P「今年の誕生日はどうだった?」響「えへへ♪ でーじ幸せさー!」(129)

-10/7-

「うわぁーっ! 見て見てプロデューサー!」

沖縄に向かう飛行機の中で響は声を上げた。

「おぉ、高いなぁ」

「すっごーいちっちゃーいっ! あははっ」

窓際に座るプロデューサーの前に身を乗り出してはしゃぐ響。
ポニーテイルがぴょんぴょんと跳ねる。

「響、やっぱり席変わったほうがいいんじゃないか?」

「どうしてだ?」

「外見たいんだろ? 窓に近いほうがいいじゃないか」

「じっ、自分はべつにっ! 子供じゃないしっ!」

勢いよく席に戻った響は腕を組んでそっぽを向いた。
プロデューサーは苦笑する。

「ああ、わかってるって。それにしたって俺まで沖縄に行くことになるとはなぁ」

「び、びっくりだよね。社長がいきなりあんなこと言い出すなんて」

「響が帰省するって言ったら『だったら君もついていきたまえ』だからな……」

「う、うん」

「時々あのひとの考えてることがわからないよ。今回もなにかティンと来たのか?」

「さぁ、そ、そうなのかなぁ」

「ま、響のご家族に挨拶して、ふるさとで営業していくのもいいかもな」

「ゆ、ゆっくりしていってくれればいいさー」

「おう、ありがとな」



「すぅ……すぅ……」

(寝たか。はしゃいだら疲れて寝ちゃうなんて、まったく響もまだまだ子供だな……)

(俺も寝るか)

響ちゃんのペットになりたい

響がはいさいとなんくる以外のうちなーぐち喋ると違和感あるのは何故だろう
なんらおかしいことはないはずなのに

支援

―――
――


「おい、響。おいってば」

「むにゃ……くぅり幸うぇー……なんくるないさぁ……」

「起きろ、我那覇響!」

「! な、なまー何時なとーいびーが!? 遅刻!?」

涎を垂らして寝ていた響は飛び起きてきょろきょろと辺りを見回した。
そして自室ではないことをぼんやりと把握して、首を傾げた。

「う?」

「響、もう少しで空港につくぞ」

寝ぼけている響に苦笑するプロデューサー。

響ちゃんって絶対似非沖縄人だよね

「ぷろでゅーさぁ……? ……あっ」

ようやく今の状態を思い出した響は赤面した。

「ほら、響。きれいな海だ」

「えッほんとっ?」

だが、プロデューサーの声にすぐ反応して、窓から外を見た。
ちらほらと薄い雲をはさんで、碧い海と小さな島々が眼下にあった。

「わーぁ……すごい、きれい……」

目をきらきらさせて、響は風景に見入った。

「おーし到着」

「とうちゃくーっ!」

「いやー暑いなぁおい」

「プロデューサープロデューサー!」

吹き出した汗を拭う彼を呼ぶ響。
空港の看板を指している。

「『めんそーれ! 沖縄』だぞ、プロデューサー!」

読み上げながら一礼して、響はにっこり笑った。

「おう! ……で、ここどこだ」

「えっ」

「もーっどうなるかと思ったぞプロデューサー!」

「すまんすまん。響がわかるかと思って下調べの手を抜いた」

「そのわりにはお土産屋さんをやけにじっくり見てたじゃないかー」

「悪かったってば」

フェリーを降りながら響が唸った。
荷物を降ろすプロデューサーは頭を掻いて笑った。

「んーっやっと着いたなぁ。長かった……」

ぐいと伸びをするプロデューサー。

「………」

黙ったまま港からの風景を眺めていた響だったが、とつぜんぽろりと涙をこぼした。

「! 響」

「ごめん、だいじょぶ……あははっ、なんか、ぐすっ、島を出るときのこと、思い出して」

「うん」

響は涙を拭って笑顔を作った。

「自分、トップアイドルになるまで帰ってこないって決めて、島を出たんだ。
 船からずっとこの景色を見てた。ずっと見てた」

優しく相づちを打つプロデューサー。
小さく震えながら、響はそれでも背伸びをして島の様子を見渡した。

「変わってない。ぜんぜん変わってないさ。ねぇプロデューサー。ぜんぜん変わってないんだ」

声を震わせる響。
また瞳から涙が落ちる。

「けーてぃちゃびたん……自分、帰ってきたよ……」

支援

涼ちんちんぺろぺろ

―――
――


「もういいのか」

「う、うん! ごめんね、プロデューサー! そろそろ出発するさーっ」

泣き止んだ響は勢いよく腕を突き出して、跳ねるように歩き出した。
それを空元気だと理解して、それでもプロデューサーは調子を合わせて声を上げた。

「おいおい響! 頼むから自分のぶんの荷物くらいは持ってくれー!」

「あははっプロデューサーしっかりしてよー!」

駆け戻って彼の手からリュックサックを受け取って背負った響は、プロデューサーを見上げてにっと笑った。

「プロデューサー、うちまで競争だからねっ!」

そう言ってぴょこりと向き直ると足取りも軽く走り始める響。

「おいおいそりゃないだろ! うおーい響ぃーっ!」

響SSが多くてうれしいわしえん

ひびきんかわいいよお
およめさんにしたいです

苦笑しながら追いかけるプロデューサーの前に広がるのは、周囲10km程度の小さな島。

港のある南側に伝統的な住居がかたまり、西にいけばなだらかに盛り上がった草原が唐突に途切れて崖になっている。
人の暮らす地域のそばを通る川をさかのぼっていくとすぐに鬱蒼と広がる森と海抜100mもない小山がある。

その小さな島の、舗装もされていない白砂の道を、ふたりは並んで歩き始めた。



20分ばかり歩いたふたりは、石垣とフクギで囲われた古民家のうちのひとつにたどり着いた。

「あー着いた着いた! プロデューサー、ここが自分のうちだぞ!」

「やっと着いたか……。おぉ、なんか風格あるな。ちょっと俺、緊張してきた」

「なーにいってんのさ! プロデューサーらしくないなー」

服装を気にするプロデューサーに響はけらけら笑った。

やっぱりスーツなのか

それから二人は我那覇宅に上がり、響は久々の家族との対面にまた涙ぐみ、プロデューサーはお土産を渡して挨拶した。
日が傾いてきた頃、風呂を借りたプロデューサーを含めて晩ご飯が振る舞われ、最終的に酒盛りになった。

「響はほんとにねぇ~よくやってくれてますよ! トップアイドルになるべくしてなった、と俺は思います!」

「ちょ、ちょっとプロデューサー! 恥ずかしいからやめてってばぁっ」

「ダンス、ヴォーカル、ヴィジュアル、どれをとってもまさに完璧! 俺は確信を持って言えます、響こそトップアイドルのなかのトップアイドルだと!」

「もぉープロデューサーやめろぉーっ!」

はじめは"響さん"と遠慮して呼んでいたプロデューサーも酒精についついいつもの呼び方に戻り、
さらにどれだけ響がアイドルとして素晴らしいかを力説し始めるに至って、響は彼を外へと連れ出した。

「なんだよ響ぃ……いいところだっただろ?」

「よ、よくないぞ! あんなの、すっごく恥ずかしかったんだから……!」

そういえばSPの響は黒井がスカウトしてきたから沖縄土人なのに一人で上京してきてたけど、2の響はどうやって東京につれていたんだろ

酔っぱらったプロデューサーはすこしおぼつかない足取りで、庭を歩く響のあとをついていく。
響も彼と同じようにすこし赤くなった顔を隠すように星空を見上げた。

「ねえ見て、プロデューサー! すっごいきれいな星!」

「おわぁ、すごいなぁ……。事務所の屋上で流星群を観たときのことを思い出すなぁ」

プロデューサーの呂律が回らなくなってきている。
井戸の脇に腰を下ろした響の隣に、プロデューサーもへたりこむように座った。

「響」

「うん?」

「お母さん、喜んでたな」

「うん」

「お兄さんも、嬉しそうだったな」

「うん」

「おじいちゃんやおばあちゃんも笑ってたな」

「うん」

「響」

「うん」

「帰ってきて、よかったな」

「うん……!」

―――
――


夜も更けた頃。
プロデューサーはアシャギ(離れ)で目を覚ました。

「うあ……飲み過ぎたな……」

倒れるように眠り込んだことをぼうんやりと思い出して彼は頭を掻いた。
サンダルを履いて外に出る。
虫の鳴き声と海の音が背景音楽だ。

「トイレトイレ……っと」

トイレはアシャギとは反対側の北西にあるため、本家の正面を通ることになる。

ふと彼が本家のほうを見遣ると、響がひとり、仏壇に向かって座しているのが見えた。
そこには彼女の父親がいるはずだ。
顔は見えないが、嬉しそうに報告しているみたいだった。

彼がトイレから戻ってくると縁側に響が腰掛けていた。

「ちょっと肌寒いね、プロデューサー」

髪を下ろしている彼女はいつもより大人びて見えた。

「響。眠れないのか?」

「ううん」

プロデューサーは柱にもたれた。
縁側の向こうでは蚊帳のなかで家族が寝ている。
ふたりは静かな声で会話を続けた。

「スーに――父さんに、向こうに行ってからのことを話してたさ」

「うん」

「ねえ、自分は、うまくやれてるかな」

「ああ」

「父さんも、褒めてくれるかな?」

「当たり前だろ」

「……プロデューサーも、褒めてくれる?」

「もちろんだ」

「えへへ、よかった……」

響はすこし眠たそうだった。

「自分ね……、いつも不安だった。これでいいの? これでいいのかな? って……」

「………」

「自分、これでいいって、言ってほしい。言ってほしいんだ」

しえん

「――いいよ」

「プロデューサー……」

「これでいいんじゃない。響。響の、そのままがいいんだ」

「……うん」

「心配するな。もし間違ってたって、俺が言ってやる。俺はお前の、プロデューサーだからな」

「………。うん、そうだよね」

響は眉尻を下げて立ち上がった。

「おやすみ、プロデューサー」

「おう。おやすみ、響」

-10/8-

「プロデューサー! 起きろー! 朝だぞー!」

「むが……」

朝。
彼が目を覚ますと傍らに響が腰に手を当てて立っていた。

「響か……おはよう」

上体を起こすプロデューサー。

「はいさい! もうすぐ朝ご飯できるぞー。顔洗って来なよ、プロデューサー」

「ああ。わかった」

小走りで響が本家に戻っていってから、プロデューサーは井戸で顔を洗ってそちらに向かった。



「今日はどうしようか」

「せっかく沖縄に来たんだし、海で遊ぼうよ!」

「そうだな! そのために水着も持ってきたんだし」

「じゃあ準備してくるぞー」

「おう」

それから水着に着替えて上着を着て、ふたりは砂浜へと出向いた。
砂浜は船が着いた場所の隣にある。
というよりも、浜から桟橋が延びて船が停まれるようになっているというのが正確なところである。

「美ら海どっくせんだぁーっ!」

上着を脱ぎ捨て、その桟橋を駆け抜けて側転からの空中宙返りで響は海に飛び込んだ。

「おいおい響、準備体操はちゃんとしろよー」

「ぷはっ! プロデューサーも早く来なよー!」

「はいはい」

シートとパラソルを準備して、彼はきちんと体操をした。
水を巻き上げ、海底を蹴って跳ね上がり、響は楽しそうに笑いながら戯れている。

「あははっ! プロデューサー、早く早くー!」

「すぐ行くってば」

それからふたりで散々遊び、昼食を挟んで夕方まで海にいた。

「うあーっ肌がふよふよするぞぉーっ」

「もう動けない……」

砂浜に座り込んで、ふたりは黄金色に照らされた海を眺めていた。

「きれいだな……」

「うん」

「こんな風景を見られただけでも、ここに来た甲斐があったって思わせてくれるなぁ」

「………。い、いつだって見られるように、したい?」

「ん? でもきっとここに住んでる人たちはこれが当たり前なんだろうな」

そう言ってプロデューサーは屈託なく笑った。

響はなにも言えなくなって、合わせるように笑ってまた海へと顔を戻した。

「………」

「………」

「……響はさ、ここに帰りたいって、思ったりしないのか?」

「え?」

ぽかんとしたような顔でプロデューサーを見る響。

「いや、アイドルをやめて、故郷に帰りたいって思ったり……うわわ、泣くなよ!」

「なっ泣いてないっ!」

響はぐしぐしと涙を拭った。

いい響スレだ

「プロデューサーは、自分がアイドルやめたいって思ってるって、本気で言ってるのか?」

「……悪かったよ。そんな風に思ってないし、俺もそれを望んでない」

「――当たり前さ。自分はトップアイドルになれたかもしれないけど、それはゴールじゃなくてスタートでしょ?」

「ああ。響はもっと高みを目指せる。俺がしてみせる」

「ふ、ふふんっ♪ 自分、完璧だからなーっ!」

「ああ、その通りだ」

「ちょ、ちょっとぉ~っなんか恥ずかしいからやめてよぉ~っ!」

「いやどうしろっていうんだ」

夜。
響は眠れないでいた。

(プロデューサーは、自分がアイドルを続けることを望んでるんだ……)

複雑な気持ちだった。
本当は、もうアイドルを辞めてしまおうかと思っていたからだ。

どれだけがんばっても、アイドルでいる限り彼と一緒になることはできない。
響と彼は、どこまでいってもアイドルとプロデューサー。
だから、アイドルではいられない。

このまま、この気持ちを秘めてずっと今の関係を続けていくなんて、響にはできなかった。
涙が出るほど、辛い。

(自分は、プロデューサーが、好き……だけど、こんな気持ちになるなら、好きになんてなるんじゃなかった……)

熱くなってきた目頭を両手で押さえて、響は嗚咽をこらえた。

プロデューサーに告白したって、彼は戸惑うだろうし、困るだろう。
どうしたって彼はプロデューサーで、彼からすれば響はアイドルの一人にすぎないのだ。
あのひとを困らせたくなかった。
もう、どうしたらいいのかわからなかった。

(わかんない、どうしたらいいか、わかんないよ……)

しとしとと、枕が濡れた。
離島の夜は更けていく。

支援

-10/9-

「響、おはよう」

「はいさい、プロデューサー」

門の前で待ち合わせたふたりは静かに挨拶を交わした。
まだ日も昇らぬ早朝である。
薄暗いなか、家々を抜けて川を渡り、森へと入った。

「響、あの山に登るんだよな?」

「そうだぞ。いい景色だから、プロデューサーにも見てほしいさ」

踏み固められただけの道を歩いていく。

支援は紳士のつとめ

支援

しえ

さるよけ

前を行く響の足は速く、プロデューサーは追いつくのがやっとだった。

「響……っ、ちょっと、スピード、落としてくれ!」

「!」

響はそこでようやく彼の様子に気付いたようで、驚いた顔で振り返った。

「ご、ごめんプロデューサー。自分ちょっと、考え事を……」

「情けない話で申し訳ないが、こういう道は慣れてなくてな。で? なにを考えてたんだ」

ようやく連れ立って歩きはじめて、プロデューサーは問いかけた。

「う、うん。えっと、たとえば、たとえばだよ?」

のたくる木の根をまたぎ、岩を迂回して、ふたりは進む。

「もし、自分の欲しい物が、どうしても手に入らないとすれば、プロデューサーはどうする?」

伊江島かと思ったらそんな甘いところじゃなかった

周囲10km
小山
フェリー
ビーチ

…響の実家は渡嘉敷島か座間味のどこか

「うーん……、俺はあんまりなにかを欲しいと思うことないけど、まぁ本当に欲しいものなら、俺は諦めないよ」

「でもでもっ、やっぱりダメなんだ、それを手に入れるためには、別の大切なものを捨てなきゃいけないんだ」

プロデューサーはなにかに勘付いて、すこし考えてから話しだした。

「実は俺ってけっこう欲張りなんだよ」

「でも……」

「何かを捨てないと何かを得られない、ってよく言われるけど、俺はそうじゃないと思う」

道が坂道へと変わった。
勾配はゆるやかだが、大きな段差があったりして気を抜けない。

「諦めなければ、きっとなにか手段が見つかるはずだ。たとえ今はムリでも、時間が状況を変えることもある。
 大切なのは、諦めずにずっとその気持ちを持ち続けることだよ」

「持ち続ける……」

やだカッコイイ//

「なんて、まぁそれが一番難しいんだろうけどな」

「プロデューサー、もしかして」

「響。お前の目指してるもの、そのためなら俺は必ず力を貸す。響の思う通りにやってみろ。俺はお前の味方だよ、響」

「あ、うん……」

「? おっ、もしかしてそろそろ頂上じゃないか?」

「えっ? あ、あぁっ急がなきゃ!」

慌てて響が走り出し、プロデューサーもなんとかそれに追いすがる。
唐突に樹々が途切れ、一気に視界が開けた。

「おお……!」

「ま、間に合わなかった……」

たとえ小山といえど周囲に何もなければずっと遠くまで見渡せる。
どちらを向いても碧い海が広がっている。
そして、東側の水平線のうえに朝陽が輝いていた。

「海からの日の出を見せようと思ったのにぃ~……」

「ああ、なるほど。いやいや、じゅうぶんキレイだよ。ありがとう、響」

「プロデューサーがそうなら、よかったけど……、夕焼け! 夕焼けはぜったい見に行こっ」

「今日はもう勘弁してくれよ~、慣れない道を歩いて疲れたよ」

「何言ってんのさ、帰りも同じ道だぞ!」

「きついなぁ、休憩してから帰ろう」

「あっ、サンドイッチ作ってきたんだ。た、食べる?」

「おお! 用意がいいな、ちょうど腹減ってきた頃だったんだ」

響はバックパックからサンドイッチを取り出して、渡した。

4〇

「いただきます」

柔らかな草に腰を下ろして、ふたりは朝陽が昇っていくのを眺めながら朝食をとった。

「ん、うまい!」

「そ、そう? よかった」

「さすが響、料理も完璧だな~」

「……プロデューサー」

「ん?」

「自分、もうちょっとだけ、諦めないで、がんばってみる」

「ああ、さっきの話か」

「うん。ほんとはね、もう諦めようとしてたんだ。けど……、プロデューサーの話を聞いて、なんとかしてやろう、って思ったんだ。
 だからその、ありがと」

「完璧な響ならきっとだいじょうぶさ、ええっと、なんくるないさー?」

「あははっ! そうだね! なんくるないさーっ!」

支援は紳士のつとめ

ジェントル支援

昼食も済んだ昼下がり。

「………」

縁側に腰掛けて、プロデューサーはぼうんやりとしていた。
波の音が聞こえる。

「プロデューサー、お茶入れてきたよ」

「おっ、ありがとう。響」

持ってきたお盆を静かにおいて、響も縁側に座る。

燦々と降り注ぐ陽光は雨端にさえぎられ、縁側は日陰になって涼やかである。

「いーい天気だなープロデューサー」

「ああ、いい天気だ」

プロデューサーは一口お茶を飲んだ。

「ん、うまいな」

「さんぴん茶だぞ!」

「縁側といえば緑茶って感じもするけど、沖縄に来たらやっぱりこれだよなぁ」

もう一口飲んで、グラスをお盆に戻す。

響は伸ばした足をぱたぱたさせた。

「潮の香りがするさ」

「うん。音も相まって、まるで目の前に海が広がってるみたいだ」

実際には縁側の前には中庭を挟んでヒンプンと呼ばれる衝立があり、外の様子は窺い知れない。
しかし、そのヒンプンによって勢いを弱められた海風が匂いと潮騒を届けてくれて、澄み渡る碧い海を想起させてくれるのだ。
ふたりはしばし黙って、心の中の海を楽しんだ。

「プロデューサー、退屈じゃないか?」

彼のほうを見ずに、響がおもむろにそう言った。

「いや?」

「そっか」

響はへへ、とすこし笑った。

「なにもせず、なにも考えないで過ごすなんて、久しぶりだけどさ、」

プロデューサーはそこで口を止め、ちょっと考えた。

「……もしかしたら、初めてかもしれないけどさ。いいもんだなぁって思う」

「そうなの?」

「ああ。時間がゆったり流れていくみたいな、贅沢な時間の使い方してるなーって」

「……うん、ゼータクかもな」

プロデューサーをちらりと見て、響は真顔でひとりごちた。

支援は紳士のつとめ

巨乳化スレで響が終わって悲しい支援

しえ

「いつもの、目が回るような忙しさのなかで、あれこれこなすのも、好きなんだ」

「ふうん」

「でもな、こうやって、次なにしなきゃいけないんだっけ、って、考えなくていい、ってのが、うーんと」

空を見上げて言葉を探すプロデューサー。

「楽しい。うん、そうだな。なにもしないっていうのが――楽しい」

子供みたいに嬉しそうに笑った。

「俺はそう思うよ」

つられたように笑顔になって、響もうなずく。

「自分も、楽しい、こんなカンジ。ずうっとこのままがいいって思う」

たぶん、それは、プロデューサーが隣にいるから、と思ったが、口には出せない。
なんだか恥ずかしくなって、響は顔を伏せた。

氷が溶け崩れて、からんと音を立てた。

「ね、ねえプロデューサー」

ちらちらと彼の顔を盗み見ながら、響は切り出した。

「ん? どうした響」

「ちょっと、そっちに寄ってもいいかな」

「ああ、いいぞ。ていうか、そんな気を使わないでくれよ」

可笑しそうに笑ってプロデューサーはお盆をすこし下げた。
迷っているように足の指をぎゅっとしたり伸ばしたりしていた響だったが、
思い切ってぱっとプロデューサーに身を寄せた。

シ円

しぇ

「………」

プロデューサーは体温を感じる距離にいる少女を見つめた。

「な、なんだ? プロデューサー。そんなに見ないでほしいぞ……」

「いや、響はちっさいなぁと思って」

「うが!? 自分、小さくないったら!」

「いやいや、ちっさくて可愛いって」

笑ってプロデューサーはすぐ近くの響の頭を撫でた。

「かっかわっ……!」

顔を真っ赤にして響はますます小さくなった。

潮風がふたりだけの世界を海で満たす。

「えへへ……可愛いっていわれた……」

うつむいたまま響はつぶやいている。

「ほんとに、いい天気だ」

それが聞こえないプロデューサーは、またも空を見上げてぼうんやりとした。

支援

ぽすん、と響がプロデューサーによりかかった。

「?」

「すぅ……すぅ……」

彼がその顔を見ると、幸せそうな寝顔だった。
同じような表情で彼は少女との隙間を埋めた。

「むにゃむにゃ……ぷろでゅうさぁ……かなさんどー……」

寝言に苦笑して、彼は応える。

「ああ。俺もだよ、響」

しえしえ

-10/10-

朝から我那覇宅はばたばたしていた。

「プロデューサぁー、兄貴が御嶽案内してこいってー」

「御嶽?」

「そうそう。川上に泉があって、そこが御嶽。あっそうだ、その帰りに夕焼け見に行こう。それならお弁当作らないと……」

とててと走っていった響はすぐに戻ってきた。

「なんかアンマーが用意してくれてた。じゃ、いこっか」

「おう、いいぞ」

プロデューサーは読んでいた文庫本を閉じた。

良い響④

響可愛いよ響

昨日は渡った川を今日は渡らずに、川沿いに北へと歩く。

「それにしたって、やっぱりプロデューサーと兄貴は似てるさ」

「そうか?」

「たぶんプロデューサーが眼鏡を外したらそっくりだぞ。や、プロデューサーは兄貴ほど肌焼けてないけどなー」

「自分ではわからんもんだな」

他愛ない会話をしながら、並んで泉を目指すふたり。
道は歩きやすく、川のせせらぎがずっと聞こえていた。

「でさー、雪歩は気絶するし、美希はずっと笑ってるし、……あ、見えてきた」

「お、あれが御嶽の泉か。お祈りするところなんだっけ?」

「そんな感じ。昔は男子禁制だったんだってー」

「そうなのか。神社と似てるかと思ったけどそこは逆かもな」

「うーん、自分は似てないって思うぞ」

支援は紳士のつとめ

支援

「えっと、これはどこが御嶽なんだ?」

「え? ここが御嶽だぞ」

「な、なにもないのか……」



御嶽からすこし歩いて、ぽつんと枝を伸ばす樹のしたでふたりはお弁当を食べた。

「おぉ……この味付け良いなぁ」

「やっぱりアンマーの料理は美味しいさ」

「響って自炊してるんだろ? やっぱりお母さんの味になるんじゃないのか」

「うーんそうかも。あッ!」

「ど、どうしたんだ」

しえ

「も、もし良かったら、今度、自分の料理、食べてみませんか……?」

「なんで丁寧語なんだよ」

「うぎゃあーっ間違えたぁーへこむーっ!」

「冗談だってば。うん、響の手料理、楽しみだぞ俺」

「ほっほんと?」

「ああ」

「ぜったいだからね! 約束だよ!?」

「嘘なんかつかないって」

「やったあっ!」

「はは、そんな喜ぶことか?」

「よおーっし、プロデューサーには最高の沖縄料理をごちそうしてあげるからね!」

「頼んだぞ」

支援は紳士のつとめ

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支援 響ちゃんちっちゃ可愛い

木陰でまどろんでから、ふたりはさらに西へと歩いた。
少しずつ、目線が高くなっていく。
島の北端にして西端の岬に到達したのは、そろそろ太陽が赤くなってきた頃だった。

「日が沈むのも早くなってきたな」

「うん。自分、暑いのは苦手だけど、夏は日が長いのが好きだな」

「フェスとかもたくさんあるしな。今度は離島ライブするか」

「765のみんなで一泊二日のライブなんてどうかなぁ」

「恐ろしいスケジュールになりそうだ……」

それから、ふたりはしばらく黙って海を眺めた。

支援は紳士のつとめ

支援

響はなんだか寂しい気持ちになった。
本州に戻ればまた恋い焦がれる気持ちを押し殺していかねばならないのだ。

(アイドルと、プロデューサーと……、どっちも大切だけど、どっちかしか……)




 ―――何かを捨てないと何かを得られない、ってよく言われるけど、俺はそうじゃないと思う




(……!)




 ―――これでいいんじゃない。響。響の、そのままがいいんだ




(そのままの、自分……)

よんまる




 ―――響の思う通りにやってみろ。俺はお前の味方だよ、響




(自分の思う通りに……自分が思ってることを、プロデューサーに、伝える……!)

「……プロデューサー!」

勢いよく響は彼のほうに向き直った。
プロデューサーも響の声から決然としたものを感じて、真剣な表情で正対する。

「えっと、じ、自分は、えっと、沖縄を出てから、一緒にいて家族みたいに落ち着く人、っていうのは、プロデューサーだけだったんだ」

「うん」

「そっ、それでね、えぇっと、自分にとってプロデューサーはスーみたいな、って違う違うそーじゃなくてぇっ!」

「響?」

>>80の一枚目はやっぱりええな

しえ

支援

「あ、う、えっと、その、自分は、もっとプロデューサーと、一緒に、いたい……っ! 仕事だけじゃなくて、いつも、ずっと!」

「………」

「………。だめ、かな?」

「………」

「そ、そうだよね、自分はアイドルだし、プロデューサーはプロデューサーで、自分たちは恋人には――」

「響」

「ひゃいっ!」

「それ以上言うな」

「ご、ごめん……」

プロデューサーは深くため息をついた。

支援は紳士のつとめ

「俺が言う分がなくなるだろ」

「へっ?」

「まったく……俺だって辛抱してたんだからな」

「え? う? それって……?」



「響、かなさんどー、……だっけ?」



「!」

プロデューサーは照れ笑いを浮かべて頭を掻いた。
顔を真っ赤にする響。

「好きだよ、響。俺も、響とずっと一緒にいたいと思ってる」

えんだああああああああああああああああ

いやああああああああああああああああ

いやあああああああああっ

ヒューヒュー

いやああああああああああああ

えんだあああああああああああ

いやああああああああああああああ

いやあああああああああ←小鳥さんの悲鳴

「ぷ、プロデューサぁあ……」

涙を浮かべて、響が彼に抱きつく。

「自分、自分っ、プロデューサーを好きなままじゃアイドルできないって思っててっ、でも好きじゃなくなることなんてもっとできなくてっ!」

「ごめんな」

「ううん、嬉しい、すっごく嬉しい、ねぇプロデューサー、えっとね、うんと、撫でて、くれる?」

「ああ、もちろんだ」

「えへへ……」

しばらく響を撫でていたプロデューサーはすこし彼女から離れた。

「プロデューサー?」

「………。響、」

―――愛してる。
夕陽に照らされたふたりの影が、ひとつになった。

や、やったッ!
さすがP!俺たちにできないことを平然とやってのける!

「あーもう、こんなことになるなんてなー……社長になんて言おう……」

沈んでいく太陽を眺めながら、プロデューサーは呻いた。
その腕を抱きしめる響は彼を見上げて、すこし笑った。

「それなら大丈夫だと思う、ぞ……?」

それから響はこの帰省の経緯について説明した。

「社長が提案したぁ?」

「う、うん。自分が、プロデューサーが好きでもうアイドルできないって言ったら、自分の気持ちを見つめ直す機会を作りなさい、って」

「それで俺についていけなんて言ったのか……」

「たぶん……」

「けっきょくあのひとの思った通りになったってことか……? まだまだ勝てないなぁ」

高木マジイケメン

Pが捕まりませんように…てか日本の条例マジ理不尽

「だいじょうぶ! 完璧な自分のプロデューサーなら、プロデューサーだって完璧さー!」

「そして完璧な響の恋人でもある」

「えへへ♪」

「あ、そうだ。これを忘れてた」

プロデューサーはポケットから小さな紙袋を取り出した。

「こんな包装だけど……、開けてみてくれ」

受け取った響が中から取り出したのは、

「これ……、ネックレス?」

響はかわいいなぁ

「ああ。誕生日おめでとう、響」

「! あ、ありがと! あ、も、もしかしてお土産屋さんで見てたのは……」

「ああ、時間がなかったから買うとこがそこしかなくてな。まぁ沖縄のだし響に似合うと思って」

瞳を潤ませて、響はそのネックレスをつける。

「うん、やっぱり似合うな。きれいだよ、響」

「ふあっ!」

響は首筋まで真っ赤になった。
嬉しさを表現するようにぴょんぴょんと小さく飛び跳ねる。

「お気に召したようで何より」

にっこりと、花が咲くように響は笑った。

「うん! うん! すっごく嬉しい、ほんとにありがとう! 最高のプレゼントだぞ!」

支援

甘いわー

ひびきん可愛いわー

「きみまーで届きたーい裸足のまーまーでー♪」

手をつないで我那覇宅へと帰ると、誕生日パーティの準備が整っていた。
さっそくパーティが始まり、酒が入ったプロデューサーが響とつきあうことを宣誓したり、
お母さんがアルバムを引っ張りだしてきて響の子供の頃の写真を見せて響が恥ずかしがったり、
プロデューサーと響の兄が意気投合して、その兄が妹を頼むといって泣いたりしながら、宴は過ぎていった。

夜。
皆が寝静まってから、プロデューサーと響はアシャギの縁側に隣り合って座っていた。

「楽しかったな」

「うん。や、なんかもう恥ずかしいことだらけだった気がするぞ……」

「俺はなんにも恥ずかしいことなどない!」

「ばか」

響はプロデューサーを見た。
月の光に照らされて、彼女はまるで妖精のようだった。

読んでたら切なくて寝れなくなった支援

時折我に返って死にたくなるが素晴らしい

「ねえ、プロデューサー」

「なんだ」

「後悔、してない? 自分と、恋人になったこと……」

「なにかと思えばそんなことか。してるわけない。言ったろ、俺は欲張りなんだ」

「そっか……よかった」

「響」

「んっ……っはぁ」

「今年の誕生日はどうだった?」

「えへへ♪ でーじ幸せさー!」




おしまい

乙乙
響かわいいよ響


寝れなくなるほど心に来た

乙!
響はかわいいなあ


素晴らしい雰囲気だった


読んでたらもうこんな時間かー

ありがとござしたー
響の誕生日は10/10、フライングだけどおめでとう!

                ,.へ

      /⌒⌒ ヵ ―――'   \
    _<ヽ/>            ヽ 
 /´       \------ァ  /

/ / / /|    \ ヽ  / /
 | | /|/ i人|\∧  | /  /
  ヽi ┃   ┃ヽ| | /  /      |\
  八""  ヮ "",6)/ |  {         j  ヽ  プロデューサー
    |.ヽ-r   f´   ',  `ー――‐"  ノ   これは乙じゃなくて
    |八0乙と_)      ` ----------‐´   自分のポニーテールだぞ 
     し─、_|



乙乙



奇をてらわず良い話だった

乙です

>>122
これ初めて見たかわいい
おつおつ

乙、胸がいっぱいになった

乙っした


素晴らしい

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