男の子「お姉さん、家に帰りたいよぅ」 (13)

お姉さん「でも帰れないのよ。ごめんね」

男の子「ここはどこなの? 家に帰りたいよぅ」

お姉さん「だからー、もうアナタは帰られないの。同じ事を言わせないで」

男の子「どうして?」

お姉さん「ああ、そういえばここはどこなのって質問ね。ここは私の家よ」
お姉さん「アナタはこれから私と暮らすの」

男の子「なんでボクがお姉さんの家にいるの? どうしてお姉さんと一緒にくらすの?」

お姉さん「説明が面倒ね。質問にはご飯を食べながら話すわ」

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モグモグ

男の子「もう暗いよ、お母さん達が心配するよ」

お姉さん「質問に答えるのは後にするわ」
お姉さん「いい? 『これから二度とお家には戻れない。』これについて文句を言ったり騒いだりしたら本当に痛い目にあうから」

男の子「……」

お姉さん「そう。それでいいわ。賢いわね」
お姉さん「あと、他の会話なら好きにしましょう。お姉さんは怖い人じゃないから」

男の子「……」

お姉さん「大丈夫。ご飯もゲームもあげるから。楽しいわよ」

ーー……

お姉さん「ただいまー」

男の子「おかえりなさい」

お姉さん「元気にしてた?」

男の子「雨が降ってたから、洗濯物が汚れちゃったよ」

お姉さん「あー……仕方ないわね」

男の子「この鎖が無いなら取り込めたのに」
ジャラ…

お姉さん「それが無かったらアナタ逃げちゃうから」

男の子「逃げたらお姉さん、この前みたいにヒドい事するんでしょう?」

お姉さん「うん。今度はもっと痛いよ」

男の子「……髪が伸びてるから切りたい」

お姉さん「そうねぇ…でもお姉さん、髪の長い女の子が好きだから」

男の子「……切りたいよぅ」

お姉さん「アナタを選んだのも特に可愛らしいからよ。もし顔に傷を付けたりしたらいらなくなって捨てちゃうかもね」

男の子「……」

お姉さん「そんな顔しないで。ほら、新しいゲーム機。これで遊びましょう? 」

男の子「なら、女の子を連れてくれば良いのに……」

お姉さん「あら、そんな事を言わないの。その女の子が可哀想でしょう」

男の子「……捨てるって、どこに捨てるの?」

お姉さん「庭ね」

男の子「……」

お姉さん「さあ、お化粧もしましょうね」

ーー……

男の子「お姉さん、洗い物終わったよ」

お姉さん「ありがとう。助かるわ」

男の子「他になにかない?」

お姉さん「そうねえ……無いわ。ケーキでも食べましょうか」

男の子「運動してないから、なんだか身体に力が入らないんだ」

お姉さん「それは大変ね。じゃあ運動スペースを少し広くしてあげる」

男の子「本当っ?」

お姉さん「うん」ニコ

男の子「ありがとうっ」パァッ

お姉さん「ケーキを食べたらゲームをしましょう」

男の子「うんっ」ニコ

ーー……

男の子「……あの男の人は?」

お姉さん「知り合いの人よ。きちんと隠れてた?」

男の子「うん……」

お姉さん「あの人はね。アナタが声を出して助けを呼ばないか確かめるためにいたのよ」
お姉さん「もしアナタがあの男に助けを叫んでいたら逆にヒドい目にあっていたわ」

男の子「えっ……」

お姉さん「よかったわね。アナタが偉い子だから無事で済んだのよ」

男の子「……」

お姉さん「今度から、ウチに人を呼ぶ事があるけどこれからも気をつけるようにね」

ーー……

お姉さん「私の親戚の子よ」

少年「は、はじめまして」

男の子「……」ペコ

お姉さん「こちらは私がいま預かっている女の子。どう? かわいいでしょう」

少年「う、うん。本当に」

男の子「……」

少年「……」チラ

お姉さん「緊張しているのよ。君がかっこいいからテレているの」クス

少年「そ、そう……」
少年「き、綺麗な髪だね」

男の子「……」チラ

お姉さん「……」ニコ

男の子「……ありがとう」ボソ

少年「どぅふふ……」

ーー…

男の子「あの人きもちわるかった」

お姉さん「そうね」

男の子「どうして女の子だって言ったの?」

お姉さん「嫌なら否定すれば良かったのに」

男の子「……お姉さんがそう言うから」

お姉さん「あら、あれを否定されるくらいでは怒らないわよ」
お姉さん「アナタが私の言う事をきいてくれない時だけ」

男の子「……」

ーー……1年後

お姉さん「おはよう。良い天気ね」

男の子「うん」

お姉さん「ご家族に会いたい?」

男の子「っ」
男の子「……」チラ

お姉さん「大丈夫よ。正直に言って」

男の子「……」
男の子「会いたい、です」ジワ

お姉さん「ああもう泣かないで」
お姉さん「アナタと私は対等なんだから。罰が与えられるのは、約束を破ったアナタが悪いから。敬語なんてやめて」

男の子「……」

お姉さん「そうね……じゃあ…」

男の子「……お父さん?」

『いまどこにいるんだっ?これまでどうしていたっ?』

男の子「……」ウル

『身体は? 元気なのか??』

男の子「……うん」グス

『いまお母さんに変わるからなっ?』

男の子「っ……」
男の子「….…」

『……お母さんよ。わかる?』

男の子「……っ、うん。うん』ヒック

『そう……元気そうで良かった…』

男の子「……」グスッ

『それで、いまどこにいるの?』

男の子「……っ」
男の子「ぁ……」

『すぐにおまわりさんが迎えに行くから。いまどこなの?』

男の子「……」ドクン

お姉さん『……』

男の子「……」ドクンッ、ドクンッ
男の子「ぁ……」パク、パク

『聞こえてる? お母さん達もすぐに行くからっ』

男の子「…….」

お姉さん「……ほら、お母さんが聞いてるよ」

男の子「……あ、あの」

男の子「い、いま……」ドクンッ、

男の子「ば、ばしょは……」ドクンッ、ドクンッ

お姉さん「…….」ニコ

ポンッ

男の子「……っ」

男の子「……」

『~っ、~~っ!ーーっ」

男の子「ボクは、大丈夫だから。心配しないでお母さん」

『~!ー!! ガチャンッ!

ツー…ツー…

お姉さん「……良かったの?」

男の子「……うん」
男の子「お姉さんに迷惑がかかるから」ニコ…

お姉さん「……そう」
お姉さん「じゃあ、ご飯にしましょう。その後にお勉強よ」



ーー……

男の子「お姉さんっ」

お姉さん「お買い物ご苦労さま」
お姉さん「……タバコは?」

男の子「身体に悪いので買ってきてないよ」

お姉さん「……鎖の跡、消えないね」

男の子「うん……そうだね」

お姉さん「逃げようと思えば逃げられるのに」

男の子「大丈夫。ボクはなにも不満が無いから」

お姉さん「そう。良い子ね」

男の子「お姉さん。足の具合は?」

お姉さん「平気。あんな事故に遭うなんて、ツいてないわ」

男の子「そうだね。でも大分歩けるようになったみたいで良かった」

男の子「運動スペース。広くしてもよさそうだね」

お姉さん「そうね」

男の子「食器。洗うのはお姉さんの係でしょ?」

お姉さん「ごめんなさい。立つのが辛くて」

男の子「ダメだよ。約束なんだから」

お姉さん「……」

男の子「そうだ。食器洗いが終わったらご褒美にタバコをあげる」
男の子「ケーキも買ってあるから」

お姉さん「……」

男の子「それと、最近知り合いになった人が来るから。お姉さんは隠れていてね」

お姉さん「……」

男の子「大丈夫」


男の子『お姉さんは、ボクの言う事を聞いていればいいから』ニコ


<了>

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