地底人「私は地底人だ」男「……は?」 (151)

地底人「地底王様、只今帰還しました」

地底王「おう、早かったな」

地底人「ハイ、またしても地上に出れませんでした」

地底王「またかよ」

地底人「いえ、だって地上の奴らなんかめっちゃ硬いバリア張ってるんですよ?」

地底王「めっちゃ硬いバリアね。消えないタイプの」

地底人「ハイ、いつ攻めてもあのバリア消えないんですよ」

地底王「地上の民族パネェ」

地底人「マジパネェっすわ」

地底王「あれ?もう一人は?」

地底人「え?来てないんですか?」

地底王「もしかして今頃地上じゃね?」

地底人「まっさか」

地底王「だよねー」

ワハハハハ……

ーーーーー

タッタッタッ

男「ハァ……ハァ……」

タッタッタッ

男「ハァ……ハァ……」

男(この河川敷を走るようになってから一ヶ月か……)

男(そろそろ景色も見慣れてきたな)

おー、釣れたかー?

いやー、全くだわー

男(あそこで釣りをするおじさん達)

パパパパーパーパパー

男(トランペットの練習する女の子)

ボコボコボコ……ドガーン!!

男(そして突然地面に穴を開けそこから突如現れる生き物)

タッタッタッ……

男「……いや、待て。おかしい」

ボコボコボコ……ドガーン!!

地底人「……どこだ、ここは?」キョロキョロ

地底人「これは何だ?……水?だとしたら随分と汚いな……」

地底人「生物もいない……これは一体……」

男「オイ!お前!そこの!」

地底人「……私か?」

男「そう!お前!つか言葉通じるの!?」

地底人「あぁ、地上の日本と言う小さな島国のみで使われる言語、日本語だろう?」

男「あ、うん……今じゃ色んな国で見るけど……じゃない!」

男「お、お前!何してんだよ!」

地底人「? 見ての通り水質を調べているんだが」

男「違う!なんで地面から現れたの!?」

地底人「何故と言われても、我々は地底に住んでいるからな、これ以外に地上に出る放送は無い」

男「はぁ?」

地底人「では私も問おう、何故この水はこんなにも汚いんだ?生物はどうした?」

男「え?いや、川の水なんてこんなもんだろ、それに汚いから生き物も暮らせないし……」

地底人「では、何故こんなにも汚いのだ!?」

男「えぇっと……環境汚染のせい?」

地底人「環境汚染?何故?」

男「ゴミの不法投棄とか、排気ガスとか……」

地底人「ゴミの不法投棄!?どいつの仕業だ!?」

男「は!?いや、知らねえよ!!大体皆やってるよ!!あ、俺はしてねえよ!?」

地底人「そうか……ではこの水は人間による環境汚染の仕業か」

男「お、おう……いや、違う違う!!」

男「お前、何者だよ!?」

地底人「私か?」

男「うん、お前!!何者!?」



地底人「私は地底人だ」

男「……は?」



地底人「私は地底人だ」

男「いや、聞こえなかった訳じゃないけどさ……は?」

地底人「なんだ?何が疑問なんだ?」

男「いやいや……えー?」

地底人「まったく……何なんだ?」

男「あー……シンキングタイムプリーズ」

地底人「ほほう、貴様、英語も喋れるのか?だが文法はめちゃくちゃだな」

男「やかましい」

ーーーーー

男「えーっと、とりあえず考えまとまった」

地底人「おう、そうか」

男「まず、お前は地底で暮らしてる種族だと」

地底人「あぁ、地底のアガルタと言う都市で暮らしている」

男「やめてココに来て新しい単語出さないで」

地底人「そうか、すまない」

男「それでお前は地底王とやらの命令で地上に出てきたと」

地底人「うむ。地上の視察にな」

男「お、おう……」

地底人「もう大丈夫か?」

男「う、うん……」

地底人「では、私はコレで」

男「いや、待て。超待て」

地底人「なんだ、私はもう一時間お前の為に時間を使ったんだぞ」

男「いや、えっとだな、ダメ。とりあえずダメ」

地底人「む?ダメ?何故?」

男「いやいや、お前、見つかったら終わりだぞ?」

地底人「何故だ?自分で言うのも何だが、私はお前達人間に容姿は似ていると思うんだが」

男「あー、うん、似てるな。ただその服装はいただけない」

地底人「む?このスーツはダメか?」

男「うん、地上の犯罪者が着る服に似てる」

地底人「なるほど、犯罪者に見えてしまうか」

男「うん、捕まる」

地底人「ううむ、困ったな……そうだ!」

男「何?なんか考えついた?」

地底人「貴様、しばらく俺を匿ってくれないか!?」

男「はぁ!?」

地底人「もちろんタダでとは言わない。人間はこんな物が大好きだと聞く」スッ

男「こ、小判!?」

地底人「昔地上に出ようとした際掘り当てた物だ。地上では徳川埋蔵金と言うらしいな」

男「なんちゅうロマン掘り当ててんだ地底人」

地底人「どうだ?これらを現代の貴様達が大好きな紙切れに変えてやる!だから頼む!」

男「うーん……ホントに視察だけなんだよな?」

地底人「ああ、人間には一切危害は加えない!約束しよう!」

男「……分かった。いいよ」

地底人「ホ、ホントか!?」

男「俺もお前に興味があるしな。でも……」

地底人「で、でも?」

男「絶対に約束は違えるなよ?」

地底人「分かった。神に誓おう」

男「地底人にも神の概念はあんだな」

地底人「おそらく人間達の神とは違うだろうがな」

男「へー。それじゃあ行くか」

地底人「? どこへだ?」

男「俺の家だ。行くぞ」

地底人「あぁ」

男「あ、俺は男。よろしく」

地底人「私は地底人、地底での名前は一応あるが、地底人で構わない」

男「おう」

地底人「所で、この硬い地面は何だ?」

男「これ?アスファルト」

地底人「まさか、コレが地上のバリアか!?」

男「いや、違うけど。地面の上を固めてで舗装してるんだよ」

地底人「なるほど、地面の上を固めることで地下からの攻撃を防いでいるのか!」

男「いや、攻撃とか来ないから。お前達以外からは」

地底人「うむ、どうやら地底人は人間には認知されていないみたいだな」

男「まぁ、空想上の生き物扱いだからな、ドラゴンとかと同じだよ」

地底人「地底にはドラゴンもいるぞ、グランドドラゴンと言う。地上ではモグラと呼ばれるらしいが」

男「え?モグラってドラゴンなの?」

地底人「うむ、完全体のグランドドラゴンは地底で暮らしている。地上でモグラと呼ばれるのはまだ子どもの物だ」

男「モグラやべぇ」

ーーーーー

男「ほれ、着いたぞ」

地底人「な、なんだコレは!?」

男「いや、普通の家だよ」

地底人「家!?これが今の地上の家なのか!?」

男「……地底人って、もしかして現代の地上の知識はほとんど無いのか?」

地底人「そうだな……現代の地上の視覚的情報はほとんど無い」

男「最後の視覚的情報はいつのだ?」

地底人「そうだな……今から約400年前の視察依頼、あまり地上の視察は行われていなかったな」

男「400年前?なんかあったのか?」

地底人「視察に向かった地底人のほとんどが地上で一人の人間殺されてしまってな」

男「一人の人間に?誰が?」

地底人「確か、信長と名乗っていたな」

男「今の話は忘れさせてくれ」

地底人「アレはまさしく人間離れした強さだったな」

男「歴史の闇を知ってしまった」

地底人「それ以降は視察はあまり行えず、気付けば地上にバリアが貼られてしまい、最後の地上の記録は約50年前の物だな」

男「へー、地底人も色々あんだな」

地底人「だから、今の地上は私からすれば未知の異世界だ」

男「まあ、ここ数年で技術は発達したからな」

地底人「噂では今の地上には一人でに物を吸う小型の円盤がいるらしいな」

男「……ルンバの事ならウチには無いぞ」

地底人「そうか、残念だ」

男「ほら、入れ」

地底人「お邪魔する」

男「地上の言葉もだいぶ変化してるんだけど、対応出来てるのか?」

地底人「あぁ、地上の聴覚的な情報は対応出来てるつもりだ。ちなみに地底では今はパナいが流行中だ」

男「微妙に古い」

地底人「しかし、広い家だな」

男「親が二人共あんまり帰って来ないから、ほとんど俺の一人暮らし状態だよ」

地底人「ほほう、一人暮らしか」

男「学生の一人暮らしなんて、レアケースだぞ」

地底人「学生だったのか、これは驚きだ」

男「地底のデータとは違ったか?」

地底人「うむ。これは新しい情報だ」

男「つうか、お前達の目的はなんなんだ?やっぱり地上の支配とかか?」

地底人「いや、私達は地上の民族と友好関係を結びたい。それも争いは一切せず、平和的にな」

男「友好関係?」

地底人「我々地底人は全ての民族と友好関係を結び、全ての生命が協力しながら生きていける。そんな世界を望んでいるのだ」

男「はー、壮大な話だな」

地底人「だから、信長とやらに地底人を殺されまくった時はビックリした」

男「偉人が変な事してごめんなさい」

地底人「とにかく、遠い未来で地上と友好関係を結べればと思っている。視察も地上の文化を知る為の物だ」

男「なるほどね、頑張れよ」

地底人「ありがとう、と言うべきか」

男「あぁ、合ってるよ」

男「とりあえずシャワー浴びてこいよ。お前、随分と汚れてるからな」

地底人「……シャワー?」

男「……え?シャワー知らないの?」

地底人「……昔のデータには無かったからな」

男「でも、外国にはあったろ?アメリカとか」

地底人「いや、我々地底人にも国があり、私のような日本の地底人は海外の事はあまり知らないんだ」

男「え?地底人にも国籍とかあんの?」

地底人「まぁ海の地底を渡ることになるので、自分の国以外の地底に行った事のある地底人はほとんどいないがな」

男「なるほど、じゃあ使い方から教えるよ」

地底人「ありがたい」

ーーーーー

男「さて、そんじゃまずは」

地底人「男、その腰に巻かれた布はなんだ?」

男「え?タオル」

地底人「湯船に入る際、布を入れるのはマナー違反と聞くが」

男「あー……シャワーだからセーフだ」

地底人「そうか、ならばいい」

男「まず、ここを捻る」キュッ

シャーーー

地底人「ぶっ!な、なんだ!?海人族の攻撃か!?」

男「なんだよ海人族って」

地底人「くっ!海人族め!心地よい温度のお湯を浴びせ私を油断させるつもりか!?」

男「心地よくなってんじゃねえかよ」

ーーーーー

地底人「いやぁ!実に気持ちよかったな!」

男「そうかよ、髪ちゃんと拭けよ」

地底人「む、そうか」わしゃわしゃ

男「いや、俺のじゃなくてお前の」

地底人「おっと、そうだったか」わしゃわしゃ

男「ったく」わしゃわしゃ

地底人「むっ、男、アレはなんだ?」

男「アレ?」

地底人「あの庭に置かれている自立している網だ」

男「ああ、ネットか」

地底人「ネット?しかし、見たことない形だな」

男「ボール投げる時、あそこにボール投げ込むんだよ」

地底人「ほほう、ボールを」

男「えっと……見てろよ」

地底人「うむ」

男「よし、行くぞ」

地底人「何?こちらに投げるのか」

男「違うよ、あそこに投げるよってこと」

ザッ…

男「ふんっ!!」シュッ!!

ズサーッ!!

地底人「おお!野球か!」

男「野球は分かるんだな」

地底人「ああ、地底でも人気のスポーツの一つだ」

男「へぇ、地底でもスポーツするんだな」

地底人「ちなみに地底で一番人気なスポーツはサッカーだ。地底リーグなんてのもある」

男「なんつーか、地底すげーな」

地底人「ふふん、だろうよ」

男「思ったより、人間に近いんだな、地底人」

地底人「まぁ、技術力は地上には敵わないがな」

男「ルンバとか知らなかったしな」

地底人「だから今回の視察は私自身楽しみだ」

男「あんまり目立つ事はすんなよ」

地底人「分かっている。それにいざとなればこれがある」

ブウン……

男「……消えた!?おい!地底人!おいゴルァ!」

ブウン……

地底人「ふふん、ステルス能力だ」

男「あ、いたんだ。違う、なんだ今の」

地底人「驚いたか?」

男「ビックリし過ぎて金属バット取り出したわ」

地底人「あぁ、それには私もビックリしたよ」

男「そうか」

地底人「まさかバットが金属になっているとは」

男「そっちかよ」

地底人「ふむ、木製の物に比べ扱いやすくなっているんだな」

男「コラ、バット返せ」

地底人「ちょっと振ってみていいか?」

男「まぁ、いいけど」

地底人「では、失礼」

ブオオンッ!!

男「……は?」

地底人「うむ、軽くていいバットだ」

男「え、待って、何今のスイング」

地底人「む?何かおかしかったか?」

男「いや、違う……もう一回振ってくれるか?」

地底人「いいだろう」

ブオオンッ!!

男「…………」

地底人「……やはり、私のスイングはどこかおかしいのか?」

男「いや……まぁ確かにおかしい」

地底人「そうか……」

男「スイングスピードが人間離れしてやがる」

地底人「……え?」

男「そのスイング……まるで全盛期の松井秀喜、いや、それ以上……」

地底人「? よく分からんが、私が人間離れしてるのは当然だろう。地底人なのだから」

男「いや、まぁそうだけどさ」

地底人「それに、我々地底人の身体能力は地上の人間の10倍だしな」

男「今の一言で納得だわ」

地底人「しかし、男の投球も中々の物だったぞ」

男「……ホント?」

地底人「あぁ、男には才能がある」

男「…………そうか」

地底人「?」

男「そうだ、地底人!ちょっと打席立ってくれよ!」

地底人「打席?そこの横に立てばいいのか?」

男「あぁ、ただ打つなよ。あんなスイングで打たれたら球どっか行っちまうから」

地底人「なるほど」

男「そんじゃ、行くぞ!」シュッ

地底人「ふん!」カキーン

ズサーッ

男「お、後ろにカットすんのか」

地底人「あぁ、これなら文句無いだろう」

男「いや、そっちの方が難しいだろ……」

地底人「なぁに、大差無い」

シュッ

カキーン


シュッ

カキーン


シュッ

カキーン


男「……なぁ」

地底人「ん?」

男「本気で投げていいか?」

地底人「ほほう」

地底人「驚いた。まだ上があるのか」

男「あぁ、刮目しやがれ」

地底人「期待しよう」

男「…………」ザッ

地底人(振りかぶった)

男「行くぜ」

ビシュッ!!

地底人(なるほど……確かに先程よりは早いが)

地底人(まぁ、対応出来るレベルだな)シュッ

クンッ

地底人「はぁ!?」

ブオンッ!

ズサーッ

男「へっへー!どうだこの野郎!」

地底人「い、今!球が落ちて!え!?」

男「どうだ!?俺のスプリットは!!」

地底人「男!お前も地底人みたいに能力でボールの軌道を変えたのか!!」

男「も!?」

地底人「む?違うのか?」

男「いや、まぁ違うんだけどさ……」

地底人「そうか。地底では念力を使いボールの軌道を変える投手もいるんだが、確かによく考えれば人間は一部の者しか念力は使えないからな」

男「いや、多分十割使えねえよ」

地底人「おや?そうだったか」

男「今のはホラ、こうやって球に回転をかけてるんだよ」

地底人「ほう、人間も色々考えているんだな」

男「まあな」

地底人「なぁ、他にはあるのか?」

男「他?あるぜ、見てみるか?」

地底人「うむ、頼む」

男「おっしゃ!こうなりゃ全部見せてやるぜ!」

地底人「なら今度は打ってみせよう」

ーーーーー

ピピピ……ピピピ……

ピッ

男「チクショウ……超眠い」

地底人「すー……すー……」

男「呑気に寝やがって……つか地底人も寝るんだ」

男「……ハァ」


地底人「なんだ、随分と表情が暗いな」

男「おわっ!?」

地底人「む?驚かせたか?」

男「うん!凄く!」

地底人「そうか、すまない」

男「ハァ……とりあえず、俺学校行くからな」

地底人「何!?学校だと!?」

男「うん、学校」

地底人「行く!私も行くぞ!」

男「はぁ?」

地底人「一度、現代の地上の教育機関を見てみたいんだ!」

男「いや、なんも面白いモンはねえぞ?」

地底人「安心しろ、私にはステルスがある」ブウン……

男「あったなそんなビックリ能力」

地底人「そうか、これなら勝手に着いて行ってもバレないな」

男「声は聞こえてるんだな」

地底人「なんだと?」

男「いや、まぁ別にいいんだけどさ」

地底人「ホントか!?」ブウン……

男「ただ、目立った事はすんなよ」

地底人「了解!」

続く

今日は終わりです

あ、地底人は男ですよ

ーーーーー

テクテクテクテク

男「はーあ……眠い」

友「うぃーす、男」

男「あ、うぃーす」

(おい、男)

男「ん?なんだ友」

友「は?俺なんにも言ってないぞ?」

男「え?でも今」

(私だ、地底人だ)

男「はぁ!?お前どっから!?」

友「はい?男?」

地底人(これはテレパシーだ。私達は今心と心で会話している)

男「マジで!?すげぇ!!」

友「……おーい、男?さっきからどうしたー?」

男「あ、ゴメン。なんでも無い」

友「何だ何だー?お前、まだあの事引きずってんのか?」

男「……いや」

友「男、顔怖い」

男「……そうか」

地底人(あの事?)

男(……すぐ分かるよ)

地底人(ほほう、もうテレパシーが出来るか)

男(つかお前、今どこにいんの?)

地底人(男の隣にいるが、ほれ)

ピトッ

男(あ、今触られた)

地底人(ステルス状態だからな、今は誰にも姿は見えない)

男(へー。ほら、着いたぞ)

地底人(ほほう、これが現代の学校……え?)

男「あ、先生、おはようございます」

友「ちわっす!先生!」

先生「友、制服の着方がだらしないぞ」

友「へへ、今朝は忙しくて……」

地底人(男、ここは本当に学校か?)

男(は?そうだけど)

地底人(では、あのデカイ綺麗な建物は何だ!?)

男(え?校舎)

地底人(では、お前達が着ているお揃いの礼服は何だ!?)

男(制服)

地底人(制服!?)

男(あー……学校が指定して、学生が着る服)

地底人(それは分かる、しかし、現代の制服はこんな風になっているのか!)

男(ブレザー知らんのか)

地底人(知らん!!)

男(いっそ清々しいな)

地底人(アレは!あのネットは何だ!)

男(え?サッカーのゴールだろ?地底にもあるんじゃないんだっけ?)

地底人(アレが地上のサッカーのゴールか、地底では壁に穴を掘ってゴールにしている)

男(へー)

地底人(凄いな、現代の地上の学校は)

男(そうかい)

地底人(む?あの男は何者だ?制服を着ていないが)

男(アレは教師だよ。教師は制服着ないの)

地底人(何故教師は制服を着ないんだ?)

男(えー……何でだろう、考えたことねえや)

地底人(軍の上官が兵士と違う服を着るように、教師も違う服を着るのか?)

男(いや、知らんわ)

友「おーい、男!男ってば!!」

男「へ!?あぁ、どうした?」

友「お前、様子おかしいぞ」

男「そ、そうか?」

友「何つーか、心ここに在らずって感じで」

男(実際に無かったけどな)

地底人(そうだな)

男(黙れ)

男(それじゃ、俺教室行くからな!)

地底人(あぁ、何かあればテレパシーする)

男(はいよ)

地底人(おお!アレは何だ!?箱に缶が並んでいる!)

男(テレパシー切れよ!)

ーーーーー

先生「えー、この文で用いられている表現方法について、誰か分かる人」

男「…………」

先生「あー……いないか、じゃあ男」

男「…………」

先生「おーい、男、男!」

男「……へ?」

先生「……おはよう、男」

男「……おはようございます」

クスクス……クスクス……

先生「さて、それじゃあこの文で用いられている表現方法について答えろ」

男「えーっと……倒置法」

先生「うむ、不正解だ」

男「それじゃあ、お休みなさい」

先生「許さん」

地底人(おい、男)

男(ん?何だ急に)

地底人(何故寝ている)

男(国語は苦手なんだよ)

地底人(苦手だと寝るのか?)

男(いや、分かんねえから寝るんだよ)

地底人(む?分からなければ寝てもいいのか?)

男(……いや、理解出来なくて退屈だから寝ちまった)

地底人(なるほど、そう言う事か)

男(で、なんか用か?)

地底人(あぁ、先ほど屋上で制服を着た男達が細くて短い物を咥えて煙を出していたんだが、アレは何だ?)

男(聞かなかった事にしてえ)

地底人(む?アレは何だったんだ?)

男(……タバコ)

地底人(へ?タバコ?それの何が悪い)

男(未成年は吸っちゃダメなんだよ)

地底人(ほほう、そうなのか)

ーーーーー

教師「さて、じゃあこの問1を……友、解けるか?」

友「無理」

教師「腹が立つ程に清々しいな、じゃあ男」

男「ハイハーイ」

教師「おう、それじゃ前出て書いてくれ」

男「うぃーす」

カッカッカッ

地底人(男、男)

男(あ?何だよ今問題解いてるんだよ)

地底人(今屋上で先ほどの男達がたくましい肉体の男にどこかに連れて行かれたぞ)

男(あーあ)

地底人(そう言えば、今は起きてるんだな)

男(あー、数学は得意だからな)

地底人(なるほど、男は単純だな)

男(やかましいわ)

教師「ん?男?分からないのか?」

男「え?あ、大丈夫です」

カッカッカッ

教師「よし、正解だ」

男「あざっす!」

地底人(む、邪魔してすまなかった)

男(え?何?見えてるの?)

地底人(うむ、テレパシー中なら離れていても相手の様子も見える)

男(ホントすげーな、地底人)

地底人(だろう)

ーーーーー

キーンコーンカーンコーン

男「……疲れた」

友「あ?」モグモグ

男「あ、いや、なんと無くさ」

友「あっそ」モグモグ

男「ただ、ふと思ってさ」

男(事あるごとにテレパシーが来るからな)

女「男君、友君」

男「あ、女」

友「ちーっす、どうした?」

女「今度の週末、一軍は試合見に行くって」

友「あ、そうなの?了解」

男「…………」

女「あの、男君?」

男「ん、あぁ、了解」

女「大丈夫?男君、今日ちょっと変だけど」

男「そ、そうか?」

女「うん、何だか上の空って感じで」

男「気のせいじゃない?大丈夫だから」

女「そっか、それならよかった」

男「そっか」

女「それじゃ、また放課後」

友「バーイ」

男「おう、またな」

友「やいやーい、言われてやんの」

男「うっせ!さっさと食えよ!」

友「もう食い終わりましたー」

男「うわ、クソうぜえ!」

友「お前こそ早く食えよー」

男「うっせ!食うよ!」モグモグ

地底人(ははーん)

男(んだよ今度は)

地底人(なるほどー、好きなのかー)

男(っ!?てめえいつから!!)

地底人(試合を見に行くとやらの辺りから)

男(なんで何にも言わなかったんだよ!?)

地底人(面白かったからな)

男(ゲス野郎!!)

地底人(しかし、試合とは何だ?一軍とはなんの一軍だ?)

男(部活のだよ)

地底人(部活?)

男(あぁ…まさか部活の説明がいるのか?)

地底人(いや、現代の地上の学校には部活動があると言うのは聞いている)

男(そうか)

地底人(しかし、なんの部活動なのだ?)

男(野球だよ)

地底人(あぁ、そうか)

男(ま、俺達はその野球部の一軍って訳よ)

地底人(ほほう、それは凄いことなのか?)

男(……まあな)

地底人(それは、今朝聞いたあの事とやらと関係あるのか?)

男(……あるよ)

地底人(ほほう、是非お聞かせ願いたい)

男(……今夜話してやるよ)

地底人(そうか、楽しみにしているよ)

男(そんじゃ、切ってくれ)

地底人(そうか、分かった)

友「お、食い終わったか」

男「…………」

友「……表情暗いぞ?」

男「……うっせ」

友「……男?」

男「部活に備えて寝る、お休み」

友「そうかい、お休み」

ーーーーー

キーンコーンカーンコーン

友「おっし男!部室行くぞ!」

男「よっしゃ!行くぞ!」

先生「お、お前達、急に元気になりやがって」

友「あ、先生、お疲れーっす」

先生「おう、次の大会頑張れよ!」

男「ハイハーイ!」

先輩「よお、お前達、行くぞ!」

男「あ、先輩ちっす!」

友「よし、行こうぜ!」

地底人(男、これから部活か)

男(あぁ!!)

地底人(嬉しそうだな)

男(嬉しいとも!!)

ーーーーー

キーン キーン ザァッ

「オラー、声出せー!!」

「「「おーっす!!」」」

部長「よーっし、キャッチャー陣は投げ込み!一軍捕手は捕球!」

「「「ハイッ!!!」」」

男「よし友、捕球頼む!」

友「あいよ!」

タッタッタッ

部長「アイツら、ホント仲良しだな」

先輩「だな、アイツら名バッテリーだよ」

ビシュッ!!

パシンッ!!

友「ナイピッチ!!」

男「おー、そっちもナイキャッチ」

投手「おー友、俺の捕球も頼むわ」

友「あ、ちょっと待ってくださーい!」チラッ

男「……いーよ行けよ、試合で長く組むのあの人なんだからさ」

友「……そっか」

男「ほれ行け、俺後輩に受けてもらうから」

友「あいよ、せんぱーい!今行きまーす!」

タッタッタッ



地底人「……なるほど」

ーーーーー

ガチャッ

男「あー、疲れた」

ブウン……

地底人「お疲れ様」

男「いたのかよ」

地底人「帰路からずっとな」

男「相変わらず心臓に悪いな」

地底人「そんな事より、食事だろ」

男「あー、そうだったな」

地底人「私は魚を食べてみたい」

男「地底は魚食わないのか?」

地底人「あぁ、まずいないからな」

男「なるほどね、そんじゃ魚にすっか」

地底人「む?男は料理が出来るのか?」

男「そういや昨日は作らなかったからな、まぁ人並みには出来るよ」

地底人「そうか、楽しみだ」

男「ちなみに地底人はどんな物食ってるの?」

地底人「地底人は野菜をよく食べるな」

男「へー」

地底人「地上から生えてる根っこなどを辿って種をだな」

男「やめろ」

地底人「まぁ大体の種は地底での市場で手に入る物だ」

男「つーかよ、地上に出れないだとか言うけど、田舎の方とか行けば全然出られるんじゃねえの?今言ったみたいに畑だとかさ」

地底人「いや、地底にも首都があってだな、その首都の真上が地上で言う首都なんだ」

男「へー、で?」

地底人「地底は首都を中心に下に伸びて行く形で地底都市を開発している為、地上の田舎の方には地底人の手は届いていないんだ」

男「なるほどねー」

地底人「いずれは横の開発も進め、楽に地上に出れるようにしたいものだ」

男「そうか」

地底人「まぁ、頑張れば田舎から地上にも出れるのだが、移動距離が長いと疲れてしまうからな」

男「そうだな。さて、そんじゃ作っていくか」

地底人「では、手伝うとしようか」

男「手伝えんの?」

地底人「任せろ、少しは出来る」

男「じゃあ、野菜切ってくれ」

地底人「分かった、一刀両断してやろう」

男「お前座ってろ、まな板まで切る前に」

ーーーーー

地底人「ふぅ、ごちそうさま」

男「あいよ。どうだった?魚は」

地底人「大変美味かった。あんなに美味い生き物だったとは」

男「食べ物と言え、食べ物と」

地底人「む、生き物と言う表現は嫌か」

男「何か引っかかる」

地底人「そうか」

男「それじゃ、ちょっと走ってくるわ」

地底人「体力作りの為、か?」

男「……分かってんのか」

地底人「私も行こう。横に誰かいた方がスピードも出るだろう」

男「……ああ、頼む」

ーーーーー

タッタッタッ

男「ハァ、ハァ……」

地底人「お前が気にしているあの事とやらは、お前の体力不足の事か」

男「あぁ……大会のメンバー発表の時、監督に言われたんだ」

地底人「何てだ?」

男「お前は実力は申し分ないが、体力が足りないって」

地底人「なるほど」

男「だから、抑えのエースに回された。先発は一個上の先輩だと」

地底人「投げ込みの時に途中でお前の友人と組んだ男か」

男「あぁ。だけどな、俺は諦めてないぜ、いつか絶対にあの人から先発投手の座を奪ってみせる!」

地底人「……頑張れ」

男「おう!!」ダッ

地底人(お、スピードを上げたな)

地底人(しかしまぁ、その程度のスピード、私だと少し遅いくらいだな)

男「ハァ……ハァ……」

地底人(しかし、人間なら十分なスピードか)

地底人(いつかと言うが、男ならそう遠くはないだろう)

ちょっとお風呂入ってくる

ーーーーー

ワー!ワー!

監督「投手、お疲れ様。今日は下がれ」

投手「ウッス」

友「投手さん、お疲れっす」

投手「あぁ、サンキュ」

監督「男、次の七回からだ」

男「ハイ!」

監督「アウト9つ、頼んだぞ」

男「分かりました!」


地底人「……4対2、か」

地底人「どうやら、男は次の回からか」

地底人「……地上の野球も、面白い物だな」

『桜分高校、ピッチャー代わりまして、男君、背番号、17』

ワー!!

相手「相手校、ピッチャー変えたな」

相手「チェッ、さっきの投手とか言う奴、打ちやすかったんだけどな」

相手「グダグダ言うな、さっさとネクスト行け」

相手「うぃーす」


友「アウト9個か……打者一巡で丁度だな」

男「当然、狙うよな?」

友「もっちろん、投手さんの球に慣れ始めた連中に、お前の球は打てねーよ」

男「リード、頼むぜ」

友「おう、任せとけ!」

相手(二年のピッチャーか……ま、先頭の俺が出て調子崩してやるか)

友(さーて、コイツは外角が得意なんだっけか……だったら)スッ

男(りょーかい)コクンッ

スッ

相手(振りかぶるタイプかよ、綺麗なフォームだこと)

男(外角、ストライクになるスライダー!)

ビシュッ!

相手(外角……ボールだな)

クンッ

相手(やっべ!曲がった!)ブンッ!

パシンッ!

審判「ストライーク!!」

相手(あんにゃろ……いい球投げんじゃねえか)

友(やっぱり、得意なコース来たから振っちゃったか。振るの遅かったけどな)

友(さて、そんじゃぱっぱとカウント取っちゃうかな)

ビシュッ!

パシンッ!

ビシュッ!

パシンッ!

審判「ストライク!バッターアウト!」

ワー!!

友(へへ、まずは)

男(三振、一つ)


地底人(凄いな、まるでテレパシーでもしてるかのようなバッテリーだな)

地底人(こんなバッテリーが試合終盤しか見れないんだから、面白いな)


友(さーてと、そんじゃ二人目からもさっさと三振貰いますか)

男(狙うぜ……三振9つ!!)



ワー!ワー!

ーーーーー

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

「いやー、凄かったな!あの二年生ピッチャー!」

「三回パーフェクト、しかも全部三振だもんな」

「あんなんが抑えなんだから、ビックリだぜ」

「案外先発のピッチャーより、あの抑えの方が凄いんじゃねえか?」

「はは、ありうる」


女友「よかったじゃーん、一回戦突破だよ」

女「うん、よかったね」

女友「それにしても男君、凄かったねー、まさに完璧なピッチングだったね」

女「ホント!凄かったよね!男君!」

女友「ありゃ、モテるだろうねー、女?」

女「え、ええ!?」

女友「もーちょっと勝ち進んで、注目浴びたらファンとか出来たりしてさ」

女「ファ、ファン……」

女友「でー、後輩とかに告白されたりしてー!!」

女「こ、ここここ、告白!?」

女友「どーする女?もしそうなったら?」

女「え、えええ!?い、イヤだよそんな、そんなの!!」

女友「だったら!ちょっと話せるだけで満足ー、なんて言ってないで、もっと積極的に行きなさい!!」

女「う、うん!!」

女友「でなきゃ男君、誰かに取られちゃうよー?」

女「分かった!私、頑張るよ!」

ーーーーー

監督「ーーー以上、今日はここまで!」

「「「お疲れ様でした!!」」」

友「男、一緒に帰ろうぜ」

男「おうよ」

監督「……男!」

男「え?ハイ!」

監督「今日のピッチング、素晴らしかったぞ」

投手「!?」

男「……あ、ありがとうございます!!」

監督「次の試合も、いいピッチングを期待してるぞ」

男「ハイ!!」

友「いえーい、褒められてんじゃーん」

男「なーに、お前のリードもあっての投球ですよ」

投球「…………クソッ」

友「あ、男。今日お前の家泊めてくれよ」

男「え?今日」

友「あれ?ダメな感じ?」

男「あー……微妙」

友「何?親いんの?」

男「いや、親はいないけどさ……分かった。ただし家の前で少し待ってもらうぞ」

友「別にいいけど」

ーーーーー

男「そんじゃちょっと待ってろ」

友「オッケー」

ガチャッ

地底人「お、今帰ったか、男」

男「お前、ステルス使え」

地底人「え?」

男「今日友人が泊まるから、お前バレたらめんどくせえから」

地底人「あぁ、そう言う事だったか。なら大丈夫だ、私は今日は帰らない」

男「え?」

地底人「ちょっと、ある捜査をしなくてはならないんだ」

男「ある捜査?」

地底人「あぁ、では」

男「バカ!今開けたら……」

ガチャッ

友「え」

地底人「あ」

友「あー、えっと……どなた?」

地底人「あー、えっと……男の友人です」

友「あ、始めまして、友と申します」

地底人「始めまして、ドクトルと申します」

友「あ、外国の方でしたか。ご出身は?」

地底人「私の出身はアガルタです」

友「アガルタ?聞いた事無い国ですね」

地底人「いえ、国では無く都市なんですよ」

男「よし、お前達中に入れ、事情の説明と行こうか」

地底人「すまなかった男、まさかすぐそこにいるとは思わず」

友「なぁ男、この人何?」

男「今から説明するよ」

今日はここまで
毎回夜遅くの投下になってしまう

ーーーーー

友「ハァ!?地底人!?」

地底人「うむ、証拠にほら」ブウン……

男「ステルスは地底人の証拠にはならねえだろ」

地底人「む、そうか」ブウン……

友「いや、まぁ今ので何と無く分かったけど……えー」

男「いや、まぁそうなるわな」

友「ただ、話聞く限りホントっぽいし、何より男がこんなくだらない嘘つくとは思えないしな」

地底人「男、今くだらないって言われた」

男「お前の存在はそれほど馬鹿げてるんだよ」

地底人「酷い」

友「しっかし、地底人なんて存在するんだな」

男「俺も最初そうなったわ」

地底人「どうやら本当に私達の存在は地上では認知されて無いらしいな」

男「最初から言ってんだろ」

地底人「まぁいい。では私は出掛けるとしよう」

友「あぁ、俺に気を使ってんなら大丈夫ですよ」

男「いや、ちょっと捜査をすんだとよ」

友「捜査?地上の?」

地底人「まぁ、地底人にも色々あると言う事だ。では」ブウン……

友「あ、消えた」

男「まぁ実際はそこにいるんだろうけどな」

ガチャッ

男「今外出たな」

友「だな」

友「しかし、地底人かー」

男「アイツが来てから俺は振り回されっぱなしだよ」

友「お前がこないだ様子が変だったのもアイツが原因か?」

男「あぁ、アイツのテレパシーだ」

友「テレパシーまで使えんのかよ、地底人」

男「念力使えるのもいるらしいぜ」

友「へー」

男「そんじゃ、飯作るか」

友「じゃあ俺テレビ見るわ」

男「相変わらず手伝う気ゼロかよ」

『株式会社○○は今日、新たなエネルギーを実装した……』

友「……男」

男「ん?何?」トントン

友「暇、構って」

男「今日のメニューはハンバーグだ」

友「わーい」

『総理大臣は今日、近日行われる日米首脳会談について……』

友「ニュース超つまんねぇ」

男「知らねえよ」

友「日米首脳会談とかどうでもいいっつうの」

男「非国民」

友「何?お前興味あんの?」

男「微塵も」

友「だよな」

『昨日未明、○○県△△市で起きた殺人事件、警察は、連続殺人事件と関係が……』

友「高校野球ニュースやんねーかな」

男「もうちょっと後だろ」

友「勝ち進んだら取材来るかね」

男「来るんじゃない?」

友「俺達取材されるかな?」

男「されんじゃない?」

友「お前今日調子良かったな」

男「だな。今日は出来すぎだ」

友「俺はお前が先発の方がいいや」

男「それ言う為だけにウチ来たべ?」

友「後は練習付き合ってやろうかと」

男「ありがたい話だよ」

『巨人の坂本がメジャー挑戦を表明し……』

友「え?マジか」

男「何よ」

友「坂本、メジャー挑戦だって」

男「マジか、飯出来るぞ」

友「りょーかい」

『さて、今日から高校野球、夏の予選が行われました』

男「あ、高校野球触れてんじゃん」

友「俺達映るかな?」

男「春に甲子園優勝したら映ったんじゃない?」

友「夢のある話だこと、いただきまーす」

男「召し上がれ」

友「うん、美味い」

男「サンキュ」

ーーーーー

地底人「……やはり、可能性は高いな」

地底人「この辺りか?」

地底人「……いや、気配を感じない」

地底人「向こうがこっちに気付いたか?」

地底人「……まさか、こんな事になるとはな」

地底人「一刻も早く、見つけなければ」

地底人「……ポエナめ」

地底人「必ず見つけ出してやる……」

地底人「ドクトルの名にかけて!」

ーーーーーーーーーー

女「お、男君!」

男「ん?女か」

友「俺もいるよーん」

女「あ、友君も」

男「で、どうかした?」

友「もしかしてー、男にプロポーズでもすんのかなー?」

男「なっ!?おい、友!!」

友「冗談だって、じょーだん!」

男「ハァ……で、どうした?女」

女「えっと……その……」

友(あらら?こりゃもしかして当たってたか?)

女「あの……ベスト8、おめでとう!!」

男「おう、サンキュー」

女「次勝ったら、甲子園に王手だよ!」

男「ハハ、そうだな」

友(……こりゃ俺はお邪魔かな)スッ

女「私もマネージャーとして鼻が高いよ!」

男「そうか、なら次も勝たないとな」

女「うん、頑張ってね!」

男「まぁ先発は投手さんなんだけどな」

女「あ、そうだったね」

男「あの人が早々に崩れたら俺のロングリリーフもありえるかもな」

女「それ、あんまりイイ事じゃないよね」

男「まぁな」

あははははは

女友「ふふ、女もやれば出来るじゃない」

友「うぃーす、女友ちゃん」

女友「あれ?友君」

友「なーんか気まずいからこっち来ちゃった」

女友「いい判断ね、流石は名捕手」

友「褒めたって何にも出ないぜ?」

女友「あら、残念」

友「しっかし……不思議だよな」

女友「そうね、不思議ね」


「よっしゃ、そんじゃ次も女の為に絶対勝つよ」

「うん、応援してるよ!」


友「アレ、付き合って無いんだぜ?」

女友「本当に不思議ね」

友「うん、不思議」

友「そーいや、こないだ女ちゃん告白されたんだろ?三年の先輩に」

女友「うん、断ったらしいけど」

友「女ちゃん、モテるねー」

女友「あれでも隠れファン多いからね」

友「ふーん」

女友「それに、男君も最近ファン増えてるらしいじゃない」

友「ああ、隠れてない方ね」

女友「試合でも彼がマウンド上がると女子の歓声が凄いもの」

友「うん、アレは凄いわ。マウンド駆け寄るの恐れ多くなるわ」

女友「ま、彼はマウンドでは集中してるみたいだけど」

友「アイツの集中っぷりは凄いよ。マウンドで話しかけてもたまに聞こえて無いとか言い出すからね」

女友「ホント凄いわね」

友「まったく、いつになったら付き合うんだか」

女友「ホント」

友「甲子園行ったらプロポーズとか考えてたりして」

女友「ありえる」

友「…………」

女友「…………」

友「なんか急に負けられなくなったわ」

女友「ええ、頑張ってね」

友「うん、頑張るわ」

女友「そう言えば、友君は彼女いらないの?」

友「今はいいや、少なくとも甲子園行くまではね」

女友「あら、そうなのね」

友「ま、甲子園行ったらプロポーズするかもね」

女友「あら、それじゃあ尚更頑張ってね」

友「……おうよ」

ーーーーー

ガチャッ

男「ただいまー」

地底人「おう、おかえり」

男「なぁ、お前今日学校いたか?」

地底人「む?何故だ?」

男「いや、テレパシーが無かったからさ」

地底人「男もすっかりテレパシーに慣れたようだな」

男「まあな。で、どうなの?」

地底人「いなかったさ。ちょっと別の事を調べていてな」

男「別の事?何?」

地底人「……いや、男には言えないな」

男「そっか」

地底人「……何でか聞かないのか?」

男「そりゃ、地底人にだって秘密の一つや二つ、あっても不思議じゃないからな」

地底人「そ、そうか?」

男「おう、何にだって秘密はある。俺は別にそれを探ろうとは思わないよ」

地底人「……そうか」

男「ただ、黙って消えたりはすんなよ」

地底人「……分かった。ありがとう、男」

男「別に、そんじゃ晩飯作るか。今日は食うか?」

地底人「うむ、いただこう」

男「よし、テレビでも見て待ってろ」

地底人「しかし、テレビは凄いな」

男「何が?」

地底人「こんな風に簡単に映像を全国に流せるのだからな」

男「だな」

『昨日行われた日米首脳会談にて、総理は、アメリカと……』

地底人「地上も色々あるんだな」

男「らしいな、あんまり興味無いから知らんけど」

『連日行われる連続殺人事件について、警視庁は今回の件に関して……』

男「でもよ、お前も地上に馴染んできたな」

地底人「そうだろうか?」

男「あぁ、もう俺の私服着てるお前に違和感感じないからな」

地底人「地底人は容姿が人間に近いからな、当然だろう」

『全国高校野球、夏の予選もいよいよ終盤です』

地底人「む?これは男のチームメイトの投手と言う男では無いか?」

男「え?どれどれ」

『○○県の予選では、桜分高校がここま快進撃を見せており……』

男「うわ、マジだ。こないだの試合の映像だ」

地底人「しかし、なぜこの男がピックアップされる?」

男「そりゃ先発投手だからな」

地底人「ふうむ、そう言う物か」

男「そんな物だよ」

地底人「あぁ、次の試合、私は見に行けなくなった」

男「え?つか今まで見てたんだ」

地底人「例の捜査が大詰めでな、すまない」

男「いいよ、そっち頑張れよ」

地底人「……本当にすまない」

ーーーーー

ワー!ワー!

「今日は乱打戦になったな」

「いや、ピッチャーが両校とも崩れたんだろ」

「確かに、そんな感じだな」

「五回終わって7対5か……」

「桜分は二番手ピッチャーが頑張ってるけどな」

「あぁ、これまで2塁を踏ませないピッチングだからな」


友「さーて、そんじゃ点取らないとな」

男「友ー、ホームランでいいからな」

友「んな簡単に無茶言うなよ」

部長「男が踏ん張ってるんだ!点取ってやろうぜ!!」

「「「おう!!」」」

投手「…………」

友「……そんじゃ、ネクスト行くかな」

カキーン!

部長「おし、ランナー出た!」

先輩「友ー!!ランナー返してやれー!!」

友「うぃーす!!」

相手(コイツか……ここまでノーヒットだったか)スッ

相手(ここまで球結構放ってるし、ちょっと抜いてもいいかね)ヒュッ

友(甘いな)

キーンッ!!

相手「うわっ」

部長「よしっ!!」

男「これでやっと同点か」

ワー!ワー!

「初球ホームラン!!」

「あの捕手、打撃もいけんのかよ!!」

友「どーだこらお望み通り打ったぞヘボピッチャー!!」

男「よく打ったなクソキャッチャー!!」

ワイワイ

部長「よし、友に続くぞ!!」

「「「おう!!」」」

ーーーーー

「むう……同点のまま延長か」

「一体、どっちが勝つんだろうか」


女「……ん?」

女友「どったの?女」

女「いや、男君の球数なんだけど……」

女友「あー、今何球?」

女「もう、100球超えてるんだよね……」

女友「あれまぁ」

男「なぁ、友」

友「あ?なんだよ」

男「一体いつになりゃ試合終わるんだよ!!」

友「知らねえよ!!黙って投げろ!!」

男「お前あのホームランからノーヒットじゃねえかよ!!次の回打たなきゃぶっ殺すからな!!」

友「だったらこの回パーフェクトな!そしたら打ってやるよ!」

部長「やかましい!!さっさと守備位置付け!!」

監督「まったく、騒がしい奴らだ」

先輩「そっすね、まだまだ元気ですよ、アイツら」

監督「……だな」

投手「……チッ」

ーーーーー

友「あれ?地底人いねえの?」

男「忙しいらしいぜ、色々と」

友「ふーん、残念」

男「あー、今日は疲れた」

友「お前今日何球投げた?」

男「知らね、50超えた辺りで数えんのやめた」

友「それじゃ明日女に聞くか」

男「だな」

友「とりあえず今日はもう投げないだろ?」

男「おー、今日は走り込みだけにするわ」

友「今からいって帰りに飯買おうぜ、作るのめんどいだろ」

男「そうすっかな。行くか」

ーーーーー

タッタッタッ

友「遅くね?」

男「今日はちょっと落としてる」

友「そう言えば、この河川敷だっけ?地底人と会ったのは」

男「うん、ほれ、あの辺り」

友「あ?橋の下誰かいね?」

男「現地住民じゃね?」

友「いや、何か投げてる」

男「え?」

ビュンッ!!

友「……あれ投手さんだ」

男「は!?」

今日は終わり
明日で完結

投手「……ふっ!」

ビュンッ!!

ズバーンッ!!


友「壁に向かって投げ込みしてんのか」

男「……あの人、あんなストレート早かったっけ?」

友「明らかに早くなってんな」

投手「……誰かいんだろ?」

友•男「っ!!」

投手「出てこい」

友「や、やぁ」

男「うぃっす」

投手「……お前達か」

友「スイマセン、特訓見ちゃって」

投手「別に、お前達は何してる」

男「いやぁ、軽い走り込みを」

友「付き添いでーす」

投手「……男」

男「ハ、ハイ!」

投手「無茶すんなよ、お前、今日100以上投げてんだから」

男「え?そんなに?」

投手「あぁ、延長も投げてるからな、身体を壊すなよ」

男「ハイ……あの、先輩は?」

投手「……男、俺は先発の座を渡すつもりはない」

男「ッ!?」

友「おやおや」

投手「しかし、もし誰かに譲らないといけないと言うなら……男、俺はお前以外に渡す気は無い」

男「……はぁ?」

友「つまり、投手さん男をライバル視してるんですよねー?」

投手「ッ!?と、友!!」

友「いやー、投手さん素直じゃ無いんだからー」

男「あ、あの……投手さん?」

投手「~~っ!!あぁそうだよ!!男をライバルだと思ってるよ!!勝手に!!文句あるか!!」

友「あーぁ、逆ギレしちゃったよ」

男「あの……投手さん」

投手「んだよ!!見んな!!」

男「……ありがとうございます」

投手「……あ?」

友「あー、面白い事になってんな」ニヤニヤ

男「俺は、アナタにそんな風に言ってもらえて嬉しいです」

投手「……ホント?」

男「本当です」

男「俺は、投手さんより変化球のキレもあるし、球種もアナタより多い」

投手「オイ」

友「ちょっ、男?」

男「でも投手さんのストレートは一級品ですし、投手さんにはスタミナがある」

投手「…………」

男「アナタは、俺には無い物を持ってます。だから、二人で高め合って行きたいんです」

友「……けっ、主人公かお前は」

男「は?」

友「そんな漫画かなんかみたいなくっさい台詞、よく言えるなお前」

投手「うん、臭かった」

男「ちょっ、投手さんまで!?」

投手「でも、それで充分だ」

男「……え?」

投手「お前の意思は分かった。それで充分だよ」

男「投手さん……」

友「くっせぇ!投手さん!超臭い!」

男「お前ちょっと黙っとけ!!」

投手「男、俺は負けないぜ」スッ

男「えぇ、追い越してみせますよ」スッ

ギュッ

友「硬い握手か……完全に漫画だな、くっせぇなオイ」

投手「やかましいわ!!」

キャアアアア!!

投手•友「!?」

男「悲鳴!?」

地底人(男!!今すぐ逃げろ!!)

男(地底人!?)

地底人(いいから!!早く!!)

男(お、おう!!)

男「友、投手さん!!走りますよ!!」

友「男!?」

男「今、アイツに言われたんだよ!!早く!!」

投手「ア、アイツ?」

友「!! 了解、行くぞ!!」

投手「ちょっ、事情説明は!?」

男「いいから!行きますよ!」

タッタッタッ

ーーーーー

男「ハァ……ハァ……」

友「ったく……マジかよ……」

投手「オイ、なんなんだよ!!」

男「いや……あそこにいるのは危ないと思って」

投手「そうかよ……」

地底人(男、大丈夫か)

男(おい、どういうつもりだ!?)

地底人(今私はお前の横にいる。とりあえず、そこの投手とやらと一回解散してくれ。私が責任を持って彼を無事に家まで送ろう)

男(了解)

男「とりあえず先輩、今日はもう帰った方がいいかもしれませんね」

投手「だろうな……近くで悲鳴があったとなれば、帰るしかなかろう」

友「あの、一人で大丈夫ですか?」

地底人(……友よ)

男•友(!!)

男(地底人お前、友にまでテレパシーを!?)

友(え、これテレパシー?スゲー!!)

地底人(その投手と言う奴は私が送り届ける、安心しろ)

友(そっか、了解)

投手「大丈夫だ、ここからそう遠いわけでも無いし」

友「そうっすか、じゃあお気を付けて」

投手「あぁ、分かった。また明日」

タッタッタッ……

男「……友」

友「んだよ、男」

男「もしかしたら、ちょっとヤバイ事が起きてるかもな」

友「ちょっと、だといいな」

ーーーーー

ガチャッ

地底人「男、友」

友「おう、おかえり」

男「お疲れ様、何か飲むか?」

地底人「いや、大丈夫だ。それより、話す事がある」

男「……さっきの事か」

友「俺にまでテレパシー使ったりして、どうしたんだ?」

地底人「……私以外の地底人が、地上にいるらしい」

男「……え?」

地底人「それも、凶悪な地底人がな」

友「凶悪な地底人?」

地底人「あぁ、地底人にも色々いるんだよ」

男「それは、あの悲鳴にも関係ある事か?」

地底人「ある。あの悲鳴は、もう一人の地底人に殺された女性の悲鳴だ」

友「はあ!?」

男「……殺されたって、地底人は争いはしない主義だったんじゃないのか!?」

地底人「あぁ、地底人は争い無く地上と友好関係を結ぶ、これは地底王の意思だ」

友「地底王?」

地底人「地底を統べる我らの王だ。しかし、その地底王の考えに反対する地底人もいる」

男「それが、地上に出ちまったと」

地底人「あぁ、地上を武力を持ってして征服しようと考える過激派の地底人が地上に出て来た」

友「……もしかして、最近ニュースで見る連続殺人って」

地底人「あぁ、そいつの仕業だ」

男「だから、突然逃げろなんて言ったのか……」

地底人「私はその地底人を必ず捕まえる。二人も、警戒はしておいてくれ」

友「分かったよ。どうせ地底人相手じゃ手伝える事もなさそうだしな」

男「地底人も、無茶はすんなよ」

地底人「……ありだとう」

友「しっかし、地底人も大変だね」

男「ホント、案外地底人も人間も変わんないのかもな」

地底人「確かに、地上の人間達のように地底にも少なからず派閥は存在するからな」

友「はーあ、なんか一気に疲れたわ。男、今日泊まるかんな」

男「分かってんよ、俺ももう眠いわ」

地底人「はは、まぁ仕方ないか」

ーーーーー

監督「よーし、今日は早めに上がるぞ!!」

「「「ハイ!!」」」

監督「いいか、明日勝てば、いよいよ念願の甲子園だ。お前達、絶対に勝つぞ!!」

「「「ハイ!!」」」

監督「それじゃあ、今日は終わりだ!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

監督「……投手、男。ちょっと来い」

男•投手「ハイ!!」

監督「明日の先発ピッチャーなんだが、実は決めていなくてな……」

投手「……え?」

男「…………」

監督「そこで、お前達に問いたい。明日、どちらが先発のマウンドに立つべきだと思う?」

投手「ッ!!」

男「先発……」

投手「……先発は」

男「投手さんで行くべきです」

投手「男!?」

監督「ほほう、何故だ?」

男「明日は、甲子園が決まる大一番です。そんな大事な試合だから、二年の俺より、三年の投手さんの方が、明日にかける心意気が強いと思います」

投手「……男」

監督「……そうか。投手、どうだ?」

投手「…………俺は、勝つ為なら、男を先発にするべきだと思います」

男「投手さん……」

投手「ただ、ここまで先発のマウンドに立っていたのは俺です。そんで、明日の大事なマウンドを、今更誰にも譲りたくはありません!!」

監督「……そうか」

男「投手さん……」

監督「よし、明日の先発は投手、お前だ!」

投手「え!?」

監督「なんだ?嫌か?」

投手「いえ、でも勝つためなら男の方が!!」

監督「別に私は勝ち負けの為に野球はしていない」

投手「……監督」

監督「確かに野球において、勝ち負けは重要な物だ。しかし、私はそれが一番だとは考えていない」

男「……投手さん、頑張ってくださいよ」

投手「男……」

監督「明日は、お前の最高のピッチングを見せてみろ。そうすれば、必ず俺達は甲子園に行けると信じている」

投手「……分かりました」

監督「期待しているぞ、投手」

投手「ハイ!!」

ーーーーー

タッタッタッ

友「なぁ、男」

男「ん、なんだ?」

友「良かったのか?先発を譲って」

男「別に、決めたのは監督だし」

友「そうか」

男「つか、何で一緒に走ってんの?」

友「暇だから」

男「あっそ」

友「あ、投手さん練習してる」

男「まぁ、気合入るだろうな」

友「……あ?誰か投手さんに近づいてねえか?」

男「ホントだ、助け行くか」

友「どーすっか」

男「……アレ、人間か?」

友「……え?」

男「まさか!?」ダッ!!

友「おい、男!!」


投手「……フッ!!」ビュンッ

ズバーンッ!!

投手「いよいよ明日か……」

投手「……最高のピッチング、か」

?「なぁなぁ、そこのアンタ」

投手「え、はい……」


?「ちょっと、死んでくれよ」


男「投手さん!!逃げて!!」


ザシュッ!!

投手「ッ!!」

?「あら?避けたのか、まぁ殺しそこねたけど傷は残したか」

投手「グッ……お前、何者だ!相手校の回し者か!?」

?「俺?俺はなぁ」

ガシッ

地底人「そこまでだ、地底人ポエナ」

地底人2「……ドクトルか」

男「投手さん!逃げますよ!捕まって!」

投手「男達……なんで」

友「いいから捕まってください!」

投手「……あぁ」

タッタッタッ……

地底人2「あーあ、逃げちゃった」

地底人「逃がしたんだよ、馬鹿が」

地底人2「……気に食わないなぁ」

地底人「だったらなんだ」

地底人2「殺す」

地底人「望む所だ」

ーーーーー

友「ハァ……ハァ……」

投手「畜生……何なんだアイツ……」

友「……連続殺人の犯人ですよ」

投手「マジかよ……クソが」

男「…………」

友「……男?」

男「友、投手さんの止血して。やり方分かるだろ」

友「お、おう。一応な」

男「じゃあいいな、俺は……」

友「どこ行くんだ?男」

男「…………」

投手「行かせないぞ」

男「行きます」

投手「俺は、お前以外に先発を譲る気は無い」

男「…………」

投手「一度言ったはずだ」

男「……今行かないと多分、後悔する」

投手「今行かせたら、絶対後悔する」

男「……行きます」

投手「行かせない。俺はもう投げれない、だからお前を行かせない」

友「男……」

男「……すぐに終わりますよ」

投手「待てっつってんだろ!!」バッ!!

男「……立ち塞がないでください」

投手「せめて最後くらい立ち塞がってやる」

男「フラフラじゃないですか」

投手「ハンデだよ」

友「……投手さん、行かせましょう」

投手「友……」

友「どっちにせ、行かせなかったらコイツは明日投げませんよ」

投手「……チッ」

男「……俺、行きますよ」

投手「……完封だ」

男「え?」

投手「明日、完封しろよ。絶対」

男「……はい」

タッタッタッ……

友「……甘いですね、完全試合くらい言ってよかったですよ」

投手「……一番、育てたかった奴だからな」

友「……そうですか、そんじゃ止血しますよ」

投手「あぁ、頼む」

ーーーーー

地底人2「ハハハ!いいねぇ、闘えるじゃん!」バッ!

地底人「そりゃあまあな」サッ

地底人2「チッ、外したか」

地底人「お前、その刀、どこで調達した」

地底人2「あー?最初に殺った人間達の住処だったかな?色々あったぜ?」

地底人「ほう、後で詳しく聞こうか」

地底人2「死ぬ前に聞けるといいな!」バッ!


男「……いた、あそこ」

男「えっと、確か持ってたよな……」ゴソゴソ

男「あった、ボール」

男「……当たるといいな」スッ

地底人2「オイオイ、避けてばっかじゃ俺は捕まえられねえぜ?」

地底人「……そうか」

地底人(コイツ……隙があるようでまったく隙が無い)

地底人(何か……コイツに隙を作れれば!!)

地底人2「さーて、そろそろ俺も本気モード入っちゃうかなー」

地底人「……何か、何か!」

ビュンッ!!

地底人2「あ?」

ズドーンッ!!

地底人2「いってぇクソが……んだコレ、ボール?」

地底人「よし!」ザッ!!

地底人2「あ」

ガシッ!
バッ!

地底人「拘束完了だな」

地底人2「テメェ!汚ねえぞ!」

地底人「隙を見せたお前が悪い」

地底人2「畜生が!誰だボール投げた奴!」


男「将来のメジャーリーガーだよ」

地底人「男!!」

男「どうだ?少しは手伝えたか?」

地底人「……あぁ、助かった」

地底人2「クソが!人間の分際で……地底人に攻撃しやがって!」

地底人「男、私は一度地底に帰らなければならない」

男「そっか」

地底人「必ず戻る、だからしばしの別れだ」

男「絶対戻って来いよ」

地底人「……あぁ」

ーーーーー

ワー!ワー!

「あのピッチャー、なかなかやるな!」

「五回まで未だ無失点だぜ!」

「頑張れー!桜分高校ー!」


女「…………」

女友「男君、調子いいね」

女「うん……でも」

女友「でも?」

女「ちょっとコントロールが乱れ始めてるみたい、ボール球も増えてるし」

女友「え?まだ五回じゃん、こないだもっと投げてたじゃん」

女「そうだけど……どうしたんだろう……」


男「ハァ……ハァ……」

友「男、ほら、飲め」

男「……サンキュ」

男(クソ……先発の重圧ってこんな重いのかよ!)

男(投手さんは、いつもこんな重圧の中投げてたのかよ!)

相手「相手ピッチャー、制球乱れ始めてますね」

相手監督「そうか、だったら早く捕まえてやれ」

相手「うっす」

友(とりあえず、カウント稼ぐか)スッ

男(外に、ストライクになるカーブね)コクッ

ビシュッ!

相手(これは、ボールだ)

パシンッ!

審判「ボール!」

友(制球乱れてんな……とりあえず入れないとだ)スッ

男(内角高め、ストレートね)コクッ

ビシュッ!

パシンッ!

審判「ボール!」

男(チッ、審判判定辛いな)

友(……ちょっと、ヤバイな)

ーーーーー

男「ハァ……ハァ……」


女「ノーアウト満塁……」

女友「ハッキリとは打たれて無いけど、四球増えたね」

女「うん、表情すごい辛そう……」

女友「援護も一点しか入ってないし、こりゃ辛いだろうね。もう七回だけどさ」

女「男君……」


男(ダメだ……全然球をコントロール出来ねえ)

男(このバッターに四球出したら、同点……)

男(打たれたら二点入るよな……)

男(ホームランだと、四点で……)

男(畜生……マイナスのイメージしか湧かねえ)

男(どうすりゃいいんだよ……クソ!!)

友「男……」

友(とりあえず、ストレート投げさせてコントロール落ち着かせないと)スッ

友(……何で、首振ったりも無いんだ?)

男(……今、サイン出たか?)

男(あれ……部長、声かけてくれてんのか?歓声のせいで全然聞こえねえや)

男(あぁ……集中切れてんのか、俺)

男(どうすんだよ……俺……)



(男、落ち着け)

男(……え?)

(今のお前は、責任で押しつぶされそうになっているだけだ)

男(……地底人、いんのかよ)

地底人(落ち着け、リラックスしろ)

男(……だな、ちょっと気を張りすぎた)

地底人(頑張れ、男、応援しているからな)

男(おう、サンキューな)

地底人(……私がいなくても、頑張れよ)

男(あぁ、このピンチ、なんとかしてやるよ)

地底人(……頑張れ)

男(任せろ)

友「……こ、男!!」

男「え?あぁ、友か」

友「……大丈夫か?」

男「……ごめんな、もう大丈夫だ」

友「……だな、任せたぞ」

男「おう、任せろ」

ーーーーー

ワー!ワー!

「あっとひっとり!あっとひっとり!」

「あっとひっとり!あっとひっとり!」

女「男くーん!頑張れー!」

女友「いけー!完封やっちまえー!」


友(今のアイツなら、大丈夫だろ)スッ

男(……スプリットか)

男(まったく……見てろ、地底人)スッ

男(これが、俺の最高のボールだ!!)

ビシュッ!!

相手(ストレート、もらった!)

クンッ

相手「なっ!!」

ブウンッ

パシンッ!!

審判「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」

ドワァァァァァア!!

ーーーーー

友「いやー!最後のスプリット、気持ちいいくらいに決まったな!」

男「バッターがスイングした瞬間、勝利を確信したわ!」

友「しっかし、俺達が甲子園か」

男「……だな」

友「こうなったら、行ける所まで行ってみようぜ!!」

男「おうよ!!」

友「じゃ、また明日」

男「あれ?今日は泊まんねえの?」

友「……ちょっと寄る所あるんだ」

男「そっか、お疲れ」

友「おう、お疲れ」

男「さーてと」

ガチャッ

男「アレ?開いてる……アイツか?」

男「ただいまー」

父「おう、お帰り」

母「お疲れ様。試合、見てたわよ」

男「あれ?親父、母さん……仕事は?」

父「終わったよ、しばらくは休みだ」

母「アンタが負けるまではね!」

男「……そっか、俺部屋いるよ」

父「そうか、ゆっくり休めよ」

男「うん」

ガチャッ

男「…………」

男「アイツはいねえのか……」

男「……ッ!」

男「……机の上にこんなボール置きやがって」

男「きったねえ字だなあ、アイツ日本語は書けねえのかよ」

男「まったく……」


「ありがとう」


男「勝手にいなくなったも同然だろ……こんなのよ」ポロポロ……

男「まったく……あの野郎……」

男「……せめて、直接言ってくれよな……テレパシーなんか使わずによ……」

ピンポーン

男「……客?」

母「男ー、お客さんよー」

男「俺に?誰だよ……」

ガチャッ

男「あれ……」

女「あ、えっと……お疲れ様」

男「あぁ、うん……ありがと」

女「えっと……甲子園、出場おめでとう」

男「うん、サンキュー」

女「…………」

男「…………」

女「…………」

男「えっと、なんか用?」

女「あぁ!ごめんなさい!」

男「いや、大丈夫だけど」

女「その、今、時間大丈夫?」

男「うん、いいけど……」

女「じゃあ、ちょっと……散歩しない?」

男「……分かった、いいよ」



友「これでようやく、かね」

女友「でしょうね。で、友君は?」

友「ん?俺?」

女友「甲子園決まったら告白するー、とか言ってなかった?」

友「はて、言ったかな?」

女友「で、どうなのよ?上手く行きそう?」

友「とりあえず、二人きりになるのには成功した」

女友「……そう、よかったわね」

友「上手く行きそう?」

女友「さぁね」

ーーーーーーーーーー

タッタッタッ……

友「なんとなーく、走るの習慣になっちまったな」

男「ま、まだ俺には体力ねえしな」

友「あの後しばらく完投続きだったくせに」

男「途中何回も崩れたからな」

友「真面目なこった」

男「そーいやさ、ここでトランペットの練習してた奴、ウチの高校の奴だったわ」

友「え?マジで?」

男「ホント、決勝で見かけたから」

友「……優勝したな」

男「あぁ」

タッタッタッ

友「ここも、懐かしいな」

男「色々あったな、ここ」

友「投手さん、今は大学野球で頑張ってるみたいだしな」

男「あぁ、復帰出来てなによりだよ」

友「……なぁ、あそこの地面、膨れてねえか?」

男「は?」

友「ほら、今動いてる」

男「……あの野郎」



ボコボコボコ……ドガーン!!


友「……うわぁ」

男「……久しぶりだな、あの野郎」

タッタッタッ

「……ふぅ、ようやく地上か」

男「よぉ、クソ野郎」

地底人「……久しぶりだな、男」

男「会いたかったぜ」

地底人「私もだよ」

地底人「どうだった?野球の大会は?」

男「優勝だよ、優勝。日本一になってやったよ」

地底人「そうか、良かったな」

男「オマケに今じゃ美人の彼女持ちだ、どうだ?羨ましいかこの野郎」

地底人「ほう、交際したのか」

男「それで、何しに来たんだ?」

地底人「視察だ。色々とな」

男「そうかよ」

地底人「また、色々と教えてもらうぞ、男」

男「おう、色々と教えてやるよ、地底人」

くう疲おしまい

テーマは「おかしな話」
変な話になった気がする
いつかリメイクしたい

次は久々にアニメのSS書きたいです

読んでくれた人、ありがとうございます

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