れんげ「足なんて飾りなのんな」 (49)

夏見「随分と遠くまできちゃったなー」

夏見「はぁ、面白そうな場所って案外みつからないもんだなぁ」

夏見「一人で来て正解だったよ。結構危なそうな所もあったし………姉ちゃんやれんちょん連れてきたら大変なことになってたかも」

夏見「って、もう暗くなってきそうだから帰ろっと……あ、ここ確か大きな溝あったんだよね。気を付けないと、よっと」ピョンッ

ズルッ

夏見「あっ」

夏見「イタタタ……」

夏見「うわぁ……溝にずっぽし嵌まっちゃったよ」

夏見「あははっ、でも夏見ちゃん発育良くてよかったぁ、なんとかうまい具合に引っ掛かって深いとこまで落ちなくてすんだよ」

夏見「姉ちゃんだったらストーンと落ちていっちゃったかもね……さて」

グッ

夏見「あれ?」

グッグッ

夏見「……で、出れない」

夏海「……どうなってんのこれ」

夏海「足が完全に挟まってて動かない………」

夏海「………どうしよう、こんな所誰も来るわけないし」

夏海「……………」

夏海「うち、死んじゃうのかな………」

ポツ ポツ

夏海「あっ、雨だ……」

ポツ ポツ ポツ ザー

夏海「…………」





夏海「寒い……」ガタガタガタガ

夏海「……もっと良い子にしてればよかった」

ザー

夏海「……勉強もちゃんとして」

ザー

夏海「母ちゃんごめんね……悪い子で………」

夏海「………」

夏海「……」

夏海「…」

…ツミ…ナツミ……

夏海(姉ちゃんの声が聴こえる……はははっ……幻聴ってやつかな?)

小鞠「夏海!しっかりして!夏海!」

夏海「……ねえ……ちゃん?」

小鞠「夏海!お兄ちゃん、夏海目覚ましたよ!」

卓「………」

小鞠「ショック?なにそれ?夏海大丈夫なんだよね?」

夏海「なんで……姉ちゃん達が……」

小鞠「大丈夫だよ!すぐに救急車くるのんな!」

夏海(……姉ちゃんの訛り久しぶりに聞いた気がする……なんか安心したら眠くなってきた……)

小鞠「寒くない!?夏海?寝ちゃダメだよ!」

夏海「………んっ」

小鞠「夏海?」

夏海「………眩しい」

小鞠「お母さん!夏海が目をさましたよ!」

雪子「夏海……良かった……もう…目を覚まさないかと……」ポロポロ

夏海「母ちゃん、なんで泣いてるの?」

小鞠「良かったぁ……良かったよぉ……」ポロポロ

夏海「姉ちゃんまで……ってここ何処?」グッ

小鞠「だめっ、まだ寝てないと!」

夏海「この布団重いなぁ」バサッ

夏海「………えっ?」

夏海「ね…姉ちゃん?うちの足どこいったのかな?」

夏海「えっ?えっ?何これ?」

小鞠「な、夏海、落ち着いて」

夏海「なんで足なくなっちゃってるのかな?なんで?なんで?」

雪子「大丈夫、大丈夫だから」

夏海「何が大丈夫なの?意味わかんないんだけど」


長時間狭いところに挟まっていたいたせいで、うちの足はダメになってしまったらしい
お医者さんが言うにはきらないと命も危なかったとか

母「一生かけてでもお金払いますからぁ!」

BJ先生「その言葉が聞きたかった」

小鞠「夏海、リンゴ食べる?」

夏海「……いらない」

小鞠「せっかく皮むいたのに」

夏海「……姉ちゃんがむいたわけじゃないじゃん」

小鞠「………あっ、そうだ!今度の休みに皆がお見舞いにくるって」

夏海「えっ?」

小鞠「れんげなんて夏海にあいたいあいたいうるさかったんだから」

夏海「も、もう少しだけ待って」

小鞠「何でよ!」

夏海「うち……柄にもなく落ち込んでるから……その、もう少し待っててもらいたいんだよ。れんちょん達には元気な夏海ちゃんとしてあいたいから」

小鞠「夏海………」

れんげ「いつになったらなっつんに会えるん?」

小鞠「今週末に退院するって」

蛍「本当ですか!」

小鞠「うん。入院中はリハビリなりなんなりで忙しくて皆に会えなかったんだけどね」

れんげ「よかったのん!またなっつんと遊べるのんなー」

蛍「………」

小鞠「あのね、今まで黙ってたけど夏海はね………」

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