セーラ「俺のお嫁さんになってくれ」(116)

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バスガデルデー

クララ「私の足になってくれ」

ヘコヘコ

支援やでー

バスガデルデー支援

代行感謝

書き上がってるからサクサクイクデー

あと、いろいろな描写に対しての突っ込みは勘弁願います

アコチャーか?トキか?

「うちな、卒業したら家業を継ぐことになったんや」



卒業式も押し迫った2月初旬。
学校の最寄り駅の、駅前にある小さな公園。
部活で後輩らの相手をした帰りのこと。

2月っていうと暗くなるのが早いし、寒かった。


そんなとき、そんな場所で、竜華は俺と怜に向かってそう言うた。


竜華の白い息が、暗くなり始めた空にはっきりと見える。

竜華の家業とな

「は?竜華、何言うてんの?卒業したら、大学やで?」

怜は首を傾げる。

「うん…昨日、入学辞退の届け出してきた」

「ちょお待てや竜華、それどういう意味なんや?」

「大学には行かんと、家の仕事手伝うんよ」

俺の質問に、竜華は冷静に答えた。
あまりに冷静で、少し違和感を覚えるくらい。

「竜華の家の仕事って…あれ、やんな」

怜が逡巡しながら言う。戸惑いの表情が浮かんでる。

「あれやなぁ、反社会的組織やなぁ」

竜華はあっけらかんとしてそう言う。
笑顔にすら見えるほど、竜華はリラックスした様子や。

「なんでまた急に…怜はどうなるんや」

「あぁ、うん…怜ごめんな。一緒の大学に行けへんくなってもうて」

「…うん」

怜は小さく頷くけど、下を向いてしまう。

麻雀の推薦で早々に進学を決めていた二人。
二人で同じ大学に行って、これからもずっと一緒やと誓った二人。

そのうちの一人が、自らそこを抜け出していく。

「お父さん、倒れたんよ。もうあんま長くないねん」

「おっちゃんが?大丈夫なん?」

怜は竜華の親父さんに可愛がられてたから、おっちゃんって呼んでた。
俺はちょい怖くて近寄れへんかったけど。

支援

ほんとにヤーさんかよwwww

支援

「なんとか家におるけど、芳しくはないな。そやから、跡取りのうちが
お父さんの仕事とか覚えなあかんし、…しゃーないねん」

「そう…」

怜は相変わらず下を向いたまま。

「大学卒業までは待ってくれるはずやってんけど、予定変更や」

「なぁ、竜華…それでええの?」

「せやからしゃーないねんて。いいとか、悪いとかもうそういう次元ちゃう」

きっぱり言い切る竜華は、妙に貫禄があって
いろんな自覚と覚悟を伺わせた。

「それでな、…これはうちなりのケジメっちゅうか、あれなんやけど」

意を決したように、竜華が切り出す。
俺はその言葉をゴクリと唾を飲み込んでから続きを待った。

支援でー

「卒業式が終わったら、うちはもう二人には会わんとこうと思ってる」

「え?なんで!?」

怜が顔を上げて驚いた顔をして竜華に詰め寄った。

「それがお互いのためやと思うから」

「イヤや…そんなんイヤや」

怜が首を横にフルフルと振る。泣きそうな顔で、少し胸が痛い。

「セーラはわかってくれるやろ?」

「……わからん」

「そら困ったなぁ」

竜華は、自身に抱きつき今にも泣き出しそうな怜の髪を撫でながら呟く。
その顔がひどく穏やかに見えて、胸騒ぎがした。

まさかの展開

「きっと人に言えへんこともする、二人を巻き込みたくないんよ」

「それはっ…でもっ」

「竜華、…本気なん?」

「うん、ごめん」


ごめんと謝った竜華の意志の強い顔を見て俺は追及をやめた。
怜は最後まで駄々をこねていたけど、最後には渋々納得した。


その日から、俺らと竜華の別れのカウントダウンが始まった。

支援
清水谷組・・・

3月、千里山女子、卒業式。


「…ついに卒業してしもたな」

誰もおらへんようになった教室で、竜華が呟く。

「3年間早かったなぁ」

俺が答えると、「そやなぁ」と竜華が小さく零した。

「この1ヶ月、濃かったなぁ」

「うん」

「これでもかってくらい遊んだなぁ」

「うん」

「付き合ってくれて、ありがとうなぁ」

「…友達やろ」

「うん、セーラ、ありがとう」

机に腰掛けていた竜華が俺のそばまでやってきて、手を差し出した。
俺はぎゅっと力強くその手を握り返す。

「ふふ、相変わらずの馬鹿力や」

クスクスと微笑む竜華。
笑ってるのに、泣きそうなんは何でや…。

「来月には江口プロになるんやな」

「…まあな」

「応援してるから」

「ありがとう、新人王とったるで」

「うん、期待してる」

「…竜華、俺はずっと竜華のこと、とも」

「待った、それ以上言わんといて?」

「なんで?」

「なんとなく、やめとこ」

「…わかった」

ふぅ、と小さく息を吐き出して、さっきから一言も発しない怜を見つめる。
イスに座ったまま、立ち上がることもせず黒板を見つめてる。

「怜、そろそろ帰るで」

そう声をかけても立ち上がる素振りは一切ない。

「なぁ、怜…怒ってる?」

竜華が怜のすぐ後ろに立って、声をかけた。

「…別に」

「こういうときな、会えなくなってもずっと友達やでとか言えたらええねんけど」

「ん?」

「けど、生憎そういうことは言えへんねん。…今日で、うちらは、」

「イヤや!やっぱりイヤや!なぁ、竜華考え直してや!」

ガタっと音をたてて立ち上がった怜は大きな声を出して訴えた。

「ううん、もう無理」

「…私は、私は…」

「怜、うちは怜が大好きやったよ」

「私も、竜華が、」

怜の言葉は竜華が怜を抱きしめたことで遮られた。

「怜、多分、もう一生会うことはない」

抱きしめておいて、竜華は残酷な言葉を投げかける。
そして、怜には告白の隙を与えない。自分は言うたくせに。

「怜に膝を貸してあげることも、もう一生ない」

「………」

「そやから、元気で、元気でな…グスッ」

竜華の涙が頬を伝って怜の髪に落ちる。
一瞬の出来事が、何時間もあるかのような錯覚に陥る。



俺はそんな二人を見ながら、目を潤ませていた。

支援

支援だよー

3月中旬、清水谷家


卒業式の次の日から、竜華のケータイは解約されて
電話もメールも通じなくなった。

竜華との連絡は一切絶たれた。


「怜、やめとこうや」

「ううん、ここまで来て帰れへん」

「そやけど…」

「おっちゃんと直接話すんや」

「俺あの人苦手やなぁ…」

竜華の家の、たいそうご立派な門の少し手前に俺と怜はいた。
門の前には、いかつい男が一人立っている。

3月も中旬になるともう結構暖かくて、
病弱で寒がりな怜にマフラーを貸していた。

ふむなるー

そのマフラーに触れながら、怜が言う。

「あの人に言うたらええのかな?」

「うん、多分…」


意を決して門の前に立つと、いかつい男が鋭い目をこちらへ向けた。

「あ、あの」

緊張しすぎて声が上擦る。

「あぁ?ここはお嬢ちゃんらの来るとこちゃうで」

「えっと、竜華!竜華はいますか?」

率先してここまで連れてきたくせに、
怜は俺の後ろにすっぽり隠れている。

「お嬢はおらへん、帰れ」

「だ、大事な話があるんです!」

「あ、ほな!おっちゃん!竜華のお父さんはいますか?」

ひょっこり俺の後ろから顔だけ出して怜が続けた。

「おらんおらん」

男は面倒くさそうな顔をして首を横に振る。

「ん?誰や?」

そんな男の後ろから、見覚えのあるおじさんが顔を出した。
確か…竜華の叔父さん。

見た目はダンディーなおじさんやけど、
怒ったらめっちゃ怖い…とか竜華が言うてた気がする。

「おう、セーラちゃんと怜ちゃんやんか」

「「お久しぶりです!」」

見覚えのある人を見つけて俺と怜は声を揃えた。

「…竜華やったらあかんで。あれはもうセーラちゃんらの手に負えん」

「え?」

「あれが上に立つ器なんやな、と感心してるわ」

おじさんは腕を組んでうんうんと頷く。

「申し訳ないけどこのまま帰ってや」

「でも、」

「あかん、竜華が自分で決めたことや。約束は守らなあかん」

「…そやけど、俺は竜華に会いたいです」

「友達なんやったら、理解したり。それが友達や」

おじさんにそう言われて、俺も怜も言葉の続きを飲み込んだ。


結局、俺らはそのまま家路につく。
二人の間に会話はなかった。

しえ

半年後、病室


「怜~」

「セーラ…久しぶり、ゴホッ」

か細い声の怜。顔色はよろしくない。

「…具合どうや?」

「あんまり…」

「そうか、けど顔見れて嬉しい」

そう言って怜の髪を撫でる。ふわりと柔らかい。

「うちも、嬉しい…1ヶ月ぶり…やんな?」

「うん、遠征が多いからなかなか大阪に帰ってこれへんねん」

「せっかくの休みなんやからこんなとこにおらんでもええのに…」

「俺が来たいから来ただけやん」

「うん、嬉しいで」

「ふふ、そうか」

二人で笑い合うと、心なしか怜の顔色もよくなったように見えた。

しえん

プロチームに加入して半年、遠征やらなんやらで忙しい日々を送っていた。
1ヶ月近く地元に戻らへんことも少なくなかった。

そんなとき俺は、病床に臥せる友人を想った。

竜華の家を訪ねて追い返された数日後、家で倒れた怜は
そのまま半年という長い時間を病院の中で過ごしていた。

もちろん、竜華と通うはずやった大学には一度も通っていない。

病が快方へ向かっているというと必ずしもそうではなく、
怜の両親は退学も視野に話を進めているようやった。

支援

続けて

「この1ヶ月の試合、どうやった?」

医者から興奮するから、とTVを禁止されている怜は
俺が来るといつも試合のことを尋ねる。

「…チームの調子はええねんけど、俺個人はイマイチやな」

「1年目なんやからそんなもんやろ?」

「でも、宮永照はルーキーやけど月間MVPやで?」

「宮永さんかぁ…懐かしいな」

「あぁ、インハイやな」

「うん…最高の夏やったなぁ」

「そやな、幸せな夏やった…」


「…戻れればええのになぁ」


怜が遠くを見つめながらそう呟く。
それを見たらうっすら涙目になって、ちょっとだけ焦った。

最高の夏、幸せな夏、…それは怜にとって…


たぶん
きっと


竜華がいた夏、竜華と過ごした夏…



そういうことやんな。

さらに半年後、病室。


「はは、1年も経ってしもたな」

「…そやな」

「さすがにちょっと…長いな」

はぁ、とため息を零す怜は1年前に比べて見るからにやせ細っていた。
顔からは生気も消えているように思えた。


痛々しいほどに、怜の身体は弱っていっている。


結局、怜は一度も大学に通うことなく大学を退学した。
竜華と過ごすはずやった4年間は、全て露と消えた。

怜;;

「セーラはもう2年目になるんやな、どう?」

「下が入ってきて、気合入ってるで」

「ドラ1は荒川さんやっけ」

「そうそう、ここだけの話やけどな、」

「ん?」

「あいつ、開幕戦のレギュラー決まってるねん。さすがやで」

「セーラは?」

「ん…補欠や」

「どんまい、けど、セーラは大丈夫。私が保証するで」

「ありがとう怜、怜に言ってもらえるんが一番嬉しいわ」

そう言うて髪をくしゃくしゃっとすると、

「もう、乱れるやろ」

って言いながらも嬉しそうな怜。
そんな怜を見ているのが、俺は嬉しかった。

シエンスルデー

もうハッピーエンドはなさそうだな・・・
しえん

俺の幸せは、怜とこうしてじゃれ合っている時間。
…だから俺は、怜を……いや、やめとこ。


「…セーラ、私な、手術するかもしれん」

「え?」

「薬でどうにかできるもんでないのはわかってたんやけど、」

「うん」

「それでも手術が怖くて逃げてたんや…」

「うん、前、言うてたよな」

「でもな、もう薬じゃ限界やねん。…ここ切らなあかん」

怜がぽんぽんと自分の胸辺りを叩いた。

「…そうか、怖い?」

「うん…怖いで」

「でも、やるんやろ?」

「…たぶん」

そのとき、怜が震えていることに気付いた。
唇が青くなっている。

「怜?大丈夫か?」

「ちょっと…寒い…かも」

「あ、え、ど、どうしたらええ?」

「…抱きしめて」

「え、え??」

「お願い…セーラ」

細くなった、青白い肌の怜の腕が俺に伸びる。
それをしっかりと掴んで、怜を抱き寄せた。

「こ、これでいい?」

「うん…暖かいで、ありがとう」

青白い顔をして精一杯に笑おうとする怜。

「…お安い御用や」

その笑顔に応えるように、笑顔を作った。

抱きしめて、怜が想像以上に痩せてしまっていることに気付いた。

なんで、なんで怜がこんな目にあわなあかんの?
…なんで怜ばっかり。

「……グスッ」

「セーラは泣き虫やな」

俺の腕の中からくぐもった怜の声が聞こえる。
それでも、しばらくずっとそのままで、俺は泣いていた。

この泣き顔を、見られたくはなかった。

支援

セラ怜支援

それから2年後、病室


「…セー…ラ…」

「おう、久しぶりやな」

「うん……そやなぁ」


もう、声はほとんど出てなかった。
耳を近づけて、ようやく聞き取れる。

胸には、いくつもの手術跡があって、身体中、管だらけの怜。
倒れた日から、3年間、一度も病室から出られない怜。

モニターから、怜の命の信号の音が、ピッ、ピッ、ピッと聞こえる。

やめて本当かわいそうだから

「2ヶ月ぶり…くらいやな」

「ん…」

「初めて世界大会に行って来たんや、補欠要員やけどな」

「ん…」

「でも、毎日充実してた…楽しかったわ」

「そっか…」

「怜は…なんか楽しいことあった?」

「ん……ないなぁ」

掠れた、小さな小さな声が耳に届く。
耐えていたはずの涙がボロボロと流れていく。

;;

「…泣いて、ばっか、やなぁ」

震えながら、怜の細腕が俺の頬に伸びる。
俺はその手を掴んで、頬に押し当てた。

「怜……いつも泣いてごめん…」

「ううん…」

首を横に振る怜。

「…大会…の、話、聞き…たい…」

「おう…代表の先鋒は宮永照やで、…ほんで、大将誰やと思う?」

「だれ?」

「小鍛治プロや」

「えっ…ほんま?」

「うん、この大会で本格復帰したんや…すごい人やで」

「ふふ…見たかったなぁ…」

「贅沢言えば出たかったけど、でも、呼んでもらえてよかったわ」

「そやな…代表、選手…やもんな…」

「怜の友達は代表選手やで?すごいやろ?」

「うん…すごいなぁ」


すごいなぁ、と微笑んだ怜。
その笑顔が何よりのお祝いと労いやった。

支援

怜は、すっと目を閉じて眠る。

このまま目を開かないかもしれない。そんな風に思ってしまう。
でも、一定のリズムで鳴り続けるモニターの音で我に返る。

小さいけれど、すぅすぅと寝息も聞こえてきてようやく心が落ちついた。

「怜…」

思わず零れたため息のような呼びかけに応じるはずもない眠った怜。

「…りゅーかぁ」

眠っているはずの怜から声がして、よく聞くと、寝言やった。
何度も、何度も同じ名前を呼ぶ。

「りゅーか、りゅーか…」


何度も何度も、怜は…愛しい人の名前を呼ぶ。

この3年間、怜を支えてきたつもりでいた。
出来るだけ時間を作って会いに来た。
怜を守るのは自分だと思っていた。

でも、どれだけの時間を重ねてもどれだけ誠意を尽くしても
怜が求めているのはたった一つで。

きっと、倒れる前からたった一つで。
そのことがわかっていたのに、あえて触れようとはせんかった。

『セーラなんかいらん、セーラが必要なわけじゃない。』

そう、言われるのが怖かった。

怖くて、避けて、知らない振りをして、なんでもない振りをして、
怜を支える自分に酔っていただけなのかもしれない。

怜の寝言で、そのことに気付いた。
虚しくなって、悲しくなって、悔しくなった。

俺は、そっと病室を抜け出した。

それでも、足は動き続けている。
確かにそこへ足が向いている。


そう、竜華の家に。

「はぁ…ついたか」

大事な話。怜の話を竜華にしよう。

…怜に必要なんは竜華や。俺やない。
それを認めたくなかった。でも、認めるしかない。

会えへんくても、でも、なんとかしてそれを伝えたい。
そのためにはまず、…俺は門の前に立った。


今日は誰も門には立っていなくて、門構えだけ見れば
立派なお金持ちのお屋敷に見えなくはない。

いや、ある意味ではそれも正しいわけやけど。

それでも、俺が門の前に立ったせいか、
中から音がして門扉がガラッっと音を立ててて開いた。

ヤクザが出てくると急にほかの麻雀漫画に大接近したような感じになる

「…ここがどこかわかってそこに突っ立ってるんか?」

ドスの効いた声で、威嚇に近い忠告を受ける。

「はい、わかってますよ」

「ほなはよ立ち去らんかい」

「いや、用があって」

「ここに?何の用や!?」

俺の物静かな態度が気にいらんのか、急に大声に変わる。

「竜華、呼んでください」

「は?」

「大事な話や。友達の話」

「あぁ!?」

おうおう怖いなぁ、反社会的組織の人は。

せやけど、俺もプロの世界で3年以上生きてきたんや。
あの時みたいにすごすごと帰ったりはせーへん。

「江口と言います、言うてもらったらわかります」

「頭は誰にも会わへん、帰れ」

「頭?竜華は頭になってるんかい」

「あぁ?そんなことも知らんのか」

「ま、とにかく呼んでくれや。俺も帰れへんやん」


なんていう押し問答が続いた後、根負けしたか
そいつはどこかに電話をかけて、俺は中に通された。

以前来たことのある応接間のような洋室やった。

セーラ支援

「セーラ、何しに来たん?」

3年以上ぶりの親友は、バタバタと部屋に入ってきて
俺の顔も見ずにタバコに火をつけてそう言うた。

「…着物なんやな」

そんな竜華の態度や服を見て、3年ぶりやと言うのに
そんな、しょうもない、つまらない言葉しか出なかった。

「まあな、威厳も必要やしな」

ふーっとタバコの煙を吐き出した竜華は、ようやく俺の顔を見た。
俺も、竜華の顔を正面から見据える。

支援

「お前、痩せすぎやろ」

怜のような病的な痩せ方ではなかったけど
それでも、以前のような顔つきではなかった。

「日々ストレスとの戦いや」

「…大変やな」

「ま、想定内や。で、なに?世間話しにきたわけちゃうやろ?」

「その前に、なんで会う気になった?あれだけ拒否ってたくせに」

「…ちょうど時間が空いただけや」

「そうか」

何か理由があるのかもしれないと思ったけど
それ以上の追求はやめた。

「正直、今でも絶対会わへんほうがええって思ってる。
でもセーラもうちももう大人やからな」

「大人か、まあ…そうやな」

「で、話って?」

竜華はタバコを灰皿に押し付けてもう一度俺の顔を見た。
俺は竜華と目を合わせて、一呼吸を置いてから怜の話を始めた。

淡々と、怜の話をした。

卒業後しばらくして倒れて入院し、大学には一度も通えず退学し、何度も辛い手術を受け、
身体中にたくさんの管を通されて、今は話すのもやっとの状態。

竜華は何も言わずただじっと話に聞き入っていた。
そして最後に、今日のことを告げる。

「俺な、少ないながらもできるだけ怜に会いに行ったし、
できることならなんでもするっていつも言うてた」

「……」

「怜を支えられるのは自分だけって思ってたし
竜華がおらん以上は、俺が怜を守るって思ってたんや」

「……」

「でも、でも怜は…寝言でお前の名前を呼んだ」

「え?」

セーラ;;

悲しいのう

支援

セラ怜支援

アカン辛いわ

「りゅーか、ってお前を呼んだんや」

「とき…が?」

「そうや、そのときの俺の気持ちわかるか?」

「……」

「いろんな感情がごっちゃごちゃになって変になりそうやったで」

「……」

「結局怜が必要としてるのはお前なんや、竜華。俺じゃなかったんや」

「そんなん言われても」

「そうやな…でも、怜はお前に会いたいんやと思う」

「……」

「俺ではアカンねん、俺は、俺は…悔しいけど、でも、でもお前しかあかんねん!」

想像より大きい声になって、竜華がビクっとしたのが見えた。

「竜華、なぁ、頼むから怜に会ってやってくれ」

ソファに腰掛けたまま頭を下げる。

「…アカンよ。無理」

でも聞こえてくるのは欲しい言葉やなくて。

「俺には会ってくれたやん!」

「たまたま、会っただけや。怜とは会えへん」

「なんでや!怜はお前を求めてるんやぞ!お前にしかできんのやで!」

「どんな理由でも無理は無理」

「竜華!一回でええ、見舞いに来てやってくれや。な?」

「…行けへん」

「……」

何を言うても無駄なんか…そう思うと絶望感に近いものが襲う。

支援

こういうのアカンわ、胸にビシビシくる

「私はこの3年間、二人には口が裂けても言えへんことをいっぱいやった」

「いっぱい?」

「もうこの手は汚れきってる…この世界で、生きるほかない」

「…でも」

「こんな汚い手で、怜に触れることはできひん。せやから、あかん」

右手を握り締めた竜華は下を向く。

「セーラが、これからも怜を支えてあげてほしい。な?」

その言葉を竜華に言われるのはある意味残酷で。

「……もうええわ」

でも、もうそれ以上何かを言う気にはなれへんかった。

「ごめんな…あ、それから…セーラも二度とこんなとこにきたらあかんで」

「なんで?」

「麻雀のプロがこんなとこに出入りしてるって世間的にどうなん?」

「…そっか、思慮が足らんかった…大人やのに、な」

「そやで…大人、やで」

しえ

俯いた竜華を見て、本心では会いたいと思っているはずやと思った。
怜の状況を聞かされて自分の名前を寝言で呼んだ怜に会いたくないはずない。

竜華はそんなに冷たいヤツじゃない。そう信じてる。



でも、実際に竜華は首を縦には振らへんかったし
それから1ヶ月経っても、竜華が怜の病室に現れることはなかった。
同時に、俺があの家をもう一度訪ねることはなかった。

きっといつかは3人でまた仲良くできる。
竜華は俺らに会いに来てくれる。
どこかで持っていた願望はもう全て捨ててもいいのかもしれない。



本当の意味での、決別。



そんな考えを元に、俺はこの1ヶ月の間にある決意を固めていた。

断固支援

1ヵ月後、病室


「今日は早いなぁ…」

俺が病室をノックして中へ入ると、怜が声をかけてくれる。

この1ヶ月でほんの少し快方へ向かったと聞いた。
身体を起こして座っている時間も増えている。

それにやっと聞こえる程度の声しか出せへんかった怜が
ここ数日は割とはっきりした声を出してくれている。
まあそれでも、身体中の管が抜けたわけやないけど。

「今日は試合も練習も休みやねん」

「休みなんやったら遊びに行ったらええのに」

「えぇ、来たらあかんのー?」

「ふふ、あかんで」

おどけてみれば、怜もそれ乗っかってくれる。
そんなやりとりの一つ一つが嬉しかった。

「あ、今日は怜に話があるねん」

「え?なに?」

「ここ1ヶ月ずーっと考えてたことや」

「ええこと?悪いこと?」

「ええことであると信じてるけど、わからへん」

「えぇ、怖いなぁ…」

伸びた髪を触りながら怜が言う。
俺もその髪に触れる。
相変わらず、ふわふわとしてた。

「…なぁ、怜?」

「なに?」

支援

「あんな、えっと…俺と結婚せぇへん?」

「えっ?」

「俺のお嫁さんになってくれ」

「…え?」

戸惑った顔が可愛い。
やせ細った怜やけど、それでも愛らしい顔はそのままで。

「おいおい何回言わすねーん」

「だ、だって…」

今度は頬を赤らめる。
俺なんかのプロポーズに照れてくれて嬉しい。

「俺と結婚しよ?ほんで、俺がお前の面倒を一生見るから」

「セーラ…」

あかんわ涙腺が

自分がどうしたいか、自分は怜をどう思っているのか。
それをずっと考えていた。
竜華のことを全部抜きにして、自分は何をどうしたいか。

『りゅーか』と寝言で竜華を呼んだ怜を見てどう思ったか。
あのときの、言い表すのが難しい複雑な感情は一体なんやったのか。

考えて、考えて、ここにたどり着く。


俺は…、怜が好きやった。
どうしようもなく、愛しかった。


怜が求めているのは竜華やけど、でも、その竜華はもういない。
いくら求めたって竜華はここにはいない。

ないものを、手に入らないものを、求め続けたって意味がない。
なら、あるものを、手に入るものを受け入れてくれたっていい。

支えて欲しい人が支えてくれないのなら、
支えてくれる人に頼ってくれればいい。

「私らまだ若いで」

「関係ない」

「私、家事できひんよ」

「問題ない」

「私、…セーラになにもしてあげられへん」

「それでいい、お前が元気になってくれればこれ以上のことはないで」

「ほんまにそれで…ええの?」

「ええよ、当たり前や」

「でもやっぱ…」

「タイトル取って、がっぽり賞金いただいて、お前のこと絶対治したる」

「……うん」

「そやから、一番近くで、俺を応援してくれ…怜に、応援して欲しいんや」

怜をふわりと抱きしめる。相変わらず細いけど、でも、暖かい。

ハラハラするぜ…

いい女やセーラ

「…うん、絶対……幸せにしてな、セーラ」

「当然やで、怜」

優しく頭を撫でるとぎゅうっとしがみつかれる。
やっぱり暖かくて、その暖かさがふわふわと心地よかった。


怜にとっての俺は、今は竜華の代わりかもしれない。
頼りたい相手がいないから、俺に頼っているだけ。

頼っているから、支えてもらっているから
プロポーズにも応じてくれただけかもしれん。

でも今はそれでいい。

いつかきっと報われるときが来るはず。
そんな日が来ると信じてる。

泣いた

セーラ……

竜華も頑張ったね

こうなってくるともうあとはいつ怜が……という問題に

そういう風に割り切れば、何も辛いことはない。
だから、全力で怜を幸せにする…!

この強い気持ちがあれば卓上の魔物にだって勝てる気がする。
全てを力に変えて、俺は試合に挑む。


ふと、頭に浮かぶものがあった。
試合を終えて家に帰ると怜が出迎えてくれるという映像。

『おかえり、セーラ』

声まで聞こえたような気がして、
なんとなく後ろを振り返る。

当然何もなくて、俺は誤魔化すように微笑みかけた。
俺の、お嫁さんになる人に。




カン

えっ

またまたいける

抑制的で良かった乙乙



選択肢間違えてノーマルENDか

以上です
支援ありがとございましたー

その後はご想像にお任せします
書きながら泣いてました、でも怜は強いって信じてます


では

乙でー

泣くな

乙乙ー。竜華も竜華で切ないな

乙乙
良かった

これ3人とも切ないんじゃないのかな

竜華が新鮮な内臓持ってきて移植で元気になる未来が見えた

誰かネタをください

なんでここに誤爆した俺

今北産業

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