リヴァイ「それでも俺は戦い続ける」 (6)

壁は再び破られた。

トロスト区は全住民の避難後、隔離、駐屯兵団及び緊急措置として駐屯兵団隷下に置かれた訓練兵団104期はローゼの門の徹底防衛を開始した。

人類は前回の教訓を確実に生かしていた。

最終防衛ラインとして展開された内門周辺に幾重にも塹壕及び大量の砲兵隊を展開、内門自体にも大量の資材を積み、来たる超大型巨人及び鎧の巨人への防御策を講じる。

結果的に作戦は成功、人類は滅亡までの時間を引き延ばす事に成功し、六ヶ月の膠着状態を経て作戦はトロスト区奪還へと移行しようとしていた。


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ちなみにトロスト区の壁が壊された後からのifモノです。

ーーートロスト区近郊、駐屯兵団・調査兵団合同作戦本部ーーー

人類最後の砦とも言える城塞は多くの兵士で活気に溢れている。

壁の破壊による混乱で当初は多数の損害は出たものの、各方面より多数の部隊が集結され、また、彼らの士気は有事以降常に高く保たれていた。

それは効率的な作戦が功を奏して来たからでもある。

依然として破壊された門を通じて侵入してくる巨人を止める手段は確立されていないものの、トロスト区奪還への布石は着実に打たれていた。

最高責任者であるドット・ピクシス司令は調査兵団の精鋭を中心とした特別部隊を編成、トロスト区内に数多く取り残された重要物資の回収、及び戦闘データの収集作戦に多くの功績を残した。

作戦が成功を納める度に兵士達は歓喜し、じきにトロスト区を奪還出来るだろうと希望に胸を膨らませていた。

馬の嘶きが紺碧の空に響いた。

エレンは、ハッとして目を開ける。

牙を剥いた巨人がこちらを睨んでいる。生殖器の無い裸体に笑顔が張り付いた顔。両手を広げエレンに飛びかかろうと身構える。

エレンはブレードを慌てて引き抜き、もう一度敵を見据える。

体の力が抜け、思わずため息をついた。

「畜生、驚かせやがって」と模擬標的に毒づく。

途端に隣から笑い声がわく。

「おいおい、寝ぼけて自分が今何処かもわからなくなったのか?」

そう言うとジャンはニヤニヤしながら続ける。

「まあしかし、こんな悪路を突っ走ってるってのに良く居眠りなんか出来たな、流石は死に急ぎ野郎ってか」


「うるせぇ、目を閉じてただけだ」

そう言いつつもエレン自身、決して快適とは言えない荷馬車で良く眠れたもんだな、と我ながら感心していた。

無駄に力み過ぎていたから、余計に疲れが来ていたのかもしれない。特にここ最近は。

5年ぶりに壁が破られてから自分達を取り巻く状況は一変した。

104期訓練兵の進路は一時保留、そのまま駐屯兵団に編入され、壁上での砲撃支援、塹壕の設営活動等、主に後衛での支援活動に従事する事になった。

同期達が不満を漏らすことは無かった。ほとんどが駐屯兵団行きを予定していた連中だし、自分達も少しでも役に立ちたいと思っていたからだ。

しかし、エレンは違った。勿論、逃げ出したい訳では無い、寧ろ彼の不満はその逆である。

彼も前線で戦い、一体でも多くの巨人を屠りたかったのだ。

彼らが寝泊まりをしていた駐屯地に作戦本部からの伝令が現れたのは数日前の話だ。

「104期訓練兵で本名簿に名前を記載されている者は本部への転属を命ずる」

名簿にはエレンを含める成績上位者を中心にした40名前後の名前が連なっていた。

転属を命令された理由はすぐに分かった。

次回の作戦のメンバーに抜擢されたのだ。

それからと言うもの、エレンは自分も戦闘に参加できる事に喜びを感じ、訓練や砦の設営作業に普段以上に力を入れていた。

そして今日の早朝に移動の為に幾つかの物資(この忌々しい模擬標的もその一つだ)と共に荷馬車に乗り込み、今に至る。

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