マミ「チョコっとした騒動」 (31)

○ マミホーム

マミ「ねえ美樹さん」

さやか「な、なんですか?」

マミ「私が昨日あげたチョコはおいしかった?」

さやか「そ、そりゃあもう、メチャウマっすよ! はいっ!」

マミ「そう、よかったわ」

マミ「……すっごい気合入ってたでしょ、あれ」

さやか「ええ、まあかなり、はい」

マミ「それじゃあなぎさちゃん作のは、どうだった?」

さやか「…………」

さやか「え、えーと――」

マミ「ただおいしかったって、感想ではダメよ?」

マミ「どっちがおいしかったかを、はっきり教えてちょうだい」


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さやか「…………あー、そのぅ、……えぇーっとぉ」

マミ「……もういいわ。その反応見ただけでわかったから」

マミ「なぎさちゃんの方がおいしかったわよね。そうでしょう?」

マミ「正直に言って大丈夫よ、だって私もそう思ったんだから」

さやか「…………正直、なぎさちゃんのが一番おいしかった」

マミ「全くもってその通り。私の完敗だったわ」

マミ「……私ってね、お菓子作りに関してはこれまで何年も頑張ってきたの」

マミ「両親が生きてた頃からね、お母さん、お菓子作りが趣味だったから最初はそれがきっかけで」

マミ「それなのに、あんな幼い子に、私は負けてしまった」

さやか(あの尋常じゃないおいしさの前だったら仕方ないような……)

マミ「あれは、家庭、個人の味の範疇に収まるものじゃない」

マミ「それどころかプロの作品においてですら、なぎさちゃんのアレに及ぶモノを私は知らないわ」

さやか(あっ……マミさんも知らないんだ)

さやか(実際あたしレベルだと、マミさん作チョコですら、それ以上においしいの他に食べた覚えないんだよなぁ……)

さやか(ゴデ○バのチョコってどんな味だっけ?たしか昔一度だけ食べたことあるような……?)

マミ「私ね、恥ずかしいんだ」

さやか「……えぇっ?あんなにおいしいチョコ作れたら、あたしはもう充分だと思うけどなぁ」

マミ「いいえ、単純にチョコ作りに負けたとかそういう話じゃないの」

マミ「今までなぎさちゃんに料理のこと、私、この家で色々得意げに教えてきたから……」

マミ「だって、家にお招きして、調理中にウキウキ無垢な顔でキッチンにいる私の姿を見てたら、言っちゃうわよ」

マミ「『一緒に手伝ってみる? 大丈夫よ、わからないことがあったら私が一から教えてあげるから』、って風に」

さやか(あっ、あぁ……、なるほど)

マミ「あんな物凄いチョコ、絶対一朝一夕、付け焼刃の経験で作れるわけがない」

マミ「血の滲むような努力と時間、センスと研究の結晶が込められているはずだわ」

マミ「きっとなぎさちゃんのお父さんはパティシエなのね」

さやか(えっ、そこまで、言っちゃっていいの?)

マミ「お父さんにお菓子の英才教育を施されていたに違いないわ」

マミ「あれほどのお菓子が作れて、なぎさちゃんは食べることが大好き」

マミ「普通の料理についても知らない訳がない」

マミ「なのに、本来教えを乞うてしかるべき相手に、私はしたり顔でモノを教えてるつもりになってた」

マミ「相手が自分よりも子どもだから、そんなつまらない理由で見くびって」

マミ「なんて私って、つまらない人間なのかしら。先輩失格よね……」ズーン

さやか(ねえマミさん、それをあたしに話してどうするつもりなのさ)

さやか(もしかしてだけど、家に呼んだ目的なんだか知らないけど忘れてたりしない?)

マミ「うあぁ……!思い出すだけではっずかしいぃ……!」モジモジ

さやか(まあ、こんな取り乱してるマミさんはレアだから、あたしとしてはありっちゃありなんだけど)

さやか(……とりあえずどうにかしてちょっと落ち着かせた方がいいよね。これ)

さやか「まあまあ、そんな重く考えない方がいいって」

さやか「例えばさ、なぎさちゃんがあのチョコを作ったかどうかだって、確実とは言えないでしょ?」

マミ「…………どういうこと?」

さやか「え゛っ」ビクッ

さやか(口から出まかせすぎて何も考えてなかった……)

さやか「え、えーと、ほら、あれですよ」

さやか「確かに昨日の友チョコは、『自分だけの力で作ったものを持ち寄る』ってルールだったけど」

さやか「それをなぎさちゃんがちゃんと守ったかは、あたしたちにはわからないわけで」

さやか「あんなにおいしすぎるチョコを小学生が自力で作ると考えるよりは」

さやか「むしろどこか人知れぬ名店で買ってきたって方が可能性高いと思いません?」

さやか「なぎさちゃんの食への執着を考慮すると、そういうお店を食べ歩きとかで偶然知っても不思議はないような……」

マミ「……なるほど、なぎさちゃんがズルをした可能性ね」

マミ「全く考えてなかったけど、結構あるかもしれない」

マミ「もしそうだとしたら、そういうズルをする癖がついてしまわないように、やめさせなきゃ」

マミ「なぎさちゃんがはたして、あのチョコを作ることが可能な環境に普段身を置いているのか」

マミ「それをまず調べてみる必要がありそうね…………」

さやか(…………あれれ?あたしってばもしかしてうっかり、話を無駄に大きくしちゃった感じ?)

ー 公園

なぎさ「ハイ、報酬の作ったけど結局余ったチョコたちなのです」スッ

杏子「サンキュー。これでしばらく小遣いから無駄な出費を省けるよ」

杏子「まずは一つ目」パクッ

杏子「あー、うまぁー」ニコニコ

なぎさ「杏子のそんな顔、なぎさ見たことないのです」

杏子「ん?アタシ今どんな顔してる?」ニコニコ

なぎさ「超ニコニコしてます」

杏子「ふーん、そっか。まあ、こんなうまいもん滅多に食えないからな」

杏子「魔法って本当に便利だよな。こういうとき切に実感するわ」

なぎさ「なぎさもそれは思うのです」

杏子「…………にしてもまさか、なぎさがチーズ以外のお菓子、なんでも魔法で作れるとは思わなかったわ」

なぎさ「だって、ソウルジェムが濁りきったら私が消滅しちゃうのに、お菓子作るのにポンポン使ってたらバカみたいじゃないですか」

なぎさ「戦闘に関してはシャボン玉だけで足りるというか、お菓子があっても無意味なのです」

杏子「まあね。お菓子魔法はバレンタインに特別な人たちのために使う、くらいが実際丁度いいんじゃねえの?」

杏子(じゃあなんで、お菓子を生み出すことが固有魔法の一部になるような願いをしたのか)

杏子(なんてこと聞くのはさすがに踏み込み過ぎだよな。ヤメヤメ。無用な干渉は厳禁、厳禁)

杏子(……情けねぇ話だ。モモエって名前と、年下の女の子だって思うと、どうも無駄にかまいたくなる)

なぎさ「杏子が色々味見してくれたおかげで、なぎさが作れる中で一番おいしいと思われるチョコを選べました」

なぎさ「あげた人たち、みんなの反応も事実上々でした」

なぎさ「…………マミは、本当に心から喜んでくれたと思いますか?」

杏子「ああ、間違いないんじゃないかな。アイツ、休日返上しておいしいお菓子研究するくらいお菓子に凝ってるし」

杏子「ほっぺた落ちるようなお菓子をなぎさのおかげで食べられたんだから、喜んでるに決まってるって」

なぎさ「本当ですね?その言葉に嘘はないのですよね?」

杏子「あーくどいくどい。何度同じ話、事あるごとにさせんだよ」

杏子「マミとアタシは、なぎさよりもずっと長い、旧知の間柄なんだから心配いらないって」

なぎさ「…………本当に、ありがとうなのです、杏子」

杏子「…………どういたしまして」

なぎさ「そう言えばふと思い出しましたけど杏子のチョコ、あんなにわたしと一緒に頑張ってくれてた割に、適当でした」

なぎさ「なんでですか?」

杏子「なんでって……、どうせなぎさがあの中で一番うまいチョコ用意してるのわかりきってるのにやる気でるかよ」

杏子「それにマミにだって及ばない自信あったし」

杏子「何よりアタシは食べることは好きだけど、作る方はそんなに好きじゃないんだよ」

なぎさ「それにはなぎさも同感なのです。……でも、マミと一緒に料理すると結構楽しいですよ?」

杏子「そりゃあ、そうだけど……だって、自力でやれって言われてたじゃん」

杏子「一人でやってもつまんないしつまみ食いばっかり。やっぱアタシは性格的には食べる方が向いてるんだな」

なぎさ「……まったくもう、杏子ったら食い意地ばかり張ってるのです」クスクス

杏子「へんっ、少なくともそれをなぎさには言われたくないっての」ナデナデ

ここまで
バレンタイン当日終わる一時間前から書き始めた
杏なぎ無性に書きたくなったので

バレンタイン当日SSを書かなければ他の人とネタかぶりしないだろうという発想
バレンタイン当日SSじゃないから特別急ぐつもり全くないので今日中には完結しない自信ある

○ マミホーム

マミ「なぎさちゃん、どう?紅茶とケーキおいしい?」

なぎさ「もちろんなのです!マミが作るお菓子は大好きなのです!」

マミ「…………」

なぎさ「?」

杏子「なあ、さやか」ボソボソ

さやか「何?」ボソボソ

杏子「マミ、機嫌悪くない?」ボソボソ

さやか「機嫌悪いというかなんというか……」ボソボソ

杏子「?」

マミ「なぎさちゃんのお父さんって」

なぎさ「はい?」

マミ「どんなお仕事をなさってるのかしら?」

なぎさ「仕事、ですか……?普通の会社勤めなのです」

マミ「あらあら、それじゃあお菓子を作ったりする暇、中々ないでしょうね」

なぎさ「お菓子を作ったり……はお父さん全然やらないから大丈夫です」

マミ「あら?じゃあお菓子作りはなぎさちゃん、誰に教わったの?」

なぎさ「誰に……って、そんなのマミに決まってるのです」

マミ「……そう」

マミ なぎさ「…………」

杏子「ねえ」ボソボソ

さやか「な、何?」ボソボソ

杏子「今日のマミ、無駄に迫力ない?」ボソボソ

さやか(それをあたしに聞いてどうなるのよ……)

マミ「なぎさちゃん」

なぎさ「は、はい」

マミ「一昨日なぎさちゃんがくれたチョコ、ほんっとうにおいしかったわ」

マミ「それでなんだけどね、私もあのチョコ作ってみたいから、レシピとか教えてくれたら嬉しいなぁ……って」

マミ「やっぱり私、ああいうおいしいものは、どうやって作られたかが重要だと思うの」

なぎさ(レシピ……?)

なぎさ「…………っ!」

杏子 さやか「…………」ハラハラ

マミ「ダメ、かな?」

なぎさ「ダ、ダメなわけないのです!どんと来い!なのです!」

さやか(な、なぎさちゃんむっちゃ目泳いでる……)

杏子(レシピつっても適度に手のひらの上に魔力を込めます。完成。ってだけだからなぁ)

マミ「じゃあ今日はケーキでお腹いっぱいだろうから、早速明日お願いしてもいい?」ニコッ

なぎさ「は、はい……」

ー 公園

なぎさ「マズいことになったのです」

杏子「魔法で作ったって、素直に言っちゃえば?」

なぎさ「……『どうやって作られたのかが重要』、このマミさんの意味深長な言葉杏子はどう思いますか?」

杏子「どう思うって……」

なぎさ「マミさんは、私が何をやったか知っていたに違いないのです」

なぎさ「魔法を使って、あのチョコを作ったことを……」

杏子「いやぁ、さすがにそれはないんじゃない?」

杏子「幻惑魔法の使い手……だったアタシが見たり食べたりしても、言われるまでわかんなかったくらいだし」

なぎさ「でも、マミさんですよ?一日以上チョコを調べる時間ありましたし」

杏子「……それを強く言われちゃうと、自信なくなってきちゃうね」

杏子(ある程度作られたイメージとは言え、やろうと思えばアイツ何でもできちゃいそうだからな)

杏子「だけどさ、仮にそうだとしても、魔法で作ったことに何か問題あるの?」

杏子「おいしかったらいいじゃん」

なぎさ「……おそらくですけど、『自力で作ってくる』ってところに引っかかってしまったんじゃないでしょうか?」

なぎさ「私は誰の力も借りずに作るって、それを解釈しましたが」

なぎさ「マミさんはそれを、普通の調理工程で作れってつもりで言ってた」

杏子「なんだそりゃ。もしそうなんだとしたら、自力ってルールの意味をはっきりさせてなかったのが悪いんじゃねーか」

なぎさ「…………そ、そうですか?」

杏子「どういうつもりでマミがあんな態度とったのかは知らないけど」

杏子「やっぱ素直に魔法で作ったって言うのが絶対一番いいよ」

杏子「だって、アレを魔法なしで作るのは無理でしょ?」

なぎさ「……そう、ですね。杏子の言う通りなのです。わかりました。明日、正直に言ってみることにします」

○ マミホーム

マミ「美樹さん」

さやか「は、はい」

マミ「昨日、言い忘れちゃったことを聞いてくれる?」

マミ「あの時は、なぎさちゃんのチョコの衝撃があまりに私の中で大きかったから」

マミ「それを少し言葉にしたら途端に止まらなくなっちゃって……」

さやか「……で、その言い忘れちゃったことって?」

マミ「あっ、えっとね、佐倉さんのことなんだけどね」

マミ「美樹さん今、佐倉さんに近接戦闘の特訓つけてもらってるでしょ?」

さやか「うん」

マミ「それで佐倉さんの固有魔法ってなんだかわかる?」

さやか「えっ……あー……?あれ?」

マミ「……幻惑魔法なのよ」

マミ「わからないわよね。私も、彼女がその魔法使ってるのは、ある時を境に一度も見たことないわ」

マミ「佐倉さんはそういう魔法をあえて使わないんじゃない」

マミ「あることが原因で使えなくなってしまってるみたいなの。ちゃんと、キュゥべえにも確認をとったわ」

さやか「……それで、どうしてあたしにその話を?」

マミ「改めて使えるようにする方法があるか?って、キュゥべえに聞いてみたら」

マミ「自分の中のトラウマをもし乗り越えたなら、その兆候は自ずと現れるだろうって言ってた」

マミ「トラウマがどの程度回復されたかは定かじゃないけど」

マミ「そういうのはいざ実際にあたってみないとそういうのはわかんない」

マミ「……トラウマの内容については、本人に直接聞いみて」

マミ「本人の了承も得ずに、勝手に他人に漏らしていい話じゃないだろうから」

さやか「はい、わかりました」

マミ「私が直々にあれこれ出来るのが理想的でいいんでしょうけど」

マミ「生憎あの子は、今更私と特訓しようなんて話、了承しようとしないはず」

マミ「美樹さんに、特訓の傍ら、佐倉さんの魔法を取り戻す手がかりを探してほしいの」

マミ「魔獣と戦っていく中で、使えるモノは一つで多くベストな状態で確保しておくべきだもの」

さやか「…………わかりました。どうすればいいかわかんないし、自信はないけど、やれるだけ何かやってみます」

マミ「お願いね。もちろんわたしも陰ながらではあるけどサポートするつもりだから」

マミ「仲間として、佐倉さん共々互いを支えあっていきましょう」

さやか「はい!」

○ マミホーム

なぎさ「ご、ごめんなさいなのです!マミ!」

なぎさ「あのチョコは、私が魔法を使って作ったものなのです!」

マミ「えっ……?魔法……?」

杏子「なぎさが言ってることは嘘じゃないよ。作ってるところアタシ見てたから」

マミ「…………」

杏子「ほら、なぎさ。この場で前と同じチョコ、同じように作ってみなよ。それが一番はやい」

なぎさ「は、はい」ポワァァァン

なぎさ「……で、できました」

マミ「…………それじゃあ、いただくわね」スッ パクッ

マミ「……」モグモグ

マミ「た、確かにバレンタインのと同じチョコみたいね」

なぎさ「だから、チョコのレシピとかはなぎさにはよくわかりません」

さやか「……ということはさ、あのチョコって魔力でできたチョコだったてわけ?」

杏子「うーん。魔力そのものだったら、アタシかマミのどっちかは気付いたんじゃないかな?」

杏子「変換か何かして、正真正銘本物のチョコを生み出してるってのが、一番説明としてもっともらしい」

さやか「へー。……しっかしなぎさちゃんに、そんな特技があったなんてねー」

なぎさ「いくらおいしく作れるからって、こんなの頻繁に使ってたらジェムが濁って仕方ないのです」

さやか「ほほー、小学生なのにちゃんとそういうところまで頭回ってるんだね」

さやか「全く、杏子になぎさちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいよ」

杏子「いやいや、アタシでも、さすがに自分の命かかってるとなったら自重するっつうの」

マミ「…………」

なぎさ「…………」ソワソワ

○ マミホーム

マミ「なぎさちゃん、私がいつも作ってる料理、おいしいかな?」

なぎさ「もちろん!おいしいのです!誰が食べてもおいしいということ請け合いなのです!」ニコニコ

マミ「ふふ……ありがとう……」

マミ「ごめんね、疑ったりなんかして」

なぎさ「え?」

マミ「私、なぎさちゃんがあんなにおいしいチョコを作れるはずがないと思って」

マミ「どっかのお店で買ってきたんじゃないかって邪推してたの」

なぎさ「!」

マミ「なぎさちゃんがそんなズルするわけないのに。自分が味で負けたからって浅ましいことを考えて……」

なぎさ「し、仕方ないのです!事実なぎさじゃ普通に作ったらあんなチョコ作れるはずないのですから!」

なぎさ「み、みんな同じ条件でチョコ作ろうって中で、魔法を考えなしに使ったなぎさが悪いのです!」

マミ「いいえ、なぎさちゃんは悪くない。だってちゃんと自力で作ったんだから」

マミ「……それに、私が本当に気になってるのはね」

マミ「なぎさちゃんがこんなにおいしいチョコを作れるんだって思ったときに」

マミ「今まで私が、なぎさちゃんに料理を教えてるつもりだったのが急に恥ずかしくなったこと」

マミ「一緒に楽しく料理を作ってるだけ、ただそのつもりだったのに、いざ、なぎさちゃんがお菓子作り上手だとわかるとうろたえて」

マミ「私はずっとなぎさちゃんに料理を、恩着せがましく『教えてあげていた』の」

マミ「そうじゃなかったら、どっちが料理が上手いなんてこんな気になるはずないわ」

マミ「……ホントごめんね、なぎさちゃんにこんなつまらない話なんかして」

なぎさ「…………」

なぎさ「もし仮に、なぎさがマミより余程料理が上手だったとしても、そんなの大した問題じゃないのです」

なぎさ「なぎさは、マミと一緒に料理をしていて凄く楽しかったのです」

なぎさ「お母さんに甘えるみたいに、マミに思う存分甘えられて嬉しかったのです」

マミ「なぎさちゃん……」

なぎさ「お返しになぎさも一つ、つまらない昔話をマミにするのです」

なぎさ「病気で死にたくなかったから、魔法少女になればそれを克服して生きていけるって、キュゥべえに聞いたから」

なぎさ「そのとき、唯一欲しかったチーズケーキを願い事にして、なぎさは魔法少女になりました」

なぎさ「でも、魔獣が怖くて……戦うのが辛くて、怖くて、寂しくて……」

なぎさ「お母さんは、私がもっと小さい頃に死んでしまって、仕事で忙しいお父さんと家族二人きり」

なぎさ「病気と闘って、魔獣と闘って。苦しくて、でも、それを誰にも言えなくて、分かち合えなくて」

なぎさ「ほとほと生きるのが嫌になっていた時、マミと出会いました」

なぎさ「それがどんなに幸せに思えたことか、マミになら、きっとわかってもらえると思います」

マミ「…………ええ、わかると思う、わ」

なぎさ「マミは見栄っ張りで、寂しがりで、悪いことを何でも自分ひとりのせいにして抱え込もうとするけど」

なぎさ「欠点があるからこそ、誰よりも人に対して優しい。そんなマミのことがなぎさは大好きなのです」

なぎさ「……こんなこと言われたくないかもしれませんが、マミを、もう一人のお母さんみたいになぎさは思ってます」

なぎさ「マミに『教えてもらえる』ならドンとこいなのです!こっちもその分全力で甘え返すだけなのです!」

マミ「なぎさ、ちゃん……!」グスッ

なぎさ「……せっかくですから、ちょっとの間でいいので、お母さんみたいに抱きしめてもらっていいですか?」

マミ「……うんっ!」ギュゥ

ー 公園

さやか「……ねえ、杏子?」

杏子「なに」モグモグ

さやか「それ終わったら、これ食べてくんない?」スッ

杏子「ん?」ゴクン

杏子「何それ?バレンタイン、義理チョコはもう渡されたけど、もしかして今更アタシにプラス本命?」

さやか「バーカ、何言ってんのよ。…………まあ、本命と言えば確かに本命チョコなんだけどね」

杏子「つまり?」

さやか「恭介に渡そうと思ってたんだよコレ。でも、彼女持ちにはどうも気後れして渡せなくてさ」

さやか「だけど自分で食べるのも、その、嫌で……。だったら杏子にあげちゃえばあたしも納得できるだろうから」

杏子「……ヘタレてんなぁ」

さやか「うっさい!そんなのあたし自身が一番よくわかってるつうの!」

さやか「食べるの!?食べてくれるの!?」

杏子「た、食べるに決まってんだろ。食い物を粗末にするかよ」

杏子「ただそういう未練切りは、バレンタイン過ぎて翌日くらいに済ませるもんじゃない?」

さやか「わ、わかってるわよ……!そんなの……!」

さやか「でもなんで、仁美と恭介が付き合い始めた時に吹っ切ったはずなのに、こんなにまた苦しくなってるのか……」ジワッ

さやか「あたしが……一番よくわかってないのよ……!」グスッ グスッ

杏子「……アタシの胸でいいなら、そこで泣いていいよ?チョコのお礼ってことでさ」

さやか「…………」ギュゥ グスッ

杏子「はぁ……。まあいいや、いただきます」パクッ

杏子(……このチョコ、すんごい苦い……)

杏子「あのさ、さやか。なんでチョコ、こんな苦くしたの?」

さやか「……仁美がどうせ甘々のを用意するだろうから、その甘々空間を冷ましてやろうと……」

杏子「……もう、いいよ、大丈夫。アンタの気持ちはアタシにだけは十分に伝わったから。……後は泣けるだけ泣いときな」

さやか「……ぅっ……ぅぅ……ぅ」グスッ グスッ


おしまい

どうしてこうなった

全体的に衝動的なまま書いたせいで、マミなぎじゃねーか!杏なぎかきたかったんだぞこっちは!状態
マミさんアニメとかより相当面倒な性格して見える気がするのは俺の実力不足
なぎささんがかなり漢らしい気がするのは叛逆とかで出番少なすぎるから

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月08日 (金) 22:27:26   ID: PADnNAiV

バレンタイン当日の話しじゃないのが新鮮で良かった

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