感がするなぁ」

真「あずささんがおかしくなった原因は、結局分からずじまい。もし他の皆もこんなことになってたら……つぅッ!」ズキッ

真「いつつ……暫くは動けそうにないや。携帯も雷化の時におかしくなっちゃったし」

真(みんな……無事でいてくれよ……!)


~路地裏~

響「……あれ?」

亜美「おやおや~? どうかしたのかね、ひ~びきん」

響「前が見えない……!」

響「もーこんな時に、いたずらか? 亜美!」


~事務所屋上~

やよい「どうしたんですか? 急に呼び出して……」

千早「高槻さん……高槻さん……」ブツブツ

やよい「な、なんだか、ちょっぴり怖いかなーって」

千早「ん……大丈夫、ちょっと聞きたいことがあるだけだから、ね?」

~池の前~

美希「あれ? デコちゃんのおでこ、なんかいつもよりキラキラしてない?」

伊織「そう? 気のせいじゃないかしら」

春香「そうそう、別に光エネルギーを溜めてるとかそんなんじゃないから大丈夫だよ」

美希「ふぅん……」


~???~

雪歩「あの……何処に行くんですか? ラーメン屋どころか、人一人いないんですけど……」

貴音「そうですね……では、この辺りで」

雪歩「……はい?」

雪歩「!?」ズシッ


~事務所~

社長「行くぞ、プロデューサー君。アイドルたちを救うのだ」ザッ

P「いや俺たちには無理でしょう。怖いのでここにいましょう社長」

社長「ええー……」

このP役立たずです

~路地裏~

亜美「んっふっふ~、隙を突いてひびきんの視界を奪ったった!」スッ

真美「いぇいっ! 勝ったッ!」パンッ

響「亜美~、ふざけてないで早く元に戻してくれ~」

亜美「……は?」

真美「キョーアク犯がなんか言ってるねぇ、亜美」

亜美「サイアクでゴクアクでレツアクな犯人が、なんか言ってんね、真美」

響「は、犯人? なんのこと?」

真美「ええい! とぼけやがって……りっちゃんを殺した犯人は、お前だっ! 我那覇ひびきん!」

響「ええ~っ!? 違うぞ!?」

真美「違うの?」

亜美「違わないと思うけど……」

真美「ま、どーでもいっか。覚悟しろキョーアク犯!」

響「どーでも良くないぞ! 早く目を元に……!」

響「あれ? あーー!! あああああ!! いーいー!!! うー!」

亜美「お、真美、やったっぽいね」

真美「ふっ、音の支配こそ真美の最強たるゆえんである。これでひびきんは……」

真美「何も見えないし、何も聞こえないのだ!」

響「うがー! 自分喋れてるー!? 亜美真美ーー!! そこにいるのー!?」

亜美「うっさいなぁ……ほら、いるよん♪」キック

響「ぐふっ」

亜美「んっふっふ~、作戦通りィー!」

真美「やっぱし真美たち無敵だねっ!」

亜美「『色使い』の亜美が敵の目の前を真っ黒にして」

真美「『音使い』の真美が敵のとこの音を消しちゃえば」

亜美&真美「「敵はナスすべなし!!」」

響「うう……自分、何にもしてないのに……」

亜美「ではでは真美くん、やってしまおうではないか」

真美「犯人は処刑されなきゃだもんね。んじゃ真美の超メチャイケな攻撃を……」スッ

真美「くらえいっ!」ヴィィィィィン

あんまペース早いとまたさるくらうぞ

響「……ッ!」

ヴォォォォォォォォォォオオン

亜美「やったか!?」

真美「んっふっふ~、音をうまいこと操れば振動を操れるんだって。その辺の石ころでも、投げてめっちゃ振動させたらとんでもない威力を発揮するのであった!」

亜美「さっすが真美~! チョーンパ振動ってやつだっけ? その辺の木をジャコジャコ斬り倒して怒られまくった経験はムダじゃなかったね!」

真美「えへへもっと褒めて……ん?」

ハムスター響「……」

亜美「ありゃ、生きてんね」

真美「咄嗟にハム化して避けたんだね。次は外さないけど」

亜美(ん……咄嗟に……? それじゃまるで)

真美「今度こそ、いっけええええ!」ヴィィィィィン

ハムスター響(響CHANGE!)シュピーン

サッ

虎響「……ふう、危なかった……のか?」

亜美「うあ、やっぱり」

かっか

亜美「真美! ひびきん、分かるんだよ! 目も見えなくて耳も聞こえないのに、こっちの攻撃が!」

真美「へ? なんで?」

虎響(ふう……また、避けれた、かな? 何の攻撃か分かんないけど、なんとなく分かる)

虎響(動物化すれば匂いで二人の大体の位置は分かるし……何より)

虎響(危険が迫ってくる感覚……分かるぞ。動物の本能、ってやつで)

虎響(集中するんだ……これなら……これならいける!)

亜美「うあうあ~、どうしよー!? こっちの攻撃が分かっちゃうんなら、どうしようもないよ~!」

真美「うーむ、こりゃひびきん討伐は諦めた方が良さそうだNE! まいったまいった!」

亜美&真美「「……と、言うとでも思ったか?」」

虎響「……?」

虎響「あれ? あーあー、うがうが、ヤンバルクイナ」

虎響(音が……聞こえる!? なんで?)

真美「くらえー!」

虎響「! そっちだな!」サッ

ズパァッ

虎響「……え"?」ガハッ

ドサッ

真美「引っかかったねぇ~、ひーびきんっ! ちなみに今のは刃物ではない、平たい石だ」フフフ

響(背中……斬られた? 痛い……痛い痛い痛い!!!)

真美「ありゃ、結構深くいったっぽいね。もう終わり?」

響(やばい、痛みで全然動けないぞ……! 斬られるって、こんなに痛いの……?)

響(バトル漫画とかだと背中斬られてもわりと平気だったりするのに……騙された!)

亜美「んっふっふ~、ひびきん、何も聞こえなかったから逆に感覚が研ぎ澄まされて、匂いとか気配とかで攻撃を読めたんだよね」

真美「でも、聞こえたら普通そっちを信じるよね。そこでかちこい真美はあえて音を聞かせて、ニセモノの音でひびきんを騙したのであった!」

亜美「真美はすごいなぁ。真美は亜美のお姉ちゃんだ。あみにはとてもできない」

響「ぐ、が……」

響(やば、声もまともに出ない……すごい苦しいぞ……)

響「なん、で……こんな、こと……」

亜美「……な~にを言うかと思えば」

真美「あのねー、ひびきんは犯人でしょ? だから処刑してるだけなの。悪いのはひびきんの方だかんね!」

響(最期まで犯人扱いか……もう、いいや。自分がどう思われてても……悪く思われるのは、961時代から慣れっこだから)

響(本当に辛いのは亜美と真美だ。自分の知ってる二人はこんな酷いこと絶対しないぞ。ってことは……誰かが二人にそうさせた……?)

響(だとしたら……誰かわかんないけど、なんてやつなんだ)

響(人殺しの罪は重いんだぞ。一生消えたりしないんだ。亜美と真美にこんな嫌なもん背負わせようなんて……)

響「なんて……ひど、い……こと…………!」ポロッ

亜美「やばっ!ひびきん泣きながらチョー怒ってる!真美、早いとこやっちゃって!」

真美「うん。それじゃ……とどめだよ、ひびきん」スッ

響(くそぅ……もう、変身する体力も、ない……ほんとのほんとに、おしまいさー)

響(ハム蔵、へび香、シマ男、コケ麿、ねこ吉、いぬ美、オウ助、うさ江、ワニ子、ブタ太、モモ次郎……)

響(ごめんな、ご飯……もう、あげられないよ……)

響(ごめんな……みんな、ごめんな…………)

真美「……あれ? 亜美、なんかした?」

亜美「何にも。一応亜美なら色抜いちゃえば透明っぽくすることはできるけどさ、まったく見えなくなるなんてことはないはずなんだけど……」

真美「それじゃあ、ひびきんは……」

真美「どこに行ったのさ?」

~池らへん~

美希「ねえねえ、犯人探しの調子、どう? ミキ、これから探そうと思うの」

春香「それがね、分かったんだ。犯人」

美希「ほんと!?」

春香「うん、今から伊織と二人で懲らしめるところなんだ」

美希「ミキも手伝う!」

美希「犯人の人……ゼッタイ許さないの!」

春香「わ、珍しくすごいやる気。それじゃあ……お願い」ニコッ

春香「動かないでくれる?」ボォウッ

美希「!?」

美希(ミキの周りが……炎で囲まれた!)

伊織「よくやったわ、春香。後は私が……決める」ギュイイイイン

伊織「フルパワー、溜まったわ」ニッ

美希(! なんか光っ……)

ズキュウウウウウウウウウウウン

かっか

美希「っつ……」ツーー

美希(いったぁ……ほっぺにかすったの。今のすごいデコビーム、明らかにミキを狙って……)

伊織「チッ……やっぱフルパワーは制御しにくいわ」

春香「ドンマイ、次は当たるよ。律子を殺した犯人……美希は、私たちでやっつけよう!」

美希(デコちゃんだけじゃない。春香もミキを犯人だと思ってる? こんなの、おかしいの)

美希「あのねえ、聞いて。勘違いしてるみたいだけど、ミキ、犯人じゃないよ?」

春香「言い訳は通用しないよ美希。私たち、覚えてるもん」

伊織「そう、見たのよ。アンタが律子を殺す……その瞬間をね!」

美希「ええっ!? 嘘なの!」

春香「嘘じゃないもん!」

美希「いつ? どこで? どーやって!? だいたい昨日は皆帰ったんじゃ」

伊織「うるさいわね……覚えてるもんは覚えてるのよ。とにかく、はっきりとね」

美希(あり得ない……ロンリ的せーごーせーがメチャクチャって思うな)

美希(こんなの、デコちゃんらしくない。まるで、人が変わったみたい……)

春香「渦巻く炎はメインヒロインの証!必殺!『スプリングファイアー』!」ボウッ

美希(人が変わった……なんだろ、この感じ……うーん……)

春香「くらええええええええっ!」ゴォォォォ

美希「ほいっなの」ビュウッ

春香「うそっ、軽くかき消された!?」

美希「今考え中。悪いけど春香と遊んでる暇なんてないの」

春香「こっのぉ~……次は決める!」メラメラ

春香「羽ばたく炎はメインヒロインの情熱!必撃!『ファイアーバード』!」ゴォォォォ

美希「ほいっなの」ビュウッ

春香「ぐっ……!」

美希「何をやっても無駄なの。お願いだから邪魔しないでほしいな」

春香「むむ……鳥の形にしたら風に強くなるかと思ったのに~」

美希「あといつもだけど、炎出す時に前口上とか技名みたいなの叫ぶのやめるべきって思うな。スベってるの」

春香「また……バカにして~……!」メラメラ

伊織(ナイスよ春香、もう少しその調子で時間稼ぎなさい)

伊織(次に光が溜まったら……大技を決めて、チェックメイトよ)

春香「燃えたぎる炎はメインヒロインの灼熱!必燃!『ファイアーッファイアー』!!!」ゴォォォォォォ

美希「んー……」ヒュウッ

春香「まだまだぁ!」

伊織「ストップよ、春香。もう攻撃はいいわ」

春香「あっ……伊織! 光、溜まったんだね」

伊織「ええ、この技……確実に決めるために、アンタにも手伝ってもらうわ」

春香「おっけー! 美希の周りを炎で囲めばいいんだよね?」

伊織「いいえ。さっきは不意をつけたからともかく、今それをやってもすぐ消されてムダになるだけ」

伊織「それより作戦があるの。まずはさっきから一定の距離を置いてる美希に近づく必要があるわ。春香、美希に向かって走りなさい」

春香「ん、分かった!」タタタッ

美希(……あ)

美希(もしかして、犯人は……)

伊織「美希! 次の私のビームで、アンタを……撃ち殺すわ」

美希「待ってデコちゃん! ミキ、分かったかも! 犯人は……」

伊織「だから、アンタよ。絶対……アンタなんだから!」

ピヨォ

美希「違うの! ミキがやるわけない! 二人とも、そう思い込んでるだけで……!」

伊織「ッ……うるさいうるさい、うるさーい!」

美希「なっ……」

春香(美希に近づいてどうするんだろ……至近距離から炎をぶち込めばいいのかな?)タタタッ

春香「って、わわぁっ!」

すってーん!

美希「あっ、春香転んだ」

伊織「くらいなさい!」キュイイイイン

美希「! 来るっ!」ビュウッ

伊織「!」グリンッ

美希「ふふん、風でデコの向きを変えちゃえば、ビームは当たらないの!」

伊織「ふーん、そうくるなんて……まったく予想」

伊織「通りだわ」

美希「!」

伊織「その回避方法は、ギリギリまで私の方を見ていなければならない……だからこそ、コレが効く」

ぐわああああああああ

ぐわああああああ

伊織「強すぎる光は闇を生むのよ。さぁ……目に焼き付けなさい」

美希「……まさか!」

伊織「もう、遅い」

ピカッーーーーーーーーーー

美希(まぶしっ……)

伊織「気づいたところで、光より早く瞳は閉じられない。そう、一瞬あれば十分なのよ」

伊織「溜めに溜めたエネルギーの全てを込めて、全方位に向けたこの光。直視して耐えられるのは光使いの私と……眼鏡で反射できる律子くらいでしょうね」

美希(目が……焼けるように痛いの……!)

美希「ッ……ビームを、印象付けてたのは、このため……?」

伊織「ビームが来ると分かっていたなら必ず対策を取る。光栄に思いなさい。アンタならそうすると、信じてやったのよ」

美希「春香をこっちに走らせたのも、転ぶことを計算に入れて、光を見せないためにやったことなの……?」

伊織「まあね。巻き込むわけにはいかないし、目を閉じるように合図を送ればアンタなら察していたでしょうしね」

春香「いたた……何があったの」

伊織「美希、転んだ春香の背中を見たその時点で、アンタの黒星(負け)は決まっていた」

伊織「これが春香の必殺技、名付けて『転倒無視(ダイビンスルー)』よ!」

かっか

春香(なんか勝手に変な技名付けられた)

伊織「ほらどうしたの美希? 目を開けなさい。ま、どうなってるか、だいたい想像できるでしょうけど」

春香「ん……え、もしかして伊織、美希の目を……失明、させちゃったの?」

伊織「そうよ。ちょっと汚いかもしれないけど……勝てばよかろうなのよ! にひひっ」

春香「うわぁ……それはちょっとあんまりだぁ」

美希「……」

美希「だから何?」

伊織「……は?」

美希「感覚で分かる。ミキ、確かに目、見えなくなってるよ。でも……こんなのどうせ一時的なもの」

美希「明日になれば、治ってるの」

伊織「はんっ、馬鹿ね。アンタに明日は来ない。今、ここで、私が! ……やっつけちゃうんだから!」

美希「ううん、来るよ。明日も明後日も、ずーっとその先も、来るの。だってミキ……さっき決めたから」

美希「死のうなんて思わない。楽に生きようとも……もう思わない」

美希「ミキは生きる。律子さんが生きられなかった未来を……辛くても苦しくても、一生懸命生きてやるの!」

春香「……!」

春香「律子……さん、か」

 美希『ねえ、律子』
 律子『さんを付けなさい』
 美希『うん今度ね。それより律子あのね……』
 律子『おいこら』

春香(あの美希が……)

伊織「春香! やっちゃいなさい!」

春香「あ……う、うん」ゴォォォッ

美希「ああっ!」ボウッ

春香「えっ……」

春香(当たっ、た……今まで一度も、それが…………)

春香「こんなに……簡単に……」

伊織「今のうちに畳み掛けなさい! どういうわけか反撃してこないし、チャンスよ!」

春香「……」

美希「はぁ……はぁっ……生きる…………生きるの…………!」

美希「みんなで……生きるの……っ!」

春香(美希……)

伊織「……春香! 迷わない!」

春香「!」

春香(そうだ、美希は律子さんを……だから)

春香「殺さないと……私が……!」

春香「うわああああああっ!!!」ゴォォォォォォォォォォォォォォ

美希「きゃああっ!!!」ボォォォォッ

伊織「よし、その調子よ」

美希「あぐ……」ドサッ

春香「はあ、はあ……」

春香「……ッ」

春香「反撃してよ! いつもいつも……なんで……」

春香「なんで攻撃、しないの……!」

美希「……したくない、から……しない……だけ」ゴフッ

美希「だって、痛いの、ヤなの……みんな……同じなの……ジョーシキ、なの…………ッう」

春香「……~~~ッ」

伊織「春香! なにボケっと突っ立ってんの!? 美希は律子を……」

春香「伊織は黙ってて!」

伊織「なっ……」

春香(……知ってるよ。美希は初めてチカラに目覚めたあの一件以来、今まで一度もチカラを使って人を攻撃したことがない、って)

春香(いつだってそうだったね。私が美希に何をしても……美希は決して私に手を出さなかった)

春香(なのに私は……ちょっと美希にバカにされたりしたくらいで……簡単に美希に炎を向けてた)

春香(美希は正直なだけだったのに……悪気なんてなかったかもしれないのに…………私は……!)

伊織「春香! 美希が……美希が憎くないの!?」

春香(……私は美希を、憎んでた)

春香(個性も、才能も、積極性も……私にないものを全部持ってる美希が、憎かった。それで、美希の軽い一言にイラッときて、私は美希を攻撃した)

春香(それでも美希は簡単に攻撃をあしらって……それを繰り返すうちに、攻撃することに抵抗がなくなってきて……口実さえあれば、美希に炎を向けるようになった)

春香(けど……それはただの嫉妬。憧れが生んだ醜い嫉妬。気ままな北風に憧れた太陽のジェラシー。分かってる。美希は……何にも悪くない)

伊織「美希が律子を殺したの、覚えてるんでしょう!?」

春香(憎んでたからこそ、美希のことはよく知ってる。美希が律子さんを殺すなんてあり得ない。ならこの記憶は? ……これはきっと)

春香(嫉妬が生んだ……幻!)カッ

伊織「ったく……もういいわ。光は溜まった。私が……決める」キュイイイイン

美希「……」

春香「ええええええいっ!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオ

伊織「!?」

伊織(炎の幕……? 分断、された!)

春香「逃げるよ、美希!」ガシッ

美希「えっ」グイッ

伊織「逃がさなっ……ぐっ、ダメ、スモーキーすぎる。煙がどんどん出てきてまったく見えない。これじゃ狙いが定められないじゃない!」

美希「春香……? 美希を……おぶっ、て…………助けて……くれる、の……?」

春香「ごめん美希。ケジメは、つけるから」タタタッ

伊織「……まったく、お手上げだわ。こうなったら……仕方ないわね」

伊織「美希!!」

美希「!」


伊織「やよいを……助けてあげて!!」

うおおおおおおおおおやよいいいいいいいいいいい

美希「えっ……でも……」

伊織「やよいは、良い子なんだから!! 絶対……絶対!!」

美希「……」

美希「行、こう……春、香……」

春香「……どういうこと?」タタタッ

美希「……デコちゃん……気付いてたの、かな」

伊織(ふん……その仮説なら、私だってとっくに思い付いてたわよ)

美希「あのね……ミキの、予想……で…………は…………ううっ」

春香「わわ、喋らなくていいよ。ごめん美希……本当に、ごめん」タタタッ

伊織(でも……認めるわけにはいかないじゃない。私の記憶が、美希への殺意が、もしもウソっぱちのものだとしたら……そんなことができそうなのは……人の心に干渉できそうなのは……ッ!)




~事務所屋上~

やよい「なんですか? 聞きたいことって」

千早「……単刀直入に言うわ」

千早「高槻さん、私はあなたを疑っている」

やよい「疑ってるって……何のことです?」

千早「……高槻さん、昨日はあの後どこに行ってたの?」

やよい「ええっ、どこって……律子さんに言われた通り、すぐに帰りましたよ?」

千早「ええ、真っ先に帰った……はずだった。でも実は私、あなたの様子が変だった気がして……確かめるために、帰っているであろう時間に、あなたの家に電話したの」

千早「……弟くん、言ってたわ。姉ちゃん、まだ帰ってない、って」

やよい「……あー、そういえば少し寄り道したかも」

千早「それだけじゃないわ。貴女のポケット、いつもより少しだけ膨らんでる。ちょうど眼鏡分くらいかしら」

千早「そこ……何が入ってるの?」

やよい「……はぁ」

千早「それに……なんの根拠もないのだけれど……」

千早「昨日今日だけじゃない。最近の高槻さん、どこか変。表面上は変わらないけれど、内部のどこかで何かが違う、ような気がする」

千早「私も迷っているの。だから答えて。律子を殺したのは…………あなた?」

千早さん「違うのなら、証明して。あなたがやってないことを、証明して。でないと私……あなたを……」

やよい「あうぅ……証明なんて無理ですよぉ~。だって」


やよい「私がやったんだもん」

      , ‐、 ,- 、
     ノ ァ'´⌒ヽ ,
   ( (iミ//illi)))

     )ノ`リ・ω・ノ(  
 _, ‐'´  \  / `ー、_ 
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ

{ 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー~'´ ̄__っ八 ノ

 ヽ、   ー / ー  〉
   `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く
 

千早「……え?」

やよい「あれ? 自分の予想が当たって、なんで驚いてるんですか? 普通、喜ぶところかなーって」

千早「高槻さん……どうして……」

やよい「どうしてって言われても~……私にもおっきな目標ができたので、そのために……欲しかったから、かな?」

やよい「ついでにもっとバラしちゃいますけど、なんと、春香さんと伊織ちゃんと亜美真美とあずささんと貴音さんは、もう私の支配下なんです!」ドヤァ

千早「……は?」

やよい「まあ私にとってはちょっとしたゲームみたいなものです。私ゲームなんてほとんどしたことないんですけどねえへへ」

やよい「と、鉄板の貧乏ネタが決まったところで……正直に言うと」

千早(違う……!)

やよい「本当は千早さんにもそうなってほしかったんですよ。でも千早さん変に警戒してたから触れなくて……直接触らないと意味ないから、私のチカラ」

千早(違う…………ッ!)

やよい「ふー、正直に話してスッキリしました。やっぱり人間、正直が一番ですね!」

千早(こんなの、高槻さんじゃない……!)

やよい「……さて」

やよい「もう、いいですか?」

やぁよぉいぃ

千早「え?」

やよい「ネタばらしはもう、これくらいでいいでしょうか? 飽きちゃったんで」

千早「ッ…………そう、ね。もう……充分だわ」スッ

ガシャコーン

やよい「!」

千早「あなたの周囲を厚い鉄板で取り囲み、閉じ込めたわ。私が解除しない限り、あなたはそこから出られない」

千早「できれば、外れて欲しかった……あんなに純粋でかわい……良い子だった、高槻さんが犯人だなんて」

千早「でも……高槻さん、あなたはもう……」

千早「……」クルッ

千早「あなたの処分は、皆で話し合って決めるわ。それじゃあ、その閉ざされた場所で反省でもして待ってなさい」

千早(これで……これで、いいのよ)スタスタ

千早(かわいそうなんて思っては、ダメ。高槻さんはもう……私の好きな高槻さんじゃ、ないのだから……)スタスタ

バゴォン!!

千早「……え?」クルッ

千早「!!」ガシッ

千早さんそれ死亡フラグ

やよい「えへへ、やーっとさわれましたぁ……」グググ

千早「あ……あぐ……」

千早(頬を掴まれて……くっ、なんて、力……!)

やよい「何をどう考えたらあの程度で私を止めた気になれるんだろ。あんな鉄板くらい、普通に殴り壊せますよ?」

やよい「この、メガネンサックで」スッ

千早(……律子、の……やっぱ、り、あなた……が……)

やよい「もー、あれだけのことを聞いといて、無事に済むなんて思ってたんですか? あはは」

やよい「……この、みのほろしらずっ」

千早(この子、まさか……律子の、チカラ、を……!)

やよい「板使い……かぁ。千早さん、自分のチカラを全然つかいこなせてなかったみたいですね、もったいない」

やよい「だったら……私がもらったほうがいいですよね」

千早(や……め…………)

やよい「それじゃあ、この辺で……さよなら千早さん。関係ない話ですが、このレスちょうど72レス目ですね」

やよい「死んじゃうあなたをここに置いて……私は先に進みます」

千早(誰か……ッ!)

~???~

雪歩「あ……あうぅ……」ミシミシ

雪歩(痛い……押し潰されそうですぅ……)ミシミシ

貴音「まこと、申し訳ございません。らぁめん屋へ行くというのは嘘です」

貴音「全ては……そう。以前隠れた名店を探していたときに発見した、滅多に人の通らないこの地へと誘導するため」

貴音「ここへ来た時点で助けなどないものと思ってくださいまし。誰の目にも触れぬまま、貴女は裁かれるのでございます」

雪歩「うう……わたし……何か…………したっ、け…………」ミシミシ

貴音「恍けても無駄です。私は知っているのですよ、あなたが律子嬢を殺したことを」

貴音「律子嬢はアイドルとしての活動もさる事ながら、プロデュース業も真剣に取り組む、765プロに必要不可欠な存在でした」

貴音「そんな彼女の命を奪った罪……法で裁かれるのを待つ必要などありません」

貴音「それでは……月に代わって、埋めて差し上げます」

雪歩「わけが……わからないですぅ……」ミシミシ

雪歩(とにかく、何故かはわからないけど、このままじゃ四条さんに、殺されちゃう……)ミシミシ

雪歩(なんとかしないと……なんとか……)ミシミシ

雪歩(『重力使い』……対策、は……)ミシミシ

雪歩(……そうだ、確か四条さんのチカラは範囲に限りがあるはず)ミシミシ

雪歩(一旦地中に潜って土を流動させて横移動をして、四条さんのチカラから逃れられれば、後は……)ミシミシ

貴音「ちなみに、地中に潜るなどといったことは考えませんよう」

雪歩「!?」ミシミシ

貴音「今貴女にかけている重力は範囲指定ではなく対象指定……一度捉えてしまえば、解除するまではたとえ私が貴女を身失おうとも重力はかけ続けられます」

貴音「一度潜ってしまえば、あなたはもう二度と日の光を浴びることなく息絶えるでしょう」

雪歩「……!」ミシミシ

貴音「さて、大地の密度も硬度も支配できる貴女だけの特権です」

貴音「このまま押し潰されるか、あるいは地の底へ沈むか……お好きな方を、どうぞお選びください」

雪歩「……」ミシミシ

雪歩「ふふっ」ミシミシ

貴音「はて、何がおかしいのです?」

雪歩(そうか、それなら、私に出来ることは……)

ボゴォッ

貴音「! なんと、私の足下に大穴が……」

貴音「……だから何だと言うのですか?」フワァ

雪歩「……」ミシミシ

貴音「無重力や反重力……対象にあらゆる力をかけられる『重力使い』であるこの私が、よもや穴に落ちるとでも?」

雪歩「ふ……ふふ……」ミシミシ

貴音「……まだ、笑いますか」

雪歩「二……本…………使わせ、た……」ミシミシ

貴音「……なるほど、気付いていましたか。確かに私のチカラ、同時に対象とできるのは二つまで。力の源は腕ですゆえ」

貴音「右手は貴女に、左手は私に……今、私の両腕は使用中。他の対象に重力をかけることは確かにできません」

貴音「しかし……これで十分。貴女にこの状況を打破することは……」

雪歩「たしかに、でき……ない……」

雪歩「私に、は……!」

貴音「? 助けに期待しても無駄ですよ。先ほども言いましたが、この地は人の通らぬ秘境。普通に生活していては決して辿り着けない……」

雪歩「それでも、来る……! きっと、来てくれる……っ!」ミシミシ

雪歩「真ちゃんは……来る!」ミシミシ


真「雪歩ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」ダダダ

真ちゃん!

貴音「なっ……!」

真「雪歩、大丈夫!?」ササッ

雪歩「真……ちゃん……やっぱり、来てくれたぁ……」ミシミシ

雪歩「えへ、へ……大地を通じて……分かってた、よ……」ミシミシ

真「よいしょ……んぐっ!?」ズシィ

真(重い。ボクでも持ち上げられないほどに……)

真「なんでだよ……貴音……!」

貴音「菊池真……何故、ここが?」

真「偶然、この森にいたからね。近くで雪歩が弱っていくのを電波で感じて、すぐに駆け付けられたよ」

貴音「この森は偶然来られるような所ではないと思っていたのですが……これは想定外です」

真「そんなことはどうだっていいだろ。それよりなんでこんな真似を? 返答によっては……話し合う気にもなれない」バチバチ

貴音「……皆には信じてもらえないであろうと思い、私一人で片付けようと考えたのですが……やむを得ませんね。話しましょう」

貴音「萩原雪歩。彼女こそが、秋月律子を死に追いやった犯人なのです」

真「……」

真「やっぱり、ね」

雪歩「え……やっぱり、って…………真……ちゃん……?」ミシミシ

貴音「おや、貴女も気付いていましたか。では共に彼女に制裁を……」

真「まったく、そんなことだろうと思ったよ。なんでこう、胸のおっきいひとばっかりこんな……」ポリポリ

貴音「……?」

真「同じなんだよ、貴音……君の目は、さっきのあずささんと同じなんだ。君自身の目じゃない、誰かの悪意に満ちた……そんな目なんだ」

貴音「随分と、面妖な物言いを致しますね」

真「とにかくこれで確信したよ。律子たちを殺して、貴音やあずささんに何かした『黒幕』がいる、ってね」

雪歩「えっと……真ちゃん……?」ミシミシ

真「安心して雪歩。ボクは君の味方だ」

真「辛かったろう……大好きな仲間に疑われ、命を狙われるなんて……こんなに辛いことはないよね」

真「大丈夫、黒幕はボクが倒すから! 雪歩も貴音もあずささんも……みんな救ってみせる!」グッ

雪歩「真……ちゃあん……」ミシミシ

雪歩「どうでもいいから早くこの重力をなんとかして……うぐぐ」ミシミシ

雪歩(痛い……耐え切れないぃ……押し潰されて内臓ぶちまけちゃうよぉ……)ミシミシ

真「あっとごめん……それじゃ貴音、ボク不器用だからさ……力づくで止めさせてもらうよ!」

まっこまっこりーん

貴音「まったく、仕方がありませんね……ならばこちらも貴女を敵とみなし、全力で迎え撃ちましょう」

真「でぇやぁ!」ダッ

貴音(さて……どうすべきか。まず左手のチカラは自身にかけておかねば雪歩によって穴に落とされるため解除できない)

貴音(問題は右手のチカラをどう使うか。このまま雪歩に『対象指定』で重力をかけ続ければ、当然真にやられるでしょう)

貴音(『範囲指定』で二人共々巻き込むという選択は論外。おそらく、土の流動で二人とも逃がす結果になるだけ。ならば答えは……一つ)スッ

真「!」ズシィ

雪歩(あ、軽くなった。やったぁ)ギュッ

貴音「菊地真、貴女をこの右手のチカラの対象とします」

真「ぐぅ……動けない」

雪歩「えっ……真ちゃん!」

真「雪歩! 逃げて! 貴音はボクがなんとかするから!」

貴音「雪歩、貴女が逃げた場合、左手も合わせ両手のチカラで真を押し潰します」

雪歩「えっ、えっ? あ、あうぅ
、そんな、私、どうしたら……」

貴音「ふふ、真を助けたいのなら、貴女の取るべき行動は一つですよ」

貴音「自害するのです、雪歩。そうすれば……これ以上真に手は出しません」

雪歩「……はい?」

貴音「私は元より貴女を殺しに来たのです。ゆえに自害していただければ、真は解放いたします」

真「なんだよそれ……雪歩!構わず逃げるんだ! ボクは大丈夫だから!」グググ

雪歩「えと、うあ、あうぅ……」

貴音「雪歩」

真「雪歩!」

雪歩「うっ、あっ……ご…………ごめんなさいいいいいいいいいっ!!!」ドドド

貴音「穴を掘って……まさか本当に逃げるとは」

真「それで良い、それで良いんだ雪歩……」グググ

貴音「この状況で本当に逃げるとは……何故貴女があんな薄情者を庇うのか……理解できません」

真「貴音なら、理解出来るはずだよ。本当の貴音なら……きっと……」グググ

貴音「……」スッ

真「んぐっ!?」ズンッ

貴音「理解する必要も、ありませんね」

真(やば……重力、さっきの数倍なんてもんじゃない。両手使うと、ここまで……)ズズズ

重力使いはかませの法則

貴音「貴女のせいで犯罪者を逃がしたのです。然るべき報いは受けるべきでしょう」

真「ぐっ……効ッ……くなぁ、これ……」グググ

貴音「……」

貴音「何故、立っていられるのです?」

真「……へへっ」グググ

貴音「先ほど雪歩にかけていた以上に強い重力、常人なら数秒で圧死するほどの力を受けていながら……何故あなたは、立っていられるのです」

真「さぁね、ただ……一度倒れたら……起き上がれない、気がしてさ」グググ

真「そう考えたら、意地でも立ち続けないと、ね……」グググ

貴音「……どうやらその力の源は、電流による『どぉぴんぐ』だけによるものではないようですね」

貴音「並々ならぬ精神力。敵ながら天晴れです」

真「違うよ、敵じゃない。ボクたちは……仲間だ。雪歩だって……君の……765プロの、仲間なん、だ」グググ

真「みんな揃って……トップアイドルに、なるんだ……!」

真「だから……律子や千早みたいに……これ以上、仲間を、失うわけに、は……いかないん、だ……!」グググ

真「貴音……キミは、ボクが止める……!」グググ

貴音「…………今、千早と?」

真「……そうだよ。ここに来る途中……気付いたんだ……ほんの、一瞬の、出来事だった」グググ

真「事務所にいた……千早の電圧が……消えた……ってね」グググ

貴音「なん、と……」

真「状況を、考えるんだ……貴音……頭、良いんだろ……!」グググ

真「ボクたちは……こんなところで、争ってる場合じゃ、ないんだ……!!」グググ

貴音「…………」


~病院~

春香「ついたよ、美希……病院でいいんだよね?」

美希「うん、やよいに治してもらうのは……多分、ダメなの」

春香「……あれ、少し回復してる?」

美希「そーみたい……なんでかな?」

春香「よかったぁ……」

美希「……」

美希「だいぶ楽になったし……話すくらいなら、もう……大丈夫かな」

美希「ミキの予想ではね、黒幕はやよいなの」

かっか

どうやら自動保守あぼーんがついてくれたようだ

春香「……そう、なんだ」

美希「ヘンタイさんとか、記者さんとか……やよいが治した人って、性格変わっちゃうことあったよね?」

美希「いくら元気にしたからってアレはないの。もしかしたらやよいのチカラって、元気だけじゃなくて……心とか、『気』そのものをどうこうできるんじゃないかなーって思うの」

美希「だとしたら……やよいがそう思い込ませたんなら、春香とかデコちゃんが美希を犯人だって思ってても不思議じゃない」

美希「ミキはすぐに出てったからしてないけど、春香はしたんでしょ? ハイタッチ」

春香「……うん、した」

美希「仕組まれたなら、その時。そー考えたらツジツマは合うの」

春香「でも……まさかあのやよいが、そんな……」

美希「チカラを手にして変わったとか、自分の意思とは無関係にチカラが発動しちゃってるとか……そういうのだったら、まだいいって思うな。でも……」

美希「小鳥次第では、一番ヤバいパターンも残ってるかも」

春香「え……小鳥さん? なんで?」

美希「……まあ、それは今気にしてもしょうがないの。どの道、早くやよいを止めないと……ごめん、やっぱこんなとこで休んでなんか……」スクッ

美希「うっ」ズキッ

春香「わわっ、無理だよ。失明してるし……私のせいで、酷い火傷も、してるし……お、大人しくしなきゃ」

美希「でも……」

春香「そんな状態であの律子さんを殺した人をどうこうできると思う?」

美希「それでも……真実を知ってる、ミキが行かないと……みんな……」

春香「……」

春香「生きるんでしょ?」

美希「……!」

春香「律子さんの分も生きるんでしょ。だったら無茶したらダメ……よっこらしょ」スクッ

美希「春香、どこへ……」

春香「事務所だよ。大丈夫、やよいは私がなんとかするから」スタスタ

美希「なっ……春香、ダメなの! 殺されるかも……」

春香「言ったよね、ケジメはつけるって。私は、感情に任せて美希に何度も炎を向けた。生きる資格なんて……とっくにない」

春香「だからさ、美希はここでしっかり治療してもらってよ。それじゃ私、行ってくるから!」

美希「春香……っ!」

春香「……今まで本当に、ごめん。……じゃあね、美希」スタスタ

美希「……!」

 律子『じゃあね、美希』

美希(嫌だ……もう、あんなの……)

美希「……ッ!」

美希「春香ぁ!!」

春香「ん……」クルッ


美希「じゃあねなんて、言わないで!」

美希「またねって言って!!」

春香「!」


美希「美希、もう嫌なの! 仲間がいなくなっちゃうの、もう……嫌なの!」

美希「春香はアホだけど、今までけっこう楽しかったんだよ? だから、ごめんなんて言わないで……もう終わりみたいに言わないで……」

美希「またねって言って……ほしい、の……」

春香「美希……」

春香(あんなに酷いことしたのに……美希は……私を、受け入れて……)

春香「…………」


春香「…………またね!」ザッ

いっしょにうたーおー

~事務所~

社長「なかなか、戻って来ないな……」

P「ですね……」

社長「プロデューサー君、流石にもう限界だ。私に見えた未来……アイドルたちの戦い……我々には止める責任がある」

P「……俺は行きませんよ」

社長「プロデューサー君! 君はまだそんな……」

P「行ってどうなるって言うんですか! アイドル達が必死に戦っていたとして、俺たちが行ったところで彼女たちの足枷になるだけでしょう!」

社長「そっ……そうかも、しれんが……」

P「そりゃあ、行ってなんとかなるなら俺だって行きたいですよ……アイドル達のためなら、自分がどんな目に合おうが……た、多少なら大丈夫です」

P「でも無策で特攻して人質にでも取られたら、大変なことになりますよ。彼女たちは良い子だから俺達を見捨てられませんし、きっと犯人の思うがままになります」

P「そうなるのが一番、怖いんです」

社長「むう……」

P「何もしないわけじゃありません。考えるんです。俺たちに出来ることを」

P「アイドル達がステージで戦っているとき、一歩引いた立場から支えてやるのが俺たちの仕事です。まずは社長、見た未来をもう少し詳しく思い出してください。そこに何かヒントがあるかもしれません」

社長「そう……だな」

ピヨォ

~森~

貴音「……」

真「貴……音……」グググ

貴音「すみません、やはりまだ……信じられません」

貴音「決断の際最も信じられるのは、やはり自分なのです。この目で見ない限りは、何事も十分には信じられない」

貴音「私は私の意志を貫き、雪歩を殺します。そこに障害があるなら……壊してでも」

真「くそっ……」グググ

真(もう、倒れちゃいそうだ。誰もボクを信じてくれない……のか……?)

「真ちゃ~~ん!!!」

真「!」

貴音「おや……戻ってきましたか」

真「雪歩……!」

真(……へへっ、そうだよ。ボクにはまだ……信じられる仲間がいる!)

雪歩「助っ人……連れてきたよ!」

やよい「うっうー! お助けします!」

              .  ―  ‐ -  .
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              /   / l   |. /    :/
                /   /   !   .|/    :/ 〉

真「やよい……!」グググ

貴音「ふむ……」

やよい「あうう、ケンカはダメですよ~!」

雪歩「あの時ね、ただ逃げたわけじゃないんだよ。あのまま四条さんと戦っても勝てないかもって思って……助けを呼びに行ってたの」

雪歩「でね、偶然やよいちゃんがいたから、連れてきた。やよいちゃんなら真ちゃんが怪我してても治せるからね」

真「……」グググ

雪歩「待たせてごめんね真ちゃん。これからは三人で協力して……」

雪歩「四条さんを、殺そう!」

真「!」

貴音「……」

雪歩「私、気付いたんだ。犯人は四条さんだって。だから殺して骨までバラバラにして埋めてあげないとねえへへ」

真「雪歩……」

貴音「どうやら、犯人がはっきりしたようですね……真」スッ

真「……うん。残念だけど……そういうことらしい」


やよい「? ……!?」ズシィ

ボコォ

貴音「高槻やよい、全てあなたが仕組んだことだったのですね」

やよい「なっ……え?」グググ

雪歩「四条さん! 私だけじゃなくてやよいちゃんにまで罪を着せようなんて……酷いですぅ!」

真「雪歩、黙っててくれる?」

雪歩「えっ?」

やよい「えっと……なんでそう思ったんですかー?」

貴音「……雪歩が去った後、真が教えてくれたのです。千早の電圧が消えた時、側にいたのはやよいであったと」

真「ボクはまさかやよいが犯人だなんて考えてもなかったんだけど……話してみるもんだね。そこから貴音が一つの可能性を導き出してくれたんだから」

貴音「やよいのチカラならば、人の心に干渉することが出来るのかもしれない。真が言うには、私や三浦あずさの目は通常とは異なるものであったようで」

貴音「もしそう仮定すれば、現状にも辻褄が合う。と、私は考えました」

貴音「しかし私自身、迷っていました。やはり自分の目でそういった『目の違う者』を見ないことには、十分には信じられませんでした」

貴音「ですから今ようやく、真を信頼することが出来たのです」

やよい「はい? 目? え?」

貴音「雪歩の目は先ほどとは明らかに違う。そしてやよい。貴女は……」

貴音「誰ですか?」

さすがお姫ちん

~路地~

亜美「ひびき~ん!」

真美「いたら出てこ~い! 殺させろ~!!」

亜美「……どーしよっか。ねぇ真美~、ホント聞こえないの~?」

真美「まっっったく聞こえないよ。ひびきんの心音、覚えてたんだけどなー」

亜美「じゃあやっぱ死んだのかな?」

真美「多分ね。どーやって逃げたのかはわかんないけど、おっ死んでるなら一件落着! 事務所戻ろっか」

亜美「そだね」


~事務所付近~

春香「はぁ……はぁっ……」タタタッ

春香「……ん?」

春香「事務所のビルの屋上から地面に向かって階段が……何あれ? 板でできてる」

春香(この板……千早ちゃんの?)

春香「……」

春香「行かなきゃ!」ダッ

~屋上~

春香「…………」

千早「」

春香「……」スッ

春香「死んでる……」

春香「……」

春香「…………っう」グスッ

春香「うっ……うう、ひぐ……っ!」

春香「……」フルフル

春香「ん!」パンッ

春香(……ダメだよね、これじゃ。泣くことなら容易いけれど……それじゃ……ダメ、なんだよね)

春香(事態は一刻を争うんだもの。泣いてる暇があるなら、この恨みも怒りも……悲しみも)

春香(全部、炎に変えて……)

春香(私は…………!)キッ


ボウッ

くっ

~森~

やよい「私が……誰か、ですか?」

やよい「高槻やよいですけど」

貴音「……私には、貴女があのやよいとは思えません」

真「ボクも、同意見だよ。実際に意識して見てみると……誰だお前、って感じだ」

雪歩「あのぅ、どう見てもやよいちゃんなんですけど」

真「いいや違う。360度違うよ。つまり……真逆だ」キリッ

貴音「ええ、このような悪しき雰囲気……今までのやよいのものとは正反対です」

やよい「……」

真「というわけでやよい、教えてくれ。なんで律子や千早を殺した? 皆に何をした? ここに……何しに来た?」

やよい「……納得いかないかなーって」

真「?」

やよい「千早さんの方がまだマシでした。なんですか目って。バカにしてるんですか? 理論もクソもない」

やよい「なのに、それで本人達は確信を持ってるなんて……どうしようもないじゃないですか」

雪歩「や、やよい……ちゃん?」

貴音「どうやら……本性が見え始めたようですね」

やよい「あーあ、バレなかったらもう少し楽しく遊ぶつもりだったのになぁ……不愉快です。そろそろ、頃合いかなーって」

真「やけに諦めが早いなぁ。雪歩はまだそっちを信じてたのに。それで、どうするつもり?」

やよい「決まってます。私頭良くないから、私の洗脳に欠陥があった以上、他に方法も思いつきませんし……」

やよい「とりあえず、皆殺しです^^」

真「!!」ゾワァ

真「貴音! やよいに重力を!!」

貴音「……かけていますよ。先ほどから……全力で」

真「なっ……!」

雪歩「な、なにがどーなってるの? ついていけないよぅ……」

真(ぐっ……まいったな、ここにきてさっきのツケが…………全然、動けそうにない……!)

やよい「残念です、みなさん……さようなら」パッ

真「!! 上から、巨大な……板……!?」

真(おいおい、このチカラって……)

ズウゥゥン!

~事務所~

P「なるほど……ありがとうございます、社長」

社長「うむ。私に見えた未来、もはや過去のことかもしれんその内容は、大体こんなところだ」

P「アイドルがアイドルを犯人だと思い込んでる、か。これが色んなところで起きてるとなると……誰かの手によるものだと考えるのが自然ですね」

社長「その、誰かとは……?」

P「……社長が思い出してる間に、ネットでチカラについて調べてみたんですが……これを」

社長「ふむ……むむ?」

ガチャッ

亜美「たっだいま~! よろこべ兄ちゃんども! 犯人を、やっつけてきたぞよ!」

P「!! なっ……もしかして、響を、か?」

真美「あったりー! ホント言うとやっつけてる途中で見失ったんだけど、心音も聞こえなくなったし……多分殺せたよ!」

P「な……なんてこった」

亜美「それよりさー、何? あの屋上行きの長い階段。メッチャ楽しそうだから意味なく上り下りしてきていい?」

P「お前ら……響はなぁ……ああ…………」

真美「あ、そうそう、そういえばさっき蒼い鳥見…………!!」ピクン

亜美「? 真美、どったの?」

真美「……行くよ、亜美。まだ……生きてたっぽい」

亜美「へ?」

P「……?」


~森~

シュウウウウウウ

やよい「……手応え、なし」

真「い……いったい、何が……」

???「なんとか……間に合ったみたいだな」

貴音「!!」

雪歩「あ……え……?」

やよい「なんで……潰したはずの皆が、板の上にいるんですか……?」


やよい「響さん……!!」

響「さぁね。自分、いくらやよいでも……悪いやよいの質問には答えないからな!」

響ちゃん!

貴音「響……ああ、来てくださったのですね……」

響「貴音。自分、亜美と真美に襲われたんだ」

貴音「!」

響「二人は本気で自分を殺そうとしてきた。それが自分の意志なら、いいんだ。でももし無理矢理そんなことさせられてたら……犯人を許さない、って思った」

響「その犯人が……やよいなんだな?」

貴音「……ええ。その証拠に……私も雪歩や真に酷いことをしてしまいました。どう償ってよいか……わかりません」

響「そっか」

真「響、やよいは千早のチカラを使った。よく見ると律子のメガネも持ってる。……奪ったんだよ、チカラを……殺して!」

響「……そっか」

響「そうなんだな……やよい」キッ

やよい「来る途中、周りに人がいないことはメガネで確認してたんですけどねー……まいっか。3対1が4対1になったところで、私が負けるわけ」

響「……いや」

響「それは違うぞ」

やよい「……は?」

響「4対1なんかじゃない……15対1だ!」

やよい「15人? あっ、もしかして私を除く765プロメンバーみんなの思いを背負ってるとか寒いこと言うんじゃ……」

響「15人じゃないぞ。自分、真、貴音、雪歩の4人と……11匹だ!」

ザシュッ

やよい「……え?」ヨロッ

響「良くやったぞモモ次郎、流石はなんでも斬れる『刃使い』だな! どうだやよい、背中斬られるって痛いだろ?」

やよい「ッ……いつの間に……!」

ドガッ バキッ

やよい「ぐふっ……」

響「『前脚使い』ネコ吉のパンチと『後脚使い』ウサ江のキック、効いたろ? 鉄板だって余裕でぶちぬける威力だからな!」

やよい「このっ……!」パッ

やよい「ああ? 消えた……?」

響「そして『空間使い』のこいつがいる限り、そっちのターンはずっと来ないぞ」

響「さっきは助けてくれてありがとな……ハム蔵!」

ハム蔵「ヂュイ!」

響「これからだぞ、やよい……お前は、自分が倒す!」

ハム蔵先生TUEEEEEEEEEE

貴音「なんと……先ほど瞬間移動したような錯覚に陥ったのは、ハム蔵のチカラだったのですか」

やよい「……ああ、なるほど……そういえば、いましたね。あの時」

 響『えっへへ、今日はなんと、自分のペット達もみ~んなでお祝いに来たんだぞ!』

やよい「チカラに目覚めたのは……人間だけじゃなかった、ってことですか」

響「そうだぞ。今まで気付かなかったけど……自分のペットたち、皆すっごく強くなってたんだ」

ハム蔵「ヂュイ!ヂュッヂュ!」

響「あははっ、粋なことを言うなぁハム蔵。うん……自分はもう、一人で戦ったりなんかしないよ」

響「自分にはこんなに頼もしい仲間たちがいるんだ。お前たちと一緒なら……誰にも負けないぞ!」

響「ヘビ香、ワニ子、皆を守ってくれ。イヌ美は治癒を!」

ヘビ香「シャー!」シュルルルル

ワニ子「ワニッ!」カプッ

真「ん? うわぁっ!ヘビ香お前、何を……!」シュルル

雪歩「ヘビ香ちゃん……?」シュルル

貴音「わに子がへび香を咥え、へび香が伸びて私達に絡まって……これは……」シュルル

響「『伸縮使い』ヘビ香はどこまでも伸びられる。『硬度使い』ワニ子は間接的にでも触れてるものの硬さを変えられる。これでみんな防御力アップさ!」

真「そうか、お前、ボク達を守ってくれてるのか……はは、ありがとう」

貴音「しかしこうも巻きつかれては……動き辛いですね」

雪歩「……ひゃっ」ビクン

いぬ美「ペロペロ」

響「いぬ美は『舌使い』。その舌から出る唾液は嫌いなものを溶かし好きなものを治す……そんな感じさ」

響「雪歩を治したら次は真だぞ。皆の痛いとこは全部治すから、そこで休んでてね!」

雪歩「あうぅ、くすぐったいですぅ」

響「やよい、お前は絶対自分が倒す! 貴音は引き続きやよいに重力よろしくな!」

貴音「……ええ、少しでも動きが鈍ってくれればよいのですが」

貴音(それより響、貴女は……)

貴音(自らの手でやよいを倒すことに……拘りすぎてはいませんか?)

真「……」

やよい(まだ……まだです……)

響「さあ、休ませやしないぞ! モモ次郎、ネコ吉、ウサ江! そして『前歯使い』のシマ男も一緒に! ハム蔵の指揮で攻撃しまくるんだ!」

ザシュッ ドガッ バキ ジュムッ ザシュッ ドドガッ バゴォン バギャアン ガリガリ

響ちゃんチート

やよい「……」ボロッ

響(よし……もう自己回復も追いつけてないっぽいぞ!)

響「響CHANGE!!」

ライオン響「これで……とどめだ!」ガオオオ

ライオン響(倒す、なんて言葉使ってたけど……こいつは殺さなきゃダメだ。殺さないと……被害は増えるばかりなんだ)

ライオン響(無惨に殺された律子や千早。したくもないことをさせられた貴音たち。……そんな犠牲者をこれ以上出さないためには、誰かがその元凶を殺すしかないんだ)

ライオン響(そんな汚れ役、誰にも頼めない。だったら……自分がやるしかないじゃないか!!)

ライオン響「お前は! 自分が!! 殺す!!!」

やよい「……ねぇ」

ライオン響「命乞いなら無駄だぞ!がおおおおおっ!!」

ドゴッ

ライオン響「……」

ライオン響「ごふっ……」

ネコ吉「にゃはっ」グリグリ

ライオン響「ネコ……吉……?」

あらあら

ライオン響「な……何、するんだ、ネコ吉……今朝キミのエサをちょっと食べたのは謝るから、今は……うぐぅ」

やよい「そこの鳥たちと豚のチカラはなんですか? 食用ですか?」

ライオン響「えっ……ブタ太は『嗅覚使い』、オウ助は『真似使い』、コケ麿は『卵使い』だけど」

やよい「ふーん、そんなもんですか。なら……もういいかな」

ライオン響「え?」

やよい「チカラを知らずに殺してしまって、もしそいつが良いチカラを持ってたらもったいないかなーって。かといって何でもかんでも奪ってたら……メモリーの無駄遣い」

やよい「だからまずは全部知って、要るチカラと要らないチカラを分別しよーって思ったんです。そこの豚たちが何かしてくるの、待ってたんですよ?」

ライオン響「な……なに言ってるんだ。わけわかんないこと言って混乱させようとしても、無駄だ……ぞ……」ヨロッ

ライオン響(もう少し……もう少しなんだ、やよいを……殺せば……)

やよい「……やれ」

ザシュッ ドガッ バキ ジュムッ ザシュッ ドドガッ バゴォン バギャアン ガリガリ

ライオン響「っあ……」ボロッ

ライオン響「お前た……ち……」ドサッ

やよい「タイムセールの荒波に揉まれながらも商品は確実に掴んで生きてきたこのスーパーアイドル高槻やよいが……意味もなく一方的にやられてるわけ、ないじゃないですか」

やよい「ちょっとずつ洗脳してたんですよ。動物たちは脳もちっちゃくて実にやりやすかったです。ほーら、おいでおいでー」

やよい「よーしよし、ムササビちゃん、いいこいいこ」ガシッ

響「あ……」

やよい「んっ、ありがと」ドクンッ

ポイッ

モモ次郎「」ドサッ

やよい「ふむふむ……」シャキッ

ザシュザシュザシュッ

ネコ吉ウサ江シマ男「」ドサッ

やよい「うん、良い感じ。刃が出るやつだけ、良さそうなので貰っておきます。その他は……触った感じ、いらないかなーって」シュッ

響「ああ……」

やよい「そこで見ててください、響さん。まだ終わりじゃないんですから」

やよい「このために生かしておいたんですよ。ペットたちの行く末を見守るのは……飼い主の義務なんですから、ね」

響「ああっ……うう……」ポロポロ

やよい「さて、一番欲しいのはやっぱりハム……!」

バチバチィ!!

バースト

やよい「ッ……」ビリビリ

真「へへっ、やーりぃ! ……命中、だね」シュウウ

響「ま……こと……?」

やよい「……今のはちょっと、効きましたよ」イラッ

真「ありがとう響。動物たちも……よく戦ってくれた」

真「おかげで全快したよ。折れてた右手も復活したし……これで思う存分雷を『放出』出来る」

真「このチカラの本来の使い方、とくとご覧あれ、ってね!」

やよい「まだやりますか、真さん。765プロメンバーは後回しにしても良かったんですけど……」

やよい「えへっ、気が変わっちゃいました。……お前からやります」

響「だ……めだ、真……自分が……自分がやるから……」

真「熱くなりすぎだよ響。君にしか出来ないことって、それじゃないだろ?」

響「えっ……?」

真「今一番避けるべきことは、ハム蔵のチカラをやよいに取られることだ。どう考えても強力だからね。なのにその主の響がやよいに執着してたら、ハム蔵は逃げられないじゃないか」

真「響はハム蔵と一緒に雪歩たちを連れて逃げるんだ。そしてもっと仲間を連れて……フルメンバーでやよいに立ち向かう」

真「それが今出来るベストなんだ。だからさ、もしボクを信じてくれるんなら……そのための時間稼ぎ、任せてくれ」

まっこまっこりーん

響「真……」

響「…………たしかに……そうだな、ごめん。分かった」

響「ハム蔵……一旦、『亜空間』に、逃げる、ぞ……」

響「自分と、雪歩と貴音……それと生き残った動物たちを連れて……体力的に、いけるか?」

ハム蔵「……ヂュイ」キリッ

響「はは……ほんと、男前だな……」

やよい「いやいや、他はともかく……ハム蔵は逃がしませんよ?」ビュンッ

響「!!」

響(なんだこれ! 人間の速さじゃ……)

やよい「私は本来『気使い』なんですよ。気を高めれば人間離れした動きだってできます」

やよい(捉えた!)

ドゴォッ

やよい「ッ……!」ズザー

真「人間離れした動きならお互い様さ。ボクの場合その源は電気だけどね」バチバチ

真「ハム蔵! 今のうちに!」

やよい「くっ……待て!」

ハム蔵「……ヂュ!」

雪歩「あっ……真ちゃ」

シュンッ

やよい「……ッ」

真「よし、なんとか全員行ってくれたみたいだ」

やよい「……真さん……覚悟はいいですか?」ピキピキ

真「覚悟、か。自分でも……よく分かんないや」

真「心より先に、体が動いてた。ボクはそれに従っただけ。……後悔は、無い」スッ

やよい「そうですか……なら、その体に分からせてやらないとですね」スッ

バッ

ドドドドド

ガキィン シュパッ バリバリィッ スチャッ バババッ ズキュウウウン

ズバァッ

ザシュザシュザシュッ

~亜空間~

響「ふう……ありがとな、いぬ美。だいぶ楽になった」

雪歩「ねぇここどこ? 出して! 真ちゃんが! 真ちゃんがっ!!」

響「ここはハム蔵が作り出した亜空間。さっきの場所のすぐ近くにあるけど、普通の手段じゃ決して来られない場所さ。ここにいれば、やよいに見つかることはまずない」

響「外からこの空間内のものは認識できないけど、ここからあっちの空間は認識できる。ほら、そこでやよいと真が……あ、ううん、見なくていい」

響「とにかく自分たちはさっきまでここに身を潜めてたんだ。さっき助けられたのは、嗅覚使いのブタ太がお前たちを見つけてくれたからなんだぞ」

雪歩「そんなの聞いてない! 真ちゃんを……見捨てるの!?」

響「見捨てるんじゃない、信じたんだ。自分たちは真を信じて、真は自分たちに託した。それを無かったことにはできない」

雪歩「でも! 真ちゃんも連れて皆で逃げればそれで良かったじゃない!」

貴音「雪歩……どうか理解してくださいまし。今やよいを自由にするわけにはいかないのです」

響「あの身体能力と目を持つやよいをほっといたら、765プロの皆はすぐに見つかって捕まって……洗脳されるか、殺されるか。良いことなんて一つもない」

響「だから、自分たちが仲間たちをこっちに連れてくるまでの間、やよいを足止めする必要があるんだよ。悔しいけど、この中であのスピードについていけるのは多分真だけだからな」

雪歩「う、あう……あ! そうだ! ハム蔵ちゃんのチカラでやよいちゃんを亜空間に閉じ込めちゃえばいいんだよ! ねぇ響ちゃん、そうすれば……」

響「ダメだ。ハム蔵が作り出した亜空間は、その核となるハム蔵がそこいないとすぐに形を保てなくなって、中にいるものは元の空間に戻されるらしい」

響「だからハム蔵とやよいを別空間に隔離するには、これしかないんだ」

すまんできたらしばらく保守頼む

                  l    ―ァ l l  ―|ー   r‐ァ r-、
      _  _,.      |ー .  (      (,|    .| く .|ー|
     l  く |_|   _l__|_     `    ノ    |-'  |ー|   l
     | `ヽ |―|                     |   ┴.┴   |ー
     |ー'" _j_j__                           _l__|_ 
                            ,.r'::ア'            つ
    \                     ,:':::;r'                 /
      \                   .j:::/._,.r::'::"^':.ュ、          /
                 ._,.。:-‐::'":´ ̄:`ヾ.j':;r=='ニ:´ ̄

              . ,r:'":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ、
             /:::::::::::::::::::;r:::::::::::::::::;、::::::、:::::::::::::::、:::ヽ

        o     ,r'::::::::::::/::::::;r^|::::::::::::::::/='='^:1:::::::::::::::::ヾ:::':、
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          /:;r::::::::::/ l゙'/ー'" .l;::/l:::./  `'ー‐ベ::/l::::::::::::::1::::i,  o

          j/^j:::::::::/ l/‐- 、 V 1/      ,rーV、j:::::::::::::::i::::::l      
      O    '  i::::::::;'  (   )          (   )|:::::::::;::::.j::::::i     O
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        o   l:::::::{      ,..-'"⌒"'"⌒^ヽ、  |:::::/;::Y::ノ     ゜
          r:i-V1:::':、_   i´          1  ,j:::/:j、:i.:ム,-、
          `i-、i,_'、:::/'ーr-,ゝ、,___ _,..... /‐'"l:/!´ ̄i._,,.iノ
          ri;ーl-`Vー-l, i   ヽ l-、_ ,j /'   i j,r-'^j  i二)
          `ヽ^'"´ ̄ `'ーー┐.ヽjヘ.^ノl,i'  r―'"^  ̄i ̄!
                    / i^j////.l. i  l
                   r'ニコ .l'////1 r-l、

                    (    j/////!  ̄`i;
                   `i.、__./'/////i、___,ィ^
                     j^'-.、'__,/=-―'l、

すまんありがとう

雪歩「……こうするしか、なかったんだね」

響「ごめんな、雪歩…………ブタ太、どうだ?」

ブタ太「ブヒョー」

響「なるほど、近くにあずさがいるのか。そして公園の方に伊織、病院の方に美希、事務所には七人くらい……でも千早と律子が死んでるんなら、五人だな」

響「で、春香は……ええっ!? ハム蔵、頼む!」

ハム蔵「ヂュイッ」

貴音「響、まずは三浦あずさをこちらに連れてきましょう。真によると彼女はやよいの洗脳を受けていたようですが……恐らくもう大丈夫でしょう」

貴音「どうやらこの洗脳、時間とともに薄れゆくもののようです。現に今の私の心に、犯人としての萩原雪歩は殆どおりません」

雪歩「で、でも私はまだ、犯人としての四条さんが頭から離れないですぅ……今はもちろん、違うって分かってるんですけど」

響「うーん、そもそも洗脳されるってどんな感じなんだ?」

雪歩「えっと、まず……記憶の捏造かな。四条さんが律子さんを殺した瞬間を見たっていう記憶が、ハッキリと私の中に……うう、忘れたいよ」

貴音「そして、意志の誘導。犯人は許せない。殺さなければならない。そういった思いが、極端に強くなります」

響「『気使い』、だっけ。人の心をこんなにも簡単に操れるなんて……恐ろしいチカラだな」

貴音「ともかく、急ぎましょう。戦力を集めなければ……勝てる戦いも勝てません」

響(みんな……待ってろよ……!)

~事務所~

亜美「行かせてよ~兄ちゃん~!」

P「いいやダメだ。響が生きてて、それを殺しに行くなんて、許すわけがないだろ」

P「よく聞け。響は犯人じゃない! お前らは操られてるんだ!!」

亜美「な……なんだってー!!」

真美「兄ちゃんがそういうなら、そうなのかも」

亜美「だったらひびきんに悪いことしちゃったね」

真美「うんうん、後で謝らなきゃ。真美、取っといたチョコひびきんにあげるよ」

P「で、だ。誰に操られてたかだが……やっぱ彼女としか思えない、ですね、社長」

社長「うむ……君がネットで調べ得たあの情報を考えるに……答えは一つしかないようだね」

P「じゃ……最終確認としましょうか」スタスタ

P「小鳥さん……少し喋ってもらいますよ」

小鳥「……」

亜美「へ? あっ、さてはピヨちゃんが亜美たちを操ってたの!?」

P「いや、そうじゃない。お前たちを操ってた……正確には洗脳してたのは、やよいだろう」


   ̄ヽ、   _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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.        | :::: |:il:::::::::::::::::|《  {こ.:)ノ       {こ)ノ ノ/|:::::::::::::: |        あ
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         ノ. 八. ∨ ヽ:::| |二二>:。..    /| l |i:i| |i:i/    ノ
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   -‐==ニニニニニ二\.     /_/⌒:} \ |ニニ=‐-
 /\ ‐==ニニニニニニニ\/  ̄ ̄ヽ.  | ̄ ̄ }ニニニニ=-

亜美「や、やよいっち!? おのれ、ビンボーをこじらせたか!」

真美「バツとして後でこの取っといたチョコ、目の前でおいしそうに食べてやる~!」

P「で……それを確かめるためにも、小鳥さん。あなたには喋ってもらいます」

P「といっても、内容は何でもいいんです。何でもいいので喋ってみてください。できないのなら……そういうことなんですね」

小鳥「……」

亜美「へ? なんで?」

真美「ピヨちゃんは妄想嫌いになっただけで、別に喋れなくなったわけじゃないっしょ?」

亜美「ん? でも言われてみれば最近ピヨちゃんの声聞いてないような」

社長「……」

社長(音無くん、やはり……)

小鳥「……」

P「やはり、喋れないようですね。恐らく……あれ以来、一度も喋っていないでしょう」

亜美「あっ、アレって、ピヨちゃんがいきなり『妄想なんて、もう……しない』とか言ったアレ?」

真美「三日くらい前かな? 妄想使いなんてすごいチカラ持っててしかも元々妄想好きだったピヨちゃんがそんなこと言って、みんなメッチャびっくりしたんだよね~」

亜美「ピヨちゃんの妄想には無限の可能性を感じてたし、チョ~ショックだったよね」

P「あのあと貴音が『お、思い出しました……』とか言って隕石の秘密について語り始めてさ、俺らは皆納得したんだよな」

P「小鳥さんは隕石に選ばれた。そのエネルギーのおかげであんなにすごいチカラを得た。そしてその副作用によって、特性の一つが逆になり、妄想が嫌いになってしまったんだ……って」

P「でも……違ったんだ。小鳥さんは……隕石に選ばれてなんかなかったんだ」

亜美「? つまりは、どういうことだってばよ……?」

P「ネットで調べたらこんな情報が出てきた。『スーパー・エネルギー・ストーンに選ばれるのは、その場にいるもっとも純粋な心の持ち主』……って」

真美「ピヨちゃんじゃないじゃん!!」

亜美「じゃあ誰が……?」

P「どう考えてもやよいだ。やよい以上に純粋な子はうちにはいない。つまり隕石に特別なエネルギーを与えられたことによりやよいのチカラはより強力になり……」

P「その副作用で、特性の一つが逆になったんだ」

P「群を抜いて『良い子』だったやよいは……とんでもなく『悪い子』になってしまったんだ!!」

真美「ふむふむ……白やよいが黒やよいに……まるでやよいっちの好きなオセロみたいだね」

P「皮肉なもんだな。俺たちは……仲間の中で一番の良い子を、相手にしなければならない」

P「最悪の場合……殺さなければならないんだ……」

亜美「……ん?」

亜美「ちょい待って、じゃあピヨちゃんのこれはどういうこと?」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおやよいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

P「小鳥さんについてはなんとなく想像できますが……多分、社長の方が知ってるんじゃないですか?」

社長「ああ……今考えれば、そうなのだろう、な」

亜美「くわしく」

社長「……彼女のチカラは、不便な能力だったのだよ」

亜美「えーどこが!? 妄想使いなんて、なんでもできんじゃん!」

真美「だよねだよね~! 不便なワケないっしょ!」

社長「例えばだがね……テスト返しの時、悪い点を想像してドキドキしたりすることはないかね?」

真美「んー、たまに。これ以上悪い点取ったらお小遣い減らすよーなんて言われてたら、嫌でもしちゃうかも」

社長「音無くんのチカラはだね……妄想を現実にすることができるチカラ、と言うよりは、想像してしまったことを現実にしてしまうチカラだったのだよ」

真美「……へ?」

社長「有り得る、と思ってしまえば、本人の意志とは無関係にそれは強制的に現実になる。カップリングの妄想だろうが……嫌な予感だろうが、ね」

社長「……そのチカラで、彼女は…………人を死に追いやってしまったのだ」

亜美「!?」

社長「道路で遊んでいる小さな子供に対して、ふと思ってしまったらしい。『危ないなぁ、もし車が来たら……』とな」

社長「あっ、と思った頃には時既に遅し。急に猛スピードでつっこんできた車は……サッカーボールのように容易く子供を跳ね飛ばしてしまったのだ」

(アカン)

亜美「う……うああ……」

社長「考えただけでも、恐ろしいチカラだろう? ……轢かれた子供は即死だった。誰からどう見ても、な」

社長「人が生き返るなんて、普通に考えて有り得ないこと。有り得ると思った範囲のことしか実現しないから……どれだけ妄想しても、その子供が生き返ることはなかった」

社長「小鳥くんは後日そのことを私に話してくれた。嫌なことを考えないようにしても、抑え込もうとすればするほど浮かんでくる。私は……どうすればいいの?」

社長「そう聞かれた私は、言葉に詰まった。そして結局……その日は何も答えられなかった」

社長「……今にして思えば、小鳥くんはその帰り際、何かを決意をしたような顔をしていた、な」

社長「翌日、小鳥くんは皆の前であの言葉を告げた。『妄想なんて、もう……しない』」

社長「貴音君の話した例の副作用の話で、我々はそういうことなのだと納得した。私も……そう思うことにした」

社長「しかし本当はあの瞬間、小鳥くんは自らのチカラで、自分を妄想出来ないようにしたのだ」

社長「とはいえ微調整の出来ない不便なチカラだ。結果、音無くんは……『思考すること』のほとんどを封じられてしまったのだろう」

社長「簡単な受け答えすら出来ていない今の状態が何よりの証拠。考えてみれば、妄想が嫌いになったからといってあの音無くんがここまで無口になるはずがない」

社長「あまり考えずにできる、身に染み付いた日常的な行動くらいはできていると信じたいが……危険な状態には違いないだろう」

社長「この様子だと、食事が取れているのかも怪しい。帰宅はしているようだが、風呂には入れているのか?そもそも着替えているのか? ……私は今、心配で仕方が無い」

真美「思ってた以上に悲惨すぎて何も言えない……」

P「やっぱ、そういうことになりますよね。小鳥さんは……自らのチカラで、自らのチカラに立ち向かった……ってことか」

亜美「ねぇ兄ちゃん、どうにかなんないの!?」

P「……わからない、けど……今日からは皆で色々と助けていこうな。なんか介護みたいで小鳥さんも嫌かもしれないけど」

社長「音無くん……」

小鳥「……」

響「みんなぁ!」シュンッ

P「おわっ!?」

真美「ひびきん!?」

亜美「おのれ……じゃなかった、えと、ごめんねひびきん! 亜美たち、やよいっちに騙されてたんだって!」

響「えっ? そこまで気付いてたのか? はは、良かったぁ……すぐ襲われるかもって、ちょっと身構えちゃったぞ」

真美「ほんとにごめんね、後でチョコあげるよ」

響「いいって、二人は悪くないもんな。チョコはもらうけど」

P「というか今どこから現れた? 響CHANGEのレパートリーに瞬間移動できる動物なんていたっけ?」

響「ああ、そうだ! ええっと、黒幕のこと分かってるんなら話は早い。皆でやよいを倒しに行くぞ!」

P「!」

響「今、真たちが時間稼ぎしてくれてる。多分、勝てない。だから……勝つために、仲間を集めてるんだ!」

P「……勝算は?」

響「そんなのないぞ。でも、仲間が多い方が勝率は上がるに決まってる! プロデューサーたちも来てくれるでしょ?」

P「いやいや、そんな理由じゃ行けないって。亜美真美はともかく、俺や社長なんてどう考えても戦力外だろ。足手まといを庇いながらの戦闘は非効率的であるからにしてわざわざその道を選ぶのは非論理的であるからにしてゆえに」

響「うがー! 何言ってるんだ? 理屈なんかどうでもいいから、早く行くぞプロデューサー!」

P「ちょっおま……!」

社長「我那覇君。プロデューサー君はともかくとして……音無くんは連れて行けない。それでもいいかね?」

響「……ワケありっぽいな。分かった。その代わり他の皆は連れてくからね!」

P「ちょっと本気で待ってくれ心の準備が……」

  「いってらっしゃい」

P「!」クルッ

P(小鳥さん、今……)

響「ハム蔵~! ピヨ子以外OKだって!」

シュンッ

P「えっ」

雪歩「わっ」

ピヨォ

~病院~

医者「あれ?」

医者「おかしいねぇ、大火傷した急患が来てたはずなんだけど……どこ行ったかな?」


美希「……あふぅ」

美希「治った」ザッ


~森~

真「か……はぁっ……」

やよい「ふふっ、私の手ばかり気にしてくれてるもんだから、とーってもやりやすいです! そんなにこの手が怖いですか?」

真「……そりゃ、そうだ、よ。洗脳されたり、チカラを奪われたりするくらいな、ら……やられた方が、ずっと……ぐっ」

真(まいったな……あとどれくらい耐えればいい? もう……壊れそうだ)

やよい「なかなかしぶとかったですけど、そろそろ限界みたいですねぇ。最後は男らしく傷だらけで死なせてあげましょう」ジャキィ

真(はは、本気でやばいみたいだ。幻覚まで見え始めてる)

真(蒼く燃える鳥だなんて……いるはずがないのに……)


バサァッ

フェニックスはるるん

            群れを離れた鳥のように

真「……あ」

やよい「どっこからっ斬っろおっかな~っと」

         明日の行き先など、知らない

真(幻覚なんかじゃない。あれは…………)

       だけど傷ついて 血を流したって
   いつも 心のまま

 ただ、羽ばたくよ――――――


バサァッ


やよい「よーし決めた、やっぱり脳天から……ん?」

ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

やよい「!?」ボォウッッ

真(春香……!)



春香「やよいいいいい!!! とりゃああああああああああああああああああ!!!!!」ゴォォォォォォあ

やよい「あっつ……あっつぅいいぃいぁ!!」ボォォウッ

真「!」

真「すごい……効いてる……!」

春香「真! 大丈夫!?」シュタッ

真「春香……なんで、ここに……」

真(いや、それより、この姿は…………)

春香「……守りたい命と……消したい命がここにあったから」

真「……?」

春香「ここに来た理由も、来れた理由も、それだけだよ。だから私は……やよいを殺す」

真「!」

春香「律子さんが殺された。千早ちゃんも殺された。そして今……真も、殺されかけた」

春香「どんな理由があるにしても、仲間の命を簡単に奪ってきたやよいを許すことなんて、やっぱりできないよ」

春香「もっといい方法があるのかもしれないけど……それでも私は天海春香だから」

春香「こうすべきとかそういうのは関係なしに、一人の人間、天海春香として、千早ちゃんたちの仇を討ちたい。これが今の正直な気持ちだよ」

真「春香……」

ID変化はさる回避に役立つぞ

真「もちろん、ボクだって同じさ。こんな悪いやよいを許したら、律子や千早が報われないよ」

真「でもね、春香……殺すのは皆が来てからだ」

春香「……え?」

真「どうしちゃったんだよ春香。何もかも一人で背負おうとしすぎだよ」

真「プロデューサーもいる。ボクたちもいる。楽しいことはもちろんだけど……辛いことを分かち合ってこその仲間じゃないか」

春香「!」

真「それに、やよいはそう簡単には殺せないよ。冷静さを欠いたままガムシャラに突っ込んでも、返り討ちに合うだろうね」

真「だからボクは今、皆を信じて戦ってるんだ。ボクが時間を稼げば、響たちが皆を集めてくれる。皆で戦えば、きっと……ってね」

真「春香は……皆を信じてないのかい?」

春香「そんなことない! でも……」

真「おっと……ごめん、ボクはここまでだ」

春香「えっ?」

春香「!! やよいが来る! 避けないと……」サッ

春香「真も……!!」

春香(足が……切断されてる?)

真「君が来る少し前から、ボクはもう……限界なんだ。ごめんね春香、後は託したよ」

春香「真っ……ッ!?」ゴンッ

春香(透明な壁……!)

やよい「もう、邪魔させませんよ……春香さん」

春香「やよい……!」

やよい「さっきの、すーっごく熱かったです。焼かれた仕返しに……焼き付けてあげます」

やよい「真さんの死を、あなたの目に!!」キッ

春香「待っ……」

真「……」

真(長かったなぁ、ここまで……へへっ)

 あずさ『死んだら、楽になれるんじゃないかしら~』

 貴音『理解する必要も、ありませんね』

真(辛いこともいっぱいあった。何度も絶望して……心が折れそうになった)

真(だけど今は……うん、違う)

雪歩覚醒フラグ

真「……」ニッ

やよい(? 笑った……?)

真(雪歩がボクを信じてくれた。貴音が自分に打ち勝ってくれた。響がボクらを助けてくれた。そして……)

真「……春香!」

真(……ボクはもう、怖くない。だって皆がいてくれるから。皆がいれば、きっと勝てるから)

真「希望を見せてくれて……」

真(だからボクは……笑顔で死ねる)


真「ありがとう」ニカッ


春香「真ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!!!!!!!!」



グサッ


やよい「はいおしまい。あっけないでーす」

春香「あ……ああ……」プルプル

春香(命が……消えた……)

やよい「さて、と……次は春香さんですね」

春香「あ……うう……」

春香「うわあああああああああああっ!!!!」ゴォォォォォォ

やよい「……」ボォウッ

やよい「なんですか、そのへなちょこな炎」

春香「え……」

やよい「さっきはすごいかもーって思いましたけど……やっぱり春香さんですね」

やよい「奪う価値もない、クソ能力です」スタスタ

春香(……さっきも、思ったけど……この子、他人のチカラを……)

ドゴォッ

春香「がっ……!」

やよい「はいおしまい。鉄板を砕いたメガネパンチ、普通の人には耐えられな……」

やよい「……あれ?」

春香(死ねない……まだ、私は……!)ヨロッ

やよい「ふうん……粘りますか、意味ないのに」

~亜空間~

P「……情報交換は、こんなとこだな。なるほど、大体事情は分かった」

響「こっちも、色々新しいことに気付けたぞ。そっか、やよいは……隕石なんかに選ばれたせいで……」

貴音「……考え得る中で……最悪の展開ですね」

伊織「……」

あずさ「……」

P「伊織もあずささんも、そう落ち込むことはない。責任を感じているのかもしれんが……仕方なかった、だろ?」

伊織「……私は」

伊織「気付いてた……その可能性に」

P「……え?」

伊織「でも……認めたくなかったのよ。やよいが犯人だなんて……どうしても……」

伊織「そのわがままのせいで!! 私は! 美希に酷いことを!!!」

P「おい落ち着け、自分を責めても……!」

伊織「……大丈夫。落ち着いてるわ」

伊織「情けない……やってやろうじゃないの!! 自分のミスは、自分で取り返す!」

あずさ「強いわね……伊織ちゃん」

P「ですね。心配、いらなかったか。あずささんは大丈夫ですか?」

あずさ「……私は」

あずさ(私は……割り切れない…………)

P「……」

P「……響、春香と美希は?」

響「春香は、入れ違いだ。自分たちがこっちに向かってる途中、すごい速さでやよいの方に向かってった」

響「強制的にこっちに呼ぼうと思ったんだけどハム蔵のチカラでも捉え切れなかったんだ。今は多分真と一緒。 あの様子なら足手まといにはならない、と思う」

真美「あのー……それなんだけど」

響「……なに?」

真美「あっちの空間からはこっちの空間の音は聞こえなかったんだけどさ、こっちの空間からあっちの空間の音は聞こえるわけじゃん?」

P「らしいな。音に限らず、なんでもそんなマジックミラーみたいな感じなんだろ?」

真美「でね、真美もじっとしてらんなくて、ずっとそっちに集中してたんだけど……ちょうど今さっき、なんだけどね……」

真美「まこちんの心音……聞こえなくなった……」

P「!?」

書き溜めって調子乗っちゃうのよね

P「……春香は?」

真美「まだ生きてるよ。やよいっちのすぐそばで。でも、もう……やばいかも……」

P「……こりゃ、急いだ方が良さそうだな」

真美「あれ?」ピクン

P(真……お前の死は、無駄にはしないからな)

響「ハム蔵!急いでくれ!」

ハム蔵「ハッ、ハッ、ハッ」カラカラ

P「……なぁ響、このハムスターの運動するやつみたいな移動方法、なんとかならないか?」

響「えー、でもこの亜空間ごと移動するには、これしかないんだぞ? これでも地上を移動するより多分速いんだからな!」

P「でももっと急がないと……貴音! 重力処理はしてるのか?」

貴音「ええ、ハム蔵が最も運動しやすい重力に調整しています。しかし……気休め程度にしかならないかと」

真美「ねぇ、次は病院にミキミキを拾いに行くんだよね?」

響「そうだぞ。伊織によると美希は大怪我してるらしいから動けてないはずだし、まずはいぬ美が治して……」

真美「でもね、そのミキミキ……」


真美「やよいっちのすぐ近くまで来てるっぽいんだけど」

~森~

やよい「真さん以上に何故かしぶといですね……身体強化もできない、ただの炎使いが」

春香「……」ボロッ

やよい「もう死にかけに見えますけど……そろそろとどめ、なーんて言ってまた他の人が来てうやむやになるのも嫌ですし……一応メガネかけて周囲の確認でもしときましょうか」スチャ

やよい(透視&千里眼!)カッ

やよい(……響さんたちの姿は無い。そこまで遠くには逃げられないはずだし、ハム蔵のチカラでこっちからは干渉できない別の空間でも作ったかな?)

やよい(いいですねぇ……ますます欲しい)ジュルリ

やよい(で……結局765メンバーで見えるのは、この人だけですか)

やよい「って、メガネいらなかったか。真っ正面から普通に歩いて来てますね」

やよい「……美希さん」

美希「……」スタスタ

春香(美……希……?)

やよい「目、閉じてますけど、どうしたんですか? あっもしかして見えないとか? 伊織ちゃんのチカラで……」

美希「ううん……もう治った。ただ今は……こうしてた方がよく見えるだけ」

やよい「……は?」

美希「美希、寝てるの好きだからかな……寝てた方が、落ち着いて周りを見れるんだ」

美希「風だけで……全部…………うん、よく見える」

やよい「……ああ、わかりました。天才ってやつですね。私みたいな庶民にとっては、すっごく腹が立つかなーって」

美希「……春香」

春香「美希……」

美希「よかった、生きてて……本当に……」ヒュウウウウ

春香「美希にまたねって……言ったもん……真に後を、託されたもん……」

春香「何度も、死にそうになったけど……炎、消えそうになったけど……」

春香「死ねるわけ、ないじゃ……?」シュウウウ

春香(傷が……癒えてく……?)

美希「『癒しの風』だよ。美希の必殺技……じゃなくて、必生技、かな?」

美希「美希のチカラは、風のチカラ。あらゆるものを“飛ばす”チカラ」

美希「だからね、ちょっとコツを掴めば……怪我とか病気とか、痛いのだって、飛んでけーって、できるの」

春香「ふふっ、なにそれ……ありがとう…………」

やよい「イラッ……ときますね、相変わらずその無茶苦茶ぶりには」

やよい「美希さん、やっぱりあなた……全然見えてないですよ」

美希「むー、ちゃんと見えてるもん」

やよい「見えてないのは、状況のことです。春香さんの傷を癒して、二人で戦ったところで……私に勝てるとでも思ってるんですか?」

美希「だから……見えてるよ。うん、確かにやよいまだ本気出してなさそうだし、勝てないかもしれないけど」

美希「……春香と一緒に、逃げて時間を稼ぐくらいはできるの」

美希「春香、飛べる?」

春香「うん……なんとか」

やよい「ふうん……まあ、それなら少しは寿命伸びるかもですね」

やよい「でもどっちみち、おろかな道には違いないです」

美希「ミキ的には、ナイスチョイスって思うな」

やよい「逃がすつもりなんてありませんけど……もし美希さんたちがうまく逃げ切って、お仲間たちと合流できたとします」

やよい「それでも私に勝てないことくらい……美希さんなら分かりますよね?」

春香(……確かに、やよいは強い。私の知る限り、今のやよいに勝てる人なんて……)

美希「……可能性を蔑ろにしてたら、前に進めないの」

やよい「はいはい……それじゃ鬼ごっこ、始めましょっか」ダッ

やよい「ええい!!」ビュンッ

春香「わっ、やっぱ速……」

美希「春香! 飛んで!!」

春香「! うん!」ビュンッ

美希「えいっ」ヒュウ

やよい「!」スカッ

美希「行くよ!」ヒューーイ

やよい「……厄介な風です」

美希「止められなくったっていいの。ちょっとズラせば攻撃は外せる!」

やよい「だったら……これはどうですか?」スッ

春香「!! 真上に……巨大な鋼鉄の板!」

春香(やっぱり……千早ちゃんのチカラを……!)

やよい「ズラせるもんならズラしてみてください! 押し潰しますよー!!」

春香(やばっ……)

やよい「……って、もうあんな遠くに逃げてる!? くそっ、思ったより速いです」

春香「……?」

美希「春香、こっち」ボソッ

やよい「じゃあ次は逃げられないように……っと」サッ

ガシャコーン

春香「!!」

やよい「六方向全部板で囲んじゃったら、さすがにどうしようもないでしょう。あはは」

春香「何を……」

やよい「そして上の板だけ少し小さくして……押し潰す!」

やよい「さぁ……今度は、どうやって逃げるんですかねぇ!!」スッ

ガシャアアアアアアン

やよい「……手応え…………無し?」

やよい「まさか美希さんも瞬間移動を? いや、そんなはずは……」


美希「よし……けっこう逃げれたね」

春香「何したの? やよい、一人で何と戦ってたの?」

美希「ん、大したことしてないよ? 春香の炎で熱せられた空気に、美希の風……それでちょっと蜃気楼作っただけ」

春香「……蜃気楼?」

美希「おっきい板に潰されそうになった時、遠くに見えるようにミキたちの光をねじまげたの。なんとなくやってみたら、なんとかなった」

春香「え……そんな簡単に作れたっけ、蜃気楼って」

美希「でも出来としてはビミョーなの。眼鏡使いのチカラを得てるっぽいやよいなら、集中して見れば気付くって思うな」

美希「だから……次はない。ギリギリだよ、ずっと」


やよい「どうやって逃げたのかはさっぱり分からないですけど……この眼鏡から逃げられると思ってるなら、甘いです。噛み続けたもやしより甘いですよ」スチャ

やよい「ほうら見つけた。さてさてお次は、どんな攻撃にしよっかなーっと」

やよい「……そろそろ、使ってみるのもいいかなぁ」

やよい「千早さんの……本来のチカラ」


美希「! 春香、あれ!」

春香「あれは……プロデューサーさん!!」

春香「の……石像?」

美希「……」

美希「まさか……」

美希(石にするチカラなんて、無い、はず……でも、もしかしたら……)

美希「ハニー……」ユラユラ

春香「! 美希、近付いちゃダメ!」

美希「!!」サッ

ジャキジャキジャキィ!!

美希「危なっ……」

春香「刃がいっぱいでてきた……やっぱり、罠だった」

美希「た、助かったの、春香」

やよい「んー、恋は盲目作戦、失敗、か」スタスタ

美希「! やよい……」

やよい「お二人ともあんなクソみたいなプロデューサーのこと何故か好きみたいですし、エサに使ってみたんですけど……どうでした?」

春香「全然ダメ。石像なんかで、私は騙せないよ!」

春香(だってあの石像からは……“命”が、感じられなかったから)

美希「うん……たしかに、集中したら分かる。フカクだったの。やよい……石像なんて作れたんだね」

やよい「えへへ、私、いただきましたから」

春香「板抱いた……ですって……?」

美希「千早さんのチカラをお前が奪ったのは、分かるの。見てればわかる」

美希「それよりハニーが石になったのかと思って、すっごく怖かったの。ドキドキしたの。美希の純情をもてあそんで……許せない」

やよい「おー、怖いですねぇ、ゆとりさん」

春香「あれ? でも千早ちゃんのチカラって、板を作るだけじゃなかった?」

やよい「違うんですよ。本来は、ね」

やよい「『物質の生成』……千早さんはそんな良いチカラに目覚めていながら、コンプレックスからか凹凸のイメージができなかった」

やよい「結果として『板使い』なんて呼ばれることなっちゃいましたけど……本当は板状じゃなくても好きな形のものを作れるチカラだったんです」

春香「千早ちゃん……ううっ……」

やよい「複雑な形を作ろうとしたらその分疲れるから、もしかしたらその制約が良い方にはたらいてたのかもしれませんが……100%チカラを引き出せてなかった時点で、ダメですよね、もう、全然」

やよい「その点私なら、疲れるなんてことはない。ダテに元気使いやってませんでしたからね」

春香(そういえば……あれだけ動いたのに、汗一つかいてない)

やよい「ということは、ですよ。もう、おわかりでしょうけど」

やよい「私がそのチカラを使えば……ほうら、こんな感じで」パパパッ

春香「あ……」

やよい「こーんなに複雑な形のものでも……無制限に作れちゃうわけです」

美希(765プロのみんなそっくりに……色んな素材を使って……)

ドガシャァン!

美希「!」

春香「!!」

やよい「んー、失敗作。でも壊すとストレス解消になって良いものですね」

やよい「……あ、偶然あなたたちの未来を暗示したみたいになってれぅ」

美希「こいつ……!」

やよい「ちなみに刃の方はあれです。響さんの家畜の……ムササビのムっさんでしたっけ? そいつのチカラです」

やよい「なんでも斬れる刃。千早さんのチカラだと、それっぽい形は作れますが……流石にここまでの斬れ味は無理です」

美希「……バケモノ」

やよい「あははっ、同じですよ。一般人から見たら……私も、あなたたちも。チカラを使える時点で……バケモノです」

春香(時間……時間を、稼がなきゃ)

春香「さっきから、当たり前みたいにチカラを奪った話してるけど……その、具体的にはどうやってるの?」

やよい「あ、気になっちゃいます?」エヘヘ

やよい「えっとですね、チカラを奪うにはまず相手が生きてることが最低条件ですね。チカラって、命そのものに宿ってるみたいなんで、死んだら消えちゃうんです」

春香(やよいは、まだ私たちを舐めてる。ここは冷静に、話をして、援軍を待つ……そう、冷静に)

やよい「っていうか『命』と『チカラ』は一セットというか……くっついて離れないんですよ、しつこいくらいに。だから生きたまま相手を掴んで、命もろとも奪う。これがコツですね」

春香「……」ピクッ

やよい「私本当は『元気使い』っていうか『気使い』だったんですよ。だから命とかエネルギーみたいなものの扱いはお手の物なんです」

やよい「もっとも今の私は『元気使い』って言っても過言ではないですけどね。今の私は単なる気使いじゃなく、眼鏡使いであり物質使いであり刃使いでもある『元・気使い』ですから」

やよい「それにしてもあの瞬間の千早さんの表情……普段のキリッとしてる姿からは想像もできないくらい崩れてて……ぷふっ、あ、ごめんなさい思い出し笑いしちゃっちゃあ!」ボウッ

やよい「……」

やよい「…………熱っ」

春香「殺す」ゴォォォォォォ

美希「……このやよい相手に会話で時間稼ぎなんて、やっぱ無理なの」スッ

やよい「……」ジャキン

ズンッ

春香「!? かはっ……」

美希「えっ……春香!」

やよい「人の話は最後まで聞く……常識が欠けてますよ、ゆとリボン」ズパァッ

春香「うぐっ……!」

美希「なっ……」

美希(見えなかった……このやよい、本気出すとこんなに……)

美希(というか春香! お腹貫かれてそのまま斬られて胴体半分千切れた状態の春香をなんとかしないと……!)

美希「今治すの!」ヒュウッ

やよい「治されると分かってて……」スッ

やよい「させるわけないでしょう、普通」シュッ

美希「!!」サッ

美希(ッ……かすった。それより春香が……春香が!!)ツー

美希「ねぇやよい! 何が目的なの!? ミキにできることならできるだけするから! 春香を助けさせて!」

やよい「目的? 最終的な目的のことなら……世界征服です」

美希「……は?」

やよい「世界せーふくです」

美希(ま、真顔……うそっ……そうだった、忘れてたけど基本バカだったのこの子)

やよい「アイドルのトップなんて目指したところで、たかがしれてます。私のチカラならなんだって出来るのに……そんなもの目指してもつまらないかなーって」

やよい「ならいっそのこと世界のトップを目指そう、と。思いまして」

やよい「だって世界征服できたら、なんでもできちゃうんだもん……」

やよい「世界中の、ぎゅ、牛肉とか、いっぱい食べて……! 自転車なんかも買っちゃって……」

やよい「もやし祭りだって、好きなだけ……えへ、えへへ」

ゴォウッ

やよい「!」ボウッ

春香「っかはぁ……っはぁ……」

やよい「……燃やし祭りってか、やかましいです」

美希「春香……そんな体で無茶したら……!」スッ

やよい「あ、回復はさせませんよ?」ジャキン

美希(隙がない……! ど、どうしよう……)

やよい「……で、まぁ、昨日律子さんのチカラを奪ったのは、単純に欲しかったからです。私のものになった世界を、私の目で見渡せるように……」


?「そんな理由で、律子を殺したのか」

やよい「はい、そうで……え?」

美希「あ……」

??「よく頑張ったな、美希君」

??「んっふっふ~、話は全部聞かせてもらったよん」

??「この『音使い』真美に聞こえない音は無し! 聞いた音はそっくりそのまま皆に届けたかんね!」

??「あうぅ、春香ちゃんが……すごく、普通じゃない状態ですぅ」

美希「ああっ……!」ポロッ

??「さっきは悪かったわ、美希。口先だけの謝罪より……結果で示してみせるから」

???「やよいちゃん……ちょっと、お痛が過ぎたわね」

?「いぬ美、春香を頼むぞ。こっちは自分たちに任せろ」

??「事実と向き合い死した者。仲間の裏切りに涙した者。人を傷付け、自身を責めた者。……誰一人として望んでおらぬこの不毛な戦いに、今こそ……終止符を打つ時です」

?「よし……」

P「いくぞ!!!」

亜美真美伊織響あずさ雪歩貴音社長「「「「「おおっ!!!!」」」」」

美希「遅いよ、みんな……!」ポロポロ

やよい「あーあ、みんな来ちゃいましたか……わざわざ、死にに」

春香「!」シュンッ

ハム蔵「ヂュイッ」キリッ

いぬ美「ペロペロ」

春香「んっ……やっ、ああっ……ふう」

美希「ぐすっ……こっちにくれば、ミキも治せるの!」スッ

スゥゥゥゥゥゥ


やよい「あーあ、治ってく……思いやりがないですね。もうちょっとで楽にしてあげられたのに……」

P「……やよい」

やよい「プロデューサー、それに皆も……どうしたんですか? そんなに怒った顔して」

P「っ……」ビクッ

伊織「やよい……アンタ、自分のやってることが分かってんの?」

やよい「はい。で?」

伊織「でって……アンタねぇ!」

やよい「伊織ちゃん。この世はね……不平等なんだよ」

伊織「……はぁ?」

やよい「金持ちと貧乏人。巨乳と貧乳。高身長とチビ。美顔とブサイク。そして……強者と弱者」

やよい「後者は前者に憧れこの世の不平等を恨むけど、前者は後者を気にすることもなく恵まれた世界を『普通』だと思って生きている」

やよい「伊織ちゃん、下の立場になんかなったことなかったんでしょ。伊織ちゃんが思ってるよりずーっと、弱者は救われないものなの」

伊織「……」

やよい「だから私はあなたたちを救わない。普通に、不平等に、あなたたちを殺すだけ」

やよい「だってそれがこの世界では、当たり前のことなんだから。違う?」

伊織「……何言ってるのか、ぜんっぜんわかんないわ」

やよい「あ、そう。バカなんですね」

伊織「ハンッ、逆よ。あんたの言ってることがバカすぎて、天才の私には理解出来ないって言ってんのよ!」

伊織「ダラダラダラダラと自己中な詭弁を……ラスボスか、アンタは」

伊織「そうね、私にもはっきり分かるのは……その腐った悪の心がやよいの『自我』だってこと」

伊織「誰に操られてるわけでもなく、隕石に一人選ばれた代償として、やよい自身がそうなってしまった……ってこと」

伊織「この可能性はできるだけ考えたくなかった……だって、これじゃあ優しいやよいを取り戻す道なんて、どこにもないじゃない……」

伊織「でももう、覚悟は決めたわ。私はアンタをやよいと認めた上で、アンタを殺す」

伊織「親友として……間違った道を行くやよいを、止めて見せるんだから!」

やよい「伊織ちゃん伊織ちゃん、それね、無理」

やよい「だって私、低く見積もっても伊織ちゃんの120倍強いから」

伊織「……大切なのは、意志。さっきまでの私には無かった、明確な殺意」

伊織「美希の時は……正直、迷っていたわ。じゃなきゃ私がレーザーを外すわけがない」

春香(確かに、そうだよね。本当ならあの時、最初の一発で終わってたはずだもん)

伊織「迷いを捨てた私はアンタが思ってるよりずっと強いんだから! 今ならレーザーなんて、余裕で百発百中よ」

やよい「で……まさかそれだけで、私より強くなったつもりなんですか?」

伊織「なわけないでしょ。そこまで自惚れちゃいないわ。でも……私一人で殺すわけじゃない」

伊織「アンタを殺す算段は、皆のチカラを計算に入れて立ててきたわ! 行くわよみんな! プランBよ!」

真美「おっけー! くらえやよいっち!!」ビュンッ

やよい「石なんか投げて……そんな遅いの、当たるわけがないでしょう」サッ

あずさ「いいえ、当てるわ」スッ

やよい「! 石の方向を急転換……なるほど。でもそれでも避け……」サッ

やよい(!! 私の避ける方向まで……この無駄メロン……)

あずさ「……」

無駄?必須メロンの間違いだろ

ズズズズズズ バァッ!!

やよい「がっ……!」

真美「命中!」

やよい「ぐっ……こんな傷くらい、すぐに」

ズキュウウウウン

やよい「ッ……!?」ジュウウウウ

伊織「回復に専念しようとした瞬間、確かな隙ができる。その一瞬が、光使いの私には十分過ぎるのよ」

伊織「さぁ今よ! 回復なんかさせずに畳み掛けなさい!!」

雪歩「えいっ!!」

やよい「!」ボゴォッ

やよい(足元に……窪み……?)

響「くらええええっ!!!」ビュンッ

やよい(!! 真上に、瞬間移動して……!)

貴音「我那覇響、重力増し増し」スッ

響「響CHANGE!! シロナガスクジラ!!!!!」

シロナガス響「潰れろぉぉぉぉ!!!」

やよい(ああそうか、この窪みは……私を一瞬でも「空中」の状態にして、脚力による回避を出来なくさせるため、か……)

やよい(すごいね、伊織ちゃん……これでもう少し……もう少しそれぞれの力が強かったらあるいは……私の負けもコンマ数パーはあったかもしれないなぁ)

やよい「それだけに……残念」ジャキッ

美希「!! あれは……なんでも斬れちゃう刃!」

やよい「わざわざ的をでかくしてくれて、ありがとうございます」

春香「響逃げて!!」

伊織「大丈夫、計算通りよ」

春香「へ?」

やよい「スッパスパに、斬りまーーっす!」フニャ

やよい「……ふにゃ?」

やよい「……!!」

亜美「んっふっふ~、でっかいひびきんに気を取られて、亜美が色抜いて透明っぽくしたヘビちんに気付かなかったっしょ?」

やよい(ヘビが私の足に絡みついて……それを通じてワニが私の刃を柔らかく……!)

伊織「全部計算通りよ! 潰れなさい、やよい!!」

春香「すごい、これなら……」

美希「あはっ、みんなすごいの」

やよい(板で防ぐ? ……無理かな、板ごと潰される)

やよい(なら足場を作って回避……や、こりゃ間に合わないか)

やよい(あと少し気付くのが早ければ避けられたけど、これじゃあ……)

シロナガス響「いっけえええええええ!!!!!!」

やよい「ぐっ……!」


ズウウウウウウウウウウン


P「やったか!?」

社長「やったな!」

伊織「……最善は尽くしたわ。やよいが人間である以上、流石にあの巨体に潰されて生きてはいないでしょう」

貴音「重力もめいっぱいかけておきました。流石に潰れているでしょう」

真美「土煙でよく見えないけど、どう考えても潰れてるっしょ!」

亜美「やった……やったぞぉぉぉぉお!!!!!!」

よっしゃ!やよい死んだ!

春香「……まだ、だ」

P「ん、どうした春香」

春香「まだ……やよいの命は、消えてない……」

P「……え?」

真美「……!」ピクンッ

真美「ゆきぴょん危ない!!」

雪歩「へ?」ドンッ

スパァンッ

真 「う……」


 真「あ……」


貴音「なっ……真美!」

ヒュンッ ゴッ

貴音「!? ぐっ、が……」メキメキメキ


ドゴォォォォォォォン

響「な、なんだ……? 何が、起きて……」パッ

響「!! 真美! 貴音!!」

響「あ……」

ヘビ香「」
ワニ子「」

響「ああ……っ!」

イヌ美「ぐるるるるる……わふっ!!」ダッ

美希「イヌ美! 行っちゃ……」

イヌ美「わおおおおおおおおおおんっ!!!!」

ザシュッ

美希「イヌ美ぃぃぃ!!!!」

伊織「な……なんなのよ、これ……」

伊織「なんで……生きてるのよ…………」

ブタ太「ぶひょぉおおおおおお」ザシュッ

オウ助「オウッ……」ドゴォ

伊織「やよいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」

あずさ「あ……ああ……」

ポンッ

あずさ「!」クルッ

やよい「……」ボソッ

あずさ「!!」

春香「いやだ……もう、いやだ……ううっ……頭が痛い…………」

春香「消えていく……すごい速さで……次々と…………!」

春香「『命の灯火』が……消えていく……!!」

コケ麿「コゲェ……」プルプル

ドサッ

やよい「……ふう、スッキリした」シュタッ

伊織「やよい……」

やよい「うさばらし……おーしまいっ、と」

伊織「憂さ晴らし……ですって?」

やよい「屈辱だったよ、伊織ちゃん。まんまとしてやられて、避けきれなくて、モロにくらっちゃったもん」

どうせみんないなくなる

伊織「避けてないんなら、なんで……生きて…………」

やよい「単純に耐えたの。あー痛かった」

伊織「なっ……シロナガスクジラって、100tくらいあるわよね? しかも重力を増して更に強力になった……そのプレスをくらって、耐えた……ですって……?」

やよい「強靭な肉体には全てが無力なんだよ、伊織ちゃん。こんなことわざ知ってる?『元気があればなんでもできる』って」

伊織「ッ……もう、ボケに構ってる余裕も無いわ」

やよい「あはは、ボケはそっちでしょ。余裕なんて最初から全くないくせに、そんなこと言っちゃって」

やよい「それに……大事に抱えてたものを無くしても気付かないなんて、ボケたとしか思えないもん」

伊織「……え?」

やよい「『うさバラし』……楽しかったよ」

伊織「あ……」

伊織「~~~~~ッ! このォ!!!」ダッ

やよい「へぇ、まだ刃向かうんだ。なら……殺すだけだけど」スッ


響「もう、ダメだ……自分……どうすれば……」

ハム蔵「……」シュンッ

響「おい、ハム蔵……なんで、亜空間から、出て…………」

ハム蔵「……」

ハム蔵「ヂュ」ニコッ

響「え……」


伊織「だああああああああああああああああああああっ!!!」

やよい「さよなら伊織ちゃん、私の……大親友」

シュッ

伊織「……ッ!」グッ

伊織(あ、目、閉じちゃった。あーもう、何やってるの、私……)

伊織(最後の最後に、こんな無様な死に方するなんて……見返すつもりだった家族に笑われるわ、これ)

伊織(それにしても、死ぬ瞬間は周りの時間がゆっくり流れるって言うけど、ほんとなのね)

伊織(刃が迫ってくる瞬間だったはずなのに……まだ、その刃、届いてないんだもん)

伊織(……)

伊織(いや……これって……)

伊織「ん……」パチッ

伊織「いない……」

~亜空間~

やよい「あれ? ここって……」

ハム蔵「……」

やよい「あー、ここがそれですか! 別の空間ってやつですね! ふーん、こんな感じなんだぁ、意外としょぼっ」

ハム蔵「……」

やよい「で……ハム蔵、私とあなたしかいないみたいだけど……二人きりになって、どうするつもりなのかな?」

やよい「ま、どうするつもりだろうと、私はあなたのチカラを奪うだけだけど」スッ

ガシッ

やよい「ふふ、これで……?」

ハム蔵「」

やよい「え……?」


~森~

響「ハム蔵……」

伊織「何が……あったの?」

響「……お前は……男だったぞ」

美希「……」

P「ど……どうなった?」ヒョコッ

社長「なっ……キミは、ずっと隠れていたのかね!?」

P「いや、これは……そ、それより響、ハム蔵がどうしたって?」

響「ハム蔵は……最後に自分に、こんなことを言ったんだ……」

『御主人、自分はもう我慢の限界です。仲間が死にゆく中、一匹安全圏にいる自分が許せないのです』

『遅すぎる決断、御容赦ください。しかし……覚悟は決めました』

『自分があの女を亜空間に閉じ込めます。命をもって、ご主人への忠誠を尽くします』

『チカラを奪われず、亜空間の存在も保ち続けるただ一つの方法。それは……自分が死に、永遠にあの空間の核となり続けることです』

『今までお世話になりました。最後に一つ、恐縮ですが我儘を言わせていただきます』

『出来ることなら……来世でも、あなたの素晴らしい料理を毎日食べたいです。……それでは、さようなら、愛しき御主人』

響「って」

社長「私には『ヂュ』としか聞こえなかったが……そんなことを……」

P「でも……ということは、だ」

P「犠牲者はたくさんでたけど……勝ったんだな……俺たち……」

響「そう……だな……うう……うぅう、ハム蔵ぉ……みんな……」ポタポタ

亜美「お姫ちん~~!! 真美ぃぃぃぃい!!! うわぁああああああああん!!!!!」

雪歩「真美ちゃん……私の、せいで……」

春香「みんな……みんな、命が……ううっ」

社長「生き残ったのは、これだけ……か」

伊織「私、響、亜美、雪歩、春香、美希、あずさ、社長、そしてプロデューサー、ね」

伊織「私の采配ミスでこんなことに……謝って済む問題じゃないけど……ごめんなさい」

伊織「……皆に向ける顔がないわ」クルッ

P「仕方ないさ。あれは仕方な……」

伊織「……」プルプル

P(泣いてる、のか。そっとしておこう)

美希「ねぇデコちゃん」

P「ちょっ」

美希「今挙げた名前の中にあずさの名前があったけど……」

美希「いないの、どこにも」

伊織「……あら? そういえばいないわね。さっきまでいたのに……まったく、こんな時まで……あずさらしいわ」

春香「美希……それより……うう」

美希「あっ春香、大丈夫? 辛いよね、だって春香……」

春香「貴音さん……まだ、生きてる……」

美希「えっ……あ!」

社長「おお、やよい君に殴られ骨がボロボロになってもまだ生きていたのか! よかった……本当に……」

美希「今治す!」ビュウウ

貴音「……ぅ…………」ピク

社長「よかった……よかった……」

伊織「……ねぇ春香、なんで生きてるって分かったの?」

春香「それは…………!!!」

春香「や……よい……」プルプル

伊織「……え?」

春香「貴音さぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

ザシュッ

やよい「……ふう」

貴音「」

響「な、ななな……!!」

やよい「戻って来たついでに……さし損ねたとどめ、さしときました」

響「やよいぃっ!?」

伊織「な、なんで……! まさか、ハム蔵、向こうに行ってすぐ死ねなかったんじゃ……」

やよい「んーん、そんなことないよ。いつの間にか死んでたもん」

やよい「すごいよね、声も上げずに静かに自殺するなんて。お前たちより明らかに有能でびっくりしちゃった」

伊織「ワケが分かんないわよ! アンタが強いのは十分分かってる! でも、空間使いのチカラもないのに空間を越えられるなんて、強さとかの次元じゃないじゃない!!」

やよい「……私には空間を越える力なんてなかったし、正直もうダメかと思ったけど……助けてもらったの」

やよい「この人に、ね」

伊織「……は?」

あずさ「……」ザッ

伊織「あず、さ……アンタ、どこに、行ってた……のよ……」

あずさ「……」

やよい「あずささんのチカラはね、伊織ちゃんが思ってる以上にすごいチカラなんだよ」

やよい「方向を操れるだけじゃなく……上下前後左右どこでもない、新しい方向を作り出すこともできたの」

やよい「空間を超越して、私の元へ向かう方向をもね」

伊織「な……え?」

伊織「それができたとして……なんで……」

あずさ「……ごめんなさいね、伊織ちゃん」

あずさ「私は……やよいちゃんを裏切れない」

伊織「……は?」

やよい「無駄だよ伊織ちゃん。今のあずささんは……私の忠実なしもべだから。ねーっ」

あずさ「ええ、どこまでもついていくわ~」

伊織「そんな……あずさ! 目を覚ましなさいよ!」

やよい「無駄だよ無駄、無駄無駄」

やよい「知ってた? 皆が私を倒そうと思いを一つにしてる中で……あずささんだけは、どうすべきか迷ってたって」

伊織「迷っ……てた?」

P(やばい……漏らしそうだ)

やよい「伊織ちゃんたちの場合、ハイタッチの瞬間に軽く意識に介入しただけだからすぐ元に戻っちゃったみたいだけど……」

やよい「あずささんの場合はね、留守番中、怖いから手を繋いで欲しいってお願いして、じっくり洗脳させてもらったんだもん」

やよい「どんなに時間が経っても、どんなにみんなに説得されても、心の底から私を疑えるはずがないよ」

やよい「そこにつけ込んで、もっかい洗脳したの。うさばらしの片手間にね」

あずさ「ええ……あら?」

伊織「……今の話、あずさの前でして良かったの? 流石にそんな話されたらあずさでも……」

やよい「うん、いいよ。だってもう……」スッ

やよい「いらないから」

グサッ

伊織「えっ……!」

あずさ「う……っ……やよいちゃん……なん、で…………」

あずさ「」ドサッ

伊織「……なに、してんの、アンタ」

やよい「もうハム蔵もいないし、亜空間に閉じ込められる心配もない」

やよい「あの空間、思ったより景色良くなかったし、もう行くこともないかなーって」

伊織「やよい、アンタは……!」

春香「ううっ!」

伊織「ッ! 春香!? どうしたの急に!」

春香「また……命が……いやああぁぁああ!」

社長「お、落ち着きたまえ天海君! 悲しいのは皆同じだが、今は前を向かねば……」

美希「社長、それ、ちょっと違うの。同じじゃないって思うな」

社長「……なに?」

美希「ミキ達、いっぺんに人が死にすぎて、感覚がマヒしてるの。心のどこかで、現実っぽくない、って思ってるんだと思う」

美希「でも春香は……人が死ぬたびに、それをリアルに、心で感じてるの」

美希「だって春香は、人の命を、その消える瞬間を、『炎』として感じられるから……だよね?」

春香「……うん」

春香「炎が、消えてくの。次々と……スッ、て……それが怖くって……私……ううっ!」

やよい「ふーん、そのチカラ、王大人にでもあげた方がいいんじゃないかなーって」

伊織「……美希、アンタなんでそんなこと知ってるの?」


美希「……『風のウワサ』、なの」

伊織「風の……噂?」

美希「風はね、世界とつながってるの。海を越えて山を越えて、人の心もすり抜けて」

美希「だから風はなんでも知ってる。社長は『未来』を知れるけど、ミキのチカラは『今』を知ることが出来るって感じ」

やよい「……へぇ、やっぱり美希さん意味わかんないです」

美希「だからミキ、知ってたんだよ? 敵の場所も、春香の心も……」

美希「……」クルッ

美希「ハニーが……すごいチカラを持ってる、ってことも」

P「!?」

やよい「!!」

やよい(こいつ……本当に……)

美希「隠れてないで出てきてハニー。ハニーのチカラが必要なの」

美希「きっとハニーにだって分かってないチカラだから……ミキにもよくわかんないんだけど」

美希「ハニーの中にすごいチカラがある……風は、そう言ってたの」

P(……な……そ、そんなこと言われても、美希……無理なんだよ、俺には、やっぱり……)

P(さっきから……足がすくんで、動けないんだ……!)ガクガク

やよい「やりますね、美希さん。正解ですよ」

美希「……え?」

やよい「プロデューサーのチカラを使われたら、確かに私もやばいかもです。でも……彼にはそれが出来ない」

美希「……変だな、分からないの。やよいの心だけは、風も通ってくれない」

やよい「気使いですから。心を閉ざすくらい余裕です」

美希「……じゃあ、普通に聞くの」

美希「まるでハニーのチカラのことを知ってるみたいに話すけど……なんでそんな風に言えるの?」

やよい「……ああ、そのことですか」

やよい「私、今朝律子さんの死体を見て泣くフリをしてた時ですけどね、プロデューサーに軽く抱きつかれたんですよ」

美希「は? 抱き……は?」

やよい「その時に苛立ちながらもちょっと集中してチカラを探ってみたら……ぼんやりとですけど、厄介なチカラだって分かりました」

やよい「でもでも、私には要らない系統のチカラだったんで……とりあえず私に立ち向かおうと思わないようになればいいかなーって思って」

やよい「プロデューサーから、ある『気』を奪ったんです」

P(事務所に残るべきだった……無理だって……こんな化け物と戦うなんて……俺には……)

やよい「奪ったのは、勇気。それさえなければ……こんなやつ恐るるに足らないです」

美希「そういう、ことだったの……」

美希(おかしいと思ってた。ヘンタイさんから美希を守ってくれたカッコいいハニーとは、別人みたいに怯えてるんだもん)

やよい「だからプロデューサーを戦いの場に来させるなんて、無茶だったんです。格上の相手と戦うためには、何よりも勇気が必要ですからね」

社長「そういうことだったのか……プロデューサー君……」

P「勇気……ですか……はは、そうだと分かっても、出ないもんですね、これ」ガクガク

社長「……!」

社長「プロデューサー君……よく聞きたまえ」

P「……社長?」

やよい「それじゃ、お話はこれくらいにして」

やよい「やっぱり念のため……もう殺しちゃいましょうか、プロデューサー」

P「!!」ビクッ

美希&響&伊織「「「させるか!」」」ダッ

やよい「あはは、真さんならともかく……あなた達が、私に付いて来られるとでも?」ビュンッ

美希(やっぱり、速すぎ……ちょっと間に合わない!)

P「あ……ひぃ……」ガクガク

社長「いいかねプロデューサー君」

P「ッ……」

社長「彼女達の力を信じるのだ。君はあの子たちの……プロデューサーなのだから」

ドッ

P「えっ……」

ザクッ


社長「がっ……」


P「しゃ……」

P「社長!!」

やよい「……あれ、社長刺しちゃった。まいっか、次は……」

美希「たあああああああああああああああああっ!!!」ビュウウ

やよい「ッ……ここにきて、なんて風……」

ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウッ

P「しゃ……社長……」

社長「はは……攻撃が来る場所……予知、できたよ……わ、私のチカラも……捨てたもんじゃ、ない……だろう?」ポタポタ

やよい「ぐっ……動き辛い、です」ビュウウウウウウ

美希(ミキの全力の風でも、動きを鈍らせるので精一杯……!)

美希(はやく社長を治さないと……でも、この風をやめたら……)

P「なんで……俺なんかのために……」

社長「今……ティンと、きたのだ……」ポタポタ

社長「事務所で、皆が、笑って、いる……そんな、輝かしい、未来が……ね……」ポタポタ

P「え……」

社長「その、鍵を、握るの、は……君、そして、アイドルたち、だ…………私では、ない……」ポタポタ

社長「大丈夫……君は勝てる…………だから……勇気、など、なくとも……平常心……で………………が……ま……」ポタポタ

社長「」ガクッ

P「しゃ……っ!」


P(…………俺は)

P(何をやってるんだ…………)

どなたか保守のスペシャリスツはいますか
寝るまでには終わらせるつもりで昼に始めたけど終わらなさそう

美希「っはぁ、っく……!」

やよい「すごい風ですけど……動けないほどじゃあない」スタ スタ

美希(体力が……もう……こんなとこで……使い切っちゃ…………)

P(……)

P(俺は……すごいチカラと悪意を手にしたやよいが……怖かった)

P(怖くて怖くて……勝てるわけがないって思って……立ち向かうなんて、勇気のない俺には、とても無理だった)

P(でも……)

P「……」スゥゥゥ


P「みんな!!!!!!!!」


美希伊織響「!!」

やよい「!?」

P「待たせてすまん。もう、大丈夫だ」スタスタ

P「……やるぞ!!!!!」


やよい(……は?)

響「プロデューサー! 戦う勇気、出たのか?」

やよい「バカな……プロデューサーの勇気は、全部……」

P「勇気? ……そんなもの、いるか」

やよい「……はい?」

P「社長がさ……言ったんだよ。俺とお前らなら、勝てる……って」

P「ないんだよ、今まで。社長がティンときて、外れたことなんて……だから」

P「だから、絶対に『大丈夫』だってことだ! 失敗するはずがない戦いに、勇気なんて必要ない!」

やよい「なっ……バカなんですか? 社長がチカラを手にして、まだ一週間くらいですよ?」

やよい「たったそれだけの期間で、そこまで盲信できるとか……流石にあり得ないです^^;」

P「一週間? 違うだろ、そんなもんじゃない」

P「もっともっとずっと前から、俺は社長のティンには絶対の信頼を抱いてるんだよ」

やよい「え……」

P「社長は元々ズバ抜けた先見の明を持ってた。だから俺は、予知使いなんて、社長にとってはあまり意味のないものだと思ってたんだ」

P「今までに社長のティンが間違っていたことなんてあったか? ないだろ? ……現に」

P「社長がティンと来て集まったアイドル候補生たちは、もれなく全員例外なく、素晴らしい子だったじゃないか!」

響「えへへ……まぁねっ!」

伊織「フンッ、当たり前じゃない」

春香(プロデューサーさん……)

美希「ハニー……ッ」

亜美「うっ……ひぐっ……」

雪歩「……」

やよい「とんだ茶番です。すっごくうぜぇです」

P「……そしてそれはお前も同じだ、やよい」

P「俺は決めたぞ。皆助ける……って」

やよい「はぁ」

P「分かったんだ、俺の最大の武器は……信じること、だって」

P「お前たちのチカラならなんだって出来る。だからお前たちも俺を信じてついてきてくれ」スタスタ

P「俺がお前たちを!! プロデュースしてみせる!!!!」

カッ――――――――――――


やよい(ちょーっと……面倒な感じかなーって……)

響「……なんだ、これ」

伊織「プロデューサーの体から出た光が……私たちを包んで……?」

P(プロデュースの基本。まずはアイドル選択……よし、全員だな)

P(後は……アイドルたち、それぞれに合わせたプロデュースをするだけ)スタスタ

美希「ッ……もう、限界……ッ」

やよい「風も弱まってきたみたいだし……いいかげん、ぶっ殺します……プロデューサー!!!」

亜美「ひっ……っぐ……」

亜美(もうやだよぅ……みんな死んじゃったし……真美も、死んじゃったし……やよいっちも怖いし……)

亜美(あーもう、亜美にはどうしたらいいか……分かんないよ~……っ!)

P「……」チラッ

P「亜美!」

亜美「!」

P「遊べ!!」

亜美「……」

亜美「えっ……?」

P「何をすべきかとか、何ができるかとか、無理にそんな難しいこと考えなくていい」

P「皆が死んで悲しい気持ちも、遊んで楽しく笑顔で乗り越えるんだ!」

亜美「遊……ぶ……?」

P「それがお前の長所。お前がそんなに暗い顔してたら、皆が暗くなっちまうよ」

P「さぁ、今ならイタズラもし放題だ。あまり深く考えず……落書きでも、楽しんでこい!」

亜美「……」

やよい「さぁ……いきますよ!」ダッ

亜美「……んっふっふ~、こともあろうかこの遊びの天才双海亜美に、好きに遊べとな?」

亜美(そうだよ……死んじゃうってことは、もう遊べないってことじゃん)

亜美(楽しいことも全部、終わっちゃうってこと……それって、メッチャもったいないっしょ)

亜美(だったら……真美たちが死んじゃったんなら……悲しむより、何より……)

亜美(皆の分まで、ももももーっと楽しまないと損じゃん!)

やよい「プロデューサー! これで終わりです!!」シュッ


スカッ

やよい「……?」

やよい「あれ、なんで、このっ!!」シュッ シュッ

やよい(攻撃が……当たらない! 目の前にいるのに、なんで……?)

やよい(まさかまた蜃気楼? でも、この眼鏡でそれが見破れないわけ……)

亜美「んっふっふ~、ムダだよやよいっち! キミの世界は亜美が塗り替えた!!」

やよい「なっ……?」

亜美「やよいっち、どんだけ眼鏡ですごい見れるようになっても、眼鏡の奥は普通の目っしょ?」

亜美「だったらそこに落書きしちゃえば良いのだ! どうどう? けっこー力作だかんね!」

やよい(このガキ、網膜に直接……いやそれより)

やよい(今見えているプロデューサーもその背景も、全部落書き? そんな、いくらなんでも、リアルすぎる……!)

雪歩「亜美ちゃん……すごい……」

雪歩(それに比べて……私は……)

雪歩(真ちゃんにも、響ちゃんにも、真美ちゃんにも……みんなに、守られてばかり)

雪歩(こんなダメダメな私は……やっぱり穴掘って埋まってなきゃ、みんなに迷惑が……)

P「雪歩」

雪歩「え、ひゃっ」ビクッ

もしできる人がいれば保守お願いします……

保守ありがとうぼちぼち続き投下してく
こんな早起きするとは

P「お前はさ、自分を過小評価しすぎてないか?」

雪歩「えっ……?」

P「いつまでそんな小さな穴に籠ってるんだ。お前の力は、そんなもんじゃないだろう」

雪歩「そ、そんなこと……私、本当にダメダメで……私がいなかったら、真美ちゃんだって……」

P「雪歩、俺を信じろ! 俺が保証する! お前なら絶対やれる!」

雪歩「ふぇっ……!?」

P「穴を開ける?土を動かす? 違う!お前が操作していたのは……この地球そのものだ!!」

P「お前は宇宙だ! 大宇宙だ!! お前にできないことはない!」

雪歩「わ……私……」

雪歩(なんだか……できる気がしてきた……)

P(雪歩に足りなかったのは、自信。それさえあれば、あとは……無敵だ!!)

P「うおおおおっ!!! 頑張れ雪歩!」

雪歩「ま……負けるな、雪歩!!」

P&雪歩「「絶対……やれるっ!!」」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

やよい「!!」

やよい「この……音は……!」

ヒューーーーーーー

ドゴォォォォオオオオオオオン!!!!!

やよい「がっ……!」

やよい(隕……石……!)

雪歩(この地球も、遠くの大地も、全部私が支配するっ!)

亜美「おー、ゆきぴょんやるぅ。コスモスコスモスって感じ!」

雪歩「えええええええええええええええいっ!!!」

ヒューーーーーーー

チュドーン チュドーン チュドーン チュドーン

やよい「ぐっ…………がっ…………!!」

雪歩「やよいちゃん……私、真ちゃんや真美ちゃんが死んで……ダメな自分を責めてたけど」

雪歩「どう考えてもあなたの方が悪いよっ!! だから自分を責める前に……あなたを懲らしめる!」

やよい(くっ……そ、が……!)

やよい(やっぱり……あの時感じた、脅威は……間違って、なかった……!)ボロッ

やよい(周りの人間を強く育てるチカラ……私には必要ない、チカラ、だけど……)ボロッ

やよい(もっと早く……消しとくべき、だった……!!)ボロッ

雪歩「はぁ、はぁ……もう、だめ……」ヨロッ

響「おつかれ、雪歩」ガシッ

響「プロデューサー、これがプロデューサーのチカラなのか?」

P「ああ……恐らく俺は人を導く『プロデュース使い』ってとこだろう」

P「一人山にこもってどれだけ特訓しても、一生目覚めるはずがなかったんだ。このチカラは……自分ではなく、人のためのチカラだから」

響「へへっ……プロデューサーらしい、良いチカラだぞ」

P「さて、響……次はお前だ」

響「自分……これ以上、強くなれるかな?」

P「なれるさ、だってお前の中には……」

P「あいつらがいる……だろ?」

響「……うん」

響「死んだからって、いなくなりはしないさ……絶対!」

P「だったら響……ヘンシン、するんだ」

響「ヘンシン?」

P「まだお前はあいつらの思いを『受けた』だけ。ちゃんと『応えて』やらないとな」

響「……」

響「そうか……そういうことか。うん、うまくできるかわかんないけど……やってみる!」

P「行け響。チャレンジだ! ……響CHARENGEだ!」

響「……うん!」

 P『……響CHARENGE? いろんなことに挑戦する企画だって?』
 響『うん、面白そうな企画だろ? 自分が考えたんだぞ!』
 P『いや、スペル違うぞ。正しくはCHALLENGEで……』
 響『うがー! いいの! ちゃんとワケがあるんだから!』

響(……返信、するんだ)

響(あいつらの思いに……応えるんだ……!)

やよい「っはぁ、っはぁ……見えてるものが全部幻覚なら……集中して、気を感じとればいいだけです」スゥゥ

響(……変身、するんだ)

響(もっと強く……強くなるんだ!!)

P「RE、再び……CHANGE、変わる……それで『CHARENGE』、か」

P「響にとって、挑戦ってのはそういうことなんだっけな」

P「現状に満足せず、ベストになるまで何度だって変わり続ける。あいつはそうやってずっと生きてきた」

P「だからこそ……今響は、過去を乗り越えて……変わろうとしているんだよな」

響「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

響「『RE: 響CHANGE‼︎‼︎』」

やよい「!! こ……れは……!?」

やよい(あり得ない! こんな……こんなに強い気なんて……!)

P(さあ、見せてやれ響。新しいお前の……お前たちの、チカラを!)

響「うおおおおおおおっ!!」ダッ

雪歩「あ……」

伊織「はやっ……!」

雪歩(見た目は変わってないけど……あの脚力は……)

雪歩(ウサ江……ちゃん……?)

響「どりゃあああああああああああああああ!!!!!」

やよい「!!」

やよい(見えないけど……分かる! すごい拳圧が……目の前に!)

やよい「ッ……!」サッ

ザシュッ

やよい「!?」クラッ

響「やるな、今のネコ吉パンチを避けるなんて。でも……」

響「刃の方は、避けられなかったな!」

やよい(くっ……まさか、響さん……)

やよい(動物たちの“チカラ”を……全部、使えるってんですか……?)

響「まだまだぁ! どりゃどりゃどりゃあー!!!」シュンッ ビュッ バッ

やよい「ぐっ、なっ、この……」バッ ザシュッ ガッ

やよい(……おかしい)

やよい(いまだに隕石のダメージすら治り切ってないし……なんか動き辛いし…………この私が……押されてる?)

やよい(……まさか!!)

P「……あ、気付いた?」

響「らぁぁあ!!」バキッ

やよい「ぐっ……」ズズズ

やよい「……プロデュー、サー……!!」キッ

P「悪いな、やよい。勝手にだが……お前もプロデュース対象にさせてもらったぞ」

P「俺には分かる。まぁ俺じゃなくても分かるだろうが……今のお前の進むべき道は一つ」

P「やよいお前、一回死んどけ」

やよい「ふざ、けるな……!」

やよい(チカラの弱体化……こんなことまで、出来るんですか……)

やよい「こうなったら、なりふり構っていられません!」スッ

P「! 巨大な鉄球がいっぱい……あれは千早のチカラか!?」

やよい「ぐっ……流石に、キツい、けど……これ全部、防げますかねぇっ!?」ビュンッ

響「しまっ……」

響(雪歩の隕石を鉄球で再現したのか!? あれ全部はさすがに……)

美希「大丈夫だよ、響」

美希「ミキがなんとかするから」

響「……へへっ、そっか。なら任せたぞ!」

やよい「な……っ」

やよい(ハッタリ? たしか美希さんの体力は、さっきので、もう……)

美希「よーし、もうひと踏ん張り、いっちょやるの!」

P「……」

P(美希……お前に関しては、俺ももうほとんどすることないんだよな)

P(だってお前、他の皆とは違って……もう既に覚醒してんだもん)

P(だから……今、俺に言えるのは、月並みだけどこの言葉くらいかな)

P「美希!」

P「……がんばれ!」

美希「!」

美希「……あはっ」

美希「ハニーのその言葉だけで……ムゲンに力が湧いてくるの!」

美希「ええええええええええい!!!」


ビュッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ

美希「はぁ、はぁ……」

亜美「全部とんでった! ミキミキすげー!」

響「やるな、美希!」

美希「……やよいは!?」

響「え? ああっ!」

美希「……やられた。今の大量の巨大鉄球を目隠しにして……走って、あんな遠くに逃げられたの」

伊織「ッ……まずいわね。この勢いのまま殺さないと……全快されたら、流石に疲労してるこっちが不利に……ああもう!」

伊織(逃がして……たまるもんですか!)


やよい(……アレを防ぐとは……悔しいですけど、今の状態でまともにやってももしかしたら勝てないかもですね)

やよい(落ち着いたら改めて狙うことにします。今度は一人ずつ確実に……殺す)

やよい(この私に逃げの選択をさせたことは、素直に褒めときます。でも、最後に勝つのはこのわた……!)

 ??『765プロは……負けない』

やよい(……ったく、なんでこんなの思い出してるんだか)

やよい(負けませんよ……最後に勝つのは、私です!)

伊織「絶対逃がさないんだから!! やよい!!」ダッ

P「ああ、逃がすな」

伊織「! プロデューサー!」

P「伊織、お前なら追い付ける。お前がこの戦いを終わらせるんだ」

伊織「わ、私だってそのつもりよ! やよいは許せない! 絶対に!!」

P「どうした伊織、お前らしくないな。さっきから、冷静さを失ってるように見える」

伊織「ッ……分かってる、冷静にならないと最良の選択はできない。だから落ち着こうとしてるけど……でも……抑え切れなくて!」

P「そのままでいい。冷静になんかなろうとするんじゃない」

伊織「……え?」

P「時にはな、がむしゃらに突っ走ることも大切なんだ。人間の全力ってのは、冷静でいたら決して出ないもんなんだよ」

P「もっと我を忘れろ!もっと怒り狂え!もっと真っ白になれ! 本当の自分を……曝け出すんだ!! 伊織!!!」

伊織「!!」

伊織「…………」

伊織(熱くなると……頭の中がぼわーっとして……自分が自分じゃなくなってしまいそうになる……)

伊織(そんな感覚は……何度か、あった)

デ/ /ブ
真/ /美
フレ/ /ンダ

伊織(抑え込まなきゃいけないものだと思ってた。でも……)

P「抑えていたものを……解き放て!!!」

伊織(アンタがそれでいいって言うんなら……信じてやろうじゃない!)

伊織「やよいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」


ピカーーーーーーーーーッ


やよい「!?」

P(真は雷になれた。春香は炎になれた。だったら伊織……お前は……)

P「終わりだ……やよい」

P「お前自身が光になって……全身で貫け! 伊織ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

やよい「な……ッ!」


ズキュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン


やよい「が……」


やよい「はっ」ゴフッ

やよい(心臓……とか……全部……丸ご、と…………)

やよい(ちくしょう…………こんな、はず、じゃ………………)

やよい(な…………)


やよい(か……)

やよい(……)


 律子『あらやよい、戻ってきたのね』

 やよい『はいっ、もしかしたら誰か死んじゃうかもしれないのって、病気とかが原因なのかもーって思って……』

 やよい『念のため、元気にしときますねっ!』

 律子『そう……でも、もういいの』

 やよい『?』


やよい(……)


春香「や……やよいの命が……」


春香「消えていく……」

 律子『さっきは嘘だったけど……皮肉なものね、見えたのよ、本当に』

 やよい『なにがですか?』

 律子『きっとこれは、死を受け入れて初めて発揮されるチカラ。このメガネで私は……死のその先の未来を、見ることができたの』

 律子『だからもう、怖くないわ。あなたに殺されても……大丈夫だって知ってるから』

 やよい『え?』

 律子『覚えておきなさい。765プロは……負けない』


やよい(……)

やよい(あの時は……何言ってんだこのメガネ、頭にタルタルソースでも湧いたか、って思ったけど…………)

やよい(なぁるほど…………見えますよ、未来……私にも…………)ポロッ


やよい(あーあ……こんなのかぁ……そうかぁ…………)ポロポロ


やよい(こんな……未来なら…………私みたいな、悪い子には…………)


やよい(居心地……クソ悪い……かなーって…………)


やよい(…………)

春香「消えた……」

春香「やよいの命が…………完全に……!」

亜美「いやったぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!」

亜美(やったよ……真美……!)

雪歩「すー……すー……」

伊織「はぁ、はぁ、ったく……っ」ポロ

伊織「感情全部曝け出したら……こうなるに決まってるじゃないの、ばかぁ……」ポロポロッ

伊織「うっ……くぅっ……」ポロポロポロ

伊織(もう……みんな、帰ってこないなんて……夢なら覚めてよ……ねぇ……)ポロポロ

響「……自分、完璧だけど……ちょ、ちょっとくらい……泣いてもいい、よね……」グスッ

響「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! うぇええええええぇぇぇぉぅぉぅぇぇぇぇっ!!!!」

美希「ねぇねぇハニー、早く早く」

P「……ああ、分かってる」

春香「……?」


P「いいかお前ら。まだ終わりじゃないぞ!」

伊織「え……今、なんて……?」

伊織「まだ……終わりじゃない……ですって……?」

響「え、ま、まさか、まだやよい、生きてるの……?」

亜美「いやだ! もう終わりだもんねっ! バンザーイ!」

春香「プ、プロデューサーさん……やよいは確かに死んだんですよ?」

美希「あふぅ、みんな落ち着けって思うな」

P「ああ、やよいが死んだのは間違いない。春香がそう言ったんだもんな」

P「だからこそ、次のステップに進めるんだ。今から……」

P「死んだ皆を、生き返らせる」

伊織響亜美春香「「「「!!?」」」」

春香「プ、プロデューサーさん、そんなこと出来るんですか?」

P「ああ。お前がな」

春香「はい…………えぇっ!?」

P「……春香」


P「命の灯火を……再び灯すんだ」

春香「命の灯火を……私が、ですか?」

P「ああ。春香、今のお前のチカラならできる」

美希「うん、ミキもそー思うから、ゼッタイそーなの」

春香(私が……皆を……)

響「そっか……そうなのか…………みんな……生き返るのか……」

響「ねぇ……ハム蔵も、生き返るの?」

P「ああ。お前が空間使いのチカラで亜空間から連れてくればな」

響「そっか……そっか…………ふふっ、そっか!」

亜美「兄ちゃん兄ちゃん! ま……真美、も?」

P「もちろんだ。ちょっと大変なことになってるから、生き返らせる前に美希や響のチカラで治さなきゃだけどな」

美希「ふふん、今のミキに治せないキズなんでないの!」

亜美「うっ……うう、よがっ、うっ……」

亜美「うわあああああああああああああああああああああああん!!!!」

伊織「待って!」

伊織「……確認しておきたいことがあるんだけど」

伊織「春香のチカラで、もし本当に生き返らせることが出来たとして……それはつまり、春香が新しい命を生み出す、ってことよね」

P「そうだ」

伊織「消えた命がかえってくるわけじゃない、なら……生前の記憶は、戻ってくるの?」

春香「あ! 確かに……どうなんですかね?」

P「……ふむ」

P「考えてなかった」

春香「ええっ!?」

美希「その心配はいらないの」

伊織「美希」

美希「脳と命は別なの。死んじゃったら脳は一旦機能を停止するけど、記憶がなくなっちゃうわけじゃない」

美希「だから……新しい命になっても、前の皆に戻れるよ?」

伊織「……風が、そう言ってたの?」

美希「うん」

伊織「そ……なら、大丈夫なんでしょうね」

美希「それじゃあ、ミキ、風で皆を連れてくるね!」

響「え? 風で連れてくるって……どういうこと?」

美希「ん? 風の仕事は運ぶことでしょ? ヨユーなの」

伊織「え、いや、何言ってんのアンタ。流石に遠くからここまで風だけで人を運ぶなんて……」

美希「むむ……きたきた。まずは真クンなの」

伊織「え?」

雪歩「……むにゃむにゃ」

雪歩「えへへ……隕石で……穴だらけ……むにゃむにゃ」クイッ

P(雪歩、疲れ果てて寝ちゃったのはいいが……どんな夢見てるんだお前)

伊織「ちょっ、こっちに飛んで……!」

美希「あ、勢い強すぎた」

雪歩「……ん?」パチッ

雪歩「あれ? 起きたら目の前に真ちゃんが……ふふ、いいよ。いっしょに寝」

チュドーーーーーーーーーーン!!

響「雪歩ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

美希「あれ、失敗。むー、イガイと難しいな。次はもっとふんわりと……」

チュドーーーーーーーーーーン!!
チュドーーーーーーーーーーン!!
チュドーーーーーーーーーーン!!

……………………………………

チュドーーーーーーーーーーン!!

美希「よし、みんな運べたの」グッ

P「いやよしじゃない。また雪歩眠りに付いちゃったじゃないか。いいか、今度からはもっと丁寧にだな……」

美希「うっ……ごめんなさい」

伊織(死体を運ぶなんて作業に次があってたまるか)

美希「で、生き返った時痛くないよーに傷を全部治して……っと」ヒュウウ

美希「うん、終わり。あとは……春香の仕事、だね」

春香「……うん」

伊織「春香、がんばんなさい」

響「春香ならきっと、なんくるないさー」

亜美「は~るるんっ、ファイト!」

春香「うう……緊張してきた」ドキドキ

P「……あー……春香、お前は緊張したり油断したりすると、すぐ失敗するというか……どんがらするよな」

春香「あうう……痛いところを」

P「どうやったら失敗しなくなるか……どうしたら転ばなくなるか……一応俺なりに考えてみた」スタスタ

ガシッ

春香「!」

P「俺が支えててやる。だから失敗を恐れず……やってみろ、春香」

春香「プロデューサーさん……」

美希「むー、いいなー春香」

亜美「おやおや~、ミキミキ、はるるんに嫉妬してるのかね?」

美希「……うん、してるよ、ずっと」

美希「春香は……ミキの、ライバルだから」

春香(プロデューサーさんが……みんなが……私を支えてくれてる)

春香(命の灯火を……再び…………うん、今なら)

春香(きっと…………)


――――――数ヶ月後

千早「か、身体がやよいになってる!!」

春香「ちょっと入れ間違えちゃいました

春香「ふぅー、終わったー」

??「おつかれ、春香」

春香「えへへ、そっちこそ。レコーディング、いい感じだったね」

??「ええ」

春香「……」

春香「ねぇ……あれから、どれくらい経ったかな?」

??「夢を初めて願って、今日まで?」

春香「あはは、ちがうよ。新曲、頭から抜けきってないでしょ、もう、歌のことばっかり考えてるんだから……」



春香「千早ちゃんったら」


千早「ふふっ、そうね。ごめんなさい春香」

千早「私が死んだ……あの日のこと、よね?」

春香「そうだよ~。千早ちゃんが死んで……」

春香「生き返った……あの日のこと」

千早「今思えば、すごく濃い一日だったわね」

春香「私ね、あの時は……もうこうして千早ちゃんと喋ることなんてないんだろうなって思ってたよ」スタスタ

千早「そうね……人が死んだら、普通はそう思うんじゃないかしら」スタスタ

春香「でも今はこうして話せる。これがね、私……本当に、本当に幸せなんだ」ニコッ

千早「春香……」

春香「あっ、見て見て! これ、売れてるみたいだね!」

千早「亜美と真美がCMしてる『スタートースター』ね。星型のトーストが出来るっていう……何がいいのかしら」

春香「こんなのでもCM効果で売れちゃうんだもん。二人がそれだけ人気者になれたってことだよ」

千早「夢のようね……今、765プロ全員がここまで勢いに乗れているなんて」

春香「もう絶好調だよね! 歌はもちろん、テレビでも!」

春香「例えば、美希と響ちゃんと貴音さんの日常ドラマ『DQN!なんか居やが~る』とか」

千早「不良役で出たジュピターも人気急上昇中だそうね」

春香「真の旅番組『迷走自転車エージェント』とか」

千早「萩原さん、毎週予約して何度も見てるらしいわね」

春香「それにそれに~」


春香「『高槻やよいのお料理さしすせそ』とか……ね!」

千早「……正直、高槻さんを生き返らせるとは思ってなかったわ」

春香「私もだよ~。あの時美希がそう言い出さなかったら……そのまま放置しちゃってたかも」

春香(そう……あの時……)


 春香『……ふぅ』

 真美『あ……あれ? 真美確か、ゆきぴょんを守ってかっこよく……』

 亜美『真美ぃぃぃぃいいい!!!!』ダキッ

 真美『おわぁっ!? どったの亜美?』

 社長『おお……』

 P『これで大体みんな生き返りましたね』

 美希『それじゃ、次はやよいなの』

 千早『そうね、たかつ……』

 千早『……え?』

 みんな『えええええっ!!!?』

 伊織『ちょっ、ちょちょちょっと! 必死こいて殺したやよいを、また生き返らせてどうすんのよ!』

 真『うーん、分からないなぁ……でも、何か考えがあるんだよね?』

 美希『真クン、ちょっと雷出せる?』

 真『え? うん……あれ、出ない』

 美希『やよいも言ってたんだけど、チカラと命はセットなの。だから一回死んだらなくなるの』

 千早『私の場合は高槻さんに取られたからなくなっていて当然だと思ってたけど……そういう仕組みがあったのね』

 真美『そうか! つまり……悪やよいっちが生き返っても怖くないってことだ!』

 美希『ブー、外れ。悪やよいは生き返らないの』

 真美『あれ、そなの?』

 貴音『……! なるほど、そういうことですか』

 響『分かったのか貴音』

 貴音『ええ、チカラとはそもそも全ての命に眠っているもので……それを引き出すのが例のえねるぎぃ』

 貴音『つまり、命に直接干渉するものであるえねるぎぃもまた、命そのものに宿るということ』

 貴音『故に……やよいを悪へと変えたあのすぺしゃる・えねるぎぃも……やよいが死した瞬間、消え失せたということになります』

 あずさ『それじゃあ、今のやよいちゃんは……』

 美希『みんな大好きな、良い子のやよいなの』

 P『その通り。俺も分かってた俺も』

でも腐った心こそがやよいの自我だと言われてたやん

>>512
ちょっと説明不足だったと思うから補足する
腐った心は「あの時の」やよいの自我
隕石に選ばれて特性が真逆になって、良い心が悪い心になってしまった
他の人に操られてるとかではなく、やよい自身が根っこから変わってしまったからもうどうしようもないってことを伊織は言ってた

 千早『ほ……本当なの? もし悪いままだったら……』

 律子『……安心なさい。やよいは良い子になって復活するわ。私……知ってるから』

 千早『……?』

 響『まさかやよいも元に戻るなんて……本当に良かったぞ!』

 伊織『何よ、今更……そういうことは早く言いなさい、よね……』

 春香『それじゃあ……やってみるよ?』

 ……ボウッ

 やよい『……』

 やよい『う……』

 やよい『あれ、みんな……わたし……』

 やよい『……!!』

 やよい『あ、ああ……わた、ああっ、私、なんてこと……』

 あずさ『やよいちゃんだわ!』

 真『うん、あれは……ボクの知ってるやよいの目だ』

 P『さて、ここからだな。乗り越えられるか……』

 やよい『あ、あの、皆さ、ん……ごめんなさい……私、あんなに酷いこといっぱいしちゃって……』

 やよい『うう、生きてたらダメなのに……なんで生き返っちゃったんだろう~……』

 伊織『……』

 P『いいかやよい、お前は何も悪くないんだ。かくかくしかじかで、 隕石のせいでこんな事件が起きてしまったんだ』

 律子『やよい……誰もあなたを責めていないわ。悪いのは全部、あの隕石なんだから』

 やよい『うう、でもでも~……』

 美希『過去を気にしても、仕方ないって思うな』

 やよい『……美希さん?』

 美希『やよいは悪い子になって、何人も人を殺したの。そのジジツは変えられない』

 やよい『あうう……』

 美希『でもね、今のやよいは良い子だし、皆だってこうして生きてる』

 美希『世界は今で出来てるの。やっちゃったことを後悔しても仕方ないの。だからミキは……今が楽しければ、それでいいって思うな』

 真『……そうだね、うん。今は誰も気にしてないんだし、謝られても、逆に困るっていうか……』

 あずさ『あれだけ悪いことをしちゃったのも、元々のやよいちゃんが良い子だからこそ。むしろ褒められてもいいくらいだと、私は思うわよ?』

 やよい『皆さん……』

 やよい『で、でも、私……』

 伊織『……』

 伊織『甘いわ、みんな』

 律子『……伊織?』

 伊織『どんな理由があろうと……人殺しは罪よ。例え殺された本人が許していても……罪を犯したんなら、罰を受けるべき』

 真『ちょっと伊織! あんまりじゃ……』

 伊織『罰として……これからしばらく毎日事務所の掃除をすること。いいわね、やよい』クルッ

 やよい『!』

 伊織『人を殺したのは私も同じ。だから二人で一緒に……頑張りましょ』スタスタ

 やよい『う……うんっ! がんばるっ! 一生かけてでも、償うから!』

 P『……うまいな、伊織』

 美希『うん、デコちゃんにしてはなかなかなの』

 P『一番の問題は、俺たちより死んだみんなより……やよい自身が自分を許せるかどうか。どんな些細なことでも罪滅ぼしをしないと、きっとやよいも気が済まなかっただろう』

 美希『一緒に、ってのもポイント高いよね。罪のイシキに押しつぶされそーになった時、誰かがそばにいてくれるだけで全然違うから』

 伊織『……なーにを二人で勝手に評価してくれてんのよ、ったく……』スタスタ

まだ廃人ピヨちゃんが救われてない…

 美希『デコちゃんえらいの。なでなでしてあげるの』

 伊織『ちょっ、やめなさいって! バカぁ!』

 P『はは、この光景、小鳥さんが喜びそ……!』

 P『……』
 
 真美『ねえねえ兄ちゃん』

 P『……ん?』

 真美『この天才少女双海真美、だいたいのことは亜美から聞いてすぐにリカイして、それで思ったんだけどさ』

 真美『帰ったら……』

 P『……』

 P『!?』


春香(今となっては……これでよかったって、心から思える)

千早「……事務所、着いたわね」

春香「……うん」ガチャ

春香「ただいま戻りました!」

小鳥「あら、はるちはわっほい……じゃなくて! お、おかえりなさい二人とも」

千早「ただいま、音無さん」

春香「もう、また妄想してたんですか?」

小鳥「そ、そんなことないのよ? ただ本日はお日柄も良く絶好のはるちは日和かなーって……」

春香「……ふふっ」

小鳥「……春香ちゃん?」

春香「それでこそ小鳥さん、ですよね!」

小鳥「? ……あ、まさかまたあの日のこと思い出してたの?」

春香「えへへ~、なんたって私が大活躍した日ですから! 一生忘れませんよ!」

小鳥「うう、個人的にあれは黒歴史だから忘れていただきたい……」

P「けど、良かったじゃないですか。こうして元通りになれて」スタスタ

真美「んっふっふ~、これも真美のおかげだかんね!」

春香「あ、真美、それにプロデューサーさんも……戻ってたんですか」

P「お前らよりちょっと早くな。それにしても、懐かしい話だな」

P「あの時……まさか真美があんなことを言うなんてな」


 真美『帰ったら……とりあえずピヨちゃん殺せばいいんじゃない?』

春香「たしかに、あの一件落着ムードの中であの発言はすごかったですよね~」

P「ああ、驚いたよ」

真美「え、だってピヨちゃんってチカラで思考を押さえ付けられてたんだよね? チカラなくなったら元通りになれるって思うの、そんな変だった?」

真美「もし元通りにならなくっても、どうせ生き返るんだし関係ないっしょ?」

小鳥「えっそんな『でぇじょうぶだ、はるるんボールで生きけぇれる』みたいに扱われてたの私」

P「いやまあ、実際真美の言う通りだったわけだが……そもそもあの時点では、小鳥さんのチカラとか状態については完全に把握出来ていたとは言えなかったからな」

P「不確定要素の多い中でとりあえず殺してみるって発想が、盲点だったというかなんというか……例え思い付いても、発言にまでは踏み込めなかった部分はあったと思う」

P「とにかく、結果的にはお手柄だったぞ真美。お前のその子供ならではの純粋なゲーム脳のおかげで小鳥さんは復活できたんだからな」

真美「もー、子供扱いしないでよ~! 真美もう中学生なんだかんねっ!」

P「褒めてるんだぞ?」

真美「えっ……なら、いいけど、えへへ」

やよい「お掃除、終わりました~!」

P「おう、お疲れ」

伊織「ぜぇ……ぜぇ……いつもいつも、あんな隅々までやらなくてもいいじゃない……」

P「はは、伊織もお疲れ。そんな調子でこの後のレッスン大丈夫か?」

P(何はともあれ……こうして……“チカラ”に目覚めたアイドルたちの戦いは、終わった)

律子「……」スタスタ

千早「律子、おかえりなさい」

伊織「あら? どうしたのよ、いつも以上に疲れた顔して」

律子「……別に。雪歩は?」

春香「今日は久しぶりのオフだし買い物にでも行くって言ってましたけど……」

P(何人かのチカラはまだ残ってるが……あれ以来誰も、日常生活でチカラを使ってはいない。もうチカラには懲りたんだろう)

律子「はぁ……」

P(これから彼女たちは普通のアイドルとして、この厳しい業界を登り詰めていく)

律子「……プロデューサー、聞いてくださいよ~」

P(平和な日々は帰ってきた。しかし常に需要が変わり続けるアイドルとしての戦いに安息日なんてない)

律子「……プロデューサー?」

P(俺たちの戦いはこれからだ! ~完~)

律子「プロデューサー!!」

P「うおっ、なんだ律子」

律子「呼んでるのに無視しないでくださいよ。何考えてたんですか?」

P「あの……俺たちの戦いは……いやなんでもないですすいません」

律子「もう……まぁいいです。それで話なんですけどね、ちょっと困ったことになりまして」

P「困ったこと?」

律子「前に雪歩言ってたじゃないですか。あの戦いで疲れて寝ちゃったあと、隕石の夢を見てたって」

P「ああ、言ってたな」

律子「ちょうどその頃、876プロに変な隕石が落ちたみたいで……」

P「……」

P「ふむ」

律子「今日久しぶりに涼に会ったんですけど……」

律子「『凍気使い』になってました」

P「……」

P「なぬ?」

律子「問い詰めたところ、絵理は『水使い』、愛は『爆発使い』だそうです」

P「え? え?」

~876プロ~

愛「うわーん! にっぽんの行く末がわかんないよー!!」ドッカーン

涼「わわっ、愛ちゃん爆発! 爆発気を付けて!」

絵理「消火っ」ビシャア

絵理「……ぐっじょぶ?」ニコッ

涼(ああもう……愛ちゃんの近くにいるとヒヤヒヤするよ……)ヒュウウ

愛「わわっ! 涼さんすっごく凍気漏れてます!! わーん! 寒いよーっ!」ドッカーン

涼「ぎゃおおおおおおおおおおおおおん!!!」ドッカーン

絵理「うーん……」

絵理「……地獄絵図?」


~765プロ~

律子「毎日こんな感じらしくって……」

P「はは、大変だな向こうも」

律子「笑い事じゃないですよ~。雪歩が寝ながらうっかり落とした隕石がスーパー・エネルギー・ストーンだったとかだとしたら悪いじゃないですか」

P「十中八九それだと思うけどばれなきゃ問題ない」

P(しかし……876プロだけならいいんだが……もし雪歩が日本中に大量のスーなんちゃらストーンを落としてしまってたとしたら……)

春香「プロデューサーさん、あずささんの生放送、もうすぐ始まりますよ! テレビテレビ!」

あずさ「楽しみね~」

P「お、今行く」

P(ま、考えすぎか。雪歩もそこまでむやみやたらに隕石落としたりしてないだろう)

ピッ

北斗『チャオ☆ 突然だけどこの生放送、予定していた三浦あずささんが例のごとく来ていないみたいだから、代わりに俺がやることになったんだ』

北斗『ファンのエンジェルちゃんたちは知ってるかもしれないけど、実は俺、あるチカラに目覚めてさ』

北斗『今日はこの人差し指からLOVEを撃ち出せる『LOVE使い』のチカラで、テレビの前の皆を俺の虜にしちゃ』

ピッ

P「……」

P「ふう……」

P「日本終わったな」




一応これで終わりです
軽いおまけとして説明し忘れてたことの言い訳とかダラダラ書こうかな
何か聞きたいことあればついでに答えます

前例によるとこれ、性質反転が他の事務所も起こってそうなんだけど

876はまず愛ちゃんとして、性質はアホ→頭いい子?
961は……あまとうかなぁ。童貞がモテモテに反転してたら隕石ぶつけて一度殺すべきだな

・律子の死体が黒コゲだった理由

まず、やよいはそもそも律子を殺すつもりはなかった
チカラを奪って記憶をいじるだけのつもりだったが、チカラが命から離れなかったので仕方なく……ってやつ
で、警察にバレるとちょっと困るので、苦肉の策として自分の指紋を消すついでに春香あたりに罪を着せようと、ライターで普通に燃やして焼死を演出したって感じ

>>542
876はそんな感じ
すごい小声な愛ちゃんとかも考えたけど爆発使いとどうにも合わないのでやめた
ジュピターは特に考えてないしそもそも事務所に落ちたとも限らない

とりあえずこれくらいで
こんな長いの読んでくれて本当に感謝
謎みたいなの残ってたら教えて

どうすれば子供が救われるかちょっと考えたけど無理でした
不運な事故だった

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