サシャ「蒸かした小人です!」アリエッティ「駆逐してやる!」 (171)

ホミリー 「人間に見つかったらどうするの?」

アリエッティ 「見つからないもん!」

ホミリー 「外には危険な生き物がいっぱい居るのよ。お爺さんの一族には――」

クリスタ 「人間に食べられた人もいたんですよね」



人間に喰われてはいけない

それが床下の小人たちの掟だった



【ジャンル】

『借りぐらしのアリエッティ』と『進撃の巨人』のクロスオーバーSS
『借りぐらしのアリエッティ』は映画全編、『進撃の巨人』は原作11巻までのネタばれ有り

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380456097

シガンシナ区 河川敷

アルミン 「これ、お爺ちゃんが隠し持ってたんだ。外の世界のことが書かれてる本だよ!」

エレン 「外の世界の本だって!? それっていけないものなんだろ? 憲兵団に捕まっちまうぞ」

アルミン 「そんなこと言ってる場合じゃないんだ! この本によるとこの世界の大半は海っていう水で
     覆われているんだって! しかも、海は全部塩水なんだって!」

エレン 「塩だって! 嘘つけ! 塩なんて宝の山じゃないか! きっと商人が直ぐに取り尽くしちまうよ」

アルミン 「取り尽くせない程、海は広いんだ!」

エレン 「そんなこと有る訳……」

エレン (アルミンの奴、目が輝いている)

アルミン 「そしてその海にはね、仲間の魚を集めて津波を起こす女型の魚人が居るんだ」

エレン 「何だって? 外の世界にはそんな危ねえ奴がいるのか!?」

アルミン (それから僕達は外の世界について書かれた本のことを話し合った。人間が立ち入ると5分で
     肺が腐る森に棲む鎧の巨蟲、夜になるとヘラジカのような姿から変身する超大型巨神、外の世界は
     きっとこの壁の中の何倍も広く、誰も見たことのない世界が広がっている筈だった)

アルミン (しかし、その後僕らの前に現れたのは鎧の巨蟲や超大型巨神ではなく鎧の巨人と超大型巨人だった)

アルミン (これらの巨人にウォール・マリアを突破された人類は活動領域の3分の1と2割の人口を失い、
     今に至る)

アルミン (そして12歳になった僕は幼馴染のエレン、ミカサと共に訓練兵団に入団した)

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 アリエッティ寝室

クリスタ 「ここは……一体……」

クリスタ (私、ベッドに寝てる……)

クリスタ (確か……蜂に追いかけられて逃げる途中で崖から落ちて……それから記憶が無い)

クリスタ (誰かに運ばれてここまで来た?)

ガチャ、キイィ

クリスタ (誰か部屋に入ってくる!?)

アリエッティ 「!」

アリエッティ 「お父さん、お母さん、この子目覚ましたよ!」

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 アリエッティ寝室

クリスタ 「ここは……一体……」

クリスタ (私、ベッドに寝てる……)

クリスタ (確か……蜂に追いかけられて逃げる途中で崖から落ちて……それから記憶が無い)

クリスタ (誰かに運ばれてここまで来た?)

ガチャ、キイィ

クリスタ (誰か部屋に入ってくる!?)

アリエッティ 「!」

アリエッティ 「お父さん、お母さん、この子目覚ましたよ!」

この世界には巨人と人類と小人がいるってこと?

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 リビング

ホミリー 「はい、どうぞ」

クリスタ 「頂きます」

クリスタ 「美味しい! このハーブティー……」

ホミリー 「そう? 良かった」

ポッド 「どこか痛いところは無いかい」

クリスタ 「体のあちこちが痛いですが、それほどでは……」

ポッド 「傷が癒えるまでここに居ればいい」

クリスタ 「あの……」

ポッド 「何だい?」

クリスタ 「皆さん、改めて……助けて頂き、本当に有難う御座いました。クリスタ・レンズと申します」

ホミリー 「そんなにかしこまらなくていいのよ。それに大怪我でなくて良かったわ」

ポッド 「そうだ、早速ですまないが君の仲間の居場所を教えてくれ。連絡しないと家の人も心配するだろう」

クリスタ 「私……帰るところがないんです」

ホミリー 「その……ご家族のこと聞いていいかしら?」

クリスタ 「両親は先日……蛇に食べられて……」

ホミリー 「蛇ィ!」

アリエッティ 「お母さん! 変な声出さないで」

クリスタ 「私にはもう、帰る場所が無いんです……」

クリスタ 「お願いします。洗濯でも掃除でも何でもやります。ここに置いてもらえないでしょうか!?」

1です

3と4が重複書き込みになりました。失礼。

>>5
そうです

クリスタは小人なのか

ポッド 「クリスタ、私達の家で暮らそう。辛いことが沢山あった……君には十分な休養が必要だ」

ホミリー 「この辺りの小人っててっきり私達とスピラーぐらいかと思ってたから歓迎するわ。
     これから賑やかになるわね」

アリエッティ 「私、アリエッティ。これからよろしくねクリスタ」

クリスタ 「よ、よろしくお願いします」

アリエッティ 「そんなに固くならないで、ね」

ホミリー (そういえば最近スピラー見ないわね)

1です

>>8
そうです

トロスト区 訓練兵団 練兵場

キース 「只今より、104期訓練兵団入団式を行う! 私が運悪く貴様らの監督をすることとなった
     キース・シャーディスだ!」

サシャ ムシャ、モグモグ

キース 「おい貴様、何を持っている?」

サシャ ムシャ、モグモグ

キース 「貴様だ! 貴様に言っているんだ!何者なんだ貴様は!?」

サシャ 「んぐっ!」

サシャ 「ウォールローゼ南区、ダウパー村出身、サシャ・ブラウスです」

キース 「サシャ・ブラウス、貴様が右手に持っているものは何だ?」

サシャ 「蒸かした小人です!」

サシャ 「調理場に丁度頃合の者が居たのでつい……」

キース 「小人だと……」

キース (小人……私も子供の時分に見たことがある……)

キース回想

私はあの年の夏、母の育った古い屋敷で一週間だけ過ごした

そこで私は、母の言っていた小人の少女に出会った

キース(少年時代) 「怖がらないで」

小人の女の子 「!」

キース(少年時代) 「庭で君を見たんだ」



回想終り

キース (結局あの小人の女の子は引っ越した……思えば、多分あれが初恋だった)

キース (ホミリー、君は今もどこかで元気に借りぐらしをしているのだろうか……。ハッ!
    私としたことがつい昔のことを。年は取りたくないものだ)

キース (そうだ、こいつを問い詰めていたのだ)

キース 「貴様……何故だ。何故今小人を食べだした」

サシャ 「冷めてしまっては元も子も無いので、今食べるべきだと判断しました」

キース 「いや、分からないな……何故貴様は小人を食べた?」

キース (あんな可憐な生き物を食うだと……信じられん)

サシャ 「それは、何故人は小人を食べるかという話でしょうか?」

キース 「……」

サシャ 「チッ」

ブチブチブチッ

サシャ 「半身、どうぞ」

キース 「半身……」

キース (小さいけどモロに人の形してる!)

キース 「ウゲエェェェェェェェェェ!」

マルコ 「教官が吐いたぞ!」

ライナー 「こいつは酷ぇ……」

トロスト区 訓練兵団 練兵場

タッタッタッタッタッタッ

サシャ 「ハヒッ、ハヒッ、ハヒッ」

コニー 「おい、あの小人女まだ走らされているぞ」

エレン 「凄いなあ、五時間ぶっ通しか。でも、吐くまで走れと言われた時より飯抜きだと言われた瞬間の方が
    悲壮な顔してたな」

コニー 「ダウパー村って確か山奥にある少数民族の狩猟民の村だよな。小人を喰う習慣があるって聞いてたが
    マジだったんだ……」

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 リビング

アリエッティ 「お母さんのクッキー美味しいね、クリスタ」

クリスタ 「うん」

クリスタ (思えばここの生活も長い……。小人になった私に生まれた大切な家族……)

ホミリー 「でもそれが最後のクッキーよ。お砂糖がもう無いの。お砂糖があれば美味しい紫蘇ジュースが
     出来るんだけど」

アリエッティ 「今夜待ってて、私が借りてくる。もう借りも慣れたわ」

ガチャ、キイィ

アリエッティ 「あ、お父さんだわ。お帰りなさい」

クリスタ 「お帰りなさい、おじさん」

ポッド 「ああ」

アリエッティ 「お父さん、今夜また一緒に借りに行く約束よね。お父さん、私今夜のことずっと
       楽しみにしていたの」

ポッド 「ああ、アリエッティももう14才になった。これからもっと借りを覚えていかないとな」

アリエッティ 「ありがとう、お父さん!」

ホミリー 「気をつけて。慣れてきたからって気を抜いては駄目よ」

アリエッティ 「大丈夫よ、お母さん」

クリスタ 「あの、私も連れて行って貰えないでしょうか?」

ポッド 「クリスタとは前回一緒に借りに行った。今夜はお留守番しなさい」

クリスタ 「はい」

アリエッティ 「クリスタ、帰ってきたら今日の借りの話聞かせてあげるね」

ホミリー (アリエッティったら同じ年頃の娘とお話出来るのが嬉しくてしょうがないのね)

トロスト区 訓練兵団 女子寮 寝室

サシャ 「ただいま」

ユミル 「サシャ、もう直ぐ消灯だぞ……って何旨そうな物食ってんだ?」

ユミル (串に刺した肉か、いい匂いがする)

サシャ 「あげませんよ」

ユミル 「ほう、どうせ食料庫から盗んできたんだろ? 教官にチクッてもいいんだぜ」

サシャ 「いいえ、この肉は狩りで得た物です」

ミーナ 「狩り? 外出許可が出たの?」

サシャ 「いいえ?」

ミーナ 「じゃあ、この訓練兵団の施設内で捕まえたってこと?」

サシャ 「そうです」

ユミル 「ということは雀か何かか?」 

サシャ 「鳥ではないです」

ユミル 「ということはまさか犬や猫か?」

サシャ 「私、犬猫は食べませんよ」

ユミル 「じゃあ何だ?」

サシャ 「何だと思います?」

ユミル 「分からないから聞いてるんだろ」

ミーナ 「ヒントを頂戴」

サシャ 「そうですねえ、……捕まえたのは調理場です」

ユミル 「調理場って……お前やっぱり盗んだんだろ?」

サシャ 「盗んでませんよ。ほら干し肉にみえますか、これが?」

ミーナ 「もういいわ……」

サシャ 「どうしたんですか?」

ミーナ 「調理場で捕まえた肉って……まさか……あの……チューチュー鳴く……」

サシャ 「どんな病気持ってるか分からないのにネズミ食べる訳ないじゃないですか」

サシャ 「二人とも私をどんな悪食と思ってるんですか」

サシャ 「では特別にもう一つヒント。半身あげます」

サシャ 「元々あげないつもりでしたが、今日の私は気分がいいので大サービスです」

ブチブチブチッ

サシャ 「はい、これを二人で分けて下さい」

ユミル 「これ半身じゃねえだろ」

ユミル (足1本を半身とは言わんぞ)

ユミル 「まあでもサシャにしては太っ腹だ。ほら半分こ、ミーナ」

ミーナ 「ありがとう、サシャ」

ミーナ (何だろう、牛や豚、鳥とも違う。でも美味しい……)

ユミル (久しぶりの肉なのは有難いが……まさかこの味……)

サシャ 「まだ分からないですか?」

ユミル 「なんかムカつくね、その言い方」

サシャ 「それでは大ヒント。この串に刺した姿焼きをよく見てください。これで何なのか見当付く筈です」

ユミル 「大きさでいうと蛙か……」

ミーナ 「何というか……手足が人間っぽいね……これ……まさか……」

サシャ 「気づいたようですねミーナ。正解は……」

サシャ 「小人の肉です」

ミーナ 「小人……?」

サシャ 「ええ、食料庫に適当な物が居たのでつい……」

ミーナ 「ウェッ……プ、ウゲエェェェェ!」

サシャ 「ミーナ! 大丈夫ですか!?」

ユミル 「バカ、お前のせいだろうが!」

サシャ 「えっ?」

ユミル 「お前が小人の肉なんて食わせるから」

サシャ 「ごめんなさい、ミーナって小人アレルギーだったんですね」

ユミル 「そういう問題じゃねぇ」

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 ホミリー寝室

ホミリー 「ごめんねアリエッティ、クリスタ……。家事を全部任せてしまって」

アリエッティ 「気にしないで、お母さん。今は休んで早く元気になって」

クリスタ 「家のことはアリエッティと私でやりますから」

ホミリー 「アリエッティだって辛いだろうに……母親失格だね……ウッ、ウウウウッ」

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下の換気口(アリエッティ一家の物干し場)

アリエッティ (お父さんが人間に殺されて、お母さんは心労から寝込んでしまった。
       私がしっかりしないと……でも……私だって……)

アリエッティ 「グスッ……エグッ……お父さん……ヒック……」

クリスタ (アリエッティ……)

アリエッティ (昨日、お父さんは……)

アリエッティ回想

トロスト区 訓練兵団 食料庫

ポッド 「この時間に人間は来ないとは思うが油断するな、アリエッティ」

アリエッティ 「うん」

ポッド 「ここの食料も数年前はもっと品目が多かったのだが」

アリエッティ 「お母さんも最近芋料理ばかりになるって文句言ってた」

ポッド 「例え芋ばかりでも我々は人間に生かして貰ってるからな。あまり文句は言えん」

アリエッティ 「共存する為にはあまり人間のことを悪く思っちゃいけないってこと?」

ポッド 「共存とは違う。人間にとって小人がここに住んでるメリットは無い。それに……」

アリエッティ 「それに?」

ポッド 「人間は危険だ。だからこうして夜に借りを行う」

ポッド 「人間にも色々種類がある。まず通常種。これは私達人間を見ると驚き、
    次に捕まえようとするか殺そうとする」

アリエッティ 「殺そうとして来るのが通常?」

ポッド 「ああ、借りぐらししているところを見つかれば殺されることもある。
    多くの人間にとって食料等を持っていかれるのは癪に障ることだ。
    仮に殺す意志が無くても、彼らの多くにとって小人は珍しいから捕まえようとする」

アリエッティ (お母さんが人間を怖がるのも分かる気がする)

ポッド 「それから奇行種。これは小人を食べようとする」

アリエッティ 「食べるって……頭から齧り付くの?」

ポッド 「いいや、連中も知性があるから調理する。蒸かしてからタレにつけたり
    挽肉にしてハンバーグにしたりするそうだ」

アリエッティ 「非道い……。でもちゃんと料理するんだ。もし悪い人間が来たらこの剣で戦うわ」

ポッド 「お前の初めての借りでの戦利品だな。しかしマチ針の剣では人間の指に怪我をさせるのがやっとだ。
    借りの基本はいかに人間と出会わないかだ。忘れるな」

アリエッティ 「うん。それじゃお芋取ってくるね」

ポッド 「無理してあまり大きなのを取らないように」

アリエッティ 「分かってるよ、お父さん」

アリエッティ (芋の入った袋まで辿り着いた。手頃な大きさの芋……あった!)

アリエッティ (これを袋に入れて……よし。あとは下まで降りるだけ)

アリエッティ (んしょ、んしょ、地面まであと少し……)

キイィィ

ポッド (ドアが開く! この時間帯で? ありえない!?)

ポッド (このままだと見つかる!)

ポッド 「アリエッティ、明かり消すぞ」

カチッ

アリエッティ (わっ! 急に暗く!)

ポッド 「アリエッティ、動くな」

アリエッティ 「うん……」 

アリエッティ (どうしよう、見つかったら……)

ポッド (アリエッティがまだ床まで降りてない、このままでは身動きが取れん……)

サシャ (今夜も食料庫へ侵入成功、早速食料を調達する)

サシャ (まずはランタンの覆いをとって……眩しっ!)

アリエッティ 「キャッ」

サシャ 「……今、声が……」

アリエッティ (いきなり明るくなったから声出しちゃった。見つかりませんように、見つかりませんように!)

サシャ 「……誰もおらんね」

サシャ 「まずは芋から探そうか」

アリエッティ (そんな……こっちに来る……)

ポッド (駄目だ、このままでは見つかる)

ポッド 「アリエッティ、飛び降りろ」

アリエッティ 「えっ?」

アリエッティ (飛び降りられない高さじゃないけど……)

ポッド 「このままでは直ぐに見つかる。早く!」

アリエッティ (ええい、ままよ!)

スタッ

アリエッティ (着地出来た)

サシャ (何か居る!)

ポッド 「大丈夫かアリエッティ?」

アリエッティ 「うん」

ポッド 「逃げるぞ」

1です
風呂入ってきます

30分位したら続き書きます

サシャ (小人だ!)

ポッド (人間め、追って来る!)

アリエッティ (気づかれてる!?)

サシャ 「怖がらないで」

アリエッティ 「!」

サシャ 「食べたり、しないから……ジュルリ」

ポッド (我々を見て『食べる』という言葉が出てきた。ということは!)

ポッド 「奇行種だ、戸棚の裏に逃げろ!」

アリエッティ 「ハァ、ハァ、ハァ」

ポッド (何と戸棚の裏に逃げ込んだが……)

サシャ 「逃がしませんよ。訓練兵団に入って2度目の小人料理です」

アリエッティ 「怖い……お父さん!」

ポッド 「大丈夫だ、アリエッティ」

ポッド 「戸棚の裏を通り抜けて、その先を壁沿いに走れば小麦の袋が大量に積んであるところがある。
    そこの壁の穴が空いたところが食料庫の出入り口だ」

ポッド 「そこまで逃げ切れれば助かる」

サシャ (戸棚の裏と壁の隙間に逃げられてしまった。厄介だ)

サシャ (下手に隙間に手を突っ込んでも噛まれたら嫌だし……燻り出そうか)

サシャ (こんな感じか。戸棚と壁の隙間にお尻をつけて……)

ブボォッ!

アリエッティ 「ウッ! 臭いッ、何、この臭い……」

ポッド 「く、臭い……人間め……」

アリエッティ 「ここから出よう、お父さん……」

ポッド 「臭いの強い方に逃げるんだ」

アリエッティ (何を言っているのお父さん……)

ポッド 「恐らく人間は放屁したのと反対側の出口で待ち構えている筈だ」

アリエッティ 「ウッ……もう駄目!」

ポッド 「待てアリエッティ! 罠だ!」

アリエッティ 「プハァ! 非道い目に……!」

ガシッ

アリエッティ 「キャアアアアアアアアッ!」

サシャ (こちらの策略に気づかないなんて、この小人あまり賢くない)

サシャ 「捕まえ、痛っ!」

アリエッティ (私を放した!? そうか。腰に差してたマチ針が人間の指に刺さったんだ!)

ポッド 「大丈夫か」

アリエッティ 「うん!」

ポッド 「逃げるぞ!」





サシャ 「待たんかい!」

ポッド 「アリエッティ、先に飛び込め!」

アリエッティ 「うん!」

アリエッティ (穴に逃げ込めた! お父さんも早く来て!)

サシャ 「逃がすかああぁ!」

ポッド (手で穴を塞がれた! クッ、捕まってたまるか!)

ガシッ

サシャ (捕まえた!)

ポッド 「うわッ! 放せええぇ!」

アリエッティ 「お父さん!」

サシャ 「穴に逃げたもう一匹も出てきて下さい。でないとこの小人を殺しますよ」

ポッド 「アリエッティ、来ちゃ駄目だ! この人間はお父さん達二人とも食い殺す気だ!」

ポッド (あと少しで私も穴に逃げ込めたのに……間に合わなかった……)

アリエッティ (このままじゃ……お父さんが……)

サシャ 「……もういいです。この小人を食べます」

アリエッティ 「待って!」

ポッド 「駄目だ、来るな! アリエッティ!」

サシャ 「出て来ましたね」

アリエッティ (改めて見ると人間って大きい……。こんなのに勝てる訳無い……)

ポッド 「行け! アリエッティ!」

アリエッティ (お父さん!)

ポッド 「生きろ!」

サシャ 「そのままじっとしてて下さい……それともそのマチ針で私と勝負する気ですか?」

ポッド 「娘には手を出すなあああぁ!」

ガブリ!

サシャ 「痛い痛い痛い!」

ポッド (早く逃げろ……アリエッティ!)

サシャ 「この小人風情が!」

グイッ ゴキッ!

アリエッティ (人間がお父さんの首を!)

ポッド プラーン

サシャ (もっと早く絞めれば良かった)

アリエッティ 「イヤアアアアアッ!」

サシャ (痛い……指に歯形が……血が滲んでる)

サシャ (こんな小っこい生き物相手に怪我してたら狩猟民族の名が泣く、私もまだまだ未熟だ)

サシャ (もう一匹は……逃げられたか。残念)

サシャ (この前の弓矢持った小人は蒸し小人にしたから……今日は串焼きにしようか)

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下に通じる壁の隙間(小人の移動通路)

アリエッティ (お父さん……私だけ……助かって……) 

アリエッティ 「ウ、ウ、……ウワアアアン!」



その日、小人は思い出した。人類に支配されていた恐怖を。

借りぐらししていた屈辱を。





回想終り

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下の換気口(アリエッティ一家の物干し場)

アリエッティ (家族皆での楽しかった頃には二度と戻れない。お父さんはいない、どこにもいない)

アリエッティ (どうしてこんな目に……小人が弱いから? 弱い者は泣き喚くしかないのか!?)

クリスタ (アリエッティ、凄く怖い顔してる……)

アリエッティ 「駆逐してやる、人間共を!……一匹……残らず!」

クリスタ 「駄目! 駄目よ、アリエッティ!」

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました
今後、少なくとも1週間以内での更新を目指します

いやこれ普通にディスってるレベルだと思うんだけど…

サシャsageに見えるってこと?
でも小人を獲物として狩るのが当然という風に育った場合
サシャの行動は納得できるし
今のところ必要以上にサシャを貶める描写はないと思う

小人を食うこと自体が非人道的とかグロとかに見えるかもしれんが
そこらは文化の違いって気がするんだよなあ

数日後

トロスト区 訓練兵団 女子寮 寝室

アリエッティ (クリスタなんてもう知らない……)

アリエッティ (私は一人で狩りをする)

アリエッティ回想

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下の換気口(アリエッティ一家の物干し場)

クリスタ 「80万」

アリエッティ 「80万?」

クリスタ 「ええ、人間の数よ」

アリエッティ (そんなに沢山!)

クリスタ 「アリエッティが、いえ全ての小人が力を合わせても人間の駆逐なんて出来ない」

クリスタ 「それに人間が滅びたら借りる相手が居なくなる」

クリスタ 「私達小人は自力で食料を得るにはあまりに非力だわ。背丈より遥かに大きな小麦や
     トウモロコシや芋を育てたり、牛や豚を飼育したりといったことは出来ないよ」

アリエッティ 「だからって泣き寝入りしろって言うの!?」

クリスタ 「私はアリエッティに生きて欲しいの。人間と戦えばいつか死ぬわ」



回想終り

アリエッティ (奴らの寝室に忍び込んだ。人間の活動が鈍くなる夜に仕掛ける)

アリエッティ (今腰に差しているマチ針の剣では人間に対し致命傷は無理。これは予備武器で使えばいい)

アリエッティ (お父さんが昔言っていた。ただ大きいだけで人間の構造は私達小人と同じらしいと。
       ならばさっき借りてきたこれを使えば……)

それは 剣というには
あまりにも大きすぎた
大きく、ぶ厚く、重く
そして大雑把すぎた
それはまさに鉄塊だった



剃刀(重量22g)

アニ 「スゥ、スゥ」

アリエッティ (これから殺されるとも知らずにのん気に眠っている。いくら人間でも頚動脈を切れば死ぬ筈)

アリエッティ (これで終り)

ザシュッ!

アニ (痛ッ! 何かチクッって……)

アニ (首の辺りが生暖かい……何か濡れてる……これ……血の臭い……)

アニ (あれ、意識が……何だか眠くなっちゃった……)

アニ (……)

アリエッティ (やった! 討伐数1!)

トロスト区 訓練兵団 女子寮 寝室

ハンナ 「アニ……」

ユミル 「成績優秀なあんたでも悩みがあったのかい? 自殺する位なら兵士諦めて開拓地に行けば
    良かったろうに」

ミーナ 「朝起きたら枕元にカミソリが落ちてて……そんなに辛かったなら相談すればいいじゃない……」

トロスト区 訓練兵団 体育館裏

ライナー 「ベルトルト、アニのことなんだが」

ベルトルト 「……うん」

ライナー 「俺はアニが自殺したとは思えん」

ベルトルト 「僕も同じだよ。ただ、仮にアニが殺されたのなら、僕らのことを知っている人間がここに
      いるかもしれない」

ライナー 「ああ、その点が不可解だ。シガンシナが陥落したあの日、壁外でのアニの姿を見た奴は居ない筈だ。
     俺達が実はあの日誰かに見られていて襲われるのならまだ分かるが。いずれにせよ警戒した方がいい」

ベルトルト 「うん。……死んだアニの為にも僕らは戦士としての務めを全うしよう」

ライナー 「そうだな、あの世に逝ったあいつに笑われないようにしないとな」

ベルトルト (……アニ、君の敵は必ず……)

トロスト区 訓練兵団 教官室

眼鏡の教官 「キース教官」

キース 「どうした?」

眼鏡の教官 「この前剃刀を無くしたとおっしゃってましたね」

キース 「ああ」

眼鏡の教官 「ひょっとしてこれですか?」

キース 「おお、それだ! 特注品だから無くなって困ってたところだ。剃刀としては随分値が張るが、
    頭剃る時にこれがまた使い勝手が良くてな」

キース 「ありがとう、使い慣れてるから重宝してて……おい、冗談はよせ。渡さんか」

眼鏡の教官 「これはお渡し出来ません。この剃刀はレオンハート訓練兵が自殺時に使用した物です」

キース 「!」

眼鏡の教官 「キース教官、なぜレオンハート訓練兵が貴方の剃刀を使って自殺したのか?
      詳しく話を聞かせて頂きたいですな」

キース 「……私を疑っているのか? たまたま同じ物を使用していたかもしれないだろう?」

眼鏡の教官 「特注品と先ほど自分で言いましたよね?」

キース 「……待て、これは何かの陰謀だ! 私を嵌めた人間が居る筈だ!」

眼鏡の教官 「その辺りも含めて話を聞かせてもらいましょう」

アリエッティ (計画通り)

アリエッティ (仮にこの人間が後に無実と分かったとしても、一度生まれた溝の修復は容易では無い筈)

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました

>>49
1はサシャのこと嫌ってません。むしろ進撃の巨人のキャラで好きな方です

>>50
そう! それを言いたかったんです

トロスト区 訓練兵団 男子寮

エレン 「何でだよ……ライナーの奴……」

ベルトルト 「こんなのおかしいだろ! 誰がやったんだ!」

トーマス 「落ち着け、事故かもしれんだろ?」

ベルトルト 「事故だって……本気で言ってるのか?」

ベルトルト 「ライナーが立体起動装置の整備を怠る訳ないだろ? 誰かが装置に細工したんだ!
      でないとライナーが死ぬ訳が……」

アルミン (ベルトルトの言う通りだ。立体起動の訓練中に装置が動かなくなったライナーが激突死なんて
     普通なら考えられない)

ベルトルト 「ライナーとアニを殺った奴出て来い! この悪魔の末裔が! 根絶やしにしてやる!」

アルミン (こんなに取り乱したベルトルト、初めて見た)

ベルトルト (ライナー、普段の君なら訓練中に装置の不具合があっても簡単に死んだりしなかったろう。
      仲間思いの君はきっとアニの死が心に引っかかってたんだ)

アリエッティ (争え、争え、人間共)

アリエッティ (これで2匹目!)

アリエッティ (これからどんどん人間を狩ろう!)

アリエッティ (お父さん、狩りって楽しいね!)

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下に通じる壁の隙間(小人の移動通路)

クリスタ (この前、人間と戦おうとするアリエッティを諌めて以来、私達の関係はギクシャクしている。
     現に今、こうして別々に借りをしている)

クリスタ (ポッドおじさんが人間に喰われたことは私も悲しいし、アリエッティやホミリーおばさんの気持ちを
     考えると胸が張り裂けそう)

クリスタ (それでも私はアリエッティに生きて欲しい。人間と戦えばいつかアリエッティは命を落とす)



キャアアアア!



クリスタ (食料庫の方から声が! あの声はアリエッティ!)

トロスト区 訓練兵団 食料庫

アリエッティ 「クッ……」

サシャ 「今月は運がいいですね。また小人を捕獲出来るなんて」

サシャ 「どうしましょう。こんがり焼いた後薄くスライスして、パンに挟んで……ウヘ、ヘヘヘ」

アリエッティ 「人間め、お父さんを返せ! お父さんを殺した罪をお前の命で贖って貰う」

サシャ 「私に罪はありません」

アリエッティ 「なっ!?」

サシャ 「私は狩猟民族の人間として獲物を狩った。たまたま獲物があなたのお父さんだっただけで
    私の獲物は私が好きにさせて貰います」

アリエッティ 「そう、それがあなたの答えなの……」

サシャ 「私の故郷には小人を食べる習慣があります。獲物である小人に対する知識もあります」

サシャ 「あなた達は人間の物を盗む習慣がある」

アリエッティ 「盗んでるんじゃない! 借りぐらしよ!」

サシャ 「借りても返さなければ泥棒と一緒です!」

アリエッティ 「!」

サシャ 「あなただって肉を食べたことはあるでしょう。その肉はどうやって手に入れたのですか?
    牛や豚や鶏の肉を?」

アリエッティ 「……」

サシャ 「私は子供の頃から狩りをしてきて、肉を食べるイコール生き物の命を奪うことだと体感してます。
    知識として知っているだけでなく経験してるんです。狐や兎を撃って、死体の毛皮を剥いで、肉を捌いて。
    犠牲になった生き物達に自分が出来ることは感謝して残さず美味しく頂くことぐらい」

サシャ 「農作物だって開拓地の人々が汗水流して働いて作っているんです」

サシャ 「あなた達小人は自らの手を汚さずに食料を手に入れている。あなた達に人間を非難する資格は
    ありません」

アリエッティ 「確かにそうかもしれない。でも……それでも……」

アリエッティ 「私達家族は、殺されなきゃいけない程、罪深くは無かった筈よ!」

アリエッティ (私は現実から目を逸らしていた)

アリエッティ (でも、お父さんが死んだ時)

アリエッティ (自らの手で人間を殺した時)

アリエッティ (もう気付いていたんだ)

アリエッティ (世界は残酷なんだって)

クリスタ 「待って!」

アリエッティ 「クリスタ! どうしてここに? 来ちゃ駄目!」

サシャ (もう一匹来た!)

クリスタ 「アリエッティを解放して! 私が代わりに捕まるから」

アリエッティ 「何を言っているのクリスタ! 早く逃げて!」

サシャ 「こっちの小人も美味しそうですねえ……グヘヘヘ」

アリエッティ 「人間、こっちを向いて」

サシャ 「サシャです」

アリエッティ 「サシャ……私は人を殺した」

サシャ 「!?」

アリエッティ 「だから私を殺して! クリスタには手を出さないで!」

サシャ 「……小人が人間を殺せる訳無いでしょう」

アリエッティ 「本当よ! 信じて!」

サシャ 「……」

アリエッティ 「どうしたの?」

サシャ 「貴方達姉妹ですか? 見た目が似てないですが」

アリエッティ 「血はつながってないけど、私達は姉妹同然に暮らしてきた」

クリスタ 「アリエッティは私の家族なの。お願い、助けて!」

サシャ 「……羨ましいです」

アリエッティ 「え?」

クリスタ 「え?」

サシャ 「私は訓練兵団で孤立してたから」

サシャ 「私なんてまともな人間になるまでは帰ってくるなって言われて村を出て、それっきり故郷に
    帰ってません」

アリエッティ 「じゃあ今だにまともじゃないってことね」

サシャ 「うるさい!」

クリスタ 「プッ、クスクス」

サシャ 「ここに来てからも初日に小人を食べてたら小人女とか言われて」

アリエッティ 「それがお父さんだったの?」

サシャ 「いいえ、初日に捕まえた小人は弓矢を持った少年でした」 

アリエッティ (そんな……スピナーまで……)

サシャ 「信じられないですよ。村では普通に小人食べてたのにここでは野蛮人扱いです。
    教官の覚えまで悪くなったのもあって、口を聞いてくれる人も殆どいませんでした」

サシャ 「相手してくれるユミルにはこき使われるし小人でも食べないとやってられないですよ」

クリスタ 「食べるなら私を食べて!」

アリエッティ 「いいえ、私を!」

クリスタ 「駄目ッ!」

アリエッティ 「どうして!?」

クリスタ 「アリエッティが死んだら、残されたホミリーおばさんはどうするの!」

アリエッティ 「それは……」

クリスタ 「ホミリーおばさんは私たちを分け隔てなく育ててくれた。それでも実の娘のあなたに家に帰って
     来て欲しい筈よ。」

アリエッティ 「お母さんを……一人に……ウワアアアン!」

クリスタ 「サシャって言ったわね」

サシャ 「ええ」

クリスタ 「アリエッティはホミリーおばさんを独り残して逝けない。どちらが喰われるかこれで結論が出た」

サシャ 「ええ、食べるのはあなたにします。あなたの勇気と家族愛に敬意を表しますよ」

ちょっと間隔空いたが今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました

アリエッティ 「ごめんなさい、グスッ……ごめんなさい、クリスタ」

クリスタ 「いいの。おばさんに伝えて。今まで有難う。愛してますって」

アリエッティ 「……うん」

サシャ 「それでは……ええと」

クリスタ 「クリスタよ」

サシャ 「クリスタ、まずはアリエッティと一緒の瓶に入って貰います。それから服を脱いで下さい。
    布は食べたくないので」

クリスタ 「……分かったわ」

サシャ 「どう調理しましょう?」

クリスタ 「あの……出来れば、生きたまま丸呑みがいいです」

サシャ 「うーん、生肉を食べるのは一寸……」

サシャ 「やっぱりお肉って、油引いた鉄板の上でジュージュー焼いたり――」

アリエッティ 「やめて、聞きたくない!」

サシャ 「さっきから泣き過ぎですよ。可愛いお顔が台無しです」

アリエッティ 「ヒック……せめて、……クリスタの最期のお願い……聞いてあげて……」

サシャ 「うーん、そうですねえ……そうだ! 一寸、瓶に蓋をしますよ」

アリエッティ (逃げ出す隙はないか……)

クリスタ (閉じ込められた)

サシャ 「ここに隠してる筈……」

アリエッティ 「ごめんなさい、クリスタ」

クリスタ 「……」

アリエッティ 「私ね、初めて人間を殺した時、寝てるところを剃刀で頚動脈を斬って殺したの」

アリエッティ 「サシャもいつか同じように殺してやる。刺し違えてでも貴方とお父さんの敵を――」

クリスタ 「死ぬなアリエッティ! 何いい人ぶってだよ! 自分の為に生きろよ!」

アリエッティ 「クリスタ!?」

サシャ 「この辺と思ったけど……あった!」

サシャ 「寮に置いても隠す場所が無いのでここに置いてるんです」

サシャ 「ジャーン、蜂蜜です!」

サシャ 「折角の若い女の子ですからこういった食べ方もいいでしょう」

サシャ・ブラウスの三分間クッキング

「小人の蜂蜜漬け踊り食い」

材料(一人分)

・小人一人

・蜂蜜適量(出来れば瓶1本分)


(1)小人はあらかじめ服を脱がせ、体をぬるま湯で洗いましょう。水洗いすると小人のお腹が冷えますし
 お湯が熱すぎると小人が火傷したり、後で汗をかいたりします。湯加減に注意して下さい。

(2)小人に蜂蜜を塗ります。蜂蜜の入った瓶に小人を漬けるのが理想ですが、蜂蜜が少ない時は体に塗布して
 下さい。

(3)あとは小人の活きが良い内に口の中に小人を放り込みます。噛むと出血したり内臓が飛び出したりして
 口の中が臭くなります。一度も噛まずに飲み込みましょう。

サシャ 「ぬるま湯で行水させた後に蜂蜜の瓶に入れて全身蜂蜜まみれになった小人……」

クリスタ (体中蜂蜜でベトベトする)

サシャ 「裸の美少女がヌメヌメテラテラ光ってる。艶かしいですね。同期の男子共に見せたら鼻血ものです」

サシャ 「食べるのも勿体無い位綺麗ですよ、クリスタ」

クリスタ 「それはどうも……」

サシャ 「それではお食事タイムです」

クリスタ 「嫌……こ、来ないで……キャッ!」

サシャ 「捕まえました、それでは……」

クリスタ 「アリエッティ!」

アリエッティ 「クリスタ!」

コン、コン、コン!

アリエッティ (私が閉じ込められた瓶、いくら叩いても割れない!)

サシャ 「いただきます」

パクッ

アリエッティ 「クリスタアアァッ!」

サシャ (凄い! 口の中で蜂蜜が暴れてる!)

サシャ (何、この食感! 口中ツンツンしてる、こんなの初めて!)

サシャ (……段々動きが鈍くなってきた。疲れたのか?)

サシャ (一寸舌で捏ね繰り回したら……ヒャハハハ、また暴れ始めた!)

サシャ (ペロペロする度にビクンビクンする!)

アリエッティ 「ああ、クリスタ……」

サシャ (だいぶ蜂蜜が薄まってきた、そろそろ終りにするか)

サシャ (ここで口を少し開けたら……)

クリスタ 「プハァッ!」

アリエッティ 「クリスタ!」

アリエッティ (クリスタの頭が人間の口から出てきた!)

クリスタ 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……アリエッ……ティ……あなた……生きて……生きて……」

サシャ (これで終り)

ジュルルル

アリエッティ (クリスタが飲み込まれた!)

ゴクリ

アリエッティ (クリスタ!)

アリエッティ 「ウアアアアアアア!」

サシャ 「ご馳走様でした。クリスタとの約束通り貴方を逃がしましょう」

サシャ 「でももし次出会ったらその時は食べますよ」

アリエッティ (クリスタ……)

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下 アリエッティの家 リビング

ホミリー 「おかえり、アリエッティ」

アリエッティ 「ただいま……お母さん、起きて大丈夫なの」

ホミリー 「ええ、あなたもクリスタも頑張っているのにお母さんだけいつまでも寝てられないわ」

アリエッティ (お母さんは少しずつだけど立ち直ってきている。でももし今、クリスタのことを話したら……)

ホミリー 「そういえばクリスタに会わなかった? あの娘も借りに行ったのよ」

アリエッティ 「!」

ホミリー 「どうしたの、アリエッティ?」

グラグラグラグラッ!

アリエッティ 「地震!?」

ホミリー 「ヒイィィ!」

トロスト区 訓練兵団 女子寮更衣室

アリエッティ (あの大地震から数週間が過ぎた)

アリエッティ (クリスタのことは言い出せなかった。そのせいでお母さんは、クリスタがこの前の地震で
       行方不明になったと思い込んだ)

アリエッティ (本当のことを話してお母さんに人間の恐怖を思い出させてはいけない)

アリエッティ (許してクリスタ。あなたのことは絶対に忘れないから)

アリエッティ (今日の借りは石鹸を……人が来た!)

ハンナ 「キース教官が復職するらしいよ。その……アニの件での因果関係が分からずじまいだって」

ミーナ 「疑わしきは罰せずってことか」

ハンナ 「今、露骨に嫌な顔した」

ミーナ 「だって、鍛えてくれてるのは分かるけど教官凄くヘコむこと言うでしょ。以前立体起動の訓練で
    ミスしたら『飛べない豚はただの豚だ!』って怒鳴られたし、酷くない?」

ハンナ 「ミーナって入団式でも教官から『貴様は豚小屋出身、家畜以下だ!』って言われてたもんね」

ミーナ 「私は豚じゃないって! ただ入団式といえばサシャのインパクトには誰も勝てない」

ハンナ 「入団式の最中に小人食べるってありえないでしょ」

ミーナ 「入団式の最中じゃなくても普通小人食べないって。でもサシャって印象変わったよね」

ハンナ 「うん、元々可愛い方だったけど、今はホント綺麗になった。フランツの話では
    104期の男共からも人気ナンバー1だって。そこで私がフランツに『フランツも
    サシャみたいな子がタイプなの?』って聞いたらフランツがね――」

ミーナ 「ハーイハイハイ、のろけ話はそこまで」

ハンナ 「もう!」

ミーナ 「まあ、サシャって分け隔てなく皆に優しいからね。人気出るのは当然でしょ。ユミルなんて
    すっかりサシャにベッタリで『私の嫁だー!』なんて言ってるし」

ハンナ 「小人食べたら美人になれるのかな……だったら私も……」

ミーナ 「ちょっと、怖いこと言わないで」

アリエッティ (あの人間……どうしてあいつが!)

アリエッティ (家族を失って私とお母さんは悲しんでいるのに、あいつは、サシャは、他の大勢の人間から
       愛されているのか?)

アリエッティ (お父さん、クリスタ……私やっぱりあの人間が許せない!)

アリエッティ (サシャだけは駆逐してやる!)

アリエッティ (今度こそ失敗は許されない。まずは情報収集からだ)

トロスト区 訓練兵団 施設内廊下

ミカサ 「アルミン、サシャと普段どういう風に接してるの?」

アルミン 「どうって……図書館で一緒に本を読んだり、休みの日は一緒に買い物に行ったり」

ミカサ 「恋人として?」

アルミン 「うん。他にも自分が苦手な科目を教えて貰ってるよ。僕はサシャから馬術を習って
     逆にサシャは僕から座学を教わってる。お互い得意科目が違うから教え合うには丁度良いんだ」

ミカサ 「つまり相手より得意な科目を教えてあげれば親密になれるってこと?」

アルミン 「そうだね、苦手な科目を勉強したり練習したりってのは敬遠したくなるけど、なんていうか
     好きな人が教えてくれるなら頑張ろうって気持ちになれるんだ」

ミカサ 「そう……」

ミカサ (いいことを聞いた。私はあらゆる科目でエレン以上の成績を残している。私がエレンと親密になる
    機会は無限大だ)




アリエッティ (いいことを聞いた。愛する人を失う悲しみをサシャに味あわせてやる!)

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました

サシャ[ピーーー]肥貯め出身蛆いかの糞が!
クリスタを喰いやがって!!
その日、訓練所に鎧の巨人が現れ、サシャが四股を
切断され死んでいた
生きる希望もなくなったし(進撃しよ)

サシャ死ね肥貯め出身蛆いかの糞が!
クリスタを喰いやがって!!
その日、訓練所に鎧の巨人が現れ、サシャが四股を
切断され死んでいた
生きる希望もなくなったし(進撃しよ)

トロスト区 訓練兵団 厩舎

ミカサ 「エレン」

エレン 「ミカサ、アルミンのことか?」

ミカサ 「ええ。さっきアルミンの馬具を調べたら皮具に切り込みが入れられていた。あれは人為的なもの」

エレン 「!」

エレン 「さっきのアルミンの落馬は事故じゃなかったってことか? そりゃサシャが好きな男子は多いけど
    アルミンは決して人に怨まれる奴じゃないぞ」

ミカサ 「エレンは分かっていない」

エレン 「ハァ?」

ミカサ 「人は時として恋愛の為なら死にも殺しもする」

エレン 「物騒なこと言う」

ミカサ 「兎も角、アルミンが狙われていることに変わりは無い。私達でアルミンを守る。アルミンを
    傷つけた犯人は見つけ次第削ぐ」

エレン 「二、三発ぶん殴る位にしとけよ。捕まえた理由を教官に説明しなきゃいけないだろ。
    俺達とサシャの3交代でアルミンを守るぞ」

ミカサ 「分かった。サシャには後で私から説明する」

エレン 「サシャの奴、案外取り乱さなかったな」

ミカサ 「あの子は本当は強い。……今頃アルミンに付き添いながら自分を責めてる筈」

エレン 「アルミンも折角出来たばかりの彼女に心配かけやがって……。ところでさ、ミカサ?」

ミカサ 「何、エレン?」

エレン 「お前もそうなのか?」

ミカサ 「え?」

エレン 「さっき言ってただろ? 『恋愛の為なら死にも殺しもする』って。お前もそうなのか?」

ミカサ 「……ええ」

エレン 「お前に惚れられた奴は大変だな」

ミカサ 「……」

トロスト区 訓練兵団 医務室

アルミン 「スゥ、スゥ、スゥ」

アリエッティ (うまくいけば殺せるかと思ったが、流石に落馬では簡単に死ななかったか)

アリエッティ (アルミンとやらのベッドに突っ伏して寝ている金髪の人間は付き添いか何かか? まあいい。
       うまくいけば二人殺せる)

アリエッティ (また借りてきたこの剃刀でアルミンの頚動脈を削ぐ! 後でここにサシャが来たら
       びっくりして、その後絶望するに違いない)

アリエッティ (サシャ、お前が味わうのは小人の肉じゃない。恋人が死んだ苦しみだ!)

アリエッティ (いけえぇぇ!)

クリスタ 「アリエッティ!? 何をしてるの?」

アリエッティ (付き添いの女が目を覚ました! クリスタ!? さっきベッドで突っ伏していた人間が
       クリスタ!?)

アリエッティ (そんな馬鹿な! クリスタは死んだ筈、そもそも人間じゃない筈? どうなってるの!?)

クリスタ 「アリエッティ、まさか、あなたがアルミンを!?」

アリエッティ (この女がクリスタな訳がない!? こいつはクリスタに似た人間だ!)

クリスタ 「待って、アリエッティ!」

アリエッティ (来るな!)

クリスタ 「……ほら、怖くない、怖くない」

ザシュッ

クリスタ (痛ッ!)

アリエッティ (この人間め!)

クリスタ 「……ほらね、怖くない、ね?」

アリエッティ (剃刀で指を切られたのに、優しい笑顔で手を差し出して来る……)

アリエッティ (本当にクリスタなの……)

アリエッティ 「ごめんなさい、クリスタ」

クリスタ 「大丈夫よ、アリエッティが包帯を巻いてくれたから」

アリエッティ 「クリスタ、どうして人間になってるの? それに生きていたなら知らせて欲しかった!
       私とお母さんがどれほどクリスタが居なくなったことを悲しんだか!」

クリスタ 「ごめんなさい、アリエッティ。順を追って説明するね」

クリスタ回想

ウォールシーナ内 某研究所 所長室 

研究所所長 「ふうん、――っていうのかい。贅沢な名だね」

研究所所長 「お前の処分を頼まれたのだが、いくら妾腹の子といっても貴族の子を殺すのは色々と後が
      面倒だ。そこで小人になって慎ましく生きるなら見逃してやろうというのが
      お前の実家レイス家の決定事項さ。その為にお前はここに連れて来られたんだ」

研究所所長 「元の世界には戻れないよ。今からお前の名はクリスタだ」

回想終り

アリエッティ 「酷い……人間は同じ人間同士でそんな酷いことするの? しかもその時のクリスタって
       まだ子供じゃない!」

クリスタ 「当時の私は10歳。研究所で小人にされた後に外に放り出されて、一人で生きていけなくて
     途方に暮れてもう駄目かなって時にポッドおじさんが助けてくれたの」

アリエッティ 「じゃあ、初めて会った時に言ってたクリスタの両親が蛇に食べられたっていうのは……」

クリスタ 「あれは嘘。人間だと言ったら受け入れて貰えるか不安で……ごめんね」

アリエッティ 「それに人間は自分達を小人化することが出来たんだ」

クリスタ 「ええ。今から100年以上前に人類の天敵として巨人が現れて、人類は活動領域を
     囲うように3重の壁を築いて巨人の侵攻を食い止めたわ」

クリスタ 「そこで一旦巨人の脅威は去ったけど、新たな問題が発生したの。それはいずれ訪れるであろう
     食料と資源の不足。壁外の巨人達を駆逐するには人間はあまりにも無力だった。かといって
     壁内の資源や農地だけでは今後の人口増加に対応出来ない。そう考えた時の政府は極秘に
     人間を小型化する研究を重ね、ついに成功した」

クリスタ 「でも結局人間を小人化する計画は打ち切られたと聞いたわ」

アリエッティ 「どうして?」

クリスタ 「体が小さくなったら、これまで脅威でなかった生き物に命を脅かされてしまう。猫やカラス
     どころか肉食の昆虫ですら小人にとっては脅威よ」

クリスタ 「それに人間を小人化して人口増加に対応する計画は、あくまで巨人が壁を越えられない
     という前提で成立するものだから。巨人にウォール・マリアを突破され、第二、第三の壁もまた、
     いつ突破されてもおかしくない今、計画は無意味となったわ。人間の姿でも巨人を倒すのは
     容易でないのに、小人になったらいよいよ巨人には勝てないもの」

クリスタ 「そして計画が頓挫するまでの間、研究で小人化された人達の子孫がおそらく……」

クリスタ 「アリエッティ、あなた達じゃないかしら」

アリエッティ 「そうだったの……どうしてそのことを教えてくれなかったの」

クリスタ 「てっきり知ってると思ってたから。あなたの一族はそのようなことも忘れてしまったの?」

アリエッティ 「クリスタ、その言い方はちょっと酷いと思う」

クリスタ 「ごめんね。ひょっとしたら今は人間を巨大化する計画を極秘に進めてるかもね。
     巨人に対抗する為に」

アリエッティ 「もう一つ聞きたい。あなたは確かにサシャに食われた。その後どうやって生き延びることが
       出来たのか……いや、それは聞かない方がいいか……」

クリスタ 「どうして?」

アリエッティ 「だって、その……生きて出てこれたってことはサシャのお腹で消化しきれないまま出て――」

クリスタ 「失礼ね! 変なこと考えないで! こうなったらちゃんと説明するからしっかり聞いて貰うわよ」

アリエッティ 「……うん」

クリスタ 「今からする話は私がサシャのお腹の中に居た時の話もあるけど、その部分はそこで寝ている
     アルミンから聞いた話よ」

アリエッティ 「そのアルミンとの馴れ初めも是非聞かせて欲しいわ」

クリスタ 「ええ、後でちゃんと話してあげる」

クリスタ 「ここから少し長い話になるけど……」

アリエッティ (アルミンの頭撫でながら優しそうに微笑んでるクリスタ……う、美しい)





トロスト区 訓練兵団 食堂

エレン 「何だ、サシャの奴、やけにご機嫌だな」

アルミン 「何かいいことがあったの、サシャ?」

サシャ 「いいこと? ありましたよ」

アルミン 「何があったの?」

サシャ 「それはついさっき美味しい小――」

アルミン 「ごめん。一寸待って! 何か向こうが騒がしい」

サシャ 「聞いといてそれは無いじゃないですか」

アルミン 「ごめん」

エレン (確かにあっちの方が騒がしいな、あれは……ベルトルトか?)

マルコ 「ベルトルト、立体起動装置付けっぱなしだよ。訓練終わったら外さないと」

ベルトルト 「……ああ」

マルコ (ベルトルト、何か思いつめた様な表情をしてる)

マルコ 「早く外さないと、教官に見つかったら叱られるよ」

ジャン 「あまり相手にするな、マルコ」

マルコ 「ジャン、そういう言い方……」

ジャン (ベルトルト、俺より成績の良かったお前が、最近訓練にもあまりやる気が感じられん。
    元々人とあまり話さない奴だったが最近は特に孤立が酷い)

ベルトルト 「マルコ」

マルコ 「どうしたの、ベルトルト?」

ベルトルト 「マルコは指揮官向きで状況判断能力に長けると思う。だからマルコに聞きたい」

ベルトルト 「ライナーとアニを殺したのは誰だと思う?」

ジャン 「おい、何言い出すかと思えば――」

マルコ 「ジャン、落ち着いて」

ジャン 「……」

マルコ 「ベルトルト、僕にも分からない。仮にベルトルトが言うようにあの二人が殺されたとして、
    二人が誰かから怨みを買っていたという話は僕も聞いていない。犯人の目星の付けようがないよ」

ジャン 「まどろっこしいぞマルコ。はっきり言ってやれよ」

ジャン 「簡単なことだろ。成績上位者が居なくなれば自分が成績上位に入れる奴、若しくは
    単に成績上位者を妬んだ奴が殺ったんだろ」

マルコ 「ジャン……」

ジャン 「お前は気を使い過ぎなんだ。こういうことははっきり言ってやれば良い。それにしても
    二人を殺った奴は小せえ野郎だぜ。普通に頑張って10位以内に入ろうって気概が無いのかよ? 
    ま、才能の無い奴の妬みであの二人は死んだんだろうな。気の毒なこった」

マルコ 「あ、あの、ベルトルト? ジャンの言ったことはあまり気にしないで。犯人は訓練兵団の誰か
    ということしか分からないよ。その、参考にならなくてごめんね」

ベルトルト 「二人共有難う」

マルコ 「!?」

ジャン 「え!?」

ベルトルト 「それだけ分かれば十分だ」

ジャン 「だったらとっとと装置外してくるこったな、早く戻って来ねえとお前の飯無くなるぞ」

ベルトルト 「言葉を慎みたまえ。君は今、超大型巨人の前に居るのだ」

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました

ジャン 「ベルトルト、お前今冗談言ったのか!? つまんねぇよお前! 最高だな!」

ベルトルト 「君の馬面には心底うんざりさせられる」

ジャン 「ハァ!? てめぇ、喧嘩売ってんのか! てめぇの方がよっぽどか馬面だろうが!」

ベルトルト 「見せてあげよう、巨人の雷を」

ガリッ

ジャン (こいつ、自分で手を噛んだ?)

ピカッ ドゴオオオオォォン!

アルミン 「何だ!?」

エレン 「爆発か……?」

ミカサ 「エレン、あれ!?」

エレン 「!」

超大型巨人 ゴゴゴゴゴ

エレン (超大型巨人! どうしてここに!?)

トーマス 「……ウ……グ……」

エレン 「トーマス!」

アルミン (酷い怪我だ……)

トーマス 「ベルトルトが……自分を超大型巨人とか言い出して……そしたら……爆発……が……」

トーマス 「……」

エレン 「トーマス……! おい、トーマス!」

ミカサ 「エレン、食堂から出るわよ。ここは危険」

エレン 「畜生!」

エレン (トーマスが死んだ……)

アルミン (地獄絵図だ。今の爆発で何十人死んだんだろう……)

ダズ 「ヒイイッ、巨人だああぁ!」

ナック 「逃げろおおぉ!」

トム 「クソッ! どうして巨人がここに!?」

エレン 「立体起動装置を取ってくる!」

ミカサ 「エレン!」

エレン 「ミカサ、アルミン! お前らも急げ!」

アルミン 「ミカサ、エレンの判断は正しい。僕らは立体起動装置が無いと巨人の前では無力だ」

アルミン 「それぞれ自分の装置を取って来よう。後は巨人を追えばエレンと合流出来る」

ミカサ 「分かった」

超大型巨人 (ライナーとアニを殺したのはお前か!)

ナック 「嘘だろ、ウワッ!」

グシャッ

超大型巨人 (お前か!)

トム 「ギャアアア!」

グシュッ

超大型巨人 (お前か!)

ミリウス 「ヒイイィ! 助けて下さい!」

ドグシャ

超大型巨人 (難しく考える必要なんてなかったんだ。この訓練兵団の中に二人の敵がいる。今こうして
      巨人の恐怖に恐れ慄くここの連中を全滅させれば、敵を討ったことになるんだ!)

超大型巨人 (ライナー、アニ、見てるかい? 僕がここの人間共に、二人を殺した罰を与えるよ! 
      素晴らしい! 最高のショーだと思わないかい?)

トロスト区 訓練兵団 敷地内森林 立体起動訓練場

コニー 「ユミル……」

ユミル 「コニーかい。生きてたのか」

コニー 「何とかな。巨人は建物を中心に攻撃している。だったら建物から離れれば助かると思ってな」

ユミル 「敵前逃亡は死罪だよ」

コニー 「お前だって戦わずにここに来たってことは逃げ口上位考えてるんだろ」

ユミル 「私達は巨人を攻撃しろという命令は受けていない。だから各自の判断で一時的に避難した」

コニー 「もし上官からお咎めを受けたらその言い訳使わせて貰うぜ。……そういやサシャは見なかったか?」

ユミル 「サシャ? さあね。どうして私が知ってると思った?」

コニー 「お前らよく一緒に居るから。仲良いのかと思って」

ユミル 「私とサシャはそんなんじゃないよ」

コニー 「そうか……」

コニー (サシャ、お前は無事なのか……)

コニー回想

トロスト区 訓練兵団 中庭

サシャ 「じゃあコニーは小人食べないんですか?」

コニー 「……食ってたさ」

サシャ 「だったら!」

コニー 「いいか、サシャ。世の中の殆どの人間は小人を食わないんだ。小人を食う習慣があるのは
    ウォール・ローゼ南区の一部の狩猟民族だけだ。俺達は少数派なんだ」

サシャ 「小人、美味しいのに……」

コニー 「旨い不味いの問題じゃない。ここで小人食ってたなんて言ったら野蛮人扱いされちまう。
    だから俺は皆の前では小人のことをよく知らない振りをしてた」

サシャ 「それでさっき私に小人狩りを止めるように言ってきたんですか」

コニー 「ああ。お前もこれから小人食べるの控えろよ。それに乱獲したらあいつらそれこそ絶滅するぜ」

サシャ 「嫌」

コニー 「お前、俺の話聞いてなかったのか!」

サシャ 「故郷の食文化をどうこう言われるのは心外です。たとえ野蛮人と思われても、私達には私達の生き方が
    あるんですから。もし私が小人食べるの止めたら、故郷の風習を恥じてるってことになるじゃないですか」



回想終り

コニー (すまんサシャ。これまでお前が孤立していくのを見て見ぬ振りしてたが、今、罪悪感でいっぱいなんだ。
    虫のいい話かもしれんが、もし生き残れたら一緒に小人食って仲直りしようぜ)

トロスト区 訓練兵団 武器庫

超大型巨人 (武器庫も破壊した。しかし連中、蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げていく。
      このままでは全滅出来ない……)

超大型巨人 (いや、もっと簡単に考えよう。この壁内の人間を絶滅させれば二人の敵を討ったことになるんだ)

超大型巨人 (そうだ。それでいい……)

トロスト区 訓練兵団 中庭

エレン (巨人が訓練兵団の敷地から出ていく……まさか、壁に向かっている!)

エレン (ウォール・ローゼの開閉扉を破壊する気か!?)

エレン (させるか! 立体起動装置を使えば追いつける!)

バシュウウウ

トロスト区 市街地

市民1 「おい、何で巨人が壁の中に!?」

市民2 「巨人が……こっちに来るわ……」

市民3 「巨人だああぁ! 逃げろぉ!」

子供1 「うわーん、お母さーん」

超大型巨人 (死ねぇ!)

ガラガラガラズシャーン

アルミン (あのサイズの巨人が移動するだけで町は甚大な被害を被る)

アルミン (訓練兵団は壊滅状態。生き残った皆も恐怖と混乱で戦闘どころじゃなくなっている)

アルミン (少なくとも立体起動装置をつけて巨人と戦おうとしている訓練兵は僕を含めて数名もいれば
     いい方だろう)

アルミン (僕自身、シガンシナで一度だけでも巨人を見たことで冷静に行動出来てる。
     訓練兵の大半はこれまで巨人を見たことが無い。怖いのも無理は無い)

アルミン (先行したエレンとミカサが心配だ。冷静になることも大事だけど急がないと)

アルミン (僕がもっと立体起動装置の扱いが巧ければ三人一緒に行動出来るのに!)

バシュウウウ

トロスト区 市街地

エレン (いっけえええ!)

ザシュッ!

エレン (クソ、また手の甲しか斬れなかった!)

超大型巨人 (……)

エレン (うなじを片手で覆いながらもう一方の手を振り回してくる)

エレン (うなじを斬らないと巨人は死なない、他の場所を斬っても再生する。どうする?)

ミカサ 「エレン!」

エレン (ミカサ!?)

エレン 「何でお前の方が遅いんだ? 立体機動はミカサの方が得意だろ?」

ミカサ 「エレンが怒りで我を忘れてガスを蒸かし過ぎてただけ。あと立体機動だけでなくあらゆる科目で
    私の方が得意」

エレン 「いきなりお小言かよ」

ミカサ 「ともかく巨人を倒しましょう。作戦は左右からの挟撃。私は右から、エレンは左から。
    まず私が、うなじを覆っている巨人の手の指を出来るだけ落とす。その後エレンが巨人のうなじを斬って」

エレン 「俺に手柄を譲るのか?」

ミカサ 「この作戦は最初に巨人の指を何本切断してうなじを露出させるが勝負の分かれ目。
    それは斬撃の得意な私がやる」

エレン 「わかった」

エレン (こんな時でもミカサに世話焼かれてばかりだ。でもこれで母さんの敵を討てる!)

ミカサ (実戦で初のエレンとの共同作戦……必ず成功させる!)

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました
あと以下変換ミスありました……今頃気づいた

誤:立体起動
正:立体機動

1です
トリップはつけないが名前付けました
これより投下します

超大型巨人 (あと少しで開閉扉だが、……ミカサとエレンの二人一度に相手にするのは厄介だ。
      特にミカサは手強い)

ズシン、ズシン、ズシン

エレン (ようやくこちらに向き直ったか)

ミカサ (相手も本気)

エレン 「目標、目の前! 超大型巨人! 行くぞ、ミカサ!」

バシュウウウ

ミカサ (まずは巨人の指を落とす!)

エレン (ミカサ、流石に速いな)

超大型巨人 (甘いよ)

プシュウウウウ

ミカサ (巨人から蒸気が!?)

エレン 「逃げろ、ミカサ!」

ミカサ 「クッ!」

ミカサ (一旦離脱か……)

エレン (駄目だ。アンカーを射出しても蒸気で弾き返される。巨人に刺さらない)

ミカサ (これでは接近出来ない。開閉扉は目の前。このままだと扉を破られてしまう!)

エレン (扉を破られて壁外の巨人が雪崩れ込んできたら、ここも壊滅する! シガンシナの二の舞だ!)

トロスト区 ウォール・ローゼ 壁上

アルミン (エレンとミカサが巨人を引き付けている間に、固定砲まで辿り着けた)

アルミン (たとえ蒸気を出していても固定砲の砲弾までは流石に弾き返せないだろう。うまくいけば手の指ごと
     巨人のうなじを損傷出来る。但し、一人での操作は時間がかかる)

バシュウウウ スタッ

サシャ 「よっと!」

アルミン 「サシャ!? どうしてここに!?」

サシャ 「こういう時は正解を導ける人に付いていくのが生き残る道です。アルミンを尾けた甲斐がありました」

サシャ 「それに、アルミンは私のことを避けない数少ない人の一人ですから」

アルミン 「サシャ……」

サシャ 「さあ、巨人を倒しましょう!」

アルミン 「巨人がエレンとミカサに気を取られている今がチャンスだ。作戦はさっき話した通り。いいね?」

サシャ 「ええ、分かってます」

アルミン (距離は40メートルってところか。こちらに背を向けているとはいえ、うなじに当てられたら奇跡だ)

アルミン 「撃(て)ーい!」

ドォォン!

バシュッ!

エレン (砲撃!? 駐屯兵団か?)

ミカサ (命中したが……うなじからずれてる)

アルミン 「榴弾が効かない」

サシャ 「うなじに当てないと駄目か」

超大型巨人 (固定砲からの砲撃か)

サシャ 「気づかれた。こっちに来ます!」

アルミン 「隣の砲台に移動! 第二案に移行する」

サシャの胃袋内

クリスタ (熱い……熱いよ……)

クリスタ (どうしてこうなったの……どうして私達は奪われるの……)

クリスタ (あ……諦めて……たまるか……)

クリスタ (私は……生きたい……)

クリスタ (もう一度……人間の姿に戻ってでも……生きたい!)

ゴオッ

トロスト区 ウォール・ローゼ 壁上

サシャ 「!」

アルミン 「どうしたの、サシャ?」

サシャ 「ぐああああ」

アルミン 「?」

サシャ 「あの……お腹……! 痛いんで……」

アルミン 「サシャ、逃げたいのは分かるけど今は――」

ドオッ

ドォドォォッドォォォバキバキバキ

ドバシャアアアア

ビチャビチャビチャ

サシャ 「……」

クリスタ 「ハァ、ハァ、ハァ」

クリスタ (ここは……一体……?)

アルミン (サシャの中から人が出てきた!?)

超大型巨人 (サシャの中から血染めのアルミンが! いや、アルミンはそこに居るし何がどうなってるんだ?)

プシュウゥゥ ピタッ

ミカサ (巨人が動きを止めた!? 出していた蒸気も止まった! )

エレン 「よく分からないがこいつはチャンスだ。絶対に逃すな!」

ミカサ (これでケリをつける!)

ザシュ! ズバッ!

エレン (流石ミカサだ、瞬く間に巨人の指を4本落とした。うなじが丸見えだ!)

超大型巨人 (しまった! 早く蒸気を!)

プシュウウ

エレン (グアッ! 熱!)

アルミン 「くそぅ! 化け物め!」

ドオォン!

バシャア!

超大型巨人 (あ、ああ……、目が、目がああああ!)

プシュウゥゥ ピタッ

ミカサ (再び蒸気が止まった!)

アルミン (幾ら超大型巨人でも至近距離で顔面にぶどう弾を食らえば、しばらくは視力を失う。視力を奪われて
     動揺した巨人が我に返って再び蒸気を出すまで十数秒といったところか)

アルミン (でもそれだけ時間があればエレンが!)

これってサシャが破裂したの?

1です

>>143
そうです

エレン (黒き衣を纏いて箒で空を飛ぶ魔女でも、青き衣を纏いて金色の野に降り立つ救い主でも、何でもいい)

エレン (それを見た者はこの世界で一番の自由を手に入れた者だ)

エレン (どれだけ世界が残酷でも関係ない)

エレン (戦え!)

エレン (戦え!)

エレン (戦え!)

アルミン 「いけえぇぇ! エレン!」

エレン 「ウアアアアアッ!」

ザシュッ!





この日、人類は初めて、巨人に勝利した

トロスト区 ウォール・ローゼ 壁上

エレン 「お前、何者だ?」

クリスタ 「?」

エレン 「お前だよ、お前」

ミカサ 「エレン、下がって! アルミンもこっちへ!」

ミカサ (エレンもアルミンもこの女が何者か分からないのに……)

クリスタ (そこの黒髪の女の人何なの、その眼……。まるで化け物を見るような眼。無理も無いか)

アルミン 「ほっとけないよ、女の子が血まみれなのに!」

エレン 「もう一度言う。お前の正体は何だ?」

アルミン 「名前なんて後でいいって、エレン」

クリスタ (とにかく答えを間違えちゃいけない)

クリスタ 「サシャです」

エレン 「ハ?」

クリスタ 「私、サシャ・ブラウスです。私……」

クリスタ 「脱皮したんです!」

エレン 「……」

ミカサ 「……」

アルミン 「……」

アルミン 「これを羽織って」

クリスタ (この人、ジャケットを私にかけてくれた……)

クリスタ 「ありがとう」

アルミン 「いや、いいんだ。そうしないと……目のやり場に困るというか……」

クリスタ (え……私、そういえば……裸!)

クリスタ 「キャッ!」

アルミン (かわいい……)

エレン 「うわっ!? ミカサ、マフラーで目隠しするなよ! 何も見えねえ!」

ミカサ 「エレンは見なくていい。あと、アルミン鼻血出てる」

アルミン 「あ、これ返り血がついたのかな、ハハハ……」





バシュウウウ

ハンネス 「大丈夫かお前ら!?」

リヴァイ 「オイ……ガキ共……これは……どういう状況だ?」

エレン (遅ぇよ……)

今日はここまで
読んで下さった皆さん有難うございました

トロスト区 訓練兵団 図書室

アルミン 「やあ、サシャ」

クリスタ 「アルミン、勉強熱心ね」

アルミン 「サシャだって頑張ってるよ」

クリスタ 「私は今までの遅れを取り戻さないといけないから」

クリスタ (皆はずっと訓練兵団にいたけど、私はこの前入団したようなものだから)

アルミン 「記憶の混濁はまだ続いてるの?」

クリスタ 「うん、昔のこととかあまり思い出せなくて……」

アルミン 「大丈夫だよ、少しずつ思い出していけばいい。勉強も忘れたところは僕でよければ教えるよ」

クリスタ 「ありがとう、アルミンって優しいね。私が脱皮した時も真っ先に制服をかけてくれた。
     そのせいで……」

クリスタ 「アルミンの制服はこうして今も血の跡が残っている。一生懸命洗ったけど落ちなかった。ごめんね」

アルミン 「気にしないで。これもいい思い出だよ」

クリスタ 「いい思い出って……私の裸を見たこと?」

アルミン 「いや、そういう意味じゃなくって!」

クリスタ 「ふふ、冗談よ」

クリスタ (アルミンだけじゃない。ここの皆は私に親切にしてくれる)

アルミン (サシャ、元々美人だったけど、脱皮してからさらに綺麗になった。君は脱皮というより羽化したんだ)

アルミン 「残念ながらここにある本は壁の中のことばかりだ」

クリスタ 「アルミンは壁の外について書かれた本を探していたの?」

アルミン 「ああ、こんなこと知れたら大変だけどね」

アルミン 「昔読んだんだ。この世界の大半は海っていう塩水で覆われていて、その海には津波を起こす
     女型の魚人がいるって」

クリスタ 「それって『壁の上のアニョ』のこと?」

アルミン 「そうだよ! サシャ知ってたの!?」

クリスタ 「うん、私も子供の頃に読んだことがある」

アルミン 「嬉しいよ! 僕とエレン以外に読んだ人に会えるなんて!」

クリスタ 「あと同じ作者でこの街を舞台にした話もあったでしょ?」

アルミン 「ああ、『となりのトロスト』だね。僕あの話大好きなんだ!」

クリスタ 「そこでミカサが『サシャが脱皮した音です』って言ったら教官からのお咎めが無くなったの」

アルミン 「ハハハハハ!」

アルミン 「あれ、もうこんな時間だ。残念だけど寮に戻らないと」

クリスタ 「外の世界のことやアルミンのこと、沢山お話出来て良かった。楽しいと時間が過ぎるのも早いね」

アルミン (サシャが僕との時間を楽しいと言ってくれた)

クリスタ 「他の人とも同じような話が出来ればいいのに……」

アルミン 「それは駄目だ」

クリスタ 「分かってる……でも……」

アルミン 「下手に外に出て巨人を壁の中に招くことが無いように、王政府の方針として外の世界に
     興味を持つこと自体をタブーにした。壁の中だけが現実世界で外の世界は基本的に
     存在しないものと位置づけ、僕の様に外の世界に興味を持ってその世界の本を読み漁る人間には
     キモオタとか中二病といったレッテル張りを行った」

アルミン 「オタクは社会不適合者で犯罪者予備軍なんて偏見がいつまで続くんだ!」

クリスタ 「分かる、私も小さい時に中二病呼ばわりされた」

アルミン 「僕はこの偏見を払拭する為に外の世界を探検する調査兵団に入るつもりだ。壁の外の
     誰も見たことの無い素晴らしい世界を世の中の人に知って貰うんだ」

クリスタ 「夢、叶うといいね」

アルミン 「有難う、サシャ。今日は楽しかったよ!」

クリスタ 「私も!」

クリスタ 「こうして本物のサシャ・ブラウスのお腹を破って出てきた私はサシャに成りすまし、訓練兵団の
     兵士としてここで生活している。それからしばらくしてアルミンと付き合うようになって……。
     ここに来たばかりの私は有名人で……脱皮した人間なんて普通じゃ考えられないから注目されて、
     それでアリエッティに会いに行けなかった。会いに行くところを他の誰かに見られて
     アリエッティの家を特定されたらって思うと……」

アリエッティ 「分かったわ。私とお母さんに心配をかけたのは許してあげる」

クリスタ 「ねえ、アリエッティ。どうしてアルミンを殺そうとしたの?」

アリエッティ 「クリスタは好きだ、でも人間を許すことは出来ない」

クリスタ 「それがアルミンを殺そうとした理由なのね……」

アリエッティ 「今こうして人間を続けているのはアルミンがいるから?」

クリスタ 「いいえ、小人になれないからよ。小人から人間に戻った時は強く念じたら戻れたんだけど、
     その逆はどんなに一生懸命念じても無理だった。図書館で色々調べても方法は見つからなかったわ。
     実家のレイス家なら秘術を知ってるけど、帰ったら私殺されるよ」

アリエッティ 「そんな……もう一緒には暮らせないというの……」

クリスタ 「私は壁の中で、アリエッティは床下で暮らそう。共に生きよう」

アルミン 「ウ……ン……」

アリエッティ、クリスタ (アルミンが目を覚ます!?)

アリエッティ 「行かなきゃ……これを、そばに」

クリスタ (これは、アリエッティがいつも着けていた洗濯バサミの髪留め……)

クリスタ 「ありがとう」

アリエッティ 「守ってくれて嬉しかった」

クリスタ 「アリエッティ、私からはあげられる物が無いけど、誰にも話していない秘密を教えてあげる」

クリスタ 「私、もう一つ秘密の名前があるの」

アリエッティ 「貴族だった頃の名前?」

クリスタ 「うん」

数日後 トロスト区 訓練兵団 馬場

クリスタ 「行くわよ、ヤックル」

ヤックル(馬) ヒヒーン!

クリスタ (アリエッティ、私は将来、アルミンと調査兵団に入って公に心臓を捧げる。貴方はその心臓の一部よ)

トロスト区 訓練兵団 食料庫床下の換気口(アリエッティ一家の物干し場) 

アリエッティ 「今日は絶好の洗濯日和ね」

アリエッティ (私が生きている限り、この世で唯一本当の貴方を知る者がこの世界に居ることになる。
       貴方がサシャ・ブラウスでないことの証として私は存在し続ける。生き抜いてみせる……)

アリエッティ (生きねば……そうでしょ、クリスタ。……いえ……ヒストリア)

トロスト区 訓練兵団 体育館裏

クリスタ 「どうしたの、コニー? こんなところに呼び出して」

クリスタ (アリエッティと別れて数日が過ぎた……今頃どうしてるかな)

コニー 「サシャ。俺、どうしてもお前に伝えたいことがあって……」

クリスタ (……この前はダズから告白されたけど、今日はコニーか……。悪いけど私にはアルミンが居るし……)

コニー 「俺、お前と同じ狩猟民族なのに、今までお前が小人食って孤立してたのに何も出来なくて……」

コニー 「俺、悪いと思ってたんだ。だから俺もこれからは、故郷に居た時みたいに小人食おうと思って!」

クリスタ 「いいから!」

コニー 「えっ!?」

クリスタ 「私、小人食べないから! そういう気遣いはいいから!」

クリスタ (何を言い出すかと思ったら、コニーって小人食べてたんだ……)

コニー 「そ、そうか。……俺の忠告を聞き入れてくれたんだな。ならよかった。でもよ……」

コニー 「これ、どうしよう」

アリエッティ 「……」

クリスタ (アリエッティ!?)

コニー 「さっき捕まえたんだ。捕まえて直ぐ絞めたから新鮮だぜ。一緒に食ってお前と仲直りしようって
    思って持ってきたんだ。……サシャ、どうした? ……顔色が青いぞ」

クリスタ 「ウゲエェェェェ!」

コニー 「おい、大丈夫か!? 医務室に行くぞ! 立てるか?」

クリスタ 「ウゲェェッ、ウ……ハァハァハァ……。コニー、一つだけ……教えて」

コニー 「ああ」

クリスタ 「あなたが殺した小人は最期に何か言ってた?」

コニー 「ああ、『クリスタ、助けて!』って叫んでた。クリスタって誰だろうな」

クリスタ (ハァハァハァ、アリエッティ……ほら、見て)

コニー 「……」

クリスタ (貴方を殺した人間がナイフでメッタ刺しよ。ハッハッ見ろ、人がゴミのようだ!)

アリエッティ 「……」

クリスタ (アリエッティ、貴方を一人にはしない。これからはずっと一緒だよ)

ガブリ





おわり

これで終りです。
結末についてはいろいろあるかとは思いますが……。
これまで読んで下さった皆さん有難うございました。
特にコメントを下さった皆さん有難うございました。

モロウ「クリスタ君、そんなことをしてはダメだ!!君まで友人を失って、死んでどうする!!ゆうじんのぶんまでいきろ!」

クリスタ「離して私は死にたいのよ、モロウ中将!!」

>>164
コニーの台詞修正

誤 ……サシャ、どうした? ……顔色が青いぞ」

正 ……サシャ、どうした? ……顔色が悪いぞ」

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