あかね「なんでも券?」 (60)
-あかりの部屋-
あかり「あとはネコさんの絵を描いて…」
あかり「~♪」
あかり「…でーきたっ!」
あかり「よぉーし! 早速渡しに行こーっと!」
―
あかり「お姉ちゃーん!」
あかね「あら、どうしたの? あかり」
あかり「はいっ、これ!」
あかね「これは…?」
あかり「あかりの感謝の気持ちを込めて作ったんだよぉ」
あかね「…なんでも券?」
あかり「うんっ! えっとね…」
あかり「いつも優しくしてくれるお姉ちゃんに、少しでも恩返しがしたくて作ったの!」
あかね「あかり…」
あかり「その券はね、使うとあかりがなんでもしてあげる券なんだよぉ」
あかね(な、ななな…)
あかね(なんでも!?)
あかり「でも三枚だけだから、よぉーく考えて使ってねっ!」
あかね(なんでもって事は…なんでもよね!?)
あかね(あかりとあーんな事やこーんな事とか…)
あかね(何に使っちゃおうかしら!?)
あかね(…そうだわ! もっと券を増やしてもらえば…)
あかね(……はっ! だ、だめよ!)
あかね(あかりの前では綺麗なお姉ちゃんでいなくちゃ!)
あかね(…でも本当に何にしようか迷うわ~!)
あかり「どうしたの? お姉ちゃん」
あかね「! ど、どうもしてないわよ!?」
あかり「…?」
あかね「こほんっ…とにかくありがとう、あかり」
あかね「大切に使わせて貰うわね」
あかり「うん! えへへ」
―
-翌日、大学-
あかね(うふふ♪)
あかね(なんでも券…)
あかね(お姉ちゃん大好き! って言ってもらおうかしら?)
あかね(それとも、キスとかしてもらっちゃったり…!)
ともこ「あかねちゃん、何持ってるの?」
あかね「あら、ともこ」
あかね「これはなんでも券よ」
ともこ「なんでも券?」
あかね「ええ、あかりからいつもありがとうって貰ったんだけどね」
あかね「これを使うと、あかりがなんでもしてくれるんですって!」
ともこ「な、なんでも…!」
ともこ(あかねちゃん嬉しそう…)
ともこ(私もあかねちゃんになんでも券、作ってみようかなぁ…)
ともこ(…な、なーんて)
あかね「ところでともこ、この券なんだけど…」
あかね「何か良い使い方とか無いかしら?」
ともこ「良い使い方?」
あかね「ええ、出来ればあまり変な事には使いたくないの」
ともこ「そうね……あっ、肩叩きとかはどうかしら?」
あかね「なるほど、それなら良いわね」
あかね「ありがとうともこ、参考にさせてもらうわ」
ともこ「ううんっ! どういたしまして!」
―
-赤座家、リビング-
あかね「ただいま」
あかり「おかえり、お姉ちゃん!」
あかね「あかり、ちょっとお願いがあるんだけど…」
あかり「なぁに?」
あかね「これを使いたいんだけど、いいかしら?」
あかり「なんでも券? うん、いいよぉ!」
あかね「それじゃ…はいっ」
あかり「えへへ、あかりは何すればいいかなっ?」
あかね「お姉ちゃんちょっと疲れちゃったから、かたた…」
あかね「……ま、マッサージをお願い出来るかしら!?」
あかり「わかったよぉ、じゃあ寝転がってねぇ~」
あかね「ええ!」
あかり「どの辺りをやればいい?」
あかね「全体的に! まんべんなく!」
あかり「はぁーい、じゃあ始めるねっ」
あかね「ええ、お願いするわ」
あかり「…んしょ、んしょ」
あかね(最高だわ~!)
あかり「どうかなぁ?」
あかね「とっても気持ちがいいわ! あかりは上手ねっ」
あかり「えへへ」
あかり「……よい、しょっ」
あかね「あ、もうちょっとこう…」
あかね「体を密着させるような感じで出来るかしら?」
あかり「こ、こう…かな?」
あかね「そう! それでお願い!」
あかり「わかったよぉ」
あかね(最っ高だわっ!)
―
あかね「ありがとう、すごく気持ち良かったわ!」
あかり「ふぅ、疲れたぁ~」
あかね(…!)
あかね「はい、あかり! これっ!」
あかり「えっ?」
あかね「なんでも券!」
あかり「え、えっと…」
あかね「マッサージで疲れたでしょ?」
あかり「まぁ…」
あかね「じゃあ、ご飯の前にお姉ちゃんと一緒にお風呂に入りましょう!」
あかり「お風呂に!?」
あかね「だめかしら?」
あかり「ううん、全然大丈夫だよぉ!」
あかね「良かった、それじゃあ行きましょうか!」
あかり「うんっ」
―
お風呂
あかり「お姉ちゃんとお風呂入るのって久しぶりだねぇ」
あかね「そうね」
あかね「お湯、熱くない? 大丈夫?」
あかり「ちょうどいい位だよぉ」
あかね「……」
あかり「? お姉ちゃん、どうかしたの?」
あかね「あ、いえっ! な、なんでもないわ!」
あかね「…そうだ! あかり、お姉ちゃんが背中を洗ってあげるわね」
あかり「わぁい! じゃあお願いしようかなぁ」
―
ゴシゴシ
あかね「これくらいで痛くない?」
あかり「うん、平気だよぉ」
あかね「……」
あかね「…あかり、大きくなったわね」
あかり「そうかなっ?」
あかね「ええ、とっても」
あかり「……あかりね、お姉ちゃんみたいになりたいなぁ」
あかね「お姉ちゃんみたいに?」
あかり「うんっ!」
あかり「背も高くて、頭も良くて、それから…」
あかり「すっごく優しい、お姉ちゃんみたいになれたらいいなぁ…って、思うの」
あかね「あかり…」
あかね「…きっと…いえ、絶対になれるわ!」
あかね「お姉ちゃんよりも、ずーっと素敵な人に…ねっ」
あかり「ほんとっ?」
あかね「ええ、だってお姉ちゃんの自慢の妹だもの!」
あかり(自慢の妹…)
あかり「えへへっ」
あかね「ふふっ」
―
-あかねの部屋-
あかね(……)
あかね(しまった…)
あかね(調子に乗って二枚も使っちゃったわ…!)
あかね(いや、でもあかりにマッサージしてもらって)
あかね(一緒にお風呂に入れたから満足かも…)
あかね(……とにかく、残り一枚)
あかね(最後くらいは慎重に、大切に使いましょう!)
―
-あかりの部屋-
あかり「お姉ちゃん、なんでも券喜んでくれたみたいで良かったなぁ」
あかり「優しい、あかりのお姉ちゃん…」
あかり「あかりもそんな風になれるかなぁ…」
あかり「えへへ、なれたらいいなぁ」
あかり「…あ、もう9時だ! そろそろ寝ないと」
カチッ
あかり「おやすみなさーい…」
~~~
「……」
「…ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
「待ってよぉ!」
「あかりを…」
「あかりを一人にしないでっ!」
「お姉ちゃんっ!」
~~~
あかね「あかり、起きて」
あかり「んっ…」
あかね「もうお昼よ」
あかり「…お姉…ちゃん」
あかね「土曜日だからって、いつまでも寝てちゃ…」
あかね「って、あかり…?」
あかり「なぁに?」
あかね「泣いてるの?」
あかり「えっ?」
あかり「あ、あれっ? ほんとだ…」
あかり「おかしいなぁ…あはは…」
あかね「…何かあったの?」
あかり「ううん、なんでもないよぉ!」
あかね「そう…」
あかね「ご飯の準備出来てるから、先に行ってるわね」
あかり「うんっ、わかった!」
ガチャ
バタン
あかり「……」
あかり「お姉ちゃん…」
―
-リビング-
あかね「あかり、ご飯粒こぼれてるわ」
あかり「あっ、ほんとだぁ」
あかね「あかり、お茶入れてあげるわね」
あかり「ありがとう!」
あかり「…ごちそうさまでしたっ」
あかね「あかり、お姉ちゃんが食器片付けておくわね」
あかり「うん、お願い!」
あかり(……)
あかり(優しい…お姉ちゃん)
―
あかね「~♪」
あかり「……」
あかり(やっぱり…やだよぉ…)
あかり「お姉ちゃん…」
ギュッ
あかね「あ、あかり!? どうしたの…?」
あかり「…あのね、あかり…怖い夢を見たの」
あかね「怖い夢?」
あかり「うん…」
あかり「お姉ちゃんが、どこか遠くに行っちゃう夢…」
あかね「…でも、それは夢のお話でしょ?」
あかり「ううん…」
あかり「その夢を見て、気付いたんだ…」
あかり「…いつか、お姉ちゃんはあかりから離れていっちゃうって事…」
あかね「……」
あかり「あかり、そんなの絶対やだよぉ…ぐすっ」
あかり「お姉ちゃんと、えぐっ…ずっと、ずっと一緒にいたいよぉ…」
あかね「…あかり」
ギュッ
あかり「ふぇ…」
あかね「大丈夫、お姉ちゃんはずっとあかりと一緒にいるわ」
あかり「ほんと、にっ…?」
あかね「本当よ」
あかね「…あかり、これ」
あかり「これは…」
あかね「あかりがくれた、最後のなんでも券」
あかね「約束して?」
あかね「『お姉ちゃんと、ずっと一緒にいる』って」
あかり「…!」
あかり「うんっ! 約束だよぉっ!」
あかね「ええ、約束!」
あかり「お姉ちゃん、あのね…」
あかり「…あかり、なんでも券たくさん作ったんだよぉ」
あかね(こ、こんなにいっぱい!?)
あかり「たくさんあれば、お姉ちゃんが喜んでくれるかなって!」
あかね(私の為に…)
あかね「あかりは優しいわね…」ナデナデ
あかり「えへへ」
あかね「…でも、お姉ちゃんにはもう要らないわ」
あかり「えっ?」
あかね「だってこれを使っちゃうと、あかりが絶対になんでもしてくれる…」
あかね「…それって強制的みたいでお姉ちゃんは嫌なの」
あかり「そっか…」
あかね「イヤなものはイヤって言える…」
あかね「それって、すっごく幸せな事だと思うわ」
あかね「だから、あかりには自分がしたいって思った事をして欲しいの」
あかり「…うん!」
あかり(あかりの、したいと思った事…)
あかり「お姉ちゃん…ちょっといいかな?」
あかね「どうしたの?」
あかり「もうちょっと…」
あかね「…?」
チュッ
あかね「えっ!?」
あかり「…あのねっ」
あかり「あかり、お姉ちゃんの事が大好きだよぉ!」
終わり
ありがとでした
綺麗なあかねさんになってるかな
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