なの「私の時間だけ止まったままなんだ」(89)

なの「Zzz」

阪本「Zzz」


はかせ「ただいまー…」

はかせ「あれ、もう寝てるんだ…」

はかせ「…ん?」

はかせ「これ…なののケータイだ…」

はかせ「…アンテナ0じゃん…故障してるんだ」

はかせ「なの…機械にはめっぽう弱いからなあ」

はかせ「…」

チュンチュン

なの「ふわあ…もう朝だ」

なの「はかせは帰ってきて…」

はかせ「Zzz」

なの「もう、机の上で寝たら風邪引いちゃうじゃないですか…あれ」

なの「私の携帯電話が置いてある…?」

なの「…」


なの「メール…120件?」

なの「どういうこと…?」


なの「…」

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From 相生さん
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件名 やっほー!
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元気にしてる?
私は1人暮らしにも慣れてきて、
大学も楽しくなってきたよ!
大学イモ楽しくなってきたよ!
どう?会心の出来なんだけど!
またメールするね!

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From 相生さん
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件名 風邪とか引いてない?
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最近メール返してくれないけど、
もしかして故障…おっと失礼
具合悪くなったりしてない?
なのちゃん無理しそうだから心配!
ネギとかちゃんと食べなよ!

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From 相生さん
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件名 なし
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なのちゃーん…
私のこと嫌いになった…?

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From 相生さん
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件名 イカのおつまみはイカん
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今日は大学のサークルで初めて
飲みに行ったよ!
私、お酒弱いみたい…(笑
笑い上戸だって言われちゃった

迷惑…?じゃないといいけど
またメールするね!

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From 相生さん
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件名 単位が危ない!
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就活始まったのに授業が多いよー!
なのちゃん、勉強おしえてー!

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From 相生さん
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件名 やった!
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就職決まったよ!!
普通の事務だけど、ほんとによかった!

時間できたら遊ぼうよ!

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From 相生さん
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件名 なし
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人生初の…彼氏ができちゃいました

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From 相生さん
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件名 結婚って
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どんな感じなんだろう?
なのちゃんは今ごろ彼氏とラブラブ
だったりして~!

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From 相生さん
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件名 なし
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もしかしてケータイ見てないかな?
なんか一方的に送っちゃってるけど
もし彼氏とかできてて忙しいなら
メールやめとくよ!

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From 相生さん
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件名 なし
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なんか、ごめん

何かあったらいつでも連絡してね

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なの「相生さん……ごめんなさい……」

なの「長野原さんと水上さんからもたくさん来てる…」


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From 長野原さん
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件名 カプネタがない…
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なのちゃん、もしかして腕が取れて
もとい都合により手が動かせない?
ちょっと行き詰っちゃったから、
また一方的にメールさせてもらうね

漫画家って大変だよ…
たまにはなのちゃんと会って話した
いな!
もしよかったら連絡待ってる!

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From 水上さん
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件名 ごま
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まり
りんご
ごみ
弥勒菩薩

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なの「…」

なの「私…」

なの「…」

なの「あああああぁぁぁ…」

なの「…」

なの「みなさんがこんなに私のこと考えててくれたのに…」

なの「私はずっと無視してたんだ…」

なの「もう、友達じゃないよ…」

はかせ「…友達だよ」

なの「はかせ…!起きてたんですか…」

はかせ「ゆっこたちはずっと友達と思ってるよ」

なの「そんなことないです…」

はかせ「そんなことある!」

なの「そんなことないです!」


阪本「だったら連絡してみりゃいいじゃねーか」

なの「阪本さん…」

なの「そんなの無理です」

なの「私、みなさんの気持ちをずっと無視してたんですよ!」

なの「10年間…ずっと」

なの「そんな私を友達と思ってるわけないじゃないですか!!」

阪本「だったらガキ、お前が電話しろ」

はかせ「わかった!」

なの「…!」

なの「待ってください!」


なの「私が…します」

なの「…」ぷるぷる

~~~

ゆっこ「もしもし?」

なの「あ…あの」

ゆっこ「どちらさまですか?」

なの「えっと…あの…し、東雲」

ゆっこ「…」

なの「東雲…なのです」

ゆっこ「…」

ゆっこ「…ちょっとわからないです」

ゆっこ「そんな『人』、知りません」

~~~

なの「…」ぶるぶる

はかせ「…」

はかせ「ちょっと貸して」ばっ

なの「ちょ…!はかせ!!」

はかせ「…」ぴっぴっぴ

はかせ「…ほら、なの、かけてあげたよ」

なの「ちょっと何してるんですか!」

はかせ「もう繋がってるから早く出なさい!」

なの「あの…えっと…もしもし」


ゆっこ『…なのちゃん?』

なの「あ…相生さん…」

ゆっこ『…』

なの「あの…急に電話してすみませ」

ゆっこ『こら!元気だったのかー!このこのー!』

なの「…相生さん」

ゆっこ『ずーっとメール返してくれないし、電話も繋がらないから心配してたんだぞー!』

なの「あ……あ……」

ゆっこ『みおちゃんも麻衣ちゃんもずっと気にかけてたんだから!』

なの「ごべんなざいぃ…」

……

ゆっこ『よかったよ、元気そうで!』

なの「あの…メール返せなかったこと…怒ってないんですか」

ゆっこ「なんで?」

なの「な、なんでって…」

ゆっこ「なのちゃんの事だから、きっとケータイの使い方がわからなかったんでしょ!なんてね」

なの「そ、そういうわけじゃ…でも間違ってないというか…」

ゆっこ「あはは、なんとなくわかるよ」

ゆっこ「怒るどころか、いつか会いに行こうってみおちゃん達と話してたんだよ」

なの「いつでもいらっしゃってよかったんですよ…」

ゆっこ「だってもしなのちゃんが結婚とかしてたら行きづらいじゃん?」

なの「結婚だなんて…」

ゆっこ「でも、これで気がねなく遊びにいけるよ」

なの「!」

ゆっこ「もちろん、みんな一緒にね」

……

ゆっこ『じゃあ、また連絡するから!今度はちゃんと返してよー?』

なの「は、はい!もちろんです」

ゆっこ『じゃ、またね~!』

なの「はい…!」

なの「…」ぴっ

なの「……はかせ」

はかせ「ほらね?」

なの「…ぐすっ」

阪本「ったく…世話が焼けるぜ」

はかせ「それとね、なの」

はかせ「大事なお話があるの」

なの「大事な話…ですか?」

はかせ「よく聞いて、良く考えてね」

はかせ「はかせは、とっても大変な研究、開発をしていたの」

なの「研究…」

はかせ「そう。」

はかせ「なのや、いわゆる『ロボット』達が、人間のように成長できるようにする研究。」

なの「…!」

はかせ「っていうのは口実で、本当はなのが大人になれるような研究。」

なの「はかせ…」

はかせ「それでね、ちょうど昨日、正式に完成したの」

なの「そうなんですか…」

はかせ「なのは、自分の見た目が変わらないこと、悩んでるんでしょ?」

なの「…」

はかせ「わかってる。そのために研究してきたんだもん」

はかせ「でもね、よく考えて欲しいの」

はかせ「なのはそのままでもなのだから。」

はかせ「ゆっこもきっと普通に友達として接してくれるよ」

はかせ「それに、大人になるってことは、同時に死へ近づくって事。」

はかせ「人間と同じってことは、いずれなのも死んじゃうってことなの…。」

なの「死ぬ…」

はかせ「私は、なのに死んでほしくないの」

はかせ「ずっと、私がおばあちゃんになって、天国に行くまで一緒にいて欲しいの」

なの「はかせ」

はかせ「でもね、なのが本当に、人間と同じになりたいって思うなら…止めないよ」

なの「…」

なの「私は」

なの「私も、はかせや阪本さん、相生さん達とずっと一緒にいたいです。」

なの「でも、今のままだったら私はずっと生きます」

なの「はかせや阪本さんや相生さんが死んでしまってからも…ずっと、ずっと…1人で。」

はかせ「…なの」

なの「私、そんなのいやです」

なの「…みなさんといっしょに大人になりたいです」

はかせ「わかったよ、なの」

はかせ「なのに、大人になれる装置をつけてあげる」

なの「はい!」

はかせ「…あ」

はかせ「それと、もう一つ」

なの「なんですか?」

はかせ「その装置ね…これなんだ」

なの「…え」

はかせ「本当に、付けていい?」

なの「…ふふ」

なの「はい、お願いします!」

はかせ「…ふふっ」

はかせ「それと、阪本」

阪本「ん?どうした」

はかせ「これ、あげる」

阪本「なんだこれ?」

はかせ「はかせ特製『サメキャットフード』です」

阪本「サメキャットフードて…」

はかせ「これはね、食欲を増進させる効果がある食べ物なの」

阪本「…食欲、か」

はかせ「阪本は食欲がないだけで、体は健康だから。」

阪本「…」

阪本「ま、お前らはまだまだガキだからな。もう少し俺がついてないとダメか」

はかせ「改造してロボットにしてあげてもいいよ!ずっと元気でいられます」

阪本「いや、勘弁してくれ」

はかせ「…言うと思った」

数週間後

なの「はかせ、お菓子のごみ片付けてください!」

はかせ「えーめんどくさい…」

なの「もうすぐ相生さんたち来ちゃうんですよ!」

はかせ「Zzz」

なの「寝たふりしないでください!」

はかせ「…ちぇっ」

阪本「うるせーなあ」

ぴんぽーん

なの「あ!はーい!ほらほらはかせ、早く早く!」

はかせ「ふあーい」


がらっ

『おじゃましまーす』


おわり

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