雪歩「神さまのBirthdayイヴ」 (17)

―【萩原雪歩バースデー&クリスマススペシャルライブ】ライブハウス楽屋

春香「楽しいライブだったね~!」

雪歩「うん! 春香ちゃん、みんな、本当にありがとうございますぅ!」

亜美「じゃあゆきぴょん、亜美たちサプライズパーティーの準備があるから先行くねん」

雪歩「え!?」

真美「足洗って待っててYO→」

響「雪歩が何したって言うんだ」

千早「というか、言ったらサプライズにならないじゃない」

美希「何でもいいから早く事務所に戻ったらいいって思うな」

伊織「そうね。しょうもないこと言ってる暇があったら準備に回した方がいいわ」

律子「よし。じゃあ雪歩以外は撤収! 雪歩はプロデューサー殿と一緒にゆっくり戻ってくれたらいいわ」

雪歩「えっ? あの…」

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やよい「ご馳走作っちゃいますー!」

あずさ「頑張りましょうね、やよいちゃん」

雪歩「あのー」

春香「私も特製バースデーケーキ作るから、期待しててね、雪歩っ」

雪歩「ありがとう、春香ちゃん。それでね」

真「色々あるから時間掛かりそうだなぁ! 雪歩、ほんと、ゆっくりでいいからね」

雪歩「真ちゃんまで…」

貴音「今日がちゃんす、ですよ、雪歩」

雪歩「しっ、四条さん!?」

律子「さっ、撤収ー!」オー!

ガチャバタン

雪歩「…」ポツン

雪歩「……」グス

コンコン

雪歩「はい?」

P「俺だ。入っていいかー?」

雪歩「プロデューサー? どうぞ」

P「…あれ。雪歩しかいないのか?」

雪歩「はいぃ。みんな、サプライズパーティーの準備があるから、って」

P「宣言したのにサプライズなのか…」

P「まあいい。タクシー呼ぶからもうちょっとゆっくりしててくれ」

雪歩「あ、はい…」ハッ

『今日がちゃんす、ですよ』

雪歩(…うん!)キュッ

P(きゅってした…?)

雪歩「あっ、あの!」

P「ん!? な、なんだ?」ビクッ

雪歩「みんなにゆっくり帰ってこいって言われたので、その…」

雪歩「今日は、歩いて帰りませんか?」

―ライブハウス前

P「本当にいいのか? こっから事務所ってそれなり遠いぞ」

雪歩「うぅ、駄目でしたか?」

P「いやいや、駄目って訳じゃないぞ」

P「ただ、今日は雪歩の誕生日でもあるんだが、同時にな、うん」

雪歩「クリスマス・イヴですよね」

P「ああ。そんな日に二人で歩いてるとあらぬ誤解を受けるかもしれない」

P「アイドル的にもそうだが、嫌じゃないか? 女の子としては」

雪歩「プロデューサーとだったら、大丈夫ですぅ」ニコッ

P「お、おう。なら、いいんだけどな」

P「…ぼちぼち行くとするか。雨に降られるのも嫌だし」

雪歩「はいっ」

―事務所への帰り道、メインストリート

P「予想はしてたが、ひどい人混みだな」

P「どうする? 道一本外すか?」

雪歩「いえ。折角ですから…、駄目でしょうか?」

P「いや。雪歩がそうしたいならそうしよう」

雪歩「ありがとうございますぅ。…ふふっ」

P「……」

P「手でも繋ぐ?」スッ

雪歩「え?」

P「はぐれたら大ごとだからな。無理にとは言わないが―」ギュッ

雪歩「よ、よろしくお願いしますぅ」カァァ

P「…おう」

雪歩「えへへ…」ニギニギ

P(まあ、雪歩だって女の子だ。こういうことへの憧れだってあるだろう)

P(ここのところずっと頑張ってくれてるしな。プレゼントとは別のちょっとしたサービスって奴だ)

P(それだけだ。それだけ…)

『二人で祝おう 神さまのBirthday♪』

P「お。流れてるぞ」

雪歩「わ、分かってますけど。まだちょっと恥ずかしいですぅ」

P「はは。そういうところは変わらないな」

雪歩「そんなにすぐには変われないですよぉ」

P「そうでもないと思うぞ」

雪歩「え?」

P「しっかり、強くなれてるって。そうでもなきゃ、ここまで来られてないだろ」

雪歩「それこそ、そうじゃないです」

P「雪歩?」

雪歩「ここまで来られたのはきっと、プロデューサーがこうしてくれてたから、です」ギュッ

雪歩「プロデューサーが手を引っ張ってくれなかったら、私はずっと立ち止まったままでした」

雪歩「だから、私、プロデューサーに…」

ポツ、ポツ…

雪歩「ふぇ?」

P「事務所まで保たなかったか! しょうがない、雨宿りだ」グイッ

雪歩「はっ、はいぃ」

P「この辺がアーケードになっててよかったよ」

雪歩「セーフですぅ」

雪歩「…あ、プロデューサー。ちょっと動かないでください」ゴソゴソ

P「ん? 分かったけど…」

雪歩「肩、ちょっと濡れてます」スッ

P「おぉ。ありがと――」

雪歩「…」フキフキ

P(――近いなっ)

雪歩「髪も少し…」スッ

P「…」ジッ

雪歩「…」ジッ

雪歩「ふぁっ!?」ビクッ

雪歩「ち、ちちち違うんですぅ、これは決してやましい気持ちではなくて」

P「分かってるから落ち着こう。で、一旦離れようか」

雪歩「は、ひゃいっ」パッ

P「よし。あとは自分で拭くからいいよ。ありがとう、雪歩」ゴシゴシ

P「さて、このままじっと待つのもなんだし、ちょっと見て回るか」

雪歩「あの、帰らなくていいんでしょうか?」

P「三十分くらいなら待ってみていいんじゃないか? 折角ここまで来たんだし」

P「雪歩も楽しみたいだろ、クリスマス」ニコッ

雪歩「…!」

雪歩「は、はいぃ。楽しみたい、ですぅ…」カァァァ

P「じゃ、それっぽい所冷やかしてこうか」

雪歩「はいっ」ギュッ

P(こんな人混みの中ではぐれたら一大事だからな。うん、それだけのことだ)ギュッ

P「そういや、七面鳥って食べたことないな」

雪歩「あれって、わざと美味しくないのを食べるらしいです」

P「高い金払ってまで、大変だなぁ」


雪歩「クリスマス・イヴって厳密には12月24日の夜までだそうですぅ」

P「じゃあもう終わっちゃってるのか。…まあ、関係ないけど」

雪歩「ですねぇ。ふふっ」


P「ほら、雪歩。室内犬可愛いぞ」

雪歩「い、犬は駄目ですぅぅ!」

P「…悪かったよ」

P「お。雨、止んだみたいだな。ちょうど三十分経ってるし、帰ろうか」

雪歩「そう、ですね…」

雪歩(もう、終わっちゃった…)

雪歩(四条さん、ごめんなさい。つかまえてはもらえませんでした)

雪歩(やっぱり私は、ひとりじゃ勇気も度胸もなくて、駄目駄目で…)

雪歩(手を引っ張ってくれれば、どこまでも行けるのに)

P「そういえばさ。雪歩」

雪歩「…はい?」

P「雪歩はやっぱり強い子だと思うよ、俺は」

雪歩「え…?」

P「雪歩は、自分で765プロに応募してきたんだろ。だったら、その時点で一歩踏み出せてるじゃないか」

P「それに、雪歩は俺が引っ張ってきたからだって言ったけど。それだってさ」

P「雪歩は男が苦手なのに、俺の手を握ってくれた。これでほら、もう二歩も進めてる」

雪歩「でも、他のみんなに比べたらずっと小さな一歩です」

雪歩「それで二歩進んだところで、他の人の一歩にも及びません…」

P「他のみんなには小さな一歩かもしれない。でも、雪歩にとっては大きな一歩だよ」

P「だから、それでいいじゃないか。雪の上を歩くように、ゆっくり」

P「そんな風に歩いていけるなら、それは素敵じゃないか?」

雪歩「……」パッ

P「…雪歩? どうしたんだ、急に立ち止まって」

雪歩「プロデューサー。本当に私に勇気があるって思いますか?」

P「? ああ、勿論。嘘は言わないよ」

雪歩「私にはやっぱり、どうしてもそう思えないんです」

雪歩「今日、さっき。四条さんに『今日がちゃんす、ですよ』って言われました」

P「それって…」

雪歩「だから、なけなしの勇気を振り絞って、プロデューサーをこうして誘ってみました」

雪歩「でもそれだけ。後は、足を止めて待っているしかできませんでした」

雪歩「怖いです、プロデューサー。踏み出した雪の下に、何もないんじゃないかって」

雪歩「先に立ってくれてるプロデューサーがいなかったら、本当にそう感じるんです」

雪歩「ねぇ、プロデューサー。私を、つかまえてください。離れてると、怖くて、寒くて、泣いちゃいそうです…」

P「……」

P「…俺は」


P「本当は、薄々そう感じてた。雪歩は、俺が好きなんじゃないかって」

雪歩「!」

P「でも俺は意気地なしなんだよ。今の関係から一歩踏み出すのが、怖い」

P「雪歩。手を握ってくれないか?」

P「そこまで歩いていけるって分かったら、俺は雪歩をつかまえられると思うんだ」

P「だから…」スッ

雪歩「……」ギュッ

P「ゆき――」

雪歩「…!」ダキッ

P「――ほ?」

雪歩「…えへへ。つかまえちゃいましたぁ」ギュゥゥ

P「…本当に、雪歩は勇気あるよ」

P「…このタイミングで言うのも何だかカッコ付かないけどさ」

P「一応ケジメだからな」

雪歩「はい?」

P「雪歩、好きだ。ずっとこうして、一緒に歩いてくれ」

雪歩「っ! はいぃ、こちらこそ、よろしくおねがっ、ぃ…ふぇ…」ジワ

P「泣かないでくれよ。泣いてても可愛いから困る」ナデナデ

雪歩「でもっ、わだし、ほんとっに゛、嬉しくっ、て…!」グス

P「参ったな。…ん?」

P「雪歩、空見てくれ」

雪歩「ぐすっ。は、はいぃ」

雪歩「わぁ…。雪…」

P「雪歩。ちょっと、そのまま雪見ててくれ。動くんじゃないぞ」

雪歩「え? こ、こうですか?」

P「そうそう。そのままそのまま」

チュッ

P「さて、帰るか」

雪歩「は、ひゃい…」

P「結構遅くなったなぁ。怒られるかなぁ…」

雪歩「あの、プロデューサー」

P「ん?」

雪歩「ゆっくり、歩いていきましょうね」

P「…まあ、そうだな。転ぶといけないし」

『きっときっと あたたかい冬になぁれ♪』

以上です。

雪歩誕生日おめでとう!

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