あと一つは?
昨今のアニメや漫画、ライトノベルの作品には「展開やキャラクターのテンプレ化」が見られる。
メディア作品におけるストーリーの形態は既に出尽くしてしまっており、
現状では「王道ストーリー」をどれだけ美しく演出できるかが評価の鍵となっている。
しかし、ありがちなストーリーを顧客に魅せるというのは非常に難しく、
人気作を作るためにはそれを補うごまかしを工夫しなければならない。
そこで活躍するのが「ツンデレ」といったキャラクターの雛型や、有名作品の引用で
誰でも使えるパロディだ。こうして誰かが作ったテンプレにはまった作品を作り上げれば、
それを求める顧客に対して一定の評価を得ることができる。
しかしキルミーベイベーは違った。非常に曖昧な設定で、たった二人と+αにより形成された狭い世界。
その中で、わかりやすいパロディや萌えキャラ同士の百合要素といった「媚び」を排除し、
ただ二人のおりなすコントと友情を描ききっているのである。
登場人物の近親者といった無駄な存在が出ることはない。
やすなの優しさにソーニャが頬を染めることもない。
キャラを増やせば展開を考えるのも楽になるだろう。
もっと二人を仲良くさせれば、互いの自宅や遊園地といった場所も舞台に使えるだろう。
しかしそれはキルミーベイベーにとっては不用である。そんな安易なものに頼るまでもなく、
キルミーベイベーはやすなとソーニャのキャラクターを自らの手で描いている。
どこかで誰かが作った指標に従属することはない。
キルミーベイベーはキルミーベイベーとして、誇りある一つの作品としてこれからも歩んで行くだろう。
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