ミルヒオーレ「勇者召喚に成功しました!」深淵歩きアルトリウス「…………」 (97)

アニメ《DOG DAYS-ドッグデイズ》一期
ゲーム《DARK SOULS-ダークソウル》DLC-ARTORIAS OF THE ABYSS
のクロス物です


クロスとはいっても、アルトリウスさんがシンクさんに代わってフロニャルドで無双する感じなので
ダークソウル分は少ないと思われます
苦手な方は適当に決別してください


またアルトリウスのキャラ、セリフの言い回し、設定などに勝手な妄想が入るのでそのあたりもご了承ください


あと敬語苦手です


遅筆で拙いものですがよろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1383871366

すいません
立てた時にエラーって出たので
立ってないと思ってました




 数百年前。古の都の姫を救い出し、《深淵》と呼ばれる闇を征した英雄がいた。

 深淵歩きアルトリウス。

 それが、不死者の聖地《ロードラン》に伝わる英雄の名。


主人公「…………」ジャリッ

白霊「…………」ザッ


 さて、ひょんなことからその英雄が生きた時代、数百年前の都《ウーラシール》へと足を踏み入れた不死者がいる。

 火継ぎの宿命を背負った彼は、その生まれ持った悪運により《深淵の主》に攫われた姫を助けることになったのだ。

 その道中で様々なことを見聞きする。

 それは、今まで史実になかったウーラシールの本当の姿。

 そして……


アルトリウス『ハア……ハア……』


 英雄アルトリウスの末路である。

アルトリウス『君が何者かは知らないが、退いてくれ。

       間も無く、私は飲み込まれてしまう……

       奴らの、あの闇に。

       ぐっ……!ああ、ああああああああああああああああああッッ!!!』


 円形の古い闘技場。

 その中心で、アルトリウスが苦しみ悶えながら不死者に語りかけた。

 どのような戦闘を行ったのか彼の鎧は傷付き凹んでいる。左腕は折れているのかだらりと垂れ下がり足元はふらついていた。

アルトリウス『ハアハア……人間よ、君は強い。

       人間なら、君ならば!より純粋な闇の力に近いはずだ。

       頼む、聞いてくれ……深淵の拡大は、防がなければならない!!』


 満身創痍なアルトリウスの影から、闇が立ち昇る。

 ズズズとアルトリウス脚に真っ黒い大蛇が絡んだ。まるで、彼を喰らい尽くすかのように。みしみしと締め付けていく。

主人公「ッ!」チャキ

白ファン「…………」スッ


 英雄にまとわりつく闇を見た火継ぎの不死者は右手に持つ剣を構える。

 闇の放つ嫌な気配で、不死者は、動かないはずの心臓が不気味に鼓動する感覚を覚えた。


アルトリウス『グ……グゥゥッ!
      (ああ、シフ!其処にいるのか……?)

       ァアァアァアアアアアアッ!!
      (みんな、許してくれ……)

       ア゛ァアアアアアアアアアアアアッッ!!!
      (私は何もできなかったッ……!!)』


 そして、深淵歩きアルトリウスは火継ぎの不死者にその巨大な剣を向ける。

 狙いはお前だ。ついに深淵の下僕と成り果てたアルトリウスの暗い瞳がそう言っていた。

 アルトリウスはグッと身を屈め、闇のヘドロを撒き散らし一気に高く跳び上がる。


???「ワンッ!」

主人公「!?」

白ファン「!?」


 そんなアルトリウスの動きを見てとっさに右に跳んだ不死者の真横を、背後からさっそうと現れた一匹の小さな犬が駆け抜けた。

???「アオーン!」


 その小犬は何の躊躇いもなくアルトリウスの着地点で立ち止まり、咥えていた短剣を地面に突き刺す。

 その途端に短剣と地面から眩い光が迸った。

 光の奔流は小犬を飲み込み、空中のアルトリウスをも捉えて引きずり込む。

 闇を打ち消すような強力な魔翌力の波動が収まった後、その場にはもう小犬も英雄の姿もなかった。


主人公(´・ω・`)ナニコレ?

白ファン「…………」シタヲユビサス

主人公(´・ω・)?

メッセージ【クソチーターがオ○ニーなら一人でやってろクズ!!!】

白ファン「ペッ」シュワー

主人公(´;ω;`)


【深淵歩きアルトリウスが召喚されました】

 頭がクラクラする。それに気持ち悪いほどの浮翌遊感も。


アルトリウス(浮翌遊……感……?)


 アルトリウスはハッとして瞼を開いた。

 彼の目に飛び込んで来たのは白い雲、薄紫色の空そして空に浮かぶいくつもの島々。

 首を下に向けると、広大な緑の大地が広がっている。


アルトリウス(私は、夢をみているのか……?死の間際に走馬灯を見るとはよく聞くがこれは……)


 あまりにも現実的な感覚、しかし非現実的な状況だ。落下しているにも関わらずアルトリウスは冷静だった。

 あるいは理解が追い付いていないだけなのかもしれないが……


アルトリウス(それにしても美しい風景だ。竜どもはいつもこの景色を見ていたのだな。全く忌々しい)


 アルトリウスは右手を広げて暫しこの貴重な時間を楽しむことにした。どうせ夢なのだから……と。

 鎧の隙間から流れ込む風が心地よい。気持ち悪く感じていたこの落ちている感覚は、気分を高翌揚させる素晴らしいものだ。

 だが、地上に近付くにつれてワーッという騒々しい音が聞こえて来る。

 それはどんどん大きくなり、やがて音が大勢の声であることがわかる。

 悲鳴、歓声が区別できた。金属と金属がぶつかる音が耳に入る。

 ああ、戦いだ。アルトリウスは高翌揚が一気に冷めていくのがわかった。夢の中でさえ、最期の時でさえも私は戦いから逃れられないのか。王に仕える最高の四人の騎士、英雄アルトリウスが思わず漏らした彼らしくはない呟きだった。

???『おおっと!これはなんだぁー!?空から人が降って来たぞー!!』


 どこからか自分の様子を伝える大きな声が発せられる。

 だからなんだ。アルトリウスは轟音を立てながら、ついに地上に降り立った。

 砂煙が晴れ、辺りを見渡す。ここは戦場のど真ん中だろうか、それにしてはやけにごちゃごちゃとしていて遊び場のようにも見えた。そのどれもが侵攻を妨害するには役に立たなそうだとアルトリウスは思う。


アルトリウス(それに、この人間達はどこかおかしい。獣の尾や耳……か?)


 獣の人間。仮に獣人とするが、獣人の兵士は突如現れたアルトリウスに唖然としピクリともしない。

 戦場は静寂に包まれ、緊張が支配する。

 それも当然だろう。自分の二倍も大きな巨人が空から降って来たのだ。敵か味方かもわからない巨人が。


アルトリウス(うん……?)


 しかし、変だ。そう主にサイズ的な意味で。


アルトリウス(人間とはもっと小さくはなかったか?)

 それだけでなく、気付いたことがある。
 
 死体も血の臭いもない。遊具のような施設に感じられない殺気。これは本当に戦場なのか。

 そして、負傷した左手が痛む。おかしいのだ。これは夢のはず、だが、痛みを覚えるということは……


アルトリウス「現実……?」


 そんなアルトリウスの呟きは周りにいた兵士に聞こえていた。そのうちの一人が恐怖を吹き飛ばすようにオオーっと叫び、目の前のアルトリウスに切りかかる。


アルトリウス「ふん!」

獣人兵士A「にゃんッ!?」


 だが、いくら利き手を失っていようとも、丸腰だろうとも四騎士の名は伊達ではない。獣人がまさに振り下ろそうとしている手を掴み、そのまま握り潰す。

 ポフンッ。

 そんな気の抜けた火炎壺のような音を立て、今まさに手首を握り潰したはずの獣人は、丸い毛玉になって転がっていった。


アルトリウス「なんだ……アレは」


 戸惑いながらも、アルトリウスは残された獣人の剣を拾い肩に担ぐ。

 相手の人数はザッと五十人。わからないことだらけだが、この場を切り抜けるまでは考えないようにしよう。


アルトリウス「我はグヴィン王に仕えし四騎士が一人アルトリウス!毛玉にされたい者から掛かってくるがいいッ!!」


 その宣言により張り詰めた空気が弾ける。

 宣言を合図に、次々と、アルトリウスは知らないが敵味方関係なく兵士たちは雄叫びをあげて彼に向かって立ち向かって行った。


???『これはー!一体全体どうなってしまうんだぁー!?』

途中で途絶えたりsagaしてなかったり

すいませんでした

今回分はこれで終了です

また一週間以内に書きダメしてから来るので

その時はsage進行ですがよろしくお願いします

獣人兵士B「きゃいん!」


 ポフンッ。間抜けなこの音をいい加減聞き飽きた頃、生き残ったのはアルトリウスただ一人であった。

 彼は拾った剣の使い勝手を確かめるように振り回している。その辺りには五十程の毛玉が転がり、本来なら死屍累々という状況だろう。


アルトリウス「軽いな……もっと重く長い剣が欲しい」


 いつの間にかなくしていた愛用の剣を思い出しため息を吐く。

 そして、一区切りついたことで今まで感じられなかった気がかりを思い出した。


アルトリウス「シフ、どうか生き延びていてくれ……」


 だらりと垂れて動かない左手を見て、あの闇に残して来てしまった親友(とも)のことを嘆く。

 アルトリウスの左腕は、闇の主と対峙し、傷付き怯んだゆえに狙われたシフを庇った時に噛み潰された。

 その後、命からがら逃げ切ったものの、弱ったアルトリウスは傷口から侵入した深淵の意識に抗えず、闇に飲まれ始める。

 同じく弱ったシフが深淵に侵される前に何とか闇の地から脱出したかったが、急速に歪み始めた理性がそれを拒んだ。

 《人間性を求めろ。人間性を捧げろ。》

 歪んだ理性が暴れ出す。欲求が抑えられない。

 欲しい。欲しい!そして、捧げなくては!人間性を!

 《求めろ。求めろ。捧げろ。捧げろ。》

 このままではダメだ。このままでは自らの手で親友(シフ)を傷つけてしまう。

 アルトリウスは理性の残るうちに、退魔の祝福を受けた自らの大盾をシフに預け結界を張った。そして、大猫アルヴィナにシフのことを頼むとアルトリウスはよろめきながらも足早にその場から立ち去る。

 闇を、深淵を祓う光を求めて……

???「ゆ、勇者様!」

アルトリウス「ッ!?」

???『おお!謎の剣士に近付いて行くのはビスコッティの姫君!ミルヒオーレ姫だぁあ!!あ、え?はいはい……な、なななんと!?今入りました情報によりますと、先ほどビスコッティ、ガレット両国の兵士に対し圧倒的強さを見せたあの剣士!実はミルヒオーレ姫が召喚された勇者だそうです!!召喚時に巨大な手が現れて勇者を叩き落としたのだとか!』


 そんなアルトリウスの思考を遮ったのは、走る大きな白い鳥に跨った愛らしい少女の獣人とギャーギャーうるさい青年の声。

 そして、爆音のように轟いた兵士たちの歓声だった。

 ピンク色を基調としたドレスを身につけた獣人の少女は、アルトリウスの前まで寄って来ると跨っていた鳥からいそいそと降りて慌ただしく話し出す。


ミルヒ「こ、この度はビスコッティ共和国フィリアンノ領の領主、ミルヒオーレ・F(フィリアンノ)・ビスコッティの勇者召喚に応えていただき本当にありがとうございます」


 領主だという少女は息を整え、真剣な眼差しでアルトリウスを見つめた。

 それは強い信念を持った者の瞳(め)。

 言葉は要らない。今はそれで十分だ。

アルトリウス「……私はグヴィン王に仕える騎士アルトリウス。こちらこそ、貴女に命を、騎士としての誇りを救われた」


 片膝をつき頭を垂れる。

 恩人への最大の敬意を示すために。


アルトリウス(あの時あの光に導かれていなければ、確実に私は大切なものを失っていただろう)


 魂を。大切な誇りを失うところだったのだ。


ミルヒ「そ、そんな!頭をあげてください勇者様!」

アルトリウス「しかし……」

ミルヒ「どうかお願いします!本当に頭を下げるべきなのは私の方なんですから!」


 アルトリウスがその誇りゆえに渋ると、ミルヒオーレはそう言ってぐっと腰を折ろうとした。

 慌てたアルトリウスはそんな彼女の肩を掴み、その動きを止めさせる。

アルトリウス「無礼をお許しください。しかし、貴女ほどの立場の者がそう簡単に頭を下げてはいけない。それに、私にそれだけの価値はありません」

ミルヒ「そんなことは……いえ、わかりました勇者アルトリウス。詳しい話は移動しながらさせていただきます。どうか私と一緒に来てくださいませんか?」


 ミルヒオーレはアルトリウスをまっすぐに見つめた。

 アルトリウスは、もちろんウーラシールのことやシフのことを忘れていたわけではない。

 だが、恩人に対し何も礼ができないというのでは気が済まなかった。

 剣を振るうしか能のない自分に何かできることがあるのなら、是非とも恩返しさせていただきたい。

 アルトリウスはそう答え、ミルヒオーレは返事を聞くと心から安堵し長くため息を吐いた。


【フロニャルド式戦の詳しいルールはアニメを観て確認してください。でも要はごり押し安定の無双ゲー】

???『さあ戦場は大変なことになってまいりましたぁ!

    先ほど現れた謎の暗黒剣士、実はビスコッティ側が召喚した勇者!手違いで何の説明も受けず戦場に落ちて来たそうでミルヒオーレ姫が慌てて状況を説明しに駆け付けるという珍事件が発生!

    これは後にも先にも残る逸話になること間違いなし!

    あれから30分ほど経過し、始めこそビスコッティ軍が勇者召喚の勢いに乗って戦況を立て直そうとしていましたが、勇者が再び戦場に現れる前に攻め切ろうとしたガレット軍に結局は押し戻される形になっています!

    果たして!ビスコッティの勇者は砦が攻略される前に戻ってこれ……

    あああっと!!ミルヒオーレ姫からの通信が入ったそうです!これはまさか!まさかぁあああ!!』


 ブツン。

 画面いっぱいにまでズームアップされた青年の顔が途切れる。

 代わって映し出されたのは、ピンク色の髪にドレスを纏ったビスコッティ共和国代表領主ミルヒオーレ・F・ビスコッティ。

 彼女は声高々に宣言する。勇者の登場だと。

 剛勇にして圧倒的。その名は勇者アルトリウス。

今回分はこれで終わりです

また来週お願いします

次は姫様誘拐編まで行けるよう頑張りたいと思います

昨日の>>1「あれ?PSストアにサインイン出来ないぞ」

あとは察してください

すいませんでした



ガレット兵士AtoZ「「「さあ地獄を楽しみなあ!」」」

アルトリウス「ふっ!」

ガレット兵士AtoZ「「「にぎゃああああッ!!!」」」


 アルトリウスの振るった一撃で多くのガレット兵士が毛玉にされた。

 毛玉された者達は当然だがアルトリウス自身も驚いている。先ほど城で貰い受けたなんてことのない大剣を素振りのようなつもりで振るうと、熱風を纏い周囲を吹き飛ばしたからだ。

 そこに自軍の兵がいなかったのが幸いだと、アルトリウスは自分の《左腕》を見つめて思う。

 薄暗い彼の鎧とは対照的な白金の鉄甲に包まれた左腕を……


アルトリウス(これが《神剣パラディオン》。自在に形を変えられると聞いた時は驚いたが、こうして無理やりにでも腕を動かせるのはありがたい)


 アルトリウスの左腕は決して癒えたわけではない。ミルヒオーレから教わった紋章術の基本と神剣パラディオンの力を借りて操縦しているだけだ。

 動かす度にかなりの激痛を伴うが、両手を動かせることを考えるとこれぐらい堪えられる。

アルトリウス「君がロラン・マルティノッジか?ミルヒオーレ様から君に指示を仰ぐように言われている」


 転がっている毛玉を避けながら少し歩くと門が見えた。そこでは隊を率いる一人の青年が勇者を待っている。

 彼はビスコッティ騎士団の騎士団長ロラン・マルティノッジ。


ロラン「おお!勇者殿、お待ちしておりました。モニターで戦の様子を見させていただきましたが、実に頼もしく思います」


 ロランがよく通る声でアルトリウスを迎えると、二人は互いに手を差し出しがっしりと握手をした。

アルトリウス「いや、君の槍術も素晴らしいものだ。紋章術も含めて、オーンスタインが聞けば生唾を飲み込むだろう」


 ロランの握手に応じながら、もう何十年も姿を見れていない同僚を思い出し、アルトリウスは兜の中で少しだけ頬を緩める。

 思えば四騎士が全員揃ったのはいつが最後だっただろうかと、懐かしい記憶が脳裏に浮かんで消えた。


ロラン「オーンスタイン殿……ご友人ですか?」

アルトリウス「友人……戦友だな。私と同じ主君に仕える騎士でね、槍と魔法の使い手なんだ」

ロラン「なるほど、それは是非ともお会いしてみたい」


 そんなロランの言葉にアルトリウスは、彼の雷を纏った槍が竜の鱗を物ともせず貫き、絶命させた話を聞かせてやりたくなる。

 しかし、今は戦の真っ最中だ。そういう話は、この戦に勝ち、自分の世界に戻ってウーラシールの闇を祓った後からでも遅くはないだろう。

アルトリウス「ふふ、しかし、その前にやらねばならないことがあるな」

ロラン「ええ、その通りです。では、勇者殿はこのまま前進し先陣の部隊と合流してください。この場は我らが必ず守り抜きますので」

アルトリウス「心得た。貴公に炎の導きのあらんことを」

ロラン「勇者殿も、いくらこの世界の戦が安全を考慮されたものだとしても十分にお気をつけください。ご武運を願っております」


 二人はもう一度握手を交わし、そのあとすぐにアルトリウスは前線へ向けて駆け出した。

 道中で立ちはだかる敵は全て左の大剣で薙ぎ払い、敵の攻撃を右の大盾で防ぎ切る。

 アルトリウスと対峙した者は、間抜けな破裂音とともに毛玉へと姿を変えていった。

ガレットモブ兵A「やっべー!マジで勇者だカッケー!」

ガレットモブ兵B「これってあれだよな!俺達が勇者を倒したりなんかしたら閣下ににゃんにゃんしてもらえる可能性が微レ存!?」ウヒョー!

ガレットモブ兵P「クックックッ、見かけだけのデカブツに、何かできるはずもありませんからねえ…」

アルトリウス「…………」ザッザッザッ

【BGM:Knight Artorias】


アルトリウス「…………」ゴゴゴゴゴ

ガレットモブ兵ABP「「「…………」」」









ガレットモブ兵A(アカン)

ガレットモブ兵B「強い(確信)」

ガレットモブ兵P「私が何をしたって…いうんだ…」シュワー

 アルトリウスは戦場を駆け抜ける。そうしてそろそろ前線の部隊と合流できるかという辺りで、彼の真横を一筋の烈風が走った。

 その鎌鼬が走って来た先を見ると、少女が一人、多数のガレット兵を相手にして戦っている。

 多勢に無勢に思えるが、どうやら心配いらないようだ。少女は不利な状況にも一切動じず、体も大きな相手を両手に持った短剣と軽やかな体術を駆使し次々と薙ぎ倒していく。

 烈風の発生源もこの少女だったようで、再び放たれたその技によりこの辺りの敵は全て吹き飛ばされ毛玉に変わった。


アルトリウス「いや、まだか」


 ふう。一息ついた少女の背後に大男が砂煙の中から姿を現し斧を振り下ろす。

 少女は男に気付き振り向いたが、いくら腕が立とうとも防御しようと反応できる限界を超えていた。少女になす術はない。


ガレット兵士(大)「ニャフンッ!?」

???「なっ!?」

アルトリウス「いい動きをする、まるでキアランのようだ。君がエクレール・マルティノッジだな」

 少女は大男に気づかなかった。しかし、大男もまた少し離れたところにアルトリウスがいたことを知らなかった。

 大男のがら空きの背中目掛けて高く跳躍したアルトリウスが大剣を突き刺す。

 ポフン。本来ならおびただしい量の血液が噴き出すように飛び散るところだが、大男も他の兵士と同じように毛玉になって跳ねていった。


エクレ「お前は!勇者……」

アルトリウス「…………」ゴゴゴ

エクレ「(デカい!)い、一応礼は言っておくが、お前が来なくても私だけでやれていた!か、勘違いするなよ!」

アルトリウス「そうか」スッ

エクレ「ヒッ!」ビクッ

アルトリウス「それはすまなかった」ナデリナデリ

エクレ「お、おお!そうだ、だが、お前より小さいからといって私をこども扱いするな!いいな!」

アルトリウス「はっはっはっ、承知した」

エクレール「くそぉ……何だこの敗北感は……」

 大勢の足音が聞こえる。アルトリウス、エクレールが同時にその音に気付き武器を構えた。

 二人の前にはガレット側の援軍が大群で押し寄せて来ている。


エクレ「お前、紋章砲は知っているか?」

アルトリウス「いや、君に習えとミルヒオーレ様から言われている。君が一番上手いとも言っておられたよ」

エクレ「そ、そうか!まあ、さっきの礼に教えてやらんこともない」シッポフリフリ
 
アルトリウス「是非ご教授願いたい」


 紋章砲の技をエクレールから学ぶことは三十秒もかからなかった。

 基本はミルヒオーレから教わっていたし、これまでも無意識で紋章砲のなり損ないのようなものも放っていたからだろうか。

 とにかく、アルトリウスは紋章砲を会得し、エクレールとともに放ったエネルギーはガレットの援軍を全て毛玉に変えていた。

アルトリウス「おお、これは……素晴らしいが……しかし……ううむ」

エクレ「おいなんだ!何か不満があるのか!」

アルトリウス「疲労感はあるものの、手応えが感じられず何とも消化不良だ」

エクレ「はん!脳筋勇者が、そんなことではこれから先役に立つのか怪しいものだな」

アルトリウス「ははは、これは手厳しいな。……ん?そら、そこは危ないぞ」グイッ

エクレ「い、いきなり何をす――」


 ゴォオ。大気を無理やり押し退けて、一本の弓矢が今までエクレールのいたところに目掛けて突き刺さる。

 その瞬間、矢じりに付加されたエネルギーが弾け、地面を大きく抉った。


 アルトリウス「この威力、精度ゴーのように的確だ。彼の大矢に腹を凹まされた竜を思い出すなぁ」ハッハッハッ

エクレール「おい!バカ離せ!」


 隠居したのが本当に残念だ。などと呟きながらも、アルトリウスは飛び散った土や砂をエクレールが被らないように身体を傘にして庇っている。

 エクレール自身は羞恥心やプライドからアルトリウスの腕を振り解こうとするが、全く解ける気配がない。

 兵士として厳しい訓練を受けていて実力も才能も人並み以上の彼女だったが、アルトリウスの身体は岩より固くジタバタする他なかった。

 そんな中アルトリウスは飛んで来た矢の軌道を目で辿り狙撃手を探していた。しかし、そんな必要はないとばかりに、矢を放った者は狙撃点である崖の上で巨大な走る鳥に跨がり豪快に笑っていた。


???「犬姫のご機嫌とりかと思いきや、なかなかどうしてやるじゃないか」

エクレール「あ、あれは……レオンミシェリ姫!?」

アルトリウス「姫……敵国の将か」


 アルトリウスの言葉に、ガレットの女騎士はニッと笑みを浮かべる。


レオ「チッチッ、姫などと気安く呼ぶな。我が名はレオンミシェリ・ガレット・デ・ロア。ガレット獅子団領国の王にして百獣の王の騎士!閣下と呼ばんかこの無礼者がッ!!」


 レオンミシェリの紋章が彼女の背後に展開された。強者が放つ特有の威圧感が撒き散らされ、アルトリウスとエクレールは思わず身構える。

 しかし、レオンミシェリは今度は不敵な笑みを浮かべると愛騎ドーマを操り二人から背を向けた。

レオ「ま!それはさておき、わしは先に行かせてもらうぞ。ハイヨー!」


 そしてそのまま、レオンミシェリはドーマに鞭を打ち走り去って行ってしまう。


アルトリウス「さて……追うか」


 しばらくして、レオンミシェリを打破するための思考を巡らせたアルトリウスが、崖の上を見上げて呟く。

 輝力を使ってジャンプすれば容易に登れるだろうと目測を立て、アルトリウスはグッと身体に力を込めた。


エクレ「だったらいい加減離せこのバカ勇者ぁ!」


 肩に担ぎ直したエクレールが文句を言っているが、気にしないでおく。

 身体中を巡った輝力を感じ、溢れ出しそうな熱いエネルギーを足にとどめる。


アルトリウス「心配するな。君を抱えていたとてあの鳥には負けないさ」ダッ

エクレ「話を聞けえええッ!!」

 凝縮した輝力を爆発させアルトリウスは空高く跳び上がり、崖の上に着地した。

 そして、颯爽と駆け出す。レオンミシェリを打ち倒し、ビスコッティに勝利をもたらすために。


???『さあ!レオンミシェリ閣下の登場でいっそう盛り上がって来ました!

    果たしてエクレール親衛隊長と勇者アルトリウスはレオンミシェリ閣下を倒しビスコッティを勝利に導けるのか?

    それとも!逆にレオンミシェリ閣下率いるガレット軍がこのまま押し切るのか!

    すでに撮影班員が二人ほど勇者に近付き過ぎて斬撃の餌食(真っ二つ)にされておりますが、このあとも迫力の戦風景をご覧いただけるよう我々も努めていきますのでよろしくお願いします!』

撮影班員C(ブラック過ぎワロエナイ……)

撮影班員V(【戦の映像撮る仕事だけど質問ある?】……っと)カタカタ

撮影班員R(エクレールたんのキャストオフはよ)ハァハァ

すいません
どうやら晩ご飯に糞団子が盛られていたようで……

続きは明日投下させてください

 すべすべ床のすり鉢コース。名前の通り滑る床とすり鉢状の地形が特徴のステージ。

 そのエリアに先に立ち入ったレオンミシェリはすり鉢の底の部分で、ビスコッティ兵士をバッタバッタと叩き潰している。


アルトリウス「あそこで決着をつけるぞ」

エクレール「言われなくともそのつもりだ!足を引っ張るなよ勇者!」


 彼女を追う二人はステージの二つの入口、細い急斜面をそれぞれ駆け上がり、エクレールは宙へ跳び、アルトリウスはすり鉢の底目指して斜面を高速で滑りように下る。


レオ「ほう、そう来たか!」

アルトリ/エクレ「「ハァアアアアアアッ!!」」


 レオンミシェリの頭上にはエクレールが、正面にはアルトリウスが迫って来ていた。

 どちらか一方に気を向ければ、他方からの攻撃を受ける。この状況から脱するには、一度に両方を相手取らなければならない。

 見せてもらおうではないか、百獣王の騎士の実力を。ただ腕が立つというだけでないことを証明せよ。

 そして私に考えを改めさせよ。血の流れない戦、平和ボケした者共のお遊びだと少しでも思ってしまった愚かさを。

 アルトリウスはそう思いながら自身の腕力と滑り落ちる高速のスピードのエネルギーを上乗せした刺突を繰り出す。

レオ「そう簡単にやれると思うなッ!」

エクレ「くっ……」


 ところが、彼とエクレールの刃は、レオンミシェリが張った防御結界により阻まれた。

 半透明で厚さも殆どないその膜は、アルトリウスの力でも破壊出来そうにない。

 いいぞ。兜の中で、彼は確かに微笑んでいた。自身ですら気づいていない自然な笑み。そのことに気づいたのは、彼の正面にいたレオンミシェリだけ。


レオ「吹き飛べッ!」


 ニイッと、レオンミシェリも思わず口角が上がる。その笑みの理由を、彼女は知っているからだ。

 渾身の力を込めて、レオンミシェリは振りかぶった長柄斧を横薙ぎに払い、結界ごと粉砕する。

 その一撃はアルトリウスのわき腹を的確に捉え、強打された彼は彼女の剛力で宙を舞った。アルトリウスの巨体が頭上にいたエクレールをも巻き込み、そのまま二人は地面に叩きつけられる。

エクレール「ガハッ!」

アルトリウス「グ……」

レオ「ふふ、なかなか楽しめたぞ勇者、垂れ耳。褒美をやらんとな……」


 レオンミシェリが長柄斧をグッと持ち上げ、切っ先を天に掲げた。

 彼女の紋章が碧色に輝きながら、彼女を、獅子王レオンミシェリを引き立てるようにして展開されている。


レオ「獅子王炎陣ッ」

アルトリウス「これはッ!?」

エクレ「クソッ、身体が……」

 掲げた斧が振り下ろされ、その刃が地面を抉った。

 レオンミシェリから斧を伝って大地を揺らがせるほどのエネルギーがこのあたりの地面に流し込まれる。メキメキという音が響き渡り、まだらに土が盛り上がった。

 紅く、高温の炎の柱が次々と火山の噴火のように、盛り上がった地面を吹き飛ばして噴き出す。

 吹き飛ばされた大地の欠片は炎を纏い、隕石のごとく空から降り注いでいた。

 地を焼き天を焦がす。それらは敵味方に関係なく襲いかかり、触れた者を次々に焼き払う劫火。


アルトリウス「エクレール!」

エクレ「バカ!私に構うな!早く範囲外に逃げろ!」

レオ「大爆破ぁあああああッ!!!」


 瞬間、レオンミシェリを中心に炎は一気に膨れ上がり急激に炎上して弾けた。

 衝撃は空を壊してしまいそうなほどに轟き、一筋の白煙が空に向かい立ち昇る頃、そこに立っていたのはレオンミシェリだけである。

 そう、今までは……

レオ「ほう……」


 ゆらり。残火と陽炎が揺らめく中、アルトリウスは剣を肩に担ぎ鎧を煤けさせながらも確かに立っていた。

 足元には熱でとろけた彼の大盾の破片が転がり、アルトリウスは右足を一歩前に、その破片を踏み砕いて高速に駆け出し間合いを詰める。


アルトリウス「オオオッ!!」

レオ「面白い!受けて立つ!」


 アルトリウスの叩きつけた大剣は、レオンミシェリが薙いだ長柄斧に弾かれ空振った。

 ニヤリとレオンミシェリは笑みを浮かべ、右手に輝力を集める。そしてがら空きとなったアルトリウスの腹に手を添えると……


レオ「これで終わりじゃ!」


 避けようのない至近距離で、ありったけの輝力をつぎ込んだ紋章砲を撃ち出した。

 閃光が迸り、強力な砲撃がアルトリウスの身体を突き抜けて空を穿つ。

レオ「ハア……ハア……」


 ボロボロの彼の鎧には新たに拳程の大きさの焦げ跡が刻まれ、鎧の隙間からは焦げ臭い匂いと煙が漏れていた。

 勝った。レオンミシェリは確信している。二人の戦いを見ていた者達も、勇者の敗北を感じとっただろう。


エクレ「まだだ!」

レオ「なっ!垂れ耳!?」


 しかし、まだ戦は終わっていない。レオンミシェリの大技で再起不能になったかと思われたエクレールが、突如彼女の背後にあった岩の中から現れ、輝力を纏った短剣で切りつけた。

 レオンミシェリは何とかその刃を長柄斧で防いだが、彼女の武器は耐え切れず、ついに砕けてしまう。

 追撃が来る。とっさに両手を顔の前で交差しその時に備えたが、どうしてだろうかエクレールは手をだしては来なかった。

エクレ「ゲホッゲホッ……ハァハァ……クソッ」

レオ「ち、力尽きたのか……ハ、ハハハ、ちと惜しかったな垂れ耳。今回もわしの勝ちじゃ」


 顔を上げて見れば、エクレールは片膝を着きかろうじて意識を保っているような状態だった。

 短剣は二つとも刃が折れ、もはや戦うことなど出来ないだろう。


エクレール「それは……どうでしょうか……まだ決着はついていませんよ」


 それでも、エクレールの眼はまだ死んでいなかった。

 レオンミシェリと同じく勝利を信じている。


レオ「何をバカなことを、もうお前は立つことも――ッ!?」


 そして、彼女は感じ取ってしまった。背後から放たれている圧倒的なプレッシャーを。

 飢えた獣に背後をとられたかのような本能的な恐怖。どす黒く絡みつくような闘気が、百獣の王である獅子の、レオンミシェリの身体の動きを封じ込めた。


レオ(動けぬ……このわしが、恐れているというのか!?)

 彼の地ロードランのアルトリウスの伝承にはこうある。


 《アルトリウスは、強靭な意志により決して怯まず》


アルトリウス「オオオッ!!!」

レオ「クッ……舐めるなあああッ!!!」


 《大剣を振るえば、まさに無双であったという》


レオ「……見事じゃ」


 アルトリウスの大剣は、袈裟斬りにレオンミシェリを斬りつけた。

 プレッシャーを押し退け、戦意を取り戻したレオンミシェリが振り向きざまに紋章術の拳を叩き込もうとしたが、アルトリウスの刃は彼女の拳よりも速く彼女を切り裂いた。

 自身の敗北を宣言するように小さく呟いた賛辞の後、レオンミシェリの鎧は形を維持出来ずに砕け散り、あちこちから咆哮のような歓声が響き渡る。

 敵国の領主であるレオンミシェリを下したことでビスコッティ共和国の勝利がほぼ決定的になった。

 こうしてフロニャルドの伝説に、新たな勇者の武勇が加えられることになる。

以下ダイジェストでお送りいたします


《擬態》

レオ「ところで垂れ耳が岩の中から出て来たアレはどういうトリックじゃ?」

エクレ「ああ、あれは勇者の世界の魔法だそうです」

レオ「ほう……」





アルトリウス「パラディオンが砕けてしまったが大丈夫だろうか……」ヒダリテダラーン


【神剣の杖:神剣パラディオンの形態を変化させたもの
      神剣の力によりアルトリウスに記憶されていた術をこの世界で行使することができる
      ただし魔法の使用回数は1になる】

《キャストオフ》

レオ『次も勝てるなどと思うなよ勇者。今度は必ず侵略してやる。楽しみにしているがいい!ハッハッハッ!』





アルトリウス「負けたというのに随分とご機嫌だったな」

エクレ「張り合える相手が出来たのが嬉しいのだろう。お前は頑丈さだけは取り柄のようだからな」

アルトリウス「なるほど……ところで、そのかっこうもこの国の戦の作法なのか?」

エクレ「は?」ゼンラー



エクレ「…………」ペタペタフニフニ



エクレ「な!?な、なななななああ~~~ッッッ!!!」

撮影班員R「ブヒイイイイイイイッ!?キタキタキタキターーーーッ!!!」

エクレ「ヒッ!?」

アルトリウス「…………」チャキ


【しばらくお待ちください】

《ロードランへのマッチングに失敗しました》


アルトリウス「ううむ、元の世界にに戻れないのは困るが……」

???「ぅぅ……今回の件は本当に申し訳ありません。しかし!ビスコッティ国立研究学院の主席研究士リコッタ・エルマールが必ず勇者様を元の世界に送還する方法を探し出してみせるのであります!」

アルトリウス「ふふ、それを期待して待っているよ」ナデリナデリ

リコッタ「はふぅ」スリスリ

エクレ「」イラッ

《メッセージを書く》

リコッタ「この装置を使えば時空を超えてメッセージを残せるはずであります!」

アルトリウス「ふむ、ありがたい」カキカキ

リコッタ「感激であります!」

アルトリウス(頼む……届いてくれ!)


~~~


シフ『ワォオオオンッ!!』シュワー

主人公( ^ω^)わんわお!

ポワワーン

主人公(´・ω・`)メッセージダドレドレ

【必ず向かうそれまで待っていてくれ】

主人公「」ゾワッ

主人公 ( ´ ; ω ;`)ナニコレコワイオ

《姫様誘拐……未遂》


ミルヒ「いいお湯でしたぁ~……あら?」


アルトリウス「さて、誰から魔物のエサになる?」

うさ耳「ふぇえええっ」

虎猫「あかんて……これあかんやつやて……」ガタガタブルブル

黒猫「オオキナホシガツイタリキエタリシテル…アハハ…オオキイナ…スイセイカナ?」


ミルヒ「」

ミルヒ「ハッ!ゆ、勇者様!これは一体……」

アルトリウス「ご安心ください。今直ぐ処理しますので」

うさ耳「ヒィイイッ!」

黒猫「ミンナーオーイ!ハハハー」

虎猫「イヤやー!助けてや姫様ぁぁ!!お願いや何でもするからぁ!」


ミルヒ「勇者様!」

アルトリウス「は!」

ミルヒ「この方達は、あの……その、友達なんです!敵国なのにおかしいと勇者様は思われるかもしれませんが、私にとっては大切な友達なんです……だから」

アルトリウス「……お優しいですね姫様は」

ミルヒ「そ、そんなことありませんよ。きっと普通です!」

アルトリウス「ははは、そうですか。普通ですか」ナデリナデリ

ミルヒ「わふ~♪」シッポフリフリ

《一方そのころ》

モニター『ミルヒ「わふ~」』

エクレ「お前ぇえええええ!脳筋勇者風情がなぁああ!姫様のなぁああああ!!頭をなあああああッ!!!」ウガーッ

リコッタ「お、落ち着くでありますよエクレ~!」

エクレ「離せリコッタ!あの無礼者は私が断罪してやる!!私だって最近自重してるのにッ」

リコッタ「完全なる私怨であります!?と、とりあえず自分の頭で我慢して欲しいでありますよ!」

エクレ「いや……それはない」

リコッタ「ガーン!」

エクレ「ない」

リコッタ「……グスン」


《一方そのころその2》

モニター『うさ耳/虎猫/黒猫「ばたんきゅう」』

???「……あの三馬鹿ぁあああああああッ!?何やってんだぁああああああッ!!!」

こんな感じでやっとアルトリウス召喚編が終了です


姫様誘拐の件を省いたのはあまりグダグダとアルトリ無双をし続けるのもどうかなと思ったからです

単純に>>1のモチベーション的な意味もありますが……

あと書き溜めなくなっちゃったから
続きはしばらくお待ちください

ありがとうございました

カウントされててビビりながらの投下です

1ヶ月あったのにこんだけかよと思われることでしょうが

就活辛過ぎワロエナイ……






本当は日常回はもっと本編ではしんくーさんと関わりなかった大人組をアルトリさんと絡ませたかったんですが断念

結果ただ本編をなぞるだけとなっております

では、よろしくお願いします

 アルトリウスがこの世界に召喚されてから数日後。

 この世界の奇怪な技術に驚いたり、フロニャルドの習慣を教わったりしながら、この世界にもある程度慣れたアルトリウスは、殺伐としたロードランでの生活とは打って変わって平穏な日々を過ごしていた。

 早朝に起床し、ビスコッティの兵士達の訓練に加わり《右手》での剣技を磨く。

 結局のところ、アルトリウスの左腕はパラディオン無しには動かせず、今は添え木と包帯を巻いて固定している状態だ。

 そうしているからといって決して腕が治ることはないのだが、根本的な治療を勧められ紋章術による施術を受けたもののアルトリウスには効果がなかったのだ。

 医師は首を傾げていたが、アルトリウスは気付いていた。自身のソウルに染み付いた闇のソウルが、身体を癒すことを邪魔しているのだと。

 闇はまだ虎視眈々と狙っているのだ。アルトリウスが再び弱り、闇の下僕に堕ちるその時を。

 そんな身体で戦をさせてしまったことを知ったミルヒオーレが顔を青ざめさせながら必死に謝罪して来た時には、その勢いにさすがのアルトリウスもたじろいでしまった。

 医師からは絶対安静だと言われているが、どうせ大人しくしていても治らないのだろう。と半ば強制的に剣を振るうことを許してもらい、こうして朝の日課が出来上がった。

エクレ「クッ……相変わらず片腕なのに重い攻撃だ」

アルトリウス「それが私の《売り》だからな、エクレもわざわざ重い私の剣を受けずとも、身軽なことを活かした動きをだな」

エクレ「そんなことお前に言われなくてもわかってる!」

アルトリウス「ははは、そうだったな」


 火の時代を作り上げ、守り続けて来たアルトリウスの豊富な戦闘経験から繰り出される動きは、ビスコッティの兵士には実に良い刺激となっていた。

 特に、若くして力を身につけていたエクレールにとっては、自分達とは全く違う戦い方、技術、それら全てが新鮮でまた乗り越えるべき壁となっている。

 騎士団の訓練スペースを存分に使い戦う二人の姿を、少し離れたところから騎士達は羨望の眼差しを向けつつ見学していた。

 エクレールの兄である騎士団長ロランと食堂からの差し入れを持って来たリコッタも、豪快に颯爽と剣を振るう二人を観察している。

リコッタ「エクレ楽しそうでありますな」

ロラン「ああ、勇者殿はそれこそ師のようにエクレールの相手をしてくださっているよ。残念だが、今のエクレールを伸ばしてやることが私には出来ないからね。本当に勇者殿がこちらに来てくれてよかった」

リコッタ「それはみんな思ってるのであります。自分もあちらの世界の色々な技術の話を聞かせてもらえるのでありますし、なにより自分がついついアツく語ってしまった時に嫌な顔しないで聞いてくれるのでありますよ」

ロラン「私個人としては、ぜひこちらに残って欲しいと思っているが……」

リコッタ「そういうわけにもいかないのであります!聞いた内容から察するに勇者様は元の世界でやり残したことがあるらしいのでありますから」

 ふと、先ほどまで聞こえていた剣と剣がぶつかる音が途絶え、エクレールの怒声が響いた。

 気安く撫でるな。などと言ってアルトリウスを蹴り付けているが、当のアルトリウスは朗らかに笑っているだけだ。


ロラン「残念だなぁ」

リコッタ「そうでありますねぇ」

 さて、いつもなら騎士達との訓練の後、アルトリウスは城下の様子を見て回ったり戦場を駆ける鳥《セルクル》の飼育を手伝ったりして過ごしていたのだが、今日は城の裏手にある森を抜けた先にある、風月庵というところに出向くことになっていた。

 風月庵は隠密隊と呼ばれる組織の頭領であるブリオッシュ・ダルキアン卿が居を構える建物であり、また彼女は大陸最強の剣士だとも言われている。

 お互い顔合わせだけはダルキアン卿がビスコッティに帰国した際、城で行っていたが、きちんとしたあいさつがまだ済んでいなかったのでこうして案内役の犬に囲まれながら清らかな森の中を歩くこととなった。

 どこか懐かしい神聖な雰囲気の森の様子を楽しみ、アルトリウスの顔をチラチラ伺いつつ歩を進める犬に癒され、(傍から見て見分けはつかないが)上機嫌のアルトリウスを、淡い緑色に花柄が散りばめられた着物を身に付け、金色の髪と尻尾を垂らした狐の少女がにこやかに出迎えてくれた。

アルトリウス「やあ、ユキカゼ殿」

ユッキー「先日ぶりにござるな勇者殿、今日はお忙しいところわざわざ申し訳なかったのでござる。それと私のことはユッキーと……」

アルトリウス「ふむ、ユキカゼ殿それでダルキアン卿は?」

ユッキー「親方様はあちらにおられますが……出来ればユッキーと……」

アルトリウス「神族の方にそんな恐れ多いことは私にはとても……」

ユッキー「勇者殿は頑固でござるな~」


 川釣りの道具を持たされたアルトリウスはユキカゼに連れられて、さらさらと流れる綺麗な川に辿りつく。

 水に反射する光に目を慣らすと、川の上に突き出た角張った地面に腰掛け、釣り竿を持ったブリオッシュが水面を眺めている姿を見つけることが出来た。


ユッキー「親方様~!」


 ユキカゼが手を振りながら少し遠くにいるダルキアン卿に声をかける。

 二人に気付いたダルキアン卿は、同じように手を振り返してユキカゼ達に応えた。

【ここからは巻きで行くよ】


アルトリウス「ほう、これが《釣り》」チャポッ


ダルキアン「おや?勇者殿は初めてにござるか」

 
アルトリウス「ああ、最近まで《食べる》ことがなかったからな」


ダルキアン「ふむ、ヒトならざる身の者がヒトになってしまうとは不思議な話でござるな。まだまだ勇者召喚という魔法には謎が多い」


アルトリウス「ヒトになって改めて思うよ、ヒトの身体は実に不便だ。食事、入浴、睡眠……」


ダルキアン「その割には、嬉しそうでござるが?……っと勇者殿、引いているでござるよ。これはかなり大物にござるな」


アルトリウス「なるほど……オオオオッ!」グァアッ



ブチブチブチブチッ!



ユッキー「おわ!?骨だけ!」



ドチャッ



ダルキアン「つ、強く引き過ぎでござる勇者殿。これまた……頭と背骨が胴体からキレイに抜けたでござるな」


アルトリウス「ふむ……難しいな《釣り》」ザンコウブンブン


ユッキー(川が真っ赤でござる……)

ダルキアン「ふむ、まあ結果的に調理しやすくなったでござるな」


ユッキー「そうでございますね親方様」


アルトリウス「うまい!」


ダルキアン「それはそれは、勇者殿のお口に合って幸い」


ユッキー「とはいえただの焼き魚、もっと凝っていて美味しい料理もあるのでござるよ」


アルトリウス「うーむ、ヒトの欲深さの根底に触れてしまったように感じる」ガツガツ


ダルキアン「その欲望こそヒトがヒトたる所以、これ故にヒトは繁栄出来たのでござる」


アルトリウス「そしてその欲望故に争うのだろう?何度でも……見飽きたさ」


ダルキアン「ふふ、その愚かしさと儚さに惹かれているのではござらんか?」


アルトリウス「ははは、どうなのだろうな……だが、私を殺すのは人間だ。それだけは確信している」


ダルキアン「……姫様の前では、あまりそういったことは言わないでもらいたい。お優しい方でござるから、きっと心を痛めてしまわれる。例えそれがどうしようもない宿命なのだとしても」


アルトリウス「ああ……わかっているよ」




ユッキー(難しい話にはついていけないのでござる)モグモグ

ダルキアン「さて、それでは腹ごなしに……」


アルトリウス「うん?」


ダルキアン「ちょっとした運動などいかがでござるか?」スッ


アルトリウス「ほお、木で出来た刀……確かにちょっとした運動だな」


ダルキアン「もちろん勇者殿のものも用意してあるのでご心配なさるな」


アルトリウス「いいだろう。しかし、少し待ってくれ……食べた後に動くと脇腹が痛む」


ダルキアン「ハハハ……なんとも可愛らしい」


アルトリウス「人間は本当に不便だ……」




ユッキー(親方様もめちゃくちゃ可愛いのでござるよ!)ゲプゥ

ダルキアン「では、地に伏すか得物が折れた方の負けということで」


アルトリウス「いざ参る」


ドゴォオオオオッ!!!


ダルキアン「おやおや……勇者殿が木刀を壊さないよう加減すれば拙者の攻撃が通ると思ったが、ばれていたでござるか」ベキッ


アルトリウス「ここでは脳筋だ脳筋勇者だと言われているが、私とて一軍を率いる将だぞ。それぐらい……まあ、もとより手を抜くつもりなどなかったが」ボキンッ


ダルキアン「引き分け……でござるな」


アルトリウス「今度はぜひゆっくりと楽しみたいものだ」


ダルキアン「何なら泊まっていってもいいでござるよ?」


アルトリウス「残念ながら今夜は姫様とお茶会なのだ」


ダルキアン「ははは、それはそれは……まるで美女と野獣でござるな」


アルトリウス「全くだ」


アル/ダル「「はっはっはっ!」」




ユッキー「Zzz……」

その夜

アルトリウス「な!お茶会に行く時は鎧を変えろだと!?」


メイド「ひゃ、ひゃいぃ……」ビクビク

メイド(う、恨みますよメイド長ぉ~)


アルトリウス「これは私が四騎士の任に命ぜられた時、王より授かった名誉あるものだぞ!見よ!この鮮やかな群青色の……」



【アルトリウスの鎧】

グウィン王の四騎士の一人
「深淵歩き」アルトリウスの鎧

主の最期を示すように、深淵の闇に汚れ
名高い群青のマントは、もはやボロ布のようだ



アルトリウス「群青色の……」

アルトリウス(´・ω・`)ハァ

アルトリウス「」ヌギヌギ


メイド(た、助かったぁ……)ドキドキ

浴場

 _
|鏡|(´・ω・`)ジー
  ̄

アルトリウス(この顔も見慣れたな)ペタペタ


メイド「お湯加減いかがですか?」


アルトリウス「ああ、申し分なし……しかしすまないな、このような大男の世話は辛かろう」


メイド「い、いえ!滅相もございません!お背中お流ししますね」ザバァ


アルトリウス「不便なカラダだ……まあ、左手が使えないせいでもあるが……しかし、風呂はいいな」


メイド(兜の下はブロンドイケメン!マジ役得ありがとうメイド長!!)

ミルヒ「あ、勇者様!どうぞこちらへ」


アルトリウス「此度は招待していただき大変光栄に思います姫様」


ミルヒ「こちらこそ、召喚したのは私だというのに全然何も出来なくて……」


アルトリウス「そのようなことはありませんよ。十分過ぎる程に良い待遇を私は受けています」


ミルヒ「ありがとうございます。どうぞ、紅茶と言います」


アルトリウス「《紅茶》……なるほど、いい香りです。心が穏やかになるような」


ミルヒ「はい、ビスコッティのお茶は他国ではちょっとした高級品にされるぐらい香りも良くて美味しいんです。どうぞ、お楽しみ下さい」


アルトリウス「…………」グビ

アルトリウス「~~~ッ」ジタバタ


ミルヒ「勇者様!?」

アルトリウス「…………」


ミルヒ「もしかして、勇者様は猫舌なのですか?」


アルトリウス「最近まで知りませんでしたが、炎やこれを頭から被る分には可能なのです。しかし、口の中はどうも……」ナミダメ


ミルヒ「フフ……私は、勇者様はもっと恐ろしい方だと思っていました」


アルトリウス「間違いではありませんよ。見てくれは綺麗でも、染み付いた血の臭いと業は消えません」


ミルヒ「……ねえ、勇者様?」


アルトリウス「何なりと」


ミルヒ「人の命を奪う、というのはどういう気持ちですか?」


アルトリウス「……どうも話の進め方を失敗してしまったようですね。どうしてそんなことを?」


ミルヒ「私は……幸運にも《この》戦しか知りません。ですが、この世界でもかつては命の奪い合いをしていました。私は怖いんです。いつかこの平和な日々が失われて、大切な人たちも……その時に私は領主として剣を振るわなければなりません。もちろん、この平和が永遠に続くことを願っていますが……それでも」


アルトリウス「……なるほど、しかし姫様、私は人間ではございません。だから、答えたくとも答えることができません。しかし一つアドバイスをしましょう……」


ミルヒ「……はい」


アルトリウス「勝てば英雄、負ければ亡者。ただそれだけです」

アルトリウス「私からも一つよろしいでしょうか」


ミルヒ「ええ、何でも」


アルトリウス「どうして私だったのですか」


ミルヒ「……勇者様は《星読み》ってご存知ですか?違う世界を覗いたり、ごく近い未来を少しだけ見ることができる術です」


アルトリウス「神族の方にそういったチカラを持つ方はおられますが、私にはありません。その術で私を?」


ミルヒ「……いいえ、始めは違う人を召喚するつもりでした。でも……あなたの声を聞いてしまったんです。闇に自らの魂が侵されながらも、懸命に戦い抗い続け、使命を託すことしかできない無力を呪うあなたの声を」


アルトリウス「……ははは、それはなんとも女々しく情けないものを聞かせてしまいましたね」


ミルヒ「そんなことはありません。でも、私が今まで聞いたことがない悲痛な叫び声で……頭から離れなくなりました。同時に疑問に思いましたい、なぜそこまで戦えるのか……それは私にとって必要な答えです。だから、あなたの傍にいればそれがわかる気がして」


アルトリウス「……そうですか。どうやら、姫様は領主の在り方ついて悩んでいるようですね」


ミルヒ「……はい」


アルトリウス「先日も申し上げましたが、王はただ前を向いて堂々としていればよいのです。あとのことは、姫様に王としての気質が備わっているならば自ずとついてきます」


ミルヒ「わ、私に王の気質が備わっていなかった場合どうすれば!」


アルトリウス「何も、ただ前を向いて堂々としていればいいのです。姫様は一人ではありません。ロランもダルキアン卿も他にも大勢、姫様には、姫様を助けてくれる人々がついているでしょう。だから、その人々を信じて姫様は立っていればいい」ナデナデ


ミルヒ「……ありがとうございます勇者様」

ミルヒ「そういえば……初めて勇者様のお顔を見たように思います。思っていたより……その、失礼ですがお若いんですね」


アルトリウス「ははは、最初は私も自分が自分でないように思えてなりませんでした」


ミルヒ「不思議ですね、でも本当にごめんなさい」


アルトリウス「私はむしろ嬉しいくらいです。人間ならば、あの闇の主を倒すことができるかもしれませんから」


ミルヒ「さすが『勇者様』ですね」


アルトリウス「私なぞ……そんなに大層な存在ではありませんよ。ただ、私はもうあの色のない世界に戻りたくない。新緑の森や青く澄んだ空、色とりどり全てが鮮やかな今にしがみ付いているんです。だから、私はあの闇に挑んだのです」


ミルヒ「……もっと、勇者様の世界のことを知りたいです。教えていただいてもよろしいでしょうか?」


アルトリウス「そうですね……でしたら始めにこの話をしましょうか。火の時代の始まり、まだ世界が暗黒と灰色に包まれていた時の物語を……」



といったところで今回は終了です


次回はかなりはしょりまして

魔物襲来からエンディングまで行きたいと思います


とりあえず私が就活失敗してダークリングを使う前には完結させたいですね


ありがとうございました

 ミルヒオーレとのお茶会の翌日、突如レオンミシェリが宣戦布告を宣言する。

 そして、それはそのまま両国の宝剣を賭けた大規模な戦へと発展していった。

 戦が始まり、お互いに善戦している最中、両国の領主-ミルヒオーレとレオンミシェリが互いの宝剣を賭けた決闘が行われる。

 決闘の場にいるミルヒオーレの不安な想いや、レオンミシェリの隠された恐怖の念が渦巻くように、空は暗黒に淀み、雷が轟き始めた。


エクレ「ああ、姫様どうかご無事で……ぅぅぅ」ウロウロ


 この建物の屋上で大好きな姫様が戦っている。ケガをするかもしれないといった状況だ。

 それなのに何もできないためか、エクレールは落ち着かない。


アルトリウス「…………」

エクレ「貴様!何をのんきに空など見上げているんだ!」


 だからついアルトリウスに八つ当たりをした。ある意味ではこれは彼女の信頼の現れでもある。

 つまりはこんな子どもみたいな八つ当たりをしても許してもらえるといった類いのものであった。

ごめんなさい今回も短いです……





アルトリウス「…………」


 しかし、アルトリウスは答えなかった。何かを睨み付けるようにして、微動だにせず暗雲を見つめるばかりだ。


エクレ「お、おい、何かあるのか?」ジー


 いつもと様子の違うアルトリウスに気づいたエクレールは、怒らせてしまったかと思いながら恐る恐るアルトリウスの隣に立ち、同じ方角を見る。

 エクレールの目に映るのは暗雲と絶え間無く点滅する雷の残光。


エクレ「何もないじゃないか……お前は一体何を見て――」

アルトリウス「……深淵」

エクレ「は?」

アルトリウス「……来る」

エクレ「何を言っ……ッ!?」


 だが、それこそが異変だったのだ。

 暗雲……闇の中から、ゆっくりと紫色の半透明な球体のモノが降りて来る。

 その『殻』に映るのは、巨大な獣のような黒い影。

 そう、あれは……

 かつてこの地に封印されたという強大な力を持った伝説の魔物だ。

アルトリウス「ッ……!」ガクッ


 一度深淵に飲まれたアルトリウスのソウルがざわつく。

 そして囁いた「人間性を捧げろ」と。


エクレ「どうした!」

アルトリウス「エクレ……姫様のところに行け」

エクレ「しかし、今姫様は決闘を」

アルトリウス「緊急事態だエクレ……わからないか、あれは魔物だ。もはや戦などしている場合ではない!」


 その瞬間、紫色の球体からおぞましい闇の波動が解き放たれた。

 ズシン、一瞬大地が軋む。

 ついに魔物が再びこの地に復活してしまった。

アルトリウス「グ…ォォオォオォッ!」

エクレ「勇者ッ!?」

アルトリウス「大丈夫だ……お前は姫様のところへ……」

エクレ「くっ…わかった、後で説明しろよ!」ダッ


 エクレールがミルヒオーレの元へと駆けていく。

 それを見届けたアルトリウスの周りには、地面を這うようにして闇がアルトリウスを取り込もうと集まっていた。


アルトリウス「フフ…芸のないヤツめ。そう何度も私を喰らえると思うなよ!」グッ


 アルトリウスが立ち上がり、両手を広げて仁王立ちになる。

 ズズッ、闇が足元から登ってくる感覚。染まっていく。脚から腰、胸、腕、頭……そしてソウルが。

 闇に染まる……

アルトリウス「オオオオオオオオオッ!!!」


 アルトリウスの身体が二周りほど大きくなった。それに伴い質量もまた増加し、石造りの床がアルトリウスの足の形に凹んだ。

 軍より支給された極大剣が朽ちて行く。

 深淵に染まる。


アルトリウス「…………」


 そして、アルトリウスは、目の前の壁が崩れて出来た大穴から外へ飛び出して行ってしまった。

終わりです(小声)

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