杏「新年?」 (22)

モバP「そうだな。明日には新年だ」

杏「一年って早いねぇ」

モバP「だな。おまえをスカウトしたのがまだこうして鮮明に思い出せるのに」

杏「そんな昔のこと、杏は忘れたよ」

モバP「まあ、そんなもんか」

杏「そんなもんだよ」

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大晦日、即興で書いたぐーたらな大晦日なSSです。
書きためたので、数分で投稿し終えます。

モバP「なあ、新年仕事やる気ないか?」

杏「あるわけないし。むしろもう印税生活にシフトしてもいいくらいだよ」

モバP「だよな、俺も新年から仕事したくない」

杏「おい」

モバP「仕事があるにはあるんだが、年末年始くらいは各自の都合を優先しようと思ってだな」

杏「ふぅん。そういうとこ、意外と考えてるんだ」

モバP「おまえは俺をなんだと思ってる」

杏「鬼畜P」

モバP「鬼畜じゃねぇよ。アイドルはアイドル、俺はその華を輝かせる手伝いをするだけだって」

杏「で、どうして杏の部屋に来たのさ」

モバP「他の子は全員大掃除の真っ只中だが?」

杏「………」

モバP「………」

杏「杏の部屋は掃除する必要ないし?」

モバP「この部屋の惨状を見せつけられて、当初開いた口が塞がらなかった俺の姿を見ていてもか」

杏「これはこれで整頓されてるんだよ。手を伸ばせばテレビのリモコン、手を横に下ろせばこたつのリモコン、手元にはみかんとあったかーいお茶、電気ケトルにこたつの側には簡易冷蔵庫」

モバP「あきらかにだらけるためだけに特化された配置だよな」

杏「もちろんゴミ箱も配置済みだよ」

モバP「聞いてねぇ」

杏「で、プロデューサーは手伝いに行かないの?」

モバP「アイドルの部屋を物色しちゃマズイだろ、いくらプロデューサーでも男が」

杏「気にしない子もいると思うけどね」

モバP「逆に怖いわ。気にしろアイドル」

杏「杏も気にしないよ?」

モバP「ああ、おまえはもういいから」

杏「なんか女としての尊厳を傷つけられた気分」

モバP「そんな素振り見つけたことがないんだが」

杏「考えてみてもそんなものはなかったよ」

モバP「俺がこの部屋を片付けようと思ったんだが」

杏「ちょっと、それはやめてよね。この計算しつくされた配置をずらされるとか考えられない」

モバP「面倒だからやめた」

杏「プロデューサーも大概じゃないか」

モバP「人なんて所詮こんなもんだろ」

杏「杏に対して、最も吐いちゃいけない言葉の一つだと思ったんだけど」

モバP「そんな気遣いもいらんだろ、おまえとの仲だ」

杏「まあ、そうなんだけどね」

モバP「というわけで……」

杏「なにしてんの?」

モバP「おう、今杏の部屋にいるんだ。そう、そうそう。お、話が早い。よろしく」

杏「嫌な予感しかしないんだけど」

モバP「相変わらず勘はいいんだな」

杏「脱出!」

きらり「にょわー☆ やっほー、杏ちゃん、Pちゃーん!」(だきっ

杏「ぐへらっ」

きらり「杏ちゃん、一緒にお掃除お掃除」

モバP「おう、響子も呼んだから頼むな」

きらり「ばっちし頑張るよー! Pちゃんもがんばゆー?」

モバP「俺は用事あるから。すまんが杏の世話を頼む」

きらり「んにー、頼まれたにぃ!」

杏「に、逃げるなプロデューサーアアアアアアアァぁっ!」

二時間後



モバP「なぜこたつ周りだけは片付いていないんだ」

杏「……片付けられた後に直したんだよ」

モバP「その無駄な努力を他のところに使えないのかよ……」

杏「楽をするために努力をする。人間の本質じゃないか」

モバP「まあいいや……あー、やっぱこたつはいいな」

杏「なんで何事もなかったかのように入ってきているのさ」

モバP「そりゃそこにこたつがあったら入るだろ?」

杏「それが当然だと言わんばかりのドヤ顔には、杏もちょっといらっときたよ」

モバP「まあまあそう言うな。実はこんなのも持ってきてたんだ」

杏「何さ……って、年越しそば?」

モバP「おう。どうせ何も食べてないんだろ?」

杏「失敬な。飴ちゃんを食べてるし」

モバP「食事にはいらんだろ、それは」

杏「お蕎麦をすするのもたまにはいいかもね」

モバP「ただし、用意されてたら、の話だろ」

杏「よく分かってるじゃん」

モバP「わからいでか」

杏「まあ、杏のプロデュースをずっとやってれば分かるよね」

モバP「本当ならその性格を矯正したかったんだが」

杏「残念だったね。杏のこの性格は誰にも曲げられないよ!」

モバP「ああ、もう諦めてるよ。だから――」

杏「え、何さ?」

モバP「強引に連れて行くことにしました」

杏「連れて行くってどこに!? てか、どうして敬語!?」

モバP「はっはっは、そんな細かいところ気にしてちゃハゲるぞ」

杏「最近生え際が上がってきたプロデューサーには言われたくないよ!」

モバP「―――」

杏「あ、あれ? これ禁句だった?」

モバP「まあ、俺のことはいい」

杏「あ、再起動した」

モバP「というわけで、ちょっくら付き合ってもらうぞ」

杏「どこにさっ。というか、年末くらい杏を休ませろ―っ!」

杏「ねえ、プロデューサー」

モバP「んー?」

杏「どこかへ行くって言ってたから、こうやって車に乗せられるのは覚悟してたけど、どこに向かってるのさ」

モバP「んー、まあ、着けば分かるさ」

杏「まあ、プロデューサーが強引なのは今に始まったことじゃないか」

モバP「杏もなんだかんだで俺に慣れてきたよな」

杏「まあねー。それなりに一緒だったし?」

モバP「もう少しで着くから、雑談で気でも紛らわしておいてくれ」

杏「はぁ……ゲームとかないの?」

モバP「お前は自分で持ってきてるだろ」

杏「んー、酔いそうだからやめとく。さっき食べたばかりだし、ゲロりそう」

モバP「仮にもアイドルがゲロって言うなよ……」

杏「プロデューサーもトップアイドルに対して仮はひどいでしょー」

モバP「よし、着いた」

杏「ふわぁ~……やっと? って、周りなんにもないんだけど」

モバP「何を言っている、よく見ろ」

杏「……変わりないんだけど」

モバP「木々生い茂り、自然に囲まれてるじゃないか」

杏「何もないのと一緒だよそれ! ていうか、真面目にここどこなのさ!?」

モバP「最寄りの山」

杏「は?」

モバP「初日の出と除夜の鐘を聞きにな」

杏「いやいや、どうしてさ」

モバP「こうして出ておけば戻るなんて気もなくすだろ?」

杏「まだ年明けにも二時間以上あるんだけど?」

モバP「そんな時のために……車内用一人コタツ~」

杏「どこから出したのさ!?」

杏「杏はさ、プロデューサーの突飛な行動にはもう慣れたと思ってたよ」

モバP「おう。、そうか。あ、みかん食う?」

杏「あ、食べる食べる。あーん……ん、うまー。でもさ、さすがに車内で年越しは想像しなかったな―」

モバP「俺もこんなことになるとは思いもしなかった」

杏「おい張本人」

モバP「まあ、いいじゃないかたまには」

杏「一年に一回の日が、こんなことに費やされるとは思いもしなかったよ」

モバP「テレビもあるぞ」

杏「この車って、もしかして杏の部屋よりも充実してない?」

モバP「あー極楽」

杏「そだねぇ。周りはなーんも音しないし」

モバP「テレビつける?」

杏「んー……いいや」

モバP「そっか」

杏「静かだねえ」

モバP「そりゃなぁ」

杏「……ねえ、プロデューサー」

モバP「眠ることは許さんぞ」

杏「ケチー」

モバP「おーい、杏」

杏「なにさー」

モバP「ちょっと外出るぞー」

杏「こんな寒いのにー?」

モバP「まあまあ、いいからいから」

杏「今更反抗したって無駄だから出るけどさ……うわ、さむっ!」

モバP「予想以上だなぁ。……って、なにコートの中に潜り込んでんだ」

杏「意外と暖かいよね」

モバP「まあ、お前がいいならいいけどさ。臭わないか?」

杏「気にならないよ。それに臭ってても気づかないと思うし」

モバP「なんだそりゃ。意味わからん」

杏「意味分からないままでいいよ」

モバP「そろそろか」

杏「んー? 何がさ」

モバP「新年」

杏「あ、そーなんだ」

モバP「おまえはもう少し興味を持てよ」

杏「年末年始なんてだらけるためにあるものだという認識しかないよ」

モバP「即刻その認識を正してやろうか」

杏「あ、除夜の鐘」

モバP「おまえのせいで貴重な年越しの瞬間を待ち構えられなかったじゃないか」

杏「年越したって何も変わらないじゃん」

モバP「ホント、いつもと変わらないな、お前は」

杏「杏は変わらないよ」

モバP「そうだな。それがおまえだもんな」

杏「ねぇ」

モバP「なんだ?」

杏「どうしてさっきから杏の頭なでてるわけ?」

モバP「いやか?」

杏「いやなら警察呼んでるよ」

モバP「それは勘弁願いたいな」

モバP「なー、杏」

杏「なにさ? てか、そろそろ戻ろうよ。どうせ年越しを外で過ごそうとか思っただけでしょ?」

モバP「そうだな。寒くなってきたし、入るか。……の前にだ」

杏「どしたの、改まって」

モバP「去年は大変お世話になった。アイドルとして頑張ってきたおまえの背中を見て、俺も結構元気づけられたよ」

杏「……そういうこと言って恥ずかしくないの?」

モバP「黙って聞けよ。……恥ずかしいのは我慢してるんだから」

杏「だよねー。……杏も恥ずかしいから早くしてよ」

モバP「はいはい。まあ、おまえの頑張りが認められてきて今年は去年よりも大変になると思う」

杏「アイドル引退宣言してもいい?」

モバP「トップアイドルになったらな。……だから、今年もよろしく頼む。ファン一合からの新年の挨拶だ」

杏「……しょうがないなぁ。今年もいやいやだけど、プロデューサーに付き合ってあげるよ」

モバP「ハッピーニューイヤー、杏。今年もおまえにとってよりよい一年になりますように」

杏「ハッピーニューイヤー、プロデューサー。今年は去年よりもだらけられるアイドル生活を希望してるよ」

モバP「おまえ最後くらいいい雰囲気でしめろよ。ぶち壊しじゃん」



おしまい

短いですが、これでおしまいです。
杏とプロデューサーって、気の置けない仲だと思うので、こんなやりとりになりました。
HTML化依頼出してまいります。

拙作ですが、読んでいただいて楽しんでいただけましたら幸甚です。

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