ほむら「まどかが割り箸になった……」(195)
早乙女「今日は転入生を紹介します!」
ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
ほむら(あら? まどかの席に誰もいない)
ほむら(妙ね……。私の登校初日にまどかが欠席するなんてことは、今まで一度もなかったのだけれど)
ほむら(……ん?)
ほむら(まどかの椅子に何かが置かれている)
ほむら(あれは……)
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. まどまど ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ほむら「どうして割り箸が」
早乙女「ああ。やっぱり鹿目さんのことが気になるかしら」
ほむら(気になるというかなんというか)
=「あはは、びっくりしたかな? 私これでも中学生なんだよ」
ほむら「喋った!?」
さやか「まどかは世にも珍しい割り箸女子中学生だからね」
ほむら(なるほど……)
ほむら(って、納得できる訳ないでしょう!)
クラスメイト1「前はどこの学校に通ってたの?」
ほむら「東京のミッション系の学校よ」
クラスメイト2「部活とかやってた?」
ほむら「やってなかったわ」
クラスメイト3「髪綺麗だよねー」
ほむら「ごめんなさい。緊張し過ぎたみたいで、ちょっと気分が」
クラスメイト1「あ。保健室ついてくよ」
ほむら「いえ、おかまいなく。保健委員の人にお願いしますから」
クラスメイト2「保健委員っていうと……、鹿目さんに!?」
ほむら「……え、ええ」
ほむら「鹿目まどかさん。貴女がこのクラスの保健委員よね」
=「うん。そうだけど……」
ほむら「ああ。貴女が保健委員ということなら早乙女先生から聞いたのよ」
=「そうじゃなくって」
ほむら「何かしら」
=「私自力じゃ歩けないから、案内してもらうなら誰か別の人の方が……」
ほむら「……」
=「……」
ほむら「私が貴女を手で持っていくわ」
=「あ、うん。暁美さんがそれでいいなら」
ほむら「……」
=「暁美さん、えっとその」
ほむら「ほむらでいいわ」
=「あ、うん。じゃあ……、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら」
=「私のこと見てどう思った?」
ほむら「どうって……、その、普通の割り箸だなって」
=「そう、だよね……」
ほむら(このまどかは契約させてあげた方が幸せな気がしてきたわ……)
ほむら「……鹿目まどか」
=「??」
ほむら「貴女は自分の人生を尊いと思う?」
=「いやー、どうかなぁ。私人間じゃないから」
ほむら「……」
=「……」
ほむら「ごめんなさい」
=「ううん。よくあることだから」
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. まどまど ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ほむらちゃん困ってる……
そりゃそうだよね
私みたいなのとどう会話していいかなんて、よく分かんないよね
よーし、ここは一発冗談で場をにぎわそう
=「そんなに悲しそうな顔をしないで!」
ほむら「まどか……」
=「割り箸だけに、私は自分の境遇を割りきっちゃってるから!」
ほむら「……」
=「て、てへっ」
ほむら「……」
=「……」
ほむら「ねえまどか」
=「はい……」
ほむら「貴女の身体はまだ繋がったままよ。つまり割り切れてはないわよね」
=「確かに……」
ほむら「強がってはいるけれど、自分の運命のことも、本当に納得できているのかどうか。
私には、とてもまどかが割り箸である自分を心の底から受け入れているようには見えない」
=(何だろうこの流れ。ギャグに駄目だしされるより辛い……)
ほむら「……もし、身の危険と引き換えに」
=「えっ?」
ほむら「人間の形をした身体を得られるとしたら、貴女はどうする?」
=「……」
=「そんな方法があるの?」
ほむら「あるわ。呪われた運命を背負いこむ代わりに、願いを何でも1つだけ叶えられる。
そんな悪魔の取引のような忌わしい奇跡がこの世界には存在している」
=「願いを何でも1つ!?」
ほむら「そうよ」
=「それなら命なんか喜んで差し出すよ!
だって私、どうしても叶えたい願いがあるから!」
ほむら「そう。貴女の気持ちは分かったわ」
ほむら(割り箸として一生を終えるよりも、たとえ危険だろうが
人間の姿での生活を満喫する方が、きっとこの子にとっては幸せなのよね)
ほむら(よし、決めたわ。今回はまどかを契約させる)
ほむら(この子を近くから見守って、そしてどうしようもなくなった時は、私の手で―――)
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. まどまど ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
私みたいな棒きれの為に真剣になってくれる人がいて、正直とっても嬉しかった
だからかな?
願いを何でも1つ叶えられまーす! ……なんていう突拍子もない話も、
不思議なほどにすっきりと木目の中で理解できた
私はほむらちゃんの話をもっとよく聞きたいと思った
そこで今日は、ほむらちゃんと私の2膳で一緒に下校することにした
ほむら「……」ホムホムホム
=「……」ワリバシバシ
ほむら「まどか」
=「なーに、ほむらちゃん?」
ほむら「ふと気になったのだけど」
=「うん」
ほむら「貴女を真ん中から割ったらどうなるの?」
=「……もうっ、ほむらちゃんのエッチ!」
ほむら「えっ!? 割り箸にとって割られるというのはそういう意味を持つの!?」
=「そうだよ」
=(……初めてってやっぱり痛いのかなぁ。できればその時は好きな人に割って欲しいなあ)
ほむら「……」
=「あれ? どうしたのほむらちゃん、顔が真っ赤だよ?」
ほむら「いえ、なんでもないわ」
=「そんなことないよ」
ほむら「……」
=「何でも話して欲しいな。ほむらちゃんが私に真剣になってくれたように、
私もほむらちゃんと真っ直ぐ向き合っていきたいから」
ほむら「……気持ちだけ受け取っておくわ」
=「そっか」
ほむら(もうっ、もう! 可愛いんだから! )
ほむら(……あら? この気配、アイツがすぐ近くにいるわね)
=「どうしたのほむらちゃん? なんだか急に雰囲気が怖く……」
ほむら「気にしないでちょうだい。それよりほら、早く出てきなさい。
そこに隠れているのは分かっているのよ」
QB「やれやれ。やはり君は本当に魔法少女としての力を持っているようだね」
ほむら「ええ」
QB「君のような人間と契約をした覚えはないんだけどな……」
=「ほむらちゃん。何なのこの変な生き物?」
QB(君が言うなよ)
ほむら「コイツはQB。体毛の色とは裏腹に、どす黒い思考の持ち主よ」
QB「ひどい言い様だね。いったい僕が君に何をしたと言うんだい?」
ほむら「あら、私にそんな質問をしてもいいの? 一昼夜かけても語りつくせないわよ」
QB「……ずいぶんとまあ、知らないうちに嫌われたものだ」
=(なんだか凄い会話だなぁ)
=(平凡な中学生の私とは、全く違う世界に生きているみたいな)
=(命を危険にさらして願いを1つ、か……)
ほむら「まあ今は恨み言はいいわ」
QB「それは助かるよ」
ほむら「そんなことよりも魔法少女にしてやって欲しい美少女が1膳いるの」
QB「誰でも魔法少女なれるというわけではないよ。
魔法少女になる為には一定の素質が必要だ」
ほむら「それなら問題はないわ」
QB「問題がないかどうかを見極めるのは僕だよ。
……で、魔法少女になりたいという子はどこにいるんだい?」
ほむら「ここよ」
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. まどまど ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
=「魔法少女って何なの?」
ほむら「魔女と呼ばれる存在と戦う少女の総称よ。
当然、危険と隣り合わせの一生を過ごすことになるわ」
=「その魔法少女になれば、魔法の力で何でも願いが……?」
ほむら「うーん。少し違うかも。正確には、魔法少女になる際に発生する
特殊なエネルギーで、1度だけ好きな願いがかなえられるのよ」
=「ふむふむ」
ほむら「魔法少女になってから使える魔法は、やや用途がせまいわ。
それでもある程度便利な代物ではあるけれどね」
=「なるほど」
ほむら「……そしてそこの白いの」
QB「ぎくっ」
ほむら「さりげなく逃げようしないでちょうだい。踏み殺すわよ」
ほむら「どうして逃げようとするの」
QB「いやだって……、ねえ?」
ほむら「まどかの、この子の資質は本物よ」
QB「それは確かに認めるよ」
ほむら「ならどうして尻ごみするのよ。いつもは頼まなくたって契約を迫る癖に」
QB「そうは言われてもね。僕は人間を魔法少女にすることはあっても、
割り箸と契約を結んだことなんて1度もない」
=「……」
QB「何もかもがイレギュラーな存在と契約を結ぶなんて無駄に危険な賭けは、正直避けたいんだ」
ほむら「割り箸で何が悪いっていうのよ」
QB「何がって言われても、そりゃほら、色々と」
ほむら「美少女なのよ? 高い能力を秘めているのよ? 何が不足だっていうの」
=(美少女って、そんな……、てへへ)
QB「この膨大な魔力数値も、僕には何かの間違いだとしか思えない」
ほむら「間違いなんかじゃないわ」
QB「……」
ほむら「もしお前が契約を結ばないようならば、その時は……」
QB「?」
ほむら「現存する全ての魔法少女を、絶望に飲み込まれる前に潰す」
QB「やれやれ。何かと思えば脅しかい」
QB(一体彼女はどこまでを知識として持っているのやら。全く、痛いところを突く)
ほむら「これは脅しでは無く警告よ」
QB「分かったよ、お手上げだ。君がそこまで言うなら試してみようじゃないか」
QB「さあ、君の願いを言ってごらん」
=「願いって……、何でもいいの?」
QB「勿論さ。願いの成就と引き換えに、君は魔法少女としての定めを背負うことになる」
=(やったー! これでようやくコンプレックスを解消できる!)
ほむら(まどか、こんなに嬉しそうな木目を浮かべて……)
ほむら(でもそれもそうよね。だってようやく人間に―――)
=「私の願いは……、爪楊枝付きの割り箸になること!」
ほむら「って、まどかぁ!?」
QB「……本当にそれでいいのかい?」
=「実はずっとこれがコンプレックスだったの、てへへ」
ほむら「ね、ねえまどか! 考え直しましょう!?」
=「なんで?」
ほむら「それはその……。ちょっとQB! あなたからも何か言ってあげて!」
QB「ああ。僕がこんなことを言うのは本当に異例のことなんだけど……。
爪楊枝付きの割り箸になるだなんて願いは勧められないよ」
=「どうして?」
QB「どうしてって……」
QB(駄目だコイツ。常識が通用しない)
ほむら(くっ……。“人間の身体を得なさい”とはっきり言えたらどんなに気が楽か)
ほむら(だけどそれを口にするのは、割り箸であるまどかを否定することに繋がる)
ほむら(割り箸が人間に劣るとでも考えていなければ、そんな発想が出る筈もないのだから)
ほむら(……)
ほむら(そもそも、どうしてまどかに人間の身体を得させなければならないのかしら)
=「わーい! これでセブンイレブン出身のお箸に馬鹿にされないですむ!」
ほむら(なんだかんだで本人は楽しそうだし、割り箸のままでもまどかは可愛いし……)
ほむら(あら? もしかして何の問題もないんじゃないかしら?)
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ まどまど ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. 爪楊枝付きだよ ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
こうして私は新しく生まれかわりました
てへへ……、我ながら見違えちゃった
魔法食器まどか☆マギカはじまります!
=+‐「今日は初めての戦い。緊張するなぁ」
ほむら「大丈夫よまどか。私がサポートするわ」
=+‐「ありがとうほむらちゃん! よーし、頑張るぞー!」
ほむら(魔法でふわふわ浮いてるまどかも可愛いわ……)
魔女パトリシア(……何あの箸? あの黒髪の武器かしら?)
パトリシア(まあいいわ。さっさと片付けて洗濯の続きといきましょう)
パトリシア(まずは使い魔に挟撃させて、空中に跳ねさせる)
パトリシア(身動きが取れなくなったところを糸で絡め取れば……)
=「爪楊枝アロー!」
まどかがそう口にすると、割り箸と凧糸を組み合わせて作ったような弓が空中に現出した
弓は独りでに弦を絞り、爪楊枝を目にも映らぬ速度で放つ
パトリシア(……え? ちょ、ええっ!?)
放たれた爪楊枝は真っ直ぐに魔女の身体を貫いた
よろめく魔女へ向け、次々と別の爪楊枝が発射される
パトリシア(もう限界……)
魔女が消滅するまでにはさほど時間がかからなかった
ほむら「さすがはまどかね」
=「ううん、まだまだだよ。だって私、あんなにもたくさんの木材を無駄にしちゃったから…。
もっと地球にやさしい戦い方ができたら、それはとっても素敵だなって」
――――
それから2週間ほど後
ほむら「とうとうワルプルギスの夜がやってくる……」
=「大丈夫だよ、ほむらちゃん」
ほむら「……」
=「私は負けない。だってまだ、やり残したことがあるから」
ほむら「……うん」
┏━┯━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━━┻━┥ _,,.. ┃
┠────┤ ⊂⊃ /,' 3~~\ ⊂.⊃ まどまど ┃
┗━━┳━┥..............,,,,傘傘傘::::::::傘傘傘............. 爪楊枝付きだよ ┃
┗━┷━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
ほむら(駄目だな、私。まどかを守れる自分になる筈が、こんな……)
ほむら「ところでまどか」
=「んー?」
ほむら「やり残したことって一体何なの?」
=「それはね、私―――」
ほむら「……どうやら話している暇はなさそうね」
=「うん……。そっか、あれがワルプルギスの夜」
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:!
,! ;;,:!
ヽ、 :;:;:;:''
゙`!二二二!
ほむら(何かがおかしい)
ほむら(ふざけた見た目だけれど……)
ほむら(あの大きさだと流石に威圧感は物凄いわね)
=「爪楊枝アロー!」
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:! ― - ― -
,! ;;,:! ― - - ― =←まどか
ヽ、 :;:;:;:'' ― - - -
゙`!二二二!
ほむら(かっこいい……)
ほむら(不思議ね、今のまどかを見ていると胸がきゅんきゅんするわ……)
ほむら(ここまで胸が高鳴るのは、一体いつ以来かしら)
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:! /7
,! ;;,:! //
ヽ、 :;:;:;:'' // =
゙`!二二二! i´ ,!
ほむら「ああっ! 巨大なスプーンが!」
まどか「心配しないでほむらちゃん。これぐらい避けられる……、から!」
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:! = /7
,! ;;,:! //
ヽ、 :;:;:;:'' //
゙`!二二二! i´ ,!
゚'''''″
ほむら「なるほど……」
ほむら「確かにスプーンはダイナミックに食べ物をすくえる」
ほむら「けれども繊細さにかけてはお箸に大きく劣るわ」
ほむら「その動きの大雑把さをついて攻撃を回避したのね」
=(お茶碗の魔女ワルプルギスの夜……、その性質は配膳)
=(お茶碗というのは、料理を盛る為のもの)
=(外の汚れから中身を守る役割がある以上、外壁は爪楊枝を通さないほど固い!)
=(だけど……、お茶碗の中に潜り込んで内壁に衝撃を与えたらどうだろう)
=(お茶碗の中身が刃向かってくるような事態は、お茶碗職人さんでも予想できない筈)
=(きっと外から攻撃を加えるよりも効果的にダメージが与えられる!)
BGM
http://www.youtube.com/watch?v=Iv-FTxisEpM
ほむら「何をするつもりなのまどか!?」
=「大丈夫、ほむらちゃん。お行儀の悪いお茶碗にちょっとテーブルマナーを……」
=
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:!
,! ;;,:!
ヽ、 :;:;:;:''
゙`!二二二!
=「叩きこむだけだから!!!」
∥<エイヤァー!
,._,._,._,._,._,._,._,._,.._,._
,! ;;,:!
,! ;;,:!
ヽ、 :;:;:;:''
゙`!二二二!
ほむら「まどかぁああああああああ!!」
――――
=(ここが……)
=(ここがあのワルプルギスの夜の中身)
=(……)
=(何にもない)
=(からっぽだ)
=(あんなに強かったのに)
=(こんなに大きいのに……)
=(お米一粒はいってない……)
=(ひょっとして……、寂しかったのかな)
=(誰かに物を食べてもらうためにつくられたのに、誰にも使ってもらえずに)
=(悔しかったんだよね)
=(誰かに気づいて欲しかったんだよね)
=(分かるよ、その気持ち)
=(でももういいの。全部私が終わらせてあげる)
― -
― =←まどか -
― -
- -
まどかの周囲を、無数の爪楊枝がふわふわと漂い始める
=「高級爪楊枝アロー!」
全ての爪楊枝がワルプルギスの夜に内側から突き刺さる
初めに生じたのは、小さなヒビだった
しかしそのヒビが、徐々に大きく広がっていき―――、
=「さようなら。ワルプルギスの夜」
茶碗は粉々に砕け散った
――――
=(ふうっ……)
=(さすがに力を使いすぎちゃった……)
=(私ももう長くはないかな)
ほむら「まどかっ!」
=「あ。ほむらちゃん……」
ほむら「今すぐグリーフシードを使いましょう! そうすればまだ……」
=「いいのほむらちゃん。こうなることは最初から分かっていた」
ほむら「えっ……?」
=「だって割り箸なんて、所詮は使い捨ての消耗品なんだもん。だから―――」
ほむら「消耗品なんかじゃない!」
割り箸の魔女 その性質は自己犠牲
=「私は消耗品だよ……」
ほむら「そんなことない! 私にとっての貴女は……、たった一膳の大切な……」
=「……」
ほむら「何度だって洗い直すよ! 何度も何度も大事に使うよ!
死ぬまで貴女を使い続ける! だから……」
=「うん……」
ほむら「消耗品だなんて悲しいこと言わないでよ……、お願い……」
=「ありがとう、ほむらちゃん。こんなこと言ってもらえる割り箸、きっと世界中探しても私だけだよ」
ほむら「まどかぁ……」
=「私、世界一幸せな割り箸になっちゃった。……嬉しいな、本当に嬉しい」
=「でもね。分かるんだ、もう限界だって」
ほむら「そんなっ!」
=「だからさ。お願い、最後に1つだけワガママ聞いてくれないかな」
ほむら「……」
=「私の意識がある内に、私を使ってご飯を食べてほしい。それが最後の、最大の願い」
ほむら「……分かった、わ」
=「ありがとう。それじゃあ……、割ってくれる?」
ほむら「ええ……」
ぱきっ
=「ふふっ。私の初めて、ほむらちゃんにもらわれちゃった」
=「美味しい、ほむらちゃん?」
ほむら「う、ぐすっ、ひくっ……。美味しいよまどか、美味しいよぉ……」
=「てへへ。一番好きなほむらちゃんにそんなこと言ってもらったら、
世界一どころか宇宙一幸せな割り箸になっちゃうよ」
ほむら「一番……好き?」
=「ふふっ。我慢しきれずに言っちゃった。これ、クラスの皆には内緒だよ」
ほむら「私もまどかのことが大好き! 誰よりも何よりも愛してる!」
=「……へ、変だなぁ。
これ以上幸せになんてなりようがない筈なのに、どんどん木目が幸せで一杯になっていくよ」
=「戦いの前に言っていた、やり残したことっていうのはね」
ほむら「うん……」
=「ほむらちゃんに、私の初めてを貰ってもらうことだったんだ。
だからそれが叶った今、気持ちが凄く穏やかなの」
ほむら「……」
=「さて、と。それじゃあそろそろお別れの時間みたい」
ほむら「やだよぉ……」
=「辛い役目を押し付けちゃってごめんね。でも本当に……、限界……近くって」
ほむら「あ、あぁ……、うぁあああああああ!」
=(ありがとう、ほむらちゃ―――)
ぱりん
――――
「ほむらちゃんってお弁当の時、いつも同じ割り箸を使ってるよね」
「ええ。変かしら?」
「ううん。なんとなくだけど、ほむらちゃんがその割り箸を気に入ってるってことが、痛いほど伝わってくるから」
「そう……」
ねえ、割り箸だったまどか
私は貴女のこと、一生忘れないわ
貴女はいつまでも、永遠に、私の大切な―――
おわり
.,-'''''~~~ ̄ ̄~~''' - 、
\ ,へ.人ゝ __,,.--──--.、_/ _,,..-一" ̄
\ £. CO/ ̄ \ _,,..-" ̄ __,,,...--
∫ / ,、.,、 |,,-¬ ̄ _...-¬ ̄
乙 イ / / ._//ノ \丿 ..|__,,..-¬ ̄ __,.-一
.人 | / ../-" ̄ || | 丿 / ). _,,..-─" ̄ ._,,,
マ .ゝ∨ / || " 丿/ノ--冖 ̄ __,,,,....-─¬ ̄
( \∨| " t-¬,,...-一" ̄ __--¬ ̄
ミ ⊂-)\_)` -一二 ̄,,..=¬厂~~ (_,,/")
.⊂--一'''''""|=|( 干. |=| |_ (/
/ ( / ∪.冫 干∪ 人 ` 、 `
/ ) ノ '`--一`ヽ 冫
く.. /
. ト─-----イ |
∪ ∪
/. ノ、i.|i 、、 ヽ
i | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ |
| i 、ヽ_ヽ、_i , / `__,;―'彡-i |
i ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' / .|
iイ | |' ;'(( ,;/ '~ ゛  ̄`;)" c ミ i.
.i i.| ' ,|| i| ._ _-i ||:i | r-、 ヽ、 / / / ̄7l l ― / / ̄7l l _|_
丿 `| (( _゛_i__`' (( ; ノ// i |ヽi. _/| _/| \/ ― / \/ | ―――
/ i || i` - -、` i ノノ 'i /ヽ | ヽ | | / _/ / 丿
'ノ .. i )) '--、_`7 (( , 'i ノノ ヽ
ノ Y `-- " )) ノ ""i ヽ
ノヽ、 ノノ _/ i \
/ヽ ヽヽ、___,;//--'";;" ,/ヽ、 ヾヽ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません