沈黙の進撃(242)




主演:スティーヴン・セガール


~あらすじ~

845年、人類を巨人から守護する壁の中で最も外にある壁「ウォール・マリア」。
突如出現した体高60mを超える超大型巨人がその壁の門を蹴り破った。
多くの人々が我先にと逃げ出す中、今だ留まっている人影があった。
瓦礫の下敷きになった母を助けようとする子どもたちだった。
しかしそんな健気な子どもたちの前にも巨人の魔の手が忍び寄っていた。


ただひとり巨人の恐怖に屈していなかったのは、駐屯兵団御用達の食堂のコック長ライバックのみ。
しかし彼の正体は初代人類最強と謳われた元調査兵団の兵長だった。
彼は、ある壁外調査で部下が多数死傷し、当時の団長を殴打し兵団をやめさせられてしまった。
それをピクシス司令が不憫に思い、彼を自分の手元に置いてコック長という任務に就かせていたのである。
救出したハンネスや(破壊された門の破片のせいで)瓦礫の下敷きになっていた主婦のカルラ・イェーガーと共に、ライバックの進撃が始まる。

ハンネス「ライバック、酒はあるかい?」

ライバック「また酒か。あるにはあるがそんなに飲んでばかりで大丈夫か?」

ハンネス「ああ、心配するな。身体だけは丈夫だからな」

ライバック「・・・・ハンネス、俺が心配しているのはお前の身体でも、懐事情でもない」

ハンネス「……じゃあ、なんだ?」

ライバック「・・・・わからないのか?」

ハンネス「ああ、ピーンとこねぇな」

ライバック「・・・・もういい。ほら、いつもの安酒だ」

ハンネス「またくるぜぇ~」

ライバック「おう、次はピクシス司令の飲むような上物を買っていけよ」






ライバック「・・・・俺が心配なのは、酒に酔っていてイザというとき戦えるかってことだよ」

「・・・・」

厨房の奥でライバックは静かに腕を振り上げた。

その手に握られているのは厨房にあるありふれたナイフだった。

シュッ、とライバックが手を振り降ろし持っていたナイフを投擲した。

ナイフは一瞬でライバックの睨みつけていた的の中心に鈍い音を立てながら深く深く突き刺さった。

「・・・・」

次のナイフを手に取り、ライバックは一連の動作を繰り返した。

その度にナイフが突き刺さる的だったが、そこに残るナイフの傷跡は中心以外に存在しなかった。

ライバック「・・・・まぁ、確かにあの壁を見ていれば巨人が中に入ってくるなんて考えられないが」

ライバック「もしかしたら・・・・ということもあるからな」

コック「コック長、そろそろ……」

ライバック「ああ・・・・よし、みんな。もうすぐいつもの稼ぎ時だ、存分に腕を振るってくれ」

―――――
―――


少年「ヤツらが壁を壊して!街に入ってきた時だよ!!」

ハンネス「……イッテェ、おいエレン、急に大声出すんじゃねぇよ」

ハンネス(……ああ、ライバックが言おうとしてたことはコレか)

やいのやいの

ハンネス(でもなぁ、イザって言われてもなぁ……)

駐屯兵「なぁ、ハンネス」

ハンネス「あ、ああ」

駐屯兵「お前も兵士になって壁の上に行ってみりゃわかる。ヤツらにこの壁をどうこうするなんてできネェってな」

エレン「じゃ、じゃあ、そもそもやつらと戦う覚悟なんてねぇんだな?」

ハンネス「ああ、ねぇなぁ」

エレン「何だよ、もう駐屯兵団なんて名乗るのやめて壁工事団にしろよ!」

ハンネス「それも悪くねぇな」

エレン「はぁ?!」

ハンネス「いいかエレン、兵士が真っ当に活躍するってことは それこそ最悪の時だぜ?」

ハンネス「俺たちが『役立たずのただメシ食らい』ってバカにされてる時は、今みたいに皆は平和に暮らせるんだぞ」

エレン「一生壁の中から出られなくてもメシ食って寝てりゃ生きていけるよ」

エレン「でも それじゃまるで……まるで家畜じゃないか?!」

駐屯兵「……行ったか」

ハンネス「しかしエレンのあの口ぶり……もしかしてアイツ、調査兵団に入りたいのか?」

駐屯兵「かもな。まぁ、ガキの頃はそんなもんだったろ、俺たちも」

駐屯兵「そのうち目も覚めるわな」

ハンネス「……だな」

――――――
―――


ライバック「・・・・そろそろ飯時も終わりか」

コック「休憩ですか?」

ライバック「そうだな、その後は夕飯の仕込だ」

ドォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオンン……

ライバック「・・・・?」

―――――
―――


ハンネス「……バッカヤロウ、ライバックもエレンも妙なことを言いやがるから」














バカでっかい巨人『………………』

ハンネス「あんな馬鹿でかいのが出てきちまったじゃねぇか!」

―――――
―――


ライバック「お前たちは先に避難していろ」

コック「コック長は!?」

ライバック「俺はちょっと様子を見てくる」

―――――
―――


ハンネス「……クソッ、エレンの野郎は…イェーガーさんは!?」

ハンネス(あれはエレンにミカサ!?アイツら逃げないで何やってやがる!)

カルラ「ハンネスさん!2人を連れて逃げてぇ!!」

ハンネス(カルラ!?そうか、瓦礫の下敷きに……)

ハンネス「待ってろ!今助ける!!」シャキンッ

カルラ「待って!戦ってはダメ!!」

ハンネス「なっ……!?

カルラ「子供たちを連れて…逃げて!」

ハンネス「見くびってもらっちゃ困るぜ!俺はこの巨人をぶっ殺して3人ともきっちり助ける!恩人の家族を救ってようやく恩返しを───」

カルラ「ハンネスさん!」

ハンネス「!?」ビクッ

カルラ「……お願い!!」

巨人『……………』ニタニタ

ハンネス(確実に……確実に二人だけは助かる方法を取るか…巨人と戦って全員助ける賭けに出るか…・・・)

ハンネス(カルラの願いに応えるか…オレの恩返しを通すか…)

ハンネス(俺は――――!!)

ライバック「おいおい、待てよハンネス」

ハンネス「なっ!?」

ハンネスが声のした方を振り向くと、そこにいたのはコックのライバックだった。

肩には錘の結んである頑丈そうなロープの束を背負い、手にはいつもの包丁を持っていた。

ライバックはその包丁の刃の方を掴み直すと腕を振りかぶって投擲した。

間を置かず2本目の包丁も投擲する。2本の包丁はそれぞれ巨人の目玉に突き刺さった。

激痛に耐えかね瓦礫の下の人間どころではなくなった巨人目掛け、ライバックはロープの錘のついた方を振り回し投げつけた。

狙い通りにロープは巨人の首へと絡みついた。

「借りるぞ」

ハンネスの超硬質ブレードの替え刃を瞬時に引き抜くと、ライバックは躊躇いもせずに巨人の足元へと歩を進めた。

そして刹那、巨人の腱を斬り抉るとロープを思い切り引っ張った。

腱を斬られたことによりバランスを崩した巨人はロープの引っ張りに導かれるようにその巨体をあっさりと地に伏した。

ライバックは慣れた手つきで、まるでいつも食堂で食材を捌くときのように巨人のうなじを綺麗に斬り取った。

エレン「す、すげぇ……」

ライバック「ありがとう。でもそんなことより今は君のお母さんを助けるのが先だ」

ライバック「ハンネス、来いよ」

ハンネス「お、おう……」

―――――
―――


カルラ「本当に、なんとお礼を言えばいいのか……ありがとうございます」

エレン「おっさんありがとう!本当にありがとうな!!」

ミカサ「……ありがとう」

ライバック「いや、まだ安心はできない。奥さんはその大怪我だし巨人もまだまだうろついている」

ライバック「ハンネス、お前の立体機動装置を俺によこせ」

ハンネス「は?」

ライバック「ケガ人1人と子どもを2人も連れて立体機動なんてできるわけないだろう?だから俺に貸すんだ」

ライバック「今のお前よりは戦えるさ、な?」

ハンネス「あ、ああ……わかった」

カルラ「……あなたは、一体?」

ライバック「ただのコックさ」

ライバック「・・・・よし、これならいけるな」

ハンネス「……本当に大丈夫なのか?」

ライバック「ハンネス、俺を信じろ。大丈夫さ、お前らが避難船に乗るまで巨人は一匹たりとも近づけさせない」

ハンネス「さっきのを見てただもんじゃないとわかったが、アンタはコックだろ?」

ライバック「結構疑り深かったんだなぁお前。これでも昔は調査兵団にいたんだぜ?」

ハンネス「調査兵団…ライバック…… まさか!?」

ライバック「さあ、無駄話してる時間はない。行くんだハンネス」

ハンネス「お、おう!」

―――――
―――


エレン「……なぁ、ハンネスさん。あの人は結局誰なんだ?」

ハンネス「あの人はなぁ……」

ハンネス「元調査兵団で人類最強と言われた」













ハンネス「ケイシー・ライバック兵長だ」

―――――
―――


ライバック「さて、コイツを使うのは随分と久しぶりだが・・・・」

巨人『…………』

ライバック「まぁ、一匹ずつ相手するなら問題はないさ」

ライバックを捕えんと巨人の腕が伸びる。しかしその手の中に収まったのは粉塵のみ。

ゆっくりと引いたその手の甲に光るのはワイヤーにつながるのアンカー。

巨人の引いた手に引っ張られるように立体機動装置を身に着けたライバックの体が宙を舞う。

慣性に身を任せるライバックの手が巧みに動く。すると絶妙のタイミングでアンカーが抜け、ライバックはそのまま真上へと飛んでいく。

そして一閃、巨人のうなじの肉が削ぎ落とされる。

しかしライバックはそんなことには目もくれず、次に迫る巨人へと向き直っていた。

――――――
―――


駐屯兵「避難状況は!後どれくらいだ!?」

駐屯兵「わかるかよ!確認しに行ける状況でもねぇだろ!!?」

ハンネス「……おぉーい、手を貸してくれ!」

駐屯兵「ハンネス!医者の奥さんもか!」

駐屯兵「倅や娘も無事だったんだな!」

ハンネス「ああ、ライバックに助けられたんだ」

駐屯兵「ライバック?ていうかお前立体機動装置は?」

ハンネス「ライバックに渡したよ」

駐屯兵「ライバックってあのコックのか?」

ハンネス「ああ、そのライバックさ。だが、あの人はただのコックなんかじゃねぇ」

ハンネス「あの人は――――

845年のその日、人類は思い出した



かつて人類最強と呼ばれた男がいたことを



その男は死んでなどいなかったということを


―――――
―――


ザシャッ

ハンネス「ライバック!」

ライバック「ガスが切れそうだ。新しいのをくれ」

ハンネス「ああ、ちょっと待っててくれ」」

ざわ・・・ ざわ・・・

ライバック「・・・・」


ハンネス「ライバック!」

ライバック「おう」

ハンネス「……あっちにはあとどれくらい残ってる?」

ライバック「・・・・数えきれないぐらいだ」

駐屯兵「な、なぁ!中で戦ってる連中はどうしてる?あそこには俺の……」

カンカン

ライバック「・・・・さっきまで使ってたガスはそいつらの分だ」

駐屯兵「…………」

ライバック「・・・・じゃあ、そろそろ戻る」

駐屯兵長「おい、そっちはシガンシナだぞ!?」

ライバック「それがどうした?」

駐屯兵長「もう閉門するんだよ!これ以上は危険すぎる!!」

駐屯兵「何言ってやがる!まだ中に大勢の人が残ってんだぞ!?」

駐屯兵長「わかっている!だが、この門を突破されれば街一つが占領されたどころの話じゃない!!」

駐屯兵長「ウォール・ローゼまで人類の活動領域が後退することになるんだぞ!!」

駐屯兵「だからと言って目の前の連中を見殺しにしろっていうのか!?ふざけるな!!」

駐屯兵長「貴様!さっきから上官に向かってなんて口を!!?」

ライバック「落ち着け、要は巨人をここに近づけさせなくちゃいいんだろ?」

―――――
―――


ライバック「・・・・」

駐屯兵「この便はもう満員だ!出港する!!」

ライバック「・・・・あと、最低2・3便はいるな」

ライバック「・・・・!?」

なんか堅そうな巨人『……………』

ライバック「いつの間にこんなところまで・・・・」

なんか堅そうな巨人『……………』カハァァァ・・・

ライバック「・・・・まずい、急いで閉門しろ!」

駐屯兵「なんだあの巨人は!?」

駐屯門兵「突っ込んでくるぞぉ!!?」

ゴ、ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

なんか堅そうな巨人『オォォォォォォォォ!!!』ガッシュガッシュガッシュ

ライバック「・・・・」パシュッ

ライバックがアンカーの狙いを迫りくる巨人へと向ける。

瞬きするほどの間に発射されたそれは巨人の皮膚に食い込む――――はずだった。

「・・・・!?」

人類を守護する壁を想起させる巨人の皮膚はアンカーの刃を跳ねのけたのだった。

しかし、巨人の皮膚はまるで鎧のようでわずかな隙間が空いていた。アンカーは運よくそこに引っかかった。

想定していた場所と違ってはいたがライバックを躊躇することなく巻き取られるワイヤーにその身を委ねた。

見事に肩のあたりに着地するとライバックは超硬質ブレードを一閃した。

「・・・・!!?」

ブレードはその役割を全うすることなく見事に折れた。頑丈な巨人の皮膚はアンカーどころかブレードすらも寄せ付けなかった。

「撃てぇぇ!!」

ライバックは自身が砲撃に巻き込まれることもいとわず駐屯兵に向けて叫んだ。

駐屯兵達もあの巨人には刃が通らないのが見えていた。一拍の間をおいてから砲弾が次々に発射された。

『…………』

だが、巨人の歩みは止まらない。

「逃げろぉぉおおおお!!!」

一瞬の轟音、それが告げるのはたった今ウォール・マリアが巨人に突破された、ということだった。

市民「ああ、突破されちまった……」

エレン「……くそっ!」

パシュッ・・・・

市民「うわぁ!?巨人か!!?」

エレン「違うよ!立体起動装置のアンカーだよ!!」

エレン「きっと!誰か水の中にいるんだよ!!」グイッ

ライバック「・・・・」ザパァッ

エレン「ライバックさん!?」

ライバック「・・・・」

エレン「気を失ってる!誰か引っ張り上げるのを手伝ってくれ!!」

市民「お、おう……」

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845年のこの日、ウォール・マリアは陥落した。





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俺とお前でダブル人類最強も見たい。

>>41「俺とお前でダブル人類最強も見たい。 」・・・・?




また一体巨人が倒れた。

倒した主は、人類最強と謳われる調査兵団兵長・リヴァイその人だった。

それだけならよくある光景、当然の光景とすら言えた。しかし、今回のそれは常のそれとは違っていた。

リヴァイの全身が返り血に塗れていたのだ。だが、今回彼をそこまで追い詰める強敵がいたわけではない。

数刻前、調査兵団は壁外調査中大規模な巨人群と戦闘に入ってしまった。

包囲されてしまったものの、精鋭により突破口を開き調査兵団はその場を離脱した。彼はその殿を務めたのだ。

そして、いつものように残りの巨人をある程度引き付けた後、一点突破で離脱する手筈であった。

しかし、ここで不幸な出来事が一つ起きた。リヴァイの馬が巨人の倒した木で足を負傷して走れなくなってしまったのだ。

今この場のように巨大樹が生い茂る森なら立体機動による高速移動が可能であるが、平地では馬無しで巨人から逃げることは不可能だ。

リヴァイは馬を使えないと悟った瞬間、離脱することを最優先事項から外した。

彼は出来得る限り巨人を排除することにしたのだ。先に離脱した調査兵団本隊に巨人を向かわせぬように。

潔癖症であるリヴァイが返り血も気にせず闘うのはそういうわけだったのだ。

しかしながら倒しても倒しても湧いてくる巨人、彼の武器は限界を迎えていた。

人類最強と言えど、使っている武器まで特別というわけではない。斬り続ければ刃はなまくらになるし、飛び続ければガスは無くなる。

「チッ……」

迫り来る巨人の腕を立体機動も使わず後ろに飛び退くことでかわすが、それ以上後ろに逃げ場はなかった。

右前方の太めの枝に向けてアンカーを発射する。それを軸にリヴァイの身体が宙空を駆ける。だが――――

「!?」

戦闘の余波でもろくなっていたのか、はてまた長時間の間断無き戦闘で彼の直感が鈍ってしまったのか、アンカーの刺さっていた枝が根元から折れた。

そして、宙に投げ出され身動きの取れないリヴァイに巨人の醜悪な顔が猛烈な勢いで近づいてきた。

「……なめるな」

しかしそこは人類最強の兵長、巨人の鼻っ柱に足を当てると巨人の接近する勢いを利用して蹴り跳び、後方の枝へと着地する。

「……チッ」

だが、想定外の事態によりガスの残量はほぼゼロ。ブレードも最後の刃にしてから既に10体のうなじを削ぎ落としていた。

そして何より、今の無茶な動きのせいで足の筋を痛めてしまっていた。

いつもの不機嫌そうに寄せられた眉が、さらにその皺を深く刻み込んだ。彼の心に今去来しているのは絶望か、はてまた別の何かか。

「……エルヴィンたちは逃げ切れたか?」

ぽつりと、そんな声が漏れた。








『ああ、彼らなら無事に離脱した』

「……オイ」

『スマンな、リヴァイ……遅くなった』

「……来るならもっと早く来い、ホンゴウ」

ギャロォォォォオォォォォォォォオン・・・・

巨大樹の森をたゆたう風がやおらその勢いを増し、嵐となって吹き荒れる。

ホンゴウのベルトの中央の風車が嵐を吸って、激しく強く雄々しく回転する。

その暴風の最中、ホンゴウの声が力強く太く大きく響く。

『ライダァァ・・・・』

『変身!!』

瞬間、風車から美しく眩く輝く虹色の光が放たれる。

そして、光が治まったその場所に立っていたのは先とは違う異形の者。

この世のどんな刃の煌めきよりも鮮やかに輝く銀の両の腕、そして脚。

その全身を取り巻く色は深く澄み切った黒。胸から腹部にかけては装甲とも皮膚ともとれる緑の外殻が覆う。

顔面に当たる部分は昆虫の複眼を想起させる真っ赤な光源が二つあり、鋭い歯をした銀の顎と二本の触覚が生えている。

頭部の外殻もまた緑色であるせいか、それはまるでバッタを摸した姿をしているようだった。

そして、何より目を惹くのは紅蓮に燃えさかる火焔のように風に靡く真っ赤なマフラー。

その異形の名は――――


. ――――仮面ライダー1号

『敵は多いな、リヴァイ』



『……いや、大したことはないな』



『俺とお前の、ダブルライダーならばな』



ペトラ「こうですか!?わかりません><」
以上お遊び
以下本編

―――――
―――


老兵「……ライバックはおるか?」

衛生兵「ぴ、ピクシス司令!?こ、こちらです!!」



ピクシス「ライバック」

ライバック「・・・・やぁ、アンタか」

ピクシス「思ったより元気そうじゃの」

ライバック「ベッドで、寝てる、けが人に、言う、セリフじゃないな」ギッ ギッ

ピクシス「ふぉっふぉっふぉ、今も腕立て伏せをしとるくせに寝てると言うか」

ライバック「そうだとしても、まずは心配するべきだろう?」

ピクシス「それもそうじゃの。大丈夫か、ライバック?」

ライバック「おかげさまでね」

ライバック「で、司令のアンタがわざわざこんなところにまで来るなんてな」

ライバック「何があった?」

ピクシス「何があったもないわな。お前じゃよ、ライバック」

ライバック「俺か?」

ピクシス「左様」

ピクシス「ところでお主、ウォール・マリアが陥落したことは知っておるか?」

ライバック「・・・・すまない。俺がいながら」

ピクシス「自惚れるなライバック!お主一人でどうにかできたわけではないわ!!」

ピクシス「……ま、このことは人類にとって大いなる損失じゃ」

ピクシス「じゃが、希望もまたある」

ピクシス「お主じゃ、ライバック」

ピクシス「シガンシナの住民の避難を助けたお主の働きは聞いておる」

ピクシス「かつての上官に対するお主の行き過ぎた行為は看過できるものではない」

ピクシス「しかしながらお主のその力、そのまま放置しておくのもまたできん」

ピクシス「よってケイシー・ライバック兵長の原隊への復帰を命ずる!!」

ピクシス「……もう誰も文句は言わんじゃろう。いや、言わせんよ」

ライバック「・・・・了解しました」

ライバック「ですが司令、一つ頼みがあります」

ピクシス「…………んん?」






――――3か月後

ハンネス「ライバック!」

ライバック「おお、ハンネス。今日は飲んでないのか?」

ハンネス「今日も何も、あれから非番の時でもあまり飲んじゃいねぇよ」

ライバック「あの飲んだくれがよくもここまで変わったもんだ」

ハンネス「あんなことがあったんじゃ何が何でも変わるさ」

ライバック「あの日もこうだったらあの巨人に立ち向かえてただろうにな」

ハンネス「……あの時は助かったよ、本当に」

ハンネス「あんたが来てくれなきゃ、俺はカルラを見捨てて2人を助けることしかできなかっただろう」

ハンネス「……ありがとう、ライバック」

ライバック「よせよ、照れるじゃないか」

ハンネス「しかし、なんであんたは駐屯兵になったんだ?調査兵団で随分と鳴らしてたんだろう?」

ライバック「ああ、まだ話してなかったな」

ライバック「どうにも引っかかることがあってな。ピクシス司令に頼んで駐屯兵団に配属してもらった」

ハンネス「……引っかかることだと?」

ライバック「・・・・周りに誰もいないな?」

ハンネス「ああ……」

ハンネス「で、何が引っかかってるんだ?」

ライバック「・・・・あの2体の巨人だ」

ハンネス「超大型と鎧か?」

ライバック「ああ、あの2匹の行動がな。どうにも腑に落ちない」

ライバック「奇行種の一言で片づけるには不可解過ぎる」

ハンネス「と、いうと?」

ライバック「あの2匹は知性を持っている。それだけじゃない、その正体はおそらく――――人間だ」



ハンネス「はぁぁぁ!!?」

Seid ihr das Essen?
Nein, er sind der Hahn!

消された星の 名前も知らずに 
陽の堕ちた空は 月を待ち侘びる

祈っただけでは 障害(カベ)は壊せない
≪不承知な現状≫を壊すのは 闘う決意だ…

屍積み重ね 尚も挑み 駆ける鬼よ
夢幻の生命…無為の代償…散った戦友(センシ)の『悲願(ネガイ)』を!

強いられた理不尽は 沈黙の←嚆-<だ
限界の其の向こうで 巨人を捌く≪料理長≫

燃え上がる≪殺意≫に其の身を委ねながら 黎明に死を刻む―――

←オヤジのゲンコ-≪

グンタ「……どうだ?」
オルオ「ほう… 悪くない……」
エルド「……何やってんだお前ら」
以上お遊び
以下本編

ライバック「だっておかしいじゃないか。超大型も鎧も門を壊すとすぐに消えたと聞いてる」

ライバック「まるで最初から門を壊すことだけが目的だったようにな」

ハンネス「待てよ、そりゃ考えすぎだろ?超大型巨人が門を蹴破ったのだって偶然じゃないのか?」

ライバック「かもしれん。だが、奴が巨人によくあるように俺たちを食べるつもりならもっと壁をぶち壊したはずだ。中に入るためにな」

ハンネス「そう言われりゃそうだな…… 人間を食べようってんなら門を壊しただけじゃあの巨体は中には入れねぇ」

ハンネス「でも、それだけであの2匹に知性があるってのは……」

ライバック「いや、間違いない。鎧の巨人にしろあそこが壁に比べてもろい門だと判断したから突っ込んできたんだ」

ライバック「避難民が逃げる先を見ていたのかもしれない」

ライバック「そして、あの2匹が現れたのがあの日だったというのもそう考えるポイントだ」

ハンネス「あの日?あの日は確か…… 調査兵団の帰還か?」

ライバック「そうだハンネス。あの2匹は調査兵団が戻った場所を見てあそこが門だと判断したんだ」

ハンネス「……いや、でもどう見ても門と壁とは違うだろ?調査兵団が帰ってくるのを待たなくても」

ライバック「いいや、あの2匹には知性があった。だからこそ、調査兵団が戻ってきた後に侵攻してきたんだ」

ライバック「奴らからしたらあの門が本当の門じゃないかもしれないという疑いがあったんだ」

ライバック「おそらく超大型巨人には壁を壊すほどの力はなかった。だから一発で門を破壊する必要があった」

ライバック「下手に壁を蹴って壊せないでうろついたりしていれば、駐屯兵に討伐される可能性だってあるわけだしな」」

ハンネス「何を言ってるんだアンタは……?」

ライバック「ハンネス、あの2匹は2匹とも突然現れたのを知ってるよな?」

ハンネス「超大型巨人の方はな。鎧の巨人は状況が状況だけにな」

ライバック「なら俺が保証する。鎧の巨人は突然現れた」

ライバック「遠くから走り寄ってきたわけでもないし、もともといたなら俺が見逃すと思うか?」

ハンネス「いや、思わねぇ」

ライバック「つまり2匹とも本当に突然現れたんだ。あれだけ特徴的な奴らがどうして事前に発見できなかった?」

ライバック「・・・・きっとあの2匹は、事を起こす前には全く気付かれない見た目だったんだ」

ライバック「ここでお前に質問だ。お前はマリアを突破される前、壁の上の哨戒に真剣に取り組んでいたか?」

ハンネス「……あんときは連中にあの壁をどうこうできるわけねぇ、そう思ってたからな」

ハンネス「ハッキリ言って適当に見下ろしてただけだな」

ライバック「だと思ったよ。それは他の駐屯兵も同じだろ?」

ハンネス「ああ」

ライバック「奴らがそれを知っていたかは知らないが、とにかく駐屯兵の警戒は杜撰だったということだ」

ライバック「そんなところで小さい奴がウロチョロしていたところで気にもとめなかったろ」

ハンネス「だろうな」

ライバック「杜撰な警備と慎重な侵入者、突破されるのはある意味当然の出来事だ」

ハンネス「……その小さい奴っていうのは3m級とかじゃなくて、人間って言いたいのか?」

ライバック「そうだ。それなら突然現れたというのにも説明がつく

ライバック「超大型が門を壊した後、人間に戻ってシガンシナに入ったとしても誰も気にする余裕はなかっただろうさ」

ライバック「そして2匹は人間の姿のまま避難民に紛れる。あの状況で隣の奴が知り合いかどうかなんて確認してる余裕はないからな」

ライバック「やがて避難民はマリアの門に辿り着く。そこで鎧の巨人が人間から変身してそれを壊した」

ハンネス「……なるほど。人間なら門の外では小さすぎて気にも留めない。中に入れば避難民と見分けがつかない、か」

ハンネス「だからあの2匹の正体が人間だと」

ライバック「そうさ」

ハンネス「……でもよぉライバック」

ライバック「言うな」

ライバック「わかってるさ、今言ったことは余りにも馬鹿げているってな」

ライバック「人間が巨人に変身する?そんなこと出来るはずはない。全ては偶然、こっちの方がよほど信憑性がある」

ハンネス「…………」

ライバック「しかしな、どうしても俺は気になるんだ。鎧の巨人が突然現れることができた理由が」

ライバック「だからこうして、以前はローゼの外側にいた連中の名簿を写して回っている」

ライバック「目下最大の敵は壁外にはいない。この壁の内側にいるはずなんだ・・・・」

ハンネス「……こう言っちゃあ失礼だが、あんた頭がおかしいんじゃねぇか?」

ライバック「・・・・だろうな」


―――更に3か月後

ライバック「・・・・ウォール・マリア奪還作戦?」

ピクシス「左様」

ライバック「奪還とは聞いて呆れるな。要は口減らしじゃないか!」

ピクシス「……うむ」

ライバック「・・・・とにかく、こんなバカげた作戦は取りやめるようお偉方に言ってくれ!」

ライバック「人の命を何だと思っているんだ!」

ピクシス「…………」

ライバック「頼みましたよ、司令。失礼します」







ピクシス「……すまんのぉ」

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奪われた領土を取り返す大規模な反攻作戦「ウォールマリア奪還作戦」



人口の2割、約25万人を動員するが作戦は失敗



人員は大量の避難民を主に構成されており本作戦の実態は食糧難を解消するための人間の間引きだった



中央政府の目論見通り生存者は極わずかであった





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―――――
―――


ライバック「司令!」

ピクシス「……やはり来おったか」

ライバック「当たり前だ!どうしてあの作戦を実行させた!?」

ピクシス「必要だったからじゃ」

ライバック「必要?必要な死なんてありはしない!!」

ピクシス「では間近に迫った食糧危機、お主はどう乗り切るというのだ?」

ピクシス「望めば出てくるようなものではない!開墾したとて実りの季節までは持つまいぞ!」

ライバック「それは!・・・・それは」

ピクシス「……食糧難、それの行きつく先は人類同士の食い物の奪い合いぞ」

ピクシス「それこそ今以上の地獄じゃわいの。子どもから食料を奪う大人、骸すら喰らう者……」

ライバック「・・・・しかし、しかしだからと言って!!」

ピクシス「それでは人類は生き残れぬ!!」

ライバック「!?」

ピクシス「情けでは巨人は倒せぬ、人のままでは奴らと戦えぬ!!」

ライバック「・・・・司令」

ピクシス「……儂は人であることをやめた。情けを捨てたのじゃ」

ピクシス「それはそこにいる調査兵団団長のエルヴィンも同じじゃ」

ライバック「エルヴィン?俺が使い物にならなくしたバカの後任はキースだったんじゃ?」

ピクシス「キースは今は訓練兵の教官をやっておる」

エルヴィン「……ライバック、我々の目的は人類の勝利だ」

ライバック「・・・・」

エルヴィン「しかし敵は余りにも強大だ。人間のままでは戦うことすらままならない」

ピクシス「故に儂らは人を捨てた。今回の一件もそういうことじゃ」

ピクシス「次の世代を生かすため、儂らは鬼になった」

ライバック「・・・・情けを捨てた?何をおっしゃいます」

ピクシス「……ム?」

ライバック「机の上にある酒・・・・ いつものアンタなら飲むはずもない安酒だ」

ピクシス「ぬぅ……」

ライバック「・・・・わかりました。俺も人をやめましょう」

ライバック「次の世代が人間でいられるよう、彼らを鬼にさせないために・・・・」

ピクシス「……ウムッ!」

――――847年

エレン「ライバックさん!」

ライバック「ん?ああ、エレンか!?大きくなったな」グシャグシャ

エレン「うわっ!?やめてくれよ!!」

ミカサ「…………」

ライバック「ミカサも随分きれいになったなぁ。エレン、油断してたら誰かに取られるぞ?」

エレン「……そんなことさせねぇよ」

ライバック「・・・・そう怖い顔をするなよ」

ライバック(取られるっていうのを人さらいと勘違いしてるのか?そういう意味で言ったんじゃあないんだが)

エレン「あ、しまった。今仕事中だよな?」

ライバック「大丈夫さ、俺は駐屯兵特命班だからな。基本的に自由さ」

エレン「特命班?」

ライバック「一人だけの部署だけどな」

エレン「それってライバックさんが協調性のない問題児だからだとか?」

ライバック「こいつぅ~」グリグリ

エレン「痛てててて!!見てないで助けろよミカサ!!」

ミカサ「今のはエレンが悪い」

ヒリヒリ・・・

エレン「ってぇ……そうだ、ライバックさん!俺たち今年の訓練兵団に入団するんだ!」

ライバック「そうか、お前らももうそんな歳か。そりゃ大きくなってるわけだ」

エレン「ああ、ライバックさんみたいなすげえ兵士になるんだ!」

ライバック「おいおい、協調性のない問題児に憧れるなよ」

エレン「あ、ああ……ごめん」

ライバック「いや、いいさ」

エレン「それじゃ、また!」

ミカサ「さよなら」

ライバック「ああ」





ライバック「・・・・あいつらが前線に出る前にはケリをつけたいが」

―――――
―――


ガチャッ

ハンネス「ライバック!?こんな狭い部屋で何やってるんだ?」

ライバック「ハンネスか。なに、前に言ってた名簿の写しを見てたのさ」

ハンネス「うへぇ……なんつぅ量だよ」

ライバック「集められるだけ集めた分だ。残念なことにそれだけあっても全員分じゃないそうだが」

ハンネス「混乱してたからなぁ……」

ライバック「まぁ、いくつか怪しい奴はいたが、尋問するわけにもいかないしなぁ」

ハンネス「一人一人聞いて回るか?『お前は巨人か?』ってな」

ライバック「馬鹿げてるな」

――――――To Be Continued...

Wohlan Freie!  Jetzt hier ist an Sieg.
Dies ist der erste Gloria. 
Wohlan Freie!  Feiern wir dieser Sieg.
fur den Sieges Kampf!

「無意味な死であった」と…嗤うまい
最期の≪一矢≫であっても……

Der feind ist grausam... Wir bringen...
Der feind ist riesig...Wir springen...

両手には≪包丁≫
唄うのは≪調理≫
背中には≪沈黙の翼≫
誇り高き戦意(ココロ)を胸の奥に
炒めるのは≪仮初の正義≫
蒼穹を裂く―――
≪沈黙の翼≫

クリスタ「~♪」フーフフフンーフフー
ユミル「……何書いてんだお前?」
クリスタ「きゃああああ!?ユミルってば何勝手に覗いてるの!!?」
以上お遊び
以下本編

――――848年

キース「今日は特別教官を呼んでいる」

キース「貴様らも3年前の彼のシガンシナでの武勇伝は聞いているだろう」

エレン「……ライバックさんだ」

キース「元調査兵団兵長、現駐屯兵団特命班班長・ケイシー・ライバック兵長だ」

ライバック「やぁ、たった今紹介に預かったライバックだ。今日は君らの対人格闘訓練を見ることになっている」

ライバック「よろしく頼む・・・・」

―――――
―――


ライバック「なかなかみんな熱心じゃあないか」

キース「今日は貴様がいるからな。いつもは碌に得点にならんからと言って適度に力を抜いている奴がほとんどだ」

ライバック「そんな奴らは全員投げ飛ばしてやればいい」

キース「……“適度”に手を抜いているのだ。やることはやっているから手におえん」

ライバック「俺が訓練兵の時も周りはそんなやつばっかりだったな」

ライバック「・・・・ん?」


少女「…………」ガッ

エレン「ぐえっ」ドサッ


ライバック「見たことのない技だな・・・・」

ライバック「ちょっといいか?」

エレン「ってて……ライバックさん」

少女「……何か?」

ライバック「さっき君を見ていたんだがおもしろい技を使うな。一つ俺にもやってみてくれないか?」

少女「………はぁ」

少女ことアニ・レオンハートはライバックの真意を測りかねていた。

自ら進んで蹴られたがる人間なぞ早々いるものではないからだ。

アニはライバックの顔を見た。ニヤニヤとした笑みが浮かんでいた。

ああ、とアニは得心した。

この男はこれを口実に自分の身体に触れようとしているのだと感じ取った。

蓼食う虫も好き好きというからには、男の好みも千差万別。

不幸にも自分はライバックのお眼鏡にかなってしまったのだ、アニは心の内で嘆息した。

アニは諸般の事情により憲兵団入りを目指す身だった。彼女は考える。

特別教官とは言え、その心証を悪くしては成績に響くのではないか、と。

腐った制度とはそういうものなのだ、アニは不快感を感じたがそれを表に出すことはなかった。

「こちらから仕掛けた方がいいのかな?」

そう言ってライバックが一歩踏み込んできたとき、アニは背筋に悪寒を感じた。

(殺される!?)

ライバックのニヤニヤした笑みは下卑た心根を表していたのではなく絶対的実力者としての余裕だったのだ。

今まで感じたこともないような殺気を受け、この一撃は絶対に外せない!アニは渾身の一撃を蹴り放った。

「むっ・・・・」

全ての技の布石となる初撃は決まった。しかしまだ油断はできないとアニは極めの技に打って出る。

ライバックの首を取るとアニは何の躊躇いもなく地に叩き伏せ、ライバックの首を極めた。

「・・・・なるほど」

地に伏したライバックが発した声からは先ほどアニが感じた殺気は微塵も存在していなかった。

そこでアニは悟った。この男は自分の本気を引き出すために一瞬殺意を見せたのだ、と。

「もう一回やってみてくれるか?」

アニはまたも背筋に悪寒を感じた。ライバックは自分の技を盗もうとしていることを感じ取ったからだ。

何故自分の技を?どうして興味を持った?まさかこの技から自分の、自分たちのことを察したのでは?

知らずアニの身体が震え始めた。しかし彼女は気丈にもそれを抑え込んで見せた。

ライバックを放し、再び技の構えを取る。動揺を悟られてはいけない、と自分に言い聞かせながら。

しかし、ライバックの目はいたいけな少女には鋭過ぎた。

時折感じた同期の訓練兵の男子が向けてくるような舐め回すような視線とは比べようとすら思えないほどだった。

肌や髪や胸といった表面は当然、その内側、心すら全て見通すような鷹の目。

このままではマズイ、アニは決断した。心の奥底まで見透かされるよりも先にこの男をどうにかしなければ。

そして、再びライバックは宙を舞い、地面に叩き伏せられた。

ライバック「・・・・いや、素晴らしくキレのある技だ。どこの技かな?」

アニ「……父が、教えてくれました」

ライバック「お父さんが?お父さんはその技をどこで?」

アニ「……すいません、父のことはあまり話したくないので。失礼します」

ライバック「・・・・難しい年頃か」

エレン「?」

ライバック「・・・・よし、俺も一つ技を披露しよう」

ライバック「キース、来いよ」

キース「……………………え?」

――――――To Be Continued...

――――数日後

ライバック「よぉ、ライナー・ブラウンにベルトルト・フーバーだな?」

ベルトルト「!?」ドキィッ

ライナー「おい、ベルトルト!敬礼だ!」ババッ ドンッ

ベルトルト「……!!」ババッ ドンッ

ライバック「いや、敬礼まですることはない。くだらない質問だ」

ライナー「……何でしょうか?」

ライバック「実は君たちに聞きたいことがある。すまないが、実は君たちの出身地について調べさせてもらった」

ライナー「…………」タラッ

ベルトルト「…………」ハァ・・・ハァ・・・・・・

ライバック「君たちはアニ・レオンハートと同じところの出身だな?」

ライナー「……はい」

ライバック「なら教えてくれ。アニのあの技はなんていう武術だ?」

ベルトルト「はぁっ!?」

ライバック「ん?」

ベルトルト「あ、いえ……」

ライナー「……申し訳ありません、確かに出身地は一緒です。あのときも一緒に逃げてきましたから」

ライナー「でも、あのとき以前は特に親しかったわけでもないのでよく知りません」

ベルトルト「……私もライナーとは幼馴染ですが、アニは違います」

ライバック「そうか、残念だ。アニはどうやら難しいお年頃らしくてな」

ライバック「素直に教えてくれそうになかったんで、もしかしたら君たちが知っているかと思ったんだが・・・・」

ライナー「……お役に立てず申し訳ありません」

ライバック「いや、いいんだ。怖がらせてすまなかった。それじゃあ失敬する」





ライナー「何だったんだ……?」

―――――
―――


ライバック「・・・・」

ハンネス「どうしたライバック?難しい顔をしてるが……」

ライバック「・・・・怪しい奴を見つけた」

ハンネス「……なんだと?誰だ?」

ライバック「トロスト区の訓練兵さ・・・・」

ハンネス「訓練兵って……まだガキじゃねぇか!?」

ライバック「ああ、3年前ならもっと子どもだったろうな」

ハンネス「そんな、そんなガキがあれだけ惨いことをしたっていうのかテメェは!?」

ライバック「ハンネス、子どもはとても純粋だ。そしてその純粋さはとても危ういものだ」

ライバック「大人の言うことを素直に信じて悪事と知らずに実行してしまう。そんなことはよくある話だ」

ハンネス「……アンタが冗談でそんなことを言うとは思えないしな。なんでそう思った?」

ライバック「訓練兵の中に俺の知らない技を使う奴がいた」

ライバック「自分で言うのもなんだが俺は壁内の武術に精通している。そんな俺が知らない技だったんだ」

ハンネス「あんたが武術に精通してるのは誰でも知ってるさ。でもそれだけじゃ……な」

ライバック「ああ、それだけなら別に疑いもしなかったさ。だが、もう一度技をして見せてくれと言ったときソイツは動揺したんだ」

ハンネス「あんたのことだろうからどうせ嬉々として技を受けたんだろう?そりゃ動揺するさ」

ライバック「よくわかってるじゃないかハンネス。でもな、あの動揺はそういうものじゃなかった」

ライバック「何かに気付かれた、そういう動揺だった」

ハンネス「そんなのあんたの感じ方次第だろう?」

ライバック「それだけじゃない。その後ソイツと同じ出身地の奴に声をかけてみたんだが、ソイツらも同じように動揺していた」

ライバック「アイツら、何かを隠している・・・・」

ハンネス「……いくらなんでも根拠が弱すぎる。さすがに今回のはあんたの思い違いだろう」

ライバック「・・・・そうだといいんだが」

ハンネス「ライバック……?」

―――――
―――


キース「ブラウンとフーバー、レオンハートをよく見ろと?」

ライバック「ああ」

キース「お前の特命班とやらに引き込むつもりか?」

ライバック「まぁ、そんなところだ。何か気になることがあればすぐに教えてくれ」

キース「うむ、まぁいいだろう…… そうだな、気になると言えば」

ライバック「どうした?」

キース「どうやらフーバーはレオンハートに気があるらしい」

ライバック「・・・・」

キース「…………」

ライバック「・・・・フフ」

キース「ハハハ……」

アーハッハッハッハッハッ・・・・

ライバック「・・・・まったく、相変わらず下世話な奴だな。お前は」

キース「心根という奴はそうそう変わらんのさ」

ライバック「ああ、とにかく頼んだぞ

――――――To Be Continued...

ゴソゴソ・・・・

ゲルガー「え~と、なになに…… これから先、進撃キャラを貶めるような描写が散見されます?」

リコ「どうかご容赦ください、よろしくお願いします。ハイ」

ナナバ「ん。そういったものが苦手な方はこれから先は読まないことを強く推奨します」

イアン「それでは本編が始まるまでリコとナナバのセクシーランジェリー姿を想像してお待ちください……ってなんだこの文章は!?」

リコ「…………」スッ

ナナバ「…………」スッ

イアン「引くな!これにそう書いてあったのを読んだだけだ!!」

ネス「いや、書いてあったとはいえ本人たちの前で読み上げるか普通?」

キッツ「最低だな」

リーネ「ですね」

ヘニング「同感」

イアン「ちょっと待ってくれ!俺のせいじゃない、俺じゃないんだ!!」
以上お遊び
以下本編

―――849年

ライバック「・・・・」

ピクシス「精が出るのぉ、ライバック」

ライバック「・・・・あんたか」

ピクシス「悪いか?」

ライバック「いいや・・・・」

ピクシス「しかしよぉやるのぉ、調査兵団が壁外調査に出るたんびにピリピリしよって」

ライバック「調査兵団にはリヴァイやミケをはじめとして優秀な人材が揃っている」

ライバック「あちらさんからすれば、アイツらがいないときこそ攻めるべきチャンスだからな」

ピクシス「うむ、その通りじゃ。ところでお主の言っておったあの2匹の巨人の正体、掴めそうか?」

ライバック「幾つか候補はいる。だが、確信の持てるのは一人もいない。搾り上げようにもそうできる理由がない」

ピクシス「事が急を要するわけでもないしの。強権を使うわけにはいかんわな」

ライバック「ああ・・・・ だが、確実にあの2匹はこの壁の内側にいる。それだけは間違いない」

ピクシス「……大した自信じゃの」

――――850年

ライバック「・・・・」

ハンネス「あれから5年経つ…… やっぱりお前の言うような奴はいないんじゃないか?」

ライバック「いや、いるさ」

ハンネス「5年も音沙汰無しだぞ?」

ライバック「きっと壁を壊す以外の目的があったのさ」

ハンネス「何?それ以外の目的?」

ライバック「・・・・ああ、多分な」

ハンネス「多分かよ……」

―――――
―――


ライバック「・・・・もうすぐ104期も解散か」

キース「ああ、教えられることは全て教えたつもりだ」

ライバック「あの3人に変わった様子はあるか?」

キース「特にはないな。あるとすれば……辛そうな目をするときがあるな」

ライバック「辛そうな目?」

キース「ああ、きっと解散が近いこともあって仲間と別れねばならんからだろう」

ライバック「・・・・」

―――――
―――


ハンネス「……56回目の壁外調査だ」

ライバック「またいつも以上に気の抜けない日々が始まるな」

ライバック「・・・・ハンネス、壁上の警戒のシフトは?」

ハンネス「ここにある。熱心だなぁ、アンタも」

ハンネス「もうすぐエレンたちが立派な兵士になるんだ。ちょっとは祝ってやろうとか考えねぇのか?」

ライバック「夜になったらな・・・・」

ハンネス「そうだな、昼間は巨人がウロウロしてやがるからなぁ……」

ライバック「・・・・ハンネス!」

ハンネス「うぉわ!?」

ライバック「この日のシフトだが、トロスト区の104期訓練兵がトロスト区の壁上の固定砲整備とあるが?」

ハンネス「ああ、解散式も終わってあいつらが104期として最後にやる仕事だ」

ライバック「・・・・そうか、奴らこれを待っていたんだ」

ハンネス「どういうこった?」

ライバック「奴らが今まで侵攻してこなかったのは、何か別の目的があったから・・・・そう考えていた」

ライバック「だが、それだけじゃなかった」

ハンネス「要領を得てないぞ?」

ライバック「奴らは自分たちの正体が露見することを恐れていたんだよ」

ライバック「壁の内側から門を破壊するとしたら、衆人環視の中で巨人にならざるを得ない」

ライバック「目撃者を全員その場で確実に殺せるならそれでもいいだろう。だが、駐屯兵がそれを目撃していたら?」

ハンネス「死に物狂いでそいつの正体を司令部に教えるだろうな」

ライバック「そうだ、奴らの最終目標がウォール・シーナ内だとしたらそういうリスクは絶対に避けたいはずだ」

ライバック「奴らの俺たちを殺す以外の目的が、シーナの中にあったとしたらだが・・・・」

ハンネス「つまり、こういうことか?」

ハンネス「調査兵団がいない、且つ何の疑いもされずに壁の外側に行けるこの日が絶好のチャンス……」

ライバック「ああ、門を内側から破ると正体がばれてしまう。壁を登ろうにも立体起動装置の使用許可がいる」

ハンネス「簡単に使っていいような代物じゃあないからな、これは」カンカン

ハンネス「でもよ、今お前が言ってるのはトロスト区の104期の中にあの2匹がいるってことだろ?」

ハンネス「本当にあのガキどもの中に最大の敵がいるっていうのか?」

ライバック「・・・・いるともいないとも言い切れない。だが、いたとしたらこの日は二度とないチャンスだ」

ライバック「この日何の動きもなければ、エレンの同期にあの2匹はいないってことだ」

ハンネス「待てよ、どうしてそうなる?5年も辛抱強く待つような奴だぞ?まだ侵攻しないかもしれないぞ?」

ライバック「いや、2匹が兵科は同じでも同じ部隊に配属される可能性は決して高くない。連携が最も密なのは今なんだ」

ライバック「この日を逃せば、シガンシナで見せたような連携をするのは格段に難しくなるはずだ」

ハンネス「……わかったよ、アンタを信じる。何をすればいい?」

ライバック「助かる。でだ、特に警戒してほしいのが3人いる。一番疑わしいのは俺が見る」

ライバック「怪しいのはこの3人。アニ・レオンハート、ライナー・ブラウン、そしてベルトルト・フーバーだ」

――――トロスト区104期訓練兵解散式翌日

ベルトルト「…………」ゴクッ

訓練兵女子「でさー……」

ベルトルト「大丈夫、誰も僕を見ていない……」ダッ



パシュシュッ ヒュォォォオオオオオオオオオ・・・・

ベルトルト「勝負は今!ここで決める!!」










ライバック「何の勝負を決めるんだ?ベルトルト」ヒュォォォォォオ・・・

ベルトルト「!!?」

ライバック「こっちは壁の外側だぞ?巨人の領域に何しに行くんだ?」

ベルトルト「……やっぱり僕たちを疑っていたんですか?」

ライバック「ああ・・・・ できればお前たちじゃなければいいと思っていた」

ベルトルト「……言い逃れはできそうにありません。なら!」ガリィッ

ライバック「なに!?」



カカッ!!!


エレン「……!!?」

訓練兵「ちょ、ちょちょちょ超大型巨人!?」

エレン「……5年ぶりか」シャキンッ

訓練兵「……待て!なんか様子がおかしいぞ!?」

エレン「え?」

超大型巨人『…………』

ライバック「・・・・どうしてだ、と思っているか?お前の目撃情報からうなじがどの辺りのどの高さかいつもシミュレートしていたんだ」

ライバック「そしてお前が壁の外側に行ったのを見てお前が超大型巨人と確信した。だから予測箇所目掛けてアンカーを撃った」

ライバック「もっとも、こうしてお前のうなじ辺りに入れるのは奇跡としか言いようがないが・・・・」

パシュパシュッ パシュッ

ライバック「・・・・待機させていた駐屯兵の精鋭だ。お前は危険過ぎる。聞きたいことはいろいろあるが討伐させてもらう」

超大型巨人『………!!!」ブショワァァァァァァァァァァァァ!!!

エレン「熱ッ!!?」

訓練兵「うわぁぁぁあああああああああ!!?」

エレン「な、何が――――!?」

超大型巨人『………』














ライバック「・・・・高温の蒸気とは驚いたが」

ライバック「フンッ!!」ザシュッ

エレン「立体起動に移れ!!」

エレン「固定砲整備4班!戦闘用意!!目標目の前、超大型巨人!!!」

エレン「これは最大のチャンスだ!絶対に逃がすな!!」

ダッ

エレン「……いない?」

エレン「そんな、門を壊してもいないのに……?」

ライバック「・・・・」

エレン「ライバックさん!?もしかして……」

ライバック「ああ、超大型巨人は俺が討伐した」

エレン「さすがライバックさん!……ってその火傷は!?」

ライバック「大丈夫だ。それより今は・・・・」

――――――To Be Continued...

―――――
―――


ライナー「…………」

駐屯兵「ライナー・ブラウンだな?」

ライナー「……はっ!」ドン

駐屯兵「アニ・レオンハート、ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー」

駐屯兵「以上の3人にケイシー・ライバック兵長から出頭命令が出ている。ついて来い」

ライナー「……はっ!」

―――――
―――


ライナー「…………」

アニ「…………」

駐屯兵「ベルトルト・フーバーはまだ来ていないようだが…… よし、2人だけでも先に入ってろ。そこの地下室だ」

ライナー「…………」

アニ「…………」

駐屯兵「どうした?入らないのか?」

ライナー「……いえ、まだベルトルト・フーバーが来ておりません。出頭命令が我々3人に出ている以上、3人が揃った上で出頭するべきかと」

ライバック「・・・・いや、そんなに気負わなくてもいい。先に入ってくれ」

アニ「!?」

ライナー「!?」

ライバック「それとも・・・・地下室に入れない理由があるのか?」

ライナー「…………」

アニ「…………」

ライバック「ん?」

ライナー「……失礼ですがライバック兵長、その火傷は?」

ライバック「なに、さっき高温の蒸気を受けてしまったんだ」

ライナー「高温の蒸気?」

ライバック「・・・・ライナー、一度だけ言う。投降しろ」

ライナー「……聞けません」バッ

ライナーが不意に手を口元へと持っていった。半拍おいてアニも同じ動きを見せた。

丈夫そうな歯が白く光る。その歯がそれぞれの手を噛み切ろうと力強く閉じられた。











が、しかし。それよりも先にライバックは動いていた。

アニとライナーの今当に噛み切ろうとしていた手を掴むとくるりと捻り上げた。

ただ噛み切るだけのつもりであって碌に力の込められていなかった二人の手は、ライバックの技に何の抵抗もできなかった。

さらに痛みに反応した神経により無意識に動いた筋肉の力の流れをライバックは巧みに操り、二人を地面へと叩きつけた。

ライナー「……かはっ」

アニ「くふっ……」

ライバック「さっきベルトルトが巨人になるとき、手を噛み切った」

ライバック「おそらくお前たちが巨人になるためには血を流す必要があるんだろ?そうはさせない」

駐屯兵「よし、抑えた!」ガシッ

ライナー「ぐぉおおお!!?」

駐屯兵「こっちもだ!」ギリギリ

アニ「……くっ!!」

ライバック「・・・・全員離れろ!」

潜んでいた駐屯兵が二人を抑え込んだその時、ライバックは事前に出していた制圧命令を撤回した。

ライバックは見ていたのだ。布を噛まされ腕も抑えられたアニの手に光る指輪を。

その指輪から小さな切っ先が飛び出して、彼女の親指を傷つけたのを。

瞬間、アニを抑えていた数人の駐屯兵が宙を舞い、彼女のいた辺りから巨大な何かが盛り上がる。

それはすぐに人と同じ形をしたものだと、巨人であると判別できた。ただし、今まで誰も見たことのない女性のような巨人だった。

そして、その余波を受けて自由の身となったライナーもまた巨人へと変身しようとその手を噛み切った。

空気のはじけるような音が聞こえ、音源の中心からかつてウォール・マリアを陥落させた鎧の巨人が立ち上がった。

「鎧の巨人は俺がやる!もう一方にはアレを使え!!」

駐屯兵「おぉぉおおおお!!」

バシュシュッ バシュッ

女型『!?』 ギシィッ

駐屯兵「やった!」

駐屯兵「どうだ!動けネェだろ!!」

駐屯兵「巨人捕獲用兵器……壁内で使えるようにしておけ、とライバック兵長に言われていたが」

駐屯兵「何言ってんだ、ってばかり思ってたけどこうなることを兵長は見越してたんだな……」

駐屯兵「さて、じゃあ言われた通りうなじのところを大きく斬り取るか」

駐屯兵「超大型巨人のうなじの辺りにフーバーがいたらしいからな。うまく斬り取れば中からレオンハートが出てくるだろうさ」

駐屯兵「よし、いくぞ!」

駐屯兵「うおぉぉぉぉぉっ!!!」ガキィ・・・ン

駐屯兵「なっ!?刃が通らねぇ!!?」

駐屯兵「コイツの皮膚……硬化してやがる!?」

鎧『オォォォ!!!』

ライバック「おっと、お前の相手は俺だ」

銛とワイヤーで身動きの取れなくなった女型を開放せんと鎧が右腕を大きく振りかぶった。

「おおっ!?速いっ!!あんなに速く人って動けるのかぁ―――!!?初めて見たぜ俺――――!!」

その右腕にライバックが今まで訓練の時でも見せたことのない速さで追い縋った。

しかし超硬質ブレードをもってしても自身の硬化した皮膚は傷つけられまいと、鎧は意にも介さない。

「おいおいライナー、あの時から俺がお前との戦い方を考えていなかったなんて思ってるのか?」

言ってライバックがブレードの刃を鎧に突き立てる。硬化した皮膚と皮膚のわずかな隙間を縫うように。

それは何百本もの縫い針の針の穴に糸を通し続けるかのような絶技。しかし寸分の狂いもなくライバックのブレードは斬り進む。

「す、すげぇ~~~!!!」

鎧の巨人の右腕とライバックが交錯し、刹那鎧の右腕が力なく垂れ下がった。

「次は足だ」

鎧の皮膚は恐ろしいほどに頑丈であった。巨人の侵入を拒む巨大な壁のように。

だが、鎧の巨人は彫像ではない。動き回ることができるのだ。それは必然的に硬い皮膚で守りきれない箇所があるということでもある。

そのあってないような弱点をライバックは見つけ出し、そこを狂気すら感じられるほど正確に切り裂いているのだ。

鎧が地に膝をつくのに時間は大してかからなかった。

ライバック「さて、じゃあ出てきてもらおうか?うなじの中にいるんだろ?ライナー」

鎧『…………』ビキビキィ

ライバック「うなじをより強固にして再生までの時間を稼ぐつもりだな」

ライバック「それも対策済みだ・・・・」ガスッ

駐屯兵「それは?」

ライバック「離れろ、俺の作った爆弾だ」

カッ

ドォォォォォォォオオオオオン!!!!

―――――
―――


ライバック「・・・・これで丸裸だな」

鎧『…………』

ライバック「うなじは任せた。再生されないように他のところも斬っておく」

駐屯兵「任せてください!」

駐屯兵「さぁ、出てきやがれ!お前らがどこから来たのか、何を企んでいるのか、洗いざらい吐いてもらうぜ!!」

鎧『………!!』カァァァァァァ・・・・

駐屯兵「な、なんだぁーーーーーーーーー!!?」

シュゥゥゥゥゥ・・・・

駐屯兵「……何が起きたんだ?お、おい!ミタビ!お前の腕……!!?」

ミタビ「な、なんだ?俺の右腕が…岩みたいな何かの中に……?」

駐屯兵「おい、こっちの様子もおかしいぞ!」

女型『…………』カァァァァァ・・・・





――――――To Be Continued...

親父のゲンコは死ぬほど痛い――


                 ,...-‐'::"´:::::::::::::::`丶、

                /::::::::::::::::::::::;: ―-::、:::::ヽ           「俺を怒らせなや」
                /::::::::::::::::::::::::::/     `゙ヾi
              /:::::::::::::::::;;::::::::::l    -、 、__|
              l:::::::::::::/;ヾ:::/  ,,.-、_ :i;!ーi     壁の秘密を隠すバカタレは潰しちゃる!
              }:::::::::::::';r'ソ ゙'    ,.-━;;;ァ; ;:!   
          、、__,....ノ;::::::::::::::iヾ      ` ゙フ´ : i゙
          /:::::::ヾ;、:::::::;:べリ.       /_  i           理想の父親像No.1 
           ノi::::::::::::::::::ゞ'"   .      ,._ `ヾ:::;'         スティーブン“パパ”ザ・セガール主演!
         ノ;::::::::::::::::/   :   :_  i:   '゙``ー:/ 
         i'i;、:;;r‐'" ̄``丶、 .ヾ::::゙:...._   '"゙:i'       怒りのデストロイ・ハードアクション!
          / -ー- 、、   `ヽ、ヾ:;;;;;;;;;;;;;;'ノ      
                                            「言うたやろ」 「怒らせンなや!」


日曜迷画劇場『沈黙の進撃』 10月6日放送

コニー「よし!さすが俺、天才的な出来だな!!」
サシャ「かっこいいですねーこの予告」
ジャン「……なぁ、知ってるか?」
マルコ「お遊びに出たきた人は、本編に出番がないんだって」
コニサシャ「「え……?」」
以上お遊び
以下本編

――――数日後

エルヴィン「ピクシス司令」

ピクシス「エルヴィンか。壁外調査はどうした?」

エルヴィン「急に巨人たちが北上し始めたので、5年前と同じことが起きたのかと急ぎ戻って参りました」

ピクシス「そうか。じゃが、今回は門を破られることはなかった。ライバックが雪辱を晴らしたおかげでな」

エルヴィン「そして、5年前の主犯格がこの岩のような塊と結晶の中にいるのですね?」

ピクシス「うむ、超大型巨人であったベルトルト・フーバーはその巨体ゆえ拘束が困難と判断したライバックにより討伐された」

ピクシス「で、岩の方が鎧の巨人でトロスト区の104期訓練兵のライナー・ブラウン」

ピクシス「そして、結晶の中の美人が同じくトロスト区104期訓練兵のアニ・レオンハート」

ピクシス「巨人になった時の姿は女のようだったと聞く。もし食われるのならこの娘に食われるのがええのぉ」

エルヴィン「バカなことを言わないでください。ところで、鎧の方のあの隙間は?」

ピクシス「奴がアレになるときにミタビの右腕が巻き込まれてのぅ。そこがあの隙間じゃよ」

エルヴィン「あそこを起点に中の人間を引きずり出せないのですか?」

ピクシス「えらく頑丈でな、無理じゃった。鎧の巨人の皮膚を吹っ飛ばしたライバックの爆弾でも傷一つつかん」

ピクシス「とりあえず日光に当てんようにと暴れ出してもすぐ抑えられるよう、こうして地下室に置いておるのじゃ」

エルヴィン「……彼らのほかにまだ敵はこの壁の中にいるのでしょうか?」

ピクシス「わからんな。こいつらに聞こうにも完全なる黙秘じゃしな」

―――――
―――


ライバック「・・・・」

ハンネス「よぉ」

ライバック「ハンネスか。ミタビの容体は?」

ハンネス「安定したよ。もっとも腕があそこまで潰されたんじゃ兵士を続けられないだろうがな」

ライバック「そうか・・・・」

ハンネス「ところで、エレンたちには声をかけてくれたか?同期の中に5年前の悲劇の犯人がいたんだ。そのショックはデカい……」

ライバック「わかった。その内行こう」

――――――
―――


エレン「くそっ…くそっ…… 俺に兵士の心構えとか言っておきながら!お前が!その敵だったんじゃねぇか!!」

エレン「アニだって!てめえら内心俺たちのことをバカにしながら一緒に訓練してたっていうのかよチクショウ!!」

エレン「この……裏切りもんがぁぁああああ!!!」

ギュッ

ミカサ「……大丈夫、エレン。私はあなたの家族、私はずっとエレンの傍にいる」

ミカサ「私は決して、エレンを裏切ったりしない……」

―――――
―――


ハンネス「で、ライバック。お前ずっと何を見てるんだ?」

ライバック「鎧の巨人と女型の巨人の破片さ。何故か消えずに残っていた」

ライバック「・・・・どこかでこれとよく似たものを見た気がするんだ」

ハンネス「どれ、思った通りだいぶ硬いな。硬くて頑丈なものと言えば……何だろうな?」

ライバック「硬くて頑丈なもの・・・・ まさか」

ハンネス「おい、ライバック!どこ行くんだ!?」






ライバック「・・・・」

ハンネス「おいおい、まさかこの壁とか言うんじゃねぇだろうな?」

ライバック「・・・・」ガッガッ

ハンネス「何しやがるテメェ!!?」

ライバック「・・・・ふむ」

ハンネス「五月蝿い奴らにに見られてなかったろうな?」

ライバック「五月蝿い奴ら?」

ハンネス「知らねぇのか?ウォール教っていう壁を神様って崇めてる宗教屋だよ」

ライバック「・・・・」

ハンネス「ライバック?」

ライバック「・・・・なぁ、俺は前にこう言ったよな。奴らには壁を壊す力はなかった、だから門を正確に蹴破る必要があったと」

ハンネス「ああ、言ってたな」

ライバック「もしかしたら・・・・ベルトルトが壁を壊せなかったのはそれだけの力がなかったからじゃないのかもしれない」

ライバック「あの壁を造っているのは・・・・」

ライバック「ハンネス、今度壁の補修工事があったら俺も呼んでくれ」

ハンネス「ん、ああ、構わないがライバック、アンタは何を考えてる……?」

ライバック「・・・・」

――――さらに数日後

ハンネス「……というわけでご注文通り呼んでやったわけだが」

ライバック「助かる。で、この破片の落下防止用の幕なんだが外から中は見えない造りだよな?」

ハンネス「そうだが、何をする気だ?まさかただ壁を直したかったなんて言わないだろう?」

ライバック「・・・・確かめたいことがある」



ライバック「よぉ」

駐屯兵「ライバック兵長」

ライバック「修理個所はここか?」

駐屯兵「ええ」

ライバック「・・・・よし」

駐屯兵「その手にある不穏なものは何です?なんで掘削用の装備を持ってるんです!?」

ライバック「確かめるのさ・・・・ この壁の中身を」

駐屯兵「ええぇぇぇぇ!!?」

ガッ ガッ ガッ・・・・

駐屯兵「ああ~もう!どれだけ掘り進むんですか!ちゃんと直してくれるんでしょうね!?」

駐屯兵「………」ギリ・・・・

ガッ ガッ ガッ ガッ・・・・

ライバック「!?」

駐屯兵「? どうしました?」

ライバック「・・・・ここが腹の筋肉だとして・・・・ベルトルト並みと仮定・・・・・」

駐屯兵「……はぁ?」

ライバック「・・・・予備の幕はあるか?」

駐屯兵「ありますが?」

ライバック「次は上の方のあの辺りを掘る。そこを覆ってくれ」

駐屯兵「はぁぁああ!?」

ライバック「この周りをいくら掘っても確信は持てない。もっとハッキリしたものを見つけないと・・・・」

駐屯兵「……ハッキリしたもの?何があったんですか?」

ライバック「見てみろよ」

駐屯兵「……何です?この赤黒いの?」

ライバック「おそらく、とか多分、としか今は言えない。だから、もっと上の辺りを掘らなくちゃいけない」

駐屯兵「……何を仰りたいのか全くわかりませんが、掘ったところをちゃんと直してくれるならお手伝いします」

ライバック「わかった。よし、じゃあ早速始めてくれ」

―――――
―――


ガッ ガッ ガッ・・・・

ライバック「・・・・やはり、か」

ライバック「ハンネス!ここに来い!!」

ハンネス「何だよ一体……」



ライバック「これでハッキリした。ライナーたちの破片と壁の見た目は違っていたが、その質はよく似ていた・・・・」

ハンネス「……オイ、オイオイ!なんて…なんてこった!!」

駐屯兵「どうしたんですか?何があったんです?」

駐屯兵「こ、これは……!!?」

ハンネス「俺たちは…倒すべき巨人に…… その巨人に護られてたってのか!!?」

巨人の目『……………』

――――――To Be Continued...

―――――
―――


ライバック「・・・・ふぅ、なんとか埋め終わったな」

ハンネス「ああ、しかし壁の中に巨人がいるとは……」

ライバック「違うな、壁の中に巨人がいるんじゃない。壁そのものが巨人なんだ」

ハンネス「女型や鎧の巨人は皮膚を硬化させていた…… この壁も同じように巨人が固めた?」

ライバック「そういうことだろう」

ハンネス「ライバック、あんた最初からこの壁が巨人だと思って掘ってたのか?」

ライバック「この壁の中に巨人なんていやしない、そう安心したくて掘ってみたんだ。結果はこうだったが・・・・」

ハンネス「そうか…… 俺はこのことをピクシス司令に報告しようと思う。あんたはどうする」

ライバック「待ってくれハンネス、今はまだ報告すべきじゃない」

ハンネス「どうしてだ?」

ライバック「トロスト区104期に巨人が3人もいたこと、その処理とかで司令部はまだ慌ただしい」

ライバック「迅速な対応が難しいとなるといろいろとマズイ。この壁に対する権限とかを持っているのは何だ?」

ハンネス「そりゃウォール教と……政府、だな」

ライバック「そいつらが壁の中身を知っていないなんてことはないはずだ。連中は知ったうえで隠してやがったんだ」

ライバック「厄介なことに連中の権限はピクシス司令よりよっぽど上だ。素早い対応ができないんじゃ、先に首根っこを押さえられてしまう」

ライバック「それにあの怪しい宗教についてもう少し知っておきたい。方向はもう少し後にしよう」

ハンネス「……わかった。そうしよう」

ライバック「悪いが君たちも壁の中身については他言無用でお願いする。上に報告するときは声をかけるから協力してほしい」

ライバック「いいな」

駐屯兵「は、はぁ……」

駐屯兵「お、俺黙ってられるカナ?さっきから怖くて怖くて身体が震えてるんだ……」

ライバック「・・・・すまない」

駐屯兵「………」ギリギリ・・・

――――翌日

ライバック「・・・・なるほど、ウォール教での最も神聖とされる祈りは三重の輪をつくり祈ること、か」

ライバック「隣同士で腕を組んでいる・・・・ もしかして壁の中の巨人を真似してるのか?」

ドタドタドタ・・・

ライバック「ん?」

ハンネス「たっ、大変だライバック!!」

ライバック「どうした?」

ハンネス「昨日一緒にいた連中が…全員誰かに殺された!」

ライバック「・・・・」

ハンネス「いったい誰がやったんだ!?ライバック、心当たりはないか?」

ライバック「壁の中身を知られたくない連中の仕業だろう。政府や宗教屋さ。もっともこんなに早く動くとは思っていなかったが」

ハンネス「くそっ、奴らどこから俺たちを見てたんだ?アレを見たのは俺たちだけのはずだ……」

ライバック「裏切者が・・・・内通者がいたんだよ」

ハンネス「はぁ?何言ってるんだライバック、俺たち以外全員殺されたんだぞ!?」

ライバック「繋がりを俺たちに悟らせたくなかったからさ。他の奴は全員死んだのに一人だけ生き残ってみろ?明らかに怪しいだろう」

ハンネス「……確かに何でそいつだけ助かったんだろうってなるな」

ライバック「裏切者が政府か教団に昨日のことを密告、そして俺たち以外の全員を招集、始末した」

ハンネス「で、そこから足がつかないように口封じか。やることがエグイな……」

ライバック「壁の中に巨人がいるっていう身の毛のよだつような事実を隠し通してきたような連中だ。まともじゃないさ」

ライバック「ところでハンネス、俺のナイフが1本無いんだが何か知らないか?」

ハンネス「いや、知らないな」

ライバック「だよな・・・・」

―――――
―――


???「……壁の秘密を目撃した連中は大方“断罪”して参りました」

!!!「あとは駐屯兵のハンネスとかいう男と……ケイシー・ライバックか」

???「はっ」

!!!「ライバックは人類最強と言われ対人格闘も相当の腕前と聞いている。お前たちの腕を信じないわけではないが直接裁くのは控えておけ」

???「抜かりなく。断罪の刃は全てライバックの所持していたナイフです。報告してきた者に持ってこさせました」

!!!「そいつはどうした?」

???「奴は秘密の重みに苦しんでいるように見えましたので、その重責から解放してやりました」

!!!「うむ、重畳重畳。あとはそのナイフで以てハンネスを断罪せよ」

???「そして事の全てをライバックの企みとする…… 心得ました」ガチャッ

小姓「司教様、お祈りの時間です」

司教「わかった。敬虔な信者たちを待たせてよい道理はあるまい。すぐに行こう」

――――――To Be Continued...

アルミン「え~、今回も」トーマス「進撃キャラを」ミーナ「貶めるような描写が」

ナック「よく出てきます」ミリウス「ご容赦ください」

フランツ「そういったものが」ハンナ「苦手な方は」トム「これから先は」

ダズ「読まないことを」ケイジ「お勧めします」

トーマ「ちなみに」モブリット「今我々が」ラシャド「やらされていること」

ラウダ「これまさに」ニック「キャラを貶める行為」

マルロ「でも作者は」ヒッチ「面白いって思ってんだって」グリシャ「どうか笑ってやってほしい」

ダリス「また、原作が未完結なのをいいことにやりたい放題である。以上」
以上お遊び
以下本編

ライバック「いいかハンネス、できる限り一人になるな?」

―――――
―――


ハンネス「とは言え、俺の権限じゃ護衛をつけさせるのは無理なんだよな」

ハンネス「……もっとも今は殺人容疑がかかってるせいで見張りがいてくれるからいいが」

ハンネス「…………」

ハンネス「……お~い」

ハンネス「…………」

ハンネス「……もしかしてやられたか?」

???「…………いや、彼は祝福を受けたのだ」

ハンネス「ああん?」

???「そして貴様には、“断罪”を!!」バッ

ハンネス「断罪?俺が何をしたってんだ」

○○○「断罪を!」

△△△「断罪を!!」

ダンザイヲ! ダンザイヲダンザイヲ!! ダンザイヲダンザイヲダンザイヲ!!!

ハンネス「なっ!?何人いやがるんだぁ!!?」

???「神聖なる壁に仇成すものよ、その罪を償いたまえ!」

ハンネス「チクショウ!離しやがれ!!クソッ、クッソォォォォオオオオオ!!!」











ライバック「・・・・」

ライバック「どうにもおかしいな。見張りの視線がなくなっている・・・・」

ライバック「・・・・ハンネス!まさか!!」

―――――
―――


ライバック「ハンネス!」

ハンネス「…………」

ライバック「大丈夫だハンネス、すぐに医務室に連れて行ってやる!」

ハンネス「…………」

ライバック「何だ?何が言いたいんだ?」

ハンネス「………………」

ライバック「わかった。もういい、喋るな」

ハンネス「……――――」

ライバック「・・・・ハンネス?」

ライバック「ハンネスどうした?こんなところで寝ている場合じゃないだろう?」

ライバック「ハンネス、ハンネス・・・・ ハンネェェェェェェェェエエス!!」


―――
―――――

ピクシス「一連の殺人事件…… 犯人はライバック、か」

側近「はい。ハンネスに刺さっていたナイフはライバックが所持していたものでした」

側近「その切り口はほかの殺害された者の傷口と一致します」

側近「それにハンネスは正面から刺されていました。親しい者だったからこそ油断していたのでは?」

ピクシス「……本当にライバックがやったのかのぉ?」

側近「ええ、彼がハンネスを殺した現場を目撃した者がいます」

ピクシス「……なに?」

―――――
―――


司教「首尾はどうなった?」

???「はい、目撃者を二人ほど用意しました。そして断罪したのはライバックのナイフ……」

???「誰もがライバックの仕業に違いないと思うでしょう

司教「うむ、重畳重畳」

―――――
―――


ライバック「目撃者がいた?」

尋問官「ええ、あなたがハンネスさんを殺したところを目撃した、と証言されている方が2名いらっしゃいます」

ライバック「そんな馬鹿な!」

尋問官「先日の壁の修復に関わった駐屯兵7名、ハンネスさん。そしてあなたとハンネスさんの見張りの者を2名」

尋問官「その誰もがあなたの所持していたナイフで殺されたことが判明しています」

ライバック「・・・・」

尋問官「以上のことからどう考えてもあなたが犯人です!いつまで無意味な否認を続ける気ですか!?」

ライバック「じゃあ逆に聞くが俺があいつらを、ハンネスを殺す動機は何だ?」

尋問官「ええと、それは…… し、質問をしているのは私だ!質問に質問で返すなぁ!!」

ライバック「・・・・」ギロッ

尋問官「ひっ!?」

ピクシス「あまり怖がらせてやるな、ライバック」

ライバック「司令」

ピクシス「外してよいぞ」

尋問官「あ、いや、ですが……」

ピクシス「大丈夫じゃ」

尋問官「……では」

ピクシス「……ライバック」

ライバック「・・・・あんたも俺が犯人だと?」

ピクシス「いや、ちーとも思っとらん。だがの」

ピクシス「お主を犯人だとする証拠はあるが、お主を犯人ではないとする証拠はない」

ピクシス「いくら儂でもどうしようもないわ。そこでじゃ、ライバック」

ピクシス「お主を陥れようとしているものに心当たりはあるか?そこから糸口が掴めるかもしれん」

ライバック「……神聖なる壁、ハンネスの最後の言葉だ」

ピクシス「神聖なる壁?ハンネスはウォール教に入信しておったか?」

ライバック「・・・・やはりそうだな」

ピクシス「話が見えんぞ?」

―――――
―――


尋問官「今日はここでゆっくりしろ。いいな」ガシャーーーン



見張り「……ケイシー・ライバック兵長ですよね?」

ライバック「そうだが?」

見張り「一度お話ししたいと思っていたんです。あのシガンシナの英雄、今回の超大型・鎧の両巨人討伐の功労者……」

見張り「できれば、こんな形でお会いしたくはありませんでしたが……」

ライバック「そうだな」

ライバック「・・・・どうだ、もう少しこっちに来て話をしないか?」

ピクシス「ライバックめ、儂が何とかしてやろうと言うのに何も喋りおらん!」

側近「何か妙なことを言っていたりはしませんでしたか?」

ピクシス「妙なこと……のぉ」



ピクシス「……ウォール教じゃ」

側近「は?」

ピクシス「殺された連中は見張りの2名以外はこの前の壁の修復工事に参加したものじゃったな?」

側近「は、はい!」

ピクシス「そのときライバックたちは見たのじゃ。壁にまつわる何かを……」ボソボソ

側近「司令?もう少しい大きなお声で喋っていただかないと聞き取れません……」

ザッ ザッ ザッ ザッ・・・・

ライバック「・・・・」

エレン「あ、あれ?ライバックさん!」

ライバック「エレンか?それにミカサもか?」

ミカサ「はい」

ライバック「で、お前らどうしてここへ?」

エレン「ライバックさんがハンネスさん殺しで捕まったって聞いて、そんなわけないだろって思ってさ」

ミカサ「エレンがライバックさんのところへ行こうって言ったから私もついてきた」

エレン「でも、こうしてここを歩いてるってことは釈放されたんですね」

ライバック「・・・・」


―――
―――――

ピクシス「一足遅かったか……」

側近「おい、大丈夫か!何があった!」

見張り「…………」チーン

ピクシス「まぁ、気絶しとるだけじゃからそのうち目を覚ますじゃろ」

ピクシス「ライバックの行先も大体見当がついておる……」

見張り「え?今なんと?」

ピクシス「いや、なーんも」

―――――
―――


エレン「で、ライバックさんはどこに行こうとしてるんですか?」

ライバック「いろいろあって疲れたからな・・・・ まずは家でゆっくり休むつもりだ」

ミカサ「……嘘」

エレン「こっちにライバックさんの家はないぜ?」

ライバック「・・・・」

エレン「なぁ、ライバックさん?もしかしてあんた……」

ライバック「・・・・フンッ」

エレン「がはっ…………」ドサッ

ライバック「・・・・なるほど、キースが絶賛するわけだ」

ミカサ「……エレンと話した。無罪放免で釈放されるには早すぎる」

ミカサ「やはり貴方は……!」

ライバック「そうだ。あそこのルームサービスは質が悪かったから勝手に出てきた」

ミカサ「貴方がハンネスさんを殺した犯人とは思えない……」

ライバック「なら、見逃してくれるのか?」

ミカサ「でも、いきなり理不尽にエレンを殴ったのは許せない!」

ミカサ「ので、見逃すわけにはいかない…… それに」

ライバック「それに?」

ミカサ「貴方に私がどこまで通用するのか興味がある」

ライバック「なら、今試してみればいい」

刹那、少女の右足が少女らしからぬ速さと重みを伴ってライバックへと襲い掛かる。

しかし、ライバックは驚いた様子もなく少女の右足をはたき落した。

続いて少女の左の足刀が伸びてくるもライバックは半身でそれを躱す。

訓練所で習っていたソレとは全く違う、生のままの戦闘術。

技術で言えばアニ・レオンハートに軍配が上がるだろうが、力そのものではミカサ・アッカーマンが上だろう。

この二人が激突していれば果たしてどちらが勝ったのだろうか?さして意味のない疑問がライバックの脳裏をよぎる。

突きを受け止めればすぐに肘打ちへと動きを変える。最小限の動きで次の攻撃を打ち出してくる。

もっと鍛え上げれば少しは自分といい勝負ができるようになるかもしれない。

そんなことを考えながらライバックは捉えた少女の腕をひねり上げた。

ミカサ「ぐぁっ……」

ライバック「歴代最高の逸材、か。あと3年したらもっと強くなれるだろう」

ミカサ「くっ……」

ライバック「このまま君を気絶させるのは簡単だがミカサみたいな美人が倒れてたら変な気を起こす奴が出てくるかもしれない」

ミカサ「は?」

ライバック「だから、このまま放っておく。後は追いかけてくるんじゃないぞ?」



ミカサ「…………エレン、大丈夫?起きて……」

―――――
―――


ピクシス「まだライバックは見つからんのか?」

側近「はい、兵士たちも総出で探しているのですが…… おや、一部まだ報告の上がってきていない場所がありますね」

ピクシス「……そこに行った兵士たちは今頃全員伸びてるじゃろうな」

エルヴィン「ピクシス司令、ライバックが脱獄したと聞きましたが……」

ピクシス「その通りじゃよ。奴め、どこへ行ったのか……」

エルヴィン「そうですか」

ピクシス「本当は大体わかっておるがの……」ボソッ

エルヴィン「どこなんです?」ボソボソ

ピクシス「ウォール教… その本部じゃ……」ボソッ

エルヴィン「……わかりました。リヴァイたちを向かわせます」ボソボソ

ピクシス「数だけおっても所詮有象無象、奴を止められる可能性があるのはあやつだけじゃ……」ボソッ

―――――
―――


――――壁周辺

駐屯兵「ライバック兵長… こっちに来るのかな?」

駐屯兵「さぁな。内地に逃げ込むつもりなら来るだろうさ」

駐屯兵「俺たちで止められるのかな?」

駐屯兵「さぁな。でも来たらやるしかないだろうっ」ドサッ

ドササッ

ライバック「もう来てるんだがな」

ライバック「さて、登るか・・・・」

―――――
―――


司教「ライバックが脱獄しただと!?」

???「ええ、信者たちにも情報を募っておりますが未だ発見できていません」

司教「まさかとは思うが…… ここに向かって来ているのではないだろうか?」

???「は?」

司教「念のため、お前たちにはここで待機していてもらう。もしライバックが姿を現せば……」

???「ハッ!我ら必ずやケイシー・ライバックの胸に浄化の剣を突き立てて見せましょう……」

――――3日後

駐屯兵「しかし、3日も経つというのにまだ見つからないとは……」

駐屯兵「もうトロスト区、いやウォール・シーナの外側にはいないんじゃねぇか?」

駐屯兵「……もしかしてハンネスを殺したのはライバック兵長じゃなくて、その真犯人に殺されちまったとか」

駐屯兵「まさか……」



ピクシス「……間違いないの。ライバックめ、今頃はシーナの中じゃな」

エルヴィン「ウォール教には何か伝えたりなどは?」

ピクシス「いや、ライバックが儂にポツリと漏らした『神聖なる壁』という単語以外何も奴はしゃべっとらん」

ピクシス「憲兵団には万が一ということで伝えておいたが、ウォール教にまで教えてやる必要はなかろう」

エルヴィン「そうですね。下手に声をかけたらどんな疑いを持たれるか……」

ピクシス「中央政府にも奴らは深く関わっておるからの……」

―――――
―――


ライバック「・・・・もう人々は寝静まったころかな?」

ライバック「さて、もう少し行けばウォール教の本部だな」

ガタッ ガタタッ バカッ!!

憲兵「ふぁーあ、よく寝た……」

ライバック「・・・・樽の中に!?」

憲兵「……あ」

憲兵「ライバック!」ピィィィィィィィィィ・・・・・

ライバック「フッ」

憲兵「ぐへぇっ……」ドサッ

ライバック「まさかこんな形で見つかるなんてな。それに今の笛・・・・」

ライバック「そうすぐに来るとは思えないが」ダッ

―――――
―――


憲兵「いたぞぉぉお!!」

ライバック「馬鹿な!速すぎる!!」

髭「憲兵団団長、ナイル・ドークだ!」

ナイル「10丁の銃が今お前を狙っている。そしてここにいるのは憲兵団の精鋭30名だ」

憲兵「しかし、ある意味ラッキーだったよな。まさかライバックが俺たちの配備されてた近辺に現れるなんてな」ヒソヒソ

憲兵「ですね」ヒソヒソ

ナイル「逃げることなど不可能だ。おとなしく出てこい、殺人犯め……!」

ライバック「精鋭だと・・・・?そうか、ウォール教が政府を通じて本部の近辺に配備させていたのか」

ライバック「・・・・」スッ

ナイル「出てきたな……」

ライバック「精鋭と言ったな?しかし俺が聞いてる限りでは憲兵になるような奴らはそのほとんどが対人格闘をおざなりにしてるらしい」

ライバック「どうだ、ここはひとつ俺が稽古をつけてやろう」ザッ

ナイル「なっ!?」

ライバック「当然俺は訓練兵時代は対人格闘の成績は1位だ」ザッザッ

ライバック「他にも壁内のほとんどの格闘術に精通していると自負している」ザッザッ

ナイル「そ、それ以上近寄るな……撃つぞ!」

ライバック「どうした?何もお前たちを殺すと言ってるんじゃあないんだ」ザッザッ

ナイル「ち、近寄るなと言っている!」

ライバック「まさか、憲兵団の精鋭がたった一人相手にビビってるのか?」

ナイル「……ってぇぇ!!!」

ダンダンダァ・・・ンッ

ライバック「これは射撃の訓練じゃない。的は動いてるんだぞ?」

ナイル「……ぐはっ」ガクッ

確かに、しっかりと狙いをつけて自分は撃ったはずだと、憲兵の一人は目の前の現実を受け入れられないでいた。

巨人相手には何ら効果を見せない銃だが、こと対人戦においてはその威力と速さで驚異的な武器となる。

しかし、しかしだ。目の前の男、ライバックは人の目でとらえることのできない速度の弾丸をいとも簡単に避けて見せたのだ。

………3メートルも離れていない場所で。

人類最強と言われた男、つい先日の超大型巨人の出現を見事制し、鎧の巨人に手も足も出させなかった男。

その憲兵はケイシー・ライバックに銃口を向けたことを激しく後悔していた。

「うぉぉおおおお!!!」

別の憲兵もまたライバックに恐怖していた。しかし、これほど危険な男を野放しにしてもいいものか?

彼は手にした捕縛用の棒を手に相棒とともにライバックへと踊りかかった。

次弾の装填がほぼ不可能となった状況で、最もリーチがあったのが彼らであったというのも大きな点だが。

「・・・・よし、ならここは棒術を教えるとするか」

ライバックは彼の横薙ぎの棒を脇を締め受け止めると、相棒の振り下ろした棒をひょいと避け、その先端を踏みつけた。

そして受け止めた棒をひねられると彼はたまらず棒を手放してしまった。

「・・・・突かば槍」

瞬間、銃を持っていた10人の喉に強烈なストレートが突き刺さった。

いや、違った。それは彼から奪った棒による超高速の突き!

「・・・・払えば薙刀」

ライバックの腕の範囲から逃れていた5人には竜巻のような薙ぎ払いが襲い掛かった。

大の男たちがまるで木の葉のようにあっけなく空を舞う!

「・・・・持たば太刀」

鋼鉄をも斬り裂くようなライバックの一撃が憲兵団の精鋭たちの胴を抜いた。

精鋭の名は伊達ではなく、何人かは防御の態勢にとることができた。

だが、そんなものはライバックの前では何の意味もなさない。一般人だろうが、兵士だろうが精鋭だろうが皆ただ斬り伏せられるのみ。

ライバック「・・・・杖はかくにもはずれざりけり」

ライバック「しまったな・・・・ 今のは杖術だった」

精鋭「…………」

ライバック「残りは5人か。次は徒手空拳だ。かかってこいよ」

精鋭「う、うわぁぁあああ!!!」

精鋭と呼ばれるだけあって、彼らは腐敗している憲兵団のそれとは違い確かな実力を持っていた。

しかし、しかしである。先に述べたようにライバックの前では一般人だろうが、兵士だろうが精鋭だろうが同じことなのだ。

半ば自棄になった憲兵の右ストレートを叩き落とし、防御のなくなった顔面に裏軒が叩き込まれる。

タックルで組み付こうとした兵士の顎を膝で迎え撃ち、意識のなくなったその身体を放り投げる。

形振りの構わなくなった兵士がなんと超硬質ブレードを持って襲いかかってきたがライバックは鼻で笑うと兵士に向き合った。

上段に構えたブレードを兵士が振り下ろそうとするがそれより先にライバックが手首をつかんだ。途端に兵士の手の関節が外れる。

そのまま喉に手刀を叩き込むと兵士は声もあげずに前のめりに倒れ、起き上がってくることはなかった。

慌てて一人の憲兵が倒れた仲間から銃を奪うと銃口をライバックへと向けた。

「おいおい、弾は入ってないぞ?」

そう笑ってライバックは銃の先端を掴むとぐっと力任せに引き寄せ憲兵から銃を奪い、そのまま銃底を鳩尾に叩き込んだ。

「おや?まだ起き上がれたのか?」

ナイル・ドークは憲兵団の団長だ。形の上では。

団長職ともなるとさまざまなしがらみに捉われることになる。そんなめんどくさいこたぁ御免だと他のものからナイルに押し付けられたのだ。

故に彼の発言力は団長でありながらないに等しく、憲兵団の腐敗を嘆き、働きかけてもなんの成果もあげられなかった。

だから彼はそんな自分の拠り所として自らを鍛えることにした。発言力は貴様らが上だろう、しかしまともに戦り合えば勝つのは俺だ、と。

そんな彼にとって対人戦における敗北は決して許せないものだった。

そして、彼は立ち上がった……

ナイル「おおおお!!!」

ライバック「・・・・」

ナイル「な、なんだ!?その動きは!!?」

ライバック「・・・・」

ナイル「…………くっそおおおお!!!」

ライバックは内地のありとあらゆる武術に精通していた。

そんな彼が辿りついた境地がこの構えである。

ナイルはここにどのような攻撃を打ち込んでも叩き落され痛烈なカウンターをもらうことはわかっていた。

わかってはいたが、そのまま手を出さなくてもいずれライバックの方から攻撃されて負けることもまたわかっていた。

押しても引いても駄目、前門の虎後門の狼。ナイルの拠り所は既に粉々になっていた。

ただ、兵士としてここは引けないという矜持がナイルを突き動かした。

しかし、ナイル渾身の一撃は簡単に受け流された。

「1回」

ライバックはナイルの胸を軽く小突くと再び構え直した。続いてナイルの隙をつき、2撃3撃と大して力のこもっていない手刀を打ち込んだ。

「これで4回だ。お前、もう4回は死んだぞ?」

そう笑ってライバックはナイルの腕を掴むと勢いよく地面へと叩きつけた。

ライバック「・・・・さて」

憲兵「ひっ」

ライバック「あとは君一人だが・・・・ 携帯糧食は持ってないか?」

憲兵「あ、ひ、ああ… はい、コレ……」

ライバック「ありがとう。実は今日の朝で手持ちが切れてな・・・・」ビシッ

憲兵「うっ」ドサッ

ライバック「よし、他の憲兵が来る前にウォール教の本部に行かなくちゃな」

ライバック「しかし精鋭がこの有様で本当に暴漢を退治できるのか?」

―――――
―――


ザッ ザッ ザッ・・・・

ライバック「・・・・」

男?女?「……本当に来た」

小男「そりゃそうだ。エルヴィンが何の確証もなく内地に行けと言うか?」

馬「ブルルル・・・・」

男「……危険な臭いだ」スンスン

ライバック「・・・・リヴァイ、それとミケか。ハンジはなんでここにいる?」

ハンジ「……えーと、私はこの2人の付き添い」

ライバック「大体見当はついてるが、どうしてここに?」

ミケ「……偶然」

リヴァイ「ということにしとけ」

ライバック「・・・・なるほど。ピクシスとエルヴィンの差し金か」

リヴァイ「……お前が駐屯兵殺しの犯人かどうかはどうでもいい。ただ俺はお前を止めろと言われた。それだけだ」

ライバック「・・・・」スッ

ミケ「リヴァイ、わかっているとは思うが……奴は強い、強すぎる」

ハンジ「……なんで着いて来ちゃったかなぁ」

かつての人類最強と現人類最強との夢の対決、真の人類最強決定戦。見る者が見たらそう胸を躍らせるであろう。

しかし当人たちの間にはどちらが人類最強なのか?などという考えはありはしない。

ただ、自身の目的を達成するため、眼前に立ち塞がる障害を全力を持って排除するのみ。

両者まずは睨み合い……ということはなく、リヴァイが先に仕掛けた。

先日ライバックがミカサより受けた蹴りと似て非なる強力な蹴り。速さと重みが段違いだった。

受けるのはマズイ、そう咄嗟に判断しライバックはその蹴りを右に捌いた。

普通なら誰もがあのリヴァイ兵長の蹴りを避けた、と感心するところだが今この場にそんなことで驚く者は誰一人いない。

他ならぬリヴァイもそうで、左の足によるローキックをライバックへと繰り出す。

そちらも捌こうとしてライバックは自身に迫る拳の存在に気付いた。

何とか状態をそらし、ライバックはそれを避けた。

ライバック「流石は調査兵団の№2だ。あのタイミングでよく入ってこれた」

ミケ「……すまない、やり損ねた。次はない」

リヴァイ「ああ……」

ハンジ「今のミケのやつ、絶対入ったと思ったんだけどなぁ~」

ライバック「さて、続けようか・・・・」

ナイルとの一騎打ちで魅せた構えをライバックはとった。

しかし一瞬の躊躇いもなくリヴァイはその小柄な体躯ならではの素早さでライバックの間合いに踏み込んだ。

そこから放たれるのはリヴァイのその小柄な体格に似つかわしくない鋭く重い蹴撃。

ライバックはその蹴りを捌き切ると、リヴァイの背中に手を回しその小柄な身体を思い切り投げ飛ばす。

リヴァイはそのまま地面に叩きつけられることはなく、投げられた勢いで宙空で一回転すると着地、屈伸でより加速をつけライバックに挑みかかる。

隙がどうしても大きくなる蹴り技から、極近い間合いで肘や膝を用いた素早い連撃に攻め手を変えたリヴァイだが、その連撃をライバックは苦も無く捌き切った。

ミケが途中援護に入るものの、ライバックにただの一撃を見舞うこともできなかった。

ミケ「……強い」

リヴァイ「同時に仕掛けるぞ。手数で攻める」

ミケ「了解した」ダッ



ハンジ「よくやるよ二人とも……」

ハンジ「にしても、ずっとリヴァイを間近で見てきた私としては人類最強はリヴァイだって思ってきたわけなんだけど」

ハンジ「ライバック兵長強すぎね?」

今度はリヴァイとミケが同時にライバックへ飛びかかる。

調査兵団の№1と№2。個々の実力もさるものながら、見事にぴったりと息の合わさった二人の連撃は互いの実力以上の力を発揮しているように見えた。

だがしかし、ああしかし、どちらの拳も脚もライバックの身を捉えはしない。ある一撃は叩き落され、ある攻撃は捌かれる。

怒涛の拳撃と蹴撃をライバックは叩き、受け、捌き、流しきった。

三者の間合いがまた一旦開いた。

「……リヴァイ、悔しいが俺とお前の二人掛かりでもやれないらしい」

「……ああ」

「……後は任せた」

ミケはそう言うとライバックとの間合いを詰めた。

今、ミケの脳裏にあるのはライバックに攻撃を当てることではない。

防御に徹し、ライバックを取り押さえ動きを封じる。そこにリヴァイが渾身の一撃を叩き込む。

先ほどの短いやり取りで二人の意志は通じていた。

リヴァイもライバックに急接近し、その顔面目掛け回し蹴りを放つ。

ライバックの防御が顔面に集中したその瞬間を狙い、ミケは隙のできたライバックの下半身に掴みかかった。

だが、ライバックはリヴァイの蹴りを受けた勢いで後ろに倒れこみ、突っ込んできたミケに見事な巴投げを決めた。

哀れミケは自身の勢いとライバックの投げの双方の力により前方の民家の窓を突き破った。

そしてリヴァイはミケの犠牲を無駄にはすまいと、倒れこんだライバックに踵を振り下ろした。

ライバックは回転してそれを辛くも避けるが、二撃三撃とリヴァイの追撃が来る。

四撃目にして何とかリヴァイの足を掴むも、リヴァイは掴まれた足を起点に空いた足でついにライバックに痛恨の一撃を見舞った。

リヴァイ「……ようやく入ったか」

ライバック「・・・・ああ、いつ以来かな?」

リヴァイ「……大して効いてないのか」

ライバック「いやぁ、実はまだ焦点が定まってない」

リヴァイ「本当か?」

ライバック「確かめてみろよ」

リヴァイ「そうしよう」ダッ

リヴァイが、ライバックが互いの距離を一気に縮める。先に拳が動いたのはリヴァイだった。

リヴァイの右の拳がライバックの顎を捉える――――はずだった。

しかし、こちらに向かって来ていたはずのライバックの上体はぬるぬると後ろに下がっていた。

完全に空振りの体となったリヴァイの腕を掴み、ライバックは語りかけた。

「今のは東洋の武術に伝わる足運びで、前進したように見せかけて後退する技さ」

リヴァイの小柄な身体を引き寄せ、足を払うとライバックは彼を地面に向けて前のめりに倒した。

そして背後を取ると、その首に自身の太く逞しい腕を回し一気に締め上げた。

しかしリヴァイは、締めつけてくるライバックの腕をつかむと腹筋の力のみで自身の身体を宙に上げ、ライバックに膝蹴りを食らわせようとした。

だが、その一撃が届く前にライバックはリヴァイの身体を振り回し体勢を崩させると巻き付けた腕にさらに力を込めた。

程なくリヴァイの身体から力が抜け落ちた。

ハンジ「……嘘、死んじゃったの!?」

ライバック「いや、気絶しただけさ。調査兵団のエースをこんな形で失うわけにはいかない」

ハンジ「よかった……」

ライバック「・・・・」

ハンジ「…………」ダラダラ

ライバック「・・・・」

ハンジ「……見逃してくれたりなんか…」

ライバック「できないな」グイッ

ハンジ「うわっ!?めっちゃ高い!!?」

ライバック「フンッ」ベチャッ

ハンジ「ぐえっ…………ガクッ」

――――ウォール教本部

ライバック「・・・・」

ギィィ・・・

ライバック「・・・・ノックの必要はないみたいだな」

???「やはり来たか。神聖なる壁に仇成す背徳者め……」

○○○「断罪を!」

△△△「断罪を!!」

ダンザイヲ! ダンザイヲ!!・・・・

ライバック「・・・・今までいろんな奴に出会ったが、お前らのバカさ加減には希少価値がある」

ライバック「保護する値打ちはないけどな」

???「それはこちらの台詞だ。貴様の戦闘力は欲しいが神を冒涜する輩が生を謳歌するなど許されん」

ライバック「最後に一つ聞いておく。ここに信者たちはいないのか?」

???「万が一ということもある。我々と司教様以外は全員避難させた」

ライバック「・・・・なら安心だ」

多くの信者を抱えるウォール教の祈りの間はとにかく広い。

故にウォール教の私兵たちは思い思いの武器を持っていた。槍、太刀など大き目の獲物でも十分に振り回せる余裕があるからだ。

先ほどの憲兵団の精鋭たちと違い、僧兵たちは本気でライバックを殺すつもりだった。殺気立つとは今の彼らのことを言うのだろう。

ライバックも僧兵たちも大きく動くことはなく、聖なる教会にふさわしい静寂が周囲を包み込む。

その静寂を破ったのはライバックだった。

「・・・・不意打ちをするつもりならもっとうまく隠れた方がいいな。出てこいよ」

少しの間を置いて物陰、2階などから銃を携えた数人の男が一斉に姿を現し、ライバック目掛けて発砲した。



しかし、そこにすでにライバックの姿はなかった。

そして僧兵たちが彼がどこに行ったか確認できないうちに、ハルバードを構えていた僧兵が休憩用のベンチに無手で落着した。

「う~ん、やっぱりコイツは重くて使いづらいな」

器用にハルバードを軽々と振り回しながらライバックがごちる。その光景の異常さに僧兵はあと一歩踏み込むことができなかった。

ライバック「俺は昔訓練兵だった頃にこう教わった」

???「…………」

ライバック「ナイフを向けた奴は殺せ、ガキは殺すな」

ライバック「お前らはどっちだ?おバカな子どもか?」

???「……我ら自身に問おう。我らは何者であるか!?」
 
○○○「……我らは、我らは神聖なる壁を崇める信徒!」

△△△「無垢なる心で、神の啓示を待つ童子なり!」
 
???「だがしかぁし!!今この瞬間の我らはぁ!!」
 
□□□「壁に仇成す愚か者共を裁く断罪者!!」

×××「幼き子供に非ず、神の威光を余さず伝え広める者なり!!」

???「そう…… 我らは神を冒涜する愚者を裁く者なり!」ダッ

「・・・・弾を装填する時間稼ぎか。なかなか強かじゃないか」

そう笑ってライバックがハンマー投げよろしくハルバードを2階目掛け放り投げると、次弾の装填を終えたばかりの僧兵の顔面を砕けた。

ワンテンポ遅れて次々と降りかかる弾丸に目もくれず、ライバックは脱力したその僧兵の手から抜け落ちた銃を拾いに行った。

そして拾い上げると、隠れ損なった銃持ちの僧兵を一人軽く撃ち落とす。

次の弾も火薬もないので、ライバックは銃を只の鈍器として持ち替えると一番槍の僧兵の槍の切っ先を逸らし、その顔面に銃底を突き込んだ。

そのまま銃を振り回し、次々と僧兵をライバックは葬った。

それは先の憲兵との戦いで見せた気遣いの一切入っていない攻撃

相手の“いしき”を奪うのではなく、相手の“いのち”を奪う一撃、意識を刈るのではなく、命を刈る攻撃。

すっかり銃としての役目を果たせなくなるほど歪になった銃を捨てると、ライバックはまた独特の構えを見せた。

長物ではどうしようもないとナイフを持った僧兵が数人が果敢にもライバックに向かっていく。

突く・斬る・振り下ろすといった目を見張るようなナイフ捌きだったが、ライバックの迎撃の前に全ては虚しく空を舞う。

やがて一人の僧兵の手が掴まれるとその手首から先がだらりと垂れ下がり、握っていたナイフはライバックの手元に落ちた。

「コイツはこう使うのさ」

ナイフの連撃は続くが、ライバックが一閃するたびにナイフが一つまた一つと落ちていく。ライバックが僧兵の手首を深く切っているからだ。

やがてライバックの周辺にはナイフの水たまりができていた。

ライバックがナイフの束を拾おうとした瞬間、これを最大の好機と見た銃兵が次々と弾丸を放った。

それを前転しながら且つナイフも拾いながらライバックは躱す。だが――――

「・・・・うっ!?」

前転直後の隙を狙った一発の弾丸がライバックの左肩を撃ち抜いたのだ。しかしライバックは不敵に笑う。

「弾は貫通した。撃たれた内には入らない」

言ってナイフを投擲する。鈍い悲鳴があちこちから聞こえ、ライバックが最後の一本を投げたときには2階にいた銃兵は全滅していた。

そこからの銃に狙われる心配の無くなったライバックの猛攻は苛烈だった。

ある者は首を折られ、ある者は自らが持っていた武器に貫かれ、ある者は首を折られ死んでいった。

「・・・・さて、残りはあんただけか」

???「……どうやらそのようだな」

ライバック「どうするんだ?」

???「場所を変えさせてもらう!」ダッ

ライバック「・・・・逃がさんぞ」

―――――
―――


ライバック「ここは・・・・」

???「信者たちに炊き出しを行う調理場だ……」

ライバック「・・・・」

???「知っているか?調理場は武器の宝庫なんだ……」

ライバック「・・・・よく知ってるさ。なんせ5年前までは俺はコックだったからな」

ライバック「ついでにいいことを教えてやろう」

???「?」

ライバック「台所じゃ誰にも負けない」

男は包丁を手に取るとライバックへと踊りかかった。

ライバックはそこに干してあったフライパンを手に取るとそれを受けた。死闘の場に似つかわしくない気の抜けた金属音が響く。

空いた手でお玉を取るとライバックは男の右頬を叩いた。男は一瞬目を白黒させるものの一歩引き場を仕切り直す。

再び男がライバックに挑みかかる。彼はそのナイフを振り下ろす手をフライパンで受け止め再びお玉で顔面をぶん殴った。

今度はそれだけに留まらず、フライパンとお玉で男の顔面を連続で殴打した。強烈なダメージを与えているが響く音はどこか間が抜けている。

フラフラになったところで男はライバックに掴まれ地面へと投げ転ばされる。男は素早く起き上がると今度は麺棒を手にした。

「足元には気をつけろ」

そう笑ってライバックは先ほど男を投げ飛ばした衝撃で落ちていたボールを、男の右足の着地点にそれを蹴り込む。

丁度それを踏んづけた男はバランスを崩し前のめりになる。そこへライバックは歩み寄ると、男の肩を掴み膝蹴りを頭と腹ととにかく容赦なくぶち当てた。

仰向けに倒れた男が何とか立ち上がるも、起き上がった直後にライバックの掌底がすぐに男を床へと戻させた。

そこに落ちていた包丁を掴み男は尚も立ち上がった。

「殺してやる……!」

男の包丁を躱し背中をとると、ライバックは男を掴み上げ調理台に叩きつけた。そのまま男を引きずり回し向かった先にある包丁庫へ投げ捨てた。

全身斬り傷だらけで、もはや前後不覚になった男の首に腕を巻き付け、ライバックはその首の骨を至極あっさりとへし折った。

「キッチンで負けたことはないんだ」

―――――
―――


司教「……誰だ?私の祈りを邪魔するのは?」

ライバック「あんたが予想してたのと同じ男さ」

司教「ケイシー・ライバック……」

ライバック「・・・・答えろ。なぜハンネスを殺させた」

司教「壁の秘密を知ったからだ」

ライバック「なぜあのことを隠す?」

司教「……お前ごときが知っていいことではない」

ガタッ・・・・

ライバック「・・・・もう一度聞こう」

リヴァイ「……なぁ?」

ハンジ「はは…… すごいこと聞いちゃったなぁ」

ミケ「…………」

司教「お前たちは確か…… 調査兵団か?どうしてここへ?」

ミケ「所要でシーナ内に来ていた。そこでライバック兵長の脱獄を聞いた」

ハンジ「それでライバック兵長がここに逃げ込んだって聞いたから追いかけてきたんだけど」

リヴァイ「でだ。その壁の秘密とやらはライバックには話せないそうだが、俺たちにはどうだ?話せるのか?」

司教「……それはできない」

ハンジ「……ふざけるな」

ハンジ「壁の中に巨人がいる?何故黙っていた」

司教「…………」

ミケ「……教団が壁の強化や地下の開発を拒んだ理由はそれか」

ハンジ「これは重罪だ。人類の生存権に関わる重大な罪だ」

司教「…………」

リヴァイ「オイ、なんとか言えよ」

司教「……教えることは何もない」

ライバック「・・・・あんたらは今世の中の害毒に成り果ててる」ガッ

司教「ぬっ!?」

ライバック「この俺が解毒剤だ」ブン゙ッ

司教「がはっ!!?」ドザァッ

司教「……くははは… 害毒?この私が?我々が害毒?何も知らぬ愚か者目が好き勝手言いよって」

ハンジ「そうさ、私たちは何も知らない。だから教えろと言っている」

司教「できぬ話だ……ゴフッ」ドバァッ

ライバック「!?」

司教「……ふふ、ようやく効いてきたか」ハァ・・・ ハァ・・・・

ライバック「あんたまさか・・・・」

司教「貴様がここに来る直前に毒を飲んだ……」

ハンジ「……ふざけるな!あんた、このまま何も言わずに死ぬ気か!!?」

司教「私はこの世の害毒らしい…… だから毒は毒らしく毒に侵され死のうではないか」

ハンジ「おい、オイ!ふざけるな!目を覚ませ!!死ぬな!勝手に死ぬんじゃない!!」

司教「………――――」

ハンジ「……クッソォオオオオオ!!!」

―――――
―――


ハンジ「……ケイシー・ライバック兵長、あなたにかかっていた容疑は全て晴れました」

ミケ「首謀者は死んでしまったが、司教の証言は我々3人がすべて聞いた」

リヴァイ「……で、これからお前はどうする?」

ライバック「決まってるさ。ハンネスを殺さなければならなかったほどの秘密だったのか、確かめる」

ミケ「心当たりがあるのか?」

ライバック「連中に壁に口出しする権限を与えたのは誰だ?」

ハンジ「……王政」

ライバック「そうだ」

ハンジ「……まさか、王政を敵に回す気!?」

ライバック「ああ。・・・・ついてくるか?」

ミケ「……4人だけではさすがに無理だろう。エルヴィンに一度掛け合ってみるべきだ」

ハンジ「うん、私もあれだけの秘密を隠していた連中を許せそうにない」

リヴァイ「……決まりだな」

ライバック「ああ、俺たちの最大の敵は王政だ」



                                         〈 ̄ヽ
                                   ,、____|  |____,、
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                                       / /  |  |    |\
                                   ___/ /  |  |___| ヽ
                                   \__/   ヽ_____)



――――しかし、戦いは続くッ!!

>>227の前に一個抜けてた

ライバック「ハンネスたちを殺すように指示したのはお前か?」

司教「そうだ。彼らは壁の秘密を知ってしまった」

ライバック「俺のナイフを使ったのは俺を犯人に仕立て上げるためか?」

司教「そうだ。そのために目撃者も用意させた」

ライバック「壁の秘密というのはあの壁が巨人でできていたことか?」

司教「それはお前が自信の目で見ただろう」

ライバック「巨人で壁ができている・・・・ それ以外にもまだ秘密があるのか?」

司教「……お前が知る必要はない」




?「……なら、俺には知る権利はあるか?」

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