影女「あ、喋れる…」(467)

【影女】

影女「影だから喋れないと思ってたけど、喋れるんだ!」

影女「よーし、試しに次に住んだ人は声を使って驚かせるぞ!」

影女「…けどこんなボロ屋敷に誰か住むのかな」

影女「人が居なくなって5年、次に人が来るまであと何年…?」

影女「もしかしたら取り壊されるかもしれない…」

影女「障子に映るだけのわたしなんか壊されたらもう存在できないだろうし…」

影女「そんなの。やだな…」

ガラガラ

影女「!?」

男「おー、なかなか良い家だな、これから住むのに申し分ないぜ」

影女(き、きたー!)

男「こんな広い家で一人暮らしか、悠々と過ごせるなー」

影女(こ、こっちに来る…! 目の前を通り過ぎる時に驚かすぞ…!)

男「えーと、ここが居間か?」

影女「わ、わー!」

男「ちぇいさ」ビリィ

影女「きゃー! 障子が破れたー!」

男「なんだ影女かびっくりさせやがって」

影女「え? え?」

男「すまんな、荷物運んだら修理するから今はこれで勘弁してくれ」ペタペタ

影女「セロテープ…」

影女「と、というか私のこと知ってるんですか!?」

男「影女だろ? 割とメジャーな妖怪だろ、俺の実家にもいたぞ」

影女「え、えー」

男「幽霊とか見えるタイプの人間なんだ、俺」

影女「幽霊とあんまり一緒にして欲しくないんですが…」

男「似たようなもんだろ」

影女「全然違います!」

男「そうか?」

影女「そうですよ! デリカシーのない人ですね!」

男「デリカシー関係あるのか」

影女「それで、えっと」

男「男だ」

影女「男さんはどうしてここに?」

男「大学通う上で近い家探してたら親戚のおじさんがこの空き家紹介してくれたんだ」

影女「なるほど…」

男「安いし、一軒家だし、一人暮らしにはもったいないぐらいだけどな」

影女「妖怪だっているんですから数に入れてください!」

男「あー、はいはいそうねそうね、これからよろしく」

影女「はい! これで寂しくないですね!」

男「寂しかったのk」影女「ちがいます!」

【ケセランパサラン】

男「ただいまー」

影女「おかえりなさーい」

男「見て見て影っち、なんか変な綿みたいな妖怪捕まえた」

影女「綿みたいって…わあ! これケセランパサランじゃないですか!」

男「ケセランパサラン…名前は聞いたことあるな」

影女「うわー、すごーい! 実物なんてはじめて見ました!」

男「はじめて見るのに知ってるのか」

影女「有名なんですよ! 自力じゃ見に行けないから一生見れないと思ってました!」

影女「幸福を呼ぶ妖怪なんですよ!」

男「ほう」

影女「飼いましょうよ飼いましょうよ!」

男「妖怪界ではペット的な存在なのか」

影女「穴の開いた木箱に入れて飼うんですよ! 餌はおしろいです!」

男「木箱ねー…、ダンボールに穴開けたんでいいか。おしろいは…片栗粉で」

影女「そんな適当でいいんですか…?」

男「知らん、まあ何とかなるだろ」

影女「ああ! 片栗粉食べてますよ! かわいい!」

男「なかなか愛嬌ある奴じゃないか」

影女「幸運が来るといいですね!」

男「楽しみである」

――数日後

男「観賞できるように昆虫用のケージ飼ってきた」

影女「住みやすいように土とか敷き詰めた方がいいんでしょうか?」

男「汚れるからティッシュちぎったやつ詰めとくわ」シャバババ

影女「ちぎるのはや!」

男「ほれ、お前の新しい家だぞ」

影女「ちょこちょことした動きが可愛いですねー」

男「うむ、しかも感触もふわふわで気持ち良い」

影女「あー、いいなー、わたしも触りたいです」

男「また今度な」

影女「はーい……え!? 私影ですよ! 触れないじゃないですか!」

――さらに数日後

男「なんか最近調子がいい」

影女「なんのですか?」

男「体調とか妖力とかその他もろもろ、お釣りの10円がギザ10だったりする」

影女「しょぼ!」

男「しょぼくないわ! ギザ10のロマンなめんな! 破くぞ!」

影女「ご、ごめんなさい、そんなに怒らないでくださいよぉ…」

男「これもケセランパサランのおかげかねぇ、ありがとなー」

影女「ささやかな幸せですねー」

男「そのくらいが丁度いいさ、分相応の幸せで生きて行こうぜ」

影女「無欲ですねー」

http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/kageonnna_a_syabereru.html
一応前回の

>>16
さんくす

ちなみに前回落ちたとこまでは
文章がちょこちょこ変わってるけど中身はだいたい一緒なので
すでに見た人は適当に読み飛ばしながらさるよけしてくれると助かります

【すねこすり】

男「何かやたら懐っこい妖怪がついて来たんだが」

影女「あー、すねこすりですねー、かわいー」

男「すねこすり? このやたら脛に体をこすりつけてくるのと関係あるのか」

影女「はい、歩くのを邪魔する妖怪です」

男「なるほど…確かにやや歩きにくかったな」

影女「まあすることはそのくらいですから特に害はないですね」

男「まあな。…それでこいつ猫なの? 犬なの?」

影女「どちらでもないんじゃないですか?」

男「すねこすりはすねこすり、か」

すねこすり「わん!」男「犬だこいつ!!」

男「それでこいつどうしたらいいんだ?」

影女「普通すぐにいなくなるらしいんですが」

男「めっちゃ脛こすってるぞ、俺の」

影女「懐いてるんじゃないですか? 飼いましょうよ!」

男「ええー、ケパランいるしなー」

影女「略さないでくださいよ」

男「名前だよ。あー、しかしこいつ飼うとなったらエサとかどうなるんだ」

影女「さあ…、ドッグフードとかでよさそうですけど」

男「猫まんまでもいいかな」

影女「なんでもいいんじゃないですか? 食べられたら」

男「しかしこいつ脛こすりすぎじゃね? 摩擦で熱くなってきたんだが」

影女「まあそういう妖怪ですし…」

男「このままじゃ飼うのに支障がでるな…捨てるか」

すねこすり「」ピタッ

男「なんだ、話がわかるやつだな」

すねこすり「わん!」

男「お前はこすられないんだな」

影女「実体がないですもん」

すねこすり「わん!」ビリィ

影女「ぎゃー!? 障子がー!!」

影女「やめてー! 穴開けないでー!」

すねこすり「ハッハッハッ!」ビリバリ

男「このまま障子破れるたびに騒がれるのも嫌だしな…しゃーない」ソッ

影女「? なんで障子に触るんですか?」

男「ケパランのおかげで更に妖力あがってる今ならいける気がする、よっこらセックス」グイッ

影女「へ?」グンッ

男「影から引きずり出した、あるいは実体化させたと言おう」

影女「ええええええええええええ!? うわああほんとに身体ある!」

男「俺、寺生まれのTさんのマブだぜ? このくらい当然」

影女「すごいです!! すごいですー!! わーい!!」

しまった
どうでもいいことだけど>>13の影女の一人称が漢字になってた
正しくは「私」じゃなくて「わたし」

ごめんどうでもいいね

【すねこすり2】

影女「けど実体化しちゃうとわたしって何ですか? 影じゃないですよね?」

男「心配するな、影みたいな女だよお前は」

影女「どういう意味ですか…」

男「影が薄そう」

影女「濃くてもいいじゃないですか!」

男「残念ながら…」

影女「ひどい!」

すねこすり「わんわん!」

影女「慰めてくれるんですか…ありがとうすねこす…あつっ摩擦あつぅ!」

男「俺と違って素足が出てるもんな、というか全裸」影女「ひああ!?」

男「部屋を追い出されてしまったわけだが」

影女「当たり前です! 開けないでくださいよ!?」

男「しかし破れた部分から…」

影女「覗くのもなしです!」

すねこすり「わんわんわん!」

男「脛をこするな。座ってろ」

影女「男さん服がないですー!」

男「今度買いに行くからとりあえず俺のTシャツとズボン着てろ」

影女「持ってきてくださいー!」

男「へーへー。わかりましたよ、お嬢様ー」

影女「うー、ぶかぶかです」

男「実体化させてやったんだから少しのことは我慢しろ」

影女「感謝感激雨あられです!」

男「馬鹿にしてんのか」

影女「なんで!? あ、そういえば何でわたし全裸だったんですか」

男「しらん、俺のせいじゃないぞ。お前が元から全裸だったんだ」

影女「わたし裸だったんだ!?」

男「影だからってとんだ淫乱女だぜ」

影女「い、淫乱じゃないです!」

男「どーだか」

男「さて、今日から何から何まで二人分かー」

影女「えへへ…」

すねこすり「わん!」

男「ああ、お前の分忘れてたわ」

すねこすり「わんわん!」

影女「わー、脛こすらないでー! でも生まれて初めて味わう感覚!」

男「今度ケパランも触れよ」

すねこすり「…じゅるり」

男「ケパランが危ない。やっぱこいついいわ、邪魔だし」

影女「山に捨てるといいですー」すねこすり「わん!?」

【木の子】

男「山に来たわけだが」

影女「はー、ここが山!」

男「お前はいちいち反応がでかいな」

影女「生まれてはじめて見るものばかりなんです!」

男「なら存分に楽しめばいいさ」

影女「はーい!」

男「さあ、すねお、山に御帰り。うちのペットはケパランだけなんだ」

すねこすり「くぅーん…」

男「悲しげな声を出してもだめだ、食費もない、あと扱いに困る」

すねこすり「くぅん…」トボトボ

男「行ったか。…ん、向こうに誰かいるな」

影女「どうしましたー? 男さーん」

男「んー、いや、向こうの方に誰かいる」

影女「子供…たちみたいですね、山で遊んでるんでしょう」

男「へえ、今時の子にしては珍しいアウトドア派か」

影女「男さんはどっち派だったんですか?」

男「俺はどっち派でもある、まあよく遊ぶ子だったよ」

影女「真面目そうではないですよねー」

男「お前はインドアだよな、障子の中でヒキコモリ。ぷーくすくす」

影女「好きで引きこもってたんじゃないですー!」

男「さて、このまま帰るのもあれだし、ピクニック気分で飯を食おう」

影女「ご飯がないですよ?」

男「こんなこともあろうかとサンドイッチを持参してきた」

影女「いつの間に!?」

男「さあ食べよう食べよう」

影女「あ! わたしはじめての食事です!」

男「おー、味わって食べろよー」

影女「えへへ…楽しみです、お腹も変な感じ…。これが空腹…えへへ」

男「腹減ってるのが嬉しいのか変な奴。…あれ? ないぞ、ここに置いてあったはずなのに…」

影女「ええ!? あ! あの子供が持ってるのそうじゃないですか!?」

男「むぅ、人の弁当を奪うとは不届き千万な奴め、懲らしめてやる」

影女「あれ…? 男さん! あの子供、妖怪ですよ!」

男「なんと。…ああ、確かにわずかながら妖気を感じるな」

影女「木の子ですよ! 木の子!」

男「キノコの妖怪なのか」

影女「違います、山童です。子供の姿をした山の妖怪で、特に害はないんですが…」

男「弁当を奪われたわけだが」

影女「特に害はないんですがー、悪戯好きなんです」

男「ふーむ、追いかけるのも面倒だし弁当は諦めるか」

影女「いやです! 絶対食べるんです! 行きますよ男さん!」

【木の子2】

影女「はひっ…はひっ…」

男「体力少なすぎだろ」

影女「仕方ないじゃないですかぁ…、運動なんかしたことないんですからぁ…、ひー…」

男「まあ子供は元気だしな」

影女「うう…、でも逃げた方向がわかればいずれ捕まえられますぅ…」

男「弁当がなくなるかもしれんがな」

影女「それは困りますぅー…はぁ、はぁ…」

男「ならもっと早く走れ」

影女「ひーん」

男「体力では負けても、気合いではロリショタに負けるなよー」

男「この辺りにいるはずだな。さっきと同種の妖気を複数感じる」

影女「ぜひー…ぜひー…かえ…かえして…もら…ます…ひー…ひー…」

男「脆弱すぎる…。ほら、深呼吸深呼吸」

影女「ひっひっふー」

男「つまらんボケをするな」

影女「はひー…はひー…」

男「しゃあない、お前はそこで休んでろ。俺が見てくるから」

影女「た、頼みますぅー…」

男「あいよー」ガサガサ

――

男「さて、この辺から感じるんだが」

木の子「……!」

男「見つけたぜロリショタ幼女どもども! 大人の厳しさを教えてやん…ん?」

木の子「……」

男「何だお前ら怪我してるじゃないか」

木の子「……」

男「弁当を奪ったのはその子らのためか」

木の子「……」コクン

男「まあ怪我してる状態だとまともにエサもとれないだろうしな…」

木の子「……」

男「……はぁ、しゃーない」

影女「あ、男さんおかえりなさい! お弁当は!?」

男「あー、食われてたわー」

影女「えー! そんなー!」

男「わめくなわめくな、帰ったら世界一美味い料理作ってやるから」

影女「すごい! なんですかそれ!?」

男「カレーだ」

影女「楽しみだなぁー、えへへ」

男「あー、しかし疲れたー」

影女「汗一つかかず走ってたじゃないですか…」

男「いやそのことじゃな…。ま、いいか。帰るぞー」

【山姫】

男「しかし、だいぶ奥の方まで来たなー」

影女「ここから歩いて帰るのかと思うとうんざりします…」

男「じゃあ走るか」

影女「あ、そうですねー……って、え!? 余計嫌ですよ!」

男「やれやれ、わがままな奴だ」

影女「ううー……あれ? 男さん何か聴こえません?」

男「これは…歌か、なかなかの美声だな」

影女「あっちからですねー、行ってみます?」

男「それはいいけど、結構な妖気を感じるぞ」

影女「はっ! まさか山姫!?」

男「山姫?」

影女「血を吸って人を死に至らしめる妖怪ですよー! 帰りましょう!」

男「へえー、危険なタイプの妖怪なのか」

影女「美人な見た目に騙されてちゅーちゅーされちゃうんですよ!」

男「ほお、それは一目見ておきたいな」

影女「や、やめましょうよー、死んじゃいますよー!」

男「美人と聞いて帰る奴は男じゃねぇな」

影女「すけべー!」

男「大丈夫大丈夫、俺酒呑童子と飲み比べして勝った男だぜ?」

影女「お酒の強さじゃないですかー! ていうか未成年飲酒だめですよー!」

男「あの小屋の中から聴こえるな」

影女「ほんとに行くんですかぁ、やめましょうよぉ」

男「泣くなよ、仮にも妖怪だろ」

影女「妖怪だって泣いたり笑ったりしますよぅ」

男「そりゃそうか、嫌なら先帰ってたら?」

影女「男さんが死んじゃうのが嫌なんですよー! うわーん!」

男「……しゃあない、帰るか。腹減ったしな」

影女「男さん…」

山姫「何してるのあなたたち」

影女「ふぎゃー!!」

男「おーっと美人のお姉さん、俺の血は吸わせないぜ?」シュッシュ

山姫「別に血を吸いはしないわよ」

男「そうですか」スッ

影女「警戒とくの早いですよ! 吸われちゃいますよ!」

山姫「だから血は吸わないって…精力は吸うけど」

影女「ぎゃー! 男さんは吸わせませんー!」

山姫「あら、彼女?」

男「同居人です」

影女「男さん帰りましょう!」グイグイ

山姫「またきてねー」影女「きません!」

それではここから前回と変えていきます
具体的にはエピソードの入れ替え、加筆修正です

とりあえずここまでで全体の3分の1程度なので
もうしばらくお付き合いお願いします
これまでの支援感謝です

支援
前スレkwsk

>>58
前スレは>>16を参照

【七人ミサキ】

男「バイザウェーイ、バイザウェーイ」

影女「なんですかー、男さん」

男「暑くない?」

影女「そういえば夏が近いですねー。えへへ、暑いって感覚もはじめてです」

男「海へ行こう」

影女「海!? 海見たことないです!」

男「よっしよっし、じゃあ見に行こう」

影女「わーい!」

男「泳ぐのにはまだ早いから、下見と考えよう」

影女「えへへ、えへへ、海かー」

男「ほい到着」

影女「すごーい!! 男さん! 水! 水がいっぱいですよ!」

男「海は広いな大きいな」

影女「ですねー! わー」

男「海開きはまだだから、思った通り人いないな」

影女「そうですねー」

男「……んん? なんぞこの霊気は」

影女「どうしました?」

男「いや、なんか怨霊が…」

影女「ええー!? なんでですかー!」

男「あそこに七人の霊がいる」

影女「七人って、七人童子!?」

男「いや、ありゃ七人ミサキだな」

影女「ミサキ?」

男「水辺に現れる霊だ。見た人間は高熱を出し、死ぬ」

影女「ええー!? いやですわたし死にたくないです!」

男「お前は妖怪だろ。人間が死んだら一人成仏し、死んだ人間がそいつの代わりになるらしい」

影女「やだー! 男さん死なないでー!」

男「あーあーうるさい、大丈夫だから」

影女「本当ですか…?」

男「俺くらい霊力が高ければな。…お前は知らんが」

影女「え、でもわたし妖怪だからって…」

男「今のお前は人間並みの妖力だぜ?」

影女「ぎゃー! 死にたくないー!」

男「お前とはここまでだな。…嫌いじゃなかったぜ」

影女「やだやだやだ! 男さん何とかして下さい!」

男(俺と一緒にいる時点で大丈夫なんだが、面白そうだしもうちょっと黙っておこう)

男「いやー、俺でも倒せるかどうか…」

影女「そ、そんな…、う、うう、うううう」

男「ああごめんごめん嘘だからマジ泣きすんなって」

【濡女子】

影女「えぐえぐ」

男「ほらほら、泣くと美人が台無しだぞ」

影女「……ばか」

男「ごめんごめん。じゃ、帰るか?」

影女「うん…」ギュッ

男「うっ…。ほ、ほらちゃんと前向いてあるk……」

影女「どうしました?」

男「びしょぬれの女が目の前にいる件について」

影女「え?」

男「しかも透けてr」影女「見ちゃだめー!」

?「……」ニコッ

男「?」ニコッ

影女「! だめです男さん! この女性は濡女子という妖怪で笑い返すと――!」

濡女子「……ぽっ」

男「なぜ顔を赤らめる?」

濡女子「結婚、して」

影女「ぎゃー!」

男「初対面でプロポーズとは、なかなかアグレッシブなお方ですな」

濡女子「それほどでも、ないよ」

影女「結婚なんて認めませんからね!!」

男「しかし笑い返すだけど結婚とは」

影女「濡女子は笑い返した相手に一生取り憑く妖怪なんです…」

男「なんと、人生20年目にして早くも伴侶が」

影女「でーきーまーせーんー!」

男「そこまで否定せんでも」

影女「いつもの様に追っ払ってくださいよー」

男「ふむ」

濡女子「迷惑は、かけない。家事も、できる」

男「影女より出来る子じゃないか。影っち代わりにここで濡女子やる?」

影女「うわーん!」

影女「ぐるるる!」

男「こらこら、威嚇しない威嚇しない。いいじゃないか、家政婦欲しかったんだ」

影女「…それだけですか?」

男「それだけとは?」

影女「そ、それは……い、いちゃいちゃ…とか…、ちゅ、ちゅっちゅ…とか…」

男「え、なに? よく聞こえないんだが」

影女「なんでもないです!」

濡女子「家族が、増えるよ」

男「やったね濡れっち!」

影女「おいやめろ」

【菷神】

男「さて、濡女子が住むことになってとりあえず一夜を明かしたわけですが」

影女「そーですねー」

男「身体もすでに濡れてない彼女ですが濡女子です」

影女「そーですねー。……私も影じゃない影女です」

濡女子「存在、意義が」

男「まあ濡女子の本質は取り憑くところにあるそうだし、いいんじゃないか?」

影女「私の本質は影なんですけど! このままじゃ私ちょっと妖力のある人間です! このままでいいですが!」

男「いやいや、世の中には押し掛け女房な影女もいるらしいぜ?」

影女「女房なんて! そんな! まだ早いですよ!」

濡女子「伴侶は、わたし」影女「ちがいます!」

男「家政婦とか言ったけど、やっぱ家事とか分担した方がいいと思うんだ」

濡女子「わたし一人でも、だいじょぶ」

男「ノンノン、同じ家に暮らす者同士助け合っていこうぜ」

影女「むー、なんか濡女子さんには優しいですね」

男「そんなことない、影っちのことも大切に思ってるぜ」

影女「~~~~!! へ、へー、そうなんですかー、へー……えへへ」

男「で、家事分担なんだが基本俺と、濡女子+影女で行きたいと思う」

濡女子「わたしと、影女がペア?」

男「影女は影から出たばっかでまともに家事とかしたことないからな」

影女「濡女子さんに教えてもらえということですね」

男「箒神?」

影女「産神の一種です。掃き出す、ということで出産の神様とかも言われてます」

濡女子「妊婦さんの、お腹をこれでさすると、いい」サワサワ

影女「って何自分のお腹さすってるんですか! はっ!? まさか男さん昨晩!?」

男「へいへい影っち、箒は人を殴る道具じゃないぜ?」

影女「卑猥です! えっちです! えっちっちです!」

濡女子「冗談、だよ」

影女「まあ知ってますが」

男「おい」

影女「とりあえずこの箒はいつか来る日のためにとっておきましょう」男「?」

ごめん、>>74>>75の間抜けたからコレはさんでください


男「箱入り娘ならぬ影入り娘のお前には丁度いいだろ」

濡女子「ちゃんと、教える」

男「とりあえず、炊事洗濯、そして掃除の分け方でやるとして」

影女「いずれは炊事、洗濯、掃除に分けられるようにですね!」

男「そうだな、今日は俺が炊事洗濯するから二人は掃除を頼む」

影女「それならわたしもできます!」

濡女子「箒貸して、もらうね」

男「元々家にあったもので良ければ」

濡女子「どう、も。……この、箒」

影女「あー、かすかに妖力を感じると思ったらやっぱり箒神ですか」

【座敷童子】

濡女子「男、さん」

男「ん? どうした濡女子…」

影女「男さんやばい! やばいですよ!」

男「何がやばいんだ、掃除しようとしたら物壊したとかだと怒るぞ」

影女「違いますよ! 掃除してたら妖怪が出てきました!」

男「そうか…俺今ケパランと遊んでるからお前たちで何とかしてくれ」

影女「何とかするも何も、放っておいていい妖怪です!」

男「じゃあなんでそんなに焦ってるんだ」

濡女子「座敷、童子だった」

影女「レア妖怪です!」

男「レアも何も、俺は妖怪吸引体質だから割とよく見るぜ?」

影女「座敷童子は激レアですよ!?」

男「俺の実家にもいたよ。それに妖怪モノのSSではメジャーもいいところ…」

影女「なに訳わからないこと言ってるんですか!」

濡女子「今、縁側に、いるよ」

男「んー…。実家の座敷童子がクソ生意気だったから、あまり座敷童子に良い思い出ないんだよなー」

影女「つまり?」

男「会いたくない」

濡女子「可愛い、女の子」

男「座敷童子見てくる」影女「男さんのばかー!」

座敷童子「……」カチカチ

男「座敷童子が携帯でFXをしている件」

座敷童子「よお、ご無沙汰じゃな」

男「ていうか何でお前ここにいるの…実家にいるんじゃないの…」

座敷童子「お主について来たんじゃ、いや、憑いてきたというべきかの、かかっ」

男「え、いつから? いつからいたの?」

座敷童子「最初からじゃが、顕現したのは今日じゃ」

男「なんで今日」

座敷童子「わしは家に憑く物の怪じゃからの、憑くのに時間がかかったんじゃ」

影女「男さーん、知り合いですか?」

男「まあ、知り合いというか、なんというか」

座敷童子「幼馴染みたいなもんじゃ、男が赤ん坊の頃から知っておる」

影女「むっ、幼馴染…」

濡女子「旧知の、仲」

座敷童子「かかっ、そう身構えるでないわ。わしは男のことなんかなーんとも思っとらん」

男「じゃあ憑いてくんなよ」

座敷童子「いやいや、友として気に入っておるぞ。ま、これからよろしく頼むわ」

男「はぁ…帰れっつっても言うこときかないんだろ? …金の面はまかせた」

座敷童子「おうおう、ほどよく稼いでやるわ」

濡女子「よろしく」影女「お願いします…」

ヒロイン出そろったー
そして分量的に半分行ったと思われ

これまでの支援ありがとうございます
またしばらくお願いします

【夜泣き石】

男「……くー」スヤスヤ

?「しくしくしくしく」

男「んあ?」

?「しくしくしくしく」

男「誰か泣いてるのか…? 影女? 濡女子? 座敷童子は…ないな」

影女「くかー」濡女子「すやすや」

男「寝てるし…ていうか他の部屋で寝ろと言ってるんだが。この二人は…」

男「しかし、この二人じゃないとすると誰だ? まさかマジで座敷童子?」

?「しくしくしくしく」

男「庭から聞こえるな…」

?「しくしくしくしく」

男「なんだ? 石が泣いているのか」

影女「夜泣き石じゃないですかぁ…」

男「起きたのか?」

影女「男さんが物音をたてるので」

男「俺は静かだったよ、泣き声で起きろよ」

影女「しかしこの庭に夜泣き石なんてあったんですねぇ」

男「そんでこいつどうしたら泣きやむの?」

影女「さあ? わたしはもう寝ますね…」スタスタ

夜泣き石「しくしくしくしく」

男「このままじゃうるさくて眠れないぞ…、影っちよく眠れるな…」

座敷童子「捨てに行きゃ良いじゃろ」

男「いたのか。捨てるってこんな夜中に…面倒だな、砕くか」

夜泣き石「うええええええええん!!」

男「うるさいうるさい! わかったから泣き止め!」

夜泣き石「しくしくしくしく」

男「困ったな…」

座敷童子「夜泣き石は朝になれば泣き止むぞ?」

男「待てるか、俺は眠い。とりあえず埋めよう」ザッザッ

夜泣き石「……ク……シク……」

男「そんなわけで朝だが、大学に行く前にケリをつける」

影女「どうするんですか?」

男「いや、昨日は眠くてわからんかったがこいつ妖怪っつーより霊だ」

影女「あー、石に霊が宿って妖怪化したらしいですしねー」

男「なら軽く成仏させるわ、俺妖力とか強いし」

影女「え、でも結構な念があって妖怪になったらしいですしそんな軽くって」

男「ちょろんぱ」ビュバッ

夜泣き石「アリガトウ……」

影女「えー!? 何がありがとうなの!? 何したの!?」

男「これで今日から安眠だn」影女「納得いかないですー!」

【首かじり】

男「……すー」スヤスヤ

?「がじがじ」

男「痛いいい!?」

影女「んん…なんですかぁ?」濡女子「男…?」

男「首が、かじられてるんだが」

?「うまうま」

濡女子「首、かじり」影女「お、男さんから離れなさい!」

首かじり「ぺろぺろ」

男「おお、テクニシャン」

影女「きー!」濡女子「む」

男「今日こそ安眠できると思ったらこれか」

影女「なんなんですかあなた、なんなんですかあなた」

首かじり「いやー、いい男が住み始めたと聞いたのでぺろぺろしに」

濡女子「あなたは、死体の首をかじる、妖怪」

首かじり「ほら、そういう価値観ってもう古いから」

影女「まあ影じゃないわたしも人のことを言えませんが」

男「ばっかでー」

影女「あなたのせいですから! いやこのままでいいですが!」

男「まあとにもかくにもあまり首をかじられるのは困る」

首かじり「そっかー、残念」

――翌日の晩

男「……ぐーすか」

首かじり「じゅるり、いただきまーす」

男「起きてますが」ベシッ

首かじり「あひん」

男「こらこら、諦めてくれたんじゃないのか」

首かじり「いやー、あまりにもおいしかったもので」

男「まあ俺の霊力や妖力は一級品だからな」

首かじり「病みつきになるね!」

男「だが俺も睡眠をとりたいんだ、昼間も学校があるから駄目だぞ」

首かじり「えー、じゃあアタシは何かじればいいのー」座敷童子「そりゃ死体じゃろ」

男「なんだ座敷童子、まだ起きてたのか」

座敷童子「実は夜行性じゃ。して、まだいるのか首かじり」

首かじり「この人(の味)がアタシを縛りつけるの…」

座敷童子「男…、お主…」

男「なんだその目は」

座敷童子「スケコマシを見る目じゃ」

首かじり「アタシもかじるものが他にあればねー」

座敷童子「とりあえず土葬墓地の場所教えてやるからそれで我慢するがよい」

首かじり「やったー、最近骨ばっかで困ってたのよ!」

男「やれやれ、もう来るなよ…」

【畳叩き】

?「」バタバタバタバタ

男「うるせえ! 誰だ走ってんのは! 夜中だぞ!」

座敷童子「かかっ、お主の安眠街道は邪魔される運命のようじゃな」

男「影女も濡女子も寝てるし…、誰の仕業だ。ていうかなんで起きないのこの子ら」

座敷童子「畳叩き、じゃろう。夜中に畳の上を走る妖怪じゃ」

男「これまで出会った中でもかなり迷惑だな、地味に」

座敷童子「さらに迷惑な話を教えてやろう」

男「なんだ」

座敷童子「なんとこの妖怪、姿がない!」

男「迷惑だー!」

畳叩き「」バタバタバタバタ!

男「しかし放っておくわけにもいかない。正直に言おう、かなり眠い」

座敷童子「お主の妖力があれば姿なき妖怪も具現化できるんじゃないかの」

男「試す。……たぶん、あの辺だなっと!」ビュオン

畳叩き「……!」ドロン

男「ほーほー、これはこれは立派に太った狸じゃないですか」

座敷童子「札なしで妖怪の姿を映すとは、相変わらずチートじゃのう。影女を実体化させるだけはある」

男「さて、明日の晩飯は決まったな座敷童子」

座敷童子「狸鍋、じゃな」

畳だたき「!」ピュー

男「逃げたか」

座敷童子「力量差が明確じゃったからのう、もう二度と現れまい」

男「よっし…。よっし…! ようやく寝られる!」

座敷童子「お主がそこまで喜んどる姿を見るのは初めてじゃよ…」

男「睡眠は大事よ」

座敷童子「わし最近寝てないのー。夜行性と言っても夜は暇じゃし、わしも寝るか」

男「そうしろそうしろ、寝るのは気持ちがいい」

座敷童子「ではお言葉に甘えて…」ゴソゴソ

男「こら待てそこは俺の布団だ」

座敷童子「そ・い・ね(はぁと)」男「出ろ」

影女「男さーん! 起きてくださーい!」

濡女子「休日だからって、寝すぎは、良くない」

男「いや…俺全然寝てないから…」

影女「何言ってるんですかー! ほらー!」グイグイ

濡女子「早起きは、三文の徳」グイー

男「あと五時間…」

影女「だめですよー! 五秒で起きましょう!」

濡女子「夜更かし、するから」

座敷童子「かかっ、やはりお主は安眠できぬ星の下に生まれてきたんじゃの」

男「もう…やだ…」

【倩兮女】

男「……」ペラッ

影女「本読んでないで構ってくださいよー」

男「シャラップ、俺は今安息の時間を過ごしてるんだ」

影女「えー、つまらないですよー」

男「お前も本を読め、読書はいいぞ、心が潤う」

影女「字読めないですー」

男「まじか、読み書き習うか?」

影女「そうですねー」

男「まあこれだけ読んだら教えてやr」?「けらけらけら」

男「? なんだ?」

?「けらけらけら」

男「笑い声が聞こえるんだが」

濡女子「男、外みたい」トテトテ

男「お、掃除御苦労さま濡れっち。外か…どれ」ガラガラ

?「けらけらけら」

男「」ピシャン

影女「どうしました?」

男「塀の向こうでめっちゃでかい女の人が笑ってた」

座敷童子「そりゃ倩兮女じゃな」カチカチ

男「けらけら女?」

影女「けらけら笑う女性の妖怪ですよー」

男「ふむ」

影女「笑ってるだけで特に害はないです」

男「うざいんだが」

座敷童子「去るまで我慢せい」カチカチ

男「何なの? 安眠妨害どもといい、妖怪って地味な邪魔してくる奴多くない?」

影女「殺されるよりマシだと思いますが」

男「俺の場合わかりやすく襲ってくれた方がぶっ飛ばせて楽なんだが」

影女「乱暴ですねー…」

倩兮女「けらけらけら」

濡女子「それじゃあ、どうする?」

男「ちょっと追っ払ってくる」ガラガラ

影女「行ってしまいました…」

倩兮女「けらけらけ『ドゴォ!』ひいいいい」ダダダダダ

男「ただいまー」ピシャン

影女「早かったですね、どうやって追っ払ったんですか?」

男「目の前で塀に穴開けてやった」

座敷童子「野蛮じゃのう…」カチカチ

男「修理しなきゃいけなくなったがな…」

影女「ばかですか…」

【青鷺火】

座敷童子「かかっ、これはなかなか」カチカチ

濡女子「儲けてる、の?」

座敷童子「いや、エロ本を読んどる」

影女「電子書籍!」

男「なにやってんだ…。ん、障子の向こう光ってないか?」

座敷童子「青鷺火じゃろ」

男「サギ? アオサギビ?」

影女「そうです、光るサギの妖怪です」

男「今夜の夕食はサギ鍋だな」

影女「ええ!?」

男「しかし何で光ってるんだろうな」

座敷童子「妖怪に道理を求めん方がよいぞ、そういうものなんじゃから」

男「ま、それもそうか」

影女「そういえばバクテリアが光ってるとかそういう説もあるらしいですよー、あくまで科学的に説明する場合」

男「影っちはいつから科学キャラになったの?」

影女「いや、ただの予備知識なんですが…wikiの」

男「ネットっ子だった! 俺が大学言ってる間ネットばっかしてるだろ! はっ、まさか今までの妖怪知識も…」

濡女子「続々増えるヒロインに、食われないかと、必死」

影女「ちちち違います! それを言うなら濡女子さんの方が影薄いです! 私影ですけど!」

濡女子「あなたは言ってはいけないことを、言った」

男「どーどー、喧嘩すんなよ。お二人さん」

影女「してません!」

濡女子「そう。これはヒロインの座をかけた、じはーど」

男「意味わからんことを…」

座敷童子「ま、わしにその気はないが…幼馴染がメインヒロインなのは王道じゃの」

影女「ちがいます! ほら! スレタイ! スレタイ私のセリフですから!」

濡女子「2番目に出てきたヒロインと結ばれる話など、いくらでもある」

男「あんまり騒ぐな、サギが逃げる」

影女「食べるんですか!?」

男「もちろんだ」ダッ

男「ちっ、逃したか…」

濡女子「飛んで、いった」

影女「もう、何してるんですか」

男「いや、サギの肉って美味しいのかと」

座敷童子「大してうまくなかろうよ、同じ鳥なら鴨や鶏がよいわ」

男「ふむ、食料もないし、明日みんなで買いに行くか」

濡女子「みんなで、お出かけ」

座敷童子「あー、わしはパスじゃ、外に出るなどめんどくさいわ」

男「このヒキコモリが。いいよ、俺もお前には来てほしくないしな」

座敷童子「かかっ、そう言われると行きたくなるのが性分じゃな、わしも行こう」男「ちっ」

【首切れ馬】

影女「あーるこー、あるーこー、わたっしはーふふふーん」

男「影女は出かける度上機嫌だから毎週デートに誘いたくなるな」

影女「えええ!? そそそそそうですか!? べ、べつにやぶさかじゃないですよ?」

濡女子「わたしも、楽しいよ」

男「そーかそーか、じゃあ今度みんなで出かけるか」

濡女子「わーい」影女「ぐぬぬ…」

座敷童子「かかっ、男はジゴロじゃのう」

男「人聞きが悪いな、博愛主義者と言ってくれよ」

座敷童子「浮気者、とも言うんじゃがの」

男「……」

男「ん? なんか前方から来てるぞ、妖怪っぽい」

影女「ぎゃー! 首切れ馬ですー!」

濡女子「首が、ない」

座敷童子「人を襲うタイプの妖怪じゃな、おい男よ、何とかせい」

男「何とかせいとは」

座敷童子「わしは非戦闘員じゃぞ? いたいけな幼女じゃぞ? 守るがよい」

男「そう言われると守りたくなくなってるくるなー」

座敷童子「いいのか! 金が手に入らなくなるぞ! 金は大事じゃぞ!」

男「なんだその脅し、まあ助けるけど。ほれほれ、女性陣は下がるがよいよい」

首切れ馬「」ザッザッ

男「おっと、ここから先は通行止めだぜ。通りたくば俺を倒してからにしてもらおう」

首切れ馬「」ザッ

男「ふ、構えたか。突進する気だな?」

影女「お、男さーん、大丈夫なんですかぁ?」

濡女子「無理は、よくない」

男「まかせろ、俺の妖力は伊達じゃないぜ」

影女「はっ! 何か特別な技でも使って倒すんですか!?」

男「おらぁ!!」ガシィ!

影女「力技だぁー!」

濡女子「おー、わいるど」

首切れ馬「…!」ググッ

男「ブルッブルルッ! ブルヒーン!! ヒヒーン!! ブルヒヒーン!!」

影女「男さんのが馬っぽい!」

座敷童子「あいつ相変わらずキモいの」

濡女子「わいるど、好き」

首切れ馬「」ガクン

影女「力尽きた!?」

男「そぉい!!」ブンッ

影女「投げたぁー!?」

男「よっしゃ、じゃあ行くかー」影女「もう何でもありですね…」

【釣瓶落とし】

男「さって、じゃあ行くかー」

影女「はーい」

男「む? ……ちょっと影っち前歩いて」

影女「へ? まあいいですけど…『ガイン!』あふっ!」バタン

男「おー、なんか木の上から桶が降ってきた。ドリフドリフ」

濡女子「わかってて、先に行かせたね」

座敷童子「釣瓶落としじゃの」

男「あー、聞いたことあるな。釣瓶を落とす妖怪だな」

座敷童子「お主それただ名前通りに言っとるだけじゃろ、そうじゃが」

影女「きゅー…」

男「しかし井戸の上でもないのに釣瓶か」

座敷童子「いやいや、釣瓶落としは必ずしも釣瓶とは限らんのじゃ」

男「どういうことだ?」

濡女子「生首、とも言われて、る」

男「へえ。なら釣瓶だから釣瓶落としってわけじゃないのか」

座敷童子「そういうことじゃ」

男「ふーん。じゃ、どうして釣瓶落としって名前なんだ?」

座敷童子「……」

濡女子「……」

男「知らんのかい」

影女「うう…ひどいですよぉ、男さぁん」

男「おお、悪いな影っち。美味しい役は影っちに譲ろうと思って」

影女「いらないです…」

男「ところで影っち、釣瓶落としってなんで釣瓶落としって言われてるんだ?」

影女「釣瓶を落としてくるからでしょう?」

男「いやいや、落ちてくるのは釣瓶とは限らないらしいじゃないか。生首とか」

影女「それは名前が違うんじゃないですか? 釣瓶落としはそもそも木の上から何かを落とす妖怪の一種ですし」

男「そうなん?」

影女「ええ、釣瓶落としって呼ばれるのはごく一握りです。鍋を落とす鍋落としなんかもいるらしいですよ」

男「詳しいな。さすがネット子」影女「ちちち違います!」

男「ん、じゃあ行くかー」

影女「ところでこの釣瓶どうします?」

男「持って帰るか」

座敷童子「別にいらんじゃろ」

濡女子「元に、もどす?」

男「んー、そうするか。そりゃ」ブン

影女「帰りはここを通らないようにしましょう」

男「そうすっか。ていうかこれ妖怪っていうかただのトラップじゃね?」

座敷童子「そんなもんじゃ」

男「そんなもんか」

【次第高】

男「んー、食料たくさん買ってたら結構暗くなったな」

影女「気をつけて帰りましょうね!」

濡女子「どりふに、ならないように」

影女「なりません!」

男「まあ影っちの言うとおり気を付けて帰らないとな」

座敷童子「ちゃんと前を見ての。ほれ、さっそく人影じゃ」

男「こんな遅くに…? って何か妖気を感じるんだが。背ぇ高!」

濡女子「見越し、入道?」

座敷童子「の、一種じゃな」

影女「次第高です!」

男「その、しだいだかってのと、ナンタラ入道ってのはどう違うんだ?」

座敷童子「両者とも見上げると、どんどん高くなって人を転ばせる妖怪じゃ」

濡女子「でも、次第高は見下ろせばいい」

男「見下ろす?」

影女「次第高は見上げると高くなりますが、見下ろすと小さくなって、しまいには消えてしまうんです」

男「なるほど。つってもあの背の高さは見下ろせないぜ?」

影女「うっ、そうですね…」

男「肩車でもするか? ブレーメンよろしく」

濡女子「はずか、しい」

座敷童子「とりあえず近くまで寄らんか?」

男「さて…目の前まで来たが」

座敷童子「見上げるなよ、絶対に見上げるなよ」

男「フリか」座敷童子「違う」

影女「ど、どうしましょう」

濡女子「素通り、する?」

男「いや、それは負けた気がするし…」

濡女子「それ、じゃあ」スッ

座敷童子「こら濡女子、フリじゃないと言ったろうが――」

濡女子「ひざまずけ、この豚野郎」

一同「」

濡女子「ほんと、くず。見上げられ、ない。でも、その存在価値のなさは、見上げたもの」

座敷童子「み、見下しおったー!」

男「見下ろすんじゃなくて、見下すとは…しかしこれでいけるのか?」

影女「そうですね、これじゃあ言葉遊び――」

次第高「」シュン

影女「小さくなったー! 卑屈だー!」

濡女子「消え、て。ごみを視界に、いれたく、ない」

次第高「」ポンッ

男「濡女子、恐ろしい子!」

濡女子「ぶい」

【袖引小僧】

男「じゃあ気を取り直して『グイッ』って誰か俺の袖引いた?」

影女「いえ?」

座敷童子「引いとらんが」

濡女子「引いて、ない」

男「じゃ、気のせい『グイッ』じゃないな。誰の悪戯だ、グルか」

座敷童子「かかっ、違う違う。たぶん、袖引小僧の仕業じゃろう」

男「なんだそいつは」

影女「名の通り袖を引くだけの妖怪です」

濡女子「姿は、ない」

男「めんどくさ!」

男「ほんと妖怪ってのはしょうもない悪戯する奴が多いな!」

座敷童子「坊主や童子と名のつくものはたいていそうじゃよ、子供じゃからな」

男「ならお前もだな」

座敷童子「いやいや、わしは立派なレディじゃから」

男「行きの馬ん時、自分で幼女とか言ってただろ」

座敷童子「はて、そうじゃったか。わしの記憶にはないの」

男「まったく、都合の良い記憶だな『グイッ』うぜえ! 自然な会話な流れで行こうとしたのに!」

影女「落ち着いてください男さん…」

座敷童子「そうじゃそうじゃ、わしのようにおおらかな心を持って『グイッ』男! こやつヤっちまおうぜ!」

男「おうとも!」濡女子「みんな、短気」

男「まずは実体化して、煮て焼いて好きにしてやろう!」

座敷童子「それが嫌なら二度と袖を引かぬことじゃなあ!」

影女「なんて悪い顔…」

濡女子「いきいき、してる」

シーン

男「どうやら逃げたようだな」

座敷童子「そのようじゃの」

男「そんじゃ行くか『グイッ』ああーん! てめえこの野郎いい加減に――」

影女「……」ギュ

男「ってなんだ影っちか、どした?」

影女「えーと、なんとなく?」

男「なんとなくって、なんで」

影女「えー、と。うーん、その、ですねー」

座敷童子「煮え切らんの」

濡女子「たぶん、嫉妬」

影女「ぬぬぬ濡女子さん!?」

濡女子「わたしも、そう。ふたりが、仲、いいから」

座敷童子「…かかっ。かわゆい奴らよの! 帰りはみんなで手をつないで帰るかの!」

男「いや俺買い物袋持ってるから…」

影女「じゃあ」濡女子「みんなで、男の、袖握って」

男「あー。はいはい、好きにしなー」座敷童子「モテモテじゃのー」

【狐者異】

男「日に日に食料が少なくなってる件について」
座敷童子「そりゃ食えば減るじゃろ」
男「いやいや、料理し終わった時より減ってるんだって、1日1食分以上」
影女「狐者異ですね」
男「ああ、怖いな」
影女「あ、いえ、コワイ――狐者異です。妖怪の名前です」
濡女子「夜な夜な、家の食べ物を奪う、意地汚い、妖怪」
男「なんと、許せんな。食べ物の恨みは恐ろしいぞ」
座敷童子「ただでさえ食費がかかると言うのに」
男「まあお前らのせいだがな」

座敷童子「いやいや男よ、その分助かってることはあるじゃろ」
男「まあ、そうだな。お前は金を稼いでくれるし、濡女子は家事してくれるし、影女は――」
影女「?」
男「ごめん……、何も言えない俺を許してくれ……」
影女「ええええ!? ありますよね!? 私がいて良かったこと!」
男「え、まあ、そう、かな、うん、うん?」
影女「曖昧だー! すごく曖昧だー!」
男「さて、とりあえずそんな些細な話は置いといて」
影女「些細じゃないです! 私いらない子なんですかー!?」
男「今晩その狐者異とやらに制裁を与えてやろう、怖いのはどっちか教えてやる」

――深夜

狐者異「ハラヘッタ…ハラヘッタ…」ガサゴソ
男「おなか減ってるのかい? ならこれでもお食べ」スッ
狐者異「アア?」パクン
男「俺特製――激辛団子だ」
狐者異「ガァ!? ゲホッゴホッ」
座敷童子「ほら、水じゃ」スッ
狐者異「!! ゴキュ……ガボッ!?」
座敷童子「おっと悪いの、それは油じゃった」
男「ははははは! どうだ!? うまいだろう! お前の欲しがってた食物だよ!」
狐者異「ヒイイイ!!」ダダダッ

男「逃げたか」
座敷童子「てっきり暴力に頼るかと思ったら、絡め手とはのう」
男「食べ物の恨みは食べ物で晴らす。それに、これに懲りたらあいつも食べ物を奪うような真似もしなくなるだろ」
座敷童子「そうかの、あれはあやつの性分、いや、存在意義そのものじゃろうに」
男「どうかな、妖怪だって役目がなくても生きていけるんじゃないか?」
座敷童子「影女か」
男「影じゃなくても生きていける、意義がなくても妖怪は消えはしないさ」
座敷童子「ふん、しかし影女は元々妖力の少ない妖怪じゃ。意義なき今、あやつは妖怪から人間に成ろうとしておるぞ」
男「いけないことか?」
座敷童子「さあの。知らぬが――弱くはなろうよ。人は、すぐ死ぬ…」男「…」

改行忘れてるぞ、読みにくい

>>154
あと8エピソードもあって時間かかりそうだったから
短縮で試してみたんだ、すまん

あとそろそろ限界

あ、ごめん眠気限界だわ…
これは落ちる、ごめん

もし万が一、億が一今日の夜まで残ってたら続き投下する
おやすみ

ほす

この時間ってどのくらいだ?ほす

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

後は頼んだ・・・

ts

自宅外から投下する
保守さんく、狐者異から投下しなおす

【狐者異】

男「日に日に食料が少なくなってる件について」

座敷童子「そりゃ食えば減るじゃろ」

男「いやいや、料理し終わった時より減ってるんだって、1日1食分以上」

影女「狐者異ですね」

男「ああ、怖いな」

影女「あ、いえ、コワイ――狐者異です。妖怪の名前です」

濡女子「夜な夜な、家の食べ物を奪う、意地汚い、妖怪」

男「なんと、許せんな。食べ物の恨みは恐ろしいぞ」

座敷童子「ただでさえ食費がかかると言うのに」

男「まあお前らのせいだがな」

座敷童子「いやいや男よ、その分助かってることはあるじゃろ」

男「まあ、そうだな。お前は金を稼いでくれるし、濡女子は家事してくれるし、影女は――」

影女「?」

男「ごめん……、何も言えない俺を許してくれ……」

影女「ええええ!? ありますよね!? 私がいて良かったこと!」

男「え、まあ、そう、かな、うん、うん?」

影女「曖昧だー! すごく曖昧だー!」

男「さて、とりあえずそんな些細な話は置いといて」

影女「些細じゃないです! 私いらない子なんですかー!?」

男「今晩その狐者異とやらに制裁を与えてやろう、怖いのはどっちか教えてやる」

――深夜

狐者異「ハラヘッタ…ハラヘッタ…」ガサゴソ

男「おなか減ってるのかい? ならこれでもお食べ」スッ

狐者異「アア?」パクン

男「俺特製――激辛団子だ」

狐者異「ガァ!? ゲホッゴホッ」

座敷童子「ほら、水じゃ」スッ

狐者異「!! ゴキュ……ガボッ!?」

座敷童子「おっと悪いの、それは油じゃった」

男「ははははは! どうだ!? うまいだろう! お前の欲しがってた食物だよ!」

狐者異「ヒイイイ!!」ダダダッ

男「逃げたか」

座敷童子「てっきり暴力に頼るかと思ったら、絡め手とはのう」

男「食べ物の恨みは食べ物で晴らす。それに、これに懲りたらあいつも食べ物を奪うような真似もしなくなるだろ」

座敷童子「そうかの、あれはあやつの性分、いや、存在意義そのものじゃろうに」

男「どうかな、妖怪だって役目がなくても生きていけるんじゃないか?」

座敷童子「影女か」

男「影じゃなくても生きていける、意義がなくても妖怪は消えはしないさ」

座敷童子「ふん、しかし影女は元々妖力の少ない妖怪じゃ。意義なき今、あやつは妖怪から人間に成ろうとしておるぞ」

男「いけないことか?」

座敷童子「さあの。知らぬが――弱くはなろうよ。人は、すぐ死ぬ…」男「…」

【鳴神】

座敷童子「雷なう、と」カチカチ

男「なうとか言うのやめろ」

座敷童子「ヤングじゃろ」

男「(笑)」

座敷童子「せめて突っ込んでくれんかの…」

男「しっかし、すごい雨と雷だな。……何震えてんの影っち」

影女「ううー…鳴神様が怒ってるんですよぉ」

男「鳴神?」

濡女子「雷を起こす神様」

男「ああ、雷様ね」

男「雷苦手なのか影っち」

影女「私今実体あるからおへそが取られちゃいますー…くわばらくわばら…」

濡女子「堂々としてたら、だいじょぶ」

座敷童子「幸い、わしらの中にはへそ出しルックはおらんからの」カチカチ

影女「隠してもだめですよぉ。蚊帳の中に入るか、くわばら唱えないと…」

男「くわばら」

濡女子「くわ、ばら」

座敷童子「くわばらなう」カチカチ

影女「みんな適当すぎます!」

男「><。みたいな顔するなって」

男「雷様は光りの後に届く音からすると、3kmは離れてるから大丈夫だよ」

影女「こわいー、こわいですー」ギュッ

男「おー、よしよし」ナデナデ

座敷童子「……」

濡女子「……」

男「ん? どうしたお前ら」

座敷童子「お、おお? な、なんだかわしも少し怖くなってきたぞ」

男「はあ?」

濡女子「そう、実はさっきのは強がり」

男「えー」

座敷童子「というわけで失礼して」ギュ

濡女子「うん、失礼、して」ギュ

男「あんまくっつくなー、あついー」

影女子「ぐすぐす…ん、んん? ってあなたたち何してるんですかー!」

座敷童子「一人占めはいかんのう、独占禁止法じゃ」

影女「べべべ別にしてません!」

濡女子「じゃあ、わたしが」

影女「だめですだめです!」

座敷童子「かかっ、もてる男はつらいのう」

男「とりあえず皆離れてください」

【大猫】

男「ケパランは可愛いなー、癒されるなー」ツンツン

影女「我が家のマスコットです!」

座敷童子「幸運を呼ぶわしも実物は見たことなかったから最初は驚いたわい」

濡女子「超、らっきー」

男「いやしかしペットはいいものだ」

濡女子「でも、いめーじ的には犬とか、猫が有名」

男「犬、かぁ…」影女「犬、ですかぁ…」

濡女子「犬に、いやな、思い出?」

座敷童子「ねこぉ?」

濡女子「猫、きらい?」

座敷童子「嫌いというか、天敵というか」

男「こいつ猫苦手なんだよ」

影女「えー、可愛いじゃないですかー、にゃんこ」

座敷童子「だってあいつら容赦ないんじゃぞ!?」

男「実家で猫にいじめられてたんだこいつ」

影女「まあ」

座敷童子「いじめられてないもん!」

男「もんとか言うな」

座敷童子「あの家猫飼いすぎじゃ! 猫屋敷か!」

濡女子「天国、だと思う」

座敷童子「まったく猫なんて鳴き声も聞きたくな『ナゴォー』いいい!!」ガタガタッ

男「こら机にもぐるな揺れるだろ」

座敷童子「なんじゃあの声!? 大きかったぞ!」

濡女子「妖気、庭から」

男「どれ」ガラガラ

?「ナァゴ」

座敷童子「大猫じゃー!!」

男「でっか、なんだあの猫…猫か? でかすぎない?」

影女「大猫ですねー、名の通り大きな猫の妖怪です」

濡女子「かわいい」

座敷童子「何が可愛いじゃ! こいつら普通に肉食じゃぞ! 追っ払え!」

男「あー、仕方ない。食われても困るし。ほら、ぬこども散れ、しっし」

大猫「……ナァー」スタスタ

男「おや、以外に素直じゃないか」

影女「野生だし勘がするどいんじゃないですか?」

座敷童子「助かったぞ男! お礼にちゅーしてやろう!」

影女「だめです! ぜーったい、だめですからね!」

濡女子「したら、きょっけい」

男「しないから…」

座敷童子「かかっ、モテモテじゃのう。…ほんとに」

【再・座敷童子】

座敷童子「影女と濡女子は、寝とるみたいじゃの。…男よ、起きとるか」

男「なんぞや」

座敷童子「ちょっと話に付き合ってくれんか?」

男「まあ、別にかまわんが」

座敷童子「縁側へ行こう」

男「めんどくさいが…、ま、いいや」

座敷童子「ほれほれ、横に座れ」

男「失礼しますよっと」

座敷童子「あー、して話なんじゃが。影女のことじゃ」

男「影っちがどうしたって?」

座敷童子「いや、ほんとに実体化させたままでよいのか?」

男「人間に成りつつあるんだっけ」

座敷童子「うむ。本人はあの姿が気に入っておるようじゃが、元は影じゃ」

男「妖怪で生まれてきたなら、妖怪であるべきじゃないかってことか?」

座敷童子「そういうわけじゃない。生き様は自由じゃ。じゃが、あやつは知らんのじゃろ?」

男「……」

座敷童子「知らずのうちに人に成っても良いのか。人に成ってしまえば、もう一度妖怪に至るのは難しいぞ」

男「そう、だなぁ」

座敷童子「ちゃんと聞いておくべきじゃと、思うがの」

男「ああ、明日にでも訊くとするさ。わざわざすまんな」

男「……」

座敷童子「……」

男「…じゃ、俺はそろそろ――」

座敷童子「男」

男「ん?」

座敷童子「それとは別に、お主に訊いておきたいことがある」

男「……なに?」

座敷童子「お主は結局……」

男「……」

座敷童子「誰が好きなんじゃ?」

座敷童子「影女か? 濡女子か?」

男「……みんな好きだよ」

座敷童子「そうじゃない。誰が特別かと聞いておる」

男「言わなきゃダメか?」

座敷童子「そろそろハッキリさせておくべきじゃろう」

男「そっかー。そっかー…」

座敷童子「影女も濡女子もお主のことが大好きじゃからの、そろそろハッキリしてやるといい」

男「お前は……いや、なんでもない。そっか、そろそろ決めなきゃいけないか」

座敷童子「ああ」

男「俺が好きなのは――」

【再・濡女子】

濡女子「おはよう」

男「……おはよう、もう朝か。二人は?」

濡女子「影女は、散歩。座敷童子は、知らない」

男「……そっか」

濡女子「知ってる、の?」

男「いや。……でもま、昼までには戻ってくるから」

濡女子「そう」

男「…あー、濡れっち」

濡女子「?」

男「家政婦の件なんだけど、もういいよ」

濡女子「もう、いい?」

男「ごめん、俺は濡女子の気持ちに応えられないから」

濡女子「ふられ、た?」

男「…うん、そうなる。好きなやつ、いるんだ」

濡女子「そっ、か」

男「だから、俺に一生取り憑いてたら、なんつーか、出会いもないし、だから」

濡女子「( ゚ω゚ ) お断りします」

男「」

濡女子「私は、ここにいる」

男「濡女子…」

濡女子「あなたが、誰を好きでも、いい」

男「気持ちには、応えられないぜ?」

濡女子「それでもいい、家政婦でいい。そばに、いられるだけで」

男「つらいだろ」

濡女子「いい」

男「……」

濡女子「迷惑は、かけない。邪魔は、しない。だから」

男「わかった」

濡女子「男…」

男「濡れっちがそれでいいなら、いいよ。それに、家事もできるんでしょ?」濡女子「うん」

男「でも本当に気持ちには応えられないけど」

濡女子「うん、だいじょぶ」

男「そっか」

濡女子「それに、いつか男の気持ちが、変わったときに、がんばる、から」

男「んー、それはどうかなぁ…」

濡女子「一生、待てる。だって私は、一生を共にする、妖怪、だから」

男「…そか。なら、これからもよろしく」

濡女子「うん」

男「じゃあ、二人が帰ってくるまで待つか」

濡女子「うん」

【再・影女】

座敷童子「昼飯うまかったの!」

男「そりゃよかった。ああ、そうだ影っち」

影女「はい、なんでしょうか?」

男「影っちこのままじゃ人間に成るけどどうする?」

影女「へ?」

男「いやね、実体化したことによって妖怪影女としての特性、存在意義がないから」

座敷童子「妖力が自然に弱まって、このままじゃ人間に成るのじゃよ」

影女「えと、それで」

男「うん、影に戻る?」

影女「いやです」男「おお、即答…」

座敷童子「人に成ると不便じゃぞ? すぐ死ぬし」

影女「でも、実体化したからこそ、これまで色々なことができました」

男「影っちがそれでいいなら、それでいいんだけどね」

影女「影の世界が悪かったわけじゃないですけど、一度この世界の広さを知ってしまったら、もう戻れません」

濡女子「そう、だよね。わたしも海には、もどれない」

影女「こんな楽しくて、楽しくて、楽しくて仕方ないのに――絶対影になんか戻りません!」

男「そっか、じゃあこのままでいっか」

影女「はい! …あ、でも心残りはありますね」

男「心残り?」

影女「ええ。人間に成ると、影女って名前おかしいですよね」

男「まあ、それはね。女って名前になるのが妥当だろ」

影女「それだと、影っちって愛称で呼ばれなくなるじゃないですか!」

濡女子「人間に、成ると、女っち?」

影女「わたし、男さんから影っちって呼ばれるの、好きなんです!」

男「……それくらい、人に成っても呼んであげるよ」

影女「ほんとですか! わーい! 約束ですからね!」

男「へーへー」

座敷童子「そういえばわし愛称ない!」

男「そもそも名前で呼んでない気がする」

座敷童子「愛称希望じゃ!」男「えー」

男「じゃあ安価で募集すれば?」

座敷童子「ふむ…じゃあ>>216わしの愛称っと…。というか人おるのか」カチカチ

男「…ま、可愛いのになるといいな」

座敷童子「う、うむ。あ、そうじゃ男。食料がもう底を尽きかかっとるから買ってこい」

男「パシりか」

座敷童子「ほら、わしお金稼ぐのに忙しいから」カチカチ

男「お前さっきまでvipいただろうが」

影女「じゃあ、わたしいっしょに行きますよ!」

濡女子「私は、片付け」座敷童子「ほれほれ二人で行って来い」

男「お、おお」影女「いってきまーす!」

座敷ワロス

【座敷ワロス】

男「決定したぞ」

座敷童子「おお! なんじゃなんじゃ!」

男「座敷ワロス」

座敷童子「やり直しを要求する」

男「だめだ。安価は絶対、わかるだろ?」

座敷童子「やじゃやじゃやじゃやじゃー!」

男「よろしくな、ワロス」

座敷童子「うぐぅ」

男「……く、ワロス」プルプル

座敷童子「わらうな!」

【頬撫で】

影女「ふっふっふっふふーん♪」

男「ご機嫌だな、影っち」

影女「男さんと二人でお出かけですからね!」

男「つっても夕食の材料の買い出しだけどな」

影女「それでもです! えへへ!」

男「……不思議だな」

影女「なにがです?」

男「いや、影っちは天真爛漫だからかな。見てるこっちも、なんだか楽しくなってくる」

影女「男さん?」

男「それに、好かれてるのは、やっぱ嬉しいしな」

影女「え? そ、それって」

男「影っち見てると、俺も楽しい気分になってくる」

影女「え、え、え、え、」

男「……顔赤いぞ影っち」

影女「いやだってこれは男さんがその、えとえと」

男「そういう感情に素直なところも、可愛いと思うぞ」

影女「あふっ。も、もう! からかわないでください!」フンッ

男「そっぽ向くなってー、赤い顔が見れないじゃないか」

影女「へーんだ、ひゃう!? ちょ、男さん急に頬触るなんて変態です!」

男「変態って…しかも触ってないから」影女「へ?」

影女「あー、頬撫で、かなぁ…」

男「頬撫で?」

影女「名の通り頬を撫でる妖怪です」

男「そりゃまたしょぼい」

影女「夜中に一人で歩いてる時に頬を撫でられたら結構びっくりすると思うのでしょぼくはないと思います!」

男「じゃあ、なんだろ。せこい」

影女「ふふっ、そうかも」

男「だな」

影女「あー、でも残念。男さんかと思っ……いやいやなんでもないですし!」

男「……」サワッ 影女「え?」

男「影っち」

影女「え、男、さん?」

男「…すべすべ」

影女「え、ええ! ぴっちぴちのすべすべです!」

男「ずっと影のままだったら、触れなかったなあ」

影女「ずっと影だったら触ってもらえなかったです!」

男「実体化させて、よかった」

影女「は、はい!」アセアセ

男「なあ影っち」

影女「はひ!?」




男「好きだ」

【黒髪切り】

影女「……」

男「最初は、面白い奴だって思った」

男「影で、姿は見えないけど、声だけでも表情がわかった」

男「何にでも素直に反応するし、元気な子だって思った」

男「試しに実体化させたら、思わぬ可愛い子でびっくりした」

男「普通に嬉しかった、俺は可愛い女の子好きだからね」

影女「…知ってます」

男「そっか」

男「それで、日々過ごすうちに、どんどん惹かれていった」

男「影っちは、いつでもどこでも、楽しそうだった」

男「すぐ怒るし、すぐ泣くし、すぐ笑う。とても楽しそうに、生きてた」

男「それが何だか、面白くて。俺も何だか、楽しくて」

男「いいな、って思ったんだよ」

影女「男さん…」

男「これからも一緒にいてくれないか? 俺は影っちの隣で、その笑顔を見て生きたい」

影女「……!」ギュッ

男「影っち?」

影女「私も…!」

影女「私も大好きですよ…! 男さん……!」ギューッ

男「…うん、知ってた」ギュ

一人称また間違った
「私」じゃなくて「わたし」

影女「えへへ…あれ、おかしいな、嬉しいのに涙が出てくる…」

男「泣いていいよ」

影女「いやです、こんなに嬉しいんです、死んじゃうくらい、ううん、生きたいくらい嬉しいんだから、笑顔がいいんです」

男「そっか、じゃあ、笑おう」

影女「はい! えへへ」

男「帰ったら座敷童子と濡女子に報告だな…」

影女「きっと二人とも怒るし泣くと思います」スッ

男「そうかな…、そうか……。あれ? 影っち」

影女「はい?」

男「髪が切れてる」

影女「ほんとだ…、いつの間に」

男「ロングヘアがショートヘアに」

影女「黒髪切り、ですね」

男「髪を切る妖怪か」

影女「ええ。……え、っと、その、しかも髪を切るのはですね、えと」

男「うん」

影女「幽霊とか、人ではないものが、人と、け、けけけ、結婚する時に現れるそうですっ!」

男「じゃあ、結婚するか」

影女「はひゃ!? そ、そういうセリフはもっとロマンチックに…あれ?」

男「どうした?」影女「あ、いや、髪を切られたら」



影女「どうやら妖力がほとんどなくなったようなんです、が」

【人間】

座敷童子「なんじゃ、それで帰ってくる間に人間に成ったのか」

濡女子「妖力、ほとんど、ない」

女「え、ええ。影女あらため、女です」

男「あと、恋人になりました。あ、ちょっとトイレ行ってくる」

女「そんな報告がついでみたいに!」

濡女子「それは、おめでとう」

座敷童子「めでたいの!」

女「……いいの?」

座敷童子「…胸を張らんか、じゃないと怒るぞ」濡女子「堂々、と」

女「ご、ごめんなさい」

座敷童子「しかし、あれじゃの、こうなることがわかってたとはいえ」

濡女子「つらい、の?」

座敷童子「……つらい、のぉ」グスッ

女「座敷童子さん…」

座敷童子「気など、ないと言ったのに……うえぇ」グズグズ

濡女子「…お姉さんの、胸を、かそう」ギュ

座敷童子「…どっちが年上じゃろうか」

濡女子「さあ。どっちに、しろ、気持ちの、問題」座敷童子「…そうか」スンッ

濡女子「幸せに、なってね、影…ううん、女」座敷童子「じゃないと恨むぞ」

女「わ、わたし幸せになりますので! 男さんも幸せにしますので!」

女「ふたりが、男さんの恋人がわたしでよかったって思えるように!」

男「へー、なるほど。そりゃ楽しみだ」

女「ぎゃー! このタイミングで戻ってきたー! デリカシーないですねほんと!」

男「わるいな。…あと、ふたりも」

座敷童子「うるさいうるさい。いいからお主は幸せになれ」

濡女子「でも、あたっくは、つづける」

男「邪魔しないんじゃ!?」

座敷童子「ふん、少しでも気持ちが揺らげばその隙をつつくからの。覚悟せい」

女「だ、だめです! お、男さんは渡しませんからねー!」

男「渡されませんからねー」

男「あ、ケパランにエサやらないと」

女「片栗粉も買いましたよね…はい」スッ

男「さんきゅーさんきゅー」

座敷童子「ところでわしの愛称についてどう思う」

濡女子「すごく、わろす、です」

男「あ、そうだ。濡れっち、ワロス、そして影っち」

濡女子「なん、ですか?」座敷童子「む…なんじゃ」

女「はい! なんでしょうか男さん!」

男「改めまして。これからも――よろしく」

濡女子「うん」座敷童子「…うむ」女「はい!」



「よろしく!」



fin.

おめでと!
ワロス定着したワロス

お疲れさまでしたー
お付き合い頂きありがとうございました
支援保守、感謝です

すごいこう、途中gdgdして申し訳ない

>>243
安価は絶対だからね

そんなわけで影女ルートでした

SSは今まで書いたことあったけど
自分でスレ立てたSSは初めてだから完結できてよかった
一回落ちたけど

なんでわかったのか

ワロスルートっていうかワロスアフター書こうと思ってた

>>256
食費を理由に放流されたのに、濡女子はあっさり受け入れてもんなwww
美少女だから仕方がないとはいえ…男さんパネェっすww

>>258
ぶっちゃけすねこすり扱いにくかった(俺が)
あと男の理由にはケパランに危害が加わりそうだったからってのもある
濡女子は家事もできるしね

ちなみに書きタ溜めてた当初は濡女子ではなく山姫がヒロイン候補だった

まだ残ってた
エピローグ書いたほうがいい?
それか他ルート?

じゃあ悪いけど保守してくれたら書く
ちょっと時間ちょうだい

【ワロスアフター】

男「おいワロス」

座敷童子「ぶち殺すぞ!」

男「キレすぎだろ…」

座敷童子「冗談じゃ。して、何用じゃ」

男「呼んでみただけ」

座敷童子「ぶち殺されるぞ!」

男「誰にだよ…」

座敷童子「そりゃ女じゃろ」

男「影っちはそんな子じゃねーよ…、そうそうその影っちどこか知らない?」

座敷童子「なんじゃ、おらぬのか。濡女子もおらぬし、どこに行ったのやら」

男「そういやお前、実家から出てきたんだよな」

座敷童子「うむ、男に憑いた方が面白いからの」

男「俺はめったに実家と連絡取らないからさ、気付かなかったんだけど」

座敷童子「うむ」

男「昨日、妹から連絡来たわけよ。久々に」

座敷童子「ほうほう、それでそれで」

男「家が財政難でやばいそうだ」

座敷童子「ほ、ほうほう、それでそれで」

男「お前のせいだろ」

座敷童子「し、知らぬなぁー」男「目がバタフライしてんぞ」

男「それでお前一旦帰れ」

座敷童子「やじゃもん!」

男「もん言うな、キャラが違う」

座敷童子「えー、なしてじゃー」

男「財政難建て直してこい、しばらくは大丈夫なように」

座敷童子「ぐぅ…。あ、でもわし家に憑く妖怪じゃし、ひとりじゃ行けん!」

男「いや、お盆だし俺も一旦帰るから」

座敷童子「お盆? なにそれ? 覆水盆に返る?」

男「いや、古来からの日本妖怪のお前は知ってるだろ…。あと覆水は盆に返らねーよ」

座敷童子「はぁぁぁ…。あの猫屋敷に帰れと…」

男「それで影っちと濡女子に留守を任せようと思ったんだが…」

座敷童子「あの二人が了承すると思うか?」

男「……してくれる、はず!」

座敷童子「お盆の間は家にいるんじゃろ? 一日以上離れるとなればついてくるじゃろ」

男「挨拶とか言い出しかねないな…」

座敷童子「お主もそれは困るじゃろ?」

男「まあ、なー…」

座敷童子「そういうわけで帰省はなしにしよう!」

男「家をつぶすわけにはいかないだろ、帰るぞ」

座敷童子「(´・ω・`)」

【走れワロス】

男「そんなわけで二人にはちゃんと事情を説明して残ってもらおう」

座敷童子「最悪連れて行ってでも帰るのか?」

男「ああ」

座敷童子「仕方ないの…」

男「何でそんな帰るの嫌なんだよ、一応お盆の間だけでいいから」

座敷童子「一番嫌なのは猫じゃ。他の猫どもはあれとして、あやつにまたいじめ…ちょっかいを出される」

男「お前まだあいつ苦手なのか」

座敷童子「あやつ性格最悪じゃろ…」

男「四日間だけだ、我慢してくれ」

座敷童子「うぐぐ。まあ、家を守るためじゃしなー…」

男「じゃあ俺荷物まとめるからお前二人探して説得しといてくれ」

座敷童子「わしが!? いやいやいや無理じゃろ!」

男「あれだったらここに連れてくるだけでもいいから」

座敷童子「ま、まあそれくらいなら…」

男「でも期待してるぞ」

座敷童子「ぬ」

男「じゃ、よろしく」スタスタスタ

座敷童子「……はぁぁぁ。まったく面倒なことに…」

座敷童子「しかし、男の頼みじゃしなぁ…」

座敷童子「……よし、いっちょ頑張るかの」

座敷童子「妖怪同士ってのは…どういう理由か… 正体を知らなくても…知らず知らずのうちに引き合うのじゃ…」

濡女子「なに、いってるの」

座敷童子「なんでもないもん」

濡女子「語尾、気に入ってる?」

座敷童子「かくかくしかじか四角いムーブというわけなんじゃが」

濡女子「行く」

座敷童子「じゃよなー…。とりあえず一旦家に帰ってくれぬか?」

濡女子「ごあいさつ、しないと」

座敷童子「いやいやいや、あいさつするのはお前じゃなかろう」

濡女子「しょん、ぼり」トボトボ

濡女子実家に連れていくか安価
>>293

人いないか

俺しかいねーのか
じゃあつれてくで

座敷童子「さて、あとは影女じゃが…」

女「なんでしょう」

座敷童子「いつの間に背後に!?」

女「何びっくりしてるんですか」

座敷童子「ふ、ふん。アフターメインのわしに恐れるものなどないわ! このオワコンが!」

女「…ふふっ」

座敷童子「…てへ」

女「」ダッ

座敷童子「」ダッ

女「あれー、なんで逃げるんですかー?」座敷童子「調子に乗るなよ勝ち組がー!」ダダダ

【ワロスの王子様】

座敷童子「大切なものは目に見えないんじゃ…」

女「そうですね! わたしと男さんの愛とか!」

座敷童子「そうじゃな…」

女「ええ!」

座敷童子「慈悲の心とかも目に見えぬよな…」

女「はい、それでつまり?」

座敷童子「殺さないでくれ…」

女「いやいやいやいや! 殺しませんから! なに女の子が土下座してるんですか!?」

座敷童子「だってお主最近怖いんじゃもん…」

女「そんなことないですから!」

男「おー、二人とも帰って来たか」

座敷童子「ただいま…」女「ただいまです男さん!」ダキッ

男「おかえりー。さて、影っちと濡女子に頼みたいことがあるんだ」

女「なんですなんです?」

男「俺とワロスお盆に帰省するからその間留守番頼める?」

女「やです」

男「だよねー」

女「一緒にいっちゃだめなんですか?」

男「いや、だめなわけじゃないんだけど…」

座敷童子「家を出て半年経って戻ってきたら美少女を二人も侍らせておったらびっくりするじゃろ」

女「あー、しかも妖怪ですしね」

濡女子「あなたは、人間」

女「そうでした」

男「まあ要するに気恥ずかしいわけだ。しかも実家にいる連中いじめっこだから」

女「男さん以上のですか…?」

座敷童子「むしろ男を育てたのはそいつらと言ってもよい」

濡女子「それは、ぬれる…」

女「!?」座敷童子「ここにきてエロキャラ方面、じゃと…?」

濡女子「私きゃらが、うすい、って…」

座敷童子「なにそれ泣ける」

座敷童子「しかし、濡女子…大変申し訳ないんじゃが…」

濡女子「どうし、たの?」

座敷童子「この話のメインわしじゃから…お主の出番は更に…」

濡女子「う、そ…」

座敷童子「むしろ留守番しておいた方がお主のためになるかもしれぬ…」

女「そうですね…、いるのにいない扱いをされる方がつらいかも…」

座敷童子「そうじゃな。それはお主にも言え――」

女「なにか?」ニコ

座敷童子「う、うわー、影女の存在感に目が潰れるー」

濡女子「それ、でも…行く…!」男「お、準備できたならいくぞー」

【ワロスがたった家】

男「久々に…帰ってきたな…」

座敷童子「……ないーぶ、じゃ」

女「おー! ここが男さんの家ですか! すごく大きいですね!」

濡女子「掃除のしがいが、ある」

女「あ! 確かここにも影女がいるんでしたっけ?」

男「それだけじゃないぜー。まあ、入ればわかる。ただい――」ガラガラ

妹「おかえり鬼ちゃーん!」ドンッ!

男「まう!?」

女「ず、頭突きだー! そして鬼ちゃん!?」

妹「愛のある抱擁と言ってもらおう、って、誰?」




女「こ、こんにちは! 男さんの恋人のか…女と申します! よろしくおねがいします!」

座敷童子「愛称は、影っち、じゃ」

妹「彼女!? へええ…。あ、妹は妹って言います! 宜しくお願いします!」

濡女子「男の、伴侶。濡女子、妖怪」

妹「二股!?」

座敷童子「違う。彼女は影の方じゃ、そいつは願望。愛称は濡れっち…じゃがあまり呼ばれてない」

妹「鬼ちゃんが…タニシになってる…?」

座敷童子「タラシじゃろ。それに前からタラシじゃ」

妹「おっと、そうだった。座敷童子も昔からおに――」

座敷童子「さ、さあ家の者にも挨拶しようじゃないか!」

妹「まあまあ立ち話もアレだし入りなよ! 鬼ちゃんの家だしね!」

男「お前のせいで入れなかったんだがな…」

女「ところで何で鬼なんですか?」

座敷童子「鬼畜お兄ちゃんの略らしいぞ、鬼のお兄ちゃんで、おにちゃん」

濡女子「むかしから、攻め…」

座敷童子「いやいや、昔は可愛かったんじゃぞー。それがあやつのせいでこんなねじれた性格に…」

濡女子「あやつ、って?」

座敷童子「時期に会う」

濡女子「そう」

男「ほらお前らも早く入れー」

【ワロスと猫娘】

座敷童子「さって、男たちが挨拶してる間に久々に我が部屋に行くとしよう」ガラッ

猫娘「お?」

座敷童子「げ」

猫娘「やあ、ご無沙汰だね。会いたかったよ」

座敷童子「よお、ご無沙汰じゃな。会いたくなかったわ」

猫娘「ぬふふ、そうだろうね。だから部屋で待ってたんだけど」

座敷童子「勝手にわしの部屋に入るな…」

猫娘「君とボクの仲じゃないか。猫たちをここに集めてないだけ気が利いてるだろ?」

座敷童子「仲良くなった覚えはないがの。まあ、猫の件については感謝しよう」

猫娘「冷たいなあ、君は犬じゃあるまいに」

座敷童子「で、わしの部屋で何をしておった」

猫娘「ナニをしてた」

座敷童子「変態じゃー! 変態がここにおるぞー!」

猫娘「君のことを思うたびに股間がうずいて仕方なかったよ」

座敷童子「ぎゃー! 濡女子の努力が食われるー!」

猫娘「おや、新キャラかい? また男くんが連れてきたのか」

座敷童子「濡女子だけではなく、元影女の人間も連れてきておる」

猫娘「へえ! それは驚きだ」

座敷童子「人間の方は男の、恋人じゃ」

猫娘「…へえ。それは残念だったね」座敷童子「ふん」

猫娘「しかし男くんはもてるねー、モテモテだ」

座敷童子「妖怪に好かれやすい体質をしとるしな」

猫娘「くっく、羨ましいねえ。性格も最高だしね」

座敷童子「お主の手でだいぶ歪められとるがの…」

猫娘「芯は変わってないよ。良い子だ」

座敷童子「言われんでもわかっとる」

猫娘「それにしても、男くんの妖怪吸引体質は目を見張るよね」

座敷童子「…そうじゃな」

猫娘「うん。ボクも――そして君も、そのおかげでここにいる」

座敷童子「……」

猫娘「彼が生まれて、ボクらがここにきて」

座敷童子「…あやつのおかげで、わしらはここにいる」

猫娘「うん! …救われてるよねぇ、ボクら」

座敷童子「そうじゃな。じゃからわしは、男のそばにいると決めたんじゃ」

猫娘「恋人ができたんでしょ?」

座敷童子「関係あるか。わしのは恋とか、そんなものじゃない」

猫娘「ふうん。じゃあボクと付き合うかい?」

座敷童子「ふん、無理じゃ無理じゃ。わしはお前が嫌いじゃからの」

猫娘「知ってるよ。そしてボクはキミが大好きだ」

座敷童子「知っておるよ」

今から家帰って飯食ったりするから
20:30~21:00くらいまで残ってたら続き投下します

これまでの支援保守感謝です

【影のワロス】

座敷童子「さて、そろそろ話もおわっとるかの…」スッ

猫娘「行くのかい?」

座敷童子「お主は挨拶せんのか」

猫娘「向こうから来るだろうし、待つよ。こっちから会いに行くと楽しみにしてたみたいじゃないか」

座敷童子「違うかの?」

猫娘「違わないさ。ただ、待つのが好きなんだよ」

座敷童子「ふん。別件じゃが、何でも待ってばかりじゃ掴み損ねるぞ」

猫娘「君は間に合わなかったみたいだからね」

座敷童子「…親父殿に会いに行ってくる」

猫娘「行ってらっしゃい」

座敷童子「さて、話が長引いてなければいいが」

影女「やほー、童子」

座敷童子「なんだ影か。久しぶりじゃの」

影女「おひさー! 男くん帰って来たって!?」

座敷童子「おう。恋人を連れてな」

影女「」バリィ

座敷童子「自ら破れるほどショックか…」

影女「えええええ!! えええええ!? うそでしょ!?」

座敷童子「かかっ、ふられたのう」

影女「相手はだれ!? 人間!?」座敷童子「元妖怪のな」

影女「元? 元は何の妖怪だったの?」

座敷童子「……」

影女「どったん?」

座敷童子「いや、なんでもない。…影女じゃ」

影女「え」

座敷童子「お主と同じ、影にひそむ者で――今は光りの下にいる」

影女「……男、実体化できたんだ」

座敷童子「とある妖怪のおかげでできるようになったんじゃ。見るか? 男が連れて来とる」

影女「そうだね、それと…その影女にも会いたい」

座敷童子「…意外じゃな。会いたくないと、言うと思った」

影女「んにゃー、ぶっちゃけ会うのは、自分の潰えた未来を見るようでつらいと思うけど」

座敷童子「ならばなぜ?」

影女「だからって暗くなっても仕方ないじゃん! 影だからって、暗いといけないわけじゃないし!」

座敷童子「なるほどの。前向きじゃな」

影女「元気がとりえですから!」

座敷童子「なるほど、影女って妖怪はみな明るいのか――影なのに」

影女「影だからこそかもよ?」

座敷童子「そうかそうか。……後ろ向きなのは、わしだけか」

影女「座敷童子?」

座敷童子「おっと、噂をすれば男らが来たぞ。ゆっくり話せ、わしは行く」

【ワロスは想い人の夢を見るか】

座敷童子「影女と女がどんな話をするのかは知らんが、それはまた別の話じゃろ」

座敷童子「わしはわしの話をしよう」

座敷童子「というわけで久しぶりじゃの、親父殿」

父「よう、ワロス久しぶり」

座敷童子「お、男から聞いたな…!」

父「はは、いいじゃねーか。笑顔に出来る名前だろ」

座敷童子「笑わせとるんじゃなくて、笑われとるんじゃ」

父「どっちにしろ笑顔だろ。それより俺の息子はどうだ、あっちでもうまくやれてるか」

座敷童子「もう色々話は聞いたんじゃろ? なら男が言った通りじゃ」

父「そうか。ならやっぱりあの子が男の彼女なんだな」

父「しかし意外だな。俺はてっきりお前が男の妻になるのかと思ってた」

座敷童子「…わしもじゃよ。わしが一生、男の隣にいると思っとった」

父「そこは昔からお前のポジションだったからなー」

座敷童子「じゃが今は違う。選手交代、じゃ」

父「失恋か」

座敷童子「違うよ。恋ではない」

父「なら何だ」

座敷童子「何でもない。こんなのはただの、感傷じゃ」

父「ふうん――、そうか」

座敷童子「そうじゃ。夢見る乙女では、ないからの」

父「つらかったか」

座敷童子「つらかったよ」

父「泣くか?」

座敷童子「もう泣いた。一晩泣いて、翌日友の胸で泣いた」

父「そうか。男はお前の気持ち知ってるのか?」

座敷童子「遠まわしな表現はしたが、直接は言っとらん」

父「言わないのか」

座敷童子「言わぬよ。言っても仕方のないことじゃ」

父「そうは思わないぜ?」

座敷童子「そうなんじゃよ。もう、遅い」

父「しばらく会わないうちに卑屈になってまあ、昔のようだ」

座敷童子「暗いか」

父「明るくはない。お前はもっと、そうだな。気持ちのいい奴だったよ」

座敷童子「……」ゾッ

父「無言で自分の身体を抱くな、そういう意味じゃねーから」

座敷童子「ふん…。で、財政難なんじゃろ? わしは金をどの程度稼げばいい?」

父「適当に。次に帰省するときまで、もつ程度で」

座敷童子「じゃあ200万ほどでいいかの」

父「十分だ。今具現化してるってことはどうせこの家に戻ってくる気はないんだろ?」

座敷童子「ああ、わしの家は男のそばじゃ。隣ではなくても、の」

【ワロスのさみだれ】

座敷童子「……」カタカタ

濡女子「失礼、します」ガラ

座敷童子「お、濡女子か。わしの部屋にようこそ」

濡女子「ぱそこん、多いね」

座敷童子「商売道具じゃ」

濡女子「すごい、ね」

座敷童子「ありがとう。それでどうした、何か用か?」

濡女子「特に、ないけど」

座敷童子「ふむ、男らはどうした」

濡女子「影っちは、影さんの、ところ。男は、猫娘さん」

座敷童子「ほう…。それはそれは」

濡女子「……」

座敷童子「どうした?」

濡女子「えろきゃら、には、なれなかった」

座敷童子「ああ、猫には敵わんじゃろ」

濡女子「私も、あんなに、きゃら、濃くなりたい」

座敷童子「いいことだけとは限らんがの」

濡女子「濃く、なくても、これが私って、胸の張れるような」

座敷童子「……」

濡女子「私みたいな、私になりたい」

座敷童子「……なれとるよ」

濡女子「え?」

座敷童子「そう言える時点で、なれとるよ。そう思うお主の心が、お主自身じゃ」

濡女子「そう、かな」

座敷童子「おうとも。胸の張れるお主みたいな、お主じゃよ」

濡女子「そっ、か」

座敷童子「自信を持っていい」

濡女子「……。……うん。ありがとう、そうするね」

座敷童子「…………普通にしゃべったー!?」

濡女子「自信、もつことにしたから」

座敷童子「そ、そうか」

濡女子「うん。もっと男にもあたっくする」

座敷童子「前向き、じゃな」

濡女子「うん。私の目、前についてるから」

座敷童子「…かかっ、なるほどの」

濡女子「男のところに、行ってくるね」トテトテ

座敷童子「……そうか、後ろ向きは――わしひとりか」

座敷童子(みんな大人になっていく。わしだけが停滞している)

座敷童子「ままならない」

座敷童子「……ままならないから、だから、わしは」

【ワロスの夜の夢】

猫娘「やあ、ワロス。元気かい?」

座敷童子「よお、猫。お主は元気じゃの」

猫娘「なんだい、反応が普通だね。もっと嫌な顔をすると思ったんだが」

座敷童子「その名は慣れた」

猫娘「くっく、そうか」

座敷童子「こんな夜中に、何用じゃ」

猫娘「おいおい。夜行性のボクらはいつも夜中に話をしてたじゃないか」

座敷童子「ああ。そうか、最近は夜になると寝てたからの」

猫娘「へえ、健康だねえ」

座敷童子「ただの暇潰しじゃよ」

猫娘「ボクは最近寝てないからさー。だから教えてほしいんだけど」

座敷童子「なんじゃ」

猫娘「どんな夢を見る?」

座敷童子「……最近は、懐かしい夢を見る」

猫娘「懐かしい」

座敷童子「そう、懐かしい」

猫娘「具体的には?」

座敷童子「男と、仲良くなった頃の夢」

猫娘「へえ」

座敷童子「あの時から、男の隣はわしだと、思ってたんじゃが」

座敷童子「わしが向こうの家で具現化した時には、すでに二人の女がいたよ」

猫娘「もてるからねぇ」

座敷童子「一人暮らしを始めた男と、二人きりになれると思って出てきたんじゃがな――」

猫娘「…なんだか、今日は素直に話すんだね」

座敷童子「悪い。…思ったより、引きずっとる」

猫娘「いいよ、話しなよ。君がこんなこと話すのなんか親父殿かボクくらいだろ」

座敷童子「……ありがとう」

猫娘「なんならキスもしてあげようか」

座敷童子「遠慮する」

猫娘「残念だ」

座敷童子「わしもそろそろ前を向く時か…」

猫娘「今までは後ろ向きだったの?」

座敷童子「ああ、でも、もういいじゃろ」

猫娘「目を反らすの?」

座敷童子「違うよ。背負って前を向くだけじゃ」

猫娘「へえ。帰って来た時とは全然目の色が違うじゃないか。何かあったのかい?」

座敷童子「…戦うことすらできず負けた奴が、前を見ておった」

座敷童子「戦った結果惨敗して、それでもなお戦うやつがおった」

座敷童子「それで、ちょっと色々考えただけじゃよ」

猫娘「うーん、ますます惚れるね」

【ハンマーソングとワロスの塔】

猫娘「でも本当にいいの?」

座敷童子「何がじゃ」

猫娘「告白するつもりなんだろ?」

座敷童子「おう。明日、男に直接言うつもりじゃ」

猫娘「傷つくよ?」

座敷童子「望むべくもない傷じゃ」

猫娘「傷つかなくたって、前は向けるよ」

座敷童子「それでもちゃんと戦いたい」

猫娘「それで悲しむことになってもかい?」

座敷童子「違う。そんなのは問題ではないんじゃ猫娘」

座敷童子「悲しむから、傷つくから、つらいから、苦しいから、しんどいから」

座敷童子「どれも、告白しない理由には成りえぬ」

座敷童子「その痛みは、泣いてでも得るべきなんじゃ」

座敷童子「いや、むしろ得て泣くべきなんじゃ」

座敷童子「そうしないと、前は向けても、進めない」

座敷童子「心の歩を進めるのは、痛みに他ならない」

座敷童子「痛みは確かに嫌じゃが、それでもそれを知らなければ」

座敷童子「わしはきっと」

猫娘「……」

座敷童子「わしはきっと、恋などできない」

猫娘「……なるほど」

座敷童子「かかっ、恥ずかしい。これでは乙女じゃ」

猫娘「いいじゃないか、君は乙女だ。惚れ直したよ」

座敷童子「ただの恋愛初心者のたわごとじゃがな」

猫娘「懸命に考えて決めたことだろ?」

座敷童子「まあの」

猫娘「なら胸を張ろう。君が得た答えなんだ、それは誰にも否定できない」

猫娘「自信を持って、貫こう。ボクは応援するからさ!」

座敷童子「猫…」

猫娘「惚れるかい?」

座敷童子「まさか。わしが惚れとるのはひとりじゃよ」

猫娘「男が好きなんだね」

座敷童子「言うまでもないことじゃ」

猫娘「それは恋かい?」

座敷童子「そうかもしれぬ」

猫娘「明日はきっと、傷つくね」

座敷童子「そうじゃな」

猫娘「……童子の頑張りは、知ってるからね」

座敷童子「見ていてくれるか?」

猫娘「うん。だから明日は、ちゃんと恋愛するといい」

【ワロスに届け】

座敷童子『明日、必ず告白する』

猫娘『泣くときはボクの胸を貸してあげよう』

座敷童子『わかってることじゃが、フラれるのが前提って悲しいの――』

座敷童子「――とは言ったが、さて」

男「よお、ワロス。何か話があるって?」ガラガラ

座敷童子「お、おお、よく来たな。まあ座るがよい」

男「じゃ、失礼して…」

座敷童子「……」

男「……えっと、どした?」

座敷童子「男、お主わしとはじめて話した時のことを覚えとるか?」

男「覚えてるよ」

座敷童子「そ、そうか」

男「姿は生まれた時からずっと見えてたけど、話したのは俺が小学5年の時がやっとだったな」

座敷童子「うむ。しかも携帯電話が初の会話じゃったな」

男「近づいてこようとしないお前のために買ってもらったんだからな」

座敷童子「大切につかっとるよ」

男「知ってるよ」

座敷童子「あれからずーっと、お主とは一緒にいたな」

男「そうだな。なにをするにしても、正しく幼馴染だったよ」

座敷童子「1週間も会わなかったことはないしの」

座敷童子「なあ男。わしはお前に言わねばならないことがある」

男「ああ、なんだ?」

座敷童子「わし実はお主のこと好きなんじゃ」

男「ごめん、知ってた」

座敷童子「知っとることを知っとった」

男「あと更にごめん、俺好きな子いるんだ」

座敷童子「知っとるよ」

男「なんだ、知ってることだらけだな」

座敷童子「わしとお主の仲じゃからな」

男「大親友?」座敷童子「その通り」

男「ありがとう」

座敷童子「何がじゃ?」

男「好きになってくれて」

座敷童子「どういたしまして。わしも好きになれて、良かった」

男「俺も好きになってくれて嬉しかったよ。……だから、泣くな」

座敷童子「泣いておらぬ」

男「それじゃあ、その雫は何なんだ」

座敷童子「これは――これは、汗じゃ。夏だから、汗をかく」

男「……暑いな」

座敷童子「ああ暑い、暑くて汗が止まらない――」

【ワロスの恋のうた】

その後、はじめて正直に男に想いを伝えたおかげか、たくさん泣いた。

ちゃんと告白して、ちゃんと傷ついて、ちゃんと泣いた。

これで、ようやくスタート地点に立てたのだろう。

この先も想いを抱え続けるなら、傷つき続けるだろうし報われはしないだろう。

それでもいい。

そう思えたから、やはり告白して正解だった。

もう少し早く告白していれば、違う未来もあったのだろうか。

だけどそんなことは考えても仕方ない。

なぜならわしは男のそばにいる。

隣じゃなくても――今はそれで十分だから。

座敷童子「おい男」

男「なんだワロス」

座敷童子「墓参りに行くぞ」

男「お前から外出の提案が出るとは珍しいな」

座敷童子「お盆じゃしな。ほれ、影っち濡れっち呼びに行くぞ」

男「あと妹と猫娘。影は実体化嫌がったから……、最後に親父もだな」

座敷童子「ほら行くぞ」ギュッ

男「ひっぱるなひっぱるな――ってワロスが愛称で二人を呼んでる!?」

座敷童子「驚きすぎじゃろ…」

男「お前はほんと昔に比べて、明るくなったな」座敷童子「…まあの!」

さて、これにてわしの後日談はおしまい。

ハッピーエンドでもなんでもない、ただの失恋話。

失恋して、ようやくわしは恋をした。

ひたすらに傷ついて、つらくて痛くて悲しくて。

そして何より嬉しかった恋。

大事な人がそばにいる。

好きな人。

好きな人が好きな人。

好きな人を好きな人。

好きな人たち囲まれて、わしは恋をする。

さて、それでは座敷童子らしく、悪戯をして終わるとしよう。

座敷童子「…男、あそこにあるやつは何じゃ」

男「何がある『チュ』って――!?」

女「ぎゃー!! ちゅ、ちゅーなんてわたしもしたことないの『チュ』にー!?」

濡女子「ほっぺでもぬけがけはだ『チュ』め?」

三人は顔を朱に染め、驚き、そして笑った。

座敷童子「…かかっ。お主らみーんな大好きじゃ!」

では、おあとがよろしいようで。

恋する童子は、恋する乙女らしく慎ましやかに退散するとしよう。



fin.

はい、おつかれさまっした!
支援&保守ありがとうございました!

あれ、ワロスがメインヒロインじゃね…?

ここで濡れアフターいくかワロスifいくかって話ですよ

>>449
濡女子の扱いがかわいそすぎてなんとかしてあげたいけど
さすがにまたアフター書く気力は今の俺にはない…

今更ながらに酉つけてみた
今度SS書くときはまたよろしくお願いします

支援保守乙等々ありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月30日 (木) 00:54:39   ID: 3yWVFzyL

なんかしらんがすげーよかった

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