ハルヒ「今日は天気もいいし、みんなで自殺でもしましょ!」(360)


キョン「おう!」

古泉「それはいいお考えですねぇ」

みくる「楽しみですぅ~」

長門「……」コクン


ハルヒ「どんな方法が一番いいかしら?」

古泉「そうですねぇ。集団で行うとすれば、やはり練炭が妥当なところでしょうか」

キョン「練炭か……」

ハルヒ「ちょっとベタすぎじゃない?」

長門「同意」


キョン「どうせ死ぬなら、もっと面白いやり方で自殺したいよな」

みくる「サンポールとドメストを混ぜるのはどうでしょうかぁ」

ハルヒ「結構お手頃よね! あれ? 今そういう洗剤って販売禁止になってるんじゃなかったっけ?」

みくる「ふぇぇ、そうなんですかぁ!?」

古泉「まあ探せば見つかる程度のものですよ。御安心を」

みくる「流行りのやり方だから……少し憧れちゃうんですぅ」

ハルヒ「分かるわみくるちゃん! でも、他にもっと魅力的な自殺があるかもしれないし……結論はもっと後にしましょう」


キョン「シンプルに、首吊りはどうだ?」

古泉「そうですねぇ……首吊りは成功率も高いそうですし」

ハルヒ「屋内にみんなで集まってゾロゾロと首吊るの? 地味ね」

キョン「そう言うなって」

ハルヒ「有希! なんかいい自殺方法ないかしら!?」

長門「……飛び降り」

キョン「これまた普通な」

長門「例えば、全員裸になった上でビルの屋上から雑踏の中に飛び込む」

みくる「わぁ~素敵ですぅ~」


長門「有象無象の大混乱の中、血と内臓をぶちまけて粉々になる私たち」

ハルヒ「最っ高よ! 有希、あんたって凄い事考えるわね!」

古泉「ふふっ……長門さんのその提案、素晴らしいですね」

キョン「飛び降りかぁ……」

ハルヒ「何よキョン。なんか文句でもあんの?」

キョン「俺高い所は苦手なんだよ」

古泉「んふっ、随分と可愛らしいですねぇ」

ハルヒ「何バカな事言ってんの? そんくらい我慢しなさい!」


キョン「それにさ、飛び降りって確実に死ねないだろう? 下手したら、障害持ちになって生きる事になっちまう」

みくる「ふぇぇ……それは嫌ですぅ」

長門「確かにその不安は拭えない」

ハルヒ「……ふん。キョンにしては案外まともな意見ね」

キョン「はっちゃけた死に方なら、飛び降り以外でも可能じゃないか?」

古泉「鉄道自殺とか……そのあたりでしょうかね」

ハルヒ「電車ね! それも捨てがたいわ」


古泉「例えば……そうですね。僕たち5人が横一列で手を繋ぎながら、ホームを端から端まで走って行くんです」

キョン「ほう」

古泉「ホームの先端からジャンプ! 線路に飛び込むのです。そしてちょうど前からやって来た電車にそのまま……」

ハルヒ「すっごい! それいいわね!」

キョン「なかなか面白いな」

古泉「電車が入ってくるタイミングを間違えないようにするのが少し難しいかもしれませんねぇ」

ハルヒ「それが厄介だわ。上手くいけば、これほどエキサイティングな自殺は無いかもしれないわよ!」

古泉「ありがとうございます」


キョン「なあ、一つ考えたんだが」

ハルヒ「何よ?」

キョン「みんなで樹海に行かないか?」

みくる「わあ、いいですねぇ~」

古泉「樹海……ですか」

キョン「でもあそこ監視員とか多いのかなやっぱり……ウロウロしてたら誰かに見つかるかな」

ハルヒ「そうね。でも大勢でまとまってればマークされないんじゃない? 一人で歩いてたらそりゃ警戒されるでしょうけど」


古泉「自殺の名所で豪勢な客死、というのも良いでしょうねぇ」

みくる「そうですねぇ」

キョン「樹海のどっか洞穴みたいなとこでさ、何も食べずにただじっとするんだ」

ハルヒ「みんなで?」

キョン「ああ。極限の極限まで飢えて死ぬんだ。このメンバーでな」

古泉「素晴らしいですね」

みくる「私たちにとって、特別な自殺になるでしょうねぇ~」


ハルヒ「ねえ有希! どっかお勧めの自殺名所知ってる?」

長門「有名なものを挙げると、日光華厳の滝……東尋坊……足摺岬……」

ハルヒ「なんか水っぽい場所ばっかりね」

キョン「海やら滝に飛び込んだ所で、ちゃんと死ねるのか?」

みくる「どこかに流されて、打ち上げられちゃうかも……」

長門「身体が岸壁や岩石に上手く叩き付けられれば、即死できる」

古泉「おお!」


キョン「上手くいけば最高だが」

ハルヒ「なんかすごく名所に行きたくなったわ! SOS団みんなで富士山登山してから、そのまま火口にダイブとか!」

みくる「わぁ! いいですねぇー」

古泉「んっふ……それは素敵ですね」

キョン「他には何かあるか?」

長門「……刺し違え」

みくる「ふぇ?」

長門「刃物でお互いを刺し合う自害のこと」


ハルヒ「随分と古風なものを出してきたわね」

古泉「会津白虎隊の悲劇も、確かそのような感じでしたね」

キョン「面白いなぁ。それ」

長門「例えタイミングがずれたとしても……自分で首を斬って自害する事が出来る」

ハルヒ「いいわね!」

みくる「そうですねぇ」

古泉「首を狙えばかなり確実ですし、それに何より」

キョン「カッコいいな」


ハルヒ「そうね! なんか日本的な自殺って感じ?」

長門「……」コクン

ハルヒ「他には何が挙げられるかしら!?」

キョン「焼身自殺」

ハルヒ「なんか苦しそうよ!」

古泉「どこかの僧侶みたいですね」

キョン「なんだそれ?」

長門「ベトナム戦争に抗議するためチベット仏教の僧侶がサイゴン街頭で焼身自殺した。1963年」


みくる「怖いですぅ……」

ハルヒ「僧侶が進んでやるくらいだし、とんでもなく辛いに決まってるわ!」

キョン「まあ、そうかもな」

古泉「薬を大量に摂取するのはどうでしょう?」

ハルヒ「どこから手に入れるってのよ!」

古泉「……機関のルートを使えば一発なんですけどね」ボソボソ

キョン「流石に怪しまれるだろ、やめておけ」ボソボソ

ハルヒ「何よ? 内緒話?」

キョン「なんでもねーよ」


みくる「凍死とかどうですかぁ?」

ハルヒ「山に登らなきゃいけないわね」

キョン「でも、凍死って結構すんなり逝けそうじゃないか?」

ハルヒ「登山客とか、救助員とか、いろいろ阻止してくる奴らがいるかもしれないわ」

古泉「そうかもしれませんね……よく知りませんが」

キョン「眠るように死ねたら、そりゃ最高だろうなぁ」

みくる「そうですね~」

藤原「君らが死ぬのは知ったことじゃないが、誰にも迷惑をかけずに死にたまえ」

藤原「もちろん、家族にもな」

キョン「そんな死に方があるのか」

藤原「生きろってことだよ。言わせんな恥ずかしい」


ハルヒ「他には?」

キョン「うーん……」

長門「……感電死」

ハルヒ「電線に噛みつけばいいのかしら?」

キョン「おそらく……まぁ死ぬだろうな」

みくる「わたし電線なんて噛み切れません~」

古泉「別に噛み切る必要はありませんよ」

ハルヒ「やれば確実だろうけど、ちょっとめんどいわね」





ハルヒ「今までたくさんの自殺方法が挙げられたけど……」

キョン「結局、どれにするんだ?」

古泉「どの自殺も魅力的で選べませんねぇ」

みくる「そうですねぇ~」

長門「……」コクン

ハルヒ「そこで! あみだくじで決める事にしましたっ!!」


キョン「……」

ハルヒ「何よその顔」

古泉「くじでいいと思いますよ。どれか選べませんしね」

キョン「……まぁいいんじゃねえのか」

みくる「わたしも、くじでいいと思いますぅ~」

長門「……」コクン

ハルヒ「よし決定! んじゃくじ作るわねー」


ガタンッ

バサッ


キョン「……ん?」


ハルヒ「あ、ごめんね。なんか落としちゃた」

キョン「文庫本? 長門のか?」

長門「そう」

キョン「なんでこんな所に置いてあるんだ……あ、栞が飛び出てる」

ハルヒ「~♪」

古泉「どんな自殺になるんでしょうかねぇ」

キョン「…………栞に何か書いてある……?」

古泉「どうしました?」

キョン「…………」





  気  を 付    けて 

   そ  の   世界は   く   る っ  て    いる

おっと、手が滑って保守してしまった


キョン「……!?」

古泉「どうしました?」

キョン「い、いや……なんでも、ない」

古泉「? そうですか?」

キョン「…………(これは、なんだ)」

ハルヒ「さあできたわよっ!」

みくる「楽しみですぅ」

キョン(ちょっと待て、こいつらは一体何をしているんだ? なんだ……これは!?)


ハルヒ「どうしたのキョン? すっごいアホヅラして」

キョン「お、おい……俺たちは今、何について話してたんだっけ……?」

ハルヒ「はあ? 自殺に決まってるじゃない」

キョン「は!?」

ハルヒ「? 何をそんなに驚いてるのよ?」

キョン(こいつ正気か!? 何が自殺……ってか、このメッセージは……いかん、頭が混乱してきた)

古泉「いきなりどうしたと言うのです?」

みくる「キョンくん、これから皆で自殺しようって話をしていたんですよぉ。忘れちゃったんですかぁ?」

キョン(明らかに常軌を逸している……自殺!? ふざけるな! 意味が分からん!!)


キョン(栞に書かれたこのメッセージは、長門の字だ……と言う事はつまり……)

古泉「汗がすごいですねぇ。調子でも悪かったのですか?」

キョン「……す、すまんが……少しトイレに行ってきてもいいか」

古泉「? 構いませんけど……」

キョン「……」


バタン


キョン「…………なんなんだ、これは」


プルルルルルルルルル


キョン「!?」ビクッ


キョン「電話……?」

キョン(なんだこの表示……通知不可能……?)

キョン「……」ピッ

キョン「……もしもし」

「……聞こえてる?」

キョン「…………ああ、聞こえてるよ。……長門……だよな?」

「そう」


「そちらにアクセスするのに少し時間がかかってしまった」

キョン「長門っ……! これは、この世界は……何だ!? どう考えても……異常だっ、こんなのっ」

「落ち着いて。まずは私の話をよく聞いて」

キョン「はぁっ……はぁっ……」

「あなたは、私が栞に仕込んだプログラムによって正常な自我を取り戻した」

キョン「ああ……ありがとよ」

「あなたが今いるそこは、涼宮ハルヒの潜在的自殺願望によって作られた世界」

「そこは、全ての自殺、自害、自傷行為が積極的に肯定される世界」

「何らかの力が及び、あなた自身がそこへ組み込まれてしまったものだと思われる」


キョン「……なんだって……!?」

「タナトス、つまり死への憧憬、欲望は、涼宮ハルヒとて例外無く持っている」

「それが無意識の内に膨らみ、このような結果になったと考えられる」

「そちらへ……アクセスしづらく……ている……一旦……ザザッ……って……後で……ガガッ……る」

キョン「おい長門っ……!! どうすれば出られるんだ!? こっから出るには、どうしたらいいんだ!?」

「そ……は……ガガッ……ルヒ……を……ザッ……と……ガガッ」

キョン「おい! 聞こえないぞ!! 長門!!」

「…………ブツッ、プープープープー」

キョン「…………!!」

長田からのヒント:タナトスの反対語はエロス


キョン「……ははっ……畜生っ……!」


バターン!


ハルヒ「こらー!! キョーン! いつまでトイレに引き籠ってるつもりー!?」

キョン「うわっ!?」

ハルヒ「なんだ、もう済ましてたの? 廊下につっ立ってないで、さっさと戻ってきなさいよ」

キョン「あ……ああ」

ハルヒ「どうしたの? あんた大丈夫?」

キョン「……な……なんでも……ねーよ……」

ハルヒ「?」


キョン「…………」

古泉「調子は良くなりましたか?」

キョン「…………」

古泉「?」

ハルヒ「発表します!!」

みくる「……!」ドキドキ

長門「……」ワクワク

キョン「…………」

ハルヒ「我がSOS団の、歴史に刻むべき自殺方法は……」

古泉「……!」


ハルヒ「……飛び降りに決定!!」

古泉「おおお!」パチパチパチ

みくる「わぁ~!」パチパチパチ

長門「……ユニーク」

キョン(…………狂ってやがる)

ハルヒ「結構いいんじゃないこれ!? あたし飛び降りって好きよ?」

古泉「同感です。中々良い結果となりましたね」

みくる「いいですよね~……今からうっとりしちゃう」

長門「同感」

キョン「…………」


ハルヒ「……キョン? あんたさっきから黙ってばっかだけど」

古泉「どうかしたんですか?」

みくる「具合でも悪いんですかぁ……?」

長門「……?」

キョン(どうする……何て言えばいいんだ……? 分かんねえ……でも、こんな狂った場所からは一刻も早く逃れたい……!)

キョン「……悪いが、今日はちょっと……あの、用事があって……帰らせてもらえないか……?」

キョン(ちょっと……きついかな……?)


ハルヒ「はあ!? 今更何言ってんの!?」

キョン「……っ」

古泉「そうですよ。折角みんなで自殺しようと言うのに」

みくる「ここで帰るなんて、キョンくん酷いですぅ……」

長門「……」

キョン「い、いや……でも、はずせない用事がっ……」

キョン(糞っ……長門まで……なんでそんな顔をするんだ……! やめてくれっ……!)

ハルヒ「そんなにサボりたいの? みんなとの自殺が、そんなに嫌だって言うの!?」

キョン「そっ……そんなの嫌に決まってるだろっ!!」

キョン「…………あっ……」


古泉「……今、何と…………?」

みくる「えっ……!?」

長門「…………」

ハルヒ「…………キョ、キョン……?」

キョン「……ッ……」

キョン(何なんだこの雰囲気はッ……!! そんなに変な事を言ったのか!? 俺はっ……!!)

キョン「いっ……いや、そんな……そういう意味じゃ、なくて、な? その……」


ハルヒ「…………」

古泉「…………」

みくる「…………」

長門「…………」

キョン「やっ……やめてくれ! 俺そんなに変な事言ったか!? 誰だって死ぬのは怖いじゃないか!! そうだろ!?」

ハルヒ「……キョン」

キョン「あ!?」

ハルヒ「見損なったわ……あんた、最低ね」


キョン「は……!?」

みくる「うっ……ぐすっ……キョンくん……ひどいですぅ……」

古泉「……言っていい冗談と、悪い冗談があるのではないですか?」

長門「…………」

キョン(もう……意味が分かんねえ……何なんだよっ……こいつら、真面目な顔して何言ってんだよ……!)

キョン(逃げたい……さっさとこの部屋から、この場所から……姿を消したいっ……!!)

キョン「うっ……うわああああああああッ!!!」ダッ

ハルヒ「キョン!!」


バタンッ……


キョン「はあっ……はあっ……」

キョン(どこへ逃げればいいっ……!? そもそもこの世界に安全な場所なんて、あるのかっ……!?)

谷口「よおーキョン! そんなに急いで、どこ行くんだ?」

キョン「!?」

谷口「お前、今日は涼宮んとこ行ってないのか?」

キョン「谷ぐ……!?……おっ……お前ッ……!?」

谷口「ああ、これか? さっき国木田の自害の介錯やっててさー、随分と返り血浴びちまったよ」


キョン「あっ……うああっ……ぁ……」

谷口「今時古臭いやり方だよなー。切腹なんて痛いだけじゃねえか! そう思わねえかキョン?」

キョン「……ッ」ガタガタガタ

谷口「ほら見てみ教室ん中! 俺が見事な剣さばきで斬り落としたから、まだピクピク動いてやがるぜ!」


国木田「…………」ビクッ ビクビクッ


キョン「ぎゃああああああああああああ!!!!」

谷口「おいどうしたキョン! おーい!」


キョン「ハアッ……ハァッ……ハッ……ハッ……」

キョン「狂ってる……こんな世界、あってたまるもんかっ……!!」


ビュン!


キョン「!?」


ビタァァ―――ン……


キョン「…………何も……何も落ちてきてないっ……!」


キャアアアアアア……

バッシャ――――ン……


キョン「絶対に……絶対に……窓の外なんて……見るものかっ……」


キョン「ぜっ……絶対……にっ!?」


ビュン!


鶴屋「……!」


バシャ――――ン……


キョン「そ……そんなっ……今の、今のは」

キョン(目が合った……窓の外の、落ちてきた、鶴屋さんと……!!)

キョン「……ははっ……あはははは…………ひゃはははははははは」


キョン(もう、ダメだ)

キョン(こんな、こんなの、耐えられねえよ……笑う、笑うしか、ねえ)

キョン「ふふっ……はははははははははははは……」


プルルルルルルルル


キョン「はっ……!?」

キョン「携帯……長門っ!?」

キョン「おいっ!! 長門かっ!?」ピッ


「……時間が無い。手短に言う」

キョン「よかった……!! 長門っ、長門ぉっ!!」

「いつアクセスが途切れるか分からないから……その世界から抜け出す方法を伝える」

キョン「……っ」

「二つの条件を満たさなければならない。一つ目は、あなたが正気を取り戻す事」

キョン「ど……どういう」

「これは先程の栞に仕込んだプログラムで済んだ……後は、あなたが正気のままでいる事が重要」

キョン「……な」

「辛いものを見ているかもしれないけれど、正気を保って。発狂してしまえば、そこで全て終わる」


キョン「あ、ああ……それで、もう一つは!?」

「そちらの世界における、あなた以外のSOS団のメンバーを死に至らしめる事」

キョン「……え……っ!?」

「殺害する必要は無い。あなたを除いた四人が先に自殺してしまえば、それで事は済む」

キョン「…………でも……」

「しかしおそらく、四人はあなたを執拗に集団自殺に誘おうとしている筈。あなたが先に死んでしまってはいけない」

キョン「…………」

「その世界は……ザッ……自殺する事が美徳とされ……一緒に自殺を……ガガッ……事は、信頼の証でもある」

キョン「なるほど……だから拒否った時あんな反応されたのか……」

「涼……ガガッ……ヒの深層心理を探……て分かっ……ザッ……果」

キョン「分かった! ありがとう長門! それさえ知れば多分……大丈夫だ!」

「どうか……ガガッ……ってき……ザザッ…………」

キョン「…………」




キョン「…………」


コンコン


キョン「……俺だ。さっきは悪かった。開けてくれないか」

キョン「……」


ガチャッ……


みくる「……」

キョン「朝比奈さん……」

みくる「キョンくん……」

ハルヒ「何? ノコノコと帰ってきて」

キョン「ハルヒ……俺が悪かった。さっきはちょっと……気が動転しててな」

キョン「俺は別に……みんなと自殺したくないなんて思っていない……むしろ、一緒に自殺したいと強く願ってる」

キョン「信じてくれ」

キョン(…………)

>>143
先生きのこってなんだよ。
撤回しろ。たけのこにしろ。


ハルヒ「……本当、酷いわよっ……バカキョン」

キョン「ああ……」

古泉「……考え直してくれましたか」

みくる「ふぇぇ……わたし、キョンくんがいない集団自殺なんて……ううっ……」

古泉「泣く事ありませんよ。彼はこうして帰ってきてくれました……」

長門「……」

古泉「これでSOS団全員、胸を張って自殺できるという訳です……本当に、よかった」

キョン「…………」

キョン(俺は先に死んではいけない……死んだら終わりだ。先にこいつらを見届けて……)

>>145
こんなスレでも布教とは汚いさすがたけのこ厨汚い

>>145
お前みたいにたけのこ厨を装ってたけのこのイメージを悪くしようとするきのこ厨にはうんざりだ
われわれたけのこ厨はそんな非人道的な、他人を考えないような発言はしない


ハルヒ「さあ! バカキョンも来た事だし、行きましょう!」

キョン「…………」

古泉「そうですね」

みくる「ぐすっ……はいっ」

長門「……」コクン

ハルヒ「屋上でいいかしら?」

古泉「先客が多いかもしれませんよ」

みくる「わたしはどこでも構いません~」

キョン(……っ……こいつら、本当に自殺するつもりなんだ……今更だが、実感が……)

キョン(ヤバい……こんな、こんな状況……耐えられるか、分かんねえ……)

>>145>>147>>149
「この先、生き残る」だぞ





ハルヒ「んーっ! 風が気持ちいいわねっ!」

古泉「いい自殺日和ですねぇ」

みくる「本当……こんな日に自殺できて幸せですぅ」

長門「……」コクン

キョン「……ッ……」

ハルヒ「わっ!!」

キョン「うわああっ!?」ビクッ

ハルヒ「あははは! あんたって本当にボーっとしてばっかりよね!」

キョン「やめてくれっ……マジで……!!」

ハルヒ「……ふふっ、ばーか」


古泉「そろそろ逝きますか」

ハルヒ「……そうね」

キョン(どうする……順番とか……俺は最後にしないと……)

みくる「緊張してきましたぁ……」

ハルヒ「……ほら……手、出しなさいよ」

キョン「え?」

ハルヒ「いいから出せって言ってんの!」

キョン「おっ……おい、あの」


ぎゅっ


ハルヒ「そんなに躊躇ってたら、恥ずかしいじゃない……」


キョン「あ……!?」

みくる「うふふ。なんだか照れちゃいますね」

古泉「こうしてみんな一緒に自殺できるのは、この世の中で最高の誉れですよ」

長門「……」

キョン「お、おいっ……そ、そんなっ」

ハルヒ「みんなぁ! 全員手ぇ繋いだ!?」

キョン(横一列で手を繋ぎながら飛び降りるとか……ふざけんなよッ……!!)

みくる「OKですよ~」

古泉「準備万端です」

長門「大丈夫」


キョン「ぅ……ふふっ、はは」

ハルヒ「どうしたのキョン?」

古泉「そんなに高い所が苦手なのですか?」

みくる「うふふ。キョンくん可愛い」

キョン「ははっ……そ、そうですね」

ハルヒ「フェンスを乗り越えるわよっ!」


ガシャン!ガシャン!


キョン「……」

ハルヒ「あっ!? 覗くなこのエロキョン!!」

キョン「……(こんな状況でパンツ見て喜んでる俺って……)」


みくる「ふええ……待って下さぁーい……」ガシャンガシャン

ハルヒ「だらしないわよみくるちゃん!」

古泉「手を貸しますよ」

みくる「あ……ありがとうございますぅ……ふぅ、はぁ」

キョン(…………たっけぇ……落ちたら、即死だな……こりゃ)

ハルヒ「……ねえキョン」

キョン「な、なんだよ……」

ハルヒ「…………ううん、何でもない」

古泉「全員整いましたよー」

ハルヒ「よしっ! じゃあみんな手を繋ぎ直して……」


ぎゅっ


キョン「ひっ……」

ハルヒ「あたしがカウントダウンするから、ゼロで一斉に跳ぶわよ!!」

古泉「了解です!」

みくる「はーい!」

長門「わかった」

キョン(どうするどうするどうするどうするっ……!! こ、このままじゃまずい……死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ死ぬしぬしぬしぬしぬ)

ハルヒ「じゅーう……」

dkdk


キョン(死にたくない……こんな、狂った世界で……死ぬわけにゃ……いかないっ……)

ハルヒ「きゅーう……」

キョン(どうすればいいっ……先にこいつらが死ねば……でもっ)

ハルヒ「はーち……」

キョン(殺せば……そうだ、殺せば……殺されないっ……俺は、助かる……!!)

ハルヒ「なーな……」

キョン(きっと戻れば……普通の日常が……いつものSOS団が……俺を待ってる筈……!! きっと、きっと……)

ハルヒ「ろーく……」

キョン(でも……)

ハルヒ「ごーお」

キョン(こいつらを殺す事なんて……!!)

「ど-すんの!?オレ」
これぞ本当のライフカードだな

>>189だれうま


キョン(死にたくない……死にたくないっ……死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
    死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない)

ハルヒ「よーん!」

古泉「……っ!」

ハルヒ「さーん!」

みくる「……!!」

ハルヒ「にーい!!」

長門「…………」

>>192
続きはコピペブログで!

>>197あるのかいww



ドンッ



ハルヒ「いっ……」

キョン「……」

ハルヒ「……キョン……?」

キョン「ごめんな……ハルヒ。おかしいのはお前らなんだ」



ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……


バッシャ――――――――ン……



キョン「……ふふっ……へへ、へへへ」


みくる「きゃああああああああああああああああ!!!」

古泉「……何をしているんですか!!!」

長門「…………!!」

キョン(殺しちまった……ハルヒを、ころしちまった)

キョン(もう戻れない……こいつら、全員、殺さないと……俺は)

古泉「てめえ何してんだッ!!!」

キョン「ぐあっ……!!」

古泉「お前はっ……仲間を、何だと思ってんだッ!! この野郎!!」

キョン「ぐっ……ぁ……」ギリギリ


みくる「やめてえええ!! 古泉くんっ!! やめてえええええ!!」

キョン「がっ……」ギリギリギリ

古泉「はぁっ、はぁっ」

長門「古泉一樹。それ以上は彼の生命に関わる」

キョン「……ッ」

古泉「はぁ……はぁ…………でもッ」

長門「他人の自殺する権利を奪ってはいけない。これでは、あなたも彼と同じ」

古泉「………………」

キョン「っ……!」

古泉「……分かりました。分かりましたよ」パッ

キョン「ぷはっ……! はあっ、はあっ、はあっ……」


古泉「……ッ……なんで涼宮さんを……なんで、なぜ!?」

キョン「はぁ……はぁ……ははは……なんでって」

キョン「こんな狂った世界で、俺の理屈なんか通用するかよっ……」

キョン「俺は……死にたくねえんだよ!! 死にたくねえ!! だから、お前らが死ねよ!!」

キョン「死にたい奴はさっさと死ねばいいじゃねえかあああああああ!!!」


ドカッ


古泉「なっ……!?」

長門「!?」

キョン「ははっ……油断したな……馬鹿だなぁ……あはははは」

古泉「あああああああああああああああああああ!!!」


グチャッ


キョン「はは……死んだかな……」

キョン「後ろにいた長門も……古泉に押されて、落ちやがった……ふふっ……へへへ」

キョン「まさかこの世界でも不死身なんて……そんな事言わないでくれよ……?」

みくる「ひっ……ひいっ……!!」ガタガタガタ

キョン「朝比奈さん……」

みくる「いやっ!! 来ないでぇ!! やめてえ!!!」

キョン「そんなこと言われても……みんな死なないと……俺……帰れないんですよ」

みくる「いや……いや……!!」


キョン「……ごめんなさい……朝比奈さん」

みくる「あなたに殺されるくらいならっ……!」

キョン「!?」

みくる「……わたし、自分で死にますっ!!」

キョン「あっ……」



バシャ――――ン……



キョン「………………」

一人ずつ襲ってけばよかったのに


キョン「みんな……みんな、死んだ……はっ、ははは」

キョン(……俺は人殺しか……仲間を殺した糞野郎か)

キョン(いや……違う。こんな世界のハルヒなんて、朝比奈さんなんて、長門なんて古泉なんて、本物であってたまるもんか)

キョン「これで戻れるんだ……」

キョン「……」

キョン「…………なんだ、あれ」


ずりっ……ずりっ……


キョン「まだ、生きてる……?」


ハルヒ「がッ……ぁ……ぅあ……」

キョン「下まで降りてきて見てみれば……お前か、ハルヒ」

ハルヒ「……ッ」

キョン「てっきり長門か古泉かと思ったぞ……」

ハルヒ「ぐァッ……ぁ……!」

キョン「喋らなくていい。今楽にしてやるから」

ハルヒ「ッ……」

キョン「……一緒に自殺できなくて、ごめんな」


グチャッ

せつない

自殺が肯定される世界なのに「樹海で止められるかも」とか心配してるのっておかしくない?

>>264「自殺ブーム当来」とかなってるってことじゃね?

>>269
っていうか今の日本がそうだろ


それから先の事は……よく思い出せない。

気付いたら病院のベッドの上だった。
いつぞやの時みたいに古泉が林檎を剥いていて、傍でハルヒが寝袋に包まっていた。

家のベッドで眠ったまま意識が回復せず、何週間も異常な昏睡状態にあったらしい。




長門「あなたは無事にこちらの世界へ帰還できた」

キョン「そうか……」

長門「……」

キョン「なぁ長門……俺は、あっちで、みんなを……あっちのお前も、殺しちまった」

長門「……」

キョン「いや、お前が死ぬわけないだろうけど……こうして帰ってきてるんじゃ……殺したって事だろ……?」


長門「そう」

キョン「……」

長門「あれは、言わば涼宮ハルヒの無意識下における夢の世界とも言える」

キョン「夢……?」

長門「そう。つまり、その世界の私は、この私とは全く関係が無い。それは涼宮ハルヒが生み出したイメージ体に近い」

長門「あの世界は全てがそのような虚構で成り立っていた。全ては夢の中で完結し、現実に影響は出ない」

長門「しかし今回、あなたはその世界に取り込まれてしまっていた」

キョン「…………なんで、また……?」

長門「原因は分からない」

>>273
     _人人人人人人人人人人人人人人人_
     >      自殺ブーム当来     <
      ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄

               ヘ(^o^)ヘ 
                  |∧   
                 /


こんな感じのテンションならイケる

>>281
> こんな感じのテンションならイケる
イケねぇよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


そうだ。長門は確かに「夢の世界」と言った。

それはあながち間違ってもいなかった。

悪夢は終わらなかった。

俺は、それから毎日、同じような夢を見続けるようになっていた。

夢と言っても……ハルヒの閉鎖空間が世界を滅ぼしかけた時のような、
嫌な現実感を伴う……現実感てもんじゃない、本当に体験しているんだ。俺は……

俺は毎日、夢の中で殺し続けた。
だって、仕方ないだろう? 殺さなきゃ、死ぬ。
ハルヒの無意識下の夢の中に取り残されて死ぬなんて。

>>282,283
だめか…もっと優しい感じの方が自殺したくなるか?

>>287
なんでお前はそんなに自殺させたいんだよwwwwwwwwwwwwww

>>291なんとなく
ちなみに俺は自殺願望なんて微塵もない


一度目の時のように、何日間も寝込む事はまず無かった。
平常な生活が送れるレベルに朝は起きれたが、悪夢は毎日きちんとやって来た。

キョン「……」

ハルヒ「キョン! どうしたの、随分とやつれてるじゃない」

キョン「……ああ」

キョン(ちょうどさっき、夢でお前を首をナイフで突き殺したんだよ)

ハルヒ「大丈夫? 無理はしないでよ、団活休んだら承知しないからね!!」

キョン「……ああ」

キョン(もう何度殺したろう……)

>>297現実の方は殺すなよ…


みくる「お茶です」

ハルヒ「ありがとうみくるちゃん!」

古泉「ありがとうございます」

長門「……」ペラッ

キョン(今日は……ハルヒは先に首吊って、古泉が飛び降りて……長門を殺して……)

みくる「キョンくん?」

キョン「うわあっ!?」

みくる「大丈夫? キョンくんなんか変ですよ」

キョン「……ッ」

目の前の人が、今にも嬉々として自殺しそうで、怖い。
殺さなきゃって思ってしまう自分が、恐ろしい。




ハルヒ「きゃあああああああああああ!!!」

古泉「なっ……」

みくる「……ッ」ビクッ ビクビクッ

ハルヒ「みくるちゃん!! みくるちゃん!!!」

キョン「……」

何度見た光景だろう。
朝比奈さんが血を流して横たわっている。

これは、夢なのか……? 現実なのか……?


俺にはもう分からない。

なんでそんなに大きな声を出すんだ、ハルヒ。

早く死んでくれないと……俺が帰れないだろうが……




さっさと、自殺、しろよ。







<終>

おつ~

>>297誤字訂正
×夢でお前を首を ○夢でお前の首を

他にも誤字あるかもしれんがチェックする気力が無い
こんな時間まで読んでくれてありがとう

寝るのこわいなあ

>>325ねろ

なぜ、まだ残ってるし・・・

>>354ほんとだれが保守してたのか

あげ

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