上条「…ディアボロ?」(438)
上条「なんかベランダにピンク髪にカビが生えた半裸のオッサンが引っ掛かってるんですが…」
ディアボロ「………うぅ…」
上条「!…オイ、あんた大丈夫か?」
ディアボロ「!!!!おれのそばに近よ…」
ツルッ!
上条「あ」
ディアボロ「あ」
今日のディアボロ:ベランダから落ちて頸椎骨折で死亡
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< To Be Continued... | |
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インデックス「ねね、とうまようまー。私、この新メニューのディアボロが食べたいんだよー」
上条「おいおい、それがいくらするかわかってて言ってんのかインデックス」
インデックス「うーんとねー、360円」
上条「それだけあれば一日の食費がまかなえます。それもちょっと豪華に」
インデックス「えぇ~~~。食べたい食べたい食べたい~~~!」
上条「ふぃ、仕方ないなあ・・・」
キング・クリムゾンが幻想殺しに効かなくてボス涙目
ディアボロ「モグモグ…」
上条「……」
上条「(なんか、急いで助けに行ったら生き返ってた…魔術師でせうか、この人?)」
ディアボロ「…ウッ!?」
上条「…お、オイ!?」
今日のディアボロ:上条のもらった冷凍ピザが喉に詰まり死亡
ディアボロ「がはっ…また死んだのか俺は」
上条「……また生き返った~!?」
ディアボロ「クソッ…ピザならダンジョンと同じで大丈夫だと思ったのだが…」
上条「オイオイ…ほんとに大丈夫でせうか?」
ユサユサ(右手で背中をさする)
バ チ ン !!
上条「え…?」
ディアボロ「なん…だと…」
疲れた
伊藤リオン「テイルズオブシュリンピア?」
本文
伊藤リオン「エビゾー・・・僕は・・・お前みたいに・・能天気で・・馴れ馴れしくて・・図々しい奴が・・・大嫌いだ・・・・だから・・・後は・・・頼む・・・・・・」
でお願いします
test
上条当麻は我が目を疑った。
ベランダに布団を干そうと思ったら、
ピンク色の髪に緑の斑点を付けた、半裸同然のおっさんが引っかかっていたからである。
ディアボロ「………」
上条「…えーっと、どちらさま?」
どうやら意識が無いらしく、上条はとにかく介抱してやる事にした
……何か男の体に触った時にバチンと音が鳴った様な気がしたが、恐らく気のせいだろう。
上条「補習行かなきゃならねぇのに…」
そう嘆息しつつもシッカリ介抱してやる上条は何だかんだでお人好しだった。
小萌先生に怪我人を見つけたから遅れる旨を連絡した所、
小萌「上条ちゃん…そんなに私の授業受けたく無いんですかぁ…?」
と涙目声で返され大いに慌てたものの、誠意誠心説得した結果
小萌「わかりました…でも上条ちゃん、明日はちゃんとくるんですよ」
と、補習を休む事を認められた。
ある意味ラッキーだが、見ず知らずのオッサンを介抱せねばならない事を考えると、
どっちが幸か不幸かは解らないが。
寝ている男を起こさないよう、風呂場で電話を掛けていた上条が、
男の様子を見るべく部屋に戻った所。
???「次は…どこから襲ってくるんだ…?いやだいやだ…もう死にたくない…おうちかえる!」
部屋の隅で大の男が布団にくるまって怯えていた。
上条「えーっと…大丈夫でせうか?」
上条は相手を刺激しないように、やんわりとした態度で男に近づくが、
???「ヒィッ~~!! オ レ の 傍 に 近 寄 る な ~ !」
男は一層怯えて布団にくるまってしまう。
上条のベッドの上に布団のお化けの様な塊が出来上がった。
上条「(あちゃ~…こりゃ落ち着くまで待った方がいいか…)」
上条は男の様子を見て、しばし時間を置いた方がいいと判断した。
一先ず、ベッドの傍で胡坐かいて、漫画本を読んで時間をつぶす。
上条お気に入りの「ピンクダークの少年」だ。
男は震えていた。男は恐怖していた。
絶え間なく襲いかかる死の連鎖は、かつては「帝王」とすら呼ばれた男の心を完全にズタズタにしていた。
まるで子犬か、いもしない幽霊に怯える小学生の子供の様に、布団にくるまってぶるぶると震え続けていた。
5分経過し、10分経過し、15分ほど経過した時、男はようやく様子がおかしい事に気がついた。
???「(何だ…?どういう事だ…?何故襲ってこない…?何故俺はまだ死んでない?)」
今まで自分を襲ってきた絶え間ない「死」は、正に絶え間なく、
心構えの準備する間も与えず、自分の命を刈り取って行く筈だ。
にもかかわらず…
???「(おかしい…何かがおかしいぞ…これは一体…)」
いつまでたっても「死」が来ない。その事実に一瞬男は安心しかけるが、
???「(いや、油断は出来んぞ…)」
???「(こうやって時間を空けて安心させておいて)」
『自分を知れ…そんなオイシイ話が…… あると思うのか? おまえの様な人間に』
???「(と、ばかりに唐突にむごたらしく、俺を殺すのかも知れないッ…!)」
男は再び恐怖して、布団にくるまった。
そのまま、さらに20分ほど時間が過ぎた。
???「(お…おかしい!余りにも死と死の時間が空きすぎている!こんな事は今まで無かったぞ!)」
男もようやく様子がおかしい事を真に認識し始めた。
恐る恐る、布団のくるみを緩めて隙間を作り、辺りの様子を覗う。
???「(何の変哲も無い部屋だ…男が…東洋人が一人いる…ウニの様な頭だ…まだ若い…学生か何かか…)」
少年は漫画か何かを読んでいるらしい。
ふと、こちらの様子の変化に気付いたのか、漫画から目を離して男の方を見た。
上条「んあ…ようやく落ち着いたみたいだな…大丈夫か?」
少年、上条当麻はそう声を掛けて来るが、男は応えない。
否、応えられない、と言った方が正確だろう。
布団の中で、男はまるで滝のように冷や汗を流して、ガタガタ震えているのである。
「死に続ける運命」に巻き込まれて以来、男にとって他人とは、
「自分の死因」以外の何物でも無く、まともな会話など、久しくしていなかった事なのだ。
上条「(まだ調子悪そうだな…もう少しそっとしておいてやるか…?)」
上条は男の怯えを感じ取って、再び「ピンクダークの少年」に視線を落とした。
???「(落ち着け…落ち着くのだディアボロよ…一先ず、『死』が襲ってくる様子は無いのだ…)」
???「(お、俺は帝王と呼ばれた男なのだ…たかがガキ一人に何をビビってるんだ…落ち着け…落ち着くのだ…)」
必死に冷静になろうとする、男、『ディアボロ』の意志とは反対に、
彼の体は震え、動悸は激しく、息は上がり、冷汗は相変わらず滝の如きである。
その姿に、かつてはイタリア、否、ヨーロッパでも有数の凶悪なるマフィア組織、
『パッショーネ』のボスを務めた男の威厳も、凄味も微塵もありはしない。
『ジョルノ・ジョバーナ』…ディアボロをボスの座から引きずり落とした男の仕掛けた『死に続ける運命』は、
ディアボロの心を完全にヘシ折り、粉微塵に砕いて、暗黒空間にぶちまけてしまったのだから。
ディアボロ「……ひ、一つ…尋ねてもいい…か?」
それでも、腐っても元ギャングボスである。
なけなしの勇気と凄味を振り絞って、ディアボロは上条に声を掛けた。
上条は、驚いた様子で、ディアボロを方を見た。
ディアボロは、布団の塊から頭を半分だけ出して、言葉を続ける。
ディアボロ「お前は俺を…殺さないのか…?殺し…に来たんじゃない…のか?」
上条「……はあ?」
上条は男が突拍子も無い事を言い出したのに、目を丸くした。
殺すつもりだったら、わざわざこうして介抱などしないだろう。
上条「いや…この学園都市でこの上条さんほど無害な人はそういないと思いますよ」
上条「(ひょっとして…タチの悪い能力者に絡まれたのかねぇ…んで、逃げててベランダに引っかかってた?)」
そんな事を考えながら、一先ず、安心させるためにそう返す。
ディアボロは依然、怯えた様子だが、少し落ち着いた様子で再度尋ねる。
ディアボロ「信用しても…いいんだな…?お前は俺を殺しに来たんじゃないんだな…?」
上条「いや…だから大丈夫ですって…ここにはアンタを狙う様な人はいませんって」
上条「第一、ほら、現に上条さんは寸鉄一つ帯びて無いし」
ディアボロ「…素手でも人は締め殺せる」
上条「いや、だから大丈夫だって(めんどくさいなコイツ)」
そう言って上条は両手をひらひらさせた。
ディアボロ「…………」
まだ疑わしげな目をしているものの、少しは安心したのか、
布団から完全に顔を出して、何かを言おうとして…
ぐぅ~っ
お腹の音が鳴った。
上条のではない。ディアボロのである。
上条「…」
ディアボロ「…」
上条「何か喰うか?」
ディアボロ「…たのむ」
何かをディアボロに食べさせようと思った上条だったが、
つい昨日、某ビリビリ中学生に電化製品の大半を破壊され、
冷蔵庫の中身が全滅させられていた事を思い出した。
上条「…不幸だ」
そう嘆息した。
上条「すまん…ピザまんしか無かったんだが…これでいいかな」
ディアボロ「…構わない…すまんが、もう食べてもいいか…」
上条「どうぞどうぞ」
「何が食べたい?」と尋ねた上条にディアボロは「ピッツァを食べたい」と応えたのだが、
最初、どこかのコンビニで冷凍ピザでも買ってこようと思ったものの、
昨日の某ビリビリ中学生の電撃攻撃で電子レンジもお亡くなりになっており、
かといってピザの出前をたのもうにも、上条には手持ちが無かった。
仕方が無いので、近くのコンビニでピザまんとパニーニを買って来たのだが、
ディアボロ「………」
ディアボロは文句を言わず(言える立場でも無いが)、モグモグとピザまんを食べ始め、
早くも食べ終えて、すでにパニーニに手が掛っていた。
ディアボロ「………ううっ…」
上条「!…どうした!?食あたりでもしたか?!」
パニーニを半分ほど食べた辺りで、突如、ディアボロがボロボロと泣き始めたのである。
大粒の涙だ、滂沱の如く流す。
ディアボロ「いや…違うんだ…ただ…こうしてマトモに食事するの自体…久しぶりで…」
上条「………」
食事…普通の人間であれば、毎日している当たり前の、生きる為の行動。
絶え間無い死の連鎖のただなかにあったディアボロにとって、それは余りにも久しぶりの事だった。
極々当たり前に食事をしている…ただそれだけの事実が、ディアボロの心を歓喜で満たしていた。
いったいどれほどぶりかも解らない、久しぶりの人間らしい行為であった。
ディアボロ「食べると言う事が…自分が生きているという事が…これほど喜ばしいとはっ…!」
上条「………(このオッサン…一体今までどんな生活してきたんだ…?)」
涙をぼろぼろ流しながらパニーニに齧りつくディアボロの様子は、上条に憐れみを覚えさせた。
飢えた第三世界の子供たちですら、食事でこんな表情はしないだろう。
それだけの切実さがディアボロの表情にはあった。
上条「なあ…アンタ、俺の部屋のベランダに引っかかってたんだけどさ…」
ディアボロ「………」
上条「何であんな所にいたんだ…そもそもアンタはどっから来たんだ…?」
ディアボロ「………」
ディアボロは何処からどう見ても日本人では無いし、外見年齢的にも学生には見えない。
ひょっとして外から来た人間だろうか、上条はそんな事を考えていた。
一方、ディアボロは「そんな事、俺が聞きたいくらいだ」と考えていた。
連鎖する死の運命が、ディアボロを様々な所に矢継ぎ早に飛ばしてきた事もあって、
ディアボロには、ここが何処かどころか、今が一体、何年何月何日なのかすら解らないのだ。
ディアボロ「(ここは何処か…今は何時か…まるで解らん…それに…)」
ディアボロ「(この少年は東洋人のようだが…日本語か?話しているのは。それが理解できるのも妙だが)」
ディアボロ「(そもそも何で俺は当たり前の様に日本語で会話出来ているのだ…?ワケが解らんぞ)」
死の連鎖からの脱出から続く、不可解な状況の連続に、
ディアボロは返事するのも忘れて、思考に没頭してしまった。
そんなディアボロの沈黙を、上条は、「ああ、答えられな事情でもあるのか」と、早合点して、
上条「話したくないんなら…何も言わなくていい(聞いて藪蛇になるのも嫌ですからね、上条さんは)」
と、そんな事を言ったのだった。
上条「んーと…俺はちょっと用事で外に出てくるけど…好きにしてもらって構わないんで」
結局、上条はディアボロに何一つ聞かず、ディアボロも色々と尋ねようにもタイミングを逸したため、
さっきの会話は互いに何も語らずに終わってしまった。
それから一時間程、上条は「ピンクダークの少年」の続きを、ディアボロは新聞を読んだりしていたのだが、
今朝がた自分で割ったキャッシュカードの再発行をしてもらうために、上条は出かけようとしていた。
見ず知らずの謎の男を部屋に残して外出とは、余りにも不用心だが、そういう人の良さが、上条の魅力とも言えた。
上条「んじゃ…留守番を…」
ディアボロ「……ディアボロだ」
上条「へっ?」
ディアボロ「さっき俺の名を聞いていたな?…俺の名はディアボロだ」
上条「…んじゃ、俺の名前は上条当麻、で」
ディアボロ「カミジョウトウマか…覚えたぞ」
パッショーネのボスが自ら名を名乗る!
聞く者が聞けば、スタンドも月まで吹っ飛ぶこの衝撃ッ!というヤツだが、
死の連鎖は、この冷酷非情なギャングボスの心すら変質させてしまうほど恐ろしいものなのだ。
久しぶりの真っ当な人間らしい、人と人との交流が、多少のディアボロの心を緩ませたらしい。
上条「それじゃ…ディアボロ…さん?留守番は任せました」
ディアボロ「……ああ」
上条は出かけていった。
しばし部屋の真ん中で、ディアボロはぼんやりとしていたが、
ふと、ベランダに足を向けた。窓を開け、空を仰ぐ。
ディアボロ「………」
何処までも綺麗な青空である。
こうして無心に青空を眺める…そんな何という事は無い事が、余りにも久しぶりだった。
ディアボロ「………学園都市、か」
新聞から得た情報…今自分が居るという、奇怪な場所の名前をぽつりと呟く。
自分はこれからどうすればいいのだろうか?まるで見当がつかない。
しかし、
ディアボロ「……」
考えるのは後にしよう。今はこの青空を楽しむとしよう。
自分が、ただぼんやりと空を見ている。そんな平和な事実に、ディアボロの心は少し和らいだ。
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< To Be Continued... | |
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一先ずここまで。
流石に疲れたので、少し休憩させてください。
1~2時間休憩したら、再開するので、
出来れば、自分の駄SSを望む方が居れば、それまで保守をお願いします。
正直プロットとかなんも無いし、どこまでいけるか解らんけど、出来るだけやってみます。
所で、自分で書いといてなんだけど、上条さん家って新聞とって無さそうだよね…
上条さんも「ジョジョ」だよな
上条さんも「ジョジョ」だよな
本日11時から再開します。
書きためて無いので、ペースはゆっくり目で
ディアボロ「さて……」
青空を眺める事も、もう存分に堪能できたのか、
ディアボロはベランダから上条の部屋に戻った。
ディアボロ「確認しておかねばなるまい…」
若干、顔を蒼褪めさせながら、ディアボロはギュッと両手を握りしめて、
心を澄み渡らせ、深く強く念じる。その名を。自身の『半身』の名前を。
ディアボロ「(ひょっとすると失われているかもしれぬ…)」
ディアボロ「(そう考えると、結果を見るのは恐ろしいが…)」
ディアボロ「確かめぬ訳にはいくまいッ…!」
一旦両目を暫時閉じたディアボロは、カッと双眸を見開いて、
その名を呼ぶ。自身の『半身』の名前を。
ディアボロ「『 キ ン グ ・ ク リ ム ゾ ン 』!!」
その呼びに応えて、『ソレ』は姿を現世に顕現させる。
赤い体躯に、白く浮き出た格子文様。
腹部、肩先、拳、爪先は白い装甲で覆われ、
同色の仮面を被った様な異様な風貌をしている。
眼はギョロリとして小さく丸く、ねじれた唇を持ち、
そして額には『第二の顔』を備えている。
奇怪なる人型の怪物が、その幽かなる姿を顕わした。
これが…これがッ!
『キング・クリムゾン』だッ!
かつてディアボロをパッショーネのボスたらしめていた、帝王の力。
彼の半身にして、彼の精神の顕現。
『幽か』にして『波打ち』、『傍らに立ち』、大いなる運命に『立ち向かう者』。
即ち『スタンド』ッ!
その能力は正に帝王の能力。
『未来を視て』、自分の行く末を阻む運命を『消し飛ばす』力。
それは正に無敵の能力であり、事実、あの『鎮魂歌』に相対するまで、
如何なる敵をも討ち破って来た力であった。
しかし…
ディアボロ「…クッ…何という事だ…」
ディアボロは思わず呻いた。
連鎖する死の運命の中で、失われたかと思われる彼のスタンドは、
確かに未だ彼の傍らにあった。あったのだが…
ディアボロ「何と…何と弱弱しい姿だ…」
その姿かたちこそ変わらないものの、
その身に纏った風格とも、凄味とも呼べるオーラが、
かつてとは比べ物にならない程弱くなっているのを、
ディアボロは確かに感じていた。
当然の結果であった。
スタンドとは、スタンド使い自身の精神に由来する力であり、
故に、精神強い者はスタンドも強く、弱い者のスタンドは弱い。
精神の弱い者に強力なスタンドが宿る場合も無いわけではないが、
殆どの場合、そんなスタンド能力者は、自身の分不相応に強すぎるスタンドに振り回されて破滅する運命を辿るのだ。
ディアボロに襲いかかった『鎮魂歌』の『死の連鎖』は、
彼の精神をズタズタのボロ雑巾の様にした。
かつては正に慎重で臆病ではあっても、その根底に『覇王』の意志を備えた彼の精神には、もはや昔日の力強さは宿っていないのだ。
だとすれば、ディアボロの精神の顕現たるスタンドの力も弱まるのは必定であった。
ディアボロ「もしや…『キング・クリムゾン』!時間を消し飛ばす!」
瞬間、世界の色が変わる。
色彩が反転したモノクローム状となり、そのただ中にあって唯一、色を備えているのは、
ただディアボロとその半身たる『キング・クリムゾン』のみ。
これが『キング・クリムゾン』の第一の力、『時を吹き飛ばす能力』。
ディアボロを中心とした半径100メートルの世界からあらゆる『過程』は消え失せ、
最後にはただ『結果』だけが残る。失われた『過程』を認識できるのは、ディアボロただ一人。
全盛期には、十数秒の時を消し飛ばせたものだったが…
ディアボロ「くっ…『五秒』だと…!たったの『五秒』だと、このディアボロが、消し飛ばせる限界が!?」
ディアボロ「も、もう一度だ!『キング・クリムゾン』!」
しかし、何度試みても、『消し飛ばせる』のは『五秒』が限界。
しかもそれだけでは無い…
ディアボロ「ううっ…『頭痛』もする…は、『吐き気』もだ…」
ディアボロ「馬鹿な…このディアボロが…この程度の事で…『消耗』している…だと…」
スタンドとは精神に由来する力。
故に、過度な使用はその精神を消耗させる。
しかし、かつてのディアボロの強靭な精神は、この程度で音を上げるなど、
決してありはしなかった。ディアボロは、自身の『衰え』を自覚せざるを得ない。
ディアボロ「うう…『ドッピオ』の気配もしない…」
ディアボロ「やはりあの時…コロッセオの戦いの時に…」
ディアボロを苦しめるのはそれだけでは無い。
もう一つの『半身』とも言える存在、『ヴィネガー・ドッピオ』の喪失もまた、ボスを苦しめたいた。
ディアボロはかつて『二重人格者』であった。彼に宿ったもう一人の人格、それが『ドッピオ』であった。
ある意味、彼の最大の腹心と言える存在であり、誰も信じなかったディアボロが唯一信用した存在、
それが『ドッピオ』であった。
ディアボロ「コロッセオの時はさして気にはならなかったが…」
ディアボロの心に住みついてもう一人の少年の喪失は、彼に、心にぽっかりと穴が空いた様な喪失感を与えていた。
全盛期の唯我独尊なるディアボロであれば、『ドッピオ』の消滅にさしたる感慨も抱かなかったであろう。
しかし、今の弱り切った彼にとって、それは大きな心の傷となっていた。
すなわち『孤独感』である。
ディアボロ「『エピタフ』は…問題無く使えるが…」
『エピタフ』とは、『キング・クリムゾン』の第二の力の名前であり、
それは十数秒後の『未来を視る』能力である。
『時を消し飛ばす能力』を『矛』とするならば、『盾』とでも言うべき能力であり、
『消し飛ばすべき時』を、ディアボロに予知させる力である。
これは問題なく使用出来た。確かに、彼の未来を彼に視せたのである。
とはいえ…
ディアボロ「俺は…こんなにも弱くなっていたのか…」
ディアボロは思わず部屋の真ん中にヘタヘタと座り込んでしまった。
如何に未来が視えようとも、それを消し飛ばしきれなければ、何の意味も無い。
避け得ぬ『運命』を『視るだけ』の『エピタフ』が真価を発揮できるのは、
『キング・クリムゾン』の力あっての事なのである。
しかしそれ以上に…
ディアボロ「心が…心が弱くなっている…」
スタンドの弱体化と言う、客観的な事実を見せられては、認めざるを得まい。
自分は、弱くなったのだ。心が萎れてしまったのだ。
もはやあの『帝王』たる『絶頂』の姿は、昔日の栄光でしかないのだ。
すまない。ちょっと中断
30分ほどで帰ってきます
再開します。
所で、コテハン付けた方がいいんですかね?
実はVIPに来てから日が浅いので、マナーとか知らない点が多いんです
よく考えれば、上条当麻に自分の名前を教えたのも寂しかったからに他ならない。
『ドッピオ』もおらず、誰も知らない異国の街に、訳も解らず独りきり…
そんな状況で、自分を助けてくれた人間に名前を教える…つまり『他者との繋がり』を求める行動…
かつての自分ではあり得ぬ行動。唯我独尊の筈の自分が、他人を求めるのは、弱くなった何よりの証拠だ。
だが、弱くなったからどうだと言うのであろうか。
ディアボロ「いや…『絶頂』…『帝王』…もはや…もはや『どうでもいい』」
そう、虚ろな表情で呟くディアボロの姿を、
ブチャラティチーム一行が見たらどんな顔をするだろうか。
そこにいるのは『帝王』では無い、平穏を望む『隠居老人』であった。
『覇道』を歩むと言う事は、つまりまたあの『鎮魂歌』と、
あるいはあれに匹敵する『何か』に立ち向かわねばならぬと言う事。
そんな『ガッツ』は、今のディアボロには無い。
付けない方がいいのね…教えてくれて感謝します
ディアボロ「『平穏』…『平穏』さえあればいい…静かに、慎ましく暮らす」
ディアボロ「それ以外は…もう…望みはしない…」
かつて、日本のM県S市杜王町に、今のディアボロと同じような望みを抱いた殺人鬼がいた。
その名は吉良吉影。恐るべきスタンド使いにして、変態的嗜好を持った殺人鬼。
しかし彼は『平穏な生活』を望んでいた。『植物の様な平穏』を望んでいた。
一見、今のディアボロと類似しているように見えるが、彼とディアボロには決定的な違いがあった。
吉良吉影には、自分の『平穏』を脅かす存在を一切の容赦なく『爆ぜ殺す』、『漆黒の意志』があった。
『平穏』を守るために彼は、『漆黒の意志』で輝かしい『黄金の精神』に立ち向かった。
ディアボロは違う。彼の『平穏』を望む心は単なる『逃避』に過ぎない。
もしなけなしの『平穏』を破らんとする存在と出会った時、今の彼に立ち向かえるかどうか…
『黄金の精神』も『漆黒の意志』も無く、『対応者』にすらなれない『敗残者』。
それがディアボロの現状であった。
ディアボロ「(もう高望みはしない…)」
ディアボロ「(上条にも、あまり迷惑はかけられん…時が来れば、イタリアに帰ろう…)」
ディアボロ「(金を稼いで、南イタリアで農地でも買って…静かに暮らそう)」
ディアボロ「(フフフ…ハハハ…)」
体育座りして、床に指で「の」の字を書きながら、ブツブツ呟くディアボロの背中は、たそがれて煤けていた。
結局ディアボロは、上条が帰ってくるまでそうしていたのであった。
ディアボロ「(月だけか…星は殆ど見えんな…)」
タオルケットに包まりながら、カーテンの隙間から覗く夜空を眺め、そんな事を考える。
彼より数メートル離れた所では、上条当麻がベッドの上で鼾をかいていた。
上条が帰って来た後、ディアボロは様々な質問を上条にした。
まず、今は『いつ』で、ここは『どこ』なのか。
学園都市の地元新聞社の出している新聞からある程度情報は得ていたが、
それでも確認をとる為にディアボロは訪ねる。
上条は答える。今が『200X年7月20日』で、ここが日本の『学園都市』である事を。
ディアボロは続けて尋ねる。新聞に書かれていた様々な気になる言葉…
『能力者』や『能力開発』についてなど。
上条は律義にその一つ一つに、彼の解る範囲で丁寧に教えた。
その間、上条からディアボロに対しての、「お前は何者か」「何処から来たのか」と言った質問は一切無かった。
お人好し上条の面目躍如である。
『能力者』…
この『学園都市』独自の方法で生み出された、スタンド使いとも異なる『人を超えた人』。
上条自身は、そのヒエラルキーの中でも最底辺の『レベル0』であり、
如何なる能力ももってはいないと言うが、その存在に、ディアボロは驚きを隠せない。
聞けば、『能力者』を生み出す方法は、未だ実験段階のものも数多く含みながらも、
ある程度土台のしっかりした理論を骨子としており、『安全』に『能力者』を生み出すとの事。
『生きるか死ぬか』の『矢の試練』を乗り越えて『スタンド使い』になったディアボロからすれば、
些か釈然としない話だが、聞けば、ディアボロのスタンドと同格の能力を持つ『超能力者』は僅かに8人、
それに次ぐ『大能力者』も決して数は多く無いのだと言う。少しだけ、ディアボロの溜飲は下がる。
ディアボロは、上条に『スタンド』については話していなかった。
一応すでに『見せて』はいるのだが、上条はスタンドを認識できなかった。
『能力者』と『スタンド使い』はやはり別物なのか、それとも上条のレベルが低いから視えないのか、
その点は現状では判別出来ない。ゆくゆく、解明しなくてはならないだろう。
一方、上条も『幻想殺し』については話していない。
別に隠している訳ではなく、話す必要が無いと思っていただけだ。
故に、ディアボロは、自身を死の連鎖から脱出せしめた要因が何か、
未だ知ってはいなかった。
閑話休題
ディアボロ「(しかし…随分と厄介な所に来てしまった物だ…)」
この『学園都市』の住人は大きく分けて二種類に分類できる。
即ち『研究者・教師』と『学生(モルモット)』。
そしてそのどちらも、厳重に『管理』されている存在である事に変わりは無い。
『学園都市』は閉じた箱庭世界だ。そして『能力者』の秘密は、
古代の中国国家が、養蚕技術を徹底的に秘匿したが如く、外部への漏えいを許さない。
『行きはよいよい、帰りはこわい』の、社会主義国家の如き管理社会…それが『学園都市』の現状なのだ。
僅かに8人ってだれだ?
レベル5が7人とあと一人は?
数え間違いかオリキャラ登場
>>106~>>109
ごめんなさい、数え間違いです。7人だったよね。腐れ脳みそでゴメンね…
唯一、社会主義国家と違う点を挙げれば、治安が酷く悪い点だろう。
何でも上条と同じような『レベル0』は『学園都市』では『敗残者』とみなされ蔑まれ、
そんな視線に耐えられなくなった者は『落伍』し『武装』し、
『学園都市』を乱す『スキルアウト』になるのだと言う。
解らないでもない、とディアボロは思う。
かつて彼の部下の一人、ポルポはこんな事を言っていたという。
『「侮辱する」という行為に対しては、命を賭ける。殺人も、神は許してくれると思っている!』
ディアボロも本来は『漆黒の意志』を備えた、誇り高い人間である。
誇りを傷つけると言う事は、本来、それほどの重さをもってしかるべきなのだと思う。
ディアボロ「(しかし…『部外者』の俺にとっては迷惑な話だ…)」
外に出るのは難しく、内に住むには治安が悪い。
『平穏』を求めるディアボロにとっては住むに適した土地とは言えまい。
第一、この学園都市の住人が一人余さず持っている『ID』をディアボロは持っていない。
要するに『不法侵入者』で『不法滞在者』と言う訳である。望んでそうなった訳ではないが。
迂闊に外を出歩けば『アンチスキル』とか言う自警組織にしょっ引かれてしまうのである。
流石にそれは御免こうむりたい。スタンドを使えば逃げられない事も無いが、とにかく面倒は御免である。
ディアボロ「(情報を集めて、何とかここから出る方法を見つけねば…)」
余り長く居座るって、恩人の上条に迷惑を掛ける訳にもいかないだろう。
幸い、自分には『未来を視る力』と『運命を消し飛ばす力』がまだある。
万が一見つかっても、警備員風情から逃げるのならば容易い。
ただ、前述したように面倒は嫌なので、出来るだけ、慎重に隠密に事を運ぶつもりではあるが。
以前のディアボロであれば、『スキルアウト』の頭目となって彼らを糾合し、
武力で『学園都市』を乗っ取る、なんて事を考えたかもしれないが、
今のディアボロにそんな野心は無い。
そう、『ディアボロは静かに暮らしたい』のである。
ディアボロ「(眠れんな…妙に目がさえてしまっている…)」
思考の海から還って、ディアボロは再び夜空を眺めた。
話は前後するが、とにかく、ディアボロは幾つもの質問を上条にし、
幾つもの重要な情報を手に入れたと言う事である。
その後、上条にディアボロはおずおずと切りだして曰く。
ディアボロ「すまないが…一晩でいい…泊めて欲しい…」
上条「いいぜ」
即答であった。
ディアボロ「いや…そんなにあっさりと決めてしまっていいものなのか…」
ディアボロ「第一…自分で言うのもなんだが…こんな怪しい男を泊めるなど…」
流石のディアボロも、上条のあまりの太っ腹っぷりに些か焦った。
慎重で疑り深いディアボロは、こう言う裏表の無い善意には慣れていない。
上条「いやさ…困った時はお互い様だろ。一晩泊めるぐらい、どうってこと無いし…」
少し間を空けて、上条は言葉を続ける。
上条「アンタ、何か抜き差しならない事情があんだろ?そんな奴を放りだすなんて出来ねぇよ」
上条当麻は善意の人である。
自身は『偽善使い』を標榜するが、客観的に見ても上条充分『善人』である。
上条は『不幸』に踏みにじられて生きて来た。
しかし上条はいじけなかった。それは恐らく両親の確固たる『愛』があったからだろう。
誰より『不幸』を知るからこそ、他人の『不幸』の痛みが解る。
故に、他人の『不幸』から目を離せない。だから助ける。
彼の心に吹くさわやかな風をディアボロは確かに感じたのだった。
ディアボロ「(少し…眠くなってきたか…)」
思い返しながら、ディアボロは瞼をこすった。
こんなに静かな夜は久しぶりだった。
ディアボロ「(静かな夕食というのも久しぶりだった…)」
上条はディアボロを泊めたばかりでなく、夕食も御馳走してくれたのだ。
簡単な野菜と肉の炒め物だったが、味云々よりも善意がディアボロの胃にしみた。
しまいにゃ、自分は風呂場で寝るからベッドを貸してやるとまで言い出す始末。
流石にそこまで甘える訳にはいかないと、タオルケットを借りて、床で寝ている次第であった。
ディアボロ「(世界は違っても、地面を照らす月は変わらず…か…)」
月明かりに、昼間読んでいた新聞を翳して見る。
「7月17日」と日付が印刷された古新聞には、以下の様な見出しが躍る。
『“超電磁砲”御坂美琴さん、またまたお手柄。銀行強盗団を撃退』
『ヴァレンタイン米国大統領、緊急来日。学園都市上層部緊張走る』
『不動産王ジョセフ=ジョースター氏に隠し子発覚か!?』
ディアボロ「(ジョセフ・ジョースターと言う名前には聞き覚えがあるが、このアメリカ大統領の名前を俺は知らない…)」
ディアボロ「(前大統領の名前も載っていたが…俺の知っている名前じゃない…)」
ディアボロ「(何より『学園都市』何て物を俺は知らない)」
ディアボロ「(やはり違う世界か…まるでSFだな)」
自身は『スタンド使い』という超常の人間であるのを棚に上げて、そんな事を考える。
ディアボロ「(この世界にも『スタンド使い』はいるのかはまだ解らんが…居ない事祈るのみだが…)」
『スタンド使いは惹かれあう』…
それは絶対普遍のジンクス。『スタンド使い』である限り、他の『スタンド使い』との『因縁』は途切れる事は無い。
そんな因縁は、自分の『平穏』を乱すものでしかない。そんなものは無いに越した事は無い。
ディアボロ「(時が来れば、ここを出て、まず、サルディニア島に帰ろう)」
心の弱った今のディアボロには、捨てた筈の故郷が無性に恋しかった。
郷愁の内に、ディアボロは眠りに落ちる。
こうして、ディアボロの『学園都市』での第1日は終わりを告げた。
ディアボロは「この世界」に『スタンド使い』が居ない事を祈った。
しかし無情にも、その祈りは神には聞き届けられなかった様だ。
『スタンド使い』は『スタンド使い』から逃れる事は出来ない。
この世界にも『スタンド使い』は存在するッ!
のみならず、かの輝かしいジョースターの一族もまた存在するッ!
そして、上条当麻、ジョースターの血を引かぬ、
もう一つの「ジョジョ」がこの世界には存在するッ!
上条当麻はこの先、数奇な運命に翻弄され、
ジョースター一族とは一風変わった奇妙な冒険を体験する事となる。
『平穏』を望むディアボロもまた、この奇妙な運命に巻き込まれていくのである。
奇妙な運命の始まりを告げる、伝令は、
すでに彼らのすぐそばまで迫っていた。
ディアボロと上条当麻の奇妙な冒険の始まりは、
『7月21日』…すなわち明日ッ!早くもその朝から始まるのだッ!
果たしてディアボロはこの運命に立ち向かう事ができるのか。
来るべき戦いのさなかで、『漆黒の意志』を取り戻し、再び『絶頂』を求めて『覇道』をまい進するのか、
それとも、『黄金の意志』に目覚めて、『光り輝く道』を新たに歩む事になるのか…
兎も角『運命』は明朝に来訪する。
それは、奇しくもディアボロと同じくベランダから、シスターの少女と言う形をとって来訪するッ!!
/└────────┬┐
< To Be Continued... | |
\┌────────┴┘
一先ず、ここで一旦区切ります。
続きはどうしましょう?
もう遅いので、ここで一旦、今日はお休みとしましょうか?
実を言えば、目が妙に冴えちゃってて、後一話ぐらいなら書けるかも…
どうしますか?
それじゃあ書いて見るよ。
ただ、ちょっと準備したり、トイレを済ましたりしてくるので、
30分ほど待って欲しい。
ようするに4時から再開します
ここの作者は上条がDIO倒すやつ書いてたのと一緒の人かな?かな?
時間が来たので再開するよ~
>>138
違うよ~VIPでSS書くのは実は今日が初めて
『7月20日』…
それは、本来の歴史において、『少女』が『上条当麻』のもとに来訪した日付であった。
本来、『7月20日』に上条当麻の部屋のベランダに引っかかっているのは、『彼女』の筈であった。
しかしそんな『運命』は変局する。
『7月20日』に上条当麻のもとに来訪したのは、全く異なる存在、
地に堕ちしかつての『帝王』、『異世界』より来訪せし『スタンド使い』『ディアボロ』!
この男の存在が、運命の時計の針を少しばかりずらした。
かくして、『彼女』の来訪は『一日』ずれる…すなわち『7月21日』!
たった一日の『ずれ』、ただ一人の『異人』の介入…
されどその『異変』、『運命』の筋書きを変えるには余りに充分!
必然、運命は変転する。
だから、敢えて開幕口上に代えて宣言しよう。
これより始まる物語は、貴賓者(VIPPER)諸君の知る『禁書目録』の物語では無い。
『正史』より大きく逸脱したこの物語は、
もう一人の『ジョジョ』、『上条当麻』、
かつての『深紅の帝王』、『ディアボロ』、
そして『別の物語』の世界にて輝ける『黄金の精神』の軌跡を描いた『ジョースター一族』、
そして彼らに挑み、破れながらも『別の物語』に邪悪な光芒を見せた『宿敵達』、
『正史』において、『上条当麻』と時に敵対し、時には友として傍らにあった、多くの人々、
『御坂美琴』、『土御門元春』、『神裂火織』、『ステイル=マグヌス』、『一歩通行』…
清濁老若男女主役脇役のごった返した、『奇妙な冒険』の物語だ。
『正史』には無かった数々の『異物』が、物語を変転せしめる。
『スタンド使い』!『波紋使い』!『吸血鬼』!『石仮面』!
『柱の男達』!『ナチスドイツ』!『杜王町』!『弓と矢』!
『悪魔の掌』!『鉄球』!『聖人の遺体』!『ケープ・カナベラル』!
『らせん階段』!『カブト虫』! 『廃墟の街』!『イチジクのタルト』!
『ドロローサへの道』! 『特異点』!『ジョット』! 『天使』!
『紫陽花』!『秘密の皇帝』!『JOJO』!『DIO』!
この物語の行く末は、偉大なる『さかしま魔法使い』にも読めぬ…
果たして、『少女』は来訪し…『物語』は始まる。
ディアボロ「………」
7月21日、ディアボロは上条当麻よりも早くに目が覚めた。
こうして普通に目覚めると言う行為に、斯くも懐かしさと新鮮さを同時に覚える日が来るとは、
かつての彼は想像だにしなかった事だった。
ぐっすり寝た…とはあまり言えない。
昨日寝たのは随分、夜も更けてからであった。
やはり『死に続けた』と言う事実が、どこか、自分の神経を緊張させて、
未だ深い眠りに落としてはくれないらしい。
小さくノビをし、うーんと静かに唸る。
しかし気持ちのいい朝である。空は昨日から続けての快晴であり、
口笛でも吹きた気分になる程だった。
ディアボロは、タオルケットを足元に畳んで、カーテンを開けずに、静かに窓をスルスルと開いた。
カーテンを開けなかったのは、未だ夢中の上条を起こさない為であり、
窓を開けたのは、ベランダに出て外の空気を吸う為であった。
『死の運命』より脱出し、新しく始まった人生の記念すべき朝…
そんな朝をより気持ちよい物にすべく、外に出て、
ディアボロ「…なん…だと…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …
???「おなか減った」
一人の少女が、昨日の自分の様に、ベランダに引っかかっているのを発見した。
???「パクパクパクパクパクパクパクパク……」
ディアボロ「( ゚д゚)」
上条「( ゚д゚)」
昨日、上条は今日の分の朝飯と昼飯の分の食料を買い込んでいた。
冷蔵庫が壊れてしまっているため、仕方なくどれもレトルトとインスタントばかりであったが、
???「モグモグモグモグモグモグモグモグ……」
ディアボロ「( ゚д゚)」
上条「( ゚д゚)」
インスタントみそ汁二つ、インスタントお茶漬け二つ、レトルトカレー1箱、
サ○ウのごはん4パック、カップラーメン2種類…
来客あるが故に、赤貧の上条にしては何時に無く奮発したその食料…
???「ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ……」
ディアボロ「( ゚д゚)」
上条「( ゚д゚)」
その全てが…
???「ハフハフッハフハフッハフハフッハフハフッ…!!!」
ディアボロ「( ゚д゚ )」
上条「( ゚д゚ )」
少女の胃袋に消えていた。
???「…ふーっ…ごちそうさま!美味しかったんだよ!」
ディアボロ「………(コイツ…どれだけ食い意地が張ってるんだ…俺達の分まで喰いやがった!?)」
上条「つーか二日続けて誰かが自宅のベランダに引っかかるなんて上条さんホントびっくりですよ…」
すっかりご満悦といった表情の謎の少女を尻目に、
ディアボロは唖然とし、上条はどこか泰然とし、悟った表情をしていた。
ベランダに引っかかった謎の少女をそのままにしておく訳にもいかず、
取り敢えず上条を起こし、判断を仰いだディアボロだったが、
お人好しの上条が空腹の少女を見捨てる訳も無い。
少女を招き入れ、食事を与えたのだが…
???「シスターにこれだけ『喜捨』してくれるなんて…きっと今日は神の御加護が貴方達にあるんだよ!」
ディアボロ「……(白い服のシスターだと…カトリックじゃなさそうだが、何処のシスターだ?)」
上条「いや~満足してくれて上条さんも嬉しいですよ、ホント…ええホント」
???「む~…神の御印を信じて無いね!」
上条「いや~たとえ神でも上条さんの不幸は打ち消せませんよ」
彼らにとって誤算だったのは、少女の胃袋が健啖というレベルを通り越して、
もはや底なしと言う段階だった事だろう。
唖然とする両人を尻目に、彼女は上条が備蓄した食料を残らず平らげてしまったのだ。
???「む~っ…この街は不信心者の巣窟だって聞いてたけど、全くその通りだね!罰当たりなんだよ!」
上条「いや…この科学万能の学園都市でそんな事言われましてもねぇ…第一、もう罰はあったてるみたいなもんだし…」
???「えっ!?」
上条「ああ~何でもないですよ~それより、オタクは何処のどなた」
???「見ての通り、教会の者なんだよ…えっと、ローマの十字教の方じゃなくてイギリス清教の方ね」
上条「んで…そのイギリス清教のシスターさんが何でウチのベランダに…?」
???「私はインデックスって言うんだよ!」
上条「聞いてねぇよ!第一何だよその名前、明らかに偽名じゃねぇーか!?」
インデックス「「正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumなんだよ」
上条「ノックしてもしも~し!?人の話を聞いてますかぁ!?」
ディアボロ「(十字教…?ローマン・カトリックの事か?それにイギリス清教?イギリスは国教会だろうが…ピューリタンの事か?)」
イタリア生まれであり、さらにそのイタリアの闇社会にギャングとして根を張っていたディアボロである。
宗教関連、殊にキリスト教関連には知識が多少は無いわけでは無かったが、
インデックスを名乗る少女の口から出る宗派は知らない名前ばかり。世界の違いというやつだろうか。
スマン、ミスした、
イタリア生まれであり、さらにそのイタリアの闇社会にギャングとして根を張っていたディアボロである。
→イタリア生まれであり、元は神父の養子であったディアボロである。
に差し替え
インデックス「ちなみに魔法名はdedicatus545ね」
上条「だから聞いてねぇよ!さっさと質問に答えてくれませんかねぇ~」
インデックス「追われてたんだよ。それでその途中で屋上から落っこちちゃったんだよ」
上条「追われてた?誰に?」
インデックス「ん~と、『薔薇十字団』かな?それとも『黄金の夜明け』かな?とにかく『魔術結社』の連中だよ」
上条「まじゅつけっしゃ~あ!?」
ディアボロ「……」
『魔術結社』
その単語にディアボロの耳は鋭く反応した。
彼にとっては多少聞き覚えのある単語である。
何せ彼の『商売』の顧客リストに、名前を連ねていた連中なのだから。
ディアボロ「(聞き覚えの無い宗派ばかりかと思えば…成程、カルトサークルの一員で、そこから逃げて来た訳か)」
ディアボロはそのように考えた。
彼の知る『魔術結社』とは、嘗ての商売道具『麻薬』やセックスを売り物したカルトグループの事である。
我々の世界におけるアレイスター・クロウリーの魔術結社の実態が、セックスとドラッグまみれの乱交サークルであったように、
(我々の世界のアレイスター・クロウリーの死因は梅毒であった)
大概の『魔術結社』と言う奴は、我が国に日本におけるカルト教団などと殆ど変らない。
『薔薇十字団』を代表とする中世以来連綿と続いた歴史ある組織達のように、
中には『真面目』な(オカルトサークルに真面目もくそも無い様な気もするが)魔術結社も無い訳でもないが、
ほとんどの場合は怪しげなカルト教団か、『魔術結社』という名前を隠れ蓑にした乱交サークルか、
そうでなければオカルト好きの好事家の同好会であって、『魔術結社』から連想される神秘の世界など、
滅多に存在していないと言ってよかった。
少なくとも、我々の世界と、ディアボロの元の世界においては、で、あるが。
ディアボロがそんな事を考えている間にも、上条とインデックスの口の丁々発止は続いていたが、
その内容を要約すると、以下の様なものとなる。
インデックス曰く、
この世には魔術と呼ばれる、世に隠れた技術がある。
それを操る魔術師がいて、そんな連中によって構成された魔術結社がある。
その魔術結社に、自分は狙われている。
狙われる理由は、自分が記憶している脳内の魔道書の存在にある。
その魔道書の数は十万三百冊であり、自分はその内容の全てを一字一句記憶している。
自分の着ている服は『歩く教会』と呼ばれる防御結界で、銃弾はおろか戦車砲にも耐えられる。
さて、以上の如きインデックスの説明を聞いた上条、ディアボロの反応は…
上条「(うわ~~この娘、イタいわぁ~いくら上条さんでもフォローしきれね~)」
ディアボロ「(言ってる事がわからない……イカれてるのか?それともヤクがキマってるのか?かわいそうに)」
完全に『かわいそうな人』扱いであった。
そんな二人の内心を、表情や雰囲気で察したのか、
インデックスは威嚇する河豚か、木の実を頬袋に詰め込んだシマリスの様に、
頬をプクーッと膨らませると、
インデックス「むき~っ!!完全にバカにしてるんだよ。微塵も信じて無いんだよ。雰囲気で解るんだよ!」
頬を赤く染めてプンスカと怒りだす。
中身は兎も角、外見は充分すぎるほど可憐な少女なので、微塵も恐ろしくは無いが。
インデックス「証拠を見せるんだよ!この『歩く教会』の凄さを目の当たりにして、目ん玉ひんむくといいんだよ!」
と、言うが早いが台所から包丁を取って来て、
インデックス「さあ!突いてくるんだよ!」
上条「いや、ヤケクソはよくないって。後に引けなくなってるのは解るけど」
ディアボロ「過ちを認める事もまた大切だ…そうでなければ過去には打ち勝てない」
インデックス「失礼しちゃうよ!解ったよ、だったら自分で証明する!取り敢えずジャパニーズ・セップクを…」
上条「わーっ!?まてまてまて、取り敢えず落ち着け落ち着け」
自分の腹部に包丁の切っ先を当てようとしてインデックスから急いで包丁を奪い取ると、
上条は彼女の眼前に自身の右手を差し出す。
上条「わかった…取り敢えず試して見ようじゃねぇか…俺の…」
差し出された右手は、一見、何に変哲もない右手であった。
上条「『幻想殺し』で触れば、ハッキリするだろうよ」
上条は自信を込めてその名を呼ぶ。
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』
上条の右手に生来宿った、正体不明の『力』。
あらゆる『奇跡』、あらゆる『能力』を打ち破る破幻の右手。
恐るべき『神殺しの異能』を上条はそう名付けていた。
インデックス「幻想(イマジン)…?」
ディアボロ「…殺し(ブレイカー)?」
インデックスは兎も角、ディアボロにも初耳な話である。
ディアボロ「…上条…オマエは『レベル0』では無かったのか?」
上条「いや…こいつは『能力開発』によるものじゃなくて…生まれつき何だけど」
上条が言う所によれば、上条の右手にに生来宿った力で、
レベル5の超能力も、神の奇跡も触るだけでたちどころに破壊してしまう力であり、
これは学園都市謹製の『身体検査(システムスキャン)』ですら認識できない、
正に異能と言っていい代物であった。
インデックス「………」ジトー
上条「何だよ、信じてねぇのか」
インデックス「君が魔術を信じないように、私もそんなの信じられないんだよ…」
ディアボロ「………」
ジト目で上条を睨むインデックスは、上条の言葉を全く信じていないようだったが、
反対にディアボロは、色々と思い当たる節があって、思考の世界に没入していた。
ディアボロ「(幻想殺し…成程、ひょっとすると…)」
ディアボロにとって現状における最大の謎は、
どうして自分は『死の連鎖の運命』から逃れられたかと言う事である。
上条の言う『幻想殺し』とやらが本当ならば、
その力で、ディアボロの肉体に掛けられていた『鎮魂歌』のあの忌まわしい能力を打ち消した…
そういう可能性が視えて来る。
ディアボロ「(だとすれば俺にとって上条は…)」
掛け替えの無い『命の恩人』と言う事になる。
そんな事をディアボロが考えていた時、
上条「 あ 」
インデックス「 え 」
ディアボロ「 ん? 」
上条とインデックスの間抜けな声がディアボロの耳に入ってくる。
何事かと思考の海より顔を上げれば、
頭部以外全裸のツルペタ少女がそこにいた。
???「ザ・ワールドォッ!!時は止まる!」
何処からともなく、そんな声が聞こえて来た気がして、
ほんの数秒間、部屋の中の時間が止まる。
???「…そして時は動きだす」
止まっていた時間が動き出した瞬間、
上条はインデックスに頭部を噛みつかれていた。
上条「アイテテ…それじゃあ上条さんは補習に行ってきますよ…」
ディアボロ「ああ…」
上条が出かけて行くのを、ディアボロはそう言って見送った。
部屋の中に居るのはディアボロ一人。あのインデックスと言う少女はもう此処には居ない。
上条の『幻想殺し』によって破壊された修道服を、
必死に安全ピンで修復し、その後もすったもんだあって結局彼女は出て行った。
『じゃあ、私と一緒に地獄のそこまで付いてきてくれる?』
そう言った時の彼女の瞳に、ディアボロは見覚えがあった。
あの瞳…あれは決意した瞳であった。
自身の運命を知り受け入れた上で、それに抗わんとする『決意し』の瞳であった。
ああいう眼をした人間を止めるには、殺すしかない事をディアボロはよく知っていた。
ディアボロ「(受け入れているのであれば…俺が言う事は何もあるまい…)」
上条は終始、釈然としない顔をしていたが、
ディアボロは彼女との邂逅はあの短い時間で終えて、
すっぱりと因縁を切るべきだと考えていた。
彼女と上条では、生きている世界が違う。
インデックスの生きる世界は、かつて自分が居た世界に近い…
そんな二人の因縁が再び交わる事は互いに『不幸』しかもたらさないだろう。
ディアボロ「(俺も、自分の事で手が一杯だ…)」
今のディアボロは『平穏』を得る事と、
自分を『死の運命』より助けてくれたかもしれぬ上条への恩に報いることで、
正直一杯一杯であった。余計な物を背負い込む余裕などありはしない。
ディアボロ「(…しかし)」
嫌な予感がする。何だか解らないが、とにかく嫌な予感がする。
あのインデックスと言う少女との因縁が、何か途方も無い厄介事を連れて来る。
そんな予感がしてならないのだ。
基本的にスタンド使いは勘が鋭いとされる。
スタンド使い同士、互いの存在を感じ取るなど、
直感能力が優れている為か、常人には視えぬ物を肌で感じ取ったりする。
ディアボロは腐っても『キング・クリムゾン』をその身に宿した恐るべきスタンド使い。
『エピタフ』による未来予知とは別に、そのような第六感もスタンド使い随一であるのだ。
そして、この勘が、不幸にも当たっていた。
インデックスと、上条・ディアボロとの因縁は、ここで途切れるどころか、
より一層、強く複雑になって行き、『平穏』を乱す『厄介』として、二人に襲いかかる。
今回の場合、『厄介』は人の形をとってやって来る。
すなわち、『魔術師』と、
『 ス タ ン ド 使 い 』
という形をとって。
見知らぬ異国の科学の牙城を、インデックスは彷徨い歩く。
その背中に、都合『4つ』の視線が突き刺さる。
彼女を追跡する『2つ』の『2人組』。
一方は、我々も『正史』を通して善く知る『偽悪』の魔術師二人組。
そしてもう一方は…
インデックス「……うん?」
背後よりの視線を感じて、インデックスは振り返る。
背後に広がるのは無機質なコンクリートジャングルのみで、
人の気配はまるで無い。
気のせいかと思い、彼女はその場をそのまま歩き去ったが、
もうしばらくその場に留まっていれば、その直感が正しかった事を知っただろう。
コンクリートジャングルの陰から、『正史』には影も形も無い、
もう一組の『追跡者たち』が姿を現す。
それは実に奇妙な二人組だった。
一人は、露出の多い服装の下から、夥しい時計の刺青を覗かせ、
帽子を被り、昆虫の触角の様な奇怪な髪を伸ばして、
顔を網の様な物で覆った男。
もう一人は、竹筒の様な物を何本も頭部に巻き付けた、
気味の悪い面相の猫背ぎみの少年。
その半開きの口から、何かが一瞬視えた様な気がする。
いや、気のせいであろう。舌の上に『ウィンチ』を乗せた少年など、いる筈も無い。
少年の口から不気味な声が零れた。
???「ウィーン ガシャン、ガシャン……」
それはまるで機械の駆動音の如き不気味な声だった…
/└────────┬┐
< To Be Continued... | |
\┌────────┴┘
はい、ここで一旦区切ります。
流石にもう限界…寝てきます。
再開は…どうしよう…夜までスレが残ってたら、続きを投下したいと思います。
所で、みんなヴ男の事が好きだねぇwww
目が覚めました。
本日、夜8時ぐらいから再開します。
それまで保守を願いします
数々の保守、大変感謝しいたします
VIPPERッ! 君達のの命がけの行動ッ! ぼくは敬意を表するッ!
予定通り8時より再開します
8時になったぜ。
再開します
???「ウィーン、ガッチャン、ウィーン、ギュィーン…」
???「ギィーン、ガッシャン、ウィーン、ガッシャン…」
『学園都市』のさる場所にある、何の変哲もない雑居ビルの屋上。
そこに、一人の奇怪な少年の姿があった。
頭に竹筒の様な物を何本も巻き付け、
爬虫類を思わせる不気味な顔立ちをしたその少年の口からは、
作業機械の駆動音を思わせる不気味な声が漏れ出ている。
膝をついて、体を屈めた少年の足元には、
水がなみなみと注がれたタライが一つ置かれている。
少年はそのタライの水鏡に写ったモノをニヤニヤと笑いながら眺めていたが、
しかし、この少年はどうしてそんな事をしているのだろうか。
この水鏡に映るモノなど、水面を見つめる少年の不細工な顔以外ありはしないのに。
???「ウケケケ…視えてる、視えてるぜぇ…ウィーン、ガッシャン」
奇妙な事に、水鏡に映っているのは少年の顔では無い。
ここでは無い何処かの路地裏をペタペタと走る、白い修道服の少女の姿が、
そこには映し出されていたのだ。
一体、どのようなカラクリなのであろうか。
???「ウィーン、ガッシャン、ギィーン、ガッシャン…あーあー…マイクテスマイクテス」
???「こちら“帽子小僧”、こちら“帽子小僧”…“花火屋”…ちゃんと聞こえてるかい?どうぞ」
少年は水鏡から一旦、目を離すと、
右耳に取りつけた小型のインカムを起動し、
今回の『任務』の相方、コードネーム“花火屋”に声を掛ける。
???『こちら“花火屋”、こちら“花火屋”…通信感度は良好だぜぇ~…どうぞ』
少年が今居るビルの屋上から、100メートルほど離れた路地裏に、
“帽子小僧”の相方たる“花火屋”の姿がある。
露出の多い、上半身など殆ど裸に近い服装の下から、
夥しい数の時計文様の刺青を覗かせて、
黒い帽子を被り、昆虫の触角の様な奇怪な髪を伸ばして、
顔を網の様な物で、やはり刺青の入った顔を覆った男…“花火屋”その人だ。
最早、不気味、を通り越して非人間的な印象すら与える怪人物は、
カラスを連想させる形態をした、自身の『半身』たる『スタンド』を出して、
路地裏の陰から、『目で見ず』に、自分たちの標的たる『インデックス』を追う、
男女二人の『魔術師』の姿を『視て』いた。
“花火屋”は『スタンド使い』であった、そして“帽子小僧”もまた。
“帽子小僧”『ウィーン、ガッシャン…ちゃんとばれずに尾ける事ができてるかぁ~?どうぞ』
“花火屋”「問題ねぇ…何時でも行動に移れるぜ…どうぞ」
“花火屋”もまた、“帽子小僧”と同じような小型インカムを右耳に付けていた。
『学園都市』の中でこそ、『カタ落ち品』されるであろうが、『外』の世界においては、
未だ最先端と言える技術で作られた小型の無線機である。
“帽子小僧”「ウケケケ…“花火屋”、そのまま待機だぁ…オイラは“風船おじさん”に連絡を取るぜ。どうぞ」
“花火屋”『了解…手早く済ませてくれ…OVER』
“帽子小僧”は“花火屋”との回線を切ると、インカムの小さなツマミを捻って、
この場における彼らの指揮官たる“風船おじさん”に回線をつなぐ。
“帽子小僧”「ウィーン、ガッチャン…こちら“帽子小僧”、こちら“帽子小僧”…“風船おじさん”どうぞ」
“風船おじさん”『こちら“風船おじさん”の世界だ。目標を捕捉出来た世界か?どうぞ』
“帽子小僧”「オイラも“花火屋”も目標を補足したし、予定通りの配置に付いたぜ…どうぞ」
“風船おじさん”『了解した世界だ。まずは、『魔術師』二人を片付けろ…』
“風船おじさん”『ターゲットだけならば、如何に逃げ足が速かろうと、俺とお前の『スタンド』で充分追跡出来る世界だ』
“帽子小僧”「ウケケケ…違いねぇ~なぁ~。了解、“風船おじさん”…オイラと“花火屋”は行動に映るぜ、OVER」
“帽子小僧”は“風船おじさん”との回線を切ると、再び“花火屋”に回線をつなぐ。
“帽子小僧”「GOサインが出たぜ、“花火屋”…『カムザキキャオリャ』と『シュテイル・マギャニュス』…だったか?」
“帽子小僧”「連中を始末するぜ…ウィーン、ギュィーン、ガッシャン!」
“風船おじさん”「了解…OVER」
“帽子小僧”との定期連絡を終えた“風船おじさん”は、インカムに当てていた右手を離した。
“帽子小僧”が居るビルから少し離れた背の高いビルの屋上に、“風船おじさん”は居る。
縮れた短めの黒髪を頭頂部に乗せた、背の高い黒人の男である。
スマートな容貌の持ち主で、両方の眼の周辺部に、奇妙な刺青の様な文様がある。
もう夏なのに、礼服を思わせる瀟洒なコートに身を包んでいた。
???「キサマや俺は一緒に戦わなくていいのか?」
“風船おじさん”「今回の『任務』は奴らの能力評価も兼ねている。俺達は奴らの働きを見届ける世界だ」
“風船おじさん”「“帽子小僧”は新参者、“花火屋”は傭兵だ…そのスタンド能力自体は素晴らしい世界だが…」
“風船おじさん”「俺達の『任務』の世界は、ただ強いだけでは務まらない世界だ」
“風船おじさん”「今回の俺の任務は、あくまで連中の審査役の世界だ…」
“風船おじさん”「“射的屋”、貴様も今回の『任務』の本分を忘れない事だ…」
“射的屋”「ああ…」
“風船おじさん”、こと『マイク・O』に“射的屋”と呼ばれた男は、
屋上の給水塔の麓に腰かけていたが、その顔は陰に隠れて覗う事はできない。
ただ、声色から覗うに、成人した男性である事は確かだろう。
“風船おじさん”こと『マイク・O』、
“帽子小僧”こと『ポーク・パイ・ハット小僧』、
“花火屋”こと『オエコモバ』、
そして“射的屋”。
彼らは『さる人物』の命令を受けて、この『学園都市』に来訪した。
彼らに課せられた『任務』は、『学園都市』に逃げ込んだ『禁書目録』の確保。
その『さる人物』の野望の実現に、『禁書目録』の知識が大きく寄与する可能性が高いのだ。
マイク・Oとその一党は、その『さる人物』の直属組織の構成員であり、
『さる人物』の『野望』の実現に日夜世界を縦横無尽に奔走しているのだ。
マイク・O「『禁書目録』は世界を左右できる力を秘めている」
マイク・O「落日のイギリスごときが占有することが許される世界では無い」
マイク・O「より相応しい『主』の手中にあるべき世界だ…」
マイク・O「所で、奴らの動き…ちゃんと追えているな?」
“射的屋”「ああ…よく『視える』とも…」
抑揚の無い声で、“射的屋”は応える。
不意に、空にあった雲の塊が晴れて、陰となって見えなかった男の容貌が明らかになる。
長髪の白人の男である。声からの推測通りの、30半ばほどの面相で、カタチは悪くない。
凹凸のついた奇妙なシャツと、黒いズボンを着ていて、その膝には一丁の狙撃銃が置かれていた。
『ワルサーWA2000』。世にも珍しいブルバップ式セミオートの狙撃銃である。
それはさておき…
“射的屋”「よく『視えている』」
聞き間違いだろうか?
“射的屋”は『視えている』と言ったが、
今しがた陽光で明らかになった男の双眸、
その両方の瞳は、白く濁って光を通さない。
白内障であった。これでは狙撃銃も宝の持ち腐れの筈であるが…
“射的屋”「『見る』よりもよく『視えている』」
“射的屋”は静かにそう事実を告げる。
“射的屋”には『視えてる』。
空気の流れが、今しがた始まった『魔術師』と『スタンド使い』の闘争を、
“射的屋”に見せる。
眼下の街中から、爆音が連続して響いた。
戦場の上空を、ふわふわと浮き漂う『何か』が居る。
四枚の羽を備えた奇怪な『何か』は、その真下の闘争の様子を、
見えざる風の流れで『視て』いたのだ。
“射的屋”…その真名は『ジョンガリ・A』。
かつて『神(DIO)』の名を持つ男に仕えた刺客であった。
???「はぁ…はぁ…はぁ…」
一人の、うら若い女が、ゴミ溜めと化した路地裏の壁に背を乗せ、喘ぐ。
その全身の至る所に裂傷と、火傷を負った姿は痛々しい。
へそ出しルックの白いTシャツに、裾を根元までぶった切ったジーンズ、
そしてウェスタンブーツと言う奇抜で破廉恥な装束も、
今は所々が焼け焦げ、破れ、摺り切れて、破廉恥な恰好を一層ふしだらな物にしている。
???「はぁ…はぁ…ゆ…油断しました…奴ら一体…」
普段は腰に帯びておる、その長さ六尺を超える大太刀を杖に、
彼女は上がり切った息を整えていた。
今の彼女の様子を見れば、ロンドンの彼女の同僚たちは残らず目を剥くだろう。
なぜなら彼女、『神裂火織』はこの世にたった20人しかいない『聖人』、
すなわち『神の代理人』にして『神威の顕現に他ならないのだから。
神裂「はぁ…はぁ…私ともあろう者が…こんな…」
神裂「しかし…とにかく今は『ステイル』が…彼は、彼は無事なのでしょうか…」
『魔術師』、『神裂火織』とその相方『ステイル・マグヌス』は、
こともあろうに『学園都市』に逃げ込んだ『インデックス』を追って、
この科学の街に足を踏み入れていた。
その目的はインデックスの『保護』。
そのやり方は到底『保護』とは言えない、
むしろ『拉致』とでも言うべき大層荒っぽい物だが、
それは彼女達が、インデックスに対する『感傷』を抱かずに、
インデックスを『保護』するための彼女達なりの『苦慮』の結果であった。
何故、インデックスの護衛役とも言える、
イギリス清教、影の実働部隊『必要悪の教会』の二枚看板たる彼女達が、
『インデックス』に対して『感傷』を抱く事を許されないかと言えば、
それには抜き差しならない『ある事情』があるのだが、
それについては後に語る事にしよう。
すまん、二文ほど抜けてた
『魔術師』、『神裂火織』とその相方『ステイル・マグヌス』は、
こともあろうに『学園都市』に逃げ込んだ『インデックス』を追って、
この科学の街に足を踏み入れていた。
→
『魔術師』、『神裂火織』とその相方『ステイル・マグヌス』、
イギリス清教の下部組織たる『必要悪の教会』に所属し、
その2枚看板として武威を轟かせているこの二人組は、
こともあろうに『学園都市』に逃げ込んだ『インデックス』を追って、
この科学の街に足を踏み入れていた。
に差し替え
とにかく、インデックスを保護すべく学園都市に来訪した彼女達は、
いよいよインデックスを捕捉し、『彼女達の流儀』で、
インデックスを確保しようとしたのであるが…
神裂「…何者ですか」
オエコモバ「………」
突如、彼女達の現れたのは、
昆虫の様な一種異様な風体の、怪人物である。
単なる怪人物では無い。恐るべき『殺気』を身に纏った怪人である。
オエコモバ「…『神裂火織』と『ステイル・マグヌス』で、間違い無いな…?」
ステイル「君は頭脳がマヌケなのかい?質問に質問で返すなよ」
オエコモバ「間違い無いようだな…」
怪人、オエコモバの身に纏った殺気がさらに膨れ上がる。
オエコモバ「御命、頂戴させてもらうぞッ!」
神裂「…ステイルッ!?」
正体は不明だが、『刺客』である事に変わりはあるまい。
神裂、ステイルの両人は、歴戦の勇者らしい迅速な反撃を試みたが…
ステイル「オゴアッ!?」
神裂「ステイルゥッ!?!?」
背後のステイルから突如発せられた呻き声に、
神裂は振り向き、そして驚愕した。
『何も無い空間』にステイルが肩から血を流しながら浮かびあがっていたのだ。
いや、厳密には『何も無い空間』では無い。
一枚の黒いカラスの羽が、ふわふわと宙を漂っていたが、
スタンド使いでは無い神裂には、ステイルが浮かび上がった事と、
黒い羽に因果関係を見いだせない。
彼女には視えないのだッ!
その黒い羽から伸びて、ステイルを『釣り上げている』ワイヤーフックが!
正に一瞬の出来事。
宙に浮かびあがったステイルは、次の瞬間には黒い羽の中に吸い込まれて、
この場から消失してしまったのである。
神裂「!?!?(理解不能理解不能ッ!?)」
神裂は唖然とした。
全く予期せぬ奇襲であった。
彼女は優れた戦闘能力の持ち主であり、
人の気配を読む事にも長けているが、
その優れた彼女の索敵能力を以てしても、
この正体不明の奇襲の仕掛けに人の存在を感知する事が出来なかったのだ。
この怪現象は魔術によるものではない。
魔術であれば、魔力の流れを感じ取れる筈だが、それが一切無い。
神裂にとっては完全に正体不明の攻撃であった。
驚愕する神裂の様子を見て、オエコモバはほくそ笑み、
オエコモバ「隙だらけだぁっ!」
神裂「…しまった!?」
ジャケットの内より抜いた小型拳銃の銃口を神裂に擬した。
本来、如何に神裂がスタンドを認識出来ないとはいえ、
奇襲なら兎も角、オエコモバが真っ向勝負で神裂に勝てる道理は無い。
『聖人』の戦闘能力は『吸血鬼』に匹敵、いや、それを遥かに凌ぐであろう。
スタンド使いとはいえ、身体能力はあくまで常人レベルのオエコモバなど、
神裂にとっては人間にとってのモンキーに過ぎない。
しかし、認識出来ない正体不明の攻撃による、ステイルの体の当然の消失。
それによって生じてしまった神裂の意識の致命的な『隙』。
闘争の場において『隙』を見せる事が、そのまま敗北に直結するのは、
人であっても聖人であってもスタンド使いにあっても変わらない不変の法則ッ!
オエコモバ「『一手』遅いぜぇ~っ!殺(と)った!」
オエコモバは両手で構えたワルサーを乱射する。
されど神裂も聖人ッ!
神裂「(このド素人がァッァァァァァ!そのんなチンケな銀玉鉄砲で、この私をどうにか出来ると思ったかァッ!)」
神裂は読んで字の如く紫電の速さで七天七刀を抜刀する。その剣速は、『シリバー・チャリオッツ』にも匹敵するだろう。
この程度の拳銃弾を弾いてしまうなど、訳も無い事であった。
神裂は迫りくる拳銃弾を全て『弾いた』。
『弾いてしまった』のだ。
『七天七刀』の『刀身』で、『拳銃弾』の『弾頭部』を『弾いた』てしまった。
つまり、『弾頭部』に『触れて』しまったのだ。
カチリッ
神裂「えっ!?」
神裂には認識できない『音』が鳴り、
『拳銃弾』の『弾頭部』に仕掛けられた『ピン』が抜け、
瞬間、神裂の周囲の空間が『爆発』した。
オエコモバ「…チッ」
オエコモバは、爆風の後に見えた『モノ』に舌打ちし、
急いで、インカムの回線をポーク・パイ・ハット小僧に繋ぐ。
オエコモバ「こちら“花火屋”…“帽子小僧”、ステイルという魔術師、まだ生かしてるか?」
小僧『ウィーン、ガッシャン…こちら“帽子小僧”…まだ生きてるぜ。シュテイル…だっけか』
オエコモバ「まだ殺すな。利用価値がある」
小僧『へっ?なんでだよぉぉぉっ…オイラ達の目的は「イカデックス」とかいう小娘だろぉぉっ?』
小僧『コイツなんて邪魔なだけじゃねぇぇぇかぁぁぁっ』
オエコモバ「あの女まだ生きてやがる」
小僧『…はあっ!?いや、オイラも視てたけどよぉぉ、あの爆発で生きてる訳ねぇじゃねぇか』
オエコモバ「いや…」
オエオコモバは自身の足元の『窪み』を見る。
神裂火織の、身体能力の凄まじさを事前情報で知り得たオエコモバは、
敢えて『弾かせる』事を考えて、『ピンを仕込んだ拳銃弾』を用いた。
至近距離でのあの爆発である、常人ならばまず爆死していただろう。
常人ならば。
オエコモバ「あの女…爆発の瞬間に地面を蹴って逃げやがった…」
とんだ化け物だ…と続けて呟きながら、改めて『窪み』を見る。
それは爆発による窪みでは無く、神裂が地を蹴った時に出来た窪み。
『聖人』とは『人を超えた存在』。その証左となるものであった。
神裂「ハァ…ハァ…」
神裂「(いけない…思ったより消耗が激しい…)」
何とか九死に一生を得て、死地より脱した神裂だったが、
その体力の消耗は、彼女が予想した以上の物であった。
傷自体は、『聖人』としての能力で今現在もジョジョに回復に向かっているが、
『傷を直す』という行為にも、人間の体はカロリーを燃やし、体力を消耗させる。
要するに神裂は、ガス欠の状態にあったのだ。
神裂「(いけない…意識が薄れる…眠気も酷い…)」
神裂き「(でも…ここで…倒れる…わ…け…)」
遂に、神裂は膝をついてしまった。
神裂「(ダメだ…もう…意識が…もたな…)」
瞼が重く、足は萎え、意識は朦朧としている。
神裂の疲労は限界に達し、今まさに意識を失わんとした時、
上条「はぁ~…やっと補習が終わりましたよ…」
上条「ああと…そういえばどこぞのシスターが我が屋の食料喰いつくしたんだっけか」
上条「また出費が…不幸だ~…」
どこからともなく、そんな呑気な声が聞こえて来る。
上条「あれ…なんか綺麗なお姉さんが…って怪我してるじゃねぇか!?」
上条「オイ、アンタ、大丈夫なのかよ!?」
神裂が意識を失う前に見た物。
それは、自分の顔を心配そうに覗きこむ、ウニ頭の人の善さそうな少年の顔だった。
/└────────┬┐
< To Be Continued... | |
\┌────────┴┘
取り敢えず、ここで一旦区切ります。
明日は日曜なので、夜更かししても大丈夫。
すこし休んで、深夜一時ごろに再開します。
???「このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?」
神裂「ホゲェーーーッ 鼻がッ! ハガがッ!」
休憩終了
予定通り1時より再開します
時間が来ました。
再開します
ディアボロ「ううむ…」
ディアボロは自分自身しかいない部屋の真ん中で、右手左手、
それぞれの掌に乗せられた『モノ』を睨みつけてううむ唸った。
右手に乗せられているのは夏目漱石が2枚、
左手に乗せられているのはインデックスが残していったコイフである。
上条が補習に出かけた後、部屋に残されたのはディアボロ一人である。
昨日の朝昼は上条の買って来た軽食で、晩は上条謹製の肉野菜炒めで済ましたが、
今日の昼は上条が補習で居ないので、食事はディアボロ一人きりでしなくてはならない。
学生がその人口の『8割』を占める『学園都市』において、
『大人』は非常に少数派である。
故に、ディアボロのような独特の容姿をした異人の大人が街中をほっつき歩いていれば、
目立ってしょうがない上に、その姿を怪しまれる事は必定である。
ただ単に怪しまれるならばいいが、
『風紀委員(ジャッジメント)』や『警備員(アンチスキル)』に通報されればたまった物ではない。
だからこそ、上条は昨日の内に、ディアボロの昼食分と、
補習が長引いた時の事を考えて夕食分の食料を買いだめていた訳だが、
どこぞのシスターに全て平らげられてしまったのである。
残念ながら朝方バタバタしてしまった為に改めて買い出しに行く時間は無く、
仕方なく上条はディアボロになけなしの2千円を渡して出かけたのであった。
上条「いや…ちょっとコンビニで買い物するぐらいなら大丈夫だと、上条さんは思うんですけど…」
などと上条は行っていたが、
正直に言えば、ディアボロは外に出る事を酷く躊躇っていた。
我慢できない事も無いが、折角の食事を楽しみたいとも思う。
今後の為に、部屋の外の様子を、一度自分の目で見て置く、という事も必要だと思う。
それより何より…
ディアボロ「(さっさとコレを捨ててしまいたい)」
インデックスが部屋に忘れて言った『コイフ』を、さっさと何処かに捨ててしまいたかった。
インデックスは言っていた、追跡者は『歩く教会』の魔力を追ってくると。
だとすれば、この『コイフ』を部屋に何時までも置いておくのは、百害あって一利なしだろう。
ようやく手に入れた『平穏』である。正直、こんなに早く乱されたくは無い。
しかし…
ディアボロ「馬鹿な…このディアボロが…」
ディアボロは出入り口の扉の前で、蒼褪めながら、呻く様に言った。
ディアボロ「外に出るのが怖いだと…」
部屋の出入り口の前に立った時、名状しがたい恐慌が、
ディアボロの背骨を突き抜けたのだ。
動悸は激しくなり、瞳孔は拡散し、
冷や汗が噴き出て、頭がクラクラする…
一見、ある程度平静さを取り戻したかに見えるディアボロだが、
その実、その胸に巣食ったトラウマは、全くと言っていい程解消されていない。
この部屋の外に出れば、またあの理不尽な『死の連鎖』に襲われるのではないか、
そんな事は無い、もう『鎮魂歌』の『呪い』からは解放されたのだ、と、
何度自分に言い聞かせても、恐怖はディアボロの体を病魔の様に蝕むのだ。
結局、
ディアボロ「(こ、ここは『退く』のだ…)」
ディアボロ「(恐怖から身を隠し反撃の時期を待つ)」
ディアボロ「こ、ここで一時『退く』のは敗北ではないッ!)」
ディアボロ「(オレはちゃんと一人で外に出れる能力があるッ!)」
と、散々に言い訳して部屋の中に戻った訳である。
部屋から出るのを『一時』断念したディアボロであるが、
暫くは、部屋の隅に積まれた古新聞を読んだり、
ディアボロ「(『ピンクダークの少年』と言うのか…中々面白いじゃあないか…)」
本棚から漫画を勝手に取り出して読んだりしていたのだが、
ぐぅっ~
腹の音は静かな部屋では一層音を響かせる。
あらためて考えれば朝から何も食べて無いのだ。
時計を見れば、もうそろそろ午後2時を回るころだ。
ディアボロ「(まだ慌てる様な時間じゃない…)」
それでも『恐怖』がぶり返して、空腹を我慢していたのだが、
ぐぐぅっ~
午後4時を廻る頃には流石に限界が来て、
某不思議なダンジョンのゲームであれば、
『 このまま では餓死してしまう! 』
のメッセージがでるレベルに達してしまった。
不思議の な
>>398のレスで気がついたんだけど、ミス発見。
某不思議なダンジョンのゲームであれば、
→「ディ○ボロの大○険」とかいうゲームであれば
に差し替え
ディアボロ「これは『試練』だ…」
部屋の真ん中で仁王立ちし、拳を握りしめ、
天に突き出して、ディアボロは独り叫ぶ。
ディアボロ「過去に打ち勝てという『試練』と、オレは受けとったッ!」
ディアボロは自身の未熟な過去に討ち勝つ為に、
再度部屋の外に出ようとして…
ディアボロ「よくも!!こんなーッ!…とるにたらない…外出のために……!!」
ディアボロ「この便器に吐き出されたタンカス(恐怖)どもが!!この俺に対してッ!」
結局ダメだった。
ディアボロ「(そもそもだ…この姿で外に出れば…怪しまれるに決まっている)」
ディアボロ「(今の俺が望む物は『平穏』…ならば、部屋の中で大人しくしてればいいじゃないか…)」
ディアボロ「(しかし、あのインデックスの『コイフ』に釣られて、魔術師どもが此処に来るかもしれない!)」
ディアボロ「(いや…待て…もう午後4時だ…連中が来るなら、もっと早く来てる筈だ…)」
ディアボロ「(…だとすれば、わざわざ捨てに行かなくても…)」
そんな事を、延々と考えていた時だった。
ふと、ディアボロの脳裏に去来した考え。
ディアボロ「(俺がかつてボスだったころ…)」
ディアボロ「(俺自身が動きまわれない時…)」
ディアボロ「(窮地に立たされて動けなくなった時…)」
ディアボロ「(率先して動いていたのは…)」
『ヴィネガー・ドッピオ』
失われた相方の名前が脳裏に浮かぶ。
ディアボロ「(俺が行けない所にも、アイツなら行けた…)」
ディアボロ「(俺が動けない時も、アイツならば動けた…)」
ディアボロ「(『大人』の俺に出来ない事が…)」
ディアボロ「(『子供』のアイツには…)」
ディアボロ「(ん!?)」
ディアボロ「(『子供』…だと)」
『ディアボロ』から『ドッピオ』に変わる時、
『ドッピオ』から『ディアボロ』に変わる時、
それは『精神』だけではなく、『肉体』さえも変化した。
『大人』から『子供』の肉体に…
ディアボロ「待て、落ち着け、良く考えろ…」
床に寝そべっていたディアボロは、
起き上がりながら、自分に言い聞かせる。
ディアボロ「何か…何か閃いたぞ…一体何を閃いた…」
『ディアボロ』と『ドッピオ』。
俺の肉体には二つの精神が同居し、
時と場合に応じて、その表裏を入れ替えて、俺は生きて来た。
『ディアボロ』は『大人のボス』として、『ドッピオ』は『子供の腹心』として。
しかし『肉体』は、『変化』するにしても『元々の俺の肉体』が唯一つあるに過ぎない。
だとすれば…
ディアボロ「俺が俺のまま、『ドッピオ』の肉体に変わるのは…果たして可能なのか?」
今まで考えて見た事も無い事であった。
『大人』が『ディアボロ』で『子供』が『ドッピオ』であると言う事が、
あまりに当たり前すぎていたし、
何より、自分の場合『精神』の変化に『肉体』が従う、という形だったから、
『子供の肉体』は『ドッピオの物』という事を、考えるまでもない前提だと思っていたのだから。
しかし、『不幸』にも、自分の肉体には、
自分自身である『ディアボロ』ただ独りしかいない。
しかし、自分の肉体は自分の肉体のままここにある。
つまり、肉体に『変化する能力』自体は残ったままの筈だ。
『肉体の変形』
この能力は、スタンドとも何の関係も無い、
自分の『体質』とでも言うべき代物。ならば…
ディアボロ「俺にも使えるかも知れん」
ディアボロは、ベッドの端に座ると、
目を閉じ、精神を集中して、自分にこう言い聞かせる
ディアボロ「(俺は『ヴィネガー・ドッピオ』だ…)」
ディアボロ「(俺は『ヴィネガー・ドッピオ』だ…)」
ディアボロ「(俺は『ヴィネガー・ドッピオ』だ…)」
ディアボロ「(俺は『ヴィネガー・ドッピオ』だ…)」
ディアボロ「(俺は『ヴィネガー・ドッピオ』だ…)」
何度も何度も繰り返し繰り返し、自分にそう言い聞かせる。
無心に、静かに、心平らかに、ただただ念じる…
ささやき…いのり…えいしょう…ねんじろ…
*おおっと*
その結果…
バイト君「ありがとう御座ましたァ」
ディアボロ「………」
ディアボロはコンビニ袋を下げて、帰路についた。
その姿は、『まるで少年の様である』。
髪は紫で、顔にはそばかす、
ディアボロに比べると背は低く、
顔立ちも大人しい感じだが、
目付きだけはディアボロと全く変わらない。
要するに『ヴィネガー・ドッピオ』の姿である。
ディアボロ「(正直…上手くいくとは思わなかった)」
人生何事も試して見るものだとは、良く言った物である。
一心不乱に念じ続けた結果、30分程の時間を掛けて、
ゆっくりゆっくりと肉体は『変化』していった。
以前であれば、精神の『入れ替わり』に数時間掛けねばいけなかった半面、
肉体の変化自体はものの30秒ほどで済んでしまうものだったが、
どうやら勝手が色々と違うものらしい。
ディアボロ「(しかし…ようやく『外に出る』と言う目的が果たせた訳だ)」
異人の容姿や、姿を変えても恐怖を完全には払拭できなかったが故の精神不安から、
若干挙動不審な行動を取ってしまい、多少不審の目で見られた物の、
やはり子供の容姿が効いたのか、あくまで『見られる』だけで済んだのだ。
ディアボロ「(恐怖も大分払拭できる…)」
『今の自分はディアボロでは無い』
『だから、死の運命も今の自分は襲わない』
そう自分に言い聞かせる事で、心に巣食った恐怖を、
幾分か和らげる事ができたのだ。
何れはディアボロの姿のまま、外に出れる様にしたいものだが、
今は一歩前進できただけでも良しとしよう。
ディアボロ「(しかし…この肉体…欠点が無いわけでもない)」
変化するのに時間が掛ったように、戻るにも同じぐらいの時間が掛るのである。
まあ、それぐらいの欠点ならばどうと言う事は無いが、
ディアボロ「(スタンドが出せないのは痛いな…)」
この肉体の状態になってしまうと、
『ディアボロ』に完全に戻り切るまでスタンドが一切使用できないのだ。
以前は『ドッピオ』状態でも『エピタフ』や、
『キングクリムゾンの一部』を貸し与えて使わせる事ぐらいはできたが、
今回の場合は『エピタフ』すら出す事が出来ないようだ。
つまり、この状態でいる時に敵に襲われた場合、
自身の五体だけで立ち向かわねばならないと言う事だ。
ディアボロ「(まあ、素手の喧嘩ならば出来ない事も無いが…)」
ドッピオですら相手の眼窩に指を突っ込んで眼球をグリグリやったりするぐらいであり、
ディアボロならば、えげつない技の一つや二つ、使えない事も無い。
ただ、この『学園都市』の不良は、酷いのになると自動小銃や、
使い捨てロケット砲で武装していたりするらしい。
そんな連中と万が一事を構える様な事になれば、スタンドが使えないのは不安要素であった。
すいません…なんかもう…眠気が限界…
中途半端な所ですが、ちょっと此処で中断させてください…
起きた時にスレが残っていれば、
再開できる時刻をレスします…
おやすみなさい…
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません