右京「着信アリ?」 (139)

相棒×着信アリのクロスSSです。

需要なんてろくにないと思いますがそれでもという方はどうぞお読みください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390986937



<2013年11月13日>


特命係の杉下右京と甲斐亨は城南大生・北川奈月が殺害された捜査で立ち寄った、
東山証券の本社ビルからの帰り道にある会話をしていた。

右京「キミ、内定ももらった事ないのによくコーヒーをかけられたとわかりましたね。」

カイト「俺実は…内定もらって断った事あったんです…その時は…凄い嫌な顔されてそれこそコーヒーぶっ掛けられそうな剣幕だったんで…」

右京「なるほど、しかしわかりませんねぇ…
キミは早稲田大学出身です、恐らく一流の企業から内定を貰えたはず。
それなのにそんな就職先を蹴ってまで警察官の道を選んだ…
しかも先ほどの会話の内容からして人事の面接官の方に剣幕を捲し立てられるほどに嫌な顔されても敢えて断った。
僕としてはどうにも納得いかない部分があるのですが…」

そんな右京の疑問にカイトは渋々ながらもこう答える。

13日はどうしたんだ

カイト「親父のいる警察に入るなんて御免だったんですよ、どうせコネで入ったんだろうと思われるに決まってるし…
だから就職活動もして内定ももらいました、でも……何か違うなって思ったんですよ…
親父がいるからって自分が本当にやりたい事諦めるなんて癪じゃないっすか…
その事に気づかせてくれた刑事さんがいたんですよ。」

右京「刑事さん?ひょっとしてどなたかに影響を受けたのですか?それもキミの父君とは違う警察官に?」

カイト「ハイ、あの人との出会いが無ければ恐らく俺は刑事はおろか…警察官にすら…
いやひょっとしたら生きてすらいなかったかもしれませんからね…」

そしてカイトは思い出す、自分がかつて影響を受けた刑事と遭遇した事件の事を…



<2005年8月2日>


~警視庁~


当時大学生のカイトは無事就職先も決まり、後は残りの大学生活を悠々自適に過ごす毎日を送っていたが…
ある事件がきっかけで同級生の女子大生と一緒にこの警視庁の入り口前に来ていた。

カイト「あの所轄の本宮とかいう刑事…本庁に行けばいいとか適当な事言いやがって…
だから警察とは関わりたくなかったんだ!」

カイトが警視庁の入り口付近の前で何やらブツブツと文句を呟いていると彼の前にある私服刑事の格好をした男が近付いてきた。

亀山「え~とキミ…その見た目だと…大学生くらいだよな…そうかわかったぞ!
警察官採用試験の申込用紙をもらいに来たんだろう!
ほらこれ!まだ期日までギリギリだがしっかり勉強すれば絶対受かるから頑張れよ未来の警察官!!」

亀山薫、当時の杉下右京の相棒であった刑事である。
彼はカイトが警察官採用試験の申込用紙を貰いに来たのかと思い彼にその申込用紙を渡したがどうも違うようであった…

カイト「違います!俺たちは警視庁の特命係っていう部署に用があって来たんですよ!」

亀山「ハイハイ、特命ね………ってウチ!?」



~特命係~


特命係の部屋に案内する亀山、その前の部署である組織対策5課を通り抜ける際にカイトはある疑問を抱いた。

亀山「ハイ、ここが警視庁特命係だよ。ちなみに隣は組織対策5課!よく間違えられるけどね…」

カイト「あの…亀山さん…でしたっけ、何で隣の部署は誰もいないんですか?」

そう、先ほど通り抜けた組織対策5課は現在無人の状態で常に「よ、暇か?」とコーヒーを強請りに
ちょっかいを出す角田課長率いる組対5課の刑事たちは現在部署にはいなくて無人の状態だった。

亀山「あぁ、隣は今ちょっとある事件を追っていてね。
これは一般人には言えないんだけどね、新宿の繁華街で中国マフィアが諍い起こして大変なんだって!」

カイト(おいおい…バッチリ言ってるじゃねえかよ!?この刑事さん大丈夫か…?)

亀山「本当は俺以外にもあともう一人上司がいるんだけど今は外出中でさ…
とりあえず俺が話を聞くから何でもいいから言ってみなよ!」

亀山に対して不安を抱くカイトだが現状でこれから話す事を対応してくれるのはこの男しかいない…
そう思ったカイトは意を決して亀山にある事件について話し始めた。

カイト「まずは自己紹介しますけど俺は甲斐亨、こっちは同級生の中村由美です。
それじゃあ言いますけど亀山さんは『死の着信』って知っていますか?」

亀山「死の着信?いや…知らないけど…?」

何も知らない亀山のためにカイトは一応の説明をする。

『死の着信』 それは1ヶ月前より巷で流行っている所謂都市伝説の怪奇話である。
この話にはあるいくつかのルールが存在する。


1.発信者は自分の携帯電話の番号である。


2.着信履歴に残る時刻は未来の時刻、人によってそれぞれだが最長1週間後の日付となっている。


3.着信メロディに何故か『ある特定の音源』が使用されている。


4.メールや音声で死ぬ直前の画像や動画や音声が送られてくる。


5.この着信を受け取った者は何があろうと必ず………『死ぬ!』


6.死の着信を受けた物の死体の口には必ず赤い飴玉が咥えられている。


7.殺された被害者の携帯電話の番号から次の被害者が選ばれ殺人は繰り返される。

亀山「ハハ…う…嘘だろそれ…」

その話を聞いた亀山は彼らが冗談を言いに来たと思い笑ってみせた。
だが彼らの真剣な顔を見てこの話に何か信憑性があるのではないかと疑問を持った。

亀山「まさか…本当なのか?」

亀山がこの話に疑いを持ち始めると同時に今まで頑なに黙っていた女子大生が話をし始めた。

由美「その話は本当です…」

カイトの同期の女子大生である中村由美は重苦しい表情で数日前の出来事を話し始めた…

亀とカイト出会ってのか そして亀何やってんの

由美「私たちのサークルに『岡崎陽子』っていう子がいて…1週間前…つまり7月26日に私たち合コンをしていたんです…
『河合健二』、『小西なつみ』の5人のメンバーだったんです。」

カイト「俺たちは合コンの話で盛り上がっていました…
それでトイレに行った陽子の携帯に変な着信音が鳴ったんです、彼女そんな着信音の設定はしてないって言ってたのにですよ…
それでその彼女が…死の着信を受けたんです…送られてきたは着信時刻は7月28日23時04分でした…」

由美「その時、私は陽子と一緒にトイレで先輩が着信を受け取ったのを知ったんです…
でもその子は知らないうちに設定されていた着信音に相手の電話番号が自分のモノだった事でそれが死の着信じゃないかって疑って…
けどその時は唯の悪戯だろうって誰も信じてはいなかったんです…」

カイト「ちなみにこれがその時に送られてきた音声です。
俺…気になったんで陽子に頼んで音声のデータ移してもらったんで聞いてもらえますか?」

そしてカイトは亀山に岡崎陽子が受け取った時の死の着信の音声を聞いた。



((カンカンカンカンカン))


最初に聴こえてくるのはまるで電車の踏切の音。

『やだ、雨降ってきちゃった…』

次に女性の声、カイトが言うには岡崎陽子本人の声だという事だ。

そして最後に…


『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』


岡崎陽子の悲鳴、まるで断末魔の叫びが部屋に響き渡った…

亀山「何だこりゃ…」

あまりの事に思わず声に出せない亀山、しかしこの話にはまだ続きがあった…

由美「私たちはこの話を半信半疑だと思い、仲間内で電話番号を交換してその日はお開きになったんです…
それから二日後の28日の23時頃に私は陽子と電話で話をしていました…
他愛のない会話です、今度一緒に水着買いに行こうって…健二に見せたいって…
その時でした…うぅ…グスッ…」

それから由美は泣きじゃくりまともに言葉が出なくなってしまい代わりにカイトが言う事になった…

カイト「由美から聞いたんですけど…その時どうやら陽子の近くで雨が降っていたらしいんですよ。
その時彼女が言った言葉がこうでした…」

『やだ、雨降ってきちゃった…』

そして次に陽子が発した言葉が…

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』

亀山「ちょ…ちょっと待って!それってつまり…」

あまりにも荒唐無稽な事態にさすがに同様の隠せない亀山、話はまだ終わりではなかった…

カイト「実は今日ここにもう一人来る事になっていたヤツがいたんです…
さっき話した『河合健二』っていう俺のダチなんですけど…そいつはこの話を全然信じてなくて…
でも昨日の事でした、あいつ…死の着信を受けたんですよ!」

亀山「それってどういう事なんだ?」

カイトが言うにはこうである。
死の着信を受けて死んだ人間の携帯から次の標的が定められる。
7月26日の合コンの時に彼らは携帯電話の番号をお互いに交換していた、つまり河合健二が標的に選ばれてしまったのだ…

カイト「ちなみに健二の携帯をちょっと強引に借りてあいつが受け取ったっていう着信の音声なんですけど…」

ずっと待ってた

カイトが恐る恐る亀山に聞かせる河合健二という青年の死の着信の音声、それは8月3日15時34分の着信履歴…

『やっべ、完全に忘れてた!』

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

亀山「これも…演技にしちゃちょっと出来過ぎだろ…」

カイト「これが健二に送られてきた死の着信です、俺と由美はこの事を近くの所轄に相談しに行ったんですけど
誰もまともに取り合ってくれなくて…」

そりゃそうだ、こんなオカルト染みた案件なんて所轄の刑事が扱う訳がない…
亀山自身も内心この話を未だ信じられずにいた。

カイト「それで所轄の刑事さんたちが警視庁の特命係にいけばなんとかしてくれるかもって言われたんでここに来たんですけど…」

亀山(なるほど、要はこっちにたらい回しにされたって事か…)

さすがに今の話だけではなんとも言い難い状況、亀山はとりあえずこの事を上司と相談して対応してみると
カイトたちにそう話し、今日のところは帰らせる事にする。
それから亀山はカイトと由美を警視庁の出入口まで見送っていた。

亀山「じゃあな、とりあえず気を付けろよ!」

亀山の姿が見えなくなると同時に二人は先ほどの亀山の対応について話していた。

由美「さっきの刑事さん…どう見ても半信半疑だったよね…」

カイト「まぁ…しょうがねえだろ…俺だっていきなりこんな話振られたら対応困るしさ…」

由美「じゃあ真剣に対応してもらうためにカイトくんのお父さんの名前を…」

由美がカイトの父親の事を持ち出そうとした時であった。



カイト「嫌だね!!あんなヤツに頼むだなんて死んでもゴメンだ!!」


父親の名を挙げたと同時に激しい嫌悪感を露わにするカイト、その態度を見て由美は思わず謝罪してしまう…

由美「あ、ゴメンなさい…」

カイト「いや…俺の方こそ…あ、これは…」

その時、鞄の中に先ほど亀山からもらった警察官採用申込用紙をまだ持っていた事に気付いた。
しかしここは道端、こんな通り道に捨てるわけにもいかずにしょうがなく持って帰る事にした…

一方、亀山はというと…

亀山「さてと、これからどうしたもんだかな…」

先ほどの事件についてまだ半信半疑であった、そこへ珍しい男が彼に声を掛けてきた。

小野田「亀山さん、今話していた少年は知り合いかしら?」

亀山「お…小野田官房長!?」

小野田公顕、警察庁長官官房室長の官房長であり実質警察庁のNo.2と言われる人物である。
そして特命係を創設した張本人でもあり事件が起きるたびに時に協力者、時に妨害をと敵か味方なのかわからない人物である。

亀山「何で官房長が警視庁に!?」

小野田「それよりも先ほどの彼…何処かで見覚えがあると思ったら確かウチの甲斐さんの息子さんだったと思うんだけど…」

小野田が言うにはカイトは警察庁の幹部職員である甲斐峯秋の息子であり以前彼と面識があったという話である。

小野田「まぁよくは知りませんけど力になってあげたらどうかしら?
そうしたら亀山さんも上の人たちとお近づきになれるかもしれませんよ。」

冗談めいた事を言い残しその場を立ち去る小野田、一人その場に立ち尽くす亀山は半ば呆れ顔でいた。

亀山「ハハハ…つまり逆に言えばこの件を蔑にしたらお坊ちゃんのご機嫌を損ねてパパに文句言われちゃうって事かよ…
まったく冗談じゃねえや!」

そう思った矢先に亀山の携帯に右京からの連絡が入った。

右京「僕です、今暇ですか?」

そう言うと右京は至急ある場所へ来てくれとの事で亀山は急ぎ右京のいる場所へと向かった。
亀山自身も先ほどの死の着信とかいう馬鹿げたオカルト事件よりはマシだろうと思い足早に右京の下へと急いだ。

その頃、小野田は警視庁内のとある一室へと向かった。



~大河内の部屋~


大河内「お待ちしておりました官房長、わざわざお越しくださって恐縮です。」

小野田「まぁ別にいいけどね、隣のビル同士だし少しは運動しないと体が鈍っちゃうし…
それで何があったのかしら?」

大河内「実は…」

大河内が重苦しい雰囲気の中で小野田にある問題について説明をする。
それは数週間ほど前から警察のデータバンクにある警察官に関する情報が外部の人間によって閲覧された疑いがあるという話であった。
しかもその閲覧された情報には警察の幹部職員の情報も含まれていた。

小野田「なるほど、それは少し厄介な話ですね。
警察官の…それも幹部職員の情報を閲覧となると最悪の場合、犯罪者に我々幹部職員の生命を脅かされる恐れもあるよね…」

大河内「えぇ、それで私はこの件について独自に調査を開始したいと思うのですが…」

小野田「何か問題があるのかしら?」

大河内「今回の件はもしかしたら警察内部の人間が手を貸している疑いがあります。
こんな状況では自分の部下も信用できません、そこで…」

小野田「なるほど、僕を呼んだのはキミが信頼できる人間を呼んでほしいという訳ですね。
わかりました、それで何人欲しいの?」

大河内「いえ、欲しいのは一人だけ…今回の件に関してはなるべき少数で動きたいので…」

小野田「へぇ…まぁいいや…僕の伝手で良い人材を紹介しましょう。」

大河内「ありがとうございます。」

それから小野田はすぐに部下に命じてある人物を呼びつけた、数分後…小野田と大河内の下にやってきた人物とは…

神戸「お待たせしました、警察庁警備局警備企画課課長補佐の神戸尊警視です。
お久しぶりですね大河内さん♪」

大河内「まさかお前が来るとは…」

何と現れたのは大河内の旧知の間柄にして後に杉下右京の相棒となる神戸尊であった。
ちなみにこの時、彼はまだ警察庁の職員であり、数年後自分が特命係に飛ばされるとはこの時はまだ予想すらしていなかった…

小野田「二人は旧知の仲だし、まぁ顔見知り同士頑張ってね。」

神戸「頑張りましょうね♪」

大河内「ふん!」(バリッボリッ)

懐に忍ばせてあるラムネを頬張りながら大河内は不満そうな顔でこの決定を受け入れた。
しかしこの一見何の関係も無い幾つもの事件が全て繋がっていようとはこの時誰が予想出来ただろうか…



~のぞみの家~


右京から呼び出しを受けた亀山はこの『のぞみの家』という児童養護施設に来ていた。

亀山「まさかもう一度ここに来る事になるとはな…」

実はこの施設は以前に都内で発生した16人の子供が一斉に誘拐されるという
同時多発誘拐事件で逮捕された犯人夫婦が営む施設であった。
あの事件はその後、犯人夫妻に執行猶予が付き、更に二人とも模範囚であった事から数年前に仮釈放された。
そしてあの事件で人々からの注目が集まり再び施設を再開する事が出来たのである。
そんな場所に何故右京は亀山を呼び出したのか、些か疑問に思っていた。

そして建物の中に入った亀山はそこで待っていた右京と当時あの事件の犯人である望月ちとせと則彦と再会した。

右京「亀山くん、お待ちしていましたよ。」

ちとせ「刑事さん…あの時はどうも…」

則彦「馬鹿な真似をしてすみませんでした…」

亀山「いや、お二人は今は更生して無事に自由の身ですからね…
それで右京さん、何で俺たちが呼び出されたんですか?」

亀山の率直な疑問に対して右京は部屋の隅でジッとしたままでいるある少女を指摘する。
幼稚園児くらいの年齢で妙にボロボロなクマのぬいぐるみに小さなカバンを持った一人の少女…
どうやらこの少女についての事であった。

期待

右京「少女の名前は『水沼菜々子』、年齢は5歳。この施設にやって来てまだ1ヶ月足らずです。
今回頼まれたのはあの少女のお母さんを探してほしいとの事です。
菜々子ちゃんのお母さん水沼マリエさんは1ヶ月前に菜々子ちゃんを『武蔵野青木外科医院』に連れて行き、
そのまま失踪してしまったそうですよ。」

亀山「武蔵野青木外科医院?どこかで聞き覚えがあるような気が…
あー!あの事件の時の!?けどなるほど…人探しですか!
よ~し!任せろよ菜々子ちゃん!必ず俺たちがキミのお母さんを見つけてあげるからな!!」

亀山は張り切り出して菜々子を励まそうとする。
先ほど相談を受けた死の着信なんてふざけた話よりはよっぽどマシで有意義だろうと思ったからだ。
だが菜々子はというと…

菜々子「…」

亀山「あ…あれ?」

俯いていた、まるで母親を探してほしくないのではと疑いたくなるほどに…

ちとせ「それじゃ菜々子の母親の事お願いします…」

右京「えぇ、今回の件承りました。」

亀山「俺たちが必ず菜々子ちゃんのお母さんを見つけてあげますからね!」

望月夫妻の前で自信満々にそう答える亀山、だが夫の則彦は…

則彦「正直…見つからない方がいいのかも…」

そうぼそりと呟いていた…

それから車に乗り込み施設を後にする右京と亀山。
亀山は何故菜々子や望月夫妻が今回の件について消極的なのかという事を問い質していた。

亀山「おかしくないですか?
母親を探してほしいから俺たちに依頼してきたんでしょ?それなのに見つからない方がいいかもとか言って…」

右京「確かに疑問はもっともです。
では今回の件、僕から詳しい説明を付け加えておきましょう。
実は…先ほどキミがお会いした水沼菜々子ちゃんですが虐待されている可能性があります。」

亀山「ぎゃ…虐待!?」

右京の説明は以下の通りである。
右京は亀山が来る前に望月夫妻の許可を得て菜々子の身体に虐待の痕跡を発見した。
それは殴られたりするような痣ではなく包丁や鋏による切り傷の跡が身体の箇所に複数見られていた。
さらにそれだけではなかった…

出来れば今までの過去作教えてほしい

右京「実は…菜々子ちゃんにはお姉さんがいました。
名前は『水沼美々子』、年齢は小学校5年生の11歳の少女でした。」

亀山は右京の言い方に違和感を感じる、『いました』『でした』…まるでもう姉がいないような言い方であった。

亀山「右京さん…その言い方はもしかして…」

右京「キミが推察する通り、美々子さんはもうこの世にはいません。
彼女は亡くなっています。」 

右京の話はこうである。
菜々子の姉である水沼美々子は喘息を患っていた、直接的な死因は喘息による発作である事。
そしてある重要な事を右京は付け加えた。

右京「僕たちが依頼されたのは母親探しですが…
もしも母親が美々子さんの死を知りながら敢えてあえて放置したというのなら…これは殺人事件になります。
最悪の場合、僕たちは母親である水沼マリエさんを逮捕しなければなりません!」

亀山「母親を…逮捕…」

その言葉を聞き、亀山は先ほど菜々子の前で母親を見つけ出すと息巻いていた自分の言葉を取り消したくなってきていた。

右京「菜々子ちゃんを虐待させて、そして美々子さんもまた虐待死させたのなら…
それは到底許されるべき行いではありません。
最初に言っておきますがこの件は菜々子ちゃんにとって必ずよい結果で終るとは思わない方がいいかもしれませんねぇ…」

亀山「…」

車内は重苦しい雰囲気に包まれつつ、車は菜々子の母親である水沼マリエを探すべく走り出した。

とりあえずここまでです。
SSはかなりオリジナル設定が入ります、基本本編の設定を取り入れますが私の解釈で変更される部分もあるので
予めご了承ください。


>>3

最初に謝罪しておかなければなりませんがまずはあの作品エタッてしまいごめんなさい
真犯人を速攻でバラされてしまい創作意欲が無くなってしまったのと書いててこれは相棒じゃないなと
自分でも思ってしまって…
やはり思いつきでssでやるものじゃないなと…

>>10

これもオリジナルです、原作じゃまだこの二人会ってもいないので…
ちなみに私が過去に書いたSSでは二度くらい会っていますけど…

>>15
>>26

ありがとうございます

てか亀ちゃん中の人的に今後出れるか微妙だしな



<8月3日>


~水沼宅~


翌日、右京と亀山は水沼マリエが住んでいた団地、つまり菜々子が以前住んでいた場所にやってきていた。
ちなみにこの部屋は水沼美々子の死体が発見された場所でもある。
部屋の中は1ヶ月前に美々子が死んだ時のままの状態になっており子供が悪戯などをして物を荒らした痕跡が見られた。
それから右京はこの部屋に入る前に団地の郵便受けにある水沼宅の郵便物に紛れていた携帯電話の請求書を見てこう話した。

右京「今から1ヶ月前、怪しい物音を聞いた近所の住人が水沼宅へ入りその時既に意識の無い美々子さんを発見。
美々子さんは居間で喘息の発作によりもがき苦しみながら倒れていました。
彼女は救急車で搬送されましたが病院に着く前にそのまま死亡。
当時彼女の手には携帯電話が握られていたという事です。」

亀山「携帯電話?何でそんな物を?」

右京「美々子さんは喘息を患っていたとの事です。
近所の方が言うには恐らくいつでも母親と連絡を取れるように持たせていたのではという事ですが…
ちなみにこの請求書に書かれてあるマリエさんの携帯電話の番号ですが…
090‐〇〇‐××××ですが…予想はしていましたが一向に繋がりませんね。」

ここで亀山はある疑問を感じて右京にある質問をする。

亀山「それって何かおかしくないですか?
いなくなった母親は子供に虐待するような酷い人間だった訳ですよね!
それなのに何で携帯電話を持たせていたんですか?」

右京「えぇ、僕もそこに違和感がありました。
キミの言う通り虐待をするような母親がわざわざ子供に携帯電話を買い与えるモノなのか…
少し気になるところですねぇ。」

亀山「うん?」

その時、亀山は居間の死角になる戸棚に注目した。
その戸棚は大人の背丈でなければ届かない場所である、しかもそれだけではなかった…


((ギィー))


亀山「おわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

亀山は思わず叫んでしまった、その戸棚の中から青白い人間の手が出てきたかのように見えてしまったからだ!

右京「亀山くんどうしましたか?」

亀山「い…今…人間の手が!……あ…あれ?」

しかし右京がその戸棚を開けてみると中に人間の手などありはしなかった。
だが代わりにあるモノが置かれていた。

右京「これは…ビデオカメラ?」

亀山「本当だ…けど何で?」

そこに置かれていたのは一台の旧式のビデオカメラが設置されていた。
しかし中身のテープが無い、部屋の中を隈なく探しても何処にも見当たらなかった…

右京「ありませんねぇ、テープの中身が…」

亀山「きっとこれ子供たちの悪戯でしょ、それよりも今見つけたこの写真見てくださいよ!
たぶんこの家の子供たちの母親ですよ!」

亀山は先ほど驚いた拍子に床に散らばっていたこの水沼家の家族写真を発見する。
その写真に写っているのは娘の菜々子、それに姉の美々子、そして母親のマリエ、の三人の写真である。
ちなみにこの家に父親は存在しない、この一家は母子家庭であるからだ。
しかしその写真はバラバラに引き裂かれていてジグゾーパズルの如く組み合わせるも、
長女の美々子の顔の写っている部分だけは発見する事は出来なかった…

亀山「あれ?何で美々子ちゃんの顔写真だけ無いのかな~?」

右京「それはともかく…なるほど、この方が僕たちが探している水沼マリエさんですか…」

その家族写真に写る水沼マリエはとても穏やかな顔をしていて、子供に虐待を加えるような女性には決して見えなかった…



~葬儀屋~


部屋の捜索を一通り終えた右京と亀山はその足で葬儀屋へ向かう。
ちなみにこの葬儀屋であるが…以前亀山が更生させた若杉栄一が借金の取り立てをして…
その際にヤミ金の激しい取り立てに耐えられなくなった葬儀屋の女主人である阿部由紀子が、
借金をした旦那の身代わりにするために客の死体を自分の旦那にすり替えて誤魔化すという大胆な事件を起こした葬儀屋でもあった…

由紀子「まさかあの時の刑事さんが来るだなんて…」

右京「その節はどうも、実はお話があるのですが?」

由紀子「何でしょうか?もうお亡くなりになった仏さまを粗末に扱ってはいませんけど?」

亀山「いや俺たちはちょっと別件で来たんですけどね…」

由紀子はパートの女性と一緒に葬式に使う引き出物を作るための作業をしている真っ最中であり、
どうにもタイミングが悪い時に来てしまった。
それから右京たちは由紀子に水沼美々子の事を話した。
記録上美々子を埋葬したのはこの葬儀屋であるとの事だった。

由紀子「水沼って…あぁ…あの…まったく困ったものですよ!
親御さんが行方不明だから葬儀代が支払われていないんですよ、これ警察で支払ってもらえますか?」

亀山「いや…そういう事は俺たちには…あれ?」

その時、亀山は由紀子が作業のために使っていた数日前の新聞紙を見て思わずギョッとした。

何故なら…その記事に自分が昨日聞いた岡崎陽子の名前が載っていたからだ…


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―女子大生、電車に撥ねられ死亡―


7月28日、23時頃にJR○×線の電車に早稲田大学に通う岡崎陽子さん(20歳)が歩道橋から落ちて電車に撥ねられ死亡。
警察は事故死として判断、なお岡崎さんは即死ではなく右手右足切断が切断されていた状態ではあるが、
目撃者の証言によると数分間は息があった。
切断された右手には携帯電話が握られており、事故に合う数分前まで友人と会話していたとの事である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


亀山「なっ!?まさか…あの子たちが言っていたのは本当の事だったのか!?」

右京「どうしたのですか亀山くん?
おや、それは数日前の新聞ですね。確か女子大生が事故死したとか…
この時に遺体の検分を行った米沢さんに聞いたのですがこの岡崎陽子さんの口から『赤い飴玉』が発見されたそうですよ。」

亀山「赤い飴玉!?」

さらに話は続く、なんとその事件の目撃者が…

パートさん「あぁ…その事件の目撃者…私なんですけど…」

由紀子「そういえば28日に急なお客様が入ったから夜遅くまで残業させちゃったのよね。」

パートさん「ハイ、確か夜中の23時くらいでしたね。
雨が降り出してきたんです、私はその女性とすれ違いになってその人が…
『やだ、雨降ってきちゃった…』って言っていたのを確かに聞きましたけど。」

由紀子「ゴメンなさいね、残業なんかさせて変な事件に出くわす事になっちゃって…
最近依頼が立て込み続けて…そういえば1ヶ月前の『山下律子』さんが亡くなってから依頼が立て込んできたわよね…」

右京「なるほど、1ヶ月前からですか…」

その話を聞き亀山は顔面蒼白になってしまった…
それからすぐに亀山は慌てて右京を連れ出して急いである場所へと向かった。



~早稲田大学~


カイトたちが通う早稲田大学、亀山は昨日カイトたちと連絡を取り合う時のためにお互いの連絡先を聞いていた。
そこに急いで駆けつけた亀山と事態が読み込めない右京…

亀山「しまった…もう16時だ!?チクショウ間に合わなかったか…頼むぞ…無事でいてくれよ!」

右京「まったく、先ほどからキミの行動は理解し難い行動を取りますね。
どういう事か説明して頂けますか?」

亀山「あ…はい…実は…」

亀山が右京に昨日の説明をしようとしたその時であった。



ファン!ファン!ファン!ファン!


数台のパトカーが大学の構内へと入ってきていた。
それもサイレンを点灯させて、間違いなくこの大学内で事件が発生したのだ!
ちなみに駆けつけたのはご存じ警視庁捜査一課の伊丹、三浦、芹沢の捜一トリオと鑑識の米沢といつものメンバーである。

伊丹「ここが現場か…むむっ!特命係の亀山!何でテメェがここにいやがる!?
ここはテメェの来る場所じゃ…」

伊丹がいつもの喧嘩腰のやりとりを言う途中で亀山は急いである質問をした。

亀山「なぁ!お前らが来たのは河合健二って青年が死んだからじゃないのか!?」

芹沢「先輩よくわかりましたね!
そうですよ、通報があってその河合健二って男性がエレベーターのドアが勝手に開いて転落死したんですよ!」

三浦「まさかお前…事件を目撃していたのか?」

右京「いえ、そんなはずはありませんよ!
亀山くんは今日はずっと僕と一緒でしたし僕たちも先ほどここへ来たばかりですから。」

亀山「こうしちゃいられねえ!」

伊丹「あ、おい待て!?」

亀山は急いで河合健二が死亡したであろうエレベーターの入口付近に来ていた。
そこには昨日会った中村由美がショックを受けて跪いた状態であった…

由美「…」

亀山「おい大丈夫か!何があったんだ!?」

由美「手が…エレベーターから手が…いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」
 
恐怖で錯乱状態に陥る由美、そんな由美を見て亀山はあの死の着信は本物であると確信した。
それから数分後、現場の検証を伊丹や米沢たちで行っていた。


米沢「状況から察するに恐らくこのエレベーターのドアが何らかの拍子に開いてしまったのでしょうな。
そして被害者は運悪く転落死してしまったものかと…」

伊丹「エレベーターが着てないのにドアが勝手に開くものか?
もしかして誰かがドアに細工して被害者を突き落としたんじゃ…」

米沢「それはないでしょうな、そのような痕跡は見当たりませんでした…
第一エレベーターのドアは簡単に細工出来ないように作られていますよ。」

芹沢「じゃあこれって事故死ですか?」

三浦「あぁ、今のところ殺人の可能性は低いな。」

そんなやり取りが行われる中で亀山は右京に昨日彼女に死の着信で相談を受けていた事を伝えて、
落ち着いた由美から河合健二の死亡時の状況を聞いてみた。

由美「あの死の着信の時刻が迫ってきたから私…心配になって健二くんに付いていたんです…
それであのエレベーターに向かう途中の事でした…」

由美の話によると河合健二がエレベーターに乗ろうとした瞬間に知り合いの学生にこう言われたとの事である。

『昼休み、学園祭の出し物決めるってアンタが集合掛けたんでしょ!』

その時に彼が言った言葉がこうであった。

『やっべ、完全に忘れてた!』

その瞬間、エレベーターの扉が突然開いて中から…

((シュコー)) ((シュコー))

という奇妙な音が聞こえてきた、そして…

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

突然エレベーターに吸い込まれるように転落してそのまま死亡という事だった…

右京「なるほど、死の着信ですか。
なるほど、それでキミの行動にも納得がいきます、しかしもっと早く教えてほしかったものですねぇ…」

亀山「すんません…まさか本当にこんな事になるとは思わなくて…」

伊丹「何が死の着信だ!そんなの信じられるわけがねえだろ!?」

そんな右京たちのところへ現場検証を一通り終えた伊丹たちがやってきた。

伊丹「このバカ亀が!
妙に現場に早く到着してのはそれが理由か!
お前も一応刑事だろ!そんな馬鹿げた話を信じちゃいねえだろうな?」

亀山「馬鹿げたって…現にこうやって人が死んでるんだぞ!?」

芹沢「けどそんなオカルトな話信じられませんよ…今は21世紀なんですからね!」

三浦「何か幽霊が殺人を犯したっていう証拠でもあれば別だがな…」

証拠、この言葉を聞いて由美はある事を伊丹たちに訊ねてみた。

由美「あの…健二くんの口から赤い飴玉は見つかりましたか?」

伊丹「飴玉だぁ?」

米沢「飴玉なら確かに被害者の口の中にありましたな、そういえば都内で最近同様の手口が何件かありましたが…」

由美「やっぱり…
実は私見たんです!健二くんが転落する直前に変な青白い手が彼を中に引っ張っていくところを…」

米沢の言葉を聞いた伊丹たちはもしかしたらこの事件は赤い飴玉を使いオカルトに見立ててた、
連続殺人事件ではないかと決め込み捜査を開始する!

伊丹「つまりこれは赤い飴玉を使った連続殺人の可能性があるな!こりゃデカい事件だぜ!!」

芹沢「ちょっと先輩…今回は事故死で片づけるんじゃなかったんですか?」

三浦「それでは我々はこれで失礼しますので…」

すぐにその場を後にする伊丹たちであった。

亀山「あいつら勝手に決めつけやがって…」

右京「赤い飴玉が口からですか…
まるで人間の魂が肉体から抜け落ちるような印象がありますが犯人がいるとしたら何故このような事をするのでしょうかねぇ…」

そんな疑問が右京の頭を過っていた、しかしこの場で考えていても拉致が明かない。
右京はとりあえず本来の依頼である水沼マリエの行方を捜しに行こうとするが亀山は…

亀山「すいません、ちょっと別行動を取らせてもらえますか?
今はこの子を一人にさせるわけにはいかないんで…」

右京「わかりました、水沼マリエさんの捜索は僕が行います。
キミは彼女が落ち着くまで傍にいてあげてください。」

そう言って右京もまたその場を立ち去った、そんな右京と入れ替わりでカイトが由美を心配して急いで駆けつけてきた。

カイト「由美大丈夫か!健二はどうした!?」

亀山「確か…甲斐くんだったよな…すまない、彼はもう…」

カイト「そんな…マジかよ…」

落胆するカイト…だが…そんなカイトの前に一人の女性が悲鳴を上げた…


「「イヤァァァァァァ!?」」


亀山「な…何だ!?」

カイト「なつみ!お前も来てたのかよ!」

悲鳴を上げた女性は小西なつみ。
カイトたちと一緒に26日の合コンで最初に殺害された被害者とアドレス交換していたメンバーであった。

なつみ「け…携帯…私の携帯に死の着信が…」

亀山「死の着信だと!?」


((♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫))


まるで子守唄みたいなオルゴールのメロディ。
これこそが岡崎陽子、それに河合健二を死に至らしめた死の着信であった。

夏海は恐る恐る携帯電話を開けた、そこには画像が出ていて8月4日の0時0分と出ていた。

なつみ「そんな…今日の夜だなんて…嫌よこんなの!?」

すぐに携帯電話を外に放り投げてその場で泣き崩れるなつみ、その姿を見て呆然と立ち尽くすカイトに由美と亀山…
さすがの亀山も慰める言葉が見つからなかった…

そんな時、どこからか死の着信の噂を聞きつけてマスコミの人間がなつみに近付いてきていた。

藤枝「ねぇキミ、最近巷で噂になっている死の着信を受けたんだって!
ウチで取材受けない?勿論力にもなるよ、いい霊媒師を紹介するからさぁ!」

その男は東西テレビの藤枝一郎という男であった。
彼は半ば強引になつみへ取材を申し込み、落ち込むなつみに対してかなり強引にアプローチを仕掛けて
その態度にさすがの亀山も彼の行動を止めようとした。

亀山「おいお前こんな時に止めろ!彼女嫌がっているだろ!」

藤枝「おいおい刑事さん!それじゃあ聞くけどさ警察にこの事件の犯人捕まえる事出来るの?
出来ないよね、死の着信の噂が流れてからどれだけ人が死んでいるだろうかなぁ?
アンタならこの子を救えるって確証はぁ!あるのかぁ!!」

半ば恫喝染みた口調で亀山を詰る藤枝、その言葉を聞き確かに今の自分にはなつみを救う手段などありはしないと思い立ち尽くしてしまう。
そしてなつみも…

なつみ「わかりました、私…取材に応じます…」

藤枝「そうこなくっちゃ!有名な先生呼んであげるからね、あの先生なら絶対なんとかしてくれるから!
おい、すぐ局に帰るぞ!」

カイト「おいなつみ!」

由美「なつみ待って!」

亀山「やめろ!そんな無理に付いて行かなくたって…」

なつみ「でも…私…健二みたくなりたくないよ…ごめんね…」

そう言い残すとなつみは藤枝によって強引に東西テレビに連れて行かれてしまった…

とりあえずここまで
補足説明、このssには堤真一さんが演じた山下弘は出ません。
その代わりに彼のポジションにカイトくんがいます
それと本来中村由美が通う大学は城南大学なのですが設定の都合でカイトくんが通っていた早稲田に変更しました。

>>30

どこかのまとめサイトさんにあると思いますが相棒とホラーのコラボ書いてるのは大体私です
リングと呪怨がそうです

>>34

シーズン12で亀山さんネタがいくつかあるから復活フラグではないかと思うのですが…

>>57

亀ちゃん(死亡)フラグor(美和子死亡で)亀ちゃん(悪堕ち)フラグはあるかもね 即身仏でサルウィン内乱記事出てるし



~特命係~


部屋に戻ってきた亀山は落ち込んでいた、相談を受けておきながら見す見す河合健二なる青年を無残に死なせてしまい…
今度は小西なつみの命が危ういというのに自分にはこの事件を解決させる術がないという事を今回の事件で酷く痛感していた…
そこへ右京が水沼マリエの捜索から戻ってきた。

右京「遅くなりました、おや…随分と落ち込んでいますね。何があったのですか?」

亀山「…それが…」

亀山は右京に事の詳細を話した、その話を聞いて右京もまた亀山にある言葉をぶつけた。

右京「なるほど、確かに今回の事件…仮に呪いの類が原因だったとしましょう。
解決できない、自分には無理だと言ってキミは助けられる被害者を見殺しにすると言うのですか?」

亀山「そんな!出来るわけ無いじゃないですか!?
俺だって助けてあげたいですよ!けど…この事件は犯人の痕跡が全く掴めないんじゃしょうがないですよ…」

右京「そうやってすぐに諦めてしまうのがキミの悪い所ですよ。
犯人に辿り着ける手段ならあります、犯人と同じ方法を使い逆に辿っていくのですよ!」

亀山「逆に?どういう事ですか?」

右京「先ほどキミから聞いた死の着信の条件です。
死の着信を受け取り死んだ者の携帯のアドレスから次の相手を見つけるという事でしたね。
ならば…被害者の携帯電話にはその前の被害者…
今回の場合で言うなら河合健二さんの携帯電話に岡崎陽子さんの携帯のアドレスが残っていたはず。
それを辿って行けば…」

亀山「そうか!
そうすれば犯人の携帯電話のアドレスに辿り着けるって訳ですね!それじゃあさっそく鑑識に行って…」

右京「そんな必要はありませんよ、既に僕が調べましたからね。」

亀山「せっかく閃いたのに…それで犯人は誰だったんですか!?」

右京「しかし残念ながら犯人にまでは辿り着けませんでした。
携帯電話のアドレスと赤い飴玉を口に咥えていたという死亡報告を照らし合わせた結果…
最初の被害者が判明しただけです。」

亀山「最初の被害者?」

右京「山下律子さん…聞き覚えがありませんんか?」

亀山「山下律子…?あぁー!確か葬儀屋で…」

そう、葬儀屋での会話の中に確かに山下律子の名が言われていた。
そして会話の中で彼女の死亡後から都内で頻繁に赤い飴玉を咥えた変死体が発見されたのと時期があった。

亀山「じゃあ山下律子の携帯を調べれば犯人がわかるんですね!」

右京「えぇ、そういう事になります。そしてその携帯電話も既に調べがついています。
その人物は…」

その時である、なんとも妙なタイミングで角田課長が現れた。

角田「よ、暇か?
ウチはここんところ大忙しだよ、近い内に二人にも手を貸してもらうからその時はよろしくな!」

亀山「角田課長…こんな時にですけど…」

右京「確か新宿の繁華街に潜伏している中国マフィアの一斉摘発でしたね。
その様子だと上手くいっているようですが…」

角田「まあね、証拠固めも順調だし後は摘発すればヤツら一網打尽よ!
王健峰とかいう台湾人がやってる台湾料理の店なんだが表向きは普通の飲食店だが裏じゃあの悪名高い城南金融と手を組んでるとんだ悪党だよ!
あ、摘発の時は二人とも応援頼むよ♪」

亀山「いや…俺たちは今…」

亀山は現在自分たちが抱えている事件があるのでその話を断ろうとした時であった。
大木と小松が慌てて部屋にやってきた。

角田「な…どうしたんだよお前ら!?」

大木「大変…大変ですよ!」

小松「TV!TVをつけてください!東西テレビがとんでもない事やってますよ!」

亀山「TVだと…?」

右京「とりあえず付けてみましょうか。」

大木と小松の言う通りTVを付ける右京、そして東西テレビのチャンネルを見るととんでもない番組が始まっていた。



<緊急生特番!死の予告を受けた女子大生!!>


ナレーター『遂にこの時がやってきました、みなさんは自分の死の予告を自分の声で、

しかも携帯電話を使って伝えられたらどうしますか?

今夜は今、世間を騒がせている死の予告電話を徹底検証すべく緊急特別番組を生放送でお送りします!

ある女子大生が受けてしまった死の予告電話の時刻はまさに今夜…

8月4日0時、あと38分後です!!

そしてこの方が今回恐ろしい死の予告電話を受けてしまった小西なつみさんです、どうぞ!!』

なつみ『あ…あぁ…ハイ…』

突然の緊急報道番組、そしてその番組に出演していたのはなんと亀山が昼間に早稲田大学で会った小西なつみであった。

亀山「何だよこれ…どうなってやがる!?」

右京「なるほど、そういう事でしたか。
恐らくキミが昼間に出会った藤枝という男は小西なつみさんを利用してこの緊急特番の企画を成立させたかったのでしょうね。
死の予告電話を受けた人間ならそれだけで視聴者の興味が引き立てられますからねぇ…」

亀山「そんな…でもあいつ専門家の先生を呼んでやるって言ってたんですけど…」

なつみを心配する亀山がTVを観ると何やら霊媒師風の男が画面に映った。
その男を見た角田課長は思わず驚きを露わにする。

角田「おい!こいつ…天道白水じゃねえか!?
捜査二課がこいつの事を近々逮捕するって乗り出している最中だぞ!!」

亀山「逮捕?どういう事ですか!?」

角田「あぁ…こいつはとんでもない悪徳詐欺師でな!
霊感商法とか言って高値でガラクタ売りつけたり高額な除霊代を請求したりとんだ小悪党だよ!」

亀山「なんてこった…」

小西なつみは藤枝を信じて付いて行ったのだ。
それなのにこのような見世物の扱いを受け、さらに除霊をするのがインチキ霊媒師…
こんな光景を見てジッとしていられる亀山では…いや…特命係ではなかった!

亀山「右京さん、俺!」

右京「わかっています、至急東西テレビに向かいますよ!
角田課長、お手数ですがこの東西テレビの緊急特番を録画しておいてください!」

角田「わかった任せておけ!」

右京と亀山は急いでこの緊急特番を放送している東西テレビへと向かった。



~東西テレビ~


警備員「何だアンタらは!?」

右京「我々は警察です!そこをどきなさい!」

亀山「こんなふざけた報道はすぐにやめろ!」

東西TVに到着した右京と亀山は立ち塞がる警備員たちを押し退け急いでスタジオへ向う。
スタジオでは天道白水がなつみに対してわけのわからないお経を唱えている最中であった!

白水「なんまいだ~さんまいだ~よんまいだ~!」

なつみ「亀山さん!」

亀山「なつみさん!すぐにここを出るぞ!」

すぐにここから出ようと言う亀山、だがその時右京がある異変に気付く!


♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫


右京「待ってください!この着信音は何ですか?」

亀山「え?」

それはなつみのポケットの中から聞こえてくるあの死の着信音、彼女は恐る恐るポケットの中を探るとそこにあったのは…

なつみ「け…携帯電話…そんな…投げ捨てたはずなのにどうしてここに?」

投げ捨てたはずのなつみの携帯電話がそこに在った。

なつみ「あぁ…そんな…嫌よ…」

亀山「投げ捨てた彼女の携帯が何でここにあるんだ!?」

なつみの手元に突然現れた携帯電話に驚く亀山、しかしそれだけではなかった…


((ドオオオオオン!))


白水「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

除霊を行っていた白水が突然どういうわけか吹っ飛ばされてしまったのだ。
この事態に恐怖を感じたスタッフもさすがに…

ディレクター「おい!CM入れろ!CM!」

…と放送中止を呼びかけようとするが…

藤枝「CM入れるな!このまま続けろ!こりゃ高視聴率間違い無しだぞ!!」

藤枝は愚かにも放送を続けるようにと命じる、この後何が起こるか知っていればこのような事は命じなかったはずなのに…

右京「亀山くん!時刻が…」

時刻は8月3日23時59分になった、死の着信の時刻まであと1分足らず…
右京と亀山は急いでなつみをこの場から逃がそうとする、するとそこへ…


「「なつみ!!」」


どこからか女性の声が聞こえてきた、その女性は中村由美であった。

亀山「由美さん!そうか、心配して来てくれたんだな!」

そしてなつみは由美のところへ急いで駆け寄った。

なつみ「由美!私恐かった…恐かったよ!」

『安心して…もう終わったから…』

由美に抱きしめられ安堵するなつみ。
その姿を見た亀山はとりあえず安心して一息つける、だが右京は二人の映像をカメラ越しで見てこれが奇妙な光景であると気付く!

右京「なつみさん!急いでその女性から離れなさい!!」

亀山「な…何言っているんですか?由美さんはなつみさんの友達ですよ!」

右京「亀山くん!カメラ越しで由美さんを見てください!」

そして亀山もまたカメラ越しで由美となつみを見てみると…そこにはとてつもなく奇妙な光景が映っていた!

亀山「こ…これは!」

右京「今こちらのカメラにはなつみさん!あなたしか映っていません!
そこにいるのは由美さんではありませんね、一体誰なのですか!?」

なつみ「そ…そんな…」

なつみは急いで由美(?)から離れようとする、だが由美(?)はなつみを力強く掴んで離そうとしなかった。
そして次の瞬間!


((ブワッ!))


亀山「なっ…!なつみさんが空中に浮かんだ!?」

突如空中に浮かぶなつみ、しかしそれだけではなかった…



((シュコー、シュコー))


奇妙な空気の音が流れると同時に嫌な音が右京と亀山の耳に入る、それはまるで骨が砕けるような音が…


((ベキッ!ボキッ!バキッ!))


なつみ「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!??」」


なつみの両腕の骨がズタズタに引き裂かれる音がスタジオ内で響いていた。
右京は辺りを見回すがワイヤーで彼女を吊り上げているとかそんなトリックの痕跡は見当たらなかった。
とにかく一刻の猶予も無い、二人は急いで空中にいるなつみを連れ出そうとするが…



((ドンッ!!))


右京「ぐはっ…」

亀山「うわぁぁぁぁぁ!?」

二人も先ほどの白水と同じく目に見えない力によって吹き飛ばされてしまった。

そしてなつみは…


((ゴキッ! ゴキッ! グシャッ…グシャグシャグシャッ…………ブチッ!!))


首を何度も回転させられた後に何やら奇妙な音がした。
吹き飛ばされた右京と亀山は急いで立ち上がりなつみに近寄ろうとするがその時、亀山の足元に何かが転がって来た…

亀山「待ってろよなつみさん!なんとか助けてやるからな!」

右京「いえ、どうやら手遅れのようです。亀山くん…キミの足元をよく見てください…」

亀山「え?足元?なっ…これは…!?」

そこに転がり落ちていたのはなつみの首であった、恐る恐るなつみの身体を見てみると…


((ブシュゥゥゥゥ!))


そこには首の無いなつみの死体が大量の出血を出して倒れていた。
そして彼女の口元からあるモノが転げ落ちた…

亀山「赤い…飴玉…」

右京「時刻は8月4日0時0分…どうやら犯人は予告通り殺人を完了したようですね…」

8月4日0時0分、死の着信は予告通り小西なつみを死に至らしめた…

とりあえずここまで

>>61

官房長や三浦さんの退場でダメージ有るので出来れば普通に捜査する展開にしてほしいです
これ以上相棒レギュラーが死んだり怪我して退場は勘弁願いたいので…



1時間後…


藤枝「やめろ!俺は何もしてないぞ!?」

伊丹「ふざけんなこの野郎!テメェの所為で人が死んでんだぞ!!」

三浦「アンタは小西なつみさんが死の着信だとかわけのわからんオカルトで死ぬという話を予め知っていた!
だからそれを利用して高視聴率を取ろうと画策した、そして…彼女を実際に死に至らしめた!
現に今夜の東西TVの視聴率は70%超えてるからな!」

藤枝「馬鹿言うな!いくら数字のためとはいえそんな事で人殺しなんかするわけないだろ!?」

芹沢「たとえあなたが犯行に関わってなかったとしてもこんな危険な撮影を強行したんです!
殺人ほう助に問えなくもないんですよ!」

藤枝は到着した捜査一課の伊丹たちに抑えられ、連行される最中であった。
捜査一課の見立てではこの藤枝が犯人と共謀して今回の犯行を行ったのではないかと考えていた。
その藤枝を警視庁に連行しようとする最中に亀山も彼に一言文句を言ってやろうとしたがそれを伊丹に阻まれた。

伊丹「おーっと!特命係の亀山ぁ!!
どきやがれ!これから藤枝を本部に連行しなきゃならねえんだ!」

亀山「うるせえ!あいつに言ってやらなきゃならねえ事があるんだよ!」

伊丹「だとしても今のテメェに言う資格なんかあるわきゃねえだろ!」

亀山「何!?」

伊丹「少なくともお前がこんな胡散臭い男に被害者を任せなきゃ、こんな見世物みたいな死に方はしなかったろうよ!
テメェの不甲斐無さの責任だ馬鹿が!!」

そんな捨て台詞を残し、亀山が呆然と見つめる中で伊丹たちは藤枝を連行していった…

そして追い打ちをかけるかのようにカイト、中村由美の二人が急いでこのスタジオへと駆けつけてきた。
二人は無残な死体となった小西なつみの前で思わず泣き崩れていた…

亀山「甲斐くん…それに由美さん…すまない…俺の所為で…」

由美「そんな…なつみが…
これであの合コンに参加したメンバーは私とカイトくんの二人だけに…あれ?携帯が…?」

♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫

由美の携帯から死の着信が鳴り響く、その時刻は8月4日20時26分であった。

カイト「由美!クソッ!?…なぁ…亀山さん!俺たちアンタにちゃんと相談したよな!?
それなのに…なつみが…なつみが死んじまったんだぞ!!」


(ドガッ!)


亀山「うわっ!?」

突然カイトに殴られる亀山、いつもならそう簡単に殴られるわけではないのだが…
先ほどの痛みが言うように自分の所為で人が死んでしまった、そんな責任からカイトの拳を避ける事が出来なかった…

カイト「だから警察なんか最初から信用できなかったんだ…
もうアンタらには頼まねえ…こうなったら…俺がこの事件の犯人を捕まえてやる!!
みんなの敵を取ってやるんだ!!」

由美「待ってカイト!」

怒りの感情をむき出しにして亀山を殴りつけたカイトはそのままスタジオを後にする。
そんなカイトを心配して追いかける由美、一人…その場に取り残された亀山の前に米沢の鑑識の結果を聞いていた右京が現れた。

右京「だいぶ荒れていますね、キミはもうこの事件からここで手を引きますか?」

亀山「そんなわけ…ないでしょ!
なつみさんは俺の所為で死んだようなものです、なら俺が…俺の手でこの事件を解決する事が彼女に対する俺の償いです!!」

亀山は落ち込んではいられなかった…
無残な死を遂げた彼女の無念を晴らすためにも刑事である自分のすべき事は嘆く事ではない。
一刻も早くこの事件の犯人を見つける事であると自分の職務を全うしようとしていた!

右京「そう言うと思っていましたよ。
それでは犯人の捜索ですが…一課はこの事件を藤枝さんの仕業だと思っているようですね。
恐らくそれは見当外れだと思いますよ。」

亀山「そうですよね、俺たちを吹き飛ばしたあの力はまるで超常的な力を感じました…
あんなのは人間業じゃないっすよ!」

右京「僕はキミのような霊感は無いのでそういった類の事は門外漢なのですが…
先ほどのなつみさんの殺害方法ですが…幼稚さを感じさせましたね、まるで子供が人形遊びをするようなそんな感じが…」

亀山「幼稚さ…ですか?そういえば右京さんはさっき犯人の携帯電話の番号がわかっているって言いましたよね!
犯人は一体誰なんですか?」

亀山の問いに対して右京は少し苦い顔をしながらこう答えた。

右京「まだ犯人と断定できるわけではありませんが…
まったく…今回の事件は奇妙なモノですね…まさか二つの事件が繋がっていたとは…」

右京の言動に困惑の表情を浮かべる亀山、そして右京は犯人の名前を告げた。

右京「最初に殺害された山下律子さんの携帯に残っていたのは…
090‐〇〇‐××××、僕たちが現在行方を追っている水沼マリエさんの携帯番号でした。」

亀山「それじゃあまさか…犯人は…水沼マリエ!?」

亀山は右京に菜々子にとって必ずよい結果で終るとは思わない方がいいと言った言葉を思い出す…
まさか本当にそうなるとは…

そしてその会話をカイトが立ち聞きしていた…

カイト「水沼マリエ…その女がみんなを…!」



<8月4日>


~武蔵野青木外科医院~


右京と亀山は死の着信の最初の被害者である山下律子が臨床心理士を務める武蔵野青木外科医院にやってきた。
ちなみに右京と亀山は以前にもこの病院を訪れた事がある。
この病院の前院長である青木征十郎が息子の『青木周作』の執刀ミスによる事故死。
その執刀ミスに疑問を持った右京と亀山は捜査を開始、事件の犯人はこの病院の勤務医である小林亘と妹の恭子の二人であった。
医者である人間が何故殺人を犯す事に膨大なエネルギーを使うのか…と嘆かねばならないなんとも痛ましい事件であった…

青木「まさか急患だと駆けつけてみればあなた方だとはね…」

右京「その節はどうも。」

亀山「俺たち一応怪我人なんで、ホラ!怪我してるでしょ!」

右京と亀山は東西テレビで吹き飛ばされた際の傷の手当てを、この病院の院長である青木に診てもらっていた。

青木「まったく…僕は親父の後を継いで院長なんですがね…まぁあんな事件の後じゃ患者は減るし勤務医も去って行くわで…
院長である私がこうして診察しなければならなくなりましてね…
杉下さんのは…まぁ擦り傷ですから湿布貼っておけば充分でしょ…
問題は亀山さんですね、この腕の傷ですけど…こりゃ縫合した方がいいですな。」

亀山「縫合!?…痛そう…」

嫌がる亀山を前にさっそく縫合を始める青木、そんな青木の縫合を見て右京はある事に興味を示す。

右京「おや、『女結び』なのですね。」

亀山「痛てて…って女結び?」

右京「結紮の仕方ですよ、縫合を行う際には女結び、男結び、外科結びの三種類があります。
その内の一つである女結びですね。」

青木「相変わらず何でも知ってますねぇ…
それで何の用ですか?まさかあなた方が遥々ここまで治療だけしに来たわけではないのしょう?」

右京「すみませんね、細かい事が気になるのが僕の悪い癖で…
ところで今日お邪魔したのは治療だけではありません。
1ヶ月ほど前にこの病院に勤める臨床心理士の山下律子さんが亡くなられた事で少しお尋ねした事があるのですが…」

青木「彼女は…事故…じゃなかったんですか?」

亀山「死の着信…ご存じありませんか?昨日の夜にTVで盛り上がっていたんですけどね…」

青木は少し動揺した表情を見せるが彼らが訪ねて来た理由は既に察していた。

青木「なるほど、やはり水沼マリエについて聞きに来たわけですか。」

亀山「彼女の事知ってるんですか!?」

青木「知っているも何も水沼マリエは元はこの病院で働いていたんですよ!
それが数年前からもっと稼ぎのある水商売をしたいというんでここを辞めていったらしいですけどね…
あぁ、ちなみに言っておきますけど娘二人もその縁でここでよく治療をしてましたよ。
菜々子ちゃんも怪我したらよくウチで診察受けてましたし、長女の美々子に至っては喘息持ちでしたから…」

青木の話を聞いて右京は何故山下律子の携帯電話に水沼マリエの番号があったのかがわかった。

右京「なるほど、そういう事でしたか。
恐らく菜々子ちゃんの身体の傷を見た山下律子さんは親である水沼マリエさんが、
子供たちに虐待をしている事に気付いたのでしょうね。
その行為を止めさせるためにマリエさんの携帯を使いマリエさんと連絡を取ろうとしていたのではないでしょうか。」

亀山「じゃあやっぱり一連の事件の犯人は水沼マリエ…
けど彼女は何で子供たちを病院に連れて行って治療をさせていたんですかね?
そんな虐待をする母親なら普通は面倒臭がって放置するでしょ!」

右京「僕も以前その点に関して疑問を持っていました。
しかし山下律子さんが臨床心理士という事にある疑惑が浮かびました。
臨床心理士というのは精神的な病を専門職としています。
ならば山下律子さんは水沼マリエさんに精神的な障害があったと思われたのではないでしょうか?」

亀山「精神的な障害?それって何ですか?」

亀山の疑問に対して青木がある病名を告げる…

青木「『代理ミュンヒハウゼン症候群』…山下くんは水沼マリエをそう診断していましたよ…」

亀山「だ…代理…ミュ…?何すかそれ?」

まったくわからないという表情を浮かべる亀山に対して右京が答える。

右京「代理ミュンヒハウゼン症候群、精神疾患の一種です。
通常のミュンヒハウゼン症候群は患者が周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、
自らの体を傷付けたりするといった自傷行為を指します。
しかし代理ミュンヒハウゼン症候群は自分ではなく…
対象は他者…それも自分の身近にいる人間が代わりに傷つけ周囲の関心を引き寄せる事を言います。」

亀山「な…なんすかそれは…
それじゃつまり水沼マリエは精神病だったって事ですか!?」

青木「疑いの段階でした、病院には児童虐待の痕跡を見つけたら通報を義務付けられていましたが僕が止めていましたよ…
まだ決めつけるのは早いと思いましてね、仮にも相手はたった一人の母親…
施設送りになればあの母子家庭がどうなるかだなんて目に見えているでしょう…」

一見水沼一家を心配そうに言っている青木だが本心は違うだろうと亀山は喰ってかかった。

亀山「本当にそうなんですかね?
水沼マリエは元はここのスタッフだった、そんな彼女が虐待しているなんて知られたらどうなるだろうな!
アンタはこの病院の看板にこれ以上傷を付けたくないから通報を止めてただけじゃないのか!
その所為で姉の美々子ちゃんが死んじまったんだぞ!?」

青木「フフ、病院の看板に傷だなんて…あの事件以来堕ちっぱなしですよ…
それに…美々子は…いやまぁいいでしょう…
とにかく僕は今回の事件には関わっていません、それだけはご理解願えますかね!」

右京「なるほど、わかりました。
ところで水沼美々子さんですが救急車でこの掛かり付けの病院に搬送される途中との事でしたね。
その時に死亡診断をなされた診断書などできたら拝見させてもらえますか?」

青木「どうぞ…お好きに…」

さっそく右京は青木から美々子の死亡時の診断書を渡されてそれを見ていた。
ちなみに青木はその後すぐに仕事があるからと言って院長室に戻ってしまう。

亀山「やっぱあの男…全然変わってませんでしたね!
あれじゃ近い内にまた医療ミスを起こして今度こそ本当に医師免許失効するかもしれませんよ!」

右京「まぁ、それはともかく…
やはりですね、水沼美々子の診断書は喘息の発作に間違いがありません。
それ以外には大した傷がありませんが…」

二人が診断書を調べていた時であった、廊下から何やら看護師たちの話声がしてきた。
気になった亀山は看護師たちに何の話をしているのか聞いてみる。

亀山「何話してんですか?」

看護師「あぁ…この病院の事を話してたんですよ…
院長がボンボンのバカ息子だから頼りないし他の病院に移ろうかなって…
相変わらず先物取引には手を出すしなんだか知らないけどここ最近妙に携帯電話を買い替えてるし…
あまりにもアレだから昔は先代の院長が台湾の貧しい地域にNPOの派遣医師として行ってこいって無理矢理駆り出されてましたからね…」

亀山「ハハ、昔から相変わらずなんですね…」

どうもこの看護師は昔からこの病院に勤務しているようで病院内の内情に詳しかったようで右京は水沼マリエについて聞いてみた。

右京「失礼ですが水沼マリエさんの事をご存知ですか?」

看護師「マリエちゃん?えぇ、知っていますとも!
この病院に勤めていましたからね、それに美々子ちゃんと菜々子ちゃんの出産もウチの病院でやりましたから!
今はありませんけど前の病院じゃ産婦人科もやっていましたからね!
いい子だったから前の院長もあの子が辞める時結構な退職金を上げていたそうですよ。」

右京「前の病院?もしかしてこの病院は以前他の場所にあったのですか?」

看護師「そうですよ、この病院は10年前に移転された場所ですから。
それにしてもマリエちゃんも可哀想な子なんですよ…ろくでもない男に妊娠させられたんだから…」

亀山「それはどういう事ですか!」

看護師が言うには美々子と菜々子の二人は共に私生児で、妹の菜々子はホステスの客との子供であるが…
美々子の父親については誰であるのか一切明かされてはいなかった。

看護師「何て言うんでしょうかね…あの子…いい子なんだけど男運はさっぱりと言った感じで…」

右京「なるほど、水沼マリエの戸籍を調べてみる必要がありますね。」

亀山「ウッス!」

看護師「ところでなんだけど…」

右京と亀山が病院を出ようとしたその時、看護師は思い出したかのようにある事を告げた。

看護師「そういえば…アンタたちみたく二人の若いカップルがマリエちゃんの事を聞きに来たんだけどあの子らもアンタたちの知り合いなの?」

右京「はぃ?」

亀山「若いカップルってまさか…その二人に何を話したんですか?」

看護師「今さっき話した事を言っただけよ!
そしたら男の子の方が前の病院に何かあるかもしれないって思って飛び出して行っちゃったんだけど…」

亀山「早まった事を…右京さん!俺は移転前の病院に行きます!」

右京「わかりました、僕は水沼マリエさんの戸籍を調べに行きます。」

そして亀山は右京と別行動を取り、移転前の病院へと向かった…



~旧武蔵野青木外科医院~


<20時00分>


移転前の病院へやってきた亀山、そこは10年以上買い手が見つからないために放置され、
建物がかなり老朽化していた。
さっそく中に入った亀山だが、人の気配はまるで感じられず本当にカイトと由美がいるのか疑問を感じていた時であった…

カイト「もしかして…亀山さん?」

亀山「甲斐くん!よかった無事だったんだな!ところで由美さんは…?」

カイト「実は…さっきはぐれてしまって…」

カイトが説明するには二人でこの建物に入ったのは確かなのだが途中彼女とはぐれてしまったという事であった。
そんな訳で亀山はカイトと一緒に由美を探す事になった。
しかしふて腐れ気味なカイトと何か話でもしようかと思った亀山だが会話の糸口が見つからないでいた…

カイト「…」

亀山「あのさぁ…甲斐くん…そういえばキミは何で『カイト』って呼ばれてるの?」

カイト「……甲斐亨だからカイトって呼ばれているだけですよ。昔からそういうあだ名なんで…」

亀山「あぁ…そっか…それにしてもどうしてこの場所に辿り着けたんだ?」

カイト「大した事ありませんよ、アンタたちの会話をちょっと盗み聞きしてたんですよ。
それでこの病院を探し当てた、それにあの病院の看護師さんから聞いて水沼マリエが隠れていそうな場所に…
この閉鎖された無人の病院跡地が打ってつけだと思ったまでです。」

なんとか会話の糸口を切り出した亀山、そこでカイトの父親が警察官である事に関して話題を振ってみようとする。

亀山「な…なるほど…さすが警察官のお父さんを持っていると違うな…
刑事になれそうな先入観の持ち主だ!」

カイト「親父は!……親父は関係ないだろ!!」

亀山「え…?」

地雷を踏んでしまった、どうやら父親とは不仲な事をさすがに察した。

カイト「どいつもこいつも親父の事ばかり持ち出しやがって…あんな男の何がスゴいんだよ!?」

亀山「お父さんの事は…嫌いなんだね…」

カイト「あの男がこの世に存在している事自体が憎たらしいですね!
だからあの親父と同じ職の警察官にだって本当は…今回の事件を解決してほしくはなかったんだ…」

父親と同じ職の警察官にすら嫌悪の感情を抱き始めるカイト。
そんなカイトを諌めようかと思ったが、自分がもっと真剣に対応していれば少なくとも小西なつみは死ななかったのでは…
という負い目を感じていた亀山は強気には出れなかった。

そんな時であった…



「「イヤァァァァァァ!!!!!!!!!」」


カイト「この声は由美のだ!」

亀山「急ぐぞ!」

二人は急いで叫び声のした方へ行ってみる、そこは病院内の死体安置所…
中に居たのは先ほど悲鳴を上げた中村由美とそして…

カイト「由美!大丈夫か!」

由美「か…カイトくん…こ…これ…」

由美は死体を洗浄する蓋の付いた浴槽に指を差す。
そこには腐りかけた人間の手が見えていた。
亀山とカイトはその蓋を開けてみるとそこにあったのは…

亀山「これは…死体!?」

そこにあったのは死体、しかしただの死体ではない…
1ヶ月以上放置されていた腐乱死体、体格は女性…そしてその死体の横には奇妙な瓶と携帯電話が置かれていた。
その携帯電話の中を見てこの携帯電話が亀山たちが探している水沼マリエの物であると判明した。

亀山「この携帯は水沼マリエの物だ、という事はこの死体は水沼マリエって事に…」

カイト「ちょっと待ってくださいよ!
この死体はどう見たって1ヶ月以上経っていますよ!彼女が犯人じゃないんですか!?」

カイトの当然な疑問、確かに亀山も彼女が犯人ではないかと疑っていた…
しかし当の本人がこうして死体となって発見されたとなれば話は別である。
二人がそんな疑問を抱く中、由美が興味を持ったのか死体であるマリエの顔をよく見ようと近付いてきた。

由美「あの…私にもよく見せて…」

亀山「やめときなって、こんな死体見たって…うん?」

由美は死体の顔を見ようと手で触れようとした。
亀山は由美の手に注目する、その手にはまるでタバコで押し付けられたかのような火傷の跡があった!

亀山「おいこの火傷の痕どうしたんだ!誰にやられた!」

由美「あ…これは…昔両親に…」

カイト「由美は昔母子家庭で母親から虐待を受けていたんですよ…
まったくどこの家もろくな親がいやしないんだからな…」

親に絶望感を抱くカイト、そんなカイトを亀山が諭す。

亀山「親ってそんなに悪いもんじゃないと思うぞ。
少なくともキミたちだっていずれ愛する人と結婚して子供産んで親になるんだからさ!
ま、俺も今は結婚考えてる人がいるんだけどさ…」

カイト「何すかいきなりノロケ話して…」

由美「でもこの人…こんなところに一人で…可哀想…」

カイト「可哀想なもんかよ、子供に虐待してたんだろ!当然の報いだ!」



((ギギギギギギギギ…))


その時である、まるでカイトの言葉に反応したかのように死体が動き出した!

カイト「なっ!?死体が動いた!?」

由美「そんな…死んでいるはずじゃ…」

亀山「どうなってんだこりゃ!?とにかく二人は逃げろ!こいつは俺が…」

カイト「は…ハイ!行くぞ由美!」

由美「う…うん!」

亀山は二人を逃がして死体を取り押さえようとする…が…



((バシッ!))


亀山「うわぁっ!?」

亀山はまるで見えない何かの力で弾き飛ばされてしまう…

亀山「こりゃあの時のスタジオで吹っ飛ばされた時と同じだ…
じゃあつまり一連の事件は死体となった水沼マリエの仕業って事かよ!?」

マリエ(あ゛ぁぁぁ…)

亀山「違うなら反論してみろ!アンタが何で死んだのかはわからねえが子供を虐待死させるなんてな!
アンタそれでも母親か!?」

亀山はマリエに対して激しく詰め寄った、子供たちを虐待させ死後も人々を呪い殺す禍々しい存在…
そんな者に躊躇している場合ではなかったからだ。
だが…マリエは何やら奇妙な事を亀山の前で呟き始める…


マリエ(チガウ…ワタシ…ジャ…ナ…イ…)

亀山「な…何言ってんだ?」

亀山が事件の犯人を水沼マリエと断定した時であった。

((ヴィー、ヴィー、ヴィー、))

亀山の携帯電話が突然鳴り出した、相手は右京であった。
亀山は急いで右京にこの事を伝えるようとする…

亀山「右京さんですか!わかりました犯人は水沼マリエですよ!
美々子ちゃんを虐待死させただけじゃ飽き足らずに携帯電話を使って次々と呪いを掛けて人々を殺していったんです!」

亀山はこれまでの事態を急いで右京に報告し水沼マリエが犯人であることを告げる。

だが右京は…

右京『キミの言っている事は少し理解に苦しむ点がありますが…
犯人は水沼マリエではありませんよ!』

亀山「え?」

マリエ(…)

右京の言葉を聞き思わず驚く亀山、そして動きを止めるマリエ。
そんな二人の反応は無視して右京は電話越しで推理を語り出す。

右京『そもそも水沼マリエさんは虐待なんてしていなかったのですよ。
水沼美々子さんの診断書を見て僕は疑問に思っていました。
菜々子ちゃんには虐待の痕跡が多数見つかったというのに美々子さんの死体には虐待の痕跡はなかった…
つまりこう考えるべきです、虐待を受けていたのは美々子さんと菜々子ちゃんではなく菜々子ちゃんだけであったと!』

亀山「待ってください!それってどういう事なんですか!?」

右京『ここで注目すべき点があります、僕たちが水沼宅へお邪魔した際に戸棚から発見されたビデオカメラです。
残念ながら中身のテープは抜き取られていましたがそもそもなぜあのようなモノが設置されていたと思いますか?』

亀山「え…そりゃ映像を撮るためじゃないですか?」

右京『そう!そうなのですよ!ですが誰が何のために?
考えてみれば不自然でした、あの戸棚は子供たちには届きにくい戸棚でした!
つまり…あの戸棚にビデオカメラを設置したのは大人なのですよ!
そして、水沼家で大人といえばたった一人しかいません。
母親である水沼マリエさんがあのビデオカメラを設置したのです!!』

亀山「なんですって!けどそれならマリエさんは一体何を撮ったというんですか?
それに誰が菜々子ちゃんを虐待したんです!?」

亀山の言う通り、虐待を行っていたのがマリエでないとすれば誰が虐待を行ったのか…という当然の疑問が浮かぶ。
右京は…暫く口を閉ざしたが意を決っして菜々子に虐待を行っていた者の名を言う事にした。

右京『……マリエさんの戸籍を調べたすぐ後に…僕は現在、菜々子ちゃんのいるのぞみの家に来ています。
そして思い出してください、菜々子ちゃんは小さなカバンを持っていましたね。
もしもあの家からテープが持ち出されたとしたら菜々子ちゃんが持っていたとしても不思議ではないと思いませんか。
つまり彼女はマリエさんからテープを受け取っていたのですよ!』

亀山「テープを菜々子ちゃんが…じゃあそのテープを見れば菜々子ちゃんに虐待を行っていた人間の正体がわかるんですね!」

右京『実はもうそのテープを見ている最中です。
それから菜々子ちゃんのカバンからテープと一緒に飴玉が出てきました。
あの被害者たちが口に咥えられていたあの赤い飴玉です。』

亀山「赤い飴玉…?
ちょ…ちょっと待ってください!何で菜々子ちゃんのカバンの中から飴玉が出てくるんですか!?」

右京『菜々子ちゃんはこの飴玉を『お姉ちゃんから貰った』と証言してくれました。
こう言ってくれたと証言してくれましたよ。』


菜々子『お姉ちゃん飴くれた、早く良くなってねって…』


亀山「それってつまり…虐待を行っていたのは…」









右京『そうです!奈々子ちゃんへの虐待を行っていたのは姉である水沼美々子だったのですよ!!』








電話越しで告げられたあまりにも衝撃的な事実、菜々子に虐待を行っていたのが実の姉である美々子であったとは…
その時亀山は自分が持っていたマリエの携帯を見てある事に気付く。
その携帯電話の着信履歴の最後は娘の水沼美々子の番号が登録されていた。

亀山「じゃあすると待てよ…あの死の着信を送っていたのは…」

右京『恐らく…娘の美々子さんの仕業なのでしょうね。
無念の死を遂げた彼女が死の着信を送り続けている、これが事件の全容ですよ!
そしてキミの目の前にいるであろう水沼マリエさん、彼女こそ水沼美々子が発信した死の着信の最初の被害者だったのですよ!』

右京の言葉を聞きマリエを見る亀山、マリエは既に死体となった身体で何かを話そうとしていた。

マリエ(…アノコタチヲ…スクッテアゲテ…)

聴こえるかどうかのか細い声でそう言うとマリエはある瓶を亀山に託す。
それは…眼球…人間の両眼がホルマリン漬けされた瓶であった…
その瓶を亀山に託すとマリエの身体は白骨化し彼女はまるで成仏するかのように消えて行った…

亀山「マリエさん…それにしてもこの眼は…誰のだ?」

亀山がそんな事を疑問に思う中であった。




「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」」



亀山「何だこの悲鳴は!?」

急いで駆けつけるとそこにいたのは…

カイト「う…うぅ…由美…何で…」

由美『…』

なんと血だらけで倒れたカイトと血の付いた刃物を持った由美の姿があった。

亀山「おい!何してんだ!?」

由美『…』

由美は既に正気では無かった、まるで誰かに操られているような狂った眼差しで立ち尽くしていた…

そして亀山は恐る恐る時計を見ると時刻は20時26分、由美の死亡予告時刻だというのに由美は何故か死なずに予告時刻は過ぎていた。

それからすぐに本部に事の一部始終を報告、捜査一課は由美こそが一連の事件の犯人ではないかと思い逮捕するが…

精神鑑定の結果、解離性同一性障害が認められ彼女は警察に拘留される事は無く、そのまま精神病院へと収容される。

甲斐亨もまた急所を外していたために、命に別状はなく現在病院で療養中である。



~特命係~


部屋に戻ってきた右京と亀山は右京が菜々子のカバンから押収したというビデオテープを見ていた。

テープの内容は美々子と菜々子が映っていた、二人は仲良く遊んでいるようで母親のマリエはどこかへ出かけているようであった。

すると突然刃物を取り出して菜々子を傷つける美々子、泣き叫ぶ菜々子に…

美々子『病院に行こ…』

…と言って赤い飴玉を渡す美々子。

そこへ母親のマリエが帰ってきて刃物を持った美々子を見て…

マリエ『美々子…やっぱりお前の仕業だったのね!何でこんな事をしたの!?』

母親に菜々子への虐待を見られたショックなのか、突然美々子の喘息の発作が起きた。

美々子『ゴホッ!ゴホッ!』

マリエは泣き叫ぶ菜々子をすぐに病院へと連れて行こうとするが…

美々子『待って…ママ…置いてかないで…』

美々子はあまりの苦しさから母親に助けを求める、しかしマリエはそんな美々子を放って菜々子と一緒に部屋から出て行った。

美々子『ゲホッ!ゴホッ!ガハッ………』

苦しみ悶える美々子、映像はここで終っていた…

亀山「これが水沼家の虐待の真相ってわけですか…
母親のマリエさんが美々子を放っておいたのは菜々子ちゃんに行っていた虐待に恐れたからなんですね…」

右京「そうでしょうね、母親であるマリエさんが菜々子ちゃんの虐待に気づき…
そしてあのビデオカメラを設置してその証拠を撮ろうとしていた、そしてその証拠のテープを菜々子ちゃんのカバンに託しておいたのでしょう。
山下律子が診断した代理ミュンヒハウゼン症候群に陥っていたのはマリエさんではなく、
実は娘の美々子さんだったのですから。
ちなみにあの死の着信の間際に聞いたあの空気の音はこれです。」

右京は亀山の前にある物を渡す、それは喘息用の吸引器であった。

亀山「なるほど、あの空気の音はこの喘息用の吸引器の音だったのか!
けど右京さん…このテープを見ると美々子は何で吸引器を使わなかったんですかね?
自分一人でも吸引器は使えたはずですよ?」

右京「その吸引器ですが、菜々子ちゃんのカバンの中に入っていました。
恐らく菜々子ちゃんがいたずらで隠してしまったのではないでしょうか…
だから美々子さんはあのような虐待をしてしまった、そう考えるべきではありませんかね。」

亀山「そういう事だったんすね…」

事件の顛末はこれでわかった、しかし…

右京「ですが新たな謎が浮上しましたね。
キミが病院跡地で見つけた人間の両眼が入った瓶ですか…一体誰の物なのでしょうねぇ?」

亀山「マリエさんの死体にはちゃんと眼球はありましたし…
それに美々子の死体にも両目がえぐられたなんていう痕跡はなかったはずですからね…
まさか全く関わりの無い赤の他人の眼じゃないですよね?」

右京「そんな訳がありませんよ。
この眼の持ち主は間違いなく今回の事件の関係者、それにマリエさんが言っていた言葉も気になります。
『あの子たちを救ってあげて』と確かに彼女はそう言ったのですね?」

亀山「えぇ…聞こえるかどうかの小さな声で言ってましたけど間違いないはずです!
でもあの子たちってたぶん菜々子ちゃんと美々子の事でしょ?
あの家には他に子供なんかいませんよ?」

右京「確かに…その通りなのですが…」

亀山「でも結局これで終わったんでしょうか…?」

右京「いいえ、美々子さんの呪いはまだ消えてなどいません。
むしろ僕にはこれでようやくスタートラインに立てたとそう思うべきですね。」

亀山「スタートライン…」

事件はまだ始まったばかりだと言う右京。
しかしこれ以上何を調べろと言うのか、右京にそう訊ねようとした時である。

角田「よ、暇か?」

角田課長が部屋に現れた、どうやら先日言っていた新宿の繁華街にある台湾料理店のガサ入れを手伝ってくれとの事であるが…

亀山「課長…その実は俺たち今抱えている事件がるんで…」

亀山が角田課長の断ろうとした時であった。

右京「わかりました、是非ともお受けします。」

角田「お、助かるわ♪それじゃすぐ来てくれるか!」

右京「頼まれれば何でも引き受けるのが特命係ですからね。」

角田課長は上機嫌で部屋を出て行った。
亀山は何故今抱えている事件があるのに組対5課の事件を手伝わなければいけないのか右京に聞いてみた。

亀山「右京さん何で手伝いなんか?俺たちには抱えている事件が…」

右京「その抱えている事件が偶然にも角田課長たちが追っている事件とある共通点があるのですよ。
実は水沼マリエさんの戸籍を拝見したのですが父親欄が『チャン・ウェイ』となっていました。
水沼マリエの父親は台湾からの移民だったのですよ!」

亀山「けどいくら同じ台湾人だからって知り合いって訳じゃ…」

右京「さらにわかった事なのですがチャン・ウェイはどうやらこの日本に同郷の人間と日本にやってきたそうです。
その同郷の人間というのが…」

亀山「まさか…そいつが王健峰!?」

右京「そうです、この事件の手掛かりはまだ途絶えていません。
さぁ角田課長たちと一緒に新宿の繁華街に行きますよ!」

亀山「了解!!」

こうして右京と亀山の二人は角田課長の組対5課の刑事たちと一緒に新宿の繁華街へと向かう。

その頃…



~鑑識課~


米沢「さてと…こちらが1ヶ月前の変死体で発見された水沼美々子の携帯電話。
そしてこっちが先ほど腐乱死体で発見されたその母親のマリエさんの携帯電話ですが…
あまり目新しい情報はありませんな、娘の携帯には母親と掛かり付けの医者の電話番号のみ…
母親の方は…ホステスをしていただけあってお客の携帯番号が多数登録されていますな。」

米沢は右京に頼まれ1ヶ月前に亡くなり警視庁に保管されていた美々子の携帯。
それに亀山が発見したマリエの携帯を調べてもらうように米沢に依頼していた。

だが右京の期待に応えられるような真新しい情報を得られずにいたが…



((ピ・ポ・パ・ピ・ポ))


米沢「おや?」

米沢は一瞬、美々子の携帯が勝手に動いたのかと思った。
だが目の錯覚だろうと思い気にも留めずにいた、これこそがこの後起きる大参事の予兆とも知らずに…


右京「着信アリ?」


終わり


右京「着信アリ2?」


へ続く→

というわけでとりあえずこのスレはこれでお終いです。

続きは後日次スレを立ててやりますので、では失礼します。

※補足

ちなみに今回出てきた過去の事件ですが一応紹介させてもらうと…

相棒シーズン2

第17話『同時多発誘拐 消えた16人の子供達』 

>>24

こののぞみの家の望月夫妻が17話の犯人です

第7話『消えた死体』

>>40

ここで出てきた葬儀屋さんが7話の葬儀屋さんです

第10話 『殺意あり』

>>89

この青木外科医院というのが10話の舞台となった場所です
ちなみにこの青木医師は関係者ではありますが犯人役ではありません





ちょっと修正します

>>86

そして追い打ちをかけるかのようにカイト、中村由美の二人が急いでこのスタジオへと駆けつけてきた。
二人は無残な死体となった小西なつみの前で思わず泣き崩れていた…

亀山「甲斐くん…それに由美さん…すまない…俺の所為で…」

由美「そんな…なつみが…
これであの合コンに参加したメンバーは私とカイトくんの二人だけに…あれ?携帯が…?」

♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫ ♪ ♬ ♫

由美の携帯から死の着信が鳴り響く、その時刻は8月4日20時26分であった。

カイト「由美!クソッ!?…なぁ…亀山さん!俺たちアンタにちゃんと相談したよな!?
それなのに…なつみが…なつみが死んじまったんだぞ!!」


(ドガッ!)


亀山「うわっ!?」

突然カイトに殴られる亀山、いつもならそう簡単に殴られるわけではないのだが…
先ほどの伊丹が言うように自分の所為で人が死んでしまった、そんな責任からカイトの拳を避ける事が出来なかった…

カイト「だから警察なんか最初から信用できなかったんだ…
もうアンタらには頼まねえ…こうなったら…俺がこの事件の犯人を捕まえてやる!!
みんなの敵を取ってやるんだ!!」

由美「待ってカイト!」

怒りの感情をむき出しにして亀山を殴りつけたカイトはそのままスタジオを後にする。
そんなカイトを心配して追いかける由美、一人…その場に取り残された亀山の前に米沢の鑑識の結果を聞いていた右京が現れた。

右京「着信アリ2?」

右京「着信アリ2?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391517860/)

次スレ立てました、どうぞ。

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