エレン「洗礼名……?」(57)



ニック「ええ。ウォール教に入ればつけて貰えますよ」


エレン「……例えば俺は?」


ニック「そうですね。カリュードエレンなどどうでしょう?」


エレン「それは……どういう意味なんですか?」


ニック「東洋の言葉でJagerと言う意味です。ぴったりじゃありませんか」


エレン「おお……」



アルミン「僕は!?」


ジャン「俺は!?」


ニック「ちょっと待ってください。入信しないとつけられませんから」


ミカサ「……エレン、入信するの?しないでしょ?」


エレン「ま、まあ……しねぇと思う」


キース「しなくともよいのだが……」


エレン「教官!」


キース「実は……訓練兵にはウォール教の布教をして欲しいのだ」



ミカサ「布教?」


アルミン「ちょっと待ってください!何故僕たちが!!」


ニック「……教官が憲兵団所属なのはご存知でしたか?」


エレン「はい」


ニック「先日、憲兵団は全員入信することに決まりました」


アルミン「えっ!?」



マルコ「腐ってるなー……」


ジャン「命が助かるなら入信くらい……いや、やっぱり抵抗が……」


アニ(嘘!?憲兵団に入ったら入信しないといけないの……?)


ベルトルト「何てことだ……聞いてないよ!」


ニック「ちなみに教官殿の洗礼名はヒメタチバナキースに決まりました」


アルミン「フフッ……」


キース「東洋の言葉だそうだ。意味は教えてもらえなかったが中々綺麗な響きだな」


ミカサ「不毛」


エレン「……?」



ニック「ゴホン!えー、毎月第三土曜日は訓練の代わりに布教の日とします」


ニック「後、こちらのマニュアルと教典をお読みください」


エレン「えっ?教典読まないといけないんですか?」


ニック「教えを引用出来たら入信率が上がるというデータがありますので」


ミカサ「……」


ニック「では私はこれで」


キース「明日までにマニュアルと教義を覚えておくように」


エレン「ええー……」



ライナー「……ベルトルト。俺調査兵団に行く」


ベルトルト「おすすめするよ……」


コニー「俺も」


サシャ「私もです」


クリスタ「怖かった……」


ユミル「……」


  寝室





コニー「……カリュードエレン」ボソッ


エレン「おい止めろ!恥ずかしいだろ!」


ライナー「俺はメンヘライナーとか言われた……どういう意味だ?」


エレン「さあな……」


ジャン「わざと意味解らないようにつけてるっぽいし、気にした方が負けだろ」



ライナー「そうだな。そうしようそうしよう」


エレン(カリュード結構気に入っているとか言えないよな……)


マルコ「……とりあえずこれ覚えようか」


ジャン「面倒くせぇ……別にいいだろ」


マルコ「ダメだよ!」


エレン「あー……俺はもう寝るぞ!あと憲兵団行きたかった奴元気出せよ!」


ジャン「ああ!?」


ベルトルト「エレンに言われるとなんか腹立つね……」


ライナー「ベルトルト、俺らも寝るぞ」


ベルトルト「うん……」


アルミン「……」ペラッ


アルミン(ウォール教教義その2 愛すべきは壁。されどまずは人から)


アルミン(何か良いこと言ってるような……?)


キース「諸君!待ちに待った土曜日だ!」


キース「よいか!我々はウォールローゼ南区を一手に任されている!」


キース「全員、故郷には優先的に配置されている!まずは家族を入信させるのだ!」


キース「入信してもらったらこの紙にハンコを押してもらってくるのだ!」


ジャン「ラジオ体操じゃねぇんだから……」


キース「ノルマこそないが、3人以上入信させた者!」


キース「夕食を楽しみにしておくといい……」ニヤリ


サシャ「コニーやりましょう!!!」


コニー「おう!肉だぜ肉!」



教官「このプリ……レジュメ見てどこからどこまで布教するか確認しなさい」


エレン「……俺達はこの辺りか」


アルミン「何か気が重いよ……」


ミカサ「問題ない。ノルマはないはず」


アルミン「……」


ジャン「お前ジナエ町出身だったっけ?」


マルコ「そうだよ。久しぶりに家族に会えるのはうれしいんだけど」


マルコ「言う事はウォール教に入信してくれ、だもんな……」


ジャン「まあそう言うな。仕事と割り切ろうぜ」



       ラガコ村




コニー「俺だ!コニーだ!帰ってきたぞ!」


サシャ「早く出てきてくださーい!」ジュルリ


コニー母(以下コ母)「コニー……!!!」


コ母「あんた帰って来たの!?訓練所はどうしたの!?」



コニー「違うんだって!訓練所はやめてない!今日だけ帰ってこれるんだよ!」


コ母「……じゃあ結婚の挨拶に来たの?」


コニー「は?」


サシャ「え?」


コ母「そんなに丁寧な言葉遣いで、よく出来た子じゃないか!」


サシャ「どうも。サシャ・ブラウスと言います。向こうの山に住んでます!」


コニー「違う違う違う!俺達は仕事で来たんだ!」


コ母「違うの……」


サシャ「実はお話がありまして」

調査兵団を辞めて訓練兵団の教官(憲兵団扱い)じゃなかったですかね?



コ母「話?」


コニー「……ウォール教に入って欲しいんだ」


コ母「うお……?何?」


サシャ「ウォール教です」


コ母「そ……それに入って欲しいの?」


コニー「今なら洗礼名二つ付けて貰えるキャンペーン中だぜ!」


コ母「洗礼名……?」



サシャ「それにウォール教の教えにはダイエット効果があるとかないとか……そんな感じですよ?」


コ母「……私も入ってみようかしら」


コニー(母ちゃん!!そんなに気にしてたのかよ腹!!)


コニー「入ってくれよ!多分面倒臭い事はしなくても良さそうだから」


コ母「まあ他でもない息子と娘のためだからね……」


コニー「今おかしなこと言った気がするけどほら、これにハンコ押してくれ」


コ母「ちょっと待っててね……」



サニー「……だれだ」


マーティン「コニーのかのじょだ!」


コニー「は!?バカ言うな!」


サシャ「違いますよ!お嫁さんです」


サニー「およめさん?」


マーティン「じゃあねえちゃんだ」


コニー「おいっ!子供に嘘教えるな!」


コ母「喧嘩しない!ほらハンコ」ポン



コニー「母ちゃん……」


コニー「……ありがとう」


コ母「また来るのよー?」


コニー「皆!今度!今度絶対来るからなー!」


サシャ「さよならー!」


マーティン「もうくんな!」


サニー「あのねぇちゃんきらい」


サシャ「」


コニー「……次は近所のおじさんの家だ」

   トロスト区 南部




ジャン「はあ……帰りたくねぇな……」


ミーナ「私も帰りたくないよ……殆ど家出みたいな形で訓練所に来たのに」


ミーナ「いきなり家に押しかけて宗教の勧誘しろだなんて……」


ジャン「お前もそのクチか」


ミーナ「……ジャンもそうなの?」


ジャン「まあな……」



ミーナ「そんな私たちの話、聞いてくれるかな?」


ジャン「聞かせなくてもいいだろ……俺はここでサボってる」


ミーナ「……じゃあ私も」


ジャン「……」


ジャン「三人以上に布教したら晩飯何が出るんだろうな」


ミーナ「お肉?卵?お菓子?」


ジャン「ハッピーセットかもしれねぇな」


ミーナ「それは要らないね……」


ジャン「ハハ……」



ジャン「こうしてるとまるで休日だな」


ミーナ「うん……」


ミーナ「……」


ジャン「……まずい!上官だぞ!」


ミーナ「え?」


ジャン「とりあえず敬礼だ!急げ!」


ミーナ「……」バッ


リコ「ん……?こんな所で何をやっている訓練兵」



ジャン「ウォール教の布教活動です!」


ミーナ「右に同じです」


リコ「おおそうか!実は私もウォール教に入っている」


ジャン「は、はあ……」


ミーナ「そうだったんですか」


リコ「この眼鏡は何故かけていると思う?


リコ「……教典の読み過ぎだ」


ジャン「え!?」


ミーナ「ね、熱心……ですね……」



トロスト区 北部






エレン「俺達は訓練所の近くか」


ミカサ「気をつかったのだろうか……?」


アルミン「いや、その分サボりにくくなってるよ……」


ミカサ「アルミン、サボるのを前提に考えるのはよくない」



エレン「なあミカサ……これ真面目にやってるやつなんか居るか?」


アルミン「居ないだろうね……」


エレン「100人入信で憲兵団行けるとか言えば皆頑張ったんじゃねぇのか?」


ミカサ「でも憲兵団に入ったら無条件で入信」


エレン「……嫌だな」


アルミン「一応布教する振り位はしておこうか……」


エレン「そうだな」




     ダウパー村




サシャ「ここのはずなんですが……」コンコン


コニー「居ねぇんじゃねぇのか?」


サシャ「多分狩りに行ってるんだと思います」


コニー「じゃあどうする?近所の家に先行くか?」


サシャ「そうしましょうか……」


コニー「あっ」


サシャ父(以下サ父)「サシャ!?何でお前がここに……」



サシャ「おとう……さん」


サ父「……」


サシャ「……ただいま」


コニー「あの……どうも」


サ父「訓練所はどうした?まさか……」


サシャ「やめとらんよ!」


サ父「そうか……」


サ父「ん?そっちの少年は……」


コニー「……同じ訓練所のコニーと言います」


サ父「コニー……うちのバカ娘をよろしくな」


コニー「は、はい……」


サ父「まあ入れ……色々と話を聞かにゃならんからな」


サシャ「……」


コニー「……」

           サシャの実家




サ父「……訓練所はどうだ」


サシャ「まあ……辛い事もあるけど楽しいよ」


サ父「……そうか」


コニー「……」


サ父「コニー、訓練所でのサシャはどうだ?」


コニー「……結構優秀ですよ。10位以内に入れるかもしれないって言われてます」


サ父「おお!お前そんなに頑張っとるんか!」



サシャ「うん……」


コニー「でもよく食糧庫に盗m」


サシャ「あー!あーー!」


サ父「お前の食い意地はまだ直っとらんのか……」


サシャ「……」


コニー「……」


サ父「これからお前が帰ってきても飯は出さんぞ」


サシャ「えええええ!!!?」


コニー(お父さんと仲いいんだな……)

マルコの実家



マルコ「……」


マルコ「…………」


マルコ(手抜きだ……)


マルコ「………………………」


マルコ「ZZZ」





     トロスト区 南部




ジャン「うえー、眼鏡の上官からニック司祭語録とかいう本貰っちまった……」


ミーナ「何か面白そうだね」


ジャン「!?」


ミーナ「もちろん笑えるって意味でね」


ジャン「……」ペラッ




あなた方は小さな幸せを見つけなさい。ニック司祭は小銭拾っただけで満面の笑みです


あなた方は小さな幸せを役に立てなさい。ニック司祭はその小銭で鳩にやるパンを買います


あなた方は小さな幸せを分かち合いなさい。ニック司祭はそのパンで隣人と釣りをします




ジャン「ニック司祭小せえええ!!」


ミーナ「でも良い事言ってるかも……?」


ジャン「そうか?」


ミーナ「……幸せって人と分け合うとかえって大きくなるものだよ」


ジャン「そうなのか?」


ミーナ「ジャンは彼女居たことないから知らないだろうけど!」


ジャン「てめぇこそ彼氏居たことあるのかよ!」


ミーナ「かか関係ないでしょ!!」


ジャン「もういい……」ペラッ




ニック司祭は言いました。『正直憲兵団より調査兵団に守ってもらいたい』


ニック司祭は言いました。『ウォール教っていう名前がまずダサい』


ニック司祭は言いました。『このネックレスもダサい。私の顔柄にしてくれ給え」





ジャン「うわぁ……」


ミーナ「うわぁしか言えないよ……」


ジャン「はあ……」


ミーナ「はあ……」


   トロスト区 西部




アニ「……」


ベルトルト「アニ……笑顔で笑顔で」


ライナー「……」ヒクヒク


アニ「誰がこんな事……」



ライナー「まずは俺が行く……見てろ」


ライナー「すみませーん!」コンコン


女性「はい?」


ライナー「奥さん、最近聞いたことないですか?ウォール教」


女性「ウォール教……ああ、確か壁を愛する宗教……でしたっけ?」


ライナー「はい。私共、ぜひウォール教に入っていただけないかと……」


ライナー「今なら入信手数料0!こちらの万能おしゃれポーチもついてきますよ!」


女性「ちょ、ちょっと主人と相談してきます……」


ベルトルト「ちょろすぎる……」


アニ「ライナーどうしたの?そんなにお腹減ってるの?」


ライナー「いや……ウォール教が広まればその分やり易くなるんじゃねぇかと思ってな」


ライナー「この人類が壁内に引きこもっててくれた方が……な」


ライナー「ベルトルト。今の俺は戦士だぞ」


ベルトルト「ライナー……!」


アニ「……壁への愛に生きる戦士ってところだね」


ライナー「うるせえよ!」



女性「あの~……年会費とかどうなってます?」


ライナー「それはですね……こちらの資料をご覧ください」


アニ「そんなの知らないよ?」


ベルトルト「ライナーが独自に入手したんだよきっと!」


女性「……」


ライナー「まだご不満ですか?今ならダブル洗礼名キャンペーンとかやってますよ?」


女性「……」


ライナー「教会へ行けば若い男性とお知り合いになれるかもしれませんよ?」


女性「……これにハンコを押せばいいんですよね?」



ベルトルト(そうだ!そこで倍プッシュだよ!)


ライナー「はい!どうぞこちらに……」


女性「私……入ります」ポン


ライナー「……ありがとうございました。壁に愛を」


女性「か、壁に愛……を……?」




       トロスト区 東部




クリスタ「良かったの?晩御飯……」


ユミル「は?私は某芋女みたいに食い意地張って無いぞ」


クリスタ「ごめん……でも何が出るんだろうね?」


ユミル「どうでもいいだろ……どうせくっだらねぇもんだろ」



クリスタ「それじゃ頑張った甲斐がないよ……来週からもやる人居なくなるんじゃない?」


ユミル「そうか、これ毎月やるのか……まあこうして訓練サボれるから歓迎だがな」


クリスタ「こればっかりは私も休ませて貰おうかな……」


ユミル「そうしとけ。こんな事やっても得するのはお前の敵だけだ」


クリスタ「うん……」


ユミル「そもそもお前は休まなすぎなんだよ!もっとだらけようぜ」


クリスタ「でもする事がないと暇すぎてやだな……」


ユミル「つべこべ言わずに今日は休め」


クリスタ「………」



クリスタ「それじゃ頑張った甲斐がないよ……来週からもやる人居なくなるんじゃない?」


ユミル「そうか、これ毎月やるのか……まあこうして訓練サボれるから歓迎だがな」


クリスタ「こればっかりは私も休ませて貰おうかな……」


ユミル「そうしとけ。こんな事やっても得するのはお前の敵だけだ」


クリスタ「うん……」


ユミル「そもそもお前は休まなすぎなんだよ!もっとだらけようぜ」


クリスタ「でもする事がないと暇すぎてやだな……」


ユミル「つべこべ言わずに今日は休め」


クリスタ「………」




     訓練所内 食堂






キース「貴様ら!静まれぇ~い!」


エレン「何だ……?」


キース「今から名前を呼ぶ者!こちらへ来るのだ!」


キース「コニー・スプリンガー!サシャ・ブラウス!」


キース「ライナー・ブラウン!ついて来い」



ライナー「……行ってくる」


ベルトルト「う、うん……」


アニ「……」


サシャ「フヘヘヘヘ……」


コニー「肉……」






  教官のお部屋




ニック「……」


キース「え~、ここに集まってもらったのは他でもない」


ライナー「……」


キース「今朝私の言った夕食を楽しみにしていろと言う言葉だが……」


サシャ(肉!?)


コニー(チーズも捨てがたい……)



キース「食べ物を期待していたのなら申し訳ない。君たちに贈るものはこれしかないのだ」


サシャ「」


コニー「えっ」


キース「ニック司祭」


ニック「実は……この布教活動は……」


ニック「二つの目的がある。一つはウォール教の宣伝だ」


ニック「もう一つは……そう。これは」


ニック「諸君が毎月故郷に帰れるように設けられた、言わば休日なのだ」



ライナー「……」


サシャ「そうだったんですか!?」


コニー「うわー、普通に布教してた……」


ニック「考えてもみたまえ。入信にハンコ一つなど、おかしいとは思わないかね?」


コニー「そうか……?」


ニック「……これが本物の入信届だ。色々と書き込む項目が見えるだろう?」


サシャ「本当ですね!」


コニー「こ……こんなの教えてよかったんですか?」


ニック「勿論口外は無用だ」



ニック「形骸化は宗教の本分だからな……広まってもても特に問題ない」


キース「……では食堂に戻れ」


ライナー「……」


コニー「教官っていい人だよなー!お前も誰かに言うんじゃねぇぞ!」


サシャ「言いませんよ!失敬な!」


ライナー(思いっきり騙されてた……)




      食堂




エレン「お前ら何貰ったんだよ!!教えろ!」


ジャン「羨ましいぞ!」


マルコ「分けてくれー!」


ライナー「……何もなかったぞ」


サシャ「そうですよー」


コニー「いやーほんと残念だなー」


ミカサ「あのハゲは皆の期待を裏切った……」



アルミン「ミカサそれ言っちゃダメ」


エレン「ちょっと分けて貰おうかと思ってたのに……」


ライナー「別に誰も肉が出るとか言ってなかっただろ?諦めろ」


ベルトルト「……」


アニ(お菓子とかじゃなかったの……?)


ユミル「何もなかったのかよ!」


クリスタ「教官何であんな事……」




     教官のお部屋





キース「ニック司祭……本当の目的は一体どちらですか?」


ニック「教官殿が知る必要はありませんよ……では失礼」ガチャリ


キース「……」


キース「なんだこの本は……東洋語辞典?」


キース「ヒメタチバナって乗ってるだろうか………あった」


キース「こっ!これは……!!!?」



   完

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