見崎「榊原くんが私以上にミステリアスだった」恒一「ククク……」(448)

~病室~

水野姉「ほー、また得体の知れないもの読んでますねオカルト少年」

恒一「これはヴォイニッチ手稿というシロモノだ」ペラッ

   「暗号と思しき未知の文字で綴られた挿絵付きの書物でな」

   「描かれているのは地球上のどの植物とも適合しない、しかし緻密で写実的なスケッチ」

   「そしてこの一見でたらめに見える文字列だが――」トントン

   「言語学の統計的手法で解析した結果によると」

   「確かな規則性と意味を持つ自然言語か人工言語のような文章列であるらしい」

   「数多の学者たちが解読しようとしたが未だ叶わぬ謎の書物……どうだ、実に興味がそそられるだろう」ククク

   「貴様が望むなら貸してやらんでもないぞ?」

一同(うわあ……)ドンビキ

水野姉「あはは遠慮しときますー。じゃ、あとはみなさんヨロシクー」ソソクサ

風見「えっと、僕たち夜見北中学3年3組の代表で来ました」

恒一「そうか」ペラ…ペラ…

風見「僕は風見、こっちの桜木さんとクラス委員長をやっていて、こっちの赤沢さんは対策係を――」

恒一「対策係、だと?」ピクッ

恒一(ついに『コレ』を求め『機関』が動き出したということか……)ククク

風見「あ、あの……?」

恒一「嗚呼申し訳ない、続けてくれたまえ」

   (腕が! 左腕が! 疼く、疼くぞ……!)ククク

桜木「あの、それでこれ、みんなからの花束です」カサッ

恒一「ほう……これはこの惑星の植物と手稿との良い比較サンプルになる、有り難く頂戴するぞ女」

桜木「桜木ですぅ……」

恒一「――おい対策係とやら。さっきからだんまりだがどうした?」

   「『対策』、するために来たのだろう?」ククク

赤沢「! ……そうね、じゃあ榊ばr……恒一くんって呼んでもかまわない?」

恒一「好きに呼べ、名前など記号に過ぎん」フン

   「……それだけか?名前で呼んで、それからどうする?」

赤沢「えっと……これからもよろしくね恒一くん」スッ…

恒一(差し出すように伸ばされたのは、左手……)

  「そういうことか――流石は対策係、有能だな」ククク

赤沢「あ、ありがとう……?」

恒一「では、こちらこそ夜露死苦頼もうククク……」ガシッ

一同「っ!?」

桜木(包帯が……)

風見(指先までぐるぐる巻き……)

赤沢(……これじゃ体温わかんないじゃない!)プルプル

恒一(封印されし左腕の波動に震えておるな)ククク

~教室~

恒一「父上の任務の都合により首都からこの町に居を移した」

   「現在は祖父母の下で厄介になっている」

   「諸君とは良好な関係を築きたいと考えているが……あまり俺には近寄らない方が身のためかもしれん」

   「ついにこの左腕を求め『機関』が動き出したようだからな……」ククク

クラス(ざわざわ……)

久保寺「……えっと、3組の新しい仲間として仲良くやっていきましょう」

    「みんなで一緒に健やかに卒業できるよう」

    「では榊原くんはあそこの席に」

恒一「御意」スタスタ

見崎「……」ボー

恒一「……」スタスタスタ

   「……眼帯も悪くないな」ククク

~教室、昼休み~

「おい、誰か話しかけろよ……」
「そうは言っても自己紹介とかヤバめの雰囲気だったじゃん」
「今もなんか左腕見つめて独りで笑ってるし……」
「ちょっと男子ー、差別はよくないよー」
「じゃあお前行ってこいよ」
「……ごめんね?」
「けどこのままじゃ赤沢さんに怒られちゃう……」
「赤沢もなんで今日休むかのう」
「そもそも病室行ったときになんで話さなかったんだ?」
「……ちょっと想像して欲しい」
「なんだよ?言い訳か?」
「オカルト対策の話をしに行ったはずが、そこはすでに得体の知れないオカルトグッズで埋め尽くされた病室」
「しかも終始あんな調子で無意味に笑ってるんだ」
「かと思えばいきなり左腕を抑えて震え出したり」
「気胸だろ……肺の病気だろ……なんで腕に包帯巻いてるのさ……」
「……ごめんね?」
「……赤沢が登校して来んの待とうぜ」

~授業中、学校屋上~

見崎「……」カキカキ

恒一「ほう、上手いものだな」

見崎「ひゃぅ!?」ビクッ

恒一「貴様もここから高みの見物か?」ククク

見崎(いつから後ろに……それに左腕に、包帯?)

恒一「いいのか?『こんな所』にいて」

見崎「……さあ、近くで見ていても意味はないから」

   「そういうあなたは大丈夫なの?」

恒一「さあな」ククク

   「いつかは『在るべき場所』へ還らなくてはならんがそれは今じゃない、それだけだ」

見崎「そ、そう……」

恒一「嗚呼その絵、翼が似合うと思うぞ」

   「夜に濡れたが如き漆黒の翼がな……」ククク

見崎(堕天使の翼……いいかもしれない)グッ

前にも立てなかった?

>>10 数日前に立てたときは用事で途中離脱しちゃったから、書き直しと書き溜めして再度投下中


恒一「ところで見崎冥」

見崎「なにそれかっこいい」

   「でもメイは鳴くって言う字だから」

恒一「共鳴のメイ、悲鳴のメイか」

見崎「そう……それで、なに?」

恒一「先日の夜のことは覚えているか?」

見崎「……」フルフル

恒一「俺が霊安室で仮眠を取っていると何やら気配がしてな」

  『可哀想な私の半身――』
  『ミサキ――』
  『約束の人形よ――』

  「チラッと見えたがあの白いドールが贈り物か?」

見崎「ごめん何から突っ込めばいいのかわからない」

恒一「質問責めは嫌いか?」

見崎「そういう問題じゃないと思うの」

見崎「あなたは榊原恒一、間違いない?」

恒一「嗚呼、毎日鏡に問いかけているが間違いない」

見崎「そ、そう……」

   「クラスのみんなから何も言われない?」

恒一「誰からも話しかけられないな」

見崎「あなたの名前は死を――え?なんて?」

恒一「俺に話しかける者は誰もいない」
  
   「前の学校でもそうだった」

   「人は皆理解出来ないモノを畏れ、遠ざける」

   「否、人に限らんな。思い返せば上履きや教科書、ノートに体操着も俺から離れていった」

   「家にも片方だけの手袋が幾つもあってな」ククク

   「この左腕のチカラは俺を孤独にする」

見崎「……とりあえず何も知らされてないのね」

恒一「俺はさしずめ『いないもの』だからな」ククク

見崎「……本当に何も知らされてないのね?」

恒一「どうやら何か秘密があるようだな」

   「しかもクラスぐるみでの秘め事とは、実に興味深い」

見崎「そのうち分かってくるから」

恒一「秘密は秘密であるうちが華だと思うね」

   「見崎鳴、貴様もこの左腕の包帯の下が気になるだろう?ん?」

見崎(悔しいけど気になる……義眼見せたら教えてくれるかな……)ウズウズ
  
見崎「……私には近寄らない方がいい」

   「話すのも、もう止めた方がいい」

恒一「それはこちらの台詞だよ、見崎鳴」

見崎「……どういうこと?」ワクワク

恒一「そのうち分かってくる」

見崎「そんな……」

恒一「さよならだ、み・さ・き・め・い――」

キィ――バタン


見崎「……榊原くんが私以上にミステリアスだった」ドキドキ

~朝、校庭ベンチ~

見崎「……」ポツーン

恒一「……」チラッ

見崎「……」

恒一「……」スタスタ

見崎「……気をつけたほうがいいよ」

恒一「……」スタスタ

見崎「もう――始まってるかもしれない」

恒一「……」スタスタ…

見崎「……」

   「……どうして」

   「……どうして話かけてくれないの」グスン

~授業、美術室~

恒一「ほう、貴様には『コレ』が『こう』視えているというわけか」

望月「う、うん」ビクビク

恒一「さしずめ檸檬の叫び――いや、違うな……これは世界が叫んでいるのか」

望月「!! そ、そうなんだよ!分かる?!」

恒一「嗚呼、この世界は五月蠅過ぎる」

  「そう、思わず耳を覆いたくなるほどにな」ククク

望月「うんうん、おののいちゃうよね!」

  「ち、ちなみに榊原さんは何を描いてるの!?」

恒一「――絶望を」ククク

桜木「果物描きましょうねー」

桜木さんそんなんだから傘が刺さるんだよ

~廊下、移動中~

恒一「それにしてもムンクの叫びは眺めていると落ち着くな」

望月「え? 不安にはならないの?」

恒一「世界はそもそも安定を欠いている」

   「それを抉り出して視覚化したようなあの絵は、実に見ていて気持ちが良いとは思わないか?」

   「見ないフリをしていても、ソレはそこにあるのだから」

   「嗚呼、あとダリも貴様の感性には合うやもしれんな」

   「昨今シュールを勘違いした輩が多くて実に嘆かわしい」

   「あれはあくまで現実だと云うに……」

望月「うんうん、だよねえ! 榊原さんとは話が合いそうだよ!」

勅使河原「よ、よお望月とサカキ……ばらセンセイ」

      「ふ、二人で何の話してんだ? 俺も混ぜろよー」ハハ…

恒一「――世界を覆う不安について」

勅使河原「ぶっ、なんだそりゃ」アハハ

望月「……勅使河原くんはわかってないなあ」

恒一「識らない方が良い事もあろう」

勅使河原「え? え?」

望月「はあ……こんな蒙昧な輩は放っておこうよ」

   「僕、榊原さんのことがもっと知りたいな!」

   「たとえばその左腕のこととか……」チラッ

恒一「ほう、貴様はなかなか見込みがありそうだ……」ククク


勅使河原「俺の不安は望月の行く末だぜ……」

~放課後、下駄箱~

桜木「さ、榊原くん、これからお帰りですか?」

赤沢「ちょっといい?」キリッ
 ・
 ・
 ・
赤沢「そう……生まれたのは夜見山の病院なんだ」

恒一「ヨミで生まれる、とは中々傑作だとは思わんかね」ククク

赤沢「そ、そうね……それで東京戻ってからはずっとあっち?」

恒一「嗚呼、肯定だ」

赤沢「帰省とかは?」

恒一「帰る理由は……俺が生まれてすぐに失われてしまった、そう永遠にな」フッ

赤沢「……戻ってきてないってことでいいのよね?」

恒一「この質問責めも『対策係』とやらの仕事か?」ククク

赤沢「それもあるけど、どこかで会った気がするのよ」

恒一「前世かね?」

赤沢「生まれ変わってまでアンタと知り合いなんて御免よ……」

赤沢「とにかく! 恒一くんには三組の置かれた状況と決まりを理解してもらう!」

恒一「ようやく本題だな」

桜木「あ、赤沢さん……」

赤沢「なによ」

望月「実は……」

桜木「かくかくしかじかで……」ゴニョゴニョ

赤沢「なにソレ!? たくっ……たった1日休んだだけでこのザマか!」

望月「ごめんね、病院に手を繋ぎに行っただけで対策したつもりになって満足して翌日お休みした赤沢さん」

赤沢「~~ッ!」ギリギリ

桜木「赤沢さん!首絞めちゃダメです!」

恒一「……じゃあまた(無関心)」スタスタ

桜木「ちょ、ま、待ってください!」アワワ

赤沢「ほんとにっ……どいつも、こいつも……っ!」ギリギリギリ

望月「あっ――……」ガクリ

桜木「も、望月くぅーん!!!!」

もっちー思わずさん付けwww

~帰路~

恒一「『夜見の たそがれの うつろなる 蒼き瞳の』……?」

   「なんと甘美な響きか」

   「さぞ名のある魔術師の工房<アトリエ>に違いない」

   「そうだな……まずは偵察と洒落込むか」ククク

ギィ…カラン……

店婆「いらっしゃい……」

   「おや、若い男の子とは珍しいねえ」

   「お客さんかい?それとも……」

恒一「それとも……なんだ?」

   「返答次第ではこの左腕が黙っていないぞ?」ククク

店婆「いや、ウチの子のお友達かと思うて」

恒一「友とは……俺には縁の無い旋律だ」フッ

店婆「鳴ちゃんの友達じゃないのかい?」

恒一「メイ……ここは見崎鳴の家なのか?」

   「魔術師の工房では……?」

店婆「なぁんだ、やっぱり鳴ちゃんのお友達かい」

   「あの子も小さい頃からそういうゴッコ遊びが好きでねぇ」

   「タダで良いよ、わたしゃあの子呼んでくるからゆっくり店内見てお行き――」トコトコ

メイチャンオトモダチダヨー ヒダリウデニホウタイマイタ
エ?ホントニ? ウソヤダドウシヨウ…
アンタモ スミニオケナイネェ
モウ…ソンナンジャナイカラ///

恒一(興が削がれたな……帰るか)フン


ギィ…バタンッ


店婆「お待たせしちゃって悪いねぇ……あら?」

恒一「邪鬼眼を」
鳴「持たぬ者には・・・」
「「わかるまい」」クククク

~工房、地下~
見崎(まさか榊原くんが来るなんて……)

   (好きそうな言葉を看板に書いておいて良かった)ウフフ

   (そうだ、この鳴ちゃんドールの影に隠れて声をかけよう)

   (そしてミステリアスな雰囲気を醸し出しながらこう言うの)

   (『――ふぅん、こういうの嫌いじゃないんだ?』)

   (『似てるって、思った?』)

   (『似てるよね、でも半分だけ――もしかしたらそれ以下』)

   (このとき人形の髪をかき上げて瞳を見せ付けるのがポイント)

   (そして)

   (『見せてあげようか?』)

   (『えっ』って戸惑う榊原くんに畳み掛けるように)

   (『見せてあげようか?この眼帯の、下』)

   (謎めいた笑みとともに、ゆっくりと眼帯に指をかけて――)

店婆「あの子なんだか帰っちゃったみたいだよ」

見崎「えっ」

~屋上~

ビュオオオオオ……

恒一「嘆きの香りを孕んだ、心地好い風だ……」ククク



~1F渡り廊下~

見崎(あ、榊原くんが手を広げて風を受け止めてる……)

   (『風が、泣いている――』)

   (とか言いながら背後から現れたら相手してくれるかな)

   (……よし、行ってみよう)トコトコ

風見(あいつ! おいおい、いないものの役割忘れてないか……?)

   「あ、勅使河原ちょうどいい所に!」

恒一「今日は…風が騒がしいな」

見崎「でもこの風、少し泣いています」

勅使「おー風見じゃん、どうしたそんな血相変えて」

風見「榊原さんの携帯番号知らないか?」

   「ヤバいんだよ、いないものが榊原さんに話しかけに行こうとしてるみたいなんだ」

勅使「マジかよ……スマン知らないわ、榊原センセイとはあんま話したことなくてな……」

   「ってかそもそもあの人ケータイ持ってんのか?」

風見「確かにイメージ湧かないな……」

勅使「つってもこのまま放置してたらまた後で赤沢にどやされそうだよなあ……」

風見「そもそも彼女が病院で彼に説明しておけばこんな気苦労なかったろうけどね」

勅使「あんま無能っぷりを指摘すると望月されるぞ」

勅使「今からじゃいないものより先に屋上には辿り着けそうもないし……こっから叫んで知らせるしかなさそうだな」

風見「それしかないか……」

勅使「恥ずかしいが覚悟を決めろ、クラスのためだ。 いくぞ、せーのっ!」

勅使「オーイ榊原センセイぃいいいい!!」

風見「榊原さぁああああああん!!」

勅使「いないものの相手は!」

二人「「よせぇぇぇぇええええ!!!」」

~屋上~
恒一「なにやら下界が騒がしいな、無粋な有象無象め……」

  「これでは空の鎮魂歌<レクイエム>が聴こえぬではないか」

  「……興を削がれた、戻るか」 クルッ スタスタスタ…ガチャ、バタン


ビュオオオオオオオオオオオ……――ガチャ


見崎「……」ソー

  「……?」キョロキョロ

  「……またいない」グスン

~教室、テスト~

クラス「……」カリカリ

見崎「……」ウトウト

榊原「……」

  (退屈だな、もう終わってしまったぞ)

  「……」フム

ガタッ

スタスタ…ガララ――ピシャッ

クラス(帰っちゃったよ……)

    (ていうか榊原さんは別にいないものじゃないんだし久保寺注意しろよ……)

見崎「……zzZ」

   「」ハッ

   「……」キョロキョロ

   (あれ? 榊原くんがいない……)コシコシ

久保寺(目を擦りつつ涙目で榊原くん探してる鳴ちゃんマジ天使)

榊原さんは頭いいまんまなのか
それとも答案も厨二なのか

~町中~

恒一「肌を伝う雫が心地好い……」

   「このまま雨に煙る町の散策と洒落込むか」ククク

女性「あらあら! そんな濡れちゃって……夜見北の生徒さんね?」

恒一「そうだが……貴様、何者だ?」

   「何故俺が夜見北の生徒だと……さては『機関』の人間だな!?」

女性「きかん……? 娘が通ってる学校の制服着てるもの、そりゃ分かるわよ」フフ

恒一「そうであったか、これは失礼致した」

女性「いえいえ良いのよ。ところで今日は学校どうしたの? 早退してきたのかしら」

恒一「まあそんなところだ」

女性「それならそんな濡れ鼠でいちゃいけないわ、ほら」

恒一「傘を傾けてどうしたというのだ?」

女性「体調悪いのでしょう? 家まで送ってあげるから、ささ、傘にお入りなさい」フフ

恒一「なんという聖母<マリア>のような慈愛<アガペー>か……俺には少々眩しすぎる」

女性「変な子ね」クス

誰だ?

恒一「だが奥方よ、我が身は病に冒されてなどしていない」

女性「あら、そうなの? じゃあ、その左腕の怪我……?」

恒一「嗚呼、コレは怪我ではない……応急処置には違いないがな」ククク

女性「じゃあ別にどこも悪くないのかしら?」

恒一「どこも良くはないがね」ククク

女性「まあ、不良さんなのね。いけない子」フフ

恒一「嗚呼、不良品<ジャンク>かも知れんな……さて、奥方よ」

女性「何かしら、不良くん?」

恒一「袖振り合うも他生の縁と云う諺がある」

   「ならば傘を差し伸べてくれたその手は、どれ程までに深い縁だろうか」

   「何よりこの左腕が『奥方の慈愛に応えよ』と疼いている――そのか細き腕には不釣合いな荷物、俺が家まで運んでやろう」

女性「本当に変な子ねえ」フフ

   「けどタイムセールでついつい買い込んじゃって困ってたのよ、ふらついちゃうくらい」

   「このままじゃ何かの拍子に道路に飛び出しちゃいそうだし、お言葉に甘えちゃおうかしら……」

   「けど奥方ってのはなんか照れちゃうから、桜木さんって呼んでね」フフ

桜木ママww

~病院出口~

水野「あれ、オカルト少年じゃない!」

   「もう身体の具合はいいのかな? くれぐれもお大事にだよー?」

恒一「貴様は精々馬車馬の如く働くことだな」フン

   「――嗚呼、そうそう。具合と言えばだが」

水野「うん?」

恒一「先ほど自動昇降機に乗ったときのことだが、微かだが確かに不協和音を感じたぞ」

水野「えっ?」

恒一「あれはワイヤーがイカレているな、もう長くあるまい」

   「さて、問題だ」

   「死人が出て喜ぶのは葬儀屋だが、病院の仕事とはなにかね?」

水野「……えっと、なおすこと?」

恒一「正解だ」ククク

   「修理会社くらいは自分で調べることだな」フン

水野「あわわ……」

私より有能じゃない…

~帰路、工務店前~

恒一「お前はいったい何者だ――?」

綾野「……えーと、こういっちゃん? 何してるの?」

恒一「自己同一性の確認、といった所かな」ククク
   
   「この巨大な硝子に映り込む己の虚像に榊原恒一とは何たるかを問いかけていたのだ」

綾野「そ、そうなんだ……」

   「ところで、こういっちゃんもばっくれ?」

恒一「否、病院帰りだ。貴様のような下賎な者と一緒にされては困る」ククク

綾野「じゃあこのまま授業に途中参加するんだ?」

恒一「……」

綾野「……」

恒一「……ぐ! ぐあああああああッ!」

綾野「ぴっ!?」ビクゥ

恒一「急に、左腕が……ッ! ぐぁああああ!!」

綾野「だ、だいじょぶこういっちゃん……?」オロオロ

恒一「鎮まれ……鎮まれ俺の左腕……ッ!!」プルプル

綾野「な、なにかの発作!? 今お医者さんを――」タタタ


ビュオオオオオオ―――ッ!


綾野「きゃっ」


グラッ…ガシャ――――ン!!

パラパラパラ…

綾野「さ、さっきまであたしが立っていたところにガラスが……」

   (走り出してなければ直撃して……)プルプル

恒一「……命拾いしたな女」

   「拾った命、大切にすることだ」ククク

綾野「……もしかしてさ、こういっちゃん」

   「こうなること分かって腕が痛む演技してた、とか……?」

恒一「さて、何のことかな」フン

   「演じることは容易いが、生憎と俺が俺であることを辞めるのは死ぬ時と決めているのだ」ククク

綾野「……」

   「今度、演劇部の見学きてねこういっちゃん」

   「ううん……榊原さん!」

恒一「そうだな、気が向いたら、な」ククク

~工房、地下~

恒一「……」コツ…コツ…

見崎(さ、榊原くんだぁ!)

   (よ、よし、この物陰のポジションから何食わぬ顔で……)

見崎「……」ユラリ
  
   「偶然ね……こんなところでまた」

   「それとも運命?」
  
   「今日はどうしてここに?」

   「学校は?」

   「私に逢いにきたの?」

   「それともやっぱり運命?」

恒一「単なる病院の帰り道だ」

見崎「そ、そう……ちなみに私も今日は学校行ってないの」

恒一「……」

見崎「でも風邪とかじゃないから。心配しないで」

恒一「……」

見崎「いつも適当に行ってるの」

恒一「……」

見崎「私は、いないものだから」チラッ

恒一「……」

見崎「……ぐ、具合はだいじょうぶなの?」

恒一「だからこうして出歩いている」

見崎「そ、そうだよね……」

   (会話が続かない……)

見崎(やっぱりここは鉄板ネタの三組の呪いで興味をひいてみよう)

  「私、怯えてる。 始まったんじゃないかと思って」

  「こころの底では半信半疑だったんだと思う」

  「クラスのみんなも榊原くんにはあんなこと言ってるけど、今も信じてないひとも多い」

  「でもね……やっぱりあるみたい」

  「百パーセント確実に。 それが始まってしまったから」

  「……」
 
  「榊原くんは今も知らないまま、か」

  「だったらいっそこのまま知らないでいるべきなのかも」

  「知ってしまったら――」チラッ

  「あれ?」キョロキョロ

  「榊原くん?」

  「どこかに隠れてるの?」

  「榊原くーん?」


  「……またいない」グスン

~教室、昼休み~

赤沢「綾、それほんとなの?」

綾野「うん、榊原さんは演劇の才能あると思うんだー」

赤沢「そこじゃなくって!」

   「ガラスが倒れてきて危うく、って方よ」

綾野「ああ、それねー。確かにやばかったねありゃー」

   「けどそれも榊原さんの演技力のおかげでするっと回避!」

赤沢「能天気なのは良いけど……綾、アンタ死にかけたのよ?」

   「もしかしたら……始まってるのかもしれない」

   「ちょうどさっき恒一くんは窓から勢いよく飛び出て行ったし、今から緊急会議を始めましょう」

   「ゆかり、風見くん。みんなを会議室に集めてちょうだい」


   「――見てなさい榊原恒一、私が一番うまく対策できるんだから!」

すまぬ、綾→彩です

おい、3-3の教室って2階以上のはずだぞwwww

~教室~

恒一「……帰ってきてみればもぬけの殻、か」

   「残された鞄、机の中には教科書」

   「椅子には……」サワサワ

  「うむ、まだ温もりが残っている」

   「つい先刻まで人がいた気配は確かにあれど、その持ち主は影も形もない」

   「まるで現代のメアリーセレスト号事件だな」ククク

   「そう、紛れも無くこれは神隠し――」

久保寺「違います、黒板に別室で会議中って書いてあるでしょう」

恒一「なんだいたのか貴様」

久保寺「あなたに伝えることがあって待っていたんです」

恒一「そうか。ところでもう帰ってもいいか?」

久保寺「あの、校則とかもう良いんで、せめてクラスの決め事だけは守ってくださいマジで」

恒一「善処しよう」

>>110
鳴「窓枠に包帯が結びつけてあるわ…」

~帰路~

恒一「禁じられた旧校舎を探検していたらすっかり日が傾いてしまった」ククク

   「――む?」

ジュクジョノミリョク?
ヤッパリヒップカナ、アトガーターベルト
アレハフェアジャナイネ

恒一「ほう、あそこにいるのは確か望月といったか」

   「そして隣にいるのは……よく俺の真似をして胸を抑えている不遜な輩だな」

   「これは『挨拶』をしてやらねばなるまい」ククク

   「――Commant allez vous? 望月とその下僕よ」

高林「フェアじゃないね……」

望月「あ、榊原さん! お疲れさまです!」

望月「あの、榊原さん」

恒一「なんだ?」

望月「さっきの会議で、榊原さんのいないところで話さなきゃって、赤沢さんが」

   「これからその赤沢さんの決定で嫌なことがあると思うけど、我慢してくれないかな」

   「みんなのためなんだ」

   「全部赤沢さんが決めたことなんだけど」

恒一「『対策係』め、ついに本格的に動き始めたということか」ククク

高林「望月くん、フェアって言葉知ってる?」

高林「僕は一方的に決め事を押し付ける赤沢さんのやり方に賛成できない」

恒一「ほう……貴様なかなか見所があるじゃないか」

高林「榊原くん、知りたいこといっぱいあるよね?」

恒一「そりゃあ、もう」ククク

高林「じゃあ一つずつ聞いてみて。 僕の知ってる範囲で答えてあげるよ」

望月「ちょ、高林くん本気!?」

恒一「ならば……お前は神の存在を感じるか?」

高林「うん、神は……え?」

恒一「神は人のようなものか、どのような形か……」

高林「え、あの……」

恒一「神は絶対の力を持つ存在、この世はそのような個が作り出したもの……」

高林「あの、できれば3組がらみの質問で……その……」

恒一「災害と同じと思っていい……あきらめるほかないのだ……」ククク

高林(災害と同じ!? もしや、現象について何か知っていて逆に遠まわしにアドバイスを……?)

高林「榊原くん……いや榊原さん、あなたはなんてフェアなひとなんだ……!」

~教室~
キーンコーンカーンコーン

風見「それじゃ、そういうことでなにか――」

ガララッ

恒一「……」ドッコイセ、ガシャン

  「今日からお前もこのクラスの一員だ、我が闇の眷属レイ・チャンよ!」ククク

レイ「レーチャンドーシテ!ドーシテレーチャン!」

クラス(うるせぇ……)

久保寺(でもいないものだから注意もできない……)

風見「いや、もういいですねどうでも……」

久保寺「……さて、このままみんなで力を合わせて切り抜けましょう」

   「みなさん、くれぐれもクラスの決め事は守るように……よろしいですか?」

レイ「ドーシテ!?ドーシテ!?」

恒一「この世は疑問符に満ちておる……」ククク

クラス(今まで通り関わらないようにするだけか)

レイ「ゲンキダシテ!」

~放課後、教室~

恒一「ふむ、今日もいつも通り変化のない1日だったな」

  「帰るとするか」

ガサゴソ…カサッ

恒一「む? 机の中に何か……」


<君の求める真実の在り処、それは

  夜見のたそがれのうつろなる蒼い瞳の

            ――これでフェアだよ>


恒一「ほう、これは……噂に聞く果たし状というヤツだな」ククク

  「良い度胸だと褒めてやりたい所だ、差出人が皆目検討も付かんが」

  「この左腕にて、全力をもって相手してやろうじゃあないか……!」クハハハ

~工房、地下~

恒一「……」コツ…コツ…

見崎(! ま、また榊原くんがきた!)

恒一「……」コツ…コツ…

見崎(ど、どうしよう……!)コソコソ

   (こんどこそ榊原くん好みの登場をしなきゃ……)ドキドキ

   (どんなのがいいんだろう)

   (今まではちょっと凝りすぎてたのかも)

   (しんぷるいずべすと、これ大事)

   (あ、後ろから目隠しとか)

   (ベタだけど、とってもミステリアス)

   (これで今日はおともだち記念日……?)フフ


   (よし――ミステリアス鳴ちゃん、いきます!)ソー…

恒一「む――」ピク

   「この左腕の疼き――」

見崎「だぁーれd

恒一「後ろだ!!」ドコォッ!

見崎「ぎゃんっ!?」

恒一「フン、他愛もない」

見崎「きゅぅ……」ピクピク

メイチャン「ドウシテ…ドウシテ…」

恒一「なんだ、貴様があの果たし状を書いたのではないのか」

見崎「うんちがう……ぜんぜんちがう」ヒリヒリ

   「きっと誰かが3年3組にまつわる現象について、私から榊原くんに説明させようと書いたんだと思う」スリスリ

恒一「――現象、だと?」ピク

見崎「!」

   (ついに、ついに榊原くんが興味を持ってくれた……!)ドキドキ

   「そう……」

   「きっかけは26年前の、とある事件」

   「それ以来3年3組は死に近づいてしまったの――」ドヤァ

恒一「成る程。つまりはこういうことだな?」

   「26年前、悪戯に簡易降霊術式を組んでしまった愚か者共の所為で3年3組は異界と繋がってしまった」

   「そしてひとたび開いた冥界の門を閉じることは能わず」

   「毎年訪れる招かれざる客は更なる死者を育み、冥府を賑わす」

   「対処法は唯一つ、クラスの一人を『いないもの』として生贄に捧げること」

   「そして今年の『いないもの』は見崎鳴、貴様である――と」

見崎「うん、そうなの」ホクホク

恒一「左腕の疼きが俺に告げている……これは運命<さだめ>である、と」ククク

~翌日教室、朝のHR~
――ガララッ  カツカツカツ……ドサッ!

クラス「?」チラ

久保寺「……みなさん、おはようございます」ユラッ

     「来年の三月にはみんな元気に卒業できるように……そう思って私も精一杯頑張ってきましたが……」フフフ

クラス「……」ゴクリ

久保寺「何よりも皆さんの努力あればこその今の平和です!」

     「今日まで何事もなく皆さんが健やかに過ごしていること、先生は誇らしいです!」

     「だからそんな皆さんのために……」

     「今日はご褒美にお菓子を持ってきちゃいましたあ!」ドサァ

綾野「くぼっちサイコー!」

勅使河原「ヒュー! 先生太っ腹だぜぇ!」

キャッキャッ
エンゼルパイカヨー
チョコパイネーノ?
コレモーライ
フェアニエラボウヨ
モーミナサンアワテナイデタクサンアリマスカラ フフフ

いいクラスや…

久保寺「皆さんこれは内緒ですよ、先生怒られちゃいますから」フフ

綾野「わかってるってー!」

桜木「はい」ニコ

見崎(……あまり物のえんぜるぱい美味しい)

   「……」モキュモキュ

レイ「ドーシテ!ドーシテ!」バサバサ

見崎「……?」モキュモキュ

   「……たべたいの?」

レイ「ゲンキダシテ!レイチャンドーシテ!」

見崎「……はい、ましゅまろ」ヒョイ

レイ「ぱくっ」バサバサ

見崎「……」ジー

レイ「……」ゴクン

見崎「……」ジー

レイ「……ッ!……ッ!!」バサバサ!

見崎(よろこんでる)フフ

レイ「…………ッ」

見崎「……?」

レイ「……」

見崎「レイチャン?」

レイ「」

見崎「……し、死んでる」アワワ…

~屋上~

恒一「俺がアイツを3組にさえ連れてこなければ……」

勅使河原「仕方ねえよ、なあ榊原センセイ、そう落ち込むなって」

恒一「使い魔を自ら殺したようなものだ、とんだ笑い種だよ」フッ

勅使河原「自分を責めたってよお、今更レイちゃんは戻ってこねえんだ」

      「原因不明の窒息死、か……」

      「まさか、クラスのペットまで災厄の力が及ぶなんてな……」

見崎「……そう。すべて災厄のせい、誰も悪くない」ドキドキ

勅使河原「いないものを二人に増やしても意味はなかったってわけか」

      「見崎もいないものじゃなくなって、肩の荷降りたってカンジか?」

見崎「さあ? もともと重くなんてなかったし? わたし変わってるから?」チラッチラッ

恒一「……」

   (――災厄め、この左腕にかけても貴様を滅してくれる……ッ!)

レーチャン

~第二図書室~
ガララッ

恒一「おい貴様」

千曳「第一声からして尋常じゃないね。 なにかな?」

恒一「見崎鳴から聞いたが、貴様は現象について浅からぬ知識と経験を持っているようだな?」

   「俺は災厄を止める手立てを探している――手を貸せ」

千曳「災厄を止める、か……」

   「今まで幾度となく試みられてきたが、そのどれもが成果を上げることはなかった」

   「苦肉の策で導き出されたのがいないもの対策だよ、君も知っているだろう?」

恒一「アレでは根本的な対策にはならん、一時凌ぎのまやかしだ」

   「……先ほどは災厄を止めたいと言ったが、それは訂正しよう」

   「俺はヤツを、災厄を『殺したい』んだよ」ククク

千曳「災厄という現象を殺そうとは、尋常じゃないね」

   「そもそも一度始まった災厄はほぼ確実に止むことはないんだよ」

恒一「ほぼ、か……例外があったのだな?」

千曳「……唯一現象が止まった年がある、15年前のことだ」

恒一「ほう、続けろ」

千曳「その年は合宿に行っていてね、そこで神社に参拝をしてきたらしい」

   「そしてどうやらそれを機にその年の災厄は収まっているようなんだ」

恒一「神頼み、か」

千曳「だがその年を参考に、同じように合宿に行き参拝を行った後の3組もあったが……」

恒一「効果はなかった……?」

   「どうやらまだピースが揃っていないようだな」

   「しかし有益な情報であった、一応担任のロリコン眼鏡にも進言しておくか」ククク


   「――ふむ、どこかで落ち着いて情報を整理してみるとしよう」

~イノヤ~

赤沢「……恒一くん、どうしてここに?」

恒一「ここは喫茶店だ。珈琲を飲みに来た、それ以上の理由がいるかね?」

赤沢「勅使河原に呼ばれたわけじゃないのか……」

恒一「ほう、『対策係』ともあろう者が逢い引きか」

赤沢「クラスの問題だからって呼び出されただけよ!」

   「じゃなきゃあんな男に呼ばれて出てくるわけない」

恒一「冗談だ、取りあえず座ったらどうかね」ククク

赤沢「アンタと話してると調子狂うわ……」ストン

望月姉「あら、泉美ちゃんいらっしゃい」

     「ご注文は――いつものでいいわね?」ニコ

赤沢「ええ」

赤沢「インドネシアのフェアトレードコーヒーよ」

赤沢「……ねえ、なに飲んでるの?」

恒一「珈琲を飲みに来た、と最初に言わなかったか?」

赤沢「そうじゃなくって、銘柄は?」

恒一「……これだ」コトン

赤沢「え……瓶?」

恒一「独自にブレンドした豆を自宅で挽いて、いつでも愉しめるようこうして持ち歩いているのだ」

   「望月の姉とは顔馴染みだからな、無理を言っていつもコレを淹れてもらっている」

赤沢「へー……恒一くんもコーヒーに詳しいんだ?」ワクワク

恒一「単なる道楽だ、そんな大層なものではない」

   「ただ、やれブルマンだ、やれハワイコナだと通ぶって頼む輩がいるが、そういうのは好かんな」

   「無論本当にその豆に魅せられて嗜んでいるならば良い」

   「しかし自分で豆を挽いたこともないようなズブの素人が『これこそ本物の珈琲』などと語っているのには反吐が出る」フン

赤沢「……あのすみません、さっきの注文キャンセルで、アイスティーお願いします……」

勅使河原「おまたせー……ってなんで榊原センセイが?」

望月「ぼく榊原さんの隣ね!」

赤沢「だから無能じゃないといっとろーが!」

松永『あの年の呪いは俺が……』

   『俺は悪くないんだ!』

   『みんなを助けたんだ……助けたんだよ俺が!』

   『だから伝えなきゃって思って残したんだ、アレを……』
 ・      
 ・
 ・
赤沢「松永という人が災厄を止めて」

   「そしてその人が手がかりをどこかに隠した……?」

勅使河原「その松永って人に直接話しを聞いてみようぜ」

望月姉「ごめんなさいね、松永さんがどこに住んでるかはわからないの」

望月「そんな……せっかくの手がかりなのに諦めるしかないなんて……」

赤沢「お手上げ、か……」


恒一「――そうでもないぞ」ククク

赤沢「まさか、松永さんの住所に心当たりでも?」

恒一「住所には心当たりはない」

赤沢「じゃあいったいなんなのよ?」

恒一「……『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちに』」

勅使河原「なっ!?」

望月「それって!?」

赤沢「どういうことなの!?」

恒一「まあ、そう慌てるな」ククク

   「順を追って話してやろう――」

水着回ぶっ潰したー!
中尾www

恒一「あれは貴様らが会議とやらで教室を空け、暇を持て余していた日のことだ」

   「自由の翼を広げた俺は左腕の疼きに従い歩を進めていると、気がつくと旧校舎の中にいた」

   「老朽化が進んだせいか、二階への階段には黄色いロープが張られ、立ち入り禁止の札が下がっていた」

   「だが、禁とは破るためにある」ククク

赤沢「そ、それで……?」

恒一「割れた硝子に朽ちた床……実に廃屋然としたその内部に思わず胸が高鳴ったよ」ククク

   「黄昏時の旧校舎」

   「なんともお誂え向きなシュチュエーションじゃないか」

   「そして、欲望の赴くまま俺は余す所なく探索した、探求した」

   「きっと何かあるはず、謎が、秘密が、怪異の断片が!」

   「そして――」

一同「……」ゴクリ

恒一「そしてまあ、先ほどの文章が書かれたモノを見つけたわけだが」

勅使河原「だが? な、なんだよ?」

恒一「言っただろう?」

   「『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちに』」

   「生憎と俺はそのクラスの者ではなかったし、その時は災厄の存在を知らなかったものでね」

望月「もしかして……?」

恒一「嗚呼、元通りに戻しておいた」

赤沢「なんでそんなトコだけ律儀なのよアンタ……」

赤沢「とりあえず松永って人にわざわざ会いに行く必要はなさそうね」

望月「榊原さん、そのメッセージが書かれたものがあった場所って覚えてる?」

恒一「愚問だな」ククク

勅使河原「よっしゃー、んじゃ今度みんなで旧校舎探検しに行こうぜ!」

赤沢「みんなの予定を合わせて、遅くても来週には行きましょう」

望月「旧校舎だし、集合は美術室にしよっか」



~後日中尾家~

ズデーン!

中尾「いってぇ……」

中尾母「だいじょうぶアンタ?」

    「どうせ何の予定もないんだし病院行ってきなさい」

        /.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
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        ハ  ヽ       / j/ ノソ/:/
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           '. Xー ─ ノ    ,  ::::|
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             '.            l .
             ー-<´       |  ー──    __  
             _ __ ヘ      .:               `

          マカ・セロ[Maka Selo]
         (1983~20?? フィンランド)

~浜辺~

見崎「……」

   「あ、ヒトデ……」

   「……」ジー

   「……」ツンツン

   「……ひとでぼっち」

   「なんちゃって」

   「……」

   「……榊原くん」

~校門~

綾野「あれぇ? 榊原さんとてっしー?」

   「帰宅部のエースがなんで学校きてんの?」

恒一「少々訳有りでな」ククク

勅使河原「も、望月と待ち合わせでよ? つか、二人とも部活?」

小椋「うん」

綾野「ちょっと千曳先生にね、あの人演劇部の顧問だから」

勅使河原「マジで!?」

綾野「アレでけっこう演技指導うまいんだよねー?」

小椋「演技してると何気にカッコよく見えるからフシギ」

綾野「榊原さんには負けるけどね! で、二人は何しに来たのー?」

恒一「鎮魂歌<レクイエム>を求めて」ククク

小椋「そ、そう……じゃあ、また」ソソクサ

綾野「あ、待ってよ由美ってばー!」

   「それじゃね榊原さん、また合宿でね!」タタタ

~美術室~

勅使河原「あ、見崎……!?」

見崎「……家にいても仕方ないから絵でも描こうかと来たんだけど」

   「あなた達は何をするつもりなの?」ワクワク

勅使河原「あー……探検みたいな?」

見崎「探検……どこを探検するつm

タタタタ……ガララッ!

望月「ごめんごめん!」ハァハァ

見崎「……」ムゥ

見崎「……それで、三人でなにを探k

赤沢「遅れてごめんなさい」ヒョコッ

見崎「……四人でなn

恒一「揃ったようだな、では参ろうか」ユラリ

勅使河原「おう!」スタスタ

赤沢「そうね」ツカツカ

望月「まってよぉー」タタタ

――ピシャッ

見崎「……」

見崎「……」グスン

~旧校舎~

勅使河原「へー、ここが昔の3年3組かあ」

      「で、お目当てのモンはどこにあんだ?」

恒一「この掃除用具入れの天板の……これだ」ベリッ

赤沢「貸して」

   「『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちに』、か」

   「……ビンゴね」

望月「ねえ、開けてみようよ」

赤沢「そうね」


ビッ…ビッ…ビリリ……



赤沢「カセット……?」

恒一「そのようだな」

勅使河原「はやく聴いてみようぜ!」

望月「放送室なら機材があるんじゃないかな?」

赤沢「勝手に使っていいの?」

勅使河原「バレなきゃ問題ねーって」

恒一「これだから貴様は愚か者だと言うのだ」

   「万が一にも無断使用を教員に見咎められたらどうする」

   「単なる叱責で済めば良いが、最悪カセットを没収されかねんぞ」

   「コレは災厄を殺すことのできる、唯一無二の武器となる可能性が非常に高い」

   「そんなシロモノを失いかねないような憂いの念は出来得る限り絶つべきだ、そうだろう?」

赤沢「恒一くんの言うとおりだわ」

   「誰か、テープレコーダーを持ってる人はいない?」

望月「えっと、僕の家にあるよ」

恒一「決まりだな――これより望月家に向かう」

赤沢さんにカセットを触らせるのが怖い

>>221
赤沢「無くさないように、マグネットで黒板にとめておきましょう」

~道中~

望月「みんなーこっちだよー」トコトコ

恒一「いつか還るべき大地の香りが鼻腔をくすぐる……」ククク

赤沢「今にも降り出しそうなイヤな空ね……」

勅使河原「雷がぴっしゃーん!って落ちてきたりしてな」ハハ

赤沢「笑えない冗談言わないで」

勅使河原「……すまん」ショボン

望月「ははは……」

パラ…パラ…
シトシトシト……

赤沢「うわ、ほんとに降りだしてきた……」

勅使河原「マジかよー」

望月「仕方ない走ろう、みんな着いてきて!」タタタ

恒一「……雨に抱かれるのも悪くないものなのだがな」フン

あの厚さだと磁石じゃくっつかないだろ

恒一「のんびり歩いていたら望月たちとはぐれてしまったようだ」

   「ここはどこだ……む?」

   「あれは……おいそこの貴様」

運ちゃん「アン? なんだァ?」

恒一「……サイドブレーキだ」

運ちゃん「ンァ?」

恒一「後ろを見ろたわけ、事故の慰謝料で家族を路頭に迷わせたいのか?」

運ちゃん「アァ? 何を言って……ってマジだやべェ!」ダダダ ガコッ

     「ふー……危うく大事故になるトコだったぜ……」ヒヤリ

     「あンがとなボウズ……てアレ? どこ行っちまったンだァ?」キョロキョロ

>>225
赤沢「そう思って、超協力なのを用意したわ」フフン

恒一「ほんの手付け金だ。裏と表が逆の10円玉をくれてやろう!」

~望月家~
望月「もー。 榊原さんったらどっか行っちゃうんだから、探したよー」

恒一「細かいことは気にするな、さっさと聴くぞ」

カチッ キュルルキュル……

松永『……えっと、オレの、オレの名前は……松永克己……』ザザザ…

望月「!」

勅使河原「アタリだぜ!」

赤沢「しっ、静かに」

松永『オレがこんなテープを残そうと決めたのには、ふたつの意味があるんだ……』

   『一つはオレの……オレ自身の罪の告白……』

   『もう一つの意味は……後輩であるキミたちに、アドバイスを伝えたい……』
 ・
 ・
 ・
松永『死者を死に還すんだ。それが始まってしまった災厄を止める方法だ』カチッ…

赤沢「……名前、分からなかったわね」

恒一「改竄の影響がテープにまで及んでいるということだろう」

   「そしてそれこそがコレが本物であるという何よりの証拠だ」ククク

勅使河原「……けどよ、肝心のもう一人って誰なんだ?」

望月「見分ける方法はないって聞いたよ」

恒一「それ以前に、仮に見分けが付いたとして、だ」

赤沢「なによ?」

恒一「――貴様らに学友を殺す覚悟はあるのか?」

赤沢「……ッ」

望月「それは……」

勅使河原「そんなこと……」

恒一「……まあ、そうだろうな」ククク

   「今すぐ決断を迫られず逆に良かったじゃあないか」

   「死人探しも良いが、まずはその苦悩でその身を焦がし尽くせ」

   「それに何より、じきに嫌でもクラス一同顔を合わせねばならなくなる」

赤沢「……合宿、ね」

恒一「そういうことだ、わざわざ殺す相手の玄関を叩くのは億劫だろう?」

   「死者探しも殺すべきか否かも、それまでの宿題としようじゃないか」ククク

鳴ちゃんは毎晩枕を濡らしてるんやで…

~そして合宿当日~

勅使河原「……死者の見分け方はなんか思いついたか?」コソコソ

望月「ぜんぜんだよ……」ヒソヒソ

赤沢「これじゃ対策係失格ね……」ショボン

恒一「ほう、これは『いかにも』な洋館だ……」ククク

千曳「地元の企業が使っていた保養所を寄付してくれたんだよ」

   「正直な所、学校では持て余しているようだがね」

恒一「一法人がどうにか出来るシロモノではない、ということか」ククク

   「クランクだけは持参してきたがエンブレムは現地調達するしかなさそうだな」

千曳「……世界的製薬会社は関係ないよ」

鳴「キーピックはまかせて」

和久井(製薬……薬……)ハッ

    「あの、すいません先生、喘息の薬切らしちゃってることに今気付いたんですけど……」

千曳「それは尋常じゃないね」

   「大事を取って家まで一度取りに戻るのが良い、車で送ろう」

久保寺「ええ、それではひとまずここは私に任せてください」


ブロロロロロ――


管理人「あらあら、いらっしゃい」ニコニコ

高林「こんな大勢でおしかけちゃってごめんね」

管理人「いいのよ郁夫ちゃんのお友達だもの、おばあちゃん頑張っておもてなししちゃう」フフ

~食堂、夕食~

勅使河原「なあオレさ、もう一人が誰なのかずっと考えてたんだけどさ」カチャカチャ

恒一「ほう、もう殺す覚悟の方はできたわけか」

勅使河原「いやいや、ただ死者を見分ける方法ってなんかあるんじゃねーのかって……」モグモグ

見崎「!」ピクッ

恒一「確かに出来ないと決め付けるのは容易いが、思考を止めるのは愚か者のすることだ」ククク

望月「けど死んだ人を見分けるなんて、それこそ特別な目でもないと……」

見崎「……」ソワソワ

恒一「ほう、魔眼の持ち手か……良い着眼点だ、望月よ」

望月「そ、そんなことないって」テレテレ

見崎「……」ソワソワソワ

鳴ちゃんソワソワかわいい

見崎「……わたs


――ガシャン!


風見「和久井っ!?」

和久井「――っ」ヒュー…ヒュー…

風見「苦しいのか!?」

千曳「和久井くん、落ち着いて!」

   「さあ、さっき取りに戻ったこの薬を吸って……」

和久井「――……」フゥ

千曳「もう安心だ、みんな心配はいらないよ」

見崎「……」

~夕食後~

和久井「いやぁ、みんなごめんね心配かけちゃって」

風見「もう、本当にびっくりしたよ」

勅使河原「お前すっげー取り乱してたもんな」ハハハ

風見「か、からかうなよ」

桜木「まあまあ、こうして無事だったんだから良いじゃないですか」フフ

綾野「そーそー、終わりよければすべてよし!ってね」

勅使河原「じゃあこのまま食堂でウノ大会でもやるか!」

猿田「何がじゃあなのかわからんのう」

多々良「ふふ、楽しそうで良いじゃない」

赤沢「対策しなくていいのかしら……」

恒一「フン、現象とやらも手ぬるいな」

見崎「……あのね、榊原くん」ソワソワ

恒一「見崎鳴か、どうした」

見崎「えっと、その……」モジモジ

恒一「煮え切らなんヤツだな、さっさと用件を話せ」

見崎「……」ゴクリ

   「あ、あのね……後で私の部屋にきて欲しいの」

   「同室の子がいなくてひとりだから……その……」

恒一「面倒だここで話せ」

見崎「もしこの眼帯の下に秘められたチカラがあるって言ったらどうする?」

恒一「よし行こう」

こういっちゃんwww

~見崎の客室~

恒一「――ほう、緑柱石のオッドアイか」

見崎「そういえば見せるのは初めてだっけ」

恒一「嗚呼、これは……義眼だな?」

見崎「そう。4歳の頃に病気で」

   「普通の義眼は可愛くないからって霧果が……お母さんが作ってくれたの」

恒一「貴様の母親は類い稀なセンスと確かな技術を持っているな」

   「俺が片目を失くした際には是非依頼をさせてもらおう」

見崎「うん、お母さんもきっと榊原くんのこと気に入ると思う」

   「……本当の娘じゃない私よりもしかしたら、ね」チラッ

恒一「……」

見崎「榊原くん、霊安室に人形を持っていくの見てたんだよね」

恒一「そういえばそんなこともあったな」

見崎「あれはね……私の実の妹、未咲に届けに行ってたの」

   「物心付く前に養子に出されたから戸籍上は従妹だけど、血を分けた私の半身」

恒一「……二親等以内、か」

見崎「……」

恒一「貴様の妹が今年最初の犠牲者であり、すでに4月から災厄は始まっていたわけだな」

見崎「……そういうこと」

恒一さん大喜びの展開

見崎「……話が逸れたね」

恒一「そうだな、貴様が持つ秘められしチカラについて聞かせてもらおうか」

見崎「あのね……この人形の目は、見えなくていいものを見せてしまうの」

   「それは――死の色」

   「死のそばにあるものの色」

恒一「ほう……興味深いな」

   「死者のみなのか? その色が現れるのは」

見崎「死んでる場合ははっきり、重病とか重傷の人はうっすら」

恒一「つまり死に近しいものを視る魔眼、というわけか」ククク

見崎「どうしてそんなものが見えるのか、不思議に思うでしょ?」チラッ

恒一「否、そうでもない」

見崎「でも受け入れるしか――え?」

恒一「古来より人とは違う形質を持つ者は神に近しい存在として捉えられてきた」

   「現在においてもその信仰は根強く、奇形児を神の生まれ変わりとして敬う地域も珍しくない」

   「シャーマンの埋葬されたとされる遺跡を発掘すると、異常に変形した頭蓋などが出土することもままあるそうだ」

   「そうした特徴的な頭蓋には先天的なものだけでなく、幼少時に過度な圧迫を施して後天的に変形させたと見られるものもある」

   「そしてそうした例と同様に、霊媒には視力障害者が多かったと聞く」

   「神に仕える司祭たる者としてあえて片目を潰すことさえしたそうだ」

   「この世を見る視力はあちら側を視る妨げになるのかもしれんな」

   「これは創作になるが、北欧神話の主神オージンもその片目を代償として知識と魔術を得たという」

   「見崎鳴よ、貴様がその能力を得たのは必然と言っても過言ではないのかもしれんな」ククク

見崎「そ、そう」

   (なんかよく分からないけど榊原くんがすごい饒舌でうれしい)

恒一「ちなみに俺にその色は視えるのか?」

見崎「……ううん、榊原くんからは死の色が見えない」

   「あなたは死者じゃない」

恒一「そうか、自ら命を絶つ必要はこれでなくなったな」ククク

見崎「え?」

恒一「嗚呼、貴様はテープを聴いていないんだったな」

   「災厄を止める方法が先日判明してな」

   「これが実に単純なんだが、死者を死に返す――つまり死者の命を絶てば良いのだよ」ククク

見崎「それで勅使河原くんたちと死者の見分け方について話してたの」

恒一「そういうことだ」ククク

   「――手札は全て揃った、これより狩りを行う!」

レーチャンニゲテ…

恒一「そういうわけで見崎鳴よ、貴様にはこれより存分に働いてもらうぞ」

見崎「合宿参加者をこの義眼で見ればいいのね」

恒一「実に物分りが良くて助かる」ククク

   「確か皆は食堂で遊戯に興じているのだったな」

見崎「うん」ワクワク

恒一「では、往くぞ」

テクテクテクテク

恒一「……ところで見崎鳴よ」

見崎「なに?」

恒一「血の繋がりなど、些細なことだ」

見崎「?」

恒一「想いがある、それだけで充分ではないか」

見崎「……」

恒一「親子とは、母とは、きっとそう云うものだと俺は思う」

見崎「……うん」

この恒一君、内心では何を考えてるんだろうな

恒一「む、久保寺と千曳が通路の向こうからやってきたぞ」

   「一応こやつらも確認しておく必要があるな」

   「――おい貴様ら、そこで止まれ」

千曳「なんだい? 尋常じゃないね」

久保寺「もうその横柄な態度にも慣れました」

恒一「黙ってじっとしてろ……やれ」

見崎「……鳴ちゃんさーち」キュピーン

千曳「……?」

見崎「……」ジー

久保寺「」ビクンビクン

見崎「……ちがう」

恒一「そうか。よし貴様ら、もう行っていいぞ」

千曳「よく分からないが、消灯時間までには部屋に戻るよう頼むよ」

久保寺(義眼鳴ちゃんマジ天使」

千曳「久保寺先生、心の声が」

恒一「さて、食堂についたぞ」ククク

見崎「みんなでウノしてるね」

恒一「ふむ、全員この場にいるようだな……これは好都合だ、一網打尽にしろ」ククク

見崎「了解……鳴ちゃんさーち」キュピーン


エイ ドロツーダ!
ヘヘーン ドロフォーダヨ!
ジャアワタシモ ドロツーネ
コンナノフェアジャナイヨ…
リバースハマカセロー


見崎「……そんな、どうして」

恒一「どうした見崎鳴よ」

見崎「そんなはずは……」

恒一「……どんな信じられない結果でも良い、言ってみろ」

見崎「……」

   「……死の色が見えない」

   「……この場に死者は、いない」

恒一「……それは本当か?」

見崎「」コクリ

恒一「今年は『ない年』だった、そういうことなのか……?」

見崎「わからない……けど見えないってことは、そうなのかも……」

恒一「――否、違う」

見崎「……どうして?」

恒一「レイ・チャンが災厄により命を散らしているからだ」

見崎「」ビクッ

恒一「『どうして!』 が口癖のアイツは、いつ何時も問うことを止めなかった」

   「そう……思考を止めるのは愚者の行いだからだ」

   「誇り高き使い魔の遺志を継ぎ、俺も真実を問い続けねばなるまい」

   「災厄は在った、ならば必ず死者も存在する」

   「きっと何か落とし穴があるに違いない」

   「巧妙に隠された、魔眼を欺くような何かが……」

見崎「そ、そう……」ビクビク

勅使河原「ふぃー楽しかったぜー、あとで組み分けシャッフルしてもっかいやろうぜ!」

望月「勅使河原くんウノ言い忘れすぎて全然上がれてなかったけどね」

勅使河原「う、うっせー!」

桜木「くすくす」

赤沢「みんな気を抜き過ぎよ、対策係として看過できないわ」

杉浦「そんなこと言って泉美ったらもの凄く楽しんでたじゃない」

綾野「あっれー? 榊原さんたちも食堂にいたんだ、参加すりゃ良かったのにー」

恒一「……色々あって、な」

見崎「……」

勅使河原「なんだよー、辛気くさい顔しちゃって」

      「あ……もしかしてやっぱ死者についてか?」コソコソ

恒一「望月によると遊戯のルールついて貴様は記憶が改竄されてるらしいな」

   「貴様が死者の可能性が高まったぞ」

勅使河原「ちっげーよただのうっかりだっつーの!」

      「そんなことより白熱したら汗かいちまった、フロ入ろうぜフロ」

高林「ここは大浴場だからね、気持ちがいいよ」

恒一「……そうだな、悪くない提案だ」

中尾「よし、一番風呂はまかせろー!」ダダダ

中尾!そっちには扇風機が!!

~女子大浴場~
カポーン

杉浦「ふぅ……良い湯……」チャプチャプ

綾野「いやーごくらくですなあ」

赤沢「こんな広々としたお風呂だと、なんか開放的になるわねー……」

綾野「ほうほう、それは心がですかな? それともそのわがままボディがですかな?」ムフフ

赤沢「ば……! 心よこころ!」

小椋「へぇー……じゃさ、ぶっちゃけトークでもしちゃう?」

綾野「いいねー合宿ってカンジで」

杉浦「あー……わたしはパスー……」

綾野「もーつれないなあ」

   「それにしてもさ、榊原さんは独特な魅力があるよねー?」

赤沢「……まあ、独特なのだけは認めてあげるわ」

桜木「確かにちょっと変わった方ですけど、悪い人じゃないんですよ?」

赤沢「へぇ、随分と肩持つじゃない?」

桜木「ふふ、ウチの母から聞いた話なんですけどね」

綾野「おかーさん?」

桜木「はい、買い物の帰り道、荷物が重くて難義をしてたそうなんです」

   「それを通りすがりの男子生徒が見かねて、わざわざ家まで運ぶって申し出てくれたらしいんですけど」

小椋「うんうん」

桜木「それが夜見北の制服を着た、ぶっきらぼうでちょっと変わった口調の、左腕に包帯巻いた子だったんですって」

多々良「あら」フフ

杉浦「ふぅん……」

小椋「けっこう良いトコあんのね」

綾野「でしょでしょー!」

赤沢「……ふん」チャプン

見崎「……」プクプク

~男子大浴場~
勅使河原「お、流石の榊原センセイもフロでは包帯取んのか」

恒一「水はそれ自体が魔を封ずる性質を持つからな」

王子「へえ、初めて聞いたなそんなこと」

恒一「吸血鬼は流水を渡れない、という話を聞いたことはないか?」

風見「あ、それなら分かるよ」

恒一「ふむ、あとは有名どころだと一人かくれんぼだな」

   「これは生命力の象徴である米と自身の一部である髪や爪を仕込んだ人形を用いた一種の魔術だ」

   「同様の呪いであるこっくりさん等と大きく異なるのは、漂う霊を降ろすというよりは新たな霊を生み出すといった側面が強いことだろうな」

   「そしてこの一人かくれんぼという儀式では水の存在が大きく関わってくる」

   「まず一つは件の人形を水を溜めた浴槽に沈めて行うということ」

   「そしてもう一つが、この儀式を終了するためには口に含んだ塩水を人形に吹きかけねばならない、ということだな」

   「ちなみに俺がこの儀式を行った際には――

勅使河原「すまん、話を振った俺が悪かった」

望月「榊原さんの手、すごく綺麗……」ポー

水野「最近姉貴がやたら怖い話したがるのはこいつの影響か……」

~脱衣所~
恒一「……ない! ないぞ!」

勅使河原「ど、どうした榊原センセイ?」

恒一「俺の布切れがないのだ! これでは隠せないではないか!」

望月「ぶっ」

勅使河原「パンツならそこにあんじゃねーか」

恒一「そんなモノどうでも良い!」

   「俺の包帯が失くなっているのだ……まさかこれも現象の仕業か……ッ!」

猿田「それは違うと思うぞな」

望月「なんだ包帯かあ」

高林「あ、もしかしたらウチの婆ちゃんが洗濯しちゃったのかも……」

   「みんなの服はまとめて洗ってもらうことになってるから、きっと包帯もフェアに洗ったんだよ」

         / ̄ ̄ヽ、
        /  ー/  ̄ ̄~ヽ

       /     ト、.,..    \    小娘に不覚をとるとは…すまぬ恒一
     =彳       \\    ヽ
     ,          \\  |

              /⌒ヽ ヽ  |

             /    | |  /
           ./     ヽ|/
           l


恒一「な、なんということだ……封印の抑えがなくては何が起こるか分からん……」ワナワナ

   「ぐっ……静まれ俺の左腕……ッ!!」

勅使河原「良い機会だから太陽に浴びせとけ、そんな女みたいななまっちょろい腕しちまいやがって」ハハハ

恒一「笑い事ではないぞ、この腕が暴走したらどうなるか……身を以って知った時には貴様は既にこの世には亡いだろう……」

勅使河原「そりゃコワいな」

高林「ごめんね、婆ちゃんも悪気があってやったんじゃないんだ……」

   「僕からもなるべく早く乾かすよう頼んでおくから、今日のところは我慢してもらえないかな」

恒一「……仕方あるまいな、明日までに頼むぞ」

   「それ以上は待てん、手遅れになってからでは遅いのだからな」

勅使河原「よっしゃ一件落着だな、んじゃさっさと着替えてウノの続きでもやろうぜ」

王子「代わりに僕のふんどしを使いなよ」

http://uproda11.2ch-library.com/345977gm4/11345977.gif
この恒一はこの画像で想像すると大変いいぞ

>>305
ヤンデレっぽい

~食堂~

勅使河原「お、女子もちょうどフロから上がったトコみてーだな」

王子「あれ? ウチのクラスにあんな可愛い子いたっけ?」

水野「よく見ろ、ありゃ三つ編み下ろして眼鏡外した柿沼さんだよ」

中尾「あ、赤沢がポニーテールにしてる、だと……」

風見「桜木さんの上気した頬……ふぅ」

久保寺「眼帯外したパジャマ鳴ちゃんマジ天使」

千曳「もう突っ込みませんよ」

勅使河原「先生方も一緒にみんなでウノやりませんか?」

千曳「いいねえ」

望月「榊原さんもやるよね!」

恒一「それもまた一興か」ククク

見崎「……榊原くん、ちょっといい?」

恒一「……ふむ。 望月すまんな、また後にしてくれ」

望月「んー……しょうがないなあ、待ってるからねー?」

もうレーチャンの代わりに見崎が使い魔になっちゃえよ

~2Fテラス~

ビュオオオオオオオ……

見崎「風が、泣いてるね」

   「……封印、解いたんだ」

恒一「不可抗力でな」フン

   「明日には包帯が戻ってくる、それまでの辛抱だ」

見崎「そう」

   「わたしの眼帯も洗われちゃったみたい」

恒一「高林の婆さんには困ったものだな」ククク

見崎「……ほんとうに、ね」

   「……見えないままで良かったのに」

   「……」

   「ねえ」

   「榊原くんは、いつからチカラに目覚めて封印するようになったの?」

恒一「封印を施すようになったのは……いつからだったろうな、忘れてしまった」フッ

   「だがこの腕が疼くようになったのは、一年半前からだ」

見崎「そう……一年半前」

   「前の学校にいたときからなんだね」

   「……ところで話変わるけど、榊原くんは幻痛って知ってる?」

恒一「Phantom Painか」

   「正しくは幻肢痛と云い、欠損した筈の四肢の痛みを感じる症状のことだ」

   「身体の欠損を脳が正しく認識していないことで生じるとされているな」

   「それがどうかしたか?」

見崎「……」

   「――そういえば、だけど」

恒一「……いったい今度は何だ」ハァ

まさか恒一が死者なんじゃねwwwww

まさか腕だけ…

見崎「前の学校にいたときから、色んなものが遠ざかるんだっけ」

恒一「そんなことも話した気がするな」

見崎「うん、その左手が孤独にするんだ、って」

   「クラスメイトに、上履きに、教科書に、ノート、体操着」

   「それに、手ぶくろが……片方」

   「――ねえ、家に無いのはどっちの手ぶくろ?」

   「右手?」


   「それとも……左手?」



――ズクン

恒一「なにが、言いたい?」ズキ…

見崎「……榊原くんの言うとおり、確かに死者はいた」

   「この義眼がはっきりと、告げている」

恒一「それはおかしいな」ズキズキ

   「『誰からも死の色が見えない』」ズキズキ

   「俺の記憶が確かなら、貴様はそう断言していたはずだが」ズキズキズキ

見崎「うん、見えなかった」

   「だって、すっぽりと覆い隠されていたから」

   「指先まで、きっちりと」

恒一「な、にを……」ズキズキズキズキ

見崎「ねえ、榊原くん」

   「どうして包帯を巻くようになったの?」

恒一「それ、は……、ッ」ズキズキズキズキズキ

見崎「チカラを封印するため?」

   「……ううん、ちがう」

   「きっとこれも改竄のひとつのかたち」

   「違和感を、齟齬を感じなくさせるための、現象による干渉」

   「私はこの義眼のおかげでその改竄をまぬがれているみたい」

恒一「……はッ……はッ……!」ズクンズクンズクンズクンズクン

   「――ねえ、榊原くん」

   「自分の手、よく見てみて」


   「どう見てもその左腕……」



   「女性のモノだよ」

やだこわい

   /\___/ヽ
 /''''''   '''''':::::::\
 | (◯),   、(◯)、.::|:
 | " ,,ノ(、_, )ヽ、,,"".:::|: ドウシテェェエエ

 |   ´,rェェェ、` .:::::::::|:
 \  |,r-r-|  .:::::/…
    ヾ`ニニ´ /

恒一「……」

   「……くっくっく」

   「――嗚呼、そういうことか」

見崎「待って。 早とちりはしないで」

恒一「早計も何もあるまい」

   「確かに、指摘された今ならこの腕の異常さも知覚できる」

   「何より見崎鳴、貴様に色が見えているなら決定的だろう?」

   「俺が……今年の死者だ」

見崎「……あなたらしくない」

   「考えることを、放棄するの?」

   「あなたは愚者だったの? 榊原恒一」

恒一「……」

見崎「私は最初にクラスメイト全員を義眼で見て、死者はいないと断言した」

   「もちろん榊原くん、あなたも含めてね」

   「けど、いくら包帯で隠されていたとしても、それは左腕だけのこと」

   「榊原くん本人が死者だったら、その顔に死の色を浮かべているはず……違う?」

恒一「……」

   「……成る程」

   「つまり死者は俺そのものではなく……」


見崎「……」コクリ


恒一「――この左腕のみ、か」

デビル鳴クライ4思い出した

恒一「成る程。通りで左腕が疼くわけだ」ククク

   「幻肢痛、だったのだな」

見崎「たぶん、だけど」

   「一年半前にあなたは何らかの事故により左腕を失っている」

恒一「そのPhantom Painが死者の腕を得てからも、こうして俺を苛んでいたわけか」

見崎「……その腕が榊原くんに憑いたのはたぶん、転校が決定して夜見山に来たのと同時」

恒一「4月に災厄に見舞われたという藤岡未咲の件についても、それならば辻褄が合う」

見崎「足りない座席が榊原くん一人分だったのも……」

恒一「もしクラスの誰かが死者なのだとしたら、始業式の時点で一つ、俺が転校してきた時点で二つ座席が足りなくなる筈だ」

   「しかし増えたのが人数でなく腕の本数ならば、席の数に関係などする訳もないな」

見崎「榊原くん……」

恒一「くっくっく……」

   「左腕の疼きを超常的なチカラの顕れと信じ込んできたが……」

   「ある意味間違ってはいなかったわけか」

   「呪われたチカラどころか、死者の腕とはな!」

恒一「……俺は覚悟はできている」

   「貴様にはあるか? 見崎鳴よ」ククク

見崎「覚、悟……」

恒一「そう、覚悟だ」

   「このまま野放しにしては、犠牲者がいつ出るとも限らん」

   「何より貴様の妹の仇のようなものだろう?」

   「遠慮はいらん――殺れ」

見崎「怖く、ないの?」

恒一「死者なんてものがいる世の中だぞ?」

   「そもそも畏れとは未知から喚起される感情だ」

   「死後の世界の一端を垣間見た今、いったい死の何を畏れる必要があろうか」ククク

   「……それにレイ・チャンを死なせてしまった責任もある」

見崎「」ビクッ

見崎「……榊原くんが死ぬ必要はない」

   「死者を死に還せば良いだけなのだから」

   「その左腕にだけ、還ってもらえばいい」

恒一「成る程、合理的だ」ククク

   「しかし腕を一本殺すというのはなかなか骨が折れそうだな」

見崎「やっぱりひと思いにばっさりかな」

恒一「現実的なのは、鉈とか斧だな」

見崎「いっそボートのスクリューに突っ込むのがお手軽かも?」

~合宿所裏庭、倉庫~

恒一「結局鉈、か」

見崎「この中で使えそうなの、これくらいしかなかったから」

恒一「まあ良い、ひと思いに頼むぞ」ゴロン

見崎「……ところで、片目って遠近感つかめないって知ってた?」

恒一「……直前にそういう笑えない冗談はやめてくれ」

見崎「榊原くんにもこわいこと、あるんだね」クス

恒一「俺を完璧超人か何かと勘違いされては困る」

見崎「……そうだよね、榊原くんは人間」

恒一「見崎鳴、貴様もまた人間だ」

見崎「……ありがとう」グググ


恒一「……こんな役目を負わせてすまんな」ポツリ



ヒュン―――――ダンッ!!

恒一「馬鹿者、それは右腕だ」

恒一「――ッ!!!」

見崎「大丈夫、血は出てない」

恒一「く――ぁ――」

見崎「大丈夫、大丈夫だから」

恒一「――――――」
 ・
 ・
 ・
恒一(これは、離別の悲哀か)

  (胸に穴が開いたような喪失感)

  (空っぽだ)

  (さみしい)

  (いや――だ)

  (いかないでくれ―――)

  (かあ――さ――――)



  『――おかえりなさい』

レイ・チャン「南斗水鳥拳奥義!飛翔白麗!」

見崎「お帰りなさい」

恒一「……」

   「……」ゴシゴシ

   「……ふん」

見崎「気分はどう?」

恒一「最高の気分だ……」ククク

   「貴様の母親に義手を依頼するのが今から愉しみでしようがない」

見崎「つよがり」

恒一「強がりなんかじゃないさ」

   「腕は失ったが、大事なことを取り戻せた」

見崎「大事なこと……改竄されていた記憶?」

恒一「相変わらず察しが良いな」ククク

   「俺の左腕だった死者は……今から1年半前に逝った俺の叔母だ」

   「名を、三神怜子という」

見崎「!」

レーチャン…

恒一「怜子さんは教師をしていてな――そう、お察しの通り夜見北中の教師だった」

   「何年何組の担任だったのか、なんて聞いたこともなかったが、今なら分かる」

   「当時、彼女は3年3組の担任だった」

  「それは今年の死者として現れたからではない」

   「生前彼女の口から現象についての因縁を聞いていたからだ」

   「俺の母が15年前に夜見山で死んでいる、ということは話したか?」

見崎「」フルフル

恒一「……母は単なる事故で死んだんじゃない」

   「当時3年3組に生徒として在籍していた怜子さんを介した現象により、死に引き摺られたのだ」

   「それ以来怜子さんはオカルトに傾倒するようになり、敢えて教師として夜見北に戻って現象と対峙したのさ」

   「母を間接的に殺してしまった罪悪感からだろう、物心付く頃には現象を含む詳しい事情を俺に話してくれたよ」

   「しかし俺は怜子さんを恨まなかったし、むしろ実の母のように敬愛さえしていた」

   「俺が今こうしてオカルトにのめり込んでいるのも、彼女の存在が大きく影響しているだろうな」

人形の左腕かw邪気眼は続きそうだな

>>366
榊原「呼んでいる…哀しき我が半身が…な」

恒一「……すまん、閑話休題だ」

   「とにかく一年半前のことだ」

   「親父の仕事の都合で夜見山に遊びにきていた俺を、怜子さんはドライブに連れて行ってくれた」

   「よく晴れた日だった」

   「見通しの良い直線道路」

   「何がどうしてあんな事故になったのかは今でも分からない」

   「……気がつくと俺は横倒しになった車の中、焼け付くような疼きを左腕があるべき場所に感じていた」

   「後部座席から首を回して運転席を見ようとした」

   「しかしどこをどう捻じ曲げたらこうなるのだろう、ひしゃげた車体は怜子さんを完全に覆い隠していて――」

恒一「次に目を覚ましたときは病院だった」

   「左腕切断という重傷だったものの、命だけは助かった」

   「叔母と甥という関係だったから、災厄の力が及ばなかったんだろうな」

   「しかし、俺にとってあの人は、怜子さんは……母親のような人だったんだ」

   「血の繋がりなんかじゃない」

   「もっと確かなもので、俺はあの人と通じていたと信じている」

見崎「確かな、繋がり……」

恒一「だが皮肉なものだな」ククク

   「現象により、俺は怜子さんと文字通り繋がっていたというのに」

   「何よりも大事な心の繋がりを忘れさせられていたなんて――!」

   「……俺は決して現象を、災厄を――赦しはしない」

見崎「けど、もう災厄は終わった」

   「榊原くんのおかげで現象は止まった」

恒一「確かに今年はこれで災厄が起こることはなくなっただろう」

   「しかしそれも一時凌ぎに過ぎん」

   「来年からはまた何事もなかったように死者が紛れ込み、命を、記憶を、想いを弄ぶのだろう」

見崎「……」

恒一「俺はそれが我慢ならんのだ」

さぁどうなる?

恒一「見崎鳴よ、現象はこの夜見北中学特有のものだと思うか?」

見崎「……他にも、もしかしたら?」

恒一「嗚呼、むしろ世界中でこの中学だけなどと考える方がおこがましい」

   「世の中にはまだまだこうした災厄が、理不尽が蔓延っていると考えてまず間違いない」

見崎「」コクリ

恒一「俺は夜見北だけでなく、世界中のそうした理不尽に立ち向かい、駆逐したいと考えているのだ」

見崎「荒唐無稽な話ね」

恒一「嗚呼、困難なのは重々承知している」

   「だがそれも俺独りならば、な」

見崎「どういうこと?」

恒一「単刀直入に言おう――見崎鳴、俺と共に来い」

えんだぁぁぁぁぁぁぁーー

使い魔メイ・チャン が 仲魔になった

恒一「お前のその魔眼は無論魅力だが、それだけじゃない」

   「怪異への順応性、好奇心、俺の腕を躊躇なく切り落としてみせた冷静さ」

   「そして何よりもお前という魂に触れ、思ったのだ」

   「俺はお前をパートナーにしたい」

   「共にこの世界を跳梁跋扈する魑魅魍魎を打ち滅ぼそう」

見崎「」ポカーン

恒一「……嗚呼、返事はすぐにとは言わん」

   「そうだな――卒業までに決めてくれ」

   「それまでは……」

見崎「……それまでは?」

恒一「せっかく現象を打ち負かして勝ち取ったひと時の休息だ」

   「――存分に愉しむとしようじゃないか!」ククク

来年の死者がレーチャンだったら笑う

恒一「……さて、まずは合宿からだな」

   「俺は一足先に皆の下へ帰還するぞ」

   「前々からウノなる遊戯に興じてみたいと思っていたのだ……」ククク


スタスタスタ……――バタン

ドコイッテタンダヨー
イイカラ ウノヤロウゼ!
ヤリカタ ワカリマスカ?
ウソデモ ワカルッテ イイナサイヨ!
ムチャゾナ…
ボクガトナリデ カードモツネ?
コレデフェアダネ
シャッフルハ マカセロー
ヤンヤヤンヤ

見崎「……」

   「……」

   「……チーム名、なににしよう」ドキドキ



――隻腕ドールマスターと隻眼魔女のコンビが歴史の裏舞台で活躍するのは、もう少し先のお話である。

おしまい

腕なくなってんののツッコミは無しかよwwwww

>>399
記憶が改竄されたんじゃね?

>>1
前スレからは想像出来ないクオリティの高さ

>>400
そういえばそうか

>417
こいつ真性じゃね?

>>419
いない者の相手はよせよ!
それマジでやべぇーんだって!

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