千早「体感型超能力バトルゲームinトーナメント」【安価】 (338)

このssは
春香「体感型超能力バトルゲーム?」
春香「体感型超能力バトルゲーム?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385219296/)
の続きです

若干キャラが崩壊しています
前回より更新頻度は下がるかもしれません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387701446

社長室

コンコンコン

社長「入りたまえ」

ガチャ

春香「社長」

雪歩「話があります」

社長「なにかね? 天海君、萩原君」

春香「昨日、言ってましたよね?」

雪歩「『これからの君たちの取り組み方を見て、誰にご褒美をあげるか決める』って」

社長「……それが、どうかしたかね?」

春香「具体的に、どこを見るんですか?」

雪歩「そこが分からないから、皆不安なんですよ?」

社長「…………」

社長(……まずいね。せっかく曖昧な言い方で誤魔化していたのだが)

春香「まさか……」

雪歩「曖昧な言い方で誤魔化して、誰にもご褒美をあげないつもりじゃあ……ないですよね?」

社長「……もちろんだとも」

社長(実際はP君にご褒美をあげるつもりだったが……近いな、真実に)

春香「だったら」

雪歩「ちゃんと基準を示してください」

社長「……ああ、そうだね」

社長(…………)

社長「……分かった、では一番宣伝の評判が良かった者に──」

春香「それだと、どこの意見を参考にするかで随分変わりませんか?」

雪歩「もっとはっきりとした……分かりやすい基準がいいと思います」

社長「……では──」

春香「優勝回数じゃ……駄目ですか?」

雪歩「優勝したってことは、それだけ頑張ったということですよね?」

社長「…………」

社長(ここでこれを認めれば、これからのゲームはさらに凄惨になるだろう……)

社長(だが、前回ああ言ったたものの……あの殺し合い、実は中々評判が良かった。撮り直しの必要はないという声もある……)

社長「……優勝回数だと、天海君が有利だが……それで納得できるのかね?」

雪歩「はい、皆それで納得しています」

社長「……分かった。それでは、最も優勝回数が多かった者に、ご褒美をあげると約束しよう」

春香「ありがとうございます!」

雪歩「一応言っておきますけど……ちゃんと録音してありますからね?」

社長「……うむ、男に二言はない」

春香「じゃあそういうことで」

雪歩「失礼しますぅ」

バタン

社長「……ふぅ」

社長(こうなると……P君にご褒美をあげるのは難しいな)

社長(…………)

数日後

スタッフ「──と言うわけで、今回はトーナメント戦となります。呼ばれた方は前回同様カプセルに入り試合を。他の皆様には、ここモニタールームで試合を観戦していただきます」

スタッフ「それと、皆様の要望にお応えし、今回からはボタンの他に『HPをゼロにする』という勝利方法を追加致します。また、いかなる能力でも我々スタッフのフリをするのは不可能とさせていただきます」

スタッフ「何か質問はございますか?」

小鳥「はい! 使う能力は前回と同じですか?」

スタッフ「いいえ、今回はまた別の能力でプレイしていただきます」

小鳥(っしゃあ!)

スタッフ「他に質問は? ……ないようですね。では早速、第一回戦初戦の組み合わせを発表致します」

第一回戦 第一試合

>>8 vs >>10

試合する場所>>12


選手の安価は『765のアイドル、律子、小鳥、P』のみ
安価は『名前+プレイヤーネーム(フルネームは無し)』でお願いします

試合する場所はどこでもいいですが『~の漫画の○○』などはやめてください
一般的に分かりやすい場所(例 海中、高層ビルの屋上、市街地など)

プレイヤーネームってなんのことだっけ…

>>7
すいません、説明するのを忘れました
前回はアイドルの本名を使って能力を決めていたので、今回は適当にプレイヤーネームを決めてもらい、それで能力を決めます

安価は全て二つ下で

これもうわかんねぇな
P(勇者P)って感じでいいの?

>>10
OKです
プレイヤーネームは能力を決めるだけで本編には全く出ないので、気楽に、適当に決めてくださって結構です
声優名でも持ち歌でもいいですよ

雪歩(くりーむ)

スタッフ「一回戦 第一試合はP様vs萩原雪歩様です。それでは、どうぞあちらへ」

P「えっ」

雪歩「頑張りましょうね、プロデューサー」ニコッ

P「……あ、ああ」

P(嘘だろ……なんで初戦が雪歩なんだよ)

春香「雪歩! 頑張ってね」

雪歩「うん! ありがとう、春香ちゃん」

真美「兄ちゃん……」

亜美「仇はうってあげるね……」

P「やめてくれ……俺はまだ希望を捨ててないんだ」

スタッフ「今回試合を行うのは『橋の上』でございます。それでは、健闘を祈ります」

…………………
……………
………

P「……はっ!」

P(……ここが、試合会場か)キョロキョロ

P(どこまで行ってもレンガの橋だ……終わりはないのか?)

P(下は……霧がかかってよく見えないな)

雪歩「やっぱり落ちたら死ぬんでしょうか?」

P「……うお!?」

雪歩「落ち着いてください……まだ試合は始まってませんよ?」

P「す、すまない」

P(分かってはいるが……やっぱり怖い。前回の試合を見た限り、今回も恐らく──)

『両選手の入場を確認しました。これより第一回戦を開始します』

『ready……』

『fight!』

P「先手必勝だ!『 雷撃執行(マーダートリック)』!」

雪歩「爆弾……!?」バッ

ドゴォン!

P「まだまだ!」ヒュオッ

雪歩「う……」バッ

ドゴォン!

P(雪歩に反撃の暇は与えない!)ドゴォン!

P(このまま押し切って勝つ!)ドゴォン!

雪歩「うう……」

P(今はまだ避けられているが、いつまでももつ訳がない……)

P「はあっ!」

ドゴォン

P(いずれは避けきれず……)

P「ふっ!」

ドゴォン

P(避けきれず……)

P「おらっ!」

ドゴォン

P(避けきれず……?)

P「…………」

P(避けきれず……死ぬのか?)

雪歩「…………」

P(違う……死ぬんじゃない、殺されるんだ)

P「……こ、この!」

ドゴォン

雪歩「ひう……!」

P(殺されるんだ……俺に)

P「……う」

P(違う……これはゲームだ!)

P「……くそっ!」

雪歩「ひいっ!」

ドゴォン

P(そう……ゲームだ。だが、ゲームなら殺してもいいのか?)

P「……く」

雪歩「……どうしたんですか? プロデューサー」

P「……うるさいっ!」

雪歩「はう……!」

ドゴォン

P(いいんだよ……これはそういうゲームだ。でも、これを見たファンはどう思う? いやファンに限らずこれを見た全ての人は?)

P(俺を人殺しだと思うんじゃないか?)

P(もしかしたら、苦情が来るかもしれない……)

P(もしかしたら、それが原因で俺はプロデューサーを辞めさせられるかもしれない……)

P(もしかしたら、怒り狂ったファンに殺されるかもしれない……!)

雪歩「……プロデューサー?」

P「ひぃ……」

P(このゲームで雪歩を殺せば……現実の俺が殺される?)

P「……あ、ああ……」

雪歩「プロデューサー? 大丈夫ですか……?」スッ

P「く、来るな……」

雪歩「え?」

P「来るなっ!」

雪歩「で、でも……!」

P「ああああああああああああああッ!」ダッ

雪歩「プロデューサー!?」

雪歩「ま、待ってください!」

P「やめろ……来るなぁ!」

雪歩「いきなり、どうしたんですか……?」

P「う、うるさい! 喋るな!」

雪歩「そ、そんな……」

P「俺のそばに近寄るなああ──────ッ」バッ

雪歩「プ、プロデューサー!?」

P(ああ……これで俺は、助かったんだ……)

P(…………)

P(…………あれ?)

P「お、俺……なんで飛び降りて──」

グチャ

雪歩「……あーあ、飛び降りちゃった」

『P様の死亡を確認しました。萩原雪歩様の勝利です』

雪歩「あ、やっぱり飛び降りたら死ぬんだ……当たり前か」


………
…………
……………

モニタールーム

ガチャ

春香「あ、お帰り雪歩!」

雪歩「えへへ……ただいま、春香ちゃん」

春香「ねえねえ! あれ、雪歩の能力なの?」

雪歩「さあ? ……秘密」

春香「えー! ケチ!」


P「……俺の給料二倍が遠のいた」

真美「ドンマイ」

亜美「そのうちいいことあるよ」

P「もうちょっとマシな慰めしてくれよ……」


スタッフ「えー、それでは第二試合の組み合わせを発表します」

一回戦 第二試合

>>30 vs >>32

場所 >>34

念のため言いますが、これは一応トーナメントなので同じキャラは選べません

真美(マリオ・マリオ)

あずさ(キング)

流氷の上

スタッフ「一回戦 第二試合は双海真美様vs三浦あずさ様です。準備してください」

真美「…………」

あずさ「あら? 真美ちゃん、どうかしたの?」

真美「ううん! いい試合にしようね! あずさお姉ちゃん」

あずさ「うふふ、そうね~」

真美(これ……勝ったら次の相手ゆきぴょんじゃんか……)


亜美「頑張れ真美!」

真美「……うん!」


伊織「負けんじゃないわよ、あずさ!」

あずさ「ええ、頑張るわ」


スタッフ「今回試合を行うのは『流氷の上』でございます。それでは、健闘を祈ります」

……………
…………
………

真美「……はっ!」

真美(ここが今回の試合の……凄い、氷の世界って感じ……)

真美「……て言うか! ちょ→寒いYO!」

あずさ「そうね、ちょっと寒いわね。……でも、綺麗なオーロラよ?」

真美「どーでもいいよ!……さっさと始めてよ!」

『両選手の入場を確認しました。第二試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

あずさ「いくわよ真美ちゃん!」

真美「来てよあずさお姉ちゃん!」

あずさ「『 火焔旋律(メロディックジャベリン)』!」

真美「!」

あずさ「…………」

真美「……?」

あずさ「…………」

真美「……ねえあずさお姉──」ボウッ

真美「あ、熱──!?」ボウッ

真美「……!!」

真美(の、喉が……!)

あずさ「…………」

真美(……え、えっと……もしかして)パン!

ボウッ

真美(やっぱり! 音を鳴らすと炎が出るようになってるんだ!)

あずさ「…………」

真美(……だったら、音を立てないように近づけばいいっしょ)スッ

ツルッ

真美「うっ」ボウッ

真美(熱──!?)

あずさ「…………」

真美「…………」

真美(く……今度こそ)スッ

真美(……慎重に)トッ

ボウッ

真美(──! あ、足!)

真美(……ほんのちょっとした音でも駄目ってことだね)

あずさ「…………」

真美「…………」

真美(……仕方ない……ね)

ダッ!

あずさ「!」

真美「……っ」ダダダ

ボボウッ!

真美(熱いっ!多分もう足が燃え始めてる!)

真美(でも止まらないよ!きっと『音に反応して炎があがる』のはあずさお姉ちゃんも同じ!だからさっきから喋らない!)

あずさ「……!」ダッ

真美(……あれ?)

あずさ「……甘いわよ、真美ちゃん。きっと私も迂闊に音をたてられないと踏んだんでしょうけど……」

あずさ「この現象は私の能力によるものなのよ?」

真美「!」ピタッ

真美「……っ!」バッバッ

あずさ「…………」

ボウッ

真美(う……また能力を……!)ボオオ

真美「…………」ダッ

あずさ「…………」ダッ

真美(まずいよ、氷の上だから本気で走れない……あずさお姉ちゃんとの距離が縮まらない!)ゴオオ

真美「このままじゃ……焼け死ぬ!」

真美(もう『覚悟』を決めるしかないッ! 次の試合は考えるな!今! この試合で勝つことだけを考えろッ!)

真美(……いけッ!)

ツルッ

真美「……!」

ゴツッ

あずさ「!」ピタ

あずさ「……真美ちゃん?」

真美「」ドク…ドク…

あずさ「血……」

真美「」ドク…ドク…

あずさ「……いつまでそうしてるつもりかしら? 早く起きないと燃え尽きちゃうし……なにより、血がなくなるわよ?」

真美「」ドク…ドク…

あずさ「…………」

真美「」ドク…ドク…

あずさ「……悪いけど、その手には引っかからないわ」

真美「」ドク……ドク……

あずさ「……ま、まだやるつもりなの……? もう髪まで燃えてるわよ……?」

真美「」ドク……

あずさ「……っ」

真美「」

あずさ「…………」

真美「」

あずさ「……もう火も消えたわ。とっくに血も止まった」

真美「」

あずさ「なのに……何故?」

真美「」

あずさ「さっきの試合は、プロデューサーさんが飛び降りた後すぐに終わった……なのに何故?」

真美「」

あずさ「何故この試合はまだ続いているの!?」

真美「……」

あずさ「本当はまだ死んでいないの? でも、血だまりはかなり大きいわ」

真美「…………」

あずさ「間違いなく、真美ちゃんは死んで──」

真美「…………う」

あずさ「!?」

真美「……う……あ」

あずさ「『メロディックジャベリン』!」

真美「あう……」ボオッ

あずさ「生き返ったの……?」

真美「うう……」ムクッ

あずさ「? ……! ……!?」

真美「う……ああ……」ボオッ

あずさ「……ひっ」ボオッ

あずさ「っ!」

真美「う……ああああ……ああ」ピチャ…ピチャ…

あずさ「いやああああ!」ダッ

真美「ああああ……うああ……」

あずさ「こ、来ないで──」ツルッ

ゴッ

あずさ「あ……」ドク…

ピチャ…ピチャ…

あずさ「いやぁ……助けて……」ズリ…ズリ…

ピチャ…ピチャ…ピチャピチャピチャ…

あずさ「……ひぃっ!」ズリ…

ガシッ

あずさ「あ……ああ……」

ア…ウア……

あずさ「……やめ──」

ガブッ

あずさ「い、痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃっ!」

真美「うあ……ああうあ……」グチャ…グチャ…

あずさ「わ、わたし……たべられ──!?」

ガブッ

あずさ「ああああああああああああああああああ!」ブシャアア

グチャ…グチャ…

あずさ「す、スイッチを……」

ガブッ

あずさ「あぐうっ!」ブシャ

グチャ…グチャ…

あずさ「……ああ……意識……が……」

ガブッ

グチャ…グチャ…

ガブッ

グチャ…グチャ…

ガブッ──




『三浦あずさ様の死亡を確認しました。双海真美様の勝利です』


現実世界

………
…………
……………

真美「はっ!」

あずさ「…………」

真美「あっ! あずさお姉ちゃん! どっちが勝ったの!?」

スタッフ「双海真美様の勝利です」

真美「ホント!? やった!」

あずさ「…………」

真美「……どったの? あずさお姉ちゃん」

あずさ「ごめんなさい……しばらくほっといてちょうだい」

真美「……?」

モニタールーム

ガチャ

真美「ただいま!」

「「「…………」」」

真美「……んん? どしたの皆……なんか暗くない?」

春香「お帰り真美! いい試合だったね!」

雪歩「次は私とだよね? 頑張ろうね!」

真美「あ、うん。……ねえ、皆どうしたの?」

伊織「……大した能力ね、あんた」

真美「え? あー……そゆこと」

真美(『 再殺劇場(ブラッディクーデター)』……死んだ後ゾンビ化する能力。なんか変なとこ見せちゃったんだね……)

真美「ごめんね? 真美、滑って転んでからの記憶ないんだ……」

伊織「……そりゃ良かったわね」

律子「あずささん、こっちで休んでてください」

あずさ「……ありがとうございます~……」

真美「あずさお姉ちゃん……ごめんね?」


スタッフ「えー……では、第三試合の組み合わせを発表します」

一回戦 第三試合

>>54 vs >>56

場所 >>58

貴音(かぐや)

春香(はるかっか)

遊園地

スタッフ「第三試合は四条貴音様vs──」

貴音「今一度考えなおしていただけませんか」

スタッフ「……はい?」

貴音「この流れは嫌でございます……! 先程からプロデューサーが乱心なさったり、真美が……ああっ!」ガクガク

響「お、落ち着くさー! 大丈夫だぞ! もしかしたら次の相手はやよいとかかもしれないだろー?」

貴音「……そ、そうですね……」

スタッフ「いえ、天海春香様です」

春香「あ、私?」

貴音「…………」

春香「貴音さん、頑張りましょうね!」

貴音「……は、はい」

スタッフ「えー、ステージは『遊園地』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

貴音「…………」

貴音「すたっふどの」

『なんでしょうか』

貴音「……これは、なんですか……?」

『遊園地ですが』

貴音「そうではありません。何故──何故子供達がいるのですか!?」

『遊園地ですから』

貴音「これからここは戦場と化すのですよ!? なのに──」

『申し訳ありませんが、そういうプログラムですので……それよりも、両選手の入場を確認しましたので、試合を開始致します』

貴音「待ちなさい! 話はまだ──」

『ready……』

『fight!』

貴音「……くっ」

貴音(致し方ありませんね……子供達は巻き込まないようにしなくては)

貴音(それより、春香はどこに……? まだ一度も姿を見せておりませんが……)

貴音「……ふむ」チョンチョン

貴音「……?」クルッ

「お姉ちゃんこれあげるー!」

貴音「おや、これは……『ちょこれいと』ですね。何故私に?」

「なんででもー!」

貴音(……春香の罠でしょうか? いえ、しかし……)

貴音「……今はお腹が一杯なので、お気持ちだけ受け取りますよ。ありがとうございます」

「じゃあぼくがたべていいー?」

貴音「ええ」

「やったー!」パクッ

ドガァン!

貴音「…………え」

貴音(…………え?)

「あがっ……げぶっ……」ドサッ

貴音「……!」

「お、おね……」

貴音(あ、頭に穴が……!)

「──」ガクッ

貴音「あ……ああ……」

貴音(い、一体何故……! どうやって殺──いえそれよりも!)

貴音(何故この子を──)

貴音「何故この子を殺したのですか! 春香ッ!」

キャッキャッ
アハハ…

貴音「…………」

貴音(応えず、ですか……それがあなたの答えなのですね……)

「大丈夫? お姉ちゃん」

「具合悪いのー?」

貴音「あっちへ行ってなさい! ここは危険です!」

「……?」

「ねー、もー行こー?」

「うん! じゃあてーつなごー!」スッ

「うんいいよ!」パシッ

ドガァン ドガァン

貴音「!?」

「えぶ……!」

「ぐば……!」

ドサドサッ

貴音「ああああああ……!」

貴音「春香ぁぁぁああああああッ!」

貴音(分かりました……! 春香は子供達を殺すのが目的ではなく、あくまで私を殺すのが目的だったのだと!)

貴音(今! 子供達は相手の体から出た弾丸でお互いに撃たれた!)

貴音(恐らく春香の能力は『弾を仕込む能力』! そして仕込んだ弾は触れたとたん発射される!)

貴音(私が触れると思い、ちょこや子供達に弾を仕込んだのでしょう!ですが!)

貴音「何故子供達を利用したのですか!? こうなることを予測しなかったのですか!? ──それとも!」

貴音「予測しておきながら! 危険を理解しておきながら! 子供達を利用したのですかッ!?」

貴音「絶対に、絶対に許しませんよ──春香ッ!」

キャッキャッ
アハハ…

貴音「……あくまで姿を見せないつもりなのですね」

タタタタタタタタ……

貴音「……!?」

「あはは!」「あははは!」「いえー!」「とつげきー!」

貴音「な──」

貴音(こ、子供達が私に向かって──)

貴音「と、止まりなさい! 来てはなりません!」

タタタタタタタタ……

貴音「止まるのです! 来ては……! 来ては……!」

タタタタタタタタ……

貴音「──止まりなさいッ!『 硝煙狂乱(のいじーわーるど)』ッ!」

ズダダダダダダ!

ピタッ

貴音「命の惜しくない者から前に出なさい!」

「「「う……」」」

「「「うわーん!」」」

タタタタタタタタ……

貴音「……うう」

貴音(申し訳ありません……! わたくしは……わたくしは! 我が身可愛さにあなた方を見捨てました……!)

貴音(自分で自分が許せません……! しかしそれ以上に許せないのは春香!)ダッ!

貴音(春香……あなたの居場所は既に分かっています! 先程から子供達はあちらから来ている! 恐らくあなたは……あの曲がり角の先にいる!)ダダッ

ダダダダ

貴音「……!」バッ

春香「…………」

貴音「ようやく会えましたね……春香!」

春香「…………」ダッ

貴音「! 逃がしませ──」ダッ

ドガァン

貴音「ぐうっ……!?」

貴音(足に穴が……! なるほど、地面に弾を仕込んであったのですね……しかし!)

貴音「このぐらいでは! あなたへの怒りは収まりません!」ダッ

春香「……フン」ポイ

ポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイ

貴音「!」

貴音(ボールを……!)

貴音「……く、待ちなさい……!」

貴音「『 硝煙狂乱』!」

ズダダダダ!

ビシ!ビシ!ビシ!ビシ!

貴音「……届きませんか」

貴音(……見失ってしまいました)

貴音(わたくしの『 硝煙狂乱(のいじーわーるど)』……体から弾丸を発射する能力。春香とは正反対ですね)

貴音(しかし……今は春香の能力の方が有利。わたくしには攻撃方法がありません)

貴音(どうしたものでしょうか……)

ポイッ
ドシャッ

貴音「……ぽっぷこーん?」

バサバサバサバサバサバサ!

貴音「……なる程、鳩もいたのですね」

貴音(一斉に鳩がこちらへ……)

貴音「……申し訳ありません……!」

ドガガガガガガガガ!

ボト…ボト…ボトボトボト

貴音「…………?」

貴音(…………!)

貴音「あっ!」

貴音(し、しまった! いくらなんでも『全ての鳩』に触れている筈がありません! つまり私は──)

春香「あーあー……やっちゃった。これで貴音さんも私と同罪ですねー」

貴音「は、春香! 違うのです、わたくしは……わたくしは……!」

春香「違いませんよ……私と同じです。私と同じ……深く考えずに、結果尊い命を奪う罪人です」

貴音「う、嘘です……あなたは、子供達がどうなるか承知の上で……!」

春香「えー? そんなことないですよー。それにほら、実際あんな目に遭わせたのは貴音さんですよ? だって私の思い通りだったらあの子達は死ななかったんですから」

貴音「そ、そんな馬鹿な言い訳が──」

春香「でも大丈夫ですよ! 気に病むことはありません! 人は間違いをおかす生き物ですから!」

春香「私はあなたを許します! 仕方ないですよ! だってみんな自分が大事ですもん!」

春香「むしろ他人のことを思いやることができる貴音さんは素晴らしい人ですよ! 私が保証します! 貴音さんは優しくて、思いやりがあって、人の為に怒れる、とてもいい人です!」

貴音「……春香……」

春香「貴音さんは良い人です……素晴らしい人です。だから、私の為に負けてください!」ビシュッ!

貴音「…………」

ドガァーン! ドガァン!

春香「……え?」ドサッ

貴音「…………」ガクッ

春香「う、嘘……なんでこの距離で投げた球を避けれるの──げぶっ!?」ダアン!

ドガァン

貴音「ぐふ…………春香」

貴音「わたくしは……別にあなたに許してほしくなどありません……」ダアン! ドガァン!

春香「がっ……!」
貴音「ぐっ……!」

貴音「……わたくしは……この罪を一生背負います……!」

貴音「あなた如きに許してほしくなどありません!」

春香「ま、待って! 貴音さん!」

貴音「あの子は!ちょこを食べてすぐに亡くなりました!」

ダアン ドガァン

春香「あぐ……!」
貴音「くっ……!」

貴音「……あの子達は!手を繋いだ直後に亡くなりました!」

ダアン ドガァン

春香「あああっ!」
貴音「うぐっ!」

貴音「…………あの子達も!あの後亡くなってしまったのでしょう!」

春香「ちょっと待って、あの子達はすぐに能力解除したから生きてるよ」

貴音「…………」

ダアン ドガァン

春香「なんでっ!?」

貴音「……このように、子供達を利用して命を奪った張本人が……!」

貴音「自分だけ楽に死ねると思ったら──大間違いです!」

春香「や……まって、このまま撃ち続けたら、貴音さんも凄いダメージを受けることになるよ……?」

貴音「承知しております!」

貴音「『硝煙狂乱』ッ!」

春香「『装弾嗜虐(デモンカーニバル)』ッ!」

貴音「はあああああああ──」ズダダダダダダダダ

春香「ああああああああ──」ドガガガガガガガガ

………………
……………
…………

………
…………
……………

貴音「はあっ……あうっ……」ガクッ

ドサッ

春香「……ぁ…………ぅ」ピク…

貴音「…………と、とどめ……です」

春香「……も…………やめ……」

貴音「…………」ダアン!

ドガァン!

春香「……………ぁ」ガクッ

貴音「……………ぅ」ガクッ


『えー……両選手の死亡を確認しました……僅かな差ですが、勝者は──』

『──四条貴音様です』

………
…………
……………

モニタールーム

春香「ただいまー……」

貴音「ただいま戻りました」


真美「お姫ちんおかえりー!」

亜美「ちょーかっこよかったっしょー!」

貴音「ふふ……ありがとうございます」


美希「それに引き換え……春香は最低のゲス野郎なの」

「「「…………」」」ウンウン

春香「ちょ、ちょっと待ってよ! あれプログラムなんだよ!?」

雪歩「春香ちゃん……私もあれはないと思うよ?」

春香「嘘つかないでよ雪歩!」


スタッフ「それでは第四試合の組み合わせを発表します」

一回戦 第四試合

>>84 vs >>86

ステージ >>88


眠いので今晩はもう安価だけだして終わりです

響(ワイルドカード)

律子(鬼軍曹)

戦艦

スタッフ「一回戦 第四試合は我那覇響様vs秋月律子様です。準備してください」

響「よーし、頑張るぞー!」

貴音「響、御武運を」

響「うん! 行ってくるさー!」


律子「さて、ちょっと行ってこようかしらね」

伊織「しっかりしなさいよ?」

律子「わかってるわよ、せいぜい頑張るわ」


スタッフ「ステージは『戦艦』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

響「……ん」

響「ここが戦艦か? ……宇宙じゃないんだな」

律子「当たり前でしょ……まあ、モデルにされた戦艦みたいだけどね」

響「お! 意外だなー! 律子が最初から姿を現すなんて」

律子「……まあ、ね」

『両選手の入場を確認しました。ただいまより一回戦 第四試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

響「じゃあ行くぞ!」

律子「来なくていいわ、もう終わったから」

響「……え?」

ミシミシミシ……バキャッ!

響「う、うわあああああぁぁぁぁぁぁ!」

ヒュウゥゥゥゥ…
ウギャアァァァァ!

律子「『 共鳴少女(ハウリングオブジェクト)』……鑑首にいるあんたが悪いのよ?」

ヒュウゥゥゥゥゥ

響「うぎゃあああああぁぁぁぁぁ!」

響(お、落ちてる! 自分落ちてるぞおおおおぉぉぉぉ!)

響「や、やれるか……? でも、やるしかない!」

響「『 暴風無惨(グロテスクリベリオン)』ッ!」ゴオッ!

響「ぉぉぉおおおおおッ!」ゴオオォォォォ

響「おおおおおおおおおッ!!」

ドドドドドドドドドド

ドドドド

律子「……? 何よこの音……」

ドドドドドド
ォォォォォォォォ

律子「……か、風? まさか……」

ドドドドドドドド
オオオオオオオオオオオ

律子「う、嘘……」

ドドドドドドドドドド

響「おおおおおおおおッ! 律子おッ!」

律子「響……。あんたの能力は『風』って訳ね。しかも、鉄の塊を浮かせるぐらい強力な……!」

響「そういうことさー! まだ勝負は終わってないぞ!」

律子「でも……そんな塊、すぐに砕く! 『ハウリング──」

響「遅いぞ!」バッ

トッ

律子「う……だったら! あんた自身を砕──」

響「だから遅いって!」ゴオッ

律子「は、速──」ドスッ

律子「がはっ!」

響「隙だらけだぞ律子ッ!」

ポチッ

律子「あ……」

響「律子はもうちょっと運動した方がいいと思うぞ?」

律子「……しょうがないでしょ、もうダンスしてないんだから──」

シュン

『秋月律子様の消滅を確認。勝者は我那覇響様です』

響「ふふん! 当然だぞ? 自分、完璧だからな!」

……
………
…………

モニタールーム

ガチャ

響「ただいまだぞー!」

貴音「響……次は、わたくしとですね」

響「貴音が相手でも負けないからね!」

貴音「ええ……わたくしも同じ気持ちでございます」


伊織「なに負けてんのよ……しっかりしなさいよね! さっきから竜宮小町負けっぱなしじゃないの!」

律子「……そこまで言うからには、伊織は勝てるのね?」

伊織「あったりまえでしょ! この伊織ちゃんが負けるはずないじゃない!」

真「その割には……前回あっという間に負けたよね?」

伊織「う、うっさいわね! あれは──」

ギャーギャー


スタッフ「えー……次の組み合わせを発表します」

一回戦 第五試合

>>100 vs >>102

ステージ >>104

亜美(とかち)

伊織(くぎゅ)

廃れたホテル

スタッフ「一回戦 第五試合は双海亜美様vs水瀬伊織様です。準備してください」

真美「あ、亜美の番じゃん。頑張れ! いおりんなんか蹴散らしちゃえ!」

亜美「当たり前っしょ! いおりんなんか亜美の足元にも及ばないもんね!」

伊織「……言ってくれるじゃない。あんた、覚悟しときなさいよ? 絶対手加減してやらないわ」

真「て言うか、竜宮同士の戦いになっちゃったね」

千早「結局勝つのは一人だもの、しょうがないわ」

スタッフ「ステージは『廃れたホテル』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

亜美「……はっ!」

亜美「……うわぁ、汚いホテル」

伊織「なによここ……気味が悪いわね」

亜美「おやおや? もしかしていおりんびびってる?」

伊織「ばっ! ばっかじゃないの!? そんなわけないじゃない!」

『両選手の入場を確認しました。一回戦 第五試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

伊織「行くわよ! 亜美!」ダッ

亜美「!」

亜美(近づいてくるってことは、いおりんの能力は近距離用かな? ……でも!)

亜美「『拡散(ドッペルゲンガー)』!」ブワッ

伊織「! 亜美が二人に!」

亜美「いおりんは亜美に触れることすらできないよ!」

伊織「……なめんじゃないわよ」ガシッ

伊織「『漆黒脳髄(ダークサイドパラダイス)』!」

「──!」バタッ

亜美「ああっ! よくも亜美の分身を!」

伊織「さあ、これで邪魔は消えたわよ!」ダダ…

亜美「……んっふっふ~。いおりんも意外と、お甘いようで」

伊織「……はあ?」ピタ

亜美「言ったっしょ? いおりんは亜美に触れることすらできないって」

伊織「ふん、やってみなくちゃ分かんないわよ」

亜美「なぜならいおりんにとても『ゾッ』とすることを見せるからね」

伊織「……へえ、やってみなさいよ」

亜美「『ドッペルゲンガー』ッ!」ズラララララ!

伊織「なるほど……名前こそ『ドッペルゲンガー』でも一人ずつしか出せないわけじゃないのね」

亜美「そゆこと~」

伊織「でもね……何人増えようと結局は! 一人一人はあんたなのよ!ゴリラみたいな誰かさんと違って、脅威でもなんでもないわッ!」

亜美「その自信、いつまで保つかな? 見たところ、いおりんの能力は触れただけで相手を倒せるみたいだけど……」

亜美「数の暴力って怖いよ?」ズラララララ

伊織「ふん! ゾンビの姉に増える妹! パニックムービーみたいな姉妹ねッ! 片っ端から始末してやるわ!」ダッ!

……………
…………
………

………
…………
……………

伊織「はあっ……はあっ……」

亜美(ほらね、だから言ったのに)

亜美「大丈夫ー? だいぶ疲れてるね」

伊織「っ! そっちね!」ダッ

亜美(んっふっふ~)

伊織「く……この……! どきなさい!」

亜美(亜美の分身……確かに、いおりんの言う通り弱い、弱いよ)

亜美(でも! さっきも言った通り、問題は質じゃなくて数!)

亜美(廊下を埋め尽くす亜美相手にここまでやってるいおりんは凄いよ? ……でもね、いおりんは本体の亜美を倒せない)

亜美(見分けがつかないからね……真美よりも亜美に似た亜美達。見分けれる人なんていないよ……真美も含めて)

伊織「っ! 次から次へと、キリがないわ……!」

伊織「……亜美! そう言えば、この前亜美の分の『ゴージャスセレブプリン』が無かったのは私が食べたからよ!」

亜美(……亜美の分身は喋らない、だから見分ける方法は一つだけある。いおりんもそれを知ってなんとか亜美に喋らせようとしてくる)

伊織「それと! あんたのアイス食べたのも私よ!」

亜美(でも亜美は不用意に喋ったりしないよ。特に、こんなにいおりんの近くにいる時は、絶対に)

伊織「……はあーっ!……はあーっ!」

亜美(まあいおりんは後でてってー的に追求するけどね! よくも亜美のアイスとゴージャスセレブプリンを!)

伊織「…………」

亜美(かなり疲れてるね……もう少しかな?)

伊織「……あー、そう言えばこんな光景見たことあるわね……」

亜美(?)

伊織「なんだったかしら……。そう! あれよ! なんかのアニメの、ほら……」

亜美(??)

伊織「超能力者のクローンの『妹達』よ!」
亜美「いおりいいいいぃぃぃぃぃぃいいいいいいんッ!」

伊織「いたっ!」ダッ

亜美(しまった!)

伊織「馬鹿ねッ! この距離ならもう見失わないわ!」

亜美(亜美は……不用意に喋ったりしないと言った……しかし……それは……)

亜美(無理ってもんだッ!)

亜美「こんなことを言われて頭に来ねえ双子の妹はいねえッ!」

伊織「また喋った! もう決定的よ! 絶対に逃がさない!」

亜美「『拡散(ドッペルゲンガー)』ッ!」ズララララ!

伊織「無駄よッ! …………て、え?」

亜美「亜美……ずっと勘違いしてたよ。ずっと……『亜美の』分身しか作れないって……思いこんでた」

亜美「でも違ったッ! 作れる分身は亜美のだけじゃない!」

亜美「『いおりんの分身』も──作れるッ!」

伊織「う……」

伊織「か、関係ないわッ! 例え私の姿でも、本物の私はここにいる! こいつらを殺すのに躊躇はない!」

亜美「そう……そうだろうね。もはや自分の姿をした分身を殺すのに躊躇する人なんて、うちの事務所にはいないと思う」

伊織「そうよ! こんなの問題じゃ──」

亜美「……ねえいおりん、もうそんな問題じゃないんだよ」

伊織「……は?」

亜美「いつまで『狩る側』の気分でいるの?」

伊織「い、意味が分からないわよ……」

亜美「既に状況は変わった。いおりんはもう『狩られる側』だよ」

伊織「だから! 意味が分からないって言ってんのよッ!」

亜美「確かに! 亜美の分身は弱かった! だからいおりんはまだ負けてない!」

亜美「でもねッ!」

亜美「いおりんの分身は弱くなんかない! だっていおりんと同じ、『触れただけで殺す』能力があるから!」

伊織「……う、嘘! そんなはずないわ!」

亜美「……だったら、試してみなよ」

伊織「言われなくてもそうするわよ!」ダッ

伊織「この! このっ!」バッ バッ

伊織「くらいなさい!」バッ

亜美「…………」

ガシッ!

伊織「あ……」

伊織「──」フラッ

ドサッ

亜美「…………」

伊織「」

亜美(……死んだ?)

『水瀬伊織様の死亡を確認。勝者は双海亜美様です』

亜美(よかったーっ! ホントに分身も能力持ってたよ! 持ってなかったらスゴい恥ずかしい思いするとこだったYO!)

…………
……………
………………

モニタールーム

ガチャ

亜美「ただいまー!」

伊織「…………」ムスッ

真美「お帰り亜美!」

亜美「ただいま真美!」


律子「……あれだけ大口叩いといて」

伊織「うっさいわね! しょうがないじゃない!」

亜美「あ、そうだいおりん」

伊織「なによ!」

亜美「さっき言ってたよね? 亜美のプリンとアイス食べたって」

伊織「あっ」

真「それと……ボクもちょっと訊きたいことがあるんだけど……」

伊織「うっ」

春香「あーあ……」

美希「でこちゃん……さよならなの……」

伊織「か、勝手に殺さないでよ!」


スタッフ「えー、第六回戦の組み合わせを発表します」

やよい「う? 第六試合じゃないんですかー?」

スタッフ「あ、失礼致しました。ご指摘された通り、第六試合ですね」

伊織「ほ、ほら! 次の組み合わせの発表よ!?」

真「……帰ったら、覚えときなよ?」

伊織「……ふう」

亜美「亜美はもう試合終わってるんだけどー?」

伊織「うっ……分かったわよ。今度買ってくるわよ」

亜美「わーい! ありがといおりん!」

伊織「……はぁ」


スタッフ「えー、それでは改めてまして、一回戦 第六試合の組み合わせを発表します」

一回戦 第六試合

>>122 vs >>124

ステージ >>126

加速下

真(まっこまっこりーん)

美希(おにぎり破)

kskst

お菓子の国

おにぎり破(物理)おにぎり波(レーザー)という遠近で変わる可能性が微レ存

スタッフ「一回戦 第六試合は菊地真様vs星井美希様です」

伊織「…………」グッ

真「そのガッツポーズは何かな?」

伊織「な、なんでもないわよ?」

雪歩「頑張って、真ちゃん」

真「雪歩……うん!」


美希「やっとミキの番なの? ちょっと遅過ぎるって思うな」

律子「しょーがないでしょ、ほらさっさと行きなさい」

美希「……あふぅ」


スタッフ「ステージは『お菓子の国』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

真「……う」

真「うわあー! 凄い! 本当にお菓子の国だ!」

真(なんか……ここにいるだけで童話のお姫様になった気分だよ!)

美希「……ねえ真クン」

真「ん? どうしたの?」

美希「これって食べられるのかな?」

真「……さあ」

美希「…………」パクッ

美希「おいしいのっ!」

真「え? じゃあボクも……」パクッ

真「本当だ! スゴくおいしい!」

美希「ねえねえ! こっちのもおいしいよ!」

真「ホントだ! じゃあ今度はこっちも食べてみなよ!」

美希「ん……うまいの! こんなことなら『おにぎりの国』よかったな」

真「……なんか、粘つきそうだね」

『……えー、そろそろ第六試合を始めてもらってよろしいでしょうか』

真「あっ、はい!」

『ready……』

『fight!』

真「じゃあ行くよ美希!」

美希「えー……ミキ、もうちょっとこれ食べたいの」

真「そんなこと言ったって……これは、しご……と……?」

真(な、なんだ? 体が熱く……!)

美希「…………」

真(ま、まさか! 美希は既に攻撃を開始しているのか!?)

真「『焚刑背理(パラドックスインフェルノ)』ッ!」ゴオッ!

美希「! ……おっと」ヒョイ

真「ぐうう……」

真(くそ……美希の攻撃は一体なんなんだ!?)

真「あが……!」

美希「あはっ……真クンの能力、ミキの能力と似た名前なの」

真「……そ、そうかい……」

真(だ、駄目だ! もう耐えられない!)ダッ

美希「あっ」

真「悪いけど、一旦逃げさせてもらうよ!」ダダダ…

美希「……行っちゃったの」

ダダダ…

真「はあ……はぁ……」

真(ここまで来れば……大丈夫みたいだ。もう熱くない)

真(と、言うことは……美希の能力は対象、あるいは特定の範囲を熱する能力ということかな……?)

真「…………」

真(ボクの能力は……『冷たい炎』を出す能力)

真(もしかすると……美希の能力を無効化できるかも!)

真(……美希はまだあの場所にいるかな?)

真(……いた! ていうかまたお菓子食べてる……)

真(……一か八かだ。炎を纏って突撃する!)

真(美希には熱する以上の攻撃方法は無い……筈。近づきさえすれば、ボクの方が有利だ!)

真「……よし!」ダッ

ダダダ……

美希「!」

真(う……気づかれた)

ダダダ…

真(まずい……体が暖かくなってきた)

真(そろそろ……『パラドックスインフェルノ』!)ボウッ

真(もしも美希が『対象』そのものを暖めているのなら! 効果はないかもしれない……ボクの能力はボクを冷やせない)

真(でも『範囲』を暖めているなら……効果はあるはずだ!)

ダダダ…

美希「…………」ダッ!

ダダ…

真(……違うッ! これは『対象』を暖めている! 段々熱くなるだけだ!)

美希「…………」ダダダ…

真(でももう遅い! どの道美希も走ってきている以上、逃げるという選択肢は消えてしまった! 今逃げても間に合わない!)

美希「…………」ダダダ…

真「ボクが先に焼けるか、美希が凍えるかだ! くらえ美希ッ!」ゴオッ!

美希「! やっ! 冷たいのっ!」ダダ…

真(うっ……! そろそろ限界だ、もう美希がよく見れない! ……でも!)

真「この距離なら外しはしない! ボクの最大火力をくらええええぇぇぇえええええッ!」ブオオオオオ!

美希「!」

ゴオオオオオオオ!

真「く……」バタッ

真(ど、どうだ……!?)

美希「……ザンネンだけど、真クンの攻撃はミキには効かないの」ザッザッ

真「……へへっ。駄目だったかぁ……」

美希「うん。ミキは自分も温めることができるから……」

真「……本当に残念だよ」

美希「ごめんね?」

真「ううん……いいよ。それより……早くとどめを……苦しいからさ」

美希「うん……バイバイ真クン」

美希「『焚刑電波(ダンシングインフェルノ)』」

真(あ……本当に似てる……)

真(じゃなくて! なんで能力使ってるの!? そこはボタン押して終わらせてよ!熱いよ!)

真「……あ、う……み、みき……」

美希「あ、苦しい? じゃあもっと強くするね?」

真「……ち、ちが……」

真(だめだ……もううまくしゃべれない……い……いしき……が……)

美希「…………」

『菊地真様の死亡を確認しました。勝者は星井美希様です』

…………
……………
………………

モニタールーム

ガチャ

真「美希! なんでボタンで終わらせてくれなかったのさ!」

美希「えー……だって真クン、力強いもん……ほら、でこちゃんだってゴリラって言ってたくらいだし」

真「伊織いいいぃぃぃいいいッ!」

伊織「ちょっと美希! あんた何私のせいにしてんのよ!」

美希「えー? でもさっきだって真クンのこと……」

伊織「違うわよ! 別に真のことだなんて一言も言ってないでしょ!?」

亜美「でも亜美に言ったってことは、共通の知り合いってことだよね?」

伊織「亜美ぃッ!」

真「さあ伊織……ちょっとあっち行こうか……」ガシッ

ズルズル……
アアアアアア……



スタッフ「えー、では一回戦 第七試合の組み合わせを発表します」

一回戦 第七試合

>>143 vs >>145

ステージ >>147

千早(イージス)

小鳥(エイトオーワン)

教会

スタッフ「一回戦 第七試合は如月千早様vs音無小鳥様です」

春香「頑張って! 千早ちゃん」

千早「ありがとう……春香」


小鳥「……落ち着け、落ち着くのよ小鳥。きっと今度は強い能力が来る筈よ……!」

P「前回は先に相手を見つけないとまず勝てない能力でしたからね……」

あずさ「逆に先に見つけさえすれば結構強いんですけどね~」


スタッフ「ステージは『教会』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

千早「…………」

千早(教会……なんていうか、すごく静かね。そして、美しい)

小鳥「…………」

千早「あ……音無さん、強い能力は手に入りましたか?」

小鳥「え? ……ええ、まあ……」

千早「?」

『両選手の入場を確認しました。これより一回戦 第七試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

千早「…………」

小鳥「……? 千早ちゃん、かかってこないの?」

千早「……ええ、まずは相手の能力を知ってからにしようと思いまして」

小鳥「そう……。ねえ、私の能力知りたいかしら?」

千早「それは、まあ」

小鳥「ふふ……私の能力、『時間停止』だって言ったら……信じる?」

千早「……!」

千早(時間停止……? そんな能力が、音無さんに……?)

千早(そんなこと、いくらゲームでもできるのかしら……?)

小鳥「……ありえないって思うかしら?」

千早(いえ、前回のプロデューサーの能力は『時間跳躍』。時間停止ができても不思議じゃないのかもしれない)

小鳥「……ねえ、どうなの?」

千早(それに、もしかしたら好都合かもしれないわ)

千早「……ええ、信じますよ。絶対にないとは言えませんから」

小鳥「……ふふ。そう、ありがとう……ふふふ」

千早(……『残滓(サイレンス──)

小鳥「『世界(ザ・ワールド)ッ!』

ドオーン

……………
…………
………

千早「……うっ!」ブシュウッ!

小鳥「」ドク……ドク……

千早「……はあ……はあ……」ガクガク

小鳥「」ドク……

千早(ほ、本当に……時間……停止、だった……のね……)バタッ

千早(よか…………た……)ドク……ドク……

……………
…………
………



『音無小鳥様の死亡を確認しました。勝者は如月千早様です』

………
…………
……………

ガチャ

千早「……ふぅ、ただいま」

春香「あ、おかえりー」


小鳥「ぴよぉ……ぴよぉ……」シクシク

あずさ「あらあら~」ナデナデ

P「……まあ、なんていうか……ドンマイですね」

小鳥「なんで! なんであそこまで上手く行ったのに負けたのよおおおおー!」


P「ところで、これで残りはやよいだけだが……」

やよい「シード……ですか?」

スタッフ「いえ、第八試合もありますよ」

やよい「え?」

社長「…………」

一回戦 第八試合

>>157 vs >>158
(やよいor社長)

ステージ >>160

社長(ダークドラゴン)

かそくした

清水寺

スタッフ「一回戦 第八試合は高木社長vs高槻やよい様です」

やよい「……はわっ!?」

春香「え……」

雪歩「社長……どういうことですかぁ?」

社長「ん? いやね……君達の元気な姿を見ていたら、年甲斐もなくはしゃぎたくなったんだよ」

P「……もし、社長が優勝して優勝回数でも一番になったら?」

社長「はっはっ……その時はご褒美はなしだよ。当然だろう?」

雪歩「……っ」ギリィ

小鳥(あれ……そう言えば私ってご褒美必要ないんじゃないかしら……)

律子(今頃気づいたんですか?)

小鳥(!?)

社長「まあ、社長だからといって遠慮はいらないよ? やよい君」

やよい「うう……は、はい……」

亜美「さすが大人だね」

真美「きたないね」


スタッフ「ステージは『清水寺』です。健闘を祈ります」

………………
……………
…………

社長「……む」

社長(なんだここは……確かに清水寺だが)

社長(普通は中で戦うべきだろう……何故屋根の上なんだ)

やよい「ううう……こ、怖いです……」

社長(おお……そういえば、やよい君は高所恐怖症だったね。好都合だよ)

『両選手の入場を確認しました。これより一回戦 第八試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

社長「一気にたたみかける! 『不在連斬(ミッドナイトジャンキー)』!」スゥ

やよい「! け、剣……」

ズバッ

やよい「え……?」ブシュウ

社長「まだまだ!」

スパッ

やよい「あう……! い、痛い!」ポタ…ポタ…

社長(私の能力は『切った』という結果を残す能力! 過程は存在しない! あらゆる防御は意味をなさない!)

社長「さあ終わりだ!」

やよい「……ごめんなさい社長!」

やよい「『喪失幻想(サイレントミラージュ)』!」

グニャ~

社長「!」

社長(景色が歪んでいく……! おそらく幻覚だろう)

社長(だが無意味だ……やよい君がいくら私に幻覚を見せたところで、やよい君にそれ以上の攻撃手段がない以上無意味だ!)

社長(ボタンさえ守れば負けることはない……!)

やよい「…………」グニャ~

グニャア~

社長(……いつまで歪み続ける?)

社長(もはや物体の区別もつかないぞ……これ以上、どう歪むのだ?)

スウゥ…

社長「な!? い……色が!」

社長(色が……世界から色が消えていく! 全て黒くなっていく!)

シイーン

社長(うっ……もう何もなくなった。私以外には何も……いや、私自身も消えかかっている!?)

社長(ば、馬鹿な……! こんなことがあるのか!? 段々と感覚すら消えていく!)

…………
………
……

(……どれくらい時間がたったのか……もう時間感覚すらないのか)

(もはや何も分からない)

(私は今立っているのか? それとも寝ているのか?)

(どっちが上だ? どっちが下だ?)

(何もない……ただ黒だけがある。どこまでも続く、限りない黒が)

(……………………)

(……………………………………)

(……………………………………………………………)

(…………む? なんだあれは……光?)

(近づいてくる……いや、私が近づいているのか?)

(……どうやら後者だな……あれは、地面だ)

(そうか、私は負けたのか──)

グチャ

やよい「あ……社長、落ちていっちゃった……」

やよい「…………」

『高木社長の死亡を確認しました。勝者は高槻やよい様です』

やよい「……ま、いっか! うっうー! やりましたー!」

…………
……………
………………

モニタールーム

ガチャ

やよい「社長! その……勝たせてもらってありがとうございました」

社長「……それは、いやみかね?」

やよい「ちっ、違います! だって……社長が最初から私を殺そうとしてたら、私、勝てませんでしたから」

社長「……君達は我が社の大事なアイドルだ。いくらゲーム内とはいえ、あまり手荒な真似はできんよ」

P「……だったら、最初から参加しなかった方が……」

社長「それとこれとは話が別だよ。……ううむ、なんとか優勝してご褒美を無しにしたかったんだがねえ……」


スタッフ「それでは、一回戦が全て終了しましたので一旦休憩とさせていただきます。皆様、しばらくお待ちください」

春香「あーあー、今回も優勝してトップを不動にしたかったなー」

貴音「卑劣な手を使うからですよ。反省なさい」

春香「え~? だってあれプログラムですよ?」

貴音「ぷろぐらむとはいえ、あれだけ愛らしい子供達を己だけの都合で勝手に殺めてよい筈がないでしょう」

春香「……はーい」



雪歩「真ちゃん、残念だったね」

真「ほんとだよ……相性が悪かったのかなぁ」

雪歩「私、真ちゃんの分まで頑張るからね!」

真「うん、応援してるよ……頑張れ雪歩!」

雪歩「うん!」

真美「ねーねー兄ちゃん。ゆきぴょんの能力ってどんなのなのさ?」

P「いや……それを教えるのは、なんだか贔屓みたいで気がひけるな……」

真美「えー、いーじゃん教えてよ!」

P「……やっぱり駄目だ。試合の映像から推理しなさい。大体俺だってはっきりとは分かってないんだから……」



あずさ「……はぁ」

律子「大丈夫ですか? もうしばらく休んでいてもいいですよ」

あずさ「いえ……いいんです。みんなの戦いを見て、少しはマシになりましたから」

律子「でも、次はまた真美の試合ですよ?」

あずさ「……やっぱりもう少しだけ休んでますね……」

亜美「ひびきんの能力って何気に強くない? もしかして最有力優勝候補かもよ」

響「ほ、ほんとか!?」

亜美「ステージにもよるけど……多分、物理的な能力には大体勝てるんじゃない?」

響「ふふん! 自分、完璧だからな!」ドヤァ

亜美「ま、ゆきぴょんとかやよいっちに勝てるかは分かんないけどねー」


やよい「……小鳥さんの能力って本当に『時間停止』だったんですかー?」

小鳥「あら、鋭いわね? そうよ、実は時間停止じゃないわ……本当ほもっと面倒くさい能力よ」

やよい「へえー、そうなんですかー」

小鳥「……あんまり興味はないのね」

美希「そういえば、千早さんの能力もまだ分かってないの」

千早「……そうね、でも次の試合もあるから、まだ言えないわ」

美希「……なんとなくだけど、千早さんの能力……すっごい使いにくそうなの」

千早「……そうね。使いにくいわ、すごく……」



伊織「社長は、これからもゲームに参加するつもりなの?」

社長「そうしたいがね……体がついていかんかもしれんな」

伊織「ゲームなのに?」

社長「うむ。だから次からは助っ人でも呼ぼうかと考えているよ」

伊織「どんだけご褒美あげたくないのよ……社長が決めたんじゃない」

社長「君達のやる気があがればと思ったんだが……言ってから失敗したと気づいてね。……そうだ、後で秋月君と音無君のご褒美も考えなくてはな」

ガチャ

スタッフ「えー、二回戦の用意ができましたので、萩原雪歩様と双海真美様は準備をしてください」

二回戦 第一試合

雪歩vs真美

視点 >>175(1雪歩 2真美 3両方)

ステージ>>177

1

体育館

スタッフ「ステージは『体育館』です。健闘を祈ります」

真美「……ふぅ」

雪歩「緊張……してるの?」

真美「まあ、そりゃねー。前回勝ったとはいえ、やっぱりゆきぴょんは怖いから。特に今回は能力が分からないんだし」

雪歩「そう? 私は、真美ちゃんの能力の方が怖いと思うけどなぁ」

真美「見た目はねー」

雪歩「それに、前のは演技してたら熱くなっちゃっただけだって……」

真美「あれが演技……かぁ。……ぶっちゃけ嘘っしょ?」

雪歩「う、ううん! 本当だよ! ……半分」

真美「…………」

雪歩「と、とにかく行こ?」

真美「うん、そだね! あと、試合では情け無用でいいからね!」

雪歩「……いいの?」

真美「あ、やっぱなし……ううん、やっぱいいよ……あ、でも……」

………………
……………
…………

雪歩「…………」

雪歩(体育館かぁ……当たり前だけど、私の学校のとは違うなー……)

雪歩「扉は……開かないんだね」

真美「扉の向こうは体育館じゃないからね。ちかたないね」

雪歩(うーん……じゃあ用具庫はどうなんだろ?)

『両選手の入場を確認しました。これより二回戦 第一試合を開始します』

真美「いい試合にしようね、ゆきぴょん」

『ready……』

雪歩「……そうだね、真美ちゃん」

『fight!』

真美「…………」

雪歩「…………」

雪歩(さあ、どうしよかな?)

雪歩(私の『絶望侵犯(ショットガンスパイダー)』は相手の恐怖や不安などの負の感情を増幅させる能力)

雪歩(自殺させるのに便利だけど……今の真美ちゃんには自殺する手段がない)

雪歩(考えもまとまらない内に、闇雲に負の感情を増幅して暴れられても困るし……)

真美「……どしたの? ゆきぴょん。兄ちゃんにやったみたいに、真美に能力使わないの?」

雪歩(一方、真美ちゃんも私に能力で攻撃はできない。殺された後に発動する能力だからね……)

雪歩(だから……)

真美「じれったいなぁ……こっちから行くよ!」ダッ

雪歩「こうなるのは必然……かな?」ダッ

真美「くらえっ!」シュッ

雪歩「……嫌だよ、痛いから」サッ

雪歩(アイドルの肉弾戦……誰が喜ぶのかなぁ)

雪歩「……そこだっ!」ドシュッ

真美「うわあっ!?」バッ

雪歩「避けるのは上手だね……」

真美「真美はダンスやってるからね! てゆーか、ゆきぴょん完全に前回と同じテンションじゃん!」

雪歩「お仕事モード……かな?」ドバッ

真美「怖い怖い! ゆきぴょん以外に力あるよね!?」バッ

雪歩「私は穴掘りやってるからね……」シバッ!

真美「風を切る音してんじゃん!」キュッ

雪歩「逃げてばっかりなの?」シュッ

真美「違うよ……そこっ!」バシィッ

雪歩「!」コテッ

雪歩(足払い……!)

真美「もみ合いになれば! チャンスはある!」バッ

雪歩「……ないよ?」

雪歩(『絶望侵犯』……)

真美「!」ビクッ

雪歩「もみ合いになることはないよ……その前に、こうして動きを止める」

真美「ぐ……」タラ…

雪歩「……へえ、逃げないんだ? プロデューサーならとっくに逃げ出すレベルなのに」

真美「……前回のゆきぴょんを知ってるからね……! ちょっぴり耐性があるみたい」

雪歩「ふぅん」

雪歩(どうしようかな? このままじゃ泥沼だし……)

雪歩「……あ、ちょっと待ってて」スッ

真美「! ま、待──」

雪歩「 待 っ て て 」

真美「う……!」

雪歩「…………」スタスタ

雪歩(さっきも疑問に思ったけど……用具庫は開くのかな?)

ガラッ

雪歩「……開いた」

雪歩(何か、武器になるもの……流石にスコップはないだろうけど)

雪歩(うーん……竹刀とか木刀もいいけど……)

雪歩(私は、この卓球のラケットがいいかなぁ……ちょっと小さいスコップに似てるし)

キュッ!

雪歩「!」バッ

ガシイッ!

真美「もうちょっとだったのに……」

雪歩「……真美ちゃん」

雪歩(自力で恐怖を克服した? それとも私の能力には射程距離があって、単にそこから外れただけ?)

雪歩(……どっちでもいい。既に武器は私の手にある)

雪歩「……!」シュッ!

真美「おっと」ヒラリ

雪歩「!」

真美「ゆきぴょんだけ武器を使うのは……ずるいよね?」パシッ

雪歩「卓球ラケット相手に木刀使うのも……ずるいと思うよ?」

真美「オラアッ!」

雪歩「無駄ァ!」

バキッ!

真美「太刀に片手剣が勝てると思う!?」ドシュッ

雪歩「さあ? ……少なくとも、手数では勝ってるよ?」ガキッ

真美「手数~? だったら!」

雪歩「!」

真美「『突き』ならどうだッ!」シュバ!

雪歩「ラケットの面は広いよ……簡単にガードできる」ピタ

真美「う……このお!」

真美「オラオラオラオラオラオラオラオラオラアッ!」ドガガガガガガガ

雪歩「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」カカカカカカカカ

真美「埒があかないね……!」

雪歩「そうかな? 『絶望侵犯』!」

真美「!」

雪歩「そこだあ──ッ!」ヒュオッ

真美「うおおおおおおおッ!」ググ…

バキッ!

真美「──!」フラッ

ドサッ

雪歩「……?」

雪歩(今……自分から当たりに来た……? 何故……?)

雪歩(まあいいや……今の内……に……?)

真美「…………」ピクッ

雪歩(……なんだ、まだ意識があるんだ)

真美「……う……」ピクピクッ

雪歩(……まあ、いいや──)スッ

ガシイッ!

雪歩「っ! ……離せ!」バッ

メキャッ!

真美「…………あう」ググ…

雪歩(……嘘でしょ)

真美「…………う……あ……」グググ

雪歩(まさか──まさか! 既に!?)

メキッ

雪歩「うぐ……」

真美「あ……うあ……」ポタ…ポタ…

雪歩(あれだけで死ぬ……? ありえない、それに早過ぎる。もしかして)

雪歩(『気を失っても発動する』ってこと……?)

真美「ああ…………うああ……」ポタ…ポタ…

雪歩「……離れろッ!」ブン

ドガ!バキッ!メキョ!

真美「うああああ……」ブンッ!

雪歩「きゃあっ!?」

ドサッ

雪歩「うう……真ちゃんなんかよりよっぽどゴリ……ううん、そんなことより!」

雪歩「どうすればこの苦難を乗り越えられるか、考えなきゃ……!」

真美「うあ……」ピチャ…ピチャ…

雪歩「……『絶望侵犯』」

真美「うあ……ああ……」ピチャ…ピチャ…

雪歩(効かない……)

雪歩(でも、この状態の真美ちゃん相手に近接格闘は難しい……)

雪歩(ううん、そもそも今回は『気を失っている』だけ……死んでるわけじゃないはず)

雪歩(目を覚まさせることができれば……!)

雪歩「…………」ダッ!

真美「あう…………」ピチャ…

雪歩(近距離が駄目なら……遠距離!)

雪歩「これはどこの体育館にもある……!」

雪歩「バスケットボールッ!」ブンッ!

真美「うがぁっ!」バシッ

雪歩「う……」

雪歩(意外と素早い……!)

雪歩「ほらっ!」ブンッ!

真美「うおああっ!」バシッ

雪歩「…………」

雪歩(どうしよう……)

真美「……あう……」ザッ…ザッ…

雪歩「く……」

真美「…………があ……」ザッ…ザッ…

雪歩(用具庫に入ったのは間違いだった……かな)

雪歩「……はぁ」

真美「……ああ……う……」ザッ…ザッ…

雪歩(なんか痛覚なさそうだなぁ……)

ガシイッ!

真美「……くああ…………」ギュッ!

ガブッ!

雪歩「あああっ……!」ブシュ

雪歩(う……おとなしく噛まれればボタン押せないかと思ったけど、しっかり両手を押さえられてる……)

真美「……があ……」グチャ…グチャ…

雪歩(……この策が失敗すれば、まず勝てない……でも、やるしかない……!)

雪歩「すううううううっ」

真美「があ……」グワッ!

雪歩「おおおおおおおきいいぃぃいいろオオオオオオォォォォォォオオオオオオオオッ!!!」

真美「!?」

雪歩「…………ぜえ……ぜえ……」

真美「……あ、あれ? ゆ、ゆきぴょん……おえっ!」

真美「おええーっ! げえっ! 」ペッペッ

雪歩「……ひどいなぁ」ガシッ

真美「はっ!」

雪歩「ばいばい」

ポチッ

真美「あああーっ!!ちょ、たんま──」

シュン

雪歩「……いたた……」ドク…ドク…

『双海真美様の消滅を確認しました。勝者は萩原雪歩様です』

…………
……………
………………

モニタールーム

ガチャ

雪歩「ただいま」

真美「ひどいよゆきぴょん!」

雪歩「ひどくないよ……あそこで意識を失った真美ちゃんが悪いんじゃない」

真美「もー!」

真「雪歩、ちょっと話が……」

雪歩「あ! 真ちゃん!」ギュッ

真「うえ!? ちょ、ちょっと雪歩!?」

雪歩「真ちゃん……見ててくれたかな? 私、頑張ったよ……」ギュウ

真「……んもう、しょうがないなぁ……」ギュッ

伊織「……納得できないわ」


スタッフ「それでは、二回戦 第二試合に移ります。四条貴音様と我那覇響様は準備してください」

二回戦 第二試合

貴音vs響

視点>>196(1貴音 2響 3両方)

ステージ >>198

2

羅生門

スタッフ「ステージは『羅生門』です。健闘を祈ります」

響「よーし、頑張るぞー!」

貴音「随分と張り切っていますね、響」

響「当たり前だぞ! 前回は自分、貴音と戦えなかったからな!」

貴音「おや、響はわたくしと戦いたかったのですか?」

響「うん! ……なんていうかさ、貴音のことは勿論その……好き……だし、仲間だとも思ってるぞ?」

貴音「ふふ、ありがとうございます」

響「でも時々、自分は貴音に勝てる所があるのか……とか、不安になるんだ。自分は貴音に釣り合ってないんじゃないか……って」

貴音「…………」

響「だからさ、嫌な言い方だけど……こんなのでもいいから、貴音に勝って自信をつけたいんだ。自分でも貴音に勝ってる所はあるって、証明したいんだ」

響「じゃないと……いつまでも劣等感を感じちゃうから……」

貴音「響、わたくしは…………いえ、今はよしましょう」

貴音「ですが、これだけは申しておきましょう。たとえそのような事情があろうと、わたくしは全力で勝負に望ませていただきます」

響「勿論さー! そうじゃないと、貴音に勝ったことにならないからな!」

貴音「そろそろ行きましょう、皆を待たせる訳にはいきません」

響「うん!」

………………
……………
…………

響「……ん」

響「うわ……また屋根の上?」

響(もしかして、この手のステージは全部屋根の上なのかー?)

貴音「…………」

響「……貴音、どうかしたのか?」

貴音「いえ……あまりに懐かしかったもので、つい」

響(!? ……それは、えっと……昔映画か何かで見たってことだよな! うん! そうに違いないさー!)

貴音「相変わらず、まこと美しい景色ですね……それに、今宵は月も……」

『両選手の入場を確認しました。それでは二回戦 第二試合を開始します』

響「……自分、絶対負けないからな」

『ready……』

貴音「……わたくしとて、同じ気持ちです」

『fight!』

貴音「『 硝煙狂乱』っ!」

ズダダダダダ

響「おっと!」ビュオッ

響(その攻撃はよめてたぞ! 貴音が自分に勝つには先手をとって一気に決めるしかないからな!)

響「悪いけど、自分の勝ちだぞ! 初撃さえ避ければ、こっちのものさー!」

響「『暴風無惨(グロテスクリベリオン)』っ!」ゴオッ!

貴音「! 宙に……!」

響「こうすれば、貴音の攻撃は自分まで届かない! ここからはずっと自分のターンだぞ!」

貴音「…………」

響「はああああああああああっ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

貴音「ま、まさか……!」

響(能力を全開にして自分の周りに渦を作る!)

響「さすがの貴音も、これは避けられないぞ!この『竜巻』は!」

ミシミシ…メキッ…バキャッ!

貴音「あ、足場が……! ああああああっ!」

ビュオオオオオオオオオオ!

響(ふふん……自分の作った竜巻が、ありとあらゆるものを呑み込んでゆくさー!)

響(『羅生門』はとっくに壊れた! 家々も! 木々も! 全て全て全て! 壊して吹き飛ばすッ!)

ゴオオオオオオオオオオオオ!

響(……貴音は見えないけど、流石にこの渦の中でいろんな物にぶつかってかなりのダメージを負った筈だよね)

響「……もうそろそろいいかな。よし! 竜巻はもう終わり!」

オオオオオオ……

響(終わりにならないってことは……貴音はまだ生きてるんだろうけど……)

響「……まあ、だいぶ高い所まで舞い上がった筈だし、きっと落ちて死ぬ──」

チュンッ!

響「!?」

響(な……何!? 今、何かが頬をかすった……)

響「まさかッ!?」バッ

「まさか竜巻を作るとは……予想外でした。かなり傷も負いましたし、なによりこの高さ……落ちれば命は無いでしょうね……」

ヒュウウウウ…

貴音「ですが! それは言い換えれば『落ちるまでは命はある』ということッ! 地面につくその前に! あなたを倒せばいいのです!」

響「貴音ぇっ……!」

響「で、できる筈ないぞ! 常に移動すれば、この距離で当たる筈がない!」ビュオッ

貴音「そこがあなたの甘い所です! 勝負とは最後までどうなるか予測できぬもの! 相手の最期をその目で見届けるまで、油断は禁物です!」

貴音「『硝煙狂乱(のいじーわーるど)』ッ!」

ブワッ

響「え……!?」

響(だ、弾丸の雨……!? 貴音の体が見えないくらい、弾丸が出てる!)

響「……だ、だったら! 当たらない所まで逃げるだけ──」ビュオッ

ゴツン!

響「あ痛っ!?」

響(そ、そうか……! ここはゲームの世界だから、行ける所に限りがあるんだ! だから貴音はあんまり遠くまで飛ばなかったんだ!)

チュイン!

響「あ……」

チュイン!……チュイン!

響「あああ……!」

チュインチュイン…ドスッ!

響「うわあああああああああッ!」

ドスドスドス…ボゴォ!

響「──!」フラッ

ヒュウウウウ…

ヒュウウウウ……

グチャッ! ドスン!

……ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガ……

………………
……………
…………




『両選手が死亡致しました。勝者はより遅く死亡した──我那覇響様です』


………
…………
……………

響「……え? 自分が勝った……のか?」

貴音「どうやら……そのようですね。わたくしは、一歩及びませんでした」

響「そ、そんなことないぞ! 貴音はすごかったさー! ……やっぱり、自分なんかより全然……」

貴音「響。先程言わなかった言葉を、言わせていただきます」

響「……?」

貴音「あなたがわたくしに勝っている所がない……などということはありません。あなたには、私には無いものがいくつもあります」

響「……そんなこと、ないぞ」

貴音「いいえ、確かにわたくしが勝っている所もあります。ですが、あなたにはわたくしには無い『明るさ』や『純粋さ』等があるではないですか」

響「…………」

貴音「それにだんすでは、わたくしはあなたにはまだまだ及びません。他にも、探せばあなたの勝っている所などいくらでもあります」

響「…………」

貴音「そしてなにより、誰が何と言おうと、あなたはわたくしのかけがえのない友人です。劣等感など、感じる必要はないのですよ」

響「うう……たかねぇ……」

貴音「弱気にならないでください……あなたは『完璧』なのでしょう?」

響「……貴音ーっ!」ギュッ

貴音「さあ、皆のもとに戻りましょう」

響「……もうちょっと……このままで……」ギュウウ

貴音「! ふふ……響は甘えん坊ですね……」ナデナデ

モニタールーム

ガチャ

響「ただいまだぞ!」

貴音「ただいま戻りました」

春香「お帰り! やったね響ちゃん!」

響「当然だぞ! 自分、完璧だからな!」

雪歩「四条さん……惜しかったですね……」

貴音「ええ……ですが、悔いはありません。それに、まだ『ご褒美』を得る望みは潰えておりません」

真「うん……そうだよね。まだ、チャンスはある……!」



スタッフ「それでは、二回戦 第三試合を開始します。双海亜美様と星井美希様は準備してください」

二回戦 第三試合

亜美 vs 美希

視点 >>215(1亜美 2美希 3両方)

ステージ >>217

1

摩天楼の頂上(夜)

スタッフ「ステージは『摩天楼の頂上(夜)』でございます。健闘を祈ります」

美希「Zzz……」

亜美「起きなよミキミキ。亜美達の番だよ」

美希「ん……? ……もうミキ達の番……?」

亜美「そうだよ! ほら早く!」

美希「……あふぅ」

亜美「……そんなに寝てたいなら、棄権してもいいんだよ?」

美希「するわけないの」ガバッ

亜美「ちぇっ……」

……………
…………
………

亜美「……おおう」

亜美(高い! しかも凄い夜景だYO!)

亜美(広さも十分だね……フェンスみたいなのは無し)

亜美(唯一あるのは扉だけだけど、開かない……と)

美希「…………」

亜美(このトーナメント……能力もそうだけど、ステージが勝敗の鍵を握る時もある。そしてこのステージはミキミキにとってやりやすいだろーね……)

『両選手の入場を確認しました。それでは二回戦第三試合を開始します』

亜美(前回はいいとこなかった亜美だけど! 今回こそは……!)

『ready……』

美希「……あふぅ」

『fight!』

亜美「『拡散(ドッペルゲンガー)』ッ!」スゥ

「…………」

亜美(ミキミキにとってやりやすいってことは! つまりは亜美が作ったミキミキの分身にとってもやりやすいってことだよ!)

亜美「行っけー! 亜美のミキミキ!」

美希「……ミキは亜美のものじゃないの。ミキはハ──……危ない危ない、律子……さんに怒られるとこだったの」

亜美「……?」

亜美(随分と余裕だね……)

美希「亜美。よく知らない能力を使ったら……ヤケドしちゃうよ?」

亜美「……どういう──!?」

亜美(熱い……!? 亜美は確かにミキミキにミキミキを攻撃するよう支持した筈……!」

美希「…………」

亜美「あう……!い、一旦攻撃を止めてっ!」

「…………」

亜美「はあ……はあ……」

美希「……いいの? 止めちゃって……。じゃあ、次はミキの番」

「……!? ──!──!」」

「────」バタッ

亜美「あ……」

亜美(分身が……! に、逃げなきゃ!)ダッ

美希「むー……また逃げられたの」

亜美「……うう」

亜美(熱かった……! でもこの扉の裏にいれば問題ないみたい……)

亜美「……なんだか、まこちんみたいだね……」

亜美(このままだと亜美、負けちゃうのかな?)

亜美「……やだよ」

亜美(じゃあどうすればいいの? 亜美はミキミキに近づくことさえできない。だから亜美の分身も近づけない)

亜美(ミキミキの分身は、能力がわからないから使えない……)

亜美(ということは、能力でミキミキを殺すのは無理。ボタンを押すのも無理)

亜美(あとは──あとは?)

亜美「……!」

亜美「ミキミキ!」バッ

美希「やっと出てきたの……遅いの!」

美希「『焚刑電波(ダンシングインフェルノ)』!」

亜美「熱い……でも!」

亜美「『拡散(ドッペルゲンガー)』ッ!」

ブワワッ

美希「……? 亜美の分身?」

亜美「まだまだ!」ブワワワッ

美希「……何人だしても一緒なの! ぜーんぶミキが焼いてあげるの!」

亜美「だろうね! でもいいよ! 好きなだけ、焼けばいいッ!」

「……!」バタッ

「──!」バタッ

美希「……まだ分からないの? 何人だしても無駄! みんな死ぬだけなの!」

亜美「こっちのセリフだね! まだ分からないの? 何人殺しても無駄! いくらでも出てくる!」

美希「……? 持久戦にして、ミキが疲れるのを待つ……ってこと?」

亜美「違うよ? ……自分の殺した死体を見てみなよ」

美希「亜美の……死体? …………!?」

「」ズズ…

「」ズズズ…

美希「ち、近づいて来てる……」

亜美「やっと分かった?」

美希「ま、まさか──」

亜美「そう! 何人焼かれようがそんなことはかんけーないッ! 増やして増やして増やしまくって! ミキミキをコインゲームみたいに──」

亜美「落とすッ!」

美希「……ふうん」

亜美「……なにさ。どうかしたの?」

美希「うーん……つまり、亜美が分身を出す時の力で分身の死体を動かしてる……ってことでしょ?」

亜美「う、うん……」

美希「じゃあさ……」

ヒョイッ

美希「こうやって、死体の上に乗っちゃえば、関係ないの」

亜美「あ……」

美希「ついでに言えば、そもそもミキの能力から身を守れない亜美から距離をとる理由がないの。だからこうして──」

ザッザッ

美希「近づいていって、至近距離で焼いてあげるの」 

亜美「……亜美の屍を越えて行けってやつだね……」

美希「降参するなら、今の内だよ?」

亜美「…………」ブワワッ

美希「まだ出すの……? その内亜美、潰れちゃうよ?」

亜美「…………」

亜美「ミキミキ……」

美希「何? 命乞いは受け付けないの」

亜美「ううん、そうじゃないよ……ねえミキミキ、気づかなかったの?」

美希「……? 何に?」

亜美「ほんとーに、気づいてないの?」

美希「……だから、何に?」

亜美「だったら──亜美の勝ちだね」

美希「……? ……!?」

美希「あ、熱っ……!?」

亜美「……んっふっふ~。気づいてなかったんだね、ミキミキ」

美希「……ま、まさか……亜美!」

亜美「そうだよ、出してたのは、亜美の分身だけじゃない……たまに、ミキミキの分身も出してたんだYO!」

美希「う……」

亜美「気づかれないように紛れこませて! 気づかれないように後ろに回り込ませて! そして今! ミキミキ達はミキミキの後ろで能力を使ってる!」

亜美「まだミキミキの能力は分かってないよ……でも、亜美よりミキミキの方が近いなら! ミキミキの方がダメージは大きくなる! ……はず」

美希「あが……ううっ……」

亜美「バイバイ、ミキミキ」

美希「……ハ…………ニィ……!」

ドサッ


『星井美希様の死亡を確認。勝者は双海亜美様です』

亜美「やったー! ……って、喜びたいけど……」

亜美「ミキミキが……最後の力を振り絞って亜美の分身を皆殺しにしちゃったせいで……動けない。てゆーか潰れる!」

亜美「ま、まだ!? 早くしてよスタッフの兄ちゃん!」

亜美「は、早く……! 早──」


………
…………
……………

モニタールーム

ガチャ

亜美「…………」

亜美(結局潰れるまで戻れなかった……)

真美「お帰り! やったね亜美!」

亜美「うん……ただいま……」


美希「真クン……ミキ、真クンをあんな目に遭わせてたんだね……ごめんなさいなの」

真「ううん、いいよ。もう気にしてないから」

美希「……はぁ。また負けちゃったの」

真「大丈夫、次があるよ」

美希「……でも、あと何回チャンスがあるの? それに、今回もまた誰かが優勝するんだよ?」

真「う……」

美希「……まあ、次こそ。次こそ優勝するの」


スタッフ「それでは、二回戦第四試合を開始します。如月千早様と高槻やよい様は準備してください」

二回戦 第四試合

千早 vs やよい

視点 >>234 (1千早 2やよい 3両方)

ステージ >>236

2

満開の桜の木の森

スタッフ「ステージは『満開の桜の木の森』です。健闘を祈ります」

やよい「千早さん、頑張りましょーね!」

千早「……ええ、そうね」

やよい「……千早さん?」

千早「?」

やよい「本気で来てくださいね?」

千早「ええ、もちろんよ」

やよい「…………」

千早「……どうかしたのかしら?」

やよい「……あの、なんだか千早さん、本気になってない気がして……」

千早「…………」

やよい「私たちに遠慮してるんじゃないかなーって」

千早「…………そうね、そうかもしれないわね」

やよい「あの! 私、千早さんに何をされて、どんな結果になっても絶対に気にしません! だから、全力を出してください!」

千早「…………分かったわ。でも多分、高槻さん、相当な目に遭うわよ」

やよい「かまいません」

千早「……そう、だったら行きましょう」

やよい「はい!」

……………
…………
………

やよい「……う?」

やよい「わっ! とってもきれいな桜です!」

千早「そうね……」

やよい「…………」

千早「…………」

『両選手の入場を確認しました。それでは二回戦第四試合を開始します』

やよい「いい試合にしましょうね!」

『ready……』

千早「……いいえ、いい試合なんかにはならないわ……絶対に」

『fight!』

やよい「じゃあ行きますよ!」

千早「……高槻さんは、なんで桜がこんなに綺麗に咲くか……知ってるかしら?」

やよい「え? ……え、えっと……」

千早「桜の下には死体が埋まっていて、その血を吸うから……ですって。どこの誰だか知らないけど、悪趣味なことを考えたものよね」

やよい「……は、はい」

千早「大体、そうだとしたらこの辺りにはどれだけ死体が埋まっているのかしら? ……でも、もしそれが本当なら──」

千早「この木と、その木は、来年綺麗に咲くのでしょうね」ブシュウッ

やよい「!? ち、千早さ──」ブシュウッ

やよい(!? て、手首から血が……!?)

千早「……ごほっ…………一応、もう一回……しておくわ……」ブシュウウウ

千早「『残滓(サイレンス)』」ドバアッ

やよい「げほっ……」ドバアッ

やよい(の、喉からも……? 私と千早さん……全く同じ場所から……血が……)フラッ

やよい(い……いしき……が……)ドサッ

千早「……たす……か……たわ……たか…………きさ……の……からだ……が……」フラッ

千早「……ち…………さ………く………て……」ドサッ

…………
………
……

『両選手の死亡を確認しました。勝者は死亡が遅かった如月千早様です』

……
………
…………

モニタールーム

ガチャ

やよい「た、ただいま……」

千早「……ごめんなさい、高槻さん」

やよい「あ、謝らなくてもいいですよー。ちょっと驚いただけですから……」

春香「早かったですねー」

律子「ええ、今までで一番ね」

千早「……私には、こういう戦い方しかできないから……」

小鳥「あー……こういうことだったのね……だから負けたのね……」

あずさ「よしよし」ナデナデ

小鳥「うう……あずささーん!」バッ

あずさ「あら~」


スタッフ「それでは、続けて三回戦に入ります」

P「残ってるのは……雪歩、響、亜美、そして千早か」

律子「雪歩だけいまいち能力がはっきりしてないんですよね」

春香「なんとなく決勝の組み合わせが分かった気もしますけどねー」

貴音「いけませんよ春香。まだ決まったわけではありません」

真美「その言い方だと、お姫ちんも内心はそう思ってるってことになるよー?」

あずさ「でもそうねえ……多分、正面から向き合っちゃうと……」

伊織「ステージ次第……ってことかしらね」

やよい「うん……雪歩さんと真美の時みたいに、ステージによっては能力無しでも勝てるかも……」

真「特に響はただでさえ運動できるからね……」

美希「正面からじゃない場合は、どっちが先に相手を見つけるかだと思うな」

社長「まあ、とにかく見守ろうじゃないか……彼女達の戦いを」

三回戦(準決勝) 第一試合

雪歩 vs 響

視点 >>245 (1雪歩 2響 3両方)

ステージ >>247

3

校庭

スタッフ「三回戦第一試合を開始します。萩原雪歩様と我那覇響様は準備してください。ステージは『校庭』です」

響「雪歩……自分、負けないからな!」

雪歩「私も同じ気持ちだよ、響ちゃん」

響(自分、絶対に優勝してみせるぞ! 貴音の分まで頑張るさー!)

雪歩(……校庭、かぁ……)

……………
…………
………

雪歩「……!」ダッ

雪歩(このステージ……殆どの部分は広くて見晴らしのいいグラウンド)

雪歩(でも、そこじゃ響ちゃんの能力が圧倒的に有利……)

雪歩(だから今のうちに移動する。響ちゃんが入場する前に……校庭の中で、数少ない見晴らしの悪い場所に……)

響「……お!」

響(ここが校庭かぁ。小学校……って感じでもないし、中学校か高校の校庭かな?)

『両選手の入場を確認しました。これより三回戦第一試合を開始します』

響「……あれ?」

響(意外だぞ……こんなステージなのに、向き合って始まらないなんて)

『ready……』

『fight!』

響「うーん……」

響(このステージ、そんなに隠れられる所は無いからなー……)

響(雪歩がいるとしたら、校舎の辺りか、あっちの用具庫が集まってる辺りだけど……)

響「……まあ、どっちでもいいぞ。近づかれさえしなければ、なんくるないさー!」スタスタ

響(こうして校庭の真ん中にいれば、どっちから来ても対応できるぞ!)


雪歩(響ちゃんは、校庭の真ん中にいることにしたみたい)

ザクッ

雪歩(確かに、四方の内どこから来ても、そこなら対応できる……)

ザクッ

雪歩(四方の内どこから来ても対応できる……じゃあ、五方目から来たら……?)

ザクッ

雪歩(その時は、対応できるのかな?)

ザクッ

…………
………
……

響「…………」

響(……暇だぞ……)

響(雪歩はいつまで隠れているつもりなんだー? いい加減、待つのも飽きてきたぞ……)

響「うがー……」

響(……どうせ暇なら、ちょっと遊んでようかな……?)

響(『暴風無惨』!)フワ…

ズボォ!

響「!?」

雪歩「……失敗、しちゃったかぁ……」

響「雪歩!? し、下から!?」

雪歩「でも、この距離まで近づけたし……上出来かな」

響(し、しま──)

雪歩「『絶望侵犯(ショットガンスパイダー)』」

響「あ……」

ズル…

雪歩(ふう……これで響ちゃんは動けない。あとは、この用具庫から持ってきたスコップで!)

雪歩(叩いて戦闘不能にし──)バッ

ゴオッ!

雪歩(て……!?)

ビュウウ…

響「はぁ……はぁ……」

雪歩(え? あれ? なんで?)

響「い、いきなりスコップで殴りかかるなんて……ひどいぞ、雪歩!」

雪歩「……ね、ねえ、響ちゃん。なんともないの……?」

響「? なんともないって……なにが?」

雪歩(嘘……『絶望侵犯』が効いてない? 真美ちゃんですら、しばらくは動けなかったのに?)

響「とにかく! 今度はこっちがお返しする番だぞ!」

雪歩「待って! 何か感じなかったの!? 不安とか、恐怖とか!」

響「……さっきから雪歩は何を言ってるんだ? 不安? 恐怖? なんでそんなものを感じるんだ?」

雪歩「え……? 負けるかも……とか、全く思わないの?」

響「思うわけないぞ! だって自分、完璧だからな!」

響(今は、何も怖くないぞ……貴音のおかげで自信がついたから、負ける気がしない!)

雪歩「……かん、ぺき……?」

響「そうだぞ! じゃあ行くさー! 『暴風無惨(グロテスクリベリオン)』!」ゴオッ

雪歩「! わ、私の体が浮いて……!」

響「ちょっと痛いと思うから、嫌ならボタンを押すことをオススメするぞ!」

………
…………
……………

雪歩「ああああああっ!」ゴオオ…

雪歩(た、高い! こんな所から落とされるの……!?)

響「雪歩ー! 聞こえるかー! 後三秒したら落とすから、それまでにボタンを押してねー!」

雪歩「え……!?」

響「さーん!」

雪歩(ど、どうしよう……! こんな所から落とされたら……!)

響「にーい!」

雪歩(じゃあボタンを押す……? 嫌だよ……! 負けたくない!)

響「いーち!」

雪歩「う……」

響「ゼロ!」

ピタッ

雪歩「う……うあああああああああああああっ!」ヒュウウウウ…

……………
…………
………

雪歩「………………あ……」ピク…

雪歩(……体が……痛い……じんじんする……)

響「だ、大丈夫か? だからボタンを押してねって言ったのに……」

雪歩「…………う」ピク…

響「……どの道、その体じゃもうまともな抵抗ができないぞ……」

雪歩(『その体』……? ああ……なるほど……足も、腕も、変な方向に曲がってる……)

響「……自分がボタンを押してあげるから、暴れないでね」

雪歩「……ねえ……ひびき……ちゃん」

響「喋らない方がいいさー……話なら、後で──」

雪歩「わ……わたし……なん……で……まけてる……の?」

響「……え?」

響「な、なんでって……自分が、能力で雪歩を……」

雪歩「そう、じゃ……ないの……」

響「じゃあ、どういうことなんだ……?」

雪歩「わた……し……なにが……たりなかっ……たの?」

響「……?」

雪歩(ねえ真美ちゃん……前回、言ってたよね? 私が負けたのは『ゲームを楽しむ気持ち』がなかったからだ……って)

雪歩(だから私……楽しもうとしたんだよ?)

雪歩(そうしたら確かに……プロデューサーはあっけなさ過ぎて楽しくなかったけど、真美ちゃんとの試合は楽しいって……思えないこともなかった)

雪歩(なのに……なのになんで? どうしてゲームを楽しもうとしてたのに、こんなところで負けてるの?)

雪歩「おしえて……よ……どうして……わたしは……まけ……てるの……?」

響「…………」

響(どうして? ……うーん)

響(……やっぱり、あの時雪歩が驚いてたのは、雪歩の能力が自分に効かなかった……からだろ? 多分)

響(なんで効かなかったのかは分かんないけど……多分相性みたいなのがあったんじゃないかな……)

響(つまり……そもそも自分とあたった時点で、雪歩の負けは確定してた……ってことじゃないか?)

響(それに……偶然自分が浮いてたから、雪歩に引きずりこまれなかったのも、自分が勝った理由の一つでしょ?)

響(だったら……雪歩が負けた原因は……)

響「……運……じゃ、ないかな……?」

雪歩「…………う……ん……?」

雪歩(『運』……? 運が悪かった……ってこと?)

雪歩(私が精一杯頑張っても、何をどうしても、結局は運で決まるの……?)

雪歩(運が悪かったから負けるの……? 運が悪かったから優勝できないの……?)

雪歩(運が悪ければこれからも負け続けるの……? 運が悪ければこれからも優勝できないままなの……?)


雪歩(運が悪いから、プロデューサーを手に入れられないの……?)

雪歩「いや……だよ……そんなの……」

響「ゆ、雪歩……?」

雪歩(真美ちゃんの嘘つき……結局全部運で決まるなら──)

雪歩(『ゲームを楽しむ気持ち』なんて……いらないじゃない!)

響「雪歩、もういいから……後は向こうに戻ってから──」

雪歩(……『絶望侵犯(ショットガンスパイダー)』ッ!)

ズズズズズ……

雪歩「……ああああああああああああああああああっ!」

響「雪歩!?」

響「だ、大丈夫か!? 今ボタンを──」ダッ

ブン!

響「っ!?」

響(お、折れてる腕を──振り回した!?)

雪歩「よ゙る゙な゙あ゙っ……!」

響「よ、よすんだぞ雪歩! そんなことしても、雪歩が痛いだけだ!」

雪歩「ゔる゙ざい゙……!」

雪歩(頭がおかしくなりそう……! 痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い!)

雪歩(自分でも何でこんなことしてるのか分からない! でも! でも……!)

雪歩「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

響「うう……」

雪歩「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

響「も……もうやめ……」グス…

雪歩(痛い! 苦しい! 憎い! 苛つく! 悲しい! 怖い! 無理! 無駄! もういい! 嫌! 羨ましい! 勝ちたい! 死ね! 殺したい! 殺したい! 殺したい!)

雪歩「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙──」

雪歩「あうっ!?」プツン

響「っ!」

雪歩「…………」

響「……ゆ、雪歩……?」

雪歩「…………」ニコッ

響「ゆき──」ドスッ

響「…………がはっ」ブシュウ

響(……? 何が起き──)

ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスッ

響(……なにこれ? 『これ』が雪歩……なのか?)


『が、我那覇響様の死亡を確認しました。しょ、勝者は萩原雪歩様です……』

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

『……あれ?』

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

『おい、これ……』

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ニコニコ

『ていうか、こんなのプログラミングしたか……?』

………
…………
……………

モニタールーム

ガチャ

響「…………」

真美「……ねえひびきん……ゆきぴょん、まだ画面に映ってんだけど」

響「……なんか、意識戻らなくなったって……」

真美「そっか……」

伊織「いやいやいやおかしいでしょ……ちょっとスタッフ? なんなのよ、あれ」

スタッフ「いえ、我々も把握しておりません……現在調査中でして……」

春香「じゃあさっさと第二試合しましょうよ」

P「え?」

春香「えー? よく分かりませんけど、倒せば……っていうか、意識失わせれば治るんじゃないですか?」

亜美「ちょっと待ってはるるん。次勝った方はあのゆきぴょんと戦わないといけないの?」

春香「うん」

千早「…………」

スタッフ「で、では……第二試合を開始します。双海亜美様と如月千早様は準備してください」

三回戦 第二試合

亜美 vs 千早

視点 >>272(1亜美 2千早 3両方)

ステージ >>274

東京ドーム地下闘技場

スタッフ「ステージは『 東京ドーム地下闘技場 』です。健闘を祈ります」

千早「…………」

亜美「……不安そうだね、千早お姉ちゃん」

千早「……そう?」

千早(優勝は……したいわ。大して重要視はしていないけれど、したい)

千早(でも、あの萩原さん? に勝てるのかしら……?)

亜美「ほほう。戦う前から勝った後の心配とは、この亜美も中々侮られたものですなぁ」

千早「あ……そ、そういうわけじゃ……」

亜美「ううん、いいよ。勝てないって、ちゃんと亜美も分かってるから」

千早「亜美……」

亜美「でもさ……最後まで足掻かせてよ。亜美はね、絶望に身をゆだねて立ち止まるよりは、最後まで希望を追って走りたいんだ」

千早「……ごめんなさい」

亜美「いいってば……んじゃ、行こっか!」

………………
……………
…………

亜美「…………」

亜美(『東京ドーム地下闘技場』……かぁ」

亜美(漫画でしか見たことないけど、実際にあるのかなぁ?)

千早「…………」

千早(…………)

『両選手の入場を確認しました。それでは、第二試合を開始します』

『ready……』

『fight!』

亜美「……『ドッペル──」

千早「『残滓(サイレンス)』」ドバッ

亜美「!」ドバッ

千早「……ごめんなさい、亜美」

亜美「いいってば……こっちこそごめんね? 亜美のわがままに付き合わせて」

千早「……わがままなんかじゃないわ。当然の権利よ」

亜美「……好況の福井ってやつだよ、千早お姉ちゃん」

千早「日本全体が不況なのに、福井は凄いのね……正しくは──いえ、亜美が言おうとしたのは、公共の福祉……よ」

亜美「……なんで、言い直したのさ」

千早「正しくないからよ……亜美の頑張りが不利益なんてことはないし、そもそもこんなことに使う言葉ではないわ」

亜美「……あり、がと……」バタッ

千早「……どういたしまして」

『双海亜美様の死亡を確認しました。勝者は如月千早様です』

千早「…………」バタッ

モニタールーム

ガチャ

亜美「ただいまー!」

千早「ただいま」

真美「お帰り、亜美」

春香「お帰り、千早ちゃん」

真「最短記録更新だね」

亜美「……頑張ってね、千早お姉ちゃん」

千早「……ええ」

スタッフ「えー、では皆様はここでお待ち下さい。今一度あれを何とかできないものか、試してきますので」

………………
……………
…………

スタッフ「結論から申し上げますと……萩原雪歩様を助ける? ことは可能です。方法ほ二種類、結果も二種類です」

伊織「……? どういうことよ」

スタッフ「そうですね……まず、一つ目の方法は『あの萩原様を見捨てる』というものです」

P「?」

スタッフ「このゲームをプレイしているのは皆様自身ではなく、皆様の記憶や人格などのコピーなのです」

小鳥「なるほどね……」

あずさ「あら、音無さん今ので分かったんですか?」

小鳥「ええ。つまり、あの雪歩ちゃんはただのコピーで、本当の雪歩ちゃんは眠っているんです」

小鳥「このゲームは、コピーに試合をさせて、試合後の記憶や人格を脳に上書きしているんです」

スタッフ「ええ、その通りです」

千早「科学の進歩は凄いわね……」

真美「春川教授もびっくりだね」

真「と、いうことは……あの雪歩を見捨てたら、雪歩はさっきの試合を忘れることになるんだね」

スタッフ「そういうことになりますね」

律子「別にいいじゃないですか……なんでそうしないんですか?」

スタッフ「……先程の音無様の説明をもう少しだけ細かくします」

スタッフ「記憶や人格は確かにコピーしているのですが『考える』ということを行うのは皆様自身の脳なのです。でないと知能が凄いことになるので」

響「……じゃあなんでわざわざ記憶とかをコピーするんだ?」

スタッフ「……さあ?」

伊織「さあってなによ……」

スタッフ「だって私が決めたわけじゃないですし……。とにかく、一定の危険があるということだけご理解いただきたいのです」

社長「それで、もう一つの方法とは?」

スタッフ「えー、現在あの萩原様は我々の制御が効きません。ですから、我々はあの萩原様を消すことが不可能です」

美希「それで?」

スタッフ「ですが、あの萩原様のボタンを押す……もしくはHPをゼロにする。どちらかを達成すれば、あれは消滅します」

真美「ボタンを押すのは無理だねー。さっき自分でもぎ取ってたもん」

千早「あの……あれは、出血多量で死にますか?」

スタッフ「……難しいでしょうね」

千早「……私、今回は諦めるわ」

社長「では今回は萩原君の優勝だね」

亜美「ちかたないね」

スタッフ「それで、皆様はどちらの方法を──」

伊織「待ちなさい。そもそも雪歩はどうしてああなったのよ?」

スタッフ「……確証はございませんが、恐らく『負の感情を増幅させる能力』を自分に使用し、またその効果を強くしすぎたため、何らかのバグが発生したのでしょう」

貴音「では、特に精神に異常をきたしたというわけではないのですね?」

スタッフ「……さあ? 異常をきたしているかもしれないし、そうでないかもしれませんね。我々なは分かりかねます」

あずさ「あ、あの~まとめると、どういうことなのかしら~?」

亜美「つまりね……ゆきぴょんが負けそうになって」

真美「自分に向けて能力を使って」

スタッフ「更には、出力をあげすぎて」

「「「『究極の情報生命体ゆきぽの誕生だッーっ』」」」

スタッフ「……というわけです」

伊織「あんた、いい性格してるわね」

スタッフ「よく言われます」

春香「とにかく! 『ある程度のリスクを負って強制的に目覚めさせる』か! 『あれを倒して普通に目覚めさせる』か! そのどっちか……ってことですよね?」

スタッフ「まあそうですね」

P「……じゃあ、やっぱり」

社長「あれを倒すしかないね……強制的に目覚めさせて、もしものことがあれば我々は東京湾で魚の餌になってしまう」

伊織「……あんたらスタッフなら、なんか強力な能力使えるんじゃないの?」

スタッフ「いえ、それはできません」

伊織「なんでよ」

スタッフ「……プライド?」

伊織「…………」ゲシッ

スタッフ「ぐふぅ」

小鳥「まあ……そういうことなら、みんなで倒しに行ってくればいいじゃないですか」

P「そうですね……よし! みんな、雪歩を助けるためだ! 張り切って行こう!」

社長「そうだね……東京湾はまだ寒い」

律子「小鳥さんは?」

小鳥「……私は、役に立てそうもないので……」

律子「時間停止できるくせに何言ってんですか……ほら行きますよ」

小鳥「あ、あれは違うんですよ! ちょ、ちょっと待っ……いやあああああ!」

春香「…………」

千早「ほら春香……そんな面倒くさそうな顔しないで」

真「そうだよ! 雪歩の為だよ!」

やよい「……雪歩さん、さっきから見えませんね……」

伊織「ニコニコしてたと思ったら、突然凄い勢いで穴掘り始めたものね……」

亜美「なんだかMHFみたいでワクワクしますな~」

真美「全く、ゆきぴょんはしょうがないですな~」

あずさ「そうねえ、後でちゃんと叱ってあげなきゃね」

響「……雪歩は、自分が『運』だなんて言ったから、ああなったのかな……」

貴音「そうでしょうね……しかし、響が気にすることではありません」

美希「ミキも、雪歩が考えすぎだって思うな。だって逆に言えば、運さえ良ければハニーが手に入るってことだもん」

律子「こら美希! 外でハニーとか言わない!」

P(……俺、多分何の役にも立たないだろうなぁ……)

社長(気にするな……私も、君と同じで足止め程度しかできんよ)

小鳥(こいつら、脳で直接……!)


スタッフ「では最終戦、萩原雪歩様? vs皆様を開始します。ステージは『地底』です。健闘を祈ります」

……………
…………
………

最終戦

雪歩? vs 全員

ステージ 地底

視点 >>290(雪歩以外の誰か一人 or 全員)

全員

社長「……ふぅ」

小鳥「これで全員揃いましたね」

P「律子……雪歩は?」

律子「……あれです」

P「……マグマ……平気なんだな」

春香「ワンピースが黒くなってますね」

亜美「明日からゆきぴょんのあだ名はラージャンだね!」

伊織「相棒は……そうね、ドドブランゴ亜種かしらね」

真美「あれ? いおりん分かるの?」

伊織「この間あんたらとCMやった時に調べたのよ」

真「ときに伊織……相棒って誰のことかな?」

律子「はいはい、馬鹿やってないで作戦を立てるわよ」

千早「作戦?」

律子「そうよ。この人数でかかっていくには的が小さすぎるから、いくつかのチームに分けるわ」

小鳥「支援する人と、攻撃する人に分けるから、取りあえずみんな能力を教えあいましょう?」

……………
…………
………

律子「そうね、主戦力になるのは……伊織ぐらいかしらね」

P「さっきの傷が治ってるところを見ると、どうやら自己再生できるようだからな……」

春香「じゃあ、伊織が突撃してくればいいんじゃないかな?」

伊織「嫌よ……あんたも見たでしょ? あいつかなり速いわ」

真「伊織が雪歩に触るのを、僕達がサポートする……って感じかな?」

美希「チーム分けの必要なかったの」

律子「……うるさいわね、思ったより雪歩が強くなってたんだもの、しょうがないじゃない」

やよい「……あのー……雪歩さんは、今どこにいるんですか……?」

響「え? あそこに──あれ?」

貴音「……いけません! 今すぐここから移動を──」

ボゴォ

ストッ

雪歩「…………」ニコニコ

伊織「! こ、このっ!」バッ

シュン…ガシッ

雪歩「…………」ニコニコ

伊織(う……速い! 触ろうとしても触れない!)

雪歩「…………」スッ

伊織(……な、なにこれ。 ゆ、雪歩の腕が……ドリルに……)

ギュイイイン

伊織「……あ……た、たすけ──」

ザシュッ!

春香「う……ぐふっ……」ボタボタ

伊織「え? ……春香?」

真美「は、はるるんが、いおりんを突き飛ばして助けた!?」

亜美「し、信じられない……! まるで映画版のジャイアンだ!」

春香「……あ、はは……ひどい、言い草だね……」ギュイイイン

伊織「な、なんでよ……」

春香「……早く戻って、みんなの頑張りを高みの見物したかったんだ……」

伊織「あんた……」

春香「それより! 今の内に、みんな早く逃げてっ!」

小鳥「そ、そうよみんな! ある程度バラけて横穴から逃げるのよ!一旦体制を立て直さないと!」

「「「は、はい!」」」

ダダッ

春香「ほら……伊織も……早く」

伊織「……向こうで待ってなさい……絶対に、この伊織ちゃんが雪歩を連れて帰るんだから……!」

やよい「伊織ちゃん! 早く!」

伊織「ええ!」ダッ

春香「……ほら、雪歩……もうみんな、逃げちゃったよ?」

雪歩「…………」

春香「あれ? 急に真顔になってどうしたの? そんなに逃げられたのが悔しい?」

雪歩「…………」ギリッ

春香「あはは……そうそう、あんな作りものの笑顔より、その表情の方がよっぽど──」

ブンッ

春香「……がはっ」

雪歩「…………」

春香「……早くトドメさしてよ……お腹に穴開いてるのって、あんまりいい気分じゃないからさ……」

雪歩「…………」スッ

春香「……ドリルの次はノコギリ……かぁ」

雪歩「…………」ザッザッ

ガシッ

ドゴォン!

雪歩「!」サッ

春香「……驚いた? 『装弾嗜虐(デモンカーニバル)』で自分に弾を込めたんだけど……」

春香「まさか……私の能力忘れてた? 記憶力ないんだねー……あはは」

雪歩「…………」

春香(はあ……こんなものかな? 流石にただで帰るのは悪いから、時間稼いであげたけど……)

ザッザッ

春香(これ以上は無理っぽい……意識が薄れてきた……)

スッ─

春香(……伊織……言ったからには、実行してよ?)

ザクッ

『天海春香様が死亡しました』

千早「!」タタタ…

千早(春香……)

やよい「うう……春香さん……」タタタ…

伊織「……雪歩……何が何でも目を覚まさせてやるわ……! そして、一発ぐらいかましてやんなきゃ気が収まらない!」タタタ…

千早「…………」ピタ

やよい「……千早さん?」ピタ

伊織「ちょっと! 何立ち止まってんのよ!」ピタ

千早「……先に行っててちょうだい。少し、やることがあるから……」

伊織「……あんた、まさか」

千早「…………」

やよい「……行こう、伊織ちゃん」

伊織「やよい!? 駄目よ、千早は──」

やよい「いいから!」

伊織「! や、やよい……?」

千早「高槻さん……水瀬さんを、守ってあげてね……」

やよい「……はい!」

伊織「ちょっとやよい! どういうつもりなのよ!」

やよい「……駄目だよ伊織ちゃん。わがまま言っちゃ」

伊織「わがままって、あんたねえ……! 千早が死んでもいいって言うの!?」

やよい「……!」パアン!

伊織「……え?」 

やよい「……私だって、嫌だよ……でも、しょうがないよ」

千早「水瀬さん、あなただけが頼りなの……今萩原さんと戦ったら、恐らく私達はみんな死ぬわ。 見たでしょう? あの速さ」

伊織「だからって……なんであんたが……」

千早「……私は、チームで戦えるような能力じゃないもの。だから、ここであなたを逃がすことに全力を尽くすわ」

ザッザッ

伊織「! まさか……!」

千早「やはりこっちに来たわね……さあ、水瀬さん、高槻さん……早く」

やよい「行くよ!」グイッ

伊織「……分かったわよ!」ダッ

伊織「千早! あんたも春香と一緒に待ってなさい! そして見届けるのよ……私達の勝利を!」タタタ…

千早「……ええ、楽しみにしているわ」

タタタ……

千早「……ふう」

雪歩「…………」ザッザッ

千早「……萩原さん……あなた、少し身嗜みに気を使った方がいいわ。アイドルが返り血を浴びていては、週刊誌の格好の獲物よ?」

雪歩「…………」ピタ

千早「それに、案外私の能力であなたも死ぬかもしれないわよ? 今なら、全開の能力を使えるわけだもの……」

雪歩「…………」スッ

千早「……なくなってしまった決勝戦の始まりね──」

『如月千早様が死亡しました』

伊織「……!」ギリッ

やよい「伊織ちゃん……」

伊織(……千早の死は無駄にはしないわ……)

やよい「……! 伊織ちゃん、あれ!」

伊織「……!」

真美「いおりん!」

亜美「やよいっち!」

やよい「真美! 亜美!」

伊織「再開を喜ぶのは後よ! 後ろから雪歩が追って来てるわ!」

真美「……ふーん」

伊織「『ふーん』ってあんた……」

亜美「ねーいおりん、亜美達はあっちから来たんだ……だから、いおりん達はこっちの横道に行きなよ」

真美「多分、みんなと会えると思うよ?」

伊織「……あんたらも、死ぬつもりなの……?」

真美「まあねー」

亜美「でもでも!ただで死ぬ亜美達じゃないよ?」

やよい「どういうこと?」

真美「聞いて驚け!」

亜美「亜美は真美を増やして、真美軍団を作る!」

真美「そして真美軍団はゆきぴょんと戦って死ぬ! それによって!」

亜美 真美「「不死の真美軍団ができあがるのだー!!」」

やよい「!」

伊織「……面白いアイデアね」

真美「でしょでしょ?」

亜美「この作戦で、いおりんが皆と合流するくらいの時間は稼げるっしょ!」

真美「いやいや! もしかするとゆきぴょんなんか倒しちゃって、今度は不死の真美軍団が敵になっちゃうかもよ~?」

伊織「ぜひそうしてもらいたいわ。そしたら、この伊織ちゃんが全員片づけてあげるから」

やよい「……伊織ちゃん、そろそろ……」

伊織「……そうね」

伊織「じゃあね! あんた達、言ったからにはちゃんと、私が皆と合流する時間をとりなさいよ!?」

真美「任せてよ!」

亜美「じゃあねいおりん! やよいっち!」

やよい「……うん!」タッ

伊織「…………」ダッ

ザッザッ……

真美「さてさて、そろそろ準備を開始しますかな? 亜美隊員!」

亜美「そだね! それでは早速準備に取りかかります! 真美隊長!」

雪歩「…………」ザッザッ

亜美「…………」

亜美(うわ……ワンピースが赤黒くなってるよ……)

真美「…………」

真美(ゆきぴょん……ゲームを楽しむ気持ちがあれば勝てるって言ったよね? あれは嘘だよ)

雪歩「…………」ピタ

真美(まあ、完全に嘘ってわけでもないと思うけどさ。……ごめんね? 真美にもよく分からないんだ)

真美(だから、帰ったら『ゲームに勝つ方法』を考えようよ。……真美も付き合ってあげるから、一緒に考えよ?)

雪歩「…………」スッ

……………
…………
………

『双海真美様と双海亜美様が死亡しました』

あずさ「……真美ちゃん、亜美ちゃん……」

律子「……でも、お陰でみんなが集まることができました」

伊織「これからどうするのよ?」

P「……雪歩が来るのを待つ」

伊織「待ってからどうするのって言ってんのよ!」

美希「ん~、でこちゃんうるさいの……」

響「そうだぞ? ここ、音が響きやすいんだから……」

貴音「響……今は、千早はいませんよ?」

響「別にギャグのつもりで言ったわけじゃないからな?」

真「……でも、実際どうするんですか?」

社長「チーム分けなんて悠長なことは言ってられないと分かったからね」

小鳥「全員で襲いかかるのよ」

やよい「全員で……」

P「そうだ。全員で襲いかかって、乱闘になってる間に、隙を見て伊織が雪歩に触れるんだ」

小鳥「満員電車で痴漢するのと一緒よ。どさくさ紛れに雪歩ちゃんを撫で回──」

律子「そういうわけだから、みんな……いいわね?」

美希「ねえ律子……さん。あずさはどうするの?」

律子「あずささんの能力は、この状況だとちょっと使いにくいので……あずささんはできるだけ伊織を隠すようにしていてもらえますか?」

あずさ「はい~」

響「……貴音、どうしたんさー?」

貴音「……そろそろです」

ザッザッ

雪歩「…………」

伊織(来たわね……!)

あずさ「!」スス…

P「行くぞ雪歩! 『雷撃執行(マーダートリック)』!」ヒュボッ!

雪歩「…………」シュン

P「!」

雪歩「…………」ドスッ

P「……や、やっぱりはやい……な」

雪歩「…………」スパァン!

律子「く、首を……」

真「くらえ雪歩! 『焚刑背理(パラドックスインフェルノ)』ッ!」ゴオッ

シュン

雪歩「…………」スパァン

律子「は、はやすぎる……! く、『共鳴少女(ハウリングオブジェクト)』──」

スパァン

美希「『ダンシングインフェ──」スパァン

貴音「『のいじーわー──」スパァン

響「『グロテスク──」スパァン

伊織(そ、そんな……! 能力を使う前に……!)

やよい「『サイレント──」スパァン

伊織「やよいっ!」

あずさ「い、伊織ちゃん……!」

雪歩「…………」ギロッ

伊織「あ……」

雪歩「…………」シュ─

ズバババッ!

雪歩「!?」ドバッ 

社長「……こういう場合は、声を出すべきではない。密かに能力を使うべきだ……」

社長(……もっとも、足止めにしかならんがね)

雪歩「……!」シュン

スパァン

伊織(社長まで……! )

伊織「駄目よ……! こんなの! たとえ手を触れても能力を使う前に殺される!」

雪歩「…………」シュン

あずさ「伊織ちゃん──」

スパァン

伊織「あ……ああ……」ペタン

雪歩「…………」ザッザッ

伊織「お、お願い! 待って!」

雪歩「…………」ピタ

伊織「や、やだぁ! 助け──」

雪歩「…………」スッ─

ガシッ

ドガァン!

雪歩「!?」ブシュ

伊織(かかったわね! 私を立たせようとしたんでしょうけど! 服じゃなくて首を掴むべきだったわ!)

伊織(あの時春香は! ただ庇ったわけじゃない! 私の『服』に弾丸を仕込んでいた!)

ガシッ

雪歩「!」

伊織(だからこそ!この隙が出来た……! くらえッ!)

伊織「『漆黒脳髄(ダークサイドパラダイス)』ッ!」

雪歩「っ!」

雪歩「…………」

伊織「…………」

雪歩「…………」

伊織「……あ、あら?」

雪歩「…………」スッ

伊織「ちょっ!ちょっと待──」

スパァン

雪歩「…………」

『……P様、菊地真様、秋月律子様、星井美希様、四条貴音様、我那覇響様、高槻やよい様、高木社長、三浦あずさ様、そして水瀬伊織様が、死亡しました』

雪歩「…………」ニコニコ

雪歩「…………」ピタ

雪歩「……?」

雪歩「…………」クルッ

小鳥「あ……ば、ばれちゃった……?」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「…………」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥(このまま行けば……間違いなく、待っているのは死……!)

小鳥(……覚悟を決めるのよ! せめて、やれることをやり尽くしてから死になさいッ!)

小鳥「……ねえ、雪歩ちゃん。なんであなたがこんなふうになってるか……知りたい?」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「う……じゃあ、このゲームの仕組みとか、どう!?」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「じゃあ、今日の真ちゃんのパンツの色とかは!?」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「分かった! プロデューサーさんのパンツの柄ね!?」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「しょうがないわね……大サービス! プロデューサーさんの住所!」

雪歩「…………」

雪歩「…………」ザッザッ

小鳥「うう……じゃあ……! じゃあ……!」

雪歩「…………」ピタ

小鳥「じゃあ! あなたが響ちゃんに負けた理由は!?」

雪歩「……!」

小鳥(かかった……!?)

小鳥「どう……?知りたい?」

雪歩「…………」

小鳥「知りたい……のかしら?」

雪歩「…………」

小鳥「じゃあ、教えてあげるわ……実は、全部スタッフのせいなの」

雪歩「……?」

小鳥「ここのスタッフは酷いスタッフなのよ……? 私達がモニターに選ばれたのも、実はここのスタッフが若い娘の殺し合いを見たいって考えたからなの!」

雪歩「!?」

小鳥「それでね? スタッフは私達につける能力を自由に選べるんだけど……スタッフの中にね? 雪歩ちゃんが嫌いな人がいるの」

雪歩「……!」

小鳥「雪歩ちゃんが負けた理由は! そのスタッフが!雪歩ちゃんを負けさせようと思って! 与える能力とか試合の組み合わせを! 全部全部……」

小鳥「操作したからなのよッ!」

雪歩「…………」

小鳥「ところでなんで私がここにいると思う?」

雪歩「……?」

小鳥「私ね? そのスタッフから雪歩ちゃんを元に戻してくれって、頼まれたの」

雪歩「…………」

小鳥「だから実は、私の能力はもう『時間停止』じゃないの」

小鳥「私の能力は『因果(アイミーマイン)』! ありとあらゆるものを! 自由自在に操る能力ッ!」

雪歩「!? ……っ!」スパァン

小鳥(あ……首、切られちゃった……)

小鳥(……ふふ、でも……雪歩ちゃんは慌ててた……ねえ、なんで?)

小鳥(なんで慌ててたのかしら? 私の『嘘』の能力に恐れをなしたから?)

小鳥(……つまり、それって──)

雪歩「…………」

小鳥「」

雪歩「…………」チョンチョン

小鳥「」

雪歩「…………」ホッ

小鳥「雪歩ちゃん!」グリン!

雪歩「!?」

グチャッ

ガバッ

小鳥「ねえ雪歩ちゃん? あなた、さっき──『信じた』わよね?」

雪歩「??」

小鳥「私の能力を!『真実』だと! 『信じた』わよね!」

雪歩「???」

小鳥(私の言ったことを相手が信じたその瞬間! 私の『嘘』は! 『真実』に変わる!)

小鳥(それが私の本当の能力! 『抽象蓮華(ロジカルランチャー)』ッ!)

小鳥「……さあ、雪歩ちゃん。あなたを今から元に戻すわ……」

雪歩「……ッ!」ブン

バキィッ!

小鳥「無駄よ……無駄無駄。あなたの能力は効かないわ」

雪歩「……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!」

小鳥「もう遅いわ! 『因果(アイミーマイン)』ッ!」

パアアアア……

…………
……………
………………

雪歩「……う」

雪歩(……どこ、ここ……ああ、カプセルの中か……)ガチャ

雪歩「私は、確か……」

雪歩(ああ……そうだった。響ちゃんに負けて、自分に能力使って、挙げ句の果てに──音無さんに、負けたんだった……)

雪歩「なんで、だろうね……?」

雪歩「足りないのは何?『運』? 『覚悟』? 『能力』?」

雪歩「……分からないよ」

春香「分からなくて……いいんじゃない?」

雪歩「! ……春香ちゃん」

春香「私は、確かに前回優勝したよ? でも、雪歩ほど強い能力でもなかったし、大した覚悟なんてなかったよ?」

雪歩「……じゃあ、やっぱり運?」

春香「……そうかも、ね。でもさ……負けた時に『運が悪いから負けた』って、普通思う?」

雪歩「…………」

春香「私は思わないな」

雪歩「…………」

春香「ねえ雪歩。勝敗なんて、ほんの些細なきっかけで変わるものだよ。もちろん、運があるにこしたことはないよ? でも、なくても勝てる」

雪歩「…………」

春香「考えなくてもいいんだよ。ただ、その時その時で自分の精一杯を出し切れば」

春香「そうすれば、いつか必ず勝てる」

雪歩「……いつかじゃやだよ。今勝ちたいの」

春香「甘えないでよ」

雪歩「……!」

春香「勝ちたいのは雪歩だけじゃない、私も勝ちたい、皆も勝ちたい」

春香「なのに何で、雪歩だけが絶対に勝てる方法を見つけられると思うの? 私達はそんなに雪歩より劣ってるの?」

雪歩「…………」

春香「勝ったり負けたりは当たり前だよ……そこの所、勘違いしないで」

雪歩「でも! 勝てなきゃ、プロデューサーが……!」

春香「……はぁ。あのね雪歩、社長は『交際を認める』とは言ったけど、交際相手を決める権利はプロデューサーにあるんだよ?」

雪歩「!」

春香「だから、そんなに熱くならなくていいの……ほら、行くよ? 皆待ってるから」

雪歩「…………うん!」

春香(あーあ……これ、教えない方が楽なんだけどなぁ……)

春香(……まあ、いいか)

モニタールーム

ガチャ

バキッ!

雪歩「い、痛……!?」

伊織「ふん! 迷惑かけた罰よ!……で、もういいの?」

雪歩「うん……ごめんね?」

伊織「まったく……」

真美「ゆきぴょん……」

雪歩「……真美ちゃん」

真美「あのさ……」

雪歩「大丈夫だよ。別に真美ちゃんのこと、恨んでたりはしてないから」

真美「……ほんとに?」

雪歩「うん」

真美「……そっか。あのさゆきぴょん。帰ったら、反省会しない?」

雪歩「反省会?」

真美「うん。何で負けたか、どこが悪かったのか、ふたりで考えるんだ……次、勝つために」

雪歩「……ありがとう」

……………
…………
………

スタッフ「えー、それでは今回の優勝者は萩原雪歩様です! 貴重なデータをくださった萩原様に拍手ー!」

パチパチパチパチ


雪歩「あ……社長!」

社長「む? なんだね?」

雪歩「あの……もし、優勝回数が同じ人が複数人でたら……どうするんですか?」

社長「もちろん、全員なし! ……と言いたいがね。今回のようなことが起きる可能性は減らしておきたい。特別に複数人いても、それぞれにご褒美をあげることにしよう」

雪歩「……ほ、本当ですかぁ?」

社長「うむ」

雪歩「や、やった……!」

雪歩(こうして、今回のテストプレイは終了しました)

雪歩(テストプレイはまだ続きますし、誰が優勝するかは分かりません)

雪歩(でも、私はこれからも頑張ります……それに、誰が優勝しても決して恨んだりしません)

雪歩(みんな大切な……仲間ですから)


伊織「…………」

亜美「どしたの? いおりん。元気ないよー?」

伊織「……なんでもないわよ」

春香「あー、大きい口叩いたくせに、人のあげたチャンス無駄にして負けた伊織だー」

伊織「うっさい! しょうがないでしょ!? まさか能力が効かないなんて思わないわよ!」

春香「結局伊織は口だけってことが証明されたね!」

伊織「見てなさいよ!? 絶対次回は優勝してやるわ!」

春香「はー……まーた大口叩いて……」

伊織「きーっ!!」

真美「あーあ……今回真美、能力的に全然楽しくなかったよ……」

P「俺もお前も、気づいたら試合終わってたりしてたからな……」

真美「……やっぱり能力も重要だよねー……」



響「納得いかないぞー……普通、あの試合は無効だろー?」

律子「はいはい、過ぎたことをグダグダ言わない」

響「ううー……」


千早「……あっちで真美達があんまり楽しくなかったとか言ってるけれど……」

やよい「私たちもあんまり楽しいものじゃありませんでしたよね……」

千早「ええ……私は特に」

やよい「千早さん、ビリリダマみたいでしたー」

貴音「……全体的に、前回よりも悲惨な負け方が多い気がします」

あずさ「なんだか、本当に殺し合いのゲームになりそうね~」

小鳥「むしろ、ボタンの決着の方が珍しいですもんねー」



真「……あんまりボク、見せ場なかったなぁ……」

美希「特攻してくる真クン、格好よかったよ?」

亜美「うんうん! とっても男らしかったYO!」

真「……それはそれで嫌だ」


社長(……ふむ。そろそろみんなのモチベーションがさがってきたようだね……何か、手をうたねばならないかな?)

これで終わります、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました

他に何か対戦形式ってありますかね? ちょっと自分じゃ思いつきませんので……

それとまた、どの試合が一番マシだったか教えていただければ嬉しいですね

春香 『装弾嗜虐(デモンカーニバル)』
物体や生物に銃弾を仕込む能力
銃弾を仕込まれた対象が何者かに触れられた時、触った相手に向けて弾が発射される。基本的に能動的な攻撃は難しい
銃弾の総体積が仕込む対象の体積を越えさえしなければ、何発でも仕込める

千早 『残滓(サイレンス)』
周囲の生物に、全く同じ部位から出血させる能力
自らも例外ではなく、自爆にも似た技
身長体格の似た相手と戦う際、勝敗はほぼギャンブル
いずれにせよ、最後には死体だけが残る

真 『焚刑背理(パラドックスインフェルノ)』
冷たい炎を出す能力
出力を上げれば上げるほど炎の温度は下がる
しかし絶対零度には達しない。絶対に

雪歩 『絶望侵犯(ショットガンスパイダー)』
負の感情を増幅させる能力
相手の不安や絶望などを増幅して自殺に追いこめる
『負の感情』なので、怒りや悲しみその他などを増幅させれば、響に勝てた可能性もあったことに本人が気づいたのは家に帰ってからだった

伊織 『漆黒脳髄(ダークサイドパラダイス)』
触れた相手を絶命させる
実はこの能力を使われた相手のアバターの脳は真っ黒になっている

やよい 『喪失幻想(サイレントミラージュ)』
相手に幻覚をおこさせる
受けた相手は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感以外にも平衡感覚などの様々な感覚を失う
最後には時間感覚を失い、意識だけとなって永遠の刹那を味わうことになる

亜美 『拡散(ドッペルゲンガー)』
対峙した相手の分身を作り出す
分身は、能力はおろかありとあらゆる面で同じであり、喋らないのと亜美の言いなりになることを覗けば本体と全く同じ
本体を倒してしばらくすると分身の内一体が喋りだすらしい

真美 『再殺劇場(ブラッディクーデター)』
ゾンビ化する能力
死ぬか意識を失うかした時ゾンビになる
ゾンビ化の間は一切本体の意識、記憶はない
再生能力があるが若干動きが遅く、またある程度バラバラにされたら戻らないという弱点も

三浦あずさ 『火焔旋律(メロディックジャベリン)』
音を鳴らすと炎が上がる空間を作り出す
空間は自分を中心にした球状なので、能力を使っている間は自身も喋れない
足音を鳴らすと靴が燃え、声を出すと口や喉が焼け、腹が鳴ると腹の中に火があがるというお互いかなり緊張する能力

律子 『共鳴少女(ハウリングオブジェクト)』
物体を振動させて壊す能力
自動でその物体の固有振動数に合わせてくれるので、本体はただ能力を使うだけでいい
若干破壊に時間がかかるのが難点

響 『暴風無惨(グロテスクリベリオン)』
風をおこす能力
シンプルな分、応用がきく中々いい能力
響は高速移動、浮遊、竜巻発生などを行った
近接格闘の際の使い方が分からなかった響だが、もしこれが亜美真美だったらなら間違いなく『神砂嵐』を使っていただろう

貴音 『硝煙狂乱(ノイジーワールド)』
体から弾丸を発射する能力
どこからでも出せるので、文字通り全方位射撃ができる
暗殺に便利

美希 『焚刑電波(ダンシングインフェルノ)』
電磁波で相手を温める能力
まさしく人間電子レンジ
デフォルトは全方位への発射なので亜美の分身は別に亜美を攻撃しようとしたわけではなかった

小鳥 『抽象蓮華(ロジカルランチャー)』
雄弁になれる能力
スタッフの間であまりに地味だという声があがったため、後に相手に信じさせた『嘘』を『真実』にする能力が付与された

『世界(ザ・ワールド)』
説明不要。スタンド像がないだけで、まんまあれ

『因果(アイミーマイン)』
元々原因と結果を自由に変化させる能力。名前だけ借りられた
例えば、『相手にボタンを押される』という原因は『自らの敗北』という結果をおこす。
しかしこの能力を使えば『相手にボタンを押される』という原因から『相手の敗北』という結果をおこせる

P 『雷撃執行(マーダートリック)』
空中で魚雷を発射する能力

社長 『不在連斬(ミッドナイトジャンキー)』
特殊な剣を作り出す能力
この剣は『切る』という過程がなく、『切った』という結果だけを残す
ちなみに二回以上切る気がないと能力が使えない

以上能力の説明です
風邪のひきはじめにスレを立てて、まだ治っていないのでぼーっとしていて忘れてました

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