ほむら「時の卵?」 (1000)

西暦2011年 見滝原


ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」

さやか「くぅっ……」

杏子「ちくしょう……」

マミ「……なんて強さなの……」

ほむら「どうしてなの……? 何度やっても、アイツに勝てない……」

ほむら「魔法少女が4人そろっても勝てないなんて……!」


QB「ここまでだね。さぁまどか、あとは君しかいない。契約を」

まどか「わたし……わたしは……」


ほむら(繰り返す。私は何度でも繰り返す)

ほむら「私の戦場は、ここじゃない!」


カチッ...デュイィン!!

ほむら「えっ? なに、この……丸い、ゲートみたいなのは……!?」

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さやか「うわ!?」

杏子「さやか!? ちょ、何だよこれ! 吸い込まれる!」

マミ「いやああああーっ!」

まどか「ほむらちゃん!!!」

ほむら「まどかぁーっ!!!」

ほむら(し、知らない! こんな時間遡行、私は知らない! いったい何が起きて……!?)


…………


QB「……」

QB「全員、吸い込まれちゃったね。これはまさか……」

年代不明 時の最果て


♪時の最果て


「おーい」

ほむら「……うっ……」


老人「気付きなすったか、お嬢さん」

老人「驚いたぞ、バケツのゲートから出てくるとはの……。お前さん、滅びの日からの来訪者か」

ほむら「あなたは……? それにここは? 街灯のある小さな広場だけで、他に何もない……」


老人「ここは『時の最果て』。時間の迷い子が行き着くところさ」

老人「私はその管理人といったところかの。お嬢さん、どっから来なすった?」

ほむら「私は2011年から……そうだ! まどかは!? ワルプルギスの夜はどうなったの!?」

老人「このところ、時空のゆがみが多くてな。お前さんのようにフラリとここへあらわれる者が多い」

老人「お前さんの言う『まどか』さんかどうかは知らんが、先ほどここへ来た連中なら……」

ツンツン頭「すごいな! あのスペッキオって人のおかげで魔法が使えるようになるなんて!」

メガネ女子「人じゃなくて神様でしょ? にわかには信じがたいけれど……」

どう見てもロボット「ワタシだけ適正がなかったのハ残念デス」

金髪ポニテ「でも、ロボだって強い心は持ってるって言ってたし……あれ? 誰かいるよ」


ほむら(広場にある扉の向こうから変な4人組が……当然だけど、全員知らない顔ね)

老人「お前さんたちがスペッキオの修行を受け取ったあいだに、ほれ、また迷い子じゃぞ」

金髪ポニテ「こんにちは! あなたも、時の旅人さん? 私はマール!」

ツンツン頭「僕はクロノ」

どう見てもロボット「製造番号R66-Y、ロボと呼んでクダサイ」

メガネ女子「私はルッカよ。見たことない服ね。いつの時代の人かしら?」

ほむら「……暁美ほむらよ。私は2011年から来たんだけど、あなた達は……?」

クロノ「ワルプルギスの夜、か……。ラヴォス以外にも、そんな災厄があるなんて」


ほむら(魔法少女と魔女、当たり障りのない範囲で話したけれど……)

ほむら(ずいぶんあっさり信じるのね。ラヴォスとやらのほうが、おおごとだからかしら)

ほむら(世界崩壊……まゆつばものだわ。でも……)


ほむら「これが『ラヴォスの日』の映像、か……」

ルッカ「信じてくれたみたいね。ロボ、もういいわよ。映像投影システムを消して」

ロボ「了解しマシタ」

マール「でも、おかしくない? ほむらちゃんの話だと『ラヴォスの日』なんてなかったらしいし」

ほむら「私のいた時代では、世界は滅びてなんかいないわ」

ロボ「ワタシの時代とほむらの時代のあいだニ、何か起きたのでショウカ?」


ルッカ「考えられるのはこうね。情報センターで私たちが見た記録には、本来『続き』があった」

ルッカ「少なくともA.D.2011まではラヴォスによる世界崩壊は食い止められていた」

ルッカ「誰の手によるものかは分からないけれど……その後、抑えきれなくなってしまった」

ルッカ「気になるのは、ほむらの時代にゲートが開いたこと。はたして偶然なのかしら?」

ほむら「ワルプルギスの夜もラヴォスに関係があると?」

ルッカ「推測だけどね」

マール「なんか頭がこんがらがってきたよ……」

クロノ「とにかく、僕たちがラヴォスを何とかする目的に変わりはない、でいいよな?」

ルッカ「そうね。その過程でワルプルギスの夜についても何か分かるかもしれないし」


ロボ「ほむら、アナタが良ければワタシたちと一緒に行動しませんカ?」

ほむら「私も? でも私は、まどかを……」

マール「そのまどかちゃんも、きっとどこかの時代に飛ばされてると思うんだ」

ロボ「すなわちワタシたちと共に旅をすれバ、いずれ会うこともあるデショウ」

ほむら「そう……そうね。そうかもしれないわね」

クロノ「正直に言うと、君の……魔法少女だっけ? その力も心強いし」

マール「もう、クロノ! 女の子を戦士扱いするなんて、何考えてるの!」

クロノ「いや、そういうつもりで言ったんじゃ……」

ほむら「いえ、いいのよ。仲間に入れてもらう以上、足手まといになるつもりはないわ」

ほむら「それに元いた時代に戻るゲートも見当たらない……」

ほむら「私が通ってきたというゲートも閉じてしまったようだし。ここにいても仕方がないわ」

ルッカ「決まりね! 改めてよろしく、ほむら!」

老人「話はついたかね? 迷い子たちは、みなで協力するようじゃの。良きことじゃ」

マール「それで、私たちの時代に戻るにはどうしたらいいの?」

老人「この広場につながる橋の先に、光の柱があったじゃろう」

老人「あれは、あちこちの次元のゆがみと、ここをつなぐものじゃ」

老人「ただし! 違う時間を生きる者が、4人以上で時空のゆがみに入ると次元の力場がねじれてしまう」

老人「時の旅は不安定じゃ。3人以内で行動するようにしなされ」

クロノ「ということは、僕たちのうち2人はここに残らないといけないのか」

ほむら「当然、私は残るつもりはないわよ」

ルッカ「まあ、ほむらがいなくちゃ友達が見つかっても分からないものね」

ロボ「現代、ルッカの時代デスカ。是非とも行ってみたいデス」

ほむら「なら、私とロボと……あと1人は?」

ルッカ「ロボが行くなら私も行くわ。主にメンテナンス的な意味で」

マール「お留守番かあ。3人とも、早く帰ってきてね!」


クロノ「僕、主人公なのに空気だな……」

A.D.1000 メディーナ村


ほむら「到着、って……何よここ!?」

ロボ「タンスがゲートにつながっているトハ……とても愉快な発想デスネ」


魔族弟「に、兄ちゃんたち何者!?」

魔族兄「おまえら、人の家のタンスから出てくるなよ! これだから人間は……」

ほむら「……ッ! 使い魔……いえ、結界もないし違うようね……」

ルッカ「こいつら魔族よ。襲ってはこないようだけど……」

ほむら「魔族……1000年前には、そんなやつらも……」

魔族兄「人間との戦いは400年前に終わってる。俺らは負けたんだ、いまさら戦うもんか」

魔族兄「ここは魔族の子孫によって作られた村、人間は歓迎されねーだろうから気をつけな」


魔族弟「西の山の洞窟の近くに、変わった人間のおじいさんが住んでるよ」

魔族弟「兄ちゃんたちの力になってくれるんじゃない?」

ルッカ「ずいぶんと親切な魔族さんね。私たちを憎んでいるんじゃないの?」

魔族兄「過去にとらわれていても仕方ないってことさ。こんな意見は少数派だがね」

ほむら「……」

ロボ「トニカク、行ってみまショウ!」

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「人間の客とは珍しいのう。ワシはボッシュ」

ボッシュ「ワシの自慢のコレクションでも見ていかんか? 何でもあるぞ!」


…………


ほむら「ただの鍛冶屋だったわね」

ルッカ「まあこんな辺鄙なところで開業してる、という点では変わってたけど」

ほむら「有益な情報は何もなし、か。武器が調達できただけマシかしら」

ロボ「ほむらもワタシやルッカと同じく銃器ヲ扱うのデスネ」

ルッカ「ていうか、その盾の収容能力どうなってるのよ? 分解して調べたいわ」

ほむら「魔法で、ちょっとね……。それを言うなら、あなたたちのバックパックのほうが不思議だわ」

ロボ「それ以上はメタ発言につき禁則事項デス」

ルッカ「で、これからどうする? 早くも手詰まりだけど」

ほむら「……西の山の洞窟、って言ってたわよね。そこへ行ってみましょう」

A.D.1000 ヘケランの洞窟


魔王のしもべ「ギエピー!!!」

ほむら「……ここの魔族は襲ってくるのね」

ルッカ「クサイわね。何か隠されてる臭いがプンプンするわ」

ロボ「奥へ進んでミマショウ」


…………


洞窟最深部


???「魔族の敵に死を!」

ルッカ「なっ!? 何よコイツ!?」

ヘケラン「オレの名はヘケラン! にっくき人間どもめ、ここがキサマらの墓場だ!」

ほむら「いかにも雑魚が言いそうなセリフだわ」

ルッカ「サクッと倒しちゃうわよ!」

ロボ「戦闘モードに移行シマス」

ほむら(ここは一気に、時間停止で……)

ヘケラン「オレをあなどるなよ! キサマらの攻撃など効かぬわ!」

ほむら(……止まれッ!)


ヘケラン「さあ攻撃してみろ! そうしたら……」

ルッカ「なにアイツ? いきなりカリスマガードしだしたわよ?」

ロボ「妙デスネ。隙だらけなのが逆に不気味デス」


ほむら「……え? あれ……?」

ルッカ「ん? あんた、なにボーッとしてんのよ。戦闘中よ」

ほむら「! ……そう、だったわね。ごめんなさい……」

ほむら(時間停止が使えない……。……砂時計がひっくり返っていない……)

ほむら(やっぱり、あの時の時間遡行は私自身のものではないということ?)


ヘケラン「どうしたあ! 怖気づいたか!」

ロボ「向こうから攻撃してくる気配はありマセンガ……」

ルッカ「まどろっこしいわね! 仕方ない、私が行くわ。食らえっ!」ドキューン!


ヘケラン「ひゃっほう!」ガイン!

ルッカ「銃弾が弾かれた!?」

ヘケラン「けっけっけ! 攻撃したな……。お返しだ、反撃の『うぉーたがー!』」

ほむら「うあっ!?」

ルッカ「いつつ……。カウンターか!」

ロボ「これはいけマセンネ。こちらの攻撃は通りにくいデスシ、うかつに攻められマセン」


ヘケラン「さっきは雑魚だなんだと好き勝手言ってくれたな。キサマら、生きて帰れると思うなよ!」

ヘケラン「今度はオレの番だ……。『はーーっ!』」

ほむら「はーだの、がーだの、うるさいわよ。ならこっちも、カウンターでお返しするわ!」ダァン!


ヘケラン「ひゃっほう!」ガイン!

ほむら「……」

ロボ「銃撃はほとんど効果がありマセンネ。物理攻撃は無駄ということデショウカ?」

ほむら「くっ……。すごくウザいわ、こいつ……」

ルッカ「なるほどなるほど。そういうことね」

ほむら「納得してる場合? どうやって倒すか考えないと……」

ルッカ「いや、ほんとよくできてるわ。ストーリーの流れって大事ね」

ほむら「はあ?」

ルッカ「つまり、こういうことでしょ……『ファイア』!!」


ヘケラン「ぐおっ!?」

ほむら「ダメージが通った!」

ヘケラン「キ、キサマなぜ魔法を!? 人間は魔法など使えないはず……!」

ルッカ「見た? これが突破口ってわけよ」

ロボ「魔法……スペッキオさんのおかげデスネ」

ルッカ「よし、次はロボの番よ。ガツーンとかましてやんなさい!」

ロボ「と言われましてモ、ワタシは魔法ハ……」

ルッカ「スペッキオの言葉を思い出して。あなたにも使える技があるでしょ?」

ロボ「! ……そうデシタネ。デハ……『回転レーザー』!!」

ヘケラン「なにぃ!? この人形まで……ぐおおっ!」


ルッカ「効いてる効いてる! よし、ほむら。トドメにデカいのお願い!」

ほむら「……え?」

ルッカ「ん?」

ほむら「はい?」

ルッカ「いやいや」

ほむら「ご冗談を」

ルッカ「……」

ほむら「……」


ほむら「私、魔法使えないのよ」

ルッカ「なんでよ!? 魔法少女なんでしょ!?」

ほむら「そう言われてもね。無理なものは無理なのよ」

ルッカ「私女だけど、魔法使えない魔法少女って……」

ほむら「言わせないわ」


ロボ「ほむらは肉体言語で交渉する系の魔法少女なのデスカ?」

ほむら「まあ……そういうことにしておいてちょうだい」

ルッカ「そんな魔法少女いるの!?」

ロボ「ところデ、こんなに話し込んでいるのにもカカワラズ、敵が静かなのが気になるのデスガ」

ほむら「そういえば……あら?」

ヘケラン「……」


ルッカ「ああ……。カリスマガード中だったのね」

ロボ「ワタシたちが有効打を与えられることに驚キ、カウンターで優位に立つ作戦に切り替えたようデスネ」

ほむら「なんとか反撃される前に、一気に畳み掛けたいところだけれど……」

ルッカ「ふむ。それならここは、『れんけいわざ』でいくしかないわね」

ほむら「なによそれ?」

ロボ「ふたり、ないしは3人が協力してお互いの技を重ね合わせるのデス」

ロボ「そうすれバ通常では考えられないほどの威力を持った新たな技に昇華されマス……」

ロボ「それが『れんけいわざ』デス。信頼関係がつむぎだす、必殺の一撃なのデス!」


ルッカ「100万パワー+100万パワーで200万パワー! ふたり分のATBゲージを使って400万パワー!」

ルッカ「そしていつもの3倍のエフェクトが加われば400万×3の1200万パワーよ!!」

ほむら「意味が分からない」


ルッカ「そういうわけで、私が先陣を切るからあとはよろしくね」

ほむら「ちょっと。ぶっつけ本番でやらせるつもり?」

ロボ「大丈夫デスほむら。ワタシがあなたに合わせマス。具体的にどの技を合わせるかデスガ……」

ほむら「……うまくいくといいけど……」

ルッカ「いくわよ! しっかりやんなさい、あんたたち!」

ほむら「不安だわ……」


ヘケラン「! 来るか、人間どもめ……。さあ攻撃してみろ! そうしたら……」

ルッカ「待たせたわね。お望みどおり、こいつを食らいなさい!」

ルッカ「『ファイア』!!」


ヘケラン「ぐおおお……っ! ……ゲヘヘヘ……熱くて死にそうだぜ……」

ヘケラン「うらみによってパワー倍増! 反撃の『うぉーたがー!』だァーッ!!」


ルッカ「残念、クロスカウンターよ!」

ヘケラン「なに!?」

ロボ「ワタシたちのターンはまだ終わってイマセンヨ! ドロー! 『回転レーザー』!!」

ヘケラン「ちぃッ、キサマか! だが同じ技ごとき、耐えてみせるわあッ!」


ロボ「ほむら!」

ほむら「はいはい」

ヘケラン「人形の上に女が乗ってやがっただと!?」

ほむら「『パイプ爆弾』!!」

ヘケラン「これは!?」


ルッカ「ロボの黄金の回転とレーザーに乗せて、無数のパイプ爆弾が降り注ぐっ!」

ルッカ「ふたりわざ『大回転ボム』!! とぐろを巻いて燃え盛る炎が、あんたを焼き尽くすわ!」

ほむら「……ノリノリね、ルッカ」

ヘケラン「ギャアアア!! 燃える! オレの弾丸をも弾き返す自慢の体が、燃えてしまうぅ!!」


ロボ「うまくいきマシタネ」

ほむら「私はただ、あなたの上に乗っかってただけで、あまり力になれていなかった気がするけど」

ロボ「そんなことはありマセン。どちらか一方でも欠ければ成立しない、それが『れんけいわざ』デス」

ロボ「ほむらあってこその『大回転ボム』デスヨ」

ほむら「まあ、そこまで言うなら……ありがとう」

ルッカ「大・勝・利ーッ! はい、ここでファンファーレ!」


♪ファンファーレ1


ほむら「ロボ、あのお調子者を止めてちょうだい。殴っていいから」

ロボ「さすがにソレハ……」

ヘケラン「ぐぐぐ……おのれ、おのれ……」

ルッカ「やったわね!」

ヘケラン「ラヴォス神を生んだ魔王様が、400年前に人間どもを滅ぼしておいてくだされば……」

ほむら「!」

ヘケラン「今ごろこの世界は我ら魔族の時代になっていたものを……クソーッ!」


>ヘケラン爆砕!


…………


ほむら「あいつの断末魔……確かに『ラヴォス』って言ってたわ」

ルッカ「中世の魔王が、この星の未来をメチャクチャにしたラヴォスを生んだのね」

ロボ「魔王を中世で倒す事ガできレバ、歴史は変わるのでショウカ?」

ほむら「でも、どうやって中世へ?」

ルッカ「リーネ広場のゲートを使えば……でもそこへ行く方法がないわね」

ルッカ「時の最果てのゲートも、今いるこの大陸も、リーネ広場のある大陸にはつながっていないわ」

ロボ「ルッカ、ほむら。あれを見てクダサイ」

ほむら「洞窟の奥に泉……いえこれは、渦?」

ロボ「この渦、どこかにつながっているのデハないデショウカ?」

ほむら「……」

ルッカ「……」


ほむら「ルッカ、あなたが先にどうぞ」

ルッカ「嫌よ! こんな、いかにも死亡フラグな場所! ほむらが先に行けばいいでしょ!」

ほむら「私の戦場はここじゃない」

ルッカ「ここしかないわよ! じゃ、いつやるの? 今でしょ!」

ロボ「ヤレヤレ、仕方ありマセン。ワタシが行きまショウ」

ルッカ「ロボ! やっぱりあなたは紳士ね!」

ほむら「そこにシビれるあこがれるわ」

ロボ「デハ、失礼シテ……」バシャーン!


ほむら「思ったんだけれど」

ルッカ「なに?」

ほむら「ロボって防水性能があるのかしら?」

ルッカ「……」

ほむら「……」

ルッカ「……。ロボーッ!!!」バシャーン!

ほむら「結局こうなるのね」

A.D.1000 トルース町


ほむら「驚きだわ。あの渦が、目的地すぐそばの海岸につながっていたなんて」


ほむら「で、ロボの調子はどう?」

ルッカ「ちょっとこれは……しばらくメンテナンスが必要だわ」

ロボ「面目次第モ……ございマセン……」

ほむら「いいのよ、ロボ。あなたはとても勇敢だったんだもの」

ルッカ「私たちは時の最果てに戻るわ。中世には、あとの2人と行ってちょうだい」

ほむら「私もスペッキオに聞くことがあるし、とにかく一度戻りましょう」

年代不明 時の最果て


スペッキオ「ふーむ……」

ほむら「どうなのかしら? 戦の神様」

スペッキオ「不思議だ。おめーも確かに魔法の民の血、ひいてる。しかしだ」

スペッキオ「力の引き出され方が特殊っつーか……おめー、生き物だけど生き物じゃないな」

ほむら「……要点だけ教えて。私の『時間停止』が使えなくなったのは何故?」

スペッキオ「それなら単純だ。今のこの時の流れはおめーの『持ち時間外』」

スペッキオ「その盾の砂、そいつで時間を操ってる。それ有効なの『A.D.2011のある期間内』だけ」

ほむら(私がループできるのは、まどかと出会ってからワルプルギスの夜が来るまで)

ほむら(その時間軸から外れた今、魔法の効果が及ばない……ということかしら)

ほむら(『時間操作』に魔力の大部分を使っている以上、私の戦闘力は大きく落ちるわね……)

スペッキオ「深刻な顔だな。ま、その魔法、使えたとしてもオススメできない。命削ってる」

ほむら(……こいつ、どこまで分かってるのかしら)


スペッキオ「心配すんな。『時間停止』なんてチート使えなくてもそれに近いことできるようにしてやれる」

ほむら「! ……どういうことかしら?」

スペッキオ「おめーの資質に合ってる魔法ある。『ヘイスト』」

スペッキオ「おめーも、おめーの周りのやつらもこれでちょー速く動ける『時間加速』魔法」

スペッキオ「こっちなら命も削らない。オススメ」

ほむら「……手札はいくらでも欲しいわ。使えるようにしてくれるかしら」

スペッキオ「おー、いいぞ。その代わり……」

マール「あっ、ほむらちゃん! 難しい話、終わった?」

クロノ「……ずいぶん息切れてるな」

ほむら「ハァ……あの、3周するの……ハァ……意味、あるのかしら……」

マール「あれキツイよね〜。ズルすると怒られるし。ほむらちゃんもやったんだ?」

ほむら(『身体強化はズルだ』って無効化されたのよね……。終わったら戻してもらえたけど)

ほむら(生身で走るのってこんなにつらかったかしら……忘れてたわ)


クロノ「魔法少女なのに新しく魔法教わったのか?」

ほむら「色々あって、ね……。とにかく、戦力の低下は避けられそうよ」

クロノ「よし、次は中世だな!」

A.D.600 ガルディア城


ほむら「ふたりは、以前にもここへ来たことがあるのよね?」

クロノ「ああ。あの時は大変だったよ。マールが消えちゃうかもしれないところで……」

マール「その話は、また今度ゆっくりね! それより、今もなんだか騒がしいみたいだけど」

ほむら「兵士の人たちに話を聞いてみましょう」


…………


クロノ「魔王軍の侵攻と、勇者の出現か……」

ほむら「本当にファンタジーの世界ね。ちょっと頭痛くなってきたわ……」

マール「ゼナンの橋に騎士団が展開してるんだって。そこへ行ってみようよ!」

ほむら「それにしてもリーネ王妃って、本当にマールによく似てたわね」

料理長「お前ら、ゼナンの橋に行くのか?」

ほむら「そうですけど、あなたは?」

料理長「俺のことはどうでもいい。橋に行くならこれを持っていけ」

マール「なに? この袋……。わ! 干し肉がいっぱい!」

料理長「ただの干し肉じゃねえ。『ハイパー干し肉』だ」

マール「ハイパーって……」

クロノ「なるほど、これを前線の兵士たちに補給物資として届ければいいんですね?」

ほむら「兵站線確保は戦争の基本よね」

料理長「……ついでにあの馬鹿団長に伝えとけ。生きて帰って来ねぇと承知しねえってな」


…………


マール「あの料理長さん、騎士団長の弟さんなんだって」

クロノ「仲は……そんなに良くはないみたいだな」

ほむら「誰にでも……たとえすれ違ってたって……失いたくない人はいるのよ、きっと」

A.D.600 ゼナンの橋


騎士団長「……そうですか、あいつがこの物資を俺に渡せと……」

クロノ「戦況はどうなんですか?」

騎士団長「……はっきり言って、これは負け戦です。魔王軍は『四魔騎士』を投入してきた」

マール「『四魔騎士』?」

騎士団長「魔王軍きってのツワモノ、4人の将軍です」

騎士団長「情けない話ですが、我らではどうすることも……勇者様にすべてを託すしか……」

マール「その勇者様ってどんな人なの? ここを通っていったんでしょ?」

騎士団長「青髪の、まだ年端もいかぬ少女でした」

騎士団長「しかしあの華美なマントと剣! 何より勇者の証たる『勇者バッジ』!」

騎士団長「彼女こそ勇者です! 魔王を撃ち滅ぼし、我らの救世主となるお方……!」

ほむら「ちょっと待って、青髪の少女って……まさか……」


ズドォォン!!!

騎士団長「! 何事だ!?」

騎士団員「魔王軍が攻めてきました! もう防ぎきれません!」

騎士団長「ここが最終防衛線なのだ、騎士団の名誉にかけて守りきれ!」


ほむら「これは……」

マール「黙って見てられないよ! 私たちも加勢しよう!」

クロノ「だな。騎士団長さん、助太刀します」

騎士団長「かたじけない、クロノ殿。またしてもガルディアの危機を救ってもらう形になるとは……」

ほむら「行くわよ、ふたりとも!」

ビネガー「ん〜? まーた、命知らずの馬鹿がのこのこ殺されに来たか」

ビネガー「ワシは魔王様第一の部下、魔王四大将軍のビネガー!」

ビネガー「偉大なる魔王様の敵に、死を! ゆけい、ジャンクドラガー!」



ジャンクドラガー「ウバシャアーッ!」

マール「スケルトン!?」

ほむら「ただのスケルトンじゃないわね。5mくらいあるわよ」

クロノ「すごく……大きいです……」

ジャンクドラガー「ゴオォゴゴ!!」

ほむら「! 脚が……!」

マール「避けてっ、ほむらちゃん!」

ビネガー「そのまま踏みつけてしまえーッ! ジャンクドラガー!」


ジャンクドラガー「ガアッ!!」ドオン!!

クロノ「ほむら!?」


ビネガー「フヒヒヒ! ぺちゃんこになりおったわ!」

マール「そんな……こんなあっさり……」

クロノ「!? いや、待つんだ。あいつの足の下には、誰もいない!」

マール「えっ……あ、ホントだ!」

ビネガー「なにいっ!? 馬鹿な、たしかにジャンクドラガーが踏み潰したはず!」

ビネガー「どこだ!? あの女はどこにいった!?」


ほむら「……」


ビネガー「ワシの背後だとおッ!?」

マール「ほむらちゃん……いつの間に……?」

ビネガー「く、くそっ! わざわざ背後を取っておきながら立ち尽くすだけとは、なめくさりおって!」


ほむら(……来てる! 確実に今、在りし日の格好いい私が来てるわ!)

ほむら(周りの人たちの、『え!?』という驚きの表情……これがあるから、時間操作はやめられない!)


クロノ「なんか、ほむらがホムホムしてるぞ」

マール「ほむらちゃん、いったいどうやったの?」

ほむら「『ヘイスト』。スペッキオに教えてもらった、時間加速魔法よ」


ビネガー「加速魔法だと……。おのれ、こしゃくな! 握りつぶせ、ジャンクドラガー!」

ジャンクドラガー「ゴオォゴゴ!!」

ほむら「つかまると思って?」

ジャンクドラガー「ウゴ? ゴゴゴ?」

ビネガー「は、速すぎる……。まるでついていけておらん!」

ビネガー「……だが、逃げ回ってばかりいてもジャンクドラガーは倒せんぞ!」

ほむら「『攻撃』は私の役目じゃない」

ビネガー「なにっ!?」


クロノ「『かまいたち』!!」

ジャンクドラガー「ブゲッ!」

ビネガー「しまった! 女はただの囮かーッ!」


ほむら「……っと、効果時間終了か。ヘイストが切れる前に仕掛けてくれて助かったわ、クロノ」

ジャンクドラガー「ウギィィィアァァ……」

マール「真ん中からまっぷたつだよ! さっすがクロノだね!」

クロノ「やったか?」

ビネガー「やってないッ!!」

ほむら「!? なに、こいつ……体を切断されたのにピンピンしてるわ!」

ジャンク「ウギギギギ!」

ドラガー「グバアアア!」


ビネガー「フヒヒヒ! 残念だったなあ、ジャンクドラガーは2体でひとつの合体魔法生物!」

ビネガー「上半身と下半身がそれぞれ、個別の意思を持っておるのだ!」

マール「ずるい! 反則だよ!」

ほむら「それぞれ別だというのなら、個別撃破するまでよ! 『デザートイーグル』!!」ダァン!!

ドラガー「ギニャア!?」

ほむら「まずはお前からよ!」

ビネガー「そう簡単にいくと思うのか!」

クロノ「ほむら、危ない!」

ほむら「え……きゃあっ!?」

ジャンク「ブバアーッ!!」ゴオォォ!!


マール「火を吐いた!?」

ビネガー「『火炎攻撃』じゃあ! そのまま焼けただれろッ!」


ほむら「うぐっ……。油断したわ、奇襲か……!」

ビネガー「チッ、しとめそこなったか。まあいい。殺すのが少しばかり遅くなっただけだ」

クロノ「上半身を狙えば下半身が、下半身を狙えば上半身が割り込んでくる……」

マール「入れ替わり立ち代りで、息つく暇もないよお〜」

ほむら「厄介ね……。でも、ふたつに分かれたぶん、1体ごとの力は落ちているはず。隙を見て集中攻撃よ」

ビネガー「なるほどなるほど。では、攻撃しやすいようにもう一度ひとつになってやろうか?」

マール「え?」


ビネガー「ジャンクドラガー・パイルダー・オーン!!」

ジャンクドラガー「マジーンガアア!!」

ビネガー「ぶちかませッ! 中華キャノン……ではなかったな。『外道ビーム』!!」

ジャンクドラガー「ブッピガァァン!!」


クロノ「股間からビームが!?」

ほむら「まずい!」


ズドォォン!!!

ほむら「くうっ……ふたりとも、無事!?」

クロノ「ああ、なんとかな……」

マール「うう……もうちょっとで直撃しちゃうところだったよ……」


ビネガー「まだ生きていたか。人間にしてはなかなかしぶといな」

ほむら「ヤツは合体してるわ、今が攻撃のチャンスよ!」

マール「反撃の『アイス』だよ! いっけー!」


ビネガー「おおっと、危ない。ジャンクドラガー・パイルダー・オーフ!!」

クロノ「ま、また分離した!」

ほむら「なんてうっとうしいギミックなの……」

ビネガー「フヒヒヒ! 変幻自在のこの動き、とらえられまい!」

マール「どうしよお……。これじゃ、埒が明かないよ……」

クロノ「合体時に強力な一撃を食らわせるしかないな……しかし、どうやって……」

ほむら「私に考えがあるわ。そのためにも、ここは『待ち』の一手よ」


ビネガー「どんな作戦を立てようが無駄無駄ァ! 『アースクエイク』で一網打尽にしてしまえいッ!」

ドラガー「グバオオオ!!」

クロノ「うわわわ! あいつが地団太を踏むたびに地面が揺れる!」

ほむら「耐えるのよ、ふたりとも! 今はひたすら耐え続けて!」

ビネガー「フヒヒヒ! いつまで持ちこたえられるかな? そろそろ潮時じゃあッ!」

マール「『ヒール』!!」

クロノ「危なかった……。サンキュー、マール」

ビネガー「回復魔法か! 無駄な足掻きを……。このまま押し切ってやるわぁ!」


マール「『ヒール』!! ヒールヒールヒール!!」

ビネガー「……」

ほむら「ついげきのポーションがぶ飲みでさらに回復力は加速したわ」

ビネガー「……」イライラ

クロノ「まっまっ満足! 一本満足! ハッ!」

ビネガー「うぜえええ! ウザすぎるわ、この人間どもがあ!」



ビネガー「ジャンクドラガー! 『外道ビーム』でまとめてなぎ払え!」

ほむら「……来た!」

ジャンクドラガー「マジーンガアア!!」


ほむら「マール! 『反作用ボム』よ!」

マール「えっ? それって、ルッカがいないと使えないけど……」

ほむら「大丈夫、同じようにやってちょうだい!」

マール「……分かった。『アイス』!!」

ビネガー「チッ、この瞬間を狙ってやがったか!」

ビネガー「だがそんなチンケな魔法、『外道ビーム』で押し返してやるわあ!」


ほむら「『パイプ爆弾』!!」

ビネガー「!?」

ジャンクドラガー「アギィィィヤアアァァァァ!!!」

ビネガー「ジャンクドラガーが! なんだ、この巨大な破壊魔法は!?」


クロノ「『ファイア』代わりの爆炎とマールの『アイス』!」

クロノ「熱のプラスと熱のマイナスの力が反作用して『熱の無』、消滅の力が生成されたんだ!」

クロノ「これはふたりわざ『反作用ボム』と同じ技! 言うなれば、『メドローアボム』だな!」


ほむら「……クロノって解説王の先祖なの?」

ドラガー「ゴバアァァ……」

ジャンク「ウギギギギ……!」


ビネガー「ま、まずい! ドラガーがやられた!」

ほむら「あとはクロノ、お願いね」

クロノ「おいしいところだけ取っちゃって悪いな。『サンダー』!!」

ジャンク「GYYYYAAHHHHHH!!!」

ビネガー「オーノー!? ジャンクまでもがあ!」

マール「やったあ!」


ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!!」

ほむら「何が『ピ〜ンチ』よ。ふざけてるの?」

ビネガー「ちくしょ〜! 生意気な小娘め……覚えておけ!」


マール「あっ、逃げた!」

ほむら「情けないヤツね。魔王軍きってのツワモノが聞いて呆れるわ」

クロノ「ほむらって時々辛らつだよな……」

騎士団長「さすがです、クロノ殿! それにお仲間のみなさんも!」

ほむら「隊長さん……」


騎士団長「魔王軍は退却しました。これでゼナンの橋は、我らの手に取り戻せたということになります」

クロノ「でもそれって根本的な解決にはなりませんよね?」

ほむら「霧が出てきたわ」

マール「え? いたって快晴なんだけど……」


騎士団長「おっしゃるとおり……。魔王軍を倒さないことには。やはり勇者様次第です」

マール「勇者様を追いかけてみようよ! 私たちにも手伝えることがあるかも!」

クロノ「そうだな。女の子ってのも気になるし……」

ほむら(こんなことに首をつっこみそうな青髪の少女なんて、ひとりしか思い当たらないわね)

A.D.600 デナドロ山


クロノ「パレポリ村の話では、ここに勇者さんが向かったらしいけど……」

マール「伝説の聖剣グランドリオン! まさに勇者様にピッタリだよね!」

ほむら「この山にその聖剣があるのね……」



…………


謎の白い生き物「山はいいよねぇ」


…………


ほむら「……今の場面、必要なくない?」

クロノ「何を言ってるんだ? それより、もうすぐ山頂だぞ」

A.D.600 デナドロ山 山頂の洞窟


マール「見て! あそこ!」

ほむら「!」

クロノ「青髪の少女……勇者さんだ! 魔物と戦ってるぞ!」


勇者?「これで……とどめだぁ!!」

グランとリオン「あいててて〜」

勇者?「はぁっ、はぁっ……どうよ!?」

リオン「やられちゃったね、グラン兄ちゃん」

グラン「なかなか楽しかったな、リオン」


マール「魔物が分離して……!? え、子供ふたりになっちゃったよ!?」

勇者?「あたしのこと、認めてくれた? なら、グランドリオンを譲って!」

グラン「ここまでのやつ、サイラス以来だな」

リオン「この人なら、ボクらを直して、本当の持ち主を見つけてくれるかな?」

グラン「ああ、大丈夫さ」


リオン「お姉ちゃん、忘れないでね」

グラン「手にした力をどう使うかが大事、だぜ」

勇者?「分かってるよ……。もうあたしは、間違えない」


クロノ「消えた……。あの子供たちは、剣の精霊か何かだったのか?」

マール「不思議なこともあるもんだ〜って……え、ちょ! ほむらちゃん!?」

勇者?「これがグランドリオン……。でも、折れちゃってるし……」

ほむら「こんなことだろうと思ったけど……」

勇者?「えっ!? その声、もしかして……」


ほむら「やっぱりあなただったのね、さやか」

さやか「ほむら!!!」


…………


マール「まさか、噂の勇者様がほむらちゃんの探してたお友達だったなんてね〜」

さやか「あ〜、そのことなんですけどぉ……あたしはただの、代行? みたいな?」

ほむら「何よ勇者代行って」

さやか「えーと……うん、会ってもらったほうが早い! ちょっとついてきて!」

A.D.600 お化けカエルの森


さやか「しーしょおーっ! 師匠ってばーっ!」

クロノ「師匠……?」

ほむら(誰よ師匠って……ていうか何よ、この竪穴式住居は……いつの時代よ? あ、中世か……)

マール(ほむらちゃんがなぜかすっごくイライラしてる)

さやか「ししょおーっ! いないんすかー?」


ガサガサッ

ほむら「!?」

人型カエル「さやか、師匠と呼ぶなとあれほど……む!? お前らは……!」

クロノ「カエル!? カエルじゃないか!」

ほむら「え、カエル!? 名前そのままなの!? あなたそれでいいの!?」

マール(ほむらちゃんの貴重な狼狽シーンだ)

カエル「誰だこの無礼な女は。……いや待て、その服、もしかしてさやかの……」

さやか「さっすが師匠、話が早い! そうそう、前話したあたしの友達のひとりだよ!」

カエル「なるほどな、通りで礼がなってないわけだ」

ほむら「そこのと一緒にしないでちょうだい。少し驚いただけよ」

さやか「えっなにこれひどい」


カエル「それにしてもクロノ、マール……久しぶりだな。剣術でも習いに来たのか?」

マール「えっとね、私たちはさやかちゃんに連れてこられて……」

カエル「さやかが? そういえばお前、今までどこに行っていた」

さやか「話すと長くなるんだけど……あ、ほむらたちの話も聞かせてよ!」

ほむら「そうね……。ここでいったん整理しましょう」

ほむら「つまり……さやかはこの時代に飛ばされて、カエルさんに拾われたわけね」

さやか「拾われた、って……ま、とにかく魔物に襲われてたあたしを助けてくれて……」

クロノ「剣術を教えてもらったりもしたと……。だから『師匠』か」

マール「カエル、やさしいトコあるじゃない!」

カエル「やめろ。コイツがあまりにも無鉄砲なんで灸をすえてやっただけだ」

さやか「師匠、こー見えてめちゃつよなわけよ! 世界一かっこいい両生類なんだから!」


ほむら「それで、このバッジは?」

さやか「あー、『勇者バッジ』。パレポリ村のタータってガキ……いや、お子サマがね、拾ったって」

さやか「高く売れるかも〜とか馬鹿なこと言ってたから、とっちめて取り返してやったの」

さやか「だってこれ、師匠の大事なものでしょ? ずっと大切にしてたじゃん」

カエル「……」

さやか「そしたらなんか周りの人が騒ぎ出してさ。あたしのこと、『勇者様だ〜』って」

クロノ「『勇者バッジ』は勇者の証明らしいね」

さやか「そんなつもりなかったんだけど……話聞くと、魔王のことでみんな困ってるみたいじゃない?」

さやか「正義の味方の魔法少女としては、ほっとけなかったわけよ!」


マール「それで勇者代行として今まで振舞ってきたのね」

さやか「うん、だけどさ……やっぱりこれは、師匠のだよ」

さやか「グランとリオンも『本当の持ち主』って言ってたし。勇者は、あたしじゃなくて師匠!」

カエル「俺は……」

さやか「ね、師匠……魔王を倒してよ!」

さやか「そしたら、ほむらの言ってたラヴォスってやつを倒すことにもつながるらしいし!」

さやか「世界を救う、なんてのはやっぱり勇者のやることだよ! あたしみたいな……じゃなくて、さ」

ほむら(さやか、あなた……)


さやか「せっかくグランドリオンも取ってきたんだし……」

クロノ「折れた刃の部分だけだけどね」

マール「クロノ! 余計なこと言わない!」

カエル「……グランドリオンの柄なら、ここにある」

クロノ「えっ……あ、ホントだ!」

カエル「だが直すアテがない。それに、仮に直ったとしても俺に持つ資格はない……」

カエル「俺では魔王に勝てん……。俺は勇者などではない……」

さやか「師匠……なんで……」



カエル「さやか。友が見つかったのなら、もうここには用はないはずだ」

カエル「出て行け。俺のことはもう、ほっておいてくれ」

第1話「星の夢の終わりに」 終了


  セーブしてつづける(第2話「師匠って、ほんとバカ」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

魔法少女まどか☆マギカとクロノトリガーのクロスSS


前編3話+中編4話+後編5話(実質4.5話)+マルチイベント編6話の計18話構成です。
クソ長いですが、良ければお付き合いください。

また、クロノトリガーのBGMは神曲ぞろいです。
音源を用意しての閲覧をオススメします。


それでは、また明日。

第2話「師匠って、ほんとバカ」


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  よろしくない

年代不明 時の最果て


ルッカ「これがそのグランドリオンってやつ、ねぇ……」

クロノ「なんとか直せないかな?」

ルッカ「そうは言ってもね、私じゃ専門外だわ」

ロボ「待ってくださいルッカ。ここに古代のショウケイ文字で、何か記されていマス」

ルッカ「見せて。えっ……と……ボ……ッ……シ……ュ……?」

ほむら「ボッシュ? それって確か、メディーナ村の……彼が制作者!?」

ルッカ「ボッシュのところに行くわよ! ロボ、準備しなさい!」

ロボ「了解デス。防水性能も完備シ、パワーアップしたワタシに隙はありマセン!」

ほむら「あなたたち、今まで何やってたのよ……」


マール「ほむらちゃん」

ほむら「なに?」

マール「……さやかちゃんのことは、いいの?」

ほむら「……」


————

さやか「あたし、やっぱり一緒に行けないよ。あんな状態の師匠を置いていけない」

ほむら「そう……別にいいわ。どうせここには戻ってくるだろうし」

さやか「そっか……よし! その時までに師匠を説得しとくよ!」

ほむら「一応期待しておいてあげるわ」

さやか「一応って何さー。あ、そうだ。ほむら、これ要るでしょ? 余ってるから」

ほむら「これは……グリーフシード!? あなた、魔女退治を!?」

さやか「勇者代行中にちょこちょこねー。あれ、ほむらはしてなかったんだ」

ほむら「最近はバタバタしてて……いえ、待って。じゃあ、ここにも魔女はいたの?」

さやか「そりゃいるでしょ。ほむらのトコにはいなかったの?」


————

マール「ほむらちゃん? どうかした?」

ほむら「……いえ、なんでもないわ。ええと……そう、さやかのことよね」

ほむら「彼女は望んで残ったのだし、それにカエルさんのところには、また寄るでしょう?」

マール「うん……そうだよね。そのときこそ、ふたりとも一緒に来てくれるよね!」


ほむら(この世界、少なくとも中世時代には魔女はいる……現代には……)

ほむら(いえ、私が見つけられなかっただけかも……)

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「これは、グランドリオン……! 何故お主らがこれを?」

ほむら「ボッシュさん。この剣、あなたなら直せるわよね?」

ボッシュ「こいつの原料である『ドリストーン』っちゅう原石が今でも入手できれば……な」

ロボ「ドリストーン……ワタシのメモリーには記録されていない石の名前デス」

ボッシュ「昔は金よりも値打ちのあった赤く輝く石じゃ。今じゃどこにもなかろうて」

ボッシュ「そう、はるか昔……気の遠くなるほどのな……」


…………


ロボ「参りマシタネ。所在不明の原料が必要となるト……」

ほむら「お手上げね。さて、どうしたものかしら」

ロボ「何か良い手立てハ……ルッカ?」

ルッカ「……」

ほむら「そう言えばずっと黙ってるわね。どうしたのよ?」

ルッカ「……昔……気の遠くなるほどの昔……そうよ!!」


ほむら「急に大声を上げないでちょうだい。……何か分かったの?」

ルッカ「時の最果てに、まだ入ったことのないゲートがあったでしょ?」

ルッカ「管理人さんの話だと、はるか昔、人間がまだ原始の時代だったころにつながってるらしいの」

ロボ「原始……気の遠くなるホドノ昔……ナルホド、行ってみる価値はありマスネ」

ほむら「原始、か。どんどん話のスケールが大きくなってくるわね」

B.C.65000000 不思議山


ほむら「あ……ありのまま今、起こったことを話すわ」

ほむら「『私たちがゲートから出たらそこは中空で、落ちた先に緑色の恐竜人間がいて襲われた』」

ほむら「何を言ってるのか分からないでしょうけど、私も何をされたのか分からなかったわ」

ほむら「催眠術とか超スピードとかそんなチャチなモノじゃなく、もっと恐ろしいものの片鱗を……」


ルッカ「ごちゃごちゃ言ってないで戦いなさいよーっ!」

ロボ「まずいデス。数が多すぎマス!」

ほむら「くっ……このままじゃ……!」

♪エイラのテーマ


???「ウガーッ!!!」


ほむら「えっ!?」

ルッカ「なに!? 誰よあれ! 金髪の痴女が恐竜人間をなぎ倒していくわ! 素手で!」

ロボ「助太刀……でショウカ?」



ルッカ「ってちょっと! 逃げたやつ追いかけてどっか行っちゃったじゃない!」

ほむら「この……お残しは許しまへんで! 誰だか知らないけど!」

ロボ「気ヲつけてクダサイ! 残りのターゲットが向かってキマス!」

ほむら「くっ! やるしかない!」

ドキューン!

恐竜人「ビューティフォー・・・」

ルッカ「!? ヘッドショット……今度は何よ!?」


???「危なかったわね。でももう大丈夫」

ほむら(あれ、何かすごいデジャヴ……)

ロボ「誰デスカ、あなたハ!?」


???「そうそう、自己紹介しないとね」

???「でも、その前に」

???「ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら」

サールティー ロイヤーリー タマリーエ パースティアラーヤー レースティングァー



ほむら(ていうかあれよね、みんなもう分かってるわよね)

ほむら「マミ……。あなた、原始の時代に飛ばされていたのね」

マミ「……」

ほむら「……マミ?」

マミ「……あ……あ゛け゛み゛さ゛あ゛ぁあ゛ぁぁぁん!!!!! 」

ほむら「ちょっ!? ちょっと……!」


ロボ「文明的な時代カラ原始へ、たった一人で飛ばさレ、彼女モ苦労したのデショウ」

ルッカ「わかるわ」

???「おっ? マミ、なぜ泣いてる?」

ルッカ「あっ、さっきの金髪痴女。戻ってきたのね」

ほむら「ずっと気になってたんだけど、痴女ってひどくない? 確かに露出は多いけど……」


マミ「エイラ。ううん、なんでもないのよ」

エイラ「お前ら、マミのトモダチか?」

ほむら「そうね……あなたが、マミを保護していてくれたのかしら?」

エイラ「あたいの名、エイラ! マミの嫁だ!」

ルッカ「嫁ぇ!? あなたたち、女同士でしょ!?」

マミ「ち、違うのよ? 誤解しないで!」


エイラ「マミ、ここ来た時、ひとりで恐竜人、戦ってた」

エイラ「エイラ、強い者、好き。男でも女でも。だからエイラ、マミ、好き!」

ほむら「……あなたまた、えらいのに好かれたわね」

マミ「だから、抱きつかないでって……あきれ返ってないで助けてよ、暁美さん!」

ロボ「仲良きことハ美しきかな、すなわちキマシタワーデス」

マミ「そう、美樹さんが……。どうしてこんなことに……」

ほむら「私にも何が起こったのか分からないわ。こんな、バラバラになってしまうなんて」

マミ「でも、暁美さんや美樹さんが無事で良かったわ。あとのふたりも、きっと大丈夫よね」

ほむら「まどかや杏子の行方は……」

マミ「ごめんなさい、分からないわ」

ほむら「そう、そうよね……。私が最初じゃなきゃ、あんな泣き方はしないわよね」

マミ「そっ、それはもう忘れてって言ってるじゃない。もう」

ほむら「……マミ、ひとつ聞かせて。この時代に魔女はいた?」

マミ「それが、いないみたいなのよね」

ほむら(原始時代に魔女はいない……。魔法少女は、この時代にはいない……?)


ほむら「いえ、待って。だとしたら、あなたソウルジェムの穢れはどうしていたの?」

マミ「暁美さん、『ヌゥ』って知ってる?」

ほむら「ぬう? ……知らないわ」


マミ「そのひと……人じゃないか。とにかく、彼にソウルジェムを渡すとキレイになって戻ってくるのよ」

マミ「『こういう石の扱いには慣れてる』んですって」

ほむら「ソウルジェムの扱いに慣れている? 何者、そいつ?」

マミ「……さあ?」

ほむら「さあって……。魔女はいないんでしょ? グリーフシードもなしに、どうやって浄化するのよ」

マミ「……さあ?」

ほむら「……」

ほむら(あのゲートを通ってからこっち、私の知らないことが頻出している……。なぜ……?)

ほむら(考えられるのは、ラヴォス。ヤツに何か秘密が……?)


マミ「暁美さん、どうかしたの?」

ほむら「いえ、なんでもないわ。この話はまた今度にしましょう」

ほむら(今の状態じゃ机上の空論しか出てこないわね……)



ルッカ「で? 何で私たちはエイラの村に向かうことになっちゃってるのかしら?」

ロボ「彼女が歓迎の宴ヲ催してくれるそうデス」

ルッカ「ドリストーンはどうなったのよ……」

エイラ「石ならそこら中、ある。欲しければ、いっぱいやる。とりあえず、村、来い!」

B.C.65000000 イオカ村 村の広場


エイラ「みんな聞け! 新しい仲間、できた!」

イオカ族A「Foooooooo!!!」

エイラ「強い女、マミのこと、みんな知ってるな?」

イオカ族B「マミサン マジ マミマミ!!!」

エイラ「マミのトモダチ、来てくれた! ほむ! ルッカ! ロボ!」

イオカ族C「ホムホム マジ ホムホム!!!」

エイラ「マミのトモダチ、エイラたちのトモダチ!」

イオカ族D「ダイタイソンナカンジ!!! ダイタイソンナカンジ!!!」

エイラ「新しい仲間、めでたい! 夜通し、宴! みんな、ボボンガ、踊れ!!」

イオカ族たち「UHOHOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


♪燃えよ! ボボンガ!


…………


ほむら「すごい歓迎っぷりね」

マミ「ここの人たち、いつもこんな感じよ。楽しいわよね」

ほむら「こんなことしてていいのかしら……」

エイラ「飲んでるか? ほむ!」

ほむら「ええ、まあ……。それより、『ほむ』はやめてほしいんだけれど」

エイラ「全然減ってないぞ! 岩石クラッシュ、特別な酒! こんなときしか飲めない!」

ほむら(中学生がお酒飲めるわけないじゃない……)

エイラ「マミをみならえ! もっと飲め!」

ほむら「えっ」


キーノ「まっ、マミ! どうだ? もっと飲むか?」

マミ「うふふふ〜そうね〜もういっぱいついでもらっちゃおうかしら〜」

キーノ「よし来た! どうだ、マミ? 体、熱くなってきた! 脱ぐか?」

マミ「そうね〜なんだかあ〜ほてってきちゃったっていうか〜……」

キーノ「熱いなら脱ぐ! これ自然の摂理! 何もおかしいこと、ナイ!」

キーノ「なっ、なんなら、手伝ってやr」

ほむら「『マジカル☆スタンガン』!!」

キーノ「電気を大切にね。ビリビリ!」


ほむら「ちょっと! 飲みすぎよマミ!」

マミ「あ〜あけみさ〜ん! 大丈夫よ〜これくらいぃ、いつものことだわあ〜」

ほむら「あなただって未成年でしょうに……」

マミ「このじだいじゃ15さいはもうオトナよ〜わたしはオトナのおんななのよお〜」

ほむら「まとわりつかないでっ」


キーノ「……」ピクピク

ほむら(勢いで気絶させちゃったけど……誰かしら、こいつ)

ロボ「この液体は不純物が多すぎマスネ……」

ほむら「ロボ。さすが、あなたは冷静ね。ルッカは?」

ロボ「ルッカならそこデ伸びてイマス」


ルッカ「うひひひひ! やっらのよ……さすがるっかちゃん……ちじょにはまけんろ〜」

ほむら「女子が上げてはいけない声を上げてるわ……ん、これは?」

ロボ「それはドリストーンでス」

ほむら「えっ!? いつの間に……」

ロボ「この村にドリストーンがありマシタ。何でモ、村一番の強者の証らしいデス」

ロボ「それでルッカが頼み込んで、所有者のエイラさんと勝負シマシタ。その戦利品デス」

ほむら「なるほどね。勝負方法は……まあ、見れば分かるわね」

ロボ「ハイ、飲み比べデス」

ほむら「ルッカ……やるじゃない」

ルッカ「かんしゃがたりんろ〜ほむ〜! としうえをうやまへ〜!」

ほむら「カエルさんみたいに、敬われるに足る振る舞いをしてから言いなさいよ」

ルッカ「にゃにお〜!」

ほむら「ま、とにかく……一件落着か。マミも見つかったし、夜が明けたら早速戻りましょう」

ロボ「これで、グランドリオンが修復されマスネ」


キーノ「……」



エイラ「みんな! マミと、マミのトモダチ! 強さにカンパイ!!」

イオカ族たち「Prosit」


…………

翌日


ほむら「……んぅ……」

ほむら「……あ……。ずいぶんと、寝込んじゃってたのね……。私も疲れてるのかしら……」


ロボ「ほむら! 大変デス!」

ほむら「どうしたの、ロボ? そんなに慌てて……」

ロボ「見てクダサイ! この周囲の地面ヲ!」

ほむら「! ……この足跡は、いったい……?」

ロボ「何者かの襲撃と思われマス。ゲートホルダーがなくなってイマス!」

ほむら「ゲートホルダーって……ルッカが作った、ゲートを安定化させる装置……」

ロボ「アレがないと帰れマセン!」

ほむら「盗まれたの……!? 一大事じゃない!」

ロボ「エイラさんたちに相談してみまショウ!」

B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント


エイラ「グガ〜! グゴゴ〜!」

マミ「うぅ……うーん……」


ほむら「ふたりとも、起きて!」

マミ「あう!? ……あ、ああ……おはよう、暁美さん。と、ロボさんだったかしら?」

エイラ「おー、ほむ。起きたか……ウグッ! 飲みすぎたぞ……」


ロボ「二日酔いのところ、申し訳ありマセン。デスガ、コトは急を要するのデス」

ほむら「私たちの大事なものが盗まれたの。犯人に心当たりない?」

エイラ「なに!? それ大変……あぐ、ぐ……」

マミ「大丈夫、エイラ? ……暁美さん、それはきっと恐竜人の仕業だわ」

ほむら「恐竜人? ……って、山で私たちを襲ってきた……?」

エイラ「エイラたちと恐竜人、戦ってる。恐竜人のリーダー、アザーラ。とても頭いいヤツ」

マミ「エイラたちイオカ族は、もう長いこと戦ってるの。私も協力してるんだけど……」

エイラ「マミのチカラ、心強い。ラルバのやつらも来てくれたら、もっと心強い。でもダメ……」

マミ「恐竜人を恐れた人たちは、ラルバ村に隠れ住んでるの。どこにあるかは分からないんだけど……」

エイラ「アザーラ、イオカもラルバもなくすつもり。そんなの許せない!」

エイラ「エイラ、負けない。戦うのやめる、それエイラ死ぬ時!」

ほむら「人間と恐竜の生存競争ということね……」


エイラ「恐竜人、エイラたち、恨み持ってる。ほむたちの大事なもの、盗んだ。間違いない!」

マミ「暁美さん、私たちも手伝うわ。無くしたものを取り返さなくっちゃ!」

ほむら「助かるわ。それじゃあ、恐竜人を見かけなかったか聞き込みをして……」

ルッカ「そっ! それには、及ばないわ! ……うぐっ」

ほむら「ルッカ! あなた、どこにいたのよ?」

ルッカ「聞き込みなら、もうしてきたわ。ここから南にある、迷いの森よ!」

ルッカ「広場から出てきた恐竜人がそこに向かったって話を……あいたたた」

ロボ「ルッカ! 大丈夫デスカ!」

ほむら「お手柄よルッカ。あなたは休んでて。ロボ、ルッカを頼むわね」


ルッカ「私も……」

ほむら「そんなフラフラした状態でまともに動けるとでも?」

ルッカ「へーき、へーき! これぐら……おぇっぷ。あ、やっぱ無理だわ」

ほむら「お酒くさいわね。ロボ、何とかならない?」

ロボ「承知しまシタ。ルッカ、これをどうゾ。お二方にも、お分けしまショウ」

エイラ「なんだこれ! 食いものか?」

マミ「グミかしら。……あら? お口の中がすっきりして、ほのかにミントの香りが……」

ロボ「口臭清涼剤デス。これでお酒の臭いも吹き飛びマス。女性は身だしなみが大切と聞きマシタ」

ほむら「何とかしろとは言ったけど……なんでそんなものをロボが持ってるのよ」

ロボ「ワタシの内部に備蓄されているものデス」

ロボ「これヲ破砕シ、含有物質を循環させることにヨリ、体臭の拡散を防いでイマス」

ロボ「錆びや油による臭いデ皆様方が不快になってハいけませんカラネ」

マミ「で、できたロボットさんね……」

エイラ「お前言うこと、わからん。わからないこと、言うな。エイラ、頭、火山、なる」


ルッカ「ふふ……防水性能と一緒に私がつけてやったのよ。ルッカちゃん天才」

ほむら「ロボ? 嫌なことは嫌って言っていいのよ?」

ロボ「?? 発言の意図が不明デス」

B.C.65000000 迷いの森


ほむら「ここが迷いの森ね……」

エイラ「ここ、道入り組んでる。魔物いっぱい。誰も近寄らない」

マミ「だからこそ、逃走経路にはうってつけよね。……待って、誰かいる!」


キーノ「!」

エイラ「キーノ! ここで何してる?」

キーノ「……エイラ、マミ……お、オレ……」

マミ「キーノくん。どうかしたの? 顔が真っ青よ?」

キーノ「……ご……ゴメン! ほむたちの物、キーノ、盗んだ……」

ほむら「! ……あなたが……」

エイラ「なぜ取った!」

キーノ「キーノ、聞いた。マミ、ほむたちと、帰る」

キーノ「キーノ、マミ、好き。一番! マミ、いなくなる。キーノ、それ、イヤ……」

マミ「キーノくん……」

エイラ「WRY!!」ドギャーン!


ほむら「ちょっ……スパルタね……」

エイラ「キーノ。なぜ殴られた、分かるか?」

キーノ「エイラ、マミ、好き違うから……いなくなる、イヤじゃない……」

エイラ「それ違う! エイラ、マミ、一番好き! でもマミ、使命ある!」

エイラ「エイラも、使命ある。キーノ、使命ある。みんなある!」

エイラ「大切なら、助けてやる! 巣立つ時、来たら、信頼して送り出す! それが、なまか!」

キーノ「……!」


マミ「キーノくん。あなたの気持ち、うれしいわ。でも人のものを盗むのは間違ったことなの」

マミ「間違ったことをしたら、それを正してあげるのも仲間なんじゃないかしら?」

マミ「エイラが怒ってるのはキーノくんのためを思ってのことなの。分かってあげて?」

キーノ「……」

キーノ「エイラ……マミ……ゴメン! ほむ、ゴメン!」

ほむら「いいわよ、もう。盗んだものを返してくれれば」

キーノ「……ない。恐竜人、持っていかれた」

ほむら「ええ〜……」

マミ「やっぱり最後は恐竜人なのね。どっちに行ったの?」

キーノ「この森の中、入ってった……」

エイラ「エイラたち、行く。キーノ、村戻る。村、守れ!」

キーノ「分かった! エイラ、マミ、ほむ、必ず戻る!」


…………


エイラ「キーノ、男。エイラ、死んだり子供できたら、キーノ、酋長なる」

エイラ「マミもそのとき、きっといない。キーノ、成長しないと、ダメ」

マミ「エイラ……」

ほむら「強いわね、あなたは」

エイラ「さ、恐竜人、追う! 大事なもの、取り返す!」

B.C.65000000 恐竜人アジト


ほむら「森を抜けた先のこの洞窟……」

エイラ「臭いする。間違いない、ここ、ヤツらのアジト!」

マミ「恐竜人たちがウジャウジャいるわ。ふたりとも、気をつけて進みましょう!」


…………



洞窟最深部


???「これは一体……。あのサルどもが、本当にこんな高度な物を?」


エイラ「アザーラ!!」

ほむら(こいつが恐竜人のリーダーか。確かに衣装は派手ね……)

アザーラ「来たなサルども……。うん? そっちの新顔は、牛女と同じ臭いがするな」

マミ「牛女はやめなさいって言ってるでしょ!」

アザーラ「不必要に乳を膨らませておいて、よく言うわ」

ほむら「あなた、なかなか話が分かるじゃない」

マミ「暁美さん!?」

ほむら「冗談よ」

アザーラ「ふん……。そういう貴様はずいぶんと貧相だが、本当に同じ種族か?」

ほむら「……前言を撤回するわね。やっぱりあなたは敵だわ」ビキビキ


エイラ「アザーラ! 盗んだもの、返せ!」

アザーラ「そう急くな。おい、これはどうやって使うものなのだ?」

ほむら「教えるとでも?」

アザーラ「ふふ……だろうな。私もそう簡単に話してもらえるとは思っておらんよ」

アザーラ「では、体に聞くとしようか。出でよ、ニズベール!」

ニズベール「グゲゲゲゲ! オレ様の出番ですね? アザーラ様」

ほむら「人型トリケラトプスですって!?」

マミ「ニズベール……恐竜人の中でも、随一の怪力を誇る強敵よ」


アザーラ「サルどもを痛めつけてやれ。二度と我らに歯向かおうなどという気が起きないようにな」

ニズベール「そいつぁオレ様好みの仕事ですねえ!」


エイラ「ニズベール! どけ! お前、用、ない!」

ニズベール「ボス猿と牛女か……。てめぇらも大概、諦めが悪いよなあ?」

ニズベール「新顔がひとり増えたところで、オレ様たち恐竜人に勝てると思っているのか!」

マミ「やってみなければ分からないわ!」

ニズベール「そうかい。なら、かかってきな!」

ほむら「言われなくても! 食らえ、『デザートイーグル』!!」ダァン!!

ニズベール「筋肉いぇいいぇーい!」ガイン!

ほむら「弾かれた!?」


マミ「無駄よ、暁美さん……。ニズベールの鋼鉄の皮膚には生半可な攻撃は通用しないわ」

ほむら「またそれ!?」

エイラ「また? なにがだ?」

ほむら「いや、まあ、いいけど……」

マミ「あの皮膚のせいで、私たちも手を焼いているのよ……」

ほむら「以前の経験を生かすなら……魔法が有効だったはずよね。マミの出番だわ」

マミ「それもダメなのよ。『ティロ・フィナーレ』で、やっと傷つけられるかどうかって感じなの」

ほむら「ええ〜……」


ニズベール「サルどもが、このオレ様の筋肉をどうこうしようと言うのがそもそも間違いなのだ!」

ニズベール「おとなしくぶっ飛ばされろォ! 『筋肉タックル』!!」

ほむら「! 体当たり!?」

マミ「いけない、暁美さん!」

エイラ「『まるまじろキック』!!」

ニズベール「むっ!」

マミ「エイラ! ナイスタイミングよ!」

エイラ「でも防がれた! 悔しい!」


ニズベール「邪魔しやがって、ボス猿め」

エイラ「ほむ、手、出させない!」

ほむら「助かったわ……」


ニズベール「おもしれえ、てめぇとは前から力比べをしたいと思っていたんだ」

ニズベール「どっちの筋肉がより優れているか、今日こそ勝負をつけようぜ!」

エイラ「のぞむところ!」

ニズベール「むぅン!!」

エイラ「やあ!!」


マミ「あれは……手四つ!」

ほむら「プロレスでよく見る、互いの向き合う手をつかみ合って押し合うアレね」


ニズベール「きんにくぅ……プッシュゥ……!!」

エイラ「うぎぎぎぎ……!!」


ほむら「互角ね。たいしたものだわ、恐竜相手に」

マミ「負けないで、エイラ!」

ほむら「マミ。ちょっと……」

マミ「フレーフレー、エイラ! がんばれがんばれエイラ!」

マミ「エル・オー・ブイ・イー・らぶりーエイラーッ!!」


ほむら「話を聞きなさい」スパーン!

マミ「いたっ!? な、なにするの暁美さん!?」

ほむら「応援してる場合じゃないでしょ。あいつをどうやって倒すか考えないと」

マミ「そ、そうよね。ごめんなさい」

ほむら「何か弱点はないの?」

マミ「うーん……。そう言われてもねえ……」

マミ「あ、そういえば……」

ほむら「何か思いついたの?」


マミ「えっとね。ニズベールとは以前、一度だけ戦ったことがあるんだけど……」

マミ「彼、ほとんどの攻撃が通用しないでしょう? 正直、勝てないと思ってたわ」

マミ「でもしばらくしたら、慌てて逃げていったの。不思議よね?」

ほむら「そうね、なぜ逃げたのかしら……。その時、変わったことはなかった?」

マミ「雨が降ってたわ」

ほむら「雨?」

マミ「『狩りの森』って知ってる? イオカ村の北にあるんだけれど、あそこは天気が変わりやすいのよ」

ほむら「……水が苦手ということ?」

マミ「でも、降り始めで小雨の時は別に気にしてる様子はなかったし……違うような気もするけど」

ほむら「うーん……」

マミ「そういえば、あのあとは大変だったわ。どしゃ降りになっちゃって、雷も鳴り出す始末で……」

ほむら「……! 雷……!」

マミ「え?」

ほむら「そうよ、雷よ! 雨が強くなってきたから、その時は逃げたのよ!」

マミ「あ……そ、そうか。なるほど!」

ほむら「ニズベールの弱点は、『雷』だわ!」


マミ「……って、分かったのはいいけれど、どうしようもないわよね?」

マミ「雷の魔法なんて誰も使えないわ。ここは洞窟の中だし、自然発生するわけもない……」

ほむら「その必要はないわ。マミ、準備して。私があいつを感電させたら、ティロってしまいなさい」

マミ「感電させるって……何をするつもり?」

ほむら「いいから。いつでも撃てるようにしておいてね。いくわよ!」

マミ「あ! ちょ、ちょっと!?」

エイラ「んううぅぅぅ……!!」

ニズベール「サ、サルにしては……ずいぶん、粘ったが……そ、そろそろ……限界のようだな……!」

エイラ「お、お前、こそ……!」

ニズベール「筋肉に……不可能は、なぁいッ! うおおおおッ!!」

エイラ「! ぐ、あ……いぎぎぎぎ……!!」

ニズベール「グゲゲゲ……! このまま、てめぇのこぶしを握りつぶしてやる……ッ!!」

エイラ「うあああ……!!」

ほむら「エイラ! もういいわ、よくがんばってくれたわね!」

エイラ「ほむ!?」

ニズベール「新顔があ! 加勢に来たところで、その細い体で何ができる!」

ほむら「あなたの弱点はお見通しよ……」

ニズベール「オレ様の筋肉は無敵! 弱点など存在しなァい!」

ほむら「こいつを食らっても、同じことを言ってられるかしらね?」



ほむら「『マジカル☆スタンガン』!!」

ニズベール「電気を大切にね。ビリビリ!」

ニズベール「ぐおおお!? オレ様の筋肉が、焼け焦げるゥゥ!!!」


エイラ「おお!? ほむ、何した!?」

ほむら「感電させたのよ。思ったとおり、こいつ雷に弱すぎるわ」

ほむら「たかがスタンガンごときで、ここまでダメージが通るなんてね!」

エイラ「??? すたんがん?」

ほむら「説明はあとよ。……マミ! よろしく!」


マミ「やるわね、暁美さん。私も、ちょっとは格好いいところ見せないと……」

マミ「ふたりとも、ちゃんと避けてね! いくわよ!」



マミ「『ティロ・フィナーレ』!!」

ニズベール「ぐぎゃあああっ! オレ様の筋肉が、サルどもなぞにいいいーッ!!!」


ほむら「なるほど……。感電すると、無敵の防御が崩れるのか。雷を恐れるはずよね」

エイラ「マミ! ほむ! お前らすごい!」

マミ「エイラが時間を稼いでくれたおかげよ」



アザーラ「なんだ、今の絶叫は……ニ、ニズベール!?」

エイラ「アザーラ!」

アザーラ「馬鹿な!? ニズベールがサルどもに負けるとは!」

マミ「観念しなさい! あなたご自慢の部下は、私たちが倒したわ!」

アザーラ「……ここは引こう。だが覚えておけ。この大地は我が恐竜人のものなのだ……」

アザーラ「貴様らサルどもになど、ゆずりはせんぞ!」


…………

マミ「暁美さん、どう? ゲートホルダーっていうの、無事かしら?」

ほむら「ぱっと見は壊れてないわね。あとでルッカにも見てもらうけど、たぶん大丈夫でしょう」

マミ「良かった。ところで、どうしてスタンガンなんて持ってるの?」

ほむら「痴漢撃退用よ。主な対象は……そうね、キーノとか」

マミ「なんでキーノくん? あの子、とてもいい子よ?」

ほむら「知らないほうがいいこともあるわよね……。気にしないでちょうだい」

マミ「???」


エイラ「アザーラ、また攻めてくる……。次こそ、決着……」

マミ「エイラ?」

エイラ「……う……ゲエーッ! エロロロロロ!!!」

マミ「ちょっ! ちょっとー!?」

ほむら(まだ治ってなかったの……。それでこれだけ戦えるって、すごいわね……)

B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント


エイラ「ほむたち、行くか」

ほむら「世話になったわね」

エイラ「また来い。宴やる。飲む。食べる。踊る。戦う。楽しい!」

ほむら「飲むのはもう勘弁してほしいわ……」


キーノ「ゴメン、ほむ。キーノ、強くなる。ほむよりも!」

ほむら「そう。あなたなら……きっとできるわ」


ルッカ「さーて! 二日酔いも治ったし、ちゃっちゃとグランドリオンを直しに行くわよ!」

ロボ「ルッカが元気になってなによりデス」

ほむら「またうるさくなるわね……」

マミ「……」

マミ「あのね、暁美さん……」

ほむら「なに、マミ? お別れはすんだの?」

マミ「そのことなんだけど……もう少しだけ、ここに残らせてくれないかしら?」

ほむら「え?」


マミ「ずっと考えてたんだけど……恐竜人たちとの戦いはまだ終わっていないの」

マミ「エイラも言ってたように、きっとまた攻めてくるわ」

マミ「イオカ族の人たちは仲間だもの。私も、力になりたいの」

エイラ「マミ……」

マミ「だから……全部終わるまで、ここに残りたいんだけど……」

ほむら「……はぁ。相変わらず甘いわね、マミ」

マミ「うっ……だ、駄目かしら?」

ほむら「全部終わったらって、いつの話よ? それまでゲートが開いてる保証は?」

マミ「えっ……いや、それは〜……そんなに先の話にはならないんじゃないかな〜と……」

ほむら「甘いわね、動機も見立ても。砂糖吐きそうだわ」

マミ「だ、だってぇ……」


ほむら「……ま、さやかを中世に残してきた私が言えた義理じゃないわね」

マミ「! それじゃあ……」

ほむら「好きにしたらいいわ。これは選別よ」

マミ「これ……グリーフシード?」

ほむら「さやかからもらった分よ。私はまだストックがあるし」

マミ「ありがとう、暁美さん!」

ほむら「終わるまでゲートが閉じないよう祈っておくことね」

マミ「怖いこと言わないで……」

エイラ「マミ、まだ残るか? いいのか?」

マミ「ええ、もうしばらくのあいだ、よろしくね」

キーノ「春ですよー! 春が来ましたよー!」

マミ「キーノくんはちゃんと反省して、決意を反故にしないように」

キーノ「Oh...」



ほむら(いい仲間じゃない……。がんばってね、マミ)

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「ドリストーンを見つけてくるとはの。どうやって……いや、それは瑣末なことか」

ほむら「これで文句ないでしょう? さあ、グランドリオンの修復を」

ボッシュ「うむ。その苦労に応えねばな。久しぶりに腕が鳴るわい!」


ボッシュ「早速作業開始じゃ! お主らも手伝えい!」

ルッカ「伝説の聖剣の復活か。面白そうじゃない!」

ロボ「微力ながらお手伝いシマス」

ほむら(あれ、何か私も手伝う流れよね、これ……)


ボッシュ「グランドリオンの修復にはドリストーンを精製するだけでは駄目じゃ」

ボッシュ「同時に剣を活性化させる必要がある。お主らは精製を、ワシは活性化を行うぞ!」

ボッシュ「しかるのち、そのふたつを掛け合わせる!」

ルッカ「任しとき! いくわよロボ!」

ロボ「ドリストーンをスキャンしマス! 不純物計測、1番カラ24番!」

ルッカ「ドリル用意!」

ロボ「ドリル用意! 除去開始シマス!」

ルッカ「レーザー用意! 最も純度の高い部分は!?」

ロボ「座標、P 23.9 = B0 -7.2 = L0 127.4! 抽出開始シマス!」

ルッカ「くっ、汗が目に! 助手、拭いて!」

ほむら「助手ってゆーな」フキフキ

ルッカ「良ぉお〜〜〜〜〜〜〜しッ!」


ほむら「……」チラッ

ボッシュ「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ! 『恐怖』を我が物とすることじゃあッ!」

ボッシュ「波紋ッ! その生命エネルギーによってグランドリオンは活性化するッ!」

ほむら(何でボッシュさん、上半身裸なのかしら……)


コオオオオオオオ チュミミーン メメタァ


…………


ボッシュ「待たせたの……見るがよい! これこそがグランドリオンじゃ!」

ルッカ「すごいわ……神々しさすら感じる……」

ロボ「不思議デス。このグランドリオン自体に精神エネルギーが感じられマス」

ほむら「まぁ……うん。見事なものよね。制作の経緯はともかくとして」


ボッシュ「ワシにかかればザッとこんなもんじゃ。ほれ、早く持っていけ」

ほむら「準備は整ったわね。カエルさんのところに行くわよ」

ルッカ「いってらっしゃい」

ほむら「……あなたも行くのよ」

ルッカ「疲れたからやめとくわ。ほむらが持っていって、ふたりと合流すればちょうど3人旅じゃない」

ロボ「ナルホド、とても合理的デスネ」

ほむら「もうツッコむのも疲れたわ。あなたたち、あとで覚えてなさいよ」

A.D.600 お化けカエルの森


カエル「まさか、ありえん……」

さやか「うわ、すご! グランドリオン、完全に直ってるじゃん!」

ほむら「苦労したわ、本当に……」

さやか「なんかえらい実感こもってるね」


さやか「師匠! ほむらたちが、ここまでしてくれたんだよ! これでも決心つかないの!?」

カエル「……」

さやか「師匠!!」

カエル「……少し、考えさせてくれ。今夜はここで休むといい」

ほむら(えっ、ここで!?)


…………


深夜


カエル「……」



カエル「……そんな草陰でゴソゴソしてちゃあ、魔物と間違えて退治しちまうぜ」

さやか「あ! アハハ……ばれてら」

カエル「隠れるなら、もっとうまく隠れろ。これだからお前は……」


さやか「眠れないの、師匠?」

カエル「……昔を思い出していた」

さやか「昔?」

カエル「サイラス。ガルディア王国騎士団の前騎士団長……」

カエル「俺の親友。そして……真の勇者」

さやか「勇者……」

カエル「お前には話したことはなかったな。聞きたいなら、聞けばいい……」

——10年前


リーネ「行ってしまうのですね、サイラス……」

サイラス「ええ……勇者バッジ、いつまでもあの化け蛙に持たせておく義理はないでしょう」

サイラス「あの魔物、退治し、取り返してきます。伝説の剣とやらもこの目で確かめてみたいことですし」


ガルディア21世「サイラスよ。お前はこの国にとっても、私やリーネにとっても、かけがえのない人物……」

ガルディア21世「必ず戻ってくるのだぞ!」

サイラス「この命ある限り」

騎士団員A「団長!」

サイラス「お前たち……」

騎士団員B「我ら騎士団員一同、みな団長の武運長久をお祈りいたします!」

サイラス「あとのことは頼んだぞ。……行くか、グレン」

グレン「ああ」


リーネ「待って! ……グレン! あなたも、気をつけてね……」

グレン「王妃様……王妃様も、どうかお元気で」

化け蛙ことGフロッグ「グギャギャギャ! 勇者バッジ、欲しくば力ずくで取ってみよ!」

サイラス「無論、そうさせてもらう。食らえ! 『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

Gフロッグ「ハギャーッ!!!」

グレン「さすがだぜサイラス! これで勇者バッジはサイラスのものだ!」


…………


サイラス「これが、グランドリオン……!」

グラン「お前みたいな人間、初めてだぜ!」

リオン「ボクたちも力を貸すよ!」

グレン「すごいな、サイラスは……。この剣さえあれば、魔王軍も……!」


…………


グレン「あぶない! サイラス!」

サイラス「ッ! ……ふう、助かったぞ、グレン」

グレン「ハハ、サイラスでも油断することがあるんだな」

サイラス「お前が背中を守ってくれているからこそさ……」


…………


村長「勇者様のおかげで、娘は助かりました。ありがとう、ありがとう……」

村人「さすが勇者様だ」

村の子供「勇者様がいれば魔王なんてへっちゃらだよね!」

グレン「そうとも、勇者サイラスは必ず魔王を打ち倒すさ!」


…………




サイラス……俺の親友……無敵の勇者……

サイラスがいれば……きっとこの世界は……

なあ、そうだろう……サイラス……


……サイラス……


グレン「サイラス!?」

ビネガー「フヒヒヒ、どうしたあ? もう終わりなのかあ?」

サイラス「……くそっ……」


ビネガー「馬鹿なヤツ! 足手まといをかばいながら、魔王様の攻撃がしのげるとでも?」

ビネガー「伝説の剣とやらも折れてしまったし、いよいよ年貢の納め時かな〜?」

グレン「サイラス……どうする、このままじゃ……」

サイラス「聞け、グレン。俺がヤツらの足を止める。その隙にお前は逃げろ」

グレン「何を言う、サイラス! 死ぬときは一緒だ!」

サイラス「このままじゃふたりとも犬死にだぞ!」


魔王「余裕だな、サイラスとやら。人の心配などしている場合か?」

サイラス「いいな、グレン! 行くぞ!」

グレン「し、しかし……!」

サイラス「うおおおおーッ!!!」


…………


グレン「サイラスッ! サイラス、目を開けてくれ!」

サイラス「逃げ、ろ……グレン……。……リ、リーネ様のこと……たの……。……」

グレン「サイラスーッ!!」



魔王「どうした、仲間の仇を討とうとは思わんのか?」

グレン「ぐっ……お、俺は……」

ビネガー「フヒヒ! まるでヘビににらまれたカエルだなあ、え?」

ビネガー「魔王様、どうです? この腰抜け、似合いの姿に変えてやりましょうや」

魔王「それもまた一興か」


グレン「!? ……う、ぐあっ……何をした……!?」

ビネガー「お前は醜いカエルの姿になって無様に生きながらえるのさあ〜!」

ビネガー「フヒヒヒヒヒヒヒッ!!!」


————


さやか「……」

カエル「分かったろう。俺はただの腰抜けだ。親友を死なせ、惰性で生きるだけの愚か者だ……」


さやか「……師匠って、ほんとバカ……」

カエル「ああ、そうだ。俺は大馬鹿者……」

さやか「違う、違うよ……あたし、知ってるよ。今もサイラスさんのこと、大切に思ってるんでしょ……」

さやか「クロノさんたちから聞いたよ。王妃さまがさらわれた時、助けにきたって……」

さやか「サイラスさんの遺言、守ってるんでしょ……王妃さまを頼むって……」

カエル「……」

さやか「……何が大切で、何を守ろうとしてたのか……師匠、分かってるじゃん……」

カエル「お、おい……さやか?」

さやか「あ……あたしだって、正義の味方に……なりたかった。でも、なれなかった……」

さやか「でも師匠は……なれるじゃん……なんで、逃げるのさ……」

カエル「なっ、なぜお前が泣くんだ!? おい、さやか!」


さやか「なってよ、師匠……正義の味方に……勇者様にさ……」

さやか「……師匠ならできるよ……師匠にしかできないんだよ……」

さやか「お願いだから……あたしに……夢、見させてよ……!」

カエル「……」


————


グレン「えーん! えーん!」

サイラス「お前ら! グレンをいじめるな!」

いじめっ子たち「やべぇサイラスだ! 逃げろ!」


…………


サイラス「グレン、泣いてばかりじゃ駄目だ。男には、立ち向かわなきゃいけないときがあるんだぞ」

グレン「でも……ぶたれたら痛いよ。アイツらだって……」

サイラス「優しすぎるよ、グレンは……」


————


サイラス「なあ、グレン。俺、騎士団に入ろうと思うんだ」

グレン「君なら立派な騎士になれるよ! 僕が保証する!」

サイラス「お前も来い、グレン。剣の腕はお前のほうが上だ」

グレン「駄目さ、僕は……。実戦じゃ、きっと震え上がってしまう……」


————


ビネガー「お前は醜いカエルの姿になって無様に生きながらえるのさあ〜!」

ビネガー「フヒヒヒヒヒヒヒッ!!!」


…………


カエル「……サイ、ラス……」

カエル「……」


カエル「これは……バッジ……勇者、の……」


————


さやか「し゛し゛ょお゛おおおお〜!! ね゛え゛ってヴぁああ!!」

カエル「あー、うるさい。この、馬鹿弟子が」

さやか「ふえっ」


カエル(サイラスよ。俺も、お前にとってはこんな感じだったのか?)

カエル(馬鹿で愚直で不器用で、けれどもずっと自分を信じてついてきてくれる相手……)

さやか「へっ、あの……師匠? なんで、頭なでて……」

カエル「さやか」

さやか「ふゃっ!? はい!」

カエル「寝るぞ。明日は魔王城だ。英気を養っておかないとな」

さやか「えっ……じゃあ……」

カエル「俺にどこまでやれるのか分からないが……逃げるのはおしまいだ」


さやか「……ししょー!!!」

カエル「抱きつくな!!!」

A.D.600 魔岩窟


さやか「この岩が邪魔して魔王城まで行けないんだよね〜」

カエル「グランドリオンの出番だな」


ほむら「……さやか。ちょっと、さやか。こっち来て」

さやか「ん? 何さ?」

ほむら「昨日の夜、何があったのよ? カエルさん、憑き物でも落ちたような顔してるんだけど」

さやか「ふふふ……まあ、いろいろとね〜」

ほむら「いろいろって何よ……」


カエル「お前ら、ごちゃごちゃしゃべる暇があったらもっと下がれ。危険だからな」

♪カエルのテーマ


カエル「我が名はグレン!」


カエル「サイラスの願いと、こころざし……そしてこのグランドリオン……」

カエル「今ここに受けつぎ……」



カエル「魔王を———討つッ!!!」

A.D.600 魔王城


ほむら「ここが魔王城……」

さやか「い、いかにもって感じだね〜……」

カエル「……行くぞ」


…………


少年「あそぼ……」

女性「フフ……」

少女「アハハ……」


さやか「なんなのさ、ここ……暗すぎるし、生気のない人たちがうろついてるし……」

カエル「妙だな、静か過ぎる……魔族たちもいない……」

ほむら「!? あ、あれ!」

まどか「ほむらちゃん……こんなところにいたんだね」

杏子「さやかぁ……心配したぞ……」

さやか「えっ!? ウソ!?」

ほむら「まどか!!!」

カエル「さやかの友人か? なぜこんなところに……む!?」


リーネ「グレン、無事でしたか……」

カエル「王妃様!?」

リーネ「……魔王討伐なんてもういいのです……。さあ、城に帰り、ずっと私のそばで……」

カエル「……」

ほむら「まどか! まどかぁ! 良かった、無事だったのね!」

さやか「杏子、あんた……あたしのほうが、ずっとずっと心配してたっての! もう!」

杏子「……さやか、こんなとこ来ちゃ駄目だ。帰ろうぜ、なぁ……さやか……」


カエル「ふたりとも、下がれ。それは幻覚だ」

ほむら「え!?」

カエル「王妃様は俺の正体を知らない。『グレン』などとは呼ばん……。こいつはニセモノだ」

さやか「じゃ、じゃあ……このふたりも、マボロシ!?」

カエル「大切な人の幻覚を見せ、戦意喪失させるか……! 魔王め、姑息な手段を!」

ほむら「そんな……せっかく会えたと思ったのに……」

杏子「……」

杏子「あ〜あ。女心が分かってねえな、アンタ」

さやか「!?」

杏子「一国の王妃様がさあ、カエル男に信頼を寄せる理由、考えたことないワケ?」

ほむら「な!?」


カエル「お前……幻覚じゃないのか!?」

杏子「今からでも遅くないよ。魔王討伐なんてくだらないことに必死になるよりかさ」

杏子「城に帰って、愛しの王妃様に愛の言葉ひとつでもささやいてやれば?」

カエル「くだらないことだと……!? お前ら魔族による侵略が、くだらないことだと!?」

杏子「……」

さやか「杏子……あんた、本物の杏子なの?」

杏子「……久しぶりだね、さやかにほむら。相変わらず平和ボケしたツラしてるわ」

ほむら「杏子……良かった、私たち、ずっと探して……ッ!?」


ガインッ!!!

カエル「ちっ! ほむら! 隙を見せるな!」

杏子「あーらら、カエル男に防がれちゃったか」

さやか「なっ、何してんのよ、あんた!!」

杏子「敵はつぶす。何かおかしいところ、ある?」

ほむら「杏子……どうして……」

杏子「ほむら、今のアンタ見てると超ムカつくわ。昔の孤高な暁美ほむらサマはどこいったんだい?」

ビネガー「フヒヒヒ! オフィーリア、感動の再会はすんだか?」

杏子「……チッ……出てくんなよ、豚」

ビネガー「ぶ、ブタ!?」


カエル「ビネガー!!」

ビネガー「よ〜こそグレン。いや、今はただのカエルだったな」

ビネガー「そこの黒髪にも見覚えがあるぞ。生意気な小娘。そいつらがサイラスの代わりか?」

ビネガー「あいにく魔王様は大事な儀式の最中でな、ワシらが相手をしてやる」

ビネガー「外法剣士ソイソー!」

ソイソー「……」

ビネガー「空魔士マヨネー!」

マヨネー「はぁい☆」

ビネガー「幻魔戦士オフィーリア!」

杏子「その肩書き、何とかならない?」

ビネガー「そしてこのワシ、魔王様第一の部下にして魔王軍軍事参謀ビネガー様!」

ビネガー「魔王四大将軍と魔王城の100の魔物が、貴様らを歓迎してやるわあ!!!」


カエル「来るぞ! 構えろ、さやか! ほむら!」

ほむら「……」

さやか「杏子……なんで……」


…………


カエル「くそっ……雑魚どもを相手している間に、将軍連中は引っ込んだか……」

ほむら「……」


カエル「おい! シャキッとしろ、ふたりとも!」

カエル「ショックなのは分かるが、そんな状態じゃいかに雑魚といえど不意をつかれるぞ!」

さやか「杏子……あいつ、幻惑の魔法を使ってた……」

さやか「どうして……もう二度と使わないって、封印したんじゃなかったの……?」

ほむら「……さやか、行きましょう」

さやか「待ってよ! ほむらはいいの!? 杏子と戦うことになるかもしれないんだよ!?」

ほむら「彼女にはきっと事情があるのよ。それを問いただすためにも、もう一度会わなきゃ」

さやか「……そっか……そう、だよね。うん、きっとそうだよね!」



ほむら(そうよ……何か理由があるはずだわ……)

ほむら(私へのひと太刀、本気じゃなかった。杏子の実力はあんなものじゃない)

ほむら(それに、あの苦虫を噛み潰したような表情……。ちゃんと説明してもらうわよ、杏子!)

第2話「師匠って、ほんとバカ」 終了


  セーブしてつづける(第3話「後悔なんて、あるわけない」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。それでは、また明日。

次回はカエルが大活躍するよ!

第3話「後悔なんて、あるわけない」


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ニアよろしい

  よろしくない

A.D.600 魔王城 西の玉座


ソイソー「お前がここまで来るとはな……グレン」

カエル「ソイソー……!」


さやか「パイクーハン!?」

ほむら「誰よ。違うわよ。色が青いでしょ……いえ、待って。そうじゃない」

さやか「ほむら、落ち着いて?」

ほむら「……」イラッ

ソイソー「あの時サイラスがいなければ、お前も同じ運命をたどっていたはず」

ソイソー「そう……この私に使役されるだけのムクロたちと、同じ運命をな」

カエル「確かにこの身はサイラスに生かされた身……」

カエル「なればこそ、俺はあいつの想いを受け継ぎ、前に進まなければならない!」

さやか「師匠……」

ソイソー「何も感じず、何も考えぬ屍どもの相手にも飽き飽きしていたところだ」

ソイソー「久しく忘れていた高揚感……今のお前なら思い出させてくれそうだな!」



ソイソー「来い、グレン!」

カエル「徒手空拳だと……? ふざけているのか、ソイソー!」

ソイソー「お前たちを試してやる。私に剣を抜かせてみろ、グレン」

カエル「なに……!?」

さやか「えらそうにふんぞり返っちゃって……ナメるんじゃないわよ!」

ほむら「! 早まらないで、さやか!」

さやか「『スティンガー』!!」


ソイソー「『ウメハラ・ブロッキング』!!」レッツゴージャスティーン!

さやか「なっ!?」

ほむら「白刃取り!?」

ソイソー「なかなかいい突きだ。……が、太刀筋が素直すぎるな」


ソイソー「むぅんッ!」バキンッ!

さやか「あたしの剣が……!」

ソイソー「この程度で折れるとは、とんだなまくらを使っているようだな」

さやか「こ、こいつ強い……」

ソイソー「反撃させてもらおう。『昇天炎舞』!!」

さやか「うあっ!」

カエル「さやか! このバカ、考えなしに突撃しやがって!」

さやか「いちちち……。ご、ごめん、師匠……」

カエル「勇敢と無謀を履き違えるなと何度言えば分かるんだ、お前は」

さやか「そうでした……てへぺろ」


ソイソー「グレン、弟子にやらせるな。お前が来い」

カエル「言われなくてもやってやるぜ……。『ベロロン斬り』!!」

ソイソー「! 舌を伸ばして拘束する気か……。つかまりはせんぞッ!」


さやか「ダメだ、はずしちゃった!」

ソイソー「確実性を重視した、いい攻撃だ。残念ながら失敗に終わったがな」

ほむら「……いえ、違うわ! まだ失敗なんてしていない!」

ソイソー「なにっ!?」

カエル「俺はここだぜ、ソイソー!」

ソイソー「バカな!? いつの間にこの近距離まで!?」

カエル「グランドリオンを食らえッ!」ブンッ!

ソイソー「ちいッ!」ガキンッ!


カエル「今の一瞬で、とっさに抜刀から防御するか……。やるな、ソイソー」

さやか「ええ〜? 今、どうやって近づいたの? ほむら、なんかした? ヘイストかけたとか……」

ほむら「私は何もしていないわ」


ソイソー「貴様……そうか、柱に舌を巻きつけ反動で飛んできおったな……」

カエル「『ベロロン斬り』はなにも、拘束したり、相手を引き寄せるためだけの技じゃあないぜ」

カエル「『舌』と『斬撃』の二段構えというだけだ。やり方は、いくらでもある」

ソイソー「ふ……。自身の姿に悲観するどころか、その体を最大限利用して新たな技を生み出すか……」

ソイソー「面白い! 死合いとは、こうでなくてはな。久方ぶりに血が騒ぐわ!」

ソイソー「我が愛刀『ソイソー刀』! 抜かせたこと、後悔させてやる!」

ソイソー「いくぞグレン! 『全力斬り』!!」ブオン!!

カエル「ぐっ!?」ガギィンッ!


ソイソー「ほう……。よく防いだ。ほめてやる」

カエル「な、なんてパワーだ……。手がしびれてやがる!」

ソイソー「次だ。『乱れ斬り』!!」ヒュオオッ!

カエル「高速の4連撃!? は、速いっ!」

カエル「ぐああっ!?」

ほむら「カエルさん!?」

さやか「み、見えない……! あいつの攻撃、全然見えなかった……」


カエル「くそっ……」

ソイソー「致命傷を受けることだけは避けたか。身のこなしも本物……」

ソイソー「技を磨き、戦術を磨き……鍛錬と経験からくる、その洗練された剣術」

ソイソー「お前の剣の腕がサイラス以上との噂、本当だったようだな……」


ソイソー「すばらしいぞ、グレン! こんなに心躍るのは初めてだ!」

カエル「お褒めに預かり光栄だね。悪いが、俺は全然楽しくないぜ……」

ソイソー「お前の抵抗をもっと見たい! もっとだ!」

ソイソー「さあ、次はどうする!? 食らえ、『全力斬り』!!」

カエル(まずい! 今のこの体じゃ、受けきるのは無理だ!)


カエル「下がるしかないッ!」

ソイソー「む! また舌による高速移動か! その潔さたるや、良し!」

ソイソー「しかしその選択自体は愚策だ! 直線でしかない動きの軌道が容易に予測できてしまうぞ!」

カエル「! しまった……!」


ソイソー「『鎌イタチ』!!」

カエル「うぐああっ!」

ほむら「衝撃波……! カエルさんが押されてる! このままじゃ……」

さやか「師匠……。……」


ソイソー「どうした、もう終わりか!?」

カエル(なんてこった……。パワーもスピードもヤツのほうが上……)

カエル(おまけに遠近両方に対応可能じゃ、打つ手がないぜ……)


ソイソー「残念だ。お前とは、もう少し戦っていたかった……」

ソイソー「だが、そこが限界というのであれば迷わずトドメをさしてやろう」

ソイソー「それが強者への礼節というものだ!」

カエル「やばいぜ……。結局俺は、この程度か……!」


ソイソー「これにて終幕だ、グレン!!」

さやか「師匠! あきらめちゃダメだよ!」

カエル「!?」

さやか「『スプラッシュスティンガー』!!」

ソイソー「うぐっ!?」ドスドスドスッ!!


カエル「さやか……」

さやか「また昔の弱気な師匠に戻っちゃってるよ? しっかりして!」

カエル「ヘッ……。お前に助けられるとはな……」


ソイソー「馬鹿な……貴様……! 貴様の得物は、既に折ったはず……」

ソイソー「私の体に刺さっているこの複数の剣は、なんなのだ!?」

さやか「へへん、残念でした! 1本折ったぐらいでいい気になってるからだよ!」

ソイソー「なに……!? 空間から剣が!」

ほむら「そういえば、さやかにはそんな特技があったわね」


ソイソー「人間ごときにそのような高等魔法が使えるとは……。貴様、何者だ?」

さやか「あたしは師匠の一番弟子、美樹さやかだ!」

ソイソー「ミキ・サヤカ……。その名、覚えておこう……」

さやか「覚えてもらわなくて結構! あんたはここであたしたちに倒されるんだからね!」

ソイソー「……。つあっ!」ズボッ!

さやか「! あ、あいつ無理やり剣を引き抜いた……。なんて豪快なヤツ……」

ソイソー「未熟者が……。この私にかなうと思っているのか!」

さやか「……確かにあたしは弱いよ。あんたと師匠の戦いも、目で追うことすら難しかった」


さやか「でも……それでも! 師匠とふたりなら、あんたに勝てる!」

ソイソー「なんだと……?」

カエル「認めるぜ、ソイソー。お前の実力は俺より上だ」

ソイソー「グレン、貴様……! まだ動けるのか!」

カエル「そういうわけで、ちと卑怯かもしれんが、ふたりがかりでやらせてもらうぜ」

ソイソー「無粋なヤツらめ……」

カエル「悪いが負けるわけにはいかないんでね。お前の言う『戦術』とやらだ」

さやか「知らなかったの? 大魔王からは逃げられない。そして勇者は、チームを組むもんだってね!」


カエル「いくぞ、ソイソー!」

ソイソー「ちいッ……さすがに厄介だ……!」

さやか「いっけーッ! 『スプラッシュスティンガー』!!」

ソイソー「『ウメハラ・ブロッキング』!!」

さやか「また!?」

ソイソー「飛び道具は私には通用せんぞ!」

さやか「じゃ、おかわりあげるよ!」

ソイソー「……くっ、貴様! いったい何本の剣を召喚できるのだ!?」

さやか「あんたがぶっ倒れるまで必要な分だよ!」

ソイソー「……だが、無駄だ! すべてブロッキングで弾いてくれるッ!」


カエル「足元がお留守になってますよ」

ソイソー「うおおッ!?」ガグン!

ソイソー「舌で私の足を拘束……!? いや、この状態でもブロッキングは可能!」

ソイソー「だが……いかん! 拘束されたということは、ヤツの『ベロロン斬り』が来る……!」

カエル「よく分かってるじゃないか。まあ、半分しか当たってないけどな」

ソイソー「なに!?」


カエル「……合わせろ、さやか!」

さやか「合点承知の助!」

カエル「『ベロロン斬り』!!」

さやか「『スパークエッジ』!!」

ソイソー「同時攻撃だと!? こ、これは!!」



カエル&さやか「ふたりわざ『エックス斬り』!!!」

ほむら「ふたりの剣の軌跡が……『X』の文字を……!」

ソイソー「師弟による連携が生み出す至高の一撃か……!」

さやか「よっしゃあ! ばっちり決まっちゃいましたね、これは!」


ソイソー「フ……フハハハハハハ! 見事なり、強者どもよ!」

ソイソー「自身の技術のみに頼った、私の負けだ……」

カエル「ソイソー……」

ソイソー「だが……魔王様のため戦い敗れた我が人生に、悔いはなし!!」

ソイソー「さらばだグレン! おのれを磨け……。お前はもっと、強くなる!」

カエル「……」


…………


さやか「なんか……敵なのに、気持ちのいいヤツだったね」

ほむら「『武人』……ってやつかしらね。よく分からないわ」

カエル「まだ先は長い。気を抜くなよ、ふたりとも」



ほむら(……あ。そういえば今回、私なにもしてないわね)

A.D.600 魔王城 東の玉座


マヨネー「お久しぶりネ、カエルちゃん」

カエル「マヨネー……会いたかったぞ!」

マヨネー「いやん。再会早々、告白だなんて〜。カエルちゃんったら意外と大胆ネ!」

カエル「ふざけるな!」

マヨネー「分かってるわヨ〜。サイラスちゃんがいなくなってさみしーのヨネ?」

マヨネー「だからそんな乳臭いガキどもに走っちゃったのヨネ〜?」

さやか「ち、ちちくさい!?」

マヨネー「おまけに、そんな醜い姿にされちゃって……や〜ヨネ!」

マヨネー「でもだいじょ〜ぶ! あたいは外見でオトコを選んだりしないわヨ?」

マヨネー「強い者こそ美しいのヨネ! たとえそれがオンナでも、オトコでも!」

ほむら(つい最近、似たようなセリフを聞いた気がするわ……)


カエル「くだらんおしゃべりはそこまでだ……!」

マヨネー「ウフフ……殺気立っちゃって。せっかちなオトコは嫌われるわヨ?」

マヨネー「でも、そうヨネ……。せっかくこうして遊びに来てくれたんですもの」

マヨネー「ふたりっきりでおもてなししてあげちゃうわヨ……」



マヨネー「そこのガキどもを殺してから、ネ!」

マヨネー「『虹色怪光線』!!」

さやか「うおっまぶしっ」

カエル「目くらましか! み、見えん……!」

ほむら「くっ……マヨネーは、どこ!?」


マヨネー「はぁい☆ ご指名、ありがとー☆」

ほむら「!」

マヨネー「死んじまいなァ! 『ハートファイア』!!」

ほむら「きゃああっ!?」

カエル「ちいっ……。なんとか視力が戻ってきたか……」

さやか「ほむら! 大丈夫!?」

ほむら「え、ええ……」

マヨネー「あ〜ら、しとめ損なっちゃったン」


カエル「厄介な技を使いやがるぜ。長引くとまずい。一気に仕掛けるぞ!」

さやか「オッケー、師匠! アレの出番っすね!」


カエル&さやか「『エックス斬り』!!」

マヨネー「おぶぅっ!?」

マヨネー「……な……な〜るほど……。アナタたち、なかなかやるのヨネ……」

カエル「ちっ、まだ倒れんか。ならばもう一度!」

マヨネー「よく分かったのヨネ。アナタたちの強さの秘訣が」

ほむら「なんですって?」

マヨネー「それは『連携』! コンビネーションの質の高さが、実力以上の力を発揮させている……」

さやか「なかなか鋭いじゃん。んで、それが分かったところでどうすんのさ。仲間でも呼ぶの?」


マヨネー「ウフフ……。そんなかったるいやり方より、もっと簡単な方法があるのヨネ……」

カエル「なに?」

マヨネー「こうするのヨ……。『投げキッス』!!」

さやか「!? ……なに、今の? あたしにはそんな趣味、ないわよ!」

マヨネー「あ〜ん、振られちゃったのヨネ。あたい、ショックだわン」

ほむら「ふざけてるの、あなた?」

マヨネー「フフ。仕方ないから……眠っちまいな! だらしなくよだれをたらしながらなァ!」


さやか「……? ……あ、あれ……? おかしいな、力が抜けて……」

カエル「さやか!? おい、何してる! 戦闘中だぞ!」

さやか「……し、師匠……あたし……なんか……眠く、なって……」

さやか「……ぐー……」


ほむら「どうして!? さやかが急に眠ってしまった……!」

カエル「マヨネーの仕業か! おのれ……!」

マヨネー「ウフフ。どう? これで『れんけいわざ』とやらも使えないのヨネ!」

ほむら「あいつ、私たちの分断を狙ったのね!」

カエル「くそっ! だがヤツはエックス斬りで体力を削られている。ここは畳み掛ける!」

マヨネー「やだもう、カエルちゃんにはそんな怖い顔は似合わないわヨ?」


マヨネー「もっと幸せそうな顔しててほしいのヨネ〜。というわけでェ……『トキメキ熱視線』!!」

カエル「う……!?」

ほむら「カエルさん! ……マヨネー! 今度は何をしたの!?」

マヨネー「じきに分かるのヨネ〜」

カエル「……」

ほむら「カエルさん? 大丈……」



カエル「オウフwwwマヨネー氏wwwテラモエスwwwwwwww」

ほむら「!?」

マヨネー「さ〜、カエルちゃん。こっちへいらっしゃい?」

カエル「ドプフォwwwお誘いktkrwwwwww」ピョンピョン

ほむら「かっかっかっカエルさん!? いったいどうしちゃったって言うのよ!?」


マヨネー「魅了+混乱魔法よン☆ これでカエルちゃんはあたいのものなのヨネ〜」

カエル「ファカヌポウwww拙者、マヨネー氏のみりきにメロメロでありんすwwwwwwww」

ほむら「なんてこと……。あ、頭が痛くなってきたわ……」


マヨネー「オ〜ホッホッホ! ざ〜んねんだったわネ! 数に頼ったアナタたちも、これでオシマイ!」

ほむら「卑怯よ、あなた……!」

マヨネー「負け犬の遠吠えは、いつ聞いてもいいわネ〜」

カエル「ワオオンwwwワオオンwwwハッハッハッwwwwwwww」

マヨネー「あらあら、カエルちゃんたら。カエルの癖に盛った犬みたいになっちゃってるのヨネ」

ほむら「カエルさん、目を覚まして! こんなの、あなたらしくない!」

マヨネー「無駄なのヨネ。アナタみたいな乳臭いガキが、あたいの魅力に勝てるわけないのヨネ」

マヨネー「そうでしょう、カエルちゃん?」

カエル「このおっぱいには勝てんでござるwwwデュフフwwwwww」

ほむら「……こ、こんな……!」


マヨネー「さ、カエルちゃん。あのガキをアナタの手でぶっ殺してしまうのヨネ!」

カエル「拙者www加虐趣味はないのでござるがwwwどちらかというと責められるほうがwwwwww」

マヨネー「うまくやってくれたら、あとでご褒美あげるわヨ?」

カエル「俄然やる気が出てきたでござるwwwwwwwwwwwwwwww」

カエル「ほむら氏wwwうらまんでほしいでござるwwwこれもご褒美のためゆえ致し方なしwwwwww」

ほむら「そ、そんな……カエルさん!」

カエル「悲しいけどwwwこれ戦争なのよねwwwwwwwww」

カエル「おっとっとwwwつい名言がwwwこれではまるでオタクみたいでござるwwwwwww」


ほむら(まずい、まずいわ! なんとかしないと……!)

ほむら(魅了……魅了の魔法……あ、あいつを上回るインパクトを与えなきゃ……!)

ほむら「……えっと、えっと……!」

カエル「いいですぞwwwいいですぞwwwww慌てふためくその姿、そそられますぞwwwwwww」

ほむら「……ネ……」

カエル「ネ?wwwwwwwwwwww」



ほむら「……ネコミミモード……」

カエル「……」


カエル「え?」

♪NekoMimiMode (月詠 -MOON PHASE- OPテーマ 歌:斎藤千和)


ほむにゃん「ネ、ネコミミ! ネコミミ・モードで〜す!」

カエル「……」

ほむにゃん「うにゃ〜うにゃにゃ〜♪ フルフル・フルムーン♪」

マヨネー「……」


ほむにゃん「KISS、したくなっちゃった……」

カエル「コポォwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

マヨネー「カエルちゃんが鼻血を!?」

カエル「モエスwwwテラモエスwwwホムラタンwwwギガントカワユスwwwwwwww」

ほむら(戻ってない……。でも!)


ほむら「カ、カエルさん? ほら、こっちに来て。私のほうがいいでしょう?」

カエル「……」

マヨネー「ちょ、ちょっと……カエルちゃん? まさかアナタ、こんなガキの言いなりに……」

ほむら(よし、これでカエルさんはこっちの味方に!)

カエル「……ふぅ……」

ほむら「?」


カエル「ああ、ほむら氏。申し訳ないでござる。拙者、ちっぱいには興味がないので」

ほむら「……」


ほむら「……は?」

カエル「拙者が好きなのはリーネたんのような、母性溢れるふくよかなおっぱいなのでござる」

カエル「ほむら氏のネコミミはなかなかの破壊力でござったが、マヨネー氏のきょぬーにはやはり……」

マヨネー「そうヨネ! さすがよく分かってるわネ〜、カエルちゃんは!」

ほむら「……」


カエル「そういうわけなので、そちらの味方につくというのはちょっと……」

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……」

カエル「……ほむら氏?」

ほむら「……」

ほむら「……し……」

カエル「し?」



ほむら「死んでしまえええええええええ!!!」ダァン!!!

カエル「ひいッ!? ご乱心じゃ! ほむら氏がご乱心めされたッ!?」

ほむら「あなたを殺して私も死ぬわ!!」ダァン! ダァァン!! ダンダンダァン!!!

マヨネー「オ〜ホッホッホ! 同士討ちとはブザマネ! そのままふたりともおネンネしちゃいなさい!」


ほむら「お前は生きていてはいけない人間なんだ!」

マヨネー「ん?」

カエル「マヨネー氏wwwボスケテwwwwwwww」

マヨネー「ちょ!? こ、こっち来んな!!」


ドシーン!!

ほむら「……ハッ!? わ、私はいったい何を……」


カエル「セーフでござるwwwほむら氏が落ち着いてくれたでござるwwwwww」

マヨネー「んも〜、あぶないじゃないのヨ。もつれて倒れちゃったのヨネ」

カエル「申し訳wwww申し訳wwwwwww」モミモミ

マヨネー「あんっ……♪ もう、どこさわってるの? カエルちゃんのエッチ!」

カエル「デュフフwww不可抗力でござるwwwラッキースケベでござるwwwテラ主人公特権wwwwwww」

マヨネー「カエルちゃんったらダ・イ・タ・ン・ネ☆」

カエル「おっぱいは正義wwwおっぱいは……んん?」モミモミ

マヨネー「ハァハァ……なんだかあたい、感じてきちゃったのヨネ〜」

カエル「不思議でござる……。おっぱいとは……股間についているものでござったか……?」

カエル「いや、そんなはずは……。では、このふにゃふにゃした感触は……」

マヨネー「もう我慢できないン!」


マヨネーの息子♂「ゲヒンナンデスガ...フフ...ボッキ...シチャイマシテネ...」

ほむら「え……!? きゃああっ!?」

カエル「どういうことなの……」

ほむら「マ、マヨネー!? あなた、男のひとだったの!?」

マヨネー「失礼ねェ。ちゃあ〜んと心は、オ・ン・ナ・なのヨネ」

カエル「オカマじゃねえか! ふざけんな!!」


ほむら「カエルさん! 元に戻ったのね……」

カエル「だいじょうぶだ…… おれは しょうきに もどった!」

ほむら「……なんか、怪しいけど」


マヨネー「あ〜らら、残念。でも無駄なのヨネ。またあたいのトリコにしてあげちゃうんだから!」

マヨネー「『トキメキ熱視線』!!」


ほむら「……」

カエル「……オエッ」

マヨネー「え? あ、あら?」

マヨネー「なんで!? なんで平気なのヨネ!?」

カエル「俺の明鏡止水の精神に、二度もそんな技が通用すると思っているのか!」

ほむら「メイキョウシスイッテナンダロー」


カエル「今度はこちらの番だ。マヨネー……貴様は目くらましだの睡眠だの、厄介な技を使う……」

カエル「だがそれは、裏を返せば搦め手でしか相手に対抗できないということの証!」

マヨネー「! ま、まずい……気づかれちゃったのヨ……」


カエル「純粋な実力勝負ではこちらに分がある! 食らえ、『ジャンプ斬り』!!」

マヨネー「ぶげェッ!!」

マヨネー「あぐっ、あおお……! くそっ、くそがあ……!」

マヨネー「だ、ダメだ……! ここはいったん退いて、立て直しを……!」

ほむら「逃がすと思って?」

マヨネー「! こ、このガキ……!」

ほむら「よくも恥をかかせてくれたわね……。死になさい!!」

マヨネー「ま……魔王様ァーッ!!」


ほむら「『FN MINIMI M249パラトルーパー』!!」ドガガガガガガ!!

マヨネー「ぎゃあああああ!!!」

カエル「終わりだ、マヨネー!」

マヨネー「こんな……! こんなガキに、このあたいがあ……!」

マヨネー「……ああ、魔王様……! お慕い……しておりましたのヨネ……」


…………


カエル「やったか……」

ほむら「……あいつとは、二度と会いたくないわ……」

カエル「確かにな。実にいやらしい攻撃を仕掛けてくる強敵だった」

ほむら「そういうことじゃなくてね……。カエルさん、混乱していたあいだの記憶はないの?」

カエル「ほとんど覚えていない。どうやら迷惑をかけてしまったようだな」

ほむら「……別に、いいけど」

カエル「お前がいてくれて助かったよ。これからもよろしく頼むぜ」スッ

ほむら「……」ススッ...

カエル「? おい、なぜ距離を取る? 俺はただ、握手をしようとしただけで……」

ほむら「カエルさんの本性がよく分かったから」

カエル「はあ? 何を言ってるんだ、お前は」

さやか「う〜ん……。あ、終わった?」

ほむら「お姫様がようやくお目覚めね」

カエル「さやか、お前なあ……。ずいぶんノンキなことを言ってくれるな。こっちは大変だったんだぜ」

さやか「あ……そうですよね。本当に申し訳ありませんでした」

カエル「……なぜ敬語なんだ? まだ何かおかしな術にかかっているのか?」

さやか「あたしは大丈夫です。さ、いこっか、ほむら」

ほむら「……さやか。あなた、戦闘中は寝てたのよね?」

さやか「そうだよ。ホントごめん。次はがんばるから」

ほむら「本当に寝ていたの?」

さやか「……」


カエル「おい、俺を置いていくな」

さやか「あの……すみませんけど、ついてくるなら少し離れていてくれませんか」

カエル「なんでだよ!? あと、敬語はやめろ! 気持ち悪い!」

A.D.600 魔王城 中央の間


ビネガー「来たか……魔王様に仇なすカスどもめ」


ビネガー「ソイソー! マヨネー! 出番だぞ!」

ほむら「……」

ビネガー「……? おい、ソイソー! マヨネー! 聞こえんのか!?」

カエル「残念だったな、ビネガー。ヤツらは既に倒した。助けは来ないぞ」

ビネガー「にゃにゃにゃ、にゃにっ!?」


ビネガー「な、ならば……オフィーリア!」

さやか「!」

ビネガー「おおい、オフィーリア! ええい、さっさと出てきてこいつらをぶちのめせ!」

ビネガー「く、くそ! オフィーリア! 聞こえているのだろう!? 何故来ない!?」

さやか「杏子が……あんたみたいな豚に、手を貸すもんか!」

ビネガー「おのれ〜……どいつもこいつもワシを豚呼ばわりしおって……」

カエル「観念しろ、ビネガー。次はお前の番だ」

ビネガー「こ、このケロケロ野郎……」


ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!!」

さやか「あっ、逃げた!」

ほむら「……あいつ、アホなの?」

カエル「追うぞ!」

A.D.600 魔王城 処刑通路


ビネガー「ウエ〜ルカム……!」

さやか「なっ、何ここ!?」

ビネガー「この廊下は、貴様らのような招かれざる客のために用意された地獄への花道ィ!」

ビネガー「死のロォォォド!!! その名も処刑通路!」


ガッチョンガッチョン

カエル「無数のギロチンだと! あんなものに挟まれたら……」

ほむら「間違いなくまっぷたつね」

ビネガー「おやおや、わざわざ歩くのは億劫と見えるな」

ビネガー「ならばワシが手伝ってやるわあ!」キコキコキコ!!


カエル「床が……動く!?」

さやか「ていうか手動なのかよ!」

カエル「言っている場合か! ギロチンに引き寄せられる! 引き返すぞ!」

さやか「でっ、でも、動く床のせいで踏みとどまるのがせいいっぱいだよ!」

ビネガー「フヒヒヒヒ! 良いダイエットになるだろう? ん?」

さやか「このヤロー! 痩せなきゃならないのはあんたのほうでしょうが!」

カエル「まずいぞ、このままでは……!」

ほむら「私に任せて」

さやか「ほむら!? 何する気!?」

ほむら(ギロチンの引き上げられるタイミングを見計らって……)

ほむら「今ね! 加速装置ッ!」カチッ


ビネガー「な、なにっ!?」

カエル「いいぞ! 上下動するギロチンの隙間を高速で駆け抜けていきやがった!」

さやか「あれ、ヘイストだよね。加速装置じゃないよね」

ほむら(一度でいいからやってみたかったのよね、これ……。時間停止だと誰も見てないし)ドヤァ

ビネガー「く、くそっ! 当たれ! 当たらんか! のろまギロチンめ!」

ほむら「こんにちは、また会ったわね」

ビネガー「うおおおっ!? いつの間に背後に!?」


ほむら「さて、あなたを殺せばギロチンは止まるのかしら?」

ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!!」

ほむら「! 待ちなさい!」



カエル「相変わらず逃げ足だけは速いな」

さやか「今度こそ逃がさないよ!」

A.D.600 魔王城 奈落の間


ビネガー「ウエ〜ルカム……!」

さやか「また!?」

ビネガー「この部屋は、貴様らのような浅はかで無駄にいきがる雑魚のために用意された墓場への招待状!」

ビネガー「死のルゥゥゥゥム!!! その名も奈落の間!」


カエル「何もない部屋に見えるが……」

ビネガー「ほれほれ、ワシはここだぞ? 来るがいい……来れるものならなあ!」

さやか「散々逃げまくっといてよく言うよ! 待ってろ、ぶっ飛ばしてやる!」

ほむら(奈落……地獄。また、地獄に落ちること。転じて、劇場で、舞台や花道の床下の空間の通称……)

ほむら(加えて、あいつのあの挑発的な態度……まさか!)

ほむら「さやか、待ちなさい!」

さやか「え?」


ビネガー「引っかかったなあ!!」キコキコキコ!!

さやか「んなっ!?」パカーン!

カエル「落とし穴だと!?」

ほむら「さやかっ!」

さやか「また手動かよおおおぉぉぉぉ……!」ヒュウウウウウ...

ビネガー「フヒヒヒヒ! まずはひとぉ〜り!」

ほむら(くっ……ここも、ヘイストで駆け抜けるしか……)

ほむら(でも、落ちたさやかは……!)


ビネガー「……む!? 待て!」

ほむら「っ! な、何よ?」

ビネガー「お前ではない! ……グレン! 貴様……」



ビネガー「なぜ『口を開いて』いる……ッ!?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ほむら「え!?」

カエル「……」ドドドドドドド


ビネガー「ぶんぶん飛び回るハエを捕まえることぐらいしかできんその『舌』でッ!」

ビネガー「いったい『何を支えている』のか聞いているんだァーーーッ!! グレェーンッ!!!」

カエル「やれやれだぜ……」

カエル「はあああああっ!!」グイッ!

ビネガー「なにっ!?」ォォォォオオオオ

ほむら「この声……!」オオオオオオオオ


さやか「おおおおりゃあああーッ!! さやかちゃん復活!」

ビネガー「馬鹿なあー!? 舌を巻きつけて落下を阻止したのか!」

さやか「師匠! このまま……!」

カエル「ぬうんッ!」ブォン!!!

ほむら「そのまま反動をつけて投げ飛ばした!?」

ビネガー「うおおっ!? く、来るなッ!」

さやか「さやかちゃん……アターック!!!」

ビネガー「まそっぷ!!」


さやか「見たか! これがあたしと師匠の第2のふたりわざ、『ベロロンさやかちゃん』だ!」

ほむら(そのネーミングセンスはないわー)

さやか「さあ、言われたとおり来てやったわよ! 覚悟しろ!」

ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!!」

さやか「こらー! 逃げるなっつってんでしょー!」


ほむら「とりあえず、あいつがいなければトラップは作動しないわね」

カエル「……」

さやか「あれ、師匠? うずくまってどうかしたの?」

カエル「いや……だいぶ舌を酷使してしまったからな……」

ほむら「さっきのはかなり無理な動作だったしね。それにさやか……あなた体重何キロだっけ?」

さやか「ちょ、師匠! 女の子を重いとか言っちゃうなんて、デリカシーないっつの!」

カエル(俺は何も言ってないぞ……)

ほむら「『ベロロンさやかちゃん』……諸刃の剣ね」

A.D.600 魔王城 恐宴の間


ビネガー「ウエ〜ルカム……!」

さやか「うん、知ってた」

ビネガー「この広間は、貴様らのようなアホでマヌケなヤツのために用意された超ヤバイ場所!」

ビネガー「死のホォォォォル!!! その名も恐宴の間!」

ほむら「口上が雑になってるわよ」

ビネガー「ええい、うるさいわ!」

ビネガー「まどろっこしいのはもうやめだ! そおりゃあああ!!」キコキコキコ!!

さやか「はいはい、手動手動」

カエル「部屋の四方の床がせり上がってくるようだが……」


ビネガー「その、とお、りっ! しかもぉっ! これはあ! 床ではなく! いわばっ、昇降機ィ!」ゼェハァ

さやか「疲れてる疲れてる」

ビネガー「そしてぇっ! 階下、には! 魔物どもが、ウジャウジャ!」キコキコキコ!!

ほむら「まさか……」

カエル「いかん、囲まれるぞ! 戦闘態勢だ、ふたりとも!」

ほむら「……」

ビネガー「……」キコキコ...キコ...

カエル「……」

さやか「……完全にせり上がりきったみたいだけど、誰も乗ってないよ?」


ビネガー「おいィ!? どういうことだ! メーデーメーデー、待機室! 応答しろ!」

ビネガー「なにいっ!? 定時だからみんな帰った!?」


さやか「定時とかあるんだ……」

ほむら「意外と優良企業みたいね、魔王城」

ビネガー「残業をしなさいよ、サービス残業を! 貴様ら全員減俸するぞ!!」

ほむら「幹部は無能みたいだけどね」

つまり
魔物「もう定時なんで帰りますねー、お先に失礼しまーす」

魔王「む、もうこんな時間か…お疲れー」

って事か

カエル「さて……もういいか、ビネガー? そろそろ手もなくなってきただろう」

ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!!」

カエル「……」


ほむら「あいつ、似たようなネタで何レス使う気なのよ」

さやか「師匠……あたし、そろそろ飽きてきたんすけど」

カエル「オホン!! お前ら、気を抜くな……頼むから」

A.D.600 魔王城 北の玉座


ビネガー「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……」

カエル「追い詰めたぞ! ビネガー」

さやか「や〜れやれ……やっとだよ……」

ほむら「長く苦しい戦いだったわ」


ビネガー「勝手に終わらせるな! ふん、カスども……このワシが、ただ逃げていただけだとでも?」

カエル「なんだと?」

ビネガー「フヒヒヒヒ! すべてはこの部屋におびき寄せるための布石!」

ビネガー「貴様らはまんまとワシの手のひらの上で踊らされていたというわけよ!」

さやか「ウソくせ〜……」


ビネガー「ウソかどうか、その目で確かめるがいいわあ!」

ビネガー「これぞ、最後にして最大の策!」

ビネガー「ビネガー……バリアーッ!!!」


カエル「馬鹿な!? ビネガーの体が氷のような結晶体で覆われたぞ!?」

さやか「ちょっ、バリアーってずるくない!? 正々堂々戦いなさいよ!」

ビネガー「な〜にか勘違いしているようだなあ? ワシの役目は時間稼ぎ!」

ビネガー「貴様らが足掻いておるあいだに、魔王様は呼び出しているだろうよ……」



ビネガー「ラヴォス様をな!!」

ほむら「シャクだけど、あいつの言うとおりだわ。ここで手間取っている暇はない」

さやか「こ、こんなヤツほっといて……」

カエル「ビネガーのことだ。そうすれば背後から不意打ちでもかけてくるに決まっている!」


ビネガー「フヒヒヒ! どんな作戦を立てようが無駄無駄ァ!」

ビネガー「ワシのバリアーはあらゆる攻撃をうけつけぬのだ!」

さやか「くっそ〜……あんなウザいドヤ顔、初めてだわ……」

カエル「あらゆる攻撃を、か。もし本当なら、どうやって攻略したものか」

ほむら「……ハッタリに決まってるわ」

さやか「ほむら!?」

ほむら「いくわよ!」ダァン!!


ビネガー「む」カキーン!

さやか「! 銃弾が弾かれちゃった……」

ほむら「いい加減にしなさいよ! もう何回目よ!?」

さやか「な、なんでキレてるの?」

ほむら「キレてないわよ。私をキレさせたら大したもんよ」


ビネガー「フヒヒ! 今、なにかしたかあ?」

カエル「どうやらハッタリではなさそうだな……」

さやか「どどどどうすんのさ!? 何も通じないってんじゃ攻撃のしようがないじゃん!」キンキンキィン!

ほむら「こんな奥の手を隠し持っていたなんて……」キンキンキィン!

ビネガー「どうしたどうした、もうあきらめたか? ならば尻尾まいて逃げ帰れ! フヒヒヒ!」キンキンキィン!


ビネガー「……」キンキンキィン!

ビネガー「おい、さっきからうるさいぞ。この音はなんだ」キンキンキィン!

カエル「音だと?」

さやか「そういえばさっきから、なんかキンキン鳴ってる……」

ほむら「まさか……! ふたりとも、伏せて!」


ガガガガキィン!!!

さやか「うわ! な、なに!?」

ほむら「うかつだったわ……兆弾よ。あのバリアーにはじかれた銃弾が、壁に跳ね返ったんだわ」

カエル「あやうく同士討ちになるところだったか……」

ビネガー「フヒヒヒヒ! 進退窮まって自滅か? なかなか賢い選択だと思うぞ?」

ほむら「くっ……」

さやか「さっきの銃弾、どこいったの? まだ跳ねてたりしないよね?」

カエル「どうやら部屋にある装置に当たって止まったようだが」



ビネガー「……え?」

キュラキュラキュラキュラ

さやか「あれかあ〜。なんかレバーがついてて、回ってるけど」

ほむら「着弾の衝撃で作動したのかしら……」

カエル「ということは、なんらかのトラップがまた……!」


ビネガー「フヒヒ……いいところに気がついたな、グレン」

カエル「! やはりか……!」

ビネガー「この玉座がある部屋は……え〜と……死の……」

ほむら「今考えてるでしょ」

ビネガー「もういい! ……とにかく、この部屋は『奈落の間』同様、落とし穴が隠されている!」

さやか「またかよ!」

カエル「それが、あの装置で作動した……。いかん、このままでは!」

ビネガー「そ〜とも! 落とし穴によって無様にも深遠の藻屑となる愚か者は……」



パカーン!

ビネガー「このワシだあ! フヒヒヒヒ!!」

ほむら「……」

さやか「……」

カエル「……」

ビネガー「……」


ビネガー「ちくしょおおおぉぉぉぉ……!!!」ヒュウウウウウ...


…………


ほむら「……」

さやか「……」

カエル「……」


ほむら「えっ、戦闘終わり?」

カエル「ビネガー……恐ろしい敵だった。ヤツの執念深さ、魔王より上かもしれん」


ほむら「……」

さやか「師匠……無理してシリアス展開にしなくていいんだよ……?」

カエル「……言うな……」

A.D.600 魔王城 最奥


さやか「ずいぶん来たけど、ここが最後の部屋?」

ほむら「……真っ暗ね」

カエル「怖気のするようなこの瘴気……。間違いない、いるぞ……!」



ボッ...ボッ...

さやか「うあ!? びっくりした……」

ほむら「誰もいないのに、燭台のろうそくがともされていく……」

カエル「誘ってやがるな……。望むところだ」

「ダ・ズマ・ラフア・ロウ・ライラ……」

ほむら「……!」


「つむがれよ、天と地のはざまに……」

さやか「あ、あれってまさか……」


「この大地の命と引きかえに……!」

カエル「この時を、待ちわびたぜ……」



カエル「魔王ッ!!」

魔王「いつかのカエルか……。どうだ、その後の人生は?」

カエル「感謝しているぜ。こんな姿だからこそ……手に入れた物もある!」

魔王「ほう……。きさまがグランドリオンを……」

カエル「それに、守るものも増えちまったしな……。後悔なんて、あるわけないぜ!」

さやか「師匠……」


魔王「なるほど。今度はお前が足手まといをかばいながら戦おうというわけか……」

さやか「あたしは足手まといなんかじゃない! 師匠と一緒に、あんたを倒すんだ!」

魔王「たやすく背後を取られておいて、よく言う……」

さやか「え……!?」

杏子「動くなよ、さやか。手元が狂ってブスッといっちまうからな」

さやか「杏子!」


杏子「帰れっつったのに……。ほんと、人の言うこと聞かないよねぇ」

ほむら「さやかを放しなさい、杏子!」

杏子「撃てるかい、ほむら? さやかにも当たっちまうぜ?」

ほむら「くっ……!」

カエル「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ、キョーコとやら!!」

杏子「……チッ!」ガインッ!!!


杏子「そういやいたっけね、カエル男」

カエル「さやか、大丈夫か?」

さやか「あ、ありがと、師匠……」


魔王「油断したな……杏子」

杏子「うっさいよ。何やってんだ、アンタは儀式の再開を」

魔王「邪魔者を排除せねば続行は不可能だ」

杏子「……ちぇっ」

ほむら「どきなさい、杏子! あなた、自分が何をしているのか分かってるの!?」

杏子「そこから一歩でも前に出てみな。それが戦闘開始の合図だよ」

ほむら「っ……」


さやか「あんたのワケを聞くまで……」

杏子「!」

さやか「あたしたち、引き下がるつもりはないからね!」

♪魔王決戦


杏子「動いたな。さやか……」

杏子「おしゃべりは終わりだ。今度は……本気だよ」


魔王「黒い風が、また泣き始めた……」 

魔王「私を、杏子を。止めたくば、かかってくるがいい……」



魔王「死の覚悟ができたのならな!」

杏子「ちっとは強くなったかい、さやか?」

さやか「この……バカキョーコ! 灸をすえてやる! 『スクワルタトーレ』!!」

杏子「……へえ」ギキキィン!!

さやか「……っ! あたしの連続攻撃が、全部防がれた……!」

杏子「割と洗練されてんじゃん。誰に教わったんだ? ……ま、聞かなくても分かるか」


カエル「『ダッシュ斬り』!!」

杏子「死角から高速度で近づいて奇襲か……。やるじゃん、『師匠』」

魔王「『ヘルガイザー』!!」

カエル「ぐおっ!?」

杏子「残念、止められちゃったねえ」

ほむら「カエルさん! この……魔王……! これを食らいなさい、『M26手榴弾』!!」

杏子「『縛鎖結界』!!」

魔王「……この結界により、跳ね返された爆弾はお前たちのもとへと戻る」

ほむら「!」

カエル「まずい、散れッ!」


ドカァン!!

杏子「ありゃりゃ。ほむら……アンタ、チーム戦に向いてないんじゃないの?」

ほむら「くっ……!」

カエル「冷静になれ、ほむら。俺が囮になる……」

さやか「師匠?」

カエル「あの結界が解除されたら、さやかとふたりで遠距離攻撃を頼むぜ」

ほむら「……分かったわ」


魔王「うまくいくといいな」

カエル「!」

杏子「まる聞こえだっつの。作戦の立て方すら知らねえのかよ」

カエル「チッ……。なら、防いでみろ! 『ジャンプ斬り』!!」

杏子「へー、ずいぶん高く飛び上がるね」

魔王「上から攻撃する気か? 無駄だ、この結界は全方位型……」


カエル「まだまだ……! 『ベロロン斬り』!!」

さやか「師匠が天井に張り付いた!」

ほむら「あの高さから落下のスピードを加えて威力を高めるつもりね!」

カエル「いくぜ……『グライドフック』!!」


魔王「なかなかの技のようだな……。この結界で耐えられそうか?」

杏子「さあね」


カエル(頼むぜ、グランドリオン……! 俺に、力を!!)

カエル「うおおおおおおッ!!!」

バキイィィィン!!!


杏子「おっ」

カエル「やった……!」

魔王「なるほど、グランドリオンか。思いのほか使いこなしているようだ」

杏子「誤算だったね」

カエル「余裕ぶっていられるのも今のうちだぜ……。さやか! ほむら!」


さやか「さっすが師匠! いくよ、ほむら!」

ほむら「ええ……!」

さやか「『スプラッシュスティンガー』!!」

ほむら「『RPG-7』!!」

魔王「『トゥソード』!!」

カエル「空間からロッドが……! しかも複数だと!?」

さやか「あ、あたしと同じ技じゃん!?」

杏子「それだけじゃないぜ」

ほむら「ロッドが剣に変わった……!?」


魔王「目障りなハエを叩き落せ……!」ヒュヒュヒュン!!!


ドカァン!!

ほむら「RPGの弾頭が……途中で爆破させられたわ!」

さやか「あたしの剣も叩き落されちゃった……」

杏子「惜しかったね。結界を突破するまではよくやったと思うぜ?」

カエル「く、くそっ……!」


杏子「じゃ、お返しだよ。『飛槍』!!」

カエル「槍を空中に……!?」

魔王「『サンダガ』!!」

ほむら「こ、これは……槍に稲妻が凝縮されて……」

さやか「師匠! よけてッ!!」



杏子「ふたりわざ『ソーヘブン』!!」

ドドオオオォォン!!!

カエル「ぐ……がは……ッ!」

さやか「師匠ッ!」


杏子「はい、一丁上がり。次はほむらか? それともさやか?」

魔王「まとめて来い。時間が惜しい」

ほむら「う、ぐ……」


カエル「まだだ……! まだ俺は、倒れちゃいないぜ……!」

杏子「だと思ったよ」

魔王「無駄な足掻きだ……」


カエル「さやか! 『エックス斬り』だ!!」

さやか「! ……うん、分かった!」

杏子「へえ。アンタらも『れんけいわざ』を使えんのかい?」

さやか「腰抜かすなよ! ……師匠、いける!?」

カエル「おお……! 魔王にひと太刀浴びせるまでは、死んでも死にきれんぜ!」

さやか「よっし! あたしらの力、受けてみなよ!」

魔王「来るぞ、杏子」

杏子「分かってるよ。準備はできてる」



カエル&さやか「『エックス斬り』!!!」

杏子「『縛鎖結界』!!」


さやか「あっ!?」

カエル「さやか!」


杏子「カエル男はグランドリオンで結界をこじ開けられても、さやかはそうはいかない」

杏子「『れんけいわざ』、不発だね。その攻撃はただの『ベロロン斬り』だ」

カエル「し、しまった……!」

杏子「『鉄砕鞭』!!」

カエル「ぐ!?」

さやか「うあ!?」

ほむら「多節棍による拘束!?」


杏子「ほい、あとよろしく」

魔王「まとめて焼き払ってやろう……。『ファイガ』!!」

カエル「ぐあああっ!」

さやか「あちちちちっ!」

ほむら「さやか! カエルさん!」

杏子「さあ、ほむら。アンタの好きな単独戦闘だぜ。かかってきなよ」

ほむら「……」

杏子「……アンタさあ。さっきから観察してたけど、やっぱり『時間停止』、使えないみたいだね」

ほむら「!」

杏子「こりゃいいや。一番厄介だと思ってたほむらがそのザマじゃあね」

ほむら(ここは……態勢を立て直すしかない!)


ほむら「ふたりとも、これを飲んで……!」

カエル「ポーションか……。ス、スマン……」


杏子「来ないのか? まあそれが賢明だよな」

魔王「杏子、護衛しろ。私は詠唱に入る」

杏子「……アレか。はいはい、分かったよ」

さやか「んぐっ……。はあ、生き返った……。攻撃が苛烈すぎてあたしの回復も追いつかないよ……」

カエル「待て。ヤツらの様子がおかしいぞ!」

ほむら「! 魔王が何かつぶやいてる……」

さやか「なんかやばそうだよ! 止めなきゃ!」


杏子「おおっと。邪魔はさせねえ」

さやか「杏子!」

カエル「チッ……。だが、こいつひとりなら!」

杏子「誰がひとりだって?」

ほむら「え……」



杏子「『ロッソ・ファンタズマ』!!」

カエル「こ、これは……! ヤツが13体に分身した……!?」

さやか「これって、封印したって言ってたはずの……」

ほむら「どうして使えるの!?」


杏子「13を3で割ると……えーっと、4あまり1か」

杏子「あまったひとりは一番強いアンタにあげるよ、カエル男!」

さやか「う、くっ……! これじゃ、防ぎきるのでせいいっぱいだよ……!」

ほむら「まずいわ、このままじゃ!」

カエル「……魔王……!」



魔王「人の名を……ずいぶん気やすく呼んでくれるじゃあないか……」

カエル「!」

魔王「下がれ、杏子」ゴゴゴゴゴ...!!

杏子「あいよ」


さやか「な、なにあれ……」

ほむら「なんて巨大な魔力……」

カエル「あ、あんなものを食らったら……!」

魔王「取るに足らぬ、か弱きものどもよ……。闇に抱かれ眠るがいい……」

魔王「二度と目が覚めぬよう、私が地獄の果てへと続く門を開いてやろう……」



魔王「我招く、無音の衝裂に慈悲は無く、汝に普く厄を逃れる術も無し!!」

魔王「『ダークマター』!!!」

ほむら「きゃああああっ!!」

さやか「うああああああっ!!」

カエル「く、くそ……こんな……! うおおおおおおおッ!?」



ドゴォォオオアアアアァァァァァン!!!!!


…………


ほむら「……」

さやか「……あ、う……」

カエル「お……ぐ、ふっ……」

杏子「よく耐えたもんだよ、アンタら。立派立派」

魔王「……フン」


さやか「つ、強い……! 強すぎる……。どうしろってのよ……」

カエル「なぜだ……俺では……魔王に、勝てないのか……!?」

ほむら(ダメ……。魔王だけでも手ごわいのに、杏子までいたんじゃ……!)


杏子「終わりだね」

さやか「うぐっ……」

カエル「こんなところで……すまん、サイラス……!」

ほむら「まどか……!」

杏子「……」

魔王「殺さないのか、杏子」

杏子「……それは命令かい? 魔王としての……」

魔王「……」



ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!

魔王「!」

さやか「な、何!? ものすごい振動!」

杏子「これは……! なんてこった、ラヴォスが!」

魔王「まずい! 今、眠りからさめられては……」

ほむら「眠り!? どういうことよ……ラヴォスを生み出したのは、あなたでしょ!?」

杏子「バッカやろう! コイツは呼び出しただけだよ!」

魔王「あれは太古の時より地中深く存在し、この大地の力を吸いながらゆっくりと成長を続けているのだ!」

さやか「どどどどーいうこと!?」

ほむら「それなら……ラヴォスはいったい、いつから……」


カエル「何か来るぞ!」

ズズズズズズ...!!!

杏子「ゲート!?」

ほむら「巨大すぎる! 何が起こったというの!?」

魔王「おのれ……貴様たちさえ現れなければ……!」


さやか「うあああっ!」

杏子「さやか! くっ、くそ! また……!」

カエル「すっ、吸い込まれ……!」

魔王「うおおおおっ!!」


ほむら「きゃああああああああっ!!!」




キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!



…………

………

……


第3話「後悔なんて、あるわけない」 終了


  セーブしてつづける(第4話「もう何も怖くない」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

前編終了。今日はここまでです。

それでは、また明日。

第4話「もう何も怖くない」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

まどか「おはよう、ほむらちゃん」

さやか「遅いぞ、ほむらー」

仁美「おはようございます」


ほむら「お待たせ、みんな。さあ、行きましょう」


…………


まどか「でね。ラブレターでなく直に告白できるようでなきゃダメだって」

さやか「相変わらずまどかのママはカッコいいなあ。美人だしバリキャリだし」

仁美「そんな風にキッパリ割り切れたらいいんだけど……はぁ」

ほむら「……」


カラーン...コローン...

まどか「わあ、リーネの鐘があんなに気持ちよさそうに歌ってる」

ほむら「……え?」

まどか「どうかしたの? ほむらちゃん」

ほむら「いえ、なんでも……待って。リーネの……鐘……?」

さやか「そーだよ! リーネの鐘が鳴ってるってことは時間やばいじゃん!」

仁美「少し急いだほうが良さそうですわね」

さやか「よーし、走るかー」


まどか「あ、待ってよ! ほむらちゃん、いこ! 置いてかれちゃうよ」

ほむら「まどか、待って……何かおかしい……」

まどか「何言ってるの? ねえ、ほむらちゃんってば!」

ほむら「そうよ……リーネ……中世……私は、私たちは魔王と戦ってて……」

まどか「ほむらちゃん! どうしたの? ほむらちゃん!」

ほむら「ゲートが……とても巨大なゲートが……」

まどか「ホムラチャン! ホムラチャン!! ホムラチャン!!!」



まどか「ホムラチャンホムラチャンホムラチャホムラホムホムホムほむほむほむほむ!!!」

ほむら「!?」

B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント


ほむら「んあー!?」

エイラ「ほむ! 気づいたか!」

ほむら「エイラ!? え……今のは、夢? ここは……」

エイラ「エイラ、会いたかった。不思議山、行った。お前たち、倒れてた」

エイラ「エイラ、ひとりでみなかついで、テント連れて来た」

ほむら「原始時代……あの巨大なゲートに吸い込まれた先が……」


ほむら「そ、そうだわ! 他のふたりは!? 杏子は? 魔王はどうなったの!?」

エイラ「落ち着け、ほむ。お前の連れ、そこ寝てる」

さやか「うーん……」

カエル「うぐぐぐ……」

カエル「ぐお……ぐぐ……ま……魔王ーッ!」ガバッ

ほむら「カエルさん! 良かった、気がついたのね」

カエル「ほむら……。ここはいったい……」


エイラ「このカエル、デカい。みやげか? エイラ、食っていいか?」

カエル「うおぉおい!? 誰だこの女は!? やめろ、味見するな!」

さやか「うぅ……うるさいなあ……ん? あれ……」


カエル「さやか! 助けてくれ!」

さやか「……なにやってんの、師匠……」

エイラ「みやげじゃないのか。エイラ、つまらん」

カエル「くそ、なんでいきなりこんな目に……。おい、青白いツラしたマントのヤローはいなかったか?」

エイラ「いや、お前たちだけ。そいつ、お前よりウマイか?」

カエル「魔王……逃がしたか」

さやか「杏子もいないんだね……。また、離ればなれか……」

マミ「暁美さん! 美樹さん!」

さやか「えっ!? ま、マミさん!?」

マミ「心配したのよ……。目を覚まさなかったら、どうしようかと」

ほむら「マミ。意外と早い再会になったわね」


キーノ「( ゚∀゚)o彡°おっぱい! おっぱい!」

さやか「あそこで、あたしを凝視して狂ったように踊ってるのは?」

マミ「キーノくんよ。あれはボボンガね。歓迎の踊りなの」

ほむら(絶対ボボンガじゃないわよ。おっぱい言うてるし)


エイラ「お前たち、傷だらけ。今日は休め。テント、貸してやる」

ほむら「悪いわね」

翌日


マミ「中世で魔王、か。ずいぶんと大変な戦いだったみたいね」

ほむら「結局、ラヴォスを生み出したのは魔王じゃなかった。当てが外れたわね」

さやか「じゃあラヴォスっていつからいたんだろ?」

カエル「魔王は『太古の時』と言っていたが……」


マミ(魔王さんか。『黒い風』……すごくそそられるわ。どうにかして技名に取り入れられないかしら)

ほむら「マミ? どうかしたの?」

マミ「えっ!? い、いえ。なんでもないのよ。オホホホ」

キーノ「元気か、ほむたち。メシ持ってきた。食って、リキ、つけろ」

さやか「気が利くじゃん! サンキュー、キーノ!」


ほむら「そういえばエイラは? 朝から姿が見えないみたいだけど」

キーノ「エイラ、今、大変。ラルバの村、探してる」

ほむら「ラルバ……確か、恐竜人との戦いを避けて隠れ住んでる人たちの村よね」

マミ「恐竜人との最後の戦いが迫ってるのよ。何とか、ラルバの村の人たちの力も借りたいんだけど……」

キーノ「恐竜人ほろぼさなければ、キーノたち、ほろぶ。逃げ続けるの、無理!」

イオカ族「キーノ!!」

キーノ「どした! ほむたち、休んでる。静かにする!」

イオカ族「北の森、メラ! メラ!! メラ!!!」

キーノ「!」

さやか「え、なに? メラメラメラ?」

カエル「北の森が燃えているってことか?」

マミ「そんな……だとしたら、大変よ! 北の森はエイラが向かった先なの!」

ほむら「なんですって!?」


キーノ「……ッ!!」

マミ「あっ、キーノくん! 待って、ひとりじゃ……」

ほむら「追いかけるわよ!」

B.C.65000000 ラルバ村の焼け跡


さやか「なにこれ……ひどい……」

カエル「焼き討ちと略奪か。侵略戦争につきものとはいえ、気分のいいものではないな」

ほむら「キーノが見当たらないけど……」


ラルバ族「おまえら、イオカのやつらか……」

マミ「あの、ここに男の子が来ませんでした? イオカ族の……」

ラルバ族「キーノ、恐竜人、さらわれた。ラルバのみんな、さらわれた」

マミ「そ、そんな……」

ラルバ「恐竜人、さからった者、みな殺しする。きっと、助からない……」

ほむら「最悪の状況ね……」

さやか「ほむら、マミさん! あそこに誰かいるよ!」



マミ「エイラ! ひどい怪我……」

エイラ「マミ……。恐竜人……キーノが……」

マミ「分かってるわ。でもまずはあなたの怪我を……」


ラルバ長老「エイラ……これ、みな、お前のせい……。見ろ、このありさま……」

さやか「え、だ、誰!?」

ほむら「ラルバ村の長老さんみたいね……」

ラルバ長老「お前のあと、恐竜人つけてた! だからこの村、こんな目にあった!」

エイラ「……すまん……エイラ、うかつ……」

ラルバ長老「恐竜人、たてつく……おろか! 恐竜人、ワシらより昔から、この地いる」

ラルバ長老「だからワシら、かくれてた。だが、エイラ、いっしょに戦え言う……」

ラルバ長老「エイラ! こんな目あっても、戦え言うか!?」


さやか「ちょっと待ってよ! 一方的すぎるよ、そんな言い方!」

カエル「待て、さやか」

さやか「師匠……でも!」

エイラ「生きてるなら……エイラ戦う! 勝った者、生きる。負けた者、死ぬ。それ、この大地のおきて」

エイラ「恐竜人もエイラたちも、生き物みな、このおきて、さからえない」

エイラ「長老……お前たち、生きてない。死んでないだけ!」

ラルバ長老「エイラ、お前、強い。だからそう言える! ワシら、力、ない……」

エイラ「それ違う! 力あるから戦う、違う。戦うから……力、つく!」

ラルバ長老「……」

マミ「長老さん。こんなことになってしまって、本当にごめんなさい……」

マミ「あなたたちの気持ち、分かります。私も昔はそうだったもの」

マミ「戦うのが怖くて、辛くて……泣いてばかり」

マミ「いえ、きっと今もそう。無理してカッコつけてるだけ」

ラルバ長老「……」

ほむら(マミ、あなた……)


マミ「でも……そんな私でも戦い続けられるのは、そばにいてくれる人がいるから。その人が大切だから」

マミ「長老さん。あなたも……いいえ、ラルバの人たちみんな、本当は悔しいんじゃないですか?」

マミ「あなたたちの大切な人が、危険な目にあってる。助けたい……」

マミ「私たち、力を貸します。キーノくんも、さらわれたラルバの人たちも、みんな助け出します!」

マミ「だからお願い……。あなたたちも、私たちに力を貸してください……!」

ラルバ長老「……」

エイラ「長老、たのむ! このとおり!」

ラルバ長老「……ワシら、戦うの無理。手伝いたくても、手伝えない」

さやか「そんな!」

ラルバ長老「だから、別の方法、探す。エイラ、言え。ワシら、何すればいい?」

エイラ「長老!」

マミ「長老さん! ありがとう……」


さやか「良かった〜。一時はどうなることかと……」

カエル「人は助け合えるさ。少しのきっかけさえあればな」

ほむら「さやか、カエルさんに感謝しなさいよ。あなたが出しゃばってたら余計ややこしくなってたわ」

さやか「うぐっ、言い返せない……」

エイラ「長老! プテラン! プテラン、今、必要。プテラン貸してくれ!」

ラルバ長老「プテラン……? ティラン城、乗り込み気か!?」

ラルバ長老「あそこ、恐竜人の城。キケン! いくらエイラでも! 死にたいか?」

エイラ「違う。生きたいから、行く。エイラ、だいじょぶ。たのむ!」

ラルバ長老「……わかった。プテランの世話してる者、伝えておく。プテランの巣、行く」

ラルバ長老「気をつける、エイラ!」

エイラ「長老、助かる!」


エイラ「マミ、あと頼む。エイラ、行く!」

マミ「待って、エイラ! まだ傷の治療が……!」

ほむら「行ってしまったわね」

さやか「怪我してるってのに、すごいスピードだなあ〜」

カエル「ひとりで死地におもむくつもりか……」


ラルバ長老「ワシら、言えた義理ないが、頼む。エイラ、助けてやってくれ」

マミ「長老さん……。でも、ここに残った人たちのことが……助けてあげないと……」

さやか「な〜にしてんの、マミさん! 早く追いかけなよ!」

カエル「この村のことは、俺たちが引き受ける。あんたはあいつのもとに行ってやりな」

マミ「美樹さん、カエルさん! ……ごめんなさい、ありがとう。あなたたちに、お願いするわ」

さやか「任されました!」


ほむら「プテランの巣とやらの場所は聞いたわ。早くしなさい、マミ」

マミ「暁美さん……。ええ、行きましょう!」

カエル「気をつけてな、ふたりとも」

B.C.65000000 プテランの巣 山頂


マミ「エイラ!」

エイラ「! ……マミ……」

ほむら「はー。これがプテランね。名前のとおり、プテラノドンなのね。空から乗り込むというわけ」


エイラ「マミ……なぜ来た」

マミ「ラルバ村のことは、美樹さんとカエルさんに頼んであるわ。大丈夫、あのふたりなら……」

エイラ「違う! ティラン城、危険! みな、死ぬかもしれない!!」

エイラ「乗り込む、エイラ、ひとり!」

マミ「……」

マミ「エイラ。私ね、あなたのこと親友だと思ってるわ」

エイラ「? 急にどうした、マミ」

マミ「エイラは私のこと、嫌い?」

エイラ「嫌い、違う! エイラ、マミ、好き。一番! いつも言ってる……」

マミ「ええ、そうよね。ありがとう……」


マミ「エイラ、言ってたわよね。大切なら、助けてやるって。それが仲間だって」

エイラ「!」

マミ「私、あなたが好きよ? だから助けてあげたいの。間違ってるかしら?」

エイラ「間違ってない……でも……」

マミ「大丈夫。ひとりなら難しいことでも、ふたりなら。みんないれば……きっと、大丈夫よ!」

マミ「私、ひとりぼっちじゃないもの。もう何も怖くない」


ほむら「あっ」

マミ「? どうかしたの、暁美さん?」

ほむら「い、いいえ。なんでもないわ……」

ほむら(関係ないわよ。そういう世界観じゃないから。死亡フラグ? なにそれおいしいの?)


エイラ「マミ……」

マミ「行きましょうエイラ。恐竜人と、決着つけなきゃね」

エイラ「……エイラ、行く! マミも、行く! ふたりで!!」

ほむら「ちょっとちょっと。私を忘れないで」

エイラ「ほむも行くのか?」

ほむら「まさかこんなところに、ひとり置いていくつもり? そっちのほうがひどいわよ」

エイラ「ほむ……すまん。助かる」



マミ「さあ乗り込むわよ。いざ、ティラン城! ってね」

B.C.65000000 ティラン城 入り口


ほむら「ここがティラン城……恐竜人の本丸、ってわけね」

マミ「エイラ、怪我のほうは大丈夫?」

エイラ「エイラ、元気! マミのおかげ!」

ほむら「まずはさらわれた人たちを助けないと。どこにいるのかしら……」


…………


地下牢


牢番「われら、これからウタゲ! お前ら料理されて、皿の上! ゲゲゲ!」

キーノ「……」

ラルバ族たち「おしまい……みな、おしまい……」

ほむら「いたわ……キーノ。それに、ラルバ村の人たちも」

エイラ「みんな、助ける! あいつ、ぶっ飛ばす!」

マミ「待ってエイラ。ここは私に任せて」

ほむら「何をする気?」

マミ「ふふ……こうするのよ! 『レガーレ』!!」


牢番「ムググググ!?」

ほむら「なるほど、リボンによる拘束……。口もふさげば、増援も呼ばれないってわけね」

マミ「ナイスアイディアでしょ?」ドヤァ

ほむら「ついでに鍵もいただいておきましょう」

マミ「ああん、無視しないで!」

キーノ「エイラ! マミ! ほむ!」

エイラ「キーノ、無事か?」

キーノ「エイラ、ゴメン。キーノのせい」

エイラ「そんなこといい。それよりキーノ、ラルバの村人と、先逃げる!」

キーノ「エイラ、どーする?」

エイラ「大地のおきてどおり、ケリつけ、行く」

キーノ「キーノ、いっしょ、行く!」

エイラ「キーノ来る、ダメ。エイラ負けたら、キーノ、イオカ酋長……」

キーノ「エイラ……」


マミ「大丈夫よキーノくん。私がついているもの」

キーノ「マミ! ……分かった。エイラ、がんばれ!」

エイラ「エイラ、強い。負けない!」

ほむら「さて……それじゃあいよいよ、決戦といきましょうか」

キーノ「待て。キーノ、いいこと教える。こっち、来い」

ほむら「何かしら?」

キーノ「ここ、抜け道。牢番、言ってた。近道」

ほむら「へえ……隠し通路かしら? 助かったわ、キーノ」


キーノ「オマエ強い。オレ弱い。うらやましい。……エイラ、マミ、たのむ」

ほむら「ええ、任せておいて。あなたはラルバ村の人たちのこと、お願いね」

キーノ「気をつけろ、ほむ!」


…………


ニズベールR「グゲゲゲ……! サルどもが来るのが待ち遠しいぜ」

ニズベールR「以前は不覚を取ったが……『R』として生まれ変わったこのニズベール様の筋肉は無敵だ!」

ニズベールR「グゲゲゲゲゲゲ!!! さあ早く来い、サルども!」



ほむら「何か、壁の向こうから気持ち悪い笑い声が聞こえてくるわね」

マミ「恐竜人の城だもの。何がいてもおかしくはないわ」

エイラ「ほむ、マミ、はよ進む! ここ狭い! 苦しい!」


>ニズベールR、スルー!

B.C.65000000 ティラン城 玉座


エイラ「アザーラ!!」

アザーラ「……やはり来たか……。これが、最後の勝負になりそうだな」

アザーラ「遅かれ早かれ、決めねばならぬことだ……。我々恐竜人か、貴様たちサルどもか!」

エイラ「それ決める、大地のおきて。エイラ、戦うだけ!」



ギャオオオオオオォォォォォン!!!

ほむら「な、なに!? この咆哮は!」

アザーラ「聞こえたようだな。フフ、あとでたっぷり聞かせてやるわ……」

マミ「! 待ちなさい!」

ほむら「奥の扉から出られるわ。追うわよ!」

B.C.65000000 ティラン城 空中廊下


マミ「アザーラ! 逃げるなんて往生際が悪いわよ!」

アザーラ「逃げる……? 違うな、戦いの舞台をわざわざ用意してやっただけのこと……」

アザーラ「玉座の間は、このブラックティラノには少々狭すぎるのでな!」



Bティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

エイラ「でかい!」

ほむら「ティラノサウルス!? ウソでしょ……」

マミ「やるしかないわよ。覚悟を決めて、エイラ! 暁美さん!」

アザーラ「……」

エイラ「アザーラ! 空見る、必要ない! エイラたち、こっち!」

アザーラ「赤い星め……ふるがいい」

マミ「星? 何のことよ!」

アザーラ「そして大地を赤く染めるがいい……」

ほむら(赤い星……? 確かに、空に赤く輝く星が見えるけど……あれが、なんだと言うのかしら)


アザーラ「たとえ、我々がほろぶ運命だとしても……」

アザーラ「サルどもなぞに……道をゆずるわけにはいかぬのだ!」



アザーラ「来い、サルども! ブラックティラノと私が、永遠に歴史から消し去ってやるわ!!」

♪ボスバトル2


Bティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

マミ「くうっ!?」

エイラ「うるさい!」

ほむら「間近でこの咆哮……! 耳がおかしくなるわ!」


アザーラ「ひるんだな! 隙だらけだぞ、サルども……。『サイコキネシス』!!」

マミ「うあっ!?」

エイラ「マミ!」

マミ「か、体が動かない……!」

ほむら「あいつ、超能力を使えたの!?」

アザーラ「この場所にわざわざおびき寄せたのは、もうひとつ理由がある……」

アザーラ「狭い足場! 貴様らサルどもにくれてやる大地など、この足場程度がお似合いだ!」

ほむら「まさか! マミをこのまま、崖下に投げ飛ばす気!?」

アザーラ「ふふふ……。サルにしては頭が回るではないか……」


アザーラ「はあッ!」

マミ「ああ……っ!?」

エイラ「マミーーーッ!?」

アザーラ「フハハハハ! あっけないものだな」

ほむら「マミの姿が見えない……!」

アザーラ「ヤツは地面に叩きつけられて、肉片を撒き散らしているだろうよ」

ほむら「そんな……!」


エイラ「……」

アザーラ「悲しむことはない。貴様らもすぐ肉塊にしてやる。あの牛女のようにな……」

エイラ「あの牛女のように……? ……マミのことか……?」

ほむら「エイラ?」


エイラ「マミのことかーーーーッ!!」

アザーラ「馬鹿な、金髪になっただと!? 穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めたのか!」

ほむら「金髪はもとからでしょ」

エイラ「アザーラ、許さない! 『まるまじろキック』!!」

アザーラ「ぬるいわ! 無駄だと言うのが分からんのか! 『サイコキネシス』!!」

エイラ「ぎっ!?」

アザーラ「地面とキスするがいい! さらばだ、ボス猿めがッ!」

ほむら「エイラ!」



「『ティロ・ドッピエッタ』!!」

ガガァン!!

アザーラ「ぐ!? な……! なんだ!?」


エイラ「マミ!」

マミ「YES,I AM! チッチッ♪」

ほむら「無事だったの?」

マミ「あの程度でやられはしないわよ」

アザーラ「そんな馬鹿な! 貴様は確かに崖下に落ちたはず!」

マミ「ふふ……。アザーラ、周りを見てみなさい!」


アザーラ「こ、これは! 紐がこの廊下と城壁のあいだに無数に張り巡らされている!?」

マミ「私の魔法はリボンの魔法……。足場を作らさせてもらったわ!」

ほむら「そうか、これ……『委員長の魔女』と戦った時にも使った……」

アザーラ「こしゃくな……。焼き払え、ブラックティラノ! 『火炎放射』だ!!」

Bティラノ「ゴアアオオオオオオォォォォォン!!!」

エイラ「燃えた! ヒモ、燃えた!」

マミ「無駄よ! 何度でも作り直してあげるわ!」


アザーラ「ちいっ……。口惜しいが、直接貴様らを投げ飛ばすのは無理なようだな……」

ほむら「その超能力はもう使えないわね。ざまぁみろだわ!」

アザーラ「くっくっく……使えないだと? 勘違いしてもらっては困るな……」

マミ「え?」


アザーラ「『サイコキネシス』にはこういう使い方もある。見るがいい!」

エイラ「岩! アザーラ、周り、岩! いっぱい!」

ほむら「地上から超能力で引き寄せたの!?」

アザーラ「死ね、サルども! この岩石の下敷きになってしまえーッ!!」

ほむら「飛んでくる! ふたりとも、よけて!」

エイラ「必要ない。任せろ!」

マミ「エイラ!?」


エイラ「だらっしゃあーッ!!」

アザーラ「岩を受け止めただと!?」

エイラ「こんなもん要らん。アザーラ、返す! 『がんせきなげ』!!」

Bティラノ「ギャオ!?」

アザーラ「くっ、ブラックティラノが!」


ほむら「あの巨体じゃ、どこかしらに当たるわよね」

マミ「ナイスよ、エイラ! まだまだあるわ。全部ノシつけて返しちゃいなさい!」

エイラ「おっしゃ!」

アザーラ「お、おのれ……!」

ほむら「配下ばかり痛めつけるのはフェアじゃないわね。あなたも、高みの見物は飽きたでしょう?」

アザーラ「!? 貴様、いつの間にこんな近くに!」

ほむら「視界の外から近づかせてもらったわ。『ヘイスト』と『リボンの足場』を使ってね」

ほむら「うかつだったわね。岩の弾幕にばかり気を取られているからよ」

アザーラ「ちいっ!」

ほむら「この至近距離なら! 食らえ、『レミントンM870』!!」


アザーラ「『瞬間移動』!!」

ほむら「なっ!?」

アザーラ「侮っていたよ……。そういえば貴様は、サルの中でも知恵に長けていたのであったな」

マミ「短距離とはいえ瞬間移動……。あなた、ヤードラット星人か何かなの!?」


アザーラ「残念だったな。貴様の奇襲は外れた……」

アザーラ「不幸なことに、その弾丸はブラックティラノに命中したが……見ろ」

Bティラノ「ギャギャギャギャ!」

ほむら「わ、笑ってるの? こいつ……」

アザーラ「そのような豆粒、虫刺され程度にしか感じぬと言っておるわ。フハハハ!」


ほむら「……あら、そう? 忠告するわ。虫だって怖いのよ」

アザーラ「なに?」

ほむら「目に入ったら痛いでしょう! 『89式小銃』!!」

Bティラノ「ギャオオオオオ!!!」

アザーラ「しまった! 貴様……ブラックティラノの目を!」

ほむら「デカいヤツは目が弱点。王道よね」

アザーラ「くそっ! 振り落とせ、ブラックティラノ!」

ほむら「おっと危ない。揺れる足場はあまり気持ちのいいものではないわね」

アザーラ「この……サルが……チョコマカと……!」


マミ「やるじゃない、暁美さん!」

エイラ「ほむ、よくやった!」

ほむら「まあ、ザッとこんなもんよ」

アザーラ「……」

アザーラ「どうやら我々も本気にならざるを得ないようだ……」

ほむら「強がりを……。なら、準備運動だけで終わらせてあげるわ」

アザーラ「くくく……。虚勢を張っているのはどちらかな?」



アザーラ「ブラックティラノ……お前の真の力を見せる時が来たぞ! ゆけ!」

Bティラノ「グオオオオオオオオオオオ!!!」

>防御をといて、力をためている!


エイラ「アイツ、様子、変!」

マミ「いかにも強力な攻撃をしますって感じね!」

アザーラ「『5』!!」

Bティラノ「オオオオオオオ...!!!」

アザーラ「『4』……!!」


マミ「カウントダウン!?」

ほむら「なめられたものね。そんな見え見えの攻撃、やらせると思っているの!」

エイラ「エイラ、お前ら、止める!」

ほむら「ブラックティラノに総攻撃するわよ! 奥の手なんて見せてもらう必要はないわ!」


アザーラ「邪魔してもらっては困るなァーッ!!」

ほむら「!」

アザーラ「そこでおとなしくしていろッ! 『ブラックアウト』!!」

マミ「え!?」

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アザーラ「フハハハハハハハ!!!」

マミ「なに、今の!?」

エイラ「画面真っ暗!」

ほむら「リモコンのボタンを誤って押したのかと思ったわ……」


アザーラ「さて……。どうやらブラックティラノの準備は完了したようだな……」

マミ「あ! し、しまった……!」

アザーラ「なぎ払えッ!! 『ティラノ火炎』!!」

Bティラノ「ゴバアアアアアアアアアアアオオオオオオォォォォォォォォ!!!」

ほむら「うあっ!?」

マミ「きゃあああっ!!」

エイラ「ういいいいいっ!!」


アザーラ「ハッハッハ! 見たか、これが我らの力だ!」

ほむら「く、くそ……!」

エイラ「まだ、まだ……!」

マミ「だ、大丈夫……? ふたりとも……」

アザーラ「存外にしぶとい……。だが無駄な足掻きだ、今楽にしてやる……」

アザーラ「まずはその目障りな足場を管理している牛女からにしようか……」

マミ「!」


Bティラノ「ギャギャギャギャ!」

アザーラ「そうだな、お前の言うとおりだ。ヤツら、こんがり焼けてうまそうではないか」

アザーラ「腹がすいたのか、ブラックティラノ? んん? そうなんだろう?」

Bティラノ「ウオオウ! ウオッ! ウオッ!」

アザーラ「そうか、そうか……。そうだろうな……ふふふ……」



アザーラ「今日の食事は牛女の丸焼きだッ! 食ってしまえ、ブラックティラノ!!」

Bティラノ「グバアアアア!!!」

マミ「あ」


バクン!!!

                ヽ∠ゝ、___,|||、___ノニ/

                   l_l }:l::⊂|||⊃:::l:{ l_l
                   l´  l l:l:::::::|||::::::::l:l |  `l
                   |   V/::⊂|||⊃:::';V   |
                    /   //:::::::::|||::::::::::';ヽ  ',
                 {  / ヽ::::⊂|||⊃::::/\  }
                レ'    >‐--‐<   \l
               /    / l    l  \    \
                   ヾ、、  /  |   |    ヽ  ‖
                   ゙ゞ=ソミミ彡|   |彡三ミ三彡
                 ',     ミ三三彡   ,'
                  }     l   l     {
                      |_____|:  |_____l
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                  {///////  ∨/////}
                       l//////    ∨////l
                       |/////l      l/////|
                  |/////|     l ////.|
                  |/////|:      | ////l
                       }/////|.      l.////.l
                      l/////l      l ////l
                  l.////l      l ////l
                  ll∨¨ ',l     } ̄∨ l
                    l    l    /    /
                  ',     ',   {    /
                    ヽ    }   `ー´
                    ゝ - '

ほむら「マミーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」

アザーラ「フハハハハ! ハアーッハッハッハ! フラグ回収!!」

ほむら「馬鹿……マミ……『もう何も怖くない』とか言うから……」

アザーラ「どうだ、ブラックティラノ。牛女は美味いだろう? ふふふ……」

Bティラノ「……?」


アザーラ「ん? どうした、何か歯に挟まったのか?」

アザーラ「あの女……やわらかそうな体に見えたが、実は筋肉質だったのか?」

Bティラノ「オゴ...? アガガ、ギャアガ...???」

アザーラ「おい! いったいどうしたというのだ、ブラックティラノ!? ただごとではないぞ!」

ほむら「え……?」

エイラ「ふんぬぎぎぎぎぎ……ッ!!!」

Bティラノ「アガガガガガガガ!!!」


ほむら「エイラ!? 口をこじ開けてる!」

アザーラ「なあッ!? ボス猿……! 貴様、いつの間にブラックティラノの口内に!?」

エイラ「……まぁ……みいぃいいぃ……!!」



マミ「……ほんと……あなたがいてくれて良かったわ……!」

ほむら「マミ! マミられてなかったのね!!」

アザーラ「ば、馬鹿な!?」

マミ「『ティロ・フィナーレ』えええーッ!!」

ズガガァン!!!


Bティラノ「ギャバアアアアアアアアア!!!」

アザーラ「こっ、口内に砲撃を!?」

ほむら「やった! あれは効いたわよ!」



エイラ「ぷはあっ! マミ、無事か!」

マミ「死んだかと思ったわ……。ありがとう、エイラ!」

Bティラノ「ギャオオ...! グギャアアオオン...!」

ほむら「マミの『ティロ・フィナーレ』でヤツはもだえている! 今が好機よ!」

エイラ「ぶっ飛ばあーすッ!!」

アザーラ(ま、まずい! ブラックティラノが回復するまでの時間を稼がなければ!)


アザーラ「待て、サルども!」

マミ「待つわけないでしょう!」

アザーラ「ふ、ふふ……。そんな単純に突撃してきてもいいのかな……?」

ほむら「ハッタリは通じないわよ!」

アザーラ「くく……。私には、貴様らの行動が手にとるように分かるのだと言ったら、どうする?」

エイラ「ウソつけ!」

アザーラ「ウソではない……。私はテレパシー能力で貴様らと同調し、その思考を読み取れるのだ!」

ほむら「なんですって……!?」

アザーラ「貴様の性格を当ててやろう……。いや、貴様の過去というべきかな?」

マミ「過去……?」

アザーラ「ふーむ……」


アザーラ「セーブを怠っているようだな? ここまで3回しか記録していない。大胆なようだな……」

アザーラ「それと、ときメモが好きなようだな」

ほむら「……」

エイラ「なんのことだ?」

マミ「私にも分からないわ……」

アザーラ「まだ信じないのか。仕方あるまい……。では、個別に見ていくとしよう」

アザーラ「まずは牛女……貴様だ」

マミ「私?」

アザーラ「ふーむ……」


アザーラ「見えたぞ……。『エイラ』、か……」

エイラ「呼んだか?」

マミ「エイラがなんだと言うのよ!」

アザーラ「いや、ボス猿のことではない……。影の羅刹と書いてエイラ……」

マミ「!!!」

アザーラ「ほう、なるほど……。影羅(エイラ)は牛女の第2人格らしい……」

エイラ「は?」

アザーラ「その人格が主のもとを離れ、魔眼の力によって形をなした……」

ほむら「ええ?」


アザーラ「惑星(ほし)の『選択』によりふたりは出会い……意気投合する……」

アザーラ「もとが同じ生命体……。影羅(エイラ)は牛女を決して裏切らず、常に傍らに立つ存在……」

アザーラ「自らの闇の人格と思っていた牛女は、最初は影羅(エイラ)をこころよく思わなかったが……」

アザーラ「彼女の妖しくも魅力的なその心に惹かれ、次第にふたりは……」



マミ「やめてえええええええええええええ!!!!!」ゴロゴロゴロ!!

エイラ「マミ、どした! なぜ転がる!」

マミ「ちがうのぅ……わたし、そんなふうにあなたをみてたわけじゃあ……」

エイラ「意味わからん!」


アザーラ「フハハハハ! 隠すことはない。最近はずいぶんと、はかどっているようではないか!」

アザーラ「『影羅(エイラ)、私はあなたを殺さなくちゃならない……』」

アザーラ「『いいよ、マミになら……。大好きなあなたになら……』」

アザーラ「ふたりは涙を流しながら幸せなキスをして……」

マミ「いやあああ!! いやああああああああッ!!!」


ほむら「……マミ……」

マミ「お願い……穢れた私を見ないで……」

アザーラ「これで牛女は戦闘不能だな! フハハハハッ!!」

ほむら「こ、この……! 卑怯よ、精神攻撃だなんて!」

アザーラ「なんとでも言え。これが私の戦法だ」


マミ「ごめん、ごめんね……エイラ……ごめんなさい……」

エイラ「なぜ謝る! マミ、悪いこと、ない!」


アザーラ「さーて。ではお次は……貴様だ、新顔」

ほむら「! ……ふ、ふん。私にやましいところなんて何もないわよ」

アザーラ「それはどうかな? ふーむ……」

アザーラ「おっと、これは……くふ……くくく……」

ほむら「な、何よ!」

アザーラ「ふふふ……。貴様、なかなか可愛いところがあるではないか」

エイラ「アザーラ、様子、ヘン」


アザーラ「これは……えー……『アケミホムラ』か……」

ほむら「はっ、何かと思えば。ええ、そうよ。私の名前は暁美……」

アザーラ「アケミホムラ……演出ノート……No.12……」

ほむら「!!!」

アザーラ「貴様は夜な夜な考えているのだろう? いかに登場場面を格好良く見せるか……」

ほむら「なっなななな何を言っているの!」


アザーラ「どの方角から出てきて……どちらにはけるか……。その際に発する一言……」

アザーラ「クール、かつミステリアスに。そして強い印象を残すにはどうすればいいか……」

アザーラ「毎日2時間、鏡の前で練習しているな? ……おお、どうやらこの赤文字は強調の意味らしいな」

アザーラ「『それには及ばないわ←採用! 余裕を見せるように髪をかきあげるしぐさを忘れずに』……」



ほむら「ホワアアアアアアアアアーーーッ!!!!!」ゴロゴロゴロ!!

エイラ「ほむも転がりだした!」

ほむら「違う! 違うわ! 私はそんなことしてない!」

ほむら「これはインキュベーターの陰謀よ! まどかァーッ! そいつの言葉に耳を貸しちゃダメぇ!!」

エイラ「さらに意味わからん!」



アザーラ「ハアーッハッハッハ! これで残ったのは貴様だけだな!」

エイラ「うぎ……。マミ、ほむ、立て! なにやってる!」


マミ「エーイラちゃん……あそびましょ……」

ほむら「……愛ゆえに……人は苦しまねばならぬ……」

エイラ「だめだこりゃ」

アザーラ「仕上げといこうか。ボス猿……最後は貴様の心の闇を暴いてやる!」

アザーラ「ふーむ……」

エイラ「……」

アザーラ「……ん……? な……!? こ、これは!」

エイラ「なんか見えたか、アザーラ」


アザーラ「き、き、き……貴様!! ひいっ……! イ、イヤ!」

エイラ「??? どした?」

マミ「あら……? アザーラの様子がおかしいわね」

ほむら「いったいエイラの何を見たのかしら……」

アザーラ「こ、ここここの破廉恥が! 信じられん!!」

ほむら「ちょっと、なにごと? ずいぶんと動揺しているじゃない」

アザーラ「あ、当たり前であろう! この女の心にあるのは牛女……」

マミ「私?」

アザーラ「牛女と……」


アザーラ「みだらなことをしたいと思っている!!」

マミ「え……」

ほむら「……具体的には?」

アザーラ「ぐ、具体的……! 言えるか、ばか者!」

エイラ「それ、いけないことか?」

アザーラ「なんだと!?」

エイラ「エイラ、マミ、好き。好き、つまり、にゃんにゃんしたい」

アザーラ「ふ、ふざけるな! そのような即物的思考! だから貴様はサルだというのだ!」

アザーラ「恋愛というのは、もっとこう……美しく、陽だまりのようにぽかぽかするもので……」


マミ「ちょっとエイラ……。どういう空想をしたのよ?」

エイラ「ん? そーだな。たとえば……」

アザーラ「やめろおおおおおっ!!! 聞きたくなあああいッ!!!」ゴロゴロゴロ!!

ほむら「エイラじゃなくて、アザーラが転がりだしたわ」

エイラ「お? なんか落ちた」

アザーラ「! そ、それは! くっ、拾わせるか!」

マミ「『レガーレ』!!」

アザーラ「あっ!」


マミ「リボンで回収したわ。ノートみたいね」

ほむら「もしかして、私たちに対抗するための秘策がここに?」

マミ「なるほど、作戦ノートというわけ! 残念だったわね、アザーラ!」

ほむら「これを見ればあいつの手の内が明らかに……よし!」

アザーラ「ち、ちがっ……あああああッ!!」

マミ「えーっと……。なになに……?」

ああ わたしたちはみな
眼をあけたまま
空を飛ぶ夢を見てるんだ

軋む軋む 浄罪の塔
光のごとくに 世界を貫く
揺れる揺れる 背骨の塔
堕ちてゆくのは わたしか空か

わたしたちは ひかれあう
水滴のように 惑星のように
わたしたちは 反発しあう
磁石のように 肌の色のように

そう、わたしたちに運命などない
無知と恐怖にのまれ
足を踏み外したものたちだけが
運命と呼ばれる濁流の中へと
堕ちてゆくのだ

この世界に意味などなく
そこに生きるわたしたちにも意味などない
無意味なわたしは世界を想う
そこに意味は無いと知ることにすら
意味など無いというのに

たとえば この 大地のすべてが
水に沈んでしまうとしても

たとえば この 空のすべてが
わたしを光で射抜くとしても

失くしたものを
奪い取る
血と肉と骨と
あとひとつ

わたしの心に 指を入れないで

そう、何ものも わたしの世界を 変えられはしない

ほむら「……」

マミ「……」

エイラ「長い! 今北産業!」

ほむら「アザーラ
     まさかの
     ポエム集」

エイラ「把握!」


ほむら「アザーラ、あなた……こんな趣味が……」

アザーラ「……」

マミ「いえ、待って暁美さん。この詩、よく読めば結構……いえ、かなりすばらしいと思わない?」

ほむら「はい?」

マミ「アザーラはこの詩の中で、自らの無力とこの世のはかなさを詠っているわ……」

ほむら(マミの変なスイッチが入ってしまった)


アザーラ「……理解できるのか……サルである貴様に……」

マミ「あなたをここまで絶望させたものは、一体なに? この『空』は何を意味しているの?」

アザーラ「……じきに分かる……。そう……それはすぐそこまで来ているのだから……」


マミ「アザーラ。あなたは絶望の中で、なお、自らの生き方を通すと叫んでいる……」

マミ「その身が焼かれる時まで。なんて悲しく、そして勇気を与えてくれる文章なのかしら……」

アザーラ「……」

Bティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

エイラ「! ブラックティラノ、復活!?」

ほむら「まずいわ! グダグダやってるうちに回復されてしまった!」


アザーラ「ブラックティラノ……」

Bティラノ「ギャオ! ギャオオオン!!」

アザーラ「そうだな……。生き物はみな、心に闇を持つ……。それは我々もサルどもと変わらん……」

マミ「私、この詩を通してあなたの想いに触れられた。ねえ、アザーラ。私たちは……」

アザーラ「それ以上言うな」

マミ「!」

アザーラ「生き残るべき種は、ひとつでしかない。たとえお前が、私に共感を寄せたのだとしても」

マミ「でも! アザーラ……!」

アザーラ「牛女……。いや、マミ。お前とは、もっと別のかたちで会いたかったよ……」

アザーラ「だがもはや、遅すぎたのだ!」


アザーラ「ことここに至っては、すべてを天にゆだねようではないか……!」

アザーラ「これが最後だ! 選ばれるのは、我ら恐竜人か、貴様たちサルどもか!」

エイラ「アザーラ! ケリ、つける!!」

アザーラ「我らのすべてをこの一撃にかけよ! 『ティラノ火炎』だ!!」

Bティラノ「グオオオオオオオオオオオ!!!」

>防御をといて、力をためている!


ほむら「またあの火炎攻撃か!」

エイラ「やらせない! マミ!」

マミ「……。分かったわ、エイラ!」

アザーラ「サルどもが飛び上がった!?」

エイラ「お姉さま、アレを使うわ」

マミ「えぇ、よくってよ」

エイラ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


エイラ「『まるまじろキック』!!」

マミ「『黄金の美脚』!! 私たちの蹴りが……天を、うがつ!!」



エイラ「スーパー!」

マミ「イナヅマ!」


エイラ&マミ「キィィィィィィィィック!!!」

Bティラノ「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

アザーラ「ぐあああああっ!?」

ほむら「やった! 『れんけいわざ』が完璧に決まったわ!」


Bティラノ「グオオオオオ...!!」

アザーラ「ブラックティラノ……!」

ほむら「落ちていく……! あの巨体が、この空中廊下から……」

マミ「私たちの勝ちよ、アザーラ……」

アザーラ「う、うう……! 天は……お前たち、サルどもを選んだというのか……!」

エイラ「アザーラ! もう充分!」


アザーラ「……サルどもよ、聞け。そして伝えよ」

アザーラ「我ら恐竜人は、運命に戦いを挑み、誇り高く滅びたと……!」

エイラ「……アザーラ……。分かった、伝える。エイラたち、恐竜人、忘れない!」

ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!

マミ「きゃっ!? なに、この地響きは!?」

ほむら「赤い星が……!?」

アザーラ「はじめに、炎をまとった大岩がふってくる……」

ほむら「え……!?」


アザーラ「灼熱の火球は、万物を焼き尽くす……」

アザーラ「焼き尽くされた大地は、やがて冷え始め、すべてが凍りつく長く厳しい時代が来る……」

ほむら(隕石の衝突による恐竜の絶滅……)

エイラ「ラヴォス……」

ほむら「!? どういうこと、エイラ!」

エイラ「エイラたちの言葉。『ラ』、火のこと。『ヴォス』、大きいこと……」

ほむら(あの赤い星が……隕石とされてきたものが、ラヴォス!?)


マミ「暁美さん、まずいわ! あの隕石、こっちに向かって降ってくる!!」

キーノ「エイラーッ!!」


ほむら「キーノ!」

マミ「プテランに乗ってきてくれたのね! みんな、早くプテランに!」

キーノ「いそげ! ラヴォス、降りてくる! 脱出する!」

ほむら「逃げるが勝ちね!」

アザーラ「フフ、我らが時代に……ふさわしい幕引きだ……! フハハハハハ……!!」

エイラ「……」

マミ「エイラ! 何してるの!? 早く!!」

エイラ「……アザーラ……」



エイラ「来い! アザーラ! 来い!!」

マミ「! エイラ……」

エイラ「アザーラ! プテラン、乗る!」

アザーラ「駄目だ! これは、大地が決めたことだ!」

エイラ「……!」


アザーラ「助けなど要らぬ! 生き恥などさらさぬ!」

アザーラ「大地のおきてと私の運命を変えることは、誰にも許さん!」

アザーラ「それが……それこそが、我ら恐竜人の誇り!!」

エイラ「……」

キーノ「エイラ、早く! 時間、ない!!」



エイラ「……アザーラ……。忘れないっ……!」


アザーラ「……未来……」

エイラ「未来? 未来がどうした!」



「……未来……を……」


…………





キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!



…………

………

……


B.C.65000000 ティラン城跡


ほむら「衝撃ですべてが焼け野原、か。恐ろしいものね……」

さやか「いやービックリしたよ。いきなり隕石が降ってくるんだもん」

さやか「おまけにここまで来るのにプテラノドン、だし。人生に二度とはない体験だったわー」

カエル「ノンキなもんだな。ラヴォスの落下位置が少しでもズレていたら、今ごろ俺たちはあの世だぞ」

さやか「へへ。師匠ってば、大慌てでゲロゲロ言ってたもんね」

カエル「ゲ、ゲロゲロなど言っていない!」


マミ「でも、美樹さんたちが無事で良かったわ。ラルバの人たちもイオカ村に避難したんですってね?」

キーノ「イオカ、人、増えた。これから忙しくなる!」

ほむら「……で、どう?エイラ」

エイラ「ラヴォス……すごく、速い! 大地の奥、深く、もぐってる」

カエル「『太古の時より地中深く存在し』……か」

さやか「ラヴォスが地球外生命体とはね〜。なんかぶっ飛びすぎてて、実感わかないや」


マミ「このゲート、どこにつながってるのかしら?」

カエル「爆心地にできたゲートか……。もしかしたら……」

ほむら「ええ。ラヴォス本体につながっている可能性も考えられるわね」

ほむら「ゲートの発生は、ラヴォスの力のせいなのかしら? ここだけじゃなく、すべてのゲートも……」

カエル「そうかもしれないな。魔王城の時は、バカみたいにデカかった」


さやか「なんにしてもさ。ここ、入るしかないんでしょ?」

ほむら「そうね。でも、いったん時の最果てに戻りましょう」

ほむら「残ってるみんなに話をして、準備しなきゃ。決戦の可能性が高いなら、なおさらね」

ほむら「マミ、今度はついてきてくれるのよね?」

エイラ「! ……」

マミ「……ええ、そうね。私、言ったものね。恐竜人との戦いが終わったら……って」

さやか「やった! マミさんがいれば百人力っすよ!」

カエル「あんた、かなりの手だれらしいな。頼りにさせてもらうぜ」

マミ「そんな、私なんて……」

さやか「うーん。師匠とマミさん、どっちが強いかなあ」

カエル(最近さやかの俺に対する敬意がゴリゴリ下がっていっている気がするが……なぜだ)

キーノ「マミ。やっぱり行くか」

マミ「ごめんね。エイラ、キーノくん。こればっかりは……」

エイラ「分かってる。エイラ、言った。巣立つ時、送り出す」

エイラ「エイラ、さみしい。でも、笑う。マミ、がんばれ!」

マミ「……うん……」

ほむら「マミ、不思議山のゲートの場所は分かる?」

マミ「え? ええ、あそこは何度か探索したことがあるから……」

ほむら「そう。ならいいわ。私たちは先に行くから、あなたは一晩、イオカで休んでから来なさい」

マミ「え、でも……」

ほむら「……別れの時間は必要でしょう?」

マミ「暁美さん……ありがとう……」


キーノ「みんな、またいつでも来い! イオカ、ラルバ、みな歓迎する!」


…………


B.C.65000000 不思議山

翌日 早朝


マミ「ここ、よね? 崖下にゲートが見えるし、間違いないはずだけど……」

マミ(これって飛び降りろってことよね。まさかとは思うけど、そのまま落下なんてことは……)

マミ(……暁美さんたち、よくこんなの平気でいけるなあ)

マミ「……」


マミ(ごめんね、エイラ。最後の最後で何も言わず出てきちゃって……)

マミ(でもダメなの。ちゃんとお別れしたら、きっと帰りたくなくなっちゃう)

マミ(弱いんだ、私。だから……ごめん……)



マミ「今までお世話になりました。ありがとう。……さようなら……」

「……マミー……ッ!」

マミ「……」


マミ(いやだわ、幻聴が聞こえるなんて。私ったら、そんなに未練がましいのね)

マミ(もう行きましょう。何も考えず、ここから足を踏み出せば……)

マミ「いくわよ、巴マミ! いち……にの……!」



エイラ「マミ! 待て! マミ!!!」

マミ「さ……! え、ええ!?」

エイラ「マミ! 落ちる! つかまれ!」

マミ「え、エイラ!? うそ、どうして!?」


エイラ「マミ、死ぬ気か? ほむたち、合流、しないか?」

マミ「いえ、ゲートに入るには飛び降りなきゃ……って、そうじゃないわよ! エイラ、なぜここに!?」

エイラ「エイラ、マミ、いっしょ行く!」

マミ「なんで……だって、あなたはイオカ村の酋長で……」

エイラ「酋長、キーノ! エイラ、引退!」

マミ「はぁ!?」

エイラ「キーノ、言った。『エイラ、追いかける。マミ、いっしょ行け!』」

エイラ『イオカ、ラルバ、キーノ面倒みる! エイラ、マミ、いっしょ。一番!』」

マミ「キーノくん……」


エイラ「エイラ、マミ、好き。だから助ける。間違ってるか?」

マミ「……」

エイラ「ひとり、辛い。でもふたり。できる! みんないっしょ、だいじょぶ!」

エイラ「エイラ、ぼっちじゃない。もう何も怖くない!」

マミ「それ……私の、セリフじゃない……。取らないでよ、もう……」

エイラ「マミ、なぜ泣く? どこか痛いか?」

マミ「違う……違うのよ……」


マミ「参ったなぁ。まだまだちゃんとカッコつけてなきゃいけないのになぁ……。やっぱり私ダメな子だ」

エイラ「マミ、ダメ、違う!」

マミ「ふふ……そうね。あなたとなら私、きっとがんばれるわ……」

エイラ「エイラ、マミ、ふたり、無敵! ラヴォス、負けない!」



マミ「ありがとう、エイラ……。これからも、私のそばにいてください」


第4話「もう何も怖くない」 終了


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今回はここまでです。それでは、また明日。

第5話「もう誰にも頼らない」


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年代不明 時の最果て


カエル「たまげたな。からくり人形が動いてしゃべるとは」

ロボ「ロボでス。カエルさんの話、ルッカから聞いてマス。トテモ勇敢な戦士だトカ」

ルッカ「ふふん、ロボだって強いんだから。負けてないわよ」

カエル「なぜお前が威張るんだ……」


エイラ「お前、エイラ、似てる。イオカ族か?」

マール「違うよ〜。でもほんと、なんだか他人の気がしないっていうか……不思議だね」

マミ「もしかして、血のつながりがあるんですかね?」

さやか「マミさんも実はふたりの子孫だったりして! 金髪だし巨乳だし!」

マール「私は、ふたりほどおっきくないけどね〜」

ほむら「ずいぶん大所帯になったものね……」

老人「ホッホッホ。ここがこんなににぎやかなのは、初めてじゃわい」


クロノ「僕はクロノ! ツンツン頭がトレードマークの、日本刀使いです!」

ほむら「きゅ、急にどうしたのよ……」

クロノ「いやあ、久しぶりの出番だろ? 忘れられてやしないかと思って、改めて自己紹介をさ」

ほむら(クロノが壊れた……)

ほむら「はいはい、みんな。おしゃべりはそこまでにして」

さやか「ほむら、お母さんみたい」

ルッカ「せめて先生にしてあげなさいよ」

ほむら「……あなたたちがまとまりないから、仕方なくやってるのよ」

クロノ「ほむらはリーダー適任だな!」

ほむら「あの、えっと……ごめんなさい」

クロノ「なんで謝るんだよ?」

ほむら「ゴホン。とにかく、これまでのいきさつはみんな把握してくれたわね?」

マール「いよいよラヴォスとの対決かあー。なんか、ドキドキしちゃうね」

カエル「まだそう決まったわけじゃないけどな」


マミ「それで暁美さん。あのゲートには誰が入るの? 3人までなんでしょ?」

エイラ「エイラ、あばれる! 連れてけ!」

ほむら「そうねえ……って、私が選ぶ流れになってるけど?」

ロボ「ほむらはリーダーですカラ、その権利がありマス」

ルッカ「ルッカちゃんの出番ね!」

さやか「いやいや、ここはさやかちゃんっすよ!」

ほむら「このふたりは論外として……」

さやルッカ「「なんで!?」」


ほむら「……」チラッ

クロノ「?」

B.C.65000000 ティラン城跡


クロノ「僕で良かったのかい? 他に行きたい人、いっぱいいたと思うけど」

ほむら「いえ、いいのよ。クロノ、それにマールも。頼むわね」

マール「うーん! 腕が鳴るね!」

クロノ「勘が鈍ってるかもしれないのが心配だな。刀を握るのも久々だし」


ほむら「時の最果てでは何をして過ごしていたの?」

クロノ「モノマネゲームさ! もとは、現代のリーネ広場のお祭りでの催し物なんだ」

クロノ「管理人さんと対戦してたんだけど、これが意外に手ごわくてね。つい白熱しちゃって」

クロノ「いま、48勝48敗なんだぜ! 次の一戦が天王山なんだ!」

ほむら「……あの……私、これからはもう少しクロノのこと気にかけるわ……」

クロノ「なんだよ突然?」

ほむら「だから、そんなキラキラした少年のような目でこっちを見ないで……」

ほむら「あ、マール……あなたは……」

マール「クロノと管理人さんの対戦を見てた! 面白かったよ!」

ほむら「あ、そうなの……。えーと、放置してたことについては……」

マール「うーん。私は、クロノと一緒にいられればそれでいいかな? って」

ほむら(こいつら、いつの間にフラグを!?)


クロノ「長話もなんだし、そろそろ行こうぜ!」

B.C.12000 小さな洞窟


ほむら「ここは……」

マール「洞窟かな?」

クロノ「あっちに出口があるみたいだぞ」


…………


ほむら「さささささせがわささみ! じゃなくて寒い!!!」

マール「吹雪で何も見えないよ〜。クロノ〜ほむらちゃ〜ん……いるよねー!?」

クロノ「手を離すなよふたりとも!」

B.C.12000 天への道


ほむら「死ぬかと思ったわ……」

クロノ「洞窟を出た途端、猛吹雪だもんな。どの時代だろ、ここは?」

ほむら「こんなところでラヴォスと戦いたくはないわね……」


マール「この建物、なんだろうね? ずいぶん近代的なつくりみたいだけど」

ほむら「雪をしのげればなんでもいいわ」

クロノ「おーい、ふたりとも! こっち来てみなよ!」



マール「なになに、どうしたの?」

ほむら「これは……魔方陣?」

クロノ「あやしいよな?」

ほむら「見たこともない図式だわ……。ルッカかロボなら分かるのかしら……」

マール「不思議だね。どうやって描かれてるんだろ……きゃっ!?」

クロノ「大丈夫か? 足元気をつけろよ」

マール「えへへ、こけちゃった……あれ?」キイイイイイン...


マール「な、なにこれ! 体が浮いて……きゃあああああっ!」

クロノ「マール!!」

ほむら「うそ……空に向かって飛んでいったわ……」

クロノ「ほむら! 行こう!」

B.C.12000 浮遊大陸


ほむら「……」

クロノ「なんだこれ……」

マール「すっ……ごおおおおお〜い!!! 陸地が空に浮いてる!」



♪時の回廊


ほむら「あの魔方陣は、地上とここをつなぐ転送装置だったのね……」

クロノ「なんか、天国に来た気分だよ」

マール「あっちに町があるよ! 行ってみよ!」

ほむら「ご機嫌ね、マールは」

クロノ「女の子だからな。夜景とか好きだろ、ほむらも」

ほむら「さあ、どうだったかしら……。少なくとも、この景色は嫌いではないわ」


マール「ふたりとも何してるの〜! 早く早く!」

ほむら「はいはい、せかさないで」

B.C.12000 エンハーサ


マール「みてみてクロノ! 本から炎が! あ! あっちは噴水だ!」

クロノ「なんというか、まあ……驚きすぎて言葉も出ないよ」


魔法生物?「ここは永遠なる魔法王国ジール。すべての望みのかなう場所さ」

魔法生物?「だけど、その代償がどのくらい高くつくかは知らないけれどね……」

ほむら「……」


光の民「この国をみちびくのは女王ジール様。この世にふたりといない、美しく偉大なお方です」

マール「女王さまか〜。こんなきれいな国の王さまなんだもの、会ってみたいよね!」

クロノ「そうだな……ん?」

少年「……」

マール「どうしたの、ボク? 迷子かな?」

少年「……黒い風が泣いてる……」

ほむら「!」


少年「あなたたちのうち、誰かひとり……死ぬよ、もうすぐ……」

クロノ「え!?」

マール「な、なに言ってるの……? クロノ……この子、なんだか気味悪いよ……」

ほむら(黒い風……どういうこと? この子、魔王と何か関係が……)



???「やれやれ。やっと見つけたよ」

少年「……!」

ほむら「え? ……な……!? え……っ!!!???」

QB「ジャキ。駄目じゃないか、あんまり遠くにいっちゃ」

ほむら「イ……インキュベーター……!!!」


QB「うん? その名称を知ってる君は、何者だい?」

ほむら(な、何故ここにこいつが……どういうこと!?)

QB「ふーむ。見たところ、魔法少女みたいだね。でもおかしいな、君とは契約した覚えがないんだけど」

ほむら(私のことを知らない? 別の個体なのかしら……)

ジャキ「何の用だよ、淫獣」

QB「『淫獣』はやめておくれよ。僕の名前はキュゥべえだ」

ほむら(やっぱりこいつ、キュゥべえじゃないの!)


ジャキ「どうでもいいよ。ボクのことはほっといてくれって言っただろ」

QB「そうはいかない。もうそろそろ宮殿に帰らなくちゃ」

QB「遅くなったら、ジールに叱られるのは僕なんだよ? それにサラも心配してるんじゃないかな?」

ジャキ「……分かったよ。ちぇっ……なんでこんなやつがアルファドの代わりなんだ……」

QB「死んでしまったペットのことを僕のせいにされてもなあ。あ、待ちなよ!」

ジャキ「ついてくんな!」

クロノ「行っちゃったな……」

マール「ほむらちゃん、大丈夫? さっきから顔色悪いよ?」


ほむら「……宮殿……宮殿に行きましょう」

クロノ「あの子を追いかけるのか?」

ほむら「あの子もそうだけれど……インキュベーターをあのままにしてはおけないわ」

マール「いんきゅ……なんとかって、さっきの白いウサギさんだか猫さんみたいな動物のこと?」

ほむら「! あいつが見えたの?」

クロノ「見えちゃまずかったのか?」

ほむら(あの少年にも見えていた……。なぜ? 彼らはインキュベーターが選んだ人間なの……?)

【レス抽出】
対象スレ:ほむら「時の卵?」
キーワード:まどか「

抽出レス数:6

しかもそのうち4レスは幻覚

ほむら「……こんなこと、突然言っても驚くだけだと思うけど……あいつは敵なの」

ほむら「放置してはおけない。お願い、私を信じて……」

クロノ「……分かった。何か事情があるんだな?」

マール「いつか聞かせてね。今は、追いかけよ!」

B.C.12000 ジール宮殿


マール「宮殿っていうから一般人は立ち入り禁止かと思ったけど、あっさり入れちゃったね」

ほむら「インキュベーターは!?」

クロノ「真っ白で目立つからな。きっとすぐに……おや? あれはさっきの少年……」


…………


マール「この扉の向こうの部屋に入っていったみたいだね」

ほむら「! ……扉が開いてる……待って、なにか聞こえるわ。話し声……?」

B.C.12000 ジール宮殿 おやすみの間


♪サラのテーマ


サラ「はい、できたわよ」

???「わあ、ポニーテールだ!」

サラ「いつものもかわいいけど、たまには他の髪型も似合うんじゃないかと思って」

???「サラちゃんに髪さわられるの、気持ちいいから、わたし好きだよ」

サラ「ふふっ、ありがとう」

???「そうだ! サラちゃんも髪型変えてみようよ! わたしのリボン貸してあげるから」

サラ「ええ? いいわよ、私は」

???「いいからいいから! ほら、座って。今度はわたしがやってあげる!」

サラ「もう、強引なんだから。わかったわ、じゃあお願いね……」



サラ「まどか」

ジャキ「あねう……えっ!?」

サラ「あら、ジャキ。おかえりなさい。……どうかしたの?」

ジャキ「姉上がまどか姉さまで、まどか姉さまが姉上に……」

まどか「??? なに言ってるの?」

サラ「きっと髪型のことよ」

まどか「あーそっか。ジャキくん、わたしのポニテとサラちゃんのツインポンポン、どっちが好み?」

ジャキ「ど、どっちでもいいよ……」

まどか「照れてる〜。ウェヒヒヒ! かわいいなあ!」

ジャキ「やめろよっ。はなせよっ」

まどか「……」

サラ「……まどか。タツヤくんのことを思い出していたの?」

まどか「え? ち、違うよ? ……あ、ごめんね。抱きついてたら暑苦しいよね」

ジャキ「……別に。まどか姉さまがこうしてたいなら、仕方ないからもうちょっとだけ我慢してやるよ」

まどか「え、でも……」

サラ「いいのよまどか。ジャキだって甘えたいのに、素直じゃないんだから」

ジャキ「そ、そんなんじゃないよ!」

サラ「……ごめんね。いつでも私がそばにいてあげられたらいいのだけれど。でも母様の計画が……」

ジャキ「あんなヤツ、母様じゃない! 姿かたちは母様だけど中身は別のモノだ!」

サラ「……それでも私には……。ゴメンなさい、ジャキ……」

まどか「大丈夫だよ。サラちゃんがいないときは、わたしがそばにいてあげるから」

ジャキ「まどか姉さま……」


ガタンッ

ジャキ「! 誰だ!?」

マール「ちょ、ちょっと押さないで……あ〜あ」

クロノ「やばい、見つかった……いやーハハハ。僕たち決してあやしいものでは……」

マール「確実にあやしい人が言うセリフだよそれ!」

マール「……って、いつもならほむらちゃんのツッコミが入るはずなのに、あれ?」

クロノ「ほむら?」


ほむら「……」

まどか「え……うそ……夢……?」

ほむら「……夢じゃ……ない、わ……。ずっと……ずっと、あなたを探してた……」

まどか「ほむらちゃん!!!」

ほむら「まどかあーっ!!!」


…………


サラ「良かったわね、まどか。お友達が見つかって」

まどか「うん、うん……!」

ほむら「あの、あなたは……」

サラ「私はサラ。この子はジャキよ」

ジャキ「……」

まどか「サラちゃんはこの国の王女さまで、ジャキくんは王子さまなんだよ!」

マール「王族なの!? すごい!」

クロノ「いや、君も王女さまだろ」


ほむら「まどかにいろいろ良くしてくれて、ありがとうございます」

ほむら「このご恩は忘れません。さあ、まどか。行きましょう。マミやさやかも心配してるわよ」

まどか「マミさんやさやかちゃんも!? ……あ、でも……」

ジャキ「まどか姉さま! 行っちゃうの!?」

ほむら「まどか、なにしてるの? 早く帰りましょう。あなたの居場所はここじゃないでしょ?」

クロノ「お、おい。ほむら……」

女官「失礼いたします、サラ様。鹿目様。女王がお呼びです」

女官「至急、海底神殿のほうに下りていただきたいとのことです」

まどか「え? わ、わたしも?」

女官「計画に変更があったとか。わたくしどもには詳しい内容は知らされておりませんが……」


ほむら「まどかを連れていく気? させないわ」

女官「な、なんですかあなたは!? それは武器ですか!?」

クロノ「おい、ほむら! よせ! 銃をおろせ!」

ほむら「っ! はなして! クロノ! 放しなさい!」

マール「ほむらちゃん、どうしちゃったの!? いつもの冷静なほむらちゃんらしくないよ!」

女官「無礼な……衛兵! 来なさい、ここに不届き者が……」

サラ「っ! 待ってください。母様が呼んでいるのでしょう? 早く行かないと」

女官「……そうでしたね。遅れると私が女王様に……分かりました、こちらです」

サラ「さあ、まどか。あなたも……」

まどか「う、うん……」

ほむら「待って、まどか! ……放しなさい! 放しなさいよおおっ!!」


…………


ジャキ「バカなヤツ。姉上がとりなしてなかったら、今ごろ囚われの身だぜ」

ほむら「……」

マール「クロノ、もう放してあげたら?」

クロノ「そうだな……」


ほむら「ああああああああっ!!!」ドンッ!

ジャキ「ひっ!? な、なんだよこいつ……急に床を……」

マール「やめて! ほむらちゃん……殴った手を見せて。血が出てるじゃない!」

クロノ「深刻だな……。そんなにあのまどかって子が大事なのか……」

ほむら(せっかく……せっかく会えたっていうのに……!)

マール「大丈夫だよ。呼ばれただけなんでしょう? きっとすぐ戻ってくるよ。だから、ね……」

QB「それはどうだろうね」

ジャキ「淫獣!? なにしてんだよ、ここにお前は出入り禁止だって言っただろ!」

QB「そんな場合じゃないんじゃないかな。あのふたりをほっておいていいのかい?」

クロノ「どういうことだ?」

QB「説明してあげなよ、ジャキ。海底神殿のこと。それに、預言者と巫女のことも」


クロノ「預言者? 巫女?」

ジャキ「……フードで身をおおった、うさんくさいヤツらだよ。突然あらわれて、母様に取り入った」

ジャキ「未来に起きる出来事を的確に当てるってんで、預言者だの巫女だの呼ばれてあがめられてる」

クロノ「海底神殿ってのは?」

ジャキ「『大いなるエネルギー』……この国は、そう呼ばれるものですべてが成り立ってる」

ジャキ「そのみなもとが海中深くで発見されたってんで、神殿を建設してるのさ……」

QB「預言者たちの協力のもと、ジールは神殿の建設にやっきさ。まもなく完成するだろうね」


クロノ「なるほどな。しかし、サラたちは何のために呼ばれたんだ?」

QB「サラもまどかも、ものすごい魔力の持ち主だからね。まどかは才能という意味でだけど」

クロノ「関係あるのか?」

QB「大有りさ。来なよ、いいものを見せてあげる」

B.C.12000 ジール宮殿 魔神器の間


クロノ「これは……!?」

QB「『魔神器』さ。『大いなるエネルギー』の回収および増幅装置といったところかな」

QB「これを作動させるのは常人では無理だ。そこで、サラの出番というわけさ」

QB「まどかが連れていかれた理由は不明だけど。ジールの考えてることは僕にも分からない」

QB「たぶん、手伝いでもさせるんじゃないかな? もしくは、サラに言うことを聞かせるための人質か」

ジャキ「……」


ほむら「……そんなこと、させないわよ……」

マール「ほむらちゃん!?」

ほむら「マール、もういいわ。血は止まった。だから手を離して」

マール「でも……」

ほむら「インキュベーター。お前がどうしてこんなことを私たちに話すのか、今はどうでもいいわ」

ほむら「お前を殺す暇も惜しい。教えなさい、女王はどこにいるの」

QB「やれやれ。どうして僕が殺されなきゃいけないんだい? わけがわからないよ」


QB「……まあいいか。それより、気になってたんだけど。そこの君」

マール「えっ? わ、私?」

QB「君の持つペンダント、サラのと同じものだね? 何故なのかはしらないけど、この状況では好都合だ」

QB「ペンダントを魔神器にかざしてごらん」

マール「こう? ……わっ!」キイイイイイン...


QB「ペンダントに『大いなるエネルギー』が注入された」

QB「女王の間は『封印の扉』によって閉ざされている。でもこれで入れるよ」

ジャキ「女王の間はこっちだよ……。お前ら気に入らないけど、姉上たちを助けるってんなら協力してやる」

B.C.12000 ジール宮殿 女王の間


ダルトン「ずいぶんとノンビリしたご到着ですなあ、サラ様に鹿目様。何か変事でも?」

サラ「ダルトン。いいえ、母様の側近であるあなたを煩わせるほどのことは何もありませんわ」

ダルトン「さようで。まあどうでもいいんですけどね、ヘッ」

ジール「ひかえろ、ダルトン。ふたりに話があるのはわらわぞ」

ダルトン「はッ! 失礼いたしました……」


サラ「母様……」

ジール「そう構えるな、サラ。今回はただの下見だ。本番に向けてのな」

ジール「海底神殿はまもなく完成する。そのあかつきには……フ……フハハ……」

サラ(母様は変わってしまわれた。『大いなるエネルギー』の力に魅せられて……)

ジール「鹿目まどかよ。お前にもついてきてもらうぞ」

まどか「わ、わたしは……」

サラ「なぜです母様! まどかは関係ないはず……」

ジール「こやつは『予備』だ。何かあったときのためのな……」

ジール「用意は抜かりなく、だったな? 巫女よ。お前の発案、受け入れてやった。これでいいのだろう?」

巫女「……」


ザワザワ

ダルトン「ん? おい、なにごとだ! 騒がしいぞ!」

ほむら「まどかっ!!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

ダルトン「なんだお前ら、どうやってここに入った? ひかえろ、女王陛下の御前だぞ!」

ほむら「女王ジール……!」

ジール「!」

サラ「!? ほむらさん、やめて!」


ダァン!!

ダルトン「こっ!? こいつ、撃ちやがった!?」

ジール「……お、おのれ……貴様……わらわの顔にキズを……!!」

ほむら「くっ、はずした! ……ッ!?」

巫女「……」ガスッ!

ほむら「う! あっ……」


予言者「そのまま締め上げろ」

巫女「……」ギリギリ...

ほむら「あ、ああ……う、腕が……」

まどか「ほむらちゃん! やめて! やめてよ!!」

予言者「お分かりいただけましたか? 女王よ」

予言者「この者どもこそ、私の警告した『わざわいをなす者』たちです」

ジール「異国の者め……! 貴様らも、三賢者ども同様このジールにたてつこうというのか……」


ジール「ダルトン!!!」

ダルトン「は。残りのテロリストどもは捕らえましてございます」

マール「く、クロノ〜……」

クロノ(また牢獄行きか……)

ジール「安心しろ、すぐには殺さぬわ……」

ジール「あらゆる悲しみ、苦しみ……そして恐怖を味わわせてから殺してやる……」

ジール「わらわの計画に逆らったこと、後悔するがいい……フフフ……」


ジール「アーッハッハッハッ……!」

B.C.12000 ジール宮殿 監獄の間


ほむら「……」

クロノ(くそ……なんだよ、この光線……体がまったく動かない。口も……)

マール(私たち、ここで死んじゃうのかなあ……)


…………


サラ「どう、まどか?」ボソボソ

まどか「待って……。うん、誰もいないみたい」ボソボソ

サラ「よし、じゃあ扉を開けるわね……」ボソボソ

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「!」

サラ「しーっ! 大声出すと気づかれるわよ」

まどか「あ……ご、ごめん」


ジャキ「バカなヤツら。あれだけ忠告してやったのに、結局つかまってるじゃん」

サラ「待っててくださいね、今助けますから。えっと端末は……確か、ここを操作して……」

ほむら「っ……はあっ! た、助かったわ……」

まどか「ほむらちゃん。それにクロノさんとマールさんも。ここから逃げて!」

サラ「このままではあなた方は大罪人として処刑されるだけです。ジャキに案内させますから、どうか……」

ジャキ「めんどくさいなあ」


サラ「そして、できることなら『命の賢者』様をお助けしていただきたいのです……」

マール「命の賢者様って?」

サラ「かつてこの国には、3人の賢者様がおられました。命の賢者様はそのおひとり」

サラ「でも、母様の計画に反対した命の賢者様は追放され、今は『なげきの山』に幽閉されて……」

まどか「あとのふたりの賢者様も、行方が知れないの。お願い、賢者様を助けてあげて!」

ほむら「でも、私はまどかを……」

予言者「そこまでにしてもらおうか」

クロノ「! お前らは……」

予言者「好き勝手してくれたものだな、サラ。こんなことをして、ただですむとでも?」

ジャキ「おいッ! 姉上たちに手を出したら許さないからな!」

予言者「……安心しろ。あなたたちをどうこうするつもりはない」


予言者「しかし、うしろの3人はそうもいかないがな……」

巫女「……」

まどか「やめて! ほむらちゃんたちにひどいことしないで!」

予言者「……フッ。よかろう、そいつらの命は助けてやる」

サラ「!」

予言者「そのかわり、あなたには力をかしてもらうぞ。サラ……」

サラ「……それで、この方たちが助かるのであれば……」

予言者「決まりだ。さあ、お前たちがどうやってこの時代へ来られたのか教えてもらおうか……」

B.C.12000 小さな洞窟


予言者「ほう、こんなところから……」


予言者「さあ、サラ。こいつらをその中に放りこんだら、そこに結界を張るのだ」

サラ「結界!? そんなことをしたら、もうここは通れなくなって……」

予言者「私の言うとおりにしなければ、その者たちの命はない」

サラ「……わかりました」


まどか「ごめんね、ほむらちゃん。ごめんね……」

ほむら「まどか……! 待って! まどかは関係ないでしょう? 彼女だけでも連れていかせて!」

予言者「くどいぞ。死にたいのか?」

ほむら「私はどうなってもいい! でも……でも、まどかだけは!」

巫女「まどかがここでいなくなれば、アタシたちがジールに疑われる」

ほむら「!?」

クロノ(しゃ、しゃべった!?)

マール(あの子、しゃべれたんだ……)


予言者「……そういうことだ。さあ、さっさと消えろ」

ほむら「で、でも……」

巫女「早く……行けっての!」グイッ

ほむら「お、押さないで!」

巫女「ジールがまどかの素質に気づいちまった」ボソッ

ほむら「!?」

巫女「アタシの立場じゃあ、アイツを予備扱いしてできるだけ関わらせないようにするのが精一杯だ」

ほむら「あなた……誰なの!? どういうことよ!?」

巫女「……やれやれ。錯乱しすぎだぜ、ほむら」


巫女「ちっとは頭……冷やせって、の!」ドンッ!

ほむら「! ま、まど……!」


…………


サラ「……終わりました。……ごめんなさい……みなさん……」

予言者「これでもう、このゲートからヤツらが来ることはあるまい」

まどか「ほむらちゃん……」

予言者「帰るぞ、巫女」

巫女「ああ……」


まどか「待って! 巫女さん……あなた、もしかして……」

巫女「……」

予言者「早くしろ」

巫女「分かってる。今行くよ……」

年代不明 時の最果て


ルッカ「ロボ、何か分かった?」

ロボ「スキャンの結果、このペンダントに蓄積されたエネルギーはラヴォスのものと同一ト判明」

ロボ「マタ、時空ジャイロによる検査では王国暦前1万2千年代のものと判明しまシタ」

クロノ「『大いなるエネルギー』ってのはつまり、ラヴォスのエネルギーか」

カエル「身震いするぜ。生活に使うエネルギーが実は破壊神によるものだったなんてな」

ルッカ「B.C.12000……便宜上、『古代』とでも名づけましょうか」

さやか「超古代文明かあ……。漫画なんかだと王道ですよね」


エイラ「みな、なに言ってる? エイラ、頭、火山。マミ、説明してくれ」

マミ「え? えーと……。うん! エイラ、あっちで遊んでましょうか?」

カエル(投げた)

さやか(投げたね)

ルッカ「こうなってくると、その海底神殿ってやつは是が非でも止めないといけないわね」

さやか「エネルギーのみなもとってラヴォスっすよね? モロじゃん!」

カエル「しかし、古代に続くゲートは封印されてしまったぞ」

クロノ「八方ふさがりか……」


ロボ「ルッカ。ワタシに考えがあるのデスガ」

ルッカ「どうするの?」

ロボ「このペンダントで開くという扉、そこに描かれた紋章ハ確かワタシの時代にもあったはずデス」

ロボ「紋章の出自が古代であるナラバ、その先に何かあるのではないでショウカ?」

ルッカ「ふむ……確かに行ってみる価値はありそうね」

ルッカ「ただ、リーダーであるほむらがあの状態じゃあねえ」


ほむら「……」

マール「元気出して、ほむらちゃん。ほら、アイス食べる?」

ほむら「ハーゲンダッツじゃないとやだ……」


クロノ「ほむらは僕とマールで見てるよ。みんなは、調査のほうを頼む」

さやか(ていうかあれ、とっくに回復してなくない?)

さやか「となると、戦力になりそうなのは……」


マミ「うふふ、どう? エイラ」

エイラ「お、おお……。マミ、エイラ、のど、なでる。気持ちいいぞ……」ゴロゴロ


さやか「あのふたりはなんか別の世界にいってるし……」

カエル「よし、俺が行こう。準備しろ、さやか」

さやか「待ってました!」

ロボ「デハ、ワタシが紋章の場所まで案内しマス」

ルッカ「私が留守番か。まあいいわ、ちょっと調べたいこともあるしね……」

ルッカ「あんたら、なんでもいいから手がかりつかんできなさいよ!」

A.D.2300 アリスドーム付近


さやか「この廃墟しかない世界が、あたしたちの未来か……。なんか、やるせないね……」

カエル「こうならないようにするのが俺たちの役目だ。気張れよ、さやか」

ロボ「目的地はここから南下した場所にある地下水道ヲ抜けた先にありマス」


…………


地下水道跡


さやか「くさっ!? ここ下水道じゃん!」

ロボ「正確には跡地デス」


さやか「え〜……ここ通るの? 濡れるし、臭いが服につきそうでやだな〜……」

カエル「お前はちょいちょい、どうでもいいことを気にするな」

さやか「女の子にとってはどうでもよくないの! そんなこと言ってるからモテないんだよ師匠は!」

カエル「どどどど童貞ちゃうわ!」

ロボ「おふたりとも、あまり騒ぐとミュータントに気づかれマスよ」

カエル「ミュータント? 魔物のことか?」

ロボ「そう理解していただいてかまいマセン。ここを束ねているのハ……」


\ウオオオォォォォ!!!/


さやか「な、なに!?」

カエル「敵襲か!?」

クロウリー様「レ●プレ●プレ●プレ●プレ●プレ●プレ●プレ●プレ●プレ●プ!!!」

みはり「出た……クロウリーさんの1秒間に10回レ●プ発言!」

クロウリー様「SATSUGAI SATSUGAIせよ! SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」

おやぶん「うわあああ! 最高に猟奇的だ!」

こぶん「Go to DMC!! Go to DMC!!!」


さやか「……」

カエル「……」

ロボ「ここの主、ヨハネ・クロウリー様II世コト、クロウリーさんデス」

カエル「係わり合いにならんほうがよさそうだな……」

ロボ「賢明な判断デス。興味本位による干渉はクロウリーさんに対する冒涜デス」

さやか「ロボ……あんた……いや、なんでもないわ」

A.D.2300 監視者のドーム


カエル「ここか……」

さやか「待って師匠! なんかいる……」


なぞの物体「……」

さやか「な、なんなのこいつ……生き物?」

ロボ「生体反応はありマセン」

カエル「眠っているようにも見えるが……。動き出されても困る。放置しよう」


ロボ「扉はこれデス」

カエル「よし、開けるぞ!」

さやか「まだ先があるみたいだね……あれ?」

カエル「何か見つけたのか?」

ロボ「音声データチップですネ。お待ちクダサイ、今再生シマス」



「……扉を開けた者たちへ……。私は、理の賢者ガッシュ……」


さやか「ガッシュってクロノさんたちが言ってた、三賢者のひとりの?」

カエル「そのようだな。待て、続きがあるようだぞ……」

「扉を開けた者たちへ……。私は、理の賢者ガッシュ。魔法王国ジールの、ガッシュ」


「私はジールの大災害のおり、この時代へとばされた」

「驚いたことに ラヴォスが現れるのは私の時代だけではなかった」

「ラヴォスははるか太古の時代に空より落下し、ジールに出現し……」

「地中深くひそみ、この地球のエネルギーを吸いながら成長を続けた……」


「王国暦600年。魔王が呼び出し、一時その姿を現す」

「王国暦1999年。再びその姿を現し地表を破壊しだす」

「この世の終わりかと思われたが、すべてを破壊することなく再び眠りについたようだ」

「王国暦2011年。大嵐によって、あまたの生命が失われた。嵐は1年半続いたと記録にある」

「王国暦2012年。ジールではこの年に世界が終わるとされてきた。長期暦が、この年で終わるからだ」

「予言は事実となった。ラヴォスが四度その姿を現し、ついに地表をそのテリトリーにしたのだ」

「嵐はやんでいた。思えば、あれはラヴォス復活の前兆——最も強力な『黒き風』であったのだろう」

「ラヴォスはその後、まるで卵を生むかのように自らの分身を次々と誕生させていった」

「私はその場所を『死の山』と名付けた……」

「ラヴォスは、星全体に巣くう巨大な寄生虫なのだ」


「私は、ここでラヴォスの監視と研究を続けて来た」

「だが、すでに限界じゃ。こんな時代に正常な精神をたもつのは不可能なのかもしれぬ……」

「私の精神が死をむかえる前に、この記憶を残しておくことにする。私の生がい最後の発明と共に……」


「私は自分の時代になんとか帰ろうと研究を続けた」

「しかしこの研究が完成するころには、私自身、寿命を感じていた」

「だから、託すのだ。ここを開く者に」

「時代を行き来できれば……時代を超えて人間が、この星そのもののためにひとつになれば……」

「あのラヴォスをどうにかできるかも知れぬ……」


「可能性はゼロに等しい……。しかしゼロでない限り、かけてみる」

「この扉を開く者に、この地球のすべてを……」

「さあ、開けるがいい、最後の扉を。そして手に入れるのだ。私の最後の発明……」



「『時をわたる翼』を……」

A.D.2300 監視者のドーム 格納庫


カエル「これは……!」

さやか「で、でかい卵!?」

ロボ「乗り物のようデスネ。中央に操縦室がありマス」

さやか「『時をわたる翼』……つまり、タイムマシンってこと!?」



♪シルバード 〜時を渡る翼〜


さやか「すげーすげー! ドラえもんじゃん! デロリアンじゃん!」

カエル「どら……なんだ?」

ロボ「前者はA.D.1969より連載開始サレ世界的に有名になったSF漫画作品デ、後者はA.D.1985ニ……」

カエル「いや、いい。説明されても分からん」

なぞの物体「驚いてくれたようだな」

さやか「!?」

なぞの物体「私だよ。ガッシュだ。この物体に、私の頭脳をコピーしておいたのだ」

ロボ「そんなことマデ……」

カエル「ダメだ、俺にはついていけん。とにかく、これがあれば古代時代に行けるんだな?」

ガッシュ「ほう……。君たちは、私の元いた時代に行こうというのか」


ガッシュ「これも何かの運命かもしれんのう。君たちが何をなすため時空を越えるのか興味があるが……」

ガッシュ「私はすでに託したのだ。こいつを、役立ててやってくれ」



ガッシュ「このタイムマシン……『シルバード』を、な!」

年代不明 時の最果て


ルッカ「まさかだわ。タイムマシンを見つけてくるなんて……」

老人(あの男、完成させたか……。時をわたる翼を……その命と引き換えに……)


さやか「ふふん、さやかちゃんにかかればこんなもんすよ!」

マミ「すごいわ美樹さん!」

カエル「あまり調子に乗らせるなよ、巴。作ったのはこいつじゃないんだからな」


マール「でも、これでまどかちゃんを助けに行けるよ。良かったね、ほむらちゃん!」

ほむら「……」

さやか「感謝しろよ、ほむら〜」

カエル「こいつ、さっきの俺のセリフ聞いてねえな……」

ほむら「そうね……。どうもありがとう、さやか」

さやか「ぅえ?」

ほむら「なによ?」

さやか「いや、別に……」

さやか(ほむらが素直にありがとうとか言うなんて……。やっぱりまだ調子悪いのか?)


クロノ「それで、ルッカのほうはどうだったんだ? 何か調べてたろ」

ルッカ「まあね。いろいろ興味深いことが分かったわ」

マミ(あ、難しい話始まりそう……。エイラ、大丈夫かしら……)

エイラ「?」

ルッカ「ま、結論から言うと古代の人たちがあれだけ繁栄したのはラヴォスの影響なの」

クロノ「『大いなるエネルギー』のことか?」

ルッカ「それもまあ、そうだけど。もっと根源的な部分で……」


ルッカ「原始の時代から、魔法を覚え行使し、歴史上最も進んだ文明を持つ『ヒト』への進化」

ルッカ「これは『ドリストーン』によるものとされる説があるわ」

ルッカ「そしてドリストーンとはラヴォスの破片……。わたしたちヒトは、ラヴォスの子とも言える」


さやか「まじで!? ラヴォスがあたしらのママ!?」

マミ「女の子なのかしら? ラヴォスって……」

カエル「そこはどうでもいいだろ……」

ロボ「ラヴォスが飛来する前にもドリストーンは存在していマシタガ?」

ルッカ「それはたぶん、先行して落ちてきた欠片なんじゃないかしら」

さやか「隕石みたいなもんですもんね〜、ラヴォスって」


ルッカ「ドリストーンの原石は長い年月を経て失われたとは言え、形を変えて今も残っているわ」

ルッカ「マールのペンダント、カエルのグランドリオン、古代にあるという魔神器」



ルッカ「そして……ソウルジェム」

ほむら「!?」

マミ「ええっ!? 私たちのソウルジェムが、ドリストーン!?」

マール「赤くないけど……」

ルッカ「原石が赤い色してるだけよ。現に、そのペンダントも赤くないでしょ」

さやか「で、でもこれはあたしらの魂で……」

カエル「魂? どういうことだ?」

さやか「……あ。い、言っちゃっていいのかな……」

ほむら「……仕方ないわ。必要になればと思っていたけれど、今がそのときというのなら……」


…………


マール「ひ、ひどい……。魂を抜き取って宝石に変えちゃうなんて……」

クロノ「とんでもないやつだな、そのインキュベーターってのは……!」

ほむら「私があいつを『敵』だと言った理由、分かってもらえたかしら」


ルッカ「つまりこうね。私たちは魔法の民の子孫。魔法とはラヴォスの力によるもの」

ルッカ「私たちの中にある最も濃い『ラヴォスとしての部分』を抽出、宝石化したものがソウルジェム」

マール「ル、ルッカ……そんな淡々と……」

ほむら「……」

さやか「……」

マミ「……」

ルッカ「……可能性の高い自論を述べただけよ」

ロボ「ワタシ、思うのデスガ。ワタシの魂とはどこにあるのデショウカ?」

ほむら「え?」


ロボ「ワタシのこの身体は機械デス。いわバ、ハードウェアでス」

ロボ「ではCPUや内蔵記憶装置が魂なのデショウカ? ワタシはそうは思いマセン」

ロボ「ルッカたちと出会ったコト。ほむらたちと旅したコト。そこで感じたコト。思い出……」

ロボ「それらが今のワタシをかたち作ってイマス。それが魂なのだト、ワタシは思いマス」

ほむら「ロボ、あなた……」

カエル「いいこと言うぜ、ロボ」

さやか「師匠……?」


カエル「安心しろさやか。俺なんて、カエルだぜ?」

カエル「だがサイラスのこころざしを受け継いだ魂は、ここにある。大事なのは、心だ!」

カエル「お前もゾンビが嫌ならカエルになってみればいいさ!」

さやか「なにそれ……。全然なぐさめになってないっての、もう……アハハ」

エイラ「そのとーりだ!」

マミ「エ、エイラ? 大丈夫? 頭から湯気が出てるけど……」


エイラ「みな言うこと、さっぱり分からん! でも、エイラ、分かることある!」

エイラ「マミはマミ! なにあっても、変わらん! エイラ、トモダチ!」

マミ「……ありがとう、エイラ……」

クロノ「つらいこと、聞いちゃってゴメンな。僕たちにどうこうできる問題ではないけど……」

マール「でも、手伝えることがあったら何でも言ってね! 仲間だもん、支えあわなきゃ!」

ルッカ「……ま、そういうことよ」

ほむら「問題ないわ。私たちは覚悟しているのだから」

マミ「でも、みんなの気持ちうれしかったわ」

さやか「これからもよろしくってことで! そうと決まれば、まどかを助けに行かなくちゃね!」


クロノ「よし、みんな! 旅の準備だ! まどかを助けるまでは帰れないぜ!」


…………


ルッカ「あなたは秘密が多いのね」

ほむら「知的好奇心の旺盛な誰かさんは、興味津々でしょうね」

ルッカ「意地悪な言い方しないでよ。悪かったわ」

ほむら「別に、怒ってないわよ」

ルッカ「どうだか。最近は丸くなってきたと思ってたのに、今のあなたは最初に出会ったころのようだわ」

ルッカ「『もう誰にも頼らない』って顔、してるわよ」

ほむら「……」


ルッカ「ねえ、ほむら。いつか……すべて話してくれるときが来るのかしら?」

ほむら「……なにが言いたいの?」

ルッカ「信頼されるようにがんばらなきゃなってことよ」

ほむら「……」

ルッカ(ほむら。あなたはまだ何か隠してる……)


ルッカ(ほむらたちが持っているグリーフシード……。あれも、調べたところドリストーン製)

ルッカ(ドリストーンは、ヒトの希望と絶望を糧とするもの)

ルッカ(グランドリオンが、持ち主の意志によって聖剣にも魔剣にもなるという話……)


ルッカ(ならソウルジェムは? 絶望を吸えば、どうなるの? グリーフシードになるのではないの?)

ルッカ(魔法少女の魂。魔女のみなもと。あれらの石が、ともにドリストーンなのだとしたら……)

ルッカ(魔女と魔法少女は関係があるんじゃないの?)


ルッカ(教えてよ、ほむら。私たち……仲間でしょ……)

ルッカ(あなたの背負うもの、私たちが一緒に背負うことはできないの?)



ルッカ(ねえ、ほむら……)

第5話「もう誰にも頼らない」 終了


  セーブしてつづける(第6話「本当の運命と向き合えるかい?」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。
次回ですが、都合により少し日があきます。ご容赦を。

それでは、また。

第6話「本当の運命と向き合えるかい?」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

B.C.12000 小さな洞窟付近


ほむら「ここは、最初に来た場所の近くみたいね」

マール「シルバードから出たら、また吹雪だよね……。今回はちゃんと防寒してきたけど……」

クロノ「さて、これからどうする? 罪人扱いされてる僕らが宮殿に乗り込むわけにもいかないし……」

ほむら「私はそれでいいと思うけど」

クロノ「いやいや」


マール「ね、気になってたんだけど。向こうの空に、おっきくて黒い影があるよね?」

ほむら「吹雪でよく見えないけれど……山、かしら?」

マール「うん、私もそう思う。あれ、『なげきの山』なんじゃないかなあ?」

クロノ「命の賢者様がとらわれている場所か」

マール「賢者様の協力が得られれば、宮殿に入る方法も見つかるかもしれないよ」

ほむら「なら、近くまで行ってみましょうか」


…………


クロノ「驚いたな。山は山でも、空に浮いてるぞ」

ほむら「それも地上から鎖につながれて、ね。本当になんでもありよね、この時代は」

クロノ「あの山に行くには鎖を伝っていくしかないのかな……」


マール「……むにゃむにゃ……」

クロノ「って、おぉい!? 寝るな、マール! 死ぬぞ!」

ほむら「そこに洞窟があるわ。とりあえず避難しましょう」

B.C.12000 アルゲティ


アルゲティ長老「おや、サラ様たち以外のお客さんが来るとは珍しい……」

マール「え……人? この洞窟、人が住んでるんですか?」

アルゲティ長老「洞窟か……。そう思われるのも無理はない。しかしここは一応、村なのだよ」

マール「あ……ご、ごめんなさい」

アルゲティ長老「かまわんよ。あんた方、異国の者じゃろう」

アルゲティ長老「ようこそ、地の民の村アルゲティへ。わしはこの村の長老じゃ」

ほむら「地の民……?」


アルゲティ長老「魔法を使える者は『光の民』と呼ばれ、浮遊大陸で人生を謳歌する」

アルゲティ長老「しかし魔力を持たぬ我ら『地の民』は天空の王国を追放され、極寒の地で暮らすしかない」

マール「ひどい……」

ほむら「華やかな王国の裏に隠された闇……か」

アルゲティ長老「あんた方、こんなところにわざわざ何用じゃ? 観光なら浮遊大陸のほうに行けばええ」

アルゲティ長老「……いやしかし、『天への道』は今は封印されておったか……」


クロノ「僕たちはなげきの山に行きたいんです」

アルゲティ長老「あのような危険な場所へ進んで入りたがるとは……何か理由でもあるのかね?」

マール「私たち、命の賢者様を助けに行くんです!」

アルゲティ長老「なんと……」

アルゲティ長老「サラ様や鹿目様、三賢者様たちぐらいのもんじゃ……」

アルゲティ長老「わしらを自分と同等に扱ってくださり、こんな村に何度も足を運んでくれてのう……」

アルゲティ長老「彼女らのおかげで、わしらは腐らずにおれる」

ほむら「まどかが……」


アルゲティ長老「あんた方が賢者様を助け出してくれるというなら『ドロクイの巣』への道を開けておこう」

アルゲティ長老「そこを通れば、なげきの山をこの大地につなぎとめている鎖のところまで行けるはずじゃ」

アルゲティ長老「わしからもお頼み申す。賢者様を助けてあげてくだされ……」

B.C.12000 ドロクイの巣


ドロクイ「モルスァ」

ほむら「アリクイならぬドロクイ、ね」

マール「キモカワイイってやつかな?」

クロノ「襲ってきた時点で可愛いも何もないけどな」

ほむら「見えたわ。あれが鎖の連結地点ね」


…………


ビュウウウウウ...!

ほむら「うあ……!!」

マール「高い寒い怖い風が強い!!!」

クロノ「下を見るなよ! 進めなくなるぞ!」

B.C.12000 なげきの山


ほむら「ハァ……ハァ……。……な、なんとかたどり着けたわね……」

クロノ「帰りもあるぞ。しかも下り」

ほむら「今は考えたくないわ……」


マール「浮遊大陸と違って、この山は整備されてないね〜」

ほむら「山自体が牢獄のようなものでしょうしね」

マール「ふわあ……この崖の端から落ちたらひとたまりもなさそう」

クロノ「気をつけて進まなきゃな」

B.C.12000 なげきの山 山頂


ほむら「ここに命の賢者が閉じ込められているのか……」

マール「あれ? なんだろ、台座の上に何か……氷塊……?」

ほむら「待って。透けて中が見えそう……人よ! 中に人が!」

クロノ「賢者様か!?」


キイイイイイン...

ほむら「! 氷塊が……」

マール「消えちゃったよ!?」


ズズズズズ...!

クロノ「何か来るぞ!」

ギガガイア「グオオオオォォォ!!!」


クロノ「で、でかい!」

マール「巨人!?」

ほむら「なんて大きさなの……! ティラン城のブラックティラノより大きいじゃない!」

クロノ「こいつをなんとかしろって言うのか!? むちゃくちゃだな……!」

ほむら「……ふん。ちょうどいいわ……」

マール「ほむらちゃん……?」

ほむら「鬱憤がたまってたのよ……。これだけ大きければ、よけれられる心配もないわね」


ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」

クロノ「なっ……なんだよ、その筒!?」

ほむら「発射ッ!!」

ズドドドドッ!! ガガアアアァァァン!!!

ギガガイア「ゴオオオオォォォ!?」


クロノ「ゆ、ゆれる! 山が揺れている!」

マール「わわわわわっ!? 立ってられないぃ〜……」

ほむら「ああ、気持ちいい。図体がでかいだけのでくの坊ね。そのまま死ねばいいんだわ」


クロノ「! マール、あぶない! 土砂崩れだ!」

マール「えっ……! きゃああ!!」

ほむら「あら、失敗。着弾地点が広範囲すぎて、周囲にも損害が出たわね」

クロノ「大丈夫か、マール!」

マール「う、うん。なんとか……」

クロノ「ほむら! なに考えてるんだよ、味方にも被害が出てるじゃないか!」

ほむら「そう、ごめんなさいね。邪魔だから下がっててくれる?」

クロノ「おい……!」


マール「ほむらちゃん……。ど、どうしちゃったの……」

ほむら「邪魔よ、マール。バックブラストの餌食になりたいの?」

マール「えっ……」

ほむら「『M136 AT-4』!!」ドォン!!

ギガガイア「グアアオ!!」ズガアン!!


マール「ゲホ、ゲホ! なにこれ……煙が!」

ほむら「だから邪魔だって言ったじゃない」

マール「あ、あの……ごめん……」

ほむら「どんくさいわね。足手まといは嫌いよ」

マール「……」


クロノ「……! ほむらッ!!」ドン!

ほむら「いたっ……!? 何するの、クロノ! 頭にきたからって、突き飛ばすことは……」

ギガガイア「ウオオオオォォォ!!!」

ほむら「!?」

ギガガイア「ガアアッ!!!」ズドオン!!!


ほむら「くっ……! あの巨大な腕、振り下ろされるだけで脅威ね……」

マール「ほむらちゃん! 大丈夫?」

ほむら「さっきの場所にいたらつぶされていた……。クロノ、あなたはそれを知らせるために……?」

マール「あ、あれ? クロノ!? クロノがいないよ!」

ほむら「え……!? ま、まさか……私をかばって……」

ギガガイア「オオォォォッ!!!」

『ダブルハンドブラスター』

ズオオオオッ!!!


マール「きゃああっ!!」

ほむら「こいつ……! ただ力任せに振り回すだけでなく、魔法まで……!」



ギガガイア「シイイイイ...!」

『防御アームでヘッドを回復』

マール「回復されちゃった……」

ほむら(右腕で攻撃、左腕で回復……。両腕があけば、強力な魔法が飛んでくる……)


ほむら「厄介ね、あの腕は……!」

ギガガイア「グ...!? ゴオオオ...!!」


マール「あれ……? 巨人の様子が変だよ?」

ほむら「背中を気にしている……?」

マール「かゆいのかな?」

ほむら「冗談を言ってる場合じゃないでしょ」

マール「うーん、でも巨人だって人でしょ? かゆかったらムズがるんじゃない?」

ほむら「……人……あれが……」

クロノ「やれやれ……。振り落とされるかと思ったよ」

マール「あ、あれ!? クロノ!?」

ほむら「巨人の背中に張り付いている……! なるほど、だからヤツが気持ち悪がったのね」


クロノ「うまく接近できたな。よし、食らえ! 『みだれ斬り』!!」

ギガガイア「ギャバア!!!」

マール「連続攻撃がクリーンヒット! クロノすごーい!」


ギガガイア「グアアア!! オオオオオォォォ!!!」

ほむら「すごい痛がりようね……」

クロノ「うわ、わ……! さすがにこう動かれると張り付くのは無理だな。離脱、っと」

マール「クロノ! 無事だったんだね!」

クロノ「へへ、振り下ろされた腕を伝って登ってやったよ。対巨人戦闘の常套手段だろ?」

ほむら「よくやるわね、あなたは。私をかばいながら、その一瞬で……」

クロノ「ほむら、危なかったな。あのままだったらぺちゃんこだったぜ」

ほむら「……ヘイストで避けられたわ」

クロノ「それもそうか。ほむらは強いもんな。余計なことしちゃったかな?」

ほむら(……気づいていれば、だけれど。あの状況では、きっと間に合わなかったわね……)

ギガガイア「グウウゥゥ...!!」

『防御アームでヘッドを回復』


マール「また回復されちゃった……」

クロノ「くそっ! せっかくダメージを与えてやったのに……」

ほむら「いえ、クロノ。あなたのおかげでヤツの弱点が分かったわよ」

クロノ「ホントかい?」

ほむら「ええ。マールの言うとおりだったわ」

マール「私の……?」

ほむら「巨大さばかりに惑わされてはいけない。あいつを、人もしくは人型生物とみなせば話は簡単」

ほむら「人体の急所のひとつ、頭部。目、鼻、アゴ、こめかみ、眉間。果ては、そのすぐ下の首まで……」

ほむら「衝撃を受ければ致命傷となる部分が集中している頭部を狙われることを、あの巨人は嫌がっている」

ほむら「だから腕で顔をかばい、優先的に回復しようとしているのよ」


マール「そ、そっか。じゃあ頭を重点的に狙えば……」

ほむら「そのためには、あの腕をなんとかする必要がある。作戦はこうよ」

ほむら「私とマールの『れんけいわざ』で腕のガードを引き剥がす。いいわね、マール」

マール「オッケー!」

ほむら「クロノ、あなたがトドメを刺しなさい。眉間にその刀を思いっきり突き立ててやればいいわ」


クロノ「……へへっ」

ほむら「なにを笑っているのよ。今の話に面白いところなんてあったかしら?」

クロノ「そうじゃないよ。ほむらの調子が戻ってきたみたいだからね」

ほむら「……」

クロノ「やっぱり君は頼りになる。それでこそ僕らのリーダーだ」

ギガガイア「グアアアア!!!」

マール「巨人が攻撃してくる!」

ほむら「散開して!」


『ガイアマグナード』

ズガァン!!


クロノ「ぐっ……! さすがにキツイな!」

マール「でも、距離を取ったおかげでそこまで被害は大きくないよ!」

ほむら「今度はこちらの番! いくわよ、マール!」

マール「『アイスガ』!!」

ほむら「『M26手榴弾』!!」


ほむら&マール「ふたりわざ『メドローアボム2』!!」

ギガガイア「グゲッ...!! グググ...!!!」


マール「手をついた!」

ほむら「体勢は崩したわ……クロノ!」

クロノ「ふたりが作ったこのチャンス……。逃す手はないよな!」

クロノ「うおおおおっ! 『ぜんりょく斬り』!!」


ズバアンッ!!

ギガガイア「ギャオオオオ!!!」



マール「やったあ! 今度こそ……」

ほむら「! いえ、まだよ……!」


ギガガイア「グギギギ...!」

マール「耐えてる……! しぶといなあ、もう!」

ほむら「とはいえ、もう少しだわ。私たちの攻撃で腕もボロボロ。あれでは頭部を回復させることも……」

『アームを復活』


マール「え!?」

ギガガイア「ウオオオオ...!!」

ほむら「冗談でしょ!? 腕が再生していく……!」

マール「ど、どうしよう、ほむらちゃん! プランBは!?」

ほむら「ないわよそんなもん!」

クロノ「いや、ある!」

マール「クロノ!?」


クロノ「ヤツは満身創痍……。ほむら! 今こそ僕と君の『れんけいわざ』を叩き込むときだ!」

ほむら「私とあなたの……!?」

クロノ「今度はちゃんと狙ってくれよ。あの筒……一点集中で、ね!」

ほむら「! 『M252 81mm迫撃砲』……」

クロノ「合わせてくれ、ほむら!」

クロノ「『サンダガ』!!」

ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」


マール「こ、これは……!」

クロノ「無数の落雷と砲弾のシャワー! 耐えられるかい、巨人!」

ギガガイア「ゴオオオオオ!?」



クロノ「そのまま沈めッ!! ふたりわざ『ダークスパーク』だ!!」

ギガガイア「ギャアアアアアアアアアァァァオオオオオォォォ...!!!」


マール「巨人が倒れていく……」

ほむら「やられる姿すら迫力満点ね。我ながら、よくなんとかなったものだと感心するわ」

クロノ「ほむらの知略と僕らの戦力。合わせれば、どんな敵でも対処できるって僕は信じてたよ」

マール「うんうん。ほむらちゃんのおかげだね!」

ほむら「あまりおだてないで。お世辞は好きじゃない」

マール「お世辞じゃないってば〜」

ほむら「……」


ほむら(……『コンビネーションの質の高さが、実力以上の力を発揮させている』……か……)

クロノ「それにしても、あの巨人がここの牢番だったのかな?」

ほむら「とんでもない牢番もいたものね」

マール「あ、見て! 氷塊が戻ってきたよ」


パリーン!!

ボッシュ「うう……ここは……?」

ほむら「ボッシュさん!?」

ボッシュ「いかにも、ワシはボッシュじゃが……なぜワシの名を? 会うのは初めてじゃぞ」

クロノ「ボッシュが命の賢者様だったのか。でも、現代にいたはずじゃ?」

ほむら(元は古代の人間だったのね。ということは、このあとなんらかの理由で時間跳躍を……?)

ボッシュ「まあええわい。助けてくれたこと、礼を言おう。ところで女王は? 海底神殿はどうなった?」


ゴゴゴゴゴ...!

マール「きゃあ! じ、地震!?」

クロノ「空に浮いてるのにか!?」

ボッシュ「いかん、ここの封印を解いたため山が落ちるぞ! 急いで下りるのじゃ!」

B.C.12000 アルゲティ


地の民A「長老! な、なげきの山が!!」

アルゲティ長老「彼らは、やってくれたか……」


地の民の子供「ママ、お山が落ちてくるです〜!」

地の民B「大丈夫よタラちゃん。ここにいれば安全だからね……」


…………


ボッシュ「そうか……。女王の心は、既にそこまで……」


ボッシュ「ラヴォスに、人としての心を食われてしまったのじゃろう。もはや女王は正気ではない」

アルゲティ長老「何も知らされず、わしらは奴隷として重労働を強いられました。神殿を建設するため……」

ボッシュ「魔神器を海底までおろせば、ラヴォスそのものを目覚めさせてしまうかもしれぬ」

マール「なんとかしないと!」

ほむら「宮殿へ乗り込む方法は?」

ボッシュ「そうじゃな。まずは天への道の封印を解いて……」


地の民「長老! サラ様がおいでです!」

ボッシュ「なに、サラが?」

アルゲティ長老「おお、サラ様……。それに、鹿目様も……」

ほむら「まどか!」

まどか「えっ!? ほ、ほむらちゃん!? どうやってこの時代に……」

クロノ「いやあ、タイムマシンでちょっとね」

まどか「タ、タイムマシン!?」

サラ「みなさん、良かった……」

ジャキ「へこたれないヤツらだよ」

ボッシュ「サラ。久しぶりじゃな」

サラ「ボッシュ……。なげきの山が落ちたので、ここに来ればきっと会えると……」

ボッシュ「宮殿を抜け出したりして、大丈夫なのか?」

サラ「それどころではありません。神殿が……海底神殿が、完成してしまったのです!」

ボッシュ「! 間に合わなんだか……!」


サラ「しかし、私かまどかでなければ魔神器は動きません……」

サラ「私はまどかと逃げます。天への道は開いておきました。みなさん、どうかお願いします……」

サラ「女王を……母を、止めてください!」

まどか「お願い、ほむらちゃん。サラちゃんの頼み、聞いてあげて!」

ほむら「まどか……どうしてあなたは、そこまでこの国のことを……」

ダルトン「そこまでにしていただきましょうか」

サラ「ダルトン!?」

ダルトン「たまげましたねえ。甘ちゃんの王女さまが、とんだ暴挙に出たもんだ」

ダルトン「鹿目様の入れ知恵かね? かごの中の鳥は、おとなしくさえずってりゃいいんですよ」


ボッシュ「ダルトン! おぬしの好きにはさせんぞ!」

ダルトン「ジジイは説教くさくてたまらねえ。黙らせろ、衛兵」

ボッシュ「ぐはっ!」

まどか「ボッシュさん!」

ダルトン「連れていけ。ふたりともだ」

ほむら「!」

ジャキ「姉上! まどか姉さま! こいつら……その手を放せ!」

ダルトン「王家のガキはどいつもこいつも……気が強くていけない、ね!」バシッ!

ジャキ「うあっ!」

サラ「ジャキ!」


マール「あんたたちぃ……!」

ダルトン「おーっと、お前たちも手を出すなよ? 俺様は女王など少しも恐れちゃいない」

ダルトン「ふたりともと言ったが、必要なのはどっちかひとりだ」

ダルトン「要らんほうのクビをここでハネてもいいんだぜ? そうだなあ……やはりここは、鹿目様かね?」

ほむら「そんなことをしてみろ。次に飛ぶのは、お前のクビよ……!」

ダルトン「やってみるか?」

まどか「やめて……お願い。言うとおりにするから……」

ダルトン「それでいい。素直なのが一番ですぜ」

ほむら「まどか!」

ダルトン「さーて行きましょうか。やさしいお母上がお待ちかねですよ」


ダルトン「ハッハッハッハ!!!」


…………


ほむら(またまどかを救えなかった……! どうしてこう、邪魔ばかり入るの!)


クロノ「ボッシュ、大丈夫か?」

ボッシュ「うむ、すまん……。まずいぞ、なんとしてもふたりを救い出さねば、大変なことに……」

アルゲティ長老「無茶です! いかにボッシュ様といえど……」

ボッシュ「この計画が実行されれば、すべての人間……いや、すべての生命が危機にさらされるんじゃぞ!」

アルゲティ長老「し、しかし……」


クロノ「……マール」

マール「言われるまでもないよ!」

クロノ「……ほむら」

ほむら「だから言ったでしょう? さっさと乗り込むべきだって」

クロノ「……よし!」

♪クロノ・トリガー


ボッシュ「何をする気じゃ……」

マール「決まってるよ!」

クロノ「僕たちに任せてくれ!」

ほむら「まどかを救うついでに世界も救ってあげるわ」

ボッシュ「お、お主ら……。すまぬ……名も知らぬお前さんたちに、何から何まで……」


ほむら「気にしないで。あなたには借りがあるから」

マール「名前なら、そのうち知ることになるよ!」

ボッシュ「な、なに???」

クロノ「よし、宮殿に行こう!」

ボッシュ「待て、これを持っていけ」

ほむら「これは……ナイフ?」

ボッシュ「そいつは魔神器と同じ赤き石のかけらで作られたもの。それなら魔神器を壊せるじゃろう」

ほむら(ドリストーン……)


ボッシュ「ワシも、あとのふたりの賢者に連絡して、すぐにあとを追う。頼んだぞ、お主ら!」

B.C.12000 ジール宮殿 女王の間


ほむら「ジール!!!」

マール「……誰もいないね」

ほむら「……」

マール(勢いつけて飛び込んだ分、反動で恥ずかしさが加速してるほむらちゃんカワイイ)

クロノ「というか、宮殿自体に誰もいなかったな。どこに行ったんだろう……」

QB「海底神殿が完成したからね。ラヴォス復活に備え、みんなそっちへ行ってるのさ」

ほむら「インキュベーター……!」

QB「おっと。どうして君は、会うたび僕を殺そうとするんだい?」

マール「……」

QB「……うしろのふたりも、以前と様子が違うね。何を話したんだい?」

ほむら「お前に教える筋合いはないわ」

QB「やれやれ。結局、君もまどかと一緒か。彼女も僕の話を聞こうとしなかった」

QB「それどころか、彼女の影響でサラもジャキも僕を嫌う始末さ」

ほむら「いい気味だわ」

QB「……僕たちは共通の敵を持っている。ラヴォスは、最終的には倒されなければならない存在だ」

QB「その点において、僕たちは協調できると思うんだけどな」

ほむら(ラヴォスは星のエネルギーを食らいつくす寄生虫)

ほむら(確かに、管理側のこいつらにしてみれば天敵とも言えるわね。でも……)


ほむら「お前との協力なんて、こっちから願い下げよ」

QB「そうかい。まあいいけど。僕は僕で、動かせてもらうよ」

ほむら「……邪魔はさせないわ」

QB「邪魔なんてしないよ。海底神殿に行くんだろう? ほら、ここから下りられるよ」

クロノ「ほむら、行こう! 時間がない」

ほむら「命拾いしたわね、インキュベーター」

QB「……」


…………


QB「行ったみたいだね。さて、僕も追いかけようか」

B.C.12000 海底神殿


リオン「やあ、お姉ちゃんたち」

ほむら「リオン!? なぜあなたが……」

リオン「黒い気が、高まってくる……。こわいものが目を覚ましちゃうよ」

クロノ「何を言って……うおっ!?」


ゴゴゴゴゴ...!

マール「ま、また地震!?」

ほむら「まさか……!」


…………


ジール「さあ、サラよ。魔神器のパワーを限界まで上げるのだ」

サラ「……」

ジール「サラ! わらわの言うことが聞けぬのか!?」

サラ「分かりました……母上……」


キュイイイイイイン...

ジール「おお……なんとまばゆい輝き! すばらしきラヴォス様の力よ!!」

まどか「サラちゃん……」

予言者「……」


…………


光の民「異国の者、立ち去れ……。神聖なるラヴォス様の復活……邪魔はさせない……」

ほむら「どきなさい!」

光の民「ラヴォス様……万歳……ギャギャギャギャギャ!!」

マール「人間が魔物に……!?」

クロノ「ラヴォスの影響か!?」

ほむら「強行突破よ!」


…………


ジール「ああ、感じる……感じるぞ! 永遠の生命の鼓動を……!」

まどか「な、なに……この黒い気の渦……!?」

巫女「……!!」


キュイン! キュイン! キュイイイン...!!

側近「ま、魔神器の様子が……! 女王様、これ以上は危険なのでは……」

ジール「臆病者はこの場にふさわしくないな……。死ね!!」

側近「ギャアーッ!?」

サラ「母上……! なんてことを……」


…………


グラン「ボクらはナイフにこめられたボッシュの希望なんだよ……」

ほむら「このナイフが……? じゃあ、もしかしてこれは……」

グラン「さあ、女王たちのところに行くつもりなら急がないと。頼むぜ、姉ちゃんたち」


…………



サラ「う……ッ!」

ジール「続けるのだ、サラ! あともう少しだ……」

ジール「わらわは永遠の生命を手に入れる! 我がジール王国は……神の光に包まれるのだ!」


ジール「ククク……フハハ……アーッハッハッハッ……!」


…………


ダルトン「ったく、予言者のヤローが中に入れて、なぜ俺様が見張り……む?」


ほむら「ダルトン!!」

ダルトン「お前ら、マジでこんなところまで追いかけてきやがったのか……」

マール「サラさんとまどかちゃんは、どこ!?」

ダルトン「予言者のヤツらが何かボロを出すかと思って泳がせておいたが……もうお前らも用済みだな」


ダルトン「お前らの始末はコイツがつけてくれる! いでよ、ゴーレム・シスターズ!」

ダルトンゴーレム・シスターズ(姉)「わたくしたちの出番ですね」

ダルトンゴーレム・シスターズ(妹)「がんばるさー!」


クロノ「空間からゴーレムが!?」

ほむら「くっ、こんなことしてる時間はないのに!」

ダルトン「いさぎよく死ねーいッ!」

シスターズ姉「ダルトン様の野望を邪魔立てする者に死を。『エネルギーボール』!!」

マール「きゃあっ!?」

クロノ「マール!」


ほむら「どきなさい! あなたたちを相手にしている暇なんてないのよ!」

シスターズ妹「ここを通ろうってんなら、自分らを倒してからにするさ」

ほむら(すぐ目の前に、まどかがいるっていうのに……こいつら……!!)


クロノ「ほむら! 相手はふたりだ。ここはなげきの山の時のように『れんけいわざ』で……」

ほむら「うるさいッ!!」

クロノ「!?」

ほむら「『89式小銃』!!」

シスターズ妹「おっと危ない! 『鉄球』!!」

マール「鉄の塊!?」

シスターズ妹「そんな豆鉄砲、この鉄球には効かないぞ! このまま押し込んでやる!」

ほむら「!? 鉄球を盾にしたまま強引に突っ込んできた……!」

マール「ほむらちゃん、逃げて!」


シスターズ妹「そーれっ!!」ドスッ!

ほむら「あ、がふっ……!」

シスターズ姉「あらあら。見事なまでにお腹にめり込みましたね」

ほむら「……ぐ……うぐ……!」

シスターズ妹「ハハハッ! そこでそのまま、うずくまってればいいさー!」

ほむら「げほっ……えぅ……が、えほっ……」ビチャビチャ!

シスターズ姉「ふふ、吐血しましたか。内臓のいずれかがつぶれたのではないですか?」


マール「ほむらちゃん! しっかりして、今回復を……」

ほむら「……必要……ない、わ……!」

マール「え……?」

ほむら「必要ないと言っているの! こんなもの、魔力ですぐ修復してやるわ!」

マール「で、でも……」

ほむら「何をやっているのよ、あなたは! 余計な心配をする暇があったら、あいつらを殺しなさい!!」

マール「ほむらちゃん……」

シスターズ妹「殺すだって? よく言うさ。そんなボロボロで何ができるって言うんだ?」

シスターズ姉「油断はなりませぬ。追い詰められたネズミに噛まれる前に、トドメを刺しましょう」

シスターズ妹「オッケー。みんなまとめてあの世行きだぞ! 『ダークレイ』……」


ほむら「やらせるかああッ!!」

シスターズ姉「!」

ほむら「『FN MINIMI M249パラトルーパー』!!」

シスターズ妹「うぎゃーッ!? こ、こいつムチャクチャだぞ!」

シスターズ姉「なんてデタラメな弾幕……! どこを狙っているのです!」


ほむら「ああああああッ!!」ドガガガガガガ!!


マール「きゃあああっ!?」

クロノ「ほむら、クソ……! ダメだ、見境をなくしている!」


ダルトン「うおおおッ!? あ、あぶねえ! こっちにまで流れ弾が!」

シスターズ姉「ダルトン様! 危険です、お下がりください!」

ほむら「……!」

マール「はあ、はあ……。あうう〜……ちょっと足にかすっちゃったよ……」

クロノ「どういうつもりなんだ、ほむらは……。こんな……!」

シスターズ妹「ふい〜……。なんとか切り抜けたぞ……」

シスターズ姉「!? あの女がいません! どこに行ったのですか!?」

マール「え……」


ダルトン「シ、シスターズ……! 助けてくれえ……」

シスターズ姉「ダルトン様?」

ほむら「……捕まえたわ……!」


シスターズ妹「な!? あ、あいつ、ダルトン様を!?」

シスターズ姉「なんのつもりです、貴女!」

ほむら「大事な大事なご主人様を殺されたくなかったら、投降しなさい……」


マール「ほむらちゃん!? 何してるの!?」

ほむら「人質よ。テロリストの私たちにはお似合いでしょう?」

クロノ「き、君は……!」

ほむら「あなたたちがこいつの安否を気にしているのを見てね、ひらめいたのよ」

ダルトン「ひいいッ! やめろ、銃を向けるな!」

ほむら「当然よね、自分の主なんだもの。見殺しにできるわけがない」

シスターズ妹「卑怯だぞ、お前!」

ほむら「まどかをいいように利用し続けたあなたたちに言われたくはないわ」


ほむら「さあ、そこをどきなさい。私たちが先に進み、安全が確保されたらこいつは放してあげるわ」

シスターズ姉「……仕方ありません。ダルトン様に危害を加えさせるわけにはいきませんから……」

ほむら「お利口さんね……。クロノ、マール。行くわよ」

マール「……」

ほむら「……!? ぐっ……!」

ダルトン「む……?」

ほむら(ま、まずい……視界がボヤける……。思ったよりダメージを受けすぎていた……!)


ダルトン「バカめ、ヒザを突いたな? 隙だらけだぞ!」ドスッ!

ほむら「あうっ……!?」

マール「ほむらちゃん!」

シスターズ妹「やったぞ! ダルトン様が解放された!」

シスターズ姉「損傷の激しい腹部への肘打ち。お見事です、ダルトン様」

ダルトン「チッ、このアバズレが! よくも汚らしい手でこの俺様に触れてくれたな……」


シスターズ妹「さ〜て、ナメた真似をしてくれたお礼だぞ。楽には死なせてやらないさ」

シスターズ姉「非道なる行い、目に余ります。あなたはこの美しき王国にふさわしくありませんね」

ほむら「……!」


ダルトン「ぶっ殺せ! シスターズ!!」

クロノ「『ぜんりょく斬り』!!」

シスターズ妹「!?」ガキィン!!

クロノ「くそ……防がれた……!」ギリギリ...!!

シスターズ妹「こ、こいつ……! 邪魔するなぁっ……!」ギギギギ...!!

クロノ「ほむらに手出しはさせない……ッ!」ガギギギ...!!


シスターズ姉「つばぜり合い状態……!」

ダルトン「何をしているッ! さっさと押し切ってしまえ、シスターズ!」

ほむら「ああ……いいわね、クロノ。その状態、すごくいいわよ」

クロノ「な……んだっ、て……? ほむら……とにか、く……そこから下がれ……!!」

シスターズ妹「うぎぎぎ……!!」

ほむら「そのまま、そいつを押さえつけておいてね……」



ほむら「『パイプ爆弾』!!」

クロノ「なっ!?」


ドカァン!!

シスターズ妹「うぎゃーっ!?」

クロノ「ぐあ……っ!」


マール「ク、クロノーッ!!」

ダルトン「信じらんねえ!? 味方もろとも爆破しやがった!」


マール「ほむらちゃん、なんてことを!」

ほむら「敵が拘束されていたのよ。チャンスじゃない」

マール「だからって……!」

ほむら「魔法って便利よね。さっさとクロノを回復してあげなさい。死ぬわよ、彼」

マール「あなたねえ……!!」

シスターズ妹「うぎぎ……オ、オマエェ……ッ!!」

ほむら「!」

シスターズ妹「よくもやってくれたな!」

シスターズ姉「貴女は第一級の危険人物ですね。速やかに排除せねばなりません」


マール「クロノ! 大丈夫!?」

クロノ「ゲホッ、ガハッ……! なんなんだよ、これ……。なんでほむらは……!」

ダルトン「クソ忌々しい女が! 早く殺せ、シスターズ!」

ほむら「……どいつもこいつも……ギャーギャーわめきたてて……うっとうしいったらありはしない……」


ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!!」

マール「あの筒……なげきの山の時の……!」

クロノ「おいおいおいおい! 冗談はよしてくれ……!」



ほむら「みんな、みんな……消えなさいッ!!」

ダルトン「正気かアーッ!? あの女、室内で砲撃しやがった!!」

シスターズ妹「ぎゃーっ!? 天井が崩れる!」

シスターズ姉「ダルトン様……!」


マール「きゃああああッ!!」

クロノ「マール! クソッ……!!」


ズズウ...ン!!

ほむら「……はあ、はあ……ゲホッ……」

ほむら「……」

ほむら「全部……瓦礫の下敷きね……。ざまぁみろ……」


クロノ「ぐ……いて……。大丈夫か……マール……」

マール「う、うん……。クロノがかばってくれたから……」


ほむら「あら、生きていたの。たいした生命力ね」

マール「……ほむらちゃん……」

ほむら「ヤツらは瓦礫につぶされておしまい。上々の戦果でしょう?」

マール「……」

ほむら「なによ、その顔は。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ」

クロノ「いい加減にしろよ、ほむら!」

ほむら「……」

クロノ「君らしくないよ、こんなやり方! 君はもっと冷静で、頼りになる……」

ほむら「知ったような口を聞かないで」

クロノ「……!」

ほむら「私らしいって、なに? 私のこと、何も知らないくせに」

クロノ「それは君がちゃんと話してくれないからだろう!」


マール「やめて、ふたりとも! 仲間割れしてる場合じゃないでしょ……」

クロノ「マール……」

マール「じっとしてて……。クロノもほむらちゃんも、もうボロボロなんだから……。私に任せて……」

ほむら「……」

ほむら「クロノ。憎いなら、その刀で私を刺せばいいわ」

クロノ「……」

ほむら「でも、できるならまどかを助けてからにしてほしいわね」

ほむら「そのあとなら、私はどうなってもいいわ。好きにしてくれていいわよ」

クロノ「……ほむら……君は……」


マール「なに言ってるの、ほむらちゃん! 今のあなた、おかしいよ!」

ほむら「ええ、おかしいわ。仲間だなんだとぬるま湯に浸っていたことが、そもそもおかしかったのよ」

マール「やめて……。そんなこと言わないで……」

ダルトン「くそッ! お前ら……よくもやってくれたな!」


クロノ「ダルトン!」

ほむら「ちっ……しぶといヤツ。まだ生きていたのね」

ダルトン「シスターズがやられたか……! こうなりゃマスター・ゴーレムで……」



ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!

ほむら「! この地響き、魔王城の時と同じ……!」

ダルトン「な、なんだこの不気味な気の高まりは? これがマジもんのラヴォス!?」

クロノ「ちくしょう、時間がない!」

ダルトン「……永遠の力を手に入れたとしても、死んじまっちゃあ元も子もねえ……」

ダルトン「今日のところは見逃してやる! あばよッ!」


マール「逃げちゃった……」

ほむら「ほっときなさい。今は、まどかを助け出すことが最優先だわ」

クロノ「……サラも、だろ。きっとこの先だ。行こう!」

マール「う、うん……」

ほむら「そんなおびえた目で見なくても、後ろから撃ったりしないわよ」

マール「あ、や……そういうわけじゃ……」

クロノ「もうやめろ。行くぞ、ほむら」

ほむら「私に命令しないで」

マール「……」

B.C.12000 海底神殿 魔神器の祭壇


ほむら「まどか!!」

まどか「ほむらちゃん! 来てくれたんだ……」


ジール「貴様らか……。呼んだ覚えはないぞ」

クロノ「ジール、やめるんだ! ラヴォスは災いしか生まない!」

ジール「貴様らにはラヴォス様の偉大さが分からんと見える……。感じないのか? このゆらぎ……」

マール「こ、これ……次元のゆらぎ……」


サラ「み、みなさん……もう間に合わない……。逃げて……あああっ!!」

予言者「サラ!」

ジール「何をやっている! 魔神器の波長が乱れているぞ、サラ!」

ほむら「今よ……! こいつを食らいなさい!」

ジール「!? 魔神器が……! なんだ、あのナイフは!」


グラン「よし、行くぞリオン!」

リオン「うん、グラン兄ちゃん!」

グランとリオン「止まれえええええーッ!!!」


マール「あ、あれ!? ナイフが剣に……」

ほむら「やっぱりあれは、グランドリオン……!」

クロノ「よし、聖剣の力さえあれば!」

ジール「フ、フフフ……フハハハハ!」

ほむら「!? ……止まらない……」

サラ「い、いけない……あの剣だけでは、この力を抑えきることは……」

予言者「来る……!!」



ジール「ラヴォス神の降臨だ!! アハハハハハハッ!!!」

♪ラヴォスのテーマ


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ほむら「う……うそ……」

マール「これが……本物の……」

クロノ「ラヴォス……!」



『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


側近たち「!? ぎゃああああ……!!」

まどか「み、みんな……あっ!?」

ほむら「! いけない、まどか! 逃げて!」

まどか「……う……あ、あれ……? なんともない……」

巫女「ぼーっとしてんなよ、まどか」

まどか「巫女さん!?」

巫女「アタシが防御結界を張る。こいつとふたりで、隠れてろ」

サラ「まどか! 大丈夫!?」

まどか「サラちゃん!」


巫女「打ち合わせどおり、ふたりは避難させたぜ。やっちまえ、ジャキ」

予言者「どれほど待ちわびたことか……。この時がくるのを……」

魔王「久しぶりだな、ラヴォス!!」


マール「え……!? 予言者が……魔王!?」

まどか「あ、あれ……? ジャキくん? でもなんだかずいぶん年がいってるような……」

サラ「……」

ほむら「じゃあ……あなたは、やっぱり……」


巫女「やっぱりってなんだよ」

杏子「あーあ。ださいフードかぶってた意味ないじゃん」

魔王「お前は変装が下手すぎる。もっと隠す努力をしろ」

杏子「うっさいよ」

ジール「クックック……」

魔王「!」


ジール「偽りの予言者めが……こんなことだろうと思ったよ……」

まどか「ジールさん、なに言ってるの!? ジャキくんなんだよ!」

サラ「まどか……無駄よ……。母上はもう、正気を失っている……」

魔王「遠いあの日、俺は誓ったのだ。ラヴォス、貴様だけは……この手で叩き潰してやると!」

魔王「たとえそのために、何を失うことになろうともな……!」

杏子「……」


魔王「ついに誓いを果たす時が来た! 死ね、ラヴォスよ!」

ジール「できるかな、お前に? ラヴォス様の餌食にしてくれるわ!」

魔王「!? ……うぐ……ま、魔力が……吸い取られてゆく!?」

ジール「アッハッハッハ! その程度か?」

魔王「や、やられぬぞ俺は……ラヴォス……! 貴様を倒すためだけに、闇の中……俺は……!」

杏子「ジャキ! ……くそっ! そこにいろよ、ふたりとも!」

まどか「杏子ちゃん!」


ほむら「杏子、手を貸すわ」

クロノ「詳しい事情はまだ分からないけど……」

マール「今は、みんなでラヴォスを止めなきゃ!」

杏子「アンタら……」

ジール「愚か者どもめ……。ちっぽけな貴様らの力などラヴォス様には通用せぬわ!」


『カオティックゾーン』


ほむら「なっ!?」

魔王「ぐおおおおおっ!?」

杏子「うあっ!」

まどか「きゃあああっ!」

杏子「! くそっ……結界が……!」

サラ「う、ぐ……! 母上……もう……やめてください……。もう、これ以上は……!」

ジール「邪魔だてするな、サラ。もはや運命は変えられぬ」

ジール「ラヴォス様の偉大なる生命の力は、わらわの中に息づいておる。お前も、その一部なのだぞ?」


ジール「この世のすべての生き物は、ラヴォス様の中で一体となるのだ!!」

ほむら「まどか……せめて、まどかだけでもなんとか……」

ジール「ほう? まだ動ける者がいたようだな。存外にしぶとい……」


ジール「フフ……よかろう。わらわからの贈り物だ」

ジール「黒髪の女よ。永遠の生命となり、ラヴォス様の中で生きるがよい」

ほむら「!」

ジール「忘れてはおらぬぞ……。貴様が、わらわの顔にキズをつけたこと……」

ジール「喜べ! 貴様はラヴォス様の、最初のいけにえに選ばれたのだ! アーッハッハッハッ!!」



"あなたたちのうち、誰かひとり……死ぬよ、もうすぐ……"

ジール「! ……何のつもりだ?」

クロノ「……」


ほむら「ク、クロノ……!? あなた……何を……」

クロノ「ほむら。大切な人を守るって、大変だけど気分いいな」

ほむら「え……」

クロノ「ずるいぜ、君は。こんなカッコいいこと、たったひとりでやってきたんだろ?」

クロノ「君にとって大切な、まどかを守るってこと……ずっと続けてきたんだろ?」

クロノ「たまには、守られる側にも回ってみなよ。意外とそっちのほうが似合ってるかもしれないぜ」


ほむら「……私……は……あなたに守られる資格なんて……」

クロノ「そんなことを言っちゃダメだ」

ほむら「……」

クロノ「守られる資格がないとか、どうなってもいいとか、自虐するのはよしてくれ。悲しくなるだろ?」

ほむら「クロノ……」


クロノ「僕は君やルッカのように頭がいいわけじゃあない」

クロノ「バカだから……目の前で君が辛そうにしているのをほっておけないんだ」

クロノ「ただ、それだけなんだ……」

クロノ「悪かったよ、さっきは。決戦を前に、僕もちょっと変にテンションが上がっちゃったみたいだ」

ほむら「……私の……ほうこそ……」

クロノ「……へへっ。良かったよ、喧嘩したままじゃあ、覚悟が鈍っちゃうからね」

ほむら「なに……なにを言ってるの……クロノ……」

クロノ「みんなにゴメンって伝えといてくれ」

ほむら「やめ……やめて……!」


ジール「やるというのか? 異国の少年……お前に何ができる」

クロノ「……」

ほむら「クロノ……! ダメ……逃げて……!」

クロノ「ほむら。もうひとつだけ、お願いしてもいいかな」

ほむら「え……?」


クロノ「頼ってくれよ、僕を。僕らを……」

ほむら「! ……」

クロノ「君の力になりたいんだ。きっとみんな、そう思っている……」



クロノ「じゃ……あとは任せたぜ、リーダー」

ジール「その傷ついた体でただひとり、ラヴォス様に挑むのか? ククク……勇敢なことだ……」

クロノ「ジール……そしてラヴォス……。お前たちの好きにはさせない……!」

ジール「虫ケラめが……。死ねい! ラヴォス様の力を見よ!」


クロノ「うおおおおおおおおおおおーッ!!!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」



「クロノ……!? クロノーッ!!!」

ジール「アハハハハハハハッ! ゴミクズのように消し飛びおったわ!」


マール「クロノ……!? クロノは、どこ……!? いやあーッ……!!」

ほむら「……うそ……うそよ……」

まどか「ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……」

サラ「……クロノ……」


ゴゴゴゴゴ...!!

杏子「! やべえ、神殿が……!」

ジール「崩れるか……まあよかろう。ラヴォス様の聖なる住処として、生まれ変わってもらうとするか」

ジール「その前に、まずは不要となった以前の住居をきっちり掃除しておかねばな……」

魔王「待て、ラヴォス……!」


ジール「さあ行きましょう、ラヴォス様。この星のすべてをあなた様の支配下に。フハハハ……!」



魔王「……ぐっ……。俺の力では、ヤツに勝てぬというのか……!」

杏子「ジャキ、どうする!? ここは海の底だぞ!」

魔王「無駄だ……もはや……脱出はかなわん……」

杏子「あきらめるのかよ!?」

サラ「私の最後の力を振り絞れば、みなさんを地上に飛ばすことぐらいはできるでしょう」

まどか「サラちゃん!?」

サラ「許されるはずはないけれど……どうか母を……この国を憎まないで……。ごめんなさい……」


魔王「……サラ!」

サラ「ジャキ……さようなら……」

杏子「光が……!?」

まどか「サラちゃん! ダメ、やめて! あなたも一緒に……!!」

サラ「まどか……今まで、ありがとう……。私、あなたのこと忘れないよ……」

まどか「サラちゃん……! わたし、わたし……!」

サラ「泣かないで、まどか。きっとまた会えるから」

サラ「忘れないで。私はずっとあなたのそばにいる。ずっと、守ってあげるから」

サラ「だから……ほんのちょっとだけ……お別れ、だね……」


まどか「サラちゃああああああんッ!!!」


…………


サラ「……まどか……」

サラ「……」


QB「鹿目まどかは数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった特別な存在だ」

サラ「……キュゥべえ」

QB「しかし、サラ。驚くべきことに、君にもまどかに劣らない素質がある」

QB「まったく、どういうわけだろうね? こんなすばらしい魔法少女候補が同時に存在するなんて」

サラ「ずっと狙っていたのね、あなたは……こうなることを……」

QB「ラヴォスは浮遊大陸を破壊し、その後この星のすべてを焼き尽くすだろう」

QB「君の魔力はさっきの転送ですべて尽きてしまった」

QB「サラ。君は、この星の本当の運命と向き合えるかい? いや、無理だね」


QB「それに、必要もない。僕なら、君の中に眠る魔法の力を限界を超えて引き出すことができる」

QB「避けようのない滅びも、嘆きも、すべて君が覆せばいい」

サラ「……」



QB「さあ、サラ・キッド・ジール——その魂を代価にして、君は何を願う?」

サラ「……私の……願いは……」



「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した」


第6話「本当の運命と向き合えるかい?」 終了


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今回はここまでです。それでは、また明日。

第7話「こんなの絶対おかしいわ」


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B.C.12000 残された村


ほむら「……」

マール「……うう……クロノ……クロノ……!」

まどか「……サラちゃん……」


ほむら「私たちだけ……か……」

アルゲティ長老「倒れていたのは、あんた方だけじゃった。そのキョーコさんとやらも、見当たらん」

ほむら「ここは……地の民の村?」

アルゲティ長老「海底神殿から起こった大災害で、たったひとつ残された村じゃ」


アルゲティ長老「何もかも無くなってしもうた。浮遊大陸も、ラヴォスに破壊され崩壊した」

アルゲティ長老「じゃが、ラヴォスは不思議な光に包まれて再び眠りについた。吹雪も晴れた……」

アルゲティ長老「ワシら人間はまた、ここからやり直すべきなのじゃろう……」

ほむら「ボッシュさんは……」

アルゲティ長老「大災害の時、黒いゆがみのようなものが現れての……」

アルゲティ長老「吸い込まれそうになったジャキ様を助けようと、ボッシュ様を含め、三賢者様はみな……」

ほむら(ゲートか。ジャキ……たぶん、子供のほうね……。じゃあ魔王は……)


まどか「サラちゃんはどうなったの……」

アルゲティ長老「分かりませぬ……。サラ様の姿は誰も見ていない……」

まどか「そんな……」


アルゲティ長老「無事なのは、あんた方の船ぐらいじゃ。驚くほど頑丈じゃな」

アルゲティ長老「あんたらのあとを追うように、ここに流れ着いておった。不思議な船じゃ……」

ほむら「シルバードは無事なのね……」

アルゲティ長老「鹿目様。これを……」

まどか「これ……サラちゃんのペンダント……。どうして……」

アルゲティ長老「鹿目様の肩の上にありましたんじゃ。そう、まるで守るようにのう……」

まどか「……」


ほむら「戻りましょう……。時の、最果てに……」

年代不明 時の最果て


ルッカ「ウソ! ウソよ!! クロノが死んだなんて……冗談でも、そんなこと言わないで!!」

マール「……」

マミ「冗談じゃ……ないんですね……」

カエル「なんてこった……。サイラスばかりか……クロノまでも……」

エイラ「負けた者、死ぬ。大地のおきて。……でも……」


ルッカ「ほむら!! あんた何やってたのよ! あんたがついていながら、どうして!」

ほむら「……」

ルッカ「……ッ! なんとか言いなさいよ!!!」

ほむら「っ……!」


ロボ「ルッカ!? やめてクダサイ! 喧嘩はいけマセン!」

ルッカ「放しなさい、ロボ!!」

ロボ「イイエ、放すのはアナタデス! ほむらの胸倉をつかんだその手を放してクダサイ!」

ルッカ「だって……! だって、こいつが……!!」

ロボ「それ以上言ってはいけマセン! その先を言えバ……取り返しがつかなくなりマス……」

ルッカ「……ぐっ……」

ほむら「……」


ロボ「落ち着いてクダサイ。ほむらのせいではありマセン。イエ、誰のせいでもナイ……」

ルッカ「分かってる! 分かってる……けど……」

まどか「……」

さやか「まどか、大丈夫? 顔が真っ青だよ?」

まどか「さやかちゃん……。ひどすぎるよね、こんなの……絶対、おかしいよ……」

さやか「……」


ルッカ「おかしいと思ったのよ……。やっぱりあんた、普通じゃなかった……」

ほむら「……」

ルッカ「それが分かっていながら、どうして……。なんでついて行かなかったの、私は……」

ルッカ「クソ……。日和ったあの時の私を、ぶっ飛ばしてやりたいわ……」

マミ「ルッカさん……」

エイラ「……むぅ……」

ルッカ「……あきらめないわよ……」

ロボ「ルッカ?」

ルッカ「シルバードが無事だったんだもの……。クロノだって、きっと……」


ルッカ「ほむら! なにボサッとしてんの!」

ほむら「……え……」

ルッカ「必ず手がかりはあるはずだわ。もう一度戻るわよ、古代に!」

ほむら「でも……彼は、もう……」

ルッカ「あーもう! ウジウジした空気は嫌いなのよ!」ムニー!

ほむら「ひょっ……ひゃめへ……ほほをふめらはいで……」

ルッカ「私が言いすぎた! やりすぎたわ、ゴメン!」

ほむら「……」

ルッカ「しっかりしてよ、ほむら……。あんたがそんな調子だと、張り合いがないのよ!」

ほむら「ルッカ……」


ルッカ「任されたんでしょ……クロノに!!」

ほむら「……!」

ほむら「そう……そうね……。嘆き悲しむのはあとにしましょう」

ルッカ「よっしゃ! 頼むから、ローテンションほむらちゃんはこれっきりにしてよね」

ほむら「……善処するわ」

ルッカ「なんか頼りないなあ〜。やっぱり私がついてないと、ダメね!」

ほむら「はいはい」


ロボ「仲直りハ早いうちニ。オオゴトにならズ、ホッとしまシタ」

ほむら「ロボ……。あなたが仲裁してくれたおかげよ」

ロボ「イエイエ、ワタシは何もしていマセン」


カエル「クロノはお前に任せるか。頼んだぜ、ほむら」

ほむら「カエルさん、どこに行くの?」

カエル「ああ、気にするな。お前の話を聞いていて、気になることがあったからな。すぐ戻る」

マミ「ねえ暁美さん。古代に行くなら、エイラも連れていってあげてくれないかしら?」

ほむら「エイラを?」


マミ「最近、体がなまっちゃってるみたいなのよね。本当なら私も行きたいところだけれど……」

エイラ「エイラ、あばれる!」

ルッカ「いいんじゃない? エイラなら、何があっても大丈夫そうだし」

ほむら「分かったわ。よろしくね、エイラ」

エイラ「任せろ!」

マール「ほむらちゃん……」

ほむら「マール、ごめんなさい。確かにルッカの言うとおり、最近の私はどうかしてたわ」

ほむら「クロノはそれを教えてくれたのよね。やっと、分かった……」

マール「……」


ほむら「彼にもう一度会って……謝って……ちゃんと、ありがとうって言わないと」

マール「……うん! クロノ、きっと待ってるよ!」

B.C.12000 残された村 広場


アルゲティ長老「おや、戻ってきたのか……」

ほむら「あのあと、なにか変わったことはあった?」

アルゲティ長老「変わったのはお前さんじゃないかね? 目に生気が戻ってきとる」

ほむら「え……」

アルゲティ長老「フォッフォッ。まぁそれはさておき、変わったこと、か……」

アルゲティ長老「あるぞ。それも、少々やっかいな問題じゃ」

ほむら「問題って……」


親衛隊A「え〜い、頭が高い! 新王ダルトン様のおな〜り〜!」

アルゲティ長老「ほれ、噂をすれば……じゃ」

ダルトン「なんだなんだ、おめえら! せっかく生き残ったってーのにそのシケたツラは!」

ほむら「ダ、ダルトン!? あいつ……」


ダルトン「あのイカれた女王も、こざかしい予言者もいなくなった」

ダルトン「しかぁ〜しッ! どんなときでも上に立つ者は必要だ! ん? そう思うだろう?」

ルッカ「あれがダルトン? 聞いた話以上にウザそうなヤツね」


ダルトン「そこでだ! このダルトン様が迷える子羊どもを導いてやろう! 感謝しろ!」

地の民たち「Boooooooo!!!」

ダルトン「ええい、黙れ黙れ! いいか、これからジール王国は『ダルトン王国』とするッ!!」

地の民A「冗談じゃねぇぞ! ほら、あんたも文句言ってやれ!」

光の民「ええ!? わ、私ですか? しかし、私は……あのダルトンのようにあなた方を……」

地の民B「関係ないわよ。浮遊大陸もなくなった今、生き残った私たちは運命共同体なんだから」

地の民A「そういうこと! いいか、俺の真似をして立てた親指を下に向けるんだ」

光の民「こ、こうでしょうか……」

地の民B「うまいわよ!」


村民たち「Boooooooo!!!」

ほむら「皮肉なものね。王国とともに、差別意識も破壊されたなんて」

ルッカ「あのダルトンってヤツ、そういう意味ではなかなかいい悪役してるじゃない」

ルッカ「人が団結するには共通の敵を作るのが手っ取り早いってね」

ほむら「本人はそんなこと考えてもいないでしょうけど。ただ欲望に忠実なだけだわ」


エイラ「ハハハ! お前ら、面白い! エイラもやる!」

地の民の子供「ボクもやるですー!」

村民たち「KA・E・RE!! KA・E・RE!!!」

ダルトン「ぐぬぬぬぬぬぬ……! 人が優しくしてりゃ付けあがりやがって……」

ダルトン「愚民連中には少しばかり教育が必要なようだな! おい、兵士ども!」


親衛隊A「はッ、ただちに! 貴様ら、調子に乗る……ニャー!?」バリバリ!!

親衛隊B「うおおっ、なんだこの凶暴な女は!」

エイラ「こいつら、傷つける。エイラ、ゆるさない!」


ダルトン「なっ……誰だお前は!? ええい、何とかしろ!」

親衛隊C「む、無理ですぅ〜。この人、強すぎますぅ〜」

ほむら「さすがエイラね。私たちが出る幕もなかったわ」

ダルトン「お、お前……テロリストの女か! しぶとく生き残ってやがったとは……」

ルッカ「テロリストって……あんた何やったのよ」

ほむら「やんごとなき理由によるものよ」


ダルトン「お前がここにいるということは……そうか、外にある乗り物はお前らのか」

ダルトン「以前ガッシュが設計していたものとそっくりだ……大方、それも盗んだんだろう!」

ルッカ「ちょっとちょっと。とんだ言いがかりよ。あれは譲り受けたもので……」

ダルトン「事実などどうでもいい! よーし、決めたぞ」

ダルトン「お前らにゃ過ぎたオモチャだ。この新王ダルトン様の愛機にしてやろう!」

ほむら「なに勝手に決めてるの? あなたバカなの?」

ダルトン「こ、この口の減らないガキめ……。おい、この犯罪者をひっとらえろ!」


親衛隊B「や、やめろ! 噛むな! 俺はおいしくないぞ!」

親衛隊C「ダルトン様ぁ〜! 助けてくださいぃ〜」

エイラ「逃げるな! 戦え!」


ダルトン「……」

ほむら「部下の失態は上司の責任。上に立つって大変よね」

ダルトン「お……おのれ……」

ルッカ「で、どうしましょうか。こいつ、縛っちゃったほうがいいのかしら?」

ダルトン「……」


ダルトン「あっ!? 女王陛下!!」

ほむら「えっ!?」

ダルトン「引っかかったなァーッ!!」

ほむら「うあっ!」


ダルトン「ヒャアッハッハッハ!! 捕まえたぞ、これで形勢逆転だなあ〜?」

ほむら「しまった……!」

ルッカ「ちょっと! なんちゅー古典的な手法に引っかかってるのよ!」

ほむら「く、屈辱だわ……」

ダルトン「そこのメガネと金髪の女! 仲間を殺されたくなければ、おとなしくしやがれ!」

エイラ「むお?」ガジガジ

親衛隊B「なんか噛まれるの気持ちよくなってきた……」

ルッカ「くそ……ほむらが人質にされてちゃ手が出せない……」


ダルトン「ついてきてもらおうか。安心しろ、お楽しみは黒鳥号に戻ってからだ……」

ダルトン「お前らにはたっぷりお仕置きしてやる。エロ同人みたいにな!」

親衛隊A「本が薄くなるな……」

ダルトン「ヒャアッハッハッハッハ!!」


…………


B.C.12000 黒鳥号 営倉


ほむら「う……」


ルッカ「やっとお目覚めか」

ほむら「ルッカ……ここは……」

ルッカ「飛行船の中よ。黒鳥号って言うらしいけど」

ほむら「飛行船……? そんなものまで……」

ルッカ「理の賢者ガッシュが設計したものを、彼の失踪後にダルトンが指示して完成させたみたいね」

ほむら「ずいぶん詳しいわね」

ルッカ「ヒマだったからね。いろいろ調べたわ」

ほむら「調べたってどうやって……」

エイラ「お? ほむ、起きたか!」

ほむら「エイラ!? どうして上半身だけ壁から……!?」

ルッカ「よく見なさい。エア・ダクトよ。ここからこっそり抜け出して、機内の様子を探ってたの」


ルッカ「で、どうだった? 私たちの装備、見つかったかしら?」

エイラ「小部屋、ある! 武器、いっぱい!」

ほむら(そういえば身包みはがされてるわね。ソウルジェムが無事だったのは不幸中の幸いか……)

ほむら(素っ裸にされたわけでもなし。服飾の一部と思われたのかしら)

ルッカ「オッケー。ほむらも目が覚めたことだし、そろそろ脱獄といきましょうか」

ほむら「なんだかずいぶん手馴れてるわね」

ルッカ「こちとら二回目だっつーのよ。慣れもするわ」

ほむら「あなたこそ、いったい何やったのよ……」

ルッカ「言っとくけど、つかまったのは私じゃないからね」


エイラ「エイラ、穴、はさまった! 助けろ、ほむ!」

B.C.12000 黒鳥号 エア・ダクト内


ほむら「狭いわね……」

ルッカ「贅沢言わない」

ほむら「おまけにホコリっぽいし……。ちょっと! おしりさわらないで!」

エイラ「すまん。エイラ、間違えた」

ほむら「気をつけてよ、もう……」

エイラ「ほむ、ケツ小さい。元気な子、産めないぞ。マミ、デカイ。見習う!」

ほむら「大きなお世話よ……」

ルッカ「ちょっと静かにして。通風孔から下が見えるわ。格納庫……?」

B.C.12000 黒鳥号 格納庫


ダルトン「貴様らっ、キリキリ働けよ! 手を抜いたりしやがったら、承知しねえからな?」

ダルトン「なにしろコイツは、この新王ダルトン様の空飛ぶ玉座なんだからな!」

整備班「うぇ〜す……」

ダルトン「コイツが完成すりゃあ、この世界は俺様の意のままだぜ。ヒャアッハッハア!」


…………


ほむら「あ、あいつシルバードを……」

ルッカ「なんてことすんのよ! シルバードは私が改造する予定だったのに!」

ほむら「怒るとこ、そこ?」

エイラ「シルバード、助ける! ほむ、ルッカ、武器取り戻す! 早く!」

B.C.12000 黒鳥号 武器庫


親衛隊A「エロ同人みたいにってことはよォ〜、やっぱ複数人プレイなんかね?」

親衛隊B「俺、無理やりは好きじゃないんだよなあ。なんとかラブラブえっちに持ち込めないかな」

親衛隊A「無理だろ……」

親衛隊C「えっちなのはいけないと思います!」

親衛隊A「まぁなんにしても、ダルトン様のお許しがないことには何も……ん?」チョンチョン


親衛隊A「誰だ、俺を呼ぶの……わあッ!?」

エイラ「ニイメンハオ」

親衛隊B「お、おま……!?」

エイラ「あいさつは?」


ドタン ガタン! ギャー! ウワー!!!

親衛隊たち「きゅ〜……」


ルッカ「はい、お疲れさま」

エイラ「エイラ、武器、この体! 戦える!」

ほむら「エイラをつれてきて正解だったわね」


ルッカ「さてと。装備を取り戻したはいいけど、どうしたものかしら。脱出しても空の上じゃあね」

ほむら「ブリッジをおさえる?」

ルッカ「乗っ取りか。それしかないかな……」

ほむら「じゃあ、もう一度エア・ダクトを通って……」

ルッカ「待って。それよりもいい手があるわ。この部屋にあるコレを使って……」

B.C.12000 黒鳥号 通路


警備兵「……」

警備兵「! 誰かそこにいるのか!?」

警備兵「……なんだ、ダンボールか。やれやれ、見回りも楽じゃないよ……」


ルッカ「見たか! 古今東西、潜入任務にはダンボールよ!」コソコソ

エイラ「この箱、すごい。エイラ、土産、する」コソコソ

ほむら「なんでバレないのかしら……」コソコソ

B.C.12000 黒鳥号 主翼


ゴオオオオオオオ!!!

ほむら「か、風が……!!」

ルッカ「ハシゴから手を離したら死ぬわよ!!」

ほむら「こんな危険なところからブリッジに上がる意味はなんなのよ!!」

ルッカ「なに!? 聞こえない!!」

ほむら「わざわざ外から回る理由はって聞いてるの!!」

ルッカ「真正面はさすがに無理でしょ!! 奇襲よ、奇襲!!」

ほむら「その前に死んだら意味ないわよ!!」


エイラ「おー。ここ、見晴らしいい。ほむ、ルッカ、はよ来い」


ほむら「なんでエイラは平気なの!!」

ルッカ「チートだからでしょ!!」

ほむら「最近こんなのばっかりよ、もう!!」

マスターゴーレム「脱走犯、見つけたの」

ほむら「!」

マスターゴーレム「可及的速やかに処理すべしとの命令なの」

ルッカ「や、やばい! この状況じゃ……エイラ! 助けて!」


エイラ「雲、流れる、すごい速さ! 風、気持ちいい!」キャッキャッ


ルッカ「聞こえてねえええ!!!」

マスターゴーレム「超破壊必殺魔法〜!」

ほむら「なんとかしてよルッカ! あなた天才なんでしょ!」

ルッカ「私にだって……できないことぐらい……ある……」

マスターゴーレム「5、4……2……」

ほむら「ま、まずい!」


マスターゴーレム「え〜と……どこまで数えたっけ? 5、4……」

ほむら「え?」

マスターゴーレム「……2……ダメん、こわい〜!」

ルッカ「は?」

マスターゴーレム「たかいとこニガテなの〜! うわ〜ん!!」

ほむら「……」


ルッカ「どっか行っちゃった……わね」

ほむら「あれ、ダルトンのゴーレムよ。確か以前、マスターゴーレムがどうのこうの言ってたし……」

ルッカ「ああ……。だと思ったわ……」

B.C.12000 黒鳥号 格納庫


ダルトン「へーちょ」

整備班長「風邪ですか?」

ダルトン「ふん、下界ではこの新王ダルトン様の噂で持ちきりなのだろうよ」

整備班長「はあ……」

ダルトン「それより! まだ完成せんのか!?」

整備班長「ご安心ください。たった今、すべての作業が終わったところであります!」

ダルトン「よし、見せろ!」

ダルトン「……ほう」

整備班長「いかがですか? 閣下のご要望どおり、美しい翼でしょう!」

ダルトン「脚がないようだが?」

整備班長「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」

整備班A(偉い人ってダルトン様だよな)

整備班B(ていうか飛行機に脚は必要ねえだろ)


ダルトン「うむ、気に入ったッ! さっそく処女飛行といくぞ!」

♪クロノ・トリガー


管制官「進路クリア、オールグリーン! 発進どうぞ!」

整備班長「整備班退避! ハッチ開け! ダルトン様が出られるぞ!」


ダルトン「待て待て待てぇ〜いッ!!」

整備班長「は? 発進中止ですか?」

ダルトン「そうではない! 音響班、BGMが違うだろうが! やり直せ!」

整備班長「……」

♪危機一髪


ダルトン「フハハ! これだ、これだ! 出すぞ!」

管制官「あ、えと……発進どうぞ……」

整備班長「ハッチを……え、もうとっくに開いてる? あ、そうですか……」



ダルトン「よおおぉ〜しッ! 新王ダルトン様の玉座、名づけて……」

ダルトン「『スカイ・ダルトン・ギョクーザ』!! 発進んん〜ッ!!!」

B.C.12000 黒鳥号 主翼


ほむら「くっ……もう少しで、ブリッジに……」


キイイイイイン...!!

ルッカ「なに? 耳鳴り!?」

ほむら「! 違うわ……あれは!」


ダルトン「ヒャヒャヒャアーッ!! 実に気分爽快だ!」

ルッカ「シ、シルバードが……」

ほむら「飛んでるーッ!?」

ダルトン「む? あんなところに虫ケラどもが……」

ダルトン「ちょこまかとうっとうしいヤツらだ! ちょうどいい、レーザー砲の試運転といくか!」

ダルトン「空のもくずと消えろーッ!! ヒャハハ!」


ルッカ「な、なんか撃ってきそうよ!?」

ほむら「ダメ、避けられない!」

エイラ「ほっほーい!!」

ほむら「エイラ!」

ルッカ「もっと早く助けなさいよね、もう!」


ダルトン「チッ、はずしたか!」

ダルトン「あの金髪女、なんつー身体能力だ。人ふたりを抱えて飛び跳ねられるとは……」

ダルトン「だがしかぁ〜しッ! そう何度も避けきれるかな!?」


ルッカ「また来るわよ!?」

エイラ「ほむ、ルッカ。つかまれ、しっかり。離すな!」

ほむら「え……ちょっと……」

ルッカ「ま……まさか……」


エイラ「大ジャアァァァ〜ンプッ!!!」

ほむら「いやああああああっ!!!」

ダルトン「なにいいいっ!?」

エイラ「ほいっ! っと」

ダルトン「こ、こいつ……飛び移りやがった!?」


ルッカ「落ちる落ちる落ちる!!」

ほむら「ダルトン! どきなさい!」

ダルトン「アホぬかせ! どいたら俺様が落ちて死ぬだろうが!」

ルッカ「シルバードはあんたのオモチャじゃないっつーの!」

ダルトン「シルバードではない! スカイ・ダルトン・ギョクーザだ!!」

ほむら「なによそのダサい名前! エイラ、ここ開けて!」

エイラ「ぶっ壊していいのか?」

ダルトン「バカ、やめろ! ハッチが!」

ダルトン「あばばばばばば! 俺様の高貴なるヘアーが風で乱れる!!」

ほむら「どけ……っつってんでしょ……!」

ダルトン「やめろ、押すな! 押すなよ! 絶対に押すなよ!」

ルッカ「はいはい……! 押せってこと……よ、ね!」

ダルトン「俺様は芸人じゃねえ! だから押すなって!!」

ほむら「くっ……こいつ、意外にしぶとい……!」


ダルトン「調子にのりやがって! いでよ、マスターゴーレム!」

ルッカ「残念、あんたのゴーレムはさっき逃げ出しちゃったわよ!」

ダルトン「ぬ、ぬあにぃ〜!?」

ほむら「往生際が悪いわよダルトン!」

ダルトン「くそ……こうなっては俺様の最終兵器を使わざるを得んな……!」

ほむら「最終兵器ですって!?」

ルッカ「こいつ、まだそんなものを!?」

ダルトン「切り札は最後まで取っておくもんだぜ!」

エイラ「やらせない!」

ダルトン「遅いわあッ! 食らえッ!!」



『オナラぷー』ブボボモワッ

ほむら「はあ!?」

ルッカ「サ、サイアク! レディの前でおならを……」

エイラ「? 臭い、ないぞ?」

ダルトン「……」


ほむら「……? こいつ、仁王立ちのまま動かないけど……」

ルッカ「! そうか、そういうことね!」

ほむら「なにがよ?」

ルッカ「私たちがいるのは船首方向、対してダルトンは船尾方向。つまり、風下……」

ほむら「……まさか!」



ルッカ「そう……ヤツは『自爆』したッ!!」

ダルトン「……」ヒュウウウウウ...


ルッカ「気絶したまま落ちてったわね……」

ほむら「ビネガーといい、ダルトンといい、なんで落下オチなのよ……。こんなの絶対おかしいわ」

エイラ「ダルトン、死んだか?」

ほむら「どうかしら。あいつ、空間を操る魔法の使い手らしいし、途中で気づけば……」


ビー! ビー!

ほむら「今度はなによ!」

エイラ「シルバード、落ちる! 大変!」

ほむら「高度が……! ルッカ、どうにかならないの!?」

ルッカ「ちょっと待ってよ! くそ、あいつらが変にいじくり回したせいで操縦方法が……!」


ルッカ「ええと、ええと……こ、これかな?」ポチッ

『Laser system running』

ルッカ「えっ」

B.C.12000 黒鳥号 艦橋


ブリッジクルー「スカイ・ダルトン・ギョクーザより再攻撃!」

艦長「ええい、ダルトン様は気でも違ったのか!? 我らを殺すおつもりか!」

ブリッジクルー「主翼がやられました! 墜落します!」

艦長「もういい! 総員退艦! 急げ!!」

B.C.12000 残された村 広場


光の民「黒鳥号が、墜ちる……」

アルゲティ長老「なんちゅうもろい船じゃ」

地の民A「ダルトンのヤツ、ざまあねーや!」


地の民B「見て、あそこ!」

アルゲティ長老「おお……。あの船は異国の者たちの……飛んでおる……!」

B.C.12000 シルバード


ルッカ「ふーッ、大体わかったわ」

ほむら「大惨事が起きたけどね」

ルッカ「ま、まあいいじゃない? どのみち、黒鳥号をほっておくわけにはいかなかったでしょ」

ほむら「それはそうだけど」

エイラ「シルバード、元気! シルバード、鳥なった!」

ほむら「怪我の功名ってやつかしら。これで、行動範囲が一気に広がるわね」


ズズズズズズ...!!!

ほむら「なに!?」

ルッカ「シルバードの時空ジャイロに高エネルギー反応!? まさか……ゲート!?」

ほむら「あれは……」

♪黒の夢


エイラ「デカイ巻き貝!」

ルッカ「船? いえ、城? とてつもない存在感だわ……」

エイラ「アレ、憎んでる! エイラたち憎んでる!」

ほむら「私たちを呼んでいるの……? この感じ……以前にも……」


ほむら「間違いない……。あそこに、ジールが……ラヴォスが、いる!!」

エイラ「ラヴォス! 突入するか?」

ほむら「いえ、やめておきましょう。今の私たちでは勝てる見込みがないわ」

ルッカ「シルバードもメンテしなきゃいけないしね」

ほむら「そういえばハッチが壊れたままか……」

エイラ「このイス、臭い」

ほむら「ダルトンのアレね……」

ルッカ「それに関してはロボになんとかしてもらいましょう。こんなときのための消臭機能だし」

ほむら「ロボも災難よね……」

ルッカ「そして、シルバードが万全になったら……! この子さえいれば!」

ほむら「ルッカ?」


ルッカ「クロノを探すわよ! 世界中をめぐり、いくつもの時代を越えてでもね!!」

ほむら「……」

ルッカ「付き合ってもらうわよ、ほむら」

ほむら「……任せておいて。迷路の出口を探すのは、慣れてるから」

ルッカ「どういうこと?」

ほむら「……そのうち、ね」

ルッカ「また秘密主義ってわけ? まーいいけど」

エイラ「クロ、強い! クロ、死なない!!」



ほむら「そうね。探しに行きましょう……クロノを」


第7話「こんなの絶対おかしいわ」 終了


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中編終了。今日はここまでです。

それでは、また明日。

第8話「そんなの、私が許さない」


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  よろしくない

ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!


サラ「魔神器が……!」

ボッシュ「駄目か! グランドリオンをもってしても止めることができぬ!」

ガッシュ「やはりムリであったか!? 人の手で、この力をコントロールするのは……!」

ハッシュ「むう……! この次元のゆがみは……!?」

ボッシュ「いかん……! このままではヤツの次元の渦にのみこまれるぞ!!」


ジャキ「姉上ッ!!」

サラ「いけない、ジャキ! 来てはダメ……!」

ジャキ「で、でも……!?」

ズズズズズズ...!!!

ボッシュ「こ、これは……!!」

ハッシュ「まさか、タイムゲート!?」

ガッシュ「しまった……!!」


ジャキ「あ……姉上ーッ!!」

サラ「ジャキッ!?」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


…………

………

……


ジャキ「う、うう……ここは……」


ジャキ「姉上!? 姉上、どこにいるの!」

ジャキ「誰もいない……。それに、見たこともない森の中だ……」

ジャキ「ラヴォス……! ちくしょう、ちくしょう……!!」


…………


ジャキ(夜が更けてきた……)

ジャキ(あれから歩き回ったけど、木ばっかりで何もない……。出口も分からないし……)

ジャキ(どこなんだよここは……。くそ……もう……歩けない……)

ジャキ「……」

ジャキ(おなか減ったなあ……)


アオオオォォーン!!!

ジャキ「!? ……遠吠え……獣の……」

ジャキ(そうだよな……森なんだし……いる、よな……)

ジャキ(……エサとして食べられてしまうかも……。ここで死ぬのか……ボクは……)


ジャキ「……あね、うえ……」


…………


ジャキ「……ハッ!?」

???「ん? よっ、目が覚めたかい?」

ジャキ「な、なんだお前!?」

???「なんだはねえだろ。命の恩人に向かってさ」

ジャキ「恩人……?」

???「森ん中でぶっ倒れてたのを助けてやったんだ、感謝しろよ?」

ジャキ「助けたって……ここはまだ森の中じゃないか!」

???「しょうがねえだろ。アタシだって、ワケ分かんねえうちに突然こんなとこ飛ばされたんだ」

ジャキ「……使えないヤツ」

???「……口の利き方がなってねえな。誰かさんそっくりだよ」

ジャキ「誰かさんって誰のこと……」グウゥゥ...

ジャキ「……ッ!」

???「アハハッ。お前、腹減ってるんだろ?」

ジャキ「う、うるさいな……え?」


???「食うかい?」

ジャキ「これ……リンゴ?」

???「そこの木の上に生えてたんだよ。ま、オコサマにはちょっと手が届かないかな?」

ジャキ「……」シャクシャク

???「お前なあ……ありがとうぐらい言えねえのかよ、ったく」

ジャキ「『お前』じゃない。ジャキだ」

???「は?」

ジャキ「名前だよ」

???「あ、そ。アタシにも『お前』じゃなくてちゃんとした名前があるんだけどね」

ジャキ「聞いてやるよ」

???「……っとに、可愛くないな。まあいいか……」



杏子「アタシは佐倉杏子だ。よろしくな、ジャキ」


————

———

——


B.C.12000 北の岬


魔王「お前と出会ったのも、それが最初だったな……。あれから色々あったものだ……」

杏子「……」

魔王「何年たってもお前はあの時のままだな、杏子」

杏子「魔法少女はピーク年齢まで成長したらそこで止まるんだよ。誰に聞いたか忘れちまったけど……」

杏子「っつーか、なんなんだよ。思い出話をするために、わざわざこんなトコまで来たのか?」

杏子「ラヴォスとの戦いで受けた傷だって癒えちゃいないんだろ。なのに……」


魔王「お前との奇妙な縁もこれで終わりということだ」

杏子「はあ!? なんだよ、それ! まだこれからだろ!」

杏子「あの空に浮かぶ『黒の夢』——変わり果てちまった海底神殿に乗り込んで、ラヴォスを倒すんだろ!」

魔王「話は終わりだ。迎えが来た……」

杏子「え?」

カエル「気づいてやがったのか、魔王……」

魔王「人の過去話を盗み聞きとは、いい趣味だな……」

カエル「偶然聞こえちまっただけだぜ」

杏子「カエル男……」


魔王「我が城でラヴォスを呼び出すことをお前に邪魔され、杏子とともにたどり着いた先がこの時代……」

魔王「皮肉なものだ。歴史を知る私は、予言者として女王に近づきラヴォスとの対決を待った……」

魔王「ヤツが作り出した渦に飲まれ中世に落ちて以来、私はヤツを倒すことだけを考え生きてきた……」

魔王「そう、それだけだった……。すべてを犠牲にするつもりだった……」

杏子「ジャキ……?」


魔王「だがどうだ? 結果は、このザマだ。私には甘さがあった……だから負けたのだ!」

魔王「お前のせいだ、杏子。お前のせいで私は弱くなった……」

杏子「……」

魔王「私は立ち返らねばならぬ……。あの日感じた、憎しみの業火の中にな……」

魔王「ラヴォスの前では、すべての者に黒き死の風が吹きすさぶ。ちっぽけな情などヤツの前ではゴミ同然」

魔王「そんなものに頼る弱き者は虫ケラのように死ぬ。あのクロノとかいうヤツと同じようにな!」

カエル「……! あいつを侮辱する気か……!」


魔王「剣を抜け、カエル……いや、グレン。お前にかかずらうのも、もはやこれまで」

杏子「!」

魔王「ここで決するとしよう。一騎打ちでな!」

カエル「……」

魔王「どうした? 疲弊した私を殺すこともできぬほど、お前は弱いのか!」

杏子「やめろ! やめてくれ、ふたりとも!」

魔王「邪魔をするな、杏子! これはヤツと私の、男の矜持をかけた戦いだ!」

杏子「なにが男だ! 今のアンタは、ただのひねくれジャキ坊やだよ!」

魔王「なんだと……!?」


杏子「一度失敗したくらいであきらめて、自棄になって……」

杏子「挙句、自分でケリをつける勇気がないから、コイツに殺してくれって頼んでるだけだろ!」

魔王「……」

杏子「ふざけんじゃねえぞ……。そんなの、アタシが許さない!」

杏子「カエル男……いや、グレン、だっけか」

杏子「ジャキに手を出すってんなら、アタシが先に相手になる!」

カエル「……」


杏子「二度も……失うのは、ゴメンなんだよ!」

カエル「……もういい」

杏子「え?」

カエル「今キサマを倒したところでクロノは戻って来ん……。サイラスもな……」

魔王「……」


カエル「魔王。お前はさっき、仲間の情などくだらんと言ったが、俺はそうは思わない」

カエル「『時代を超えて人間が、この星そのもののためにひとつになれば』」

魔王「……!」

カエル「お前の時代の人間、理の賢者ガッシュが遺した言葉だぜ」

カエル「佐倉杏子。お前は魔王城で対峙したあの時、俺たちを殺そうとはしなかった」

カエル「そうしようと思えばできたはずなのにな。これで、借りは返したぜ」

杏子「アンタ……」


カエル「お前の言うとおりだ。一度失ったものを取り戻すには、大変な労力が要る」

カエル「大事にしてやれ……。恋人なら、な」

杏子「は? なんのこと?」

カエル「へ?」

杏子「ジャキがアタシの恋人? なんだよそれ、ありえねー。ていうかキモい」

カエル「キモい!?」

魔王「……」


杏子「コイツはアタシの弟みたいなもんだよ。家族同然のヤツを大切に思うのは、当たり前だろ?」

カエル「え、家族? 同然? ファミリー的な……?」

杏子「それともなに、アンタ近親相姦フェチ? うわー、勇者サマってやっぱぶっ飛んだ思考してるわ」

カエル「やめろォォ! 俺をイジって三枚目キャラにおとしめるのは、さやかだけで十分だ!」

カエル「俺はシリアス担当、俺はシリアス担当……」ブツブツ

杏子「な、なんだよコイツ。急にいじけだしたぞ」

魔王「フ……ククク……。これでは勇者ではなく、ただの道化師だな……」

杏子「ジャキ?」


魔王「グレン。私と杏子を連れていけ」

カエル「な、なに!? ふざけるな、そこまでしてやる義理はない!」

魔王「ヤツを……クロノを生き返らせる手、ないわけではない……」

カエル「なんだと? 何を知ってるんだ、お前……」

魔王「詳しく話してやる。さあ、杏子の仲間のもとへ案内しろ」

年代不明 時の最果て


さやか「っとに、あんたはもう……。敵対したり、仲間になったり、なんだっつーのよ!」

杏子「悪かったって。落ち着いたら、話すよ」

マミ「でもこれで、バラバラになったみんながようやくそろったわね!」

ほむら「ここまで長かったわ……」


まどか「あの……ジャキくん……」

魔王「鹿目まどか。その呼び方はやめろ」

まどか「ぇう……なんだか怖いよ、ジャキくん……。前みたいに、お姉ちゃんって呼んでくれないの?」

魔王「……」

カエル「さて、魔王。そろそろクロノを生き返らせる方法ってやつを教えてもらおうか」

マール「……!」


魔王「『クロノ・トリガー』……別名、『時の卵』だ」

ほむら「時の卵?」

魔王「失った時を戻し、死者をよみがえらせる……」

魔王「運命を『やり直す』ための、禁忌の扉を開くことができる唯一の鍵……」

ほむら「運命を……やり直す……」

ルッカ「まさしく神の所業ね。で、それはどこにあるわけ?」

魔王「時の賢者ハッシュが研究していたと聞いている」

ロボ「ハッシュさんはどこにいるのデスカ?」

魔王「……知らん」

さやか「ダメじゃん!」


マミ「それでも、何も手がかりがないよりはマシじゃないかしら?」

ほむら「そうね。シルバードで、まだ訪れたことのない場所をしらみつぶしに当たってみるわ」

さやか「気の長い話だな〜……」

マール「私も行くよ、ほむらちゃん!」

ほむら「いても立ってもいられないって感じね。いいわ、行きましょう」


ルッカ「時の卵か……。未来の情報センターで何か分からないかな?」

ロボ「デハ、ワタシたちはそちらへ向かいマショウカ? ガッシュさんにも話を聞いてみマショウ」

ルッカ「シルバードはほむらたちが使うから、私たちはゲートで行くわよ!」


エイラ「マミ! 卵、いっぱいある! イオカ、行く!」

マミ「うーん……食用卵とは違うと思うけど。でもまあ、じっとしているよりは、いいか」

さやか「あたしらはどうしよ? 師匠」

カエル「そうだな。俺たちはボッシュのじいさんのほうでも当たってみるか」

さやか「じゃあ現代だね!」


杏子「やれやれ、忙しいやつらだな」

魔王「人ひとりのためにご苦労なことだ」



まどか「……」


…………


数日後


さやか「ダメだあ〜。なんにも分かんなかったよ〜」

カエル「ボッシュのじいさんも知らないとなると、な……」

さやか「ゲートでバラバラになったんじゃね……。あたしらだって、お互いの場所は知らなかったわけだし」


さやか「マミさんのほうはどうだったっすか?」

マミ「ダメね。まあもともと、可能性は薄かったけど……」

さやか「戦利品はケーキだけか。つか、なんでケーキ作ってきてるんですか……」

マミ「だ、だってエイラが食べたいって言うから……」

エイラ「うまっ! めちゃうまっ! ふわふわ! 卵、ふわふわ、なった! マミ、まじ魔法使い!」

カエル「お前ら何しに行ったんだよ……」

さやか「あとは、ほむらとルッカさんのほうで何か……お、噂をすれば」

ヒュウウウウウン...

カエル「シルバードの駆動音か。帰ってきたみたいだな」


ほむら「何か分かった?」

カエル「それを聞くということは、そっちもダメだったみたいだな」

マール「うん……」

ほむら「マール、大丈夫よ。まだ行ってないところはたくさんあるのだから」


杏子「ジャキ。アンタ、ほんとにハッシュの所在、知らないのか?」

魔王「……」

まどか「……」


老人「みな、苦労しているようじゃな」

まどか「管理人さん……」

老人「幸せですな、クロノさんは。こんなにも思ってくれる人たちがいる……」

まどか「そう、ですね……」


老人「死んだ者を生き返らせる。今まで何人の人が、望んだことだろうね」

老人「だがそれは、決してかなわぬ、かなえてはならぬ願いじゃ。そうは思わんか、まどかさん」

まどか「わたしは……」

老人「命はひとつであるもの。時の流れは、人の手によっておいそれと変えていいものではない」

老人「神に近づこうとした人間はみな、重くつらい業を背負うことになる。それは、歴史が証明しておる」

老人「運命がその者に滅びと絶望を与えるのであれば、甘んじて受けるべきじゃ。違うか?」

まどか「それは違います!」

老人「ふむ?」

まどか「あ……いえ……すべてが違うわけじゃ……。管理人さんの言うことも、もっともだと思います……」

老人「続けなさい」

♪クロノとマール 〜遠い約束〜(クロノ・リメンバー)


まどか「わたし……誰かにばっかり戦わせて、自分で何もしない卑怯な子で……なんの取り柄もなくて……」

まどか「でも、ほむらちゃんと出会って……わたしのために、苦しんでるのに……」

まどか「わたしを……守ってくれて……望んでくれて……」

まどか「さやかちゃんも……マミさんも杏子ちゃんも……みんな……がんばってて……」

まどか「わたしなら……なんでもできるって……でも、なんにもしちゃいけないって……」


老人「……」

まどか「ごめん、なさい……。なに言ってるか、分かんないですよね……。頭、ぐちゃぐちゃで……」

まどか「サラちゃん、が……ひっく……わたしと同じように、無力な自分に……悩んでて……」

まどか「友達に……なれたのに……助けてあげられたのに……わたし……う、うう……」

まどか「サラちゃん……最後は……わたしを守って……ううん……きっと……」

まどか「きっと……今もどこかで、戦ってると思うんです……。ペンダントが、教えてくれてる……」

老人「サラのペンダントか……」

まどか「わたしも……何かしたい……! でも、分からないんです……。何を願えばいいのか……」

まどか「だから……ぅ、ぐっ……ぇぅ……これだけは……信じ続けようって……」


まどか「希望を抱くのが……間違いだなんて言われたら……わたし……」

まどか「そんなのは違うって……何度でも……いつまでも……言い返す……って……」

まどか「……ひっく……ぇぐ……うわあああああん!!」

老人「……」


…………


老人「……落ち着いたかね?」

まどか「はい……。あの、すみませんでした……」

老人「ええんじゃよ。私のほうこそ、泣かせてしまってすまんかったの」

まどか「そんな……管理人さんのせいじゃ……」


老人「お前さんの気持ち、聞かせてもろうた。若いのう。もろくはかなく、とても危うい」

まどか「う……。や、やっぱり、そうでしょうか……」

老人「それだけに、とてもみずみずしい。私は、そういうもののほうが好きじゃよ」

まどか「管理人さん……」

老人「ジジイのたわごとに付きおうてもろたお礼じゃ。お前さんにこれを差し上げよう」

まどか「これは?」

老人「『時の卵』じゃ。その卵をかえす方法は、あの時の翼を作った男に聞きなさい」

まどか「えっ!?」


老人「結局のところ、正しい答えなんぞないのかもしれん……」

老人「だが答えや結果のために行動するわけじゃあるまい? 行動するから結果がついて来る……」

まどか「管理人さん……。もしかして、あなたが……時の賢者……ハッシュさん……」

老人「フフ……。そう言われたこともあるような気がするよ……。そう、はるか昔……な」



老人「まどかさん。ゆっくり探すとええ。お前さん自身が導き出す、お前さんだけの答えを、な」

カエル「驚いたな。なぜお前がこれを?」

さやか「ていうか持ってたなら早く出してよ! あたしら骨折り損じゃんか〜」

まどか「えっと……別にわたしが持ってたわけじゃ……」

マミ「ハッシュさんから譲り受けたの? 彼、どこにいたのかしら?」

まどか「そ、それは……あのぅ……」チラッ


老人「……」ニコニコ

まどか「ど……どこなんでしょうね?」

マミ「ええ???」


ほむら「もういいじゃない、質問攻めはかわいそうよ。大切なのは、時の卵が入手できたということ」

杏子「お手柄だぜ、まどか! あとはコイツの使用法をガッシュのジジイに聞きに行けばいいんだろ?」

ルッカ「その必要はないわ!」

ほむら「ルッカ。いつ帰ってきたのよ」

ロボ「先ほどデス。ハッシュさんの居所は分かりませんデシタガ、時の卵について情報を入手しまシタ」

さやか「やるじゃん! で、どうやって使うの?」


ルッカ「時の卵をかえす方法は、大きく分けて三つ」

ルッカ「ひとつ。本当にその人が大切で、その瞬間に戻りたいと心の底から強く願うこと」

ルッカ「ひとつ。『死の山』に赴き、山頂にて言霊をつむぐこと」

ルッカ「ひとつ。そのものを時の流れの外に連れ出すならば、代わりとなる存在を用意すること」

ルッカ「以上よ」

ほむら「最後のひとつがよく分からないわね。『代わりとなる存在』ってなに?」

ロボ「ガッシュさんが言うにハ、『ドッペル人形』……その人ソックリの人形でもアレバ、という話デス」

さやか「そんなの、どこにあんのさ」

ルッカ「それについても調べてきたわ。『ノルシュテイン・ベッケラー』なら制作が可能よ」

マール「あ、その人知ってる! 世界的に有名なマジシャンで、父上が千年祭にゲストとして呼んでたよ」

ルッカ「というわけで現代のリーネ広場に行くわよ、ほむら!」

ほむら「はいはい」


まどか「……あ、あの!!」

ほむら「まどか、どうかしたの?」

まどか「あのね、ほむらちゃん……。わたしも、連れていってくれないかな?」

ほむら「え?」

マミ「ドッペル人形を手に入れたら、次は死の山よ? 危険じゃないかしら」


まどか「分かってます。でも、お願いします。なんの役にも立たないかもしれないけど……」

まどか「もう十分、泣きました。だから今度は……探しに行きたいんです」

老人「……」

ほむら「……分かったわ。一緒に行きましょう」

まどか「ありがとう!」


杏子「いいのかよ?」

ほむら「危険があれば私が守るわ。その代わり、サポートお願いね」

まどか「うん! お薬ぐらいならわたしでも使えるよ!」

杏子「……ふーん……」

カエル「そういうことなら、スペッキオのヤツに頼んでみればいいじゃないか」

さやか「スペッキオって戦の神様の?」

カエル「鹿目が俺たち同様、魔法の民の子孫であるならば、その力を引き出してもらえるだろ」

さやか「うーん……それっていいのかな……」

カエル「何か問題があるのか?」

ほむら「……」


魔王「……無駄だと思うがな」

杏子「どういうことだよ?」

魔王「試してみればいい。すぐに分かる」

スペッキオ「ダメだ」

まどか「え? ダ、ダメってどういうこと……?」

スペッキオ「おめー、どエラい力持ってる。オレ、手に負えない」

まどか「……」

スペッキオ「あきらめろ。オレ、おめーにしてやれること、ない」

まどか「ダメだったよ……」

魔王「やはりな」

エイラ「まど、血、引いてないか?」

魔王「そうではない。あのスペッキオというヤツは、私の力を引き上げることも不可能だった」

魔王「神とうそぶいているが、強大な力を扱うことはできぬようだ」

魔王「あるいは、あえて避けているのかもしれぬがな……」


カエル「当てが外れたな……」

ほむら「……まあ、問題ないわよ。当初の予定どおりなんだし」

まどか「やっぱりわたしじゃ、なんの力にもなれないのかな……」

マール「まどかちゃん……」

ルッカ「……と、ここで、殺伐としたスレに天才ルッカちゃんが!!」

ほむら「は?」

ルッカ「ロボ、アレを持ってきなさい!」

ロボ「まどかさん、ドウゾ」

まどか「これは……ボウガン?」


ルッカ「ただのボウガンじゃないわよ。ロボのパーツを流用することにより、大幅パワーアップ!」

ルッカ「従来の手持ちタイプでなく腕部装着型に変更、連射速度・射程・威力ともに申し分なし!」

ルッカ「おまけに軽量・無反動・自動照準機能つきでオコサマでも安心!」

杏子「よい子は使っちゃダメだぞ。杏子お姉さんからのお願いだ」

ルッカ「矢の装填もカートリッジ式でスムーズ! 使い方は簡単、ハンドルを回すだけ!」

ルッカ「どーですか、奥さん!」

マミ「えっ、わ、私……? えっと……このボウガンのおかげで私にも友達ができました!」

ロボ「効果には個人差がありマス」


ルッカ「さらには今回、キャンペーンといたしまして……」

ルッカ「アタッチメントとして付け替え可能な小型大砲や炸裂弾もご用意!」

マミ「あらステキ。でもお高いんでしょう?」

カエル(巴が悪ノリしだしたぞ……)

ルッカ「いえいえ、ここまでお付けしてお値段……なな、なんと! たったの9980G!!」

マミ「ええ!? そんなに安くて大丈夫なんですか?」

ルッカ「はい、決して損はさせません。さあみなさん、今すぐお電話を!」


ロボ「フリーダイヤル『0120 - 6578(るっかちゃん) - 1031(てんさい)マデ」

ロボ「商品番号96番『狂戦士の連弩』デス。深夜ですノデ電話番号のお間違えないようご注意クダサイ」


ほむら「チャンネル変えていい?」

まどか「えっと私、お金持ってないんですけど……」

カエル「こいつのアホに付き合わんでいい」

ルッカ「アホとはなによ。ま、もともとお金なんて取るつもりはないわ」

マール「いいなー。私も欲しいよ!」

ルッカ「残念だけどこれ1台きりよ」

まどか「ありがとう、ルッカさん!」


ほむら「もういいかしら? いい加減、話を進めたいのだけれど」

A.D.1000 リーネ広場 ベッケラーの小屋


ベッケラー「ようこそ、ノルシュテイン・ベッケラーの実験小屋へ。世にも恐ろしいショウが始まるよ」


ルッカ「この人がノルシュテイン・ベッケラーね」

ほむら「人っていうか……顔と手だけしかないんだけど……」

まどか「ベッケラーさん! お願いがあるんです……」


ベッケラー「ドッペル人形がほしい? 君たちのかい?」

まどか「えっと、私たちのじゃなくて、クロノさんっていうんですけど……」

ベッケラー「ふむ。本人しかダメなんだが今日は特別さ。それじゃあ今からゲームをしてもらおうか」

ルッカ「ゲ、ゲーム?」

ほむら「まあ、タダでもらえるわけはないわよね……」

ベッケラー「アシスタント、カモーン!」

クロノ?「……」

ルッカ「えっ!? ク、クロノ……!?」

ほむら「違うわ、人形よ……」

まどか「そっくりだね。でも、どうして……」


ベッケラー「おや、君たちが欲しいのは彼だったのかい?」

ベッケラー「偶然だなあ。つい最近、ふと思い立って作ってみたんだよ」

ほむら(こいつ……何者……)

ベッケラー「さて、これからやってもらうのは『モノマネゲーム』さ!」

ほむら「それって、クロノが夢中になってた……?」


ベッケラー「ルールは簡単、このドッペルくんと同じポーズをとり続けるだけ!」

ベッケラー「みごとパーフェクトを達成すれば、彼は君たちのものだ!」

まどか「パーフェクトって何回やればいいんですか?」

ベッケラー「そうだなあ……じゃあ100回」

ルッカ「ひゃ、100回!?」


ベッケラー「それじゃあいくよ。ドッペル・ゴー!」


…………


デデーン! マドカ、アウトー!

まどか「ぁうっ!」パチーン!


デデーン! ルッカ、アウトー!

ルッカ「う゛いッ!!」バシーン!!


デデーン! ホムラ、アウトー! タイキック!!

ほむら「いやあああ!!!」

ルッカ「ぜぇ……はぁ……」

まどか「うう……おしりがヒリヒリするよお……」


ベッケラー「おやおや〜? クレジットがなくなっちゃったみたいだね」

ベッケラー「シルバーポイントを貯めて、また来てよ!」


…………


まどか「なんか、後半に進むにつれてスピードが上がっていってましたよね……」

ルッカ「無理。あきらめましょう」

ほむら「早いわよ! あきらめたらそこで試合終了よ……!」

ルッカ(タイキックされて涙目になってるくせに……)

まどか「どうしよう……。あのお人形さんが手に入らないと、時の卵が……」

ほむら「仕方ないわね、彼女の手を借りましょう。ふたりはここで待っていて」

ルッカ「誰を連れてくる気よ?」

ほむら「魔法少女界の高橋名人よ」


…………


杏子「誰が高橋名人だ!」


ほむら「任せたわ、名人」

まどか「がんばって、名人ちゃん!」

ルッカ「期待してるわよ、名人」

ベッケラー「今度はその子が挑戦者かい? 『高橋名人』でスコア登録していいのかな?」


杏子「違うっつってんだろ! アタシの名は……『クイーン』」

杏子「ゲームセンターあらしとして名を馳せ、あまりにも有名になりすぎたがゆえに出禁店多数……」

杏子「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 『ゲームマスター・クイーン』とはアタシのことだ!!」


ほむら「暇だったのね……普段……」

杏子「モノマネゲーム? へっ、『Dog Drug Reinforcement.』で鍛えたアタシにかかりゃ楽勝だぜ」

ベッケラー「たいした自信だね〜。じゃあいくよ? ドッペル・ゴー!」


…………


話の流れ的に杏子はワルプルギスから直接中世(ジャキが飛ばされた辺り)に飛んだ感じじゃないのか?
なんか無理矢理+600歳にさせようとしてる感じしかしないんだが

杏子「……どういうことだ……オイ……」


「Marvelous! Rank『A+』!!」

ベッケラー「こりゃすごい。『キング』のハイスコア更新だ!」


杏子「なんでパーフェクトが出ねえんだよ!!」

ほむら「最後のところでミスったわね」

ルッカ「おしかったわねえ。今回こそはと思ったのに」

まどか「杏子ちゃんでもダメかあ……」

杏子「クソッ、まだだ! もう1回やらせ……いてて……尻がいてぇ……」

ほむら「もうシルバーポイントがないわよ」

>>802
違うぞ?B.C.は数字がでかい程過去になる、しかもタイムホールで移動してるから実際には、A.D.500〜570位にジャキが来てたと思う、だから杏子は百才超えたかどうかだろ、魔王だから寿命は分からんが一応人間だし、無茶な年齢じゃないはず。

???「見苦しいぞ、クイーン」

杏子「!? 誰だ!」

???「我が名は『ジャック』……」


ジャック「貴様の実力はその程度か? フ……。クイーンが聞いてあきれる……」

杏子「なんだと……! 急に出てきやがって、なにもんだ、テメェ!!」



まどか(あっ、ジャキくんだ)

ほむら(仮面かぶってるけど、あれ魔王よね?)

ルッカ(いつの間に来たのよ……)

ジャック「どいてもらおう。次は俺の番だ」

杏子「ヘン、どうせ一発ミスだろ」

ベッケラー「1回40シルバーポイントだよ」

ジャック「……これで足りるはずだ」

ベッケラー「はい、確かに。それじゃあいくよ。ドッペル・ゴー!」


ジャック「はああああ……ッ!!!」カッ!!


                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧
                     /  /

                 (^o^)/ てめえがパーフェクトなんか
                /(  )    取れっこねえって思ってるなら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三
 ( /
 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す

「Congratulation! Rank『S』!! Perfect!!!」


杏子「う、うそだろ、オイ……何がどうなってやがんだ……」

まどか「すごい! 一発クリアだ!」

ジャック「フ……。こんなもの、児戯に等しい……」


ベッケラー「いや〜、たまげたね。おめでとう、ドッペル人形進呈だ!」

ジャック「そのようなもの、俺には必要ない。そこにいるヤツらにでもくれてやれ」

ほむら「……いいの?」

ジャック「かまわん。オーディエンスを沸かすのは、王者の勤め……」

ルッカ(ていうか魔王なんだから、最初から私たちのものよね)

杏子「くそ……このまんまじゃ引き下がれねえ……!」


杏子「ジャック! クイーンとして、テメェに勝負を申し込む!」

ジャック「ほう……。勝負方法は?」

杏子「この広場の全ゲームで、ハイスコア勝負だ!」

ジャック「ククク……よかろう……。だが決闘(デュエル)には立会人が必要だ……」

杏子「それなら……ルッカ! 頼むぜ!」

ルッカ「なんでよ! 嫌よ!」

>>476-477が伏線かと思ったが違ったか

杏子「これで文句ねえだろ? さあ、とっとと始めようぜ!」

ジャック「クイーンの名、今日限りで返上させてやろう……。フゥーハハハ!!!」

杏子「テメェこそ、あとで吠え面かくなよ!」

ルッカ「はーなーせええぇぇぇ……!!」


…………


まどか「ジャキくんが楽しそうで何よりだよ!」

ほむら「あ、そうですね……はい……」

>>821
おっしゃるとおり、そこは伏線です。ただし、別のかたちで。

ベッケラー「もう行くのかい? じゃ、これはオマケだ」

まどか「え? これ……私たちのドッペル人形?」

ほむら「私のと、まどかのと……ルッカのまであるわね……」

ベッケラー「大変有意義な時間をすごさせてもらったからね。お礼だ。突貫制作だけど、我慢してくれよ」


ベッケラー「本当は、クイーンとジャックの分も渡そうかと思ったんだけど……」

ベッケラー「彼らはハイスコア登録者だ。ゆっくりじっくり、作らせてもらうよ」

ベッケラー「完成したらこの小屋にでも飾っておこうか。彼らも有名になるだろう」

ほむら(どっちかっていうと、さらし者よね……)


ベッケラー「君たちの幸運を祈ってるよ。時の卵、かえるといいね」

まどか「! どうしてそれを……」

ベッケラー「さてね。三賢者のじいさんたちに会ったら、よろしく伝えといておくれ」

A.D.2300 監視者のドーム


マール「というわけで補充メンバーとして私が来たよ!」


まどか「時の卵とドッペル人形、そろえてきました!」

ガッシュ「うむ、よいじゃろう。死の山がお前たちを受け入れる時が来たようじゃの」

ガッシュ「ゆめゆめ忘れるな。チャンスは一度きり。よく考えて行動するのじゃぞ」

ほむら「……」


ガッシュ「私がこの物体に入力した、本当に最後のプログラム……」

ガッシュ「お前たちをあの山へ導くサポートシステムを起動させよう。少し下がっていなさい」

「プログラム スイコウ カイシ!」

「リョウカイ! モクテキチ シノヤマ!」

「リョウカイ! リョウカイ!」


マール「わっ!? なんか飛んでったよ?」

まどか「小さなお人形さんみたいでしたけど……」

ガッシュ「今、旅立った三つの分身が、お前たちを死の山から守ってくれるじゃろう」

ほむら「ありがとう、ガッシュさん。何から何まで……」


ガッシュ「扉を開いた者たちよ。進むがよい。君たちの先に、きっと『未来』がある……」

ガッシュ「この星を……託したぞ……」

なぞの物体「プログラム『ガッシュ』ハ終了シマシタ。電源ヲキッテクダサイ」

なぞの物体「プログラム『ガッシュ』ハ終了シマシタ。電g……。……」



マール「……」

ほむら「……お疲れさま、ガッシュさん……」

まどか「……おやすみなさい……」

A.D.2300 死の山 ふもと


まどか「うぅ……すごい強風! 目を開けていられない……」

ほむら「また風なの……」

マール「ふたりとも、こっちにわき道があるよ! ここから登ろう!」


…………


プチラヴォス「キュアアオォアオーン...!!!」


マール「はあ……びっくりしたあ。ラヴォスかと思っちゃった」

ほむら「ガッシュさんの研究によると、今のはラヴォスの幼生体ね」

マール「子供なら、今の私たちでもなんとかなるもんだね〜」


ほむら「まどか、大丈夫?」

まどか「うん。ルッカさんのボウガンのおかげで、わたしもなんとか戦えるよ!」

マール「まどかちゃんの援護、ばっちりだったもんね」

ほむら「ルッカはエイラがチートだと言っていたけれど……こと機械に関しては、彼女も十分チートよね」

A.D.2300 死の山 中腹


まどか「開けた場所に出ちゃいましたね」

マール「うーん。ここから先はこの風の中を進むしかないのかなあ……」

まどか「ちょっとでもバランスを崩したら、あおられて転がり落ちちゃいそうですよ……」

ほむら「死の山に吹きすさぶラヴォスの黒き風……か」

マール「あれ? ちょっと待って。道の途中に何かあるよ?」

まどか「あ! あれ、ガッシュさんが飛ばしたお人形さんですよ!」

マール「なんであのお人形さんの周りだけ風が吹いてないんだろ?」

ほむら「……! まさか、防御結界!? とても微弱だけれど……」


まどか「結界って、マミさんや杏子ちゃんが使ってるやつ?」

ほむら「それと同じかどうかは分からないけど、似ているわ。つまり、風除けね」

マール「お人形さんを盾にして進めばいいんだね! ちょうど三つあるし!」

まどか「ガッシュさんのおかげですね!」

ほむら「山頂は近いわ。行きましょう」

A.D.2300 死の山 山頂


まどか「ここが……死の山のいただき……」

マール「枯れ果てた木が1本あるだけで、なにもないね……」

ほむら「こんなところに長時間いたら、頭がおかしくなってしまいそうだわ」


マール「そうならないうちに、早いとこやっちゃおうよ!」

まどか「じゃ、ほむらちゃん。これ……」

ほむら「……」

ほむら(時の卵……運命をやり直せる神の品……)

ほむら(これがあれば……どんな時代でも、どんな瞬間にも戻れる……)

ほむら(……そう……どんな瞬間にも……)


まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「えっ!? あ……よ、呼んだかしら?」

マール「ぼーっとしちゃって、どうしたの? 言霊忘れちゃったとか?」

ほむら「いえ、大丈夫。ちょっと感慨にふけっていただけ……。始めるわよ」


マール「いよいよだね……」

まどか「はい……」

ほむら「……」

ほむら「……夜にふるえる、すべてのおもいよ……」

ほむら「……やみに立ち向かう、すべての生命……」

ほむら「……願わくば、我に力を……!!」


キイイイイイン...

マール「ペンダントが!」

まどか「共鳴してる……!!」



ほむら「今こそ……あの瞬間へ!!!」


ピシッ!!!

パキィィ...ィン......



ほむら「……え?」


まどか「た……卵が……」

マール「砕け……ちゃっ……た……」


ほむら「そんな!? どうして!!」

まどか「……失敗……しちゃった、の……? わたしたち、なんのためにここまで……」

マール「……うそ……。クロノ……返事をして……! 私をおいて行かないで……!!」

まどか「マールさん……」

ほむら「……」



『ひとつ。本当にその人が大切で、その瞬間に戻りたいと心の底から強く願うこと』



ほむら「……私の……せい、だ……」

まどか「ほむらちゃん……?」


ほむら(わ、私……そんなつもりじゃ……ただほんの少し、頭の片隅によぎっただけなのに……)

ほむら(どんな瞬間にも戻れるなら……もしかして、まどかの絶望の運命を変えられる瞬間が……)

ほむら(……ち、違う……私は……本当に……そんなこと……)



『ゆめゆめ忘れるな。チャンスは一度きり。よく考えて行動するのじゃぞ』



ほむら(忘れていた……。私……同じ時間を何度もめぐり続けるうち……忘れてしまっていた……)

ほむら(こ、怖い……! 『やり直せない』ことが……こんなにも、怖いものだったなんて……!)


ほむら「あ、ああ……あああ……!!」

まどか「……大丈夫、ほむらちゃん。私の手を握って?」

ほむら「ま、まどか……私……」

まどか「怖くないよ。わたしたちがいるからね……」

ほむら「え……」


マール「……」

ほむら「マール……あ……あの……私、失敗して……」

マール「ううん、ほむらちゃんのせいじゃない。きっと、あなたに全部任せちゃった私のせい」

マール「今度は私たちもそばにいるよ。だからあきらめないで、もう一度……ね?」

ほむら「無理……無理よ……。たとえもう一度チャンスがあったとしても……」

ほむら「きっとまた、同じ過ちを繰り返してしまう……。今までだって、ずっとそうだったもの……」

マール「今まで、何があったの?」

ほむら「そ、それは……」


マール「ふふ。ルッカの言うとおり。ほむらちゃんって、秘密が多いね」

マール「でも信じるよ、私。ほむらちゃんのこと……どんな結果になっても……」

ほむら「どうして……あなたは……何も知らないのに、そんな風に言えるの……」

マール「うーん、なんでかな? わかんないけど、たぶん、こういうことなんだと思う」



マール「クロノも、同じだったでしょ?」

ほむら「……!!!」

まどか「さあ、ほむらちゃん」

マール「もう一度、願って」



「あなたは、今、誰を救いに行きたい?」


————

———

——


ほむら「……」


ほむら「長い……気の遠くなるような長い、時の迷路を越えて……」


ほむら「あなたを迎えに来たわよ……」



ほむら「……クロノ」


マール「すごい……。本当に、あの時の……海底神殿でラヴォスと戦った時のままだ……」

まどか「みんな静止してる……あの時のわたしたちも……。これが時間の停止された世界なんだ……」

ほむら(なつかしいわね、この感覚……)

ほむら(そっか。こんなにさびしいものだったのね、私のいた世界は……)


クロノ「————」

マール「ドッペル人形とすりかえて……と」

ほむら「これで、ラヴォスに消されるのはクロノ本人ではなく人形になるわけね」

マール「ああ、クロノだ! 生きてるよね!? クロノ、帰ろう。みんなのもとへ……!」

まどか「……」

サラ「————」


まどか「ごめんね……。助けてあげたいけど、ダメなの……」

まどか「わたし、もう泣かないよ。分かったんだ、あなたがそばにいてくれてるってこと」

まどか「だから……わたし、行くね」



まどか「……ありがとう、サラちゃん」

サラ「————」


————

———

——


クロノ「……」


クロノ(暗い空だ……風も冷たい……。そうか……僕は死んで、地獄に落ちたのか……)

クロノ(まいったなあ。これでも、真っ当に生きてきたつもりだったんだけど……)

クロノ(ルッカ……ほむら……。僕は、みんなの役に立てたんだろうか……)

クロノ「……」


クロノ(マール……。僕は……君のことを……)

マール「クロノ!!!」

クロノ「……え? マール……どうして? 君も死んだのかい……?」

ほむら「なにを言ってるの、しっかりして。あなたは生き返ったのよ」

クロノ「ほむら……それに君は、まどか……」

まどか「クロノさん、無事で良かった……」

クロノ「どういうことなんだ? 僕が生き返ったって……」


マール「……っ!」


まどか「わ、わわ……!」

クロノ「な、なんだよマール!? 急に抱きついてきたりして……」

ほむら「だ、大胆ね……」

マール「……」

♪クロノとマール 〜遠い約束〜


みんな…… みんな、待ってたんだよ。

もう…… 遠くへ行っちゃあ……、ダメだよ…

クロノがいない間にね…… いろんな事が……のよ…… そして……

……そこでね……私が…… …したの……でも……


……ねえ、クロノ! 聞いてるの?



まだまだ、ぜんぜん話したりないんだから……

年代不明 時の最果て


ルッカ「この大バカ者! マヌケ! 甲斐性なし!」

ルッカ「あんたがいないあいだ、すっごく大変だったんだから! 今度ヘマしたら、助けてやんないわよ!」

クロノ「……」

ルッカ「マールが……それに、ほむらも……でも……私だって……」

クロノ「泣くなよ……」

ルッカ「な、泣いてないわよ! バカ! ホントに……バカなんだから……!」

ほむら「あのルッカが泣くとはね」

ロボ「彼女モひとりの女の子ということデス。それにシテモ、本当に良かっタ……」

カエル「お前は幸せ者だぜ。こんなにみんなに思われてよ」

さやか「今のクロノさん、マジ主人公状態っすね!」

エイラ「クロ、戻ってきた! みんな、元気!」

マミ「ほんと。クロノさんがいるだけでこんなにも場が和むなんて……」

杏子「ハッピーエンドってヤツかね? な、ジャキ」

魔王「……フン。まだ何も終わっていないぞ」

まどか「もう〜、ジャキくんもちゃんと祝ってあげないとダメだよ!」

マール「ね、みんな! 今日は……今日ぐらいは、パーッと騒いじゃってもいいよね?」

ロボ「クロノの復帰祝いデスネ」


さやか「一発芸やってよ、師匠!」

カエル「やらん!!」


エイラ「岩石クラッシュ! 旅出る前、エイラ、持ってきた! 祝い事、酒! 飲む!」

マミ「あらあら……」

まどか「ま、マミさん? よだれ出てますよ……?」

ほむら「マミを止めて。えらいことになるわよ」


魔王「私は参加せんぞ」

杏子「カタイこと言うなよ。どうせ全員、強制参加だろ」

魔王「チッ……」

クロノ「いやあ、僕のためにこんな……なんか、申し訳ないな」

ルッカ「何言ってんのよ、クロノ」

クロノ「え?」

ルッカ「あんた主賓でしょーが。そんなとこ突っ立ってないで、さっさと来なさい!」

クロノ「お、おい、引っ張るなって!」


マール「クロノー! なにしてるの、早くー!!」


…………


ほむら「……」


クロノ「ほむら、こんなところにいたのか。みんなの輪の中に加わらないでいいのかい?」

ほむら「……アレに加われと?」



さやか「うっひゃっひゃっひゃ! 師匠の腹芸、サイコー!!」

カエル「くひひ、ワイルドだろぉ〜? まだまだ行くぜ!」

マミ「ダメよぉ〜! ちゅぎは私が脱ぐ番なんだからぁ〜!」

エイラ「いいぞ! エイラも脱ぐ!」

ルッカ「女の価値は乳のデカさで決まらないっつーのよ! ウガー!!」

マール「すー……すー……」

まどか「うぅ……ん……。やめて……もう飲めないよ、マミさん……」

ロボ「オヤオヤ、こんなところで寝ていてハ風邪を引きマスネ。毛布をかけてあげなけれバ……」


魔王「う……ぐ……! くそ……負けん……! 俺は酒などに負けはせんぞ……!」

杏子「意地張るなよ。ほら、気持ち悪いならこの袋の中に吐けって」

魔王「や、やめろぉ……! 俺の背中をさするんじゃあない……ッ!」



クロノ「……ハハ。みんな、楽しんでくれてるみたいでいいんじゃないか?」

ほむら「笑顔がひきつってるわよ」

ほむら「あなたこそ、主役が抜け出してきていいのかしら?」

クロノ「ん……そうだな。ちょっとばかし、ほむらに聞きたいことがあったからね」

ほむら「なに?」

クロノ「時の卵のこと、聞いたよ。失ってしまったものを取り戻せる唯一の方法だって」

ほむら「……」


クロノ「僕は君の事情を知らない。でもなんとなく分かる」

クロノ「本当に良かったのか? 君は……もっと別のことに、卵を使いたかったんじゃ……」

ほむら「クロノ」

クロノ「お、おお? どうしたんだ、そんなに怖い顔して……」

ほむら「それ以上言わないで。もし、あなたを救ったことが間違いだと言う人がいたら……」



ほむら「そんなの、私が許さない」

クロノ「……」

ほむら「聞きたいことはそれだけ?」

クロノ「ん? あ、ああ……」


ほむら「じゃあ、今度は私から質問。私の事情、あなたは知りたい?」

クロノ「え……」

ほむら「どっち? 知りたいの? 知りたくないの?」

クロノ「いや、それは……ど、どっちだろ……」

ほむら「……ハァ。あなたって、優柔不断よね」

クロノ「ええ!?」

ほむら「マールもルッカも大変ね、これは」

クロノ「なんのことだよ?」

ほむら「おまけに鈍感ときた。どこのラノベ主人公よ、あなたは」

ほむら「いいわ。私の秘密、すべてとはいかないけれど、話してあげる」

クロノ「え?」

ほむら「私たちの最後の秘密。魔法少女と魔女の関係……。そうね、みんなにも話さなきゃね」

クロノ「それが、君の事情なのか……?」

ほむら「言ったでしょう? すべてとはいかないって」


ほむら「これは、ジールに殺されそうになった私を助けてくれたあなたへの……」

ほむら「そして……無条件に私を信じ続けたおバカさんたちへの、お礼よ」

クロノ「……」

ほむら「あなたたちは私たちの正体を聞いても、平然としていられるかしら?」

クロノ「たとえ君たちにどんな事情があろうと受け入れてみせる。それが、仲間ってもんだろ?」

ほむら「甘いわね、あなたたちは……。何も知りもしないで……」

クロノ「それを言われると辛いな」


ほむら「……でも、不思議ね。今ならあなたの言葉を、素直に受け止めることができるかも……」

ルッカ「こりゃー! バカクロノにほむほむ! そんなとこで内緒話とは感心せんなあ〜!?」

マミ「ふたりともお〜こっちきて飲みましょ〜。た〜のしいわよ〜!」


ほむら「やれやれ……面倒くさいのに絡まれたわね」

クロノ「ほむら……」

ほむら「戻りましょう。今は……何も考えず、楽しめばいいわ」

クロノ「……」

ほむら「ああ、そうそう。ひとつ言い忘れてたことがあったわね」

クロノ「? なんだよ」



ほむら「……おかえりなさい、クロノ」

クロノ「! ……」



クロノ「ただいま」


第8話「そんなの、私が許さない」 終了


  セーブしてつづける(第9話「それはとても、うれしいこと」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。

途中で話題になった杏子さんじゅうよんさいの年齢ですが、
分かりにくかったようなので補足しますと、>>806>>808で合ってます。

子供ジャキが中世に飛ばされたタイミングとほぼ同時ぐらいに、杏子もワルプル戦から飛ばされてます。
子供ジャキが魔王ジャキになるまでどれぐらい経っていたかは原作でも不明ですが、
まあ、ウン百年という設定ではないとこちらサイドでは認識しています。

魔法少女がそんなに長く生きられるのか? ということについては……
今後の展開でも出てくる話なのですが、まあ杏子ちゃんががんばったということで。
強引ですが、ご容赦ください。

それから>>824についても補足しておくと、要するにキング=ハッシュです。
つまりクロノはキングと対等に渡り合った大型新人ということに……
彼らとジャック&クイーンを含めた4人はいずれ、
シャッフル同盟ならぬドッペル同盟として名をはせるでしょう。

……うん、どうでもいいね。


次回は説明回ですのでいつもより短くなります。
それでは、また明日。

第9話「それはとても、うれしいこと」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

ハッシュ「おーい」


ハッシュ「……」

ハッシュ(ラヴォスのタイムゲートに巻き込まれ、飛ばされた先のこの空間……)

ハッシュ(誰もいない……。いやそれどころか、何もない……チリひとつすら……)


ハッシュ「ここは……時の最果てか……?」


————

———

——


年代不明 時の最果て


老人(ここに飛ばされ、幾年月を経たか……。もはや思い出すこともかなわぬ……)

老人(いや、時間など1秒たりとも進んでいないのかもしれんな。ここはそういう場所……)


老人(罰だと思った。女王の暴走を知りながら、崩壊の日の時まで日和ることしかできなかった私への……)

老人(ここで誰にも知られず、気づかれることもなく……ひっそりと死ぬのだろうと……)


老人(だが……今は……)

老人「おーい」

ほむら「? 何かしら、管理人さん」


老人(……呼べば答えてくれる者たちが、こんなにもたくさんおる。それはとても、うれしいこと……)

老人(なんと心あたたかく、安らぐことだろうか。私は許されたのか……?)

老人(いや、この者たちの道しるべとなることが、きっと私の……)


まどか「あの、どうかしたんですか?」

老人「ん? いや、すまんすまん。ちょっとな、お前さんたちに話しておきたいことがあるんじゃ」

ほむら「じゃあ、みんなを集めてくるわね」


…………


老人「今ここに、さまざまな場所から、時代を超えて……勇士たちが集結した」

老人「ほむらさん、まどかさん、さやかさん、マミさん、杏子さん……」

老人「クロノさん、マールさん、ルッカさん、ロボさん、カエルさん、エイラさん、魔王さん……」

老人「お前さんたち12人に、この星の未来が託されておる……」


まどか「な、なんかすごいことになっちゃいましたね……」

クロノ「星を救う英雄か。男子なら、誰もが夢見ることだな」

さやか「女子だって燃える展開っすよ!」

ルッカ「ラヴォスを倒そうと誓ったあの日から、こんなにも仲間が増えるなんて……」

マール「ほむらちゃんのおかげだね!」

ほむら「私は別に、何も……」

ロボ「謙遜することはないと思いマス。ほむらが中心に立っていたのは確かデスカラ」


杏子「良かったな、ジャキ? これだけいればラヴォスを倒せるんじゃねーか?」

魔王「フン、雑魚がいくら群れたところで無駄だ……」

カエル「お前もいまや、その雑魚のひとりだぜ」

エイラ「強いヤツ、いっぱい! ラヴォス、負けない!」

マミ「そうね。みんなが力を合わせれば……」

QB「僕はそうは思わないな」

マミ「キュゥべえ!?」

ほむら「お前……なぜここに!」

QB「ゲートを通ってきたのさ。時間移動は僕たちにもない技術だ」

QB「やっぱりこの星はすごい。ラヴォスについてきて正解だったよ」

クロノ「ラヴォスについてきた、だって……?」


エイラ「マミ、あのウサギ、マミの言ってたヤツか?」

マミ「え、ええ……。エイラにも見えるのね……」

QB「ふむ。みんな見えているみたいだね」

QB「ということはやっぱり、君たちが『ラヴォスを倒しうる可能性を持つ存在』ということになる」

QB「しかし可能性はただの可能性だ。今の君たちでは、勝算は限りなく低いと言わざるを得ない」

魔王「去れ、淫獣。貴様に何が分かる」

QB「おっと、君は……そうか、ジャキか。老けたね」

魔王「……なるほど、ここで死にたいらしい」

ほむら「手伝うわ、魔王」


QB「いいのかな? 僕の話を聞かなくて。このままじゃこの星も、サラも消えてなくなってしまうよ」

まどか「サラちゃんが!?」

魔王「貴様……何を知っている……! サラはどこだ!」

QB「サラはラヴォスと同化している」

まどか「え!?」


QB「彼女の魔法少女としての性質は『代替』。自らを差し出し、ラヴォスの力を封印している」

QB「そうだね、彼女の魔力なら……15000年ぐらいは眠らせておけるんじゃないかな?」

QB「ただし……何もなければ、という条件付だけどね」

魔王「……」


マール「あなたは……サラさんを魔法少女にしたの!?」

QB「そうしなければこの星は、B.C.12000の時点で滅びていた。僕はこの星を救ってあげたんだよ?」

杏子「テメェ……よくも抜け抜けと……」

QB「サラは立派に役目を果たしてくれたよ。彼女こそ、魔法少女システムの最高傑作のひとつだ」


ルッカ「あんた、何が目的なのよ! ほむらたちを食い物扱いするなんて……!」

QB「ひどい言い草だな。目的か。前に言わなかったかな? ラヴォスを倒すのが目的だって」

ほむら「どうせ、宇宙のエネルギーがどうだの言い出すつもりでしょう」


QB「色々知ってるみたいだね。まあそうさ。ラヴォスは膨大なエネルギーを生み出すけれど……」

QB「それ以上の消費者でもある。ヤツに繁殖し続けられると、宇宙の寿命は加速度的に減少していく」

QB「僕らはそれを避けたい。だからラヴォスとともに星をめぐり続け、解決の糸口を探した」

QB「そして、たどり着いたのがこの星だ。そして、君たち人類は驚くべき進化をなしとげた」

QB「ラヴォスのかけら、『ドリストーン』に触れ——そうなるよう僕らが仕向けたんだけれど……」

QB「『ラヴォスの力』を身に宿した。君たちが『魔法』と呼んでいる力をね」

QB「僕たちはその力をもう一度、高純度のドリストーンとして抽出する技術の開発に着手した」


QB「ドリストーンは持ち主の感情によって、大きくその性質を変化させる……」

QB「君たちの感情を吸ったドリストーンのエネルギーは、ラヴォスのそれを凌駕するだろうと期待したんだ」

QB「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女たちだった」

QB「テクノロジーは完成した。ラヴォスの娘たちによる親殺し……」

QB「魔法少女システム——またの名を、調停者システムの完成というわけさ」

QB「力及ばず魔女と化した少女たちも、無駄死にじゃない」

QB「ソウルジェムがグリーフシードへと変わるその瞬間、膨大なエネルギーが発生する」

QB「そのエネルギーは回収され、宇宙の存続とさらなるラヴォスの研究資源として使われる」

QB「僕らは君たちの犠牲に敬意を払い、その魂の最後のひとかけらまで余すところなく役立てているんだよ」


QB「君たち人類はすばらしい。エネルギーの浪費対策と供給を、同時になしとげてしまうんだからね」

さやか「……」

QB「君はまるで、僕を悪だとののしらんばかりの顔をしているね」

QB「なぜなんだい? ラヴォスはこの星だけじゃない、宇宙全体にとっての問題だ」


QB「君たち人類だって、いずれはこの星を離れて、僕たちの仲間入りをするだろう」

QB「その時になって、ラヴォスによって食いつぶされ尽くした宇宙を引き渡されても困るよね?」

QB「悪だというなら、ヤツこそがそうなんじゃないのかな?」


QB「僕たちはそれを倒す方法を見つけたんだ。ほめられこそすれ、責められるいわれはないはずだけどなあ」

まどか「バカ言わないで! そのためにサラちゃんを……何人もの女の子たちを……。ひどすぎるよ……」

QB「僕たちはあくまで合意を前提に契約しているんだ」


QB「それに君たちだって家畜を飼い、実験には動物を使い、戦争ともなれば同胞を駒とする」

QB「どう違うんだい? 単一個体の生き死にが、そんなに重要なことかな?」

まどか「あなたは……いつまでたっても、そんなことばっかり……!」

QB「まどか。そこまで言うなら、君が契約してくれればいいじゃないか」

QB「サラと同等かそれ以上の素質を持つ君なら、ラヴォスを倒せるんじゃないのかな」

まどか「……」


ほむら「そんなことはさせないわ」

ロボ「まどかさんは大切な仲間デス。手出しはさせマセン」

カエル「鹿目を魔女に仕立て上げようってんなら、無駄だぜ」

QB「やれやれ。あれもダメ、これもダメ。君たちは本当にラヴォスを倒す気があるのかい?」

QB「魔法の力、契約していない君たちの中にも使える者がいるみたいだけど……」

QB「どうやって引き出したのかな?」

クロノ「……」


QB「だんまりか。まあいいけどね。ここに来た時、なんとなく分かったから」

QB「この感じ、スペッキオだね? 彼もこの星に来ていたのか……」

ルッカ「……なんですって?」


QB「大きな力には大きな代償。小さな代償では小さな力しか得られない。等価交換の法則さ」

QB「スペッキオではなしえない、大きな力を、ラヴォスを倒せるだけの力を与えてあげること」

QB「僕ならできるよ。協力関係を築くべきだと思うけどね」

ほむら「二度も言わせないで。そんなもの、お断りよ」

QB「……そうかい。まあ、この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて」

QB「理想はまどかだけどね。可能性を持つ君たちの中なら、誰でもいいよ」


QB「待ってるからね。そのためにこうやって、情報を提供しに来たんだから」

ほむら「ええ。とてもためになったわ。これはお礼よ」

QB「……えっ?」


ダァン!!


…………


マミ「暁美さん……」

ほむら「なに、マミ? まさかとは思うけど、かばうつもりだったの?」

マミ「……いえ……そんなこと、しないわ……」

魔王「問題ない。暁美ほむらがやらねば、私が殺していた」


ほむら「どうせすぐ復活するわよ。なんならエイラ、食べちゃってもいいわよ」

エイラ「お? じゃあ丸焼き、する!」

杏子「やめとけよ。腹壊すぞ」

ルッカ「こいつの話は聞くに堪えないものだったけれど、ある一点においては正しいわね」

クロノ「今の僕たちじゃラヴォスは倒せない、か……」

まどか「サラちゃん……。ラヴォスを倒せば、戻ってこれるのかな……?」

魔王「……」


老人「そう、今のお前さんたちではまだ力不足じゃ。私も、その話をするつもりじゃった」

さやか(やばっ……管理人さんの存在、忘れてた……)

ほむら(ひどい人ね、あなた)

さやか(テレパシーでツッコミ入れんな! ほむらだって忘れてたくせに!)

ほむら(……ノーコメントよ)

老人「ラヴォスといつ、どこで戦うかはお前さんたち次第じゃ」

老人「じゃが、くれぐれもお前さんたちだけで戦おうとしてはいけない……」

まどか「どういうことですか?」


老人「ここはすべての時に通じている。おぼろげじゃが、見えるのじゃよ」

老人「お前さんたちに力をかしてくれるものがな……」

老人「もう一度、旅をしなさい。人としてのレベルを上げ、絆という名の連携を深めるのじゃ……」

老人「あのキュゥべえとかいう者の言ったこと……大きな力を手に入れるための、大きな代償……」

老人「すぐに手に入れようとするから、基準以上のものを支払うはめになる……」

杏子「アタシらには耳の痛い話だな……」

老人「ホッホ。なにもお前さんたちを責めておるわけではない。切迫した状況というのも確かにある」

老人「じゃが、今はそうではあるまい? なら、急がば回れ……じゃ」


マール「それで、『力をかしてくれるもの』ってなに?」

老人「うむ……。まずは、そうじゃな……」

老人「中世で魔王にやぶれ、現代までさまよい続けるほこり高き騎士の魂……」


カエル「! まさか……」

さやか「サイラスさんだ! 師匠、絶対サイラスさんのことだよ!」

カエル「間違いないな。これは、誰にも譲ることはできん。俺が行く」

さやか「当然あたしも行くっしょ!」

ほむら「なら、カエルさんとさやかと……。そうね、あともうひとりはクロノ、お願いできるかしら?」

クロノ「僕か? かまわないよ」

カエル「クロノが来てくれるなら百人力だ。頼むぜ」

さやか「剣士パーティーっすね!」

老人「原始から未来、全ての時をまたにかけ陽の光をあつめ続ける石……」


魔王「ほう……それはおそらく、『太陽石』だな」

まどか「聞いたことあるよ。確か、古代で……なんだったかな?」

魔王「古代、さる民族が信仰していた神の神体だ。ガルディア建国以後は廃れたがな」

杏子「よく覚えてんな、ジャキ」

魔王「……お前らの物忘れが激しいだけだ」

ほむら「じゃあそれは、あなたたち3人にお願いするわ」

杏子「え?」

ほむら「なによ、ダメなの?」

杏子「いや、ダメじゃねーけど……アンタのことだからてっきり、『まどかは私が』とか言い出すかと」

ほむら「……別に。ただの戦力分析の結果よ。魔王に言うこと聞かせられそうなのは、あなたたちふたり」

ほむら「長年連れ添ったらしい杏子と、『まどか姉さま』ぐらいでしょ」


杏子「前にも思ったけどよ……。アンタ、変わったか?」

ほむら「……」

杏子「……ま、いーか」

まどか「ウェヒヒヒ! よろしくね、ジャキくん!」

杏子「おう、ジャキ? アタシのことも『お姉ちゃん』って呼んでもいいんだぜ?」

魔王「……」


クロノ「あっちは古代パーティー……いや、魔王のお姉ちゃんパーティーかな?」

カエル「ギギギ……魔王め……うらやまけしからん……! リア充爆発しろ……!!」

クロノ「こっちにも、さやかがいるじゃないか」

さやか「可愛いお姉ちゃんかと思った? 残念! さやかちゃんでした!」

老人「中世では、まぼろしと呼ばれる虹色に輝くもの……」


マール「虹色だって。きれいなんだろうな〜」

エイラ「虹、ヘビガミさま! 雨の神様! えらい!」

マミ「ヘビガミさま? 虹蛇のことかしら? 創造と雨を降らせる力があるっていう……」

ほむら「詳しいわね」

マミ「ええ、まあ。神話とかって私、好きだから……」

ほむら「じゃあそれは、あなたたち3人の担当ね」


マール「私たちはなんだろ? 金髪パーティーとか?」

さやか「おっぱいパーティーっすね!」

マミ「お、おっぱ……何を言い出すのよ、美樹さん……」

ほむら「チッ」

マミ「暁美さん!?」

ルッカ「なんでマールなのよ! 私を入れなさい!」

ほむら「ルッカ、あなたの居場所はこっちよ」

ルッカ「やめろ! 私を貧乳カテゴリーに入れるな! マールよりちょっと小さいだけじゃない!!」

ロボ「バスト1cmの差ハ、競技における順位の差と等しいとワタシのデータバンクに記録されてイマス」

ロボ「すなわち3cm差で表彰台に立てるかどうかが分かれるホド、重いものダト……」

ルッカ「消せ! 今すぐその不愉快な情報を消しなさい!!」

ほむら「代わりにインプットしておきましょう。『貧乳はステータスで希少価値』……と」


老人「次にいってもいいかね?」

まどか「あ、はい。どうぞ……」

老人「未来の時代、機械の生まれたふるさと……」


ロボ「! これはワタシの時代デスネ……」

ほむら「ふるさと、か……。ロボの生まれはどこなの?」

ロボ「ワタシがルッカたちと出会ったのはプロメテドームですガ、そこではないことハ確かデス」

ルッカ「ふむ。ならロボの出生の秘密を探りに行くとしましょうか」

ロボ「ついてきてくれるのデスカ?」

ルッカ「当然じゃない! ロボあるところに、私ありよ!」

ほむら「私も行くわ」

ロボ「おふたりトモ……ありがとうゴザイマス」


ルッカ「名づけて、天才ルッカちゃんとそのお供たちパーティーね!」

ほむら「却下。近代兵器パーティーとかでいいじゃない」

ルッカ「安直ねえ〜」

ほむら「……」イラッ

老人「中世で逃げのびておる魔王配下の3悪の巣くう場所」


カエル「これは……」

さやか「どう考えても……」

杏子「アイツらだな」

ほむら「わかりやすいわね。やっぱり生きてたのか……。それも3人とも……」


魔王「ビネガーは魔王城に似たアジトを持っていた。逃げたとすれば、おそらくそこだろう」

杏子「しょうがねえ、アタシらがきっちりケジメつけてきてやるよ」

まどか「わたしも手伝うよ!」

老人「中世の時代、ひとりの女性の心によりよみがえる森……」


クロノ「女性? 誰だろ……」

カエル「……フィオナ嬢か? そういえば森がどうのと言っていたはずだが……」

さやか「フィオナさんって師匠んちの近くに住んでた人だっけ?」

カエル「たぶんな。さほど面識はないが、とりあえず話を聞きに行ってみるか」

老人「以上じゃ。よいか、この星のあらゆる時代の人々……いや、すべての生命の力を借りて戦うのじゃ」

老人「でなければラヴォスは倒せまい。未来を変えるには、それほどの大きな力が必要じゃ」

老人「私は示すことしかできん。この星の行く末……私はここで、ゆっくりと見物させてもらうよ」

老人「お前さんたちが、きっと成し遂げてくれると信じてな……」


老人「絶望の運命に負けぬ強い心、『希望』を……より強く、育て上げるのじゃ」

老人「待っておるぞ……」

第9話「それはとても、うれしいこと」 終了


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短いですが、今回はここまでです。次回よりマルチイベント編開始。

展開の都合上、最後に回さざるを得ない「緑の夢」を除き、マルチイベントは順不同・一話完結型です。
先に見たいという話があれば、どうぞ。
特になければこちらで適当に順番を決めます。


参考


太陽石:まどか「もしもクロノさんたちが見滝原中の生徒だったら」

ビネガーの館:杏子ちゃん過去話

勇者の墓:さやか「師匠がガチで師匠してる!?」

虹色の貝がら:マミさんが飲んだり踊ったりモンハンしたりする話

ジェノサイドーム:ロボの恥ずかしいセリフにほむらがもだえる話


それでは、また明日。

第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」


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A.D.600 ガルディア城


騎士団長「勇者様のご来訪! 全員、整列して面甲をあげ、粛々としてお出迎えせよ!」


さやか「わ、わ……。なにこれ……」

クロノ「そういえば、さやかは勇者だって思われているんだっけ」

カエル「良かったな。これだけの敬意を集めることなんてそうはないぞ」

さやか「いや、あのね? 騎士のみなさーん! 実はあたしは勇者じゃないんですけどお〜……」


騎士団長「勇者様、謁見の間へどうぞ。陛下がお待ちです」

さやか「聞いてよ!」

A.D.600 ガルディア城 謁見の間


ガルディア21世「おお、勇者殿。よく来てくれた」

リーネ「魔王軍を撃退してくださったそうですね。これでこの国も平和になるでしょう」

さやか「あ〜、もう! どこから説明したらいいのやら……」


カエル「恐れながら、陛下。お尋ねしたき儀がございます」

ガルディア21世「カエルか、しばらくぶりじゃな。かまわん、申せ」

カエル「10年前消息不明となった前騎士団長、サイラスという男のこと、ご存知かと」

リーネ「……!」


ガルディア21世「サイラスか……。彼はよき友人であった」

ガルディア21世「だが今では、生きておるのか、死んでしまったのかさえ分からぬ……」

ガルディア21世「いや、サイラスは生きておれば必ず戻ってくると誓ったのだ」

ガルディア21世「あの者はその誓いを反故にするような人物ではない。だとすれば……もはや……」

リーネ「……」

カエル「……ご明察のとおり、サイラスは戦死いたしました」

ガルディア21世「……だろうな」

リーネ「……ああ……」

ガルディア21世「リーネ、気をしっかり持て。お前も覚悟していたことだろう」

リーネ「……はい……」


カエル「なぜ私がそのことを知っているのか、お聞きにならないのですか?」

ガルディア21世「……いや、聞かん」

カエル「……」

ガルディア21世「カエルよ。お前の聞きたいことが分かったぞ。サイラスの遺体のことだな?」

カエル「左様でございます」

ガルディア21世「残念ながら、その所在も不明だ」

カエル「……」


さやか「あ、あの!」

ガルディア21世「なんじゃ、勇者殿?」

さやか「サイラスさんは、王様にとっても大切な人だったんでしょ……」

ガルディア21世「む……。それはそうだが……」

さやか「じゃあ、なんで探してあげないのさ! 死んじゃったからって、それでもう終わりだなんて……!」

カエル「さやか、やめろ! 陛下に対してなんという不敬なことを!」

さやか「なんでよ師匠! おかしいじゃん、こんなの!」

ガルディア21世「いや、いい。勇者殿の申すとおりだ……」

ガルディア21世「国王などと言ってふんぞり返っておっても、所詮この程度よ」

カエル「そのようなことは……」

ガルディア21世「王とは窮屈なものだな、カエルよ。友人を弔うために奔走することすら許されぬ……」

リーネ「陛下……」


ガルディア21世「勇者殿、良ければ今日はこの城に泊まっていってくれぬか。客間を用意させよう」

ガルディア21世「城の者たちもそなたの話を聞きたがっておるのでな」

さやか「……」


ガルディア21世「……少し疲れたな。すまぬが、休ませてくれぬか……」

A.D.600 ガルディア城 客間


クロノ「いやー、すごいご馳走だったね。王族っていつもあんなの食べてるのかな?」

カエル「どうだろうな。勇者ご一行ってんで、特別に腕を振るってくれた可能性もあるぞ」

クロノ「ちょっと食べ過ぎたかもしれないなあ。腹ごなしに素振りでもしてこようかな」

カエル「付き合ってやろうか。組み手なら、より実践的だろ」

クロノ「いいね、それ。じゃ、これ使ってくれ。片方は僕が使う」

カエル「竹刀か。いつも持ち歩いているのか?」

クロノ「いつもってわけじゃないけど、稽古には欠かせないからね」


カエル「おい、さやか。俺たちは少し出てくるから……」

さやか「……」

カエル「なんだ、まだ意地を張っているのか? お前もおとなげないな」

さやか「どうせあたしはガキですよーだ」

クロノ「そんなに王様のことが気に入らないのかい?」

さやか「王様だけじゃないよ……」

カエル「なに?」

さやか「会う人会う人、みーんなあたしらのこと持ち上げてさ、ゴマすって……」

さやか「勇者だー魔王討伐の英雄だーって。こっちの話なんか聞こうともしない」

さやか「あたしは違うっつってんのに。魔王だって、実際に負かしたわけでもないのに……」


カエル「別にかまわんだろ。この時代から魔王がいなくなったことには変わりあるまい」

さやか「汚いよ、師匠は! なんでそれで納得できるのさ!」

カエル「……」


さやか「それに……誰ひとり、サイラスさんのこと一言も触れようとしなかった!」

さやか「なんで? 負けちゃったから勇者じゃないの? 役に立たなきゃ忘れちゃうの?」

さやか「おかしいよ。勇者ってなんなのさ。正義の味方って誰のために戦ってるのさ!」

カエル「お前はいったい何を期待しているんだ。見返りを求めて戦っているのか?」

さやか「そういうお説教はもうたくさんだよ。あたしは、ありがとうすら言えないヤツがムカつくだけ」

カエル「お前は感謝されてるだろ」

さやか「あたしのことじゃなくて、今はサイラスさんの話でしょ!」

カエル「誰も彼もが、サイラスをどうでもいいと思っているわけじゃない」


さやか「それでいいの、師匠は……。サイラスさんの親友である師匠が、そういう考えでいいの!?」

カエル「……」

さやか「見損なったよ、師匠」

カエル「やれやれ……。お前はどうも、潔癖症すぎるな」

さやか「もういい! あたしは寝るから!」

クロノ「あ、さやか! ……出て行っちゃったぞ。いいのかい、カエル?」

カエル「ほっておけ。今のあいつは何を言っても聞かないだろう」


クロノ「さやかの言うことは僕も分かるよ。カエルだって、思うところがないわけじゃないんだろう?」

カエル「……」

クロノ「勇者ってなんだ、か……。僕も少し、世の中の『正義』ってやつが分からなくなってきたよ」

カエル「悩めばいいさ。いつか、自分なりの答えが見つかるだろ」

クロノ「カエルにはその『答え』ってのがあるのかい?」

カエル「……さあな。おい、稽古するんだろ。早く行くぞ」

クロノ「……」

A.D.600 ガルディア城

翌日


カエル「さて、どうしたものか。サイラスのこと、陛下に聞けば何か分かるかと思ったが……」

さやか「……」

カエル(一晩寝れば機嫌が直るかと思ったが……。厄介だな、これは)


クロノ「カエル、王妃様が来たみたいだよ」

カエル「なに?」

リーネ「カエル、良かった……。まだ出発していなかったのですね」

カエル「王妃様、わざわざご足労いただき恐縮です。何かご用命でも?」

リーネ「……サイラスのことです」

カエル「!」


リーネ「私、噂を聞きました。彼のなきがらが、魔族によって運ばれた可能性があると……」

クロノ「魔族が……!?」

リーネ「真実のほどは分かりません。ですが、あなたたちの助けになればと思って」

カエル「貴重な情報をありがとうございます。早速、調べてまいります」

さやか「……」

リーネ「勇者様……。陛下とて、何もサイラスをないがしろにしているわけではないのです」

リーネ「魔王軍との戦い……そして今は、国の復興……。陛下には責任があり、自由に動けないのです」

カエル「分かっています、王妃様。こいつとてバカではありません。その辺の事情は察しているはず」


カエル「だよな? さやか」

さやか「そりゃ、もちろん……」

カエル「不出来な弟子に成り代わり、謝罪いたします。陛下へのご無礼、お許しください」

リーネ「ふふ。可愛いお弟子さんですね、カエル」


さやか「……あの、王妃様……」

リーネ「勇者様。またいらしてください。あなたのことは、いつでも歓迎いたしますわ」

さやか「! ……はい、また来ます!」

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「勇者の墓じゃと?」

クロノ「400年前、魔族がどこかに運んだらしいんだ」

カエル「魔族と親交があるじいさんなら、何か知ってるんじゃないかと思ってな」

ボッシュ「ふむ……。勇者かどうかは知らんが、ここから南の大陸に廃墟がある」

さやか「廃墟……? それがどうかしたんすか?」


ボッシュ「……出るんじゃよ……その廃墟に……『亡霊』がな……!」

さやか「わざわざ部屋のカーテン閉めて暗くして、懐中電灯を顔の下から当ててるよ、この人……」

クロノ「ボッシュ、カーテンの隙間から光が漏れ出てるぞ」

カエル「昼だからな」

ボッシュ「チッ、つまらん。もっと怖がらんか。メディーナ村の魔族兄弟ならチビっておったぞ」


クロノ「で、その亡霊は魔族なのかい?」

ボッシュ「分からん。少なくとも魔族連中は、あんなヤツは見たことがないと言っておった」

カエル「とりあえず行ってみるか」

A.D.1000 北の廃墟


"魔王に戦いを挑んだ、おろかな男サイラス、ここに眠る"



カエル「……」

クロノ「ここだったのか……。それにしてもこれは……」

さやか「ひどい! なんて侮辱的な墓標……」

クロノ「この埋葬地も、荒れ果てて見る影もないな。本当に廃墟同然だよ」

カエル「この墓はおそらく、魔族が建てたものだろう。サイラスを、死後も冒涜するためにな……」

さやか「許せないよ! これじゃサイラスさんがかわいそう……」

???「ヌグォォォォァァッ!」

クロノ「!? なんだ、今の咆哮は!」

さやか「あ、あれ見て!」


亡霊騎士「ゴオオオォォ……」

クロノ「ぼ、亡霊!? ボッシュが言ってたのは、これか!」

さやか「なんか、めちゃくちゃ怒ってますけど……襲い掛かってくる気マンマンじゃん!」

カエル「まさか……!」

カエル「サイラス! アンタ……サイラスか!?」

さやか「え、ウソ!?」


亡霊騎士「……グ……レン……」

クロノ「カエルの名を呼んだ!? じゃあ、やっぱり彼は本当にサイラスさん!?」

さやか「そんな……。成仏もできずに、ずっと苦しんでたの……?」

カエル「サイラス……。こんな姿になってまで……」


亡霊騎士「グレエエエェェェン!!!」ブオン!!

カエル「!?」ガキイィン!!

さやか「な!? なんで師匠を攻撃するの!? サイラスさんなんでしょ!?」

カエル「……これは……。サイラス……アンタ……」

亡霊騎士「ゴアァァッ! グレエェン!!」


クロノ「ダメだ、見境がなくなってしまっている! ここはひとまず退却しよう!」

さやか「言われなくてもスタコラサッサだぜぇ!」

カエル「……」



亡霊騎士「グレェン! オオォォアッ!! グレエエエェェェン!!!」


…………


年代不明 時の最果て


ほむら「で、逃げ帰ってきたというわけね」

さやか「しょうがないじゃん。サイラスさんをやっつけちゃうわけにもいかないでしょ」


クロノ「どうしたらいいかな、ルッカ?」

ルッカ「なんで私に振るのよ」

クロノ「いや、君なら何かいい案を出してくれるんじゃないかと」

ほむら「頼られてるわね、あなた」

ルッカ「なんでもかんでも私に頼るのはやめなさい」

ロボ「サイラスさんの暴走ハ、やはり墓所の荒れ具合によるものではないデショウカ」

エイラ「エイラ、知ってる! 墓、死者のネドコ! 静か、いい! うるさい、ダメ!」

マミ「ということは、廃墟と化したサイラスさんのお墓を建て直す必要があるってことよね」

クロノ「土木工事か……。僕らだけじゃ無理だよな……」

マール「父上に頼んであげよっか?」

さやか「いきなり国家権力っすか!?」

クロノ「さすがにそれは悪いよ。かと言って、職人さんのアテもないしなあ……」


ルッカ「仕方ないわね。クロノ、父さんに会ってきなさい」

クロノ「タバンさんに? なんでだ?」

ルッカ「仕事柄、職人の知り合いは多いのよ。土木建築関係にもツテがあるかもしれないわ」

さやか「なるほど。じゃ、早速行ってみます!」


ほむら「なんだかんだ文句言いつつも、結局助けてあげるのね……」

ルッカ「聞こえてるわよ」

クロノ「ところで、あの3人は何やってるんだ?」


まどか「もう、どうしてそんなことしたの! サイラスさんがかわいそうでしょ!」

杏子「いやホント、知らなかったんだよ。ビネガーのヤツが勝手にやったことでさ……」

まどか「言い訳しない!」

魔王「……」


ほむら「お姉ちゃん風を吹かせるまどかも可愛いわ」ホムホム

ルッカ「正座させられる魔王って前代未聞よね」

カエル「……」

さやか「師匠、何ぼさーっとしてんの。トルース町に行くんでしょ」

カエル「ああ、そうだったな……。悪い、すぐに支度する」


クロノ「……サイラスさんのことか? ビックリしたよな、突然斬りかかってくるんだから」

クロノ「やっぱり、すぐそばにいたからカエルが狙われたのかな?」

カエル「……」

さやか「……本当にそうかなあ」

クロノ「え?」


さやか「あたし、あれは偶然じゃないと思うけど。サイラスさん、怒ってるんだよ」

さやか「だって師匠、冷たいもんね。親友のくせにサイラスさんのこと、ちゃんと分かってあげてないもん」

さやか「あたしだったらそんなヤツ、一発ガツンとぶちかましてやるよ。そういうことでしょ」

クロノ「おい、さやか……。何もそこまで……」

カエル「……」

さやか「……何も言い返さないんだね。あたしが間違ってるなら、そう言ってよ」

カエル「お前は間違っていない。何も言うことはない」

さやか「っ……! なんでさ、師匠! あたしのこともどうだってよくなっちゃったの!?」

さやか「教えてよ……師匠なんでしょ……。迷ってるときに、どうして突き放すのさ……」

カエル「……」

さやか「……師匠のバカ……。根性なし……」


ほむら「なにやら雲行きが怪しいわね」

ルッカ「リーダーとして仲裁してきなさいよ、ほむら」

ほむら「いや……私にそういう類の能力を求められるのはちょっと」

A.D.1000 トルース町 ルッカの家


タバン「よう、クロノ! 久しぶりだな。ルッカのヤツは一緒じゃねえのか?」

クロノ「ええ、まあ。今日はタバンさんに用がありましたんで」

タバン「俺に?」


…………


タバン「なるほどねえ……。大工の知り合いか……」

クロノ「心当たりありませんか?」

タバン「いるぜ。ちょうどいいヤツがよ」

さやか「マジっすか!」

タバン「待ってろ。今、紹介状を書いてやる。これを持ってチョラス町に行きな」

カエル「タバン殿、感謝いたします」

A.D.1000 チョラス町 大工の家


14代目大工のゲンさん「ほお……。あんたら、あのタバンの知り合いか」

クロノ「はい。事情はその紹介状に書いてあるとおりなんですけど……」

14代目ゲン「北の廃墟か。確かにあそこは、機会があれば手をつけてえと思っていたところよ」

さやか「それじゃあ!」


14代目ゲン「……が、無理だな」

さやか「……ええ? な、なんでなんすか?」

14代目ゲン「あそこに行ったなら分かんだろ? 亡霊をどうにかしないことには、入ることすら不可能だ」

14代目ゲン「修理なんて、とてもじゃねえが危なくてやってられねえよ」

クロノ「そうですか……」

さやか「うーん。どうしよう……」

カエル「……サイラスは、400年分のうらみつらみを募らせ、ああなってしまった」

カエル「その無念を晴らすことができれば、あるいは亡霊と化すこともなくなるかもしれん」

クロノ「つまり……お墓を修繕するなら、400年前じゃないとダメだってことか?」

カエル「おそらくな」


クロノ「でもさ、僕らはともかくとして、大工さんを400年前に連れていくわけにはいかないよな?」

カエル「……まあな」

クロノ「ってことは、向こうで改めて大工さんを見つけるしかないか……」

さやか「うええ……。またそっからっすかあ……」


14代目ゲン「よく分からんが、あんたらは400年前の時代に飛べるんだな?」

さやか「あ、はい。まー、そうなんですけど」

14代目ゲン「タイムマシンだなんだのと吹聴してやがったのは、酒の席の与太話じゃなかったか」

14代目ゲン「タバンの野郎……やるじゃねえか」

14代目ゲン「これを持っていきな」

クロノ「これは……大工道具?」


14代目ゲン「うちの家系は、400年以上前から大工業を営んでいてな。これはその時代から伝わるものだ」

14代目ゲン「こいつを見せりゃあ、ご先祖様もあんたらに力を貸してくれるかもしれんぜ?」

さやか「いいんですか? そんな大事なもの……」

14代目ゲン「なあに、今じゃ骨董品みたいなもんよ。だが、そうだな……」

14代目ゲン「全部終わったら、話を聞かせてくれ。ご先祖様の仕事ぶりってのは興味があるからな」

クロノ「ありがとうございます!」


カエル「さて……お次は中世か」

A.D.600 チョラス村 大工の家


初代大工のゲンさん「こいつは……! なぜあんたらがこれを?」

さやか「まあまあ。細かいことは言いっこなしってことで」

クロノ「北の廃墟、なんとか修理してもらえませんか?」

初代ゲン「……久々にデカい仕事だな。やりがいがありそうだぜ」

さやか「それじゃあ!」


初代ゲン「……が、無理だな」

さやか「がくーん。ま、またっすか……」

クロノ「今度は何が問題なんです?」

初代ゲン「あそこは今、魔族どものたまり場だ。危なくて近寄れねえ」

クロノ「そういえば、あのお墓は魔族が建てたんだっけ?」

カエル「推測だがな。まあ……魔王の様子を見る限り、間違ってはいなかろう」

クロノ「ただの魔族なら、僕たちでなんとかできるかも知れないな……」

初代ゲン「ほう。あんたら、ヤツらとやりあえるのか。こいつはいい」

初代ゲン「交換条件だ。魔族どもはこのチョラス村でも問題になっている」

初代ゲン「それに、ヤツらが巣食っている場所では仕事はできねえ。全滅させるんだ」


クロノ「すべて退治できれば、そのときはお墓を修理してもらえるんですよね?」

初代ゲン「任せろ。ただ修理するだけじゃねえ、立派な墓に造り替えてやるよ」


さやか「決まりだね! よーし、腕が鳴るわー! 師匠なんかに任せておけないもんねー」

さやか「サイラスさんの安眠は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン守りまくっちゃいますからね!」

カエル「……」

クロノ「はあ……。これは気苦労が絶えないな」

A.D.600 北の廃墟


ボーンナム「オッパイノペラペラソース!!」

クロノ「こいつで最後か。あとはサイラスさんのお墓がある部屋だけだな」


さやか「いつつ……」

クロノ「大丈夫か、さやか。割と手痛いのをもらっちゃってたみたいだけど」

さやか「へーき、へーき! これぐらい!」

カエル「後先考えずに突っ込むからだ。まだ直ってないな、その癖は……」

さやか「うっさいなー。いーじゃん、どうせ魔力で治るんだし」


カエル「『ケアルガ』!!」

さやか「っ……! あ……これ……回復魔法……」

カエル「俺たちと違って、お前の魔法は命を削るんだろ。使わないなら、それに越したことはない」

さやか「……」

クロノ「カエル、魔法使えたっけ?」

カエル「スペッキオに引き出してもらった。まあ、今までなかなか使う機会に恵まれなかったがな」


カエル「さやか、いいか。何度も言うようだが、さっきのような戦い方はよくない」

カエル「最後まで気を抜くな。勝利に酔いしれた瞬間こそ、隙が生じるものであって……」

さやか「おせっかいはいいよ! 何さ、こんなときだけ師匠ヅラして!」

カエル「……」


さやか「いいんだよ、別に……あたしは。魔女になっちゃう前に、さっさと死んだほうが……」

カエル「ふざけるなよ、お前!!」

さやか「……っ!」

カエル「死んでも別にいいだと? 自分の命をなんだと思っている!」

さやか「師匠には分かんないんだよ! あたしの苦しみなんか!」


カエル「ああ、分からねえな。死にたがりの精神なんて、理解したくもねえ」

カエル「テメェの命も救えねえで、他の誰の命を救える?」

カエル「テメェの命の管理もできてなかったから、大切なヤツを失っちまう羽目になったんだ……!」

さやか「……!」

カエル「お前は死ぬために生きているのか? 泣きながら死にたいのか? 後悔したまま死にたいのか!」

カエル「生きることは、辛く苦しいことばかりだ。格好良く生きるためには、裏で無様に足掻くしかねえ」

カエル「それがイヤなのか? だからやめるのか、投げ出すのか!」


カエル「何もしねえで身も心も真っ白なまま死ぬのがお前の望みか?」

カエル「ちょっとでも汚れたら生きていたくないのか? 答えろよ、馬鹿弟子が!!」

クロノ「カエル、よせ……。さやかが怖がってる」

カエル「……。……すまん……」

さやか「……」


カエル「……俺はお前に、なんにも伝えられなかったみたいだな」

さやか「……」

カエル「見限ってくれていいぜ。汚い大人のやり方に、愛想も尽きただろう……」

クロノ「カエル……」


カエル「……行くぞ。この先がサイラスの墓だ」


…………


"魔王に戦いを挑んだ、おろかな男サイラス、ここに眠る"


カエル「サイラス……。サイラスよ! 俺は帰ってきたぞ」

カエル「幼き日の誓いを。そしてアンタとの、最後の邂逅を果たすために!」

さやか「師匠……」


カエル「いるんだろう、サイラス! さあ、姿を見せろ!」

クロノ「え?」

サイラス「……」

さやか「あ……! これが本当のサイラスさん……?」

クロノ「間違いないよ。立派な騎士の姿をした、勇者サイラスさんだ!」


サイラス「よく来てくれたな、グレン。会いたかった……」

カエル「……アンタは、ずっとここにいたんだな? こころざし半ばで倒れた無念さに苛まれながら……」

サイラス「この体を魔王の炎に焼かれた時、私の心はこの世に残された人のことを思い、千々にみだれた」

サイラス「ガルディア王……リーネ王妃……魔王……」

カエル「……」


サイラス「そして、グレン……。親友の……お前のことをな……!」

カエル「!」

クロノ「サイラスさんが消えた……!? どこに行ったんだ!」

さやか「! ……う……あ……!?」

カエル「さやか!?」



さやか「フ……。やはりだ……。この者の心は今、猜疑心と虚無感で満ちている……」

クロノ「えっ……!?」

さやか「私と同じだ……。世を呪い、人を呪い、そして……グレン、お前のことを……」

カエル「ま、まさか……サイラス……!!」


さやか「グレンと切り結ぶため、少し体を借りるぞ、少女よ!!」ヒュカァッ!!

カエル「くっ!?」ガキイィン!!

クロノ「そんな馬鹿な!? さやかの体にサイラスさんが乗り移ったのか!?」

カエル「サイラス……!」

クロノ「それに、なぜカエルを攻撃するんだ! まだ亡霊になったわけでもないのに!?」


さやか「今のはすばらしい反応だったな、グレン」

カエル「……」

さやか「まるでこの私が、お前に斬りかかることをあらかじめ予想していたかのごとき動きだった……」

クロノ「なんだって……!?」

カエル「一合切り結んだだけだが、あの時確かに感じた……」

カエル「サイラス。アンタは俺をうらんでいる。魔王よりも……いや、他の誰よりも……」

さやか「そのとおりだ、グレン! お前が……貴様が……! 貴様さえ、いなければ……!」

クロノ「ウ、ウソだろ……」



さやか「貴様が私を殺したのだ! 死ね、グレン! 『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

カエル「ぐあっ!?」

クロノ「くそっ! どうする……。さやかの体を傷つけるわけには……」


カエル「クロノ……竹刀を貸せ。持っていただろ」

クロノ「え……? た、確かにまだ持ってるけど……」

カエル「悪いな、さやか。少し痛めつけるが、あとで回復してやるから」


さやか「フ……。女相手に暴力とは、見下げ果てたヤツだな、グレン」

カエル「なあに、ちょっとばかしキツイ修行と思ってくれりゃあいいぜ。模擬戦は、何度かやったしな」

カエル「……それに、サイラス。どうやらアンタは、俺自身が乗り越えなければいけない壁のようだ……」

さやか「……」

クロノ「カエル……。分かった、グランドリオンは僕が預かる。がんばれ!」

カエル「さやか、聞こえるか? よく見ておけ。勇者というものが、どういうものなのかを」

カエル「人の……弱さってやつを……」

さやか「……貴様がそれを言える立場か、グレン? 貴様は弱い。力も、心も……」


カエル「そうだな……。俺は、ずっと……サイラス、アンタに守ってもらってきた」

さやか「……」

カエル「いや、今とてそう変わりはしない。事実、俺では魔王は倒せなかった」

カエル「魔王以上の力を持つであろうラヴォスに、俺がどこまで役に立てるものか……」


さやか「弱いだけならば良し。だが貴様はそれだけでなく、私の後ろをうろちょろと……」

さやか「目障りで仕方がなかった! 貴様の存在はずっと重荷だったんだ! 『タイフーン』!!」ビュオン!!

カエル「っ!」


さやか「チッ……。よけられたか……」

クロノ「回転斬り!? いや、あれは……さやかの技か……!」

さやか「グレン、貴様は……私にとって弟のような存在だったんだ」

カエル「ああ……。俺だって、アンタのことは実の兄貴のように思っていたぜ……」


さやか「男兄弟とは! 家族であり無二の親友であると同時に、最大のライバル!」

さやか「兄にとって弟とは! 仲が良かろうと悪かろうと、邪魔者以外の何者でもない!」

さやか「貴様がそれだ、グレン! 『スクワルタトーレ』!!」ヒュオオッ!

カエル「くっ!?」


さやか「貴様に分かるか!? 後ろから見られていることの恐怖が!」

さやか「貴様に理解できたか!? 背中を追われる、あの焦燥感を!」

さやか「私は……! 貴様に無様な姿を見せぬため、理想の兄を演じなければならなかった!」


スパアアァンッ!!

カエル「……!」

クロノ「竹刀がバラバラに……! くそ、カエル! 予備を受け取ってくれ!」

カエル「格好良かったぜ、アンタは……。俺の知っている、誰よりもな……」

カエル「そして同時に恨めしかった。なぜアンタだけが先に行ける!? 俺だって努力していたのに!」

カエル「名声も、信頼も、勇者の称号も! すべてアンタを選んでしまったんだ!」

カエル「腹が立つぜ……。ふがいない自分自身と、そしてアンタによ! 『ベロロン斬り』!!」シュバッ!

さやか「効かんッ!」バシッ!

カエル「……クソ……!」


さやか「それは貴様が甘いからだ! 努力だと? 貴様が何をした!」

さやか「ただついてきただけだろう! そして、おいしいところだけを狙っていた!」

カエル「そうすることでしか、アンタについていけなかったからだ!」

さやか「そのようなこと、私は望んでいない! 『スティンガー』!!」

カエル「ふざけるな! アンタが言ったんだろう……。一緒に来い、って! 『ダッシュ斬り』!!」


ズバァン!!!



カエル「ぐ、うぐっ……」

さやか「ちいっ……浅かったか。しかも、切り抜けざまに一撃もらってしまうとは、我ながらうかつ……」

カエル「ウソだったのか、サイラス……! ともに来いと言ったあの言葉は、ウソだったのか!?」

さやか「私は対等の関係を望んでいたんだ。金魚の糞がごとき醜態をさらせと言った覚えはない!」

カエル「俺の気持ちはどうなる!? アンタをずっと追い続けてきた、俺の気持ちは!」


さやか「こちらの意を介さず、おのれの言い分だけを通そうとする……。小僧か、貴様は!」

さやか「解ってもらおうなどというのが、そもそもの間違いなのだ!」

カエル「解れなんて言っていない! どうしてそのことを、少しだけでも考えてくれないんだってことだ!」



カエル「サイラス! アンタこそ自分の主張を押し付けているだけだろう! 『ジャンプ斬り』!!」

さやか「私が悪いのか!? 私に責を問うのか、グレン! 『シューティングスティンガー』!!」


ドドオオオォォン!!!

カエル「俺はアンタに……何も与えられなかったって言うのか、サイラス!」

カエル「どんなときでも、アンタとともにいた! その恩は、感じてくれなかったのか!?」


さやか「それだ、グレン! その言い方に、私は怒りを覚える!」

さやか「恩だと? その言葉を口にした時点で、貴様から受け取ったものは薄っぺらなものになる!」

さやか「感謝していたのに! 結局貴様は、本心では私に恩を売って優越感に浸っていたのか!」

カエル「! ち、違う! 俺はそんなこと……!」


さやか「違うものか! 語るに落ちたな、グレン! 『ニルヴァーナ・スラッシュ』!!」

カエル「うぐああっ!!」

さやか「みな、そうだ……。勇者などともてはやし、過度の重圧を与え追い込んでおきながら……」

さやか「失敗すれば、すべて私の責! 誰も彼もが、侮蔑と失望を向ける!」


さやか「魔女を殺すだけしか意味がない石ころのあたしに、誰が何をしてくれるって言うの?」

さやか「あたしのために人間やめる覚悟もないくせに、口だけで丸め込もうってのが気に入らない!」


さやか「勇者など、ただのいけにえではないか! 貴様たちはそうやって陰で笑っていたのだろう!?」

さやか「私は一体、なんのために戦ったのだ! 誰のために戦ったのだ!?」


さやか「ねえ、この世界って守る価値あるの? あたし、なんのために戦ってたの?」

さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。その仕組み、変えられないの!?」


さやか「私の生涯に意味はあったのか!?」

さやか「教えてよ、今すぐあんたが教えてよ! でないと、あたし……!!」

カエル「く……。……ア、アンタが……! そんなセリフを言っちゃいけない!」

さやか「貴様がそれを言うのか……! 私をこんな風にした、貴様が……!」

カエル「何もかもを覚悟していた