京介「俺の妹がこんなに可愛いわけがない 8?」(1000)

原作八巻の続きを勝手に想像した読者参加型のSSです

■前スレ
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 8?

京介「俺の妹がこんなに可愛いわけがない 8?」

桐乃「兄貴!」

京介「あん?」


桐乃「お年玉は兄貴と私の子供でお願いね!!」

京介「ブハッ!」


桐乃:デレデレ
黒猫:ツンデレ
あやせ:ヤンデレ
伊織:クーデレ
地味子:嫁


ふぅ…ごちそうさまでした

>>88
黒猫はクーデレだろ

>>90
クーデレなツンデレでおk

そんなわけでだれかあやせのヤンデレ書いて

つまらない訳じゃないが
進展遅くて御世辞にもテンポ良く展開してるとは言えないからな

書くの遅くてゴメン
できるなら一日中書いていたいんだけどどうしても用事が入ってしまう






「お兄さんを呼び出した理由は、もうご存知ですよね」
「桐乃のことについて話があるんだろ」

昨日もらったメールにそう書いてあったからな。
あやせはこくんと頷き、膝の上で両手を握りしめて訊いてきた。

「単刀直入に聞きますけど……。
 お兄さんの目から見て、家での桐乃はどうですか?」
「はっきり言ってスゲー荒んでる」

瑠璃と付き合うことを告白したあの夜から、
桐乃の俺に対する態度は、一年と半年前のそれに逆戻りした。
廊下ですれ違っても言葉一つ交わさない、当然挨拶もなし、
偶然目が合えば舌打ちし、聞こえるか聞こえないくらいの大きさの声で悪態を吐く。

「しかも俺だけにじゃなくて、親父やお袋に対しても似たような態度取ってるからな。
 今はみんな、腫れ物触るようにあいつに接してるよ」
「そんな……」

「親友のお前から見て、桐乃はどうなんだ?」

あやせは悲愴な面持ちで、訥々と語った。

「ここ数日の桐乃は、なんだか桐乃じゃないみたいです。
 冷たくされたり、あからさまに避けられているわけではないんですよ?
 でも、メールは続かないし、電話で話してても上の空で……わたし怖いんです。
 今の状態がずっと続けば、桐乃との関係が壊れてしまうような気がして……」

あやせが悲観的に捉えすぎている可能性がなくもないが、
桐乃があやせを含めた学校の友達にまで素っ気なくしているのは一応の事実なんだろう。

「桐乃は昨日あった撮影の仕事を無断欠勤しています。
 あと、これは陸上部の友達が教えてくれたんですけど、
 桐乃はここ数日の部活も、何の連絡せずに休んでいるみたいなんです。
 みんなすごく心配してました……。
 あの娘、仕事や部活には、常に真面目で、本気でしたから。
 遅刻もこれまで一度もしたことありませんでしたし……」

それには薄々勘付いてたよ。
あいつ、三日前から家に引きこもり通しだからな。

同じでもパラレルでも桐乃のデレが見られれば本望

「わたしは、三日前に、桐乃に何かがあったんだと考えています。
 その日はお昼から撮影で、撮影が終わった後は一緒に買い物に……。
 あ、お兄さんには電話で言いましたよね。
 桐乃、撮影の時から様子が変でした。
 表情や雰囲気がイマイチだって、何度もカメラマンの人に注意されてて……。
 モデルだって人間ですから、機嫌が悪い時や、
 体調が悪い時に撮影の仕事が入ることは珍しいことではありません。
 桐乃のすごいところは、どんなに不調な時でも、
 カメラの前では普段通りの桐乃でいられるところで……。
 でも、あの日は違ったんです。
 桐乃の目……、まるで一晩中泣いてたみたいに腫れてました」

その喩えはたぶん事実だよ。
それにしても、仕事や部活は自他ともに厳しかったあの桐乃がね……。
あやせと喧嘩したときでも、撮影や部活の合宿は休まず参加して『いつも通りの桐乃』を演じてたってのに。

「わたし、撮影が終わった後で桐乃に言ったんです。
 『何かあったの』って。『わたしでよければ相談に乗るよ』って。
 だってわたしたち、親友じゃないですか。なのに桐乃は『なんでもない』としか言ってくれませんでした。
 桐乃が嘘を吐いているのはすぐに分かりました。
 わたし、ショックで頭の中が真っ白になって……でも、そこで桐乃を責めても仕方ないと思いました。
 だから桐乃の好きなタイミングで悩みを言ってもらうために、
 桐乃を元気づける意味も込めて、『買い物に行こう』って誘ったんです」

一年前に比べりゃ大きな進歩だな、と思ったよ。
人間関係に潔癖で、純粋で、素直で、嘘を吐かれると人が変わったようになるあやせが、
桐乃の隠し事に言及するよりも、自分から話してもらうまで待つ選択をしたんだからな。

あれとは違うか...黒猫の喫茶店でのセリフやら引きこもる話なんかが重なっている気がして
そんな風に見えてね。これも単品で見ても面白いからいいけど

>>155
そう思わせて引っ張っておいて大逆転とかだともうプロだな

「街に出ると、桐乃はいつもの桐乃に戻ったように見えました。
 撮影のときの桐乃が嘘みたいに、桐乃は笑顔で……でも、やっぱり違ったんです。
 お金の使い方がすごく荒くて、ナンパされたときも普通に話してて……いつもは無視するか、冷たくあしらうのに……。
 桐乃、テンションが高いというよりは、自棄になってるみたいでした。
 桐乃を家の晩ご飯に誘ったのは、長く街にいればいるほど、桐乃がおかしくなるような気がしたからです」

あやせの賢明な判断に感謝しねえとな。
隣にあやせがいなけりゃ、あいつ、マジで朝帰りして親父に捜索願出されてたかもしれねえ。

「わたしたちはご飯を食べた後で、わたしの部屋に行きました。
 その時に、桐乃に『泊めて』と頼まれて……でも、心を鬼にして断りました。
 お父さんやお母さんは桐乃の言葉を信じてましたけど、
 わたしには、桐乃が桐乃のお家に連絡していないことが分かっていたんです。
 だってその日、桐乃は一度も携帯を開いていませんでしたから」

お前の観察眼には怖れ入る。

リアルで桐乃みたいのがいたら100%軽蔑するのに
こんなに可愛いのはなんでだろうな


桐乃「あ、あああああ、アンタ!な、何してんのよ!!!//////」

あやせ「お、お兄さん…////」

京介「なにって…ナニだが?」

桐乃「早くしまいなさいよもう!!」

あやせ「あれ…これって」

京介「ああ、偶然にもあやせの写真集があったんでな。おかずにさせてもらった」

桐乃「ふ、ふざけんじゃないわよ!あんたさっさと」


あやせ「……嬉しい…////」

桐乃「え」

「それで、桐乃を家に帰してくれたのか」
「はい。そうするのが桐乃の友達として……親友として……正しい選択だと思いました。
 あの、あの後桐乃はご両親に……?」
「叱られたよ」

途中で俺が止めに入ったことは黙っておく。

「お兄さんは、桐乃が変わった原因について、何か心当たりがありませんか?」
「さあな。あいつは何も話してくれねえから」
「わたしはお兄さんの考えを聞いているんです」
「……………」

熱気を孕んだ一陣の風が吹きすぎ、あやせの豊かな黒髪を膨らませる。
すぐ後ろの木立で独唱していた蝉が力尽きる気配がした。
サッカーをしていた小学生たちは、いつの間にかいなくなっていた。

「―――お兄さんが原因なんじゃないですか?」

しん、と水を打ったように静まり返った公園に、あやせの透明に澄んだ声はよく響いた。

やっべ、マジやっべ

「なんでそう思うんだ?」
「あの日、桐乃は一度もお兄さんの悪口を言いませんでしたから。それが逆に不自然でした」

あやせは重く低い声で言う。

「桐乃が夜遅くなっても帰りたがらず、連絡も入れようとしなかった理由は、
 きっととても単純なことで……家族に……お兄さんに心配をかけたかったからなんだと思います」

お前も麻奈実と同じことを言うんだな、あやせ。
夏休みが明けるまでは、瑠璃との交際を公にせず、これまでどおりに振る舞う――。
それは瑠璃と話し合って決めたことで、
だから一昨日の図書館勉強は、麻奈実と純粋に『仲の良い幼馴染み』として過ごせる、
残り少ない貴重な時間だったのかもしれないのに、
麻奈実はめざとく俺が落ちこんでいることに気づき、結局俺は、桐乃の不可解な行動の顛末を話してしまった。
そして麻奈実は、俺の話を聞き終えたあとでこう言ったのだ。

『桐乃ちゃんは、きょうちゃんに探して欲しかったんじゃないかなあ』

麻奈実は続けてこうも言った。

『ねえ、きょうちゃんはその時、何をしてたの?』

声の調子は優しく穏やかで、だからこそ俺には堪えた。
開き直れたらどんなに楽だったろうな。
「妹の我が儘なんざ知ったこっちゃねえ」ってさ。
でも俺は決まり悪く俯いて、「家を空けてた」と言うのが精一杯だった。
麻奈実を失望させたくなかったというのもあるし、
そうやって嘯いたところで、麻奈実には通用しないと分かり切っていたからだ。
あやせは言った。

「もう一度訊きます。
 桐乃があんなふうになったのは……お兄さんが原因なんじゃないですか?」

これ以上否定しても白々しいだけだ。
首肯すると、あやせはそれまでの必死な表情を、さっと能面に変えて、

「やっぱり……そうだったんですね」

ぞわ、と全身が粟立つ。
一瞬のうちに、俺たちを取り巻く夏の熱気が冬の冷気に変換されたような錯覚がした。」

「桐乃に、何をしたんですか?」

お、落ち着け。

「俺が桐乃に直接何かしたワケじゃねえよ」
「でも、桐乃が傷つくようなことをしたのは、事実なんですよね!?」
「俺にあいつを傷つけるような意図は、これっぽっちもなかったっての!」
「結果的にはそうなってるじゃないですか!」

目的語不在の論駁に終着点は見えず、

「これは俺たち兄妹の問題なんだ。
 お前が首を突っ込むことじゃねえんだよ」

俺はつい、いつものスタンスを忘れて、強い言葉をぶつけてしまった。

「………ッ」

あやせの表情に、怯えと悔しさが綯い交ぜになった色が浮かぶ。
俺は深呼吸してささくれ立った気持ちを落ち着け、

「……あやせが心配することはねえよ。
 しばらくしたら、桐乃は元通りになる。
 お前とはこれからも親友でいるだろうし、モデルの仕事や部活にも復帰するさ」

18年の離れた妹の面倒を見るために大学のサークル活動を辞め就職し懸命に働いてたんだけど
妹はさっさと結婚し後に残ったのは婚期を逃した兄(主人公)だけだったーという少女漫画を思い出した。
兄がどんなに尽くしても妹は何もしない、見返りは無いという教訓だったなぁ

>>183
親だとそれが当たり前みたいになってるんだよな
俺は家族とあんまり仲よくないけどそういうのって損得を超えたもんなんだろうな

>>188
次の世代を作り両親に孫を見せてあげて
自分がしてもらったように子供を育てることが見返りだと俺は思う

>>189
ごめんよ父ちゃん母ちゃん…

「時間が解決してくれると?」
「……ああ」
「お兄さんは……、桐乃のことが心配じゃないんですか?」
「心配だよ。心配に決まってんだろ」
「じゃあお兄さんは、桐乃があんなふうになってから、今まで何をしていたんですか?
 わたしはわたしなりに桐乃を元気づけようとしてメールを送ったり、電話をかけたりしました。
 全部、無駄でしたけど……それでも、放っておくことなんてできませんでしたから」

あやせは消え入るような声で言った。

「わたしの知っているお兄さんは、
 桐乃が苦しんでいるときに、こんなに悠長に構えているお兄さんじゃありません」

あやせは木陰から日向に踏み出すと、

「さよなら」

そのまま振り返りもせずに、去っていった。

「人の気も知らないで、好き勝手言いやがってよ」

誰もいない、閑散とした公園で独りごちた。

-----------------

「ただいま」

返事は帰ってこない。お袋の靴が無くなっている。
買い物に出かけたんだろう。親父は仕事で朝から家にいない。
俺はリビングで麦茶を飲んだ後、階段を上って自室に向かいかけ、
右手のドアの前で、足を止めた。ドアプレートには『桐乃』の文字。
心の裡で誰かが言った。
……たったの三日で手前との約束を反故にしていいのかよ。

「桐乃、いるか?」

考えていることとは裏腹に、右手の甲がドアを叩く。

「いるんだろ、桐乃」

言葉が口を衝いて出ていた。
ドアノブに手を掛ける。駄目元で捻ると、あっさり開いた。
家に誰もいないと思って、油断してたのかもしれねえな。

部屋から流れ出してきた、甘く冷たい空気に身震いする。
照明はついておらず、閉め切られたカーテン越しに届く仄かな陽光が、
部屋の中のものにぼんやりとした陰影を与えていた。
クーラーが冷風を送る音と、マウスのクリック音が虚しく響いている。
実に陰気な部屋だ。いるだけで気が滅入ってくる。
そしてそんな部屋の左奥に、俺の妹がいた。
手入れを怠っているせいか、髪のぱさつきがよく目立つ。
ディスプレイの光に照らされた顔はどこまでも無表情で、
寝ても覚めてもパソコンと向き合う生活を続けているせいか、目は赤く充血している。

「……なに、勝手に入ってきてんの?」
「話があるんだ」

桐乃はゴミを見るような目でこちらを一瞥し、

「あんたとなんか話したくない。出てって」
「やだよ」

俺は後ろ手にドアを閉めて言った。

「お前さ、いつまでこうして引きこもってるつもりなんだ?」

桐乃「支援」

「…………」
「撮影の仕事や、部活、無断で休んでるんだってな」

桐乃は「ッチ」と大きく舌打ちし、

「……誰から聞いたの?」
「んなことは今どうだっていいだろ。
 お前、いい加減に外出ねえと、終いにみんなから愛想尽かされちまうぞ」

ティーン誌の人気モデルに、陸上部のエース……。
今まで築き上げてきた地位が水泡に帰してもいいのか?
そんなこと、お前のプライドが許せるのかよ?
桐乃はふっと嘲るような笑みを浮かべて、

「別に?もう、どうでもいいし。勝手に愛想尽かしてろって感じ」
「おま……それ、マジで言ってんのか?」
「本気だけど?あたし今年受験あるし、
 モデルも走るのも飽きてきたトコだったし……丁度いい機会じゃん」

売り言葉に買い言葉、で出てきた言葉じゃなさそうだ。

受験勉強に専念する――辞めるには誂え向きの理由だな。
でもさ、

「それは建前だろ」
「ハァ?勝手に決めつけるとか超ウザいんですケド。
 なに『俺は全部分かってる』みたいなキモい顔してるワケ?
 あんたなんかに、あたしの考えてるコトの一万分の一も分かるわけないじゃん!」
「……受験勉強のためにモデルや部活をやめることは、俺以外の誰かに言ってあるのか?」
「ま、まだ言ってない。でも、これから言うつもりだったの!」

携帯を手に取り、電源を入れようとする桐乃。
コイツまさか今から事務所や部活の顧問に辞める意志を伝える気か?

「ちょ、早まんなって!」

お前が今超絶に神経質なのを忘れて、下手に刺激した俺が悪かった!
俺の呼びかけも虚しく、桐乃は素早く電話帳から目当ての番号を選び出し、通話ボタンに手を掛ける。
すんでのところで取り上げた。

「か、返してよっ!てか、あたしの携帯に汚い手で触んなっ!」

「落ち着け、落ち着けってば!」
「うるさいっ!返せっ!」
「返したら電話するだろ、お前!」

拙いパンチやキックを躱して後退していくと、背中が本棚にぶつかった。
逃げ場を失った俺は、わざと携帯を床に落として、
掴み掛かってきた桐乃の両手を、逆に掴み返す。
性別も違えば歳も違う。
膂力の差は歴然だったが、しかし……、桐乃は暴れた。
顎先に頭突きをもらい、爪先を親の仇のように力いっぱい踏み潰され、
鳩尾に数発膝蹴りを叩き込まれてなお俺は倒れず(今振り返ってもよく持ちこたえたと思う)、
逆に俺の股間を一蹴しようと大きく足を後ろに引いた桐乃がバランスを崩し――。

「…………ん」

目を覚ますと、後頭部がずきずきと痛んだ。
手をやると微かに膨らんでいて、熱を持っているのが分かる。
やれやれ、この年でたんこぶか。
軽く意識が飛んでいる間に、俺の体は桐乃のベッド脇にもたれ掛かるような格好になっていて、
部屋の中に桐乃の姿はなく、ついでに携帯も消えている。
……終わったな。なにやってんだ、俺。
絶望に浸りかけたそのとき、ドアが開いた。

麻奈美「なにやってるのきょうちゃん…?」

支援

                        -―─-
                     ´  /        `丶、
                  /              \
                                   ヽ
                   //   ,   | /\   \ \    .
                'イ   // /| {   \   / ∧   |
                |   i/|/\i八     ≪斗 //|  |
                  i |   N ィ弌'ト、_,  、_,ィチr'ト \|  /
                  i八   | {弋.iリ      弋.iリ }   ∧                    ,、
                  (ヘ八 {..ノ         / / `ニニ=‐'           / }
                   /介ー/)"    '     ""厶イi⌒ヽ\             / ,
             ー=ニ7 \∨/、    ァ┬‐r   イ /│ ∧ 丶、__      _/ /
                  ノ 、r'´ノ>、>‐( :i  )<:. / ':.:.:|   \     ̄ ̄ ̄  /⌒ヽ
              /{ ー|  '´ 勹.:.:∨ ーく∨.:.:.i ii.:.:.:|/ -='⌒\_          /⌒'
.     (` ー-----一 ´ /´  |   /.:.:.:.:.\.:.:. /.:.:.:.:i i|.:.:.:|      / >        /
     >─      /ー‐‐y   /|―‐'⌒><⌒ー| i|:ア|      / /\      /
.    /         マ⌒У  /i |`ー ‐'´V/V`ー | i| ∧    / /  丶
    '⌒\         / /   /| リ    /⌒l.   | i|彳 \_/ ,xく     \/
     <`ヽ     /'´     /八∧   /  リ   八 V|   └''´   丶、    \

「あ……」
「桐乃……」

焦燥の色を浮かべていた顔が、ぱぁっと明るくなって、すぐに顰め面に変わる。

「……起きたんだ」
「ああ、さっきな」
「これ、あげる」

桐乃は手に持っていた何かを放ってきた。氷嚢か。

「わざわざありがとよ」
「別に。クモ膜下出血とかで死なれても困るから作ってきてあげただけ」

氷嚢で押さえたくらいでクモ膜下出血が治るかよ、という突っ込みは我慢して、後頭部を押さえる。
熱が奪われていく心地よい感触に目を瞑っていると、

「ねえ……あんた、そのまま死んだりしないよね」
「死ぬかボケ」

死因がたんこぶとかどんな虚弱体質だよ。

「だってさ、倒れたとき、ものすごい音したよ?」
「親父やお袋が出払っててよかったな」

京介がスペランカーじゃなくて良かったな

桐乃が背中から倒れる一瞬前、
引き寄せることも間に合わないと判断した俺は、咄嗟に自分の体と桐乃の体を入れ替えた。
似たようなことが、一年前、桐乃があやせや加奈子を家に連れてきたときにもあって、
あの時は桐乃の背中に手を回すことで事無きを得たのだが(怪我の有無的な意味で)、
今回は両手を掴み合っていたことが仇になり、
結果、俺はめでたく後頭部を床に強かに打ち付け、
ダメ押しに桐乃のボディプレスをもらうことになった――んだろうな。
最後らへんはあんまし良く覚えてねえや。
っと、んなことよりも大事なこと聞くの忘れてた。

「お前、電話しちまったのか?」
「し、したって言ったら?」
「俺がかけ直して、さっきのは間違いだから取り消してくれって頼む」

俺は大真面目に言ったつもりだったのだが、
桐乃は「ぷっ、馬鹿じゃん」とお馴染みの台詞を口にすると、俺の前にぺたんと座り込み、

「……電話はしてないよ。これが証拠」

携帯を操作して、発信履歴を見せてくる。
最新の発信日時は三日前のものだった。

俺の彼女よく「ビンタしていい?」って聞いてくるけどビンタされたほうがいいのか?

>>236
代わりにチューするけどいい?とか聞け
ていうかもうVIPに二度と出て行け

桐乃を縛って目の前であやせと濃厚なセックスしたい

ホッと胸を撫で下ろそうとした矢先、

「でも、辞めようと思ってるのはホントなんだ」

桐乃は神妙な顔で言った。

「受験のためじゃなくて?」
「うん……もういいかな、って。
 やる気がなくなったっていうよりは、やる意味が無くなったっていうか……。
 モデルはお小遣い稼ぎのために、続けてもいいかなーって思ってるケド……」

ええぇぇ、それ逆じゃね?
普通モデル業より部活優先するだろ。だって、

「お前、あんなに走るの大好きだったじゃねえかよ」
「走るのは今でも好きだよ」
「じゃあ……!」

俺はそこで二の句を継げなくなる。
桐乃は濡れた瞳に、再び拒絶の意志を宿し、

「もう、どうでもいいじゃん。あんたには関係ないことでしょ」
「桐乃……」

桐乃に唾液を飲ませたい

桐乃の足を舐めたいし、足の裏を舐めさせたい

拙者も仕事がないでござる

沙織に抱きしめられて上からキスされたい

そうだ、殺そう

>>276
受験勉強も四回までならやり直せる。
ソースは俺。

ここが分水嶺だ。このときの俺には、根拠不明の確信があった。
自分に課した約束を破るか否か。
破れば俺はきっと桐乃の我が儘を叶えてしまう。
守れば俺はきっと瑠璃の呪いに縛られ続ける。








かなり迷ったんですけどやっぱ安価にします
ここは安価SSスレだもんね
誰かが泣いて誰かが幸せになるルート と 誰も泣かないルート に分岐

1 自分との約束を破る
2 自分との約束を破らない

ラスト安価になりそうなので>>300までに多かったので

>>279
そんな事思ってたから4回もやる事になったんだよ…

両方頼む

どちらかと言えば1
できたら2も後で頼む


両方書けなんて野暮なこと言うなよ

→ 1 誰も泣かないルート



「関係なくなんかねえよ。お前は俺の妹だろうが」
「い、妹だから何だっての?」
「放っとけねえって言ってんだ」

親父に『桐乃を任せる』と責任を負わされたからでも、
あやせや麻奈実に発破を掛けられたからでもない。
事実俺は、今この瞬間まで、自分との約束を破るつもりなんてなかったんだ。
卑怯だよ、妹ってやつは。
兄貴の弱点がなんなのか、無意識のうちに分かってやがる。

「俺はお前の泣いてる姿は見たくないんだよ」

人差し指で、桐乃の目から溢れた涙を拭ってやる。

「やめてよ」

桐乃はいやいやするように首を振った。

「中途半端に優しくしないでって、あたし前に言ったよね?」

言われた記憶は無いが、お前が言うならそうなんだろうな。

「そういうの、マジでムカつくの……。
 構うのか構わないのか、どっちかにしろって感じ……。
 妹が泣いてる姿は見たくない?……ざけんなっ。
 それじゃああんたさぁ、あたしを泣き止ませるためなら、何でも出来るわけ?」

俺は頷く。
桐乃は一瞬怯むように肩を震わせて、ぎり、と下唇を噛み、

「じゃあ……………………黒いのと、別れてよ」
「それは……」

言い淀むと、桐乃は勝ち誇ったような笑みを、涙で濡れた顔に浮かべて、

「ほら、どうせ出来ないんでしょ?
 撤回していいよ。あんたが口先で言ってるのは、最初から分かってたし――」
「待てよ。俺はまだ何とも言ってねえだろ。
 それに答える前に、ひとつだけ、どうしても訊いておきたいことがあるんだ」
「な、何?」
「お前はどうして、俺と黒猫に別れて欲しいんだ?」







風呂

本作で見れそうにないから濃厚な近親相姦をみたい

黒猫「兄貴の恋愛に干渉するとかマジキチ」

「そ、それは……っ」

攻守が反転する。
ただ単純に、自分の兄貴と友達が付き合うのが許せないという理屈が通らないのは、
桐乃も重々承知しているはずだ。
いつまでも口を噤んだままの妹に、俺は尋ねた。

「お前、俺のことが好きなのか?」

燃え上がった後悔の炎は、そのすぐ後で、清涼感にも似た開放感に吹き消される。
もう元には戻れない。でも、それでいい。
ずっとその真偽を確かめたくて、答えを知るのがどうしようもなく怖くて、
『その質問をする状況』から、俺はこれまでみっともなく逃げ回っていた。逃げ切れた気でいた。
瑠璃と付き合う選択をすることで、
もし仮に『桐乃が異性として俺のことが好き』だったとしても、
自然とそれを諦めてくれるだろうという後ろ暗い打算があった。

「あたしは……あんたのことが……あんたのことなんか……っ」

桐乃は顔を真っ赤にして、苦しそうに言葉に喘ぐ。
もしも桐乃が『異性として』俺のことが好きで、
そのために瑠璃と別れて欲しがっているなら……、俺はその気持ちには応えられない。
確かに俺は、桐乃が泣いている姿は見たくないと言った。
でも一時的に『妹の涙を止める』ことが、『妹を不幸せ』にする未来に繋がるなら、
俺は妹が――桐乃が自分で泣きやんで、自分の力で歩き出すまで見守る道を選ぶ。
もしも桐乃が『兄として』俺のことが好きで、
そのために瑠璃と別れて欲しがっているなら……、俺は……。

「分かんない」

桐乃は涙をポロポロ零しながら、叩きつけるように叫んだ。

「あたしは自分でも、あんたのことをどう思ってるのか分かんないのっ!」
「なっ」

完全に想定外の答えに、またしても攻守が逆転する。
わ、分からないってお前……自分の心に尋ねればすむ話だろうがよ!

「わ、分かんないことは分かんないんだから、しょーがないでしょ!?」

桐乃はぐしぐしと両手の甲で目を擦ると、キバを剥いて睨み付けてくる。
そして出し抜けに立ち上がると、乱暴に本棚をスライドさせて襖を開き、
オタクグッズを掻き分けるようにして"あの段ボール箱"を取り出した。
通信簿や運動会のワッペン……あの段ボール箱に入っているのは、
桐乃が過去の自分と向き合い、初志に立ち帰るためのアイテムだ。
唖然とする俺を余所に、桐乃は段ボール箱のフタを開けアルバムを取り出すと、

「見て!」
「は、はぁ?」

いきなりなんだってんだよ。
今の話と、お前の『陸上を始めた理由』のどこに関係があるってんだ?

「いいから!見て!」

物凄い剣幕に押されて、アルバムを受け取る。

もう二度と見ることはないと思っていた。
桐乃が留学する日の未明、そのチャンスを、自分でふいにしてしまったから。
アルバムの表紙を開く。

果たしてそこにあったのは、幼い頃の桐乃と俺の二人か、俺一人だけが写っている写真ばかりだった。
大きな毛布にくるまり、抱き合って眠っている二人。
リビングで頬をすり寄せ合って笑っている二人。
親父の竹刀を振り回している俺。
庭に設えたビニールプールで水を掛け合っている二人。
玄関の前でランドセルを背負いVサインをしている俺。
ブランコに乗った桐野と、その背中を押してやっている俺。
砂浜で砂のお城を作っている二人。
揃ってランドセルを背負い、玄関の前に立っている二人。
運動会の徒競走でゴールテープを切っている俺……。
ブレの有無で、お袋と親父のどちらがシャッターを切っていたのか分かる。
ふっくらと丸い顔に天真爛漫な笑みを咲かせた桐乃は天使のように愛らしく、
俺はガキのくせに真面目腐った、なんつーか、今の俺もよりもずっと桐乃の兄貴らしい顔をしていた。
眠っていた記憶が呼び覚まされていく。

俺はこれらの写真が撮られた瞬間を覚えている。
現像された写真を親父やお袋に見せてもらった記憶もある。
だが以前親父に桐乃の趣味を認めさせようと親父のアルバムを持ち出したとき、
そこに俺が写っている写真は一枚もなくて、
ああ、どうせ桐乃に比べれば俺なんて……と軽いショックを覚えたりもした。

「お前が持ってたんだな」

俺の正面にぺたんと座り込んだ桐乃は、さっと目を逸らし、ややあってから頷く。
理由を聞くのは後でもいい。とりあえず最後まで目を通すか。
ぱらぱらと頁を捲っていくと、アルバムの中程で、唐突に終わりが訪れた。
最後の一枚に写っていたのは、
碧眼を眇め、悔しげな表情でバトンを握りしめて佇立している体操着姿の桐乃だった。
胸のゼッケンには『2-2』の文字。
確かこの頃の桐乃はまだ全然足が遅くて、
だからこれはきっと、桐乃がリレーで負けちまった時の写真なんだろう。
背後の勝者と思しき男の子の喜びようがコントラストとなって、
余計に哀愁を誘う一枚に仕上がっている。

「これで終わりかよ……?」

お前の輝かしい勝利の記録は?

「写真はそれで終わり。次の年からビデオになったから」

「ああ、そうだったっけ。
 で……お前がこのアルバムを俺に見せた理由は何なんだ?」
「あたしが陸上始めたのはさ、あたしがまだ小学生で、足が遅かった頃に、
 超ムカつくことがあったからって、前に言ったじゃん?」

質問に質問で返すなよな。

「聞いたよ。その超ムカつくことが何かは聞いてないけどな」

桐乃は言葉を選ぶように口籠もり、
しかしそれ以外に適切な言い方を思いつかなかったのか、

「そのアルバム見たら分かると思うケドさぁ、
 小さい頃のあたしたちって、き、気持ち悪いくらい仲良かったよね?」

気持ち悪いくらい、は余計だろ。

「あんたはあたしのことが大好きで、
 あ、あたしも兄貴のことがそれなりに好きで、
 どこに行くのも一緒で、何をするのも一緒だった……よね?」

当時の記憶はほとんど残っちゃいねえが、
まあ、このアルバムを見る限り、俺たちは仲睦まじい兄妹だったんだろうな。

その関係が拗れることなく続いていれば、
俺たちは赤城兄妹のように、普通に仲の良い兄妹になれていたのかもしれない。

「よく公園に遊びに行ったの、覚えてる?」
「さっきの写真にも写ってた公園か?」
「そ」

俺はアルバムを逆向きに捲り、桐乃がブランコに乗り、
俺がその背中を押している写真を見つけ出す。
背景を見る限り、敷地はかなり広いようで、ブランコの他にもシーソーや回転式の遊具が見える。
少なくとも近所の小さな公園で無いことは確かだ。

「これ、どこの公園なんだ?」
「中学校の近くにあるでしょ。あんたが……ホラ……あやせを説得してくれた、あの公園」

嘘つけ。
あそこは公園と呼ぶのも躊躇われるほど何もない殺風景な場所で、こんなブランコ――。

「撤去されたの。何年か前に小さな子が遊具で怪我して、その親が大騒ぎしてさ。
 結局、残ったのは鉄棒と砂場だけ」

桐乃は小さく洟を啜って、

「やっぱり、覚えてるワケないよね」

これだけ言われても、思い出せないものは思い出せない。

「すまん」
「謝んなくてもいいよ。
 あんたの記憶はあたしよりも三年分劣化してるんだから……、忘れてても仕方ないと思うし」

ムカつくけど、と付け加える桐乃。やっぱ怒ってんじゃねえか。

「小さい頃のあたしはさ、友達作るのが苦手でさ、
 家に帰ったら兄貴の後についてばっかりだったんだ。
 兄貴と一緒に遊ぶのが楽しくて……、兄貴がいれば、友達なんていらないと思ってた」

桐乃はそこで一瞬、チラ、と俺を恨みがましい目で見て、

「でも、あんたはあたしのことを裏切った」
「う、裏切った?」
「いつもみたいにあんたと一緒に公園に行ったら、
 そこにあんたの友達がいて……、あんたはあたしじゃなくて、友達と遊ぶのを選んだのっ」

桐乃が幼稚園児に見えてしょうがない

ブチュビュチュ

桐乃「あんっ、アァン…京介っ気持ちぃよ…んっ」

京介「コラ、俺のことはお兄ちゃんと呼べと言ったはずだろ」

京介「お仕置きが必要だな」

桐乃「んん、ごめんなさい…お、お兄ちゃんっう」

京介「よしいい子だ、もっと激しく突いてやるぞ」

ブチュビュチュ

ジャイ子「あんっ、アァン…タケシっ気持ちぃよ…んっ」

ジャイアン「コラ、俺のことはお兄ちゃんと呼べと言ったはずだろ」

ジャイアン「お仕置きが必要だな」

ジャイ子「んん、ごめんなさい…お、お兄ちゃんっう」

ジャイアン「よしいい子だ、もっと激しく突いてやるぞ」

幼稚な裏切りだな、と一笑に付しかけて、自己嫌悪に陥った。
当時の桐乃にとっては、俺は兄貴であると同時に、唯一の友達だったんだ。

「あたしはあんたに置いてかれるのがヤで、あんたとあんたの友達の後についてった。
 そしたらあんたがすっごく怖い声で『帰ってろ』って言って、
 それでもあたしがついていったら、あんたと友達が走り出して、
 足の遅いあたしはすぐに兄貴たちの姿を見失って……そんなことが何度もあったの」

たぶん、俺は本気で桐乃のことをウザがっていたわけではないんだろう。
だが同年代の友達と遊ぶことと、幼い妹の相手をすることを天秤にかけたとき、下がるのは当然前者の皿で、
それから少なからず、友達の前で妹を優先するのが気恥ずかしかったに違いない。
俺を見失い、半泣きで一人帰路を歩む桐乃の姿を想像する。

「ごめんな、桐乃」

無意識のうちに謝っていた。

「……遅いよ、馬鹿」

その同年代の友達ってのが・・・

桐乃は懐古するように遠い目になり、

「あたしが走る練習始めたのは、それから。
 運動会のリレーでビリになることよりも、
 あんたに置いてかれたことの方が、よっぽど悔しくて、悲しかった。
 小さい頃のあたしは単純でさぁ、兄貴たちに追いつければ、
 また一緒に遊んでもらえると思ってたんだよね。
 馬鹿みたいだケド……、本気でそう思ってたんだ」

くすっ、と笑い声を挟み、

「そしたら何勘違いしたのか知んないケド、
 あんたがあたしに、どうやったら早く走れるようになるのか、色々教えてくれたんだよね。
 結局、あたしが兄貴たちに追いつけるくらい足が速くなる前に、
 あたしにも仲の良い友達ができて、走る練習をやめようかな、って思ってたところに、運動会があったんだ。
 あたしが三年生で、あんたは六年生で……、
 一緒に参加できる最後の運動会だから、
 せめてどれだけあたしの足が速くなったか見てもらおうと思ったの」

桐乃ははにかみながら、手に隠し持っていたiPodを俺に手渡した。

「見て」

見て?そこは「聞いて」が適当なんじゃないかと訝しみつつ、
イヤホンを片耳に挿し、クリックホイールを操作して再生した瞬間、
俺はiPodが『音楽』だけではなく、『動画』も再生できるツールに進化していたことを思い出した。
iPodの画面に、幼い桐乃の姿が映し出される。
テレビで再生したものを直に撮り直したんだろう、
画質は最低だが、これが運動界のワンシーン――桐乃の徒競走――であることは分かる。

『桐乃ー、がんばってー』

がやがやとした喧噪に混じって、若かりし頃のお袋の声が聞こえる。
ビデオカメラを回しているのは親父と考えて間違いなさそうだ。
桐乃がスタートラインに着く。
まだクラウチングスタートを知らない桐乃は、ただ体を前に傾け、ひたとゴールテープを見据える。
そして――乾いた空砲の音が轟き、走者が一斉に駆けだした。

でも俺の脳内でも、桐乃と京介のわだかまりの原因はこんな感じだと思ってた。

所詮、小学三年生の駆けっこだ。
走者の身体能力に差はほとんどなく、
走る練習をしていた桐乃が上位に食い込むのは容易いはずだった。
なのに……桐乃の足は悲しいほど遅く、みるみるうちに前の集団から離されていく。
リアと桐乃の勝負を見ていた時と、そっくり同じ感覚が腹の底から沸き上がってきた。
くそっ、応援してやりてえ。
頑張れと、負けるなと、諦めるなと、まだ追いつけると、大声で叫んでやりたかった。
現在と過去を隔てる液晶ディスプレイの前で歯がみしたその時、

『がんばれぇーっ、いけーっ、桐乃ーっ!』

喧噪を切り裂いて、誰かの絶叫が木霊した。
親父は桐乃を追いかけるので精一杯で、その誰かの顔は映らないが、俺には分かる。
――こいつは桐乃の兄貴だ。

『負けるなぁーっ!抜けーっ!最後まであきらめんな桐乃ーっ!』

ほら、その証拠に俺が言いたいことを全部言っちまいやがった。

これ終わっても、黒猫との睦言√書いてほしいな。

俺の祈りが届いたのか、はたまた緊張で忘れていた走り方を思い出したのか、
桐乃の体がぐんぐん加速していく。まるで桐乃の背中にだけ追い風が吹いているかのようだ。
あっという間に一人を抜き去り、もう一人の背中に追いついたところで――ゴール。
五位、か。段ボールに入っているワッペンの数字どおりの結末だ。
そこで動画は終わっていた。
俺は桐乃にiPodを返し、

「100メートル走ならお前が一位だったな」
「ぷっ、いいよ。今更慰めてくれなくても」

桐乃はiPodを大切そうに両手で包んで、

「あんたの応援、ちゃんと聞こえてたから。
 あたしが最後に早くなったのは、あんたのおかげ」

照れ臭くなった俺は頬をポリポリ掻きつつ、

「あれはお前の実力だろ」
「ううん。それだけじゃない。
 嘘言っても仕方ないから、言うね。
 あ、あたしさ……、なんでか分かんないんだケド、
 あんたに応援されると、いつも以上に頑張れるんだ」
 

桐乃は俯き、

「あの時あんたが応援してくれて、すっごく嬉しくて、気持ちよくて、
 たぶんその気持ちが、走ることに結びついたんだと思う。
 だからあたしの陸上の原点はあんたで……その原点を記録したコレは、あたしにとっての宝物なの。
 スランプになったときや、走るのが辛くなったときは、コレを見るんだ。
 あはっ……あんたからしたら、超キモいよね?」

中学に上がって、陸上部に入った桐乃は、
親父やお袋だけじゃなくて、俺にも大会を見に来て欲しかったに違いないんだ。
俺たちは小さな頃の擦れ違いをそのままにしたまま、成長してしまった。
桐乃は裏切られた記憶をいつまでも忘れられず、
俺は裏切った記憶をいつのまにか忘れてしまって。
物心ついた桐乃は素直に兄貴に甘えられなくなり、
妹にコンプレックスを抱えた俺は妹を避けるようになり。
『仲直りしよう』
一番言いたかった言葉は、時間が経てば経つほど、絶対に言えない言葉になっていった。

「去年の春に人生相談するまで、あんたはあたしのことが大嫌いで、
 同じ家にいても他人同然で、あんたが家を出たら、
 本当の本当に他人みたいになっちゃうんだと思ってた」

襖の奥のオタクグッズを一瞥して、

「けどあんたは……あたしの相談に乗ってくれた。
 あたしが友達探すの手伝ってくれて、
 お父さんと喧嘩してまであれを守ってくれて……他にも色々してくれたよね。
 それで、人生相談を続けていくうちに、また昔みたいに戻れるカモって思った。
 もう一度あんたのことを好きになれるカモって」

桐乃の告白は、俺の考えていたことと全く同じだった。
桐乃の我が儘を、面倒だ、鬱陶しい、と言いながらも叶えてやっていたのは、
俺が桐乃と仲直りしたかったからだ。桐乃のことをもう一度好きになりたかったからだ。

「あんたが留学してたあたしを連れ戻しに来たとき、どうしてあたしが帰ることにしたか分かる?」
「……俺がお前がいないと寂しくて死ぬって言ったからか?」
「そ、それは……違わないけど、違う……」

どっちだよ。

「あー、じゃあお前がリアに言った台詞そのまま借りるけど、
 こっちにお前の大切なモンがたくさんあって、それがお前の原動力、だからか?」

桐乃はまたしても首を横に振り、

「日本に帰れば、あんたがあたしのことを見てくれるって、
 あの時みたいにあたしを応援してくれるって、はっきり分かったから。
 こっちに来たリアと中学校で競争して、あんたに応援されて再確認した。
 あのね、あたしさ……弱く、なっちゃったんだ……」
「弱くなったって、どういう意味だよ?」
「あたしはもう…………なきゃ…………ダメなの」

枯れていた涙が、再び目の縁から溢れ出す。
桐乃は嗚咽を必死で堪えながら、

「あたしは……あたしはもうっ……あんたに見ててもらわなきゃダメなのっ……!」
「な、何言ってんだよ。俺はいつでもお前のことを」

見てるじゃねえか、と言い終える前に、桐乃が涙混じりの言葉を投げつけてくる。

「見てないっ!」

怯んだ俺に、桐乃は畳みかけた。

「黒いのと付き合いだしてから、あたしのこと、全然見てくれてないじゃんっ……!
 どうせっ……どうせあたしのことなんか……どうでもよくなっちゃったんでしょっ……!?」  

なんだその言い草。
あれだけ自分から俺を拒絶するような態度とってたくせによ。
やっぱり構って欲しかったんじゃねえか。

「俺がここ最近、お前のことを避けてたのは……」

ああ、クソ。
なんでよりにもよって一番言いたくない相手にこんなことを言わなくちゃならねえんだろうな。

「お前に……兄離れして欲しかったからだよ!」
「あ、兄離れ?」
「ああ、そうだ!
 お前は自覚なかったのかもしれねーけど、ここ最近のお前は、俺にベタベタしすぎなんだよ!」

普段から人のことシスコンシスコン馬鹿にしてるけどな、

「お前も立派なブラコン――ぶはっ」

痛ぇ!何しやがる!?
俺の胸をボカッと一発殴った桐乃は、

「ブ、ブラコンの何が悪いワケ!?
 むしろシスコンのあんたからしたら好都合だよね!?
 なんでまた距離置こうとするの!?そんなの、おかしいじゃんっ!」

「俺は怖かったの!
 お前に、純粋に兄貴としてじゃなくて、
 その……まあ……なんだ……一人の男として好かれてたらどうしようかと――ぐはっ」

パンチ二発目頂きました。
誰も心臓マッサージは頼んでねえよ!

「あ、ああ、あたしがあんたのことを……ひ、一人の男として……?」

桐乃は舌を激しく縺れさせ、

「そ、そんなこと……」

あるワケないじゃんマジエロゲ脳キモすぎ死なして九十九里浜に埋めるよ?とは続けずに、

「……分かんない」

またそれかよ!
とりあえずは俺を安心させるために『兄妹としての好きだよ(ハート)』って言っとけや。
なんで禁断の愛の可能性を残すの?ねえ、なんで?

あやせたんマジペロペロ

「あ、あんたと疎遠だった時間が長すぎたから、
 自分でもあんたへの『好き』がどういう『好き』なのか分かんないのっ!
 た、多分……兄妹としての『好き』なんだとは……思う……ケド?」

"多分"と最後の疑問符が余計だが……まあ、今のところはそれで納得しといてやるか。

「で……、話を元に戻すけど、
 お前は……俺に見てて欲しい……んだよな?」

桐乃は顔を真っ赤にして、しかし力強く頷く。
俺は言った。

「俺はいつでもお前のことが心配で、いつでもお前のことを応援してる。
 それは黒猫と付き合っても、何も変わらねえよ。……なぁ、それじゃダメなのか?」

数秒の沈黙。
やがて桐乃は、膝をついて俺の傍に寄ってくると、
ライトブラウンのつむじを俺の胸に預け、

「一番じゃ、ないんでしょ?」

ぽす、とまともに握ってもいない拳で叩いてくる。

「一番じゃなきゃ、ヤなの」

そして桐乃は、俺がこれまで聞いた中でも、史上最大級の我が儘を口にする。

「黒猫はあたしの友達で……友達だから……あんたのことが本気で好きなのも分かってるっ……!
 でも……ヤなのっ!あたしよりも黒猫の方が大切にされるのが……ヤなのっ……!」

そっか。お前の気持ちはよく分かったよ。

「あんた、男と付き合うのなんてやめて欲しいって……この前あたしに言ったよね……。
 なのに……自分は黒いのと付き合うなんて……そんなの、ズルい!
 あたしだって……あたしだってっ……!兄貴に、女と付き合うのなんてやめて欲しいっ……!」

Tシャツは涙でぐしょ濡れだ。
ぽかすかと殴りつけてくる桐乃の頭に手を乗せて、小さな子をあやすように撫でてやる。
そうしていると、ずっと昔にも、こんなことがあったことを思い出した。
転んで膝を擦り剥いた桐乃を、
雷に怯えた桐乃を、
親父に叱られた桐乃を――俺はこんなふうに慰めてやっていたんだ。
妹が泣いたら、泣き止ませるのが兄貴の仕事で、
妹が離れるその時まで、我が儘を聞いてやって、しっかり護ってやらなきゃならない。

「なあ、桐乃。お前に約束してほしいことがあるんだ――」








飯 現在9/10

なんという告白。。。 しかしそろそろ桐乃は京介の言った台詞の中で
一人の男として好かれていたとしたら、何故「怖い」のかを追求しようぜ

>>582
なぜ「怖い」かの答えによっちゃあかなりのニヤニヤもんだな

>>577訂正

妹が離れるその時まで、我が儘を聞いてやって、しっかり護ってやらなきゃならない。

「なあ、桐乃。お前に約束してほしいことがあるんだ――」

×

妹が離れるその時まで、我が儘を聞いてやって、しっかり護ってやらなきゃならない。
そうだったよな、赤城。

「なあ、桐乃。お前に約束してほしいことがあるんだ――」

「イヤあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!晒しスレが立ってるぅぅぅぅぅぅ!!!!」

ムンクの叫びのように両手を頬に当てて絶叫する少女の名前は赤城瀬菜。赤城の妹だ。
俺は真壁君と顔を見合わせ、今は触れないほうがいい、と無言で合意を終えた。
だというのに瑠璃は横目でチラと瀬菜を見遣ると、

「あなたは相も変わらず騒がしいわね。
 またわざわざネットから批判を蒐集して発狂しているの?
 被虐趣味も大概にしておきなさいよ。耳障りだから」

あーあ触れちまった。瀬菜はキッと瑠璃を睨め付けて吠えた。

「五更さんは批判され慣れてるかもしれないですけどっ!
 あたしには全っ然耐性ができてないんです!」
「おい赤城ィ、お前ちっと声のトーン落とせよなぁ。この前も隣の部室から苦情が……」
「部長は黙ってて下さい。
 あと壊滅的に臭いので可及的速やかに全身を殺菌洗浄してきてください」

部長はのっぺりした前髪を摘みながら、

「ハァ?一昨日シャワー浴びたばっかりだぜぇ?」
「真壁せんぱい、ファブリーズをお願いします」

ここで場面変えるかぁ・・・  (´・ω・`)

両手にファブリーズを携え、距離を詰めていく真壁くん。

「オイ真壁てめぇ、まさかチョクで吹きかけるつもりじゃねえだろうな!?」
「きちんと毎日お風呂に入らない部長が悪いんですよ。汚物は消毒です」

シュッシュッ。真壁くん容赦ねえな。

「ギャーやめろ!やめろって!今すぐ水浴びしにいくから」

部室を飛び出していく部長には目もくれず、
瀬菜はマウスのホイールを回しては呪詛を吐く作業を再開している。
匿名批評者の槍玉に挙げられているのは、
ゲー研が夏コミ一日目で販売した創作物だ。
制作の根幹にはもちろん瑠璃と瀬菜が関わっていて、
煽られ慣れていない瀬菜が発狂するのはもはや恒例行事になりつつある。

「キィームカツク!ああぁー悔しいっ!
 こいつら人間じゃないです!人の皮を被った悪魔です!」
「なら悪魔も納得させるようなゲームを作るまでよ」

瑠璃にすげなく言い換えされた瀬菜は、ぐぎぎと歯を食いしばり、
文句の聞き役を探して部室を見渡し、標的を俺に定める。

「ねー高坂先輩。聞いてくださいます~?」
「真壁くんに聞いてもらったらどうだ?」

真壁くんはニッコリ笑って、

「僕でよかったら聞き役になりますよ。悔しい気持ちは僕も一緒ですし」
「真壁せんぱぁい……」

真壁くんと瀬菜の仲を取り持つ俺マジGJ。
瀬菜は男からのアピールに鈍そうだし、真壁くんは積極性に欠けるからな。
これで実は既に付き合ってる、とか言われたらビックリだけどよ。
今度それとなく真壁くんに聞いてみっかな。

-------


昇降口を出たところで、瑠璃は何も言わずに手を絡めてきた。

「お、おい。誰かに見られたらどうすんだよ」
「何も怖れることはないわ。
 半径五メートル以内の空間に『頻闇の帳(ブラインドフィールド)』を展開しておいたから。
 で、今日はどこに連れて行ってくれるのかしら?」

瑠璃は上目遣いに尋ねてくる。
今日は部活に参加した後、途中で抜けて、制服デートを楽しむ約束をしていたのだ。
俺は言った。

「その前に……さ。瑠璃に話があるんだ」

期待の光を宿していた瑠璃の双眸に、翳りが差す。

一線超えるのだね

「それは歩きながら話せるような話ではないの?」
「ああ。できるならどこか、落ち着いた場所で話がしたい」
「………そう。なら誂え向きの場所を知っているわ」

瑠璃はきゅっと下唇を噛むと、俺の手を引いて、校門とは逆方向に歩き出した。
果たして辿り着いたのは校舎裏のベンチで、俺たちはそこに手を繋いだまま腰掛けた。
日陰を吹き抜ける涼風に汗が引いていく。
グラウンドから響く運動部のかけ声と、葉擦れの音以外には何も聞こえない静謐なこの場所は、
俺と瑠璃にとっては思い出深い場所でもある。

「…………」

話がある、と言い出しておきながらダンマリを決め込んだ俺に、
瑠璃は辛抱強く付き合ってくれた。
唇を湿らせ、覚悟を決める。
しかし俺が舌先に言葉を載せる直前に、

「別れよう」

えっ?

「そう、言いたかったのでしょう?」

トラウマになりそう この展開 ><

だから「涙のわけは!?CMのあとで」っていうのはもう・・・

「なんで……」

と呟きを漏らすのが精一杯の俺に、瑠璃は訥々と言葉を重ねていく。

「わたしと二人きりになった途端に、
 あんなに悲愴で、沈痛で、哀切の漂う表情をされれば、厭でも察しが付くわ。
 で、わたしの勘は当たっていたのかしら?それとも外れていたのかしら?」

否定できない。ああ、その通りだ。
確かに俺は今日、お前に別れを切り出すつもりでいた。
沈黙は肯定と同義で、瑠璃はふんと鼻を鳴らし、

「どうやら図星だったようね。
 理由は……十中八九、あなたの妹に泣き付かれたからでしょう?
 そろそろ頃合いだと思っていたのよ。
 あなたが折れるか、あの女が素直に欲望を吐露するか、のね」

全ては想定内だと言わんばかりの語り口だった。
そして今のところ、瑠璃の言っていることはほとんど正鵠を得ている。

今のところは とうあるが 京介にしてこの変節はありえない

このあとの展開がどうなろうと、ここまでむごい精神的ブラクラ踏まされたような気分は晴れませんわ

「三日と少し……よくもったほうだ、と言うべきなのかしら。
 いずれにせよ、短い幻想(ユメ)だったわね。
 ふふっ、あなたを家に呼んだときに既成事実でも作っておけば、
 わたしは今も幻想(ユメ)を見続けることができていたのかしら」

瑠璃は清々しい表情でそう言い放ち、立ち上がろうとする。
でも、俺は瑠璃が手を解くのを許さなかった。
……このまま行かせてたまるか。

「離して頂戴」

瑠璃は振り返らずに言う。

「安心しなさいな。
 わたしがあなたと付き合っていたことは、
 一夏の思い出として、胸の内に仕舞っておいてあげるから。
 ベルフェゴールや沙織にはまだ何も伝えてないのでしょう?
 なら、何も問題はないわ。あなたはこれまで通りの日常に回帰――」

力に任せて、無理矢理振り向かせた。瑠璃は咄嗟に俯く。
それでも瑠璃がこちらに顔を向けた一瞬、たしかに俺は瑠璃の眦に大粒の涙を見た。
なに、物わかりのいい彼女演じてんだよ。
全然納得できてねえんじゃねえか。

神速で風呂
明日の朝から明後日の夕方までPCに触れないから
今日中に終わらさないとヤバイ

瑠璃泣かせといて、物分りのいい女優云々はねえだろ

この瞬間まで別れを切り出すつもりだった京介だぜ?

なんなの、この流されやすいご都合主義の性格は?

「なぜわたしを止めるの?
 まだ何か不満なら、どうぞ言ってごらんなさいな」

不満?大ありだよ。
俺は言った。

「お前の言ったことは、大体当たってる。
 桐乃は……あいつは、俺がお前と付き合うのがどうしても許せないらしいんだ。
 俺がお前に取られる気がするんだと……まるっきりガキの理屈だよな」

ホント、中学三年にもなって、兄貴に彼女作るなとかどんだけブラコンなんだって話だよ。

「でもさ、俺は桐乃の我が儘に耳を塞げなかった。無視できなかった。
 元を辿ればさ、あいつがそんなことを言い出した原因は俺にある。
 俺は随分長いことあいつをほったらかしにしてきて、
 そっからこれまでの空白期間を埋めるみたいに、あいつに構っちまった。
 自分で言うのもなんだけどさ……、今のあいつには、俺が必要なんだ。
 あいつは俺が見てなきゃダメになっちまうんだよ」
「ふっ、妹を想う兄の鏡ね。シスコンとブラコン、最高の組み合わせじゃない?」

俺は瑠璃の震えた声には応えず、

「でも、俺だっていつまでもあいつのことを見ていられるわけじゃねえ。
 だから桐乃に約束させた。
 もしも桐乃に、桐乃のことを俺よりも大切にしてやれる奴ができたら――その時はお役ご免だってな」

 別れる
 別れない
ニアキープ

で、瑠璃にお預け喰らわして、それで納得しろってか

「あなたは当然、その約束があなた自身を縛ることにも気づいているのでしょうね」
「ああ、分かってるつもりだ」

桐乃に彼氏ができるまで、桐乃を誰よりも大切にすることは、
桐乃に彼氏ができるまで、俺が彼女を作れないことと同じ意味だ。
それを承知で、俺は桐乃と約束を交わした。

「それで……」

瑠璃は繋いだ手に力を込めて言った。

「あなたはわたしに、あの女に彼氏ができるまで待っていろと言うの?」

でもさ、それなりに期待して読んでたんだぜ?

いま、一生懸命加筆修正してるところか?_



   ,、,.'" ̄`ヽ  < 『これは遊びじゃない』だよ、かなかなちゃん♪
    i (;ミ〃リハソ          ノ)
   |.爪i」´ヮノl|      へ8" ̄ ̄8へ
   ノノ iつ旦と      ( (/ィ人レ人) )
  (´ .くOvvvrつ  旦~ ()人゚Д゚ ;人( < なんだこのキモオタ共、なに必死になってんだ……きめぇ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

選んだのは「約束を破る」ルートであって
「誰も泣かないルート」を選んだのは>>1じゃね?
違ってたらすまん

約束を破る⇒桐乃を見守らない⇒黒猫とそのまま⇒なおかつ誰も泣かない

⇒作者の力量に期待 ・・・だったのに。

すでに猫泣かしてんじゃん

っていうか誰も俺の質問に答えてないけど、結局京介の約束ってなんなんだよ
まさかあんたら約束の内容も知らずに選択肢選んだわけ?

もうすぐ終わるので減速してもらえたらありがたいです
できればこのスレで終わらせたいと思っているので




「……待っててくれ、とは言わない」

お前が誰か他の奴のことを好きになっても仕方ないし、
その時に、俺がお前に文句を言う資格もない。
だから、

「もしも桐乃に彼氏ができたら、"俺"が"お前"に告白する」

お前が俺に愛想を尽かしていたら、遠慮無く、こっぴどく振ってくれていい。
もしも一分でも好きな気持ちを残してくれていたら、その時は……。
どちらにせよ、選ぶ権利は瑠璃にある。
その選択権さえ放棄したいなら、それでも構わない。
俺はもう……瑠璃に嫌われるには、充分すぎるほど最低なことをした。

規制で書きたくても書けなかったんだよ

>>775
桐乃に兄離れさせるために桐乃を避ける
ことを突き通すのが約束を守るで
桐乃に構うことが約束を破る
だと思ってる>>542を読んで思ったことだが

結局、黒猫の気持ちをレイプしただけの三文芝居だったか。

「ごめん」

俺は手を解き、目を瞑って頭を垂れる。
長い長い沈黙があった。
目を開けばそこに瑠璃の姿はなく、
一人ベンチに取り残されているのではないかと疑うほどの静寂があった。

「卑怯よ」

瞼を開く。瑠璃はまだそこにいてくれた。

「そんなことを言われては、あなたを責めるに責められないじゃない」
「瑠璃……」
「さっきも言ったでしょう……三日と少し……よくもったほうだ、と。
 あなたに別れを切り出されるのは、所詮時間の問題なのだと、わたしには初めから分かっていた」

瑠璃はスカートの前で、こぶしをぎゅっと握りしめて、

「告解するわ。わたしは……わたしはあなたとあなたの妹の微妙な関係を利用したのよ。
 あなたは『妹から異性として好かれている』可能性を怖れていた。そうでしょう?
 それが真実か否か確かめる状況から逃げる『手段』として、わたしと付き合う選択肢を意識させた。
 あの時、あなたはわたしのことが好きだから、
 わたしの告白を受け入れると言ってくれたけれど……。
 実際は、それが唯一の理由ではなかったはずよ」

そうだ。
俺は桐乃との関係を、自分でも自信が持てなかった可能性を指弾されて、
都合良く目の前にあった逃げ場に駆け込んだにすぎない。
瑠璃のことが好きだという気持ちに嘘はない。
けれど俺は、その気持ちを最後まで吟味することなく、性急に答えを出してしまった。
いや、出すことを強いられた、というのが正しいのか。

「わたしもあなたも、打算的だったわ。
 そんな不純なきっかけで始まった恋人関係が長続きするわけがない。当然の帰結ね」

でも、と瑠璃は続ける。

「それでもわたしは……あなたの恋人になりたかった。
 たとえ純粋な気持ちからではなくても、あなたがわたしを選んで、
 そのままわたしを選び続けてくれる極小の可能性に賭けた」

そうまでして瑠璃が俺の恋人になりたかった理由は……考えるまでもねえよな。

「ねえ、正直に応えて頂戴ね。
 あなたがわたしに告白をしなおすというのは、筋を通すため?
 それとも……あなたが本気でそうしたいと思っているから?」

俺はありのままの気持ちを口にする。

「本気でそうしたいと思ってるからだ」

桐乃を避けていた理由は、兄離れをさせたかったのと、
それと何より、瑠璃と別れるのが嫌だったからだ。
俺は瑠璃と恋人でいることに、他の何にも代え難い幸福感を覚えていた。
順序が逆かもしれねえけど、付き合ってからハッキリ気づいたんだ。

「俺はお前のことが好きだよ。手放したくなんかない」
「わたしもあなたのことが好きよ。別れたくなんかないわ」
「じゃあ瑠璃は……待ってくれるのか?」
「待つ、という言い方は適当ではないわ。
 そうね、言うなればこれは契約の"一時解消"よ」

瑠璃は――黒猫は両手の指で目を擦り、艶然と笑んで言った。



「だから、もしもあの女に相応しい彼氏ができたときは……その時は再び、闇の契りを交わしましょう?」

エピローグを書く予定だったのですが
予想以上に流れが速くスレが途中で終わってしまいそうなので、ここで完結とします
数レス程度のエピローグのために新しいスレを立てるのもアレなので

京介「あやせ、結婚しよう」の内容に繋げることができたので自分は満足なんですが
期待通りの展開にならなかった方にはごめんなさい

長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ではでは~

八月二十八日。
夏休みも後数日を残すところとなり、
世間の怠惰な受験生はこれまでの遅れを取り戻すべく必死になっているんだろうが、
勉強の出来る心強い幼馴染みのサポートを受けている俺に焦りは無縁で、
友人家族と一緒に県外くんだりまで出かける余裕さえある。

「京介~、あの子の出番いつなの~?
 もう走り終わっちゃったんじゃないの?」

双眼鏡を覗きながらお袋が言った。

「もうすぐだろ。親父、ビデオの準備は?」
「む、完了している」

普通に出来てるって言えよな。
隣の沙織はくっくっくっと喉を鳴らして、

「きりりん氏のご両親は愉快な方たちですなぁ」

愉快て。

「もちろん誉め言葉でござるよ?
 それにしても、ずいぶん準備に時間がかかっているご様子……」

沙織は手を庇にして首を前に突き出す。
視力云々以前に、そのぐるぐる眼鏡でどこまで先の物が見えているのかと尋ねたい。

「る……黒猫、お前は大丈夫か?相変わらず汗一つかいてねーけど」
「だから、わたしは薄い妖気の膜を――」
「ほらよ。お袋が持ってきたの貸してやるから」

俺は有無を言わさず日傘を差して、黒猫に手渡す。

「あ、ありがとう」

はにかみ、顔を赤らめる黒猫。

「京介氏は黒猫氏には優しいんですなぁ?拙者、嫉妬してしまいますぞ?」
「お前はたっぷり汗かいてるから大丈夫だろ」

口をω(←こんなふう)にして憤慨する沙織。
人の機微に敏感なコイツのことだ、俺たちに何か秘め事をされていることには、とっくに気づいているのかもしれない。
少なくとも桐乃が塞ぎ込んでいた期間、あやせと同じように、沙織も桐乃の異常に気づいてたに違いないのだ。
いつか、説明しなくちゃならない時が来る。
でも今は……その時が来るまでは、沙織の思いやりに甘えておこうと思う。

「あれではないかしら?」

ぽそりと黒猫が言った。皆が一斉にその視線を辿り、赤茶色のトラックの上に整列する群衆の上に、探していた人影を認める。
均整の取れた体。すらりと伸びた長い足。ライトブランの豊かな髪は走りの邪魔にならないよう、綺麗に結わえられている。
緊張に強張っていた顔が、こちらに向き……満面の笑みに変わる。
大きく手を振る桐乃。俺たちは全員でそれに応えてやった。
今日は桐乃にとって、中学最後の陸上選抜大会だ。桐乃が今、他の走者と共にスタートラインに着いた。
完成されたフォームは、あの日の稚拙な構えとは比べものにならない。
乾いた空砲が蒼穹に鳴り響く。

「がんばれーっ!桐乃ーっ!」

俺はいつかの運動会と同じように、声を張り上げた。

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