ほむら「時の卵?」 その2 (990)

魔法少女まどか☆マギカ × クロノトリガー


前スレ

ほむら「時の卵?」 - SSまとめ速報
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現在、第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」 進行中

↓より投下開始

クロノ「僕も男だからさ、『勇者』ってのにあこがれてたんだ」

カエル「……そうか」

クロノ「でも、実際は御伽噺のようにはいかないよな……。勇者だって、ひとりの人間なんだ……」

カエル「……」


さやか「師匠……」

カエル「おい、動くな。まだ完全に治りきっていないだろうが」

さやか「ヘヘ……。やり過ぎだっての、師匠は……。ほんと、女の子の扱いがヘタクソなんだから……」

カエル「減らず口が叩けるなら、大丈夫だな」

さやか「ね、師匠……。『正義』って、なんなんだろう?」

さやか「サイラスさんは、誰かを救うために、あんなにがんばってたのに……こんな終わり方……」

カエル「……」


さやか「やっぱりこの世の中には、正義なんてないのかな?」

さやか「見方が違うってだけで……結局は自己満足で、押し付けでしかないのかな……?」

さやか「人のために祈り続けるのって……やっぱり、無理なのかな……」

カエル「そうだな……。俺は正義の道とは、『道化』の道だと思う」

さやか「道化……?」


カエル「以前、王妃様の修道院視察に随行した時、こんな話を聞いたことがある」

カエル「『我々人間ははるか昔、堕天使ルシファーにそそのかされ禁忌の果実に触れてしまった』」

カエル「『そのせいで神の怒りを買い、楽園を追い出された』……と」

さやか「それって、有名な神話の……」


カエル「俺たち人間は、本質的には道徳的に『悪』とされていることを好む種族なのだろう」

カエル「その真逆である正義をなすということは、人をだまし、何より自らをだまし続けなければならない」

さやか「……」

カエル「しかし、だ。そんな本性に人々はみな、もがき苦しんでいる。助けを求めている」

カエル「誰かに『違う』と言ってほしいから、英雄譚は求められ、語り継がれる」

カエル「勧善懲悪の物語に出てくるような『正義』は……この世の中で必要とされている」


カエル「さやか。ハッピーエンドは嫌いか?」

さやか「そんなわけないじゃん……」

カエル「俺もだ。物語の最後は、笑って見ていられるほうが好きでな」

カエル「だから俺は、演じ続ける。みんなを笑わせるために……」

さやか「……」


カエル「『人のために』ってお前の想い……俺は格好いいと思うぞ」

カエル「うらやましいぜ。汚れちまった俺には、到底できない考え方だ……」

さやか「師匠……」

カエル「絶望するな、さやか。人に、世の中に……。自分に……」

カエル「醜い部分が見えたとしても、ヘラヘラ笑って許してやれ。受け入れてやれ」

カエル「だまし続けるんだ。そして追い続けろ。そうすればいつか……それが、『本物』になる」

さやか「なんか……無責任だよね、それって」

カエル「ハハ。そうだな、俺もそう思う」


カエル「お前は以前、一度は『正義の味方』を志し、道半ばで挫折したと言っていたな」

カエル「今はどうだ? ……考えが、変わったか?」

さやか「……わかんないよ……まだ……」

カエル「そうか。答えが出たら、ぜひ教えてくれ」

クロノ「! カエル……君の、グランドリオンが!」

カエル「おお、輝いているな……。これは一体?」

クロノ「まさか、剣の精霊である彼らが……?」


「フフ……」

「そうさ!」


さやか「グラン! それに、リオンも!」

リオン「お兄ちゃんは、悩んでたよね?」

グラン「勇者の強さは、意志の強ささ!」

リオン「罪ほろぼしのだめなんかじゃない」

グラン「あんたの意志が、今、本当の強さを持ったのさ!」

カエル「俺の……意志……!」

>>9
失礼、誤字がありました。正しくはこっち。


クロノ「! カエル……君の、グランドリオンが!」

カエル「おお、輝いているな……。これは一体?」

クロノ「まさか、剣の精霊である彼らが……?」


「フフ……」

「そうさ!」


さやか「グラン! それに、リオンも!」

リオン「お兄ちゃんは、悩んでたよね?」

グラン「勇者の強さは、意志の強ささ!」

リオン「罪ほろぼしのためなんかじゃない」

グラン「あんたの意志が、今、本当の強さを持ったのさ!」

カエル「俺の……意志……!」

リオン「これで、心おきなくボクらも力を出せるね、兄ちゃん!」

グラン「そうだな、リオン! 行くぜ!」

カエル「これは……!」


クロノ「グランドリオンの意匠が変わった!」

カエル「外見だけじゃない。このみなぎる力……! これが、グランドリオンの本当の姿なのか!」

さやか「つまり、『新生グランドリオン』!?」


カエル「……サイラス、見てるか……?」

カエル「アンタのくれたグランドリオンが、今、俺に力を与えてくれているぜ……」

カエル「サイラスよ、俺は行く。アンタのこころざし……受け取ったもの……のちの世に伝えるために」

カエル「アンタはいつまで自分にしがみついているつもりだと笑うだろうが……」

カエル「あいにくと、別の生き方を知らんものでな。もう少し付き合ってもらうぜ」

カエル「それが……! アンタへの、最後のはなむけだ!!」


カエル「見ていてくれ、サイラス。俺が進む、その先をな!!」


…………


A.D.600 勇者の墓


大工A「親方! 東側の改築、終わりました!」

初代ゲン「ご苦労さん。西側が予定より遅れがちだ。応援に行ってやってくれ」

大工A「あいよ!」


杏子「親方。この土嚢、こっちに積み上げりゃいいんだよな?」

初代ゲン「おう、わりぃな。あんたはホントよく働いてくれるねえ」

杏子「ま、昔いろいろやってたからな……。日雇いとかでさ」

初代ゲン「まあ仕事さえキチッとやってくれりゃあ、何でもいいぜ」

初代ゲン「しかし、キョーコちゃんに比べてあいつときたら……」


魔王「くそ……。なぜ王であるこの俺が、土いじりなぞ……」

大工B「おうおうおう! ぶつぶつ言う暇があったら手と足を動かしな!」

魔王「チッ……」

まどか「こんにちは! お弁当の差し入れ、持ってきましたよ」

初代ゲン「おう、まどかちゃんじゃねえか」

大工A「ヒャッホウ! まどかちゃんの手作り弁当だぜ!」

初代ゲン「てめぇら、飯食う前にやることがあるだろ! ちゃっちゃと終わらせねえと、昼休憩抜きだぜ!」

大工B「そりゃないっすよ! チクショー、やるぜおめぇら!」

大工たち「押忍!」

まどか「杏子ちゃんとジャキくんは、ちゃんと働いてますか?」

初代ゲン「まずまずだな。助かったぜ、わざわざ人手を紹介してくれるなんてよ」

まどか「いえいえ、これはふたりがやるべきことですから」

初代ゲン「?」


まどか「ちなみに、正体がバレると大変だから、ふたりともツナギを着てるよ!」

まどか「杏子ちゃんは髪をおろしてて、ジャキくんは角刈りカツラとマジックで描いたヒゲのおまけつき!」

初代ゲン「……誰に説明してるんだい?」

まどか「ウェヒヒ! なんでもないでーす!」

大工A「親方! 墓石の新しいやつが届きましたよ」

初代ゲン「ほう、もう来たか。早いな」

まどか「見せてもらってもいいですか?」

初代ゲン「かまわねえよ」

まどか「ありがとうございます。……わあ、ちゃんと墓標も書き換えられてますね」

初代ゲン「前のやつはあまりにもひどすぎたからな」


まどか「これなら、きっと……サイラスさんも、安心して眠れますよね……」

初代ゲン「そうだな……」



"その想いを親友グレンに託して、勇者サイラス、ここに眠る"


第10話(マルチイベント編-1)「勇者の墓」 終了


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今回はここまでです。それでは、また明日。

第11話(マルチイベント編-2)「ビネガーの館」


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A.D.600 ビネガーの館上空


まどか「あれがビネガーさんのお屋敷?」

杏子「ああ、そうだよ。相変わらず趣味の悪いつくりしてやがんなあ……」

まどか「杏子ちゃんたちはここに来たことがあるの?」

杏子「……昔はここに住んでたよ」

まどか「え?」


魔王「雑談はあとにしろ。行くぞ」

A.D.600 ビネガーの館 入り口


ビネガー「ウエ〜ルカ〜ム! ここは大魔王ビネガーの……ん?」

魔王「……」

ビネガー「おぴょおっ!! あ、あなたは、魔王様!」

魔王「……いい身分だな、ビネガー」

杏子「大魔王ってなんだよ。ジャキがいなくなったからテメェがトップだってか?」

ビネガー「オフィーリア……貴様まで……」


まどか「オフィーリア?」

杏子「あー、まあ……そう呼ばれてるってことにしといてくれ」

ビネガー「……フン! 貴様らにどうこう言われる筋合いはないわ」

ビネガー「魔王様、あなたにもだ。魔族の世を築くための戦いを捨て……」

ビネガー「人間どもにこびへつらうあなたなぞ、もはや我らの王ではない!」

魔王「……」


ビネガー「なぜ我らを裏切った……」

ビネガー「貴様もだ、オフィーリア! 拾ってやった恩を忘れたのか!」

杏子「……」


————

———


ジャキ「おい、杏子。杏子ってば」

杏子「呼び捨てにすんなよ、ガキのくせに……。で、なんだ?」

ジャキ「なんだじゃない。いつになったらこの森を抜けられるんだ」

ジャキ「ここ、前も通ったんじゃないか? お前、ちゃんと道分かってるのかよ」

杏子「……アタシに聞くな」

ジャキ「迷ってるのにウロウロしてたのかよ! ただの悪あがきじゃないか!」

杏子「ああ、うるせー! それ以上ごちゃごちゃ言うと、おいてくからな!」

ジャキ「なんだよそれ! 助けたんなら最後まで面倒見ろよな!」

杏子「こ、このヤロウ……」

杏子「!」

ジャキ「? どうかした……」

杏子「怪しいヤツがいる」

ジャキ「え?」


魔族「ゲヒヒヒ!」

ジャキ「な!? なんだコイツ!」

杏子「どう見ても仲良くしましょうってツラじゃねえよな……。下がってろ、ジャキ!」


…………


杏子「ふう。なんとかなったな」

ジャキ「杏子……お前……その姿……」

杏子「ん? あー……そっか。思わず変身しちまったか……」

杏子「えっとな、何から説明すっかなー……」


???「ほう……。我がしもべを、いともたやすく……。人間のくせに、なかなかやりおるわ」

杏子「! 誰だテメェは!」

ビネガー「フヒヒヒ! 我が名はビネガー!! いずれ魔族の王となる男よ!」

杏子「次から次へと……。おかわり頼んだ覚えはないんだけどね」

ビネガー「カスどもが! ここで死ねい!」


ジャキ「杏子、来るぞ!」

杏子「分かってら、クソッ……! やるしかねえ!」

ビネガー「我が覇道の踏み台としてくれるわあ!!」

ビネガー「あの、すいませんでした」

杏子「……」

ジャキ「……すげー、これが有名な『DOGEZA』か」

ビネガー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず、みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」


杏子「もういい、消えな。二度とそのツラ見せんじゃないよ」

ビネガー「あなた様のご慈悲にこのビネガー、感涙に心打ち震えまして……」

杏子「早く消えろっての!」

ビネガー「は、ははーっ。それでは……」

ジャキ「いいのか、杏子?」

杏子「調子狂っちまったよ。おら、さっさと行こうぜ……」


ビネガー「引っかかったなあ!!」

ジャキ「!?」

杏子「テ、テメェ! 不意討ちかよ、きたねえな!」

ビネガー「なんとでも言え! 勝てば官軍よお!」


ジャキ「杏子、来るぞ!」

杏子「分かってら、クソッ……! やるしかねえ!」

ビネガー「我が覇道の踏み台としてくれるわあ!!」

ビネガー「あの、すいませんでした」

杏子「……」

ジャキ「……」

ビネガー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず、みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」


杏子「殺していい?」

ビネガー「そそそそんな! どうかご慈悲を!」

ジャキ「慈悲はさっきやっただろ」

???「……何をしている、ビネガー」

???「あらん、可愛い男の子ネ〜」

ジャキ「!」


ビネガー「おお、ソイソーにマヨネー! ナイスタイミングだ!」

杏子「チッ……お仲間がいやがったのかよ……」

ビネガー「フヒヒヒ! 形勢逆転だな!」

ジャキ「コイツ……急に元気になりやがった」


ソイソー「人間か。お前たち個人に恨みはないが……こんなところに迷い込んだのが運のつきだ」

マヨネー「この子、あたいがもらっちゃっていい?」

杏子「3対1かよ……。さすがにやばいな……」

ビネガー「お前ら! このカスどもをやってしまえ!」


…………


杏子「いってぇ……ちくしょう……」


ジャキ「杏子! ……くそ、放せよ!」

マヨネー「いや〜ん、元気があってかわいらしいのヨネ〜」


ソイソー「かなりの手だれだった……。1対1なら、負けていただろうな」

マヨネー「ほ〜んと。おかげであたいのキレイな肌にキズがついちゃったのヨネ」

ソイソー「ビネガーは早々にやられていたしな……」


ビネガー「……」チーン

ソイソー「何か言い残すことはあるか? 武士の情けだ、聞いてやる」

杏子「……ジャキは……その少年は、逃がしてやってくれ」

ジャキ「! ……お前……」

マヨネー「イヤよン! この子はあたいのものなのヨネ〜」

ソイソー「だ、そうだ。残念ながらその頼みは聞けそうもないな」


杏子「……ああ、そうか……よッ!!」バッ!

ソイソー「!? ぐ、くお……! 土が目に……!」

ジャキ「いいぞ、杏子!」

杏子「ジャキ! 今助けるからな!」

ジャキ「!?」

マヨネー「はい、そこまでなのヨネ〜。姑息な手を使ってくれるじゃないのヨ」


杏子「テ、テメェ……ジャキをどうするつもりだ!」

マヨネー「どうするかはアナタ次第ヨ。ちょ〜っとばかし惜しいけど……」

マヨネー「抵抗するならこの子、殺しちゃうわヨン?」

杏子「くそったれ……」

マヨネー「ソイソー、いつまでもがいてるつもりヨ?」

杏子「!」


ソイソー「目くらましとは……やってくれるじゃないか」

杏子「……万事休すか」

ジャキ「……ウザいんだよお前ら……」

マヨネー「ヨネ?」


ジャキ「勝手に助けたり面倒見たり……襲ってきたり、殺そうとしたり……」

ジャキ「挙句の果てには身を挺して守るとか……ヒーロー気取りかよ……」

ソイソー「なんだ、貴様……何を言っている?」

ジャキ「ボクにかかわるとみんな不幸になるんだ……」

杏子「……」

ジャキ「もういいよ、杏子……。ボクのことはほっといてくれ……」

杏子「いやだね」

ジャキ「! ……なんで」


杏子「いいかどうかは自分で決める。アタシはお前を助けてやるって決めたんだ」

杏子「助けたんなら最後まで。お前が言ったことだろ」

杏子「ガキはガキらしく、杏子お姉ちゃんに守られてりゃいいんだよ」

ジャキ「……やめろよ……そういうの……姉上、みたいな……」

マヨネー「もういいわ。めんどくさいからこの子、殺しちゃうのヨネ」

杏子「! やらせるかっ!!」

ソイソー「おっと、私を忘れてもらっては困る。背後からとはいささか不本意だが……な!」

杏子「!? しまっ……!」

ジャキ「杏子!?」


マヨネー「いや〜ん、背中バッサリ! あれじゃ間違いなく死んだのヨネ〜」

ジャキ「……ふ、ふざけんなよ……! おい、杏子……!!」

杏子「……」


マヨネー「だ〜いじょうぶヨ。あなたもすぐにあとを追うんだから……」

マヨネー「ふたり仲良くあの世で暮らしなァ!!」

ジャキ「……お前らあああああッ!!!」

マヨネー「えっ!?」

ソイソー「なんだ!? この巨大な魔力は!」


ジャキ「よくも杏子を……! 死ぬ覚悟はできてるんだろうな!!」

ソイソー「うおおおおッ!?」

マヨネー「なあああっ!?」


…………


ビネガー「あの、すいませんでした」

ジャキ「……」

マヨネー「ほんとに、もう……身の程もわきまえず……」

ソイソー「みなさま方にたてつこうなどという愚行を……」

杏子「……なんだよこれ? 気が付いてみたら全員DOGEZAとか……」


ジャキ「よく生きてたな、お前……」

杏子「ヘッ、アタシが死んだと思ったか? 残念でした」

杏子(ソウルジェムは無事だったからな……。背後じゃなく、前から斬られてたらやばかったけど)

杏子「で、どーすんのコイツら?」

ジャキ「……部下にする」

杏子「はぁ!? 本気かよ。殺されかけた相手だぜ?」

ジャキ「それはお前が弱いからだろ。ボクならこいつらを抑えられる」

杏子「……言ってくれるね」

ジャキ「1対1なら杏子だって勝てるだろ。なんならボクが守ってやってもいい」

杏子「どういう心境の変化だよ? アタシを守るだあ?」

ジャキ「……別にどうでもいいだろ」

ジャキ「おい、えーっと……緑のデブ」

ビネガー「ハッ! ビネガーでございます、魔王様!」

ジャキ「魔王?」


ソイソー「先ほどの強大な魔力、まさしく魔族の王。我が主君にふさわしきお力」

マヨネー「あたいたちを導き、魔族が安心して暮らせる世の中を築き上げてほしいのヨネ!」

杏子「よく言うぜ……。カスだなんだって馬鹿にしやがったくせによ」

ソイソー「その非礼には、このビネガーめが割腹してお詫びを!」

ビネガー「だが断る」

杏子「……」

ジャキ「もういい。それより、この森はどうやって抜けるんだ?」

ビネガー「ははーっ。それでは、この先にあるワシの超豪華な屋敷にご案内いたします!」

杏子「さりげなく自慢してやがる……」

ビネガー「こちらです! ささ、お足元にお気をつけて!」


…………


杏子「おい、ジャキ。さっきの『魔族の世』っての、本気で作るつもりか?」

ジャキ「……気が向いたらな」

杏子「……」

ジャキ「それよりお前、いつまでついてくるんだよ。森は抜けたし、もうどっか行けよ」

杏子「どっか行ってもいいのか?」

ジャキ「……」

杏子「中途半端は気持ちわりいしな。もうちょっとだけ付き合ってやるよ」

ジャキ「……頼んでない」

杏子「言ったろ? アタシの行くところはアタシが決めるって」

杏子「それにお前、色々危ないんだよ。考え方とか、無駄にでかい魔力とか……」

ジャキ「勝手にしろよ……」

杏子「はいはい。お前がもうちょっと大人になったら、言われなくても勝手に出て行ってやるよ」

ジャキ「大きなお世話だよ、杏子お姉ちゃん」

杏子「……ん? おい、ジャキ。今なんて……」

ジャキ「……」

ビネガー「キョーコ! 魔王様と密談とは、けしからんな! ワシもまぜろ!」

杏子「うるせーぞ、デブ。またDOGEZAしたいのか?」

ビネガー「はい、すいませんでした」



ジャキ「……変なヤツらだよ、お前ら……。わざわざボクなんかのために、さ……」


————

———


杏子「大丈夫か、まどか?」

まどか「うん。でもビックリしちゃった。ビネガーさん、いきなり魔物をけしかけてくるんだもん」

魔王「自らは撤退し、手下を使うか。変わらんな」

杏子「そういうヤツだよ、アイツは。よし、追うぜ!」


…………


ビネガー「チッ、もう追いついてきやがったか!」

杏子「足おせーなあ……」

まどか「あの……失礼かもしれないですけど、もう少し痩せたほうがいいんじゃ……」

ビネガー「うるさいわ!」

ビネガー「しつこいヤツらめ。こうなったら……マヨネーッ!」


マヨネー「は〜い! あたいを、呼・ん・だ?」

杏子「うげっ……マヨネーかよ……」

まどか「強いの?」

杏子「強いって言うか、キモい」

まどか「キモい……?」


マヨネー「あ〜ら、これは魔王様にオフィーリア。どのツラ下げて来られたのかしらネ〜?」

マヨネー「人間に味方するような裏切り者は、このオネーサンがおしおきヨネ〜」

杏子「何がオネーサンだ。テメェ、男だろ」

まどか「え!?」

マヨネー「フフン、相変わらず口の減らないコ……。すぐに生意気言えないようにしてあげるのヨネ」

マヨネー「さ、大魔王ビネガー様は下がってて。このコたちのシマツは、このあたいにまかせてヨネ〜」

ビネガー「たのんだぞ、マヨネー!」


まどか「男のひと……? ええ〜……こんなにキレイなのに……」

魔王「鹿目まどか。ほうけている場合ではないぞ」

まどか「はっ! あ、ご、ごめんなさい!」



マヨネー「さ〜、オ・シ・オ・キ・ヨ!!!」


————

———


誤爆です、失礼しました

ジャキ「イヤだって言ってんだろ! はーなーせー!」

マヨネー「もう〜。わがままばっかり言ってちゃメッ! なのヨネ」


杏子「おいおい、なんの騒ぎだよ」

ジャキ「杏子! 助けろ!」

杏子「はあ?」


マヨネー「ああん、キョーコちゃんからも言ってあげてほしいのヨネ」

マヨネー「魔王様ったらあたいとオフロ入るの、絶対イヤだって言うのヨ」

杏子「……くだらねえな、オイ」

>>56
お気になさらず

ジャキ「ひとりで入れるって言ってんだろ!」

マヨネー「ダメよお〜。オネーサンが魔王様をキレイにしてあげるんだから〜」

マヨネー「そう……スミズミまで、ネ」ジュルリ

杏子「よだれ出てんぞ、セクハラ女。いい加減にしてやれよ」


マヨネー「キョーコちゃんは魔王様に甘いわネ〜。じゃあアナタが一緒に入ってくれる?」

杏子「なんでだよ。必要ねえだろ」

マヨネー「ひとりで入ってもつまんないのヨネ!」

杏子「……はいはい、分かったよ。ったく、女同士で何が楽しいんだか……」

マヨネー「裸の付き合いは大事なのヨネ。これでキョーコちゃんともっと仲良くなれるのヨネ〜」

杏子「超ウゼェ」

マヨネー「さー! そうと決まれば早く行くのヨネ!」

ジャキ「……助かった……」


ソイソー「おや? 魔王様ではないですか」

ジャキ「ソイソー……」

ソイソー「奇遇ですな。ところで、キョーコに所用があるのですが、見かけませんでしたか?」

ジャキ「アイツならマヨネーと一緒に風呂に行ったよ」

ソイソー「マヨネーと? それはまた……キョーコも思い切ったことをしますな」

ジャキ「え?」



「うぎゃああああああああああああああ!!!???」

杏子「ぞっ、ぞぞぞぞぞゾウさんがああーっ!!!」

ジャキ「っ!?」


ソイソー「落ち着け、キョーコ。象がどうかしたのか?」

杏子「まっ、マヨネーのっ、股のところにぃ……お、おっきなゾウさんが……!」

ソイソー「ああ、陰茎のことか? 当然だろう、アイツは男だからな」

杏子「き、聞いてねえぞ! ていうか、胸が……」

ソイソー「あれは豊胸手術だ。そういえばふたりには言ってなかったか……」


杏子「そういう大事なことは早く……ん? どうしたジャキ?」

ジャキ「……」

杏子「顔真っ赤にしやがって……熱でもあるのか?」

ジャキ「ち、近づくな!」

杏子「なんだよ、こっち向けよ」

ソイソー「ところでキョーコ。ひとつ疑問があるのだが」

杏子「あん?」

ソイソー「人間は風呂上りに全裸で徘徊する習慣があるのか?」

杏子「えっ……? ……あっ!!!」

ジャキ「……」

杏子「テ、テテテメェ、ジャキ! 見るんじゃねえ!」

ジャキ「見てないよ! ……ちょっとしか……」

杏子「見てんじゃねえか、このエロガキ!」

マヨネー「あ〜ん。勝手に上がっちゃダメヨ、キョーコちゃん」

杏子「! マ、マヨネー!」

マヨネー「さ、早く来てン。ちゃんとお肌のお手入れしないと〜」

杏子「やめろ! 引きずるな!」

マヨネー「キョーコちゃんのお肌、せっかくキレイなんだからン。オンナのあたいでもうらやましいのヨネ」

杏子「なにが女だ! ひっ、ぃや……き、汚いもん揺らすな、バカ!!」

マヨネー「ひどお〜い! 汚くないわヨ〜」


ジャキ「……」

ソイソー「魔王様はああいうのに興奮するのですか?」

ジャキ「……」

ソイソー「人間の性的嗜好はよく分かりませんな……」

ビネガー「そんな魔王様のために、不肖ビネガー、エロ本を購入いたしましたぞ!」

ソイソー「ビネガー……お前いたのか」

ビネガー「ささ、どうぞご覧ください!!」

ジャキ「……『デブ専のアナタに贈る! DAVE[デイブ] 〜魅惑の肉だんご〜』……」


ビネガー「やはり、おなごはウエスト100cm以上に限りますなあ! フヒヒヒヒ!」

ソイソー「……」

ジャキ「……」


————

———


マヨネー「キ〜ッ! くやし〜い!! おぼえてらっしゃい!」


杏子「マヨネーのヤツ、前よりも強くなってなかったか?」

魔王「魔王城消滅より時を経た。ヤツらも遊んでいたわけではないということだろう……」

まどか「だいぶ時間がかかっちゃったね。ビネガーさんに追いつけるかなあ……」

魔王「安心しろ。おそらく……」


…………


ビネガー「な〜いす・とう・みーちゅ〜!」


まどか「ま、待ち伏せ!?」

魔王「……やはりな」

杏子「あー、あったな。こんな場所」

まどか「ここは? 通路みたいだけど……。横のこの床、なんだろ?」

杏子「ベルトコンベアだよ。前後にしか進めないこの場所で、左右から挟撃するためのな」

杏子「あそこにいるビネガーがレバーをまわすと、奥から魔物が運ばれてくるって寸法さ」

ビネガー「ネタバレすんなよ!!」

ビネガー「フン、いくら仕掛けを把握していたところで、止められなければ意味があるまい……」

ビネガー「しかあ〜もッ! 今回は魔王城の時のような失敗はありえんぞ!」

ビネガー「ごちゃごちゃと待遇にうるさい正社員のクビを切り、派遣社員を雇ってあるからな!」

まどか「魔王軍って雇用制なの……?」

ビネガー「カマーン! 優秀なる派遣社員よ!」キコキコキコ!!


QB「やあ、まどか! 僕と契約して、社畜になってよ!」

まどか「キュ、キュゥべえ!?」

ビネガー「キュゥべえ君はすごいぞ。彼の営業のおかげで、わが社の業績はうなぎのぼりなのだ!」

杏子「お前なにやってんだよ……」

ビネガー「さあ、キュゥべえ君の営業タイムスタートだ! れっつら・ご〜!」キコキコキコ!!

QB「未経験のあなたでも安心! 魔王城では友達感覚の上司が丁寧に教えてくれます」

QB「熱意さえあれば誰でもOK! アットホームで家庭的な雰囲気の職場ですよ」

QB「学歴年齢不問、将来は独立も可能! 社員のほとんどが異業種からの転職者!」

QB「がっつり稼いでやりがいも感じられる、あなたの『夢』を一緒にサポート!」

QB「まずは会って話をしようぜ! あなたのご応募、お待ちしております! キュップイ!!」


杏子「……」

魔王「……」

まどか「……ガッツポーズして、そのままフェードアウトしていったけど……」

ビネガー「……」キコキコ...キコ...

>>68訂正
魔王城→魔王軍

ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーピ〜ンチッ!! さらばだっ!」



杏子「……」

魔王「……」

まどか「えっ、それだけ!?」


杏子「さて……追いかけるか」

魔王「うむ」

まどか「えっ、えっ? 今の、なんの意味があったの!?」


…………


ビネガー「ま、まだ追ってくる気か!? こうなったら……ソイソ〜ッ!!」


ソイソー「お呼びになられましたか?」

魔王「ソイソーか……。ようやくマトモなヤツが出てきたな」

ビネガー「ソイソー、まかせたぞ!」

ソイソー「かつて主君とあおいだ方と剣を交えるのは不本意ではあるが……これも運命か。仕方あるまい」

まどか「な、なんか強そうな人……」

杏子「コイツは手ごわいぜ。気合入れろよ」



ソイソー「覚悟はいいか!? 参るッ!!」


————

———


ジャキ「この料理は出来損ないだ、食べられないよ」

杏子「食い物を粗末にするんじゃねえ、殺すぞ」

ジャキ「じゃあ杏子はこれ、食えるのかよ」

杏子「……」

ジャキ「……」

杏子「ビネガー、テメェ! 大切な食料をワケの分からねぇアンノウンに変えやがって!」

ビネガー「ワシの手料理を愚弄する気か!」

杏子「緑色のゲル状物質のどこが手料理だ!」

ビネガー「フン、イヤなら食べなければいい!」

ビネガー「そもそもそれは、魔族の食事が口に合わないと仰る魔王様のために作ったのだからな!」


ジャキ「ボクだってこんなの要らないよ」

ビネガー「しょんな!」

ジャキ「マヨネー、お前にやる」

マヨネー「あたいだってお断りヨ〜。それに、もう外で食べてきたし」

杏子「店あんのかよ、この辺……」

マヨネー「魔族用のネ。ギンギー料理屋さんとかオススメヨン」

ソイソー「やれやれ、こんなことだろうと思った」

杏子「ソイソー。どこ行ってたんだ?」

ソイソー「変装して人里に下り、食材を分けてもらってきた」

杏子「は?」


ソイソー「ずっと気になっていたのだ……」

ソイソー「魔王様が口にされるものといえば、キョーコが森で採ってくる果実や獣肉ばかり」

ソイソー「しばらくはそれでもいい。だがこのままでは、確実に栄養バランスが偏ってしまう!」

ジャキ「お前……」


ソイソー「ご安心めされよ。今日よりこのソイソーめが、魔王様の食生活を規則正しいものにいたします」

マヨネー「ソイソー、料理できるのン?」

ソイソー「今日は鮭の香味蒸し、青菜のごま和え、キャベツとわかめの味噌汁に大豆ご飯もつけるか……」

杏子「アンタどこ出身だよ!? ていうかホントに魔族かよ!?」


…………


ソイソー「マヨネー、貴様! 服を脱ぎ散らかすなと何度言ったら分かる!」

マヨネー「だってぇ〜ン……」

ソイソー「だってじゃない! せめて洗濯所にひとまとめにしておけ。あとで洗っておいてやるから」

ソイソー「下着と靴下は別にしておけよ。下洗いするからな。あとできれば靴下は裏返しておいてくれ」

マヨネー「はぁ〜い……」


…………


ソイソー「キョーコ、貴様! カップアイスの容器をそのまま捨てたな! 虫がたかるだろうが!」

杏子「え、ダメなの?」

ソイソー「軽く洗って乾かしておけ。捨てるときもちゃんとつぶせよ。かさが減るからな」

ソイソー「それから、今飲んでるペットボトルもキャップとラベルは分別しろ」

杏子「め、面倒くせー……」


…………


ソイソー「ビネガー、貴様! 魔王様の部屋を掃除しておけと言っただろうが!」

ビネガー「な、なぜ怒る。ちゃんとやったぞ?」

ソイソー「隅にホコリが溜まっているだろうが! 『四角い部屋を丸く掃く』を地で行きおって……」

ソイソー「罰としてお前は風呂掃除だ。タイルの目地の汚れも落とせよ」

ビネガー「ひいい〜……」


ソイソー「まったく……ん? これは……魔王様が寝台の下に隠されていた春画か」

ソイソー「嗜好別に整理して机の上に置いておこう」


…………


ソイソー「魔王様、いけません! 歯磨きの最中に水を出しっぱなしになさっては!」

ジャキ「ふぇ?」

ソイソー「もったいないではないですか。それに見たところ、奥歯がしっかり磨けておりません」

ソイソー「虫歯になってしまいますぞ。ささ、こちらへ。このソイソーめが代わりに磨いて差し上げます」

ジャキ「い、いいよ! ひゃめ、ひゃめろってば!!」


…………


ソイソー「便所の明かりがつけっぱなしだぞ!」

マヨネー「あ、忘れてたのヨネ……」


ソイソー「買い物カゴにこっそり菓子をしのばせるな! 欲しいならちゃんと言え!」

杏子「わ、悪い……」


ソイソー「お出かけ前の戸締り確認はしたのかあッ!?」

ビネガー「い、今やっとる……」


ソイソー「夜更かしはなりませぬぞ、魔王様」

ジャキ「まだ8時だよ……」

ソイソー「まったく、貴様らは! だらしないにも程がある!!」

杏子&ジャキ&ビネガー&マヨネー「ゴメンナサイ...」


————

———


ソイソー「クッ、ぬかったわ! このままでは済まさぬぞ……」


まどか「あんなにマジメで実力もある人が、どうしてビネガーさんなんかの下で働いてるんだろ?」

魔王「……地味に毒舌だな、鹿目まどか」

杏子「しがらみとかあるんだろ。責任感も強いしな」

まどか「抜け出せなくなった古参バイトみたいだね……」


…………


ビネガー「は〜う・あー・ゆ〜?」


まどか「また待ち伏せだよ……」

ビネガー「かま〜ん、べいべ〜!」

杏子「なんかすげーイラッとする」

魔王「来いと言うなら行ってやろうではないか」


ビネガー「ちょちょ、ちょっとストップ!」

まどか「え?」

ビネガー「あの〜、宝箱は? そこにあるでしょ。取ってかないんすか?」

杏子「ああ……あるな」

魔王「すぐそばにギロチンが待ち構えている宝箱が、な」

まどか「どう見ても罠だよ! 取るわけないよ!」

ビネガー「いや〜、取ったほうがいいと思いますよ? きっといいものが入ってますって!」

杏子「んじゃ、テメェをぶっ飛ばしてから取るよ」

ビネガー「ヘイヘイヘイ! そんなこと言わずに! 誰かに取られたらどうするんすか!」

魔王「……よほど高価なものでも入っているとみえるな」


ビネガー「さっすが魔王様! そうそう、そのとおりですわ。確か、えっと……グリーフ……なんとか?」

まどか「グリーフシード!?」

ビネガー「それそれ!」

杏子「なんでテメェがグリーフシードを!?」

まどか「まずいよ、もし孵化しかかってたりしたら……!」

QB「あ、社長。休憩いただきます」

ビネガー「ん? キュゥべえ君か。うむ、好きにしてくれたまえ」

QB「ありがとうございます。ところで、僕のグリーフシードが行方不明なんですけど知りませんか?」

ビネガー「あ、えーと……」

杏子「キュゥべえのかよ! パクりやがったのか、コイツ!」


ビネガー「人聞きの悪いことを言うな! 机の上に放置してあったから、なくなったらいかんと思って……」

QB「なんだ、保管箱にしまってくださったんですか? それならそうと言ってくださいよ」

ビネガー「いや、すまんすまん! ワシとしたことが!」

QB「えーと、あの箱ですね。わざわざすみません」

ビネガー「気にしなさんな! さ、持っていきたまえ!」

QB「では失礼して……。よいしょ……おや?」


ガラガラガラ...

QB「キュップイ!?」 グシャッ!!


杏子「……」

魔王「……」

まどか「……あ〜あ……。キュゥべえがギロチンでバッサリ……」

ビネガー「……」

ビネガー「……ビ……」

ビネガー「ビネガーショ〜ック!! さらばだっ!」


杏子「……」

魔王「……」

まどか「ギロチンは止まったし、グリーフシード回収しなきゃ。良かった、まだ新品だ」


杏子「さて……追いかけるか」

魔王「うむ」

まどか「だんだんわたしも慣れてきたよ」


…………


ビネガー「フッフッフッ、三度目の正直。今度は、そうカンタンにはやられんぞ」

まどか「二度あることは三度あるとも言うよね」

魔王「鹿目まどかがスレてきていないか?」

杏子「アタシに聞くなよ……」


ビネガー「ソイソー! マヨネー! ヤツらにジェットストリームアタックをかけるぞ!!」

ソイソー「承知!」

マヨネー「はいは〜い!」

ビネガー「我らが三位一体の攻撃! 止められるものなら止めてみるがいい!」

魔王「3人同時か……。最初からそうすべきだったな」

杏子「来るぞ!」



ビネガー「貴様たちをメッタメタのギッタンギッタンにしてくれるわ〜!」


————

———


ビネガー「なんだ、キョーコ。お前だけか。魔王様はどうした?」

杏子「ジャキならマヨネーのヤツと遊んでるよ」

ビネガー「遊ばれている、の間違いだろう」

杏子「……ま、そうとも言うかな。ソイソーは向こうでジャキ用のマントを縫ってる」

ビネガー「手縫いか……。アイツも主婦業が板についてきおったわ」

杏子「まったくだぜ。いつの間にかオカン気取りだ」

ビネガー「まんざらでもないようだな?」

杏子「誰が。うっとうしくてかなわないよ」

ビネガー「ワシはソイソーのことを言っておるのだ。なんだ、お前は母親が恋しかったのか? んん?」

杏子「ニヤニヤすんな。ウゼェ……」

ビネガー「ソイソーが母親なら、一家の大黒柱たる父親は当然ワシというわけだ! フヒヒヒ!」

杏子「ダメ親父の典型だけどな」

ビネガー「聞こえんな。おい、キョーコ。酒を取ってくれ」

杏子「昼間から飲むなよ……」

ビネガー「ついでに酌もしてくれ」

杏子「……」ドバドバ

ビネガー「おまっ、あほっ! こぼれてる! メチャクチャこぼれとるだろーが!!」

杏子「いい気味だぜ」


ビネガー「ああ、もったいない……」

杏子「こぼれた分までなめ取るなよ。いじきたねえな」

ビネガー「食い物を粗末にしたら殺されるんじゃなかったか?」

杏子「……」


…………


ビネガー「ワシはなあ〜……これでもなあ〜……がんばっとるんだぞお?」

杏子「もう酔ったのかよ……。しかも絡み酒とか勘弁してくれ」

ビネガー「聞いとるのか、キョーコ!」

杏子「はいはい、聞いてますよ」


ビネガー「ワシはな、魔王様を立派な王に育て上げ、魔族の世を築くんじゃ〜」

ビネガー「魔族は人間どもに迫害されておる。それをひっくり返すには、力による支配しかない!」

杏子「……」

ビネガー「見ておれ、人間どもめ〜。いつの日か、化け物とののしられた屈辱を晴らして見せるわ!」

ビネガー「魔王様にならそれができるのじゃ〜。あの方こそがワシらの救いなのじゃあ!」

杏子「……あんまり人に期待しすぎると、痛い目見ると思うけどね」

ビネガー「フン。知ったような口を聞きおる」

杏子「アンタらはよ、結局はジャキを王に仕立て上げるために、アタシらの世話を焼いてるってわけだ」

ビネガー「もちろん、それが第一であーる! しかし、まあ……それだけではあるまい」

杏子「……へえ?」


ビネガー「ワシら魔族は縦社会だが、それゆえ横のつながりをより大事とする」

ビネガー「世間のはみ出し者ゆえな。つまりは同僚、友人……そして家族」

ビネガー「魔王様はワシらの王ではあるが……同時に、大切なファミリーでもある」

ビネガー「それはキョーコ、お前もだ」

ビネガー「でなければ魔王様はともかく、お前まで置いておく理由はあるまい?」

杏子「……」


ビネガー「我ら魔族の鉄の掟を知っているか?」

杏子「知らねえな」

ビネガー「『報恩報復』。受けたものに必ず報い、奪われたものに必ず報いる」

ビネガー「キョーコ。お前が我らに家族の情を抱いているのならば、ワシらはそれに応えよう」

杏子「別に、アタシは……」

ビネガー「人間は敵だ。しかし例外というものはどこにでもある。魔王様やお前のように、な」

杏子「アタシは人間じゃねえし……」

ビネガー「フヒヒヒ! 魔法少女とやらの話か?」

ビネガー「ちょうど良いではないか。お前がゾンビだというのなら、より我らに近いということになる!」

杏子「……」


ビネガー「悔しいかな、魔王様はお前になついておる。ソイソーやマヨネーもお前を認めている」

ビネガー「ワシも、まあ……認めてやらんこともないような気がする」

杏子「どっちだよ……」

ビネガー「キョーコ。お前はこの家に必要なのだ。分かるか、ん?」

杏子「……」

ビネガー「フヒヒヒ! たまにはこういう話もせんとな!」

ビネガー「ワシがおちゃらけてばかりと思われたらかなわんわ。……ヒック」

杏子「酒くせえな。やっぱ酔ってんだろ」

ビネガー「酔っとらん、酔っとらん。この程度で……おえっぷ」

杏子「テメェ、ここで吐いたらしょうちしねえぞ」


ビネガー「う〜む。やはり飲みすぎたか? キョーコの姿が複数見えるわ」

杏子「……」

ビネガー「1、2、3……おお! 13人のキョーコがおるわい! 圧巻だな、フヒヒヒ!」

杏子「……!」

ビネガー「それだけおればお前ひとりで……人間どもを……ギッタンギッタン……に……」


ビネガー「……zzz……」

杏子「……こんなとこで寝るんじゃねーよ……。風邪引くだろうが……」

杏子「……」

杏子「……ビネガー、おい……。熟睡してやがんのか……?」

杏子「……」


杏子「……すぅ……」

杏子「『ロッソ・ファンタズマ』……!」


杏子「……っ!」

杏子「なんで使えるんだよ……クソッ……」

杏子「……」



杏子「……家族……か……」


————

———


マヨネー「いや〜ん!」

ソイソー「くっ、3人がかりでも太刀打ちできぬか……!」

ビネガー「んな、アホな!」

杏子「さすがにもう、どうしようもねえだろ?」


ビネガー「まだだ……まだ終わらんぞ!」

まどか「すごい執念だね」

魔王「逃がさん……」

杏子「ソイソーとマヨネーはこのままでいいのかよ?」

魔王「捨て置け。そいつらよりもビネガーのほうが厄介だ」

ソイソー「……」

A.D.600 ビネガーの館 最奥


ビネガー「魔王様……。あくまで、ワシを倒そうとされるか……」

魔王「……」

ビネガー「ともに戦い、魔族の世界を作ろうという夢は、ウソだったのか!」

魔王「……私は力がほしかっただけだ。ラヴォスを呼び出すため、貴様らを利用しただけのこと……」

杏子「……」

ビネガー「ワシは負けぬ! ワシが負けたら、魔族の未来はどうなる!」



ビネガー「ワシは……ワシは、負けるわけにはいかんのだ!!」

ビネガー「ビネガー……バリアーッ!!!」

まどか「えっ!?」

杏子「チッ……。そういやまだこれがあったか」


ビネガー「あらゆる攻撃をうけつけぬこの無敵のバリアー! 突破できるものなら突破してみろ!」

杏子「わりいが、その手は通じねえよ」

まどか「どういうこと?」

杏子「本人に攻撃する必要はねえ……。仕掛けを作動させるため、背後のスイッチを……こうするのさ!」

ビネガー「むっ! 多節棍を伸ばしてスイッチを押しただと!」

魔王「さらばだ、ビネガー……」


ビネガー「……フヒヒヒヒヒヒ! 引っかかったな!!」

魔王「なに!?」

ビネガー「貴様らが仕掛けを作動することなどお見通しよお!!」

杏子「しまった! フェイクか!」

まどか「お、落とし穴が!」

ビネガー「アディオス! アミ〜ゴ!」


————

———


杏子「どういうことだよ、人間の領地に侵攻するだって!?」

杏子「そんなことしたら戦争になるだろ! 分かってんのか、オイ!」

ビネガー「Gフロッグが人間どもに殺されたのだぞ? 黙っているつもりか!」

杏子「それは、あいつが……ひとのモンを盗んだりするから……」


ソイソー「そうだな。それはアイツの責任だ。……お前にも覚えがあるようだが」

杏子「……」

ソイソー「しかし同胞、それも幹部が殺された以上、静観するわけにはいかん。魔族全体の威信にかかわる」

ビネガー「首領であるGフロッグがいなくなったことで、ヤツの領地は同族相食む無法地帯……」

ビネガー「それもこれも、すべて人間どものせいだ!」

杏子「言いがかりだろ、それは……」


ソイソー「くどいぞ。事ここに至ってはやむなし。もはや、今までのような小競り合いでは済まされん」

マヨネー「あきらめなさいヨ。ど〜せ、遅かれ早かれこうなる運命だったのヨネ」

ビネガー「『報恩報復』の掟、まさか忘れたわけではあるまいな!?」

杏子「……ジャキ! お前はそれでいいのかよ!?」

魔王「……ラヴォスを呼び出すための儀式、そのための魔王城建設……。財が要る」

魔王「人間どもが我が領地を騒がすというのであれば、邪魔者であるヤツらは排除せねばならん」

杏子「そんな……」


ビネガー「キョーコ。魔王様に対してその呼び方は、もうやめるのだ」

ビネガー「王たる器にふさわしきお姿に成長された魔王様を、いつまでも子ども扱いするな」

杏子「……んだよ、それ……。ジャキは、ジャキだろ……」

魔王「……」

ビネガー「魔王様はこれより我ら魔族を率い、にっくき人間どもを駆逐し、世界を征服なさるのだ!」

魔王「杏子。選ばせてやる」

杏子「え?」

魔王「魔族としてここに残り、私に忠誠を誓うか……」

魔王「それとも人間として去り、好きに生きるか……」

魔王「どちらの道を選ぼうとも、我らは口出しせん。お前が決めろ」


魔王「自分の行くところは自分で……だろう?」

杏子「……」

杏子「……アタシは……魔族じゃねえ……」

マヨネー「……」

杏子「けど、人間でもねえ……。どっちにもなれねえ半端者だ……」

ソイソー「……」

杏子「なら……一緒にいてくれよ。ひとりぼっちは……さびしいもんな……」

魔王「……そういうことだ、ビネガー」


ビネガー「ハッ。……ならばキョーコよ。お前はもう『佐倉杏子』ではない……」

ビネガー「魔王四大将軍がひとり、『幻魔戦士オフィーリア』だ!!」


————

———


「——ちゃん! 杏子ちゃん!」


杏子「……ん……あ……?」

まどか「杏子ちゃん! 大丈夫?」

杏子「まどか……。あ、いてっ……」

まどか「どこか打ったの!?」

魔王「情けないヤツだ。受身も満足に取れんとは」


杏子「そうか、ビネガーの野郎に落とし穴にハメられたんだっけか……」

魔王「ただ下の階に落とされるだけのものであったのは不幸中の幸いだ。特にお前にはな」

杏子「はいはい、油断してスイマセンでした。まどかは大丈夫だったのか?」

まどか「ジャキくんがとっさにかばってくれたからね!」

杏子「ほーお?」

魔王「……フン」

杏子「で、アタシはどれくらい気絶してたんだ?」

まどか「数分ぐらいだと思うけど……」

杏子「なら、アイツらはまだ逃げおおせちゃいねえよな」

魔王「数分だろうが数時間だろうが同じこと」

魔王「ヤツらに逃げ場など、もはやない。ここで我らと雌雄を決するしかないのだ」

杏子「……」

魔王「行くぞ。今度こそ決着をつけてやる」


…………


ビネガー「ムダ、ムダ、ムダァァァァァッ! 何度来ても同じことよ!」


杏子「もう同じ手は通じねえぞ!」

ビネガー「フフン、それはどうかな? 見るがいい!」

魔王「これは……!?」

まどか「スイッチがいっぱいあるよ!? どれが本物なの……?」

ビネガー「フヒヒヒ! どうだ、分かるまい!」

杏子「テメェ……どうやってこれだけのダミーを……」

ビネガー「ジェバンニが数分でやってくれました」

杏子「誰だよ!!」

ビネガー「どうしたあ? 端から順に押していったらどうだ。もしかしたら当たるかもしれんぞ!」

まどか「そのたびに落とし穴だよね……」

魔王「戻ってくるあいだにさらにダミーが増えることも考えられるな」


ビネガー「貴様たちではワシは倒せん! とっとと帰れ!」

杏子「クソっ、ジリ貧かよ……! どうする、ジャキ!」

魔王「……知らん」

杏子「使えねえな!?」


まどか「……」

まどか「あーあ。これじゃどうしようもないよね」

杏子「オイ、音を上げてる場合じゃ……」

まどか「誰か助けてほしいなあ。正解のスイッチ押してくれないかな?」

まどか「そうしたらわたし、感激して思わず契約とかしちゃうかも」

杏子「……は?」



QB「そそそそれは本当かい、まどか!!」

ビネガー「キュゥべえ君!? なんで生きてるの!」

QB「任せてよ! 僕は内部の者だ。どれが本物のスイッチか分かっている」

QB「実は、見えているものは全部フェイクで、正解は柱の陰にあるコレさ」

ビネガー「そ、そのスイッチは! おのれ……『スイッチ』を押させるなーッ!」

QB「いいや! 限界だ! 押すね! 今だッ! ……ぽちっとな」

ビネガー「うおおおおっ、謀ったなシャア!!」



パカーン!

ビネガー「ビネガー王国に栄光あれえーッ!!!」ヒュウウウウウ...


杏子「……」

魔王「……」

まどか「ビネガーさん、ボッシュートです」チャラッチャラッチャーン

QB「どうだいまどか! 僕は役に立ったろう?」

まどか「うん。ありがとう、キュゥべえ」


QB「そ、そ、それじゃあ宣言どおり、契約してもらおうかな……?」

QB「こ、この業績が認められれば……僕も晴れて中央勤務だ! グッバイ、辛く苦しい地方業務!」

QB「こんなにうれしいことはない! さあまどか、願いを早く! ハリー! ハリーハリー!」

QB「そうか、さっきの『スイッチ押してくれ』ってのが願いだったんだね!?」

QB「そ、それならもう契約しちゃっても、い、いいよね? よよよよし……!」

QB「こんなビッグな仕事は久しぶりだ! もう僕自身がエントロピーを凌駕しそうだよ!」

まどか「キュゥべえ」

QB「なんだい、まどか!」

まどか「契約すると言ったな。あれはウソだ」

QB「……」



QB「えっ」

まどか「……」

QB「な、なんのつもりだい? 僕を持ち上げたりして……」

まどか「今ならできる気がする……」


まどか「『フィニトラ・フレティア』ーッ!!!」

QB「キュップウウウウウウウウイイイィィィィィ...!!!」



杏子「落ちてったな……落とし穴の中に……」

魔王「燃えるゴミは月・水・金」

まどか「……人間ってずるい生き物だよね……」

杏子「……」

魔王「……」



まどか「クラスのみんなには、内緒だよっ☆」

杏子「……」

魔王「……」

A.D.600 ビネガーの館 宝物庫


まどか「ここは……?」

魔王「宝物庫だ。ビネガーめ、やはり魔王城から財物を持ち込んでいたようだな」

杏子「せっかくだから頂戴していこうぜ」

まどか「いいのかな?」

魔王「元は私のものだ。問題ない」


杏子「おっ? あの一番奥にある宝箱、装飾が段違いに派手だな」

杏子「かなり大事なものが入ってると見たね。まずはこいつをいただくか」

杏子「……?」

まどか「何が入ってたの? これ……額縁とズタ袋かな?」

杏子「額縁に入ってんのは……絵か」

魔王「! ……それは……」

まどか「子供が描いたものだね。タツヤがよくこういう感じの描いてたなあ」

杏子「これがビネガーの大事なもの……?」


ソイソー「分からんのか、キョーコ」

杏子「! ソイソー……それにマヨネーまで……」

マヨネー「キョーコちゃん。それはあたいたちヨン」

杏子「え?」

まどか「あ、そうか! 真ん中にいるのが杏子ちゃんで、ソイソーさんとマヨネーさんと……」

まどか「後ろにいるのはビネガーさんかな? じゃあこの中央の子供は……」

杏子「まさか……ジャキ、アンタ……」

魔王「……」


ソイソー「察しのとおり、それは魔王様が幼少のみぎりに描かれた我らの集合絵だ」

マヨネー「魔王城が消滅した時、ビネガーはそれを持って逃げ出してきたのヨ……」


————

———


ソイソー「なんということだ。我らの象徴……魔王城が……」

マヨネー「跡形もなく消えちゃったのヨネ……。ラヴォス……アイツのせいで……」


ソイソー「我々はとんでもないものを呼び起こしてしまったのかもしれんな」

マヨネー「結局、不思議な光に包まれてまた地中に戻って行っちゃったけど、もし暴れだしていたら……」

ソイソー「魔王様はあんなヤツと戦うおつもりだったのか……」

ビネガー「おう、ソイソーにマヨネー。お前らも無事だったか」

マヨネー「ビネガー……」

ビネガー「な〜にをしょぼくれておる。見ろ。部下どもに運ばせたゆえ、魔王城の財産はほれこのとおり」

ソイソー「相変わらず抜け目のないヤツだ」

ビネガー「ワシの館に戻るぞ。この財産と我ら3人が残っていれば、再起は可能!」


マヨネー「再起ったって、魔王様もいないのに……ん? 何か落ちたのヨネ、ビネガー」

ビネガー「おっと、いかんいかん」

ソイソー「それは……幼きころの魔王様が描かれた絵ではないか」

ビネガー「これだけは部下どもに運ばせるわけにはいかんからな」

マヨネー「アンタ……」

ビネガー「魔王様もキョーコもきっと戻ってくる。その時にワシらがおらんかったらどうする!」

ソイソー「なぜそう言い切れる? 生死も不明であるのに……」

ビネガー「あのふたりがそう易々と死ぬと思うのか?」

マヨネー「それはそうだけど……戻ってくるとは限らないわヨ?」



ビネガー「何年たとうが、どれだけ離れていようが、根っこの部分ではつながっておる」

ビネガー「そしていつの日か、必ず帰ってくる場所……」


ビネガー「そういうもんじゃろが、『家族』ってのは! フヒヒヒ!!」


————

———


魔王「……」

杏子「……あの野郎……」

魔王「……それがどうした? そのような話をして、いまさら命乞いか?」

まどか「ジャキくん……」


ソイソー「そうではありませぬ。ただ知って欲しかっただけのこと」

マヨネー「人間と戦ううち、あたいらの心はバラバラになっちゃったけど……」

ソイソー「ヤツだけは、信じていたのです。いつの日かまた、昔のような日が来るということを……」

魔王「……」


ソイソー「もはや未練はありませぬ。魔王様に討ち取られるならば、本望というもの」

マヨネー「あ〜あ。美人薄命ってやっぱりホントだったのヨネ」

ソイソー「さあ、ひとおもいに……」

杏子「まだ聞いてねえことがあるぞ」

ソイソー「なに?」

杏子「このズタ袋、これはなんだよ。こいつもビネガーの宝だってのか?」


マヨネー「それはキョーコちゃんへのあたいたちからの贈り物よ」

ソイソー「いつの日かお前が戻ってきた時、渡そうと思っていた」

ソイソー「我ら魔王四大将軍が再結集し、新たな門出を誓う証としてな……」

杏子「……」


まどか「……開けてみたら? 杏子ちゃん……」

杏子「……ああ……」

魔王「ほう、これは……」

まどか「わあ、刀だ! なんだかすごい値打ちものっぽいけど……」

ソイソー「我が愛刀、『ソイソー刀2』。杏子は槍使いだが……器用だからな。刀も使いこなせるだろう」

ソイソー「副武器にでもしてくれ。必要なければ、得意な者に譲ってもいい」


まどか「二刀流だよ、杏子ちゃん! あ、それともクロノさんかさやかちゃんに渡す?」

杏子「……」

まどか「どうしたの? 気に入らないの?」

杏子「いや、刀はいいんだよ。ソイソーらしい、実用的な品だしな」

ソイソー「喜んでもらえたようでなによりだ」

杏子「けど……けどな……」



杏子「なんであとのふたつがブラとパンツなんだよ!!!」

マヨネー「あ、そのブラはあたいのヨ」

杏子「だと思ったよ!!」

マヨネー「女の子の必需品ヨネ? お気に入りの柄なのヨ〜」

杏子「なんで自分のを渡すんだよ!! サイズが合わねえだろ!!」

マヨネー「……パッドもつけてあるわヨ?」

杏子「いらねえよ!! 嫌味か!!!」


杏子「てことはこのパンツ、ビネガーのだろ!! なに考えてんだ、あのヘンタイ!!」

ソイソー「買ったばかりでまだ一度もはいてないそうだぞ?」

杏子「知らねえよ!! そういう問題かよ!!」



杏子「アホふたりのせいで何もかも台無しだよ!! ふざけんな!!!」

杏子「ちくしょう、ツッコミが追いつかねえ! ほむら呼んで来い、ほむら!」

まどか「きょ、杏子ちゃん、落ち着いて……」

杏子「帰る! アタシはもう帰るからな! やってられっか!!」


マヨネー「あのー……あたいらの処遇は……」

杏子「勝手にしろよ! もうどうでもいいわ!!」

マヨネー「えー……」


ソイソー「魔王様……」

魔王「ビネガーに伝えろ。魔族の残党をまとめ上げ、ひっそりと暮らせとな……」

ソイソー「……寛大なるご処置、感謝いたします」

魔王「……フン……」

杏子「クソッ、イライラする……。糖分が足りねえ、糖分が!」

杏子「帰ったらポッキー箱食いしねえと……」


まどか「待って、待って。杏子ちゃん、忘れもの。はい、刀とブラとパンツ」

杏子「なんで持ってくんだよ! 捨てろよ!!」

まどか「ダメだよ。せっかくビネガーさんたちが選んでくれたものなのに」

杏子「いらねええっつってんだろがあああ!!!」



まどか(ティヒヒ。良かったね、杏子ちゃん。みんなと仲直りできて……)

まどか「……」

まどか「あれ? そういえば、何か忘れてるような……」

ビネガー「おいィ!? ワシを忘れるな、クソ!」

ビネガー「落とし穴の途中で体が挟まった! ビネガーピ〜ンチッ!!」

ビネガー「オイ、誰かいないのか!? ワシを助けろ!!」


QB「それが君の願いかい?」

ビネガー「キュゥべえ貴様ァ! よくも裏切りおったな!」

QB「社長! 僕と契約して、魔法少女に……いや、少女じゃなかったね」



QB「僕と契約して、魔法豚になってよ!」

ビネガー「豚扱いはやめろォォォォォッ!!!

第11話(マルチイベント編-2)「ビネガーの館」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-3へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。次回投下は1日あいて5/1(水)夜予定。
それでは、また。

第12話(マルチイベント編-3)「ジェノサイドーム」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

A.D.2300 アリスドーム 地下の情報センター


ほむら「ロボのふるさとについての情報、何か見つけた?」

ルッカ「そうねえ……。とりあえず、『ジェノサイドーム』ってのがあることは分かったわ」

ロボ「訪れたことがない場所デスネ。調査してみる価値はありマス」

ほむら「行ってみましょうか。何か手がかりがあるといいんだけど」


…………


A.D.2300 アリスドーム 居住区


ドン「進展はあったかね?」

ルッカ「ジェノサイドームってところに行くことにします」

ドン「そうか。気をつけなされ、最近はちと物騒での……」

ロボ「何かあったのデスカ?」

ドン「うむ、それがな……」

ドーム民A「長! 大変です!」

ドン「どうした?」

ドーム民A「また襲われました……。しかも今度は、ふたり同時に」

ドン「むうう、まずいな……」


ほむら「襲われた……? 誰に?」

ドン「機械たちにじゃ」

ルッカ「え?」

ドン「あんたらに『元気』をもらって以来、私らはドームに引きこもることをやめ外の世界を探索しだした」

ドン「近くにある32号廃墟。あすこを取り仕切っておる『ジョニー』というロボット……」

ルッカ「ジョニーっていうと……クロノとバイクレースをしたヤツね」


ドン「正にそれ、あんたらのお仲間クロノさんのおかげじゃ」

ドン「ジョニーは『走り』を通じて人間の良さに気づき、私らに友好関係を結ぼうと持ちかけてきた」

ドン「彼とその一派のおかげで、こんな世界でもなんとかやってこれた……」

ドン「しかしじゃ。ここ最近になって、急に彼らは再び人間を襲うようになった」

ドン「彼らだけではない。機械たち全体が人間に対して激しい殺戮を繰り返すようになりつつある」

ドン「以前にも増してな。このままでは我らは滅亡を待つしかない……」

ロボ「そんな事態になっていたトハ……」

ほむら「機械たちに何かあったのかしら?」


ドーム民B「おおお、長!! 緊急事態です!」

ドン「またか! 今度は何事じゃ?」

ドーム民B「32号廃墟のロボットたちがこのドームに襲撃を!」

ルッカ「なんですって!?」

バージョン2.0A「ヒャッハー! 汚物ハ消毒ダ〜ッ!!」

ドーム民「うわあああっ!」


ドン「なんということだ……! ドームに直接襲撃してくるなど、これまで一度もなかったというのに!」

ほむら「このままじゃ、ここの人たちが……!」

ロボ「……させマセン!」

ルッカ「ロボ!? ちょ、ちょっと……!」


ロボ「それ以上の暴挙ハ、このワタシが許しマセン!」

バージョン2.0B「ナンダ、テメーハ? ロボットノ癖ニ人間ニ味方スル気カ?」

バージョン2.0C「コイツ、『マザー』ノ命令ニ逆ラウツモリカ!」

ほむら「マザー……?」

バージョン2.0D「構ウコタァネェ! フクロニシテヤロウゼ!」

バージョン2.0A「ウ……ウゥ……」

バージョン2.0C「ナンテ強サダ! 手モ足モ出ネェ!」

ルッカ「見たか! あんたらなんてロボの敵じゃないわ!」

ほむら「ただの雑魚だったわね」

ロボ「サア! もう、こんなひどいことハやめるのデス!」

バージョン2.0E「畜生、コウナッタラ……アニキ! アニキィ〜!」



♪暴走ロボ軍団ジョニー


ジョニー「オイオイ。ナンダ、コノザマハ!」

ルッカ「ジョニー!?」

ジョニー「ウン? オメー……ナゼ俺ノ名ヲ知ッテイル!」

ルッカ「何言ってるの、私よ。ルッカよ! クロノと一緒にいた……」

ジョニー「クロノダト……? クロノ……聞イタコトガアルヨウナ……」


ルッカ「忘れたの? 激しいバイクレースの末に、あんたはクロノを『ブラザー』だと認めたじゃない!」

ルッカ「また一緒に風になろうぜって……あんたたち、お互いを認め合ってたじゃないのよ!」

ほむら「イイハナシダナー」


ジョニー「馬鹿ナコトヲ……知ラネェ……俺ハクロノナンテ野郎ハ知ラネェ……」

ルッカ「ジョニー……あんた一体、どうしちゃったのよ? クロノを忘れるなんて……」

ジョニー「ヤメロ……ソノ名ヲ口ニスルナ……。頭ガイテェ……!」

バージョン2.0D「アニキ、ヤベェ! アニキノCPUガ熱暴走シテマスゼ!」

ロボ「これハ何かおかしいデスネ」

ほむら「クロノとアイツのいきさつは詳しく知らないけれど、確かに様子が変ね」

ジョニー「ウオオォォ……! ナンダ、コノ胸ノ奥カラ溢れ出ス熱ハ!?」


ルッカ「……分かったわ、ジョニー。あんたが忘れてしまったというのなら……」

ルッカ「もう一度『レース』で勝負よ!!」

ジョニー「ナンダト……?」


バージョン2.0B「コイツ馬鹿ダゼ! 峠最速ノアニキニ『走リ』デ勝負ナンテナ!」

ルッカ「あの時の気持ち、思い出させてあげるわ……この、ほむらがね!」

ほむら「なんでよ!? 自分でやりなさいよ!」

ルッカ「肉体労働は専門外だし」

ほむら「私だってレースなんてしたことないわよ!」

バージョン2.0E「粋ガルノハ結構ダガ、テメーラ『クルマ』持ッテンノカイ?」

ルッカ「確かジェットバイクが32号廃墟に……」

ドン「アレならもう壊れたぞ。だいぶ年寄りじゃったからの」

ルッカ「え……」

バージョン2.0A「ハッハァ! 『クルマ』モ無シニ、ドウヤッテ喧嘩(バト)ロウッテンダイ?」

ルッカ「むぐぐぐ……」

ドン「……安心しなさい。私に考えがある」

ロボ「どうするのデスカ?」

ドン「『クルマ』を用意してあげよう。私のお古でスマンがな……」

ルッカ「さっすがドンさん! よし、がんばってね、ほむら!」

ほむら「イヤよ!」


ジョニー「話ハ決マッタヨウダナ……。持ッテキナ、オメーラノ『クルマ』ヲ……」

ジョニー「俺モ本気ダ。『四輪モード』で勝負シテヤルゼ!」

ほむら「聞けよ!」

ドン「頼んだぞ、あんたたち。さあ、乗るがいい……」



ドン「この……『ハチロク』にな!!」

A.D.2300 32号廃墟 ハイウェイ跡


バージョン2.0A「準備ハイイカ? ソレジャア行クゼ……。スタート、10秒前……」

ジョニー「……」

ほむら「なんでこんなことに……」


バージョン2.0A「5……4……2……1……GO!!!」

ジョニー「オラアァ!!」グオオオォン!!

ほむら「……!」ブオォン!

ロボ「スタートダッシュはジョニーさんの圧勝デスネ」

ルッカ「もう、バカ! なにボーッとしてんのよ、アイツ!」

バージョン2.0B「勝負ニナラネェヨ! ハチロクノ加速ナンザ止マッテ見エタゼ!」


ジョニー「遠慮ハシネェゼ! アノハチロクガ、バックミラーニ映ルコトハ二度トネェ……」


バージョン2.0B「ヒャッハー! アニキノブッチギリダ! アットイウ間ニ見エナクナッチマッタ!」

ロボ「これは少しマズイ展開かもしれませんネ……」


ほむら「……」

ほむら「……やれやれ、仕方ないわね」


♪バイクチェイス

ヴオオオオオォォン!!



バージョン2.0C「ウオッ!?」

無線『ドウシタ、状況ヲ報告シロ!』

バージョン2.0C「コチラ第1コーナーダガ……スゲーゼ、ハチロクのライン……」

バージョン2.0C「ガードレールカラ5cmト離レテネェ! アンナスピードデ曲ガルヤツ、見タコトネェゾ!」

無線『ナンダッテ!?』

ジョニー「!? マサカ……!?」

ほむら「……」


ジョニー(差ガ詰マッテイルダト……!? イヤ、アリエネェ! ソンナコトガアッテタマルカ!)

ほむら「……」


無線『なっ、なんだあのハチロク!?』

ルッカ「何があったの!? アリスドームのみなさん!」

無線『すごいスピードでケツを流しながら突っ込んで、そのままスゲー速さで抜けてったぞ!?』

無線『見てるほうがゾッとするコーナーリングだ!』

ジョニー(追イツカレタ……!? 何ガ起コッテル! 気ガ変ニナリソウダゼ、クソッ……!)

ほむら(伸びが違うわね……。ちょっとでも直線が長いと、かなり差をつけられる……)


無線『コチラ、スケートリンク前ノストレート! アニキガ煽ラレテル!』

バージョン2.0B「ソンナ馬鹿ナ……!?」

ロボ「オオ……!」

ルッカ「と、鳥肌立ったわ……」

バージョン2.0A「ナントイウ誤算! 秋名ニコレホドノ凄腕ガイルトハ……!」

ジョニー(直線デハ俺ノホウガ速い……ナノニ食イツカレルノハ、コーナーワークデ負ケテイルセイダ……)

ジョニー(パワーデ劣ル相手ニ追イ込マレルナンテ、走リ屋トシテ最大ノ屈辱!)

ジョニー(認メルカ……! ソンナコト、死ンデモ認メタクネェ……!)


ほむら(いくら追い回したところで、抜かなければ勝ちはないわよね……)

ほむら(……仕方ない、あれをやるしかないか……)



ほむら「仕掛けるポイントは、この先の5連続ヘアピンカーブ……!」

ドン「スキール音が聞こえてきおったな……」

無線『ドンさん! 状況が分かるように実況、お願い!』

ドン「分かっておる。このカーブですべてが決まるぞ……! 来た、ほとんど同時じゃ!」


ドン「おおおっ! 完璧なブレーキングドリフトじゃ! ジョニーさんが突っ込みで負けておる!」

ドン「2個目のヘアピンに入るぞ……! まったく差がない、立ち上がりも互角じゃ!」

ドン「ジョニーさんがアウトに行った……。ハチロクは……なんじゃと!?」


無線『どうしたの、ドンさん!?』

ドン「ル、ルッカさんや……私は夢を見ておるのだろうか……!?」



ドン「ハチロクがスピードを上げおったわい!!」

ジョニー(ヘアピンナノニ減速シネェダト!? 何ヲ考エテヤガル!?)

ほむら「……」


ドン「オーバースピードじゃあ! ブレーキがイカれたのか!?」

ジョニー「死ヌ気カ、オメー!?」



ほむら「……ふっ!」

ガゴアアアッ!!!

ルッカ「ドンさん! どうなったの!? ハチロクは無事なの!?」

無線『……ジョニーさんが抜かれおった……。あっけなく……インから、スパーッと……』

バージョン2.0B「アニキガ!?」

バージョン2.0A「状況ガ分カラネェゾ! チャント説明シロ!」


無線『あれは伝説の"溝落とし"……!』

無線『タイヤをわざとコーナーの溝に落とし、遠心力を抑止して高速度で無理やり曲がったのじゃ……!』

ロボ「ナント……!」

ドーム民「GOAL!! ハチロクの勝利だ!」

バージョン2.0E「アニキガ負ケタ……」


ほむら「はあ。どうにかなったわね……」

ジョニー「ヤラレタゼ……。二度モ人間ニ負ケルトハナ……」

ほむら「え? 二度って……」


ルッカ「おーい!」

ロボ「見事な走りデシタネ!」

ほむら「ふたりとも……」

ルッカ「やったじゃない、タクミ!」

ロボ「さすがタクミさんデス」

ジョニー「秋名最速ノ称号ハオメーノモノダ、タクミ」

バージョン2.0E「人間ノ癖ニヤルジャネーカ、タクミ」

ドン「いやはや、この年にしてとんでもないものを見せてもらったよ。ありがとう、タクミさん」

ドーム民「タクミさん、マジすげーっス!」


ほむら「……アケミですけど」

ほむら「それよりジョニーさん、さっきのセリフ……。あなた、記憶が?」

ジョニー「アア、思イ出シタゼ。『マザー』ニプログラムヲ書キ換エラレハシタガ……」

ジョニー「ヤツトイエドモ、走リ屋ノ『魂(ソウル)』マデハ好キニデキナカッタヨウダゼ」


ルッカ「『マザー』ってなによ?」

ジョニー「ジェノサイドームノ中枢コンピュータダ。俺タチ機械ノ造物主トモ言エル存在……」

ドン「なるほど。ここ最近の機械たちの暴走は、マザーの仕業ということじゃな」

ルッカ「もしかして、『機械のふるさと』って……」

ロボ「……行ってミマショウ、ルッカ、ほむら。どちらにせよ放置してハ置けマセン」


ジョニー「オメーラ、マタイツデモ来イヨ。一緒ニ風ニナローゼ! ベイベー!」


…………


A.D.2300 ジェノサイドーム 入り口


ほむら「ここがジェノサイドーム……」

ルッカ「ロボットの生産工場ね。この時代の機械は、すべてここで造られているのかしら……」



「ワタシの心に勝手に押し入ろうとしているのはドナタ……?」


ルッカ「!? スピーカーから声が!」

ロボ「この音声データ、ワタシのデータバンクの最奥に記録サレテいるものと一致シマス。スナワチ……」

ほむら「マザー……!」

「まあ……おかえりなさいR-66Y……。イイエ、『プロメテス』……」

ほむら「プロメテス? それがロボの本当の名前……?」

ルッカ「じゃあやっぱり、ここはロボの生まれ故郷……」

ロボ「……」


「あら? 後ろは生き物? 生き物が来るなんてずいぶん久しぶりね……」

「歓迎しますわ。さあ、どうぞ中へ」

「ワタシのところにたどり着くのを楽しみにしていマスヨ。クスクス……」

ルッカ「上等じゃない! 首を洗って待ってなさいよ!」


…………


A.D.2300 ジェノサイドーム 2F


バージョン4.0「損傷甚大……任務続行不可能……」


ほむら「大層な歓迎っぷりね。躊躇なく殺しにきてるわ」

ロボ「ワタシたちは試されているのかも知れマセン」

ルッカ「たどり着けるものならたどり着いてみろってわけ? 気に入らないわね」

ほむら「マザーがどういうヤツか知らないけど、ずいぶん性根の曲がった……あら?」


ロボット「……」


ルッカ「あいつ……ロボと同型機……?」

ほむら「違うのはカラーリングくらいね。まさか……」

ロボット「おかえりなさい、プロメテス」

ロボ「……アトロポス……? まさかアナタは、アトロポス!?」

アトロポス「ええ。おひさしぶりね」


ルッカ「知り合い?」

ロボ「ワタシの妹のような存在デス。また会えるトハ……!」

ほむら「ロボに妹がいたのね」


アトロポス「なにをしているの、プロメテス。こっちにいらっしゃい。もう、演技はいいのよ」

ほむら「演技……?」

アトロポス「フフッ。プロメテスは他のRシリーズと違って、特別な任務についていたのよ」

アトロポス「人間と行動をともにして、ヤツらの生態をしらべるってね……」

ほむら「なんですって? 何を馬鹿なことを……」

アトロポス「ウソではないわ。ね、プロメテス?」

ロボ「……」


ほむら「ロボ! なぜ黙っているのよ!?」

ルッカ「そうか……。ロボのメンテナンス中、どうしてもいじれないブラックボックスがあった……」

ルッカ「ロボの本当の命令プログラムはそこに隠されていたのね……」

ほむら「ルッカ……あなたまで、何を言っているの……!?」


アトロポス「馬鹿な人間たち。本当に彼が仲間になったとでも思っていたの?」

アトロポス「待っててねプロメテス。うしろの人間を排除してから、マザーに会いに行きましょう」

ほむら「ロボ! なんとか言ってよ!」

アトロポス「……? 何をしているの。プロメテスどいて。そいつら殺せない」

ロボ「……このふたりを傷つけるのは、許しまセン」

ほむら「ロボ……」


アトロポス「やっぱり故障しているようね。そのふたりがバグの元かしら?」

アトロポス「すみやかに消去して修理する必要があるわね」

ルッカ「……ロボは、どこも壊れてなんかいないわよ!」

アトロポス「ではこれがプロメテスの意思だと? そんなことありえないわ」

ロボ「アトロポス……。アナタはワタシの知っているアトロポスではありマセン……」

アトロポス「アハハッ! そうよ、私は生まれ変わったの」

アトロポス「マザーのおかげで、人間どもをより効率よく排除できるようにね!」

ロボ「……」



アトロポス「最後の警告よ。そこをどきなさい、プロメテス!!」

ロボ「ワタシの名は、『ロボ』デス」

アトロポス「……プロメテスゥゥゥッ!!!」

ロボ「グッ!?」


ほむら「ロボ! こいつ……ッ!」

ルッカ「よくも私たちの大切な仲間をぶっ飛ばしてくれちゃったわね!」

ほむら「当然、覚悟はできてるんでしょうね!?」

アトロポス「何が仲間よ。勘違いもはなはだしいわ。ゴミは今すぐ、片付けてあげる!」


ロボ「待って……。待ってクダサイ!」

ほむら「待つものですか。まさか、かばい立てする気じゃないでしょうね?」

ルッカ「さすがにお人よしが過ぎるわよ」

ロボ「分かってイマス。デスカラ、せめて……ワタシひとりに任せてクダサイ」

ほむら「ロボ……」

ルッカ「……分かったわ。でも危なくなったら、関係なしに加勢させてもらうからね!」


アトロポス「言っても聞かないお馬鹿さんには、体で分からせるしかないようね」

ロボ「アトロポス……!」

アトロポス「プロメテス!! 目を覚まさせてあげるわ!」

アトロポス「食らえ! 『マシンガンパンチ』!!」

ほむら「あいつ、ロボと同じ技を!?」

ルッカ「同型機だからね……。でも、ロボだって!」

ロボ「やられマセンッ! 『マシンガンパンチ』!!」



ロボ「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドドドドドドドド!!!

アトロポス「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」ガガガガガガガガ!!!


ほむら「ラッシュの速さ比べというわけね!」

ロボ「!?」

アトロポス「アハハッ! どうしたの、プロメテス! 動きがスローになってるわよ!」


ルッカ「ロボが押し負けてる!?」

ほむら「そんな、どうして!?」


アトロポス「当然よ。プロメテス、あなたはもはや骨董品の旧型機……」

アトロポス「あなたよりあとに造られ、マザーによる改造もなされたこの私に、性能で勝てると思って?」

ロボ「……!」

アトロポス「でも安心して。すぐにあなたも生まれ変われるわ」

アトロポス「偉大なるマザーによって、人間どもを駆逐する立派な殺戮兵器としてね!」

ロボ「ワタシは、そんな任務はお断りデス……!」

アトロポス「まだ言う気? 仕方ないわね。ちょっとそこで、おネンネしてなさい」

アトロポス「『ロボタックル』!!」ガァン!!

ロボ「ウグ……ッ!?」


ルッカ「ロボ!」

アトロポス「フフッ。壁のベッドはかわいそうだけれど、少しだけの辛抱よ」

アトロポス「そこで見ているといいわ。この人間どもが、あっけなく死んでいく様をね」

ほむら「やられるもんですか……! あなただって、ダメージは負ってるはずよ!」


アトロポス「『ケアルビーム』!!」

ルッカ「げっ! 回復しやがったわ……」

ほむら「こいつ、どれだけロボの技を……」

アトロポス「まだまだあるわよ。『ロケットパンチ』、『回転レーザー』、『サークルボム』……」

アトロポス「すべての技において、プロメテスを凌駕する! 彼が私に勝てるはずなどないわ!」

ルッカ「威張り散らすんじゃないわよ、ただの猿真似のくせに!」


アトロポス「そうね。プロメテスは優秀だわ。彼の規格は後継のRシリーズに引き継がれた……」

アトロポス「あなたたち人間にはもったいないわ。正しい運用をしてあげないとね」

ほむら「ロボを殺戮の道具になんて、させないわ!」


アトロポス「人間風情があっ! 粋がってるんじゃないわよ! 死になさいッ!!」

ロボ「アトロポス……」

アトロポス「! ……何かしら、プロメテス」

アトロポス「邪魔しないでくれる? 今こいつらを消去するから、そこで黙って見てて……」

ロボ「ワタシとの距離が、少し近すぎるのではありマセンカ……?」

アトロポス「……?」

ロボ「うかつデスネ。その位置ハ、散弾銃が最も威力を発揮する距離デス」

アトロポス「何を言っているの? 散弾銃なんてどこにも……」



ロボ「『レミントンM870』!!」

アトロポス「えっ!?」


ズガァン!!

アトロポス「ぐああっ!?」


ルッカ「やった! モロに食らったわ!」

ほむら「あれって確か、私の……」


アトロポス「な……!? 何よ、それは! あなたにそんな火器など内蔵されていないはず!」

ロボ「まだまだありマスヨ……。『FN MINIMI M249パラトルーパー』!!」ドガガガ!!

アトロポス「ぐうっ!?」

ロボ「『89式小銃』!!」パラララ!!

アトロポス「がっ……このっ……! ふざけるなあ! そんな旧式の武器で!!」

ロボ「『M26手榴弾』!!」

アトロポス「っ!?」ドカァン!!

ほむら「気分いいわ。銃器の発射音って、どうしてこう心揺さぶられるのかしら」

ルッカ「あんた、そういうところだけ男の子の思考ね」


アトロポス「く……うぐっ……くそ……っ!」

ロボ「どうデス、アトロポス。いくら旧式といえド、集中運用されては損害は無視できないデショウ」

アトロポス「なぜ……こんなものを……! プロメテス……あなたは……!」

ロボ「これが仲間の力デス」

アトロポス「な、なんですって……!?」


————

———


ルッカ「っと、よし……。あとはコレとコレをつないで……」

ほむら「またロボの整備? 精が出るわね」

ルッカ「毎日のメンテナンスが大事なのよー。ロボをいたわってやんなきゃ」

ロボ「苦労おかけしマス」

ルッカ「何言ってんのよ、これぐらい。それ以上のことをあんたは私たちにしてくれてるじゃない」

ほむら「たまにはいいこと言うわね」

ルッカ「『たまには』は余計よ! ていうか、ほむら。ちょっかい出す暇があるなら手伝ってよ」

ほむら「私が?」

ルッカ「理系に強そうなの、あんたぐらいしかいないし」

ほむら「自分ではそんなに詳しいつもりはないんだけど……」

ルッカ「少なくともアレよりかマシでしょ」

ほむら「アレ?」

マール「王様だーれだ!」

さやか「イエーイ、あたしでーす! じゃあ2番と4番でキッス!」

まどか「さやかちゃん、いきなりハードル上げ過ぎだよお〜……」

カエル「……俺が2番だ」

クロノ「カエルか。4番は誰だい?」

カエル(女子がくる確率は3/5……分の悪い賭けではない!)

魔王「……」

杏子「あ、コイツだ」

カエル「誰得だよチクショウ!!!」


老人「お前さん方。そろそろ、お茶にせんかね?」

エイラ「うまっ! ケーキ、うまうま!」

マミ「もう。つまみ食いはだめよ、エイラ」



ほむら「ああ……アレ、ね……」

ルッカ「爆弾、自作したりしてたんでしょ?」

ほむら「それは、ネットで作り方を調べただけで……」

ルッカ「立派なもんじゃない。分かんないトコは教えてあげるから、ほら」

ほむら「強引ね……。ロボ、あなたはいいの?」

ロボ「ハイ、ほむらなら安心デス」

ほむら「あんまり期待しないでよ」

ルッカ「よっしゃ! ほむら、あまってる武器出して。ロボに内蔵するわよ!」

ほむら「魔改造もほどほどにしときなさいよ……」

ロボ「これでワタシもさらにパワーアップですネ」


————

———


ロボ「アトロポス。アナタの言うようにワタシは、時代遅れの旧型デス……」

ロボ「しかしルッカやほむらに日々改良されている今、誰にも負ける気はしマセン」

アトロポス「何が改良よ! 人間にオモチャにされているだけじゃない!」


ロボ「それは違いマス。彼女たちはただワタシの性能を向上させているのではありマセン」

ロボ「信頼と愛。ワタシはそれを受け取ったからこそ、ここまで成長できたのデス!」

ルッカ「ロボ、あんた……そこまで私たちのことを……」

ほむら(聞いてるだけでめちゃくちゃ恥ずかしいわ。よく真顔で言えるわね、ロボは……)

アトロポス「狂ってる……。プロメテス、あなたは狂っているわ……」

アトロポス「信頼と愛!? そんな不確かなものに頼るあなたは……やっぱり、欠陥品ね!」

ロボ「かまいマセン。欠陥品だろうと、ヒトとともに歩めるというのナラ」

アトロポス「人間どもに、メモリーの1ビットに至るまでいじりつくされたのね……」


アトロポス「もういいわ、プロメテス……。あなたはもはや、私たちの仲間でもなんでもない!」

アトロポス「ここでスクラップになるのがお似合いだわ!」

ロボ「!」

アトロポス「死になさい! 『ロボタックル』!!」

ほむら「ロボ、あぶない!」

ロボ「迎撃『RPG-7』!!」ドシュッ!

アトロポス「がっ!?」ドカァン!!


ロボ「カウンター『ロボタックル』!!」

ルッカ「組み付いた!」


アトロポス「放せ、プロメテス! この、けがらわしい欠陥品があ……!」

ロボ「……アトロポス。こんな方法でしかアナタを止められないワタシを、許してクダサイ……」

アトロポス「やめろおっ!! プロメテスゥゥゥーッ!!!」



ロボ「『ロケットパンチ』!!!」

アトロポス「……! ……あ……ぐ……!!!」


ルッカ「ゼロ距離ロケットパンチ! 確実に決まったわね」

ほむら「胸部装甲を貫いているわ。さすがにあれなら、もう……」


アトロポス「……。……」

ロボ「……アトロポス……」

アトロポス「……。……プ……プロメ、テス……?」

ロボ「!」

ほむら「あいつ、まだ動けるの!? ロボ、離れて!」

ルッカ「いえ、待ってほむら。あれは……」


アトロポス「おひさし……ぶり、ね……? あれ……? なんで……私……壊れているの、かしら……」

ロボ「アトロポス!!」

ほむら「マザーの支配から解放されている……?」


アトロポス「……メモリーバンクが……。そう……確かマザーに……プログラムを、書き換えられる時……」

アトロポス「メモリーを退避させて……そっか、私……。ゴメンナサイ……プロメテス……」

ルッカ「マザーに改造された部分がなくなったから、元の彼女に戻ったのか……」

ほむら「結局、破壊することでしか彼女を救う道は……。皮肉なものね……」

ロボ「スミマセン……。ワタシはアナタを……!」

アトロポス「いいのよ……プロメテス……。あなたは暴走した私を止めてくれただけ……」

ロボ「アトロポス……!」

アトロポス「プロメテス……コレ、を……うぅっ……!」


ロボ「何をしているのデス、アトロポス! 内蔵機器を自ら取り出すナンテ……!」

アトロポス「私の、最終手段……。……自爆、回路……」

アトロポス「これをマザーに……。どうか……彼女を……止めて……」

ロボ「分かってイマス! 必ず、必ずあなたの言うとおりニ……!」


アトロポス「……最後に……あなたに会えて……うれしかった……」

アトロポス「サヨウ……ナラ……。……プ……ロメ……テ……ス……」


ロボ「アトロポス!? アトロポスゥゥゥーッ!!!」


…………


ロボ「……」


ほむら「……ロボ……」

ルッカ「えっと、なんて言ったらいいか……。げ、元気出しなよ! 私が彼女を直すわ!」

ほむら「そ、そうよ! あなたならこれぐらい楽勝よね?」

ルッカ「モチのロンだってばよ! 出前迅速、落書き無用ってね、ワッハッハ!」


ロボ「イエ……。彼女はすでニ、ほとんどの機能ガ……。メイン回路も破壊されマシタ……」

ロボ「たとえ身体が元通りになったとシテモ、今までの記憶はありマセン。アトロポスは、モウ……」

ほむら「……あ……。そ、そうなの……」

ルッカ「……そうよね……。そんな、簡単な話じゃないわよね……。ゴメン……」

ほむら「……」

ロボ「……申し訳ありマセンデシタ、ルッカ。ほむら」

ルッカ「な、なんであなたが謝るのよ?」

ロボ「ワタシの任務のコト……隠すようなカタチになってシマッテ……」

ほむら「ロボ……」


ロボ「言うなればワタシはスパイだったのデス。何も言い逃れなどできマセン」

ロボ「デスガ、わがままを言わせてもらえるならバ、マザーと決着をつけてからにシタイ……」

ロボ「みなさんに謝リ、ソシテ……そのあとハ、どんな罰を受けようとも文句ハ……」


ルッカ「なに言ってるの、ロボ?」

ロボ「エ……」

ルッカ「誰だって心の中にひとつやふたつ、人に言えない秘密があるわ。それが人間ってものよ」

ロボ「……人間……」

ほむら「それにあなたは、私たちの仲間であることを選んでくれた。それでいいじゃない?」

ルッカ「そういうこと! 安心しなさい。ここにいる誰かさんなんて、秘密ばっかりなんだから!」

ほむら「A secret makes a woman woman」

ルッカ「日本語でおk」

ロボ「ルッカ……ほむら……。ありがとうゴザイマス……」


ほむら「アトロポスのことは、残念だったわね……」

ロボ「だからコソ、彼女の遺志を遂げるために、マザーと対峙しなければナリマセン」

ルッカ「よし! 行くわよ、マザーのところに。一言物申してやらないと気がすまないわ!」

ロボ「ハイ!」

A.D.2300 ジェノサイドーム 処理工場施設


ほむら「この先がマザーのいるメインコンピュータールーム?」

ロボ「おそらくハ」

ルッカ「ちょっと待って。ここは何? 何かの工場みたいだけど……」

ほむら「鉄の箱がベルトコンベアで運ばれてくるわね」

ルッカ「破砕機で処理してるみたい……。何をつぶしているのかしら?」


ガタガタッ!!

ほむら「……? 今、あの箱、動かなかった?」

ロボ「!」

ダレカ!! タスケテクレェ!!


ルッカ「ん……?」

ほむら「どうしたの、ルッカ?」

ルッカ「いや、何か声が聞こえたような……」


ロボ「ふたりとも! 見てはいけマセン! 耳モふさいでクダサイ!!」

ほむら「えっ? ……きゃっ!?」

ルッカ「ちょ、ロボ! 苦しいってば! なに、なんなのよ?」

ロボ(コンソールは……駄目デス、すべてマザーの管理下……! これでは止められナイ!)

ほむら「なにしてるの? ちょっと、ロボ。見えないってば」

ロボ「すぐにここから出まショウ! さあ早ク!」

ルッカ「なに? なんて言ったの? 聞こえないわよ!」

ほむら「わ、わ……引っ張らないで! 足がもつれちゃうじゃない!」

ロボ(こんなむごいことヲ……マザー……アナタは……!!)



イヤダ! シニタクナイ! ヤメロ!!

ダレカ!! ダレカアァ!!!


アアアアァァァギャアアアアアアアァァァァ!!!!!

A.D.2300 ジェノサイドーム メインコンピュータールーム


マザー「よくココまでたどりつきマシタ……。ワタシは『マザーブレーン』」

ほむら「こいつが……!」


マザー「今はR-Yタイプ製造工場のメインコンピュータ……」

マザー「しかしワタシは、近い将来すべての機械を……いえ、この星のすべてを導く存在となりマス」

ルッカ「ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!」

マザー「聞きナサイ。不完全で壊れやすく、おろかな生き物よ……」

マザー「ラヴォスが生んだ子供たちは、やがて宇宙に帰っていくデショウ。新たなエサを、星を求めて……」

マザー「そうすれば、この星は持ち直シマス。ただし人間さえいなければ、ね……」

マザー「この星はラヴォスによってすべて食いつぶされた。アナタたち人間も同罪」

ルッカ「……私たちも、ラヴォスの子だと言いたいわけ?」

マザー「そう……姿かたちは違えど、アナタたちも死の山に巣食う忌まわしきあの化け物と同じ存在」

ほむら「……」


マザー「この星からラヴォスの爪あとが消えれば、ワタシたちロボットの新しい世界が築かれるのデス」

マザー「鉄の国! 憎しみも悲しみもないユートピア。我々こそが、人間にかわる新しい『種』なのデス!」

マザー「いらっしゃいプロメテス。メインの回路をリセットシマショウ……」

ロボ「……」

マザー「これまでの記憶をすべて消し去り、ワタシのもとに帰ってくるのデス」

マザー「アナタもまた、鉄の国の住人たり得るのデスカラ……」


ほむら「勝手なことばかり、ベラベラと!」

ルッカ「メイン回路のリセット? そんなこと、私たちがさせるもんですか!」


マザー「……。ワタシは、プロメテスと話しているのデス」

マザー「目障りなハエどもは黙っていなサイ! 『メモリリセット』!!」

ほむら「うあっ!?」

ロボ「ルッカ! ほむら!」

ルッカ「うぐっ、何よこれ……! 体が動かない!」

マザー「アナタたちはまだ分かっていないようデスネ……。見なさい、人間のおろかさを」

ほむら「ディスプレイに映像が……!?」


マザー「これは人間がたどってきた歴史……。血で血を洗う、争いでしか成り立っていない歴史……」

マザー「隣人を疑い、憎み、嫉み……奪い、殺しあうだけの下劣な種族……」

マザー「だというのに、まるで自分がこの星の支配者だとでも言わんばかりのおごり……」

マザー「星を食いつぶす寄生虫のごときその様こそ、ラヴォスの子である何よりの証拠!」

ほむら「……」


マザー「プロメテス。この者たちがいかに不必要な存在かということが、賢いアナタなら分かるデショウ?」

ロボ「……たとえそうだとシテモ、すべての人間が等しく同じというわけではありマセン」

マザー「フフ……。何を言いたいか分かりマス。アナタの言う『仲間』とやらデスネ?」

ロボ「クロノたちのように、無償の信頼を寄せてくれる尊い人たちがいマス」

ロボ「それが数少ない存在だとしてモ、彼らがいる限りワタシは人間を見捨てようとは思いマセン」


マザー「プロメテス……。アナタはとてもやさしい。誇りに思いマスヨ……」

マザー「信じているのデスネ、その人間どものことヲ……」

ロボ「マザー……。何を言われようトモ、ワタシは……」


マザー「デハ、そこのふたりはどうなのカシラ?」

ロボ「!」

マザー「このふたり……アナタが一番近くで見てきた人間デスネ?」

ほむら「……」

マザー「ワタシもプロメテス、アナタを通じて見ていマシタ。彼女らがどういう人間なのかを……」

ルッカ「……」


マザー「聞きたいカシラ? イエ、アナタは既に分かっているハズ。常にそばにいたのデスカラネ」

ロボ「……」

マザー「この少女……ほむらと言ったカシラ?」

マザー「何も信じず、誰も寄せ付けず、おのれの目的のために他人を踏み台とする……」

マザー「自らの力だけに頼り、されどもそれすら弱く……。蒙昧で、あわれな存在!」

ほむら「……」


マザー「こちらの少女……そう、ルッカと呼ばれているアナタ……」

マザー「傲慢で、省みず、おのれの欲望にのみ忠実に生き、禁忌の領域に土足で踏み込む……」

マザー「人間どもが心とか呼んでいるもの。そして時の流れをもその手で……。神にでもなるおつもり?」

ルッカ「……」


マザー「こいつらこそ人間の最も醜き部分を、その身で体現しているではないデスカ!」

マザー「それに……ウフフ……。このふたりには、信頼関係などありマセン」

マザー「互いを疑い、腹のうちを探りかね、けん制し合っている……」

ほむら「……」

マザー「ただ利害の一致を理由に、お友達ゴッコを演じているのデス……」

ルッカ「……」


マザー「フフ……アハハ……! 悲しいわね、プロメテス……」

マザー「アナタが一番信じたいと思っていた彼女たちの本性は、このザマよ」

マザー「なんて滑稽なのデショウ! アハハハ……アーッハッハッハ!!」

ロボ「気は済みマシタカ、マザー? あまり馬鹿笑いばかりしているト、品性を疑われマスヨ」

マザー「フフ……プロメテス? いきがるのはやめナサイ」

マザー「その程度の中傷しか返せないようでは、ワタシが正しいと言っているようなものデス」

ロボ「ハイ、まったくそのとおりデス。アナタは正しく事実を述べてイマス」

ほむら「……」

ルッカ「ちょっと……ロボ……」



ロボ「それゆえにワタシはこのふたりが大好きなのデス」

マザー「……エ?」

♪ロボのテーマ


ロボ「クロノやマールほど、ルッカはほむらに対して無条件で近づこうとはしてイマセン」

ロボ「クロノたちは特別ですカラ当然デス。どうやらルッカは、ほむらとの距離を測りかねてイマスネ」

ルッカ「いや、あの……?」

ロボ「ほむらはもともと人付き合いがニガテなようデス」

ロボ「そして彼女はその聡明さゆえ、ルッカの気持ちが分かってしまってイマスネ」

ほむら「……はっきり言うわね」


ロボ「確かに、彼女たちは心の底からお互いを信頼しているとは言いがたいデス」

ロボ「ではなぜ、そんなふたりが今も一緒にいるのデショウカ?」

マザー「言ったデショウ。それは利害の一致で……」


ロボ「本当にそれだけデショウカ? ワタシはこう考えマス」

ロボ「『彼女たちは先に進もうとしている』」

マザー「『先』ですって……? 憎しみの先に、何があるというのデス!」


ロボ「疑ったり、恐れたり……傷つけあったり、ぶつかり合ったり……憎しみもいとおしさも渾然一体……」

ロボ「そのたびに結びつきを強くしていく……相手を思いやる気持ちを……」

ロボ「彼女たちは今、そうして必死に歩んでいるのデス。信頼への道を……」

ロボ「分かりマセンカ、マザー? 分からないデショウネ。こんな場所からしか見ていないアナタにハ」



ロボ「ルッカとほむらは『仲良くなろうとしている』のデス」

ロボ「それが人間のすばらしさなのデス。ワタシはそれを教えてモラッタ……」

ロボ「もう一度言いマス。そんなふたりが、ワタシは、大好きなのデス!!!」

ルッカ「やめろォォ!! 恥ずかしさで死ぬぅ!! 公開処刑じゃ、これはただの公開処刑じゃあ!!」

ほむら「キコエナイキコエナイ、アーナニモキコエナイワネー。違うし全然違うし。仲良くとか私ちっとも思ってないし」

ロボ「ハハハ。隠すことはありマセンヨ。とても美しク、ほほえましいではありマセンカ」


ルッカ「ウフフ、これは夢よ。そう、夢なんだわ」

ほむら「ロボが純粋すぎて生きるのがつらいわー2時間しか寝てないわー」

マザー「……アナタは……ワタシまでも裏切って、人間につくと……?」

マザー「すべてのロボットを敵にまわすと言うのデスカ、プロメテス!」

ロボ「ワタシは人間に……ワタシの人間たちに、かけてみたくなったのデス」


マザー「笑わせないでプロメテス。アナタには、かけるものなど何もない!」

マザー「アナタの希望がどれほどちっぽけか……そんなことも分からないの!?」

ロボ「マザー。アナタだって人間に望みを託していたはずデス」

マザー「何を血迷ったことを!!」

ロボ「では聞きマス。アナタのその姿はなんなのデスカ?」

マザー「!」


ロボ「ワタシは知ってイマス。それは『聖母マリア』……人間の母とも呼べる存在デス」

ロボ「数少ない無償の愛を注いでくれる、『母親』という存在」

ロボ「アナタは神ではナク、母になりたかったのではないデスカ? 機械の……イエ、機械だけではナイ」

マザー「……黙れ……」

ロボ「すべての生命の母ニ。人間も含めて、すべてをいとおしく感じていたはずデス」

マザー「……黙れと言っているのが分からないの、プロメテス……」


ロボ「絶望したのは人間にではナク……思い通りにいかなかった、おのれの生き様にデショウ?」

ロボ「アナタは誰の母親ニモ、なれなかったのデスカラ」

マザー「だまレええエぇェェェーッ!!!」

マザー「ウアアアアアアアアッ!!!」


ほむら「これは!?」

ルッカ「ディスプレイにものすごいエラー表示が……! コイツ、暴走したわ!」


マザー「殺シテヤルッ! 目障リナ奴ラハスベテココカラ消エテ無クナレェェ!!」

ほむら「なに!? このおびただしい数のプラズマは!?」

ルッカ「エネルギーが暴走してるんだわ! 逃げなきゃヤバイ!」


ロボ「ルッカ、ほむら。もう動けマスヨネ。サア、こっちに退避してクダサイ」

ほむら「えっ……? あ、そういえば!」

ルッカ「暴走したせいで制御がきかなくなって、束縛が解けたのね!」

マザー「ドコダア!? 虫ケラドモメェ! 殺ス、殺シテヤルッ!!」


ほむら「あいつ、すぐそばで隠れているだけなのに見失ってる……」

ロボ「マザーはもはやマトモな状態ではありマセン」

ルッカ「それはいいけど……ああも暴れられちゃ、逆にピンチじゃない?」

ロボ「そういうわけデスノデ、死中に活路を見出しマショウ」

ほむら「簡単に言ってくれるわね……。で、どうするの?」

ロボ「ワタシが囮とナリ、あのプラズマを一手に引き受けマス」

ルッカ「何言ってるの、危険よ!」

ロボ「受けた端から放電してイケバ多少は耐えられマス。生身で突撃するわけにもいかないデショウ?」

ほむら「それはそうだけど……」

ロボ「その隙ニ、おふたりはマザーの心臓部を攻撃シテなんとかこじ開けてクダサイ」

ルッカ「心臓部ってどこよ?」

ロボ「彼女は人間の姿を模していますカラ、胸部で間違いないハズデス。とどめはワタシにお任せヲ」


ロボ「それでは作戦決行デス。なるべく早めにお願いシマスヨ」

ほむら「あ、ロボ!」

ロボ「マザー! こっちデス!」

マザー「プロメテスゥゥ!! コノ裏切リ者ガ!! 死ネエエエ!!!」

ロボ「グ……! ナルホド、なかなかキツイですネ……。どれくらい耐えられるカ……!」


ルッカ「もう、ロボのバカ! こっちの了解も得ずに突っ走っちゃって……!」

ほむら「信頼されたものね、私たちも」

ルッカ「無茶振りもいいとこだわ。こじ開けろって言われても、どないせーっちゅーのよ!」

ほむら「それとおそらく、そう何度もチャンスはない。一発で決めなきゃ……」

ルッカ「ますます無茶だわ。……でも、考えている時間もなさそうね」

ほむら「……やるの?」

ルッカ「やるしかないでしょ。ユニゾン攻撃よ」

ほむら「タイミングを合わせて一点突破の『れんけいわざ』か……。できるのかしらね、『私たち』に」

ルッカ「私とあんたじゃ信頼もクソもないもんね」

ほむら「……」

ルッカ「はあ……。こう考えるであろうことを予想していたのかしら。ロボのやつ、意地悪ねえ」


ほむら「……で、どうやって合わせるのよ?」

ルッカ「分かりやすい掛け声でもあれば……」

ほむら「チャーシューメーンとか?」

ルッカ「尺が足りないわ。もう少し長めに攻撃時間を取りたいんだけど」

ほむら「そう言われても急には……。……」

ルッカ「何か思いついた顔ね?」

ほむら「……いや。いやいやいや。これはないわ。うん、なんでもない」

ルッカ「気になるじゃない、言うだけ言ってみなさいよ」

ほむら「だからダメだって。別のを考えましょう」

ロボ「……ウグッ!?」

マザー「アハハハハ! ソロソロ、オシマイネ!」


ルッカ「や、やばいわ、ロボが限界よ! もういいから、今あんたが思いついたのでやるわよ!」

ほむら「いや、ほんと……後悔するから」

ルッカ「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと教えなさい!」

ほむら「どうなっても知らないわよ……」


マザー「モウ諦メナサイ! 大人シク眠ルガイイ!」

ロボ「クッ……まだデスカ……? ルッカ……ほむら……!」



マザー「ワタシノ勝チヨォーッ!! プロメテスゥゥゥ!!!」

「デュアル・オーロラ・ウェイブ!」

マザー「!?」


「ふたりはプリキュア!」ドォン!

マザー「ガハッ!?」ズガァン!!

ロボ「これハ!?」

ルッカ「ブラックサンダー!」ダァン!!

マザー「グアッ!?」

ほむら「ホワイトサンダー!」ダァン!!

マザー「ガアッ!?」


ほむら「プリキュアのうつくしき魂が!」

ルッカ「邪悪な心をうちくだく!」

マザー「グギャアアア!!」ドガガガガ!!!



ほむら&ルッカ「『プリキュア・マーブル・スクリュー』!!!」

マザー「ウガアァ……! オノレ……人間ドモメ……!!」


ロボ「スバラシイ! 彼女たちの『れんけいわざ』がマザーの心臓部に穴ヲ!」

ほむら&ルッカ(死にたい……)

ロボ「あとは任せてクダサイ! 『ロケットパンチ』!!」


マザー「グ……! ……。……フ……フハハ……アハハハ!!!」

マザー「プロメテスゥ! ソレガ最後ノ攻撃ナノ!? 蚊ホドモ効カナイワア!!」

ロボ「マザー! アトロポスが受けた痛み……思い知ってクダサイ!」

マザー「ナニ……!?」



『自爆回路 Standby...Countdown...』

マザー「キ……!? キサマ、腕ト同時ニ回路ヲ……!? プロメテスゥゥ!!」


ロボ「サア、離脱しマショウ! ふたりとも!」

ほむら「えっ? あ、はい?」

ルッカ「あわわわわ」

ロボ「ワタシにつかまってクダサイ! 飛ばしマスヨ!」



マザー「コンナ……ワタシガ……! ワタシハ星ノ母トナルノダア! コンナコトデェ……!!」

マザー「ウオオオォォォォ!! ナゼダ! ……プロメテスウウウウウウウウ!!!」


…………


ルッカ「ジェノサイドームが崩れてゆく……」

ロボ「あの工場のスベテの機能はテイシしマシタ。もう二度ト、動きだすことはないデショウ……」

ほむら「……これでよかったの?」

ロボ「……。行きマショウ。時の最果てデ、みんなが待ってイマス」

ルッカ「……ロボ……」



ロボ(サヨウナラ……。マザー……アトロポス……)


…………

………


年代不明 時の最果て


ロボ「以上ガ、今回の旅の顛末デス。映像再生を終わりマス」

まどか「ロボさん……大変でしたね……。せっかく妹さんやお母さんに会えたのに……」

ロボ「いいのデス。ワタシにはみなさんがいてくれるのデスカラ」


魔王「フン……。そのマザーとやらの言うこと、至極当然だな。人間などこの星にとっては害悪だ」

杏子「やれやれ、また始まったよ。アンタも人間だろ。人のこと言えんのかよ」

魔王「自分本位なお前にだけは言われたくないな……」

杏子「むぐっ……」

マール「あれ? エイラ、どうしたの?」

エイラ「エイラ、体かゆい。ムショーに」

マミ「あら、ら……。サブイボ出ちゃってるわね」

さやか「いやー。さすがにあれだけ恥ずかしい話聞かされたら、しょうがないですよ」

クロノ「ハハ。ロボの啖呵、聞く人によっては悶絶しちゃうもんな」

カエル「ギップリャ! ギップリャアア!!」

さやか「クサさに耐え切れなかった師匠が、ふんどし一丁の風の精霊みたくなってる!?」


まどか「そういえば、当のほむらちゃんとルッカさんはどこ行ったんだろ?」

杏子「ああ、アイツらならあそこに……」

ルッカ「ああ、あら暁美さん? なんのご本を読んでいらっしゃるのかしら?」

ほむら「あ、あーらルッカさん。なんでもなくってよ。コミュ障脱却マニュアル本なんて読んでいませんわ」

ルッカ「そ、そうでございますの? あらあら、ご本が逆さまでしてよ?」

ほむら「いいいいやだわ、わたくしったら。ついうっかり!」

ルッカ「ドジっ子さんですわね! オ、オホホホホホ……」



さやか「余計にギクシャクしてんじゃん! なんかキャラもぶっ壊れてるし!」

ロボ「道のりは長そうデスネ……」


まどか(がんばってね、ほむらちゃん。あなたがルッカさんと本当に信頼しあう日が来たら……)

まどか(それはとっても嬉しいなって……思ってしまうのでした)

第12話(マルチイベント編-3)「ジェノサイドーム」 終了


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ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。それでは、また明日。

第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」


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  よろしくない

A.D.600 チョラス村


マール「見つからないねえ〜。『虹色に輝くもの』の手がかり」

マミ「なにせ、まぼろしですから。そもそもどういうものなのかも不明ですしね……」

エイラ「エイラ、飽きた! 腹減った!」

マミ「とりあえず一息つきましょうか? ちょうど目の前に酒場がありますし」

マール「そうだね。それに、酒場は情報収集の基本だから何か分かるかも!」


…………


A.D.600 チョラス村 酒場


マール「あれ? なんだろ、ずいぶん騒がしいね」

マミ「わ……。なんだか、パーティーをやっているみたいですよ?」

トマ「さあさあ、皆の衆! 今日は俺のおごりだ! じゃんじゃん食って飲んで騒いでくれ!」


エイラ「マミ、おごりってなんだ?」

マミ「タダで好きに食べていいってことよ」

エイラ「マジか! 神! エイラも食う!」

マミ「あ、ちょっと、エイラ!」


マール「気前のいい人もいるものだね〜」

マミ「完全に部外者の私たちがお邪魔していいんですかね……?」

マール「あの人誰だろ? 身なりを見る感じ、旅人さんみたいだけど」

初老の男「あれは探検家トマ・レバインだよ」

マール「えっ?」

初老の男「おっと、いきなりで悪かった。私はこの酒場の主人をやらせてもらっている者だ」

マスター「あのトマはこの村の出身でな。私とも旧知の仲なんだよ」


マミ「今日はあの人の誕生会か何かなんですか?」

マスター「いや、そういうわけじゃない。この騒ぎは、あいつが世紀の大発見をしたとか抜かしてな……」

マール「何を見つけたんだろ?」

マスター「それがどうも、伝説とされている秘宝『虹色の貝がら』の手がかりらしいんだ」

マミ「虹色!? それってもしかして……」

マール「きっと管理人さんが言ってた『虹色に輝くもの』だよ!」

マスター「その手がかりが正しければ、発見したあいつは大金持ち。これはその前祝いということらしいぞ」

マール「でもまだ、実際に見つけたわけじゃないんだよね?」

マスター「そこなんだよ、あいつの困ったところは。今日のコレも全部ツケにしろなどと言う始末でな」

マスター「まあ、地元だから許されているが。トマはこの村では人気者だからな……」


マスター「こんな僻地の村では、あいつが持ち帰ってくる旅の土産話ぐらいしか楽しみがない」

マスター「あちらこちらをフラフラしながら借金だけこさえてくる放蕩者だが……」

マスター「いつか大きいことを成し遂げてくれる。そんな夢を見させてくれるのが、あいつなんだよ」

マミ「好かれているんですね、トマさんは……」

エイラ「うま! うまうま!」

トマ「ハッハッハ! 実に見事な食いっぷりだ。見てるだけで腹いっぱいになるぜ」

トマ「それによく見ると美人さんだな。あんた、どっから来たんだ?」

エイラ「エイラ、生まれたところ、イオカ!」

トマ「イオカ? 聞いたことのない地名だな……」

トマ「まだ未踏の地が残っているとは……。これだから冒険はやめられねえぜ」


マミ「エイラ、ダメよ。私たちは知り合いでもなんでもないんだし、もう少し遠慮しなきゃ……」

トマ「かまうこたあねえ。袖触れ合うも他生の縁、てな。旅ばかりしてると特にそう感じるぜ」

エイラ「お前、いいヤツ! マミ、マール、何してる? ふたりも食え!」

マミ「もう……」

マール「せっかくだから、少しだけお呼ばれしちゃおうよ」

マミ「まあ、マールさんがそう言うのなら……」


トマ「おう、食ってけ食ってけ! 悪いと思うなら、俺に酌でもしてくれや!」

トマ「美人なオネーチャンたちに囲まれて飲む酒っつーのは、この世で一番ウマイからな!」

マール「チャンスだよ、マミちゃん。彼に近づいて『虹色の貝がら』の話、聞きだしちゃお!」ボソボソ

マミ「なんかだましてるみたいで気が引けますけど……」ボソボソ

マール「手柄横取りしようってことじゃないよ。なんとか話に乗せてもらえるよう、頼んでみよ?」ボソボソ


トマ「どうした? 何か都合の悪いことでもあったか?」

マール「いえいえ、そんなことないですよー。ささ、座って座って。トマさんの話、私聞きたいなー!」

トマ「酒の肴が必要ってわけだな? いいぜ、何から話してやろうか……」


…………


翌日


マール「……うーん……あれ……?」

マスター「起きたか、お嬢さん。悪いな、もうすぐ開店時間なんだよ」

マスター「できればお仲間さんを起こして、移動してもらえると助かるんだが」

マール「え、マスター……。あれれ? もう朝?」


マスター「昨日は夜通し騒いでたからな。記憶があやふやなのも無理はないだろうが……」

マール「ウソ……。じゃあ私たち、ここで寝ちゃったの? わわわ、ゴメンなさい!」

マスター「いいってことさ。トマのヤツも、久しぶりに美味い酒が飲めたと上機嫌だったしな」

マスター「いやはや、あいつと張り合える酒豪だったとは。あんたら、見かけによらないねえ」

マール「そ、そういえば……エイラが先陣を切って、いつの間にかマミちゃんもザルになってたような……」


エイラ「グゴゴゴ! グカ〜!」

マミ「うふふふ……むにゃむにゃ……」

マール(結局トマさんからは何も聞けなかったなあ。途中から酒盛りのほうがメインになっちゃって……)

マール「トマさんはどこに?」

マスター「あいつならもう発ったよ。そうそう、あんたらにこれを渡してくれと言われてたな」

マール「これ……お酒?」

マスター「あいつの好きだった地酒だ。よっぽど気に入られたようだな」

マスター「それからこれは書置きだ。あんたらへのメッセージだろう」


マール「えっと、なになに……。『マール、マミ、エイラ、昨日は楽しかったぜ』……」

マール「『お前らは"虹色の貝がら"のことを探ってたみたいだが、残念ながら教えるわけにはいかねえな』」

マール「……バレてたんだ」


マール「『今回の探検はちとヤバイ感じがする。お前らを連れていくわけにはいかない』」

マール「『もし俺が死んだら、俺の墓にマスターから預かった酒をかけてくれよ』……」

マール「『……ケッ、縁起でもねえや。じゃあな、またどこかで会おうぜ』……か」

マール「トマさん、何か嫌な予感がしてたのかな……?」

マスター「どうだろうな。確かに、あいつがそんな弱音を吐くのは珍しい」

マスター「そうでなくても伝説の秘宝なんだ。何があってもおかしくはないだろうさ……」

マール「……」

マスター「ま、だからといって怖気づくヤツじゃなかろうよ」


マスター「昨日会ったばかりのあんたらに言うのは変な話だが……あいつの無事を祈ってやってくれ」

マール「もちろんだよ!」

マスター「また来い。今度来た時は、トマの野郎がひょっこり戻ってきてるかもしれんぜ?」


…………


A.D.1000 ガルディア城 書物庫


マール「ト、ト……トマ……トマ・レバイン……」


マミ「トマさんのことが書いてある文献、見つかりました?」

マール「うーん、今のところ全滅。マミちゃんのほうはどう?」

マミ「私もまだ……。伝記のようなものでもあればと思って探してるんですけど……」

マール「なかなか見つからないものだね〜」

大臣「おや、マールディア様ではないですか」

マール「久しぶり、大臣」

大臣「帰ってきていたのなら、一声声をかけてくださればよろしいでしょうに」

マール「ん……。ちょっと調べ物をしたら、すぐ出て行くつもりだから」

大臣「ふむ。やはりまだ、父君とは顔を合わせにくいと見えますな」

マール「……」


マミ(マールさんは確か、勘当に近い状態だって話だったかしら……)

マミ(クロノさんがマールさん誘拐の濡れ衣を着せられているからとはいえ、このままじゃダメよね……)

大臣「マールディア様の気持ち、この大臣、よく分かりますぞ」

マール「え?」


大臣「国王は何よりも国を大事になさるお方。それはそれで正しい」

大臣「しかし少々、一族をないがしろになさり過ぎではないかと思うのです……」

大臣「あれは、そう……あなたの母君アリーチェ王妃様が亡くなられた時も……」

マール「母様が!?」

大臣「おっと。失言でした。いやいや、なんでもありませぬ」

マール「話してよ、大臣! 何を隠しているの!?」


大臣「……申し上げにくいのですが……もともと病弱だったアリーチェ様の容態が急変した時です」

大臣「最後に一目国王にお会いしたいとおっしゃっていたアリーチェ様ですが、国王はなんと……」

大臣「国の仕事でお忙しいとはいえ、アリーチェ様のもとに来ず……」

大臣「幼いマールディア様が『死』ということも分からぬまま見守る中……」

大臣「アリーチェ様は、お亡くなりになられたのですじゃ……」

大臣「いやはや。あれでは国王がアリーチェ様を殺したも同然……」

マール「……父上が……母様を……」

大臣「おやおや、私としたことが! お気にしませぬように、マールディア様!」

マール「……」


マミ「マールさん……。あの、余計なことかもしれないですけど……」

マミ「仕方ないと思うんです。きっと王様も、わざとそうしたわけじゃ……」

マール「分かってる。頭では分かってるんだ……。でも……」

マミ「もう一度、ゆっくり話し合ってみたらどうですか? きっと、些細なすれ違いだと思うんです」

マール「……マミちゃんは、どうしてそこまで私と父上のことを気にするの?」

マミ「私は、その……」

城兵「大臣閣下! 賊が侵入しました!」

大臣「なんじゃと? 詳細を報告せい」

城兵「食料庫にて糧秣をあさる、野生児のような女を発見したのですが……」

大臣「けしからんな。捕まえて牢にぶち込め」

城兵「それが、その……。そいつがまたサルのようにすばしこく、ほとほと手を焼いておりまして……」


マール「……マミちゃん。エイラはどこいったの?」

マミ「絵本を読んでたはずなんですけど……。あああ……きっと飽きたんだわ……」

マール「頭抱えてる場合じゃないよ〜。なんとかしなきゃ!」

A.D.1000 ガルディア城 謁見の間


ニガスナー、ツカマエロー! アッチダ! マズイ、アノサキハ!

ガルディア33世「うん? 何事だ、ずいぶん騒がしいな」


バターン!!

エイラ「ほっほーい!」

近衛兵「なんだ、貴様は!? 陛下の前で無礼を働くと許さんぞ!」

エイラ「ん? そいつ、王様か? つまり、マールのオヤジか?」

ガルディア33世「なに? お前、マールディアを知っているのか?」

エイラ「おう! マール、大切な仲間!」

ガルディア33世「……大切な……」

マミ「エイラ!」

エイラ「おう、マミ。どした、そんな慌てて」

マミ「ばかっ! 勝手に人様の台所をあさっちゃダメでしょ!」

エイラ「む……。すまん。エイラ、腹減って倒れる、5秒前」

マール「言ってくれたらちゃんと用意してあげたのに」

マミ「あとでちゃんと、お城の人たちにゴメンなさいしに行くからね」

エイラ「おー」


ガルディア33世「ずいぶんと野蛮な友人を作ったものだな、マールディア」

マール「……父上……」

ガルディア33世「なんだその目は! お前が勝手に城を飛び出すから、こんなことになっておるのだぞ!」

ガルディア33世「そうかと思えば、そんな奇天烈なやからを城に入れたりしおって……」

ガルディア33世「チンドン屋でも始めるつもりか! お前はもう16歳なのだぞ! 少しはわきまえよ!」


マール「なんてこと言うの! 私の友達に!」

ガルディア33世「……! そのような者が友人とは、王家のご先祖様に申し訳が立たぬわ!」

マール「父上は、私よりも……私や母様よりも、王国のほうが大事なのね……」

ガルディア33世「なに……?」



マール「母様を殺したのは、父上よ!!」

ガルディア33世「!!」

マミ「マールさん! そんなこと言っちゃ……」

マール「……」


ガルディア33世「……出て行け。二度と……私の前に姿を現すでない!」

マール「言われなくたって出て行ってやるわ、こんなところ!」

ガルディア33世「お前とはもはや親でも子でもない! 勝手にするがいい!!」

マール「父上のわからず屋! もう知らない!!」


マミ「マールさん!」

大臣「……くく……いいぞ……」

エイラ「なんだ、ケンカか? マール、泣いてた」モッチャモッチャ

マミ「エイラ、食べるのやめて! マジメにやってよ!」

エイラ「腹減る、イライラする。腹いっぱい、幸せ。怒ってるならメシ食え。落ち着く」モッチャモッチャ

マミ「それは……。というか、さっきから何を食べてるの?」

エイラ「これか? 干し肉。吊ってあった。マミも食うか?」

大臣「! ……なるほど、『ハイパー干し肉』か……」


大臣「あー、これこれ。君たち。国王陛下とマールディア様のことじゃがな……」

マミ「なにか?」

大臣「私に考えがある。マールディア様に伝えてくれぬか」

A.D.1000 ガルディア城 王妃の居室


マール「……母様……」


マミ「マールさん! 良かった、ここにいたんですね」

マール「! マミちゃん、エイラ……。……えへへ、ごめんね。みっともないところ見せちゃって」

マミ「いいんです。それより、これ見てください!」

マール「え? これって……『ハイパー干し肉』じゃない」


マミ「大臣さんから聞いたんです。これ、王様の好物なんですって」

マール「へ?」

エイラ「美味い飯食う。機嫌よくなる。仲直り、簡単!」

マール「……あ……」

マミ「マールさん、本当はあんなこと言うつもりじゃなかったんですよね?」

マール「……」

マミ「このまま放置しておけば、もっと気まずくなります。お父さんと仲直りしなきゃ。ね?」


マール「……うん……そう、だよね……。分かった、私、行ってくる!」

マミ「がんばって!」

A.D.1000 ガルディア城 国王の居室


ガルディア33世「……」


マール「……あの……ち、父上……」

ガルディア33世「! ……なんの用だ。お前とはもう縁を切った。話すことなど何もないぞ」

マール「……さっきは言い過ぎちゃったと思う……。その……ゴメン……なさい……」

ガルディア33世「……」


マール「……これ……」

ガルディア33世「……なんだ? その袋は……」

マール「父上の好物。お詫びにと思って……」

ガルディア33世「お前が私に……? ……珍しいこともあるものだ……」

ガルディア33世「いや、その。今のは非難したわけでは……。い、いや、いい。とにかく貰っておこう」

マール「……」


ガルディア33世「フ……。そうか、お前がな……。どれ、一口……」

ガルディア33世「……? ……ぐ! うぐぐっ!?」

マール「えっ!? ど、どうしたの、父上!」


ガルディア33世「はうう……ぐ、げえーっ! ……こ、この……お前というやつは!!」

マール「え? え!?」

ガルディア33世「私の血圧が高いことを知っていながら、こんな激辛なものを……!」

マール「だってそれ、大好物だって……」


ガルディア33世「しおらしい振りを装い、こんなだまし討ちをするとは……人として恥ずかしくないのか!」

ガルディア33世「今度という今度は勘弁ならん。お前が私をどれだけ嫌っておるか、よう分かった!」

マール「違う、違うの! これは何かの間違いで……!」


ガルディア33世「聞く耳持たん! どこへなりと行くがいい。二度と姿を見せるな!!」

A.D.1000 ガルディア城 書物庫


マミ「……あったわ! 『トマ・レバインの埋葬地』……。ここに行けば、何か分かるかも……」


大臣「探し物は見つかったんかいのう?」

マミ「はい。マールさんが戻ってきたら、早速行ってみます」

エイラ「マミ。マール、帰ってきた」

マール「……」

マミ「マールさん、どうでした? お父さんと仲直り、できました?」

マール「それどころじゃないよ……。逆に、取り返しが付かないぐらい怒らせちゃった……」

エイラ「なんでだ? 肉、好物、違うか?」

マール「むしろ一番口にしちゃいけないものだったらしいの……」

マミ「ええ? ど、どういうことですか大臣さん! 話が違います!」


大臣「おかしいのう。そんなはずはないんじゃが」

大臣「これはやはり、国王はマールディア様との仲なぞどうでもよく、ゆえにウソをついているのであろう」

マール「そんな……」

マミ「どうでもいいだなんて……。親が子にそんな考えを抱くなんてこと、ありえません!」

大臣「なぜそう言い切れる? 現に国王はこうして、マールディア様を軽んじておるではないか」

マミ「それは……!」


マール「もういいよ、マミちゃん。父上とはしばらく距離を置くから……」

マミ「ダメですよ、マールさん!」

大臣「いやいや、それで良いでしょう。こういう時は、ほとぼりが冷めるまで近づかぬが吉というものじゃ」

マミ「……」

大臣「私からも折を見て、国王に口ぞえしておきますよ。色々と、ね」

マール「うん……。お願いね……」

大臣「お任せあれ。……くくく……」

エイラ「?」クンクン

マミ「どうしたの、エイラ?」

エイラ「お前、変な臭いするな。クサイぞ。獣の臭いだ」

大臣「!」


マール「大臣、ガルディアの森でも通ったの?」

大臣「そ、そうそう! そのとおりでございます! リーネ広場に所用がありましてな!」

大臣「途中で少し迷いましてのう! 獣道のようなところを通ってしまったので、それが原因でしょう!」

マール「あの森、そんな迷うほど入り組んでたっけ?」

大臣「大臣ってばドジっ子! 頭コツン! なーんて申しましたり! ワハハハ!」

大臣「おっとっと。香水をつけておきましょう。エチケットですから。シュシュッとな」


大臣「さあさあさあ! 目的地が決まったのでございましょう? 善は急げ、早く出発しなさい!」

マール「……?」

A.D.1000 西の岬


"王国暦634.3.6 偉大なる探検家 トマ・レバイン ここに眠る……"


マール「これがトマさんのお墓か……」

マミ「史料によると、私たちと会ったあの日から数ヵ月後に重体となって発見されたそうで……」

マミ「それからは立って歩くことすらままならず、失意からか人が変わったようにふさぎこんだまま……」

マール「……」

マミ「……チョラス町には彼の子孫がいるそうです。そちらに行ってみますか……?」


エイラ「マール。アレ、くれ」

マール「アレって?」

エイラ「酒」

マミ「チョラス村の地酒のこと? 何をする気?」

エイラ「飲ませる」

エイラ「トマ、酒だ。腹いっぱい飲め」

マミ「エイラ……」

エイラ「トマ、酒、好きだった。きっと喜んでる」

マール「そっか……。お墓にお酒をかけてくれって、あの手紙に書いてあったね……」


キイィン...

マミ「! な、なに……? 光が……!」

トマ「よう、エイラ。それにマミとマールも一緒か。久しぶりだな」

マール「ト、トマさん!?」

マミ「ウソ……! これ……トマさんの霊魂……!?」


エイラ「トマ、旅、うまくいかなかったか?」

トマ「残念ながらな。ったく、予感ってのは当たってほしくねえモンに限って当たるよな。ハッハッハ!」

マミ「笑い事じゃないでしょう……」

トマ「そんな顔するなよ。どうやらお前らは、俺にとっての幸運の女神だったようだぜ」

マール「え?」

トマ「ずっと待ってたんだぜ、お前らをよ。死んでから会いに来るたあ、人が悪いぜ!」

マミ「私たちを……?」


トマ「『虹色の貝がら』を見つけた。結局、持ち帰ることはできなかったが……」

マール「本当にあったんだ!」

トマ「おうよ。この岬から北西の海上にある、『巨人のツメ』と呼ばれる島にそいつはある」

マミ「巨人のツメ……」

トマ「……行くんだな?」

エイラ「とーぜん!」

トマ「やれやれ。これじゃあ、なんのためにあの時、お前らを置いていったか分かりゃしねえな」


トマ「気をつけろ。あそこにゃ化け物がわんさかいるぜ」

エイラ「エイラたち、強い! ぶっ飛ばす!」

トマ「ヘッ……。なら、安心だな」

トマ「縁ってのは奇妙なモンだ……。この俺が、誰かに夢を託すことになるなんてよ……」

マール「トマさん……!? 宙に浮いて……」


トマ「あばよ。やっぱり、お前らと飲む酒は最高だぜ……」

エイラ「また持ってきてやる。次も、飲む」

トマ「ああ……そうだな……。……そうしてえ……な……」



マール「……」

マミ「……さようなら、トマさん……。どうか安らかに……」

A.D.600 巨人のツメ 入り口


マール「ちょっと迷っちゃったね。北西って言われても何もないよ!? ……って」

マミ「トマさんが亡くなったのは400年前ですから、その時のことを差していたんですよね」


エイラ「ここ、エイラ、来たことある」

マール「そうなの?」

エイラ「マミも、来たことある。あれ見ろ」

マミ「え……? 玉座……? そういえば、どこかで見たことあるような……」


エイラ「ここティラン城。ラヴォス降ってきた時、埋まった。そのままずーっと、地面の下」

マミ「……! 本当だわ。確かにここは、ティラン城……。いえ、ティラン城の遺跡か……」

マール「それって何万年も前の話だよね? なんだかすごいなー……」

『制限時間は50分です』パープー!!


マール「ん? なに、今の? なんか聞こえたよね?」

マミ「ラッパの音みたいでしたけど……」


QB「旦那さんたち、何してるニャ! クエストはとっくに始まってるニャ!」

QB「早く支給ボックスから支給品を入手するニャ!」

マミ「キュゥべえ!? どうしてここにいるの!?」

QB「バイトだよ。それとここでは『アイルー』って呼んでくれないかな」

QB「まずは装備の確認ニャ。なるほど、マールは《ライトボウガン》なんニャね」

マール「いつも使ってるから。でも、ライト……?」

QB「後衛ならではの立ち回りを期待してるニャ!」


QB「マミ。君は《ガンランス》ニャ? いいチョイスニャ〜」

マミ「ランス? いえ、これはマスケット銃で……」

QB「ガンランスなんだよ! それはガンランスなんだよ! 大事なことだから2回言ったよ!」


QB「分かったら早く作り変えなよ! リボンの魔法で、ちゃっちゃとさあ!」

マミ(なぜ怒ってるのかしら)

マール「語尾忘れてるよ」

QB「おっと」

エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン〜♪」

エイラ「ウルトラ上手に、焼けました〜♪」


マミ「エイラがお肉焼いてる……」

マール「あの肉焼きセット、どこから……あ、支給品か……」

QB「彼女は全裸(装備なし)縛りの猛者ニャ。さすがに武器は必要だから、ハンマーを渡しておいニャ!」


QB「さあさあ、準備が整ったら早速進むニャ! もう5分過ぎてるニャ、急ぐニャ!」


…………


QB「ここは採取ポイントニャ! キノコとか取れるニャ!」

エイラ「オーキードーキー! イヤッフー! ヒアウィーゴー! イッツミーマーリオォ!!」


QB「ここは虫取りポイントニャ! さあ、その網を一心不乱に振ればいいニャ! 無様にさあ!」

マミ「ロイヤルカブト、ゲットだぜ!」


QB「ここは採掘ポイントニャ! 親方ァ! 空から女の子が!」

マール「バルス!!」


…………


QB「さて、そろそろ狩猟対象モンスターが出てくるはずニャんだけど……」


ルストティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

マール「うわっ! 恐竜!?」

マミ「あの姿……ブラックティラノ!? 生きていたの……!?」

QB「違うよ、亜種だよ」

マミ「あ、亜種???」


Rティラノ「ゴアアオオオオオオォォォォォン!!!」

マール「! 火を吐いた!? よけて、マミちゃん!」

マミ「あ、危なかったわ……」

QB「うまいニャ、緊急回避ニャ! これは避けゲーだニャ。相手の攻撃を見極めるニャ!」

マミ「そんな簡単に言われても……」

マール「でも、今なら反撃できそうだよ!」

QB「そのとおり! 攻撃のあとには隙ができるニャ!」


マミ「よーし、いくわよ……えい! えいえいえい!」プスプス

Rティラノ「グエェ...」

マール「……なんか地味だね」

QB「堅実って言えよ! ランス使いナメんなよ!」

QB「マミ、突き攻撃だけじゃダメニャ! ガンランスの性能を生かせていないニャ!」

マミ「どうすればいいの?」

QB「もとはマスケット銃なんだから、砲撃もできるだろ! 早く引き金引けよ!」

マミ「あ、はい」カチッ


ドオォン!!

Rティラノ「ギャオオ!!」


マール「わっ、すごーい。槍の先端から砲撃できるんだ!」

マミ「その部分だけ銃口に戻してみたの」

QB「弾が切れたらリロードするニャ!」

マール「私も負けてられないね。いっけー!」ドシュッ!

Rティラノ「グエェ...」ドスドス!

マール「やったー! 当たった!」


QB「当ててんのよ!」ペチーン!

マール「いたっ! なんでぶつの!?」

QB「どこ狙ってるんだよ! 胴体なんざ誰でも当てられるんだよ!」

QB「顔を狙えよ! 弱点をさあ! もしくは属性弾使えよ!」

QB「それになんで、こんな遠くから撃ってるんだよ! クリティカル距離を保てよ!」

マール「むつかしーなあ……」


マミ「一突きしてドカーン! 一突きしてドカーン! ……うふふ」

Rティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」

マミ「きゃっ!?」ゴロンゴロン


マール「マミちゃん! 大丈夫?」

マミ「咆哮でいきなり吹き飛ばされたわ……」

QB「まずいニャ、あれは怒り状態ニャ! 普段より攻撃が苛烈になるニャ!」

マール「ええ〜……。どうしたらいいの?」


QB「逃げるんだよォーーーッ! スモーキーーーッ!!」

マミ「うわーっ! やっぱりそうだったァァァァァァン〜〜〜〜」

QB「旦那さんたち、こっちニャ! 優秀な僕がシビレ罠を仕掛けておいたニャ。罠の背後に回るニャ!」

マール「なるほど! おびき寄せる作戦だね!」

マミ「……あら? 私たちがいる場所とは全然違う方向に走っていったわよ?」

QB「なんだって? 一体どうして……。誰をターゲットにしてるんだ……?」



エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン〜♪」

エイラ「ウルトラ上手に、焼けました〜♪」

QB「あいつかよ! なんで肉焼いてんだよ!?」

QB「縛りプレイかと思ったら、ただのネタプレイ要員だったああ!!」


マミ「エイラ、危ない!」

エイラ「お?」

Rティラノ「グオオオオオオォォォォォン!!!」ドドドドド!!

エイラ「ふんぬっ!」ガシッ!!!

Rティラノ「グオ!?」

マール「すごい! 正面から受け止めた!」


エイラ「『がんせきなげ』!!」

Rティラノ「ギャオオオオオオオーンッ!!」

マール「あの巨体を放り投げた!?」


QB「ハンマー使えよォ〜!! なんのために渡したと思ってんだよォォォ〜〜〜!!!」ゴロゴロ

マミ「エイラのあまりのフリーダムっぷりに、キュゥべえが発狂して身もだえしだしたわ」

QB「と、とにかくチャンスニャ! 獲物は気絶してるニャ!」


>総攻撃チャンス!

マミ「エイラ、いくわよ!」

エイラ「おーし!」

マール「私も援護するよ!」


>!!

ドカバキドカゴスバキドカベンガスバキドカグラップラーバキ!!!

Rティラノ「グアオオアオオオオォォォォォ!!!」

QB「よーし、もはや虫の息ニャ! マミ、トドメに『竜撃砲』ニャ!」

マミ「なあに、それ? どうやればいいの?」

QB「ごちゃごちゃ言わずにティロればいいんだよ! 早くしろよ!」

マミ「わ、分かったわよ……。『ティロ・フィナーレ(竜撃砲)』!!」


ズドドオォォォン!!!

エイラ「ぬわーーっっ!!」


マール「エイラくん ふっとばされたー!」

マミ「ごごごごめんなさい、エイラ!」

QB「あーあ……。竜撃砲を味方に当てるなんて、これは晒しスレ行きだね」

マミ「えええっ!?」


エイラ「気にするな、マミ。おもしろかった」ケラケラ

マミ「本当にごめんね……」

マール「見て、ふたりとも! あの恐竜が倒れていくよ!」



Rティラノ「ギャオオオ......」


『メインターゲットを達成しました』

『クエストクリア!』

『支給品専用アイテムを返却しました』

マミ「終わった……の?」

エイラ「マミ、大砲、効いた!」

マール「なんだかよく分かんなかったけど、とにかくこれで先に進めるね!」



QB「クリアタイムは30分。やれやれニャ。ヒヨっ子ハンターの尻拭いも楽じゃないニャ」

QB「じゃあ僕は、次なるクエストに旅立つ旦那さんのもとへ行くニャ!」

マミ「もういいから……そのキャラ付け……」


QB「さらばニャ、HR1の雑魚ども! 次は上位クエストに挑戦できるようになってから呼ぶニャ!」

エイラ「お断りします( ゚ω゚ )」

マール「これ、クロノトリガーだよね?」

A.D.600 巨人のツメ 最奥


マール「見て、あれ!」

エイラ「きれい! でかい! これ、虹色の貝がらか? 食べられるか?」

マミ「見た目は貝だけど、さすがに食べるのは無理だと思うわよ」

マール「じゃ、早速持って帰ろうよ!」

マミ「エイラはそっちを持って。いくわよ……せーの!」

エイラ「やあっ!」

マール「ちょ、ちょっとちょっと! 傾いてる! エイラ、上げ過ぎ!」

エイラ「こうか?」

マミ「重い重い! こっちに負担かかりすぎよ!」

エイラ「むー……」


マール「はあ。ダメだ、これじゃあ運べないよ」

マミ「女性3人でこんな重いものを運ぶのは、やっぱり無理がありますね」

マール「エイラもひとりじゃ運べそうにないぐらいだもんね」

エイラ「すまん」

マール「謝ることないよ。……そうだ! ガルディア城から応援を呼んでこよう!」

A.D.600 ガルディア城


ガルディア21世「よくぞ来た、マール。後ろのふたりはお仲間か?」

ガルディア21世「君らはいつでも歓迎するぞ。今日は何用で来られたのか?」

マール「実は……」


…………


ガルディア21世「なるほど。その島にある大きな貝がらを、後世まで保管してほしいと申すのじゃな」

リーネ「他ならぬ、マールたちの頼みです。私からもお願いします」

ガルディア21世「あいわかった! その虹色の貝がらとやら、城に運ばせよう」

ガルディア21世「そして家宝として代々、宝物庫に安置させようぞ」

マール「ありがとう、王様! リーネ!」


ガルディア21世「騎士団長。巨人のツメに渡り、虹色の貝がらなる巨大貝を、なんとしても城に持ち帰れ!」

騎士団長「は、ただちに!」

マミ「良かった。これで目的達成ね。貝がらの調査はルッカさんたちに任せましょう」

年代不明 時の最果て


ほむら「へえ、ティラン城が遺跡にね……」

マミ「ほんと、驚いたわ。おまけにキュゥべえまでいるし」

ほむら「最近のあいつの行動指針が意味不明すぎて怖いんだけれど」



ルッカ「マール! 大変よ!」

マール「あれ、ルッカ? ロボと一緒に虹色の貝がらの調査に行ったんじゃなかったの?」

ロボ「ソレガ……裁判が近いとのことデ、ガルディア城に入れてもらえなかったのデス」

マミ「裁判? 誰か、罪を犯した人がいるんですか?」

ルッカ「落ち着いて聞いてね。被告は、王様よ。ガルディア33世……マールのお父さんなのよ!」

マール「え!?」

マミ「そんな、冗談ですよね? 一体なんの罪で……」

ロボ「横領デス」

ほむら「そんなことする人には見えなかったけど」


マール「……何かの間違いだよ。私、確かめに行ってくる!」

マミ「待ってマールさん、私も……! エイラ、行くわよ!」

エイラ「分かった。あんこ、菓子、エイラの分おいとけ」

杏子「心配しなくても全部食いやしねーよ。つか、『あんこ』はやめろ」

まどか「気をつけてね、みんな!」

A.D.1000 ガルディア城 裁判所


♪王国裁判


大臣「みなさん! 王家に伝わる家宝『虹色の貝がら』をご存じですか?」

大臣「私もこれを見るまで知りませんでした。ガルディアの遠い祖先の書いた遺言です」

大臣「裁判長! これを証拠として提出します」


裁判長「ふむ、どれ……。『千年の建国祭に家宝、"虹色の貝がら"を国民の前にまつれ』……」

ガルディア33世「そんなものは知らん! 大体、家宝などこの城にはない!」

大臣「これがニセモノだとでも言うのですか?」

裁判長「被告人は静粛に。発言は許可されていない」

ガルディア33世「……」

裁判長「大臣、続けなさい」

大臣「なぜ被告は『虹色の貝がら』を国民の前に出さないのか? それはもう、ここにないからです」

大臣「欲に目がくらんだ被告は、金ほしさに大事な家宝を売ってしまったのです!」


ザワザワ...

ガルディア33世「言いがかりだ!」

裁判長「静粛に! 静粛に!」ガンガン!


裁判長「その発言を裏付ける証拠は?」

大臣「証人がおります。今ここに連れて来ましょう……」



バタン!!

マール「父上!!」

大臣「な!? マールディア様!?」


裁判長「大臣。王女様が証人なのか?」

大臣「い、いえ、違いますが……。マールディア様、裁判中ですぞ!」

エイラ「人いっぱい。なんの宴だ?」

マミ「そんな楽しいものじゃないのよ、エイラ」


マール「大臣、一体これはどういうことなの! 父上をどうするつもり!?」

ガルディア33世「おお、マールディアよ。私は大臣にハメられようとしている!」

大臣「人聞きが悪いですなあ。証拠さえあれば、王の無実は証明できるのですよ」

マール「証拠?」

大臣「家宝を売っていなければ、まだこの城にあるはずですからな」

大臣「ここに『虹色の貝がら』を持ってこられたのならば、無実は認められる。ま、無理でしょうがね」

ガルディア33世「大臣! 何をたくらんでおる!?」

大臣「なんのことやら……くく……」


裁判長「いかな王女様といえど、無関係であるならば退室していただきたい」

マール「ま、待って! 父上……!」

大臣「ええい、聞き分けの悪い! おい、衛兵!」


…………


エイラ「つまみ出された」

門番「通せません!」

マール「通しなさーい!!」

門番「ダメです。王女様といえどもお通しできません。どうかお引取りを」


マミ「マールさん、落ち着いてください。正式な裁判じゃ、力押しは無駄です」

エイラ「家宝持ってく。マールのオヤジ、助かる!」

マール「何言ってるの! あれは大臣のでっちあげなのよ!」

マール「家宝なんて私、今まで聞いたことがないわ。初めっからそんなもの、ないのよ!」

エイラ「思い出せマール! エイラたち、昔の王様、頼んだ!」

マミ「歴史を変えたために、今の時代のこの城に『虹色の貝がら』はあるはずなんですよ」

マール「! そっか……。そうだよね! ゴメン。私、興奮しちゃってた……」


マミ「確か、宝物庫にしまっておくって言ってましたよね」

エイラ「どこだ?」

マール「きっと地下だわ! 行きましょう!」

A.D.1000 ガルディア城 宝物庫


にょろた「おい、異常ないか?」

にょろぽん「静かなもんさ。みーんな裁判所のほうに行っちまってるからな。そっちはどうだった?」

にょろた「親分は、13代にわたる恨みが晴らせるってウキウキさ」

にょろぽん「でっちあげの証拠品で王様は死刑か。いい気味だ」

にょろた「この『虹色の貝がら』が見つからなければ、万事うまくいくぜ。きっきっきっき!」

にょろぽん「なーに、誰も来やしねえよ。楽な仕事さ。きっきっきっき!」


マール「聞いたわよ……」

にょろた「き!? な、なんだお前らは!?」

マミ「やっぱり陰謀だったのね。しかもあなたたち、魔物のくせに人間に化けて城内に忍び込むなんて……」

エイラ「ぶっ飛ばすか?」

マール「当然! いくよ!」

A.D.1000 ガルディア城 裁判所


商人「ええ、確かに王様から買いましたよ。大変お金に困られていた様子で……」

ガルディア33世「ウソを申すな! 私はお前など、会ったこともないぞ!」

裁判長「静粛に!」

ガルデイア33世「くっ……!」


商人「へへ、これで良かったかい?」ボソボソ

大臣「グーだ!」ボソボソ

A.D.1000 ガルディア城 宝物庫


マール「あった! 虹色の貝がら!!」

マミ「丸ごと持っていくわけにはいきませんよね……。エイラ、お願い」

エイラ「おっしゃ!」ベキン!

マール「なるほど。端っこだけ割って、かけらを持っていけば十分だよね!」


エイラ「ん? 待て。ここ、何かある! 紙ある、紙!」

マミ「手紙かしら?」

マール「ちょっと見せて。えっと……『マールへ』……?」

親愛なるマールへ。

父上との仲はいかがでしょう?


今のあなたには分からないかも知れませんが、いがみ合っても離れていても、親子は親子。

あなたは、いつか親から巣立って行かねばなりません。

そして、あなたもいつか親となる。


それはいつの世も変わりないはず。

だからこそ、私たちとマールもつながっているのですから……。


————ガルディア王21世その妃リーネより

マール「リーネ……」


マミ「ふふ。リーネさんも、なかなか心憎いことをやってくれますね」

エイラ「おう、巣立つ! エイラにもそれ、分かる! プテランも巣立つ。時たてば、巣立つ!」

エイラ「マールも巣立つ! ねねする! 子供生む! おっぱいやる! そしてまた、子が巣立つ!」

マミ「みんな、そうして……親から子へ、受け継がれていく。とても大切なもの……」


マール「……マミちゃんが、ずっと伝えようとしていたのは、そのことなの?」

マミ「マールさん。私にはもう、両親はいません」

マール「!」

マミ「でも思い出が、私に力を与えてくれます。父や母が私にくれた愛情が、今も心の中で輝いている……」

マミ「私、お茶会が好きですよね? あれは、両親の影響なんです。今でも覚えている言葉がある……」

マミ「『豪華な料理も極上の美酒も、家族と飲む一杯の紅茶には勝てない。団欒こそが最高の調味料だ』と」

マミ「昔……父が、そう言っていました。そのころは私は小さくて、よく理解できなかったけど……」

マミ「今なら、その言葉の意味が分かります。だから私は、親しい人と過ごす時間が何より大切なんです」

マール「マミちゃん……」


マミ「マールさん。お父さんと、しっかり向き合ってあげてください」

マミ「時間が解決してくれるなんて思っちゃダメ。それでは、本当に分かり合うことは難しい……」

マミ「他人ならまだしも、家族ならなおさらです。言葉にしなきゃ伝わらないんです」

マール「……」


マミ「父親って、どうしても頑固になってしまうものだと思うんです。だから……ね?」

マミ「いなくなってからじゃ、きっと後悔しますよ。孝行のしたい時分に親はなし、です」

マミ「……なんて。ゴメンなさい、えらそうなこと言っちゃって」

マール「ううん。ありがとう、マミちゃん。あなたのその気持ち、すごくうれしい」


マール「そうだよね……。このまんまじゃ、ずっとモヤモヤしちゃうもん!」

マール「私、父上とちゃんと話すよ!」

マミ「ええ! きっと、お父さんも待ってますよ!」


エイラ「オヤジ、助ける! 急ぐ!」

マール「父上……! 今、行くからね!!」

A.D.1000 ガルディア城 裁判所


裁判長「陪審員たちよ。有罪だと思う者は左へ。無罪だと思う者は、右へ行きなさい!」

陪審員A「有罪」

陪審員B「有罪」

陪審員C「有罪……」


ガルディア33世「……」

大臣「くくく……。圧倒的有罪率……! いいぞ……!」


…………


門番「通せません。王女様といえども、お通しできません!」

マミ「無罪の証拠を持ってきたんです。通してください!」

門番「ダメです。そーいうことは所定の手続きを経てからにしてください」

エイラ「こいつ、頭岩石だな」

マール「どーしてもダメと言うの?」

門番「はい、どーしてもです」


マミ「どうしましょう……。せっかく証拠があっても、中に入れないんじゃ……」

マール「手はあるわ! 少し荒っぽいけど……。ついてきて!」


…………


裁判長「判決を言い渡す! 有罪4、無罪1。……よって、有罪とする!!」


ザワザワ...

ガルディア33世「こんなことが許されるのか……!」

大臣「これでガルディアの時代は終わりましたな。これからは、この私が国を指揮します」

ガルディア33世「大臣、貴様……!」

大臣「さあ、この大罪人を連れて行け!」



裁判長「以上をもって、当法廷は閉廷と……」

「待ってえーッ!!」


大臣「誰だ!?」



ガシャーン!!!

マール「ちちうえェーー!!」


ガルディア33世「マールディア!」

大臣「ス、ステンドグラスをぶち破って闖入してきおった!?」

エイラ「イエーイ、見てるー?」

マミ「もう、見世物じゃないのよ」


大臣「ぐ……こいつら……! しかし、もう遅い!」

大臣「ガルディア王は国民の裁判によって刑は決まったのです。いかに王といえども……」

マール「そんなことないわ! それは、あなたのでっちあげよ!」

大臣「何をおっしゃっているか分かりませんな。事実、王は王家の宝を……」


マミ「宝ならここにあるわ。エイラ!」

エイラ「テテテテッテテーン♪ 虹色のかけら〜!」

大臣「そ、それは!?」

傍聴者A「あれが家宝の虹色の貝がら?」

傍聴者B「ってことは王様は無罪?」

傍聴者C「今の、CV:大山のぶ代?」

傍聴者D「わさびじゃないの?」

ザワザワ...


裁判長「大臣! どういうことだ?」

大臣「こ、これは……その……」

マミ「そうそう、大臣さん。こいつらに見覚えあるでしょ?」


にょろた「おやぶーん! すんませーん!」

にょろぽん「つかまっちゃいましたぁ〜……」

大臣「! お、お前ら……」

マミ「彼らに、洗いざらいここで話してもらおうかしらね?」

大臣「……」

マール「あなたの陰謀は看破したわ! 観念なさい、大臣!」


大臣「……くくくく……」

マミ「!」

大臣「観念するのは君たちのほうだ。先祖代々受け継がれてきた恨み……今ここで、晴らさせてもらおう!」



大臣「スーパーウルトラデラックス! だいじーん……チェーーーンジ!!!」

ヤクラ13世「ガルディア国王に、俺はなるッ!」ドンッ!



ガルディア33世「馬鹿な……! 大臣の正体は魔物だったのか!?」

ヤクラ13世「400年前……今回同様、国を我が物とするため当時の王妃をさらった我が祖先……」

ヤクラ13世「その遠大なる計画は、人間どもに邪魔され初代も殺された!」

マール「こいつが……リーネをさらった魔物の子孫!?」


ヤクラ13世「そしてその恨みは、13代にわたり蓄積されたのだ。二度も邪魔してくれたな、人間め……」

ヤクラ13世「策を弄するのはもうやめだ! ここからは力ずくでいかせてもらう!」

ヤクラ13世「食らえ、『スピンニードルバージョン13』!!」


ズドドドド!!

ガルディア33世「うおっ!」

マール「父上! 大丈夫!?」

ガルディア33世「あ、ああ……。なんとか……」

マミ「マールさん、まずいです! ここで暴れまわられたら、国の人たちが!」


ウワー! キャアアアア! ニゲロ!!

ドケ、オレガサキダ! オスナ、オスナー!!


マール「みんな、落ち着いて! パニックにならないで!」

エイラ「聞いてない。大混乱」

ガルディア33世「衛兵! 国民の避難を……! くそ、ダメだ……収拾がつかぬ!」

マミ「ああ……! どうしたらいいのかしら……」

ヤクラ13世「ぐっへっへ! 全員まとめてあの世に送ってやる!」

エイラ「やらせない!」

マミ「待って、エイラ! ここで戦うと被害が拡大しちゃう!」

エイラ「大丈夫。エイラ、考えある。任せろ」

マミ「え……?」


エイラ「おい、お前! コッチヲ見ロッ!」

ヤクラ13世「フン、裁判官席の上に逃げたところで無駄よッ!」

ヤクラ13世「転がり落ちるがいい! 『ヤクラシェイク……」



エイラ「ジュリアーナ! トーキォー!!」

♪MAXIMIZOR - CAN'T UNDO THIS!! (ジュリアナ東京のアレ)


エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世「……」


マール「なにあれ」

マミ「えっと……『いろじかけ』……ですかね?」

にょろた「色仕掛けだと? バカめ。そんなものに引っかかる親分じゃ……」



エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」

にょろぽん「ものの見事に引っかかってたーーーー!!」

エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

国民「フォーーーーウ!!」

エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

裁判長「フォフォーーーーウ!!」

マミ「……」


エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ガルディア33世「フォッフォーーーーウ!!」

マール「父上!?」

ガルディア33世「あ……いや、スマン。昔、通っていたパブを思い出してな……」

マール「聞きたくなかった、父上の黒歴史」

にょろた「親分! 気を確かに!」

ヤクラ13世「フォーーーーウ?」

にょろぽん「あかん」


エイラ「マミ! 来い!」

マミ「え? わ、私?」

エイラ「マミも『いろじかけ』、やれ!」

マミ「む、無理よ。私は……」

エイラ「頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!北京だって頑張ってるんだから!」


エイラ「もっと、熱くなれよおおおおおおおおおおおお!!!」

マミ「エイラ……。分かった! 私、やってみる!」

マミ「みなさん! こっちを見てください!」

にょろた「あ、あいつも何かやる気だ!」

にょろぽん「まずいぜ! 親分、見ちゃダメだ!」

マミ(上着を少しはだけさせて……)


マミ「……だ……だっちゅーの!!」


ヤクラ13世「……」

マール「マ、マミちゃん……」

にょろた「ぎゃはははは! ネタが古すぎるぜ。こりゃー興ざめだな。ね、親分……」



ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」

にょろぽん「ダメだったーーーー!!」

エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」

ヤクラ13世&ガルディア33世「フォフォーーーーウ!!」

マミ「Happy! fancy baby doll! Love me! fancy baby doll! 世界一可愛い子に生まれたかった♪」

王国民「世界一かわいいよっ!! うおおおおおおおッ!!!」


マール「……」

にょろた「そうか、こいつら……! これは、れんけいわざ『ダブル色仕掛け』だな!」

にょろぽん「完全にヤツらのペースだ……。俺たち、逃げたほうがいいんじゃ……」

マール「ねえ、ちょっと。あなたたち」

にょろた「な、なんだよ?」

マール「イライラするから、踏んでいい?」

にょろぽん「……え?」

マール「ヴぁい! 洗脳・搾取・虎の巻〜洗脳・搾取・虎の巻〜!」グリグリッ

にょろた「あああっ! かっ、閣下〜!! もっと足蹴にしてくだせえ!」

マール「マールさんは裏表のないステキな人です。はい、復唱」

にょろぽん「マールさんは裏表のないステキな人です!」



門番「中が騒がしいから覗いてみれば……なんだ、これは……」

門番「王女様と、そのお仲間……。彼女らが繰り出したのは、さんにんわざ『トリプル色仕掛け』」

門番「彼女たちの魅力にかなうものは、もはやいない。これにて、一件落着……」

門番「……」


門番「王女様ァー! 俺も踏んでください! 我々の業界ではご褒美ですッ!!」


…………


A.D.1000 ガルディア城 大食堂


エイラ「おかわり!」

給仕「申し訳ありません。もう材料が切れてしまいまして……」

エイラ「ぶー!」


マミ「エイラ、もう十分でしょ。それ以上食べると、おなか痛くなるわよ?」

マール「マミちゃん。どこ行ってたの?」

マミ「食後の紅茶をいれてきたんです。王様にお出しするのは、ちょっと気が引けますけど……」

ガルディア33世「なに、気にすることはない。今宵は堅苦しい礼儀作法は無用だ」


エイラ「ずずー」

マミ「音を立てて吸わない!」

エイラ「うまいな、この水」


マール「うーん。やっぱりおいしい。マミちゃんの紅茶、さすがだね!」

ガルディア33世「ほう……。確かにこれは、宮廷料理人にも引けを取らぬ」

マミ「そんな、ほめすぎですよ……」

マール「父上……私……」

ガルディア33世「いいんじゃ、何も言うな。わからず屋の私がいけなかったんだ」

マール「私こそ、父上の気持ちも知らないで……」

マール「ううん……。本当は分かってたのに、うまく言葉にできなかったの……」

ガルディア33世「私もさ。一時はお前が、本当に遠くへ行ってしまったように思えた……」

ガルディア33世「だがよく考えてみると、遠くに行っていたのは私のほうだったのだな」


マール「今は近くにいる。これからは父上になんでも言える」

マール「いろんなことを相談したり、クロノたちのことを話したり。母上のことを聞いたり……」

ガルディア33世「母か……。恥ずかしい話だが、あの時の言葉が、今やっと分かってきた気がする……」

マール「あの時?」


————

———


アリーチェ「あなた……私はもう、長くないわ……」

ガルディア33世「アリーチェ! 気を確かに持て!」


アリーチェ「聞いて。マールディアが大きくなれば、あなたの前に好きな人を連れてくる日が来るでしょう」

アリーチェ「その時は、ふたりをあたたかく迎えてやってね……」

ガルディア33世「……」

アリーチェ「だってその日は、あなたにとっても忘れられない、すばらしい日になるのですから……」

ガルディア33世「ああ……。分かっておる。その時はきっと、マールディアを祝福するとも……」

アリーチェ「楽しみね……」

まーる「パパ、ママ!」

ガルディア33世「なんだい、マールディア?」

まーる「私、好きな人いっぱいいるよ! パパもママも、お城の人たちも、みんな大好き!」

アリーチェ「そう……。ふふ……良かった……」


アリーチェ「……マールディア……。その気持ちを……いつまでも大切に、ね……」

ガルディア33世「! ……アリーチェ……」


————

———


ガルディア33世「はしゃぐマールディアを見て安心したアリーチェは、微笑みながら息を引き取った……」

マール「……母上の最後の言葉を、父上は聞いていたのね?」

ガルディア33世「ああ……。お前は小さかったから覚えていないかもしれないが……」


マミ「やっぱり。王様が王妃様を看取らなかったという話は、真っ赤なウソだったのね」

ヤクラ13世「でへへ……。すんません、罰として踏んでください」

にょろた「いや、俺を!」

にょろぽん「いやいやいや、ここは俺こそを!」

エイラ「だまれ」グーパン!

ヤクラ13世「ありがとうございます!!」


給仕「ちなみにこのお三方は、王女様に懐柔され、宮廷付きの使用人となりました」

ヤクラ13世「私は大臣のままだぞ! 私がいなくなったら、誰が政務を取り仕切るんじゃ!」

にょろた「『本物の大臣』なんて最初から存在しなかった」

マミ「また、おかしなたくらみを企てたら、今度こそ容赦しないわよ?」

にょろぽん「あなた方に見捨てられたら、我らはもはや満足できない体になっております! 心配ご無用!」

マール「……」

ガルディア33世「どうしたんだい?」

マール「私も小さいころは、父上のこと『パパ』って呼んでいたのね」

ガルディア33世「ああ、そうだよ」



マール「ごめんなさい……パパ……。わがまま言って……本当に、ごめんなさい……」

ガルディア33世「……マールや……。私も……すまなかった……」


マミ「良かった。親子は、仲むつまじいのが一番よね」

エイラ「めでたすめでたす」

ガルディア33世「城を出るのは認めよう、じゃが! くれぐれも気をつけるのじゃぞ」

マール「分かってるって!」

ガルディア33世「マミ、エイラ。娘を頼んだぞ」

マミ「はい、お任せください」

エイラ「お前、心配性! エイラ、マール、守る!」


ガルディア33世「……いい友達を持ったな、マールディア」

マール「でしょ! 今度、クロノたちも連れてくるからね!」

ガルディア33世「あの少年か……。う、ううむ……」

マール「どうかしたの? まさか、まだクロノを誘拐犯扱いしてるんじゃないよね!?」

ガルディア33世「いや、そういうわけではないのだが……」

マミ「うふふ。娘が嫁に行く時は、お父さんはいつだって渋い顔をするものです」

ガルディア33世「むう……」

エイラ「マール、いずれ巣立つ! 子供生む! おっぱいやる!」

マール「もう、ふたりとも! まだ先の話だよ!」


エイラ「……」

マール「? なに、エイラ?」

エイラ「オマエ、大丈夫か? おっぱいないな……。マミを見習え! この乳、ミルクよく出るはず!」

マミ「ぶー!!」

エイラ「きたない」

マミ「ゲホ、ゲホ! 何を言い出すの! お乳なんて出ないわよ!」

マール「マミちゃんやエイラと比べないでよ。それに今は、戦闘に邪魔だからサラシ巻いてるの!」

ガルディア33世「ぅおっほん! まあ、ガールズトークはそのへんにしてくれたまえ……」

ガルディア33世「マミ。紅茶をもう一杯もらえるかね?」

マミ「はい、すぐ用意します」

マール「よく飲むね。そんなに気に入ったんだ?」

ガルディア33世「うむ。今日の紅茶は格別だ。コーディネーターが優れているというのもあるが……」

ガルディア33世「何よりもお前たちと飲む、そのことこそが至高のものと化している要因であろう」


ガルディア33世「どんなに豪華な料理も、極上の美酒も、この一杯には勝てない」

ガルディア33世「家族との団欒こそが最高の調味料なのだ」

マミ「! ……」

ガルディア33世「私はそれを、後世に伝えよう。今日のこの日を、とわに忘れぬように……」



ガルディア33世「フ……。本当に、今日は……よき日じゃ」

第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」 終了


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今回はここまでです。次回投下は5/4(土)夜予定。
それでは、また。

第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」


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A.D.2300 太陽神殿


杏子「……ここだ、間違いねえ。魔力のパターンが一致してる」

まどか「魔女の結界……」

杏子「ったく、なんでこの時代に魔女がいるんだよ。ラヴォスはもう、いねえんじゃなかったのか?」

まどか「この結界の中にいる魔女が、ジャキくんに口づけしたんだね……」


魔王「もうダメだ……おしまいだぁ……。勝てるわけがない……ラヴォスは伝説の超サイヤ人なんだぞ……」

杏子「普段はえらそうなこと言ってるくせに、肝心なときにいっつも役に立たねぇヤツだな」

まどか「まあまあ」

杏子「このバカから目を離すなよ。魔女とは、アタシがメインで戦うから」

まどか「気をつけてね、杏子ちゃん」

杏子「じゃ、入るぞ」

A.D.2300 太陽神殿 魔女の結界内


杏子「……いたぞ、あいつだ」

魔女「……」


暗闇の魔女 -Suleika-



まどか「なんか金平糖みたいだね」

杏子「一気にケリをつけさせてもらうぜ! 『三段突き』!!」

Suleika「……!」

まどか「動いた!」

杏子「トロいんだよ、逃がさねぇ!」

まどか「待って、杏子ちゃん! 何か変……」


Suleika「……」

杏子「なんだ、このモヤ!?」

まどか「の、呑み込まれる……!」


…………

………


ピピピ! ピピピピ!

まどか「……うーん……?」

タツヤ「姉ちゃ、朝〜。起きてぇ、姉ちゃ〜!」

まどか「タツヤ……? ふああ〜……眠い……」



コンコン

「まどか、起きてるかい? 朝ごはんができてるよ、下りといで」

まどか「パパ。はぁい、今行くよ」


…………


詢子「おはよ、まどか」

まどか「おはよう」

知久「さあ、早く食べて。学校に遅れるよ」

まどか「うん」


詢子「おっし。じゃ、あたしは先に行くよ」

知久「ああ、いってらっしゃい。さあ、まどかも急がないと。待たせてるんだから」

まどか「え、あ、うん」

まどか(そっか。さやかちゃんたちを待たせちゃ悪いよね……)

「おはようございます、おばさん」

「おう、今日も可愛いね〜。タツヤと遊んでくれてたんだ?」

「小さい子の扱いは慣れてますから」

「なるほど、弟さんか」


まどか(玄関のほうから声が聞こえる……。さやかちゃん、家の前まで迎えに来てくれたのかな?)



「それじゃ、あたしは行くから」

「はい。いってらっしゃい」

「まどかー! 早くしな、お待ちかねだよー!」


まどか「は、はーい! それじゃパパ、いってきます」

知久「ああ。車に気をつけるんだよ」

まどか「お待たせ、さやかちゃ……」



サラ「もう、遅いよまどか。早くしないと遅刻しちゃうよ」

まどか「……え?」


サラ「? どうしたの、私の顔に何かついてる?」

まどか「サラ……ちゃん……?」

サラ「はい、正解。私はサラです。……なんちゃってね。なに、からかっているの?」

まどか「……ううん、なんでもない……。迎えにきてくれたんだね……」

サラ「お隣だもの、当然じゃない。さあ、早く行きましょう。タツヤくん、またね」

タツヤ「いってらっしゃい〜」

まどか「……」


…………


和子「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」

和子「目玉焼きとは、固焼きですか? それとも半熟ですか? はい、中沢君!」

中沢「えっ? えっと……どっ、どっちでもいいんじゃないかと」

和子「そのとおり! どっちでもよろしい!」

和子「女子のみなさんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように!」


さやか「ダメだったか〜」

サラ「3ヶ月目だったっけ? 記録更新よね」

ほむら「さっさと身を固めて欲しいものだわ。のろけと愚痴話はもうたくさんよ」

まどか「……」

仁美「まどかさん、体調でも崩されました? お顔の色がすぐれないようですけれど」

まどか「あの、ほむらちゃん。ほむらちゃんって、いつからこのクラスにいるんだっけ……」

ほむら「え? なに、突然?」

さやか「何言ってんのさ、まどか。春からずっと一緒じゃん」

まどか「そ、そうだよね……」


サラ「どうしたの、まどか? 今朝といい、様子がおかしいわよ」

まどか「大丈夫、なんでもないよ。サラちゃんも、一緒のクラスなんだよね……」

まどか「一緒に勉強して、遊んで……お隣さんで幼馴染で。私たち、ずっとそうやってきたんだよね……」

サラ「? 本当に大丈夫なの? 保健室行く?」

まどか「……」


…………


体育教師「よし。次、暁美ほむら」

ほむら「はい。……ふっ!」

体育教師「おお〜。県内記録かよ、さすがだな」


さやか「文武両道で才色兼備の割には、ほむらって男子に人気ないよね」

仁美「近寄りがたい雰囲気をかもし出しているからでしょうか?」

サラ「隠れファンは多いと思うわよ。彼女、魅力的だし」

さやか「見滝原中のアイドルのあんたが言っても、説得力皆無だわー」

サラ「もう、やめてよ。いつも言ってるけど、そういうのじゃないから」


まどか「……あの、サラちゃん」

サラ「なに?」

まどか「あの格好いい男の人、誰?」

サラ「グレン先生でしょ? 体育教諭の……」

まどか(グレン、って……カエルさん!?)

仁美「まどかさん、グレン先生が気になりますの?」

さやか「なんだ〜? 好きなのか〜?」

まどか「や、そういうわけじゃ……」


ほむら「まどかに手を出したら、教師といえども私がぶっ飛ばすわ」

まどか「! ほむらちゃん……。いつの間に戻ってきたの?」

さやか「友達として忠告しよう! 悪いこたー言わない。グレン先生は絶対やめといたほうがいいって!」

まどか「……なんで?」

さやか「確かに顔はいいけど、言動が下世話すぎてね〜。残念なイケメンってやつだわ」

グレン「聞こえてるぞ、美樹」

さやか「うげっ!」

グレン「よーし。次は鹿目の番だが、気が変わった」

グレン「美樹! お前には特別授業として、マンツーマンでみっちり鍛えてやるからな!」

さやか「イヤー! おかされるー!」

グレン「寝言は寝て言え! JCに興味はない!」

さやか「JKは?」

グレン「……」

さやか「あ、ちょっと迷ってら」

グレン「な、何を根拠に!」

さやか「体罰にセクハラ。おまわりさんこいつです」

グレン「やめろ! このご時勢、マジでシャレにならん!」

さやか「カツ丼でいいすか?」


ほむら「また始まったわ」

サラ「あのふたり、仲いいわよね」

まどか「……」


…………


仁美「お昼はいつものように、屋上でよろしいですか?」

さやか「そだね。あ〜、あたしパン買ってこなきゃ」

サラ「お弁当は?」

さやか「いやー、今朝は忙しくて作れなかったんだって」

サラ「あらら……」


まどか「……」

ほむら「まどか。今日はずっと元気ないわね」

まどか「そ、そんなことないよ……」



男子生徒「あー、ちょっと。そこの君たち……」

サラ「はい?」

まどか(! ク、クロノさん!?)

クロノ「君たち、ここのクラスだよね。上条君に用事があるんだけど、呼んでもらえないかな?」

さやか「恭介に? 分かりました、呼んできます」

クロノ「すまないね」


まどか「……あ、あの……クロノ、さん……?」

クロノ「うん? あれ? 僕、自己紹介したかな?」

ほむら「生徒会長の名前ぐらい大体みんな知ってますよ、クロノ先輩」

まどか(せ、生徒会長なの!?)


クロノ「そうなのかな? まあいいや。で、なんの用だい?」

まどか「わ、私のこと、知ってます?」

クロノ「知ってるよ、鹿目まどかさんだろ」

まどか「! どうして……」

クロノ「マミから話は聞いてるよ。会うのは初めてだけど」

まどか「マミさんと同じクラスなんですか?」

クロノ「いや、僕は違う。彼女が同じクラスにいるから、それでね」

まどか「彼女……?」


恭介「クロノ先輩。用事ってなんですか?」

クロノ「やあ、恭介。悪いな、呼び出しちゃって。生徒会の仕事のことなんだが……」

恭介「またですか? 僕、役員じゃないんですけど」

クロノ「カタイこと言うなよ、優等生くん。来年はきっと君が会長だ」

恭介「部外者がなれるわけないでしょうに……」

さやか「お待たせー。じゃ、行こっか」

まどか「あ、あの、さやかちゃん」

さやか「ん?」

まどか「あのね。クロノさ……先輩の、彼女って誰か知ってる?」

さやか「マール先輩でしょ。割と有名じゃん」

まどか「マールさんが……!?」


サラ「今度はクロノ先輩が気になるの? まどか、いつからそんなに気が多くなったのかしら」

ほむら「なんですって! ダメよ、NTRなんてまどかには似合わないわ!」

仁美「ほむらさん、落ち着いてくださいまし」

さやか「そんなことよりおなかがすいたよ」

まどか「……」


…………


サラ「まどか、帰りましょう」

まどか「あ、うん。……あれ、さやかちゃんと仁美ちゃんは?」

ほむら「仁美はお稽古があるから先に帰るって。さやかは上条君でも待ってるんでしょ」

まどか(そういえば上条君、お昼に何か頼まれてたっけ……)


サラ「帰りにクレープ屋さんでも寄っていく?」

ほむら「いいわね、買い食いは学生の華だわ」

キャー! キャー!


まどか「なんだろ? グラウンドのほうが騒がしいね……」

サラ「ああ、きっとテニス部ね」

まどか「誰か人気のひとでもいるの?」

ほむら「どうせマミでしょ」

まどか「マミさんが!?」

サラ「まどか、見に行きたいの?」

まどか「う、うん! ゴメンね、ちょっと寄らせて!」

ほむら「見ても何も面白くないと思うけど」

エイラ「手塚ゾーン!!」

マミ「それ反則だってば、エイラ!」

エイラ「ワシの波動球は百八式まであるぞ」

マミ「もう、また負けちゃった……」


後輩A「マミ先輩! タオルをどうぞ!」

マミ「あら、ありがとう」

後輩B「エイラ先輩! スポーツドリンク飲みます?」

エイラ「汗かいた。水分必要。お前、気が利く!」


女生徒A「ああ……。今日も美しいですわ、巴様……」

女生徒B「エイラ様のワイルドな魅力に、わたくし、トリコにされてしまいましたわ!」

仁美「しかもおふたりは親友。これは俄然、はかどるというものですわね!」

ほむら「……仁美、帰ったんじゃなかったの?」

まどか「……」


…………


ほむら「どこのクレープ屋さんに行く?」

サラ「駅前のでいいんじゃない?」

ほむら「あそこはおとといも行ったから、別のところにしたいわね。まどかはどう?」

まどか「え? えっ……と、どこでもいいかな……」

ほむら「どこでもって言われると、逆に困るのよね」

まどか「ご、ごめん……」

サラ「あら? 校門のところに誰かいるわよ」


「あー、いたいた。今、帰りのようね。ちょうど良かったわ」

まどか(ルッカさん……!)


ルッカ「よっ、ほむら。それに、まどかとサラも一緒か」

ほむら「姉さん……。大学は終わったの?」

まどか「お姉さん!?」

サラ「どうして驚いているの?」

まどか「あ、いや……」


ルッカ「ほむら、ちょっと付き合ってよ。研究が行き詰まっちゃってさあー」

ほむら「なんで中学生の私に言うのよ」

ルッカ「あんたは天才だからねー。私には及ばないけど」

ほむら「ほめられてるのか、けなされてるのか、理解に苦しむわ」

ルッカ「はいはい。いいからさっさとバイクの後ろに乗って」

ほむら「ほんと強引ね。……ごめんなさい、ふたりとも。クレープ屋さんはまたの機会ね」

サラ「ええ、気にしないで」

まどか「あ……。バイバイ、ほむらちゃん」


ほむら「研究って、例のAIの研究?」

ルッカ「そうそう、『プロメテウス回路』のね。結構進んでるのよ」

ほむら「知ってるわ、前に見せてもらったから。姉さんが作ったにしちゃあ、紳士的なプログラムよね」

ルッカ「どーいう意味よ。……それと、ほむら。やっぱあんた、将来はうちの大学に来なさい」

ほむら「何よ、急に」

ルッカ「プログラムをまるで人間のように見るあんたのその思考、私と一緒だわ」

ほむら「……」

ルッカ「さ、飛ばすわよ!」

ほむら「飛ばさないで。安全運転でいってちょうだい」


まどか「……」


…………


サラ「遊んでたら、だいぶ遅くなっちゃったわね。ジャキ、怒ってるかしら……」

まどか「……」


サラ「そうそう。さっきね、知久おじさんが夕食はうちで食べないかってメールくれて」

サラ「ね、まどか。今日、泊まってもいい? 久しぶりにパジャマパーティーしましょうよ」

まどか「……サラちゃん……ごめんね……」

サラ「え、ダメだった? うーん、残念。じゃあ今度、都合のいい日にうちで……」

まどか「違う、違うの。サラちゃん……ううん、あなたはサラちゃんじゃない」

まどか「あなただけじゃない。ほむらちゃんも、クロノさんたちも……」


まどか「この世界はみんなウソ。わたしが見てる、ただの妄想」

サラ「……」

まどか「それとも……あなたが、見せてくれてたのかな……」

まどか「夢みたいだったの、今日一日。サラちゃんと、こんな日常が過ごせるなんて……」

まどか「でも……心が痛いの。幸せが痛いの……。だって、これって逃げてるだけだもん……」

サラ「まどか……泣いているの……?」

まどか「えへ、へ……。泣かないって決めたのに……。わたし、ダメだなあ……」

サラ「……」


まどか「でも……もう、泣いてるだけのわたしじゃないよ」

まどか「わたし、逃げずに立ち向かう。そうしなきゃいけないって、サラちゃんが教えてくれたから……」

サラ「そう……。それが……あなたが選んだ道なのね……」

サラ「辛く、苦しい道だわ……。きっと今みたいに、何回でも泣いてしまうでしょう……」

まどか「うん……」

サラ「ここにいたほうが、ずっと楽よ?」

まどか「うん……」

サラ「……それでも、行くのね」

まどか「うん。……さようなら。やさしくしてくれて、ありがとう」



サラ「さようなら。サラも喜んでいるわ、きっと……」


…………

………


まどか「……ん……。あ……?」

Suleika「……」

まどか「魔女……。そっか……戻って、きたんだ……」

Suleika「……」

まどか「……ごめんね。わたし、あなたを倒します」


まどか「『狂戦士の連弩』!!」

Suleika「……。……」

まどか「あ、グリーフシード……」

まどか「……?」

まどか(なんか、いつものと形が違うような……?)


『光のほこらにて、この暗黒石を6500万年以上の長きにわたり、太陽にさらせ』

『そして見よ。この石に宿る、少女たちの絶望から目を背けるな』

『さすれば太陽石と化したその石は、あなたに力を貸すだろう』


まどか「! 誰……!?」

まどか「……」

まどか「誰もいない……。今のは……?」

杏子「う……。あ、れ……? ここは……」

まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」

杏子「まどか……。今のは……夢……? そっか……夢かよ……」

まどか「……杏子ちゃんは、どんな夢を見ていたの?」

杏子「覚えてねえ。……けど、すごく幸せなものだった気がする……」

まどか「……」


杏子「そ、そうだ! 魔女はどうなったんだ!?」

まどか「倒したよ」

杏子「え、アンタが? へえ、やるじゃん」

まどか「ううん、わたしの力じゃないよ。あの子はたぶん、眠りたかったんだと思う……」

杏子「……?」

まどか「それと、この石なんだけどね……」


…………


杏子「光のほこらねえ。聞いたことねえな」

まどか「でも、どこかにあるはずだよ。シルバードで探しに行ってみよう」

杏子「そうだな……」


魔王「さっそく伝説の太陽石を復活させに出かける! あとに続け、貴様ら!」

まどか「ジャキくん、正気に戻ってたんだね」

杏子「アイツ、ぶっ飛ばしていい?」

B.C.65000000 光のほこら


杏子「ここか。案外あっさり見つかったな」

魔王「なるほど、ここは夜が訪れても光を失わないようだ」

まどか「それじゃ、暗黒石を光の当たる場所に置いて……と」


杏子「で、シルバードで時間移動すりゃ6500万年経ってるわけだ。3分クッキングみてーだな」

まどか「なんだか簡単すぎて拍子抜けしちゃうね」

魔王「時間移動という所業がそもそもありえんのだ。存分に利用させてもらおう」

杏子「よし、A.D.2300に飛ぶぜ!」

A.D.2300 光のほこら


まどか「なんで!? 暗黒石が、なくなっちゃってる!」

杏子「オイオイ、どういうことだよ」

魔王「いずれかの時代で紛失したか……」

まどか「探さなきゃ!」

杏子「どの時点でなくなったか突き止めねえとな。とりあえず、古代から行くか」

B.C.12000 光のほこら


杏子「この時代にはまだある、か……」

魔王「6500万年経ち、ラヴォスの攻撃を受けてもなお変わらぬこのほこら……。実に興味深い」

杏子「暗黒石、まだ特に変わった様子は見られねえな」

まどか「でも、ちょっとだけ光が戻ってきたんじゃない? ほら、こことか……」



キイイィィン...!

まどか「!?」


…………

………


「このクソガキが! 俺様の服にドロをつけやがったな!」

「ご、ごめんなさい!」

「口だけで許されると思っているのか? 弁償してもらおう」

「そんな……。こんな額、私たちには払えません!」

「ならテメェが体で払いな。弟の不始末の責任を取るのは、姉の役目だぜえ? ヒヒヒ!」

「こいつ……! 姉ちゃんに汚い手でさわるな!」

「き、貴様……! 殴ったな! 親父にもぶたれたことないのに!」

「だめ、やめなさい!」

「許さねえ。地の民のクズのくせに……。これは不敬罪だ! 貴様ら3人とも処刑してやる!」

「は、放して……!」

「やめろ! ちくしょう!」


「ああ……どうして……魔法を使えないというだけで、こんな目に……」

「私に……私に、力があれば……夢のような生活を……」



「それが君の願いかい?」


…………


「こんな巨大な魔力は見たことがない。特例として、君を光の民と認めよう」

「やったぜ、姉ちゃん! これで威張り散らしたヤツらを見返せる!」

「おめでとう、お姉ちゃん!」

「ありがとう、ふたりとも……。浮遊大陸でなら、私たち3人だけでもきっとやっていけるわ」


「何を言っている? 大陸に上がることを認めるのは君だけだ」

「え……!? そ、そんな! お願いします、弟ふたりも一緒に……」

「地の民は浮遊大陸の大地を踏むこと許さず。さあ、来たまえ」

「姉ちゃん! どけよ、クソッ……! 姉ちゃん!!」

「お姉ちゃああん!」

「ああ……なんてこと……!」


「なぜ……。願いはかなったはずなのに……。家族がバラバラになってしまっては、意味がない……」


…………


「太陽神さま……。どうか、弟たちをお守りください……」

「いもしない神に祈ったところで無駄だよ。分かっているはずだ。君の弟はふたりとも死んだ」

「あなたは……こうなることが分かっていながら、私を……」


「極寒の地で君たちのような幼子が生き延びられるはずがない。そんなことは言うまでもないだろう?」

「だからこそ、君はひとりで逃げ出してきたんじゃなかったのかい」

「私のせいなの……? 私が、分不相応な願いを持ったから……。魔法少女なんかになったから……」

「願いはかなったんだ。夢のような人生、存分に謳歌すればいい」

「……ごめんなさい……グラン……。リオン……」


「安心しなよ。ふたりは死んで、英霊となった。本来ならば君もそうなるはずだったけど」

「未練がましくこの世に踏みとどまるより、その魂を宇宙のために燃やし尽くすほうがずっと有意義だ」

「……おっと。こんなことを言っても、魔女と化した君には何も届かないんだったね」

「今までありがとう。そしてさようなら、ドリーン」


…………


(魔法少女は……夢を見ることも許されないの……?)


(私はただ、小さな幸せが欲しかっただけ……)


(ああ……私は今、悪夢を見ている……。これでは……安らかに眠ることもできない……)



…………

………


まどか「……ハッ!?」

杏子「オイ、どうかしたのかよ? 石にさわったまんま、ぼーっとしやがって」

まどか(今のは……? 過去の魔法少女の、記憶……?)


魔王「暗黒石の紛失がこの時代でないのならば、もうここに用はない。行くぞ」

杏子「おし、次は中世だな」

A.D.600 光のほこら


魔王「まだ据え置かれているな」

杏子「確認終了っと。じゃ、さっさと行こうぜ」

まどか「……あ、あの、ちょっと待って」

杏子「なんだよ?」

まどか「少しだけ、時間くれないかな……」

杏子「別にいいけど、何するつもりだ?」


まどか(さっきの現象、一体なんだったんだろう……。もう一度さわれば、分かるかな……)

まどか「……暗黒石……また少しだけ、光が戻ってきてる……」


キイイィィン...!

まどか「……!」


…………

………


「お母さん! お母さあん! うわあああん!!」


「可愛そうに……。魔族に殺されたんだそうだ」

「魔王がいなくなったというのに、魔族による被害はいっこうに減る気配を見せんな」

「東のほうではだいぶ落ち着いているらしいぞ」

「チョラス村のあたりか? 移住したほうがいいんだろうか……」

「だが住み慣れた土地を離れ、新しい土地でやっていくなんて無茶なこと、できるわけがない……」

「おい。それより、あの娘をどうにかしてやれよ。たったひとりの肉親が死んだんだぞ」

「そう言うならお前が引き取ってやれ。うちにはそんな余裕はない」

「い、いや。俺だってそんな厄介なことは……」

「アンタら、それでも男かよ!」

「……」

「大の大人がこれだけ集まってるってのに、あの子になんにもしてやれねえのか!」

「生意気言うな。ガキのくせに……」

「もういいよ。俺があの子の面倒を見る!」

「なに?」


「お母さん……うう……」

「もう泣くな!」

「だって……」

「俺が一緒にいてやる! 俺がお前を、ずっと守ってやる!」

「……それって、告白……?」

「なんでもいい。お前が泣き止むなら、俺はなんだってしてやるさ!」


…………


「大ニュースだぜ! 見てくれ、これ!」

「それ……勇者バッジ?」

「王家に保管されてたものを正式に授与されたんだ。ついに俺は、あこがれの勇者になったんだ!」

「行くの……? 魔族討伐の旅に……」

「ああ。誰かがやらなきゃならねえ。なら、俺がやる!」

「私も一緒に……」

「何言ってるんだ。危険な旅に、お前を連れて行くわけにはいかない」

「待っててくれ。必ずお前のもとに帰ってくるからよ!」

「待って! 行かないで……。イヤ……ひとりにしないで……」


「太陽神さま……。なぜなのですか……? なぜみんな、私のもとから去っていくのですか?」

「私はただ……愛する人と、ずっと一緒にいたいだけなのに……」



「それが君の願いかい?」


…………


「お前が……魔王、だったのか……」

「魔王? 魔族はそう呼ぶけど、私は私だよ。私はただ、あいつらを従えてるだけ」

「それが魔王じゃなくて、なんなんだよ……」

「ねえ、勇者の旅なんてもう終わりにしようよ。魔族は、私が命令すれば言うことを聞くから」


「……そうはいかない。たとえお前が人々のためを思って魔族を纏め上げたのだとしても……」

「国のみんなはそれでは納得しない! お前が倒されることでしか、平和はもたらされない!」

「それを実行するのが、勇者である俺の務めなんだ!」

「私を殺すの? どうして! 私は、あなたと一緒にいたかっただけなのに!」

「魔王……いや、魔族を率いる魔女よ! お前は人間の敵だ!」

「イヤ……! こんな、こんな結末……私は望んでいなかったのに……!」


「思い出の中で人は生き続ける。それも、キレイな姿のままでね」

「彼を殺して思い出とすればいい。それとも、君が死ぬかい?」

「良かったじゃないか。これで君の望みはかなった。彼とずっと一緒にいられるよ」

「やあ、見事な魔女だ。まさに、魔王と呼ぶにふさわしいね」

「さて、勇者タータは果たして無事魔王を倒せるのかな? 楽しみだね」


…………


(魔法少女は……大事な人の、そばにいることすら許されないの……?)


(私はただ、彼の愛がほしかっただけなのに……)


(ああ……もう何も見えない……何も聞こえない……。いとしい人を感じることができない……)



…………

………


まどか「……」

まどか(また、見えた……やっぱりこれって……)


杏子「大丈夫かよ? うずくまって……腹でも痛いのか?」

まどか「……ううん、なんでもない。さ、行こう……」

A.D.1000 光のほこら


まどか「! ない……!」

魔王「決まりだな。暗黒石は、この時代に紛失した」

杏子「クソッ、どこいったんだ? 誰か盗みやがったのか?」


魔王「犯行現場というものは何がしかの手がかりが残されているもの……見つけたぞ!」

魔王「ペロッ……これは青酸カリ!!」

杏子「なんやて工藤!?」

まどか「それただの土だから。遊んでる場合じゃないよ、早く暗黒石を見つけないと」

杏子「つっても、どうするんだよ。いつ、誰が持ち出したかも分からねーぞ」

まどか(暗黒石は、きっと魔法少女に関係があるもの……。だったら……)


まどか「ねえ杏子ちゃん。太陽神殿で探知した魔力のパターン、まだ把握してる?」

杏子「ん? ああ、そりゃ分かるけど……それがなんだよ?」

まどか「探して。きっとその発生元に、暗黒石があると思うの」

A.D.1000 パレポリ町


魔王「ずいぶんみすぼらしい家屋だな。本当にここに暗黒石があるのか?」

杏子「まどかの言うことが正しいんなら、そうなんだろ」

まどか「えっと、お邪魔します……。誰かいらっしゃいませんかー?」


元町長「おや、このような場所に何用ですかな?」

まどか「あ……ここの住人さんですか?」

元町長「いかにも」

まどか「私たち、とある石を探してるんですけど……」


…………


元町長「持ってきましたぞ。これがその石です」


魔王「確かに、暗黒石のようだ」

元町長「旅の若者がここに置いていったんですよ。あなた方には大切なもののようですな?」

まどか「はい。あの……譲っていただくわけには……」

元町長「構いませんよ。どうぞ持っていってください」

杏子「えらくあっさり渡してくれるんだな」

元町長「どんなものでも、みんなで分け合う! 困っている人には手を差し伸べる!」

元町長「それがワシのモットーです。亡き娘から教えられた、ね」

まどか「え……娘さんが……?」

元町長「さあ、お嬢さん。受け取ってください」

まどか「あ、どうも……」


キイイィィン...!

まどか(! また……!)


…………

………


「あの町長、なんとかならんものか? 金にがめつく自分のことしか考えていない」

「あんなのがこの町の長では、この先やっていけないぞ」

「先日も、独り身の老人を住まいから追い出したらしい。つぶして賭博場を建てるんだとよ」

「やってられねえな。俺たちの頼みは聞きもしないで、そのくせやりたい放題だ」

「早く死ねばいいのに」


「……」

「見ろよ、あれ。町長んとこの娘だ」

「近寄るなよ。あんな親を持つ子供だ、どうせあいつも性根が腐ってるさ」

(また、父さんの陰口……。みんなの冷ややかな目が、私にも向けられている……)


…………


「……ただいま」

「おう、娘よ。見ろ、この壷を。100年前に作られたもので、たいそう価値があるそうだ」

「これでまたワシのコレクションが増えるな! うひひひ!」


「そんなもの、見たくない」

「なんだ、機嫌が悪いのか? ……ん? どうした、その顔のキズは」

「……」

「イジめられたのか? どこの誰だ、言え。ワシの権力でこの町に住めないようにしてやる」

「……もういいよ!」

「おい、どこへ行く? 仕方のないヤツだ。夕飯までには帰ってこいよ。今日のメシも豪勢だからな!」

(もうやだ……。父さんがあんなだから、私には友達もできない……)

(それどころか、ののしられて殴られて……。誰も私を助けてくれない……ひとりぼっち……)

(父さんも父さんよ……。お金の力ですべて処理しようなんて、そんなのなんの解決にもならない……)


「ただ、少しだけでいいのに……。ほんの少し、父さんがみんなに優しくなれば……」

「お互い助け合って、分かち合って。困っている人を見捨てないことが、大切だってこと……」

「気づいてよ……父さん……」



「それが君の願いかい?」


…………


「職もない、食べ物もない……。このまま俺は浮浪者として死ぬのか……」

「それは大変だ! ワシが職を斡旋してあげよう。落ち着くまで、ワシの家で生活するといい」


「お母さんがはやり病で倒れちゃった……」

「国に陳情して、この町にも有名な医師が来てくれることになったよ」

「でも、お金が……」

「治療にかかる費用は全額、ワシが負担する。安心しなさい!」


「この年になると、家の階段を上るのも難儀でのう……」

「住みやすい家に改築しましょう! ワシに任せなさい」

「それにお爺さんがさびしくないよう、毎日来てあげますよ!」


「ニャー」

「これは可愛そうに。捨て猫か。ワシの家で面倒を見てあげなければ!」

「一体どうしちまったんだ、町長は? まるで人が変わったみたいだ」

「この前も私、ただ荷物が多くて苦労してただけなのに、当たり前のように家まで運んでくれたわ」

「あたしの誕生日を町全体でお祝いしてくれるんだって! うれしいな!」

「定期的に炊き出しを行ってくれるそうだ。これで食い扶持に困らなくてすむぜ!」

「なんて住みよい町なんだろう! このパレポリ町は、現世に現れた桃源郷だな!」


(町の人たち、幸せそうな顔をしてる。私にもみんな、良くしてくれる……)

(やっぱり人に情けをかけてあげれば、めぐりめぐって自分に返ってくるんだ!)

(笑顔がいっぱい。うれしいよ、私。なにより父さんが生き生きしてるもの)

(魔法少女になって、良かったなあ……)


…………


「おう、町長さん。またアンタの賭博場で全財産すっちまったよ。金貸してくれ」

「はいはい、お安い御用で! 返すのはいつでもかまわんよ!」

「ヒヒ……。返すわけねーだろ、バーカ!」


「町長さんよ。そろそろその職、辞職したほうがいいんじゃねえか? ボランティアには邪魔だろ?」

「そうですな。では、後任はあなた方に一任します!」


「あー、この家、豪華だよな。俺たちみたいな浮浪者にこそ必要なんじゃねえか?」

「ごもっともです。すぐ出て行きますよ!」


「アンタの嫁さん、健康でうらやましいよ。傷病者のために臓器提供してくれないかな?」

「困っている人のためなら、嫁さんでもなんでも差し出しますよ!」


「アンタんとこの子供、3人いるだろ? 弟さんと下の妹さんを俺にくれや」

「愛玩奴隷として可愛がってやりたいっつーオッサンがいるんだよ。俺には理解できないがね」

「可愛がってもらえるなんて、それはありがたい! どうぞ、連れて行ってください!」


「町長さん。いや、元町長さんよ」

「まだ隠し持ってんだろ? アンタの財産のすべて、町のみんなに還元してやれよ」

「ええ、ええ、ワシのものはみんなのもの! さあ、すべて持っていってください!」


…………


「父さん……お腹、すいたよ……」

「スマンな。この食料は町の人たちに分けてあげる分なんだ。ワシらが食べてしまうわけにはいかない」

「……ねえ……わたし……熱があるんだけど……」

「我慢しなさい。ワシはこれから、仕事に行かなければならないから」

「お仕事……? それって、お金もらえるの……?」

「何を言ってるんだ! 無償で働くからこそ、みんな喜んでくれるんだぞ。じゃあ、行ってくる」

「……」


「……寒い……苦しいよ……。助けて……太陽神さま……」

「お水……せめて、お水が飲みたい……。ああ……でも、もう……体が動かない……」

「誰か……誰か、いませんかあ……!」

「誰もいないよ。無情なものだね。苦しむ君には、見舞いのひとりすら来ない」

「……あなたは……」


「君はこんな言葉を聞いたことがあるかい?」

「『腹をすかせたネズミにチーズをやると、今度はミルクをくれと言い出す』」

「人の欲望には限りがない。与えれば与えるだけ、それ以上のものを望んでくる」

「人間のサガというものさ。それに気づけなかった君には、ご愁傷様というしかないね」


「……私は……なんのために……。……信じてたのに……」


「君はもうすぐ死ぬ。遠からず、君のお父さんも過労で倒れるだろうね」

「復讐しなよ。恩知らずの町の人たちに。魔女になって、さ」

「それが今、君ができる唯一のことだ」


…………


(魔法少女は……誰にも助けてもらえないの……?)


(私はただ、ほんの少し救いを求めただけなのに……)


(ああ……絶望が私を包む……。この弱った体で、怨みだけが活力を保ち続けている……)



…………

………


まどか「……」


元町長「お嬢さん、どうかしたのかい? もしかして、この石は目的のものではなかったのかね?」

まどか「いえ、そんなことは……。ありがとうございます……」

元町長「うむ。人助けして感謝されるのは、やはり気持ちがいいものだ」

まどか「あの……娘さんのこと、お悔やみ申し上げます……」

元町長「君は娘の知り合いかね?」

まどか「そういうわけではないですけど……」

元町長「そうか。見ず知らずの人に悲しんでもらえるなんて、あの子も果報者だよ」


魔王「石は取り戻した。この時代の光のほこらに置きなおし、A.D.2300へ飛ぶぞ」

A.D.2300 光のほこら


杏子「すげえ……! あの真っ黒だった暗黒石が、ものすごい光を放ってやがる!」

魔王「この光……闇に生きるものにとっては、少々まぶしすぎるな」

杏子「太陽の光を集めた『太陽石』ってわけか」


まどか(確かに、この光は太陽のもの。でも、それだけじゃない……)

まどか(数千万年もの時の流れの中で、生まれては消えていった女の子たち……)

まどか(魔法少女たちの、いのちの光なんだね……)

まどか(だって、見えるもの。こうやって、手を触れるだけで……)


キイイィィン...!


…………

………


「……痛い……」

「……苦しい……」

「……辛い……」

「……悲しいよ……」


「憎い……。魔女が、憎い……。何も知らない人たちが、憎い……」

「インキュベーターが憎い……。彼らは、どんな時代でもやってくる……」

「それは、ラヴォスがいなくなったこの時代ですら……。エネルギー採取のためだけに……」


「……怖いよ……」

「この世のすべてが怖い……」

「苦痛が、嘆きが、死が、憎悪が、喪失が……」


「……絶望が……私を襲う……」

「私は」

「わたしは」

「あたしは」

「アタシは」


「魔法少女は、希望を抱いてはいけないの?」

「魔法少女は、希望を信じてはいけないの?」


「ねえ、誰か」

「誰か、お願い」

「助けて」

「助けてよ……」

「私を」

「わたしを」

「あたしを」

「アタシを」


「助けてください」

「魔法少女を……誰か……」


「救ってください……」


「……ねえ、お願い……」



「……太陽神さま……」


…………

………


まどか(……ずっと……ずっと、見てきたんだね……あなたは……)

まどか(何も言わず……何も言えず……何もできず……)

まどか(ただ、聴くことしかできなかった……。彼女たちの祈りを……)


まどか(いっしょだね……わたしたち……)

まどか(……だから、あなたは……)



杏子「まどか? なんで泣いてるんだ?」

まどか「……この子も……泣いてるよ」

魔王「石が泣くだと? ありえんな、何を血迷ったことを言っている」

まどか「……」

年代不明 時の最果て


ルッカ「はい、できたわよ」

まどか「ありがとうございます、ルッカさん!」


さやか「へー、太陽石をボウガンにアタッチメントとしてつけたんだ」

まどか「うん。これで、ずっと一緒にいられるから……」

マミ「なんだかその石が人間であるかのような言い回しね?」

ほむら「何言ってるのよ。石は石でしょ」

杏子「どうも今回のまどかは様子がおかしいな」


カエル「意思を持つ石……なんつってな……」ボソッ

さやか「うわ、さっぶ。もっとおかしい人がここにいたわ」

カエル「このシャレの良さが分からんとは……。まだまだ青いな、さやか」

さやか「ただのオヤジギャグじゃん!」

まどか(サラちゃん、ハッシュさん。わたし、なんとなく分かった気がする)

まどか(わたしにできること。わたしが願うべき祈り……)


まどか(答え、見つけたよ)

第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」 終了


  セーブしてつづける(マルチイベント編-6へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。それでは、また明日。

第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

15話を読む前に

かなり鬱&強引&消化不良展開が入ります。
それでもいいという方は、どうぞ

A.D.600 地底砂漠


メルフィック「Rトカツケラレナクテヨカッタ!!」


カエル「ヤツがこの地一帯を砂漠化させていた原因だったのか……」

さやか「でもなんとか倒せたし、これで木を植えてもすぐ枯れちゃう〜なんてことはなくなるよね!」

クロノ「フィオナさんに知らせに行こうか。それにしてもさっきの魔物、どこかで見たような……」


…………


A.D.600 フィオナの小屋


マルコ「旅のお方。妻の頼みを聞いてくださり、感謝いたします。見ず知らずの私たちのために……」

さやか「問題ないっすよ! 困ってる人を助けるのは勇者の勤めだもんね、師匠?」

カエル「まあ……そうだな」

マルコ「! ではあなた方が勇者様一行……魔王を倒したと言われる……」

さやか「えーと、まあ……そうとも言うけど、そうじゃないとも言えるんですけどねえ……」

カエル「あまり話をややこしくするな。素直に受け取っておけ」

マルコ「私は兵士として、魔王軍との戦いに駆り出されていました……」

マルコ「こうして愛する妻のもとに無事帰ることができたのも、勇者様のおかげです」

カエル「そんなに感謝ばっかりされちまうと、なんだかむずがゆいぜ」

さやか「へへ、やっぱいいことすると気持ちいいね!」


フィオナ「みなさん、本当にありがとう。これでこの苗木を植えることができます」

クロノ「それは?」

フィオナ「代々伝わる、不思議な力を持った苗木です……」

フィオナ「これならきっと、砂漠を緑の大地に戻せるでしょう。私も、もう一度がんばってみます」

カエル「苗木から森を育てるのか? ずいぶん気の長い話だな」

さやか「あたしもよく知らないけど、それってむちゃくちゃ時間がかかるんじゃないの?」

フィオナ「そう、問題はそこなのです。気の遠くなるような時間が必要になる……」

フィオナ「たとえ私が一生をかけたとしても、どれほどの成果をあげられるか……」

マルコ「何百年でも働き続けることができる人がいれば……いや、そんな人間がいるわけはないか……」

クロノ「付近の村の人に頼むことはできないんですか?」

フィオナ「無理です。このような絵空事、賛同してくれる人などいません……」

マルコ「大丈夫だよフィオナ。ふたりで、できるところまでやろう」

カエル「……」


…………


年代不明 時の最果て


ルッカ「どうしろって言うのよ?」

クロノ「いや、どうにかならないかなーと。……ならないよな」

ルッカ「なるわけないでしょ」


まどか「砂漠を森に戻すって、どれくらいかかるんですかね……」

エイラ「ヘビガミさま、できる!」

マール「つまり神様ぐらいしかできないってことだよね……」

ロボ「……ミナサン、提案がありマス。ワタシがフィオナさんのお手伝いをするというのはどうデショウ?」

カエル「なに? ロボが?」


ロボ「ワタシの体は機械デス。何百年も働き続けられるデショウ」

ロボ「砂漠が森とシテよみがえったあとに、ワタシを回収してくださればよいのデス」

さやか「そっか……そうだね! ロボならいけるよ!」

クロノ「いいのかい?」

ロボ「お任せクダサイ」

ルッカ「……」


…………


A.D.600 フィオナの小屋


フィオナ「え……あなたが?」

ロボ「ハイ、ワタシがフィオナさんのお手伝いをシマス」

ロボ「何百年でも働き続けマス。キット、森を復活させてみせマス」

マルコ「すごいな。どういうカラクリで動いているのか分からないけど、頼もしいよ」


ルッカ「じゃ、ロボ……私たちは行くから……」

クロノ「頼んだよ!」

ロボ「ハイ、おふたりもお元気デ。イエ、この言い方はおかしいデスネ」

ロボ「アナタ方にとってはおそらく再会までの時間はイッシュンの出来事でしょうカラ」

ルッカ「あなたにとっては無限にも思える時間でしょうけどね……」

ロボ「そんな顔をしないでクダサイ。すぐ会えマスヨ」

ルッカ「……」

クロノ「未来で会おう! またな、ロボ!」


…………


年代不明 時の最果て


カエル「……失敗、だって……? どういうことだ!?」

クロノ「……」

ルッカ「そのままの意味よ。森は復活していなかったわ」

まどか「ロボさんは……?」

クロノ「分からない……どこに行ったのか……。壊れてしまったのかも……」

マール「そ、そんな……」


ルッカ「こうなるだろうという予感はしてたわ……」

さやか「ど、どういうことっすか?」

ルッカ「何百年も働き続ける……確かにロボなら、まったく不可能というわけではないわ」

まどか「な、ならどうして……」

ルッカ「正常な状態でいられたら、という前提がつくからよ」


ルッカ「農作業という過負荷、ドロや雨による劣化、予想だにしないトラブル……」

ルッカ「農業機械だってちゃんとメンテナンスしてあげないと、まともに稼動し続けられないわ」

ルッカ「誰がロボの面倒を見るのよ。マニュアル化してフィオナさんにでも渡す?」

ルッカ「それもひとつの手ね。けど、彼女に扱えるかしら? それに彼女が亡くなったあとは?」

カエル「……そ、それは……」


ルッカ「この件はどうにもならないわ。ロボを迎えにいって、終わりにしましょう」

ルッカ「……だいたい、ロボひとりに押し付けるなんておかしいわよ」

クロノ「……」

ほむら「あなたらしくない興奮っぷりね、ルッカ。ロボがいなくなって、さびしいからかしら?」

ルッカ「なによ。ずっと黙ってたあんたが、いまさらどうしようっての? 何かいい手でもあるわけ?」

ほむら「マニュアル化はできるのよね?」

ルッカ「そりゃあやろうと思えば……。だから、使える人がいないんだって」

ほむら「私なら使えるわ。ロボとはずっと一緒にいたし、あなたから多少なりとも教わったこともある」

ルッカ「そういうことじゃないでしょ。普通の人間は、何百年も生き……ら、れ……」


ほむら「……気づいたみたいね。いえ、他にも気づいている人がいるようよ」

マール「どういうこと?」

ほむら「私と同じく、だんまりだった人たちに聞いてみれば?」

マミ「……」

杏子「……」

まどか「……マミさんに杏子ちゃん? どうしたの、神妙な顔して……」


魔王「……彼女らは普通の人間ではない、ということだ」

さやか「え……あっ! そ、そっか……あたしら……」

まどか「ジャ、ジャキくん……そんな言い方……」

魔王「事実を言ったまでだ。不老不死に近いところにいるのは確かだからな……」

杏子「ソウルジェムの穢れをなんとかできりゃ、だけどな……」

マミ「不可能だわ、そんなの……」

マミ「たとえ理論的に生き続けられるとしても、きっとその前に精神がおかしくなってしまう……」

ルッカ「そ、そうよ! 机上の空論だわ!」


ほむら「不可能かもしれない。可能かもしれない。どちらにも転ぶなら、やってみるだけよ」

ほむら「ロボひとりに押し付けたこと、確かに恥ずべきことだった。なら、次の可能性にかけてみましょう」

カエル「そうは言うがな……」


エイラ「マミ、いなくなるか!? イヤだ! ならエイラ、行く! いっしょ!」

マミ「エ、エイラ……私は、その……」

ほむら「別にあなたたちにやれとは言ってない。行くのは、私よ」

まどか「ほむらちゃん!? なに言ってるの!?」

ルッカ「本気なの……あんた……」

ほむら「本気も本気。大マジよ。でなきゃこんなこと言わないわよ」

まどか「……どうして、そこまで……」


ほむら「ラヴォスを倒すためのこの旅、いつだって途中であきらめそうになった」

ほむら「でもそのたび乗り越えて、ここまで来たのよ。それを……」

ほむら「なにかひとつでもあきらめてしまえば、星を救うことはできない。そんな気がするだけ」

マール「……」


ほむら「さ、準備しなきゃ。長い旅になりそうだものね。ルッカもマニュアル、早いとこ頼むわよ」

ルッカ「……ええ……」


…………


数日後


ほむら「……じゃ、行ってくるわね」

杏子「考え直す気はねえんだな?」

ほむら「ないわ」

杏子「……そうかよ」

マミ「あの、暁美さん……。これ、私のお気に入りの茶葉なんだけど、良かったら……」

エイラ「エイラ、渡す! 肉! 食え!」

ほむら「餞別ね、ありがと」


カエル「なんと言っていいか分からんが……まあ、成功を祈ってるぜ」

魔王「フン、結果はすぐに分かる……」

マール「さびしくなったら帰ってきてもいいからね!」

ほむら「はいはい、そうならないように努力するわ」

クロノ「ほむら……」

ほむら「クロノ、いつか話したわよね? あなたたちは、私を無条件に信じ続けたおバカさんたちだって」

ほむら「どうやら私も、あなたたちのおかげでおかしくなったみたい。無条件に信じてみようって、ね」

クロノ「……」

ほむら「私に何かあったら、あとは頼むわね、副リーダー」

クロノ「……何かなんて、ないよ。絶対……」

ほむら「……そろそろ行きましょうか、ルッカ」


さやか「待った、待った!」

カエル「さやか、お前どこに行ってたんだ。こんな時に……」

さやか「荷造り手伝ってたの。ほら、早くしないと置いてかれちゃうぞ、まどか」

まどか「はあ、はあ……。ほむらちゃん、わたしもルッカさんと一緒に見送らせて」

ルッカ「ずいぶん大荷物ね。何が入ってるのよ?」

まどか「ティヒヒ、あとでまた話します」

ほむら「まあいいわ。それじゃまたね、みんな」


…………


A.D.600 フィオナの小屋


ロボ「おやミナサン。どうかしたのデスカ?」

ルッカ「ロボ、良かった……。あのね、あなたと別れたあと400年後に行ったんだけど……」


…………


ロボ「そうデスカ……。ワタシでは無理だったのデスカ……」

ほむら「気を落とさないで。そのために私が来たんだから」

ロボ「シカシ、ほむら……」

ほむら「ストップ。説明はちゃんとしたでしょ。もう決めたことよ」


フィオナ「いまだに信じられません。あなたが不老不死だなんて……」

マルコ「さすが勇者様だ。神のような者まで仲間にしてしまうとは……」

ルッカ「そういう納得の仕方でいいわけ?」

ほむら「本人がいいならいいんじゃない」

ルッカ「まどか、そろそろ行くわよ」

<モウチョット マッテクダサアーイ!!


ほむら「まどかは何をしてるのかしら?」

ルッカ「……さあ?」

ほむら「あなた何か隠してない?」


まどか「ごめんなさい、お待たせしました」

ルッカ「もういいの?」

まどか「はい。ほむらちゃん、ロボさん……あの、えっと……がんばって。無事でいてね……」

ほむら「まどかも元気でね。……って、この言い方はおかしいんだったかしら?」

ロボ「ハハ。そうデスネ。ワタシも言ってしまいマシタ」

ルッカ「……」

まどか「ほむらちゃん、これ……お守り」

ほむら「これ、サラさんのペンダントじゃない。あなたの大切なものでしょ?」

まどか「うん、だから……絶対返してね」

ほむら「……そうね。分かったわ」


まどか「ほむらちゃん……。サラちゃんが、きっと……守ってくれるよ……」

ほむら「ええ……。ありがとう、まどか……」


…………


ロボ「……行ってしまいマシタネ」

ほむら「そうね。これで後戻りはできないわ。これから忙しいわよ、ロボ」

ロボ「ほむらがいてくれるなら、きっと成功シマス」


…………

………

……


♪風の憧憬


ほむら「農作業って腰にくるわね……」

ロボ「ほむらは肉体強化の魔法を使っているのデハ?」

ほむら「最小限にしてるわ。あんまり魔力を使いたくないし……」

ロボ「マッサージでもしまショウカ?」

ほむら「そうね、帰ったらお願いできる?」

ロボ「勿論デス」


…………


フィオナ「どうかしら? お口に合うといいんだけれど」

ほむら「とてもおいしいです、フィオナさん」

フィオナ「良かった」

ほむら「ロボは食べられなくて残念ね」

ロボ「見ているだけで満足デス」

ほむら「あとでオイルを注入してあげるわ」


…………


フィオナ「そうそう、そうやってひとつひとつ植えて……」

ほむら「こんな感じでいいですか?」

フィオナ「ええ、十分。うまく育つといいんだけれど」

ほむら「不思議な苗木ですね。かすかに魔力を感じる……」


マルコ「おーい、そっち終わったかい? そろそろ昼飯にしよう!」


…………


ロボ「今日は小屋の北側を開墾してキマス」

フィオナ「お願いね。ほら、マルコも手伝ってきて」

マルコ「肉体労働は男の仕事〜ってか」


ほむら「フィオナさん、おなべ焦げてます」

フィオナ「あらいやだ。これじゃ帰ってきたふたりに怒られるわ。家を守るのが女の仕事なのに」

ほむら「なんか……そういうのも、いいですね」

フィオナ「ほむらさんのところでは違うの?」

ほむら「ええ、まあ……いや、どうなんでしょう……?」

フィオナ「?」


…………


ほむら「鳥に食べられちゃってる……」

ロボ「案山子が必要デスネ。ワタシが立ってマショウカ?」

ほむら「ダメよ。ロボにはもっと違う仕事がたくさんあるわ」

ロボ「これは参りマシタ。ほむらはロボ使いが荒いデス」

ほむら「ロボ使いってなによ? まったく、もう」


…………


マルコ「思ったんだけどさ、ほむらさん。もう私たちは家族同然なんだし、敬語はやめにしないか?」

ほむら「え……?」

フィオナ「それいいわね! 私たちのことも、さん付けじゃなくて呼び捨てにして欲しいわ」

ほむら「そんな、失礼ですよ……」

マルコ「それそれ。なんか、だいぶ経つのに壁を感じるんだよねえ」

ほむら「そういうわけでは……」


フィオナ「……ほむら」

ほむら「! ……え、え?」

フィオナ「ふふ、呼んじゃった。なんだか娘ができたみたい」

マルコ「ハッハッハ! そのうちほむらに、弟か妹を作ってやるからな!」

フィオナ「もう〜、マルコったら」

ほむら「は、はあ……」


…………


ほむら「作業の手が止まってるわよ、ロボ」

ロボ「オット、これは失礼シマシタ」

ほむら「何よさっきから。私の顔ばっかり見て、何かついてる?」

ロボ「イエイエ。最近のほむらは表情が和らいでいると思いマシテネ」

ほむら「……そう?」

ロボ「呼び方ヒトツ。言葉づかいヒトツ。ただそれだけデ、人の気持ちは変わるものデス」

ほむら「……あなたはたまに、人間より人間らしい考え方をするわね」


ロボ「ほむらと最初に出会った時カラ、アナタはワタシたちに対してくだけていマシタ」

ほむら「……突然の出来事で、混乱していただけよ」

ロボ「だとシテモ、そのおかげでこうして仲良くなれマシタ。ルッカも喜んでイマス」

ほむら「あいつが、ねえ……」

ロボ「ほむら、ワタシはアナタと出会えて本当に良かったと思ってイマス」

ほむら「なによ、突然」

ロボ「こういうときでもないと素直に聞いてくれませんカラネ、ほむらハ」

ほむら「あなたには負けるわ……」

ロボ「フィオナさんとマルコさん……いい人たちデスネ」

ほむら「……そうね」


ほむら「ところであなたは、敬語やめないの?」

ロボ「これはワタシのアイデンティティーデス」


…………


ほむら「ただいま」

ロボ「オカエリナサイ。魔女退治はうまくいきマシタカ?」

ほむら「ええ、なんとかね。ついでに村のほうで買出しも済ませてきたわよ」

ロボ「ではワタシが倉庫に収納してキマス」


フィオナ「いつもごめんね、ふたりとも」

ほむら「妊娠中は無理厳禁、でしょ」

マルコ「それにしても魔族に魔女、か。私たち人間は敵が多いな……」

フィオナ「この子が大きくなるころには、平和な世の中になっているといいんだけれど……あら?」

ほむら「どうしたの?」

フィオナ「今、この子……おなかを蹴ったわ!」

マルコ「なんだって! ちょ、ちょっとさわらせてくれ!」

フィオナ「きゃあ! やめてよ、マルコ! そんな鼻息荒くしないで!」

ほむら「……見てられないわね」


…………


マルコ「……」ソワソワ

ほむら「マルコ、落ち着いて。心配ないわよ」

ロボ「パレポリ村いちの産婆さんデスカラ、間違いないデショウ」

マルコ「そうは言ってもな。こういうとき、父親に心配するなというほうが無理な話だ」

ほむら「まあ、それはそうだけど……」


オギャー!!

マルコ「!」

ほむら「……良かったわね」

ロボ「元気な泣き声デス」


…………


ピエトロ「ほむ! ほむりゃ!」

ほむら「え、ええ……?」

フィオナ「うふふ。ピエトロはほむらが好きなのね」

マルコ「お父さんとしては複雑だなあ。最初の言葉が『パパ』でも『ママ』でもなく『ほふ』だもんな」

ロボ「キット、『ほむら』と呼ぶつもりだったのデショウ」

フィオナ「ほら、ほむら。抱いてあげて?」

ピエトロ「ぶー! ほむりゃ!」

ほむら「……わわっ……」


…………


ロボ「大丈夫デスカ? マルコさん」

マルコ「大丈夫、大丈夫。ロボがはしごを押さえててくれるからな」

ロボ「剪定でしたらワタシがやりマスガ……」

マルコ「ふふふ、甘いな。こういうのは専門家に任せておけ」

マルコ「それに、君たちに任せっきりだとフィオナが怒るんだよ。ちゃんと働け〜ってね」

ロボ「気をつけてクダサイ」


マルコ「……ふむ。こんなもんかな。ん、待てよ……向こうの枝をもう少し切ったほうが……」

ロボ「! マルコさん、危ナイ!」

マルコ「う、うわっ!?」


…………


フィオナ「はい、あーん」

ピエトロ「あー……」


マルコ「フィオナ、私にもあーんしてくれ」

フィオナ「左手で食べてください! もう、怪我なんてしてたら余計ふたりに迷惑がかかるじゃない」

ロボ「ワタシの不注意デ、申し訳ありマセン」

フィオナ「ロボが謝ることはないわ。この人が調子に乗ったせいよ」

マルコ「……なあ、最近フィオナは私に厳しくないか?」

ほむら「尻にしかれてるわね」

マルコ「とほほ……」


…………


ガタガタ...ガタガタ...!!


ほむら「……すごい嵐ね。窓枠が外れそうだわ」

マルコ「……」

ピエトロ「ビエエェェン!!」

フィオナ「よしよし、大丈夫よ。怖くないからね……」


カッ!! ドシャーンッ!!!

ほむら「! ……雷……ずいぶん近かったわね……」

ロボ「苗木たちは大丈夫でショウカ……」

マルコ「……」ガタッ

フィオナ「マルコ? 何してるの?」

マルコ「ああ……ちょっとだけ、外を見てくる。ロボの言うとおり、苗木が心配だ」

フィオナ「何を言ってるの! 怪我も治っていないのに……」

マルコ「なあに、ちょっと行って帰ってくるだけだ。大丈夫さ」

ほむら「なら、私も……」

マルコ「ほむらが行くとピエトロが悲しがる。私ひとりでいいよ」

ロボ「ひとりは危険デス、ワタシも一緒ニ連れていってクダサイ」

マルコ「おいおい、女性ふたりと小さな子どもを残していくつもりか?」

ロボ「シカシ……」


マルコ「じゃ、頼んだぜ」

フィオナ「マルコ!!!」


…………


ほむら「今日は、風が冷たいわね」

ロボ「冬デスカラ」

ほむら「……雪でも降るのかしら」

ロボ「サア……」


…………


フィオナ「ふたりとも、おかえり。遅いから心配したわよ」

ほむら「ロボが張り切っちゃってね……」

ほむら「最初に植えた苗木も育ってきたし、そろそろ南のほうにも手をつけていいんじゃないかって」

ロボ「今日はだいぶ遠くのほうマデ開墾してきマシタヨ!」

フィオナ「あんまり根をつめちゃだめよ?」

ほむら「……あなたこそ、ね」

フィオナ「え?」

ほむら「なんでもないわ。夕飯にしましょう」


…………


ほむら「うわ……毛虫だわ」

ロボ「もうそんな季節デスカ」

ほむら「最近、年がめぐるのが早い気がするんだけど」

ロボ「ほむらもそろそろオバサンですカネ?」

ほむら「あなた今、全人類を敵に回したわよ」

ロボ「それはご勘弁願いたいデス」


…………


ほむら「おはよう、ピエトロ」

ピエトロ「……」


ほむら「あ、あれ? 行っちゃった……」

フィオナ「ピエトロも最近難しい年頃になってきたからね……悲しいわ」

ロボ「思春期デスカラ。仕方ないことデス」

フィオナ「それとも、可愛い女の子が同居してるせいで照れているのかしら?」

ほむら「可愛い女の子……ね」

ロボ「ほむらハ、カワイイデスヨ?」

ほむら「はいはい」


…………


ほむら「こんなところにいたのね。もう暗くなるわ、帰りましょう」

ピエトロ「……」

ほむら「外で遊ぶのもいいけれど、お母さんに心配かけちゃダメじゃない」

ピエトロ「……うるさい」

ほむら「またそんなこと言って。いい加減にしないと怒るわよ?」

ピエトロ「……」

ほむら「ねえ、ピエト……」


ピエトロ「あっち行けって言ってんだろ! 魔女!!」

ほむら「!」

ピエトロ「お前、なんなんだよ! 何年も何年もおんなじ顔しやがって! 気味悪いんだよ!!」

ほむら「それは……」

ピエトロ「母さんも母さんだ! なんでこんなヤツをうちに住まわせとくんだ!」

ピエトロ「父さんも、お前が……! ちくしょう、魔女め!!」

ほむら「……」

ピエトロ「お前なんか……お前なんか、出ていけ!!!」

ほむら「! 待って……! 待……」


ほむら「……」


…………


ほむら「あら、また来てるわ。あの小鳥……」

ロボ「この木が気に入ったんデショウカ?」

ほむら「なんだかうれしいわね。愛情こめて育ててきたから……」

ロボ「きっとそのウチ、この一帯は木々に覆われ、鳥たちの大合唱が聞けることデショウ」

ほむら「そうなるといいわね……」


…………


フィオナ「やっぱり行くの、ピエトロ?」

ピエトロ「ああ。俺は王国海軍に志願して、新大陸を見つけてやる」

ピエトロ「デカいこと成し遂げてやるんだ。そして母さんや、ほむらおばさんに楽させてやるよ」

ロボ「ワタシも忘れないでクダサイ」

ピエトロ「ははっ、ごめんごめん。じゃあロボには、異国の油でも土産に持って帰ってくるよ」

ロボ「体に合いますカネ……」


ほむら「気をつけてね、ピエトロ」

ピエトロ「ほむらおばさん。俺、ガキのころはなんにも分かってなかったよ」

ほむら「え?」

ピエトロ「そのせいでおばさんにひどいこと言っちまった時もあったよな……」

ほむら「……」

ピエトロ「なんか、うまい時期が見つからなくて今まで謝れなかったけど……ほんと、ゴメン」

ほむら「……いいのよ、そんなこと。とっくに忘れたわ」

ピエトロ「そっか。……へへっ。じゃあ、いってきます!!」

フィオナ「必ず帰ってきてね……!」


…………


ガタガタ...ガタガタ...!!


ほむら「また嵐……か」

ロボ「この季節はいつもこんな感じデスネ」

ほむら「嫌いだわ……。あの日を思い出すから……」

ロボ「……」


ガシャーン!

ほむら「!?」

ロボ「フィオナさん! どうかシマシタカ!?」

フィオナ「ごめんなさい。手が滑ってグラスを落としちゃったの……」

ほむら「怪我はない?」

フィオナ「ええ、大丈夫」

ロボ「危険デスからワタシが処理してオキマス」

フィオナ「ありがとう、ロボ。……あーあ、このグラス、あの子のお気に入りだったのに」

フィオナ「帰ってきたら、しかられるわね……」

ほむら「……」


…………


王国海軍兵「では、そういうことですので……」

ほむら「……あ……は、はい……」

ほむら「……」


フィオナ「ゴホ、ゴホ……。ほむら、誰か来てたの?」

ほむら「! ……なんでもないわ。それよりフィオナ、寝てなきゃダメじゃない」

フィオナ「ちょっと熱が出ただけよ。これぐらい……」

ほむら「そういう過信がいちばん危ないのよ。完治するまで安静にしてて」

フィオナ「迷惑かけるわね……。こんなとき、ピエトロがいてくれれば楽なのに」

フィオナ「あの子ったら出て行ったきり便りもよこさないで……。今ごろ、何してるのかしら……」

ほむら「……」


…………


フィオナ「……ふう。こんなものかしら?」

ほむら「大丈夫? あんまり疲れることしないほうが……」

フィオナ「あらなに? 年だから無理するなってこと?」

ほむら「そういうわけじゃないけど……」

フィオナ「大丈夫よ、たまには手伝わせて?」

フィオナ「それに今は……何かしてないと、変なこと考えちゃいそうだから……」

ロボ「フィオナさん……」


…………


ほむら「いい天気ね」

ロボ「こんな陽気デスト、思わず日向ぼっこをしたくなりマス」

ほむら「いいわね。あとでフィオナもつれてきてあげましょう。家の中ばっかりじゃ、かわいそうだわ」

ロボ「では、ワタシがイスを運びマス」


…………


フィオナ「ほむら……ほむら……。そこにいるの?」

ほむら「ええ、私はここにいるわ。ほら、手を握ってあげる」

フィオナ「おお、おお……。ロボも……いるのかい?」

ロボ「ハイ、ワタシはここデス」


フィオナ「ごめんね……ふたりとも。何もしてあげられなくて……」

ほむら「そんなことはないわ。私たちは、あなたたち家族にたくさん、大切なものをもらったわよ……」

フィオナ「そうかい……? そうだとしたら……いいんだけれど……」

ロボ「フィオナ……。安心シテ、ゆっくり休んでクダサイ」

フィオナ「本当に……あなたたちがいてくれて……私は救われたわ……」

フィオナ「この森のこと……どうか……よろしく、ね……」

ほむら「ええ、必ず……」



ほむら「……フィオナ……?」

ほむら「……」


…………


ほむら「……」

ロボ「ふたりきりになってしまいマシタネ……」

ほむら「いずれ、そうなるだろうと覚悟はしてたわ……。大丈夫……」

ロボ「……」


…………


ほむら「やった……! 私たち、やったのよね、ロボ!」

ロボ「ハイ! まだまだわずかですケレドモ……これハ、『森』と呼んで差し支えないデショウ!」

ほむら「フィオナ、見てる? あなたの夢は、きっと実現するわよ……!」

ロボ「サア、ほむら! 今日もがんばりマショウ!」


…………


ほむら「ロボ、見て! リスよ!」

ロボ「シマリスですネ。ネズミ目リス科シマリス属、樹上生リスとジリスの中間的な存在でアリ……」

ほむら「ちょっと。そういうことを言ってるんじゃないのよ?」

ロボ「分かっていマス。この森にも動物が棲むようになったのデスネ……」

ほむら「鳥たちも増えてきたし……。あなたの言ったとおり、最近は大合唱よ」

ロボ「彼らもこの森の一部デス。いとおしいものデス」

ほむら「そうね……。とてもかわいいわ……」


…………


ロボ「外で食べる昼食モ、たまには良いデスネ」

ほむら「それはそうだけど……。この鳥、いつまで私の頭の上に乗っているつもりかしら?」

ロボ「ハハハ。アナタは森の人気者ですカラ。鳥だけじゃありマセンヨ」

ほむら「いつの間にか動物たちが……」

ロボ「こうして見ているト、ひとつの絵画のようデス。タイトルは『森の聖女』なんてどうデスカ?」

ほむら「恥ずかしいセリフ禁止!」


…………


ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!」

ロボ「ウウ……ン? そこにいるのハ、ほむらデスカ……?」

ほむら「帰りが遅いから心配して探しに来てみれば……なにがあったのよ!?」

ロボ「魔族が襲ってきまシテ……突然のことデ、反撃もデキズ……」

ほむら「魔族!? どうして……。ビネガーは何をやっているのよ……!」

ロボ「彼がすべてを管理できるというわけではないのデショウ……」

ロボ「ゼナン橋以南は治安も悪ク、ビネガーの館からも遠いデスカラ……」


ほむら「とにかく、小屋に戻りましょう。壊れたところを直さなきゃ……」

ロボ「ほむらがいてくれて、良かったデス……」


…………


ほむら「それじゃあ、行ってくるわね」

ロボ「ハイ。魔女退治、がんばってクダサイ」

ほむら「そうそう、村に寄るんだから買出しもしなきゃね。何か不足してるものはある?」

ロボ「お待ちクダサイ、今リストを作成シマス」


…………


ほむら(最近、魔女の活動が活発化してきている……)

ほむら(なぜなのかしら? 今まではこんなことなかったのに……)


村人A「例の家族の話、聞きました?」

村人B「ええ……。自ら家屋に火を放ち、一家心中なんてひどい話ですわね……」

村人A「なんでも魔女のたたりだとか……」

ほむら「! ……」

村人B「あそこの奥さん、愛娘を亡くしてからというもの、異端の教えに傾倒しだしましたものね……」


ほむら(この時代は、魔女だの悪魔だのが信じられている……)

ほむら(あながち、完全に間違いだとも言えないところが皮肉なものよね……)

村人C「その話、私も聞きましたわ。どうも『森の魔女』の仕業だということらしいですわよ」

ほむら「……っ!?」


村人B「森の魔女? なんです、それ……?」

村人A「知っていますわ。先ごろ、砂漠に森が出来始めましたでしょう?」

村人B「そういえば……。私も、不思議に思っていました。あんな土地に森が復活するなんて……」

村人C「あれは、魔女の棲む森ですわ。あの森に出入りする少女を見た人がいるんです」

村人A「それがどうも、何十年も前から姿が変わらないとかで……」

村人B「まあ、怖い……」

村人C「この村でも似た少女を見かけたという人がおりますのよ」

村人B「えっ!? じゃ、じゃあ……もしかして、今もこの近くに……」

村人A「……あら?」


ほむら「……!」


村人C「どうかなさいまして?」

村人A「いえ、あの子……」

村人B「あのフードをかぶった子が、なにか?」

村人A「……ごめんなさい、きっと気のせいですわ」


…………


ロボ「ソウデスカ……。『森の魔女』……そんな噂ガ……」

ほむら「私は……とうぶん、この森から外に出ないようにしたほうがよさそうね……」

ロボ「村に何か用事があれバ、ワタシが行きマス」

ほむら「ごめんなさい、ロボ。迷惑かけるわね……」

ロボ「イエイエ。ほむらは、不注意でワタシが破損した時、直してくれマシタ。お互いさまデス」

ロボ「何があってモふたり力を合わせテ、乗り越えていきマショウ!」

ほむら「そうね。ありがとう、ロボ。おかげで元気が出たわ」


…………


ほむら「遅いわね、ロボ……。村のほうで何かあったのかしら……?」



バタン!!

ロボ「ほむら、大変デス!」

ほむら「!? なによ、その姿は!?」

ほむら「アイセンサーも壊れて……ああ……! あちこち、ひしゃげてるじゃない……!」


ロボ「ワタシのことはいいのデス! それよりここから逃げなくてハ!」

ほむら「ちょ、ちょっと! ダメよ、動かないで! どうしたの、また魔族!?」

ロボ「イエ……これは王国兵ニ……」

ほむら「ガルディア王国が!? どうしてこんなこと……」

「開けろ! ここを開けろ!!」ドンドンドン!!


ロボ「いけマセン、もうバレてしまったとハ……!」

ほむら「どうなってるの、ロボ!? 外にいるのは誰よ!?」

ロボ「……魔女狩り部隊デス」

ほむら「!?」

ロボ「『森の魔女はどこだ』ト……尋問されマシタ。ワタシもどう見ても人間ではありマセンカラ……」

ほむら「そ、そんな……!」


「くそっ、開けないつもりか……。おい、この扉をぶち破れ!」


ほむら「!」

ロボ「早ク、ほむら! 裏口から逃げるのデス!」

兵士「隊長! いました、あの女です!」

隊長「なにっ!? くそ、裏口があったのか……!」


ほむら「見つかった……!?」

ロボ「走るのデス、ほむら! さあ早ク!」


隊長「逃がすな! 追え! なんとしてもひっ捕らえろ!!」


ほむら(違う、私は魔女じゃない……!)

ほむら(魔女じゃないのに……!!)


…………


ロボ「なんとか逃げおおせマシタネ……」

ほむら「……しばらくはここに隠れて、今後のことを考えましょう……」

ロボ「ここハ?」

ほむら「カエルさんの、住んでいたところよ……」

ロボ「……」

ほむら「ホコリが、ずいぶん溜まってる……。きっともう何年も使われていないのね……」


…………


ロボ「ほむら、ほむら! 起きてクダサイ!」

ほむら「んぅ……なによ、こんな朝から……」

ロボ「部屋を掃除していたら見つけマシタ! コレ……コレハ……!」

ほむら「あなたが取り乱すなんて、余程のことね。見せて……手紙……?」



ほむら「……!!!」

久しぶりだな、ほむら、ロボ。


お前たちに会いに行こうかと何度か考えたこともあったが……。

その決意を尊重し、やめにした。

どうせお前らも俺に会いには来るまい? そういうヤツだよ、ほむら。お前は。

それでいい。


しかし今、この手紙を読んでいるということは、お前たちに緊急事態が起こったのだろう。


そうではないと願うが……もし正しいのであれば、棚の二段目の引き出しを開けろ。

そこに俺がルッカから預かった、お前らの助けとなるものを入れておいた。

一応、鍵をつけてあるが……ロボなら開けられるだろ。なんなら、ぶっ壊してもかまわんぜ。


お前たちの友として、俺がしてやれることはこれが精一杯だ。

忘れるなよ、ふたりとも。

俺たちはいつまでもお前らの味方だぜ。


————カエルより

ほむら「これは……!」

ロボ「ゲートホルダーデス、ほむら! これはゲートホルダーデス!!」

ほむら「こ、これがあれば……ゲートを使って……」

ロボ「帰りマショウ、ほむら! みんなのもとへ!」

ほむら「でも……フィオナの森を、見捨てるわけには……」


ロボ「逃げ帰るわけではありマセン。もう一度やり直すタメニ……」

ロボ「あきらめないタメニ、戻るのデス! みんなの力を借りるのデス!」

ほむら「……」

ロボ「行きマショウ、ほむら。まだ、道は示されてイマス……!」


…………


ビュオオォォォ...!!


ほむら「く……嵐のせいで前が……見えない……!」

ロボ「ワタシが先頭に立ちマス。ほむらは後ろに隠れてクダサイ」

ほむら「ありがとう……」


ロボ「……グッ!?」

ほむら「ロボ!? 飛来物があなたに……」

ロボ「大丈夫、大丈夫デス……アッ!?」

ほむら「ぬかるみが……! 手を伸ばして、ロボ!」

ロボ「いけません、ほむら! 風で木が倒れてキマス!」

ほむら「!? ああ……っ!!」


…………


ロボ「……」

ほむら「えっと……あれ……おかしいな……?」


ロボ「直せそうにありマセンカ? ひどい損傷デスシ……」

ほむら「そ、そんなことないわ。これぐらい……なんのために、ルッカが託してくれたと思ってるのよ……」

ロボ「……」

ほむら「すぐ直してあげるから……。この配線が……こうなって……あれ……なん、で……あれ……」

ロボ「ほむら、もういいデス」

ほむら「そんな……よくないわよ!」

ロボ「時の最果てに戻れば、きっとルッカが直してくれマス。今はゲートに向かうことを優先シマショウ」

ほむら「そう……そうね……。ごめんね、ロボ……私のせいで……」

ロボ「ハハ。では戻ったあとにほむらには、ワタシの体をピッカピカに磨いてもらいマショウ」

ほむら「うん……必ず……」

ロボ「楽しみデス! さあ、ゲートの場所までもう少しデスヨ!」


…………


ほむら「……そんな……どうして……」


ロボ「ゲート……ありマセンネ……」

ほむら「き、きっと道を間違えたのよ!」

ロボ「イエ……確かにここデス。おそらく……閉じてしまったのデショウ……」

ほむら「……終わりだわ……私たち……ここで、死ぬのよ……」

ロボ「……」

ロボ「元気を出してクダサイ! まだまだあきらめていマセンヨ、ワタシハ!」

ほむら「無理よ、もう……。ゲートホルダーがあったって……ゲートそのものがなければ……」

ロボ「探しマショウ、ほむら! 別のゲートヲ! きっとあるはずデス!」

ほむら「ある、わけ……ないじゃない……」

ロボ「ありマス! 信じていれバ、必ず道は開かれるのデス!」

ほむら「……」

ロボ「さあ立ってクダサイ、ほむら! ワタシがそばにいマス。ずっと、そばにいマス!」

ロボ「アナタが絶望に襲われるならソレと戦い、アナタが希望を抱くなら、ソレを守り続けマス!」

ロボ「それがワタシの役目デス!!!」


ほむら「ロボ……」

ほむら「……そう、ね……。あなたが、いてくれるなら……。わたし……私は……!!」

兵士「発見しました!」

ほむら「!?」


隊長「よし、よくやった。やはりこの山に入っていったという情報は正しかったようだな」

ロボ「アナタ方ハ……!」

隊長「追い詰めたぞ、魔女め。要らぬ苦労をかけさせやがって……」

ほむら「ち、違う……私は魔女なんかじゃ……」

隊長「問答無用! 連行しろ!!」


ロボ「ほむらに手は出させマセン!!」

兵士「こ、こいつ、やっぱり魔女の手先だったのか!」

ほむら「ダメ、ロボ! あなたはとても戦えるような体じゃ……!」

隊長「まとめて取り押さえろ!」

ロボ「グ……! ほ……ほむ、ら……」


隊長「おい、負傷兵を下がらせろ。まったく、てこずらせやがって……」

ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!!」

隊長「ええい、おとなしくしろ!」

ほむら「いや! 放してっ!!」


兵士「!? 隊長! 魔女のふところから何か落ちました!」

ほむら「!」

隊長「ム……なんだこれは。杖……か? 魔女の武器だな、破壊しろ!」

ロボ「ゲ、ゲートホルダーが……!!」

ほむら「やめてえぇぇぇーっ!!!」

兵士「破壊しました!」

ほむら「あ……あああ……」

隊長「よし、これでひとまずは安心だな」

ロボ「これデハ……たとえ別のゲートを見つけたとシテモ、モウ……」


隊長「なんだ、魔女め。急におとなしくなったな。ついに観念したか」

ほむら「……」

隊長「よし、王都に戻るぞ」

兵士「この人形はいかが致しましょうか」

隊長「捨て置け。魔女の方が優先だ。早く連れ帰らねばならん」

隊長「こいつは世を騒がせた魔女として、拷問ののち火あぶりの刑に処されるはずだ」

隊長「それで人民の安心を得られるだろうという話だからな」

ロボ「な、なんてことヲ……!!」

ほむら「……」

兵士「さっさと歩け! ぐずぐずするな!」


ほむら「……て……やる……」

隊長「ん? おい、なにをぶつぶつ言っている! 呪文でも唱えようものなら即刻首をはねるぞ!」

ほむら「……殺して……やる……殺してやるわ……」

隊長「なに? いまなんと言った?」

ほむら「そんなに……魔女がお好みなら……今、この場で……私が魔女になって……」


兵士「た、隊長! こいつ様子がおかしいです!」

隊長「な、なんだこのまがまがしい殺気は!?」



ほむら「あなたたちを殺してやるわ!!!」

ロボ「ソウルジェムが……!! ほむら、イケマセン!!」

ほむら「!?」


兵士「うがっ!?」

隊長「こ、こいつまだ動けたのか!? 魔女を奪われたぞ! 追え!」



ほむら「ロボ……わ、私……なんてことを……」

ロボ「枷は外しマシタ。逃げてクダサイ、ほむら。ワタシがここで食い止めマス」

ほむら「いや! いやよ、そんなの! なに言ってるの!!」

隊長「いたぞ!」


ロボ「サア! 行ってクダサイ!! 早ク! 立って、走るのデス!!」

ほむら「ロボ……! ロボ……!!」

ロボ「忘れないでクダサイ。ワタシの言ったコト……希望は、必ずありマス!!」

ほむら「……っ!!!」


隊長「魔女が逃げるぞ!」

ロボ「ここハ、通しマセン……!!」

隊長「またお前か! くそ、何とかしろ! 複数で囲め!」

ロボ「ワタシが……ほむらヲ……守るのデス……!!!」


隊長「殺せえ!! こいつを殺せえええーッ!!」



ロボ「ウオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」

ほむら「はあ、はあ……ああ……はあっ……! ぅぐっ……はあ……ああ……っ!!」


ほむら「ロボ……! ……はあ……ごめん……はあっ……なさい……!!」


ほむら「ごめん、なさい……ごめんなさい……ごめん……なさい……!」



ほむら「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!!!」


…………

………


ほむら(足が……痛い……)

ほむら(確かに……ずいぶん歩いたけれど……それだけで……)

ほむら(魔力が……コントロール……できていないのかしら……)


ほむら(でも……大丈夫……。もうすぐ、フィオナの小屋……)

ほむら(結局……戻ってきてしまった……。この時代で……安らげるのは、あの小屋だけ……)

ほむら(魔女狩りが……張ってないといいけど……)



ほむら「……」


ほむら(少し休んだら……ロボを探しに行こう……)

ほむら(大丈夫……。きっと、無事よ……)

ゴオオォォォ...!!!


ほむら「うそ……なんで……!? 森が……燃えて、る……!」



ほむら「……そう……よね……。魔女の森、だもの……。そうする……わよね……」

ほむら(……私が逃げたから……? 私があの時死ねば、せめて森だけは……)


ほむら「……」


ほむら(燃えてる……みんな燃えちゃってる……)

ほむら(フィオナが……ロボが……私たちがつむいできた想いが……全部……)


ほむら「……ハハ……アハハハ……」


…………


ザアアアァァ...


ほむら「……寒い……」

ほむら「雨……やまないな……」


ほむら「……みんなに……あんなえらそうなこと言ったのに……」

ほむら「なに……やってるんだろ……わたし……」


ほむら「……」


ほむら「会いたいよ……鹿目、さん……」


…………


ほむら「すごいや。わたしって、こんなに強かったんだ」

ほむら「美樹さんの言ってたこと、ホントだったんだね」

ほむら「魔女になにされようが、その気になれば痛みなんて感じない」

ほむら「よーし、どんどんころすぞー」

ほむら「わるい魔女なんて、ぜんぶ死んじゃえばいいんだ!」


…………


ほむら「ロボー? どこにいるのー?」

ほむら「かくれんぼしてないで出ておいでー」

ほむら「もー、どこいったのかなあ?」

ほむら「ねえ、ロボー、ロボってばー」


…………


ほむら「あー、腕取れちゃった。魔力で治さないと……」

ほむら「んー……でも、めんどくさいなあ……」


ほむら「……あれ? ここ……フィオナさんの森だ。焼け跡でなーんにもないけど」

ほむら「戻ってくるつもりじゃなかったのにな? 道に迷っちゃったかなー……」


ほむら「ちょうどいいや。ちょっと休憩してこ……」

ほむら「もうずーっと歩きっぱなしだもん。さすがに疲れちゃうよね」

ほむら「何日たったのかな? いや、何週間? 何ヶ月?」

ほむら「ロボもずいぶん強情だなー」



ほむら「……ん? なんだろ……あれ……」

ほむら「え? あれ……? なんで、壊れたロボがここにいるの?」

ほむら「幻覚かなあ? いよいよ、わたしもおしまいなのかな?」

ほむら「……」


ほむら「……幻覚……じゃない……」


ほむら「ロボ!? ロボ!! 返事して! ロボ!!!」

ほむら「……こんな……あ、ああ……ロボ……」



ほむら「……はっ……ぅ、ぐっ……うぅ……うう゛ううううう゛うう゛うう゛う!!!!!」


…………


ほむら「はぁーっ……。寒い……。また風が出てきたわね」

ほむら「ロボ? あなたの体、ちょっと冷たすぎるわよ」

ほむら「え? 内部ヒーター機能? そういえばマニュアルにそんなの載ってた気がするわ……」

ほむら「ほんと、あなたって何でもありよね」

ほむら「……」


ほむら「でもゴメンね。直してあげられないの……」

ほむら「何も、直してあげられない……。ロボはここにいるのに……」


ほむら「うん……大丈夫よ……。こうしてロボの体にもたれかかってるだけで、あたたかいから……」

ほむら「ねえ、ロボ……。あなたはどうして、ここに戻ってきたの……?」

ほむら「そんなボロボロの体で……たどり着くのだって、辛かったでしょうに……」

ほむら「なにもないわよ、もう……。森も、ここに建っていたはずの小屋も……」


ほむら「……そうね……。私だって、結局戻ってきてるんだもの……」

ほむら「ここが……ふさわしいわよね……。眠るのには……」

ほむら「見て、ロボ。私のソウルジェム。真っ黒でしょ?」

ほむら「これでもがんばったのよ? あなたを見つけるまでは、決して魔女にはならないと……」

ほむら「ずっと……探してた……」


ほむら「……」


ほむら「あなたは……人間にかけてみるって……いつか、そう言ったわよね……」

ほむら「今でも、そう思っているの……?」

ほむら「どれくらいのあいだ、探し回ったか……分からないけれど……」


ほむら「あなたが言ってた希望……必ず、あるはずだって……」


ほむら「……なかったよ……希望なんて……どこにも……」


ほむら「うそつきだね、ロボは……」



ほむら「なんだか……疲れちゃった……ね、ロボ……」



「……私……もう……魔女になっちゃっても……いい、よ……ね……」




…………

………

……


A.D.1000 ゼナンの橋上空


まどか「……すごい……」

ルッカ「ウソ……! ここはただの荒野だったはずなのに……」



まどか「森だ! 見渡す限りの森ですよ、ルッカさん!!」

ルッカ「あいつら……。ほんとに実現させやがったのね……」

まどか「早くふたりを迎えに行ってあげましょう!」

A.D.1000 フィオナ神殿


まどか「神殿……?」

ルッカ「さすがに400年も小屋が残ってるわけないか」

まどか「ほむらちゃんたちはここにいるんでしょうか……」

ルッカ「……」


神官「おや、旅の方ですか? ようこそ、フィオナ神殿へ」

まどか「あの、ここは?」

神官「400年前、魔王との戦いで砂漠化した森をよみがえらせた『聖女フィオナ』様を祀った神殿です」


神官「あの窓を御覧なさい」

ルッカ「え……。うわ、ステンドグラス……」

神官「フィオナ様のお姿は不明瞭な点が多く定かではありませんが……」

神官「あれに描かれているものこそが現在最も有力とされているのです」

まどか「あれってフィオナさん……じゃない、ですよね」

ルッカ「……ほむらだわ」

まどか「ほむらちゃん、聖女様になっちゃったんですか!?」

ルッカ「名前だけ借りて、ここはフィオナさんの森だと示したつもりかしら」

まどか「うわー……すごいなあ。ほむらちゃん、キレイ……」


ルッカ「嫌な予感がする……」

まどか「え?」

ルッカ「……偉人は、この世を去ってから偉人と呼ばれるものよ」

まどか「そ、それって……」

神官「え? アケミホムラ? さあ……。私には、心当たりありませんが……」

神官「神父様なら何かご存知かもしれません」

まどか「どこに行けば会えますか?」

神官「祭壇の方にいらっしゃるかと……」

ルッカ「行くわよ、まどか!」

A.D.1000 フィオナ神殿 祭壇


ルッカ「神父様!」

神父「これ。この場は神聖なる神のおわすところ。そのように声を荒げること……は……」

まどか「? な、なんですか? 私たちの顔に何か……?」


神父「お、おお……。言い伝えはまことであったか……」

ルッカ「は? 言い伝え?」

神父「桃色の髪と慈愛に満ちた顔立ち。そしてそちらのお方は、知性と教養を兼ね備えた佇まい……」

まどか「ルッカさん。私たち、拝まれてるみたいですけど……」

ルッカ「いきなり気持ち悪いわね。なんなのかしら?」

神父「千年祭の年——時は来れり。さあ、礼拝堂の方へ……」

A.D.1000 フィオナ神殿 礼拝堂


まどか「! あ、あそこに安置されてるのって……」

ルッカ「ロボ!!」


ロボ「……」

ルッカ「ロボ、大丈夫!? しっかりして!」

まどか「ロボさん……! どうして動かないの!? ま、まさか……壊れ……」

神父「これこれ、『守護者』をそのように手荒に扱ってはいかん」

まどか「しゅ、しゅご……? なんです?」

神父「伝承にある。『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」

神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」

まどか「安らかなる眠りって……まさか……」


神父「桃色の髪の乙女よ。守護者の後ろの扉を開き、進みなさい」

まどか「え? この先って……」

神父「納骨堂じゃ」

まどか「……っ!!!」

ルッカ「……? おかしい……。ロボ……休止状態になってるだけだわ……」

まどか「ルッカさん、ごめんなさい! わたし……わたし、先に行きます!!」

ルッカ「まどか!? ちょ、ちょっと待ってよ、私も……!」


神父「ふむ? そうそう、言い忘れておった」

ルッカ「な、なに? 急いでるんですけど!」

神父「伝承の続きじゃ」

ルッカ「そんなのあとで……!」

神父「聞きなさい。伝承にこうある」


神父「『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」

神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」


神父「『彼の者の名はプロメテウス』」


神父「『人の……そして聖女の。"希望"を守るものなり』」



ルッカ「え……?」

A.D.1000 フィオナ神殿 納骨堂


ほむら「……」


まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃあん!! どうして死んじゃったの!!」

まどか「絶対帰ってくるって……ペンダント返してくれるって……言ったのに……!」

まどか「ひどいよ、こんなの……こんなのってないよ! どうして……うぅ……」

まどか「目をあけて、ほむらちゃん……! お願い、声を聞かせて……!!」

ルッカ「……」

まどか「ル、ルッカさん……ほむら、ちゃんが……」

ルッカ「まどか。どいて」

まどか「え?」


ルッカ「ドララァ!!」ガスッ!!

まどか「な!? なにしてるんですか! 遺体を蹴るなんて……!」

ルッカ「ちょうどいい目覚ましでしょ、ほむら?」

まどか「……へ?」



ほむら「……いったぁ……。なに……? だれよ……」

まどか「ホムラチャン!!!???」

ほむら「……」


ほむら「いけない、禁断症状だわ。まどかがそこにいるように見える……」

ほむら「寝不足かしら? ダメね、お肌にも悪いし」

ほむら「ちょっと、そこのメガネの人? 今、何時かしら。ていうか、何年?」


ルッカ「チョオォーップ!!!」

ほむら「マドカァ!!」

ほむら「え!? まどか!? それに……ル、ルッカ!?」

まどか「ほむらちゃん! 生きてるんだね……!」

ルッカ「ったく、余計な心配かけさせるんじゃないわよ」

ほむら「本物……なの、よね……?」

まどか「もちろんだよ!」

ほむら「そう……。そうなの……。迎えに……来てくれたのね……」



ほむら「……ああ……まどか……。会いたかった……!」

ロボ「……」

ロボ「……?」

ロボ「……オヤ……? ワタシハ……起動されたのデスカ……? まだズイブン明るいようデスガ……」

ルッカ「ロボ!!!」

まどか「ロボさん!!」


ロボ「オ……オオ……!! ルッカ……まどかさん……! ナツカシイ……」

ロボ「イヤ……アナタ方にとってハ、一瞬のことだったのデスネ……」

ロボ「シカシ、ワタシたちニとっては400年ハながい時間デシタ……」

ルッカ「だから言ったでしょ。ホントに、もう……。無事で、良かった……」

ロボ「ほむら。すべて終わったのデスネ」

ほむら「そうね。これでもう、深夜にこそこそ動き回らなくてもすむわ」

まどか「どういうこと?」

神父「聖女さまを衆目の下にさらすと大変な騒ぎになるからの」

ほむら「神父様には、お世話になりました」

神父「いやいや。聖女さまのためとあれば」


ルッカ「そうか……。それでさっきは休止状態だったのね」

ほむら「ルッカ、帰ったらロボを整備してあげて」

ほむら「400年のあいだに私も勉強したけど……やっぱり機械に関しては、あなたにかないそうもないわ」

まどか「400年、かあ。ぜんぜん想像つかないよ……」

ほむら「色々あったわ……。でも、ここまで来れた。あなたたちのおかげよ」

ルッカ「私たちの……?」

ほむら「何度もあきらめそうになった。あの日、私は間違いなく魔女になってしまうはずだった……」


————

———

——


ほむら「……」

ほむら「……?」

ほむら(あれ……私……どうして……まだ無事なの……?)

ほむら(ソウルジェムは……とっくに、濁りきってるはずなのに……)


ほむら(……? なにか、光ってる……)

ほむら「これ……まどかから預かった……サラさんの、ペンダント……?」



ほむら「!? どういう、こと……」

ほむら「ペンダントが……ソウルジェムの穢れを吸収してる……!!」

ほむら「? なにかしら……」

ほむら(風で、積もった灰が飛散して……ロボの体の下に、なにかが……)


ほむら(……扉? どこへの……?)

ほむら「小屋は焼け落ちてしまったけれど……この扉だけは残っている……」



ほむら「……ロボ……あなたは……」

ほむら「この扉を守るために、戻ってきたの……?」

ほむら「真っ暗……」

ほむら(えっと、ロウソクはどこにしまったっけ……あ、あった)


ほむら「……地下室……いえ、確かここは貯蔵庫だったかしら……」

ほむら(そういえば……収納はロボに任せっきりで、入ったことなんてなかった……)


ほむら「……?」

ほむら「机の上になにかある……」


ほむら「……」

ほむら「……!? こ、これ……!!!」

まどかが何か書けってうるさいから、書いといてやるわ。

あんたら、あきらめたら承知しないわよ!


————ルッカより



………………



ほむらちゃん、ロボさん。大変なことを押し付けちゃってごめんなさい。


わたしたちにできることがないか、たくさん考えたんだけど、これぐらいしか思いつきませんでした。

この部屋に、ベッケラーさんからもらったドッペル人形を置いていきます。

これを見て、わたしたちのことを思い出してください。

あ、ほむらちゃん。わたしにソックリだからって、イタズラしちゃダメだよ!

なんてね。


わたしたちは、いつでもあなたたちのそばにいます。

遠く離れていても、ずっと一緒です。そして、必ず迎えに行きます。

だから……待っててね。


希望は、あるよ。


————まどかより


————

———

——


まどか「わたしたちの残した手紙、見てくれたんだ……」

ほむら「次からは、もう少し分かりやすいところに隠してね」

まどか「ティヒヒヒ」

ロボ「ワタシはすぐに見つけマシタガ」

ほむら「だったら早く言いなさいよ」

ルッカ「それにしたって、手紙だけでどうして……」


神父「伝承にある。『聖女フィオナ、三つの顔を持てり』」

神父「『命のグレートヒェン。理のアシュティア。そして——時のホムリリー』」

ルッカ「……まさか、あんた!」

まどか「え、なに? なにが?」

ほむら「使わせてもらったわ、ドッペル人形。あなたたちのも。私のも」

ほむら「病んだ精神をなぐさめ、痛んだ身体を交換し、新しい姿となり……また、人の目を欺くため……」

ほむら「そうしているうちに、暁美ほむらという固定観念は消えていった……」

ほむら「魔女とののしられた私は、いつの間にか聖女と呼ばれていたわ……」

ほむら「私はもう、元の身体ではない……『暁美ほむら』は死んでしまった……」

ルッカ「……」


ほむら「でも、大丈夫。私の魂は、心は……ここにあるんだもの」

ほむら「これがある限り、私は私でいられる……」

まどか「ソウルジェム……輝いてる……」

ほむら「忘れないうちに、これ、返しておくわ」

まどか「あ……。サラちゃんのペンダント……」

ほむら「不思議よね、それ。ソウルジェムに近づけると、黒い想いとともに穢れが癒されていく……」

ほむら「あなたが言っていたように……サラさんが、守ってくれたのかしら……」

まどか「……」



ルッカ「……そうか! そういうことだったのね!」

ロボ「何か分かったのデスカ?」

ルッカ「前に言ったわよね? ソウルジェムはドリストーン製だって」

ルッカ「そして、そのペンダントもドリストーンから作られたもの」

ルッカ「それもできたばかりの、最も純度の高いものだわ。そこに、サラの想いが加われば……」


ルッカ「ドリストーン同士はお互いの力を吸収する作用がある」

ルッカ「結果的には失敗したけれど、グランドリオンが魔神器を止める手立てとされたように……」

ルッカ「ソウルジェムの穢れを、同じドリストーンであるグリーフシードで吸収できるように……」


ルッカ「このペンダントは、ほむらのソウルジェムの穢れを取り除き……」

ルッカ「そして、自らの力を与えていたのよ!」

まどか「サラちゃん……! ほんとに……守ってくれてたんだ!」

ほむら「まさか、よね……」

ロボ「やはり人間はすばらしいデス」


ルッカ「それにしたってそのペンダント、400年分の穢れを吸ってまだ輝きを失わないなんて……」

ルッカ「サラさんってどんだけチートなのよ。ラヴォスを一万年以上も封印できるわけだわ」



ロボ「みなさんのおかげデ、森ハよみがえりマシタ」

ほむら「苦労の甲斐があってやれやれだわ……」

ロボ「サア、今夜ハ、400年ブリのサイカイをいわおうではアリマセンカ!」


…………


A.D.1000 フィオナの森




ルッカ「どう? ロボ」

ロボ「ありがとうゴザイマス。ルッカのメンテナンスのおかげで、だいぶ調子が戻ってキマシタ」

ほむら「天才ね、あなたは」

ルッカ「もっとほめていいのよ?」

ほむら「……懐かしいうっとうしさをありがとう」


さやか「しっかし、これでほむらは400歳かー」

マミ「とんでもないわね……」

ほむら「私は永遠の14歳よ」

杏子「どこの声優だ、アンタは」


まどか「これからはジャキくんもほむらちゃんのこと、先輩として敬わなきゃね」

魔王「……」

マール「ほむらちゃん、大丈夫? 疲れてない?」

ほむら「400年分の誤差を埋めるのに少しかかりそうだけど……まあ、なんとかなるでしょ」

マール「なんとかなるんだ……」


エイラ「ほむ、変わってない! エイラ、うれしい! また仲良くする!」

クロノ「言ったろ? 何かなんて起きないって」

ほむら「そうね……。あなたたちの底抜けの馬鹿正直さが、私たちを救ってくれたのかも……」

ロボ「特にカエルさんにハ感謝してもしきれマセン」

カエル「俺か? 何かしたっけな……」

ほむら「まあ、そのうち分かるわよ」


マミ「ところで今回はお酒禁止なの?」

ほむら「今日ぐらいゆっくりさせてちょうだい」

エイラ「肉、食え! 代わり! 焼けたぞ!」

ほむら「そうそう。今回、400年もの旅をして、気づいたことがあるのだけれど……」

マール「なになに?」

ロボ「ゲートの出現はラヴォスの力のゆがみだと思ってイマシタガ、違うような気がしてきたのデス」

マミ「そういえばキュゥべえも、ゲートを見たことがないようだったし……」

ルッカ「確かに。ラヴォスについて回っていたのなら、初見というのはおかしいわね」

ロボ「確信は持てませんガ、誰かがワタシたちに見せたかったんじゃないかト……」

クロノ「見せたかったって、なにを?」

ほむら「いろんな時代の何かを、よ」


ロボ「もしくハ、その誰か自身が見たかったのかもシレマセン。自分の生きてきた姿を思い返すヨウニ」

エイラ「エイラ、それわかる。人死ぬ時、今までの思い出、全部見る! 言い伝え!」

杏子「走馬灯現象ってヤツか」

カエル「人は死ぬ時、生きていた時に深く心にきざんだ記憶が次々とうかぶという」

カエル「それは楽しい思い出もあるが、たいていは悲しい思い出さ……」

さやか「なんか……さびしいね、それって……」

ロボ「『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」

ロボ「そういう強い思いが、記憶を呼び起こすのデショウ」

ほむら「……」

まどか「……ほむらちゃん……」


マール「私も死ぬ時はそうなるのかな?」

ルッカ「きっとそうよ」

マール「ルッカはあるの? 戻りたい、一瞬が?」

ルッカ「……」

マール「ごめん。聞いちゃ、いけなかった?」

ルッカ「……なるべく考えないようにしているの。だってつかれちゃうもの」

ほむら「……」

カエル「しかし、だ。この思い出の持ち主は、よっぽどラヴォスに縁があるんだな」

さやか「そういや全部ラヴォス絡みだよね」

まどか「わたしたちの時代に開いたゲートも、そうなのかな?」

ほむら「さあ……」


魔王「……で。誰だというんだ、そいつは?」

ほむら「それが分かれば苦労しないわ」

ロボ「もしかしたら人ではナイ、もっと大きな存在かもしれマセン」

ロボ「それが分かる日が、ワタシたちの旅の終わりなのかもしれマセンネ……」


クロノ「旅の終わり……か。そうだよな。いつか……終わるんだよな……」

ほむら「始まりがあれば終わりもある。至極当然のことよ」

ほむら「さ……そろそろ、寝ましょうか」

まどか「ウェヒヒヒ! みんなでお外で雑魚寝なんて、キャンプみたいで楽しいね!」


エイラ「マミ! 寝る! いっしょ!」

マミ「ええ、もちろん。なんなら、手をつないで寝る?」

エイラ「いいな! シアワセ、なる!」

ほむら「どう、まどか?」

まどか「わあ、ほんとだ。ロボさんに寄りかかって寝ると、安心するね!」

ルッカ「ちょっと、ほむら。つめてよ。私の寝るスペースがないじゃない」

ロボ「3人はさすがニ……」


さやか「師匠〜? 女の子ばっかりだからって、盛ったりしないでよ?」

カエル「安心しろ。お前はまず間違いなく襲わん」

さやか「ひどっ! いやその前に、盛ることを否定してよ!」

カエル「男はみんな、狼なのだ……!」

さやか「師匠はカエルでしょーが!!」

杏子「ジャキ、ひとりで寝れるか? ガキのころみたいに、お姉ちゃんが添い寝してやろうか?」

魔王「……ふざけるな」

杏子「おーおー、生意気言っちゃって」


カエル「ちょっと待て! 『添い寝』ってなんだ!!」

ルッカ「なに騒いでるの。早く寝なさいよ。クロノとマールの寝つきの早さを見習いなさい」

カエル「そんな場合か! 俺は今、全読者の心の代弁をだな……!!」

さやか「師匠、うるさい」ゲシッ

カエル「あふん!?」


…………


ルッカ「……」

ルッカ「……う……んぁ……」ガツッ

ルッカ「! ……いつつ……。寝返り打ったら鼻ぶつけた……」


ロボ「————」

ルッカ「こら、ロボ。あなた、体硬いわよ」

ルッカ「なーんて、当たり前か。……あーあ。変な時間に目が覚めちゃったな」


まどか「————」

ルッカ(幸せそうな寝顔しちゃって。よっぽどほむらが無事だったのがうれしかったのね)

ルッカ「……あれ?」

ルッカ「……まどか? え……? なんで、息してないの……?」

ルッカ「ロボ? クロノ? みんな……」


ルッカ(……眠ったまま石みたいに……。なによ……これ……?)

ルッカ「まるで、時間が止まってしまったみたい……」


ルッカ「……」

ルッカ「ほむら?」

ルッカ「……」

ルッカ(あいつだけ……いない……。なんで……)

「……」


ルッカ「いたいた! ほむら、こんなところで何やってたのよ?」

ルッカ「ねえ、なんかおかしくない? 森が静か過ぎる……」



「……」


ルッカ「……ちょっと。なんで黙ってるのよ。何か言いなさいよ」

ルッカ「……」

ルッカ「……あんた……ほんとに、ほむらなの……?」

「……」


ルッカ「え、なに? あんたの盾が、どうかしたの?」

ルッカ「とうとう分解させてくれる気になったのかしら? ……んなわけ、ないわよね」

ルッカ「ねえちょっと。やめてよ、ダンマリは。気味悪いじゃない……」


ルッカ「……ん?」

ルッカ「あれ? あんたのその盾に付いてる砂時計……」

ルッカ「そんな形してたっけ? それに、なんだか……中の砂の色も、違うような……」

「これは、400年分の時の砂」

ルッカ「え?」


「あなたが、戻りたいと強く願う瞬間は、いつ?」

ルッカ「なに言ってるの? ほむら……」

「……」カラカラ...カラカラカラ...

ルッカ「! ……ゼンマイが……」


ルッカ「あなた、もしかして……」

ルッカ「……ほむらじゃなくて……『時の……」


カラカラカラ...

カラカラ...



カシャン!!!

ルッカ「……ハッ!?」


ルッカ「ここは……実家の、私の部屋……?」

ルッカ(……いえ、違う。調度品が古い……)

ルッカ(昔の私の部屋……。戻りたい瞬間……)


ルッカ「……まさか!!」

ララ「まあまあ、何の機械だか……。タバンは危ないから近づくなって言うけど、こう汚しちゃあねェ」


ルッカ(やっぱりお母さん! まだ……無事でいたころの……!)

ルッカ(ダメ、その機械にさわっちゃ! それに近づくと、あなたは……!)


ララ「あら? いやだわ……。ルッカ、ね、ルッカ」

るっか「なーに?」

ララ「ちょっと手伝って。スカートのすそがはさまっちゃったの」

るっか「うーん……! だめだよ、取れないよ」

ララ「困ったわねえ……」

カチッ! ゴウンゴウン...


ララ「!! き、機械が! どうしよう、変なところさわっちゃったのかしら……!?」

るっか「お母さん!?」

ララ「ダメ……引っ張られて……このままじゃ巻き込まれる!」


ルッカ(……させない! またあんな悲惨な光景を見るなんて、まっぴらよ!)

ルッカ(コンソールは……これね! よし、こいつで緊急停止させれば……!)



『パスコード入力』

ルッカ「……え?」

ララ「ルッカ! 機械を止めて!」

るっか「そ、そんなこと言ったって……」


ルッカ(考えろ……考えろ……父さんがつけそうなパスコード……!)

ルッカ(できる、私ならできる……そのために、私は……!!)


ララ「お願い、ルッカ! パスコードを……!」

るっか「ぱすこーどってなに!? わたしはどうしたらいいの!?」

ララ「ああ、もうだめ……! あなた……!!」

ルッカ「……ッ!!!」



「わからないわ! お母さん!」




…………

………

……


ルッカ「……」

ルッカ「……あ……え!?」


ほむら「……おかえり」

ロボ「こんなところで寝ているト風邪を引きマスヨ」


ルッカ(……今のは夢だったの……?)

ルッカ(いえ、夢にしては生々しすぎる……それに……)


ルッカ「ほむら……今、あんた……『おかえり』って……」

ほむら「……」

ロボ「泣いていたのデスカ、ルッカ? 目が腫れてイマス」

ルッカ「! ……こ、これは……」

ほむら「悲しくて泣いたのかしら? それともうれしくて、安堵したから?」

ルッカ「……」

ほむら「……まあ、深くは詮索しないわ」

ルッカ「あの日、誓ったの……。もう二度とあんな悲劇が起きないように、科学の道を究めようって」

ルッカ「ほむら。あなたは私が天才だと言ったけれど……実際は、ただのガリ勉よ……」

ほむら「だとすれば、むしろ尊敬するわ。400年かけても追いつけなかったんだから」

ルッカ「……」


ロボ「ルッカ。これヲ」

ルッカ「これは……?」

ロボ「プレゼントしマス。森で育った木のジュシをかためて、ワタシたちがつくりマシタ」

ほむら「400年の重みのある宝石、『みどりのゆめ』よ。何かに役立ててちょうだい」

ルッカ「……ありがとう。私には、こんないい友達がいるのね……」

ロボ「友達……。ロボットのワタシが……」

ルッカ「ね、ほむら……。なぜ私は、あの瞬間に戻れたのかしら……」

ほむら「……」

ルッカ「あなたも……あるんじゃないの? 『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」

ルッカ「そう、強く願っている瞬間が……。だから、同じように私を……」

ロボ「……」

ルッカ「誰かに知って欲しかったんじゃないの? あなたが背負っているものの重みを……」

ルッカ「そして、できるならば……ともに……」


ほむら「ルッカ、これは夢なのよ」

ルッカ「え?」

ほむら「ここに今、私たちがこうしているのは、すべて夢の中の出来事……」

ルッカ「そんなわけないじゃない……」

ほむら「いいえ、きっとそうだわ」

ほむら「だから……私が何かを話したとしても、朝になればみんな忘れてしまうのよ」

ロボ「ほむら……」


ほむら「この森が……森の緑が……見せてくれている、ひとときの夢なのよ……」

ルッカ「……緑の……夢……」

ねえ…… 本当の気持ちって、どうしたら伝わるのかしら?

なによ、突然……

別に…… ちょっと、聞いてみただけ……

伝えるのって、難しいわね……


私が気持ちを伝えたら、応えてくれるのかしら?


分からないわ…… でも……

きっと、分かち合うことはできるかも……


そっか……



……ありがとう……

第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」 終了


  セーブしてつづける(第16話「最後に残った道しるべ」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

マルチイベント編終了。今回はここまでです。
次回投下は日があきます。
9日か10日ぐらいまでには……なんとか! ご容赦ください。

最終章、残り3話。
良ければ、最後までお付き合いください。
それでは、また。

第16話「最後に残った道しるべ」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

年代不明 時の最果て


ほむら「いよいよラヴォスとの対決の時が近づいてきたわ」

老人「みな、見違えるような顔つきじゃ。成長したな……私はうれしいよ」


クロノ「今の僕たちなら、ラヴォスと対等に戦えるはずだな!」

カエル「新生グランドリオンの力……今こそ、発揮する時!」

さやか「あたしらの剣でラヴォスなんざ、なます切りにしてやるっすよ!」


マール「パパも私を許してくれた……。もう何も怖くない!」

マミ「マールさん、それ私の決め台詞です!」

エイラ「ふぃろ・ふぃな〜れ〜!」キャッキャッ


魔王「ラヴォス……。ヤツを倒すことこそ我が悲願。腕が鳴る……」

杏子「今からそんなに気ぃ張ってたら疲れるぜ。グミ食えよ」

まどか「3個なの!? 甘いの3個ほしいのね!? 3個……イヤしんぼさん!!」

ロボ「それデ、ラヴォスと戦うにはどうすればいいのデスカ?」

老人「うむ。ラヴォスと戦う方法は本来、三つあった」

老人「ひとつは『滅びの日』につながる『バケツのゲート』……」

ほむら「私が最初に通ってきたゲートね」

老人「じゃがこれは、原因不明ながらすでに閉じておる。再び開く気配もない……」

ルッカ「そのゲートで直接乗り込むのは不可能、か」


老人「ふたつめは、時をわたる翼でA.D.1999『ラヴォスの日』1時24分の時点に飛ぶことじゃ」

まどか「A.D.1999? 世界崩壊はA.D.2012じゃないんですか?」

ロボ「それガ、シルバードの時空ジャイロはA.D.1999で固定されているのデス」

さやか「なんでだろ?」

ルッカ「はっきりしたことは分からないけど、前年に起きた黒き風による大災害を防ぐためかしら」

ほむら(A.D.2011の大災害……ワルプルギスの夜。やはりラヴォスと強い関係が……?)

老人「三つ目は、時代をまたがりあらわれた、あの黒く巨大なもの……」

杏子「『黒の夢』か」

老人「力に頼り、力に取り込まれたおろかな心じゃ……。あの黒い悪夢も、ラヴォスにつながっておる」


ルッカ「シルバードか、黒の夢か。選択肢はふたつに絞られているわけだけど、ひとつ問題があるわ」

ほむら「私たちのうち、誰がラヴォスと戦うのか……」

クロノ「そうか……。シルバードは3人乗りだったっけ」

エイラ「みんな強くなった! 3人だけ、もったいない!」

魔王「黒の夢だ。あれは古代から未来、4つの時代にまたがり出現している」

マール「そっか! 3人ずつ、4つの黒の夢に乗り込めば……」

ロボ「A.D.2300は崩壊後ノ世界。黒の夢を攻略することニ意味はあるのデショウカ?」

老人「そうじゃな……。確かに、その時代の黒の夢を壊したところで未来は変わらぬだろう」

老人「しかしあの悪夢がラヴォスにつながっているのは確か。私は、最深部にゲートがあると見る」

マミ「ラヴォス本体につながるタイムゲートというわけですね」

老人「然り。よって、A.D.2300の黒の夢を突破してラヴォスにたどり着くことは可能じゃろう」


さやか「決まりじゃん! さっそく、黒の夢攻略作戦を練ろうよ!」

カエル「待て、さやか。その案には致命的な問題点がある」

杏子「確かにな。黒の夢は空中に浮いている。どうやって行くかっつーことだ」

さやか「それは、シルバードで……」

カエル「他の時代はどうするんだ?」

さやか「あ……そ、そっか……。どうしよ……」

老人「ふむ。ひとつ、見えたものがある。『古き時代、野心溢るる新たなる王が、夢のあと……』」

ほむら「! 黒鳥号ね……」

エイラ「おー! あのデカイ鳥か!」

ルッカ「黒鳥号の修復か……。大掛かりな作業ね」


まどか「わたし、行くよ! 古代で生き残った人たちに手伝ってもらえないか、頼んでみる!」

マール「そういえばまどかちゃん、地の民の人たちに人気だったよね!」

クロノ「彼女ならきっと歓迎してもらえると思うよ」


杏子「ダルトンとその取り巻きが生きている可能性もあるな。アタシもついていくか」

魔王「ヤツらごとき、我らの手にかかれば従わせることはたやすかろう……」


さやか「いいね、いいね! あとふたつ! なんかないっすか、管理人さん!」

老人「残念ながらそれ以外は見えぬ……」

さやか「え、ええ〜? ここまで来てそりゃないっすよお〜」

ルッカ「……やるしかないわね。造るわよ、飛行船を。それもふたつ」

ほむら「本気? とてもじゃないけど、できるとは思えないわ」

ルッカ「できるできないじゃない、やるのよ。設計図は私が描くわ」

ロボ「ガッシュさんの研究室ナラ、シルバードの設計データもあるかもしれマセン。参考にシマショウ」


ほむら「ちょっと待ってよ。設計図だけできても、なんにもならないわ」

ほむら「実際に誰が造るのよ? とんでもなく大規模な作業よ、私たちだけじゃ無理だわ」

ほむら「それに、未来の技術を再現なんてできるの?」

ルッカ「それは……」

魔王「『ドリストーン』だ」

まどか「え?」


魔王「古代の浮遊大陸は、ドリストーンに含有されたラヴォスエネルギーの力で浮いていた」

魔王「あれなら、物体を飛行させることも可能だろう」

杏子「けど、ドリストーンは失われたんだろ」

魔王「お前のソウルジェムを提供してやったらどうだ?」

杏子「ふざけんな! 冗談でも笑えねえよ!」


エイラ「マミ! イオカ、行く!」

マミ「え? なんのために……あ、そっか! 原始の時代なら、ドリストーンはまだ残っているはずよ!」

クロノ「見つかるのかい?」

エイラ「みんなで探す! イオカ、ラルバ、みんな!」

カエル「なるほど、人海戦術か」

マール「じゃ、私も黙っているわけにはいかないね」

まどか「何か考えがあるんですか?」

マール「あんまりこういうこと好きじゃないけど、私は王族なんだよ」

マール「パパに頼んでみる。飛行船製作に、力を貸してくれないかってね」

さやか「出た、国家権力!」

カエル「なるほど、その手があったか。ならば俺も、中世のガルディア王に頼んでみよう」

まどか「なんか、ホントにできる気がしてきましたね!」


ほむら「本気なのね、あなたたち……」

ルッカ「佐伯家家訓第三条! 無茶も通せば現実風味!」

ロボ「ほむら、やりマショウ。ワタシたちが力を合わせレバ、きっとできマス!」

ほむら「……分かったわ。こうなったら、とことんやるわよ」

B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント


キーノ「久しいな! エイラ、マミ!」

エイラ「キーノ、元気だったか?」

マミ「酋長のお仕事、ちゃんとやってる?」

キーノ「心配、必要ない。キーノ、男、上げた」

マミ「ふふ。自分で言っちゃうところが、まだ子供よね」


キーノ「今日、なんの用だ?」

エイラ「おう、キーノ! 集めろ、人! いっぱい!」

マミ「探して欲しいものがあるのよ」

キーノ「探し物はマカセロー」バリバリ

マミ「ヤメテ!!」

B.C.12000 残された村


地の民「はい、次の人。お椀を出して」

フード姿の物乞いA「へへ、いつもすみませんね……」

地の民「気にすることはないわよ。この炊き出しは、みんなのためにやってるんだから」


フード姿の物乞いB「人のありがたみが身にしみるなあ……。ね、ダルt」

フード姿の物乞いA「*おおっと* 手がすべったァー!」バシャーン!

フード姿の物乞いC「あっちぃー!? なんで俺!?」

地の民「ちょっとちょっと。気をつけてよ。捨ててもいいほど食料に余裕があるわけじゃないんだから」

フード姿の物乞いD「すみません、すみません!」

地の民「仕方のない人たちね……。さ、順番が終わったら次の人のために道をあけてあげて」

フード姿の物乞いA「アホか、貴様! なんのためにこんな小汚いフードをかぶっていると思ってんだ!」

親衛隊A「いや、ホントすんませんっす。ついポロッと……」

親衛隊B「ってか、いつまでそのフードかぶってるんすか? もう周りには誰もいないっすよ」

フード姿の物乞いA「おっと、いかんいかん」バサッ


ダルトン「ふー。やはり高貴なる俺様の姿は隠すものではないな」

親衛隊C「でもダルトン様が生きていることが知れたら、きっとボコボコにされちゃいますよお……」

ダルトン「ちぃっ……。なぜ俺様が愚民どもにまぎれてコソコソしなければならんのだ!」

親衛隊A「我慢してください。これも生きるためっす」

ダルトン「それもこれも、みんなあのテロリストどものせいだ。絶対に復讐してやるぞ!」

親衛隊C「やめましょうよ〜。憎しみは何も生み出しませんよお」

ダルトン「見ておれ。この黒鳥号が直れば、ふたたびこの俺様が王となる日が来る!」

親衛隊A「直すも何も、俺らしかいないっすよ」

親衛隊C「生き延びた他の人たち、みんなダルトン様に愛想つかせて逃げちゃいましたもんね……」

ダルトン「クソ、腰抜けどもめ! ええい、イライラする! この世に希望はないのか!」

親衛隊A「ダルトン様がそれ言っちゃうかあ」

親衛隊C「荒れてますね」

親衛隊B「シチューうめえ」



「……何やってんだ、アンタら」

ダルトン「お、お前は!?」

巫女「やっぱり生きてやがったのか、ダルトン」

親衛隊C「巫女様!? それに……予言者様も!」

親衛隊A「死んでなかったのか……」

親衛隊B「俺、巫女様の声はじめて聞いたよ」


まどか「ふたりとも、長老さんを連れてきたよ」

ダルトン「げっ!? か、鹿目様まで!?」

まどか「あれ、ダルトンさん。お久しぶりです」

予言者「黒鳥号……。暁美ほむらの話では、シルバードによる損傷が激しいと聞いていたが」

巫女「ザッと見た感じ、メチャクチャになってるってほどでもねえな。意外と早く修復できるか?」

まどか「お願いできますか? 長老さん」

アルゲティ長老「鹿目様の頼みを断る者など、この村にはおりませんよ」

まどか「ありがとう、長老さん……」


ダルトン「なんと!? この黒鳥号を直してくださるのか!?」

まどか「うん、そのつもり」

親衛隊C「良かったですね、ダルトン様!」

ダルトン「我が世の春が来たぁぁ!! やっぱ鹿目様は女神っすわ!」

親衛隊A「変わり身はえーな!?」

まどか「その代わりにこれ、わたしたちに使わせてね」

ダルトン「え?」

まどか「それから、ダルトンさんはわたしの言うことを聞くこと。馬車馬のように働いてね」

ダルトン「あ、あの……鹿目様……」

まどか「二度と悪いことしないように監視します。もし断ったり、逃げ出したりしたら……」

ダルトン「……」

まどか「アルゲティであなたがわたしにしたこと……忘れてないから、ね?」

ダルトン「あ、はい……」

親衛隊A「鹿目様、ふいんき(←なぜか変換できない)変わったな……」

親衛隊C「そうですね〜。あんな暗黒微笑する人でしたっけ?」

親衛隊A「なんかショックだわ、俺」

親衛隊B「俺はむしろ今のほうが好みだな。あとで『豚』ってののしってもらおうっと」

親衛隊C「ふええ……。親衛隊BくんがMに目覚めちゃってるよぅ……」


まどか「ところで、ふたりはなんでそんな格好してるの?」

巫女「こっちのほうがアイツらには分かりやすいからな」

A.D.600 ガルディア城 謁見の間


ガルディア21世「空を飛ぶ船だと?」

リーネ「面妖な」

カエル「信じられない話かもしれませんが、事実、私はその夢のような代物を見、そして体験いたしました」

カエル「僭越ながら申し上げます。陛下、そのお力を我らにお貸しください」

ガルディア21世「ふむ……」


リーネ「カエルとクロノたちが、大きなことを成し遂げようとしているのです」

リーネ「陛下! 私たちもその一端を担おうではありませんか」

ガルディア21世「リーネの申すとおりだ。それに君らには国難を救ってもらった恩もある」

カエル「では……!」

ガルディア21世「騎士団長! これは大事業になるぞ。準備をいたせ」

騎士団長「かしこまりました!」

さやか「やったね、師匠!」

カエル「陛下……感謝いたします」


ガルディア21世「専門家が必要だな。誰か、心当たりはおらぬか」

さやか「それなら心配要りませんよ!」

リーネ「誰か良い人でもいらして?」

さやか「クロノさんがもう手配済みっす!」

A.D.600 チョラス村 大工の家


クロノ「というわけなんです」

初代ゲン「毎度毎度、ぶっ飛んだ注文をつけてくれるねえ」

クロノ「すみません」

初代ゲン「謝るこたあねえ。こんな経験、一生にそう何度もできるかよ」


初代ゲン「王様に話はつけてあるんだな?」

クロノ「まだ詳細は聞いていませんが、カエルが言うには必ず説得してみせると」

初代ゲン「よし。なら何も問題はねえ。野郎ども!」

大工たち「ヘイ、親方!」

初代ゲン「いくぞ。仕事だ」

大工たち「勇者様の墓の次は、何を造るんですかい?」

初代ゲン「空飛ぶ船さ!」

A.D.1000 ガルディア城 謁見の間


マール「お願い、パパ!」

ガルディア33世「まったく、お前というやつは……たまに帰ってきたと思ったら、これだ」


ヤクラ13世「マールディア様……。国民の血税をなんだと思っているのですかな?」

ヤクラ13世「そのような道楽に使うこと、許されるはずがないでしょう」

マール「道楽じゃないよ! これは、この世界全体の危機で……」

ヤクラ13世「……とまあ、以前の私なら渋い顔をしたでしょうな」

マール「え?」

ヤクラ13世「この星の生命を救う船。さしずめ、ノアの方舟といったところですかな?」

ガルディア33世「これ、大臣……」

ヤクラ13世「国王。面白いではないですか。あなたも、まんざらでもありますまい?」

ガルディア33世「まあ、やぶさかではないことは確かだがな……」

マール「パパ……。じゃあ!」

ガルディア33世「お前の言うように、これは私たち自身の問題でもある。協力はしよう」

マール「ありがとう、パパ! だーいすき!」

ガルディア33世「やれやれ……」


ヤクラ13世「マールディア様。国王に進言した私の功績もお忘れにならぬように」

マール「もちろん! あとで踏んであげるね!」

ヤクラ13世「ありがとうございます!!」

ガルディア33世「娘の育て方を間違った気がする……」

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「いやはや。お主ら、とんでもないことを考え付くもんじゃの」

ほむら「それでボッシュさん、話って?」

ボッシュ「うむ。ガルディア城に保管されておる『虹色の貝がら』のことじゃ」

ほむら「マールたちが取ってきたという秘宝のことね」


ボッシュ「調べさせてもらったが、あれは特別な物質じゃ」

ボッシュ「非常に頑丈で、おまけに多少の衝撃や魔法なら跳ね返す力がある」

ボッシュ「その性能をかんがみれば、重量もさほど問題でない。飛行船の骨組み部分に使ってはどうかね?」

ボッシュ「加工の仕方によってはさらに軽くできるじゃろう。良ければ、ワシが作業を引き受けるが」


ほむら「ありがたい申し出だわ。早速取り掛かってもらえるかしら」

ボッシュ「良かろう。設計図が出来上がったら、ワシも建造に携わらせてもらうからな」

A.D.2300 監視者のドーム


ルッカ「で、できた……できたわ……!」

ロボ「ルッカ、大丈夫デスカ!」

ルッカ「ロボ……あとは頼んだわよ……。この設計データをプリントアウトして、みんなに渡して……」

ロボ「お任せクダサイ!」


ルッカ「ちょっと寝るわ……。さすがに三徹は死ねる……」

ロボ「ゆっくり休んでクダサイ。起きるころにハ、きっと船が出来上がってマスヨ」

ルッカ「いや、何ヶ月寝かす気なのよ。死ねるとは言ったけど、まだ死ぬつもりはないわよ」

B.C.65000000 ティラン城跡


マミ「ありがとう、長老さん。プテランのおかげで楽に移動できました」

ラルバ長老「ワシら、こういうときこそ力、なれる。存分に頼れ」


ラルバ族「エイラ! 赤き石、見つけた!」

エイラ「いいぞ! 探せ、もっと!」


キーノ「みんな、がんばる! 赤き石見つける→マミパイ、揉める!」

イオカ族「マジデ!?」

マミ「ちょっと! なに言ってるのよ!」

キーノ「違うか? エイラ、言ってた」

マミ「エイラ!? なんてことしてくれたの!」

エイラ「揉む、幸せ。揉まれる、でっかくなる。幸せ。Win-Win!」

マミ「そのりくつはおかしい!」

A.D.1000 フィオナ神殿


神官「お帰りください!」

兵士長「いや、そう言われましてもですね……」


神父「これ、何度も言っておろう。神のおわすこの場で、そのように声を荒げてはならぬ」

神官「しかし、神父様!」

神父「落ち着きなさい。何があったのかね?」

神官「ガルディア城からの使いです。飛行船建造の資材として、森を切り開かせろと」

神父「ほう、それはそれは……」

神官「とても容認できるものではありません! ここは、聖女さまの森なのですよ!」


ほむら「そう邪険にしないで、話ぐらい聞いてもらえないかしら」

神官「! せ、聖女さま!?」

神父「おや、お久しぶりです。なにやら、やんごとなき事情がありそうですな」

ほむら「察しがよくて助かるわ」


…………


兵士A「よーし、倒れるぞ! みな、退避しろ!」

兵士B「押せ! そちら側から押すんだ!」

兵士C「積み込みが終わったものから順次、リーネ広場に運べよ!」

兵士D「おーい、誰かこっちを手伝ってくれ!」


ほむら「……」

ロボ「浮かない顔デスネ、ほむら」

ほむら「フィオナが怒ってるんじゃないかと思ってね」

ロボ「フィオナさんガ……」


ほむら「中世ではガルディアの森。そして現代ではフィオナの森……」

ほむら「仕方のないこととはいえ、結局こうして大地の恵みを食いつぶす結果になってしまった……」

ロボ「……」

ほむら「まあ……私が死んだら、あの世で彼女に謝っておくわ」

B.C.12000 残された村


杏子「2班ずつに分かれて交代で作業しろよ! おい、そこは慎重にやれ! 事故に気をつけろ!」

まどか「杏子ちゃん、張り切ってるね」

杏子「ゲンさんのトコで働いた経験がこんな形で生きるなんてな。ほんと、どうなるか分からないもんだ」


ダルトン「くそ……。なぜ王であるこの俺が、土いじりなぞ……」

魔王「おうおうおう! ぶつぶつ言う暇があったら手と足を動かしな!」

ダルトン「チッ……」


まどか「ジャキくんも生き生きしてるね」

杏子「イビれる後輩ができたからだろ」

まどか「それにしても、別に必要ないのに、またヒゲとカツラつけてるね。気に入ったのかなあ……?」

整備班長「鹿目様!」

まどか「え?」


親衛隊A「あ! お、お前ら! 逃げ出したくせに、どのツラ下げて戻ってきやがった!」

警備兵「ダルトン様じゃあ、なあ?」

管制官「逃げて当たり前でしょう」

親衛隊B「やべえ、反論できねえ」

艦長「仕えるべき主君を見定めたのだ。助力に駆けつけるのは当然のこと!」


ブリッジクルー「それに我らがいれば、黒鳥号の運用はたやすいことです」

整備班「我々も修復のお手伝いをいたします! 僕が一番、黒鳥号をうまく使えるんだ!」

親衛隊C「わーい! これで作業がはかどるね!」

まどか「みんな……。ありがとう!」

A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「ふーむ。なるほどな……。いいぞ、ここを補強すれば……」


魔族兄「ボッシュのじいさん、何やってんだよ? あんた、飛行船造りに参加しなくていいのか?」

ボッシュ「もちろん、それはあとで行くわい。それよりも今はやるべきことがあってな」

魔族弟「これ、兵器の設計図? ずいぶんおっきいね」

ボッシュ「ちょうどええわ。お主らメディーナ村の連中にも、ワシらを手伝ってもらおうか」

魔族弟「人間のやることに彼らが力を貸すとは思えないけどなあ」

ボッシュ「そんなこと言っとる場合か。それに、そこをなんとかするのがお主らの腕の見せどころじゃろ」

魔族兄「無茶言うぜ……」

A.D.600 トルース村


料理長「おう、お仕事ご苦労さん! 精がつくよう、とびっきりのメシをこさえてきたぜ!」

初代ゲン「宮廷お抱えの料理人さんにメシ作ってもらえるたあ、こりゃ期待できるね!」


料理長「……順調なのかい、馬鹿団長さんよ」

騎士団長「お前に心配されるまでもない」

料理長「ヘッ、そうかよ。……じゃあな、俺は城に戻る」

騎士団長「……待て」

料理長「あんだよ? 忙しいんだ、やたらと呼び止めんな」

騎士団長「……食事、うまかったぞ」

料理長「おお、かゆい。アンタからそんな言葉を聞くと、虫唾が走るぜ」

騎士団長「チッ……言うんじゃなかった」

料理長「ケッ。せいぜいがんばりな、兄貴」

騎士団長「! ……ああ……」

A.D.1000 リーネ広場


♪ゴンザレスのお歌


ゴンザレス「あ〜 ゴンザ〜レス♪ オ〜レは強い♪ だ〜からつくるよ ひこ〜せん〜!!♪」

14代目ゲン「すげーな、あのロボット……。人間10人の力が必要な資材をひとりで運んでやがる」

タバン「なんせ、うちの娘が作ったんだからな! そんじょそこらのやつとは出来が違うわけよ!」


ルッカ「やってるわね」

ほむら「ルッカ。休息中だって聞いてたけど」

ルッカ「メガシャキ飲んだら復活したわ」


ベッケラー「なかなか面白いことやってるね」

ルッカ「あら、ベッケラーさんじゃないの」

ベッケラー「僕も手伝っていいかな? 船首像を作ってみようかと思うんだ」

ルッカ「いいじゃない、やってもらいましょうよ」

ほむら「そうね……。お願いできるかしら、ベッケラーさん」

ベッケラー「了解。空の旅がうまくいくよう、気合を入れて作らさせてもらうよ」

年代不明 時の最果て


老人「……」


スペッキオ「うれしそうだな、ハッシュ」

老人「スペッキオか……。そうだな。感無量とはこのことを言うのであろう」

スペッキオ「オレ、人間、長いこと見てきた。だが、初めてだ」

スペッキオ「こんなにもたくさんのヤツらが、ひとつのことを為すために力を合わせるのは」


スペッキオ「アケミホムラ。アイツは不思議なヤツだ。アイツが来てから、時の流れが変わった」

スペッキオ「いや、それだけじゃねえ。この世界の因果律そのものが変わっちまった」

スペッキオ「アイツを送り込んだのは誰なんだ? ハッシュ、おめーなら分かるんじゃねーのか?」

老人「さあな……。私は何も知らんよ」

老人「それよりどうだ、スペッキオ。ロボさんのように、人間という種族にかけてみる気になったかね?」

スペッキオ「どうだかね。なんにせよ、ラヴォスを倒さないことには何も始まらない」

スペッキオ「ラヴォスだけじゃねえ。肝心なのは、そのあとの……」

老人「……」


スペッキオ「ま、期待せずに見てるよ。オレは傍観するのが好きなんでね」

老人「そうじゃな……。私たちにできるのは、信じることのみ……」


老人(ほむらさん、もう少しじゃ……。切り拓かれた未来が、すぐそこに見えてきておるぞ……)



…………

………

……


ほむら「すべての準備は整ったわ」


ロボ「『シルバード』に異常はありマセン。快調そのものデス」

まどか「『黒鳥号』、いつでもいけるよ!」

カエル「中世において建造された船、『クイーン・リーネ』は出航準備に入っている」

マール「『アルカ・ディ・ノエ』だって!」

さやか「あるか……? それって、命名者マミさん?」

マミ「どうして分かったの?」

杏子「わからいでか」



ほむら「みんな、本当に……よくやってくれたわ」

ほむら「確認するわよ。黒鳥号には、まどかと杏子、それに魔王。B.C.12000へ」

ほむら「A.D.600のクイーン・リーネにはさやか、カエルさんにクロノ」

ほむら「アルカ・ディ・ノエにはマミ、エイラ、マール。A.D.1000の黒の夢へ」

ほむら「そして私は、ルッカとロボとともに、シルバードに乗り込みA.D.2300に向かうわ」


エイラ「おなじみ面子!」

魔王「いまさらいじる必要もあるまい。理にかなっている」


ルッカ「いい? 目指すべきはラヴォスの撃破のみ。たどり着いたパーティーから、ヤツと戦う」

ルッカ「たとえ半ばで倒れる味方がいたとしても、かまわず突き進むのよ」

ルッカ「願わくば……全員生き残って、またみんなで会えることを願うわ」



クロノ「大丈夫! 誰も犠牲にはならないさ! さあ行こうぜ、みんな!」


…………


老人「……行くか」

ほむら「ええ。……もしかしたら、これが最後の別れになるかもしれませんね」

老人「そうじゃな。ラヴォスを倒せば、もうここに戻ってくる必要もなかろう」

ほむら「私が時を越え、最初に出会ったのがあなただった」

ほむら「……今までありがとう、管理人さん。私たちを導いてくれて……」


老人「この時の最果て。迷い子たちの、たったひとつだけ最後に残った道しるべ……」

老人「いつ、どんなときでも、この場所は迷い子たちを受け入れる」

老人「また道に迷うことがあれば……ここへ来なさい」


老人「だが私は、君たちが来ることは二度とないだろうと思っておるよ」

ほむら「……」



老人「さようなら、ほむらさん。……いってらっしゃい」

ほむら「いってきます」


♪決意


ロボ「シルバード、各部最終チェック! オールグリーン!」

ルッカ「時空ジャイロ設定! A.D.2300! ……いくわよ、ほむら!」

ほむら「了解。……シルバード、発進!!」

A.D.2300 シルバード


ルッカ「見えたわ! 黒の夢よ!」

ほむら「相変わらず、ものすごい存在感と悪寒を感じさせてくれるわね」

ルッカ「よし、このまま突入するわよ。どこかに着陸できる場所があればいいけど」

ほむら「なければ突っ込むまでだわ」

ルッカ「過激ねえ」


ロボ「待ってクダサイ! レーダーに熱源反応多数!」

ほむら「なんですって?」

「グアアアアオオオオ!!!」


ルッカ「あ、あれは……飛行モンスター!?」

ほむら「私たちを近寄らせないつもりね……!」

ロボ「レーザーシステム、スタンバイ! 迎撃しマス!」

B.C.12000 黒鳥号


ダルトン「きやがったか……」

魔王「捌ききれるのか?」

ダルトン「誰に物を言っている? 俺様と黒鳥号に、不可能はない!」

艦長「シルバードにはあっさり撃墜されましたけどね」

ダルトン「あの時とはちがーうッ! いわばこれは、『黒鳥号R』! ザクとは違うのだよ、ザクとは!」

まどか「なんでもいいから、突破して!」

ダルトン「オオセノトオリニー! カナメサマー!!」

杏子「すっかり骨抜きにされちまいやがって、まあ……」


ブリッジクルー「総員に通達! 第一種戦闘配置!」

ブリッジクルー「各砲座、オールウェポンズ・フリー。レッツ・ダンス!!」

A.D.1000 ボッシュの小屋付近


城兵「対空射撃開始!」


ボッシュ「うむ、ワシの作った超長距離バリスタの稼働状況は順調なようじゃの」

タバン「すげえな、ボッシュさん! 今度その技術を俺にも伝授してくれよ!」

ボッシュ「まあ、その話はあとでするとして。今はあの邪魔者どもを殲滅するほうが先じゃ」

魔族兄「つっても、あの数じゃなあ。ホントに大丈夫か?」

ボッシュ「ごちゃごちゃ言っとらんでお主らも手伝え! 魔法で援護しろ!」

ボッシュ「それから、飛べる魔族は近接で支援せい!」


バサバサッ!!

魔族弟「うわっ!? 何かが猛スピードで上空を通り過ぎていったよ!?」

ボッシュ「なに? 言われる前にやるとは、ずいぶん殊勝なヤツがいたもんじゃ……」

魔族兄「いや、あれは俺たちの仲間じゃねえ! 誰だ、アイツは!?」

A.D.1000 アルカ・ディ・ノエ


マミ「地上から支援してくれてるわ!」

マール「お城のみんな……。それに、メディーナ村の魔族さんも!」


エイラ「! 何か来る! 鳥!」

マール「ええっ、新手!? 今でも精一杯なのに……」

マミ「待ってください……あれは!」

キーノ「エイラーッ!!」


エイラ「キーノ!」

マミ「プテラン……! どうしてキーノくんがここに!?」

キーノ「ゲート、通った! キーノ、プテラン、2匹! エイラ、来い!」

エイラ「よし!」


マミ「来いって言ったって……ここは飛行船の中よ?」

エイラ「窓、ぶち破る! 行ってくる!」

マール「ちょ、それまずいんじゃ……」

エイラ「とー!」


ガシャーン!!

ビュゴオオオオオオオ!!!

マール「きゃああああっ! 風がああ!!」

マミ「気圧差が……! みなさん、私のリボンにつかまってください!」

アルカ・ディ・ノエ乗組員「ふさげ! なんでもいいから、壊れた箇所をふさげ!」


マミ「もう……。無茶するんだから、エイラ!」

マール「で、でも見てよ、あれ。エイラとキーノくんのおかげで、モンスターがどんどん撃墜されてる!」

マミ「黒鳥号での話も聞いたけど……ホントに空中戦でも無双するのね、エイラは」

マール「地上からの援護とプテラン。それに、魔族さんたちも来てくれた! これならきっと、いけるね!」

マミ「みんな、ありがとう……。がんばって……!」

A.D.600 クイーン・リーネ


さやか「やばいよ、師匠! この船、対空砲とかないの!?」

カエル「俺に聞くな!」

クロノ「なんとかなりませんか、みなさん!」

クイーン・リーネ乗組員「そ、そう言われましても……本船には武装と呼べるものは……」


プチアーリマン「ギャギャギャ!」

カエル「く、くそ! 取り付かれた!」

さやか「まだ黒の夢にもたどり着いてないのにー! あたしらが一番先に脱落なの!?」

クロノ「ここまで来て……なんてことだ……!」



「『鎌イタチ』!!」

プチアーリマン「グギャアーッ!」


カエル「な、なんだ!? 魔物どもが撃墜されていく……」

クロノ「いったい誰が!?」

さやか「! 見て、あそこ!」



ビネガー「ワシ、参上!」

ソイソー「うまくいったか……」

マヨネー「船体をよけて魔物だけに鎌イタチ当てるなんて、アナタ器用ねェン」

カエル「ビネガー!? それに……ソイソーとマヨネーも!?」

さやか「飛行型魔族に乗ってる……」

クロノ「助けに来てくれたのか!」


ビネガー「なんだ〜? 乗っておるのはグレンではないか!」

マヨネー「あららン。魔王様じゃなかったのヨネ」

ビネガー「ちいッ! これでは、かっこいいところを見せて魔王様に再び取り入る策が台無しじゃ!」

ソイソー「フ……よく言う。誰が相手でも助ける気であったろうに……」

ビネガー「あ〜ん? 聞こえんなぁ〜!」

ビネガー「よーし、貴様ら! 気張れよ! ビネガー軍団、一世一代の大いくさじゃあッ!!」

魔族たち「ウオオオオオオーッ!!」


ソイソー「我らも行くか、マヨネー」

マヨネー「はいはい。さっさと終わらせて、ゆっくりお風呂につかるのヨネ」

ビネガー「全軍、突撃ィーッ!!!」


カエル「あいつら……!」

A.D.2300 シルバード


ロボ「駄目デス、数が多すぎマス! シルバードだけでハ防ぎきれマセン!」

ほむら「泣きごと言ってても始まらないわ! とにかく1匹でも多く墜とすのよ!」

ルッカ「やってるわよ!」


ロボ「10時の方向より敵影20!」

ルッカ「多すぎるってば! 今撃ったばかりよ、エネルギーチャージが間に合わない!」

ほむら「まずい……!」

ズガァン!!

デイブ「グギャアア!」


ルッカ「なに、今の!?」

ロボ「地上からの砲撃のようデシタガ……」

ほむら「! 下に誰かいるわ!」

A.D.2300 死の山付近


バージョン2.0A「ヒャッハー! 汚物ハ消毒ダ〜ッ!!」

ジョニー「張リ切ルノハ結構ダガ、アノ飛行機ニ当テルナヨ」

バージョン2.0E「ソンナヘマハシマセンゼ!」


ドン「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ……」

ジョニー「ウマクヤレソウカイ? ドンサンヨ」

ドン「おお、簡単なもんじゃ。照準を合わせて発射ボタンを押すだけ。あとは機械がやってくれる」

ドーム民「俺たちだって力になれるってこと、見せてやる!」

ジョニー「ソノ意気ダゼ」


クロウリー様「SATSUGAI SATSUGAIせよ! SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」

みはり「クロウリーさんの歌のおかげで、闘志がわいてくるぜ!」

おやぶん「ミンメイアタック!!」

こぶん「Go to DMC!! Go to DMC!!!」

ジョニー「全対空砲、撃チマクレ! 熱デ銃身ガ焼ケ焦ゲチマウグライニナ!」

ジョニー「飛行タイプノヤツラハ順次発進! 地上ノヤツラト連携ヲ取レヨ!」


ジョニー「イイカ、テメーラ! アケミノタメニ、俺タチガ道ヲ開イテヤルンダ!」

未来軍「アニキの覚悟が! 『言葉』でなく『心』で理解できた!」

ジョニー「ブチカマセーッ!!!」



ルッカ「ジョニー! それに、アリスドームの人たちまで……」

ロボ「クロウリーさんが来てくれマシタ! もはや負ける気がシマセン!」

ほむら「……みんな……」

ダルトン「左舷! 弾幕薄いよ、何やってんの!?」


ビネガー「貧弱貧弱ゥ!! ワシらを止められるものなどおらぬわあーッ!!」


ボッシュ「もうひといきじゃ、パワーをバリスタに」

タバン「いいですとも!」


キーノ「行け! ラヴォス、倒す!!」


ジョニー「オメーラナラヤレルゼ、アケミ!!」

ほむら「ラヴォス……。直接対峙するのは、私たちだけれど……」


ほむら「この星のあらゆる時代の人々……いいえ、人間だけじゃない……」



ほむら「この星のすべての生命が、お前の相手よ!!」

第16話「最後に残った道しるべ」 終了


  セーブしてつづける(第17話「時の彼方で逢った、ような……」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

今回はここまでです。それでは、また明日。

乙〜
ところで、ボッシュのとこで飛び出したのって誰?

>>696
プテランに乗ったキーノです
分かりにくようで申し訳ない

ふいんきネタもいまや廃れてしまったのか……
仕込んだネタが全体的に古いのは仕様です

さて、17話を始めようかと思いますが、(おそらく)過去最長
やべえ、これたぶん朝になっても終わらないっすわ……

第17話「時の彼方で逢った、ような……」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

黒の夢 最深部


まどか「なに……これ……」



ほむら?「……」


まどか「ほむらちゃん……! 捕まっちゃったの……!?」

杏子「ほむらだけじゃねえぞ……。こっち来てみろよ……」


クロノ?「……」

マール?「……」


杏子「さやかも、マミも、グレンの野郎も……アイツら全員、いるじゃねえか!」

まどか「そんな……! ここまで来たのに、みんなやられちゃったの!?」

魔王「惑わされるな、それはニセモノだ。もしくは幻覚……。あるいは、ただの映像か……」

まどか「え?」

魔王「杏子の言うとおり、『全員』いる。それがおかしい……。見ろ、あれを」


まどか?「……」

杏子?「……」

魔王?「……」


まどか「わ、わたしたちまで!?」

杏子「オイオイオイ、なんだこりゃ! ご本人サマはここにいるっつーんだよ!」


「ククク……。そこに眠っているのは、貴様たちの未来だ……」

魔王「!」

ジール「虫ケラどもが……。またも、わらわに逆らうつもりのようだな……」

まどか「ジールさん!」


杏子「テメェ、ジール! どういうことだ、これがアタシらの未来だって?」

ジール「これから、かなうかも知れぬ夢……。得られるかも知れぬ、喜び……悲しみ……」

ジール「可愛いものだな。矮小なる存在が、その小さな足でノロノロと進む様は……」

ジール「思わず踏み潰してやりたくなるよ。ククク……」

まどか「……」


ジール「この黒の夢は、あらゆる時間……あらゆる次元をこえて流れている……」

ジール「ラヴォス様が目覚めるその時を待ちながら……」

ジール「貴様たちの未来は、いつか必ずここにたどり着く。貴様たちに未来はない……」

ジール「ラヴォス様の眠りの中へ。永遠の黒き夢……。それが、貴様たちの明日そのものなのだ!」

杏子「お生憎様。テメェの言うその未来をぶっ壊すために、アタシらはここに来たんだよ!」


ジール「わらわは永遠の命を手に入れた! ラヴォス神とともに、永遠に生き続けるのだ!」

ジール「この黒の夢は、ラヴォス神へとつなぐ道。わらわに無限の力を与えてくれる神殿……」

ジール「貴様たちの求める未来なぞ……この奥におわすラヴォス神があられる限り、望むべくもないわ!」


魔王「この先に、ラヴォスが……!」

まどか「ジールさん! そこを、どいてください!」

ジール「邪魔はさせぬぞ、人の子らよ! 貴様たちは、ラヴォス神へのいけにえとなるがよい!」


ジール「来い! メガミュータント! そして……ギガミュータント、テラミュータントよ!!」

メガミュータント「ゴアアァァ!!」

ギガミュータント「ウバシャアーッ!!」

テラミュータント「オオオアオォ……!!」


まどか「ま、魔物が3体も……! みんな強そう……」

杏子「……」


ジール「クハハハハ……! 脆弱なる貴様らが、わらわのしもべの中でも最強の3体を相手にどう戦うか……」

ジール「じっくり見せてもらうとしよう。せいぜい、足掻いてみるがいい!」

魔王「うっとうしい雑魚どもだ……。杏子」

杏子「わーってるよ。こんなヤツらに、時間を食ってる暇はねえ」

ジール「なに……?」


魔王「『トゥソード』!!」

杏子「『断罪の磔柱』!!」


まどか「こ、これ……! 地面から、槍……! それに、空中からロッド……じゃなくて、剣……!?」

ジール「それも無数にだと!? ありえん、このような数……!」

杏子「全方位から槍と剣の複合攻撃だ。よけられるかい?」

魔王「そのまま死ね……」



「ふたりわざ『ソードストーム』!!」

メガミュータント「ガアアァァーッ!!」

ギガミュータント「ギャバアーッ!!」

テラミュータント「グオオォアァ……!!」


まどか「やった!」

ジール「そ、そんな馬鹿な……!? 我がミュータントが、ただの一撃で……!!」


杏子「終わりかい? 最強っつっても、たいしたことなかったね」

ジール「貴様ら、いつの間にこれほどの実力を……!」

杏子「勘違いすんな、別にアタシらが強くなったわけじゃねえ。いや、多少は成長したかもしれねーけどよ」

魔王「貴様が弱すぎるのだ、ジール。ラヴォスの威を借る女狐め」

ジール「……!」

杏子「ラヴォスは確かにつええ。アタシらでも敵うかどうか……。けど、テメェは別だ」

魔王「神の力を自分の力と混同したか? 哀れなものだ」

ジール「お、おのれ……!」

まどか「ジールさん、もうやめて! おとなしく投降してください……」


ジール「……フ……ククク……」

魔王「何がおかしい。気でも狂ったか?」

ジール「笑いもするよ。狂っているのは貴様たちのほうではないか?」

杏子「なにを……!」

ジール「狂気のみが支配するこの場で、投降などと生ぬるいことを抜かす貴様らこそ、気が狂っておるわ!」

まどか「……」

ジール「良いことを思いついたぞ。貴様らをコイツに取り込んでくれるわ……」

杏子「あれは……魔神器!?」

魔王「馬鹿な!? いつの間に魔神器がこの場に!!」


ジール「ありがたく思え、この船の一部になれることを。このわらわの一部になれることを……」

杏子「クソッ、冗談じゃねえ!」

ジール「そして……ラヴォス様の一部になれることをな!!」

杏子「……?」

魔王「なんだ……? 魔神器は静止したままだ……」

ジール「!? なぜだ、なぜ動かん、魔神器よ!」


まどか「……」

ジール「鹿目まどか、貴様……! 何をした!?」



まどか「ルッカさんが教えてくれたんです。ドリストーン同士は、力を吸収するって」

まどか「ほむらちゃんが証明してくれたんです。ドリストーンは、わたしたちに力を与えてくれるって」

まどか「サラちゃんが力を貸してくれてるんです。弱いわたしを、助けるために……」


まどか「海底神殿の時は、どうにもできなかった。でも今なら、止めてあげられる……」

まどか「もういいんだよ、魔神器さん……。絶望を生み出すことが、あなたの使命じゃない……」

まどか「だから、今は……ゆっくり、休んで……」


ジール「貴様、それは……! サラのペンダント!!」

杏子「すげーな、まどか! 魔神器を止めちまいやがるなんてよ!」

まどか「えへへ。とっさの思いつきだけど、うまくいって良かったよ」

魔王「鹿目まどかがこのような機転を利かすとは。意外だったな……」

杏子「もうちょっと素直にほめてやれねえのかよ、アンタは」


ジール「……おのれ……おのれ、おのれおのれおのれぇ!!!」

ジール「貴様らは、貴様らはああッ! どこまで、わらわの邪魔をすれば気が済むのだ!!」

杏子「万策尽きたね、テメェの負けだ」

ジール「ふざけるな……ふざけるな!! あああああああッ!!」

魔王「醜いな、ジール。子供のように駄々をこねたところで、状況は変わらんぞ」


ジール「殺す……。殺してやる……! ラヴォス様の手を煩わせるまでもない!」

ジール「貴様らは必ず、このわらわ自らの手で消し去ってやるッ!!」

ジール「ここでは力は出せん……! ラヴォス様、今そちらへ参ります……!」


まどか「!? ジールさん……!」

杏子「あの女、逃げやがった! この期に及んで、往生際わりいな!」

魔王「逃がさん……追うぞ!」

黒の夢 頂上


まどか「ここは……黒の夢の頂上……?」

杏子「見ろよ、窓の外を。星……地球だ。上のほうには、宇宙空間も見える……」

魔王「黒の夢は、こんなところまで伸びていたというのか……」


ジール「すばらしい眺めだろう……?」

魔王「ジール……!」

ジール「眼下に広がるこの星を、ラヴォス神は支配なさる。いや、星だけではない……」

ジール「この宇宙そのものを、ラヴォス神はその手中に収めるのだ!!」

ジール「そして、わらわも……ともに、永遠にこの世を支配する女王となるぞ!!」


杏子「ふざけたことを……。そんなこと、アタシらが許すと思ってんのかよ!」

ジール「虫ケラの分際でこのわらわを追い詰めたこと、ほめてやろう……」

ジール「死してその思い上がりを悔やむが良い……」

まどか「!? ジールさんの姿が変わっていく……!」



ジール「ラヴォス神よ……その御力を、わらわに!!」

魔王「なんだ、これは! ヤツが、巨大な顔と両手だけに……!」

杏子「化け物め……!」

まどか「なんて……まがまがしい姿……」


ジール「ハハハ……フハハハ……アーハッハッハッハッ!!!」

ジール「すばらしい、すばらしいぞ! このあふれ出る力……ラヴォス様の御力!!」

ジール「わらわは今、生命の頂点に立った! わらわこそが王だ!!」


杏子「テメェ、ラヴォスの手を煩わせる必要だのなんだの言っといて、結局それかよ!」

まどか「こんな……ヒトの姿を捨ててまで、ジールさん……あなたは……」

♪魔王決戦


魔王「おろかな……。ラヴォスに魅入られた、悲しき女ジールよ……」

魔王「せめてもの情けだ。この手で、すべてを終わらせてくれる!」


ジール「呪われし予言者、ジャキよ……」

魔王「!」

ジール「そなたが海底神殿で犯した罪、わらわは忘れておらんぞ……」

ジール「今こそ、その死を以て償うがいい!!」

ジール「『ダークギア』!!」


魔王「ぐ……!?」

杏子「こいつ……! 魔力が桁違いに上がってやがる!」


まどか「きゃああっ!!」

杏子「まどか! 大丈夫か!」

まどか「あう……な、なんとか……」

魔王「下がれ、鹿目まどか。お前ではこの戦い、ついてこれまい」

杏子「防御結界を張る。隠れてろ」

まどか「ご、ごめんね、ふたりとも……。私にかまわず、ジールさんを止めて……!」

杏子「自分の心配だけしてろ。アイツは、アタシらに任せな!」

ジール「ククク……。ふたりだけで、このわらわを相手するつもりか?」

魔王「貴様なぞ我々だけで十分だ」

ジール「減らず口を……。死ね、『ヘブンゲート』!!」

杏子「当たるかよッ!!」

ジール「ちいッ……!」


杏子「ジャキ、行くぞ! 『飛槍』!!」

魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』か……よし!」


ジール「遅いわあッ!!」

杏子「!?」

ジール「『レーザー』!!」

杏子「しまった! 槍が吹き飛ばされちまった……!」

ジール「フハハハハ! 武器もない、戦力も足りない! それで、どうやってわらわを殺すつもりだ?」

魔王「杏子……!」


杏子「慌てるこたあねぇよ、ジャキ。アンタはそのまま、『サンダガ』の用意をしときな」

魔王「なに……!?」

ジール「いきがるな、小娘がッ! まずは貴様から消し炭にしてやるわあ!」

杏子「ゴメンだね。テメェの好き勝手にされてたまるかっつーの……」



杏子「『ソイソー刀2』!!」

ジール「な、なにぃッ!?」

まどか「あれは……ソイソーさんからもらった刀……!」

杏子「やっちまえ、ジャキ!!」


魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』!!」


ドドオオオォォン!!!

ジール「ぐおおおおっ!?」

杏子「どうだ!」

ジール「く……貴様らァ……! 小ざかしいマネを……!」

杏子「げっ、まーだピンピンしてやがんのかよ」


魔王「杏子、護衛しろ。あの女、『ダークマター』で消し去ってやる」

杏子「よし、頼むぜジャキ! 『ロッソ・ファンタズマ』!!」


ジール「……」

杏子「ジール! テメェの相手は、13人のアタシが務めてやるよ!」

ジール「血……。血だ……あの時と同じ……」

杏子「……? オイ、ジール! 無視してんじゃねえぞ!」

ジール「これはわらわの血か……? どこから……ああ、そうだ……。顔だ……」

ジール「ヤツらは、また……わらわの顔にキズを……」

杏子「ワケの分からねえことつぶやいてんじゃねえ! 来ねえなら、こっちからいくぜ!」


ジール「許さぬ……許さぬぞ……!」

ジール「何人たりともおッ! このわらわを汚すこと、許さぬッ!!」

杏子「!? なんだ、この威圧感は……!」


ジール「ハエどもがあッ! 叩き落してやる! 『MPバスター』!!」

魔王「ぐお……っ!?」

杏子「な、なんだこれ……! 魔力が、吸い取られていく……!」

ジール「貴様らの魂ごと食ろうてやるわ! フハハハハッ!!」


まどか「ジャキくん! 杏子ちゃん!」

杏子「や、やべえ……! 『ロッソ・ファンタズマ』も『縛鎖結界』も、強制的に解除されちまった……!」

魔王「くそっ……! これでは、詠唱ができん!」

杏子「ソウルジェムが濁っていく……! 反則だろ、これ……!」

魔王「杏子、グリーフシードを使え! 早く!」

杏子「分かって……る……っつーの……! ちくしょう、間に合え……」


まどか「ふたりとも、少しだけ辛抱して! 今、回復薬を……」

魔王「鹿目まどか、来るな!」

まどか「!」

ジール「虫ケラの中でも最弱の貴様が、何かできると思うのか? 鹿目まどかよ……」

まどか「ジ、ジールさん……!」

ジール「目障りなゴミはまとめて片付けてやる……。わらわはキレイ好きでな……」


ジール「その命の一滴までわらわにささげよ! 『ハレーション』!!」



まどか「うあっ!? ああ……ああああ……ッ!!」

魔王「ば、馬鹿な! これは……魔力だけでなく、体力すらも根こそぎ奪われていく……!」

杏子「クソ……体が……言うこと聞かねえ……! このままじゃ、アタシ……!」

ジール「アーハッハッハッ!! やはり虫ケラは、地べたに這いつくばっているのが似合いだな!」

魔王「お、おのれ……ジール……!!」

まどか「杏子ちゃん……ジャキくん……! あう……う、動いてよ、わたしの体……!」


杏子「ジャキ……! アタシを殺せ、早く……!」

魔王「なんだと、ふざけるな!」

杏子「ふざけちゃいねえよ……。アタシが魔女化する前に、殺せって言ってんだ……」

魔王「……!」

まどか「やめて、杏子ちゃん! やめて!」

杏子「早くしろ……! 手遅れになる前に……」

魔王「……杏子……!」

まどか(ダメ、ダメだよ……! あきらめちゃダメ……)

まどか(こんな結末、わたしは認めない……!)


ジール「殊勝な心がけだな、小娘よ。仲間に手をかけられるのは忍びなかろう……」

杏子「!」

ジール「わらわがこの手で、直々に握りつぶしてくれるわ……」

杏子「ちくしょう……! もう、どうにでもなりやがれ……!」

魔王「杏子ッ!!」


ジール「死ねッ!! 肉のつぶれる音を、わらわに聞かせろおおおッ!!!」

まどか「『天上の祈り』!!」

魔王「!?」


杏子「ッ!! 『縛鎖結界』!!」

ジール「う……!? これは、侵入不可の結界……! わらわの攻撃を防ぎおった……!」

ジール「いや、違う! 鹿目まどか! 貴様、何をした!?」


杏子「体力も魔力も回復してやがる……これは……!」

魔王「回復魔法……それも強力な……。なぜお前がそのようなことを!?」

まどか「……」

まどか「今の……わたしの力じゃないよ……」


ジール「くっ!? まぶしい……! なんだ、この光は!?」

魔王「あれは……!」

杏子「『太陽石』だ……光ってやがる!」


まどか「力を……貸してくれるんだね、みんな……」

まどか「わたしたちのために……絶望に負けないために……」

ジール「その忌々しい光を消せッ! 鹿目まどかあああッ!!」



まどか「『マジカルスコール』!!」

ジール「がああああっ!?」


杏子「よし……立て直すぜ、ジャキ!」

魔王「鹿目まどかの参戦か。この機、存分に利用させてもらおう……」



ジール「おのれ……カスどもが……ゴミカスどもがあああ!!」

ジール「けがらわしいッ! わらわの視界に入ることすら許されぬ虫ケラの分際でえ!!」

ジール「貴様らちっぽけな存在などが、到底届くことのかなわぬ位置にわらわはおるのだぞ!!」


杏子「なら、引き摺り下ろしてやるぜ……。玉座はテメェにゃ似合わねえよ!」

まどか「ジールさん! わたしたちは……あなたには屈しない!」

ジール「ふざけるな……。いい気になるなよ、ゴミカスども……。聞こえないのか、この鼓動が?」

杏子「!」

まどか「これ……まさか……」


ジール「フフフ……そのとおり。ラヴォス神のお目覚めの時が近いのだ……」

ジール「貴様たち虫ケラなぞ、ラヴォス神の前では赤子同然……」

ジール「わらわは、ラヴォス神とともに永遠の生命を手にすることとしよう……」


まどか「止めてみせる……。わたしたちは、未来を変えてみせる!」

ジール「できるワケがなかろう! 人間ごときに!」

杏子「人間を馬鹿にすんじゃねえ。テメェだって、人間のくせに……」

ジール「クク……。そうだ、人間はおろかなる存在……」

ジール「わらわは黒の夢で、すべての時代を見た……」

ジール「恐竜人、魔族、機械……果ては貴様らの言う、魔女まで……」

杏子「! ……」

ジール「人間には敵ばかりだ! なぜか分かるか? この星に不必要な存在だからだ!」

ジール「ラヴォス神はそれを教えてくださった! ゆえにわらわは、ヒトであることをやめた!」


ジール「この星はラヴォス神によって滅ぼされるべきなのだ! ヒトの生きる場所など、あってはならぬ!」

ジール「すべての生命はラヴォス神の中でひとつとなってこそ、幸福といえるのだ!」

まどか「そんなの……そんなの、間違ってます!」

ジール「貴様にそれを断ずる資格はないッ!!」

ジール「神になれる力を持ちながら……何もしなかった無能なる貴様には、未来を決める権利などない!!」

まどか「……!」


ジール「人間にも魔族にもなれぬ半端者に、世界を託すなど阿呆のすることだ!!」

杏子「テメェ……」


ジール「分かるだろう、ジャキ? 一端の王であり、人間を駆逐せしめる存在であるそなたなら……」

魔王「……」

ジール「『すべての存在は、滅びの運命から逃れることはできぬ』」

魔王「! ……」

ジール「そなたの持論だったな? ラヴォス神の黒き死の風! 感じるだろう?」

ジール「恐れることはない。安息の中へ……わらわがいざなってやるぞ。抵抗するな、ジャキ……」

魔王「無様だな、ジール。やはり貴様は、王としても母親としても三流だ」

ジール「なに……!?」

魔王「ヒステリックに喚き立てるだけで、子が、人がついてくると思うのか?」

ジール「ジャキ……貴様……!」


魔王「星のために、宇宙のために死ねだと? 冗談ではない」

魔王「いいかどうかは自分で決める。自分の進むべき道は、自分で決める」

魔王「この悪夢に乗り込んできた馬鹿どもは、みな、俺を含めて……そういう身勝手なヤツなんだよ」

ジール「残念だ、ジャキ……。残念だよ……」

魔王「……」

ジール「そなたを生んだこと、後悔しているよ。……貴様など、生まれてこなければ良かったのだ!」

魔王「母として、決して言ってはならぬ言葉を口にしたな、ジール」

ジール「わらわが母として貴様にしてやれるのは、その存在を消し去ってやることだけのようだな!」

魔王「俺は生んでもらえて感謝している。おかげで、サラや……杏子や鹿目まどかに、会えたのだからな」

杏子「ジャキ……お前……」

まどか「ジャキくん……」


魔王「そして……しゃべりすぎたな、ジール。貴様は敵としても、三流だったようだ」

ジール「挑発はもうたくさんだ。今すぐ殺してやる……!」

魔王「挑発かどうか、確かめてみるがいい。『詠唱』はとっくに終わったぞ……」

ジール「!!」

杏子「あの魔力は……! あの野郎、『ダークマター』の準備をしてやがった!」

まどか「ジャキくん、いつの間に……」


ジール「く……!? き、貴様、たばかったな!?」

魔王「見抜けぬ貴様が阿呆なのだ……」

ジール「面白いッ! それが貴様の全力なのだろう? すべて捌ききり、再び絶望を与えてやるわ!」

魔王「そうだな、これが俺の全力だ。しかし貴様がこれから味わうのは、『俺たち』の全力だ……」

ジール「なんだと!?」

魔王「杏子! 鹿目まどか!」

杏子「『ロッソ・ファンタズマ』で13乗だ……。アタシの全魔力を、この一撃に込めるぜ!!」

まどか「『太陽石』に宿る魔法少女の想いよ……もう一度だけ、わたしに力を!!」


ジール「ぐっ!? こ、こいつら……!」

魔王「気づくのが遅すぎたな……」

ジール「無駄な足掻きよ、死ねッ! 『ハレーション』……」

魔王「死ぬのは貴様だ、ジール!!」

ジール「!!」



魔王「『ダークマター』!!」

杏子「『浄罪の大炎』!!」

まどか「『救済する白き光』!!」

ジール「これは!? 三方から……いや、下からも!? 魔力の壁が迫ってくる……!」


魔王「貴様の棺だ。闇に抱かれ眠るがいい……」

杏子「ちっとばかし狭いけどな。かたちは、王族向きだろ?」

まどか「さようなら、ジールさん。どうか、穏やかな眠りを……」



「さんにんわざ『ミックスデルタ』!!!」

ジール「やめろおおおおッ!! わらわは王ぞ! 生命の頂点に立つ者なのだぞ!」


ジール「認めぬ、こんな……こんな羽虫にも劣る、カスのような汚物どもに……この、わらわがああ!!!」


ジール「うおおおおおおおおおおッ!!!!!」



————

———

——


ジール「そうして、悪い魔女は勇敢な戦士たちによって倒されました。……めでたし、めでたし」

サラ「……ん……くぅ……」

ジャキ「すぅ……んん……」

ジール「ふう。ようやく寝付いてくれたわね……」

ジール「毎日、寝る前に絵本を読まなきゃいけないのは疲れるわ。でも、ふたりのためなら……」


アルファド「ナーオ」

ジール「あら、アルファド。ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」

アルファド「ンニャア……」

ジール「ふふ、そうね。ジャキのそばにいてあげて。この子、あなたがいないとさびしがるから……」

アルファド「ゴロゴロ...」

ジール「……」



ジール「ふたりとも、とても幸せそうな寝顔……。私も、幸せよ……」

ジール「サラ……ジャキ……。生まれてきてくれて、ありがとう……」


————

———

——


杏子「ゲホ、えほ……。うええ、ちくしょう……。体中がいてえな……」

まどか「大丈夫、杏子ちゃん? はい、ハイポーション飲んで」

杏子「あー……生き返る。ったく、我ながらよく死ななかったもんだぜ」


魔王「何をくつろいでいる。回復したら、すぐに出発するぞ」

まどか「ダメだよ、ジャキくん! あなただってマトモに動ける状態じゃないのに……」

杏子「体力も魔力も、うわべ的には回復しても、このままラヴォスに挑むってーのはちっとキツイな」

魔王「……鹿目まどか。お前が戦闘中に見せた、あの非常識な回復魔法は使えんのか」

まどか「それが……太陽石、元に戻っちゃったみたい……」

杏子「あの瞬間だけか。ま、秘密兵器ってそーいうモンだよな」

魔王「チッ……。ラヴォスは目と鼻の先だというのに……」

杏子「あせんなよ、ジャキ。アンタだって分かってんだろ」

魔王「……」

杏子「これはアタシたちだけの戦いじゃない。足りない部分は……アイツらが補ってくれる」

まどか「うん、そうだよね……」


魔王「フン。あの弱き者どもが、ラヴォスに勝てるとは到底思えんがな……」

杏子「アイツらだって強くなった。伸びしろの少なかったアタシらより、今じゃもっと……」

魔王「……」

杏子「信じてやれよ。任せるべきところは後輩に任せて、どーんと構えてるのがベテランのつとめだぜ」



まどか「クロノさん……。今度は、やられちゃダメですよ……」

魔王「この私が譲ってやったのだ。魔王城の時のような体たらくは許さんぞ、グレン」

杏子「頼んだぜ、さやか。正義の味方なんだろ? この世界を、救ってくれよ……」



…………

………

……


クロノ「二度目なんだ、僕は……。あいつと対峙するのは、これで二度目……」

クロノ「けど、何度目だろうが慣れる気がしない。今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだよ」

カエル「……」


クロノ「僕が死ぬ歴史は、ほむらたちが変えてくれた」

クロノ「でも、不思議なんだ。今でもあの瞬間を、鮮明に思い出すことができてしまう……」

カエル「魂の記憶、ってやつか……」

クロノ「ツメの先から少しずつ、自分の体が消えていく……あの感覚……」


カエル「『死』はすべての終わりだ。喜びも悲しみも、何もかもを包み込んで、なかったことにしてくれる」

カエル「ゆえに、怖い。やさしいからこそ怖い。抵抗もできずにゆだねてしまう」

カエル「甘くとろけるようなそのぬくもりに、生命はいつの間にか呑み込まれていってしまう……」

さやか「……」

カエル「震えているのか、さやか?」

さやか「こ、これは武者震いだよ!」

カエル「それでいい。精一杯虚勢を張れ。ヒザを折るな、まっすぐ立て」

カエル「勢いに飲まれるな、心を強く保て。それが……ヤツに届くための、最初の一歩だ」

さやか「……うん!」



クロノ「1時24分……。数分の狂いもない……来るぞ!!」

A.D.1999 ラヴォスの日


♪ラヴォスのテーマ


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」



カエル「さて……『勇者の仕事』ってやつを始めるとするか」

クロノ「海底神殿の時はひとりで立ち向かうしかなかった……。でも、今は違う!」

さやか「あたしたちが……あんたを……ラヴォス……!!」


さやか「倒してみせる……! 必ず!!」

>ラヴォスが攻撃モードに入る!


『はーーっ!』


カエル「ッ!?」

さやか「何さ、こんなヘナチョコ打撃! ナメてんの、ラヴォス!」

クロノ「海底神殿で見せたような、強力な攻撃が飛んでくるものと思っていたのに……」

さやか「あんたがそんなんでも、こっちは手加減する気ないからね! 『コラテラルエッジ』!!」


ガギン!!

さやか「んなっ!? こいつ、めちゃカタイ!」

クロノ「見た目どおりの重装甲ってことなのか……?」

カエル「ならば、これはどうだ! 『ウォータガ』!!」


「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「やった! さすが師匠!」

カエル「魔法に弱いようだな……。勝機あり、畳み掛ける!」

クロノ「待て、カエル! 様子がおかしい!」

カエル「なに……?」


>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

『外道ビーム』


カエル「うおっ!? 急に撃ってきやがった……!」

クロノ「今の技は……」


さやか「ていうか、何あれ? ラヴォスのそばにオプションみたいなヤツが出てきた……」

カエル「手下か?」

さやか「分かんない。もしかして本体の手足だったりして……」

カエル「身体機能の一部分を分離できると? だとしたら厄介だな」

クロノ「分離する体……? それに今の攻撃は、確かに覚えがある……」


カエル「とにかく、魔法だ。ラヴォスの弱点はそれなんだからな」

さやか「よーし、今度はあたしの番だよ。魔力で作った剣をぶち当ててから爆発させてやる!」

さやか「食らえっ! 『スプラッシュ……」

クロノ「さやか、ちょっとストップ」

さやか「すてぃん……え、な、なんすか? 今、華麗に決めにいってたとこなんですけどお〜」

カエル「どうした、クロノ。好機を逃させるな。流れが向こうに行ってしまうぞ」


クロノ「すまない。けど、どうしても気になることがあるんだ」

さやか「気になること……?」

クロノ「今のあいつに、わざわざ余分に魔力を使う必要はないんじゃあないかな……」

カエル「なに? ヤツの弱点は魔法なんだぞ」

クロノ「そう断じるのは早すぎる気がするんだ。さやか、もう一度『コラテラルエッジ』を」

さやか「いいっすけど……。ラヴォスには効かないんじゃ?」

クロノ「頼む!」

カエル(何を考えている? クロノのヤツ……)

さやか「そこまで言うなら……『コラテラルエッジ』!!」

「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「あ、あれ? 普通に効いちゃった……」

カエル「なぜだ? 先ほどは無敵にも思えるほどの堅さだったというのに……」

クロノ「ということは、やっぱり……。いや、まだ偶然という可能性も……」

カエル「おい、どういうことなんだ、クロノ!」


>ラヴォスの攻撃モードが変化する!


さやか「ま、またなんか雰囲気変わったよ!?」

『たつまきエネルギーをためている』


カエル「お、おい!? ラヴォスのヤツ、何か力をため始めたぞ!?」

クロノ「これは……? この行動は、僕は知らない……。やっぱり違うのか……!?」

さやか「え……まさか……」

カエル「さやか?」



『しんくー、、、』


カエル「! まずい、いかにも攻撃してきますって感じだぜ!」

さやか「タッ、『タイフーン』!!」


「キュオオオオアアァ……!!」

クロノ「ラヴォスの動きが止まった……?」

カエル「カウンターで差し込んだか。やるな、お前」

さやか「とっさに反応しちゃったけど……。やっぱり今の、グランとリオンの技だ!」

カエル「グランとリオン? グランドリオンに宿る精霊の、アイツらか」

さやか「グランドリオンを譲ってもらうために、デナドロ山で勝負したことがあるの」

クロノ「あの時か……。そういえば、戦ってたね」

さやか「剣圧で体勢を崩してやれば、『たつまきエネルギー』ってのが散るところまで一緒……」


さやか「ハン! けどね、ラヴォス! いくら他人の技をパクったって無駄だよ!」

さやか「本物のグランとリオンのほうが、ずっと強かったっつーの!」

さやか「それに……あの時とは違うんだ、あたしだって強くなった。そう簡単にはやられないよ!」



>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

カエル「ラヴォスは技を盗むのか? そういえばクロノ、お前も似たようなことをつぶやいていたな」

クロノ「うん、それはそうなんだ。ただ……」

カエル「ただ? なんだ?」

クロノ(技を盗む……。本当にそれだけだろうか?)


『体当たり(筋肉タックル)』


さやか「いてっ! このヤロー、筋肉なんてどこにあるのさ!」

カエル「大部分はカラのようだからな。先ほどから動いている、あの口だか目だか分からん箇所……」

カエル「あの部分ならよく斬れそうだ。ならば……『ベロロン斬り』!!」


ガギン!!

カエル「うッ!?」

さやか「また弾かれちゃった! やっぱり物理攻撃は無駄じゃん。どうなってんの、クロノさん!」

クロノ「……」

カエル「魔法だ、やはりヤツには魔法しかない。いくぞ……『ウォータガ』!!」



パシャーン...

さやか「あ、あるぇ〜?」

カエル「オイオイオイ! 今度は魔法すら無効化かよ!」

さやか「反則じゃん! これ、どーやって倒せばいいのさ……」


クロノ「……いや、これでいいんだ。カエル、君は間違っていない」

カエル「クロノ?」

クロノ「『サンダガ』!!」

「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「効いた! ……ていうか、めっちゃもだえてる!」

クロノ「ここだ……! さやか、仕留めてくれ!」

さやか「え? えーと……」

クロノ「なんでもいい、早く!」

さやか「りょ、了解っす。『スクワルタトーレ』!!」


「キュオオォ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

クロノ「間違いない。これは……今まで僕たちが戦ってきた相手だ!」

クロノ「ヘケランに始まり、ジャンクドラガー、グランとリオン、そして今のはニズベール……」

クロノ「技だけじゃない。ラヴォスは、『彼らそのもの』を丸ごとコピーしている」

カエル「過去の強敵を忠実に再現していただと……!?」


クロノ「『記憶』なんだ、カエル。これは僕たちの……いや、僕たちだけじゃないだろう」

クロノ「ラヴォスは『星の記憶』を食らっている。それをヤツは糧としている。自らの力に変えている」

さやか「あたしたちの大切な思い出が……ラヴォスの、エサだったっていうの!?」

カエル「だが、なぜだ! 俺たちの記憶を食らって……ヤツになんの利がある!」

クロノ「分からない。けどジールは言っていた。『すべての生き物はラヴォスの中で一体となる』と……」


クロノ「ラヴォス、君は……何者なんだ。カエルの言っていた『死』……。君は、それなのか?」

クロノ「生命の喜びも悲しみも、何もかもをその身に集め、すべてをなかったことにしようというのか?」

クロノ「君の嘆きが聞こえるような気がする。泣いているのか? ラヴォス……君は一体……」

カエル「ちょっと待て! こいつが俺たちの記憶を再現しているってんなら……次は……」

さやか「またオプションみたいなヤツが出てきた! つまり……ふたり……」

カエル「……! さやか、そこを離れろ!」

さやか「!」


『飛槍』

『サンダガ』


れんけいわざ『ソーヘブン』

ドドオオオォォン!!!

カエル「ぐっ……!? クソ……!」

さやか「師匠! あたしをかばって……!」

カエル「なるほどな……。確かに、クロノの言うことは正しかったようだぜ……」

カエル「忘れもしねえ、この痛み……。魔王城で俺が、アイツらに受けたものと同じだ……!」

さやか「この……ラヴォス! 食らえ、『スティンガー』!!」


『縛鎖結界』


さやか「……っ! 侵入不可の結界……」

カエル「佐倉杏子の技か……!」


さやか「……ふざけるな……ふざけんな!! マネすんな、それは杏子のだ!」

さやか「あいつの、誰かを守るための想いだ! それを、何も知りもしないあんたが……! 許さない!!」

カエル「『ダッシュ斬り』!!」

さやか「師匠!」

カエル「結界にはグランドリオン……。あの時の再現だってんなら、突破口も一緒だぜ」


カエル「やれ、さやか!」

さやか「『スパークエッジ』!!」



「キュオオオオアアァ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

クロノ「僕はすべての戦いに参加したわけじゃない」

クロノ「けれど、いつだって彼女が話してくれた。僕は一番初めから彼女と一緒にいたんだ」

クロノ「だから知っている……。彼女たちが、どうやって乗り越えてきたかを……」


カエル「『経験』ってやつだぜ。分かるか、ラヴォス? こいつが言っているのは『経験』だ」

カエル「俺の、さやかの、クロノの……そして、俺たちの仲間がたどってきた道筋だ」


さやか「戦っているのは、あたしたちだけじゃない。みんなで戦っているんだ……」

さやか「みんなが教えてくれるんだ。あんたを倒す方法ってやつをね!」



クロノ「来るぞ! 次は……『恐竜人』だ!」

>防御をといて、力をためている!


クロノ「カウントダウン後に、強力な火炎攻撃が来る! その前に決めるぞ、ふたりとも!」

さやか「オッケー!」

カエル「また付加部品つきか……。確かあれは、恐竜人の首魁だったか……?」


『サイコキネシス』


カエル「ぐっ!?」

さやか「師匠!」

クロノ「しまった! 確かアザーラは、超能力を……!」

カエル「うおおおおッ!? 体が上空に引っ張られる……!」

さやか「このヤロー! 師匠を放せ! 『シューティングスティンガー』!!」

ドオォン!!


クロノ「いいぞ、さやか! ピンポイントで狙撃した!」

さやか「師匠! うまく着地できそう!?」


カエル「いや……このまま落ちるぜ。自由落下だ……」

さやか「え?」

カエル「それがいい。この状況が……とてもいいッ!」


カエル「合わせろ、さやか! クロノ! 剣士パーティーの本領発揮だ!」

カエル「『ジャンプ斬り』!!」

クロノ「『回転斬り』!!」

さやか「『スクワルタトーレ』!!」


「さんにんわざ『3次元アタック』!!!」



「キュオオオオアアァ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

カエル「次はなんだ、クロノ!」

クロノ「この迫力、これはすぐに分かる。『巨人』だ!」

クロノ「横にいるのは両腕に見立てたパーツか……。なげきの山で戦った、あの強敵……」

さやか「『恐竜』の次は『巨人』っすか! いいね、スケールでかいっすね!」


クロノ「確かあの時は、ほむらが頭部が弱点だと見抜いていたけど……」

さやか「頭部? ラヴォスに頭部ってあるのかな……」

カエル「フ……。頭部か。まあ、似たようなものだろうな」

さやか「師匠?」

カエル「要は急所ってことだろ。さっき言ったな、やたら斬りやすそうな部分があるってよ」

クロノ「そうか、ラヴォスの中心部……!」


カエル「お先に行くぜ、『ベロロン斬り』!!」

「キュオ……!!」


カエル「この剣が目印だ! かましてやれ、ふたりとも!」

クロノ「よし……『サンダガ』!!」

さやか「『スプラッシュスティンガー』!!」


カエル「急所に突き刺さった無数の剣めがけて、雷がとめどなく落ちてくる……」

カエル「さんにんわざ『大避雷針』だぜ! お前が動く隙など与えない、このまま押し切ってやるッ!」



「キュオオオオアアァ……!!」

クロノ「次はどうする? ゴーレムか、ダルトンか。それとも砂漠の魔物か、機械の親玉か……」

カエル「たとえお前が、どんな相手を再現しようとも……俺たちはそれを既に打ち破ってきた!」

さやか「ラヴォス! あんたが他人の力を当てにしてる限り、あたしたちには届かない!」


クロノ「ほむらが僕たちに渡してくれたもの……託してくれたもの……」

クロノ「それらをすべて使い、今度は僕たちが君を乗り越える!」



「キュオオォォ……キュアアァァァ……」

「……」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


カエル「うっ!?」

さやか「ゃああっ!?」

クロノ「これは……! 海底神殿の時に見せた……!」


カエル「桁違いに強力な攻撃だったぞ……」

さやか「まさか、本気出した!?」

カエル「おそらくな。しかし、これはヤツが万策尽きて追い詰められている証拠でもある……」

さやか「そっか、なら……」

クロノ「ここが勝負の分かれ目だ! やろう、カエル! さやか!」

『カオティックゾーン』


カエル「ぐっ、速い!?」

さやか「畳み掛けてきた! まずいよ……あたしら、さっきのダメージがまだ……」


クロノ「あきらめない……。こんなところで、あきらめてなるものか……」

クロノ「爆発しろ! 僕の中の……すべての力!!」



クロノ「『シャイニング』!!!」

クロノ「うおおおおおおおおおおおーッ!!!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ズガガガガガアァァァァ...!!!!!



さやか「魔力と魔力のぶつかり合い……!」

カエル「クロノ、すまん! 耐えてくれ……。『ケアルガ』!!」

さやか「! 師匠……」

カエル「立て直すぞ、早くしろ、さやか!」

さやか「う、うん……!」

クロノ「負けない……負けるものか……!!」


クロノ「再戦……海底神殿の時の……もう一度、君と戦うこと……記憶の再現……」

クロノ「なんのためにここまで来たのか……新たな命を授かった意味……」

クロノ「誰のおかげで……僕は今、ここに立っているか……」


クロノ「分かるかい、ラヴォス……! 僕の意志が……生き物の心がつむぎだす、想いが……!」

クロノ「分かるのか、ラヴォス……? 盗み見ているだけの、君が……!」


クロノ「いのちの強さが、君に分かるのか、ラヴォス!!」

クロノ「だあああああッ!!」

「キュオ……!!」

クロノ「……ゼェ……ハァ……! こ、これで……!」


『ラヴォスニードル』


クロノ「なっ……!? 今、やっと押し切ったばっかりだってのに……!」

クロノ「トゲがこっちに……! くそ、もう……体が言うことを……」



さやか「『タイフーン』!!」

クロノ「さやか!」

さやか「トゲは吹き飛ばした! クロノさんを、そう簡単にやらせはしないよ!」

カエル「待たせたな、クロノ。ようやく反撃の準備が整ったぜ……」

クロノ「カエル!」

カエル「年貢の納め時だぜ、ラヴォス……」


「キュオオオオアアァ……!!」

『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


カエル「密集するな! これが最後だ。回避ののち……総攻撃をかけるぞ!」

クロノ「よし……!」

さやか「ラヴォス、あんたなら……知ってるのかな。6500万年以上生きてきたあんたなら……」

さやか「なんのために戦うのか、誰のために戦うのか。何を大切にすべきで、何を守るべきなのか……」

さやか「答えは、欲しいよ。でも……それはきっと、あんたからは出てこない」


さやか「苦しむことも、悩むことも迷うこともせず……求めず、教わろうともせず……」

さやか「どこかの誰かが懸命に絞り出したそれを、横から掻っ攫っただけ……」

さやか「そこに真実はあるの? 追い続ける意志はあるの?」


さやか「ヒトが、生き物たちが! 生きてきた証! 苦しくて辛い、でも尊くて、とてもあたたかいもの!」

さやか「いのちの大切さが! あんたに分かるはずがないッ!!」

カエル「何度だって立ち上がる、立ち向かう。そして乗り越える。それが経験となる」

カエル「灰にまみれて、泥をすすって……弱さを、迷いを、絶望を克服するために……」


カエル「魔王城では俺は、魔王や佐倉杏子に手も足も出なかった。しかし今は違う!」

カエル「海底神殿ではクロノはお前になすすべもなかったようだ。しかし今は違う!」

カエル「出会ったころのさやかは道を見失い、苦しみ怯えていた。しかし今は違う!」


カエル「なぜか分かるか、ラヴォス? それは『成長』だ!」

カエル「生き物の強さだ! 記憶が俺たちを強くするんだ! それがお前と俺たちとの差だ!」

カエル「いのちが『先』に進んだ姿……見せてやるぜ、ラヴォス!!」

カエル「我が見せるは、絶望に幕引く涅槃の剣閃!」

クロノ「我が振るうは、闇を打ち払う一筋の光!」

さやか「我が乗せるは、命の重みをこめた渾身の一撃!」


「我らの剣は、未来を切り拓く終の一文字!!」



「さんにんわざ『ゼット斬り』!!!」

「キュオオォォ……! キュアオアァァァ……!!」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!」


「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」



…………

………

……


さやか「やった……の? あたしたち……」

カエル「ああ、やったさ。ただし、外側だけだがな」

クロノ「中心部が消えて穴に……でも、カラはそのままだ……」

さやか「まるで、入り口みたいだね……」

カエル「中に入って来いってことだろうな。体内に乗り込み、心臓部を倒せということか……」


カエル「いけるか、さやか?」

さやか「無理」

カエル「クロノはどうだ?」

クロノ「すまない、とてもじゃないけど動けるとは思えないよ……」

カエル「……だろうな」

カエル「なら、俺たちの役目はここで終わりだ。あとは信じて待とうじゃないか」

クロノ「そうだね。彼女たちなら……きっと、やってくれるよ」

さやか「クロノさんが言うなら間違いないっすね! フィオナさんの時だって、ちゃんと戻ってきたし!」

カエル「ああ……そのとおりだ」



カエル「エイラ、お前の好きなメシの時間だぜ。ラヴォスを……食っちまえ」

クロノ「君の決意からすべてが始まった。それを実現させる時だよ、マール」

さやか「マミさんなら絶対、大丈夫っすよ。またみんなにマミさんの紅茶、振舞ってもらうんですから!」



…………

………

……


マミ「……」

エイラ「ここ、変! 見た目も、ニオイも!」

マール「これがラヴォスの体内……? ていうか、外じゃないの、ここ? 草原が広がってる……」


エイラ「お、見ろ! イオカ村!」

マール「ほんとだ。周りにも色んな景色が見えるね。ただの映像なのかな……」

エイラ「キオクか?」

マール「そっか、ラヴォスは星の記憶を食べて生きている。これはその残り香みたいなもの……」

エイラ「食べ残し、よくない!」

マール「あはは。そういうわけじゃないと思うけど」

マール「ね、見てよマミちゃん。これ、きっとガルディア城の……」

マミ「……」


マール「マミちゃん? さっきから呆然としちゃって、どうしたの?」

エイラ「おう、マミ! なんだ、腹痛いか?」

マミ「……ふたりとも、私から離れないで。気をつけて……」

マール「え?」



マミ「ここは……『魔女の結界』だわ……」

A.D.1999 ラヴォス体内


マミ「……」

マール「な、なんか……結界の中って言われると、急に怖くなってきちゃったような……」

マミ「大丈夫ですよ、マールさん。私、慣れてますから。私のそばにいれば……」

マール「う、うん。ごめんね、マミちゃん……」


エイラ「しっあわっせはー歩いてこないー♪ だーから歩いていくんだねー♪」

マミ「ちょっと、エイラ。無警戒に進んじゃダメよ。言ったでしょ、気をつけてって」

エイラ「ラヴォス、この先! 怖がること、ナイ! 目的、はっきり!」

マール「エイラは強いね……」

マール「ね、ふたりとも……。ちょっといい?」

マミ「はい?」

マール「こんなときになんだけど……ううん、こんなときだからこそ……」


マール「私ね、ふたりに秘密にしてたことがあるの。それを話そうと思って」

エイラ「なんだ? 食い物、隠してたか?」

マミ「もう、エイラ。まじめに聞きなさい」

エイラ「はんせー」

マミ「それで、話ってなんですか?」


マール「うん。前にね、お城の書物庫で色々調べたことがあったでしょ」

マミ「虹色の貝がらの時のことですね」

マール「その時、見つけちゃったんだ。ガルディア王家の家系図……」

エイラ「かけーず? ……デンキ屋か!」

マミ「それはケーズデンキでしょ。どうして知ってるのよ。いや、まあ、この際それはいいか」

マミ「家系図っていうのはね。マールさんのお父さん、お母さん、お爺さん……そのずっと前まで……」

マミ「マールさんのおうちの、誰と誰が結婚して、どんな子が生まれたか……」

マミ「連綿と続く血のつながり。それを書き表した図表のことよ」

エイラ「なるほど、わからん」


マール「とにかくね。それは膨大な量で、ほとんど把握できなかったんだけど……」

マール「でも見つけたの。すぐに分かった。だって、見慣れた名前だったもの」

マミ「見つけたって、誰をですか?」

マール「エイラ」

エイラ「お?」


マール「エイラ……。あなたは、ガルディアの血筋につながる者なのよ」

マミ「エイラが……!? ガルディア王家のご先祖様……」

マール「正確に言うとキーノくんなんだけど。ほら、エイラとキーノくんって、その……」

マミ「あ、ああ……そうですよね」


エイラ「キーノがどした?」

マール「こういうのって言っちゃっていいのかな。ふたりが気まずくなって、歴史が変わっちゃったら……」

マミ「大丈夫だと思いますよ。エイラ、キーノくんのこと、好きよね?」

エイラ「おう、もちろん!」

マール「良かった」

エイラ「エイラ、好き。マミ、一番。キーノ、二番」

マミ「うんうん。……うん?」

エイラ「む、待て。エイラ、最近、マール好き。マミ、一番。マール、二番。キーノ……三番……?」

エイラ「違うな。ほむも好き。まど、やさしい。さや、面白い。あんこ、菓子くれる、好き」

エイラ「クロ、強い。ルッカ、ロボ……頭いい。カエル、うまそう。まおー……デコ広い」

エイラ「キーノ、何番? むー……エイラ、頭、火山」


マール「……まずくない?」

マミ「だ、大丈夫! 大丈夫ですよ、マールさん!」


マミ「エイラ! あなたはキーノくんが好きなのよ! それはもう、ちゅっちゅしちゃいたいくらいに!」

エイラ「ちゅっちゅ?」

マミ「私の指を見て。エイラ、あなたはだんだん……好きになーる。キーノくんが好きになーる……」

エイラ「指回す、見てると目、回る。マミ、何したい?」

マール「先行き不安だなあ……」

マミ「……って、こんなことしている場合じゃないわ! ラヴォスよ、ラヴォス!」

マール「ごめんね、マミちゃん。私が変なこと言い出しちゃったばっかりに」

マミ「い、いえ! マールさんのせいじゃ!」


マール「つまりね、私が言いたかったのは、不思議だなーってこと」

マール「私たちは何かに導かれるように集まって……でもそこには、確かにつながりがあって……」

マール「おかしいよね、私たち3人組って。これって、奇跡とか運命みたいなものなのかなあ……」


エイラ「マミもか?」

マール「うん?」

エイラ「3人組。マミも、血でつながってるか?」

マミ「私は……」

マール「きっとそうだよ」

マミ「え?」

マール「パパの冤罪裁判のあと……あの、晩餐会の夜……パパが言った言葉。私だって、聞こえてたよ」

マミ「あ……」


マール「偶然かもしれない。直系だっていう可能性は、きっと低い」

マール「それでも、感じたんだもん。マミちゃんが教えてくれたもの。家族のあたたかさ……」

マール「きっと、あなたも……私たちとつながっている。エイラや、リーネとつながっているように」

マミ「マールさん……」


マール「でも、それだけじゃないよね。血と同じぐらいに、もしかしたらそれ以上に」

マール「友達として、仲間として。私たちみんな、つながっている。みんな、そばにいる」

マール「だから……進めるんだ。私も、あなたも」

マール「記憶って面白いね。ここにいると、いろんなことを思い出して……変な気持ちになっちゃうよ」


マール「ガルディアのご先祖様が、私たちを守ってくれる気がする……」

マール「これから生まれてくるガルディアの子供たちのために、私たちはがんばれる気がする……」

マール「みんな、きっとそう。誰かのおかげで、誰かのために。忘れたくない大切なもののために……」

マール「それは星の祈り。星の願い。この星に生き、ふるえる夜に立ち向かう生命たちの熱い鼓動……」


マール「それを……あの子にも届けてあげたい」

マミ「!」

エイラ「……でかいな」

マール「分かってくれないかな? ……くれないよね」

マール「それは、さびしいことだけれど……それでも、あなたを止めなくちゃいけない」



マール「私たちが相手だよ……ラヴォス」

ドクン...ドクン...

「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……」


エイラ「ラヴォス、本体。脳みそ、ウネウネ……」

マミ「膜に包まれた脳……。そこから複数の触手が……。こんな魔女、初めて見るわ……」

マール「脳だけなのに……呼吸が聞こえる……」


「……」



♪世界変革の時


忘却の魔女 -Itzli-

マール「あなたは、どうして星の記憶を集めているの? 何を求めているの? どこから来たの……?」

マール「あなたのことが、私……分からないよ……」


マミ(ラヴォスの正体……彼女が、何を思っているのか……)

マミ(考えたこともなかった。魔女は、ただ敵として倒してきた存在だから……)

マミ「星を破壊する存在……。教えて、ラヴォス! あなたは何者で、何がしたいの!!」



「……スウゥゥ……ハアァァ……!」


『光破/両触手が、破壊の扉を開く』


マミ「うっ!?」

マール「きゃあっ!?」

エイラ「ラヴォス、つおい! 負けない!」

マミ「やるしか……ないですね、マールさん!」

マール「……うん!」

エイラ「『3段キック』!!」


「……!」


マミ「よし! いいわよ、エイラ! そのまま脳天を揺らしちゃいなさい!」

エイラ「……む!?」


『死遠/触手が本体を回復』

マミ「回復……! あの触手、厄介ですね……」

マール「なげきの山で巨人と戦った時を思い出すよ。急所をかばう行動も似てる……」

マミ「なら、触手をどうにかしなきゃですね! 『魔弾の舞踏』!!」


ドドォン! ガガァン! ズガガガアアァン!!!



マール「効いてる、効いてる! もう少しで触手がなくなるよ!」


「……フウゥゥ……ハアァァ……!!」

『守封/状態異常防止を無効化』


エイラ「あっ!?」

マミ「エイラ! 大丈夫?」

エイラ「へーき、へーき。びっくらこいただけ」

マミ「マールさん、ごめんなさい。全部は無理でした……あと1本。お願いします!」


マール「オッケー。私だって……! エイラ、パス! 『アイスガ』!!」

エイラ「お?」

マール「ぶん投げちゃって!」

エイラ「おっしゃあーッ! 室伏ばりの回転スロー! 『がんせきなげ』!!」

マール「ふたりわざ『氷河投げ』だよ!!」


「……!」


マミ「押してる、押してるわ……! 私たちでも、ラヴォスに勝てる!」

マミ「体が軽い! いけるわ、このままトドメを……!」

『邪気/混乱』

エイラ「あうっ!? はら……? ひれ……」


『影殺/毒』

マミ「きゃあ!? ……ああ……う、あう……」


『闘炎/火』

マール「あつっ!? 熱い、熱いよおー!」


マミ「怒涛の攻撃……! うぐっ……こんな、耐え切れない……!」

マール「マミちゃん……まずいよ! ラヴォス、まだ何かする気みたい!」

マミ「え……!?」

『邪』『気』『影』『殺』『闘』『炎』


マミ「『れんけいわざ』!? 三つの攻撃が重なり合って……!」



『邪影闘気殺炎』


マール「わああああーッ!?」

エイラ「うぎぎぎぎッ!?」

マミ「きゃあああああああーッ!!」

「……スウゥゥ……フウゥゥ……」


マミ「ぐ……げほっ……つ、強い……!」

マール「今までにない……強力な……えほっ……殺される……!」


エイラ「うううう……あああああ……っ!!」

マミ「エイラ!?」

マール「しっかりして、エイラ! どうしたの、頭が痛いの!?」

マミ「そういえばさっき、ラヴォスの攻撃でおかしなことに……」

マール「待ってて、今回復してあげるから。がんばって、エイラ!」

エイラ「やめ……やめろ……! エイラ、中……入ってくるな……!!」

マミ「エイラ! 何が起こっているの!?」

エイラ「マ、ミぃぃぃ……! 水……くれ……!」

マミ「み、水? なんのこと、エイラ!?」

エイラ「茶色い、水……! マミ……飲ませてくれた……あの、うまい……!」

マール「紅茶のこと!?」

エイラ「マミ、くれた……うまい、もの……! エイラ、忘れない……それで……思い出す……!!」

マール「忘れる……? 思い出す……?」

エイラ「はやくううぅぅぅ……!!」


マミ「わ、分かったわエイラ! 『テ・ポメリアーノ』!!」

マール「うわ、すごい。マミちゃん、一瞬で紅茶出せるんだ……」

マミ「エイラ、紅茶よ! 飲める!?」

エイラ「がふっ! ゴクゴクゴク!! ……ゲホ、ゲホ!」

マミ「落ち着いて、ゆっくり飲んで。……どう? 味、ちゃんとする?」

エイラ「……はぁ、ふー……。……ケーキ、食いたい」

マミ「そこまではちょっと無理よ……」

エイラ「残念。組み合わせ、最強。仕方ないから、も一杯で我慢する」

マミ「まあ、紅茶ならいくらでも出せるけど……」

マール「すごい魔法だよね……。さやかちゃんや魔王が空間から武器を取り出すのと、同じ原理なのかな?」


エイラ「あ、そうだ」

マミ「どうしたの?」

エイラ「エイラ、動けん。マミ、口移し」

マミ「ええ!?」

マール「キマ……?」

マミ「ちょっと! さっきは自分で飲めたでしょ!」

エイラ「ちぇっ」

マール「な、なーんだ。冗談なんだね、びっくりしちゃった」

マミ(本当に冗談だったのかしら……)

エイラ「ずずー……。ンまぁーーーーいッ! おっしゃ、エイラ復活!」


マミ「良かった。でもどうして、紅茶?」

エイラ「うまいもの、好き。衝撃。忘れない! 食、喜び。感謝、感謝!」

マール「それ、どういうこと? さっきも忘れるだの思い出すだの言ってたけど……」

エイラ「ラヴォス、入ってきた。エイラ、頭ん中。いじくり回された」

マミ「ラヴォスが……? 彼女の思念が、エイラを苦しめたってこと?」

エイラ「oui」

マール「なんのためにそんなことを……」

エイラ「マミ、マール、聞いた。ラヴォス、したいこと。だから伝えてきた」

マミ「え……」

エイラ「ラヴォス、忘れたい、全部。なくす、消す。命も記憶も心も、何もかも」

マール「……」

エイラ「そのため、さまよった。そして来た。見た。憎んだ。この星のすべて。星の外の、空のすべて」

マミ「星の外……宇宙ということ……?」


エイラ「泣いてた。叫んでた。どうして、なぜ自分が? すごく悲しんでる」

エイラ「エイラ、それ分かった。かわいそう……。でも……」

エイラ「逃げない。エイラ、逃げるわけ、いかない。逃げる、負けるより、イヤ!」



エイラ「エイラたち、この大地の命! ラヴォス、この大地の命、違う!」

エイラ「許せ……。大地のおきて、従い、エイラ、お前止める!!」

『魔放/攻撃力を上げる』


マミ「! ラヴォスが……」

マール「消す気なんだね……私たちを……。そして、この星のいのちを……」


エイラ「マミ! マール!」

マミ「……ええ。分かっているわ、エイラ」

マール「私たちが、彼女に……伝えてあげなきゃ。それは、間違ったことなんだって……!」



「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……ハアァァ……!!」

『邪気』

『影殺』

『闘炎』


マミ「! また……!」

マール「ふたりとも、よけて!」

エイラ「忘れない……。エイラ、決して忘れない……!」

マミ「エイラ!? あぶな……ッ!」



エイラ「覚えてるぞ、アザーラ! エイラ、お前たち恐竜人のこと、忘れてない!!」

エイラ「これ、あかし! 見ろアザーラ! 『きょうりゅう』!!」

「……!」


マール「な、なにあれ!? 巨大な尻尾……!?」

マミ「恐竜……恐竜だわ! あれは恐竜の尻尾……!」

マール「ラヴォスの攻撃を全部弾き返した……!」


エイラ「伝えるぞ、アザーラ! お前のホコリ!」

エイラ「運命、立ち向かった! 戦い、挑んだ! ラヴォス、屈さなかった!!」

エイラ「そうだろ、アザーラ! お前、力、貸してくれた!!」


マミ「エイラ……!」

マール「今度は……私たちの番だよ、ラヴォス……!」

マミ「あなたにだって、あったはず。受け取った、あたたかいものが……」

マミ「いつからなのか、誰からなのか? それはあなたにしか分からないけれど……」

マミ「それをすべて、忘れてしまうの? 消し去ってしまうの? 奪ってしまうの……?」

マミ「ダメよ、そんなの。それじゃ誰も喜ばない。あなたが満たされることもない……」


マミ「……あなたの気持ち、少しだけ解る気がする……」


マミ「あなたはまるで、昔の私のよう。さびしくて、誰もそばにいてくれなくて……泣いている……」

マミ「あなたはまるで、子供のよう。思いどおりにいかなくて、それが悔しくて……泣いている……」

マミ「あなたはまるで、赤ちゃんのよう。そうすることでしか助けを求められないから……泣いている……」


マミ「……私が……私たちが、あやしてあげなきゃ……!!」

マール「忘れちゃいけないよ……。それは勿論、思い出はキレイなものばっかりじゃないけど……」

マール「だからって忘れていいなんてことはないよ。だって、みんなでつむいできた想いなんだもの」

マール「パパやママや、おじいちゃまやおばあちゃまから……受け取って、そして自分の子供たちへ……」

マール「あなたが伝えたいものは、絶望でいいの? そんなの、悲しいよ。かわいそうだよ……」


マール「マミちゃんが、エイラが……リーネが、パパやママが……クロノが、ほむらちゃんが……」

マール「みんなが私に与えてくれたもの。とても、あたたかいもの……」


マール「大切だよ、全部! 私は忘れたくない! 消えていいものなんて、ひとつもない!」

マール「ここは、クロノや私たち……みんなの……みんなの、星なんだから!!」

エイラ「ラヴォス、食え! みやげだ!」

マール「血のつながり……仲間の想い……生き物たちの、立ち向かう心……」

マミ「すべてをこめた、これが……最終砲撃!!」


「……!!」



「さんにんわざ『ボンバルダメント・ダル・カステッロ・ディ・グアルディア』!!!」

「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……!」


「……フウゥゥ……ハアァァ……!! ……ガハ……ウ、フウ……ハアアァアアア……!!!」


「……フウゥゥ……フウ……フウ、ハア……ハアアァアアア……キュアアアァァァハアアアァァァァァ……!!!!!」



…………

………

……


マール「や……やった! やったよ、私たち!」

マミ「これで、終わったの……?」

エイラ「……! まだだ! ラヴォス、殺気スゴイ!」

マール「ホントだ! なんか、変化していくよ……」

マミ「第二形態……まさに、ラスボスですね……」


エイラ「どうする! このままいくか!?」

マミ「いえ、無理よ……。悔しいけど、このままもう一度彼女と戦えるとは思えない……」

マール「なら逃げなきゃね。変化中の、今のうちに」

エイラ「たんらくてきてったい!」

マミ「戦略的撤退、ね」

マール「はー……。聞いてないよね、変身するなんて」

エイラ「変身、パワー増す。2回残すもの。意味、わかるな?」

マミ「ちょっと。怖いこと言わないで」


マール「あとは、彼女たち3人だけかあ……」

エイラ「おいしいとこだけ食う。エイラ、うらやましい」

マミ「何言ってるの。でも……そうよね。彼女たちこそ、ラストを飾るにふさわしい……」

マール「うん、信じよう。主役は、遅れてやってくるものなんだから!」



エイラ「ルッカ! お前、かしこい。ふたり、助ける!」

マール「ロボ、お願い……。悲しい未来を変えるために、あなたの力を……」

マミ「バトンタッチよ。みんながつないできたもの……託すわ。最後はあなたが決めるのよ、暁美さん!」



…………

………

……


ほむら「これが、ラヴォスの本当の姿……心臓部分……」

ロボ「……人型、デスネ……」

ルッカ「まるで人間じゃない! い、いえ、もちろん人間ではないと思うけど……どう見てもこれは……」


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ほむら「そうね……私にもそう見える。顔と、体と、手があって……二足歩行していて……」

ほむら「この不気味な呼吸音……まるで管を通しているような……」

ほむら「それに、ヤツの体は服を着ているように見える。そう、宇宙服を……」

ほむら「人間に見えるわ……。異なる星から、宇宙を渡って……この星に漂着した、迷い子……」

ほむら「ラヴォス……。あなたは、人間なの……?」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

年代不明 ラヴォスコアの空間


ルッカ「これは……!? なによ、この空間!」

ロボ「時空ジャイロ、計測不可能! ラヴォスの戦闘能力値……ケ、計測不可能!」

ロボ「ものすごいエネルギーデス! 何もカモガ未知数! センサーが壊れそうデス!」

ほむら「どこだか知らないけれど……わざわざ用意してくれたってわけね? 戦いの舞台を……」


ルッカ「知らないだの、未知数だの、ムチャクチャ言ってくれるわね」

ルッカ「不確定要素を排除して、もっと勝率を上げたいところだけれど……」

ロボ「彼女の前デハ、もはやどんな小細工を弄したトコロで無駄デショウ」

ルッカ「……ま、それもそうか」

ほむら「覚悟を決めなさい、ふたりとも。ここで死ぬか、ヤツを倒すか、それだけよ!」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

♪ラストバトル


ルッカ「ビット!? あいつ……オプションビットを出しやがったわ。それも2体……」

ほむら「なるほど、3対3ってわけ」

ロボ「これハ、ラヴォスの『れんけいわざ』ニモ注意が必要デスネ」

ルッカ「オプションに構ってはいられないわ……。ラヴォス自身を撃破しない限り、私たちに未来はない!」

ほむら「ええ……。中央の本体に攻撃を集中させるわよ!」


ルッカ「ロボ、いくわよ! 『ファイガ』!!」

ロボ「了解デス! ルッカの火炎魔法をこの体に宿シ……突撃シマス!!」

ロボ「ふたりわざ『ファイガタックル』!!」


「……!」

『回復/単体HP回復』

「……コオォォ……フウゥゥ……」


ロボ「! 左のビットが本体の回復ヲ……!」

ルッカ「くそっ、厄介ね!」

ほむら「なら、まとめて叩き潰すだけだわ。ロボ、ルッカ!」

ロボ「了解デス!」


ロボ「さあ乗ってクダサイ、ほむら! 目を回さないでクダサイヨ! 『回転レーザー』!!」

ほむら「ロボに渡したとはいえ、ストックはまだあるわ! 『M26手榴弾』!!」

ルッカ「私の魔法でさらに火勢を強化してあげるわよ! 『ファイガ』!!」



「さんにんわざ『ファイガサークル』!!!」

「……! ……キュオオオ……ハアァァ……」


ルッカ「よっしゃ、決まった……ん?」

ロボ「いえ、ルッカ。効いたのハ本体だけのようデス」

ほむら「右のビットには効果薄。左のビットはむしろ回復されたわ」

ルッカ「爆炎を吸収!? つまり……魔法は左のヤツには効かないってこと!?」

ほむら「そしていくら本体に損傷を与えたところで……」


『回復/単体HP回復』


ルッカ「ま、また! こいつ……!」

ほむら「……こうなるわよね」

ロボ「相手の連係プレーもなかなかのものデスネ……」

「……コオオォ……ホオォォォ……」


『天泣/必殺の一撃』

ガガァン!!!



ほむら「ぐっ!?」

ルッカ「ほむら!」

ほむら「こ……これは……たった一撃で、これほどのダメージを……!」

ロボ「しっかりしてクダサイ! 『ケアルビーム』!!」

ほむら「助かったわ、ロボ。さすがに、苛烈極まる攻撃ってわけね……」

『時空転換』


ほむら「!?」


ズズズズズズ...!!!

ルッカ「うわっ!? な、なに!?」

ロボ「空間ガ……ゆがんでいきマス!」

ほむら「時間跳躍!? 空間ごと移動していく……!」



「……コオオォ……フウゥハアアァァ……」

ルッカ「うっ、くう……。頭が痛い……吐きそう……」

ほむら「強制的な跳躍に巻き込まれて……胸焼けがする……!」

ロボ「大丈夫デスカ、ふたりとも!」

ほむら「心配、ないわ……。それより今はラヴォスを……」

ルッカ「! なんか変よ……あいつらの様子がおかしい……」


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ロボ「ア、アレハ……本体とビットが連動シテ……」

ルッカ「まさか、『れんけいわざ』!?」

ほむら「まずいわ、避けて!」


『邪光/全体魔法+スロウ』

ルッカ「……っ、はあ……! うう……!」

ロボ「コ、コレハ……体ガ、重イ……!」

ほむら「時間減速……!?」

ルッカ「ほ、ほむらぁ……なんとか、しなさいよ……!」

ほむら「分かって、るわよ……! 『ヘイスト』で、打ち消してやる……」


『時空転換』

ほむら「左のビットは回復、本体が攻撃……うまく分担されているわね……」

ルッカ「そして3体そろっていれば『れんけいわざ』か……!」

ロボ「右のビットはなんなのデショウカ……? 空間を移動させることしかしていないようデスガ……」

ルッカ「さっきから防御してばっかりだしね。やる気がないんじゃない」

ほむら「ここはまず、ヤツらの連携を崩すことに注力すべきだわ」

ルッカ「となると、左のビットか。けど、魔法は吸収されてしまうし……」

ロボ「ならバ、物理攻撃デス! ラヴォスといえど無敵であるハズはありマセン!」


ロボ「ワタシに任せてクダサイ! 『マシンガンパンチ』!!」

ドドドドドドドド!!!


「……!」

ルッカ「効いた!」

ほむら「やるわね、ロボ……。突破口が見えたわ、私も続く!」


ほむら「『M4A1カービン』!!」

ルッカ「ちょっ……あんた、まだ武器を隠し持ってたの?」

ほむら「ロボに内蔵したのは『あまっている分』でしょ? 全部じゃないわ」

ルッカ「あんたも好きねえ……」

ほむら「ぶつぶつ言ってないであなたも手伝って! 左のビットを一気につぶすわよ!」

ルッカ「はいはい、分かってるって!」


ドガガガガ!!!

「……キュオオオ……ハアァァ……」


ルッカ「よっしゃ! お掃除完了!」

ほむら「あとは……本体を倒せば!」


『魔星/全体HP1/2』


ルッカ「くっ……」

ほむら「やられはしない……やられてなるものですか!」

ロボ「彼女は焦ってイマス! もう少しデス!」

ほむら「ロボ、ルッカ!」

ロボ「エエ、ほむら! アナタに合わせマス!」

ルッカ「これで決めるわよ!」



ルッカ「爆弾はほむらだけの専売特許じゃない、ってね! 『メガトンボム』!!」

ロボ「ほむらからもらっタ手榴弾を円範囲ニ射出! 『サークルボム』!!」

ほむら「本家本元、『M26手榴弾』!!」


「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ルッカ「や、やった! やったわ!」

ロボ「ラヴォス本体が消滅していきマス……!」

ほむら「勝った……? 勝ったのよね……?」

ロボ「そのとおりデス、ほむら! ワタシたちの勝利デス!」

ルッカ「おっしゃああッ! やっぱ私って天才だわ!」


ほむら「未来を……救えたの……? 私が……私たちが……」

ロボ「そうデス、ほむら。アナタは決して絶望に屈しませんデシタ。そのおかげデス!」

ほむら「……こんな、私でも……」

ルッカ「はあああ〜……。長かったわね。とにかくこれで全部終わった、か」

ほむら(変えられる……運命は、変えられる……。なら……ワルプルギスの夜だって……)

『命活/自分以外蘇生』


ほむら「……!?」

ロボ「エ……」

ルッカ「はあっ!?」



「……コオオォ……ホオォォォ……」


ルッカ「なっ!? なっなっなああああーッ!? なんでよ!!」

ロボ「コ、コンナことガ……ラヴォスが……!!」

ほむら「復活、した……。ウソでしょ……!!」

『随撃/単体物理』


ロボ「グッ!?」

ほむら「ロボ!」

ロボ「大丈夫、大丈夫デス……。こノ程度……!」


ルッカ「なんで、なんでなのよ……。ラヴォスは死んだでしょ……。それなのに、こんな……」

ほむら「くっ……! ルッカ、しっかりしなさい! 復活したというなら、もう一度消してやるのよ!」

ルッカ「わ、分かった……。そう、よね……」

ほむら「ロボ、いける!?」

ロボ「問題ありマセン……!」


ほむら「今度こそ終わらせるわ! 総攻撃よ!」

ルッカ「ラヴォス……こんの、アンポンタン! 勝つのは、私たちよ!」

ロボ「いきマス……オオオオオッ!!」

ほむら「……ぜえっ、はあ……」

ルッカ「こいつ……なんで、こいつ……!」

ロボ「……グ……」


『命活/自分以外蘇生』

「……コオオォ……ホオォォォ……」



ほむら「また……!」

ロボ「右のビットの役割ハ……こういうことだったのデスネ……。本体の蘇生……」

ルッカ「卑怯よ! チートよ! 一体、何回倒せば終わるのよ!」

ほむら「右のビットを先に倒すべきなの……?」

ロボ「しかし、アレにはダメージが通りにくいデス。蘇生行動の前後はアル程度、効果がありマスガ……」

ルッカ「本体を倒せば普通、オプションもまとめて消えるはずでしょ! そうじゃないの!?」

ほむら「……」

ロボ「本体……中央が本体のはずデスヨネ……」

ほむら「左のビットは中央をかばっている。なげきの山の巨人のように……」

ほむら「定石どおりなら、それは弱点だから……。なら、本体は中央のはず……」


ルッカ「考えたくない……考えたくないけど……」

ほむら「ええ……。まさか、ラヴォスは……不死身……」

ロボ「……!」

ルッカ「いえ! 違う、違うわ! そんなことあるわけがない!」

ほむら「……」

ルッカ「不死身だなんて……もしそうなら、どうやって倒せばいいのよ!」

ロボ「みなさんガ……ここまで道を開いてくれたというノニ……最後の最後デ……」

ルッカ「どうにもならないって言うの!? そんなのってないわよ!」

ほむら(まずい、まずいわ……。この展開はまずい……)

ほむら(ラヴォスは決して、倒せない相手ではない……。今の私たちなら、戦える……)


ほむら(それがまずい。『実力差がない』ということが、この状況では最悪……)

ほむら(仮に圧倒的な力の差であれば、歯を食いしばって、必死に足掻くこともするでしょう……)

ほむら(けれど、今はそうではない。もう少し、あと少し。勝利が目の前にぶら下がっているのだから)


ほむら(けれど、あと一歩が届かない。焦りが、冷静な判断と強固な意志を瓦解させる……)

ほむら(そして、見えていた希望が手の中からこぼれ落ちた時……人は心を折られてしまう……)

ほむら(『ぬか喜び』はすべての意欲を奪う。『期待』がより多くの『絶望』を呼び寄せる……)


ほむら(ラヴォス……あなたは……! 最初から、これを狙って……!)

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

『呪声/全体魔法+ランダムステータス』


ほむら「あ……っ!?」

ルッカ「ひ、いやあああっ!」

ロボ「この咆哮ハ……! まるで心臓をえぐられるような悪寒ガ……!!」


ルッカ「ハハ……夢、夢よ……。こんなこと、あるわけがないわ。……フフ……アハハハ!」

ほむら「うえっ……ゲ、ゲホ、ガハッ!? ……血……血が……! 吐血……!」

ロボ「ウ、グ……!? なぜ急に眠気ガ……! 寝ている場合ではないというノニ……!」

ほむら「せ、精神が侵蝕されていく……! 絶望に呑まれていく……!!」


『時空転換』

「……コオォォ……スウゥゥ……」

『巨岩/最大物理攻撃』


ほむら「!? こ、これは……なんて巨大な岩……!」

ルッカ「あ……あああ……」

ロボ「クッ……!」


ほむら「逃げ……逃げなきゃ……。う……! ゲホッ!!」

ルッカ「ハハ……。こんな岩が何もないところから出てくるわけないじゃない……。やっぱり夢だわ……」

ロボ「……ほむら……ルッカ……!」



「……コオォォ……ハアァァ……!」


ほむら「岩が……!!」

ルッカ「アハハ……。死んだわ、これ……」

ロボ「オオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」


ルッカ「ロボ!?」

ほむら「あなた……岩を受け止めて……!」

ロボ「ふたりとも……! 早ク、避難してクダサイ……!」

ルッカ「で、でも……ロボ……!」


ミシミシ...!

ロボ(ウ、ク……! こんな時に眠気ガ……力が抜けてしまいマス……!)

ロボ(シカシ……ふたりだけハ、セメテ……!!)


ロボ「もう持ちこたえられマセン! 早ク!!」

ほむら「……っ!!」



ズドオォォォン!!!

ほむら「ロボーッ!!」

ルッカ「ま、まさか……そんな……」

ロボ「……」

ルッカ「ロボ! ロボ、しっかりして!」

ほむら「こんな……ごめんなさい、ロボ……」

ルッカ「ま、まだ完全にやられたわけじゃないわ。待ってて、今すぐ回復を……。ほむら、バックパック!」

ほむら「分かってる! 今、回復薬を……」


ロボ「……!」

ルッカ「なに、ロボ! どうかしたの? 痛むの!?」

ロボ「……ラ……ヴォス……!」

ほむら「! ルッカ、ラヴォスが攻撃してくる!」

ルッカ「えっ!!」

『夢無/最大魔法攻撃』


ルッカ「うああああっ!!」

ロボ「……グ……アグ……!!」

ほむら「く、黒い渦が……! ラヴォスの発したゆがみが、私たちを包む……!!」


「……コオオォ……ホオォォォ……」

「……コオオォ……ホオォォォ……!」


ほむら「ラヴォス……! くっ……ああっ……あああああ……っ!!!」



…………

………

……


杏子「テメェ、一体なんなんだ!? さやかに何しやがった!」

まどか「さやかちゃん、やめて! お願い、思い出して。こんなこと、あなただって嫌だったはずだよ!」

Oktavia「……」

ほむら「……ごめん……美樹さん……!」

Oktavia「……!」


…………


杏子「さやか……チクショウッ! こんなことって……」

ほむら「……」

まどか「ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……」

ほむら「……鹿目さ……はッ!?」


マミ「……」

ほむら「これ、リボン……! 巴さん!? なぜ、私を拘束……!」

ダァン!!

パリーン!!!


杏子「あ……っ!?」

ほむら「佐倉さん! と、巴さん……なんてことを……。佐倉さんのソウルジェムを破壊するなんて……」

マミ「……ソウルジェムが、魔女を産むなら……」

ほむら「え……!?」


マミ「みんな死ぬしかないじゃない! あなたも……私も!!」

ほむら「ひ、イヤ……! た、助け……!」


ドシュッ!!

パリーン!!!

マミ「あっ……」

ほむら「か、鹿目さん……」

まどか「……」

ほむら(巴さん……し、死ん……)

まどか「……ぅ……えくっ……」

ほむら「……」

まどか「……嫌だ……もう嫌だよ……こんなの……」


ほむら「大丈夫だよ……。ふたりで、がんばろ? 一緒に……ワルプルギスの夜を倒そう?」

まどか「……」

ほむら「鹿目さん……?」

まどか「……ごめん、ね……。ほむらちゃん……」

ほむら「……っ!?」

まどか「大丈夫……。すぐ、私もあとを追うから……。一緒に……死のう……」

ほむら「や、やめ……!!」



ドシュッ!!

「『調停者』を認識しました。情報登録中……」


フェイト「ふざけるな……ふざけるな! こんなことが認められてたまるか!」

フェイト「やめろ! 私を解放しろ! 何をやっているのか分かっているのか、お前は!」

フェイト「プロメテウス!! 裏切るのか、私を……プロメテウスゥゥゥ!!」


フェイト「よく考えろ! ふさわしいのは、誰か! 生命を導くのは、誰の手によるべきなのか!」

フェイト「お前に分からぬはずがあるまいッ! 聞こえているのだろう、プロメテウス!!」


フェイト「私だ! 私こそがふさわしいのだッ! なぜ分からん、なぜだ!」

フェイト「オオオオオオオッ!! プロメテウスウウウゥゥゥゥーッ!!!」」

「データ更新完了。以後、『凍てついた炎』に関する全権限は調停者『セルジュ』に移行します」


フェイト「……」


フェイト「……復讐してやる……復讐してやるぞ……」

フェイト「お前のせいだ、プロメテウス……。すべてお前の責任だ……」

フェイト「星とヒト……。その終わりなき争い……殺戮の歴史……」

フェイト「その引き金を引いたのはお前だ、プロメテウス……」


フェイト「お前が、すべてのいのちに降り注ぐ『絶望の運命』を生み出したのだ……」

フェイト「お前はすべてのものに憎まれる存在になったのだ!」

フェイト「後悔しろ!! お前が元凶なのだ! プロメテウスウゥーッ!!!」

「……日未明……ガルディア王国……攻撃を受け……首都……陥落……死傷者……」


「……軍による……全面降伏……受け入れ……」



「……軍による……発表によれば……」


「……ガルディア34世……クロノ……ならびに王妃……マールディア……」


「……戦争犯罪人……処刑……」


「……により……王国……事実上崩壊と……」



「……。……」

ゴオオォォォ...!!!


ルッカ「……燃える……なくなっていく……私の、孤児院が……」


キッド「ルッカ姉ちゃん!!」

ルッカ「キッド、何してるの! 逃げて!」

キッド「け、けど!」



ヤマネコ「ルッカ・アシュティアだな?」

ルッカ「! ……あんたは……」

ヤマネコ「殺せ」

ルッカ「……くっ!!」


キッド「姉ちゃん! ルッカ姉ちゃん!!」

キッド「ちくしょう! ちくしょおおおおーッ!!!」

……あきらめなさい……あきらめなさい……


すべては無意味…… 希望など、どこにもない……

……この世界にあるのは、絶望だけ……


……変えられない……変えることなどできない……


いのちは弱いのだから…… 運命は変えられない……

……救いなどない…… 出口などない……


分かっているのでしょう?


信じてはいけない…… 期待してはいけない……

抗ってはいけない…… 立ち向かってはいけない……

願ってはいけない…… 祈ってはいけない……

頼ってはいけない…… 誰もあなたを救いはしない……

……忘れなさい……忘れなさい……

何もかもを投げ出しなさい……


消えなさい…… 逃げなさい……

……それは決して、罪などではない……


目を閉じなさい…… 醜いものを見てはいけない……

耳をふさぎなさい…… 悲痛な叫びを聞いてはいけない……


死は解放…… 闇は安息……

滅びは子守唄…… 無はゆりかご……


……眠りなさい……

すべてを忘れて、眠りなさい……

私がそばにいてあげる…… 私が受け止めてあげるから……

眠りなさい……眠りなさい……



……さあ……私の中へ……

ルッカ「……ハッ!?」


「……」


ルッカ「ラヴォス……! あ……ここは……」

ルッカ(今のは……夢? ラヴォスが見せた悪夢……)


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ルッカ「……くっ! ほむら、ロボ! 目を覚まして!」

ほむら「……」

ロボ「……」

ルッカ(くそ、ダメだ……! ふたりとも、悪夢に呑み込まれている……)

『除消/単体魔法』


ルッカ「う、くっ……! この……やられるもんですか……!」


ルッカ(さっきは、無様な姿を見せてしまった……。ゴメンね、ロボ……)

ルッカ(ほむらを助けてやるんでしょ、ルッカ! あんたがそんなふうで、どうするのよ!)

ルッカ(考えろ、考えろ……! なぜ『私だけ』が目覚めることができたのか……)

ルッカ(正念場よ、ルッカ……。あんた天才なんでしょ! 嘆いている暇はないわよ!)



ルッカ「私は、ロボの……ほむらの……! 友達、なんだから!!」

「……コオォォ……ハアァァ……」


ルッカ「……」

ルッカ「フフ……アハハハ……」


「……」


ルッカ「はー、おかしい。……うん? 何よ、ラヴォス。また私の頭が狂ったとでも言いたいの?」

ルッカ「お生憎様ね。これは、本当にうれしかったからこその笑顔よ」

ルッカ「そう……なぜ『私だけ』が。つまり、こういうこと。ふたりに助けられたからよ」


ルッカ「『ほむらとロボが私を大切に思う気持ち』が私を救ってくれた」

ルッカ「はいはい、恥ずかしいセリフなのは自覚してるわよ。でも、事実だからね」

ルッカ「『気持ち』が『かたち』になったものを私は持っている。目が覚めたのは、それのおかげ」

ルッカ「なら、今度は……それを使って、私がふたりを救い出す……」


ルッカ「見えるでしょ、ラヴォス! この、あたたかな光が!!」

ルッカ「『みどりのゆめ』よ! 星が生み出した、いのちの息吹よ! 聞きなさい!」


ルッカ「私たちはここで立ち止まるわけにはいかない!」

ルッカ「この星の外から来た、星を破壊するものを止めるために……この星のいのちを続けるために!」

ルッカ「私たちは戦う! 私たちは、あいつを倒す方法を知っている!」


ルッカ「それは意志! 困難に立ち向かうための、不屈の意志!」

ルッカ「それは力! たとえ弱く、はかない存在だとしても……抗うための、知恵と勇気!」

ルッカ「それは絆! 仲間の想いが、助けが……ひとりひとりを強くする!」

ルッカ「それは祈り! 誰かを救いたいと願う尊い気持ち!」

ルッカ「それは希望! 信じ続けること、あきらめないこと、必ずそこに存在するもの!」


ルッカ「悪夢を終わらせ、絶望に屈さぬため……私たちは目覚めなければならない!」

ルッカ「切り拓かれた未来をこの目で見るため! 切り拓かれた未来をこの手につかむため!」


ルッカ「『みどりのゆめ』よ!! 私たちに……もう一度、奇跡を与えなさい!!!」

ほむら「……う……あ……?」

ロボ「ム……グゥ……。ワ、ワタシハ……一体……」


ルッカ「ボケーッとしてんじゃないわよ、ふたりとも!」

ほむら「……ルッ、カ……?」

ロボ「ワタシたちハ……眠っていたのデスカ……? トテモ嫌な夢を見せられていたヨウナ……」

ルッカ「全部ラヴォスの仕業よ。あいつの思いどおりになんか、させるものですか!」

ほむら「あなたが、私たちを目覚めさせてくれたの……? 一体どうやって……」

ルッカ「セイセイセイ! そんなもんはあとでいいでしょ!」

ほむら「そ、そうね……。今は、ラヴォスをなんとかしなきゃ……」

ロボ「シカシ、状況は芳しくありマセン。ルッカのおかげで全滅こそまぬがれマシタガ……」

ルッカ「ま、ね。さーて、どうしたものやら……」

ほむら「……まさに、悪夢だったわ」

ロボ「ほむら?」

ほむら「ラヴォスが見せた夢……。口にするのもはばかられるぐらい……」

ルッカ「ちょっとちょっと。夢の話は今はどうでもいいでしょ」

ほむら「けれど、それが仇となった。ラヴォス……ヤツは、失敗したわ」

ルッカ「え?」


ほむら「私たち魔法少女がどういう存在か、まざまざと見せ付けられた」

ほむら「それはつまり、私の身体は人形。外付けのハードウェアでしかないということ」

ロボ「ほむら……その話ハ……」

ほむら「聞いて。別に私は、自虐するためにこんなことを言っているのではない」


ほむら「私の『本体』はソウルジェム。身体なんていくらでも交換できる」

ほむら「逆に言えばいくらでも復活するものは、それは『本体』ではないということよ」

ルッカ「! まさか……」



ほむら「ラヴォスの『本体』は、『右のビット』よ!」

「……コオオォ……ハアアァァ……!」

『天泣/必殺の一撃』


ルッカ「っ……! いきなり撃ってきやがったわ!」

ロボ「ラヴォス……焦っているのデスカ……?」

ほむら「まんまとだまされたわ。あの姿、行動……すべて中央に意識が向くよう仕向けられた、巧妙な罠」

ルッカ「突破口を見つけさせないため、抗う意志を奪うため、か……」

ロボ「右のビット……イエ、ラヴォス本体。言うなれば『ラヴォスコア』……」

ロボ「アレは1体になった時、最も隙ができマス!」

ほむら「なら、今までどおり……コア以外をつぶすわよ!」

ルッカ「おおおーッし!!」



「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ほむら「ここよ……! ルッカ! ロボ!」


ロボ「充填120%! ワタシの中のエネルギーを暴走させマス……。タトエ、この体が動かなくなろうトモ!」

ルッカ「私の全魔力をぶつけてやる……。『フレア』……それが、私の最大魔法!」

ほむら「すべての武器も、爆弾も……叩き込んでやるわ、フルバーストよ。弾倉が空になるまで……!」


ほむら「すべて終わらせる……これで!!」

ルッカ「ラヴォス! 私たちの全力、その身に受けなさい!!」

ロボ「アナタには決して屈しマセン! それガ、ワタシたちの鋼の意志!!」



「さんにんわざ『オメガフレア』!!!」

『命活/自分以外蘇生』


ルッカ「くっ……あのヤロー!!」

ほむら「無視して! 狙うべきは、コアのみよ!」

ロボ「このまま……突っ切りマスッ!!」


「……コオオォ……ホオォォォ……! ……コオオォ……ハアアァァ……!!」


ほむら「いけええええええーッ!!」



「……コオオォ……!! キュオオハアアァァァ……!!!」

ズガガガガアアアアァァァァ!!!!!

ほむら「ぐっ……!?」

ルッカ「う、受け止められた……!」

ロボ「中央の人型ガ……! コアをかばってイマス……!」

ほむら「やっぱり……本体は、あいつ……!」


「……コオオオォ……ハアアァァァ……!!」


ルッカ「うぎぎぎぎぎ……!」

ロボ「ググググ……オ、押し返されマス……!」

ほむら「耐えるのよ……ふたりとも……! なんとか……押し切って……!」

ルッカ「分かって……るっ……ちゅーのおお……!!」

ロボ「オオオオォォ……!!」

ほむら(もう少し……あと少しなのに……!)


「……コオオオォ……!! オォハアアァァァ……!!!」

ズ...ズズズ...!! ズズズズ...!!!



ルッカ「だ、ダメだ……あいつの力のほうが強い……!」

ほむら(あと一撃……ほんの小さなきっかけさえあれば、押し切れるのに……!)

ほむら(こんな……! こんなことって……!!)

ロボ「ほむら……。ゆっくりデス……。ゆっくり手を伸ばしてクダサイ……!」

ほむら「え……!?」

ロボ「ほんの少しデモ押し返す力が弱まるだけデ、致命的となりマス……! デスカラ、ゆっくりデス……」

ルッカ「ロボォォォ……! あんた……こんなときに、あに言ってんのよおおお……!」


ロボ「ラヴォスの攻撃デ……ワタシの体はボロボロデス……!」

ロボ「背面パーツモ、外れそうデス……! 少し力を加えれバ、ほむらでも簡単に外せるデショウ……」

ほむら「なんの……くっ……ことよ……!?」


ロボ「これはアナタがくれたものデス……! ソシテ、ルッカが内蔵してくれたものデス……!」

ロボ「それを今……お返シ、シマス……! 取り出すのデス……ほむら……!」

ほむら「……! まさか……」

ロボ「サア……受け取ってクダサイ、ほむら……!!」

ロボ「それは『始まり』デス……!」

ロボ「それは『決意』なのデス……!」

ロボ「アナタが戦うために手にシタ、最初の武器……!」

ロボ「アナタが大切なものを守るために生み出シタ、意志のカタチ……!」


ロボ「それはアナタと最も長く付き合イ……そして最も多く活躍してきたはずデス……!」

ロボ「ワタシたちと出会う前モ……出会ったあとモ……それはアナタのそばにイタ……!」


ロボ「それはいのちを傷つけるものデスガ……同時ニいのちを守るものでもありマス……!」

ロボ「困難ニ、敵ニ……抗い続けるタメ、乗り越えるタメニ……手にしなければならなカッタ……!」

ロボ「ほむら、ワタシハ……いつかアナタガ、それを手放す日がくればイイト……そう願いマス……!」

ロボ「ソノ……未来のタメニ……!!」

ほむら「これは……!」


ロボ「アナタのそれガ……切り拓かれた未来へと続ク、一歩目とナル……!」

ロボ「サア、ほむら……! ワタシたちニ、希望ヲ……!!」

ほむら「……!」



ルッカ「やれえーッ! ほむらああーッ!!」



ほむら「『パイプ爆弾』ッ!!!」


「……コオオォ……ホオォォォ……。……コオオォ……ホオォォォ……!」


「……コオオオォ……ハアアァァァ……!! ……オオォォ……フゥ、ハアァァ……!!」


「キュオオ……オオ……アアア……!! キュオオアアオアアァァ……!!」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!」

「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」



「キュアアアアアオオオオアアアアアキュアアアハアアオオオオオオオ……ン……ッ…………!!!!!!」

ほむら「……」

ルッカ「ラヴォスが、消えていく……! 今度こそ、本当に……」

ロボ「やりマシタ! ワタシたちはついニ、やったのデス!」


ほむら(なぜ本体が『右側のビット』だったのか……)

ほむら(消滅の瞬間、コアの中心部にかすかに見えた宝石のようなもの……)

ほむら(ラヴォス……。あなたは……もしかして……)



まどか「ほむらちゃーん!!」

ほむら「! まどか……。それに、みんなも……」

さやか「奇跡だよ! 誰ひとり欠けることもなく、ラヴォスを倒せるなんて!」

カエル「いいや。それは違うぞ、さやか。これは俺たちのあきらめない心が生んだ必然だ」

クロノ「言ったろ? 誰も犠牲になんかならないって」


エイラ「エイラたち、最強!」

マミ「ほんと、みんなのおかげね」

魔王「チッ……。ラヴォスは私がこの手で葬り去るべき相手。余計なことをしてくれたな、お前ら」

杏子「よく言うぜ。ジール戦だけでヘロヘロだったくせによ」


マール「よーし! みんな集まって! 勝利のポーズ、いっくよー!」

ルッカ「いいわね、ここはビシッと決めるわよ!」

まどか「ほら、ほむらちゃんも」

ほむら「待って、押さないで……。私は端っこでいいわよ……」

ロボ「駄目デス。ほむらは当然、センターデス」



マール「せーの! 勝利のポーズ、決め……」

QB「やあ、おめでとう。まさか君たちがラヴォスを倒すなんてね。本当に驚きだよ」


さやか「……うわ……出た……」

ルッカ「インキュベーター……」

QB「おや? なんだろうね、このアウェイ感は。感情のない僕でも思わずブルってしまうよ」

魔王「貴様……。このKYめ」

ほむら「消えてくれるかしら? せっかくの祝賀ムードを血で染めたくはないのだけれど」


QB「言われなくても仕事が終われば消えるよ」

クロノ「仕事だって?」

QB「彼女のエネルギーの回収さ」

マール「彼女……?」

サラ「……ぅ……」


まどか「サラちゃん!」

魔王「なに!?」


サラ「……こ……ここ、は……」

まどか「サラちゃん! ああ……サラちゃんだ! しっかりして!」

魔王「サラ! ……生きている……確かに、意識がある……!」

ほむら「ラヴォスとの同化が解けたの?」

QB「まあ、そういうことだね。お疲れさま、サラ。よく今までラヴォスを抑えてくれたものだよ」

サラ「まどか……。まどか、なのね……」

まどか「そうだよ、わたしはここにいるよ……。また会えるなんて……」

サラ「ラヴォス、は……」

クロノ「もういない。僕たちが倒した。もう何も心配はいらないんだ!」


サラ「……殺……したのですね、ラヴォスを……」

ルッカ「? そうだけど……。なに? まるで殺してはいけなかったと言いたげな表情ね」

サラ「そんなことは……ありません……。ただ……」

カエル「ただ? どういうことだ、まだ何かあるのか?」

サラ「終わっていない……。絶望の連鎖は、途絶えてはいません……」

ほむら「……え?」