男「小さな魔法使いの学園生活」(25)

本の世界は面白い。科学という夢見がちなものが発達していて、スイッチをひねれば火が出たり、蛇口をひねれば、誰の力も借りずに水が出てくるらしい。科学や化学など、そんなものが実際あったらどれだけ便利だろうか。

しかし本の世界は本。現実ではない。火を出そうと思えば、火の精霊石を使わないといけないし、蛇口から水を出すのは、ウィンディーネのおかげだ。

俺が好きな本の中には人間がたくさんいるが、人間なんて今や絶滅危惧種で、どこの国でも保護されている。ちなみに俺は人間で、政府から保護されている。

まぁ、つまりありえないからこそ面白い。新刊が出たら睡眠時間を削ってでも読んでしまうくらいに。

???「起きろー。朝だぞー」

覚醒と睡眠の狭間でうとうとしていると、毎朝起こしに来るおせっかいな幼馴染の声が聞こえた。

家事全般が得意で、成績優秀、運動だって得意でしかもモテる。

男「寝かせてくれ、幼馴染」

幼馴染「俺の目が黒いうちは寝坊で遅刻なんてさせねぇよ」

しかし男だ。

漫画や小説のように、美人で、家庭的な女の子が幼馴染でいてくれるはずがない。

悲しい事にこれは現実なのだ。

幼馴染「また本を読んでたのか。睡眠不足は体に悪いぞ。お前は人間なんだからもっと体に気を使えって」

口うるさい幼馴染の小言で、大親友の睡魔と別れを告げ、完全に目が覚めた。

眠いが、もう眠れそうにない。しかたないが起きるとしよう。

幼馴染「お、起きたか。さっさと着替えろ。それとも俺が着替えさそうか?」

男「ガキのころじゃないんだから、もう一人で着替えれるって」

幼馴染「そりゃ、残念」

そういって、幼馴染が部屋から出ていく。たまにあっち系っぽい発言があるが、本人は別にそっちの気はないらしい。それでも薄ら寒いものがある。

男「あー。着替えるか」

一週間のうち5回袖を通す制服は、入学してから3か月もたてば体になじむ。あとで小言を言われるだろうが、面倒だったので寝間着をベッドの上に投げ、着替えた。

適当に本を鞄に詰め、部屋から出ると一回からいい匂いがした。幼馴染が朝ご飯をつくっていたらしい。

腹はいい感じに減っている。ありがたくいただくとしよう。

???「よう。今日も目つき悪いな!」

朝から聞くには大きすぎる声がリビングに入ると同時に聞こえる。そのスピーカーのような男は、雪男。昔からの友人の一人だ。

男「ていうかなんでお前まで飯食ってんだよ」

雪男「細かい事は気にするな」

テーブルを見ると、焼き魚、豆腐、ご飯、味噌汁、のり、つけもの。というこれぞ日本の朝ご飯代表と言えそうなメニューが並んでいた。幼馴染はいったい何時から俺の家にいたんだろうか。

雪男「おかわりだ!!」

幼馴染「よく食べるな。相変わらず」

幼馴染が呆れながら空いた茶碗にご飯を盛る。昨日の夜みた炊飯器にはあんなにご飯はなかったはずだ。だから何時からいたんだ幼馴染。

テレビをつける。幼馴染が行儀が悪いと言っていたが、無視をし毎朝やっているアニメをつける。

雪男「これ、もう何年やってるんだろうな!」

幼馴染「俺達が小さいころからあったよな」

テレビの中では、ヒーローがなんたら火薬爆弾という道具で敵を倒していた。

毎度良くこんなこと考えつくなと感心する。脚本家の頭の中には別の世界の法則でもあるのだろうか。

アニメが終わり、エンディングが流れる。気が付けば時間は遅刻ギリギリ。走っていかないと危ないだろう。

雪男「ほら、さっさと行くぞ!!」

幼馴染「ハンカチとティッシュもったか?」

男「持ってるよ」

雪男「急げ急げ!!!!」

男「お前の声は近所迷惑なんだよ!!」

どたばたしながら外に出る。

空は青く、太陽は今日も眩しかった。

男「自転車、買おうかな」ぜはーっ

雪男「なんだ!! 情けないな!! 体を鍛えろ!!」

幼馴染「体力バカの、お前とは違う、んだよ」はぁ、はぁ

校門まではあと数百メートル。時間は一分。チャイムが鳴る前に学校内へ入ればセーフだ。

しかしギリギリ。体力バカはともかく俺達は危ない。これは強行突破をしなくてはならないだろうか。

雪男「よっしゃ、間に合うぜ!!!」

あと校門までは十メートルほど。担当が門を閉めようとしているが強行突破をさせてもらおう。

男「雪男!!」

雪男「おう!!」

雪男がバーレーのレシーブの態勢を取る。そこに飛び乗って、雪男が腕を跳ね上げる。そして校門の中へ。

???「はぁっ!!」ガッ

入ろうと思った瞬間、何か硬いもので殴り飛ばされ、門外へ落ちた。受け身を取り損ね、悶絶する。同じように飛んで行った幼馴染も同じく迎撃されていた。

???「ちゃんと門から入れ。貴様ら!」

俺達を殴り飛ばした声の主は、小柄な体に似合わない大きな刀。額に生えた日本の角。そして腕に巻かれた風紀委員長の腕章。

風紀委員長。鬼娘だった。

鬼娘「今度同じことがあったら、反省文だからな」

幼馴染「心得た」

雪男「反省文か!」

男「ほら、さっさと行くぞ」

鬼娘に捕まり、たっぷりしぼられるとすでにホームルームが終わろうとしていた。

急がないと一時限目に遅刻する。

急いで教室に入り、自分の席に座る。

隣には外を見つめている狐の妖弧がいた。俺と同じく目つきが悪く、特になにもしてないのに不良扱いされている。別にスケバンとかではなく、ふつうの女子生徒だ。

俺と並ぶとすさまじく不良オーラが出ているらしく、あまりこの席周辺に生徒は近寄ろうとしない。なぜだ。

妖孤「休みかと思った」

妖孤が外を見ながら話しかけてくる。クラスの中でも話し相手が俺くらいらしく、こうやってちょくちょく話しかけてくる。しかし男女の浮いた話ではない。ただの世間話だ。

男「ん。あぁ、風紀委員長にしぼられてた」

妖孤「早めに家を出ればいいだけだろ」

ごもっともだ。妖孤が遅刻欠席をしている所は見たことないので、案外優等生なのかもしれない。

妖孤と適当に二三言葉を交わすとチャイムが鳴った。一時限目はなんだっただろうかと机を漁りながら考えていると、妖孤が、魔法史と小さく教えてくれた。

魔法史の教科書は分厚い。しかも資料集まであるので、置き勉をする人にとっての天敵だ。

担任「席につけ。授業を始める」

担任が入ってくる。担任は俺と一緒で人間。ちなみにこの学園には生徒の数は1000人越え、教師の数は100人を超えるというのに人間は3人しかいない、しかも男は俺だけだ。これでも多い方なのだから人間の少なさを感じさせる。

生徒「先生! 授業中にタバコを吸うのはいけないと思います」

担任「お前が空気無しで生きれるようになったらやめてやるよ。教科書36ページを開け」

相変わらずひどい教師だなぁ、と思いつつ教科書を開く。教科書には魔法と魔術と書いてあった。

担任「この世界には魔法と魔術があるが、その違いを簡単に説明すると、魔術法則に当てはまらないものを基本的に魔法と呼ぶ。運の良い事に、希少である魔法使いがこのクラスにはいるな。男の魔法はなんだっけな」

ぼんやりしていたのでいきなり名指しで呼ばれて、驚く。なんの話を聞いていたのかわからずうろたえると妖孤が小さく教えてくれた。

男「えっと《錬金術》です」

担任「あぁ、そうそう。なんでも他の物質に変えてしまう。なんだかよく分からん魔法だったな。実践してみろ」

頭の中で飴玉を思い浮かべる。手の平の空間が少し歪み飴玉が現れた。理屈とかそういうのはわからない。ただ飴玉欲しいなぁ、とか思ったらできるだけだ。

空気を飴玉に変えているらしいが、石とかそういうものでもできる。物によってはそれに対応するものを使わないとできない錬金もあるらしい。そんなものを作ったことはないのでわからないが。

一見すごいと思われるかもしれないが、サイズが手のひらの大きさぐらいなのであんまりすごいものは作れない。金とかお金とかの錬金は国から止められている。しかもこれをするたびに軽くカロリーを使う。結構不便な能力だ。

男「妖孤、やるよ」

妖孤「変なもんじゃないだろうな」

男「わからん」

妖孤「まぁ。ありがとな」

担任「いちゃつくな根性焼きするぞガキ共」

男「いちゃついてねぇ!!」

雪男「なんだ! 男は妖孤と付き合ってたのか!!」

幼馴染「お兄さん、なんだかさびしいな」

男「だから違うって!!」

担任「シャラップ!!」

ちくしょう、なんなんだよ。この担任。

担任「そして、アルカエラムは、魔動力を効率化する装置を作り上げて、これで工業的な生産スピードは3倍もアップしたらしい。この魔道機構のことをリグラム機関と呼ぶ。テストに出るから覚えておけよ」

担任「さて、このリグラム機関のリグラムとは何の意味かわかるやつは。そうだな影女。わかるか?」

担任が影女を指名する。影女はいつも黒い制服を着ている。影を操る種族らしい。あまりかかわりがないので詳しくないが、成績優秀で一年生中5位以内に入っているようだ。ちなみに幼馴染は大体10位以内にいる。

影女「アルカエラムの嫁、リグラム・レインロードの名をとって名づけられました。教科書に載るのはアルカエラムだけですが、彼女も賞を受賞しています」

さらさらと淀みなく答える。リグラムがアルカエラムの嫁なんて記述は教科書にも参考書にもない。つまり、知識として知っていたらしい。博識だな。

妖孤「ちなみにアルカエラムの息子も受賞しているぞ」ぼそっ

どうやら、もう一人博識なやつがいた。そういえば妖孤の順位は知らない。今度聞いてみることにしよう。

担任「さて次の産業革命の立役者だが」

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなる。担任は次の時間続きやるからといって、終わりのあいさつをせずにそのまま出て行った。相変わらずの不良教師である。なんで苦情が入らないのか分からない。

雪男「飯だー!!」

国語教師「まだ終わってない!!」

チャイムがなった瞬間に雪男が大声でそう叫ぶ。たしか時間的には昼休憩だが、まだ終わりのあいさつをしていない。

見ていて恥ずかしくなる友人をもったものだ。そう重箱のお弁当を出している雪男を見てそう思う。

国語教師「それでは授業を終わる。礼」

国語教師が教室から出るととたんに騒がしくなる。購買に走って人気商品を手に入れようとするもの、グループで固まって食べるもの、一人で食べるもの、さまざまだ。ちなみに俺は幼馴染と雪男。あとはその他もろもろが加わって食べる。妖孤は基本一人で食べているが、後で来るであろう友人にちょくちょくこっちのグループに引っ張られている。

???「ふははー!! 隙ありっ!!」

妖孤「きゃんっ!」

ほら現れた。うわさをすればなんとやら。元気なゾンビ娘。イメージ的に相反するものかもしれないが、本当にこいつは元気なゾンビ娘なのだ。いたずら好きで良く風紀委員と追いかけっこをしているところを見る。なにかしらと妖孤にかまうのが好きらしく、昼になると妖孤を引きずってこっちのグループにやってくる。妖孤が勝った日は来ないので、大体ゾンビ娘の勝率は3割。

妖孤「だぁあああ!! うぜぇ!!」

ゾン娘「たわばっ!」

ゾンビ娘が妖孤に投げ飛ばされてこっちへ飛んでくる。

男「せいっ」

ゾン娘「なして!?」

妖孤「うわっ! こっちへ投げんじゃねぇ!!」

なので投げ返してみた。ゾンビ娘は妖孤にぶつかって、どさりと地面に落ちた。

妖孤「いたた………」

ゾン娘「よし、勝利!!」

しかし何事もなかったかのようにすくっと立ち上がる。さすがゾンビ娘。タフだ。

どうやらゾンビ娘が勝ったらしい。妖孤を引きずってこっちへやってきた。

ゾン娘「おっすおっす! ゾンビ娘ちゃん。、只今帰還ですぜ!」

妖孤「裏切ったな」

じとーっと妖孤が睨んで来る。しかし別に怖くないということは知ってるので流した。

幼馴染「今日も元気だな」

ゾン娘「たははー。死んでるのに元気いっぱいですよ!」

雪男「元気なのはいいことだな!!」

やはりこの二人がそろうとうるさいな。妖孤と俺が耳をふさいでいるともう一人のメンバーがやってきた。

狼娘「やっぱりこの二人はうるさいなぁ。ボク、耳いいから、キーンッてするよ」

狼娘、ワーウルフの少女で頭の上にある耳がぴこぴこ動いている。一回ふさふさの尻尾を触ったらセクハラとして殴られた。だめらしい。性感帯なのだろうか。

ゾン娘「狼娘ちゃんおっすおっす!! 元気ですか!?」

狼娘「ボクは君達が静かにしてくれたら元気になるよ」

ゾン娘「まぁまぁ、たまねぎあげますから」

狼娘「毒だよ。ボクを殺す気!?」

雪男「元気があればなんとかなるんじゃねぇか!?」

狼娘「じゃあ君は元気があれば屋上から飛び降りても大丈夫なんだね」

雪男「おぉ! それはやったことなかったな。うぉおぉおおお!! 燃えるぜぇえええ!!」

雪男が走って出て行った。

男「おい」

狼娘「雪男があんなに馬鹿だと思ってなかったんだよ。ボクは悪くないよ」

外からうおわぁああああぁああ!! という悲鳴が聞こえて、何か重いものが落ちる音がした。その後根性ーっ!と聞こえたのでどうやら生きているらしい。

男「よかったな前科者にならなかったぞ」

狼娘「よかったけど、雪男の種族ってそんなに防御力高いの?」

男「姉は普通の人だぞ。美人目の人だった」

ゾン娘「突然変異ってやつだね!」

男「げっ。ブロッコリー………」

幼馴染「体にいいんだから食べなさい」

ゾン娘「幼馴染って男のお母さんみたいだねー」

男「だってブロッコリーって森みたいな味するだろ」

口にいれた瞬間青臭さが広がるし、あの舌触りが独特でなんだかいやだし、あと見た目がどう見ても食べ物じゃない。

妖孤「森食べたことあるのかよ」

雪男「やっぱり元気があれば屋上から飛び降りても大丈夫だったよ!」

男「良かったな。次は時計塔からだ」

食べ終わり、なんとなく暇だったのでかばんからトランプを取り出す。

男「真剣衰弱でもするか」サッ サッ サッ

妖孤「私まだ食べてるんだけどな」もぐもぐ

狼娘「男って良く訳の分からない行動するよね。人間って皆そうなのかな。担任先生だってそうだし」もぐもぐ

失敬な。これでも一般ピーポーのくくりの範疇にいるというのに。嫌がらせに狼娘と妖孤の弁当箱の近くに重点的にトランプを設置する。

幼馴染「それ、ガン牌トランプだろ」

狼娘「しかもいんちきって」

男「そうだないんちきはいけないな」

反省したので妖孤の弁当をトランプピラミッドで囲む。繊細かつ大胆に。それがトランプを組み立てる時の秘訣。

妖孤「おい………おい!!」

ゾン娘「意味がない分わたしのイタズラよりもたちが悪いよねぇ」

男「出来た! 三次元構造ピラミッドだ!!」

妖孤「なにしてんだよ………すげぇ!!」

狼娘「無駄な才能だね」

昼休憩が終わり、次の時間は体育なので着替える。ほかのやつの話を聞くところによるとほかのクラスと合同でしかも男女混合らしい。

男「珍しいこともあるもんだな」

雪男「なんか体育教師のあいつが倒れたみたいだぜ」

幼馴染「熱中症かね。気をつけろよ。お前ら」

雪男「あー。さすがの俺も熱には弱いからな」

男「種族の因果はしかたないだろ。ほらさっさと行くぞ」

雪男「着替えるの相変わらず早いな」

そりゃあ人間だから着替えるのは早い。がたいがやたらといい雪男はともかく、鵺で翼とか尻尾とかいろいろごちゃごちゃしてる幼馴染に比べれば着替えるのは格段に早い。

男「ふわぁ。ねむ………」

外では他の体育教師が何か命令をしているらしい。出来ることならサボって保健室で寝ていたいが幼馴染が許しそうにないのであきらめて出ることにする。

男「ままならんなぁ」

外では珍しい女子の体操服が見れる。2組と5組が合同だから、狼娘とゾンビ娘もいるだろう。

男「そういえば魔族娘もいたなぁ」

魔族娘。一回プリントをぶちまけるというベタな所に遭遇して、助けた結果、会えば話をするぐらいには仲良くなった。

なんだか知り合いが勢ぞろいだ。これなら少しはましな体育の時間になるだろう。

男「テンションあがってきたー」

幼馴染「抑揚のない声で言われても上がってるように見えない」

男「言うほどあがってないからな」

雪男「おっしゃぁあああ!! 今日はなんだぁあああ!?」

男「だってあれとドッヂとかバスケとかしてみろよ。死ぬって」

幼馴染「………俺達、よく生きてるよな」

小さなころから暴走機関車と一緒にすごしているようなもんだからな。普段はともかく柔道とかだと瞬殺される姿しか想像できない。

魔族娘「あ、男くん」

近づくと俺に気づいて華のように笑う。魔族なんて言葉から想像できないくらいにぽわぽわしてる少女それが魔族娘だ。魔族は魔力が高く、その扱いに長けていることで有名なんだが、こいつは魔力自体は高いものの、その扱いが人間の俺よりも下手だ。性格が影響しているのだろうか。

男「よう。元気か?」

魔族娘「元気ですよ~」ニパッ

男「一人なのか?」

魔族娘「えへへ。一人なんです」

男「そうか、なら」

雪男「男ぉおおぉおおお!! 今日好きなことして良いらしいぜぇええ!! 遊ぼうぜぇえええ!!」

男「あいつと一緒でいいなら、なんだが。一緒にやるか?」

魔族娘「………私と、ですか?」

自分を指差しきょとんとした顔をする魔族娘。この状況で違うというのなら一体俺は何を見ているのだろうか。

魔族娘「じゃ、じゃあもう一人呼んできていいですか?」

男「いいけど」

魔族娘「じゃあ待っててくださいね~」

とてとてと走り去っていく魔族娘。そういえば魔族娘の友達なんて始めてみるかもしれない。俺が見るときもいっつも一人だし。もしかして友達いないのだろうか。今度確かめてみよう。

死神娘「………」

魔族娘「じゃじゃ~ん。友達の死神娘ちゃんですよ」

魔族娘が連れてきたのは白い髪、白い肌。死神という種族は聞いたことがあるが、どんなものかは詳しく知らない。

目の前にいる少女はなぜだかできるだけ俺と目を合わせないようにしていた。そんなに目つきが悪いだろうか。

男「あー。俺は男だ。よろしく」

手を差し出す。しかし死神娘はそれをよけて魔族娘の後ろに隠れた。しかし身長が150にぎりぎりいかない魔族娘なので隠れられてない。

魔族娘「死神娘ちゃんはちょっと人見知りなのです」

そうか人見知りなのか。なら仕方ないが、無理やり俺らと一緒に遊ばせてもいいものなのだろうか。そう考えていると後ろからいつものメンバーの声が聞こえた。

雪男「おぉおおおい!!」

死神娘「………っ!」ビクッ

よりによって雪男が猛ダッシュで近づいてきていた。人見知りには耐え難い光景だろう。そうじゃなくても軽く恐怖を覚えるだろうに。魔族娘の顔が少しひきつっている。

とりあえず魔族娘と死神娘の目の前に立ちできるだけあいつが視界に入らないようにする。

雪男「何するんだ!? サッカーか!? バスケか!? フェザーボールか!?」

男「おい、大きな声出すな。こいつらが怯えるだろ。ただでさえお前威圧感半端ないんだから」

雪男「そうか! すまん!!」

幼馴染「おい。声が大きい。ごめんな、こいつうるさくて。えっと君はたしか魔族娘ちゃんだったな」

魔族娘「は、はい。魔族娘です~」

幼馴染「ったく、男も隅に置けねぇなぁ。こいつ~」

男「違うから」

ゾン娘「あれ、死神娘ちんもいるんだね」

狼娘「………そう、なんだ」

狼娘の歯切れが妙に悪い。死神娘がどうかしたのだろうか。

妖弧「なんでもいいからさっさとしようぜ。何するんだよ?」

幼馴染「―――スーパー鬼ごっこだ」

狼娘「スーパー鬼ごっこだなんて遊び、ボク知らないんですけど」

男「気にすんな。スーパーはこいつの口癖だから」

理由はスーパーだとなんだか凄いからという良く分からない理由だ。つまりスーパー鬼ごっことはただの鬼ごっこに他ならない。

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