淡「テルー、なに読んでるのー?」(132)

淡「テルー、なに読んでるのー?」

照「マンガ」

照「菫から借りた」

淡「えーっと、何なに……?」

淡「『つまり…だから…その…マ…マで始まる言葉で……マ…マス……』
   『その、つまり、マスタ~~…………ベ~~~ション………をよ……』」

淡「なにこれ」

誠子(おいおい……声に出すなよ)

尭深(恥じらいなく読むところが、流石というかなんというか……)

淡「うわー、絵もグロっ。信じられない……オエッ」

照「でもこれ、面白いよ?」

淡「えー、絵が気持ち悪すぎじゃないですか?」

淡「うわー、耳とか飛んでる……うげぇ」

淡「ちょっと菫先輩のセンスが信じられないなぁ、これ」

菫「……」 ガチャ

淡「あ、お疲れ様でーす」

照「おかえり」

誠子「お疲れ様です」

尭深「お疲れ様です……」

菫「……」 ゴゴゴ

尭深(……あ)

誠子(これはヤバイ)


照「……」 ペラッ

淡「菫先輩、どうしたんですかー?」

菫「……」 ゴゴゴゴゴゴ

菫「『絵が気持ち悪い』……ああ、確かにそうだろう」

菫「『グロい』……それも認めよう。一般的と言うにはあまりに残酷なシーンが多い。それも確かだ」

菫「だが……今ッ! まさに! それを愉しんで読んでる人間の目の前で取り上げて言うってのはどういう事だ……?」

菫「こいつはめちゃ許さんよなぁぁぁぁ――――ッ!?」

淡「へっ?」

菫「オラァ!」

淡「ひぎゃっ」

淡「い、いたっ……! 何するんですか!?」

菫「いいか、このデコピンは荒木飛呂彦の分だ。頭が痛いようだが……それは荒木飛呂彦がお前の頭を弾いたと思え」

淡「荒木飛呂彦って誰――?」

菫「そしてこれも荒木飛呂彦の分だ……!」

淡「――って、いたたたたた、いたい! いたいよっ!」

菫「照の背後に隠れるつもりだろうが、それはもうできない」

菫「今お前の頭を押さえた……もう逃げ場はない」

菫「そして次も荒木飛呂彦の分だ。その次の次のも。その次の次の次のも……。その次の次の次の次のも……」

淡「ちょ、ちょっと顔が怖――」

菫「次の! 次も! 荒木飛呂彦の分だ。これも、これも、これも、これも、これも、これも、これも、これもなぁ――――ッ!」

淡「いたたたたたた、いたいっ! ひぎゃぁ! いたいっ! いたいですっ! あうっ! 痛いよぉ! いたっ!」

淡「やめ、やめて! あぶっ! ちょ、壊れちゃうって、頭っ! 割れちゃうっ! 血が出るからぁ! 無理だってっ! いたっ! 痛いっ!」

菫「……ふう」

菫「お前がデコピンされたのは、たった一つだ……。淡、たった一つのシンプルな答えだ」

菫「『お前は全ての漫画ファンを怒らせた』」

照「菫、お疲れさま」 ペラッ

菫「……ああ」


淡「いたた……赤くなってる……」

誠子「大星も余計な事言わなきゃいいのに……」

尭深「流石にフォローが……」

淡「えーっ」

淡「だって、絵がグロいのは本当――」

菫「……ああん?」 ゴゴゴ

 
菫「反省が足りてない……どーにも私の言った言葉の意味を理解できていないマヌケ頭がいるって気がするんだが……」

菫「これはただの気のせいで私の勘違いなのか……? それとも、そうじゃあないのか……?」

菫「お前は……どっちだと思う? 大星淡……」

淡「き、気のせいです……ハイ」

菫「そうか、ならいい」

淡(殺されるかと思った)

誠子(そりゃお前、二度目は危ないって)

尭深(弘世先輩は、ジョジョ大好きだから……)

照「……」 ペラッ

淡(でも……いくらなんでもさぁ。これはやりすぎじゃん――)

菫「――淡」

淡「ひゃ、ひゃい」

淡「な、なんでしょうか……?」

菫「スマン、まあやりすぎた」

 
菫「赤くなってるしな……ちょっと力を入れ過ぎたかもしれない」

淡「あ、はい」

淡(ちょっとどころじゃないんだけど……)

菫「だがな……」


菫「好き嫌いというのはよくわかる……人間にはどうしても好みというものが存在するからな」

菫「ファッションにしてもそうだし、食べ物や……打ち筋なんかもそうだ」

菫「それは人の自由であり……個性だろう。そこはいい。そーゆーものだからな」

菫「でもな、考えてもみてくれ」

菫「お前だって好きなお菓子とかあるだろう?」

淡「たけのこの里」

菫「うん、じゃあそのたけのこの里だとしよう」

菫「お前が満面の笑みでたけのこの里を食べているとする――そう、頬張っているとする」

菫「そこに来たやつがいきなりお前の持っている箱を取り上げて、たけのこの里を口に含む」

菫「それから……こう言うんだ」

 
菫「『やっぱりたけのこはゲロまずだぜェェェ~~~~ッ! よくもこんなものを食べれるよなぁ……オエッ! きのこが最高なんだよォ~~~』」

菫「するとどうだ? どんな気分になる?」

淡「ブッ殺します」

照「やはりきのこはクソ。便所のネズミもゲロ吐くゲス野郎」 ギュルギュルギュル

照「倒す」 ゴッ

誠子(たかがお菓子ってツッコミは駄目なんだろうなぁ)

尭深(もっと普通のたとえじゃ駄目なの……?)


菫「そうだろう? お前がやったのは、そういう事なんだよ」

菫「遣り過ぎたとも思うが……まあ、お前の態度にも問題があった」

菫「今回はこれぐらいの笑い話だが……場面によってはそうもいかなくなる。その事を改めて欲しいと思ったんだ」

菫「これから、色々と長いんだからな……今のうちに」

淡「菫先輩……」

照「……豊胸、なるほど」 ペラッ

 
尭深(笑い話……?)

誠子(どう見ても本気で怒ってたよな……)

尭深(でもまあ……本人たちがそれでいいなら)

誠子(わざわざ虎の尾を踏む必要もないか)


淡「で、どうして部室でマンガなんて読んでるんです?」

照「菫が貸してくれたから」

淡「いや、そーじゃなくて」

照「……?」

照「私が古いマンガしか読んでないって言ったら、色々貸してくれたんだ」

淡「いや……」

淡(なんで部活中に読んでるの……って意味だったんだけど。まあいいか)

淡「古いマンガって、どういうのですか?」

照「……ん」

 
照「鉄腕アトム、ブラックジャック、ドラえもん、サイボーグ009、デビルマン」

照「新しいのだと、コブラ、花の慶次、エリア88、サイボーグクロちゃんとか」

淡「あー」

淡(半分以上知らない)


淡「クロちゃんとか懐かしいですね」

照「マタタビくんが可愛い。あとグレイとかバイスとか、かっこいい」

淡「アニメ、よく見てましたよ」

淡「手足が針金の、クロちゃんの人形とかも買っちゃったりして」

照「いいな……うちは余裕がなかったから」

淡「あー、懐かしいなー」

照「懐かしいね」

淡「あんまり知らないんですけど、どこら辺が好きなんですか?」

照「コブラは言うまでもなくかっこいい。ちょっとした時に気の利いたタフな台詞が言えるところが最高にいい」

照「慶次郎も一緒。原作の一夢庵風流記よりちょっと若々しさが出てるけど、やっぱりタフでクール」

 
照「エリア88は……風間真もそうだけど、私が好きなのはグレッグ大尉。なんといってもかっこいいし可愛い。クマみたいで」

照「ドラえもんはいい……心が癒される。でもそんな中にブラックなユーモアがあるあたりが好き」

淡「なるほど……色々あるんですね」

照「本当はちゃんと貸してあげたいんだけど……長野の方に置いてきちゃったから……」

淡(あ、明らかに目の色が暗くなった……)

誠子(ちょっと話題変えよう、話題を!)

尭深(えっと……先輩、お願いします)

菫(あ、ああ……任せろ)


菫「淡、そういうお前はどんな漫画を読むんだ?」

淡「マンガ? 全然詳しくないんですよね」

菫「でも多少は読んでるんだろう?」

淡「それは、そうですけど」

淡「絵が汚い……ちょっと線が多いのは苦手かも」

菫「そうか」

 
淡「そうですねー。最近読んでるんだと」

淡「東京喰種とか、嘘喰いとか、テラフォーマーズとか、キングダムとか」

淡「あとはバチバチとかケルベロスとかプリベルとかドリフターズとか……レッドアイズとか」

淡「ちょっと前だとハガレンとかヘルシングとかARMSとかガンスリンガーガールとか覚悟のススメとかですかね」

菫「なんだ、結構読んでるじゃないか」

淡「いやあ、全然ですよ」

誠子(さっきジョジョがグロいって言ってたけど……)

尭深(東京喰種とか、嘘喰い、テラフォーマーズ、キングダムも十分……)

誠子(バチバチやドリフ、ハガレン、ヘルシング、ARMS、ガンスリ、覚悟のススメにも出血とか死亡シーン多いよな……?)

尭深(……うん)

誠子(というかどれも、バトルシーン豊富じゃないか。血が出る)

誠子(それに……正直覚悟のススメとジョジョって、絵とかどっこいじゃないか?)

尭深(ある意味、覚悟のススメの方が人を選ぶと思うけど……)

 

 
誠子(ところで、プリベルって何?)

尭深(多分……魔法少女プリティ☆ベル)

誠子(魔法少女か……そこだけなんか違うラインナップだ)

尭深(主人公は魔法少女に変身するマッチョのおじさん)

誠子(えっ)

尭深(小学生が戦場に出る事を許さないってタイプの心優しいマッチョ。顔は濃いし腹芸も使うけど)

誠子(はっ?)

尭深(お色気あり、出血グロあり、おバカな下ネタあり、パロディあり、政治・軍事ネタあり、クトゥルフあり)

誠子(えっ、なにそれは)

尭深(事実だから)

誠子(……マジか)
 

 
誠子(じゃあ、ケルベロスってのは?)

尭深(チャンピオンのポストうしとらって言われていたマンガ)

誠子(へー)

尭深(でもコミックスの売り上げが悪かったのか、10巻で打ち切りになった)

誠子(そうなのか。なんか勿体ないな)

尭深(チャンピオンの編集部は見る目がない。あの化け蜘蛛のエピソードとか最高だったのに)

誠子(ふーん)

尭深(それにリョナ漫画として人気も高かったし)

誠子(えっ、なにそれは)

尭深(事実です)

誠子(いや、そもそも、リョナって……?)
 

 
誠子(……レッドアイズって?)

尭深(redEyes)

尭深(SAAって、パワードスーツに身を包んで闘うおじさんたちの話)

尭深(登場人物の9割方が男。オジサン率高し。おじいさんも出る)

尭深(女の登場人物は名アリ数人。モブを入れて……多分数えても両手の指以下ぐらい)

尭深(とにかく、漢ッ! って感じでむせる、男たちの戦場物語。当然人は死ぬ。モブはバカスカ死ぬ)

誠子(えっ、なにそれは)

尭深(連載雑誌が次々と廃刊になって、移り変わった先も滅ぼす死神って言われてる)

誠子(えっ)

尭深(まあ、移籍先がマイナー雑誌って言うのもあって、逆に廃刊になっても拾い上げらるぐらいファンがついてるんですけど……)

誠子(へー)

誠子(ところで、詳しくないって言う割に、あいつマイナーなのばっかり読んでるなぁ)

誠子(しかも、死亡シーン多いみたいだし……)

誠子(どうなってるんだ……?)
 

淡「そういう菫先輩はどういうのを読んでるんですか?」

菫「私か?」

菫「まず……ジョジョだろ?」

淡「はい」

菫「……で、うしおととらに、からくりサーカスに、寄生獣に、烈火の炎、今日から俺はだろ?」

菫「マスターキートンとか、パイナップルアーミーも好きだな。3×3EYESとかも」

菫「最近のだと……ヴィンランドサガとかシュトヘルとか、ヒストリエとかだろうか」

菫「Sとかウロボロス、ヨルムンガンドやブラックラグーンも好きだな」

淡「へー」

照「ジョジョを読み終わったら、そのあたりも貸してくれる?」

菫「ああ、分かった」

菫「……あ。金色のガッシュもいいな。実に熱くて」

淡「懐かしいですね……昔、アニメやってましたよね」

淡「『ザケルガ!』とか『シン・シュドルク!』とか。結構ごっこ遊びしましたよ」

菫「ああ……懐かしいな。ごっこ遊びはしてないけど」

 
菫「この手のバトルものでは『人が死ぬか』『それとも死なないか』」

菫「少年漫画だと、基本的に後者が多くて……前者がある場合は感動的な別れの場面や心を震わされるんだが……」

菫「死ぬ事なく、それでいて熱い別れを演出する……」

菫「ガッシュは、間違いなく名作だな……うん」

誠子(シン・シュドルクって……?)

尭深(ウマゴンの術)

誠子(どれだけ覚えてるんだよ……)

尭深(まあ、ウマゴンなら割とメジャーだから)

誠子(メジャーって……私は一々覚えてないよ)

尭深(それにしても……読んでるものが偏ってるよね)

誠子(偏ってるくせに、なんか色々覚えてるなぁ……なんなんだアイツ)


照「……お腹チュいたニャン♪」 ペラッ

照「……」 ハラハラ

照「糸が集まって固まる……なるほど。すごい」 ペラッ

菫「あとはYAIBAとかも好きだな」

菫「個人的には、名探偵コナンよりこっちのバトルものの方があってると思うんだ」

菫「絶望的なシーンとか、出血の描写も上手いしな」

淡「コナンの前に連載してたんですか?」

菫「ああ、やってたんだ。まじっく快人とか、短編集も面白いぞ?」

菫「短編集と言えば、藤田和日郎の短編集もなかなか面白いのが多くてな……」

菫「個人的には、短編集に収録されてる瞬撃の虚空とかがお勧めだ。かっこいいおじいさんが好きならな」

淡「それはちょっと興味あるかも」

菫「藤田の書く老人は凄まじいぞ? からくりサーカス、うしおととらもまたこう老人がかっこいい。とくにからくりのルシールとか」

菫「もう、年を取ったらこうなりたいってくらいのパワフルな老人なんだ」

淡「へー、買ってみようかな」

菫「うん、間違いなくお勧めできる」

菫「からくりサーカスはネットじゃ色々言われているが、私は勝が守られる側から守る側に向かったのには感動したんだ」

菫「『えんとつそうじ』というのが出てきたときには震えた。シルベストリの話もよかった」

菫「黒賀村編も、その後のタメの為だし……れんげ畑のエピソードとか、いいじゃないか。私は好きだ」

 
菫「そう言えば、短編と言ったら週刊石川雅之というのがあってな……」

菫「これはもやしもんを書いている人のものなんだが、なかなか良質の短編集だぞ」

淡「あ、もやしもんなら知ってますよ。菌が可愛いですよね」

誠子(弘世先輩って……)

尭深(以外に語りたがり屋なんだ……)


淡「たかみ先輩はどんなのを読んでるんですかー?」

尭深「わ、私……?」

尭深「えーっと、ドラゴンボールに」

菫「ああ、あれもいいよな」

菫「今でこそ色々言われるが、あの絶望感やピンチって感じ。主人公の待ち遠しさがやっぱり違う」

照「……読んだ事ない」

尭深(メジャーなのに)

誠子(メジャーだよね)

淡(ドラゴンボール読んでないって、流石テル)

 
菫「じゃあ、今度買いに行こうな」

照「うん。そうしよう」

照「……承太郎!?」 ペラッ

尭深「で……スラムダンクに、キン肉マンに、幽遊白書に、レベルEに、るろうに剣心に、世紀末リーダー伝たけしに」

尭深「ヒカルの碁に、ホイッスルに、地獄先生ぬ~べ~に、シャーマンキングに、アイシールド21に、ネウロに」

尭深「最近だと……暗殺教室とか、トリコ、銀魂かな」

淡「ワンピースはどうなんですか?」

尭深「ヒルルクまで。百歩譲ってもアラバスタまで」

菫「ジャンプ率高いな、おい」

尭深「やっぱり流石は大手……ですから」

尭深(それに男の友情(意味深)って意味でも大手だから……ふふふ)

淡「懐かしいなー」

淡「小学生の頃、テニスの王子様に影響された同級生がテニス始めてみるって言ったり」

淡「アイシールドに影響された同級生が、アメフト部作るって言ってましたよ」

 
菫「私は、中学生だったな」

菫「男子の方とか、授業でラグビーをやってたらしく『なんで前にパスできないんだ!』って騒いでたけど」

淡「へー」

照「……どっちも知らない」

菫「そうだな、後で買いに行こうな」


照「東京は長野に比べて本屋が多くて本当に嬉しい」

菫「東京って言っても、ここは相当田舎の方だけどな……電車も一本しかないし」

照「長野に比べたら都会」

照「というか、東京に田舎なんてない。全田舎に対する侮辱だから」

菫「そうなのか? でも実際田舎っぽいだろう?」

照「近所にメジャーなコンビニがある」

照「街頭が明るい」

照「十分、都会でしょ?」

菫「……え、ああ、そうなのか。スマン」

 
淡「亦野先輩はどうなんです?」

誠子「私?」

菫「きっとあれだ。ゴルゴ13とか、源文漫画とか、松本零次の戦場ロマンとか、釣りバカ日誌とか釣りキチ三平そういうのだな」

誠子「……いや、読みませんって」

誠子「どんなイメージもたれてるんですかね」

菫「いや、それはな……」

淡「なんというか……」

照「釣り好きな殺し屋」

尭深「ちょっ……」

誠子「……ひどい」


菫「ま……まあ、気を取り直せ。取り直して」

菫「ほら、亦野はどういうのを読むんだ?」

誠子「私は……そうですね」

 
誠子「普通に、隣の怪物くんとか夏目友人帳とか、大奥とか、エマとか乙嫁語りとか」

誠子「あとはBASARAとか7SEEDSとか、さんすくみとか、ひらひらひゅ~んとか、きのう何食べたとか、西洋骨董洋菓子店とか」

尭深「きのう何食べた(歓喜)」

尭深「西洋骨董洋菓子店(震え声)」

淡「どうしたんです?」

尭深「いや……ふふふ」

尭深(ゲイ漫画……よしながふみはそういうのが多い……)

尭深(きのう何食べたとか西洋骨董洋菓子店は抑え目というかただのフレーバーだけど……)

尭深(『それを言ったらおしまいよ』とか、『1限めはやる気の民法』とか……あれはモロ)

尭深(彼女も、こっち側なんだ……ふふふ)


誠子「そうですね……あとは」

誠子「ぽっかぽかとか、空の食欲魔人とか、百鬼夜行抄とか、男の華園とか、パタリロとか……最遊記ですか」

照「パタリロ……美少年系の先駆けか」

尭深「男の華園(意味深)」

 
誠子「いや、違うから。あのマンガそういうのじゃないから」

誠子「純粋に男子新体操の話だから。桑田乃梨子の方だからな」

尭深(BLじゃないの……? それは残念だけど……)

尭深(でも、百鬼夜行抄はともかくとして……今市子もその手のが多い……)

尭深(峰倉かずやもそう……これは確定)

尭深(ふふふふふふ、ふふふふふふ)

菫「うーん」

菫「意外だな。少女漫画が多い……というかほとんどそればっかりだ」

誠子「そりゃあ、少女なんだから少女漫画読みますよ」

尭深「えっ」

菫「ん?」

淡「……あはは」

照「?」

誠子「……あ、すみません」

 
誠子「そういえば」

誠子「よしながふみの漫画に、東京でのおいしい店が書いてあるエッセイみたいのがあるんですよ」

誠子「結構こっからでも行けそうな場所があるんで、今度行ってみませんか?」

淡「行くー」

尭深「実際に行きたくなるんですよね……ああいう食事系の漫画って」

照「勿論行く。断る理由がない」

照「菫は?」

菫「ん? ああ、断る理由はないんじゃないか……うん」

菫(体重計が怖いが)


菫「……結構話したな」

菫「さて、じゃあ本屋にでも寄って帰ろうか」

照「うん」

誠子「私も付き合います」

尭深「私も……」

 
淡「私も行くけどいいですよね?」

菫「……どうせ、いつもみたいに答えは聞かないって言うんだろ?」

淡「そりゃあ、モチのロン!」

照「……」

照「私の強さに、お前が泣いた」

尭深「あ、仮面ライダーは押さえてるんですね」

照「テレビくらいは使えるから」 フンス

誠子「じゃあ……そうですね、私は……」

誠子「お前、私に釣られてみる?」

尭深「(一巡目に捨てた牌が)降臨……満を持して」

菫「……何の話をしてるんだ?」

淡「えっ」

尭深「……ああ」

誠子「仮面ライダーの話ですよ」

菫(仮面ライダー……? そんな台詞あったか……?)

 
照「電王」

菫「電、王……?」

菫「ああ……。平成かぁ……」

菫「平成はなぁ……」

菫「だって、改造人間じゃあないんだろ……?」

菫「それは……ちょっとなぁ……なんというか」

菫「ちょっと、なんかなぁ……」

照「……!」


照「違う。それは誤解だから」

照「昭和は確かに改造人間だけど、昭和派が思ってるほど改造人間の悲哀は出てこない」

照「仮面ライダーの最初の方や、真。或いは全体的にムードが暗いBLACK」

照「ライバルが改造されて襲って来たり、ヒロインの父親を殺した疑惑があったりはした」

照「真も、エグいシーンやもう戻れない改造人間としての悲哀はあった」

照「BLACKも、育ての親を殺されたり、親友だった信彦との争いがある」

 
照「でもそれじゃあ子供に人気が出なかったから、路線が変更されて明るくなってる」

照「仮面ライダーには少年ライダー隊とか、真は続編なし、BLACKにはムードの明るいRXが」

照「……あ。RXも明るそうだけどちゃんと暗い場面もあるというのは置いといて」

照「昭和には、逆になんでここまで子供が出てくるんだとか、ご都合主義が過ぎないかとか」

照「小学校をアジトにしようとしたり日用品を掛け合わせた改造人間作ったりジンドグマって頭大丈夫とか」

照「そういう風なのも多いってちゃんと見てればハッキリわかるから」

菫「……あ、ああ」


照「改造人間の悲哀のようなものが見たいのであれば、アギトや555」

照「どっちも改造はされてないけど、人で非ざる者の苦悩が描かれてる」

照「剣だって、中盤グダグダしてるけど……ちゃんと正義のあり方とかが描いてある」

照「人間とそうでないもののパートナーは、電王やオーズが」

菫「あ、ああ」

誠子「ちなみに、うしおととらが好きならオーズはオススメですよ」

菫「あ、ああ……覚えておく」

 
照「それを改造人間じゃないからとか、イケメン俳優を使っているから、武器を使っているからって見ないのは勿体ない」

照「同じように、古臭い、今更肉弾戦なんて……って理由で昭和をないがしろにするのもよくない」

照「平成には平成の良さが、昭和には昭和の良さがある」

照「昭和のバイクシーンや、役者が身体を張っている場面には本当に凄いと思う」

照「何だかんだと爆発する場面はかっこいいし、デザインもシンプルながら味わい深い」

照「ただの光る棒だってのに、リボルケインは火花が散ったりあの動きがあったり凄い。大切断の体液吹き出しもシンプルながら凄い」

照「変身ポーズの切れの良さ、力強い変身の掛け声なんかは本当に好き。心が震える」

照「イケメンっていうよりハンサムって言った方がいいような、男らしい人たちが見れるのもいい」

照「というか、元々はあれだって当時のイケメン(ハンサム)を利用してたから、平成のイケメン起用と一緒。男らしさの違いはあるけど」

照「でも、甲羅砕きとか真空地獄車みたいな、見てみるとなんだこれしょぼいなぁ……って場面だって当然ある」

照「平成は画面が見やすかったり、色々な小物なども充実してるし、エフェクトも凄い」

照「昔と違って子役も増えてきたから子供の演技が気にならなくなって来たり」

照「技も昔なら、よく使わないしちょっとだけだからいいかって、手抜きみたいになっているもののちゃっちさが消えてて丁寧になったりしてる」

照「別に無理やり見ろとは言わないけど、どちらかだけを偏重して一方を軽んじるのはよくないと思う」

菫「あ、ああ……分かった。判ったよ。判った。私が悪かった。謝る」

 
誠子(宮永先輩がいつになく長文を話してる)

尭深(多分、それぐらい思い入れがあるんだと……)

淡(アイス食べたいなー)

照「……」 ギュルギュルギュル

菫(何故か分からんがこっちを凝視してくる……右手も渦撒いているし……)

菫「……そうだな、確かにお前の言う事も正しいかもしれない」

菫「うん、本屋に寄ったらT○UTAYAにも寄ろうか」

菫「そこまで言われるたんなら、ちょっと見てみたくなった」

菫「亦野が言うように……そうだな、オーズというのから見てみよう」

照「それがいい。興味を持ったのから入れば」


淡「でもあれ、最初に見ない方がいいよね」

尭深「確かに」

誠子「主役の演技力と歌唱力が、他作品に比べて格段にいいからなぁ……」

淡「電王とかもイマジン変わったときの演じ分けいいよね。Wの左側もスゴイし」

 
誠子「オーズや電王、W見てから剣を見ると色々際どいかもなぁ……滑舌が」

尭深「でも……剣も、中盤とかダレるけど……。終盤のまとめ方とかすごく綺麗だから」

淡「オーズも中盤より終盤に尺を回しておけば、もうちょっと完全体も活躍できたよね。勿体ないなー」

尭深「でも、終わり方の綺麗さは平成でも上位だよね」

誠子「だから、それを見た後に響鬼とか見ると……ねえ」

淡「演技は兎も角、前半のミュージカル風(笑)がキツイのと、オチが結局投げっぱなしだもんね」

誠子「響鬼さんはかっこいいけど、最初は仮面ライダーの皮を被った中学生日記だし」

尭深「後半は斬鬼さん関連が熱いけど、いつものように内紛するから……」

淡「まあ、斬鬼さん関連は満足かなー。あと、私は明日夢より桐矢京介の方が好きだけど」

誠子(お前自身がちょっとそんな感じだもんな……)

尭深(それを言っちゃ駄目だと思う……)

菫「おい、なんか不安になってきたぞ……平成ライダー」

菫「ま、まあ……とりあえずオーズだな」

照「うん」

 
照「あれは終わり方が綺麗だから、多分見ても戸惑わないと思う」

淡「歌はともかく、ですね」

菫(平成ライダーってのは見て戸惑うのが前提なのか? 大丈夫か……?)


淡「ところで、先輩たちは何が好きなんですか?」

尭深「私は電王。映画への出張りはともかく、掛け合いが面白いから」

誠子「私は……Wかな。仮面ライダー=正義って言うのが言及されてるから、ファンとしては嬉しい」

淡「私はカブトかなー。天道がイケてんじゃん」

尭深「あー」

誠子「……確かにお前自身が、そういうタイプだもんな」

照「音也とか士みたいなところもある」

淡「なんだか、名前も似てるでしょ? あんな感じの名乗りができそうで」

淡「それに、顔も同じく美形だしさ」

誠子「自分で言うな、自分で」

尭深「ははは……」

漫画いっぱい読んでんのはわかったけど
咲SSじゃなくてもいいんじゃあ・・・

 
照「……うん。いっそ、インターハイで名乗ってみたらどう?」

照「ポーズも一緒にさ」

淡「あー、それいいかも」

淡「だったら、考えとかなきゃなー」

淡「ねえ、テルー」

照「どうしたの?」

淡「『お祖母ちゃんが言っていた』をそのまま使ってもいいかな?」

照「どうだろう。テレビに映るし、東映から怒られるかも」

淡「でもでも、逆に次のライダーへのオファーこないかな?」

照「……あ、それもアリかな」

淡「よし、考えてみーようっと」


誠子(個人的には……『私はかーなーりー強い』とか言いそうだけどな、こいつ)

尭深(ああ……はい、確かに)

>>52 スマン。グダグダ掛け合いして喋るのが書きたかったんだ


照(私も何か考えておこうかな……どうしよう)

照(『さぁ、お前の点棒を数えろ』ぐらいなら、元ネタが分かりやすくていいかもしれない)

照(でも、『この私が許さん』とか『どこへ逃げても無駄だ』とか)

照(『なんなんだお前は……!?』→『通りすがりのチャンピオンだ、覚えておけ』も捨てがたいな)


淡「……あ」

淡「そんなテルはどうなの? 何が好き?」

照「……うん」

照「私は昭和なら初代とBLACK」

照「電光ライダーキックがかっこよかったのと、バトルホッパーやクジラ怪人に泣いたから」

照「平成なら555とキバ」

尭深「ああ……」

誠子「うわぁ……」

淡「……あはは」

 
菫「ん? どうかしたのか?」

誠子「いや、宮永先輩の挙げた平成ライダーってのが……」

尭深「作中のムードに癖がある事が定評のある脚本家で……」

淡「寝取りがあったり、昼ドラみたいな陰湿なイジメがあったりするんですよ」

淡「あとやたらとご飯食べたり、ご飯食べたり」

菫「……なんだそれは」

菫「なんだそれは」

淡(二回言った)

菫「そういうのを聞くと、なんだか余計に見る気がなくなって来るんだが……」

照「待って。それは違うから」

照「確かにそうだけど、でも熱さが凄い。邪道を以って王道を書く、みたいなところがある」

照「きっと菫も気に居るはずだから」

菫「そ、そうか……」

 
菫「ところで……私は平成と言ったらクウガぐらいは聞いたことがあるんだが」

菫「クウガ好きってのはいないのか?」

誠子「クウガも面白いですよ」

尭深「主人公は、優しいヒーローって感じで。それに熱いし、王道です」

誠子「話も、綺麗にまとまるから……安心して見れますね。良作です」

菫「それなら、いいじゃないか」

菫「うん、なるほどな」

菫「淡はどう思っているんだ?」

淡「んー」

淡「私は子供の頃に別のを見て、今までその流れでライダーを見てたんですよ」

菫「なるほど。それから、クウガを見たという感じなのか」

淡「そう。後で、DVDを借りて見た感じで」

淡「で、見ると……なんていうか、テンポが悪いんですよねー」

淡「ドラマとして見たら面白いんだと思いますけど、特撮とかライダーとして見ると肩すかし……みたいな」

 
淡「『いつまでバイクに乗ってはしゃぎまわってるんだよ』とか、『いつまで追いかけっこしてるの?』とか」

淡「戦闘のテンポも悪いし、ラストバトルもライダーっぽくはないですね。スッキリしない」

誠子「あー、確かにそれはある」

誠子「特撮・仮面ライダーってよりは、仮面ライダーが出てくる一般ドラマって感じですね」

尭深「『見ててください……俺の変身』とか『綺麗ごとだから現実にしたいじゃない』とかいい台詞がありますし」

尭深「主人公が戦いに心を痛めてたり、敵が恐ろしい集団だったり、ライダー同士で争わなかったりっていうところがあるんで、そこはオススメですよ」

誠子「純粋で王道なヒーロー像って感じで」

菫「ふうん、なるほどな」


淡「あ、あとねー」

菫「ん……何だ?」

誠子(まだ言うのか)

尭深(こういうところが確かに俺様系みたいだよね……)

淡「個人的にはね」

淡「笑ってるシーンでも、オダギリジョーの目がまるで笑ってないから、怖いんだよね」

 
淡「だから良い事言っても嘘っぽいし、ずっと草加雅人みたいな人間だと思ってたもん」

照「……少しは分かる」

誠子「それは確かに……まぁ」

尭深「特撮自体に乗り気じゃないってのが出ちゃってるってのは、確かにあるけど……でも」

菫「……そうなのか?」

誠子「あー、余計な事言っちゃったかな」

尭深「言わなければ、気付かなかったかも知れない程度なんで……」

淡「男とか子供だったらそういうの気にせず見れるんだけど、どうしても違和感感じちゃうとキツいんだよね」

照「でも、お話自体は綺麗だから見てもいいと思う。普通に良作だから」

照「私は王道らしい王道より、邪道系の主人公が王道な結論に至る方が好きだけど」

菫「なるほどなぁ……」


照(懐かしいな……仮面ライダー)

照(仮面ライダーごっこ、よくやったなぁ……)

 
 咲『それじゃあ私がBLACK』

 照『私もBLACKがいいんだけど……』

 咲『お姉ちゃんなんだから譲ってよ』

 咲『シャドームーンでいいでしょ?』

 照『……むぅ』

 京太郎『あ、あの……』

 咲『何?』

 京太郎『俺は……?』

 咲『バトルホッパーかロードセクターでいいでしょ』

 京太郎『せめて人型にしてくれよぉ! もう四つん這いは嫌だよぉ!』

 照『……私も。いい加減、仮面ライダーがやりたいんだけどな』

 咲『じゃあ……お姉ちゃんがRXで、私がBLACK』

 咲『それならいいでしょ?』

 咲『過去のBLACKを助けに、RXが来たの』

 
 照『……でも、私はBLACKがいい。RXじゃくて、BLACKが』

 咲『やだ。RXは顔が間延びしてて、身体がヘンな緑色で、かっこわるいんだもん』

 咲『年上なんだから我慢してよ』

 照『……』

 京太郎『お、おれは……?』

 咲『ゲドルリドル』

 京太郎『そんなダサいのはやめてくれよぉ!』

 咲『じゃあ、京ちゃんは帰っていいよ』

 咲『仕方ないから、お姉ちゃんはシャドームーンね』

 照『……』


照(結局、一度もBLACKになれなかった。RXには何度かなれたけど)

照(咲のライダーキックを咄嗟に躱しちゃったせいで、坂道を転がり落ちて咲が怪我をした事があった)

照(咲のライダーパンチによろけて硝子に背中を打って割ってしまった事もあった。私が怒られた)

照(『リボルケインを用意して』って蛍光灯をせがまれて、咲が割っちゃったのに私が怒られた事もあった)

 
照(『キングストーンフラッシュ!』って、祭りの縁日で取ったレーザーポインターもどきを顔面に照射された事もあった)

照(『シャドームーンならバイクを切って』って、京ちゃんをサタンサーベル(小枝)で切りつける事を強要された)

照(鎖骨を折った京ちゃんは入院して点滴で夏を送る事になった。勿論私が怒られた)

照(京ちゃんには悪い事をしたとも思うが……なんで私ばっかり怒られるんだろうか。咲が言ったのに……)

照(他にも……)

照(『バイオライダーなら水に潜って』って、バイク役ごと海に落とされて溺れかけて肺炎になった)

照(『ロボライダーなら大丈夫』って、焚火を起こした咲のせいでボヤになって、姉だからって怒られた)

照(『ライドロンに乗って』って、車椅子で坂道を急降下させられた事もある。車椅子が壊れて勿論私が叱られた)

照(私は怪我したのに。思えば酷い。すごく叱られた)

照(そう言う事をやってたから、家にお金がなくてお年玉を取り上げられるような麻雀が始まったんだ)

照(……思い返すと、色々出てくるな)

照(……) ムムム

照(やはり許しがたい)

照(いや……断じて許さんッ!) ゴッ

照(私に妹はいない。いるのは改造されて、邪悪な心を持った世紀王だけだ)

 
淡「……で、やってきました。TS○TAYA」

菫「本屋もセットになってるみたいだな……あまり大きくはないが」

淡「それでも一応揃ってるからいいんじゃないですか?」

菫「まぁ、確かに」

照「淡、さっき言ってた漫画を紹介して」

淡「おまかせあれ!」

誠子「じゃあ、私はちょっとぶらっと見てきますね」

誠子(少女漫画見てくるって言ったら、また冷やかされかねない)

尭深「私はジャンプの新刊を……」

尭深(黒バスとテニスが発売してるはず)

菫「なんだ、結局は別行動か」

菫「……」

菫「……レンタルの方でも見てるか」

菫「よし、とりあえずオーズを借りよう」

菫「デザインは……なんだこれ? 胸に中華鍋でもつけてるのか?」

 
菫「ゴテゴテしてるが……うーん、今のはこれぐらいが普通なんだろうか?」

菫「他のも……なんだこれ。万年筆のペン先に、焼き肉の鉄板、イカ焼きみたいのがあるな」

菫「555とキバは……目がデカいな。照は目が大きいのが好きなのか?」

菫「電王も目がデカいというか……なんかそれを通り越した奇抜なデザインだ」

菫「Wは……なんだこの、半分こ怪人は。かっこ悪いな」

菫「いや……近くで見ると、口のところがあって結構悪くない。真ん中のがなくて色が一つならきっとかっこいいのにな」

菫「カブトは……うん、かっこいいんじゃないか? この中だとシンプルだな。なかなかいい」

菫「ふーん、平成ライダーってのも……色々あるんだな」

菫「おっ」

菫「この……ディケイドっていうのは気になるな。巻数も少なくて、気楽そうだ」

菫「よし、次はこれにしようか」


菫「……ん、これは」

菫(魔法少女……プリキュアか……)

菫(昔は『魔女』とか『魔女っ娘』って言ってた気がするが……いつの間にか魔法少女なんだな)

 
菫(まあ、悪くないな……その響き)

菫(魔法少女しゃーぷしゅーたー☆すみれ)

菫(牌のお姉さんみたいに子供に人気が出そうだ)

菫「……」 フフッ

菫「……」 ニヤニヤ

菫(うん、悪くないんじゃないだろうか。うん)

菫(プリキュアは昔見てた。懐かしい……って、なんだこの数)

菫(驚いた、随分出てるんだな……知らないうちに)

菫(うーん、どうしよう)

菫(照はともかく、淡もいるから……借りるのは今度にしようか)

菫(こんなとこ見られたら、なんて言われるか分からない)

淡「……」 ジー

照「……」 ジー

菫(だけどまあ……私は純粋な気持ちからなんだ)

菫(昔の事で、よく思い出せない。細部がどうなっていたか分からない)

 
菫(昔を懐かしみたいのと、純粋にどうなっていたのか知りたい)

菫(そんな気持ちなんだ。だから別に何も悪くない。そう、純粋な気持ちだ。誰にでもある気持ちなんだ)

淡「まさかの時のスペイン宗教裁判!」

菫「ひゃぁう!?」

淡「お前の罪は3つある!」

誠子「胸!」

尭深「目つき!」

淡「体重!」

照「驚いた声が大きすぎる」

淡「あ、4つだった!」 テヘペロ

菫「お、お前たちどうして……。というか、いつからだ……?」

照「『……ん、これは』から」

菫「声をかけろ! その時に!」

照「だから、声大きいよ……店内なんだからもっと静かに」

菫「あ、ああ……すまん」

 
菫(クソッ! どうして私が謝っているんだ……?)

菫(最悪だ、コイツらにそれを見られていたとは……)

菫(どうしたらいいんだ……これでは普段の私のイメージが崩れてしまう……)

菫(よりにもよって、淡に見られた……それが一番困る……ッ)

淡「ところで、笑いながら何を考えてたんですかー?」 ニヤニヤ

淡「ねー、教えてくださいよー♪ 菫せんぱーい♪」 ニヤニヤ

菫(ぐっ……この明らかに分かっているって態度……クソッ)

菫(迂闊な受け答えをしたら、こいつはそこに確実に突っ込んでくる……!)

菫(いや、非の打ちどころがない言い訳をしても……『どうして必死なんですかー?』くらいは言ってくるだろう)

菫(くっ、どうしたらいいんだ……?)

淡「ほらー、教えてくださいよー」 ニヤニヤ

淡「さっきみたいな大きい声で、はっきり分かるように言ってくださいって……」 ニヤニヤ


菫「……」

菫「……ああ、わかったよ。言えばいいんだろう、言えば」

 
菫「言ったらすぐ済む。とってもシンプルな事だ。そうだろう?」

淡「そうですよー♪」 ニヤッ

淡「だから早く言いましょうよ、ねっ?」

照(あ……)

尭深(この流れは……)

誠子(間違いない……)

照(コーラを飲んだらゲップが出るほど確実)

菫「 だ が 断 る 」

菫「この弘世菫が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ……」

淡「えっ」

尭深(……やっぱり)

誠子(……こうなったか)

照(正直予想はついた)

尭深(ジョジョオタにあんな風な事を振る時点で)

誠子(こんな流れになるのは、必至だから……)

 
菫「第一、考えてもみろ……。おかしいんじゃあないか……?」

菫「どーしてこの私が怯えなくちゃあならないんだ?」

菫「こんな場面を見られるのなら、『下痢腹かかえて公衆トイレ捜しているほうが、ズッと幸せ』って……頭を悩ませなくっちゃならないんだ?」

菫「怯えるのはお前の方だ、大星淡……」

菫「ちょっとばかり調子に乗って……私に向かって『体重』などと不敬な事を口にしてしまった」

菫「貴様の方が、便所の隅っこのネズミのようにガタガタと怯えるべきなんだ……」

淡「せ、せんぱい……顔、怖いですよ……?」

淡「こんなの……可愛い後輩がちょっと悪戯しちゃっただけじゃないですか? ね?」

淡「ノリって奴ですよ、ノリって。だから……ほら、ね?」

菫「やれやれ……確かに、可愛い後輩だな」

淡「そ、そうでしょう?」

菫「だからこれは――愛の鞭だ。オラァ!」

淡「きゃんっ」

菫「お前が! 泣くまで! デコピンを! やめないッ!」

 
誠子「ま、まあまあ……弘世先輩もそこらへんにしましょうよ」

尭深「ちゅ、注目集めちゃいますし……」

照「『白糸台高校麻雀部。体罰!』とか報道されたら困るから……」

菫「……う、むぅ。確かにそうだな」

淡「……痛いよぉ、馬鹿力なんだから」

菫「……あ゛あ゛ん?」

淡「ごめんなさい……。なんでもないです」

菫「ああ、そうか……。いやー、なんでもないなら良かったよ……なんでもないなら」

菫「流石に二回も同じ事をするってのは無駄だからな……」

菫「無駄な事は嫌いなんだ……無駄無駄」

照(正直菫のこれはマナーが悪いファンみたいでもあるのが、残念だな)

誠子(……ま、まぁ。大星の奴も悪かったから半々って事で)

尭深(まだ、スキンシップの範囲内ですから……)

照(確かに、淡の事で菫は頭を悩ませてるから……しょうがないか)

 
菫「……まあいい」

菫「なあ、ところで……お前たちはどんな映画が好きなんだ?」

菫「あと、オススメのアニメとか……」

菫「折角この場に居るんだし、色々見ながら話さないか?」

菫「面白そうだと思ったり、興味を持ったのなら借りていけばいいし」

菫「そうやって、話題が共有できるようになるってのは、悪い事じゃあない……と思うんだが」

菫「どうにもメンバーの少ない高校などと違って、私たちは人数も多い。ランキング故の入れ替わりがある」

菫「結束に問題がある……というのも否めないかもしれない」

菫「インターハイでは何があるか分からないし……」

菫「そういう意味で、不安要素を埋めるというか……お互いの親睦を深めておきたいんだが……」

淡「さんせーい」

誠子「いいんじゃないでしょうか」

尭深「面白そうです……」

照「悪くないと思う」

 
         ・

         ・

         ・


淡「あ、もうこんな時間だ」

菫「……そうだな」

誠子「とりあえず借りて、買って……戻りますか」

尭深「後は、また別の日に……」

照「今日は楽しかったから、また来たい」

淡「どうせなら、次はカラオケとか行きません?」

照「カラオケって?」

誠子(あ、知らないのか)

尭深(流石……ですね)

菫(今更だな。もう私は驚かない)

淡「自分の好きな曲を入れて、大声で歌えるところですよ」

 
照「へぇ……」

淡「折角だから、このメンバーで行こうよ」

淡「親睦を深めるって意味でも」

照「楽しそう」

照「うん、行きたいな。楽しそうだし」

淡「オッケー! じゃあ次はカラオケって事で!」

淡「いいですよね?」

菫「ああ、それもいいだろう」


菫(……うん、よし)

菫(天の時、地の利に如かず。地の利、人の和に如かず)

菫(団体戦……それはお互いの信頼が大事なんだ)

菫(点数を取られて変に焦ったり、逆に余計に稼ごうと前傾姿勢になったり)

菫(そういう、押し引きを間違えるのが一番つらいからな。もっとお互い打ち解けておきたいところだ)

菫(こういう時に淡の人懐っこさはいい方向に働く。うん、いい傾向だ)

 
菫「……で」

淡「何時の間にやら、インターハイ間近ですね」

尭深「全然練習できなかった……」

誠子「やばいなー……どうしよう」

照「コロンビーヌ……そんな……」 グスッ

菫(……どうしてこうなった)

誠子「……どうしましょうかね」

尭深「どうしよう……」

淡「私は別に問題ないと思うけど、練習不足で不覚をとるって凄くかっこ悪いよね」

菫「……ああ」


照「いやまさか、そんな……」 ペラッ

照「あ……ギイ先生……」

誠子「……あの」

誠子「宮永先輩、読んでる場合じゃないですって」

 
照「え……?」 グスッ

誠子「……いや、なんでもないです。すみません」

照「……そう」 グスッ


誠子(……マジ泣きしてるよ。どうする?)

淡(アンジェリーナが死ぬところでも号泣してたよね)

尭深(フランシーヌ人形の最期でも)

誠子(そういえば、ロッケンフィールドさんのところでも……)

淡(でも、確かに泣けるよね。今まで読んでなかった私が言うのもなんだけど)

誠子(爽やかさと熱血、王道具合だとうしおととらの方が強いけど)

尭深(涙腺へのダメージは、僅差でからくりの方が上かな……)

誠子(……まあ、私はうしとらの最終決戦でずっと泣きっぱなしだったけど)

淡(テルも、ページを進めるごとに鼻をかんでたから……真っ赤になってたね)

尭深(宮永先輩は、結構そういうのに弱いのかも……)

 
尭深(ミギーが消えたと思ったあのシーンのあと、2日間漫画も読まずお菓子も食べずだったから……)

淡(こりゃ、今回も長引くかもしれませんねー)


菫(……不味いな)

菫(どうにも緊張感というのが欠如してきている)

菫(漫画や映画、アニメなどの趣味。買い物や遊びを通じて部員の結束が強くなったのはよかった……)

菫(前以上に、メンバー同士の絆というのは深まった。それは確かだ)

菫(だがどうしても……なれ合いと言うか、緊迫感が薄れてしまっているのも事実)

菫(インターハイより、別のものに比重が置かれてしまっている)

菫(これじゃあ全国を目指す部活というよりも……緩やかなサークルだ……)

菫(……まずいなぁ、これ私のせいだよな)

菫(……どうしよう。部長が漫画本勧めたせいで三連覇を逃したとか言われたら)

菫(申し訳ないよな、先輩やレギュラー以外の部員たちに……顔向けできないというかなんというか)

菫(私も悔しいし……)

菫(かといって、急にバリバリやるって言っても……絶対にそれはよくない)

 
菫(熱湯で温まろうと思った瞬間に氷風呂に入れられるようなものだ……急激なショックを受ける)

菫(そうしたら、却ってインターハイに悪い結果を及ぼすかもしれない)

菫(どうしようか……)

菫(逆に考えろ……逆に考えるんだ、弘世菫)

菫(そう……この状況……この状況を利用するんだ……)

菫(『結束も壊さない』『インターハイへの緊張感を持たせる』)

菫(両方やらなくちゃあならないのが、部長の辛いところだな……)

菫(覚悟はいいか? 私はできてる)


菫「……さて」

菫「全員がジョジョを読み終わった事だが、好きな部は何だ?」

照「7部」

照「まさに集大成だった。大統領も単純なゲスとも言い切れないし、かといって善人とも言い切れない魅力的な敵だと思う」

照「個人的には、何のスタンド能力もなしに最後のステージまで来たバーバ・ヤーガにどんな馬とのドラマがあったのか気になる」

照「最後の最後で急に顔を出したあのクソッタレの父親のシーンより、静かに馬を労わってリタイアする彼の方が感動する」

 
誠子「私は5部ですかね」

誠子「何にしても……こう、三つ巴の戦いって好きなんですよね。暗殺・護衛・ボスみたいな……リゾット戦とか」

誠子「マフィアだからか、スタンドも強力且つ凶悪で見応えがありました……こう、緊張感がハンパなくて」

尭深「私は2部で……」

尭深「ジョセフの、あの普段はお茶らけているのに実は計算高くて正義感が強いのが好きです」

尭深「シーザーとジョセフの凸凹コンビが打ち解けていくのとか、悪役にされがちなナチスでも個人ではやっぱり人間なんだって丁寧に書いてるところとか」

尭深「後はやっぱり、ワムウですね。ワムウとシーザー、ワムウとジョセフの戦いはどちらも熱いです」

菫「淡は?」


淡「ふふ、甘いよ菫先輩」

淡「どんな部だろうと、ジョジョにはそれぞれその個性にあった適材適所の面白さがある……」

淡「1部には1部の……7部には7部の……。それがジョジョを楽しむという事だ」

淡「部の好みも同様……好き嫌いの概念は――うひゃい」

菫「うん、そういうのはいいから話してくれ。判ったな? いいな? 頬っぺたから手を離すぞ?」

淡「……ひゃい」

 
淡「私は……6部かなー」

淡「徐倫が、まさにタフって感じでかっこよかったんだよね。なんというか憧れる力強さっていうか」

淡「あの、『来い! プッチ神父』のシーンは神々しすぎてヤバイ! もうヤバイって!」

淡「『ボヘミアン・ラプソディ』攻略のウェザーの回答もクールだし、最終戦の倒し方もかっこよかったから」

菫「そうか。ちなみに私は4部が好きだ」

菫「バイツァ・ダストを――あの絶望的なスタンドを、川尻早人という一般人が攻略する」

菫「その構図が非常に良かった。黄金の精神とか、運命を克服する人間賛歌とかが表れていてな」

菫「キャラクターの等身大のリアルさ……特に吉良吉影なんかの、本物っぽさなんかは悍ましくて凄まじかったな」


誠子「……で」

尭深「どうして、そんな話をしたんですか……?」

菫「ああ、それはな――」

淡「――もしかしてジョジョ談義? いいよ、やろうやろう!」

照「ジョジョで一番好きな言葉は……『復讐』とは、自分の運命への決着をつけるためにあるッ!」

照「普通は復讐するなとかくだらない事ぬかすのに、前向きに扱っててよかった。ポルナレフにしても」

 
淡「あれって、なりふり構わないで自分の尊厳を地に落とすのは駄目だけど、正当なる復讐はオッケーって感じだよね」

照「花京院が止める前のポルナレフのやり方だとアヴドゥルがやられた描写=ダメ、って意味になる」

照「そのあたり、『過程と結果』の話だったり、『男の世界』だったりと色々通じてる事があって面白い」

淡「うんうん、そういう大切な事を書いてはいるんだけど……こう、あくまで後ろに隠してあるというか」

照「気付かないで読んでも普通に楽しめる。でも注目して読んだらもっと楽しめる」

淡「あくまでも、キャラの台詞がキャラ自身の台詞なんだよね。人格を持った個人の発言って言うのかな?」

照「うん。説教臭さとかはあんまり感じない。主張が鼻に付く感じがなくて読みやすい」

照「どうしてなのかはわからないけど……」


淡「あー、あれじゃないんですか?」

淡「どうしても主義が違う相手や誰かに呼びかける=説教、みたいになってそれが鼻につくんだけど……」

淡「あくまでも、誰に呼びかけるんじゃなくて、自分自身の中で完結させてるの」

照「……と、言うと?」

淡「『吐き気をもよおす「邪悪」とはッ! 何も知らぬ無知なる者を利用する事だ……! 自分の利益だけの為に利用する事だ……!』」

淡「って台詞があるじゃないですか」

 
照「あるね」

淡「あれって、実際独り言な訳じゃないですか。ボスに呼びかけてる風だけど、ブチャラティの独り言」

淡「『俺はこう考えた、だからこう行動するんだッ!』……みたいな」

淡「ボスの説得とか、批難とかどうでもいいんですよ。ただ、俺の中の価値基準はこう。だからこうするぜって感じで」

淡「言うなら……『薄ら笑いを浮かべるテメーの顔面をコナゴナに殴り飛ばしてやるぜッ! 二度とできないようになッ!』」

淡「みたいな。相手に改めさせようとか、そんな意志がないんですよ。とにかく俺はこうする……みたいな」

照「なるほど……だから、その分キャラがキャラとしての人格を持っているように見えるんだ」

照「淡は読み込んでるね」

淡「いやあ……それほどでも――あるけど!」

照「あるんだ」


菫「……ん。もういいか?」

淡「あ、はい」

照「いいよ」

 
菫「で、まあ何故そんな事を聞いたかと言えば……だ」

菫「『無』から『有』は生まれないという表現がされる――だが、それはかつての話だ」

菫「絶対真空の中から、突然素粒子が生まれ……そしてそれがエネルギーに化ける事がある」

菫「私たちの世界を司っている『引力』や『質量』なんかも、これが原因らしい」

菫「つまり『無』から『有』は生まれ、『無』とは『可能性』を意味する」

菫「――ここまではいいか?」

照「理解『可』能」

誠子「いや、それSBR10巻の巻末ですよね?」

尭深「どうしてそんな話を……」

淡「なーんだ、結局菫先輩もジョジョの話したかっただけじゃん」


菫「続けるぞ?」

菫「そして、この素粒子というのは『確率』の上に成り立っている」

菫「『ある確率』と『ない確率』。『エネルギーになる確率』と『ならない確率』」

菫「それらが、重ね合わさって存在しているんだ」

 
菫「つまり――だ。この世は『確率』から成り立っている。そう思って貰って構わない」

菫「重ね合わさったサイコロがどんな目を出すかによって、この世は成り立っている」

菫「だから、『無』――だと思われていた場所から『有』が生まれる」

菫「『無』が『可能性』を意味するというのはそういう事だ。『確率』で成り立っているからこそ、『可能性』を意味するんだ」

菫「そして、この『確率』というのは何も遠い世界の話ではない」


菫「私たちのもっとも身近な……麻雀がまさに、確率で成り立っている」

菫「知っているか? 清老頭の和了確率は2億7900万分の1」

菫「同じ配牌を引く確率は実に425京分の1。同じ和了系を引く確率でも12兆8600億分の1なんだそうだ。単純に考えて」

菫「これは――勿論素粒子の持つ確率に比べたら――微々たるものかもしれないが……」

菫「それでも十分、麻雀は驚異的な『確率』。『可能性』の上に成り立っていると言っても過言ではない」

菫「さて……そんな事を言っても、同じ和了形を見るというのは――『ある』」


菫「これは牌の効率であったり、或いは役の決め打ちだったり、それとも直感から導き出されたものかもしれない」

菫「しかし、どれにしてもそれは『選択』によって成り立っている。そして、『選択』とは『意思』によるものだ」

 
菫「つまり――言い換えるのならば」

菫「私たちは『意思』の元に『確率』を左右させている、という事だ。『可能性』をな」


菫「そして、中には単純な選択や技術によらない――能力を持つものがいる」

菫「まあ、これは今更だな……私のは『昇華した技術』であるが、君たちのは違う」

菫「それは俗にオカルトと言われる――ある種の法則、原理によって成り立っている。条理を外れた原理で」

菫「そんなオカルトは、単純な選択よりも――より大きな力で『確率』を左右する。『可能性』を支配するんだ」

菫「『意思』は可能性を左右し、『能力』は可能性を支配する」

菫「だったら――この二つは、実に近しい位置にいるんじゃあないか? 私はそう考える」


尭深「えっと……その」

誠子「その、何が言いたいんですかね……?」

照「……」

淡「???」


菫「うん、つまりだな」

 
菫「『意思』――『精神』と『オカルト』を組み合わせよう」

菫「もっとわかりやすくいうなら、スタンド能力を参考にオカルトを強化しようって話だ」

尭深「は……?」

誠子「はぁ!?」

照「……は?」

淡「???」


菫「どっちも精神の力なんだからな。やろうと思えばできるんじゃないだろうか、うん」

誠子「いやいやいやいやいや、待ってくださいよ!」

誠子「スタンドは漫画の話ですよ!? そんなのが組み合わせられるわけがないじゃないですか!」

尭深「ちょっと、いくらなんでもそんなオカルトは……」

照「菫、疲れてるの? だとしたら……ごめん」

淡「???」

誠子「漫画と現実の区別をつけてくださいよ! 流石にそれはちょっと行き過ぎですって!」

誠子「いくらジョジョが好きだって言ったって、末期! それは末期です!」

 
菫「……ふう、やれやれ」

誠子「いや、やれやれじゃなくて……」

菫「どうやら私の話をちゃんと聞いていなかったらしいな」

誠子「いや、聞いてましたよ。トンデモ理論を」

菫「いいや、聞いていないな」

菫「まず――世界が『確率』から成り立っている。これは事実だ」

菫「次に、麻雀も『確率』で成り立っている。これも当然だろう」

菫「それから、麻雀の『確率』は『意志』によってある程度左右できる」

菫「それ以上に、『確率』は『オカルト』によって支配できる。今更オカルトがないとか、そんな戯言は聞かないぞ?」

菫「つまり『意思』と『オカルト』は同じ結果を目指しているものである――と言える」


誠子「そのあたりは聞いてましたよ」

誠子「で、どうしてそこからスタンドが出てくるんですかね」

菫「スタンドを使うというのには、だから語弊があると言っただろう。というか使うとは一言も言ってはいない」

菫「私が言いたかったのは――」

 
淡「――意志の力でオカルトを補強、ですよね?」

淡「スタンドを見て、こうなりたい。これが欲しい。これが必要だって強く思う事で――そういう『意思』を持つ」

淡「で、その『意思』を『オカルト』にMIX! あら不思議、『オカルト』が参考にした『スタンド』っぽくなったぞ!」

淡「って事ですよね? 菫先輩が言いたいのは」


菫「そうだ。淡の言うとおりだ」

菫「というか……最初からそう言わなかったか?」

誠子「いやいやいやいや、言ってませんって。そんな事、一言も言ってないですよ」

菫「……あ、そりゃあすまない。悪かった」

誠子「というか、それも十分とんでもない理論ですよ?」


菫「何言ってる。元々オカルト自体がトンデモナイじゃないか」

誠子「そうですか?」

誠子「いやでも、スタンドとかに比べたら全然常識じゃないですか。おとなしいですって」

菫「例えばこれは私の打ち方なんだが……」

菫「手出しを見たり、捨て牌から手役や手牌予測したり、ドラの位置考えたり、切り出し位置から予測したり」

菫「山の残りの枚数を読んだり、点数と局数状況から相手の手役を予想したり、相手の今までの牌譜から手役や攻め方の好き嫌いを分析したりして」

菫「牌効率が下がったり、点数が落ちそうでも刻子を集めて色々な相手を狙えるようにしたり」

菫「愚形待ちでも相手の余剰牌や不要牌を打てるようにダマでそこそこの打点を持って和了できる手作りを考えたり」

菫「それぐらいやって、私は狙い撃ってるんだ。一応理論も論理もある」

菫「まあ、私も簡略化したり欲しい牌や必要な牌が来やすいんだけどな」


菫「それでも比べると……相手の配牌5シャンテン以下にしたり、各局の第一打がオーラスの配牌になるとか」

菫「3副露してから、5巡目で必ずツモるっていうのは結構ぶっ飛んでるだろう?」

菫「なんというか、スタンドみたいに『そこにだけルールがある』感じで」

誠子(そう言われると確かに)

尭深(……良く考えたらどんな理論なんだろう、これ)

照(……でも、『技術』っていい響きだな)

淡(そんなこと言われても、だって元々そういうものだし……うーん)

 
菫「……という事で、だ」

菫「これから自分に合ったスタンドを見つけて欲しい」

菫「で、それから、ひたすらそのスタンドの活躍シーンを読み込んで……」

菫「それが終わったら、常にイメージしてくれ。そのスタンドを自分が持っている事を」

菫「そして、自分の能力と組み合わさっている場面を想像するんだ。それが常識、できて当然ってぐらいにな」

菫「ああ、ジョジョの話し合いをするってのもいいぞ。親和性は大事だからな」

菫「頭をジョジョに染めろ。精神をそっちに馴染ませるんだ」

菫「という事で……分かってもらえただろうか?」

誠子「はい、まぁ……」

尭深「はい……一応は」

淡「んー、りょーかい」

照「頑張る」


菫「……よしッ」

菫「私の技術と組み合わせられるのはなさそうだし……私は普通に練習するか」

 
菫(……みんな、ジョジョを読み込み始めたな)

菫(お互いに、どのスタンドが向いてるか話し合い始めたし)

菫(まあ、向いているって言うより……『欲しい』って感じになっているのはちょっと困りものだが)

菫(……ふう)

菫(……)

菫(……ああ)

菫(テンパって、結構適当な事を口にしてしまった。狙いはあるが……)

菫(……まあ、先ほどまでより真剣になってくれてるから、これでいいんだろうな)


菫(……はぁ)

菫(いや、確かに私自身オカルトってなんだそりゃとか思うが……なぁ)

菫(流石に思うだけでオカルトに目覚めたりしたら、もっとなんかなぁ……だ)

菫(まあ、今言った中で大事なのは『見合ったスタンドを見つける』だ)

菫(なんというか言い方が悪いが、最近麻雀よりジョジョばっかりに集中しているからそっちの方が集中力が続く)

菫(で、詳しくなっているその分……オカルトにあったスタンドを探すという事は、逆に『オカルトをスタンドから判別する』って事になる)

 
菫(服を探しに言ってる時に、自分の体の正確なサイズを自覚するみたいにな)

菫(そういう意味で……逆に、逆側の視点から自分のオカルトを見つめなおせるんじゃあないか……って思ったんだ)

菫(今から打つのを重ねても時間が足りないし、元々メンバーに選ばれるほどの実力を持っている四人で)

菫(皆、オカルト使いだから……変に慌てて打つより、オカルトへの意識と鈍った集中力を取り戻してほしいと思ったんだ)

菫(確かに、尭深はオーラスまでに連荘。場合によっては親への差し込みが必要)

菫(照だって、回を重ねるごとに手役を練らなくちゃあならなかったりもする)

菫(淡は……絶対安全圏のみの使用なら、そこから先は自分の実力)

菫(誠子も、どこを叩いていくのかはちゃんと自分で考えなければならない)

菫(そう言った意味で、やはりちゃんと麻雀を打つべきなんだろうが……)

菫(ここはそれより、自分のオカルトをいつもと違う視点で分析して貰う事)

菫(今までと同じ興味のベクトルのまま、集中する事や緊張する事を強めてほしい)

菫(そう思ったからなんだが……どうなんだろうな、この判断は……)


菫(まさかそんなオカルトが進歩するわけないし、ちょっとでも集中力と取り戻してもらいたいところだ)

菫(結局のところ、どこまで集中できるかが――大きく差を分けるからな)

 
菫(カラオケに連日通ったのが駄目だったのか)

菫(それとも、とにかくみんなの好きな映画やアニメの鑑賞会をやったのがいけなかったのか)

菫(オススメの漫画を回し読みしたのが悪かったのか)

菫(インターハイ前に、照に漫画を進めたのが間違いだったのか)

菫(……どうして、こうなったんだろうなぁ)


菫(だが……悔やんでも仕方ない)

菫(それでも何とか、出来る事をやるしかない……)

菫(前向きに考えれば絆が深まった)

菫(後ろ向きに言うなら、なれ合いサークルみたいになった)

菫(ならいっそもっと信頼を寄せ合わせるのがいい。当初の予定のように)

菫(距離を近づける――ただし、そう! 温いなれ合いではなく、お互い真剣みを持った関係ッ!)

菫(内容は漫画だから実にくだらないが……)

菫(それでも真剣に自分のオカルトや相手のオカルトと付き合わせて考えるのなら……それはきっと緊張感のある信頼になるはずだ!)

菫(……多分)

       ☆     ★      ☆



照(……なるほど)

照(阿知賀の松実玄はドラを集める、支配型の能力)

照(新道寺の花田煌は決して飛ばないという、こっちも支配型の能力)

照(千里山の園城寺は未来を見るという、技能系の能力か)

照(新道寺……飛ばない人間に使った場合、どうなるかは分からない……)

照(千里山は……そもそも振り込んでくれなさそうだ)

照(……となると、狙いは阿知賀か)

照(悪いとは思うが、やらせて貰おうか)


照「……」 ゴソゴソ

恒子『おーっと、チャンピンが動き出した! これはリーチでしょうか!?』

健夜『え、えっとどうなんでしょう……この手牌でリーチをかけたら、いきなり打点が上がっちゃうと思うんですけど』

 
恒子『なるほど、いつものチャンピオンらしくない……と』

健夜『もしかしたら、何か新しいものを出してくるのかもしれませんね……』

恒子『つまり、小鍛治プロにはない若さの進化力とは恐ろしいって話ですね!』

健夜『わ、若さは関係ないよ!』


照(……)

玄(チャンピオン、リーチじゃない?)

玄(何を見てるんだろう……あれは、栞……?)

煌(集中を乱す――という意図ではなさそうですね)

煌(実にすばらな予感がします! 喰らったらすばらくない予感が!)

怜(なんやろ……変な真似して……)

怜(でも……そんな風に止まるんやったら、裏目引きをしない私の方が速度で上を行けるはずや……!)


照(……)

照(予め、カモミールを挟んで押し花にした栞を用意する)

 
照(自然のスケール。黄金比を学ぶ……そして、回転の変化させる。完全なる黄金の回転に……)

照(あんまり時間をかけると、千里山が和了してしまうかも知れないから……そこまで待てないけど)

照(ドラを抱える阿知賀なら、いずれ出す……)


怜(よし、テンパイ……!)

怜(チャンピオンに動きはない。次順で私がツモるのは確定)

怜(なんだかわからへんけど……このまま、潰させてもらう……!)

怜「リーチ!」


玄(あう、リーチがかかっちゃった……)

玄(チャンピオンは動かないし……やっぱり、園城寺さんの方が強いのかな……?)

玄(鳴かなきゃ一発ツモだけど……どうしよう。鳴いてくれそうな牌、分からない)

玄(現物打つしかないよ……) 打①筒

照(――来た)

照「――ロン。1000点」

怜「へっ?」

煌「すばらっ!」

玄「えっ……は、はいっ」


照(①筒が来たのは……一番よかった)

照(①筒は完全球。完全なる黄金の回転を乗せる)

照(これで私の能力は発動する――たとえ未来を見ようと、時を止めようと、逃れられない能力が)

照(『黄金回転の連続和了』)

照(それに、雀卓の洗牌――回転を上乗せした『ACT4』)

照(『ACT2』は一度筒子で出和了した後、その後の自在に穴を移動――出和了相手を選択できる)

照(『ACT3』は筒子でのツモ和了。その後、私は自分自身を穴に巻き込み隠れる――ツモ・ロンで点数が減らない)

照(そして『ACT4』は――)


照「ロン。2000」

玄「は、はい……」


照(――『無限の振り込み地獄』)

 
照(一度それを受けたものは……何を切っても、どう打っても、私に振り込むという運命が決定される)

照(私が再び『黄金の回転』を乗せた筒子でのロンをしない限り、それは永遠に続く……)

照(これが私の進化した『回転』――『無限の回転エネルギー』)

照(菫から、同じく駒を進める高校を見ておきたいからと言われたから完全にバラバラにはしないけど)

照(それでも、十二分に叩かせてもらう)

照(点棒より先に……心の方がバラバラに消えるかもしれないけど……)

照(この場に立つって事は、『覚悟』してきているって事)

照(相手から『点を奪おう』とするって事は……逆に『奪われる』かもしれないという危険を……常に『覚悟して来ている人』ってわけだ)

照(そう、そして……て私は決勝戦に立って、咲に今までの分のライダーキックを叩き込まなきゃならない)

照(そうすることで……私のマイナスは初めてゼロに戻る。咲のプラマイゼロにつけられた屈辱を、ゼロに戻せる)

照(だから――邪魔をする相手に、容赦はしない)


            ・

            ・

            ・

【中堅戦】
 
憧(よし、早めにオーラスまで流した!)

憧(これなら、渋谷尭深は7牌しか字牌を引けないはず……!)

尭深(私のハーベストタイムは組み合わせがし難い能力……)

尭深(だから、どんなものと組み合わせても、大きな変化は見込めない……)

尭深(それでも……強度は変わった。かき集める為の手の数が)

尭深(もはや私のハーベストタイムに、以前のように……余計な『時間(タイム)』は必要ない)

尭深(だからこれは――『ハーベスト』。そう名付けた)

尭深「――ツモ。32000」

憧「は……!?」

セーラ「な……!?」

仁美「え……!?」

尭深(運命を感じる……元になったスタンドとの、奇妙な縁を……)


            ・

            ・

【副将戦】

哩「――ロンッ!」


誠子(……へぇ)

誠子(なるほどなるほど、そうやって人の副露をかすめ取る……そんな作戦なのか)

誠子(だけど、今触れたな……?)

誠子(吊り上げようとしている私の釣り糸に……横から『攻撃』を加えたな……?)

誠子(私の釣り糸への攻撃は、すべて――)


誠子「――ロン」

哩「……は?」


誠子(――次の局で、攻撃した本人へと跳ね返るッ!)

誠子(だから邪魔なんてのはさせない……! 釣り上げるのはお前じゃあないッ! この私だッ)

誠子(3副露しちゃうとこの能力も使えないっていうのが難点だけど……)

誠子(それでも、前よりは――遥かに強い……!)

誠子(メンゼン出和了確定ッ! 副露ツモ確定ッ!)

誠子(さーて、どうやって対処する? 対処するゥゥゥゥゥ――?)

浩子(メンゼンでの出和了……これは、データの修正が必要やな)

灼(え? そんなの、聞いてな……)

哩(……これは聞いてなか)

哩(やけん、私の役目ば変わっとらん)

哩(少しでも、大きな手ば和了して、姫子に鍵を渡す)

哩(私は一歩も引かん)

哩(そいけん、こっからは意地ば張り合い……正面で勝負すっとよ)


            ・

            ・

            ・

【大将戦】

淡(へー)

淡(私の絶対安全圏をブチ破るなんて……なかなかイケてんじゃん! 新道寺!)

淡(でも……その手は、それ以上進まない……)

淡(私の能力……『二十一世紀絶対安全圏』は……)

淡(まさに絶対的な能力って奴なんだよねー)

淡(私が両手を卓につけて動いていないとき――つまりツモるときや牌を捨てるとき以外は)

淡(『シャンテン数』は絶対に動かない……あらゆる攻撃が不可能となる)

姫子「――ッ」

淡(勿論、私が捨てるときはその限りじゃあない……)

淡(つまり、私からの副露は可能なんだけどさ)

淡(逆に言うなら、メンゼンでのテンパイは確実に不可能ッ!)

淡(そして……副露して手を勧めたとしても、動いていない状態の私は全ての攻撃を受け流す)

淡(攻撃とは――点棒の損失。つまりツモ和了での損失も含まれる……)

淡(『二十一世紀絶対安全圏』はツモ和了をも封じる……!)

 
淡(だから、私が牌を切る時に相手の手を注意さえしておけば……私の点数が削られる事はない。絶対に)

淡(そして、5シャンテンから副露した手の予測なんてのは難しい事じゃあないし……)

淡(第一、有効牌を全く引けないのなら……そもそも副露すらできない。してもテンパイなんかには遠すぎる……)

淡(メンゼン手の唯一の問題は私の下家の先ヅモぐらいだけど……そんなマナーの悪い行為は、この場の誰もできない)

淡(私から直撃をとれないこの状況……)

淡(既に他家3つの点数を合わせても、逆転は不可能ってこの状況……)

淡(トップをまくるのは不可能――それどころか)

淡(どこかがトんでしまう事に注意して打たなきゃあならないって事だからさ)

淡(これは――俗にいう、『詰み』って奴に近いんじゃないの? フフフ……あははははは)


            ・

            ・

            ・

 
恒子『圧倒的ッ! 終わってみればまさに圧倒的――――ッ!』

恒子『これが全国の頂点! インターハイ連覇高校!』

恒子『流石の貫録を見せつけた、白糸台の圧勝だ――――ッ!』

健夜『いや、これは本当に凄いですね……』

健夜『初出場の大星選手はともかく……皆、去年よりもさらに強くなってきています』

健夜『こういう、進化し続ける姿勢というのが……チャンピオンなのでしょうか?』

恒子『おーっと、一言多いアラフォー年の功辛口コメントの小鍛治プロからも驚きの声が!』

恒子『これは凄いぞ白糸台――!』

健夜『アラフォーじゃないよ! 年の功でもないよ!』


淡「なーんか、終わってみたら圧勝って感じだったねー」

淡「なかなか面白い選手もいたんだけど、歯ごたえがないっていうか」

照「それだけ、私たちが強くなったって事じゃないの」

尭深「明らかに……一回戦とは違いましたね。間に合ってよかったです……」

 
誠子「それも弘世先輩のおかげですよ……まさに、名将って感じで」

照「菫は凄い」

尭深「本当に……」

淡「ねー、菫先輩のこと見直しちゃった!」

菫「……ははは、ははは」


菫(なんだこれ……どうなってるんだ……?)

菫(漫画を読んで強くなるって――お前ら一体どれだけ単純なんだ!?)

菫(オカルトってのはどうなってるんだ!?)

菫(……それともやっぱり、ジョジョは荒木飛呂彦の自伝だったんだろうか?)

菫(ああ、私の常識がなくなっていく……)

菫(前よりずっと胃が痛い……まさかこんな事になるなんて……)

菫(……)

菫(……私も、何かスタンドとの組み合わせを考えよう。決勝までに間に合うかもしれないし)


                                                 カンッ!

みんな仲良くなる→その所為で練習全然できてないぞ→ちょっとした思いつきで言ったら瓢箪から駒

その程度の話だったんだけど、碌に推敲してないせいで長くなった
ライダー出したのは、照と咲との因縁に使うぐらいなのに変に話し過ぎた所為で、ブレた。スマン
ライダーならライダー、ジョジョネタならジョジョネタで絞っとくべきだったわ

長々としてたけど、どうも支援ありがとう。それじゃあ

あ、7部は掲載誌変わってるけどマジお勧めなんで、読んでないなら読んでみてほしい

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