京子「あぁ……死にたい。もう……やだよ…」(1000)
ただ何かをする訳でもなく歳納京子はベットに仰向けになり虚ろな表情で天井を眺めていた。ボーという擬音が最も似合いそう姿だ。
燃えるような真夏の熱気にやられたーーというのも少しはあるだろうが何かおかしい。窓は鍵まで閉めきっており、真夏のお供であるエアコンは稼働させてない。涼を求めてはいなかった。
暑さではない何かが彼女をここまで落ち込ませているのは容易に分かる。しかしそれでもやっぱり暑そうだった。汗は無限を思わせる程溢れ出てシーツを湿らせていた。
ふと彼女は何かを思い出したかのようにむくりと上半身を起こした。
「……」
その瞬間。それが当然であるかのように、そしてあたかも日常生活の一環のように、自然に歳納京子の手は自身の首へとむかっていった。
ゆっくりと手と首の距離は縮まる。そう着実に縮まっていき、そしてーー絡みつく。
「うっ……く…っ」
空気は遮断された。歳納京子の衰弱しきった細い指は首の肉に深々と入り込み、押しつぶしていく。まるでワイヤーで絞めてる感覚だった。
「はっ…くぅ……っ」
自然と乾いた吐息が零れる。快楽に溺れた甘い吐息に類似しているが表情は決して快楽のそれではなく、苦痛に歪んでいた。
鬱血し血管は網目状に浮き出ており、淡い桃色だった唇は正気の薄い青紫色へ変色していく。
苦しい…!あまりにもリアルな死の恐怖が襲ってきた。その瞬間だ。
パッ。あっさりと彼女の手は首から抜けてしまった。そして一瞬間を置いてから滞っていた血液は何事もなかったかのように全身へと駆け巡りだす。
ドクンドクン…トク…トク。鼓動の波打つ速さも減速し冷静さを取り戻した。
「かはっ……はぁはぁ…」
生への依存が去来する。いつも通りだ…。そう、いつもそうなのだ!私はいつも直前になって止めてしまう。それにだ。縄ではなくいつも手で行っている。心の片隅で死を恐れている。
「…うっ…うぅ……っ」
いつも落ちるのは命ではなく、涙である。
「おはよう京子ちゃん!」
「あ、おはようございます。京子先輩」
午前8時過ぎ、部活の後輩であり親友である赤座あかり、吉川ちなつがいつも通り学校の肛門で挨拶をしてくれる。
「ちなつちゃーん!ちゅっちゅちゅっー!」
「きゃあっ!もう止めてくださいよぉ京子先輩~!」
「これは私のスキンシップであり愛情だぁ~!止めるもんかぁ
」
「あはは京子ちゃんっていつも元気だよね。見てるこっちまで元気が出てきちゃいそだよぉ」
頬にキスマークが付くほどぎゅーとちなつにキスするのが朝の日課だ。いや、もはや義務だ。ついでにいつも隣で京子のスキンシップを見つめて微笑んでいるというのも日課で義務だ。(時々あかりにもキスする)
「本当元気に底がないよね京子ちゃんったら」
「本当ですよ~。京子先輩は一回鬱になるべきです!」
あかり、ちなつにとって京子は元気を具現化したような存在なのだろう。リーダー格でトラブルメーカでその挑みかかるような雰囲気にいい意味で彼女達を引っ張られている。
彼女達は…京子に隠れる闇は知る由もないだろう。
「あっはっはっ!私が鬱ぅ?そんなのあり得ない、あり得ない」
豪快に笑う。そしてちなつはがっかりし、あかりはそれに微笑む。昨日の自殺未遂は嘘のように感じる。
何気ない日常がこんなにも楽しく感じるのが京子には嬉しくてたまらなかった。
「あかり達がこんなに笑顔になれるだから京子ちゃんなら結衣ちゃんも元気にできるよ!」
…あかりの言葉が京子の胸に深く突き刺さった。京子にとって「結衣」という単語はーー。
「そうですよ!早く結衣先輩を元気にしてあげて下さいよぉ!はぁ~ん結衣先輩にだったら口でキスするのにぃ~」
不意打ち。
京子には不意打ち。
抉れる。
京子の心が抉れる。
壊れる。
京子の体が壊れる。
崩れる。
京子の全てが崩れる。
不意打ち。
京子には不意打ち。
抉れる。
京子の心が抉れる。
壊れる。
京子の体が壊れる。
崩れる。
京子の全てが崩れる。
不意打ち。京子に
は不意打ち抉れる。京子の心が抉れる。壊れる京子の体が壊れる崩れる京子の全てが崩れる不意打ち京子には
不意打ち京子京子のののの心が抉れる壊れる壊れる抉れる京子の体体体が壊れる崩れる不意打不意打ち京子の全て
がる不意打ち京子には不意打ち抉れる不意打ち壊れる崩れる京京子京子子京子の体が壊れる崩れるるるる京子の全てが崩れるれるるれるれるるるれるれ崩れる不意壊れ
「はぁ…!はぁ…!」
「京子ちゃ…ん?」
「京子ちゃん!」
「京子先輩!」
京子の乱れ具合は尋常ではなく蒼白になる。
「わぁっ!」
「あっはっはっ!甘いぞ!君達ぃー」
「もー京子ちゃんったらぁ」
「ふざけないで下さいよ京子先輩!」
あははは
帰路。
遥か遠くの山から顔を覗かせていた夕日が淡く美しく橙色に世界を染め上げる。空の透き通る青さ。山の深々と濃い緑。歳納京子、赤座あかり、吉川ちなつの雪を思わせる白い肌。
全てが橙色に染まっていく。
「はぁ…今日も結衣先輩は先に帰っちゃったんですかぁ…」
目を細め、夕日の仄かな眩しさを手で遮りながらちなつは呟いた。
その視線の先には見えぬ結衣を見つめているのか。視線は遠い一色の景色から動かなかった。
「まったくだよね、ちなつちゃん!結衣の奴、私に一言もなく直帰とか…っていつからだっけ?」
「65日前の5月10日水曜日からです」
「…やけに詳しいね」
結衣のことになるとちなつは全細胞が常人を超越するのだ。愛ゆえの成せる技である。
『開いた口が塞がらない』とはよく言ったものだ。
本当に驚きという感情に心が濁れば口など開きたくても開けない。
「え…っと。結衣の家?えー!遠いよぉ。それに私には帰る家があるのだ…!家が私を待っている…!」
「もぅ!冗談は存在だけにして下さいよ!京子先輩」
ちなつに簡単に一蹴された。
「さぁ!!結衣先輩と私の愛の巣へ急ぎましょうー!」
「愛の酢?」
「そ…そうだよね、ちなつちゃん!よ、よっしゃあ、いくぞー!!」
ちょっと風呂と飯があるから保守オナシャス
開いた口が塞がらないは呆れてものが言えない時の表現だろ
まあこの場合はいいけど
地の文はいいんだがなんか読みにくい
>生への依存が去来する。いつも通りだ…。そう、いつもそうなのだ!
ここ海外小説っぽくて好き
この微妙な感嘆符の使い方が堪らない
(やったぁ~!結衣先輩に会える!)
(愛の酢かぁ。●ッコーマンの新商品?お姉ちゃん酢の物好きかなぁ)
(私は…私はどちらを望んでいるのだろう)
カツカツカツ。
地面から鳴る靴音を聞くと何故だろうか。一緒に帰っていた頃の結衣との思い出が去来する。
そしてその過去の思い出が嫌というほど私に突きつける。京子と結衣の関係を。
私は…結衣に会いたいのか会いたくないのか…どちらを望んでいるのだろう。
>>57
生まれてこの方20数年経つけど小説は学校の授業以外読んだことないぞ俺wwww
親が飯に呼んでるから30分ばかし離れる
ペース上げて行くから保守お願い!!
今から書く!
酢は●ッコーマンじゃなくてミツ●ンじゃね
「それにしても急にどうしたんだろうね結衣ちゃん」
思い当たる節がなくうーんと考えながらあかりは言った。
もちろんちなつも同様の反応である。
当たり前だ。結衣がごらく部の面々を嫌いになるような理由はないはず!…だけど…。
いやこれは嫌いと言うよりーー。
「ーー避けてる?」
ちなつの一言にあかり、京子の視線はちなつに集中した。
「避けてるって…結衣ちゃんが?」
「うん。多分だけど結衣先輩はちゃんと理由があって私達から避けてるんだよ」
「じゃあ結衣ちゃんあかり達の事嫌いになっちゃったのかな…」
「それは違う!…はず」
「はず…って」
「塾…とか?多分何かしらの理由があんだよ。絶対私たちのことは嫌いじゃない…はず!」
>>76
すまん
「じゃああかり達のことは嫌い…じゃないんだね!よーし今日あかり結衣ちゃんのお悩み解決しちゃうもんね」
「あー!結衣先輩は私の者なんだからあかりちゃんじゃなくて私が解決するのー」
はしゃぐ二人の一歩後ろで京子は歩く。念仏を唱えるように何度も何度も『大丈夫、大丈夫』と繰り返す。
カツカツカツ。
大丈夫、大丈夫。
カツカツカツ。
大丈夫大丈夫。
カツカツカツ。
「あ、結衣先輩の家のマンションが見えましたよ!」
大丈夫大…。
コンコンコン。
リズミカルにドアが鳴った。
「ん?誰だろ」
結衣のマンションは比較的新築に近く、最新のインターホンが部屋に搭載されており来客の顔覗ける。
液晶に視線が伸びる。
「……」
懐かしい面々だった。
ちなつは眩しいくらいの満面の笑みでピースを作っていた。
あかりはちなつほどではないが笑顔だ。
京子はーー。
「鍵開いてるから入っていいよ」
「きゃー!久しぶりの結衣先輩の声に耳が喜んでるー!」
もう覚悟を決めよう。
京子は生唾をゴクリと飲み込んだ。
私はかつてここまで重たい扉を触れたことがあるだろうかーー。
自然と全身の神経が手へ集中する。
「おぃーーっす!結衣!」
「お邪魔しまーす」
「結衣先輩~!」
少し短めに伸ばした艶のある黒髪。
美少女というより美少年と言った方がしっくりくる端正な顔立ち。
紛れもなく見慣れた私たちの親友、船見結衣だった。
「いらっしゃい」
結衣は快く歓迎してくれた。
「結衣先輩~!!会いたかったですぅ!」
ちなつは案の定だ。誰よりも先に結衣の胸へ飛び込んでいった。
何だかちなつが結衣へ抱きつく。ただそれだけのことがとても懐かしかった。
そしてそれを皮切りにあかりも結衣へと飛び込む。
「こらこら…」
一見冷めたような宥める口調。しかし表情は暖かい。
いつもの結衣だ。
いつもの結衣なんだ。
手の届く位置にいるのに、遠く感じた。
「京子」
「……え」
結衣はただ無言で微笑み二人を包んでいた腕を少しだけ離し、空白を作った。
まるでもう一人分入れるほどの空白だった。
「京子」
結衣ーー。
「早くこい、バカ」
やっと1/3進んだ!!!!!
うおおおおぉぉおー!!ペース上げる!!!!
壊れる程支援しても
>>103
1/3も伝わらなーい
結衣はーー私を喜々として受け入れている。私を許してくれたのだろうか。
空っぽ心の底から何が泉のように湧き出てくる感覚を感じた。心身ともに満ち足りていくーー。
「ゆ…ゆ……結衣ぃいいいぃぃい」
「何泣いてんだよ、バカ」
「京子先輩!?どうしたんですか」
「京子ちゃん…?」
「う……うぅ…っ。結衣ぃ、結衣ぃ、結衣ぃぃい」
嗚咽に喉枯らせ、涙に頬汚し、涎に唇を湿らせ顔はぐしゃぐしゃに汚れた。
そして雨に打たれた仔犬のように結衣の愛撫を従順な態度で受ける。
「お…おい京子」
結衣の服はまるでシャワーを浴びたように潤ってきたが結衣もまた喜々として受け入れてた。
許してくれた!
許してくれた!
結衣が話しかけてくれた、ただそれが京子にとって歓喜だった。
それにだ!
さらに私に触れてくれる!
「結・衣・っ!」
「はぁい」
「結・衣・っ!結・衣・っ!」
「はぁい。はぁい」
いつもの歳納京子へ調子が戻っていく。
それは結衣が避ける原因を作った京子に戻るということになるが、京子は自身の歓喜を抑える事が出来なかった。
「今日は私の奢りだぁ~!」
そう意気揚々な京子はスーパーの袋に溢れんばかりのラムレーズンをテーブルにドンと置いた。山積みにされたラムレーズンの塊に皆の目は文字通り点になっていた。
「京子ちゃん…頑張り過ぎだよ」
「うへっ…こんなに食べれませんよ」
「うわー…」
しばらくの間、結衣の家は娯楽部そのものだった。まるで部室まるごと結衣の家に引越ししたように。
京子がおちゃらけ、結衣がつっこみ、ちなつが笑い、あかりがタイミングよくトイレに行く。
良かった…本当に良かった。
京子にとってこの楽しい時間はとても永く感じた。
「もぅ~!京子先輩はしゃぎ過ぎですよ!私と結衣先輩の時間を邪魔しないで下さい」
京子を横目に絞め上げるほど結衣に巻きつく。「ぐふっ!」と断末魔が聞こえたのは空耳だろう。
「ちなつちゃん。きっと京子ちゃんだって結衣ちゃんに抱きつきたいんだよ!だってあんなに泣いてたじゃない!うん、あかりには分かるよ」
「えー。そうなーんですかー?」
あかりを横目に再び絞め上げるほど結衣に巻きつく。「死ぬ、ぐえっ!」と断末魔が聞こえたのは空耳だろう。
「そういえば京子先輩異常なほど泣きじゃくってましたね…何かあったんですか?」
「ち、ちなつちゃんそれ聞いちゃう…?」
柄にも似合わない苦笑いで京子は言う。明らかに目があっちへフラフラこっちへフラフラと泳いでいた。
「え、本当に何かあったんですか?」
冗談で聞いたので理由があるという可能性は微塵も考えていなかったので純粋に驚嘆していた。
それはあかりも同様だったらしく思わずラムレーズンを食べるスプーンがピタリと止まった。
(この空気…本当は結衣が怒ってる理由を安価で決めるつもりだったなんて言えない)
「わ…私実は悪戯で結衣が一番大切にしていた犬のぬいぐるみをボロボロにしちゃたたんだよ…」
犬のぬいぐるみ…それは結衣が寝る時にまで肌身離さず抱きしめていたほどの大切なぬいぐるみだった。結衣にとって友情さえも感じてたほどだ。
そしてそれが大切なものだと京子自身さえも知っていた。
ボロボロにされたぬいぐるみを見た瞬間、結衣は激怒はしなかった。怒りよりも絶望の比重が遥かに超えていた。
しかしその絶望はボロボロにされたぬいぐるみではなく矛先は京子であった。
誰よりも自分のことを理解してくれる親友がそんな行為をするとはーー。京子に限ってそんなことをするだとは思わなかったのだ。
「でも今考えたら京子をその場で許すべきだったんだよ。あの後ギクシャクしちゃってさ、それに私自身も少し意地になってちゃったからここまで冷戦状態になっちゃったんだよね…」
「京子先輩ヒドいです!それに結衣先輩も優し過ぎますよ。私だったら●●●して●●●●ですよ!」
「いやぁでもあの時色んな暴言も京子に対して吐いちゃったんだよ。それに小さな意地悪をちょいちょい…と。そしたら京子が目に見えて酷くなってて…謝るに謝れなかったんだよ」
「じゃあ今は京子ちゃんを許してるんだよね?」
「うん」
結衣がノンケで告白したのに拒絶された系かとばかり
>>174
すまぬ…すまぬ…
「やったね京子ちゃん!」
まるで自分のことのように喜んでるあかりを見て京子は完全に元の調子に戻った。
戻ってしまった。戻してしまった。
「いやーじゃあ今だから言うけどあの時の結衣爆笑物だったよぉ!」
「もう爆笑も爆笑!10年分ぐらいは笑っちゃったよ~!はっはっは」
いつもの有頂天の笑い方が戻る。緊張の糸が解れた京子に止められるものはいなかった。
「それにさ!それからずっと1ヶ月結衣の執拗な意地悪が酷かったよぉー。さすがの私が参っちゃったぐらいだもん。お前は嫁姑の姑かっ!ってぐらいに」
見えないはずの『w』が見えるようなそんな話し方である。
「ちょ…ちょっと京子先輩!」
こいつはちゃんとオチ用意してくれてるはず昨日がそうだったように
信じてるから
「……本気で…言ってんの…?それ。京子…」
結衣が声と肩を震わせながら呟く。小刻みにワナワナと震わせながら。
瞳孔は完全に開ききっており、感情に比例し叱咤の涙を流しだした。
またあの時の感情が去来するーー。
「ま、なーんてねっ!うっそだよぉーん結」「ふざけないで!!!!!!」
>>195
昨日のを知ってる…だと?貴様見てたのか!!!!
_| ̄|_ //ヽ\
| '|/ / ノ "´ ̄ ̄''''‐-...ノヽ
|__|'' ̄! ! / 丶 |
,‐´ .ノ'' / ,ィ \
ヽ-''" 7_// _/^ 、 `、
┌───┐ / / 、_(o)_,;j ヽ|
|┌─, .| /. - =-{_(o)
└┘ ノ ノ |/ ,r' / ̄''''‐-..,>
// { i' i _ `ヽ
 ̄フ i' l r' ,..二''ァ ,ノ
n / 彡 l /''"´ 〈/ /
ll _ > . 彡 ;: | ! i {
l| \ l 彡l ;. l | | !
|l トー-. !. ; |. | ,. -、,...、| :l
ll |彡 l ; l i i | l
ll iヾ 彡 l ;: l | { j {
|l { 彡|. ゝ ;:i' `''''ー‐-' }
. n. n. n l 彡 ::. \ ヽ、__ ノ
|! |! |! l彡| ::. `ー-`ニ''ブ
o o o l :. |
>>202
kwsk
>>205
京子「お願い…私を無視しないで……」
指切る奴の人とは別人?
>>202
>嗚咽に喉枯らせ……
でわかったよ
あの時の感情ーーそうあの時感じた京子への絶望。
胸の奥底に閉まっていた感情ーーそうあの時感じた絶望。
大好きな京子だからこそ思い出したくなかった感情ーーそうあの時感じた絶望。
全てがーー全てが去来する。
「なんで!?京子、あんた本気で言ってる!?」
>>216
そのフレーズ自分で書いてて気に入ったんだ。次書くときもそのフレーズ出るよ
「ゆ…結衣先輩落ち着いて下さい!」
喉を潰したような声なき悲鳴からして宥めれる状況にないのはちなつには分かった。
「そ、そうだよ!結衣ちゃん!京子ちゃんの冗談だよ!」
「これでどうやって落ち着けっていうの!?あの時は京子のハードなギャグだって分かった分かったよ!でも今は違う。全て…全てを馬鹿にしたんだよ!?」
最後の京子の『ま、なーんてねっ!うっそだよぉーん結衣』という言葉など結衣には聞こえてないだろう。
怒りが耳に言葉を遮る。
「もう…もう…帰ってよ……うっ…うぅ…ぅ…」
疲れたのか、はたまた見放したのか。結衣は力なくペタンと座り込んだ。
「結衣…」
「帰ってよ!!!!」
彼女の京子を見つめる視線は絶望から激昂やと昇華しているようだった。
結衣の鋭い眼光が京子を貫く。
氷のように冷めた視線。まるで生ゴミを見つめるかのように冷徹な視線。
ーーまた私は結衣を。
「やだ…やだ…」
やっと結衣と仲直りできたと思った。いや出来ていた…。
「やだよぉ…うぅ…っ」
また結衣と離れる生活は…。
「やだぁあああああぁぁあああ」
バタンというドアを勢いよく閉める音と結衣の啜り泣く音が部屋に虚しくいつまでも木霊していた。
2/3終わった!!!!!!
今日中には終わった欲しい
またあの生殺しの日々が始まった。
誰にも自分の闇を知らせることなく、表ではいつもの明るい歳納京子という仮面を被ってピエロを演じ、そして誰も見てない所で自身の闇に呑まれる日々。
いっそうのこと俗にいう引きこもりになってしまえば…と頭を横切るがそれは許されない。
親にだけは迷惑は掛けられない。そして掛けたくない。
崩壊寸前の自分が歳納京子でいられる最後の砦。これは自分の為でもある。
これが私のーー歳納京子の泥だらけの美学だ。
ヤバイ頭が目がヤバイ
限界来た気がするゾ
許せ…朝方スレがあったら続き書く
無かったらスレ立てる
目がヤバイ目が
保守
ほ
何も得ることなく全て失った。目には見えない大きい何かを。
どうしてーーどうして私は失うまで気付かなかったのだろう。結衣の、そして親友の大切さを。
「………」
14年間の積み木をもうバラバラだ。もう崩れる音すら聞く余力もない。
たいして好きでもないのに染みったれ天井を穴が空くほどただ見つめる。この閑散とした時間に意味はあるのだろうか…。
沈黙は私を置いて川のように流れいく。そうどこまでも。
明日は何もしなくてもやってくる。何もしなくてもだ。
「おっはよー!あかり、ちなつちゃん」
今日も私は歳納京子を演じる道化師だった。
ここでこうすれば歳納京子らしいだろうか、ここであぁすれば歳納京子っぽくなるだろうかーーと頭をフル稼働だ。
もうすでにこれは仮面を被る程度ではない。
歳納京子という鎧を着ているーーと言ったほうがしっくりくる。
髪の先から足の爪の先までが上塗りされた虚構の歳納京子。そしてそれは同時に脆弱な素の歳納京子を防衛する鎧だ。
「おはよう、京子ちゃん」
「あ、おはようございます。京子先輩」
あかりはいつも通りの優しい微笑みだ。あの時から一切変わらない優しさで京子に接している。
だがちなつは違う。明らかに今までとかは変わっている。
冷めた視線、冷めた表情、冷めた雰囲気。まるで生ゴミを見つめるようなーーそして結衣と同じ目だった。
「私たち授業があるので失礼します」
「あ、ちなつちゃん!」
半ば強引にあかりの裾を引っ張りちなつは走り出した。
振り向きはせず駆け抜ける。
この場合ーー歳納京子ならなんというべきだろう。歳納京子ならーー。
「おぅ!授業頑張れよぉー!」
もう京子の心は麻痺していた。
教室にはいつものように結衣がいた。
何をするわけでもなく上の空でただ座っていた。
挨拶の言葉でさえ喉に詰まる。
また沈黙の一日が始まる。
余談であるが最近私は以前にも増して明るくなった、とよくクラスメイトに言われる。
絵に描いたような天真爛漫さだと言われ、そこに魅かれた友人が山のように出来た。理想の人物像を演じてるのだ。逆に友人が出来ないほうがおかしい。
結衣はーー真逆だ。最近では結衣の友人からも『暗くなったね』と言われる始末だ。
そしてその性格の暗さに比例し、友人は結衣から離れていった。
一人ぼっちでいる光景が視界にギラギラと映り、痛い。
手の届く距離なのにーー声が届く距離なのにーー遠い。
小さく映るその背中には雨に打たれる小鳥にも似た哀愁を感じさせた。
何も出来ない、何もしてやれない。
このもどかしさが京子には果てしなく気持ち悪かった。
あの一件以来娯楽部は存在感を無くした。
『ミラクるん』と達筆に書かれた掛け軸は主人の顔を見なくなってしまった。もちろん主人の親友もだ。
4人それぞれが直帰する。
帰路。
またも世界は橙色に染まっていく。
「歳納さん一緒に帰ろうよ」
新たに出来た友人達が私を呼ぶ声がした。
いくら大学が夏休みとは言え一日中パソコンは厳しいなwwwww
しかし京子はどこが寂しげな表情のまま友人の誘いを断った。
「え。何か用事あるの?」
うーん何だろう。と口調は穏やかなままだが心では必死に理由を詮索したながら話す京子。
「歳納さん?」
あ、私って少しロマンチストじゃん?だから風景を楽しみながら一人で帰りたいんだよね!とどこか戯けた振りで話す京子。
「あははー歳納さん面白ーい!」
私が面白い?知ってる!知ってる~!と歳納京子として話す京子。
「じゃあまた明日ね。歳納さん」
うん。と明るく話す京子。
収拾つかないから超展開でお茶を濁すってのだけは止めてくれよ
>>346
それはしない
決して新たな友人が嫌いなわけではなかった。
ただ娯楽部のみんな以外の誰かと帰りたくないのだ。
…心のどこかでまだ淡い期待している。『また一緒に帰れる』という一縷の望み。
カツカツカツ。
この1/4の儚い靴音が、1/1のいつもの靴音になるまでは。
ーーと強がってみるが本当は泣き顔を誰にも見られたくないというのが素の京子の本音だった。
でもちょっぴり期待はしている。それもまた素の京子の本音だった。
カツカツカツ。
その1/4の靴音には希望と哀愁が同居した。
音が一人立ちし宙を舞った。
書き溜めなしの一発書きだから所々日本語おかしいけど大丈夫?
もう少し続くから待っててくれ
次は宇宙編だよ
>>361
誤爆間違って送信した
星を突くような蝉の合唱が溢れかえったある晩のことである。
その日もまた京子は一人部屋で天井を見つめていた。
すると母の声が聞こえた。
「京子ー。あかりちゃんから電話よー」
「あ、あかり!?」
あかり。
ただその一言を聞いた瞬間京子は思わず走って受話器を取りにいく。
久しぶりの娯楽部からの電話ーー胸の高鳴りが止まない。
「はぁ!はぁ!あ、あかりっ!」
呼吸を整える暇もなく京子は受話器に耳を押し付けた。
「京子ちゃん…。息大丈夫?」
「へーき!へーき!」
「んでどうしたよ、あかり。怖い夢でも見ちゃっておねしょしちゃったのかぁ~?」
「あ、あかりはもう中学生なんだからそんなことはないよ!」
即答するとことが怪しいがまぁいいだろう。
「あかり…。京子ちゃんに謝ろうと思って」
最後のはゴニョゴニョと濁すようにあかりは言った。
相当の後ろめたさがあるのだろう。
「あかりのせい…だよね」
…唐突だった。
その弱々しい彼女の口調から表情が目に浮かぶ。
「あかりが…!あかりが…!結衣ちゃんに質問しちゃってそれからーーそれから京子ちゃんと一緒に喜んじゃったから…!」
まだ記憶に新しいあの時の台詞だ。
『じゃあ今は京子ちゃんを許してるんだよね?』
『うん』
『やったね京子ちゃん!』
まるで自分のことのように喜んでるあかりを見て京子は完全に元の調子に戻った。
戻ってしまった。戻してしまった。
「ご…めん…ごめん……なさい…」
「あか……り…」
京子からはそれ以上の台詞が出てこなかったーー。
気付けば京子の目からは涙が溢れていた。あかりの言葉が心の深淵にまで響く。衰弱した京子の心を潤うには十分過ぎる言葉だった。
まだーーまだ私は捨てられていない。
「き…京子ちゃん!?」
「な、なんでも…ないよぉ!と言うかあかり悪くないし」
涙声であかりに泣いてること知られるかもしれない。
何度も何度も呪文のように『泣くな、泣くな』と自己暗示かけるが自分の体が命令を背く。
抑えきれないでいた。
「あかりは…!味方だからね」
「ありがとう…あり…がとう。あかり…」
もうこれ以上の言葉が見つからなかった。
溢れんばかりの感謝の言葉を言いたいのに声が言葉にならないでいる。
あかりの支えは雀の涙ほどかもしれない。
それに第三者がこの会話を盗み聞きしていたら『ただ謝っただけ?』と嘲笑するかもしれない。
だが京子にはそれだけで潤った。
「また明日ね京子ちゃん!」
「うん…うん……うん」
またも言えないでいる。私ってこんなキャラだったっけーー。
次で最終章(?)になるはず
背伸びをした文だけどよろしくー
あと俺が何年2chしてんと思ってんだwwwwwその程度煽りとか効かんわ
支援
俺しかいない予感
今から書く
飯食ってた
これほどまでに爽やかな朝を私は体験したことがあっただろうか。
チュンチュンという小鳥の目覚ましに夢から覚め、暖かい朝日に縮まった体をほぐす。
食卓から漂うみそ汁の芳醇な香りに胃を刺激され、柄にもないリズミカルなスキップで食卓へ向かう。
ほかほかと湯気が立ち込める白米。ほんのりと焦げた卵焼き。極めつけは部屋にまで漂っていたみそ汁。
あらゆる食材が京子の鼻を燻る。
いつもと変わらない朝ごはんなのにやけに煌びやかに京子の目には映った。食欲が湧き上がる。
一口一口が五臓六腑に旨みが染み渡る。舌の上で食材が舞う。噛みたいーーもっと噛んでいたい。
素直にそう思えた。
「昨日何かいいことてもあったの?京子」
少し引くぐらいはしゃぐ娘の姿に何かを感じた。
「あったよ!」
登校。
普段なら不快に感じる真夏日の日差しが何故か心地よい。京子は自然とハミングを奏でていた。
ここまで元気になった自分自身が気持ち悪く感じるほどだ。
今日は素の自分を曝け出そう!そして素の自分で笑おう!
早くーー早く学校に行こう!
「おはよー!あかりっ!ちなつちゃんっ!」
見慣れた学校の校門の見慣れた親友。全てが始めてのように思え新鮮に感じた。まるで生まれ変わったようだ。
「あ、京ー子ちゃーん!おはよーっ!」
「……」
目に見えてちなつの醸し出す雰囲気がガラリと変わった。
助走を付け、大地を渾身の力で蹴り飛び込むようにあかりに抱きついた。不意打ちにより「ふゃっ!」と言葉にならなら声が飛び出す。
「あぁー!くぁー!りぃー!」
むぎゅーと絞め上げるほど抱きしめた。
(なんだろう…この光景…)
違和感にも似た妙な既視感があかりの中で交錯した。味わったことはないのに懐かしい感覚。
この光景はーーあの一件が起こる以前の京子とちなつだった。
「あ…ここあかりじゃなくてちなつちゃんのポジションーー」
ーーと困ったように笑うが内心はとても嬉しかった。
「当たり前だ。私のスキンシップはちなつちゃんを抱いてこそ完成するのだ!さぁちなつちゃんおまけにあかりもいるけど飛び付いてきて構わないぞぉ!」
「わーー私たち授業があるので失礼しますっ!」
「あ、ちなつちゃん!」
半ば強引にあかりの裾を引っ張りちなつは走り出した。
振り向きはせず駆け抜ける。
この場合ーー歳納京子ならなんというべきだろう。歳納京子ならーー。
「おぅ!授業頑張れよぉー!」
もう京子の心の麻痺は払拭されていた。
その日を境に眼前にあった靄は完全に消え去った。
世界が視界に飛び込んでくる。
新時代の幕開けを思わせる感動だった。
毎日が楽しく、そして明るく思え文字通り薔薇色の人生という奴が肌から感じられた。歓喜。歓喜。歓喜。
もう理想像の歳納京子なんていらない。重圧は抹消されたのだ!
姿の見えない何かに怯え、慄いていた自分が馬鹿らしく思えた。
もう彼女に重荷に感じるものはなにもない!今なら空でさえも飛び越えれそうだった。
歳納京子はーー再び『調子』というものを作り出してしまったのは言う間でもなかった。
ある日街中に救急車のサイレンが嫌というほど鳴り響いていたーー。
ピー…ポー…。
ピー…ポー…。
ピー…ポー…。
「船見さんが入院なされました」
どんよりと沈みそうな曇天なある日のことだ。
ホームルーム中にそれは告げられた。
カチ…カチ。
教室の最前列に置かれた時計だけが静かに教室を木霊する。
ーーとはならなかった。
「船見?」「あぁ船見さん」「そう言えば最近早退しがちだったものね」「保健室によくいた子?」「あぁ~ね」と驚嘆の声ではなく納得の声が大半を占めていた。
結衣…!!
しかしその納得の嵐の中に一人だけ驚嘆していた者がいた。歳納京子である。
確かに最近は舞い上がっており結衣とは関わっていなかった。
京子の人気に拍車が掛かったと同時に結衣の不人気にも拍車が掛かったのだ。
あの一件以来、結衣の性格みるみるうちに暗くなったのはここまで読了した者には分かると思う。(忘れたって人は読み返してね)
京子以外の友人はそれが理由で一人また一人と結衣から離れていった。
しかしまだ離れただけならば気は楽だった。だが、結衣にとって問題はこの後であった。
結衣から離れた友人が京子の友人となったのだ。
離れたということは容易に言えば嫌われたということ。もし結衣が京子と関わればその友人はどう思うのだろう。
きっと嫌いな結衣と仲の良い京子にまで嫌うはずだ。
煮え湯を飲む思いだった、断腸の思いであった。
京子が結衣に関わらなくなるよう、結衣自身が京子に関わらないことを誓った。
京子には迷惑を掛けたくなかった。ただその一心だったのだ。
以上説明終了、本文へ戻る。
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/〃// / 〃l lヽ∨,〈ヾ、メ〈 }} ;l リ ハ l`!ヽ.
//' /,' ,' 〃 l l川/,ヘ丶\;;ヽ/:'/〃∧ l ト、:l !
〃,'/ ; ,l ,'' ,l| レ'/A、.`、\;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |、
i' ,'' l| ,l ' l. !| l∠ニ_‐\ヽ;\,//,イ| l | l ト/ λ! 、
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l ' l |」,' l' lハ |'Ν  ̄´ /` ,|l_=ミ|! ly' ,〈 :|| | 口 |
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ヽ ̄ニ‐、__.」乢!L!lヱL」__ ー、 `'''´ 从「 / 了 用
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l ! K ヽ,、 \「`''''''''"´:::::::;;:" //
. l l ト、\( _.... ヽ .:.::::::::;;″ /' _
\ | l| 八、ヽi´ | .:.:::::::::::::i' .:/'"´ ̄ ̄ ̄ ,.へ\
ほす
ほ
待ってろ!
待ってろ!
待ってろ!
待ってろ!
待ってろ!
私の大切な親友!
結衣!
結衣!
結衣ぃーー!!
学校にいってるのか病院にいってるのかわからないけど頑張れ京子ちゃん
>>715
説明不足だったな病院に行ってる
肩で呼吸し、限界にまで酷使した彼女の足はカクカクと震えていた。
そこまでして来たかった場所がここだ。
視界に入りきらないほど大きく、堂々と聳えたった立派な病院。結衣の入院していた病院だった。
深く深呼吸をした。何度も何度もした。
「よし!」
パンパンと自身の頬を叩き喝を入れる。
病院の自動ドアが京子を歓迎した。
大学が夏休みといえど3日間パソコンで頭がヤバイ
面会謝絶でないことを祈る。(まぁ滅多にはないだろう)
「船見さんのお見舞いに来たのですが何号室か分かりまひゅか?痛っ」
余談だが慣れない敬語に京子は舌を噛みそうなった。というかちょっぴり噛んだ。
部屋室を聞き丁寧にお辞儀をしてエレベーターへ向かった。
やはりその時も舌を噛んだ。血の味に眉間に皺が寄った。
チンーー。
エレベーターが止まった。
もう何かに怯え、慄く京子でない。不安など微塵もなかった。
「結衣ー。お見舞いに来たよ」
京子の口調は穏やかだった。
キーンコーンカーンコーン。
学校のチャイムが間に合った者、間に合わなかった者とを容赦無く区別する。
「京子先輩来なかったね」
まだ京子への敵対心が払拭しきれなていないちなつだが、今日ばかりは落胆の表情を表していた。
「今まで京子ちゃんが休むなんてことなかったのにね…」
いくら落ち込んでいたも、いくら寝坊したとしても、いくら病気になったとしても彼女は決して休みはしなかったのだ。
二人の頭に色々な仮定が横切る。
「今日…京子先輩のい、家……行く?」
照れ臭そうに自身の鼻を触りながらちなつは言った。
ちなつの思いがけない提案にあかりの表情にぱぁっと光が差し出した。
即答する。
「うん!」
京子の知らない所で娯楽部は元に戻っていた。
「って私たちこれ遅刻してない…?あかりちゃん…」
「…あ」
赤座あかり。吉川ちなつ。
人生初の遅刻であった。
同時刻。
京子は結衣の病室に足を踏み入れた。
「結衣…?」
それが京子が現在の結衣を見た時の第一声であった。
京子の視界に映った結衣は京子の予想を超える悲惨で凄惨なものだったからだ。
ひゅーひゅーと衰弱しきった呼吸で酸素マスクで酸素を吸い、頬は骨が浮き出ており、布団から僅かに覗かせる腕は骨と皮で肉が見つからなかった。
血色の良かった肌色は清潔感漂う純白な布団に保護色を思わせるほど真っ白になっていた。
原因は極度のストレスによる内臓への負担さらに上乗せして拒食症だという。
衰弱に衰弱を重ねた成れの果てであった。
結衣の印象はガラリと180°変わっていた。
…言葉が声にならなかった。
「ひゅー…京ひゅー…子ひゅー…?」
蚊の鳴くほどの声という言い回しがあるが結衣の声はそれを具現化したような声だった。
以前のクリっとした円な瞳の面影はなく生気の薄い虚ろな瞳と京子は目線があった。
「ひゅー…そ…っかひゅー…まだヒュー…お…父ひゅー…さんひゅー…仕事ひゅー…中ひゅー…だもひゅー…んねそれひゅー…に今日ひゅー…おひゅー…母さんはひゅー…来れなひゅー…らしひゅー…いしひゅー…」
もう以前の声も思い出せない。
「結衣…。隣ーー座っていい?」
結衣のベットの隣には椅子があった。
「いいひゅー…よひゅー…げほっ!げほっ!」
「あ、あぁ!もう喋らなくても大丈夫だよ結衣」
何も食べられないのだろう。点滴の管が結衣の体に絡みついていた。
「ひゅー…京…子ひゅー…綺麗ひゅー…になひゅー…ったひゅー…ねひゅー…」
確かに京子は肌の張りも良くなったしニキビも消えた。
「ひゅー…良か…っひゅー…た」
「良くなんかないよ…」
「ひゅー…ひゃー…?」
「良くなんかないよ!」
「良…く…うぅっ……ない…よ…う」
結衣を、あかりを、ちなつをーーいや親友を踏み台にして手に入れた幸せで幸せでなんかなれるものか。
親友を蹴落とせば幸福が手に入れるだなんてそんなものは虚構の公式だ!
気付くのが遅過ぎた。
「ひゅー…ひゅー…ねぇひゃー…京子ひゅー…」
「うぅ…っ…な、なに?」
今までの全て結衣の口から明かされる。
結衣は途切れ途切れの言葉で全てを京子に語ったーー。
結衣の元友人に京子を嫌わせたくなかった
こと。
京子と関わったら京子が嫌われると思い自分から距離を置いたこと。
さらに徹底させる為クラスメイトに冷たくしたこと。
それが原因でクラスメイトとかは陰湿な虐めを受けたこと。
目に見えて京子が元気になっていく樣を見続けていたこと。
こんな状態になったのは本望であり後悔はしていないこと。
京子のことを恨んでいないこと。
元気になった京子の笑顔が嬉しかったこと。
全てをーー。
「ひゅー…私はひゅー…京…子のひゅー…ことひゅー…大…好きひゅー…だひゅー…からひゅー…ねひゅー…」
全てをーー語った。
夕日を軸に再び世界は淡い橙色に染まっていく。ーーと言ってみるものの14年間見続けてきたものだ。今更大して感動もない。
私たちはあのあと結衣の両親が見舞いに来るまで世間話に花を咲かせていた。
第三者が聞けばくだらな過ぎて苦笑してしまいそうな話ばかりだった。
ーー姿、声は違えど結衣は結衣。私の『大親友』船見結衣なのだ。
またの面会を約束した時に私たちは熱い握手をしていた。結衣の力は児戯にも等しかったが私には潰れてしまいそうな握力を感じた。
そうそう。
別れる瞬間私は「結衣が死んだら私も死んでやる!」と言ったんだっけ。
あれは我ながら臭かったなぁ。
はは、まぁ結衣が死ぬことは絶対にないさ。
何故なら「結衣が死んだら殺してやるからな!」って念を押したからね。
「私が死んだら一緒に死ぬんじゃないのか!?」ってツッコミが入ったけどね。
いやー!結衣はツッコミの腕が上がったねぇ~!
まぁ私が育てたからね、なーんつって。
あー今日は楽しかったなぁ。
明日はあかり、ちなつちゃんとお見舞いに行ってやーーーーパァーーーーーーッ!!
ゴシャガガガリャガガギギグギャギャギャラララララララララララララrrrrrrrrrr。
>>1にはこのSSの結末よりも不幸になる呪いがかかっている
少しでも不幸になりたくなければバッドエンドはやめるんだ
「ね…ねぇあかりちゃん」
帰路。
モジモジと何か恥ずかしがるような素振りでちなつはあかりに話しかけた。
「どうしたの?ちなつちゃん」
「わ、私もさ!あかりちゃんみたいに素直になろうと思うんだっ!」
今日のちなつは明らかにおかしかった。現に今朝は遅刻してまであかりと共に京子を待っていた。
多少なりとも嫌な顔はしてはいたが、ちゃんと京子を待っていた。
おまけに京子の家に行こうと提案したのもちなつ自身だ。
「あかりみたいになるって…どういうこと?」
するとちなつはべぇーっと舌を出して意地悪く走った。
「教えてやんなーいっ!ほら早く京子先輩の家に行くよあかりちゃん」
ちなつとあかりを合わせた1/2ーー否。
2/4の靴音はたったったっーーと残りの靴音を探しに空へ溶けてゆく。
歳納京子、船見結衣、赤座あかり、吉川ちなつ。
彼女たち娯楽部の4/4の靴音。
叶わぬ道に一人立ちしていた。
まだあったのか
支援
何気ない平凡な道。こんな道日本中ーーいや世界どこにでもある。
そんな平凡な道にも拘らず異様な雰囲気が黒煙と共に漂っていた。
一台のトラック。元凶はこいつだった。
ブレーキ跡が生々しくアスファルトに描かれていた。
悲鳴やら喚き声やら全てが共鳴し辺りは絶叫に包まれた。
京子「ヘルメットが無ければ即死だった」
_| ̄|_ //ヽ\
| '|/ / ノ "´ ̄ ̄''''‐-...ノヽ
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ヽ-''" 7_// _/^ 、 `、
┌───┐ / / 、_(o)_,;j ヽ|
|┌─, .| /. - =-{_(o)
└┘ ノ ノ |/ ,r' / ̄''''‐-..,>
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 ̄フ i' l r' ,..二''ァ ,ノ
n / 彡 l /''"´ 〈/ /
ll _ > . 彡 ;: | ! i {
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|l トー-. !. ; |. | ,. -、,...、| :l
ll |彡 l ; l i i | l
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|l { 彡|. ゝ ;:i' `''''ー‐-' }
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|! |! |! l彡| ::. `ー-`ニ''ブ
o o o l :. |
「あかりちゃん遅ーーーーい!」
「はぁ…っ。はぁ…っ。はぁ…っ。待ってよぉぉぉ」
あまりにもちなつが速いのか、それともあかりが遅過ぎるのか。二人の距離は随分離れていた。
まるで遠足の小学生のようなはしゃぎぶりだ。
足を止めて待てないのかちなつはその場で足踏みをしていた。
京子の家まであと少しである。
ほしゅ
絶叫の渦の中、デコボコのトラックから男が降りてきたーー。
恐怖に瞳を濁らせ、小刻みに全身を震わせながら降りてきたーー。
「お、俺のせいじゃねぇよ!!そ、そうだ!!こ…この娘が飛び出してきたんだ!!そうなんだよ!!」
真紅の湖に溺れる少女を指差した。ぐったりとしていてピクリとも動かない。
傷口覗く肉からは脈打つようにリズミカルに液体を吐いていた。
美しかった金髪が赤黒く染まっていく。
「………」
違う!違う!違う!
韜晦するように口をパクパクと動かす少女を指差す。
口をパクパク…?
「こ、この娘まだ生きてるぞ!!!!」
もう一度言おう
>>1にはこのSSの結末よりも不幸になる呪いがかかっている
少しでも不幸になりたくなければバッドエンドはやめるんだ
このまま直行していいのか?改変したらいいのか!?
>>872
お前にはこのSSの結末よりも不幸になる呪いがかかっている
少しでも不幸になりたくなければバッドエンドはやめるんだ
このことを心に刻んで自分で判断しなさい
改変して生存ルートかよおいまさか
え?
>>887
これは改変なしで死亡フラグだろjk…
傷口覗く肉からは脈打つようにリズミカルに血液を吐いていた。
美しかった金髪が赤黒く染まっていく。
「………」
違う!違う!違う!
韜晦するように男は無言の少女を指差す。
過去が変わることはないのだ。
「俺じゃねぇ…俺…じゃ……ねぇ。俺は殺してねぇ」
男は何かにとり憑かれたかのようにブツブツと何度も何度も言い聞かせる。
少女を見ては俯き、見ては俯く。
誰も男を擁護する者はいなかった。
むしろ邪魔だった。
『救急車を呼べー!』『誰か脈を計れ!』
『心臓マッサージを』
現実逃避に浸るこの男に構ってる暇などなかった。
迅速に行動に移さなければ助かる命も助からなくなってしまう。
しかしーーこの状態は。
下手にブレーキを掛けたことにすり潰したようだった。
もう脈を計らずとも…素人の目にも分かる。
ゆるsざない……あsd
心を蓋し理想の自分を演じた少女、親友を守る為自分を犠牲した少女、数多くの何かを気づかせた少女、大好きな人の涙を見てしまった少女。
4人が4人共違った考えや感情を持ち、い
がみ合い亀裂が生じてしまったこの数ヶ月。
皮肉にも皆が皆、知らないところで知らない間に仲直りし、知る間もなく散った。
4/3などーーこの世には存在のだ。
>>908
おちつえk
のだ?
京子「と言うお話だったのさ」
結衣「また訳の分からない紙芝居を作って・・・」
>>911
何だ紙芝居か
心を蓋し理想の自分を演じた少女、親友を守る為自分を犠牲した少女、数多くの何かを気づかせた少女、大好きな人の涙を見てしまった少女。
4人が4人共違った考えや感情を持ち、い
がみ合い亀裂が生じてしまったこの数ヶ月。
皮肉にも皆が皆、知らないところで知らない間に仲直りし、知る間もなく散った。
4/3などーーこの世には存在しないのだ。
今読み返したら日本語おかしいの多いな
通じてるか?
いっきに終わりまで行くわ
「これより七森中学校卒業式を行います。卒業生起立」
中学生一堂に保護者。
全てをいれてもまた空間のある広い体育館に校長の一声は木霊した。
起立。姿勢。礼。着席。
一連の流れはどこの卒業式も共通している。
校長のお経のような眠くなる話も共通しているだろう。
決まって次は卒業生一人一人の点呼だ。
「えー。僭越ながら卒業生一人一人を呼ばせていただきます。3年1組ーー」
あ行から全ては始まる。
支援
あ、い、う、え、お。
か、き、く、け、こ。
さ、し、す、せ、そ。
た、ち、つ、て、とーー。
「とーー歳納京子」
沈黙。
水を差したように沈黙は流れた。
「皆さま。黙祷をお願いいたします」
全校生徒が京子の最期を知ったのは事故のあった次の日である。
結衣。あかり。ちなつ。
彼女たち娯楽部は瞼の裏側で何を思い出していたのだろう。
綾乃、千歳、千鶴、向日葵、櫻子、りせ。
歳納京子と関係のあった他の者たちもまたどんな心境なのだろう。
所々から溢れる啜り泣く声が京子の存在の大きさを物語っていた。
卒業式は何事もなく全ての行司が無事に終了し、卒業生は教室に戻りそこで友達同士で写真やら雑談に花を咲かせていた。
「ふぅ。やっぱり校長先生の話は肩に来るよね。私もうガチガチだよ」
結衣はクラスメイトと話していた。
そもそも嫌われていたのは冷めた演技をしていただけで根は優しい子なのだ。
友達なんてすぐに集まった。
しかしここまで順調に来れた訳ではなかった。
衰弱した結衣にとって京子の死は致死量を超えた毒より強力だった。
泣くことにも体力が必要ーー。無い体力で泣くのだ。負の連鎖だった。
本来なら半年で完治すると見込んでいたが約1年を要した。
いつの間にやら京子よりもお姉さんになってしまっていた。
乙
おつかれさん
こんなに長い間張り付いたのはいつ以来だろう
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