P「律子に甘やかされる年末の日々」(269)

P「……なんてごめんだからな!」

律子「はい?」

P「付き合い始めてけっこう経つけど、俺はもっと律子を引っ張って男らしく」

律子「あーはいはい起きたんならさっさと着替えてください。ほら、シャツに袖通す」スッ

P「あ、うん」

律子「はいそこどいて布団上げるのに邪魔です。プロデューサーは鼻が弱いんでしょう?」

律子「もう、髪もボサボサじゃないですか。じっとしててください」サッサッ

律子「トーストはフレンチ? ジャム?」

P「あ……ジャム」

律子「どうせそう言うと思ってたっぷりですよ。はい、あ~」

P「ん」

律子「まったく……プロデューサーは私がいないとダメなんですから」


P「……うん」

P「いや違う! 律子今のだよ……今のこういうのから抜け出したいんだ!」

律子「食べながら話さない!」

P「すっ、すまん」

律子「はい、いい子。食べ終わったらちゃんと顔洗ってくださいね、ヒドい顔ですから」

P「食べたよ」

律子「顔洗う」

P「ん」パシャパシャ

律子「こっち向く。拭きますから目つむって」グシャグシャ

P「うあ~痛いいたい」

律子「文句言わない。歯みがく」

P「わかってるって」

律子「ちゃんと歯磨き粉もつける」

P「う、うん」

P「んー」シャコシャコ ペッ

律子「見せて」

P「にっ」

律子「よくできました。スーツはいつものところにかけてありますから」

P「俺小学生じゃないか……」

P「いや小学生以下だ……ダメダメじゃないか俺……すっかり飼い慣らされてやがる!」

律子「忙しいんだから大声出さない!」

P「申し訳ない」


P(律子と恋人になって一ヶ月……)

P(付き合う前の理想の彼氏像はもろくも崩れ、彼女をリードするなど夢のまた夢……)

P(今や完全に上下関係が)


P「在りし日の初々しい律子はどこへ」

律子「まだウダウダ言ってるんですかうっとうしい」

P「あれ、『忙しい』ってことは……」

律子「今日は少し早めに出なくちゃいけないんです。というか」

律子「昨日言ったのにもう忘れたんですか? 社会人なんですからしっかりしてください」

P「そういえばすでに化粧もばっちりだし……」

P「そこは変わらないよな律子は」

律子「当然です。恋人の前でいつもきれいでいたいと思うのは当たり前でしょう」

P「………」

律子「何赤くなって俯いてるんですか。余計なことに時間取らせないでください」

P(こんなのおかしい……)

P「俺が、とかじゃなくない……? 卑怯じゃない……?」

律子「ブツブツ言われても聞こえませんから」

P「ぐっ」

律子「ファイルはそっちに入れた……会議の資料と手帳は……」セッセ セッセ

P(押されっぱなしじゃないか、こうなったら)

P「律子、忘れ物だぞ」

律子「……はい?」

P「お、おはようのキスだ」

P(どうだ恥ずかしいだろう、この隙に主導権を)

律子「………」

P「……」

P「す、すまん、世迷言だ。忙しいのにこんなこと言って」


ちゅっ


P「え」


律子「これでいいですか?」

P「……」

律子「何か不満でも? ちゃんと唇にしましたけど」

P「い、いやそんな」

律子「本当に顔赤いけど大丈夫でしょうね」ピトッ

P(これって男の俺がやるやつじゃないの? 違うの?)

律子「体調悪いのに隠してたりしたら……真冬の往来にほっぽり出しますからね」

P「そ、それこそ風邪引いちゃうって」

律子「何度でも私に看病されてればいいんです」


P「……うん」

P「いつもありがとな律子……って違う! 違わないけど!」

P「今のだって付き合いたての律子なら――」


律子『はぁ!? おはようのキス!? ふざけたこと言わないでください!』

律子『べ、別に、嫌とかじゃないですけど……///』


P「ぐらいの感じだったろう! いや事実そうだったぞ覚えてる!」

P「勘違いするなよ! あのころの乙女なりっちゃんなら俺だって引けを取らな――」


ちゅううぅーーーっ


P「―――」

律子「うるさい口ですね今日は」

P「……」

P(イケメンすぎかなーって)

律子「昔のことをグチグチ言われるの好きじゃないんですけど」

P「すまん……そういうつもりじゃなくて」

律子「……」

P「もちろん律子は魅力的だ、それは間違いなくそう思ってる」

P「ただ、非常にパーソナルかつ俺個人の問題というか」

律子「はぁ……私もう出ますからね」

P「……うん」

律子「冷蔵庫にプリンが買ってありますから、私がいなくても遠慮せずに食べてくださいね」

P「わかった」

律子「今日着ていくのはいつものコートでいいんですよね? 寒かったら違うの出しますけど」

P「平気だよ」

律子「『筋肉痛が』って言ってたからテーブルの上に湿布と塗り薬置いときましたからね」

P「あ、ありがとう」

律子「……」

律子「背中が痛むんなら貼ってあげますけど」

P「律子急いでるんじゃないのか!?」

P(あ……そういうことか)

P「律子っ」

律子「はぁ、何ですか……まだキスが足りなかったんですか?」

律子「帰ってからにしてくださいよもう……」

P(帰ってからならいいのか!?)

P「そうじゃなくて、やっぱり俺も一緒に行くよ。せっかく起きれたんだし」

P「その、邪魔じゃなければ」


律子「………」サッ サッ


P(めっちゃ髪かき上げてる……喜んでる時の仕草だ)

P(素直じゃないというか……本音をなかなか吐かないところは変わらないな)


・ ・ ・


P「よし! 超速で準備できたぞ」

律子「あーもう! ネクタイ緩んでるし……シャツもしっかり入れる!」

律子「服装の乱れは心の乱れ。子どもでもわかることですよ」

P「うあ、すまん……」

律子「私がやりますからじっとしててください」

P(律子の顔が近い)

P「……」

P「おでこにちゅぅ……」


ギュゥウウウ!!


P「ぐぇえええ!! 律子締めすぎ! ネクタイ締めすぎィイイアアア!!!」

律子「あ……ごめんなさい」

P「俺からはダメなのか!? そっちからはいっぱいちゅっちゅしてくるくせに!」

律子「ちゅっちゅなんてしてません」

P「理不尽だ……」

律子「じっとしててって言ったのに動く方が悪い」



律子「……もう」サスサス

P「大丈夫だよ、ありがとう。苦しくないから」

キュッ

律子「はい、いつものかっこいいプロデューサーの出来上がり」


律子「ほらさっさと行きますよ。一分一秒が惜しいんですから」

P「かっこいい?」

律子「……」

P「俺、カッコイイ? カッコイイかな?」

律子「あ゛?」

P「大変申し訳ないし反省もしている」


律子「ハンカチティッシュ、財布に、携帯は?」

P「オーケー」


P「いってきまーす」

律子「行ってきます」

バタン

律子「はぁ、プロデューサーのせいで少し遅れが出そうです」

P「嘘!?」

律子「まあ嘘なんですけどね」

P「うぁああよかったぁああ~~~……あんまり驚かせないでくれよ」

律子「もし本当だったら、何かしてくれてました?」

P「いやぁもう……マッサージとか、『一日なんでもします券』とか」

律子「……」

律子「嘘って言わなきゃよかったかな……」ボソッ

P「聞こえてるからな」

律子「とにかく大丈夫です。私のスケジューリングは完璧ですから」

P「はは、そりゃそうだ」

律子「あなたとのスキンシップ込みで計算してるに決まってるじゃないですか」

P「………」

律子「顔真っ赤ですけど本当に大丈夫ですか?」

P「もうわざと言ってるだろ!」

P「くそぅ、完全に手玉に取られてるじゃないか俺……」

律子「まぁ、それでも心当たりがあるなら、謝罪は欲しいかな」

P「う……」

律子「何か言うことは?」


P「……あ、朝から変なことを言い出してごめんなさい」


律子「ん、よろしい」ニコッ


P(くそぉ……可愛いっ)

P(でも律子だって何だかんだで俺にかまってきて」

律子「聞こえてますからね」

P(――まだ、俺はめげないぞ)

P「なあ律子、さっき、スキンシップ込みで計算してるって言ってたよな?」

P「手……つないで行かないか?」

律子「……」

律子「人前でそういうことするの、あんまり好きじゃないんですけど」

P「げ、ごめん……」

律子「……」

律子「何やってるんですか? 早くしてください」

P「へ?」

律子「まだ人少ないじゃないですか」

ぎゅっ


P「うわ、律子の手つめたいな」

律子「冷え性ですからね……」

P「ふふ、手が冷たい人は心があった」

律子「ちょっと! プロデューサーの手カサカサじゃないですか、どうしたんですかこれ!」

P「ぇ? いや俺はこういう体質で」

律子「どうして言わないの! あぁもう、何で私も気づかないかな……」チッ!

P「いやこんなんほっとけば」

律子「何言ってるんですか! ひび割れからバイ菌でも入ったら皮膚科通いになるんですからね!」

P「そんな大げさ……なぁああっ!? 律子どこ行くんだ!?」

律子「薬局はどこよ! 保湿クリームっっ!!」ギュゥウッ!

P「遅刻するってぇえええ!」

――事務所・昼休み



P「いいか、もう年末なんだ」

P「この状態のまま年を越すことは精神衛生上あまりよろしくない」

P「一度でもいいから律子より優位に立ってみたいんだ」


P「というわけで、君たちに力を貸してほしい」


千早「何が『というわけ』なんですか……」

春香「ううぅ、普通に休憩したかったのにぃ……」

春香「またノロケを聞かせられるなんて」

P「のっ、ノロけてるつもりはなく! 要は相談だよ相談!」

千早「物は言い様ですね」

P「最近、恥ずかしがる律子を見れてない気がするんだ……俺もリードされて情けないままだし」

千早「すべすべ……どこのクリームなのかしら」サワサワ

P「結局あのあとも手をつないだまま連れ回されて」

春香「うぅ、いらない情報」

P「だからお訊ねしたい。女の子を『きゃん』と恥ずかしがらせる方法を」

春香「そんなこと気にする必要ないと思うんだけどなぁ」

P「まあ、ちっぽけな男のプライドだよ」

P「だいたい律子は俺を甘やかしすぎなんだよな。いや、間違いなく俺も悪いんだけど」

千早「男心……というやつですか」

春香「お? 千早ちゃんむずかしい言葉知ってるね~?」ツンッ

千早「きゃっ/// もう……からかわないでよ春香」

春香「でもその前に私の女心を感じ取ってほしいかな~、なんて!」

千早「そんなの……もう十分伝わってるわ……」

春香「千早ちゃん……」

千早「春香……」


いちゃいちゃ


P「おじさん君たちも大概だと思ってるんだよ」

P「うーむ、倦怠期、とはまた違うけど……そういう感じなのかな」

春香「そんなわけないですよ!」

千早「付き合いたては新鮮だったことが、今は普通になってるってことですか?」

P「なんとなく予想はしてたんだ、律子そういうタイプだと思うし」

春香「タイプって……?」

P「人間関係の把握とか、適応力、構築力に秀でた女性だろ?」

P「アイドルだった頃も、問答無用で輝くというより、自分の身をどう置けばどう影響が出るか」

P「最適解の算出法を知ってるって感じだった」

P「今はその能力を活かして違う職に就いてるけど」

春香「そこまで見抜いてるプロデューサーさんもすごいと思いますけど……」

千早「つまり律子はもう、恋人であるプロデューサーに適応して、関係を構築し終えた……」

P「その結果があの上下関係なのだ」

春香「なぜ誇らしげに!」

千早「上下関係というより……親子?」

春香「扶養者・被扶養者?」

千早「端的に言うと」

春香「プロデューサーさん、なんだかヒモみたいですね!」


「なんだかヒモみたいですね」

「ヒモみたいですね」

「ヒモミタイデスネ…」


P「こころってくだけるんだなあ」


春香「わぁああごめんなさいごめんなさい! 言い過ぎました!」

千早「私はそういう機微に疎いのでわかりませんが、ストレートに好意を伝えるのはどうかと」

P「ああ、俺もそう思って、やってみたことがある」


P『律子! 好きだ!』

律子『はいはい、私もですよ』

P『ぐ……その、「私も」って?』

律子『はい?』

P『「私も」……何なんだ?』

律子『はい、きれいになりました。次は反対側の耳です』

P『あ、うん』クルリ

律子『まったく……こんなに溜まる前に言ってくださいね』カリカリ


P「そう言ってはぐらかされた」

春香「何で耳かき中に告白してるんですか!」

春香「やっぱり甘やかされてるじゃないですか! このヒモ! ヒモプロデューサー!!」

千早「春香落ち着いて!」

P「お、俺もそう思って、再チャレンジしてみたんだ」


P『律子……付き合ってくれ!』

律子『もう付き合ってるじゃないですか』

P『じゃあ、別れてから、また付き合う……とか』

律子『フザけてるんですか?』

P『……ごめん』

律子『それと……次に冗談でも「別れる」とか口にしたら……』ゴゴゴゴゴ

P『わ、悪かった! 本当に!』

律子『……』

律子『心臓止まるかと思ったじゃないですか……』ボソッ


春香「やっぱりノロケじゃないですか! やだぁああああ!!」

千早「春香!!」

春香「というかプロデューサーさん、律子さんに甘やかされるの嫌いじゃないんじゃ」

P「……」
 
春香「うわぁ……」

P「り、律子を出し抜きたいってのは本当だ!」

千早「そういえばその律子は……」

P「ああ、戻ってきてないな。竜宮の大晦日ライブの準備が大詰めだろうし」

春香「忙しいですよね、私たちも他人事じゃないですけど」


ガチャッ!!


律子「………」


春香「あれ? 噂をすれば律子さんじゃないですかっ?」

P「いやでも、なんか……」

春香「あれ……? めちゃくちゃ怒ってる……?」


律子「………」ツカツカツカ


春香「ひぃいい、青筋立ってるよ!?」

千早「現場で亜美あたりが何かやらかしたのかしら……」


ツカツカツカツカ

バンッ!!


春香「ひっ!!」

律子「プロデューサー?」ギロリ

P「へっ!? はいぃ!!」

ID変わっとる

律子「もうお昼は食べたんですか……?」

P「いや、それは、まだで……え?」

律子「はぁあああ……」


律子「まったく……つくづく自分に腹が立ちます……何で忘れるかなぁもうっ……」ゴソゴソ

律子「はい、これ」スッ

P「これって……」


P「……お弁当?」


春香「………」

千早「………」

律子「最近、プロデューサー殿はお昼ごはんを抜かれているそうで」

P「げっ! いつ気づいた……?」

律子「昨日ですけど。何ですか? もっと前からなんですか?」

P「……」

律子「はぁ……ダイエットだかなんだか知りませんが」

律子「この私の目が黒いうちは、不健康な生活なんて許しませんからね」

律子「昨日の晩御飯を多めに作って入れた、あり合わせのものですけど」

律子「よかったら……食べてみてください」

P「あ、ありがとう……」

律子「それでは」クルッ

P「え? それだけ……!?」

律子「何ですかもう。プロデューサーもご存知ですよね、こっちはライブモードで」

P「これを渡し忘れたから? それだけのために現場を抜けてきてくれたのか……!?」


律子「そうですけど?」


P「………」

春香「……」

千早「……」


律子「プロデューサー、今何時ですか?」

P「え、あ……12時57分……」

律子「ふぅん……まあ、あと三分は、一応休み時間なのか……」ブツブツ

P「り、律子?」

律子「プロデューサーのおっしゃる通り、確かにこれだけで帰るのはもったいないですね」

P「うん……うん?」

律子「というわけでこっちに来てもらえますか」グイッ

P「おわっ、ちょっ、律子!? なんで!? そっち給湯室……」


春香「………」


「え、え……? 嘘だよな? りつっ、近い! なんだか近いぞ!?」


千早「………」


「どうしたっ、何で俺の頬をはさんでっ、どうしっえっウソっ、ウソだろ!?」

「やめろ律子考え直せ!! そんなまさかここで――」


      ちゅぅうううう~~~~っ


春香・千早「「………」」

ちゅっ

   ちゅっ

       ちゅぅううう~~~~っ


春香「……音」

千早「大きいわね……」


「んぅううっ、ぷはぁっ! 律子ダメだって、アイツらがいるだろ! バレるだろ!!」

「こんなのどう考えてもオカ――」


    ちゅぅうううう~~~~っ ちゅっ ちゅっ ちゅぅう~~~っ

春香「……あ」

千早「戻ってきたわね……」


P「………」

律子「……ふぅ、お茶が美味しかったわ」

P「………」

春香「プロデューサーさん……」

P「よせ。何も言うな。お前たちは何かを感じ取ったかもしれないが、何もなかった」

春香「口紅ついてますよ」

P「えっ!? ウソどこだ!?」

春香「ウソですけど」

P「………」


律子「こういうの、けっこうバカにしてたはずなのに……」

律子「やっぱりいいものね……」ボソッ


千早「………」

春香「り、律子さん、ラブラブですね……」

千早「春香!?」


律子「あら? 何がかしら?」


春香「え゛」

P(春香! 春香!)ヒソヒソ

春香(プロデューサーさん……律子さんってもしかして)

P(ああ。バレてないって思ってるんだ、俺たちの関係)

春香(うわぁ……)

P(俺は『もうバレバレだ』って何度も言ったんだ! でも『バレてない』って聞かなくて!)


律子「ちょっとプロデューサー? 何ヒソヒソ話しこんでるんですか?」ソワソワ

P「いいいいやっ、なんでもない、何でもないとも! はは……」

律子「……」

P「そ、そうだ律子、大晦日のライブ終わった後さ、ちょっとだけ付き合って……」

律子「私語禁止」

P「へ?」

律子「もう過ぎてますから。休憩時間」

P(切り替え早い!)

律子「それと……そういう会話は控えてくださいって言ったでしょう、あの子たちの前では」ヒソヒソ

春香(自分はキスしてたのに……)

千早(休み時間だからってキスしていいわけでは……)

律子「ん゛?」ギロッ

はるちは「「な、なんでもないです!!」」

律子「じゃあ私、今度こそ行きますから」

P「律子……」

律子「大丈夫です、頑張れます」

律子「プロデューサー分はもう補給しましたので」

P「………」

律子「また赤くなる」

P「だって律子がっ……違う、今はそうじゃなくて」

P「ライブ……頑張ってな。応援してるから」

律子「……」

律子「………」サッ サッ

P(めっちゃ髪かき上げてる)


春香「あれでバレてないって思ってるんだもんなぁ……」

千早「幸せよね……そっとしておきましょ……」

すまん眠たい
残ってたら続き書かせてくれ

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 30分以内
04:00-09:00 50分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 20分以内
02:00-04:00 35分以内
04:00-09:00 60分以内
09:00-16:00 35分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内

保守ありがとう
あと半分くらいなのでお付き合いください

・ ・ ・



P「ほら、ワンツーワンツー! 春香、ステップ遅れてるぞ!」

春香「はっ、はっ」

P「千早! 春香を気にしすぎてるのがわかる! パートナーを信頼しろ!」

千早「はいっ……すみません!」

P「春香、今度は出足が早い! 体幹がねじれてるからそうなる!」

P「手足の先まで神経の枝を通すイメージだ、そして体は幹! どの部位も休ませるな!」

春香「は、はいっ!」


バンッ!!


「ぷ、プロデューサーさんっっ!」

P「え……?」

春香「小鳥さん!?」

小鳥「あぁ、よかった、いてくれた……大変なんですっ、律子さんが、竜宮の子たちが!!」

千早「律子が……!?」

P「とにかく、落ち着いてください音無さん。焦る必要ありません、俺はここにいます」

P「文章じゃなくていいですから、一言ずつゆっくり」

小鳥「は、はい……」


・・・


小鳥「それで、どうしましょう……電話をくれた亜美ちゃんの様子だと状況はあんまり……」

P「春香、千早」

春香「ふふっ、なんですか?」

P「すまない、自主練頼めるか」

春香「もちろんです!」

千早「ええ。プロデューサーは何も気にしないでください」

小鳥「それじゃあ……」

P「俺が行きます。行っても役に立てるかわかりませんが」

小鳥「そんなことないですよ! プロデューサーさんなら百人力です、あぁよかった!」

P「はは、大げさな……あの、結果としてはよかったんですけど」

P「俺に知らせてくれたのは……」

小鳥「え? だって恋人なんですよね?」

P「」

小鳥「冗談ですよぅ、トラブル時はプロデューサーや私、社長を仰ぐのがセオリーですから」

P「そ、そうですよね!」

小鳥「あっ、事態は一刻を争いますよっ、私からもお願いします!」


P「じゃあ行ってきます!」


春香「行ってらっしゃい! プロデューサーさん!」

・ ・ ・



ガヤガヤ…

  ガヤガヤ…


「あれって竜宮小町じゃね?」   「うそ? なんでこんなとこいんの?」

  「な、生いおりんだ……」 「亜美ちゃん、あずささんもいる!」 「すげえ!」



P「ちょっ、通してくださーい! すみません通して!!」グイグイ

P「はぁはぁ、やっと出れた……」


亜美「あっ、兄ちゃんこっちこっち!」ヒソヒソ

P「……それで、どういう経緯で?」

亜美「経緯もケーキもないよー! ウチらが移動中に、ほんの一瞬目を離したら」

あずさ「伊織ちゃんと、通行人の方が~……」


伊織「もう一度言ってみなさいよ!! 誰が親の七光りですって!? ねぇっ!」

男「うるせえな……どうせ水瀬のコネで竜宮やってんだろっつー話だよ」

伊織「ほかの悪口はどうでもいいけど一番それが腹立つのよっ……!!」

律子「伊織やめなさい! ここで喧嘩しても意味ないでしょう、謝るの!」


P「あちゃー……」

あずさ「律子さんが必死で止めてて……あの、でも事務所にも知らせたほうがって」

P「ありがとうございます。でも、なんだか伊織らしくないような」

亜美「練習が上手くいってなかった時にこれだから、事故みたいなもんなんだよー!」

亜美「ねぇねぇ兄ちゃん、いおりんを怒らないであげて、ね?」

あずさ「亜美ちゃん……」

亜美「はっ! 今はそれより事態のローソクだよ! どこにブン屋がいるかわからねえ!」

P「……よし、やるしかないか」

P「亜美とあずささんは周りの野次馬を。撮影だとかなんとか言って」

あずさ「わ、わかりました!」


男「キンキンうるさい小娘だな……これがアイドルだってんだから困る……」

伊織「正々堂々言いなさいよ! 受けて立つわっ、ねじ伏せてあげるんだから!」

律子「ねじ伏せてどうするの!! あのっ、申し訳ありませんっ、ほら伊織も!」

伊織「どうして私が謝らないといけないわけ!?」


P「まぁまぁまぁまぁ!!」グイッ!

伊織「ふぇっ……って!」

律子「プロデュー……もごっ!?」


男「おい何だ、誰だテメエは」

P(酒臭い……酔ってるのか?)

P「いえいえ、私はただのしがないいおりん……いや、竜宮小町のファンでして!」

男「ハン! 竜宮の足ひっぱってるのはコイツだって評価だがな!」

伊織「だぁれが足をひっぱ……もごっ!?」

P「まぁまぁまぁ!! いやこれも貴重な機会、こちらで議論を深めようではありませんか!」グイグイ

男「おわテメっ、何すっ、聞いてんのか!?」

P「フフフ、貴殿がどのレベルのファンかは存じませぬが、私は重度の竜宮小町マニア」

男「だから俺はちげえっつってんだよ! 離せっ、人の話を聞け!」


律子「プロデューサー……?」


P「これをご覧あれ……前回のライブの物販限定、秘蔵ブロマイド……!」

男「はぁ!?」

P「フフ、これなどは特に逸品、控え室のナチュラルいおりん、こちらはレッスン後の――」

男「っ」

P「おやぁ? おやおや? ムフっ、今『可愛い』と……そう思われましたな?」

男「お、思ってねえよ!」

P「いやいや私の目はごまかせませぬぞ! 何故なら私は重度の竜宮小町マニア!」

P「さぁ語り合いましょう! 貴殿のおすすめはどれですかな? 私はこの写真の表情も……」

男「こ、これ……」

P「む?」

男「だからこれだよっ」

P「フフ、ほうほう、この写真ですか……」

P「いやはやお目が高い! これもよいですな、キューティとビューティが同居している!」

P「さすがわかっておられる! うれしいなあ、ぜひライブで一緒に熱を分かち合いたい!」 

男「ライブには……行けねえよ」

P「おや?」

男「落ちたんだ、抽選で」

P「……」

P「そうでしたか。それは、とても残念だ」

P「うん、俺も何よりまずアイドルのファンだから、わかるよその気持ち」

P「応援してるアイドルのライブに行けないのは辛いよな」

男「っ、さっきからうるせえなテメエ! 知った風な口聞いてんじゃ」

P「君が選んだこの写真、あずささんも写ってるけど」

P「もしかしてあずささんのファンでもあるのか?」

男「――!」

P「あずささんなんかより伊織だ、なんて意見をどっかで目にしたのか?」

P「どうしてあんな『ワカってない連中』がライブに行けて……って、不満なのか?」

男「……」

P「そんな優劣つけたがる低レベルな連中相手にするなよ、それで八つ当たりじゃ一緒じゃないか」

男「……それは」

P「よぅし、君にはこのブロマイドをやろう。君が気に入ってくれたやつだ」

男「い、いいのかよ……?」

P「俺たちは仲間だ。竜宮好きに悪い奴なんかいないよ」

P「今度のライブは、そこのプロデューサーさんが完璧にする。下衆な連中も黙らせてくれるさ」

P「だから……な? ここで引き下がればまだ紳士だぜ?」

P「あずささんも悲しまなくて済む」

男「ぅ……あずささん」


男「いおりん、亜美ちゃん……竜宮のみんなっ、すまねええぇっ!!」

男「俺っ、オレは悲しかったんだぁああ! ライブにも行けなくてっ、ファン失格の奴も見て!」

P「そんな鬱憤、今ここで俺と一緒に晴らしちまえばいいさ!」

P「…」チラッ

律子「――!」

律子「伊織、亜美、あずささんっ! このスキに脱出するわよ!!」

亜美「ガッテン!」 あずさ「わかりました!」 伊織「……わ、わかったわ」


P「よぉし! 今の俺は同志を見つけて気分がいい!」

P「この残りのブロマイドもお前たちにやろうじゃないか! 欲しい奴はこっちだ!!」


 「う……うぉおおおおおおお!!」「いおりん! いおりんのは!?」
「亜美ちゃーん!」  「おいアッチ、本物行っちゃうけど!?」
         「写真ならそばにいられるだろがぁ!!」 
「ジャマだっ、俺が手にするんだ!」
    「あずささんの天使の笑み!」  「いおりぃいん!」
           「こっちだー! こっちにくれっ、重度の竜宮小町マニアー!」

・ ・ ・



小鳥「プロデューサーさぁ~んっ」タッタッタッ

P「! 小鳥さん」

小鳥「私にもできることがないかと思いましてっ」

小鳥「騒ぎについて、周辺への手回しは済ませておきましたから」

P(この人も時々反則的だよな……)

小鳥「プロデューサーさんの方は無事でしたか?」

P「はい、おかげさまで」

小鳥「今度一緒に飲みません? いろいろとお話したいことがありますし……律子さん」ボソッ

P「うぐっ」

P「……あの、一つだけ頼みたいことがあるんですけど」

小鳥「何でしょう?」


P「今度の竜宮ライブの物販……ネット販売とか充実させてもらえないかなって……」

――大晦日



『みなさ~~~ん! 今日は来てくれてどうもありがとうございました~!』

『亜美たちの美声に酔いしれたかーいっ!?』

『来年も竜宮は止まらないわよ! スーパーアイドルから目を離したら……』


『『『しょうちしないんだからねっ!!』』』


ワァアアアアア……


・ ・ ・


律子「……ふぅ」

P「律子、お疲れ様」

律子「ぷっ、プロデューサー!? 来てくれてたんですか!?」

P「はは、そりゃ当たり前だ」

P「応援してるアイドルのライブに行けないのは辛いからな」

律子「あ……」

P「もちろん律子の応援も……律子?」


律子「その……すみませんでした。そして、ありがとうございました」

律子「プロデューサーはやっぱり、さすがです」

P「その話か……」

律子「あのあと伊織にはキツく言っておきましたから」

P「そ、そう? でもまあこれから気をつければ」

律子「あなたが何故ブロマイドを持ち歩いていたのかも私はとがめません」

P「そ、そう!?」

律子「何より私……自分が情けないんです」

P「……」

すまんID変わってる

律子「プロデューサーは、私の適応力とか、洞察力を褒めるかもしれないけど」

律子「違うんですよ」

律子「私はただ、性格が悪いだけなんです」

P「律子……」

律子「相手のことを把握して、掌握しないと不安でしょうがなくて」

律子「無意識のうちに支配下に置きたいと思ってるんです」

律子「だからああいう未知の存在が、怖くて」

P「……」

P(前例のない、突発的な事態には弱く)

P(腰を据えた分析は右に出る者なし……律子はそういうタイプだ)

律子「あなたに対してもそう……」

律子「どこかであなたに対して、掌握して、優位に立とうとしてる自分がいる」

律子「そんな私に、嫌気が差したのかなって……」

P「え……」

P(律子も、悩んでたのか?)

P(俺と同じように?)

P「っ、律子」

律子「でも、そういう自分を一番理解しているのは自分自身です」

律子「欠点は欠点として受け止めて。悩んでくよくよしているつもりはありません」

律子「苦手だから逃げてるんじゃ一生そのままですしね」

律子「止まるつもりもありません。だって、この仕事が楽しくてしょうがないから」

P「うん……」

律子「彼女たちの魅力をどうやれば引き出せるか、考えて、成功したときの喜びは格別です」

律子「……えぇと、話が逸れちゃいましたね」

律子「つまりその、プロデューサー」

P「うん?」

律子「私は、あなたのことを愛しています」

P「は、はいっ!?」

律子「好きです。だいすき。死ぬほど好き」

律子「そして、誰よりもあなたことを尊敬しています」

律子「この気持ちは誰にも負けない」

律子「欠点も克服して、強さに変えてやります」

律子「あなたに見損なわれないように」

P「……」

律子「だからプロデューサーも……変なことで悩まないでくださいね」

律子「私をリードしようとか、男らしくとか考えて、無理をしないで」

律子「いつだってあなたは……私の目標なんですから」

P「………」

P「ありがとう。あと、ごめんな」

P「俺も律子を無意識のうちに傷つけてた。律子がそんな風に思ってくれてたなんて……」

P「……」

律子「泣いてるんですか?」

P「な、泣いてない!」

律子「ふふっ……よしよし」ナデナデ

P「くそ、そっちがその気なら……年を越すまでにはって思ってたし」

律子「?」

P「律子、これ」


P「指輪だ」

律子「―――っ!」

P「いやあの、今すぐにってわけじゃないんだ」

P「いつか二人とも落ち着いて、余裕ができて、よし今だって思えるようになったら」


P「俺と……結婚してくれないか?」


律子「……もしかして」

律子「最近お昼ご飯を抜いてたのって……」

P「まあ……」

律子「そんなことでもらった指輪で、私が喜ぶと思ってるんですか……」


律子「わたしがよろこぶと、思ってるんですかっ……ぐすっ」


律子「うううぅっ、うええっ、ぐすっ、ぷろでゅーさぁあっ……!!」

ぎゅっ


P「大丈夫だ。ほとんど俺の貯金からだから」

P「いつかこういう時のためにって、コツコツためておいたお金だ」

律子「ううっ、プロデューサー、ぷろでゅーさぁあ」

P「俺、律子がいないと駄目みたいだ」

P「こんなダメ男に尽くしてくれる律子が、目標に向かってひた走る律子が好きだ」

P「律子しか考えられないんだ」

律子「……」

P「俺も見捨てられないように頑張るから……だから……?」


律子「もう、言葉はいいですから」

P「言葉はいいって……」

P「こういうことか?」


律子「ん、よろしい」ニコッ

P「はは、やっぱり律子は律子だな」

律子「プロデューサーだって、プロデューサーです……」

P「……律子、好きだ」

律子「私も、愛してます」


「ん……」

「――にっしっし!!」


律子「!!??」バッ!

P「あ」


亜美「いやぁ~~~こんれまぁ、いいもの見させていただきやしたでぇホンマに!」

伊織「見ててこっちが恥ずかしくなるくらいのね……」

あずさ「ご結婚おめでとうございます~、あと、あけましておめでとうございます~」

律子「みみみっ、みんなっ、いつから!?」

亜美「『プロデューサぁん、私を抱いてぇん』から」

律子「言ってないわよそんなこと!」

伊織「『私はただ性格が悪いだけ』ってとこから」

律子「ほぼ全部じゃないのよおっ!!」

P「『あけましておめでとう』って……そうか、いつの間にか年明けてたのか」

律子「ちょっとプロデューサー!! もっと動揺していいはずです!」
 
P「いや、俺は途中から気づいてて。あっちに春香と千早も」

律子「へ?」


春香「律子さん……諦めたほうがいいですよ、こういう人ですから」

千早「ねえ、これってもしかしてプロデューサー……」


律子「気づいてて……あんな台詞をぺらぺらと?」

P「……まあ」

律子「し、しししっ、しんじられないっ、ばかぁっ!!」カァアアア

P「!! や、やった……やったぞ! お前たち今見たか!?」

P「小鳥さん録画してましたか!?」

小鳥「ばっちりです! 結婚式のムービーはお任せくださいっ」


P「俺はついに……律子を恥ずかしがらせることができたぞぉおお!!」

P「いやぁ苦節一ヶ月弱、長いようで、うん、やっぱり短かったな」

P「でもこの喜びは……」


律子「………」


P「よろこびは」


春香「………」

千早「………」


P「ごめんなさい」

律子「プロデューサぁあ……」

P「ヒッ、り、律子待て……あれ、最近こういうシチュエーションあったけど、あれは天国で」

律子「こっちは地獄ですねぇ……」

P「ひぃいいい!!」

律子「今年もヨロシクオネガイシマス……ネェエエッ!!!」ギュウウウウッ!!

P「ぎゃぁあああネクタイっ、首しまるぅううう!!」


ギャーギャー! 


亜美「ねーねーはるるんっ、このあとほかのみんなも誘って、一緒に初詣行かない?」

春香「わあっ、私も同じこと考えてた! 千早ちゃんもいこっ?」

千早「ええ……行きましょうか」

あずさ「うふふっ、今年も良い年になりそうだわ~」

伊織「どうかしらね……騒がしいだけじゃないの?」

小鳥「素直じゃないのねぇ、お神酒でべろんべろんに酔わせて、ぐへへ」

伊織「なっ! ちかよるな変態っ!」


律子「………」サスサス

P「律子、大丈夫だよ、ありがとう……」

P「今年もよろしくな」

律子「……今年だけじゃなくて、ずっと」

P「ああ、ずっと。こうしてそばにいてほしい」

P「……たまには甘やかしてくれてもいいぞ?」

律子「ふふっ、まったく」


「……私がいないとダメなんですから」


                            
                                
                                        おしまい

読んでくださった方、支援、保守、ありがとうございました
イケメン律子流行れ

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