あずさ「……私、いつか言いましたよね」 (42)

投下ペースままちまち。
そんなに遅くならないようにとは思う。

アイマス×男ssです。
苦手な方は回れ右を。

設定とかでなにか質問があったら言ってください。
何かいえるかもしれないし何も考えてないかもしれません。
アイマスについてはそんなに知識があるわけじゃないので、気になったことがあったら言ってください。

それでは、暇な方はどうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1381824986



風が吹いていた。
それは冷たい風だった。

アイマスは設定てか呼称とかよく知らずに書くのは…

男「今月はまだ七月だったよな」

そう言い、男はビニル袋をがさがさ鳴らしながらポケットに手を突っ込み、スマホで日付を確認する。

男「七月十九日か。 ほんと、なんでこんなに寒いのか」

時刻は夜の11時過ぎ。
これも地球温暖化が原因なのかと悪態を吐きつつ、温暖化なのになんで寒くなるんだよと心の中で思った。
七月十九日の使者が悲しんでいるんだろうと、適当な理由を考え思考を放棄する。
人間如きに自然の気まぐれさは理解できないだろうという判断からである。

>>3
大丈夫、呼称くらい分かるぞ

男「早く帰りたいな」

自然と独り言が増える。 一人暮らしを始めてからの癖だった。
男は先月21歳になった、普通の会社員だ。
男は少し浮かれていた。 大して寒いわけでもないのに寒いを連呼しているのは、逸る気持ちをどこかへぶつけておく為だ。

男の手にぶら下がっている袋。 中にはCDが入っている。
袋にはご丁寧にCD・MINASEのロゴ入りだ。
男は生まれて初めてCDというものを買った。 ほんの少し前までは一生買わないで暮らすんだろうと何の迷いもなく考えていた。

そんなに知識がないんなら調べてから書けばいいのに

>>7
すまん、ゲームとかででてたかもしれない個人の詳しいエピソードとかのことなんだ
基本的なことはおさえてると思う

きっかけは仕事の帰り。 車の中で何気なく流していたラジオだった。
壮大さを感じさせるイントロに始まり、これまた壮大な歌詞、そして歌い手の歌唱力。
全てに目を見張った。 一瞬で好きになった。
そして一旦帰宅し、下調べをしたうえで、購入の為に近場のCD屋に出向いたというわけだ。

男「……765プロねぇ。 アイドルなんてって馬鹿にしてたけど、凄かったんだな」

男はもう既に一人のファンになっていた。 ただのファンだった。
当然願うのが、

男「一度でいいからあってみたいな」

そう、男は普通のことを願った。

男(ん? なんだあれ?)

ふと地面に目を向けると暗くてよく見えないが、確かにそこになにかいるのが分かった。
それはとても小さく、

男(子犬かな?)

そう思った。
もともとかわいいものが好きな男は更にテンションが上がって。

手を叩いた。

男「おいで、おい……っ!?」

訳も分からぬまま、男は重力の感覚を失っていた。
夜の中に散りばめられた光すら目に入らず、完全な闇に包まれた。

?「あなたは~嘘つき……あら?」

気がつくと、男は天国にいた。
なぜか顔は極上のクッションに包まれ、シルクのような肌触り。
そしていい匂いのオマケつきだ。
あまりにも急な死だったが、これなら満足だと男は感じていた。

男(我が生涯に一生の悔いなしッ!)

男「我が生涯に一生の悔いなしッ!」

?「きゃっ」

クッションが声をあげたが、天国と今までいた世界は違う。
クッションが声をあげる世界は、とてもコミカルで面白いと男は素直に思った。

男「あれ、俺もう死んでるんだから我が生涯に一生の悔いなしっておかしいよな」

生涯を終えてから後悔を晴らしたわけだから、生涯には悔いを残してきたことになるんじゃないかと思った。

しかし、男はすでに気付いていた。 自分は死んでなどいないことに。
理由も理屈も分からないが、自分は生きていてとてつもないことをしてしまったという事実だけはしっかりと認識していた。

男の顔と、地面が一つになる。

男「すみませんでしたっ!!」

?「い、いえいえ。 こちらこそ……顔をあげてください」

男の人生を懸けた土下座はすぐに解かれることとなった。

男「本当にすみません、俺も何がなんだか全然これっぽっちも分かってなくて、決して貴方の胸に飛び込みたかった訳ではないというか、いえいえ飛び込みたくなかったという訳でもなくてですね」

?「私は大丈夫ですから。 少し落ち着いてください」

よかった、と男は心から思った。
仮にこの女性が心優しい方でなかったらとっくに警部が動き出していたであろう。
小学生に手を出したわけでもないのにだ。

男がそんなことを考えたのは、近くのアパートから空想ドラマチックガールが流れているからに違いない。
決してすぐ小学生に結びつけるロリータコンプレックスなどではないはずだった。

男「って、もしかして貴方は」

男が顔をあげると、先ほどまで考えていた人物の顔があった。
はて、知らぬ間に科学テクノロジーはすでにここまで発達していたのだろうか。 脳みその映像を匂い、質感まで完璧に再現することが出来るなんて。
さしもの黒雪姫もこれにはびっくりだろう。 なにせ男はニューロリンカーも、ましてやブレインインプラントチップなどもつけていないからだ。 そもそも開発されてさえいないが。

そんなことを考えてしまうくらい、男の前にはありえない光景が広がっていた。
さっき見た顔をすぐに忘れてしまうほど、男はボケてはいなかった。

男「三浦、あずささん……?」

あずさ「あら。 私のこと知っているんですか?」

うふふ、嬉しいわぁと、三浦あずさは音符が浮かんで見えるくらいの笑顔とともに口にしたが男はまだ現実を受け入れることが出来なかった。
そして頭の片隅で、今の笑顔は少し悲しそうだな、と考えていた。

男「何か、悲しいことでもあったんですか?」

やめとけばいいのに、と男は言ってから思った。
すぐに三浦あずさの顔も暗くなる。

あずさ「どうして、分かったんですか」

男「理由なんてないです。 ただ、なんとなくです」

あずさ「……少し、お話聞いてくれますか?」

男「三浦さんが俺なんかでいいのなら」

あずさ「それなら、お願いします」

その目は確かな意思を持って男を見た。

あずさ「ここの近くに公園があるんです。 そこまで着いてきてくれますか?」

男「もちろんです」

三浦あずさが一歩踏み出すたびに、男も一歩前に出る。
近すぎず遠すぎない丁度いい距離。
初対面でそんな自然な距離をとっていたことを二人は特に気にすることはなかった。

男「あ」

あずさ「? どうかしましたか?」

男「……いえ、なんでも」

男は気を遣わせないためにそう答えたが、一つ大きな問題があったことを忘れていた。

男(ところで、ここはどこなんだ……?)

急に見知らぬ地に飛ばされていたことを思い出した男は、まあどうとでもなるかと考え直し、三浦あずさとの距離を、また少し縮めた。
そこに、確かな予感を感じていたからである。
しかしそれが何の予感なのかは、まだ男には分からなかった。

しばらく歩くと公園に到着した。

あずさ「そこのブランコでいいですか」

男「えぇ、構いません」

ブランコに腰をかけ、お互いに沈黙する。

あずさ「……こんなところまで着いてきてくださってありがとうございます」

男「お礼を言うのはこちらの方でしょう。 三浦さんと一緒に過ごせるなんて夢のようで」

男は三浦あずさを知って間もなかったが、すでに彼女のことを好きになっていた。
もちろん、偶像という意味で。

>>9
ss書く上で自分に足らない部分がわかってるなら調べてから書けばいいんじゃないの?

あずさ「実は私、今日が誕生日なんです」

男「そうなんですか! おめでとうございます」

急な告白だったが、だから何なのか男には分からない。
しかし三浦あずさの誕生日と聞いて、男は自分のことのように嬉しいと感じていた。

あずさ(……)

男(……)

しかし三浦あずさの顔に笑顔が浮かぶことはなかった。
そこで男は、楽しい話を聞きに来たのではないことを思い出していた。

>>24
話上は問題ないんだけど全員のキャラのエピソード知ってる人からして違和感があったときのために

>>9
そういう部分で矛盾が生じたらどうするの?

あずさ「今私の誕生会の帰りなんです」

あずさ「そこにはたくさんの友達が着てくれました」

そこには、短大時代の親友もきてくれて。

もちろんそれはとても嬉しいんです。 私はその親友のことが大好きですから。
でも、その子、先月に結婚してしまって。
あのですね、私達、結婚について抜け駆けしないって約束をしていたんです。
それが破られてしまって、彼女は幸福の花嫁。
それでも私は嬉しかったんです。 だって大切な親友が幸せになれたんだって思ったら、そんな約束なんかにこだわらなくてもいいかなって思えましたから。
だから精一杯祝福しました。
自分のことのように嬉しかったです。

>>27
そいつを指摘してもらいたいんだ
もちろん気をつけるけど

それで今日その親友に会いました。
とっても幸せそうで、結婚してよかったねって何度もいったんです。
何度も何度もその子から新婚生活の話を聞かされました。
彼女がとっても幸せそうだったから、私も嬉しく……なれると思ってたんです。

でも聞いてるうちにだんだん。
それでも確かに複雑な気持ちになってきたんです。
一度応援するって、祝福するって決めたんだから何があっても笑い続けるってそう決めていたのに……っ

私は乾いた笑いしかできなくなっていきました。
心からおめでとうっていえないんです。
そんな自分が情けなくて……っ! 悔しくって!

気付いたら涙が止まらなくなっていました。
みんな凄く心配してくれて。 罪悪感でいっぱいになりました。

私が心の中で何を考えていたのか知られたら、絶対にみんなに嫌われちゃうって、そう、思って。
必死に笑顔を取り繕いました。 
そしたらだんだん涙も収まってきて、嬉しくて泣いちゃったって、嘘をつきました。
みんなあずさおかしいって笑ってくれて、私もつられて笑いました。

でもその間、その親友の顔は一度も見れませんでした。

あずさ「私は友美のこと、まだ心からおめでとうって言えてないんですっ」

あずさ「きっと羨ましくて、羨ましくて、おかしくなっちゃったんです!」

男「あずささん、落ち着いてください!」

ずっとその親友の名だしを避けていたのに、言ってしまったところを見て、男は三浦あずさが相当感情的になっていることを悟った。
そしてこのままでは仕事に悪い影響が出ると感じ始めていた。

男「……あずささん、思ったことを正直に言っていいですか」

あずさ「……大丈夫です」

男はスッと一つ息を吸った。

男「あずささんは凄い人です」

あずさ「……?」

この反応は予想していなかったらしい。 三浦あずさの顔には困惑の色が見える。
あそこまで感情的になっていたのだ。 よほど罪の意識が高いのだろう。

男「たとえば俺にあずささんたちと同じ約束をした親友がしたとして、」

男は本心で言う。

男「俺はそいつを殴ります」

あずさ「そんなことしなくても」

男「もちろん本気でやるわけじゃないんです。 約束破ったなって相手にちゃんと伝えることが目的なんです」

三浦あずさが暴力的な解決など望まないことは男も理解していた。
その親友との仲に亀裂が入るのを何より恐れているんだと感じていた。

男「それで、その後にいっぱい笑えばいいんです。 そんな気持ちは一人で溜め込んでおく物じゃない」

男はそこで笑顔を見せる。

男「辛い思いをさせられたなら、相手にも分けちゃいましょうよ。 そんなこともできない親友なんですか?」

あずさ「それは……」

三浦あずさは考え込むようなしぐさを見せた後、答えた。

あずさ「私は彼女のことを信じてますから」

男「よっぽど友美さんのことを思ってるんですね」

あずさ「はい! とても……って、え?」

男「友美さん。 口に出してましたよ」

あずさ「いやだ、私ったら」

もうしわけなさそうな顔をして俯いてしまう三浦あずさだったが、その顔には偽りのない笑顔が戻っていた。
少しずつ、本来の姿に戻ってきていることを感じて安心する。

男「すみません三浦さん。 俺なんかが生意気なこと言っちゃって」

ふと、唇にやわらかい感触。

男(あずささんの指、やわらかいな)

あずさ「私のことはあずさって呼んでください。 さっきからなんどもそう呼んでたじゃないですか」

それを聞いて思い出す。

男(俺も感情的になってたんだな)

本来、男は他人に言い聞かせるようなことはいわない人間だ。
それも自分の尊敬するような人物であれば尚更である。

男「すみませんあずささん。 俺も熱くなってたみたいで」

熱くなった人間の言葉など感情の奔流に等しい。
自制できなくなった言葉など信じるに足らないはずであったが、男はそこには妙な安心感を持っていた。
俺の言いたいことは全部伝わったはずだと。

あずさ「いえ、少し気持ちが落ち着きました。 お話を聞いてくださってありがとうございます」

男「それではお礼をもらってもいいですか?」

あずさ「お礼……ですか?」

きょとんとした顔をするあずさに男は言う。

男「歌を、歌ってほしいんです」

本当は最初に三浦あずさに会ったときから言いたかったことだ。
男の中の三浦あずさとは、歌姫そのものであった。

男「俺があずささんの……あずささんに飛び込んだとき歌を歌っていたでしょう」

あずさ「あのときは……あっ」

あずさは得心が言ったように笑う。

あずさ「隣に…ですね」

男「お願いできますか」

うーんそうですねぇと少し考えるあずさ。

あずさ「今の私にいつもの歌は歌えないですよ」

あずさ「アイドルの三浦あずさが見たいなら、多分期待に応えることができないと思います」

男「大丈夫です」

男は逆に嬉しくなって言う。

男「それってつまり、この俺しかいないこのステージで、今のあずささんの気持ちをたくさん詰め込んで歌ってくれるってことですよね」



それって凄く嬉しいです。

そう言ってもらえると安心して歌えますね。



三浦あずさはくすりと笑い、メロディーを紡いだ。

歌い終わったあずさに声をかける。

男「……凄かったです。 あずささんの気持ち、伝わってきました」

あずさ「それは、あまり楽しい気持ちではなかったですよね。 ……すみません、私はみんなに笑顔を届けるのが仕事のアイドルなのに」

男「……ここはテレビでも舞台でもないんです。 俺のために開いてくれたステージでしょう。 そして俺はアイドルとしての貴方じゃなくて言いといいました」

一瞬風がやんだ。 視覚だけに頼ったせいか、公園の明かりに照らされたお互いの顔が今までより鮮明に映った。

男「このステージは大成功です! とっても楽しかった!」

でも、と男が付け足す。

男「いつかは俺に歌ってくれた歌も聴いてみたいですね」

その歌は男の為に歌われた物だったが、その歌は友美に対して歌われていた。
そのことは男も感じていたし、あずさも分かっていた。

あずさ「こんなこと言ったら、アイドル失格だって怒られちゃうかもしれないんですけど」

三浦あずさはそういうと、幸せそうな顔で語り始める。

あずさ「私、いつかはたった一人のためだけに歌う存在に……たった一人のためだけのアイドルになりたいんです」

男「……あずささんがそれを望むなら、それは正しいんだと思います」

男「誰に批判されようが、目的を持っている人は強いです」

ふと、幸せな未来が頭を過ぎる。

男「自分の好きなことを精一杯やってるときって、とってもキラキラしてると俺は思います」

それがアイドルにとって大切なことなんじゃないかと男は漠然と思った。

あずさ「ふふふ」

するとあずさが不意をつかれたように笑い出す。
男は急になにかおかしなことを言ってしまったんじゃないかと焦りだした。

男「あのえっと、そうじゃなくて……」アタフタ

もう一度優しく笑うと三浦あずさは子供をあやすように言った。

あずさ「大丈夫です。 言いたいことはしっかり伝わりましたよ」

あずさ「それで美希ちゃんはあんなにキラキラしてるのかなって思ったんです」

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