春香「こんな奴らのために、もう誰かの涙はみたくない!」(219)

――――はじめまして! 私、天海春香、17歳の女の子です。

あ、普通の女の子じゃないんですよ? そう、なにを隠そう……アイドルなんです!

……と言っても、所属アイドルも私だけの小さな事務所なんですけれど……

それでもプロデューサーさんはとっても頼りになる人で、いつかトップアイドルになりたいなって


そんな私ですが


「ボセ ゼガド バギング ドググド パパン ビンバガ ビザバガギバ」



絶賛大ピンチ中です



「み、みみみ……未確認……!」

~~~~少し前~~~~

P「春香ー! 今日はライブだぞ、ライブ!」

春香「プロデューサーさん、私のセリフとらないでくださいよ!」

P「おう、すまんすまん……ついテンションがあがってな」

春香「まったくもう……でも、がんばりましょうね!」

P「そうだな、まだ小さいけど……いつかはドームだ!」

春香「はい!」

P「よーし、衣装についてなんだが……ん? ニュース速報……ちょっと音量上げるぞ」

TV[番組の途中ですが、速報です。未確認生命体12号が現れ……]

春香「……」

P「未確認、か……」

春香「……怖い、ですよね……」

P「警察も対処を考えてるっていうけどなぁ……」

春香「それでも襲われる人のニュースも少なくないですし……はぁ……」

P「まぁ……俺達ははちあわせないよう祈るぐらいしかできないか」

春香「いやですよね、気軽に出かけることもできませんよ……」

P「アイドルが気軽にでかけられるのも複雑だけどな?」

春香「むっ、そのうち歩いてるだけで声かけられちゃうトップアイドルになってみせますよ?」

P「はははっ、期待してるよ」

春香「……あんまり期待してるいいかたに聞こえないんですけれど?」

P「まだまだ未熟だからな、上ばっかりみてると足をすくわれるぞ?」

春香「むむむ……転びませんよ!」

P「いろんな意味で、転ばないよう気をつけたいよな」

春香「からかわないでくださいっ!」

春香「……それにしても、未確認……怖いなぁ」

P「……4号には頑張ってほしいな」

春香「4号って……まさか、プロデューサーさんは信じてるんですか?」

P「ん? まぁな……本当かもしれないじゃないか、未確認を倒す未確認」

春香「要するに怪物の仲間割れじゃないですか? そんなのアテになりませんよ」

P「そうかな? 仲間達を裏切って戦う怪人……妖怪人間とかデビルマンっぽくてかっこよくないか?」

春香「偶然そんなふうに見えてただけかもしれませんよ?」

P「それでも、助けてくれるヒーローがいるって信じるのは悪くないさ」

春香「プロデューサーさんは子供っぽすぎますよ……」

P「いいじゃないか、夢見るのはタダだ」

春香「本当に犠牲になってる人もいるんです、不謹慎ですってば!」

P「……そりゃ、そうだが……」

春香「っ……す、すいません……いいすぎました」

P「いや、すまん……そうだよな。考えが足りな過ぎた」

春香「……ごめんなさい」

P「いや、春香が正しいさ……俺も現実逃避したかったのかな」

春香「そんなこと……」

P「いや、あるんだよ……なんてな。暗くなったよな、すまん。 もうでるか!」

春香「……はい」

P「……気にするなよ?」

春香「……はい」

P「……ほれっ」グニッ

春香「はっ、はんでふか?」

P「これはひどい顔だ。お宝映像として保存しようか……なっと」グニー

春香「は、はにふるんれふかふろりゅーさーさん!」

P「ははは、しょんぼりしてるよりこっちのほうがかわいいぞ春香」パッ

春香「もう! ……そう、ですよね」

P「あぁ、俺達にできるのはステージでパフォーマンスを魅せる。いつも通りの仕事ぐらいだよ」

春香「……それで、いいんですかね?」

P「いやいや、笑顔になってもらえるって素敵じゃないか。たとえ気を紛らわせられるだけでもさ」

春香「……そうですか?」

P「あぁ、 暗いニュースに事件、だからこそ笑顔は忘れちゃいけないだろ」

春香「そう、ですよね……」

P「うん。だから笑顔を届ける側が暗い顔してちゃダメだろ?」

春香「……はい」

P「よし、じゃあ深呼吸して……」

春香「……すぅー、はぁー」

P「スイッチ入れ直して! 飯食って会場いこう!」

春香「はいっ!」パァン


春香「いたい……」

P「強く叩きすぎだな。顔に跡つけてどうするんだ」

P「さて、移動だなーっと……春香は食いたいものとかあるか?」ブロロロロロ

春香「うーん……特にないです」

P「んー、じゃあ適当なところにでも寄るかぁ……お」キッ

春香「……喫茶店?」

P「こういうところのコーヒーがうまかったりするんだよ、ここにしよう」

春香「そういう直感で入って、結構失敗しましたよね?」

P「人の目が何故前についてると思う?」

春香「ごまかさないでください」

P「のヮの」

春香「……」

P「……ま、まぁまぁ。本当にここに入ったほうがいい気がするんだよ! 俺の勘に間違いは……ない!」ドヤッ

春香「それも何回目だと思ってるんですか……まったく。いいですけれどね?」

P「さすが春香! 話がわかる! さぁ入ろう」

春香「プロデューサーさんってば……『ポレポレ』……変な名前」

カランカラーン

男「いらっしゃいませ、オリエンタルな味と香り、ポレポレへようこそ!」

春香「お、オリエンタルって……ちょっと変わったお店ですね……?」

男「いやいや、結構いいお店ですよ? ご飯もおいしいですし、おやっさんは面白いし」

P「へぇ……失礼ですが、あなたはおやっさんって年には見えないんですけれど」

男「あぁ、今ちょっと留守にしてて任されてるんですよ。だからできないメニューもあるんですけど……」

P「なるほど。 ……あ、じゃあオススメとかあります? それとコーヒーとかは?」

男「オススメはカレーですよ! コーヒーは……うーん。一応おやっさんほどじゃないですけれど技に入ってます。おいしいですよ?」

P「技?」

男「あぁ、俺こういうものです」サッ

P「あ、どうも……2000の技を持つ男……五代、雄介……さん?」

雄介「はい!」グッ

春香「か、変わった人ですね。プロデューサーさん……大丈夫でしょうか?」ボソボソ

P「いやいや、ちょっと変わってるけどいい人っぽいじゃないか。ユーモアセンスもあって」ボソボソ

雄介「はは、結構言われますよ」

P「……聞こえました? すいません……」

雄介「いえいえお気になさらず。あぁ、そういえばご注文は?」

P「オススメはカレーでしたっけ、それと……技を使ってるところもみたいですしコーヒー。ブレンドで」

春香「じゃ、じゃあ私は……サンドイッチと、バナナジュースで」

P「バナナジュースねぇ……」

春香「い、いいじゃないですか! たまに飲みたくなりません?」

雄介「大丈夫、バナナジュースもおしいですから!」グッ

春香「ほら、店員さんもこういってますよ!」

P「……んー、まぁいいんだけどな。やっぱりまだまだお子様だなぁ」

春香「乙女なんですーっ!」

雄介「まぁまぁそこらへんで。カレーにもよくあいますよ? 辛さを消してくれますし」

春香「うーん、私はこのあとのこと考えるとにおいが強い料理はちょっと……かなって」

P「俺は甘いのはちょっと……」

雄介「そうですか? じゃあサンドイッチと、バナナジュースと、コーヒーにカレーですね、ちょっと待ってください」

春香「はい……あの、プロデューサーさん?」

P「ん、どうした?」

春香「……いえ、プロデューサーさんの勘にしては珍しくいい雰囲気のお店ですね」ボソボソ

P「だろ? 俺の勘はあたるんだよ」ボソボソ

春香「だからそれが当たった試しがなかったじゃないですか?」

P「いやいや、よかっただろこの前の店とか」

春香「いきなりマジックショー始まって失敗して、痛い空気に包まれるのがいいお店ですか?」

P「……それまではよかったじゃないか?」

春香「……そういう意味ではここでもなにがあるかわからないですけれど」

雄介「~♪」

雄介「~♪ ~♪……あ、そういえばどうしてここに?」

P「え?」

雄介「いやぁ、馴染みのお客さん以外の人って珍しいなぁって」

P「通りかかってティン! ときたんで思わず……面白い店員さんにあえてよかったですよ」

雄介「あはは、光栄です……はい、お待たせしました。サンドイッチとカレーです」カタッ

春香「わぁ、おいしそう……いただきます!」

P「俺も……いただきます」

雄介「どうぞ、めしあがれ! はい、バナナジュースとコーヒー」

春香「んー……おいしい!」

P「……おぉ、うまいですね。コーヒーもまたいい酸味が効いてて」

雄介「でしょ? 結構自信あって……ってお客さんなのにちょっとなれなれしいですかね」

P「いえ、全然気になりませんし普通に話してくださいよ……五代、さん?」

雄介「あはは、ありがとうございます。 嬉しくなってくるとつい……」

春香「んー、バナナジュースもおいしい! 私も、気になりませんよ!店員さん」

雄介「あはは、ありがとう! 五代でいいよ? ……じゃあお礼に技のお披露目でもしましょうか?」

P「それじゃあお願いしてもいいですか?」

雄介「うん、じゃあ……これで」スッ

春香「ボール……ジャグリング?」

雄介「まぁ、ここでお見せできるのだとこれぐらいかなって、ねっ」ヒョイヒョイ

P「おぉ……確かに。でも本当に2000個も?」

雄介「えぇ、小学校の頃に先生と約束してからいろいろやってきてますから……よっと」

春香「小学校から、ですか!? 律儀なんですね……」

雄介「あはは、夢中でやってたらどんどん増えていってて……まだ、その先生にはお披露目できてないんですけれどね」

P「そんなにあると『技の数と順番を覚えておく』なんて技もありそうですね?」

雄介「あ、気づきました?」

P「冗談のつもりでしたよ……本当にあるんですか? なんでもありですね……」

雄介「まぁ、本当にいろいろやってきましたから……ねっ」パシパシッ

春香「わーっ……あの、他の技も見せてもらってもいいですか?」

P「おいおい、仕事中の人にそんな……」

雄介「うーん、まぁそんなに人も来ないし……おやっさんには後でいえばいいかな……?」

P「ちょ、ちょっと五代さん?」

雄介「大丈夫ですって、時々任されたのにあけちゃうこともあるぐらいですから」ニッ

P「いやいやいい笑顔で言われても……」

雄介「まぁまぁ。 大丈夫ですってば!」グッ

春香「ありがとうございます!」

P「おい春香……すいません。本当に」

雄介「いえいえ、たまには見せないと錆びちゃいそうですし……」

春香「2000個もあるとめったにお披露目しない技とかもありそうですもんね!」

雄介「そんな感じ、ですね? だから大丈夫ですよ」

P「いいんですか? ……それじゃあ、ぜひお願いします」

雄介「はい、お任せください! えーっと……じゃあ動きがあるやつでも?」

P「動きって……ここで大丈夫なんですか?」

雄介「うーん、できなくはないんですけれど。 どうせなら見やすいほうがいいでしょうし外でどうですか?」

春香「お願いします!」

P「春香、お前なぁ……」

春香「だってプロデューサーさん、2000の技ですよ、2000の技! 気になりませんか?」

P「気持ちはわかるけどな?」

雄介「ほら、そんなに期待されたら応えたくなりますし!」

P「そうですか……じゃあ外でお願いします」

雄介「まぁ、まかせてくださいよ!」グッ

P「……ストンプ、ですか?」

春香「なんですか、それ?」

雄介「うーん、こうやって……」ダンッカンカン

カカカッカン ダンッカカンッカン

雄介「……みたいに、身近なものを奏でるみたいな感じ、ですかね?」

春香「わぁ……すごいです! 私にもできませんかね?」

雄介「じゃあやってみる? 叩いた時の音を考えながら、リズムにのって……」

春香「よーし、せーのっ!」ダンッカンカン

カカカッカンダンガンガラガッシャーン

春香「こ、転んじゃいました……」

P「春香……おまえなぁ……」

春香「あ、あはは……」

雄介「いやいや、でもリズム感はすごかったですよ?」

春香「ほ、ほら! 褒めてくれましたよプロデューサーさん!」

P「いやいやお情けだから調子に乗るなよ?」

おおむね下書き部分終わり
さらに速度落ちますごめんね

雄介「いや、本当に転んじゃっただけでリズム感とか……あれ?」

春香「ど、どうかしました?」

雄介「……違ったらごめんね? さっきから違和感はあったんだけど……ひょっとしてどこかで会ったことある、かな?」

春香「ご、ごめんなさい……私のほうに覚えはないです……」

雄介「そう、そうだよね? ごめん! 勘違いかぁ……でもどこかで……」

P「あー……五代さん。実はこいつこれでもアイドルなんですよ。見かけたとしたらそっちかも……」

春香「ちょっと、プロデューサーさんひどいですよ? これでもってなんですかこれでもって!」

雄介「あぁ、なるほど……アイドルさんか、すごいなぁ!」

P「いやいやたいしたことないですよ。まだまだひよっ子で……見覚えあるっていって貰えたのは嬉しいですけれどね」

雄介「そんなことないですよ、本当にリズム感は確かだと思いましたし」

春香「ありがとうございますっ! プロデューサーさん、私褒められてますよ! ねぇねぇ!」

P「アイドルなんだからあって当たり前な気もするんですけれどね?」

雄介「いやいや、ストンプ初めてであれだけってすごいですよ?」

春香「……」ドヤァ

P「……あんまり褒めないでください。図に乗りますから」

雄介「それにしても、アイドルの人が来るなんてポレポレも有名になれそうですね?」

P「いやいや、残念ながら春香が通っても宣伝効果は期待できませんよ?」

春香「プロデューサーさん……流石にひどくないですか?」

P「……まぁ、いずれ。トップアイドル天海春香の原点! みたいな話になったら。いいですね?」

雄介「あはは、おやっさんと一緒に期待して待ってますよ」

春香「プロデューサーさん、がんばるのは私たちですよ?」

P「あぁ、そうだよな? こんないいお店なんだからぜひ……って、あっ」

春香「……? どうしたんですか、プロデューサーさん?」

P「時間! ライブ! 小規模だけどステップ!」

春香「あっ、あぁっ!? 時間に余裕持ってたんじゃないんですか!?」

P「その予定だったんだけどな! あぁすいませんお会計は!」

雄介「お急ぎみたいですし、ツケでいいですよ! また来てください!」

P「す、すいません! これ俺の名刺です! 春香、車に乗れ!」ガチャッ

春香「もう、プロデューサーさんも人のこといえないぐらいドジですよね!」バタンッ

ブロロロロロロ……

最初にいっておく! 細かい地理、間違ってたり矛盾したらごめん! 謝る!

雄介「あはは、本当にすごい勢いだったなぁ……」

雄介「さて、お客さんはもういないけど……片づけはしとかないとなぁ」


ドアを開けて、店に戻ろうとした時にふと目をやるとバイクに違和感

無線を送られていることを表すランプが点滅している


雄介「……どうしました?」

一条『五代、聞こえるか? 未確認生命体12号が現れた。現在我々が追跡中だ』

雄介「わかりました、場所は?」

一条『港区埠頭から、環状線沿いに逃げ続けている……すまない、頼む』

雄介「今いきます!」


バイクにエンジンをかけ、走らせる

おやっさんには後で怒られよう。今は未確認生命体をどうにかしなくちゃまた誰かが……


雄介「……変身!」


覚悟を込めて、変化する身体をイメージする。赤い戦士―――クウガへと

P「ゼェ……ゼェ……あぁ、なんとか間に合った……」

春香「プ、プロデューサーさん……なにやってるんですかまったく……」

P「いや、だってなぁ? 五代さんが面白くて……春香こそ気付かなかっただろ?」

春香「ま、まぁそうですけれど……あぁ、メイクしなきゃ!」

ドタドタドタドタガンガラガッシャーン

P「あー……焦ると転ぶぞって手遅れか」

春香「見てないで何か手伝うことはないんですか!」

P「いや、ない。 まじでない」

春香「もうっ……着替えます、楽屋からでてってください!」

P「楽屋っていうか小さな事務所の部屋借りてるだけっていうか」

春香「気分の問題ですっ! 乙女の着替えを見ていようなんてデリカシーにかけますよ!」

P「はいはい、わかったよ」

ガチャッ……バタン

春香「まったくもう、プロデューサーさんは……さて、急がないと」

春香「……よし、支度完了! これでよしっと」

ガチャッ

春香「……あれ? プロデューサーさんがいない」

P「へいっ」ピトッ

春香「ひゃっ!? な、ななななにしてるんですか!」

P「いや、本番直前で緊張してるだろうからほぐしてやろうと思ってだな……」

春香「驚かせないでくださいよ! 寿命が縮むかと思いました!」

P「まぁまぁ。今回は本当に小さな会場だけどさ……いつかドームいくんだからこれぐらいで緊張してたらダメだろ?」

春香「緊張って……まぁ、確かにほぐれましたけど。ありがとうございます」ムスッ

P「これからステージにたつアイドルの表情じゃないぞ? ほれスマイルスマイル」ムニッ

春香「ひゃへへふははい、おこひまふひょ?」

P「まぁまぁ……いつも通りやれば、絶対大丈夫だ! がんばれ」パッ

春香「……だからってアイドルの顔をひっぱるのはどうなんですか、まったくもう!」

P「俺なりのエールてんこ盛りだ。いってこい!」

春香「……ありがとうございます。 ふぅ……天海春香、いっきまーす!」

春香「乙女よ、大志を抱け! 夢見て素敵になれー♪」

P(うん……いいぞ、順調だ。少ないけれどお客さんだって喜んでる)

係員「すいません、プロデューサーの方ですよね?」

P「……あ、はい? どうしました?」

係員「いえ、どうやら近隣で未確認事件が発生したらしくこのライブを中止にしたいと……」

P「なんだって!?」

係員「す、すいません! でも本当に危ないらしくて……」

P「……くそっ、なんでよりによって今日こんな」

係員「……この曲で、〆の方向でお願いできますか?」

P「小さいけれどやっとつかんだチャンスなんですよ……なんで、いったい……」

係員「すいません。 ……お客様や、我々スタッフおよび天海さん自身の安全のためにも……」

P「わかってます。理解はできてるんです……じゃあ曲終わったらいったんハケるよう指示しますから」

係員「……申し訳ございません」

P「……悪いのは、あなたじゃない。未確認でしょう? また後日お願いできますか……?」

係員「えぇ、ぜひともお願いします」

春香「乙女よ、大志を……」


今日は調子がとってもいい! お客さんだってノってくれてるしこのままいけば……あれ?

何かが視界の端でチラつく。プロデューサーさんのほうをみてみるとなにやらカンペをだしているみたい

がんばってるなー! とかの応援かとも思ったけれど……目を凝らしてみれば違う言葉が書いてあるのがわかった

曲が終わったらハケろ? なんで? だって今私……すごく盛り上がってきてて……


春香「……あっ」


音が飛んだ。いけない、曲に集中しなくちゃ

だって今私はステージの上に立っていてお客さんが目の前にいるんだから

皆の前で歌を歌いたいって思って、アイドルになったんだから。精いっぱい歌わないと

そうだよ、だから――――

春香「いたっ!?」


転んだ。痛い……でも立って歌わなきゃ。だってお客さんの前だから

私はもっと、いろんな人と一緒に、いろんな人の前で歌いたいんだ

だからこんなところで転んでちゃ……顔を上げようとして


そして聞こえる、悲鳴


春香「!?」


そこにはネズミの子を散らすように走って逃げていくお客さん達と


「……ボセ ゼガド バギング ドググド パパン ビンバガ ビザバガギバ」


ネズミによく似た姿をした、未確認生命体がいた


春香「み、みみみ……未確認……!」

やだ、なにあれ?

さっきまで小規模なりに歓声が沸き上がっていた場所に悲鳴がこだまする

未確認生命体の手は赤くそまっていて、その足元には……


春香「っぐ、おえっ……」


私を、応援してくれていた人……だったものが転がっている

なんで? 今日はとっても調子が良くて……小さいけれどライブのお仕事で……

プロデューサーさんが何か叫んでいる。未確認生命体がこっちをみている

目立つ場所にいる私に興味を持ったのか、こっちへ歩いてくる


春香「あ、あぁっ……」


逃げなきゃ。逃げないと死んじゃう

でも足が動いてくれない。力が入らない

プロデューサーさんがこっちへ走ってきてる。未確認生命体がどんどん近付いてくる

ダメだ、私……死んじゃう…… 目をつむり、せめて見ないようにしようとする

「うおりゃああぁぁッ!」


その時、風が吹いた。 バイクのけたたましい音と一緒に目の前を通り過ぎる

おそるおそる目を開けると、私に手をかけようとしていた未確認生命体の姿は消え

代わりに―――


春香「……?」


別の未確認生命体が、バイクに乗った状態でこちらに背を向けていた

あれは―――未確認生命体の中でも一番有名な、一番変な個体

人間を助けているとか、未確認生命体を倒す未確認生命体だとか言われている


春香「四号……?」

クウガ「……大丈夫? ケガは?」

春香「え、日本語……?」


混乱する頭をどうにか整えようとして、それでもやっぱり落ち着かない

なんだこれ、なんでしょうかこれ……

それに、今の声……どこかで聞いたことがあるような気がする

どこでだっけ、つい最近のことのような……


P「春香、おい春香!」

春香「あっ……プロデューサーさん……」

P「しっかりしろ。 くそっ……無理やりにでもその場でハケさせるべきだったよな」


あぁ、ハケる指示は未確認生命体が近づいている情報が入ったからだったのかな?

じゃあ、私が無理に歌ったからあの人は……


春香「あっ……んぐっ……おえっ……」


また吐き気がこみ上げる。あのカンペを見た時点で察してすぐにライブをやめていればあの人は死ななかったかもしれない

赤い血だまりの中に転がった、私のファンだった人。ファンの人だったもの

ダメだ、気持ち悪い。考えたくない。いやだ

ぐるぐる回る頭を、ちっとも片付かない頭の中身の整理を投げ出して私は意識を手放した

ネズマ「……バゼジャラゾ グス クウガ。 ヅギザ ゴドゲデギソ」

クウガ「待てっ!」


あと一歩まで追い込んだところで逃げられてしまった

動きが速い。青の力のほうがいいのかもしれない

追跡しようとトライチェイサーにまたがり……ふとさっきのステージにへたりこんでいた女の子が気になった

あれはたぶん春香ちゃんだ……それも、アイドルとして仕事をしている最中の

アイドルとして、歌っている最中に観客が殺される―――どれだけの衝撃だろう

察するに余りある心境に違いない。ひとりにしていちゃダメだ


クウガ「……いや、近くに人はいるじゃないか」


プロデューサーさんと呼ばれていた。あの人は春香ちゃんと二人三脚でやってきた人のはずだ

なら、彼女のケアは彼に任せるべきなんだろう。今はこの事件を、この未確認を止めないといけない

一瞬戻る方向に切りかけたハンドルを、未確認の走り去った方向へ向ける

そうだ、止めなきゃ……止めないと……また、誰かが

―――結局、完全に見失ってしまった


五代「……すいません、一条さん」

一条「いや、無理はするな五代。深追いのしすぎでお前にまで必要以上の負担がかかったらどうする」


一条さんは、胸を叩きながら「自分たちの仕事だ」と12号の居場所の特定をしてみせると言ってくれた

本当に心強い。タフだし、まだ短い付き合いだけれどすごくいい人だというのは肌でも感じる

警察との連携がとれているのも、一条さんのおかげだ


五代「……春香ちゃん、大丈夫かな」


今できることは、警察の人たちを信じて待つこと

だけど待つ間にも、できることはある


五代「……あのプロデューサーさんの名刺」


書かれた事務所の場所へ、バイクを走らせる

おせっかいでも、綺麗事でもいい。春香ちゃんが気になるんだ

あー、キャラ切り替えが傍から見るとよくわかんなくなりそうだから切り替える時記号差し込むよー
読みにくくてごめんね。まだだらだら地の文入りのクウガパート続くよ!

※※※※※

目を覚ますと、一面真っ白な世界

どこだろう、ここ? 私は……と、そこで若干の息苦しさに気付く

あれ? これ真っ白な世界じゃなくて……タオルが顔に乗ってるだけ?


春香「あっ」


タオルをどかせば、ここはさっきまで私が着替えたりしていた楽屋

もとい、お仕事場の小さな事務所の一室だ

……つまり、あれは


春香「……夢、じゃないんだ」


私が、歌っている間に。私のファンの人が死んだ

私が歌っていたせいで、死んだ

私のせいで、死んだ

春香「っぐ、おえぇっ……う、うぅ……」


私は、皆を笑顔にするアイドルになりたかったのに

私のせいで、人が死んだんだ。私が歌ったせいで


春香「ごめん、なさい……ごめんなさい……」


あの、私のファンの人だったものの目を思い出す

なにも映していない、からっぽの目

それが私を責めているような気がして、からっぽの胃がまだなにかを吐き出そうとする


春香「あっ……あぁっ……」


ガチャリ、とドアが開いた音がする


P「春香……目が、覚めたみたいだな」

春香「……プロ、デューサー、さん」

一番顔が見たかった人。 一番顔も見たくなかった人

だって、プロデューサーさんがとってきてくれたお仕事で

プロデューサーさんがやめるようにいったのを無視したせいで

人が、死んでしまったんだ。私のせいで


P「春香……あのさ」

春香「プロデューサーさん……ごめんなさい……ごめんなさい……」

P「春香!」


プロデューサーさんの手が私の肩をつかむ

かなりの力強さに、思わず痛いと言ってしまった


P「すまん……だが、聞いてくれ春香。悪いのはお前じゃない」

春香「でも、私が歌ってたからみんなが……」

P「そうだ、避難を指示された段階で俺は無理にでも歌を打ち切らせるべきだったんだ」

春香「そんな、こと……」

P「ある。お客さんたちや、お前自身の安全まで考えるならそうするべきだったんだよ」

春香「でも、プロデューサーさんがやめろっていったのに」

P「違う。あの曲が終わったらハケろって言っただけなんだ。その場で歌うのをやめろとまで言えなかった俺の責任だ」

春香「そんなこと……」


ない

だって私が歌ったせいなんだから

お客さん達の前で歌っていたいって思ってしまったから


P「春香……大丈夫だ、大丈夫だから」


プロデューサーさんが頭をなでてくれている

あぁ、ダメだ……涙が、でてきちゃう


P「なぁ、春香……あと、警察の人から聞いたんだがな」

春香「……?」


どうしたんだろう、急に

プロデューサーさんはなにやら真剣なトーンで、重大な知らせでもあるかのように重々しく言った

P「最近、女子警官のスカートの長さが短くなってるらしいぞ」

春香「はい?」


急に何を言い出してるんだこの人は

今、すごく重要な話をすると思って身構えた私がバカみたいじゃないですか

思わず涙までひっこみました。呆れてものもいえません


P「……いや、だからな。まさか風紀を取り締まるべき立場がモラルが欠け始めているというかだな。うらやまけしからんというか」

春香「……プロデューサーさん?」

P「おう、どうした?」


プロデューサーさんがいたずらっぽく笑う

年上の男性に対していうのもなんだけど、無邪気な笑い方だと思う

この人なりに、私を励まそうと思ってくれた結果なんだろうけれど……はぁ。なんだかむなしくなってきた


春香「いえ、なんでもありません」

P「そうか? まぁその、なんだ? だからだな……」

春香「……え、その話続けるんですか?」

P「いやいや重要な話をしようと思ったんだよ、だからだな?」


そのあと、プロデューサーさんはヘタなたとえ話を混ぜつつ私を励ましてくれた

きっといい話として仕上げるつもりだっただろうになぜか政治の話に飛んだりしたけれど

それでも、懸命に応援してくれているのが伝わるその姿勢にいつの間にか涙と吐き気は止まっていた


P「だから、スカート丈がそのままその人ってわけじゃなくてだな……」

春香「あはは、プロデューサーさんさっきからおんなじ話がぐるぐる回ってるだけですよ?」

P「あれ? いや、だからその……元気出せ! な?」


おかげさまで元気は出ましたけれど

まったく、プロデューサーさんは変なところで口下手になったりするんだから


春香「……私のファンの人、お亡くなりになられたんですよね」

P「……あぁ。たった1人だけ、助からなかった」


人数の問題じゃない。亡くなってしまった人がいるのが問題なんだから

春香「……プロデューサーさん。その人のお葬式に私も参加することってできますか?」

P「……可能だろうな。だが」


わかっている。私のライブ中に死んでしまったのだ

私が責められるべきなんだ。これは自棄でいってるんじゃない

何かのせいにしなきゃ、きっと胸が痛いままだ

ライブへ送り出した親の人が、自分を責めるのだけは間違っている


春香「プロデューサーさんが悪いなら、私だって悪いです。だから」

P「……一番悪いのは、未確認だけどな」


それはそうだろうけれど、あれは人の言葉が通じないんだ

私たちにできるのは自衛ぐらいのもので……


春香「あっ」


そこで思いだした。四号は……日本語をしゃべっていたことを

P「どうした、春香?」

春香「いえ、その……プロデューサーさん。聞いても笑いませんか?」

P「あぁ、真剣な話なんだろう?」


荒唐無稽な考えだけれど


春香「未確認生命体四号って―――」


なぜか確信が持てた気がした


春香「いい人なんじゃないですかね?」

P「……は?」


プロデューサーさんが呆れたような顔をしている

要領を得ない、といった感じだ


春香「いえ、ですから」

P「いや、四号はいいやつかもなって俺もいっただろ? なにをいまさら」

春香「そうじゃなくてですね? その……」


あぁもう、うまく言葉にできない

プロデューサーさんのことを笑えないよ、こんなの

日本語って難しい。うまく伝えるだけでも一苦労で……


春香「……日本語。そう、日本語! 四号はしゃべるんですよ、日本語を!」

P「……なんだと?」


プロデューサーさんも驚いている

それもそうだろう。未確認生命体が日本語をしゃべるなんて初耳だし……

現にあの12号は、意味不明な言葉をしゃべっていたし


春香「だから……ひょっとしたら四号って未確認じゃないのかも、って」


思い出すのは、真っ赤な身体とバイク

相対していた12号とはあまりに違う色合い。毒々しいまでの攻撃色

あれはひょっとしたらあれは未確認じゃなくもっと別の……

P「……じゃあ、なんだと思うんだ?」


そう、もっと別の……


春香「……人間、なのかもって思ったんです。だからいい人なのかもって」


四号と私たちの姿の違いは、四号と未確認のそれより大きい

それでも、あの振る舞いは。あの一言は

私の知る、頼れる大人の人間のそれに近かったから


P「……なるほどな」


プロデューサーさんは何か考えているようだったけれど

私はさらに考えを深めてみる

あの声に聞き覚えがある……気がする。それもつい最近のできごとで

>>88
きらりを見てると胸がハピハピしてくるんだ……これって恋だよな

すいません誤爆しました

誰だろう? 社長じゃない、プロデューサーさんでもない

そうなると他には……お仕事関係の知り合いの人も少ないから簡単に思いだせるのが少し悲しい

でもその中にも当てはまる人はいない

じゃあ、他に誰が――――


春香「あっ」


最近も最近、今日の今日

あったばかりの人の顔を思い出す

『2000の技を持つ男』五代雄介さん。あの人の声によく似ていたんだ


春香「……2000個技を覚えると変身できるようになるのかな?」


さすがにそれはないだろうけれど

でも、なんとなく納得できそうな気もしてきた


春香「……今度あったら問い詰めてみようかな?」

P「……人間だったら、か」


まだブツブツ呟いているプロデューサーさんを軽くこづく


P「んあっ……どうした春香?」

春香「いいえ、なんでも? それよりプロデューサーさん!」

P「お、おう?」

春香「ツケにしてもらったんですから、払いにいかないといけませんよね?」

P「あっ……あー、五代さんか。ポレポレは個人的にもまたいきたい店だしな」

春香「そうそう、だから払いにいっちゃいましょうよ! それから」


そう、どうせなら確かめてみたい

違ったなら冗談で済ませればいいし、もし本当なら


春香「……それから」

P「……?」


本当なら、どうしよう?

P「どうした、春香?」

春香「あっ、いや別に……」


そうだ、五代さんがもし四号だったとして

それを問い詰めて白状したとして

私はそれを、どうしたいんだろう?


P「そうか……じゃあ払いにいってくるよ」

春香「えっ」

P「ん?」

春香「……私を置いてく気なんですか?」

P「いや、だって調子も悪いだろうしさ……」


……確かに体調は悪いですけど

今はそういうことじゃなくて……四号のこととか、気になることが多くて

このまま家に帰っても眠れない。死んだ人のあの目だって忘れてなんかない

まじでごめんね寝落ちしてた
書きます

春香「……確かに、調子は悪いですけど。今は一人になりたくないんです」

P「……そうか。そりゃそうだよな」

春香「ごめんなさい、プロデューサーさん……」


これは本心だ

今、一人にはなりたくない


P「いや、すまんな。また考えが足りなくてさ」

春香「いえ、平気です……それで、プロデューサーさん」


五代さんに聞きたいこともあるし、ついていかせてください

そう言おうと思った時、楽屋のドアが開いて


雄介「……あ、お邪魔しちゃいました?」


今まさに聞きたいことがあると名前を出そうとした人が顔を出した

P「いや、大丈夫です……って五代さん!?」

雄介「そうですか? いやぁ、だって今まさに……」

春香「あのっ……ご、五代さん!」

雄介「ん、どうしたの?」

春香「その……な、なんでここに?」

P「あっ……ま、まさかツケは10秒ごとに利息がつくシステムだったとか!」

雄介「そうそう、なのでお支払いを……じゃあないんですけれどね。 少し気になって」

春香「気になること、ですか?」

雄介「うん……あのさ」

春香「……はい」

雄介「……大丈夫?」

春香「……大丈夫って、なにがですか?」

雄介「うーん、いや……」

春香「未確認の、ことですか?」

雄介「……まぁ、そうかな。ごめんね? 藪から棒で」

春香「気にしないでください……一応、大丈夫ですから」

雄介「そっか。……ならいいんだけれどさ」

春香「うちには一応、頼りにならないプロデューサーさんがいますから」

P「おい春香、さすがにひどくないか……?」

雄介「あはは、信頼されてるってことじゃないですか? プロデューサーさん」

P「いやいや、そうは言っても……」

春香「……それで、なんでこんなところへ?」

雄介「いや、だからちょっと気になってさ」

春香「なにが、気になったんですか?」

雄介「……うん?」

春香「……ごめんなさい。気にかけてもらっておいてこんな言い方で」

雄介「そんな、別に気にしないでよ? 俺もいきなり押し掛けて変なこと聞いたんだしさ」

春香「でも、なんで……私たちがここにいるって、事件に巻き込まれたって思ったんですか?」

雄介「それは……うーん」

春香「……ひょっとして、なんですけれど。すごくくだらない冗談だと思って貰ってもいいんですが」

雄介「どうしたの?」

春香「……五代さんは、四号が人間だとしたらどうしますか?」

雄介「……どうしてそんなことを?」

春香「いえ、なんとなく……四号って実は人間で私たちを守ってくれてるのかもって思う出来事があって」

雄介「そっか。俺は……うーん、わかんないかな」

春香「わかんない?」

雄介「うん、だって俺がクウガだし」

春香「クウガ……?」

雄介「……四号って、呼ばれてるけど。あの戦う姿の名前」

春香「……!」

クウガとアイマスのコラボか
支援

春香「……じゃあ、やっぱり」

雄介「うん、あの時は……間に合わなくてごめん」

春香「間に合わなかったなんて、そんな……」

雄介「一人、助けられなかった」

春香「……」

雄介「もっと早くつけていたら、ライブが中止になることもなかったかもしれない」

春香「そんなこと……」

雄介「……ある、かもよ? だからさ」

春香「ご、五代さんは私を助けてくれたじゃないですか!」

雄介「ギリギリだったけどね。どうにか間に合ってよかった」

春香「そしたら……五代さんが来てくれなかったら、私も死んじゃってたかもしれないんですし」

雄介「うん、本当に危ないところだったよね……ごめん」

春香「なんで謝るんですか……聞きたいことがあったのに。これじゃ聞けませんよ……」

雄介「聞きたいことって?」

春香「なんで、変身できるんですかとか……どうして戦えるんですかとか」

雄介「なんでって言われると……ベルトを自分の意思で身に付けたから、かな?」

春香「ベルト……?」

雄介「うん、霊石が埋め込まれてて……古代文字でいろいろ書かれてるんだけど俺の友達の桜子さんって人が解読してくれてる」

春香「……つけてるように見えないんですけれど、どこに?」

雄介「……ここ、かな?」トントン

春香「お腹……の、中?」

雄介「うん、正解。身体の中に入っちゃったんだ」

春香「なんで……そんな」

雄介「最初は……目の前で、怪物に人が襲われてて無我夢中で」

春香「そんなの……」

雄介「本当にがむしゃらでさ、どうにか追い払ったんだけれど……その時は俺、白かったんだ」

春香「白……? 四号、じゃなくて……クウガ? は赤い色なんじゃ……」

雄介「呼びやすいほうでいいよ? そう、俺も赤が本当の色だと思ったんだけどどうして白いのかわからなかった」

春香「……なんでだったんですか?」

雄介「……覚悟が、足りなかったんだと思う。ただ追い払いたいって思って戦ったから」

春香「追い払いたいって……」

雄介「うん、甘いよね? そのあと……その襲撃でなくなった人のお葬式で泣いてる子がいたんだ」

春香「……お葬式」

雄介「それでさ……思ったんだよ。あいつらを放っておいたらもっと泣くことになる人が増えちゃうかもって」

春香「……」

雄介「もう、あんな理不尽に泣くことになる人はみたくないって……思って」

雄介「それから、俺は赤になれるようになって……少しでも、泣く人が減らせたらって思って戦ってる」

春香「……すごいんですね」

雄介「ううん。全然……間にあわないことも多いし、俺一人じゃどこに未確認がいるかもわかんないし」

春香「それでも、すごいです」

雄介「いや、春香ちゃんこそすごいよ」

春香「私なんて、そんな」

雄介「……だって、人のために泣けるんだから」

春香「え? あれ……私」ツゥ…

雄介「誰かのために、泣けるってすごいことだと思うんだ。ありがとう」

春香「いえ、そのっ……これは……」グスッ

雄介「余計な心配だったみたいだね……悩みを聞いてくれる人も身近にいるみたいだし」

春香「あっ……プロデューサー、さん」

P「……いやいや、黙って聞いてましたけれど。これ結構秘密にしとかないといけない内容なんじゃないんですか?」

雄介「いえ、俺は別に気にしてないですし大丈夫ですよ?」

P「気にしてないっていっても……もし俺がマスコミにリークでもしたらどうするんですか」

雄介「……プロデューサーさんは、しませんよ」

P「……やれやれ、そんなに信頼されたらできなくなるじゃないですか」

雄介「あはは、ありがとうございます」

P「……五代さんこそ。改めてありがとうございました」

雄介「なにがです?」

P「うちの春香を、助けてくれて。本当に……どうお礼を言えばいいのかわからないぐらいで」

雄介「ちょ、ちょっと? そんな大げさな……」

P「大げさなんかじゃないです。他人を身体をはって助けるなんて普通できやしません」

雄介「いやいや、夢中でやってるだけで……」

P「あなたの、四号の、クウガのおかげで助かってる人は多いんですから。その人たちの分までお礼を言わせてください」

春香「……私も、改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」

P「……ありがとうございます」

雄介「……いえ。こちらこそ」

P「また、カレー食べにいきますね?」

雄介「楽しみに待ってます。おやっさんのサンドイッチもうまいんですよ?」

P「へぇ……楽しみが増えました」

雄介「シャレは寒いんですけどね、腕は確かですから!」

P「寒いシャレかぁ……それはちょっとなぁ」

春香「プロデューサーさんもしょっちゅう言ってるから大丈夫じゃないですか?」

P「春香お前っ……!」

雄介「あはは……じゃあ俺はこの辺で」

春香「あっ……本当に、ありがとうございました! またいきますから!」

春香「……すごいなぁ」

P「あぁ。誰かの涙がみたくない……か」

春香「私だったら、投げだしちゃいそうですよ……」

P「俺だって無理さ……すごいな、五代さん」

春香「はい……」

P「……でもさ、俺達にもできることがあるんじゃないか?」

春香「できること……?」

P「あぁ、せめて今泣く人の気を紛らわせてあげるとかさ」

春香「そう、ですよね……泣いてる人……」

P「春香は、アイドルだろ? 人が笑顔になれるような……そんなアイドルになれればさ」

春香「……誰も泣かないっていうのは無理ですかね?」

P「たぶん、無理だろうけどさ。それが理想だよなぁ」

春香「無理でも、理想でも……せめて……私のライブではみんな笑顔でいられるように。がんばります」

P「……あぁ、改めてがんばろう」

春香「あと……私のライブで亡くなった人のお葬式、やっぱり参加させてください」

P「……わかった」

春香「ありがとうございます……その」

P「あぁ。遺族の方へはきちんと説明させてもらう」

春香「……私が歌うのをやめなかったから、避難が遅れたって」

P「いや、俺が曲を止めなかったからってだ。そこは譲らん」

春香「で、でもやっぱりあの時私が」

P「春香」ムニッ

春香「ひゃいっ……はにゃひてふははい、フロリューサーひゃん」

P「……お前だけが責任をしょい込むのも違うだろ?」パッ

春香「いてて……でもプロデューサーさん。それだとプロデューサーさんだけが悪いみたいじゃないですか」

P「一番悪いのは未確認だ。でもな……理解できるのと納得できるのは違う。身近にあたる相手は必要だよ」

春香「だったら、私が」

P「春香も被害者だ。無能なスタッフのな」

春香「そんなこと……」

P「大丈夫だって、たぶん……辞めはしない、と思う……気がするから」

春香「全然大丈夫じゃないじゃないですか……」

P「でもな。いざって時は腹を切る覚悟ぐらいないとだな……」

春香「いつの時代ですかそれ」

P「まぁ、謝罪は基本だろうよ……亡くなったのは若い子だったんだ。親御さんだって理不尽さに怒ってるだろ」

春香「理不尽さ……ですか」

P「あぁ、未確認は……理不尽で。俺たちは戦えないんだからな」

春香「……五代さんは、すごいですね」

P「……あぁ、本当にな」

※※※※※

春香「……」

P「……どうした?」

春香「いえ。泣いてたんです」

P「……あぁ」

春香「私を責めるわけじゃなく、ただ静かに……」

P「俺の時も、そうだったよ。ただ淡々と説明を受けて……さ」

春香「……理不尽、ですよね」

P「……あぁ」

春香「まだ、12号は逃げてるんでしたよね」

P「もう、何日もたってるのにな……五代さんも焦ってるみたいだった」

春香「……できることって何かないんでしょうか」

P「俺たちには知れることすらたかが知れてるからな……残念だけどさ」

春香「……」

本当に、理不尽だと思う

私と同じ年頃の女の子が犠牲になって……

今も被害は増えている。五代さんは少し疲れが溜まっているみたいだった


春香「……ごめんなさいプロデューサーさん。ちょっと顔を洗ってきます」

P「あぁ……わかった」


私は戦えるわけじゃない。そんな力も資格もない

でも、それでも……傍観者でいるのは辛い

私以外の人が頑張ってるのがわかっていて自分がなにもしないのが、いやだ


春香「……はぁ」


わがままだ。自分は安全なところにいるのに

中途半端に首を突っ込もうと思っちゃうなんて

春香「……?」


ふと、どこからか声が聞こえた気がする

声というか……悲鳴? 裏の方から……

なんだろう、気になる……万一に備えて携帯を準備する

ついこの間買ってしまったのだ。こんなハイテク機器を……って話はおいといて

恐る恐る覗くとそこには


「あ、あぁっ……」

春香「……!」


腰を抜かしている小さな女の子と


ネズマ「ジバンガ バギ……ガド ズガギビン バボビバ」


その子にせまる未確認生命体12号がいた

春香「や、やめなさいっ!」


思わず近くに落ちていた石を投げつけてしまった


ネズマ「……ザンザ ガダサギギ ゲロボバ」


12号がこちらに注意を向ける

すごいプレッシャーだ、怖い


春香「そ、そこの子! はやく逃げて!」

「あっ……あぅっ……」


這うように女の子が逃げようとする

12号が女の子の方を向きなおそうとしているのがわかったからさらに石を投げてこっちに注意をひきつける


ネズマ「グドドグギギバ ゴラゲバサ バダズベスバ」


こっちへ意識を移したようだ。こちらを完全に向いている

足がガクガク震えるけど……逃げなきゃ

春香「警察……警察……110番って何番だっけ!?」


走りながら震える手で番号を押す

長くは逃げていられないだろうし、振り切ったとしても別の人が狙われちゃうかもしれない

警察に電話しないと、もつれそうな足に渇を入れて走る


春香「はぁっ……はぁっ……」


だいぶ走ったはずだ……うしろを振り返る。誰もいない

振り切っちゃった……のかな?

一息入れようと前を向くとそこには


ネズマ「ゾグギダ ゴギバベボボ ザ ゴギラギバ?」


12号が、立っていた


春香「なん、でっ……!」

ダメだ、いったん気を抜いちゃったせいで走れない

12号がこっちに手を伸ばしている


ネズマ「ラガビビ ボセゼ ガド ズゴゴ ビンザ ギゴガベダ」


どうにか逃げようとして……足がもつれて転ぶ

こんな時にまでドジでどうするのよ、私!

もうダメだと思った時……あの時は四号が、五代さんが助けてくれたけど


春香「……やだ……」


バイクの音は、聞こえない

こっちへ迫る手はもうそこまで来ている

これで、終わりなのかな

そこへ響いたのは……銃声?


春香「……え?」

続けて何発も銃声が響く。未確認の腕が弾かれる

そちらに目をやると、銃を構えた男の人が立っていた


「君、大丈夫か! 伏せていなさい!」


あの距離で、腕正確に当てたんだ……すごい

どちら様なのかはわからないけれど、感謝しつつ伏せる

矢継ぎ早に銃声が続く


ネズマ「ヅビバサ ヅビゲド グドドグギギ !」


12号の注意があちらに向いたので、隙をみて逃げだした

警察と、五代さんに連絡しないと……あの人も危ない

なんで銃なんか持っていたのかわからないけれど、そんなに効いてないみたいだったし急がなきゃ

警官「君……大丈夫か?」


連絡を入れようとしている最中、警察の人に声をかけられる

すごい、携帯電話って連絡したいと思った人を呼び出せるのかな? ……じゃなくて!


春香「あっ……私は大丈夫です! それより私を助けてくれた人が」

警官「……よかった、じゃあ保護するからこっちへ」

春香「待ってください! 私を助けてくれた人が危ないんですってば!」

警官「助けた人って……銃を持ってて、ちょっと難しそうな顔しててコートを着てた?」

春香「は、はい!」

警官「その人は……警察の人間だよ。大丈夫だから」


警察の人? あの人……なるほど、だから銃なんて持ってたのか

でも、危ないことに変わりはないはずなのに、なんで冷静なんだろう?

警官「いやね……あの人は本当に化物みたいな人だから……応援も来てる、大丈夫だよ」

春香「そう、なんですか……?」

警官「全治2週間って言われた怪我を2日で気合で復帰してきたことがある、かな」

春香「えぇ……?」


本当ならすごいけど……でもだからって

口に出そうと思った時、警官の人の手も震えてるのに気づいた

私を励まそうとしてくれているんだ。この人だって怖くないはずがないのに


警官「だから、大丈夫だよ……こっちへ」

春香「……はい」


この人も、戦ってるんだ

不安から守ろうとしてくれているんだ


春香「……あの、ありがとうございます」

警官「はは、市民の安全を守るのは警察の仕事だからね」

お仕事……簡単に言うけれど、未確認事件はそんな簡単に割り切れるものじゃないと思う

お昼のワイドショーじゃ警察は無能だ無力だっていう内容の報道を時々していて叩いてばかりで

そして、文字通り命がけなのに……この人は……いや、この人たちは


春香「……お勤めごくろうさまです」

警官「急だね、どうしたんだい? ……でも、ありがとう。がんばれるよ。……君の保護者さんへ連絡したいんだけど」

春香「あっ……そうだプロデューサーさん」


顔を洗ってくるって席を外して、そのまま飛びだしてきちゃったから心配してるかも……

えーっと、電話しなきゃ。携帯電話を取り出して……そこで着信アリの表示に気付く


春香「あ、あれ? いつの間に……逃げてる時は鳴ってなかったと思うけど……マナーモードになりっぱなしだったのかな」

P「……おい春香ぁ?」

春香「へっ? あっ!」


後ろから声をかけられて振り返るとそこにはプロデューサーさん

探して走り回ってくれたのか汗だくだ

P「まったく、心配させないでくれよ」

春香「ご、ごめんなさい……」


本当に心配してくれたんだろう

パトカーも集まってきて未確認の目撃情報まで出て気が気でなかったそうだ


春香「……ありがとうございます」

P「まったく、次からは気をつけてくれよな?」

春香「……はい」

P「……わかってくれればいいんだ、そう落ち込まれても困る」

春香「あっ……え、えぇ」

P「まぁ心配するのも俺の仕事みたいなものだけどな。適度にならいいぞ? 体重が増えたとかな!」

春香「……」

P「ちょっ、春香? ジョークだからな? そんな真剣に悩まなくても」


お仕事。警察の人は命がけで私達を助けてくれている

私は……私のお仕事って、なんなんだろう?

※※※※※

12号を撃ちながら距離を保つ

五代は呼んだが、それまで他の市民に被害が出ないようにするのも俺たちの仕事だ


一条「しかし……」


なにやら、やたら焦っている気がする

危ういところで12号の攻撃が避けていられるのもその焦りで余裕がないのがわかるおかげだ


一条「なんなんだ、いったい?」

警官「一条警部補! 援護します!」

一条「あぁ、気をつけろ! なにやら焦ってるようだ」


応援に来た警官隊に注意を促す

こういう時が一番危なかったりするものだ

いまさら序盤のグロンギ語の構文ミスに気付いた
ごめんね☆

ネズマ「ヂブジョグ ジバング バギ!」


でたらめに突っ込んでくる

冷静に射撃しつつ避けた


ネズマ「ブゴ! ラザザ! ラザゴセパ!」


援護に来た警官隊の射撃に巻き込まれないように物陰に隠れる

未確認の余裕がどんどんなくなっていく


ネズマ「ガ……グアアアアアアアア!」


射撃は続いている……すると

12号が、爆発した


一条「……なんだと?」

そういった技や特性の可能性もあるので注意してみたが……木端微塵に吹き飛んでいる

どういうことだ? 通常兵器の射撃でも倒せる……のか? しかし


警官「い、一条警部補! やりましたよ!?」

一条「あ、あぁ……」


どうも納得がいかない……そう、爆発したのは銃弾が当たった場所というよりまるで


一条「……バックル部分は跡形もないか」


ベルト部分を中心に爆発したように見えた……のだが

確認しようにも残っていないのではしかたない。肉片を一部回収して研究に回せないだろうか


一条「……ん?」


大きさが合わない気がするが……爆風で消し飛んだのか?

残った部分はどうするべきなのだろうか。通常の火葬のような形式で……?

これ、クウガ知らない人向けに解説はあったほうがいいかな?
脳内保管要素も混じってるせいで分かりづらいとは思うんだけれど

>>128
汝の為したいように為せ

>>130
じゃあ、決着がついてから蛇足的に書かせてもらおうかな
「グ」と「パ」使うの忘れてたって話なんだけどグロンギ語訳とかもその時に簡単に

※※※※※

春香「……え、倒せたんですか?」

警官「あぁ、一斉射撃でなんとかね」

春香「すごいじゃないですか! おめでとうございます!」

警官「うん……我々だってただやられるだけじゃないってことだね」

春香「はい、応援してます!」

ヤイノヤイノ


P「あの……あなたが春香を助けてくれたそうで」

一条「ん……あなたは?」

P「あぁ、失礼しました。あの子のプロデューサーです」

一条「あぁ、ありがとうございます……プロデューサーさん?」

P「えぇ、あれでも一応アイドルなんですよ」

一条「すいません、そういったものには疎くて」

P「いえいえ、まだまだ売り出し中のマイナーアイドルですから……本当にありがとうございました」

一条「いえ、これが警察ですから……それに」

P「……?」

一条「彼女は、未確認に襲われていた少女を助けて囮になって逃げていたんです」

P「なんですって?」

一条「泣きながら走ってきた少女に事情を聞くと……リボンのお姉ちゃんに助けられた、未確認がいたと」

P「……無茶してくれるなぁ、春香」

一条「誰にでもできることじゃありませんよ。危険ですからできればもうしないでほしいですがね」

P「同意です。でも……女の子を一人助けられたんですね。よかった」

一条「そうですね。それは……」

ブロロロロロ キッ

雄介「すいません一条さん! 遅れるなんて……あれ?」

P「えっ……五代さん?」

一条「ん?」



雄介「いやー、まさかプロデューサーさんが一条さんと出会うなんて世界は狭いですね?」

P「いやほんと……五代さんの協力者さんだったなんて」

一条「五代と知り合いとは……驚きましたよ」

雄介「……それにしても、本当ですか?」

一条「あぁ、確かに警官隊の射撃に合わせて謎の爆発が起こり12号は消滅した」

雄介「そうですか……いったい……」

P「……まじめな話みたいですし、俺はここらへんで」

一条「あぁ、申し訳ありません」

P「いえいえ。俺たちには応援ぐらいしかできそうにないですし……」

雄介「そんなことありませんよ! ポレポレに来てくれるだけでも明るくなりますし」

P「カレーはおいしいですし、こちらこそいつもありがとうございます。……おやっさんは強烈でしたけど」

雄介「あはは、俺もいつもお手伝いしてるわけじゃないですから……いい人なんですけどね?」

P「こっちがどういうリアクションするのが正しいのかわからなかったですよ……」

一条「……五代?」

雄介「どうしたんですか、一条さん?」

一条「いや、なんでもない。そうか普段は店の手伝いだったな」

雄介「えぇ、まぁ一応そうですね」

一条「ふむ、今度改めてお邪魔させてもらおうかな」

雄介「とびっきりのカレー用意して待ってますね?」

一条「うむ……カレー?」

P「あ、ポレポレのカレーおいしいですよ?」

一条「……あそこは喫茶店じゃなかったのか?」

雄介「コーヒーとかもおいしいですけど、ご飯はカレーです!」グッ

P「本当においしんですよ、刑事さん!」グッ

一条「あぁ、そこまでいうのなら……ぜひ今度な」

雄介「待ってますね?」

P「……あ、それじゃあ今度こそこれで」

一条「あぁ、すいませんお手数をおかけしました」

P「いえいえ、本当にありがとうございました! よろしければ今度ライブにも来てくださいね」

一条「……時間がとれたら、ぜひ」

P「……たっぷり、休暇がとれるようになるといいですね」

一条「えぇ、本当に」

P「おーい春香、帰るぞー」

春香「えっ、はーい!」タタッ

P「おい待て急ぐのはいいけど焦りすぎると」

春香「えっ? あっ」ドンガラガッシャーン

P「あーあー……なんで小石避けてなにもない場所で転ぶんだよ。怪我は?」

春香「な、なんとか……」

P「気をつけてくれよ、アイドル?」

春香「はい……ドジですよね私って……」

P「まぁ今に始まったことじゃないけどな?」

春香「そ、そうですけど……はぁ」

P「ほれほれ笑えー」ムニッ

春香「ひゃへへふははいひょー……」

P「まぁまぁ、心配かけた代金だって……おぉ伸びる」ムニー

春香「ひゃへへふははい……んもー」

一条「……そうだ、五代」

雄介「……はい。どうしました?」

一条「気になる点が他にもあってな」

雄介「気になる点……ですか?」

一条「あぁ、射撃で爆発といったが……直撃した場所が爆発したんじゃないんだ」

雄介「どういうことですか?」

一条「見間違い……かもしれないが。ベルト、特にバックル部分が爆発したように見えた」

雄介「ベルトが……」

一条「回収した肉片からもバックル部分はかけらも見つからなかったんだ」

雄介「それは確かに怪しいですね……いったいどういうことか……」

一条「古文書の文章に未確認の生態については載っていない、よな」

雄介「えぇ、たぶん……ですけれど」

一条「どうも何かのヒントになる気はするんだがな……」

雄介「はい……うーん……」

―――――ズルッ

―――ズルズル

―ズズズッ


「……ゴセパ ギバブゾ グギバダダボバ」


「ログ ジャベザ ゲレデ」


「ガボ ゴドボ ド ゴンバ パ ボソグ」


ずるり、ずるり

春香「プロデューサーさん……」

P「ん、どうした?」

春香「今日も、考えてたんですけれど」

P「……なにをだ?」

春香「私の、仕事についてです」

P「仕事……アイドルの、ことか?」

春香「はい、私のお仕事ってなんだろうって考えてたんですよ」

P「……それで?」

春香「私は、ここ数日ずっと守ってもらってばかりだったじゃないですか

P「アイドルは戦うものじゃないぞ?」

春香「はい、そうなんです……アイドルは戦えないんです。でも」

P「……」

春香「泣いてる人も、何人も見ました」

P「……犠牲になった子の葬式か」

春香「五代さんの言ってた意味が、わかったんです。胸が痛くて……いやだなって」

P「それで、どうしたいと思ったんだ?」

春香「警官の人が、私を励ましてくれて助けてくれて言ったんです『仕事だからね』って」

P「……あぁ」

春香「だから、私は……」

P「……ん?」

春香「みんなに笑顔が届けられるような……って、え?」

「…………」

P「なんだ、あの人……ひどいケガしてるぞ……?」

プロデューサーさんの視線の先には、確かにひどい怪我をしている男の人が立っていた

正直、関わりあいにならないほうが賢い選択じゃないかってぐらい異様な風体で

でも、私は決めたんだ。いろんな人に笑顔が届けられるようなアイドルになるって


春香「あ……確かに……えっと、あなたは……」

「……ラズパ ビガラ ゾ ボソグ」


その言葉を聞いた瞬間、全身が粟立つ

この、声のトーン……聞いたことがある


ネズマ「ギベ」


ケガだらけの男の身体が一瞬で怪物に変わってこちらに踏み込んでくる


春香「あっ……」


また、これなんて……私、未確認にはモテるのかな? なんて冗談が浮かぶ

でも今度は五代さんも、刑事さんも……

ごめんねご飯食べてきます
れっつオムライス。なんか不備とかあったら教えてくれ

ただいま
おいしかったです、再開。遅筆でごめーんね☆

P「春香ぁ!」


プロデューサーさんに突き飛ばされた

また助けられてしまった……じゃなくて!


P「っぐ……!」


顔を上げると未確認になぎ払われたプロデューサーさんが吹っ飛んでいった

壁に強く叩きつけられて、そのまま意識を失ったみたいだ


ネズマ「ラダ ジャラバ ゾギヅロ ボギヅロ!」


12号は完全にこっちに狙いを定めているようだった

プロデューサーさんは気になるけれど今は逃げなきゃまずい!

仏の顔も3度までっていうしもう都合のいいお助けは期待できない

幸いここからならさっき五代さんや刑事さん達と別れた場所もそう遠くない

春香「っは、っはぁっ……」


全力で走る。ついてきている気配はない

でも気は抜かない。完全に私だけを見ていたアイツは追いかけてきているに違いない

ちょっと油断したら、走る足が止まってしまったら


春香「えっと、あっち……」


追いつかれたら、殺されちゃう

プロデューサーさんだってあのままじゃいけない

だから、助けを呼ばなきゃ

私は―――戦えないんだから


春香「っ……! っく、あああぁぁ!」


私は私にできることをする、そう決めたのに悔しい

戦えない。戦っているところをまともに見てすらいない

逃げるしかないなんて

どうにか辿り着いた

未だに12号の気配はないけれど……いる、絶対にいる


春香「あのっ、刑事さん!」

一条「ん? 君はさっきの……どうしたんだ?」


さっきの助けてくれた刑事さんが車に乗ろうとしているところだった

呼びとめて、事情を説明する


春香「12号が、まだっ……」

一条「なんだって? ……完全に爆散したんじゃないのか?」


顎に手を添え少し考えたようなそぶりをした後、私にも車に乗るように言ってくれた


一条「……とにかく乗りなさい。12号は君を追いかけているんだね?」

春香「す、すいません……」

一条「いや、無事保護できてよかった……いったん五代に合流した方が……っ、あれは」

春香「え? ……あっ!」

いつの間にやら車道に12号が立っている

やっぱり血まみれで、ボロボロの姿なのだけど……とても恐ろしく見えた


一条「……バックルが、ない……やはり一度吹き飛んだのは間違いないのか?」

春香「え、えっ?」

一条「すまない、五代に無線で連絡を!」

春香「は、はいっ!」


刑事さんが窓から身を乗り出して銃を撃つけどひるみすらしない

渡された無線機に必死に五代さんの名前を呼んだ


ネズマ「バンザ ラドラデデ ブセスドパバ ヅギデスジョグザ」


こっちにゆっくり歩いてくる

刑事さんが撃つのを諦めてハンドルを切った


一条「やはり効かないか……逃げるぞ!」

春香「は、はい! えっと五代さん、聞こえたら返事を! 五代さん!」

雄介「あとなに頼まれてたっけ……にんじんピーマンじゃがいもたまねぎ……あれ? ピーマン?」


おやっさんに頼まれていたおつかいを思い出してスーパーに寄ったのはいいんだけれど……

何買うかをいまいち思い出せない。カレーセットだったような違うような……まぁ買っておけばいいかな?

両手いっぱいになった荷物をトライチェイサーにどうやってぶらさげようか考えながら店を出ると若干の人ごみ


雄介「あれ……俺のバイクあたり?」

「ちょっとアンタ!」

雄介「あ、はい? どうしたんですか?」

「あのバイクあんたのでしょ!」


おばちゃんが指さす先にはトライチェイサー

確かに俺のバイクだけど……無線のランプが光ってる?


「さっきからなんかギャーギャーいっててうるさいのよ! なんとかしてちょうだい!」

雄介「すみません……ちょっと通してください!」


無線から聞こえてくるのは……つい最近知り合ったアイドルの女の子の声だった

雄介「……もしもし、春香ちゃん? どうしたの?」

春香『あっ、やっと通じた!? 五代さん、今、私が12号に襲われてて! 刑事さんが助けてくれて逃げてるんです!』


12号。警官隊の銃撃で倒されたんじゃないのか?


一条『すまない、代わってくれ。 五代!』

雄介「一条さん? どういうことですか?」

一条『わからない、だがベルト部分のバックルが存在しない。奴は一度吹き飛んだというのは間違いないようだ」


なるほど、よくわからないけどわかった

一度倒れたはずの奴が復活したってことらしい、急がないと……


雄介「ごめんねおばちゃん! また今度お説教聞くから!」


エンジンをふかし、アクセルを握りしめる

速度を上げながら、戦う覚悟を決めて叫ぶ


雄介「変身!」

※※※※※

一条「とにかく、ここは逃げの一手だ……なぜか君だけじゃなく俺も狙っているようだったしな」

春香「は、はい……」


またあの未確認の姿が見えないところまできたけれど……

刑事さんの車を逃げていたらまさかのガス欠で動かなくなってしまった

今は自分の足を信じて走るしかない


一条「12号がどうやって追ってきているかは不明だが……近くにいる可能性もある。くれぐれも静かに」


そう言ったところで、刑事さんの胸から高い音

携帯の着信音だ。静かにって言ったのに自分はマナーモードにしてないの!?


ネズマ「リヅベダゾ」

一条「しまった……!」


しまった、じゃなくて! なにやってるんですか刑事さん!

意外とドジなんですか? こういう時に発揮しないでくださいよ!

誤字った

車を逃げていたら→車で逃げていたら

一条「っく!」


刑事さんが銃を構えたけれど撃つより早く手をはらわれてしまった

このままじゃ……そんな時に聞こえてきたのはバイクのエンジン音


クウガ「はあっ!」


現れた五代さんはそのまま12号を轢いて吹き飛ばした

初めて、四号を見かけたときと同じ構図だ


クウガ「大丈夫ですか、一条さん、春香ちゃん!」

一条「あぁ、なんとかな……」

春香「わ、私も大丈夫です」


刑事さん……怪人に腕を思いっきり払われて、本当に大丈夫なんだろうか?

骨ぐらい折れていてもおかしくない勢いだと思ったんだけれど

そこで、12号が起き上がってこちらを睨む

ネズマ「クウガ ゴラゲパ ギズロ ギズロ ジャラダバシ……!」


明らかに憎しみをこめた目でクウガを……五代さんを睨んでいる

なにを言っているかはわからないけど、恐ろしい


クウガ「うおおぉぉっ!」

ネズマ「ボソグ……ボソグボソグボソグ!」


五代さんが殴りかかる。12号が防ぐ

12号も蹴りを繰り出す。五代さんが避ける

格闘技の試合とか、子供のケンカより生々しい殺しあいが目の前で繰り広げられる


一条「……刺激が強いだろう、あっちへ」

春香「まってください……見させてください。最後まで、私に」


手刀のような攻撃を受けた五代さんが血を噴き出す

五代さんもひるまず殴りつけ、12号が逆に膝をおった

クウガ「……」


ザリッと地面を踏み締める音がやけに大きく聞こえた

両手を広げ、腰を落とした五代さんが12号に向かって走り出す


クウガ「うおりゃあああぁぁぁ!」


そのまま大きく飛んで、足を突きだす

飛び蹴りが体制をたてなおせていない12号は吹き飛んで動かなくなった


春香「……終わった、んですか?」

一条「いや……動かなくはなったが」

クウガ「……爆発、しない?」

春香「爆発……?」

一条「あぁ、これまで確認された未確認はすべて死亡時に爆発したんだ」

クウガ「……でも、しっかり蹴った感触はありました」


いくら待っても、12号は起き上がってこないどころかピクリとも動かない

ちょくちょく日本語おかしいわごめん


×飛び蹴りが体制をたてなおせていない12号は~

○体制をたてなおせていない12号は飛び蹴りをもろに受けて吹き飛んで動かなくなった

結局、念のため銃で撃ったりもしたが反応が無く完全に死亡しているって判断になった


春香「……五代さん」

雄介「どうしたの?」


変身を解いた五代さんに話しかける

五代さんはいつも通りの人懐っこい笑顔を浮かべていた


春香「あれが……戦うってことなんですね」

雄介「……」


ぴくりと、少しだけ反応があったけれど何も言わずに私の次の言葉を待っている


春香「……私の、ファンの人のお葬式にいったんです」

雄介「……うん」


理不尽に命を奪われた人の、大切な人を奪われた人の姿を思い出す

春香「……すごく、悲しくなりました」

雄介「……そう」


そこにいる誰も悪くないのに

ただ、泣くしかない。泣くしかできない状況になった人たちのことを


春香「私は、戦ったりできませんけれど」

雄介「……」

春香「それでも……思ったんです。 こんな……」


一度、大きく息を吸い直す

決意を込めて言葉にする


春香「こんな奴らのために……もう、誰かの涙は見たくないって」

雄介「……」

春香「私は、守るために戦うことはできないですけれど……それでも」

雄介「そう……そうだね。でも春香ちゃん」

五代さんが、なにかを諭すように言おうとする

私はその言葉をさえぎって続けた


春香「戦えないから、だから私……みんなを、笑顔にしたいんです!」

雄介「……!」


五代さんが、少し驚いた顔をする


春香「戦う人が、一番疲れるはずなのに……私たちを守ってくれてる人の笑顔は誰が守るのかなって思って」


思うがまま、心の中身を吐き出す。今、五代さんが戦っているのをみて思った事を


春香「だから……私、今から歌います!」

五代「……え?」

一条「……なに?」


電話を切った刑事さんも驚いた顔をしている

そう、私は戦えない。守ってもらう立場だから……せめて守ってくれる人たちを笑顔にしてあげたい

春香「私は、アイドルですから! 見ててくださいよ……私のライブ!」

一条「ライブといっても、音楽も何も……」

春香「声だって出せますし……リズム感もあるらしいですよ?」


そこらへんに落ちている木の棒を拾い上げる


雄介「……まさか、ストンプ?」

春香「そのまさかです。 いきますよ……!」


気合を入れて、リズムに乗って

あたりにあるものを叩く。適当じゃなく奏でるように


一条「……これは」

雄介「……すごい」

春香「アイドルですから! さぁまだまだ!」


大きく息を吸い込む

そのまま、歌を――――

春香「って、きゃっ!?」

ドンガラガッシャーン

雄介「うわ、春香ちゃん!?」

一条「だ、大丈夫か?」

春香「えへへ……かっこよくキメられないなんてまだまだですね」

雄介「いやいや、すごいよ! ストンプって結構難しいんだから」

春香「そうですか? ありがとうございます……あの」

雄介「どうしたの?」

春香「……少しは、笑顔になれました?」

雄介「うん、本当にすごかった! 元気出たよ」グッ

春香「……ん!」グッ

雄介「あのさ、春香ちゃん……これ」

春香「これって……この親指立ててぐっ!ってやつですか?」

雄介「うん。これはさ……古代ローマで満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられたんだってさ」

春香「へぇー……ものしりなんですね」

雄介「小学校の先生からの受け売りだけどね。だから……これにふさわしい男になれって」

春香「ふさわしい、人……」

雄介「春香ちゃんは、すごいよ」

春香「そんなことないです。私ってドジで……」

雄介「でも、人を笑顔にしたいって……守られるだけじゃないなんて。かっこいいよ」

春香「自分以外に戦ってくれる人がいるからいえるんですよ。笑うならやっぱりみんな一緒がいいですもん」

雄介「みんな一緒かぁ……じゃあさ」

春香「はい?」

雄介「春香ちゃんが皆を笑顔にして……俺はそれを守れたらいいね」

春香「……そう、ですね。でも」

雄介「……? どうしたの?」

春香「本当なら……守る人も、いらなかったら……いいですよね」

雄介「……そうだね」

春香「だから、五代さんも無理はしないでくださいね?」

雄介「うーん……それはどうかなぁ?」

春香「えぇー、そこは『はい!』っていってくれるところなんじゃないんですか?」

雄介「今はできるだけの無理はしないといけない場面みたいだからさ、約束は守りたいもの」

春香「そうですか……なら別の約束しませんか?」

雄介「うん?」

春香「うーん……えーっと……そう! 私のドームライブを見に来てくれることとか!」

雄介「ドームライブかぁ……」

春香「あっ、今笑いましたね!? いや笑うのはいいんですけど! そうじゃなくて」

雄介「ごめんごめん、そういう意味じゃなくてさ……そうだね。みんな解決してすっきりしたら」

春香「……はい!」

雄介「春香ちゃんが、ドームをいっぱいにできるまでに解決できたらいいね?」

春香「どうですかねー、私があっという間にトップアイドルになっちゃうかもしれませんよ?」

雄介「それは厳しいなぁ……」

春香「えへへ……」

春香「じゃあ、五代さん……約束ですよ、約束!」

雄介「うん、うっそついたら針千本のーます、指切った!」

春香「……私、絶対ドームいっぱいのお客さん呼んじゃいますからね」

雄介「待ってるよ」

春香「……もし、五代さんが必要以上に無理しないといけなくなったら、私が笑顔にしてあげますから!」

雄介「うん、その時はお願いしようかな」

春香「はい……だから、見ててくださいね。私のライブ!」

雄介「うん、見に行くよ……俺も、がんばるからさ」



おわり

想像以上に長くなりましたが、お付き合いありがとうございました
仮面ライダークウガ×アイドルマスターでしたとさ

時系列としては6話と7話の間。公式の「12号は警官隊に銃撃され謎爆発」って設定からの重妄想
できる限りクウガの時間軸や設定に矛盾しないつもりだったけど細かいところはすまん


本当はここからオリジナルのゴ怪人出して春香が囮になって云々
みたいな話も想像してたんだけど

「はるか」



「へいか」

ってタイプミスして一人で笑い転げるぐらいには寝不足みたいなんで勘弁

やっべぇwwwwプロデューサーwwww忘wwwれwwwてwwwたwwwww

……春香が一条さんの車の中で救急車呼んだってことにしてください

本当にありがとうございました、どっとはらい


どうでもいい妄想解説してもいいかな?

ちなみに謎爆発の理由は「ゲゲルのタイムアップ」
ゲゲル始める時にバックルに薔薇姉さんが手をかざすのってタイマーセットらしいね?

グロンギの爆発はバックルに封印エネルギーが流れ込むからって設定もあったので
復活体が爆発しなかったのはバックルが壊れていたから、っていう感じ


徹頭徹尾俺得で書き続けたからすっごい疲れたけど楽しかった
ひょっとしたらまた別のアイドルと別のライダーのお話で
アイドル達もライダーも13人だしね?


以下本気でどうでもいいチラ裏


オリジナルのゴはライジングマイティ3キロ爆発の後のエピソード

後輩もできてトップアイドルへの道を順調に進む春香が無責任なマスコミに憤る

ゲゲルは「大勢の人間の前で話している人間をその場にいる人間の数にだけ切り裂く」

学校の校長やらヒーローショーやらが次々襲われる中、もうひとつの法則に気付く

「だんだん集まっている人間の数(分割する数)が増えている」 最新の犠牲者は人気のマジックショーだった

警察職員全員をかき集めて囮になろうとする一条さんだが失敗

春香が囮を買ってでる。苦戦するが勝利、2人でサムズアップ

春香が雄介を心配するが、雄介はいつかのより少し疲れた顔で笑うのでしたとさ――みたいな?

グロンギ語の中で訳が必要そうなところだと
ネズマがやたら焦ってるってたりの「ジバン」は刑事じゃなくてタイムリミットについての話
後は基本的に悪態ついてばかりかな。意味のあるセリフだと

>>1では
「これであと 19人。先は長いな」

>>102
「時間がない。あと5人なのに」

>>146はベルト爆散でゲゲルの資格消失してて
「俺は資格を失ったのか。もうやけだ……せめてあの男(一条さん)と女(春香)は殺す」


ぐらいかも。わりとどうでもいい!

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