打ち止め「高校生になったよってミサカはミサカは報告してみるっ!」 (40)

打ち止め「ねぇ、私今年で16歳になるんだよ?」

打ち止め「あなたとも結婚できちゃうね」

打ち止め「……なんて、ミサカはミサカはあなたをからかってみるっ!」

打ち止め「ほら、どうしたの?」

打ち止め「いつもみたいに『そのふざけた喋り方をやめろ』って言ってよ?」

打ち止め「私もう高校生なのに、こんな喋り方だったら学校でイジメられちゃうかもしれないでしょ……?」

打ち止め「お姉様と同じ高校には行かなかったんだ」

打ち止め「常盤台は全寮制だから」

打ち止め「寮に入ったら、あなたとすごす時間が減っちゃうもん」

打ち止め「部活も興味無いから、入らないつもり」

打ち止め「放課後はちょっと退屈しちゃうけどね」

打ち止め「だから、放課後は毎日あなたといっしょに居てもいいよね?」

打ち止め(とある病院の一室で、彼が日がな一日呆けて過ごすようになったのは半年程前)

打ち止め(その原因は、一体何だろう?)

打ち止め(いつ、何が原因で彼はこうなっちゃったのかな?)

打ち止め(だいたい1年半程前の事です)

打ち止め(ミサカシリーズに、最初の死亡者が出ました)

打ち止め(いや、この場合の死者とはそんな意味ではなく)

打ち止め(最初の『寿命による死者』という意味です)

打ち止め(ミサカシリーズは元々急速に成長する様に造られたクローンです)

打ち止め(当然、寿命も短い)

打ち止め(お姉様やお医者さんや研究者の人たちが、懸命にミサカシリーズの寿命を延ばす研究をしてくれましたが……)

打ち止め(人の寿命を延ばす方法が、そんなに簡単にわかるはずもありませんでした)

打ち止め(不老長寿なんて、人類永遠のテーマだから当然ですね)

打ち止め(……この1年半で、およそ6割のミサカが天に召されました)

打ち止め(ミサカたちは、みんなおおよそわかっていました)

打ち止め(みんな自分が長生き出来ないのを知っていたし、そのつもりで生きてきました)

打ち止め(その苦しみを分かつ仲間だっています)

打ち止め(でも、妹達が死んでいくお姉様は違いました)

打ち止め(最初は世界各地にいるミサカ全員の葬式に参列すると言って聞きませんでした)

打ち止め(実際そのために私生活がままならないようになり、
ミサカたちの説得でようやく自宅で黙祷を捧げる事で納得してくれました)

打ち止め(あの時期のお姉様の悲しみは、見ていらてない程に辛かったな……)

打ち止め(彼に影響が出始めたのは半年前)

打ち止め(私がまだ、進学先をはっきりとは決めていなかった時期です)

打ち止め(突然、彼は気絶しました)

打ち止め(その時はすぐに意識を取り戻しましたが、その後もたびたび気を失う事が続きました)

打ち止め(だんだんと、一日のうちに自意識を保てる時間は短くなり)

打ち止め(2、3ヶ月前からは、数日のうちに数分だけ)

打ち止め(今では、完全に植物状態になりました)

打ち止め(脳に重傷を負い、ミサカネットワークによってそれを補っていた彼)

打ち止め(ミサカたちの死は、彼の脳の崩壊を意味していました)

打ち止め(ミサカを生かす方法が無い以上、彼もまた運命を共にするのでしょうか?)

打ち止め(彼がこうなってしまったのは、何が原因でしょうか?)

打ち止め「何が彼の人生を狂わせたのでしょうか?」

打ち止め「あの実験を始めた人たち?それとも、うっかり遺伝子情報を提供したお姉様でしょうか?」

打ち止め「違います。創造主を否定しても仕方のない話です」

打ち止め「ではバタバタと無責任に死んだミサカシリーズでしょうか?」

打ち止め「これも違う。人は死ぬものですから」

打ち止め「ではあの実験に加担した、彼自身の業でしょうか?」

打ち止め「違う。違う。彼は償った。すべてではないが」

打ち止め「では彼を今この状態に追いやったのは誰か?」

打ち止め「決まっています」

打ち止め「私が、彼の前に現れたから……」ポロポロ

打ち止め「彼が私を助けようとしてくれたあの時、彼は重傷を負った」

打ち止め「命がけの償いなんて求めていなかったし、謝って欲しかったわけでもなかった」

打ち止め「彼はもう、一生ミサカや実験などとは関わらずに、過去を忘れて生きられるはずだったのに!」

打ち止め「それでも私は彼に会いに行ってしまった!」

打ち止め「それを私は何を気取ってか、愛らしい少女の姿で、悟ったような事を宣い、彼を惑わせた!」

打ち止め「私は、その時にはもう彼を殺してしまっていたのだった……」

打ち止め「私は大勢殺しているのだろう」

打ち止め「ミサカたちも、実験に関わった人たちも、あなたも……」

打ち止め「ねぇ、私高校生になったよ?」

打ち止め「あたりまえの様に、のうのうと生きてるよ?」

打ち止め「他のミサカが死んでいっても、私の寿命はまだまだ永いみたいだよ?」

打ち止め「あなたはとても優しい人」

打ち止め「だからきっと私のような人間が大嫌い」

打ち止め「でもあなたは優しいから、私にだって優しくしてくれるんだよね?」

打ち止め「だから、まだ私はその優しさに甘えていたい」そっ

打ち止め「ミサカたちも死んでしまったら私一人になっちゃうし」

打ち止め「お姉様のお世話にはなれないよ。私はお姉様まで殺したくはないから」

打ち止め「だから、これから先はあなたと二人きり」

打ち止め「もうちょっとだけ、あなたのそばに居させてね?」ぎゅっ

一方通行「……オィ、打ち止めァ……」

打ち止め「!?」

打ち止め「あなた、意識が……っ!」

一方通行「アン?さっきから、耳元でピーピーピーピー、うッせェんだよ。ッたく」

打ち止め「そんな!お医者さんが、もうダメかもしれないって言ってたのに!また、また……」

打ち止め「あなたと、お話できる……」ポロポロポロポロ

一方通行「打ち止め……せっかく高校生になったんならよォ」

一方通行「こんな所に居ないで、友達でも作って遊んでこいよ……」

打ち止め「ふふっ」

打ち止め「それ、あなたが言うの?」くすくす

一方通行「……うるせェよ。青春ッてのは短いらしいぞ?」

打ち止め「でも、そんなの無理だよ。他所で遊んでるのなんて、それこそ青春の無駄使いだからね」

一方通行「ア?」

打ち止め「だってミサカはミサカは、一方通行の事が大好きだから!」にこっ

打ち止め「って、突然大胆に告白してみるっ!」

一方通行「ハッ、そりゃ酔狂な事だな……」

打ち止め「うん。あなたにぴったりでしょ?」ポロポロ

一方通行「そうかもな……だが打ち止めァ」

打ち止め「なぁに?」

一方通行「その喋り方そろそろやめろ。学校でイジメられても知らねェぞ?」

打ち止め「……あはっ!」

打ち止め「それじゃああなたの言うとおりに努力してみるね!って、ミサカはミサカは早速失敗してみたりっ!」

一方通行「……相変わらず生意気なガキだ」

打ち止め「えへへ、大好きだよ一方通行!」ちゅっ

一方通行「人が身体動かせないのをいいことに、好き勝手してくれるぜ……」

打ち止め「ずーっといっしょにいるからね!」ぎゅっ

一方通行「……へいへい。よろしくお願いしますよ、ッと」

打ち止め(その後すぐに彼は再び眠りにつき、もう意識を取り戻す事はありませんでした)

打ち止め(そして、夏を前に彼は息を引き取りました)

打ち止め(私と彼の、青い春は終わりを迎えます)

打ち止め(彼らの思い出を脳に刻みながら、私の人生はこれからも続く……)


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