千早「過剰な愛に永久の別れを」 (138)




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見ていると気分が安らぐ

笑顔にできると嬉しくて

笑顔を見ると恥ずかしくて

触れられると、暖かくなって

ちょっとだけ、苦しくなる

でも、嫌じゃない。そんな感覚は、なんですか?

カタ、カタ、カタ……と、

ぎこちないキーボードの操作音が部屋に響く

見える誰かに聞くことはできなくて

なら見えない誰かに聞けばいい

そう思い至ったのは一週間前

音無さんに貰ったパソコン操作の指導時間

自分の部屋で扱うために支払った7万円

それらの犠牲の上に与えられた疑問の解


『それはきっと、恋。してるんじゃないかな?』


それはたった一言の、簡単なものだった


「恋……」

知らないわけではない

ただ、経験をしたことはない

K O I=恋

人差し指で丁寧に打ち出し

一瞬で現れる検索結果

どれを見ればいい、何を見ればいい

文字を追った……概念的なことばかり

ブログというものを追った……感覚的なことばかり

動画を追った……流れるように過ぎていく

解らない、伝わらない

そんな中で画像を見てみた……キスをしていた

慌てて閉じたパソコン画面

暗い中の私の顔は赤かった


彼女とするキスを……夢で見た


「おはよう、千早ちゃん」

「……おはよう。春香」

翌朝の事務所

いつものように貴女は挨拶をしてきて

いつものように挨拶を返そうとした

でも、顔が見れない

夢の中でキスをしたせいだ

いつもなら消える夢の記憶

でもこれは消えてはくれなかった

「千早ちゃん? 大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。心配しないで」

顔を背けて答えを返すと

寂しそうに小さく名前を呟かれた

ごめんなさい。貴女の顔は見たくても見れないの

綺麗な茶髪のショートヘア

丸みを帯びた優しい顔つきと緑色の大きな瞳

そして可愛らしく、柔らかそうな唇

……目を瞑っていても、見えてしまうらしい

恥ずかしくなってクッションに顔を埋めてしまった


「ん? 千早はどうしたんだ?」

「朝からあの調子なんです」

「春香にも話さないのか? そりゃ俺でもダメだな」

「あははっ……そうかもしれませんね」

春香たちの話し声

今日はレッスンする予定だったのに


『それはきっと、恋。してるんじゃないかな?』


パソコンの画面に映し出されていた言葉が蘇る

誰かに恋をしてしまったことを話してみる?

誰に?

そもそも、女の子が女の子にという異常な恋

人に相談なんてできるわけがなかった


「千早さん、そこ。ミキの場所なの」

「…………?」

「千早さん?」

いつの間にか、美希がいた

そして、仕事に向かったであろう春香とプロデューサーはいない

今なら恋愛の話を持ち出すこともできるし

美希なら多少の恋愛経験はありそうな気がする

……いや、年下に相談はありえない

しかも、美希に相談したところで

相手は誰かと迫られるに違いない

「ごめんなさい、今退くわ」

「千早さん、何かあった?」

「どうして?」

「ちょっと、複雑そうな顔してるから」


「別に何もないわ」

言い捨てて離れていく私の腕を

美希は掴んで強引に引っ張った

「なにかしら」

「千早さん、また前みたいに塞ぎ込んだりするのはダメなの」

「そんなに深刻そうな顔をしているかしら?」

「今はしてないよ。でも、するかもしれない」

美希は至って真面目な表情だった

普段はだらけていたりしても

真面目な時は真面目になれる。それが星井美希という人間

「茶化さないなら話すわ……それと、質問も禁止」

「……ミキ、笑わないよ。千早さんが真剣なら、ミキも真剣になるから」

真っ直ぐな強い瞳

参考になるか否か

とりあえず、相手が春香であることは伏せておくべきよね


年下に相談するわけじゃない

あくまで恋愛についての意見を貰うだけ

自分にそう言い聞かせながら

パソコンを弄っていたらたまたま恋愛の話を見つけ

興味本位で開いてみれば女の子が女の子に恋をするという

良く解らないものだったという話をでっち上げて訊ねてみた

「千早さんが最近小鳥と良く話してたのはパソコンのことだったんだね」

「質問は禁止」

「うっ……けど、ミキは経験あるわけじゃないから当てにならないかも」

「大丈夫よ。私よりはきっと解るはずだから」

美希は少し困った表情をして

私の顔を眺めていた

何かついているのかしら


「やっぱり、女の子が女の子に恋をするのはおかしいってミキは思うな」

「そうよね。異常だわ」

「うん。でも、ミキは他人だからそう思うんだと思う」

美希は真面目な口調でそう告げて

クッションを強く抱きしめた

まるで、それが愛おしいものであるかのように

「その恋をした人にとっては、それは異常でもなんでもない。大切な恋なの」

「…………………」

「普通に異性が好きな人にはきっと解らなくておかしいことだと思うけど」

ミキは。と言葉を区切って

しばらく美希は黙り込んでしまった

「美希?」

「……ミキは、その人が本気で相手の女の子が好きなら、応援してあげたいかな」


流れていく沈黙

過ぎていく時間

その気不味い空気を打ち破ったのは美希だった

「あはっ。結局良く解らないの」

彼女はそう笑って言うと

いつものようにあくびをしてソファへと横になってしまった

「悪かったわね。変な話に付き合わせて」

「ううん、ミキも女の子だから。恋のお話は好きだよ」

美希は微笑んでくれた

あの子とは違う微笑み

今日はまだ一度も見れていない微笑み。彼女の笑顔

「私はレッスンに行くわ」

「はぁ~い頑張ってなの~」

垢抜けた返事をしてすぐ、美希は寝息を立てて眠りにつく

春香に会いたい。春香の顔が見たい

この渇望する心は――恋?


しかし、レッスンが終わって夕方になっても

事務所に春香が戻ってくることはなかった

「千早ちゃん、帰らなくていいの?」

「ええ、もう少し」

「じゃぁ、ココアでも飲む?」

「いえ、お構いなく」

音無さんの優しさを振り払って

私はただただじっと扉を見つめているだけだった

いつもなら、春香は必ず事務所に帰ってくるのに

どうして今日は帰ってこないの?

「そうだ、パソコンはうまく使えた?」

「……ええ、おかげさまで」

話しかけてくるのが煩わしく感じてしまいそうな頃

ようやく、事務所の扉が開いた


「春」

「ん? 千早、まだ帰ってなかったのか」

入ってきたのはプロデューサーだけだった

今日はプロデューサーと春香は一緒の仕事で

つまり、戻ってくるなら一緒のはず

なのに、いなかった

「千早?」

「プロデューサー、春香はどうしたんですか?」

「春香? 春香なら亜美と会う約束があるからって途中で別れたぞ」

亜美と会う約束?

じゃぁ、今は亜美と会っているの?

「そうですか。なら、帰ります」

「千早」

横を抜けていくときに名前を呼ばれ

けれど私は足を止めることもなく事務所を出て行く


……満たされなかった


今頃、春香は何をしているのだろう

そんなことばかりを考えている頭は

普通の人から見たらやっぱりおかしいのかもしれない

でも恋をしてしまっているのだから仕方がない

春香が愛おしく

春香を独り占めしたいほどに愛しているのだから仕方がない

…………

………………?

「独り占め?」

自分が会いたいと思うときに

春香はほかの人と会っている

それを思うだけで、感情が昂る

悪い方向に昂ってしまう

ズルイ、ニクイ、ウラメシイ

嫌な感覚に、体が震えた


その翌日

「ち、千早ちゃん!?」

事務所に響いた春香の声

でも、そんなことは気にしない

強く、強く

自分のもとに縛り付けるように強く

春香を抱きしめた

「千早ちゃん、どうしたの?」

「…………………」

頭に触れてくる春香の手が心地いい

満たされていく

昨日満たされなかった分まで

春香が満たされていく……

「良く解らないけど、仕事行くまでなら……いっか」

春香は受け入れてくれた

解らないのに、私を受け入れてくれた


良く解らないのに春香は受け入れてくれた

でも、解らなくて良かったかもしれない

だって、これはあまりにも異常なものだから

春香の体を抱きしめて

艷やかで綺麗な髪の中に顔を埋めて

肺だけでなく体いっぱいに春香の匂いを取り込んで

その体の温かさを全身に感じて……。

異常だとは思う

でも好きなの。狂おしい程に愛おしいのよ。春香

言葉にはできない思いが態度となって春香を襲う

「わぁお、千早お姉ちゃん大胆だね~」

コンビニの袋を手に、亜美が事務所へと入ってきて、

そしてその臭いが体の中へと入ってきた。途端

私は凄まじい吐き気に襲われた


「っ!?」

春香を突き飛ばし

口元を押さえ込んで耐えようと息を止める

「え……?」

「ど、どうしたのさ!」

春香も亜美も唖然としている

でも、原因は2人

おかしいとは思った。でも、ただ変えただけだと思った香り

でも、違う

亜美も春香も同じにおいだった

それはつまり、春香は昨日そして今日の朝までずっと一緒だったということ

「うぇっ……ぁっ……」

吸い込んだ分だけ大きくなっていく拒絶反応

堪えきれなかった私は

胃の中が空になってしまうほどに吐き出し

「ち、千早ちゃん!」

春香の慌てふためく姿を見ながら、意識を失った


中断


重い瞼が開いていく

口の中には吐いた名残の酸っぱさが残っていて

思わず顔を顰めてしまった

「千早ちゃん、大丈夫?」

白い天井と私のあいだに割り込む

春香の心配そうな表情

「春香……」

「水、持ってきたよ」

春香に染み付いた双海亜美の不快な臭いが呼吸するたびに入り込んでくる

けれど、再び吐き出すことはなかった


コップ一杯の水を飲み干し大きく息をつく

そのあいだも、春香は心配そうな表情のままだった

「大丈夫?」

「ええ……ごめんなさい」

「何があったの?」

「ただちょっと、目眩がしただけよ」

私の嘘は、下手過ぎた

2人並んでソファに座ったまま

春香は私の体を優しく……けれど強く抱きしめた

「嘘」

「………………」

「昨日から、ちょっと変だよ」

「………………」

黙り込んだままでいると

春香は私から離れて、顔を見つめてきた

「今朝だって、急に抱きついてきたよね?」


「……ええ」

否定することは出来なかった

不自然だったのは事実だし

そうでなくても、春香が怒っているからだ

吐くほどにおかしかったのに

なぜ、相談してくれなかったのか。と

「なにか、あったの?」

「……………………」

「黙ってたら何にも解らないよ」

「……………………」

わかる、わけがない

解って、貰えるわけがない

私は春香を好き。愛してる。そう伝えたところで

訪れる結末は私達2人の絶縁

そうとしか思えない

だから、何も言えなかった


「ねぇ、千早ちゃん」

「…………………」

「この際、黙ったままでも良いから聞いて」

春香は静かな声で言葉を作っていく

同時に、私の手を握ってくれた

「私は千早ちゃんを助けてあげたい」

だから。と、続く

「出来ることがあったら言って。なんでも協力してあげるから」

そう言って、春香は笑った

「なら……今日は事務所に来て」

「え?」

「昨日、亜美の家に泊まったんでしょう?」

「う、うん。もしかして……昨日事務所で待っててくれたの?」

春香はすぐに察してくれる

割と長い付き合いだからこその理解だった


「……ええ」

「ご、ごめんね? 昨日は元々亜美達と約束してたの」

「聞いてなかったわ」

「あははっ、その……言う必要は」

春香の声を遮った大きな音

それが自分が机を叩いた音だと気づくのには

数分程度の時間が必要だった

「ち、千早、ちゃん?」

「言う必要……ない?」

「だ、だって私のプライベ」

また、大きな音

今度は手が痺れたおかげですぐに気づいた

「春香、そんなのはダメよ。黙っているなんて」

「ち、千早ちゃん? ねぇ、どうしちゃったの……?」

「不安になるし、心配になるわ……だから、ダメ」


春香の震える頬に触れ

そこから下へ下へと流れるようにおりていく

「………………」

「ねぇ、春香」

「な、なに?」

「今日は……私の家に行きましょう」

私の提案に対して

春香はビクッとあからさまな反応をして首を横に振った

「2日連続しては」

「春香!」

「っ……」

「亜美は良くて、私はダメなんて許さない」

今の私はどんな表情なのだろう

怯える春香の瞳の中にいるのは……鬼だった


「ゎ、解った……解ったから……」

春香は涙を堪えた瞳で私を見つめ、すぐさま逸らす

そんな畏怖の感情をあらわにする春香から離れ

私は部屋を出ていこうと扉に手をかけ振り向いた

「ちゃんと事務所に帰ってきて?」

「解った……」

忘れないようにという念押し

春香はそれに対して震える声で答え

自分の体を抱きしめていた


ダンスレッスン場の誰もいない部屋

私はその鏡の中に、自分ではなく春香を見ていた

春香は救いの手を差し伸べてくれていた

けれど私はその手を力強く弾き飛ばし

それだけでなく強引に引きずり込んで縛り付けた

「……春香」

怯えた瞳

震えた声と体

でも、不思議と罪悪感は沸かなかった

昨日戻らなかった春香が悪い

黙って泊まった春香が悪い

言う必要はないと言った春香が悪い

全部、全部春香が悪い

…………。

………………。


まだ、満たされていない


中断


「あははっ、そんなことないよ~」

「いやいや~、中々才能あると思うけどなぁ」

夕方、レッスンを終えた私は

事務所の扉の前で立ち尽くしていた

中から聞こえてくる声は楽しげで

邪魔をすることを許されないような感じだったから――ではない


バァンッ!!


騒々しい音を響かせて扉を開けると

春香、音無さん、美希……そして双子の片割れである忌々しい女の子が

驚いた様子で私を見つめてきた


「すみません、ちょっと倒れそうになって……」

かなり苦しい言い訳だったけれども

今朝の嘔吐と気絶がその嘘を真実へと偽ってくれた

「千早ちゃん、まだ辛いの?」

「ソファ、貸しても良いよ?」

だからこその音無さんと、美希の気遣う声

でも、私にはそんなものは必要なかった

双子の片割れの心配そうな表情だって眼中にはない

そもそも、そんな存在など不要

私からも、春香からも。不要

もしも私たちの邪魔をするのなら。

世界からだって不――

「ち、千早……ちゃん?」

私が一番聞きたい声が聞こえた


ゆっくりと、たどたどしい足取りで

春香は私の方へと近づいてきた

心配そうな表情の影に

私に対する畏怖の感情が感じられ

じっと見つめると緑色の宝石のような瞳は暗く

わずかに揺らいでいるのが解った

「春香」

「家まで送ってあげるよ」

「それならプロデューサーさんが帰ってから車で――」

「いえ、大丈夫ですよ。ね?」

「……ええ」

春香はいつもの春香を演じ

亜美の家に泊まったせいだろう

普段よりも多い荷物を抱えて、私の手を少しばかり強引に引いて

「行こっか、千早ちゃん」

私達は事務所を後にした


夜道を歩きながら

不意に春香が口を開く

「ごめんなさい」

「……どうして謝るの?」

「亜美と話してたからだよね……あんなことしたの」

あんなこととは私が扉を強く開け放ったことだろう

流石に春香のことは誤魔化すことはできなかったらしい

かといって、

元々春香まで誤魔化すつもりはなかったけれど。

「ええ、そうよ」

「……どうして、急にそんなことするの?」

当然といえば、当然の質問だった


「昨日、勝手に亜美達の家に泊まったから?」

「……………………」

「でも、昨日の朝から様子はおかしかったよね」

「……………………」

黙り込んだまま歩く私の手をつかみ

春香は立ち止まった

「答えてよ、千早ちゃん」

「………………………」

「ねぇ、おかしいよ。千早ちゃん」

「……おかしい?」

聞きたくなかった言葉だった

自分がおかしいことは重々承知の上だ

しかしながら、春香の口からおかしいと指摘されるのは

死んでしまいそうなほどに苦しく、そして辛かった


「何があったの?」

「……何もないわ」

「嘘だよ! 一昨日の千早ちゃんは普通だった!」

「……そうね、普通だったわ」

そう。普通だった

普通に、異常が隠れていただけ

自分が抱いている気持ちの理由も解らずに

ただただ日々を生きてきただけ

けれど、私は知った。理解した

それが恋であると理解し、異常であると理解した

そのせいで

春香を渇望してやまない気持ちは、

春香が誰かと親しいということでさえ許せなくなってくるほどに異常な想いへと変わった

「でも今は狂っているし、異常なのよ。春香」


「だから、その変化の理由を」

「ここでは一目につくわ」

「……家には、いかないよ」

「……どうして?」

聞くまでもない

自ら異常者を名乗る人間にのこのことついていくような人はいるかしら?

いるわけがない

春香だってそうだものね


だけど


「……本当に。それでいいのかしら」

「え?」

「貴女は言ったじゃない。なんでも協力するって」

掴まれていることを利用して腕を強く引き

私は空いている手で春香の胸ぐらを掴んだ



「嘘を。ついたの?」


「協力するなんて、ウソだったの?」


「なかったことにするの?」


「ねぇ、春香」


「私は、嘘が嫌いとか、どうとか。言うつもりはないけれど」


「たとえ口約束だとしても」


「破られるのは――大嫌いなのよ」


「ねぇ、もう一度言ってくれる?」


「一目につくから……家に行きましょう?」


じっと瞳を見つめ

怯えてしまっていることを気にすることもなく

私は畳み掛けるように、言い放った


「……はい」


震える声で春香は静かに呟いた

同意したわけではないことは明らかだった

だけれど、恐怖が拒絶を拒んだのだろう

断ったら何をされるか解らない

その恐怖が、春香を鎖に繋いだ

「ありがとう、解ってくれて嬉しいわ」

春香の心を痛めつけるように

わざとらしく明るい声で礼を言う

春香はそれに答えることはなく

黙って俯いたまま歩いていき、電車で数駅分離れた私の家へと――来てしまった


「入って」

「……うん」

元気のない声は聞いていて痛々しいと思うかもしれない

しかし、自分が春香を支配しているということが

あまりにも大きく、私はそんな風に思うことも

胸に宿るどす黒い感情によって練られた

モラルの欠けた醜悪な計画を

今更やめようと思うことも。なかった

「ねぇ、ちは」

リビングにまで入り

振り向いた春香を力いっぱいに突き飛ばした

「ぁ゛っ」

壁にぶつかった鈍い音に重なって

春香の口からうめき声が漏れ、彼女の体はそのまま床へと倒れ込んだ


「けほっ、けほっ……千早ちゃ、ん?」

「春香。私が変わった理由を知りたいのでしょう?」

冷酷で、非情な感情のままに

一歩、また一歩と春香に近づいていく

「ち、千早ちゃ、なに、なんで……」

もしかしたら

春香は僅かな希望を抱いていたのかもしれない

おかしくなった私の中に

今まで通りの普通の私がいることを

でも。残念

そんな如月千早はいない

胸ぐらを掴み上げて力一杯左右へと引き裂くと

ボタンがはじけ飛び、ビリリッと布が裂けていく


「や、やだっ! 千早ちゃ」

「なんでも協力するって言ったじゃない」

拒絶と抵抗

それらを受けながらも、私は春香の衣服を確実に引き剥がしていく

「そんな、こんな、つもりじゃ……」

涙やらなんやらで顔をクシャクシャにしながら

春香は私への抵抗を止めてしまった

もう無理だと悟ったのかもしれない

嗚咽を漏らすことしか、春香はしなくなった

だけれど

私は春香を守る最後の一枚でさえも奪い去った


「春香、私が狂った理由……わかったかしら?」

「解らないっ! わかるわけないよっ!」

春香は怒鳴って私を睨みつけてきた

物理的な抵抗はしなくなっても

やっぱり、精神的な抵抗は続けるつもりらしい

「私が何かしたの……? こんな酷いことされなくちゃいけないことしたの!?」

「半分正解だわ」

「え……?」

春香は身に覚えがないといった感じで目を丸くする

自分で言い出したくせに、解っていないなんて

「昨日、春香は私を疎かにしたわ。これはその罰」

「罰って……ただ、ただ亜美の家にお泊りしただ」


パンッ


平手を打たれた春香は左側へと顔をそらし

唖然とした表情で私の方へと向き直った

「……した。だけ? 貴女はそれだけとしか思っていなかったのね」


「私は辛かったし、苦しかった。なにより寂しかったわ」

「そんなこと言われたって……」

「なのにっ、なのにッ!」

「きゃぁっ!」

ドンッと打ち付けるように春香の体を床へと押し倒し

その両肩を握りつぶすように強く握った

「痛いっ痛いよっ……痛いよぉっ!」

「貴女はそんなこと程度にしか思っていなかった!」

「ごめんなさいっ、ごめんなさい、謝るからっ謝るからぁっ!」

春香の叫び声が響く

うるさい、うるさいっ

今までは好きだったその声は

今はただただ煩わしいだけだった

春香の口の中に彼女自身の下着をねじ込み、黙らせた


「んーっ! んんーっ!」

溜め込んでいた涙をこぼしながら

春香は顔をしかめ、下着をぬこうと手を動かした

「ダメよ、春香」

「っ!」

万歳の状態で腕を押さえつけ

春香の頬を流れる涙をペロッと舐める

「でも。それ以前の問題があった」

「ふーっ! ふーっ!」

威嚇する猫のような息を漏らしながら

春香は私を睨みつけた

「私は貴女を好きだったの。恋愛の対象として」

「んぅ!?」

なんて言っているのかは解らない

けれど、肯定的なものではないことは確かだった


「それに気づいたのが昨日の深夜」

「……………………」

「そして、貴女が私を疎かにしたことで気づいたの」

「んん……」

春香は悲しげな瞳で私を見つめ

小さく首を横に振った

「どうしようもないほどに貴女を求めていたことにね」

「……………………」

きっと呆然としているに違いない

春香は黙り込み、私を見つめるだけだった

「だから、罰」

「んっ!」

「自分のものに印をつけるように、貴女にも私のものだって烙印を押すことに決めたのよ」

「んんんっ!!」

最後まで言い終えてようやく、春香は自分がこれからどうなるのかを理解したらしい

喋れないままにこもった悲鳴をあげた


でも。

私の心は揺るがない

春香がどんなに悲痛な叫び声をあげたとしても

春香がどれだけ懇願してきたとしても

私はもう、止まれない

「春香、経験がなくて拙いかもしれないけれど……許してくれるわよね」

「んんーっ!」

キスをするのが優先的かもしれない

けれど、今の春香は下着で口を塞がれているし

それを外せば泣き喚くのは確実だった

だからこそ、血を吸う吸血鬼のように

首筋に噛み付くように唇を当て、力強く吸い込んだ


「ん゛っ」

ジュルジュルと

吸い込まれていく空気に乗せられて

口の中の水分が変な音を立てる

「っは……ダメね」

息苦しくなって離れると

春香の首筋には自分の唾液が塗られただけで

噂に聞くキスマークというものをつけられてはいなかった

「んぅぅ……」

春香が止めて。と願ってくる

けれど、当然止めるわけがなかった

さっきよりも強く吸えるように口を小さく開き

もう一度春香の首筋に唇を当てて吸い込んだ


今度は苦しくなる程度では引かず

酸欠にでもなってしまいそうな程に長く

春香の皮膚を吸い続ける

「んっ、んぅぅっ!」

春香が嫌そうに動いても

押さえつけるように強く当てているために

行為においてはなんの支障もなかった

「っ! はっ、はぁっ……はぁっ……」

苦しいという感覚を超え

吸う力によって自分の首やらなんやらまでもが強ばっていき

やがて舌が引き攣るような感覚に襲われ、離れてしまった

「んんっ……うぅぅ……」

けれど

涙をこぼす春香の首筋には

初心者にしてはよくできたと言えるほど立派な跡が残っていた


「ふふっ……跡がちゃんと付いてるわ」

「っ……」

春香自身

それは見なくても感覚的なもので解るのか

小刻みに首を振りながら

その部分を気にしているようだった

「でも、これだけじゃきっとダメよね」

「んんっ!!」

「ふふっ、貴女に拒否権はないわ」

舐めまわすように春香の全身を見つめ

どこが一番最適かを考察し、

ある一点に狙いを定めた

「胸とか、どうかしら」

「んぅ!?」

「外泊なんてする気が起きなくなるし、人前で脱ぐことなんて考えられなくなるものね」

春香の絶望に浸っていく表情に笑顔を返し

春香の豊かな胸に、キスマークを

私のものであるという印を刻みつけた


首筋に1つ

右胸に1つ

左胸に1つ

合計3つの印をつけ終える頃には

春香は抵抗する気力も

声を上げる気力も喪失してしまったらしく

腕を放しても、下着を抜き取っても

春香が何かをすることも、言う事もなかった

「ねぇ、春香」

「……………………」

下着を抜き取ったことで

垂れていく春香の唾液をしたからなぞるように舐めとり

たどり着いた唇を舌でなぞる

「貴女は私のものよ」

春香の顔を固定し、その上から自分の溜め込んだ唾液を

春香の口の中へと垂れ流していく

それはまるで魂を分け与えているかのようで

私にとっては、神聖な儀式のようにも思えた……


ここまでで中断


あと少しで終わる

閲覧注意だけじゃやっぱり不足ですか……
次回から気をつけます

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