【劇場版】進行選択ゲーム×仮面ライダー鎧武 The Dilapidated World (217)

このスレは「【安価】進行選択ゲーム×仮面ライダー鎧武【オリジナル世界観】」というスレの番外編の様なものです。

長いので、二日に分けて発表したいと思います。
一日目の本日は「プロローグ : 壊れた世界」から「第五章 : 歪んだ世界」まで投下する予定です。


このスレを読んで頂くにあたって

1.このスレだけでも話が分かりますが、先に書いた本スレの方をお読み頂くと、更に分かりやすいと思います。

2.このストーリーは、本編のChapter.4とChapter.5の間に挟まるお話しです。

3.皆様にご投稿頂いたオリジナルライダーが死ぬ場合がございますが、展開上仕方のない場合もありますので、あまり文句を言わないで下さい。

4.完成度が低いからと、あまり文句を言わないで下さい。

5.10分程の間隔を空けて投下していこうと思います。


それでは、本編開始です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389694788

- プロローグ : 壊れた世界 -


優「こんなのどう考えたっておかしいよ!!」

バンッとテーブルを叩きながら、五城 優は叫んだ。

カイト「…『裏』に関わってるなら、別に普通じゃないのか?」

優「それでもメールくらい返すでしょ!」

九門 カイトの意見も、気が立っている優に一蹴されてしまう。

誠二「確かに妙だな。ルナだけならまだしも、聖夜 留奈も一緒だからな…」

鷹磐 誠二も腕を組んで考えこんでいた。

優「聖夜さんはメール返さなくて当たり前かも知れないけど、ルナが私に連絡入れないなんてありえないよ。」

カイト「その自信はどこからくるんだ?」

優「だって私、ルナの彼女だし。」

当たり前でしょ、という感じで優は言った。

カイト「浮気という線はないのかと聞いたんだ。」

優「ルナがそんな事するわけないじゃん!!」

誠二「ルナは絶対にそんな事はしないさ。」

カイトの疑問は、またも根拠のない形で否定されてしまう。
それだけ、聖夜 ルナが信頼されているという事だろう。

誠二「お前も分かってて言ってるだろ?ルナがそんな事しないって事ぐらい、少し一緒にいただけのお前にだって分かるはずだ。」

カイト「…確証がないからな。」

かく言うカイトも、ルナが浮気などするわけがないということは分かっている。

誠二「とにかく、一旦落ち着いて状況を整理しよう。」

誠二は鞄から、レポート用紙とシャープペンシルを取り出した。

誠二「ルナと聖夜 留奈が消えたのが五日前の事。俺達が直接見ていないのは、放課後に入ってからだ。」

カイト「いや、最後に見たのは放課後、ここから二人が出て行ってからだ。」

優「え、見てたの!?どうして追いかけなかったのさ!」

カイト「誰がこんな事になると予想出来るか。」

優「…」

誠二「まぁ落ち着け。とにかく、俺達が直接二人を最後に見たのがここ、『DrupeRs』。目撃証言から、その後二人は、『ユグドラシルの工場』の敷地内でバイクを走らせていた。」

優「それはおかしいよ。ルナはバイクの免許持ってないよ。」

カイト「だから『ユグドラシルの私有地』の中で走らせていたのさ。私有地で走らせる分には、免許は必要ないからな。」

誠二「それ以降の情報はパッタリ。沢芽市から外に出た記録もない。」

カイト「失踪か…」

優「…!まさか、志村に!?」

志村 菱一というのは、少し前に沢芽市で起きた連続失踪事件の犯人だ。
現在は消息を絶っている。

誠二「それでも、少しも情報が入らないのはおかしい。志村 菱一が出て来たとすれば、必ずと言っていいほど目撃情報が入るからな。」

優「レナさんも警察に捜索願を出したって言ってた。でもまだ見つかってないって…」

聖夜 レナはルナの姉である。
彼女は以前、志村のターゲットにされており、ルナに助けられている。

カイト「手詰まりか…」

誠二「探るにしても、情報が少な過ぎる…」

優「…なら、集めればいいよ。」

優は立ち上がった。

優「ここにいたって何も変わらない。もっと情報を集めよう!」

カイト「集めるにしても、一体どこを当たるんだ?」

優「それは…」

優は黙ってしまった。
確かに情報を集めるにしても、もう何処の誰が何を知っているのか、全く見当がつかない。

誠二「…いや、まだ一箇所あるだろ。何か知ってそうな奴が。」

カイト「…!」

優「え!?誰!?どこの誰!?」

優は興奮したように尋ねた。

誠二「D.C.の研究室だ。」

カイト「やはりあいつらのところか。」

優「D.C.って、上春くんの事?」

誠二「確か、桃ノ木商店街裏の廃屋で色々調べてただろう。もしかしたら、何かしらの情報を掴んでるかも知れない。」

優「よし、そうと決まればすぐ行こう!」

カイト「…いや、三手に分かれるべきだ。」

今にも飛び出さんばかりの優を、カイトが制する。

カイト「五城はあいつのところに行け。俺はもう一度、ユグドラシルの工場を調べる。」

誠二「なら俺は、裏の人間をもう少し当たってみるか。なんか情報入ったら、メールじゃなくて電話で報告だな。」

優「決定だね。じゃあ、解散!」

優はそう宣言すると、店を勢い良く出て行った。

カイト「…あいつ、会計忘れてるぞ。」

誠二「奢ってやれよ。」

カイト「…」

カイトは溜息をついた。

カイト「聖夜が帰ってくるまでの間、立て替えてやる。」

カイトはそう言うと、カウンターに向かう。
なんだかんだ言って、結構優しい性格をしているのだ。

誠二「さてと、ここまで苦労してるんだ。ひょっこり帰ってきたら、ルナの顔面殴ってやる。」

この三人、普段はあまり接点がない。
聖夜 ルナが消えたというこの状況においてのみ、お互いの目的が一致したに過ぎないのだ。

一人は恋人として。
一人は友人として。
一人は仲間として。

全ての事の発端は、五日前の放課後。
聖夜 ルナが消息を絶った事に起因している。

- 幕間 その1 -


裕司「状況はどうだ?」

ユグドラシルの重役である二月 裕司は聞いた。

了「二日前のアレを最後に、あのエネルギーは感知されていません。実験は成功したと言って良いでしょう。」

裕司の腹心で「ユグドラシルの3バカ」の一人、佐野 了が簡潔に報告する。

裕司「そうか。」

裕司は満足そうに呟いた。

秀「でも彼らの仲間も動き出してると思いますよ。どう対処しますか?」

裕司「しなくていいさ。」

裕司の腹心で「ユグドラシルの3バカ」の中心、三木 秀の質問を彼は一蹴した。

裕司「こちらに来たら、それ相応の対処をすればいい。」

秀「それが、思ったよりも大人数なんですよ。」

裕司「いくらだ?」

秀「今は二人ですが、もう一人、とても優秀なインベス使いがいます。一度に三体のインベスを操りながら、自分も戦闘に参加できる程の。」

胡桃「それに多分、失踪中のデザインチャイルドのも加わるでしょう。そうすれば、一気に三人と三体を相手することになります。」

裕司の腹心で「ユグドラシルの3バカ」の紅一点、芦原 胡桃が補足した。

裕司「…なるほど。確かに面倒臭いかも知れないな。」

裕司は話を終えると、三人に指示した。

裕司「今のうちに潰しておく事にしよう。準備しろ。」

了「はい。」
秀「はいさー。」
胡桃「はいはいさー。」

裕司「…次に下らない洒落を言ったら、貴様ら二人を沢芽市から永久に追放するぞ。」

- 第一章 : 滅びた世界 -


私立彗海学校高等部。
広大な敷地を誇るその学校は、学力においても沢芽市の高校の五本指に入ると言われる。
巨大企業「ユグドラシル」からの資金援助もあるという、極めて珍しい学校だ。

ある昼休みの事。
いつも通り、恋人である優と昼食をとっていたルナの元に、一人の生徒が来た。

留奈「ルナ、放課後『DrupeRs』に行くぞ。帰りのHRが終わったら、私の席に来い。」

ルナ「え…別にいいけど。」

聖夜 留奈。
ルナと同じ名前を持つ少女。
本当は彗海高校の生徒ではなく、姉妹校である私立天樹高等学校の生徒なのだが、彼女は今「交換生」としてこの学校に通っている。

留奈「絶対に来い。分かったな。」

優「ちょっと待って、聖夜さん。」

留奈が席を離れようとしたところで、優が留奈に声を掛けた。

この二人、ルナに関してのみ馬が合わない。
理由は明白で、ルナと留奈の距離が近いからだ。
と言うよりも、留奈の方が一方的に近い。
その事が、ルナの恋人である優にとっては嫉妬の対象であり、同時に心配事でもあるのだ。

優「いくらなんでも、用件も言わずに呼び出すのはちょっとおかしいと思うんだ。」

留奈「安心しろ。五城には関係のない話だ。言わば『私とルナの、二人だけの秘密』だ。」

優「なっ…!」

優の顔が引きつる。

ルナ「なんで留奈は一々そういう言い方するんだよ…」

ルナにしてみれば、この二人の喧嘩ほど面倒な事はない。

優「…前から思ってたんだけどさ、ルナ。いつの間に聖夜さんの事、名前で呼んでるの?」

ルナ「いや、それは…」

留奈「私とルナは苗字が同じだ。なら、必然的に名前で呼ぶ事になるだろう。」

ルナが説明しようとした瞬間、留奈が口を挟んだ。

優「名前だってどっちも同じじゃん!」

留奈「何を言っているんだ?ルナはカタカナでルナ、私は漢字で留奈だろう。」

優「口で言う分には同じでしょ!だったら、別に聖夜って呼んでもいいじゃん。」

ルナ「それは…」

優「ルナは黙ってて!」
留奈「ルナ、お前は口を挟むな。」

ルナ「なんでだよ…」

ルナは当事者であるはずなのに、発言の権利を取り上げられてしまった。

留奈「私とルナの間だぞ?苗字で呼ぶなんて水臭い事この上ないだろう。」

優「この上あるから。そもそも聖夜さんとルナって、そんな特別な関係じゃないでしょ。」

私は恋人だけど、という意味を言外に含ませる優。

留奈「今はまだ、な。」

優「は?」

留奈「私とルナの未来がどうなるのか。それは五城には分からない。」

優「何それ?聖夜さんになら分かるって言うの?」

留奈「もちろんだ。私とルナの間に隠し事などない。」

ルナ「いや結構あるぞ。」

留奈「口を挟むなと言ったはずだが?」

尚も口論が続きそうな勢い。
その時、タイミングを見計らったかの様にチャイムが鳴った。

優「聖夜さん、この続きは昼休みにね。」

留奈「望むところだ。」

ルナ「やっぱり、まだ続くのか…」

勘弁してくれ、とルナは心の中で呟いた。


放課後、ルナと留奈はDrupeRsに向かっていた。
もちろんルナも、目的も聞かずについて行きはしないが。

ルナ「なぁ、どうして今日は呼び出したんだ?」

留奈「シドの奴に、ルナと一緒に来るように言われてな。」

ルナ「シドに?」

シドというのは、沢芽市の裏で有名な錠前ディーラーだ。
基本的には戦闘用ロックシードを販売しているが、これと見定めた人間にはある物を売る。

それが「戦極ドライバー」。
人間を、アーマードライダーと呼ばれる戦士に変える装置だ。

留奈「詳しい用件は知らん。だから直接会って確かめるんだ。」

二人はDrupeRsの扉を開いた。
霧島 奈々という元気のいい店員が出迎える。

奈々「いらっしゃいませー、ルナルナコンビの二名様。」

ルナ「なんですか、その変なコンビ名…」

留奈「エスプレッソとカフェラテ。」

ルナ「あと、ジャンボパフェ。」

奈々「はーい。聖夜くん、浮気はダメだよ?」

ルナ「浮気じゃないですから。」

留奈「そうだな。」

ルナ「…一応言っておくが、留奈が本気だからって意味じゃないぞ?」

留奈「分かってるさ。もしかして自意識過剰か?」

ルナ「違うから。いつものパターンだとこうなるだろ。」

そんなやりとりをしながら、二人は最奥の席に向かう。
そこには、目的の男が腰掛けていた。

シド「来たか、お二人さん。」

ルナ「なんで俺達を呼び出したんだ?」

シド「…シスコン君。お姉さん以外の人とデートなんて、浮気じゃないのかい?」

ルナ「だから、俺はシスコンでもなければ浮気でもないし彼女もいるから。」

留奈「そうだな。」

ルナ「…一応言っておくが、留奈じゃないぞ?」

留奈「分かってるさ。もしかして自意識過剰か?」

ルナ「違うから。…この件(くだり)さっきもやったよな…」

留奈「それでシド、私たちを呼び出した理由は何だ?簡潔に言え。」

シドはコーヒーを一口啜ると、ある物を取り出してテーブルに置いた。

シド「そいつのテスト走行に協力して欲しいんだ。」

ルナ「それは?」

シド「新開発のロックビークルだ。まだ試作品だがな。解錠するとバイクに変形する。」

ルナ「マジかよ…すげぇな…」

ルナがその超技術に驚いている。
彼が使う戦極ドライバー自体、それと同じくらいの超技術なのだが。

留奈「何故私たちなんだ?試運転なら、他の誰でも出来るはずだ。」

シド「その理由はだな、お前達二人が乗ることを前提として、そのロックビークルは開発されたからだ。」

ルナ「俺達が?」

留奈「理由になっていないぞ。そもそも、何故私達が乗ることが前提なっている?」

シド「…知ってるか?」

そういうとシドは、タブレット型端末に、ある画像を表示した。

シド「俺が戦極ドライバーを与えたアーマードライダーの中で、そっちのシスコン君が一番アーマードライダーとして成長しているからさ。」

ルナ「シスコンじゃねぇって。」

留奈「じゃあ、私は?」

シド「言わなくても分かるんじゃないかい?」

一瞬、シドと留奈の視線が交錯する。

留奈「…いいだろう、やってやる。」

ルナ「え、いや、ちょっと待ってくれ。」

シド「どうした?シスコン君。」

ルナ「だからシスコンじゃねぇって!」

ルナは思わず叫んだ。

ルナ「俺、バイクの免許なんて持ってないぞ。」

シド「心配しなさんな。運転してもらうのは、ユグドラシルの工場の敷地内だ。既に話も通してある。」

ルナ「…そうかよ。」

ルナは渋々承諾した。

留奈「行くぞ。さっさとやって、さっさと終わらせる。」

ルナ「…分かった。」

二人が店から出て行く。
それを見届けると、シドは独り笑った。

シド「さぞや面白い事になるだろうさ。」

奈々「お待たせ…あれ?聖夜くん達は?」

ユグドラシルの工場。
ここでは衣類などを生産しているらしい。
その敷地内を周回するように作ってある道路の上に、ルナと留奈はいた。

留奈「念の為、変身しておくぞ。」

ルナ「分かった。」

ルナは留奈に従い、素直にロックシードを取り出す。

『ブラッドオレンジ』
『オレンジ』

二人がロックシードを解錠すると、それぞれ、頭上に巨大なブラッドオレンジとオレンジが現れた。

幸い、周りに人はいない。
ここの敷地は広いので、工場の外からは見えないだろう。

二人はロックシードを戦極ドライバーに装填、施錠した。

『ロックオン』
『ロックオン』

二つの施錠音と同時に、それぞれの変身待機音が流れ始める。
留奈のものは、ロック。
ルナのものは、和風だ。

留奈「変身。」
ルナ「変身。」

『ソイヤッ』

二人は戦極ドライバーを操作し、装填してあるロックシードを斬った。

『ブラッドオレンジアームズ』
『オレンジアームズ』

次の瞬間、留奈とルナの頭に巨大な果実が突き刺さった。
だが二人は、何ともないかの様に動じない。

そして果実が割れ、展開し始めた。
パタパタと折りたたまれ、彼らの身体に装着される。
変形したそれは、まるで甲冑の様だった。

『邪ノ道 オンステージ』
『花道 オンステージ』


二人とも良く似た容姿をしているが、細部や色彩が異なる。

聖夜 ルナの変身した姿は、群青のスーツ。
その上に、鮮やかなオレンジ色の鎧が纏われている。
オレンジ色に光るバイザーと、その上に付けられた金色の三日月型の飾り。
腰には無双セイバーを帯刀し、右手にはオレンジ色の刀、大橙丸を持っていた。

仮面ライダー鎧武 オレンジアームズ


一方、聖夜 留奈の変身した姿は、群青のスーツに紅い鎧。
鎧には、黒いツタのような模様が浮かび上がっている。
紅く呻くバイザーと、その上に飾られた鮮やかな紅い三日月。
腰に無双セイバーを下げ、右手には血が染み込んだように紅い刀、大橙丸を掴んでいた。

仮面ライダー武神鎧武 ブラッドオレンジアームズ

良く似たシルエットを持つアーマードライダーが二人。
それがただの偶然なのかは、未だに判然としない。

留奈「よし。じゃあさっさと終わらせるぞ。」

そう言うと留奈は、先程シドから受け取った錠前を解錠した。
解錠音と共に空中に浮かび上がったそれは、ガチャガチャと音を立てながら変形し、巨大化する。
やがてバイクの姿となったそれは、ズドンという重い音と共に着地した。


赤い薔薇があしらわれたそれは派手だが、何処か優雅な美しさを出している。

ローズアタッカー

それがこのロックビークルに与えられた名前だった。


ルナ「すげー。じゃ、俺も。」

ルナはそう言うと、留奈と同じく受け取った錠前を解錠した。
先程のロックビークルと同じように変形し、ルナの足元に降りてくる。


薄紅色の桜がついている。
遠目では白と間違えてしまう程薄いその色は、和の特徴でもある「抑えられた美しさ」を出していた。

サクラハリケーン

ローズアタッカーよりも前に作られたロックビークルでもある。


留奈からバイクの乗り方について指導してもらったルナは、ようやくサクラハリケーンの運転が出来るようになった。

留奈「ルナのせいで無駄な時間を食ったな。」

ルナ「仕方ないだろ。バイクに乗ったこともないのに、運転の仕方なんて知るわけない。」

留奈「私とルナは、もっと有意義な時間を過ごすべきだ。一緒に。」

ルナ「バイクの実習はそんなに無意義だったか…」

留奈「私が一方的に喋るだけだったからな。」

なるほど。
つまり留奈に言わせれば、会話が有意義な時間なわけだ。

勝手に納得したルナは、無双セイバーが邪魔にならないようにしてサクラハリケーンに跨った。
同じように、留奈もローズアタッカーに跨る。

留奈「3コールでスタートだ。いいな。」

ルナ「オッケー。」

留奈「3…2…1…」

ルナ「…」

ルナに緊張が走る。
別にレースというわけでは全くないのだが。

留奈「Go!」

ルナ「!」

留奈の無駄に発音の良いゴーサインと共に、二人は同時に走り出した。
工場を周回するように走る。
しばらく時間が経ったとき、ルナの前を走っている留奈が煽った。

留奈「どうしたルナ?その程度か?…まぁ、初心者だしな。」

ルナ「むっ、調子に乗るなよ。」

留奈「あぁ、バイクに乗っている。」

ルナ「そういう下らないギャグはいいんだよ!」

ルナは見事に挑発に乗り、加速する。

ルナ「ここで決める!」

ルナが留奈の隣に並んだ。

留奈「ほう、初めてにしてはやるじゃないか。」

ルナ「もう慣れた。理屈よりも身体で覚えるタイプだからな。」

留奈「なるほど。そういう…うん?」

ルナ「どうした?」

そう言ってルナが前に向き直ると、何を表示している不明なメーターが映し出されていた。
今は862。
既に、もうすぐ上限である999に達する状態になっている。

ルナ「スピードメーターじゃない…これは…?」

留奈「!、ルナ!」

留奈がそう叫んだ瞬間、メーターが999に達した。
それと同時に、ローズアタッカーの周りに薔薇の花びらが舞い、サクラハリケーンの周りに桜吹雪が巻き起こる。

ルナ「え?なんで桜?…え?何これ?何?」

留奈「…何かくる、構えろ!」

ルナ「え?うわ!?うわわわわ…」

そして、遂にそれは起こった。
二人の乗っていたバイクが宙に浮き、クルクルと回り始めたのだ。

ルナ「何、何、何だよこれ!?」

留奈「喋るな!舌を噛むぞ。」

二人の眼前に、アーマードライダーへの変身のときにも現れる、時空間の裂け目が生じる。
二つのバイクはその裂け目に吸い込まれ、そして裂け目も完全に閉じてしまった。


留奈「ルナ。起きろ、ルナ。」

ルナ「…ん…留奈?」

ルナはゆっくりと身体を起こして、周りを見る。
そして目を疑った。

ボロボロな建物。
灯っていない信号機。
人っ子一人通らない道路。
看板はあれど人気(ひとけ)のない店。

異様な静寂が辺りを包む。
正にゴーストタウンだった。

ルナ「…どゆこと?」

留奈「…おそらく、私達はバイクの実験中に時空間を飛んだんだ。ここは…」

留奈は少しだけ、間を持って言った。

留奈「所謂一つの、平行世界というやつだろうな。」

ルナ「なるほどね。これが目的だったのか。」

留奈「ここまで大きな事をするとは、流石に予想出来なかったな。」

別世界に飛ばされたにも関わらず、二人はそこまで焦ってはいなかった。
そもそも二人は「ユグドラシル」そのものを全くと言っていいほど信用していないからだ。
今回の実験を受けたのも、ユグドラシルが何を考えているかを探るためだったのだが…

ルナ「まんまと罠にハマったな。さて、これからどうする?」

留奈「バイクも壊れているから、元の世界に戻るのは無理だな。全て計算されていたんだろう。」

ルナ「だろうな。とりあえず必要なのは、寝床と水と食料と…」

留奈「どうした?」

ルナが何かに気づき、留奈もそちらを見る。
二人に向かって、猛然と何かが走ってきた。
複数のインベスだ。

ルナ「この世界にもインベスがいるのは分かった。」

そう言うとルナは大橙丸を構える。

留奈「少し数が多いな。八匹いるぞ。」

留奈はそう言いながら、大橙丸と無双セイバーを手にした。
明らかに、多勢に無勢だ。
不利な戦いだが、やるしかない。

ルナ「いくぞ!」

ルナは叫ぶと、インベスの群れに突っ込んでいった。


留奈はインベス四体を相手に戦っていた。
何とか立ち回ることが出来ているが、あまりダメージを与えられていない。
しかしそれよりも、彼女にとって気掛かりな事があった。

留奈「(私が四体のインベスと戦っているという事は、ルナも四体のインベスと戦っている事になる…)」

はっきり言って、ルナの強さは留奈の足下にも及ばない。
ルナが同時に戦えるのは、精々二体が限界だろう。

留奈「(これは少しマズいぞ…)」

留奈は今すぐにでも、ルナの援護をしたかった。
だがそれは、どう足掻いても出来そうにない。
今の彼女に出来る事は、目の前のインベス達を倒す事だけだ。

留奈は大橙丸を構え、思い切りその場で回転した。
彼女を倒そうと近づいてきたインベスを、一気に弾き飛ばす。
それでも耐久力の高いインベスは、すぐに立ち上がって留奈に向かってきた。

留奈「はぁ!」

留奈は無双セイバーと大橙丸を振り、インベス二体を攻撃する。
そして身体を捻り、もう一体のインベスを蹴り飛ばす。
更に、無双セイバーのコックを引きエネルギー弾を装填、後ろから迫ってきたインベスに零距離射撃を放った。

留奈「(やはり耐久力が高いな…)」

留奈は唇を噛みながら、両手に握った武器を振るった。


ルナは負けそうだった。
一体のインベスに身体を抑えられ、他の二体のインベスから同時に攻撃を受ける。
なんとか振り切ったのも束の間、彼は四体目のインベスに胴を蹴られ、抵抗出来ずに後ろへ吹き飛んだ。

ルナ「ぐはっ!」

一気に四体のインベスに囲まれたルナは、為す術なく攻撃を受け続ける。

ルナ「ぐっ…かはっ…」

立ち上がろうと必死に踏ん張るが、既に彼の身体はボロボロだった。
そしてインベスが、こちらに向かって走ってくる。

ルナ「まずっ…!」

ルナは思わず目を閉じた。
しかしそのとき、彼の目の前のインベスが、弾かれたように思い切り吹き飛んだ。

ルナ「!!」

ルナが振り返ると、そこには、見た事もないアーマードライダーがいた。


黄色のスーツに、緑と黄色のアクセントカラーが輝く。
両肩には、まるでオモチャのように大きな大砲、フィスティバルタイホーンが載っている。
両手にも、パーティーグッズのように派手な銃、カーニバルガンガーンを構えていた。
緑色の強固な鎧が上半身に被さり、胸の中央には、オレンジ色に光る逆三角形のエンブレムがついている。

仮面ライダーバンプ パンプキンアームズ

バンプ「ほら、そこのキミ!立って一緒に戦おう!!」

ルナ「…は?」

バンプのハイテンションな物言いに、ルナは思わず身体の痛みも忘れてしまう。
そして突然の乱入者に呆然としていたのは、インベスも同じだった。
少しの間の後、インベスは二手に分かれ攻撃を再開する。


バンプ「そりゃ!とりゃ!もういっちょ!」

バンプは一々声を上げながら、両手のカーニバルガンガーンを的確にインベスに当てていく。
クルクルと回りながら、インベスの攻撃を優雅にかわし攻撃する。
姿に似合わず激しく踊るように戦う彼は、インベス二体を苦もなく相手にしていた。


ルナ「どりゃ!」

インベスが二体に減り、ようやくルナの反撃が始まろうとしていた。

ルナ「見せてやるよ、こいつの力。」

ルナはそう言うと、別のロックシードを取り出す。
それを右手に構え、解錠した。

『パイン』

彼の頭上に、巨大なパインが出現する。
直後、パイン ロックシードを戦極ドライバーに施錠した。

『ロックオン』

装備されていたオレンジの鎧が消え、和風の待機音が鳴る。

『ソイヤッ』

ロックシードを斬ると、巨大なパインがルナの頭に突き刺さった。

『パインアームズ』

パインの展開と同時に、右手に武器が装備される。

『粉砕 デストロイ』


金色に輝く豪華な鎧。
肩の装甲は、腕の先まで長く伸びている。
右手にはチェーンアレイ型の武器、パインアイアンが装備された。
金色のバイザーは、オレンジ鎧と違いU字に光っている。

仮面ライダー鎧武 パインアームズ


ルナ「いくぞ!ここからは俺のステージだ!」

ルナは素早くパインアイアンを振り回し始めた。


留奈を中心として、四体のインベスが外側に吹き飛ぶ。
彼女は大橙丸を捨てると、無双セイバーにロックシードを装填した。

『ロックオン』

そして戦極ドライバーと同じように、無双セイバーに施錠する。

『イチ、ジュウ、ヒャク』

無双セイバーにエネルギーがチャージされる。
そのとき、タイミング良くインベス達が起き上がった。
留奈は躊躇いなく、無双セイバーのエネルギーを解放した。

『ブラッドオレンジ チャージ』

留奈「はぁっ!!」

留奈はグルリと円を描くように、無双セイバーを振り回す。
そして彼女の周りを包むように、インベス達が同時に爆炎を放った。

バンプ「それじゃ、そろそろ決めるかな!」

バンプはそう宣言すると、一足跳びに後ろへ下がった。
そして戦極ドライバーを操作する。

『パンプキン スパーキング』

両肩のフィスティバルタイホーンに、エネルギーが充填される。
ちょうどインベス達が、彼にに向かって走り出した。

バンプ「喰らえ!タイホーン!!」

バンプの陽気な台詞と共に、チャージされたエネルギーが一気に射出される。
辺りを眩しい光が包み、一瞬だけ何も見えなくなる。
やがてまた見えるようになると、そこには、既にインベスの姿はなかった。

バンプ「一件落着!」


ルナ「こっちも決める!」

バンプの必殺技を目の当たりにしたルナは、自分も決着をつけるために構えた。

『パイン スカッシュ』

戦極ドライバーを操作し、ルナは思い切りパインアイアンをインベス達にぶつける。
インベス達の身体は、先程蹴られたルナの様に吹き飛び、爆散した。


ルナは変身を解除すると、謎のアーマードライダーの元へと走った。

ルナ「ありがとうございます。助けてくれて。」

バンプ「いいんだよいいんだよ。こんな世界で助け合わない方がおかしいでしょ。」

バンプはそう言いながら、変身を解除する。

バンプ「初めまして。ボクの名前は水落 宙(みなおち そら)。よろしくね!」

ルナ「俺の名前は…」

ルナが名乗ろうとした瞬間、留奈が大橙丸を構えて近づいてきた。
その切先を、宙に向けて。

留奈「相手が何者かも分からない内に、自分の情報を曝け出すものじゃない。」

宙「ちょ、ちょっと待ってよ。ボクは怪しい者じゃないよ。そりゃ、確かに『ヘーラクレース』のリーダーだけど、今は助けてあげたんだから仲間じゃない?」

留奈「…ヘーラクレースとは何だ?」

宙「…あれ?知らないの?自分で言うのもなんだけど、結構有名なんだけどなー。」

宙はそう言いながら、ハッとして呟いた。

宙「そうか分かったぞ!今ので確信した!」

宙はルナと留奈の目を見て言う。

宙「キミたち、別の世界から飛んで来たんでしょ?」

ルナ「!」

宙「あ!図星だね?図星なんだね?やっぱりそうだったかー。」

ルナ「…どうして、そう思うんですか?」

宙「ん?だってあの時と同じエネルギーを感じたから。大きさはかなり違ったけどね。何か危険な事になるといけないから、リーダーであるボクが直々に見に来たというわけさ!」

ルナ「…あの時?」

宙「ん?あの時と言えばあの時しかないでしょ。…あ、そっか。別の世界の人だから知らないんだね。」

宙はそう言うと、ルナに向かって話始めた。

宙「あの時っていうのは三年前、あの瞬間の事を言うんだ…」

- 幕間 その2 -


ユグドラシルタワー。
そこを含む一帯が、爆発と共に発生した特殊なエネルギーで壊滅する。
そのエネルギーは「時空間転移」を可能にするエネルギーだった。

この事件をきっかけに、ユグドラシルの時空間転移装置開発計画が全世界に露見。
ユグドラシルは倒産を余儀なくされる。
しかし技術だけは残り、次々とロックシードと戦極ドライバーが、様々な場所で量産された。

そして時空間転移装置の技術を狙い、世界各国やテロ組織が技術の奪取に乗り出す。
そして巻き起こった「時空間転移技術争奪戦争」。
それは正に「アーマードライダー大戦」と言っても過言ではなかった。

世界各国やテロ組織が作ったアーマードライダー同士の戦いにより、世界は壊滅していく。

そしてあるとき「最強のアーマードライダー」が目覚めてしまう。
それは大量のインベスとアーマードライダーを操り、次々と各国や組織を撃破。
世界の全てを破壊し、生命を根絶やしにしていった。

それはユグドラシルタワーの残骸の上に、自らの城を建てた。
そしてその「城下町」にいる人間だけを生かし、支配し始める。

世界にある全ての命が、それの手の中にあった。
それは自らの世界を「帝王の果樹園」と名付け、その全てを意のままに動かしている。

その暴君の名は、

アーマードライダー王武。

- 第二章 : 渇いた世界 -


宙「…というわけで、世界は滅びました。ちゃんちゃん。」

宙が全てを話し終えた時、そこには静寂しかなかった。

ルナ「…なんだそりゃ。」

留奈「…事実なんだろうが、信じられないというのは確かだな。」

宙「でしょ。まさかあの大企業ユグドラシルが、そんな真っ黒な事やってたなんて…」

ルナ「いやそこは全然。」

留奈「そもそもあの企業に信じられる糊代なんてあるわけないだろう。」

宙「あれ?じゃあアーマードライダー大戦が起きたなんてビックリでしょ?」

留奈「別に何も。」

ルナ「規模は小さいけど、似た様な事やってるしな。」

宙「…じゃあ最強のアーマードライダーが目覚めた事に驚かない?怖くない?」

留奈「上には上がいる。『最強』程度だったら、ルナも倒してる。」

ルナ「いや、あれはどっちかって言うと自滅に近い気がしなくもないけどな…」

留奈が言っているのは、多分菱一の事だろう。

宙「…キミ達のいた世界って何なの?もしかしてこの世界より酷いんじゃないの?」

ルナ「そう言われても…な?」

留奈「おい、まだ話は終わってないぞ?」

宙「いや、世界は滅びましたでお終いだけど。」

留奈「ヘーラクレースについてはどうした?」

宙「あー、それね。」

宙はポンと手を打つと言った。

宙「それは、ボク達の基地にご案内してから話すよ。」

留奈「知らない人について行ってはいけないと習わなかったか?」

宙「あれ?名乗らなかったっけ?ボクの名前は水落 宙。よろしくね!」

留奈「…」

ルナ「まぁまぁ落ち着けよ。俺達だって寝床が必要だし、情報も必要だし。それに水落も悪い奴じゃなさそうだし、ついて行っても大丈夫だと思うけど。」

今にも殴りかかりそうな留奈を、ルナは何とかして宥めた。

留奈「…ついて行こう。ただし、あくまで情報収集の為だ。変な気でも起こしたら…」

宙「こ、怖いよ怖いよ。そんな事、絶対にしないって。」

しばらく歩いたところで、宙はピタリと足を止めた。

宙「ようこそ。ボク達、ヘーラクレースのベースへ。」

そこは、他と同じ廃墟だった。

宙「あ、今汚いって思ったでしょ。カモフラージュなんだよ。」

宙はドヤ顔でそう言った。

ルナ「…そうなんですか。」

???「お、宙!おかえり。」

すると、誰かが基地から出て来た。

ルナ「あ!お前は…」

???「あ?誰だよお前?」

宙「あれ?キミ、礼(れい)を知ってるの?」

ルナは驚いていた。
知ってるも何も…

ルナ「彼、俺の世界ではアーマードライダーだったんです。」

宙「そうなの!?、もしかして、ドングリのアーマードライダー?」

ルナ「はい。」

宙「…すごい偶然。礼はここでもドングリのアーマードライダーだよ。」

礼「おい宙、そいつら一体誰だよ?」

宙「聞いて驚け!…時空間転移者の二人さ。」

礼「!、マジかよ…マジなんだろうな?」

礼は戸惑いの声を上げた。

宙「多分マジだよ。さ、入って入って。自己紹介は、皆の前でお願いね。」

ルナ「分かりました。」

留奈「…」

宙を先頭にルナが続く。
留奈は少しの間渋っていたが、観念したようにルナの後に続いた。


留奈「中は普通だな…」

宙「だから、外見はカモフラージュなんだって。」

ルナ達は、基地のリビングルームに案内されていた。
留奈の言う通り、至って普通の部屋だ。
作戦会議用の大きなホワイトボードがある事を除いて。

ルナが部屋を眺めていると、部屋の扉が開き誰かが出てくる。

優「宙おかえりー。少し遅かっ…」

扉から出てきた優は、宙の隣にいるルナを見て固まった。

ルナ「優…」

優「ルナ…本当に、ルナ…」

優はフラフラとルナに近づき、そして抱きついた。

優「ルナ…ルナ!」

礼「!、お前が聖夜 ルナなのか!」
宙「え!、君がレナの弟のルナくんだったの!?」

礼と宙が同時に声を上げる。
更に…

レナ「ルナ!?」

ルナ「姉さん!?」

優が出てきた扉が再び開き、レナが飛び出してきた。
彼女はルナに駆け寄ると、優とは反対の方向から抱き締めた。

レナ「ルナ…おかえり、ルナ…」

ルナ「…ただいま、姉さん。」

ルナは思う。
きっとこの世界の俺は、何らかの理由で既に死んでいる。
だからこそ、ここまで二人は喜ぶのだろう。

でも俺は、この世界の俺じゃない。
その事を彼女達に伝えなくてはいけない。
それが優とレナにとって、どんなに辛い事でも。

ルナ「…二人共、聞いて。」

優「…何?」
レナ「何?ルナ。」

ルナ「…」

二人の顔を見て、ルナの決意が鈍る。
それでも、言わなくてはならない。

ルナ「…俺は、この世界の聖夜 ルナじゃないんだ。」

優「…」
レナ「…」

ルナ「ごめん。勘違いさせて。」

優「…」
レナ「…」

二人はしばらく黙っていたが、優がおもむろに口を開いた。

優「…知ってるよ。最初から。」

ルナ「え?」

優「ルナはもう死んでる。だからこの世界のルナじゃないって事は、とっくに分かってるんだ。」

でもね、と優は続ける。

優「それでも、嬉しいんだよ。またルナに会えて。」

ルナ「でも、俺は…」

レナ「ルナ。」

レナが、ルナの言葉を遮って言った。

レナ「たとえ世界が違っても、ルナは私の弟だよ。」

ルナ「…」

レナ「だからいいの。弟と再会した姉が、喜ばないわけないでしょ?」

レナの言葉に、優が続ける。

優「難しく考えなくていいんだよ。ルナはルナ。それだけだよ?」

ルナ「それは…そうだけど…」

レナ「私はルナに会えて嬉しい。優もルナに会えて嬉しい。それで十分でしょ?」

ルナ「…姉さんと優がいいなら、俺はそれでいいよ。」

二人はルナに抱きつきながら言った。

優「…おかえり、ルナ。」
レナ「おかえり、ルナ。」

ルナ「…ただいま。優、姉さん。」

少し離れたところで、留奈達三人はその光景を眺めていた。

宙「…グス…素晴らしいね…感動の再会だね…グスン。」

礼「…まぁ、ちょっとウルッときた。」

留奈「…しかし、いつまで抱きついている気だ?あの二人は。」

宙「おや?、嫉妬かな?」

宙はニヤニヤしながら言った。
瞬間、留奈の目に殺気が宿る。

留奈「[ピーーー]ぞ?」

宙「ごめんなさい。」

宙は恐怖のあまり、素直に謝った。

留奈「あのままでは話が進まない。さっさとヘーラクレースについて話してもらわないとな。」


夜、ルナと留奈はヘーラクレースの基地のリビングにいた。
そこでヘーラクレースの全メンバーと対峙している。
と言っても、たった八人なのだが。

宙「それでは!只今より、ヘーラクレースと時空間転移者との親睦会を始めます。拍手!」

パチパチと拍手が起きる。
…宙とルナからだけ。

宙「あれ?なんか皆ノリ悪くない?ねぇねぇ、なんかノリ悪くない?」

???「そういう無駄な時間はいいので、さっさと始めましょう。」

ヘーラクレースの男が、冷たくそう言った。

留奈「そうだな。先ずはそちらから自己紹介でもしてもらおう。」

???「僕はあなた方を信用していません。そちらから自己紹介をお願いします。」

レナ「ルナは信用できるよ。」

???「それはレナさんと優さんだけです。そもそも、この二人が本当に時空間転移者なのかも怪しいんです。」

???「『果樹園』のスパイかもって事か?、善也(よしや)。」

善也「そうです、姉さん。」

善也と呼ばれた男の姉が言った。

優「でもさ、それって目の前のルナが、果樹園の作ったD.C.かもしれないって事でしょ?」

善也「はい。」

優「それなら違うよ。ユグドラシルが壊滅したときに、ルナの遺伝子データも焼失した証拠があったじゃん。」

善也「…そういえば、誠二さんがそう言ってましたね。」

ルナ「誠二!?誠二もいるのか!?」

ルナは知り合いの名前が出てきたので、興奮して聞き返した。

宙「…いたんだ。」

ルナ「は?」

宙「誠二は、少し前に果樹園との戦闘で…」

ルナ「…嘘だろ…そんな…」

その場を静寂が支配した。

どれだけ経っただろうか。
とても長く感じたが、三十秒程度だったのかもしれない。
留奈が口を開いた。

留奈「…いいだろう。こちらから自己紹介しよう。」

そう言うと留奈は、ルナに目で指示する。
ルナは立ち上がって言った。

少し離れたところで、留奈達三人はその光景を眺めていた。

宙「…グス…素晴らしいね…感動の再会だね…グスン。」

礼「…まぁ、ちょっとウルッときた。」

留奈「…しかし、いつまで抱きついている気だ?あの二人は。」

宙「おや?、嫉妬かな?」

宙はニヤニヤしながら言った。
瞬間、留奈の目に殺気が宿る。

留奈「殺すぞ?」

宙「ごめんなさい。」

宙は恐怖のあまり、素直に謝った。

留奈「あのままでは話が進まない。さっさとヘーラクレースについて話してもらわないとな。」


夜、ルナと留奈はヘーラクレースの基地のリビングにいた。
そこでヘーラクレースの全メンバーと対峙している。
と言っても、たった八人なのだが。

宙「それでは!只今より、ヘーラクレースと時空間転移者との親睦会を始めます。拍手!」

パチパチと拍手が起きる。
…宙とルナからだけ。

宙「あれ?なんか皆ノリ悪くない?ねぇねぇ、なんかノリ悪くない?」

???「そういう無駄な時間はいいので、さっさと始めましょう。」

ヘーラクレースの男が、冷たくそう言った。

留奈「そうだな。先ずはそちらから自己紹介でもしてもらおう。」

???「僕はあなた方を信用していません。そちらから自己紹介をお願いします。」

レナ「ルナは信用できるよ。」

???「それはレナさんと優さんだけです。そもそも、この二人が本当に時空間転移者なのかも怪しいんです。」

???「『果樹園』のスパイかもって事か?、善也(よしや)。」

善也「そうです、姉さん。」

善也と呼ばれた男の姉が言った。

優「でもさ、それって目の前のルナが、果樹園の作ったD.C.かもしれないって事でしょ?」

善也「はい。」

優「それなら違うよ。ユグドラシルが壊滅したときに、ルナの遺伝子データも焼失した証拠があったじゃん。」

善也「…そういえば、誠二さんがそう言ってましたね。」

ルナ「誠二!?誠二もいるのか!?」

ルナは知り合いの名前が出てきたので、興奮して聞き返した。

宙「…いたんだ。」

ルナ「は?」

宙「誠二は、少し前に果樹園との戦闘で…」

ルナ「…嘘だろ…そんな…」

その場を静寂が支配した。

どれだけ経っただろうか。
とても長く感じたが、三十秒程度だったのかもしれない。
留奈が口を開いた。

留奈「…いいだろう。こちらから自己紹介しよう。」

そう言うと留奈は、ルナに目で指示する。
ルナは立ち上がって言った。

ルナ「聖夜 ルナです。オレンジのアーマードライダーです。」

なんとなく「知ってる」という空気が漂った。
そして、留奈が立ち上がる。

留奈「聖夜 留奈だ。ブラッドオレンジのアーマードライダーに変身する。」

そして今度は、皆一様に驚いた声を上げた。

優「ルナと同じ名前なの!?」

留奈「あぁ。元々下の名前は同じだったけどな。」

優「下の名前『は』…?」

留奈の発言で、一部の空気が冷たくなる。

優「ルナ、聖夜さんとはどういう関係なの?」

ルナ「いや、別に何も…」

レナ「お姉ちゃんも色々知りたいな…」

ルナ「だから何も…」

優「下の名前が同じなのはいいとして、どうして苗字も一緒なの?」

ルナ「それは偶然…」

レナ「もしかして、留奈ちゃんが私の義妹なんてことはないよね…?」

ルナ「ないから安心し…」

留奈「別に隠す必要はないだろう。ハッキリ言ってやれ、ルナ。」

ルナ「だから何で留奈はそういう言い方するんだよ!」

優「へぇ…ルナが私とレナさん以外を名前で呼んでるのなんて、初めて聞いたなぁ…」

ルナ「成り行き!成り行きだから!」

レナ「どんな成り行きなの?詳しく教えて欲しいな。」

ルナ「それは…」

留奈「別に普通だろう?私とルナの関係なら。」

ルナ「留奈は少し黙っててくれよ!」

優「ねぇ、ルナ。聖夜さんとはどんな関係なの?」

ルナ「友達!ただの友達だから。」

留奈「な…!ルナ、私は今深く傷ついたぞ。」

ルナ「嘘つけ!本当は心の中で笑ってるだろ!!」

レナ「ねぇ、ルナ。お姉ちゃんに本当の事教えてよ…ね?」

ルナ「さっきから本当の事言ってるっての!」


ようやく留奈との関係を説明したルナは、既に憔悴しきっていた。

宙「それじゃボクの番だね。もう知ってると思うけど、ボクの名前は水落 宙。パンプキンのアーマードライダーだよ。」

留奈「カボチャ…野菜のロックシードだと?」

宙「ボクのは特別なのさ!」

留奈「…」

宙「…ボクも詳しくは知らないんだよ。だからそんなに睨まないでよ。」

留奈「…一応は納得しておいてやる。」

宙「ありがとう。じゃ、次は男性から。」

礼と善也の視線が合わさる。

善也「お先にどうぞ。」

礼「…分かった。乃木坂 礼(のぎざか れい)だ。」

ルナ「知ってる。ドングリのアーマードライダーなんだよな。」

礼「そういえば、そっちの世界でもそうだって言ってたな。」

礼が座ると同時に、善也が立ち上がる。

善也「矢上 善也(やがみ よしや)です。サクランボのアーマードライダーになります。」

宙「そっちの世界に彼はいなかった?」

ルナ「俺の周りには、サクランボのアーマードライダーはいませんでした。」

宙「じゃ、本当の意味で初対面なわけだ。」

ルナ「よろしく、矢上。」

ルナはそう言って右手を差し出した。
が、それは無下にも弾かれてしまう。

善也「僕はまだ、あなたを信用していないので。」

ルナ「…そう。」

その場を再び静寂が支配する。

宙「…それじゃ、女性陣の自己紹介に行こうか。優とレナは知ってるから、二人以外で。」

???「それじゃ、アタシからいこう。」

そう言って善也の姉が立ち上がった。

???「矢上 恋(やがみ れん)だ。善也の双子の姉で、同じサクランボのアーマードライダーだ。」

ルナ「よろしく。」

恋「善也が信用できない相手は信用出来ないな。」

ルナ「…そう。」

???「じ、じゃあ、次は私が。」

その場を無理矢理繋げようと、一人の女性が立った。

ルナ「晴空 真美さんですよね。もしかして、ザクロのアーマードライダーじゃないですか?」

真美「え…うん。でもどうして?」

ルナ「俺の世界でも、そうだったので。」

真美「そうだったんだ。よろしくね。」

ルナ「よろしくお願いします。」

そう言って、真美とルナは握手した。

善也「真美さん、彼はまだ信用できませんよ。」

真美「大丈夫だよ。だってレナの弟だし。」

善也「理由になっていません。」

真美「なってるよ。レナが、自分の弟が本物か偽物かの見分けもつかないと思う?」

善也「…誰だって騙されることはあります。」

留奈「いいじゃないか。誰が誰を信用しようと、それはそいつの勝手だ。そんなに信用できないなら、もうお前は誰も信用しなければいい。」

善也「あなたは口を挟まないでください。」

宙「まぁまぁ、そういうのは後にして。まだ自己紹介は終わってないよ?」

ヒートアップする口論を、宙が制した。
こんな性格だが、リーダーとしての役割はしっかり果たしている。

善也「しかし、リーダー…」

恋「その辺にしときなって、善也。いざとなれば、力でねじ伏せればいいんだしさ。」

善也「…姉さんがそう言うなら。」

善也は渋々黙った。

留奈「(どのくらいかは知らないが…どちらにせよ、本気を出したルナには勝てないだろうな。)」

恋「…なんだ?アタシの顔に何かついてるか?」

留奈「なんでもない、気にするな。」

???「じゃあ、最後は私ですね。」

優と同年代くらいの女の子が立ち上がる。

???「初めまして。枝垂 雪菜(しだれ ゆきな)です。モモのアーマードライダーです。」

そう名乗った瞬間、ルナがガタッと立ち上がった。

ルナ「え!?雪菜!?」

雪菜「え…はい。」

優「なんで下の名前で!?」

レナ「しかも呼び捨て!?」

優とレナが的のずれた指摘をするが、今のルナには届かない。

ルナ「もしかして、優と乃木坂とは中学時代からの友達?」

雪菜「そうですけど…どうして?」

ルナ「…」

ルナは驚いた顔をしながら、座った。

ルナのいた世界では、雪菜は既に死亡している。
他ならぬ、菱一の手によって殺されている。
それが原因となり、優と礼がアーマードライダーになったのだ。

宙「どうしたんだい?ルナくん。」

ルナ「すみません。こっちの世界の話です。」

雪菜「あの…そちらの世界で、私は何かしたんですか?」

ルナ「…いえ。ただ、話に聞いていたので、会えて嬉しかっただけです。」

雪菜「そうですか…?」

雪菜は首を傾げながら座った。

宙「全員、自己紹介は終わったね。それじゃ食事をしながら、今後の事について話そうか!」

宙は元気よく、そう宣言した。


ルナ「なぁ。」

優「何?、ルナ。」

ルナ達は食事をしながら、今後について話し合う事になった。
が、そこで疑問が浮かぶ。

ルナ「世界があんなに荒廃してるのに、食べ物はどうやって手に入れてるんだ?」

優「それは…」

善也「優さん、それは危険です。」

優が答えようとしたところで、善也がそれを制した。

善也「彼はまだスパイの可能性があるんです。その事を伝えるのは…」

宙「大丈夫だよ。伝えても。」

善也「何故言い切れるんですか?リーダー。」

宙「人間だからだよ。」

宙は軽い口調で言った。

善也「D.C.なら、僕たちと同じものを食べないかも知れない。教えるのは危険です。」

宙「大丈夫だって。善也は心配しすぎだよ。」

善也「リーダーが楽観的過ぎるんです。得体の知れない人物を、そう簡単に信用出来るわけ…」

宙「あーもう、分かったよ。」

宙は煩そうに言うと、今までとは違う、ハッキリとした口調で言った。

宙「彼に食事についての情報を開示する。リーダーのボクが下した、決定事項だよ。」

善也「っ…了解…」

善也は苦い顔でそう言うと、席に座る。

留奈「…そういえば、お前はリーダーだったな。」

宙「え?忘れてたの?酷いなぁ…」

宙はいつものおちゃらけた口調に戻ると、ルナの方を見た。

宙「どうやって食料を入手してるか、だっけ?」

ルナ「はい。」

宙「闇市だよ。」

ルナ「…は?」

宙の簡単な物言いに、思わずルナは聞き返してしまう。

恋「本当は果樹園共から食料配給があるんだが、アタシ達は反乱軍だからな。」

善也「姉さん…」

恋「善也、アタシも信用していいと思うぜ?」

善也「…姉さんがそう言うなら。」

善也はルナの方を見た。

善也「反乱軍云々を抜きにしても、配給の食料だけじゃ生きていけませんから、闇市が開かれるんです。」

ルナ「なるほどな…」

留奈「何を納得している。まだ謎があるだろう?」

留奈は宙の方を見て言った。

留奈「食料を買うにしても、金が無ければ買えない。でも反乱軍なんかの連中を雇う人間なんていないはずだ。…どうやって金を稼いでいる?まさかとは思うが…」

宙「最初に言っとくけど、盗んではいないからね。」

宙は留奈の言いそうな事を、先回りして塞いでおく。

優「闇市の警護をして、お金を貰ってるんだ。そのお金で食料を買ってる。」

ルナ「警護?」

礼「簡単に話すとな…」

礼が優の言葉を繋いだ。

礼「果樹園には二種類の警察みたいな連中がいる。『騎兵隊』と『特殊警察』だ。騎兵隊は人間、特殊警察はインベスで構成されてる。」

宙「キミたちを襲ったのも、実は特殊警察のインベスだったんだ。」

そして宙が付け加える。

真美「騎兵隊の人達は、闇市を見つけても黙認してくれるの。自分達もそこで買うし、取り締まったら生きていけないから。」

雪菜「でもインベスは違うんです。彼らは食べ物なんて食べない。だから闇市を見つけたら、容赦なく攻撃してきます。」

ルナ「それで、アーマードライダーの力を使って護るのか。」

留奈「なるほど。つまり反乱軍と言えど、人からは敵意を向けられていないという事か。」

宙「そ!むしろ好意的に見られる事が多いよ。」

話しているうちに食事が運ばれて来る。
今夜のメニューはパンとシチューとサラダだ。

雪菜「はい、聖夜くん。」

ルナ「ありがとう、枝垂さん。」

宙「それじゃ、皆手を合わせて!」

宙の音頭に合わせ、皆素直に手を合わせた。

宙「いただきます!」

一同「いただきます。」

宙「あれ?何かボクの音頭に比べてテンション低くない?」

宙の疑問は無視し、各々食事を始める。
そしてそのとき、それは起こった。

レナ「ルナ。」

ルナ「何?姉さん。」

レナ「はい、あーん。」

ルナ「!」
優「!」

少しだけ、時間が止まる。

ルナ「…ね、姉さん、流石に少し恥ずかしいから…」

レナ「あ…ごめんね。久しぶりに会えたのが嬉しくて、つい…」

ルナ「…」

レナ「…」

ルナ「…あーん。」

レナ「!」
優「!」

パクッと、ルナは差し出されたスプーンを口に含んだ。

ルナ「…」

レナ「…」

優「…」

しばらくの沈黙の後、急に宙が口を開いた。

宙「はいはーい、そこまでそこまで。レナにルナくん、流石に姉弟なんだから、一線を越えちゃダメだよ?」

ルナ「こ、越えませんよ!」
レナ「こ、越えないよ!」

ルナとレナは同時に叫んだ。

宙「どうかなー?さっきの二人、矢上姉弟と同じ雰囲気だったよ?」

恋「は、はぁ!?なんだよそれ!アタシ達が一線越えてるみたいに聞こえるだろ!!」

宙の発言に、恋がバンッと机を叩いて立ち上がり、抗議の声をあげる。

善也「そうですよ、リーダー。確かに僕と姉さんは愛し合ってますが、それは家族愛の範疇ですから。」

本日はここまでにしたいと思います。

疑問、質問、提案等、いつでもお受けしております。
気になった点があれば、いつでもご指摘ください。


80改行制限があるというのを始めて知りました。
終わるのに一週間くらいかかりそうですね…

乙でした!
とうとう劇場版の話ですね、本編でももやもやする部分であったから続きが楽しみです
頑張って下さい!

乙です、元の世界とはいろいろ違いがありますね。
続きを期待しています。

乙でした
少し投下ペースを早くしてもいいかなとは思いましたが、御自身のペースで更新してくださいね。

>>27さん
長らくお待たせ致しました。


>>29さん
世界が壊れていれば、何やってもいい気がしてます。


>>30さん
すみませんが、これ以上早めるのは少し難しいです。
申し訳ございません。


こんばんは。
それでは、本日も始めていきたいと思います。

礼「でもお前ら一緒の部屋で寝てるじゃん。それっていくら家族でもおかしくね?」

ルナ「そうなの!?」

礼の発言した衝撃的事実に驚くルナ。
だが矢上姉弟はケロリとして言った。

善也「おかしくないですよ。ねぇ、姉さん。」

恋「当たり前だろ。普通だ、普通。」

ルナ「…いや、それは…」

恋「なぁ、レナ。普通だよな?」

レナ「…普通だよ。」

ルナ「姉さん!?」

レナの発言に、何故か早口で反論する優。

優「だ、だったら!恋人同士が同じ部屋で寝るのも普通じゃないかな!?」

ルナ「何言ってんの優!?」

留奈「そうだな、普通だ。」

優「そうだよね!」

留奈「つまり、私とルナが…」

ルナ「留奈はややこしくなるから黙っててくれないかな!」

宙「はいはい、下らない喧嘩はそこまでだ。」

レナ「下らなくないよ!」
優「下らなくなんてない!」
留奈「下らない話などした事もない。」

ルナ「いや、結構してるだろ…」

リーダーの制止も聞かずに、団員達は(私欲の為に)戦い続ける。

宙「…グスン。誰も言う事聞いてくれない。ボク、リーダーなのに…」

真美「仕方ないよ。宙にはリーダーの威厳なんてないもん。」

宙「…ねぇ、それ酷くない?傷心のボクに追撃って、酷くない?」


しばらくして食事が終わる。
喧嘩は、先程善也を黙らせたのと同じ方法で終結した。

宙「それじゃ、今後について話そうか。」

ルナ「…本当なら、さっきの食事の時間に話し合うはずだったんですよね…」

留奈「随分と遅くなったな。全く、誰のせいだと思っている?」

ルナ「留奈だよ!」
優「聖夜さんだよ!」

レナ「…いや、優は他人の事言えないよ。」

礼「レナさんもだよ。」

宙「だからそこまで!先ずは、ルナくん達の要望を聞いてみよう。」

このままでは話が進まないと思った宙が、リーダーシップを発揮する。
それに対する留奈の回答は簡潔だった。

留奈「こちらの要求は五つだ。一つ、寝床の提供。二つ、食料の提供。三つ、衣服の提供。四つ、情報の提供。五つ、風呂の提供。」

そして、それに対する宙の回答も簡潔だった。

宙「分かった。いいよ。」

善也「リーダー!」

善也が抗議の声を上げる。

善也「他の団員の意見も聞かずに、勝手に決めないで下さい。」

宙「えー、分かったよ。じゃ、ルナくん達の要求を受け入れる事に賛成の人、手を挙げて。ハイ!」

レナ「…」
優「…」

真美「…」
雪菜「…」

宙の発言の直後、レナと優が手を挙げる。
少し遅れて、真美と雪菜も手を挙げた。

宙「ほら、五人。過半数だよ。」

善也「納得がいきません。レナさんと優さん、真美さんは置いておいて、どうして雪菜さんまで賛成なのですか?」

善也は雪菜に問う。
その質問に、雪菜は何でもないという風に答えた。

雪菜「だって、聖夜くんは嘘をついてないと思うから。」

その回答に対し「根拠にならない」と反論するかと思いきや、善也はあっさりと引き下がった。

善也「…そうですか。」

ルナ「あれ?それで納得するの?」

ルナの当然の疑問に、雪菜が答える。

雪菜「私、他人が嘘ついてると分かるんです。」

ルナ「…本当に?」

雪菜「本当です。」

宙「雪菜に嘘は通じないよー。」

宙がルナに言った。

雪菜「でも、聖夜くんが嘘をついてるようには見えませんから。」

ルナ「…ありがとう。」

雪菜「だから…」

雪菜は小声でルナに言った。

雪菜「聖夜くんの世界の私の事、誤魔化さないで教えて下さいね。」

ルナ「!…」

そんな中、宙と留奈も交渉していた。

宙「でもね、無条件ってわけにもいかないんだ。ボクの方からも、三つ条件を出したい。」

留奈「何だ?」

宙「一つ、ボク達ヘーラクレースに戦力として協力する。二つ、戦極ドライバーは、使用時以外はこちらに預けてもらう。そして三つ、一人ずつ監視役を付けさせてもらう。だよ。」

留奈「…その程度でいいのか?」

宙「他には…特に思いつかないから。」

留奈「…では、それで契約しよう。」

宙「契約なんて重々しい言い方だね。」

宙はそう言いながら、他の仲間に向き直った。

宙「というわけで、監視役を決めるよー。先ずは、ルナくんの監視役から。」

レナ「はい!」
優「はい!」

宙がそう言った瞬間、レナと優が同時に手を挙げる。

善也「どちらもダメです。監視役は、聖夜くんと深い関係のない男性にすべきです。」

レナ「善也は黙ってて!」
優「善也は黙っててよ!」

宙「いや、今回は善也が正しいよ…」

宙がそう言って二人を止めた。

宙「そうすると必然的に、善也か礼のどちらかだけど…」

恋「おい、宙。まさかアタシの善也を危険な目に合わせる気じゃあないだろうな?」

恋がギロリと宙を睨む。

宙「怖いよ。ていうか、そもそも今の世界で危険な目に合わない方が珍しいでしょ…」

宙は弱々しくそう言うと、礼の方に向き直った。

宙「というわけで礼、お願いできる?」

礼「あぁ。別に構わないぜ。」

礼は快諾する。
宙はホッと息をつくと、再び仲間に向き直った。

宙「それじゃあ、留奈ちゃんの監視役だけど…」

留奈「ちゃん付けで呼ぶな。本気で殺すぞ。」

宙「…留奈さんの監視役だけど、誰かやってくれる?」

宙はビクビクしながら聞く。
この間、ずっと留奈に睨まれていたからだ。

雪菜「じゃあ、私がやります。」

宙「本当に?ありがとう、雪菜。」

宙は再び調子を取り戻すと、ルナと留奈に言った。

宙「それじゃあ、ルナくんは礼に、留奈さんは雪菜に戦極ドライバーを預けて。」

ルナ「はい。」

留奈「仕方ないな。」

二人はそう言いながら、それぞれ戦極ドライバーを自分の監視役に渡した。

宙「それじゃ、今日は遅いし、もう寝ようか。ルナくんは礼と、留奈さんは雪菜と同じ部屋で布団敷いて寝てね。」

ルナ「分かりました。よろしく、乃木坂。」

礼「おう。」

雪菜「それじゃあ、行きましょうか。」

留奈「寝首をかこうとしたら、返り討ちにするからな。」

雪菜「そんな事しませんよ。」

宙「よし、解散!」

宙がそう宣言すると、各々部屋に入って行く。


ルナは礼の部屋に布団を敷くと、直ぐに横になった。

礼「電気消すぞー。」

礼はそう言ってランプを切り、ベッドに潜る。
だが、お互い何処かで緊張しているのか、中々寝付けなかった。

- 幕間 その3 -


中々眠れないな…
そう思っていたルナに、思わぬ声がかかった。

礼「まだ起きてるか?」

ルナ「…中々寝付けなくてな。」

礼「俺もだ。妙に緊張してよ。」

ルナ「お泊まり会みたいってか?」

礼「いや、どっちかって言うと修学旅行の夜だ。」

ルナ「…」

分かっている。
礼はもう、二度と修学旅行なんて行けない。
だからこそ、声が少し楽しそうなのだ。

本当なら、正体不明の男と密室で二人きり。
殺されるかもしれないと考えるのが普通だ。
それでもきっと、それ以上の何かが沸き上がってきているのだろう。

そんな事を思ったとき、ルナに素朴な疑問が浮かんだ。
なので、聞いてみる事にする。

ルナ「…なぁ、乃木坂。」

礼「なんだよ?」

ルナ「好きな子いる?」

瞬間、礼は噴き出した。

礼「なっ、ちょ、おまっ、何言ってんだよ!?」

ルナ「騒ぐなよ、先生来るぞ。」

礼「誰だよ先生って。」

なるほど、これがボケる側の気持ちか。
なんか新鮮だな。
ルナは悪びれる様子もなく、そんな事を考えた。

ルナ「いや、俺の世界の乃木坂はさ、枝垂さんと三回デートに行ってるみたいだから。」

その三回目のデートで、乃木坂は目の前で枝垂さんを殺されたらしいけど。
とは、言わない。

礼「…マジで?」

ルナ「あぁ、自分で言ってた。」

礼「…マジかよ。お前の世界の俺、すげぇな。」

礼は感動した様に呟く。

ルナ「今も好きなのか?枝垂さんの事。」

礼「…いや、今は違うな。」

ルナにとって、意外な答えが返ってきた。

礼「確かに、中学生のときは、雪菜の事が好きだった。でも今は…何ていうか、仲間って感じだな。」

ルナ「…なるほどね。」

ルナは納得した様に言うと、寝返りを打つ。

ルナ「変な事聞いたな。おやすみ。」

礼「…いや、俺も久しぶりに『日常』に戻れた気がした。おやすみ。」

礼はそう言うと、ルナと同じく寝返りを打った。

今日出会ったばかりの二人。
だが、そこには既に、確かな絆が出来上がろうとしていた。

- 第三章 : 荒んだ世界 -


翌朝。
目が覚めたルナは、礼を起こさないように着替え、顔を洗うために洗面所に向かう。

ルナ「痛て。」
雪菜「あ痛。」

ルナ「ごめん、枝垂さん。」

雪菜「こっちこそごめんなさい、聖夜くん。」

そこで、同じく顔を洗いに来た雪菜とぶつかってしまった。

二人で顔を洗い、食堂に向う。
そこには朝食当番であるレナと優に加えて、既に留奈と宙がいた。

ルナ「おはようございます。」

雪菜「おはよう。」

宙「おっはー、二人共。」

優「おはよう、雪菜、ルナ。」

レナ「おはよう、雪菜。ルナ、寝癖酷いよ。」

ルナ「なんで俺にだけ『おはよう』じゃないのさ…」

留奈「おはよう、ルナ。同じベッドで目が覚めないのは、とても久しぶりだな。」

ルナ「バレバレの嘘つくの、やめようぜ。」

留奈「今日は枝垂と一緒に起きてきたみたいだが、二人で昨夜ナニをしていた?」

レナ「!」
優「!」

ルナ「さっきそこでぶつかっただけだから。昨夜は留奈と寝てただろ。」

留奈「何!?私が気づかない間に、ルナは私と寝ていたのか!?」

レナ「!!」
優「!!」

ルナ「『枝垂さんが』に決まってるだろ!後、優と姉さんは留奈の言葉に反応しなくていいよ…」

そんなやりとりをしていると、礼と真美が起きてくる。

礼「おはよう。聖夜、監視役の側を離れるなよ。」

ルナ「起こしちゃ悪いかと思って。」

雪菜「それは起きるのが遅い礼が悪いよ。」

礼「雪菜まで!?」

雪菜の思わぬ援護射撃に、礼は朝から驚いてしまう。

ルナ「晴空さんも、おはようございます。」

真美「おはよう、ルナくん。」

そして最後に、矢上姉弟が起きてきた。

恋「おはよーす…」

善也「おはようございます。」

恋がまだ眠い目をこすっているのに対し、善也は既に完全に目覚めている。

宙「おっはー、矢上姉弟。昨夜は一線越えなかっただろうね?」

宙が茶化すように言う。

恋「越えるわけねぇだろ…」

宙「だってこの前さ、矢上姉弟の部屋のドアが開いてるから閉めてあげようと思ったら…」

宙は少し間をおいてから言った。

宙「この二人、同じベッドでくっついて寝てたんだよ!」

ルナ「はぁ!?」
留奈「…」
優「え!?」
レナ「嘘!?」
礼「マジかよ…」
雪菜「!!」
真美「まさか…」

宙の爆弾発言に、その場にいた全員(宙と矢上姉弟を除く)が反応する。
対して、矢上姉弟は冷ややかだった。

恋「姉弟なんだから、普通だろ。」

善也「えぇ。普通です。」

ルナ「…いや、流石に姉弟でもそれは…」

恋「なぁ、レナ。普通だよな?」

レナ「…普通だよ。」

ルナ「姉さん!?」

レナの発言に、何故か早口で反論する優。

優「だ、だったら!恋人同士が…」

ルナ「反論しなくていいよ、優!と言うか、昨日もこのやりとりやった憶えがあるよ。」

留奈「…そうだな、普通だ。」

ルナ「なんで無理矢理にでも続けようとするんだよ!」

留奈「昨日なんてものはない。あるのは、明日という未来だけだ。」

ルナ「名言っぽい響きだけど、今だけはただの言い訳にしか聞こえないな。」

宙「結構その通りだけどね。」

宙が少しふざけた口調で言った。

宙「昨日の事を忘れるなんて出来ないけど、いつまでも過去ばかり見て明日から目を背けてると、この世界ではすぐに死んでしまうだろうから。」

ルナ「…」

宙の発言に、皆一様に黙る。
ルナは、先程までふざけていた自分が少し恥ずかしくなった。
実際には、ルナ自身は全くふざけていないのだが。

宙「はいはい、朝食をとったら今日の予定を話すよ!」

宙はことさら大きな声で言い、パンッと柏手を打った。


宙「それじゃ、今日の予定は…」

宙はホワイトボードを指しながら言った。

宙「午前はE-23ブロックで開かれる闇市の警護だよ。午後は特に予定なし。」

真美「警護するメンバーは?」

宙「決まってるよ。優と礼、真美と矢上姉弟、そしてボク。」

善也「ちょっと待ってください。」

善也が抗議の声を上げた。

宙「はい、矢上 善也クンどうぞ。」

宙が大学の教授のような口振りで聞く。

善也「礼は彼らの監視を任されています。それはどうするんですか?」

宙「レナがいるでしょ。」

善也「レナさんは聖夜くんの姉です。そういう立場の人間を監視に置くのは間違っていると思います。」

宙「…レナはアーマードライダーにはなれない。言い方は悪いけど、警護に連れて行くことは出来ないからね。」

宙は静かに言った。

宙「誠二ももういないから、戦力もあんまりないんだ。分かるでしょ?」

善也「…分かりました。」

善也も苦い顔で引き下がった。

宙「それじゃ、メンバーは準備して行こうか。買物鞄、忘れないでね。」

宙はそう言って、解散を表す柏手を打った。


宙「それじゃルナくん、お留守番よろしくね。」

宙はそう言うと、玄関から外に出た。

恋「よし。行くぞ、善也。」

善也「はい、姉さん。」

続いて、恋と善也が外に出る。

真美「レナ、雪菜、行ってくるね。」

礼「じゃ、行ってきます。」

レナ「行ってらっしゃい。」

雪菜「行ってらっしゃい、礼、真美さん。」

そして真美と礼も外に出た。

優「…」

ルナ「優?」

ルナが見ると、優は少し暗い顔をして黙っている。

ルナ「どうしたの?」

優「…少し、心配で。」

ルナ「…大丈夫だよ。優の強さは、向こうの世界にいるときから知ってる。」

ルナは励ますように言った。

優「…そうじゃなくて。」

ルナ「え?」

優「…その、聖夜さんとルナが二人っていうのが…」

ルナ「…」

ルナは察した。
つまり優は、自分が留奈にとられてしまうのではないかと心配しているのだろう。
そんな事は絶対にあり得ないが。

少し考えた後、ルナはそっと優にキスした。

優「…へ?」

優が呆けた顔をする。
ルナは優しく声をかけた。

ルナ「心配ないよ。俺が好きなのは、俺の世界でも、この世界でも、どの世界だろうと、優だけだから。」

優「…」

優はしばらくぼーっとしていたが、次の瞬間、顔を真っ赤にして走り去ってしまった。

留奈「やるじゃないか。」

留奈がニヤニヤしながら言う。

ルナ「留奈が邪魔してこないのが、俺は意外だったけどな。」

ルナは嘆息しながら答えた。

留奈「ふざけられるかどうかくらい、ちゃんと空気を読むさ。」

ルナ「…そうだな。」

留奈がその辺を弁えていることくらい、ルナは知っている。

留奈「ちなみに、前の世界で五城とキスした事は?」

ルナ「…多分、ないな。」

留奈「五城もまさか別の世界の自分に、恋人のファーストキスを奪われるとは考えもしなかっただろうな。」

留奈は笑った。

留奈「さ、邪魔物は消えた。思う存分愛し合おう、ルナ。」

ルナ「もう死ぬまで黙ってたらどうだ?」


誰一人いない街を、一台のジープが走っていた。
その後ろを一台の車が追跡している。

???「そろそろ逃げるのも限界なんじゃないか?」

細身で長身の男、志村 菱一が、隣で運転している気怠そうな女、旗郷 錦(はたざと にしき)に問う。

錦「って志村が言ってるんだけどー?リーダー。」

???「何、少し作戦があってな。」

リーダーと呼ばれた男、喜多川 豊(きたがわ ゆたか)は簡単に答えた。
その言葉に、筋肉質の男、岩肌 陽射(いわはだ ひざし)が反応する。

陽射「反乱軍の連中も巻き込もうって魂胆だろ?久しぶりに戦えそうだな。」

陽射はそう言いながら、身体をほぐすように動いた。

???「ちょっと…むさいから動かないでよ…」

その隣に座っていた、生気を失いかけている女、稲盛 南が力なく声をあげる。

菱一「大丈夫か?、変態。」

南「アンタ目ぇ腐ってんじゃないの…」

豊「大丈夫じゃなさそうだな。」

南「分かってるならオッサンは話かけないでよ…はぁ、女の子成分が足りない…」

錦「大丈夫ー?南。」

南「オバサンも話かけないで。」

錦「ふざけんな私はまだ22だ!!」

菱一「おいキレるなよ、事故るぞ。それと南、俺だってまだ24だ。」

南「私は年下が好きなの…はぁ、もうすぐ私も二十代か…」

陽射「二十歳以上はいいぞ。なんてったって酒が呑める。」

錦「煙草も吸える。」

豊「車も運転出来る。」

南「この世界に法律なんてもうないでしょ…」

カーチェイスという緊迫した状況の筈が、ジープの中の空気は緩みきっていた。


ルナは今、留奈と共に基地の掃除をしている。
レナと雪菜は洗濯物を干している。

ルナ「掃除機かけ終わった。」

留奈「私もはたき終わった。」

ルナ「残りは…風呂とトイレと洗面所か。」

留奈「私は風呂を洗う。」

ルナ「分かった。じゃあ俺がトイレ掃除だ。」

そうして二人が動き出そうとしたとき、ベランダを勢い良く開けてレナ達が飛び出してきた。

レナ「大変、奴らが来た。」

ルナ「…奴ら?」

雪菜「レナさん、聖夜くん達は知りませんよ。」

雪菜はそう言うと、ルナの方を向く。

雪菜「『酸い葡萄の狐(命名、宙)』、という、盗賊団の様な連中です。物はあまり盗みませんが、自分達の快楽の為に他人を傷つけるんです。」

ルナ「この世界にもそんなのがいるのか…まぁ、当たり前か。」

レナ「騎兵隊も一緒にいるから、多分、私達を戦闘に巻き込もうって魂胆だと思う。」

留奈「…つまり、私達にそいつらと戦ってこいと言うんだな。」

留奈は纏める様に言った。

雪菜「私も行きます。」

ルナ「…そうですね。人数は多い方が良いかもしれない。」

留奈「とにかく行くぞ。ここで私達の株を上げれば、少しは居心地が良くなるかもしれないからな。」

留奈はそう言うと、玄関を飛び出していく。

ルナ「え、ちょ、待てよ。」

雪菜「あ、待ってください、聖夜さん。」

ルナと雪菜も後に続いた。

レナ「三人共!気をつけてね!!」

レナは小さくなっていく三人の背中に叫んだ。


優達は闇市の本部にいた。
そこで、宙と主催者の一人である微風 ひよりが話している。

ひより「来て下さってありがとうございます。本日も頼みます。」

宙「任しといてよ!」

宙はドンッと自分の胸を叩いた。

ひより「それでは、特殊警察が現れるまでは、ゆっくりと見て回って…」

ひよりがそう言った瞬間、警報が鳴り響いた。

『南西の方角、特殊警察確認!こちらに迫っています!』

アナウンスがけたたましく流れる。

ひより「…頂く暇はないようです。」

宙「みたいだね。」

宙は笑うと、優達の前に行った。

宙「というわけで、早速仕事だよ。最初に南西のマーカーに辿り着いた人が勝ち!よーい、ドンッ!」

宙は叫ぶやいなや走り出す。

礼「おい待てよリーダー!」

礼も叫びながら追いかける。

真美「何度やっても、この雰囲気は緊張する…」

恋「肩の力抜けよ、真美。行くぞ、善也。」

善也「はい、姉さん。」

それに真美と恋と善也も続く。

優「…よし!」

優も気合いを入れると、五人を追いかけて走り出した。


ジープと車を降りて、酸い葡萄の狐と騎兵隊が睨み合っている。

???「大人しく投降しろ、犯罪者五人組。」

騎兵隊第三小隊の隊長である青年、蔵森 樹心(くらもり きごころ)が言った。

豊「まぁ、そう焦るなよ騎兵隊さん。もう少しで面白い事になるんだから。」

???「面白い事…ですか…?」

豊の言葉に、騎兵隊第三小隊の紅一点、天雲 遊(あまぐも あそび)が反応する。
と、同時に留奈が現場に到着した。

留奈「タイミングはバッチリだったみたいだな。」

続けて、雪菜とルナも到着する。

雪菜「はぁ…はぁ…あ、お久しぶりです、蔵森さん。」

???「…面白い事って、反乱軍の連中の事か…」

騎兵隊員の一人でスラリとした男、烏山 夏彦(からすやま なつひこ)が溜息をついた。

留奈「見ろ、ルナ。知ってる顔がいるぞ。」

ルナ「へ?…なっ、志村!」

ルナは思わず叫ぶ。

錦「お知り合い?」

菱一「あんなガキ知らねぇよ。」

そんな菱一の台詞と共に、反乱軍と騎兵隊のコンビが酸い葡萄の狐と対峙した。

ルナ「今更だが、反乱軍と騎兵隊が手を組むのって普通なのか…」

遊「この世界では普通ですね。」

ルナの溜息混じりの呟きに、遊が律義に答えた。


宙達は八体のインベスと対峙していた。
この程度の数、普通なら直ぐに片が付くはずだ。
が、今回はそうでもないらしい。

恋「おい。あいつら、戦極ドライバー着けてるぞ。」

善也「精鋭部隊ですね。でも、隊を組んで現れたのは初めてです…」

優「それってさ、ちょっとヤバくない?」

優がそう言った直後、インベス達がロックシードを取り出した。
それを自分達の口に運ぼうとし…ブンブンと首を振ってから、ロックシードを前方に構える。

礼「…なんか可愛いな。」

真美「そうかな?普通に気持ち悪いと思うけど。」

インベス達が、ロックシードを解錠する。

『『コメ』』

コメ、という電子音生が何重にも重なって聞こえた後、インベス達の頭上に巨大な米粒が現れた。
彼らはロックシードを戦極ドライバーに装填、施錠する。

『『ロックオン』』

施錠音と待機音も、何倍にも大きく聞こえる。
そして、全員が同時にロックシードを斬った。

『『ソイヤッ』』

上空に浮かぶ八つの米粒が、一気にインベス達の頭に刺さる。

『『コメアームズ』』

それぞれの米粒が、シンクロして鎧に変形した。

『『出陣 ウェルカム!』』


白いスーツに白い鎧、そして白い武器。
和風の鎧の形をしたそれは、同じ和風の鎧であるオレンジ鎧に比べて貧弱だ。
武器はそれぞれ違い、刀が二人、薙刀が二人、短刀、槍、弓、拳銃となっている。
足軽の様なその姿は「質より量」を身体で表していた。

仮面ライダー兵凱 コメアームズ


宙「それじゃ、ボク達もいくよ!」

宙は戦極ドライバーを装着し、ロックシードを解錠する。

『パンプキン』

解錠音と共に、巨大なカボチャが頭上に現れた。
オレンジ色で、つり上がった目と三角形の鼻、ギザギザに開いた口から光が漏れている。
つまり、大きなジャック・オー・ランタンだった。

『ロックオン』

施錠音が鳴り、ファンファーレの様な待機音が鳴り始める。

宙「変身!」

彼は叫ぶと、ロックシードを斬った。

『カモン!』

カボチャが宙の頭に刺さる。
そして次の瞬間、ジャック・オー・ランタンの顔の光が消え、カボチャも緑に変色した。

『パンプキンアームズ』

そして鎧が展開する。
他の鎧に比べ、複雑な変形だ。

『仰天!サプライズカーニバル!』

宙「痛くても文句言うなよ!」

変身完了と共に、彼はインベス達に向かって叫んだ。


恋「善也、アタシ達もいくぞ!」

善也「はい、姉さん。」

恋と善也も戦極ドライバーを装着する。
恋がポケットから、施錠部で二つが繋がったロックシードを取り出した。
片方を恋が、片方を善也が掴み、同時に解錠する。

『サクランボ』
『サクランボ』

解錠することで、初めて二つのロックシードをそれぞれが使用出来るようになるのだ。
現れた二つの鮮やかな赤色のサクランボの下で、二人は同時にロックシードを施錠する。

『ロックオン』
『ロックオン』

和風の待機音が両方からステレオで流れる。

恋「変身!」
善也「変身。」

恋と善也の声がハモり、ロックシードが斬り開かれた。

『ソイヤッ』
『ソイヤッ』

そしてサクランボが、二人の頭に突き刺さる。

『サクランボアームズ』
『サクランボアームズ』

それぞれのサクランボが展開し、同じ形の鎧に変形した。

『共鳴!ダブルビート』
『共振!ダブルビート』


恋が変身した姿は、真紅のスーツに赤い鎧。
和風のシルエットに、左腕に焔のエンブレムがついている。
ツインアイの仮面。
更に、手にはまるで火柱の様な大剣、爆裂刀剣 スカーレットセイバーを握っていた。

仮面ライダー双炎 サクランボアームズ


対して善也の変身した姿は、深海を連想させる落ち着いた碧のスーツ。
赤い鎧とシルエットは双炎と良く似ており、右腕に水のエンブレムがついている。
複眼の仮面。
加えて、両手に滝の様にしなやかな双剣、激流双剣 ターコイズセイバーを握りしめていた。

仮面ライダー双水 サクランボアームズ


同じロックシードで変身する二人のライダー。
二人で戦うことで、何者にも勝る最高のコンビネーションを披露する。


礼「見せてやるよ、俺の変身を。」

真美「私もいるよ。」

礼と真美も戦極ドライバーを装着し、ロックシードを構えていた。

『ドングリ』
『ザクロ』

二人の頭上に、ドングリとザクロが浮遊する。

『ロックオン』
『ロックオン』

ファンファーレの様な待機音と、和風の待機音が混じり合った。

礼「変身!」
真美「変身。」

そして同時にロックシードが斬られる。

『カモン!』
『ソイヤッ』

ドングリとザクロが、それぞれの頭に刺さった。

『ドングリアームズ』
『ザクロアームズ』

見慣れた鎧の変形が行われ、変身が完了する。

『ネバーギブアップ』
『鮮血 バージンロード』


礼の変身した姿は、茶色のスーツに茶色の鎧。
仮面と鎧の形状から、中世ローマの騎士を思わせる姿だ。
手に持ったハンマー、ドンカチは、トンカチと言うには小さく、まるで小槌の様だった。

仮面ライダーグリドン ドングリアームズ

真美の変身した姿は、朱色のスーツに鮮やかな紅色の鎧。
顔はまるで花嫁衣装のように覆われているが、覗く角と長めの牙、そして眼光が鋭く光っていた。
薙刀、紅石榴を構え、白い振袖の様な部分には隠し武装、種子島が忍ばせられている。
朱色の身体全体に、まるで返り血の様な、華麗な白い花びらの模様が舞っていた。

仮面ライダー紅姫 ザクロアームズ


優「…いくよ。」

優はそう呟くと、戦極ドライバーを装着した。
顔の横でロックシードを構える。

優「変身。」

彼女は静かにそう言うと、ロックシードを解錠した。

『バナナ』

優の頭上に巨大なバナナが現れる。
彼女はクルリと手の中でロックシードを回すと、戦極ドライバーに装填し施錠した。

『ロックオン』

施錠音、そしてファンファーレの様な待機音が流れる。
優は戦極ドライバーを操作し、ロックシードを斬った。

『カモン!』

彼女の頭にバナナが刺さる。

『バナナアームズ』

そして展開、鎧に変化した。

『ナイト オブ スピアー』


赤と銀のスーツに、金と銀の鎧。
肩の鎧はとび出ており、角のついた兜がとても攻撃的な印象を与える。
右手に持つ金色の縁が付いた槍、バナスピアーは、まるで装飾品の様に、白く高貴な輝きを放っていた。
西洋の騎士のようなその姿は、どこか優雅な美しさを感じさせる。

仮面ライダーバロン バナナアームズ


全員の変身が完了したのを見て、宙は一歩前に出た。

宙「役者は揃った!ミッションスタート!」

彼の宣言と共に、戦いの火蓋が斬って落とされた。


雪菜は錦と対峙していた。
二人とも既に戦極ドライバーを装着し、ロックシードを手に持っている。

錦「あら、中々可愛いじゃない。私よりも南の相手をしてあげたら?」

雪菜「残念ですけど、私は爪の餌食にも爆弾の餌食にもなる気はありません。」

雪菜は凛とした口調で言うと、ロックシードを解錠した。

『モモ』

解錠音と共に、頭上に大きなモモが現れる。
そのまま、戦極ドライバーにロックシードを装填した。

『ロックオン』

錦「大きなモモねー。桃太郎でも産まれるのかしら?」

雪菜「生まれるのはアーマードライダーです…変身。」

『ソイヤッ』

雪菜がロックシードを斬り、巨大なモモが彼女に刺さった。

『モモアームズ』

それが和風の鎧へと変形する。

『一刀両断!インパルス!』


薄いピンクの差し色が入った、薄い青色のスーツ。
それに桃色の鎧が被さり、鎧武者の様なシルエットを作っている。
左目に切り傷がついた仮面と、右手に持った太刀、モモ一文字が特徴的な姿だった。

仮面ライダー時雨 モモアームズ


錦「いいわねぇ…面白くなりそう。」

錦もそう言いながら、ロックシードを解錠する。

『カキ』

彼女はロックシードを、ウットリとした顔で撫でた。

錦「変身。」

そしてそれを戦極ドライバーに施錠する。

『ロックオン』

中華風の待機音が流れ始める。
それをしばらく聞くと、錦は戦極ドライバーを操作した。

『ハイーッ』

橙に熟したカキが、彼女の頭に突き刺さる。

『カキアームズ』

それが魚鱗甲の形に変形した。

『極彩弾!ボム!ボム!ボム!』


橙色の鎧とスーツに、白いポイントカラーが輝いていた。
仮面の形は中華風だが、目はまるでワニの様に鋭く、赤いラインが何重にも血走った様に光っている。
手榴爆弾型の武器、カキ極彩弾は、今はまだ何処にも見当たらない。
頭頂部に付いたカキのヘタの様な飾りは、彼女なりのチャームポイントなのだろうか。

仮面ライダー李呪 カキアームズ


錦「悪いけど、私は今イライラしてるの。手加減はしないわよ?」

雪菜「オバサンとでも言われたんですか?」

錦「…いいわよ。お望み通りに殺してあげる。」

錦にフッと危険な炎が灯る。
「地雷は踏み抜く」のが雪菜のスタイルだ。


陽射と夏彦は、お互いに睨み合いながら身体を解していた。
二人共無言で戦極ドライバーを装着し、ロックシードを解錠する。

『ナシ』
『ペッパー』

それぞれの頭上に、巨大なナシ、巨大なコショウと小さな大量のコショウ群が出現した。
ロックシードを同時に施錠する。

『ロックオン』
『ロックオン』

陽射の戦極ドライバーからはファンファーレの様な待機音が、夏彦の戦極ドライバーからはロック調の待機音が流れ始めた。

陽射「変身!」
夏彦「変身。」

『カモン!』

二人が戦極ドライバーを操作する。
ナシが陽射の頭に、巨大なコショウが夏彦の頭に刺さった。

『ナシアームズ』
『ペッパーアームズ』

ナシが展開し、陽射の鎧となる。
小さなコショウが夏彦の上半身に次々とくっ付き、それぞれが展開していく。
最後に、彼の頭に刺さったコショウが展開した。

『Muscle Champion!』
『ネクストジェノサイド』


陽射が変身した姿は、光沢のある黄褐色に金の差し色が入ったスーツ。
スーツと同色の鎧は、筋肉質な古代ギリシア風の形だ。
両腕に装着された、洋梨を半分にした様な形状の盾、ナシールドが目を引く。
全身に粒々が散りばめられており、仮面には孔雀の様な鶏冠があしらわれていた。

仮面ライダーアイアス ナシアームズ


夏彦が変身した姿は、黒いスーツに黒い鎧。
夕焼けの如き赤色に、傷痕を連想させる白が見える。
仮面にも、赤と黒の同じ様な模様が折り重なっていた。
重装甲に弾丸をホールドするベルトが巻かれ、両腕にはブラック、ホワイトと呼ばれるガトリング、四肢には怪しげなコンテナが装着されている。

仮面ライダーアンビシャス ペッパーアームズ


陽射「久々の戦闘なんだ、ガッカリさせるなよ?」

夏彦「そっちこそ、アッサリ終わらせるんじゃねぇぞ。」

敵同士でありながら、二人の考えている事は全く同じだった。


南「可愛い…」

戦極ドライバーを装着した南は、恍惚とした表情を浮かべていた。

留奈「…気持ち悪いな…」

それを見て、同じく戦極ドライバーを装着した留奈は、思わず本音を漏らしてしまう。

南「ねぇ、貴方の名前は?年齢はいくつ?スリーサイズは?」

留奈「教える義理はない。知りたければ、直接測ったらどうだ?」

南「分かった、そうさせてもらうね。」

南はニコニコと笑いながら、ロックシードを取り出し解錠した。

『ババコ』

空中に縦長のババコが現れる。
彼女はロックシードを施錠した。

『ロックオン』

流れ出す和風の待機音。
南にはそれが、これから起こる楽しい事を待つドラムロールの様に聞こえていた。

南「変身!」

彼女は楽しそうな声で叫び、ロックシードを斬る。

『ソイヤッ』

南の頭に、ババコが突き刺さる。

『ババコアームズ』

それが展開し、忍者の様な華奢な鎧に変形した。

『瞬間 スラッシュ』


薄い青をメインカラーとし、黒いラインの入った濃い黄色が目を引くスーツ。
それにババコが変形した美しい鎧が着けられていた。
左腕には、そのシルエットに似合わない程アンバランスな大きさの爪、ザンバコウが付いている。
その鎌の様に鋭い爪は、見る者に本能的な恐怖を与えるだろう。

仮面ライダードゥーエス ババコアームズ


留奈「まさか本気で私と戦う気か…?」

留奈は溜息をつくと、ロックシードを取り出す。

『ブラッドオレンジ』

ロックシードを解錠すると、彼女の頭上に真っ赤なオレンジが現れた。

『ロックオン』

戦極ドライバーに施錠すると、ロック調の待機音が流れ始める。

留奈「変身。」

留奈はそう言うと、躊躇いなくロックシードを斬り開いた。

『ブラッドオレンジアームズ』

彼女の頭に刺さったブラッドオレンジが、甲冑に変形する。
鎧として装着されると、黒いツタの様な模様が浮かび上がった。

『邪ノ道 オンステージ』

留奈「最初に警告しておくが、お前に私は倒せない。」

南「いい…すごくいい…強がってる貴方が…悲鳴を上げるところを想像するだけで…もう…私…はぁ…」

留奈「…」

南の言葉に、留奈は不快感のあまり絶句してしまった。


樹心「いくぞ、天雲。」

遊「はい、隊長。」

豊と対峙した樹心と遊は、相手に敵意を向けながらロックシードを解錠する。

『カシューナッツ』
『カシス』

それを既に装着していた戦極ドライバーに装填、施錠する。

『ロックオン』
『ロックオン』

待機音の発生と同時に、カシューナッツとカシスが現れた。

樹心「変身。」
遊「…変身!」

『ソイヤッ』
『ソイヤッ』

ロックシードが斬られ、カシューナッツとカシスが突き刺さる。

『カシューナッツアームズ』
『カシスアームズ』

そしてそれぞれが変形し、二人をアーマードライダーに変えた。

『トラップ オブ ヒット』
『全力!ライジング! 』

樹心が変身した姿は、忍者の様な鎧を着けた鋭利な身体。
濃黄のアクセントカラーに、金色のブーメラン、カシューラッシュが装着されていた。
ツインアイの仮面にも、ブーメランが付いている。
見るからに素早く動きそうなその姿は、正に現代に生まれた忍者だった。

仮面ライダークイック カシューナッツアームズ


遊が変身した姿は、紫の差し色が目を引く水色のスーツ。
そこに光の当たり方によって、真紅、群青、暗紫、そして漆黒に色を変える鎧に身を包んでいた。
カシスの持つ独特の色合いが、彼女を美しく輝かせる。
少しメカニックな和風の鎧に、両手には武器の二挺拳銃、紫電一号、紫電二号を構えていた。

仮面ライダー紫電 カシスアームズ


豊「なるほど。中々面白くなりそうだね。」

豊はそう独りごちると、ロックシードを構えた。

『スターフルーツ』

頭上にスターフルーツが現れる。
無論、星型ではないが。

『ロックオン』

ロックシードを施錠すると、中華風の待機音が流れ始めた。

豊「久しぶりの…変身。」

『ハイーッ』

戦極ドライバーを操作し、スターフルーツを自分に刺す。

『スターフルーツアームズ』

それが特徴的な変形をして鎧となった。

『征服 スターロード』


白いスーツに輝く、夜空の星の如き金色。
そこに武術家の様な、黄色い中華風の鎧が被さっていた。
武器は見当たらないが、頭部に一角獣の角が生えている。
そして両手の手甲内に、ペガサスの翼を模した刃が隠されているのだ。

仮面ライダー征馬 スターフルーツアームズ


豊「さて、鬼ごっこの決着をつけようか。」

樹心「そうだな。鬼に捕まってお前はお終いだ。」

豊「鬼に捕まると、今度はこっちが鬼になる事を忘れていないか?」

樹心と豊は戯言を交わし合うが、その目には一切の油断が無かった。


『ドリアン』

菱一は戦極ドライバーを装着し、ロックシードを解錠した。
そのまま戦極ドライバーに施錠、ロック調の待機音が流れ出す。

『ロックオン』

菱一「俺は…」
ルナ「気に入った女以外は殺さないんだろ?」

菱一「…そうだ、そして…」
ルナ「男を傷つけるのは大好きなんだよな。」

菱一「…」

菱一は少し驚いた顔をすると、戦極ドライバーを操作した。

菱一「へ…」
ルナ「変身。」

菱一「…」

『ドリアンアームズ』

ドリアンが彼の頭に刺さり、刺々しい鎧に変化する。

『ミスター デンジャラス』


全身から生えているトゲが、ワニやイグアナ、リザードを彷彿とさせる。
金色に光るつり上がった目は、獲物を狙う捕食者の目だ。
緑と紫の毒々しいグラデーションのスーツは、危険な美しさを感じさせる。
そして両手に持ったノコギリ、ドリノコが、彼の恐ろしさを増大させていた。

仮面ライダーブラーボ ドリアンアームズ


菱一が変身している間に、ルナも戦極ドライバーを装着し、ロックシードを構えていた。

『オレンジ』

彼の頭上に、巨大なオレンジが出現する。

『ロックオン』

ルナ「変身。」

『ソイヤッ』

戦極ドライバーに施錠し、和風の待機音を聞くことなくロックシードを斬った。

『オレンジアームズ』

そして、オレンジが甲冑へと形を変える。

『花道 オンステージ』

菱一「始めようか…」
ルナ「破壊と暴力のパジェントを。」

菱一「…ふざけるのもいい加減にしろよクソガキ…!」

自らの決め台詞まで盗られた菱一の目は、殺意に染まっていた。

- 幕間 その4 -


誠二はある確信を持って、DrupeRsから一歩も動いていなかった。
そのうち、目的の人物がくる。

奈々「おはようございまーす。」

誠二はタイミングを見計らって、奈々に話しかけた。

誠二「ナナちゃん。」

奈々「ん?どしたの鷹磐くん。」

誠二「五日前、ルナと聖夜 留奈が髭面の男と話してたよな?断片的でもいい、どんな話をしていたか分からないか?」

奈々「五日前…じゃあ『シスコンじゃねぇ!』て叫んでたときかな?」

誠二は思わず笑ってしまった。

誠二「それだ。何か受け取ったりとかしてなかった?」

奈々「なんかね…新しいロックシードの実験を頼まれてたはずだよ。間違いない。」

誠二「本当?」

奈々「うん。アーマードライダーの中で一番成長しているって言われてたのを憶えてるから。」

誠二「…そうか。ありがとさん。」

アーマードライダーとして成長しているのが良い事なのかどうかは、今の誠二には分からない。
が、今考えるべきなのは、その実験が何を引き起こしたのか調べることだった。

彼は伝票を掴むと立ち上がる。

誠二「お会計、お願い。」

奈々「はーい。」

誠二は支払いを済ませると、DrupeRsを後にした。
ケータイを取り出し、優にかける。

誠二「五城 優、頼みがある。デザインチャイルドのところに着いたら、工場付近でロックシード関係のエネルギー流動がなかったか確認してくれ。」

次にカイトの電話番号を呼び出す。

誠二「九門 カイト、今からそっちに向かう。情報交換は、俺がそっちに着いてからにしよう。」

- 第四章 : 砕けた世界 -


拳銃と弓をあつかう二体のインベスを、宙は独りで相手取っていた。

宙「精鋭部隊って言うだけあるね。結構強いじゃん!」

宙は楽しそうな声を出すが、内心では様々な作戦を立てていた。

こいつらの装甲は硬い。
その上インベス本体の耐久力も合わさってる。
このままカーニバルガンガーンだけで対処するのは、あまり得策じゃない…

宙はフィスティバルタイホーンを当てる為に、後ろへ跳んで距離をとる。
しかし、インベス達はここぞとばかりに反撃に移った。

宙「おっと!それは当たらないよ!!」

宙は軽やかなステップを踏み、インベス達の攻撃を避ける。
その楽しそうな笑顔の裏では、唇を噛んでいた。

このままじゃフィスティバルタイホーンを当てられない…
なんとか武器を落とさせないと。

宙は再びカーニバルガンガーンを構え、インベス二体に連射した。


錦は激しく動き回っている。
対して、雪菜は一歩も動いていない。
いや、動けないのだ。

錦は次々とカキ極彩弾を投げ続ける。
雪菜はモモ一文字を使い、それを居合い切りの要領で全て斬り落としていた。

錦「面倒ねー、私と相性最悪。あなた、やっぱり南の相手しなさいよ。」

雪菜「同感です。私も、何故貴方と対峙してしまったのか甚だ疑問です。」

雪菜は基本的にはヒット アンド アウェイ戦法で戦う。
そのため、このように近づけない相手は苦手だ。

このままの状態が続けば、自分の敗北は時間の問題だろう。
こうなれば…
雪菜は意を決して前に跳んだ。


恋「おら!おらおらおらおらおら!!」

恋は短刀を持ったインベスの身体を連続で殴りつけていた。
「攻撃は最大の防御」を体現させている。

善也「姉さん、武器を使ってください。僕の手が痛いです。」

善也はターコイズセイバーを使い、薙刀を使うインベスと戦っていた。

恋と善也が変身したアーマードライダーは、他のものと違う箇所がある。
テレパシーを扱う事ができ、更にお互いの距離が近い程高い性能を発揮できる。
ただし、ダメージも共有されてしまうという欠点もある。

恋「そうだな。こいつら硬いし、アレを使うか。」

恋は素直に殴るのをやめると、今度はスカーレットセイバーをバットの様に振った。
それは見事にインベスの腹部に直撃、深い斬撃と共に、インベスを遠くへと吹き飛ばす。

善也は薙刀を掴むと、それを持っているインベスの手を下から蹴り上げた。
そして薙刀を投げ捨てると、再びターコイズセイバーによる連続斬撃を繰り出す。
武器を持たない今のインベスに、反撃する事は不可能だった。


夏彦は無表情のまま驚いていた。
対峙している陽射というこの男は、今まで対峙してきたどの相手よりも硬い。
ビームも、弾丸も、ミサイルでさえ、彼のナシールドを破壊できなかった。

陽射は両腕のナシールドを構えたまま、全速力で夏彦に近づく。
そして強力なパンチを放った。

陽射のパンチがもたらしたであろうダメージは、全て鎧に吸収された。
だが、衝撃は身体に伝わってくる。
夏彦はハンドアックスを取り出すと、陽射に向かって思い切り振り下ろした。

陽射は咄嗟に左腕のナシールドでガードすると、夏彦の胴に蹴りを放つ。
だがそれすらも、彼を怯ませる事は出来なかった。

ひたすらに繰り出される二人の四肢。
彼らの戦闘には、一切の言葉がなかった。


礼「やべぇ、近づけねぇ…っと!危ね!」

礼は突き出された槍を咄嗟に避けると、体制を立て直した。
彼の持つドンカチでは、槍を武器にするインベスに上手く攻撃出来ない。

礼「全く、なんでよりによってこんな奴と!」

礼は叫ぶと、腰を低くして走り出した。
肩の鎧を使い、インベスに強力なタックルをかます。
が、その衝撃は完全に吸収されてしまった。

礼「マジかよ…でも諦めねぇ!ネバーギブアップだ!!」

近づいたことで、槍の攻撃を受け難くなった。
勝負をここで決める!とばかりに、インベスの頭をドンカチで殴る。
連続で三回殴ったところで、彼はインベスに腕で弾き飛ばされてしまった。

礼「インベスって、頭殴られても気絶しないのかよ…」

礼は苦そうに呟くと、再び槍の回避行動に戻った。


倒れている南を、留奈は立ったまま片足で踏みつけていた。

勝敗はすぐに着いた。
勝負開始直後、南がザンバコウを構え留奈の方に跳ぶ。
でも、それだけ。
それからは、ずっと留奈のターンだった。

目にも留まらぬスピードで跳んできた南に対し、留奈はなんでもないかの様に膝蹴りを見舞った。
彼女の鳩尾に深く入ったそれに続いて、大橙丸と無双セイバーで連撃。
彼女に反撃する暇を与えないまま、留奈はとどめに無双セイバーからエネルギー弾を発射、零距離で額を撃ち抜いた。

そして今に至る。
しかし南に「悔しさ」は全くなかった。
変わりに支配しているのは「快感」だ。

南「年下の女の子に傷つけられるのが…こんなにも素晴らしいものだったなんて…」

留奈「…」

南「あうっ!」

留奈の全身に鳥肌が立ち、冷汗が噴き出る。
彼女は思わず、南を思い切り蹴り飛ばしてしまった。

留奈は気持ち悪さを無理矢理拭おうと、援護が必要な味方を捜した。


真美は紅石榴を使い、インベスの刀を叩き落とす。
そのまま紅石榴を突き出し、インベスを後ろへと突き飛ばした。

真美「そうだ、アレ使ってみよう…」

真美は懐から別のロックシードを取り出した。

『ヘビイチゴ』

解錠すると、装備されていたザクロの鎧が消える。
代わりに、頭上に大きなヘビイチゴが現れた。

『ロックオン』

ロックシードを施錠すると、和風の待機音が鳴り始める。
彼女は戦極ドライバーを操作し、ロックシードを斬った。

『ソイヤッ』

ヘビイチゴが頭に刺さる。

『ヘビイチゴアームズ』

それが展開、新たな鎧に変形した。

『シャシャーと スネイク』


ザクロアームズよりも華奢な鎧は、薄紅色に緑色が光る。
頭部はザクロアームズと同じく花嫁衣装に似ているが、錦帽子の様な形に変化し角も見えていない。
手には新たな武器である鞭、苺蛇鞭が現れた。
苺蛇鞭の先にはヘビイチゴの様な突起が付いており、毒蛇の牙の様な刃も内蔵されている。

仮面ライダー紅姫 ヘビイチゴアームズ


真美「新しいロックシードの力、見せてあげる。」

真美は両手で苺蛇鞭を伸ばすと、それを右手で振った。


樹心は豊を睨みながら、遊に耳打ちした。

樹心「志村と戦ってる男を援護してやれ。あいつを独りで倒すのは、難しいだろうからな。」

遊「分かりました。」

彼女は答えると、ルナの方へと走って行く。

豊「おや、独りで俺と戦うのか?」

樹心「随分と自分の力を過信しているようだな。」

豊「戦ってみれば分かるさ。」

豊はそう言うと、人差し指を曲げ伸ばし挑発した。

樹心は上空高くに飛び上がると、両腕のカシューラッシュを投げた。
豊はそれを苦もなく平手で弾く。
樹心は彼の背後に降りると、素早く拳を突き出した。

豊は樹心の拳を右手で受け止め、再び跳んできたカシューラッシュを脚で弾く。
もう一つのカシューラッシュを左手で掴むと、それを彼に向かって振り下ろした。

樹心は振り下ろされたカシューラッシュを、肩のカシューラッシュを展開して受けた。
更に右脚のカシューラッシュを解放、鋭利な刃を纏った蹴りを放つ。

豊はそれをジャンプして避ける。
そのまま後ろに跳び、再び距離を取った。
樹心も、四つのカシューラッシュを待機状態に戻す。

「騎兵隊」のリーダーと「酸い葡萄の狐」のリーダー。
直接対決の行方は、未だ知れない。


優は二人のインベスを相手取っていた。

刀と薙刀の攻撃を避け、バナスピアーを横に振る。
二人のインベスの身体が同時に吹き飛んだ。
更に片方のインベスにバナスピアーを突き出して追撃、もう一人には背中向きに回転し、重い回し蹴りを見舞う。

ルナが現れた今、無様に負けることは(自分としては)許されない。
優は普段の倍以上の力を発揮していた。

優「はぁ!」

彼女の攻撃は続く。
実は今のところ、彼女が受けたダメージはゼロだ。
優の中のルナという存在は、それ程までに大きなものだった。


そしてこちらも、今までに受けたダメージは、相手と比べてとても少なかった。
ルナはひょいひょいと菱一の攻撃を避け、大橙丸でカウンター攻撃を放っている。

菱一はイライラしていた。
自分の攻撃が全てよまれている。
しかも初対面の相手にだ。

菱一「なんなんだ、お前…なんなんだ!?」

ルナ「別に、なんでも。ただ…」

ルナは含みを持たせてから言った。

ルナ「…お前にとっては初対面でも、こっちは二回もお前と戦ってるんだよ。」

ルナは知っていた。
菱一はイライラするに比例して、攻撃が単純化する。
最初に彼の台詞を盗りまくったのも、全て作戦の内だった。

そして、ルナに勝機が訪れる。
イライラが頂点に達した菱一が、戦極ドライバーを操作したのだ。

『ドリアン スパーキング』

菱一「死ね、このクソガキがぁぁぁああああああ!!!」

菱一がドリノコを構えて走ってくる。
それが振り下ろされた瞬間、ルナはドリノコを踏台にして跳んだ。

菱一の顔が驚愕に染まる。
仮面越しの為、ルナには見えないが。

『オレンジ スカッシュ』

ルナ「お前の負けだ、志村!」

ルナは重力に乗り、大橙丸を思い切り突き出す。
強力なエネルギーを纏った大橙丸は、見事に菱一の戦極ドライバーを貫いた。

菱一「嘘だ…俺が…この俺が…こんな奴に…」

菱一の変身が強制解除される。
飛び出したドリアンロックシードを、ルナは左手で受け止めた。
菱一は膝から崩れ落ち、そのまま気絶してしまう。

ルナ「…この志村が弱かったのか、それとも俺が強くなったのか…」

遊「…すごいです。」

いつの間にか、後ろに遊が立っていた。

遊「あの志村を…独りで倒すなんて…」

ルナ「…経験です。」

ルナは少し照れ臭くなりながら、辺りを見渡した。
次の敵を捜している事を察した遊が、彼に助言する。

遊「蔵森隊長を手伝いに行きましょう。えっと…」

ルナ「聖夜 ルナです。」

遊「聖夜さんですか。私は天雲 遊です。」

遊が菱一に手錠をかけ終えると、二人は樹心の手助けに向かった。


カーニバルガンガーンは、見事に二体のインベスの手に直撃した。
宙は武器を落としたインベスに向かって突撃する。
そして両手でそれぞれの胸ぐらを掴むと、身体を捻って思い切り放り投げた。

宙「飛んでけー!!」

二体のインベスは為す術もなく、後ろの方へと飛ぶ。
今しかない!

『パンプキン スパーキング』

両肩のフィスティバルタイホーンに、エネルギーが流れ込んだ。

宙「喰らえ!ボクの必殺技!!」

宙の叫びと同時に、エネルギーが射出される。
強力なそれは、インベス達に当たった瞬間に巨大な爆炎をあげた。

爆炎が消え、大地が姿を現す。
そこに残っているのは、壊れた戦極ドライバーだけだった。

宙「ふぅ…一件落着!」

宙は満足そうに呟いた。

本日はここまでにしたいと思います。

疑問、質問、提案等、いつでもお受けしております。
気になった点があれば、いつでもご指摘ください。


未だに果樹園と衝突していないなんて、自分で言うのも何ですが遅々として話が進んでいませんね。

乙でした
志村は実に哀れですなww後ババコも大体向こうと同じだったww
質問ですが、新しいライダー投稿は本編のスレにすればいいんですか?

>>56さん
アイデアは、本編スレ(3つ目)の方にお願いします。

志村とは本編で2回戦いましたし、もういいかなって思いまして。

ルナくんは志村の攻撃を回避しながら、横目で留奈の戦闘を見ていたという裏設定があります。
その関係で、ルナくんは南に有効な技をなんとなく覚えていました。
Chapter.5でルナくんが留奈と同じ攻撃をしたのは、この裏設定のせいなんです。

乙でしたー アンビシャスと征馬のACシリーズが欲しいよぉ・・・
大方勢力は出そろいましたけど、まだまだ登場ライダーいるんですよね。凄い楽しみっす。

乙です。

ルナ君に手玉にとられた志村ぇ…本編じゃすでに死んでるから劇場版にでられるだけまだましなほうかww

ラスボスの王武がどんぐらい強いのか気になるな

>>58さん
今回読んで頂いた戦闘描写でもそうなのですが、登場人数は多いのですが、そのせいで一人一人にスポットを当てている時間があまりないんです…

>>59さん
劇場版でザビーに戻れた矢車さんも、あっさりヘラクスに倒されますし。

ラスボス戦に関しては…まだ何も言えません。

インベスがアーマードライダーに変身するのわ予想外だったわ…むしろわざわざ変身させるよりロックシード食わせて強化させた方がいいような気もするけど。

>>62さん
世の中には、ツッコんではいけないことが山ほどあるんです。


こんばんは。
本日も始めていきたいと思います。

恋「そろそろ決めても大丈夫じゃないか?」

善也「…そうですね。『せーの』で決めましょう。」

恋「おっしゃ、来い!」

恋と善也は、戦極ドライバーに手を掛ける。

善也「せーの…」

そして善也の掛け声のあと、同時に戦極ドライバーを操作した。

『サクランボ オーレ』
『サクランボ スカッシュ』

恋「え?」
善也「え?」

恋「ここはオーレだろ!」

善也「スカッシュでしょう!」

そんな言い争いをしている間に、恋の脚に、そして善也のターコイズセイバーにエネルギーが流れ込む。

恋は助走をつけて飛び上がると、右脚を前に突き出した。
綺麗な飛び蹴りが、インベスに決まる。
インベスは、後ろに吹き飛びながら爆散した。

善也がターコイズセイバーを胸の中央でクロスさせる。
それをそのままインベスに突き刺すと、外側に開くように振り身体を引き裂いた。
インベスは一瞬屈み込む様な体制になり、そして爆散した。

恋「…やっぱここはオーレだったろ。」

善也「…スカッシュ以外なかったでしょう。」


礼「このままじゃ埒が明かねぇ。」

礼は呟くと、戦極ドライバーを操作した。

『ドングリ スパーキング』

ドンカチの真上に、巨大なドンカチを模したオーラが現れる。

礼「頼むぜ…決まってくれよ!」

礼は後ろに跳んで距離をとると、インベスの脳天にドンカチのオーラを思い切り振り下ろした。

偶然か、はたまた当たりどころが良かったのか。
インベスは次の瞬間、爆発して消えた。

礼「はぁ…危なかった。」

溜息をつくと共に、礼はその場に座り込んだ。


真美は始めてでありながら、苺蛇鞭を見事に使いこなしていた。
遠距離からの鞭打をした後、苺蛇鞭でインベスを捕らえて引き寄せる。
そして体制を崩したインベスを蹴り、再び後方へと吹き飛ばした。

真美「それじゃ、必殺技も試してみようかな。」

真美は軽い口調で言うと、戦極ドライバーを操作した。

『ヘビイチゴ スカッシュ』

苺蛇鞭を振り、インベスの首に巻きつける。
すると内蔵された刃が、インベスの首に刺さった。
苺蛇鞭の持ち手からエネルギーが放出され、複数の鞭先へと変化する。
それはまるで、メドゥーサの髪の毒蛇の様だ。

真美「名付けて、『毒蛇無双』だよ。」

薄紅色に光る複数の鞭先が、一斉にインベスへと叩きつけられる。
インベスは奇声を発しながら爆発し、壊れた戦極ドライバーだけがその場に残った。

真美「…綺麗だけど、もしかして結構エグい技?」

真美はインベスの事など忘れ、新しいロックシードに興味津々だった。

優はバナスピアーを構え、インベスを圧倒していた。
最初に戦っていたインベスの内、薙刀を使っていたインベスは、彼女にバナスピアーで滅多刺しにされ、今も爆炎をあげている。

優のラッシュは続く。
刀を持つインベスは反撃できず、その場に倒れた。
彼女は戦いを終わらせるため、戦極ドライバーを操作する。

『バナナ スカッシュ』

優「終わりだよ!」

優の繰り出したバナスピアーの一撃が、インベスの戦極ドライバーと胴体を貫く。
インベスはガードすらできず、彼女の目の前で爆炎をあげた。

優「終わった…良かった。」

優はそう言うと、変身を解除した。


錦「待ってました!」

雪菜「!!」

勝負を仕掛ける為、雪菜は前方に跳ぶ。
その瞬間、雪菜の足元が爆発した。

強烈な爆音と共に、雪菜のいるところが盛大な爆炎をあげている。
全て、錦に計算されていたのだ。

錦「可愛いあなたには、今の様な美しい散り様がふさわしいでしょ?」

錦は満足そうに微笑みながら、爆炎に背を向けて歩き出した。
勝利を確信した背中は、悠然と爆煙から離れていく。

『モモ スカッシュ』

錦「うなっ!!」

その背中に、爆炎の中から放たれた斬撃波が命中した。

雪菜「敵に背を向けるとは…一体何を考えているんですか?」

爆煙の中から、やられたはずの雪菜が現れた。

雪菜「いかがでした?私の一撃必殺、ムラサメスラッシュの直撃は。」

錦「嘘…どうして…」

錦は立ち上がりながら、後ろを振り返る。

錦「確かに今、私の仕掛けた罠が爆発したはず…」

雪菜「えぇ、確かに爆発しました…」

雪菜は、ハッキリとした口調で言った。

雪菜「私の背後で。」

彼女が前へ跳んだとき、確かに錦の罠が爆発した。
が、雪菜は既にその時、その罠の上を紙一重で通過していたのだ。

錦「予想以上ね…素晴らしいわ!」

雪菜がモモ一文字を構える。
錦と彼女が、再び対峙した。

錦「けど、一つだけ覚えておきなさい。」

雪菜「…?」

錦「あなたが戦っていたのは、私とだけかも知れないけど…」

そう言いながら、錦は戦極ドライバーを操作した。

『カキ スカッシュ』

錦「私は、あなた以外のアーマードライダーとも戦っていたの。」

ただひたすらに殴り合っていた夏彦と陽射の戦いに、変化が訪れた。
夏彦が陽射の胴を蹴り、後ろへ跳び上がる。

『ペッパー スカッシュ』

夏彦は両腕のガトリング、更に四肢に装備されたミサイルコンテナを展開した。
ビームを放射するホワイト、弾丸を射出するブラック、そしてミサイルを発射するコンテナ。
その全ての銃口が、陽射を捉える。

そして陽射も勝負に出た。

『ナシ スカッシュ』

陽射の両腕に、ナシの形状をしたエネルギーオーラが纏われる。
彼は夏彦に向かって走り出した。

夏彦「終わりだ、岩肌 陽射!」
陽射「喰らえ、アイアスブリーカー!」

二人の技がぶつかり合おうとした、その時。

『カキ スカッシュ』

彼らを激しい爆炎が包んだ。


樹心と豊の戦闘は、膠着状態にあった。
お互いに一歩も譲らず、相手の手の内を暴こうとしている。

『カシュー スカッシュ』

樹心が戦極ドライバーを操作し、全身のカシューラッシュを一気に解放した。
豊も戦極ドライバーを操作し、防御に入る。

『スターフルーツ スパーキング』

強力なバリアが豊を包み、全てのカシューラッシュを弾く。
…はずだった。

『オレンジ オーレ』
『カシス オーレ』

ルナ「喰らえ!!」
遊「はぁ!!」

豊「!」

バリアが張られる直前、豊の背中に衝撃が走った。
ルナのオレンジ色のエネルギーを纏ったキックと、遊の紫電を纏ったキックのダブルキックが炸裂したからだ。

そのせいで、バリアの展開が遅れる。
豊の身体を、全方向から飛んできたカシューラッシュが斬り裂いた。

豊「ぐっ!!」

豊はその場に崩れた。
膝をつき、屈辱に顔を歪めながら。


雪菜「…あなたは…」

飛んできたナシ ロックシードとペッパー ロックシードを掴んでいる錦を、雪菜は驚愕した表情で見つめていた。

雪菜「自分の仲間さえも…」

錦「気にしないの。勝利に犠牲は付き物でしょ?」

錦はロックシードを懐にしまいながら、何でもないかの様に言った。

錦「それに陽射だって、あんなむさ苦しい男に殺されるよりも、私みたいに綺麗な女に殺された方が良いに決まってるじゃない。」

錦の言葉に、雪菜は呆然としてしまう。
そこに留奈が駆けつけた。

留奈「枝垂、助けにきたぞ。」

雪菜「…聖夜さん。」

彼女は、か細い声で言う。

雪菜「あいつは…自分の仲間を…」

留奈「…随分とショックだった様だな。」

留奈は優しい声で言うと、錦に向き直った。

留奈「お前の相手は、私がしよう。」

錦「んー、いいや。今日は久しぶりに楽しかったし。」

そう言うと錦は、自分の足元にカキ極彩弾を叩きつける。
黒い爆煙が、彼女の身体を包んだ。

錦「またいつか、遊びに来るわねー。」

そして煙が消えた時、錦の姿はなかった。

留奈「…逃げたか。」

留奈はそう呟くと、変身を解除した。
雪菜も同じく、変身を解除する。

留奈「…大丈夫か?」

雪菜「…大丈夫です。」

心ここに在らずと言った感じで答える雪菜に、留奈は掛ける言葉が思いつかなかった。


ルナ「よっしゃ!決まった!!」

遊「息ピッタリでしたね!!」

ルナと遊は戦いの際中であるにも拘らず、嬉しそうにハイタッチを交わした。

樹心「遊、志村は?」

遊「それが、聖夜さん独りで倒したんですよ!すごかったです!」

樹心「聖夜って…君のことか?」

ルナ「聖夜 ルナです。」

樹心「あの志村を、君が独りで?」

ルナ「…はい。」

樹心「…すごいな。」

樹心は素直に感心している。
ルナにしてみれば、一度クリアしたゲームをもう一度プレイした様なものなので、なんとなく褒められるのが釈然としなかった。

豊「…まだ終わってないぞ!」

豊はそう叫ぶと、話し込んでいる三人に向かって突っ込んでいく。

樹心「まずい!」

ルナ「任せてください。」

ルナはそう言うと、戦極ドライバーを操作した。

『オレンジ スパーキング』

オレンジの鎧がパタパタと動き、再びオレンジの形に戻る。
頭に刺さったそれを使い、ルナは豊に頭突きをかました。

豊「ぬぅ!」

ルナ「何!?」

しかしそれを、豊は右手で受け止める。

豊「その程度、防げないと思ったか!」

樹心「いや、思ってないさ。」

樹心はそう言うと、素早く豊の左腕をカシューラッシュで固定した。

樹心「けど、注意は逸らせる。」

豊「!!」

樹心「やれ!遊!」

遊「はい!」

樹心の支持を受け、遊は戦極ドライバーを操作した。

『カシス スカッシュ』

遊「紫電一号!二号!」

遊の持つ紫電一号と紫電二号から、強力なエネルギー弾が射出される。
紫色に光るそれは、豊の戦極ドライバーに命中した。

豊「何…だと…」

豊の放心した呟きを合図に、戦極ドライバーが爆発する。
飛び出したスターフルーツ ロックシードを、遊は両手でキャッチした。

樹心「鬼ごっこは、俺の勝ちだ。」

樹心が豊に手錠をかける。

ルナ「終わった…良かった。」

遊「終わりましたね…」

ルナと遊は、ホッとした様に変身を解除した。

遊「でも…烏山さんが…」

樹心「…」

樹心は歩きながら変身を解除し、焼けただれた地面の前に片膝をつく。
そしてそのまま、目を閉じて両手を合わせた。

樹心「夏彦。今は、ゆっくり休め。」

遊「…」

ルナ「…」

ルナと遊も、目を閉じて静かに手を合わせた。


宙「終わったよー!」

宙はひよりの元へ走って行く。

ひより「ありがとうございます。報酬は、この闇市が終わったときに纏めてお渡しします。」

宙「オッケー。じゃ、それまでは闇市見て回ってるよ。」

そう言って宙は、再び仲間のところへ戻って行った。


ルナ「こっちは終わったけど…枝垂さん、大丈夫?」

雪菜「…大丈夫です。」

ルナ「…留奈、何があったんだ?」

留奈「詳しい事は、ベースに戻ってから話す。」

留奈は冷静な顔で言った。

樹心「済まないが、俺達も一緒に休んでいっていいか?少しだけでいい。」

留奈「…いいだろう。着いて来い。」

リーダーである宙が居ないこの場合、本来ならば雪菜が指揮を執る場面だ。
だが、彼女が放心状態である今、留奈がその役を引き継いでいた。

樹心「ありがとう。俺は騎兵隊第三小隊隊長、蔵森 樹心だ。」

遊「同じく騎兵隊第三小隊隊員、天雲 遊です。」

ルナ「聖夜 ルナです。」

留奈「私も聖夜 留奈だ。そして、彼女は枝垂 雪菜。」

樹心「彼女とは面識がある。それと…」

樹心は雪菜の後ろを指差していった。

樹心「…何で犯罪者五人組の一人が、君の後ろにいるんだ?」

南「稲盛 南、留奈姉さまの犬です!」

留奈「…」

南「あう!」

留奈の本気の右ストレートを受け、南は気絶して倒れる。
樹心は冷めた目で、彼女に手錠をかけた。

ルナ「留奈…」

留奈「…その目を今すぐやめないと、いくらルナと言えど容赦はしないぞ?」

留奈が鋭い眼光をルナに向ける。
五人は、ヘーラクレースのベースに向かって歩き出した。

- 幕間 その5 -


カイト「…」

カイトは工場の一角にいた。
警備員に見つからないようにしながら、調査を進めている。

様々な場所を調べた。
工場内を周回する道路はもちろんのこと、ゴミの集積所から小さな焼却炉まで。

そして、見つけたのだ。
薔薇の花びらを。

カイト「…」

だからなんだという話でもある。
風に乗って運ばれて来たという線も十分にある。

そう、それだけなら。

カイト「…」

カイトのもう片方の手には、桜の花びらが握られている。
この時期に桜の花びらがあるのは、確かに季節外れだ。

だからなんだという話でもある。
今の時代、季節に関係無く様々な種類の花が売っている。
それは桜も例に漏れない。
風に乗って運ばれて来たという線も十分にある。

問題は、見つけた量なのだ。

カイト「…」

この量は明らかに不自然であった。
風に乗って運ばれて来たにしては、量が多過ぎる。

カイト「…」

もしかしたらだが、手掛かりになるかも知れない。
全く事件に関係ない可能性も大きいが。
そう思いその場を後にしようとした瞬間、カイトのケータイが震えた。

カイトは無言で電話にでる。
下手に声を出せば、見つかるかも知れない。
電話口から、誠二の声が聞こえてきた。

誠二『九門 カイト、今からそっちに向かう。情報交換は、俺がそっちに着いてからにしよう。』

カイト「…」

カイトは無言で電話を切ると、立ち上がってその場を離れた。
まさか工場内で話し合うわけにはいかないからだ。

- 第五章 : 歪んだ世界 -


レナ「お帰り…随分大所帯だね。」

ヘーラクレースのベースに帰った五人を出迎えたレナは、少し驚いた顔をした。

留奈「ルナ、私は枝垂の側にいる。」

ルナ「分かった。姉さん、お昼を六人分作ってもらえる?」

レナ「いいよ。どうせ宙達は、闇市で食べてくるだろうからね。」

樹心「お手伝いします、聖夜さん。」

レナ「蔵森さん、お久しぶりです。それじゃ、お言葉に甘えて。」

遊「私は…」

ルナ「…よければ、俺にこの世界の事を教えてくれませんか?」

遊「この世界?」

ルナ「…話すと少し長くなりますけど…」

六人はそれぞれ、留奈と雪菜、ルナと遊、レナと樹心の三つのペアに分かれた。


留奈「…枝垂、やはりショックだったか?」

雪菜「…」

留奈「ここには私しかいない。少しでも吐き出せば、楽になる。」

雪菜「…そう…ですね。」

雪菜は、か細い声で言った。

雪菜「彼女は…仲間を殺した…こちらとしては…むしろ好都合…なんでしょう…けど…」

雪菜は、震えた声のまま続ける。

雪菜「頭では…理解できても…感情が…追いつかないんです…」

留奈「…」

雪菜「あの時私は…彼女と対峙していた…どんな瞬間にも…勝った…」

留奈「…恐怖を、感じたんだな。」

静かに、雪菜なコクリと頷いた。

留奈「…」

普段の留奈なら「戦いはこういうものだ」と容赦なく切り捨てていただろう。
だが今の留奈は、静かに雪菜に寄り添う事しかしなかった。


遊「べっ、別の世界から来たんですか!?」

ルナ「はい。」

遊「…本当なんですか?」

ルナ「本当です。」

遊からこの世界について聞くはずが、ルナはいつの間にか自分の世界の事を話していた。

遊「だから、あんなに強かったんですね…」

ルナ「…いや、だからではないです。」

まるで別世界の人間が全員強いかの様に納得され、ルナは慌てて否定する。

遊「聖夜さんの世界は、どんな感じですか?」

ルナ「…」

ルナはなんとなくだが、言っていいものか迷った。

ルナ「…平和です。ここよりも、ずっと。」

遊「本当ですか!?羨ましいー。」

ルナ「…」

遊は軽い声で言っているが、内心ではどう思っているのか。
それを知る術は、ルナにはなかった。

遊「アーマードライダー同士の戦いなんてないんですね!」

ルナ「それはあります。」

遊「あれ?」

遊が首を傾げる。

遊「…アーマードライダーの力を悪用する人もいないんですね!」

ルナ「志村は俺の世界でも、アーマードライダーの力を使って殺人をしてました。」

遊「…ユグドラシルが変な実験してたりしないんですね!」

ルナ「してます。そのせいで、俺達はこっちの世界に飛ばされたんです。」

遊「…」

ルナ「…」

遊「…平和、なんですよね?」

ルナ「平和です。」


レナ「樹心さん、お皿出してください。」

樹心「これでいいですか?」

レナ「ありがとうございます。」

樹心「…少し聞きたい事があるのですが…」

レナ「なんですか?」

樹心「あの聖夜 ルナという男と聖夜 留奈という女は…あなたの姉妹弟(きょうだい)ですか?」

レナ「…ルナの方はそうですけど、留奈ちゃんの方はよく分からなくて。」

樹心「…そうですか。」

樹心は昼食の配膳をしながら言った。

樹心「お願いがあります。」

レナ「?」

樹心「俺達を夜までここにいさせてください。」

ルナと話す遊の方を見ながら、樹心は言った。

樹心「宙に、相談したいことがあります。」


夜のヘーラクレース。
そのテーブルには、チーズ in ビーフシチューの皿が十二枚並んでいた。

宙「それじゃ、皆手を合わせて!」

宙の音頭に合わせ、皆素直に手を合わせる。

宙「いただきます!」

一同「いただきます。」

宙「あれ?何かボクの音頭に比べてテンション低くない?」

宙の疑問は当然無視された。

宙「それで樹心、話があるって聞いたんだけど。」

彼は食事を進めながら聞く。

宙「明日の事についてだよね。」

樹心「そうだ。」

ルナ「明日?」

ルナは食事の手を止めた。
明日一体何があると言うのか。

宙「あれ?言わなかったっけ?」

留奈「聞いていないな。」

留奈の声が低くなる。

宙「相変わらず怖いなぁ…一言で言うとね…」

宙はあっけからんと、その予定を口にした。

宙「明日、果樹園に総攻撃をかけるって話。」

ルナ「はぁ!?」

留奈「…」

ルナは驚いた。
果樹園というのは、この世界を支配している組織だったはずだ。
そこに、総攻撃を…

宙「誠二が死んでから、あまり時間が経ってないけどね。…こういうことは、連続でやった方が効果はあるから。」

戦術としては間違っていない。
相手に体制を立て直される前に再攻撃をしかけるのは、当たり前の戦法だ。

宙「その事で、樹心に協力してもらえないか相談してたんだ。」

善也「リーダー、そういう事はちゃんと報告してください。」

宙の発言に、善也が呆れた様に文句を言う。
それを無視して宙は続けた。

宙「それで…どうかな?樹心。」

樹心「…」

樹心は少しの間だまっていたが、不意に遊の方を向いて言った。

樹心「…本当に、いいんだな?」

遊は真剣な目で答える。

遊「危険は理解しています。それでも、やっぱりこの決意は変わりません。」

樹心「…そうか。」

そう呟くと、樹心は改めて宙に向き直った。

樹心「悪いが、協力は出来ない。俺は果樹園に所属する騎兵隊員だからな。」

宙「そう…分かってたけど、残念だね…」

樹心「…でも、」

静かに、そして確かに樹心は口にした。

樹心「遊が、ヘーラクレースに入りたいそうだ。」

宙「ふぁっ!?」
善也「!?」
恋「何!?」
真美「え!?」
レナ「嘘!?」
礼「マジかよ!?」
雪菜「な!?」
優「本当に!?」

留奈「…ルナ、お前か?」

ルナ「違う!…と、思う…」

ルナは頼りなくそう言うと、遊の方を向く。

ルナ「天雲さん、どうしてですか?」

遊「…前から思ってたんです。このままで、本当にいいのかなって…」

遊は語り出した。

遊「それで、前から入ろうかどうか迷ってたんですけど…」

遊はそこまで言うと、ルナを見た。

遊「今日、聖夜さんのお話を聞いて踏ん切りが付いたんです。私がいるこの世界、やっぱりこのままじゃダメだって再認識出来たんです。」

留奈「…やはりルナじゃないか。」

ルナ「…そう、なんですか。」

ルナは震えていた。
自分の発言のせいで、他人の人生が変わってしまうかも知れない。
その事実が、彼に重くのしかかった。

宙「いいよ!今日から遊ちゃんもヘーラクレースだ!」

善也「リーダー…もういいです。」

宙は快諾する。
善也はその独断専行な決定を咎めようとしたが、無駄だと分かったのか諦めた。

遊「本当ですか!ありがとうございます!!」

遊は嬉しそうに言いながら立つと、頭を下げる。

宙「顔を上げてよ。今から、遊ちゃんも仲間でしょ?」

遊は素直に顔を上げた。
周りを見ると、皆が遊に微笑んでいる。
それは、新しい仲間を歓迎している事に他ならない。

善也「よろしくお願いします、遊さん。」

恋「よろしく頼むぜ、遊。」

真美「よろしくね、遊さん。」

レナ「よろしくね、遊。」

礼「これからよろしく、遊。」

雪菜「よろしくお願いします、遊さん。」

優「一緒に頑張ろうね、遊さん。」

留奈「足を引っ張るなよ。…天雲。」

ルナ「よろしくお願いします、天雲さん。」

遊「ありがとうございます、皆さん。それと…」

兵凱に変身するインベスて下級インベスと同じ種類なのかな?

>>75さん
人型のシカインベスや、カミキリインベスのイメージです。

遊はルナに微笑んだ。

遊「『遊』でいいですよ、ルナさん、留奈さん。」

ルナ「!…はい、遊さん。」

優「ルナ…」

優が心配そうな声を上げる。

留奈「…」

留奈はそれを見て溜息をつくと、ルナに向かって剣呑な声で言った。

留奈「ルナ…私の目の前で浮気とは、いい度胸じゃないか。」

ルナ「どこがだよ。俺は浮気なんてしない。」

留奈「私というものがありながら、五城と浮気しているのにか。」

ルナ「そもそも俺が付き合ってるのは優だから。恋人として好きなのは優だけだから。」

優「ルナ…」

優が嬉しそうな声を上げる。

留奈「…全く。」

留奈は何かを吐き出す様にそう呟くと、ふざけるのをやめた。

宙「そうだ、遊ちゃんは真美と同じ部屋を使ってね。」

遊「はい!」

宙「それじゃ、今日はもう解散!」

宙の号令を受け、それぞれが部屋に戻る。

樹心「ありがとう、宙。」

宙「いいよ。こっちだって人手が足りてなかったしね。けど本当にいいの?遊ちゃん、樹心にとっては妹みたいなもんでしょ?」

樹心「大事だからこそ、あいつの思いを尊重するんだ。」

宙「なるほどね。今日は泊まってく?」

樹心「犯罪者三人を護送しないといけないからな。すまないが、無理だ。」

宙「そりゃ残念。でも、また今度遊びに来てね。」

樹心「あぁ、遊の様子を見に来るさ。」

樹心はそう言うと、玄関から出て行った。

宙「様子を見に来る、か。それじゃ、明日は遊ちゃんが死なない様にしないとね。」

宙はそう呟くと、自分の部屋に入っていった。


翌日、十台のバイクが隊を組んで走っていた。

宙「こうしてると、なんとなく『族』っぽいよね!」

先頭を走る宙が叫ぶ。

善也「リーダー、それは前にも聞きました!」

善也が宙に聞こえるように叫んだ。

ルナ「後どのくらいで着くの?」

ルナが隣を走る優に聞く。

優「もう少しだよ。後三分くらいかな。」

真美「着いたらすぐに変身するから、今のうちに戦極ドライバーは装着しておいた方がいいよ。」

真美のアドバイスを受け、ルナは戦極ドライバーを装着した。

留奈「枝垂、大丈夫か?」

雪菜「はい。昨日はありがとうございました、聖夜さん。」

礼「遊、頑張れよ!」

遊「任せといてください!」

恋「さてと…宙!そろそろ作戦言っといた方がいいんじゃないか?」

宙「そうだね。皆聞いて!」

宙が声を張り上げる。

宙「前回の戦闘で、『城』の入り口から2ブロック行ったところに、三つの分かれ道があることが分かった!だから今回は二つのチームに分かれるよ!!ボク、恋、善也、礼はそのまま城に突入!それ以外の皆は、派手に暴れて!!」

一同「了解!」

そして間も無く、果樹園の中心である王武の城に到着した。
警護のインベス達はこちらに気付くと、ロックシードを取り出す。

『『ピーナッツ』』

そして巨大なピーナッツが、大量のインベス達の頭に一つずつ現れた。

『『ロックオン』』

複数の音が重なり、とても大きく聞こえる。
大音量で響く、ファンファーレの様な待機音。

『『カモン!』』

ロックシードが全て同時に斬られる。

『『ピーナッツアームズ』』

ピーナッツがそれぞれのインベスの頭に刺さり、鎧へと展開した。

『『ソルジャーーーレッツゴー!』』


茶色のスーツに、落花生と同じ黄土色と肌色を混ぜた様な色の鎧。
茶色が大半を侵食しているそれは、西洋風だがドングリ鎧よりも小柄だった。
武器はランスやボウガン、メイスなど各々異なっている。

仮面ライダーザックル ピーナッツアームズ


宙「いくよ!作戦開始!!」

宙の合図を受け、全員がロックシードを解錠する。

『カシス』
『ザクロ』
『モモ』
『サクランボ』
『サクランボ』
『ドングリ』
『パンプキン』
『バナナ』
『ブラッドオレンジ』
『オレンジ』

空中に現れる、十個の巨大なフルーツ(若干二つを除く)。

『『ロックオン』』

和風、ファンファーレ、ロック。
三種類の待機音が、盛大に混じり合う。
全員が呼吸を合わせ、ロックシードを斬った。

『『ソイヤッ』』
『『カモン!』』

遊「…変身!」
真美「変身。」
雪菜「…変身。」
恋「変身!」
善也「変身。」
礼「変身!」
宙「変身!」
優「変身。」
留奈「変身。」
ルナ「変身。」

『カシスアームズ』
『ザクロアームズ』
『モモアームズ』
『サクランボアームズ』
『サクランボアームズ』
『ドングリアームズ』
『パンプキンアームズ』
『バナナアームズ』
『ブラッドオレンジアームズ』
『オレンジアームズ』

十人の頭に、一斉に果実が突き刺さる。
それが展開し、各々の鎧へと変化した。

『全力!ライジング! 』
『鮮血 バージンロード』
『一刀両断!インパルス!』
『共鳴!ダブルビート』
『共振!ダブルビート』
『ネバーギブアップ』
『仰天!サプライズカーニバル!』
『ナイト オブ スピアー』
『邪ノ道 オンステージ』
『花道 オンステージ』

宙「突撃ー!!」

宙が戦闘開始を叫ぶ。
そして、ヘーラクレースと果樹園が激突した。


秀「来たよー。」

「果樹園の3バカ」と呼ばれる三人は、武器倉庫の屋根からそれを眺めていた。

了「初めて見る顔が二人いるな。」

胡桃「あのオレンジの子、結構可愛い顔してるじゃない。」

秀「俺はブラッドオレンジの娘が好みだな。」

了「そんな事どうでもいいだろ。いくぞ。」

二人は軽口を叩きながらも、了に合わせて戦極ドライバーを装着した。

『アルソミトラ』
『パッションフルーツ』
『クルミ』

三人がロックシードを開錠すると、三つの物体が空中に現れる。

『『ロックオン』』

了「変身。」
秀「変身。」
胡桃「変身。」

『スタート』
『スタート』
『カモン!』

了と秀の戦極ドライバーからは、歯車の駆動音と警報を重ねた様な待機音が、胡桃の戦極ドライバーからは、西洋風の待機音が流れ始める。
それをあまり聞かずに、三人は躊躇いなくロックシードを斬った。

『アルソミトラアームズ』
『パッションフルーツアームズ』
『クルミアームズ』

三人の頭に刺さったそれらは、同時に鎧へと展開する。

あぁこっちの世界の3バカか

『フライト・オブ・コード』
『Whip of Reign』
『Assassin Time!』


了が変身した姿は、水色のスーツと、銀色のアクセントカラーが輝く姿。
背中にはグライダー状の巨大な翼を背負っている。
メカニックな鎧に、蒼いバイザーが被せられたツインアイが黄色く光る。
両手にはレールガン型の武器、U-RINIAを持っていた。

仮面ライダーエアネイド アルソミトラアームズ


秀が変身した姿は、了と同じメカニックな鎧と、橙色のスーツ。
鎧は黒色と、黄色く光るクリアカラーが目を引く。
両腕に装備された爆弾、ボムパッションと、両腕に加え左脚にも装備されたワイヤー、ヴィンプワイヤーが彼の武器だ。

仮面ライダーヴィンプ パッションフルーツアームズ


胡桃が変身した姿は、枯れた黄土色のスーツに、黒が輝く胡桃色の鎧。
シルエットはくるみ割り人形のそれだが、風化した様なカラーが異様な雰囲気を醸し出していた。
緑に光るモノアイと構えられたライフル、クルライフルが、彼女が一体何に特化したアーマードライダーなのかを如実に物語っている。

仮面ライダーギリードゥ クルミアームズ


秀「じゃ、俺はブラッドオレンジの娘と戦うな。」

胡桃「じゃあ、私はオレンジの子と。」

了「おい、待て!ちゃんと指示を…はぁ…」

二人はそう言うと、勝手に何処かに行ってしまう。
了は目眩を感じながら、他のアーマードライダーの相手に向かった。


また別の場所では、二人の男女が戦極ドライバーを装着していた。
男、鹿島 満(かしま みつる)は紫色のロックシードを、女、瑠璃宮 麗(るりみや れい)は紫色の混じった青色のロックシードを構えている。

『アケビ』
『ブルーベリー』

二人の頭上に、巨大なアケビとブルーベリーが現れた。
それを確認すると、二人はロックシードを戦極ドライバーに装填する。

『ロックオン』
『ロックオン』

和風の待機音と、西洋風の待機音が同時に流れた。

満「変身。」
麗「変身。」

『カモン!』
『ソイヤッ』

ロックシードが斬られ、二つの鎧が頭に刺さる。

『アケビアームズ』
『ブルーベリーアームズ』

それが展開し、変身完了を知らせる音が鳴った。

『Chest…break!』
『皆中・サンライト!』


満が変身した姿は、黒いスーツに歪んだ騎士のシルエット。
ボロボロの紫色の鎧からは、時折灰色の液体が滴る。
睨む様なツインアイと、2m以上の長さを誇る紫色のハルバート、イビルハルバートが特徴的なアーマードライダーだ。

仮面ライダーメラス アケビアームズ


麗が変身した姿は、銀色のアクセントカラーが入った鎧と山吹色のスーツ。
青色に輝くそれは、燕を彷彿とさせる華奢な和風の鎧だ。
手には武器である和弓、ベリー飛弓を持っている。

仮面ライダー飛燕 ブルーベリーアームズ

>>80さん
元の世界のキャラクターは、幕間でしか登場しません。

二人は一言も発さずに行動を開始した。
この二人にはある共通点がある。
どちらも果樹園直属のアーマードライダーではなく、雇われているだけという点だ。
ただし、満は家族の為、麗は自らの為という決定的な違いがあるが。


宙「どいてどいて!」

宙は叫びながら、迫り来るインベス達を蹴散らし、他の三人を城の門まで導く。
やがて門が見えた。

『パンプキン スカッシュ』

宙「悪いけど、死んでね!!」

カーニバルガンガーンが火を噴く。
それを門を護っていたインベス達に的確に当て、全てを消し去った。

宙「ここから1ブロック行った先に三つの分かれ道がある!真っ直ぐ、右、左だよ!!ボクが右、矢上姉弟が真っ直ぐ、礼が左!!オーケー!?」

三人「了解!」

宙「それじゃ行くよ!」

宙達四人は、城の中へと消えていった。


了「まずい、城の中に!」

少し前にそれに気づいた了が、四人を阻もうと向かう。
次の瞬間、了の翼はバナナのオーラに貫かれていた。

『バナナ スパーキング』

了「何!?」

翼を破壊され、下に落ちる了。
そこには、バナスピアーを空中に突き出した優がいた。

優「行かせないよ?」

了「…それはつまり、お前を殺してから行けと?」

優「『皆、私に構わず先に行って!』みたいな?」

了は静かに怒りを燃やした。
優は静かに武器を構えた。
二人は静かに睨み合った。


宙は抜き足差し足で歩いていた。
道の先に、不気味に光を反射する白い扉が見える。
どうやら研究室の様だ。

宙はそっと、窓から部屋の中を覗いた。
灯りもついていなければ、人っ子一人見当たらない。

宙はゆっくりと扉を開けて入った。
後ろ手で扉を閉め、ついでに鍵も閉める。
そのままゆっくりと歩き、研究室全体を見回した。

そしてデスクの上に、一枚の書類を見つける。
宙はそれを手に取り、細部まで眺めた。
そして再び扉の方を向き…


真美と雪菜は、多数のインベス達を相手にしていた。

真美「!、避けて!」

雪菜「!」

真美の叫びを受け、雪菜はインベスとの戦闘を中止し後ろに跳ぶ。
その瞬間、二人がいたところに数本の矢が刺さった。

そこに跳んできた満が、真美に向かってイビルハルバートを振る。
彼女はそれを紅石榴で受けた。

満「心苦しいが、家族の為に死んでくれ!」

満はそう叫び地面を蹴る。
再び真美と距離を取ると、イビルハルバートを構え直した。


雪菜は走った。
矢が飛んで来た方へと急ぎ、建物の屋根へ跳ぶ。
そして綺麗な着地を決めると、麗の方を向いた。

雪菜「私を射止める事は出来ませんよ?」

麗「そう。でも、生憎と私は遠距離特化型なの。」

麗は走ると、隣の建物へと跳んだ。
空中にいる間にも、ベリー飛弓から正確に矢を放つ。
雪菜はモモ一文字を振るい、全ての矢の軌道を変えた。

山吹色の光を、青白い光が追いかける。
一瞬でも気を抜いた方が負ける、本当の「追いかけっこ」が始まった。


恋「善也、何かあったか?」

善也「いえ、何も。」

恋と善也は、長い通路を歩き続けていた。
しかし何もない。
さらに歩くと、もう行き止まりが見えてきた。

善也「ここは…機械室のようです。」

恋「んじゃ、とりあえずぶっ壊して…ぐはっ!」

善也「うわっ!姉さん!!」

善也の腹部に、突如激痛が走った。
それは姉である恋が、腹部に攻撃を受けた事に他ならない。
恋と善也は、咄嗟に通路に目を向ける。
そこには、見たこともないアーマードライダーがいた。


赤黒いスーツに、毒々しい紫色が目を引く鎧。
濃いピンク色で中華風のそれは、各所から牙の様に鋭い黄緑色のトゲが生えていた。
両腕には潜在的な恐怖を駆り立てる鉤爪、懺悔(ざんげき)ネイルが装備され、右手にはノコギリの様に細かい刃が施された青竜刀、暴牙ブレードを握り締めている。
そして何よりも異質なのが、左半身だけが不自然な程ボロボロに歪んでいる事だった。

仮面ライダー牙獣 ピタヤアームズ


恋「お前は…」

善也「姉さん、気をつけてください。」

善也は、ターコイズセイバーを両手で握った。

善也「こいつは、危険です。」


『ブラッドオレンジ チャージ』
『パッションフルーツ スカッシュ』

留奈と秀を中心に、円形の爆発が巻き起こった。
留奈はナギナタモードを使い、インベス達を薙ぎ払う。
秀は両腕からボムパッションを乱射し、広範囲のインベス達を消し去った。

留奈「仲間を攻撃するとはな。」

秀「だって邪魔されたくないでしょ?一対一をさ。」

留奈「それは同感だ。」

インベス達の消えた場所で、留奈はナギナタモードを構える。

秀「お手柔らかに頼むよ?」

留奈「安心しろ。苦しまずに死ねるさ。」

秀「おぉー、怖っ!」

口調は軽いが、そこに流れる空気は重い。
どちらが先手を打つか、二人は相手の腹の中を探り合っていた。


礼「何もねぇな…」

礼は通路を歩いていたが、何も見つけられていなかった。

礼「もしかしてトラップか…?」

そう思って足を止める。
瞬間、二種類の悲鳴が聞こえてきた。
通路の壁に反響し、大きく歪んで耳に届く。

礼「!、今のは…恋と善也の声だ!!」

彼は元来た道を引き返し、思い切り駆け出した。
あの二人が悲鳴を上げる相手だ…
絶対に手助けが必要だろう。

礼は全力で走った。
それこそが「トラップ」だと気付かずに…


ルナと遊は、インベス達の相手で手一杯だった。

ルナ「数が多過ぎる!」

遊「キリがありません!」

ルナは大橙丸と無双セイバーを振り、ただひたすらにインベス達を斬り続ける。
遊は紫電一号と紫電二号を乱れ撃ち、インベス達を吹き飛ばしていた。

そのとき、突如それは起きた。
ルナが一体のインベスを無双セイバーで突き刺し、たまたま上に持ち上げる。
その瞬間、そのインベスの胴が撃ち抜かれ爆発したのだ。

ルナ「うわっ!」

彼は体制を崩し、尻餅をついてしまう。
急いで起き上がると、今度は足の間に銃撃を受けた。

そこでようやく、ルナは何が起きたのか理解する。

ルナ「遊さん!気をつけて!!」

遊「へ!?」

ルナ「俺達、何処かから狙撃されてます!!」

ルナは叫びながら戦極ドライバーを操作した。

『オレンジ スカッシュ』

ルナ「はぁ!」

大橙丸の一撃が、複数のインベスを弾き飛ばす。
早くインベスを片付けて、狙撃手を捜さないと…!
たとえそう思っても、今の彼らに出来る事は、迫り来るインベスを撃破する事だけだった。

- 幕間 その6 -


先程、優のケータイに着信があった。

誠二『五城 優、頼みがある。デザインチャイルドのところに着いたら、工場付近でロックシード関係のエネルギー流動がなかったか確認してくれ。』

彼女は桃ノ木商店街を歩いている。
活気に満ち溢れたこの商店街が、優は結構好きだった。

路地に入り裏に回ろうとしたところで、彼女は聞き慣れた声に呼び止められる。

鶴魅「あら、五城さん。」

優「あ、二月さん。」

同じ彗海高校一年生である二月 鶴魅だった。

彼女はユグドラシルの重役の一人である二月 裕司の娘だ。
礼儀正しいお嬢様だが、アーマードライダーに強い興味を持っているという面もある。

鶴魅「五城さんも、お買い物に来られたのですか?」

優「えっと…そんなところかな。」

優は咄嗟に誤魔化した。
上春 譲には、少し複雑な事情がある。
だから二月に話すわけにはいかない。

鶴魅「そうでしたか。既に用事はお済みですか?」

優「ま、まぁね。」

鶴魅「それは良かったです。」

瞬間、鶴魅の瞳が輝く。

鶴魅「私、五城さんに少し付き合って頂きたい事があるんです。」

優「え…」

鶴魅「実は本日もお屋敷を抜け出して『アーマードライダー捜し』をしているのですが、それを手伝って頂きたいのです。」

優「う、うーん?今はちょっと無理かな…なんて。」

鶴魅「…それに、聖夜さんの事も捜しているのです。」

鶴魅は少し悲しそうな顔をして言った。

優「…私もルナの事が心配なんだ。でも、ごめん。」

鶴魅「何かご予定がありまして?」

優「うん。でも、私もルナの事を精一杯捜してみるよ。」

と言うよりも、その為の手がかりを見つけに行く途中なのだが。

鶴魅「本当に残念です…それでは、聖夜さんが見つかる事を願って。ご機嫌よう。」

優「うん。じゃあね、二月さん。」

優はそう言うと、再び歩き出した。

鶴魅はしばらくの間、優の背中を見ている。
そして彼女が見えなくなると、顔から笑みを消して呟いた。

鶴魅「本当に残念です。」

そして再び微笑む。

鶴魅「私は『無理矢理』は嫌いなのですが…仕方がありませんね。」

鶴魅はそう言うと、優の消えた方へと歩き出した。

- 第六章 : 崩れた世界 -


戦いは一方的だった。
恋と善也の身体を、牙獣は暴牙ブレードで斬り裂く。
更に懺悔ネイルで三回、善也に追撃を喰らわした。

善也「ぐはっ!」
恋「うわっ!善也!!」

恋がスカーレットセイバーを掴む。

恋「テメェ!!」

恋が大きくスカーレットセイバーを振り下ろす。
牙獣は、それをいとも簡単に左腕の懺悔ネイルで受け止めると、暴牙ブレードで彼女の腹部に深い斬撃を放った。

恋「がはっ!」
善也「ぐぁっ…姉さん!」

思わずスカーレットセイバーを落とし、腹部を抑える恋。
牙獣は先程から、同じ部分に攻撃を加えていた。
蓄積されたダメージが、彼女を戦闘不能に追い込む。

善也「はぁ!!」

善也が隙を見て、ターコイズセイバーで牙獣の背中を斬る。
が、それが牙獣にダメージを与える事はなかった。

善也「がっ…!」
恋「ぐっ…あっ…」

牙獣は振り向くと、彼の腹部に膝蹴りを入れた。
膝から伸びる棘が、善也の身体に突き刺さる。
更に懺悔ネイルで、彼の身体を引き裂いた。

力が抜けた様に、善也が後ろに倒れる。
牙獣は暴牙ブレードを逆手に持ち替えると、勢い良く彼の戦極ドライバーに突き刺した。

善也「がぁぁぁぁああああああああ!!!!」
恋「あぁぁぁああああああ!!!」

暴牙ブレードの刃が、戦極ドライバーと一緒に善也の身体を貫く。
掠れた絶叫の後、彼は生命活動を停止した。
腹部から、ドクドクと血が噴き出る。

牙獣はそれを無視して、今度は恋の戦極ドライバーを暴牙ブレードで破壊した。
もちろん、彼女の身体も一緒に。

しかし、それだけでは終わらなかった。
牙獣は善也の死体に近づくと、善也の左腕を伸ばして、掌を上に向けさせる。
そして懐から一つのロックシードを取り出すと、それを善也に握らせた。
まるで、善也がそれを「誰かに託そうとした」かの様に。

全ての作業を終えると、牙獣は再び暗闇に消えた。
通路に響く、こちらに駆けてくる足音を聞きながら。


振り下ろされたイビルハルバートを、紅石榴で受ける。
そのままの状態で、真美は即座に種子島を放った。

満「!」

満は咄嗟に後ろへ跳ぶと、凄まじい筋力でイビルハルバートをバトンの様に回す。
全ての種子島を弾き返し終わった瞬間、今度は紅石榴が突き出された。

それをイビルハルバートを使い、地面に叩きつける様に抑える。
真美はわざと紅石榴を地面に突き刺すと、それを軸にして回し蹴りを放った。

真美「はぁ!」

満はそれを腕で受ける。
もう片方の腕でイビルハルバートを持ち直すと、横に薙ぐ様に振り回した。


礼は走った。
分かれ道に戻ると、恋と善也が入った真ん中の通路へと曲がる。
急がないと、急がないと!
彼はただひたすらに走る。

そして、それを見た。
血の海の中に、二つの死体が倒れている光景を。

二人の男女は、よく知っている顔。
ずっと一緒に戦ってきた仲間。
そして、自分が走ってきた意味。

礼「あぁ…あぁ!!」

礼はしばらくの間呆然としていたが、やがて悲しみのあまり叫んだ。

礼「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」

後ろに崩れ落ち、叫び続けた。

時間が経ち、ようやく意識が覚醒する。
泣いている時間はもうない。
善也と恋の仇をとると、礼は強く誓った。

固い決意と共に立ち上がる。
そこでふと、あるものに目が止まった。
善也の手の中にあるもの。
まるで善也が「誰かに託そうとした」かの様に掴んでいるそれを、礼は取り出した。

黄緑色のロックシード。
礼はそれを、善也が託した希望の光だと信じた。
そして、自分がその意思を継ぐとも。

『ロックオフ』

彼は戦極ドライバーからドングリロックシードを外す。
そして決意と共に、ロックシードを解錠した。

『パラミツ』

礼の頭上に、巨大な果実が現れる。
今まで見たこともない程の大きさ。
正に規格外のサイズだった。

礼「これは…!」

礼は驚く。
そして意を決して、ロックシードを施錠した。

『ロックオン』

流れ出す西洋風の待機音。
礼は戦極ドライバーを操作し、勢い良くロックシードを斬った。

『カモン!』

巨大な果実が、礼の身体に刺さる。

礼「!!」

その瞬間、礼は感じた。
自分の中に、異質な何かが濁流の様に入ってくる。

『パラミツアームズ』

スーツが茶色から、暗い灰色に変化する。
マスクが歪み、不気味なツインアイに変化する。

礼「うわっ…うわぁぁああああ!!」

意識が薄れていく。
それでもハッキリと分かった。
自分の意思を消し去り、別の何かが侵食してきている事が。

この鎧に、自分の身体を乗っ取られる事が。

礼「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

そして絶叫と共に、礼の意識は途絶えた。

『壊滅・スーパーノヴァ』

パラミツが変形し、全身を覆う鎧となる。
洋風のそれは、鎧と言うよりもロボットに近かった。

うわぁぁぁ鬱展開だぁ……

高速で動き回りながら、麗と雪菜は争っていた。
麗がひたすらに放つ矢を、雪菜がひたすらに打ち払う。

埒が明かない…
そう考えた麗は、戦極ドライバーを操作した。

『ブルーベリー スカッシュ』

麗「喰らえ!」

ベリー飛弓から、一気に多量の矢を放つ。
これを一度に回避するのは、流石に無理だろう。

雪菜は冷静に考えた。
この数は避けきれない。
なら避けずに、その時間を攻撃に裂けばいい。
そう結論を出すと、雪菜も戦極ドライバーを操作した。

『モモ スカッシュ』

雪菜「はぁ!!」

雪菜のモモ一文字から、強力な斬撃波が飛ぶ。
それは見事に、空中に跳んでいた麗に直撃した。

麗「がっ!!」
雪菜「ぐっ…!」

雪菜の一撃必殺、ムラサメスラッシュを受けた麗は吹き飛び、地面に叩きつけられる。
同時に多数の矢を受けた雪菜も、同じく地面に落ちる。

その隣では、真美と満が戦っていた。
麗と雪菜も、再び睨み合う。

雪菜「…!待ってください!」

突如、雪菜が叫んだ。

麗「はぁ?タンマなんてあるわけ…」

雪菜「様子がおかしくないですか?」

麗「…」

麗は雪菜に注意を向けながら、辺りを見渡す。
そこは、確かに異様だった。
今まで戦っていたインベス達が、全員揃って上を見上げているのだ。

真美「…!」
満「!」

どうやら真美と満も、この異変に気付いたらしい。

真美と雪菜、満と麗の四人は、同時に上を見上げた。
そしてそれが、四人が最後に見たものとなる。

『カキ オーレ』

上空には、巨大なカキのオーラがあった。
それがそのまま下に落ちると、そこから一気にエネルギーが解放される。
強力な衝撃波が発生し、辺りを激しい炎が包んだ。


宙は急いでいた。
廊下に響き、研究室内まで届いた悲鳴。
間違いなく、礼の悲鳴だった。

分かれ道まで戻ってきた宙は、目の前に現れたそれを見る。
そして驚きのあまり、言葉を失った。


全長20mを超す大型の全身鎧。
影の如く濃い鼠色のスーツも含め、緑色の血管の様な複雑なラインが走っている。
この鎧が持つ意思と同じく、彼のツインアイは歪んでいた。
ロケットパンチ、ロケットパラミッター、広範囲にダメージを与えるビームを放出する胸部、強力な一点ビームを射出する両肩、追尾機能を持った種子型ミサイル、カタールシード。

全身に武装が搭載されたそれは、最早鎧ではなく兵器ロボットだった。

仮面ライダーパラミリオン パラミツアームズ

>>89さん
安心して下さい。

どうせグリドンです。

ほんとにグリドンに着せたなパラミツ

一応「意思」はあるから仮面ライダーなんですよねぇ。本当にモビルアーマーみたいな奴ですけど絶望感が凄い事・・・

牙獣強よ!
双子ライダーをあっさり殺しちゃったよ。
これ戦力足りないんじゃないないのか

パラミリオンは宙を見つけると、躊躇いなく蹴り飛ばした。

宙「うわっ!!」

宙の身体は空中に飛び、壁に叩きつけられる。
パラミリオンはそれに見向きもせず、城の門を壊して外に飛び出した。

宙「なんだあれ…まさか、あいつが礼を…きっと、恋と善也もだ…!」

宙はそう言うと、痛む身体に鞭打って立ち上がる。
彼はパラミリオンを追って、城の外へと走り出た。


秀の両腕から連射されたボムパッションを、留奈はナギナタモードで全て打ち払った。
間髪入れずに射出される2本のワイヤー。
留奈は片方は斬り裂いたが、もう片方のワイヤーに右腕を捕捉されてしまった。

留奈「舐めるな。」

彼女は低く呟くと、その場で思い切り回転し始める。
ワイヤーがピンと張り、秀の身体をグルグルと振り回した。

秀「うわわわわ…」

彼は口ではそう言いながら、冷静にワイヤーを留奈から外す。
もう一方のワイヤーを近くの建物に突き刺すと、空中で体制を整えてから着地した。

秀「強いね。もしかして、人間じゃない?」

留奈「そうだな…一言で言えば『完璧なD.C.』だ。」

秀「完璧な…それって人間とどう違うの?」

留奈「そうだな、主に頭脳と身体能力のスペックがだ!」

留奈はそう叫ぶと、人間ではあり得ないスピードで距離を詰めた。
が、秀に到達する直前で足を止める。
しかし彼も、それに反撃しようとはしなかった。

秀「なんだ?…地震じゃない…」

留奈「待て…!、右だ!」

留奈と秀が、右にある城に目を向ける。
その門を突き破り、巨大なロボットの様な影が飛び出してきた。

留奈「…スイカか?いや、違うな。反応が全く異なる。」

秀「なんだあれ…」

留奈は冷静に相手を分析する。
秀は瞬時に状況を整理する。
お互いに理解した事は『どちらの味方かは分からないが、危険な存在の為早急に排除すべき』だった。

しかしその一瞬の間で、パラミリオンはターゲットを見つけ出していた。


錦「…はぁ…」

錦は満たされた表情で溜息をついた。
先程まで混沌の真っ只中だった戦場が、一瞬にして何もない土地へと変化したのだ。
その極上の美しさに、錦は感動のあまり震えていた。

樹心「そこまでだ、旗郷 錦。」

そんな至福の時に水をさす、忌々しい声が耳に届く。
錦はうんざりした様に振り返った。

錦「空気よみなさいよ、騎兵隊のダサ男。」

樹心「これ以上、罪のない人間を殺させはしない。」

樹心は錦の言葉には耳を貸さず、腰を落として構えた。

錦「知ってる?キリスト教だとね、人は生まれつき罪を持ってるの。」

錦も両手にカキ極彩弾を召喚する。

錦「だから、私があなたを殺してあ・げ・る。」

スイカvsパラミツかな

ここまできて、まだラスボスが出てこないとは

>>92さん
有言実行です。

だって口だけだったら、ただの嘘つきじゃないですか。


>>93さん
少しだけ「仮面ライダーG4」を意識してたところはあります。


>>94さん
でも実際、インベス達が変身する量産型はそこまで脅威ではないので。


>>96さん
果たして、スイカだけで対処できるのでしょうか…


>>97さん
将棋でも、先ずは王の周りを崩しますし。

錦は甘い声でそう言うと、容赦なく攻撃に入った。


ルナ「埒が明かない!」

ルナはそう叫ぶと、別のロックシードを解錠した。

『イチゴ』

彼の頭上に巨大なイチゴが現れる。

『ロックオン』

それを戦極ドライバーに施錠すると、装着されていたオレンジの鎧が消えた。

『ソイヤッ』

間髪入れずにロックシードを斬る。

『イチゴアームズ』

そして頭に刺さったイチゴが、鎧へと変形した。

『シュシュッと スパーク』


赤く輝く華奢な鎧。
忍者の様なシルエットは、左肩だけが異様に大きい。
右手にはクナイ型の爆弾、イチゴクナイが装備された。
赤色のバイザーは、中央上部が白く光っている。

仮面ライダー鎧武 イチゴアームズ


ルナはロックシードを外しながら叫ぶ。

ルナ「遊さん!範囲攻撃みたいなのって出来ますか!?」

遊「多分!」

ルナは遊の答えを聞くと、ロックシードを無双セイバーに施錠した。

『ロックオン』

無双セイバーにエネルギーがチャージされる。

『イチ、ジュウ、ヒャク』

遊もそれに合わせ、戦極ドライバーを操作した。

『カシス スパーキング』

紫電一号、紫電二号に紫色のエネルギーがチャージされる。

『イチゴ チャージ』

ルナ「喰らえ!」
遊「はぁっ!」

無双セイバーのトリガーが引かれ、上空に巨大なイチゴのオーラが発射された。
それと同時に、雲に向かって紫電一号と紫電二号からエネルギー弾が射出される。

そしてイチゴのオーラが弾け、中から飛び出した大量のイチゴクナイが降り注いだ。
紫色に光った雲から、強力な紫電が放出される。

ルナ「伏せて!」
遊「伏せてください!」

お互いに全く同じ注意をしながら、ルナと遊は同時に伏せた。
イチゴクナイと紫電の一斉攻撃を受け、インベス達は二人を囲む様にして爆炎を上げる。

ルナ「今なら、スナイパーから逃げられ…」

遊「…なんですか、あれ?」

ルナが逃亡を促そうとしたその時、二人はそれを見つけた。
城から飛び出してきたパラミリオンが、優と了が戦っている場所に走っていくのを。

必殺技すら出せなかったメラスェ…

>>100さん
本編に出します。
だから許して下さい。

「飛行」を封じられた了は、もう片方の翼をブレードに変え、優の攻撃を避けていた。

優「はぁっ!」

了「!」

ゆうから次々と繰り出されるバナスピアーを、彼はブレードで抑える。
本当なら、後ろへ跳んでU-RINIAを使用する時間が欲しい。
でもそれを、優の連撃が許さなかった。

了「はっ!」

優「あっ!!」

痺れを切らした了が、ブレードを上から振り下ろす。
優はそれをバナスピアーで受け止めた。
その隙に、了は彼女の胴を蹴る。

了「喰らえ!」

彼は後ろへ跳ぶと、U-RINIAからエネルギーを発射した。

優「甘いよ!」

優は思い切り前に飛び上がり、それを回避する。
空中で一回転すると、了の目の前に着地した。

優「お返し!!」

彼女は身体を捻ると、了の顎に綺麗な回し蹴りを決める。

了「がっ!」

優「はぁっ…わっ!」

了「!、なんだ!?」

優がバナスピアーで追撃しようとした瞬間、大きな地響きが二人を襲った。
驚き、震源の方に振り返ると、

そこには、こちらを見つめる巨大なロボットがいた。

優「なに…これ…」

了「何だ…うわっ!」

優「!」

パラミリオンは了を右手で掴むと、その右手をロケットパラミッターで飛ばす。
そして飛んでいく右手をロックオン、六発のカタールシードで撃墜した。

了「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

秀「了!!」

秀がワイヤーを射出し駆けつける。
しかし、既にカタールシードは了に命中した後だった。

秀「…は?」

力を失い、ワイヤーを外してしまう秀。
彼はそのまま、真っ逆さまに地面に落ちた。
放心して痛みすら感じていない秀の足元に、アルソミトラ ロックシードが落ちてくる。

秀「…嘘だろ…おい…」

彼は上空とアルソミトラ ロックシードを交互に見ながら、放心した状態で呟いた。

秀「…空中は…お前の独擅場じゃないのかよ…了…」

アルソミトラ ロックシードを拾い上げる。
それを見つめ、語りかける様に言った。

秀「りょぉぉぉおおおおおう!!!」

どんなときも共にいた、最高の相棒への思いが、秀の慟哭として谺した。

「飛行」を封じられた了は、もう片方の翼をブレードに変え、優の攻撃を避けていた。

優「はぁっ!」

了「!」

優から次々と繰り出されるバナスピアーを、彼はブレードで抑える。
本当なら、後ろへ跳んでU-RINIAを使用する時間が欲しい。
でもそれを、優の連撃が許さなかった。

了「はっ!」

優「あっ!!」

痺れを切らした了が、ブレードを上から振り下ろす。
優はそれをバナスピアーで受け止めた。
その隙に、了は彼女の胴を蹴る。

了「喰らえ!」

彼は後ろへ跳ぶと、U-RINIAからエネルギーを発射した。

優「甘いよ!」

優は思い切り前に飛び上がり、それを回避する。
空中で一回転すると、了の目の前に着地した。

優「お返し!!」

彼女は身体を捻ると、了の顎に綺麗な回し蹴りを決める。

了「がっ!」

優「はぁっ…わっ!」

了「!、なんだ!?」

優がバナスピアーで追撃しようとした瞬間、大きな地響きが二人を襲った。
驚き、震源の方に振り返ると、

そこには、こちらを見つめる巨大なロボットがいた。

優「なに…これ…」

了「何だ…うわっ!」

優「!」

パラミリオンは了を右手で掴むと、その右手をロケットパラミッターで飛ばす。
そして飛んでいく右手をロックオン、六発のカタールシードで撃墜した。

了「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

秀「了!!」

秀がワイヤーを射出し駆けつける。
しかし、既にカタールシードは了に命中した後だった。

秀「…は?」

力を失い、ワイヤーを外してしまう秀。
彼はそのまま、真っ逆さまに地面に落ちた。
放心して痛みすら感じていない秀の足元に、アルソミトラ ロックシードが落ちてくる。

秀「…嘘だろ…おい…」

彼は上空とアルソミトラ ロックシードを交互に見ながら、放心した状態で呟いた。

秀「…空中は…お前の独擅場じゃないのかよ…了…」

アルソミトラ ロックシードを拾い上げる。
それを見つめ、語りかける様に言った。

秀「りょぉぉぉおおおおおう!!!」

どんなときも共にいた、最高の相棒への思いが、秀の慟哭として谺した。

本日はここまでにしたいと思います。

疑問、質問、提案等、いつでもお受けしております。
気になった点があれば、いつでもご指摘ください。


仮面ライダーアイアス、仮面ライダーアンビシャス、仮面ライダー双炎、仮面ライダー双水、仮面ライダー時雨、仮面ライダー紅姫、仮面ライダーメラス、仮面ライダー飛燕を考えて下さった皆さん。
早々に殺してしまい、申し訳ありませんでした。

>>104
仮面ライダーエアネイドを書き忘れていました。
すみません。

乙でした。
アイアスは本編ではコンマ運も重なり屈指の強敵でしたし、他のライダー達は本編での活躍に期待したいですね。

しかしまだ未登場のライダーは現実組以外はどういう形で出るのか全く想像がつきませんね・・・

>>106さん
今回は劇場版ということで、変身者が本編と異なっているライダーが実は結構います。

なので、正反対のキャラクターで登場、なんて展開もあり得るかも知れません。

乙でした
いいですよ紅姫は本編でまだ元気だしアイアスも本編で我々の心を抉る強敵だったし(震え声)
まだ李呪が引っ掻き回すとは思わなかったけどww
まさにアーマードライダー大戦なこの続き、楽しみにしています

>>108さん
ご期待に応えられるよう頑張ります。

どうでもいい話ですが、スイカでパラミリオンを倒すのって、ルナくんが友達になったばかりの礼を[ピーーー]のと同義ですよね。

こんばんは。
本日も始めていきたいと思います。

胡桃はショックのあまり、構えていたクルライフルを取り落とした。

ずっと一緒にいた仲間が消えた。
共に進んできた友が死んだ。
その事実を、脳が全力で拒否している。

理解したくない、理解したくない、理解したくない…
胡桃は、叫ぶことさえ出来なかった。


パラミリオンは、今度は優に狙いを定めた。

ルナ「優!」

その事に気づいたルナが、新たなロックシードを取り出す。

『スイカ』

彼の頭上に、巨大なスイカが現れる。
パラミツと同等の、規格外の大きさだ。

『ロックオン』

それを戦極ドライバーに施錠すると、急いでロックシードを斬った。

『ソイヤッ』

遊「ルナさん!?」

『スイカアームズ』

遊の目には、ルナが巨大スイカに潰された様に映る。

『大玉 ビッグバン』

実際には、彼は巨大スイカの中にいた。
そしてスイカの各所が展開し、パラミリオンと同スケールの鎧へと変形する。

『ヨロイモード』


他の果実とは違う、全身を覆う鎧。
それは鎧と言うよりも、最早パワードスーツだった。
右手には巨大な双刃刀、スイカ双刃刀を握っている。
赤色のバイザーには、スイカの種の様なモールドが刻まれていた。

仮面ライダー鎧武 スイカアームズ ヨロイモード


ルナ「遊さん、これを使って!」

遊「はい!」

ルナがスイカ鎧の中からロックシードを投げた。
遊はそれを、素直に受け取る。

優「いくよ、遊さん。」

遊「はい、優さん。」

優と遊は横に並ぶと、同時にロックシードを解錠した。

『マンゴー』
『パイン』

空中に現れる、巨大なマンゴーとパイン。

『ロックオン』
『ロックオン』

戦極ドライバーに施錠すると、和風と西洋風、二つの待機音が混じり合う。

『カモン!』
『ソイヤッ』

マンゴーの一部が展開して、優の頭に刺さった。
パインはそのまま、 遊の頭に刺さる。

『マンゴーアームズ』
『パインアームズ』

そしてマンゴーとパインが鎧に変化し、彼女達の姿が変わった。

『ファイト オブ ハンマー』
『粉砕 デストロイ』


優のシルエットが、金色のシャープなフォルムから、赤と橙のマッシブなスタイルへと変化する。
花切りされたマンゴーが、腹部と両肩にあしらわれた鎧。
そして背中には、他の鎧にはないマントが装備されている。
右手にはメイス型の武器、マンゴパニッシャーが現れ、バイザーはオレンジ色に変色した。

仮面ライダーバロン マンゴーアームズ


遊の鎧は華奢なものから、金色に輝く頑丈なものへと変化した。
肩の装甲は、腕の先まで長く伸びている。
パルプアイが金色に輝く仮面。
右手にはチェーンアレイ型の武器、パインアイアンが装備された。

仮面ライダー紫電 パインアームズ


ルナ「いくぞ!ここからは俺のステージだ!!」

ルナは気合を入れる様に叫ぶと、スイカ双刃刀を構えてパラミリオンに突撃した。


宙「なんだ、あれ…」

宙は突如現れた、巨大なスイカ鎧に目を奪われていた。
だから、気がつかなかった。

紅い鎧の彼女が、何処にもいない事に。
ブラッドオレンジのアーマードライダーが、戦闘に参加していない事に。

留奈が、城の中に入っていった事に。


ルナの拳と、パラミリオンの拳がぶつかり合う。
スイカ双刃刀の一撃を弾かれた彼は、咄嗟にパンチを繰り出した。
パラミリオンはそれに合わせ、クロスカウンターを放つ。

優「はぁっ!!」
遊「はぁっ!!」

優がパラミリオンの右脚をマンゴパニッシャーで、遊が左脚をパインアイアンで攻撃する。
しかしどれだけ攻撃を加えても、傷はつくが破壊はされない。

煩く思ったのか、巨大鎧は両肩からビームを発射し、二人を攻撃した。

優「あっ!」
遊「あっ!」

ルナ「優!遊さん!…ぐはっ!!」

更に胸部から放出するビームを、拡散させずにルナに当てる。
圧縮された強力なエネルギーが、彼の身体を吹き飛ばした。

背中から倒れる。
立ち上がろうとした瞬間、パラミリオンがこちらに向かって走り出した。
まずい…!
ルナがそう思った瞬間、大量の爆弾が巨大鎧に当たった。

秀「死ね!この鉄屑がぁぁああああ!!」

秀が怒りに満ちた叫びと共に、パラミリオンにワイヤーを引っ掛けて飛んで来る。
空中で身体を捻りながら、止め処なくボムパッションを発射していた。

豪雨の様に降るボムパッションを受け、パラミリオンはよろける。
巨大鎧は彼を視界に捉えると、ロックオン。
再びカタールシードを六発射出した。
カタールシードが爆発し、秀が爆煙に包まれる。

秀「うぉぉぉおおおおおお!!!」

しかしその中から、秀は無傷で現れた。
カタールシードが直撃する前に、彼はボムパッションで全てのカタールシードを撃墜したのだ。

ワイヤーを射出し、再びパラミリオンに接近する。
が、巨大鎧は冷静にワイヤーを左手で掴んだ。

秀「!、くそっ!!」

体制を崩した秀の元に、パラミリオンの巨大な右拳が迫る。
だが、その拳が彼に当たることはなかった。

秀「!」

何者かがワイヤーを正確に射撃し、パラミリオンと秀を切り離したのだ。
彼は左足のワイヤーを引っ掛けると、大きくスイングして物見櫓の屋根に着地する。
秀は射撃手に感謝しながら、再び巨大鎧にワイヤーを射出した。

ショックからある程度回復した胡桃は、クルライフルを構えていた。
ターゲットを狙う目には、一切の慈悲がない。

彼女は正確に仲間のワイヤーを撃ち抜いた。
そして、彼女は待つ。
パラミリオンが、再び肩のビームを放射する瞬間を。


錦と樹心の対決に、決着がつこうとしている。
止め処なく投げられ、設置されているカキ極彩弾を、彼は全て避けていた。

錦「あー!もう、ウザい!!」

痺れを切らした錦が、戦極ドライバーに手をかける。
そしてそれが、樹心が待っていた瞬間でもあった。

カキ極彩弾が投げられなくなったその一瞬で、彼は右脚のカシューラッシュを回し蹴りの要領で射出した。

錦「なっ!」

カシューラッシュが錦を怯ませる。
樹心は間髪入れずに、戦極ドライバーを操作した。

『カシューナッツ スカッシュ』

樹心「終わりだ!」

全身のカシューラッシュを一気に解放する。
全てのカシューラッシュが、同時に彼女の身体を切り裂いた。

錦「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」

錦が絶叫を上げる。
彼女はそのまま、バタリと前のめりに倒れた。

樹心「…逮捕だ。」

樹心はそう言うと、ロックシードと戦極ドライバーを回収し、手錠をかける為に錦に近づく。
そして彼女の戦極ドライバーからロックシードを外そうとした瞬間、ガシッとその腕を掴まれた。

錦「死なば…諸共!」

樹心「!」

『カキ スパーキング』

錦は樹心に抱きついた。

錦「見なさい!最高に美しいフィナーレを!!」

樹心は離れようともがく。
しかし強い力で抑えつけられて、全く動くことが出来ない。

やがて、二人を巨大なカキのオーラが包んだ。
それが段々と収縮していく。

錦「あはははは!!!あはははははははは!!!!」

錦の笑い声と共に、エネルギーは極限まで収縮する。
そして、一気に爆発した。

後には何も残らない。
爆炎が全て、肉片すら焼きつくす。
だがその爆発に気づく者は、この場には一人としていなかった。

再びパラミリオンの脚部を攻撃していた優と遊に、巨大鎧は肩のビームを発射しようと構える。
胡桃は左側のそれに照準を合わせると、戦極ドライバーを操作した。

『クルミ スパーキング』

コルク栓の様な弾丸に、莫大なエネルギーが流れ込む。
それが臨界点に達した瞬間、胡桃はトリガーを引いた。

射出された弾丸が、パラミリオンの左肩のビーム砲を正確に撃ち抜いた。
特殊なエネルギーを纏った弾丸が、ビームの発射機構を破壊する。
そして暴走したビームのエネルギーが、巨大鎧の左肩で爆発した。

パラミリオンが、声にならない叫びを上げる。
巨大鎧の左腕が取れ、地面に落ちた。

その瞬間を狙っていたのは、胡桃だけではない。
宙はタイミングを計ると、戦極ドライバーを操作した。

『パンプキン スパーキング』

宙「喰らえ!礼と矢上姉弟の仇!!」

両肩のフィスティバルタイホーンから、強力なエネルギー弾が放出される。
それは見事にパラミリオンの右肩を破壊した。
ビームのエネルギーが暴走し、巨大鎧の右肩が爆発する。

パラミリオンの右腕が取れ、地面に落ちる。
巨大鎧は一気に、両肩のビームとロケットパラミッターを失った。

優「決めるよ、遊さん!」

遊「はい!」

ビーム砲と肩、そして腕が破壊された隙に、優と遊は戦極ドライバーを操作する。

『マンゴー スパーキング』
『パイン スパーキング』

優のマンゴパニッシャーに、そして遊のパインアイアンに、それぞれ膨大なエネルギーがチャージされた。

優「おりゃあ!!」
遊「とりゃあ!!」

二人はそれを大きく振り回し、パラミリオンの両足にぶつける。
そして遂に、巨大鎧の両足が壊れた。
逆流したエネルギーが、脚の付け根まで上り爆発する。

優「やった!!」
遊「やりました!!」

優と遊はハイタッチを交わす。
パラミリオンは両脚を失った。

胴体と頭だけになったパラミリオンに向かって、秀が飛んだ。
彼は空中で戦極ドライバーを操作する。

『パッションフルーツ スパーキング』

そして左脚のワイヤーを、巨大鎧の頭部に引っ掛けた。

秀「ぶっ壊れろ!!このクソロボットがぁぁぁああああああ!!!」

彼はワイヤーを巻き取りながらスイングし、パラミリオンの顔面に高速で近づく。
そのまま右脚で横殴りの蹴りを喰らわすと同時に、右脚のボムパッションを解放した。

パラミリオンの頭部が爆発する。
爆煙の中から、秀はワイヤーを引っ掛けて飛び出した。
思考回路を失った巨大鎧が、暴走を開始する。

ルナ「まずい!!」

パラミリオンが、胸のビーム砲と全身のミサイルコンテナを解放する。
それに気づいたルナは、素早く戦極ドライバーを操作した。

『スイカ スパーキング』

彼は振りかぶると、スイカ双刃刀から巨大なスイカのオーラを投げた。
それが巨大鎧の身体を包み込む。

パラミリオンが、胸のビームと全てのカタールシードを発射した。
しかしそれは、強力なバリアとなっているスイカのオーラに防がれる。
カタールシードはその場で爆発し、ビームは巨大鎧の胴に向かって跳ね返った。

自らのビームでビーム砲を撃ち抜かれたパラミリオンは、もう動くことも攻撃することも出来ない。

ルナ「決める!!」

ルナはスイカ双刃刀を構えて走り出す。
そして、パラミリオンを包んだスイカのオーラを一刀両断に斬り裂いた。
赤い断面を見せて、それが真っ二つになる。
巨大鎧は奇怪な電子音を発した後、盛大な爆発を起こした。

爆炎から飛び出したパラミツ ロックシードを、秀がワイヤーで捕らえる。
彼はボムパッションを発射すると、それを完全に破壊した。

秀「…」

秀はくるりと向きを変えると、胡桃の元へと飛んでいった。


留奈は出口へと歩いていた。
先程聞こえた爆音は、戦闘終了を告げる声と同じだろう。
どちらが勝ったか別として。

留奈「まぁ、ルナが負けるわけがないだろうがな…」

留奈は静かに呟くと、城の門を開けた。


ルナ「終わった…」

優「終わったね…」

遊「終わりましたね…」

三人は変身を解除すると、ふぅと息を吐く。

留奈「終わったようだな。」

留奈は悪びれる様子もなく現れた。

ルナ「留奈、何してたんだ?」

留奈「そうだな、インベス達が湧いてくる場所を叩いてたのさ。」

ルナ「そうか…」

ルナは疑問を持ちながらも、追求はしない。

宙「今日はもう帰ろう。これ以上は、ボク達の身体が保たないよ。」

宙は変身を解除すると、沈痛な面持ちで言った。

宙「…戦闘報告は、ベースに帰ってから纏めよう。」

ルナ「…」
優「…」
遊「…」

留奈「…」

誰もが一様に黙る。
分かっていたが、誰も口に出さなかった事だ。

善也が、恋が、礼が、真美が、雪菜がいない。

乗ってきたバイクは十。
その内、基地に帰ったのは、半数の五だった。


レナ「お帰り…」

出迎えたレナは、人数の少なさに目を見開いた。

宙「…ただいま。」

優「…」

遊「…」

ルナ「…ただいま、姉さん。」

留奈「…」

レナ「…」

重い空気が流れる。
それを破ったのは、リーダーである宙だった。

宙「皆は部屋に戻って休んでて。レナ、夕食はボクが作るよ。」

レナ「…うん、分かった。」

レナを皮切りに、五人はそれぞれ自分の部屋へと戻って行く。


ルナは部屋に戻った。
布団が二組畳んである。
ルナと礼の物だ。

もともとここは、礼の部屋だった。
もしかしたら、誠二や他の仲間との相部屋だったのかも知れない。

言い知れぬ何か、そして空虚感が漂う。
この前の夜の会話が、唐突にフラッシュバックしてきた。
あのとき顔は見れなかったが、彼の声は確かに楽しんでいた。

きっと優も姉さんも、遊さんも宙も、この空虚感と言い知れぬ思いを乗り越えてきたんだろう。
ならば、自分がここで潰れるわけにはいかない。

昨日、留奈と宙が言っていた。

留奈『昨日なんてものはない。あるのは、明日という未来だけだ。』

宙『昨日の事を忘れるなんて出来ないけど、いつまでも過去ばかり見て明日から目を背けてると、この世界ではすぐに死んでしまうだろうから。』

ルナは決意を固める。
気持ちに決着をつける事は出来ないが、それを押し殺してでも進むしかない。
それが生き残った者の義務だと、彼は自分に言い聞かせた。


夜。
テーブルには、宙が作った麻婆豆腐がある。

宙「それじゃ、皆手を合わせて!」

宙の音頭に合わせ、皆黙って手を合わせた。

宙「いただきます!」

一同「…いただきます。」

いつもよりも静かに食事が始まる。
宙も、いつも言うあの台詞を言わなかった。

宙「どう?ボクの作った麻婆豆腐は。」

ルナ「美味しいよ。料理出来たのが意外すぎたけど。」

宙「ま、ボクはリーダーだからね!おかわりもあるよ。」

ルナ「じゃ、もらうよ。」

宙「オッケー!…ルナくんってさ、なんかボクには敬語じゃないよね。遊ちゃんには敬語なのに。」

ルナ「なんて言うか…宙には必要ないかなって。」

宙「ルナくんって淡々と心を抉ってくるね…」

宙とルナの発言で、少しだけ空気が緩和された気がする。

遊「ルナさん、私にも敬語じゃなくていいんですよ?」

ルナ「うーん…でも遊さんには、敬語がしっくりくるので。」

遊「そうですか…」

遊は残念そうに溜息をついた。

留奈「…私もおかわりを貰おうか。」

宙「いいよー。でもちょっと意外だね。」

留奈「どうせ、五人分程は余ってるんだろう?」

宙「…」

留奈の呟きを、宙だけが聞き取った。
確かに、おかわりは五人分ある。
それは他でもない宙が、昨日までと同じ量の麻婆豆腐を作ってしまった為だ。

宙「留奈ちゃ…留奈さんは静かに心を抉ってくるね。」

宙は留奈にだけ聞こえるように呟いた。


夜中。
布団に入っても中々寝付けなかったルナは、気分転換に外へ出る。
すると、誰かがバイクに跨りヘルメットを被っているのが見えた。

ルナ「…宙か?」

宙「ん?どしたの、ルナくん。」

ルナ「こんな時間に何処行くんだ?」

宙「偵察だよ。今回の戦闘で、果樹園にどれだけの被害を与えられたかを調べに行くんだ。」

ルナ「独りで行くのか?皆で行った方が…」

宙「ダメだよ。だって偵察だもん。」

ルナ「それでも、独りは危険だろ。」

宙「ちょっとちょっと、あんまりボクを舐めないでよ。ボクはね、このヘーラクレースの創設者なんだ。今までの戦いで、ずっと生き残ってきたんだよ?」

ルナ「だとしても…」

宙「それにね…」

宙は、少し声を落として言う。

宙「ボクはリーダーなんだ。今まで死んだ仲間の為にも、ボクは絶対に果樹園の支配を止めなきゃいけない。ボクにはその責任があるし、義務がある。と、思う。」

そこまで言うと、またおちゃらけた口調に戻った。

宙「大丈夫!朝までには必ず戻るさ。さっきも言ったけど、あんまりボクを舐めるなよ?」

ルナ「…絶対だぞ?」

宙「…あぁ、絶対だ。」

宙はそう言い残すと、バイクを駆って走り出した。
ルナはその背中を、複雑な思いで見つめる。
元の世界に戻る前に、彼にはやることが出来たようだ。


秀と胡桃は、城内の研究室を目指していた。
今回の戦闘で了を殺したロボット…
あんなものを作るのは、一人しかいない。

二人は果樹園が誇る研究者、紅蓮 倫(ぐれん りん)の研究室へと向かう。
扉の前に立つと、秀はそれを蹴破った。
中に入ると同時に、胡桃がデスクに銃口を向ける。

秀「覚悟しろ!!紅蓮!」

胡桃「…いない。」

胡桃は銃を下ろした。

秀「…何?」

秀は訝しげな表情をしながら、研究室の奥へと進む。
デスクに目を向けると、そこには一枚の書類。

秀「これは…」

彼がその書類を手に取った瞬間、

胡桃「がっ…かはっ…」

胡桃の吐く様な声が聞こえた。
体内に張り付く様な、気持ちの悪い音と共に。

何かが裂ける様な音。
何かが潰れる様な音。
何かが噴き出る様な音。

秀が振り返ると、扉の場所に牙獣が立っていた。
その足元には、胸からドクドクと血を噴き出しながら倒れている胡桃を転がして。
血の海の中に転がる肉塊を、その右足で踏みつけて。

秀「…」

秀は何が起こったのか、理解出来なかった。
いや、何が起こったのかは分かっている。
それを理解する事を、脳が全力で拒否している。

牙獣はゆっくりと、秀の方へと歩いていく。
赤黒い足跡を残し、彼の目の前に立った。

目の前に仲間を殺した奴がいる。
そんな状況でも、秀は動く事が出来なかった。
今の彼は、胡桃と同じだった。
了が死んだときの胡桃と。

牙獣は何でもないかの様に、暴牙ブレードで秀の身体を貫いた。
目を見開いたまま、彼はバタリとその場に倒れる。
胸から多量の血を噴き出しながら。

牙獣が指を鳴らす。
研究室の扉を開け、複数のインベスが入ってきた。

牙獣が顎で指示する。
インベス達は二つの死体を持ち上げると、焼却炉に向かって運び出した。
残ったインベスが、特殊なバキュームで血液を吸い、モップで床を掃除する。

牙獣は研究室を出ると、廊下の先にある階段を登り始めた。
ふと、窓から外を見る。
太陽が昇り、空が白み始めていた。

- 幕間 その7 -


誠二とカイトは、ユグドラシルの工場の近くにいた。

誠二「ルナと聖夜 留奈は事件当日、シドから新しいロックシードを渡されていたらしい。」

カイト「…何のロックシードだ?」

誠二「それは知らねぇ。けど、『実験』をする為だったってさ。」

カイト「…すると、これと関係がありそうだな。」

カイトはポケットから、薔薇と桜の花びらを取り出す。

誠二「それは?」

カイト「知るか。だが、こいつをD.C.のところで解析すれば、何か掴めるかも知れない。」

誠二「…オッケー。」

誠二はそう言うと、ケータイを取り出した。
そして優の番号をコールする。
が、いつまで経っても、彼女は電話に出なかった。

誠二「…行くぞ。」

カイト「いいだろう。付き合ってやる。」

二人は、桃ノ木商店街の方へ走り出す。
ルナの事を最も心配していた優が、電話に出ないのは少しおかしい。
彼らは最悪の事態を避ける為、一心不乱に走り続けた。


譲の元へ行こうと走っていたとき、彼女は突如、足元に銃撃を受けた。

優「きゃっ!!」

思わず立ち止まる優。
振り返るとそこには、一人のアーマードライダーが立っていた。


緑色のスーツに中華風の模様が描かれている。
装着された紫の鎧は、ブドウが変化したものだとすぐに分かった。
胸の中心で、その鎧が紫水晶のように輝いている。
右手に持った拳銃、ブドウ龍砲は、全てを撃ち抜く強力な力を秘めていた。

仮面ライダー龍玄 ブドウアームズ


龍玄は尚も、優に発砲する。
彼女はそれを避けると、ロックシードを取り出した。

『バナナ』

優「誰だか知らないけど、なんで邪魔するの!?」

『ロックオン』

それを戦極ドライバーに施錠すると、西洋風の待機音が流れ始める。

『カモン!』

優「変身!」

『バナナアームズ』

そしてロックシードを斬ると、巨大なバナナが優に刺さった。

『ナイト オブ スピアー』

それが鎧に変形すると同時に、彼女はバナスピアーを構える。
龍玄は面白そうに頷くと、今度は容赦なく優を撃った。

- 第七章 : 廃れた世界 -


翌朝。
目覚めたルナは、寝ぼけながら洗面所に向かった。
顔を洗うと、自然と意識が覚醒する。

唐突に、二日前の出来事がフラッシュバックした。
雪菜とぶつかり、一緒に食堂に行った事。
彼女と礼のやりとり。
そして、三日前の雪菜の言葉。

雪菜『聖夜くんの世界の私の事、誤魔化さないで教えて下さいね。』

…結局、教える事は出来なかった。
そしてこの世界でも、彼女は死んでしまった。

ルナ「…はぁ…」

ルナは小さく溜息をつく。
そしてもう一度、顔に水をぶっかけた。
まるで、何かを無理矢理洗い流そうとするかの様に。

食堂の扉を開けると、なんと留奈が厨房にいた。

留奈「おはよう、ルナ。調子はどうだ?」

ルナ「おはよう、留奈。まぁまぁだ。」

長くなりそうな留奈とのやりとりを一方的に打ち切ると、テーブルに向かう。
そこには、既に宙がいた。

宙「おっはー、ルナくん。」

ルナ「…戻ってたんだ。」

宙「朝までには戻るって言ったでしょ。」

ルナ「…そうだな。それで、どうだった?」

宙「それが今までにない事態なんだ。普段はインベス以外にも監視役の人間がいるはずなのに、今回はインベスしか見当たらなかったんだよ。」

ルナ「つまり…人手が足りてない?」

宙「それもそうだけど、多分、アーマードライダーに変身出来る人間がいないんだ。…王武とその側近を除いて。」

ルナ「それって、結構なダメージじゃないか?」

宙「大ダメージだよ。だからこそ、朝食を食べた後に重大発表があるんだ。」

ルナ「なんだよ?それ。」

宙「それは朝食の後でね。」

宙は思わせぶりな笑みを浮かべた。

そこに、優とレナが起きてくる。

優「おはよう、ルナ、皆。」
レナ「おはよう、ルナ、皆。」

ルナ「おはよう、優、姉さん。」

宙「おっはー、二人共。見事にハモったね。」

そして遊が起きてきた。

遊「おはようございます…」

優「おはよう、遊さん。」

宙「おっはー、遊ちゃん。まだ眠そうだね。」

遊「大丈夫です。朝御飯を食べたら起きます。」

レナ「寝ぼけてるね。もう起きてるよ。」

遊「じゃあ、朝御飯を食べたら寝ます。」

ルナ「うん、完全に寝ぼけてますね。もう一回、顔を洗ってきたらどうですか?」

遊「じゃあ、朝御飯を食べたら洗います。」

留奈「…いい加減、目を覚ませ。」

留奈は無言で遊のところへ向かうと、スパーンと顔を平手打ちした。

遊「あうっ!…あ、皆さんおはようございます。」

優「…おはよう。」

宙「…おっはー。遊ちゃん、いつもそんな感じなの?」

遊「?、そんな感じって、どんな感じですか?」

レナ「…憶えてないならいいよ。」

遊「?、ルナさん、どういう事ですか?」

ルナ「…いや…なんて言うか…遊さん、可愛いところありますね。」

遊「へ!?あ、えと、その…ありがとうございます…」

ルナの何気ない一言で、遊の意識は完全に覚醒した様だ。

優「ルナ…」

留奈「…ルナ、また私の目の前で浮気か?」

ルナ「そのやりとり、二日前にやったぞ?」

留奈「…」

留奈はスタスタとルナに歩み寄ると、再び平手打ちした。
ただし遊にやったそれとは、強さが全く異なる。

ルナ「痛っ!!なんでだよ!?」

留奈「…この馬鹿め…」

ルナ「…」

留奈の鋭い眼光と怒気をはらんだ発言に、ルナは言い返そうとした口を閉じる。

宙「…はいはい。皆揃ったし、朝食にしようか!」

空気をよんだ宙が、パンパンと手を叩きながら言った。
リーダーとしての仕事は、気苦労が絶えない。


全員が朝食を食べ終わったのを見計らって、宙が切り出した。

宙「さて、ここで皆に伝えておく事があるんだ。」

ルナ以外の全員が「?」とした表情で彼を見る。

宙「昨日の戦闘で、ボク達は大切な仲間をたくさん失った。でも、それは相手も同じ。果樹園のガードは、今はもうボロボロだ。だから…」

強い決意のこもった声で、宙は言った。

宙「明日、果樹園に最後の一斉攻撃を仕掛ける。」

ルナ「!」

ルナは驚いた。
それは他のメンバーも同じだったが、彼よりも幾分か落ち着いている。
それはきっと、今までもそうだったからだろう。

宙「急だって事は分かってる。それでも、敵が体制を立て直す前に追撃しないと、もうボク達に勝機はないから…」

宙は珍しく、仲間の目の前で頭を下げた。

宙「お願い、一緒に戦って欲しい。」

少しの間、静かな空気が流れる。

ルナ「…頭上げろよ、宙。」

レナ「そうだよ。それに、ね。」

優「そうそう。頼まれなくても戦うって。」

遊「私達、仲間なんですよ?」

留奈「…」

ルナ達は笑顔で答える。
ただ一人、留奈を除いて。

ルナ「…留奈?」

留奈「…好きにすればいい。私は、こちらの要求さえ叶えられれば、戦力として協力するだけだ。」

ルナの疑問を含んだ呼びかけに、彼女は淡々と返した。

宙「…ありがとう、皆。」

宙は静かに、そして少し嬉しそうに言った。

宙「それじゃ、そろそろ片付けようか。今日の予定は…」

彼はホワイトボードを転がしながら言った。

宙「午前は、洗濯とベースの掃除。午後は特に決まってないね。自由に過ごしていいよ!」

一同「了解。」


時間は飛んで、昼食後。
宙は、ルナと留奈の二人を呼んだ。

宙「二人共、一緒に図書館に行かない?」

ルナ「図書館?いいけど、何しに?」

宙「この世界について、もう少し詳しく分かると思って。図書館なら、古い新聞とかも残ってるかも知れないしさ。」

留奈「…そもそも開いているのか?」

宙「いや。だから無理矢理押し入るんだよ。」

宙はそう言いながら、バイクに跨る。

ルナ「俺は行くよ。留奈はどうする?」

留奈「私も行こう。少し気になる事もあるからな。」

宙「オッケー。ほい、ヘルメット。」

宙は二人に向かってヘルメットを投げた。

宙「それじゃ、しっかりボクについて来てね。なるべくマシな道を選ぶけど、爪痕が残ってる道を通るかも知れないから。」

そう言って彼は走り出す。
宙の警告を聞きながらの、ルナと留奈も後を追いかけた。


持ってきたチェーンソーで図書館の扉を破壊した宙は、奥の書庫へと二人を案内する。

宙「ここだよ…ゲホッ、ゲホッ!…埃がひどいね…」

留奈「そこの用具入れにハタキがあったぞ。」

宙「流石留奈ちゃ…留奈さん。」

留奈からハタキを受け取ると、宙は書庫の埃を落とす。

宙「新聞は…あ、あったよ。」

ガサゴソと、彼は一束の新聞を取り出した。

宙「これが、この世界で最後に発行された新聞だよ…」

ルナ「これが…」

留奈「…」

ルナは中に目を通す。
そこには、沢芽市以外の場所を、王武というアーマードライダーが率いる「帝王の果樹園」のアーマードライダー軍が壊滅させたという事が書かれていた。

ルナ「…冗談だろ…」

留奈「…なるほど。つまり、ユグドラシル以外が作ったロックシードと戦極ドライバーでは、あの程度のモノすら止められないという事か。」

宙「留奈さんは面白い捉え方をするね…でも、その通りだよ。」

ルナ「…つまり、王武が使うロックシードと戦極ドライバーは…」

宙「そ。多分、いや、絶対にユグドラシル製だよ。」

宙は新聞の山を漁りながら言った。

宙「ボクも最初は、王武はユグドラシルが作った兵器だと思ってた。ユグドラシルが、自分達以外が作ったロックシードと戦極ドライバーを破壊する為に作った兵器だと。でも世界を破壊し始めてから、それが間違いだと分かったんだ。」

別の新聞をめくりながら、宙は続ける。

宙「王武の狙いが何なのか、それはボクには分からない。でも、王武を止めなきゃいけないって事だけは、ボクにも分かるんだ。」

彼は一枚の新聞紙をテーブルに置いた。
それを指差しながら言う。

宙「話は変わるけど、ここを見て。ここ、この人の名前。」

ルナ「ん?…紅蓮 倫?」

宙「そう。この人が、ユグドラシルで時空間転移の研究をしていた人なんだ。今は死亡したって事になってるんだけど…」

宙はルナの目を見て言った。

宙「ボクは生きてると思う。この前『城』に潜入したときに、この人の研究室を見つけたんだ。」

ルナ「!、本当に!?」

宙「うん。きっとこいつが、王武の側近だよ。」

ルナ「…マジかよ…」

留奈「…」

ルナは震える。
元の世界に帰れるかも知れないという希望と、そんな奴を倒せるのかという不安に。

宙「他には…ごめんね。あんまりいいのは見つからないや。」

留奈「…いや、私は十分だ。」

ルナ「俺も十分だよ。宙のお陰で、少し希望が持てた。」

宙「良かった。それじゃ、一旦帰ろうか。」

宙はそう言うと、図書館の入り口へと歩き出す。
ルナと留奈も、それに続いた。

宙「確認するけど、本当にいいね?今日しか調べられないよ?」

宙はヘルメットを固定しながら聞く。

ルナ「大丈夫だ。留奈は?」

留奈「十分だとさっき言っただろう。」

宙「オッケー。それじゃ、帰ろう!」

彼は元気良く叫んで走り出した。

ルナ「あ、ちょっと待って!」

宙「ん?どしたの、ルナくん。」

帰る途中、ルナがバイクを降りた。
宙もバイクを降りて近づくと、行商のお婆さんがアクセサリーを売っている。

ルナ「少しの間だけど、お世話になった皆に、何かプレゼントしようと思って。」

宙「いいけど…何で払う気?」

ルナ「…あ、そっか。」

宙「うーん…何かないかな?」

ルナ「…この腕時計はどうだろう?少し使い込んでるけど…」

宙「どれどれ…あ、これならいける。結構高価なやつでしょ?」

ルナ「中学入試の合格祝いに、父さんがくれたんだ。お婆さん、これで買えますか?」

お婆さん「少し見せてごらん。」

ルナはお婆さんに時計を差し出した。

お婆さん「ふんふん…中々いいね。金物屋に出せば結構なお金になる。」

ルナ「良かった。それで、十個欲しいんです。」

お婆さん「十個!?…うーん、十個か…」

お婆さんは腕を組んで考え始める。
頭の中で、時計と商品を天秤にかけているようだ。

ルナ「頼みます…そうだ。」

ルナは胸ポケットから、常備しているボールペンを取り出す。

ルナ「これもつけます。」

お婆さん「随分と必要みたいだね…分かった。今回だけ、特別にまけといてあげるよ。」

ルナ「ありがとうございます。」

彼はお婆さんに頭を下げると、宙に言った。

ルナ「選ぶから、少し離れて待っててくれないか?」

宙「オッケー。楽しみにしとくよ。…あれ?そう言えば留奈ちゃんは?」

ルナ「…多分、先に帰ってる。」

宙「…そうだね。」

宙はそう言うと、素直にバイクの方に歩いていく。
ルナは再びお婆さんに向き直ると、ペンダントを選び始めた。


宙「ただいまー。」
ルナ「ただいま。」

留奈「ルナ、遅かったな。」

宙「ボクは無視なの?」

優「おかえり、ルナ、宙。」

レナ「おかえりー。」

遊「おかえりなさい。」

帰ってきたルナの元に、遊が近寄ってきた。

遊「ルナさん、お願いがあります。」

ルナ「?」

遊「…付き合ってください!」

ルナ「へ!?」

遊の急な告白に、ルナは素っ頓狂な声を上げる。
が、それに優が冷静に補足した。

優「特訓だよ。さっきも私とやってたんだ。」

ルナ「なんだ、そういう…」

優「…ルナ、まさかとは思うけど…」

ルナ「違うよ。今のはビックリしただけだから。」

優「ならいいけど…」

遊「それで、今すぐでも大丈夫ですか?」

ルナ「はい。全然大丈夫ですよ。」

遊「良かった!それじゃ、早速始めましょう。」

遊はそう言うと、ルナの腕を掴んで出て行った。
佇む優に、留奈が声をかける。

留奈「心配か?」

優「…」

留奈「…提案なんだが、」

留奈は少し言葉を切ってから続ける。

留奈「朝の天雲に対する発言を始め、ルナには少し灸を据える必要がある。」

優「…聖夜さん…」

留奈「どうだ、私の作戦に乗るか?」

留奈は不敵な笑みを浮かべて右手を差し出す。
優はそれを見て、同じく不敵な笑みを浮かべて手を取った。


外の広場。
誰もいない公園に、変身したルナと遊がいた。

遊「いきますよ、ルナさん。」

ルナ「いつでもどうぞ。」

ルナが返答した直後、遊は横に滑る様に跳んだ。
紫電一号、紫電二号を構え、彼に連射する。

ルナ「おっと!」

ルナは即座に反応して後ろに跳んだ。

遊「甘いです!」

遊はそれを見計らっていたのか、すぐに彼へ向かって地面を蹴る。
彼女の至近距離からの射撃は、ルナに全発命中した。

ルナ「うわっ!」

ルナが後ろに飛ばされる。
が、彼は咄嗟に受身をとると、更に横に転がった。
転がりながら、別のロックシードを解錠する。

『イチゴ』

ルナ「こっちの方が良さそうだ。」

『ロックオン』

立ち上がりながらそう呟くと、ロックシードを戦極ドライバーに施錠した。
和風の待機音が流れ始める。

遊「させません!」

そのとき、遊が再び銃撃した。
ルナは戦極ドライバーを操作しながら、同時に後ろへ転がる。

『ソイヤッ』

地面に落ちたイチゴが、ポヨンと跳ねた。

『イチゴアームズ』

そして後ろで体制を立て直したルナの頭に被さり、鎧へと展開する。

『シュシュッと スパーク』

再び遊がトリガーを引こうとした。
しかしその瞬間、ルナが今度は前へと跳ぶ。

ルナ「シュシュッと!」

彼は走りながらイチゴクナイを投げた。
それは放たれた紫電一号と紫電二号の弾に当たり、空中で爆発する。

ルナ「もらった!」

遊「!」

爆発で出来た小さな煙幕で、僅かな間視界を塞ぐ。
その間に、ルナは遊に向かって無双セイバーから弾丸を発射した。

遊「あうっ!」

彼女の身体がよろける。
ルナはその一瞬で前に跳ぶと、無双セイバーの刃を遊の首筋に当てた。

遊「…参りました。」

遊が諦めた様に溜息を吐く。
ルナは無双セイバーを下ろすと、彼女に言った。

ルナ「遊さんは遠距離攻撃に特化しているので、相手が近づいてきたら後ろへ跳ぶか、相手の後ろに回るといけるかもしれませんね。」

遊「はい…ありがとうございます。」

ルナは右手を差し出すと、遊を起こす。

留奈「中々やるようになったじゃないか。」

ルナ「留奈、いたのか。」

そんな彼に、後ろから留奈が声をかけた。
何故か変身した姿で。

留奈「私もルナを特訓してやろうと思ってな。」

ルナ「…え?」

留奈「シチュエーションは『二人のアーマードライダーに同時に襲われたとき』だ。」

ルナ「は?二人?」

ルナが疑問を口にした瞬間、留奈が一気に前に跳んだ。

ルナ「!」

彼女の大橙丸の一撃を、紙一重の差で避ける。
ルナが体制を立て直そうとしたとき、今度は別の影が跳んできた。

優「はぁっ!」

ルナ「優!?」

繰り出されたバナスピアーを、なんとか無双セイバーで受け止める。

留奈「私を忘れるな。」

その隙に、留奈が無双セイバーからエネルギー弾を放った。

ルナ「うわっ!」

ルナは堪らずに後ろへ吹き飛ぶ。

優「いくよ!」

そこに優が追撃を加える。
バナスピアーを無双セイバーが受け止め、つばぜり合いの状態になった。


突如始まった戦闘に、遊はぼうっとしていた。
そんな彼女に、留奈が声をかける。

留奈「天雲、ルナにパインのロックシードを返したか?」

遊「え?えっと…あっ、まだです!」

留奈「それは良かった。私から返しておこう。」

留奈はそう言って、掌を上にして右手を差し出した。
呆けていた遊は、素直にパイン ロックシードを彼女に渡してしまう。

留奈「…よし。」

留奈は仮面の下で不敵に笑うと、優に合図を送った。


留奈から合図を受け取った優は、つばぜり合いを止め後ろへ跳ぶ。
そしてルナの目の前に、留奈と優が並んで立った。

留奈「いくぞ、五城。」

優「うん、聖夜さん。」

二人は同時にロックシードを解錠する。

『パイン』
『マンゴー』

ルナ「!、それは!」

『ロックオン』

留奈「遊から返してもらうのを忘れていた、ルナが悪い。」

優「ていうか、大体ルナが悪い。」

ルナ「何が!?」

『カモン!』

ルナの疑問を無視して、二人はロックシードを斬った。

『パインアームズ』
『マンゴーアームズ』

留奈の頭にパインが、優の頭にマンゴーが展開して刺さる。

『粉砕 デストロイ』
『ファイト オブ ハンマー』

そして、それぞれが鎧に変化した。


金色に輝く豪華な鎧。
肩の装甲は、腕の先まで長く伸びている。
右手にはチェーンアレイ型の武器、パインアイアンが装備された。
金色のバイザーは、ブラッドオレンジアームズと違いU字に光っている。

仮面ライダー武神鎧武 パインアームズ


優「ルナ、覚悟してね。」

留奈「自分がした事の報いを受けろ。」

ルナ「だから何の…え、嘘、本気!?」

『パイン スカッシュ』
『マンゴー オーレ』

留奈「本気さ。」
優「本気だよ。」

二人は楽しそうに言うと、それぞれの武器を構える。
留奈が宙へ飛び上がり、パインアイアンを蹴った。
それが見事にルナの頭に刺さる。

ルナ「ふぐっ!」

そして身動きが取れなくなったルナに、優のマンゴパニッシャーから繰り出されたマンゴー型のエネルギーが直撃した。

ルナ「うわぁぁああああ!!」

ルナは吹き飛んだ後、ゴロゴロと転がる。
そして変身が強制解除された。
彼は立ち上がれず、そのまま倒れる。
飛んできたイチゴ ロックシードは、優が両手で受け止めた。

留奈「やったな。」

優「やったね。」

留奈と優も変身を解除し、嬉しそうにハイタッチを交わす。

ルナ「なんで…」

留奈「自分の胸に手を当てて、よく思い出してみろ。」

優「特に今日の朝の事とかね。」

彼女達はそう言い残すと、パイン ロックシードとイチゴ ロックシードをルナに投げ渡した。
ベースに戻る二人の背中を見つめながら、彼は今朝の会話を思い出す。
が、その答えが出る事はなかった。


夜の食堂。
テーブルには、遊の作ったおでんの鍋がある。

宙「ボクがリクエストしたんだよ!」

何故か宙がドヤ顔で言った。
それを無視して、全員が席に着く。

宙「皆冷たいね…それじゃ、手を合わせて!」

宙の言葉と共に、全員が手を合わせる。

宙「いただきます!」

一同「いただきます。」

宙「…本当に冷たいなぁ…」

誰も自分のテンションについてきていない事を、宙はとても寂しそうに呟いた。

遊「どうですかルナさん、私のおでんは?」

ルナ「とても美味しいです。俺、こういう味も好きですよ。」

遊「すっ!?そ、そうですか…良かった…」

優「…」
レナ「…」

ルナ「…な、何?優、姉さん。」

留奈「…」

ルナは素直な感想を述べただけなのだが、何故か優とレナから刺すように鋭い視線を受ける。

優「ねぇ、ルナ。私の料理と遊さんの料理、どっちの方が好き?」

レナ「ついでに私の料理も。」

ルナ「え…どれも好きだけど。」

優「どれか一つ選んで。」
レナ「ちゃんと選んでよ。」
遊「ルナさん…」

ルナ「選んでって言われても…姉さんの食べ慣れた味も好きだし、優の家庭的な味も好きだし、遊さんの柔らかい味も好きだよ。」

優「…」
レナ「…」
遊「…」

ルナ「…え?」

三人から、嬉しさと残念さと少しの怒りが混じった複雑な視線を受ける。
そんなルナの隣で、留奈は深い溜息をついた。

ルナ「そ、そうだ!皆にプレゼントがあるんだ!」

彼は強引に話題を変えると、食べ終わった食器を洗い場に運ぶ。
それから部屋に戻り、十個の封筒を持ってきた。

遊「プレゼント、ですか?」

ルナ「はい。お世話になったお礼に、小さなペンダントを買ったんです。」

レナ「おぉー。で、どんなの?」

ルナ「それは開けてからのお楽しみ。先ずは、優に。」

優「あ、ありがと。」

差し出された封筒を、優は少し驚きながら受け取る。
中から出てきたのは、緑色に輝く正三角形のペンダントだった。

優「綺麗…ありがとう、ルナ。」

ルナ「どういたしまして。次は、姉さん。」

レナ「ありがと。どれどれ…」

受け取った封筒をレナが開けると、涙滴型をしたクリアな黄緑色のペンダントが入っていた。

レナ「ルナにプレゼント貰うなんて、すごく久しぶり…ありがとう、ルナ。」

ルナ「どういたしまして。次は、遊さん。」

遊「なんだか、ドキドキしますね…」

ルナから封筒を貰い、嬉しそうに開ける。
遊に贈られたものは、紫色に光る円形のペンダントだ。

遊「わぁ…ありがとうございます、ルナさん。」

ルナ「どういたしまして。次は、宙。」

宙「待ってたよ!」

宙がいそいそと封筒を開ける。
V字型でスモークブラックのペンダントを、宙は嬉々として身につけた。

宙「どうどう?似合う?」

ルナ「自分で言うのもなんだけど、結構似合ってるよ。」

留奈「ルナ、私のはないのか?」

ルナ「一応ある。はい。」

留奈は封筒を受け取ると、ゆっくりとペンダントを取り出す。
菱形のそれは、碧く輝いていた。

留奈「ルナにしては、中々いいじゃないか。」

ルナ「そりゃどうも。それと宙、少し皆の部屋に入っていいか?」

宙「何もいじらなければ、いいよー。」

ルナは宙の許可を得ると、レナと優の部屋に入った。
他の部屋よりも広いその部屋には、三つのベッドと机がある。

その内一つの机の上に、彼は「晴空さんへ」と書かれた封筒と、それの中身を取り出して飾った。
正六角形のペンダントが、電灯の光を受けて橙色に光る。

ルナ「晴空さん、ありがとうございました。」

彼は小さく呟くと、部屋を後にした。


次にルナは、留奈の使ってる部屋に入った。
中にある一つの机に向かうと、そこには、優と雪菜と礼が笑っている写真が飾られている。

ルナ「…」

彼は写真立ての横に「枝垂さんへ」と書かれた封筒と、桃色に光る正方形のペンダントを置いた。

ルナ「…枝垂さん、ありがとうございました。」

ルナは少しだけ悲しそうに呟く。
少しモヤモヤとした気持ちのまま、彼は隣の部屋に向かった。


自分が使っている部屋。
そこにある机に「乃木坂へ」と書かれた封筒と、十字型をした茶色のクリアペンダントを置く。

ルナ「ありがとよ、乃木坂。」

ルナは少しスッキリとした感じで呟く。
彼は向きを変えると、最後の部屋へ歩き出した。


今は誰も使ってない部屋。
二つのベッドと二つ机があるが、ベッドは片方しか使われていた形跡がない。

ルナ「…折角だし。」

ルナは少しぐちゃぐちゃのベッドの方に「矢上姉弟へ」と書かれた封筒と、二つのペンダントを並べる。
片方は赤く輝く楕円形、片方は水色に輝く長方形だ。

ルナ「…少しは俺の事、認めてくれたかな?」

なんとなくベッドにそう語りかける。
それから少しだけ笑い、彼は食堂へ戻った。


ルナが食堂へ戻ると、何故か宙達五人が立っている。
全員がペンダントを着け、笑顔で彼の方を見ていた。

ルナ「どうしたの?」

宙「ふふふ、ルナくん、実はボクからもキミにプレゼントがあるんだ。」

宙はそう言うと、小さな麻袋をルナに手渡した。

宙「開けてごらん。」

宙に言われるがまま、ルナは麻袋の紐を解く。
中から出てきたのは、黄色に輝くリング型のペンダントだった。

ルナ「これは…」

宙「ルナくんが特訓してるときに、ひとっ走り買ってきたんだ。他のと被らない様に、お婆ちゃんに何買って行ったかも聞いてね。」

ルナ「マジかよ…ありがとう。スゲー嬉しい。」

ルナは笑いながら、ペンダントを身につけた。

宙「これはアレだね。ヘーラクレースの証、みたいな感じだね。」

宙が右手でペンダントをつまむ。
個々の色と形は違うが、どれも銀色のフレームにクリアカラーが輝く、統一感のあるものだ。

宙「よし!明日は皆で頑張ろう!!」

宙がペンダントを掴んで叫ぶ。
ルナ達四人は顔を見合わせた後、同じ様にペンダントを掴んだ。

四人「おぉーっ!!」

そして、宙に合わせて叫ぶ。
そんな五人を、留奈はただ一人無言で見つめていた。

- 幕間 その8 -


龍玄の猛攻に、優は防戦一方だった。
ブドウ龍砲から次々と放たれる紫色のエネルギー弾を、バナスピアーで弾き、転がって避ける。

優「強い…!」

彼女は思わず呟く。

そのとき、龍玄が勝負に出た。
ブドウ龍砲のコックを引き、龍のオーラを纏った一撃を発射する。

優「がっ!!」

スピードも威力も格段に違うそれは、優に回避する隙を与えずに命中した。
彼女は立ち上がろうとするが、身体がついていかない。
龍玄はゆっくりと優に近づきながら、戦極ドライバーを操作した。

『ブドウ スカッシュ』

ブドウ龍砲の銃口が、紫色に光る。
それが優の頭に向けられた。

???「はぁっ!」

次の瞬間、一つの影が龍玄の身体を横から斬り裂いた。
優は驚き、顔を上げる。
そこに立っていたのは、美しいアーマードライダーだった。


レモン色のスーツに、黄色の鎧。
そこに稲妻が駆け抜ける様な蒼い装飾が施されている。
青いバイザーに、西洋騎士を連想させる姿。
右手には細身剣、カリンカリバーを構えていた。

仮面ライダーヴァルキュリア カリンアームズ


ヴァルキュリアはカリンカリバーを構え、龍玄と対峙する。
龍玄もブドウ龍砲の狙いを、優からヴァルキュリアに変更した。

睨み合う両者。
どちらが先に動くか、間合いを見計らう。
そして、遂に龍玄が動こうとしたそのとき、更に別のアーマードライダーが介入してきた。

『マツボックリ スカッシュ』

???「そらよ!!」

空中から突き出された黒い槍を、龍玄は後ろに転がり回避する。
そのアーマードライダーはヴァルキュリアの横に立つと、優を庇う様に武器を構えた。


黒いスーツに黒い鎧。
半円形に黄色く光るバイザーに、頭部には他の鎧に比べて大きな兜。
両手で構えた長槍、影松を含め、その姿は正に雑兵だった。

仮面ライダー黒影 マツボックリアームズ


黒影「大丈夫か?五城 優。」

見知らぬアーマードライダーに名前を呼ばれ、優は思わず身構える。
が、その声を聞いたヴァルキュリアが、低い声で黒影に言った。

ヴァルキュリア「その声…まさか、鷹磐くんですか?」

その言葉に、黒影はビクンと反応する。

誠二「…もしかしなくても、剣崎 葵先生…」

誠二が少し引きつった声で名前を呼ぶ。
剣崎 葵は中学時代のルナと誠二の担任だ。
そして、誠二が最も苦手としていた先生でもある。

流石に分が悪いと見たのか、龍玄はブドウ龍砲を下げると、走ってその場を後にした。

優「何なの…あいつ…」

優は龍玄が消えていった方を睨みながら、変身を解除する。
葵も変身を解除しながら、誠二に話しかけた。

葵「鷹磐くん、あなたはまた…」

誠二「待ってくれ先生、説教の前に話したい事がある。」

誠二も変身を解除しながら、強引に彼女の言葉を遮る。
そして、彼らの目的について話し始めた。

誠二「俺達の事と、ルナの事だ。」

- 第八章 : 死んだ世界 -


聖夜 ルナはユグドラシルタワーの前にいた。
彼の隣には、二人の男と二人の女がいる。

譲「…間違いない。ここから、アーマードライダーへの変身のときと同じ、時空間を歪める特殊なエネルギーが出てる。だけど、大きさは比じゃないな。」

上春 譲はそう言うと、持っていたノートパソコンを鞄にしまった。

???「ほいじゃ、やっぱ何か隠してたって事だな。危険を冒す価値はありそうって感じ。」

もう一人の男、最上 昂(もがみ のぼる)が、耳に貼りつく様な独特な声で纏める。
彼は「裏」では名の知れた情報通であり、古武術の達人でもある。
信念も堅いが、言動が軽いために誤解を受けやすい。
でもそんな彼を、ルナや誠二は強く信頼していた。

葵「聖夜くん、あなた、本当にやる気?」

剣崎 葵が、咎める様な口調で確認する。

ルナ「…前にも言いましたけど、俺がアーマードライダーになった理由は、リナを捜すためです。」

聖夜 リナは、ルナの妹である。
彼女は一年程前、彼にオレンジ ロックシードを残して消息を絶っている。

ルナ「その手がかりが、ようやく掴めるかも知れない。だったら、俺は行きます。たとえ誰に何と言われようとも、絶対に行きます。」

ルナは静かに、だが強い決意を秘めた声で言った。

葵「…分かりました。そうなった聖夜くんを止められないのは、よく知ってるから。」

???「それよりも先輩、五城先輩に何も言わなくて、本当に良かったんですか?」

もう一人の女、蘆江 結花(あしえ ゆうか)が心配そうに声をかける。
彼女はルナの二つ下の後輩だ。
文武両道、才色兼備な女性だが、奥手で少し抜けているところもある。

ルナ「優は…これには関わって欲しくない。」

ルナは少し躊躇った後、本音を口にした。

ルナ「優までいなくなったら、俺は完全に自分を見失ってしまうからね。」

彼は笑って言ったが、その顔には陰がある。
この場にいる全員が分かっている事だが、とうにルナは自分を見失っている。
だからこそ、誰にも彼を止める事が出来なかったのだ。

ルナ「それよりも、蘆江はいいのか?」

結花「はい。沢芽市の『裏』を知ったときから、ずっとこれを止めたいと思ってましたから。」

ルナの問い掛けに、結花はハッキリと答える。

昂「そろそろ行こうぜ?終わる頃には日が暮れる。」

ルナ「そうですね。それじゃ、行きましょう。」

ルナがそう言って戦極ドライバーを取り出した瞬間、その手を何者かが射撃した。

ルナ「!」

彼の手から、戦極ドライバーが落ちる。
更に無数のBB弾が、五人を目掛けて飛んできた。

譲「何だ!?」

見ると、一人の男が右手でロックシードを構えて走ってくる。
エアガンを持つ左腕は、遠目でも義手だと分かった。

『ライチ』

男、秋風 薫(あきかぜ かおる)の頭上に、巨大なライチが現れる。

『ロックオン』

薫「変身!」

『スタート』

薫は走りながら、ロックシードを斬った。

『ライチアームズ』

薫の頭にライチが刺さる。
そしてそれが、鎧へと変形した。

『ショット アンド ヘイト』


紫色のスーツに尖った兜。
外側が赤く内側が白い、青い差し色が入ったトゲトゲとしている鎧。
両肩にはライチを模した赤いコアがあり、猫目のような紅いツインアイには、瞼を閉じたかの様な黒い線がある。
巨大なビーム砲、レイシングブラスターはまだ見えず、左腕の義手からは、ビームで作られた刃を出していた。

仮面ライダーアヴェルダー ライチアームズ


結花「ユグドラシルのアーマードライダー!?」

昂「違うよ。ただ、彼には色々あるのさ。」

事情を知っているらしい昂が、含みを持たせて言う。

葵「ここは私が引き受けます。聖夜くん達は、先にユグドラシルタワーへ。」

ルナ「!、分かりました。」

譲「お、おい!でも…」

昂「つべこべ言わずに行くよ。出鼻挫かれたけど、これを逃したら後はない。」

譲「…分かった…」

ルナ達は走ってユグドラシルタワーに入っていく。
彼らが警備員を蹴散らして進んでいくのを見ながら、葵は戦極ドライバーを装着した。

『カリン』

彼女の上に時空の裂け目が現れ、そこからカリンが落ちてくる。

『ロックオン』

そしてロックシードを施錠すると、戦極ドライバーからファンファーレの様な待機音が流れ始めた。

葵「変身。」

『カモン!』

空中を浮遊していたカリンが、葵の頭に突き刺さる。

『カリンアームズ』

それが展開し、鎧へと変化した。

『ナイツ オブ ワルキューレ』

薫「やっぱお前もアーマードライダーか。」

葵「…あなたもそうでしょう?」

葵は何気無く返したが、それは何故か薫の逆鱗に触れた。

薫「ふざけるな!俺をお前らみたいなクズと一緒にすんじゃねぇ!!」

彼は左腕の刃を構えて前に走りだす。

薫「俺は…」

振り回された刃を、葵は即座にカリンカリバーで受け止めた。

薫「アヴェルダーだ!!」

葵「…アヴェルダー?」

彼女は聞き慣れない名前に首を傾げる。
疑問を抱きながらも、カリンカリバーを構え直して跳んだ。

ルナ達は警備員を倒しながら、非常階段を駆け下りる。
彼らが探しているのは、地下二階にある研究室だ。

地下一階に辿り着いたとき、今までとは違う警備員が出て来た。
全員が、全く同じ姿のアーマードライダーなのだ。


黒いスーツに黒い鎧。
半円形に黄色く光るバイザーに、頭部には他の鎧に比べて大きな兜。
両手で構えた長槍、影松を含め、その姿は正に雑兵だった。
大量にいる彼らは「アーマードライダー」ではあっても「仮面ライダー」ではない。

黒影トルーパー


昂は辺りを眺めた後、ルナに言った。

昂「ここは俺が食い止めよう。君達は先に…」

譲「いや、今度こそ俺も戦う。」

昂「…そ。じゃ、ルナくんと結花ちゃんは先に行って。」

ルナ「…分かった。行こう、蘆江。」

結花「…はい。」

ルナと結花は、再び階段を下り始める。

譲「いくぜ、最上。」

昂「ま、お手並み拝見ってところかね。」

譲と昂は戦極ドライバーを装着し、ロックシードを解錠した。

『シード』
『ドラゴンフルーツ』

お互いの頭上に、巨大な種子とドラゴンフルーツが現れる。

『ロックオン』
『ロックオン』

彼らがロックシードを施錠すると、和風の待機音とロック調の待機音が混ざり合った。

『ソイヤッ』

譲「変身!」
昂「変身。」

『シードアームズ』
『ドラゴンフルーツアームズ』

そして二人の頭に種子とドラゴンフルーツが刺さり、鎧へと変形する。

『限界 イグニッション』
『判決・エクスキューション』


譲が変身した姿は、灰色のスーツ。
それに種子が変化した、少し華奢な甲冑が被さっている。
バイザーの上には、鎧武とは鏡映しの黒い三日月が飾られていた。
腰に無双セイバーを帯刀し、右手には短剣、灰葬丸を握っている。

仮面ライダー無凱 シードアームズ


昂が変身した姿は、漆黒のスーツ。
それにドラゴンフルーツが変化した、濃いピンク色で黄緑色のトゲが生えた鎧が装着されていた。
右手に持った大鎌、ヒン・リヒテンゼンゼを含め、そのシルエットは処刑人を彷彿とさせる。
そして特筆すべきは、身体の各所が黒く歪み、血管の様な赤い線が侵食している事だ。

仮面ライダーブライ ドラゴンフルーツアームズ


譲「よし、さっさと片付けるか。」

昂「…いや、どうもそうはいかないらしい。」

本日はここまでにしたいと思います。

疑問、質問、提案等、いつでもお受けしております。
気になった点があれば、いつでもご指摘ください。


明日でフィニッシュできると思いますが、本編の更新は明後日からでお願いします。

乙です。

今やってる話は壊れた世界の過去の話し?

乙でした
ルナさんが本編以上にハーレム系主人公に見えたww
鈍感度がいつも以上だww

>>138さん
そうです。
幕間 その2を詳しく書いてます。

既にこの平和な世界は存在しないので、この章の副題は「死んだ世界」となっております。

>>139さん
鈍感は主人公の必須スキルだと>>1は考えております。

まぁ、ルナくんは彼女いますし、それに一人は姉ですし。

乙でしたー ルナさん鈍感やでぇ・・・
こりゃあ劇場オリライダーとアドビァングは結構重要な役どころになりそうですね。

>>142さん
アドビァングは…確かウミブドウでしたね。

さて、海藻のロック「シード」なんて、果たしてユグドラシルが作るでしょうか…

>>143てことはカボチャとかコメの果物じゃないロックシードはユグドラシル製のロックシードじゃないってことか

>>144さん
鋭いですね。
コメは、倫が低コストで量産したロックシードです。
実はピーナッツもそうです。

ちなみにユグドラシル製のロックシードというのは、戦極 リョウマ製のロックシードと同義です。

こんばんは。
本日も始めていきたいと思います。

譲「は?」

昂「感じないか?あっちの方から、別の錠前を。」

譲「…あぁ、感じた。」

この二人には、ロックシードの反応が分かる能力がある。

譲は、自らの核であるエナジーロックシードを共鳴させる事で。
これは彼に限らず、D.C.であれば誰にでも使える応用技だ。

一方、昂は本能的に感じる事で。
これは身体の一部がインベス化している、彼にだけ使える技だ。

譲「じゃあ、先ずはそいつを倒してから…」

昂「いや、そいつは俺が倒す。お前はこの辺の雑魚を一掃しろ。」

譲「…分かった。」

譲は頷くと、灰葬丸と無双セイバーを繋げて振り回し始める。
昂はヒン・リヒテンゼンゼで黒影トルーパーを蹴散らし、先へと続く通路を走り出した。


地下二階に辿りついたルナと結花は、多くの黒影トルーパーを前に変身を余儀なくされていた。
ルナは苦虫を噛み潰したような表情で、結花は決意を固めた表情で戦極ドライバーを装着する。

『オレンジ』
『ウメ』

ロックシードを解錠すると、二人の頭上にオレンジとウメが現れた。
お互いの背中を合わせる様に動きながら、それを戦極ドライバーに施錠する。

『ロックオン』
『ロックオン』

ステレオで響く、和風の待機音。

ルナ「ちっ…変身!」
結花「変身。」

ルナはイライラした様に、結花はハッキリとした声で叫ぶ。

『ソイヤッ』
『ソイヤッ』

戦極ドライバーを操作し、ロックシードを斬った。
空中に浮かんでいたオレンジとウメが、ルナと結花の頭に刺さる。

『オレンジアームズ』
『ウメアームズ』

それが展開し、鎧に変化した。
二人の和風戦士が、雑兵の中に現れる。

『花道 オンステージ』
『艶やかに!扇舞!』


結花が変身した姿は、アレンジが施された和服のシルエット。
鎧と同じ、梅の実の様な緑色のスーツに、梅干しの様な赤色のアクセントカラーが輝く。
右手に白い扇、梅花扇を構えたその姿は正に、強さを秘めた美しい舞姫だった。

仮面ライダー和 ウメアームズ


ルナ「俺は北側の通路を行く。蘆江は西側の通路へ行ってくれ!」

結花「はい!」

ルナは有無を言わせぬ口調で指示すると、北側へ続く通路へ走り出す。

結花「…先輩…」

その背中を見つめながら、結花は哀しむ様な、そして哀れむ様な声で呟く。
そしてすぐに扇を構え直すと、西側へ続く通路を目指した。

昂が通路の奥に着くと、そこにはラフな格好をした男がいた。
見た目はまだ若く、ユグドラシルの社員という感じでもない。
そしてその通り、彼は今回だけユグドラシルに雇われた、言わば傭兵の様なものだった。

昂「お前は…石狩 巡(いしかり めぐる)だったか?ウミブドウのアーマードライダーだな。」

巡「へぇ…俺も有名になったもんだな。」

昂「勝手に改造した錠前使ってれば、そりゃ有名になるさ。」

巡「それは嬉しいな…それじゃ、出血大サービスだ。」

『ウミブドウ』

巡「俺の変身、見せてやるよ。」

『ロックオン』

巡「変、身。」

『ウミブドウアームズ』

ロック調の待機音を聴きながら、巡はロックシードを斬る。
絡み合って球体状になったウミブドウが、彼の頭に突き刺さった。
それがグニャグニャとスーツに絡みつき、鎧へと変化する。
他の鎧とは一線を画する変身が、彼が改造したロックシードを使用していることを証明していた。

『オーシャン・ザッザッザ』


海の様に深い青色のスーツに、水色でシャープな仮面。
濃い緑色の鎧は半透明で、クリアブルーの箇所と浮かび上がっている稲妻を模したラインが目を引く。
手には武器であるトライデント、無道・海龍槍を構えていた。

仮面ライダーアドビァング ウミブドウアームズ


昂はヒン・リヒテンゼンゼを構えた。
巡の強さを、彼はよく知っている。
そして同時に、勝機は一度しかない事も。

昂「力だけを追い求めてっと、いつか手痛いしっぺ返しを喰らうぞ?」

巡「大丈夫さ。俺は無敵だ。」

根の優しい昂は、思わず巡に警告する。
が、それが彼に届くことはなかった。


結花は森の中を彷徨っていた。
西側の通路の先。
そこで彼女が見つけたものは、大きな空間の裂け目だった。

譲の言っていた、アーマードライダーへの変身のときと同じエネルギー。
それはきっと、ここから出ている。
そう判断した結花は、躊躇いなく中へと入って行った。

そして今に至る。
彼女は鬱蒼とした森の中を、歩いて探索していた。
それも、ある目的を持って。

ここがただの森であれば、少し歩き回った後、すぐに出口へと戻っていただろう。
だが実際には、この森は何処か無機的な雰囲気があった。
まるで、機械と自然が融合した様な…

結花「ここは…」

結花は小さく呟く。
その誰に言うとでもない呟きに、ハッキリと答える声があった。

裕司「ここは『ヘルヘイム』。」

結花「!」

声のした方に振り向く。
そこには戦極ドライバーを装着し、こちらに歩いてくる男がいた。
男は右手で、ロックシードを解錠する。

『メロン』

彼の頭上に、巨大なメロンが現れた。

裕司「我々ユグドラシルが、研究と実験の為に、時空間の狭間に作った特殊空間だ。」

『ロックオン』

静かな森に、和風の待機音が響き渡る。

裕司「変身。」

『ソイヤッ』

裕司は歩きながら、ロックシードを斬った。
メロンが頭に刺さると同時に、彼はその場に立ち止まる。

『メロンアームズ』

そしてメロンが展開し、鎧として装備された。

『天下 御免』

裕司「この森であまりはしゃいでもらっては困る。」


黄緑色の鎧と兜。
白いスーツに付く金色の装飾が、琴の音のような美しさを出していた。
左手には巨大な盾、メロンディフェンダーを装備し、腰には無双セイバーを帯刀している。

仮面ライダー斬月 メロンアームズ


裕司は無双セイバーを引き抜くと、素早く結花に近づいた。


ルナは北側の通路を走っていた。
途中にある様々な扉を無視し、先を目指す。
やがて見えてきた、他よりも分厚い扉。

『オレンジ スパーキング』

彼は戦極ドライバーを操作すると、オレンジの形に戻った鎧を手動で回転させる。
そのまま扉に頭突きをかますと、扉は真ん中から凹んで吹き飛んだ。

オレンジ鎧が鎧の形へ戻る。
彼がその中へ入ると、果たして研究室ではなかった。

ルナ「くそっ…」

ルナは思わず毒づく。
部屋の中は広く、奥には見たこともないマシーンがあるだけだ。

ルナ「…」

なんとなくそれが気になり、ルナはゆっくりと近づく。
二本の銀色の支柱がついたそれは、どうやらその柱の間に「何か」を発生させる装置らしい。

もっと詳しく調べるか?
そう思ってマシーンに触れた彼に、何者かが声をかけた。

???「困るな、それには勝手に触るなよ。」

ルナ「…」

ルナはゆっくりと振り向く。
そこには、一人のアーマードライダーが立っていた。


赤黒いスーツに、毒々しい紫色が目を引く鎧。
濃いピンク色で中華風のそれは、各所から牙の様に鋭い黄緑色のトゲが生えていた。
両腕には潜在的な恐怖を駆り立てる鉤爪、懺悔ネイルが装備され、右手にはノコギリの様に細かい刃が施された青竜刀、暴牙ブレードを握り締めている。

仮面ライダー牙獣 ピタヤアームズ


牙獣「よう、実験体S-01号のお兄さん。」

ルナ「…なんだと?」

ルナの心に、怒りの火が灯る。
こいつは今、リナの事をなんて呼んだ?

牙獣「聞こえなかったか?実験体唯一のSランク、聖夜 リナのお兄さん。」

今度は明白に、リナの事を実験体と呼ぶ牙獣。

ルナ「…ふざけるなぁぁぁぁああああああああ!!!!」

ルナが激昂し、無双セイバーと大橙丸を構えて跳ぶ。
牙獣は仮面の下で不気味に笑うと、暴牙ブレードを振りかざした。


薫の刃を、葵は全て回避していた。
怒りで単純化している彼の攻撃を避けることは、彼女にとっては何でもない。

薫「調子こいてんじゃねぇ!」

薫はそう叫ぶと、戦極ドライバーを操作する。

『ライチ オーレ』

レイシングブラスターを取り出すと、その銃口に強力なエネルギーが溜まっていった。

葵「…」

葵は冷静に状況を見極めると、彼と同じく戦極ドライバーを操作する。

『カリン スパーキング』

薫「死ね!!」

そしてレイシングブラスターから、極太のビームが発射された。
光が辺りを包み、巨大な爆音が響く。
再び見えるようになったとき、そこに葵の姿はなかった。

薫「…ふん。」

薫は満足そうに息を吐く。

『カリン スカッシュ』

薫「!」

葵「はっ!」

薫「ぐはっ!!」

だが次の瞬間、彼は後ろからカリンカリバーで突き刺されていた。
前に吹き飛び、地面に倒れる。

葵「覚えておきなさい。」

葵はカリンカリバーを構え直すと、薫に言った。

葵「私は、電流よりも早く動けると。」

薫「ふざけんじゃねぇ!」

自らの一撃を避けられ、更に反撃までされた事で、薫の顔は憤怒の色に染まっていた。

『ガラナ』

彼は別のロックシードを解錠すると、荒々しく戦極ドライバーに装填する。

『ロックオン』

歯車の駆動音と警報を重ねた様な待機音が、周囲に鳴り渡った。

『スタート』

空中に浮かんでいた、赤い果皮が剥けたガラナが落ちる。

『ガラナアームズ』

そして薫に刺さったガラナが変形し、鎧の形に変わった。

『連射・連射・超連射!』


カウボーイを連想させる兜。
ライチアームズ時と比べると華奢な鎧には、焼き焦げた様な茶色の模様が入っている。
両手には大きめの二丁拳銃、ナラガ・ガラナが装備された。

仮面ライダーアヴェルダー ガラナアームズ

薫「喰らえ!」

彼はナラガ・ガラナの銃口を葵に向けると、強くトリガーを引いた。


多量の黒影トルーパーを、譲は独りで相手していた。
一人一人のスペックもそれ程高くはなく、攻撃力も防御力も彼には及ばない。
それでも数が多過ぎる上、訓練されたチームワークは脅威だった。

暫くナギナタモードで相手をしていた譲だが、このままでは埒が明かない事を悟った。
似たようなこの武器では、彼らを一度に片付ける事は出来ない。
だったら…

『ココナッツ』

彼は隙を見つけると、懐から別のロックシードを取り出した。

『ロックオン』

巨大なココナッツが頭上に現れた事を確認すると、それを戦極ドライバーに施錠する。

『ソイヤッ』

そして待機音を聞かずに、一気にロックシードを斬った。

『ココナッツアームズ』

ココナッツが譲の頭に刺さり、強固な鎧へと変形する。

『旋風 フルスインガー』


茶色と少しの緑が、美しいグラデーションを作り出す。
パイン鎧よりも小柄だが、鎧の強度は引けを取らない。
両手には新たな武装である二振りのチェーンメイス、ココナスインガーが装備された。

仮面ライダー無凱 ココナッツアームズ


譲「いくぜ。」

彼はそう呟くと、両手のココナスインガーを振り回し始めた。
黒影トルーパー達の長槍を避けながら、確実に当てていく。
取り回しはシード鎧よりも難しいが、それが与えるダメージは確かなものだった。


巡はイラついていた。
今彼は、自らの無道・海龍槍と昂のヒン・リヒテンゼンゼを交差させ、つばぜり合っている。
イライラしている理由は、今まで彼が行なってきた戦法が、昂には全く効果を示していないからだ。

戦闘開始直後、巡はいつも通り肩の装甲を展開、多量のビットを放出した。
このビットは小さいが強い威力を誇り、並のアーマードライダーであれば直ぐに片を付けられる。
そう、並のアーマードライダーであれば。

昂はただのアーマードライダーではない。
インベス化しかけたアーマードライダーなのだ。
彼の身体は果実系インベスに匹敵する強度と力を持ち、ロックシードはエナジーロックシードどほぼ同等の性能を発揮する。

放出されたビットの大群は、昂がヒン・リヒテンゼンゼから放った衝撃波を受け、一瞬にして消え去った。
彼がアーマードライダーについて詳しく、迅速に対応出来たというのもあるが。

巡は決して接近戦が不得意なわけではない。
が、半分インベス化した人間とでは、持っているパワーが桁違いだ。

巡は無道・海龍槍を鞭の姿に変化させると、昂の首に巻きつけた。

昂「はっ!」

巡「!」

しかしそれすらも、昂は引き千切ってしまう。
巡は再び、無道・海龍槍をトライデントに戻した。
その一瞬をついて、昂は戦極ドライバーを操作する。

『ドラゴンフルーツ スカッシュ』

昂はヒン・リヒテンゼンゼをハルバード状に変えると、それを思い切り振りかざした。
しかしそれは、巡にダメージを与える事が出来ない。
彼が空気中の水分と同化し、身体を液状化した為だ。

昂「っ、しまった!」

昂は舌打ちと共に、自分の失策を悔やむ。
巡はそのまま昂の後ろにまわると、彼の身体を押さえ付けた。

昂はそこから出ようともがく。
巡は戦極ドライバーに手を伸ばし、勝負を着けようとする。
二人が何とか目的を達成しようと動いていたとき、突如昂が射撃された。

昂「がっ!」
巡「ぐっ!」

昂と共に、巡も吹き飛ぶ。
彼らが立ち上がると、非常階段近くにブドウのアーマードライダーが立っていた。

昂「…ぐっ!!が、あ…あぁぁああああ…!」

そして更に、銃撃された昂が苦しみ始めた。
傷口を抑え、のたうちまわる。
彼に刺さった針の様な銃弾の先端から、蛍光緑の液体が少量零れ落ちた。

龍玄「あらあら。実験大成功、ですね。」

龍玄は楽しそうな声でそう言った。

巡「貴様…何者だ!」

巡は状況が飲み込めず、龍玄に掴みかかろうと走り出す。
しかし彼はツルリと滑り、尻餅をついてしまった。
見ると床には、いつの間にか透明の液体が撒いてある。

龍玄「面白い事を教えて差し上げます。」

美しい女性の声が、昂の叫びを越えて耳に届く。

龍玄「ロックシードには、ユグドラシルが作った安全装置が付いています。改造したものを一定時間以上連続で使用し続けますと…」

龍玄は廊下の先へ歩きながら、ワクワクとした声で言った。

龍玄「ロックシードが機能を停止します。」

巡「…は?」

龍玄が口にした言葉を聞いて、巡の思考が一瞬止まる。
その瞬間、鈍い光が地下一階を包んだ。

昂「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」

昂の絶叫が響き、光が消える。

巡「…は?」

巡の思考は、再び止まった。
彼の目の前、先程まで昂がいた場所。
そこには、身長2m程のインベスがいた。
見るものに本能的な恐怖を与える、ギガースの様な怪物が。


『ウメ スカッシュ』

結花は跳んできた裕司の一撃を、後ろに跳んで回避した。
着地すると同時に戦極ドライバーを操作すると、梅花扇を構える。

結花「東風の舞!」

梅花扇に風が纏われる。
彼女は舞うように跳ぶと、裕司に梅花扇を振るった。

『メロン オーレ』

結花「!」

しかしそれは、呆気なくメロンディフェンダーに弾かれてしまう。
結花は即座に体制を立て直すと、再び後ろへ跳んだ。

裕司「その程度か?」

結花「あまり舐めないでください。」

『ナナカマド』

結花は裕司を睨みながら、別のロックシードを解錠する。

『ロックオン』

彼女の頭上に、真っ赤なナナカマドが現れた。

『ソイヤッ』

そして、戦極ドライバーに施錠したロックシードを斬る。

『ナナカマドアームズ』

ナナカマドが結花の頭に刺さり、鎧へと展開した。

『軽やかに!剣舞要塞!』


燃える様に赤い和服。
所々に入っている薄めの赤色が、それを一層際立たせていた。
武器である剣、七舞剣の形はオレンジ鎧の大橙丸に似ており、側面にはナナカマドの粒々が並んでいる。
それを両手に一本ずつ持ち、二本を宙に浮かせていた。

仮面ライダー和 ナナカマドアームズ


結花「…いきます。」

彼女は静かに呟くと、七舞剣を構えて裕司に斬りかかった。


ナラガ・ガラナの連射を、葵は避けきれずに吹き飛ぶ。
一発のスピードはそこまで速くなく、十分避けられるものだ。
だが連射による弾幕を縫って進むには、あまりにもビーム弾の数が多過ぎた。

葵「くっ…!」

彼女は反撃する事が出来ず、その場に倒れる。

『ライチ』

薫「今度こそ決めてやる!」

『ロックオン』

薫の頭上に、再び巨大なライチが現れた。

『スタート』

ガラナ鎧が消える。
しかしナラガ・ガラナだけは、彼の両手に残っている。

『ライチアームズ』

ライチが薫の頭に刺さり、鎧の形へと展開した。

『ショット アンド ヘイト』

彼は変身完了と共にレイシングブラスターを取り出すと、その先端にナラガ・ガラナを接続させる。

薫「ふん!」

更に義手である自らの左腕を外すと、それもレイシングブラスターとナラガ・ガラナに結合させた。

『ライチ スパーキング』

薫が戦極ドライバーを操作すると、強化されたレイシングブラスターに莫大なエネルギーが溜まり始める。
そして同時に、彼の全身から排熱口が展開され、パルプアイが開いて白く光った。

薫「うぉぉぉおおおおおお!!!」

薫の絶叫が、周囲に響き渡る。
勝負を決めるには、今しかない。
葵は決意の眼差しと共に、戦極ドライバーを操作した。

『カリン オーレ』

今にも膨大なエネルギーを解放しようとする薫へ、彼女は一直線に走り出す。
彼女の右脚に、強力な電撃が纏われた。
そして薫の目と鼻の先で、彼女は前に向かって跳び上がる。

薫「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」
葵「はぁっ!!」

薫の強化されたレイシングブラスターが、葵目掛けて火を吹く。
葵の真っ直ぐなキックが、薫の胴を突き刺す様に決まる。
二人の叫びが重なり合った瞬間、辺りを白い光と爆音が包んだ。


結花の繰り出す七舞剣を、裕司は全て弾き返していた。
自分の体力が消耗している事に、彼女は少しの焦りを覚える。

『ナナカマド スパーキング』

裕司「何!?」

結花が戦極ドライバーを操作した瞬間、何処からか新たに三本の七舞剣が現れた。
それを含めた五本の刃が、裕司の身体を側の岩場に貼り付ける。

結花「踊奏乱舞!」

彼女は両手の七舞剣を構え、舞うように跳んだ。

『メロン スパーキング』

その瞬間、予期していない出来事が起こる。
裕司の戦極ドライバーが、自動でロックシードを斬ったのだ。

裕司「はぁっ!」

気合を入れる様な叫びと共に、彼の全身から黄緑色の強力な衝撃波が放たれた。

結花「!」

七舞剣の拘束を抜けた裕司は、結花の七舞剣をメロンディフェンダーで受け止める。

裕司「ふっ!」

そして無双セイバーで彼女を吹き飛ばした。

結花「はぁ…はぁ…」

結花の体力は限界に近かった。

裕司「俺を貴様らモルモットと同じものさしで測るな。」

裕司は無双セイバーを構え、結花に向かって走る。

『アンズ』

彼女は別のロックシードを取り出し、解錠した。

『ロックオン』

今の結花に、待機音を聞いている暇は無い。

『ソイヤッ』

彼女はロックシードを施錠すると、瞬時にそれを斬った。

『アンズアームズ』

頭に刺さったアンズは、裕司が彼女に到達する前に鎧へと展開する。

『懇ろに!癒し舞!』

橙黄色の鎧のシルエットは、ナナカマド鎧とよく似ている。
美しい着物の様なそれは、今までの鎧に比べ、あまり戦闘には適していなさそうだ。
右手に杏杖と呼ばれる杖を作り出したこの鎧は、その見た目通り、直接戦闘に向いた姿ではない。

仮面ライダー和 アンズアームズ


振り下ろされた無双セイバーを、結花は杏杖で受け止める。

結花「はっ!」

そして無双セイバーを弾くと、裕司の胴に蹴りを入れた。


譲はココナスインガーを振り回し、黒影トルーパーを粗方倒していた。

譲「よし、このまま…」

彼は戦極ドライバーを操作し、残りの黒影トルーパーを一掃しようとする。
そのとき、廊下の先が鈍く光った。

昂「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」

続いて聞こえた昂の絶叫が、強く耳朶を打つ。

譲「!、何だ!?」

譲は手を止め、廊下の先へ行こうとした。
が、次の瞬間、身体を複数の黒影トルーパーに拘束されてしまう。

譲「くそっ、離せ!」

彼はもがくが、黒影トルーパーは離れない。
そして、なんとか脱出を試みる譲の元に、コツコツと歩いてくる足音が聞こえてくる。

『ブドウ スパーキング』

その影が見える前に、紫色に光る強力なエネルギー弾が彼を吹き飛ばした。

譲「がっ!!」

ゴロゴロと転がりながら、譲の変身が強制解除されてしまう。
更にヨロヨロと立ち上がった彼を、黒影トルーパーが羽交い締めにした。
痛みと疲れで上手く抵抗出来ない譲に、龍玄が近づいてくる。

龍玄「心苦しいですけれど、貴方の命、私に頂けます?」

龍玄は優しい声音でそう言うと、彼の身体に容赦なく手を突っ込んだ。

譲「がっ…かはっ…」

譲は感じた。
目の前のアーマードライダーの手が、自分の核を確かに掴んでいる事を。

龍玄はそのまま手を抜いた。
核を失った譲は、ただの屍肉となって崩れ落ちる。

龍玄「はぁ…嬉しい…」

龍玄は恍惚とした声で呟いた。

龍玄「こんなにも満たされた気持ちになったのは、本当に久しぶりです…」

龍玄は笑顔で黒影トルーパー達に支持する。

龍玄「片付けておいて下さいね。」

龍玄の言葉を受け、黒影トルーパー達は譲の死体を片付け始める。
龍玄はウットリとした表情でエナジーロックシードを撫でながら、ゆっくりと非常階段を上って行った。

戦闘に向いていないアンズ鎧には、ある特徴がある。
それは装着した瞬間に、ある程度体力が回復する事だ。

『スモモ』

結花は立ち上がると、また別のロックシードを取り出した。

『ロックオン』

ロックシードを解錠すると、アンズ鎧が消える。

『ソイヤッ』

そのままロックシードを戦極ドライバーに施錠し、斬った。

『スモモアームズ』

空中に現れた巨大なスモモが、結花の頭に刺さって変形する。

『煌びやかに!爆破舞!』


淡い赤色に黄色が輝く、他の鎧と同じ和服の様な鎧。
ただし、今回は他のロックシードと違う点がある。
木の実型の手榴弾、李玉で戦うスタイルは、今までの鎧では出来ない遠距離攻撃型だ。

仮面ライダー和 スモモアームズ


結花「はぁっ!」

彼女はその場でクルリと回ると、裕司目掛けて李玉を投げる。
彼は冷静に無双セイバーのコックを引くと、その全てを撃ち落とした。

裕司「飛び道具を使えるのが、まさか自分だけだと思ったか?」

結花と裕司が睨み合う。
今、二人が思っている事は全く同じだ。
この戦いに、もうすぐ終止符が打たれる。
それを打つのは…


ギガース「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

インベスと化した昂が咆える。
同時に口から出た衝撃波が、地下一階の廊下を破壊した。
それを受けた壁や天井の一部が崩れ、光を失った蛍光灯が下に落ちて割れる。

ショートした機械や、電線から火花が散った。
そして地下一階が、一気に炎に包まれる。
龍玄が撒いていったものは、揮発性が高く低沸点で、異臭を放つ透明の液体。

巡「ガソリンだったか…」

燃え上がる炎の中で、昂は巨大な腕を振り上げた。
巡はそれを避けようとするが、そのまま拳を受けて吹き飛ぶ。

巡「がっ!!」

彼は殴られる瞬間、いつも通り空気中の水分に同化しようとした。
だが凄まじい炎の中には、同化するために必要な量の水分は残っていない。

巡「あのアーマードライダー…!」

巡は龍玄を思い出し、怒りを現にする。
そのとき、昂がこちらに向かって走り出した。

『ウミブドウ スパーキング』

攻撃が避けられない事を知った巡は、戦極ドライバーを操作して反撃を試みる。
ロックシードにエネルギーが溜まり、光を放った。
強大なエネルギーが、彼の身体を駆け抜ける。

瞬間、昂が口から青白い光球を吐いた。

ギガース「グルァアア!」

エネルギー弾は目にも留まらぬ速さで、巡のロックシードに直撃する。
そしてロックシードと共に、彼の戦極ドライバーが爆発した。

巡「なっ!!」

巡は変身を強制解除され、生身で後ろに吹き飛ばされる。
背中が壁に当たり、身体が燃え盛る床に落ちた。

巡「…は?」

彼の顔が驚愕に染まる。

巡「…なんだよ、これ…」

彼はフラフラと立ち上がりながら呟く。

巡「なんなんだよこれぇぇぇええええええ!!!」

巡の絶叫が、炎の壁を突き抜け響き渡った。
そしてグチャリという音と共に、その叫びは止まる。

崩れかけた壁と昂の拳が、巡の頭部を跡形もなく潰していた。
昂が拳を引くと、グチャグチャの肉塊が床に落ちる。
勢い良く血が噴き出て、炎の床が一気に血の海へと変化した。

ギガース「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

爆炎の中で獣が咆える。
昂は何かに導かれる様に、非常階段を駆け下り始めた。
ステップを潰しながら、一直線にある場所へ向かう。
そんな彼の腰には、機能を停止した戦極ドライバーが輝いていた。


しばらくの睨み合いの後、二人は同時に動いた。

『スモモ スパーキング』
『ロックオン』

結花が、戦極ドライバーを操作する。
裕司が、ロックシードを無双セイバーに施錠する。

『イチ、ジュウ、ヒャク』

十五個の李玉が、桜吹雪の様に舞う。
無双セイバーに、エネルギーが流れ込む。

『メロン チャージ』

結花「はぁっ!」
裕司「はっ!!」

全ての李玉が、一気に裕司へ向かって飛ぶ。
全ての李玉を、一気に無双セイバーで斬る。

二人の間に、巨大な爆煙と爆音の壁が生まれた。
それが消えるのを、裕司は警戒しながら待つ。
壁が薄くなったとき、彼は緑色の光を見、その名乗りを聞いた。

『ウメアームズ』

裕司「…ほう。」

『艶やかに!扇舞!』

爆煙が完全に消え去る。
煙の向こうに立っていたのは、ウメ鎧に戻った結花だった。

裕司は心の中で感心しながら、無双セイバーを構える。
結花は強い決意を持ちながら、梅花扇を構える。
再び戦いの火蓋が切って落とされようとしたそのとき、突如ヘルヘイムが揺れた。

裕司「!、何だ!?」

結花「…!」

向こうから、巨大な影が走ってくる。
雷鳴の様な叫びを上げ、静かな森を震わせて。

裕司「…どういうことだ…」

結花「あれは…一体…」

裕司は唇を噛み、結花は呆気にとられる。
だが次の瞬間には、二人とも武器を構えて獣を睨んだ。
昂はある目的を持って、このヘルヘイムに来たのだ。
それを邪魔するものは、何であろうと破壊する。


ルナの大橙丸と無双セイバーの連撃を、牙獣は全て暴牙ブレードと懺悔ネイルで防いでいた。

ルナ「あぁぁぁああああああ!!!」

狂った様に叫ぶルナの攻撃を避け、牙獣は彼を蹴り飛ばす。
吹き飛んだルナはすぐに立ち上がると、大橙丸と無双セイバーを合体させた。

『ロックオン』

そしてそれに、ロックシードを施錠する。

『イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン』

オレンジ色のエネルギーが、ナギナタモードに蓄えられる。

ルナ「死ねぇぇええええ!!」

彼はナギナタモードを構えると、一直線に牙獣へ向かって跳んだ。

『オレンジ チャージ』

限界まで蓄えられたエネルギーを、一気に解放する。
しかしルナが思い切り振ったそれを、牙獣は何でもないかの様にジャンプして避けた。

ルナ「!」
牙獣「!」

それでも、ルナの勢いは止まらない。
ナギナタモードはそのまま振られ、銀色の装置に突き刺さった。

ナギナタモードの刺さったマシーンが、轟音を立てながら稼働する。
確認するまでもない程の莫大エネルギーが、二本の支柱に集まり始める。

牙獣「まずい…!」

牙獣は思わず呟くと、右手で掴んだ暴牙ブレードでルナを斬り裂いた。
そして怯んだ彼の首の後ろを左手で掴むと、それを盾にする様に前にかざす。
瞬間、銀色の支柱の間から強力な光が放たれた。

ユグドラシルタワーが、土台を失って倒れる。
巨大な樹木を模したそれは、根元を壊されて崩れ去った。


瓦礫の中から、牙獣が出てきた。
燃え盛る炎の中、彼は改めて自分の姿を見る。
防御力が高く、更に即席の盾でエネルギー波を防いだ。
それでも、彼の左半身はボロボロになっていた。

牙獣は変身を解除し、辺りを見渡す。
ひっきりなしにサイレンが鳴り響き、炎と煙と塵が充満した空間。
そこに立っているのは、自分ただ独りだった。

倫「…さて、これからどうなるかね。」

彼、紅蓮 倫は呟いた。
しかし、その声は絶望していない。
むしろこれから起こる事を想像し、とても楽しみにしている様だった。

- 幕間 その9 -


優「久しぶり、上春くん。」

葵に事情を説明し終わった優達は、予定通り譲の研究室に来ていた。

譲「おっす。こんなに大挙して、どうしたんだ?」

誠二「ちっと調べて欲しい事があってな。」

誠二は譲に近づいた。

誠二「五日前、この座標周辺でおかしなエネルギー流動がなかったか知りたい。」

譲「あぁ、分かった。」

譲はデスクに腰掛けると、カタカタとキーボードを叩く。
何かを入力し終わると、自分の左胸にコードが接続されたパッドを着け、更にヘッドホンを装着した。

譲「…よく考えたら、どんなエネルギーか分かんねぇと出来ないぞ?」

誠二「…九門 カイト。」

誠二に呼びかけられ、カイトは譲に薔薇と桜の花びらを渡す。

譲「これは?」

カイト「知るか。だがもしかしたら、何か分かるかもな。」

譲は素直に、それを真空管の様な装置に入れた。
そして改めて、エンターキーを叩く。

譲「…見つけた。」

数秒後、彼は小さく呟いた。

譲「…間違いない。ここから、アーマードライダーへの変身のときと同じ、時空間を歪める特殊な波長が出てる。だけど、大きさは比じゃないな。」

葵「時空間を歪める、とは?」

譲「アーマードライダーに変身するとき、上から果物が落ちて来ますよね?あれって実は、時空間を歪めて、別の何処かから落ちてくるんです。」

葵「別の…何処か…」

葵は驚いた様に呟いた。

譲「それと、もう一つ。」

誠二「何だ?」

譲「アーマードライダーの反応が四つ、この座標に向かってる。」

彼らの中に、一瞬にして緊張が走る。

優「…行こう。このままだと…」

誠二「ヤバい事になるかもな。」

葵「…つまり、聖夜くんは異世界に飛んだということですか?」

譲「あぁ。でも、もしこいつらがここで何かすると…」

カイト「二度と戻ってこれなくなる、かも知れないという事だ。」

五人は研究室を飛び出し、工場へ向かって走り出した。

- 最終章 : 世界の最期 -


レナ「…何処行ったんだろう?」

遊「…書き置きには『少し出てくる』としか書かれていませんね…」

朝のベースで問題が起きていた。
朝食の時間になっても、留奈が起きてこない。
そのため、遊が起こす為に寝室へと入った。
しかしそこに留奈の姿はなく、書き置きが残してあるだけだったのだ。

優「…どうするの?宙。」

宙「…留奈ちゃんには悪いけど、予定を遅らせる事は出来ないよ…」

宙は苦い顔でそう言った。

ルナ「ま、大丈夫だろ。あいつなら、何食わぬ顔でひょっこり帰ってくると思う。」

遊「それはそれで、少しアレですが…」

宙「…留奈ちゃんを信じよう。」

宙はそう言うと、食器を片付けて立ち上がった。

宙「皆、行くよ!」

彼が力強く叫ぶ。
まるでそれに応えるかの様に、五人のペンダントが日光を受けて輝いた。


バイクを走らせ、レナを除いた四人は城を目指す。

宙「今回はバイクを降りないで、ここまま城の入り口まで突っ込むよ!」

三人「了解!」

城の敷地内に、バイクに乗ったまま突入する。
彼らを見つけたインベス達が、ロックシードを取り出して構えた。

『『ピーナッツ』』

巨大なピーナッツが、大量のインベス達の頭に一つずつ現れる。

『『ロックオン』』

複数の音が重なり、とても大きく聞こえた。
大音量で響く、ファンファーレの様な待機音。

『『カモン!』』

全てのロックシードが同時に斬られる。

『『ピーナッツアームズ』』

ピーナッツがそれぞれのインベスの頭に刺さり、鎧へと展開した。

『『ソルジャーーーレッツゴー!』』

宙「最初に確認するけど、今回の目的は、確実に『王室』に辿り着く事!だから敵を倒すんじゃなくて、上手に受け流して!!」

宙はそう叫ぶと、戦極ドライバーを装着した。
他の三人も、バイクに乗ったままロックシードを解錠する。

『パンプキン』
『カシス』
『バナナ』
『オレンジ』

四人の頭上に現れた鎧は、バイクに合わせて空中を走っていた。

『『ロックオン』』

和風の待機音と西洋風の待機音が、ステレオで混ざる。

『カモン!』
『ソイヤッ』

宙「変身!」
遊「…変身!」
優「変身。」
ルナ「変身。」

『パンプキンアームズ』
『カシスアームズ』
『バナナアームズ』
『オレンジアームズ』

そして彼らの頭に刺さった鎧が光り、展開した。

『仰天!サプライズカーニバル!』
『全力!ライジング! 』
『ナイト オブ スピアー』
『花道 オンステージ』

宙「突撃ー!!」

宙は目の前のインベスを全て跳ね飛ばし、城の門にバイクをぶつけた。
彼が開けた道を通り、ルナ達もバイクを降りる。

宙「こっちだよ!」

宙はそう叫び、全員を左の通路へ案内する。
先へと走ると、眼前に階段が見えてきた。
それを上り、城の最上階を目指す。

宙達が二階に上がると、戦極ドライバーの音が大きく響いて聞こえてきた。
同時に二階と三階から、大量のインベスが降りてくる。

『『出陣 ウェルカム!』』

ルナ「優!」

優「任せて!」

ルナが咄嗟に判断し、優が行動する。

『バナナ スカッシュ』

優「はぁっ!」

バナスピアーに纏われた長いバナナのオーラが、階段上にいる全てのインベスを貫いた。

宙「どいてどいて!」

大幅に体力を奪われたインベスを、宙達は階段の下に落としながら進む。
そして三階をから四階へ、一気に突き抜けた。


誰一人欠けずに、辿り着いた最上階。
彼らの目の前に、遂にそれが現れた。

宙「…すごいね…」

遊「これが…」

優「大きい…」

ルナ「…なんだ、これ…」

ルナ達を出迎えたもの。
それは煌びやかだが、見る者の心を酷くかき乱す、禍々しい門だった。

遊「鍵は…かかってないみたいです。」

宙「ここが王室で、間違いないだろうね。」

宙はそう言うと、門の取っ手に手をかけた。
そして大きく深呼吸をする。

宙「すー…はー…皆もやっておいたら?」

彼の提案に、全員が素直に応じた。

宙「いくよ…3…2…1…」

誰かが、ゴクリと唾を飲む。

宙「0!!」

彼は叫ぶと、思い切り重い扉を押し開いた。
中はとても広いが、壁に装飾などは一切ない。
むしろ凹んだり切り傷がついたりなど、王室とは思えない内装だった。

優「これが…王室?」

ルナ「…!、あれは!」

そのときルナが、その部屋の奥に何かを見つけた。
一つだけ異様に豪華な椅子の上に、それが下を向いて腰掛けている。
首や手足は力なく垂れており、更に四肢と胴体は鎖で椅子に繋がれていた。

宙「玉座…かな…」

遊「でも…じゃあどうして鎖で…」

彼らはゆっくりと、それに近づいていく。
いつでも動けるように身構えた状態で、残り20m程まで迫った。
刹那、突如それの目が開く。

???「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

それは大きく吼えると、豪勢な椅子の上で暴れ始めた。
玉座が揺れ、鎖がギチギチと悲鳴を上げる。
同時に、その咆哮が衝撃波となりルナ達を襲った。

宙「わわっ!」
遊「きゃっ!」
優「あっ!」
ルナ「うわっ!」

四人は後ろへ吹き飛び、硬い扉にぶつかる。
ルナが痛む身体を無視して立ち上がろうとした瞬間、耳障りで、最悪の想像を駆り立てる音が鳴り響いた。

強い力を受け、玉座が半壊する。
重たい枷が外れ、大きな音と共に落ちる。
鎖が歪み、砕けて切れる。

全員が同時に顔を上げたとき、それは玉座から立ち上がっていた。
それはまるで天を仰ぐ様に天井を見上げ、両腕を広げる。
そしてもう一度、更に大きく咆えた。


金色のスーツに、鮮やかな赤色が走る。
黄金の鎧には全体に装飾や宝石が散りばめられ、胸部の中央には一際大きい宝石が着いていた。
円い真紅のそれは、脈動する様に規則的に輝いている。
兜と王冠を彷彿とさせる仮面を含め、和風の甲冑と西洋風の鎧が融合したシルエットだった。

仮面ライダー王武 ゴールドアップルアームズ


王武「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

王武の咆哮が、城全体を大きく揺らす。

遊「何、これ…」

優「…まさか、これが…」

宙「そうだね…これが…」

ルナ「…王武…」

王武は半壊した玉座を上から殴りつけた。
その一撃で、 それが完全に砕け散る。
王武はその下から、何かを引っ張り出した。

王武は取り出した大剣、王剣アップルクレイモアを右手に掴む。
そしてそのまま、それを大きく振った。

宙「!、危ない!」

宙が叫び、四人は咄嗟に転がる。
次の瞬間、彼らの後ろにあった重い扉が、真っ二つに裂けて倒れた。

ルナ「…は?」

それを見て、ルナの頭が真っ白になる。
しかしすぐに気を取り戻すと、大橙丸を構えて立ち上がった。

ルナ「宙!どうする!?」

宙「しばらく攻撃を続けて!弱点が見つかるかも!!」

ルナ「オッケー!」

宙の指示を受けると、ルナは走って優と合流した。

ルナ「優!アレいける!?」

優「いけるよ!」

ルナと優が横に並ぶ。
二人は懐からロックシードを取り出した。

『パイン』
『マンゴー』

彼らの頭上に、巨大な果実が現れる。

『ロックオン』

そして施錠したロックシードを、一息に斬った。

『ソイヤッ』
『カモン!』

頭に刺さったパインとマンゴーが、鎧へと展開する。

『パインアームズ』
『マンゴーアームズ』

優「いくよ、ルナ。」

『粉砕 デストロイ』
『ファイト オブ ハンマー』

ルナ「あぁ。いこう、優。」

パワー系鎧に変化した二人は、王武に向かって走る。
それに気づいた王武が、アップルクレイモアを振り上げた。

宙「させないよ!」

それに気づいた宙が、すかさず戦極ドライバーを操作する。

『パンプキン スパーキング』

宙「頼むよ、タイホーン!」

彼のフィスティバルタイホーンから、強力なエネルギーが発せられた。
しかし、それは防がれてしまう。
王武の鎧中の宝石から、エネルギーフィールドが張られたからだ。

宙「何あれ!?あんなの聞いてない!」

宙は思わず叫ぶ。
その間に、ルナと優が王武に到達した。

ルナ「はぁっ!」
優「おりゃあ!」

パインアイアンとマンゴパニッシャーを、ルナと優は思い切り振りかざす。
だがその攻撃も、エネルギーフィールドによって弾き飛ばされてしまう。
二人は再び後ろへ吹き飛んだ。

遊「あれじゃあ、いつまで経っても倒せません!」

遊が、ルナと優に合流する。

宙「二人の攻撃も効かないって事は、エネルギー系攻撃だけじゃなくて、物理攻撃も弾けるって事だもんね…」

宙も三人の元に戻ってきた。
そのとき、王武の仮面の一部が割れる。
口の部分に、青白い光が溜まり始めた。

豪華で王様な外見してながら獣みたいに理性がなくて狂暴なやつなのか。
こいつならプトティラとかキングフォームとも互角にかち合えそうだな

遊「!、何か来ます!」

宙「皆、右に避けて!」

バラバラになるのは危険だと判断したのか、宙が回避ルートを指示する。
そして青白い光が、王武の口から発射された。

王武「グルァアア!」

そのエネルギー弾は驚異的なスピードで飛び、王室の壁に当たる。
その部分が崩れ、更に爆炎を上げ始めた。
メラメラと燃える炎が、王武の身体を不気味に照らす。

優「どうしよう…」

ルナ「…とりあえず、あの剣は危険だな。」

遊「でも手から落とすにしても、シールドを張られていては…」

宙「…四方向から同時に攻撃してみよう。一度に弾ける攻撃量には、限界があるかも知れない!」

宙はそう叫ぶと、北側へ回った。
ルナは南側に走り、遊は西側へ移動する。

宙「いくよ!せーのっ!」

『マンゴー オーレ』
『カシス オーレ』
『パイン オーレ』
『パンプキン オーレ』

彼らの右脚に、それぞれ特有のエネルギーが溜まる。
そして同時に駆け出し、タイミングを合わせて跳んだ。

優「はぁっ!」
遊「はっ!」
ルナ「おらぁ!」
宙「喰らえ!」

全員が右脚を突き出す。
しかし、それもエネルギーフィールドに弾かれてしまった。

四人は吹き飛び、床を転がる。
王武は煩そうにアップルクレイモアを握ると、それを東側に向かって振った。

ルナ「優!」

優「!」

優は立ち上がって避けようとする。
が、間に合わない。

優「あぁああ!」

彼女は衝撃波の直撃を受け、勢いよく吹き飛んだ。

ルナ「優!!」

優の変身が強制解除される。
生身の彼女は床でバウンドし、ゴロゴロと転がった。

ルナ「優!しっかりしてくれ!優!!」

ルナが優に駆け寄る。
変身を解除すると、彼は咄嗟に身体を抱き上げた。

優「…ルナ…」

力なく右手を伸ばし、優はルナの頬に触れる。

優「…」

そしてしばらく黙っていたが、やがて痛みを堪える様に、ぎこちなく笑った。

優「…ごめん…なんか、いい言葉…思いつかないや…」

ルナ「…優?」

優「…ねぇ、ルナ。」

優は笑顔で、ルナに問う。

優「私の事、好き?」

ルナ「…当たり前だろ。大好きだよ。他の何よりも、世界の誰よりも。」

ルナはゆっくりと、優に顔を近づけた。
二人の唇が、そっと触れ合う。

優「…ありがと…」

優は、とびきりの笑顔をルナ見せた。

ルナ「…優?」

瞳が閉じて、四肢と首が垂れる。

ルナ「…なぁ、優?」

ルナの支えていた身体が、冷たく重くなる。

ルナ「…優は、俺の事好きか?」

彼が呟いた問いに、答える声はなかった。

ルナ「…」

ルナは屈んだまま、上半身を上げる。

『イチゴ』

ロックシードを解錠し、戦極ドライバーに施錠する。

『ロックオン』

王室に、和風の待機音が響く。

『ソイヤッ』

ロックシードが斬られ、イチゴが彼の頭に刺さる。

『イチゴアームズ』

それが展開し、鎧へと変化する。

『シュシュッと スパーク』

彼は変身すると、腰から無双セイバーを抜き、コックを引いた。

遊「…ルナさん…」

無双セイバーの銃口が、王武の身体を捉える。

ルナ「…死ねよ、お前。」

低い声と共に、彼はトリガーを引いた。

無双セイバーから、エネルギー弾が発射される。
だがやはり、エネルギーフィールドがその攻撃を受け付けなかった。

…最後の一発を除いて。

射出された三発のエネルギー弾は、王武の右肩へと飛んで行き弾かれる。
しかし最後の一発は、確かに王武の右腕に着弾したのだ。
王武は何かを感じたのか、軽く右腕を抑える。

遊「嘘…どうして…」

宙「…そうか!分かった!」

宙は得心がいった様に叫ぶと、走って遊とルナに合流した。

宙「聞いて!王武のシールドは、鎧の宝石から出てた。だからこそ、そこには如何なる攻撃も受け付けない。でも、逆に言えば…」

遊「…!鎧以外の場所なら、攻撃が通ります!」

>>164さん
>>1が書いてるときのイメージは、プトティラの初登場(遊園地での戦闘シーン)でした。

ルナ「…」

宙「ルナくん。君の気持ち、よく分かるよ。『自分も、優の後を追って死にたい。』そうでしょ?」

ルナ「…」

宙「でもね、いつまでも悲しんでいたら、いつまで経ってもその気持ちを晴らす事は出来ないんだ。」

ルナ「…」

宙「いや…違うかな。その気持ちが晴れる事なんてない。でも…」

宙はルナの隣に立った。

宙「そのままでいたら、恨みや憎しみも晴らせないよ。」

ルナ「…」

宙「そんなものをずっと抱え込んでいたら、ルナくんは絶対に壊れてしまう。そんな姿を、君の事が大好きだった優が喜ぶはずがない。」

ルナ「…」

宙「どんなに苦しくても、進むしかないんだ。ルナくんは、アーマードライダーなんだよ。」

ルナ「…そうだな。」

ルナはゆっくりと立ち上がる。

ルナ「俺は、アーマードライダーだ。」

ルナは強く拳を握る。

ルナ「止まる事なんて、許されない。」

宙「そういう事。」

ルナの隣に、遊が並んだ。

遊「…宙さん、指示を。」

宙「王武の戦極ドライバーに攻撃を集中。別の箇所を攻撃してもいいけど、鎧にだけは攻撃しないで。」

ルナ「あぁ。」
遊「了解。」

宙「いくよ。戦闘再開だ!」

宙はそう言うと、カーニバルガンガーンを戦極ドライバーに向かって連射する。
遊も走りながら、紫電一号と紫電二号で攻撃した。

ルナは屈むと、優しく優の身体に触れる。
手に冷たさを感じながら、彼女のポケットからロックシードを取り出した。

『バナナ』

ルナ「…優、借りるよ。」

『ロックオン』

ルナは立ち上がり、王武を見据える。

『ソイヤッ』

そしてロックシードが斬られると、空中に浮かんでいたバナナが頭に刺さった。

『バナナアームズ』

それが展開し、鎧へと変形する。
優が愛用していた鎧を、ルナが装着した。

『ナイト オブ スピアー』


和風のアーマードライダーが、西洋風の鎧を纏っている。
青と金のスーツに、金と銀の鎧。
肩の鎧はとび出ており、角のついた兜がとても攻撃的な印象を与える。
右手に持つ金色の縁が付いた槍、バナスピアーは、まるで装飾品の様に、白く高貴な輝きを放っていた。

仮面ライダー鎧武 バナナアームズ

ルナはバナスピアーを構えると、王武にその槍先を向けた。

ルナ「覚悟しろ。」

彼は低い声で、ハッキリと宣言する。

ルナ「ここからは、俺と優の、最後のステージだ。」


遊「いきます!」

『カシス スカッシュ』

遊は戦極ドライバーを操作すると、紫電一号、紫電二号を王武に向ける。
豊の戦極ドライバーを破壊した紫色のエネルギーが、王武のそれに直撃した。
しかしその一撃でも、王武の戦極ドライバーは壊れない。
そして戦極ドライバーに攻撃を受け始めた王武は、本能的な恐怖を感じていた。

王武「グルァァァアアアアアア!!!」

王武が咆える。
まるでそれに反応したかの様に、戦極ドライバーが自動でロックシードを斬った。

『ゴールドアップル スカッシュ』

アップルクレイモアに、黄金の雷撃が纏われる。
それを大きく振り回すと、遊に向かって輝く斬撃を放った。

宙「遊ちゃん!」
ルナ「!」

遊「!!」

今までの衝撃波とは比べものにならない程、素早く巨大な斬撃が遊を襲う。
彼女の身体は金色の光に包まれ、跡形も無く消え去った。

ルナ「…」
宙「…」

死体すら残らない。
そこに「遊がいた」という痕跡は、何も残らなかった。

ルナ「…いい加減にしろよ…」

『バナナ スパーキング』

ルナは低く呟くと、戦極ドライバーを操作した。

ルナ「あぁぁああああ!!」

ルナは身体を捻りながら、王武に向かって跳ぶ。
そしてバナナのオーラを纏ったバナスピアーを、王武の戦極ドライバーに突き立てた。

ルナ「あぁぁぁああああああ!!!」

そのまま強力なエネルギーを流し込む。
王武の戦極ドライバーのフェイスプレートが、一瞬だけバチッと消えた。

王武はルナを掴むと、横に振って投げる。
彼の身体は宙を舞い、壁に叩きつけられた。

『ゴールドアップル スカッシュ』

アップルクレイモアに、再び黄金の雷撃が纏われる。

宙「させないって言ったでしょ!!」

宙はそれに気づくと、すぐに戦極ドライバーを操作した。

『パンプキン スパーキング』

フィスティバルタイホーンに、エネルギーが溜まる。
彼は王武の右手を狙って、正確にそれを発射した。

王武の腕がブレる。
光り輝く斬撃波は、ルナの頭上を掠め、壁を大きく切り裂いた。

宙「今だ!ルナくん!」

宙が叫ぶ。
その声が届く前に、既にルナは行動していた。

『ロックオン』

ロックシードを無双セイバーに施錠する。

『イチ、ジュウ、ヒャク』

エネルギーがチャージされた瞬間、なんとルナはロックシードを解錠した。
そして間髪入れずに、もう一度施錠する。

『ロックオン』

ロックシードは過剰にエネルギーを絞り出され、強く光ってヒビ割れる。

『イチ、ジュウ、ヒャク』

無双セイバーにエネルギーを限界まで凝縮させると、ルナは王武に向かって跳んだ。
無双セイバーを横に振り、王武の戦極ドライバーに突き刺す。

『バナナ チャージ』

トリガーが引かれ、無双セイバーに集まったエネルギーが解放された。
多量のエネルギーが、一気に王武の戦極ドライバーに流れ込む。

ルナ「死ねぇぇぇぇええええええええ!!!!」

ルナの絶叫が、王室に響き渡った。

王武「グルァァァアアアアアア!!!」

それに呼応する様に、王武が咆える。
同時に発せられた衝撃波が、ルナを思い切り吹き飛ばした。

宙「そんな!」

宙は驚きながらも、追撃しようとカーニバルガンガーンを構える。
が、その必要はなかった。
莫大なエネルギーを流し込まれ、更に強力な衝撃波を受ける。
それは王武の戦極ドライバーの耐久力を、完全に奪い去っていた。

戦極ドライバーが壊れ、ロックシードのエネルギーが逆流する。
王武の鎧にヒビが入り、光が漏れる。
歪み、軋み、内側から割れる。

王武「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

王武の咆哮が城を揺らした。
そして次の瞬間、金色の光が王室を満たす。

遅れて、大きな爆音が聞こえた。
ルナが目を開くと、そこに王武の姿はない。
代わりに王室全体を、燃え盛る炎が包んでいた。

宙「…終わったね…」

ルナ「…」

ルナは無言で変身を解除する。
宙も変身を解除すると、歩いて彼に近づいた。

宙「とりあえず、ここにいると危ないよ。下に行こう。」

ルナ「…そうだな。」

宙とルナは、王武が破壊した扉の残骸を乗り越える。
ルナは宙について行きながら、言い知れぬ空虚感を感じていた。


二人は、一階の真ん中の通路を進む。
やがて奥に、一つの部屋が見えてきた。

宙「この前調べたときに見つけたんだ。ここに変な装置があるのを。もしかしたら、帰れるかも知れないよ。」

宙はそう言うと扉を開けた。
部屋の中は広く、様々な機械が置いてある。
だがそれ以上に、そこには目を引く人物がいた。

留奈「遅かったな。」

聖夜 留奈だった。

ルナ「留奈…!」

ルナは留奈に詰め寄ると、彼女の胸ぐらを掴む。

ルナ「どこ行ってたんだよ!さっきの戦闘で…優が…!」

ルナは強い怒りが篭った瞳で見つめる。
が、そんなものは歯牙にも掛けず、留奈は宙を見て言った。

留奈「下克上を果たした気分はどうだ?紅蓮 倫。」

機械室に、静かな空気が漂う。

宙「…ちょっとちょっと。留奈ちゃん何言ってんの?」

その空気を、宙がお茶らけた口調で壊した。
しかしそれには答えず、留奈は続ける。

留奈「最初に疑ったのは、果樹園との戦闘のときだ。お前達が城の調査をしたにも拘らず、この機械室も研究室も、随分と整理されたままだった。」

彼女はルナの手を払い除けると、更に続ける。

留奈「次に疑ったのは、図書館でだ。お前は『城に入ったときに、紅蓮 倫の研究室を見つけた。』と言った。だがさっきも言ったが、調べたにしては綺麗すぎる。」

ルナと宙が、留奈を見つめる。

留奈「次に疑ったのも、図書館でだ。お前は『紅蓮が王武の側近だ。』と言った。側近が一人だけだと分かっていたかの様に断言した。」

ルナがゆっくりと、視線を宙に向ける。

留奈「決定打は、今日のお前の行動だ。お前は城に入った後、迷わずに右の通路へ行ったな。他の通路には、興味がないと言うように。」

留奈は、宙を真っ直ぐに見つめる。

留奈「お前が調べたのは、研究室じゃなかったのか?もしも矢上や乃木坂が調べたとしたら、いつその情報を聞いたんだ?」

宙「…」

留奈が、宙を強い瞳で見つめる。
ルナが、宙を戸惑った瞳で見つめる。
やがて、宙は口を開いた。

宙「…そう言われると、結構ボロ出してたみたいだね。」

彼はそう言いながら、奥にある装置へ向かう。
その二本の銀色の支柱がついた装置に、カタカタと数字を入力し始めた。

宙「でも本当にすごいね、留奈ちゃん。」

ルナ「宙…?」

宙「もういいよ、ルナくん。偽名の方で呼ばなくても。」

宙は手を止めると、ルナの方に向き直った。

宙「紅蓮って、本名の方で呼べよ。」

ルナ「…おい、嘘だろ?」

倫「嘘じゃないって。今、そっちのが説明しただろ。」

倫はそう言いながら、装置のスタートスイッチを押した。
装置が音を立てて動き始める。
そして銀色の支柱の間にエネルギーが溜まり、銀色のジッパーの様な時空間の裂け目が現れた。

倫「はい。これを通れば、元の世界に帰れるぜ。」

ルナ「…」

倫「安心しろって。嘘じゃない。お前らが来たときのエネルギーを、逆探知して出した数値だからな。」

ルナ「…」

ルナはしばらく黙っていたが、やがて震えた声で言った。

ルナ「…全部嘘だったのか?優や姉さん、枝垂さん達を騙していたのか?」

倫「だからそうだって言っただろ?さっさと帰れよ。」

ルナ「…全部全部、演技だったのか。皆が死んだとき、悲しんだのも!」

倫「…いや、そんな事はしてないぜ?」

ルナ「!嘘だ!お前は…」

留奈「いや、確かにしていないな。」

叫ぶルナとは対照的に、留奈は冷静な口調で言った。

留奈「誰が死んだときも、お前は一度も悲しまなかった。」

倫「本当にすごいな。帰ったら探偵で食っていったらどうだ?」

倫は軽い口調で返す。
その言葉を聞いた瞬間、ルナは戦極ドライバーを装着した。

『オレンジ』

彼の頭上に、巨大なオレンジが現れる。

『ロックオン』

待機音が流れ始める前に、ロックシードが斬られた。

『ソイヤッ』

ルナの頭に、オレンジが刺さる。

『オレンジアームズ』

それが鎧に展開すると同時に、彼は大橙丸を倫に向けた。

『花道 オンステージ』

倫「…俺と戦う気か?」

倫はそう言うと、はぁと溜息をついた。

倫「頭使えよ。俺を殺したら、お前は二度とお前の世界には帰れないんだぜ?」

ルナ「…」

倫「今、お前に与えられてる選択肢は二つ。1.このまま自分の世界に帰る。2.俺を殺して、一生この世界で生きていく。…さぁ、お前はどっちを選ぶ?」

ルナ「…」

ルナは大橙丸を持ったまま固まってしまった。
このままこいつを野放しにしておくなんて、絶対に許されない。
でもそうすれば、自分は一生この荒廃した世界で生きる事になる。
そうすれば、本当に二度と、優に会う事は出来ない。

倫「…普通悩むかよ、そこ。」

倫は呆れた様に呟く。

留奈「…ルナ、ペンダントのお返しをやろう。」

そうして迷い続けるルナに、留奈が声をかけた。

ルナ「…は?」

留奈「私がもう一つの選択肢をくれてやる。」

彼女はニヤリと笑うと、一枚の紙を取り出す。

留奈「3.紅蓮 倫を倒して、元の世界に帰る。だ。」

留奈が持っている紙は、時空間転移装置の設計図と資料、そしてそれに関する倫が書いたメモだった。

倫「…いつの間に?」

留奈「研究室の扉なら、お前が王武と戦っているときに壊したさ。」

ルナ「…ありがとよ、留奈。」

ルナは小さく呟くと、倫に向けて大橙丸を構え直した。

本日はここまでにしたいと思います。

疑問、質問、提案等、いつでもお受けしております。
気になった点があれば、いつでもご指摘ください。


終わりませんでしたね…
本編の更新は、また明後日からになりそうです。


明日は「仮面ライダー鎧武 第14話 ヘルヘイムの果実の秘密」です。

4人の新世代ライダー登場!

インベスとなった初瀬の運命は…

是非是非、見て下さい。


初瀬ちゃんはインベスとして最終回まで食っていけると信じてる。

紅蓮 倫になってからもアームズは変わらない?

乙です。

結局王武はなんだったんだ?
変身者とかなんであんな理性がないのか不明だったしあんな理性のない状態だったら下克上なんかしなくても利用できたろうし

>>969さん
ユグドラシルのアーマードライダーによってです。

まぁ、そもそも盗人だろうと殺す事の方が間違っているのですが…

少し、戦極 リョウマに関するデータを載せておきます。


戦極 リョウマ(せんごく りょうま)…ユグドラシルが誇る研究者。
マッドサイエンティストだが、本人は全くそう思っていない。
その頭脳と功績から、ユグドラシル上層部の考えを無視して指示出来る珍しい人物。
時には上層部よりも、彼の指示が優先される事もある。

基本的には、自分の研究にしか興味がない。
「研究の邪魔だから」や「僕が嫌いだから」という軽い理由で、容赦なく人を殺す。
それは敵だろうと、仲間だろうと関係ない。
ユグドラシルで実績を出せない社員は、彼の実験台にされている。

投下する方間違えました。
すみません。

>>174さん
初瀬ちゃんは、きっと人間に戻れると信じています。
予告でも、少しだけ人間に戻ってましたし。


>>175さん
それはまた明日で。

先日、果実や種子以外のロックシードはユグドラシルが作ったものではないと書きました。
つまりパンプキン ロックシードは、倫が改造したものだったのです。


>>176さん
それもまた明日で。

倫が下克上をした理由は、自分が「支配者」として君臨するためです。
彼は暴れる王武を玉座に封印し、実質的に支配権を握りました。
しかしどんなに支配しても、人々が畏れるのは「王武」であり「紅蓮 倫」ではないのです。
だからこそ、彼が本当の「支配者」になるためには、王武を倒す必要がありました。

しかしそのまま下克上したところで、勝てる保証はない上、他のアーマードライダーに殺される可能性もありました。
彼は身元を偽装し「ヘーラクレース」を作り、仲間のアーマードライダーを集めました。
彼らを利用し「帝王の果樹園」に属するアーマードライダーを、全て殺してから下克上に乗り出したのです。
紅蓮 倫として殺せば、彼は裏切り者として独りで果樹園のアーマードライダーと戦う事になりますから。

全てのアーマードライダーを殺した事で、彼はようやく本命である下克上が出来る状態になりました。
だから今回彼は、インベスに構わず真っ直ぐに王室に向かったのです。

乙でしたー だからパンプキンのロックシードだったんすね。本当に(料理面でも)巧く立ち回って生き残りましたね・・・
しかし改造物は長く持たない事を知らされ液状化も看破、一番エグいであろう死に方に加え更なるアームズが器用貧乏な物の彼が本編でこの先生き残るには・・・

>>180さん
実際に昂との戦闘では、巡は勝ちそうだったんですけどね…
全ては龍玄のせいです。

でも逆に言えば、龍玄以外との戦闘と、爆炎の中以外の戦闘であれば、圧倒的に優位という事でもありますし。


皆さん、こんばんは。
実はケータイを弄るのも怠いので、手短にご報告致します。

インフルエンザにかかりました。
次に再開出来る目処がまだ立たないのですが、報告はするようにします。

ご迷惑おかけしますが、何卒ご理解下さい。

こんばんは。
本日で完結させたいと思います。


前回までのあらすじ

ユグドラシルの罠に嵌り並行世界へと飛ばされてしまった聖夜 ルナ(仮面ライダー鎧武)と聖夜 留奈(仮面ライダー武神鎧武)。
滅びたその世界で水落 宙(仮面ライダーバンプ)と出会った二人は、彼が率いる反乱軍「ヘーラクレース」と共に、仮面ライダー王武が率いる「帝王の果樹園」と戦う事になる。
最愛の彼女、五城 優(仮面ライダーバロン)を目の前で失いながらも、ルナは王武を殺す事に成功した。

そして、留奈の口から明らかになった真実。
水落 宙の正体は、王武の側近である紅蓮 倫(仮面ライダー牙獣)であった。
ヘーラクレースや優なども全て、彼が下克上を果たす為の捨て駒でしかなかったのだ。

ルナは倫を倒そうとするが、彼を殺せば自分は元の世界に戻れないとしり、苦悩してしまう。
そんな彼に、留奈は新たな選択肢と一つの希望を与える。
そしてルナは決意と共に、倫と対峙するのだった。

倫「…あっそ。戦うのか。」

彼は諦めた様に呟くと、パンパンッと手を叩く。

倫「でも、本当に戦えるのか?」

ルナ「何?」

ルナが疑問を口にしたとき、その音が響いてきた。
コツコツという足音は段々と、こちらに近づいてくる。
やがて機械室の奥の扉が開き、一人の人物が入ってきた。

ルナ「!…なんで…」

瞬間、ルナの思考が止まる。
歩いてきた人物は、涙滴型をしたクリアな黄緑色のペンダントを身につけた女性。

聖夜 レナだった。

ルナ「姉さん、どうしてここに…」

ルナは思わず近づく。
だが彼の思考は、再び停止する事になった。
レナが無表情のまま、戦極ドライバーを取り出したからだ。

ルナ「!どうして…」

レナ「…」

彼女は無言で戦極ドライバーを装着する。
ポケットからロックシードを取り出すと、それを構えて解錠した。

『ピンクグレープフルーツ』

レナの頭上に、表面がピンク色のグレープフルーツが現れる。
それを確認すると、ロックシードを戦極ドライバーに装填した。

『ロックオン』

西洋風の待機音が、機械室に鳴り渡る。
彼女は戦極ドライバーを操作し、ロックシードを斬った。

『カモン!』

レナ「…変身…」

『ピンクグレープフルーツアームズ』

巨大なピンクグレープフルーツが、レナの頭に突き刺さる。
それはルナの目の前で、鎧の形へと展開した。

『Demolish the Moonlight』

変身完了。
直後、グチャッという血液が飛び散る様な音が四回鳴った。


鮮血のような真紅のスーツに、金色に光る複雑なラインが入っている。
ショッキングピンクの鎧は、身体に張り付くように歪んでおり薄い。
西洋風のアーマードライダーでありながら、仮面は白いアーマードライダー、斬月に似ている。
右手には細く真っ直ぐな剣、Luna Demolisherを握っていた。

仮面ライダーストリーム ピンクグレープフルーツアームズ

スーツ全体に血管の様なライン・ドライブ・ストリームが走るアーマードライダー。


レナはLuna Demolisherを構え、ゆっくりとルナに近づく。

ルナ「姉さん…?」

彼がそう呟いた瞬間、レナは大きくLuna Demolisherを振るった。

ルナ「がっ!」

ルナは抵抗出来ず、そのまま後ろへ倒れる。

留奈「D.C.ではない…まさか、アレか?」

倫「本当に勘がいいな。その通り、マインドコントロールってやつさ。」

彼は留奈に簡潔に答えると、もう一つ付け加えた。

倫「それも、お前らが来るずっと前からな。」


留奈が倫と話している間にも、レナの攻撃は続く。
ルナは反撃しようとするが、洗脳されているとは言え、姉が変身したアーマードライダーに攻撃出来ない。

留奈「ちっ…」

留奈は舌打ちすると、戦極ドライバーを装着する。
が、目の前に倫が立ち塞がった。

倫「おっと。姉弟の感動の再会を邪魔するなよ。」

彼はそう言うと、今まで使っていたものとは違う戦極ドライバーを装着した。

『ブラッドオレンジ』
『ピタヤ』

二人の頭上に、巨大なブラッドオレンジとピタヤが現れる。

『ロックオン』

留奈「変身。」
倫「変、身。」

『ブラッドオレンジアームズ』
『ピタヤアームズ』

ロック調の待機音が流れると、二人はすぐにロックシードを斬った。

『邪ノ道 オンステージ』
『暴牙!ガブ!ガブ!ガブ!』

頭に刺さった果実が鎧に変形し、変身が完了する。

留奈「はっ!」

倫「おっと。」

留奈が振り下ろした大橙丸の一撃を、倫は左腕の懺悔ネイルで受ける。
次に振り下ろされた無双セイバーは、暴牙ブレードで弾いた。

倫「やっぱ強いな。でも…」

尚も続く留奈の連撃を受け止めながら、彼は不気味に笑う。

倫「全く同じパターンの攻撃を、前に受けた事があるんだよ!」

倫は楽しそうに叫ぶと、留奈の身体を蹴り飛ばした。

留奈「くっ…」

彼女は倒れずに踏み止まる。
そして無双セイバーと大橙丸を繋げてナギナタモードにすると、再び倫の方へ跳んだ。


レナのLuna Demolisherが、ルナを襲う。
彼はボロボロになりながらも立ち上がるが、どうしても攻撃する事が出来ない。

ルナ「姉さん!やめてくれ!」

ルナは必死に叫ぶが、レナは何も答えない。
Luna Demolisherを勢い良く突き出し、彼を弾き飛ばした。

ルナは吹き飛び、ゴロゴロと転がる。
しかしフラフラになりながらも、何度も立ち上がる。

ルナ「姉さん…」

彼はよろけながらも、レナに近づく。
そして振り下ろされたLuna Demolisherを回避すると、レナに抱きついた。

ルナ「姉さん、思い出してよ…小さい頃から…ずっと一緒にいた、俺の事を…」

レナ「…」

レナの動きが止まる。

ルナ「頼むよ、姉さん…俺の事を…思い出してくれ!!」

レナ「…」

彼女はビクッと震えた後、ゆっくりとルナを見た。

レナ「…ル…ナ…?」

ルナ「!姉さん!!」

ルナが嬉しそうに叫ぶ。
瞬間、彼の身体は宙に浮いていた。
下から振り上げられたLuna Demolisherが、ルナを強く弾き飛ばしたからだ。

ルナ「がぁっ!」

彼は抵抗出来ず、その場にへたり込む。
そしてレナは、戦極ドライバーを操作した。

『ピンクグレープフルーツ スパーキング』

ライン・ドライブ・ストリームを通して、Luna Demolisherにショッキングピンクのエネルギーが流れ込み鼓動する。
彼女は一足飛びにルナに近づくと、左から右へ一気に斬り裂いた。

ルナ「がぁぁぁああああああ!!!」

変身が強制解除され、ルナは大きく吹き飛んだ。
身体が床に叩きつけられ、彼は動かなくなる。
肉体的にも精神的にも、彼は既に限界だった。

オレンジ ロックシードが戦極ドライバーから飛ぶ。
ロックシードはそのまま綺麗な弧を描き、レナの手の中に入ろうとした。
彼女はロックシードを掴もうと手を伸ばす。

しかし、それはなんと宙に浮かんだまま、何かに引きつけられる様に軌道を変えて飛んでいく。

レナ「!」

ルナ「!」

オレンジ ロックシードはルナの頭上を通り抜けると、その後ろにいる人物の手の中に収まった。
ルナよりも年下だが、しっかりとした雰囲気を持つ女性。
まるで病衣の様な服を身に纏い、腰には戦極ドライバーを装着している。
彼女は左手にオレンジ ロックシードを掴んだまま、右手で別のロックシードを解錠した。

『グレープフルーツ』

彼女の頭上に、鮮やかな色の果実が現れる。
彼女はルナを見据えたまま、ロックシードを戦極ドライバーに施錠した。

『ロックオン』

和風の待機音が、時間が止まったかの様に静かな空間に谺する。
彼女は戦極ドライバーを操作し、ロックシードを斬った。

『ソイヤッ』

???「変身。」

『グレープフルーツアームズ』

巨大なグレープフルーツが、彼女の頭に突き刺さる。
それはルナとレナの目の前で、鎧へと変形した。

『瀬をはやみ 再び…!』

変身完了。
直後、ザシュッという斬撃の様な音が四回鳴った。


鮮やかな碧いスーツに、銀色に光る直線的なラインが入っている。
レモンイエローに輝く鎧の形は、鎧武と良く似ているが少し華奢だ。
和風のアーマードライダーの為か、仮面はルナのアーマードライダー、鎧武に似ている。
腰には無双セイバーを帯刀し、右手には大橙丸に似た刀、満月ノ白光を握っていた。

仮面ライダー流 グレープフルーツアームズ

スーツ全体に川のような銀のライン・ドライブ・ストリームが走るアーマードライダー。

流は立ったまま、戦極ドライバーを操作した。

『グレープフルーツ スパーキング』

彼女の左手に、ライン・ドライブ・ストリームを通してエネルギーが送られる。
黄色に光るエネルギーは、そのままオレンジ ロックシードに流れ込んだ。
オレンジ ロックシードが、一瞬だけ強く光る。
そしてそのまま、キラキラと輝き続ける状態になった。

流は歩いてルナに近づくと、オレンジ ロックシードを差し出す。
彼はそれを、呆けた顔のまま受け取った。

ルナ「…あなたは…」

流は屈むと、ルナの問いには答えずに言う。

流「兄さんが倒すべき相手は、姉さんではなくあいつ。」

彼女は立ち上がりながら、留奈と戦っている倫を指差した。

ルナ「兄、さん…?」

ルナは疑問符を浮かべる。
そんな彼を無視して、流はレナに向かって走り出した。

レナがLuna Demolisherを構える。
流が満月ノ白光を振り下ろす。
対をなす二人のアーマードライダーが、火花を散らしてぶつかり合った。


ルナは未だ呆然としたまま、受け取ったロックシードを見つめる。
橙色に輝くそれをしばらく見つめた後、彼は意を決してそれを解錠した。

『フレッシュ!オレンジ』

ルナが立ち上がる。
同時に、頭上に光り輝くオレンジが現れた。

『ロックオン』

ロックシードを戦極ドライバーに施錠する。
和風の待機音が、これから起こる何かを報せるかの様に鳴り始めた。

『ソイヤッ』

ルナ「変身!」

『フレッシュ!オレンジアームズ』

強力なエネルギーを内包したオレンジが、ルナの頭に突き刺さる。
そして一際強い光を放ち、鎧へと展開した。

『花道!オーンステージ!』


群青のスーツに、オレンジ色に光り輝く鎧。
オレンジ色に光るバイザーと、その上に付けられた金色の三日月型の飾り。
腰には無双セイバーを帯刀し、更に右手にオレンジ色に輝く刀、大橙丸を持っている。

仮面ライダー鎧武 フレッシュオレンジアームズ

決意を力に変えた、仮面ライダー。


ルナ「うぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」

ルナは叫びながら走り出す。
そして留奈と戦っている倫を、横から思い切り蹴り飛ばした。

倫「!」

倫はその場で体制を立て直すと、振り返る。
そこには、オレンジ色に光り輝くアーマードライダーが、留奈の隣に立っていた。

倫「…なんだ、それ?」

彼は訝しげな声音でルナに問いかける。
ルナは大橙丸を構えると、倫に告げた。

ルナ「これが俺の、最後のステージだ!!」

留奈「…」

留奈は無言でそれを見つめると、突然、時空間転移装置に向かって走り出した。

倫「!」

倫がそれに気づき、留奈を止めようと動く。
しかしそれは、ルナの大橙丸の攻撃によって邪魔された。

倫「…オーケー。」

彼の瞳に、怒りの火が灯る。

倫「もう一回殺してやる、聖夜 ルナ。」

彼は低く唸ると、ルナに暴牙ブレードを振り下ろした。


留奈は時空間転移装置の時空間座標入力機をいじっていた。
設計図と資料、そしてメモを元に、座標を再入力する。

留奈「…よし。」

彼女は呟くと、エンターキーを叩いた。
時空間転移装置についている二本の銀色の支柱。
その間に現れていたジッパーの様な時空間の裂け目が一度閉じ、再び開いた。


倫の暴牙ブレードと懺悔ネイルの猛攻。
ルナの大橙丸と無双セイバーの連撃。
互いに一歩も引かずにぶつかり合う。

本来であれば、ルナを軽く圧倒出来るスペックを持つ倫。
だが今は、彼に一度もダメージを与える事が出来ていなかった。

倫「うらぁぁああああ!!」

倫が暴牙ブレードを振り下ろす。

ルナ「はぁぁああああ!!」

ルナが大橙丸を振り上げる。
二つの刃がつばぜり合う。

倫「うらぁぁぁああああああ!!!」
ルナ「はぁぁぁああああああ!!!」

二人が全力で押し合う。
ルナの持つ大橙丸に、ピシッとヒビが入った。

倫「!」

倫は仮面の下で笑うと、暴牙ブレードに更に力を込める。

ルナ「まず…!」

ルナの身体に緊張が走る。
そのとき、倫が時空間転移装置の方へ吹き飛んだ。
見ると、ルナの後ろから、留奈が無双セイバーの銃口を倫に向けている。

留奈「ルナ、いくぞ。」

留奈がルナの隣に立つ。

ルナ「あぁ。いこうぜ、留奈。」

二人は息を合わせ、戦極ドライバーを操作した。

『フレッシュ!オレンジ スパーキング』
『ブラッドオレンジ スパーキング』

同時に走り出す。
そのままタイミングを見計らい、高く跳んだ。
ルナと留奈の前方に、オレンジとブラッドオレンジの輪切りが三枚ずつ現れる。

ルナ「はぁぁぁぁああああああああ!!!!」
留奈「はぁぁぁぁああああああああ!!!!」

無双セイバーを左手で抑え、右脚を突き出す。
オレンジとブラッドオレンジのオーラを蹴り抜けると、それぞれ果汁の様な橙色と紅色のエネルギーが、二人の右脚に纏われた。

二人のキックが、倫の眼前に迫る。

倫「ふっ…」

が、その瞬間、彼は素早く屈む。
ルナと留奈のキックは、倫の頭上をすり抜けた。

ルナ「しまった!!」

留奈「いや、計画通りだ!!」

ルナが焦って叫ぶ。
しかし、留奈はそれを冷静に否定した。
二人は倫の後ろ、時空間転移装置の柱の間へ飛ぶ。
そして右脚を突き出したまま、時空間の裂け目の中へと消え去った。


ルナの大橙丸と無双セイバーの連撃を、倫は全て暴牙ブレードと懺悔ネイルで防いでいた。

ルナ「あぁぁぁああああああ!!!」

狂った様に叫ぶルナの攻撃を避け、倫は彼を蹴り飛ばす。
吹き飛んだルナはすぐに立ち上がると、大橙丸と無双セイバーを合体させた。

『ロックオン』

そしてそれに、ロックシードを施錠する。

『イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン』

オレンジ色のエネルギーが、ナギナタモードに蓄えられる。

ルナ「死ねぇぇええええ!!」

彼はナギナタモードを構えると、一直線に倫へ向かって跳んだ。

『オレンジ チャージ』

限界まで蓄えられたエネルギーを、一気に解放する。
しかしルナが思い切り振ったそれを、倫は何でもないかの様にジャンプして避けた。

はずだった。

その瞬間、倫の後ろにあった時空間転移装置の柱の間に、突如勝手に時空間の裂け目が現れた。
ジッパーの様なその中から、二人のアーマードライダーが右脚を突き出した状態で飛び出てくる。
その二つのキックが、ジャンプした彼の背中に直撃した。

倫「がっ!!」

そしてガラ空きになった倫の胴に、ルナが振ったナギナタモードが炸裂する。

ルナ「はぁぁぁああああああ!!!」
留奈「はぁぁぁああああああ!!!」

ルナ「あぁぁぁああああああ!!!」

ルナと留奈のダブルキックのエネルギーと、ルナのナギナタモードのエネルギーが、一気に倫の中へ流れ込んだ。

倫「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」

彼の絶叫が、部屋中に響く。
そして次の瞬間、倫は過剰なエネルギーに耐え切れず大爆発を起こした。

ルナ「…」

過去のルナは、飛んできたピタヤ ロックシードを右手で掴む。
それを地面に叩きつけると、上からナギナタモードを突き刺した。
ピタヤ ロックシードに穴が空き、火花が散る。
最後にそれを強く踏みつけると、彼は長い溜息を吐いた。

留奈「…終わった、な。」

留奈はそう言うと、立ち止まりもせずに時空間転移装置へと歩く。

ルナ「…お前達は…」

過去のルナが、自分と全く同じ姿のアーマードライダーを訝しげな表情で見る。

ルナ「俺達は…」

ルナは咄嗟に答えようとするが、上手い答えを思いつけなかった。

ルナ「…そうだ、お前に伝えておきたい事があるんだ。」

彼は説明を諦めると、過去の自分に一言だけ伝える。

ルナ「王武を探せ。」

ルナ「…王武?」

過去のルナが聞き返す。
が、それは留奈に遮られた。

留奈「帰るぞ。あいつを倒した今、ここに長居は無用だ。」

見ると、時空間転移装置にまた裂け目が現れている。

ルナ「…分かった。じゃ、頼むぞ。」

ルナ「お、おい!」

過去のルナを無視して、ルナは時空間の裂け目の前に立つ。

ルナ「…なぁ、留奈。」

留奈「なんだ?」

ルナ「これを潜るとさ、何処に通じてるんだろうな?」

留奈「私達の世界の、最も時空間エネルギーが乱れているところに出るだろうな。」

ルナ「…そうか。」

ルナは意を決して前へ跳ぶ。
留奈もそれに続き、時空間の裂け目へと入った。

二人の姿が消え、時空間転移装置の裂け目が閉じる。
ルナはそれを呆然と見ながら、一つの可能性を口にした。

ルナ「今のは…別の世界の俺と…リナ、なのか…?」

ルナは変身を解除する。
彼はポケットからケータイを取り出すと、一枚の画像を表示した。
こちらに向かって、ぎこちない笑顔を見せる女の子。
彼女は、ルナのたった一人の、血を分けた妹。

ルナ「リナ…」

ルナの呟きは、静寂の中に消えて行った。

- 幕間 その10 -


昂は何かに導かれる様に、ヘルヘイムの中を一直線に走っていた。

彼が進もうとしたときに、立ちはだかった二人のアーマードライダー。
昂は裕司と結花をハエの様に叩き潰すと、その死体を気にも留めずに走り出した。

やがて見えてきたのは、大量のカプセル。
その溶液の中には、インベスが浮いている。
そして、何重もの円形に配置されているカプセル群の中央には、金色のロックシード。
古代の遺跡で発掘され、ユグドラシルの研究者、戦極 リョウマが好奇心の命じるままに改造し続けたもの。

昂はそれに近づくと、それが入っているケースを一撃で割った。
アーマードライダーでさえ破壊出来ない程の強度を誇るそれは、中のロックシードを剥き出しにして粉々に砕け落ちる。

彼は金色のロックシードを掴んだ。
残っている微かな記憶を元に、それを解錠する。

『ゴールドアップル』

昂の頭上に、宝石が散りばめられたリンゴが現れる。
更にロックシードが宙に浮き、まるで意思を持っているかの様に動き出した。

『ロックオン』

それは戦極ドライバーに収まると、勝手に施錠される。
流れ出した待機音は、まるでパイプオルガンによる盛大な演奏の様だった。

ギガース「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

強大なエネルギーを感じ、昂は咆える。
それに応えるかの様に、戦極ドライバーが自動でロックシードを斬った。

『ゴールドアップルアームズ』

金色に輝くリンゴが彼の頭に突き刺さり、鎧へと展開する。
それは、最強のアーマードライダーが目覚めた瞬間でもあった。

『唯我独尊・キングロード』

ギガース「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

変身した昂が再び咆える。
同時に出た衝撃波が、森の全てのカプセルを破壊した。

カプセルが割れ、中からインベス達が出てくる。
彼らは目覚めると、昂の元へと歩き出した。
全てのインベスが、彼を囲む様に終結する。
そして彼らは、昂に向かってひれ伏した。

ギガース「グルァァァァアアアアアアアア!!!!」

昂の咆哮が、ヘルヘイムに谺する。
そんな世界を破滅させる暴君の誕生を、一人の少女が木の陰から見ていた。

病衣の様な服を身に纏い、戦極ドライバーを装着している彼女の顔に、恐れは微塵もない。
必ず、自分の兄が止めてくれる。
何の確証もないにも関わらず、リナはそう信じていた。

昂が偶然開いたクラックから出現し、世界を破壊し始めるまでの時間は、もうあまり残されていない。

- エピローグ : 狂った世界 -


工場に着いた五人を出迎えたのは、四人のアーマードライダーだった。

裕司「やはり来たか。」

カイト以外の四人は戦極ドライバーを装着すると、ロックシードを解錠する。

『バナナ』
『マツボックリ』
『シード』
『カリン』

優達の頭上に、それぞれの鎧が現れる。

『『ロックオン』』

和風の待機音と西洋風の待機音。
どちらもステレオで混じり合った。

『『カモン!』』
『『ソイヤッ』』

優「変身!」
誠二「変身。」
譲「変身!」
葵「変身。」

『バナナアームズ』
『マツボックリアームズ』
『シードアームズ』
『カリンアームズ』

そして頭に鎧が刺さり、彼らがアーマードライダーに変身する。

『ナイト オブ スピアー』
『一撃 イン・ザ・シャドウ』
『限界 イグニッション』
『ナイツ オブ ワルキューレ』


彼らが変身し始めたとき、裕司達の方からもう一人のアーマードライダーが出てきた。
後ろに、三人のアーマードライダーを引き連れて。

了「誰だ?」

了はU-RINIAを構えて問う。

龍玄「ご安心下さい。あなた方ユグドラシルの味方ですよ。」

龍玄は余裕を持ったまま、淑やかな声で答えた。
後ろに控えていた三人の黒影トルーパーに、右手で指示を出しながら。


四人が変身している間に、カイトは二つのヒマワリ ロックシードとドングリ ロックシードを取り出した。
彼はヒマワリ ロックシードを右手の人差し指と薬指に掛け、ドングリ ロックシードを中指に掛ける。
そして人差し指から順番に、ロックシードを解錠した。

カイトの頭上に三つの時空間の裂け目が現れ、中から一体ずつインベスが出てくる。
また、裕司達を含めた十二人を包む様に、黄色いバトルフィールドが展開した。
彼はそれを確認すると、また人差し指から順番にロックシードを施錠し、時空間の裂け目を閉じる。

『バトル スタート』

ロックシードからの発声と同時に、インベス達が甲高い声で鳴いた。

五人と三体、八人が睨み合う。
一触即発の空気。
そして全員が武器とロックシードを構え、戦闘を開始しようと動き出した。

次の瞬間、それは起こった。

彼らの間に突如、時空間の裂け目が現れる。
更にその中から、二人のアーマードライダーが飛び出してきたのだ。

ルナ「…おぉ!ここ、俺達が飛んだ工場じゃん!」

留奈「なるほど。確かにここが、最も時空間エネルギーが乱れているだろうな。」

優「…ルナ…ルナ!」

優は叫ぶと、思い切りルナに抱きついた。
鎧と鎧が当たり、ガチガチと音を立てる。

優「良かった…良かったよ、ルナ…」

ルナ「優…」

ルナは驚いて動きを止めた。
彼の頭に突然、優の死んだ瞬間がフラッシュバックしてくる。

ルナ「…」

彼は、無言で優を抱き締めた。

ルナ「ただいま、優。」

二人だけの時間が流れる。

秀「…感動の再会、なのか?」

胡桃「なんだろうけど、変身してるとムード0ね。」

秀と胡桃は武器を構えながら、顔を見合わせた。

留奈「おい、抱き合うのはまた後にしろ。」

留奈は痺れを切らし、ルナを突き飛ばした。

ルナ「え?…あぁ、なるほどね。」

彼はそう言うと、裕司達に向かって大橙丸を構える。
優と留奈も、気を取り直して武器を構えた。


彼らは知らない。
自分達の持っている力が、どれほどの事を仕出かしてしまうのかを。

彼らは知らない。
自分達が今、無知という綱を渡っている事を。

彼らが下を見て、その力の真実を知ったとき、彼らはどうなってしまうのか。
また彼らが、自ら進んで綱を踏み外したとき、世界にどの様な影響を与えてしまうのか。

それを知る事が出来るのは、この力を最大限に使える者だけ。
この力を使い、世界を己の色に染め上げた者だけだ。

留奈「それで、これは一体どういう状況だ?」

留奈が疑問を口にしながら、ナギナタモードを構える。

龍玄「期待通り、戻って来られましたね。」

龍玄が楽しそうに微笑みながら、ブドウ龍砲を構える。

カイト「随分と遅かったな、聖夜。」

カイトが馬鹿にした様に笑いながら、ロックシードを構える。

黒影トルーパー「…」

黒影トルーパー達が、無言で影松を構える。

譲「絶対に帰ってくると思ってたぜ、聖夜。」

譲が嬉しそうに言いながら、灰葬丸を構える。

胡桃「オレンジの彼、結構やるじゃない。」

胡桃が秀に話しかけながら、クルライフルを構える。

葵「聖夜くん、これが終わったら説教ですよ。」

葵がルナの背中を見ながら、カリンカリバーを構える。

秀「いや、D.C.07のお陰だろ。」

秀が胡桃に答えながら、両腕のボムパッションを構える。

誠二「さてと、いつ顔面殴ってやろうかな…」

誠二が小さく呟きながら、影松を構える。

了「二人共、いい加減に口を閉じろ。」

了が秀と胡桃を窘めながら、U-RINIAを構える。

優「後で何があったか、ちゃんと説明してよね。」

優がルナに釘を刺しながら、バナスピアーを構える。

裕司「こうなれば、少しは楽しませてもらおう。」

裕司がルナを睨みながら、無双セイバーを構える。

ルナ「それじゃ、異世界に飛ばされた恨みを晴らさせてもらおうか。」

ルナが裕司を睨みながら、大橙丸を構える。

ルナ「ここからは俺のステージだ。」

裕司「真の強さ、見せてやる。」

ルナが宣言し、裕司が呟く。
ルナが前へ走り出し、裕司が前へ跳ぶ。
ルナが大橙丸を振り上げ、裕司が無双セイバーを振り下ろす。

二つの刃が、ぶつかった。

以上で完結となります。

途中>>1がインフルエンザにかかり、しばらく間が空きました事をお詫び申し上げます。

ですが、もう少し休ませていただきたいと思います。
本編の更新は、また週明けに。


ラストが分かりにくいと思われますので、少し解説を。

留奈は時空間転移装置を使い、過去に行くことを思いつきました。
今の二人で倫に勝つのは、少し難しいと判断したからです。
しかしそのまま突入しようとしても、倫がそれを許すはずがありません。
だからこそ、攻撃する様に見せかけて時空間の裂け目を通り抜けました。

彼女の計画は、過去に飛んでから「並行世界のルナ」と協力して倒すというものです。
ついでに世界が滅びた理由を突き止めるために、あえてその直前の時間へと飛びました。
すると、飛んだ先に偶然倫がいた上、並行世界のルナまで必殺技を繰り出す瞬間だったのです。

一言で説明すると、全てが偶然の一致です。

野菜のロックシードは劇場版限定なのかな?

>>199さん
本編でも出ます。

例えばトマトとか…

邪道鎧武も出るんですかね?

>>202さん
邪道鎧武は確かロットン(rotten)オレンジ ロックシードですよね。
勿論登場します。

あと、お陰でコレを思い出しました。


皆様に沢山のオリジナルライダー案をいただき、とても嬉しく思っている>>1です。
ですが、このままですと捌ききれないので…

また、劇場版を制作する事にしました。

と言うよりも、これ以外に大量のアーマードライダーを一気に登場させる方法を思いつけませんでした…

既に題と大方の内容は決まっております。
登場予定のオリジナルライダーを掲載しておきますので「出して欲しくない!」という方が御座いましたら、遠慮なく申し付け下さい。

【劇場版】進行選択ゲーム×仮面ライダー鎧武 Triangles of Christmas


登場アーマードライダー

1.仮面ライダー???、仮面ライダーヴィンプ…三木 秀

2.仮面ライダー???、仮面ライダーエアネイド…佐野 了

3.仮面ライダー???、仮面ライダーギリードゥ…芦原 胡桃

4.仮面ライダー???、仮面ライダー斬月…二月 裕司

5.仮面ライダー武神鎧武…聖夜 留奈

6.仮面ライダー邪道鎧武

7.仮面ライダー龍玄

8.黒影トルーパー

9.仮面ライダーヘイゼル

10.仮面ライダーゼネオ

11.仮面ライダーカオス

12.仮面ライダーラントム

13.仮面ライダーグラディエン

14.仮面ライダー袁龍

15.仮面ライダーゲリオン

16.仮面ライダーセイヴァー

17.仮面ライダーヴィクトリア

18.仮面ライダーファウスト

19.仮面ライダー曉

20.仮面ライダー妖花

21.仮面ライダーヘルメス

22.仮面ライダーヘルメスレッド

23.仮面ライダーアレス

24.仮面ライダーレックス

25.仮面ライダー天武

27.仮面ライダー頑武

28.仮面ライダーデスティニー

29.仮面ライダーゲベト

30.仮面ライダーベルゼ

31.仮面ライダー麗夢

32.仮面ライダー武蔵

33.仮面ライダーアドビァング

また劇場版ですか!!うちのライダーが入ってて嬉しい。量産型だけど……。

>>205さん
本編だけですと、やはり視点が限られてしまいますので…
劇場版は第三者視点で書けるので、沢山出せるんです。


それと、一人忘れていました。

34.仮面ライダーバミューダ

ストーリー


クリスマスが間近に迫った12月21日に巻き起こる「A.N.G.00暴走事件」、「H.R.強奪事件」、「クラック突出事件」の3つの事件。

A.N.G.00を追う「ユグドラシル」、「アカツキ」、「イェデアン」の3つの組織。

A.N.G.00に遭遇してしまう「佐野 了」、H.R.強奪事件の犯人を追う「芦原 胡桃」、A.N.G.00暴走事件での非番を言い渡される「三木 秀」と、別行動を余儀なくされる3バカ。

秀が出会った少女「月斬 宝(つきぎり たから)」、その親友「布裁之 京(ふたつの みやこ)」と、転校生である「津村 更季(つむら こうき)」との微妙な三角関係。

異世界の「???」、二月 鶴魅に好意を寄せる「月山 敦(つきやま あつし)」、「二月 鶴魅」の3人の行動。

アーマードライダー部隊、ヘルメスの総隊長、郡山 潤(こおりやま じゅん)が辿り着く「13年前」、「T.S.D.事件」、「万田 陽介(まんだ ようすけ)」の3つのキーワード。

そして、ユグドラシルのイカれた研究者「戦極 リョウマ」、ユグドラシルの重役の一人「大口 弘明(おおぐち ひろあき)」、のそれぞれの思惑。

全ての歯車が噛み合うとき「表」のクリスマスは白銀に、「裏」のクリスマスは漆黒に染め上がる…


なおストーリーに関しましては、急に大きく変更される場合がございます。
あらかじめご了承ください。

すみません、少し間違いがありました。


ストーリー


クリスマスが間近に迫った12月21日に巻き起こる「A.N.G.00暴走事件」、「H.R.強奪事件」、「クラック突出事件」の3つの事件。

A.N.G.00を追う「ユグドラシル」、「アカツキ」、「イェデアン」の3つの組織。

A.N.G.00に遭遇してしまう「佐野 了」、H.R.強奪事件の犯人を追う「芦原 胡桃」、A.N.G.00暴走事件での非番を言い渡される「三木 秀」と、別行動を余儀なくされる3バカ。

秀が出会った少女「月斬 宝(つきぎり たから)」、その親友「布裁之 京(ふたつの みやこ)」と、転校生である「津村 更季(つむら こうき)」との微妙な三角関係。

異世界の「???」、二月 鶴魅に好意を寄せる「月山 敦(つきやま あつし)」、「二月 鶴魅」の3人の行動。

アーマードライダー部隊、ヘルメスの総隊長、郡山 潤(こおりやま じゅん)が辿り着く「13年前」、「T.S.D.事件」、「万田 陽介(まんだ ようすけ)」の3つのキーワード。

そして、ユグドラシルのイカれた研究者「戦極 リョウマ」、ユグドラシルの重役の一人「大口 弘明(おおぐち ひろあき)」、ユグドラシルのスポンサーの令嬢「桃都 水面(もものと みなも)」のそれぞれの思惑。

全ての歯車が噛み合うとき「表」のクリスマスは白銀に、「裏」のクリスマスは漆黒に染め上がる…

ユグドラシルライダー総出演ですね・・・(カラタチはいないけど)
ヴィンプは好きなオリライダーですし、色々と禍々しそうでスゴイ楽しみです。

>>209さん
叢荒嗚は銭湯狂のような設定でしたので、上手く絡める事が出来ませんでした…

>>210
戦闘狂の間違いです。
何だよ、銭湯狂って…

今回の劇場版で語れてない部分も次の劇場版でなんらかの形ででるのかな?

>>212さん
今度の劇場版は、今回とは全く無関係のものとなります。

ご質問はいつでも受け付けておりますので、今回の劇場版に関する消化不良の部分がございましたら、遠慮なくご指摘ください。

ルナはフレッシュオレンジとオレンジロックシードはそれぞれ別の種類のロックシードとして扱われるのですか?

この劇場版は元々の世界っぽいですが、これに出るアーマードライダーは本編中に出てこないんですか?

味方側は誰が出るんですか?

>>214さん
別のものとして扱います。

これは直接本編にも劇場版にも関係ないのですが…

1.フレッシュオレンジアームズで倫を撃破。

2.その姿のまま元の世界へ。

3.フレッシュオレンジアームズで裕司達と戦闘。

4.イレギュラーなフレッシュオレンジ ロックシードの力がどれくらい持つのか不明なため、シドからオレンジ ロックシードをもう一つ購入。

という手順を挟んだ上で、Chapter.5へ続きます。


>>215さん
出る方もいれば出ない方もいます。

劇場版内で死亡しても「過去編」という形での登場もあり得ます。
ですが、仮面ライダーゼネオだけは本編には出せないと思われます。
別の形で再登場というのも、ないとは言い切れませんが…


>>216さん
今回の主役は3バカを予定しております。
ですが、ルナくんは出ると思います。
新アームズであるジンバーレモンも登場するかも…

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