百万回生きた上条 (16)



新約9巻で「百万階死んだ猫」パロディ




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とある時間、とある場所、とある世界に、一人の高校生の少年が居ました。


少年は右手首から上に「幻想殺し(イマジンブレイカー)」という異能の力を打ち消す不思議な右手を持っていましたが、それ以外は普通の、どこにでもいる様な男子高校生でした。むしろ、少年が持っている「幻想殺し」神様がくれる幸運の力まで纏めて消してしまうので、人と比べて「不幸」な目に合いやすい、まさに「不幸な少年」でした。

ですが、それゆえに少年はとても我慢強い心を持っていました。

例えどんな不幸に苛まれようが、例えどんな壁が立ち塞がろうが、誰から教わらなくても内から湧き上がる信念に従い、時には絶望に打ち砕かれようとしている人を救い、時には誰かに暴力を振るおうとしている人とぶつかり合い、時には自分が大切だと思える人の為に立ち上がり、時には出会ったばかりの、いえ、出合っても居ない、喋った事すらない、名前も知らない誰かのためにすら行動が出来るような少年でした。

間違えた事や失敗してしまったことも沢山ありましたが、それでもしっかりとその二本の足で自分の道を歩き、前へ前へと進むことができる少年でした。

そんな少年は、世界中のみんなの善意の力を借り、世界の危機を救う事すら出来ました。

そんな少年は、間違いなく本物の「ヒーロー」でした。



そんなある時、少年は一人の少女が作った悪の組織と対立します。
その組織は、世界中に悲劇をもたらし、沢山の人の大切な物を傷つけました。当然、少年は怒ります。彼は誰かが傷つくのを何よりも許せない人でした。

少年は沢山の人たちと一緒にその組織と戦いましたが、最後には「ヒーロー」であるその少年も組織を作った少女に負けてしまいます。なんと、その少女は人ではなく、神様だったのです。
戦う、といった事すら出来ませんでした。一瞬で世界が滅んでしまったのです。

少年が気づいた時には世界はどこもかしこも真っ暗で、何もなくなってしまいました。

ですが、少年は、少年だけは右手のおかげで生きていました。

それが気に入らない神様は少年のその強い心を折ってしまおうと考え、色んな世界を創って少年を苦しめようとします。

↑misu


とある時間、とある場所、とある世界に、一人の高校生の少年が居ました。

少年は右手首から上に「幻想殺し(イマジンブレイカー)」という異能の力を打ち消す不思議な右手を持っていましたが、それ以外は普通の、どこにでもいる様な男子高校生でした。むしろ、少年が持っている「幻想殺し」神様がくれる幸運の力まで纏めて消してしまうので、人と比べて「不幸」な目に合いやすい、まさに「不幸な少年」でした。

ですが、それゆえに少年はとても「  」強い心を持っていました。

例えどんな不幸に苛まれようが、例えどんな壁が立ち塞がろうが、誰から教わらなくても内から湧き上がる信念に従い、時には絶望に打ち砕かれようとしている人を救い、時には誰かに暴力を振るおうとしている人とぶつかり合い、時には自分が大切だと思える人の為に立ち上がり、時には出会ったばかりの、いえ、出合っても居ない、喋った事すらない、名前も知らない誰かのためにすら行動が出来るような少年でした。

間違えた事や失敗してしまったことも沢山ありましたが、それでもしっかりとその二本の足で自分の道を歩き、前へ前へと進むことができる少年でした。

そんな少年は、世界中のみんなの善意の力を借り、世界の危機を救う事すら出来ました。

そんな少年は、間違いなく本物の「ヒーロー」でした。



そんなある時、少年は一人の少女が作った悪の組織と対立します。
その組織は、世界中に悲劇をもたらし、沢山の人の大切な物を傷つけました。当然、少年は怒ります。彼は誰かが傷つくのを何よりも許せない人でした。

少年は沢山の人たちと一緒にその組織と戦いましたが、最後には「ヒーロー」であるその少年も組織を作った少女に負けてしまいます。なんと、その少女は人ではなく、神様だったのです。
戦う、といった事すら出来ませんでした。一瞬で世界が滅んでしまったのです。

少年が気づいた時には世界はどこもかしこも真っ暗で、何もなくなってしまいました。

ですが、少年は、少年だけは右手のおかげで生きていました。

それが気に入らない神様は少年のその強い心を折ってしまおうと考え、色んな世界を創って少年を苦しめようとします。





とある世界で、少年は「ヒーロー」ではなく「悪人」でした。正確には「悪人」ではなかったのですが、元の世界で少年が今までやってきた事の全てを、世界中の人達がマイナスに捕らえてしまっていました。

神様は言いました。そもそも何か在ると基本的に暴力に頼って解決してきたのだからこうなっていても不思議ではない、と。お前は「ヒーロー」である一面もあるが、同時に「破壊の権化」でもあると。


少年は仲間に刺され、暴力を振るわれ、最後には教師に殺されてしまいます。


ですが少年は揺らぎませんでした。もしも少年のやっていた事全てがマイナスになってしまっていたとしても、元々あった悲劇を見て見ぬふりをして逃げ出したという方が嫌だったからです。



とある世界で、少年は少年ではありませんでした。元々あった少年の居場所に居たのは、少年とそっくりな性格をしている「誰か」でした。
「誰か」は少年と同じ様にみんなに慕われ、好かれ、誰かもまた、少年同様不幸に苛まれながらも、しっかりと自分の信念に従い、前に進むことが出来ました。

しかし、やはり「誰か」は少年ではなく、少年は「誰か」ではありません。そしてその事に、「誰か」も皆も気づいてはいませんでした。
神様は言いました。お前のやっている事など誰でも出来た事だ、と。お前が慕われていたのはお前がお前だからではなく、それぞれの都合による物に過ぎず、それが満たされれば誰でも良いのだ、と。


少年は、誰にも見向きもされないただの少年でした。


ですが少年は揺らぎませんでした。例え少年の位置に他の誰かがいたとしても、少年が少年である事に変わりは無く、それである限り、ほとんど問題などないと思ったからです。むしろ「誰か」の積み重ねてきたものを守る為に、神様に戦いを挑もうとすらしました。



とある世界は、理想郷でした。

少年も元々の世界で沢山の人を助けてきましたが、この世界の平和と幸福と比べればかすんでしまいます。

少年が救えなかった人が笑っていました。少年と戦った人たちが幸せそうでした。少年の大切な人達が、少年が知らない人達が、最高の幸福を手に入れることが出来ていました。


神様は「否定してみせろ」と言いました。「お前が私を殺して元の世界を取り戻そうとしているなら、この理想郷を否定してみせろ」と。


このとき、少年の心は完全に折れてしまいました。自分しか元の世界を知らなく、自分以外の誰も彼もが幸せならば、元の世界に帰りたいという自分の願いは、この理想郷に住んでいる人達の幸福を殺してしまうからです。

色々な世界で死んでしまった少年ですが、この時初めて自分から死のうとします。それは、この少年がこの世界で唯一、この理想郷を壊してしまいかねない存在だからで、そうでなくとも、いくつもの世界で殺され、いくつもの絶望を味わった少年の、「   」強かったはずの心は、これ以上ないくらいボロボロに傷ついていました


少年が死のうとしたそのとき、一つの「何か」が現れました。


それは、神様の作った法則(ルール)の網の、僅かにある隙間を通り抜けた「例外」とも呼ぶべき存在で、何万人もいる姉妹の生きている人、死んでしまった人すべての意思が合わさって出来た、それも少年に関わっている人達の何人かの意思の代理まで出来る「総意」とも呼ぶべき物でした。


「総意」は言います「神様はズルをしている」と。

それは、少年も気づいていた事でした。この世界の人達は、この世界以外の記憶が少しもありませんでした。

少年が居た世界だからこそ気づく事ができた幸福を、この世界の人達が味わっている物、この世界がまさに「理想郷」だという事をこの世界の人達は知りません。知っているのは少年と「総意」だけでした。

少年は言いました「それが何だ」と。例えこの世界の記憶しかなくてもそれで良いじゃないかと。神様は完璧な理想郷を創ったんだから。と。

「総意」は言いました。「もし本当に理想郷ならなんで君は救われてないの?」と。

少年は答えました。「俺が元の世界を望んでいるからだ」と。でもその願いはこの世界に住んでいる人達を殺す事になるから出来ないと。自分だけの願いの為にこの理想郷を壊すのならそれは紛れもなく「悪」だと。

「総意」は言いました。「悔しくないの」と

少年は答えました。「悔しい」と。この時少年は始めて誰かの前でありったけの弱音を吐き、今まで自分がどんなに辛かったか、どんなに苦しかったかを告白しました。そして、それでも前へ進めたのは皆がいたからだと。そして神様は少年の築いてきたものを壊し、少年の努力を否定し、少年の絶対出来ない事を簡単に成し遂げてしまいます。それでも、だからこそ、この理想郷を否定する事は出来ない。だから「悔しい」と。
涙を流しながら言う少年を見て「総意」は言いました









「そもそも、なんで君はみんなよりも下なの?」と。






少年は何も答えません。

「総意」は言いました。一回くらい自分を優先したって良いじゃないか。と。どうしようもないくらいの悲劇に苦しんで、泣いている人を助けてきたんだから、それと同じ様に自分も助ければ良いじゃないか。と。

答える事ができませんでした。今までも「それが正義だから」「相手が悪だから」戦ってきた訳ではなく「納得できなかったから」「目の前にある悲劇を放っておけなかったから」拳を握ってきたのですが、徹頭徹尾自分のためだけに拳を握ったことなど無かったのです。


少年は言いました「……それだけで、良いのかな?」と。たった一人のために、自分だけの為に戦って良いのかな?と。


「総意」は答えました「いいさ」と。




決意を固めた少年を見送り、その存在が消えてしまうまで「総意」は優しく笑っていました。「元の世界」で少年とまた会える事を確信して。




自分の為、神様に戦いを挑んだ少年ですが、相手は神様です。勝てるわけがありません。


一回殺されました

二回殺されました

三回殺されました

四回殺されました

五回殺されました

六回殺されました

七回殺されました

八回殺されました

九回殺されました

十回殺されました

百回殺されました

千回殺されました

一万回殺されました

十万回殺されました

百万回以降は面倒臭くなって数えるのをやめます


少年が何度も何度も殺されても大丈夫だったのは、他ならぬ神様が少年を生き返らせていたからです。少年の右手、それは「神様のいた世界」に帰るための道しるべに成る事が出来る存在でもありました。

そして、少年は長い長い戦いの末、神様を追い詰める事にまで成功します。

それゆえに、神様ももう少年を生き返らせるのを止め、最後の、本当に最後の戦いが始まり……


結局、少年は神様に一度も勝つ事が出来ませんでした。そもそも少年が神様に勝てても、神様が少年にとっての「元の世界」を戻さなければ意味などありません。ですが、少年はそれでも構いませんでした。そもそも自分が負けたところで救われないのは自分だけですし、神様には少年以外の誰も彼もを幸福に出来る力があり、この戦い自体、少年一人の身勝手な我侭だったからです。

少年は言います「この右手を役立ててくれ」と。神様は少年が何を言っているのか分かりませんでした。
少年は、あの皆が笑顔で幸せな世界ではなく、正真正銘「神様が望んだ、神様がいた世界」を取り戻してくれ。と、言っていました。
例えどんなに似た世界を作ったとしても、神様が違和感を抱き、納得できなければ、幸せに成れなければ意味なんかない。少年はそう言い、まるで迷子になった子供をあやすかのように神様の顔を優しく撫でると、正真正銘、最後の死を迎えます。


真っ暗な世界で、少年が死に、正真正銘独りぼっちになってしまった神様は、その時になって初めて
「理解者」が欲しかった。神様だからこそ、誰にも理解されない、誰にも分かってもらえない。それでも誰かに自分のことを理解してもらいたい。そんな願いがありましたが、例えどんな世界、神様が元居た世界にも、そんな人はいませんでした。


ただ一人、その可能性を秘めた少年は、神様が殺してしまったのです。

百万回少年を殺した神様は少年の死体を抱きしめたまま、ワンワンと、まるで子供のように泣き続けます。
真っ暗な世界で、一人ぼっちで、途方もない時間泣き続け、そして……





少年が目を覚ますと、そこは少年にとっての「元の世界」でした。

なんでこうなったのかは分かりませんが、神様が自分の為に一度しかないチャンスを譲ってくれたのだという事は分かりました。
が、少年はこのとき初めて気づきました。元の世界に返ってきたという事は、神様が世界中の敵になってしまっているのだと言うことに。

少年がいた世界で、神様は散々悪い事をしてきましたが、神様と何億年も一緒にいた少年は、神様の気持ちを誰よりも理解できるようになってしまった少年は





たった一人の「少女」の為に、右の拳を握り締めます。






少女はもう、二度と少年を殺そうとはしませんでした

捏造しすぎですみません。

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