猿夢「次は~ひき肉~」光彦「!」 (263)

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

プシュー…

『米花町~米花町~』

光彦「…テレビで見た、移動遊園地の電車に似てる?」

『お乗りの方はお急ぎくださ~い。但し、乗ったら恐い事が起きますよ~』

光彦「恐い事?そんな事言われて乗る人なんて…あれ?」

光彦「え?乗りたくないのに…足が勝手に…」


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『発車します』

光彦「はっ!ようやく動ける…早く電車から降りなくちゃ!」

ガタン…

光彦「う…どうしてですか?電車から降りられない?!」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「恐い事って、何が起こるんでしょう…」

『次は~活け造り~活け造り~』

光彦「活け造り?!」

??「ぎゃあああ!!」

光彦「?!」

光彦「な、僕の二席後ろの人が、小人に刃物でズタズタにされ……え?」

光彦「な、どうしてですか!」

光彦「何で…刃物で殺された人が、僕と同じ顔…」

光彦「それに、後ろの人も『僕』?!」

光彦「僕の前に入る人も、殺された『僕』より後ろに続く死体も、全部『僕』じゃないですか?!」

『次は~えぐり出し~えぐり出し~』

光彦「ひっ!後ろの『僕』!小人が来ていますよ!逃げて下さい!」

光彦「何で、黙って俯いてるんですか!!」

「ぎゃああああ!!」ビチャビチャッ

光彦「あ…ああ…僕が、また殺された…」

光彦「これは、夢だ!夢に違いない…覚めろ…」

『次は~』

光彦「嫌だ!覚めろ!」

猿夢『次は~挽き肉~挽き肉~』

光彦「!」

光彦「ひぐっ…嫌だ…覚めろおおおお!!」







光彦「と、いう夢を見まして…」

歩美「だからそんなに顔色が悪いのね」

元太「たかが夢だろ?」

光彦「…そうだと思いますが、どうにも気になりまして」

コナン「」ソワソワ

灰原「でも、自分が死ぬ夢は縁起が良いらしいわよ?」

元太「マジかよ?」

歩美「哀ちゃん、物知り!」

コナン「」モジモジ

光彦「…コナン君、落ち着きがない様ですが、どうしたんですか?」

コナン「いや、タイミングを計っててよ」

光彦「タイミングって何の?」

コナン「『光彦を快速列車に飛び込ませる装置』のスイッチを押すタイミングだよ」

光彦「!」

光彦「僕をミンチにする気ですかっ?!」

コナン「別に良いだろ。減る訳じゃねえし」

光彦「減ります。むしろ亡くなります!ボタンは頂きますよ!」バッ

コナン「あ、何すんだ!」

歩美「駄目だよ、光彦君!」

元太「人の物を盗るのは泥棒だぞ!」

光彦「正当防衛ですよ!僕の命が係ってるんですから!」

-授業中-

光彦(最近、みんなの様子が変です)

光彦(コナン君は毎回おかしな装置をもって来ますし、少年探偵団のみんなや先生まで、僕に辛く当たる気がします)

光彦「…」

光彦(昨夜の夢、灰原さんは縁起が良いと言いましたが、ストレスの所為で見てしまった気がします…)

光彦「ふ、ああ…」

光彦(眠い…変な夢を見て起きた後、一睡も出来なかったから)

光彦(でも、今は授業中です!ちゃんと起きていないと)

-休み時間-

コナン「光彦。お前、途中舟こいでたぞ」

光彦「あ、見られてましたか…」

元太「え?お前、いつ舟に乗ったんだよ?」

灰原「そうじゃなくって、眠くてうとうとして頭を揺らしてたって意味よ」

歩美「哀ちゃん、本当に物知りね!」

光彦「朝に話した夢の所為で、余り寝ていませんでしたし」

コナン「へーえw」

光彦「二度寝したら、あの夢の続きを見そうで怖かったですし」

コナン「そうかw」カチッ

光彦「何ですか、コナン君。その腕時計を構えて、どうしようと…」

プシュッ

光彦「あ……」フラッ

光彦「……ぐ、なにを…する、んですか?」

コナン「流石、光彦。一発じゃダウンしないか」

光彦「う…はあ…はあ…」

光彦(凄く眠い…今にも、意識が飛びそうな…)

コナン「駄目押しに、キック力増強シューズで」キュイイイン!

光彦(でも、嫌だ…寝たら、またあの夢を見てしま……)

コナン「死ね!」

ボキャッ!!

~~~~~~~~~~

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「え?」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

『次は~えぐり出し~えぐり出し~』

光彦「え? え?」

光彦「な、何で!最初っからじゃないんですか?!」

「ぎゃああああ!!」

光彦「後ろの『僕』が殺された?!」

光彦「じゃあ、次は…」

『次は~挽き肉~挽き肉~』

光彦「ひいいいいいい!!」

光彦「嫌だ!来るな!」

小人「」ニタニタ

小人「」ニタニタ

光彦「やめ…誰か…」

小人「」ジャキッ…

ウイイイイイン…

光彦「チェーンソー…」

小人「」ウイイイイン…

光彦「ああ……」

『…ひこ…起きて下さい…』

光彦「うああ…」ガタガタ

~~~~~~~~~~

??「光彦君!」

光彦「うわあっ!嫌だあ!挽き肉なんて嫌だ!!」

??「落ち着いて下さい!光彦君!」

光彦「え…はあ…あ、此処は保健室ですか?ああ、良かった」

光彦「ありがとうございます。貴方が起こしてくれたお陰で…え?」

??「…」

光彦「え?どうして…『僕』?!」

??「ええ」

光彦「本当にそっくりですね…また博士の発明ですか?」

異世界光彦「ある意味そうですが、博士の差し金で此処に居る訳ではないので、ご安心を。僕は『異世界』から来た光彦です」

異世界「僕は、君を助けに『この世界』に来たんです」

光彦「へ?」

異世界「コナン君達の魔の手から守る為に」

光彦「魔の手って…大袈裟な」

異世界「…この世界の『僕』は危機感が薄いですね」

異世界「現に今朝だって、三度も殺されそうになったじゃありませんか?」

光彦「三度?二度じゃなくて?」

異世界「君が寝ている間も含めるとです」

異世界「今日だけじゃない。数ヵ月前から、コナン君達に常に酷い目に遭わされて居るじゃないですか」

光彦「でもコナン君達は友達ですし…」

異世界「友達、ですか…」

光彦「何が言いたいんです?」

異世界「そうやって僕の助けを断った『僕』が、体や心を壊されていくのを何度も見ましたよ」

光彦「それは、『別の世界』の話ですか?」

異世界「ええ、僕はこうやって色々な世界の『僕』をコナン君達から逃がしているんです」

異世界「君だって本当は気付いているんでしょう?彼らと『僕』の関係は、以前とは違うと」

光彦「…君は、何をされたんですか?」

異世界「僕は『痕跡を消された』んです」

異世界「物理的にも人の記憶からも、僕の存在は消されてしまったんです。残ったのは僕の身一つでした」

異世界「…博士は何を思ったか、唯一『痕跡を消す装置』に影響されない、『この世から消える』装置を僕に残してくれました」

異世界「最後は僕に選ばせてやるという手紙付きでね。僕は世界から消える事を選びました」

光彦「もしかして、それが」

異世界「ええ、『異世界』に移動出来る装置でした」

異世界「元々そういう仕組みに作ったのか、不具合なのかは僕には分かりませんが、お陰で助かりましたよ」

異世界「だから光彦君。僕と一緒に来て下さい」

光彦「どこへ行くんですか?」

異世界「『光彦の国』です」

光彦「僕の国?」

異世界「僕が最初に行った異世界━━そして僕が避難させた光彦達を大勢集めた世界ですよ」

異世界「少し変わった動植物が溢れていますが、人間は『僕』達だけしかいない。光彦の楽園です」

光彦「…」

異世界「さあ、行きましょう」

光彦「折角ですが、遠慮させて貰います」

異世界「え?」

異世界「どうしてですか?このままだと、君もどんな酷い目に遭うか…」

光彦「僕、コナン君と話してみます」

異世界「馬鹿な真似は止して下さい。僕の話を聞いていなかったのですか?」

光彦「それは他の世界のコナン君の話でしょう?」

異世界「僕が見た分には、この世界と他の世界のコナン君に違いは感じませんでした」

光彦「それでも、コナン君は友達です。そりゃあ、ムカつく所もありますよ」

光彦「やたら人を小馬鹿にしたり、僕の好きな歩美ちゃんや灰原さんとこれ見よがしに仲良くしたり…」

光彦「けど、何度も助けて貰いました。コナン君がいなければ、僕は今、生きていなかったかもしれない」

異世界「…死んだ方がマシな目に遭わされるかもしれませんよ」

光彦「そんな事はないです。話せば分かる筈ですよ」

光彦「そうだ!君と一緒に話せばきっと…」

異世界「絶対に御免です!!」

光彦「!」

光彦「でも、一人より二人の方がコナン君も聞く耳を持つかと」

異世界「君は本当に危機感が薄いですね…いいえ、能天気と言うべきでしょうか?」

異世界「無理ですよ…」

光彦「そんな!どうして決め付けるんですか?」

異世界「僕だって、何度もコナン君と話し合おうとしたんです」

異世界「でも通じないんですよ。言葉が」

光彦「言葉が?」

異世界「コナン君の言っている事が分からなかったんです。お互い同じ言語で話している筈なのに」

異世界「あの時の恐怖が、君に分かりますか?」

光彦「では、逃げるんですか?」

異世界「ああ、逃げますよ。コナン君と話し合おうなんて馬鹿のする事です」

光彦「そうですか…じゃあ、僕は馬鹿でいいです」

異世界「!」

光彦「僕は逃げるより、コナン君を説得して昔の様に仲の良い友達に戻りたいです」

異世界「どうして、そこまでして…」

光彦「決まってるでしょう?みんなと一緒にいるのが楽しいからです」

光彦「コナン君や元太君、歩美ちゃん、灰原さんとみんなでサッカーしたり、キャンプしたり、事件を解決するのがとても楽しかったからです」

光彦「君も、僕なら分かりますよね?」

異世界「…」

光彦「折角助けに来て下さったのに、すみません。僕は行けません」

異世界「…分かりました。どうなったって、知りませんよ」

「ったくよー。困ったもんだよ、光彦の奴が」

光彦「コナン君の声だ!」

異世界「…では、僕はこれで失礼します」ポチッ

シュンッ…

光彦「消えた…」

ガラッ

元太「おーい、起きたか?」

歩美「もう放課後だよー」

光彦「あ、みんな…」

コナン「…今、誰かと話してなかったか?」

光彦「い、いいえ!気の性ではないでしょうか?」ビクッ

歩美「光彦君、急に寝ちゃうんだもん。ビックリしたよー」

元太「俺が運んだんだぜ?後でうな重奢れよ」

灰原「…足首持って、廊下と階段を引きずり回しただけだけどね」

光彦「え?通りで頭が痛いかと思いましたが…」

コナン「すげえなw流石光彦w」

光彦「…」

光彦「コナン君」

コナン「何だよ?」

光彦「後でお話があるんですが。出来れば灰原さんも一緒に」

灰原「私は大丈夫よ」

コナン「…俺も良いけど、今じゃ駄目なのか?」

光彦「駄目です。ランドセルを置いた後、博士の家でゆっくり話したいんです」

コナン「ちっ、仕方ねえな」

今日はここまでにします。

【阿笠家】

コナン「どうしたんだよ。話って?」

光彦「君が僕に行う嫌がらせについてです」

コナン「はあ?嫌がらせ?」

光彦「そうでしょう?朝の『電車に飛び降りたくなる』装置や、休み時間に僕を強制的に眠らせた件についてです」

コナン「それくらいの事で嫌がらせ扱いかよ」

灰原「嫌がらせを通り越して、殺人未遂だけどね」

コナン「…灰原おめえどっちの味方だよ?」

灰原「どっちの味方でもないわ」

灰原「私は一般常識を述べているだけ」

コナン「はあ?」

阿笠「まあまあ、新一」

阿笠「哀君は幼い頃から黒の組織で育ったんじゃ。常識にちっと疎いのは仕方がないじゃろう」

コナン「あ、そうかw」

光彦「黒の組織が何なのかは分かりませんが、灰原さんの方がどう考えたって常識的ですよ」

光彦「コナン君や博士も、自分が同じ目に遭わされたらどうするんですか?」

コナン「そりゃあ、良識的な一市民として現行犯逮捕して、110番だろ?」

光彦「じゃあ、どうして僕にそんな事をするんです」

コナン「…何言ってんだ?」

光彦「え?」

阿笠「新一。光彦君は自分と新一を同列に考えてるんじゃないかのう?」

コナン「は?ねえよ」

光彦「!」

光彦「灰原さん…コナン君達はどうしてこうなってしまったんですか?」コソッ

灰原「私にも分からないわ。ある日突然、博士は貴方を貶める装置の発明を始めたわ」コソッ

光彦「え?」

灰原「貴方は覚えていないと思うけれど、彼らに何度も死ぬ様な目に遭わされているのよ」コソッ

光彦「灰原さん、知っていたのに止めてくれなかったんですかっ」コソッ

灰原「止めたわよ」コソッ

灰原「でも博士の発明と同時期に他の住民までオカシクなってしまって…」コソッ

灰原「最近は私も…円谷君なら良いかなと思うようになって来たわ」コソッ

光彦「なっ…灰原さん!」

コナン「何コソコソ話してるんだよ」

阿笠「これ、喧嘩は止さんか」

光彦「喧嘩じゃありません!」

コナン「やれやれ、光彦も困った奴だぜ…」

阿笠「そうじゃ!面白い物を用意したんじゃよ!」

阿笠「光彦君用の『巨大フードプロセッサー』じゃ!」

光彦「?!」

コナン「おw良いじゃねえかw」

光彦「何が、『良いじゃねえか』ですか!!」

コナン「これがスイッチか?」ポチッ

シュンッ…

光彦「え?僕、いつの間にフードプロセッサーに入って?」

阿笠「それは光彦君を『フードプロセッサーに瞬間移動』させるボタンじゃ」

コナン「気が利いてるな。じゃあ、スタートボタンは?」

阿笠「その赤いボタンじゃよ」

光彦「ちょっ…やめ…」

コナン「これかw」ポチッ

ギュイイイイイン!

光彦「ぎゃあ?!」ピョンッ

コナン「あ、この野郎…上の縁にしがみ付きやがった」

コナン「仕方ねえ。俺が直々に蹴落としてやんよw」

灰原「やめなさい!」

光彦「灰原さん…」

灰原「危ないでしょう?円谷君なら、放っておいても体力がなくなったら勝手に落ちるわ」

コナン「なるほど。その方が面白そうだなw」

光彦「灰原さん…」

光彦「う…やだ…やめて下さい!そんなに僕に死んで欲しいんですか?!」

コナン「いや、別に」

光彦「じゃあ、何で…」

コナン「面白いからだよ」

光彦「!」

ギュイイイイイン!

コナン「お前がこれで死ぬタマじゃねえとは思うが、もし死んだら新しい玩具を探すまでだよ」

光彦「何でコナン君…誰か…助け…」

異世界光彦「待て!」

コナン「…なっ!」

光彦「へ…」

光彦「…あの時の『異世界から来た僕』?」

異世界「ええ。助けに来ましたよ。こうなる事は予想できましたので」

コナン「光彦が二人?」

阿笠「こりゃあ驚いたのう」

コナン「しかし光彦が二人になった所で、ミンチの量が増えるだけだろ」

??「待て!」

光彦A「誰が二人と言いました?」

光彦B「話は聞きましたよ。光彦君」

コナン「な…」

光彦C「コナン君。僕達は別世界の君に酷い目に遭わされた『光彦』、百人です」

光彦D「さあ、覚悟して下さい。この悪魔め」

異世界「今直ぐ『僕』を解放して、僕達に謝罪して下さい」

阿笠「ど、どうするんじゃ!新一!」

コナン「どうするもこうするも…これしかないだろ!」ポチッ

シュンッ…

光彦E「ぎゃあああ!!」グチャグチャ

ギュイイイイイン!

光彦「ひっ!ぼ、僕が…ミンチに」

光彦F「よくも『僕』を…」

コナン「ボタン一回につき、無作為に一人かよ…畜生」

異世界「コナン君、それが君の答えですか」

異世界「みんな!コナン君と阿笠博士を生け捕りにしましょう!」

光彦達「おー!!」

コナン「くそおおおお!!」ポチポチポチ…

ギュイイイイイン!

光彦G「ぎゃああ!!」グチャグチャ

光彦H「ぎゃああ!!」グチャグチャ

光彦「ひいい…僕が沢山ミンチに…」

異世界「フードプロセッサーを倒して下さい!!」

光彦達「せーのっ!!」ドターンッ

どろどろどろ…

光彦「げほっ…うえ、『僕』の肉片が…うえええ…」

コナン「やべ、逃げ…」

異世界「確保ー!」

光彦達「わあああああ!!」

コナン「わあ?!」

阿笠「わし、関係な…ぎゃあ!」

灰原「きゃっ!」

異世界「灰原さん、すみません…貴方はコナン君に味方する可能性が高いので」

灰原「…」

コナン「くそ!光彦、どうして俺にこんな事を…」

阿笠「そうじゃよ!わし達が何をしたって言うんじゃ?!」

異世界「…分からないんですか?」

コナン「ああ!分かんねえよ!」

異世界「皆さん。コナン君と博士をフードプロセッサーの中へ入れて、そのまま起こして下さい」

光彦達「はい!」

コナン「このっ…」

阿笠「わしは無実じゃあ!」

光彦I「大人しくして下さい!」

光彦「よいしょ!」グッ

どしーんっ

コナン「くそ!ここから出せ!」

阿笠「うっ、急にフードプロセッサーを立てたから、光彦君の血肉が口の中に入ってしもう……美味い?」

コナン「美味い?」

阿笠「美味いんじゃよ!光彦君の血肉が!」

コナン「…ペロッ」

コナン「こ、これは美味い!大発見だな!」

異世界「話しても良いですか?」

コナン「あ、そうだ…出せ!」

阿笠「そうじゃ!光彦君!わし等をどうする気じゃ!」

異世界「ミンチにします」

コナン・阿笠「?!」

灰原「なっ!」

異世界「…コナン君の、答え次第ですけどね」

異世界「コナン君、よく考えて答えて下さい。自分達がフードプロセッサーの中でミンチにされるのは嫌なのに、どうして僕達には平気で出来たんですか?」

コナン「お前本気か?普通分かるだろ?」

異世界「分からないから、聞いてるんです」

コナン「はあ…例えばさ、家畜が屠畜されるのをどう思う?」

異世界「今は僕が質問しているんですが?」

コナン「だからその質問の答えを、お前が理解し易い様に質問してやってるんだよ。答えろ」

異世界「…可哀想だけど、仕方がないとは…まさか」

コナン「そう!そうだよ!ああ、やっと通じたぜ」

光彦「?」

コナン「そう、可哀想かどうかは置いておいて。家畜はその為に生きてるんだからな」

異世界「…つまり、僕は家畜同然だと」

コナン「ああ、家畜の方が若干上だけど」

光彦「ど、どうしてです?!何でそんな事を言うんですか!僕らは友達でしょう?」

コナン「ああん?何だよ、こっちの光彦は物分かりが悪いな」

コナン「いいか光彦?命ってのは平等じゃねえんだ」

コナン「人間が家畜を見下し、更に植物に命がある事すら否定するように、命ってのは平等じゃない。光彦の命は最下層の最下層も良い所だ」

コナン「そんなお前の命を、俺達が弄んで踏み付けたお陰でやっと犬のクソくらいに価値を上げてやってるんだろ?」

コナン「感謝されこそ、こんな目に遭わされる覚えはない」

阿笠「そうじゃそうじゃ!」

異世界「…もう良いです。よく分かりました」

コナン「そうか」ホッ

異世界「スタートボタンを押して下さい」

コナン・阿笠「え?」

灰原「や、やめてえっ!!」

光彦「そうです!やめて下さい!そんな事をしたらコナン君達が死んでしまいます!!」バッ

異世界「駄目です。コナン君達を生かしておくべきではありません」

光彦「でもっ」

異世界「君も聞いたでしょう?彼らは君に行った非道な行為を、善意でやったと言うんですよ」

異世界「そのスイッチの前から退いて下さい」

灰原「円谷君!お願い押させないで!!」

光彦「…」

異世界「光彦君!」

光彦「嫌です」

光彦「絶対に、避けませんっ!!」

異世界「光彦君…」

光彦「コナン君達はちょっとおかしくなっただけです。きっとまた直ぐに良くなります!!」

光彦「お願いします!どうか、コナン君達を助けてあげて下さい!!」土下座

さわっ…

光彦「お願いします!!」

異世界「…光彦君、頭を上げて下さい」

光彦「お願いします!!お願いします!!」

異世界「分かりました。処刑は取り止めましょう」

光彦達「え…」

光彦「あ、ありがとうございますっ!!」

光彦J「異世界くん!何考えてるんですか?!僕達がどれだけコナン君に煮え湯を飲まされたと…」

光彦K「あの恐怖を、怒りを忘れたんですか?!」

異世界「忘れられる訳ないじゃないですか…」

異世界「けれど、このコナン君は『この世界』のコナン君です。一番被害を被った『この世界』の光彦君が許すと言っているんです」

光彦L「異世界くん…」

異世界「それに幸いな事にフードプロセッサーでミンチになった光彦は、みんな不死身だったようですしね」

光彦「え?」

もぞもぞ…

光彦E「ぷはあ…死ぬかと思いました」

光彦M「良かった、生き返ったんですね!異世界くんがコナン君を処刑しないと言うんですよ!!」

光彦G「異世界くん、正気ですか?全く、こんな痛い思いをしたのは、コナン君にフッ酸風呂に沈められた時以来ですね」

光彦H「いえ、僕が爪先から大根おろしにかけられた時はもっと痛かったし、気が狂うと思いましたよ…そう思うと、コナン君は良心的ですものね」

灰原「命乞いをした私が言うのも何だけど。貴方達、感覚が麻痺し過ぎよ」

異世界「じゃあ、ミンチにされた光彦君達は、コナン君の処刑を見送る事に賛成で良いですか?」

元挽き肉光彦「良いですよ」

光彦N「じゃあ、コナン君達はどうするんですか?」

異世界「僕達で交代で見張って、この腐った考えを改めるまで閉じ込めておきましょう」

コナン「はあ?!何でそうなるんだよ!!」

阿笠「いやじゃあ!新一と密室で二人っきりなんて…わしの操の大ピンチじゃ!!」

光彦「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

今日はここまでにします。

あれから1年…

コナン君と博士を見張る為に、異世界にある『光彦の国』から『僕』達を呼び寄せる事になった。

すると『僕』達は、人類のいない『光彦の国』より元居た世界に近い『この世界』を居心地が良いと感じ、移住を始めた。

異世界くんは、今も他の世界の『僕』達を救い続け、この世界に来てから1カ月後には3千人も集まった。

その頃からだろうか。いや、もっと前からだったのかもしれない。

戸籍もない『僕』達は、国から目をつけられ、ついに警告を受けた。

しかし『僕』達は、この世界を手放したくなかった。

抵抗に抵抗を重ねた結果、安保条約に抵触するという事で、アメリカと戦争一歩手前までいった。

これを『ベイカの危機』という。

そして半年続いた『ベイカの危機』はある時あっさり、米花町の独立という形で幕を下ろした。

事態が好転した一因は、『僕』達の能力にあった。

一口に『僕』と言っても、博士並みの天才『発明家』の光彦、大人の姿やサイボーグ、それから超能力者の光彦など、才能や個性溢れる『僕』達がいた。

因みに『僕』達の中で一番多い能力は、『不死』だ。

光彦の『不死』の証明や、一部の核兵器に匹敵する光彦の戦闘能力を見せ付ける事で、戦争を回避させた交渉力を持つ光彦(現在は『外務大臣』の地位にいる)の働きもかなり大きかったと言われている。

米花町が『ベイカ国』となってから、僕の周りは変わってしまった。

大勢の住民は出て行ったし、歩美ちゃんや元太君、いつの間にか灰原さんまでいなくなってしまった。

僕の家族は、地位の高い『僕』達と一緒に高級住宅に移り住んだ。

僕もこの世界の光彦なので誘われたが、断った。

もしそこへ行ってしまったら、僕は僕がどの『光彦』か分からなくなってしまうような気がしたからだ。

そして余った部屋に、一人『僕』を迎え入れた。

異世界くんに頼まれて仕方なく受け入れたが、居候の『僕』は少し変わっていた。

滅多に部屋から出る事がなければ、食事もトイレもしない。

常に怯えている『臆病な』光彦だった。

光彦「ふう…こうやって日記を読み返すと、色々書いてありますね」ぐぅ

光彦「あ、お腹が減ったと思ったらもうお昼ですか?食事にでも行きましょうか…食べないとは思いますが、一応臆病くんも誘いますか」

コンコン

光彦「臆病くん?今から食事に行こうと思うんですが、臆病くんも一緒にどうですか?」

臆病「い、いらない!いらない!!」

光彦「食べなくちゃ、死んじゃいますよ…でも、もう半年以上食事を取っていないようてすし、臆病くんは『不死光彦』なんでしょうか?」

ピピピピッ

光彦「はい、光彦です」ピッ

??「僕も光彦です」

光彦「でしょうね。どうしましたか、発明くん?」

発明家光彦「いや、ちょっと面白い事を発見しましてね。来て貰えますか?」

光彦「良いですけど、今からですか?」

発明「美味しいお昼も用意しておきますから」

光彦「分かりました。直ぐに行きますね」ピッ

光彦「臆病くーん!僕はちょっと発明くんの所に出掛けてきますからねー!」

臆病「う、うん…分かりました…」

ピンポーン

発明「やあ、よく来ましたね。光彦くん、入って下さい」

ビチビチッ…

光彦「う…何です。この切り落とされた腕は」

発明「僕のですよ」

光彦「まだ動いていますよ?」

発明「ええ、トカゲのしっぽみたいですよね?」

光彦「グロテスクです…」

発明「でも見てると不思議と愛おしく思えてきますよ?」

発明「光彦くんもやってみたらどうです?」

光彦「嫌ですよ!死んじゃうかもしれないじゃないですか?!」

発明「あれ?光彦くんは『不死』じゃないんでしたっけ?」

光彦「…分かりません。まだ死んだ事がありませんので」

発明「まあ、光彦くんは頑丈のようだけど、だからと言って不死かどうかは死ぬまで分かりませんしね」

光彦「それに『不死』の程度も個人差がありますからね。体の何パーセント以上が残っていなくちゃ駄目とか、何回までなら再生可能とか、再生に掛かる時間とか…」

発明「凄いじゃないですか?よく勉強していますね」

光彦「発明くんが一方的に話してくる事を、覚えただけですけどね」

発明「あ、そうでしたっけ?いやあ、光彦くんは話し易いからついついお喋りになってしまうんですよ」

光彦「それより、面白い事って何ですか?」

発明「面白い事?」

光彦「それで僕に電話をくれたんじゃなかったんですか?」

発明「あ、ああ!そうでした!こっちに来て下さい!」

発明「これですよ!このモニターを見て下さい」

光彦「…動画、ですか?スクランブル交差点に一人も僕がいませんね。これは昔の東京ですか?」

発明「いえ、他の世界の東京ですよ」

光彦「え?」

発明「異世界くんの装置を参考にして、他の世界が見られるようなモニターを作ったんですよ」

光彦「そうなんですか。流石、発明くんですね」

発明「褒めるのはまだ早いですよ」

発明「この世界は、僕らの世界と似ているけど少し違うんです」

光彦「何がですか?」

発明「何だと思いますか?」

光彦「勿体ぶらないで下さい」

発明「ふふ、この世界の探偵は基本、殺人事件に関与しない」

光彦「え?」

光彦「探偵が殺人事件を解決しないという事ですか?じゃあ、殆どの事件が迷宮入りするという事ですか?」

発明「いやいや、そこは警察がまあまあ有能…らしいですよ?科学や常識も僕達の世界と少し違うようなんです。面白いでしょう?」

光彦「面白いと言うか、変わった世界ですね。それでその世界の『僕』やコナン君はどういう状況なんですか?」

発明「それが…いないんですよ」

光彦「もしかしてもう相討ちになったんですか?」

発明「いや、そうだとしたら町一つくらいは消失する筈ですが、そんな痕跡は見当たりません」

光彦「あ」

光彦「あの漫画本の表紙の、男の子」

発明「ん?」

光彦「コナン君に似てません?」

発明「…やっぱり、そうだったんですね」ボソッ

光彦「?」

発明「光彦くん。あの後、コナン君達には会いましたか?」

光彦「いいえ…許可が下りませんでしたので」

発明「僕は何度か会いましたよ。そして色々話が聞けました。未だに悪い事をしたとは思っていないようでしたね」

光彦「…」

発明「でも興味深い話は聞けました」

発明「ある日突然、光彦くんに危害を加えてみたくなったそうです」

発明「それは、痒い所を掻きむしりたい衝動に似ていたと、コナン君は言っていました。そして誘惑に負けた彼が光彦くんを痛め付けて、初めて得たのは爽快感だったそうです」

光彦「爽快感…」

発明「そしてどんどんエスカレートしていった。コナン君は冷静に話していましたが、光彦くんを貶めた日々を話す時だけは目を輝かせていましたよ」

発明「無邪気で残酷な子供の目でした」

光彦「本当に、悪意はなかったんですね」

発明「少なくとも僕はそう感じました」

光彦「コナン君は、以前はそんな残酷な人じゃありませんでした」

発明「僕の世界のコナン君も、以前はそうでした。しかし『ある日』を境に変わってしまいました」

発明「他の『僕』達にも色々話を聞いてみたんですが、やはり『ある日』コナン君達は変わってしまったと言うんです」

光彦「もしかして、ある日って」

発明「ええ、ほぼ同時期なんですよ」

発明「恐らく、『どこかの世界』で僕らの世界に影響する、『何か』があったんじゃないかと僕は睨んでいます」

光彦「他の世界に影響するような、『何か』ですか?」

ガシャーン!!

光彦・発明「?!」

ドタドタドタ…

警察「白衣を着ている光彦!お前が『発明光彦』か?」

発明「ええ、そうですが…」

警察「国家反逆罪の疑いで、逮捕する!」

光彦「えっ!」

光彦「何かの間違いじゃないんですか?!発明くんは、今までこの国が良くなるように貢献を」

警察「煩いっ!その影で『僕』達を売っていたんだ!」

光彦「え…」

発明「違います」

発明「と、下っ端の『僕』に言っても仕方がないですがね」

発明「…『大臣光彦』の差し金ですね」

警察「う、何故その事を…」

発明「やはり、そうですか。僕を消すつもりなんですね」

警察「こいつ、いい加減な事を…」

光彦「やめてください!発明くんを連れて行かないで下さい!」

警察「このっ、無個性光彦の癖に…貴様も逮捕して」

発明「やめておいた方が良いですよ」

発明「彼は、異世界くんのお気に入りの、『この世界』の光彦です」

警察「な…クソォ…」

光彦「…発明くん?」

発明「光彦くん。この事を異世界くんに伝えて下さい」

光彦「え?」

発明「彼なら、きっとどうにかしてくれます」

発明「…どうか、頼みましたよ」

ファンファンファンファン…

光彦「…発明くん」グスッ

光彦「泣いてる暇なんか、ない!早く、異世界くんに連絡しなくちゃ…」

ピピピピッ

光彦「異世界くんからだ…」ピッ

光彦「もしもし異世界くん!」

異世界『発明くんを知りませんか?!』

光彦「発明くんは、警察に連れて行かれました…」

異世界『何て事です…まんまと大臣くんに出し抜かれましたよ』

光彦「え?知って…」

異世界『詳細までは分かりませんよ。しかしここ数日、発明くんを狙っていたのは確かなようです』

異世界『他の世界の『僕』達を救うのに忙しくて、気付くのに遅れてしまいました』

光彦「じゃあ、発明くんを…」

異世界『ええ、勿論。助けましょう!直ぐに車を出して、そちらに向かいます!』

異世界『大臣くんの家に乗り込みましょう!』






ピンポーン

??「はーい」

??「いらっしゃいま…」

光彦「…歩美ちゃん?」

歩美「いらっしゃいませ、光彦様」

光彦「何言ってるんですか?僕ですよ、歩美ちゃん」

歩美「…もしかして、この世界の光彦くん?」

光彦「ええ、そうですが…引っ越したんじゃ…」

歩美「う…」

歩美「うぅ…ふえぇん…」

光彦「え!どうしたんですか?」オロオロ

歩美「うっぐっ…私、わたしぃ…」グスッ

異世界「……」

歩美「ひっ…異世界光彦様…」

異世界「こんな所で泣いてる暇、あるんですか?」

光彦「異世界くん!歩美ちゃんに向かってそんな言い方って!」

異世界「そんな言い方?」ジロッ

光彦「」ビクッ

歩美「い、いいえ…光彦様。私が悪いんです!!」

歩美「ご主人様の元へお連れしますので、此方へどうぞ」

異世界「……」

光彦(異世界くんの、あんな冷たい目初めて見ました…)

【大臣邸・応接室】

大臣「久しぶりですね、異世界くん。それと初めまして光彦くん」

異世界「よくもまあ、この女を出迎えに寄越せましたね」

大臣「ふふ、それは申し訳ありませんでした。歩美に、久しぶりに自分が虐げた学友に会わせてあげたいと思いましてね」

歩美「」ビクッ

光彦「大臣くん!」

光彦「子供を使用人として扱うなんて、児童虐待です!労働基準法違反ですよ!」

大臣「それは日本の法律でしょう?」

光彦「!」

大臣「僕を含めて、この国は大人も子供も関係ない。能力に応じて色んな職につけます。まあ、知能も能力もノーマルな『無個性』な君は無邪気に小学生をやっていればいいかもしれませんが」

光彦「じゃあ、歩美ちゃんにだって普通に小学生をする権利がある筈です」

大臣「ありませんよ。だって歩美は」

大臣「僕の奴隷です」

歩美「…」

光彦「なっ」

大臣「思い出すだけで…くくっ、笑いが止まらないですよ」

光彦「何が笑えるんですか!君も僕なら…歩美ちゃんの事が好きだった筈です!!」

大臣「ええ、好きでしたよ。そうですよね?異世界くん?」

異世界「やめて下さい。虫酸が走ります」

歩美「…」

大臣「コレの親はうな重一杯よりも安い値段で、僕に売ってくれましたよ」

光彦「でも貴方の知ってる歩美ちゃんは、この世界の歩美ちゃんじゃないでしょう?!」

大臣「そうですね。ですが、性根は同じですよ」

大臣「純粋無垢を装って、男を散々振り回し甘い蜜だけ吸い尽くし、挙げ句嬲り楽しむ性悪女ですよ」

光彦「!」

大臣「あの頃は、早く楽になりたいとばかり考えていました…」

大臣「『不死』の我が身を恨みました。発狂出来ない精神を憎みました」

大臣「『外務大臣』となった今でも、時々聞こえるんですよ。あいつとコレの声が。僕を嘲笑う無邪気な笑い声がするんですよ…」

大臣「思い出したら、また腹が立ってきました…歩美」

歩美「う…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ…」

大臣「…」

異世界「…ちっ」

歩美「お許し下さい…ご主人様…」

大臣「許しません」

大臣「貴方にされた所業を思い出したんです」

歩美「そんな、私がやった訳じゃないんです…」

大臣「何ですか?自分は無関係だと、言いたいんですか?」

歩美「私はご主人様や異世界様に何もしていません…」

大臣「コナン君と同じ様に、この世界の光彦くんに許されれば解放されると思っているんですか?」

光彦「そ、そうです!歩美ちゃんは僕に何もしていません!ねえ、歩美ちゃん?」

歩美「うん!歩美、何にもしてないよ!」

大臣「はあ…本当に君は期待を裏切りませんね」

歩美「え…」

異世界「…正直、貴女程恐ろしい『貴女』は、どこの世界にも居ませんでしたよ」

光彦「異世界くん、一体何を言って…」

大臣「歩美、記憶に残っていないからと言って、『記録』にない訳ではないですよ…」

歩美「!」

光彦「え?何の事ですか?」

異世界「…君は知らなくていいですよ」

光彦「でも、だって…僕の事なんでしょう?!」

大臣「歩美…」

歩美「あ…うぅ…」グスッ

大臣「涙を溢したら処分しますよ?不愉快ですから」

歩美「!!」

大臣「お仕置きですよ。下を、脱いで下さい」

歩美「ひぃ…はいっ!」ガタガタ…

光彦「やめて下さい!!」

歩美「え…」

大臣「…光彦くん。また土下座でもしてくれるつもりですか?」

大臣「土下座で済むなら、軍隊は要りませんよ?」

光彦「異世界くん!」

異世界「…いくら光彦くんの頼みでも、絶対に無理です」

光彦「でも、コナン君の時は」

異世界「くどいですよ。この世界の『コレ』は全世界中でも最低最悪…本当に大臣くんは物好きですよ。僕でしたら、迷わず処分します」

光彦「なっ…」

大臣「だ、そうですよ。残念でしたね、光彦くん」

光彦「じゃあ、どうすれば…歩美ちゃんを許してくれるんですか」

大臣「…そうですね。そうだ、あれがあった筈です」ゴソゴソ

光彦「それは…まさか、博士が作った…」

大臣「そうです。『この世界』の博士が作った『光彦君の記憶を消す装置』ですよ。これのリセットボタンを押したら、どうなると思います?」

歩美「や、やめて!!」

大臣「あ?」

歩美「ひっ!も、申し訳ございません!それだけは…それだけは…」

大臣「リセットボタンを押して記憶が戻っても尚、許すと言うならお仕置きはしません」ニコッ

光彦「…分かりました」

異世界「!」

歩美「!」

異世界「駄目です!そんな事をしたら、君の心が壊れかねないっ!」

歩美「そ、そうよ…お仕置きなら私大丈夫だから…お願い!」

大臣「おや?記憶が戻った後の報復がそんなに恐ろしいですか?」

歩美「違います!私は…ただ…」

光彦「分かっていますよ、歩美ちゃん」

光彦「大臣くん、リセットボタンを押して下さい」

大臣「…発狂したいんですか?」

光彦「いいえ、しません」

大臣「随分、余裕ですね。何も知らない癖にどうしてそう断言できるんですか?」

光彦「僕は、歩美ちゃんが好きだからです」

異世界「!」

光彦「僕が、過去にどんなに酷い事をされていようが、今の歩美ちゃんは後悔しています。許さない理由がどこにあるんですか?」

大臣「後悔しているフリでしょう?」

光彦「そんな事ありません。君、ずっとこの歩美ちゃんと一緒に居た癖に、そんな事にも気付かないんですか?」

大臣「…良いでしょう。そこまで言うんでしたら、押してあげますよ。リセットボタン…」

光彦「…どうぞ」

大臣「ふふ…お前も、悪夢に取り憑かれ…」

異世界「待って下さい!!」

大臣「…どうかしましたか、異世界くん」

異世界「君こそどうかしていますよ…光彦くんの記憶を戻してどうするんですか?『狂人』光彦が役に立つのは戦場だけですよ?」

大臣「…」

異世界「…」

大臣「…分かりました。僕の負けです」

光彦「じゃあ…」

大臣「お仕置きはなしです」

歩美「え…あっありが…」

大臣「ただし」

大臣「光彦くんにお礼をして差し上げなさい」

光彦「お礼?」

大臣「光彦くんの足を舐めなさい」

光彦「え…」

歩美「はい!」

光彦「ええっ?!」

歩美「光彦くん、ありがとう。この椅子に座って?」

光彦「ちょっとま…いたっ」ドカッ

大臣「歩美、手は使わないで下さいね」

歩美「はいっ…あむっ」

光彦「だ、駄目です!靴を噛むなんて汚い…」

歩美「でも歩美、全部口でしなくちゃ…お仕置きされちゃう…」

大臣「そうですよ、光彦くん。歩美を守りたいのでしたら、大人しく『僕』達仕込みの彼女の攻めを受けて下さい」

光彦「う…」

歩美「よし…脱げた…」

異世界「大臣くん。僕らは『発明家光彦』君について話しに来たんですが」

大臣「発明くんは、他国に『不死光彦』のデータを横流しにしたんですよ?」

異世界「僕にまでそんな言い訳が通じると思っているんですか?」

光彦「あひんっ!」ビクッ

歩美「もう…動かないでえ」ペロッ

異世界「…別室で話しましょう」

大臣「ええ、そうしましょう」

光彦「あんっ…どこへ、ふう…行くん…」

大臣「…歩美、言葉攻めもして差し上げなさい」

歩美「ひゃい…」チュパッ

光彦「う…ああ…」

歩美「ん…」ジュウッ

光彦「ああんっ」

歩美「…ふふ、おっかしい。ちょっとしゃぶっただけなのに、女の子みたいな声ぇ」ケラケラ

歩美「それに、靴下履いてないから臭いね。靴も、洗ってないの?」

光彦「それはぁ…お母さんが…洗わなああんっ!」ビクッ

歩美「ふふ…」カジッ

光彦「あ…ひゃぁ…うん…はあ…」

歩美「はあ…光彦くん可愛い…美味ひいよ、光彦くん…」チュパチュパッ

大臣「失神するまで続けなさい。じゃなければお仕置きです」

光彦「はあああんっ」ビクッ

歩美「…ごめんね、光彦くん」

続きは明後日か明明後日辺りにします。

~~~~~~~~~~







ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「ん…」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「…此処は?」

『次は~…』

『次は~挽き肉~挽き肉~』

光彦「ひい?!あ、あの夢だ!何でっ?!」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

小人「」ニタニタ

小人「」ジャキッ…

ウイイイイイン…

光彦「嫌だああ!!」

ウイイイイイン…

光彦「チェーンソーが触れ…」

シュンッ

??「ぎゃあああ!!」グチャグチャ

光彦「…あれ?」

光彦「え?ひき肉にされていない?」

光彦「あ…僕が…前方の席にいた『僕』と、入れ替わったんですね」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「随分と前方まで移動してしまったようです…『僕』には悪いですが、助かりました…」

『次は~…』

『次は~黒こげ~』

光彦達「え…うぎゃああああああ?!!」ゴオオオ

光彦「ひっ?!」

光彦(突然、僕の後ろにいた全ての光彦達が…黒こげに…)

光彦「じゃ…じゃあ、次は…」

『次は~血抜き~血抜き~』

光彦「!」

光彦「嫌です!!折角逃げられたと思ったのに!!」

小人「」ニタニタ

小人「」ニタニタ

光彦「嫌だああ!!」

『血抜きの次は~…』

『生焼け~、生き地獄~、終点白痴まで続きます~』

光彦「…どういう事ですか?」

光彦「いえ、そんな事より降りなくちゃ…いや!目を覚まさなくては!!」ジタバタ

~~~~~~~~~~

光彦「はっ!!」ガバッ

光彦「はあ…はあ…」キョロキョロ

光彦「…助かっ」ホッ

『お客さ~ん…』

光彦「」ビクッ

『次は、途中下車出来ませんからね~…』

光彦「え…どうし…」

歩美「光彦くん、良かった目が覚めたのね」

光彦「歩美ちゃん…」

歩美「助けてくれて、ありがとう…それから今まで本当にごめんなさい…」ペコリ

光彦「…頭を上げてください」

歩美「私…本当に馬鹿…」グスッ

歩美「どうしてこんなに優しい光彦くんに…あ、あんな事しようと思ったんだろう?」

光彦「いいんですよ。歩美ちゃんはもう、反省してくれているんでしょう?僕が大臣くんにもう一度、ご両親の元へ帰れるように説得しますから…」

歩美「い、いいんです…私、こういう扱いされなければ、多分悪い事をしていたなんて気付かなかった…ご主人様や異世界様がああなったのは、他の世界の私の所為だし…」

光彦「歩美ちゃん、一つ良いですか?」

歩美「え?なあに?」

光彦「その、先に言いますが責めている訳じゃないですよ?どうして、僕に酷い事をしようと思ったんですか?」

歩美「…それは…分かんない」

光彦「分からない?」

歩美「言い訳じゃないの!本当に、どうしてなのか…それをする時は、手足や口が勝手に動いてた…本当よ?!」

光彦「分かりました。辛い事を思い出させてしまって、すみません…」

光彦「そして、貴重な情報をありがとうございます」ペコッ

歩美「…」

歩美「…光彦くん、あの…黙っていたけど」

光彦「ん?」

歩美「…実は」

ガチャッ

大臣「起きていたんですか?」

異世界「…」

光彦「大臣くん…異世界くん…」

異世界「光彦くん、帰りますよ」

光彦「帰る?発明くんは?!」

異世界「今日はもう帰るんです」

光彦「でも…」

異世界「言う事を聞いて下さい」

光彦「…僕が気絶している間に、二人で何か話したいんですね?」

大臣「ええ、『ただの光彦』には関係ない話です」

異世界「大臣くんは黙っていて下さい」

光彦「もしや…発明くんを見捨てる気じゃ…」

異世界「仕方がないです。彼は『僕』らを売ったんです」

光彦「嘘だ!発明くんがそんな事をする筈ない…」ギリッ

異世界「…」

大臣「喧嘩なら表でやって下さい…元太!」

元太「…」ヒョコヒョコ

光彦「え…元太君?」

大臣「元太、お引き取りして貰って下さい」

元太「…」

光彦「元太くん…君まで『大臣光彦』くんの所に…」

大臣「褒美は『ウナジュウ』です」

元太「!」ダッ

ダダダダダダ…

光彦「ひい…何で…」ダダッ

異世界「前見て走って下さい!」ダダッ

光彦「何で四つん這いでそんなに速いんですかああ?!」

ダダダダダダ…

元太「うなぅんな゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」ハッハッ







光彦「はあはあ…逃げられ…た…」

異世界「元太君を…けしかけるなんて…大臣くん、よっぽど…」

光彦「異世界くん?元太君は、どうしてあんな事に…」

異世界「…さあ?彼も大臣くんの『物』だから…」

光彦「またですか?!元太君にも何かされたって言うんですか!」

異世界「いいえ…でも、大臣くんはこの国に多くの貢献をしてくれている…」

光彦「じゃあ発明くんは?」

異世界「彼はいい人でした。才能も豊かでしたが…彼の代わりはいくらでもいます。ただ、大臣くん程、他国と渡り合える『光彦』はいないでしょう」

光彦「そんな!君と発明くんは仲が良かった筈です!」

異世界「光彦くん…それだけでは発明くんを助けるメリットは」

光彦「メリット?」

光彦「ああ、そうですか。よく分かりましたよ。そう言えば一年前、<<コナン君達と話が通じないから、話し合いは止せ>>と僕に言いましたね」

光彦「話し合いは無意味と言いました…そう言って、決め付けて諦めた」

異世界「だからっ僕だって何度も話し合ったと…」

光彦「いいえ!初めから決め付けていたんです!『どうせ』無理だと。それなら何度も話し合ったって結果は同じです!」

光彦「君にとってコナン君達は『その程度』の友達だったんです。違いますか?」

異世界「こ…このっ…」ピキッ

異世界「君に何が分かるんですか?!」

光彦「分かりますよ!君は『僕』です!」

異世界「『僕』だからと言って、僕の全てが分かる訳がない…絶望も知らない甘ちゃんの癖に…」

光彦「教えないと判断したのは、君でしょう」

異世界「…思い出せば君だって」

光彦「考えを変えるつもりはありませんよ」

光彦「どんなに苦しくて辛い目に遭わされていたとしても、全ては過去の事です」

光彦「…歩美ちゃんは、本当に心から自分の行いを悔いていましたよ」

異世界「まさか、あの女が」

光彦「ほら、決め付けている」

異世界「…」

光彦「君の世界の歩美ちゃんと、この世界の歩美ちゃんは違うんです。君と僕が違うように」

異世界「…光彦くん、もう僕に金輪際話しかけないで下さい」

光彦「異世界くん、また逃げてるんですか?」

異世界「逃げるが勝ちと言う言葉を知っていますか?価値観の合わない人間といつまでも議論し続ける程、僕は暇じゃあないんですよ」

ガチャッ

異世界「僕はこのまま運転して帰ります」

異世界「申し訳ありませんが、帰りはタクシーで帰って下さい。ああ、今まで通り君はタダ乗りで結構です。何たって、この世界は君の世界ですし」

光彦「ちょっ…」

ブロロロロロロ…

【大臣邸】

大臣「お帰り頂いたか?」

元太「う…な…」

大臣「そうか、褒美に『麻薬入りうな重』だ。そのまま四つん這いで食べて下さい」

元太「うな♪う…な゙…」ガツガツムシャムシャ

大臣「ああ、もうそれ以外の食べ方を忘れてしまっているんですね…」

歩美「…」

大臣「歩美、浮かない顔ですね」

歩美「そんな事…」

大臣「さっきは何を話そうとしていたんです?」

歩美「え…その…」

大臣「答え次第では…」

歩美「!」

「やめなさい」

カツン…カツン…

灰原「大方、私がいると教えようとしたんでしょ?」

歩美「哀ちゃん!」

大臣「…哀」

大臣「僕が良いと言うまで、部屋から出るなと言った筈です」

大臣「誰の目にも触れぬように閉じ込めておく。それが異世界くんとした君を引き取る条件でした」

灰原「ええ、そうだったわね」

大臣「部屋から出たら、お仕置きですよ」

灰原「お仕置き?」ソッ

灰原「ご褒美、じゃなくって?」ツツッ

大臣「ふ、食えない女ですね…」

灰原「そうよ」

灰原「円谷くん、私はいつでも食べる側なの」ピトッ

大臣「……哀っ!」ガバッ

チュンチュンチュン…

光彦「結局、あの夢が怖くて一睡も出来ませんでした…」

光彦「昨日の出来事を日記に書いてみましたが…本当にどうにかして発明くんや歩美ちゃんと元太くんを助けたいですが」

ブツブツブツ…

光彦「…『臆病光彦』くんの部屋から?」

光彦「臆病くんって一晩中独り言を言っていたんですね」

光彦「ちょっと、何を言っているか、ドアに耳を押し当ててみましょう」ピトッ

臆病「押しちゃ駄目だ、駄目だ駄目駄目…押したらいけない…駄目です…駄目駄目です…」

光彦「…危険な雰囲気ですね」

光彦「押しちゃいけないとは、『博士の装置』でしょうか?この世界に来た『光彦』は、自分を貶めた装置を持参する者もいますし…」

ブツブツブツ…

光彦「…何の装置なんでしょう?」

ピンポーン

光彦「ん?こんな朝早くから誰ですか?」

光彦「はーい…」ガチャッ

パシュッ

光彦「あ、ぐ…何で…」

パシュパシュパシュ…

光彦「コナン君が…」バタンッ

コナン「ふう…やっぱり光彦には最低麻酔銃を10発は撃たなくちゃな。それでこそ、光彦だぜw」

今日はここまでにします。

バシャア!!

光彦(ん…?此処は?)パチッ

バシャア!!

光彦「げほっ…水?」

コナン「よお」

光彦「こ、コナン君…此処は?」

コナン「大臣光彦の家だよ」

??「…」ピクピク

光彦「じゃあもしかしてあそこで倒れているのは…大臣くん?」

大臣「」ピクピク

光彦「大臣くん!しっかりして下さい!」

コナン「バーロー、そいつはもう動けねえよ」

コナン「脊髄を砕いてやったからな」

灰原「彼は『不死光彦』だけど、再生能力的にはランクの低い『不死』、もしくは死ななければ『リセット』されないタイプだったのかしら?」

光彦「灰原さん!」

歩美「…」

元太「う…ナ…」

光彦「歩美ちゃん!元太君!」

光彦「コナン君!何で、こんな酷い事を…」

コナン「俺を一年も閉じ込めやがったからだよ!これでもまだ足りないがな」

光彦「そ、そんな事を言ったら、君が今まで僕にしてきた行為だって」

コナン「言っただろ?命の価値が違うって。豚が今まで屠畜された仕返しに、人間様を殺すったってそうはいかねえだろ」

光彦「!」

光彦「灰原さん!貴女はコナン君達が間違っていると分かっているでしょう?!」

光彦「一緒に、コナン君を説得して下さい!」

灰原「…出来ないわ」

光彦「どうして?!」

灰原「彼の行いの善悪なんて関係ないから。脱獄させる為に、この気持ちの悪い『貴方』に取り入られるくらい、彼が好きなの」

コナン「そうそうwこいつ、この光彦の股間を噛み切りやがったんだぜw怖ぇよな?」

光彦「歩美ちゃん!」

歩美「」ビクッ

光彦「君は昨日、今までの事を謝ってくれたじゃないですかっ!」

歩美「……ごめんね」

光彦「ぐ…元太君!!」

元太「う…ウ?」

阿笠「そう言う訳なんじゃよ、光彦くん」

光彦「博士…居たんですか」

阿笠「喚く暇があるのじゃったら、君を殺さなかった事に感謝して欲しい」

阿笠「わし達の目当ては君じゃないからのう」

コナン「ああ」

コナン「おい、お前の事だよ。『最終兵器光彦』」

臆病「…」

光彦「『最終兵器』?どういう事ですか」

コナン「大臣が捕まえた『発明光彦』に聞いたぜ」

光彦「聞いたって…発明くんに何をしたんです…」

コナン「おいおい、決め付けるなよ。奴は、快く教えてくれたぜ?」

光彦「何をしたんですかっ?!」

コナン「大臣光彦が言う所の、ご褒美…いや、お仕置き?どっちだろうな、はは…」

歩美「…」

コナン「この『最終兵器』の持っている装置は、地球上の核と発電所を大爆発させる装置だよ」

光彦「へ?」

コナン「いや、持っているんじゃない。正確には埋め込まれた装置だ」

コナン「これを押したら、凄ぇ事になるぜ?」

光彦「な、何でそんな『僕』が、うちにいたんです…」

コナン「『最終兵器光彦』本人の精神安定の為だとよ」

中途半端ですが、今日はここまでにします。

阿笠「そんな装置が埋め込まれていたら、例え光彦くんでもオカシクなるからのう」

コナン「同居するお前の為にも、『最終兵器』の事は伏せられてたんだってさ」

光彦「臆病くんを使って…何をするつもりですか」

コナン「『最終兵器』を切り札に、世界征服でもしようかな」

光彦「幾らなんでもそんな事が」

コナン「出来るよ?不死の光彦であろうと、世界中で核爆発が起これば遺伝子が壊れて、通常通りの再生は難しいだろ。それを光彦達が予想できない訳がない…」

コナン「それにこの世界まで連れて来た所を見ると、装置起動の影響は世界を超えて起こる可能性もあるって事か?」ちらっ

臆病「…」

コナン「『その世界』の博士も、とんでもない物を作ってくれたぜ」

阿笠「いやあ、照れるのう」

光彦「そんな装置を使ったら、コナン君達だって…」

コナン「心配いらねえよ」

阿笠「そうじゃ。もう直ぐ『発明光彦』君から引き継いだ遺伝子変異にも耐える薬が完成できそうなのじゃ」

光彦「く…」

コナン「楽しみだな…あと少しで世界中の人間が俺に跪くのか」ゾクゾク

光彦「コナン君…最低です」

コナン「ありがとよ」

コナン「最低ついでに、ちょっと協力してくれるか?」

光彦「はい?」

コナン「『最終兵器』のスイッチだよ。それがどこにあるのか分からない」

コナン「何を聞いても答えない。触って探すにも、間違って押したら大変だしな…ならっ」

ドカッ

光彦「ぐっ…げほっごほっ!!」

コナン「喋ってくれるのを待つしかねえよな?」

光彦「な、何を…」

コナン「お前ら、寝食を共にした仲だろう?」

光彦「部屋は別ですし…彼は寝も食べもしませんし…」

コナン「うっせw」ドカッ

光彦「げほっ!」

臆病「光彦くん!」

コナン「お、やっと喋ったか…」

臆病「君達の、やろうとしている事は間違っています」

臆病「この装置が起動したら…この世は地獄と化します」

阿笠「おや?もしかして前の世界でスイッチが押されたのかの?」

コナン「答えろよ!」ドカッ

光彦「ぐふっ?!」

臆病「や、やめろ!!」

コナン「つまり、遺伝子変異にも耐えうる光彦か…」

阿笠「いや、直撃を避け、ダメージが蓄積する前に逃げたか…ダメージを受けたが、残機があって復活したのかもしれんよ」

光彦「臆病くん、言っちゃ…駄目です」

コナン「言わなくても良いぜ…言うまで楽しむだけだし…」

がしゃーん!!

ドタドタドタ…

コナン「?」

阿笠「な、何じゃ!」

バターン!!

異世界「そこまでです!!」

光彦「異世界くん!」

コナン「ちっ…あの、『俺を閉じ込めやがった』光彦か」

異世界「光彦くん、臆病くん。遅くなってすみません…」

コナン「折角光彦そっくりのロボットを置いてきたのに、大して時間稼げてねえじゃねえかよ」

異世界「二人を放せ!」

コナン「おっと、それ以上近づくと『最終兵器』の装置を使うぜ」

光彦「異世界くん!コナン君はまだ装置の場所を知りません!」

コナン「…」

阿笠「そんなっ!バラされてしもうたぞ!」

コナン「…ははっ」

コナン「あはは…」

阿笠「…新一?」

コナン「はははは…」

異世界「…」ゾクッ

コナン「あははははははは!!!!」

光彦「な…なにがっオカシイんです?!」

コナン「…えー?」

コナン「僕が本当に、何にも知らないと思ってたのー?」

臆病「まさか、そんな筈…」

異世界「発明くんが…」

コナン「いいや、奴はそれだけは言わなかった…本当に馬鹿な奴だぜ」

異世界「…」

コナン「最初は手足や腹かと思ったよ。他のどの光彦より色白だから、外出をしていないんだろう。だから、外で間違って押されるような場所にあるのかもしれないと思ったんだよ」

コナン「でもこの『最終兵器』は身成は清潔だ。つまり外出はしないが、着替えたり風呂に入ったり、だいたい普通の生活を続けているんだよ。そう、寝食以外はな」

光彦「あ…」

コナン「睡眠がスイッチとも考えたが、時々うたた寝してたよな?寝ている最中の事を警戒して寝ないだけなんだろう」

コナン「となると、食事がスイッチの可能性が高い」

コナン「口の中だとすると、舌が当たるのが怖くてむやみやたらに喋らない筈だから、独り言やこの饒舌っぷりを見るに…『胃』」

臆病「!!」

コナン「…その他の消化器官と続けようとしたのに、その反応w」

コナン「スイッチは『胃』か……灰原」

灰原「ええ」スッ

灰原「動かないで」ジャキッ

光彦「拳銃…」

異世界「やめろ!そんな事したら」

コナン「そうか…胃を撃ち抜くのも有効って事か?光彦は分かり易いぜ。犯人には向いていないようだな」

光彦「やめて下さい…皆死んでしまいますよ!」

コナン「そうだな。俺も死にたくねえよ。だから俺達を逃がせ」

異世界「あの時…フードプロセッサーでミンチにしてやれば良かった」

コナン「はは、今更遅いんだよ」

コナン「高跳び用に、空港に足を用意しろ」

光彦「そうすれば臆病くんを解放して」

コナン「バーロー!んな事したら俺達が危ねえだろ」

異世界「…分かった」

光彦「異世界くん?!」

異世界「仕方がないでしょう…」

コナン「ああ、それでいい。それでこそ光彦だよ」

コナン「俺の掌の上で転がされる事しか出来ない、哀れで…最高の玩具だよ」

コナン「じゃあ、歩美。『大臣光彦』の金と車の鍵を持って来い」

歩美「…」

コナン「歩美?」

歩美「コナン君、もうやめようよ」

光彦「!」

歩美「光彦くんが可哀想だよ」

コナン「…歩美、正気か?」

歩美「うん。歩美ね、光彦くんに酷い事いっぱいしたのに、光彦くんは助けてくれたの。コナン君だって、ミンチになりそうだった所を光彦くんに助けて貰ったんでしょう?」

コナン「つまり、歩美。俺が光彦に感謝しろと、そう言いたい訳だな?」

歩美「そうよ」

灰原「歩美ちゃん、貴女…」

歩美「哀ちゃんもだよ!」

歩美「本当は、コナン君達が間違ってるって知ってる癖に、何も言わないなんて」

灰原「!」

歩美「…歩美ね、コナン君が好きなの」

歩美「大大大大大だーい好き!哀ちゃんが転校してくる前から、ずっと好きだったのよ。好きだから、私は分かって欲しい」

歩美「だって、私の好きなコナン君は人を傷付けて喜んだり楽しんだりしない筈だもん」

コナン「そうか…歩美、分かったよ」

歩美「コナン君…」

コナン「お前、いらねえ」

パンッ!

歩美「あ…」グラッ

光彦「歩美ちゃん!」ダッ

異世界「あゆ…」

灰原「貴方達は動かないで」ジャキッ

異世界「く…」

灰原「動いたら、このもう一丁の銃で顔に風穴を開けるわよ」

歩美「はっ…はあ…コナ…げほっ」ドクドク

光彦「喋らないで下さい…あ、ああ…こんなに血がぁ…止ま、らない…」

歩美「みつ…くん……ごめん…はあ…」

光彦「いいです!もういいですから!!」

歩美「ど…して……こう、なっちゃったんだろうね…」

歩美「また…みんなで…遊び…た、かった…なあ…」ドクドク

光彦「…ええ…行きましょう」

歩美「…ど…こに?」ドクドク

光彦「キャンプとかは、どうですか…」グスッ

歩美「…いいね…楽し…そう……光彦、くん…あ…」

光彦「何ですか?」

歩美「お、願いが……」

光彦「何ですか?何でも聞きますよ?」

歩美「…」

光彦「歩美ちゃん?」

歩美「」

光彦「歩美ちゃん?嘘でしょう?歩美ちゃん?!」

異世界「…」

臆病「…」

光彦「嫌だ…お願いって何ですか?!言ってくれくちゃ…僕、何も出来ないじゃないですか!!」

光彦「歩美ちゃん…歩美ちゃんっ!!」

灰原「…」

コナン「はあ、俺に惚れてるなら惚れてるらしくもっと媚びろっつーの。なあ、灰原?」

灰原「…ええ、そうね」

阿笠「のう、新一?歩美ちゃんの死体はわしが貰っても良いか?」

コナン「んなもん、何に使うんだよ」

阿笠「ぐふふ、聞きたいか?」

コナン「…仕上がったら見せてくれよ?」

阿笠「もちろんじゃ!」

光彦「コナン君!」

コナン「あん?」

光彦「どうして歩美ちゃんを殺したんですか!!」

コナン「どうして?言っただろ、命の価値が違うんだって」

コナン「俺の命令が聞けない歩美は、お前より価値が劣るんだよ」

光彦「このっ!!」

元太「………ぁ…ゆ…」

元太「あ ゆみ……死ン…ダ?」

元太「ど……シて…だ…コ…ナン…」

元太「お前…歩美をどうして殺した?」

光彦「元太君!」

コナン「何で正気に…」

元太「よくも、歩美を…よくもよくもおお!!」ダッ

コナン「お前も使えないのかよ…」ジャキッ

パンッ

元太「ぐ…うおおおおお!!」ドクドク

コナン「へ…」

ドカッ

元太「ぐおおおおおおお!!」ギュウウッ

コナン「かはっ…ぐ…放せ…息が…」

元太「歩美は!お前が好きだったのに!!」ギュウウッ

コナン「あ……ぐ…ぁ…」

灰原「工藤くん!」ジャキッ

パンッパンッ

元太「あ、ゆ……」バタンッ

コナン「く…重えぇ」

阿笠「し、新一、今退けてやるからのっ。そいっ」ゴロッ

コナン「灰原!返り血がかかったじゃねえか!」

灰原「…ごめんなさい」

コナン「畜生…どいつもこいつも…」フラッ

臆病(今だ!)ドンッ

灰原「きやっ」ドタッ

臆病(逃げ…)

コナン「逃がすかあああ!!」ジャキッ

灰原「工藤くん!駄目え!!」

パンッ

コナン「…やべえ…手元が狂って」

臆病「……」グラッ

バタンッ

臆病「」ドクドクドク…

光彦「臆病くん!」

異世界「亡くなっています…もう駄目です。臆病くんの残機はゼロなんです」

光彦「そんな…」

異世界「光彦くん、逃げますよ」

光彦「逃げるって、何処へ」

異世界「シェルターですよ…コナン君達は『最終兵器』の装置を撃ち抜いて、起動させてしまいましたから」

光彦「え、じゃあ…」

異世界「…もう直ぐ世界中の核兵器と発電所が爆発します」

光彦「!」

コナン「おいおい、何処へ行く気だよ」ジャキッ

異世界「コナン君…」

光彦「そうだ!コナン君達も一緒に避難を」

コナン「バーロー!!」

光彦「!」

コナン「シェルターに行くまでに爆発は起きる事は確定してるんだよ。俺はお前ら光彦と違って、簡単に死ぬ。だから俺の命はより尊いんだ」

コナン「お前ら、急いで逃げたがる様子を見ると『不死』じゃねえかのか?それとも『残機』が残り僅かか…」

コナン「どっちにしろ逃がさねえよ!お前ら全員皆殺しだ!!」ジャキッ

パンッ

光彦「あ…」

異世界「え…」

コナン「どう、して…」バタンッ

灰原「…」スッ

コナン「」ドクドク

阿笠「あわわわ…」ヘナッ

光彦「は、灰原さん!逃げましょう!!」

灰原「私は、彼の後を追うわ」

阿笠「え、じゃあわし…」

パンッ

阿笠「」ドクドク

灰原「行って」

異世界「分かりました。行きますよ、光彦くん!」グイッ

光彦「灰原さん!すみません!ありがとうございました!!」ダダッ

灰原「…」クスッ

灰原「お礼も謝罪も必要ないのにね」

灰原「…工藤くん?」

コナン「」

灰原「私、間違ってたわ。歩美ちゃんの言う通り…好きならちゃんと貴方を止めてあげるべきだった」ソッ

灰原「工藤くん…」

ちゅっ

コナン「」

灰原「歩美ちゃん、抜け駆けしてごめんなさい」

灰原「私も今、逝くから…」ジャキッ

ダダダダダッ

光彦「い、今の銃声…」

異世界「いいから走るんです!!」

異世界「この国にだって、核兵器が…」

ピカッ

光彦「まぶし…」












光彦「…え」

光彦「今の…何が起こって…げほっ…」

光彦「全身が…痛い…みんな、は…あ…」

光彦達「」プスプス

光彦「…黒こげ、だ…」

光彦(…しかし、彼らは『不死』ですから…時機に再生するでしょう…それより)

光彦「…異世界くんは?異世界くん…いせか…げほっごほっ…」

光彦「え?口から…血が…ああ、そっか。僕のお腹に穴が開いていたんですね…」ドクドク

異世界「みつ、ひこくん…」

光彦「異世界くん…君、よく生きてますね」

異世界「ええ、胸から下は建物の下敷きですけど」

光彦「…不死身だったんですか?」

異世界「いえ、少し頑丈なだけで…不死じゃなかったようです」

異世界「…君も、そうらしいですね」

光彦「ええ…そうだったみたいです」

異世界「どうして、こんな事になってしまったんでしょうか…」

異世界「俺は、『僕』達が安心して幸せに暮らせる国を作りたかっただけなのに…」

異世界「いえ…本当は昔の様に皆と仲良くなりたかった…」

異世界「事件を解決したり、サッカーしたり、キャンプをしたり…そうやって昔みたいに。だけどもう……皆いない」

光彦「…」

異世界「光彦くん、これを…」

光彦「ペンダント…それと、これは『僕の日記』?」

異世界「僕の使っといたのと同じ日記帳でしたので、懐かしくてつい拝借してしまいました…」

異世界「ペンダントは、小箱がくっ付いているんでしょう?それが『異世界に行ける装置』です」

光彦「どうして、これを僕に?」

異世界「…頼みがあるんです」

異世界「『発明光彦』君が捕まったのは、不死の情報を売ったからではない。この世界の真実を知ってしまったからです」

光彦「真実?」

異世界「君が、モニターで見た少し変わった世界につい…う…」ガクッ

光彦「異世界くん!」

異世界「すみません、目眩が…大丈夫です。最後まで話す余力はあります…」

異世界「この装置を使って、あのモニターの世界に行って下さい」

光彦「え?」

異世界「『大臣』くんは、モニターの世界の事を薄々勘付いていたみたいです…」

異世界「だから彼はモニターの世界に攻め入る為に……『僕』達の情報を他国へ売り、見返りに最新兵器を譲り受けて、戦争の準備を整えていました」

光彦「せ、戦争?何でそんな物騒な」

異世界「…この装置の使い方は、簡単です。スイッチを押して、念じるんです。自分が行くべき世界について」

異世界「僕は、『僕』の助けを待つ光彦を思い浮かべて、何度も異世界に移動しました」

異世界「知っている世界への移動なら、より簡単に移動出来ます」

光彦「待って下さい!その世界に行って、僕は何をすれば良いんです?」

異世界「…思ったままに行動して下さい」

光彦「え?」

光彦「お、思ったままなんて言われても…僕は普通の光彦ですよ?」

光彦「少し丈夫なだけで、只の小学生の光彦なんです…僕一人で何が出来ると言うんですか」

異世界「何言ってるんですか…君は普通の光彦なんかじゃありませんよ」

異世界「君は僕より、『僕』達よりずっと心が広くて優しくて…勇気と信念を持った光彦です」

異世界「『僕』達も、君の様だったら、自分達の世界での結末は少し変わっていたのかもしれない…」

光彦「でも、僕だって君達が来てくれなかったら…」

異世界「僕が君を助けに行ったのは…君の言葉に動かされたからですよ…」

異世界「どうすれば良いか分からない時は、自分の心に聞いてみて下さい」

異世界「光彦くんなら、絶対に正しい答えを見付けられますよ…」

光彦「……分かりました」

異世界「…」

光彦「さよならっ」ポチッ

シュンッ

異世界「…はあ」

異世界(辺り一面が燃えているのに、何だか暗い。火が回って黒こげになる前に、僕は恐らく…)クラッ

異世界「…やっと……死ねる…」

『光彦くん!』

異世界「え…」

歩美『もう!早く起きてよ、光彦君!!』

元太『いつまでそんな所で寝てるんだよ!』

異世界「え?歩美ちゃん?元太君?」

コナン『お、やっと起きたか。じゃあ、行こうぜ』

灰原『もう少しで置いていかれる所だったわよ?』

異世界「コナン君、灰原さん…」

異世界「あの…僕も、一緒に行っても良いんですか?」

コナン『何言ってんだ?』

元太『あったりめーだろ』

歩美『変な光彦君。5人揃ってこその、少年探偵団でしょ?』

灰原『どうしたの?悪い夢でも見たの?』

異世界「い、いいえ…」グスッ

コナン『ほら、いい加減起きろよ』スッ

異世界「…」

がしっ

異世界『ありがとうございます』スクッ










異世界「」

今日はここまでにします。

シュンッ

光彦「へ?」

ドターンガシャンッ!

光彦「いててて…」

??「……」

光彦「あ、貴方は…」

??「あ…う…」

光彦「ちが…違う!おま、お前っどどどどこから!!」

光彦「此処は貴方の部屋ですか?」

??「あ、うん…あ、そうじゃなくって!!」

光彦「PCの画面が灰色ですね…SS速報VIP?」

光彦「メモ帳に、僕の名前が…いたっ」ドタッ

??「ふーふー…勝手に見んな!触んな!!」

??「どこから入って来た!!此処は俺の部屋だぞ!!」

光彦「メモ帳に『阿笠「新一!光彦君が自殺する装置を作ったぞい!」』とありましたが…」

??「声に出して読むな……ん?あれ?」

??「…どっかで見た事ある顔だな?」

光彦「?」

??「そうか、声が…『ピカチュー』って言ってみろ」

光彦「え…」

??「ピカチューって、言えよ!!」

光彦「ぴ、ピカチュー?」

??「おお…」

??「すげえ…誰かに似てると思ったら、光彦か」

光彦「似てるも何も、本人ですよ」

??「髪型やそばかす、服装もそんな感じでクォリティー高いなって…何で血だらけなんだよ?!」ビクッ

光彦「気付くの遅いですよ」ドクドク

??「きゅ…救急車!救急車ああ!!」

光彦「騒がないで下さい。これくらい大丈夫です」

??「大丈夫…なのか?」

光彦「ええ、直ぐには死にません」

??「死ぬんじゃねえかっ!」

??「いや、待てたかし…冷静になれ。声と服装と髪型とそばかすくらいで、こいつが光彦だと判断するにはまだ早い…」

??「光彦は二次元、此処は三次元…そう、そうだよ。この血だってどうせ血糊かなんかだろ」

光彦「僕は光彦ですし、この血も本物ですよ」

??「嘘だー…そんな一目で分かる様な致死量の血を流して…」

光彦「はあ、傷口をよく見て下さい」

??「今時の特殊メイクは凄え………え?」

??「…穴?」

光彦「はい」

??「お腹の穴から、向こうっ側が見えるんだが。どういうトリックだ?」

光彦「種も仕掛けもありませんよ。ただ穴が開いているだけです」

??「…」

光彦「?」

??「ふ…あははははは…まさか…」

??「こんな事…ありえねえ…」

光彦「あの、おじさん?」

??「誰がおじさんだあ!」

コンコン

母「あの、たかし?大きな声が聞こえたけど、どうかしたの?」

??「うっせえババア!俺の部屋に近付くな!」

光彦「…たかしさんと、おっしゃるんですか」

たかし「ああ…てか、マジでお前は光彦な訳?」

光彦「ええ、円谷光彦。帝丹小学校の二年生です」

たかし「…原作から一年後の世界?」

光彦「原作、とは?」

たかし「俺の知ってる光彦は『名探偵コナン』って漫画の登場人物だよ」

光彦「え…」

たかし「ほら、この雑誌」

光彦「『少年サンデー』?」ペラッ

光彦「…モニターで見た雑誌だ。この男の子はやはりコナン君だったんですね」

たかし「そうだよ。だから漫画の登場人物が、実際に目の前に出て来られても困るっつーか。あり得ねえ」

たかし「お前が光彦っていう証拠は?」

光彦「証拠と言われましても…」

たかし「探偵バッジとか、何か光彦っぽい物ないのかよ」

光彦「探偵バッジはあります…あと、日記も」

たかし「ふうん…」ペラッ

たかし「日記に写真が挟まってる…」

光彦「あ、これは少年探偵団の皆で最後にキャンプに行った時の写真です…あの時は、楽しかったなあ」

たかし「…クオリティ高え所の、話しじゃねえ」

たかし「マジで光彦?」

光彦「ええ、僕は光彦です。信じて頂けましたか?」

たかし「まあ、こんな手の込んだドッキリを仕掛けてくれる友達所か、普通の友達もいねえしな」

光彦「僕は『異世界に行ける装置』を使って、この世界に来ました」

たかし「『異世界に行ける装置』?」

光彦「はい。この世界では…僕らの世界が漫画になっていたんです」

たかし「漫画だけじゃねえよ。アニメにドラマ、それから映画。ゲームやらグッズも色々出てるし、サンデーの看板背負ってる漫画だよ」

光彦「そうなんですか?そんなに人気がある漫画なんですか」

たかし「まあな」ニヤッ

光彦「…貴方を褒めた訳じゃありませんが」

たかし「あ…」

たかし「でも!俺だって、ss投稿してるんだぞ?」

光彦「ss?」

たかし「ショートストーリー。まあ、ぐふ…俗に言う『小説』って奴?」

光彦「え?凄いじゃないですか?小説家さんだったんですね?!」

たかし「え…い、いやあ!それ程でもない!!」キリッ

光彦「どんなお話を書いているんですか?あ、さっきのメモ帳の『阿笠「新一!光彦君が自殺する装置を作ったぞい!」』ってもしかして…あ」

光彦「…まさか」

たかし「えっと…お遊びで作った話し、だけど」

光彦「ちょっと、見せて貰っても良いですか?」

たかし「いや!出来上がってないし、まだプロットの段階だしっ」

光彦「見せて下さい…」ドクドク

たかし「ひぐっ?!」

──────────

メモ帳『阿笠「新一!光彦君が自殺する装置を作ったぞい!」』

①阿笠「悪用」コナン「OK」ポチッ

②【円谷家】お祝いステーキ。楽しい食事。ポチッ。光彦、手首にナイフ

③真っ赤なテーブルクロス。一品増える



──────────

↑訂正

──────────

メモ帳『阿笠「新一!光彦君が自殺する装置を作ったぞい!」』

①阿笠「悪用」コナン「OK」ポチッ

②【円谷家】お祝いステーキ。楽しい食事。ポチッ。光彦、手首にナイフ

③真っ赤なテーブルクロス。一品増える



──────────

光彦「…」

たかし「な?言ったろ…まだ途中だって。それにお遊びの話、で」ドキドキ

たかし「あと、その…こういう話が流行ってるんだよ。マジキチって言って…」

光彦「面白い?手首にナイフ突き立てるのが、そんなに面白いですか?」

たかし「いや、えっと…」

光彦「ちょっとパソコンお借りますよ。検索させて下さい」

『光彦 コナン 不死身』カチッ

光彦「…何ですか、このヒット件数は?」

たかし「だから言っただろ。流行ってるって」

光彦「やはり、これが原因だったんですね」

光彦「そうなんですね?異世界くん、発明くん……大臣くん…」

たかし「?」

光彦「たかしさんっ!こんな下らない話を書くのを、もうやめて下さい!!」

たかし「くだ…お前、何て事言うんだよ!」

たかし「確かに下らない内容のもあるけど、こっちだって貴重な時間削って、少しでも面白くなるように頭を捻って書いてんだよ!」

光彦「それは失礼しました。しかし実害が出てるんです」

たかし「はあ?」

光彦「この一つ一つのssの世界が、他の世界では現実として起こっているんです」

たかし「…どういう事だ?」

光彦「僕のいた世界も最後にはオカシクなって…この装置で『真実』を探しに来たんです」

たかし「真実…」

光彦「ごほっ…げほおっ」

たかし「ひいい?!吐血うう!!」

光彦「騒がないで下さい…また、お母さんが心配しますよ」

たかし「で、でも…マジで救急車呼ばなくて良いのかよ」

光彦「大丈夫、僕も光彦の端くれです…」







たかし「はあ…光彦の国に、リアルマジキチになったコナン達か」

光彦「ええ。コナン君がおかしくなったのは、どの世界でも似た時期です」

たかし「でも光彦が言う通りだったとしたら、辻褄が合わねえぞ?」

光彦「どうしてですか?」

たかし「だって一万人の光彦だろ?そんなに世の中にコナンssは存在してねえよ」

光彦「じゃあ、未完の作品を含めたらどうですか?」

光彦「投稿前の作品…もしくは頭の中の作品も、何処かの世界で現実になっているとしたら」

たかし「待て…待てよ…だとしたら、どうしようもねえじゃねえか」

光彦「…そうですね」

たかし「そうですねって…お前、何とかする為にこの世界に来たんだろ!」

光彦「…これ程まで普及した物語の傾向を、どうにか出来る訳がない」

光彦「でも、僕は僕の出来る事をしに、この世界に来ました」

光彦「そうだ。たかしさん…」

たかし「ん?」

光彦「これを…」スッ

たかし「え、お前の日記?」

光彦「貴方が、この話を書いて下さい」

たかし「…は?」

たかし「いや、いやいやいやいや!!無理無理!書けねえよ!!」

光彦「どうしてですか?小説家さんなんでしょう?」

たかし「え…あ、それは…でも」

光彦「その日記は、僕が悪夢を見た数日前から、今日まで起こった事を記しています。それをまとめて投稿して下さい」

光彦「そうする事で、皆さんのssに対する認識も変わるでしょう」

たかし「そんな大役、尚更出来ねえよ…」

たかし「そ、そうだ!お前が書けばいい!ssなんて簡単だぜ?猿でも小学生でも書け…」

光彦「残念ですが、それは無理ですね…」ガクッ

たかし「うあ…お前、マジで…死…」

たかし「てか、お前血何リットルあるんだよ…」

光彦「それ、今突っ込む事じゃないですよ…」ドクドク

たかし「きゅ…救急車だ!!ババア!!ババア!!」

ダダダダダッ

ガラッ

母「どうしたの…ひい?!血が…たかし、貴方何して」

たかし「救急車だ!!頼む!!救急車を呼んでくれ!!」

母「…分かったわ!たかし、このタオルで傷口を抑えてて!」

たかし「お、おう」

ダダダダダッ

たかし「良かったな、光彦…救急車来るからな」

光彦「…ありがとうございます。でもいいんです。僕はもう助からない」

たかし「そんな事言うなよ!!お前、マジキチssの光彦なんだろ?!」

光彦「そんな事、知ったこっちゃないですよ…」

光彦「たかしさん…どうか、この話を書いて下さい」

光彦「脳内に浮かんだ話が、何処かの世界の現実に影響を与えるとしたら。この状況を打破するには、ssを書くのが一番手っとり早いんです…」

光彦「こんな結末があると知って貰えたら、誰もがハッピーエンドを望んでくれると…僕は信じたい」

たかし「お前…馬鹿じゃねえの…人間そんなに単純じゃねえよ」

光彦「でも、この馬鹿さ加減を信じて、僕の友達は送り出してくれたんです…」

光彦「お願いします…」

たかし「…」

ピーポーピーポー…

光彦「救急車が、来たようですね…」カチャッ

たかし「…何だよ、その小箱?」

光彦「『異世界へ行ける装置』です…」

光彦「僕がこのままいたらご迷惑になりますから…」

たかし「迷惑じゃねえよ!行くな!!」

光彦「はは…」

たかし「何で笑うんだよ?!」

光彦「だって…僕に自殺をさせようとする話を面白いと言っていたのに、僕が死にそうなのを見て…そんな、はは…ごほっ」

たかし「可笑しくていいから!喋んな!!」

光彦「もう大丈夫です…貴方なら、きっと…」

たかし「でも…」

光彦「はあ…はあ…」

たかし「…分かった…やってみる」

光彦「…よろしく、お願い…しますね…」ポチッ

シュンッ

たかし「光彦!!」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「…」

光彦「此処が、僕の『行くべき世界』ですか…」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

『次は~血抜き~血抜き~』

光彦「…」ドクドク

『終点~血抜き~』

光彦「え?」バッ

光彦「前も後ろもいない…僕一人?」

『お客さ~ん。もう降りませんよ~』

光彦「…かまいませんよ」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「…上手く、やってくれたって事ですよね?」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「…ごほっ……はぁ…」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

光彦「………」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

プシュー…

猿夢『終点~血抜き~血抜き~』

光彦「」

【阿笠家】

歩美「あー!光彦君、死んじゃった!」

元太「光彦は直ぐ死ぬなあ」

コナン「光彦、残機は幾つだ?」

光彦「ああ、もう!」

光彦「その言い方やめて下さい!それじゃあまるで、僕が死んだみたいじゃないですか!」

光彦「ゲームの話じゃないですか!」

元太「まあ、そうだけどよ」

歩美「ごめんね、光彦君。つい…」

コナン「悪い悪いw」

ガチャッ

灰原「あら?」

灰原「連休初日の朝っぱらから、居間でゲーム?今時の子供らしく不健康ね」

コナン「学校サボって徹夜で実験してる、お前ぇだけには言われたくねえよ」

歩美「違うよ、哀ちゃん」

元太「今日はキャンプに行くんだぜ」

灰原「…キャンプ?」

光彦「そうですよ。灰原さん」

光彦「本当は昨日誘う予定でしたが、お休みでしたので」

コナン「そうだよ。お前どうすんだ?」

灰原「そうね。今大事な実験の最中だから…」

歩美「駄目だよ!少年探偵団は5人揃わなくちゃ!」

光彦「!」

歩美「…あれ?光彦君、どうかしたの?」

光彦「いえ、何だか…こう、何と言えばいいか分からないんですが」

灰原「デジャビュ?」

光彦「あ、はい…そんな感じが…よく分かりましたね?」

灰原「私も、そんな感じがしたから」

光彦「え…」

灰原「そうだ、博士は?」

コナン「博士も部屋にこもって、何か作ってるらしい」

灰原「何かって?」

コナン「さあ?」

歩美「きっと、『何か』が爆発する装置よ!」

元太「『何か』を操れる装置かもしんねえぞ?」

灰原「随分、物騒な発想ね」

光彦(あれ?どうしてでしょう?!これも、デジャビュ?)ゾクッ

ガチャッ

阿笠「待たせたのう」

元太「待ちくたびれて、腹減ったぜ」

阿笠「すまんのう。お詫びに凄い装置を見せてやるわい」

灰原「凄い装置?」

阿笠「そうじゃ。このスイッチを押すと、」

コナン「おう」

阿笠「光彦君の、」

光彦「へ…」ゾワッ…

阿笠「家の真上に大きな虹がかかる装置じゃ」

元太「へえ!すげえな!」

歩美「でも、何で光彦君家の上なの?」

阿笠「それはこれからキャンプに行く場所の丘の、丁度真正面が光彦君の家なんじゃよ」

灰原「ああ、そういう事ね」

コナン「じゃあ、とっとと行こうぜ」

歩美・元太「おー!!」

ガチャッ

歩美「あ」

コナン「どうしたんだよ?」

歩美「水筒、ゲームの横に置いてきちゃった」

光彦「なら僕が持ってきますよ」

歩美「ありがとう♪」

光彦「いえいえ。歩美ちゃんの頼みでしたら、火の中、水の中ですよ!」タタッ

光彦「あった、歩美ちゃんの水筒……ん?」

光彦「ゲーム、消した筈だったのに…」

──────────

【電車に乗りますか?】

→YES
 NO

──────────

光彦「…何でしょうか?この選択肢は」

光彦「じゃあ、取り敢えず…」ピピッ

光彦「よし、後はテレビを消してっと」ピッ

ブチン…

歩美「光彦君ー?」

元太「置いてくぞー!」

光彦「うわあ、ちょっと待って下さい!!」ダッ

タタタタタタタ…バタンッ

プツンッ…

──────────

【電車に乗りますか?】

 YES
→NO

──────────

『発車しま~す。ご注意下さい』プシュー

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

ガタンゴトン…ガタンゴトン…










終わり。

レス、支援ありがとうございました。

蛇足だが、光彦が消えて直ぐ、救急隊員が俺の部屋に入ってきた。
俺は興奮していた所為か、馬鹿正直に光彦が消えたと説明。

警察が介入した結果、血だまりはインクと判明した。
悪質な悪戯として厳重注意を受けたが、ババアだけは俺の非現実的な言い分を、全て信じてくれた。

以上。

終わり。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年10月25日 (火) 02:38:32   ID: ierDKMcC

ああ?なめてんのか?テメェ人は何時かは死ぬどう転んでもどう頑張っても死ぬ。英雄も犯罪者も男も女も子供も老人も、あるのは遅いか早いかだ。だからその人物が現実だろうが虚構だろうが大した差はねぇんだよ

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