さやか「奇跡も魔法も、あ…… あぁッ!?」(283)

恭介「僕の手は二度と動かないんだよ……奇跡か魔法でもない限り……」

さやか「……あるよ。奇跡も魔法も、あ……」

さやか「あぁッ!?」

恭介「!?」

さやか「………」

恭介「な、何だよ、さやか。突然大声出して……」

さやか「い、いやー、別に?何でもない何でもない!」タラタラ

恭介「………?」


さやか(……そういえば、あの時)


――――――――――――――――――――
―――――――――――――

恭介父『さやかちゃん、君に頼みがある。これを預かっていて欲しいんだ』

さやか『え、これって……恭介のバイオリンじゃないですか!なんであたしなんかに!?』

恭介父『……怪我の具合が一向に良くならなくてね。どうやら、恭介は自暴自棄になってしまっているようだ』

恭介父『もうバイオリンは見たくない、処分してくれと……私に頼んできたんだよ』

さやか『………』

恭介父『だが、私は諦めたくないんだ。父親として、恭介の夢を叶えてやりたい。例え完治する可能性がほとんど残っていなくとも……』

さやか『おじさん……』

恭介父『もしも……もしも奇跡が起こって、恭介の腕が治った時のために。あいつの楽器を残しておいてやりたいんだ』

恭介父『だから、君にこれを預かっていて貰いたい。あいつの演奏を、いつも素敵な笑顔で聴いてくれていた君にね』

恭介父『……頼めるかい?』

さやか『おじさん……!わかりました!』

さやか『あたしに任せてください!責任持って預かります!!』


――――――――――――――――――――
―――――――――――――

さやか(で、預かったのはよかったんだけど……)



さやか『恭介の、バイオリン………』ゴトッ

さやか『うわ、すごく使い込まれてる。……あいつ、本当にバイオリン馬鹿だったからなあ』

さやか『恭介……』グスッ

カサッ……

さやか『え』

G様「ハーイ!」

ブーン

さやか『ぎゃああああああああ!!!?』ブンッ

バキッ


――――――――――――――――――――
―――――――――――――

さやか(壊しちゃったんだったあああ!!)


さやか「………」ダラダラ

恭介「さやか……?凄い汗だけど、大丈夫かい?」

さやか「えっ!?あ、ああ!今日は暑いねー!!」

恭介「……?」


さやか「えーっと、何の話だったっけ! あ、そうそう!恭介の手!恭介の手の話ね!」

恭介「え、あ、まあ……」

さやか「手、もう動かないんだっけ!いやー恭介も大変だね!さやかちゃん同情しちゃうよ!」

恭介「さやかは僕をいじめてるのかい?」

さやか「だ、大丈夫だって!奇跡も魔法もあるんだよ!うん!」

恭介「………」

さやか「あ、あたし今日は帰るね!ちょっと用事思い出しちゃって!」

恭介「………」

さやか「それじゃあね、恭介!ちゃんとCD聴きなさいよ!また明日くるから!」

さやか「奇跡も魔法もあるんだからね!それじゃ!」

ガラガラッ バタン


恭介「………何だったんだ……」

さやか「キュゥべえ!いるんでしょ!」

QB「やあ、さやか。その様子だと願い事は決まったようだね」

さやか「決まったよ!だから早く契約してよ!」

QB「随分と乗り気だね。僕としてはそのほうが嬉しいけど」

QB「それじゃあ、早速契約といこう。君の願いを言ってごらん」

さやか「あたしが預かってた恭介のバイオリン!あれを元通りにして!」

QB「合点承知の助さ!」



QB「………えっ?」

さやか「何してんのよ!早く契約してよ!」

QB「えっ、いや、その。今のは僕の聞き間違いかな?バイオリンを直せと言われた気がするんだけど」

さやか「そうだよ!あれ壊したのがばれたら恭介に嫌われちゃう!」

QB「ええー………」

さやか「ほら、早くしてよ!こっちは一刻を争うのよ!」

QB「……まあ、君がそう言うのなら。本当に後悔しないね?」

さやか「後悔なんてあるはずない!」

QB「わかったよ……契約は成立だ」

QB「君の願いはエントロピーを……… えっ」

さやか「?」

QB「エントロピーを凌駕しない……だと……?」

さやか「な、何よ。まさか叶えられないなんて言うんじゃないでしょうね」

QB「……いや、確かに契約は成立した。   ………はずだよ、多分」

QB「恐らく、そのバイオリンも元通りになっているだろう……きっと」

さやか「なんだ、脅かさないでよ……」

QB「……まあ、いいか」

パァァァァ

さやか「これが……」

QB「ソウルジェム。魔法少女の力の源さ。さあ、受け取るといい。それが君の運命だ」

パァァ……

さやか「………」

QB「………」


さやQB「小さっ!?」


―――この日、見滝原に最弱の魔法少女が誕生した

――廃工場・魔女の結界内――

ガンガン!

まどか(これって、罰なのかな)

ガン!ガン!

まどか(わたしが弱虫でうそつきだから、きっとバチがあたったんだ)

ガンガンガン!!

まどか(きっと……)


ガンガガン!!ガガガガン!! ガンガガンガンガン!!


まどか(うるさっ!?)

――工場前――

ほむら(魔女の結界はこの辺りに…… えっ?)

さやか「あーけーろー!あけろってばー!!」ガンガン

ほむら「………」

ガンガンガン

さやか「あけろー!あけろっつってんだろー!! ……って、転校生!?」

ほむら「……何をやっているの、あなたは。家を閉め出された酔っ払いじゃあるまいし」

さやか「い、いや、その。あたしも魔法少女になったんだけどさー……」

ほむら「!! 美樹さやか、あなたっ!」

さやか「な、なんだよ。あたしがどうしようと勝手でしょ!」

ほむら「………」

ほむら「……それで?結界に乗り込むわけでもなく、入り口を叩いて何をしていたの?」

さやか「いやね。どうもこの中が結界みたいなんだけどさ……」スゥ

ブンッ パキィン


さやか「………」

ほむら「………」


さやか「……まあ、この通り。入り口を作ろうにもあたしの剣のほうが折れちゃうもんで……」

ほむら(弱っ!?)


さやか「でも、こんなことしてる場合じゃないんだ。中にまどかが……!」

ほむら「!? まどか!」カチッ

さやか「……って、消えた!?何なのあいつ!?」

さやか「まどか!大丈夫!?」

まどか「あ、さやかちゃん……」

さやか「……よかった、無事だったんだね。マミさんに続いてまどかまで亡くしてたら、あたし……」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「………」

まどか「あ、ほむらちゃん待って!ちゃんとお礼言わせてよ!」

ほむら「お礼なんて必要ないわ。わざわざ危険なことに首を突っ込むあなたが、見るに堪えなかっただけよ」

さやか「……転校生。そこは素直に受け取ってやりなよ」

さやか「あんたは何かと気に食わない奴だけど……それでもあんたがいなければ、まどかも無事じゃ済まなかったかもしれない」

さやか「だから、あたしからもお礼を言わせて。まどかを助けてくれてありがとう」

さやか「……それと。あんたの事、少し誤解してた。ごめん」

ほむら「………」


さやか「……さてと!それじゃあ帰ろうっか、まどか!」

まどか「あ、でも、仁美ちゃん達が……」

ほむら「警察と救急車なら呼んでおいたわ。私達まで関連性を疑われる前に、彼らに任せてここを離れたほうがいいわ」

まどか「そっか……それなら安心だね」

さやか「転校生、あんた気が利くじゃん!」

――翌日――

まどか「さやかちゃん。これからパトロール……だよね?」

さやか「まどか。どうしたの?」

まどか「あのね。邪魔にならない所まででいいから、一緒に連れて行ってほしいの。さやかちゃんのこと、心配だから……」

さやか「まどか……ありがと。すごく心強いよ」

まどか(だって、ほむらちゃんからあんな話を聞いたら放っとけるわけないよ……)


さやか「さーて!そんじゃ張り切ってパトロールといきます……か………」ズゥゥゥゥン

まどか「さ、さやかちゃん!?今の流れでテンション下がるっておかしいよ!」

さやか「………いやぁ、ね……恭介から預かってたバイオリン、見せに行ったんだけどさあ……」

さやか『じゃーん!これなーんだ!』

恭介『………』

さやか『正解は、恭介のバイオリンでしたー!ほらほら、新品みたいでしょ?どこも壊れてなんかないんだよ?』

恭介『………』イラッ

さやか『いやー、こんなに高そうなバイオリン使ってるなんて!あんたってほんとバイオリンの才能だけはあるよね!』

恭介『さやかは僕をいじめてるのかい?』

さやか『まっさかー!あたしが恭介をいじめるわけないじゃん!恭介の演奏大好きなのに!』

恭介『………』ビキビキ

さやか『それにしても、一時はどうなるかと思ったよ!でもこうして無事な姿のバイオリンを恭介に……』

恭介『帰れえええええええ!!』ガッシャーン


――――――――――――――――――――
―――――――――――――

さやか「……というわけなのよ。はあ……」

まどか(うわあ……)

さやか「恭介の奴、いきなり怒鳴るなんて酷いよね。骨折したせいでカルシウム足りてないのかな」

QB(しかも自覚なし……だと……?)

さやか「……ま、クヨクヨしてても仕方ないよね!気にせずパトロールといきますか!」

まどQB(そこは気にしようよ……っていうか謝ろうよ……)

――結界――

QB「結界が不安定だ。これは魔女じゃなくて使い魔のものだね」

さやか「楽に越したことないよ。こちとら初心者なんだから」

QB(魔女のものだったら、結界に入る事すらできないだろうしね……)


使い魔「ブーンブーンwwwwwwウゲッヘヘヘヘァァwwwwwww」

まどか「さやかちゃん、あそこに使い魔が!

使い魔「ブーンwwブゥーンwwwwバァブーwwwwwwチャーンwwwww」

まどか「逃げるよ!」

さやか「任せて!」パァァァ

使い魔「ブーンブゥーンwwwwwブッ…ゲホッ!ガハッ!!ゴホッ……   ………ブゥーンwwwwww」

さやか「これでも食らえ!!」ブンッ

カキィンッ

さやか「なっ!?」

使い魔「ブーンブゥーンwwwwww」

さやか「弾かれた!?何、今の……!」

QB「今のは……」

まどか「逃げられちゃう!さやかちゃん、もう一度攻撃を!」

さやか「ごめん、今ので筋肉痛が……」

まどQB(早っ!?)

まどか「ああっ!逃げられちゃった……」

杏子「ちょっとちょっと。何やってるのさアンタ達」

さやか「誰!?」

QB「やっぱり来たんだね、杏子」

さやか「魔法少女……? そうか、さっきのはあんたの仕業だね!」

杏子「そうだよ。見てわかんないの?あれ使い魔だよ。グリーフシードなんて持ってるわけないじゃん?」

杏子「四、五人食わせて魔女にすりゃあグリーフシードも孕むのにさ。卵生む前のニワトリ絞めてどーすんの?」

杏子「それに、アンタ如きじゃ使い魔の相手したって魔力を浪費するだけだよ。素人のクセに粋がってんじゃねぇ」

さやか「ふざけんな!あんたが邪魔さえしなければ!」

まどQB(邪魔が入らなくても負けてたと思う……)

杏子「まさかとは思うけど……人助けだの正義だの、そんな冗談かますために……そいつと契約した訳じゃないよねぇ?」

さやか「……!このっ!」バッ

ガキィン

杏子「ちょっとさぁ……やめてくれない?遊び半分で首突っ込まれるのってさ、ほんとムカつくんだわ」ブンッ

ドガッ

さやか「あ……!」

杏子「ふん、トーシロが。ちったあ頭冷やせっての」

さやか「………」

杏子「………」

さやか「………」

杏子「……おっかしいなぁ。全治3ヶ月ってぐらいに抑えたはずなんだけど」ダラダラ

まどQB(ええー……)

なぜ殺したし

さやか「……はっ!?私生きてる!?」ガバッ

まど杏QB(生き返った……)

杏子「ま、まあ……あれくらいで死なれても困るしね」ホッ

さやか「くそっ!あんたみたいな奴がいるから、マミさんは……!」

杏子「……はぁ。つーか何?そもそも口の利き方がなってないよね。先輩に向かってさぁ」

さやか「黙れぇっ!!」バッ

杏子「え、また!?」

ガキィン ドガッ

さやか「うあっ!?」ドサッ

まどQB(学習しろよ!)

さやか「ああああ!お腹に槍がああああ!!」ゴロゴロ

杏子「しまった、反射的に攻撃しちまった……」

さやか「痛い!いたいよぉ!」ゴロゴロ

まどか「さやかちゃんがやられちゃうよ!キュゥべえお願い、やめさせて!」

QB「どう見てもさやかの自爆じゃないか……」

さやか「うぅ……なんであたしがこんな目に……」グスッ

杏子「あー、その、なんていうか……ごめん?」

杏子「……って!そうじゃないだろ!アンタが使い魔なんか相手にするのが悪いんだよ!」

さやか「だってぇ……!あれ逃がしたら、誰かが殺されちゃうじゃん…… そんなのだめだよ……!」グスッ

杏子「………えーっと……」

さやか「マミさんのかわりに頑張ろうって、あたし決めたんだ……なのに使い魔も倒せないなんて………!」エグエグ

杏子「あのな?あたしは別に、使い魔を倒しても無駄だって事を教えてやろうと……」

さやか「もうやだ……!こんなのあんまりだよぉ……!」ボロボロ

杏子「あーもう、わかったよ!使い魔倒してくればいいんだろ!わかったから泣くんじゃねえ!」

まどQB(ええー……)

ほむら「そこまでよ!私は冷静な人の味方で無駄な争いをする馬鹿の敵!あなたはどっちなの佐倉杏子!」ドンッ!!


まどか「えっ」
QB「えっ」
さやか「えっ」
杏子「えっ」


ほむら「え、何この状況」




―――結局、この日はみんなで使い魔を倒して解散となった

――数日後・見滝原病院――

さやか(恭介、まだ怒ってるだろうな……結局理由はわからなかったけど……)

さやか(……帰ろっかな)

杏子「会いもしないで帰るのかい?今日一日追いかけ回したくせに」

さやか「! あんた……」


杏子「ここに入院してる坊やなんだろ?アンタがキュゥべえと契約した理由って」

杏子「魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだよ。他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ」

杏子「大方、坊やの怪我か病気を治すために契約したってところだろ?まったく。たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねぇことに使い潰しやがって」

さやか「え、違うけど?」

杏子「えっ?」

さやか「……という訳なんだけど」

杏子「……てめえは馬鹿か?ゴキブリ潰してぶっ壊したバイオリンなんかの為に契約したってのか?」

さやか「だって恭介に嫌われたくなかったんだもん!」

杏子「はぁー……ほんと馬鹿だね、アンタ」

杏子「惚れた男をモノにするなら、もっと冴えた手があるじゃん?せっかく手に入れた魔法でさぁ」

さやか「え……?」

杏子「今すぐ乗り込んでいって、坊やの手足でも潰してやりな。アンタなしでは何もできない身体にしてやればいい」

さやか「!!」

杏子「そうすれば坊やはアンタのもんだ。身も心も全部ね」

さやか「………許さない……おまえだけは絶対に許さない!」

杏子「えっ」

――歩道橋――

さやか「ここなら遠慮はいらないね」

杏子「いやいやいや。少し落ち着きなって」

さやか「今度はこの前みたいにいかないよ!」

杏子「いや、その、だから……さっきのはちょっと皮肉を言ってみただけで……」

さやか「あんただけは、あたしが倒す!」

杏子「あたしが言うのも何だけどさ……やめといたほうがいいんじゃないかな……」

タッタッタッ

まどか「待ってさやかちゃん!魔法少女同士で争うなんておかしいよ!」

さやか「邪魔しないで。まどかには関係ない話なんだから」

まどか「駄目だよ!こんなの絶対おかしいよ!それにさやかちゃん、とっても弱いのに!」

杏子「あたしもそいつの言う通りだと思うんだけどなあ……」

ほむら「私も同感よ」

杏子「って、うわっ!?いつからいやがった!?」

ほむら「話が違うわ。美樹さやかには手を出すなと言ったはずよ」

杏子「え、いや、向こうが吹っかけてきたんだけど?」

ほむら「同じよ。私が相手をする」

杏子(ええー……あたしが悪いのかよ……)


杏子「……まあ、別にいいけどさ。やりすぎんなよ?」

ほむら「わかってるわ」

杏子「ならいいんだけど。こいつ、あたしらが思ってるより全然弱ぇからな……」

ほむら「………それもわかってるわ……」ゲンナリ

まどQB(ですよねー)

さやか「この……なめんじゃないわよ!」バッ

ヒュォォォ

さやか「あっ!」

杏子「おいっ!」

ほむら「!!」

まどか「ああっ!?歩道橋という高い所にいるが故に吹いた突然の強い風のせいで他の魔法少女の物よりもだいぶ小さなさやかちゃんのソウルジェムが飛ばされて近くの林に!」

QB「説明乙」

ほむら「まずい……!」シュンッ

杏子「消えた!?あいつほんとに何者なんだよ!」

さやか「………」

まどか「さやかちゃん?」

QB「まずいことになったよ、まどか。さやかが吹き飛んでしまうなんて」

まどか「え……キュゥべえ?何言って……」

杏子「………」

ガシッ

杏子「どういう事だおい……こいつ、また死んでるじゃねえか……!」

杏子「あたし達の本体が……ソウルジェムだと……?」

QB「そうだよ。魔女との戦いを考えれば、人間の身体では脆過ぎるからね」

QB「君たち魔法少女が肉体を制御できるのは、精々が100メートル以内ってところかな」

QB「だから今みたいにソウルジェムが離れてしまえば、」

QB「こういうのは滅多に起こらない事故なんだけどね。普通は肌身離さず持っているだろうから」

QB「……それに、まさかあんな極小サイズのソウルジェムが生み出されるなんて僕も思ってなかったんだよ……」ゲンナリ

まど杏(お気の毒に……)


杏子「って、そうじゃねえ!てめえッ!それじゃあアタシ達はゾンビにされたようなもんじゃないか!」ガシッ

QB「むしろ便利だろう?脆すぎる人間の身体と違って、心臓を潰されようが全身の血抜かれようが、死ぬ事はないんだからね」

QB「これは君達の為にやってるんだよ?脆い人間の身体のままで魔女と戦ってくれなんて言えないよ」

QB「その点、この方法なら魔力さえあれば元通りだ。まさに無敵さ」


QB「……それに。そうでもなきゃ、さやかなんかとっくに死んでるよ……」ゲンナリ

まど杏(それはわかる……)

ガサゴソ

ほむら(……違う。これじゃない)

ガサゴソ

ほむら(……ヤマジュンパーフェクト? ゴクリ……って違う、これでもない)

ガサゴソ

ほむら(……これでも、ない。これも……違う……)

ガサゴソ

ほむら(……うう)

ガサゴソ

ほむら(ううっ……もういや…… 帰りたいよぉ、まどかぁ……!)グスッ



―――その後、ほむらが三時間ほど頑張った末にソウルジェムを見つけ出し、さやかは事無きを得た

――影の魔女・結界前――

ほむら「黙って見ているだけなんて、意外だわ」

杏子「今日のあいつは使い魔じゃなく、ちゃんと魔女と戦ってる。無駄な狩りじゃないさ」

ほむら「……本心は?」

杏子「ぶっちゃけ危なっかしくて目が離せない」

ほむら「でしょうね……」

杏子(結界の入り口だって、あたしが先回りして開けといてやったんだからな……)


バチッ バチバチッ

杏子「……あの馬鹿。やっぱり苦戦してやがる」

ほむら(ですよねー)

――結界内――

さやか「はああああっ!!」ダッ

ヒュンヒュンッ

まどか「!? さやかちゃん、危ない!」

ドスドスドスッ

さやか「ぎゃああああああ!?」ゴロゴロゴロ

まどか「さやかちゃん!!」

まどか(せめて避ける素振りくらい見せようよ!今のは私でも避けられたよ!)

さやか「うう……」グスッ


バリィンッ  スタッ

杏子「うっわ、案の定だよ……見てらんねーっつの」ゲンナリ

杏子「いいからもう引っ込んでなよ。あたしが手本を見せてやるからさ」

さやか「……邪魔、しないで。一人でやれる」バッ

まど杏(いや、無理だって!)


さやか「はああああああッ!!」ズダンッ

ドスドスドスッ

まどか「さやかちゃん!」

さやか「……ふ、ふ。ふ…あは……あはははは……!!」ユラァ

杏子「……アンタ、まさか……!」

ダダダダダッ ザシュッ!! ドスドスッ

まどか「ああ……っ!さやかちゃん……!」

さやか「はは!!あはははははは!!」

さやか「ほんとだぁ!!その気になれば、痛みなんて!!」

さやか「痛みなんて……簡単に………」

さやか「簡単……に………」


ドクドクドク


さやか「やっぱ無理!いたいよおおおおおお!!」ゴロゴロゴロ

まどか「さやかちゃああああん!!」

杏子「馬鹿かてめーは!!」



―――結局、魔女は杏子が倒した

まどか「さやかちゃん、あんな戦い方ってないよ……」

まどか「痛くなければ傷付いてもいいなんて、そんなの駄目だよ、いつか本当に壊れちゃうよ……」

さやか「ああでもしなきゃ勝てないと思ったのよ。あたし、多分才能ないから」

まどか「それで突撃した結果があのザマだもん……万が一……億が一勝てたとしても、さやかちゃんの為にならないよ……」

さやか「……あたしの為って何?」

バッ

さやか「こんな米粒にされて……何があたしの為になるっていうの?」

まどか「わ、私はただ……どうすればさやかちゃんが幸せになれるか考えて……」

さやか「だったらあんたが戦ってよ!!」

まどか「っ!」ビクッ

さやか「キュゥべえから聞いたわよ。あんた誰よりも才能あるんでしょ?」

さやか「あたしの為に何かしようっていうんなら、まずはあたしと同じ立場になってみなさいよ!!」

さやか「無理でしょ?当然だよね!ただの同情で米粒になれるわけないもんね!!」

まどか「そんな……」

さやか「何でもできるくせに、何もしないあんたの代わりにあたしがこんな目に遭ってるの」

さやか「知ったような事言わないで!!」

ダッ

まどか「さやかちゃん!」

さやか「ついでこないで!!」

ダッ   
         ポロッ

まどか「あっ」

恭介「僕の手は二度と動かないんだよ……奇跡か魔法でもない限り……」

さやか「……戦いに駆り立てたのは貴様だ!そんなこと言えるのかよ!!!」

さやか(馬鹿だよ、あたし……何てこと言ってんの……)

さやか(馬鹿だよ……!もう救いようが………  うぐっ)

ドサッ

さやか「………」


「き、君!大丈夫か!?」

「うわっ!?女の子が倒れてるぞ!」

「やばいってコレ……救急車呼んだほうがいいんじゃない?」


ざわ……ざわ……               ざわ……ざわ……
     ざわ……ざわ……               ざわ……ざわ……

まどか「ああっ!やっぱり死んでる!」ダッ

まどか「みなさんすみません!この子、大丈夫ですから!!」サッ

さやか「……っ!? あ……まどか」

まどか「ほら、さやかちゃん!騒がせちゃったんだから謝らないと!」

さやか「え、ええ? そ、その……ごめんなさい?」


「本当に大丈夫かい?」

「一応、病院で検査したほうが……」

「誰か携帯持ってるか?救急車……」


さやか「そ、その……大丈夫ですから!!」カァァ

バッ  ダダダダダッ

まどか「あっ、さやかちゃん待って!こんな一瞬で米粒程の大きさを奪うなんて何気にすごいよ!」



さやか(死にたい……)ズゥゥゥゥン

―――終電―――

ホストA「稼いだ金はきっちり貢がせないと。女って馬鹿だからさあ……」

ホストB「犬かなんかだと思って躾けないとダメっすよねー」

ホストA「油断するとすぐ籍入れたいだの言い出すからねー」

ホストB「捨てる時がホントうざいっすよね……その点、ショウさんはすごいっすよ」

さやか「……ねぇ。その女の人の話、もっと聞かせてよ」

ホストB「ん?」

ショウさん「お嬢ちゃん中学生?夜更かしはよくないぞ?」

さやか「ねぇ。この世界って守る価値あるの?あたし何の為に戦ってたの?」

さやか「教えてよ。今すぐあんたが教えてよ。でないとあたし……」

さやか「でないと…… でない、とあたし……」グスッ

ショウさん「えっ」

ホストB「えっ」

さやか「あたし……あたし……!どうにかなっちゃうよおおおお!!うわあああああん!!」ボロボロ

ショウさん「え、ちょっ……」


ポン


車掌「お客さん……ちょっと事務所でお話聞かせてもらえますか」

ショウさん「」

ホストB「」

―――駅のホーム―――

ホストB「危うく犯罪者にされるところでしたね……」

ショウさん「まったくだ。しかも罪状が不名誉すぎる……」

さやか「ごめんなさい……」グスッ

ショウさん「あーもう、泣くなって!また誤解されるだろ!」

さやか「はい……」シュン


ホストB「しかし。こんな夜中に一人で出歩いて、おまけに大泣き……か。何かワケ有りっぽいっすね?」

ショウさん「………」

さやか「………」グスッ

ショウさん「……話してみろよ」

さやか「え……?」


ショウさん「女性の話を聞くのがホストの仕事だ。泣いてる理由を聞かせてみな、お嬢ちゃん」

テクテクテク

杏子(……違う。ここにはいない)

テクテクテク

<イイゾ…テツミタイニアツクカンジルヨ…
<ハッシャ……スルヨ……
                ズギューンン

杏子(うえぇ……こんな所にいるわけねぇ)


テクテクテク

杏子(……ここにも、いない。ここも……違う……)

テクテクテク

杏子(……うう)

テクテクテク

ほむら(ううっ……どこだよぉ…… どこに行っちまったんだよぉ、さやかぁ……!)グスッ



―――さやかはホストの車で家まで送り届けられ、杏子の事を知る由もなかった

――翌日――

さやか「……というわけで、さやかちゃん完全復活です!ご心配おかけしました!」

ほむまど杏QB(ええー……)

さやか「いやー、偶然同じ電車に乗ってたお兄さん達が相談聞いてくれてさぁ。経験豊富な人の意見は参考になるね!」

ほむまど杏QB(………)イラッ


さやか「……なんてね。わかってるよ、みんなの言いたい事は」

さやか「あたし、自分が人間じゃなくなったって聞いてショックでさ。魔法少女になんてなるんじゃなかったって、すごく後悔した」

さやか「あたしを心配してくれてる人の事を突っ撥ねて、一人でかっこつけちゃってさ。馬鹿みたいだった」

さやか「一度泣いてすっきりしたら、そんな自分が滑稽に思えてきちゃって。全部、自業自得なのにね」

まどか「さやかちゃん……」

実際に「泣く」っていう行為はストレスを緩和させる作用があるらしいね

さやか「だから、みんな……心配かけて本当にごめんなさい!」バッ

まどか「……ううん、いいの。さやかちゃんが戻ってきてくれたなら、私はそれで……」グスッ

さやか「まどか……… ありがとう、こんなあたしの友達でいてくれて……」グスッ

まどか「さやかちゃん……」

まどさや「うっ……うう…… うわああああああんん!!」ダキッ ボロボロ


ほむら「………」

杏子「………」


ほむ杏(羨ましい……)

さやか「……うん、落ち着いた。ありがとね、まどか」ズビッ

まどか「えへへ。二人とも、一杯泣いちゃったね」

さやか「そうだね。あーあ、こんなに泣いたの久しぶりだよ」

さやか「恭介の奴、あたしにこんな思いさせてさ。今度あったら一発殴らせて欲しいね!」

まどか「ふふっ。さやかちゃんったら」


QB「やれやれ、一件落着ってわけかい?少しはエネルギーが手に入ると思ったのに」

QB「あーでも、さやか程度のエネルギーじゃ大した足しにならないかな?やっぱりまどかを契約させるしか……」ブツブツ


杏子「……へぇ。その話、詳しく聞かせてもらおうか?」

QB「あっ」

ほむら「……以上よ。こいつの目的は、まどかを魔女にすることで得られる絶望のエネルギーで宇宙の寿命を延ばす事」

さやか「あたし達魔法少女が……魔女の卵だったっていうの!?」

まどか「そんな……」


杏子「で、異論は?」

QB「異論はないよ。暁美ほむらの言う通り、僕達インキュベーターの役割は

杏子「口の利き方!」ドガッ

QB「みぎぃっ……! い、異論はない……です」ボロッ

さやか「じゃあ、こいつが何度もまどかを契約させようとしたのは……全部それが目的だったって事?」

ほむら「そうよ」

まどか「………」

さやか「……あんたはそれを知ってたから、あたし達を魔法少女から遠ざけようとしてたんだね」

ほむら「……ええ」


杏子「なるほどね。あたし達を騙してたってワケだ」

QB「騙す、という行為自体僕らには理解できないよ認識の相違から生じる判断ミスを後か

杏子「口の利き方!」ドゴッ

QB「ぴぎぃっ!ごめんなさい、杏子……さん」ズタボロ

杏子「ま、そういう事なら話は早ぇ。あたし達だけでワルプルギスの夜をぶっ潰せばいいんだからな」

ほむら「そういう事よ。ワルプルギスの夜さえ倒せば、後の魔女は脅威足り得ない」

さやか「よーし!親友のまどかを守るためだもん、あたしも頑張っちゃうよー!」

杏子「いや、アンタは来るなよ?」

さやか「えっ?」

ほむまど杏「えっ?」

杏子「え、いや、その。相手が最強の魔女だって事はわかってるよな?」

さやか「わかってるよ!だからあたしも戦う!まどかを契約させたくないもん!」

杏子(……純粋に友達思いな眼差しで心が痛い。こういう時どういう顔すればいいかわからないの)

QB(逸らせば……いいんじゃないかな)

ほむら(残念だけどあなた戦力外なのよね)


ほむら「……美樹さやか。あなたにはまどかの護衛をお願いするわ」

杏子「!?」

さやか「護衛?」

ほむら「もしも使い魔が私達を通り抜け、避難所に向かった時……あなたにはそれの相手をお願いするわ」

杏子(!)

杏子「そ、そうだぜさやか!まどかを守れるのはおまえしかいない!責任重大だ!」

さやか「!! 私しかいない……責任……重大……」キラキラキラ

さやか「奇跡も魔法も、あ…… あぁッ…んっ///」ビクビク

さやか「わかった!まどかの安全はこのさやかちゃんが保証するよ!」

ほむら「……ええ、お願いするわ。まどかもそれでいいわね?」

まどか(何でだろ。私、ほむらちゃんのこと信じたいのに。嘘つきだなんて思いたくないのに)

さやか「あたしがいる限り、まどかに使い魔なんて近寄らせないから!大船に乗った気でいてよ!」

ほむら「さすがね。あなたになら安心して任せられるわ」

さやか「おう!ドンとこい!」

まどか(全然大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない……)

――ワルプルギスの夜・当日――

ほむら「杏子。覚悟はいいわね?」

杏子「ああ。腹ごしらえも済んだし、あたしは絶好調さ」シーハー

ほむら「……そう、頼もしいわ」


杏子「一応、一つ確認しておくけどさ。使い魔が出てきたら……」

ほむら「全力全開、他の何を捨ててでも最優先で潰して頂戴。切実に」

杏子(ですよねー)

杏子「ま、ベテランの魔法少女が二人もいるんだ。そうそう抜かせねーよ」

ほむら「頼むわよ、本当に。お願いだから」

杏子「……気持ちはわかるよ」


ほむら「……っ!来るわ!」



杏子「はん、いよいよお出ましかい。腕が鳴るぜ」



ほむら「油断しないで。あいつは並大抵の相手ではないわ」



杏子「するかよ。あたしだって馬鹿じゃない。 ……こんな威圧感を出す魔女なんてそうそういないさ」



ほむら「……今度こそ、決着をつけてやる!」


――避難所――

まどか「今頃、ほむらちゃん達は戦ってるんだね……」

さやか「……うん」

QB「二人とも、彼女達が心配……ですか?」

まどか「……契約はしないよ。ほむらちゃんとの約束だから」

QB「僕としてはそれでも構わな………構いませんけど。あの二人がワルプルギスの夜に勝てる確率は、不可能に近いと…… 思います、よ?」

まどか「………」

QB「君の運命を変えられないと悟った時、暁美ほむら……さんのソウルジェムはグリーフシードへと変わるだろ……でしょう」

QB「彼女自身にもわかってるんだ。だから選択肢なんてない」

QB「勝ち目のあるなしに関わらず、彼女は戦うしかない………んですよ」

さやか「………」

まどか「………」

さやか「……まどか。あたし、行くよ」

まどか「さやかちゃん……?」


さやか「……ほんとはね、薄々感付いてはいたんだ。あたしがここに残らされたのは、戦力外だからだろうって」

まどか(あ、自覚はあるんだ……)

さやか「でも……でも、やっぱり無理だよ」

さやか「みんなが戦ってるのに、こうして見ているだけなんて。あたしだって戦える力を持ってるんだ」

まどか「さやかちゃん……」


さやか「だから……行くよ。"友達"を助けに、さ」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「……まどか。あたしが自暴自棄になってた時……こんなあたしを、あんたは最後まで見捨てないでくれたよね」

さやか「最初に出会った時は、あたしがあんたを助けたけど……でも。それからはいつだって、あたしを助けてくれたのはまどかの方だった」

まどか「………」

さやか「ありがとね、こんなあたしの友達でいてくれて。まどかみたいな親友を持った事が、あたしの一番の自慢だよ」

まどか「……っ!さやかちゃん……!」


まどか「絶対……絶対、戻ってきてね!またいなくなったりしたら嫌だよ!!」

さやか「……うん。行ってくる!」

――――――――――――――――
――――――――


杏子「……く、そッ!なんてタフさだよ……!」

ほむら「くっ……!」


魔女『キャハッ!キャハハハハハハッ!!』


杏子「グリーフシード、あといくつ残ってる?」

ほむら「……さっきので、最後よ」

杏子「!! くそ……!打つ手なしかよ……!」

ほむら「……! 杏子、後ろッ!!」

杏子「なっ……」

使い魔『キャハハハハハッ!』


ザシュッ

ほむら「杏子!」

杏子「……わりい、ドジっちまった。あたしらしくもない……」

ポタッ……

ほむら「……あなたは休んでいて。私一人で持ち堪えてみせる」

杏子「でも……」

ほむら「いいからッ!」

杏子「……わかったよ。少し体力が回復したら援護する。だから、死ぬんじゃねーぞ」

ほむら「当然よ。 ……約束を果たすまで、私は死ねない」

杏子「……そうかい」

魔女『キャハ!キャハハハハハハ!』

ほむら(……倒せなくてもいい。こいつが街を去るまで、ここで足止めできれば……!)ジャキン

パラパラパラ

使い魔『キャ、ハ……』シュゥゥゥ

ほむら(優先するべきなのは使い魔の方。避難所に近寄らせないように…… っ!?)


使い魔A『キャハハハハハ!』

使い魔B『キャハッ!キャハハッ!』

使い魔C『フヒッ!フヒヒッ!!』

使い魔D『ティヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!』


ほむら「くっ、こんなに……ッ!?」

>>168
恭介「奇跡も魔法もないけど、さやかをイカせることならできるんだ!」クチュクチュ

さやか「んほおお!恭介の指まんこしゅごいのおおおおお!」プシャアアア

杏子「馬鹿、ほむら!本体を忘れんな!」

ゴゴゴゴゴ

ほむら「っ! しま……ッ!」

ズドォン……


ほむら「くっ…もう時間を止められないなんて……」

魔女『キャハハハハハハハハ!』

ほむら「……どうしてなの……!何度やっても、あいつに勝てない……!」


使い魔『キャハハハハッ!』ヌッ

ほむら「あ……」

スッ……

ほむら「………そっか。私、これでお終いかぁ……」

使い魔『キャハ!キャハハハハッ!』

ほむら「ごめんね、まどか……」

ダダダダダッ

使い魔『キャハ!キャハハッ!!』

さやか「でええええええええええいっ!!」ダッ

使い魔『キャハッ!?』

ドンッ ズザザザザー


さやか「ぎ、ぎりぎりセーフってとこだね!」ハアハア

ほむら「なっ……!美樹さやか!?」

さやか「待たせたね、"ほむら"。真打登場だよ」

ほむら「馬鹿な事を言わないで!あなたがいたところで敵う相手ではないわ!」

さやか「そんなの、やってみなければわからないよ。怪我人はそこで見てなさい!」ダッ

ほむら「さやか!」

杏子「あれは、まさか……さやか!?何でアンタがここに!」

さやか「はあああああっ!」ダダダダダッ

魔女『キャハハハハハハハッ!』

さやか「はああああああ      あっ」ツンッ

魔女『キャハッ?』

ズベシャッ


ほむら「………」

杏子「………」


ほむ杏(あの馬鹿!)

さやか「あああああ!痛い!いたいよお!鼻があああああ!!」ゴロゴロゴロ

ほむら「………」

杏子「………」


さやか「これが、最強の魔女……!なんてプレッシャー……あたしの攻撃が届かないなんて……!」ヒリヒリ

ほむら(何言ってるのかしらこいつ)

杏子(絶対関係ないだろ……)


魔女『キャハ……?』


杏子(おいおい……ワルプルギスの夜にまで呆れられてるじゃねぇか……)

ほむら(時間、戻そうかしら……)

さやか「はあああああ! あっ」ドゴン

杏子「ああっ!周りに浮かんでたビルが偶然さやかの通り道に!!」


さやか「でやああああああ! へぶっ!?」ベシャッ

ほむら「ああっ!強風に巻き込まれたどこかの家の洗濯物が美樹さやかの顔面に直撃したわ!!」


さやか「どりゃあああ! ……えっ……? ぎゃああああああ!?」ゴロゴロゴロ

杏子「ああっ!思った以上に使い魔の身体が硬くてさやかの渾身の一撃がそのまま本人のダメージに!!」


さやか「だあああああああ!  うぐっ!?」ドサッ

ほむら「ああっ!勢いよく走り出したせいで留め具が外れてソウルジェムが!!」

さやか「はあ、はあ……なんて強さなの……!手も足も出ない……!」ボロッ

ほむ杏(いやいやいやいやいや)


QB「やあ。気になって様子を見に来たけど、やっぱり苦戦しているみたいだ

杏子「あぁ?」ギロッ

QB「ヒッ!? く、苦戦しているみたい……ですね……」

ほむら「……何をしに来たの、インキュベーター。まさか、まどかを……!」

QB「そんな滅相もない!僕は鹿目まどかとはまだ

ほむら「………」ギロッ

QB「………鹿目まどかさんとは、まだ契約していません」

ほむら「だったら消えなさい。今はあなたに構っている暇はないの」

QB「え、ええ、その事なんですけどね。一応様子を見ておこうと思ってここに来た次第です、はい」

杏子「ああ?冷やかしにでも来たのかよ」

QB「悪意のある受け取り方をされるとそういう事に…… ひっ!?すいません何でもないです!」

杏子「……チッ。あたしらに勝ち目はねぇってか?」

ほむら「………」


ほむら「………」チラッ

杏子「………」チラッ


さやか「……っ!…………!!」ゴロゴロゴロ


ほむ杏(はぁ………)

杏子「……なんか、勝てる気がしないんだよな。正直ここまでとは思ってなかったよ」

ほむら「同感ね……」

QB「これでわかっただろう?君達がどう足掻いたところで、運命に抗うことはできないのさ」

杏子「おまえ何調子乗ってんだ?」

ほむら「殺すわよ」

QB「ふっ。ワルプルギスの夜に恐れをなした君達なんて、どれだけ凄んでも怖くはないさ」キリッ

ほむ杏「………」イラッ


QB「それよりどうするんだい?さやかはまだ戦っているようだけど」

ほむら「………」

ほむら「……何度やっても。何度やっても、あいつに勝てない」

ほむら「そして……繰り返せば繰り返すほど、それだけまどかの因果が増える……」

ほむら「私のやってきた事は、結局……何の意味も……!」

ジワ…


さやか「違うよ、ほむら!」

ほむら「っ!」

さやか「あんた言ってたじゃないか!必ずまどかを守ってみせるって!あれは嘘だったの!?」

ほむら「………」

さやか「違う……!違うでしょ!あの時のあんたの顔は、生半可な気持ちで言ってるような顔じゃなかった!」

ほむら「………」

さやか「だったら諦めんな!あたしは諦めない!」

さやか「まどかはあたしの一番の親友なんだ!絶対守ってみせる!」

ほむら「………さやか……」


杏子(かっこいいはずなのに、なんか悔しい……)

ほむら「……あなたに説教される日が来るなんて。私も落ちぶれたものね」

さやか「なにおうっ!?」

ほむら「……ありがとう、"さやか"」

さやか「…っ! どう致しまして!」


QB「いつの間にか仲間外れにされてるよ、杏子。悔しいね?」

杏子「うっせーよ!」

QB「……それにしても、さっきから妙に静かだね」

杏子「……ん。そういえば……そうだな」


魔女『…………………』



ほむ杏さやQB(ん?)

さやか「……あれ?魔女が動かない?」

杏子「何してんだ、アレは……余裕見せてるつもりなのか?」

QB「……これは、僕にもわからない事だよ。過去のワルプルギスの行動にも前例はない」


ほむら(どういう事……?こんなの初めて……)

ほむら(……こんな事、今までは…… !?)

ほむら「……ッ!! まさかッ!?」

杏子「わかったのか、ほむら!?」

ワルプル「そう言えば、巴マミがいない……?」

ほむら「さやか!もう一度あいつに攻撃しなさい!」

さやか「え、ええー……あれ硬いんだけど……」

ほむら「いいから、思いっきりやるのよ!いいわね!」

さやか「うえー……わかったよ……」ダッ


さやか「おりゃあああああああああ!!」ブンッ

ガンッ ビリビリビリ ポキン

さやか「やっぱり無理いいいいい!!腕がああああああ!!」

ほむら(私の予想が正しければ……これで……!)


魔女『…………ハッ』


さや杏QB「!?」

ほむら「やはり……そういう事だったのね!」

杏子「どういう事だ、ほむら!?一体何だっていうんだ!」

QB「それは僕からも聞きたいね、暁美ほむら。君は何に気付いたというんだい?」


ほむら「……今までワルプルギスの夜に立ち向かってきたのは、最低限の実力を持った魔法少女達だった」

ほむら「でも、あいつはそれを嘲笑うかのような笑い声と共に、全てを破壊し尽していく……」

QB「それがどうしたというんだい?最強の魔女なんだから当然じゃないか」

ほむら「……さっきので気が付かなかったかしら?今までとは違う、あいつの……」


ほむら「そう、まるで……路傍の虫ケラを哀れむかのような、冷めた笑い声に」

杏QB「!?」

ほむら「ワルプルギスの夜は、私と杏子の二人で挑んだ時には容赦なく攻撃してきた」

ほむら「ところが、さやかが現れてから……さやかは自滅以外でダメージを受けていない」

ほむら「そう。あいつの不可解な行動は、さやかの存在が鍵となっていたのよ」

QB「なんだって!?まさか、それは……!」

ほむら「……あいつにとってさやかの攻撃は、虫刺され程度にしか受け取られていない。つまり……」

ほむら「あまりにもレベルが違いすぎて、わざわざこちらを攻撃するまでもないと思っているのよ!」

杏QB「なん……だと……?」

ほむら「これはチャンスよ!今のうちに畳み掛けるわ!いくわよ杏子」

杏子「お、おう……?」

さやか「あたしはどうすればいいんだよ!」

ほむら「あなたは攻撃を続けなさい!どうせ届かないだろうけど!」

さやか「わかった!」


杏子「ありったけの全力だ!食らいやがれ!」

ズガガガガガ

魔女『………ハッ……?キャハ?』


ほむら「これで……どう!?」

ドドドドド

魔女『……! キャハ!キャハハハハ!?キャハハハハハハッ!!』


さやか「おりゃあああああ! って、攻撃してきた!?」

ズゴン  ドサッ

              ピシッ

ほむら「……!!身体に罅が入った!いけるわ!」

杏子「あたしに任せろ!おらあああああ!!」

ガリガリガリガリガリ

魔女『キャ……ハ……?キャハハ………?』

バキバキッ ベキッ


さやか「うわっ!何か出てきた!?」

ほむら「!! 恐らく、それが核よ!さやか!!」

さやか「ッ!わかった!!」ダッ


魔女『キャ……ハ………』

ピシッ……ピキ……


さやか「うおおおおおおおお!!」

―――あたしは、弱かった

―――魔法少女としても、人としても。とってもとっても弱くて、そのせいでみんなに迷惑だってかけた

―――でもね。そんなあたしだって……こんな時くらい、誰かの力になりたいよ

―――正義の味方の魔法少女。最初にマミさんを見た時から、ずっと憧れてた

―――そして今、みんながあたしを呼ぶ声が聞こえる。目の前にいる悪の親玉を倒せと


―――弱くたっていい。例えあたしの身体が人間じゃなくたって、そんなの関係ない

―――あたしは、この街を…… 親友を守る為に、戦うんだ!


―――だからッ!!

アレイヤードスペシャル!!

さやか「はああああああッ!!」


魔女『キャハ……ッ!?』


ほむら「決めなさい、さやか!!」

杏子「やれ!ぶっ潰せ、さやか!!」


魔女『キャ……?』



さやか「これで……ッ!終わりだあああああああッ!!!」



ガキィィィィン

さやか「………」

ほむら「………」

杏子「………」

魔女『……………』


QB「やったか!?やったのか!?どうなんだい!?」

ほむ杏「………」イラッ


魔女『……………』

さやか「………」

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ピシッ ピキ…

さやか「……杏子。ほむら」

ほむら「……何かしら」

杏子「さやか……?」


ピシピシッ

パリィンッ……



さやか「……無理だった。交代して」ジンジン

ほむ杏QB魔女(ですよねー)



――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――

―――こうして、ワルプルギスの夜は撃破された

―――最後の最後でおいしい所を譲ってあげたのに、それを無駄にするのは……

―――やっぱりさやかはさやかだな、と思わざるを得なかったけれど



―――でも、そのお陰で。まどかとの約束を、果たす事ができた

―――最弱のあなたが、最強の魔女を倒す鍵となるなんて。皮肉もいいところね


―――だから……

―――少しだけ、感謝してあげてもいいわ。さやか

――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――


さやか「……ふぅ。ようやく使い魔程度なら倒せるようになってきたね……」

まどか「さやかちゃん、お疲れ様!」

さやか「ありがと、まどか!疲れた時にそう言って貰えると、頑張り甲斐もあるってもんだよ!」

まどか「最近は勝ち続けてるね。さやかちゃんのお陰で街も随分平和になったと思うよ!」

さやか「ま、所詮は使い魔だけどね。魔女の相手はほむらと杏子に任せるさー」


さやか「それじゃ、帰ろうか!まどか!」

まどか「うん!」

―――あれから。あたしは使い魔退治専門の魔法少女として、見滝原で活動している

―――ほむらは学校の合間を見て、杏子と二人で他の街の魔女を退治しに行く事が多くなった

―――二人のお陰で、他の街も随分平和になってきたと思う

―――まあ、この前杏子が小さな女の子を連れてきて、『今日からこいつと一緒に暮らす』なんて言い出した時は驚いたけど。

―――それと、ほむら。魔女退治を頑張るのもいいけど、遠征した時に長期滞在ばっかりするのはやめなよね。勉強、追いつけなくなるよ?

まどか「そういえば、さやかちゃんのソウルジェム……浄化しなくていいの?」

さやか「ん?」

まどか「使い魔専門だとグリーフシードが手に入らないから、濁りが溜まっちゃうんじゃ……」

さやか「あー、その事か。それなら全然平気なのです!」

まどか「え?」

さやか「あたしのソウルジェム、こんなんだからさ。グリーフシード一つでだいぶ長い間持つんだよね」

まどか「そっかー。それならよかったね!」

さやか「ま、こればっかりは才能のなさに感謝かな?なーんてね!」

まどか「もう、さやかちゃんったら!」

―――前よりマシになったとはいえ、あたしは今でも弱いまま。弱い魔女ですら相手にならない

―――でも、それでも。あたしの周りには、いつだって支えてくれる友達がいた


―――弱くたって、最弱だって。ここにあたしの居場所と、帰りを待ってくれる人がいる

―――それを守る。もう二度と、この気持ちを忘れたりしない


―――だからあたしは、戦い続ける




おわり

恭介「おわり」

色々と矛盾してたり才能ないのに書き続けたりしてごめんよ

こんなに長い時間付き合ってくれてありがとうございました!

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