姉「男ー、朝よー!」 妹「お兄ちゃーん! 起きてー!」 男「ねむねむ・・・」 (33)

男「くぁー・・・ぁふ。・・・眠い・・・」タン、タン、タン

ガチャ

男「姉ちゃん、妹、おはよー・・・」

姉「あ、男。おはよう」

妹「お兄ちゃん、おはよう」

男「おーう、おはよう・・・。二人とも、朝から元気だよなあ」ボスッ

姉「何を言ってるのよ。あなたが朝に弱いだけでしょう?」クスクス

男「んー・・・。朝はどうも苦手なんだよなー・・・」

妹「はい、お兄ちゃん。牛乳だよ。ソファで寝ちゃわないでね?」コト

男「お、ありがとう」ゴクゴク…

妹「お兄ちゃん、牛乳好きだよね」

男「ぷはあー! スッキリした! 好きも好き、やっぱり朝は冷えた牛乳だよなー」

姉「ほら二人とも。朝ご飯が出来たわよ」

男「うーい。行こうぜ、妹」

妹「うんっ」

ホカホカ

男「おー、今日も美味そうだ。いただきます」

妹「いただきます」

姉「はい、どうぞ。さて、私もいただきます、と」

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カチャカチャ モグモグ

姉「そ、そういえば男。今日の放課後は空いているかしら?」ソワソワ

男「んぁ? 今日の放課後なら、妹と買い物に(ギュウ)いってえ!」ガタン!

姉「きゃっ!? だ、大丈夫?」

男「お、おう。大丈夫だ・・・」

姉「そ、そう? ならいいけど・・・」

男「(なんてことをするんだ妹・・・。足をつねるなんて)」ボソボソ

妹「(お兄ちゃんがいけないんでしょ!? 昨日の夜、お姉ちゃんには内緒、って言っておいたのに!)」ヒソヒソ

男「(え? あー、そういやそんなこと言ってたけど・・・。でも、姉ちゃんも用事があるなら、一緒に行った方がいいだろ?)」

妹「(・・・はあ。お兄ちゃんのばか・・・)」

男「(え?)」

妹「(何でもないよ・・・)」

姉「それで、男。今日の放課後は・・・」

妹「お姉ちゃん、私達、今日の放課後に買い物に行こうと思ってたの。お姉ちゃんも一緒に行かない?」

姉「え? ああ、そうなの? そうね、丁度夕飯の買い物に来てもらおうと思っていたのよ。男、荷物持ってよ?」

男「おう、任せておけ」

妹「それじゃあ、放課後に校門前で。ごちそうさまー」ガタン カチャカチャ

姉「あ、はい。お粗末様」

男「(? なんだ、結局自分で誘ったんじゃないか。何で内緒にしてたんだろ? ・・・ああ、サプライズか。日常の中に小さな刺激。大切だよな)」ウンウン

姉「? どうしたの、男?」

男「いや、何でもないよ。いい妹を持ったなあ、って思って」

姉「? そうだね」キョトン

妹「・・・お兄ちゃんのばか」

男「んじゃ姉ちゃん、行ってくる」

妹「行ってくるね、お姉ちゃん」

姉「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね」

男「おう。姉ちゃんも、仕事頑張ってな」

姉「ふふ、ありがと」

男「ん。行ってきまーす」ガチャッ

妹「行ってきます」

姉「あ、妹!」

妹「なに?」

姉「ありがとね? 私も誘ってくれて」

妹「・・・ううん。やっぱり、ズルいと思ったから。それだけだよ。・・・それに、私は譲る気はないから」

姉「ええ、分かっているわ。それでも、よ。ありがとね」

妹「う、うん・・・」

男「妹ー? 何してるんだ? 行くぞー」

妹「あ、うん! そ、それじゃあお姉ちゃん、行ってきます」

姉「ええ、行ってらっしゃい」ヒラヒラ

ガチャッ パタン

妹「ごめんお兄ちゃん。お待たせ!」タタッ

男「いいよいいよ。どうしたんだ? 忘れ物でもしたのか?」

妹「う、うん、そうなの」

男「そか。もう忘れ物はないな?」

妹「うん、大丈夫」

男「よし、んじゃあ行くかー」

妹「うん!」

スタスタ テクテク

妹「ねえ、お兄ちゃん」

男「んー・・・?」ウトウト

妹「確かに、春の陽気で眠くなるのは分かるけど、歩きながら寝たら危ないよ?」

男「だーいじょうぶだって・・・。人間、歩きながら眠れる訳がないだろう? 眠いだけで、ちゃんと起きてるよ・・・」フラフラ

妹「お兄ちゃんは、本当に眠りそうだから見てて恐いんだよ・・・」

男「平気平気。もうすぐ着くしなー・・・」カクン…カクン…

妹「もう・・・。あ、お兄ちゃん、またネクタイが曲がってるよ」

男「んー・・・? おお、本当だ。まあ、後で直すよ」

妹「ダメだよ、今日は月曜日だから、校門で生徒会が服装検査してるんでしょ?」

男「あ、そうか、忘れてたー。ていうか妹、ほんの二週間前に入学したばかりなのに、よく覚えてるな」

妹「忘れるわけないよ。(・・・お兄ちゃんが、教えてくれたことだもん)」

男「ん? 何か言ったか?」

妹「ううん、何でもない! それよりほら、ネクタイ締めてあげるから、じっとしてて!」シュルシュル

男「おーう」

トコトコ

友「おーす、男ー。まぁた朝から仲睦まじいですこと」

男「へへーん、羨ましいだろー」

妹「お、お兄ちゃんっ・・・/// 友さん、おはようございます」シュルシュル キュッ

友「くっ・・・! こいつ、照れるとかすればまだ可愛げがあるのに、自慢までしてくるからやりづれえ。それに比べて、妹ちゃんはきちんとしてて偉いねー。兄貴とは大違いだ」

妹「ど、どうも・・・。ほら、お兄ちゃん、終わったよ」

男「ん、ありがとな」ポンポン

妹「うんっ///」

友「あーあ、ご馳走さんっと。男、先行ってるぞー。妹ちゃんも、またねー」スタスタ

男「おう」

妹「は、はい」

男「ごめんなー、あいつ、悪い奴じゃないから」

妹「大丈夫だよ。友さんは中学の時から面識があるから、そこまで恐くないよ」

男「ん、そっか」ヨシヨシ

妹「えへへ///」

男「おお、我が愛しの母校だ」

妹「何言ってるの、もう」

ワイワイガヤガヤ ゾロゾロ

生徒A「会長、おはようございまーす!」

生徒B「ございまーす!」

生徒会長「うむ、おはよう。今日も一日頑張れよ」

生徒A・B『はーい!』

生徒C「おはようございまーす」

生徒会長「うん? 待ちたまえ。君、ネクタイが緩んでいるぞ。しっかりと締め直せ」

生徒C「え? あ、はい」キュッ

生徒会長「ん、よし。改めておはよう。新入生は気が緩み出す時期だ。服装だけでなく、生活態度もしっかりな」ニコッ

生徒C「は、はいっ///」

生徒会長「うん、行ってよし」

妹「生徒会長、おはようございます」

生徒会長「む、君は確か、男の・・・」

妹「はい、妹といいます。兄がいつもお世話になっています」

生徒会長「うむ。礼儀もしっかりしていて、服装も問題ない。実に模範的な生徒だ」

妹「あ、ありがとうございます///」

男「うーす、かいちょー」

生徒会長「待て男! 服装・・・は珍しくしっかりしているが、顔と根性が弛んでいる。そこに直れ、説教してくれる」

男「・・・俺だけチェック厳しくないか?」

生徒会長「ははは、冗談だ。行ってよし。だがまあ、そのふぬけた顔は何とかしておけよ? みっともないぞ。少しは妹を見習うんだな」

男「ほっとけよ。ったく・・・」スタスタ

妹「お兄ちゃん、相変わらず生徒会長と仲いいね」

男「そうか? いつも絡んでくるだけだぞ、あいつ」

妹「うーん、そうかな・・・」

ガヤガヤ ワイワイ

妹友『妹ー! 一緒に教室いこー!』

妹「あ、うん! 今行くよー! ・・・それじゃあ放課後ね、お兄ちゃん。校門前だからね」

男「あいよ。頑張れよー」

妹「お兄ちゃんもね!」

タッタッタ

妹『ごめん、お待たせ!』

妹友『ねえねえ、あの人、妹の彼氏!?』

妹『へっ!? ち、違うよー!///』

妹友『えー、違うのー?』

ガヤガヤ ザワザワ

男「女の子はああいう話、大好きだよなー・・・」フワアー…

男「・・・教室で寝よ」スタスタ

ー三年・男の教室ー
ガヤガヤ

男「うーす」

友2「あ、男! テメエ、彼女がいるってどういうことだ!?」

友3「そうだそうだ! 初めて聞いたぞそんな話し!」

男「は?」

友2「さっき聞いたぞ! 朝から女の子と登校してきた上に、ネクタイを締めてもらったりしたらしいな!」

男「あ、ああ。でもあいつは・・・」

友3「しかもめちゃくちゃ可愛いらしいじゃないか!」

男「いや、だから・・・」

友2「だからもポカリもねえ! お前、俺達を置いて、いつの間にそんな遠いところに行っちまったんだよ・・・!」

男「あー、まあ、言いたいことは分かった。だが少し待て。・・・おーい、友ー!」

友『んー? 何だー?』

男「ちょっと来てくれー」

友『おーう』

スタスタ

友「んで、何だよ? ああ、宿題なら見せんぞ? 当然俺もやってきてないからな」

男「ああ違う違う。一発殴らせろ」

友「なにゆえ!?」

男「お前、今朝のことおかしな風に吹聴してるだろ」

友「・・・し、してないよー? 何のことだかさっぱりだなー」アハハ

男「友2、友3。さっきの話し、どこで聞いた?」

友2「え? そりゃあ、友から・・・」

男「何か言い残すことは?」

友「あっれ。反論とか弁護の余地無し? いきなり刑執行?」

男「遺言を聞いてやるだけでもありがたく思えよ?」

友「い、いや、せめて弁護の機会を・・・」

男「よし、時間切れだ。大人しく・・・」

友「ごめんなさい! 出来心だったんです! あまりに羨ましかったんで、ちょっとからかおうと思っただけなんです!」

男「そうか・・・。言いたいことはそれだけだな。目を閉じて歯を食いしばれ」

友「嫌だあぁぁ! 謝ったじゃないかあぁぁ!」

生徒会長「朝から騒がしいぞ、お前達!」

男「かいちょー・・・」

友「た、助かった! 会長様! どうかお助けー!」

生徒会長「騒がしいと言っているんだが?」

友「はい・・・。すいません・・・」

友2「じ、じゃあ俺達は・・・」

友3「この辺で・・・」

生徒会長「お前達も一緒だ。朝から馬鹿騒ぎをするな」

友2・3『は、はい!』

生徒会長「いいか? 男に恋人などできるわけがなかろう。あの娘は男の妹だ」

男「おい何で俺に彼女ができないことが前提なんだ」

友2「そ、そうか、それもそうだよな」

友3「男、悪かったな。まあ、そんな妹がいるだけでも充分に羨ましいけどな!」

男「だから待て。何でお前等も俺に彼女ができないことが前提なんだ」

生徒会長「・・・まさかとは思うが、好きな女や、既に付き合っている女でもいると言うのか・・・?」ゴゴゴ

男「・・・いません」

友「会長怖え・・・」

生徒会長「と、ともかく。男にそんな限って、彼女などという存在は無いのだから、根も葉もない話で騒ぐな。もうすぐHRも始まる。さっさと席に着け」

男「はいはい」

友「はーい」

友2「男、悪かったな・・・」ポン

友3「俺達、ずっと仲間だもんな・・・」ポンポン

男「ぶっ飛ばすぞお前等・・・!」

生徒会長「全く、お前達は・・・」ハア…

ー姉の職場ー
上司「あー、姉君。この書類、一時間後の会議までに終わらせておいてくれたまえ」ドサッ!

姉「えっ? はい、分かりました・・・」

上司「うむ、頼んだよ。これが無ければ会議に支障を来すからね。必ず終わらせておくように」スタスタ

姉「・・・はあ、またなのね・・・」

後輩「せ、先輩! 何ですかその書類の山!」

姉「あ、後輩君。いいのよ、いつものことだから」

後輩「そんなの、余計に許せませんよ! アイツ、いつもいつも大変な仕事は先輩に任せてばかりで・・・」

姉「いいの。私なら出来ると判断されたから、任されただけのことよ。私が一時間で終わらせれば問題はないわ」

後輩「で、でも・・・」

姉「大丈夫。・・・私を信じなさい」

後輩「・・・何か手伝いが必要なら、どんどん言って下さいね。俺、全力で手伝いますから」

姉「ええ、そうさせてもらうわ。ありがとう」

後輩「い、いえ! そ、それじゃあ俺、自分の仕事してるんで、何かあったら呼んで下さい」スタスタ

姉「ふー・・・」チラッ

カチコチ カチコチ
姉「あと数時間もすれば、男と買い物に行けるもの。頑張らなくちゃ・・・!」

ー放課後・校門前ー
男「ふわあー・・・ぁふ・・・」

妹「お兄ちゃん! お待たせ!」タタッ

男「おーう。俺も今着いたところだから」

妹「そっか、良かった」

男「んじゃ、後は姉ちゃんを待つだけだな」
妹「ん、そうだね」

ブー! ブー!

妹「あ、メール・・・お姉ちゃんからだ」

男「何だって?」

妹「『少し仕事が長引くから、先にデパートに行ってて』、だって」

男「そうか。なら、先に行くかな」

妹「う、うん! (わあ。こ、これってデートみたいじゃないかな?///)」ドキドキ

男「んじゃ、行くか」

生徒会長「ん? そこにいるのは男と妹ではないか」

妹「え?」

男「ん? おお、かいちょー。かいちょーも今帰りか?」

生徒会長「ああ、今日は生徒会の仕事も無いのでな。久し振りの早帰りだ」

男「へえ、そうなんだ」

妹「(は、早くお兄ちゃんと買い物に行きたいー!)」

生徒会長「男、君達は真っ直ぐ帰るのか?」

男「いや、俺達はデパートに買い物に行くんだ」

生徒会長「そ、そうか! 実に奇遇だな。私もデパートに買い物に行こうと思っていてな! も、もしよければ一緒に行かないか?」

妹「(!? お、お兄ちゃん、ここは断って・・・)」

男「ああ、いいぞ。一緒に行こうか」

妹「(くれる訳、ないよね・・・)」ハア…

男「妹? どうかしたか?」

妹「う、ううん! 何でもないよ! さ、早く行こう? 生徒会長も!」

生徒会長「う、うむ。では、共に行かせてもらうとしよう」

男「んじゃ、今度こそ行くかー」スタスタ

生徒会長「(ふふ、男と買い物だ・・・! 言ってみるものだな///)」ウキウキ

妹「(・・・確かに、目的地が同じなら一緒に行かない方が不自然だったかも知れないけど・・・。お兄ちゃん、もう少し私の気持ちに気付いてくれてもいいのに・・・。それに、生徒会長もやっぱり・・・。絡んでくるだけだなんて、嘘つき・・・)」

男「(今夜はカレーがいいな・・・)」

ーデパート内ー
ザワザワ ガヤガヤ

男「さて、と。妹、姉ちゃんから連絡は?」

妹「ううん、まだないよ」

男「そうか。・・・夕飯の買い物なら、姉ちゃんがいないとダメだし・・・。なら、先にお前とかいちょーの買い物を済ませるか」

妹「うん、そうだね」

生徒会長「うむ。では、先に妹の方から行こうか」

妹「え、ええ? でも・・・」

生徒会長「なに、どうせ私も食料品や日用品を買いに来ただけだ。後で、姉先輩と合流した時に一緒に買いに行えばいい」

男「あ、そうか。俺達が一年の時に姉ちゃんは三年で、生徒会長やってたから、姉ちゃんとかいちょーは面識があるのか」

生徒会長「うむ。彼女は素晴らしい生徒会長だった。私の目標でもあるんだ」

男「へー、そうなのか」

生徒会長「うむ。・・・と、それはさておき妹。君の買い物に行こう。何を買いに行くんだ?」

妹「あ、その、服を見たくて・・・」

男「んじゃ、上の階だな」

生徒会長「うむ、行こうか」

ー姉の職場ー
姉「これで・・・終わりー!」ズラア

後輩「姉先輩、本当にお疲れ様です。よくこれだけの量を一人で・・・」

姉「何言ってるの。後輩君も手伝ってくれたじゃない」

後輩「いえ、俺はほとんどお役に立てませんでしたから・・・」

姉「そんなこと無いわよ。どうもありがとうね。助かっちゃったわ」ニコッ

後輩「い、いえ、そんな! ・・・そ、それより先輩。も、もしよければこれから、し、食事にでも・・・!///」

姉「ああ、ごめんなさいね。弟達と約束があるから。また今度誘ってくれるかしら?」

後輩「あ、はい・・・。分かりました・・・」

姉「わ、もうこんな時間。じゃあ後輩君、またね!」タッ!

後輩「お疲れ様でした!」

後輩「・・・」























後輩「・・・こん、ちくしょうがあぁぁーー!」ガァン!

後輩「あの女、またオレの誘いを断りやがった! このオレが誘ってやったんだぞ!? それを、弟達と約束があるからだと!? 舐めやがって!」ガン! ガン!

上司「・・・あ、あの、後輩君・・・?」ソロー…

後輩「ああ!?」ギロッ!

上司「ひい! そ、そんなに睨まないでくれ・・・!」

後輩「ちっ・・・! 何の用だ、上司クン?」

上司「その、まだこんなことを続けるのかい?」

後輩「こんなこと、とは?」

上司「決まっているじゃないか・・・。私が姉君を苛めて、そこを君が慰める、っていうことをだよ・・・。そんな回りくどいことをしないで、君が直接告白すればいいじゃないか・・・」

後輩「はっ! このオレが自分から告白だと!? 冗談じゃない! 今まで自分から告白なんかしなくたって、女の方から勝手に寄ってきたんだ! 今回だって必ずそうなる!」

上司「・・・」

後輩「それに、オレはこの会社の総取締役の息子! 人生に於いて勝ち組のオレに、向こうから告白して然るべきだろう!?」

上司「それじゃあ、まだ・・・?」

後輩「ああ。今まで通り続けろ。いや、今までより酷くしろ。もっと、あの女がボロボロになるまでな」

上司「し、しかしだね! 私は、もうこれ以上は・・・!」

後輩「ならいいさ。総取締役の親父に言って、オマエの座には別の人間を置けばいいだけだしね。この不景気に、せっかく手に入れた今の立場を手放したいなら、好きにすればいいさ」

上司「!! ・・・くっ、わ、分かった・・・! 君の、言うことに従おう・・・!」

後輩「ヒャハハ! そうしとけよ! オマエみたいな人間は、大人しく分相応に生きていればいいのさ! そうやって役に立っていれば、オレが重宝してやるからさ!」

上司「・・・!」ギリ…!

後輩「・・・それにしてもあの女、そんなに弟や妹が大事なのかよ・・・。それなら・・・」ククク

上司「(姉君。大切な部下である君を守ってやれない私を、どうか許してくれ・・・!)」

ーデパート・服屋ー
妹「こ、これなんてどうですか?」シャー

生徒会長「おお、中々良いのではないか? 妹にぴったりだと思うぞ」

妹「そうですか! お、お兄ちゃんはどう思う?」

男「んー? うん、いいんじゃない?」

妹「むー・・・」

男「な、何だよ?」

生徒会長「男。お前はさっきからそれしか言ってないではないか」

男「とは言ってもなあ。俺には、女物の服のことなんて分からないよ。女の子のかいちょーがいるなら、男の俺の意見を聞くより、かいちょーに任せた方が確実だろう?」

妹「それじゃあ、一緒にいに来た意味が無いのに・・・」ボソッ

男「え? 何か言ったか?」

妹「何でもない!」シャッ!

男「何で怒ってるんだ?」

生徒会長「はあ・・・。お前という奴は、本当にしょうもない・・・」

男「??」





妹「(もう、お兄ちゃんのばか・・・。折角お兄ちゃんに『可愛い』って思ってもらえるような服を買おうと思ったのに・・・)」ハア…

妹「(お兄ちゃん、どんな服が好きなのかな? どうすればもっと、可愛いって思ってもらえるのかな・・・?)」

妹「(・・・やっぱり、実の兄にそんな感情を抱く私がおかしいのかな・・・。そういうことを期待しちゃ、いけないのかな・・・)」

妹「・・・」

ブー! ブー!

妹「・・・メール? あ、お姉ちゃんだ」パカ カチカチ…





男「妹ー、まだかー?」

妹「うん、着替え終わったよ!」

生徒会長「それで、服はどれにするんだ?」

妹「んー、今日は買わないで、また今度にします」

生徒会長「そうか。肝心の男があれでは、な?」

妹「せ、生徒会長!///」アセッ

男「? 俺がどうしたって?」

妹「な、何でもないよ! それより、お姉ちゃんがもうすぐ着くって。先に食品売場の前に行こうよ」

男「そうだな。行くか」

生徒会長「うむ、そうだな」

ーデパート・食品売場ー
姉「男ー、妹ー! お待たせ!」タッタッタ

男「いやいや。また仕事大変だったんだろ? お疲れ様」

妹「そうだよ、あんなに走って来なくても良かったのに」

姉「そういう訳にも行かないわよ。ただでさえ待たせていたのに。て、あら? あなた・・・」

生徒会長「お久しぶりです、姉会長」

姉「あ、私が在学中に書記を務めてた! 久し振りね!」

男「今じゃかいちょーが生徒会長なんだよ」

姉「あら、そうなんだ! あなたならとてもいい会長をやっているんでしょうね」

生徒会長「い、いえ。まだまだです。私の目標であるあなたに、遠く及びません」

姉「ふふ、そんなことないわよ。これからも頑張ってね?」

生徒会長「は、はい!」

妹「それじゃあお姉ちゃん、買い物に行こう?」

姉「あ、そうね。会長ちゃんも、買い物に?」

生徒会長「はい、ご一緒させていただきます」

男「んじゃ、行こうぜ。さすがに腹が減ってきた」

姉「はいはい、ごめんなさいね? じゃあ、行きましょう」

姉「男、妹。今夜は何が食べたい?」

男「カレー」

妹「うん、私もカレーがいいな」

姉「そう。じゃあ、カレーにしましょうか。生徒会長ちゃんは何を買うのかしら?」

生徒会長「今日は魚が安いので、今夜は焼き魚にしようかと」

妹「生徒会長も、自分で食事を?」

生徒会長「ああ。私の親は、その・・・。少し特殊な人間でな。あまり家には帰ってこないんだ。だから自然と自分の食事は自分で作るようになったんだ」

姉「そうなの? すごいわね、生徒会長ちゃんは」

男「てか、特殊な事情って何だ? 親が共働きで家に帰ってくるのが遅いとか、その、既にいない、とかにしては、説明の仕方がおかしくないか?」

妹「確かに」

生徒会長「いや、説明は合っている。本当に、特殊な人間だとしか説明のしようがないんだ、うちの親は・・・」

姉弟妹『?』

姉「まあ、ともかく。そういうことなら、家で夕飯を食べていかないかしら?」

生徒会長「えっ?」

妹「そうだね。生徒会長、そうしましょうよ」

生徒会長「い、いや、でも・・・」

姉「いいのよ。カレーなんて、結局一食じゃただ余らせるだけなんだから。食べて行きなさい」

生徒会長「しかし・・・。(と、ということは、男の家に上がるということ!? お、男の普段の暮らしを垣間見ることの出来る好機か!?)」チラッ

男「ん? 別にいいんじゃないか? 食べて行けよ、かいちょー」

生徒会長「(ほ、本人から誘われた! お、男の家に入れる・・・!)じ、じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

姉「ええ、そうしなさい。そうと決まれば、さっさと買い物を済ませて帰るわよ。男、荷物持ちお願いね?」

男「おうよ」

ー男の家ー
姉「ただいま」ガチャッ

男「ふう、着いた着いた」

妹「さ、生徒会長。上がってください」

生徒会長「う、うむ。お邪魔します」

姉「それじゃあ、私はお夕飯の準備するから、少し待っててね」スタスタ

男「おーう、頼むわ。・・・んじゃ、かいちょーは俺の部屋でも来るか?」

妹「お、お兄ちゃん!?」

生徒会長「えっ!? い、いや、それは急すぎるだろう! わ、私にも心の準備というものが必要でだな・・・!///」アタフタ

男「? 何を慌ててるんだ? あ、妹。お前確かトランプとか持ってたよな。皆でやろうぜ」

生徒会長「だ、だが誘ってくれたのは純粋に嬉しいと・・・へ? と、トランプ?」

妹「・・・そうだよね。お兄ちゃんに限って変な心配はいらないよね・・・。うん、分かった。着替えたらお兄ちゃんの部屋に行くね」

男「? まあ、頼むわ。んじゃかいちょー、行こうぜ」タン、タン、タン

生徒会長「・・・」

男「? どうした、かいちょー?」

生徒会長「ふん、何でもない!」

男「何で怒ってるんだよ・・・」

妹「鈍すぎるお兄ちゃんが、私はたまに心配になるよ・・・」

男「よく分からんな・・・」

生徒会長「男、お前の部屋に行くのだろう? 早く案内しろ!」

男「はいはい、っと。んじゃあ妹、頼むな」

妹「うん、後でね」

ー男の部屋ー
男「ここが俺の部屋だ。まあ、入ってくれ」カチャ

生徒会長「う、うむ・・・」ドキドキ

男「少し散らかってるけど、男部屋だからってことで勘弁な」

生徒会長「い、いや。散らかっているどころか、綺麗な部屋ではないか」

男「そうか? まあ、それなら良かったよ。あ、座布団かクッションでも持ってくるから、ベッドにでも座っててくれ」

生徒会長「ベベ、ベッド!?」

男「おう。んじゃあ行ってくるわ」ガチャ タン、タン、タン…

生徒会長「ベッド・・・」





姉『あら、男? もう夕飯なんだから、お菓子とかは・・・』

男『ああ、違う違う。俺の部屋、クッションとか無いからさ、ソファのやつを持って行こうと思って』

姉『ああ、そうなの。でも、それなら・・・』





生徒会長「お、男のベッド・・・///」

生徒会長「す、座っててくれと言われたしな! べ、別にやましいことなど無いのだ、うん」ソー…

ボフン

生徒会長「・・・おお」フカフカ

生徒会長「流石、睡眠にかけてのこだわりは凄いな。こんなに柔らかい布団は初めてだ」ポンポン

生徒会長「それに、少しだが、男の匂いもする・・・」ポー…

生徒会長「・・・」キョロキョロ

生徒会長「う、うむ。こんなに気持ちの良さそうな布団があったら、寝てみたくなるのが人情というものだよな・・・」

生徒会長「そ、そう、少し寝心地を確かめたいだけであって、決して男の匂いを嗅ぎたいなどという理由では・・・」ソロー…

ポフンッ

生徒会長「・・・! えへへ・・・///」ニヤニヤ

男「悪いかいちょー。丁度今朝クッションを洗っちゃったみたいだから、姉ちゃんの部屋からクッションを・・・」ガチャッ

生徒会長「はぇ!?」

男「かいちょー?」

生徒会長「あ、おと、こ・・・?///」ワナワナ

男「かいちょー、まさか・・・」

生徒会長「違うぞ! これはだな! あまりに良い布団だったからだな! け、決してやましいことがあるわけでは・・・!///」アタフタ アタフタ

男「そうだろう! 良い布団だろう!? いやー、この布団の良さが分かるとは、流石はかいちょーだな! バイト代や小遣いをこつこつ貯めて買った布団なんだ! いやー、分かってくれる人がいたかー!」ポンポン

生徒会長「へ? あ、ああ! うむ。実に良い布団だな!」

男「だろう!? いやー、嬉しいなー。分かってくれる人がいて」

生徒会長「あ、あはは。まあな・・・。(良かった・・・! 本当に良かった・・・!)」

コンコン

妹『お兄ちゃん、入るよー?』

男「おーう、いいぞー」

ガチャ

妹「はい、お兄ちゃん。トランプとかUNOとか、オセロとかも持ってきたよ」

生徒会長「ほう。妹はこういったゲームが好きなのか?」

妹「そうなんですよ。どれも簡単で、それでいて結構楽しめますからね」

男「好きこそものの何とかっていうか、妹はこういうゲーム強いんだよなー」

生徒会長「ほう。それは楽しみだな」

妹「そ、そんなことないですよ。好きっていうだけで、強くはないです」

男「ま、取り敢えず夕飯が出来るまでやってようぜ」

妹「そうだね」

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