久「二回戦のみんなと観光旅行に行くわよ!」 (133)

久「日時は追って連絡するけど、準備だけはしといてね」

咲「……」ポカーン

和「……」ポカーン

優希「うおおおぉぉぉマジか! なんか燃えてきたじぇ!」

まこ「そりゃあ、ずいぶん唐突じゃのう」

久「実はそうでもないんだけどね。ほら、インターハイで連絡先交換してたでしょ? それで、ちょくちょく連絡取ってたの」

久「最初は3年が本格的に忙しくなる前に、練習試合したいねーって話だったのよ」

和「それは、来年の為ですか?」

久「宮守さんはともかく、永水と姫松はうちのデータが欲しい。うちはうちで、練習相手が欲しかったからね」

咲「風越さんはいくらでも練習相手がいるし、いつも加治木さんと衣ちゃ……衣さんの所に頼むわけにはいかないからですか?」

優希「それに、いつも同じ相手だとだるーんってなっちゃうじょ」

久「そういう事ね。で、じゃあいっそのこと旅行しながらにする? って言ったら思いの外乗り気だったのよね」

まこ「行き先はどこになるんじゃ?」

久「候補は色々あったけど、京都に落ち着きそうよ」

和「姫松さんの地元なんですけど……大丈夫ですか?」

優希「巫女ねーちゃんの所もよく行ってそうな印象があるじぇ」

久「提案してきたのが向こうだし、大丈夫なんでしょう。と言うわけで……今まで空気になってた京太郎部員」

京太郎「え、はい!?」

咲「あはは、京ちゃんずっと無言だったね」

京太郎「だってお前、混ざり辛いだろこの会話」

久「他の三校には、うちに男子部員がいる事はもう伝えてあるのよ。来るかもーって言っといたから、来たかったら来れるわよ?」

京太郎「やった! ……って言いたいところだけど、辞退しますよ」アハハ

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まこ「お? ずいぶん謙虚じゃのう? わしが言うのも難じゃが、どこも綺麗どころがそろっとるぞ?」

京太郎「内二校が女子校でしょ? さすがに女所帯に男一人は肩身が狭いっすよ」

和「それは今更な気がしますけど……」

京太郎「それはそうなんだけど、うちはなんて言うか、和以外女って感じがしないしなあ」

まこ「……可愛いこという後輩じゃのう」グリグリ

久「本当に、可愛い後輩を持って私たちは幸せよねえ」グリグリ

優希「この犬、彼女もいないくせに一丁前の事を言うようになったじぇ」ゲシゲシ

咲「……」プクー

京太郎「いででで、こめかみはやめて! そういう所が野郎感覚なんすよ」

優希「まだ言うかー!」

和「まあ、ほどほどに」

ギャーギャー

まこ「ふぅ、まったく生意気に育ったもんじゃ」

久「まこ」チョイチョイ

まこ「ん? なんじゃ?」

久「今回の旅行なんだけど、あからさまにならない程度に小蒔さんと漫さん、絹恵さんと仲良くなっといてね。多分、次の部長だから」ヒソヒソ

まこ「そんなことを考えとったんか」

久「私の頃はどこにもコネがなくて苦労したからねー。それに……」チラ

優希「二人は何を持っていくつもりなんだじぇ?」

咲「うーん、どうしようか?」

和「練習試合も兼ねるんですから、お土産は持っていきましょう」

京太郎「あ、京都はこっちよりちょっと気温が高めみたいだからな。念のため薄い服ももってっといた方がいいぞ」

久「こういうのは私の役割だしね」ウインク

まこ「まあ、お前以上の適任はおらんのう」ククッ


そして数週間後、京都

久「どうも、お久しぶり」

霞「直接会うのはインターハイ以来ね」

洋榎「愛宕さんちの洋榎さんがきてやったでー」

塞「まさかインハイ後もこうして会うとは思わなかったわ」

久「せっかく連絡先まで好感したのに、それっきりじゃ寂しいからね。それより、永水と姫松さんは本当に京都で良かったの?」

洋榎「近場や言っても、近すぎて殆ど来ん場所やしな。小学校の遠足以来やから、正直中々楽しみや」

霞「なんだかんだ言って、ゆっくり観光する機会はなかったから。小蒔ちゃんがすごい楽しみにしてたし、こっちとしても渡りに船よ」

塞「修学旅行は東京だったし、実は京都って初めてで……」エヘヘ

久「なら良かったわ」

洋榎「それより、宿の面倒見て貰って悪いなあ。うちらがやることやのに。まあ、言っても実際やるんは恭子やけどな!」ケタケタ

久「ふふ、そういうのなら任せて頂戴! 企画とか、限られた予算で大騒ぎするのとか得意なのよ。これでも生徒会長だしね!」

霞「本当に、よくこの予算で自動雀卓ありつつ、ご飯のおいしい所を見つけるなんて」

塞「あれね、人は見かけによらないってやつ」

久「言うわねえ。でも無礼講よ、どんどん言ってくれていいわ。私を誉める言葉は特に!」

洋榎「おー? こらうちもなんか見つけて、ちょっとへこましてやらなあかんな」

久「何を今更。中堅戦で十分へこましてくれたくせに。これでも部長なのに、べこべこにされちゃったわ」

洋榎「せやから、もう一杯や。ここで大阪にこの人、な洋榎さんを見せたらな」

塞「なにそれ」アハハ

霞「冗談はこれくらいにして、班分けはどうするの? 20人でぞろぞろ動くわけにもいかないでしょう?」

久「それについては、ちょっと提案があるんだけど……」

同時刻・別所

咲「あ、あの! みなさんこんにちわ!」

小蒔「わあ、宮永さん。この度はお招きいただいて」フカブカ

咲「あわわ、そんな! こちらこそ遠方はるばる来ていただいて」フカブカ

優希「なんか咲ちゃんが二人に増えた気分だじぇ」

巴「そうね、なんか姫様が二人に増えた気がするわ」

春「……」ポリポリ

白望「……」ダルー

春「……たべる?」

白望「? ん、ありがと」ポリポリ

豊音「本当にみんないる! 早くはじまらないかなー」ワクワク

漫「そんな焦らんでも、今主将らが話し合ってる所や。あとどれほどもないで」

豊音「わ、漫さんだ! あの後も試合見てたよー。辻垣内智葉選手に二万点のプラス収支なんてすごいよ! あ、改めてサイン下さい!」

漫「え、私の? も……もう、しゃーないなあ。ほら、色紙とペン貸し」ソワソワ

由子「漫ちゃんすっごい嬉しそうなのよー」

恭子「私は大丈夫、私は大丈夫……」カタ

和「末原さん、どうかしたんですか? もしかして体調が」

洋榎「それが大阪人やからな!」

漫「主将、それ誉めてるんとちゃいますよ」

洋榎「漫は後で折檻やな」

漫「余計な事言ってもうた!」ギャー

霞「それじゃあリクエスト通り挨拶は飛ばして。班分けなんだけど、せっかくこうして揃ったんだから他校同士がいいわよね」

霞「なので、オーダー順で組むのはどうかしら? 先鋒なら先鋒、次鋒なら次鋒で集まって、行動はその人達で決めるの」

優希「はいはーい! 賛成だじぇ!」

巴「せっかくだし、そういうのも面白そうよね」

豊音「じゃあ私は大将のみんな? うわぁー、楽しそうだよー!」

塞「それじゃあ、ちょっと早めだけど解散! 後は自分のポジションの人と話し合ってね」


先鋒組

優希「先鋒はこっちに集合だじぇー!」

小蒔「はーい」テテテ

漫「おー、こっちやったか」テクテク

優希「おし、じゃあ集まったところでどこ行くか決めるじぇ」

小蒔「あの! 私神社は結構行くので、できれば別の場所がいいのですが……」

漫「せやったら国立府立系と、あとは余裕があったら寺で。個人的には甘味処も寄りたいわ」

小蒔「いいですね、行きましょう!」

白望「……。あの」

漫「どうしたん?」

白望「なんで真っ先に私の所を集合場所にしたの?」

優希「ふふふ、優希様をナメてもらっちゃ困るじぇ。胡桃のねーちゃんと塞ねーちゃんから、シロは自分から動かないから引っ張っててね、とリサーチ済みだじぇ」

白望「うぐ……二人とも余計な事を……」

漫「あかん、あかんで! こういうんはむっちゃ楽しまんと損するだけや! 優希、グッジョブ!」

優希「それほどでもあるじぇ」ビシッ

小蒔「一緒に行くの……嫌なんですか……」ジワッ

白望「いや、その……」

漫「あー。なーかせたーなーかせたー」

優希「せーんせーに言ってやろー」

白望「小学生か……。嫌じゃないから涙目にならないで。あー……じゃあ行こうか……」ヨッコイショ

漫「まずは国立博物館いくでー!」ガシ

小蒔「収蔵物でしたら、結構解説できるものがあると思います!」ガシ

優希「ごーごー!」ドシドシ

白望「行く、行くから手を握って引きずらないで、背中押さないで……」ズリズリ


京都国立博物館

優希「ふおぉ……初めて来たけど、全然博物館って感じじゃないな。むしろ豪邸?」

小蒔「国宝や重要文化財を多数展示している上に、お庭自体も展示物の一部ですからね」

漫「なるほど。そこらに負けんもん用意しようと思ったら、こうなるわけやな」

白望「お、おぉ……」フラフラ

小蒔「シロさん、どちらに行かれるんですか?」

漫「どないしたん?」

優希「シロちゃんが庭の方に引き寄せられていってるじぇ」

白望「ふぅ、ここはなんかすごく落ち着く……」

小蒔「分かります。どことなく落ち着く風景ですよね」

優希「うむ、わびさびがあるじぇ」

漫「ちなみに、わびさびって何や?」

優希「わ……わさび?」

漫「ブフォア!」

優希「ぐぬぬ……」

白望「あー、ここで寝たい。すっごくよく寝れそうだ……」

小蒔「わわっ、駄目ですよ。神仏像もたくさんあるんだから、罰当たりです」

漫「すっごい剛胆やな」

優希「と言うよりも明らかに迷走してるじぇ」

白望「ああそうかも……。麻雀も人生も迷いに迷ってるよ。きっと今後も迷い続ける」ダルー

優希「なんだかんだ言っていい札引くのによく言うじぇ!」

漫「それよか言いぐさが駄目人間の鏡や」

白望「……ずっと思ってたんだけど、なんでタメ口? いや、敬語を使えって訳じゃないけど、これでも3年なんだけど」

漫「せやったらもっと尊敬できる所みせてやー」

優希「ちゃんとした人には言われなくとも敬語使いますぅー。まあ、うちの先輩にも使った事ないけどな!」

白望「後輩っていると苦労するんだなぁ。うちにいなくて良かった……」

小蒔「せ、先輩も後輩もちゃんと良いところがありますから」アワワ

優希「ほっとくとシロちゃんが寝ちゃいそうだから、そろそろ中も見に行くじぇー」グイグイ

漫「ほれ歩きー」グイグイ

白望「まあ、これはこれで楽だからいいか」ズルズル

優希「ほほう、中は中でこれまた凄いじぇ」

漫「見事ながら展示物の邪魔にならず、むしろ上手く引き立てて、それでいてくどくなく」

小蒔「途中から食べ物のリポートになってますよ」クスクス

優希「あれだじぇ、わびさび!」

白望「わさびじゃなくて?」

優希「うぐぐ……」

小蒔「わびさびは感じるものだから、ちゃんと分かってますよね」

優希「! その通りだじぇ! さすが小蒔ねーちゃんは分かってる! お前達も見習え」

漫「小蒔のねーちゃんは見習えても、優希は見習えんなぁ」

白望「一番見習うべきは優希だね」

優希「ぬぉあ! いつの間にか私がいじられキャラになってるじぇ。こんなのはおかしい、ありえない」

小蒔「そんなことしなくても優希ちゃんには優希ちゃんの良いところがありますもんね」

優希「やっぱり小蒔ねーちゃんは分かってるじぇ。おっぱいものどちゃんに近いくらいあるし」

小蒔「お、おっぱいは関係ないですよぉ」

漫「しかし、ここはあれやな」

優希「うむ、あれだじぇ」

白望「?」

漫・優希「騒いじゃだめだと思うとなんかむずむずする……」

小蒔「ふふっ。一通り見ましたし、そろそろ出ましょうか。どこかででちょっとお茶休憩するのもいいですね」

白望「それが目的でしょ?」

小蒔「えへへ」アカラメ


次鋒組

まこ「わしらも行こか」

由子「うん、でも……なんでエイスリンさんは狩宿さんの背中に隠れてるん?」

巴「えっと……さあ?」

エイスリン「テキ!」ビシッ

由子「まこちゃん指さされてるのよー」

まこ「どうもインターハイの件で苦手意識もたれたみたいでのう」

由子「エイスリンさん、気持ちは分かるけど仕方ないのよー。それに、麻雀の仮は麻雀で返すしかないのよー」

エイスリン「ムムム……」

まこ「まあ、何度でも挑戦しに来たらええ。夜にいくらでも戦っちゃるけえのう」

エイスリン「カツマデヤル!」

巴「と言うか、私を盾にしないでほしいんだけど……」

エイスリン「? トモエ、ミコサン」

巴「え? うん、そうだけど」

エイスリン「ニホンノシスター!」ギュー

由子「すっごいなつかれてるのよー」

まこ「シスターってあれか、姉妹の方じゃなくて教会とかの方かのう?」

由子「失礼だったらごめんなー。巫女さんって何か特別やったりするん?」

巴「いえ、全然……。ただ巫女をする分には、特に資格とか必要な訳でもないし。キリスト教? の事はよく分からないけど、そんなに差はないと思うんだけど……」

巴「そもそも私は、というか私たちは、実家がそうだからそうしてるってだけなんだし」

まこ「んー、宗教観の違いかのう?」

由子「国際社会やー言っても、まだまだ分からない事はたくさんあるんやね」

エイスリン「?」キョトン

巴「まあいいか……そろそろどこに行くか決めましょう」

エイスリン「ウン」

まこ「とりあえず……誰か、行きたい場所の希望はあるかのう?」

由子「どこでもいいのよー」

巴「右に同じ」

エイスリン「タノシイトコ!」

由子「見事に具体的な案が出てこなかったのよー」

まこ「そいじゃ、ちょいとあたりをつけておいた所に行こうかのう」

巴「どこか心当たりがあるの?」

まこ「本当なら、後で一人寂しく行こうかとも思っとったんじゃ。京都観光っちゅうのとは、趣が違うからのう」

まこ「ま、このメンツなら楽しめる事は保証しちゃる」

…………

由子「なるほど、雀牌専門店なんやねー。来た事ありそうでなかったのよー」

まこ「長野でも一般的な牌は揃うんじゃがのう。さすがに特殊な牌やネタ牌となると、遠出せんかったらいかん」

エイスリン「スゴイスゴイ!」キラキラ

巴「ああ、ちょっと引っ張らないで!」

まこ「あちは完全に親亀と子亀じゃ」

由子「すっかり仲良しなのよー」

まこ「わしらも見るか」

由子「そうやね。あ、これ竹牌なのよー……うわ、高っ!」

巴「これ完全手彫りなのね。道理で高いわけだわ」

まこ「買ってもショーケースで観賞用にするのがオチじゃ。それ以前に、高校生に手を出せるもんでもないしのう。客寄せには……それでもあんまり効果は望めんか」

巴「客寄せ?」

まこ「うちは雀荘を経営しとるんじゃ」

由子「おうちの手伝いしとるん? 大変やねー」

まこ「子供の頃からじゃったしのう。もう慣れた。それに今更じゃ」

エイスリン「コレミテ!」

由子「何なにー? お、金箔をあしらった牌や。高級感あるのよー」

エイスリン「カッコイイ!」

巴「意外に手頃なお値段なのね」

まこ「気をつけえよ。安物じゃと簡単に金箔が剥がれるからのう」

由子「へー。エイスリンちゃん、それ諦めた方がええかもよー」

エイスリン「ザンネン。コッチハ?」

まこ「おおう、なんじゃこりゃ」

由子「なんかのキャラものなんやね。数字が分からんくなってるのよー。もうドンジャラや」

エイスリン「カワイイ」

まこ「ま、ネタ牌としちゃ悪くないんじゃないかのう」

巴「エイスリンちゃん、こっちは?」

エイスリン「! コレ、コレホシイ!」

まこ「こりゃ英語牌か? 初めて見るが、中々しっかりした作りみたいじゃ」

由子「風牌は四大元素、三元牌は天地海になっってるのよー。これ中々面白いなー」

エイスリン「エヘヘー」ニコニコ

巴「もう買うつもりでいるのはいいけど、あっちのキャラクター牌はどうするの?」

エイスリン「! ドウシヨウ……」ショボーン

まこ「わしの目的はこれ、透明牌じゃ。通販じゃちょいと高いと思ったが……なんとか手頃な値段で助かったわ」

由子「そんなの買うのー? 言っちゃ何やけど、むちゃくちゃネタ牌やのに」

まこ「うちは部員が定員ギリギリしかおらんからの。こういうもんを使って慣れを解消、ついでに知った打ち筋壊して戦略性を増やせればと思っとる」

巴「へー……色々考えてるのね」

まこ「なんだかんだ言っても、歴史の無い部じゃからのう。次期部長としては、色々考えんといかんのじゃ」

巴「私はこの四神の牌に引かれるわ。うーん、どうしようかしら」

由子「神道やのにそんなん買ってええのー?」

巴「日本は元から、八百万なんて神様ごった煮の国だしねえ。敬う気持ちさえ忘れなければ、細かいことで怒りはしないわ」

エイスリン「ウーン、ウーン……」

まこ「あっちはまだ考えとったんか」チラリ

巴「うん」コクリ

由子「いいのよー」ウナヅキ

まこ「おっちゃーん。あの外人さんが抱えとる牌の片方、わしらの支払いにしてくれ。で、包んでやって」

エイスリン「!? デモ……」

まこ「袖すり合うも多生の縁、ちゅうやつじゃ」

由子「私は買うものないから、全然構わないのよー」

巴「せっかくこうして集まったんだし、ちょっとくらいは、ね?」

エイスリン「ミンナ……アリガトウ! ダイスキ!」パアァ

まこ「現金じゃのう。これでちょいとは手心加えて貰えるんかのう?」ニヤニヤ

エイスリン「ソレハソレ、コレハコレ! マージャンハ、カツ!」

巴「ま、そうよね」クスクス

ちょっと用事ができたんでひとまずここまでです申し訳ありません。帰ってきたら再開します
あと実際に現地に行ったのは10年以上前なんで、ネットで調べながらのかなりいい加減な描写です。現地の方ごめんね

中堅組

洋榎「せーやーかーらー! みんな固まっとればてきとうにふらふらするんでもええやん! せやったらそのうち見たい場所も見つかるやろ?」

久「散歩じゃないんだから、それじゃ旅行の意味が無いじゃない。ある程度ルートを決めて、場所ごとに自由行動時間を取っていく方がいいわよ」

胡桃「ちょっと待って。それこそいちいち時間かかっちゃうじゃない。行く場所決めて団体行動! きちっとする時はきっとする!」

春「……」ポツーン

洋榎「なに言うてん。うらかてもうガキやないんやから、そこまでする必要ないやろ?」

胡桃「できる事とやらなきゃいけない事は別! ちゃんとしないと何かあったとき困るじゃない」

久「二人ともちょっと極端すぎるわよ。もう少し落ち着いた行動を考えて……」

春「……黒糖、もうない……」フリフリ

洋榎「現地までぞろぞろはい解散、なんてそれこそ学校と変わらんやん。交流言うんやったらな……」

久「だからってノープランはないでしょ? それに個別に行きたい所だって多少は……」

胡桃「団体行動って言うなら、それこそいい加減な事はしちゃダメじゃない。だから……」

春「ん……」クイクイ

久「あのね……ん? あ、はるる」

胡桃「ごめん、ほったらかしにしてた! どうしたの?」

春「おなかすいた……」シュン

洋榎「ああちょい待ち! 確かここらに、恭子に調べてもらっといた甘味処が、あそこや!」

春「そこ、おいしい?」

洋榎「自分、黒糖大好きちゃんやろ? あそこの名物は黒糖アイスや!」

春「早くいこう」パァァ

久「あー、やっちゃったわ」

胡桃「なんかもう、すっごい恥ずかしい」

洋榎「あっかんわもー。1年ほったらかしてつまらん言い争いなんて、主将がどうの以前に、3年が雁首揃えてする事ちゃうでホンマ」

久「あれなのよね、どうも仕切るのがクセになっちゃってて。面倒見なきゃいけない人がいないと空回りしちゃうわ」

胡桃「すっごい分かる。自分がやんなきゃ、な感覚が抜けきらないと言うか」

洋榎「うちらかて、そんな上等なもんちゃうのにな。あー恥ずかしい! 姫松のもんがおらんで良かった」

久「とりあえず、冷たいもの食べて頭を冷やしましょ」

胡桃「賛成」

…………

洋榎「黒糖アイスなんてだだ甘やー思っとったけど、案外さっぱりしててうまいな」

春「当然。黒糖は何にでも合う」マンゾク

胡桃「ん~! 糖分が頭に染み渡る」

久「やっぱ茹だった頭でものを考えるもんじゃないわねー。とりあえず、あれね。どこかここには絶対に行きたいっていうのがある人ー?」

洋榎「ないなあ。来ようと思えばいつでも来られる場所やし」

胡桃「私も改めて言われると……」

久「ぷ、あははははは! これなのに言い争って、ホント私たちって馬鹿みたいだったわ」

洋榎「なあ、はるるー。どっか行きたい場所とかやりたい事とかあるん?」

春「……ん。特にないけど、和菓子買いたい」

洋榎「おっしゃ。それやったら……」

久「はい、観光マップ食事お土産編」

洋榎「おお、準備ええやん」

胡桃「さっきも気になったんだけど、はるるって春の事?」

久「永水での愛称だって。霞に教えて貰ったわ」

胡桃「へー。かわいい愛称だね」

春「……」アカラメメソラシ

胡桃(かわいいなあ)

洋榎「おーおー結構あるなあ。他に何かないん? 誰も寄りたいとこないから好きに言ってええで」

春「えっと……おいしいもの食べたい」

洋榎「おっし。せや! いっそのこと食い倒れにせん? 色んな所行って、ちょっとずつ食べて」

胡桃「あ、それいいかも」

久「途中でよさげな所があれば、寄っていけばいいんだしね。私も賛成よ」

洋榎「そうと決まれば、寄る店厳選せんとな! しかし、はるるは案外あれやな、食いしんぼちゃんやな」

春「……! ち、ちが……」

洋榎「否定することないでー、かわええやん」

胡桃「なんとなく言いたいことは分かるな。こう、おとなしい小動物っぽいと言うか」

久「黒糖をぽりぽりやってる所とか、リスっぽくて和むわよね」

春「う、うぅ……」マッカ

洋榎(明らかに弄られなれてへんなあ。永水がああいう雰囲気やからしゃーないんやろうけど)

久(こういう所がまたかわいいのよねえ。と、からかい過ぎちゃかわいそうね)

久「それで、お店の厳選はどう? うまくできた?」

洋榎「それはまかしとき! 隠れた名店発掘家の洋榎とはうちの事やで!」

久「それ、後付けならぬ先付けの洋榎って事になるのかしら」クスクス

胡桃「うるさいそこ!」

洋榎「お、フラグもろたでー。これでリーチ一発確実や!」

春「クス……」

洋榎「おっしウケ取って調子もええし、サクサクいこかー」

久「なんと言うか」

胡桃「ん?」

久「はるる、こうして見るとやっぱり1年なんだなって。発育がいいから、ついついもっと年齢高く見えるけど」

胡桃「発育の事を私の前で言う?」

久「あ、ごめん。デリカシーが足りなかったわ」

胡桃「ま、慣れてるからいいんだけどね。自分でネタにすることもあるし。はるるちゃん、よく見るとぽつぽつ、ちょっと前まで中学生だったんだなって感じがあるよね」

久「せっかく一緒にいるんだから、めいっぱい楽しんで貰わないと負けた気分になるなって」

胡桃「インハイの時も思ったけど、相変わらずよく分からないキャラしてるね、久は。宮守は後輩がいないから、ちょっと新鮮でうれしいかな」

洋榎「二人でなにしとるんー?」

春「早く行こ」

胡桃「せっかちなのが二人に増えたね」

久「ふふ……。ま、せっかくだから、全部含めて楽しみましょ」


副将組

和「行きたい場所があります」ズイ

絹恵「お、おう……」タジ

塞「わ、私は別にいいけど。初美さんはどう?」タジ

初美「私もかまいませんよー。行き居場所ってどんな所なんですかー? あ、あと同学年だし、呼び捨てで構いませんよー」

和「変な場所ではありませんよ。ただの服屋です」

絹恵(って答えたんが間違いやった!)

塞(制服の印象が強かったから、彼女のセンスを忘れてた!)

和「初美先輩、こんなのはどうでしょう?」

初美「私としては、もっとこう、大胆な方が」

和「それではこちらは?」

初美「あ、良い感じですー」

絹恵(しかも初美先輩もあっち側や!)

塞(マズい……本当にマズいってこれ!)

和「絹恵先輩はこれなんかどうでしょう?」

絹恵「あー、いやー、ちょーっ……。あれや、私タッパあるから、そういうん似合わないんとちゃうかなーって……」

和「そんなことはありません! そもそもゴシックというのは……」リキセツ

絹恵「せ、やったらちょっと着てみようかなって思ったり思わなかったり……」

絹恵(助けて!)

塞(がんばれ)

和「塞先輩はこれなんかが素敵ですよ」

塞「あ、う……」

塞(助けて!)

絹恵(諦めて下さい私を見捨てた人。私は諦めました)

初美「うーん、ここをちょっと着崩して……こんな感じですかねー」

和「……! 素敵です初美先輩!」

絹恵・塞(肌色多すぎ!)

…………

塞(で、結局買った服を着ていく事になってしまった……)マッカ

絹恵(あかん、むっちゃ注目されとる気がする……)マッカ

和「金閣寺ですか。定番ですけど、落ち着きがあっていいですね」

初美「ちゃんと見ると、神道系とは趣が違うながら共通点も多いんですよー。この宗教と建築様式が微妙に混ざった様子は、正に日本独特ですねー」

塞「あの、二人とも」

和「はい、なんでしょう?」

塞「もうちょっと人の居ないところに行かない? どうも目立ってて落ち着かなくて……」

初美「それは挙動不審だからですよー。道ばたであちこち見回してる人がいたら気にするでしょう?」

絹恵「いや、確かに……そうなんかな?」

和「なぜ緊張しているのかは分かりませんが、普段通りにしてればいいんです」

塞「いや、でもやっぱり見られてるわよね」ヒソヒソ

絹恵「なんでこんな気にならんのやろ?」ヒソヒソ

観光客1「なあ、あそこにいるの原村和じゃね?」

観光客2「写真撮影お願いできるかしら?」

絹恵(あ――!)

塞(そうだった、原村さんは昔から美少女天才雀士って事で、一般的な知名度は宮永照より高いんだった!)

観光客1「すみませーん、一緒に記念撮影お願いできませんか?」

和「かまいませんよ」ニコリ

観光客2「やったー!」

塞「」シュウイチラリ

絹恵「やっぱり注目されてるやぁん!」

初美「!? い、いきなりどうしたんですかー?」

絹恵「やめてー私を見んといてー……」

塞「私はこのまま埋まるの。埋まって静かに暮らすの」

初美「は、はあ? よく分かりませんが、和の撮影も終わりましたし、そろそろ次に行きますよー」

和「ぐるっと回りつつ次は銀閣寺に行って、そのあと清水寺です」

絹恵「むっちゃ観光名所ばっかやー!」ワーン

塞「助けて胡桃! この際シロでもいいから助けてー!」ヒーン


大将組

恭子(あかん、魔物に囲まれてしもた……)カタカタ

豊音「わーわーわー! すっごい楽しみだよー! あ、あれ何かな」フラフラ

霞「うふふ、そうね。あら、あれって……」

咲「え? え? あれ? あの」オロオロ

恭子(……、ん?)

豊音「すごい行列だよー!」

霞「これかわいいわ。はっちゃんに似合いそう。やっぱり一度は京都観光するものね」

咲「ま、待って……。まだ行く場所決まってないのにふらふらしちゃうと」アワワ

恭子(この子ら、もしかして麻雀以外はわりかしダメな子なんちゃうん?)

咲「あ、あぁ……うぅ」グス

恭子「はい注目!」パンパン

恭子「そこの二人、あんまりふらふらしない! あと宮永、お前はもっとはきはき言わんと相手に通じんで」

咲「は、はい!」

霞「ごめんなさいね」

豊音「えへへ、ついテンションが上がっちゃったよー」

恭子「ちゃんと周りの人も見ること! おし、したら寺巡りもええけど、とりあえず遊べる場所や」

東映太秦映画村

咲「遅れましたー!」

豊音「気にしなくて良いよー」

恭子「私らも今来たところや」

霞「あら、咲ちゃんはお姫様なのね。可愛いわよ」

咲「えへへ、そうですか? 霞さんは殿様ですか?」

霞「ええ、水戸黄門なの。配役がちょっと違うけど、ちゃんと印籠付きよ」

豊音「私は遠山の金さんだよー。サポーターの上にサラシでちょっと恥ずかしいけど、どうかな?」

咲「豊音さんは恰好良いです! 身長があると、そういうのが似合ってうらやましいです」

豊音「ありがとう。咲ちゃんも可愛くて最高だよー」

咲「えへへ」ハニカミ

霞「それで、恭子ちゃんは……」

恭子「越後屋や!」

咲「すみません、私越後屋って悪役の印象しかないんですけど……」

恭子「その越後屋や、間違ってないで」

豊音「もっと別のにすればよかったのに」

恭子「あかん、分かってへんなあ。何と言われようとこれははずせへん、絶対にや!」

霞(よく分からないけど、こだわりがあるのかしら?)クビカシゲ

霞「貸衣装ってもっと簡単なものかと思ってたけど、案外しっかりしてるのね。私の小刀、ちゃんと竹光だわ」

豊音「ぱっと見は本物に見えてすごいよー」

恭子「手を抜かれたら、客も拍子抜けやからな。そこらはしっかりしとる。ま、竹光は写真撮影の時だけで、終わったら柄だけのもんに交換や」

写真屋「そろそろ取っていいですか?」

豊音「あっ、ちょっと待って! せっかくだから刀を構えてるシーンで取りたいよー!」

咲・恭子・豊音・霞「いえーい♪」パシャ

霞「写真が出来上がるまで、ちょっと時間がかかるわね」

恭子「午前はこのまま太秦体験や。何から見に行こか」

豊音「おみやげ!」

恭子「それは最後や! 気が早すぎやろ!」

咲「どんな所があるんですか?」ワクワク

霞「そうねえ。忍者屋敷とか面白そうかも」

豊音「あ、あそこでロケ見学ができるよ! ちょーみたいよー!」

恭子「こらこらこらこら、一人でふらっと行ったらいかんて言ったやろ」

豊音「えへへ、またやっちゃった」

恭子「さしあたっては今しか出来んことから行くで。ロケは今しか見れへん!」

…………

咲「はー……凄かったですね」

豊音「テレビで見るのとは、また別の迫力があったよー」

恭子「殺陣がむっちゃかっこよかったわー」

豊音「忍者屋敷も面白かったよー。咲ちゃんが迷っちゃうくらいだったし」

咲「も、もう! それは言わないでくださいよ!」

霞「浮世絵と水彩画が綺麗だったわ。ちょっと欲しくなっちゃったし」

恭子「あー、気持ちは分かるけどお高いからなあ。そいつは大人になってからやな」

霞「一通り回って写真も受け取ったけど、次はどうしようかしら?」

恭子「特に希望がないんやったら、私がええとこ選んで行くけど」

咲「私はそれでお願いしたいです」

豊音「同じく、お願いしたいよー」

霞「恭子ちゃんにはお世話になってばっかりで悪いわね」

恭子「かまへんよ。来ること決まってから、事前に調べといたし。何より、一緒に来て楽しんで貰わんと、大阪もんの名折れや」

咲「頼りになります!」

恭子「ちゅうわけで……豊音! 気になるもんがあったら一声かける! ふらっといなくなったらあかん!」

豊音「わ、わかってるよー気をつけるよー」

恭子「おし、それなら……次の場所に移動や! みんなちゃんと着いてくるんやで!」

咲・豊音・霞「はーい」

宿屋にて

小蒔「足が痛い……でもすっごく面白かったです!」

春「ん。おいしいものたくさん食べた」

初美「巴ちゃん、その雀牌どうしたんですか?」

巴「あ、これ? えへへ、どうしても欲しくなって買っちゃった。あとでこれ使って、みんなで麻雀するんだ」

小蒔「かっこいい牌ですね」

巴「いいでしょいいでしょ。一目見て気に入っちゃったんだ。はっちゃんこそ、その服はどうしたの」

初美「んふふー、和に選んでもらったんですよー。可愛いでしょ?」

霞「そうね、今は小蒔ちゃんより初美ちゃんがお姫様みたいね」

春「おいしい和菓子買ってきた。後で、みんなで食べよう」

小蒔「話したい事、たくさんあります!」

巴「本当に楽しかったわ……機会をくれた清澄さんには感謝しないとね」


恭子「あー、ホンマ手間のかかる子ばかりやったなあ。漫ちゃんはどうやった?」

漫「小蒔ちゃんはええ子でしたよ。シロはむっちゃ怠け者でしたけど。あ……あと優希、あいつは一度、どちが上か教えたらなあかんです」メラメラ

由子「来年は漫ちゃんが引っ張らなきゃいけないから、がんばるのよー」

洋榎「うちは……まあぼちぼちやな!」

恭子「むっちゃ調子よさそうなぼちぼちやないですか」

洋榎「あたりまえやろ、うちを誰やと思ってるん? 天下の洋榎さんやで!」

洋榎(最初すべってたのは黙っとこ)

由子「みんな楽しそうで何よりなのよー」

絹恵「あの……頼むから放置せんで……」

漫「んー? 主将、このふりふりちゃん誰だか知っとります?」

洋榎「知らんなあ。お! よく見たらうちの妹やん! ふりふり絹恵、どうしたん!?」

絹恵「ああ、弄られるけど救われた……。あかんて、原村さんああ見えて押しが強すぎや……」

由子「でも絹恵ちゃんかわいいのよー。雰囲気が普段と違いすぎて違和感すごいけど」

絹恵「せやったら真瀬先輩、一緒にこれ着てくれます?」

由子「恭子ちゃん、出番なのよー」

恭子「こういうのは漫ちゃんの役割や」

漫「なんで!?」


白望「本当に……ダルい……足が……痛い……」

胡桃「うわーシロが本気でダウンしてる」

白望「元気がいい人ばかりで……すごい連れ回された……今日はもう動きたくない……」

豊音「ダメだよーこれから麻雀の練習だよー」

エイスリン「イマカラウツ!」バシバシ

白望「叩かないで……」

塞「シロはいい加減しゃきっとしなさいよ」

豊音「あ、塞はもう着替えちゃったんだ」

塞「う……やめて、あの服の話はあんまりしないで」

エイスリン「ナンデ? カワイカッタヨ!」

豊音「そうだよー。ちょー似合ってたよ」

白望「うん、似合ってたよー」

塞「シロまで乗るな! だってあのふりふりの服は本当に、ほんっとうに恥ずかしいのよ……」

胡桃「なんで? インターハイ後はいつもモノクルしてるのに」

塞「うん、便利だし結構気に入って……あれ!? もしかして同列!?」

胡桃「注目度とかそういう意味では大して変わらないと思うよ」

塞「ああ……私って……」


久「ふぅ、最初はどうなることかと思ったけど、なんとかなったわねー」

優希「うむ、満足だじぇー。まあ、後で漫の奴はへこましてやらなきゃいけないけどな!」

和「もう、ゆーきったら……」

咲「私はずっと末原さんに面倒見てもらってばっかりで……でも楽しかったです」

まこ「ほーか。あとで礼を言っとかんとのう」

ドタタタタタ!

塞「ねえ、清澄さん!?」

まこ「ん? 宮守の、どうしたんじゃ?」

塞「正直に答えて! 私のこの服ってどう思う!?」

咲「あの、その和ちゃんみたいな服でいいんですか? それなら似合ってると思いますけど」

優希「うむ、のどちゃんほどじゃないが、中々だと思うじぇ」

塞「あれぇ!?」

豊音「ほら、似合ってるーって言ったのに」

胡桃「塞は気にしすぎだよ」

絹恵「あ、塞先輩」

塞「絹恵さん? と、その服……」

絹恵「ふふふ、みんなに無理矢理着用続行させられて出陣です。いっそ殺せ……」

洋榎「絹恵、がんばりー」

由子「ちゃんと見てるのよー」

エイスリン「フタリトモ、カワイイ」

塞「待って待って待って……とりあえず絹恵さんはおいといて、じゃあこういう服を着ることについてはどう?」

まこ「別に。わしは着慣れとるしのう」

久「私も。まこの所にヘルプに入るときは、いつもそういう服を着るし」

優希「右に同じだじぇ」

咲「わ、私はちょっと恥ずかしいかな……」

和「そんな事ないですよ。咲さんにもすごく似合ってました」

塞「あれぇ!?」

絹恵「清澄がむっちゃタフや!」

漫「なるほど、こういう所がぽんと全国にくる学校なんやな」

白望「いや、それは違うでしょ」

和「そんなに服が嫌でしたか……?」

絹恵「そういうんとちゃうねーん! 普段と違う自分で注目されるのが嫌やねーん!」

塞「似合ってるわよ、悔しいけど認めるわよ! でもそれとこれとは話が別なの!」

和「もう、注目なんてされてませんよ。気にしすぎだって言ったじゃないですか」

久(いえ、注目は浴びたと思うわ)

まこ(苦労したんじゃのう。和はさりげなく、ちょっとずれとるからな)

咲「あの、末原さん。ほっといていいんですか」

恭子「ん? あー、ええんよ。その方が面白いし」

咲(い、いいのかなぁ?)

霞「咲ちゃーん♪」

咲「わぷっ。あ、霞さん」

霞「来ちゃった」

豊音「あ、初美さんもやっぱり来てるんだ。ちょーかわいいよ!」

初美「ふふん、そうでしょう。お気に入りですよー」

洋榎「はるるも一緒に来たんか。相変わらずだんまりやのー、もっと喋らなあかんで」ワシャワシャ

春「これでいい……」

小蒔「あ、みなさん今日はとても楽しかったです。ありがとうございました!」

漫「うちも楽しんだんや。お礼を言う事とちゃうで……優希以外は」

優希「そうだじぇ、みんなで楽しんだんだじぇ……漫以外は」

漫「なんや?」

優希「あーん?」

白望(めんどくさいことになりそうだから逃げよ)

巴「あら、エイスリンちゃん、今日の牌持ち歩いているのね」

エイスリン「トモエ。……! マコ、ケッチャク、ツケル!」

まこ「なんじゃ、もうやるんか。ま、ええじゃろ。と、その前に……上重さん、洋榎さん、あと神代さん。この後一局勝負じゃ」

絹恵「え、なんでまた? できれば遠慮したいんやけど……着替えたいしお姉ちゃんから逃げたいし」ボソッ

まこ「ほー、別に逃げるんなら逃げるんでもええんじゃ。来年の姫松は腰抜け、そう覚えておくからのう?」

絹恵「んな! ……そこまで挑発されたら、やらん訳にはいかんな」

漫「おもろい事言うやんけ。姫松魂見せたる。泣きべそかいても知らへんで」

まこ「おーおー、待っちょるけえの。ちゅーわけで神代さん、すまんが一局分、時間あけさせてもらってええかの?」

小蒔「はい、大丈夫です! 私も打ちながら待ってますから!」

漫「時間が空くな。その間に……優希、お前もたたきのめしたるで!」

優希「それはこっちの台詞だじぇ!」

洋榎「おっし、うちも打つか。ちゅうても、同じメンツばかりじゃつまらんからな、石戸に姉帯に原村、こっち来いや! まとめて相手したるで!」

霞「あら、お呼ばれしたから行ってくるわね」ヒラヒラ

巴「がんばってね。私も次鋒卓で一勝負してくるから」

初美「ファイトですよー」

豊音「わ、わ、わ! 洋榎さんに呼ばれたよ、ちょーうれしいよー!」

久「相手は姫松不動のエースよ、勉強してきなさい」

和「はい、頑張ります」

由子「私もおいてかれないうちに、どっかに混ざるのよー」

白望「ねえ」

恭子「ん? 私か?」

白望「うん。一緒に打たない?」

恭子(宮守の先鋒……たしかこの子も魔物やけど、大将ほどドギツいわけでもなかったわ)

恭子「ええよ。それで、他のメンツは……」

白望「もういる」

咲「あ、末原さん、またよろしくお願いします」ペコリ

春「姫様……がんばって」

小蒔「はい、精一杯がんばります!」ギュッ

恭子(あ、これアカンやつや)カタカタ


そんなこんなで、今回の旅行は終わりました。
私は末原さんをはじめ、みなのお世話になってばかりだったけど。それでも、とても楽しかったです。
また一緒に、みんなでこれたらいいな!

カン!

一応これで終わりです
続きというか続編は明日投下します

続き投下します
作品名は
淡「準決勝のみんなとキャンプに行きたい!」
でお願いします

淡「菫先輩もそう思うでしょ?」

菫「ちょっと待ってくれ。一体何の話だ?」

淡「何って、キャンプの話だよ!」

菫「違う、その前だ。どうしてそういう結論に至った」

淡「しょうがないなー。昨日の夜、ゆーきと電話したんだけど……」

菫「そのゆーきというのは誰のことだ。基本的にお前の話は情報が足りなさすぎる」

淡「もー菫先輩はいちいち話の腰を折って!」

菫「……一度お前はへこまさなきゃならないのか? 物理的に」

淡「生意気言って申し訳ございませんでした。清澄の先鋒でございます」ドゲザー

菫「ああ、照の妹の所の……仲良くなってたんだな」

淡「なんか気が合ってね!」

菫(似たもの同士だからなあ)

淡「それで、電話したらさんざん自慢してくるの! 二回戦のみんなと旅行に行って楽しかったとか、みんな仲良くなったとか! ずるいでしょ!?」

菫「まあ、仲良くなること自体は良いことなんじゃないのか?」

淡「でしょー! だから私たちもやろうって言ってるの! だから菫先輩、他の所に連絡取って!」

菫「却下」

淡「え? なんで、今の流れはうんって言う所でしょ? あ、もしかしてもう一回繰り返すやつ?」

菫「全然違う。やらないって言ってるんだ。お前な、女子会とは訳が違うんだぞ? 他校まで巻き込んでそんな事ができるか」

菫「関西と東京だって集まるのは大変なのに、九州から来てなんてもらえるか。しかも3年は、これからが一番忙しくなるんだ。遊びに付き合ってる暇は無い」

淡「うー……」プクー

菫「うなってもふくれてもダメなものはダメだ。いい加減落ち着きを覚えろ。分かったらそのうち帰れよ」バタン

淡「ふんだ、スミレの馬鹿」タシタシ

淡「そっちがそのつもりなら、私にだって考えがあるんだから。電話番号を知ってるのは、なにも清澄だけじゃないんだから」プルルルルルル

数日後、白糸台麻雀部部室

菫「大おおおぉぉぉ星淡いいいいぃぃぃぃ!」

照「」ビクビクゥ!

淡「サラバ!」

菫「尭深、亦野、いや誰でもいいからそのアホを捕まえろ!」

キャーギャーワードタンバタン…

菫「で、何か申し開きはあるか今世紀最大の馬鹿」

淡「……菫先輩がわるいんだもん」プー

菫「よし、焼却炉だな」

誠子「待って下さい先輩。眼が本気で怖いです」

淡「テルーたすけてよー」

照「無理。怖い。なにやったの?」

淡「ちょっと段取りつけただけだもん」

尭深「段取り? 何の?」

菫「準決勝で戦った四校とキャンプがしたいんだと。それでこいつは、勝手に連絡入れて話を進めてったんだ。いきなり心当たりのない電話を貰って、寝耳に水だよ」

淡「私もやるときはやるんだよ、ふふーん」

菫「亦野、黙らせろ」

誠子「はい。淡、頼むから刺激するな」

淡「むーむー!」

尭深「それで、どうするんです? 謝って断りますか?」

菫「……。阿知賀は乗り気だし、新道寺と千里山はなんとなく事情を察していたが、その上で千里山は乗り気で、新道寺も嫌がっている様子はない。やることになるだろうな」

照「ずいぶんと引き際がいいね」

菫「事情はどうあれ、うちが振ってしまった話だ。相手がやると言ってるのに、こちらが引く訳にはいくまい」

淡「むふー!」

菫「はー……。とりあえず亦野、お前確か結構アウトドアとかするよな」

誠子「ええ、それなりには。泊まりがけで釣りに行ったりしますし」

菫「先方と話してからになるだろうが、場所の相談をしたい。私についてきてくれ」

誠子「分かりました」

淡「ぷはぁ、ねえねえ菫先輩、私はどうするの?」

菫「ああそうだな。お前には大事な役割がある」

淡「でしょー? 何でも言ってくれていいよ!」

菫「そうか。じゃあ照と尭深に、しっかり説教されてこい」

淡「……え?」

照「今回はやりすぎ」

尭深「ちょっと擁護できない。しっかりお説教するから」

菫「くれぐれも頼むぞ」

淡「ちょ、菫先輩、もう二度としないから……待ってー!」


菫「という訳だったんだ、本当に申し訳ない……」

哩『やっぱりそうやったと。ばってん、気に病むことはなかとよ。なんだかんだ言って、こっちも乗り気なんやしね』

哩『それに、花田……うちの部員の一人なんて、行動力と計画を大絶賛しとったしな』

菫「そう言ってもらえると助かる。それで、場所の希望なんかあれば教えてくれ。新道寺は一番遠いからな、最大限に考慮する」

哩『んー、どこでも良か。行くんなら飛行機やし、敢えて言うなら空港から近く、くらいか?』

菫「了解した。空港近くで調べてみる」

哩『こう言うんもあいやけど、大丈夫なん? キャンプ場の事情なんて、私には分からんと』

菫「その点は安心してくれ。アウトドア好きが一人いるからな」

哩『ほーか。ん……やったら、会場の準備はそっちにして貰うとして、音頭はこっちでとっとくか?』

菫「いや……ありがたいことはありがたいんだが。いいのか?」

哩『参加を決めた時点で、お客様やなかとよ。それに、うち以外は1年がおる。一番余裕のあるけんな』

菫「それでは、ご厚意に甘えるとする。恩に着るよ。とりあえず正式決定の連絡だけは入れておくよ」

哩『阿知賀にはこっちから連絡すっと。あ、あと一つだけ』

菫「何だ?」

哩『大星淡には、よーくお灸を据えてやっと』

菫「ああ、今思い切り絞られてる所だ。本当にすまなかった」プツ

菫「ふう、理解のある相手で助かった。白水哩、ずいぶんしっかりして大人びてるな。私ではこうはいかなかった」

菫「名門の部長でエースは伊達ではないという事か。さて、千里山に連絡しないとな」プルルルルル

菫「もしもし? 白糸台の弘世菫ですが。千里や……」

竜華『あ、すみれって部長の菫さん? 淡ちゃんちゃうんか。どっちでもええわ! みんなー、白糸台から連絡来たでー!』

セーラ『ほんまかー! どうなんやー!』

泉『こっちは準備万端ですって伝えといて下さい』

菫「まの……。あ、あの」

竜華『菫さん、ああもう一緒にキャンプ行く仲やし、他人行儀なのはあかんな! で、菫! いつなん!? いつ行くん!?』

怜『あかん、フナQどないしよ……』

浩子『な! どっか体調崩したんですか園城寺先輩!』

怜『ちゃうん。体力温存の為に休んどかなあかんのに、どうもそわそわするんよ』

浩子『もう仕方のない人ですね。清水谷部長はあの通りですから、うちの膝枕で我慢してくださいよ』

菫「いやまず、その……」

竜華『もしかして取りやめとか? いやや、そんな言葉聞きたない! うちが聞きたいんは日付だけや!』

菫「そうじゃなくて、まずは謝罪を……」

竜華『みんなー! 電話機に向けて、うちらがどんだけキャンプしたいか伝えたってー!』

セーラ『白糸台、久しぶりやなー! オレはもうキャンプウェアまで買って待ってるでー!』

泉『もう炭とか網とか、キャンプで使いそうなもんも用意しましたよー!』

浩子『ダメやな泉は、使うもんはあらかじめ精査せんと。まずは行く場所、環境! 情報は大事やで!』

怜『そんなん言うてフナQも、必要そうなもんを片っ端からチェックしとるやん。白糸台さん、説得力これっぽっちもなんいやー』

浩子『ちょ、告げ口は反則ですやん!』

竜華『聞こえた? ねえ聞こえた!? これが千里山のキャンプにかける熱意や! いけずな事言わんといて!』

菫「……。何か、もういいや。会場はこちらで用意して、全体の監督は新道寺の白水に勤めて貰う。という連絡をしたかっただけだ。日時はこれから決める」

竜華『マジで! 本決まりやー!』

ワーワー!

竜華『うちらこれからキャンプ計画たてなあかんから、また今度!』ピッ

菫「…………」

菫「……。まあ、いろんな部があっていろんな部長がいるよな」


穏乃「キャンプだよ!」

玄「キャンプなのです!」

宥「キャンプだねー♪」

灼「みんな、興奮しすぎ。キャンプって言っても、合宿みたいなものだし…」

憧「そんな事言って、灼さんだって何度もパンフに目を通してるじゃない」

灼「う…」マッカ

灼「そういう憧こそ、何度も資料を調べ直してるじゃない」

憧「私は別に、楽しみな事を隠してないもーん」

灼「ぐぬぬ…」

晴絵「おーい、お前達。楽しみなのは分かるが、今は一応部活の時間なんだぞー」

玄「あ、そうでした」

宥「すみません、つい楽しみで…」

灼「ハルちゃんは本当に一緒に来ないの? 来ればいいのに…」

穏乃「そうですよ、一緒に行きましょうよ!」

晴絵「お前らな、私はこれでも一応教師なんだぞ。学生が休みだからって私も休み、という訳にはいかないんだ」

晴絵「それに、せっかく学生だけで計画を立ててやりましょうってやってるんだ。そこに大人が混ざるのは無粋だろう」

憧「そんな事気になんないけどなあ。ハルエってそんな雰囲気あんまりないし」

晴絵「お、そりゃ私が子供っぽいって言いたいのか? このこのっ」グリグリ

憧「きゃー♪」

晴絵「ま、とにかくそんな訳だから。みんなでめいっぱい遊んできな!」

穏乃・玄・宥・灼・憧「はーい!」

数週間後・キャンプ場にて

哩「えーそれでは、これから四校合同キャンプを始めたいと思います」

竜華「はーい、長い挨拶はいらんと思います!」

菫「少しくらい聞いていられんのか……」

哩「別によかと。このメンバーで大人しく聞いていられるとは、最初から思っとらんよ」

セーラ「ひゅー! さすが新道寺の部長や、話しが分かるぅー!」

尭深(白水さん、苦労したんだろうな……)

哩「最初は持ち込む食材は調味料と米だけで、他は現地調達しようと思っちたんやけど……」

穏乃「お肉がなかった死んじゃいますよ!?」

哩「……。という高鴨一年の言葉で、肉の持ち込みば決定しました」

憧「やめなさいよこのお馬鹿!」バシーン

穏乃「あいたぁ!」

灼「恥ずかし……」マッカ

哩「で、肉の持ち込みが決定したら今度は……」

淡「お菓子は正義だよ!」

照「なかったら話しにならない」フルフル

哩「という具合にあれよあれよと増えていき、持ち込み量がかなりのものになったとよ」

菫「すまない……本当にすまない」

哩「過ぎたことたい。で、募った意見を元にしおりを作ったのが花田や」

煌「はい、この花田煌、不肖ながらパンプレットの作成を勤めさせていただきました! 簡単にですが、注意事項を述べさせていただきます!」

煌「と言っても、注意事項は当然のマナーですでご安心を。一つ、みんななかよく! 一つ、ゴミは持ち帰ろう! これだけです!」

煌「皆が一丸となって、このキャンプを成功させましょう。これで私の挨拶は終わらせていただきます」

哩「ん、よか挨拶たい。それで班分けなんやけど、大星一年から団体戦の順番で組みたいっち意見が出とるんやけど、それでよかと?」

菫「うちは構わん」

灼「こっちも大丈夫」

竜華「完全に他校と組むんやね。ええやん楽しそうで!」

哩「そいぎ、先鋒が一班、大将が五班の順番で。役割はしおりに書いてある通りたい。これで解散! あとは班別に集まり直して開始!」


五班、大将組

竜華「うちは山菜採りなんやね。面白そうや」

姫子「私にはそういう知識なかとやけど……。ぶちょーは高鴨に頼れって」チラリ

穏乃「はい、任せて下さい! こういうのは大得意です!」

淡「そうなの? 確かにそれっぽい感じはするけど」

穏乃「よく山にいって、山菜取ってきて晩ご飯にしてもらったりしてるからね。ありそうな場所も食べれる野草の見分け方も余裕だよ」

淡「へー、すごーい!」

姫子(なんでこの子麻雀しとるんやろ?)

竜華「おっし! せやったら穏乃を先頭に山菜採りに出発や! 案内は任せた!」

穏乃「了解です!」

淡「はーい! うー……このわくわく感がたまんない!」

姫子「分かりました」

姫子(先輩の言ってたこと、ちゃんと守らんと……)

哩『ええか、姫子。大将には問題児が二人揃っとる。負担が大きくなるのはすまんと思っとおけど、なんとか竜華と協力して二人を押さえて』

姫子(任せてください部長!)

姫子「清水谷せんぱ……」

穏乃「一番高鴨穏乃いっきまーす!」ズダダダ!

淡「二番淡とつげきー!」ズダダダ!

竜華「三番清水谷竜華、始まる前からアゲアゲやでー!」ズダダダ!

姫子「ええええぇぇぇ!」

姫子(ぶちょー! 問題児が三人だった場合はどうすればよかとですかぁ!?)


数十分後

竜華「ぜー……ぜー……ゴフッ、ゴホッ……」

淡「ヒュー……ヒュー」

姫子「ふ、二人ともどげんしたん?」

竜華「あ……ありえへんわ……脇腹痛い……」

淡「シズってば……あのペースで……獣道も……走り続けたんだよ……に……人間じゃない……」

姫子「あー、それで二人は途中でバテとうね。文化部なんやから、加減すればええんに」

淡「あっちも……文化部なのに……」

穏乃「あ、姫子さん遅かったですね」

姫子「高鴨が早すぎっと。みんなでやるんだから、一人先走ったらいかんやろ」

穏乃「はーい、ごめんなさい」キョシュ

姫子(思っちいたより素直やな)

姫子「他の人ば待たせるのはつまらんし、ちゃちゃっと始めたかと……ちょっと休憩します?」

竜華「いや、大丈夫や。もう走りたくはないけど……」

姫子「ふ、二人ともどげんしたん?」

竜華「あ……ありえへんわ……脇腹痛い……」

淡「シズってば……あのペースで……獣道も……走り続けたんだよ……に……人間じゃない……」

姫子「あー、それで二人は途中でバテとうね。文化部なんやから、加減すればええんに」

淡「あっちも……文化部なのに……」

穏乃「あ、姫子さん遅かったですね」

姫子「高鴨が早すぎっと。みんなでやるんだから、一人先走ったらいかんやろ」

穏乃「はーい、ごめんなさい」キョシュ

姫子(思っちいたより素直やな)

姫子「他の人ば待たせるのはつまらんし、ちゃちゃっと始めたかと……ちょっと休憩します?」

竜華「いや、大丈夫や。もう走りたくはないけど……」

淡「うー……来て早々ふとももがぱんぱんだよ」

穏乃「それじゃ、まずここらへん」ガサゴソ

穏乃「かき分けると、キノコが出てきます。ぱっと見た限り、この三種類が食べられるやつですよ。はいこれ」

姫子「手際よかとなあ」

穏乃「他には、あそこの茎っぽいのが集まってる所と、そこらの葉っぱも食べられます。ごっそり持って行っちゃいましょう」

竜華「ごっそりて。よく知らんのやけど、こういうのって残しとかなあかんのやないの?」

穏乃「多分大丈夫だと思いますよ。ここらに生えてるものって、自然っぽく配置されてるだけで明らかに管理されてますし」

淡「え、そうなの? 見てても全然分からなかった」

穏乃「うん。おいしい山菜は見るからに群生してるし、危険な毒を持った植物は見当たらないし」

竜華「なるほど、素人がいい加減に摘んでもよっぽどの事っちゅうのは起きんようになってるわけやね」

姫子「それで痛い目見るんも醍醐味、っちわけか。親切なんだかそうじゃなかんだか」

淡「ねーねーシズ、これとこれは」

穏乃「そっちのキノコはおいしいよ。そっちの草はすっごく苦い。たまにお茶にして飲んでる人とかいる」

淡「なるほど……ふふふ、こっちは持って帰ってたかみーに飲んでもらおうかな」

穏乃「そんな事すると怒られるよ?」

淡「なんて言いながら、シズも摘んでるじゃん」キャイキャイ

穏乃「赤土先生にちょっと飲んで貰おうかなって」キャイキャイ

竜華「……」

姫子「清水谷先輩、どげんしたとです?」

竜華「いやー、かわいい一年やなー思って」

姫子「あれ? 先輩ばとこレギュラーに一年おらんとでしたか?」

竜華「おるけど、泉は一人で何でもできるし気を利かせすぎるんよ。楽ではあるけどかわいいいうんは違うなあ。そっちは?」

姫子「新道寺はレギュラーはおろか、一軍に一年のいませんから。いるところと比べると、どうしても関わりば薄いです」

竜華「そうなんか……」

姫子「ええ」

竜華「あれや、面倒のかかる後輩がいるいんも、悪くないなあ。面倒見とると、先輩って感じがするわ」

姫子(ひょっとしてギャグで言うてるんちゃろうか?)

穏乃「あー! 先輩たち、こっち来て見て下さいよ!」

姫子「どうしたっと?」

淡「栗だよ栗くり! 見てこれ、こんなにたくさん!」

穏乃「栗ご飯に甘露煮に焼き栗に……うへへへへへへ、夢が広がるね!」

竜華「マジでぇ!? うち栗の甘露煮むっちゃ好きなんよ! あかん、よだれ出てきた……」

穏乃「砂糖の量がそんなになかったから、たくさんはできませんけど。それでも一人三粒くらいの量は作れるはずです!」

竜華「乱獲やー! 取り放題やー! 後に続けー!」

淡「ひゃっはー! あまーい栗ご飯♪」

穏乃「たくさん食べるぞー!」

姫子「あーちょー! だから先走らんように言うてるんに! 先輩ももうちょっと落ち着いて、引率してくださいよ!」


四班、副将組

哩「うん、地図通り到着、と。ここで合とおね」

浩子「おっとっと、やっぱり川縁は歩きにくいですわ」

誠子「鷺森さんは大丈夫……ずいぶん足取りがしっかりしてるね」

灼「ん、近場に川があったし……。よく遊んでたから結構慣れてる」

哩「そいぎ、私らも始めっと」

浩子「川に来たところを見ると、うちらは魚釣りですか?」

灼「私、魚釣りってやったことな……」

哩「安心して、ちゆうんも変やけど、私も経験のなか。全部亦野任せと」

誠子「心配する必要はないよ。今回はニジマスの養殖を放流してもらったし。養殖は警戒心が低いから、糸垂らしとくだけで簡単に釣れるんだ」

灼「へー、全然知らなかった」

浩子「さすが白糸台のフィッシャー言うだけあるな。魚釣りもお手のもんや」

誠子「ははは、どっちかって言うと、こっちが先なんだけどね。後から麻雀を始めたら、なんとなく魚釣りでやる感覚で出来るようになったと言うか」

哩「ああ、その手の話ばよく聞くな。別ん事ばやっとったら、そいがいつの間にか麻雀でも通じるようになっちったと」

浩子「え、そうなんですか?」

誠子「ああ。白糸台だと淡と宮永先輩は知らないけど、私と尭深、弘世先輩はそのタイプだ。あ、これ釣り竿」

灼「ありがと……。うちもそんな感じ。私の家はボーリングしてるし、穏乃はずっと山に登ってた。宥さんは見たまんまだし、玄も由来あるよ」

浩子「釣り餌は魚肉ソーセージといくらなんや、ゼータクやなー。しかし、そんなことべらべら喋ってええん? 言うとくけど私、チェックするで?」

哩「よかとやなか? 信憑性はともかく有名な話しやし、第一それば知った所でどうなるもんでもなかと」

誠子「ですよね。まさか私に釣りをさせない、なんて出来るわけありませんし」

浩子「ま、その通りなんですけどね。しかし……」

灼「何か気になる事が……?」

浩子「いや、そういうんとちがって。何と言うか、麻雀って何やったかなー、思って」

哩「……。そいういうもんや思って諦め」

浩子「ですよねー」

哩「うお、結構足下滑るな」

灼「なるべく岩の上に足のせたりしないで、砂利っぽいとこ歩いた方がいいですよ」

誠子「ここらに腰掛けてもらって、後は餌をつけて垂らしとけばオッケーだよ」

灼「近すぎない? 魚逃げて行きそ……」

誠子「養殖は人になれてるからね。暴れたりしなければ大丈夫」

浩子「なるほど。やっぱ本職がおると違うなあ。一応メモっとこ」

誠子「本職ってほど大層なものでもないんだけどね。相変わらずというか、船久保さんは細かくチェックするね」

浩子「こうでもせんと千里山でレギュラーなんてとても取れへんかったからな。もうクセや」

哩「ほー、千里山の名プレイヤーの誕生秘話か」

灼「気になるね」

浩子「べ、別にそんな大層なもんやないんやけどなあ。けどま、言ったからどうって訳でもなし、自分だけ聞いといてダンマリもなし」

浩子「私は麻雀が上手くなれても、強くはなれへんかったからね。そんでも、いとこが姫松のあれやし、強さに対する憧れはあったし、弱くてしゃーないとも諦められん」

浩子「やから、相手の情報集めて完全対処する事で、相対的に強くなろ思ったんや。そんな上手くはいかんかったけど、情報解析能力を買われてレギュラー入りはできた、と」

哩「なるほどなあ。ばってん、別に卑下する必要はなかと。インターハイでは見事な打筋やった」

誠子「そうですよね。私なんて、スジに頼る癖を狙い撃ちされたし……ははは……」

灼「じ、自虐してまでフォローする必要はないから。ほら、船久保さんも困ってるよ」

浩子「はは、まああれやね。妙なオカルト麻雀と同じで、人の打筋に歴史ありいう事や」

灼「分かるな……。私も憧れの人の打筋を……あ、釣れた」

浩子「お、こっちもや。長期戦を覚悟しとったけど、案外さくさく釣れるんやな」

誠子「初めては、やっぱり釣れないと楽しくないしね。その辺は気を遣ったよ。あ、針取れる?」

灼「大丈夫、取れたよ」

浩子「私の方はダメですわ。取り方教えてもらえる?」

誠子「分かった。鷺森さんは、取った魚をそっちの即席生け簀に入れといて」

灼「うん」

哩「私ん所にも来た! あ、あれ? 掴めん。ああっ、滑る暴れる! どげんしよ!?」アタフタ

誠子「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ちょっと落ち着いて」

哩「ばってんこれ逃げそうやし! あわわわわ……」

誠子「いやいや変に動かないで下さいって。ほら、取りましたから」

哩「ふー……」

灼「……」ポカーン

浩子「……」ポカーン

哩「う……何なんそげんに私ば見て」

灼「いや、だってね?」

浩子「むっちゃイメージと違ってますやん」

哩「ふぐっ、しかたなかとやろ、テンパりやすい性格なんやもん」

誠子「人は見かけによらないって事ですかね? でも、私も意外でしたよ。弘世先輩なんて、白水先輩をべた褒めしてましたし」

哩「そいは当然、私かて見栄も責任感もあっと。しゃんとするよう心がけてはおるが、咄嗟となっとどうしてもな……」

哩「実力の一番やからと部長ばしとるが、正直部長としての能力は仁美……うちの中堅の方が上たい」

灼「そうなんだ……ふふっ」

哩「う、笑わんでもええやろ」ヘコミ

灼「あ、すみません。そういうのじゃなくて、完璧超人みたいに思ってたから、ちょっと親しみやすく感じて……(緊張した憧みたいな感じだし……)」

浩子「ああ、それ分かるわ(空回り気味の清水谷部長が近いなあ)」

誠子「同意だな(ちょっと積極的な宮永先輩とか、こういう風かもなあ)」

哩「ちょ! みんなして慈しむような目でこっちば見るんやめてぇ!」

三班、中堅組

セーラ「おーし、そしたら俺らはテント立てるで! 点呼!」

憧「いーち!」

尭深「に……」

仁美「そうゆうノリなん? 三番な」

セーラ「総員揃ったな。ま、見るからに分かっとったけどな!」

憧「じゃあやらせるんじゃないわよ!」ビシッ

セーラ「お約束も挟んだところで、テント立てるでー!」

憧「おー!」

仁美「テンション高いなあ」

尭深「楽しそうでなにより」

憧「ずいぶん大きなテントを用意したのね。しかもこれが五つって」

尭深「楽に6人は入れそう……」

セーラ「おう、どうせ中で遊ぶし、狭苦しいのもどうかと思ったからな。その代わり、ちょっと立てにくいもんになったけど。お、ここらでええか」

仁美「いかん!」

セーラ「うお、いきなりどうしたん?」

仁美「場所はちゃんと選ばなつまらん!」

憧「え、ここってダメなの? 平らだしよさげだと思ったけど」

仁美「大きめの小石が多かやろ? テントに入っと時、苦しなる。砂利をどけるか、もっとよか所ば探すべきや」

セーラ「えー。別にここでもええと思うけど」

仁美「いかーん! 自分だけやったらまだしも、みんなん分も立てるんや。与えられた仕事はきっちりこなす。こいのチームん役割っちうもんや」

尭深「賛成……。気分良くなるようにするのに、超したことはないから……」

セーラ「う……確かに。配慮が足りんかったわ、すまん」

憧「私も舞い上がってた。ごめん」

仁美「よか。そういうんは次に生かせばよかと」

セーラ「分かりました先生!」

憧「頑張ります先生!」

仁美「うむうむ、先生に頼ってよかよ。あ、ちなみに先生は政治家ん先生っちゅう意味でよろしく」

憧・セーラ「なんでやねん!」

尭深「息ぴったり」

仁美「とりあえず場所ば選ぼう思う。そこの芝生のよかそうなんやけど……」

尭深「あんまり良い場所に杭を打ったら、怒られそう」

仁美「なんよね。やから、そっちの林の中にしよか。丁度平らっぽそうとよ」

憧「確かに芝生の上って気持ちよさそうよねー」

セーラ「スペースも十分やな。おっし、テント張るか。出すでー」

憧「わお、やっぱり大きいわねえ。……こう、テントを見るとわくわくしてくるわね」

尭深「分かる。キャンプしてるって気分になるよね……」

仁美「ちょ、ちょいどっちでもよかから、引っ張るん手伝っちくれ」

セーラ「なんや非力やなあ。もっと力つけなあかんで」

憧「麻雀部所属でそんなに力がある方がおかしいのよ」

尭深「う……重い……。でも、こういうのはコツが掴めれば……」

憧「コツを掴む前に、全部立て終わるだろうけどね。んんんっ!」グググ

仁美「っかー、背筋痛くなっとー。思っとったより遥かに重労働や」

セーラ「だらしないなあ。ちゃちゃっとやらんと日が暮れてまうで。ほら、あとたったの四つや」

尭深「先は長い……」

憧「気を抜いたら力が緩みそうだわ。何か話をして気を散らしましょ」

仁美「やったら、ここはうちが一つ演説ば……」

憧「なんでそうなるのよ!」

仁美「そいは当然、うちが政治家志望やからや」

尭深「冗談じゃなかったんだ」

仁美「当たり前やろ。うちは政治家になって日本ば変える! そんためには一に演説二に演説! とにかく人ば乗せるんさえ上手ければ選挙に勝てる!」

セーラ「なー、俺あんま頭良くないからよう分からんのやけど、それってアジテーターってやつやろ。あかんのとちゃう?」

仁美「何言っとん、日本の政治家なんちそんなんばっかやろ。隠すんが上手いか下手かだけや。民主主義は衆愚政治! 勝つのは口が上手いもんや!」

尭深(思ってても誰も言わなかったことをばっさりと……)

憧「あんた、政治家志望だったら少しは取り繕いなさいよ」

セーラ「おっそろしいアホや。政治を勉強して、言っとる事を理解できるようにならなあかんと思わせてくれる」

仁美「そう言えば憧は晩成高校ば合格圏内にするほど頭よかとな。どうや、うちの右腕になってみるつもりはなかと?」

憧「あんたと一緒に警察にとっ捕まるのはごめんよ!」

二班、次鋒組

菫「我々は炊事班その二になる」

美子「書いてあっけん所によると、うちらは火種と炊飯でよかと?」

菫「ああ、その通りだ」

泉「了解です。しかし、ちょっと以外ですね」

菫「ん? 何がだ?」

泉「いえ、清水谷先輩から、弘世先輩は料理できるって小耳に挟んだもんですから。てっきり炊事一班になるんかと」

菫「そのことか。他に適任がいなければ、そうしようとは思っていたよ」

宥「玄ちゃんはお料理上手だから。料理長さんによく教えて貰ってるし」

美子「うちん花田も料理できるんよ」

菫「こういう事だ」

泉「ああ、経験者が二人いる上にプロから教えて貰ってる人がいたら、そりゃそっちに任せますよね」

菫「消去法という意味もあったんだがな」

泉「というと?」

菫「例えばだ、魚担当は釣り経験者が一人はいるなとか、テントを張るには体力自慢が必要だなとか」

宥「だから穏乃ちゃんの班は、山菜採りに向かったんだね。穏乃ちゃん、そういうの得意だから」

美子「哩そう言えば……部長が班編成について電話で話してたような。どの班にも一人はまとめ役が欲しい、とか」

菫「偶然とは言え、上手い具合に人を纏めるのが上手い者が散ってくれて助かったよ。特に一年二人を面倒見る鶴田と清水谷には頭が上がらん」

泉(舞い上がった清水谷先輩に勤まるんやろか……? あれ、その場合鶴田先輩が一人で纏めるん?)

菫(照のドジを考えたら、遠くへ行かせたり火を扱わせられないからな。刃物なら、被害は本人だけで済む。私が近ければフォローできるし、なんて事情は絶対に言えん……)

美子「とりあえずお米ばとぎましょか」

宥「う、うん」ガクガクブルブル

泉「ちょ、松実せんぱ……これやと被るな。宥先輩そんな震えてどないしたんです?」

宥「手袋取ったら、手が寒くて……それに水の冷たさを考えると……」ブルブル

美子「寒さによわいんやろーなー思っとーたけど、予想以上やね」

菫「気温的には晩夏か初秋か、まだまだ暑いくらいの気温なんだがな。まあ、できない事を無理する必要はない。君は火起こしを頼めるか?」

宥「うん、ごめんね……」

美子「謝る必要なんてないですよー」

泉「布地多くてちょい怖いですね。私こっちで宥先輩手伝います」

菫「ああ、頼む」

宥「ありがとうね、泉ちゃん」

泉「安河内先輩も言っとりましたけど、そんなん気にせんでもええですよ。私らもできない事があったら、宥先輩に頼みますから」

宥「そ、そうかな? じゃあ一緒にがんばろうね」ホクホク

菫「……」

美子「どげんかしたん?」

菫「いや、ずいぶんしっかりした一年だなと思ってな」

美子「確かによい子やね。白糸台の大将ちゃんはちごーとるん?」

菫「……、淡は飛び抜けた問題児だ。もっと落ち着けといつも言ってるんだがな」

美子「あはは、部長さんは大変やー」

菫「そちらはどうなんだ? そうだな……できれば、元気の良すぎる後輩の教育方法なんて教えて欲しいんだが」

美子「うーん、うちらも千里山さんと同じで、後輩のよか子ばっかりやしなあ。それ以前に、直接世話見る事自体が殆どないし」

菫「そうか……。こういう時は、白糸台のチーム制度は面倒だな。む、米を落とした」ガシャガシャ

美子「飯ごうはお米とぎにくいけんね」

宥「火だね作り終わったよー」

泉「灰もどかし終わりましたし、いつでも始められますよ」

美子「こっちまだやから、ちょう待ってて」

宥「二人で何の話をしてたの?」

菫「ああ、部活の後輩についてちょっとな。そうだ、宥さんにも聞いてみたいんだが、普段部活の後輩をどう指導している? 参考にさせていただきたい」

宥「え、えっと、そう言われても、私は全然何もできないから……。全部灼ちゃんにやってもらってばかりで……」

宥「それに、阿知賀は殆ど身内で集まった部活だから。あんまり参考にならないと思うの……ごめんね?」

菫「む、そうか、新設部だったな。いや、こちらこそ無茶なことを聞いた。すまない」

美子「今なにげに恐ろしかこと言ったねー」ヒソヒソ

泉「創部数ヶ月でインハイ常連の超名門を下した部が身内の集まりって、阿知賀ってどんな魔境なんでしょうね?」ヒソヒソ

宥「あうううぅぅぅ、そうじゃなくて、そうなんだけど、違くて……」ワタタ

泉「冗談は置いといて、経歴は知っとりますよ。五人中三人が、顧問の昔の教え子。一人も打筋似るくらいのファンだったんですよね」

美子「生徒もよかかったんやろうけど、一番の功労者は顧問の先生やろね」

宥「あ……うんそうなの。赤土先生は凄いんだよ、菫ちゃんの癖を見抜いたのも先生なんだ」

菫「む、そうだったのか。私も癖は無くしたつもりだったが、プロからお呼びがかかるくらいのセミプロから見れば、まだまだ学生レベルだと言うことか」

美子「単純に強さやったら、プロに通用する高校生も結構おるんやけどね。経験の多かプロん怖さは、こういう対応力でズバッと切ってくる所なんよ」

泉「私らもぜひ見習いたいですねー、って優先輩何してるんですか!」

宥「え? わ、私もお米とぎを……」ガタガタ

泉「震えながらせんでもええですって! 後で出番ありますから!」

宥「でも、それじゃ私だけ何もできないで……」

泉「そんな事ないですし、別にできんでもええじゃないですか! 人間何でも出来るわけやないんです、たまには任せてまう事だってあります!」

菫「騒いでいるところ悪いが、山菜調達班から一足先に栗が届いた。宥さんにはこっちの下処理をして貰いたい」

美子「こっちなら水に触れんし、火に当たりながらすればよかとね」

宥「これなら……その、ごめんね、ありがとう」

菫「宥さん含め、みんな自分に出来ることをしているだけだ。謝罪も感謝も必要ない」

泉「こっちぱぱっと終わらしてそっちの応援行きますから、ちょっとだけ待ってて下さい」

菫「しかし、本当に気を遣えるいい一年だな。淡にこの一割でもあれば」

美子「あー、なんか弘世さんの事、ちょっと分かってきたなあ」クスリ

菫「む、どういう意味だ?」

美子「なんやかんや言うてるけど、隣の芝は青いだけって自覚しとる。そいに、淡ちゃん事も、言うほど悪い思っとらんなー、って」

菫「そんなことはない。私は部長として、先輩として切実にだな……」

美子「はいはい、そういう事にしとっちあげる」

菫「むぅ……」

一班、先鋒組

煌「それでは我々も始めましょう! ……と言いたいところなのですが」

怜「食材がまだ肉しかないなあ」

照「他の班が調達してきてからじゃないと、出来ることが限られるね」

煌「と言うわけで、まずはメニューを決めるのはいかがでしょう?」

玄「はーい、さんせー! でも食材がある程度分かってからじゃないと、決めるのも難しくないかな?」

煌「その点はお任せを。こちらの用紙に、この辺で取れる山菜や魚の一覧がありますから。これで本決まりとは言わなくとも、ある程度は決められるでしょう?」

怜「あと、申し訳ないんやけど一つ。私、料理したことないんやけど……」

照「その、私も……」

煌「大丈夫です、部長はその点に関しても考えていますから。そのために、経験者が確実に二人居る一班が選ばれたんです。ね、玄さん」

玄「うん、お料理は得意なのです!」

煌「要点さえ押さえてしまえば、料理は難しいものではありませんからね」

怜「それなら安心、かな? それやったら先生、よろしくお願いします」

照「ご指導お願いします」

玄「う……」

怜「んう? 何か微妙な反応……」

照「邪魔だったかな……?」

玄「ああっ、そうじゃないです! 何と言うか、こう、どう考えても私が教えて貰う側なのにお願いしますとか言われると、すごい違和感があって」

煌「分かる分かる。どうしても「あれ、私が教えて貰う側だよね?」って意識が抜けないんだよね」

照「んー?」

怜「よく分からんなあ」

煌「あはは、本人からするとよく分からないのかも知れませんね。私たちの世代にとって千里山のエースと不動のチャンプは、それだけビッグネームなんです」

照「そんなに大層なものじゃないんだけどな。麻雀で注目されたけど、そのほかは普通の学生だし」

怜「普通だったらまだええやない。私なんて麻雀とったら、全部人に迷惑かけっぱなしや」

玄「そう言われても、やっぱり慣れるのには時間がかかりそうですよ~」

怜「ま、いきなり直して言うのも酷かも知れへんし、おいおいでええよ」

煌「できる限り自然体で居られるよう頑張らせていただきます。それで、肝心のメニューです。お肉はどうにでも出来るとして、お魚はニジマスなのですが、どうしましょう?」

照「塩焼きじゃいけないの?」

煌「結構数が多いですし、ただ塩焼きにするだけというのも味気ないのですよね」

玄「せっかくだからおいしいものを作りたいし……あっ、確か調味料の中にチューブバターがあった!」

煌「それいいわね。じゃあ取ってきて貰った山菜を添えたムニエルなんかが……」

玄「レモンがないのが悔しいぃ~」

煌「あはは、仕方ないよ。じゃあお肉の方は……」

玄「汁物にするのが無難だけど……山菜に合わせるならデグラッセした方がいいかな?」

照「……」

怜「……なあ、チャンプ」

照「なに、園城寺さん?」

怜「全然会話についていけへんな」

照「そうだね」

怜「ふと思ったんやけど」

照「……。あまり聞きたくない」

怜「私らもしかして、むっちゃ女子力低いんやない?」

照「あー」ヘコミ

怜(どうしよ、私麻雀がなくなったら、本気でダメっ娘やん。もしプロになれへんかったら……あかん、冗談も言えへんつらい人生が待っとる)

照(私だって麻雀以外で菫に勝ってる所が一つくらい……ひとつくらい……。こ、個性とか、人は優劣だけじゃ語れないし!)

照「料理くらいできるようにならないとまずい……!」

怜「女の子名乗れへんようになる……!」

玄「どうかしたのですか?」

怜「料理がんばろと思って」

照「料理を教えて下さい。本当に本当に、お願いします」シンケン

煌(何でこんなに切羽詰まってるんでしょう?)

穏乃「玄さーん!」

玄「あ、穏乃ちゃんだ。こっちですよー」

穏乃「山菜たくさん取ってきましたよ」

怜「おわ、ほんまにすっごい量やな」

照「こんなに食べきれるかな?」

煌「大丈夫ですよ、火を通してしまえば大分量が変わりますから。これでも少し少ないかも、というくらいです」

照「へー」

怜「所で、竜華たちはまだ帰ってきてないん?」

穏乃「まだ向こうで休んでます。もう動きたくないとか言ってますから、帰ってくるのは大分後かも」

怜「えっ、竜華大丈夫なん? そんなバテるほど何したんやろ……」

穏乃「全然大丈夫ですよ、本当に山菜採りしかしてませんから。むしろ他に何かする余裕ありませんでしたし。みんな体力なさすぎですよね」

照(淡って誠子の次くらいに体力がある筈なんだけど……)

玄「穏乃ちゃんありがとうね。頑張っておいしいご飯作るから」

穏乃「玄さんの作ったご飯、おいしいんですよね。えへへ、今から楽しみだな! じゃ、私はみんなの所に戻りますんで! あでゅー!」

煌「では、材料も来たので仕込みを始めましょうか」

怜「はい先生」

照「よろしくお願いします」

玄「今日は特別に玄先生なのです、むふん。それではまず、お野菜を洗い……保冷ボックスからお肉を取り出して、これの下処理から始めましょう」

煌「厚めにお肉を切っていき……ちょっ」

怜「ん……どうしたん? 出来れば手短に」プルプル

玄「指、指を曲げて! 猫の手で! 伸ばしたままだとうっかり切っちゃうから!」

照「な、なるほど。んぎぎぎ!」グイグイ

煌「待って下さい! そんな押しつけたって切れませんって! 包丁はゆっくりと引きながら切るんですよ!」

怜「勉強になるなあ」プルプル

照「うん、これなら料理ができるようになるのも近いかも」プルプル

煌(これは……目を離したら大惨事になる!)

玄(まずいよ、お料理の中に指が入ってたなんて事になりかねないよ……助けておねーちゃーん!)

食後

哩「みんな、今日一日ほんなごとにお疲れやっと。……ごく一部死にかけとうしな」

竜華「うちは文系なんや、それでええ……」

淡「おかしい、足がガクガク言って動かないわ」

姫子「私、来年から部長って大丈夫なんやろうか……」

煌「包丁はそうやって持ってはいけないのです、すばらくない……」

玄「あわわ、指が、指が……おねーちゃーん……」

菫(本当にすまん……)

哩「テントん割り振りやけど、最初は全部くじ引きで決めようち思っとったんやけど……淡一年」

淡「せっかくだからまだやったことのない人とやりたーい!」

哩「と、定番ん声の上がってな」

憧「やったことないって何の話?」

仁美「全テントカード麻雀に電気ランタン完備なんよ。まあ、そういうこつやね」

姫子「思っとった、ゆうこつは、今はちごうとるんですか?」

灼「せっかくだから、部長は部長だけで集まろうって話をしたんだ」

哩「こげん機会、滅多になかとうしな」

竜華「私も殆どお飾りやけど、たまにはちゃんとやらんとなあ」

菫「そういう訳だ。すまないが、くじ引きは他のメンバーだけでやってくれ」

誠子「そういう事情なら仕方ないですね」

穏乃「ちなみにくじは割り箸使って私が作成済みです! 公平を期すために、私は引きませんから皆さんどうぞ」

セーラ「おっし、俺が一番や!」

美子「そーやったら遠慮なくー」


竜華「なんかこうして集まるんも変な気分やなあ」ペラ

哩「インハイん時はこうなると思いもしなかったしな」ペラ

灼「どこも自分たちのことで必死だったし……」ペラ

菫「まあ、せっかくの機会だ。楽しもう」ペラ

哩(今年も結局は決勝にすら行けんかった。来年の為に、他チームん情報は絶対に欲しか)

灼(今回は運良く晩成と緒戦で当たれた……。来年はマークされてるから奇襲は通用しないし。フロントの弱いうちはこういう所で情報を得ないと……)

菫(堅実なプレイヤーの残る千里山。オーダーがほぼ一新される新道寺。そして、全国経験者を四人も抱える阿知賀。どこも面倒な相手だ)

竜華(おーし、竜華さんきばってトップ取ったるでー)

哩(注目するべきは、阿知賀か? ここは監督の裁量が大きい。たった一年でも、躍進してくる可能性が高か。一番弟子、見切れば対抗手段も自ずと見えるとよ)

灼(来年にもハルちゃんの教え子が入学してくるし、今年活躍したから部員には困らない。後は、それがどれだけこの人達と戦えるか。見極めなきゃ……)

菫(火力チームの欠点、不安定さが浮き彫りになった。今年は課題の多く残るインハイになってしまったな。責任は私にある。ここで挽回だ)

竜華(お……お? お? お? これめっちゃええ配牌やん! さすが私、絶好調やね!)

灼「ところで、みんなの部はどんな調子? 阿知賀は定員ギリギリだから、たくさん人が集まってくれればなって感じ……」

哩「人はたくさんおるが……こっからは姫子ん役割やしな。引退する私がごちゃごちゃ口出しはせん」

菫「右に同じだな。誠子も尭深もしっかりしている。淡は多少不安だが……まあ一年もあれば多少は落ち着いてくれるだろう」

竜華「んー? そーやなー、次の部長はフナQやから、私よりは上手くやるんやない?」

灼(のらりと躱された……ま、そうホイホイ情報はくれないよね)

哩(仕掛けてきたんは阿知賀か)

菫(部員数もバックアップも、全てにおいて一歩劣るからな。やはり新設部のつらさがあるか)

竜華「おっしゃ、リーチや!」

灼・哩・菫「!」

灼(五巡リーチ、打点も高そ……。ううん、そこじゃない)

菫(仕掛けが早すぎる。情報なんていらんと言う事か? いや、違う。情報も麻雀も、全てトップを取る自信があるのか)

哩(ちっ……流石はエースば押しのけて部長になりよった逸材や。私とは部長としての器が違うか)

竜華(ふっふっふ、みんな面くらっとるでー。千里山が怜とセーラだけやないって見せたらなな!)


淡「くくく、シズノにトキ、よく私に叩きのめされる為に集まってくれたわ」

怜「や、ただのくじ運なんやけど」

淡「ふふふ、各校のエースを倒して、私が高校二位だって教えてあげなきゃね」

穏乃「うちのエースは玄さんなんだけどね」

怜「ちゅーか、二位? 一位やなくて?」

淡「一位はテルー! そして二位が私でワンツーフィニッシュ!」

仁美「おーい、そこんでかか口叩いとる一年。うちを忘れっとー」

淡「えー。だってヒトミって新道寺の三番手なんでしょ? そんなの私がぼっこぼこだね!」

仁美「ほほー……ほんなごと生意気な一年や。これはちょっと、世間の厳しさを教えたらな」

穏乃「確か仁美さんって、一回戦は哩さんに負けない成績でしたよね」

怜「うちで言うところのセーラタイプやね。実力、じつはかなり興味があるわ」

仁美「いや、そうやなくて」

怜「え?」

仁美「とりあえず名誉毀損に侮辱罪で、しょっびかれてもらおか」

穏乃「怖っ!」

仁美「くくく……ムショで食べる飯はどんな味なんやろうなあ? 出てきよったら教えて貰おか」

淡「あわわわわ……ごめんなさい」ガクガクブルブル

怜「泣きそうなんを見るんもええけど、かわいそうやから始めよか」パラパラ

淡「ん?」

穏乃「んんー?」

淡・穏乃「あっ!」

淡「角がないから使えない!」

穏乃「山がないから使えない!」

怜・仁美(この子らは何言っとるんやろ?)

宥「みんな、よろしくねー」

照「うん、よろしく」

美子「こちらこそー」

セーラ「なんやまったりした部屋やなあ。けどまあ、たまにはこういうんもええか」

照「それで、ゲームなんだけど……」モジモジ

美子「何かあるん?」

照「私、みんなでお泊まりとかあんまり経験無くて、行っても麻雀ばっかりだったりで……その……一度でいいから、トランプしてみたいなって……ダメ?」

セーラ(チャンピオンは、むっちゃかわいい生き物でした)

宥「全然ダメじゃないよー」

美子「じゃあばば抜きとか……あ、そう言えばウノもあったなあ。せっかくやし、色々やろか」

照「ごめん、わがまま聞いて貰って」

セーラ「何言ってん! こんなんみんなで楽しめるもん、言うて絶対に知ってるから麻雀になっとっただけや。楽しめるなら何でもええんやで」

宥「そうだよ、やっぱりみんなで楽しいのが一番だよ」

美子「別にこだわっとった訳でもなかかしね」

セーラ「せやで。それに、悪いー思っとるんやったら、めいっぱい楽しんでや。申し訳なさそうにされるんが一番ダメや」

照「ん、じゃあすっごい楽しむ」

美子「ふふ、それにトランプやったら、うちもチャンプに勝てっとー」

宥「私もあんまりトランプしたことないから、楽しみだなー」

セーラ「ジジいらずのセーラとは俺の事やで。トランプでも麻雀でも全力で勝ちにいったるわ!」

照(このテントに当たってよかったなあ)ホクホク

玄「お茶おいしー」

姫子「凄いなあ、入れ方一つでこんなにかわるんや」

浩子「ほんまにいい塩梅や。白糸台は多芸な人が揃ってるな」

尭深「そ、そんな事ないよ」テレテレ

玄「今度お茶の入れ方教えて。お姉ちゃんにこのお茶飲ませてあげたいんだ」

尭深「うん、いいよ。その代わり、奈良のお茶の事教えて……」

玄「まかせて! これでも実家は旅館だし、お家のお手伝いもしてるからね!」

姫子「何ちゆうか、一芸あるってよかとね。私は麻雀しかできん」

浩子「私もですわ。自分が何もしてこんかったのが原因、言うんが分かってても、やっぱりうらやましくなりますわな」

玄「そ、そんな大した事できないんだけどなあ」テレテレ

浩子「いやいや、料理を人並み以上に出来るんだけとっても凄い事やで」

姫子「そいに、そげんこと言われっちったら、料理んできん私が恥ずかしくなってしまうわ」

玄「はうぅ」

尭深「あんまりからかっちゃダメだよ?」

浩子「あはは、すみません。なんかこう、うちにはおらんタイプでなあ」

姫子「ちょっち弄りたくなるんよね」

玄「も、もー、もー! それより麻雀はしないんですか?」

浩子「無理に始める事はないんちゃう?」

姫子「まずはおしゃべり、そいでおかしや」

尭深「やりたくなったら始めれば良いよね……」

玄「そういうものなのかな?」

浩子(このメンツは、情報解析済み。無理してまで集める必要はないわな)

姫子(重要な部分は部長の集めとる。私はそれを信じてまってればよか。そいに……)

浩子(いくら打筋が割れてる言うても、屈指の火力持ち二人と戦って焼け野原にされて自信喪失なんてごめんやしな)ズズズ


憧「チー……」

煌「おっとそうは問屋が卸しませんよ、ポン」

憧「うぐっ」

泉「はー……相変わらずええタイミングでインターセプトしますね。勉強になります」

煌「おや、去年のインターミドル二位にそう言ってもらえるとは、私もまだまだ捨てたものじゃないわね」

誠子「いや、本当に上手いよ。惜しむらくは防御に偏りすぎてて、攻撃がてんで駄目な所だけど。それさえ克服すれば、大抵の所でスタメンに選ばれるんじゃない?」

煌「まったく、そんなにおだてられるとのぼせてしまいそうですよ」

憧(謙遜してるけど、マジで厄介なのよね。攻撃の出だしが悉く潰されてる。やっぱ名門の先鋒は伊達じゃないし、チャンプと戦った経験も大きい)

泉「亦野先輩も、今日はあんまり鳴かないんですね」

誠子「煌さんがいたら好きにやらせてもらえそうにないし、インハイでは手ひどくやられたからね。じきに最上級生だし、いつまでも同じ事しかできないんじゃ示しがつかない」

泉「はー、新しい打ち方の模索ですか。私も良いところ見せられんかったし、考えんといけませんね」

憧(……そうよね。一辺倒なつもりはないけど、読まれてればどちらも同じ。勝てる打ち方をしなきゃ話しにならないわ)

煌「みんな、新しい自分を探しているんですね、すばらです! 私も負けないようにしなければ!」

憧「よっし」パシン

憧「私も負けてらんないわね」

泉「お、ようやく気合い入ったん? さっきから手が硬かったけど」

憧「ふん、言ってなさいよ。あんたが私より一回り強い、っていうのは分かってるわ。けど、それで「はい負けました」とはなってやれないわね」

泉「当然や。どこでどうなるのか分からんのが麻雀やからな。まずは同学年最強、次に高校最強や」

憧「ずいぶんでかい口叩くじゃない」

泉「でかい口すら叩けん奴に、優勝が狙えるん?」

憧「その通りね。だから私も……まずはあんたよ」

泉「ふふ……もっとちゃらいかと思っとったけど、アツい奴やん。セーラ先輩が気に入るだけあるわ」

煌「あー、お二人とも?」

誠子「青春してる所悪いが、ツモだ」

憧「ブフッ! 満貫だし」

泉「手の進みを感じさせずひっそりと……あかん、完全にしてやられましたわ」

煌「己を高め競い合う、若者らしくて大変すばらです。が……」

誠子「まずは先輩の壁というものを、存分に味わうんだな」

翌日

哩「えー、それではみなさん」

『お疲れ様でしたー!』

哩「やっぱ一泊二日やとあっという間やなあ」

仁美「もう一日くらいあってもよかとかもね」

灼「一泊二日で九州までとんぼ返りって、大丈夫ですか?」

姫子「そん辺は大丈夫。山口に遠征名目でもう一泊するから」

誠子「今度はそちらまで行かせて貰うよ」

煌「ええ、是非来て下さいね。思い切りおもてなしさせてもらいますよ、ふふふ」

穏乃「うぅ……目がちかちかする……」

仁美「一晩中遊んどおからや」

怜「……」スピー

泉「あかん、先輩完全に落ちとりますわ。部長、こっち頼みます。片付けは私らでやっときますんで」

竜華「任しとき。……なあなあフナQ、昨日の私の勇士、聞きたない?」

浩子「はいはい、帰り道でたっぷり聞かせて貰いますよ」

淡「アコ、今回は勝負できなかったけど、次は勝負だからね!」フラフラ

憧「いいけど、とりあえず休みなさいよ。頭が座ってないわよ」

菫「ほら淡、あまり迷惑をかけるな」

淡「迷惑なんて……」スピー

菫「すまんな。こんな奴だが、仲良くしてやってくれ」

憧「い、いえ! そんな、私からお願いしたいくらいですから。他校のハイレベルな選手と戦える機会だって限られてますし……」

菫「そう言ってもらえると助かるよ」

宥「絶対に連絡するからね」

照「初めてのメル友……! うん、私も……菫に打ってもらう」

美子「なしてやー! もしかして、自分で打てんの?」

照「う……難しいのは苦手で。あんまり複雑になるとぜんぜん」

セーラ「まあ気にすんな。俺かて面倒になったらフナQ任せにするからな!」

浩子「お断りします」

玄「尭深ちゃーん!」ヒシッ

尭深「玄ちゃん……」ヒシッ

玄「冬休みにそっちにいくからね!」

尭深「うん、おいしいお茶を用意して待ってる……」

哩「みんな、別れば惜しむんもよかけど、片付けもしっかりせんならんぞ。帰るまでのキャンプや」


電車内

菫「はー……やっと終わったなあ」

誠子「企画から実行まで、本当にめまぐるしく過ぎましたからね。面白かったけど疲れましたよ」

菫「全くだ。それに、うちのわがままなお嬢さんはこの様だしな」

淡「うへへへへ……そう簡単に上がらせないわよー……」スピー

菫「やるだけやって後は放り投げてくるんだから、たまったもんじゃない」

誠子「でも……弘世先輩知ってました? 淡がそういう事する相手って、弘世先輩と、あと宮永先輩だけなんですよ?」

菫「それはつまり、ナメられてるのか?」ムスッ

誠子「と言うよりも、淡の中で安心して甘えられる人が、先輩達なんでしょうね」

菫「甘えられても迷惑だし、甘やかすつもりもない」

誠子「そうですか? 私はどう言ってても、最終的には淡の希望に添うようにしてると思いますけどね。今回のキャンプとか。キャンセルできない訳じゃなかったんでしょ?」

菫「むぅ……」

淡「むへへへ……」スピー

誠子「甘やかすのと厳しくするのと、どっちが賢い選択かは分かりませんが。つい甘やかしちゃうなら、それはそれでいいと思いますよ」

菫「だからそんなつもりはないと言っているだろう……所でお前達は、さっきから黙りこくって何をしてるんだ?」

尭深「メールを待ってます……」

照「早く来ないかな」

菫「あのな、向こうだって今は帰宅途中なんだぞ?そんなにすぐ来るわけが……」

ピロリロ

尭深「来た……!」

照「返信、ええとええと……菫!」

菫「お前……はいはい分かったよ、貸してみろ。なんて打つんだ?」

照「まずは……」

誠子(結局、弘世先輩を頼ってるのは淡だけじゃないって事なんだよね)

照「はやくはやく」

菫「分かってるから急かすな。本当にもう……次からやらんからな!」

誠子「それも何度目の台詞ですかね」

菫「うるさいぞ!」

カン入れ忘れた申し訳ない
一応これで終了です。2日ほどですが、付き合っていただいた方は本当にありがとうございました

ちなみに穏乃と淡はいたずらに成功し、部長ズにしこたま怒られましたとさ

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