サシャ「いただきます」(19)
ー食堂ー
ワイワイガヤガヤ…
クリスタ「サシャ、なあに?それ」
サシャ「え?なんのことですか?」
ユミル「ソレだよソレ。メシ食う前に手ぇ合わせて、いただきますってやつ」
サシャ「ああ、これですか」
サシャ「これは、私の村に古くから伝わるしきたりみたいなものです」
クリスタ「しきたり?」
ユミル「メシ食うときまでそんなのがあんのか。面倒くせぇ村だな」
サシャ「何を言うんですか!」
サシャ「これはとっても大事な事なんですよ!」
ユミル「何がどう大事だって言うんだよ」
クリスタ「私も気になる!それ、どういう意味があるの?」
サシャ「しょうがないですねぇ~、特別に教えてあげましょう」フーッ
サシャ「これは、食べ物への感謝の言葉なんです」
クリスタ「食べ物への…」
ユミル「感謝ァ?」
サシャ「そのとおり!」
サシャ「私たち人類は、食べなきゃ生きていけません」
サシャ「つまり、他の生き物の命をもらって、生きているわけです」
サシャ「だから、自分の命を差し出してくれた生き物たちに、」
サシャ「『ありがとう、いただきます』」
サシャ「と感謝の心を表すんです」
クリスタ「へー、食べ物への…感謝かぁ…」
ユミル「…ハッ、アホらしい」
サシャ「アホらしいとはなんですか!」
クリスタ「そうだよユミル!謝りなよ!」
ユミル「だってよぉ、もうこいつらは死んでるんだぜ?」
ユミル「今更どうのこうの言っても、生き返るわけでもなし」
ユミル「それに、家畜とか穀物なんかは、開拓地で人間が育ててんだろ?」
ユミル「いわば、最初から食われるために産まれたようなもんじゃねぇか」
ユミル「なにより、こんなマズいメシ、感謝なんざできないね」
サシャ「………」
クリスタ「ユミル!言い過ぎだよ!」
ユミル「ホントのことを言ったまでだろ」
サシャ「…ユミルは巨人ですね」
ユミル「ッ!?」
クリスタ「サシャ、何を…?」
サシャ「ただ自分の満足のために人間を食べる、そこら辺の巨人と同じだって言ったんです!」バンッ!
ユミル「!!」
サシャ「確かに家畜を育てるのは人間です!もとから食べるために育てるのも事実です!」
サシャ「でも、どんな形であれ、それは命じゃないですか!」
ユミル「……!」
サシャ「どんな命でも、理由なく殺すなんて、許されるはずがありません!」
サシャ「私たちが動物を狩り、作物を育てるのは、生きるためです」
サシャ「生きている限り、人は命を奪い続ける…」
サシャ「でも、生きていくために仕方の無いことで、」
サシャ「食べなきゃ私たちも死んでしまうんです」
ユミル「………」
サシャ「だからせめて、感謝の気持ちだけは、忘れちゃいけないんです」
サシャ「彼らに届くかは解りません。自己満足かもしれません」
サシャ「それでも、『ありがとう。あなたたちの分まで生きるから』って」
サシャ「感謝の気持ちだけは…忘れちゃダメなんです」
サシャ「…理由もなく他の命を奪って、遊びで食べるなんて…」
サシャ「そんなの…まるで巨人じゃないですか…」グスッ…
シーーーン………
サシャ「…あっ……」
サシャ「す、すみません!お騒がせして!」
サシャ「つ、つい熱くなってしまって!」
サシャ「ど、どうか、みんな食べてください!」
ユミル「サシャ」
パンッ
ユミル「いただきます」
サシャ「…!」
ユミル「…これで…あってるか?」
サシャ「ユミル……」
ユミル「…なんつーか…その……あれだ」
ユミル「…悪かったよ、アホらしいなんてバカにして…」
サシャ「ユミル…」
ユミル「それで…今更だけどさ…」
ユミル「これからはアタシも…言っていいか?」
ユミル「その…『いただきます』って…」
サシャ「ユミル……!」
パンッ
ライナー「いただきます」
ベルトルト「ら、ライナー?」
ライナー「何してんだベルトルト。今のサシャの話を聞いてなかったのか?」
ベルトルト「!…そうだね……!」
パンッ
ベルトルト「いただきます」
パンッ
エレン「いただきます!」
ミカサ「エレン」
エレン「何やってんだミカサ、アルミン!ほらお前らも!」
パンッ
アルミン「いただきます!」
ミカサ「いただきます」
オレタチモイオウゼ!
ワタシモ!ボクモ!
パンッ パンッ
イタダキマス!
イタダキマス!
サシャ「みんな…」
パンッ
クリスタ「いただきます」
サシャ「クリスタ…!」
クリスタ「ほら、サシャも食べよ?」
クリスタ「あったかいうちに食べないと、生き物たちに申し訳無いよ」
クリスタ「ね?」
サシャ「クリスタ…」グスッ
サシャ「はいっ!今日もいっぱい食べましょう!」
『いただきます!』
ーそれから、サシャの『いただきます』は、104期訓練兵全体に広まったー
ハンネス「今日は久しぶりの肉ですか!」
ピクシス「これハンネス、アレを忘れておるぞ」
ハンネス「おっとすみません…それじゃあ……」
パンッ
ハンネス「いただきます!」
ーまた、彼らが卒業後に配属された各兵団でもー
ペトラ「兵長!お食事の支度ができました!」
リヴァイ「よし、お前ら全員席について手を合わせろ」
パンッ
リヴァイ「いただきます」
ー『いただきます』は、瞬く間に浸透したー
ニック「さぁみなさん。壁と、今日の食事に感謝を込めて」
パンッ
ニック「いただきます」
ーその後、『いただきます』は瞬く間に壁内全体に広まりー
獣の巨人「ふーん、そういうのが流行ってるんだ」
獣の巨人「じゃあ…」
パンッ
獣の巨人「いただきます」
ーやがて、巨人が駆逐され、人類が新天地へと進出を始めても、『いただきます』の輪は、広がり続けたー
ーーーそれから、遥か遠い時が流れてーーー
サシャ母「サシャー!早く起きないと、学校遅刻するわよー!」
サシャ「はーい、今いきまーす!」
サシャ「おはよう!お父さん、お母さん!」
サシャ父「おう、もう朝ごはん出来とるぞ」
サシャ「イヤッホー!早速…!」
サシャ母「こーら、何か忘れてるでしょ?」
サシャ「あ、そうだった!」
パンッ
サシャ「いただきます」
おしまい
サシャと『いただきます』について考えてて、浮かんだまま書きました
以前は
サシャ「サシャえもん」
とか書いてました
別にサシャヲタな訳ではないんですが…
でも後期EDのパン食うサシャはかわいいです
ありがとうございました
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