右京「着信アリ2?」 (174)

相棒×着信アリ2のクロスssです。

右京「着信アリ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390986937/)

右京「着信アリ?」の続きになります。

※以下の諸注意があります。

このスレを読む前にまずは前スレをご覧ください。

舞台は相棒シーズン4、2005年の設定になっています。

話の都合上、着信アリの原作設定が大幅に変わっていたりしますがその辺はご容赦ください。

それでも良いという方はどうか見てやってください。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391517860



<8月10日>


~警視庁~


大河内「…」

神戸「…」

大河内「…」

神戸「…あの…」

大河内「何だ?」

警視庁にある大河内の部屋で不審なアクセスを行う者の正体を暴く作業を黙々と行う大河内と神戸。
しかし二人はせっかくの旧知の間柄だというのにろくに会話が無かった…

期待

神戸「いえ…こうして二人きりで作業なのだから少しはコミュニケーションを取り合うべきではないかと思いまして…」

大河内「くだらない事を言う暇があったら手を動かせ。
しかしまさかあのお前が警察庁の推薦組として警備部の配属になるとはな…
今だから言うが、お前が推薦されて警察庁に異動になる際に上申書を出して反対をしたんだがな…」

神戸「それ…冗談ですよね…?」

大河内「さあな…それで何かわかった事は?」

神戸「えぇ、この外部からのデータバンクへのアクセス記録なんですけど確かにひとつはこの警視庁からなのは確かなんですけど…
もうひとつは…これ台湾の回線を経由しているみたいなんですよ、これってどういう事なんですかね?」

大河内「台湾…だと…」

未だに警視庁へ違法アクセスを続ける者の捜査を続ける神戸と大河内の二人、その頃…



~台湾料理店山平居~


ここは新宿繁華街にある王健峰という台湾人が営む料理店である。
しかし実はこの料理店、表向きは普通の料理店だが…
その実態は城南金融のヤクザと中国マフィアによる違法な取引が行われている場として使われていた。

そこへ角田課長率いる組対5課の刑事たちと警視庁特命係の杉下右京、それに亀山薫が張り込みを行っていた。

時刻は深夜1時を過ぎていた。
料理店の営業時間は過ぎて店は閉店したがそこへ怪しい男たちが次々と店の中に入って行く光景を右京たちは目撃していた。

次スレ来たか!
前スレにも誘導を貼ってもらえたら助かる

右京「既にお店の閉店時間は過ぎています、なのにあの男たちはお店の中に入って行きますねぇ。」

亀山「間違いないっすね!ヤツら城南金融や中国マフィアの悪党っすよ!
課長、すぐにガサ入れしましょう!!」

角田「おぅ!よーし行くぞお前ら!!」

角田課長の指揮の下、張り込みをしていた刑事たちが一斉に王の店に突入していった。

角田「ハイ警察!全員動くな!!」

ヤクザ「クソッ!サツかよ!?」

マフィア「クッ!ニゲバガナイゾ!?」

大木「課長拳銃です!」

小松「こっちには麻薬ですよ!」

角田「まったく…ここは違法取引のバーゲンセールか?」

急なガサ入れに騒然とする店内、角田課長たちの大捕物は成功したようである。
一方、右京と亀山の二人はこの店の店主である王健峰を探していた。

亀山「王のヤツ…見つからないっすね…どこ行ったんですかね?」

右京「彼はこの店の店主です、もしかしたら厨房にいるのかも…」

右京の言う通り、王健峰は厨房で何やらコソコソとしていた。

右京「王健峰さんですね、警察です!動かないでください!!」

亀山「お前の逃げ場はもう無いぞ!大人しくしろ!!」

二人は厨房の出入り口の前に立ち王健峰の逃げ場を封じる。
これに観念したのか王健峰は抵抗せずに大人しく捕まろうとした。
そして二人は王健峰に、今回の一件とは別の二人が追っている『死の着信』を引き起こしている水沼美々子について訊ねてみた。

右京「王健峰さん、今のうちにお話を聞かせてもらいます。
あなたの同郷の人間であるチャン・ウェイをご存知ですよね、彼の孫娘に当る水沼美々子さんについてご存じはありませんか?」

亀山「なんでもいい!知っている事があるなら教えてくれ!」

王健峰「美々子…?………!?」

美々子の名を言った瞬間であった、王健峰の表情が急に険しくなりまるで恐ろしいモノでも見たかのような顔をしていた。
そして王健峰は右京たちに向かいこう呟いた。

王健峰「不再回来…!」

亀山「え…?あいつ何言ってるんですか!?」

右京「北京語で二度と帰らない…彼はそう言っています。どういう意味でしょうかね?」

その時であった、先ほど王健峰がコソコソしていた辺りから携帯の着信音が聞こえてきた。
しかしその着信音は…


♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


右京「これはまさか…」

亀山「間違いない!死の着信ですよ!おいアンタ!その携帯を取るな!?」

亀山は携帯を取るなと忠告を促すが王健峰は厨房のテーブルに置いてあった携帯を取ってしまう…
その携帯から女性の声が聞こえてきた。

『オトウサンドコ?』

王健峰「美鳳カ?美鳳ナンデオマエ…」

亀山「声からして女の人…?」

右京「どうやらそのようですね、『オトウサン』と呼んでいる事からどうやら彼の娘のようですが…」

相手は王健峰の娘らしい、女性は王健峰と同じく日本人ではないらしくその口調もどこかカタコトな発音であった。
そして電話越しの彼女は父親に対してこう告げる…

『…ッタク…マタアブラヒニカケッパナシ…アブナイッテイッテルノニ!』

それはまるで父親を心配するような内容であった。
しかし次の瞬間…

『キャァァァァァ!?』

王健峰「美鳳!?」

娘の悲鳴を聴き、王健峰は思わず厨房にある火の付いたフライパンに目をやると…


((ボッ!))


王健峰「ギャァァァァ!?」

突然フライパンに火がつき…そしてその火が王健峰の顔に燃え広がった。
だがそれだけではなかった…

右京「焦げ臭い…まさか…亀山くんあれを見てください!」

亀山「あれって…あぁ!?」

亀山は右京が指を差すガス栓のホースに注目した。
そこには一匹の鼠がまるで狂ったかのようにホースを食い千切っている光景があった!

右京「まずいですよ!早くこの部屋から出ますよ!」

亀山「けど王健峰が…」

右京「もうダメです、彼は手遅れですよ!」

右京の言う通り王健峰は火にあぶられ既に息絶えていた、そしてその火がガスに引火して厨房は火事に!


((ゴオオオオオ!!))


角田「な…何だこりゃ火事か!?」

右京「課長!すぐに退避してください!厨房で火災が!」

亀山「急がないと俺たちまで巻き添え喰っちゃいますよ!」

角田「わかった!おいお前ら証拠とか全部持ってけ!早くしないと消し炭になっちまうぞ!!」

大木「でも火が…」

小松「とにかく急げー!?」

右京たちは店内でガサ入れの最中であった角田課長たちを急いで退避させる。

それから数時間後…

とりあえずここまで

>>6

誘導レス貼りましたので、よければこちらもご覧ください。


了解です
次回の投下も楽しみだ

乙です

乙です

着信アリそういや1しか観たこと無いや

現場は消防車や警察車輌が入り混じり騒然とした状態になっていた。
勿論現場には捜査一課の伊丹たちや鑑識の米沢も駆けつけて捜査を始めていた。
ちなみに角田課長は現場を伊丹たちに任せて捕まえた連中の取り調べのために本庁に戻った。

伊丹「まったく…組対5課がガサ入れの最中にボヤ騒ぎかよ…
なんだって俺たちが連中の後始末をしなきゃならねえんだか…」

三浦「幸い火は厨房だけで止まって店が全焼する事は無かったが…」

右京「これも消防隊の方々が迅速に対応してくれたおかげです。」

亀山「あちらさんはお前らよりも優秀だからな!」

三浦「警部殿…今回はあなた方の目の前で被害者が亡くなったらしいですねぇ…」

伊丹「特命係の死神!お前が行くとこは死体の山ばっかじゃねーかコラ!?」

亀山「誰が死神だ!?こっちだって好きで死体と鉢合わせしているわけじゃねえんだよ!」

そんなお決まりのやり取りが行われている中で右京は米沢にある重要な事を確認していた。

米沢「被害者の死因はこの重度の火傷ですな。
特に頭部の顔面の火傷は酷いですなぁ…ただでさえ強面の顔が一層…あ、失礼…こりゃ私の感想です…」

右京「米沢さん、被害者の口から飴玉は発見できましたか?」

米沢「いえ、飴玉は発見出来ませんでしたがその代わり妙なモノが見つかりました。
微量な『石炭』です、それが口の中にありました…」

右京「石炭?飴玉ではなく石炭…どういう事なのでしょうか?それと被害者の携帯電話を調べたいのですが…」

米沢「携帯電話…ですか?」

米沢は右京に被害者が死亡直前まで使用していた携帯電話を見せた。
しかしこの携帯電話、明るい場所でよく見ると男物ではなく…シールやデコを付けた今時の若い女性が使用するような携帯電話であった。

米沢「正直この携帯を中年の男性が使っていたとは私には思えないのですが…」

右京「同感です、これは本来被害者の携帯ではないのでしょうね。」

続編来てたのか...期待してます

するとそこへ芹沢が一人の女性を連れて現れた。
女性は現場に入ると被害者の死体を見て急に駆け寄り泣き出してしまう。

美鳳「オトウサァァァァン!?」

亀山「お父さんってどういう事だ?」

芹沢「彼女は王美鳳さん、亡くなったこの店の主人の王健峰さんの一人娘だそうです。
ちなみに今日は友達と飲みに行っていて帰りが遅かったらしいですよ。」

美鳳「ダカラワタシイッタノニ!
コンナアブナイシゴトヤメヨウッテ!ヤクザノシゴトヒキウケタッテロクナコトナイヨ!」

父親の遺体の前で号泣する美鳳、そんな気まずい雰囲気の中で右京は美鳳にある事を聞いてみた。

右京「失礼ですがよろしいですか、この携帯電話ですがもしかしたらあなたの物ではありませんか?」

美鳳「ハイ…コノケイタイハワタシノデス。
キョウ、オミセノテツダイシテイルトキニチュウボウニワスレテシマッテ…」

右京「なるほど、ところでお聞きしたいのですが…
水沼マリエ、もしくは美々子という名前に何か心当たりはありますか?」

美鳳「マリエ?美々子?フタリトモシリアイデスケド…
チナミニフタリノケイタイノバンゴウモワタシトウロクシテイマス。」

美鳳の携帯には確かにマリエと美々子の携帯番号が登録されていた。
美鳳の話によると実はチャン・ウェイとは家族ぐるみの付き合いだったようで…
以前、マリエは娘たちをこの王一家に紹介していたとの事であった。

亀山「なんだって!?
キミのお父さんは水沼一家について何か言ってなかったかい?」

美鳳「ソウイエバ…」

美鳳は思い出したかのようにある事を話す。
それは王健峰にマリエが娘たちを紹介した時の事であった。
その時、王健峰は美々子の顔を見て思わず恐怖してしまいある言葉を呟いたという…

美鳳「『李麗』…オトウサンハタシカニソウイッテマシタ…」

亀山「李麗…?中国の女の人の名前ですね?」

右京「一体誰の事なのでしょうか?」

それから右京と亀山は美鳳からある情報を聞き出し、その場を伊丹たちに任せてとある飲み屋へとやってきた。

まどマギとのクロスは結局投げちゃったの?

江戸川コナンもとい

金田一一とかに比べて

出掛けたところで殺人

少なくないっけ

北条とかいう犯人の

家にいったらそこで殺人

が起きたり、護送中に

寝台列車北斗の中で

殺人が起きたり捜査の過程で

京都にいったらまた殺人が・・・・

でかけていって殺人

ルートもあるけど基本

事件が起きて首突っ込む
じゃないか

まぁ、警察や探偵物の主人公にかせられた宿命みたいなもんでしょ。>>行き先で事件



~飲み屋~


ここは東池袋の人生横丁にあるとある場末の飲み屋。
そこに右京と亀山はある人物に聞き込みをするためにやってきたのだが…

右京「失礼します、警察ですが…」

亀山「あなたは確か…辻真理子さん!?どうしてここにいるんですか?」

真理子「久しぶりねぇ刑事さんたち…」

飲み屋には二人の女性が居てその内の一人はなんと、以前右京と亀山が逮捕したこの人生横丁で殺人事件を犯した辻真理子であった。
彼女は以前、息子が死んだ時に担当をしていた保険会社の社員である久保田を殺害してしまい服役中であったが…
現在は仮出所しているとの事であった。
まさかの偶然な再会、亀山は思わず何故彼女がこんなにも早く出所出来たのかその理由を聞いてみた。

亀山「けど随分と早い出所ですよね、失礼ですけどいくら模範囚でも2~3年そこらで出られるわけが…」

真理子「それは…」

右京「なるほど、大企業・神田グループのトップ、神田喜一氏のお力添えがあったからですね。
恐らく彼がよほど腕の良い弁護士に依頼をして刑期を短くしてくれたのでしょうね。」

真理子「まったく…私は刑務所でお勤めしようかと思ったのに…あの男は…未だに未練がましいわ…」

亀山「何言ってんですか!彼はあなたのためを思ってやってくれたんですよ!
感謝こそされるにしてもそんな恨み言を言うべきじゃないでしょうが!」

真理子「本当に感謝されたいなら20年以上前に私と一緒になってくれたら…」

亀山「あ…」

右京「失礼しました…」

辻真理子の言う20年以上前とは…
かつて彼女は神田喜一と付き合っていて既に妊娠して子供が生まれようとしていた。
しかし神田喜一は地位を得たいがために当時妊娠していた真理子と別れ他の女と結婚する事になる。
それから20数年後、彼女の息子と神田が他の女との間に出来た息子が偶然にもモーターボートの事故に巻き込まれて死亡。
その後、二人は保健会社から真理子の息子は3000万円、神田の息子は3億円と同じ男の息子なのに何故こうも命の値段が違うのかと…
彼女は保健会社の人間を殺害、真理子が殺人を犯した事に責任を感じた神田が一時はその罪を自分が被ろうとしたのであった…

真理子「フフ、それで…私に用があってこんな場所にわざわざ来たの?」

右京「いえ、今回はあなたではなくこちらの女将である水沼浩子さんにお聞きしたい事があって来た次第です。」

浩子「私?」

右京たちがこの店を訪れた理由はこの水沼浩子にあった。
ちなみに彼女は辻真理子とは旧知の間柄で仮釈放中の真理子の身元引受人はこの浩子でもある。

右京「あなたは水沼マリエさんの実の母親、そして台湾人男性のチャン・ウェイの妻であったそうですね。
そしてあなたは…」

亀山「水沼美々子の祖母でもあったはず!
お願いです、水沼美々子の事について知っている事があるならなんでもいいので教えてください!」

浩子「そう言われてもねぇ…
実を言うとマリエが美々子を妊娠した時、私はあの子に子供を堕ろせと言ったのよ。
それなのにあの子産んじゃって…父親についてもろくに明かさないしさ…一体何を考えているやら…」

右京「ではマリエさんとは娘さんたちが生まれてからは…」

浩子「この10年間疎遠だったわ…それが今から数か月前だったかしら…
王さん一家とここで飲み会していたらあの子が子供を連れてやってきたのよ。」

真理子「あの時の事は私も覚えているわ。
娘二人連れてきて紹介してくれたのよ、美々子ちゃんの父親については結局明かしてくれなかったけど…
もう一人の菜々子ちゃんの父親についてはTV局に勤めているとか言っていたわね。
けど…あんな5歳くらいの子供を放ったらかしにしている男なんてろくなものじゃないと思うけど…」

右京「なるほど、美々子さんの父親については明かさなかった訳ですか…
ところでこちらに夫のチャン・ウェイさんはいらっしゃいますか?
彼にもお話を伺いたいのですが…」

右京は浩子に夫のチャン・ウェイの居場所を聞いてみた、だが返答は…

浩子「いない…突然国に帰っちまったんだよ…」

亀山「国に帰ったってどういう事ですか?」

浩子「こっちが聞きたいくらいだよ!
思えば変だと思ったのはあの時だ、マリエが娘たちを連れて来た時にチャンが変な事を言ったんだ!
李麗ってさ…」

李麗、先ほど王美鳳から聞いた女の名前であった。
一体誰の名前なのかと聞いてみるが…

浩子「だから知らないんだよ!
そういえば11年前…あの時もそうだった…
台湾の炭鉱の故郷に里帰りしたチャンと王さんが帰って来た時も…あんな恐怖で引きつった顔をして…」

亀山「炭鉱?」

右京「なるほど、そうなるとあの石灰は…」

浩子が言うにはかつて11年前にチャン・ウェイと王健峰は故郷の炭鉱で『何か』が起こり、
それから故郷には一切帰っていなかったそうだ。
その時の二人の顔を見た真理子は自身と重なるある心当たりがあった。

真理子「あの二人…たぶん…人を殺した事があるんだよ…」

亀山「何でそんな事がわかるんですか…?」

真理子「あの時の二人は私と同じ顔をしていたんだよ、人を殺して恐怖と罪悪感を抱いたあの顔に…」

右京「恐怖と罪悪感ですか…」

殺人を犯した者だけにわかる気配、その言葉に信憑性を感じる右京。
話を聞いた右京と亀山はとりあえず本庁に戻ろうとする、しかし戻る間際に二人は辻真理子にある事を話す。

右京「ところでこれは事件とは関係ないのですが…
辻さん、いい加減神田さんを許してあげてはどうでしょうか。」

真理子「そんなの…アンタたちには関係ない事じゃ…」

亀山「確かに…関係ないかもしれませんよ…けどね!
あの時、神田さんがあなたのために罪を被ろうとした愛情は本物っすよ!
あなたが逮捕された時、彼は今まで押し殺していた感情を荒げて泣き出したんですから…」

右京「こんな事は一刑事としての発言としては相応しくないかもしれませんが…
大企業のトップと場末の飲み屋の女性、いくら世間の目が気になろうとも…
彼の愛情だけは信じてあげるべきだと思いますよ。」

当時、真理子を逮捕し神田の嘘の証言を見破った二人だからこそ告げられる言葉。
しかしそれでも真理子は…

真理子「ありがとう刑事さん…けど私は人を殺した身…幸せになる権利なんか…」

右京「わかりました、ですがこれだけは覚えていてください。
天国にいる息子さんはあなた方ご両親が不幸になる事は望んでいないと思いますよ。」

亀山「そうっすよ、子供は親の幸せを望んでいるはずですから!」

二人はかつて神田が本当に真理子とその息子を愛していた事を真理子に言い残し、店を出て行った…

とりあえずここまで

辻真理子、相棒シーズン2 第8話命の値段に出てきた犯人です。
詳しく知りたい方は偶然にも今日の相棒再放送でこの話がやるそうなので(関東圏のみ)是非そちらをご覧ください。

乙です

続編来てたのか 期待してます



~特命係~


警視庁に戻った右京と亀山は、角田課長に録画を頼んだ小西なつみが緊急特番中に死亡した時のビデオと、
美々子が虐待を行ったビデオを同時に観ながら検証していた。

右京「なるほど、興味深い事がわかりました。
美々子さんが菜々子ちゃんに虐待を行う前の光景です、施設にいた菜々子ちゃんが持っていたぬいぐるみがありますね。」

亀山「あ、本当だ!
けどこのぬいぐるみを美々子が持って…ぬいぐるみの手を捻じ曲げた!
それに最後は…ぬいぐるみの頭を…捻じ曲げてまるで首を捥げそうと…あれ?これってまさか!?」

右京「そうです、小西なつみさんの殺害方法と全く同じなのですよ!
これこそ彼女が小西なつみさんを殺害した立派な証拠なります。」

亀山「しかしこの美々子の虐待の光景っすけど…俺昔を思い出しちゃうんですよね…
俺の家ですけど…姉ちゃんが一人いるんですけどその姉ちゃんに喧嘩でボコボコにやられてたんですよね…
まぁさすがに美々子ほどじゃないですけど…ほら兄弟とかって幼い頃はかなりいがみ合ったりするじゃないですか。」

右京「なるほど、参考になる幼少時の体験ですね。それよりも注目してほしいのがこちらです。」

亀山「それよりもって…酷いな…」

右京は美々子の虐待を映したテープを早送りする。
そこに映っていたのは美々子が喘息の発作で苦しむ姿、美々子は苦しみながらも携帯で誰かに連絡をしようとしていた。

亀山「これって美々子が携帯で連絡している光景ですよね?
けど…これは母親のマリエさんに掛けているんじゃないんですか?」

右京「確かにキミの言う通りマリエさんの携帯には美々子さんからの着信記録が残されていました。
しかし…死ぬ瀬戸際ですよ、他に掛ける相手がいたのかもしれません。おや?」

その時、右京はTVの画面に耳を充てていた。

亀山「右京さん、TVを観る時は部屋を明るくして離れるべきですよ。」

右京「亀山くん、ちょっと音を上げてもらえますか?何か一瞬聞き覚えのある音が…」

亀山「音ですか?わかりました。」

右京の言う通り亀山はテープを巻き戻してTVの音を上げてみた。
それは美々子が喘息の発作を起こしてテープの映像が終わる間際のシーンであった。

右京「ここです!この音ですよ!」

亀山「この音は…」

右京が指摘する音、それは…



♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


死の着信であった、TVの画面に注目するとその死の着信は美々子の携帯電話から鳴っていたのだ。

亀山「これ!映像が終わる間際に死の着信が鳴ってますよ!」

右京「どうやらそのようですね、しかし一体誰が…」

右京の言うように誰が美々子の携帯電話に死の着信を送ったのか、それが疑問であった。
しかし疑問はそれだけではない、今回の王健峰の死亡は明らかに今までとは違うからだ。

亀山「王健峰の死に方ですけどヤツは自分の携帯を持っていなかったそうじゃないですか!
それなのに死の着信を受けて死んだ…これってどういう事なんですかね?」

右京「恐らくですが彼は…身代わりになったのではないのでしょうか?」

亀山「身代わり?」

そんな中、特命係の部屋に鑑識結果の報告をしに米沢がやってきた。

米沢「杉下警部お待たせしました。
鑑識の結果ですが死亡した被害者の口から検出された石炭は台湾産のモノだという事が判明しました。」

右京「どうもありがとう、なるほど台湾ですか。」

亀山「台湾って確かマリエさんの父親のチャン・ウェイや王健峰の故郷ですよね?」

右京「それだけではありません。
確か彼らの故郷は台湾にある炭鉱だと浩子さんが話していました。
それに李麗という女性、もしかしたら台湾の女性かもしれませんね
もしかしたら今回の事件は台湾に関係しているのかもしれませんよ!」

亀山「台湾か!よっしゃー!右京さんさっそく台湾に行きましょう!」

右京「そうですね、行ってみましょうか。」

台湾にこの事件の核心がある、そう思った右京と亀山は台湾へ行く事にする。
しかしその前に米沢は思い出したかのようにある事を言っておいた。

米沢「あぁ、そういえば…捜査一課から聞いたのですが…
小西なつみさんの事件で逮捕された東西テレビの藤枝という男ですが殺人ほう助の形で書類送検になったそうですよ。
同じく天道白水も捜査二課が逮捕したようですな、しばらくは刑務所暮らしでしょう。
天道は国内だけじゃなく海外でも霊感詐欺を行っていたので余罪の追及が大変だと二課が嘆いていましたよ。
ちなみに藤枝は取り調べ中にテレビ局から解雇処分を受けたそうですな。」

亀山「ケッ!当然でしょ!
あんな危険な撮影やって小西なつみさんを見世物の様に見殺しにしたんだ!当然の報いですよ!!」

右京「亀山くん、それ以上は警察官としてはあるまじき発言ですよ。
それはそうと米沢さん、ひとつお願いがあるのですが…」

米沢「杉下警部のお願いとはまた無茶ぶりな事でないといいのですが…」



~亀山のマンション~


その夜、亀山はマンションに帰ると早速台湾に行くための準備を始めていた。
準備をしながら台湾に行く理由を恋人で同棲中の奥寺美和子に話していた。

亀山「…という訳で明日から台湾に行く事になったから!」

美和子「台湾ねぇ、普通公務員がそんな簡単に海外に行けるわけ無いんだけどなぁ…
いいよね特命係は暇で…」

亀山「放っとけ!」

美和子「ところでさ、その台湾に行くのだけの…
私も付いてくね、実は前から取材したい事があってね。」

亀山「取材だと?」

美和子「薫ちゃんさ、『エリセ化粧品』って知ってる?」

亀山「エリセ化粧品ってあの化粧品で有名な会社だろ?」

美和子が説明するには台湾でエリセ化粧品が化粧品の原料を調達するために所有する炭鉱で、
数年前から原因不明の難病が発生しているとの話であった。
しかも11年前には妙な騒動があったという噂が出回っていたらしい…

美和子「詳しい事は現地に行ってみなきゃわからないけど…
村人たち…特に子供に妙な病気が流行っていたらしいの、当時は村の人たちはこれを祟りや呪いの所為にしていたとかって話で…
それでね、私思うんだけど…もしかしたらこれってエリセ化粧品が何か公害を巻き散らかした原因じゃないかって…」

亀山「公害ねぇ…」

亀山は押し入れから旅行用のトランクを取り出しながらその話を聞いていた。

その時であった…


((ギィー))


トランクが中から勝手に開いた、するとそこにはなんと…


亀山「「うわぁぁぁぁぁぁ!!??」」


美和子「どうしたの薫ちゃん!?」

亀山「お…女の子…!トランクの中に女の子が!?」

そう、そこにいたのは生気の無い青白い肌に両目を縫合された奇妙な少女がトランクの中から覗こうとしていた。

美和子「何言ってんのよ、女の子なんかいないじゃないの?トランクの中は空っぽよ!」

亀山「そ…そうか…気の所為だったのかな?」

唯の気の所為だと思い、気にも留めない亀山…
しかしそれは見間違いなどではなかった、その少女こそこの物語の核心を担う重要な人物なのだから…

リリィって幽霊だけど現実に台湾人でその名前の人いるのかな
のろいのメールは、内村部長にぜひ

まあ内村さんと中園管理管なら内村さんが警視庁占拠時点の反応見る限りろくな手を打ち出せなかった中園さんより有能でしょうな

XDAXの話なら一応二人とも警察官の新年見せてたけど



<8月12日>


~台湾~


無事台湾に着いた、右京、亀山、それに美和子の三人。

美和子「すいません、我が儘言って付いてきちゃって…」

右京「別に構いませんよ、それにしてもまさか美和子さんと僕たちの目的地が一緒だったとは…」

そう…チャン・ウェイと王健峰の生まれ故郷、そして美和子が取材するエリセ化粧品の所有する炭鉱は、
偶然にも侯硐という同じ場所にあった。

亀山「ところで右京さん、いいんですか?このホルマリン漬けの目玉を持ってきちゃって…」

右京「ちゃんと米沢さんに頼んで許可は頂いています。
それにもしかしたらその眼の持ち主はこの台湾にいるのかもしれませんからねぇ。」

右京が米沢に頼んで持ってきたのは亀山が廃墟と化した病院で見つけた両目の眼球の入った瓶であった。(前スレ参照)

亀山「一応上に掛け合って持ち出しの許可は得ましたけど…こんな物持ち歩くなんて気味が悪いですね…」

右京「まぁもしかしたらですが…あぁそれはキミが持っていてください。」

右京の言う通りに亀山は自分の懐にこの瓶を入れておいた。

亀山「嫌だなぁ…こんな気味の悪そうなの持ってるの…
あ、そういえば菜々子ちゃんが持っていた吸引器返したそうですね!」

右京「えぇ、既に鑑識で調べてもらいましたし…
今となってはあれが姉である美々子さんの唯一の遺品ですからね。
事件性は無いので返却しておきましたよ、それにもしかしたら万が一の時の護身になるかもしれませんからね…」

亀山「?」

右京「さぁ、早くタクシーを拾いましょう。」

そして三人はさっそく現地に向かうためにタクシーを拾おうとするが…

亀山「おーい、誰か侯硐に連れて行ってくれませんかー!」

亀山は大声で現地のタクシードライバーに侯硐に連れて行ってほしいと頼むが…
どういう訳だか全員恐がった顔でその場所に行く事を拒否していた。
これでは埒が明かない、そう思っていた時である。



「「右京さーん!亀山さーん!美和子さーん!」」


何処からか右京と亀山たちを呼ぶ声が聞こえてきた、その声の方を振り向くとなんと懐かしい男がそこにいた。

右京「おやおや、あなたは…」

亀山「お前…栄一じゃねーか!?」

美和子「本当だ!でも何でここに?」

栄一「ハイ、お久しぶりです亀山さん!」

彼の名は若杉栄一。
かつて東京で借金取りをしていた頃に亀山に逮捕された過去があり、その後も何度か特命係の二人と何かしらの事件で遭遇しているという…
まさに不運に見舞われがちな人物である。

亀山「何でお前台湾にいるんだよ?北海道で商工会に勤めてたんじゃないのか?」

栄一「それが…こっちで一旗揚げようと真子ちゃんと一緒にこっちに移住したんですよ♪」

右京「相変わらず短絡的な思考ですね、そんな事ではいつか奥様の真子さんに愛想を尽かれてしまいますよ…」

亀山「まぁいいや!お前こっちでタクシーのドライバーやってんだな!
それじゃちょっと悪いんだが俺たちを侯硐に連れて行ってくれないか?」

栄一「侯硐?わかりました!さぁ乗ってください!」

こうして栄一のタクシーに乗り侯硐へと向かう右京たち、その道中で右京は栄一にある事を尋ねた。

右京「ところで栄一さん以外のタクシードライバーさんはどなたもこの場所に来る事を拒んでいたのですが…
侯硐に何かあるのですか?」

栄一「あぁ、それはたぶん呪いの所為じゃないんですかね?」

亀山「呪い?」

栄一「俺もここに来たばかりで詳しい話は知らないんですけど…
11年くらい前に女の子が侯硐で行方不明になったらしいですよ。
この辺りじゃ血を吐いて死ぬ病気が流行り出してその子の呪いじゃないのかって言われてるくらいですからね!
それで確かその女の子の名前が…」

右京「もしや李麗という名前ではありませんか?」

栄一「そうそう!そんな名前ですよ!
それで現地のドライバーはそこに行くの嫌がってるみたいですけど…まぁそんなの迷信ですよ!ハハハ♪」

亀山「本当に…迷信なんですかね?」

右京「さぁ、まだ何とも言えませんが…」

こうして侯硐に辿り着く一行、辿り着いた侯硐は既に炭鉱を閉鎖されて見事なまでに荒れ果てていた…

亀山「こりゃ酷えな…」

右京「廃墟マニアが喜びそうな光景ですねぇ…」

美和子「既に炭鉱は閉鎖されているそうです。あ、でもあそこだけ新しいわ!」

美和子が指を差したのは炭鉱のある山の麓に建つ真新しい電波塔が建てられていた。
外観からして建てられてまだ1年も経っていないという程の新設であった…

右京「電波塔ですか…それにしてもこの辺りには住んでいる住人の方はいらっしゃらないのでしょうかね?」

亀山「そうっすよね、一人くらい住んでいてもいいはずじゃ…」

右京と亀山が住人がいないか探していると一軒の家を発見。
その家以外に人が住んでいる気配はなく仕方なくこの家の住人に話を聞いてみる事にする。

亀山「ニ…ニイハオ…?」

亀山が恐る恐る家に入るとそこには…小さな位牌が置いてあった。
その位牌の隣にはぬいぐるみが、そして一人の少女の写真が…その少女の顔を見た瞬間…

右京「これは…美々子さん…?」

亀山「間違いないっすよ!この子は美々子ですよ!」

右京「ですが何故彼女の写真が台湾に、しかもこの写真は古いですね…
取られてから10年以上は経過していますよ!」

写真の少女は間違いなく美々子だと思う右京と亀山、そんな中…

「その子は美々子じゃない…李麗だよ…」

家の奥からひとりの老婆が現れた。

高淑梅「私は高淑梅…それ日本語…ひょっとしてお前さんたち日本人かい?」

高淑梅、この場に住む唯一人の住人であった。
しかし何か様子がおかしい、それもそのはず…彼女は盲目だった…

亀山「右京さん…このお婆さん…目が…」

右京「どうやらそのようですね、お婆さん。この写真に写っている子の事を教えて頂けますか?」

右京は写真に写る少女の事を教えてもらおうとしたが…

高淑梅「余所者に教える事は何もない!出て行け!!」

そう大声で怒鳴られ何も教えてもらえなかった。
結局、わかった事はこの村に李麗という少女がいたという事だけであった。
これだけでは埒が明かないと思い右京はある思い切った行動に出ようとした。

亀山「まさか俺たちが探している李麗が美々子と瓜二つな外見だったなんて…
あの婆ちゃん絶対何か隠していますよ!けど簡単には喋ってくれそうにないし…
右京さん、これからどうしますか?」

右京「そうですね、ではちょっとあの新設された電波塔に行ってみましょうか。」

美和子「あ、私はここで別れるわ。エリセ化粧品の人と取材の約束があるから。」

栄一「じゃあ俺が送って行きますね!」

こうして右京、亀山の二人は電波塔へ、美和子と栄一は少し先にあるエリセ化粧品の台湾工場へとそれぞれ別行動を取る事になった。

高淑梅の家から電波塔へ向かう途中に右京は坑道へ続くトンネルを発見。
興味を持った右京はこのトンネルへ入ってみようかと言ってみた。

右京「どうでしょう、ちょっと入ってみませんか?」

亀山「やめましょうよ右京さん!なんか恐そうだし…それに閉鎖した坑道なんて聞けんじゃないですか!」

右京「ですが…この行動少し気になるのですよ。
足元を見てください、少しですが二つの足跡が確認出来ますね。」

右京の言う通り、二つの足跡が確認できた。
ひとつは男の足跡、もうひとつは女の足跡らしきモノが…

亀山「本当だ、けどこんな人気の無い場所に入って何をする気だったんだ?」

二人は足跡の続く方へと探索を始める、その足跡はドンドン奥へと続きするとそこは灯りが照らされていた。



((ピィッ!ピィッ!ピィッ!))


灯りの前には籠に入った鳥が一羽いた。

右京「この鳥は恐らくこういった坑道に有害な毒を感知するために置かれている鳥でしょうね。」

亀山「それにしても何で鳥がいるんですか?ここは既に閉鎖されているはずですよ!」

右京「恐らく何者かがこの行動を今も利用しているのでしょうね。
その証拠に見てください、死体ですよ!」

亀山「うわぁぁぁぁ!?本当に死体だ!!」

右京と亀山が坑道の奥で見つけたのは灯りの前で壁越しにうつ伏せになっていた死体であった。
死体は死後1ヶ月以上経過した成人男性の死体、所有物から手帳とそれにパスポートを発見した。

2の記者と男女の恋人か

あれ もうリリィは成仏してなかったけ

右京「パスポートで確認しましたがどうやらこの死体は僕たちが探していたチャン・ウェイに間違いないですね。」

亀山「けど何でこの場所で死んでいるんですか?」

右京「その理由ですが…なるほど、手帳に記載されていましたよ。
かつてこの村では…」

その時である、死体がずれ落ちて後ろに何かお札が出てきた。
そのお札は赤い血文字で『悪霊退散』などと書かれている奇妙なモノであった。
気になった亀山はこのお札を剥がそうとする、だが…


「「触れるなぁぁぁぁぁぁ!!」」


突然二人の背後から大声で怒鳴る人物が、それは先ほど出会った老婆の高淑梅であった。

エリセ化粧品って言うと…天空の楼閣だかなんだかで
出てきた、あの公害の化粧品か?

乙ー

今さらですが、相棒×着信アリ ありがとうございます!

亀山「お婆ちゃん!何でここに?」

右京「なるほど、そういう事ですか。
僕たちを尾行していたのですね、それだけではなく…あなたはこの村で何が起きたか全て知っていますね!」

亀山「この村でって…一体何の話ですか?」

思わず首を傾げる亀山、そんな亀山に対して右京は先ほどチャン・ウェイの死体から発見した手帳を取り出した。

右京「この手帳に全て書かれていました。
かつてこの村で起きた悲惨な出来事の数々が記されていましたよ!」

亀山「悲惨な出来事…?」

そして右京は語り始める、11年前この村で起きたある悲惨な出来事について…

右京「今から11年前、この村で謎の流行病が発生しました。
子供やお年寄りなど身体の弱い者たちが次々と発症し、死に至る病です。
当時あなた方村人はこの原因をある少女が原因だと決めつけました、それこそが…」

亀山「まさか…それが李麗!けど何でその子が原因だなんて思ったんですか?」

右京「それは…」

高淑梅「それは…あの李麗がこの村に呪いを撒き散らしたからなんじゃ…」

亀山「なんだって!?」

右京「この手帳にも書いてあります、李麗という村に住む幼い娘が村に呪いを掛けたと…」

高淑梅「そうだ、あれは10年前…この村で起きた悲劇だ…」

高淑梅が語る過去の悲劇…
それは10年前、この村で謎の流行病が発生。
その時、真っ先に疑われたのが李麗だった…

亀山「何で李麗がそんな事を…?」

高淑梅「李麗は薄気味の悪い子だった…
いつも一人でブツブツ言って…まるで見えない誰かと話しているみたいで…
その所為で近所の子供に石を投げられ…虐められていた…
それだけじゃない…あの子の母親は余所者の…この地にやってきた日本人の医者が父親だった…
羽振りのいい日本人だ、当時じゃ珍しい携帯電話を持っていたからな…
だから余所者の血が流れる李麗を…村人たちは毛嫌いしていた…
そしてある日、李麗は虐めていた子供にある予言を告げた…」


『お前は三日後、血を吐いて死ぬ!』


高淑梅「それから三日後、李麗を虐めていた子供は血を吐いて死んだ…
その子だけじゃない…李麗に死ねと言われ村人たちは次々と血を吐いて苦しんで死んだ…
私の…旦那も…弟も…昔からの友達も…みんな…李麗に殺された…」

亀山「それで李麗はどうなったんですか!」

高淑梅「李麗は…」

右京「この坑道に埋められたのでしょうね。
この坑道なら死体を隠したところで余所の人間には決して気づかれる事もありません。
死体を隠す場所としては打って付けですからね!」

亀山「けど待ってください!ここは炭鉱ですよ、炭鉱にいる誰かが掘ればすぐにバレる可能性が…」

右京「……恐らく…いえ…間違いなくと言いましょう!
李麗を殺すのに村人たち全員の手でやったのではありませんか!どうなんですか!?」

右京がきつい口調で高淑梅を問い詰める、さすがに観念したのか高淑梅は当時の事を苦い顔をしながら話し始めた。

高淑梅「そうだ…私たち村人は…生きたまま李麗をこの坑道に閉じ込めた…
それだけじゃない…泣き叫ぶあの子の目をくり抜きそしてその瞼と…
そして口を……」

亀山「アンタらは李麗に一体何をしたんだよ!?」

高淑梅「縫ったんだよ!あの子のまるでこの世の全てを恨んでいるような気味の悪い眼!そして呪いを告げる口!
私たち村人は…呪いを止めさせるために文字通りあの子の口を塞いだのさ…
だがそれでも…李麗は50日もの間この閉じ込めた坑道の中で泣き叫んでいた…」

年端もいかない少女の眼を抉り取りその眼と口を縫った、その残虐な行為に思わず嫌悪感を露わにする右京と亀山…
しかしここで亀山は思い出す、台湾に行く前日に見た奇妙な少女の幻を…
もしかしたらあの少女こそ、非業の死を遂げた李麗の姿かもしれないと…

亀山「けどそれなら…呪いは終わったんですよね?何でこの村には婆さん以外の人間がいないんですか!?」

高淑梅「……みんな…殺された…李麗の手で…
李麗が坑道に閉じ込められて50日が過ぎたある日…村に一通の手紙が届いた…
それは村人全員に届けられた李麗からの手紙…
その内容は…死を予告する手紙だった…読んだ者は一人、また一人と次々に死んでいった…
私は読む事を拒み、両目を箸で突き刺して潰したことで難を逃れた…その所為で盲目になってしまったがね…
そしてある日本人の霊媒師から高額でお札をもらった、それを李麗を閉じ込めた」

亀山「そうか…王健峰が死ぬ間際に二度と帰りたくないって言っていたのは…
この村で起きた悲劇を思い出したくないから帰りたくないって言っていたのか!」

右京「そしてそれから11年の時が過ぎた、ある日…チャン・ウェイが村に帰ってきたのですね。
11年前、チャン・ウェイと王健峰はこの地に里帰りした際にあなた方の凶行に手を貸したのですね!」

高淑梅「そうだ…チャンは急に帰ってくるなりこの閉ざされた坑道で李麗の死体を確認しようとした…
私は止めたが…聞いてもらえず…馬鹿な息子だ…」

亀山「息子?チャン・ウェイはあなたの息子だったんですか!」

高淑梅「そうだ…それだけじゃない…李麗は私の孫だった…私らは一族で…李麗に生き地獄を与えたのさ…
これも全ては村を守るためだった…なのに…どうしてこんな事に…」

全ての真相を知り唖然とする亀山、その時であった。
亀山の携帯が鳴り響く、相手は美和子からだった。

亀山「美和子からです、けどどうしてこんな坑道で携帯が通じたんだろ?」

右京「どうやらここは例の電波塔の近くのようですね、だからこんな坑道の中でも携帯が通じたのでしょうね。」

亀山は美和子からの連絡を受け取ると、彼女からある情報を得た。

美和子『もしもし薫ちゃん?悪い予感がしたんだけど今すぐそこから離れた方がいいよ。
実はさっきエリセ化粧品の人を問い詰めて白状させたんだけど…
その辺りで昔起きた流行病は…やっぱり公害だったわ!』

亀山「なんだって!?」

右京「やはり、そういう事ですか。
つまりこの事件の全容はこうだったわけですよ。
今から11年前、エリセ化粧品がこの地に公害を撒き散らした。
しかし、当時あなた方の疑いの目はエリセ化粧品ではなくこの村で薄気味悪いと噂される李麗という少女に向けられました。
そしてあなた方は李麗の眼をくり抜き口と瞼を縫いこの坑道に生き埋めにした…
その結果、李麗は呪いの力を得て本当の殺人鬼と化してしまったのですよ!」

高淑梅「馬鹿な!それでは私たちがやった事は…」

右京「ただの殺人行為です!
死に逝く肉親の悲しみが村人たちに本来の真実を曇らせてしまい、そして罪の無い少女を死に追いやってしまった…
そこにある悪霊退散などというインチキ紛いなお札ですが、そのお札を手配した霊媒師は天道白水という名前ではありませんか?
彼は日本で詐欺師として逮捕されましたよ、あなた方の愚かさが一人の少女を死なせた…
これは許される事ではありませんよ!!」

右京により明かされたこの村で起きた悲劇の真相。
この真実を聞き、亀山もこれほどまでに報われない死に方を遂げた李麗に同情した…

亀山「なんてこった…これじゃ李麗も浮かばれねえよ…
けど右京さん、このチャン・ウェイが再びこの村に来た理由は何なんですか?」

右京「それは恐らく水沼美々子にあったのでしょう。
数か月前にチャン・ウェイは孫娘の美々子と初めて出会った、その時の美々子さんの容姿は李麗と瓜二つだった。
そこで彼はこう思ったのでしょう、もしかしたら李麗は転生して美々子として生まれ変わったのではないか?
それを確かめるために彼はこの地に戻ってきたのですよ!」

亀山「そしてなんらかの出来事があってここで死んだ…何だよこれ!誰も報われないじゃないか!?」

高淑梅「あぁ…私はなんという愚かな事を…許してくれ…李麗!チャン!」

今は亡き二人に詫びる高淑梅、その言葉を聞き右京はチャン・ウェイが死んだ理由がわかった。

右京「なるほど、チャン・ウェイを殺したのは母親のあなたですね。高淑梅さん!」

高淑梅「そうだ…李麗の死体を暴こうとするチャンを仕方なく…
チャンは電波塔の中に李麗の死体を持ち出して確かめようとした…だからここに誘き出して…殺した…
もしも李麗が再び目覚めれば…あの時以上の惨劇が起きる…それだけはなんとしても阻止しなければならなかったのだ…」

高淑梅は泣き叫びながらチャン・ウェイの遺体の前で謝り続けた。

その時であった…



((ガシッ!ボギッ!))


高淑梅「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!??」

亀山「婆さん!?」

右京「これは…」

既に死体となったチャン・ウェイの身体が突然動き出し、高淑梅の首を掴みそのまま首の骨を折った。

右京「高淑梅さん!ダメです…既に亡くなっています…」

チャン・ウェイ『…』

亀山「何だこりゃ…どうなって……あぁ!?」

亀山はチャン・ウェイの後ろにある少女がいる事に気付く。
その少女は亀山が先日目撃した瞼と口を縫った少女であった!

亀山「まさか…そうか!右京さんこのチャン・ウェイは李麗に操られているんですよ!?」

右京「なんと…とにかく危険です、ここを抜け出しましょう!」

二人は迫りくるチャン・ウェイから逃げるために坑道を更に奥に進んだ。
すると出口が出てきた、その先にはフェンス越しの電波塔があった。

右京「電波塔ですね…」

亀山「坑道はここに繋がっていたのか…うん?この着信音は…」


♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


亀山「死の着信!?」

右京「何故キミの携帯に…?」

突然、亀山の形態に死の着信が鳴り響く。
右京は何故亀山の携帯に死の着信が鳴るのか疑問を抱いたが、亀山にはその心当たりがあった。

亀山「そういえば…!」

亀山は以前、カイトたちに自身の連絡先を教えていた事を思い出した。
死の着信を受けた者の携帯から次の標的が選ばれる。
亀山が死の着信を受けた者に携帯電話の番号を教えたのはカイトと中村由美。
恐らく中村由美の携帯から亀山の携帯番号を知ったのだろう…

そして亀山はその携帯を取ろうとしたその時であった…


((ガシッ!))


右京「亀山くん!」

亀山「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

亀山は地面に倒れ込み、そのまま見えない何者かに元来た坑道に引っ張られそうになる。
これで終わった、そう思い目を瞑った時であった…

亀山「………あれ?無事だぞ…?」

そう、亀山は無事だった。
どういう事だか訳のわからなかった、だがその代わりに先ほどまで一緒にいた右京の姿が見当たらなかった。
亀山は自分が先ほど連れられそうになった坑道の方に視線を移す、するとそこには…

亀山「右京さん!?」

なんとそこには右京が亀山の携帯を手に取りながら代わりに坑道に引きずり込まれようとしていた!

右京「やはり…思った通りですね!
新宿の台湾料理店で何故携帯を持たない王健峰が死ななければいけなかったのか…
それは彼が誤って本来の持ち主である娘の代わりに携帯に出てしまったからなのです!
つまりあの場で本来死ぬはずだったのは王健峰ではなく娘の王美鳳の方だったのですよ!」

亀山「な…なるほど…じゃなくて!
何で右京さんが俺の代わりに死の着信を受けたんですか!?」

亀山の当然の疑問であった、いくらなんでも自分の命と引き換えに相棒の命を助けるなど普通なら考えられない行動だからだ。

右京「キミも知っての通り…僕は以前多くの仲間を失ってしまった…
もう二度とあのような思いはしたくはないのです…」

右京の言う後悔の言葉に亀山は心当たりがあった、それは以前に小野田官房長より聞いた話…
かつて外務省公邸人質監禁・篭城事件に対処すべく、現在の特命係の前身である『緊急対策特命係』が結成。
その作戦指揮を官房長が、そして作戦参謀に右京が選ばれた。しかし事件は最悪の結末を迎える…
隊員、人質の数名が死亡。その責任を右京が一人で被る事になりこれが特命係誕生した経緯でもあった…

亀山「右京さん!そんな…俺なんかのために…」

右京「もう僕の目の前で仲間に死んでほしくないだけですよ…それも相棒なら尚更です…
ですが僕はまだ生きる事を諦めた訳ではありませんよ、こうなればキミに…全てを託します!
必ず…彼女を救ってください……信じて…ますよ…」

そして右京は見えない何かに引っ張られながら坑道に引き込まれていった…

亀山「わかりました!俺が…俺が必ずみんなを…右京さんを助けてみせます!」

亀山は右京を救うべく急いでこの電波塔の中に入ろうとした。

しかしその時、李麗に操られたチャン・ウェイの死体が再び亀山の前に現れて亀山の行く手を妨害する!

チャン・ウェイ『…』

亀山「おいやめてくれ!俺は…相棒を救いたいだけなんだよ!!」

そしてそのチャンを背後から操り愉快に楽しむ李麗の姿があった…

李麗『フフフ…アハハ…』

縫合された口から洩れる李麗の笑い声、その声に恐怖を感じる亀山。
だがそんな事を気にしている暇は無い、急がなければ右京の命が危ないのだから…

((ドガッ!))

亀山「おわぁぁぁ!」

しかし、生身の人間を相手にしているわけではなく…
目に見えない奇妙な力で吹っ飛ばされてしまう…その時、亀山は自分の懐から日本から持ち出した眼球の入った瓶が
転げ落ちてしまい…それが李麗の前に転がってしまった…

李麗『…』

その瓶に李麗が触れた時、李麗はまるで怒りが和らげたかのように消えてしまった。
それと同時に先ほどまで妨害していたチャン・ウェイの死体もまるで操り人形の糸が切れたかのように止まってしまう…

亀山「これ…どうなってるんだ?」

右京「どうやら…彼女の怒りが和らげたようですね…」

亀山「右京さん!よかった、無事だったんですね!」

亀山の下に先ほど坑道に引きずり込まれたはずの右京が現れた。
どうやら先ほど李麗が消えたように死の着信の呪いから解き放たれたようだ。
二人はそのまま電波塔の中に入るとチャン・ウェイが掘り起こした李麗の死体を発見する。

亀山「酷え…あの婆さんが言ってたように本当に瞼と口を縫いやがったんですよ!」

右京「それにしてもこの縫合…女結びなのですね…
それはともかく亀山くん、瓶の中身を出してください、李麗にその両目を返してあげましょう。」

亀山「ハイ!」

そして右京と亀山は李麗に縫われた縫合を切り離し、死体の両目を元に戻した。
その瞬間、亀山の目の前に再び李麗が現れる。
李麗は眼の輝きを取り戻し、瞼や口の縫合を取り、あの化け物のような醜い容姿ではなく…
年相応な少女の笑みを浮かべていた。

李麗『…謝謝…』

その言葉を言い残し、李麗は消えるようにその場からいなくなった…

亀山「李麗は成仏していきましたよ…これで全部終わったんですね…」

右京「そうですね、チャン・ウェイは李麗のこの電波塔に隠した。
李麗はこれをチャンスと思い、この電波塔を通じて日本にいた自分の親族である水沼美々子と偶然にも繋がり共鳴した。
そして彼女たちは目的を果たすために次々と死の着信を送り続け人々を死に至らしめたのです。」

亀山「彼女たちの目的は失われたモノを取り戻す事だったんですね…
美々子は自分を死に至らしめる原因となった水沼マリエを…
李麗は高淑梅、チャン・ウェイ、を次々と殺していった…そして李麗は自分の眼を取り戻して成仏できた訳ですか…」

李麗は成仏できた、この時亀山が言った言葉に右京にある疑問が生じた。

右京「亀山くん、大事な事をお聞きしますが成仏できたのは李麗だけなのですか?
水沼美々子はその場にいなかったのですか!?」

亀山「いや…李麗だけですよ…そういえば何で美々子はいなかったんだろ?先に成仏したとか?」

右京「そうではありません!つまりまだ…事件は終わってはいません!!」



~警視庁~


右京と亀山の特命係が台湾で李麗の霊と遭遇していた頃、
大河内と神戸はようやく警視庁内で不審なアクセスを行っている出所が判明した。

神戸「ふぅ、ようやく突き止めた…でもこの場所って…」

大河内「何だ?わかったのならさっさと教えろ、こんな手こずる作業に数日も労力を割かれてストレスが溜まる一方なんだ。」

大河内がラムネを貪りながら聞いてきた、そんな不満そうな大河内を前にして神戸は首を傾げながらこう言った。

神戸「不正アクセスの出所は警視庁の鑑識課からですよ。」

大河内「何だと?」

その言葉を聞き、大河内は引き続き神戸に不正アクセスを行っている者の特定を急がせつつ、自分は急いで鑑識課へ向かった。



~鑑識課~


大河内「監察官の大河内です、鑑識課のみなさんは一旦作業を中止してください!」

米沢「そ…そんな!?」

米沢以下、鑑識課の人間たちは突然の監察官聴取を受ける事になり動揺を隠せなかった。
そんな中で米沢は右京にこの状況を伝えようと携帯で連絡を取った。

米沢「もしもし杉下警部ですか?そちらは今台湾ですか、どうりで回線が遠いわけですな。
実はですな…」

右京に連絡を取る米沢、その光景を見て大河内は思わず聞き耳を立てていた。

米沢「……という訳です、…って大河内監察官!何故そんな近くで聞き耳を立てているんですか!?」

大河内「お気になさらず、ところで少し代わっていただけますか。
もしもし大河内です。実は今回の件なのですが…」

大河内からこれまでの経緯の説明を受ける右京、1ヶ月前から始まった警視庁のデータバンクへの奇妙な不正アクセス。
しかし犯人は足取りを掴ませる事が困難な徹底ぶり、しかも犯人が閲覧した情報は警察職員の情報を閲覧と奇妙な事ばかりであった。

右京『なるほど、1ヶ月前からですか…そしてその出所が鑑識課からですか…
もしかして…』

大河内「何か心当たりがあるのですか!」

右京『ひょっとして今そちらの鑑識の方で水沼美々子の携帯電話を調べてはいませんか?』

その右京の質問に対して米沢は急いで自分のデスクにあるPCを見た。
確かに右京の言う通り、米沢は捜査の一環としてこの美々子の携帯を自分の端末を使い調べていたのだった。

米沢「杉下警部の仰る通りです!確かに私が調べているのは水沼美々子の携帯電話です!」

大河内「何だ…どういう事だ?」

それと同時に大河内の携帯にも神戸から連絡があった。

神戸「もしもし大河内さん、神戸です。
ようやく不正アクセスの発信元がわかりました、けどこれは…まさか…」

大河内「どうした?」

神戸「携帯電話からなんですよ、けど何でわざわざ携帯からアクセスしてるんでしょうか?」

大河内「なんだと!?」

その時だった、米沢は水沼美々子の携帯電話を見てとんでもない光景を目撃した!

米沢「大河内監察官あれを見てください!水沼美々子の携帯が…」

米沢の言うように大河内は美々子の携帯を見た。


((ピ・ポ・パ・ピ・ポ))


誰も触っていない携帯電話が勝手に動き出した。
右京は急いで携帯電話をPCから取り外すように指示を出したが既に遅かった…


((ポチッ!))


美々子の携帯電話の開始ボタンが押された。
その瞬間、日本中の警察官に死の着信が送られた…
そして死の着信を受け取った警察官たちが携帯を開くと…




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」



「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」



「苦しいよぉぉぉぉぉぉ」



「誰か助けてくれぇぇぇ」



日本中の警察官が苦しむ悲鳴がそこら中から聞こえてきた!

そして警視庁内でも…


伊丹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


三浦「く…苦しい!?」


芹沢「何すかコレ!?」


角田「何だよこれ…携帯を開いたら急に苦しくなって…」


大木「まさかこれは…」


小松「巷で噂の死の着信か…!」


内村「何だ…新手のテロか…うぐぅぅぅ…」


中園「何故私たちまで…」


そして被害は警視庁だけではなく…



~警察庁~


小野田「そちらの防衛庁は今度省に格上げですか。それはおめでたい事で…」

山岸「ありがとうございます、長年の努力が報われたと思っているところですよ。」

小野田官房長は防衛庁の幹部職員である山岸邦充と会合を開いていた。
そんな折に携帯電話が鳴り、その場で苦しむように倒れ込んでしまった…

小野田「うぅぅぅ…年貢の納め時かしら…?殺されるなら杉下にと思っていたけど…」

山岸「こ…これは…一体…まさか…!」

警視庁、それに警察庁内でも既に死の着信が蔓延し始めていた…
すぐに手を打たないと日本の警察組織が崩壊してしまうであろう事態にまで陥ってしまった!



~台湾~


携帯越しから日本の様子が伝わる右京たち、最早一刻の猶予も無いのだが…

右京「僕とした事が迂闊でした!
水沼美々子と李麗を同一人格として考えてしまった、そんな訳がありません!
二人ともちゃんと別人なのですからね!
思えばこれは罠だったのかもしれません、日本にいない僕たちではこの事態に対処することが出来ない…
人を動かしたくても恐らく僕たちの知り合いは全て死の着信を受けて苦しんでいるはずですよ!」

亀山「そんな…美々子はこんな事をして…一体何が目的なんですか!?」

その時、右京は前に亀山が言っていたある言葉を思い出した。

右京「そういえば亀山くん、キミは以前に言っていましたね。
虐待のテープを見て兄弟喧嘩がどうとか…もしかしたら美々子の目的は…」

美々子の狙いがわかった右京、だがそれでもこの事態を対処する人手が無い状態でいた…

右京「誰か適当な人間がいてくれればいいのですが…
出来れば今回の事件に関わっていて事情をある程度把握している人物が…」

亀山「警察関係者じゃない今回の事件に関わっている人物…そうだ!」

右京の言った条件に一人だけ心当たりがある亀山、その頃…



~のぞみの家~


ちとせ「キャァッ!?」

則彦「うわぁぁぁ!?」

この児童養護施設であるのぞみの家に何者かが侵入し、この施設で大人である望月夫妻を襲っていた。
重傷を負うが辛うじて命を取られずにいた夫妻、この侵入者の目的は夫妻ではない…

それは…

『ハァ…ハァ…見つけた…』

刃物を取り出し一人の少女に迫ろうとする。
その少女は水沼菜々子、今となっては水沼一家のたった一人の生き残りの少女…何故この少女が狙われるのか…?

『お前の所為だ…お前の所為で私は…』

侵入者は怯える菜々子に刃物を振り降ろそうとする!

ちとせ「ダメー!やめてー!」

則彦「その子に何か恨みでもあるのかー!?」

恨み…?
恨みならある、この子の所為で私は今も苦しんでいる…この子さえいなくなれば…

凶行に駆られた侵入者の刃が無垢な少女に振り降ろされた!……はずだった…


((ガシッ!))


『!?』

カイト「ハァ…ハァ…間に合ってよかった!」

侵入者の凶行は突然現れたカイトによって防がれた、実は数分前…



~武蔵野青木外科医院~


中村由美に刺されて病室でようやく目覚めたばかりのカイトは亀山から連絡をもらっていた。

カイト「亀山さん、どうしたんですか?」

亀山『頼みがある!お前しかいないんだ!
これからのぞみの家っていう養護施設に行って水沼菜々子ちゃんって子を助けてくれないか!』

突然の亀山からの申し出に驚くカイト。
詳しい話は省かれたが現在警察官の殆どが動ける状態に無いという、そして亀山も現在国内にいない…
助けられるのは今回の事件に関わるカイトしかいないとそう言われた。
しかしカイトは…

カイト「亀山さん…何で俺なんですか?
俺は民間人だしただの大学生です、そんな俺をアンタはどうして信用するんですか?
ひょっとして俺が警察庁の幹部である甲斐峯秋の息子だからですか?」

そして右京も亀山に対して同様の質問をしていた。

右京『亀山くん、やめておきなさい!
今回の事件は極めて危険です、場合によってはこの協力者の少年が命を落とす危険すらある!
僕もキミのする事に許可は出来ませんよ!』

当然の事を言われた、確かにカイトを現場に送るのは現時点では無謀とも言える行いである。
だがそんな二人に対して亀山はこう言った!

亀山「俺は…甲斐峯秋なんて人は知らない!
確かに警察庁の幹部さまとなりゃ偉いのかもしれない…
だがそんな事…俺は知らない!
俺が知っているのは生意気だが友達のために犯人を捕まえようとしていた甲斐亨という男だけだ!!
だから頼む、菜々子ちゃんを…それに日本中の警察官…俺たちの仲間を救ってくれ!!」

カイト「亀山さん…」

そして右京に対しても…

亀山「右京さん…あなたはさっき俺を信じてくれましたよね…
なら…俺が信じる男の事を信じてやってください!」

右京「わかりました、キミの信じる人間なら僕もその少年を信じてみましょう!」

その言葉に、右京も納得してカイトに全てを託した…

カイト「まったく加減してほしいな…こっちは病み上がりなんだぞ!」

『…』

傷口を押さえるカイト、その時侵入者が油断したカイトに仕掛けようとした!
だが…

カイト「おらっ!」

逆に押さえ込み侵入者を拘束させる事に成功する。
そして持っていた携帯電話から右京がカイトに指示を送る!

右京『今です!』

カイト「ほら!これを咥えろ!」

そう言ってカイトは菜々子のカバンからある物を取り出して侵入者の口にそれを咥えさせた。
次の瞬間!


((シュコー、シュコー、))


身体の中に送り込まれる空気の音、カイトが侵入者に咥えさせたのは喘息用の吸引器であった。

『苦しくない…ようやく…解放された…』

まるで癇癪を起した赤ん坊が疲れて眠るような安らかな居心地になる侵入者。
そしてカイトはその侵入者の耳元に自分の携帯電話を当てて右京の声が聞こえるようにした。

右京『ようやく捕まえましたよ、…水沼美々子さん!
あなたと李麗には異なる点があった、それはあなたは喘息を患っていた事です!
その苦しさは誰の所為なのか?そう疑念を抱いたあなたはその矛先を妹の菜々子ちゃんに向けた!
しかし、ただひとつ誤算があった!
それは菜々子ちゃんは携帯電話を持っていなかったのです!
携帯電話で殺害を行うあなたにとってこれでは埒が明かない、そこであなたはある方法に踏み切った。
それこそが…』

カイト「それが由美を利用する事だった!」

カイトは帽子で隠れた侵入者の顔を暴く。
そこには精神病院に収容されていたはずの中村由美の姿があった!

右京『そうです、あなたは自由に動ける身体が欲しかった!
そこで虐待を受けていた中村由美さんを利用した!
死の着信が送られていたのに由美さんが死ななかったのは彼女の魂と共鳴してその身体を乗っ取ったからなのですね!
そして警視庁内のデータバンクにアクセスしたのは警察職員を行動不能にしたのは、
精神病院で彼女を見張る警察官を抑えるため…どうなのですか!?』

右京の激しい詰問に由美の口から由美ではない…別の人間の声が聞こえてきた…

美々子『ずっと…苦しくて…寂しかった…
生まれた時からずっとお母さんは…私を疎ましい目で見ていた…
菜々子が生まれてから…お母さんは菜々子の事ばっかりで…それで私はお母さんに振り向いてほしかった…』

亀山『じゃあキミが代理ミュンヒハウゼン症候群に陥ったのは…』

右京『全ては母親であるマリエさんに振り向いてほしかったからですね。』

その言葉に首を傾げる由美、更に懺悔の言葉は続いた…

美々子『だから…菜々子を傷つけた…
いけない事だってわかってた…けど…やめられなかった…私は菜々子を傷つけるたびに病院へ連れて行った…
そしたら病院の人たちが…妹想いのいいお姉さんだねって…
お母さんもお姉ちゃんがしっかりしてて頼りになるって言ってくれた…
嬉しかった…お母さんにも…みんなにも褒められて…でも…それなのに…全部バレて…
だから…お母さんにバラした菜々子を…殺そうと…』

全ては愛に飢えた少女が起こした悲劇であった…
携帯電話越しで美々子の境遇を知る右京と亀山、それにカイト…
今の彼らには美々子に掛ける言葉が無かった…人を傷つける事でしか愛を得られなかった哀れな子供…
そんな子供にどんな言葉を投げかければいいのか…そんな時だった…

菜々子「お姉ちゃん…苦しいの?」

菜々子が泣いていた由美(美々子)に声を掛ける。由美(美々子)は一瞬身構えようとするが菜々子は…

菜々子「お姉ちゃん大丈夫だよ、菜々子がいるからね。
お姉ちゃんはひとりぼっちじゃないよ、苦しい時は菜々子が一緒だよ。」

その言葉に思わず涙を浮かべる由美(美々子)そして右京に代わり亀山が携帯に出て由美(美々子)に対してこう告げた!

亀山『そうだ、お前はひとりなんかじゃないんだよ!
お前にはお母さんや病院の人たちだけじゃない、いつも妹の菜々子ちゃんがいたじゃないか!』

その言葉に涙を流し菜々子を抱きしめる由美(美々子)
その後、まるで別れる様に由美の身体から離れる美々子…
最後に美々子はこう言った。

美々子(ありがとう…ごめんね…)

カイト「…消えてく…成仏したんだな…」

そんな美々子のためにぬいぐるみのお腹を押す菜々子。
すると音が鳴り響く、その音は…


♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


右京『これは死の着信の音…?なるほど、この音の出所は…ぬいぐるみから…』

菜々子「このぬいぐるみはお姉ちゃんから貰った物なの…
お姉ちゃんはこの音が大好きでいっつも聞いていたの…」

まるで美々子のための鎮魂歌のように奏でられる音。
その音に導かれる様に美々子は消えて行った。

それと同時に日本中の警察官を襲った死の着信の脅威も消え去っていた…

伊丹「ハァ…ハァ…助かった…」

三浦「今のは一体何だったんだ?」

芹沢「きっと俺たちの知らないところで先輩たちが解決してくれてたりして…」

そして台湾にいた亀山も目撃していた。
天に向かい昇って行く美々子と李麗、二人の魂を…

亀山「右京さん…美々子と李麗の二人が成仏していきますよ…」

右京「そうですか、僕には見えませんがこれで死の着信の呪いは去ったのですね…」



それから数日後…


~警察庁~


警察庁にある小野田官房長の部屋に呼び出された大河内と神戸、大河内は小野田官房長に今回の顛末を全て報告していた。

大河内「以上、これが今回の事件の全容です。」

小野田「なるほど、つまり今回の事件は幽霊の仕業って事ね…」

神戸「信じられませんけどそういう事になりますね…」

小野田「あら?神戸さんは幽霊とか信じないの?
僕はそういうオカルトに興味のある知り合いがいるんだけどね。
まぁそれはそうと、今回の件は他言無用でお願いね。
資料にも残したりしないでね、まさか全警察官職員が危うく呪い殺されるなんて事態を世間に公表する訳にはいきませんからね。」

大河内「しかし官房長…」

小野田「お願いね♪」

結局小野田の一言で今回の一件は世間には公表されず、闇の中へ…
その回答に納得のできない大河内はまたもやラムネを貪っていた。

((バリッ!ボリッ!))

神戸「僕は今回の処分妥当だと思いますよ、こんな事をそもそも世間が信じてくれるわけがありませんし…」

大河内「フンッ、変わったな神戸…実に警察庁の官僚的な考察だ。」

神戸「お言葉ですが、僕から言わせてもらえば変わったのは大河内さんの方だと思いますよ。
以前の大河内さんなら官房長の決断に不満なんかなかったでしょうに…」

大河内「きっと、特命係の影響なんだろうな…
神戸、いずれ警視庁に戻ってこい!そしたらお前を特命係に送ってやる。
あそこにいればお前ももっと骨のある警察官になれるかもしれんぞ!」

神戸「ご冗談を、特命係って警察庁でも有名な左遷部署でしょ…
そんな場所にどんなヘマをやらかしたら行けるのかその部署にいる人に聞いてみたいところですよ!」

余談だが神戸尊はこの4年後、上層部の命により特命係に配属される事になるのだが…
これは暫く先のお話である…



~武蔵野青木外科医院~


亀山「ハックション!」

カイト「か…風邪っすか?移さないでくださいよ!」

亀山「馬鹿言え!まだ夏だぞ、風邪なんか引く訳が…ハックション!
きっと誰かが今回の事件で俺の事を噂してんだな!」

その頃、その特命係に配属されている亀山は無断で外出してしまい入院日数が伸びてしまったカイトの病室にお見舞いに来ていた。

カイト「わざわざお見舞いありがとうございます。」

亀山「いや…今回の事件の責任は俺にもあるしな…悪かったな…もっと真剣に対応してればこんな事には…」

カイト「いや…どの道同じだったと思いますよ…
それを言ったら俺だってそもそもあんな合コンやらなきゃこんな事にはならなかったはずですからね…」

今は亡き岡崎陽子、河合健二、小西なつみ、の三人の死を悼む二人…
ちなみに中村由美は事件後、カイトや望月夫妻を負傷させた際の記憶が無く…
未だに精神病院で入院している最中であった。
そんな中でカイトは自分のこれからの人生の目標について亀山に語った。

カイト「亀山さん、実は俺…本当は警察官に憧れていたんですよ…
けど…警察に入ると親父の目が気になって…それで民間の企業に就職をしようかと思ってたんです…
けど今回の事件に遭遇して…俺の本当にやりたかった事は…警察官だってやっとわかったんです!」

亀山「そうだな、本当にやりたい事があるなら親父さんの目なんか気にする必要ねえよ!
大体警察だってそんな血縁関係なんて関係ないからな!
お坊ちゃんだろうがエリートさまだろうがみんな扱き使われるのが警察官だしよ!」

カイト「ハハ、現役の人が言うと説得力ありますね!
そういえば今回俺に指示を出してくれた亀山さんの相棒って誰だったんですか?
何か妙に偉そうな感じだったんですけど…」

亀山「あぁ…それは…」

甲斐との質問に答えようとした時、その当人である右京から呼び出しが掛かった。
慌てて右京の下へ急ぐ亀山、しかし最後にカイトにこう言っておいた。

亀山「ゴメンな!その相棒から呼び出し掛かっちゃって…
けど今回はありがとうな、それと頑張れよ!未来の警察官!!」

カイト「亀山さんも、彼女さんに早くプロポーズ出来ると良いですね!」

亀山「一言多いんだよ!…じゃあなカイト!!」

そう言って亀山はカイトの病室から出て行った。
残ったカイトはそういえばと思い出したかのように自分の鞄からある物を探した。

カイト「あった!」

それは亀山と最初に会った際に貰った警察官採用試験の申込用紙であった。

カイト「まだ8月だし…今から猛勉強すれば間に合うかな…?
その前に内定先に行って就職断んなきゃな…あーぁ…せっかくの8月だってのに憂鬱だな…」

そんな言葉とは裏腹にカイトの気持ちは前向きだった。
ようやく自分の気持ちに素直になれたと…まるで長年の鬱憤が見事に晴れたかのようなスッキリした気分だった…

そして右京から呼び出しを受けた亀山、その頃右京はというと…

右京「それでは神原さん…つまりこれは…」

神原「…そうです…そういう事ですから…」

右京「なるほど、大変参考になりました。どうもありがとう。」

神原「では僕はこれで、それじゃ。」

神原という医者風の男から意見を聞いていた右京、そんな時であった。

右京「おや?…キミ…怪我をしていますね…誰にやられたのですか?」

「…」

小児科に治療に来ていた4歳くらいの傷だらけの少年に語りかけていた。
しかし少年は右京の言葉に耳を傾ける事は無く、一切を無視していた。
そして少年の母親らしき人物が声を掛けてきた。

「俊雄、早く来なさい…」

俊雄と呼ばれた少年は母親の手を取り、その場を立ち去る。

そしてその少年と入れ替わりで亀山がやってきた。

亀山「もう…右京さんこんなとこにいたんですか!一緒にカイトのお見舞いに来てくれればいいのに…
ところでさっき小野田官房長に似た人がいたんですけど誰なんですか?」

右京「彼は神原晶といって今は医師免許を剥奪されていますが
それでも昔はかなりの凄腕の医師でドクターXと呼ばれていた人物ですよ。ちょっと彼に聞きたい事があったので…
まぁその話はともかく…その少年は怪我人なのでしょう、それなのに押し掛けるのは無作法だと思いましてね。
ところで今の子供、ちょっと気になりますね。
あの怪我は子供同士の喧嘩や事故で負う様な怪我ではありません。
ひょっとしたらあの子…」

亀山「まさか…虐待ですか?」

右京「さぁ、既に行ってしまいましたしそうでない事を祈りたいのですが…」

結局その子供と母親はまるで幽霊のように最初からいなかったかのようにいなくなってしまった…

そして同じ頃…



~防衛庁~


先日、山岸は小野田の尋常ではない苦しみ方…そして全警察官が死の着信を送られ…
奇妙な苦しみ方をしたのを知りある計画を持ち出そうとしていた…

山岸「やはり呪いは実在する!今こそ長年の計画を実行に移す時だ!!」

そして彼はデスクからあるファイルを取り出す。
そのファイルに掛かれていた文字は『ProjectRING』
後に行われる悪魔の実験がまさか今回の事件がきっかけで開始されるとはこの時誰も予想できなかっただろう…
そして病院で右京が出会った俊雄という少年も…後に今回の水沼美々子以上の呪いを広めるのだが…
それはまた別の話である…



そして現在、2013年11月13日


~花の里~


城南大生・北川奈月の捜査も終わり、二人は花の里で一杯やっていた。

カイト「まさかあの時俺が出会った亀山さんが実は特命係の先輩だったなんて…
それに杉下さんがその亀山さんの相棒だったなんて凄い偶然ですよね!」

右京「そうですね、さらにキミが特命係に在籍しているのですから…
というか亀山くんから僕の事を一切聞かなかったのですか?」

カイト「いや…聞く前に亀山さんいなくなっちゃったんで…
俺もその後、公務員試験の勉強やら警察官学校に入ったりで忙しくてすっかり疎遠になっちゃって…」


幸子「人って知らないところで繋がっているモノなんですねぇ。
カイトさんはまだお飲みになりますか?」

この店の主人である月本幸子からの誘い、だがカイトは断った。

カイト「いや…俺はこれで…
今夜は恋人の悦子と一緒に過ごすって約束してるんで、それじゃ!」

こうしてカイトは一足先に帰って行った、残った右京は酒を一杯飲みながら想う事があった…

当時の相棒であった亀山薫は去り、彼の代わりに新たに相棒になった神戸尊も去り今は甲斐亨が相棒となった。
これまでの相棒たちと違い、まだまだな面があるがそれはこれからの彼の成長に期待しようと思う右京であった…

終わり(?)

―――――――

―――――

―――

ちょっと中断します

>>118

ここで語っているお話は私が以前書いた

右京「呪いのビデオ?」

右京「呪怨?」

…のお話です、間違っても相棒本編に登場するお話ではありませんのでご注意ください。

一旦乙です

一旦おつです~

乙ー

ホラークロス他に上の二つ?
1のssあったら読みたいから今まで書いたの教えて

あと、仄暗い水の底からのと、エスターって洋画とのクロスがあったな
ここの>>1の話はタイトルが『右京「(作品名)?」』だから、ググれば出るんじゃない?
他になんかあったっけ?

















幸子「なんだか…まだ話し足りないって顔をしていますね。」

右京「えぇ、実は先ほどの話にはまだ続きがあります。
ですがこの話は出来ればカイトくんにはしたくなかったもので…」

幸子「それじゃぁ私が代わりに聞いてあげちゃいましょうか♪」

気軽に受け答えする幸子、しかしこの話はそんな気軽に聞けるような内容ではなかった…



時は再び遡り2008年…


~武蔵野青木外科医院~


「…」

右京と亀山はカイトのお見舞いの後にある物を持って病院の屋上へとやってきていた。
そこにある人物が骨壺らしきものを持って静かに佇んでいた。

右京「こちらにお出ででしたか。
実はあなたにどうしてもお尋ねしなければいけない事がありましてね。」

亀山「実は葬儀屋さんに連絡を取りましてね。
聞いたら未払いだった水沼美々子の葬式費用をあなたが支払ったという話でしたよ!
それ…やっぱりあなたが持っていたんですね、水沼美々子の骨壺を!」

右京と亀山の話を黙って聞く人物、だが彼らの詰問はまだこれからだった。

右京「実は今回の事件でずっと引っ掛かる事がありました。
それは『父親』です。水沼美々子、それに李麗の父親…僕には彼女たちの父親の全体像がまるで見えませんでした。
ひょっとしたら彼女たちの不在ではないのかと…いえ…そんな事はありません!
父親は実在していたのですよ、それも今回の事件の根底に関わっていたのです!」

父親…その言葉に思わず反応する人物。
そして右京はこの事件で重要な部分を挙げていった。

右京「そもそも水沼マリエの死体が発見されたあの廃墟と化した旧青木医院。
何故あんなところに死体が隠されていたのでしょうか?
答えは簡単です、彼女はある人物に呼び出されたからですよ!
その人物ですが、この場合考えるまでもなく病院の関係者なのは間違いないでしょうね!
そうですね、マリエさんを呼び出した青木周作院長!」

青木「…よくわかったもんだ…さすがだよ…」

そう、この病院を務める院長である青木周作。
彼こそが水沼マリエをあの廃墟と化した病院に呼んだ張本人でもあった。

青木「なるほど、確かにあんな人目に付かない廃墟を密会場所に選ぶのは僕しかないだろうね。」

右京「あなたは何らかの理由で水沼マリエさんを呼び出した。
ですが殺してはいない、殺害したのは彼女の娘である水沼美々子だったはず。
しかしそれだけなら彼女の死をさっさと通報すればよかったはずです。
それをしなかったのは…」

青木「僕は病院の院長だ、世間体を気にして連絡が出来なかった…違うかい?」

亀山「アンタ…!」

亀山は青木の舐めた態度に苛立っていたがそんな亀山を右京が抑えていた。
そして右京は彼が隠しているであろう事実を明かそうとしていた。

右京「あなたは以前こう仰っていましたね。
『僕は誤解されやすい』と、その言葉を信じるなら僕にはこの事件の全容が違った視点で見る事が出来るのですよ。
ひょっとしてあなたは自分が関与しているのが恐れていたのではなく、
美々子さんが犯人ではないかと疑われるのを恐れていたのではありませんか?
そう考えれば辻褄が合うのですよ!
あなたが山下律子さんに口止めをして美々子さんに代理ミュンヒハウゼン症候群の疑いがあっても
菜々子ちゃんの虐待を通報しなかった理由も!」

青木「…」

右京が告げた真実に青木は否定するでも肯定するでもなくただ黙って沈黙していた…
その沈黙の中ようやく重い口を開いた。

青木「何故僕がそんな事をしなければならないんだ?」

右京「一つ可能性があります、最初にあなたに水沼一家についてお尋ねした時の事です。
あなたは菜々子ちゃんの事を『菜々子ちゃん』、美々子さんの事を『美々子』と呼び捨てしていましたね。
確かに美々子さんは既に小学校高学年、ちゃん付するにはどうかという年齢かもしれませんが昔馴染みだというあなたが…
姉妹の片方をあえて呼び捨てにする理由、その理由がわかったのですよ!
水沼美々子の父親はあなたですね!青木さん!」

青木「…」

その途端、彼の顔から笑みが消えた。
まるで今まで被っていた道化の仮面を外したかのように青木の顔から表情は消えたのだ。

亀山「それだけじゃないでしょ、NPOにも問い合わせました。
あなたは今から20年前、医師免許習得後にお父さんに半ば強制的に台湾に行かされましたね。
そこである地域に派遣された、そこは…」

青木「侯硐…昔は炭鉱で賑わっていた小さな村ですよ…」

かつて彼も侯硐に行った事がある、その事実を告げても驚きもしない青木。
しかし右京たちには…

右京「実は僕たちは先日その村に行きましてね…
李麗…憶えてますよね…彼女もまたあなたの娘なのですから!!
そして今日はある物を持ってきました、李麗の骨壺です。
台湾にいる李麗の肉親が亡くなった今、唯一の親族であるあなたに渡すのが一番かと思い持って来た次第です。」

青木「!?」

その言葉に今まで沈黙を守ってきた青木の表情が曇っていく…

青木「何故それを…知っている…!?」

右京「僕たちが侯硐に行った時、高淑梅さんから聞かされました。
『李麗の母親は日本人の医者の子供を生んだ!』とね。」

青木「あの婆さん…まだ生きていたんですか…
まったく…何で世の中…憎まれた者ばかり長生きするのやら…」

高淑梅の事を嫌悪感丸出しで語る青木。
かつて二人は侯硐においてそれだけの確執があった…

右京「それに…証拠はもう一つあります。ぬいぐるみです。
あのぬいぐるみ…菜々子ちゃんが持っていたぬいぐるみと同じ物でした。
二つとも中にオルゴールが内蔵されていたタイプですね。
菜々子ちゃんから話を聞きましたよ、あのぬいぐるみは美々子さんが生まれた時にあなたが誕生祝にプレゼントなされた物だとか…」

青木「あぁ…そうだ…あれは僕が二人の娘にプレゼントした物だ…
せめてあのぬいぐるみを二人が姉妹だという数少ない証拠にしたかったんだ…」

亀山「まさかあのぬいぐるみにそんな意味があったなんて…」

その意味に思わず驚く亀山、だが驚愕な事実はそれだけではなかった…

右京「しかし李麗があなたの娘であるとひとつだけ腑に落ちない疑問が残ります!
それは李麗が拷問をされたかの如く死んだ時です。
あなたは親だというのに何処で何をしていたのでしょうかね?
しかしその問題は解決させてくれました、あなたが医者である事が全ての謎を解決してくれたのですよ!」

右京は青木の前で真実を語ろうとする、だが…

青木「もういい…やめてくれ…」

思わず彼はやめてくれと呟き始めた、しかしそんな彼の言葉をまるで無視するかのように右京は話を進めていく。

右京「思えば発見された李麗の遺体には口と瞼に縫合された痕がありました。
その縫合をある医師の方に診てもらったところ、この縫合は医術に覚えのある者が行った事がわかりました。
それと…亀山くん、先日こちらの青木院長に縫合して頂いた腕の治療痕を見せてください。」

亀山「わかりました!」

亀山は右京と青木の前で腕の治療痕を見せる。
それと同じく右京も李麗の死体の写真、それも縫ってあった部分の写真を青木に見せつけた。

青木「もう…やめてくれ!」

右京「いいえ、やめませんよ!重要な事なのですから!
僕の知り合いの医師によると医者の縫合とはそれぞれ特徴があるようですね。
以前にも言いましたが女結び、男結び、外科結びと外科医の癖によって色々なバリエーションがあるようですね。
詳しい説明は医師であるあなたの手前、省きますが亀山くんと李麗の結紮してある部分が全て女結びでした。
この事から最悪な真実が判明しました!」

青木「やめろー!言わないでくれぇぇぇぇ!?」

青木は右京に向かいその最悪な真実を言わないでくれと頼んだ。
しかし、右京はそれでもあえてその真実を告げてみせた!







右京「いいえ、敢えて言わせて頂きます!
11年前、侯硐の坑道で李麗は…医師であり、そして実の父親である青木周作さん!
あなたによって生きたまま眼球を抉り取られ、そして瞼と口を縫わされてしまったのですよ!!」






青木「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

右京が青木に真実を告げたと同時に、屋上に青木の絶叫が響いた。
そして彼は語り出した、忌まわしい過去の出来事を…

青木「今から20年ほど前…医師免許を得た僕は本当に世間知らずを絵に描いたような人間だった…
親父はそんな僕を鍛えるためだとか言って海外のNPOの紹介で台湾の侯硐に派遣させた…
そして現地で出会った娘と付き合い…李麗が生まれた…
まさか僕のような人間に子供が出来るとは思わなかった…人並みに嬉しかったさ!
李麗の母親はあの子が幼い頃死んでしまった…だから僕があの子を育てた…
恐らく人生で一番幸せだったのはあの時だったはずだよ…
けど村人たちは李麗を毛嫌いしていた…あの子が何か悪い事をしたのか!?
いいや…何もしちゃいない!それなのにあいつらは…」

右京「公害を李麗の所為だと言って罪を擦り付けた。
しかし李麗の瞼や口を閉じらせるにはそれなりの医療経験のある者が必要だった、そこで選ばれたのが…」

青木「そうさ、僕だよ!ヤツらは僕に…李麗の目を抉り取らせそして…瞼と口を縫わせて生き地獄を与えたんだ!
忌まわしいヤツラだ…しかし村人全員を相手に僕一人で立ち向かえるわけがない…
僕は李麗の両眼が入った瓶を抱えてそのまま逃げるように村を立ち去った…
ちなみにその後村人が壊滅したという話を聞いたがもうそんな事はどうでもよかった…」

右京「そしてあなたは日本へ戻ってきた。」

青木「日本に戻ってきてからの僕は抜け殻だったよ。
その頃だったかな、小林賢三の手術ミスをしたのは…そんな時だった、マリエと出会ったのは…」

亀山「じゃあマリエさんとアンタは付き合ってたのか?」

青木「そうさ、マリエのおかげで僕は立ち直れた。
そして子供も妊娠して彼女と結婚しようと親父に報告しようとした時だ。
親父のヤツ何をしたと思う?」

青木はまるでクイズ番組のように面白がっていた。
その光景を見て右京と亀山は逆に切なさを感じるがそれでも敢えて右京は答えた。

右京「恐らくあなたのお父様はマリエさんに多額の示談金を渡されたのでしょうね。
以前もお聞きしましたがあなたのお父様は成り上がりで世間体を気になさる方だとか…
そのような方が名家の令嬢でもない女性と付き合うのは言語道断だとでも言われたのではないですか?」

亀山「そういえば!以前年配の看護師さんもマリエさんに多額の退職金が支払われたって言ってましたよね!」

青木「正解だよ杉下さん!さすがは何でも知ってるね!」

亀山「それじゃアンタは父親に結婚を認められなかったのか?」

青木「そうだよ、僕は親父に結婚を認めらてもらえなかった…
そしてマリエも結婚できないのならとその多額の示談金を受け取り病院を辞めて行った…
そして2年前、親父が死んで僕は院長になった。
僕は今度こそと思いマリエと結婚しようと彼女を一目の付かないあの旧病院に呼び出した。
だが…」

右京「今度は彼女自身から断られてしまった…」

青木「そうさ…彼女は結婚を考えている男がいると言って僕の前から去ろうとした…
その時だった…あの死の着信を受けてマリエが死んだ…
携帯電話を見て僕はこれが美々子の仕業であると確信した!
もしも美々子が殺したとするなら父親として…その罪を暴かせるわけにはいかなかった…
そこでマリエの死体を以前から隠していた李麗の両眼が入った瓶と一緒にあの廃墟内に隠してたんだ…
せめて死の着信が止むまで隠せればと思っていたが…」

右京「なるほど、あなたがここ最近携帯電話を買い替えていたのは美々子さんの死の着信に怯えていたからですね。
目の前で死の着信の恐怖を知ったからこそ警戒して何度も携帯電話を変えて番号を特定されないようにしていた…
そういう事だったのですね!」

青木「フフ、娘二人に先立たれて自殺する勇気も無い惨めな男だ。
笑ってくれても構わないよ…まったく何なんだろうかね僕の人生…それに美々子や李麗の人生は…
何が悪かったんだ…?誰を恨めばいい…?
あの村の連中か?僕を台湾に送り込みそしてマリエとの結婚を反対した親父か?
教えてくれ…僕は一体誰を恨めばいいんだ!?」

誰を恨めばいいのか…そんな事を右京と亀山に聞く青木。
そんなふざけた質問に対して亀山は青木の胸ぐらを掴みこう言った。

亀山「誰の所為でもないよ…アンタ自身の所為だ!
アンタが死ぬ気で子供を庇って…そして親父さんの反対なんか押し切って結婚でもすれば誰も不幸にはならずにすんだんだ!
マリエさんがアンタと結婚しなかったのもわかる気がするよ、アンタのその頼りなさが…
マリエさんは不安になっちまった!だから結婚に踏み切れなかったんだ!」

青木「その僕の不甲斐無さの所為で子供たちは殺人鬼に…か…
クク…本当に誰も報われない話だよ…」

自分の至らなさが我が子を殺人鬼にさせた、しかし右京はその考えを否定する。

右京「あの子たちは本来殺人鬼などではなかったはずですよ。
そもそも何故携帯電話を使った殺人が行われていたと思いますか?
それは…当時あなたが持っていた携帯電話を李麗が見ていたのでしょう。
だから李麗は父親を探すためにあの電波塔を利用して父親であるあなたを探すとした!」

亀山「待ってください、それだと美々子が警視庁のデータバンクにアクセスしていたのは…」

右京「そうですよ、彼女たちは連続殺人を犯したかったわけではありません!
父親である青木周作さん、あなたを探していたのですよ!!」

青木「そんな…あの子たちは…僕を…うわぁぁぁぁぁぁ!!??」

青木は右京と亀山が見ている前で恥ずかしげもなく号泣していた。
自分の過ちがこのような悲劇に発展するなど最早償う事すら出来ないのだから…

右京「青木さん、僕たちはあなたを裁く事は出来ません。
あなたが李麗に行った違法な行為は罪に問えないからですよ。」

亀山「それはどういう事なんですか?だって11年前ならまだ時効が…」

右京「李麗が亡くなったのは台湾です。
しかし日本は台湾と犯罪人引渡し条約を結んではいません。」

亀山「犯罪人引渡し条約?」

犯罪人引渡し条約、国外に逃亡した犯罪容疑者の引き渡しに関する国際条約である。
現在日本ではこの条約を韓国とだけしか結んでいない。
それと余談であるが後に右京も亀山が警察を辞めた直後にこの国際条約に纏わる事件と関わる事になる。

青木「僕が社会的に追及される罪なんてマリエの死体隠匿くらいだろ…
初犯が付けば書類送検だけですまされてしまうかもしれんしな…」

あっけらかんとした態度を取る青木、そんな青木に詰め寄ろとする亀山であったが…


亀山「おいアンタ!いい加減に…」

その時、亀山に対して青木は自分が持っていた美々子の骨壺を渡した。

青木「しばらく僕は…警察にお世話にならなきゃいけない…
だから少しその骨壺を預かっていてくれないか…頼むよ…」

亀山「あぁ…わかった…」

右京「さ、亀山くん行きましょう。」

二人は美々子と李麗の骨壺を持ってそのまま黙って青木の前から立ち去った。
唯一人その場で立ち尽くす青木、そんな彼の前に一人の男が現れる…

青木「患者さんですか?
診療室は1階ですよ、こんな屋上に何の御用ですか?」

そんな冗談めいた言葉を男に言う青木、だが次の瞬間…


((ドスッ!))


青木「ぐはっ!?」


男が持っていたナイフに刺される青木、そのナイフを刺した相手は…

藤枝「アハハハハ!やった!殺せた!こいつの所為だ、こいつの所為で俺は…テレビ局をクビにされたんだ!」

青木を刺したのは東西テレビをクビになった藤枝であった。
彼は青木を刺すとまるで高笑いして狂ったように飛び上がるように舞い上がっていた!

青木「な…何故だ?」

藤枝「教えてやろうか?俺はなぁ……」

青木「な…何!?」

藤枝からある事実を聞かされ驚愕する青木、しかし藤枝はそんな事を気にもせずに屋上の手すりに登りそこから…飛び落ちようとした!


藤枝「ざまぁみろ!!」


((グシャッ!))


そして屋上から飛び落ちた藤枝、その場で血塗れに倒れていた青木はある事を呟いていた…

青木「親父…やはり…僕は医者に向いてなかったよ…」

その時、青木が落とした携帯からある着信音が流れる。


♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


今まではこの曲に脅えて生きていた。

しかし今となってはまるで安らかな子守歌のような…そんな居心地さえ感じる…

そう思いながら彼はそっと目を閉じた…



~花の里~


右京「そうですか、どうもありがとう。
伊丹さんからです、青木周作の死亡が確認されました…」

亀山「クソッ!」

美和子「藤枝も即死だったし…何か後味悪い事件だよね…」

伊丹から青木の死亡報告を聞く右京。
その報告を聞いて苛立つ亀山、結局この事件の関係者で報われた者は一人としていなかった…

美和子「あの天道白水って霊媒師ですけどあの後記者会見でバラエティ番組で使用されていた
タライが落っこちて当たり所が悪くて亡くなったとか…
まさかこれ死の着信の影響じゃないですよね?」

右京「さぁ、どうでしょうかね。」

亀山「それにしても驚きましたよ、まさか藤枝が菜々子ちゃんの父親だったなんて…」

右京「恋愛とは不可思議なモノですねぇ、こればかりは理解の範疇を超えますよ。
水沼マリエはやはり山下律子が診断する通り、良い母親ではなかったのでしょうか?」

亀山「いや、俺はそうは思いませんよ。
彼女は死んでもなお俺に美々子や李麗の身を託して子供たちの事を案じていました。
そんな女性が子供を蔑にしてただなんて俺には思えません!」

右京「そうですか…そうですね、そう思いましょう。」

そう納得しようとする右京、そして美和子も今回の事件である決意を固めていた。

美和子「私…今回の事件…発端になったエリセ化粧品の本を書こうと思うんです!
私に出来るのは真実を公表する事ですから…
こんな悲劇を繰り返したくないためにもっとエリセ化粧品の取材を続けて今回のノンフィクションの本を出そうかなって…
タイトルはもう決めてるんだ!『沈黙の森』ってね。」

亀山「沈黙の森かぁ、そういえばあの侯硐って人気が無かったから随分と森が生い茂っていたよな!
避暑地としちゃ最高かな?」

右京「しかし帝都新聞社にいる間はそのような一企業を批判するような本を出せるのですか?
帝都新聞の上層部から許可が下りないと思いますが…」

美和子「たぶんそうなるかもしれませんね、だから…いずれは帝都新聞を辞めてフリージャーナリストになろうかと決めてるんです。
そうすれば今まで以上に好きな事バンバン書けるから!」

そんな将来の展望を目を輝かせて語る美和子、そんな影響を受けたのか亀山も…

亀山「俺も…今回の事件で考えさせられました…
人を助けるにしても一警察官には限界があるんだなって…今回の事件…発端は理性を失った大人が原因じゃないっすか…
ちゃんとした大人がいれば李麗や美々子が死ぬ事は無かったはずだと思うんすよ!」

右京「確かに僕もそう思います、しかしそれは一警察官としては職務範囲を超えた話です。
それは警察官としてではなく別の道を歩まない限り無理な話なのでしょうね。」

亀山「別の道…」

この時、亀山は漠然とだが思ったのかもしれな…
警察官じゃない他の自分の人生について、後に彼が警察を辞める決心を固めたのはこの事件がきっかけではないのだろうか…

しかしそんな話の最中にこの店の女主人である宮部たまきがある質問をした。

たまき「それで右京さん、この骨壺ですけどどうなさるんですか?」

右京「本来ならご遺族に渡すのが常です、ですが…」

亀山「彼女たちの親は既に亡くなってますからね…
唯一の親族となると今じゃ…菜々子ちゃんくらいですけど…あの子は幼いし…
でも青木が俺たちにこの骨壺を託したのってまさか死ぬのを予感してたからじゃ…?」

右京「そこまでは何とも言えませんが、さて…どうしたものでしょうかねぇ。」

右京たちは美々子と李麗の骨壺の処遇について頭を悩ませていた。
既に彼女たちの親族の殆どが他界している、唯一の生き残りである菜々子もまだ幼い…
どうしたものかと悩ませているとたまきがある妙案を持ち掛ける。

たまき「それなら…」

右京「はぃ?」



そして再び2013年11月13日


~花の里~


峯秋「急に飯でも食おうかだなんて驚いただろうね。」

右京「えぇ、少し。」

峯秋「なんだかもう一度この店に来たくなってね。」

一連の話を終えた右京は、カイトと入れ替わりで現れた彼の父親であり警察庁の甲斐峯秋次長とこの花の里で食事を楽しんでいた。
そんな中で、甲斐次長は自分の息子であるカイトの近況について右京に聞いてみた。

峯秋「あいつもよくここに来るのかね?」

右京「僕と時々。」

幸子「良い息子さんですよね、お父さまと同じ道を選ばれて…
今時な中々ありませんよね。」

甲斐次長の前でカイトを褒める幸子、だが甲斐次長はというと…

峯秋「何故だろうね?」

右京「はぃ?」

峯秋「何故あいつは警察官に拘るんだ?まぁ大方私への嫌がらせのつもりだろうがね…」

カイトが警察官になったのが自分への嫌がらせだと語る甲斐次長、だが右京の答えは違った。

右京「それは違うと思いますが。」

峯秋「違う?」

右京「えぇ、違うと思います。」

そして右京は先ほどカイトが自分の前で警察官を目指した本当の理由について甲斐次長。
その言葉を聞き、面白げに笑った。
その笑みがカイトを嘲笑うものなどではなく、まるで蛙の子は蛙だなとそのような笑みであった…

そんな時、右京は思い出したかのように幸子にある事を頼んだ。

右京「幸子さん、そちらの上の戸棚を少し開けて頂けませんか?」

幸子「はい。」

幸子が戸棚を開けるとそこには二つの位牌と骨壺が置いてあった。
それはかつての事件で亡くなった水沼美々子と李麗の骨壺。
実はあの事件の後、たまきの厚意によりこの店に二人の骨壺が置かれたのだ。

峯秋「この骨壺は何だね?」

右京「これはとある事件で不幸な死を遂げた二人の少女の骨壺です。
あのまま無縁仏で処分するのもどうかと思い、このお店の前の女将の厚意でこちらに置いてもらっています。」

峯秋「なるほど、それは不幸な事だ。」

飲んでいた酒を手元に置き、手を合わせ供養する峯秋。
そんな彼に対して右京はある忠告を彼に促した。

右京「実はこの少女たちの骨壺を甲斐次長に見せたのにはひとつ、理由があります。
彼女たちは共に親に恵まれなかった…
いえ、もしかしたら親とわかりあえる機会があったのかもしれません。
その所為で二人は不幸な死を遂げてしまった…ですが次長、あなたたちは…」

右京の言葉を聞き、何故今回右京が自分の申し出に応じてくれたのか甲斐次長もようやく察しがついた。

峯秋「なるほど、キミが今回呼んだのは私と倅の仲を…
よしてくれ、もうお互い関係は修復できるとは思ってはいない…だが…
それでもヤツが警察官としての道を歩むのなら…好きにやればいい…
私は…好きに出来なかったのでね…」

その言葉を聞き、少し安堵の笑みを浮かべる右京。
まだ少しではあるがカイトを認めつつあるのだという確信が得られたのだから…

そんな彼らの前にもう一人訪ねてきた人物がいた。

神戸「お待たせしました、神戸尊ただいま到着しました。」

右京「おやおや神戸くん、キミも呼ばれていたのですか。」

遅れてやってきたのはかつてのもう一人の相棒である神戸尊。
どうやら彼も次長に呼ばれて今回やってきたのだが、何故遅れてきたのかというとそれには理由があった…

神戸「実は…先日、神田グループのトップ神田喜一氏が突然失踪してしまって…
それで警察庁で内密に調査する事になって、そしたら驚いた事にとんでもないところに彼がいたんですよ!」

峯秋「とんでもないとはどこにいたんだね?」

神戸「それが東池袋の飲み屋ですよ!
しかも名字を『神田』から『神谷』に変えてそこのホステスの女性と夫婦同然の生活をして…
しかも施設から水沼菜々子という身寄りのない少女を引き取ったりともう僕にはわけがわかりませんね…
何で大企業のトップの座を蹴って場末の居酒屋で働くのやら…」

右京「なるほど、ようやく素直になれた訳ですね…」

神戸、峯秋「「?」」

どこか納得した表情で酒を一杯飲む右京。
事件が終わり、誰もが幸せになれた訳ではない。
しかしそれでも生き残った者たちには是非とも幸せな人生を歩んでほしいと心の底から願った…




これにてこのSSは完結です。

読みやすいようにと二つにスレを分けたのですが逆に読みづらかったらすいません…

そして法解釈なんですが、今回かなりあやふやな面があるので話半分程度に思ってください

所詮SSですので、フィクションですので…

それと今回亀山さんとカイトくんを取り上げた所為で割を喰った神戸さん活躍させられなくてすんません…

さすがに神戸さんを活躍させる機会が無かった…


※補足

今回のSSで使用された原作の話です

若杉栄一:相棒シーズン2~3にかけて何度か登場しています。

>>81

相棒シーズン1 第11話右京撃たれる〜特命係15年目の真実

緊急対策特命係にまつわる話です

>>143

こちらで言われている事件は相棒シーズン7 第12話逃亡者
罪を犯した外国人が国外逃亡して逃げ得する話です。

>>149

相棒シーズン5 第7話空中の楼閣

美和子さんが後にエリセ化粧品の公害についてまとめたノンフィクションの本を出版しようとした事件です。


以上が今回本編から取り上げた話です。

更に追記

>>118

こちらに出ていた官房長似の神原晶とは誰か…
これ実は去年放送されていたドクターXのドラマで官房長の中の人が演じていた人です。
つまり所謂特別出演でした。

乙でした
やはり、>>1の書く相棒ssは本当に素晴らしい

完結乙です

乙でした
神原が出てきたレスは>>116だね

乙です。美々子にも李麗にも菜々子にも救いがあって、しかもリングと呪怨と繋がってた! 美々子は小説じゃマリエの実の親父、映画じゃ頭のおかしな謎の男に
レイプされて出来た子供っていう設定で、李麗もあの洞窟に囚われたままだったしね・・・・

最後に質問ですがリング、呪怨、着信の他にも相棒×ホラー映画って予定あります? 富江、渋谷怪談、女優霊、ノロイ、オトシモノとか。

乙ー

まずは感想ありがとうございます

>>165

まだ次回作については考えておりません
富江、渋谷怪談、女優霊、ノロイ、オトシモノ以下の作品は作者は未見ですので…

というかまず私が相棒ss書く場合は相棒本編で取り上げられるような話を抜粋して
さらにクロス先の話と辻褄を合わせたりと構想を練らなきゃいけなくて…
ちなみに今回のssは11月のシーズン12のリクルートスーツの話を観た後に他のシリーズから話を抜粋したりとで
構想3ヶ月近く掛かりました…
相棒SSほど一朝一夕で出来るようなものはないなと…
ていうか最後の部分徹夜で書いたから文章酷い事になってる…

>>1は相棒のゲストを絡ませるのが上手いな

あんまり否定的なこと言いたくないけど、色々手を広げて投げ出すのは一番良くないよ
167みたいなこと言ってるってことは、現行で残ってるまどマギとのクロスだってもうやる気ないでしょ?
勝手に打ち切りにするなとか言うつもりはないけど、もう書かないんなら書かないって言うなりHTML依頼するなりしてもよかったんじゃない?

楽しく読ませてもらってたけど、何だか酷くがっかりした

>>169の言葉にショックを受けた>>1は二度とSSを書かなくなったのであった

えっ?まどマギも>>1が書いてんの?

これだな
右京「叛逆の物語?」
右京「叛逆の物語?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385398558/)

クロユリ団地という選択肢もある

>>173
クロユリ団地はさすがに無理だろ…
あんな投げ放しな展開をどうやって結びつけるんだよ?

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