仁美「秘密のお友だち」(144)

キーンコーンカーンコーン

さやか「ふぅー!やっと終わった」

さやか「今日も1日頑張ったわぁ」

まどか「えー?さやかちゃん眠ってただけだよ?」

さやか「睡眠学習してたの」

まどか「えっ?じゃあちゃんと勉強してたの?」

さやか「も、もちろん!パーフェクトよ」

まどか「さやかちゃんすごい!」

さやか「あはは…」

仁美「なら次のテストは私と勝負しましょう?」

さやか「えぇ?ちょっ!ひ、仁美ぃー」

仁美「ふふっ」

さやか「や、やめてよもー!あたしが仁美に勝てるわけないでしょ?」

仁美「ですが、パーフェクトなのでしょう?」

まどか「そうだよ、さやかちゃんは眠ってても勉強できるから凄いの」

さやか「う…それはぁ…」

仁美「だから私にも勝てるはずです」

さやか「あぁー!もう、わかった認めるよ」

さやか「…普通に寝てるだけでした、すんません」

まどか「えっ?」

さやか「ほんとはさっぱり分かりません!」

仁美「ふふ、やっぱり」

まどか「えー?嘘だったの?」

さやか「あはは…当たり前じゃん」

さやか「むしろ信じたまどかに驚いたわ」

まどか「凄いと思ったのに…」

さやか「いやー、ごめんね?」

仁美「まどかさんはさやかさんを信じてますものね」

まどか「なのに嘘だなんて酷いよさやかちゃん」

さやか「冗談だったのに」

まどか「むー」プクー

さやか「あははっ!ごめんってば」

仁美「あらあら、まどかさんったらリスみたいですわ」

まどか「えぇ?酷いよぉ」

仁美「ふふ、冗談ですわ」

まどか「もぉー!いいもん、わたし帰る」

さやか「まあまあ、あたしも帰るって。一緒に帰ろ」

まどか「えへへ、そうだね」

さやか「仁美も帰るよね?」

仁美「…私は」

さやか「あっ、今日は習い事だったっけ…」

仁美「ええ…本当は私も一緒に帰りたいのですが…」

さやか「まぁ仕方ないよ」

まどか「仁美ちゃん、頑張ってね」

仁美「…はい、ありがとうございます。まどかさん」

まどか「明日は一緒に帰ろうね?」

仁美「そうしたいのですが…」

さやか「明日は別の習い事だっけ?大変だね」

仁美「はい…」

さやか「んじゃ。また時間があいたらさ、3人で遊びに行こうよ」

まどか「うん、そうだね。仁美ちゃんがいないと寂しいし」

まどか「…最近、あまり遊べてないから」

仁美「……ごめんなさい、なかなか時間を作れなくて」

まどか「あっ!仁美ちゃんのせいじゃないよ?」

さやか「それに仁美が頑張ってるのは知ってるしさ」

仁美「…ですが、最近はまどかさんやさやかさんと殆ど遊べていないとは本当ですし……」

まどか「仁美ちゃん…」

さやか「まぁ…ね。でも仁美は悪くないよ」

仁美「さやかさん…」

さやか「習い事の1つくらい辞めたりできないの?」

仁美「いえ…私も何度かそうしようとしたけれど……」

さやか「親に反対されるかぁ…」

仁美「…はい」

さやか「うーん…まっ!何時か絶対3人で遊ぼうね!」

まどか「うん、約束だよ?」

仁美「はい、約束しますわ」

さやか「ありがと。んじゃあたしらは帰ろっか?」

まどか「そうだね。ばいばい、仁美ちゃん」

さやか「また明日ね!」

仁美「さようなら」

さやか「ね、まどか。寄り道してもいい?」テクテク

まどか「うん、いいよ!」テクテク

仁美「……いいなぁ」

仁美「以前はよく一緒に帰って遊んでいたのに…」

仁美「…最近は習い事ばかりで一緒に帰ることすら、少なくなってしまいましたわ」

仁美「…私だって本当は遊びたいのに」

仁美「……羨ましい」

仁美「はぁ…」

仁美「あら、いけない!もうこんな時間ですわ」

仁美「早く行かなきゃ…」タタッ

―――

仁美「はぁ…隣町まで来るのは疲れますわ」

仁美「でもこれからがお稽古、頑張らなきゃ」

~♪

仁美「…あら?これはゲームセンター…ですよね?」

仁美「いつの間に?前まではなかったのに…」

「ゲームセンターに来たなら」

「プリクラ撮るしかないじゃない!」

仁美「……プリクラ」

仁美「懐かしい…昔、さやかさんとまどかさんと一緒に撮ったことがありましたわ」

仁美「でも、ゲームセンターになんて、さやかさん達も滅多に行かないから」

仁美「私も行った回数はほんの数回…私には縁がない場所、ですわね」

「ねえねえ!向こうに可愛いぬいぐるみがあったよ」

「ふふっ、取ってほしいの?」

「うん!でも、わたし苦手で…」

「わかったわ、私が取ってあげる」

「わーい!ありがとう」

仁美「……ぬいぐるみ」

仁美「そういえば昔、さやかさんがまどかさんに取ってあげたことがありましたわ」

仁美「ふふっ。あの時のまどかさん、すごく喜んでましたっけ」

仁美「…そして、さやかさんは私にも取ってくれて」

仁美「私もすごく嬉しかった…」
「はい、ぬいぐるみよ」

「えへへ、ありがと!」

「ふふっ、どういたしまして」

「今度はわたしがプレゼントしてあげるね」

「ありがとう」ニコッ

「えへへ」ニコッ

仁美「……」

仁美「私だって…時間があれば、まどかさん達にプレゼントできるのに……」

仁美「…いえ…時間は少しならありますわ」

仁美「…よ、よーし!まどかさんとさやかさんにプレゼントしましょう!」

仁美「お金をたくさん使えば私にだって取れるはず…」

仁美「……入りましょう」

ガヤガヤ

仁美「す、すごい音…耳が痛くなりますわ」

「~♪」タンッタタンッ

仁美「あら?これは…ダンスのゲーム…でしょうか?」

仁美「すごくお上手ですわ、私にはとても真似なんて…」

「~っと、こんなもんかな」

仁美「あっ、終わったのでしょうか…?」

「へへっ、結果はどうかな?」

「…あぁー!一回ミスってる!…あそこかぁ…うぅ…」

「ちくしょう!もう少しでランキング更新だったのに」

仁美「…」ジィー

「…ん?」

「なんだ?あたしにようかい?」

「あー!あたしと勝負したいとか?いいぜ、受けて立つよ」

仁美「えっ?あ…い、いえ!そんなんじゃ…」

「えー?なんだよ、つまんねーな」

仁美「す、すみません…私はこれで」タタッ

「んー」

「……なんかゲーセン慣れしてなさそうな奴だったな」

「まぁいいや、次は…よし!お菓子でも取っていくか」

仁美「楽しそうだったので、つい見てしまいましたわ」

仁美「…でも私にはとてもできそうじゃありませんし……」

仁美「それよりも、ぬいぐるみを探さなきゃ」

仁美「まどかさんが喜びそうな可愛いぬいぐるみ…」キョロキョロ

仁美「あっ!これなんて良さそうですわね」

仁美「よし、やりましょう!」

仁美「えっと…お金を入れて…あら?お札しかありませんわ…」

仁美「んっと…100円に両替しないと…」

仁美「あ、あら…?どこで両替をすればよいのでしょうか…?」

仁美「うぅ…わかりません…」オロオロ

仁美「…あっ」

「よっし!ポッキーゲット、やったね!」

仁美「すごい…さっきの方、あんなにたくさんのお菓子を一度で…」

「へへっ、たいりょーたいりょー」

仁美「…」ジィー

「…ん?あれ、またあんたか」

仁美「あっ…ご、ごきげんよう」

「ん?…ああ、ごきげんよー」

「で、あたしに何か用があんの?さっきからあたしを見てるっぽいけど」

仁美「あっ…あ、あの!り…両替の方法を教えてくれませんか?」

「へっ?両替?んなもん両替機を使えばいいじゃんか」

仁美「両替機…ですか?」

「うん、普通にそうすりゃいいじゃん」

仁美「わ、わかりました…それで、その両替機と言うのはどれなんでしょうか?」

「えぇ?あんた、両替機使ったことないのかよ?」

仁美「は、はい…すみません…」

「いや、別に謝んなくてもいいけどさ」

仁美「え、えぇと…」

「まぁいいや、教えてやるよ」

仁美「!」

「さあ、ついてきな」スタスタ

仁美「あ、ありがとうございます!」タタッ

―――

仁美「まぁ…!」

「これが両替機だよ、後は金を入れるだけだ」

仁美「はい、ありがとうございました」

「礼はいらないよ。ほら、さっさと崩しなよ」

仁美「はい…!」ワクワク

仁美「……?」

仁美「あら?入れても戻ってきますわ…」

「ん?あぁ…ここのは1000円しか両替できないんだっけ」

仁美「そ、そうなんですか?」

「諭吉以外になんかないのか?」

仁美「す、すみません…今はこれだけしかなくて…」スッ

「ん?」

「……はぁ?どういうことだ、おい!」

「こいつ諭吉ばっかりじゃねぇか!」

仁美「ご、ごめんなさい…」

「いや、だから謝んなくてもいいってば」

「でも両替できないぜ?」

仁美「うぅ…これではぬいぐるみが取れませんわ…」

仁美「どうしましょう…」

「……はぁ、仕方ねぇな」

仁美「うぅ…」

「おい、あんた」

仁美「は、はい…」

「ちょっと諭吉貸してくんない?」

仁美「えっ?」

「あたしが崩してきてやるからさ」

仁美「そ、それは本当ですか?」

「ああ、ちょっと時間かかるかもしれないけどさ」

仁美「大丈夫です、お願いしてもよろしいですか?」

「うん、巻かせときな」

仁美「はい、お願いします」スッ

「よっし、あんたは待ってな」タタッ

仁美「ふふ、優しい方でしたわ。助かりました」

仁美「これで私もぬいぐるみをプレゼントできますわね」

仁美「……」ニコニコ

数分後

仁美「…まだでしょうか?」

仁美「遠くへ行かれたのか、それとも…」

仁美「何か難しい作業でも?」

仁美「うーん…迷惑をかけてしまいましたわね…」

「おーい」

仁美「あっ!」

「おまたせ、時間かけちまってごめんな?」

仁美「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

「ほら、10枚にしてきたぜ」

仁美「助かりましたわ、これで100円に両替できます」

「早く両替しときなよ」

仁美「はい!」

「ってちょっと待て!何枚両替する気だよ」

仁美「え?」ジャラララララッ

「あんた、まさか全部100円にするつもりかよ?」

仁美「はい…そうですが?」キョトン

「えぇ…ならあたしが店員に無理矢理1000円と交換させた意味ないじゃんか」

「最初から100円の束貰っときゃよかった」

仁美「わわわ…」ジャラララララッ

「そりゃ100円が100枚だから溢れるだろ」

仁美「うぅ…どうすれば…」

「はぁ…いいよ、コインケース使えばいいし」

「えーと?たしかこの辺りに…あった!」

「ほら、これを使いな」

仁美「あ、ありがとうございます!」

「んじゃもう大丈夫だよな?あたしは音ゲーしてくるぜ」

仁美「あ、あの!凄く助かりました」

「ああ、無駄遣いはやめろよー」テクテク

仁美「ふふっ、やっぱり優しい方でしたわね」

仁美「さて、頑張ってぬいぐるみを取りますわ!」

仁美「えいっ」チャリン

仁美「たしか…横のボタンを押して…」ポチッ

スッ

仁美「…あら?ちょっとだけしか動きませんでしたわ」

仁美「もう一度…」ポチッ

シーン

仁美「?」ポチッポチッ

シーン

仁美「えぇっと…う、動きませんわ…」

仁美「あっ!もしかして縦のボタンを押すのでしょうか?」ポチッ

スッ

仁美「…また少しだけ?」

ウィーン

仁美「えっ?勝手にアームが下がって…」

スカッ

仁美「……?」

仁美「あら?故障でしょうか…?」ポチッポチッ

仁美「んー…」

仁美「よし、もう一度!」チャリン

仁美「横のボタンを押して」ポチッ

スッ

仁美「……やっぱり少しだけしか動きませんわよ?」

仁美「…と、とりあえず縦のボタンを…」ポチッ

スッ

仁美「…うーん」

ウィーン

スカッ

仁美「これではさっきと同じですわ」

仁美「えーと…さやかさんはどのようにしていたのかしら…?」

仁美「たしかに、横と縦のボタンを押して取っていたはず…」

仁美「んと…もう一度…」チャリン

仁美「横のボタンを…」

「あぁー!待った待った!」

仁美「あら?あなたは…」

「嫌な予感がしたから戻ってきたけど、正解だったぜ」

仁美「?」

「見てらんないっての、あんたは黙って見ときなよ」

「あたしが手本を見せてやるからさ」

仁美「まあ!お手本を見せてくださいますの?」

「ああ、ってことでちょっと借りるぜ」

「いいか?ボタンは押してすぐ離しちゃダメだ」

仁美「えっ?そうでしたの?」

「うん。んで、ここだと思うとこまで押しっぱなしにしとくんだよ」ポチッ

ススススッ

仁美「わぁ!」

「よし…ここだね。次の縦も同じさ」ポチッ

ススススッ

仁美「すごい!ちゃんと動きましたわ!」

「…うん、ここだな」

ウィーン

仁美「こうやってとるのですね?」

「まあ常識だけどな」

仁美「…あら?でも、すこしずれているような」

「いや、これでいいんだよ」ニッ

仁美「ですが…」

ウィーン

ガシッ

仁美「!」

「なっ?掴んだだろ?」

仁美「2つも…!わざと引っ掻けたのですか?」

「そうそう、わざとずらして引っ掻けたのさ」

「下手にど真ん中狙うよりもとれる時あるし」

「うまくいきゃ、何個か一緒に取れるからね」

「ほら、2つゲット」

仁美「す、すごい!」

「はい、あんたのぬいぐるみだ」

仁美「あ、ありがとうございます!」

「まぁあんたの金で取ったやつだしな」

仁美「それでもです、ありがとうございます…!」

「へへ、んじゃ次はあんたの番だぜ」

仁美「は、はい…!」ガチガチ

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって、リラックスしなよ」

仁美「わ、わかりました…!」チャリン

「…はは、ダメだこりゃ」

仁美「え、えぇと…」

「いいか?ボタンは押しっぱなしにするんだぞ?」

仁美「は、はい!」ポチッ

ススススッ

「んで、狙ってとめるんだ」

仁美「…こ、ここ?ここですか?」クルッ

「わっ?なら早く離せよ!」

ススススッ

仁美「あっ…」

「ほら、行きすぎちゃったじゃんか」

仁美「うぅ…」

「ま、今回は練習だな。次の縦はミスんなよ?」


仁美「わ、わかりましたわ…!」ポチッ

ススススッ

「あたしに聞かなくていいからね」

仁美「は、はい…ここ!」

ウィーン

仁美「やった!ちゃんと離せました!」

「ははは、良かったな」

仁美「…でも」

スカッ

仁美「うぅ…取れませんでした…」

「仕方ねぇって、次で頑張ればいいんだよ」

仁美「は、はいっ!」チャリン

「さーて、いくらかかるか見物だな」

仁美「ボタンを押し続けて…」ポチッ

仁美「と、止める…!」

仁美「次は縦のボタンを押して…」

「止めるんだ」

仁美「はい…!」

仁美「ここです!」

ウィーン

仁美「っ…」ドキドキ

「んー」

ガシッ

仁美「!」

仁美「や、やりましたわ!」

「いや…」

仁美「やりました!掴みましたわ!」

「うーん…」

スススッ

仁美「あら?どうしましたの?」

「まぁ見てみなよ」

仁美「えっ?」

ポロッ

仁美「あ…」

「やっぱりね、重心から離れてたもんなぁ」

仁美「そ、そんなぁ…」

「まぁそんなに落ち込むなよ、掴んだだけでも進歩したんだからさ」

仁美「…そ、そうですわね!」

「ほら、次もやるんだろ?」

仁美「はいっ…!」

―――

仁美「えいっ!えいっ!」チャリンチャリン

仁美「今度こそ取ってみせますわー!」

「はは…金とやる気はすごいな」

「…でも」

仁美「うぅ…また落ちてしまいました……」

「腕の方はまだまだだね」

仁美「ま、負けませんわ!」チャリンチャリン

「その金が羨ましいぜ、まったく」

仁美「……」ジィー

仁美「ここ!」

「ま…そのやる気は誉めてやるよ」

仁美「ここですわ!」

ガシッ

仁美「!」

「さーて、今度はどうかな?」

ススススッ

仁美「……!」ゴクッ

「お?落ちないじゃん」

仁美「そ、そのままお願いします…!」

ススススッ

パッ

仁美「あっ!」

「…ふっ」

仁美「き…」

ポスッ

仁美「きましたわー!」

「ああ、おめでとう」

仁美「やった…!」

仁美「ほらっ!見てください!とれましたわ!」

「ああ、よかったね。おめでとさん」

仁美「ありがとうございます!」

「それにしても結構な金使ったよなー、そんなにこれがほしかったのかよ?」

「あたしがもう2個取ってたのにさ」

仁美「私が自分で取ったものをさやかさんやまどかさんにプレゼントしたいんですの」

仁美「だから…」

「あぁ、なるほどね」

仁美「だからもう2つ取らなきゃいけませんわ」

「ん?2つ?」

仁美「はい!」

「…?まぁいいや、頑張りなよ?」

仁美「はい!」

「あたしは暇だし、もう少し見とくよ」

仁美「はい、わかりました」

「次は安く取れるといいな」

仁美「はいっ」チャリン

仁美「いきます…!ポチッ」

ススススッ

―――

仁美「やったぁ!やりましたわ!」

「へぇ?数回で2個ゲットなんてやるじゃんか」

仁美「ふふっ、あなたのおかげですわ」

「ん?あたしは何もしてないぜ?」

仁美「いえ、すっごく助かりましたわ」

仁美「ありがとうございました」ペコッ

「わわ?礼なんていらねーって!」

「別に大したことしてないんだしさ」

仁美「いいえ、あなたが助けてくれなかったら遊び方すらわかりませんでしたわ」

「そりゃ…まぁそうかもしれないけどさ」

仁美「それに、そのおかげで私はまどかさんとさやかさんに」

仁美「このぬいぐるみをプレゼントできるんですもの」

仁美「これも、あなたのおかげなんです」

「うーん…ま、悪い気はしないし。別にいっか」

仁美「はい、ありがとうございました」

仁美「そして、これを…」スッ

「ん?」

仁美「このぬいぐるみを、あなたに…!」

「えぇ?いいって!友だちにやるんだろ?」

仁美「はい、まどかさんとさやかさんにプレゼントしますわ」

「ならさ、あたしになんて…」

仁美「でも、私は3つ取りましたわ」

「それはあんたの分だろ?友だち2人とあんたで3つじゃん」

仁美「ふふ、私はあなたが取ってくれたものがありますもの」

「あ、そうだったっけ」

仁美「はい、だからこれはあなたの分なんです」

「……」

仁美「…受け取って貰えませんか?」

「…あたしは特にぬいぐるみが欲しいわけじゃないんだよね」

「だから自分じゃ取らなかったんだし」

仁美「そ、そうですか…」シュン

「でもさ」

仁美「はい?」

「人から貰うのは悪くないかもね」

仁美「!」

仁美「な、なら…あなたは」

「杏子だ」

仁美「えっ?」

杏子「あたしの名前は佐倉杏子、あなたじゃねぇ」

仁美「…!」

仁美「じゃ、じゃあ杏子さん…!」

杏子「…」

仁美「わ、私のぬいぐるみ…受け取ってくれますか?」

杏子「ああ、ありがとね」ニッ

仁美「は、はいっ!」パアッ

杏子「ふふっ」

仁美「あっ…わ、私の名前は仁美です!」

杏子「仁美…」

仁美「はい!志筑仁美と言います…!」

仁美「よ、よろしくお願いします!」

杏子「へへっ。ああ、よろしくね」

―――

杏子「へぇ?習い事のために隣町からこの辺まで来てたのか」

仁美「はい、それにゲームセンターも滅多に来る機会がなかったので…」

杏子「ふーん?まぁたしかに仁美はゲーセンに来るタイプの人間じゃないもんか」

仁美「すみません…」

杏子「はは、別に謝らなくていいよ。ま、そう言うもんさ」

仁美「そ、そうなんですか?」

杏子「あぁ、ところで仁美」

仁美「はい?なんでしょうか?」

杏子「習い事行かなくて良かったのか?」

仁美「え…?」

杏子「もう2時間くらいここにいるぜ?習い事は何時からなんだよ?」

仁美「え?えっ?えぇっ?」アタフタ

杏子「…やっぱり、もう始まってんだろ?」

仁美「ど、どうしましょう…」オロオロ

杏子「うーん…今さら行くのもあれだろ?」

仁美「そ、それは…」

杏子「よっし、この際最後までサボっちまえばいいんだよ」

杏子「たまには悪くないだろ?」

仁美「で、ですが…」

杏子「仁美はさ、たくさん習い事やってんだろ?」

仁美「はい…」

杏子「なら遊ぶ暇とかそんなにないじゃんか」

仁美「っ……」

杏子「だからさ、たまには息抜きも良いと思うよ」

仁美「息抜き…」

杏子「ああ、あたしで良ければ付き合うぜ?」

仁美「杏子さん…」

杏子「ま、無理にとは言わないけどさ」

仁美「……」

杏子「どうする?」

仁美「…たまには」

杏子「ん?」

仁美「た、たまには息抜きも必要なんですよね?」

杏子「うん、あたしはそう思うよ」

仁美「な、なら…ならっ!私…」

仁美「遊びたい…です」

仁美「私もみんなと同じように遊びたいです!」

杏子「よし、なら決まりだね」

杏子「仁美、あたしが案内してやるよ」

仁美「杏子さん…!」

杏子「へへっ!よろしくな」ニッ

仁美「は、はい!」

杏子「仁美、ついてきな!」

仁美「はいっ!」

―――

杏子「これやろうぜ、興味津々だったろ?」

仁美「は、はい…ですが、私はダンスは得意ではないので…」

杏子「別にダンスが得意かどうかなんて関係ないって」

仁美「そうなんですか?」

杏子「うん、そうだな…まずはあたしが手本を見せてやるよ」

杏子「仁美はそこで見てな」

仁美「わ、わかりました」

杏子「よっし、いくか!」チャリン

~♪

杏子「ま、画面に合わせて動けばいいんだけどさ」

仁美「は、はい」

杏子「いいか?よーく見てなよ?」

杏子「~♪」タタンッ

仁美「まぁ…!」

杏子「へへっ♪」タンッタタンッ

仁美「す、すごい…!」

杏子「~♪」タタタンッタンッ

仁美「お上手ですわ!」

杏子「まだまだいくぜ!」タタタンッタタタンッ

仁美「わぁ…!」

杏子「これで最後だよっ!」タタタンッ

仁美「わぁー」パチパチ

杏子「さーて、結果はどうなった?」

杏子「…よしっ!パーフェクト!」

仁美「杏子さん、スゴいですわ!」

杏子「へへん、だてに毎日やってねぇぜ」

仁美「すごく得意なんですね」

杏子「まぁな、で?次は仁美もするかい?」

仁美「は、はい…!」

杏子「よし、2人でプレイっと」チャリンチャリン

仁美「わ、私にもできるのでしょうか…?」

杏子「大丈夫、やればできるって」

杏子「…ただ、スカートがな」

仁美「あっ…」

杏子「うーん…」キョロキョロ

杏子「うん、回りに誰もいないし大丈夫だろ」

仁美「そ、そうですわね」

杏子「まぁ恥ずかしいなら押さえながらするしかないかな」

仁美「わ、わかりました…!」

杏子「んじゃやるか、一番簡単な曲でいいよね?」

仁美「はい、優しくお願いします」

杏子「わかったわかった、行くよ」

仁美「は、はい!」

~♪

杏子「いいか?画面をよーく見るんだ」

仁美「…!」ジィー

杏子「そうそう、んで矢印がでてきたろ?」

仁美「はい」ジィー

杏子「それが上に来た時に足元のボタンを踏めばいいんだ」

仁美「わ、わかりました…!」

杏子「よし、くるぞ!」

仁美「…」ジッ

杏子「仁美、上だっ!」タンッ

仁美「は、はいっ!」タンッ

杏子「つぎ、右だよっ」タンッ

仁美「えいっ!」タンッ

杏子「よし、今度は左と上だ」タタンッ

仁美「えぇと…」タンッタンッ

杏子「んー、ちょっと送れたな…下!」タンッ

仁美「…!」タンッ

杏子「つぎ、上、左、上、下、右」タタタタタンッ

仁美「わわわわっ?」タンッタンッタンッタンッタンッ

杏子「落ち着いてやれば大丈夫だよ」タタンッタタンッ

仁美「は、はいっ!」タンッタタンッ

―――

仁美「えいっ!えいっ!」タンッタタンッ

杏子「よっし、だいぶ上手くなったじゃん」タタンッ

仁美「はい!」タタンッ

杏子「そろそろ締めだよ、大丈夫か?」タタタタタンッ

仁美「大丈夫ですわ」タタタタタンッ

杏子「よし、なら決めるぜ」タンッタンッ

仁美「はいっ!」タンッタンッ

杏子「~♪」タタンッタタタンッ

仁美「~♪」タタンッタタタンッ

杏子「よーし!ゲームクリア!」

仁美「やりましたわ!」

杏子「結構やるじゃん、仁美!」

仁美「はい、すごく楽しかったです!」

杏子「そっか、そりゃあ良かった」

仁美「ふふっ」

杏子「でも疲れたろ?」

仁美「あ…はい、少し…」

杏子「何だかんだで結構長い時間ゲーセンにいるからね」

仁美「もう3時間…ですわね」

杏子「うん、ならとりあえず…」

仁美「あら?」

杏子「ん?どうした?」

仁美「あれは一体…」

「~♪」クルクル

杏子「ああ、シューティングゲームだよ」

仁美「シューティングゲーム…」

杏子「うん、銃で敵を射つゲームなんだけど…」

仁美「どうして彼女はクルクル回っているのでしょうか?」

杏子「…さあ?」

「ふふっ♪」クルクル

「あ、あんまり回るとコードに絡まっちゃうと思います」

「大丈夫よ」クルクル

「あぁ…だ、大丈夫なのかな?」

杏子「…」ジトー

仁美「すごく楽しそうですわ!」

杏子「そ、そうかぁ?」

仁美「はい!」

杏子「…まあ、ああ言うのは色々慣れてからにしようか」

杏子「でないと…」

「きゃっ?」グルグル

「あぅぅ…」

「と、巴さん?」

杏子「ああなっちまうぜ?」

仁美「まぁ…」

杏子「はぁ…見てらんないっての、次行こっか」

仁美「は、はい…」

杏子「ん?まだ何か気になんの?」

仁美「いえ…あちらの黒髪の方がクラスメイトに似てるなって…」

「うぅ…絡まっちゃった…」

「巴さん…えぇっと、今から、ほ…ほどきます…」オロオロ

仁美「でも眼鏡も三つ編みもしていないし…気のせい、ですよね?」

杏子「他人の空似ってやつじゃないの?」

杏子「あたしもそう思いたい、つーか今のは見なかったことにしたい」

仁美「そうなんですか?」

杏子「まぁね。それよりもさ、あたし少し腹減っちまった」

仁美「まぁ、大丈夫ですか?」

杏子「大丈夫だけど、何か甘いもん食いたいかも」

杏子「ま、お菓子はあるんだけどさ」

仁美「でしたら…」

杏子「でもさ、仁美にも食ってもらいたいものがあるんだ」

仁美「私に食べてもらいたいもの?」

杏子「うん、あたしオススメのたい焼きさ」

仁美「たい焼き…!」

杏子「食うかい?」

―――

仁美「もぐもぐ」

杏子「どう?おいしい?」

仁美「はい!今まで食べてきたたい焼きの中で一番美味しいですわ」

杏子「ふふっ。そっか、良かった。あたしの好物なんだ、これ」

仁美「杏子さんは甘いものが好きなのですか?」

杏子「まぁね、他にも団子とかクレープとかも好きかな」

仁美「でしたら、今度はクレープを食べに連れていってください」

杏子「ん?別にいいけど、今度はってこの後?」

仁美「いえ、後日ですわ」

杏子「後日?また別の日にってことかい?」

仁美「はいっ」

杏子「!」

仁美「杏子さん、今日はあなたと遊べてとても楽しかったんですの」

杏子「仁美…!」

仁美「私は…あまり遊べる時間はないのですが…でもっ」

仁美「もっと…もっと遊びたいんです」

仁美「さやかさんとも、まどかさんとも」

仁美「そして、杏子さん…あなたとも!」

杏子「…ふふっ、照れるじゃん」

仁美「杏子さん、ですので…私のまがままを聞いて欲しいんです」

杏子「…」

仁美「私と、また今度一緒に遊んでくれませんか?」

杏子「仁美…」

仁美「時間は…あまりないのですが…」

杏子「仁美はさ、習い事でこっちに来てるんだよね?」

仁美「は、はい…」

杏子「ならさ、その習い事の前でも後でもいいよ」

仁美「!」

杏子「あたしは大抵ゲーセンにいるからさ、いつでも遊びに来なよ」

杏子「待ってるからさ」ニッ

仁美「杏子さん…!」

仁美「ありがとうございます」ペコッ

杏子「だから言ったろ?礼なんていらないって」

杏子「それに、あたしらはさ…友だち、だろ?」

仁美「…!」

仁美「はいっ!」

杏子「へへっ、この後ゲーセンに寄らない?」

仁美「はい、いいですわ。またゲームをするのですか?」

杏子「いや、違うよ。ちょっとした記念を撮ろうと思ってさ」

仁美「記念?」

杏子「ああ!」

―――

仁美「私、プリクラは久しぶりですわ!」

杏子「あたしもだよ、滅多に撮らないかな」

杏子「でも、今回は特別だよ」

杏子「あたしと仁美の記念だからさ」

仁美「はい、そうですわね!」

杏子「ははっ、それじゃ撮るぜ?」

仁美「ええ、お願いします」

杏子「仁美」

仁美「はい?」

杏子「今日はありがとね、あたしも楽しかったよ」

仁美「私もですわ、ここに来て良かった」

杏子「仁美…!よし、撮るぞ?」
仁美「ふふっ」ニコッ

杏子「へへっ」ニコッ

カシャッ

―――

まどか「わぁ!仁美ちゃん、ほんとにくれるの?」

仁美「はい」

まどか「えへへ。ありがとぉ、仁美ちゃん!」

仁美「ふふっ」

さやか「かわいー、あたしにもくれるんだ」

仁美「ええ、もちろんですわ」

さやか「やったー!ありがと!」

さやか「でもさ、急にどうしちゃったわけ?」

仁美「ゲームセンターで取ってきましたの」

さやか「えっ?ゲーセン?仁美が?」

仁美「はい」

まどか「仁美ちゃん、わたし達のために取ってくれたんだ」

仁美「ええ、喜んで貰えたらって思って」

まどか「そうなんだ。うん、すごく嬉しいよ」

まどか「大切にするね?」

さやか「あたしもあたしも!」

仁美「ありがとうございます。まどかさん、さやかさん」

さやか「でも仁美がゲーセンにねぇ…珍しいこともあるもんだね」

仁美「ふふ、そうですわね。でも行って良かったと思いますわ」

まどか「何か良いことがあったの?」

仁美「はい、これを見てください」

まどか「わぁ、これって…」

さやか「プリクラじゃん!どうしたの?」

仁美「この前撮ってきましたの」

さやか「へぇー?一緒に写ってるこの子も仁美も良い笑顔じゃん」

まどか「仁美ちゃんも、この子もすっごくニコニコしてるね!」

まどか「仲の良いお友だちなの?」

仁美「はい、そうですわ」

さやか「へぇ?あたしたの知らないうちに…さては秘密の友だちってやつだなぁ?」

さやか「ね?この子は誰なの」

まどか「教えてよ、仁美ちゃん」

仁美「はい、この方は」

仁美「私の秘密のお友だち」

仁美「佐倉杏子さんです」ニコッ

おわり

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