マミ「アバダケダブラ!」 (753)

 

 それは、私が11歳の誕生日を迎えた日の出来事。


マミ『ねえお母さん……やっぱり、今日のお出かけやめにしない?』

マミママ『? どうしたの? マミも今日のお出かけ楽しみにしてたじゃない』

マミ『……えっと、なんとなく……だけど。今日はあんまり外に出たくないなって』

マミママ『あら、体調でも悪いの?』

マミ『そういうわけじゃないけど……』

マミママ『……珍しいわね、マミが愚図るなんて。でも駄目よ、もうレストランも予約しちゃったし』

マミ『でも……テレビで最近、車の事故が多いって……』

マミママ『テレビ? そんなこと気にしてたの? 大丈夫よ、パパは安全運転してくれるから』

マミパパ『オーイ、何してるんだ。早くしろって』

マミママ『あ、ほら。パパもう車回しちゃってるじゃない。ね? プレゼント奮発してあげるから』

マミ『……うん、分かった』


 未来を予測することが出来ない限り、運命は変わらない。

 だからその日、私は家族を失った。

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 三日後、巴家葬儀場

マミ「……」

弔問客1「可哀想にねぇ……あの子でしょう? あの事故で一人だけ助かったっていうのは」

弔問客2「ええ、ご両親をいっぺんに亡くしてしまって……これからどうなるんでしょう」

弔問客1「そりゃ、一番近しい親族に引き取られるじゃないかしら?」

弔問客3「……いや、それがね? どうも身元の引き受けをどこの家も拒否してるらしいんだ」

弔問客1「え、どうして?」

弔問客3「気味が悪いからだよ。考えてもごらん? 玉突きに巻き込まれての大事故。

      おまけにガソリンに引火して車体は爆発炎上。死体は対面もできない有様。
      それなのに、同じ車に乗ってたあの子には傷一つ無いんだぜ?」

弔問客2「あっ……」

弔問客3「正直、僕が親族でも引き取るのは少し考えるね
      眉唾だけど、あの事故の原因はあの子が何かしたんじゃないかって——」

マミ「……」キッ

弔問客1「ちょっと、見られてるわよ」コソコソ

弔問客3「ん……さて、僕達はこの辺でお暇しようか
      ま、遺産はそれなりにあるらしいし、最終的には誰かがそれ目当てで受け入れてくれるかもね?」


 


マミ「……」


マミ(……気づいた時には病院のベッドの上だった)

マミ(お医者さんにお父さんとお母さんはもう死んじゃったって言われて)

マミ(親戚の人達は変なものを見る眼で私のことをみてきて)

マミ(何もかもが急すぎて……頭がいっぱいで……でも、ひとつだけ分かることがある)


マミ(私は……これから独りぼっちで生きていかなきゃならないんだ……)


 

 

 初めて"魔女"と出会ったのは、そんな後ろ暗い決意を私が決めていたときだった。

 四角い眼鏡にひっつめ髪。葬儀用の黒いドレスを着た、厳格そうなおばあさん。

 箒には乗っておらず、正面玄関から普通にやってきたけれど、その人は正真正銘の魔女だったのだ。


弔問客3「さて、せっかく久しぶりに集まったんだ。これから飲みにでも——」

老婦人「……——、——」ボソボソ

弔問客3(……足が!?)
      「あだっ!」バタン

弔問客1「ちょ、大丈夫? なんでこんな何にもないところで転ぶのよ……」

弔問客2「ほら、立てる?」

弔問客3「っ……変だな、急に足が痺れて……長く座ってたからかな……」

老婦人「……」

 

老婦人「全く……やっぱりどこにでもああいう輩はいるのですね……これは……」ブツブツ

マミ(……誰かしら? 外国の人よね? 何で木の棒なんて持って……
   あ、こっちに来る……ど、どうしよう。外国語なんて分からないし……)

老婦人「……っと、失敬。貴女がマミ・トモエですね?
     その歳でこんな……大変だったでしょう。お悔やみ申し上げます」

マミ(助かったわ、日本語ね……)
  「あ、ありがとうございます。えーと……その、父か母の知り合いでしょうか?」

老婦人「いえ、残念ながら。この国はふくろう便が整備されてなくて……ああ、まあそれはともかく。
     本来なら三日前の誕生日、貴女が食事から帰ってきたらお会いする予定でした」


マクゴナガル「自己紹介がまだでしたね。私はミネルバ・マクゴナガル。
         イギリスのホグワーツという学校で教鞭を取っている者です」









マミ「きょうべ……?」

マクゴナガル「……つまり、学校の先生をやっているということです」

 

マミ「それで、その学校の先生がなんで私の両親に……?」

マクゴナガル「用があるのは貴女にです……正直、私もこんな事態になってしまって戸惑っているのですが——
         単刀直入にいいましょう。ミス・トモエ——貴女は魔女です」

マミ「……え? あの」

マクゴナガル「正確には魔女の素質がある、ということになります。
         私の勤めているホグワーツはそういう素質のある子を集めて教育を施す学校なのです」

マミ「……そんなこと言われても……」

マクゴナガル「……まあ、信じられないのも無理はありません。
         ですが事実です。そもそも貴女が例の交通事故から生き延びたのもそのお陰なのですから」

マミ「え……?」

マクゴナガル「生命の危機に瀕したとき、魔法の力が発揮されるというのは良くあるケースです。
         オーガスタ……私の知り合いの孫も、二階から突き落とされて資質に目覚めたといいますし」

マミ(それってどうなのかしら?)

 

マミ(いえ、それよりも……助かったのは私が魔女だから?)

マミ(それじゃあ私が独りぼっちになったのも……)


弔問客3『眉唾だけど、あの事故の原因はあの子が何かしたんじゃないかって——』


マミ「私の力が原因……?」

マクゴナガル「……その言葉が、いまの状況についてを問うているのなら。
         貴女だけが生き残ったことに関しては、確かに貴女の素質のせいということもできるでしょう」

マミ「……っ」ジワッ

マクゴナガル「ですが貴女の御両親が亡くなられたのは、貴女のせいではありません」


マクゴナガル「最初にどうしようもない不幸があり、貴女だけが偶然その不幸から逃げのびた。
         それだけのことです。貴女が不幸を呼び寄せたのではありませんよ」

マミ「……だけど」

マミ「だけど、それでも私が独りぼっちなのは変わりないじゃない……!」

マミ「パパもママも死んじゃって、周りの人はみんな私を気持ち悪がって!」


マミ「こんなの、死んだほうがましよぉ……!」


マクゴナガル「……それに関してですが、私から提案があります」

マクゴナガル「貴女はホグワーツに入学すべきです、ミス・トモエ」

 
マミ「……え?」

マクゴナガル「言ったでしょう。ホグワーツは魔法使いの学校で、貴女にはその資質があると」

マクゴナガル「……実を言うと、もう貴女に魔法界のことを教える気はなかったのです。

         このような大きな事故の直後。言っても、さらに貴女を混乱させるだけだと思っていました。
         ならばこのまま、慣れたマグルの——魔法の無い世界で暮らすのも悪くないのではないかと」

マクゴナガル「ですが貴女の周囲のマグルを見ていて気が変わりました。

         私はマグル——非魔法使いを特に差別するつもりはありませんが。
         しかしやはりというか、彼らと私たちは根本的に別の考え方をする生き物です」

マクゴナガル「彼らに"私たち"は理解できません。

         いまの貴女に必要なのは理解者と、それに囲まれた環境です。
         これは魔法使いではなく、一教育者としての意見ですがね」

マミ「……」

マクゴナガル「……ま、それでもすぐにこの場で決めろとはいいません

         始業式までにはまだ二ヶ月ほどあります。
         もし魔法を学ぶ気があるのなら、この手紙にサインして窓辺に置いておいてください」スッ

マミ「あっ、あの」

マクゴナガル「我々は貴女を歓迎しますよ、トモエ」パン!

マミ「き、消えた!?」
  (本当に……魔法使い? ホグワーツ……か)

 
 数日後、ダイアゴン横丁


マミ(……来ちゃった)

マミ(あの後、寝る前にサインした手紙をベランダに出しておいたら朝には消えてて。
   次の日の夕方、ベランダに知らない箱が置いてあったから触ったら……)

マミ(なんかぶわーってなって、気づいたらここに立ってたけど……

   どこかしら、ここ? 少なくとも日本じゃないわよね?
   周りで話してる人も、英語使ってるし……どうしよう不安になってきたわ)

???「……お前がマミ・トモエか?」

マミ「えっ、あ、はい。そうですけど」

???「だろうな。東洋人は珍しい。
     今回のポート・キーは時間指定されとらんから大分待つかとも思ったが……」ブツブツ

マミ「えーと……すみませんが、貴方は?」

 
フィルチ「……アーガス・フィルチだ。今日は私がお前の付き添いだ」

マミ「付き添いって……?」

フィルチ「手紙にサインをしたんだろう? だから入学にあたって必要なものを揃えにゃならん」

マミ「ノートとかですか?」

フィルチ「制服から何まで一式だ。そのマグル丸出しの格好でホグワーツを歩く気か? ええ?」

マミ「……」ムッ

フィルチ「……ふん。さて、まずはグリンゴッツだな。はぐれて面倒を増やすなよ」スタスタ

マミ「あ、ちょっ!」

フィルチ「……なんだ?」

マミ「私、外国のお金とか持ってないし……それに、通ってた学校の手続きだって……」

フィルチ「サインした時点で魔法が働くに決まってるだろうが。すでにお前は留学することになっている。
      金については、今からグリンゴッツに行くといっている」

マミ「グリンゴッツ?」

フィルチ「銀行だ! マグルの金をそこで換金できる。そんなことも知らんのか?」

マミ(……知るわけないじゃない)

フィルチ「……おっと、そうだ忘れるところだった。
      マクゴナガル副校長からこれを預かっている」ポイッ

マミ「これは……指輪?」スッ
  (あら、付けたら周りの声が日本語になった?)

フィルチ「コーユカオ・ツマ——マグルで言うホンヤクキという奴に近い道具だ」
     「付けてるとさっきまでの私みたいに違う言葉を理解し、話すことが出来る」
     「たまに酷い誤訳をするが、まあ愛嬌だと思え」

マミ「はあ」

フィルチ「さて、時間をとったな。さっさとグリンゴッツにいくぞ」

 
 数時間後


フィルチ「制服に教科書、杖に学用品……一通りは揃ったな」

マミ「そうですね……」
  (疲れた……この人、何かにつけて嫌味を言ってくるんだもの)
  (ぜんぜん歓迎ってムードじゃないわね……あれ、そういえば)

マミ「そういえばマクゴナガル先生はどうなさったんですか?」

フィルチ「なんだ? 私では不満か?」

マミ(不満だけど)

フィルチ「……あの人は副校長だからな。そうそう学校を空けるわけにもいかんのだ。

      とはいえ、極東の島国までトラブルを起こさずに行くのはそれなりに教養のある人物でないとならん。
      だからあの時は副校長が直々に足を運んだのだ。
      ハグリッドみたいなうすのろに勤まると思うか?」

マミ(ハグリッドって誰かしら?)
   「フィルチ……さんも、ホグワーツの先生なんですか?」

フィルチ「……ちっ、私は管理人だ。

      規則を破った生徒を捕まえたりするのが主な仕事でな。
      お前も入学後は精々お行儀良くして欲しいものだな、ええ?」

マミ「……」ムスッ


フィルチ「……あー、なんだ。副校長で思い出したが。

      そういえば、動物を一匹買うように頼まれてたな。
      すぐそこに店がある……ついてこい」

マミ「はあ」
  (学校の仕事なら、別に私が付き合う必要ないんじゃないかしら?)

 
 魔法動物ペットショップ


マミ「凄い……見たことも無い動物がいっぱいいる」

フィルチ「ああ、その辺の動物はみても無駄だぞ。

      ホグワーツはペットを持ち込んでも良いことになってるが、種類は制限されてる。
      ふくろう、猫、ヒキガエルの内どれかから一匹だけだ」

マミ「カエルは嫌ですね」

フィルチ「初めて意見があったな、トモエ。確かにヒキガエルは流行遅れだ」

マミ(流行に関係なく嫌よ!)

フィルチ「するとふくろうか猫だが……猫だな。私のお勧めは猫だ。
      猫は良いぞぉ。賢いし、音を立てないからな。私もミセス・ノリスという猫を飼っているが……」

マミ「……あの」

フィルチ「ん、なんだ。決まったか?」

マミ「何で私が買う動物を決める流れになってるんですか?」

フィルチ「? おかしな奴だな。お前のペットなのだから当然だろう?」

マミ「私の? マクゴナガル先生のお使いじゃないんですか?」

フィルチ「だから、副校長がお前にプレゼントとして送ってくださるということだ。
      見た目通りの厳格な方だからな。自分の寮生でもないのにプレゼントするのは珍しいことだぞ」

マミ(……誕生日プレゼント、かしら。マクゴナガル先生……)

フィルチ「とにかく、そういうわけだ。あとはお前が選べばいい。
      まあ私のお勧めは猫だが……ん? 店主、この白いのは新種か?」

店主「ええそうですよ。最近捕まえたんです。珍しいですよ。
    なんといっても——」


QB「わけがわからないよ」

店主「喋りますからね」

 
QB「あ、そこの君! 君には素質がある。僕と契約して魔法少女になってよ!」

マミ「わあ、会話ができるんですか? 魔法界の猫って」

店主「いえいえ、意思疎通できる動物はいても、人語を話す動物はあまりいませんよ」

QB「僕は動物じゃないよ。それより契約しようよ! 僕と契約して友達に差をつけよう!」

フィルチ「ほう、自分を売り込むとは中々商売上手な猫だな」

QB「いや、だから僕は猫じゃなくて……」

店主「"シレンシオ"!(沈黙せよ)」

QB「むぐっ!? むぐむごむがっ」

店主「いや〜すみません。入荷したばかりで躾がなってなくて……どうですお安くしておきますよ?」
   (≪漏れ鍋≫の裏でゴミ漁りしてるとこを捕まえたはいいけど、正直猫かどうかよくわからんからなぁ)

フィルチ「ふむ、どうする? トモエ」

 
マミ「買います。おいくらですか?」

店主「毎度! 大勉強して5ガリオンってとこで」

QB「むぐーっ!?」

フィルチ「考えなしだな、トモエ。学生らしく、もっと頭を回して考えたらどうだ?」

マミ「あら、だって猫はフィルチさんのお勧めなんでしょう?」

フィルチ「……店主、ほら金だ」

店主「へい、丁度」

マミ「ふふ、名前は何にしようかしら。魔法の動物だものね。レビヤタン? スレイプニル? コシュタ・バワー?」

QB「ぷはっ。酷いな(センスが)。そもそも僕にはキュゥべえって名前が」

店主「シレンシオ!」

QB「むがあああああ!?」

フィルチ「……おい、店主。そこの猫用栄養ドリンクを貰おうか」

店主「へい、どうも。5本セットで3シックルです」

マミ「ああ、そういえばフィルチさんも猫を飼ってるんでしたっけ」

フィルチ「ああ、ミセス・ノリスという名前でな。規則を破った生徒を教えてくれる賢い奴さ」
     「っと、ほら、受け取れ」ポイッ

マミ「え? これ、フィルチさんの猫のじゃ……」

フィルチ「ふん。勘違いするなよ。私は猫が好きだからな。
      下手な世話をされて、猫を病気にさせたくないだけだ」

マミ「……分かりました。それじゃあ、大事に育てますね」ニコッ

 
フィルチ「——さて、それじゃあこれで買い物は終わりだな。
      最後にこれを渡すようにとの指示だ」

マミ「切符と……スニーカーと長靴が片足ずつ?」

フィルチ「靴の方はポート・キーだ。来るときに使っただろうが?

      長靴はこれから帰るのに使え。スニーカーは9/1の10:30、キングズ・クロスに飛ぶようにセットされている。
      きちんと支度を整えてから触れよ。一回限りの使い捨てだから戻ることは出来んぞ」

マミ「……便利ですね、魔法って」

フィルチ「そうだな、使いこなせりゃ便利だろうよ」チッ
     「本来ポータス(ポート・キー設置)の呪文はぽこぽこ使えんのだがな」
     「お前の為に副校長が尽力してくれたお陰だ。精々感謝するんだな」

マミ「ええ。もちろん」

   「マクゴナガル先生によろしくお伝えください」
   「それと、フィルチさんも。またホグワーツで」

フィルチ「ふん。会うのはお前さんが規則を破ったときだろうよ」
     「できれば、二度と顔をあわせたくないものだな?」

 
 9/1 キングズ・クロス9と4分の3番線 列車内


マミ「さて、列車に乗ったはいいけど……どの部屋もいっぱいね。困ったわ」フラフラ

QB「椅子自体は空いてるんだから、その辺の席に座らせてもらえばいいじゃないか、マミ」

マミ「だって知らない人ばかりだし……みんな魔法使いみたいだし……」
   「だいたいなんでこの国の電車は席が個室ごとに分かれてるのよ?」

QB「コンパートメント、という奴だね。まあ確かにマミの国ではあまりみないかな」
   「あと、傍から見たら君も十分魔女だよ」

マミ「格好だけよ。ローブと三角帽だけで魔法が使えれば苦労しないわ」

QB「だけど君はこれから一年間、その中で過ごすんだろう?」
   「ここで尻込みしてどうするんだい?」

マミ「学校に着いたらなんとかなるわよ……きっと自己紹介の時間とか、そんなのがあるでしょ」

QB「現実から眼を逸らさないで、マミ。問題は今だよ。まさか学校に着くまで立ちっぱなしでいる気かい?」

マミ「トイレとかあるんじゃないかしら……」

QB「駄目だこいつはやくなんとかしないと」

 
QB「あ、そうだ僕と契約すれば席くらいどうにでもなるよ? ついでに魔法少女にもなれるけど」

マミ「うふふ、ありがとうキュゥべえ」

QB「わー流されたー。じゃあ契約はいいからとりあえずケージから出して欲しいなぁ」
   「さっきから電車が揺れるたびにガンガンぶつかって痛いんだけど」

マミ「や。そんなこといってまた逃げ出そうとする気でしょ?」
   「逃げられたらマクゴナガル先生やフィルチさんになんて言えばいいかわからないもの」

QB「確かに最初の一週間は隙を見て逃げ出そうとしたけど」

   「もう諦めたよ。君、僕を追いかけるときはやたら俊敏なんだもの」
   「他の固体からもはぶられて、マミ専用みたいな扱いされてるし……」

マミ「ふーん……よく分からないけど……じゃ、出してあげる」
   「確かに猫専用のケージじゃなくて、昔飼ってたカブトムシ用の虫かごだと狭いものね」カパッ

QB「ひゃっほおおおおおお僕は自由だあああああああああああ!」ダッ


 
マミ「やっぱり逃げた! 待ちなさい! 次は金魚蜂に詰め込むわよ!?」

QB「待つもんか! ふふ、このまま適当なコンパートメントに逃げ込めばマミは手が——」

ヒキガエル「」パクッ

QB「きゅっぷい!?」

マミ「キュ、キュゥべえがヒキガエルに頭を飲み込まれた!?」

ヒキガエル「」モゴモゴ

QB「きゃー! やめてやめて! 君、食物連鎖を無視してる! ヒキガエルは猫に食べられる方だろう!?」

   「いや僕は猫じゃないけど、ってうわー凄い生あったかい……!」
   「助けてマミ! マミ助けて!」

マミ「ごめんなさい、キュゥべえ……属性相性的なアレで女の子はヒキガエルに勝てないの」
   「きちんとお墓は造ってあげる。墓標はアイスの棒でいいかしら?」

QB「ま、マミ! 僕が逃げたの根に持ってるね!?」

   「くっ、ならばロックだぜ! 誰にも頼らねえ! 僕の力だけで切り抜ける! 発現せよインキュベーターパワー!」
   「うぉおおおおおお! ——なにぃっ、対魔翌力が特Aクラスだと!?」

ヒキガエル「無駄だ、貴様の技は全て見切った」

QB「ヒキガエルの癖にぃぃいいいいいい! きゅっぷい! きゅっぷい!」ズルッ、ズルッ

丸顔「ヒキガエル……? それってもしかして」
   「! やっぱりトレバー! ここにいたのかい?」

 
トレバー「」スポン

QB「た、助かった……」

丸顔(うわなにこの猫べとべと……)
    「あ、ありがとう。このヒキガエル僕のなんだ。よく逃げだすんだよ……」

マミ「え、と。いいのよ。当然のことをしたまでだから」
   (実際、何もしてないし……)

丸顔「それでもありがとう……何かお礼をしたいけど、僕何も持ってないし……」
    「ん? あれ、君、なんでまだ荷物もってるの?」

マミ「えっ。あっ、これはその」

丸顔「あ、もしかしてコンパートメントがどこも一杯だったの?」
   「確かに知らない人がいると座りづらいよね」
   「僕も席にあぶれるの怖かったから、一番に電車に乗り込んだんだ」

QB「こいつは準備周到なマミだね……あ、痛い痛い!」
   「も、もう逃げないから僕をソックスに詰めようとするのは勘弁して欲しいなぁ!」


 
丸顔「……そうだ! 僕達のコンパートメントにおいでよ!」

マミ「い、いいの?」

丸顔「うん。四人掛けを二人で占領しちゃってるから……」
   「荷物をひとつの席においても、十分座れるよ」

マミ「それじゃあ……お言葉に甘えようかしら」

QB「良かったねマミ! 僕のお陰だね!」

マミ「えいっ」ぎゅっ

QB「きゅ!?」

ネビル「うん、もうひとりも新入生の女の子だから気が合うと思うよ」
    「僕の名前はネビル。ネビル・ロングボトム。よろしくね、えーと……」

 
 コンパートメント

ハーマイオニー「ふうん。じゃあマミも私と同じでマグル出身なのね?」

マミ「ええ、だから全然分からないことだらけで困ってたの……」

QB「分からないのはもっと人として根本的な部分じゃ……あー! 杖は駄目! 杖は駄目ー!」

ネビル「はは、僕は純血だけど分からないことなんかいっぱいあるし気にしない方が」

ハーマイオニー「でも教科書くらいは全部読んだでしょう?」
          「私は個人的に他にも何冊か魔法界の本を購読したけど……」

マミ「え、予習? だって書いてあることちんぷんかんぷんだったし……」

ネビル「仕方ないよ、習ってないもの。僕だってまだ呪文のひとつも——」

ハーマイオニー「そう? 簡単な呪文くらいならみんな上手くいったけど」

          「それに予習してないと授業についていけないんじゃない?」
          「ホグワーツって、最高の魔法学校だって聞いてるわ」

マミ「……」

ネビル「……」

ハーマイオニー「いまからでも遅くないわよ——ほら、魔法史なら歴史とそうかわらないし」
          「簡単な呪文のひとつくらいなら学校に着く前に覚えられるでしょ?」

ネビル(どうしよう。不安になってきた)

マミ(空気が重いわ……こ、こうなったら魔法学校用に暖めてきた冗談で空気を変えるしか……!)

QB(マミ、やめろ! それは死亡フラグだ!)

 
マミ「簡単な呪文ね……ひとつだけ知ってるわよ。あ、アブラカタブラ〜……とか」

ハーマイオニー「……」

ネビル「……」

マミ「あの……アブラ……カタブラ……」

ハーマイオニー「……」

ネビル「……」

マミ「……」

マミ(へ、変ね。普通の人出身なら笑いが取れると思ったんだけど)

QB(そのレベルでかい? やれやれ、ジョークなのかも怪しいレベルだよ)
   (そもそもアブラカタブラ=変な呪文っていう認識はマミの国以外でも通じるのかい?)

マミ(ああ、なるほど。そのせいね)

   (そう、ジェネレーションギャップならぬボーダーギャップ)
   (決して、私のセンスがアレだったわけではないのよ!)

QB(あ、しまった。マミに言い訳する理由を与えてしまった)
   (自分以外に理由を見つけると省みないから人間って性質わるいなぁ)

ハーマイオニー「……」

 
ハーマイオニー(今、この子はなんて言ったの……?)

ハーマイオニー(……いえ、聞き間違いではないわ。宣言するように二回も言ったもの)

ハーマイオニー(アバダ・ケダブラですって……!?)←聞き間違い

ハーマイオニー(闇の魔術でも三本の指に入る危険な魔法じゃない!)

ハーマイオニー(人に向かって唱えただけでアズカバン送り、終身刑になる最悪の呪文!)

ハーマイオニー(それを簡単な呪文……!? 大人の魔法使いでも一握りしか唱えられないのに!?)

ハーマイオニー(間違いないこの子は……)

ハーマイオニー(闇の魔法使いの家系……! たぶん例のあの人の隠し子とかそんな感じ……!)

ネビル(なんだろう。マグルのジョークかな? 笑ったほうがいいの?)チラッ

ハーマイオニー(ネビルも全力で賛同してくれてるわ!)

 
ハーマイオニー(さてそこでこの才女ハーマイオニーは考える……)

ハーマイオニー(これからの学園生活、どんな風にこの子と付き合っていくべきか……)

マミ「?」

ハーマイオニー(……って、あら? よく考えたらどうせ闇の魔法使いのこの子はスリザリン寮よね)

ハーマイオニー(対して眉目秀麗才色兼備、勇猛果敢な私はグリフィンドールかレイブンクロー)

ハーマイオニー(なーんだ、じゃあ別に気にすること無いじゃない。適当に合わせてましょ)

マミ(この沈黙が怖い……っ)ガクブル

ネビル(お腹空いたなぁ)

QB(こっちの女の子は魔法少女の才能ないね)


 
売り子「車内販売ですよー。冷たいカボチャジュースにお菓子はいかがですかー?」

ネビル「あっ……どうしようかな。ばあちゃんに無駄遣いはするなって言われてるし……」

マミ(お菓子……小学校の遠足で、クラスのみんなと分け合いっこしたわね)
   (この空気を払拭するチャンスかも)

マミ「すみません、見せてください」

売り子「はいどうぞ。お勧めは蛙チョコレートよ」

マミ(……ってよく考えたら魔法のお菓子なのよね、これ)
   (とんでもない味とかあるかも……少しずつ、色んなのを買えばいいかしら)

マミ「これとこれと……あ、新聞がある。じゃあこれもお願いします」
   (魔法使いの世界の事情とか、全然知らないし……)

 
ハーマイオニー「あら、新聞? そうね、確かに情報は大事だわ。おばさん、私にも一部ください」

ネビル「えーと……僕は……」

マミ「あの、ロングボトム君。良かったら食べる? 席に入れてくれたお礼に」

ネビル「え、いいの? わあ、ありがとう。じゃあ蛙チョコを貰うよ」

マミ「どうぞ。グレンジャーさんも良かったらどう?」

ハーマイオニー(一服盛るつもりね!?)
          「いえ、あの、その、私の両親が歯科医で、甘いものは止められてるの」

マミ「そう……」シュン

QB「そこで諦めるから駄目はマミなんだよ。ほら、これなんか甘くないよ」ポイッ

ハーマイオニー「ムガッ!? ちょ、なにを投げ込んで……」ゴックン

ネビル「あ、百味ビーンズだ。そ、そしてあの色は確か伝説のトロール味……!」

ハーマイオニー「いやああああ!? 噛まなかったから味わからなかったけどなんかいやあああ!?」

マミ「グ、グレンジャーさん! ほらかぼちゃジュースを……!」

QB(ハッカ風味だったんだけどなぁ)

 
ハーマイオニー「トロール…トロール…」ブツブツ

ネビル「あっ、くそ。またダブりだ。これでダンブルドアが三桁か……」

マミ(なんとか落ち着いたし、新聞でも読もうかしら)バサッ
   (読めるようにもなるなんて、翻訳機凄いわね……えーと、何々?)


(魔法省、また不祥事。高まるコーネリウス・ファッジリコールの声)
(グリンゴッツに強盗? 幸いにも被害はなし)
(生き残った男の子、ハリー・ポッター帰還)
(ワーロック法違反。危険生物の卵が帳簿と釣り合わず)
(賢者の石の創造者ニコラス・フラメル氏、死去)


マミ「……さっぱり分からないわ。指輪のお陰で、読めることは読めるけど」

QB「新聞から教養を得るためには、その前段階として最低限度の教養が必要だからね」
   「マミは魔法界のこと何にも知らないんだから当然だよ」

マミ「それもそうね。学校で勉強してからまた挑戦するわ」ゴソゴソ

ネビル「あ、そろそろ着くみたい。マミ、ハーマイオニー、用意したほうが良いよ」

眠い故にここまで

ちなみに最終的にまどマギ寄りになるかも
投下

 
 ホグワーツ 大広間



ネビル「……で、さっきの大きい人が森番のハグリッド。真ん中に座ってるのがダンブルドア校長先生。
     その隣に座ってるのが——」

マミ「知ってるわ。マクゴナガル先生よね?」

ネビル「あれ? 知ってるんだ。そうだよ。僕のばあちゃんとは昔からの知り合いなんだ。
     うん、だからまあ、ちょっと僕、苦手なんだけど……」

マミ「ふふ。でもマクゴナガル先生って、とってもいい人よ?
   あ、あの端っこに座ってるの、フィルチさんよ。この学校の管理人さんなんですって」

ネビル「な、なんか物凄く意地の悪そうな顔してるけど……」

マミ「うーん。確かに優しい、とは言えないけど……えーと、その、極悪人ってほどじゃないわよ?
   キュゥべえに栄養ドリンク買ってくれたし」

QB「ああ、君が僕に無理矢理飲ましたアレ。あの飲み物、栄養価はバカみたいに高かったよ」

マミ「ねー?」

QB「言っておくけど、褒めてないからね。
   その謎栄養のせいで、三日間も僕の中のグリーフシードが暴れまわったんだから」

マミ「また訳のわからないこと言って……
   ……それにしても、ロングボトムくん。やっぱり魔法界出身だと色々知ってるのねぇ」

ネビル「そんな、僕なんか全然さ。ばあちゃんは僕をロングボトム家の恥さらしって呼んでるし」

マミ「でも私、本当になにも知らないし……グレンジャーさんの言うとおり、教科書読んでくれば良かったわ」

ネビル「たぶん彼女、僕より物知ってると思うな……教えてもらえるとよかったね」

QB「駅についた瞬間、ものすごい勢いで飛び出して行ったものねえ。あれはどうしたんだろう?」

マミ「さあ? お友達と約束でもしてたんじゃないかしら」

 
マクゴナガル「——さて、これから組み分けを行います。呼ばれた者から前に出て組み分けを受けてください」

マミ「組み分け……ね。さっき帽子が歌ってたけど、それぞれの寮で特色が違うみたいね?」

QB「グリフィンドールが勇敢で、ハッフルパフが努力家、レイブンクローが頭脳明晰、
   そしてスリザリンでは真の友情が手に入るって言ってたね」

マミ「え、そうだったかしら? じゃ、じゃあスリザリン——」

ネビル「やめときなよ! 『例のあの人』もそこの出身なんだよ?」

マミ「? 『あの人』ってどの人?」

ネビル「……あ、そっか。知らないんだった。うう、でも名前は言いたくないし……」

マクゴナガル「……ロングボトム・ネビル!」

ネビル「ああ、呼ばれちゃった……と、とにかくスリザリンはやめた方がいいよ!」

マミ「行っちゃった……どうしましょうか、キュゥべえ?」

QB「さあ? でも見てる限りでは、あの帽子が全部決めてるみたいだよ。
   そう気構える必要はないんじゃないかな?」

マミ「うーん……でも私、魔法界のこと何にも知らないからレイブンクローなんかにいれられちゃったら——」

ドラコ「こいつは驚いた! おい、聞いたかいクラッブ?
    スリザリンに入りたいとか言ってるからどんな奴かと見てみれば、なんとマグル出身ときた!
    ああ、全く。スクイブに長杖って言葉はこういう輩の為にあるんだろうな。だろう?」

クラッブ「それどんな意味? 知ってるか、ゴイル?」

ゴイル「いや全然。でも多分、食べ物じゃなさそうだってことは分かるぞ」

ドラコ「……ごほん! つまり身の程を知れってことさ。分かったかい?」

マミ「え、えっと、あの」オドオド
   (え、え? どういうこと? 私、なんか失礼なこといっちゃったのかしら)

ドラコ「スリザリンは純血主義だ。薄汚いマグルの血なんて、とんでもない」

マミ「……っ!」ジワッ
  (薄汚いって、そんな……酷い)

ドラコ「あらら、泣いちゃったよ。まったく、これだからマグル出身は。
    むしろ恥をかかないうちに教えてあげたんだから感謝してほしいくらいなんだけどね?」

マクゴナガル「……マルフォイ・ドラコ!」

ドラコ「おっと、僕の番か。ま、僕は偉大なるスリザリン寮で決まりだけどね」スタスタ

 スリザリーン!

QB「おや、本当にスリザリンだ。ふーん、なるほどねえ」

マミ「ぐすっ、ひっく」

QB「マミ、平気かい? 気にすることはないよ。スリザリン以外の寮になればいいじゃないか」

マミ「……ううん、違う、の。私、くやしく、て」ベソベソ

マミ(優しかったパパとママのことをあんな風に言われて……でも、何も言い返せないなんて)

QB「……マミ、君が望むなら、願い事で——」

マクゴナガル「……マミ! トモエ・マミ! 聞いているのですか! あなたの番です!」

マミ「あ、は、ひゃい!」グシグシ

QB「……タイミング悪いなぁ」ボソッ

 

マミ「……」ドキドキ

組み分け帽(ふーむ、難しい……非常に、難しい)

組み分け帽(勇敢ではない……とりたてて忍耐強くもない……知識に対する姿勢も並……かといって狡猾でもない……)

組み分け帽(真面目な性格のようだから、まあ普通ならハッフルパフなのだが……)


マミ(あっ、グレンジャーさんとロングボトムくんは赤色の垂れ幕のテーブルだ……)

マミ(やっぱり、知っているお友達の寮がいいな……さっきみたいなことが、またあったら……)グスッ


組み分け帽「……」

組み分け帽「グリフィンドール」

 
グリフィンドールのテーブル

ハーマイオニー(ふふふ! マミ・トモエ! ここでお別れよ!)

ハーマイオニー(やっぱり私はグリフィンドール! そして貴女はスリザリン!)

ハーマイオニー(貴女自身に恨みは無いけれど……貴女のアバダ・ケダブラがいけないのよ!)

組み分け帽「グリフィンドール」

ハーマイオニー「って、ええええええええええええええ!?」ガタッ

マミ「あっ、グレンジャーさん……その……よろしくね?」テレテレ
   (そんな、わざわざ立ち上がって喜んでくれるなんて……)

ハーマイオニー(何故!? そんな馬鹿な! 私の計画が崩れるなんて!?)

          (なんで闇の魔法使いの卵がグリフィンドール……はっ、もしかして錯乱の呪文!?)
          (そうよそれだわそうとしか考えられない! 先生たちにも気づかれずに魔法を使うなんて!)

ハーマイオニー(そしてわざわざグリフィンドールに入った理由はただひとつ……!)

ハーマイオニー(か、確実に私、目を付けられてる……! ケダブラされる!)ガタガタ

マミ「?」

ネビル「マミ! おめでとう! 一緒の寮だね。良かったよ、スリザリンじゃなくて……」

マミ「……ええ、本当にね」

ネビル「……揉めてたみたいだけど、マルフォイになんか言われたの?
     あそこ、ばあちゃんがいつもぼろくそに悪口言ってる家なんだ……」

マミ「……」ズーン

ネビル(やばいしくじった。わ、話題を変えないと)

ネビル「あ、あー、まあそれは置いておくとして、マミが来てくれて本当によかったよ。
     ハーマイオニーったら、さっきから僕が君と何を話してたのかしつこく聞いてきてさ」

マミ「え、本当?」チラッ

ハーマイオニー(やめて! やめて! 畜生この丸顔、いつか石にしてやるわ!)

 
マクゴナガル「——ポッター・ハリー!」

ザワザワ ハリー? ハリー・ポッター?

マミ「……あの、なんかざわついてるけど……いま呼ばれたあの子、有名人なの?」

ハーマイーニー(!? 話題変更のチャンス!)
         「ええ、そうよ。近代魔法史の本なんかにも出てるくらいなんだから」

マミ「……ってことは、芸能人とかじゃないわよね……うーん、物凄く頭が良いとか?」

ハーマイオニー「いいえ、違うわ。『例のあの人』を倒したのよ」

マミ「『例のあの人』……ロングボトムくんもさっき言ってたけど、それって誰なの?」

ハーマイオニー「あー、私はマグル出身だから平気なんだけど……」チラッ

ネビル「?」

ハーマイオニー「まあいっか。一回で覚えてね。
          ヴォルデモートの名前は、魔法界ではタブー視されてるから——」

ネビル「う、うわあああああ!」バ゙ターン!

ハーマイオニー「……こんな風に」

 


マミ「……なるほど。凄い悪い魔法使いだったのね。で、それをポッターくんが倒しちゃったと」

ハーマイオニー「正確には、彼が倒したって言っていいのか……その頃、彼はまだ一歳だった筈だし。
          でもとにかく、『あの人』は彼を殺し損ねて、それから姿を見せてないってことね」

マミ「凄いわね……」

ハーマイオニー「ええ、本当に。ハリーがグリフィンドールに決まった時の歓声、聞いたでしょ?
          本を読むと、『あの人』を倒したっていう事実の凄さがわかるけど——」

マミ「あ、あの、そっちじゃなくて、グレンジャーさんが」

ハーマイオニー「私? 私が、なに?」

マミ「その、いっぱい色んなこと知ってるんだなぁって。私と同じ普通の人出身なのに、凄いな、って」

ハーマイオニー「……! べ、べつにこれくらいどうってことないわ! 本の内容、ちょっと暗記しただけだもの!」

マミ「ううん。そういうことに一生懸命になれるなんて、本当にすごいと思うわ」

ハーマイオニー「そ、そうかしら? 当然のことだと思うけど」

マミ「ねえ、グレンジャーさん、これからもよければ私の知らないこととか、教えてくれないかしら……?」

ハーマイオニー「し、しかたないわね! 私が知ってることでよければ——」

ハーマイオニー(……って、思わず頷いちゃった! 駄目よ、マミは闇の魔法使い!)
          (きっと今も、無知を装ってこっちを油断させようと……!)

マミ「良かった! じゃあグレンジャーさん、これからよろしくね?」ニコッ

ハーマイオニー「え、ええ、よろしく……」
         (も、もう駄目だわ……完全にマミの術中に嵌ってしまった。なんて狡知!)ガクブル

ネビル(仲いいなぁ、この二人)

 
ニック「やあやあ、新入生の皆さん! 豪華な夕餉を楽しんでおられますかな?」ニュッ

マミ「っ!? ごほっ、ごほっ、つ、机から首が生えてきた!?」

ニック「ああ、驚かせてしまって申し訳ありません。えーと、確かミス・トモエ?」

QB「うん? 変な情報体だね。質量も熱量もゼロなのに、そこに存在してるなんて」

ニック「おやおや。はっは、これは賢い猫をお持ちでいらっしゃる」

QB「猫じゃないったら! インキュベーター! 僕達はエントロピー問題を解決する為、はるばる宇宙の彼方から——」

ネビル「マミ、大丈夫? ただのゴーストだよ」モグモグ

マミ「ゴ、ゴースト? お化けってこと?」ビクビク

ニック「おお、これは……新鮮な反応ですな。うむ、ゴースト冥利につきるというものです」

ハーマイオニー「ゴースト。実物は初めて見たけど、そんなに怖いものでもないじゃない」

ニック「ほほう、これでも?」グイッ ポロッ

ハーマイオニー「きゃっ!?」

マミ「〜〜〜っ!?」
   (く、首が取れちゃった!? あ、でも微妙に皮一枚で繋がって……)

ニック「このような風体ですので、"ほとんど首なしニック"と呼ばれることもありますが、
    呼ぶのでしたらニコラス・ド・ミムジー—ポーピントン卿と。
    グリフィンドールのゴーストですので、長い付き合いになるでしょうからな!」

QB「——絶望と希望の相転移——え? だって聞かれなかったから——」



 
ニック「さて、食事も途中のようですし、私はこれでおいとましましょう。
    グリフィンドールのみなさん、今年度こそ"寮対抗優勝カップ"の獲得を目指して頑張っていきましょうぞ!」

マミ「寮対抗? 運動会でもやるの?」

ハーマイオニー「違うわ。"ホグワーツの歴史"で読んだけど、授業の出来とか日ごろの素行とか、
          そういう細かい項目ごとに採点されるんですって。
          で、年度末にその得点が一番多かった寮の勝ち」

パーシー「うん。その通り。今年の一年生は有望そうだな」

マミ「あの、貴方は?」

パーシー「パーシー・ウィーズリー。グリフィンドールの監督生だ。今年の新入生の中には僕の弟がいてね。
      あそこののっぽの赤毛。ロナルドっていうんだけど、あいつはフレッドやジョージみたいにはならないで欲しいな……」

フレッド「俺たちがなんだって、パース?」

ジョージ「安心しろよ、可愛い可愛いロニー坊やの面倒は僕らが見てやるからさ」

フレッド「ああ。こパースみたいな石頭がこれ以上我がウィーズリー家に増えたらぞっとしないからな」

パーシー「お前たちはまたそうやって! 僕は監督生だぞ——」ドタバタ


ハーマイオニー「私、知ってるわ。今日の列車の中で、マミが私たちのコンパートメントに来る前に会ったの」


ロン「——」

ハリー「——」


マミ「ポッターくんと話してるわ。ずいぶん仲が良さそうだけど」

ハーマイオニー「列車でも仲良く話してたから、そこで仲良くなったんじゃない?」

マミ「あ、そうなんだ……え、えーと、私たちみたいね?」テレ

ハーマイオニー「え、ええ、そうね……あ、デザート! デザート食べましょう?」

マミ「あら? グレンジャーさん、甘いものはご両親に止められてるんじゃ——」

ハーマイオニー「う、うぐっ……」
          (ううっ、咄嗟についた嘘が首を絞めるなんて……)

マミ「……でも、今日くらいいいわよね? デザート、とても美味しそうだし。一緒に食べましょ?」

ハーマイオニー「え、ええ! ほら、マミ。トライフルって食べたことある?」

ハーマイオニー(私、これからまともに学校生活送れるのかしら……?)



 ハーマイオニーの予想通り、その後の学校生活は、彼女にとってとても辛いものとなった。

 

 グリフィンドール寮


マミ「あ、グレンジャーさん。ベッド、隣同士みたいね?」

ハーマイオニー「え、ええ。そうみたいね」

マミ「私……その、ひとりで寝るのが苦手で……良かったら寝るまでお話ししない?」

ハーマイオニー「もちろん! 貴女が寝るまでね!」
          (先に寝たら、寝てる間に呪いをかけられちゃう……!)



翌日


ハーマイオニー「……」ゲッソリ

ロン「なにあれ、ゾンビ?」

ハーマイオニー(マミが寝た後も、緊張で一睡も出来なかった……)

 
 魔法薬学 教室


マミ「えーと、これを煮てる間にこれをすり潰して……」ゴリゴリ

ラベンダー「じゃあ私、鍋の様子見てるわ。……にしても、マミって意外と手際いいのねー。
       本当にマグル出身?」

マミ「ふふ、ありがと。よくお母さんと一緒にお菓子作ってたりしてたから、そのお陰かも」

QB「……へえ。僕の知らない植物だ。この惑星のものは全部データベース化したと思ってたけど」



ハーマイオニー(何とか別の班になれたけど……離れてたら離れてたで怖いわね。
          なんていうか、お風呂で髪を洗ってる時に背後から感じる視線のような……)ガタガタ

スネイプ「ミス・グレンジャー。魔法薬の妙に怖気づいたか? 手が震えておるようだが」ポン

ハーマイオニー「っ、きゃあああああああああああ!?」バシャーン

スネイプ「うぉぉぉおおおお!? 熱ぃぃいいいいい! グリフィンドォォオオル! 10点っ! げんてぇぇえ……」



ジョージ「おい聞いたかフレッド。スネイプの野郎が新入生に医務室送りにされたらしいぞ」

フレッド「マジかよ!? そいつはぶっ飛びもんのニュースだ。
     その英雄、うちのパースと交換してくんねえかなぁ」

 
 ホグワーツ 裏庭



ドラコ「この穢れた血め! よくもスネイプ先生を塩掛けたナメクジみたいにしてくれたな!」

マミ「酷い……」ジワッ

ハーマイオニー(! ヤバイ! 呪いに巻き込まれる!?)
          「この腐れスリザリン! マミにちょっかいかけないで! オラァ!」バキッ

ドラコ「いや別にトモエに言ったんじゃなくてお前にげふぅ!?」

クラップ「魔法使いが素手で!?」

ゴイル「それもあんな正確に肝臓を打ち抜くなんて!」

マミ「グレンジャーさん……私なんかの為に……」キュン

ドラコ「くっ……さすがは穢れた血。杖より先に手が出るなんて」

ハーマイオニー「ドラァッ!」ボコォッ

ドラコ「フォイッ!?」

ゴイル「決まった! ハートブレイクショット!」

クラップ「これは立ち上がれない! フォイフォイダウーーーーン!」







ロン「あいつって真面目馬鹿だと思ってたけど、意外とクールだよな」


ハーマイオニー「フーッフーッ、シャーッ!」


ハリー「あれクールなの? どっちかっていうと熱暴走してるんじゃない?」






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 変身術 授業


マクゴナガル「さて、私が教えるのは変身術です。みなさん、杖を使う授業はこれが初めてででしたね?
         ですが変身術は魔法の中でももっとも難しい分野であり——」 

マミ(マクゴナガル先生の授業……! 魔法使うのは初めてだけど、絶対に成功させないと!)

マクゴナガル「——ではまず手始めに、マッチ棒を針に変身させて貰います。
         マッチが配られた者から始めるように」

QB「マミ、大丈夫かい?」

マミ「へ、へへへへへ平気よ! きょ、教科書は何回も見たんだから……!」ガチガチ

QB(駄目だこりゃ)

マミ「い、行くわよ……か、かかっ、カーコス・スペル!(針に変われ)」ポンッ










QB「……ねえ、マミ。僕にはどう見てもこれ、針じゃなくてちっちゃなミサイルにしか見えないんだけど」

マミ「……奇遇ね、キュゥべえ。私にもそうにしか見えないわ」

 バシュッ シュゥゥゥウウウウウウウ!

QB「……噴射口から、火を噴き始めたようだけど?」

マミ「……そうみたいね、キュゥべえ」

QB「……マミ、魔法を解いたら?」

マミ「……解き方はまだ、習ってないもの」

QB「……」

マミ「……」


 シュゥゥゥウウウウウウ! スリー、トゥー、ワン…


QB・マミ「せ、せんせぇぇぇえええ! マクゴナガル先生ーー!」


 ゼロゥ バシュウウウウウウウ!

 

マミ「……」ズーン

QB「マミ、そんなに気を落とさないで。ちょっと力を入れすぎちゃっただけじゃないか」




ラベンダー「凄い威力だったわね、あれ」ヒソヒソ

バーパティ「教室の壁に大穴が空いちゃったものね……」ヒソヒソ



ジョージ「よう、マミ! マクゴナガル女史が感服してたぜ。
      "こんな魔法はみたことない"って! まあ、ベッドの上でだけどさ」

フレッド「すげえよな、あれ。今度教えてくれよ、我らが自習の女神。
     フィリバスター花火と組み合わせりゃ、もっと面白いことになる気がするんだよなぁ」





ハーマイオニー(スネイプ先生に、マクゴナガル先生……
          や、やばいわ。着実にホグワーツの戦力を削りに来ている)ガタガタ

ハリー「彼女、物凄く震えてるね」

ロン「あの"みさいる"が顔を掠めたんだもんなぁ。そりゃトラウマもんだよ。
   なあハリー、さすがに同情するぜ。ちょっと励ましにいってやろうか?」

ハリー「だね。おーいハーマイオニー!」


 この日以来、ハーマイオニー・グレンジャーは二人の友人になった。

 共通の経験をすることで、互いを好きになる。そんな特別な経験があるものだ。
 
 ミサイルの恐怖を共にする。そんな経験も、まさしくそれだった。

 
 数ヶ月後 ホグワーツ廊下



マミ「……あのミサイル事件から二ヶ月弱。ようやくわかったわ。
   私、魔法の才能ないみたい……」

QB「そうかい? 君の魔法、凄いと思うけどなぁ」

マミ「呪文学では浮かす筈だった羽がフリトウィック先生の額に突き刺さるし、
   変身術では悉くミサイルやら榴弾やらに変わっちゃうし、
   闇の魔術に対する防衛術ではクィレル先生の頭に呪文が直撃して、
   この世のものとは思えない叫び声上げさせちゃうし……」

QB「あーあれは凄かったねえ。クィレル先生が錯乱して『お辞儀をするのだ!』って叫びだすし、
   ハリーは額の傷を抑えて倒れちゃうし」

マミ「そうよ……それで、ついたあだ名が……」



ミリセント「見て、グリフィンドールのぶっ壊し屋よ」クスクス

パンジー「次は何を壊すのかしら? まったくこれだからマグル出身は野蛮で困るわ」ヒソヒソ

ドラコ「ははっ、まったくその通りだね」

ハーマイオニー「無駄ぁッ!」ボゴオッ!

ドラコ「フォーーーーーーーーイ!?」グシャッ



マミ「同じ寮のみんなからも、ちょっと距離置かれ始めちゃってるし……
   普通に話してくれるの、もうグレンジャーさんくらいだもの……」

QB「そうでもないよ? あのウィーズリーの双子とか……ああいや、あれは面白がってるだけかな?」

マミ「練習しようにも、下手な場所でやったらまた粉々だし……」

QB「まあ、考えてても仕方ないよ。ほら、寮に戻ろうマミ? 夕飯も食べたし、あとは寝るだけだよ」

マミ「そうね……って、あら? あれは……」

 
フィルチ「……お前か、トモエ。何をしている? また何か壊したのか?」

マミ「……こんばんは、フィルチさん。その……いつもごめんなさい」

フィルチ「ふんっ。お前のおかげで、私はここ半年ほど休みなしだよ。
      片っ端から教室を吹き飛ばしおって。椅子と机の注文書を何回書いたか分からん。
      まったく、家具屋の回し者かというのだ、ええ?」

マミ「……私だって、別に壊したくて壊してるわけじゃ……」

フィルチ「それが私の仕事量に関係するのか? 壊してるのは事実だろうが。
      いや、悪意がない分性質が悪い。わざとやってるんであれば、逆さ吊りにしてるところさね……」

マミ「……っ」ジワッ

フィルチ「おやおや、泣くのか? そんな暇があったら、呪文のひとつでも練習したらどうだ?」

マミ「……練習したって、無駄です」

フィルチ「ああ?」

マミ「だって私、才能がないんです……スリザリンの人からはマグル生まれって馬鹿にされるし、
   実際、魔法は一回もまともに成功したことないし……」

フィルチ「……」

マミ「こんなことなら、私、ホグワーツになんてくるんじゃなかった——」

フィルチ「……っ! 黙って聞いてれば、トモエ——お前は本当に愚か者だな」グイッ

マミ「ふぇ? あの、フィルチさん、どこへ——?」

フィルチ「いいからついてこい!」スタスタ

 
フィルチ「全く、なんで私がお前の愚痴を聞かにゃならんのだ?
      管理人の私が、なんで生徒のお前の話を?」

マミ「あ、あの、気に障ったなら謝りますから——」

フィルチ「ああ本当だよ。腹立たしいにもほどがある。才能がないとか言ったな?
      ふん。全く、お前みたいな御嬢さんになにが分かるというのだ」

マミ「……っ、馬鹿に、しないでください! 私は、ずっと悩んで——」

フィルチ「たかだか数ヶ月だろうが? その程度で悩んだなどと、ちゃんちゃらおかしい」

マミ「……もう、いいです! 離してください! 離して——」



フィルチ「なあ、トモエ——本当に才能が無いということが、どういうことか分かるか?」




 
 ふと、時が止まったような感覚を覚える。

マミ「……え?」

 実際には、フィルチさんに引っ張られる私は歩き続けている。

 それなのに、そんな感覚を覚えたのはフィルチさんの声のせいだった。

 冷たい声。それはいつものねっとりした猫撫で声ではなく、酷く凍りついた印象を受ける声音。

フィルチ「マグルの生まれだからだとか、言い訳もできずに——
     それでも才能がないと思い知らされることが、どういうことかわかるか?」

マミ「あの……?」

フィルチ「毎回教室を吹っ飛ばしておいて、才能がないだ?
      ふん、才能がないというのは、杖を振っても火花すら出せない奴のことをいうんだ」

フィルチ「失敗できるだけいいだろうが。本当に才能が無い奴は、失敗することすらできん。
      成功させるための挑戦すらすることができんのだ。
      お前は、自分は惨めで可哀想な悲劇のヒロインだとでも思っているのかもしれんがな、トモエ」

 そうして唐突に、フィルチさんは廊下の壁際で立ち止まり、

フィルチ「——本当に才能の無い奴から見れば、今のお前は本当に腹正しく見えるだろうさ」

 廊下の壁に向かって、ノブを捻るような動作をして見せると、そのまま私ごと壁の中に溶けるように入り込んだ。


 
マミ「あの、ここは……?」

フィルチ「今は使われてない、隠し教室のひとつさ。ホグワーツにはこういう隠し部屋がうんとあってな」

マミ「なんで、ここに私を?」

フィルチ「毎回机と椅子を粉々にされても困るんだよ。ここには何もないし、壁も分厚い。
      扉も透明呪文で見えなくなってるから、誰かが入って来て巻き添えになることもない」

マミ「……?」

フィルチ「……ちっ。まだわからんのか。だから、好きなだけここで失敗してろ、と言ってるんだ」

マミ「……! フィルチさん!」

フィルチ「ただし! 寮の門限は守れよ? 私が見回りに来た時にまだいるようだったら、
      その時は地下牢に叩き込んでやるからな? いいな!?」

マミ「はい! ありがとうございます」

フィルチ「フン! 礼を言われる筋合いはない」

 
 ハロウィーン 大広間


マミ「わあ、素敵な飾り付けね、キュゥべえ! ほら、ジャック・オ・ランタンが空を飛んでる!」

QB「などと供述しており、警察は薬物の服用を疑って——」

マミ「ちょっと! 変なモノローグ挟むのやめてちょうだい!」

QB「まあ冗談はともかくとして、なかなか面白いね。
   あの蝙蝠の大群も、本物そっくりだけど本物じゃないだろうし」

マミ「確かに本物だと、さすがに衛生的ではないものね——って、あら?
   見て、クィレル先生が……」


クィレル「トロールが! トロールが地下室に!」


 トロール!? トロール ダッテ!?


ダンブルドア「静まれ! 静まれ! 監督生よ、それぞれの寮まで生徒を引率せよ!」

QB「……」

 
 グリフィンドール談話室


ジョージ「だけどトロールがどうやって入りこんだんだろうな?」

フレッド「さあな。もしかしてハグリッドが飼ってたのが逃げ出したのかもしれないけど」





マミ「トロールねえ。確かに、どうやってホグワーツに忍び込んだのかしら?
   ……あら? キュゥべえ? どこ行ったの?」

QB「マミ! 大変だ! ハーマイオニー達が!」

マミ「……え?」

 
 女子用トイレ


トロール「ブァァアアアアア!」


ハーマイオニー「だから言ったじゃない! トロールは危ないって!」

ロン「今更そんなこと言ってもしかたないだろ! 君だって強くは止めなかったじゃないか!」

ハリー「それにスネイプが禁じられた廊下の方に向かったのが気になるって、君も言ってたろ!」

ハーマイオニー「それはそうだけど! でもトロールは危ないから、見つけたらすぐ逃げるとも言ったでしょ!?
          ロン! それなのに貴方ったら!」

ロン「だって後ろ向いてたから、こん棒を浮かせて頭に落とせばやっつけられると思ったんだ!」

ハーマイオニー「見ればわかるでしょ! あれは山トロール! トロールの中じゃ一番頑丈なの!」

ロン「そんなのわかるもんか! 今度はもっと早く言ってくれ! あいつが殴られて怒りだす前に!」

ハリー「二人とも、言い争いしてる場合じゃないだろ——」


トロール「ブアアアアアアアア!」


ハーマイオニー「……っ、きゃああああああ!」



マミ「——フリペンド!(撃て!)」バシュッ




 
トロール「ブア?」ギロッ

マミ「っ、効いてないみたいね……でも注意は逸らせた!」


ハリー「彼女、ハーマイオニーの友達の……」

ロン「ああ、ぶっ壊し屋だ! あれ、でもいま、魔法が成功しなかった?」

ハーマイオニー「マミ!? なんでここに? はっ、ま、まさか私たちにトドメを刺そうと!?」

ロン「ハーマイオニー。前から気になってたけど、君のマミに対する被害妄想はどこから生まれたの?」

ハリー「マミ! どうしてこの場所が分かったの?」

マミ「QBが教えてくれたの! まったく無茶をするんだから!」

QB「いや、マミ。僕は契約をだね。魔法少女になれば、あの程度の怪物なんか——」

マミ「キュゥべえ! あなたは先生を呼んできて! 私が時間を稼ぐから!」

QB「いや、だから契約……はぁ、分かったよ」ピョイッ


 
ロン「無茶だ! そいつ、僕の渾身のこん棒落としでも駄目だったんだぞ!」

マミ「平気よ! 私だってこの数週間、ただ失敗してたわけじゃないもの……!」



QB『マミ。どうやら君は、得意な魔法と苦手な魔法がはっきり分かれてるみたいだね』

QB『多分、君の"素質"にも関わってるんだろうけど……
   うん、もしも君が魔法少女になったらきっと銃とか弓とかが武器になるんじゃないかな?』

QB『だから僕と契約しようよ! 願い事で頼めば、今日から君もダンブルドア級に——』



マミ「そう、全ての失敗は、いまこの瞬間、成功するために!」スッ

マミ「私の大切な友達を助ける為に、私は私の魔法を成功させる!」

ハーマイオニー「マミ……私、貴女のことを誤解してた——」

マミ「覚悟しなさい、この化け物!」バラッ


ロン「なにかばら撒いた? なんだあれ? ちっちゃい棒みたいな——」

ハリー「ああ、あれマッチだよ。ほら、談話室の暖炉に備え付けてある奴」

ハーマイオニー「……え? あの、ちょっとまって。マミ、分かってるわよね……?
          トロール挟んで反対側に私たちがいるってこと、ちゃんと考えてるわよね!?」


マミ「穿ちなさい! 我が魔弾の仔らよ! これが私の、全力全開!」


ロン「あー……駄目だよ。やっこさん、完全にトリップしちまってる」

ハリー「あー、ロン? 無駄かもしれないけど、とりあえず伏せてみようか?」

ロン「そうだな。ついでにお祈りもしとけば、少しはマシになるかもしれないし」

ハーマイオニー「マミ、ちょ、やめ——!」

マミ「——カーコス・スペル!(針に変われ)」ポポポポンッ!

 バシュウウウウウウウウウウウウウウ!

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マクゴナガル「……なるほど。それでこの惨状だと」

マミ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ

ロン「おったまげー……トロールがミンスパイの中身みたいになっちまったんだものなぁ」

ハリー「便器も全部吹っ飛んじゃったし……ハーマイオニー、大丈夫?」

ハーマイオニー「トロールはいやトロールはいやトロールはいや」ブツブツ

ロン「駄目だこりゃ。だから伏せろって言ったんだ」

ハリー「真正面からもろに浴びちゃったもんね。あー……"ミンスパイの中身"を」


マクゴナガル「とりあえず、グリフィンドールから15点減点。
         ポッター、ウィーズリー、グレンジャー。これで規則の大切さがわかりましたね?
         命があったのは本当に幸運でした」

ハリー「本当にね」

ロン「ああ。あんなに怖かったのはキャノンズが優勝した夢を見た時以来さ」

マクゴナガル「そしてマミ。殺されなかったのは運が良かっただけです。
         もしも貴女の身に何かあったら、私は亡くなった御両親にどう申し開きしろと?」

ハリー「……!」

マミ「ほ、本当にごめんなさい、マクゴナガル先生。私、全然考えなしで——」

マクゴナガル「……ですが、トロールを粉々にできる一年生は見たことがありません。
         特別に、20点あげましょう」

マミ「……え?」

マクゴナガル「できればこういう台詞は、授業中に言ってあげたかったのですが——」


マクゴナガル「——ええ、貴女は私の自慢の生徒ですよ、マミ」ニコリ


マミ「マクゴナガル先生——!」

マクゴナガル「ですがトイレを全損させたので、そこからマイナス5点。差引きゼロです」

マミ「」

 
マクゴナガル「以上。四人とも帰ってよろしい。ですが、その前に入浴するように」スタスタスタ

マミ「……うう、これで変な綽名からも脱却できると思ったのに」

マミ「あの……本当にごめんなさいね? 私、ちょっと力みすぎてたみたいで——」

ロン「ごめんなさいだって!?」

マミ「ひぅっ」ビクッ

ロン「ごめんなさいだって!? 君は最高だよ! なあ、ハリー! さっきの魔法、最高にクールじゃないか!」

ハリー「マミ、君は命の恩人だよ。うん、ただまあ、次の機会があるならもうミサイルはやめて欲しいけど」

マミ「ウィーズリーくん、ポッターくん……」

ロン「水臭いな! ロンでいいよ!」

ハリー「僕もハリーって呼んでよ。同じグリフィンドールの仲間じゃないか!」

マミ「……う、うん!」


 それ以来、巴マミは彼らの友人になった。
 共通の経験をすることで、互いを好きになる。そんな特別な経験があるものだ。
 

ハーマイオニー「トロールはいやトロールはいやトロールはいや」ブツブツ



 ただちょっと、"ミンスパイの中身"塗れになるというのはロマンチックじゃないけれども。


 

いったんおわり。次で賢者の石編はラスト

>組み分け帽「……」
>組み分け帽「グリフィンドール」

組み分け帽は空気読める良い子だw

もしかしてちょっと前に本編の文章を改編して書いてて問題になった人?

まだか

             ,-Y Yヽ |     / |  / l l |      l |ヽ_ |  l |
.              {  ( )ノ l     / l_/-- |ハ|    /TT ヽ  l l lリ
             \ し、jV   l |  ̄i /-‐ |      二リ_ i | | l
              乂ノヽ_}    l | x==サ=ァ       { b:l_j:} 〉i | l l‐- 、
              ,ヘ_ノf \   リ 〈 {C:し:::}        弋廴ソ リl /ハ、 /}      >>80 違います。そんな事件あったんですか……
          ,、_ノ   ノl l \ \ 乂-‐イ            リ  _// }          ていうか、まどマギとハリポタのクロスって
          f \  / \ゝヽ\\ ��     ,  ��  l ̄  彡{          以前にもあったんですね。

          l \  \<ニ‐`ニ\  ̄               ノー- ニイ i
             {  \_  ̄ ̄ フ f >         ー-‐ ´    <\ ̄ _ /  ノ
          / \     ーく\ } \ l>        ィ::|:.::.::.::.::.i//  へ_ 、   >>82 ごめんね。明日には投下するから、ごめんね。
.             .i\ / ̄ ー‐ ´\\   \ _ `   ´}/ ノ}:.::.::.::.::.::.:`\/  ̄ヽ:ヽ
          i ヽ ̄ニ—三}‐:.:.:.:\\ l/「ヽ |   /.::::/l{:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.}    }:::}
              > `ー— /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: \\│ | |./.::::/: ::|:.::.::.::.::.::.::.::.://   //
         /,-‐ ´ ̄ フ:.:.:.:.:.:.:.:.: 〈 (\ | | _/: : : : |:.::.::.::.::.::.::./ノ     ´::\
.         /:::/   /.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:  } }}:::::| / , ___ヽ: : :│:.::.::.::.::.::.::.::.::.:::.::.:.::.::::.::.\
.       i::/    {.::.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: 丿メ V/{ ′//⌒ヽ: : |:.::.::.::.::.::.::.::.:::.::.::.::.::.::.::.::.::. \
     .  i:{     }.:.::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:( ノノ: :)∧   /⌒) : | ::.:::.::.::.::.::.::.::.:::.::.::.::.::..::.::.::.::..::..\
       `丶  / .::.::.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}}:.:| : : : : .'.    く \: | ::.::.::.:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.::.::.::.::.::.::.::.::..\
     .      ″.::.::.::.::.::. i.::.::.::.:ノノ .:| { : : : : 〉     )、_)| ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:;ノ..::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::..\
           jj .::.::.::.::.::.:: i.::.::.::.::.::.::.::| : : : rク    /. : : :│::.::.::rヘ.___,ノY{::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:..`丶、
     .     〃.::.::.::.::.::.::.: ! ::.::.::.::.::.::.:| : : /{    /. : : : : | ::.::.: `}  }{ (::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:.:..\
         /.::.::.::.::.::.::.::.::. :、:.::.::.::.::.::.:|: :/ : :\  /. : : : : : | ::.::. ノー[I-I]-ヘ:.:.ヘ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::::.::.::.::.::.:.:..ヽ
     .   /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.. ::.::.::.::.:: l:/ : : : : :∨} : : : : : : | ::.:: 乂  j{  ノ.::.::..\::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::::.::.::.::.::.::.::...

服従の呪文をかけられていたようだ。起きたら日曜だった。

まじごめん。いまから投下します。

 
 グリフィンドール 談話室


ロン「……ってわけさ。これで大まかなルールは全部かな。
   実際にプレイするなら別だけど、観戦するには十分だと思う」

マミ「ええ、ありがとうロンくん。お陰でハリーくんの試合を見に行った時、
   何にも分からないって事態は回避できそうね」

QB「彼、シーカーってポジションに選ばれたんだっけ?
   規則を捻じ曲げてまで選ばれたんだから、きっと才能があったんだろうね」

マミ「そういえば箒で飛ぶ授業の時、凄い飛びっぷりだったような……
   あら? そういえばそのハリーくんは?」

ハーマイオニー「ハ、ハリーはスネイプ先生の所に行ったわ。
          私が貸してあげたクィディッチの本を没収されちゃったの」ビクッ

ロン「……ハーマイオニー。君ってばまだマミのこと——むがっ」

ハーマイオニー(しーっ! 染み付いちゃった習性は急に取れないの!
          そ、それに! マミはあの日、確かにアバダケダブラって……!)

ロン(絶対君の勘違いだと思うけどなぁ)

 
ハリー「"豚の鼻"! ——ロン! ハーマイオニー!」バタン!

ロン「噂をすれば、だ。ようハリー。本は取り戻してきたかい?」

ハリー「それどころじゃない。分かったんだ! スネイプはあの日"三頭犬"の——」

ハーマイオニー「っ!? ハリー、落ち着いて。駄目。ストップ!」チラッ

マミ「? どうしたの? "さんとうけん"って何かしら?」

ロン「いやあハハハ! 聞き間違いさ。さんとう、さとう……砂糖羽ペンだよ。ハリー、ほら、仕方ないな!」グイッ
   (馬鹿! "禁じられた廊下"に入っちゃったことは秘密だって、君が!)

ハリー(ごめん! でも大変なんだ。スネイプがあの犬の守ってるものを狙ってるんだよ!)

ロン「マジかよ!?」

マミ「?」

ハーマイオニー(ロン!)ギロッ

ロン「あ、え、うーん、そうか。そりゃ大変だな! じゃあ本を取り戻す作戦を立てようか。
   マミ、悪いね。ちょっと外すよ」

ハーマイオニー「あ、明日はクィディッチの試合もあるし、もう寝ないと!
          マミ、先に部屋に戻ってて? 私も歯を磨いたらすぐに行くから!」

マミ「う、うん。分かったわ。キュゥべえ、行きましょ?」ヒョイッ


 





ハリー「……。……。」

ロン「——。——!」

ハーマイオニー「〜〜〜〜〜!」



QB「……マミ。気づいてると思うけど、あの三人、君に隠し事をしてるみたいだよ?」

マミ「そうみたいね。別にいいけど」

QB「気にならないのかい? 僕のデータだと、君たちくらいの年の子は
   友達に仲間外れにされると疎外感で心がいっぱいになるとあるんだけど」

マミ「全く気にならないわけじゃないけど……意地悪してる雰囲気でもないしね」

QB「確かに。どちらかといえば、知られることを恐れているようだった」

マミ「グレンジャーさんはともかく、ハリーくんやロンくんは結構やんちゃなところがあるから……
   大方、なにか規則違反したのを隠してるとかじゃない?」

QB「そういえば、この前のトロール事件も規則違反っていえば規則違反だったか」

マミ「うん。だから……私を巻き込まないようにって、気を使ってくれてるんじゃないかしら?」

 
 グリフィンドール 女子寮


パーバティ「はぁい、マミ。お話は終わった?」

マミ「ええ。ロンくんにクィディッチのルールを教えて貰ってたの」

ラベンダー「あら、言ってくれれば私たちが教えたのに」

パーバティ「ねえ、マミ。この前のトロール、貴女が倒しちゃったって本当?」

マミ「う……もしかして、噂になってるのかしら?」

パーバティ「ええ! 一年生がトロールを魔法で粉々にしちゃったって話題でもちきりよ!」

マミ「あ、あのね。別に私、必死でやっちゃっただけで——」

ラベンダー「いいからいいから! ね、その時のこと詳しく教えて!」

マミ「……いいけど、あんまり他の人に言っちゃだめよ?」

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ラベンダー「……それでね、ホグズミードにはハニーデュークスっていうお菓子屋さんがあるの。
       品揃えはイギリスでも一番ね!」

マミ「素敵! 是非一度行ってみたいわ」

パーバティ「じゃあ今度のクリスマス休暇、一緒に行かない?
       学期内の週末に行けるようになるのは三年生からだけど、帰宅中なら大丈夫よ!
       パパとママに連れってて頼むから!」

マミ「……クリスマス、休暇」

パーバティ「? マミ?」

マミ「あ……ごめんなさい。ちょっと……私の家、遠いから。
   帰るのも大変だし、クリスマスはこっちで過ごすことになると思う」

ラベンダー「あ、そういえばマミって日本人だっけ。もしかしてふくろう便の範囲外?
       そうすると煙突飛行ネットも通ってないかー」

パーバティ「そっか、じゃあ仕方ないわね……」

マミ「うん。せっかく誘ってもらったのに、ごめんなさいね……」


 
マミ(……家に帰る、か。でも、帰ったところで……誰もいない)

マミ(マクゴナガル先生は正しかった。
   魔法というインパクトとまったく新しい環境での生活は、あの事故のことを少しだけ忘れさせてくれた)

マミ(でも……本当に忘れられたわけじゃない)

マミ(こうして一度落ち着いてしまってからだと、泣くことも難しい)


 自分にとって、クリスマスとは楽しいものだった。

 記憶が蘇る。証明を落としたダイニング。テーブルの上には丸いケーキ。ロウソクの火に、私と両親の影が揺れていた。

 でも、もうそんなクリスマスは過ごせない。


マミ(……これから、ずっと。私は……)

 
ラベンダー「——マミ、マミ? 聞いてる? もしかして眠くなっちゃった?」

マミ「あ、ええ。ごめんなさい。なんだったかしら?」

ラベンダー「だから、クリスマスの話よ!」

マミ「……あの、だからクリスマスはホグワーツで——」

ラベンダー「ああ、だいぶ前から聞いてなかったのね……仕方ないか。もうだいぶ遅いもんね」

パーバティ「あのね、マミ。じゃあクリスマスカードを送り合わない? ってさっきから話してたのよ」

マミ「クリスマス、カード……?」

パーバティ「あれ、知らない? マミの国はそういう習慣ないのかしら?」

ラベンダー「別に、直接会わなくてもクリスマスは祝えるでしょ? ホグワーツなら、ふくろう便も届くし」

マミ「……」

ラベンダー「マミ?」

パーバティ「どうしたの? 本格的に眠い?」

マミ「……ううん。大丈夫。大丈夫、だから」ニコッ

ラベンダー「本当? じゃ、今から私たちの住所言うから、メモして——」


 ——いまの貴女に必要なのは理解者と、それに囲まれた環境です——


マミ(……マクゴナガル先生、ありがとうございます)


 天国のお父さんとお母さんへ。

 私、友達ができました。

 
 図書室


ハーマイオニー(ニコラス・フラメル……この本にも載ってないわね。
          著名な魔法使いは、ほとんど網羅したと思うけど)ペラッ

ロン「教えてくれるかい、ハリー? 僕はあと何冊本を読めばいいんだ? もう一生分は読んじまったよ」

ハリー「僕もクィディッチの試合をやったのが遠い昔に思えてきたよ、ロン。まさに天国から地獄へ、だ」

ロン「地獄の獄卒だって、こんな拷問めいたことはやらせないと思うけどね」

ハーマイオニー「ああもう! あなた達、口を動かす前に手と目、そして頭の中身を動かしなさい!
          あの三頭犬が守ってるものは、ハグリッドがうっかり洩らしたニコラスって魔法使いが関係してるんだから!」

ハリー「分かってるよ。何にせよ、スネイプに取られるわけにはいかないからね。
     にしてもニコラスって名前……どっかで聞いた覚えがあるんだけどなぁ」

ロン「どうせなら、ハグリッドももっとうっかりしてくれてたら良かったのにな。
   ニコラス某が誰かとか、何を守ってくれてるのかとか教えてくれりゃ、こんな本の山に埋もれなくたっていいのに」

ハリー「あの犬、何を守ってるんだろうね」

ロン「さあ? スネイプが狙ってるんだから、厨房からくすねてきた骨ってことはないだろうけどな」

ハリー「それ以前に、あの犬の体格じゃキッチンに入れないだろうしね」

ハーマイオニー「だから! 真面目に! やりなさいってば!」

ハリー「分かってるよ。じゃあとりあえず、この本の山を片してくる」

ロン「僕も手伝うよ……さっきから司書のマダム・ピンスが睨んできてるし」ガタッ

 
ハーマイオニー「……ふぅ。とは言ったものの、さすがに行き詰ってきたのも確かね。
          二人に、ちょっと……ほんのちょびっと……厳しく言い過ぎたかしら?」ブツブツ

マミ「あっ、グレンジャーさん! ちょっといいかしら?」

ハーマイオニー「!? は、はぁい、マミ。どうしたのかしら。この机使う?」ガタッ

マミ「いや、机ならたくさん空いてるし……ひとつの机をひとりで占領する必要もないし」

ハーマイオニー「そ、そうよね。それで、何の用でございますか……?」

ハーマイオニー(やばい! 周りに誰もいない! ローン! ハリー! へるぷみー!)ガタガタ

マミ「くすっ。なぁに、その言葉遣い? まあいいけど、それでね、グレンジャーさん。
   ラベンダーさん達から聞いたんだけど、冬休みはおうちに帰るんでしょう?」

ハーマイオニー「え、ええ。ホグワーツのこと、家族にも報告したいし……」

マミ「うんうん。家族は大切にしないとね。それで、ちょっとお願いがあるんだけど——」

ハーマイオニー(マミのお願い? な、何かしら。——肝臓? 処女の肝臓が欲しいとか……?)

マミ「あのね、グレンジャーさんと、その、グレンジャーさんが良ければでいいんだけど……
   くっ、クリスマスカードとか良ければ交換しないかしら!?」

ハーマイオニー「……え。クリスマス、カード?」

マミ「う、うん。ほら私、イギリスってはじめてだから、こういう風習には疎いのだけど、
   でもその、送りあうって聞いて、それで……」

ハーマイオニー「……」

マミ「あの、急な話だし、もしも迷惑だったらいいのだけれど……」

ハーマイオニー「……はぁ」

マミ「あぅっ。溜息……呆れさせちゃったかしら?」

ハーマイオニー「そうね。私自身に呆れてるところよ」

マミ「?」

ハーマイオニー(ロンの言う通りね。なんでこんな良い子のこと、私は疑ってたのかしら……)

ハーマイオニー「それじゃ、カードを送らせてもらうわ。マミは学校に残るのよね?」

マミ「本当!? じゃ、私頑張ってカード書くから!」

ハーマイオニー「ふふっ。ええ、楽しみにしてるわ!」

 
マミ「じゃあグレンジャーさん。とりあえず貴女のおうちの住所を教えてほしいのだけれど」

ハーマイオニー「ええ。オックスフォードの——」











ハーマイオニー「……」

マミ「……? グレンジャーさん? 急に黙ってどうしたの?」

ハーマイオニー(待って……さっきマミはなんて言った……?)



マミ『うんうん。家族は大切にしないとね。それで、ちょっとお願いがあるんだけど——』

マミ『うんうん。家族は大切にしないとね』

マミ『"家族"は、大切にしないとねぇ?』(暗黒微笑)



ハーマイオニー(あ……危ないぃぃいいいい! こいつめっちゃ狙ってるわ!
          私の家族の命ぁ狙ってる! 住所知ってどうするつもり!?)

マミ「オックスフォード、の……それから?」チラ

ハーマイオニー(ひぃっ。催促してる! 早く言えって無言の要求されてる!
          あの眼は『言わねばその喉笛噛み千切るぞ!』って目だわ……!)ガクガク









ロン「はい、これハーマイオニーの住所」

マミ「あ、ありがとう……でもいいのかしら? 勝手にもらちゃって。
   それにグレンジャーさん、急に震えだして大丈夫……?」

ハリー「うん。あれはまあ、発作だよ。最近よくあるから、気にしないであげて」

 
 ——クリスマス休暇。


マミ「みんな実家に帰っちゃったし、お休み中は暇だわ……グレンジャーさんもいないし」

QB「なんか帰る時、物凄い喜んでたよね、彼女。ホームシックなのかな?」

マミ「さあ……にしても、本当に暇ね。宿題も終わっちゃたし」

QB「魔法の練習でもしたらどうだい? マミは実技が不手得のようだし」
  「筆記系とか、魔法薬は優等生のハーマイオニーに次ぐ出来だけどさ」

マミ「だって魔法薬って、レシピ通りに混ぜたり煮たりするだけだし……先生は怖くて苦手だけど」

QB「それができない人って結構いるもんだよ。
   マミはお菓子作りとかの才能があるかもしれないね」

マミ「お菓子作り……お母さんと昔やったきりだけど、夏休みに帰ったら試してみようかしら?
   自炊だって考えなきゃいけないし……」

QB「うん、いいと思うな——正直なところ、ここのご飯って不毛な味がするし」

マミ「イギリス料理……噂に違わぬ味だったわね。お菓子はおいしいんだけど」

 
QB「それはそうと、魔法の練習はどうするんだい?
  学期末に試験だってあるし、備えはしておいたほうがいいよ」

マミ「……そうね。あれ以来、得意な魔法は扱えるようになったんだけど……」

QB「君はノックバックジンクスみたいに、杖から"撃つ"魔法が得意みたいだね」

マミ「ええ。でも一年生の試験で、そんな物騒な呪文は出ないし……。
   そもそも、壊したりする魔法って実生活でそんなに役に立たないわよね?」

QB「石ころでも投げれば、同じ結果を得られるからね。
   こと破壊という点だけみれば、この星の近代兵器は中々に優れているし」

マミ「うーん。上達してないわけじゃない、と思うんだけど……
   マッチを針に変えるのだって、最近は上手くなってきたし」

QB「そうだね。ミサイルの先が、凄い鋭くなってきたから」

マミ「……ぶ、物体浮遊だって、水平に吹っ飛ばなくなってきたでしょ?」

QB「フィルチに教えて貰った"透明の教室"、天井が凹みまくったけどね」

マミ「箒を使って飛ぶ練習は——」

QB「箒……ああ、あれかい? 指先が触れた瞬間に地平線の向こうまで逃亡したやつ」

マミ「えいやっ」ギュッ

QB「きゅっ!?」

マミ 「こうなったら練習あるのみよ! やる前から諦めてたら何も出来ないわ!
   それに変身術で落第点なんか取ったら、マクゴナガル先生に顔向けできないもの!」ポイッ

QB「……じゃあ魔法でベッドを動かして模様替えでもしてみようか。
   幸いというかなんというか、君の部屋の同輩たちはみんな帰ってるし」

マミ「そうね。よーし物体浮遊は……うぃん・がーでぃあむ・れう゛ぃおーさ、ってキュゥべえ!
   透明の教室で練習するのよ! ここで失敗なんかしたら——」バシュッ

QB「ははは! 見たかマミ! 僕を"ぎゅっ"ってした罰だ——きゅっ!?」



 そしてベッドは燃え出した。

 
マクゴナガル「……まったく、練習熱心なのは結構ですが。
        危うく部屋が全焼するところでしたよ、トモエ?」

マミ「すみませんでした……」

マクゴナガル「まあ幸い誰も怪我はしなかったようですし……減点は勘弁してあげましょう」

QB「僕の尻尾の先が現在進行形で焦げてることはスルーかい?」メラメラ

マクゴナガル「このくらいの損傷なら魔法で直せますしね。レパロ!(直れ)」ポンッ

マミ「凄い! ベッドが一瞬で元通りに!」

QB「僕の尻尾……」パタパタ

マクゴナガル「貴女も練習すればこのくらい出来るようになります。練習は確かに大事です。
         しかし、朝から部屋に閉じこもってるのは不健康ですよ?
         談話室に行って御覧なさい。暇そうな生徒が何人かいましたから」

マミ「はい! ありがとうございました、マクゴナガル先生!」



 ちなみに天井に人の顔のような形をした焦げ跡が残っており、

ハーマイオニー「いやー! 顔が! 生首が私を俯瞰視点から!?」

 それを帰ってきたハーマイオニーが発見し、悪夢を見る羽目になるのはまた別の話である。

 
 談話室


マミ「やっぱりお休みだし、あんまり人はいないわね」

QB「でもマクゴナガル先生の言う通り、残ってるのは暇そうな人ばかりだよ。
    あ、ほら。暖炉の傍でチェスをやってるのって……」


ハリー「なんだこの駒! 全然言うこと聞かないぞ!」

ロン「マグルのチェスは駒が喋らないんだっけ? それって退屈そうだなぁ」


マミ「ああ、ハリーー君とロン君。あの二人も残ってたんだ……
   おはよう、二人とも。いい朝ね?」

ハリー「やあマミ、おはよう。今朝も寒いね」

ロン「もうクリスマスだもんな……それで、何か用かい?」

マミ「用ってわけじゃないけど、私のルームメイト、みんな帰っちゃたから暇なの」

ハリー「チェスでもする? 席を代わるよ。この駒、僕の言うこと全然聞かないんだ」

マミ「チェスのルール、よくわからないから……将棋とかなら少し分かるんだけど」

ロン「ショーギ? なにそれ?」

マミ「日本……私の国のチェスに似たゲームよ」

ロン「へえ、マミって日本人だったのか。そういえばどことなくハッフルパフのチョウと顔つきが似てるかも」

ハリー「日本っていえば、ダドリーが日本製のゲームを……」

 




ハリー「……あ、そうだ。ロン、ちょっと……」

ロン「ん? なんだよハリー。ちょっとごめんマミ」

マミ「あら、内緒話?」


ハリー(ニコラスのこと、マミにも聞いてみたらどうかな?)コソコソ

ロン(無駄じゃないか? ハーマイオニーも知らなかったんだぜ?)コソコソ

ハリー(でも彼女、魔法史の成績良いし……ビンズ先生の授業を真面目に聞いてる貴重な人類じゃないか)

ロン(でも僕達が『禁じられた廊下』のこと嗅ぎ回ってるの、あんまり知られるのは……)

ハリー(その辺は大丈夫じゃないかな。フラメルってだけじゃ分からないだろうし)

ロン(うーん、それもそうか。ま、あんまり期待はしてないけどね)


ハリー「じゃ、そういうわけで——ねえマミ、ニコラス・フラメルって人のこと何か知らない?」

マミ「ニコラス・フラメル? それって賢者の石を作った魔法使いでしょう?」


マミ「なんかあの二人、物凄い叫び声上げながら走って行っちゃったわね。喜んでたみたいだけど……」

QB「フクロウ小屋の方へ行ったみたいだ。誰かに手紙でも送るんじゃないかな。
   ……それにしても、マミ。いまさらだけど、君は成長したねえ」

マミ「? え、何が?」

QB「いや、人付き合いがさ。ホグワーツ特急で人見知りしてた頃とは見違えるようだよ」

マミ「ああ……それ」フゥ…ヤレヤレ

QB「あ、なんか軽くイラっときた」

マミ「そりゃあ半年も知らない場所で過ごせば人見知りくらい直るわよ。というか、直さないと生活できないもの」

QB「まあ、それもそうか。じゃあそれはまああの夏の日の幻影だったということにして」

マミ「ちょ。勝手に幻にしないで……主人の成長を喜びなさいよ、ペットらしく」

QB「話は変わるけど、ニコラス某のことは? なんで知ってたんだい?
   一年生の魔法史の授業じゃ出てこないし、教科書にも載ってないけど」

マミ「……まあいいわ。ニコラスさんのことは、ほら、あれよ。ホグワーツ特急の中で新聞買ったじゃない?
   あれに載ってたの。最近、ある程度魔法界のことも理解できたから読み返してたのよ」

QB「へえ。それはまた随分とタイムリーだったねぇ。
  発行の日付が一日でもずれてたら、マミはフラメルのこと知らなかったわけだし」

 
マミ「ええ。こんな偶然あるものなのね。
   ……でも、もう死んじゃった人に一体なんの用かしら?」

QB「ん、フラメル氏は故人なのかい?」

マミ「新聞にはそう書いてあったけど」

QB「ふぅん。じゃあなんだろうねぇ。とりあえず宿題関係じゃないのは確かだけど」

マミ「……ところで、QB」ジロッ

QB「ん? なんだい、マミ。そんな怖い顔しちゃって」

マミ「誤魔化そうとしても駄目。貴方でしょう、最近、私の教科書を引っ張り出してるの。
   ニコラスさんのこと、教科書に載ってないって断言したでしょ? 魔法史の教科書、貴方に見せたこと無いのに」

QB「ありゃ……口が滑ったな。ごめんよ、マミ。迷惑はかけないつもりだったんだけど」

マミ「ならせめて、元通りの順番に揃えて……いやその前に私に一声かければいいじゃない。
   大体、キュゥべえは魔法使えないのに何で教科書見るのよ? 授業も毎回ついてくるし……」

QB「……」



QB「——ま、新しい技術には誰だって興味が沸くさ」



.

 
 クリスマス 朝



マミ「……Zzzz」

QB「マミ、起きて。朝だよ?」

マミ「……ん。むゃ、お休みだし、あと五分……」

QB「君の言う朝の五分は一時間近いじゃないか。昨日、起こしてって言ったのは君だろう?
   ほら、届いてるよ。クリスマスカード」

マミ「!」ガバッ

QB「えーと。ラベンダーにパーバティ。これは……」

マミ「だ、だめよ! 私が最初に読むの!」

QB「やれやれ。やっと起きたか。ほら、どうぞ」

マミ「凄い! 絵が動いてる! きっと魔法のインクなのね……あ、こっちはきらきら光る!」

QB「凄いねぇ、どういう仕組みかさっぱり分からない。おや、これはハーマイオニーのか。
   ……意外に字が汚いね」

マミ「変ね? ノートは綺麗にとってるんだけど……まるで何かに怯えてガクガク震えながら描いたみたいね?」

 
マミ「うーん。こうして見ると、私の送ったクリスマスカードって地味だったかしら?」

QB「そうかい? 飛び出す仕掛けとか、凄い凝りようだったけど……」

マミ「うーん。でもねえ……あら? まだあるわね」

QB「うん? でも約束してたのは——」

マミ「ええ、ルームメイトの三人だけの筈……」ペラッ

QB「なんて書いてあるんだい?」

マミ「……これ、クリスマスカードじゃないみたい。宛名も書いてないし、誤配かしら?」

QB「見せて! もしかしたら僕宛かも!」

マミ「ふふ。でもこれ、暗号みたいよ? キュゥべえに分かるかしら」


『一つ目はケルベロス。音楽を聞かせること。
 二つ目は悪魔の罠。火をつけること。
 三つ目は空飛ぶ鍵。箒で飛んで掴むこと。
 四つ目はチェス。よく練習しておくこと。
 五つ目はトロール。対策を練っておくこと。
 六つ目は論理。前へ進みたいなら一番小さな瓶。戻りたいなら右端の瓶を』


QB「……さっぱりだ。何かのゲームの攻略法かな?」

マミ「やっぱり誤配かしら……? 悪戯にしては意味が分からないし」

QB「一応しまっておけば? もしかしたら君のルームメイトのかも」

マミ「そうね。そうしましょ」ゴソゴソ

 
 新学期 廊下


マミ「結局、ラベンダーさんのでもパーバティさんのでもなかったわね、このカード」ピラピラ

QB「そうだね。あとはハーマイオニーだけど……今日もダメだったのかい?」

マミ「そうなのよ。帰ってきてから、あの三人でずっと何かやってるみたいで。
   今日も授業が終わってすぐ、教室から飛び出していっちゃったの」

QB「話す機会がなかなかないねぇ。まあでも、向こうが聞いてこないんなら、彼女のでもないんじゃないかい?」

マミ「そうかもしれないけど……でも聞く前に捨てるわけにもいかないし」

QB「せめてどこにいるか分かればねえ」

マミ「そうねえ……って、あら?」ピラッ

QB「どうしたの、マミ?」

マミ「……ほら、これ見て」

QB「これって、あのカードだろう? もう見たけど……」

マミ「うん。だけど、ほら。カードのこの部分」


 "禁じられた森" "ハグリッドの小屋"


QB「……変だな。確かここ、前は何も書いてなかった気がするけど……」

マミ「見落としてたのかしら? それとも透明インクで書かれてたのが効果切れで出てきたとか?」

QB「分からないけど……とりあえず、これが宛名かな? マミ、届けに行ったら?」

 
 禁じられた森の外れ


マミ「確か、こっちの方だったと思うけど……」

QB「こっちには滅多に来ないからねえ。スプラウト先生の薬草学くらいで……
   って、マミ。あっちから来るのって」

マミ「……っ」

ドラコ「ん? なんだ、君か。こんな所に何の用だ?」

マミ「あ、あの、ちょっと、届け物……」

ドラコ「はっきり喋れよ。クィレルみたいにどもりやがって」

マミ「ぁう……」ジワ

QB「そういう君は、どうしてここに?」

ドラコ「はん。猫如きに話す義理はないね。ほら、邪魔だからさっさとどっか行けよ」

マミ「で、でも、私も用事が……」

ドラコ(……ちっ。ドラゴンを飼ってる証拠を掴めば、ポッター達を退学に追い込めるのに。
    仕方ない、強硬手段だ)

ドラコ「ロコモーター・モルティス(足縛り)!」ピシャッ!

マミ「っ! きゃっ!」

ドラコ「くそっ、避けたか。ほら、どっか行っちまえ! 次は当てるぞ!」

マミ「うう……」

 
ドラコ「警告はしたからな! エヴァーテ・スタティム(宙を舞え)!」パシーン!

マミ「きゃあ!」サッ

QB「マミ、肩に乗ってる僕のことも考え——きゅっぷううううううう!」ピューン!

マミ「キュゥべえ!? よ、よくもやったわね! フリペンド(撃て)!」バシュッ

ドラコ「痛っ! こいつ、僕に対してよくも——」

ハグリッド「お前さんら! いったいなにやっちょるんじゃ!」

ドラコ「……ちっ。覚えてろよ!」ダッ

マミ「た、助かった……」

ハグリッド「大丈夫か? マルフォイの仔倅め、まったく……ほら、もう遅え。寮に帰んな」

マミ「は、はい。ありがとうございました」ペコッ

ハグリッド「……行ったか」




ハリー「危なかったね、ハグリッド」ヒョイ

ロン「全くね。マミはともかく、マルフォイの奴に赤ちゃんドラゴンを見られてたら終わりだったよ」

ハグリッド「ああ。あのマミっちゅー娘っこには感謝しねえとな。悲鳴で気づかんかったら見られとったよ」

ハーマイオニー「とはいえ、何か対策を考えないと……それも急いで」

ロン「ああ、そうだな……そうだ、チャーリーに頼んで——」

 
 数週間後 大広間


マミ「んんー! 気持ちのいい朝ね、キュゥべえ!」

QB「そうだね。またクィディッチの試合でグリフィンドールが勝ったし。
   これで寮対抗杯もグリフィンドールがトップだ」

マミ「それもあるけど、ほら! 見てよキュゥべえ! とうとうやったわ!
   どう!? 前より針っぽい形でしょ?」
 
QB「……安定翼のないミサイルって、前より危険度は上がってるような」

マミ「あとは色と噴射口と中に詰まってる爆薬をなんとかすれば……」ブツブツ

QB「聞いてないね……ん?」

 ザワザワ ザワザワ

QB「マミ、マミ。見て、あそこ。凄い人だかりだ」

マミ「ん? あら、本当。どうしたのかしら。朝食の時間なのに……」

QB「あそこって、確か寮の点数が表示されてる場所だよね?」

マミ「そうよねぇ。なんであんなに集まって……」

ラベンダー「マミ! 大事件よ! グリフィンドールの点数が!」

マミ「……え?」




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「あのハリー・ポッターが校則違反を……」ヒソヒソ

「ロングボトム家も落ちたもんだ……」ヒソヒソ

「あの子の態度、前から気に入らなかったのよね……ちょっと勉強できるからって……」ヒソヒソ

「ひとり50点……全員分で150点もひかれた……」ヒソヒソ




QB「はあ。君たち人間の手の平返しの鮮やかさには惚れ惚れするよ。
  クィディッチで彼が活躍していた時はまるでヒーロー扱いだったのに」

マミ「そうよねぇ……グリフィンドールはともかく、他の寮の子達までハリー君達無視してるもの」

QB「タイミングが悪かったからね。嫌われ者のスリザリンが繰上げ一位になっちゃったからさ。
   ていうか、マミ。君はそういう感情はないのかい?」

マミ「グレンジャーさんもロングボトム君も、こっちで出来た私の最初のお友達だし……
   それに元々、寮対抗、って、そういう響きが何だか苦手だったのよ」

QB「まあ、日本的ではないかもね。でも郷に入っては郷に従えっていうのが君の国の格言にあったよ?
   おっと、君はもう従ってるのかな?」

マミ「……意地悪。私だって、別に無視したいわけじゃ……」

QB「君は人見知りが直って、そこそこ交友関係も広くなった
   パーバティにラベンダー……まあ普通に学校生活を送るのに支障が無い程度には関係を構築できた」

マミ「……」

QB「図らずしもマクゴナガルの言う通り——君は、魔法使いの友達を得ることができた」

マミ「……」

QB「それを壊すのが怖いんだろう?」

マミ「……そうよ。だって、仕方ないじゃない。もう、独りぼっちは嫌だもの……」

バーパティ「マミー? 授業遅れるわよー? ラベンダーが席とってくれてるけどー」

マミ「あ……う、うん。すぐ行くわ!」ダッ

QB「……ま、いいんだけどね。
  そんな泣きそうな顔をしてまでそっち側に居たいんなら、さ」

 
 学期末試験終了後。グリフィンドール談話室。


QB「お帰り、マミ。試験はどうだった? 今日は変身術と呪文学だったよね?」

マミ「……"可"ってところね」

QB「そうかい。落第点じゃなかっただけよかったじゃないか。
  で、具体的にはどんな感じだったの?」

マミ「呪文学ではパイナップルがブレイクダンスを踊り始めて、
   変身術では、一応ネズミを嗅ぎ煙草入れに変身させられたんだけど……超合金製だったの」

QB「……まあ、何も壊さなくて何よりだよ。他の科目は良くできたんだし、試験はパスできそうだね」

マミ「ええ。それにしても……」チラッ




ハリー「ヒソヒソ」

ロン「ボソボソ」

ハーマイオニー「コソコソ」




マミ「また、三人だけで固まってる……」

マミ(結局、あれ以来グレンジャーさん達とは話せてないのよね……もう、一年目も終わりなのに)

マミ(皆の態度も変わらないし……私から話しかけるのは……)

マミ(……臆病者ね、私。なんでグリフィンドールなんかに入れたんだろう——)

 
ネビル「マミ。あの、ちょっといいかな……?」

マミ「!? ろ、ロングボトム君……?」

ネビル「あ、あ! ご、ごめん、迷惑だったかな? うん、そうだよね。
     僕なんかと話してたら、君まで……」

マミ(……そういえば、あの三人は三人で固まってたけど……
   ロングボトム君は、あの三人とも距離を置いてたのよね……)

ネビル「あの、ごめん。僕行くね——」


マミ(ロングボトム君はあの日、一人ぼっちで途方にくれている私に声を掛けてくれた……)


マミ「——ま、まって!」





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 ——夜。 談話室。


ハーマイオニー「……よし、誰もいないわ」

ロン「ハリー、透明マントを出せよ」

ハリー「ああ。ヴォル——例のあの人が賢者の石を手に入れるのは、絶対に防がないと——」

ネビル「……君たち、また外に出るつもりなんだろ」

ロン「ネビル!?」

ハリー「いや、別になんでもないよ? ネビル、もう寝たら?」

ハーマイオニー(……ネビル、待ち構えてた?)

ネビル「外に出ちゃいけない。外に出たら、グリフィンドールはもっと大変なことになるんだ」

ハリー「ネビル、君には分からないだろうけど、これは——」

ネビル「絶対にここは通さない!」

ロン「ハーマイオニー、何とかしてくれ!」

ハーマイオニー「……ネビル、本当にごめんなさい。
          ペトリフィカス・トタルス——」




マミ「——うぃん・がーでぃあむ・れう゛ぃおーさ!」ボゥッ


 
ロン「うわっ! ソファが燃えた!?」


マミ「ああ、また失敗だわ……何がいけないのかしら。杖の振り方?」

ハーマイオニー「マミ!? 貴女も邪魔をする気!? くっ、やっぱり闇の魔法使い——」

ハリー「マミ、そこをどくんだ。僕たちはとても大事なことをやろうとしてるんだよ」

マミ「ハリー君……貴方がきっと、ふざけてるんじゃないってことは何となく分かる」

ロン「だったらどけよ!」

マミ「……ごめんなさい。だけど、私はロングボトム君の勇気に応えたいの」








〜数時間前〜


マミ『あの三人が、何か企んでる?』

ネビル『う、うん。多分……もうグリフィンドールは最下位だけど、これ以上点を減らしたくないんだ』

マミ『でも、もう最下位なら——』

ネビル『だって、これ以上彼らのせいで減点されたら、もう二度と彼らは許してもらえないと思う。
     いまならまだ来年度でいくらでも挽回できるよ。ハリーはシーカーだし、ハーマイオニーは頭が良い』

マミ『ロン君は?』

ネビル『……でも、ここで駄目押しに減点されたらもう駄目だ。ここが分水嶺なんだよ』

マミ『ねえ、ロン君は?』








マミ「ロングボトム君は、貴方達の為を思っていた。たった一人で、勇気を持って行動していた!」

マミ「ひとりぼっちの怖さも、辛さも! 私はよく知っている!」

マミ「だから、私はネビル君の味方をして、貴方達を止めるわ!」

ロン「分かった。オーケイ。つまり、力尽くで通れってことだね?」スッ

ハーマイーニー「……三対ニ。気は進まないけど、手は抜けないわよ」スッ

ハリー「ねえ、最後にお願いするけど、どいてくれない?」スッ

マミ「……」

ネビル「……」


 

マミ「やーめたっ」ポイッ

ネビル「ぼ、僕も。降参」ポイッ

ロン「……はぁっ!? 杖を捨てた!? なにそれ!?」

ネビル「だ、だって。呪いを掛け合うのも規則違反だし……」

マミ「グレンジャーさん相手じゃ、正直二人掛かりでも勝てそうに無いし……」

ハリー「冗談はやめてくれ! なら、なんでこんな——」

ハーマイオニー「……時間、稼ぎ? っ、不味い、もしかして——」

マミ「……"太った婦人"さんって、意外と足が早いのよ?
   そうね、先生の部屋に報告に行くまで——五分とかからないわ」ニコッ

ロン「どういうことだよ、おい!」

ハーマイオニー「……やられたわ。さっきの呪文で火事を起こされた時点でこっちの負けだった。
          "太った婦人"の肖像画に連絡させたのね。グリフィンドールの寮監まで——」





マクゴナガル「——さて、火事が起きたと叩き起こされてくれば、これはどういう事態でしょうか?」







ハリー「マクゴナガル先生! ヴォルデモートが! 例のあの人が『石』を盗もうと!」

マクゴナガル「ああ、ハリー。またその話ですか。心配はないと言ったはずですが」

ロン「でも、スネイプが! 『石』を守る仕掛けの秘密を全部——」

マクゴナガル「ですから、心配はないと」

ハーマイオニー「あの、先生。でも例のあの人が相手では——」

マクゴナガル「ええい、だまらっしゃい!」クワッ

ハリー・ロン・ハー子・ネビル・マミ「「「「「ひっ!?」」」」」



マクゴナガル「……こほん。いいですか、たとえ『名前を言ってはいけないあの人』が相手でも、『石』は安全です」

ハリー「でも、仕掛けの秘密が全部ばれてたら——」

マクゴナガル「……では有り得ない事ですが、百歩譲ってそれが真実だったとしましょう。
        ですが、それでもなお安全です。いえ、いまや完全な安全になったといいましょうか」

ハリー「先生、意味がよく——?」

マクゴナガル「貴方達の探偵ごっこにも、意味があったということですよ」





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 ホグワーツ地下


クィレル「……一体どうなっているんだ! 『石』は鏡の中にあるのか!?
      ご主人様、お助けを……」

ヴォルデモート『……まさか『みぞの鏡』を持ってくるとはな。あの老いぼれ爺め。
          仕方あるまい、その鏡ごと運び出すのだ』

クィレル「は、はい、ご主人様——」




ダンブルドア「……さて、そうはいかんよ」スッ

ヴォルデモート『っ、老いぼれが! クィレル、後ろだ——』

ダンブルドア「遅いわ。エクスペリアームズ(杖よ、落ちよ)!」バシュ

クィレル「ぐあっ!? しまった、杖が!」

ダンブルドア「やれやれ、間一髪というところじゃったか」

クィレル「くっ、早すぎる! お前は偽の手紙で魔法省に呼び出した筈——」

ダンブルドア「ああ。じゃがのう。勇気ある生徒が、手紙を送ってくれたんじゃ。
        そっちの手紙の方が、お前さんのより少しばかり早くわしの目に入ってな。
        勤勉な子じゃよ。短時間でフラメルのことにまで辿り着きおった!」

クィレル「ハリー・ポッターか……!」

ヴォルデモート『ハリー……! おおハリー! またも俺様の邪魔をするのか、あの小僧は!』

ダンブルドア「ヴォルデモート。貴様が殺したリリーとジェームズの息子は、立派に育っておるよ。
        良い仲間にも恵まれたようじゃしのぅ。彼を支える者と……諌める者とな」

ヴォルデモート『おのれえええええ……』

ダンブルドア「さて、賢者の石はこうしてわしのポケットの中にあるわけじゃが」ヒョイ

ダンブルドア「こんなものはもう、いらないのう——"レダクト"(砕け散れ)」




 
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 ホグワーツ特急


QB「——で、めでたしめでたしってわけだ」

マミ「そうでもないらしいけど。結局、"例のあの人"は逃げちゃったみたいだし」

QB「でも、寮対抗杯ではグリフィンドールが優勝しただろう?」

マミ「うん……校長先生が私達五人に40点ずつくれてね」

QB「お祭り騒ぎだったねえ。ハリー達は名誉挽回できたし、良いこと尽くめじゃないか」

マミ「……正直、私が40点貰って良いのかは疑問だけど。
   ロングボトム君に味方して、ポッター君たちの邪魔しただけだもの」

QB「まあ確かに。放っておいても、ダンブルドアが助けに入っただろうしね」

マミ「そうよねえ……」

QB「……でも、無意味ってわけじゃなさそうだよ?」

マミ「へ?」

 
ハリー「ああ居た! おーい、ロン! ここに居たよ!」ガラガラッ

マミ「ハリーくん? それにロンくんも」

ロン「やあマミ! あの後、僕らは質問攻めにされて君と話す機会がなかったからさ。
   こうして探し回ってたっていうわけ」

マミ「そう……それで、何の用かしら?」

ハリー「いや、まあ、ね。僕ら、なんか変な感じになっちゃってたろう?」

ロン「あの日の夜も、お互い杖を向け合って終わっちゃったしさ。
   これで夏休み挟んじゃったら、来年度から話し辛くなるし」

マミ「あ、あの時はその……ごめんなさい。あと、規則違反の時も……」

ハリー「あー、その話はお終いにしよう。それにさ、マミには感謝してるんだよ」

マミ「私に? なんで?」

ハリー「ニコラスのこと教えてくれたじゃないか。
     新学期前に分かってたから、だいぶ余裕をもって行動できたし」

ロン「ダンブルドアが間に合ったのもそのお陰だもんな。
   流石に"例のあの人"と直接対決なんてごめんだよ」

ハリー「それからさ、どうしても彼女がマミと話したいっていうから……
     ほら、ハーマイオニー。入っておいでよ」

ハーマイオニー「ちょ、ちょっと! 引っ張らないでってば!」

マミ「グレンジャーさん? 」


 
ハーマイオニー「は、はぁい。マミ。その……元気?」

マミ「え? ええ。元気だけど……」

ハーマイオニー「……」

マミ「……」

ハーマイオニー「……いい天気ね?」

マミ「そう、ね? うん、確かに快晴だけど……」

ハーマイオニー「……」

マミ「……?」



QB(彼女、どうしたんだい?)ヒソヒソ

ロン(いや多分、話し辛いんじゃないかなぁ。今までが今までだったし。
   それに彼女、完璧主義すぎて女の子の友達がいないんだよ……)

QB(ああ……なるほど。友好関係が狭く深くなんだ)

ハリー「ほら、ハーマイオニー……」




ハーマイオニー「〜〜〜! ま、マミっ!」

マミ「ひゃ、ひゃいっ?」

ハーマイオニー「私たちって! その、と、友達かしら!?」

マミ「えっ!?」

ハーマイオニー「えっ!? ち、違った!?」

マミ「いや、その。ええと、違っ、違くない! そうだったら嬉しいけど、えっと」

ハーマイオニー「……! じゃ、じゃあ、マミ! これ! これ、私の家の電話番号!」ピッ

マミ「え、う、うん。くれるの?」

ハーマイオニー「あげるの! 宿題で分からないところとかあったら、聞いて! 前みたいに!
          それと……いままで、ちょっと貴女のこと誤解してたの。でもこれからは……」

マミ「グレンジャーさん……」

ハーマイオニー「そ、その呼び方も! ハリー達だけずるいわ! わ、私もみんなみたいに呼んで頂戴!」

マミ「……分かったわ、グレンジャーさん——ううん」



マミ「来年からもよろしくね、ハーマイオニーさん!」




                                           賢者の石編 了





 

本日分終了。次回、秘密の部屋編

>>1
最終巻まで続く?

>>124
続カ−ヌ。ゴブレットまで

とーか。

 ここまでのあらすじ!
                                ユルフワ
QB「やあ! 僕、キュゥべえ! 人気赤丸上昇中の諭弄不和系魔法の使者さ!」

QB「人気の秘訣は愛らしい外見! 仕草! 鳴き声!
   そしてどんな願いも叶えてあげる特殊能力!」キュップイ!

QB「もう、これは一家に一匹置きたくなるよね! わかるよー」

QB「でもね、残念ながら僕はもう他の子のところにいくことができないんだ」

QB「なんでかって? 愛くるしすぎるのが悪かったんだろうね。
   今、僕はとある女の子に監禁されているんだ」

QB「彼女の名は巴マミ。12歳の女の子だが、その残虐ぶりは悪魔超人に匹敵する」

QB「例を挙げればきりがなく。僕を虫かごに閉じ込めるわ、ソックスに詰めようとするわ、"ぎゅっ"ってするわ……」

QB「非道だよ!」ドンッ!

QB「知的生命体のやることとは思えないよ! 嗚呼、インキュベーターに人権はないのか!」

QB「そんな悪マミだが、彼女は今、イギリスにあるホグワーツという学校に通っているんだ」

QB「ホグワーツ魔法魔術学校——名前の通り、魔法使いが魔法を覚えるために通う学校だ」

QB「実に胡散臭いね? 僕も最初はそう思ったさ」

QB「でもエントロピーとか馬鹿馬鹿しくなるような現象が起こりまくりでね? もう僕の常識は完全に打ち砕かれたよ」

QB「杖のひと振りで無機に命を吹き込み、大鍋で煎じた薬は欠損した四肢すら一晩で再生させる」

QB「そしてマミにはその素質があったらしく、ほとんどスカウトみたいな形で入学することになったんだ」

QB「その直前に、色々とごたごたがあったみたいだけど——まあ、なんとか上手くやれているみたいだね」

QB「ところで、イギリスのパブリックスクールは9月に始まって6月に終わるんだ」

QB「つまり日本で言うところの夏休みが年度休みに当たる。当然、マミもその間は寮から家に戻っているわけで——」

 
見滝原市 マンション


ミーンミンミンミーン……


マミ「——魔法薬のレポート終わりっ。これで宿題は全部ね」サラッ

マミ「それにしても羊皮紙……初めて触ったけど、意外と硬いのね。これ」

QB「マミー。出しておくれよマミー」ガタガタ

マミ「さて、お茶でも飲もうかしら……作り置きしてたアイスティーが冷蔵庫に……」ガパッ

QB「! ようやく出してくれる気になったんだね、マミ! よぅし、じゃあ僕はちょっと出かけて——」パタンッ

マミ「あら、残り一杯分ってところね……葉っぱもそろそろ買い出しに行かなきゃ……」

QB「マミー。出しておくれよマミー。冷蔵庫の中って暗いし変な匂いもするから嫌なんだよー」バンバン

マミ「だってあなた、私が宿題してる隙をみて逃げようとするんだもの。
   もう飼われて一年も経つんだから、そろそろ諦めなさい」

QB「それは人間の傲慢さだよマミー。小学生の頃からそんなに性格歪んじゃってどうするのさマミー」

マミ「……」(無視)

QB『マミー。外の空気が吸いたいよー』

マミ(こいつ直接脳内に……!)

 
見滝原市 デパート


マミ「結局、連れてきたけど……今度逃げたら新学期までトランクの中に詰め込むわよ?」

QB「酷いなぁ。僕にだって散歩する権利くらいあると思うんだけど」

マミ「それはこれからの信頼関係の積み重ね次第ね……っと、この辺から人が多くなるから、あとはテレパシーね」

QB『了解。それじゃ、僕もマミ以外の人間には見えないようにしておくよ』

マミ『ええ、お願いね?』

マミ(……それにしてもテレパシーにカメレオン呪文……どれも一人前の魔法使いにしか使えない魔法よね)

マミ(もしかしてキュゥべえってただの猫じゃなくて……)

QB「……」

マミ(……何かの雑種なのかしら? デミガイズとかの……)

 
QB『マミ、肉だ! 肉が安いよ! こっちの挽き肉! 今日はハンバーグにしよう!』バンバン

マミ『あっ、こらっ。駄目よ、棚の縁を走ったりしちゃ……ハンバーグねえ……
   でもその安売りのお肉、結構量があるわよ? ちょっと経済的じゃあ……』

QB『冷房ガンガンにかけてた子が経済的とか気にしちゃうの?』

マミ『う、うるさいわね! 仕方ないでしょ熱いんだから! キュゥべえは涼しかったからいいでしょうけど!』

QB『その涼しさって、僕が望んだものじゃなかったんだけど……』

マミ『……うーん。お肉って冷凍できたかしら? それならハンバーグも……』

QB『冷凍自体は問題はなかったと思うけど……でもさ、容量は問題かな。
   さっき見たけど、もう冷凍庫がかっちこっちの食材でいっぱいだったよ?』

マミ『キュゥべえってそんなに食べないし、1.5人分のご飯って作るの大変なのよ。
   どうしても余っちゃうんだもの……』

QB『まあ、マミもまだ自炊初めて一ヶ月だし……それは今後の課題にしようよ』

マミ『……そうね。そうしましょう。そういえば、今朝テレビでやってた占いでもハンバーグがラッキーフードだったし。
   じゃあ、今日はハンバーグよキュゥべえ!』

QB『ひゃっほう! それじゃ次は玉葱と——』

 
店員「——ジャガイモが一点、人参が一点で、お会計3460円になります」

マミ「えーと、お財布……」ガサゴソ

店員(……最近この子、よくみるなぁ。いつも一人でカートを押して……親はなにしてるんだろ?)

マミ「あ、あった!」カラン

店員「? お客様、何か落とされて——」

マミ「あっ、ああ、すみません! 大丈夫です!」

店員(木の棒? おもちゃか何かかな?)

 
帰り道


マミ「……ふぅ。危なかったわ。火花とかでなくてよかった……」

QB「いまいち魔法の杖って仕組みが分からないからねぇ。たまに突っついたものが燃えたりするし」

マミ「ねえキュゥべえ。やっぱり杖は家に置いといたほうがいいんじゃないかしら?」

QB「別に僕は強制したわけじゃないよ。ただ可能性を提示しただけさ」

QB「もしも留守中に泥棒が入ってその杖を持っていかれちゃったら、大変なことになるだろう?」

QB「"未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令"では、マグルに魔法のことがばれたら退学なんだから。
  教科書とかなら誤魔化せるけど、杖の中の魔法生物の一部は誤魔化せないからね」

マミ「そうだけど……持ち歩くのも十分危ないような……」

QB「あと、咄嗟の危険に対応するため、っていうのもある」

QB「同法令では、緊急事態に限って未成年魔法使いによる魔法の使用を認めてるしさ」

マミ「危険って……魔法が必要になるような危険なことって、見滝原じゃ起こらないわよ」

QB「……だから、あくまで"可能性"の話さ」

 
マミ「まあいいけど……それより、帰ったら何しましょうか? お掃除も選択も終わっちゃったし……」

QB「お菓子作りは? この前のしっとりしたクッキーは美味しかったよ。もう作らないの?」

マミ「……体重計が……っ」ギリッ

QB「オーケイ。僕は何も聞かなかった。だろ? うーん、それじゃあ、ハーマイオニーに電話すれば?
   まあ、ここのところずっと毎日のようにかけてるけど……」

マミ「今の時間だと、向こうってまだ早朝なのよ……だからいつも掛けるのは夜にしてるでしょ?」

QB「じゃあもう打つ手なしじゃないか。ああ、いや待てよ? 君、こっちに友達いないの?」

マミ「……いないわけじゃないけど……つまり、前に通ってた学校の友達ね。
   でも正直、一年以上会ってないわけだし……それに、ちょっと会い辛いのよ」

マミ(お父さんとお母さんのお葬式の時に、何人かとは会ったけど……やっぱり上手くしゃべれなかったし)

QB「ふーん……でもそれだと、友達増やそうにも難しいね。どうだろう、マミ。
   願い事で友達を——」

マミ「そうだ、キュゥべえ。このところ、宿題に掛かりっきりで外に出てなかったし……
   ちょっとお散歩して帰りましょ?」

QB「……うん、分かってたよ」

 
見滝原市 裏道


マミ「それにしても、一年も経つと結構変わってるものねー。
   あら、ここの区画、前はコンビニだったのに……次は何が建つのかしら?」

QB「この町、結構なスピードで発展してるみたいだね。その分、皺寄せがこういう末端に来てるみたいだけど」

マミ「しわよせ?」

QB「中央部の景観は配慮してるんだろうけど、こういう端の方までは手が回らないんだろう。
   結果として廃墟が増えたり、道が無駄に入り組んだりしちゃってるんだ」

マミ「そうなんだ……何か、悲しい話ね」

QB「……それはそうと、マミ。あんまり人通りのない道を通るのは感心しないな。危ないよ?」

マミ「でも、こういう道じゃないとキュゥべえとお話しできないし——テレパシーはちょっと苦手なの」

QB「……もう戻ろうか? 荷物も軽くはないだろう?」

マミ「いいの? キュゥべえ、外に出たかったんでしょ?」

QB「……ん。もう"十分"さ」

マミ「そう? 家ではあんなに外に出たがってたのに——」


ぐにゃり……


マミ「……え? 景色が、歪んで……」

QB「……」


 
 視界が歪んで変化する。ただのさびれた路地裏から、吐き気や頭痛を覚えるような、醜悪な空間に。

マミ「……なに、これ」

 呟く。

マミ「……なに、これぇ……っ!」

 思わず、泣き言を漏らす。

マミ(ホグワーツで変なことに慣れたつもりだったけど……これは、違う)

 あの奇妙で、しかしどこか暖かみのある学校とは違い、
 目の前に広がるこの歪な光景は、ただひたすらに悪意を凝縮したかのような造形だった。

 屋外なのに、屋外だったはずなのに、頭上は天蓋で区切られている。

 酷く焼け焦げたような、そんな濁った黒色で染められたその天井からは、あらゆる処刑道具が吊るされていた。

 ギロチン、吊り縄、十字架。その他、若干12歳のマミには使い方すら想像できないものが多数。

 意味は分からない。だが、それでも分かることは。

マミ「に、逃げなきゃ……」

 逃げなければ、"良くないこと"が起こる——そんな予感だった。

 だから右手に下げていた買い物袋を地面に取り落とし、そのまま走り去ろうとして、

マミ「……キュゥべえ?」

 先ほどまで傍らを歩いていた、白い猫の不在に気づいた。

マミ「やだ……嘘でしょ、キュゥべえ……怒るわよ……?」

 フラッシュバックする。

マミ「ねえ、冗談はやめてよ……」 

 一年前の記憶が、戻ってくる。

マミ「もう、イジワルなんてしないから……」

 魔法界に行くことが決まっても、家には誰もいなくて。

 そんな孤独を癒してくれたのは、一体誰だったのか。

マミ「お願いだから……出てきてよぉ……!」

 
 その時。じゃりっ、と炭を足で踏み崩すような音が、背後で響いた。

マミ「……っ、キュゥべえ?」

 希望と共に、振り返る。

 だがそこにいたのは、あの、愛らしい姿をした友人ではなく——

使い魔『——私は弱者。私は小さく、私は薄く、私は儚い』

マミ「ひっ……!?」

 奇妙な、怪物の姿。

 形は人に近い。幼児が黒い色の粘土で人形を拵えればこうもなるだろう。

 のっぺらとした相貌に、関節の曖昧な四肢。

 見ているだけで怖気を覚えるそれが、こちらに手を伸ばし、問いかけてくる。

使い魔『あなたは私は虐める? 弱い私をいじめる?』

 
マミ(こ、言葉が通じる……? ——そうか、指輪!)

 言葉を翻訳する指輪。それはどうやら、この化け物にも有効らしい。

 ならば、話し合いができるかもしれない。指輪の翻訳は双方向。

 何とはなしにこちらからも手を差し伸べて、応じた。

マミ「い、いじめないわ! 仲良くしましょう?」

使い魔『……いじめない? 本当に?』

マミ「ええ、本当よ。それで、あなた、白い猫を見なかった? 大きな耳が特徴で——」

 だが怪物はマミの言葉を、ほとんど聞いていなかった。

使い魔『弱い私をいじめないあなたは、私よりも弱い』

 にたりと、気味の悪い笑みを漏らす。

使い魔『——私よりも弱いあなたは、久しぶりのご飯』

 悪意もあらわに、襲いかかって来て。

マミ「あ、う、い、や——」

 だから右手は、反射的に杖を引き抜き。

マミ「——フリペンド(撃て!)」

 放たれた光弾が、怪物を一撃で粉々にした。

 
QB「……」タタッ

??「そこでストップだ」

QB「……」ピタッ

??「やれやれ、ようやく会話ができるね。女の子ひとりくらい、掻い潜って欲しかったけど」

QB「掻い潜ったからここにいるんだろう」

??「もっと早くにして欲しかったな。何せ、君とはテレパシーも記憶の共有も禁じられてるからね。
    だからこうして、直接会わねばならなかった」

??「僕も暇じゃないんだ。この町は魔女が多い。魔女が増えるだけじゃ、エネルギーは回収できないからね。
    優秀な魔法少女いれば別だけど……」

QB「……」

??「ま、過程の話をしても仕方ないか。それじゃ、報告を聞こう」

QB「……ああ。まず、僕が確認した"魔法"は——」


◇◇◇

 
QB「——だいたい、こんなところだね。第一次報告は、これでおしまいだ」

??「第一次? ……ああ、そうか。記憶の同期ができないと面倒だな」

QB「? なにを言って——?」

??「君の廃棄が決定した。いや、正確には既に決定していたんだけど」

QB「……! なんっ、で!」

??「自覚はあるんだろう? 君は精神疾患を患ってる」

??「これまでは、異種のエネルギーに曝されたということからの暫定処置だったけど。
    でもここ数日、君を観察していて明らかな罹患が確認された。だから、廃棄だ」

QB「だけど、まだ——」


使い魔「——、——」


??「おっと、使い魔が来た。移動しながら話をしようか」

??「ここの魔女の使い魔は普通の人間にも負けるくらい弱いし、
    魔女自身も、使い魔に手出しをしない限り向こうから攻撃してくることはないが——」

??「使い魔に傷をつければ、本気で殺しにかかってくるからね」

次回は秘密の部屋編だと言ったな? あれは嘘だ。
一旦投下終了。今日中にもっかい投下して夏休み編(1)を終了できたらいいなぁ

とうかー


魔女の結界内部


マミ「はぁ……はぁ……いくら走っても出られないなんて……」


使い魔『ご飯! ご飯! ご飯!』ユラッ


マミ「っ——フリペンド!(撃て)」バシュッ!

使い魔『』グシャッ

マミ(おまけにこの変な怪物はいくらでも出てくるし、キュゥべえは見つからないし……)

マミ(……私の魔法でも何とか倒せるのが救いだけど……なんなのかしら、これ。
   どう考えても魔法生物だけど……)

マミ(でもこんなの、ホグワーツの図書館で読んだ図鑑にも載ってなかったし、
   そもそも危険な生き物って魔法省が生息地とかの管理をしてるはずよね?)

マミ(街中で人を襲うような魔法生物。危険度分類はXXXXX(最上級)か、
   私みたいな子供にも倒せるってことを考慮してもXXXXを下回るなんてことは……)

マミ(もしかして新種? レシフォールドなんかは本当にいるのか疑問視されてたっていうし)

マミ「……考えてても仕方ないか。まずはキュゥべえを探して、ここから出る方法を探さないと……」


 最初こそ、この空間の異常な雰囲気に飲まれパニックに陥ったが、今では冷静な思考ができるまでに落ち着いた。

 無尽蔵に湧く怪物は不気味ではあるが、簡単な呪文で追い払うことができたからだ。

 数体を難なく倒す内に、何とかなるのではないかという希望を抱き始めていた。


 だけど、それは間違いだったのだ。

マミ(……何かしら? 急に気温が上がって……)

 この結界に足を踏み込んでしまったのなら、急いで逃げるべきだった。
 
 使い魔を倒す前に、一目散に撤退するべきだった。

 ここの主は、己が使い魔を殺した相手を絶対に許さないのだから。

マミ「なに、あれ」

 前へと進む内に、辿り着いたのは大広間のような空間。

 その中心に、先ほどまでの怪物など可愛く思えるような、本物の化け物が。








 燃え尽きろ 烏有に帰せ 灰燼となれ

 我は審判 我は断罪 我は救済

 弱者の敵に、正義の裁きを。


魔女『——ゼンブ、燃エテシマエ』


 "La Pucelle d'Orlean"





マミ「ひっ……」

 その怪物と目が合う。瞬間、体は引きつり、思考は凍りついた。

 指輪の効果だろうか? あの怪物の思考が、手に取るように伝わってくる。


(よくも殺した)(弱きものを虐げた)(それは悪)(悪は処断されるべし)


 "それ"は怒っていた。目の前で行われた殺戮劇に義憤を燃やし——


(故に)(貴様は)(灰となれ)


 ——そして、その罪人を燃やし尽くしてしまおうと。


マミ「あ、ああ……フリ……ペンドっ!(撃て)」バシュッ

魔女『……』キン!

マミ「効いて……ない?」

魔女『罪状。殺人。判決。有罪。ヨッテ——』


魔女『——火刑ニ処ス』ゴウッ

マミ(……あ……炎、が)

 煌めく赤の閃光を、ただ呆然と見つめる。

 怪物が吐き出した巨大な炎は、それこそドラゴンの吐息にも匹敵するだろう。

 いかにホグワーツが魔法界で最も権威のある学校であったとしても、
 一年生が防ぎきれるようなものではない。

 そもそもマミは、実技においては並以下——トロールの時は不意打ちが成功しただけで、
 本来、怪物を真正面から退治できるような実力はないのだ。

 よって、この炎を防ぐことはできない。それだけが事実。

 そして、その事実を覆すことはなく。

 少女は炎に飲み込まれた。

 













杏子「おいおい。あんたも魔法少女なら、そこで諦めちゃ駄目でしょ——と!」ジャラッ














 


 ザシュッ!

魔女『ギャアアアアアアアア!』

マミ「……え、生き、てる? なんで……っ、鎖の、壁?」

杏子「大丈夫かい? あたし以外の魔法少女とは初めて会ったが……といっても、あたしは成り立てだけどさ」

マミ「あの、あなたは……?」

杏子「佐倉杏子。あんたの同類だよ」

マミ(同類——魔法使い? でも杖が……あの持ってる槍に仕込んであるのかしら?)

杏子(さぁて、グリーフシードはどこかな……?)キョロキョロ

魔女『……』ギロッ

マミ「っ、危ない、まだ生きて——!」

杏子「んなっ!?」

魔女『ガァッ!』ブンッ!

杏子「ぐぁっ!?」

杏子(畜生、油断した……! 足が使い物にならねえ……)ガクッ


魔女『死刑私刑死刑火刑死刑』ギチッ ギチッ

杏子(こいつ、強い。炎による遠距離攻撃も厄介だっていうのに、近接にも対応しやがる。
    加えてタフネスも一級品。その上、こっちは足をやられたとなると……)

マミ「あ、あの……佐倉、さん? 酷い怪我……」

杏子「ああ、ちょっと拙いね……ははっ、正義の味方を気取っといて、全く格好つかないったらありゃしない」

マミ「そんなこと——その怪我だって、私を庇って……」

魔女『執行執行施行死行執行』ジリジリ

杏子「っと、おしゃべりしてる時間もないか……なあ、あんた。悪いけど、ちょいと手伝ってもらうよ」

マミ「て、手伝う?」

杏子「ああ。あたしの足、見ての通りなんでね。逃げるのは無理だ。

    もう一撃かませば倒せる自信はあるんだけど、近づくのが難しい。
    そんな訳なんで、あいつの注意を少しだけ引き付けておいてくれ。障壁は張っとくからさ」

マミ「……動きを、止めればいいのね?」

杏子「ああ。できるかい?」

マミ「……自信はないけど、でもやるしかないんでしょう?」

杏子「そーゆーこと——んじゃ行くよ! 縛鎖結界!」ジャララッ


魔女『燃エロ燃エロ燃エロ燃エテ!』ゴォッ!

杏子「残念だけど通行止めさ!」ギィン!

マミ「っ、凄い炎、だけど……佐倉さんの魔法、完全にそれを食い止めてる……」

マミ(これなら落ち着いて……ノックバックジンクスの呪文は通じないから……)スッ

杏子(杖? これまたステレオタイプな……)

マミ「——タラントアレグラ!(踊れ)」バシュッ

魔女『ガァ!?』タンッ タンッ

杏子「うぉっ、あの巨体であんな軽快なタップを!? どんなエンターテイナーだよ!」

マミ(やった、成功した! 今回はブレイクダンスにならなかったわ!)

杏子(面白い魔法だな。踊らせる——相手に何かを強要するのか? 可愛い顔してえげつないねぇ)

マミ「佐倉さん、今よ!」

杏子「おうよ! これで——」ダッ

マミ「!? だ、駄目よ! そんな真正面から突っ込んじゃ——」

魔女『火刑ト——!』ゴォッ

杏子「……」ボウッ

マミ「あ、佐倉、さ——火に、飲ま……」


杏子「——残念だけどそっちは分身だよ!」ザクッ

魔女『ガッ、ア、アアアァァア……』シュゥゥウウウウ...

杏子「本物は背後からこっそりと、ってね——っと、グリーフシード見っけ」ヒョイッ

マミ「佐倉さん!」

杏子「おう、助かったよ。あんたがいなきゃ危なかった……どっか怪我してないかい?」

マミ「私は平気……それよりも、佐倉さんが」

杏子「ああ、あたしは……っ」ガクッ

マミ「佐倉さん!?」

杏子(やばいな、流石にもう誤魔化すのも限界か……治療魔法は専門じゃないし、完治にゃちょっと時間が……)

マミ「大変、手当てしないと……救急車……はダメよね……」

杏子「ああ、まあね……」

マミ(理由が説明できないし、魔法界のことがばれるかもしれないものね……)

杏子(怪しまれるし、家族には迷惑をかけたくないからね……)


パリーン


杏子(ちっ、結界が解けたか……このままじゃ人目についちまう)

マミ(景色が元通りに……? あ、買い物袋が落ちてる。だいぶ歩いたと思ったけど……)

杏子「なあ、悪いんだけど、肩貸してくれないかな。
   一緒に戦ったよしみで、どっか人目のつかないところまで付き合ってくれない?」

マミ「え……ええ、もちろん。それじゃ、私の家に……近くだし、裏道を通って行けば……」グイッ

杏子「っ……と、悪いね。そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。あんた、名前は?」

マミ「マミよ。巴マミ。それじゃ、ちょっと頑張ってね」



マミの家


杏子「んぐ……美味いっ! このハンバーグ絶品だよ。マミ、あんた料理上手なんだな!」

マミ「ふふ、佐倉さんっていっぱい食べてくれるから嬉しいわ。これで冷凍庫もだいぶすっきりしたし……」

杏子「いや、こんな御馳走久しぶりだよ。あー、モモにも食わせてやりたいな……」

マミ「モモ? 妹さんかしら」

杏子「ああ。ちょっと歳が離れてるから、可愛い盛りでさ」

マミ「そう……それじゃ、ハンバーガーにでもして持って帰る? 残りのタネ、全部焼いちゃうから」

杏子「え、い、いやそれは悪いよ……マミの家族の分、なくなっちゃうじゃんか」

マミ「気にしないで。私、一人暮らしだから」

杏子「……ん、そうか。悪い」

杏子(聞いちゃ不味かったかな……貧乏でも家族がいるだけ、あたしは幸せかもな……)


杏子「ふぅー、食った食った。それにしても悪いね。
    傷を治す間匿ってもらった挙句、晩御飯まで食べさせて貰っちゃって」

マミ「気にしないで。命の恩人だもの」

杏子「やー、それはお互い様でしょ。あたし一人でも負けてただろうし……はー、やっぱ成りたては辛いね」

マミ「成りたて……? 佐倉さんも、最近魔法を覚えたの?」

杏子「ん? やっぱマミもか。そうだよ、大体一週間前くらいかな」

マミ「い、一週間!? それであんなにすごい魔法を……凄いわ、才能ね」

杏子「よ、よせやい。そんなに褒めたってなんもでないよ……ちなみにマミはどのくらい?」

マミ「わ、私? いいじゃない、別にそんなことは……あ、お茶。お茶淹れてくるわね?」スッ

杏子「え? あ、ああ。悪い」

マミ(ほとんど丸一年先輩なのに、あんな実力差があるってなんか恥ずかしい……)


杏子「んー。それにしても、この辺には私くらいしか魔法少女はいないと思ってたんだけど……」

マミ「ああ、私、一年のほとんどをイギリスで過ごしてるから……」

杏子「イギリス!? な、なんか凄いね。そうか、外国の……そっちってどんな感じなんだい?」

マミ「そうね、お菓子とかは美味しいわ……あと私の通ってる学校は自然がいっぱいあっていいところよ?」

杏子「いや、そうじゃなくて、縄張り争いとかさ」

マミ「争い? そうね、仲の悪い子同士だと、呪いを掛けあったりするのは日常茶飯事ね」

杏子「の、呪い!? 日常茶飯事って……流石は外国。過激なんだね」

マミ「ふふっ、大げさね。1000人近くもいれば、そりゃ喧嘩くらいするわよ」

杏子「千人もいんの!? どんだけ過密なんだよ!」ガクガク



杏子「決めた。あたしは今後一生日本から出ない」

マミ「えー……慣れればいいところよ?」

杏子「慣れる前に死んじゃうよ……マミが……いや、マミさんが恐ろしく見えてきたよ……」

マミ「……恐ろしいって言えば……さっきの怪物って……」

杏子「ん? ああ。ありゃあ強敵だったよな。私が狩ってきた中でも一番の大物だったよ」

マミ「狩ってきた中で、って……佐倉さん、今までもずっとあんなのを相手に……?」

杏子「えっ……そりゃそうだろう? 仕事みたいなもんなんだしさ」

マミ「仕事? その年齢でもう? 未成年なのに」

杏子「? 魔法少女なんだよな?」

マミ「? 魔法は使えるわよ?」

杏子「?」

マミ「?」



杏子「……まあいいや。ところでマミは留学してるんだよな? いつまでこっちにいるんだい?」

マミ「九月からまた新学期なの。あと一ヶ月、ってとこね」

杏子「へー。それじゃあさ、良かったらまた会おうぜ。今度はうちに来てくれよ。晩御飯、御馳走するからさ」

マミ「え……いいの?」

杏子「ああ。ひとりで食べるより、たくさんで食べた方がいいだろ?」

マミ「……それじゃ、今度機会があればお邪魔するわね?」

杏子「ああ。母さんにもいっておくからさ……うし、それじゃああたしはそろそろお暇するよ。
    父さんたちも心配するしさ。晩御飯、ごちそうさま。それじゃあまたな」

マミ「ええ。帰り道、気を付けてね」


マミ「ふふっ、あんなに喜んでもらえると、本当に作り甲斐があるわね。
   ……今度お邪魔する時は、お菓子を作っていこうかしら?」ガチャ

QB「やあマミ。遅くなってごめんね」

マミ「あ……キュゥべえ。そういえばすっかり忘れてた……無事だったのね、良かった……」

QB「……なにか腑に落ちないワードがあったような気がするけど……心配かけたたみたいだね」

マミ「ええ、だって急にいなくなるから……でもこうして帰って来てくれてよかったわ」

QB「まあ僕にも事情があってね……ところでマミ」

マミ「うん? なあに?」

QB「とってもいい匂いが充満してるけど……僕の分のハンバーグは?」

マミ「……あ」


 それから三日ほど、キュゥべえはヘソを曲げた。

投下終了。次回からホグワーツに戻ります

しかしさっきの魔女の名前が無駄に大物だな……
まあもし本人ならワルプルギス級になりそうだし日本にいる訳ないから多分別人だろうけど

>>187
書き損ねてた。オリ魔女は考えるの面倒だったんで、魔女化スレから拝借しました。

とうかー


 それから新学期が始まるまで、佐倉さんとの付き合いは続きました。


杏母「あら、巴さん。いらっしゃい」

マミ「お邪魔します。あの、これ、つまらないものですが……」

杏母「あらあら、いつも気を使わせちゃって悪いわねぇ。さ、上がって?
    いまお茶を淹れるから」

マミ「いえ、こちらこそ連日お邪魔してしまって……」

杏母「ふふ、いいのよ。杏子が誘ってるんでしょう? あの子、あんまり友達いなくて……
    モモも貴女に懐いてるし、これからも仲良くしてあげてね?」

杏子「母さん! いまなんかマミに余計なこと言ってなかった!?」ドタバタ

モモ「マミさん来たの!? お菓子も!?」ドタバタ

杏子「こらモモ! お前はまたそういう——」

マミ「ふふっ。モモちゃん? 今日はねぇ、杏ジャムのパウンドケーキを焼いてきたのよ?」

モモ「ケーキ!? ありがとうマミさん!」

杏子「ああもうこいつったら……とにかく上がってよ。父さんももうすぐ帰ってくるから——」


 それは、とてもとても楽しい日々でした。

 家族の暖かさ——それは、ホグワーツで得た友達とはまた違う、とても尊いもの。



杏子「そういやマミは、もうすぐイギリスに行っちゃうんだっけ?」

マミ「ええ、帰ってくるのはまた一年後になるから……それまでは会えなくなっちゃうわね」

杏子「そっか。手紙とかは届くのかな。あんまり頻繁にやりとりはできないだろうけど……」

マミ「うーん。この辺ってふくろう便がまだ整備されてないでしょ? 愛知県とかは整備されてるけど……」

杏子(ふくろう便? なんだろう、外国のクロネコヤマトみたいなもんかな?)

マミ「また、一年後に会いましょう? 今度はお土産も買ってくるわ!」

杏子「ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた——来年な」




 きっと、来年も——こんな幸せな空気が続くのだろうと、そう、私は思っていたのです。




.


 ホグワーツ特急


マミ「さて、今年は誰もいないコンパートメントに一番乗りね」

QB「そんなことしなくても、ハーマイオニーとか、ラベンダーとかと一緒の席に座ればいいんじゃ……」

マミ「ホーム凄い混んでたし……探してる間に席が埋まって、結局見つからないとか嫌だし……」

QB「……まあ、いいけどさ。それにしても着くまで暇だね。しりとりでもする?」

マミ「それに関して抜かりはないわ。えーと……ほら、MDウォークマン!」

QB「おおっ」

マミ「ふふーん。これで退屈な時間とは無縁だわ。さて、それじゃあ再生っと」ポチッ

QB「僕にもイヤホン片方貸してよ、マミ」

マミ「……?」

QB「マミ? 音が出ないよ?」

マミ「変ね? 電池は入れてきたと思ったけど……壊れちゃったかしら?」ブンブン

QB「そんな粒入りの缶ジュースみたいに振っても直らないと思うよ」


マミ「えー……どうしよう、これ高かったのに……」

QB「なら僕と契や——……」

マミ「? キュゥべえ?」

QB「いや、なんでもないよ。それよりどうする? しりとりする?」

マミ「何でしりとりにこだわるのよ。したいの? そうねぇ、それじゃあ読書でもして待ってるわ」ゴソゴソ

QB「? それって教科書だろう? 勉強熱心なのは感心だけど……」

マミ「これ、ただの教科書じゃないのよ? はい、キュゥべえにも貸してあげる。」

QB「……"泣き妖怪バンシーとのナウな休日"?」

マミ「ふふっ、あー素敵だわ。やっぱりロックハートは最高ね……」ペラッ

QB「マミ、これ教科書なのかい? どう見ても自伝にしか見えないんだけど」

マミ「ええ。これはね、ギルデロイ・ロックハートっていう最高にかっこいい魔法使いの体験記なのよ!」フンス

QB「ふぅん。でもこれ、教科書になるのかなぁ……?」

マミ「大丈夫よ! ああ、きっと今年の"闇の魔術に対する防衛術"の先生とは話が合うわ……!」


売り子「車内販売ですよー」

マミ「ああロックハート……って、もう車内販売が回ってくる時間なのね。
   それじゃ、かぼちゃジュースとチョコレートを……」

QB「僕は、百味ビーンズが欲しい」

マミ「え? 嘘、キュゥべえあれが好きなの?」

QB「色んな味が楽しめていいじゃないか。味覚情報がぐんぐん貯まるよ?」

マミ「うぅー……全部食べるのよ? じゃあそれと、ついでに日刊預言者新聞を」

売り子「はい、毎度どうもー」ガラガラ

QB「おや、新聞を買うのかい?」

マミ「ええ。まあ、電話でハーマイオニーさんから魔法界の事情とかは聞いてるけど……
   やっぱり実際に見なきゃ分からないこともあるだろうし」バサッ

QB「ふぅん。じゃあ何か面白い記事があったら僕にも——」

マミ「!? きゅ、キュゥべえキュゥべえ! ちょっと、こ、これみて!」

QB「え、なんだいその剣幕。正直引く……えーと、これかな? "秘密の部屋、開かれる"——」

マミ「どこ読んでるの! ここ! ここよ!」

QB「何々、"ギルデロイ・ロックハート、ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術教授職に就任"か……
   なるほど、教科書が彼の自伝だらけだったのはこれが原因か」

マミ「ああ、どうしましょう! 生のロックハートに会えるなんて! キュゥべえ、私、ヘアスタイルとか大丈夫?」グシャッ

QB「あ、新聞が……最高にキまってるよ、脳内麻薬で」

ガラッ

ハーマイオニー「はぁい、ちょっと失礼……って、マミ! ここに乗ってたのね!」

マミ「ああ、ハーマイオニーさん! 久しぶり!」

ハーマイオニー「ええ、久しぶり。ところでハリーとロンを見なかった? 一緒の席に座ろうと思ってたんだけど……」

マミ「うーん。ごめんなさい、分からないわ……」

ハーマイオニー「そう……変ね? あとは監督生の車両だし……」

マミ「それよりハーマイオニーさん! サプライズなニュースがあるの! 今年の"防衛術"の先生って誰になったと思う!?」

ハーマイオニー「……ふふふ。当てて見せましょう。ロックハートよ! でしょ!?」

マミ「きゃあ! さすが師匠! 情報が早い!」

QB「師匠って?」

マミ「ロックハートのこと、ハーマイオニーさんから教えて貰ったから」

QB「マミに変なもの刷り込んだのはこの子か……毎日電話で何かを熱く語ってるから変だとは思ったんだ」

ハーマイオニー「ふふ、しかもそれだけじゃあないわよ……ほら、見て! じゃーん!
          ロックハートの直筆サインよ!」

マミ「う、嘘でしょ……!? 本当に直筆サイン!? どうやって……!?」

ハーマイオニー「この前、ダイアゴン横丁でサイン会やってたの!
          まあでも私のにサインした直後、ちょっと色々あったから素直には喜べないんだけど……」

マミ「う、うう。羨ましい……ね、ねえ、触ってもいいかしら?」

ハーマイオニー「ふふっ。少しだけよ?」

マミ「ああ、ああ……! サインの筆跡からすら彼の高貴な雰囲気が伝わってくるわ……!」

QB「……ああ、これはコンクリート味かぁ。百味ビーンズは美味しいなぁ……」モグモグ


大広間 組み分け


マクゴナガル「……ジネブラ・モリー・ウィーズリー!」

組み分け帽子「グリフィンドール!」


マミ「あれがロンくんの妹さん? 赤毛がとってもチャーミングね」

ハーマイオニー「ええ。夏休み中に一回会ったけど、とっても良い子よ?
          ハリーの前だとちょっと引っ込み思案なとこはあるけど——はぁい、ジニー。おめでとう」

ジニー「ありがとうハーマイオニー。ねえ、ところでハリーを知らない? あとついでにロンも」

ハーマイオニー「私たちも探してるの。一緒に来たはずのジョージやフレッド達も知らないっていうし……」

ジニー「そうなの……そういえば、そっちの人は?」

マミ「こんにちは、ジニーさん。同じ寮の巴マミよ。これからよろしくね? で、こっちはペットのキュゥべえ」

QB「やあ、ジニー! 早速だけど、君には素質が——……いや、なんでもない。これからよろしくね!」

ジニー「わあ! 喋る猫なんて初めて見た! ねえマミ、撫でてもいい?」

マミ「ええ、いいわよ……それにしても本当にどこいっちゃったのかしら?」



リー「おい聞いたか!? ハリーとロンが空飛ぶ車で登校したらしいぞ!?」

フレッド「うお、それきっとパパの車だぜ!」

ジョージ「あんにゃろ、僕たちの先を越しやがった!」


マミ「!?」

ハーマイオニー「あの二人ったらまた馬鹿を……!」



翌日 大広間 朝食


ハリー「やあ、ええと……おはよう」

ハーマイオニー「ふんっ。お・は・よ・う」ツーン

ロン「まだヘソ曲げてるのかい? だから別にわざとじゃないんだってば」

マミ「あら、ハリーくんにロンくん。おはよう。聞いたわよ?
   何でもホグワーツ特急に乗らないで、空飛ぶ車で校庭に突っ込んだって……」

ハーマイオニー「それで人気者になって喜んでるのよね?」

ロン「だから、別に喜んじゃいないさ。あれは事故だよ。なんでか駅に入れなくて、なあハリー?」

ハリー「うん。おまけに校庭の"暴れ柳"に殺されかけたし。マミからもハーマイオニーに口を添えてくれると——」

 バサバサバサッ

マミ「きゃっ! そ、そうか、朝食はふくろう便の時間でもあるのよね……すっかり忘れてたわ」

ロン「……おい、嘘だろ」ガタガタッ

ハリー「ロン? どうしたの?」

ロン「ママが、ママったら、僕に、僕に……」

ネビル「うわ、ロン。それって……"吼えメール"じゃないか」

マミ「吼えメール? ロングボトム君、それって何なの?」

ネビル「やあ、マミ。とりあえず耳を塞いでた方がいいよ……ロン、開けなよ」

ロン「ああ、神様……ええい、ままよ!」


 ビリッ






『ロナルドウィイイイイイイイイズリィイイイイイイイイイイイ!!!!!』







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薬草学


マミ『……凄まじかったわね。絶対衝撃波とか出てたと思うわ、アレ』

QB『ああ、僕なんか椅子から転げ落ちちゃったよ……
   しかもあれ、開けずに放置しておくともっとやばいらしいよ?』

マミ『どんな風になるのかしら……それはそれで興味があるわねっ、と』ズボッ

マンドレイク「〜〜〜〜〜〜!」

マミ『わっ、と、暴れないでってば……! キュゥべえ、教科書に植え替えのコツとか書いてない!?』

QB『えーとねー……ああ、撫ぜりゃーいいみたいだよ?』ペラッ

マミ『なるほど……にしても耳当てしてる時って、テレパシーが便利ね』ゴソゴソ

QB『このマンドレイク、今の状態でも鳴き声聞いたら気絶するんだっけ?
   ほんと、こっちの世界の植物は興味深いなぁ』

スプラウト「おや、手際がいいですね。グリフィンドールに3点あげましょう」


昼食後


マミ「イギリス料理も、慣れてくるとさほど気にならなくなってくるわね」

QB「うん、慣れるのはいいことだ。変身術の授業もなかなか好調だったし」

マミ「好調って? 本当はコガネムシをボタンに変える筈だったんだけど、あれは……」

QB「いいじゃないか。去年はミサイルだったんだし、まだ火を噴くコガネムシの方が——
   ん? あそこの人だかりって……」



コリン「ハリー写真とらせて! ハリー写真とらせて!」

ハリー「いや、だからね……」



マミ「……新入生の子かしら。ハリーくんって本当に有名人なのねぇ」

QB「ヴォルデモートを倒したっていうのは、それだけ——」

ネビル「う、うわあああああああ」バターン

QB「あ、ごめんネビル。つまり、例のあの人がどれだけ恐ろしい存在だったか、ってことだね。
   倒した彼は、かなり英雄的な扱いをされてるんだよ」

マミ「ふぅーん……で、でも! 英雄的と言えば次の授業のロックハート先生だって凄いのよ?」

QB「……ま、それは次の授業で分かるだろうけどさ」


闇の魔術に対する防衛術 授業


ロックハート「はろう☆ 自己紹介の必要は"まさか"あるとは思いませんが、一応形式ですのでね?
        ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、防衛術連盟名誉会員、
        そして週魔女のチャーミングスマイル賞五回連続受賞! そして君たちの先生です!」キラッ



マミ「ああ、ロックハート先生……」

ハーマイオニー「素敵……」

ロン「聖マンゴに入院した方がいいんじゃないのか? 君たち」



ロックハート「まあこんな肩書きに意味はありませんよ、ええこれっぽっちも!
        なにせ、君たちはこれからの授業で私がどんな魔法使いか知るわけですし——」



ハリー「心底、知りたくないなぁ。っていうか既に透けて見えるっていうか……」

ハーマイオニー「ええ、そうね。ロックハート先生の授業、きっと最高のものになるに違いないわ……」

マミ「サイン、私もサイン貰おう……」

QB「駄目だこりゃ。完全に狂ってる」



ロックハート「それでは最初に、ちょっとしたペーパーテストをしましょうか。
        なーに! そう怯えることはありませんよ! 簡単な記憶力テストですから——」


三十分後 採点中


ロックハート(ふんふん……やれやれ、酷い出来ですね。ホグワーツのレベルもたかが知れるというものです。
        私のひそかな大望とかはともかく、基本的な問題までできてないなんて……)

ロックハート(……ん? この二人は結構書き込んでありますね、どれどれ——)ペラッ



1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?

ハーマイオニー『ライラック色。ただし"バンパイアとバッチリ船旅"の67項4行目において、マリンブルーについての言及がある。
          さらには147項14行目、血色の描写から考察するに、深層心理では朱色を好む傾向も——』

マミ『ライラック色です。でも"雪男とゆっくり一年"の情景描写から見るに、先生は白も好きなのではないでしょうか。
   これは"鬼婆とオツな休暇"に書いてある、目玉焼きの白身の食べ方にも表れて——』



ロックハート(……)

ロックハート(え、なんですか、これ)


ロックハート(ウワ、残りの解答も全部びっちり書いてある……これはあれですね。いえ、私も売れっ子。分かってます。
        ファンの中には時たまこういう過激な子のもいるってことを)

ロックハート(ええ、送られてきたファンレターが奇妙に湿っていた挙句異臭を放っていたりなんて日常茶飯事。
        食べ物系の差し入れなんて怖くて食べたことはありません……)

ロックハート(握手会だって手のひらに"融解結合の呪い"を仕込んできた魔女は数知れず……)

ロックハート(ですが! それを乗り越えて! 私はスター街道を歩んでいる!)

ロックハート("スター"とは! 暗雲垂れ込める暗い空を、箒ひとつで進むことだ……
        そうして進んだ先で掴み取れる、ほんの一筋の光のことだ!)ドギャーン!

ロックハート(そんなこのギルデロイに、精神的動揺は決してない! と思っていただこうッ!)






ロックハート「ええええええ、えーとですねぇ、満点はふ、二人りりりり、で……」ガタガタ



ハリー「……なに書いたんだ、あの二人……」

ロン「見たくないような、見たいような……」

QB「お互いを高めあう。それが友情……」


マミ「やるわね、師匠……いえ、ハーマイオニーさん……」

ハーマイオニー「ふふ、貴女もとうとう一人前のロックハートフリークね、マミ……」

一旦終了。次回投下未定につき

とーかー


数十分後


ロックハート「——きょ、今日の授業はここまで! 宿題として私の本の感想を書いてくること!」イソイソ

ハリー「これで終わりか……ただひたすらロックハートの本を読むだけの授業だった……」

ロン「これだったら図書室にでもいたほうがましさ。少なくとも、読みたい本を読めるからね」

ハリー「……読みたい本、あるの?」

ロン「……オーケイ。訂正する。少なくとも図書室は静かだからさ。あいつの声が聞こえなきゃ、なんでもいいよ」

ハーマイオニー「ああそんな、もう終わりなの……? このまま時が止まってしまえばいいのに……」

ロン「なんだよその拷問! まだトロールとフォークダンス踊る方がましさ! ——って、そういえばマミは?」

ハリー「あれ? 変だな、さっきまでハーマイオニーの隣に座ってたよね? ハーマイオニー、マミは……」

ハーマイオニー「ロックハート先生……Cool……」

ハリー「駄目だこりゃ。まあ、今日はこれで授業終わりだから」

ロン「ああ、夕飯には来るだろうし。じゃ、僕たちも寮に戻ろうか」


ロックハートの部屋



ガチャッ


ロックハート「ふう……取り乱してしまいました。さすがはホグワーツ。一筋縄ではいきませんね」

マミ「ふふっ、そうですね。確かに私も初めて見たときは驚きました」


バタン


ロックハート「ですが、次からはこうはいきませんよ! このロックハートに二度目の失態はありません!」

マミ「ええ! というか先生、別に今日の授業も全然失敗とかじゃなくて、す、素敵でした、よ……?」

ロックハート「HAHAHA! そうですかそうでしょうとも! 私がやればバナナの皮を踏んで転んでも絵になりますよ!
        でもね、私の実力はあんなものじゃ——……」

マミ「……?」ニコニコ

ロックハート(う……うわあああああああああああ)ガタガタ


ロックハート(なんかいる! 私の部屋に、なんか、いる! あの子ですよ名前は確かマミ・トモエ!)

ロックハート(何で! どうして!? ここに就職が決まってから、もう熱狂的ストーカーの類とは縁切りだと思ってたのに!)

ロックハート(だってホグワーツには外からの侵入を防ぐ魔法が張り巡らせてあるって——ああそういえばこの子生徒でした☆
        "外"からのじゃないですもんねそうですねインセクツ・イン・ザ・ライオンッ!)

ロックハート(い、いえ……落ち着け。落ち着きなさいギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章。
        今の私は"先生"! そう先生です! 何を怯えることがありますか! 威風堂々と対応すればいいんです!)キリッ

マミ「? どうしたんです、先生? 杖を握りしめて、壁に掛けてあった絵画を盾みたいに構えつつ、
   衣装掛けにあったマントを体中に巻きつけて……ああ、でもそんな姿もどことなく高貴さが——」

ロックハート「き、気にしないでください! ところで、マミ! 何の用かな!?」

マミ「あ……わ、私の名前、覚えてくれた、なんて……」テレテレ

ロックハート「HAHA、そりゃあ先生ですから!」

ロックハート(要・注意な生徒の名前くらいは覚えますとも!)

ロックハート「それで? もうディナーの時間ですよ。いくら私に会いたいからって、いけない子ですねマミは!」

マミ「あ、あぅ。ごめんなさい……でも私、先生に質問がしたくて」

ロックハート「質問、ですか? 今日の授業のところで? どこか分からないところがありましたか?」


マミ「いえ、ロックハート先生の授業はとっても素敵でした! 質問したいのは個人的なことで……」

ロックハート「んん? なんですか、なんでも聞いてごらんなさい! バン!と解決してみせましょう!」

マミ「ありがとうございます……それじゃあ」テクテク

 カチャンッ! シャッ!

ロックハート「……あー、マ、ミ? どうしてドアのカギを閉めて、カーテンを引くんでしょう?」

マミ「ふふ、だって、こうでもしないと……」


マミ「誰かに聞かれたら、困りますから」ニコッ


ロックハート「」


ロックハート「いやあの待って。待ってください。よく考えましょう? 私とあなたは教師と生徒。でしょう?」

マミ「ええ。ですから、教えて貰おうと思って……色々と」ツカツカ

ロックハート「マミ! マミ! なんでそんなに近づいてくるんです!? お話しするだけならそこでいいでしょう!?」

マミ「いえ、誰にも聞かれたくない話なので、出来るだけ小声で……触れ合うほど近くで」

ロックハート「オブリビエ……ああっ、汗で滑って杖が落ちた!」ポロッ

マミ「あら、大丈夫ですか? ……はい、拾いましたよ」ヒョイ

ロックハート(ひぃ、杖を奪われた! も、もう駄目だ……マントが足に絡み付いて動けないし……)ガクガク

マミ「あの、先生……?」

ロックハート「ごめんなさいごめんなさい私はまだスターでいたいんですスキャンダルとかほんと勘弁して——」








マミ「あの、先生ならきっとご存知だと思うんですけど、普通の、えーと、マグルの街中に出てくるような、
   危険な魔法生物に心当たりは有りませんか?」

ロックハート「……はい?」


マミ(私はあれから、見滝原で遭遇したあの怪物——
   佐倉さんと一緒に戦ったあの正体不明の怪物のことを、誰かに聞くことはしなかった)

マミ(一応、ホグワーツに戻ってから図書室で調べはしたのだけど、結局それらしいものは見つからなかった)

マミ(一番確実なのは佐倉さんに聞くことなのだろうけど……ホグワーツに戻ってしまった今では、帰るまで聞くことはできない)

マミ(だから私は考えたのだ。この学校で、一番危険な魔法生物に詳しいであろう——)

マミ(ロックハート先生に話を聞くことを! 魔法生物学は三年生からの科目で先生と面識ないし!)

マミ(決して、ロックハート先生のお部屋にお邪魔する口実ってわけじゃないんだから!)




ロックハート「ふむ。得物を奇妙な空間に隔離して、おまけに手下の怪物をたくさん連れてる魔法生物ですか……」

マミ「ええ、友達が襲われたらしくて……図鑑で調べたんですけど、分からないし」

マミ(私が襲われた、っていうと心配かけちゃうものね)

ロックハート「——なるほど! それはきっとゲルゲルムントゾウムシでしょう!」

マミ「む、むし? 虫なんですか、あれ? とても大きかったんですけど——いえ大きかったそうですけど」

ロックハート「ははん? いいですか、マミ。虫だっておっきい奴はおっきいんです。
        あれはだいぶ前ですが、私がアフリカの密林で——」



十五分経過



ロックハート「——そして、そこで私の呪文が炸裂し、みごと巨大女王蟻を倒した、というわけですよ!」

マミ「ああ素敵です。素敵ですロックハート先生!」ウットリ

ロックハート「当然です! ロックハートが素敵なのではなく、素敵なのがロックハートなのですから!
        まあそういうわけなので、そのお友達にはあんまり暗くてジメジメしたところには近づかないように、と伝えてくださいね」

マミ「はい! どうもありがとうございました! やっぱり先生は凄い魔法使いなんですね……!」

ロックハート「いやあ、はっは。それほどでも……ありますがねっ☆」キラッ


ロックハート(これですよ これ!これこそ、このギルデロイ・ロックハートのイメージ!
        こういう役こそわたしのキャラクターです! ハハハハハハ !)

ロックハート(いかに狂的かつ強敵なファンであろうとも所詮は小娘。
        海千山千のこの私なら軽くあしらえるというものです!)

ロックハート「さて、マミ。このくらいでいいでしょう? そろそろ夕食の時間ですし、戻ったほうが——」

マミ「はい。あ、でも最後にもうひとつだけ」

ロックハート「おやおや、なんとも欲張りな子猫さんですね☆ さて、何がお望みですか?」

マミ「あの……サ、サインを頂けませんか? この教科書に……」

ロックハート「なるほど。でも今は一応、私は教師なのですがね? まあでも、仕方ありません!
        勉強熱心な生徒に、ご褒美としてあげるなら文句も出ないでしょう!」サラサラッ

マミ「わ、わあ! あ、ありがとうございます! 一生の宝物にしますね!」

ロックハート「ええ是非に。あなたのようにチャーミングな子に持ってもらえていれば私のサインも幸せでしょう!」

マミ「え、あ、そんな、チャーミングだなんて……」プシュー

ロックハート(ふふっ。容易い容易い! これでもう恐れるものは何も——)




ハーマイオニー『アーローホーモーラァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!(開錠せよ)』ピシャーン!

    メキメキッ バギッ!


マミ「きゃあ! ドアが吹き飛んで……は、ハーマイオニーひゃんっ!?」ムニッ

ハーマイオニー「マーミー? 抜け駆けとはいーい度胸じゃなーい?」ギュゥゥッ

マミ「いひゃいいひゃい! ほ、ほっへを摘まないで! にゃんでここが……」

ハーマイオニー「あなたの猫に聞いたのよ!」

マミ(きゅ、キュゥべえ! 裏切り者ぉ……!)


◇◇◇


QB「だって聞かれたんだもの……あ、ハリー。それ動かしたらチェックメイトされるよ」

ハリー「あ、本当だ。危ない危ない。じゃ、こっちのビショップを……キュゥべえと組むとロンともいい勝負になるね」

ロン「僕のスキャバーズよりよっぽど役に立つなキュゥべえ……あっ、ハリー。どう動かしてもあと五手以内に詰むよ、これ」


◇◇◇




ハーマイオニー「ほら! もう夕飯の時間なんだから行くわよマミ! 
          ロ、ロックハート先生、また今度、ゆっくり効く毒薬のことでお尋ねしたいことが——」

マミ「や、ごめん! ごめんなさいハーマイオニーさん! 今度は誘うから! だから耳を引っ張らないでぇ……!」


バタン!


ロックハート「……」


 その時、ロックハートは吹き飛んできたドアの下敷きになりながら思った。


ロックハート(やっぱり、あの二人怖い……!)ガクガク


数日後 土曜日 グリフィンドール談話室



マミ「はー。お休みの日って素敵よね。
   こうして談話室でお茶を飲みながら、外の素晴らしい景色を眺めてるだけで癒されるわ……」

QB「ついでに朝寝坊もできるしね。マミったら涎たらしながら昼近くまで寝て——」

マミ「えいっ」ムギュッ

QB「きゅっ!?」


 ぱたん


ハリー「やあマミ……あれ、どうしたの? キュゥべえが潰れたシフォンケーキみたいになってるけど」

マミ「ちょっと天罰が下って……って、どうしたの? ハリーくんもロンくんも、何か暗い顔してるわね?
   クィデッチの練習に行ったんじゃなかったの?」

ロン「スリザリンの連中のせいで練習はできなかったんだ。最悪だよ……まあ多分、僕はナメクジの呪いのせいもあるんだけど……」

マミ「ナメクジの呪い? それって何——」

ロン「おえーっ」ボタボタ

マミ「あ、もういいわ。分かったから」

QB「凄いや、ロンの口から生命が誕生した! エントロピーを凌駕してる!」


ハリー「クィデッチの練習ができなかったのもそうだけど……僕とロンは今夜、罰を受けることになったんだ。
     まったく、ついてないよ……」

マミ「罰?」

ハーマイオニー「ほら、この二人。空飛ぶ車で校庭に突っ込んだでしょ? その処罰よ」

ハリー「まあ、退学になるよりはましだけどさ。はぁー、でもロックハートのファンレターに宛名を書くなんて……」

マミ「ろ、ロックハート先生の!? ……ねえハリーくん、手伝ってあげましょうか?
   あ、もちろん、これは善意からの申し出で、決してやましいことはないのよ? ……ひゃぅ!?」ムイッ

ハーマイオニー「マーミー? 抜け駆けは無し、って言ったそばからこれかしら? いけないのはこの口かしら?」ギュッ

マミ「ひがう、ひがうのよ! これは条件反射的にゃあれで——」

ハーマイオニー「嘘おっしゃい! ……そういうわけで、ハリー? 手伝いには私が行くわ。
          ロックハート先生にはあなたから伝えて? あと透明マントも貸してくれると——むぅっ!?」グイッ

マミ「ひゃーまいおにーひゃんこそ、抜け駆けじゃないひょれは!」ギュゥッ

ハーマイオニー「離しなひゃいマミ! あにゃたはこの前行ったでひょう!?」ギュゥゥッ


         じたばた じたばた


ハリー「お昼ご飯食べにいこうか? キュゥべえ、おいで」

QB「ありがとう、ハリー。ああ、ロン? ナメクジが止まらないならほら、ビニール袋使うかい?」

ロン「ああ、これマグルの道具かい? どうも、使わせてもらうよ」


夜 ロックハートの部屋


ロックハート「おお! これはアデラ・エインズワース! 最近よくファンレターをくれる子です!」サラサラ

ハリー「はぁ、そうですか」カリカリ

ロックハート「はっはっは、ハリー? 気のない返事をしても、君が有名人に憧れているのは分かりますよ? 
        確かに君も、ほんの少しばかり有名なようですが——」

ハリー「あ、マミだ」

ロックハート「!?」ビクッ

ハリー「——っと思ったら、違う宛名でした。マリーか……」

ロックハート「……ほっ」サラサラ

ハリー「……」カリカリ

ロックハート「……ハリー! そうだ、そういえば君がサイン入りの写真を配ってるとかいう噂を耳にしたのですがね?
        有名人の私が思うに、まだ君はその時期では——」

ハリー「ハーマイオニー?」

ロックハート「!?」キョロキョロ

ハリー「……がここにいれば、きっと宛名書きも早く終わるんだろうなぁ」

ロックハート「……呼んじゃだめですよ? あくまで、君の仕事なのですから」

ハリー「はい、分かってます」カリカリ

ロックハート「……」サラサラ

ハリー「……」カリカリ

ロックハート「……ハリー、そういえば——」

ハリー「マミ・グレンジャー!」

ロックハート「ひぃ!?」ガタッ

ハリー(便利だな、あの二人。ロックハート避け呪文と名付けよう)


??『——腹が減った。食い殺してやる——!』


ハリー「……! 先生、何か聞こえませんか!?」

ロックハート「え、何も聞こえませんよ? ははん、さては寝ぼけてますねハリー?
        もうこんな時間ですか。では、このくらいで終わりにしましょう」

ハリー(……ロックハートには聞こえてない? でも空耳にしてははっきりと……)

10月半ば



マミ「キュゥべえキュゥべえ! 保健室のポンフリー先生が"元気爆発薬"をくれたわ!
   風邪の予防にとってもいいんですって!」

QB「へえ。そりゃよかったね。で、君はなんでそれを片手ににじり寄ってくるんだい?」

マミ「飲ませてあげるわ! 風邪ひいたら大変だし!」

QB「君が先にお飲みよ。僕は後でいいからさ」

マミ「そんな、遠慮しなくていいわよ——そして飲んだら私に味を教えてね?」グイグイ

QB「いやいや、そんな。マミに先に飲んでほしいな。飼い主の健康を、僕は一ペットとして祈っているよ」グイグイ

マミ「い・い・か・ら、飲みなさいよぉぉぉぉ……!」グググ!

QB「き・み・が、先に飲めよぉぉぉぉおおおお……!」グググ!


ジニー「はぁ……」テクテク


マミ「あっ、ジニーさん……どうしたのかしら。何か元気が無さそうね?」

QB「……マミ? 先輩として、ここはケアをしたほうがいいんじゃないかな?」

マミ「あら、そう? キュゥべえがそういうんじゃ、仕方ないわね……こんにちは、ジニーさん!」

QB「やあジニー! 調子はどうだい?」

ジニー「あ、マミに……キュゥべえ」

QB「おやおや? 声になんだか元気がないよ?」

マミ「あら、大変! もしかしたら風邪かもしれないわね?」

ジニー「いやあの、これは別に風邪とかじゃ——」

QB「そんな時はこれ! マダム・ポンフリー印の"元気爆発薬"!」

マミ「一口で元気百倍! さ、ジニーさん? 口を開けて?」


ジニー「あの、本当に大丈夫だから……」

QB「……飲んでくれないのかい? ジニーの為に僕が用意したんだけど……」キュップーイ

ジニー「……えっ?」キュンッ

QB「ここのところ、元気が無かったみたいだからさ。せめて、薬でもと思って……」キラリン

QB「僕の薬を飲んで、健康になっておくれよ! そう思ってたんだけどな……」チラッ

ジニー「……飲む! 飲むわ! せっかくキュゥべえが用意してくれたんだもの!」

マミ(ジニーさんの猫好きを利用して……! キュゥべえ、恐ろしい子……!)

ジニー「じゃ、いただきます」ゴクッ


  ぼふん!


ジニー「……」シュゥゥウウウウ

マミ「……耳から煙が……」

QB「……味はどうだった、ジニー?」

ジニー「……先輩? 私が飲んだんだから、先輩とキュゥべえも飲むべきですよね?」ニッコリ

マミ「あ、ま、待って! 離せばわかるわ。ていうかなんで急に敬語に……ちょ、やめっ……!」

QB「ぼ、僕をいじめるのかいジニー? しないよね、猫好きだもんね、君……え、予防注射みたいなもんだって?
   いや待って、そこは口じゃ……」


  ぼふん! ぼふん!


.

ハリー「やあマミにキュゥべえ。どうしたの? 耳から煙を噴きだして……」

マミ「……気にしないで」モクモク

QB「なんだかこそばゆいね、これ」モクモク

ハリー「あー、まあいいけどさ。ところでちょっとお願いがあるんだけど——」



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マミ「"絶命日パーティ"? ゴーストが自分の死んだ日を祝うの? それに、私を?」

ハリー「うん。ほとんど首なしニックが是非に、って。
     僕、この前彼に助けてもらったから断りきれなくて……」

マミ「それはいいけど……なんで私を?」

ハリー「ほら、僕たちが入学した時さ。君、ニックのことをすごく怖がってたろう?
     あの反応が良かったらしくて……なんかね? パーティでも怖がって欲しいんだって」

QB「ゴーストにとっては、怖がられることがひとつのステータスなのかな」

ハリー「そうみたい……で、どうかな。ハーマイオニーとロンも来るんだけど」

マミ「ハーマイオニーさんも……そうね、それじゃあ私も参加していい?
   絶命日パーティなんて、参加する機会もなかなか無さそうだし……」

ハリー「いいの? 同じ日にやるハロウィンパーティの方は、骸骨舞踏団とかが来るらしいけど……後悔しない?」

マミ「そっちも楽しそうだけど……でも、どんなパーティでもお友達と一緒ならきっと楽しいわよ。
   後悔なんて、あるわけないわ」


10月31日 絶命日パーティ 帰り道


マミ「失敗した……」

ロン「いいよ、わざわざ言わなくて……みんな思ってるんだから」

QB「ゴーストってあんなにいっぱいいるんだねぇ。あれはあれで貴重な体験だと思うよ。
   まあ、マミはほとんど気絶してたから体験してないけど……」

マミ「非常識よ……目があった瞬間、みんな一斉に首を投げつけてくるんだもの……」ガタガタ

ロン「多分、あれじゃないかな? ニックが君に目を付けたみたいに、首狩りクラブの面々も雰囲気を察したんだと思うよ」

QB「狩りクラブの代表ゴースト、"彼女には才能がある。死ぬ時はぜひ斬首で"ってマミのこと絶賛してたけど、どうするマミ?」

マミ「ぜっっったいに嫌! ……へくちゅっ」

ハーマイオニー「大丈夫、マミ? 寒かったもの……ゴーストが集まると気温が下がるのね」ガチガチ

ハリー「それよりおなかが減ったよ……ゴースト用の料理って全部腐ってたりカビが生えてたりしたし……」

ロン「急げば、まだ大広間にデザートが残ってるかも……」



??『引き裂いてやる!』



ハリー「!? 今の声……あの時のだ。ロックハートの部屋で聞いた……」

ロン「ハリー? どうしたんだよ、一体」

ハーマイオニー「声……? 前に、あなたが聞いたっていう? 私たちには聞こえないけど……」

ハリー「しっ! 静かに……移動してる……こっちだ!」ダッ

マミ「あ、ちょ! 待ってってばハリーくん!」

QB「追いかけよう。何か様子が変だ」


三階 廊下


ハリー「ここだ……声はここで途切れた……」

ハーマイオニー「……! 見て、あそこの壁!」


<秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ>


ロン「文字……? "秘密の部屋"って……」

QB「……それだけじゃないみたいだ」


ノリス「」


ロン「ミセス・ノリスだ! フィルチの飼い猫の——死んでるのか?」

マミ「そんな……酷い。なんで……」

ハーマイオニー「……とにかく、ここを離れましょう。あんまり他の人に見られるのは……」

ドラコ「——次はお前らの番だぞ、穢れた血め!」


ハリー「マルフォイ!? どうして——そうか、パーティが終わったのか!」

ロン「……ってことは、当然こいつだけじゃなくて——」


     ガヤガヤ ガヤガヤ


「おい、どうした?」「ポッターだ」「ミセス・ノリスが死んでるぞ——?」

          
                      ざわざわ ざわざわ


フィルチ「なんだ——ミセス・ノリスがどうしたと?」

マミ「ふぃ、フィルチさん……」

フィルチ「なんだ、トモエか。一体これはなんの騒ぎ……」


ノリス「」


フィルチ「あ……ああ……! ミセス・ノリス! 誰だ! 誰がこんなことを!」

マミ「あの、これは——」

フィルチ「お前たちか! お前たちがミセス・ノリスを! 殺してやる! 私がお前たちを殺して——!」

マミ「……っ」ビクッ

ハリー「違います! 僕たちはただここに居合わせただけで——」

ダンブルドア「——静まれ! 生徒たちは各寮へ」

ハリー「ダンブルドア先生! 違うんです。これはあの——」

フィルチ「猫が! こいつらが私の猫を!」

ダンブルドア「アーガス、とにかく場を移そうぞ。居合わせた君らも、一緒においで。
       ああ、ドラコ。すまんがミネルバとセブルスを呼んできてくれんかね?」


ロックハートの部屋


ダンブルドア「お邪魔してすまんのう、ギルデロイ。君の部屋が一番近かったでな」

ロックハート「いやそんな——校長を私の部屋にお招きするなど真に光栄……」チラッ

マミ・ハーマイオニー「?」

ロックハート「こ、光栄ですからね……! それよりも猫でしたか! 私が拝見しましょう!
       むむ、これは異形変身拷問の呪いですね……とても苦しんで死んだに違いありません」

フィルチ「ああ、ミセス・ノリス!」

ダンブルドア「ギルデロイ、ちょいと外れのようじゃのう。これは異形変身拷問ではないよ」

ロックハート「はっはっ、やはり校長は見抜かれていましたか! そう、これはアバダケダブラ——」

ダンブルドア「——でもないのう。そもそも死んでおらんのだし」

ロックハート「やはりそうでしたか! ええ、これは固まってるだけでしょう」


ハーマイオニー「凄いわ! ダンブルドア先生と互角に話しているなんて!」

マミ「さすがロックハート先生……」

ロン「おい、誰か耳かき持って来いよ。絶対この二人の耳の穴塞がってるから」


フィルチ「じゃあミセス・ノリスは治るんですか!?」

ダンブルドア「ああ、スプラウト先生がマンドレイクを育てておられる。
        成長したら、すぐにでも解呪薬を作ってくれるじゃろう。のうセブルス?」

スネイプ「御命令とあらば——しかし校長? その前に犯人をみつけなくては……
      猫では証言ができないからして」

フィルチ「あいつらだ! ポッター達がやったんだ!」

マミ「そんな! フィルチさん、私たちは——」

フィルチ「うるさい! お前だって、魔法使いなんだろう! スクイブの私を馬鹿にしてるんだろう!
      同情などするべきではなかった! 貴様に、私の気持ちなど——!」

マミ「……っ」

マクゴナガル「アーガス、おやめなさい。この子たちにそんな真似はできませんよ。技術的にも、性根的にもね」

マミ「マクゴナガル先生……」

フィルチ「……」

スネイプ「ですが副校長。彼らが正直にすべてを話してるとは思えないのですが?
      ポッター、なぜあの時間にあの場所に? 他の生徒はハロウィンパーティに出ていたが?」

ハリー「僕たち、ニックに絶命日パーティに招待されて——」

スネイプ「では、その後にハロウィンパーティに来なかったのは?」

ハリー「それは……」

スネイプ「ふむ、話せない、と。……ご覧の通りです。ここは彼らが正直に話してくれるよう、処罰を与えては?
      たとえば、そう……クィデッチ・チームから外すなど」

マクゴナガル「それとこれとなんの関係が? 猫はブラッジャーに押しつぶされでもしてましたか?」ギロッ

ダンブルドア「よい、疑わしきは罰せずじゃ……今宵はこれで解散としよう」



グリフィンドール談話室


ハリー「あの声のこと、話した方が良かったのかな……」

QB「どうだろう? 君以外には聞こえない声なんて証明しようがないし、あの場を混乱させるだけだと思うけど」

ロン「ああ。狂気の沙汰だよ。気味が悪いって、ハリーも思うだろう?」

ハリー「うん。それに、あの言葉——秘密の部屋って一体なんなんだろう……?」

ロン「うーん。昔聞いた覚えがあるような……」

ハーマイオニー「私も、何かで読んだ覚えがあるのよね……」

マミ「……」

ハリー「秘密の部屋に関しては、これ以上考えてても仕方ないか……。
     ……そういえば、ロン。フィルチのいってたスクイブってなに?」

ロン「ぷっ、くくっ……ああいや、別におかしいことじゃないんだけどさ。
   スクイブっていうのは、魔法使いの家の生まれなのに、魔力をもってない人のことなんだ」

マミ(……)


     『なあ、トモエ——本当に才能が無いということが、どういうことか分かるか?』


マミ(そうか、だからフィルチさんは、失敗ばかりの私に——)


ロン「でもこれでフィルチが僕たちに強く当たる理由が分かったよ。妬ましいんだろうね、ははは!」

マミ「——別に、笑うことじゃないでしょ」

ロン「うん? なんだって?」

マミ「……別に、なんでもないわ。おやすみ!」スタスタ

ロン「……なんであんなに怒ってるんだ、あいつ? そりゃ、ちょっとブラックな笑いだったけどさ」

ハリー「……ロン、君ってたまに地雷を思いっきり踏み抜くよね」

ハーマイオニー「……マミ」


翌日


マミ「……」

QB(昨日からマミはずっとだんまりだ。あの三人組とも距離をおいて、ずっとひとりきりだし……
   ……ん、あれは?)

ジニー「……」スタスタ

QB(ジニーだ。相変わらず元気がないな。寒いし、こりゃ本格的に風邪かな?)ピョイッ

QB「やあジニー。元気してるかい?」

ジニー「ああ、キュゥべえ。今日は薬を持ってないみたいね?」

QB「もう懲りたよ。あの酷い味は猫栄養ドリンク以来だ……で、君の方はどうだい?
   調子が戻ってないみたいだけど」

ジニー「ええちょっと……ほら、ミセス・ノリスが……」

QB「ああ……」

ジニー「ロンは"あんなのいなくなった方がせいせいする"なんて言ってたけど、私……」

マミ「……そうよね。そんなの、許されるはずないわ」

ジニー「! マ、マミ! いたのね……」

マミ「ええ。ジニー。そうよ、フィルチさんの猫を石にするなんて……許せないわ」

QB「君、昨晩はだいぶ酷いこと言われてたじゃないか。それでもかい?」

マミ「誰だって、大切なものが奪われれば取り乱すに決まってるわよ……ええ、キュゥべえ、私は決めたわ」

QB「決めたって、一体何を?」

マミ「決まってるでしょう?」


マミ「この私が、フィルチさんの猫を石にした犯人を絶対に捕まえて見せるわ!」


ジニー「……」

とうかしゅうりょー

書いて消して書いて消してを繰り返してちっとも進まぬ由々しき事態

もう、あれだね。とりあえず今日の21:00までに書きたいとこまで書けなかったら書けてる部分だけ投下しますわ

なんか自分で締め切り設定したら筆が乗り出した。もうちょっとだけ書かせてください

スーパー筆乗りタイムが終了してしまった。よし、かけてないところは即興で投下しようそうしよう。
決して、ジョジョスレの投下を見守ってたら時が経つのを忘れたわけではないのですよ!
では投下ー。


魔法史の授業


ビンズ「……であるからして、千年以上も昔にこのホグワーツを創立した四名、
    その中のひとりであるサラザール・スリザリンが他の創設者も知らぬ隠された部屋を作ったという話があるのです」

ビンズ「それが秘密の部屋、と呼ばれておるものの正体なわけですな。
     純血主義だったスリザリンが純血でない魔法使いを排除するための怪物を封じ込め、
     スリザリンの継承者だけがその怪物を解き放ち、操ることができるという」

ビンズ「無論、戯言であるわけですが。部屋などない。よって怪物もいない。
     歴代の校長や著名な魔法使いが調べても、その痕跡すら発見できなかったのですから」

ビンズ「さて、よろしければ歴史に戻ることにしましょう。馬鹿馬鹿しい作り話などではない、確固とした事実にね」


◇◇◇


QB『……なるほど。ビンズ先生の話で大体は分かったかな。つまりその秘密の部屋の怪物とやらが犯人というわけか。
   確かに、事件のあった廊下にも"秘密の部屋"という文字が書かれていたね』

マミ『……でも本当にそんな怪物が? 他の可能性もあるんじゃないかしら。
   例えば、そうね——スリザリンの生徒が呪いを掛けたとか』

QB『それは有り得ないんじゃないかな。生徒が掛けた呪いくらい、先生なら解けるだろう。
   マンドレイクを使った解呪薬でしか解けないっていうのは……』

マミ『……ヴォルデモートみたいに本当に強力な闇の魔法使いか、危険な魔法生物かってこと?』

QB『ああ……でも闇の魔法使いって線はないと思うな』

マミ『え、どうして? 実際、ヴォルデモートは去年ここに忍び込んだじゃない』

QB『ヴォルデモートは賢者の石を手に入れるって言う目的があっただろう?
   わざわざホグワーツに忍び込んで、やることが猫を石にするだけっていうのはいくらなんでも間抜けだ』

マミ『でも、これから生徒を襲うつもりかも……』

QB『なら最初から生徒を標的にすべきだよ。これからは警備も強化されるだろうし、生徒自身だって警戒するだろう。
   つまり猫が襲われたのは偶然だったんだ。その魔法生物は多分、生きてるものを全部標的にしちゃうんじゃないかな』


マミ『……でも、ビンズ先生の話だと"怪物"は"継承者"に操られるんでしょう? 
   壁に文字が書いてあったから、人間が関わってるのは確かよね?』

QB『そこが分からないんだよなぁ。もちろん伝説を鵜呑みにする気はないけれど。
   いったんまとめてみようか。マミ、羊皮紙と羽ペンを借りるよ。現状、確実に分かってるのはこの二点だね』サラサラ


1.猫を石にしたのは何らかの魔法生物。

2.壁に文字が書いてあった→人間が関わっている。


QB『暫定的に、壁に文字を書いた人物を継承者。魔法生物を怪物と呼称しようか。で、こっちが推測』サラサラ


a.継承者は怪物と関わりがある?

b.怪物は継承者に操られている?


マミ『キュゥべえ、これaとbの違いってあるの? どっちも同じように見えるんだけど』

QB『ミセス・ノリスを襲ったっていう点がどうにも理解できないんだ。
   もしかすると継承者は怪物を解き放っただけで、操ることはできないのかもしれない』

マミ『そっか……でも怪物を操ってる人がいるかはともかく、危険な魔法生物がいるのは確かよね。
   その正体とか住処を突き止めて、先生方に報告すれば……』

QB『……マミ、本当に君ひとりでやる気かい? 怪物と遭遇してしまったらどうする?

   君はまだ二年生で、大した呪文も使えないんだよ?
   魔法生物の中には、一流の魔法使いが使うような魔法でさえ跳ね返してしまうようなのもいるのに』

マミ『……それでも、やらなきゃ。ここ最近のフィルチさんを見た?』

QB『明らかに憔悴してるね。通常の業務に加えて、猫の犯人捜しだ。このままだと倒れるんじゃないかな?』

マミ『そうよ……早く、犯人を、怪物を見つけなきゃ……』

QB『……でも、一人でやる必要はないと思うけどな。ハーマイオニーを誘ってみたらどうだい?
   彼女の知識量は、きっと役に立つと思うけど』

マミ『……嫌。だってきっと、ハーマイオニーさんはロン君たちと一緒に探そうとするもの』

QB『この前のロンの発言を気にしているのかい? 君もわかってると思うけど、フィルチは決して優しい職員ではないよ。
   多くの生徒に煙たがられるのも頷ける話だ』

マミ『分かってるわよ。ロンくんだって悪気があったわけじゃないって……でもそれなら、私がフィルチさんのことをどう思おうとも勝手でしょ?』

QB『まあ、君があくまでそういうなら僕も強くは言わないけどさ……それで、具体的にはどうするんだい?』


夕食後 三階 廊下


マミ「というわけで、犯行現場にやってきたわけだけど」

QB「誰もいないね。まあ、あんな事件があった後だし……なんでここに来たんだい?」

マミ「犯人は犯行現場に戻るって、本に書いてあったもの!」ドヤッ

QB「その犯人に出会ったら、君も石像の仲間入りなわけだけど……」

マミ「虎穴に入らねば虎児を得ず、よ!」

QB「……まあ、犯行現場を調べなおすって言うのは悪くないと考えだけどね。
   とはいえ、何の変哲もない廊下だけど」

マミ「そう言われるとそうなのだけど……キュゥべえ、あなたは何か気づいたことってある?」

QB「そうだね……そういえばあの時は、床がびしょ濡れだった」

マミ「床が? そうだったかしら?」

QB「君はミセス・ノリスに注目していたから……でも確かに、結構な量の水が廊下にぶち撒かれていたよ。
   バケツ一杯じゃ足りないくらいだった。あれはどこから……?」

マミ「それって、あそこからじゃない?」


 "女子トイレ"


QB「ああなるほど、排水溝がつまりでもしたのかな? そういえば"故障中"って張り紙もされてるね」

マミ「あら、そういえばこのトイレって……」

QB「どうしたの、マミ?」

マミ「何だったかかしら……確か噂があって……三階のここのトイレは入っちゃ駄目とかいう……」

QB「故障中だからじゃないかい?」

マミ「そうだったかしら……まあいいわ。とにかく何か手がかりがあるかもしれないし、入ってみましょう」


 女子トイレ


QB「うわ、ボロボロじゃないか……いつから故障中なんだろう、これ」

マミ「本当。これじゃ使えないわ……そういえばキュゥべえ。あなたってオスなの、メスなの?」

QB「えっ、いまさらそこ気にするのかい?」

マートル「……なによぅ。また誰か来たの? わたしを馬鹿にしに……」ヌゥッ

マミ「きゃっ!?」

QB「ゴーストだ。女の子の……ん? どこかでみたような……」

マートル「あんた達、わたしのこと知らないの? ……って、そういえばこのくるくる頭は見たことあるわね」

QB「ああ、思い出した。絶命日パーティの」

マートル「そうだ、首を投げつけられて気絶してた奴だ。なぁに、あんた怖がりなのぅ? にひひひっ」

マミ「こ、怖くなんてないわ! ちょっとびっくりしただけだもの!」

マートル「……へぇ。そう」スゥッ

QB「あ、床に潜っていっちゃった……」

マミ「き、気を悪くさせちゃったのかしら……?」

マートル「——ばぁぁあああああああ!」ブラーン

マミ「いやあああああああ!? 首が、天井から首が!?」

マートル「あははは! いーい怖がりっぷりじゃない? わたしより弱っちそうな奴は初めて見たわ」

QB「あんまりいじめないでやっておくれよ。マミはメンタル弱いんだから。ここ一年でだいぶ良くなったけど」


マミ「はぁはぁ……も、もう。ほんとに驚いたわ……」

マートル「きしし」

QB「ニックがマミを絶命日に呼んだの、分かる気がするなぁ」

マートル「そぉねぇ。こんなビビり虫そうそういないわ」

マミ「べっ、別にビビり虫なんかじゃ!」

マートル「毎晩、あんたの部屋に出没してやってもいいのよ?」

マミ「ビビリ虫です……」グスッ

マートル「あー久しぶりに気分がいいわっ。死んでから初めてね……んで、あんたらわたしのトイレに何の用なの?
      悪いけどお腹がピンチっていうんなら別のところで……」

マミ「違うの。あのね、ハロウィンの日にここの前の廊下で猫が石にされて……」

マートル「ああ、あんたらもそれの犯人捜ししてるんだ?」

QB「ってことは、僕たちの他にも誰か来たのかい?」

マートル「えーえおいでなすったわよ。赤毛ののっぽと箒頭の出っ歯、あとクシャ髪の眼鏡が」

QB「……ハリー達かな。彼らはなんて?」

マートル「おかしなものを見なかったかって……
      その時も言ったけど、わたしはあの日、排水溝の中でずっと泣いてたからなーんも見てないわ」

マミ「そうなの……何か手がかりがあればと思ったんだけど」キョロキョロ

マートル「んー。手がかりは知らないけど、今は機嫌がいいから面白いこと教えてあげようか?」

マミ「面白いこと?」


マートル「ゴーストが壁をすり抜けられるのは知ってるでしょ? 
      でもまあ、なんでもかんでもすり抜けられちゃあ困るから、魔法ですり抜けられないようにすることもできるわけよ」

QB「確かに。じゃないとゴーストが諜報役として跋扈することになりかねないしね」

マートル「そう。でもそんな魔法をいちいち掛けるのも面倒ってことで、重要な箇所にしか"ゴースト避け"はないの。
     だけどね、このトイレってなんでかゴースト避けの魔法がかかってるのよ」

QB「だけどさっき、君は床や天井をすり抜けたじゃないか」

マートル「トイレの一部に、ってこと。ほら、そこの手洗い台がそうよ。そこはわたしでもすり抜けられないの」

マミ(良く考えたら、トイレにゴースト避けが掛かってないのってプライバシー観点で致命的な気がするのだけど……)


 手洗い台


マミ「普通の洗面台みたいね……ん、この蛇口壊れてる」

マートル「そこ、ずっと壊れっぱなしよ。わたしがまだ生きてた頃から。修理もできないみたい」

マミ「うーん……特に変わったところはなさそうだけど……あっ、蛇の落書きがあるわ。
   ふふっ、何かこういうの見ると和むわね」

QB「……確かにこの手洗い台は気になるな。ゴースト避けなんて、洗面所に掛けても意味ないし。
   マミ、何種類か魔法を掛けてみよう。まずは開錠呪文から……」

マートル「ところで、あんたら平気なの? 
      最近このトイレの前、あの嫌われ者の用務員がずっとうろうろしてるんだけど」

マミ「……! フィルチさんが……」

QB「彼も僕らと同じ思考をしたんだろう。現状、ここくらいしか手がかりはないからね。
   僕らが入るときはいなかったけど、また戻ってくるかもしれない。もう就寝時間も近いし……」

マミ「……そうね、いったん離れましょうキュゥべえ。調べるのはまた今度よ。
   あの、またここに来てもいいかしら? ええと……」

マートル「マートルよ。あんたらはマミとキュゥべえっていったっけ?
      ま、わたしのこと馬鹿にしない奴なら別にいいわ。あんたらは、まあ……及第点ってとこね」


グリフィンドール 女子寮


マミ「なんとか就寝時間に間に合ったわね……」

QB「明日からは、フィルチの隙を見てあのトイレのことを調べよう。少なくとも、他の手がかりがみつかるまでは——」


ガチャッ


パーバティ「Zzzzz.....」

ラベンダー「むにゃ……ビンキー……こっちおいで……」

マミ『……みんな寝てるみたい。キュゥべえ、しー、よ?』

QB『うん……だけどマミ、ひとつだけ間違ってる。寝てるのはみんなじゃないよ』

マミ『へ? それってどういう……』

ハーマイオニー「……お帰りなさい、マミ」

マミ「ハーマイオニーさん……」


QB「僕は席を外すよ。終わったら呼んでね」タタッ

マミ「あっ、ちょ、キュゥべえ! ああ、行っちゃった……」

ハーマイオニー「……マミ、遅かったわね。どこに行ってたの?」

マミ「……別に。ちょっと図書室で調べものを……」

ハーマイオニー「そう……ねえ、マミ。この前ロンが言ってたこと。あれはね、別に——」

マミ「分かってる。分かってるわよ。気にしないで」

ハーマイオニー「……だったら、また明日から仲良くできるのかしら、私たち」

マミ「……それは」

ハーマイオニー「……あなた、秘密の部屋を——ううん、ミセス・ノリスのことを調べてるんじゃないの?」

マミ「……!」

ハーマイオニー「あなた、他の誰がフィルチの悪口を言っても、いつも曖昧に笑って流すだけだったから。
          もちろん私だって陰口には賛成できないけれど……
          ねえ、マミ。犯人捜しをしてるんだったら、私たちと——」

マミ「し、知らないわ! お休み!」ガバッ

ハーマイオニー「あっ、マミ! 話はまだ終わって——」

マミ「ぐー! ぐー!」

ハーマイオニー「……そう。ええ、そうですか分かったわ分かりましたとも!
          マミがそういうつもりならこっちだって考えがあるんですからね! ふんっ、お・や・す・み!」

マミ「……」

ハーマイオニー「……」




マミ(……怒らせちゃった)グスッ

ハーマイオニー(……やっちゃった)ハァ


数日後 闇の魔術に対する防衛術 授業


ロックハート「はい、それじゃ教科書のここからここまでノートに書き写して!
        おっと、読みふけって時間を忘れないように注意してくださいよ!」


ハーマイオニー「……」ガリガリガリ

ハリー「あー、ハーマイ、オニー? そんな力入れて書いたら、羽ペンが痛むと……」

ハーマイオニー「……っ!」キッ

ハリー「あーいや、なんでもないんだ。なんでもね……ロン、どうしよう。この後のあれ……」ヒソヒソ

ロン「なにがあったか知らないけど、この頃機嫌悪いもんなぁ……いざとなったら君が頼みに行けよ、ハリー」

ハリー「勘弁してよ、ただでさえロックハートは……」


ロックハート「さて、そろそろ皆さん写し終ったみたいですね! それじゃあこの部分の再現をしましょうか!
        栄えある相手役を務めるラッキーボーイは——ハリー! さあ、前においで!」


ハリー「ほら御指名だ。なんでかあいつ、僕を目の敵にしてるんだもの。
     今日やるのは……うわ、狼男だ。しかも地面に叩きつけられるとか書いてある……」

ロン「お気の毒様。あとで蛙チョコレートをあげるよ」

ハリー「割に合わないなぁ……でもやってくるよ。あいつをご機嫌にしとかないと、計画が上手くいかないし……」


ロックハート「さあハリー! まずはこれを被ってください! じゃ、じゃーん! 狼男の毛皮!」

ハリー(……裏側にMade in Chinaのタグがあるのは黙っておこうか……)



マミ「……」

QB『……マミ、ごめんよ。二人きりで話せば、上手くいくかと思ったんだけど……』

マミ『何のことかしら。知らないわ』

QB『そんなこと言って、ハーマイオニーとあれから一言も口きいてないじゃ』

マミ『知らないわ』

QB『……話を変えようか。マートルのトイレのことだけど……結局、あれから一度も調べられてないね』

マミ『そうね。フィルチさん、ずっとあのトイレの周りにいるものね……』

QB『やっぱり、ここは同時多発テロしかないと思うんだ。僕が遠くで騒ぎを起こすから、その間にマミが……』

マミ『やったらしばらく餌抜きにするわよ、キュゥべえ。フィルチさん、本当に倒れちゃうわ』

QB『……じゃあどうするのさ。このままだと年が明けちゃうよ』

マミ『……ひとつだけ、方法があると思うの。次の土曜の……』


ジリリリリリ!


ロックハート「おっと、もう終わりですか。では皆さん、宿題を忘れないように!」


QB『……なるほど。確かにそれはいいアイディアだ。じゃ、それでいこう』

マミ「ええ、行くわよ、キュゥべえ。寮に戻って細かいところを煮詰めましょう」スタスタ


ロン「お、最後の奴も出て行った……マミか。そういえばあれから口きいてないなぁ。
   はぁ、まだ怒ってるのか……大丈夫かい、ハリー?」

ハリー「いたた。ロックハートの奴、本気で掴みかかるんだものなぁ……おっと、急がないとロックハートの奴までいっちゃう。
     ハーマイオニー、ほら、君がサインを貰ってくるんだろう?」

ハーマイオニー「……分かってるわよ。
          ロックハート先生! 私、図書館からこの本を借りたいんですけど、先生のサインが必要で——」


土曜日 グリフィンドール寮談話室


ディーン「急げよネビル! もうすぐクィディッチの試合が始まっちまうぞ!」

シェーマス「っていうか先行ってるからな! 席くらいはとっておいてやるよ!」

ネビル「ああ、待って! 何で今日みたいな日に寝坊を……って、あれ? 暖炉の前に座ってるのは……」


マミ「……」カチャカチャ

ネビル「マミ、何やってるんだい、こんなところで……それなあに? なんかえらく複雑そうな装置だけど……」

マミ「あら、ロングボトムくん。これね、マグルの道具でMDプレイヤーっていうの。
   音を録音できる機能があって、今日の試合の実況を録音しようと思ったんだけど……
   壊れちゃってるみたいで、いま修理してるとこなの」

ネビル「ふぅん? でも急いだ方がいいよ、もうすぐホイッスルだし……」

マミ「ええ、時間ぎりぎりまで粘るけど、間に合わなかったら諦めて行くわ。
   ……ところで、ロングボトムくんはいいの? ゆっくりしてて」

ネビル「え。あ、そうだった! さ、先にいくね! マミ、君も急ぎなよ!」


QB「……よし、行ったね。マミ、ネビルで最後だ。もう僕らのほかは誰もいないよ」

マミ「そうね。それじゃあ早速……」ゴソゴソ


クィデッチ競技場


ネビル「はぁはぁ、着いた! ああ、もう始まってる! ロン、試合はどうなってるの?」

ロン「いま始まったところ。ネビルか、遅かったね。トイレかい?」

ネビル「いや、寝坊して……あとマミと談話室で話してたら遅くなった」

ロン「マミ? マミもまだ来てないのか……」

ハーマイオニー「……ネビル、マミはどうしてまだ寮にいたの?」

ネビル「いや、なんかマグルの道具の、なんていったかな、えむでーふらいやー? が壊れたって……
     それでクィデッチの実況を録音したいんだって」

ハーマイオニー「え、えむでーふらいやー? なにそれ、未確認飛行物体?」

ネビル「飛んではなかったよ。えーと、四角くて、黒いヒモが伸びてて、これくらいのサイズで」

ハーマイオニー「ああ、MDウォークマンね。……じゃあそれ、修理しても無駄よ」

ネビル「え、なんでだい?」

ハーマイオニー「だってね、マグルの道具、特に機械製品は魔法力の強い場所だと——」

ロン「おい、見てくれ! あのブラッジャー様子が変だぞ!」

ハーマイオニー「え?」


マートルのトイレ 手洗い台


マミ「うん、やっぱり誰もいない。クィデッチの時って、先生方もみんなそっちに行くものね」

QB「この日を調査に充てるのはいい考えだと思う……けど、君が延々とウォークマン弄ってたのには何の意味が?」

マミ「ほら、アリバイ工作って奴よ。何で来なかったの? って聞かれたら、ずっと修理してました、って言うの。
   ……にしてもこれ、本当に壊れちゃったのかしら? このっ、このっ」ポチッ ポチッ

QB「アリバイ工作って……そんなことしなくても、あの熱狂具合じゃ誰がいなかろうが気づかないと思うけど」

マミ「……こ、細かいことはいいでしょ、もうっ。さあ、調査開始よ!
   マートルさんもどっか行っちゃってるし、この隙にぱぱっとやちゃいましょ」

QB「うん、そうだね。じゃあまずは開錠呪文から……」



 数十分後



マミ「……開錠呪文も変身呪文も呪いもダメ、ね。私に使える呪文は、あらかた試したと思うんだけど……」

QB「ミサイルでも傷一つ付かないっていうのはおかしいね。なんでトイレにここまで過剰な防御を……」

マミ「……もうどうしようもないわね、これ。どうしましょうか、キュゥべえ?」

QB「そうだね。これ以上の調査は難しいし、この場所は保留にしようか。
  …… ただ、ひとつだけ分かったことがある」

マミ「えっと、何かしら?」

QB「このトイレの手洗い台は壊れてるってマートルが言ってたけど、それは間違いだ。
   ここまで頑丈に作られたものが壊れるなんてことありえない」

マミ「この洗面所は、最初から壊れてる風に造られたってこと?」

QB「いや、洗面所ですらない。その機能を最初から度外視されているのだから——」


QB「——これは、洗面台の形をした"何か"だろう」



.


QB「……まあ、だからと言ってこれが"秘密の部屋"に関連してるか、っていったら別問題だけどね」

マミ「ええ、そうね……もう行きましょうか? クィデッチの試合もいつまで続くか分からないし」

QB「あのスポーツ、競技時間が決まってないんだっけ? 確か最短4秒弱で終わったとか……」

マミ「急ぎましょうか。さすがに4秒ってことはないだろうけど……」


???『……シューッ!』


マミ「? キュゥべえ、いま何か言った?」

QB「? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
   扉の外——廊下から聞こえたように思うけど」

マミ「……って、大変じゃないそれ! もう試合が終わってたりしたら……」

QB「フィルチがまたこの辺に居座りだす可能性もあるね。マミ、声を潜めて、外の様子を窺おう」

マミ「ええ、分かったわ……」


???『シューッ! シューッ!』


マミ『……扉のすぐ傍にいるみたいね。近くから音が聞こえる。……いや、これは声、かしら。
   歯の隙間から、思いっきり空気を出してるみたいな……』

QB『フィルチじゃないのかな? なんだろう、ピーブズが悪戯でもして……ん?』ピチャ

QB(トイレの床が水浸しだ。浸水してる? でもマートルが帰ってきた訳でもないみたいだし……)

マミ「……」

QB(マミはまだ気づいてないな。靴を履いてるし、扉に耳をくっつけて聞き耳立ててるからか。
   まあ、その内気づくだろうけど。どんどん水位が上がって……待て)


QB(この水はどこから来てる? いや、それよりも……あの日も、ミセス・ノリスが石にされた日も!
   水が、このトイレから溢れてた!)


QB『マミ、危険だ! 今すぐこのトイレから……!』


???「シュッー!」

さて、ここから即興になります。著しく投下速度が下がることが予想されますので、ここは俺に任せて先に寝るんだ!
あとなんだろ、今日はやったらめったら重いデスネ!


 ばちゃん!


QB(背後から水音——まるで何かが水たまりの中に落ちてきたような。不味い!)

マミ『ちょっ、どうしたのキュゥべえ。そんな大声出しちゃ——きゃんっ!』ビチャッ

QB『逃げるんだ、マミ! 怪物だ! 多分、僕たちの背後にいる!』

マミ『えっ、嘘。怪物って……!』

QB『振り向いちゃ駄目だ! 刺激しないように、早くドアを開けて!』

マミ『わ、分かったわ……あ、あれ? なんで、これ』ガチャッ ガチャガチャッ

QB『マミ! どうしたの!?』

マミ「あ、開かない! 開かないの! ねえ、誰かいるんでしょう! 開けて! 開けてってば!」


???「……」


 ズルッ ズルッ 


マミ「ひっ!?」

QB(すぐ後ろから、何か重いものを引きずるような音が……もう、これは……)


夜 医務室


ハリー「……よーし、大体事情は分かったよ、屋敷しもべ妖精のドビー。

     君がなんで夏休みに僕の家に来てデザートをひっくり返して、
     さらに汽車に乗れないように駅の柵を封鎖した挙句、
     今日のクィディッチの試合ではブラッジャーを狂わせて僕の右腕をへし折ったのか、っていう事情がね」

ドビー「ああ、ハリー・ポッターにこんな説明台詞を喋らせてしまうなんて! ドビーは悪い子! ドビーは悪い子!」ガンガン

ハリー「やめて! それで、ドビー。君はさっき言ったよね? 秘密の部屋が前にも開かれたって。
     それって秘密の部屋は本当にあって、今もまた開かれてるってことだよね?」

ドビー「ああ、お聞きにならないでください! ハリー・ポッター、ただ、貴方様に危険が迫っているのでございます。
    どうかお家に帰ってくださいませ! どうか!」

ハリー「君が何をしようと、僕は帰らないぞ、ドビー! 僕の親友にマグル生まれがいる。
     それを放っておいて帰るなんて——」

ドビー「ああ、なんという勇敢さ! さすがは例のあの人を打ち破ったハリー・ポッター……
    ですが、ですが、だからこそ貴方様は自分の身を……」


 カツン カツン……


ドビー「! ああ、ハリー・ポッター。どうか、お願いいたします。お家に帰ってくださいませ——」パチン!

ハリー(消えた……ああ、そうか。足音が……誰かが医務室に来る?)


 ガチャッ


マクゴナガル「ええ、そうです。試合中に下級生の女子何名かが、不思議な声が聞こえたと訴えて……」

ポンフリー「ここに運ぶのがこの時間になった理由は?」

マクゴナガル「生徒たちに無用な混乱をさせない為にと……それまでは、私の部屋に」


ハリー(……マクゴナガル先生と、ダンブルドア先生? なにを抱えて……?)


ダンブルドア「……症状は、ミセス・ノリスと同じようじゃのう」

マクゴナガル「ええ。アルバス、これは……」

ダンブルドア「秘密の部屋が、再び開かれたということじゃな」


ハリー(……! 誰だ? 誰が犠牲に——あれ、あの、髪型は……)


マクゴナガル「……ですが、一体誰が? 誰が、こんな惨いことを……」

ダンブルドア「問題は誰が、ではなく……どうやって、じゃよ」





ハリー「……マミ?」



.

投下終了。即興とか>>1の遅筆じゃ無理だわ。

でもなんか締め切り設けると筆が乗るっぽいから、自主的に締め切りを設けようと思います。

安価↓で締め切り決定。無効は下にずらす感じで
1.毎日投下しろやオラァ!
2.せめて三日ごとに投下しろやオラァ!
3.最低でも週一で投下しろやオラァ!
4.スタープラチナ・ザ・ワールド

とうかー


数日後 グリフィンドール談話室



 ボソボソ ボソボソ


「やっぱり秘密の部屋が——」

「怪物——マグル生まれが狙われる——」

「マミ——彼女もやっぱりマグル出身だ——」

「フィルチの猫は——?」

「奴はスクイブだろう——」


                    ヒソヒソ ヒソヒソ


ハリー「……噂、広まってるね」

ロン「ああ。可哀想に、一年生なんかすっかり怯えちまってる。
   ひとりじゃトイレにもいけないって有様さ」

ハリー「そういえば、ジニーも一年生だったね。最近ただでさえ元気なかったし、様子どう?」

ロン「最悪だよ。君にまとわりついてたカメラ小僧がいたろ?」

ハリー「ああ、コリンね。彼がどうかしたの?」

ロン「そいつとジニー、妖精の呪文で班が一緒だったらしくてさ。

    事件のあった日、コリンも君のお見舞いに行こうと寮を抜け出そうとして——まあ、フィルチに捕まって戻されたんだけど。
    下手すりゃ怪物に襲われてたって喧伝してくれたみたいで、ジニーはすっかり怯えちまってる」

ハリー「今度会ったら言っておくよ。いたずらに不安を煽るなって」

ネビル「ハリー! ロン! 見てよこれ! この腐った玉葱には怪物を退ける効果があるんだって!
     怪物って怖いよねー! 他にも色々お守りを買い込んだんだけど——」

ハリー「よーしネビル。ダドリー直伝のチョークスリーパーをかけるからそこを動かないでくれよ」



 ガチャッ


ハーマイオニー「……おはよう、みんな」

ロン「あー、おはよう。ハーマイオニー、よく眠れたかい?」

ハーマイオニー「ええ、お陰様でね。どうにか調子は取り戻せたみたい」

ロン「無理はするなよ。事件の噂を聞いた時の君ったら、そりゃもう酷い……」

ハーマイオニー「……マミとは、その、ちょっと喧嘩しちゃってたから。
          最後に交わしたのがあんな言葉になっちゃうかもっていうのが嫌で……」

ロン「それに関しちゃ、僕だってそうだけどね……そういえば朗報だよ。マミに会いに行っていいってさ。
   なあ、これからお見舞いに行かないかい?
   おっと、君に拒否権はないぜ。僕としちゃ授業をさぼれる機会を逃したくはないからね」

ハーマイオニー「……あなたにしてはいい考えね、ロン。でも、授業には間に合わせるわよ。
          それとハリー、ええと、さっきから気になっていたのだけど、あなたは何故ネビルの頭を砕こうとしてるの?」


医務室


ポンフリー「面会、ですか。ええ、マクゴナガル先生から許可が出てますよ。
       ぜひ会ってあげなさい。きっと彼女も喜ぶでしょう」



ハリー「あのカーテンで仕切られた一角に、怪物の被害者がいるわけか……
    ってことはミセス・ノリスもベッドに寝かされてるのかな?」

ロン「流石に籠か何か用意してあるんじゃないか? 石になった猫一匹がベッド占拠してるってシュールだろ。
   あとネビル、その玉ねぎは捨ててこいよ。酷い匂いだぜ、それ」

ネビル「マミの枕元に置いてあげようと思って——」

ロン「彼女が起きときにはすっかり玉ねぎの臭いが染み込んじまってるだろうよ。それでもいいならやれば?」

ネビル「ならきっと、二度と怪物も近づかないね! 僕の分も置いていくよ」

ロン「おい馬鹿やめろ。ハリー、君のさっきの技でネビルの頭が大変なことになってるぞ何とかしてくれ」

ハリー「もう一回やれば治るかな?」

ハーマイオニー「あなた達、うるさいわよ。医務室ではお静かに。
          っと、このベッドね。カーテンを開けるから、男子はいったん後ろに下がってもらえる?
          ……マミ、開けるわよ」


 シャッ


ハーマイオニー「……はあい、マミ。その……久しぶりね」

マミ「……おはよう、ハーマイオニーさん」ナデナデ


マミ「……いま……何日かしら? 薬で眠っていたから、曜日が分からなくて」ナデナデ

ハーマイオニー「そんなに経ってないわ。あれから四日。今は水曜日。……調子はどう?」

マミ「ええ、もう大丈夫。眠ったら良くなったわ」ナデナデ

ハーマイオニー「……その、キュゥべえのことは、残念だったわ」

マミ「……残念? どうして? キュゥべえはここにきちんといるじゃない」ニッコリ

QB「——」

マミ「ふふ。キュゥべえったら、毛並がこんなに乱れちゃって……
   ……手ぐしだとあんまり直らないわね。ねえ、ハーマイオニーさん。櫛持ってる?」

ネビル「……」

ハーマイオニー「……っ、持って、ないの。ごめんなさいね」

マミ「あ……いいのよ、謝らなくても……そうだ、私もハーマイオニーさんに謝らなきゃいけなかったわね。
   この前はごめんなさい。私、意地になってて……フィルチさんには、色々と助けて貰ったから」

ハーマイオニー「……そう」

ロン「……あー、その件に関しちゃ僕も謝らないとだね。知らなかったとはいえ、ごめんよ」

マミ「……あら、ロンくん達も来てくれたの? ううん。いいのよ。
   フィルチさんが厳しいのも、好かれやすい人柄でないのも事実だものね。
   ふふっ、そういえばキュゥべえも同じこと言ってたっけ。ね、キュゥべえ?」ナデナデ

QB「——」

ネビル「……っ、悪い、けど。僕は、戻るね」ダッ

ハリー「……ネビル」

マミ「あら、用事でもあったのかしら? ……ああ、そういえば、もうすぐ授業じゃない。
   私も出たいのだけど、まだ駄目なんですって。もう、勉強が遅れちゃうわ」

ハーマイオニー「……私が、教えてあげる、から」

マミ「そう? ハーマイオニーさんが教えてくれるなら……ちょっとくらい遅れても大丈夫かしら。
   でも早く授業には出ないとね。じゃないと、折角、キュゥべえが守って、くれた、のに……あ」

ハーマイオニー「……マミ? どうしたの?」



マミ「ああ、あ、ああああああああああああああああ!」ガタガタ


ハーマイオニー「マミ!? マミ、しっかりして!」

ハリー「マダム・ポンフリーを呼んでくる!」ダッ


マミ「嫌! 嫌嫌嫌嫌! こないでぇっ! 怖い怖い怖い怖い! 助けてよぉっ! 誰か、誰か助けて!」ブルブル


ロン「落ち着いてってば! ここには怪物なんかいやしないよ!」

ハーマイオニー「マミ! 大丈夫よ! 私たちがついてるから!」ギュッ


マミ「キュゥべえ! キュゥべえはどこ!? いや! キュゥべえを連れて行かないで!」


ポンフリー「っ、これは……みなさん下がって! ドルミーテ!(眠れ)」バシュッ

マミ「ぁ……」パタッ

ハリー「……眠ったみたい」

ハーマイオニー「マミ……」

ポンフリー「……落ち着いたと思っていたのですが……
       皆さんショックでしょうが、ここは私に任せて。授業に出られますか?」


廊下


ハーマイオニー「……」

ロン「とてもじゃないけど、怪物のことなんて聞けなかったね。
   半笑いで、固まったキュゥべえをずっと撫でててさ。さすがに僕だって触れちゃいけないって分かったさ」

ハリー「うん……でも、最初に比べたらだいぶ落ち着いたと思うよ。
     あの夜、僕が見たときはもっと酷い取り乱しようだった」


◇◇◇

事件当日 医務室


ハリー(……マミ? それに、キュゥべえも。どっちも動かないけど……二人とも怪物に……?)

マミ「……ん、ぅ。わた、し……」

マクゴナガル「……! マミ、目を覚ましましたか」

マミ「マクゴナガル、先生……? あの、ここは……? 暗くて、よく……」

マクゴナガル「医務室です。貴女は女子トイレで倒れているのを発見されて……」

マミ「トイ、レ……ああ、そうだ、私、怪物に……! キュゥべえ!? 先生、キュゥべえは!?」

マクゴナガル「……マミ、落ち着いて聞いてください。キュゥべえは、ミセス・ノリスと同じく……」

マミ「あ……となりの、ベッド……」

QB「……」

マミ「い……や、そんな、キュゥべえ、私を庇って……」

マクゴナガル「落ち着きなさい、マミ。大丈夫です、マンドレイクさえ収穫できれば——」

マミ「キュゥべえ、キュゥべえ! そんな、嘘よ! だって、大丈夫だって! 大丈夫だっていってたじゃない!
   嘘つき! ねえ、目を覚まして! 起きてったら——!」

マクゴナガル「……っ」

ダンブルドア「……マダム・ポンフリーや。眠り薬を」

ポンフリー「はい……さあ、これを嗅いで。大丈夫、落ち着きますよ……」

マクゴナガル「ああ、アルバス。こんなことってあるでしょうか……この子は両親を失って、この猫だけが家族だったのに……
         いつだって一緒にいて、それがこんな……この子のために、私に何ができるのでしょう?」

ダンブルドア「大切な者を失った傷は、いかなる魔法でも癒せはせん。共にいてやることじゃ、ミネルバ。
        そして、さらなる犠牲者を出さぬためにもわしら教師が尽力せねばのう」

ハリー(……)

◇◇◇


ロン「……それにしても、これで襲われたのが三、石になったのは二人、いや二匹か。
   マミだけ助かったのはなんでだろう? キュゥべえが庇った? でも猫に威嚇されたくらいで怪物が怯むかな?」

ハリー「猫の鳴き声が嫌いな魔法生物なんじゃないかな。
     ほら、去年のフラッフィーもあんな成りして音楽が弱点だったし……」

ロン「でもそのキュゥべえはともかく、その前にミセス・ノリスも石にされてるわけだし……」

ハリー「ああ、そうか……」

ロン「まあ、ポリジュース薬が完成すればマルフォイの奴から聞き出せるけどさ。
   どうせあいつが犯人に違いないんだ。もちのロンで。だってあいつの家系を見てみろよ、親父からしてろくでもない……」

ハーマイオニー「……やめましょう」

ロン「? 今なんか言ったかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「ポリジュース薬を作るの、やっぱりやめましょう」

ロン「へぁ!? なんでさ! そもそもそれを提案したのは君だろ?」

ハリー「ロン……ちょっとちょっと」コソコソ

ロン「ん? なんだよハリー。だってさ、あの大釜を僕がどれだけ苦労してトイレに運んだか——」

ハリー(考えてもみなよ、ハーマイオニーだって一応女の子なわけだしさ。
     マミがあんな状態になってるのを見ちゃったら……)ヒソヒソ

ロン(ああ……確かに怖くなってもしかたないか。でもどうするのさ。マルフォイを放っておくのかい?)ヒソヒソ

ハリー(それは……)ヒソヒソ

ハーマイオニー「……あなた達、何を勘違いしてるのかしら?」

ハリー・ロン「……へ?」


放課後


ドラコ「はー、今日もようやく授業が終わったな」

 いま授業を終えて寮に帰ろうと速足している僕はホグワーツに通う純血な男の子。

 強いて違うところをあげるとすればその中でもかなりの名家の出であるってことかな。名前はドラコ・マルフォイ。

ドラコ「全く、無駄な時間だったと思わないか? あのギルデロイ・ロックハートとかいう屑はクビにするべきだよ。
    あの幼稚な授業内容を父上が見たらなんと仰られるか! お前らもそう思うだろ?」

ゴイル「ああ」

クラッブ「うん」

 こいつらはゴイルとクラッブ。僕の子分だ。馬鹿でトロくて顔も見れたもんじゃないけど、まあその分扱いやすくていい。

ドラコ「ふん! その癖、女子どもにはきゃーきゃー言われちゃって!
    全く、あの教師も教師だけど、女子も女子さ。見る目ってもんが全く養われてない。お前らもそう思うよな?」

ゴイル「ああ」

クラッブ「うん」

ドラコ「まあいいさ。どうせもうすぐ、秘密の部屋の怪物が——うん?」

女の子「あの、すいません……」

 ふと感じた気配に前を見やると、ひとりの女の子が佇んでいた。一年生だろうか? 見覚えはないが、結構可愛い顔立ちをしている。

 なにやら顔を赤らめてモジモジしているな——ははん? これはもしや……


女の子「あの、私、先輩のこと、一目見た時から……」

 ああやっぱり! 僕はなんて罪な男なんだろう。見覚えのない女の子さえ、僕の美貌の前にいちころだなんて。

ドラコ「はっはっは、全く急すぎて困るな。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。そこらの空き教室ででも——」

女の子「あ、ドラコ先輩じゃなくて」

ドラコ「へ?」

 我ながら間の抜けた声を上げ、改めて女の子の熱っぽい視線を辿ると——おい、待て。

女の子「グレゴリー先輩……ちょっと二人きりでお話しできませんか? お菓子も用意してあるんです」

ゴイル「……!」

 おい! 嘘だろ!

 この女の子、目が悪いんじゃないのか! それとも悪いのは趣味か?

 なんてことを胸中で絶叫している内に、我が子分たるグレゴリー・ゴイルは、

ゴイル「……ふっ」

 と、何やら腹の立つ勝ち誇った笑みを浮かべながら、女の子と一緒に歩いて行きやがった。


ドラコ「……おい、クラッブ。ほっぺ」

クラッブ「うん」ガスッ

ドラコ「痛い! 違う! 僕のを叩くんじゃなくて、お前のを叩かせろって言ったんだ!」

 畜生、思いっきり叩きやがって。前から思ってたが、こいつ、実は僕のこと嫌いなんじゃなかろーか。

 しかしどうやら夢ではなさそうだ。

ドラコ「……驚いたね。あのゴイルを。あのゴイルをだぜ?
    あいつと一対一でお茶を飲みながらお話ししたいなんて奇特な奴がいるなんてな」

クラッブ「うん」

ドラコ「まあ、僕くらい寛容で人の上に立つ素養がある者からしてみれば、別に嫉妬なんかしないけどね。
    心から祝福するさ。なんせあいつの人生、ここが幸せの絶頂に違いない。あとは下り坂だ。だろう?」

クラッブ「うん」

ドラコ「よし! 寮に帰っておやつでも食べるか! 
     マルフォイ家御用達の、さっきの女が用意したとかいうお菓子よりも百倍は美味い菓子があるぞ。
     ゴイルはどうせ食ってくるんだろうし、残さなくていいぞ。ふたりで全部食っちまおう」

 そういうと、クラッブはニヤリとこちらに笑いかけてきた。

 うん。やはり部下には鞭ばかりではなく飴もやらなくては。決して、ご機嫌取りなんかじゃないぞ!

ドラコ「あーあ。ゴイルの奴は可哀想になぁ。あんなに美味い菓子が食えないなんてなぁ——ん?」


 そんなことを言いながら歩いてると、再び目の前に人影が。

女の子B「あの、私、先輩のこと、一目見た時から……」

 デジャヴ!

 僕は咄嗟に壁に肘を突き立て体をささえ、斜め45度の姿勢で女の子に流し目を送る。

ドラコ「はは、やれやれ。全く、参ったな。これから僕はティータイムと洒落こもうとしてたんだが。
    まあなんだ、よければ君も——」

女の子B「あ、マルフォイの馬鹿倅じゃなくて」

ドラコ「おい待て、いまこいつなんつった」

 僕が抗議しようとするも、新たに表れた女の子はクラッブの方に熱い視線を送り——って、ちょ、待ておい。

女の子「ヴィンセント先輩……ちょっと二人きりでお話しできませんか? お菓子も用意してあるんです」

 吐きやがった! なにやら聞き覚えのある台詞を!

クラッブ「……」

 そしてクラッブの方を見れば、迷うような視線を僕の方に送っている。

 いや許すわけないだろう! その女は、この僕を馬鹿呼ばわりしたんだぞ!

ドラコ「クラッブ、ぶん殴れ!」

クラッブ「うん」ドゴォッ

ドラコ「ぐほぉっ!?」

 ち、違う、殴るのは僕じゃない。僕じゃないのに……

 なんて、床に転がって悶絶している僕を尻目に、我が部下たるヴィンセント・クラッブは、

ゴイル「……はっ」

 と、何やら腹の立つ勝ち誇った笑みを浮かべながら、女の子と一緒に歩いて行きやがった。


ドラコ「……畜生! なんだってんだ! 二人とも、どこの馬の骨とも分からん女にフォイフォイついていきやがって!
    それでも純血か! もうお菓子わけてやらんぞ!」プンプン

 ようやく立ち上がれる程度に回復して、僕を裏切った二人に対する悪罵の言葉を思いつく限り吐き出す。

 ああ、お腹がしくしくと痛む。これはクラッブの馬鹿力のせいだ。
 
 決して、僕を差し置いて、あの二人が女の子に声を掛けられてる状況が悲しいわけじゃない。悲しくないったらない。

ドラコ「ああくそ、目の前が霞んできた……泣いてるわけじゃない。泣いてなんかいないぞ……くそ……」

 そうして、ずりずりとみっともなく進む僕。その眼前に、今度はなんと、

ハリー「マルフォイ! ここにいたのか!」ボロッ

ロン「人の気も知らないで、のんきにたらたら歩きやがって!」ボロッ

ドラコ「ってなんだ、ポッターにウィーズリーか。くそ、とっと失せろ」

 泣きっ面に噛み付き妖精とはこのことだ。なんでこんな時に……

ドラコ「……って、なんでお前らそんなにボロボロなんだ?」

ハリー「僕たちは止めようとしたんだ。だってまだ前の計画の方が穏便だし——」

ロン「いや、説明はいいから早く逃げろ! 寮の中に入っちまえば何とか有耶無耶に——」

 なんだ? 何を言ってるんだこいつらは?

 でもなんだか様子が必死だし、冗談を言ってるようにも見えない。

ドラコ「な……なんだよ。ふん、お前らに言われなくたって、これから帰るところだったさ」

 なんにせよ気味が悪いので、僕は歩調を早めさっさとこの場を後に——











ハーマイオニー「アクシオ! マルフォイのマントよ、来い!」

ドラコ「ぐえっ!?」

ハリー「ああ、遅かった……」

 何やらポッターの奴が言ってた気がするが、気にする余裕なんかなかった。

 突如、マントが物凄い勢いで引っ張られ、抵抗もできずに僕を運び去っていく。

 っていうか、苦しい! 首にマントが絡まって、息が、意識が……



 そして、次に目を覚ました時にはどこかの空き教室の中だった。

 どこなんだ、ここは——そう思い、辺りを見回そうとしたところで、首が全く動かないことに気付く。

ハーマイオニー「あら、ようやくお目覚めかしら?」

ドラコ「っ、グレンジャー! お前の仕業か!?」

 見ると、そこにはあの糞生意気な、頭でっかちの穢れた血、ハーマイオニー・グレンジャーが僕を見下ろすように佇んでいた。

 どうやらこいつが、僕に"全身金縛りの呪い"か何かを掛けたらしい。

ドラコ「何の真似だ!」

ハーマイオニー「それは自分の胸に聞いてみたらどうかしら?」

ドラコ「何を言って……お、おい。なんだよ、えらく目がマジじゃないか」

 そう言えば……全身金縛りは、本来なら首から上も動かなくなる、つまり喋ることもできなくする呪文の筈だ。

 腹正しいが、グレンジャーの魔法の腕は学年でもトップクラスだ。

 こいつが呪文を間違えるとは思えない……とすると、わざわざ僕の首から上だけ動くようにしたということだ。

ドラコ「な、何だよ。なんか用があるなら言えよ!」

ハーマイオニー「最初はね? 私も穏便に済まそうと思ってたのよ?」

 僕を無視して、グレンジャーが喋りだす。微妙に焦点を結んでない瞳が異様に怖い。

ハーマイオニー「でも、ねえ? 薬ができるまで一ヶ月? は! ロンじゃないけど、あの時の私は何を悠長なことを言ってたのやら。
          手っ取り早く、マミが襲われる前に、こうしておくべきだったのよ」

ドラコ「と、トモエ? トモエがなんだよ?」

ハーマイオニー「あーあー。いいのよ、無理に話そうとしなくて。だって悪いじゃない?
          こんな、放課後の時間を提供してもらってるのに、タダで話してもらおうなんて」

ドラコ「僕は拉致されたんだぁ! お前に付き合うなんて一言も——」

 そんな僕の喚き声を無視して——グレンジャーの奴は何やら机の下からごそごそと荷物を取り出し始めた。


ハーマイオニー「色々、サービスしてあげるわ。ねえ、目は疲れてないかしら? 目薬は要らない?」

 そう言ってグレンジャーが取り出したのは、どう見てもレモンだ。半分にカットされていて、切り口から果汁が零れ落ちている。

ハーマイオニー「それとも、マッサージかしら? わたし、パパに上手だってよく褒められるのよ?」

 そんなセリフを吐きながら、しかしグレンジャーの手にあるのはどう見ても竹でできたノコギリだ。

 よし、なんかろくでもないことを考えているってことは分かった!

ドラコ「お、お前ぇ! お前、この僕にこんなことしてタダで済むと……
    そ、そうだ! すぐにゴイルやクラッブが気づいて……!」

ハーマイオニー「エレクト(立て)」

 またもやグレンジャーが僕の声を遮り、呪文を唱える。

 僕の体が浮き上がり、見えない十字架に貼り付けにされたように立たされると、そこには——

ドラコ「ゴイル! クラッブ!」

 先ほどまでの僕と同じように、床に突っ伏して死んだように動かない二人の姿が。

ハーマイオニー「簡単な眠り薬よ。ちょっと下級生の子に"お願い"して、あなたから引き離してくれるように頼んだの」

 嘘だ。ぼっちのこいつにお願いを聞いてくれるような下級生の友達なんかいるわけない。

 絶対、なんか陰険かつ魔法的な手段を使ったに違いないのだ。

ハーマイオニー「さ、頼みのお友達はみーんなお寝んねしてるわ。これでゆっくり"お話し"できそうね?」

ドラコ「お、お前ぇ……こんなことが許されると……あとでスネイプ先生に言って、退学に……」

ハーマイオニー「大丈夫よ。ばれなければ規則違反にはならないもの」

ドラコ「ど、どういう意味だ——」

 震える僕に対し、グレンジャーはにっこりと満面の笑みを浮かべ。

ハーマイオニー「——だってここから出る時、あなたが何か覚えてられるとは思えないもの」




廊下

ハリー「……」

ロン「……なあ、ハリー」

ハリー「なんだい、ロン」

ロン「頭がいい奴は、怒らせちゃ駄目だな」

ハリー「……そうだね。僕たちも気を付けないと」



医務室


マミ「……さて、と。あれだけやれば、ハーマイオニーさん達も怪物に関わろうとは思わない筈。
   医務室生活は何日か伸びちゃったけど、それだけの価値はあるわ」

マミ(キュゥべえ……これでいいのよね?)



◇◇◇

回想




 ズルッ ズルッ 


マミ「いやぁ……開けて、開けてよぅ……」ガチャガチャ

QB『……マミ、時間がない。落ち着いて聞いて』

マミ「キュゥべえ?」

QB『扉の外に居るのが"継承者"だろう……事件を嗅ぎまわってる僕らを始末しに来たんだ。
   ということは、継承者の正体は今日僕らがクィディッチの観戦に行かず、ここに来たことを知っている人物ということになる』

マミ『それって……』

QB『そう。おそらく、グリフィンドールの生徒だ。
   僕らが試合直前まで暖炉の前にいたことは、グリフィンドールの生徒なら誰もが知っている。外への通り道だからね』

マミ『そんな……私たちの寮に継承者が?』

QB『絶対じゃないけど、可能性は高い。少なくとも、次の捜査の指針にはなる』

マミ『……で、でも。私たちの後ろに、怪物が……っ』

QB『……大丈夫。マミ、安心して』

マミ『キュゥべえ? いったい何を……』

QB(怪物は、もう僕たちの数メートル後ろに迫っている……ただその動きは非常に緩慢だ)

QB(事情は知らないけど、継承者は迷っているんじゃないか? だとしたら——)



QB『誰か、助けてくれ! 三階のマートルのトイレだ! 怪物が現れた!』




???「——っ! シューッ シューッ」タッタッタッ




QB『……出力を絞らず、無差別、最大範囲のテレパシーで呼びかけを行った。
   この学校には素質のある子が多い。受け取った子が騒げば、さすがに教師陣も気づくだろう』

  ズルッ ズルッ……

マミ『おとが、遠のいて……た、助かった、の?』

QB『たぶんね』

マミ『……そ、う。よかっ……』パタッ ビチャン

QB『マミ!? ……ふぅ、気絶してるだけか。緊張が解けたせいかな』

QB(しかし、継承者が僕のテレパシーを感知して逃げ出したってことは、継承者は女生徒か。
   これで範囲はかなり絞り込めたな)

 ズルッ ズルッ……

QB(……あとは、怪物の方の正体か。どうも巣穴に戻るみたいだけど……
   やっぱりあの手洗い台が巣に通じる入り口だったんだな)

QB(確認しておこう。刺激しないように、ゆっくりと……床の水に映る影を、確認して……)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇◇◇

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒……ハーマイオニーさん達が犯人探しに関わっちゃうと、
   私みたいに、彼女たちもきっと狙われることになる)

マミ(だから——やっぱり、わたしひとりでやらないと)

マミ(怖くないと言ったら嘘になる。怪物がほんの数メートル後ろに来た時には、それこそパニックを起こしそうだった)

マミ(だけど……今は恐怖よりも、別の感情の方が強い)


QB「」






マミ「継承者さん——言っておくけど、私、とっても怒ってるのよ」


QB『……出力を絞らず、無差別、最大範囲のテレパシーで呼びかけを行った。
   この学校には素質のある子が多い。受け取った子が騒げば、さすがに教師陣も気づくだろう』

  ズルッ ズルッ……

マミ『おとが、遠のいて……た、助かった、の?』

QB『たぶんね』

マミ『……そ、う。よかっ……』パタッ ビチャン

QB『マミ!? ……ふぅ、気絶してるだけか。緊張が解けたせいかな』

QB(しかし、継承者が僕のテレパシーを感知して逃げ出したってことは、継承者は女生徒か。
   これで範囲はかなり絞り込めたな)

 ズルッ ズルッ……

QB(……あとは、怪物の方の正体か。どうも巣穴に戻るみたいだけど……
   やっぱりあの手洗い台が巣に通じる入り口だったんだな)

QB(確認しておこう。刺激しないように、ゆっくりと……床の水に映る影を、確認して……)



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◇◇◇

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒……ハーマイオニーさん達が犯人探しに関わっちゃうと、
   私みたいに、彼女たちもきっと狙われることになる)

マミ(だから——やっぱり、わたしひとりでやらないと)

マミ(怖くないと言ったら嘘になる。怪物がほんの数メートル後ろに来た時には、それこそパニックを起こしそうだった)

マミ(だけど……今は恐怖よりも、別の感情の方が強い)


QB「」






マミ「継承者さん——言っておくけど、私、とっても怒ってるのよ」

おわ。二重だよやっちまいやした

とりあえず投下終了

これはな、ちゃうねん。

ウロボロスオーロラのせいやねん。

書ききったので、校正したら投下します。少なくとも本日中には

投下をしようそうしよう


数日後


ポンフリー「——脈拍、血圧、全て異常なし。これなら明日からは授業へ出るのも許可しましょう」

マミ「ありがとうございます」

ポンフリー「ですが! あくまでも一応、ということです。一日の最後には医務室によって、私の診察を受けること。
       しばらくはそうやって経過を見ましょう。大丈夫、すぐに元気になれますよ」

マミ「はい。分かりました」

ポンフリー「……辛かったら、いつでも相談しにきなさい。キュゥべえは、ミセス・ノリスの隣に寝かせておきますから。
       ああ、それと。マクゴナガル先生があなたを呼んでいましたよ。今日の放課後にでも行っておきなさい」

マミ「マクゴナガル先生が? 分かりました」


マクゴナガルの部屋


 カチャン

マクゴナガル「紅茶です。温まりますよ。さ、お飲みなさい」

マミ「は、はい。あの、いただきます——ん、美味しいです」

マクゴナガル「そうですか、それはよかった。やはり国が違えば、味覚も異なるでしょうから。
         マミは——あー、自宅でも紅茶を飲みますか?」

マミ「はい、母が好きだったので——あ、いえ。兎に角、よく飲みます」

マクゴナガル「……そうですか。何にせよ、折角英国にいるのですから、やはり本場のものを味わっておいて損はないでしょう」

マミ「ええ……」

マミ(……てっきり、怪物について聞かれるものだと思ってたけど……私、なんで呼ばれたのかしら?)

マクゴナガル「……なぜ、呼ばれたのか? という顔ですね」

マミ「あ、いえそのっ。べ、別にこうしてお話しするのが嫌ってわけじゃ——」

マクゴナガル「いえ、いいのです……そういえば、こうして貴女と一対一で話すのは初めてですね。
         もっとも、教師がひとりの生徒につきっきりになるという事態が珍しいものではあるのですが」

マミ「そうですね……前に一度、両親の葬儀の時にお話はしましたけど」

マクゴナガル「あの時は、ほとんどこちらの要求を一方的に伝えただけでしたから……。
         そうですね。本来なら、去年の内にこうした場を設けるべきだったのでしょう」

マミ「……?」

マクゴナガル「一年間、貴女のことを見てきました。頑張って勉強しているようですね。
         ……実技に関しては、好成績とは言いがたいですが」

マミ「あううぅ……」

マクゴナガル「まあ、それはこの際不問にしましょう。
         それよりも大事なのは、貴女がこの学校で上手くやれている、ということです」

マミ「上手く……やれていますか?」

マクゴナガル「ええ。友人にも恵まれ、傍から見ていても十分に学校生活を楽しんでいるように見えました。
         だから……いえ、言い訳になってしまいますね」

マミ「あの、意味が良く」

マクゴナガル「貴女は上手くやれていた。ならば、私が下手に干渉することはないと思っていました。
         貴女を、この世界に招き入れた責任を忘れて」

マミ「責任って、そんなことは……」

マクゴナガル「いえ、私にはそれがありました。貴女に対して、私はもっと責任を持っていなければならなかった。
         もっと貴女のことを気にかけて、相談にのってあげるべきでした」

マミ「相談、って……?」

マクゴナガル「何故、クィディッチの試合中に貴女があのトイレにいたのか——」

マミ「……!」

マクゴナガル「何か、理由があるのでしょう。もちろん話したくないのなら、無理をして話す必要はありません。
         ですが、もしも何か話したいことがあるのなら、遠慮せずに話してみなさい」

マミ「……」

マミ(私とキュゥべえが、怪物の犯人捜しをしていたこと——)

マミ(マートルのトイレに怪物の巣につながる入り口があるかもしれないこと——)

マミ(犯人はグリフィンドールの生徒かもしれないこと——)

マミ(話せば、きっと、マクゴナガル先生なら悪いようにはしない。絶対、私の力になってくれる——)

マミ(でも)

マミ「……ごめんなさい」

マクゴナガル「……そうですか。分かりました」

マミ「あ、あの! でも!」

マクゴナガル「? 何か?」

マミ「あの、私、ホグワーツに来れて良かったです。だから、連れてきてくれた先生には、その、感謝しています。
   覚えてないかもしれませんけど、去年のトロール事件の時、
   先生が私のことを自慢の生徒だって言ってくれてとても嬉しかったんです!」

マクゴガナル「……マミ」

マミ「だから、あの。全然、先生が責任とか感じることはなくて! その、私、先生のこと——」

マクゴナガル「……ふぅ。生徒に心配されるとは、私もまだまだ、アルバスには及ばないということですか」

マミ「そ、そんなことは!」

マクゴナガル「……私は、貴女に謝らなければいけないと思っていました。ですが、違うようですね。
         掛けるべき言葉は、こちらでした——ありがとう、マミ」

マミ「あ、いえ、そんな! こちら、こそ……ありがとう、ございます」

マクゴナガル「ですが、いつでも頼ってください。私は貴女の教師で、貴女は私の生徒なのですから。
         ……紅茶をもう一杯、いかがです?」

マミ「はい……いただきます」


グリフィンドール 女子寮 自室


ラベンダー「あ、マミ! もう大丈夫なの!?」

パーバティ「心配したんだから! 怪物に襲われたって聞いて——」

マミ「……ありがとう。でも、もう大丈夫。明日からは授業にも出られるわ」

ラベンダー「そうなんだ、良かった……ねえ、その、怪物のことについて聞いても平気?」

パーバティ「ちょっと、ラベンダー!」

ラベンダー「いいじゃない、ちょっと聞くくらい……パーバティだって気になるって言ってたじゃない」

パーバティ「それは、そうだけど……」

マミ「……ごめんなさい。気絶しちゃって、何も覚えてないの……私のこと、噂になってる?」

ラベンダー「ぶっちゃけ、あなたが襲われてすぐの頃はその話でもちきりだったわ」

パーバティ「今は落ち着いてるけど、授業に出始めたらまた再燃するかも……っていうか、絶対するわ」

マミ「……そう」

ラベンダー「大丈夫よ! もしも無神経に聞いてくるような奴がいたら、私達が守ってあげるわ!」

パーバティ「うん、ラベンダーは十秒前の自分の行動を思い出してみましょうか」

マミ「……くすっ。ありがとう、二人とも」


翌日 廊下


ハッフルパフ生「君、怪物に襲われたって本当——?」

グリフィンドール生「どんな奴だったの? 牙はあった? 爪は?」

レイブンクロー生「ねえあんた、しわしわ角スノーカック信じる?」

マミ「あのぅ、えーっと」

ラベンダー「はいどいてー。取材はマネージャー通してくださいねー」

パーバティ「全部お断りだけど。ほら、授業に遅れちゃう。ただでさえマミは実技があれだから成績もあれなのに……」

マミ「あれって何? ねえ、あれって何?」


ハッフルパフ生「ああ、行っちゃった……」

グリフィンドール生「いつも一緒にいた猫、いないね。やっぱり猫は助からなかったんだ」

レイブンクロー生「スノーカックはいるよ」


フィルチ「貴様ら! そこで集まって何をしている! もう授業が始まるぞ! 全員処罰してやろうか!」

ハッフルパフ生「うわあフィルチだ! 逃げろ!」ダッ

グリフィンドール生「おっと用事を思い出したー!」ダッ

レイブンクロー生「ふーんふーんんーふー」ダッ

フィルチ「全く……」


グリフィンドール生『いつも一緒にいた猫、いないね。やっぱり猫は助からなかったんだ』


フィルチ「……」


12月 玄関ホール


ハリー「はー、これからどうしようか。結局、マルフォイは白だったもんなぁ……」

ロン「ハーマイオニー曰く、ね。一体、どんな方法で吐かせたか知らないけど。
   ところで、そのハーマイオニーはまた例のあれかい?」

ハリー「ああ、教室に残って、マミに勉強を教えてるよ」

ロン「ここ最近ずっとだもんなぁ。まあ、仲直りできたのはいいことだけどさ。
   マミも授業にでるようになってからは前みたいに元気だし——」

ドラコ「やあ、ポッターとその腰巾着じゃないか」

ロン「うわ、湧いた」

ドラコ「人をボウフラみたいに言うのはやめて貰おうかウィーズリー。この礼儀知らずめ」

ハリー「礼儀は知ってるさ。それを払うべき人物と、そうでない奴もね」

ドラコ「黙れよポッター。いいか、我がマルフォイ家は純血の中でもそれはもう高潔な——」

ハーマイオニー「——高潔な、なに?」

ドラコ「ピィッ!?」ビクン

ハリー「あ、ハーマイオニーとマミ。もう勉強はいいのかい?」

マミ「ええ、お待たせしちゃってごめんね」

ハリー「気にしないで——ところでマルフォイ、何の話だったっけ?」

ドラコ「きょ、今日はこのくらいにしといてやる! じゃあな腐れグリフィンドールども!」ダッ

ロン「行っちゃった。あれ以来、ハーマイオニーの傍には絶対近寄らないもんなぁ、あいつ」

ハリー「楽でいいけど、張り合いがないよね。っていうか、マルフォイの奴、君に何されたか覚えてるんじゃないの?」

ハーマイオニー「あら、そんな筈ないわ……でももしかしたら無意識下でトラウマにはなってるかも。
          よく考えたら濡れ衣だったわけだし、か、可哀想なことしちゃったかしら?」

ハリー「いいと思うよ、マルフォイだし」

ロン「ああ、マルフォイだし」

マミ「あの、なんの話?」

ハリー「いや、別に何でも……ん? なんだろう? 掲示板の前に人だかりが……」


玄関ホール 掲示板前


シェーマス「やあハリー、今夜から『決闘クラブ』が始まるんだって」

マミ「決闘って、あの決闘?」

ロン「マグルの決闘がどんなものか知らないけど、まあ一対一で魔法を掛け合って勝負する奴さ」

ディーン「決闘の練習か……最近物騒だし、役に立つかな」

ロン「え? ディーン、きみ、怪物がきちんと決闘の作法を守るとでも思ってるの? ……いや、面白そうだけどさ」

ハリー「ロン、僕らも行ってみない? 僕、決闘ってみたことないし」

ハーマイオニー「私も。本でどんなものか読んだことはあるけど……」

マミ(決闘……怪物を相手にするのは別として、"継承者"と戦うには有効かしら?)

ロン「まあ確かに、学んでおいて損にはならないよな……でも誰が教えるんだろう?」

ハリー「誰でもいいさ、まともに教えられる先生なら……」


夜 大広間



ロックハート「やあ皆さんこんばんわ! 今夜から始まる決闘クラブ、顧問はこのギルデロイ・ロックハート!
        助手には魔法薬学のスネイプ先生をお呼びしました!」

スネイプ「……」


ロン「嘘だろおい。考え得る限り最悪の組み合わせだ!」

ハリー「僕もう帰りたくなってきた。少なくとも二度と来ない」

ハーマイオニー「ああ、嘘でしょ? まさかロックハート先生に直接手ほどきしてもらえるなんて!」

マミ「そうね! ロックハート先生なら最適だわ!」

ハリー「もう突っ込む気も起きないけど、君らのロックハートに対するその信頼はどこから来るの?」




ロックハート「さて、私たちがこれから模範演技を行います! ああ、大丈夫! 命に関わるような呪文は使いません!
        ですから皆さん、明日も魔法薬の授業はありますよ? 宿題はきちんとやるように!」

ロン「その論で行くと、防衛術は休講かな」

ハリー「命に関わるような呪文は使わないって……スネイプの奴、控えめに言っても"今すぐ殺してやる"って顔してるけど」

ロックハート「はいそれでは行きますよ、よーくご覧ください——3、2、1!」

スネイプ「クルーシ——エクスペリアームス!(武器よ去れ)」ガオン!

     グシャッ

ロックハート「」

ハリー「ウワ、ロックハートが潰れたカエルみたいに壁に張り付いてる……」

ロン「いまスネイプ、なんか別の呪文唱えようとしてなかった? ロックハートの奴、どんだけ遅いんだ……」

ハーマイオニー「そ、そんなわけないわ! ほら、ロックハート先生は直前にカウントしてたから!
          だからちょっと遅れちゃっただけよ! ねえマミ? ……マミ? 何してるの?」

マミ「え? べ、別に何でもないわ? 本当よ?」ビクッ


ロックハート「は、はい——げほっ、大丈夫。大丈夫です。毛ほども効いてません。
        今のが"武装解除"の呪文です。ご覧の通り、私は杖を失ったわけですね。あー、ところで私の杖はどこに……?」


ハーマイオニー「マミ! あなたはまた抜け駆けしようと! ほらよこしなさい!
          その杖は私が! ロックハート先生に! 届けに行ってあげるから!」

マミ「さ、先に拾ったのは私だもの! いくらハーマイオニーさんでも、こればっかりは……!」

ハーマイオニー「いーからよこしなさい! すぐさまよこしなさい! ほら、あれよ? 私たち友達じゃない?
          病み上がりの友達を心配する友達想いの私。ね? だからほら、杖から手を離して……!」グググ!

マミ「ご心配なく、もう健康ですから! でもそうね、リハビリは必要かも。だからほら、壇上まで歩いて行かなくちゃ……!」グググ!


            メキッメキッ、ミシッ


ロックハート(ノォオオオオオオウ!)ダッ


ハリー「凄いしなってる。そして不吉な音が」

ロン「折れちまえ。どうせ役に立たないんだから」


マミ「まさかわざわざ、ロックハート先生が取りに来てくれるなんて……」ポー

ハーマイオニー「触っちゃった触っちゃった! ロックハート先生の手に触っちゃった!
          もうこの手、洗わないわ!」

ロックハート「はー、はー……よし、私の杖は無事みたいですね……
        えー、話を戻しますが、武装解除呪文。確かに有効な術です、スネイプ先生。
        ですがそれ故に、見え透いた呪文でもあります。無論、私が使えば別ですが」

スネイプ「……ほう? つまり何を仰りたいのですかな?」

ロックハート「生徒に見せた方が教育的だと思ってあえて受けましたが、
        実際に決闘を行う機会があれば、別の呪文を選択するのがいいと思いますよ?
        いや、はっは! これは失礼。つい老婆心が!」

スネイプ「なるほど、なるほど。聞いたかね、諸君。ロックハート教授は中々決闘にお詳しいようだ」

ロックハート「いやいや、それほどでも。ははは、単に難事件を解決しまくって、それを本にしたのが全てベストセラーというだけで——」

スネイプ「では、もう二、三手、御教授願いましょうか? ……今度はもう少し非友好的な呪文にて」ギロッ

ロックハート「あ、は、ははは。いやですね、スネイプ先生。そんな怖い顔しちゃ、生徒が怯えてしまいます、よ?
        そ、それに今夜は生徒に教えるのが目的ですからね!」

スネイプ「ああ、それもそうですな。いや、まことに残念。では、凶悪な呪いは次の機会と致しましょう」

ロックハート「ええ、そうしま——え? 次? 次の機会ってなんです?」

スネイプ「ロックハート教授? 生徒に教えるのではないのか? もう夜も遅い。時間は限られているが?」

ロックハート「え、あ、はい。そうですね……では二人組を作って! 今の武装解除の術を練習しますからね!」



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スネイプ「——で、こうなったわけだが」





ハリー「うわ、足が勝手にクイック・ステップを……!」タタン タタン!

ドラコ「あははは! ぽ、ポッター! あはっ、お前、げほっ、げほっ、ひゃは!
    この僕に、く、くすぐり呪文を! うふふふ、やめっ。苦しい! はあははは!」

ハリー「なんだろう。僕の踊りを笑われてるみたいで甚だ不快だ」タンタン!


シェーマス「うう……光がぁ……人参の、クラゲ帝国……」

ロン「ごめん! ごめんよシェーマス! このボロ杖がいうことを聞かなくて……!」


ネビル「ははは、やるじゃないか、ジャスティン——」バタッ

ジャスティン「君も、ね。ネビル——」ドタッ


ミリセント「死ねぇ!」ギリギリ

ハーマイオニー「」ブクブクブク

マミ「も、もういいでしょ! 放して、ハーマイオニーさんを放してよぅ……!」ポカポカ

ラベンダー「マミ、それよりもあなたが吹っ飛ばしたクラッブが、その、息してないみたいなんだけど——」



スネイプ「フィニート・インカンターテム!(呪文よ終われ) ——さて、これはどうしたものですかな、ロックハート教授?」

ロックハート「杖を取り上げるだけだと言ったのに……
        ふむ、むしろ掛けられた呪文から身を守る方法を教えた方がいいようですね」


スネイプ「では模範演技をしましょうか? 我輩が呪いを掛けるからして、教授はそれを——」

ロックハート「は、ハリーとドラコ! 前に来て! 来てください! 二人にやってもらいましょうね!」

ハリー「そのままスネイプにぺちゃんこにされれば良かったのに……」

ドラコ「なんだ、怖いのか、ポッター?」

ハリー「ハーマイオニー、マルフォイがどうしても君と模範演技がしたいって——」

ドラコ「ひぃっ! は、早く壇上に行くぞ!」

ハリー「ちょ、引っ張るなよマルフォイ!」



ロックハート「いいですか、ハリー。これからドラコが呪文を唱えますから、君はそれを防ぐんです。
        防御の呪文は"ブロテコ・トラタム(方金の守り)"ですからね」

ハリー「その呪文、本当に合ってます?」

ロックハート「はは、不安ですか? 大丈夫、いざとなったら私がついてますから!」

ハリー(不安が一ミリもぬぐえない……)

ロックハート「ではいきましょう。3、2、1。はい!」

ドラコ「サーペンソーティア!(蛇出でよ)」バシュッ


蛇「にょろ——ん!」


マミ「お、大きな蛇ね……」ビクッ

ロン「蜘蛛じゃなくて良かったけど、ハリー大丈夫かな?」

ハーマイオニー「大丈夫よ、ロックハート先生がついてるもの!」

ロン「ハリーの奴、本当に大丈夫かな」

ハリー「う、わ。ブロテコ・トラタム! ——あ、やっぱり駄目だ。何も起こらない」

蛇「にょろにょろ」

ロックハート「おやおや、はっは! ちょっと難しい呪文でしたかね! でもご安心を、私が追い払ってあげましょう!
        えいやっ!」バシュッ

蛇「にょろー!?」ビュゥン!

ジャスティン「うわ、こっちにきた!」

蛇「……シャーーーーーッ!」

ジャスティン「しかも怒ってるぅぅぅうううう! 杖っ、杖っ (ポロッ) ああ落とした!?」

ロン「本当にロックハートは余計なことしかしないな!」

ハーマイオニー「で、でもほら、あれよ。緊急事態だったから!」

マミ「そ、そうよ。ほら、一応追い払うことには成功したわけだし」

ロン「言ってる場合か! 助けないと、でも僕がやるとシェーマスの二の舞になりそうだし——」

ハリー「……シューッ! シューッ!(手を出すな!)」

蛇「! ……にょろーん」

マミ「——!? 今のって……」



ざわざわ

「ポッターが、いま……?」

「ああ、聞いた。確かに聞いたぞ……」

「でも、ポッターが……?」

                   ざわざわ


ハリー「え? なに、この空気。ジャスティン、怪我は……」

ジャスティン「う、わ。く、来るな!」ダッ

ハリー「は? 助けてやったのに、なんだあの態度……ねえ、ロン」

ロン「ハリー。こっち来て……」グイッ

ハリー「わ、ちょ、引っ張らないで。何だよ、なんだっていうのさ?」

ハーマイオニー「いいから、ね? 場所を移しましょう」

ハリー「分かった。分かったけど……」スタスタ




マミ「……」

ラベンダー「驚いたわ。まさかハリーがパーセルマウスだなんて……」

マミ「パーセル、マウス? それって何なの?」

ラベンダー「あら、マミは知らないの? あのね、パーセルマウスっていうのは……」


夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「Zzzzz...」

ハーマイオニー「Zzzzzz...」

マミ「……」



◇◇◇


ラベンダー「……それで、パーセルマウス、つまり、さっきみたいな蛇語を話せるのは、大抵が闇の魔法使いなの。
       あのサラザール・スリザリンもそうで、だからスリザリンは蛇が寮のマークでしょ?」


◇◇◇



マミ(……蛇語……闇の魔法使いの証?)


マミ(あの、独特の、息を歯の隙間から思いっきり吹くような音……)


◇◇◇

???『……シューッ!』


マミ「? キュゥべえ、いま何か言った?」

QB「? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
   扉の外——廊下から聞こえたように思うけど」

◇◇◇



マミ(でも、そんな……まさか、ハリーくんが継承者なんて。大体、ハリーくんはあの時、クィディッチの試合に……)



◇◇◇

QB『そう。おそらく、グリフィンドールの生徒だ。
   僕らが試合直前まで暖炉の前にいたことは、グリフィンドールの生徒なら誰もが知っている。外への通り道だからね』

マミ『そんな……私たちの寮に継承者が?』

◇◇◇

ラベンダー「蛇語を話せる人って、滅多にいないのよ。凄く珍しいの。多分、ホグワーツにも彼以外はいないんじゃないかしら?」

◇◇◇


マミ(……駄目よ! 考えちゃダメ! ハリーくんのわけないんだから!)

マミ(……継承者が蛇語を話せるって話は、先生にすべきかしら。でも、そうしたらハリーくんはますます疑われる……)

マミ(……誰かに、相談したい。ハーマイオニーさんは……駄目。ハリーくんを疑わせるようなこと、させたくないし……
   頼れる、人……ハリーくんを犯人だって決めつけない人……そうだ、マクゴナガル先生なら!)


翌日 グリフィンドール談話室


びゅうううううう——


マミ「大吹雪ね……薬草学、中止になっちゃった」

マミ(時間だけあってもね……変身術は次の時間だし……マクゴナガル先生に早く相談したいのに)

マミ(……そうだ! 変身術の授業が終わってから相談しようと思ってたけど、早めに行って、授業の前に相談しよう!)

マミ「よーし、そうと決まったら善は急げ、よ!」

ハーマイオニー「あら、マミ、どこかに行くの? ……変身術の教科書? まだ時間があるけど」

マミ「ええと、ちょっとマクゴナガル先生に聞きたいことがあって」

ロン「あー、だったら、ちょっとお願いがあるんだけど。
   ハリーもいま外に出てるんだけど、教科書を置いて行っちゃって……
   会ったら、早めに戻るよう言っといてくれないかい? ちょっとほら、あいつ今参ってるからさ……」

マミ「ハリー、くん?」

ロン「君はあんな噂信じてやしないだろ? ま、会ったらでいいからさ」

マミ「う、うん。分かったわ」



廊下


マミ「……」スタスタ

マミ(私自身は……ハリーくんのこと、疑ってる?)

マミ(ハリーくんは、クィディッチの試合でアリバイがある……だから、絶対に犯人じゃない)

マミ(……それなら、さっきロンくんに言伝を頼まれたとき、躊躇っちゃったのは……)

 ドンッ

マミ「きゃんっ! あたた……お尻打っちゃった」

ハグリッド「大丈夫か? ちゃーんと前を見とらんと、あぶねーぞ」

マミ「あ、えーっとハグリッドさん。ごめんなさい、ぶつかっちゃって……」

ハグリッド「はっはっは! 別にお前さんみたいなちびすけがぶつかっても、痛くも痒くもねーさ。
       ん? ああ、お前さん、えーと。確かマミだったか? 去年は助かったぞ、ありがとうな」

マミ「去年? えーと、私、なにかしたかしら?」

ハグリッド「ほれ、あのノーバートの」

マミ「ノーバート」

ハグリッド「いや、だからドラゴンの赤ちゃんを——」

ハグリッド(って、そうだやっちまった! この娘っこはあのことを知らんのだった!
       最近よくハリー達と一緒にいるもんだからつい……!)

マミ「どら、ごん?」

ハグリッド「いやーあははは! 間違えた! 勘違いだった!
       ああほれ、いつまで尻もちついとんじゃ。立ち上がらんと尻が冷えるぞ。ほれ、掴まれ」スッ

マミ「ありがとう……ってきゃあ! に、ニワトリの死体!」ピョンッ

ハグリッド「おっとっと。そういやこれ持っとったなぁ。ま、そんだけ跳ねられるんだったら怪我はしてねーか」

マミ「ああうん、平気ですけど……そのニワトリ、どうするんですか?」

ハグリッド「狐か何かにやられたみたいでなぁ。もう二匹目だし、ダンブルドアに見て貰って、小屋の周りに魔法をかけにゃならん。
       そういや、さっきハリーにも同じ話をしたな。お前さんと言い奴さんといい、考え事しながら歩くのが流行ってるんかい?」

マミ「ハリーくん? 会ったんですか?」

ハグリッド「おう。さっき、あっちの方でな。なあ、お前さん、ハリー達と仲が良いみてえだし、ちいと気にかけてやってくれんか。
       どうもなんかあったみたいでな」

マミ「……分かりました」



マミ(……私、ハリーくんのこと——)

マミ(でも、そんな——ハリーくんのわけ)スタスタ

マミ「あら、あそこに立ってるのは……ねえ、ハリーくん! ロンくんが、教科書忘れてるって——」

ハリー「マ、ミ」

マミ「? どうしたの、酷い顔色だけど……っ!」


ニック「」

ジャスティン「」


マミ「あ、ああ、あ……キュゥべえと、同じ……ゴーストの、ニックまで……」

ハリー「違う。違うんだ、マミ。僕がやったんじゃ——」

マミ「……キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」




ピーブズ「おー ポッター やな奴だー♪ 生徒を殺して楽しいのかー♪」



     ざわざわざわ


「ポッターが!?」「やっぱりポッターか!」「またトモエを襲おうとしたんだ!」


                               ざわざわざわ


アーニー「現行犯だぞ! もう言い逃れはできないなポッター!」

マクゴナガル「おやめなさいマクラミン! ピーブズも! ……ポッター、おいでなさい」

ハリー「違います。先生、僕じゃない。僕、やってません——」

マクゴナガル「残念ですが、私の手には負えません……フリットウィック先生、シニストラ先生、ジャスティン達を医務室へ。
         トモエ、立てますか? 彼らと一緒に医務室へ……」

マミ「だ、大丈夫、です。授業には、出れます」

マクゴナガル「……そうですか。どのみち変身術は自習になるでしょうが、無理はしないことです。
         さあ、ポッター。校長室へ——」

マミ「あ、あの! マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「何ですか、トモエ。やはりどこか——」

マミ「は、ハリーくんじゃ、ないと思います」


マミ(あ、あれ——? なんで私、こんなこと言って……?
   ハリーくんのこと、ちょっと疑ってた筈なのに……口が、勝手に)

マミ「だ、だって。私の時は、ハリーくんクィディッチの試合に出てたし——
   大声を上げちゃったけど、それだってびっくりしたからで、襲われたとかじゃありません」

マクゴナガル「……」

ハリー「マミ……」


     ざわざわざわ


「そういやそうだ」「アリバイはあるな」「誰だポッターが犯人だって言い出したの」


                               ざわざわざわ


アーニー「騙されるなみんな! きっと事前に、怪物に指示を出しておいたんだ!」

マミ「違うわ! だって——」

アーニー「だって、なに?」

マミ「あ……」

マミ(あの時、継承者がトレイのドアの前にいたことを私が知ってるのは、そいつの話す蛇語を聞いてたから)

マミ(蛇語のことをここで言ったら、ハリーくんはますます疑われちゃう——?)

アーニー「きっと君は混乱してるんだ——それに、ほら。ポッターが怖くてそんなこと言うのかもしれないけど、
      ここには先生もいるし、本当のことを言っても——」

マクゴナガル「お黙りなさいマクラミン!」

アーニー「ひっ!」ビクッ

マミ「ま、マクゴナガル先生——」

マクゴナガル「貴女の言い分は分かりました、トモエ。
         ですが、先ほども言った通り、もう私の裁量で扱える範囲を超えています」

マミ「そんな……」

マクゴナガル「……ですから、校長に伝えておきます。被害者からの意見は、一考すべきですから」

マミ「! あ、ありがとうございます!」

マクゴナガル「お礼をされる道理は有りません。当然のことだからやるまでです。
         さあ、行きますよポッター」


翌日 廊下


フレッド「さあさあどいたどいた! ハリー様のお通りだ! 目を合わせるな! みぃんな食われっちまうぞ!」

ジョージ「ひ、ひええええ〜。お助けくだせえ! 後生ですだ! 娘は! 娘だけは!」

パーシー「こら! また馬鹿やってるのかお前らは! 笑い事じゃないんだぞ!」

フレッド「でたなパーシー! グリフィンドールの怪物め!」

ジョージ「みんな、逃げろ! 奴の吐息を浴びた生けとし生けるものは全て、監督生にされちまう!」

フレッド「そいつはおっかない! 完全にスリザリンの怪物より格上だ!」

パーシー「これを見てもまだふざけてられるのか?」グイッ

ジニー「は、ハリーをいじめるの、やめて……」ジワッ

双子「「すいませんでした!」」ペコッ




ロン「やれやれ、パーシーは頭が固いなぁ。フレッド達が冗談でやってるって分からないかね」

ハーマイオニー「でも不謹慎には違いないでしょ。ハリー、平気?」

ハリー「まあ、あの二人は僕がスリザリンの継承者だなんて欠片も思ってないってことは伝わったよ」

ハーマイオニー「あの二人のほかにも、ハリーのこと信じてるって人、結構聞くわよ。
          そういえば、確かにマミの事件の時はクィディッチに出てたものね」

ロン「ダンブルドアもね。昨日君が校長室に呼ばれたって聞いた時はびっくりしたけど」

ハリー「ああ、ダンブルドアも僕じゃないって信じてくれてた……

     でも怪物が人を襲いまくってるって事実には変わりないんだよなぁ」
 
ロン「みーんなこぞってホグワーツ特急の予約入れてたよ。マルフォイは残るみたいだけど」


ハリー「純血だから襲われないって信じてるんだろうね」

ハーマイオニー「呑気なものよね。50年前、前回扉が開かれたときには、人がひとり死んでるって。
          その時の犯人は捕まって追放されたそうだけど。そう言ってたのは自分なのに」

ロン「吐かせた、の間違いだろ。しかもマルフォイは言ったこと覚えてないんだろうし」

ハーマイオニー「う、うるさいわね!」

ハリー「あいつとしちゃ、マグル生まれがどうなろうが知ったこっちゃないってとこだろうさ……
     そういえば、マミは? 昨日、僕が帰ってきてから姿が見えないけど」

ハーマイオニー「マダム・ポンフリーに連行されていったわ。一応、精神面のチェックとケアをするから、って」

ロン「本人は必要ないって抵抗してたけどね。でもまあ、よく考えたらマミって全部の事件現場に遭遇してるわけだし」

ハリー「そっか……昨日のお礼をしたかったんだけどな」


医務室



ポンフリー「今日は絶対安静です。絶対にベッドの上から出しませんからね!」

マミ「うう……大丈夫なのに……」

ポンフリー「聞く耳持ちません。患者本人が、病気に気付いていないというのはよくある話ですから。
       さて、私は所要があるので少し外しますが、外に出たらだめですよ?」

   バタン

マミ「……はぁ。暇になっちゃった。本でも持って来ればよかったわ……」

マミ(こうして時間があると、色々考えちゃうわね……そういえば、佐倉さんは元気かしら?)

マミ(もうすぐクリスマスだし、クリスマスカードの交換とかできたらいいのに……ふくろう便が見滝原に通ってたらなぁ)

マミ(煙突飛行ネットワークも圏外だから、キングズ・クロス駅に行くのにも、未だにポート・キーを使わなきゃだし……
   ポート・キーはマクゴナガル先生が送ってくれるけど、やっぱりご迷惑よね……魔法省にいちいち許可を取らないといけないし)

マミ(うー。パスポート取ろうにも、未成年は親の許可が必要なのよね……
   ていうか、さすがに子供一人で海外に行くとなると、さすがに何か問題になっちゃうわよね、きっと)

マミ(あーそういえばクリスマス、居残り組に丸つけなきゃ……あれっていつまでだったかしら?)

 パサッ

マミ「? 何かしら? ベッドから何か落ちて……これは紙切れ? なにかしら、文字が書いてある……?」


『今すぐ見滝原に帰れ。友達を失いたくなければ』


マミ「……っ!」ポイッ

マミ(いまのって……脅迫、状? いったい、誰が?)

マミ(いや……それより、いま、この医務室の中に、犯人がいる?)

マミ(……杖は、ある。出てきてみなさい。ロックハート先生直伝の武装解除呪文を叩き込んでやるんだから!)スッ

マミ「……」

マミ「……で、出てこないならこっちから行くわよ!」スタッ



  さっ

マミ「ベッドの下……いない」

 シャッ

マミ「怪物の犠牲になった人がいる区画……いない。キュゥべえ、見ててね。仇は取るわよ……」

 ガラガラッ

マミ「書類棚の中……いない」

 ぱかっ ぱかっ ぱかっ

マミ「薬瓶の中……いない」

 ひょいっ

マミ「スリッパの下……いない」

マミ「いない、いない、いない……うう、頭にきた!」ダン!

マミ「卑怯者! 出てきなさい! 言っておくけど、こ、怖くなんてないんだから! 私、強いんだから!」

マミ「出てきた瞬間! コテンパンにしてやるわ! そこ!? (サッ) そこね!? (サッ) それとも……そこか!?」バッ


ハリー「……」

ハーマイオニー「……マミィ」ジワッ


マミ「そこ……か……」

マミ「待って。違うの。そうじゃないの。みんな誤解してるわ。まずは話し合いましょう」

ハリー「いや、いいんだ。分かってるよ。ね? だからベッドに戻ろう?」

マミ「嘘よ。全然分かってない。そんな目してるもの」

ハリー「いいんだよ。もう休んでいいんだ……昨日はありがとう。本当、こんな状態で、僕のことを庇ってくれるなんて……」

マミ「こんな状態ってなに!? 私は正常よ! お願いだから話を聞いて——いや、気を付けて!
   医務室に継承者がいるの! 隙を見せたら攻撃してくるわ! 私達は、何者からかの魔法攻撃を受けている!」

ハーマイオニー「こんな、こんな風になるまで、辛い思いをしてるなんて……マミ!」ダキッ

ハリー「やめろ、ハーマイオニー! 刺激しちゃ駄目だ!」

マミ「ほらもう勘違いしてるぅぅぅううううううう!」

ハーマイオニー「私たち、友達でしょ! 辛いことがあったら相談してよ……!」

マミ「違うの! だってさっき、私の枕元に脅迫状が! ほら、そこに……あれ? ない!」

ハリー「いいんだ、君は疲れてるんだよ、マミ……ハーマイオニー、放して。ほら、彼女をベッドに」

ハーマイオニー「う、ん……ぐすっ。マミ。ほら、休みましょう?
          そして、見えちゃいけないものが見えなくなったら、また一緒に遊びましょうね——?」

マミ「幻覚扱いしないで! あったのよ、確かに! 見たんだもの!」

ハリー「ああ、あった。脅迫状はあった。ねえ、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「ええ、ぐすっ、私も、確かにっ、見た、わ。ぐすっ」

マミ「絶対信じてないでしょ! 物凄い優しい目でこっちを見てても騙されないわよ!」


ロン「おまたせ! マダム・ポンフリーを連れてきたよ!」ダッ

ハリー「! でかした、ロン! 先生、またマミが錯乱して!」

ポンフリー「ありがとうございます。ああ、こんな姿のお友達を見て……さぞ辛かったでしょう」

ハーマイオニー「私たちのことはいいですから、マミを! マミを助けてあげてください!」

マミ「違うの! 脅迫状が! 継承者がこの部屋の中に! 信じてったら!」

ロン「でもさ、マミ。スリッパの下を真面目に捜索するような人、君は信じられる?」

マミ「あ、う、それは、あの……だって、だってそんなノリだったんだもの! うがー!」

ロン「うわあ! 理性が!」

ハーマイオニー「マミ! あの頃の、私たちの知ってるマミに戻って……!」

ハリー「駄目だ、ハーマイオニー! いまのマミは正気じゃないんだから!」

ロン「抑えるぞ、ハリー! 君も手を貸せ!」

ハーマイオニー「マミー! マミー!」ジタバタ

ポンフリー「彼女を連れてさがってください! あとは私が!」

マミ「話を聞いてくれないなら、暴れるしかないじゃない——!」


 この後、クリスマス休暇が始まるまで、マミはベッドの住人だった。


新学期 放課後 グリフィンドール談話室


マミ「……複雑な気分だわ。今年はハリーくんとロンくんもクリスマスカードくれたけど、
   絶対お見舞い的な意味も含まれてるもの……」

マミ「でも、ロックハート先生がお見舞いカード送ってくれたのは素直に嬉しいわ!」


<ミス・トモエへ。ゆっくり、どうかゆっくり、静養してください。
 ほんともう、授業とかの心配はしないでいいですから! 宿題とかも、マミの分は量を少なくしたり、特別にしますから!
 ギルデロイ・ロックハートより>


マミ「そんな、私のこと、特別だなんて……きゃー!」ジタバタジタバタ

ハーマイオニー「う、羨ましくなんてないわ! 私も直筆サイン持ってるもの!」

マミ「でも、このカードにロックハート先生の使ってる香水が染み込ませてあるとしたらどうかしら……?」

ハーマイオニー「なん……ですって……?」



ロン「はい、チェック。あー、チェスも飽きたな」

ハリー「全勝してる側の君が言っていいセリフじゃないよね、それ。ああ、キュゥべえがいればなぁ。
    十回に一回は勝てる寸前までいくのに」

ロン「マンドレイクの成長は順調だっていうし、来年度にはまた会えるさ」

ハーマイオニー「ふぅ! 堪能したわ。一週間、サイン入り教科書のカバー交換は痛手だったけど……」

ハリー「ああ、お帰り。マミとの会話はもういいの?」

ハーマイオニー「終わったわ。マミ、ちょっと図書室に行くって言うから。
          っていうか、気づかなかったの? さっきマミ、肖像画から出て行ったじゃない」

ロン「うーん、なんでだろうね。
   もしかした最近、君らの会話の中に"ロックハート"って単語が出てきたら、
   外界からの情報を遮断するように努めてるからかもしれないね?」

ハーマイオニー「そんなんじゃ、防衛術の授業受けれないじゃない」

ハリー「有用な情報を聞けるんだったら、僕たちも考えを改めるさ」


三階 廊下 マートルのトイレ前


マミ「ふぅ……どうにか抜け出せたわ。これでまた調査ができる。
   クリスマス休暇中は、ハーマイオニーさんたちがずっと私のこと監視してたから何も調べられなかったもの」

マミ(と言っても、なにを調べたものかしら?
   怪物の巣はきっと、マートルさんのトイレにあるのでしょうけど……)

マミ(……あの手洗い台を、どうにかして壊せれば……)

マミ(そういえば、犯人が蛇語を喋ってたんだから、怪物の正体は蛇なのかしら?)

マミ(うう、考えがまとまらないわ。キュゥべえがいてくれたらなぁ……)

マミ「うーん……」スタスタ

 ツルッ! びちゃっ!

マミ「きゃあ! いたたた……もう、なにこれ! 廊下が水浸しじゃない!
   うう、下着までびしょ濡れ……着替えないと……」

マミ「……って、あれ? そういえば、ミセス・ノリスと私が襲われたあの時も水が……!
   水の出元は……やっぱり、マートルさんのトイレね」スッ



マートルのトイレ


 ガチャッ


マミ(慎重に……慎重に……怪物がいても、すぐに逃げるのよ……)

マミ(トイレの中には……うん、いないわね。手洗い台にも、異常なし)

マミ(あとは、個室の中……)

マミ「そこか! (がちゃっ) ……いないわね。次、そこぉっ! (がちゃっ) ……ここも、いない。なら、次っ!
   ローリング・ドア・オープン! (びちゃっ) 冷たい! 水が背中に!」ジタバタ!

マートル「……あんた、何やってんの?」

マミ「ま、マートルさん! 違うの、これは、違うの。そう、怖さを誤魔化すため、自分を鼓舞するためというか。
   あの、だからマダム・ポンフリーに通報とかは、ほんと勘弁してください……」

マートル「まあいいけどさ、別に……はあ、あんたの変な行動見てたら、泣いてるのが馬鹿馬鹿しくなったわ」

マミ「泣いてたの? ああ、だから床が水浸しなのね? でも、どうして?」

マートル「誰かが私に本を投げつけたのよ……ほら、その黒い革表紙の」

マミ「日記みたいね。ずいぶん古そうだけど……えーと、奥付けに出版された年が……今から50年前!?
   ほんと、年代ものね。中には何も書かれてないみたいだけど……あ、でも最初のページに名前だけ……T.M.リドル?」

マートル「その日記、できたらどっかに捨ててきてくれない? 私、これ以上見たくも、触りたくもないから」

マミ「持っていくのはいいけど、勝手に捨てるのは……でも、誰が投げたのかしら? 
   まさかこのリドルって人がまだ学校にいるわけもないし……うーん。まあ、元の持ち主に返せばいいわよね?
   図書室に生徒年鑑とかってあったかしら? 住所が分かれば、ふくろうで送れるし……」


図書室


マミ「T.M.リドル……T.M.リドル……うー、探すのも疲れてきた。
   これ、卒業生しか載ってないんだもの……リドルがいつ卒業したか分からないから、
   最低でも50年前の前後7年を探さなきゃいけないし……買ったのが在学中じゃないんなら、もっと範囲は広がるし……」

マミ「はぁ。本当なら、落とし物ってことでフィルチさんに届ければいいんでしょうけど……
   うう、でもあれ以来話しかけづらいし……」

ハリー「あ、マミだ。まだ図書室にいたんだ……」

ロン「理解できないなぁ。どうやったら本にそこまで熱中できるんだろ?」

マミ「あら、みんな。どうしたの?」

ハーマイオニー「どうしたのって、あのね、心配になって見に来たのよ。もう消灯時間も近いのに、全然帰ってこないんだもの。
          ただでさえ、最近は物騒なんだから」

マミ「え、嘘! もうそんな時間なの……うう、一日の最後を無駄にした気分だわ」

ハーマイオニー「無駄にした、って、何を読んでたの? ……卒業生の年鑑? なんでこんなものを?」

ロン「驚いたなぁ。君が読んでない本が存在したのかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「私だって、読む本くらい選ぶわ」

ハリー「選んであれなんだ……でも、本当にどうしてそんな本を?」

マミ「名前だけしか書いてない日記を拾ったんだけど……日付が50年前なの。住所が分かれば返せると思って」

ロン「おったまげー、凄いボランティア精神だな。僕だったらとっくに捨ててるね」

ハーマイオニー「マミの国ではそういうのが美徳だって、何かで読んだことがあるわ」

マミ「そういうのじゃないんだけど……あ、そうだ。ハリーくん達、これをフィルチさんに渡してきてくれる?」

ロン「本気で言ってるの? 僕、フィルチに会わない為だったら遠回りするのも辞さない……
   あー、その、別にフィルチのことをどうこう言ってるわけじゃなくてね? 相性が悪いって言うかさ」

マミ「別に気にしないから大丈夫よ……でもほんと、どうしましょう。捨てるのは論外だし……」

ハーマイオニー「ちなみに、なんて人の日記なの? 有名な人なら知ってるかも……」

マミ「T.M.リドルっていうんだけど」

ハーマイオニー「うーん、ごめんなさい。知らないわ」

ハリー「僕も。いやまあ、ハーマイオニーが知らないなら誰も知らないだろうけどさ」

マミ「ふふっ、そうね」

ロン「僕、知ってるけど」

マミ「!? ロンくんが!?」

ハーマイオニー「うそ、でしょ……ロンに負けた……?」

ハリー「あー、ロン? 別に見栄を張らなくても……」

ロン「よーし。全員そこに並べ。僕に対する認識を拳で入れ替えてやる」


ロン「って言っても、自慢できることでもないんだけどさ。前に罰当番で盾磨きさせられた時、
   そいつの名前の入った盾を一時間も磨く羽目になったんだよ。そりゃ覚えるってもんだろう?」

ハリー「あ、なんだ。納得した」

ハーマイオニー「良かった……一瞬、勉強する時間を三倍にしようかと思ったけど……寝る時間が無くなるもの」

マミ「世界の理の崩壊は防げたのね」

ロン「君ら、そんなに小突かれたいのかい? 泣きながらパンチするぞ、僕は。
   とにかく、そいつは50年前、5年生の時に特別功労賞を貰ってるんだ。なんでだかは書いてなかったけど」

マミ「50年前の5年生ってことは、卒業はそれから2年後……あった。トム・マールヴォロ・リドル。
   でも住所は書いてないわね……うー、ここまで来て手詰まりなんて……」

ハリー(ねえ、ハーマイオニー。もしかして……)ヒソヒソ

ハーマイオニー(ええ、私もそう思ってたとこ)ヒソヒソ

ロン(何の話だい? 僕にも教えてくれよ。何せ頭が悪いもんでね)ヒソヒソ

ハーマイオニー(リドルは50年前に功労賞を貰った。秘密の部屋は50年前に開かれた)

ハリー(そして秘密の部屋を開けた人物は、ホグワーツから追放された)

ロン(だから?)

ハーマイオニー(こう考えることはできない? リドルが秘密の部屋を開いた犯人を捕まえて、功労賞を貰った)

ハリー(そしてそれに関わることが、日記に書いてあるかもしれない)

ロン(あれ? もしかして、僕の方が記憶力いいのか? 名前しか書いてないって、さっきマミが言ってたけど)

ハーマイオニー(透明インクとかかもしれないじゃない!
          マミは50年前の情報を何も知らないから、あれをただの日記としか思ってない。
          多分、詳しく調べてはいない筈よ)

ロン(じゃ、ちょっと借りようか? ああでも、正直に話すのは不味いかな?)

ハリー(彼女の精神に負担を掛けるのは良くないね、確かに)

ロン(よし、ちょっと作り話でもするとしよう。なに、善意の嘘だもの。構うもんか)

ロン「あー? マミ、やっぱり僕がフィルチに渡してくるよ。やっぱりさ、こういう時は助け合いが大事だよね」

マミ「何を企んでいるの?」

ロン(おい! シンキングタイムゼロで見破られたぞ!?)

ハリー(馬鹿! ロンの馬鹿! いくらなんでもそれはないよ!)

ハーマイオニー(嘘をつくにしても、もっと分かりにくい嘘をつきなさい!)

マミ「……なーんてね。ありがとう、ロンくん。それじゃあお願いするわ」ヒョイッ

ハリー(最高だ、ロン。さすが僕の親友!)

ハーマイオニー(あなたを信じてたわ。愛してる!)

ロン(寮に戻ったら、こいつら絶対に殴ってやろう)


2月14日 朝 大広間前廊下


ハリー「はあ、眠い……昨日も遅くまでクィディッチの練習だったしなぁ。
     今年こそ優勝できそうだし、ウッドの意気込みも分かるんだけど」 

ハリー「それにしても、最近は平和だなぁ。あれ以降、怪物は誰も襲ってないし。
     結局、リドルの日記はハーマイオニーがいくら調べても二重の意味で白だったけど、平和なら別にいいや」

ハリー「さて、寝坊してちょっと遅れちゃったけど、まだ朝食には十分間に合うよな……」


  ガチャッ


ハリー「……部屋を間違えたみたいだ。それか、僕もマミみたいに幻覚がみえるようになったか」

ロン「どっちも外れだよ、ハリー。ここは大広間で、目の前のこれも現実さ」

ハリー「そこらじゅう有毒植物みたいなけばけばしい色の花で覆われて、天井からハートの紙ふぶきが降ってくるこれが?
     嘘だといってくれ。最初、ここがホグワーツかどうかさえ迷ったんだから。誰だ、こんな馬鹿なことやった奴は」

ロックハート「諸君! バレンタインおめでとう! 私のピンクのローブ、おしゃれでしょう?」

ロン「説明が必要かい?」

ハリー「いや、やっぱりいいや」

ハーマイオニー「ロックハート先生が! 納得の素敵な内装ね!」

マミ「凄い! 凄いわ! これがイギリス流のバレンタインなのね!」

ネビル「いや、ちょっとマミ? 違うよ? これはイギリスの名誉を掛けて言うけど、違うからね?
     ハリー、ロン。君たちからも何か言ってやってよ」

ハリー「今日の朝食、紙ふぶきで凄く食べにくいなぁ……」モグモグ

ロン「せめて食えるものを降らしてくれたらいいのにな。ミントの葉っぱとかさ」

ネビル「あ、駄目だ。聞いてない」


ロックハート「現時点で47人の方が私にバレンタインカードをくださいました! おっと、出遅れったって嘆く必要はありません!
        大切なのは、込められたハートですからねっ☆」パチッ

マミ「流石ロックハート先生。名台詞ね……」

ハーマイオニー「メモしておかないと……」

ネビル「ハリー、塩取ってもらっていい?」

ハリー「はい、ネビル。それ、ポリッジ? だったら熱いうちに刻みチーズ掛けると美味しいよ」

ロン「冷めたら蜂蜜垂らしてもいけるよな。ドライフルーツも悪かないけど」

ロックハート「さらに! 配達キューピットを用意しました! 彼らが今日一日、皆さんにカードを配達してくれます!
        配達してほしい人は、私の部屋の前にポストを設けたので——」

配達妖精「……」

ジョージ「うわ、なんだあれ。ぶっさいくな小人が仮装してやがる。どういうセンスしてやがんだ」

フレッド「多分、ロックハートが頭の中で飼ってる生き物だろ」

ジョージ「ああ、納得。頭の中に何が入ってるのか前から疑問だったけど、あれか。
      きっと餌は奴さんの脳みそだな」

フレッド「おいおい、それじゃあっという間に餓死しちまうだろ?」

ジョージ「それもそうか。HAHAHA——あれにカードを届けられるくらいなら自殺した方がましだな」




昼食後 廊下



配達妖精「ハリーポッター! あなたに愛のお届けデース☆」

ハリー「よりにもよって、人が大勢いるここで、来たか——ロン、杖を貸してくれ。一か八か投げつけてみよう」

ロン「それよりも逃げなよ。食い止めてあげるからさ」

配達妖精「OH、ノ〜ゥ! 逃げられたら、ワターシ、仕事まっとうできませ〜ん! 家族が飢え死にしマ〜ス!」

ハリー「キューピットのくせに、なんでそんな重たい設定抱え込んでるんだ君は」

ロン「いいからいけって!」

ハリー「ああ、ありがとう。それじゃあ——」クルッ

配達妖精「残像だ」ヒュイッ

ハリー「」

配達妖精「遅いな。あくびがあくびで殺せるほどスロゥリィだ——んーふーんー?
      まあドッチにしても、お届けするのは歌ですかーら、音速以上で逃げないと無駄デスけどネー?」

ハリー「じゃあ気絶してろ、このっ」ブンッ

配達妖精「けえっ!」カッ

 ビリビリッ 

ハリー「ふ、振り下ろした鞄が真っ二つに裂けた……」

配達妖精「これでよし……さ、歌いマース。よく、お聞きくだサーイ。
       ふーんふーんふふふーん……♪」

ハリー「ぜ、前奏から……!?」




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パーシー「さ、ほらほら! もう五分も前にベルは鳴ったぞ。散った散った!」

ハリー「パーシー……」

パーシー「お礼を言われるほどのことじゃないさ。僕は監督生だからね」

ハリー「いや、なんでその五分前に止めてくれなかったんだい?」

パーシー「さーて僕も授業だ。急がなきゃ——」スタスタ

ハリー「うう、見世物にされた……」

ロン「あれでいて、パーシーも恋に憧れる年頃なのかもな。
   にしても、独特の歌だったね。あのセンスはきっとジニーだな。奴さん、君のことじっと見てたし。
    鞄が破れるのを見たら、急に青ざめて逃げちまったけど」

ハリー「なんで?」

ロン「さあ? 自分の歌のせいで、君の鞄を破っちまったって思ったんじゃないか?
   それより、授業に行こうぜ。ほら、落ちた教科書拾うの手伝うから」

ハリー「ありがとう……うわ、インク壺が割れて教科書が全滅だ……」

ロン「ハーマイオニーなら、しみ抜き呪文とか使えるだろ。さ、行くぞ」

ハリー「うん……あれ、リドルの日記……」

ロン「君、まだそんなもの持ってたのか。とっくに捨てちまったと思ってたけど……それがどうかしたの?」

ハリー「ほら、これだけインクの被害が無い。綺麗なまんまだ」

ロン「偶然だろ? ほら、急ごうよ」

ハリー「うーん。本当に偶然かな、これ……?」

夜 グリフィンドール談話室



マミ「三年生からの選択科目ね……どうしようかしら?」

ハリー「さっきパーシーにアドバイス貰ったけど、まだ迷うなぁ。将来なりたい職業って言われても……」

マミ「そうよねぇ……私たちってまだ魔法界のこと、詳しいわけじゃないし」

ロン「まあ、そんなに気負わなくてもいいんじゃない? そういや、ハーマイオニーは?」

マミ「用紙が配られた瞬間、全部の科目に丸つけてたけど……」

ロン「……」

ハリー「……彼女、来年からロボットにでもなる気かな?
     宿題をこなそうとするだけで睡眠時間が消えると思うんだけど」

マミ「流石に、マクゴナガル先生が止めると思うわ……絶対履修できないもの」

ロン「どうかな。彼女、勉強に向ける情熱は人何倍? ってレベルだし。
   分身する魔法くらい使いだしかねないよ……よし。僕は決めた。
   占い学は何か名前からしてふにゃふにゃしてそうだし、魔法生物のケトルバーン先生はジョークが分かるって噂だ。これにしよう」

ハリー「凄い論理的な決め方だね。じゃ、僕も同じでいいや」

マミ「もう。二人とも、真面目にやらなきゃ駄目よ?」

ロン「君もハーマイオニーに毒されてきたかい?」

ハリー「……それじゃ、僕は部屋に戻るね」

ロン「もうかい? 早いね、どうしたの?」

ハリー「いや、ちょっとね……それじゃ」スタスタ

マミ「……うーん、将来か……そりゃ、魔法界の仕事に就くんだろうけど……」








グリフィンドール男子寮


ハリー「さて、誰もいない内にリドルの日記で実験だ。昼間、インクで汚れなかったのは偶然かな?」

ハリー「ページを開いて……僕はハリー・ポッターです、と」サラサラ

 シュゥゥ…

ハリー「……わーお。日記にインクが吸い込まれた。おまけに文字も浮かんできたぞ」

日記『こんにちは、ハリー・ポッター! 僕はトム・リドルです。この日記には僕の記憶が封じられており——』


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 ガチャ

ロン「あれ、ハリー。まだ寝てなかったのかい?」

ハリー「ハグリッドだ」

ロン「違うよ、僕はロナルド・ビリウス・ウィーズリー。確かに背は高いけど、ハグリッドほどじゃない
   ひょっとして寝ぼけてる?」

ハリー「秘密の部屋だよ! 50年前に秘密の部屋を開けたのは、ハグリッドだったんだ!」


翌日 グリフィンドール談話室


ロン「ハグリッドかぁ。確かになぁ。条件にあてはまるっちゃあそうだ。
   ホグワーツを追放されてるし、怪物がいるって聞いたら絶対探しにいくもの」

ハリー「で、その情熱で"部屋"を見つけたらこう思うだろうね。こんな狭いところに閉じ込められてるのは可哀想だ。
     ちょっくら散歩をさせてやろう——って。……でも、人に危害を加えるつもりはなかったんだろうなぁ」

ハーマイオニー「……ハグリッドに、全部聞いてみる?」

ロン「マジで言ってるのかい? やあハグリッド、今日もいい天気だね。
   ところであの毛むくじゃらで足がいっぱいある秘密の部屋の怪物って肉食? そう聞くつもりかい?」

ハーマイオニー「……次の事件が起きない限り、ハグリッドには何も聞かないことにしましょう」

ハリー「……こんなことになるんだったら、リドルの日記なんて捨てちゃえば良かったなぁ」ボソッ






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ハリー「で、そう言った日の放課後に日記が盗まれたわけだけど」

ネビル「部屋がぐちゃぐちゃだ! うわーん! 僕の羊皮紙セットどこ!?」

ロン「ネビル、羊皮紙だったら後で分けてあげるから、ちょっとここ頼むね」

ネビル「え? どこ行くの?」

ロン「先生に報告しに。ほら、行こうハリー……ハーマイオニーに相談だ」



図書室


ハーマイオニー「リドルの日記が盗まれたですって!?」

ハリー「しーっ! 声が大きいよ!」

ハーマイオニー「あ、ごめんなさい——で、でも、グリフィンドール生しか盗めない筈でしょ?」

ロン「そうだよなぁ……っていうか、誰がなんであんなボロイ日記を?」

ハーマイオニー「それは……リドルの日記が他人の手にあっちゃ不味い人が、ばれるのを防ぐためにでしょ?」

ロン「じゃあハグリッドが犯人ってわけ?」

ハーマイオニー「ハグリッドはグリフィンドールの寮に入れないから——
          やっぱり、犯人はハグリッドとは別人ってことにならない?」

ハリー「でも、リドルの日記はハグリッドが50年前の犯人だって——今回のとはまた別なのかな」


マミ「——リドルの日記、ってどういうことかしら?」


ハリー「あ、れ? マミ!? いつからそこに?」

マミ「ハーマイオニーさんの声が聞こえたから……で、リドルの日記ってどういうこと?
   あれ、フィルチさんに渡してくれたのよね?」

ロン「いや、つまりあれだよ。リドル——なぞなぞ(リドル)の本をだね」

マミ「……」

ロン「信じてくれよ。僕が嘘をつく男に見えるかい? フィルチにしっかり渡したさ!
    ああ、僕は助け合いが趣味だからね!」

マミ「おとなしく白状しないと、マッチをミサイルに変身させてぶっ放すわよ」

ロン「あれ?」

ハリー「ローン……」

ハーマイオニー「……どの道、確認されたらばれる話だもの。正直に話しましょう」


ハリー「……ってわけなんだ」

マミ「……ハグリッドさんが? そんな……」

ハーマイオニー「黙っててごめんなさい……」

ロン「いや、僕が提案したんだ。作り話して誤魔化そうって」

マミ「……ううん。だって、私の為を思って嘘をついたんでしょう? ありがとう」

ロン「そう言ってくれるとありがたいね」

マミ「……あと、私も謝らなきゃいけないことがあるの」

ハリー「え?」

マミ「ハリーくん達が話してくれたのに、私だけ話さないのはフェアじゃないから——
   あのね、私が襲われた時、実は——」



ハリー「犯人は僕と同じ蛇舌で、おまけに同じグリフィンドール寮か……」

ロン「逆に話さないでくれてて助かったよ。そんなの絶対ハリーが疑われるもの」

マミ「本当はマクゴナガル先生に相談しようと思ったんだけど……その直後に、ごたごたがあったから」

ハーマイオニー「マミ、犯人がパーセルマウスっていうのは確かなのね?」

マミ「ええ……あの独特の音だもの。間違える筈ないわ」

ロン「ってことは、やっぱり犯人はグリフィンドール生かな? 盗まれた日記のこともあるし」

ハリー「でも、蛇語を話せる人って滅多にいないんだろう?」

ロン「そこなんだよなぁ……でも可能性はゼロってわけじゃないし……」

マミ「結局、考えても手詰まりなのよね……」

ハーマイオニー「……」


クィデッチ試合日 大広間前 廊下


ハリー「絶好のクィディッチ日和だ……」ドンヨリ

ロン「言葉と顔が一致してないぞ」

ハーマイオニー「朝食、あまり食べてなかったものね」

マミ「具合でも悪いの?」

ハリー「いや、あの中に日記を盗んだ奴がいるかと思うと……」

ロン「おいおい頼むぜ。それも気になるけど、今は試合に集中しろ。もう骨なし腕はいやだろう?」

マミ「お腹が減ってたら力がでないわよ? いまから戻って、トーストでも齧ってくる?」

ハリー「いいよ……食欲ないし、無理に食べても吐きそうだ」


『今度は殺すぞ! ぐちゃぐちゃにして——』


ハリー「そんな風に脅されても食欲は——え?」

ハーマイオニー「え? どうしたの、ハリー?」

ハリー「あの声だ……また聞こえる……」

ロン「あの声って……君が前に言ってたやつか。相変わらず僕らには聞こえないけど」

ハーマイオニー「……待って」

ハリー「! ハーマイオニー! 聞こえたの!?」

ハーマイオニー「ううん。違うの。でも、図書室でマミの話を聞いてからちょっと考えてたことがあって——」

マミ「私の?」

ハーマイオニー「……ごめんなさい。ちょっと図書室にいかなくちゃ!」ダッ

ロン「おいちょっと待て試合はもう……行っちゃった」

ハリー「彼女、なにを調べに?」

ロン「さあね? 全く、図書室じゃクィディッチの試合はみられないんだぞ!」

ハリー「……もう声も聞こえない。行かなきゃ。時間だ」



クィデッチ競技場


リー『さあ始まります! グリフィンドールVSハッフルパフ! 司会はお馴染みのリー・ジョーダンでお送りします!』

リー『グリフィンドール勢は気合十分! キャプテンを務めるオリバー・ウッドは既にゴールの周りを飛び回りウォームアップに努めています!』

リー『一方、ハッフルパフはスクラムを組んで作戦会議中の模様。これは見ものです! 試合はどう転ぶのでしょうか!』

リー『さあ、いよいよ審判のマダム・フーチがボールを取り出しました! なお、今日はお目付け役のマクゴナガル女史が未だ現れません!
   このままいけば好き勝手に実況出来るぜ! さあさっさとホイッスルだ!』

マクゴナガル「ジョーダン。貴方とはいつか話し合う必要があるようですね」キーン

リー『あれ? マクゴナガル先生、いらっしゃったんですか? ていうか、なんでグラウンドに? そんなでっかいメガホンもって……』

マクゴナガル「こほん——この試合は中止です!!」

リー『え、そんな、なんで——ああ! ウッドがショックのあまり落ちた!』


ウッド「先生! どういうことですか! 試合中止って!」ボロッ

アリシア「なんであれで怪我してないのかしら」

マクゴナガル「全ての生徒は引率の先生の指示に従って寮に戻ること! ——それと、ポッター。私と一緒にいらっしゃい」

ハリー「僕だけ、ですか?」

マクゴナガル「できれば貴方の友達のウィーズリーも一緒の方が……」

ロン「先生! 試合中止ってどういう!? あとハリーをなんで連れて行くんです!?」

マミ「ぜぇ、はぁ……ロンくん、待って……」

マクゴナガル「……ウィーズリーも来ましたか。ですが、トモエ。貴女は来ない方がいいでしょう。さあ、寮に戻りなさい」

マミ「え……」

ハリー「ロンが良くてマミが駄目? なんでだろう?」

ロン「さあ? まさかいまさら空飛ぶ車の話でもないだろうし——」

マミ「……もしかして、また怪物が誰かを? それで、この二人ってことは——」

マクゴナガル「……」

ロン「え?」

ハリー「……それって」

マミ「私を心配してくれてるんですよね。ありがとうございます。
   でも……大丈夫です。絶対に、大丈夫ですから……」

マクゴナガル「……分かりました。良いでしょう、トモエもついてきなさい」


医務室


ハーマイオニー「」

レイブンクロー生「」


ロン「ハーマイオニー!」

ハリー「嘘だろ……数十分前まで、話してたのに……」

マミ「……っ」

マクゴナガル「二人は図書室の近くで発見されました。あなた達、これが何を意味するかわかりますか?
         二人が持っていたものです」スッ

ロン「……手鏡?」

ハリー「すみません、なんだか……」

マミ「……私、も」

マクゴナガル「……そうですか。三人とも、私が寮まで送りましょう」

マミ(……わたしの、せいだ)


『今すぐ見滝原に帰れ。友達を失いたくなければ』


マミ(あの脅迫状は、こういうことだったんだ)

マミ(全部、私が悪いんだ。私が、あれからも犯人を捜したから、ハーマイオニーさんが)

マミ(私が、私が、私が。私が、いなければ——)



マミ(——なんて、言うと思ったかしら?)




マミ(キュゥべえに加えて、グレンジャーさんまでも——彼女たちが何をしたって言うの!)

マミ(だからって私が悪いなんて思って尻込みしたら、それこそ犯人の思うつぼじゃない!)

マミ(もう、何も怖くない。だって、これ以上怒り様がないくらい怒ってるもの……!)

マミ(もう形振りなんか構っていられない)


マミ(継承者を捕まえてやる——どんなことをしても絶対に、捕まえてやるわ……!)


グリフィンドール寮


マクゴナガル「——以上が注意事項になります。非常に残念なことですが、犯人が捕まらなければ、学校は閉鎖されるかもしれません。
         犯人について何か心当たりがある生徒は、すぐに申し出てください」


 ざわざわざわ


マミ「……」


ハリー(マミ、やっぱりショックだったんだろうな。あれから、一言も口を利かないよ)ヒソヒソ

ロン(むしろ騒ぎ出さない分だけ気丈だと思うね、僕は。……ハグリッドに会いに行くかい?)ヒソヒソ

ハリー(ああ、今回の犯人がだれであれ、50年前にハグリッドは秘密の部屋を開いてるんだ。
     その方法さえ分かれば……僕の透明マントを使えば外に出られる)

ロン(ってことは、あとは結構のタイミングと——マミを誘うかどうか)

ハリー(……やめておこう。もう彼女はいっぱいいっぱいの筈だ)


◇◇◇


マミ(継承者が注目してるのは、私。だからこそ、あの脅迫状)

マミ(ハリーくん達は巻きこめない。一緒にいるだけで、標的にされるかもしれない)

マミ(マクゴナガル先生に相談を——でも、相談したらハリーくん達も巻き込む)

マミ(私ひとりでやるしか、ないんだ)


数日後 夜 ハグリッドの小屋


ガシャーン! バリーン! ドシャー!


ハグリッド「あ、ああ。わりいな、ちょいと手元が震えて……」

ハリー「ハグリッド。お茶はもういいから」

ロン「うん。っていうか、もうティーカップないし」

ハグリッド「すまんな」

ハリー「それでさ、ハグリッド。聞きにくい話なんだけど——」

 コンコン

ロン「やばっ——僕たちここにいちゃまずい!」

ハリー「透明マントを!」バサッ

ハグリッド「よし、隠れたな——誰だ!」

 ガチャッ

ダンブルドア「こんばんは、ハグリッド——良い夜とは、残念ながら言えんがのぅ」

ファッジ「やあハグリッド」

ロン(ファッジだ! 魔法省大臣! パパのボスだ!)

ハリー(静かに、ばれる!)



◇◇◇


グリフィンドール 女子寮


マミ「……」

ラベンダー「マミ……平気? 一緒に寝ない?」

マミ「……ありがとう。でも私、寝相悪いから」

ラベンダー「そんなの! マミが寝相悪いんだったら、パーバティなんかカタストロフィよ!」

パーバティ「意味わからないから……放っておいて欲しい時もあるわよ。ほら、寝ましょう?」

ラベンダー「マミ……その、いつでも言ってね?」

マミ「ええ。ありがとう、ラベンダーさん」ニコッ

マミ(まず、考えなきゃいけないのは……秘密の部屋、つまりあのトイレをどうやってこじ開けるかよね……)

マミ("ホグワーツの歴史"を図書室で借りて……いや、確かハーマイオニーさんが借りてたはず。
   ごめんね、ハーマイオニーさん。ちょっと借りるわね)ゴソゴソ


ハグリッドの小屋


ファッジ「分かってくれ、ハグリッド。魔法省も何かしたというポーズを見せないと——
     無論、君でないと分かればすぐに釈放する。十分な謝罪も」

ハグリッド「釈放って、お、俺をアズカバンにいれるってことか!?」

ダンブルドア「コーネリウス、ハグリッドではない。重ねて言うが」

ファッジ「しかしな、アルバス。かなりプレッシャーをかけられて……」

ハグリッド「どこのどいつにだ!」

ルシウス「——どいつ、とはご挨拶ですな、ハグリッド」

ロン(ルシウス・マルフォイ! パパの敵でマルフォイの親父だ!)

ハリー(知ってるよ。夏休みに会ったもの)

ハグリッド「俺の家に何しに来た!」

ルシウス「私が君の——あー、家、かね? この小屋が? 
      まあ、ここに来たのは非常に残念なお知らせを届けるためでね」

パサッ

ダンブルドア「……」

ルシウス「12名、つまりは全ての理事が署名している。
      "停職命令"だよ、アルバス・ダンブルドア校長殿?」


◇◇◇

グリフィンドール 女子寮


マミ(……さすがに、"秘密の部屋への入り方"なんて載ってないか。でも学校の構造はなんとなくわかった)

マミ(マートルのトイレに、太いパイプが繋がってる……怪物はきっとこれを伝って移動してるんじゃないかしら?)

マミ(怪物の正体は蛇——うん、確かにパイプを移動してても違和感はないわね)


ハグリッドの小屋 前


ルシウス「さて。では参りましょうか。校長?」

ファッジ「ルシウス。考え直してくれ——ダンブルドアが退任したら、ほかに誰が? 困る、絶対困る——」

ダンブルドア「よい。退けと言われれば退こう……じゃがな、ルシウス?」

ダンブルドア「わしが本当にこの学校を離れるのは、わしに忠実なものが一人もいなくなった時じゃ。
         ホグワーツは、助けを求めるものを決して見捨てはせん」

ルシウス「なるほど。ではその信念が、次の犠牲者の発生を防ぐことを祈りましょう……
      ほら、森番。貴様もさっさっと歩け、アズカバンまでの道をな」

ハグリッド「……真実がしりたきゃ、蜘蛛を追え」

ルシウス「?」

ハグリッド「俺の田舎に伝わる格言だ。よし、今いく……それと誰かファングに餌を。これも格言だ」

バタン

ロン「ダンブルドアが停職!? もう明日から怪物の天下じゃないか!」

ハリー「ハグリッド……蜘蛛を追え、か」


◇◇◇

グリフィンドール 女子寮


マミ(じゃあ、怪物の正体は?)

マミ(分かってるのは、蛇であること。被害者がみんな、石にされてること——)

マミ(これだけ分かれば、図書室で調べられるかも。明日、行ってみましょう)



翌日 夜 禁じられた森 奥地


シャキンシャキン! アラゴグ! アラゴグ!

ロン「いーち、にーぃ、さーん——あはは、数えきれないや」ガクガク

ハリー「いっぱい、でいいだろう。もう見渡す限り、馬みたいな大きさの蜘蛛だらけなんだから……」

ロン「ああもうハグリッドの奴! 何が蜘蛛を追え、だ! 追ってみたらとんでもないことに——」

アラゴグ「——ハグリッド、と言ったのか?」

ハリー「一番でっかい蜘蛛が……」

ロン「喋った……!」


◇◇◇


図書室 


マミ「さーて、何から調べようかしら……門限は事件のせいで短いから、厳選して調べないとすぐに時間がくるわ」

マミ「といっても、魔法生物の棚だけでいくつあるのかしら……気が遠くなってくるわね」


 コトン


マミ「……? 本が、落ちた? でも……誰も、いないわよね?」

マミ「……変なの。一応、元の場所に戻して——え? これって……」



禁じられた森


アラゴグ「わしはハグリッドの友人だ。ハグリッドの名誉を守る為、人を襲ったことはない。
      50年前の被害者はトイレで発見されたが、わしは自分が生まれた物置以外の光景を知らん」

ハリー「じゃ、じゃああなたは"部屋"の怪物じゃないんですか——」

アラゴグ「わしではない! その生き物の話を、わしらはしない!
      それは太古から存在する生き物だ! わしら蜘蛛の天敵だ! その生物の名を、口にすることはない!」


◇◇◇



図書室 


マミ「"バジリスク"! 毒蛇の王! "その視線に捉われたものは即死する"!」

マミ(これよ——これだわ。これが秘密の部屋の怪物の正体!)

マミ「でも、誰も死んでは……いえ、この理由はいいわ」

マミ「何か弱点……弱点は……"雄鶏が時をつくる音"。そういえば、ハグリッドのニワトリが殺されて……
   ああ、でもそれじゃ、ホグワーツの周りに雄鶏はいないってこと?」

マミ「他にめぼしい記述は……ない、みたいね。兎に角、一歩前進だわ。次は、どうにかして継承者の正体を……」

ピンス「まだ残っていた生徒が! 門限ですよ! 早く寮にお帰りなさい!」

マミ「っ……また、明日来てみましょう」



禁じられた森 外


ロン「はーはー……死ぬかと思った! 死ぬかと思ったよ!ハグリッドめ! なにが蜘蛛を追え、だ!
   野生化したパパの車が助けに来てくれなかったら、僕ら今頃蜘蛛の餌だったぞ!」

ハリー「アラゴグは自分の友達なら傷つけないと思ったんだよ」

ロン「無茶だろ! だってもうあからさまに『僕、人が主食でーす!』って怪物じゃないか!

    ああもう、踏んだり蹴ったりだよ! わざわざ退学になる危険まで冒して、分かったことってなに!?
    "禁じられた森には二度と入っちゃいけない"ってことだけだ!」

ハリー「もうひとつあるよ——ハグリッドは無実だった。リドルは間違っていたんだ」

ロン「でもそれって、リドルの日記から得た情報が当てにならなくなったってことだろ?
   じゃあ結局、一歩進んで一歩後退しただけじゃないか」

ハリー「……」

ロン「……いや、待てよ? アラゴグは死んだ女の子がどこで発見されたって言ってた?」

ハリー「……! もし、その女の子がゴーストになってたら……その場に、ずっと留まり続けたら……」

ロン・ハリー「「50年前の被害者って……嘆きのマートル!?」」



数日後 朝 大広間


マクゴナガル「皆さんに、良い知らせがあります」


「ダンブルドアが戻って!?」「スリザリンの継承者がついに!?」「期末テストが中止に!?」


マクゴナガル「スプラウト先生曰く、とうとうマンドレイクが収穫できるそうです!
         今夜にも石にされた人を蘇生できるでしょう!」


「ほ、本当ですか!?」「それじゃあ犯人逮捕もすぐ!」「しかし彼らが可哀想だ。テストは延期にすべきでは?」


マミ(……あれから全然手がかりは見つけられてないけど。キュゥべえに手伝ってもらえば、きっと)

ロン「やったなハリー! あれからずっとマートルのとこにいくチャンスがなかったけど、もうどうでもいいや!
   ハーマイオニーがぜーんぶ教えてくれるよきっと! ああでも待てよ、テスト三日前って知ったら精神崩壊が先かな?」

ハリー「声が大きいよ、ロン。まあでも、誰も歓声上げるのに忙しくて聞いてないけどさ」

ジニー「あのぅ、ハリー……」

ハリー「あれ、ジニー。どうしたの?」

ロン「ん? おお、どうした我が妹! 食えよ、ほら。お兄ちゃんがとってやろう!」

ジニー「……あの、ね。あたし、言わなきゃいけないことがあって……」

ロン「……飯を食いながら、って話でもなさそうだな。言えよ」

ジニー「……」

ハリー「もしかして……秘密の部屋に関すること? なにか、見たの? 教えて。絶対悪いようにはしないから」コソッ


ジニー「……! あの! あたし、秘密の!」


パーシー「秘密が——なんだって?」



ジニー「あ、あ、な、なんでもない! ごちそうさま!」

パーシー「ん? 走ると危ないよ、ジニー。はあ、やれやれ。腹ペコだ……」

ロン「おい! いまジニーが大切なことを話す途中だったんだぞ!」

パーシー「へえ、じゃあ後で僕が相談に乗ろうかな。どんなこと?」

ハリー「確か、秘密の何かを見たとか、どうとか——」

パーシー「ブーッ!」

ロン「うわ! 汚いな! おい監督生!」

パーシー「ごほっごほっ! ごめん……あー、でも、だね。いや、分かった。ジニーの相談には僕が乗ろう。
      ハリー、そこの皿を取ってくれ」

ハリー「ああ、うん……?」



廊下 ロックハート引率中


ロックハート「つまりですね、私は全て御見通しでした。ええ、もう犠牲者は出ません。それが重要です。
        正直、副校長がなぜこのような警戒態勢を続けるのか理解できませんね」

ハリー「その通りです先生!」

ロン「!? おいどうした。気でも狂ったか! だ、誰かマダム・ポンフリーを呼んでくれ——痛い! 足を踏むなよハリー!」

ロックハート「ありがとう、ハリー。この様な引率、無駄ですよ。もっと教育のために有意義に時間を使いたいものです」

ハリー「いや、実に全くその通り。じゃあ先生、引率はここまででどうでしょう。もう廊下をひとつ渡るだけですし」

ロックハート「ナイスアイデーア! いや、実は私もそう思っていたのです。ではこれにて失礼。
        大丈夫! 不安がることはありません! 危機は去ったのですから!」スタスタ

ロン「ははーん。なるほど、これが狙いか。てっきり君にハーマイオニーが乗り移ったのかと。
    で、どこに行くんだい?」

ハリー「マートルのところ。明日になれば全部分かるっていうけど、機会を逃す手はないだろ?」


マミ「……」スッ


廊下


マクゴナガル「なるほど……つまり貴方がたはこういうのですね?
         授業をさぼり、医務室に忍び込み、グレンジャーのお見舞いに行こうとした、と」

ロン(うわー……まさかマクゴナガル先生に捕まるなんて。最悪だ。退学も有り得るレベルだよこれ)

ハリー「そうなんです! 僕たち、ハーマイオニーに長いことあってないし、
     マンドレイクが取れるから、もう心配しないでって言いに行こうと……!」

ロン(しかもなんだい、その三文芝居。そんなんで、あのマクゴナガル先生が……)

マクゴナガル「そうでしょうとも……! 襲われた人たちの友達が、一番つらい思いをしてきたでしょう!
         私が許可します! 授業欠席とお見舞いの許可を!」

ロン(マジかよ)

ハリー(やっておいて何だけど、成功するなんて思ってなかった)

ハリー「じゃあ、先生。僕たちは、これで——」

マクゴナガル「無論、医務室までは私が同行します。よろしいですね」

ハリー・ロン「「え゛」」


◇◇◇


女子トイレ


 ジャーッ


マミ(助かったわ……まさかロックハート先生にトイレなんて言えないし……)

マミ(ちょっと遅刻しちゃったけど、トイレ行ってましたって言えば許してもらえるわよね……?)

マミ「急ぎましょう、えーと、魔法史の教室はここを曲がればすぐ……」


『ジネブラ・モリー・ウィーズリー。彼女の白骨は、永遠に秘密の部屋の一部となるだろう』


マミ「……え?」


医務室


ポンフリー「はあ、マクゴナガル先生が許可を? ならいいですが……石になった人に話しかけてもどうにもならないでしょうに」



ハーマイオニー「」

ロン「まさしくその通りだ。やあハーマイオニー! 心配するな、もうすぐ動けるようになるよ——おっと、これは枕か。
   喋らないし動かないからから区別がつかなかった……はぁ。ハーマイオニー、早く起きないかなぁ」

ハリー「……そういえば、ハーマイオニーは鏡を持ってたって言ってたよね。あれってどういう……?」

ロン「知るもんか。まあ明日になったら教えて貰えるけど……ん? ハリー。彼女、まだなんか持ってる」

ハリー「紙切れかな? よっ……と、取れた。えーと、何々……」


◇◇◇


マミ(これは、どういうこと……?)

マミ(壁一面に、文字が……ジニーさんが、秘密の部屋に誘拐された? なんで!? 彼女は純血でしょ!?)

マミ(……いえ、理由はともかく、一刻を争うわ——マンドレイク薬を待ってなんていられない)

カツカツカツ

マミ(! 誰か来た。先生よね、この時間だもの……逃げましょう。
   図書室に——早く、すぐに秘密の部屋の入り方を見つけないと——)タタタタッ


マクゴナガル「ぐすっ、私の寮は本当に友達想いの生徒でいっぱいです——……ん、壁に文字が……っ!
         ああ、なんてことでしょう……!」




職員室


ハリー「怪物の正体はバジリスク! 巨大な毒蛇だ! それで僕にしか声が聞こえなかったんだ!」

ロン「みんなが死ななかったのは、目を直接見てないから。ミセス・ノリスとキュゥべえは水に映った目を。
   ジャスティンはニック越しに。ニックはゴーストだから、二度は死ねない……
   答えに気付いたハーマイオニー達は、廊下の先を手鏡で確認しながら進んだに違いない!」

ハリー・ロン「「そういうわけなんです、先生!」」


シ〜ン


ロン「で、僕らが真相を伝えに来たのに、誰もいないってのはどういうわけ?
   もうとっくにベルが鳴る筈だろ?」

ハリー「さあ……」


マクゴナガル『生徒は全員、速やかに寮に戻りなさい! 教師は職員室へ、大至急お集まりください!』


ロン「うわ、びっくりした! なんだ、何か起こったのか?」

ハリー「……よし、隠れて話を聞こう。話すのはそれからだ。ほら、そこのロッカーに入って」


◇◇◇



図書室


マクゴナガル『生徒は全員、速やかに寮に戻りなさい! 教師は職員室へ、大至急お集まりください!』


ピンス「!? なにかあったんですかね……?」スタスタスタ

マミ「……行ったわね。よ〜し、片っ端から本を開いていくわよ……!」


職員室


マクゴナガル「……連れ去られた生徒の名は、ジニー・ウィーズリーです」


ハリー「……ロン」

ロン「やあハリー。どうやら僕の耳がおかしくなったらしいぞ! これもロックハートのせいだね。
   あいつの授業、前々から耳に有害だと思ってたんだ。君もそう思うだろ?」

ハリー「ロン」

ロン「なあ、僕の聞き間違いだろ? そうなんだろ? 頼むから、そうといってくれよ……」

マクゴナガル「全校生徒は、明日にでも全員帰宅させます。ホグワーツは、これで……」


 ばたん!


ロン「! ダンブルドアが帰ってきたのかな!?」

ロックハート「やあやあすいません。ついウトウトと——いや怪物捜索に必死で!」


「……アバダ」「待て。ここは磔呪文が正しい」「いや、服従の呪文で人に言えないような恥ずかしい恰好で……」


スネイプ「おやおや——怪物の捜索とは。まったく、情報が早いことですな?」

ロックハート「いやあははは。それほどでも——え、早い? 何がです?」


◇◇◇


図書室


マミ「……これも! これも! これも! もう! なんでないのよ! ここは図書室でしょ!?」

マミ「ジニーさんが死んじゃうかもしれないのよ!? なのに、何で……!」

マミ「……こ、こうなったらもう、使えない図書館に用はないわ!
   確かこの辺の壁にもマートルのトイレに続くパイプがあった筈!
   片っ端から爆破して、秘密の部屋に続いてないか確かめてやるんだから!」スッ


ことん ことん ことん


マミ「っ!? また、前みたいに本が落ちて……? 誰かいるの!?」


し〜ん


マミ「……いない、わよね。じゃあ、この本はいったい……?」スッ


『黒幕は、トム・マールヴォロ・リドル。その記憶が封じられた日記』


マミ「……なに、これ。こっちの、本は……」スッ


『秘密の部屋の入り口は、マートル・ヘンダーソンが死んだ三階の女子トイレの手洗い台。』



マミ「……こっち」


『開くために必要なのは合言葉。蛇の言葉で"開け"と唱えよ』


マミ(……これは、どういうこと? 誰がこんなことを?)

マミ(継承者の罠? ……ううん。疑ってる時間も惜しい!)

マミ「……パーセルマウス。ハリーくんなら、秘密の部屋に行けるわ」ダッ


職員室


スネイプ「さあ、あなたの出番ですよロックハート教授?」

スプラウト「我々教師一同、心から応援していますわ」

フリットウィック「無論、我々は足手まといでしょうから、ついてはいけませんが——」

スネイプ「なに、完全無敵のギルデロイ・ロックハートだ。単身で怪物退治くらいこなすだろう」

フリットウィック「いやはやまったく! そういえば昨晩もそんなことをいっていました!」

ロックハート「いや、あのですね。は、は。でも、だって」

マクゴナガル「なるほど……貴方の気持ちはよくわかりました」

ロックハート「わかっていただけます?」

マクゴナガル「ええ——オーキデウス!(花よ)」

ポンッ

マクゴナガル「はい、どうぞ。リコリスとフローリス・デイジーです。こんなものしか出立する英雄に手向けられませんが……」

ロックハート「え、は、どうも。え、本気で?」

マクゴナガル「どうぞ、行ってらっしゃいギルデロイ。絶対に、私達はあなたの邪魔はしませんから」

ロックハート「あ、ははは、は。みなさん、目がマジでいらっしゃる……へ、部屋に戻って準備をしてきます」

バタン

マクゴナガル「これで厄介者は消えました。さて、これからのことを詰めましょう」



◇◇◇


グリフィンドール 談話室


バタン!


マミ「……!」キョロキョロ

ネビル「マミ! どこに行ってたの、心配したんだよ——」

マミ「ハリーくんは?」

ネビル「え?」

マミ「ハリーくんはどこかって聞いたの! どこ!」

ネビル「え、あ、し、知らない。知らないよ! ハリーとロンも、魔法史の授業をさぼったんだ……」

マミ「っ、肝心な時に——って、私も人のこと言えないわね……部屋に戻るわ。
   ごめんね、ネビル。頭に血が上っちゃって」

ネビル「あ、ううん。別にいいけど……マミも、色々あって大変だろうし」


グリフィンドール女子寮


マミ「……時間が、時間がないのに! ハリーくん、早く戻ってきて……」

マミ「……いえ、待って。別にハリーくんじゃなくても、蛇語を話せる人がいれば……」

マミ「スリザリンにひとりくらいいないかしら——ああでも駄目ね。どっちにしても他の寮には入れないし」

マミ「もう! なんでこの指輪、あのゲルゲルムントゾウムシの言葉は分かったのに、蛇語は分からないのよ!」


ことん


マミ「……私のカバンから、本が落ちた? また? もしかして——!」バッ


『合言葉は、MDの中』


マミ「MD? 私の、MDプレイヤー? でもこれ、壊れて——」カチッ


ザッ、ザザザ——ブツッ


『……にしてもこれ、本当に壊れちゃったのかしら? このっ、このっ』

『アリバイ工作って……そんなことしなくても、あの熱狂具合じゃ誰がいなかろうが気づかないと思うけど』

『……こ、細かいことはいいでしょ、もうっ。さあ、調査開始よ!
 マートルさんもどっか行っちゃってるし、この隙にぱぱっとやちゃいましょ』

『うん、そうだね。じゃあまずは開錠呪文から……』




マミ「私と、キュゥべえの声? ……これ、あの日。私が襲われた時の!
   でも、壊れてたはずなのに、なんで——?」





『急ぎましょうか。さすがに4秒ってことはないだろうけど……』


『……シューッ!』


『? キュゥべえ、いま何か言った?』

『? いや? でも、僕にも聞こえたよ。空気が漏れるみたいな音だろう?
 扉の外——廊下から聞こえたように思うけど』




マミ「これ! この蛇語が、最初に聞こえた蛇語よ! じゃあきっとこれが秘密の部屋の入り口のカギ……」

マミ「……すぐに行きましょう! ジニーさん! 絶対に助けてあげるから!」ガチャッ


ことん


マミ「……また? でも、もう何も知りたいことは……」




『貴女が頼るべき人物と、その人物に掛けるべき言葉は——』




マミ「……え?」


グリフィンドール談話室


ネビル「あ、ハリー。さっきマミが探してたよ」

ハリー「……ふうん。で、そのマミは?」

ネビル「あれ? おかしいな、さっきまでいたんだけど……トイレかな?」

ハリー「じゃあ悪いけど、少し僕らを放っておいてくれ——きっと大した用じゃないさ」

ロン「……」

ネビル「ああ、うん……今、大変だもんね」チラッ



ジョージ「くそっ、見つからない——せめて、連れ込まれる前だったら——」

フレッド「……たられば言ってても仕方ないだろ……いたずら完了……くそ、何が完了だ」

パーシー「……父さん達には手紙を送った……すまない、僕は部屋にもどる……」



ロン「……ジニーは何か知ってたんだ。くそ、あの時ちゃんと話を聞いてたら!
   ハリー、なあ、僕はどうすればいい? 今からでも何かできることってあるか?」

ハリー「……ロックハートに会いに行こうか。あいつも、秘密の部屋を探さなきゃいけないだろうし」


◇◇◇


廊下


マミ「ロックハート先生」

ロックハート「ああ、マミか。どうしたんだい? ファンは大事にしたいんだが、いまはちょっと忙しくてね」

マミ「荷造りのですか?」

ロックハート「へ?」

マミ「隙あり。ステューピファイ!(麻痺せよ)」バシュッ

ロックハート「へぶっ!?」バタン

マミ「初めて使ったにしては上出来ね……こういう呪文ばっかり得意っていうのはアレだけど。
   さて、と。頼りにしてますからね、ロックハート先生……」


ずりずりずりずり.....


ロックハートの部屋



ハリー「あれ、いない? 何処にいったんだロックハート」

ロン「逃げた……訳じゃなさそうだな。荷物もそのまま残ってるし。案外真面目に探してるのか?」

ハリー「見つけたところで何ができるのか疑問だけど……ロックハートを探そう。
     どっちにしても、入り口は蛇語を使わなきゃ開けられないんだ……」


◇◇◇


マートルのトイレ


『……シューッ!(開け)』


ガコン ギギギギ…


マミ「流し台が沈んで、太いパイプが剥き出しに……これが秘密の部屋の入口ってわけね」

マートル「へえ、これこんな風になってたんだ。あたしを殺した奴もこの下にいるの?」

マミ「ええ、多分ね。心配してくれるの?」

マートル「あんたが死んでゴーストになったら、私の隣りのトイレに住まわせやってもいいわ。
      同じトイレは、もう予約があるから駄目だけど」

マミ「ふふ、大丈夫よ。ロックハート先生がいるもの」

マートル「頼りになるの、これ?」

ロックハート「」

マミ「さて、ロックハート先生をパイプに押し込まないと……うぃん・が〜でぃあむ——」

ロックハート「」

マミ「……失敗して燃えたりしたら嫌ね。別のにしましょう。リクタスセンプラ!(宙を舞え)」バシュッ


  ぴゅうぅうううん……がしゃこん! ずざざざざざ——……


マートル「ナイスシュート」

マミ「どうも。じゃあ、私もちょっと行ってくるわね!」ピョイッ


秘密の部屋



『……シューッ!(開け)』


ギィィイイイイイイ……


マミ「細長い部屋が、向こうに伸びてる……そして、突き当りに大きい像。何メートルあるのかしら?」

ロックハート「あのう、本当に大丈夫なんですかね?
        途中にあった抜け殻、あれ、一目じゃ大きさが分からいくらい大きかったんですが……」

マミ「大丈夫かって? そんなの、私が知るわけないじゃないですか」

ロックハート「そんな無責任な! マミ! 貴女が私をここに連れてきたんじゃありませんか!」

マミ「本当、私は何をしてるんだろう……こんな、伝説の秘密の部屋にまで来ちゃって……。
   ……でも、不思議とあの本のことは信用できるのよね。理屈じゃないけど……」

マミ(なんていうのかしら。凄い馴染みのある気配、とでもいうのかしら。
   知らない筈なのに、長い間ずっと一緒にいたような……)

ロックハート「あー! おしまいだー! 私の人生ここでエンドだ!
        いやだー! もっとやりたいことあったのに! うわあああああ!」

???「やれやれ、全く騒がしいことだ」

ロックハート「ひっ、お化け!?」

マミ「……っ、現れたわねトム・リドル!」


トム「おや、無様に喚いているにしては、僕が何者かを知っている……
   ふむ。まるで何も知らずにここに来たというわけでもないらしい」

マミ「あなたのやってることは、全部お見通しよ! さあ、その足元にいるジニーさんを返しなさい!
   その後で、キュゥべえとハーマイオニーさん、ミセス・ノリス。そしてその他諸々の仇を取らせてもらうわ!」

ジニー「……」

トム「キュゥべえ……なるほど、君はマミ・トモエというわけか」

マミ「ジニーさんから聞いたのね……」

トム「その通り。なるほど、日記のシステムも理解しているのか。
   そうだ、この小さな女の子は僕の日記に心を打ち明け、僕に魂を注ぎ込んだ。
   大半はハリー・ポッターのことだったがね。まあでも、君を襲った日には流石に君のことを書いていたけど」

マミ「襲った? 襲わせたの間違いでしょ?」

トム「半々、といったところかな。ジニーの心に、打倒継承者に燃える君を恐れる気持ちがあったのは確かだ。
   『トム、マミが犯人を捕まえるって言ってるの。ねえ、もしもやっぱり私が犯人だったらどうしよう?』
   だから僕は教えてあげた。消せばいいんだ、ってね」

マミ「残念ね。この通りぴんぴんしてるわ」

トム「確かに。僕からも質問しよう。あの君の傍にいたあの猫は何だ?
   ただの猫かとおもったが、強く、そして異質な魔法の力を秘めている……おかげで君どころか、猫まで殺し損ねた」

マミ「キュゥべえにそんな力が……?」


トム「知らないのか。まあ、いい。どの道、君らは前座に過ぎない。主賓が来るまでの暇つぶしだ」

マミ「主賓?」

トム「ハリー・ポッターさ。ここ数ヶ月、つまり彼が初めて僕に書き込んだ日から、僕は彼を狙っていた。
   穢れた血以上に殺しがいのある獲物だ。なにせ、この偉大なるヴォルデモート卿を打ち破ったのだから!」

マミ「この? ヴォルデモートとあなたに何の関係が……」

トム「まだ分からないのかい? 頭の血の巡りがいいのか悪いのか……」スイッ


Tom Marvolo Riddle


トム「汚らわしいマグルの名前など、僕は使わない」スッ


I am Lord Vordemort



マミ「! そういうこと、ね。いい趣味してるわ。未来のヴォルデモート卿」

トム「素直に褒め言葉と受け取っておくよ。さて、前菜の君をそろそろいただくとしようか。
   蛇はハリーに取っておく。穢れた血である君は、僕が直々に杖でお相手しよう。
   未だ本調子ではないが、君相手ならそれで十分だろう」スッ

マミ「ジニーさんの魂に、ジニーさんの杖。借り物だらけの存在で、よくも偉そうに。
   そりゃあ脅迫状なんていう卑怯な手段にでるのもわかるわ」

トム「? 何を言って——いや、いい。さあ、杖を構え、おじぎをしたまえ。
   決闘の作法は学んだのだろう?」

マミ「ふん——残念ね。あなたの相手は、私じゃないわ」

トム「なに?」

マミ「さあ、出番です! ロックハート先生!」バッ


ロックハート「開かない! 開かないぃぃいいいい! 来た時は開いたのに! 開けてぇええええええ!」ガンガンガン


トム「……あの、無様に逃げようとしている男か?」

マミ「せ、先生!? なにを逃げようとしてるんですか!」

ロックハート「だって死んじゃいますよ! あの闇の帝王ですよ!? 例のあの人になんか勝てるわけないぃ!」

マミ「先生なら勝てます! ほら、相手は16歳の若造ですよ!」

ロックハート「さっき私はそれより年下の君に気絶させられたんですが!? いやぁ、死ぬのいやあああああ!」

マミ「それはほら、不意打ちだったからですよ! きちんと真正面からやれば勝てます!」

トム「……茶番もここまでくると笑えないな」


マミ「どの道、ここまで来ちゃったら逃がしてくれませんよ、きっと。ほら、腹を括って」

ロックハート「ひぐっ、うぐっ」

マミ「はい、先生の杖です。ほら、しっかり握って……」

ロックハート「う、ううううううう! な、何でもするので、み、見逃してくれたりは……」

トム「君のような、魔法使いの面汚しのスクイブを僕が見逃すと思うのかい?」

マミ「スク、イブ?」

トム「そうだ。ジニーも書き込んでたさ。その男の授業の酷さについて。
   君は気づいてなかったのか? まさか、本の内容が本当だとでも?
   確かにリアリティはあったが、それだけだよ。どうみても内容と、その男の実力が釣り合っていない」

マミ「……」

ロックハート「……あ、あの? ひとつだけ、いいでございましょうか?」

トム「なんだ?」

ロックハート「いや、は、は。あの本の内容は、嘘なんかじゃないんですよ。
        ただ、その、ちょっとばかり、その功績を私がいただいているというわけでして……」

トム「……く、ははは! 聞いたかい? 君の頼りにしていた男は、ただの詐欺師だったというわけだ!」

ロックハート「……」

マミ「……そんな」

トム「さあ、お遊びはここまでだ。まずはそこのスクイブを殺し、そしてその次は君だ」

マミ「そんな、そんな——そんなこと、もう知ってるわよ」



トム「なんだと?」

ロックハート「詐欺行為をばらすぞ、って脅されてここまで連れてこられたんですよ、私は!
        こうして抜き差しならぬ状況になるまで杖まで取り上げられて、なんて可哀想な私!」

マミ「まあ、正確にはここにくる直前に知ったんですけどね。
   ちなみに掛けた言葉は"バンドンの泣き妖怪を追い払った魔女は兎口だったらしいですね?"です」

トム「……意図が、分からないな。なぜ、わざわざこのスクイブを連れてきた」

マミ「あら、まだ分からないんですか? もう私達、ヒントは十分あげたのに」

トム「……もはや問答をする気も失せた。その体に聞くまでだ——」

マミ「先生!」

ロックハート「ぅ……」



 ——忘却術、という呪文がある。

 それは人の記憶を自在に消す呪文。練達者が用いれば、記憶を操作するような真似も可能となる。

 マグルに自身の存在を秘匿している魔法使いにとって有用な呪文。だが、同時にそれは非常に高度な呪文でもあった。

 一度掛けた忘却術も、ふとした拍子に解けてしまうことがある。

 修正された記憶に違和感を覚える場所に被術者を置き続ければ、
 例えそれが魔法に対する抵抗の低いマグルだとしても、専門の部署の魔法使いが日に十数回は掛け直さねばならない。


 ——あるところに、ギルデロイ・ロックハートという詐欺師がいる。

 彼はほとんどスクイブだった。魔法の才能に恵まれず、ただ、スターになりたいという分不相応な夢を抱いていた。

 顔が良いだけの魔法使いなど、さほど売れるものでもない。だから彼は詐欺に手を出した。

 手法は単純。

 あまり世間に知られていない、偉業を成し遂げた魔法使い達を探し出し、仕事の手順を聞き出し、最後に忘却術を掛けて、手柄を自分のものにする。

 手法は単純——だが、簡単ではない。

 本にするには、つまらない仕事では売れない。誰もが感心する、一流の仕事でなければ。

 だから彼は探し出した。一流の魔法戦士を。一流の魔女を。

 そして——その一流の彼らに忘却術を、しかも二度と思い出せないレベルで掛けた。

 ギルデロイ・ロックハートは詐欺師である。魔法の腕は三流以下だろう。

 だがスターに固執する執念と、その執念を支える忘却術に関してだけは、彼は超一流だった。


トム「クルー——」

 トムが呪文を唱えだす。それを見てから、ロックハートは杖を抜いた。

 その動きはあまりにも滑らか。あの決闘クラブの夜の無様さが嘘のよう。

 ロックハートの心に焦りはない。何故なら、先に動きだしたトム・リドルよりも自分の方が速いと分かったからだ。

 それは、いつもこなす"仕事"のように。

 杖が複雑な軌道を一瞬で描き切り、呪文を生み出す舌は刹那より短い時間で回りきる。

ロックハート「オブリビエイト(忘れよ)」

 鋭い閃光が、トムの胸を射抜く。途端、トムの顔が驚愕に歪み、

トム「——!? 馬鹿、な——!」

 その体が、急速に薄れ始めた。

マミ「知ってるわよ。あなたはトムの"記憶"でしかない。忘却術は、記憶を消す魔法。あなたにはよく効くでしょう?」

トム「あ——消える——消えてしまう——この僕が、スクイブなんかに——?」

マミ「ああ、そうそう。言い忘れてたわ。さっき、あなたがその言葉を言った時、私、言い返そうと思ってたことがあるの」


マミ「——馬鹿にしないでちょうだい。私みたいな劣等生だって一生懸命なんだし、ひとつくらいいいところがあるんだから」


ロックハート「あ、ははは、勝った? 僕が、闇の帝王に? 例のあの人に勝った?」

マミ「そうですよ、ロックハート先生! 先生の勝ちです!」

ロックハート「え、や、はは! 当然です。あの……当然の、これ、当然です!」

マミ「先生?」

ロックハート「……ごほん! はははは、やりました! 私がスターです! あのハリー・ポッターを超えた!
        御覧なさい、傷一つ負わずに完全勝利です!
        マミ、いまなら特別に、新生・ギルデロイ・ロックハートのサインをあげましょう!」

ぺしっ

マミ「触らないでください、詐欺師さん」

ロックハート「……え?」

マミ「え、じゃないです! 詐欺師——詐欺師って! 酷いじゃない! 騙してたんですね!?」

ロックハート「え、あー、それは、まあ。でも、ほら。私みたいな劣等生も、一生懸命ですし?」

マミ「それとこれとは話が別です! 外に出たら、きちんと騙した人に謝らなきゃ駄目ですよ!?」

ロックハート「む、むむむ——ええい! 新生・ロックハートの門出を邪魔されると困ります!
        ちょっと記憶を失ってください! オブリビエイ——あれ、私の杖は?」

マミ「さっき、ぺしってやった時に奪っておきました」クルクル

ロックハート「そんな! じゃあ私のスター街道爆走譚は!?」

マミ「ないです」

ロックハート「うわああああああ! なんで私はこんなとこまでえええええええええ!」


ザザッ!


マミ「? あれ、ちょっと静かにしてくれませんか?」

ロックハート「はあ! 何でですか静かにしたら杖を返してくれますか!?」

マミ「いえ、いま、ラジオのノイズみたいな音が——」






トム「僕を——コケに——したな——!」ザッザッ、ザ—


マミ「! トム・リドル!? まだ生きてたの!?」

ロックハート「あわわわわ」

トム「消えゆく——途中さ——だけどね——」


トム「——闇の帝王がてめえらスクイブに一方的に良いようにされるなんて、有り得ちゃいけないんだよぉ!」


マミ「……っ、せ、先生、もう一度忘却術を!」

ロックハート「は、はい——って、マミ! 私の杖は貴女が!」


トム「させるワキャ、ねエダロォオオオオォォオオオオ!」

トム『スリザリンよ! ホグワーツ四強で最強の者よ! 我と話せ!』シューシュー!


 ガコン。シュルシュルシュル……


マミ「像の口から、何か出てきて……」

ロックハート「ひいいいい! なんですかあれ! 聞いてない、私は聞いてないですよ!?」

マミ「バジリスクです。目を見たら死にます!」

ロックハート「聞かなきゃよかったぁああああああああああああああああああ!」

トム「ひゃあああはっはっは! 僕も死ぬが、お前たちも死ね!
   この僕の敗北を知る者がいなくなれば、この屈辱はなかったことになる!」

トム『さあ——バジリスクよ、奴らを殺せ! その後は、ホグワーツの穢れた血どもを皆殺しにしろ!』シュー!

トム「は、は、は。お前らを殺すように命令した。お前らに命令は取り消せない——……」シュゥゥゥゥ

マミ「消えた……可哀想な、人……」

ロックハート「マミぃぃいいい! 来てます! これ絶対来てます! 目ぇつぶってるから分かりませんけど!」

バジリスク『シャアアアアアアアアア!』

マミ「……逃げましょう!」ダッ



ロックハート「マミ! 私の杖! 杖! 杖プリーズ! 緊急事態でしょうさすがに!」

マミ「あれに忘却術が通用すると思いますか!? 私達の使える呪文なんて絶対弾き返されますよ!
   それよりも、いまは少しでも距離を稼いで……あいたっ!? 何かにぶつかった!?」

ロックハート「そうです! そういえばこの部屋と外を繋ぐ扉は閉まってるんでした!」

マミ「目を瞑ってたからわからなかったわ……!」

ロックハート「マミ! 早く! あの"えむでーふらいやー"とかいうマグルの道具で扉を!」

マミ「えっと、蛇語——蛇語——これだっけ!?」カチッ


『ふーんふーんふふふーん……♪』


マミ「おっさんの鼻歌が入ってる!? こんなの入れた覚えないんだけど——」

ロックハート「マミ!? 遊んでいる場合じゃないでしょう!?」

マミ「だって目を瞑ってるから……!」

ロックハート「じゃあもう杖を返してくださいよ! せめてこの蛇がいるってことを忘れて安らかにへぶらっ!」

マミ「ロックハート先生!? いったい何」

 ヒュン! ベシ!

マミ(尻尾——!?)
  「きゃぁああああああああ——……!」


マミ「う、うう……良かった、生きてる……体も、あちこち痛いけど、動く……MDウォークマンは……?」

 カチャッ、ポロッ

マミ「あ、ははは。見事に粉々……」

シャアアアアア……!

マミ「見えないけど、かんっぺき目の前にいるわね、これ……
   どうしよう、目が合わなかったら、毒の牙で噛み付くとか本に書いてあったような……」

シャアアアアアアア! ズルッ ズルッ

マミ「近づいて、きてる……痛いのは、やだな……」

シャァァアアアアアーーーーーーー!

マミ「お父さん、お母さん、マクゴナガル先生。キュゥべえ、グレンジャーさん……ごめんなさい……」






ハリー『……手を出すな、去れ!』シューッ シュッー!



マミ(う……ううん? ここは……? なんだか、温かい……)

ロン「ん? あ、ハリー。起きたみたいだよ」

ハリー「マミ、大丈夫? いったんおろすね」

マミ「あ……私、ハリーくんに背負われて……? 他の人、ジニーさんとロックハート先生は……?」

ロン「ロックハートはローブを裂いて作った紐を使って、僕とハリーで引っ張ってる。
   で、ジニーは僕の背中さ」

ロックハート「」

ジニー「Zzzzz...」

ロン「ジニーは泣き疲れて眠っちゃった。大体の事情は聴いたよ。僕の妹を助けてくれて、ありがとう」

ハリー「体の具合はどう? どこか痛いとこない? 見た感じ、骨は折れてないみたいだけど」

マミ「平気。もう歩けるわ……私、なんで生きてるの? だって、バジリスクに襲われた筈——」

ロン「間一髪だったよ。なあ、ハリー?」

ハリー「うん。ぎりぎりだった。あと一秒遅ければ、制止も間に合わなかっただろうし。
     ああ、バジリスクには『もう誰が何しようが目を開くな攻撃するな動くな抵抗するな』って命令してきたよ」

ロン「ありゃあ、餓死するまで動かないね。何百年後かしらないけどさ」

マミ「命令……そうか、ハリーくんも蛇語使えるんだもんね。トムが消えたから、新しく命令できるように……」

ハリー「トムか……そういえば、一応拾ってきたんだけどこの日記帳はもう大丈夫なの?」

マミ「ええ……でも、詳しく話すと長くなるわ……私自身も、まだよくわからないところがあるし……」

ロン「僕らもロックハートを探して学校中走り回ったからくたくたさ。話はあとで聞こうか?」

マミ「ロックハート先生を? なんで? ……でも、そうね。後ででいいわよね」

ハリー「いや、ちょっとここで座って話そうか?」

ロン・マミ「「なんで?」」

ハリー「……あれを見てよ」


パイプ


ロン「……あー。なんかマートル曰く、マミが先に降りたっていうもんだから、後先考えず滑り降りちゃったけど……」

マミ「何百メートル——下手したら何キロってレベルだものね。私も、帰る時のことはなにも考えてなかったし……」

ハリー「休憩しよう……くたくただ」



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ハリー「そっか……マミはそういう風に行動してたのか」

マミ「なんだか、すれ違ってばっかりだったみたいね、私達」

ロン「お互い、気を遣い過ぎたんだよなぁ。
   じゃなきゃ、もっと早く、スマートに解決できたはずさ」

ハリー「来学期は、もう隠し事はなしでいようね?」

マミ「ふふ。そうね、変に遠慮しないのが、友達っていうものかもね」

ロン「あははは。じゃあ、遠慮せずいうけど……」


パイプ


ロン「誰か何とかしてくれ。もう腹ペコで喉乾いて死ぬ……」

ハリー「あれからどのくらい経った……?」

マミ「まだ、そんなに何時間も経ってない筈よ……ジニーさんも目を覚まさないし」

ジニー「Zzzzz....」

ロン「彼らは学校を守りました。そして事件を解決した英雄たちは、お礼も受け取らず何処かへと去って行ったのです——」

ハリー「やめてくれ! 縁起でもない!」

マミ「そんなの絶対おかしいわ!」

ロン「真面目にこのエンディングが近づいてきている気がする……もう僕、そこら辺の苔とかむしゃむしゃ食べそうだよ?」


不死鳥「——♪」

ロン「ん? なんだあれ? 音楽みたいな鳴き声に、真っ赤な翼、金色の尾羽……」

ハリー「不死鳥だ。フォークス! ダンブルドアのペットだよ!」

ロン「ってことは、助けか! さすがダンブルドア!」

マミ「よかった、助かったわ……」


ロックハート「うん? ううん? ここは……?」


ロン「あ、ロックハートも目を覚ましやがった。こいつ、タイミングいいなぁ」

ハリー「ここはどこ? ときたもんだ。僕たちが引きずってきてやったのに。
     私は誰? とか言い出さないよね? 頭とか打ってなきゃいいけど」

マミ「うふふ……でも、ロックハート先生も頑張ったんだもの」

ロン「確かにね。記憶に過ぎない、しかも完全じゃないとはいえ例のあの人をやっつけたんだもの」

ハリー「うん。その点だけは、ほんと凄いよね」

マミ「本当に。詐欺師なんかやめて、きちんと特技を活かして働けばいいのに」

ロン「確かに詐欺師みたいな奴だけど、実力はあるんだもんなぁ。なんだろ、マミとは逆で実技以外はダメなタイプとか?」


マミ「え? あれ? 話してなかった、かしら?」

ロン「聞いたよ? ロックハートがトムを忘却術でやっつけたんだろ?」

ハリー「あとは、マミと一緒にトムのとこまで行ったってことくらいしか……」

マミ「あー……疲れてて、重大な部分を話し損ねてたわね。まあいいわ、杖は取り上げてあるし——あれ、杖は?」

ロン「君の杖はそこにあるだろ?」

ハリー「ロックハートの杖は転がってたから、あいつのローブの中に入れといた」

マミ「え……?」チラッ

ロックハート「……」ニコッ

マミ「——! エクスペリ……!」バッ


ロックハート「オブリビエイト! 忘れよ!」ババッ


ハリー「え?」

ロン「は?」

マミ「ちょ」

ジニー「Zzzz.....ぅうん?」

不死鳥「♪?♪」


カッ!!!!!


マクゴナガルの部屋


ロックハート「——確かにトム・リドルは強敵でした。私の人生において2番目に強かった敵といえるでしょう。 
        まだ年若いとはいえ、ジニーの魂を吸い、さらに強大になった例のあの人はね……」
    

モリー「ああ、ジニー!」ワッ

アーサー「大丈夫だよ、モリーや。ほら、ジニーは無事だろう?」

ジニー「Zzzzz.....」


ロックハート「……そう! しかし、私の慧眼は見抜いた!
        奴はただの記憶に過ぎない! 真に有効な呪文はさきほど私が使ったパトロナース・チャームではなく、
        忘却術! それが正解なのだと!」


マクゴナガル「……」

スネイプ「……」ギリッ


ロックハート「悲鳴を上げて消えるトム! 『嫌だ——死にたくない——何故選ばれし純血の僕が!』 そこで私は言ったのです!」


ロックハート『純血だとか、マグル生まれだとか、どうでもいいことだ。誰だって努力をしているし、長所はある!
        それを忘れ、私の生徒たちを恐怖のどん底に落としいれた貴様に、掛ける情けなどない!』キラーン


マミ「かっこいい! さすがロックハート先生! ああ、ハーマイオニーさんもここに呼びたいわ……!」ピョンピョン

ロン「ほんっとーに僕ら、こいつに助けられたの?」

ハリー「なーんか納得できないよね」


ロックハート「すると奴は哀れっぽい懇願をやめて本性を現しました!」


トム『ぐっげっげっげっげ! ならば貴様も道連れよ! 今世紀最高の魔法使いを殺せるなら、闇の魔法使いとして本望だわ!
   出でよ、我が下僕! 奴を八つ裂きにするのだ!』


ロックハート「そうして姿を現したのは——なんと、毒蛇の王! 怪物の中の怪物、バジリスク!
        そう、それが秘密の部屋の怪物の正体だったのです!」


ロックハート「信じられないかもしれませんが、私は"目を瞑って"戦いました——
        敵の攻撃を地面の振動と風の動きで読み、牙の一撃をかろうじてよけ、そして——」


マミ「……」ゴクリ

モリー「……そして? そして、どうなったんですか?」


ロックハート「ふっ……今頃、奴は秘密の部屋の底で、永遠に御寝んねしてますよ……」フゥー…



マミ「……きゃーーーーー! 決まった! 凄い! 生ロックハート決め! 見ましたか、いまの見ましたか!?」

モリー「ええ見たわ! ああ、なんでここにカメラが無いの!?」

マミ「全くね! 世界の損失だわ!」

モリー「ああ、こんな素敵な子がいるなんて! いえ、名前だけは聞いてたけど、でももっと早く仲良くなりたかったわ!」

マミ「私もです、おばさま! ロックハートのファンに悪い人はいませんもの!」


アーサー「ロン、母さんを見ないでやってくれ。数年後、きっと自分で思い出してじたばたするだろうから……」

ロン「もうあの手合いには慣れたよ。この一年で……」


ロックハート「はっはっは——おーやおや、マクゴナガル先生にスネイプ先生! 
        どうしましたか生徒が助かったというのにしかめっ面しちゃって! 私の活躍に息を飲みましたか?
        私を快く送り出してくれたお二人には、ぜひ一番最初に聞かせてあげたいと思っていました!」

マクゴナガル「それは——あー——非常に——ありがたい——」ギリッ

スネイプ「……」ギリッ メキメキッ バキッ

ロックハート「んんんぅ? すねーいぷ先生! どうしました? 怖かったですか? いささかドラマチックに語りすぎましたかね?
        そういえばスネイプ先生は、探索を開始する直前の私になにか言葉を掛けてくれましたよね!
        えーと、確か……『なに、完全無敵のギルデロイ・ロックハートだ。単身で怪物退治くらいこなすだろう』でしったけ?」


マクゴナガル「よくもまあ、一語一語覚えている……」ボソッ


ロックハート「はっはっは——まったくもってその通り! 私が本気で動けば、怪物なんてちょちょいのちょい!
        いや流石、私が決闘クラブの助手に推薦しただけのことはある!
        見事な洞察力、というやつで・す・ね☆」バチコーン


スネイプ「……っっ!」ブシュー! バタン!


ハリー「スネイプが全身から血を吹いて倒れた!」

ロン「ひぇー……この世のものとは思えない表情をしてる。
   今のスネイプの真向かいに座るくらいなら、バジリスクとにらっめこした方がましだね僕は」



ダンブルドア「セブルスを医務室に。ミス・ウィーズリーも一緒にのう。処罰などせんよ。
         ヴォルデモート卿には、君よりも年上の魔法使いが幾人もたぶらかされてきた……」

アーサー「ああジニー! 良かったなぁ! さあ医務室に行って、ホットチョコでも飲もう!」

モリー「アーサー! ジニーはまだ寝てるんですよ! 静かに! ああ、それとロックハート先生」

ロックハート「はい? なんですか?」

モリー「この度は、本当に娘がお世話になりました——本当に、先生には感謝してもしきれませんわ!」

ロックハート「……」

モリー「あの、先生?」

ロックハート「え、あ——はは! 当然のことをしたまでですよ! なんせ私は、ロックハートですからね!」


ダンブルドア「……ふむ。さて、ミネルバ。厨房に連絡を頼む。祝宴じゃ、豪勢に、とな」

マクゴナガル「ええ、分かりました……」

ロックハート「私の席にはオグデンのオールド・ファイアを忘れずに、とも伝えておいてください!」

マクゴナガル「……ええ、分かりましたとも……!」


バタン


ダンブルドア「さて、ハリー、ロン、マミ。君たちの処罰についてじゃが」

ハリー「処罰、ですか?」

ロン「え? なんで?」

マミ「校則、100個くらい粉々にぶち破ってるものね……」

ロン「おい待て。君はいいけど、僕らはこれ以上校則違反したら……」

ダンブルドア「そうじゃのう。次に校則違反をした場合、君らは退学処分という話じゃったのう」

ハリー「」

ロン「」

マミ「ハリー……ロン……私、忘れないから——」

ダンブルドア「まあ、100個も校則を破ったら同じじゃがの」

マミ「」


ダンブルドア「……じゃが、誰にだって間違いはあ」

ロックハート「おっとお待ちください校長!」

ダンブルドア「ん? なんじゃ、ギルデロイ」

ロックハート「先ほどの話の通り、ハリーには部屋の入り口を開けるために手伝ってもらい、
        そしてロンとマミは、その友達が心配になってつい後をつけてしまっただけです!
        彼らの処罰は、この私にお任せ願えませんか?」

ハリー「え?」

ロン「ロックハートが?」

マミ「ロックハート先生……」

ダンブルドア「内容次第じゃな。言うてみい」

ロックハート「それでは……おっほん!」

ハリー「……」

ロン「……」

マミ「……」

ロックハート「……その友情と、私の手伝いという難しい仕事をこなしたので、グリフィンドールに一億点!
        どうですか!?」

ダンブルドア「無理じゃのう。得点計に砂が入りきらん」

ロックハート「では、入るだけ!」

ダンブルドア「それならまあ、いいかの」

マミ「きゃー! ロックハート先生、優しい!」

ロン「なんだかなぁ。まあこれでグリフィンドールは優勝だろうけど」

ハリー「素直に喜べないなぁ……」



ばたん!


ルシウス「何故! 理事が停職処分にしたのに! お戻りになったのか!?
      納得の行く説明をしていただけるのでしょうな!?」

ドビー「……」

ハリー「ドビー!?」

ダンブルドア「おお、ルシウス。説明か、よかろう。
        アーサーの娘が襲われたと聞いた君以外の理事全員が、わしにすぐ戻って欲しいと"何故か"頼んできてのう。
        おまけにその中の何人かは、君に脅されたと"何故か"考えているようでの」

ルシウス「なるほど! それで、犯人をもう捕まえたと!?」

ダンブルドア「捕まえたとも。ほれ、ここにいるギルデロイがな」

ロックハート「はっはっは。いやどうもどうも!」

ルシウス「誰が捕まえたとかはどうでもいい! で、犯人は誰なのかね?」

ダンブルドア「これも説明が必要かの?」

ルシウス「当然でしょう! 貴方は私に説明する義務がある!」

ダンブルドア「分かった。そこまで言うなら是非もない——最初から説明してやりなさい、ギルデロイ」

ロックハート「はい! 私にお任せあれ! そう、初めに事件の臭いを感じたのは、去年の夏。
        ダイアゴン横丁の書店でサイン会を開いた時でした……」

ルシウス「なんだこいつは!? ええい、うるさい! 私はダンブルドアに聞いて——」

ロックハート「まままま、まー! まあ待ってくださいここからがいいところ!
        そう、私はそこで彼と出会いました。それがそこにいるハリー・ポッター!
        そして、私とハリー。二つの伝説が相対するとき、物語は動き出したのです……」




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数十分後


ルシウス「……」ゲッソリ

ロックハート「その日、私の朝食はターンオーバーでした。一見、何の変哲もないその卵。
        ですが、その黄身のつぶれ具合から私は、その日の吉兆を見出したのです!」

マミ「占いまで出来るなんて——あ、そうだ! 私も来年からは数占いとってるんだった!
   お揃いだわ! ペアルックね!」

ロン「ハリー、今日の晩御飯は何だろうねえ」

ハリー「肉がいいなぁ……ああでも、もうなんでもいいや。今なら何でも美味しく食べられるよ」

ロックハート「——ここで重要なのは塩と胡椒の配分です! どちらが多すぎてもいけません!
        塩を入れすぎては味を殺し、胡椒が多くては風味を殺します! だから私は——」

ルシウス「もういい! もうたくさんだ!」

ロックハート「おや、では続きはまた今度ということで」

ルシウス「やめろ!」

マミ「あ、終わっちゃった……」シュン

ハリー「え、終わったの? あー長かった。新記録かな?」

ロン「授業以外ではそうかも」

ルシウス「お前ら、なんでそんな平気な顔ができる!?」

ハリー・ロン「「慣れです」」

マミ「愛です! あ、別に愛って言ってもどちらかというとLike寄りっていうか!」テレテレ


ダンブルドア「まあ、何じゃな。これに懲りたら、ヴォルデモート卿の学用品をばら撒くのはやめることじゃ。
        アーサーは怒っておるじゃろう。さよう、君の家の応接間の床下を調べるに違いない——」

ルシウス「な——! ちっ! 帰るぞ、ドビー!」ゲシッ

ドビー「は、はいご主人様——あうっ!」


ばたん!


ハリー「……ダンブルドア先生、その日記をマルフォイさんにお返ししても?」

ダンブルドア「ふむ。良いとも。ただし、要らないようだったらまた持ってきておくれ」

ハリー「はい!」

ロン「待って、ハリー! 僕も行くよ——」


バタン!


「マルフォイさん。僕、あなたにこれを渡しに来ました」

「……なんだ、この汚いのは! 靴下!? くそ、中は日記か。いらん! こんな汚いもの、持って帰れるか」

「おっと、じゃあ僕がこれはあとでダンブルドアに届けて、っと——ああ、そっちはいらないから、君が自由にしたら?」

「は、何を言って——?」

「……ご主人様がソックスを下さった。だから——だから——ドビーは自由だ死ね!」バチーン

「ぐあああああああああ!?」

「うわー、廊下の端まで飛んだ。鬱憤が溜まってたんだろうなぁ」

「屋敷しもべ妖精の魔法って凄いんだね。うちのグールお化けも何かできないかなぁ」

「そーれそれそれ! ドビーめが元ご主人様を玄関まで運びます!」パチーン パチーン



マミ「あわわわ。なんだか外が大変なことに!」

ダンブルドア「マミ、そろそろ止めてきて貰っていいかの?」

マミ「は、はい!」ダッ


ロックハート「では私は、パーティに出る準備を……」

ダンブルドア「おおう。ギルデロイ、すまんのう。疲れているだろうが、君にも一つだけ頼みがあるのじゃよ」

ロックハート「おや、そうですか? かのダンブルドアにそうまで頼られると、悪い気はしませんね。
        なんなりとお申し付けください!」

ダンブルドア「うむ、医務室に行ってきて欲しいのじゃ」

ロックハート「ふむふむ、医務室に行ってきて、何を?」

ダンブルドア「それを決めるのは、わしではない」

ロックハート「はい?」

ダンブルドア「自分で決めるのじゃ、ギルデロイ」



医務室


パーシー「ありがとうございます。僕の妹を助けてくれて、本当にありがとうございます!」

ロックハート「はっは! 朝飯前、というところです。私に掛かればね!」

ジョージ「ようロックハート先生! 聞いたぜ、ジニーを助けた際の活躍ぶりを!」

フレッド「ぶっちゃけスキャバーズレベルで無能だと思ってたけど、考えを改めたぜ!
     いやあスネイプもこんな顔で入院させちまうし、大したもんだ!」

ロックハート「ふふ、そうでしょうとも! サインは御入り用じゃないですか?」

ジャスティン「あの、事件をほとんど一人で解決したって聞いて……本当に、素敵だ!
        いま分かりました! ロックハート先生は魔法界のマジックなんですね……!」

ロックハート「いやー、はっはっは。それほどでも!」

ニック「いえいえ、謙遜も過ぎるとかえって嫌味ですぞ!
    バジリスクを単身で打倒した魔法使いなど、この私も見たことがありません!」

ロックハート「いや、まあ、はっは!」

ハーマイオニー「さすが、ロックハート先生ね! 私、信じてました!」

ロックハート「あー、本当ですか? それは嬉しいですね」

ハーマイオニー「ええ! ああ、それじゃあハリー達が待ってるので、これで!」

ロックハート「ははは、楽しんでおいでー」


ロックハート「……」


大広間



ジャスティン「ハリー、君を疑ってしまったことを許してほしい!」

アーニー「僕もだ、ハリー! すまなかった。この通りだ!」

ハリー「いいよ、分かってくれれば……さあ、一緒に御馳走を食べよう?」

ロン「君って奴は人が好いね。まあ、そこがハリーのいいところか」


マミ「キュゥべえ! 治ったのね。良かった……!」

QB「マミ! やったね! 事件を無事解決したんだ!」

マミ「いえ、解決したのはロックハート先生よ」

ハーマイオニー「そう、ロックハート先生だわ!」

マミ「ああ、ハーマイオニーさん! 元気になったのね、あのね、さっきマクゴナガル先生の部屋で、生ロックハート決めが……」



QB「ハリー! ロン! 久しぶり!」

ハリー「やあキュゥべえ! こっちにおいで。君にはまだそこまで耐性がない筈だ」

ロン「今日は夜通し騒ぐぞ! ロックハートの奴を忘れるくらいな!」

QB「苦労したんだね、二人とも……」


ハグリッド「ハリー、ロン! お前らが俺の無罪を証明してくれたと聞いて、俺ぁ、俺ぁ……!」

ロン「ハグリッド! 君には言いたいことが山ほどあるんだ! まあ座れよ!」

キュゥべえ「初めまして、ハグリッド! 僕はキュゥべえ!」

ハグリッド「お、おお。なんじゃこら、初めて見る猫だな——毒針とかもってるんか?」ワクワク

ロン「それだよ、それ! 今日こそは一言物申すぞ!」

ハリー「ロン、そりゃ無理ってもんだよ。ハグリッドがハグリッドである限りは」



「おいグリフィンドールの点数計が!」「うわあ見たことないくらいいっぱいいっぱいだ!」



ダンブルドア「あー、食べながらでいいので二言三言聞いてくれるかの。
        まずは嬉しいニュースから。予定されていた期末試験は、キャンセルとなった!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ハーマイオニー「そんなぁ……私、もう勉強しちゃったのに!」

ロン「なあ、嘘だといってくれよハーマイオニー」



ダンブルドア「あーそれでじゃのう、あまり嬉しくないニュースなんじゃが……
        ギルデロイ・ロックハート先生が、先ほど付で退職なされた」

マミ「えええええええ!?」

ハーマイオニー「嘘よ! 嘘でしょ!?」

ロン「は? なんでだ? あいつ、いつ調子こきながら大広間に入ってくるかと思ってたのに」

ハリー「ロックハートが、目立つチャンスをふいにするなんて……」


バターン!


スネイプ「それは本当ですか校長!」

ダンブルドア「おや、セブルス、入院してたと思ったがのう——さよう、ロックハート先生はお辞めになられた。
         なんでも、新しくやることができと言ってな。これでまた闇の魔術に対する防衛術の先生を探さねばならん、のう?」

スネイプ「ふ、ふはははは! そうですか、それは至極残念無念! ふーはっはっはっは!」キラッ

ロン「よっぽど嬉しいんだろうな……」

ハリー「スネイプ……泣いてる……?」

マミ「えー、そんなぁ……もう一回、お話が聞きたかったのに」

ハーマイオニー「マミはいいじゃない。一回聞けたんだもの」


ダンブルドア「……」










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校長室


ダンブルドア「やあギルデロイ、それで、決まったかの?」

ロックハート「……辞めます」

ダンブルドア「ほい、退職届。そこにサインだけすればいいようになっとるから」

ロックハート「どうも」サラサラ

ダンブルドア「……」

ロックハート「……校長は、全部見抜いておられたのですか?」

ダンブルドア「さて、のう。わしだって何でも知っとるわけじゃなし、全部は見抜けんさ。必要なことだけ、というとこかの」

ロックハート「……失礼します」

がちゃ ばたん

ダンブルドア「……」




ダブルドア「ホグワーツでは、助けを求めるものにはそれが与えられる——君も例外ではないのじゃ、ギルデロイ」


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夏休み 見滝原市 自宅


マミ「帰ってきたけど……やっぱり日本は熱いわね。溶ける……」

QB「冷房、冷房つけようよ、マミぃ……」

マミ「駄目よ……これからまだ暑くなるんだから……このくらいの気温、慣れないと……」

QB「なんで日本の夏はこんなに湿度が高いのさ……」

マミ「私に言われても……はあ、でも確かにイギリスの方が過ごしやすいわね。
   まあ、窓を開ければ少しは……」


 がらっ バサバサバサ!


マミ「きゃ、わ、っぷ! キュゥべえ鳥! 鳥が入ってきちゃった! 猫の出番よ!」

QB「仮に君が僕に望む役割を果たした場合、この場で鳥をバリボリ貪り食うわけだけど、それはいいの?」

マミ「けだもの! あっち行って!」

QB「君が言い出したんじゃないか……ん? マミ、その鳥……」

マミ「鳥が、何!? この、離れなさい!」ブンブン!

QB「いや、その鳥、フクロウだよ。しかも、手紙をくわえてる」

マミ「へ?」


フクロウ「ホゥー」ヒョイ

マミ「あ、ありがとう……え、何で? ふくろう便って、見滝原は範囲外でしょ?」

QB「その手紙、見てみれば? きちんと君宛になってるかい?」

マミ「マミ・トモエ様へ……私宛ね。差出人は……ギルデロイ・ロックハート!?
   ロックハート先生からだわ!」

QB「え? 彼は教職を辞任したはずだろう?」

マミ「でも、筆跡もロックハート先生のだし……とりあえず、読んでみるわね」ガサガサ

QB「ナチュラルに筆跡鑑定したね、君」

マミ「えーと、拝啓、親愛なるマミ・トモエ様へ……」




『突然のお手紙に貴女は驚いているかもしれませんね!

まあ、突然と言ったら私がホグワーツの先生を辞めるのも突然でしたが!

皆さん驚いているとは思います。あいさつも何も無しでしたからね。

こんな風に勝手に辞めた私ですが、マミだけには理由を知っておいて貰いたいという勝手な理由がありまして、こうして筆をとりました!』




マミ「きゅ、キュゥべえ! 私だけに、ですって! きゃー!きゃー!」バシバシ

QB「痛い痛い! やめて、僕をお餅にでもする気かい!?」


『えー……まあ一言でいうと、私はもっと上を目指せる人間だ! ということに気づいてしまったのです!

ギルデロイ・ロックハートは、ここで終わる器ではない! そう、私は思いました!』





QB「凄い天上天下唯我独尊な手紙だ……」

マミ「なるほど……確かにロックハート先生は、魔法界を束ねるに足る人材よね……」

QB(マミみたいのがいっぱいいるから、こういうのが出来上がるんだろうな……ん?)







『そう——偽りのスターなどではなく! 本当のスターになれる!

私は、そう思ったのです!』





マミ「え?」

QB「うん?」


『私の少年時代から青年時代に掛けては悲惨の一言です。

魔法の腕が致命的だったせいで、みんなにいじめられていました。

ちょうど、貴女と同じ寮のネビル・ロングボトムをスリザリン寮に放り込んだポジション、といえば分かりやすいでしょうか。

そんな過去の経験が、スター——すなわち、人々の中心に立ちたいという願望を形成したのでしょう

ですが、最近とある人に教えて貰ったのです。

自分の力で本当のスターになる、という行為の快感を!(まあ、その直後に詐欺師呼ばわりされましたが)』




マミ「酷いわ! ロックハート先生を詐欺師呼ばわりなんて!
   誰だか知らないけど、もしも会ったら私がやっつけってやるんだから!」

QB「いいから続き」



『それを知ってからというもの、それまでのちやほやされっぷりが、急につまらなく思えてきました。

味を占めた、というのでしょうか。

私は、もっと本当のスターとして輝きたい! そう思うようになったのです』


『教員をやめたのは、あそこにいたギルデロイ・ロックハートが偽りのスターだったから。

だから、もうあのホグワーツには戻りません。芸能活動もやめました。

これからは本当のスターを目指して努力しつつ、それを教えてくれた人の言う通り、

いままで迷惑を掛けた人達に、補償をして回ろうと思います』





マミ「キュゥべええええええええ! ロックハート先生がああああああ、芸能活動やめちゃうってええええええええ!」

QB「うわ、マジ泣きだよ……ぶっさ」ボソッ

マミ「えい!」ギュッ

QB「きゅっ!?」






『とりあえず手始めとして、マミの家をふくろう便の範囲内にしました。

今回の事件で魔法省にいくらか伝手ができたので、その恩恵です。

まあ、あるものは利用してなんぼですよねHAHAHA!

あと煙突飛行ネットワークも数日中には繋がります。そうしたら登録済みのトランクに入る携帯暖炉を送りますね。

では、またどこかで!

                                     ギルデロイ・ロックハートより

PS.次に会う時は、おそらく本物のスターになってるでしょう。

目が潰れないように、サングラスは必須ですよ☆』


マミ「よくわからないけど……ロックハート先生も、頑張ってるってことよね!」

QB「まあ、おおむねその通りでいいんじゃないかな」

マミ「よーし、なら私も頑張るわよ! ……えーと、とりあえず、ハーマイオニーさんとロンくんとハリーくん、
   ラベンダーさんとパーバティさん、あと佐倉さんにも手紙を書くわ!」

QB(何をすべきか思いつかなかったんだな)

マミ「よぉし、見てなさいよキュゥべえ。今日中に全部書いて見せるんだから!」


ばさばさばさ!


マミ「きゃあ! またフクロウが!」

QB「窓の外に郵便受けか何か作ったほうがいいかもね。で、今度は?」

マミ「小包ね、結構重い——あれ? 宛名が書いてないわ」ガサガサ

QB「怪しいね。爆弾とかじゃない?」

マミ「……」

QB「……」

マミ「キュゥべえ、私買い物に行くから、開けておいていいわよ——」

QB「一緒に死のうマミ!」ピョン!

マミ「きゃあ、ちょ、ちょっと。やめなさい。足にしがみついちゃダメ!」

QB「放さない! 放さないぞ、マミ! 死ぬときは一緒だ!」

マミ「そうじゃなくて、バランスが——あ」グラッ

QB「きゅ?」

バタン!



マミ「いたたた……もう! だから言ったじゃない! やめてって!」

QB「だって君が最初に僕を置いて逃げようと!」

マミ「〜♪」

QB「そんな口笛鳴らして"私、知りません"みたいな真似したって通じるもんか!」

マミ「……やるわね、キュゥべえ。」

QB「ほら、諦めて小包開けよう? っていうか、さっきの騒ぎで、ちょっと破れてるし……」

マミ「え、毒ガスとかだったらどうしよう……キュゥべえ、炭鉱のカナリアって知ってる?」

QB「やめろ」

マミ「ちょっとしたジョークなのに…… (ガサガサ) あら、これは……」

QB「見たことのあるパッケージだね」

マミ「猫用栄養ドリンク……手紙付きね」


『快気祝いだ。私の猫の分が余ったからやる』


QB「余り、というには何処もパッケージが破れてないよ? もとから6本入りだろう、これ?
   やれやれ、君たち人間はいつもそうだ。もっと正確な表現を心掛けてほしいよ」

マミ「……ふふっ、いいのよ、これはこれで」

QB「理解できないねぇ……」

マミ「手紙って素敵、ってことよ! さあ、私も書かなきゃ! あ、ついでにお菓子か何かプレゼントした方がいいかも!
   とりあえずは便箋とか材料とかの買いだしね。行くわよ、キュゥべえ!」



                                                          秘密の部屋編・了

投下終了。次回。夏休み編(2)を予定

二場面同時進行で場面転換させまくったら読みにくくなった。この手法は二度やらねえ

この前ネットサーフィンしてたら『魔のブラックホール大作戦』という文章が変なところで改行してて
『魔のブラックホール大作』に見えました。誰ですか魔のブラックホール大作って。

そんなわけで投下します。

夏休み 見滝原 自宅


 見滝原市の夏は、暑い——

 これは、ヒートアイランド現象により首都で発生した熱風が吹きこむことが原因である。

 その為、首都のある南の方角に向けて一心不乱に呪いの電波を飛ばすのは、夏の見滝原でよく見られる風物詩だ。

 ここ、とあるマンションの一室でも、それに近い光景が見られた。

 一見、そこは何の変哲もないマンションの一室に見える。部屋の中央で、轟々と火が燃え盛ってさえいなければ。

マミ「……」

 そんな炎の前に立ち尽くす、十代前半の女の子。

 彼女の名は巴マミ。ホグワーツに通う、魔法使いの卵である。

 魔法使い——

 箒で空を飛び、大鍋で怪しげな薬を製造し、杖を振るって異常な現象を起こす。そんな胡散臭い存在。

 いまも彼女は部屋のど真ん中で燃え盛る炎を見つめながら、まるで未開部族のシャーマンがそうするように、
 そわそわと一定のリズムで体を揺らしていた。

 その腕の中には、白い猫のような生き物が丸くなって抱えられている。

 生き物の名前はキュゥべえ。これから捧げられる生贄のようにも見えるが、一応はマミの大切なペットである。

マミ「遅いわね……キュゥべえ、ちょっと炎の中に放り込むから、向こう見てきてくれる?」

QB「いや、絶対焼け死ぬよ。まだ繋がってないし」

マミ「馬鹿! やる前から諦めないで!」

QB「やっちゃったら後悔もできなくなるから言ってるんだよ……ちょっとねえ、何で僕をゆっくり振り上げてるの?
   マミ! やめるんだ! 背中を逸らすのを今すぐやめて! ど、動物愛護団体が黙ってないぞ……!」

 と、そんな風に騒いでいると。

 それまでも激しく燃えていた炎が、さらに激しく燃え上がった。さらにその色も、赤からエメラルド・グリーンに変じる。

マミ「繋がったわ!」ポイッ

QB「ぷぎゅっ」

 歓声。そして潰れたような悲鳴。

 そんな声に導かれたように、緑色の炎の中から人影が飛び出してくる。

 ふわりと部屋の中に着地したその人物に、マミはにっこりと笑って、

マミ「いらっしゃい、ハーマイオニーさん!」

ハーマイオニー「ええ、一日お世話になるわね、マミ」


見滝原市 和風喫茶



ハーマイオニー「……ふぅ、涼しい! 日本の夏……噂には聞いてたけど、本当に蒸し暑いのね……」

QB「マミの部屋の中が死ぬほどむわっとしてたのは、マミがカーテンを閉め切ってたからだけどね」

マミ「だ、だってご近所さんに見られたら言い訳できないから……」

ハーマイオニー「あのね、マミ。煙突飛行する時火をつけるのは、入る側の暖炉だけでいいのよ?」

マミ「し、知らなかったんだもの! まだ煙突飛行をした経験もないし……」

ハーマイオニー「まあ私も今回が初めてだし、"漏れ鍋"の暖炉から飛ぶ時、近くの人から聞いただけなんだけど……
          マミも飛ぶときには気を付けた方がいいわ、煤を吸い込まないようにするのがコツですって。
          大体のことは、持ってきた煙突飛行粉(フルー・パウダー)についてる説明書に書いてあると思うけど」

マミ「ごめんなさい、わざわざ持ってきて貰っちゃって……」

ハーマイオニー「いいのよ。おかげでこうやって日本にもこれたし……
          そういえば知ってる? ロンも宝くじが当たって、エジプトに行くんですって」

マミ「初耳ね。そう、エジプト……いいなぁ、ピラミッドとか見てみたいわ。
   ハーマイオニーさんって、ロンくんとお手紙のやり取りとかよくするの?」

ハーマイオニー「そこそこね。ハリーは夏休みの間、ご家族にふくろうを使うの禁止されてるみたいだから……
          そういえばマミは夏休み、どこかへ行ったりしないの?」

マミ「夏休みはここで過ごすつもり。そもそも、一年のほとんどをイギリスで過ごしてるしね」

QB「それにしても、ロックハートも抜けてるよねぇ。暖炉だけ送って、肝心のフルー・パウダーを忘れるなんて」

マミ「こら、駄目でしょ、キュゥべえ? ロックハート先生にはただでさえお世話になってるのに!
   そんな、ご好意に甘えるような……好意……好意……えへへ」

ハーマイオニー「……マミやハリー、ましてやロンにまでプレゼントが送られてきてるのに、なんで私には……!」ギリッ

マミ「え、や、だからほら、怪物退治の時、危ない目に遭わせちゃったお詫びじゃないかしらっ。
   お詫びって言っても、ハリーくんはともかく、私とロンくんは勝手についていっちゃっただけらしいけど」

ハーマイオニー「あなた達、ショックで何も覚えてないのよね……うう、でも羨ましい……
          ロックハート先生、芸能活動もやめちゃうし、本は絶版になっちゃうし……」

マミ「ま、まあまあ! ほら、冷たいものでも注文しましょう? あ、メニュー読めないわよね。
   私の翻訳指輪貸してあげるわ!」

ハーマイオニー「え、これをはめるの? ……わあ! 日本語が読めるようになった!
          凄いわ! これならいろんな国の本が読める!」

マミ「ふふふ、ハーマイオニーさんらしいわね」

QB「道具の使い方ひとつとっても品性が表れるなぁ。
  何だっけ? 前に誰かさんは『これがあれば英検もTOEICも楽勝じゃない……!』とか言ってたけど」

マミ「すみませーん。煮えたぎった飴湯くださーい」


ハーマイオニー「……んっ、このアンミツっていうの凄く美味しいわ! マッチャも紅茶にない苦みが新鮮だし……
          これが"ワビサビ"というやつね!」

マミ「気に入ってもらえて良かったわ。紅茶やケーキは本場に敵わないだろうから、
   思い切って純和風で攻めてみたのだけど……」

QB「ここ数日、良いお店を探すって言って食べ歩き三昧だったもんねえ……
   店員が変な目で見てたよ。一見ひとりなのに二人分注文するから、"あらあら、見た目によらず大食漢ねえ"って」

マミ「な、な、な! キュゥべえが食べたいって言うから注文したんじゃない!」

QB「それは素直にありがたいけど、そういう風に見られてたものは仕方ないじゃないか。
   僕が悪いわけじゃないし……あー、クーラーの効いた場所で食べるお汁粉はまた格別だ」

マミ「きー! 飲み食いしたお菓子吐きなさい!」

ハーマイオニー「ふふ……相変わらず仲がいいのね。私もペットを買う時は猫にしようかしら?
          それに、ありがと。お店を探してくれたみたいで」

マミ「……どういたしまして」

QB「マミ、風邪かい? 顔が真っ赤だけ——きゅっ!?」


マミ「さて、お腹も膨れたことだし、これからどうしましょうか? ハーマイオニーさんはどこか行きたいとことかある?」

ハーマイオニー「うーん、そうね……来る前に、この辺のことは本で読んできたのだけど——」

QB「さすがだね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「ありがとう、キュゥべえ……でも、この辺りには魔法生物の群生地とかってないのよね。
          だから今までふくろう便とか煙突飛行ネットが通ってなかったんだし。
          河童とかは、もっと西の方に行かないといないみたい」

マミ「カッパ!? カッパって本当にいるの!?」

ハーマイオニー「いるわ。というか、日本が原産よ。来年度の授業で習うと思うわ……
          だから今回は魔法抜きで、マグル——普通の日本文化が見学できれば、って思うんだけど」

QB「うーん、でもそれだと見滝原は向かないかもね。ここって、かなり急速に発展してる街だから。
   寺とか神社とか、そういう"和風"な部分ってあんまりないと思うよ。もちろん、皆無じゃないだろうけど」

マミ「流石に、京都とか程じゃないわよね……ごめんね、ハーマイオニーさん」

ハーマイオニー「あら、どんな場所にだって、見るべきところはあるわ。
          むしろ有名なキョウトにない部分を見れるんだから、得ってものじゃない?」

マミ「ハーマイオニーさん……」

QB「彼女がそういうんだ。じゃあ、見滝原の中心部を見て周ろうか?
   かなり前衛的な都市構造だから、一日くらいなら見飽きるってこともないだろう」


ハーマイオニー「ミタキハラって、凄く未来的な建物が多いのに、緑も負けないくらい多いのね。
          ふふっ、ここの通りなんか、散歩コースに最適じゃない」

マミ「でしょう? 自慢の通りなのよ。この辺は夏でも涼しいし……」

QB「でも、無計画な緑化は後々の憂いに繋がるんだけどね」

マミ「え?」

ハーマイオニー「どういうこと?」

QB「例えばこの街路樹。今は植えられたばかりだからいいけど、このまま成長すると通行の妨げになる程大きくなるんだ。

   とりあえず植えればいい、って考えで、種類の選定が杜撰だったんだね。
   他にも災害時の救助活動とかには支障をきたすだろうし……そもそも枝が折れて落ちたりすると、それ自体危ない」

マミ「そ、そんなの枝を切っちゃえばいいのよ!」

QB「それをするのにもお金がかかる。最初から想定しておけば、税金を無駄にせず済んだのにね」

ハーマイオニー「なるほど……そこまで考えなきゃいけないのね」


◇◇◇


マミ「ここが、見滝原のちょうど中心。モール街なんかが立ち並んでて、ショッピングには不自由しないの」

ハーマイオニー「ほんと凄いわ! イギリスの本場モール街に勝るとも劣らないくらい!
          ショーウィンドゥを眺めてるだけで目移りしちゃいそう」

マミ「本場? モール街ってイギリス発祥の言葉なの?」

ハーマイオニー「発祥ってことはないでしょうけど、イギリスでモール街っていったら
          ロンドンにあるセントジェームズ公園の傍の通りを指すの。
          お店がたくさん並んでて、観光客もいっぱいいるわ。マミもロンドンにくることがあったら、ぜひ寄ってみて!」

マミ「ええ! もちろん——」

QB「まあ、イギリスのThe Mallはともかくとして、この見滝原は無計画な開発で歪が大きくなってるんだけどね。

   中心部から少し離れるとゴーストタウンみたいになってる場所もあるし。
   商圏がころころ変わるから、それで投資をしくじったって人もかなりいるはずだ」

マミ「え、あう……」

ハーマイオニー「……そうね。新しいものを取り入れるのはいいけど、古いものも大事にしないといけないわよね」


◇◇◇


ハーマイオニー「あの辺り、凄くいっぱい風車があるのね……なんの為かしら?」

マミ「えーっと……」

QB「風力発電の実験場さ。あくまで実験場だから、これだけで電力を賄えているわけじゃないけどね。
   そもそも風力発電自体が需要と供給の原則を満たしにくい発電方法ではあるんだけど」

ハーマイオニー「でも、こういう実験は大切だと思うわ。技術が発展して問題が解決されるかもしれないし、
          仮に失敗でもそこから得られるデータは無駄じゃないもの」

QB「その考え方も一理ある。僕からしてみると、酷く原始的で無駄が多いんだけどね」

マミ「……」


QB「あそこのビル群は強度不足だ。もしも凄い嵐なんかが来たら、真ん中から——」

マミ「わ、わああああああーっ!」ガバッ

QB「きゃあ、マミがバグった! こ、これだから感情は精神疾患だっていうんだ!」

ハーマイオニー「違うのキュゥべえ! マミは去年の事件で心に傷を! ああ、どうしようマダム・ポンフリーがいらっしゃらないわ!
          そ、そうだ! 何かで読んだことがあるけど、日本ではこういう時黄色い救急車を呼ぶって!
          でも救急車って普通は黄色よね? まあとにかく、はやく999に電話を——」

マミ「違うわ! べ、別に錯乱したわけじゃないったら!」

ハーマイオニー「え、違うの? じゃあ、一体なんで……」

マミ「ぐすっ、だ、だって、キュゥべえとハーマイオニーさんが凄い難しい話してて……
   わ、私、全然ハーマイオニーさんの役に立ててないから——」

ハーマイオニー「マミ……」

ハーマイオニー(ほんとのこと言うと、これはこれで凄く勉強になるから、全然気にしなくていいのだけど……
          でもあれよね? それを言うのは野暮ってものよね?)

QB「マミ……」ポンポン

マミ「キュゥべえ……なぐさめてくれるの……?」

QB「君、凄く面倒くさい」

マミ「……え」

ハーマイオニー「ちょ、キュゥべえ!?」

QB「典型的な"面倒くさい女"じゃないか。OL50人にアンケートとったら嫌われてそうな感じの——」

マミ「う、うわああああああん!」ビシィッ

ハーマイオニー「ま、マミ! ちょっとこら、何で杖なんか持ち歩いて——しまいなさい! すぐにしまいなさい!
          こんなとこで魔法なんか使ったら大変なことになるわよ!」

マミ「は、放して! 刺し違えてでも、キュゥべえと決着つけてやるんだから……!」

QB「きゅぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」

ハーマイオニー「もう、マミったら抑えて——キュゥべえが聞いたこともないような邪悪な笑いを!?」



マミ「——というわけで、これからは私がお勧めスポットを紹介するわ」

QB「わー。どんどんぱふぱふー」

マミ「なんか心底腹が立つリアクションだけど……いいわ。私だって、高尚な案内くらいできるんだから!
   吠え面かかせてあげる! キュゥべえなんて、にゃんにゃん鳴いてればいいのよ!」

ハーマイオニー(どうしよう、何か一年生の頃を思い出す不安さ加減なのだけど……)



◇◇◇



マミ「ここのお総菜屋さんはメンチカツがお勧めよ! 揚げたてを買おうとすると、こうして並ばなきゃいけないの!
   あ、おばさん! 三つ下さい! メンチカツ三つ! ソースも!」

ハーマイオニー「……美味しい! 揚げてあるのに全然油っこくないわ! それでいてジューシーだなんて!」

QB「なるほど、確かにこれは並ぶだけの価値があるね」



◇◇◇



マミ「このスーパーの駐車場敷地内にある焼き鳥屋さん、つくねが凄く美味しいのよ!
   つくねって言うのは、ええと、鶏肉のハンバーグってとこね。おじさん、2本下さい!」

ハーマイオニー「んー……確かに、この独特の香ばしいソースは食欲をそそるわね」

QB「素材の味を活かすには塩一択だね」



◇◇◇



マミ「ここのタイ焼き屋さんは、縁日でもないのにじゃんけんに勝つと一個おまけしてくれるのよ。
   じゃんけんぽん! 勝った! はい、ハーマイオニーさんの分。クリームでいいかしら?」

ハーマイオニー「……」モグモグ

QB「……」モグモグ


マミ「次。ここのケーキ屋さんはお店の中で食べることも——」

ハーマイオニー「……けぷっ。失礼。ストップ。ストップよ、マミ。落ち着いて」

マミ「? ケーキの気分じゃなかった? じゃあラーメンでも」

ハーマイオニー「あのね、そういうことじゃくて」

QB「マミ、君がさっきから案内してるの全部食べ物屋さんじゃないか。高尚(笑)な案内はどこに行っちゃったんだい?」

マミ「……あら? へ、変ね?」

QB「いいけどね。所詮はマミだし……でも女の子として恥ずかしくないのかな?
   ああ、これが色気より食い気って奴か。我が身を賭してことわざを教えてくれるなんて、ある意味高尚かも——」

マミ「こ、これはほんの小手調べよ! 腹が減っては戦は出来ぬっていうでしょ!?
   次こそ、凄いとこに案内してあげるから……!」

ハーマイオニー「マミ、無理しなくても……」

マミ「は、ハーマイオニーさんまで……うう、見てなさい! 本当に凄いところに連れて行くわよ!」


県庁前 県民広場


マミ「——そんなわけで、見なさい! あれが県庁よ!」

ハーマイオニー「……うん」

QB「……そうだね。県庁だね。大きいね」

マミ「……あ、あら? 何か期待してた反応と違う……
   ほら、政治の機能が集中してて、凄く難しい話し合いをしてる、高尚な場所で……」

QB「いいよ、マミ。僕が悪かった。人類が誕生してからの英知全てを詰め込んだ僕と、
   ただの女子中学生じゃあ勝負にならないことは自明の理だったのに」

マミ「な、何よ。それじゃあ私がキュゥべえに負けたみたいじゃない!」

QB「よく考えたら君、地元についての勉強って小学校でやってそれっきりだもんね……
   ほんと、僕が大人げなかったよ。ほら、帰ろう? ね? ケーキ食べるくらいなら付き合うから——」

マミ「……うぃ、うぃんがーでぃあむ……!」

ハーマイオニー「ああああ! ほ、ほら、マミ! なんかあっちの建物でイベントやってるみたいよ!
          私、あれが見てみたいわ! でも入り方とかよく分からないし、どうすればいいのかしら!?」

マミ「……! 本当!? それじゃ、入れるかどうかちょっと見てくるわ!」ダッ

ハーマイオニー「……ふぅ。なんとか凌げたけど……もう、キュゥべえ。なんであんな煽るようなこと言うのよ?」

QB「真面目に謝ったつもりなんだけどなぁ」


会館内


ハーマイオニー「へえ……外はシックなレンガ造りだったけど、中はそうでもないのね?」

QB「改修工事が行われたんだろう。外の様式を見る限り、昭和初期に造られたようだし」

マミ「お待たせ! 2階のホールで演奏会やってるみたい。入場料もいらないし、勝手に入れるみたいよ?」

ハーマイオニー「それじゃ行きましょうか。空調の効いてる場所で涼めるだけでもありがたいし」

QB「そうだね、早速——……」

マミ「? キュゥべえ、どうしたの?」

QB「あー……悪いけど、僕は少し外を歩いてくるよ。食べ過ぎたみたいだ」

マミ「え……ちょっと、大丈夫?」

QB「大したことないよ。ただクーラーでお腹が冷えると大変そうだから、外の木陰で休んでる。
   マミとハーマイオニーだけで行っておいで」

マミ「キュゥべえがそう言うなら……でも、駄目そうだったらテレパシーで伝えてね?」





2F ホール内


マミ「キュゥべえ、大丈夫かしら……でも、いつもあれくらい食べてるわよね……」ブツブツ

ハーマイオニー「……ふふっ」

マミ「あら、どうしたのハーマイオニーさん?」

ハーマイオニー「ごめんなさい。でも、さっきまで売り言葉に買い言葉で喧嘩してたのに、
          こうして別れた途端に心配しだすものだから、つい」

マミ「な! そ、それは、か、飼い主としての責任がね!?
   そ、そうよ! だってマクゴナガル先生からプレゼントしていただいたものだし——」

ハーマイオニー「ほら、ホールではお静かに? 次の演奏が始まるわよ?」

マミ「ううー……」


『続きまして、ヴァイオリン独奏。上条恭介さん。曲目は——』


演奏会終了後 2F ホール前



ガヤガヤガヤ ザワザワザワ


マミ「……うーん! 背筋が固まっちゃったわ。ずっとぴしっとした姿勢でいたから……」グイッ

ハーマイオニー「どの演奏者も真剣だったものね。音楽ってあまり聞かないけど、今日のは良かったわ。
          それに、私たちと同い年くらいの男の子がいてびっくりしちゃった」

マミ「あれは驚いたわねぇ……あの歳で、周りの大人とタメを張れるくらいの演奏をするんですもの」

ハーマイオニー「……そういえば、私達も浮いてたわね。周りの観客、みーんな大人ばっかりで」

マミ「ま、まあ土曜日とはいえ、日本の学校はまだ夏休みじゃないし……そもそも、休みの日に演奏会にくる子供って中々いないわよ。
   いるとしたら、それこそ関係者くらいじゃ——」



さやか「うわー、げぇじんさんだ。げぇじんさんだよ、まどか! 舶来ものだ!」

まどか「さ、さやかちゃんやめて! 恥ずかしいよ! さやかちゃんという存在そのものが!」

さやか「なんだよぅ、ちょっとした冗談じゃんか——あれ。まどか、今なんつった? 黙ってはいなかったよね?」

まどか「さーてーろーやーりー♪」

さやか「それで誤魔化せると思っているのか! うりゃー!」ガバッ

まどか「きゃ、ちょ、あははは! さやっ、やめっ! きゃははは!」


ハーマイオニー「あれも、関係者?」

マミ「あ、あはは……たぶん、そうじゃないかしら」

ハーマイオニー「それにしては、随分と落ち着きがないようだけど……というか、危ないわよ。
          あんな風に、人が大勢いるホールではしゃいだりしてたら——」


ドン!


聴客3「っと、悪いね」スタスタスタ

さやか「わっ、とっと! 危ねー。やー、悪い悪い。まどか、平気?」

まどか「さ、さやかちゃん! 足元——」

さやか「へっ?」


ぐらっ


さやか「わ、わ、わ!」

まどか「さやかちゃん!」

マミ(いけない。あのままだと階段に頭から——この高さから落ちたら……!)

ハーマイオニー「危な——」

マミ「っ」バッ


マミ「——ウィンガーディアム・レヴィオーサ!(浮遊せよ)」


ふわっ


さやか「く、ぬううううう! 落ちてたまるかぁ!」ジタバタ

ハーマイオニー「マミ!? あ、あなた何てことを……!」

マミ「い、いいから早く引き上げてきて!」

ハーマイオニー「……っ」ダッ


さやか「あ、何かいける! いけるぞ! 全く落ちる気配がない! 流石さやかちゃんトゥー!
     さあ頑張れさやかちゃんレッグ! お前の力を見せてみろ……!」


ぐいっ


さやか「あ、助かった。ありがとう、まどか——」

ハーマイオニー「これでよし。マミ!」ダッ

さやか「あれ、さっきの外人さん? ていうか無視? いやでも助けてくれたから無視じゃなくて……」ブツブツ

まどか「さやかちゃん! 良かった、落ちなくて……!」


ハーマイオニー「マミ! あなた、いま魔法を!」ヒソヒソ

マミ「と、咄嗟に動いちゃって……」

ハーマイオニー「咄嗟に動いちゃって——って、あなただって規則のことは知ってるでしょう!?
          幸い、あの子が自力で何とか耐えた形に見えたけど……ああ、どうしましょう。たぶん、すぐに——」


ひらっ


マミ「手紙……?」ガサガサ



『トモエ殿。

今日16:37分、貴女の住まい近郊にて『浮遊術』の使用が確認されました。

知っての通り、卒業前の未成年魔法使いは、学校の外での魔法使用を禁じられております。

今回は警告のみとなりますが、貴女が再び魔法を行使すれば、退校処分となる可能性があります。

規則を守り、正しく休暇を楽しまれますよう。

魔法省 魔法不適正使用取締局——』



マミ「あ、あはは。やっちゃったわ……」

ハーマイオニー「笑い事じゃないわ! あなた退学になるところだったのよ!
          そうしたら杖を折られちゃって、もう二度と魔法が使えなくなるんだから!」

マミ「で、でも今回は警告で済んだわけだし——」

ハーマイオニー「何甘いこと言ってるの! ハリーとロンに毒されたのかしら!? 
          きっとこれからはさらにチェックが厳しくなるわ! ああもう、ほら杖を持ち歩くの禁止よ! 貸しなさい私が持ってるから!」

マミ「うう、ハーマイオニーさん、怖い……」

ハーマイオニー「怒りもするわよ! そりゃ、マミのしたことは立派ですけどね、退学になったら元も子もないじゃない!
          まったく! 本当にマミはまったく!」


さやか「あ、あのぅ……ちょっといいですかね?」

ハーマイオニー「なに!? ……って、あら。さっきの」

さやか「いやー、あはは。助けて貰っちゃったみたいで。っていうか日本語上手っすね」

まどか「あ、あの! ありがとうございました! さやかちゃんを助けてくれて……」

ハーマイオニー「お礼なら、こっちのマミに言いなさい」

マミ「は、ハーマイオニーさん?」

さやか「へ? いやだって、助けてくれたのは……」

ハーマイオニー「……あなたが危なそうだって、マミが教えてくれたの。でなければきっと間に合わなかったわ」

さやか「あ、そういうことですか。じゃあえーと、マミさん? どうもありがとうございました!」

マミ「……ううん、どういたしまして。でも、気を付けてね? 階段の近くでふざけちゃ駄目よ」

さやか「はい、気を付けます……ところで、珍しいですね。そっちの外人さんもそうですけど、
     こんな小さな演奏会にわざわざくるなんて。出演者の知り合いとかですか?」

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さやか「へえー、外国の友達に観光案内を……」

まどか「凄いですね、マミさん。私たちの一個上なのに、留学だなんて……」

マミ「そんな、大したことないわ……お陰で、こっちにはあんまり知り合いもいないし」

さやか「でも明日はこっちの友達に会うんですよね。くぅー、羨ましいなぁ! まさに青春、って感じで!」

まどか「さやかちゃん、また変なこと言う……」

ハーマイオニー「驚いたといえば、さっきヴァイオリンを演奏してた男の子、サヤカの幼馴染って本当?
          結構タイプが違う気がするのだけど」

さやか「あれ、もしかしてさやかちゃんには高尚な音楽なんて似合いませんよー、って暗に言われてる?
     くっ、さすが外人。思ったことずばずば切り込んでくるね。まどか、こういうのなんていうんだっけ!?」

まどか「慧眼、っていうんだよ」

さやか「なるほど! お姉さん、あたしにクラシックが似合わないと思うとか、超慧眼っすね!
     ……まどか、本当にこれ合ってる?」

まどか「あははは……冗談はともかくとして、さやかちゃんは上条君と仲いいから、意外にクラシック詳しいんですよ」

さやか「冗談? いやその前に"意外に"とか言ったよねまどか?」

ハーマイオニー「なるほど、確かに意外だわ」

さやか「外人さんまで!? お前ら本当に慧眼ですね!?」

マミ「くすっ。いいコンビみたいね?」

さやか「まあ、まどかとも長いですからね……しかしあたしを癒してくれるのはマミさんのみだー!」ダキッ

マミ「きゃあ! ちょっと、また落ちそうになっちゃうわよ?」


仁美「さやかさーん! まどかさーん!」

さやか「お、仁美だ」

マミ「彼女も、お友達?」

さやか「ええまあ。恭介つながりで……今回の演奏会の開催元、仁美の家が関係してるみたいで、
     仁美のやつ、無理やり関係者席に座らされてたんですよ」

まどか「仁美ちゃんとも一緒に座りたかったなぁ……さやかちゃん、上条君以外の人の演奏の時寝ようとするんだもん」

ハーマイオニー「ふふ……それじゃあお友達も来たみたいだし、私達もお暇しましょうか?」

マミ「ええ、そうね……っていうか、もうこんな時間! 夕飯の買い物に行かないと!」

さやか「あー、恭介にも紹介しようと思ってたんすけど、でも手伝いがあるなら仕方ないっすよね。
     んじゃあ、またどっかで会うことがあれば!」

マミ「ええ、その時はよろしくね?」


仁美「はあ、全くお父様ったら、座る席くらい選ばせてくれても……
    お待たせして申し訳ありません、さやかさん、まどかさん」

さやか「いいっていいって! 仁美にも事情があるんだしさ! それに待ってる間も退屈じゃなかったし」

仁美「そうですか? それなら良かったですけど……そういえば、さっき別の方々とお話してましたわね?
    外国の方みたいでしたが、お知り合いですか?」

さやか「いや、さっき知り合いになったばっか」

まどか「マミさんとハーマイオニーさんっていうんだよ。イギリスの学校に通ってるんだって」

仁美「マミ……? それってもしかして、巴マミさんですか?」

さやか「うん、そうだけど——あれ、もしかして仁美の知り合い?」

仁美「いえ、ちょっとした事情があって、こちらが一方的に知っているだけです」

さやか「えー、気になるなぁ。教えてよ」

仁美「……あまり、気分のいい話ではありませんので」

さやか「え? それってどういう——」

まどか「ま、まあまあ! それよりほら、みんなで上条君に会いに行くんでしょ?」

仁美「あ、ごめんなさい。そのことなのですけど、批評のようなものがあって少し時間がかかると。
    終わったら、私の携帯に連絡がくるそうです」

さやか「マジですかー……それじゃあ、明日何して遊ぶか考えよう!」

まどか「もう! さやかちゃんったら遊ぶことばっかり! もうすぐ夏休みなんだから、いくらでも遊べるよ」

さやか「夏休みは宿題があるじゃんか! さっきのマミさんも宿題大変って言ってたし!
     まどかはあたしがイギリスに留学したらどうするつもり!?」

まどか「そんなの、とっても寂しいよ……」

さやか「まどかー!」ダキッ

まどか「もう、さやかちゃんったら……ちなみに、ねえ仁美ちゃん。
     さやかちゃんがイギリスに留学するような事態を心配する気持ち、なんていうんだっけ?」

仁美「杞憂、と申しますわ。昔の中国の国名である杞という字に、憂いと書きますの」

さやか「おお、字的に凄く心配されてる感が! そうだよね、あたしがイギリスに留学とか、凄い杞憂だよね!」

まどか(かわいい)

仁美(ぞくぞくしますわ)

さやか「いやー、でもさ。やっぱり留学はいいや。こっちの友達に会えなくなるもん。
     マミさんも、こっちに帰ってこれるのはこの二ヶ月だけって言ってたし」

まどか「そうだね……でも、向こうで友達を作れたら楽しそうだけど」

さやか「確かにねー。っていうか、マミさんって凄いグローバルな人だな。
     今日はイギリス人、明日は教会のシスターと遊ぶんでしょ? すっげえよほんと」

まどか「別にシスターとは言ってなかったけど……」

仁美「あの、シスターって……?」

さやか「あー、ごめんごめん。さっきマミさんと話してた中で出たんだよ。
     明日、知り合いの教会に遊びに行くって言って——」

仁美「……」

まどか「ひ、仁美ちゃん……?」

さやか「どしたのさ。そんな怖い顔しちゃって」

仁美「……さやかさん。覚えていらっしゃいませんか? 今年の初め、ニュースになった——」

さやか「へ? いや、お正月は特番ばっかみてたし……」

仁美「かなり大きく報道されたので、知らないということはないかと……」

まどか「……あ! も、もしかして……え、でも、そんな」

さやか「え、なんだよー。まどかと仁美ばっかりずるいぞ!」

まどか「ご、ごめんね……で、でもそんなのって……ねえ、仁美ちゃん。そうとは限らないんじゃ……」

仁美「見滝原近辺に、教会は一か所しかありませんわ」

まどか「そんな……」

さやか「あーもー! あたしにも教えろってばー!」

仁美「……さやかさん。とある教会を運営する一家が、無理心中したというニュースを聞いたことは?」

さやか「ああ、あのニュースか。それなら早く——え、待ってよ。ってことは、マミさんが遊びに行こうとしてる家って……」

仁美「……おそらくは」

さやか「で、でもさ! それなら家族が止めるでしょ! だってすっごいニュースだったじゃん!
     いやあたしは忘れてたけどさ、でも馬鹿さ加減においてあたしの右に出る者はいないよ!?」

まどか「そ、そうだよね……やっぱり、別の教会なんじゃ」

仁美「……先ほど、私は巴マミさんを一方的に知ってると言いましたが、それには事情がありますの」

さやか「……なにさ」

仁美「……数年前、見滝原で車の玉突き事故が起きました。
    ガソリンに連鎖的に引火したという酷い事故で……ですが一人だけ、その状況から無傷で助かった女の子が」

まどか「もしかして、その女の子が……」

仁美「……ええ。その後、小さいながらに外国の学校へ留学したと聞きいたので覚えていたのです。間違いはないでしょう」

さやか「で、でもさ、それとこれとなんの関係が——」

仁美「さやかさん。私は車の事故で、"一人だけ"助かったと言ったのですわ」

さやか「あ——も、もしかして、その時に家族が?」

まどか「そういえばマミさん、買い物に行くって……お手伝いじゃなかったんだ……」

さやか「う……わ、悪いこと言っちゃったかな」

まどか「知らなかったんだし、仕方ないよ……」

さやか「……」


夜 自宅 寝室


ハーマイオニー「ふう! お腹一杯……日本の料理は美味しいのね。それとも、マミの腕がいいのかしら?
          キュゥべえも喜んで食べてたし……」

マミ「ふふ、これでも帰ってる間は毎日自炊してるから、ちょっと自信あるのよ?
   さ、お風呂にも入って歯磨きもしたし、もう寝ましょうか?」

ハーマイオニー「……今更だけど、本当に泊まって良かったの? 迷惑じゃない?」

マミ「全然よ! わざわざイギリスから来てくれたんだし、おもてなしするのは当然だもの。
   ……それに、キュゥべえがいるけど、それでもひとりは寂しいの」

ハーマイオニー「こっちにお友達とかはいないの?」

マミ「ひとりだけ……でも、お手紙書いても返事がないのよねぇ……お土産の賞味期限も気になるし、明日伺うつもりだけど。
   日曜なら、ミサで教会の手伝いをしてる筈だから」

ハーマイオニー「ああ、昼間、サヤカ達との話で話題に出した……サクラだっけ?
          マグルの友達なら電話すればいいし、わざわざ手紙を書くってことは魔法使いなの?」

マミ「ええ、そうよ。そういえば美樹さん達と同じ歳だったかしら? だけど凄く強い魔法使いで、もう働いてるのよ。」

ハーマイオニー「へえ、それは凄いわね……あら? でも未成年の魔法使用は禁じられてる筈……」

マミ「……そういえば、そうね? でもお仕事してるんだし、特別に許可か何かがおりてるんじゃないかしら?」

ハーマイオニー「まあ、違法なことだったら魔法省が対処してる筈だものね……ちなみに、何の仕事をしてるの?」

マミ「佐倉さんは、ゲルゲルムントゾウムシハンターなの」

ハーマイオニー「……え?」

マミ「ゲルゲルムントゾウムシハンター」

ハーマイオニー「……寝ましょうか。マミ、疲れてるみたいだし」

マミ「そう? 確かに、今日はいっぱい歩いたけど……それじゃ、電気消すわね」
















数十分後



マミ「Zzzzz....」

ハーマイオニー「……眠れない。時差ボケね。ちょっと風にでも辺りに行きましょう」ムクリ

ベランダ


カラカラ

ハーマイオニー「ふう。流石に夜の風はまだ涼しいわね……マンションの上の階っていうのもあるんでしょうけど」

QB「やあ、ハーマイオニー。君も涼みに来たのかい?」

ハーマイオニー「あら、先客がいたのね。私はちょっと時差ボケでまだ眠くないだけ……」

QB「ああ、そうか。そうすると、明日は何時に向こうに戻るの?」

ハーマイオニー「こっちの時間で朝の6時に戻れば向こうは夜の9時よ。そこで寝なおすつもり。
          キュゥべえはいいの? 明日、遊びに行くんでしょう?」

QB「僕はついて行かないよ。今までも、そのマミの友達と会ったことはないからね」

ハーマイオニー「そうなの? 魔法使いだっていうから、てっきりキュゥべえのことも知ってるかと思ったわ」

QB「……僕としては、あんまりあの子と仲良くなってほしくはないんだけどね」

ハーマイオニー「……珍しいわね。キュゥべえがそういうこと言うなんて。
          なにか理由でもあるの?」

QB「いや……ただマミの友達には君やハリー達の方がいいだろうと思っただけさ」

ハーマイオニー「……そう言ってくれるのは嬉しいけど。
          私もこうして友達の家に泊まるのは初めての経験だし、マミとは友達でいたいと思うわ」


QB「……その言葉を信用していいのなら、ねえ、ハーマイオニー。
  できれば、ずっとマミの友達でいてやってくれないかな」


ハーマイオニー「それは、そのつもりだけど……どうしたの、急に?」

QB「……マミの両親のことは知ってるよね?」

ハーマイオニー「ええ、前に聞いたわ……」

QB「あの事故でマミは心に傷を負った。そりゃそうさ。当時、マミはたった11歳の女の子だったんだ。

   僕がペットとしてこの家に来たばかりの頃は酷いものだった。
   昼はまだしも、夜はね。もうどうしようもなかった。僕が傍にいて何か話してないと、ベッドの中にいることもできなかったくらいさ」

ハーマイオニー(そういえば一年生の頃、一人で寝るのが苦手って言ってたっけ……)

QB「これは僕の想像なんだけど、当時、マミの周りには頼れる大人が誰もいなかったんじゃないかな。

   マミがホグワーツに入学するにあたって、戸籍や学校関連の情報を魔法で改竄した。
   これはマミが知らない話だけど、その魔法はマミの戸籍を"マミがそう望むように"改竄したんだ」

ハーマイオニー「マミが、望むように?」

QB「そうだ。おかしいだろう? 普通なら、親族の誰かが親代わりになる筈なのに。

   なにがあったのかは知らないけど、マミにとって信頼できる親族というのは存在しなかったんだ。
   マクゴナガルやフィルチに懐いているのは、そんな時期に優しくしてくれた親族以外の大人だからだろう」

ハーマイオニー「……そういう言い方は、失礼だと思うわ」

QB「ああ、ごめんよ。とにかく、そういうわけでさ。マミには信頼できる人が極端に少ないんだ。
   特に、夏休み中はね。こっちには知り合いもいないから……」

ハーマイオニー「あなたがいるじゃない」

QB「僕はほら、いずれ猫の王国を拓き築くという野望があるからさ。
   きっと、ずっとは友達でいられない」

ハーマイオニー「……」

QB「頼むよ。あの通りの性格だから、傍に誰かがいないと不安なんだ。
   僕がこういうことを思うなんて、それこそ僕自身思ってもみなかったことだけど」

ハーマイオニー「……中に、戻るわ」

QB「……」

ハーマイオニー「あのね、キュゥべえ。そういう話はしないものよ。とくに友達になってくれ、なんて話はね」

QB「……悪かったよ。こういうことに関しては、まだ不得手なんだ」

ハーマイオニー「分かってくれたんならいいわ。だって失礼じゃない?
          それじゃあまるで、私がキュゥべえに言われてマミの友達をやるみたいだもの」

QB「……! じゃ、じゃあ」

ハーマイオニー「だから、言わないの。さ、戻りましょう、キュゥべえ。蚊に刺されちゃうわよ?」

QB「……」ペコリ


翌日 早朝



マミ「忘れ物はない? お土産もった? ご両親によろしく伝えてね?」

ハーマイオニー「大丈夫よ。もう、マミったら心配性なんだから……
          そういえば来年度のホグズミード、マミはこれるの?」

マミ「許可証の話よね。大丈夫よ。年度末にマクゴナガル先生に相談したんだけど、特別に許可をくれるって。
   楽しみよね! ラベンダーさんに聞いたんだけど、ハニー・デュークスって凄いお菓子屋さんがあるんですって!」

ハーマイオニー「ふふ、それじゃあ来年度は一緒に行きましょう? ハリー達も——友達みんなでね」

マミ「ええ! 絶対にね!」

QB「……」

ハーマイオニー「それじゃあ、またね、マミ。新学期には、フランスのお土産話を期待しててね!」


ゴウッ!


マミ「行っちゃった……ハーマイオニーさん、これからまたフランスに行くんですって。素敵ね……」

QB「マミのことだから、フランス料理にばっかり注目してるんだろうけど……
   たぶんハーマイオニーは、フランスの魔法史に興味があるんだと思うよ」

マミ「わ、私だって、ナポレオンとかは知ってるもの!」

QB「はいはい。それで、ゆっくりしてていいのかい?
   ここから隣町までは距離があるし、ミサって朝早くやるんだろう? その寝癖頭で行く気かい?」

マミ「ふぇ!? ね、寝癖!? なんで教えてくれないのよ!」

QB「いま教えたじゃないか。ハーマイオニーのことを気にしてるんなら、どの道君より早く起きてたんだから無駄だよ」

マミ「うぅー……いいわ。それより早く支度しないと! キュゥべえ、クシ! クシはどこ!?」ドタバタ

QB「昨日、お風呂から出た後ハーマイオニーと一緒に居間で使っただろう?
   テーブルの下にでも落ちてるんじゃないの?」

マミ「あ、あった! あ、そうだお土産……蛙チョコの詰め合わせ! あ、あれ? どこにしまったかしら?
   キュゥべえー! キュゥべえー!」

QB(これだものなぁ……)


風見野 教会前


ガチャガチャ

マミ「……おかしいわね。扉が閉まってる……日曜はミサをしてる筈なのに……
   というか、敷地内の草も伸びてるし……引っ越し、とか?」

通行人A「あれー? そこの人、その教会に何か用事?」

通行人B「え、どうしたっすか兄貴」

通行人A「いや、なんかアイツがあの教会に入ろうとしてたから」

通行人B「え、マジっすかー……やめた方がいいっすよ、嬢ちゃん。
      肝試しかなんかの下見っすか?」

マミ「え、あの……え、肝試し?」

通行人B「あれ? 知らないっすか? じゃあなんで入ろうとしてたっすか」

マミ「あの、ここの教会の子と知り合いで」

通行人A「ここの教会の子……? あーするとあれかな、年齢的に杏子ちゃん?」

通行人B「え、兄貴何でそんなん知ってるっすか。ロリコンっすか?」

通行人A「いや、ほら、前に話したろ。なんかつい聞いちまう説法してる神父さんの話」

マミ「あ、あの」

通行人A「あー、ごめんごめん。で、知り合いは杏子ちゃんの方? ……あ、どっちでもいいか。
      なんせ一家四人、全員だもんなぁ」

マミ「あの、一体なんの話で」

通行人A「無理心中したんだよ、そこの一家」


通行人B「兄貴、いいんすか? あの子、絶対泣いてましたよ?」

通行人A「別に俺が心配してやる道理もねえだろ。女は甘やかすの禁物だよ。馬鹿ばっかりだし」

通行人B「はあ、まあいいっすけどね、別に……それよりも、兄貴。さっきの兄貴の話、間違ってますよ。
      無理心中したのは三人っす。四人じゃないっすよ」

通行人A「お前こそ情報がおせえんだよ。確かに死体は三人分だったが、血液は四種類あったって話だ」

通行人B「え、なんすかそれ。普通にホラーじゃないっすか」

通行人A「だからお前も肝試し云々言ってたと思ったんだが……まあいいや。ほれ、帰るぞ。講義あるし」

通行人B「卒業したら何になるっすかねえ。兄貴はホストとか向いてるかもしれませんけど」

通行人A「なんで大学出てまでホストに……」


サアアアアアア……


通行人A「あ? なんだ、これ? 景色が……」

通行人B「兄貴、なんか変っすよ! ほら、あっちに変な人形みたいな奴が!」

使い魔「Sie sind sehr dumm!」



マミ(嘘だ)


『また、一年後に会いましょう? 今度はお土産も買ってくるわ!』


マミ(だって、約束したじゃない)


『ああ、楽しみにしてるよ。それじゃあまた——来年な』


マミ(見滝原でできた、初めてのお友達だったのに——)



マミ「う……うぅ……ううううううう」

 気づいた時には、地面に座り込んで泣いていた。

 早朝ということもあって、人通りはない。だから、人目を憚らず泣いてしまえた。

マミ(佐倉さん……なんで)

 おじさんとおばさんはとても優しくて、モモちゃんは素直で可愛くて、そして佐倉さんは明るくいつも元気いっぱいで。

 教会の手伝いで遊ぶ暇はさほどなかったが、それでも、あの時間は私にとってかけがえのないものだったのに。

 ——そんな時間は、もう二度と戻ってこない。あの時と、同じように。

マミ「嫌だ……嫌よ……もう、そんなの……」

 こんな時、隣に誰もいないのが、酷く悲しくなる——

まどか「あー! いた! いたよ、さやかちゃん!」

さやか「本当だ! てかあれ泣いてない!? おーいマミさーん!」

マミ「……え? あ、れ、美樹さんに、鹿目さん? なんで、ここに……」

さやか「後でいくらでも説明しますから、ほら、立って! こんなとこで座り込んでちゃ不味いですって!」

まどか「マミさん、大丈夫ですか? ハンカチ使います?」

マミ「う、うん……ぐすっ、ありが、とう」


数時間後


マミ「……落ち着いたわ。恥ずかしいなぁ……一応、先輩なのに……駄目な子ね、私。
   それで、その……なんで、二人がここに?」

さやか「あーそのー……まあ、なんて言いますか。偶然、通りかかっただけというか……って通りませんよね」

マミ「さすがに、無理があるわよ」クスッ

まどか「あの、その様子だと、もうあの教会のことは……」

マミ「……ええ。知ってるわ。そうか、ニュースにもなったんだろうし、あなた達も知ってるわよね」

まどか「ごめんなさい! 私達、思い出したのマミさんと別れた後で……
     連絡先も知らなかったから、その、伝えることもできなくて……」

マミ「いえ、いいのよ。というか、昨日会ったばかりだもの……ここまで心配してくれるなんて、思ってなかったわ」

さやか「いやー発案者はまどかなんですけどね? マミさんとどうしても会いたいっていうもんだから」

まどか「さ、さやかちゃんだって反対しなかったじゃない」

さやか「"私……せめて近くに居てあげたい! 私にだって、それくらいできるもん!"」

まどか「わあああああああっー! さやかちゃんのアンパンマン! なんですぐそういうこと言っちゃうの!」

マミ「……ふ、ふふっ」

まどか「あ、ごめんなさいっ! うるさかったですか?」

さやか「うるさかったのはまどかだけどね」

まどか「も、もう! さやかちゃんは黙ってて!」

マミ「ううん、違うの。ただ、あなた達を見てたらおかしくって」

さやか「ほら、まどか。言われてるぞ」

まどか「マミさんはさやかちゃんの顔を見ていったんだよ?」

マミ「そういうところがね……ふふっ、ありがとう、二人とも」


まどか「あ、あのっ。今日は午後から、仁美ちゃんと一緒に遊ぶんです。
     その、よければマミさんも——」

マミ「……ごめんなさい。さすがに、今日はね」

まどか「あ、そ、そうですよね……すみません」

マミ「ううん。本当に、ありがとう。こんな、わざわざ探してくれまでして……とっても、嬉しかった。
   ……そうだ。はい、これ」

まどか「え、これ……?」

さやか「電話番号ですか? マミさん家の」

マミ「せっかく、こうして会えたんですもの……その、もうすぐそっちも夏休みでしょう?
   だからその、もしよければ、一緒に遊んだりできればなんて……」

まどか「……マミさん」

さやか「……」

マミ「あ、あの……ごめんなさい。図々しかったわよね。こんな、心配までして貰ったのに……」

さやか「……くっはー! なんだこれ! 妖精かなんかか!」ガバッ

マミ「きゃあ! ちょ、ちょっと、美樹さん!?」

さやか「いいっすよぉ! 全然ウェルカム! 夏休みは宿題とか忘れて遊びまくりましょうね!」

まどか「さ、さやかちゃん恥ずかしい。ほら離れて、離れてってば……!」

本日の投下は終了。駄目だ眠い死ぬ。
次回はたぶんアズカバン編に入ります。



        も
        う
...       魔
...       女                           連  杏
...       化                           れ  子
−-.     し          , -'"  ̄ ` 丶、  /      て  ち
─--.   て         /         \|      き  ゃ
        る        /            |      て  ん
───  け       i   _ _     _ _   ヽ_    や
 ̄ ̄   ど      .| /二`     "二ヽ、 |  〉.    っ
       な  .   _|  _,ィiュミ   r_,ィiュミ  レ-|.    た
二二二  !      ヾ!   - ' r  `ヽ  ̄´  | ∧.   ぜ
──  ___      ゛!  〃  ^ ^  ヽ   l-/  〉
  ま             i   { ='"三二T冫  /´_ノ/\__
  さ  二ニ    _,ィヘ  ヽ ヾ== 彳   /:::/`ー- 、
  に     _, ィ´:::::/ l\ ト、 ー一 / /::/      \
  外     /  |::::::::: ̄ ̄ ̄::`ー=彳_∠ _      ヽ
  道   /   |::::::::::::::::::::::::::::(‥):::〈_      \       l
     r'"`丶、 |:::::::::/:::/::::´:::::::::::::::::(_      ト、      |
  / / `ー 、 \|::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::(_      \    \

昔遊戯王に『密林の黒竜王』ってカードがあったんですが、そのフレーバーテキストに
密林に住んでて木をバリバリ食べるってあって「怖ー」とか思ってたんですが、よく考えたらこいつ草食です。

投下します


 それから、鹿目さん達の学校も夏休みに入って。


さやか「ほら、まどか、マミさーん。こっち、こっちですよー!」ダーッ

まどか「さ、さやかちゃん! プールサイドは走っちゃ駄目だってばぁ!
     ま、マミさん、さやかちゃんを止めないと……」

マミ「ふふ、全く。美樹さんったらはしゃいじゃって……そうね、行きましょう鹿目さん」


 彼女たちは、本当に良い子でした。


まどか「——美味しいです! これ、本当に手作りなんですか!?」

さやか「めちゃウマっすよー! スポンジがしっとりしていて、その、あれです……ダイヤモンド!」

マミ「だ、ダイヤモンド? その、無理にグルメリポーターみたいなこと言おうとしなくてもいいのよ、美樹さん」


 美樹さんは、落ち込む私を家から引っ張り出してくれて。

 鹿目さんは、そんな暴走気味の美樹さんを嗜めながら、私の手を優しく引いてくれて。

 知り合って間もない私を、彼女たちは心の底から気遣ってくれました。

 彼女たちと一緒に過ごす内、私は、段々と屈託なく笑えるようになっていき——


 だけど。


マミ「……」

QB「……マミ、またかい? もう一ヶ月も前のことだろうに」

マミ「まだ、たった一ヶ月よ……」ガサッ

QB「古新聞をいくつも掻き集めたところで、どうしようもないだろう。事実が変わることはないよ。
   君の知り合いだった一家の末路は、それに書いてある筈だ」

マミ「……だって、信じられない……また、来年、会おうね、って、ひっく、約束、してたのにぃ……」

QB「……」

QB(だから嫌だったんだ。遅かれ早かれ、こういう結果になることは分かっていた。
   魔法少女の"寿命"は短い。ずっと友達でいることなんて、できやしない)

マミ「……佐倉、さん……」

QB(……でも、僕も同罪かな。楽しそうに友達の家へ遊びに行くマミを、止めることができなかった。
   ——止めるべきだったんだ。なんで僕は止めなかった?)

QB「……マミ。何にしても、もう寝ないと。明日から新学期だろう?
   酷い顔でいったら、ハーマイオニーが心配するよ」

マミ「……分かった。おやすみなさい、キュゥべえ」

QB「……お休み、マミ」

QB(……虚勢を張れる程度には、回復したかな。新しくできたっていう友達のおかげだね。
   学校に行きさえすれば、過去のことを考えている暇もそうないだろう)

QB(……そのまま、忘れてくれればいいのだけど)


◇◇◇


 例えば、ある世界において。

 新米の魔法少女が、あるベテランの魔法少女に弟子入りを志願した。

 その新米には才能があり、また努力を怠らないひたむきさもあり、やがては師を超えるほどに成長した。


 IF。もしも。或いは。可能性として。


 その新米が、ベテランに弟子入りをしなかったらどうなるのだろうか。

 もしかしたら、あっけなく死んでいたかもしれない。

 或いは意外と長生きをして、やはり強力な魔法少女になるのかもしれない。

 師に従事しない方が彼女にとってプラスとなり、理不尽なシステムを破戒するほどの力を持つ可能性もあるだろう。

 ——いまとなっては全く意味のない、蛇足のような話ではあるが。 


◇◇◇


9/1 ホグワーツ特急 最後尾車両


マミ「一番乗り、っと」

QB「相変わらず、物凄い速さで乗り込むね君は。おまけに並ぶ人の少ないホーム端の最後尾車両って……
   ねえ、マミはその労力の対価に何を得ているの?」

マミ「何よ、別にいいでしょ。誰に迷惑を掛けるわけでもないし——」


ガラッ


???「Zzzzzzz....」

マミ「あ、ら? 変ね、ドアが開いた瞬間乗り込んだのに——もう先に人がいるわ。しかも大人の人よ、キュゥべえ」

QB「へえ。この列車に大人が乗ってるのは初めて見るね。新しく来る先生とかかな?」

マミ「ああ、防衛術の……でも大丈夫かしら? なんだか、酷く顔色が悪いようだけど……」

QB「歳の割に白髪混じりだし栄養状態も悪そうだね。でも正式に採用されたんだとしたら問題ないんじゃないかな。
   相応の力が無ければ教師になんて——そう簡単に——なれるものじゃ——……」

マミ「……なんでそこで言いよどむの?」

QB「いや、君に言っても無駄だし、やめておこう。それよりほら、早く座りなよ」

マミ「ううん。別のコンパートメントに移るわ。折角寝ているのを邪魔しちゃ悪いし——」

QB「本音は?」

マミ「……さすがに、その。知らない先生と二人きりっていうのは気まずいわよ」

QB「まあいいけどさ。でも、それなら早くした方がいいと思うよ。
   ホグワーツ特急って、あんまり席に余裕が——」


ざわざわざわ

「いえーいこのコンパートメント俺らが取ったー!」

「じゃあ私達はここ! ほらおいでよチョウ!」

「ああくそっ、もう一杯か……仕方ない先頭車両だ! ついてこい花火の中へ突っ込むぞ!」

                ざわざわざわ


マミ「……」

QB「……いまからどこかの席に入れて貰うかい?」

マミ「り、理不尽よ……理不尽だわ……」グスグス


ガラガラ


ハリー「あー駄目だ。どこもかしこもいっぱいだよ……もう最後尾じゃないか」

ロン「ここが駄目だったら分かれて座るしかないね。
   よかったなぁ、スキャバーズ。そしたらお前を付け狙うあの凶悪な猫とおさらば出来るぞ」

ハーマイオニー「なによ、クルックシャンクスはきっとスキャバーズと仲良くなりたいと思ってるわ。
          ねぇ、クルックシャンクス? 一緒に遊びたいのよねぇ?」

籠「フシャー! フシャー!」ガタガタ

ハーマイオニー「ほら"ボク、仲良くしたい! 早く出して!"って言ってるわ!」

ロン「どうかな。僕には"俺様は腹が減った。早く食わせろ!"って言ってるように聞こえるけど」

ハリー「まあまあ、二人ともその辺で——あれ、あそこで突っ立ってるのマミじゃないか」

ハーマイオニー「あら、本当だわ。どうしたのかしら、コンパートメントの前で……」

ロン「ちょうどいいや。あそこに入れて貰おう。おーい、マミ」

マミ「ああ、みんな! 良かったわ! 一緒にここに座らない?」

ハリー「いいの? ありがとう——って、あれ? 先客がいる。誰だろう、この人」

ハーマイオニー「ルーピン先生でしょ」

ロン「……ハーマイオニー、君って奴はとうとう本を読みつくしちまって、戸籍謄本とかにまで手を伸ばしたのかい?」

ハーマイオニー「違うわよ! 鞄に名前が書いてあるの。ほら、R・J・ルーピンって」

マミ「きっと新しい防衛術の先生よね、ってキュゥべえと話してたとこなの」

ロン「ふぅん……防衛術の先生ねえ。一昨年といい去年といい、呪われてるみたいに長くもたないけど。
   まあいいや。空いてるのここだけだし、さっさと荷物入れちゃおうか」


コンパートメント内


マミ「……シリウス・ブラック? 例のあの人の右腕だった闇の魔法使い? ひとつの呪文で十三人も殺した!?
   そんな危ない人が、ハリーくんを狙ってるの?」

ハリー「そうらしい。おじさん——ロンのパパに忠告されたんだ。気をつけろ、あと絶対に探したりするなって」

マミ「そんな人が脱獄したってことも知らなかったわ……」

ハーマイオニー「イギリスでは、マグルのニュースにも流れたのだけどね。マミ、日刊預言者新聞を定期購読したどうかしら?
          私は読んでるんだけど、すっごく為になるわよ」

ロン「そんな悪魔みたいな誘いはあとにしろよ。にしても、ブラックを探す? 有り得ないね。
   だってそんなの、自殺しに行くようなもんじゃないか。あのアズカバンから脱獄したんだぜ?」

ハリー「そうだよね。なんでおじさんはわざわざそんなことを……」

ハーマイオニー「きっと、心配なのよ。なんだかんだ言って、ハリーの周りはトラブル塗れだもの。
          さあクルックシャンクス、いまお外に出してあげますからねー?」シュルシュル

ロン「おいなに脈絡なく猫の入った籠のヒモ解こうとしてるんだ。やめろ!」ガシッ

ハーマイオニー「あ、ちょっと何するのよ!」

ロン「僕のネズミを助けようとしてるんだよ!」

マミ「あの、この二人どうかしたの?」

ハリー「うーん。ハーマイオニーが新しくペットを買ったんだけどさ……」

ハーマイオニー「そうだわ! マミにも見せようと思ってたの。私、猫を買ったのよ!
          待っててね、いま見せてあげるから……!」グググ

ロン「絶対に、出させるもんかぁ……!」グググ!

ハリー「ハーマイオニーの猫が、ロンのネズミを襲ってさ。で、それ以来こんな感じ」

ハーマイオニー「襲ったんじゃないったら! ちょっとはしゃいじゃっただけよ!」

ロン「ああ大はしゃぎだったさ。僕の頭の上で爪を立てながらタップダンスを踊ってくれたしね。
   見てよマミ、ここカサブタになってるだろ?」

マミ「うぇ? えーと……ああそうだ! 私、蛙チョコレート持ってるの。みんなで食べない?」ガサゴソ

ハリー(誤魔化した)


ロン「わーお。詰め合わせじゃないか。どうしたの、これ?」

マミ「……ん。ちょっとね。友達へのお土産だったんだけど、渡し損ねちゃって」

ハーマイオニー「貰っちゃっていいの?」

マミ「いいのよ。さすがに、来年まではとっておけないし……そういえばこれ、賞味期限とか大丈夫かしら?
   どこにも書いてないけど」

ロン「貸して……あー、平気平気。まだ元気にぴょんぴょん跳ねてるから」

マミ「そういう判別の仕方なの? ……じゃ、どうぞ召し上がれ」

ロン「あ、中に入ってるカード集めてる人いる? いなかったら僕に頂戴」

ハリー「懐かしいなぁ、最初のホグワーツ特急でもこれ買ったっけ……」

QB「僕にもひとつおくれよ」

ハーマイオニー「あら。駄目よ、キュゥべえ。猫がチョコレート食べたら死んじゃうわ」

QB「平気だよ。僕はただの猫じゃないから」

ロン「まあ喋るしな。別にチョコくらい平気だろ。ほら、キュゥべえ。
   ついでにスキャバーズにもやってみよう。おい、スキャバーズ。チョコ食うか?」

スキャバーズ「チチッ」カリカリ

マミ「ふうん。これがロンくんのネズミね……」

ロン「あれ? 見せたことなかったっけ? スキャバーズさ。
   ほんとはもっとぷくぷくしてたんだけど、エジプトに行ってから弱っちゃってて」

マミ「本当、可哀想に……ああ、指も一本欠けちゃってる。どうしたの、これ?」

ロン「分かんない。パーシーから貰った時にはもう無かった……っと、うぇー。カサンドラだ。僕この人のカードは山ほど持ってるんだけど」

ハーマイオニー「あら、それって占い学の教科書を著した人じゃない。とっても強力な予見者だったって——」

ロン「はいはい御高説どうも。で、教科書といえば怪物本、ありゃなんだろうね?」

ハーマイオニー「それに関しては、珍しくあなたと同意見ね」

マミ「怪物本? なにそれ?」

ハリー「ああ、マミは魔法生物飼育学を取ってないんだ」

マミ「ええ、私がとったのはマグル学と数占いだから……私、あんまり実技が得意じゃないし」

ハリー「まあ確かに、教材の魔法生物をいつぞやのトロールみたいにしちゃったら大惨事だしね」

ハーマイオニー「トロール!? どこ!?」ビクゥッ

QB「あ、まだあの時のトラウマが癒えてなかったんだ……」

ロン「っていうか、マミはマグルの出だろ? ハーマイオニーといい君といい、なんでマグル学をとるのさ」

ハーマイオニー「あら、魔法使い側からの視点でマグルの文化を見るのってとっても楽しいと思うわ。ねえ、マミ?」

マミ「え、ええ、そうね」

QB「え? マミは確か、"マグル学なら大して勉強しなくても点が取れるんじゃないかしら"って——」

マミ「えいやっ」ギュッ

QB「きゅっ!?」

マミ「も、もうキュゥべえったら、どうしたのかしらね——それで、怪物本って?」


ハリー「ああ、これだよ。教科書なんだ。はい」

マミ「"怪物的な怪物の本"? ベルトでぐるぐる巻きになってる以外は、普通の本に見えるけど」

QB「どの辺が怪物的なんだろう?」

ハリー「気を付けて。あと絶対ベルトは外しちゃ——」

マミ「ふぇっ?」シュルッ

怪物本「がー!」ピョン!


ガブッ


QB「きゅぴゅ!?」ジタバタ

マミ「きゅ、キュゥべえ! ちょ、こら、離しなさい! キュゥべえの頭を噛まないで!」グイッ

怪物本「がー! がー!」モグモグ

QB「いやぁあああ! 飲まれてる! 飲み込まれてる! え、なにこれ! どこに飲み込まれてるの僕!?」

ハリー「言わんこっちゃない! ロン、引きはがすから手を貸してくれ!」


QB「い、嫌だ。もう嫌だ。トレバーといい、魔法界のものは僕を捕食しようとしてくる」ガタガタ

マミ「ああ、キュゥべえにトラウマが……」

ロン「でも収穫もあったな。この怪物本、みんなで袋叩きにして上下関係を叩き込むと大人しくなるんだ」

ハリー「あとでみんなにも教えてあげよう。っと、ダンブルドアのカードだ。ロン、いる?」

ロン「貰っておく。誰かと交換できるかもしれない……」

ハーマイオニー「吟遊詩人ビードルですって。なんかキラキラ光ってて綺麗……これ、私が貰ってもいい?」

ロン「ビードル? 見せて……これ旧版じゃないか! 七枚しか刷られなかったっていう超レアカード……
    ぐっ、でも、カードは、開けた人のもの、だから……いいよ、もってけよ」

ハーマイオニー「あの、そんな噛みしめた唇から血が出るほど悔しそうにしなくても……いい、あげるわ。
          別にコレクションしてるわけじゃないし」

ロン「ほんと!? うわぁ、一生大切にするよ!」

マミ「私も開けてみましょう……って、あら? これもレアカード?」

ロン「見せて! ……ん、なんだこりゃ。印刷ミスかな?」

ハリー「真っ白な背景に、字だけ書いてある……"逃げる時に自分で切り落とした"? どういうこと?」

ハーマイオニー「カードの説明文だけ載っちゃったんじゃないかしら? 珍しいカードじゃなくて残念ね、ロン」

ロン「いや、これはこれで珍しいし——お菓子屋さんに行けば交換してもらえるかも。ハニーデュークスとか」

マミ「ハニーデュークス! 昔ラベンダーさんから聞いたわ。ホグズミードのお菓子屋さんよね?」

ロン「そうとも。ホグズミードの価値の半分はあそこに集約されてると思うね。ああ、楽しみだなぁ」

ハーマイオニー「お菓子のほかにもあるでしょ? イギリスで一番怖い"叫びの屋敷"とか——」

マミ「いろいろ見る場所がありそうね……ね、ハリーくん」

ハリー「ああ、うん。そうだね……できればお土産を買ってきてよ」

ロン「は? なに言ってんだ、ハリーも行くだろう?」

ハリー「バーノンおじさんがね、許可証にサインをくれなかったんだ。ほら、マージおばさんを膨らませちゃったから……」

ロン「うぇー。本当かい? そりゃ酷いな——もちろん、サインをくれなかったことがだけどね」

ハーマイオニー「そう、残念だわ……」


マミ「……あ! そうだ、ハリーくん! マクゴナガル先生に頼んだらどうかしら?」

ハリー「マクゴナガル先生に?」

ロン「おいおい、正気かい? あの厳しいマクゴナガル先生が特別扱いなんてしてくれるもんか。
   まだフレッド達に抜け道を聞く方が可能性はあるよ」

マミ「大丈夫よ。あのね、前年度の最後にマクゴナガル先生とお話ししたの。
   私、いま一人暮らしだから、誰にサインを貰えばいいでしょうか、って。
   そしたらね、サインをしてくれるって。きっと、一緒に行けばハリーくんの分も貰えるわ!」

ロン「マジかよ! 良かったな、ハリー! これで一緒にホグズミードに行けるぞ!」

ハリー「本当? ありがとう、マミ!」

ハーマイオニー「マクゴナガル先生がサインをくれるのなら、無事解決ね。良かったわ。
          ……ね、クルックシャンクス? ほら、ばんざーいして? ばんざーいって」

クルシャン「にゃー」ノビーン

ロン「……ああああ! そいつを出すなって言っただろ!? しまえ!」

クルシャン「ふぎゃーお!」バッ

ロン「わっ! こいつ、またスキャバーズを! 離れろ!」ブンブン

ハーマイオニー「やめて、ロン! いまのはあなたが悪いわ! 大声出すからびっくりしちゃったのよ!」


どったんばったん


マミ「あれがハーマイオニーさんの猫……え、えーと。オレンジ色の毛がふわふわしてて素敵ね?」

ハリー(そこしか褒めるとこが無かったんだね)

QB(潰れた饅頭みたいな顔に、ガニマタだもんねぇ)

クルシャン「ふぎゃ?」ジーッ

QB「ん? なんだい、僕の方をじっとみて……」

クルシャン「……ふしゃあああああ!」バッ

QB「わ、わあああああああ! こっちきたああああ! 食べられる!」ダッ

マミ「ちょっと、キュゥべえ! ……ああ、コンパートメントの外に行っちゃった」

ハーマイオニー「ふふ、同じ猫の友達ができて、嬉しくなっちゃのね」

ロン「なんだい、あの猫は共食いまでするのかい? まあとにかく、キュゥべえには悪いけど助かった……」


ガラッ


ドラコ「おいこら誰だ! この躾の悪い猫を放し飼いにしてる馬鹿は!? こいつ、僕の顔を引っ掻きやがったんだぞ!」

クルシャン「にゃー」ダラーン

ハリー「えらいぞ、よくやったクルックシャンクス」

ロン「お、なんだ。どんな奴にもひとつくらいは取り得があるもんだな」

QB「マミぃ! 怖かった! 怖かったよぅ! あいつ、僕の尻尾の付け根を執拗に狙ってきたんだ!」ダキッ

マミ「ああ、こんなに怯えちゃって……良かったわね、マルフォイくんが助けてくれて」

ドラコ「はっ、なんだ。誰かと思えばポッターと、その腰巾着ズじゃないか。
    お前らの猫か? はん、ぶっさいくな猫だねぇ。ウィーズリー、君のかい? 安物そうだし——」

ハーマイオニー「それ、私の猫だけど」

ドラコ「ひぃっ、グレンジャー!? い、いたのか……く、くそ。ビビるな僕……マルフォイ家に後退は許されない。
    こういう時は、手のひらに純血、純血、純血……ごくん。ふう、落ち着いた」

ロン「なんだそのおまじない。どう見ても魔法使いが頼るものじゃないけど」

ドラコ「ふんっ、魔法使いの面汚しのウィーズリーには分からないだろうな。
    これは父上から教えて頂いた、由緒ある精神統一法なのだ。参ったか!」

ロン「参ったよ。心の底から」

ドラコ「なんだ、馬鹿に物わかりがいいな。さあ、今日こそ決着をつけてやるぞグレンジャー。
    なんでか知らないけど、去年の後半くらいからお前を見ると動悸・息切れ・眩暈がするんだ。それを払拭して——」


バチン!


ドラコ「わ、わあああああ! 急に真っ暗に! ひ、卑怯だぞグレンジャー! まずはお辞儀をしろよ!
    畜生、ここは引いてやる! 行くぞ、ゴイル、クラッブ——あれ、ゴイル、クラッブ!? ぼ、僕を置いていくな!」

ハリー「あーあ。マルフォイ避け呪文も流石に一年経つと効果切れかぁ……」

ロン「まあ、人生そんなにいいことばっかりじゃないさ。
   それよりハーマイオニー。何も僕たちの視界まで真っ暗にするこたないだろ?」

ハーマイオニー「私、何もしてないわ。というか、私の視界も真っ暗だもの。ただ明かりが消えただけでしょ」

マミ「……ねえ、汽車が止まってるわ。音が聞こえない……」

QB「故障かな? ——あれ? ねえ、窓から外を見てご覧よ。前の方の車両に誰かが乗り込んでる」

ハリー「遅刻した子が乗ってきたとか?」

ロン「おいおい、そいつ一人のために特急を止めるかふつー?」

ハーマイオニー「私、一番前まで行って理由を聞いてくるわ——」

???「……いや、動かない方がいいな。ルーモス(光よ)」


ぱあぁぁぁぁ……


ルーピン「やれやれ、気持ちよく寝てたというのに」

ハリー「あの、えーと、ルーピン先生? これは一体——?」

ルーピン「おや、なぜ私の名前を? まさか顔を覚えて——いや、ああ。鞄を見たのかな?」

ハーマイオニー「はい、そうです——すみません。起こしてしまいましたか?」

ルーピン「いやでも起きるさ。奴らが同じ乗り物の中にいれば……」

ハリー「奴ら? 奴らっていったい——?」

 
 そして、その時。暗闇の中で、コンパートメントの扉がゆっくりと開いた。

 そこには人影があった。少なくとも、人に似た形をした影が。

 魔法の明かりに照らされてなお、それは影であり、陰であった。たとえ陽の光の下でさえ消えることはないだろう。

 黒い頭巾に覆われた頭部と思わしき器官からは、名状しがたい呼吸音のようなものが響いている。


マミ「な、んですか、これ……っ」

ルーピン「吸魂鬼(ディメンター)。アズカバンの看守だ」

吸魂鬼「こぉおおおおおおおおお……」

ロン「なんだこれ、寒い……」

ハーマイオニー「気持ちが、変に……ああ、なにこれ……」

ハリー「……」

マミ「——……」

マミ(あれ——なんだろう。意識、が……)

◇◇◇



 ——夢を見た。酷く、昔の夢だった。

 今よりもだいぶ小さな体躯の自分が、アスファルトの上に座り込んでいる。

 周囲には鉄くずが散乱していた。周囲は炎に撒かれていた。

 紅の照り返しが視界を染める中、それでも、視界にはっきりとした白色の物体が浮かんでいた。

 これは——猫、だろうか?

 鉄くずの上に腰を下ろしたその白い猫は、しきりにこちらに向かって話しかけているようだった。

白猫「——、——」

マミ(なに? 何を言ってるの——聞こえないわ)

 とても、声が遠い。あまりにも掠れていて、聞き取れない。

 仕方なく、じっと白猫の顔を見つめた。白い体毛に、紅玉のような目玉。

 ——その姿に見覚えがあるという事実を思い出す前に、意識は戻った。



◇◇◇


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マミ「う、ううん? あれ、猫は……?」

ハーマイオニー「マミ! 良かった、気づいたのね……猫? キュゥべえのこと? 聞こえてたの?」

マミ「え、と。分からない、私、どうしちゃったの……?」

ハーマイオニー「気を失っちゃってたのよ……あなたと、それにハリーも」

マミ「ハリーくんも?」

ハーマイオニー「ええ。いまそっちでロンが介抱してるわ……ああ、起きたみたい」

ハリー「……っ、何が起きたの? 叫んだだろう、誰か」

ロン「ああ……たぶんそりゃ、キュゥべえだよ。大丈夫かい、ハリー?」

マミ「キュゥべえ? キュゥべえが、どうしたの?」

ロン「君の猫は酷くうなされてたんだ。"取らないでくれ! 取らないでくれ!"って。うん、凄かった。物凄い鬼気迫る感じで」

マミ「そんな……キュゥべえ、大丈夫なの!? ——ぅ、ぁ」フラッ

ハーマイオニー「ああ、無理して起きちゃ駄目よ! ……キュゥべえなら、ほら。ここにいるわ。立てる、キュゥべえ?」

QB「……安静にしてなきゃ駄目だよ、マミ」ピョイッ

マミ「ああ、キュゥべえ……良かった、無事みたいね……」

QB「……取らないでくれ。僕はそう言ったのかい、ロン?」

ロン「うん? ああ、確かにそう聞こえたけど」

QB「そうか……そうなのか……」ブツブツ

ハリー「なんなんだ——結局、あれはなんだったんだ」

ルーピン「さっき言った通り、吸魂鬼さ。そこに居るだけで人に害を及ぼす生き物。友達には選びたくない連中だよ……」パキッ

ハリー「! 先生、あれは——僕、一体……」

ルーピン「話はあとだ。ほら、チョコレートをお食べ。吸魂鬼の後遺症には、これが一番の特効薬だ。
      私は少しここを離れるから、その間に食べておくんだよ」


ガラッ ピシャッ


ハリー「ねえ、あの後、何があったの? 気絶したのは僕とマミだけ?」

ハーマイオニー「ええ……二人とも、急に倒れて、痙攣し始めて……」

ロン「あれは——吸魂鬼はルーピン先生が追い払った。なんかの呪文を使ったみたい」

ハリー「そうか……ねえ、マミ。気絶してる時、何か叫び声を聞いた?」

マミ「……ううん。私、夢を見ていたみたい。変な夢だったわ……」

ハリー「そうか……なんで僕とマミだけ……?」

ロン「君らだけじゃないかもしれないぜ。他のコンパートメントでは、意外とみんな伸びちまってるかも……
   あんまり気にするなよ、ハリー」


ホグワーツ 大広間


ドラコ「……もう嫌だ。グレンジャーめグレンジャーめ……」ブツブツ

ロン「あれ、マルフォイの奴どうしたんだ? いつも以上に真っ青な顔で震えてら」

フレッド「ああ、あいつか。なんか知らないけど、真っ暗なホグワーツ特急の中を走り回っててさ」

ジョージ「で、笑えることにあの吸魂鬼と正面衝突。怒った吸魂鬼に先頭車両まで追っかけまわされたらしい」

ロン「うわー、そりゃご愁傷様。自業自得とはいえ、さすがに同情するよ」

フレッド「まあ、通りすがりの新しい先生に助けて貰ったみたいだけどな。……あれ、そういやロン。ハリーはどうした?
     一緒に乗っただろう、確か」

ロン「あー、ハリー達はさっき、マクゴナガル先生に呼ばれていったよ。僕だけ除け者さ」

ジョージ「へえ。ってことは、悪いことじゃなさそうだな。表彰でもされるのか?」

ロン「おい、僕だけ呼ばれなかったってことと何の関係があるんだよそれ」


マクゴナガルの部屋


マクゴナガル「さて、あなた達を呼んだのは、ルーピン先生からふくろう便を貰ったからです。
         ポッターとトモエは汽車の中で倒れたと連絡を受けています。ここでマダム・ポンフリーから診察を受けること」

ハリー「あの、倒れたのは僕たちだけですか?」

マクゴナガル「? ええ。少なくとも、ルーピン先生が見て周った限りではそうらしいですが」

ハリー「そうですか……」

マミ「……」

ハーマイオニー「ハリー、マミ……」

マクゴナガル「……心配することはありません。マダム・ポンフリーに見て貰えばすぐ良くなります。
         と、これは私が言うよりも、散々医務室のお世話になっているポッターのほうが詳しいでしょうが」

ハリー「先生、僕、大丈夫です。もうどこも悪くは——」


ガチャッ


ポンフリー「はいはい、患者はどちら——あら、またこの子? 新学期早々、今日はどうしたの」

マクゴナガル「ポッピー、吸魂鬼です。ポッターとトモエは、奴らの影響を受けて倒れました——」

ハリー「大丈夫です! もう、すっかり良くなりました! ねえ、マミ?」

マミ「え? え、ええ、そうね。確かに、ルーピン先生から貰ったチョコを食べたら、寒気はすっかり消えたけど——」

ポンフリー「おや、ほんとうに? ……なるほど、校長が強く推薦しただけのことはありますね。
       少なくとも、闇の魔術に対する防衛術の先生としての知識はあるみたい。
       確かに二人とも顔色もいいし、これなら宴会に出ても大丈夫でしょう」

マクゴナガル「ふむ……分かりました。では、ポッターとトモエは外で待っていなさい。
         グレンジャーは、少し私と話がありますので——」


大広間


ダンブルドア「さて、諸君。新学期おめでとう! だがまあ、最初に少しだけ面白くない話をせねばならん。
        ホグワーツは現在、吸魂鬼の警備を受け入れておる。魔法省たっての要望でのう……」

マミ「……あれと、ずっと一緒に過ごさなきゃいけないのかしら」

QB「まさか。外周の要所を固めてるだけだろう」

ダンブルドア「吸魂鬼は学校への入り口を全て封じておる。勝手に敷地内から出る生徒などおらんとは思うが、"一応"注意しておこう。
        奴らにはいかなる誤魔化しも通じん。錯乱呪文や透明マントを使っても無駄じゃ。
        話が通じる相手でもない。極力関わらんようにするのが一番良いというわけじゃ」

ハリー「……」

ロン「明らかに透明マントのくだりは僕たちに言ってるよなぁ。
   だーからさすがに出ないってば。ブラックが野放しなのに……」

ダンブルドア「さて、では次の明るいニュースに移ろうかの。今学期から、新しい先生を本校に迎えることとなった。
        それも、二人もじゃ」

ハーマイオニー「二人? ひとりはルーピン先生としても、もうひとりは……?」

ダンブルドア「まずはリーマス・ルーピン先生。闇の魔術に対する防衛術の、新しい担当を引き受けてくださった。
        そして、もう一人——前年度退職されたケトルバーン先生の後任として、
        森番のルビウス・ハグリッドが魔法生物飼育学の先生となってくださるそうじゃ」

ハリー「そうか! どうりであんな狂暴な本が教科書なわけだよ。ハグリッドが先生かぁ。どんな授業になるんだろう」

ロン「ああ、嬉しいけど、そこはちょっと不安だよな。まさかでっかい蜘蛛とか連れてこないだろうね……?」

ダンブルドア「さあ、これで話は終わりじゃ。お待ちかねの宴といこう——明日からの英気を養うためにも思う存分掻っ込むが良い!」


夜 グリフィンドール女子寮


ラベンダー「ねえ、新しい防衛術の、ルーピン先生だっけ。どう思う?」

パーバティ「うーん。言っちゃ悪いけど、ちょっと不安よね。ローブも継ぎはぎだらけだし、頼りなさそう」

ラベンダー「そうよねえ……まあ去年より悪いっていうんなら、それはそれで見てみたい気もするけど」

マミ「あら、ルーピン先生は結構凄い先生よ? マダム・ポンフリーが褒めてたし……
   それに、あの吸魂鬼を追い払ったんだもの」

ラベンダー「へえ、本当? 人は見かけによらないのかしら? まあ、授業を受けてみれば分かるけど」

パーバティ「あ、そうだ。授業で思い出しけど、マミ、約束よ。私たちは"占い学"で勉強した占いを教えるから、"数占い"はお願いね」

マミ「ええ、分かったわ。それじゃ、もう寝ましょうか。えーと、パジャマパジャマ……」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

マミ「? どうしたの、二人とも。まだ寝ないの?」

ラベンダー「……マミ。最後に会ってから、二ヶ月しかたってないわよね? 私、一年間遅刻した訳じゃないわよね?」

パーバティ「……その、成長したわよね。マミ」

マミ「そう? ああ、そういえば背は少し伸びたかも。ローブを新しく仕立て直さなきゃいけなかったし」

ラベンダー「ああ、背も伸びたの……視点が下がってたから、分からなかったわ」

パーバティ「日本人って、幼く見えるって聞いてたんだけど……いや、顔は童顔だけどね……」

マミ「?」


翌日 授業前 廊下


ハーマイオニー「さあ、今日から新しい授業が始まるわ! ああ、とっても楽しみ……」

ハリー「うん、まあいいけどさ。ちょっと落ち着こうか、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「あら、どうしたのハリー? 忘れ物?」

ロン「忘れ物してるのは君だと思うなあ。時計は持ってる? 君の時間割、おかしいぜ。
   九時、つまりこれから"占い学"、同じ時間に"マグル学"、さらに同じ時間に"数占い学"!」

マミ「……ハーマイオニーさん。時間割を見直しましょう? ほら、とりあえずマグル学は私と同じ、別の曜日に——
   ああ、駄目ね。この時間にも三教科入ってる……」

QB「どうする気だい? もしかして、教室の後ろにビデオカメラでも設置しておくとか?」

ハーマイオニー「授業は直接受けなきゃ意味ないわ。それに、ホグワーツではそういう電化製品は使えないの。
          魔法力が強いとこでは、回路がしっちゃかめっちゃかになっちゃうんだから」

マミ「ああ、それで去年MDウォークマンが使えなかったのね……そういえばあれどこにやったのかしら……?」

ハリー「結局どうするのさ、ハーマイオニー。もしかして、分身の魔法を……?」

ハーマイオニー「さすがにそんな魔法は知らないし、使えないわ。まあ何とかなるわよ。
          さ、占い学に行きましょ。ああ、マミ。数占いに行くんだったら席を取っておいてくれる?」

マミ「え? う、うん。それは構わないけど——」

ロン「ほら、もう混乱してるじゃないか。占い学に行くんだったら、数占いの席なんて——」

ハーマイオニー「いいでしょ、別に! マクゴナガル先生とも相談済みなの。さ、ほら行くわよ!」


数占い 教室


マミ「うーん。一応、席は取っておいたけど……どうする気なのかしら、ハーマイオニーさん」

QB「まあマクゴナガル先生と相談したっていうなら何かしら手は考えてあるんだろう。
   たとえば、毎週違う授業を取って、残りは補習を受けるとか——」

ハーマイオニー「おまたせ。席を取っておいてくれたのね。ありがとう、マミ」

マミ「あ、あれ? ハーマイオニーさん、占い学にいったんじゃ——」

ハーマイオニー「あんな授業、クズよ。まったく時間を無駄にしたわ!
          取らなきゃよかった——いや、駄目ね。ちゃんと受けれる授業は受けなきゃ……」ブツブツ

マミ「え? え? だってまだ、占い学は始まってもないでしょう?」

ハーマイオニー「え? あ、ああ。そうね。でも、教科書を読んだら想像はつくもの。
          はー、お腹減ったわ。お昼ご飯はまだかしら?」

QB「なに言ってるんだい? ほんの数十分前に朝食を食べ終えたばかりじゃないか」

ハーマイオニー「あ。あー、その。私、朝はあんまり食べなかったから……。
          そ、それより、数占い学ね。楽しみだわ。最初はカバラ数秘術辺りから始まるのかしら?」

マミ「……どうなってるの?」

QB「さあ……?」


変身術 教室


ラベンダー「マミ、数占いはどうだった?」

マミ「ええ、とっても分かりやすかったし、今日は最初の授業だからって、簡単にできる占いを教えて貰えたの。
   よければあとで占わせてもらってもいい?」

ラベンダー「大歓迎よ! 私達の方はちょっと難しくて、まだ占えそうにないけど……」

パーバティ「そうね……でも、先生がとっても神秘的で、何でも的中させちゃうのよ! 
       ネビルがカップを割ることまで予言したんだから!」

ラベンダー「私達も、いつかあのくらい占いができたらなぁ……」

マミ「へえ、それは凄いわねぇ……でも、占い学に出てた人はみんな、とても暗い顔してるけど……」

ラベンダー「あー、それは、ね……」



ポンッ


マクゴナガル「今日はみなさん、集中力に欠けますね。動物もどき(アニメ—ガス)は、非常に習得の難しい魔法です。

         いま私が変身したように、特定の動物に自在に変身できるのは、世界広しといえども僅か七人だけですよ。
         無論、別に拍手喝采を強要しているわけではありませんが……」

ハーマイオニー「あのー、先生。確かに先生の変身は素晴らしかったですけど、でも、私たち、前の時間に占い学を受けて、
          それで……」

マクゴナガル「……ああ、納得しました。で、今年も誰かに死の予言を?」

ロン「へ? 今年もって……それじゃ、あのクラスの生徒は毎年誰か死んでるのか!?」

マクゴナガル「いいえ、ウィーズリー。占い学のシビル・トレローニー先生は毎年死の予言をして、それを全部外してきました。
         恒例行事のようなものです。悪趣味な——いや、失礼。とにかく、誰も死んだりはしません」

ハーマイオニー「ああ、ほらやっぱり。ね、あんなの適当言ってるだけよ」

ハリー「う、うん……」


マミ「そういうことなの。ハリーくんに死の予言が……」

パーバティ「ええ、死神犬(グリム)が憑りついてるって……」

マミ「死神犬?」

パーバティ「死の前兆よ。魔法使いの間では、ほんとにタブー視されてるくらい恐ろしいものなの」

マミ「そうなの……でも良かった。その予言は外れそうで」

ラベンダー「でも、ネビルのカップはどうなの? 全部の占いが外れてるってわけじゃないでしょう?」


昼食 大広間


ハーマイオニー「いいえ、全部でっちあげだわ。それらしいこと言ってるだけよ。
          だからロン、あなたも元気出しなさい。どーせインチキなんだから」

ロン「でも、死神犬だぜ? ハリー、まさか君、でっかくて黒い犬とか見てないよな?」

ハリー「……実は見たんだ。ダーズリーの家から飛び出した夜に」

ロン「」ガチャーン

パーシー「ロン! コップを落とすな! 中身が入ってたら大惨事だったぞ!」

ロン「それどころじゃないんだよパーシー! ああマジかよ。ハリー、本当に見たの!?」

ハーマイオニー「野良犬かなんかでしょ」

ロン「おいおい、どうやら君は事態の深刻さが分かってないみたいだな。死神犬といえば、最大の不吉の象徴なんだぜ?
   密室でスネイプがにこにこ笑いながら紅茶を勧めてきたりなんかしても、死神犬と比べりゃ可愛いと思えるくらいだ」

ハーマイオニー「どっちも現実には有り得ない、ってところは共通してるわね」

ロン「ここまで言ってもわからないのか! 死神犬は本当にやばいんだって!」

ハーマイオニー「大体死神犬がハリーに憑いてるってところからして、あの適当極まりない占いの産物でしょ?」

ロン「適当なもんか! 君には見えなかったんだろうけどね! トレローニー先生は、君に占い学の才能がないっていってたしさ!」

ハーマイオニー「……! 言ったわね! いいわ、それならもうずっと見えもしない未来を探してなさい!
          私はその間に、数占いできちんとした占いの方法を学ぶから!」スタスタスタ


ロン「ふん、意地っ張りめ。大体、まだあいつ数占いの授業なんて受けてないだろうに」

マミ「……ねえ、ハリーくん。ハーマイオニーさんは占い学を受けてたの?」

ハリー「うん? ああ、一緒に受けたよ。それでまあ、先生とちょっといざこざもあってさ……」

マミ「そうなの……変ね。その時間は、確かに私と数占いの授業を受けていたはずなんだけど……」

ハリー「え? 嘘だろ? だって確かにハーマイオニーは僕らと……」

QB「いや、でも僕も見たよ。そもそもマミはハーマイオニーと組で授業を受けたからね。間違いようがない。
   でも様子がおかしかったなぁ。急にお昼ご飯はまだ? とか言い出したりして」

ロン「どういうことだ? ……推論1、実はハーマイオニーは双子だった」

ハリー「有り得ないだろう、それは。というか、なんで二人で一人分の時間割を受けてるのさ」

ロン「ハーマイオニーの時間割は、軽く三人分くらいの量があるけどね……
   じゃあ、推論2、ハーマイオニーは夏休み、マミの家に遊びに行ったんだろう?」

マミ「ええ。お泊りなんかして、とっても楽しかったわ」

ロン「きっとそこで、ニンジャに弟子入りしたんだよ。知ってるよ、僕。パパの持ってた本に書いてあった。
   ニンジャって増殖するんだろう? それを利用したトリックさ」

マミ「分身の術のこと? 知らないけど、多分フィクションよ、それ」

ロン「じゃあもうこれしかないね。推論3。本の読み過ぎで、脳みそがもう一生分勉強したって勘違いしちゃったんじゃないかな。
   で、頭の中だけおばあちゃんになってボケちゃったとか」

ハーマイオニー「……」


ハリー「あー、ロン? もうその辺で……」

ロン「これならキュゥべえの言ってたお昼ご飯云々にも説明がつくぞ。
   マミさんや、ご飯はまだですかのう? って具合にさ! あははは」

ハーマイオニー「……ふーん」

ロン「あははは、は……あれ、なんでここに? 先に行ったはずじゃ……」

ハーマイオニー「鞄。忘れたから戻ってきたの」

ロン「あ、そ、そうなんだ……ぼ、僕が持って行ってあげようと思ってたんだ! うん、そうなんだよ!
   ああ、そうだ。次のクラスまで君の鞄持とうか? うん、そうしよう」

ハーマイオニー「あら、そう? お年寄りは大事にしてくれるってわけ?」

ロン「いやそんなことは——お、女の子には親切にしろって、ビルが言ってたんだ。
   さ、ほら。ハリー、一緒に——」

ハリー「僕、先に行って席を取ってるね」ダッ

ロン「ハリー!? 魔法生物学は屋外だから、席なんて——じゃ、じゃあマミ。
   ほら、ハーマイオニーとの夏の思い出とか、聞きたいかな」

マミ「ご、ごめんなさい。私、次の授業、別だから……行きましょう、キュゥべえ」ダッ

QB「ロン、いい言葉を教えてあげるよ。インガオウホウ。それじゃあね、きゅっぷい」

ロン「な、なんだよ、それ。はは、キュゥべえは難しいこというよね、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「因果応報。原因は結果として相応に返ってくるって意味よ」

ロン「さ、さすがハーマイオニーだ! やっぱりさ、君みたいな頭の良い人って尊敬するよ——」

ハーマイオニー「そうよねぇ……おばあちゃんになるくらい勉強してるものねぇ……
          ところで、鞄はいいわ。私が持つから。あなたの分もね」

ロン「え、そりゃ悪いよ——というか、なんで?」

ハーマイオニー「あら、だって怪我人に荷物を持たせるのって、お年寄りに持たせるよりも可哀想じゃない?」


透明の部屋


マミ「……キュゥべえ、捕まえてきてくれたカエルはまだある?」

QB「うん。昨日が雨だったからね。湖の周りにいっぱい居たよ」

蛙「げこげこ」

マミ「よし、それじゃあ今度こそ……チーリング・チャーム!(元気呪文)」パシュッ

蛙「げこっ!?」バチッ

マミ「どうかしら? 成功したら、元気になって3メートルくらい飛び上がるはず……」

蛙「……これはこれはドン・ゲーロ様。まだ山は冬では?」

マミ「ああもう、また失敗……全然元気にならないわ。
   マグル学のお陰で空いた時間を、全部練習に費やしてるのに……」

QB「上達はしてるんじゃないかな。最初のほうのカエルは爆裂四散しちゃってたし」

マミ「三年生になってから、急に呪文が難しくなったわね……今年はハーマイオニーさんには頼れそうにないのに」

QB「それでも、去年まではこうやって個人練習で何とかなったんだ。今年もきっと大丈夫だよ」

マミ(そうかしら……去年は、もっとスムーズに上達していった気がするのだけど。
   ……ううん。きっと、私の努力が足りないだけよね。こうして練習用の部屋もあるんだし、頑張らないと……)


夕食 大広間


ガチャッ


マミ「はー、お腹減った。結局、呪文はひとつも上手くいかなかったけど……」

QB「なに、今日練習した呪文は、まだ授業で習ってないのを予習しただけだ。
   授業で先生にコツを教えて貰えば、きっと上手くいくよ」

マミ「……ありがとう、キュゥべえ。さ、ご飯にしましょうか。
   えーと、空いてる席は……ロングボトムくんの隣ね。ロングボトムくん、隣いいかしら?」

ネビル「ああ、マミ。どうぞ、今日はキドニーパイだよ」

マミ「ありがとう。確か、ミートパイの親戚みたいな奴だったかしら? 割と好きよ、これ。
   ……ネビルくん、食べないの? なんか、野菜ばっかり食べてる気もするけど」

QB「ダイエットかい? 食事制限は効果的ではあるけど、素人がやると危ないよ」

ネビル「違うよ。そのね、僕、さっき魔法生物飼育学の授業だったんだけど……」

マミ「ああ、ハグリッドさんが先生になったっていう……どうだった? 最初はどんな生き物を勉強したの?」

ネビル「やったのはヒッポグリフ。あの羽が生えてる馬と鷲の合いの子みたいな奴。
     本物を使ってね。僕はなかなか上手くいかなかったんだけど、ハリーは乗って空を飛んでたよ」

マミ「空を! 凄いじゃない。いいなぁ、私も乗ってみたいわ」

ネビル「お勧めはできないけどね。目とかめっちゃ怖いし……それに、マルフォイの奴が爪で切られて大怪我しちゃったんだよ。
     血がいっぱい出てさ……うう、思い出しちゃった。しばらく肉料理は食べられないや」

マミ「マルフォイくんが?」チラッ


ドラコ「ああ、痛むなぁ。本当に、酷い怪我なんだよ。食事にも不便だしね。
    まったく本当にあの森番はどうしようもない」


マミ「なんだ。わりと平気そうじゃない。包帯してる以外は、いつもと変わらないわよ。
   流石はマダム・ポンフリーね」

ネビル「怪我自体はね……でも、たぶんマルフォイのことだから大げさな騒ぎにすると思うよ。
     それに、一番心配なのはハグリッドかな。授業初日であんな事故があると……」

マミ「確かに、落ち込んでそうね……そういえば、ハグリッドさんとハリーくん達の姿が見えないわ。
   ハリーくん達、ハグリッドさんと仲良かったものね……お見舞いかしら?」


翌日 魔法薬学 教室


ドラコ「ほら、ウィーズリー。早く僕の材料を刻めよ。ああ、スネイプ先生。
    僕、この無花果の皮も剥けません——怪我のせいで」

スネイプ「確かに。ではポッター、君が手伝ってあげたまえ」

ハリー「……覚えてろ、マルフォイ」

ドラコ「ん? 何がだい? 僕はあのウスノロのせいで怪我をしたから、手伝ってもらわなきゃいけないんだよ。
    ほら、早く剥け。それが終わったらイモムシもな」

ロン「この野郎、大した怪我でもないくせに——」

ドラコ「大した怪我だよ。ハグリッドが先生をやめさせられるには十分だと思うねぇ……」

ハリー「やっぱりそれが目的か。ハグリッドはやめさせないぞ。この、どうしようもない、根性悪——」

スネイプ「ポッター、授業中だ。私語は慎め。グリフィンドールから5点減点」

ロン「マルフォイの奴は無視かよ! スリザリン贔屓め」



マミ「ああ、本当ね。全く、ハグリッドさんに何の恨みがあるのかしら?」

ネビル「だってマルフォイだもん。しょうがないよ……ねえ、マミ。ネズミの脾臓っていくつ入れればいいの?」

マミ「一個だけよ。そしたらよくかき混ぜて……そう。それでいいわ」

ネビル「ありがとう。マミと一緒の机で助かったよ。僕一人だったらどうなってたか……」

マミ「魔法薬は得意な方だから……それでもハーマイオニーさんには敵わないんだけどね。
   実技に関してはボロボロだし……次の授業が不安だわ」

ネビル「次は防衛術か……これも新しい先生だけど、何をやるのかな?」


闇の魔術に対する防衛術 


ルーピン「さて、今日は実地練習と行こうか。場所を移そう。杖だけ持って、私についてきてくれるかな」

ロン「実地練習? なんだろう。禁じられた森に行くっていうんだったら、僕は梃子でも動かないぞ」

ハーマイオニー「そんな危険なことはしないと思うわ、多分……」

マミ「うう、呪文で吹っ飛ばすだけなら何とかなるけど……」

ハリー「マミ、やめてくれよ。トロールの時、洗濯大変だったんだから」

ルーピン「さて、到着。目的地はここさ」

ハリー「職員室、ですか?」

ロン「スネイプを退治してくれるっていうんなら大歓迎だけど」

ルーピン「なるほど、そのアイディアは参考にしよう。さて、鍵を……ふむ。これは駄目だな。ピーブズ、いるんだろう?」

ピーブス「ようルーニ、ルーピン。相変わらず酷い面だ!」

ルーピン「その綽名で呼ばれるのは久しぶりだ。君も相変わらずのようだね。
      鍵穴に詰めたチューインガムは、授業の前に剥がしておいて欲しかったが」

ピーブズ「べー! だ」

ルーピン「そうかい。まあ君とは彼らほど相性が良くなかったし、期待はしていなかったさ——ワディワジ(逆詰め)」


パン!

ピーブズ「へびゃっ!」

シェーマス「うわ、チューインガムが飛び出してピーブズに直撃した!」

ディーン「先生、クール!」

ルーピン「どうも。さあ、中に入って授業を始めようか」




職員室


ルーピン「さて、職員室なんかで授業をするのは他でもない。この洋服ダンスの中に、ボガートが入りこんでね」

ハリー「ボガート? なにそれ、危ないものなの?」

洋服ダンス「ガタガタ!」

マミ「きゃあ、う、動いた……!」

ハーマイオニー「平気よ。ボガート、つまり形態模写妖怪は相手が一番怖いと思ってるものに変身するの。
          直接的に攻撃してくるわけじゃないから、そんなに危なくはないわ」

ルーピン「素晴らしい。パーフェクトな説明だ。その通り、ボガートは相手の怖いものに変身する。
      だがこうして、暗い所に入ってる時はまだ何にも変身していない。ボガートの真の姿は誰も知らないのさ」

ルーピン「さて、ここで問題だ。我々はこの時点で、ボガートに対して非常に有利な立場にいるわけだが、なぜか分かるかい?」

ハリー「……人がいっぱいいるから、なにに変身すべきかわからない?」

ルーピン「その通り。ボガートを相手にする時には、誰かと一緒にいるのが一番いい。ひとりで退治できるようになったら一人前だ。
      さて、退治の方法について話そう。呪文は簡単。"リディクラス(ばかばかしい)"。
      だが、ただこの呪文を唱えるだけじゃあ駄目だ。必要なのは、精神力と想像力でね……まずはそうだな、ネビル、おいで」

ネビル「ぼ、僕ですか?」

ルーピン「ああ、君に一番にやってもらおう。君が一番怖いと思うものは何かな?」

ネビル「……スネイプ先生」

ルーピン「ふむ。なるほどね。ロン、君の要望は早速叶えられそうだぞ。そうだな、じゃあネビル、こんなイメージはどうだろう……」




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ネビル「リディクラス!(ばかばかしい)」


パチン!

スネイプ in フリフリドレス「……」

ロン「ぷっ、あははは! 見ろよ、ハリー! あのスネイプがひっどい姿だ!」

ハリー「ああ、ここにコリンがいないのが悔やまれるね。写真を撮って日刊預言者新聞に投稿したい位だ」

ルーピン「よし、次! マミ! やってみて!」

マミ「は、はい——り、リディクラス!」


バギュッ メキッ ごごごご…


スネイプの残骸「……」

マミ「……あ、あら、変ね? ゲルゲルムントゾウムシになる筈だったんだけど……」

ルーピン「失敗か。単純に吹っ飛ばしただけだね。でもまあ、ボガートはまだ動けそうだな。パーバティ、次!
      マミ、君は最後にもう一度やるから、リラックスして、イメージをしっかり固めるんだ」

マミ「は、はい! イメージ、イメージ……」





パーバティ「リディクラス! ミイラ男なんて、自分の包帯で首を絞めちゃいなさい!」

パチン!

シェーマス「リディクラス! バンシーなんて、年がら年中叫んでれば喉を潰すよ!」

パチン!

ラベンダー「リディクラス! ネズミなんて、自分の尻尾を追い回してればいいのよ!」

パチン!

ディーン「リディクラス! じゃあハンドは、ネズミ捕りに捕まっちゃえ!」

パチン!

ロン「リディクラス! 去年はよくもやってくれたなアラゴグめ! ころころ転がってろよ!」

パチン!


ゴロゴロ

ロン「ハリー! そっちいったぞ!」

ハリー「分かった! リディ——」

ルーピン「おっと、こっちだ!」サッ

ハリー「え? ルーピン先生——?」


パチン!


ハーマイオニー「あら、何かしら、これ。銀色のボールがふわふわ浮かんで……?」

ルーピン「さあ、マミ! 最後だ! やっつけろ!」

マミ(落ち着いて。できる、出来るわ。全力で、やれば——)


マミ「——リディクラス!(ばかばかしい)」


バーン!


マミ「……」

ロン「……まね妖怪、跡形もなく消し飛んじゃったんだけど、これは成功なの?」

ルーピン「……うーん。まあ、ボガートはやっつけられたんだし、よしとしよう。
      よし、ボガートの相手をした生徒には5点。マミもね。ネビルは10点だ。最初によくやってくれた……」

マミ「結局、私だけ成功しなかったのね……」

QB「気を落とさないで、マミ。また練習すればいいさ」

ルーピン「それと、ハリーとハーマイオニーにも五点ずつ。質問に答えてくれたからね。
      さ、今日はこれでお終いだ。宿題はボガートについてのレポートだよ、忘れずにね」


わいわい    がやがや 

「おい、見たか僕のバンシー」「それを言うなら、私のミイラだって」「良い先生だな、本当に」

                                    わいわい がやがや


ハーマイオニー「確かに、良い授業だったわ。でも、私もボガートに当たりたかったんだけど……」

マミ「ご、ごめんなさい。私が消し飛ばしちゃったから……ハリーくんも、ごめんね」

ハリー「いや、いいんだ……というか、先生は僕にボガートを当たらせたくないみたいだった」

ロン「あの時、先生が君の前に割り込んだこと? 気のせいだろ、時間もなかったし、マミにやり直しさせる為じゃないのか?」

マミ「うう……本当にごめんなさい」

ハーマイオニー「マミも気にすることないわ。練習すれば、その内成功するわよ……」

投下は以上です。

ベラ姐「無限に広がる空間を直進するだけの死の呪文……そんなもの、当たるはずがない。
     玄人が撃ちゃ、話は別だけどね!」


投下します


十月 グリフィンドール談話室 掲示板前


ざわざわざわざわ……


マミ「……よし、と。これで天文学の宿題は終わりね」

ロン「お、マジかい? じゃあちょっとだけ見せて——」

ハーマイオニー「ごほん!」

ロン「はいはい、分かったよ。自力でやらなけりゃ駄目だって言うんだろ。まったくお堅いよな」

マミ「ごめんね。でも、ハーマイオニーさんなんか私たちの三倍近い量の宿題をやってるんだから、頑張らなきゃ駄目よ?」

ロン「僕とハーマイオニーの頭の出来を一緒にしないでくれよ。彼女くらい頭が良かったら、僕だって喜んで宿題をやるさ」

ハーマイオニー「逆でしょ。宿題をきちんとやらなきゃ、成績は良くならないわよ」


ガタン


ハリー「はぁー、疲れた。外は寒いよ。凍えそうだ……」

ロン「お疲れさま。こっちきて座れよ。暖炉の傍取っといたからさ。クィデッチの練習はどう?」

ハリー「ウッドは今年が最後のチャンスだからね。凄い張り切ってる。もちろん僕らもさ。今年こそ優勝杯を掴むってね」

QB「去年はトーナメント自体が中止になっちゃったんだっけ? 一昨年は……」

ハリー「最後の試合が、ちょっとね。ほら、つまりなんというか、連携がさ……」

マミ(150点減点のせいで、ハリーくん達がずっと無視されてた時期だったものね……)


ハリー「それよりみんなざわついてるけど、何かあったの?」

ロン「ああ、ほら。そこの掲示板。第一回目のホグズミード週末だってさ」

ハリー「へえ……ちょうどハロウィンの日か」

マミ「それじゃあ明日の変身術の授業が終わったら、マクゴナガル先生に許可を貰いに行きましょうか?」

ハリー「うん。一緒に行こう」

ハーマイオニー「許可がでるといいわね。一緒に行けるのを楽しみにしてるわ……あら、クルックシャンクス」

クルシャン「なーご」ピョン

ロン「うわ! 出た! しかも何か、でっかい蜘蛛を咥えてやがる!」

ハーマイオニー「ひとりで捕まえたの? 偉いわねぇ、クルックシャンクス」

ロン「そうだね。もうひとりで狩りができるんだから、野生に返してやったらどうかな?」

ハーマイオニー「なに馬鹿なこといってるの。クルックシャンクスは、頑張ったから褒めて貰いに来たのよ」

マミ「蜘蛛ね……魔法薬の材料で散々使ったから、すっかり平気になっちゃった自分が何だか嫌だわ」

QB「この前のカエルも平気だったしねぇ……ん、なんだい? クルックシャンクス」

クルシャン「……なー」ブチッ ズイッ

QB「蜘蛛を半分くれるの? でもなぁ……」

マミ「言っておくけど、それを食べたらもう同じベッドには入れないわよ」

ロン「キュゥべえ。それを咥えたりしたら、僕は二度と君を相手にチェスしないからな」

ハーマイオニー「まあ、クルックシャンクスはお友達想いなのね……いいじゃない、マミ、ロン。
          猫は虫を食べるものよ。ねえ、ハリー?」

ハリー「でもキュゥべえって、僕たちと同じもの食べてるし……」

QB「僕も蜘蛛はちょっと……気持ちだけ貰っておくよ」

クルシャン「……ふー」ジリッ

QB「え、なんで近寄ってくるの……な、なんか怖い! 目が怖い! なんでそんな舌なめずりとかして……マミ! マミ!」

クルシャン「ふぎゃーーーー!」

QB「わ、わああああっ!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえ……まあいっか。このところ運動不足だったし、丁度いいでしょ」

ハーマイオニー「クルックシャンクスったらはしゃいじゃって……友達と遊べるのが、本当に嬉しいんだわ。
          随分長いことペットショップにいたんですもの。不思議よね、あんなに可愛いのに」

ロン「ほんと、どうしてだろうね? まあキュゥべえには悪いけど、スキャバーズが狙われなくて良かったよ。
   ま、今は僕の鞄の中で寝てるから安心だけどね……さて、そろそろ僕も寝るかな」


ハリー「僕ももう寝たい……けど、天文学の宿題をやらなきゃ……」

ロン「僕のを写していいよ。ほら、それまで待ってるから」

ハーマイオニー「丸写し? 感心できないわね」

ロン「仕方ないだろ、ハリーはクィディッチの選手なんだ。君はグリフィンドールが優勝できなくてもいいのか?」

ハーマイオニー「それとこれとは別よ。何のために宿題をやるの?」

ロン「そりゃあ、宿題を忘れて罰当番とかを食らわないようにするためさ。ほら、ハリー写しちまえよ」

ハリー「うん……あ、キュゥべえとクルックシャンクスが戻ってきた」

QB「マミィィィイ! あの猫が! あの猫が僕の尻尾を!」ピョイッ

マミ「わ、ちょっと頭の上に飛び乗らないで! わぷっ、尻尾が、尻尾が顔に掛かってなにも見えないから!」フラフラ

ハリー「うわっ、マミ! そんな状態で立ち上がろうとしないで! 危なっ……!」


どんがらがっしゃーん


ロン「うーわ。大惨事だ。インク瓶だけは寸前に避難したけど……ハリー、マミ、平気かい?」

マミ「いたたた……へ、平気よ。ごめんね、誰か怪我とかしてない?」

ハリー「みんな無事だよ……キュゥべえがマミの下で潰れてる以外は」

マミ「あ、そうなの? なら良かったわ」

QB「よくなぃぃぃぃいいいいい……」

ハーマイオニー「キュゥべえ、平気? でも急に飛び乗ったりしたら危ないわよ?」

ロン「いや、元はといえば君の猫が原因だろ。そういやどこいった、あのオレンジ色の危険生物は?」

スキャバーズ「チチッ、チ——っ!」

クルシャン「シャアアアアアア!」

ロン「ああ! こいつ、またスキャバーズを追っかけて!」

ハリー「鞄が開いてる……クルックシャンクスが開けたのか?」

ハーマイオニー「まさか。ロンが閉め忘れてただけでしょ——クルックシャンクス! めっ!
          ほら、こっちにきなさい。カリカリがあるから。ね?」

ロン「そんな悠長なことやってる場合か! おい、誰かその猫公を捕まえろ! なんなら呪っちまってもいいから!」ダッ

ハーマイオニー「あっ! ちょっとロンなんてことを! させないわよ!」ダッ


五分後


ロン「ぜぇ……ぜぇ……ふぅ、やっと捕まえた。スキャバーズ、ほら、もう安心だ……」

スキャバーズ「チチッ! チチチッ!」ブルブル

ハーマイオニー「はぁ……はぁ……クルックシャンクス、ほら、暴れないで、ったら!」

クルシャン「フシャー! フシャー!」ジタバタ

ロン「そいつを絶対離すなよ! 見ろ、スキャバーズはこんなに震えちまって!
    最近、全然餌も食べないんだぞ! そのケダモノのせいだ!」

ハーマイオニー「クルックシャンクスをそんな風に言わないで! なによ、猫はネズミを追いかけるものだわ!」

ロン「キュゥべえは一度もスキャバーズを追い回したことなんかないけどね! 飼い主ならちゃんと躾をしろよ!」

ハーマイオニー「それは、クルックシャンクスは最近買われたばっかりだから!」

ロン「それに、なんか変だぜそいつ! 騒ぎを起こして、その隙に僕の鞄を開けた!
   鞄の中にスキャバーズがいるって聞いてたんだ!」

ハーマイオニー「そんなことあるわけないでしょう? ロン、あなたむきになって——」

ロン「むきになってるのはどっちだよ! いいか、とにかくその猫畜生を二度とスキャバーズに近づけるなよ!」スタスタ

ハーマイオニー「ロン! 話を——ああ、もう! 男子寮に上がっちゃった……」

マミ「ああ、どうしよう……二人が喧嘩を……」オロオロ

ハリー「放っておいたら? 前からこんな感じだし、その内仲直りするよ」

マミ「そ、そうかしら……? でも、ロンくん本気で怒ってるみたい……」

ハリー「うーん。まあ、確かにちょっといつもより怒ってるかも……」


翌日 薬草学


スプラウト「いいですか、この"花咲豆"は地面に触れた瞬間に発芽します。
       ですから、摘み取り作業をするときは絶対に下に落とさないように——」


ロン「……」ブチッ

ハーマイオニー「……」ブチッ

ハリー(まだ怒ってる……二人とも頑なに口を利こうとしない。ならなんで同じ班に……)



マミ(やっぱり向こうは険悪なムードね……ハリーくん、可哀想に……)

ラベンダー「……うう、ひっく、ぐすっ」

マミ「ふぇ!? ら、ラベンダーさん、どうしたの!? 指切っちゃったりした?」

ラベンダー「ちがっ、ひっく。ちが、うの。ただ、今朝の手紙、うぅ、思い出しちゃって……」

マミ「手紙?」

パーバティ「今朝、お家から届いたの。ビンキーが狐に殺されちゃったんですって……ラベンダー、平気?
       無理しなくていいわ。作業なら、私とマミでやっておくから」

マミ「ビンキーって、ラベンダーさんが可愛がってた兎よね……うん、ラベンダーさんは休んでて。
   ペットが死んじゃうのは辛いものね……ほら、ハンカチ使って」

ラベンダー「ぐすっ、ありがとう、二人とも……うう、でも、私のせいで。ビンキー……」

マミ「そんな、悪いのは狐でしょ? ラベンダーさんのせいじゃないわよ……」

ラベンダー「違う。違うの。私、防げたのよ。今日は十月十六日。前の授業の時、トレローニー先生が予言してたの!
       今日、私の恐れてることが起きるって!」

マミ「トレローニー先生って、占い学の……そんな、本当に……?」

ハーマイオニー「——話を聞いてたけど、ラベンダー。あなた、兎が殺されてしまうかもって思ってた?」


ラベンダー「それは、そうよ。ぐすっ、だって、ビンキーは私の大切な家族だったんだもの」

ハーマイオニー「家族だからって、死ぬのを怖がることには繋がらないでしょう?
          たとえば兎がもうだいぶ歳を取っていたら別だけど、そうだった?」

ラベンダー「それは……ビンキーはまだ、子供だったけど……」

マミ「あ、あの、ハーマイオニーさん? いったい、何を——?」

ハーマイオニー「じゃあ、どうしてずっと死ぬ心配なんてするの?」

パーバティ「……」キッ

ハーマイオニー「論理的に考えて、あの占いが当たってる保証なんてないわ。
          手紙が今日来たってことは、兎はもっと前に死んだんでしょう?
          だいたい、恐れてることが起こるなんて大雑把すぎるのよ。毎日何かしら悪いことは起きるものだし——」

ラベンダー「うう、ぐすっ、わああああああん——!」

ハーマイオニー「え、ちょっと、なんでそんな泣くのよ——」アセアセ

パーバティ「ねえハーマイオニー、言い過ぎじゃない? そりゃあ、あなたがトレローニー先生を嫌いなのは知ってるけど。
       でも、ラベンダーは関係ないでしょう? なんでそんな責める風に言うの?」

ハーマイオニー「そんな! 私、別に責めてなんか……ねえ、マミ? 私、そんな酷い言い方だった?」

マミ「え、と……その、少し、言葉が直接的だったかしら?
   だってラベンダーさんは大切なペットが死んじゃって、泣いてたわけだし——」

ロン「ほっとけよ! そいつ、人のペットのことなんか、なーんとも思ってないんだから!」

ハーマイオニー「な……! ロン、あなた——」

スプラウト「はいはい! おしゃべりが過ぎますよ! 授業に集中して!」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ラベンダー「ぐすっ、ぐすっ……」

パーバティ「ほら、ラベンダー、元気出して……」


変身術 教室


マクゴナガル「——以上で今日の授業はおしまいです。宿題を忘れないこと。
        ああそれと皆さん、寮に戻る前にホグズミード行きの許可証を提出してください」

ロン「……」ガタッ

ハーマイオニー「……」ガタッ

ハリー(行ったか……だから、なんで喧嘩してるのに僕を挟んで隣に座るんだろう……」

マミ「きっと、お互い喧嘩してて不安なんでしょ。だから友達の傍に居たいのよ」

ハリー「うえ? もしかして僕、声に出してた?」

QB「ばっちりね。気をつけなよ、まあ、疲れるのもわかるけどさ」

ハリー「あの二人の喧嘩癖は本気でどうにかならないかなって、たまに思うよ……」

マミ「喧嘩するほど仲がいい、っていうけれど……毎回それの仲裁役じゃ大変かもね。
   ふふっ。でも二人もきっと、そんなハリーくんがいるから毎回喧嘩できるんでしょうけど」

ハリー「勘弁してほしいなぁ……それより、そろそろ行こうか? もうみんな渡し終ったみたいだし」

マミ「ええ、許可証は持ってる?」

ハリー「ああ、無記名のね。さて、僕のにもサインをくれればいいけど……」

マミ「私のにくれるんだから、きっと大丈夫よ——マクゴナガル先生!」

マクゴナガル「……ああ、マミ、ですか。そうですね、話さねばならないとは思っていましたが……」

マミ「? 何をです? あ、それより許可証のことなんですが、できれば私のと一緒に、ハリーくんのにも——」

マクゴナガル「すみませんが、サインはあげられません」

マミ「え……で、でも、私のにサインしてくださるなら、ハリーくんのにも——」

ハリー「あー……まあ、そういう可能性もあるって思ってたけどさ。
     残念だけど仕方ないよ。マミ、お土産をよろしく——」

マクゴナガル「……トモエの分も、サインはできないのです」

マミ「……え?」

ハリー「先生、どうしてですか? 僕はともかく、マミは去年、先生に許可をとったって……」

マクゴナガル「……その、大変申し訳なく思うのですが、状況が変わったのです。
         去年の時点では、確かに私が保護者代理としてサインを行うこともできたのですが……」

マミ「そんな……」

QB「もしかして、シリウス・ブラックのせいかな?」

マクゴナガル「その通りです。あれが野放しになっているということで、サインの徹底を図るようにということになりまして。
         トモエ、約束を破る形になって、本当に心苦しいのですが……」

マミ「……仕方、ないですよね。先生のせいじゃ、ないですし。分かりました。寮に戻ります……」

ハリー「マミ……」

マクゴナガル「……」

マクゴナガル(……ポッターと、一緒でなければ……いえ、彼女一人を特別扱いするわけにはいきませんね……)


グリフィンドール寮 談話室


マミ「……」ズーン

ハリー「……」ズーン

ロン「あー、その……元気出せよ。来年は、きっと行けるし……同じ日には、ハロウィーンのパーティもあるじゃないか。
   去年は絶命日パーティで潰れちゃったし、きっと楽しいよ——」

ハーマイオニー「そうよ。それに、これで良かったのかも。ほら、ブラックはハリーを狙ってるわけだし。
          マクゴナガル先生が許可を出すなら、って思ってたけど、許可がでないんじゃやっぱり危ないってことだし……」

マミ「……ぬか喜びさせちゃってごめんね、ハリーくん」ズーン

ハリー「……いいよ。悪いのは、ブラックだし……」ズーン

ハーマイオニー「駄目ね、私たちの声が届いてないわ」

ロン「二人とも、楽しみにしてたもんなぁ——おい、パーシー!
    いつも自慢してる監督生の権限でどうにかなったりしないの、これ?」

パーシー「先生の許可が出ないんなら、いくら監督生だってどうしようも——ああ、いや、待てよ。
      待っててくれ。いいことを思いついた」

ロン「お、マジかよ!? 一ミリも期待してなかったけど——なんだろう、偽造許可証でも造ってくれるのかな?」

ハーマイオニー「あのパーシーが? フレッドとジョージが悪戯グッズを全部捨てることくらい有り得ないわ」


数十分後


パーシー「待たせたね。ほら、二人ともこれを読みたまえ」

ロン「なんだこの紙束、パーシーが書いたの?」

マミ「……ハニーデュークスのお勧めセレクト?」

ハリー「"叫びの屋敷"のベストスポット5?」

ハーマイオニー「あの、パーシー? なにかしら、これ」

パーシー「僕なりにホグズミードのことをまとめてみた。
      行けないなら、せめて雰囲気だけでも味わえればと思って——ああ、お礼はいいよ。
      下級生のことを慮るのも、監督生の義務だ。それじゃ」スタスタ

マミ「はにー、でゅーくす……おかし……」

ハリー「ゾンコの悪戯専門店……ああ……」

ロン「生殺しもいいとこじゃないか! 最低だ、パーシーの奴!」

ハーマイオニー「無駄に文章力高いのがまた……ハニーデュークスのお菓子のくだりなんか、
          読んでるだけでよだれが出てきそうよ、これ」


翌日 ハロウィーン/ホグズミード週末 廊下


ハリー「……はぁ。みんな行っちゃったね。
    ロンとハーマイオニーは、お土産を持ってきてくれるって言ってたけど……」

マミ「これからどうしましょうか……ハロウィーンパーティが始まるまで、談話室でゲームでもしてる?」

ハリー「いや、さっきコリンがいた。多分、談話室に居る限りずっと付きまとってくると思う」

QB「じゃあ、図書館で勉強すれば?」

ハリー「本気で言ってるの? みんながホグズミードで遊んでる間に勉強なんてしたいと思う?」

マミ「流石に、ちょっとね……昨日の今日だし。魔法を練習する気にもなれないわ……」

QB「じゃあどうするのさ? このままずっと学校中歩き回ってるつもり?」

フィルチ「——何をしている、貴様ら?」

ハリー「あ」

マミ「……フィルチさん」

フィルチ「ホグズミードに行かず、こんなところで何を企んでる? 新しい悪戯の計画か?
      それとももう実行した後か?」

マミ「違いますよ。私達、許可がおりなかったんです」

フィルチ「なに、本当か? 私を謀ろうとしてるわけじゃあるまいな?
      ……なら、勉強でもしていたらどうだ。図書館にでもいけばよかろう」

マミ「だって、皆が遊んでるのに……」

フィルチ「学生の本分は勉強だろうが。それなのにお前らときたら悪戯だのなんだのと!
      ほら、さっさと行け! 私はこれからまた仕事なんだ。手間を掛けさせるんじゃない」

マミ「分かりました……それじゃ、フィルチさん。お仕事頑張ってくださいね」

フィルチ「ふん、お前に言われずとも分かっとるわ!」スタスタ

ハリー「……行ったか。マミはさ、よくフィルチとまともに話せるね」

マミ「言われてるほど酷い人じゃないわよ。まあ、確かに意地悪なとこもあるけど……さて、どうしましょうか?」

ルーピン「……おや? ハリーとマミじゃないか。どうしたね、デートにしては相応しくない場所だが……」

マミ「で、デートって……違います! わ、私たちはホグズミードの許可がおりなくて!」

QB「マミ、声が大きい。フィルチが戻ってくるよ」

ルーピン「ああ、なるほど……ふむ、それなら、どうだろう。私の部屋でお茶でも飲むかい?
      ついでに次の授業の話でもしていれば、フィルチさんもうるさくは言わないだろう」



ルーピンの部屋


水魔「グゲゲゲゲ!」チャポン

ハリー「これ、次にやる生き物ですか?」

マミ「うう、気色悪い……細長い指が、虫の足みたいにうねうね動いて……」

ルーピン「水魔(グリンデロー)さ。まあ、その指に気を付ければ大したことはない……脆いしね。
      マミならいつも通り一撃で粉々にできるだろう」

マミ「ご、ごめんなさい……いつもいつも、教材の生き物を吹っ飛ばしちゃって……」

ルーピン「いいさ。どうせ経費で落ちるし……ハグリッドが残念がるくらいかな。
      それに、結果として防衛にはなってるわけだしね。まあ、変身術や呪文学もその調子だと困るだろうが……」

マミ「あうううう……」

ルーピン「……あの調子なのかい?」

ハリー「前から失敗することは結構あったけど、今年度になってからはさらにあれだよね」

QB「まあでも、みんな慣れてきたし、人的な被害はさほどでもないよね」

マミ「一応、練習はしているんですけど……」

ルーピン「ふむ、気にすることはない——と手放しに言うことはできないが、気にしすぎないようにね。
      ホグワーツに入学できたということは、それだけで何らかの才能がある証拠だ」

マミ「はい、ありがとうございます……」

ハリー「……」

ルーピン「さて、紅茶がはいったが——ハリー、どうにも浮かない顔をしているね。
      そんなにホグズミードに行けないのが残念かい?」

ハリー「いいえ——いや、もちろん残念ですけど、それとは別に、聞きたいことがあって……」

ルーピン「遠慮することはない。なんでも話してごらん」

ハリー「はい。あの、ボガートの授業の時のことなんですが……
     先生が、その、僕に順番を当てないないようにしたような気がして……」

マミ「そういえば、そんなこと言ってたわね……でもハリーくんの考えすぎよ、って」

ルーピン「いや、ハリーの言う通りだ。私はハリーがボガートと当たらないようにした……
      が、なるほど。ふむ。それで私が君のことを低く見ているのではないか、と悩んでいたのか。
      それは悪いことをしたね。だが、言わずとも分かるだろうと思っていて……」

ハリー「どうしてですか?」


ルーピン「君と相対したボガートは、ヴォルデモート卿の姿になる。そう思ったのさ」

ハリー「……先生は、ヴォルデモートの名前をそのまま呼ぶんですね」

ルーピン「うん? ああ、例のあの人って呼び方かい。まあね、魔法使いの誰もが、奴の名前を口にできないわけじゃない。
      でも大多数の者は怖がっている。だからあの日、私は君にボガートを当てなかったんだ」

ハリー「……確かに、僕も最初はヴォルデモートのことを思い浮かべました。
     でも、すぐに別の——吸魂鬼のことが浮かんできて……」

マミ「吸魂鬼……あの、電車で私たちを襲った……」

ハリー「先生、そのことも聞きたかったんです。あの時、僕とマミだけが気絶してしまったのは——?」

ルーピン「……そもそも吸魂鬼、というのはだ。人から幸福を吸い取って生きている、この世で最も忌避すべき生き物だ。
      だから奴らと一緒に居続けると、幸せな感情をすっかり抜き取られてしまう」

QB「……」

ルーピン「そうやって全ての感情を抜き取られた後に残るのは絶望だけだ。
      吸魂鬼の影響が君たちに強く表れたのは、過去の経験に起因するものだろう。
      つまりそれだけ、君たちの過去に辛い経験があったということだ」

ハリー「それって、つまり……」

ルーピン「ハリーは言うまでもないね。君の最悪の経験は、
      それこそほとんど全ての魔法使いが、心の底から恐れている存在がもたらしたものだ……」

ハリー「ヴォルデモート……じゃああの時聞こえた叫び声は、僕の……」

マミ(……その論で行くと、あの時見た夢が、私の最悪の……?
   ほとんど覚えてないけれど、あの事故の夢だったような……)

ルーピン「……暗い話になってしまったかな。紅茶、おかわりは——」


ガチャッ


スネイプ「ルーピン、薬だ——ポッターが何故ここに?」

ルーピン「ああ、ちょっと授業の話をね。ありがとう。そこに置いといてくれ」

スネイプ「すぐに飲め。苦いから飲みたくないなどという泣き言は聞かん。飲み損ねて泣きを見るのは勝手だが」

ルーピン「分かった、分かりました……御心配どうも」

スネイプ「我が輩が心配しているのは別に貴様のことではなく——あー、ダンブルドアからの頼みであればこそ、だ。
      貴様が飲まず、我が輩の腕が疑われるのは不本意であるからして。では、確かに渡したぞ」


バタン


マミ「薬って——先生、御病気なんですか?」

ルーピン「ちょっとね。スネイプ先生にはいつも薬を調合して貰っていて——でも酷い味なんだよ、これ。ほら」

マミ「うわぁ……においも色も凄まじいですね」

QB「正直言うと、ドブみたい」

ルーピン「これから私が飲むっていうのに、嫌なたとえを——ん、ハリー? どうしたね。一口飲んでみるかい?」



夕食後 グリフィンドール寮への廊下


ロン「で、ルーピン先生はそれ飲んじまったのかい? え、マジで?
   ハリー、なんで止めなかったんだよ。スネイプが防衛術の先生の座を狙ってるのは有名じゃないか」

ハリー「いやだって、止める間もなく飲み干しちゃったし……」

マミ「凄い勢いで一気飲みしてたもの……よっぽど酷い味だったに違いないわ」

ハーマイオニー「ルーピン先生、御病気だったのね。顔色が悪かったのもそういうわけだったのかしら」

ロン「スネイプに毒を盛られてるからじゃないの? じわじわ効くやつを少しずつ……」

マミ「さすがにスネイプ先生もそんなことしないわよ、きっと」

ハーマイオニー「やるにしても、マミ達の前ではやらないと思うわ」

ロン「どうかな、あの陰険野郎、いつかやりかねないと——」


ドン!


ロン「痛っ! おい、シェーマスなんでそんなとこで止まってるんだよ。
   これから僕たちは談話室でホグズミード土産を囲むんだから——って、この行列はどういうわけ?」

シェーマス「ああ、ロン。僕も分からない。さっきからずっと進まないんだけど」

ハリー「前の方、寮の入り口でつっかえてるみたい」

ロン「何だよ、みんな合言葉を忘れちまったのかい? ネビルでもあるまいし」

マミ「こんな時こそ、キュゥべえ。あなたの出番よ。前の様子を見てきて頂戴。さあ、ごー!」

QB「人使いが荒いなぁ……」ピョイッ

パーシー「何をしてるんだ? さあ、通して! 僕は首席で監督生だ!」ズカズカズカ キュップイ!

ロン「首席は関係ないだろ——あ、キュゥべえ踏まれた」

マミ「きゅ、キュゥべえーーーーーっ!」

ピーブズ「おやおやおや、なんだいなんだい。悲鳴が聞こえたから、また誰か切り刻まれたと思ったけれど。
      生徒諸君、こんなところでゆっくりしてていいのかな?」ヒョイッ

ハリー「うわ、ピーブズ! この面倒くさい時に……もしかしてこの行列も君の仕業?」

ピーブズ「いーやー? さすがにあんな真似はしないねえ。ひっどく残酷! ひっどく短気!
      あいつだって、昔は世話になっただろうに!」

ハーマイオニー「あいつ? 世話になったって——あなた、一体誰のことを言ってるの?」

ピーブズ「時の人さ! 時の人、時の人……時がたちすぎて、昔ほど洒落は通じなくなっちまったかもなぁ。
      いや、それとも昔からあんなもんだったか——」


パーシー「大変だ! "太った婦人"の肖像画が滅多切りに! 一体誰がこんな……」


ピーブズ「——あの、シリウス・ブラックは!」


大広間


ダンブルドア「さて、申し訳ないがそういうわけじゃ。
         これから我々職員は全員でシリウス・ブラックの捜索に当たらねばならん。
         見張りには監督生が立ってくれる。安心して、ゆっくりおやすみ」


ざわざわ

「ブラックはどうやってホグワーツの中に——?」「姿現しじゃないかな?」「箒で飛んできたとか」

                                                  ざわざわ


ハーマイオニー「ああもう! ホグワーツでは姿現しは無理!
          空を飛んできたりなんかしたら吸魂鬼に見つかるわよ! 
          どうしても誰もこんな簡単なことが分からないわけ?」

ロン「君じゃないからだろ。それは何の本のどのページに書いてあったわけ?」

ハーマイオニー「ホグワーツの歴史、231ページ四行目の——」

ロン「おーけー聞いた僕が馬鹿だった。さ、寝ちまおうかハリー?」

マミ「ハーマイオニーさん、私達も寝ましょう……寝れないなら、枕を貸してあげるから」

QB「それって僕のことじゃないよね? 勘弁してよ、ただでさえ朝はマミのよだれまみれなのに——きゅっ!?」ギュッ

ハリー「……そういえばさ、ハロゥイーンって絶対になんかトラブルあるよね。
     去年はミセス・ノリスが怪物に襲われたし、一昨年はトロールが入りこんだし」

ロン「ああ、そういやそうだな……そういや、結局あのトロールはクィレルの奴がいれたんだっけ?
   待てよ? じゃあブラックも誰かが手引きして……」

ハーマイオニー「馬鹿なこと言わないでよ、ロン。誰がブラックなんかと内通するっていうの?」

ロン「マルフォイとかスネイプなら、ブラックとも仲良くやってけそうな気もするけど——」


パーシー「ほら、そこ! いつまでも話してないで寝ろ!」



数日後 夕方 グリフィンドール寮 入り口前


カドガン卿「さあ名乗れ! この悪辣なる二連星め!
       邪悪なものはこのカドガン卿が一切の侵入を拒むであろう!」

ジョージ「うるっさいなあ、こいつ。阿呆みたいな合言葉ばっか考えるし……
      おい、パーシー。もっとまともな扉番はいなかったのかよ?」

パーシー「どの絵もこの仕事を嫌がったんだよ。太った婦人があまりにも惨い状態で……」

フレッド「驚いたな。監督生のパーシー様はまだ肖像画になってなかったのかい?」

パーシー「ああ、まだだ」

フレッド「……そうまではっきり断言されっちまうと、もう言葉もないね」

パーシー「そんなことより早く着替えを取ってこい。クィデッチの練習に行くんだろう?」

ジョージ「おっと、そうだった——"スカービー・カー、下賎な犬め"。ほら、さっさと開けろ」

カドガン卿「開けん!」

ジョージ「はぁ? なんでさ、合言葉は合ってるだろ?」

カドガン卿「今、変えたのだ! さあ我が輩が今朝朗読した4番目の——」


パカッ


マミ「よっこらしょ、っと——ああ、ごめんなさい。入るところだったかしら?」スタッ

フレッド「おお、ナイスタイミング——なあパーシー、もうこれ内側に屋敷しもべ妖精でも待機させといた方が早いぜ、絶対」

ジョージ「全くだ。ああ、マミ。悪いけど通してくれ。練習が始まっちまう——」ヒョイッ

QB「それなら急いだほうがいい。さっきウッドが『双子は何処だ!』って大声で叫びながら談話室を出てったから」

ジョージ「うわ、マジか。急ぐぞフレッド!」ダッ

フレッド「ああ。ウッドがカンカンになって頭の血管切る前にな」ダッ

パーシー「やれやれ。あいつらも、もっと時間に余裕をみて行動して欲しいものだ——で、マミ。君は何処へ?
      最近物騒だし、用もないのに出歩くのは……」

マミ「あの、私は……」


パカッ


ハーマイオニー「クルックシャンクスがいないの!」

パーシー「クル——なに?」

マミ「ハーマイオニーさんの猫が外に遊びに行ったきり、帰ってこないんです」

ハーマイオニー「心配だわ。頭の良い子だから、迷子になんかはなってないと思うけど……」

パーシー「ふむ——そういうことなら、まあいいだろう。あとさっき、合言葉が変わったよ。
      カドガン卿曰く、四番目の奴、だそうだ」

マミ「え……えーと……四番目……?」

QB「"イーブルナッツ、悪意の実"だよ。マミもネビルみたいに、合言葉をメモに書いて持ち歩いたら?」

マミ「いいわよ。キュゥべえが代わりに覚えてくれてるし……じゃ、ハーマイオニーさん。
   とりあえず、手分けして探しましょ?」

ハーマイオニー「ええ、ありがとう、マミ……ハリーはクィディッチの練習だし、ロンは手伝ってくれないしで困ってたの。
          それじゃ、お願いね」


ホグワーツ 校庭端


マミ「……とはいっても、ホグワーツって凄い広いし……どうやって探しましょうか?」

QB「何にしても、急いだ方がいいかもね。ほら、天気も悪いし……雨が降りそうだよ」

マミ「最近、ずっとよね……もうすぐハリーくん達が試合するのに。
   あとキュゥべえ、重いから頭から降りていますぐに。ほら、抱っこしててあげるから」

QB「い、嫌だ! 毎回毎回あの猫、僕の尻尾を食い千切ろうとして! ひたすら尻尾の付け根を狙ってくるんだ!」

マミ「じゃあ、寮で待ってればよかったじゃない」

QB「そんなの、君がいない内にあの猫だけ戻ってきたらもっと怖いじゃないか!」

マミ「意気地なし……」

QB「あんなケダモノに追いかけられたら怖いに決まってる。
   正直、スキャバーズの気持ちも分かるよ。彼、人間みたいな魂してるし」

マミ「適当言わない。なんでそんなことキュゥべえに分かるのよ?」

QB「……マミには黙ってたけど、僕には隠された24の特殊能力があるんだ」

マミ「え、え、そうなの? ちょ、ちょっと気になるわね。違うのよ、別に、かっこいいとは思ってないけど。
   でも、ペットの特徴の把握は飼い主の義務だから——」

QB「……あ」

マミ「——そうね、それで契約を交わすと真の姿になって、封印の獣ケルベロスになるのよ。
   地獄の炎を吐いたり、空を飛んだりして——」

QB「マミ。ストップ。歩きも妄言もいったん止めて。僕にそんな機能ないし」

マミ「えぇ、期待させておいてそんな……なによ、もう」

QB「いや、この距離まで気づかなかったのもあれだけど、目の前」

マミ「目の前?」


黒犬「……」ジッ


マミ「……あ、あわあわ……お、大きな犬が、じっとこっち見てる……!」

QB「うん、すっごい大きいね。アイリッシュ・ウルフハウンドみたい」

マミ「な、何よ、その怖そうな単語……」

QB「犬の種類だよ。名前通り、真正面からオオカミを食い殺せる犬なんだけど——」

マミ「っ!」クルッ

QB「おわっと! マミ、急に方向転換しないで! それに、基本的に犬は逃げるものを追うよ。
   こういう猟犬って時速60km以上で走れるんだけど、マミはそれより速いの?」

マミ「う、うう……私、ここで食べられちゃうんだ……短い人生だったわ……」

QB「やーい。さっきは人のこと意気地なし呼ばわりしてたくせにー」

マミ「……キュゥべえ。あなたさっきから、ずいぶん落ち着いてるわね。同じ猫にはビビりまくってるくせに。
   言っておくけど、いざとなったらあなたを生贄に捧げるわよ?」

QB「あのケダモノと僕を一緒にしないで欲しいなぁ。
   それに、平気だよ。目の前の彼の魂も人に近いから、きっと理性的だと思うな」

黒犬「……ハッハッハ」

マミ「……そういえばこの犬、さっきから行儀よく"お座り"の姿勢で動かないわね。
   それに、よく見たらずいぶん痩せてるし……毛並も悪いわ。栄養不足かしら。お腹減ってるの?」

黒犬「バウッ!!!!!」

マミ「きゃっ。な、鳴き声もダイナミックね……でも、そうなの。お腹減ってるの……
   えーと、何か持ってたかしら……」ゴソゴソ

黒犬「! ハッハッハ、チキワン!」

マミ「? 変な鳴き声ね? ……あ、チョコバーがあったわ。ロンくん達から貰ったお土産の残り……
   でも犬にチョコは駄目だから……」

黒犬「……クゥーンクゥーン」

マミ「……欲しいの? そ、そんなつぶらな瞳でこっちを見ないで……キュゥべえ、どうしましょう?」

QB「このくらいの大きさの犬なら、チョコバー1本くらいは平気だよ。
   本人が尻尾振ってまで食べたいって言ってるんだし、あげちゃえば?」

マミ「そう……それじゃ、あげるわ。きちんと包み紙を解いて……はい、どうぞ」

黒犬「むしゃむしゃむしゃ!」

マミ「わわ、凄い食べっぷり……よっぽどお腹減ってたのね。ふふ、一生懸命食べちゃって……
   こういうおっきい動物も、こうなると可愛いわね」

QB「……さっきは怖がって癖に、現金だなぁ」

マミ「あら、嫉妬?」

QB「……そんな感情は知らないね」プイッ


黒犬「バウ!」

マミ「もう食べ終わったの? そうよね、あんな小さなチョコバーだものね……じゃあこれも半分あげるわ。
   ハーマイオニーさんがくれたクルックシャンクス捕獲用のジャーキーなんだけど、食べるかしら?」スッ

黒犬「ムシャムシャ! バウ! ぺろぺろぺろ!」

マミ「あははは! くすぐったいっ。な、舐めないでってば! 私の指はジャーキーじゃないったら! あはは!」

QB「よっぽどお腹減ってたんだろうなぁ……それはともかく、マミ、犬の口の中は雑菌だらけだからね。
   帰ったら手を洗うんだよ」

マミ「……ってそうだったわ。クルックシャンクスを探さないと……それじゃあバイバイ、犬さん。
   あんまりうろちょろしてちゃ駄目よ?」

黒犬「バウッ! バウッ!」グイッ

マミ「え、ちょ、わ! や、やめて! スカート引っ張らないで! もう餌はないったら!」

黒犬「ウゥゥウウウ! バウ!」クイッ

マミ「な、なに? ついて来いってこと? も、もしかして、やっぱり私を食べる気じゃ——わ、ひ、引っ張られる……!」


木の上

クルシャン「……シャーーーーーー!」バッ

マミ「きゃ!? う、上から何か落ちてきて……クルックシャンクス!? 木の上に居たの!?」

QB「わ、わあああああ! 猫だああああああ!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえが地面に……そうか、クルックシャンクスに叩き落とされたのね……」

QB「こ、このっ! この犬! 猫とグルだったんだ! 初めからマミを木の下に誘導するつもりで!
   畜生、魂は人間に似てても、所詮はケダモノだよ! 信じた僕が馬鹿だった!」

マミ「もう、そんなわけないでしょう? 偶然よ、偶然」

QB「いーや違うね! その犬は、猫と何らかの悪魔的な取引をしたに違いない——」

クルシャン「ふぎゃーお!」ダッ

QB「わ、わ! こっちに来るんじゃない!」ダッ

マミ「あ、キュゥべえ、ナイスよ! そのままグリフィンドール寮まで誘導して!」ダッ

QB「そんな余裕あるもんかぁぁああああ……」


だだだだだ……


黒犬「……」

投下終了。あと2回くらいで囚人編終わりにしたいです

投下。今回は短め。次回大量投下で囚人編終わらしたいヤック・デカルチャ


翌日 闇の魔術に対する防衛術 授業


ハーマイオニー「昨日はありがとうね、マミ。クルックシャンクスを見つけてくれて……」

マミ「ううん。いいのよ、そんな。大したことはしてないもの」

ハーマイオニー「でも、キュゥべえが……」チラッ

QB「きゅぷっ?」

マミ「……大丈夫よ。たぶんその内治るから」

ロン「キュゥべえの奴、可哀想に。言葉が喋れなくなっちまって……
   おいハーマイオニー。猫の躾くらいちゃんとやれよ。猫のキュゥべえでさえこれなら、僕のネズミはどうなる?」

ハーマイオニー「なによ。あれ以来、追いかけてないでしょ?」

ロン「追いかけられないようにしてるんだよ! ずっと寝室で休ませてるんだ!」

マミ「あ、あの、二人とも、喧嘩は……もうすぐ授業も始まるし……」

ハーマイオニー「……そういや、ルーピン先生遅いわね。いつもはベルが鳴る前に準備してるのに……」

ロン「ハリーがクィディッチの練習で遅れてるから、ありがたいっちゃありがたいけどね。
   でも心配だな。とうとうスネイプに毒殺されたちゃってたり——」

スネイプ「——我が輩が、なんだと? ウィーズリー」


スネイプ「ポッター、遅刻だ。グリフィンドール5点減点。座って教科書を出せ」

ハリー「……なんでスネイプが?」ガタッ

ロン「ルーピン先生、体調不良だってさ。でもよりによってスネイプに後釜を頼むことないよなぁ」

スネイプ「私語を慎めウィーズリー。さらに5点減点」

ロン「……これだもん」

スネイプ「さてさて……授業の記録もつけていないとは、ルーピン教授殿のだらしないことよ。
      まあ、いい。本日、諸君らに学んで頂くのは——人狼だ。教科書の394ページを開きたまえ」

ハーマイオニー「でも、先生。まだ人狼はやる予定じゃなくて……」

スネイプ「黙りたまえ、グレンジャー。我が輩がいつ君に意見を求めた。

      この授業を預かったのは我が輩であり、君ではない。
      さて、人狼の授業に移るが、人狼と狼の見分け方が分かる者は?」


しーん



スネイプ「ふむ、誰も分からない、と。やれやれ、ルーピン先生は何を教えていたのか……」

ハリー(仮に分かってても手を挙げたくないね)

ロン(同感。まああそこに一人、例外がいる見たいだけど)

ハーマイオニー「……」スッ

スネイプ「全く、呆れたものだ。三年生にもなって、人狼の見分け方も知らんとは」

ハーマイオニー「……っ! っ!」ブンブン

マミ「あのぅ、スネイプ先生。ハーマイオニーさんが手を挙げてますけど……」

スネイプ「黙れ、トモエ。他人のことをとやかく言えるのなら、君は見分け方がわかるのだろうな?」

マミ「え、あの、いいえ……」

スネイプ「ふむ、他人任せ、か。まったく、根性が悪いことよ」

マミ「……っ」


パーバティ「……先生。さっきもハーマイオニーが言いましたけど、私達、まだ狼人間までいっていません」

ラベンダー「そうです。そもそも今日やる予定だったのはヒンキーパンクで——」

スネイプ「自らの不勉強を棚に上げての発言に、グリフィンドールから10点減点。
      我が輩は"これから人狼をやる"と申し上げたはずだが?」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

スネイプ「さてさて、酷いものだ……我が輩の予想より、ルーピン先生の教え方は遥かに程度が低い。
      このクラスの学習の遅れに関しては、我が輩からしっかりと校長にお伝えして——」

ハーマイオニー「先生、狼人間は普通の狼と違って鼻面が——」

スネイプ「勝手にしゃしゃり出てきたのはこれで二度目だな。
      その鼻持ちならない知ったかぶりな態度で、さらに五点減点する」

ハーマイオニー「……っ」ジワッ

ロン「糞野郎」ボソッ

ハリー(ロン!)

スネイプ「……何か言ったか、ウィーズリー?」

ロン「いえ——ただ、答えて欲しくないのに質問するのって先生としてどうかな、って思っただけです」

ハーマイオニー「ロン……」

ネビル(凄い、ロン。とても僕には真似できない……)

シェーマス(ああ。凄いけど、言い過ぎだよなぁ。見ろよ、スネイプの顔……)

スネイプ「——処罰だ、ウィーズリー。その無礼な口のきき方を直さねば、今に後悔することになるだろうな」


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スネイプ「さて、授業は終了だ。各自、今日の授業内容のレポートを書いてくること。
      月曜までに羊皮紙二巻。忘れた者の数だけ5点減点する。以上」


バタン


ラベンダー「……最っ低! なによあの態度! なんであんなのが先生やってられるわけ?」

パーバティ「本当よね。ブラックにやられちゃえばいいのよ」

ロン「ああ。あいつの部屋に隠れてたらいいのに。こんどフレッド達に頼んで
   スネイプの部屋に"シリウス・ブラック様歓迎"ってプレートくっつけて貰おうか……」

ハリー「でも、何だか今日はいつも以上に荒れてたよね、スネイプの奴。
     ことあるごとにルーピン先生の悪口言ってたし……」

ハーマイオニー「何か恨みでもあるのかしら……」

マミ「さあ、それは分からないけど……でも、ロンくん凄かったわね。
   スネイプ先生に、あんなにはっきりと文句を言えるなんて」

ロン「お陰で僕はおまるの掃除だけどね……」

ハーマイオニー「……がとう」

ロン「うん? なんか言ったかい、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「……別に? 空耳じゃないかしら?」

QB「きゅっぷいぷい!」

マミ「え、照れてる? 誰が?」

ハーマイオニー「クルックシャーンクス!」

QB「ぴぃっ!?」

ロン「それにしてもケチがついたよなぁ。明日はクィディッチの試合だって言うのに。
   ハリー、気にせずに飛べよ。まあ、ハッフルパフなんて一捻りだろうけど」

ハリー「そうでもないらしいんだ。ディゴリーって新しいキャプテンがチームを編成し直して……」


翌日 クィディッチ競技場



ざああああああああああ!


マミ「ねえ——なんで——観客席に——屋根がついてないの——!?」

ロン「そんなの——ついてたら——試合が——見えないだろ——!」

マミ「こんな大嵐じゃ——どっちみち——なんにも——みえないわよ——!」

ロン「グリフィンドールが——50点くらい勝ってる——で、いまタイムアウト——
   ハーマイオニーが——ハリーの眼鏡を——」

マミ「なーにー!? ——聞こえない——!」


ざあああああああああああああああ!


ロン「——、——」

マミ「だから聞こえないって——っ、ごほ、ごほっ! あ、雨粒が喉に……!」

QB『無理に喋らないほうがいいよ、マミ。大人しくしていよう?』

マミ『ああ、キュゥべえ……テレパシーね。はあ、全く。こんな大嵐の日でも試合は中止にならないって……
   ハリーくん達、こんな中でよく飛べるわね……私は普通の時でも上手く飛べないのに……』



ざあああああああああ!


QB『箒に逃げられる方が多いもんね、君』

マミ『言わないで……それにしても、本当に酷い雨……びしょ濡れよ、もう。
   帰ったらマダム・ポンフリーの元気爆発薬飲まないと……』


ざあああああ……


QB『……確かに、寒い……というより、寒ぎないかい、これ?』ブルッ

マミ『……ねえ、キュゥべえ。変よ。雨の音が、急に、遠く……』

ロン「ハリーが——落ち——吸魂鬼——!」

マミ「……え? ロンくん、いま、なんて……あ、れは……」


吸魂鬼「………」


マミ「なんっ、で、学校の中、に……」フラッ

ロン「——ミ!? ——誰か——ダム・ポンフ——倒れ——!」


ざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!


◇◇◇



 今よりもだいぶ小さな体躯の自分/アスファルトの上/周囲には鉄くず/炎に撒かれ/

 視界にはっきりとした白色の猫/紅玉の双眸/×ュゥ×え/話しかけてくる/

Q×「×と×約して××少×にな×て——」

 遠い声/掠れた×/聞き取×ない声/

 背後には/両×の/死×が/散乱/


QB「——君が望めば、この運命だって変えられる」


 暗転。



◇◇◇


医務室


マミ「ここ、は……?」

ハーマイオニー「ああ、マミ! 起きたのね、良かった……私、私、あなたが倒れたって気づかなくて——」

ロン「しょうがないだろ。僕は隣だったから気づいただけ。誰だってハリーのほうに目が行ったさ。
   数十メートルも落ちたんだから……」

マミ「何が、起きたの……?」

QB「……吸魂鬼だよ。あいつらが来たんだ。それでハリーが箒から落ちて……」

マミ「……私も気絶しちゃったのね。ハリーくんは、平気なの……?」

ロン「あっちで寝てる……落ちたせいか、まだ起きないんだ。
   今はフレッドとかジョージとか、チームメイトが様子を見てるけど……」

ハーマイオニー「ハリー、大丈夫かしら……試合に負けたこと、気にしなければいいけど」

ロン「無理だろうな、それは……ほら、ハリーの箒も粉々だ。暴れ柳にぶつかって……」

QB「酷いね、柄まで真っ二つだ……もう直らないのかい?」

ロン「ああ。こうまで粉々だとな……仮に直ってもまっすぐ飛ばないよ。
   箒はクィディッチ選手の魂だぜ? ハリーは絶対落ち込むと思うな……」

マミ「……ありがとう、二人とも。私はもう大丈夫だから、ハリーくんについていてあげて」

ハーマイオニー「……分かったわ。でも、なにか必要なものとかあったら、遠慮なく声を掛けてね」

ロン「ああ、そうだ。マダム・ポンフリーが君が起きたら枕元のチョコを食べさせるようにって……
   はい、これ。じゃあ、ちゃんと食べとくんだよ……」

マミ「……」

QB「災難だったね、マミ。まさか吸魂鬼が入りこんでくるなんて……ダンブルドアが凄い怒ってたよ。
   それで、吸魂鬼はぜーんぶ吹っ飛んじゃった。あの時の迫力といったら、もう——」

マミ「ねえ、キュゥべえ」

QB「……うん、なんだい?」

マミ「……私とあなたが会ったのって、ペットショップの時が最初よね?」

QB「その筈だけど、急にどうしたの?」

マミ「……ううん。別に、なんでも……」

マミ(……夢の中で、キュゥべえに会ったような……それに、きっとあの夢は……)



翌日 夜 医務室


QB「Zzzzz....」

マミ(ふふっ。病人よりもよく寝ちゃって……ずっと、私に付き添ってくれてたものね。
   ありがとう、キュゥべえ……さて、私も寝ないと。明日には退院して、また授業だし……)

ハリー「……マミ、まだ起きてる?」

マミ「ハリーくん? ええ、起きてるけど……どうしたの? どこか痛む?」

ハリー「いや、そうじゃなくて……少し、話をしてもいいかな」

マミ「? ええ、いいけど……それじゃ仕切りのカーテンを開けるわね。えーと、杖は……」

ハリー「いや、僕がやるよ。マミがやるといつかみたいに燃えるかもしれないし……」


シャッ


マミ「もうっ、ハリーくんの意地悪……でも、まあそうね。私はあんまり魔法が得意じゃないし……
   それで? 勉強の相談なら、こんな私じゃなくてハーマイオニーさんに頼んだら?」

ハリー「はは、悪かったよ。でも、これはマミにしか聞けないことだから……
     マミなら、皆よりは分かってくれるかもしれない」

マミ「……冗談交じりで聴いていい話じゃないみたいね。分かったわ、話して。
   上手く答えられるかは分からないけど……それでも、私にできることがあるなら」


ハリー「ありがとう……その、聞きたいのは吸魂鬼のことなんだけど……」

マミ「……気絶するのが、私とハリーくんだけっていうことについて?」

ハリー「うん。前にルーピン先生が言ってたよね。僕とマミが気絶するのは、昔最悪の経験をしたからだって」

マミ「ええ。ハリーくんは、例のあの人に、その……」

ハリー「うん。父さんと母さんを……殺された。それも、僕の目の前で」

マミ「目の前で? 確かその時、ハリーくんは一歳だったって……覚えてるの?」

ハリー「いいや。でも、思い出したんだ。吸魂鬼は、最悪の経験だけを残すから……
     気絶するとき、僕を守ろうとする、母さんの声が聞こえるんだ——」

マミ「……」

ハリー「……その、辛かったから答えなくてもいいんだけど、マミも両親が……」

マミ「……ええ。亡くなってるわ。自動車事故でだけど。話したことあったかしら?」

ハリー「トロール事件の時……マクゴナガル先生が言ったのを覚えてたんだ。僕と一緒だ、と思って……」

マミ「……そう。あの時……」

ハリー「……マミは吸魂鬼が近くに来た時、何か聞こえる?」

マミ「私は——夢みたいなものを見るわ。たぶん、事故の時の。
   周りが自動車の残骸と炎に包まれていて……でも、あんまり思い出せなくて……」

ハリー「そっか……思い出さない方がいいと思う?」


マミ「……私は……きっと、思い出しくない。何か、とても嫌な予感がするの……
   あの夢をはっきりと最後まで見たら、私、とっても酷いことになるって……」

ハリー「……僕は、父さんと母さんの声を聞いたことがない。
     それで、吸魂鬼が近づいて来た時、嫌な気持ちになるけど……声を聞きたいって気持ちも、確かにあるんだ」

マミ「そう……ハリーくん、小っちゃい頃に御両親と死に別れてしまったんだものね。
   そういう点では、私の方が恵まれているのかも……」

ハリー「……」

マミ「……私は、ハリーくんと違って両親のことを覚えてるし、思い出もある……
   だから、完全にあなたの気持ちを理解できるわけじゃないけれど——」

ハリー「……けれど?」

マミ「……覚えているからこそ、思い出があるからこそ、辛くなる時もあるわ。
   だって、もう二人とも死んじゃっているんですもの……」

マミ「——二度と手に入らない幸福を知らされるのって、とても残酷じゃない?」

ハリー「……そうだね。きっと、そうだ。声を聞いたって、父さんも母さんも帰ってくるわけじゃない。
     ありがとう、マミ。少し楽になった」

マミ「ううん。私、偉そうなこと言っちゃって……もう寝ましょうか? 明日は授業だし」

ハリー「うん……お休み、マミ……」


数日後 闇の魔術に対する防衛術



ルーピン「さて、これで今日の授業はお終いだ! みんな、休んでしまってすまなかったね。
      スネイプ先生の出した宿題は、私のほうから話をつけておこう——」

ラベンダー「マミ、早く戻りましょう! 私達、紅茶占いはもう完璧なの!」

パーバティ「そうよ! マミの数占いと比べてみましょう!」

マミ「分かったわ。それじゃ、寮に戻って準備しないと——」


ロン「やれやれ。相変わらずあの二人はトレローニー先生の虜ーにーなってるな……
   紅茶占いなんて、茶色いふやけたものしか見えたことないよ」

ハーマイオニー「ほら、やっぱり占い学なんてそんなものでしょ?」

ロン「……いや、でも、僕がまだ未熟なだけかも……」

ハーマイオニー「それならきっと、ずっと未熟のままよ。さ、戻って宿題をすませないと。
          ハリー、私達も戻りましょう?」

ハリー「ごめん、僕ちょっと、ルーピン先生に用事があるから——」


ルーピンの部屋


ルーピン「吸魂鬼の追い払い方、か」

ハリー「ええ……先生が前に、汽車の中であいつを追い払ったって聞いて……」

ルーピン「ああ、確かにね。吸魂鬼に対する防衛法が無いわけじゃない……だが、非常に高度な魔法だ。
      習得も難しいし、仮に習得できたとしても、敵の数が増えれば防衛自体が難しい——」

ハリー「……」

ルーピン「——が、なるほど。もう覚悟をしてる、って顔だね」

ハリー「あいつらに近寄られるのはもう二度と御免です。だから、戦い方を知りたいんです」

ルーピン「……いいだろう。ただ、次の学期になってからになってしまうが。
      やれやれ、私も病気がなければな……」


学期末 ホグズミード週末


ロン「ハリー、またお土産いっぱい持ってくるからさ! 期待しててくれよ」

ハーマイオニー「ええ。あなたが好きだって言ってたムースチョコ、買えるだけ買ってくるわ!」

ハリー「うん、楽しみにしてるよ……はぁ、行っちゃった。今回はどうしようかなぁ……
     そういえば、マミはどこだろう? 朝から姿が見えないし」

フレッド「よう、ハリー! きょろきょろしちまって、何か探し物か?」

ジョージ「そんでもって、探してるのはホグズミード行きのチケットを持ったサンタクロースだったりしないか?」

ハリー「ああ、フレッドにジョージ……そんなサンタクロースがいるんなら、僕、頑張って仕留めるけど……」

フレッド「穏やかじゃないねえ。まあ、一人だけ置いてけぼりにされたら腐りたくなるのも分かるけどさ」

ジョージ「ハリー、そのサンタクロースは君の目の前にいるんだぜ? おっと、仕留めないでくれよ」

ハリー「? どういうこと?」

フレッド「ちょいと早いが、クリスマスプレゼントさ。それもとびっきりのな」

ジョージ「ああ。人にやっちまうのは惜しいが、"これ"を一番必要としてるのは君だろうからな」ガサッ


羊皮紙「」


ハリー「……なにこれ。古い羊皮紙? これがチケットなの?」

フレッド「ああ、どこへでもフリーパスさ!」

ジョージ「見てろよハリー——"我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり"」トン


羊皮紙「」ムズムズ



『ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。
 我ら悪戯坊主の味方が送る最高の品、"忍びの地図"』



ハリー「地図? 文字が浮かびあって……わーお、これ、ホグワーツの地図かい?
     知らない隠し通路がいくつも……しかも、この地図の上を動いてる名前って」

フレッド「その通り。誰がどこに居るかぜーんぶ表示されるってわけさ」

ジョージ「な? これを使えばホグズミードまでひとっ跳びでございってね。まあ、実際は少し歩くけどな。
     ほら、ここ。この通路を使え。他はフィルチが知ってたり、暴れ柳の真下だったりして駄目だ」

ハリー「凄い地図だね……」

フレッド「全くだ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。彼らは天才だよ」

ジョージ「是非ともお会いしたいものだな。それじゃ、ハリー。楽しい週末を過ごしてくれたまえ」

フレッド「ああ、それと使ったら消しとけよ。杖で叩いて"いたずら完了"って言えば消えるからな。
     それではホグズミードで会おう」

ハリー「……よし、それじゃあ透明マントを取ってきて……マミも呼ぼうかな。行きたがってたし。

     マミは……へえ、こんなところに隠し部屋があったんだ……ん? 一緒にいるインキュベーターって誰だ?
     まあいいや、とりあえずいってみよう。"いたずら完了"っと」


透明の部屋


マミ「はぁ……はぁ……」

QB「マミ、少し休んだらどうだい? もう朝からずっとじゃないか。根を詰め過ぎると毒だよ」

マミ「分かってるけど……でも、一回も成功してないし……大丈夫。まだ、出来るわよ……」

QB「……」

QB(確かに体力はそれほど消耗してない……それよりも精神的な疲労が大きいのか。
   やっぱり、この魔法のシステムって……)

マミ「ほら、キュゥべえ。カエル。次の。早く並べて……」

QB「……分かったよ。でも、本当に無理はしないでおくれよ?」ヒョイッ

マミ「大丈夫……さあ、行くわよ……集中して……」


蛙「ゲコッ」


マミ「すぅー……はぁー……エンゴージオ!(肥大せよ)」ピカッ


蛙「……ゲコッ」ムクムク


マミ「……っ、やった! やったわ! 蛙がどんどん大きくなってる! 成功よ、キュゥべえ!」

QB「おめでとう、マミ! ほら、やっぱり練習すればできるようになるんだよ!」

マミ「ええ、そうね……本当に、良かった……」


蛙「ゲコ」ムクムクムクムクムクムク


QB「……あー、マミ? ちょっと力が入りすぎたかな? どこまで大きくしようとしたの?」

マミ「え? そんな、一回りくらい大きくなればと思って……」


蛙「ゲ コ ゲ コ」ムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムクムク


透明の部屋前 廊下


ハリー「えーと、地図だとこの辺だったんだけど……ドアが見えないのか。参ったな……」


バタン!


ハリー「うわ、急に壁が消えて……あ、マミ! ちょうど良かった。あのさ、ホグズミードに——」

マミ「し、閉めて! キュゥべえ、閉めて! ドア閉めて!」

QB「無茶言わないでくれよ! こんなの、もう——」

ハリー「え、どうしたの……うわ、なんだこれ! 部屋の入り口から、でっかい緑色の風船みたいなのが——」


蛙「ゲ コ ゲ コ ゲ コ ! 」


パァーーーーーーーーン! びちゃっ、びちゃびちゃびちゃっ



ハリー「あーあ、廊下が内臓塗れ……マミ、何をしてたの?」

マミ「魔法の練習……肥らせ呪文をカエルにかけたんだけど……はぁ、結局失敗ね。掃除しないと……」

ハリー「あー、いや。マミ。その前にちょっと聞いてよ。フレッドとジョージからさ、良いものを貰って——」

フィルチ「ああ! 貴様ら、何をやっている!」

ハリー「うわ、フィルチ……なんてタイミングで……」

マミ「ああ、フィルチさん。ごめんなさい……部屋の中で魔法の練習してたら、こんな風に……」

フィルチ「どんな失敗をしたらこうなるというんだ! まったく貴様は! 私を過労死させるつもりか!?」

マミ「ごめんなさい。ちゃんと掃除はしますから——スコージファイ!(清めよ)」


パァン!


QB「わぷっ! ぺっ、ぺっ、口の中に入った……」ショボン

フィルチ「やめろやめろ! 貴様がやっても肉片が飛び散るだけだ! モップを持ってきてやるから大人しく待ってろ!」

マミ「すみません……それで、ハリーくん、なにか用事だった?」

ハリー「あーいや、その……何でもないんだ。掃除、頑張ってね」

マミ「? うん、それじゃ、またね」

ハリー(……マミは来れそうにないな。悪いけど、誘うのは次の機会にしよう……)


ホグズミード パブ "三本の箒"


ハーマイオニー「呆れた! それでマミをほったらかしにして来ちゃったの?」

ロン「おいハーマイオニー、仕方ないだろ。マミは掃除で来れなかったんだから」

ハリー「フィルチの前で、地図のことを言うわけにもいかなかったし……」

ハーマイオニー「大体、許可証がないのに……ブラックがここに現れたらどうするつもり?」

ロン「毎晩吸魂鬼がパトロールしてるホグズミードに? 考えすぎさ。
   それに、せっかくのクリスマスなんだ。ハリーにも楽しむ権利はある筈だろ」

ハーマイオニー「それは……そうだけど、でも……」

ロン「マミにはハニーデュークスのお菓子をありったけ買ったしさ。それでいいじゃないか。
   ほら、バタービールで乾杯だ。メリークリスマス!」

ハリー「メリークリスマス!」

ハーマイオニー「もう……メリークリスマス」


チン!


ロン「ぷはっ! やっぱり美味いなぁ、これ。なあハリー、そう思うだろ?」

ハリー「うん、美味しい。それに、凄く温まる……いいなあ、これ。ホグワーツでも出ればいいのに……」

ロン「分かってないな、ハリー。ここで飲むから美味いんじゃないか」

ハーマイオニー「そんなこといって、ロンはマダム・ロスメルタが気になってるだけでしょ?」

ロン「ぶはっ、げほっげほっ! 違う! 確かにマダム・ロスメルタは綺麗だけど——」

ハリー「はは、ロン。顔が赤くなってるよ——」グビッ


ガチャッ


ハリー「ぶーーーーーーっ!」

ロン「……よーし、ハリー。僕の顔を冷ます為にやったんだっていうなら、表に出ろよ。
   口の中にいっぱい雪を詰めてやるから」ポタポタ

ハリー「げほっ、ち、違うってば。あれ、あれ!」


マクゴナガル「ギリーウォーター。シングルで」

ハグリッド「蜂蜜酒を暖めてくれ。そうさな、とりあえず4杯分くれや」

フリットウィック「私はいつもの奴を——大臣は何にしますか?」

ファッジ「ラム酒を貰おうかな……ホットバタードで」



ロン「げー! 先生たちがなんで……ああそうか、最後の週末だもんな、クソッ!」

ハーマイオニー「不味いわね。ハリー、透明マントをしっかり被って……」

ハリー「うん……持ってきて良かったよ、これ……」バサッ

ロン「机の下に入っとけ。ジョッキも、ほら……三人分あると不味い」

ハーマイオニー「一応、私達も隠れておきましょう……モビリアーブス(木よ動け)」


ガサッ


ハーマイオニー「これでクリスマスツリーの陰になったから、先生方からはこっちが見えない筈……
          でも、どれくらい居るつもりかしら? 夜になったら吸魂鬼が……」

ロン「いざとなったら透明マントで強行突破するしかないだろ。まあ、多分ばれないさ。
   にしても、魔法省大臣がわざわざ何の用だ?」


ロスメルタ「はい、ご注文の品ですわ」

ファッジ「やあ、ママさん。久しぶりだね、こっちにきて一緒に飲まないか?」

ロスメルタ「よろしいんですの? 光栄ですわ」

ファッジ「さ、ここにどうぞ——やれやれ、それにしてもようやく一息着けるな。
     あの吸魂鬼どもの相手は、酷く億劫になる……」

ロスメルタ「そんなものを私のパブに寄越したんですの? それも二回も」

マクゴナガル「この前は学校にまで入りこんで——」

フリットウィック「ハリー・ポッターは危うく墜落死するところでした!」

ファッジ「そう皆して私を責めんでくれ……仕方がない、用心のためだよ。シリウス・ブラックを捕まえる為にはね」

ロスメルタ「シリウス・ブラック……いまでも信じられませんわ。あのシリウスが、まさか闇の陣営になんて……」

ファッジ「ではこの話も知らんのだろうな。奴の犯した最悪の所業は」

ロスメルタ「最悪の……? 捕まった時の、あの事件よりも?」

マクゴナガル「ええ、その通りです……ホグワーツ時代、ブラックの一番の親友が誰だったか、覚えていますか?」

ロスメルタ「ええ、もちろんですわ! あの二人ときたら、いつも一緒で……愉快なことをたくさんしでかしましたわ。
       あのシリウス・ブラックと——ジェームズ・ポッターは!」



ハリー「……!」ガタッ

ロン「わ、馬鹿! 座ってろって!」

ハーマイオニー「ハリー、ばれちゃう、駄目!」



ハグリッド「ああ、あんの二人には手を焼かされたなぁ……禁じられた森に近づけないことに、俺ぁ半生を費やしたよ」

ファッジ「ブラックの最悪の所業とはね、ロスメルタ。そのジェームズ絡みなんだ。
     ブラックはジェームズが結婚するとき付添人を務めて、さらにはハリーの名付け親にまでなった!
     だというのに、ブラックはそのジェームズを裏切ったのさ……」


ハリー「……ブラックが、父さんを……」


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ロスメルタ「"忠誠の術"? その魔法をブラックが破ったから、ポッター夫妻はヴォルデモートに?」

ファッジ「ああ。それが一番助かる確率が高いとダンブルドアが判断したんだ。複雑な魔法なんだがね」

フリットウィック「情報を人間の中に封じ込める魔法です。その人間が自ら情報を漏らさない限り、
          どうやっても封じられた情報は——リリーとジェームズの居場所は見つからない」

ファッジ「だがブラックは"秘密の守人"——情報を自分の中に封じ込める役になってすぐ、
     ヴォルデモートに密告をした。一週間と経たないうちにね」

ハグリッド「それをあのくそったれの裏切り者が! ああ、俺が"秘密の守人"だったら!」

マクゴナガル「ハグリッド、声を落として!」

ロスメルタ「そうですわ、ハグリッド。それに、次の日には魔法省が追いつめて……」

ファッジ「……だったら良かったのだが、最初に奴を見つけたのはピーター・ペティグリューだった」

ロスメルタ「ペティグリュー……ジェームズとシリウスの後にくっついていたあの子が……?」

マクゴナガル「ええ、そうです……優等生とは言えませんでしたが、ジェームズ達と仲が良くて……」

ファッジ「その彼がブラックを追い、見つけ、そして……あの事件だ。返り討ちにあったんだよ。
     彼の死体は残らなかった。指一本以外はね」

ファッジ「ジェームズを裏切り、その親友までもを殺した。それがブラックの最悪の所業、という訳さ」


ハリー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

今回分は以上です。短くてすみません。

とうか・マギカ


クリスマス休暇 朝食


マミ「うう疲れた……結局昨日は一日中カエルの掃除……全身筋肉痛だわ……」モグモグ

QB「それでも朝からケチャップをたっぷり絞った卵を食べられるんだから、君もだいぶ図太くなったよね」

マミ「だから、慣れちゃったっていったじゃない……そういえば、朝食なのにハリーくん達がいないわね。
   あの三人も、クリスマス休暇はこっちに残る筈だけど」

QB「昨日から様子が変だったよねぇ。ロンとハーマイオニーがホグズミードから帰ってきてから、心ここにあらず、って感じで」

マミ「……風邪でも引いたのかしら? 心配だけど、私は魔法の練習しなきゃいけないし……
   この休み中に、呪文をひとつでも成功させないと……冗談抜きで進級が危ういわ」

QB「大丈夫だよ。一応、進歩の跡は……」

マミ「あなたはそういうけどね、キュゥべえ。私が今練習してる魔法って、10月に習ったやつよ?
   はぁ。結局、授業で先生にコツを聞いても上手くいかないし……ハーマイオニーさんに頼れたらなぁ……」

QB「ラベンダーやパーバティもいないしね。というか、今年のクリスマス休暇は残ってる子少ないなぁ。
   僕らとハリー達を除けば、えーと……全寮合わせて三人しか残ってないよ」

マミ「シリウス・ブラックのせいでしょ。ホグワーツの中に出たんだし……
   にしても確かに静か過ぎね、これは。傍から見ると、だだっ広い大広間でこの人数はシュールだわ」

QB「なんなら、お昼ご飯はサンドイッチでも詰めて、外で食べるのもいいんじゃない?」

マミ「嫌よ、寒いもの……でも、お散歩くらいだったらいいかもね。籠りっぱなしだと病気になりそうだし。
   午後になったら、少し外を歩きましょうか?」

QB「うん。それがいいよ。息抜きは大事さ」


図書室


ハリー「……」ペラッ

ロン(手放しじゃ喜べないけどさ。なんだっけ? マルフォイの腕を掻っ捌いたあのヒッポグリフの名前)ヒソヒソ

ハーマイオニー(バックビーク、でしょ。名前くらい覚えなさいよ。彼の為の弁護資料を探してるんだから。
          裁判で負けたら、殺されちゃうのよ。ハグリッドが大泣きしてたじゃない)ヒソヒソ

ロン(ああ、そいつだ。とにかくさ、そいつのお陰でハリーがブラックのこと忘れてくれたのは良かったよな。
    昨日の荒れっぷりったら、今すぐブラックを探しに行きかねないほどだったじゃないか)

ハーマイオニー(忘れたわけじゃないと思うわ……ハリーのお父様の仇みたいなものだもの。
          ハリーは優しいから、今は資料探しに没頭してるけど……)

ロン(なんだっていいよ、ハリーが無茶をしなければ……)

ハリー「……二人とも、どうかした?」

ロン「え? あーいや、別になんでも。ただこの挿絵が酷くてさ。ほら、見てみろよ。
    この事件で有罪になったヒッポグリフに、連中がなにをしたのか……」

ハリー「……うぇー。朝ご飯食べてなくて良かった……絶対に、バックビークは助けないと……」

ハーマイオニー(ナイスフォローよ、ロン。つまりまあ、あなたにしては)

ロン(一言多いんだよ、君は。でも、やっぱりハリー、元気ないな……。
    もうすぐクリスマスだし、なにかすっごいサプライズでもあればいいんだけど)


午後 校庭


マミ「はぁ……一面雪景色ね。改めて見てみると、凄くいいとこだわ、ホグワーツって。
   昔の貴族が避暑地にしてるようなお城を、丸々学校にしちゃってるんですもの」

QB「創立された時代が時代だしねえ。

   大勢を収容する建物を造ろうとしたら自然とこういう風になったんじゃないかな?
   それに、授業に使う魔法生物のことを考えると、ある程度自然環境は整ってないといけないしね」

マミ「そっか。それもそうよね……はぁ。それにしても、やんなっちゃう。
   こーんな素敵な学習環境の中に居るっていうのに、結局、午前は一回も魔法が成功しなかったし……
   何か、だんだん魔法が下手になってる気がするわ」

QB「そんなことないさ。だって一、二年生の呪文は普通に使えるようになったし、今も使えるだろう?」

マミ「じゃ、才能の頭打ちってところかしらね……正直、来年以降は本当にどうなるか分からないわ、これじゃ」

QB「才能か……マミには才能、あると思うけどな」

マミ「……キュゥべえはなんでそう思うの?」

QB「あー、いや。なんていうか、勘、かな?」

マミ「……」

QB「あ、あ! でも、ほら! ルーピン先生だって言ってたじゃないか!
   ホグワーツに入学できるのは、一部の才能ある子だけだって!」

マミ「励ましてくれるのは嬉しいけど……ごめんね。いまはちょっと素直に喜べないわ」

QB「……」

QB(……確かに、マミは三年生の魔法をほとんど習得できてない。
   前年度までも実技に関しては決して好成績じゃなかったけど、今年はさらに輪を掛けて酷い)

QB(人並み以上に努力はしている筈なのにこれじゃ、心配しだすのも当然か)

QB(……でも、僕の予想が正しければ、マミは——)


マミ「……って、やめやめ! 気分転換しに来たのに、これじゃ駄目よね。
   さ、散歩の続きをしましょ。今日は湖の方に行ってみましょうか」

QB「——うん、そうだね。でもマミ、気分転換って言うんなら、もうちょっと薄着になった方がしゃんとすると思うよ?」

マミ「薄着って。この寒いのに、そんなのするわけないじゃない」

QB「いや、だって、マミはちょっと着込み過ぎだよ。アンダーウェア重ね着しすぎてコートがパンパンになってるし、
   ニット帽とマフラーで顔は見えないし……なんかもう黒い雪だるまみたいだよ? ちょっと脱ぎなよ」

マミ「や。さむい」ガチガチ

QB「軟弱だなぁ」

マミ「……キュゥべえは素足で雪を踏んでてよく平気ね。寒くないの?」

QB「僕は全環境対応型だからね。まあ大体のところは平気だよ」

マミ「ふぅん……でも、風邪はひかないでね? あ、ホッカイロ使う? なんなら背中に括り付けてあげるけど」スッ

QB「いや火傷しちゃうし。というか、持ってきたのかい、それ?」

マミ「外で授業する時、寒いから……意外とラベンダーさんとかにも好評なのよ、これ」

QB「へえ。まあともかく、僕の心配はしないでいいよ。大抵のウィルスに対する免疫は持ってるし——ぴゃあ!?」ピョイッ

マミ「わっ、わっ。ちょっとキュゥべえ! 急に肩に飛び乗らないでって前にも言ったでしょ!? もう。やっぱり寒いの?
   しょうがないわねえ。はい、マフラー半分分けてあげるから、そんなに引っ付かないで——」

QB「違う! あれ、あれ!」


クルシャン「……」トコトコ


マミ「あら、クルックシャンクスじゃない。こんな寒い日にお散歩……? あら、何か咥えてるわね。手紙……かしら?
   お使い? でも、ハーマイオニーさんならふくろう小屋から学校のふくろうを使えるのに……」

QB「い、いいから! 早く逃げようマミ! またあいつが僕の尻尾を狙う前に!」

マミ「何か面白そうじゃない。ついてってみましょ」ザクザク

QB「えっ、えっ? 冗談だろうマミ!? やめろ、馬鹿な考えはやめるんだ! 早まるんじゃない!」

マミ「だったら降りて、そして一人で帰りなさい」

QB「ヤダよ! 怖いし! 分かってて言ってるだろう!?」


ホグワーツ敷地内 暴れ柳付近


クルシャン「……」テコテコ


マミ「こんなとこまで来ちゃったけど……どこに行くつもりかしら?
   てっきり、ハーマイオニーさんが誰か別の寮の子とかと文通でもしてるのかと思ったけど。ねえキュゥべえ?」

QB「猫は嫌だ猫は嫌だ」ガタガタ

マミ「んもうっ! しっかりしなさいってば。あなたも猫でしょう?」

QB「仮に猫だとしても、僕は猫という名の紳士だよ。あの猫は猛獣じゃないか!」

マミ「そんなこと——って、クルックシャンクスが近づいて行く、あの木って……」


暴れ柳「」ザワザワザワ


マミ「あれ、暴れ柳じゃない! 近づく生き物を無差別に殴るから近づいちゃいけないって!」

QB「え、それは本当かい!? よし、きゅっぷいされてしまえ!」

マミ「なに言ってるの! 早く助けないと——」


暴れ柳「……っ」ぶおんっ!


マミ(あ——駄目、間に合わない……)


クルシャン「ニャー」 ひょい、ぱしっ

暴れ柳「……」ピタッ


マミ「へ? 嘘、暴れ柳が大人しくなった……?」

QB「ああっ! 何をやってるんだ! 諦めるな! そこだ! 叩き潰せ——きゅっ!?」ギュッ

マミ「どうなってるのかしら。クルックシャンクスが何かしたみたいだけど……」


クルシャン「……」トテテテ


マミ「あ、木の根っこの下に入って行った……あそこに通路があるのね」スタスタ

QB「……マ、マミ。まさかついて行く気かい? また前みたいに待ち伏せされてたらどうするのさ」

マミ「でも、心配じゃない。危ないところに行ったりしたら……今なら暴れ柳も大人しいから、ついていけるわ」

QB「ねえ、帰ろうよ。マミがそこまで世話を焼く義理なんてないじゃないか」

マミ「お友達のペットの危機だもの。見過ごせないわ」


叫びの屋敷 内部


マミ「……けほっけほっ。凄い埃っぽい! ここ、一体どこかしら? 古いお屋敷の中みたいだけど……」

QB「長い間使われてないみたいだね。そこら中ボロボロだ。何かが暴れたみたい……」

マミ「な、なんか不気味な感じね。窓も、全部塞がれてるし……これじゃ外の様子も見えないわ。
   なんでホグワーツからこんなところに通路が繋がってるのかしら……?」

QB「暴れ柳を植える時に、気が付きそうなもんだけどね。それとも植えた後にできたのかな、この通路」

マミ「さあ……? それより、クルックシャンクスはどこに行ったのかしら。出口を探してみましょう」

QB「ねえ、マミ。もう戻ろうよ。あの通路、かなり長かったじゃないか。
   もしも校外にまできちゃってたら、罰則ものだよ」

マミ「うーん、そうね……でも、クルックシャンクスが心配だし。とりあえず外の様子を見て、それから考えましょう」

QB「お気楽だね……ばれたら困るのは君だよ? そこまでいうなら、僕は何も言わないけどさ」

マミ「もちろん、ばれないように気を付けはするわよ。さあ、出口をさがしましょ?」


ぎしっ


マミ「? キュゥべえ、いま何か変な音しなかった?」

QB「君が歩いた音じゃないのかい? そもそも僕、マフラーにくるまってるから外の音が聞こえ辛いんだよ。
   あとだんだん暑くなってきた」

マミ「じゃあ肩の上から降りればいいのに……まあいいわ。さ、行くわよ」


叫びの屋敷 出口


マミ「ここね。扉は……まあ内側からなら鍵も開くわね。よし、っと。それじゃあ少しだけ開けて、外の様子を……」ギィィィ


わいわいがやがや


マミ「……このお屋敷、村の外れに建ってるみたいね。
   あの村、賑やかでみんな楽しそう……いるのは魔法使いだけみたい」

QB「ってことはここ、ホグズミードじゃないか。
  イギリスで完全にマグルがいない村はホグズミードだけだって聞いたよ」

マミ「じゃあここは例の"叫びの屋敷"ね。パーシーさんがくれたあの紙に書いてあったわ」

QB「誰もいない筈なのに不気味な声が聞こえてくるとかいうあれか……」

マミ(……あれ? ということは、この通路を使えばいつでもホグズミードに来れる……?)

QB「……」ジーッ

マミ「あ、あはは。いやね、キュゥべえ。校則を破る気なんてないわよ」

QB「僕は何も言ってないし、既にここに居る時点で校則違反だけどね」

マミ「だ、だって知らなかったんだもの……あ、クルックシャンクス!」


クルシャン「……」タタタ


マミ「ホグズミードに向かうみたいね……届け物かしら? でもそれならやっぱりフクロウを使えばいいし……」

QB「ねえ、もう引き返したら? 危なくないってことはもう分かっただろう?」

マミ「うーんでも、やっぱり気になるし……それに、ホグズミードもちょっとだけ見てみたいし……」

QB「……はぁ。分かったよ。でもここ、本来は立ち入り禁止みたいだよ? 誰かに見られたら不味いんじゃない?
   ここから村までは距離があるし、黒いコートは目立つよ」

マミ「うーん……あっ、それじゃ、魔法で色を白く変えるわ。それくらいなら、私にもできるし」

QB「なるほど、雪上迷彩か。よし、それで行こう。幸い、今のマミの恰好なら先生方に合っても一目じゃばれない。
   僕もこうして……マフラーに完全にくるまってれば、外からは分からないしね」

マミ「え、ええ……キュゥべえ、急に乗り気ね? どうしたの?」

QB「この前ロン達が持ってきてくれたお菓子、美味しかったからね。ねえマミ、僕、ぺろぺろ酸飴が欲しいなぁ」

マミ「もう、キュゥべえったら……分かったわよ。買ってあげる。でも、クルックシャンクスを追うのが先よ?」


ホグズミード


クルシャン「……」スタスタ


からんからーん


マミ「……この建物に入って行ったわ。フクロウ事務所……つまり、郵便屋さんね。
   でもなんでわざわざホグズミードまで?」

QB「速達とかが必要だったんじゃないのかな。学校のフクロウって、そこまではやってくれないだろう?」

マミ「……確かにそうだけど……ハーマイオニーさんなら、きちんと余裕を持って行動するような……」

QB「緊急だったんじゃないかな? まあ、ここで考えてても分からないよ。なんならハーマイオニーに聞くかい?」

マミ「うーん……気にはなるけど、それだとホグズミードに来ちゃったことも言わないといけないし。
   ハーマイオニーさん、きっと怒るわよね? 前に街中で魔法を使っちゃったときも怒られたし……私が悪いんだけど」

QB「確かに今の彼女は何か抱え込んでるみたいだし、これ以上心配事を増やすのはよくないかな。
   それじゃあ、マミ」

マミ「ええ。どうせここまで来ちゃったんだし、ホグズミードを回ってみましょう!」




マミ「ハニーデュークス! 前に話を聞いた時から、一度来てみたかったの!」

QB「ほんとにお菓子だらけだね……へえ、こっちの棚は魔法のお菓子だ。
   食べると火を噴いたり、宙に浮かんだりするらしいよ」

マミ「面白そう……だけど、ちょっと怖いわね。キュゥべえ、食べてみてくれる?」

QB「嫌だよ。それより、百味ビーンズを買っていこう。ほら、量り売りしてくれるみたいだよ」





マミ「んぐっ、んぐっ……ふぅ! 三本の箒のバタービール、とっても美味しいわね。
   アツアツを呑まなきゃ駄目って言うから、今年度は飲めないかと思ってたけど……」

QB「僕にも、僕にも頂戴!」モゾモゾ

マミ「そんなに慌てなくても……はい、どうぞ」ズポッ

通行人(なんだあの布の雪だるま、バタービールの瓶を……ええええええ! 飲み口をマフラーに突っ込んだ!
     どう見てもそこは肩だろ! 酔っぱらいか?)

QB「ありがとう。んぐっ、んぐっ」

通行人(う、うわあああ! 肩から飲んでる! あれ絶対に人じゃないよ! なんかの魔法生物だよ!)





マミ「これがあの悪名高いゾンコの店ね……なんか入るのが怖いわ」

QB「まあ、ちょっと入って中を見るくらいなら大丈夫だよ。というか仮にもお店なんだし、危なくはないさ」

マミ「そ、そうよね! よーし、それじゃあ行くわよ……」


からんからーん ばくっ


ぎゃー



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