唯「どっぺるげんがー?」(175)


律「はあ、お腹すいたなー」

律「まったく聡のやつめ、私のお菓子勝手に食いやがって…」

律「帰ったらデコピン100回ぐらいやらないとな」

律「ん?あれは…」

唯「……」

律「唯だよな…こんな夜遅くに制服なんか着てどうしたんだろう」

律「おーい、ゆいーっ」

唯「……」スッ

律「あっ、路地裏に消えた…待てーっ!」タタタ

律「あれ?確かにこっちに行ったと思うんだけど…もういない」

律「どうしたんだろう…」


――翌日

律「おはよう」

唯「おはよっ、りっちゃん」

紬「おはよう」

律「なあ唯」

唯「なーに?」

律「お前さあ、昨日の夜何してたんだ?」

唯「何してたって…憂といっしょにゲームしてたよ」

律「いやいや、昨日の九時ぐらいに外に出てただろ?」

唯「そんなことないよ。その時間はお風呂入ってたもん」

律「嘘つくな!制服着てて路地裏に消えてっただろ!」

唯「それってりっちゃんの見間違いじゃないの?」

律「そんなはずないぞ!2年も一緒にいて間違うはずない!」

唯「そこまで言うなら…憂に聞いてみてよ」

律「おっしゃぁ!これで嘘だったら今日のお菓子はわたしにくれよな!」

唯「望むところだよりっちゃん!」

紬「あらあら」


憂「はい。お姉ちゃんは昨日の九時はお風呂に入ってましたよ」

律「そんな…」

唯「ほら、言ったじゃん!」

律「じゃあ、あれはなんだったんだ…?」

憂「どうしたんですか?」

紬「昨日ね、りっちゃんが夜に制服を着た唯ちゃんを見たって言うの」

憂「そんなはずありませんよ。そんな夜遅くにお姉ちゃんを外に出したりしませんから」

律「そりゃあ、考えたらそうだよな」

唯「へへーん、これでりっちゃんのお菓子は私のものだね!」

律「なっ!私はそんなこと言ってないぞ!」

唯「いいや!私は聞いたもん!このデコりっちゃん」

律「そんなこと言うのはこの口かあ!」グニュグニュ

唯「ふいまへんでひふぁ~」

紬「あらあら」

憂「うーん……」

紬「どうしたの?憂ちゃん」

憂「いいえ、何でもないです…」

紬「そう?」

憂「……」


――放課後

唯「おいひい!」

律「結局食べられた…」

紬「まだあるから…」

澪「そろそろ練習するぞ!」

梓「そうですよ!ゆったりしすぎです!」

律「いいかげんにこの空気に慣れろよなー」

梓「慣れたくないです!」

唯「はい、タイ焼き」

梓「ちょっとだけですよ」

澪「買収されるのはやっ!」

さわ子「やっと静かになったわね…」

律「あっそうそう、昨日の夜にさぁ唯を見たやついる?」

唯「その話は終わったじゃん!」

律「でもあれは絶対唯だって!」

澪「何がなんだ?」

紬「しかじか」

澪「私は見てないけどな」

律「役立たず」

澪「う、うるさいっ!」

梓「……それってひょっとしてドッペルゲンガーじゃないんですか?」

唯「ろってんまいやー?」

紬「ドッペルゲンガーよ」

梓「簡単に言うと、もう一人の自分ですよ」

律「なんだそれ?すっげぇ痛いな」

梓「自分のドッペルゲンガーを見た人は死んでしまうっていう話もありますよ」

唯「えーっ!?死んじゃうのはいや!」

澪「ま、ままままだ決まったわけじゃあないからな?」

律「怖がりすぎだろ」

紬「でも、もしそれが唯ちゃんのドッペルゲンガーだったら…」

梓「はい。唯先輩が見たら死んじゃうかもです」

唯「いやだぁぁああああ!!」

さわ子「じゃかあしい!」バン

澪「ひいいいいっ!?」

さわ子「ゲンガーだかゴーストだか知らないけど、そんなの噂よ!静かにお茶しなさい!」

唯「そうだよね!」

律「まったくさわちゃんめ…フラれたからって…」

さわ子「ああん!?」

律「ナンデモナイデス」

梓「……」

……


律「はあ、疲れた」

澪「今日は何もしてないだろ!」

律「あんまり怒ってると、老けるぞ」

澪「うっさい!」バキン

律「なふっ!?いてぇ~」サスサス

澪「自業自得だ!」

律「意味が違うのでは…」

澪「ふん!」

律「あっでも気をつけろよ」

澪「何に?」

律「もう一人の唯にだよ」

澪「な、なななにばかなこと…」

律「夜、一人で歩いてると…突然、もう一人の唯が…!」

澪「きゃああああっ!」

律「あははっ、じゃあな」

澪「も、もう…」

澪「……」

澪「り、律があんなこと言うから…余計に怖いじゃないか…」

澪「うぅ…だ、だれかぁ…」

にゃーん

澪「ひいいっ!? な、なんだネコか…」ホッ

トントン

澪「ん?」クルッ

唯「……」

澪「うわぁ!?ゆ、ゆゆ唯!!?」

唯「……」ジリ

澪「ま、ままま待て!私はおいしくないぞ…」

唯「……」ジリ

澪「待ってよ…イヤだよ…」

唯「……」バッ

澪「いやあああああああああっ!!?」

和「何驚いてるの?」

澪「いやあああああ………へっ?のどか?」

唯「澪ちゃん、肩にゴミがついてたよ」

澪「あ、ああ。ありがとう…」

澪(あれ?本物の唯か…)

和「唯がそんなに怖かったの?」

澪「いや、そういうわけじゃ…。ただいきなり来るから」

唯「ごめんね。ついつい」

澪「もういいよ。で、和と唯は一緒に帰ってる途中なの?」

和「そうよ。帰り道にばったり会ったもんだから」

唯「そういうこと」

澪「ふふっ、仲良しなんだな」

和「じゃあまた明日ね」

唯「ばいばーい」

澪「うん。また明日」

澪「ほっ。なんだよ…律があんなこと言うからビックリしちゃったじゃないか」

澪「さて帰ろうかな」


――翌日

澪「ふう、ちょっと遅くなったな…」

唯「るんら~ん♪」

澪「あっゆいー!」

唯「おおう!澪ちゃん!」

澪「いつもこの時間に学校に行くの?」

唯「うん!今日は憂が日直だから一緒じゃないけどね」

澪「そっか」

唯「澪ちゃんも今日は遅めだね?」

澪「あ、ああ。ちょっとな」

澪(昨日のことが怖くて眠れなかったなんて言えない…)

唯「ふーん」

澪「あっそういえば、昨日は和とどこに行ったんだ?」

唯「へっ?昨日?」

澪「うん」

唯「私、昨日は和ちゃんと会ってないよ?」

澪「えっ?そんなはずないだろー」

唯「本当だよ!昨日はあずにゃんとまっすぐ帰ったし」

澪「でも、私昨日は唯と和に会ったぞ?」

唯「えーっ?それって本当に私?」

澪「本当だって!ちゃんと話したし」

唯「うーん…それってもしかしてなんとかゲンガーじゃないの?」

澪「えっ……」

唯「なーんてね!」

澪「……」

唯「み、澪ちゃん戻ってきて!」

……


唯「じゃあ放課後にね!」

澪「あ、ああ」

澪(唯本人がああ言ってるならそうなんだろうけど…)

澪(でも、あれは絶対唯だよな)

澪(よし、和に聞いてみよう)

澪「おはよう」

先生「遅刻だぞ秋山」

澪「えっ?あ、あれ…?」

澪「はあ…今日はツイてないな…」

和「めずらしいわね。澪が遅刻だなんて」

澪「今日は遅めに家を出たし、途中で唯に会ったからゆっくりになったんだろうな」

和「それは残念ね」

澪「ところで和」

和「なに?」

澪「昨日は唯と一緒にいたよな?」

和「まあね。というか会ったじゃない」

澪「だよな」

和「いきなりどうしたの?」

澪「いやあ、唯がさ、昨日は和に会ってないって言うんだ」

和「それは変ね」

澪「だろ?でも和が言うなら本当だってわかったからもういいや」

和「ずいぶん適当なのね」

澪「もうこの話題はいいの!」

和「そう」

澪(やっぱり唯が間違えたとしか考えられないよな…)

澪(そうだよな…唯はとぼけることがあるからな…そうだそうだ)

澪(よし、この話は終わり!)


――放課後

律「あー今日は疲れたな」

紬「あらあら、また今日も練習しないの?」

律「いいんだよ。最近は結構練習してたしな。たまには休みが必要だ」

紬「そうね」

ガチャ

律「やっほー」

ジャラーン

唯「ふう…あっりっちゃん」

律「えっ?どうしたんだよ唯」

唯「なにが?」

律「先に行ってると思ったら練習なんかしちゃって…」

唯「何言ってるの?私たちは軽音部だよ。練習しなきゃ」

律「ど、どうしたんだよ…」

紬「熱でもあるのかしら?」

唯「もう、りっちゃんもムギちゃんもバカにしちゃって」

律「わるいわるい…」

梓「こんにちはー」ガチャ

澪「あれ?唯が練習してる」

梓「本当ですね」

唯「たまには先輩らしいところ見せないとね」

梓「すばらしい心がけです!」

澪「まあそうだな」

澪(なんだ?唯が練習するなんて…)

律「はあ、仕方ない今日は練習するか」

紬「そうね。ティータイムはあとでしましょう」


……

律「ふう、今日はほんっと疲れたわ」

澪「そうだな。今日は疲れたな」

律「まったく…唯があんなことやるからだ!」

澪「でもいいじゃないか。唯がやる気だすとほかのみんなもやる気が出てくるし」

律「それもそうだけどな…」

澪「でも唯って最近おかしいよな」

律「なんで?」

澪「ほら今日みたいに練習するなんて言ったり、和と一緒に帰ってたのに帰ってないなんて言うし」

律「ああ、澪が言ってたやつか」

澪「うん。でも深く考えすぎだよな」

律「そうだぜー。考えすぎもお肌によくないぜ!」

澪「余計な御世話だ!」バキン

律「あふっ!?いたいです…」サスサス

澪「じゃあな」

律「殴って帰るとか…どんだけだよ」

澪「ふう…なんだか今日はほんとに疲れたな」

律「……」テクテク

澪「あれ?律、戻ってきてどうしたんだ?」

律「……」スタスタ

澪「あっおい!どこ行くんだよ!」

律「……」スタスタ

澪「り、律?」

律「……」スタスタ

澪「行っちゃった…」

澪(何だったんだ今の律は…)

澪(話しかけても無視するし…)

澪(もしかして…ドッペルゲンガー…?)

澪(……はははっ、まさかな…)


――翌日

澪「ふう、今日は早めに出ちゃった」

唯「あっ澪ちゃん」

澪「おう、唯と憂ちゃん。おはよう」

憂「おはようございます、澪さん」

澪「今日は早いんだな」

唯「うん。たまには早く起きないとね」

澪「えらいぞー」

憂「澪さんもえらいですよ」

澪「う、憂ちゃんに言われるとなんだか恥ずかしいな…」

唯「あははっ、澪ちゃん照れてるー」

澪「わ、笑うなよっ!」



唯「じゃあ澪ちゃん、また放課後にね」

澪「ああ」

澪(なんだろう…やっぱり唯がおかしい…)

澪(おかしいんだけど…違うと断言できない…)

澪(ああもう!もどかしいな)

――放課後

ガチャ

澪「おーっす」

律「おっ澪、遅いぞ」

唯「もう練習始まってるよ」

澪「えっ!?も、もうか?」

梓「はい…なんだか先輩達がやる気なんです」

紬「ティータイムもなしにすぐに練習始めたの」

律「おいおい、私たちも練習ぐらいするよ」

唯「そうだよムギちゃん」

紬「そ、そうね」

澪(り、律まで…)

澪(唯も律も…いったいどうしたんだ?)

律「おい澪、はやく準備しろよ」

澪「ああ、わかった」

……


ジャーン

律「ふう、今日は良かったな」

澪「そ、そうかな」

紬「なんかみんな元気ないっていうか…」

唯「そう?」

律「そんなことないって。いつも通りだったよ」

澪「ま、まあほんのちょっとっだけだったからな」

梓「考えすぎでしたね、澪先輩」

紬「……」

唯「じゃあ今日は帰ろうよりっちゃん」

律「そうだな唯隊員」

……


律「……」

澪「な、なあ律」

律「なに?」

澪「今日はなんだか静かじゃないか。何かあったのか?」

律「何もないよ?」

澪「そ、そうか…」

澪(律も、唯みたいになんかおかしいな)

澪(昨日何かあったのか…?)

律「澪」

澪「ひゃ、ひゃい!?」

律「もうお家だから、じゃあな」

澪「あ、ああ」

澪(なんだろう…やっぱりおかしい)

澪(いつもなら最後に何か余計なこと言ってから帰るのに…)

澪(律…いったい何があったんだ…?)


――澪の家

澪「ふう…予習終わりっと」

澪「……」

澪(今日は唯と律が自分から練習していた)

澪(いつもなら真っ先にティータイムをしていた二人が、だ)

澪(唯に関して言えば、数日前から様子がおかしかった)

澪(ドッペルゲンガーだとか何とかではないと思うけど…)

澪(やっぱり何かあるとしか…)

ガチャ…

澪「ん?誰…?」

律「……」

澪「律?どうしたんだ?なんでこんな時間に…」

律「なあ澪」

澪「な、なんだよ…」

律「澪は私のこと好き?」

澪「な、なな何言ってんだ!!?」

律「好きなの?嫌いなの?」

澪「そ、それは…好きだけど……」

律「そうなんだ」

澪「でも…今のお前は好きじゃない」

律「……」

澪「お前は律なのか?本当の律なのか?」

律「……」ガシッ

澪「なっ、なにをっ!?」

律「澪、澪、澪、澪」

澪「ひいっ!?は、はなせっ!」バッ

律「澪、澪、澪、澪、澪」

澪(このままじゃ…殺される…!)

澪「く、くるなーっ!!」


ガシャン!

梓「澪先輩っ!」

澪「あ、梓!?」

梓「さあ、早く逃げましょう!」

澪「うわっちょ、ここ2階だぞ!?」

梓「しっかりつかまっててください!」

澪「う、うわぁあぁあああっ!?」

スタン

タタタ…

律「……澪」

……


梓「ここまでくればもう大丈夫です」

澪「はあ…はあ…お、おい!あれはいったい何なんだ?あの律は何なんだ!?」

梓「いきなりですが…澪先輩はドッペルゲンガーの存在を信じますか?」

澪「へっ!?そ、それはわからないけど…」

梓「あの律先輩はドッペルゲンガーです」

澪「そ、そんな馬鹿な…」

梓「厳密にいえば、あれは律先輩じゃないけど律先輩なんです」

澪「はあ?どういうことだ?」

梓「ドッペルゲンガーは本当に存在します」

梓「そしてあることがきっかけでドッペルゲンガーが現れると、そいつは徘徊しだします」

澪「うん」

梓「ドッペルゲンガー自体に人を襲う能力はありませんが…」

梓「ドッペルゲンガーはその本人に入りこむことによって支配することができるんです」

澪「な、なんだって…?」

澪「ということは、もし私に私のドッペルゲンガーが入りこんでしまったら…」

梓「澪先輩はドッペルゲンガーによって支配されます」

澪「……」

梓「ドッペルゲンガーによって支配された人は、他の人間を自分たちと同じドッペルゲンガーによって支配させようとします」

梓「律先輩が襲ってきたのも…澪先輩を自分と同じようにするため…」

澪「そ、そんな…」

梓「ドッペルゲンガーが本人を支配することはそう簡単にはできません」

梓「なので、他のドッペルゲンガーに手伝ってもらうんです」

澪「じゃ、じゃあ律は…元に戻せるのか!?」

梓「残念ながら…」

澪「う、うそだ…そんなのいやだ…」

梓「澪先輩…」

澪「……」

梓「…ここは逃げましょう。私たちだけでも助からないと…」

澪「あ、ああ」

……


――軽音部部室

澪「ここまで来れば大丈夫か…」

梓「そうですね」

澪「でもなんで梓はそんなこと知ってるんだ?」

梓「そういうのに詳しいので」

澪「そ、そうか」

澪「でも…律だけじゃなくて唯もおかしかったよな」

梓「そうですね…おそらく唯先輩も…」

澪「そんな…」

澪(唯は多分、和といっしょに会った時にはもう…)

澪(…待てよ?)

澪「なあ梓」

梓「なんですか?」

澪「その…まだ本人を支配してないドッペルゲンガーは、他の人と話したりできるの?」

梓「いえ、できませんね。やつらは誰とも話さずにさまよい続けますから」

澪「そうか」

澪(じゃあ和といた時の唯はドッペルゲンガーに支配された唯ということか…?)

澪(でも…その次の日に会った唯はまだ支配されてなさそうだった…)

澪(……ダメだ!頭が回らない!)

梓「澪先輩」

澪「な、なに?」

梓「澪先輩は…最近の部活は楽しかったですか?」

澪「えっ…どういうことだ?」

梓「ドッペルゲンガーに支配されている人と演奏するのは楽しかったですか?」

澪「…全然楽しくなかったな。なんかやっていてまるで他人とやってるようだった」

梓「…そうですか」

澪「なんだ?いきなりそんなこと…」

ガチャ…

澪「だ、誰だ!?」

澪「……」

澪「わ、私!?」

梓「澪先輩、あなたにはがっかりしました」

澪「あ、梓!?これはいったい…!?」

梓「あなたもドッペルゲンガーに支配されてください」

澪「な、なにを…」

梓「澪先輩なら分かってくれるかと思ったのに…」

澪「梓…もしかしてお前は…」

梓「違いますよ? 私はドッペルゲンガーなんかに支配されてないです」

澪「な、ならなんでこんなこと…」

梓「私は軽音部のゆるい空気が大っきらいなんです」

梓「いつもいつも練習しないでお茶会だなんて…」

梓「そんなふざけたやつらをドッペルゲンガーに支配させて、私の思い通りに動かせば…軽音部もちゃんとした部活になります」

澪「ふざけたことを…!」

梓「もうお話は終わりです。これからの軽音部は私がちゃんとしますので安心してください」

澪「あずさあっ!」

澪(ここまでなのか…律…唯…!)


ガシャン!

澪「ま、窓が!」

憂「澪さん!助けに来ました!」

澪「憂ちゃん!?」

梓「憂、なにを…!」

憂「梓ちゃん、あなたのやっていることは間違っている! お姉ちゃんや軽音部のみなさんにあんなこと…」

梓「私は間違ってない! 憂にはわからないよ」

憂「そう…もう話はできないね」

憂「澪さん!私につかまってください!ここから逃げます!」

澪「ま、待て!ここが何階だと思って…」

憂「とりゃあっ!」ヒュン

澪「いやああああああっ!?」

スタッ

タタタ…

梓「憂…どうしても邪魔するのね」

梓「絶対に逃がさない…!」

……


――プール近く

憂「ここならなんとか…」

澪「う、憂ちゃん!いったい何が起こってるんだ?梓はどうしたんだ!?」

憂「…澪さんは梓ちゃんから大体の話は聞いていますか?」

澪「……………って聞いたんだけど」

憂「…梓ちゃんの話の通り、ドッペルゲンガーは人を支配します」

憂「ですが、そんなこと普通は起こるはずがないんです」

澪「じゃあなんで…」

憂「梓ちゃんはドッペルゲンガーを操ることができるんです」

澪「そ、そんなバカな…」

憂「そして、支配された人を自分の思い通りに動かして他の人をドッペルゲンガーに支配させたんです」

澪「信じられないけど…つまり、梓はドッペルゲンガーを操って自分の思い通りにならない軽音部を変えようとしたのか…」

憂「はい…」

澪「でもなんで憂ちゃんはこんなこと知ってるんだ?」

憂「私たちのクラスにこのことについて詳しい人がいて…その人がクラスのみんなにドッペルゲンガーについて教えたりするんです」

憂「彼女の言うことはとても信じられないことばかりだったんですが…まさか梓ちゃんがこんなことするなんて…」

澪「そうだったのか…」

憂「梓ちゃんはよく軽音部の愚痴を私にこぼしてくるんですが…このごろそれがひどくなってて…」

憂「もしやと思って梓ちゃんの周りを監視していたら…お姉ちゃんに律さん、紬さんまでやられてしまって…」

澪「えっ? ムギもか!?」

憂「はい」

澪(そんな…私以外、みんなやられちゃったのか…)

憂「澪さんは私が会った時にはまだ大丈夫そうだったんですけど…ギリギリでしたね」

澪「えっ?いつ会ったっけ?」

憂「和さんと私が一緒にいたときですよ」

澪「あ……あれ憂ちゃんだったのか!」

憂「はい…お姉ちゃんの格好で捜査してたんです」

澪「似すぎだよまったく…」

憂「すみません…こうでもしないと梓ちゃんの目はごまかせないですから」

澪「憂ちゃんはみんなのために動いてくれてたんだな」

憂「でも…助けることができたのは澪さんだけでした」

澪「……なあ憂ちゃん、ドッペルゲンガーに支配された人は元に戻せないのか?」

憂「梓ちゃんはそんなこと言ったんですか?」

澪「あ、ああ」

憂「そんなことはないはずです。元に戻すことは可能ですよ」

澪「ほ、本当か!?」

憂「はい。でも…その方法が分からないんです」

澪「そ、そんな…」

憂「私もお姉ちゃんを元に戻そうとしたんですが…無理でした」

澪「憂ちゃんでも…」

憂「でも…澪さんならできると思います」

澪「わ、私!?」

憂「私は軽音部のみなさんならできると信じてます」

澪「私じゃ無理だよ…」

憂「私も元に戻す方法を探してみます」

澪「ど、どうやって?」

憂「このドッペルゲンガーを教えてくれたクラスメイトに聞いてくれば…」

澪「そ、そうか」

憂「でも…澪さんを残していくのは…」

澪「私のことなら大丈夫だ。気にしないでいいよ」

憂「で、でも…」

澪「いいんだ。それに憂ちゃんがその方法を聞いてこれば、私がやられても……」

憂「澪さん…」

澪「だから行ってこい!憂ちゃんならできるよ」

憂「わかりました…では、行ってきます」

澪「……行ったか」

澪「うぅ…あんなこと言ったけど、やっぱり怖い…」

澪「律…唯…ムギ…」

澪「待ってろよ…私が必ず助けてやる…!」

ザッ…

澪「! だ、誰だ!」

律「……」

澪「律…」

律「澪…一緒に行こう」

澪「い、いやだ…」

律「なんで?どうして?」

澪「お前は律じゃないからだ」

律「何言ってるの?私は律だよ?」

澪「違うっ!お前は律じゃない!」

律「私は律だよ。私は律だよ。私は律だよ」

澪「うるさい!お前は律なんかじゃない!」

律「……澪。なんで逃げるの?どうして?こんなにも愛しているというのに」

澪「やめろ…来るな…くるなぁっ!」

律「…ぷくく」

澪「へっ…?」

律「あははっ!おびえすぎだろっ!」

澪「り…つ…?」

律「私は律だよ。本当だ」

澪「律…りつぅ!!」ダキッ

律「うわっ!?きゅ、急に来るな!」

澪「うわぁぁぁぁぁん!」

律「…よしよし」ナデナデ



澪「いつから元に戻ってたんだ?」

律「いやあ、ここまで来るのは覚えてないし…気が付いたら澪がおびえてたんでついつい…」

澪「ついついじゃない!」ボカン

律「あうっ! 久々だな~」サスサス

澪「まったく…」

律「へへへっ」

澪「ふふふっ」

律「ところで何が起こってるんだ?私にはさっぱりだ」

澪「えっと…かくかくしかじか」

律「そ、そんなことが…」

澪「とても信じられないけどな」

律「じゃあ梓を止めなきゃな! 軽音部を自分のものするなんて許せるわけない!」

澪「ああ…でも…」

律「なんだ?」

澪「梓がこんなことしたのも私たちのせいだよな」

律「なんで?」

澪「だって…結局、梓は今の軽音部がいやだからこんなことしたんだろ?私たちがもっとちゃんとしてればこんなことには…」

律「いいや、それは違うぜ澪」

澪「えっ…?」

律「あいつにはもっと大事なことを教えなきゃいけないだろ」

澪「大事なこと?」

律「それはだな…」

澪「……」

律「…やっぱやめた」

澪「なんでだよ!」

律「だって言うのが恥ずかしいし…」

澪「なんだそりゃ…」

律「まあ澪なら言わなくてもわかるだろ」

澪「わかんないって」

律「とにかく!今は梓をどうにかして、唯とムギを助けるぞ!」

澪「うん!」

律「でも…あいつらはどこにいるんだ?」

澪「多分…部室にいると思う」

律「部室か…行くか?」

澪「あ、ああ」

律「…大丈夫かよ?怖いだろ?」

澪「う、うん…でも、今は律がいるから怖くない」

律「澪…嬉しいこと言ってくれるじゃん!」バン

澪「あうっ! きゅ、急に殴るな!」

律「へへへっ…それじゃ、憂ちゃんが来る前に部室に行くぞ!」

澪「ああ!」


ネガ唯「変身・・・」(NEGA FOAM) ねがでんおう!

ネガ澪(Standing bay)「変身!」(Complete) おーが!

ネガ律(ギィーン)「変・・身・・・!」 りゅうがっ!

ネガ紬「変身」グシュキュイーン あなざーあぎと!

ネガ梓「コウモリもどき!」キバット「絶滅タイムだ、喜べ ガブリ!」「変身」だーくきばっ! 


律「ここか…」

澪「や、やっぱ憂ちゃんが来るのを待った方が…」

律「ダメだ!これは私たちの問題だ。憂ちゃんを巻き込めない」

澪「もう巻き込まれてるけどな…」

律「よし…開けるぞ」

澪「お、おう」

ガチャ…

律「……なんだ、誰もいないじゃん」

澪「あれ?確かにここにいたんだけどな…」

律「しかたない…今日はもう戻るか」

憂「…澪さん」

澪「! 憂ちゃん!」

憂「……」

澪「よく戻ってきたな。それでドッペルゲンガーの人を戻す方法は…」

憂「……」ガシッ

澪「えっ…ど、どうしたんだ?腕なんかつかんで」

憂「……」

澪「憂ちゃん…?」

律「…澪」ガシッ

澪「り、律!? ま、まさか…」

梓「気付くのが遅すぎですよ、澪先輩」

澪「あ、梓…」

梓「かわいそうに…憂は簡単に仲間になっちゃいました」

澪「そ、そんな…」

梓「律先輩もご苦労様です、おかげで澪先輩が簡単に捕まえることができました」

澪「りつ…そんな…」

律「…澪、仲間になろうよ」

澪「ああ…ああああ…」

梓「さあ…澪先輩、準備はいいですか?」

澪「やめろ…やめろおおおっ!!」

梓「さようなら、澪先輩」

澪「いやああああああああっ!!?」


――数日後

ガチャ

澪「おっす」

律「遅いぞ澪、もう練習は始まってるぞ」

澪「ごめんごめん」

紬「さあ、練習しましょう」

唯「がんばろうね澪ちゃん」

澪「ああ」

梓「やりましょう、先輩!」

律「いくぞー、1234…」カンカン

……


和「ねえ澪」

澪「ん?なんだ?」

和「あんたたち、最近おかしくない?」

澪「どこがだ?」

和「なんかいつもお茶会してたのに、練習に精を出しちゃって」

澪「それのどこがおかしいんだ?練習することはいいことじゃないか」

和「それはそうだけど…」

澪「唯も律もムギも、一生懸命練習するから、軽音部が楽しいんだ」

和「そ、そう…」

澪「今度のライブ、楽しみにしといてくれ」

和「うん、楽しみにしとく…」

和(やっぱりおかしい…)

和(澪も唯もバカみたいに練習してる…)

和(なんか…操り人形みたいに…)



――和の家

和(このところの軽音部の異変…)

和(どう考えても変…)

和(何か…何かあったのかしら…?)

和(そういえばこの前唯が…)


和『それでどうしたの?こんなところまで来るなんて…』

唯『ただの気まぐれってやつだよ和ちゃん!』

和『そう…』

唯『…ところで和さん…じゃなくて和ちゃん』

和『何?』

唯『和ちゃんはドッペルゲンガーっていると思う?』

和『さあ…そんな非現実的なものはないと思うけど』

唯『それはどうかな…』

和『どういう意味?』

唯『ドッペルゲンガーはいたるところで目撃されてるんだよ!』

和『そうなの』

クレしんの映画は怖かった
後半で救われたけど、あれは当事者だと確実にトラウマになるだろうな

唯『そして…もしドッペルゲンガーがその本人を乗っ取っているとしたら…?』

和『それは怖いわね…』

唯『でしょ?怖いよね』

和『ま、そんなことはあるはずないでしょうけど』

唯『うっ…和ちゃんは手厳しい…』



和「まさか…みんなが変わったのって…」

和「少し、調べてみるか」

和「グーグルで…ドッペルゲンガー…っと」カチ

和「うわ…いっぱいあるのね…」カチカチ

和「ん?…ドッぺルゲンガー研究部屋…?なにかしらこれ」カチッ

和「なになに…ドッペルゲンガーは人を乗っ取ることがある…」

和「なにこれ…唯の言ってたことが書かれてる…」

基本的に大人(非主役)は洗脳されたり連れ去られたり…

こういうのが怖いヤツはパワポケ11裏も苦手 ソースは俺

和「ドッペルゲンガーに乗っ取られている人は簡単に操ることができます…」

和「まさか…これが…!」

和「あっ…管理人の名前が載ってる…」

和「あれ…?この名前って…」

和「どっかで聞いたことあるような…」

和「はっ! 確かうちの高校に…」バサ

和「……いた! 一年二組…鈴木純…!」


>>111
今すぐ見たいんだが動画サイトでどっかにないか?

>>119
タイトルは「踊れアミーゴ」だったはずだから、アニメスクープかようつべ辺りから探してみてはどうでしょう


――翌日

和「ごめんなさい急に呼びだして」

純「いいえ、私はいつでも暇ですから」

和「そう…でもこっちは急いでるから、手短にいくわよ」

純「どうぞ」

和「ドッペルゲンガーに支配された人を元に戻すのってどうやるの!?」

純「…なるほど。あのサイト、見たんですね」

和「ええ、女子校生がつくったにしてはとてもよくできてたわ」

純「恐縮です」

和「それで、どうやったら元に戻せるの?」

純「それを知ってどうするんですか?」

和「きまってるわ。あの子たちを…軽音部を元に戻すの!」

純「それは誰の意思なんですか?」

和「私よ!文句でもあるの!?」

純「いいえ、ただあなたがでしゃばっても軽音部のためにならないじゃあないですか」

和「そんなこと…!」

純「梓はこう言ってましたよ。『軽音部がまじめになるにはどうしたらいいの?』って」

純「これは軽音部を不真面目にした先輩方の責任ではないんですか?」

和「それは梓の勝手じゃない!」

純「それも真鍋先輩の勝手ですよ」

和「あなたは…!」

純「…ドッペルゲンガーはたださまよい続けるだけです」

純「でも、彼らにだって必要とされることがあるんですよ。梓のように軽音部を正そうとするために使われるならそれはいいことなんです」

和「じゃあ支配された元の人間はどうなるの?」

純「その人たちは死んでなんかいませんよ。ただ、今までの自分を省みているんです」

和「……」

純「ああ、私はなんて馬鹿なことをしたんだろう…ああすればよかったのに…」

純「そうやって自分を正せば自然とドッペルゲンガーの思想に近づくはずです」

純「そして…やがては一つになる…」

和「……」

純「梓は偉いですよ、がんばって自分の理想の部活にしようとしてるんですから」

純「そういう使い方ならば、私はよろこんで協力しますよ。そうすればドッペルゲンガーだって喜ぶ…」

和「黙りなさい!」

純「……」

和「何が理想の部活よ!そんなのただのわがままじゃない!」

和「あの子たちはたしかに練習なんてろくにしないだらしのない部活よ」

和「でもね…それでもみんなで演奏するってことが好きで好きでたまらないの!」

和「だけど今の軽音部の演奏を聴いても…全然楽しいなんて感じないわ!」

純「……」

和「たしかに練習も大事だけど、あんな風に操ってさせるのは間違ってる!」

純「…なんでそんなに必死になれるんですか?」

和「だって…私はあのバンドの…放課後ティータイムのファンだもの」

純「そんな理由で…」

和「わ、悪いっ!?」

純「いいえ…素晴らしいと思います」

和「そ、そう…」

純「…わかりました。元に戻す方法をお教えします」

和「ありがと」

純「…元に戻す方法は…その人にむかって3回、『お前は○○じゃない』と言うんです」

和「そいつを否定するってわけね」

純「そうです。所詮はドッペルゲンガー…そうやって否定されればたちまち本人から出ていきますよ」

和「わかった。じゃあありがとね」

純「行くんですか?」

和「ええ。私がやらなきゃ誰がやるのよ」

純「では気を付けてください。梓は隙あらばドッペルゲンガーを使って支配させようとしますよ」

和「忠告ありがとう。じゃあ」タタタ

純「……」

……


――軽音部部室

ジャーン…

澪「うん、今のはいい出来だったな」

律「そうだな」

紬「みんな素敵だわ」

唯「うん」

梓「はい!」

梓(これこそ…私の望んでいた部活…!)

梓(もうこの時間は誰にも邪魔はさせない…)

ガチャン!

和「そこまでよ!」


          ':,    ',   !                     \
   \      ':,      _,,.. -‐''"´ ̄`"'' ト、.,_.       ,,--,┐  \    ヽ /
 \  \\     r-、 ァ'´      _ト、.,__ノ ノ `ヽ,ヘ,   //: /::::!   <    ∠______
           ノヾ、rァ'  __,ゝ‐i"`y'__]`''ー、'    / `>t,// :/:::::::!  /     /
    \\    `'(__!r-‐i__」-‐'"´,i  `''ー、」ー-ヘ、イ'"´.!:|||||:::::::/   \     (___
       \   r‐ァ'´]-‐' '/  !  ハ /!ィ' i `''ー'、/ゝ  |:|||||:::;t'、  ミ  >  _______
 `' 、        ヽ7´ !   !/!メ、!」 レ-rァ''iT7   iヽ」`i´!:!!!」:ノ ! i   /     '´
     i´ヽ.      | .! !   !-rァ'T    '、,_,ノ !__トr┘i>'r'、`'´   ;'    \   、,_____
   (`ヽ;、 `ヽr、. └'`ゞ、, ハ. '、_ノ     ⊂⊃ ! ';./ ;'ゝ.,二二7i   <

   ,.-`ヽ  >  i_,!`ヽ、/ |   !⊃   r‐-、    /! ! ヽ._」 /      !  /    ー┼-
   `ー‐ァ (´__,ノ! |   `7!  .i'>,、.,__'--‐' ,..イ!  i ̄´ノ!       | /      ー┼-
     'ーri´ヽ_/7   〈    V7「ヽ7i ̄´'ノ ! '.、  ':、 '、       ;' \      r-iー、
 --─  ! |::::://   r-、,ゝ、!__j ';  トー'i i  ',    `ヽ.、'     /     \    `ー' '
      '、ゝ'ン___,,...->ア`ー-'、 ,' i | i i |   ヽ.   ヽソ`''ー--‐'      /   --─ァ ヽヽ
        ̄      く ./___」_';/ ! | ! ! ! i   ,ゝ-‐''ンヽ.       く       /
          rソ´`ヽ、`'ァー-‐' ,.イ/ ,' ,' ! ', く_」`7´ハ  〉        >     '、___
         _r'ー--‐''"´   / ;'  i i ,ハ ヽ !_/ヽ!__L/       く      i
        //      -イ  /! ;'/ ム       \          \.    ├‐
       rン_,,.. -      /  / ;' !レ'´ i         `ヽ.        <    r-iー、
       `ト、        !  〈 i ;' / ,ハ      ヽ.     'r、      /   `ー' '
        ノ.ノ __     ノ   i V / / /!       '.,    _r'ヘ    /       l 7 l 7
       i_|  V   /    ハ./ ;' i i '、 }><{  ン´/!/     \     |/ .|/
       ヽヽ ∧      / ;'  i  ', ヽ、 i     r'"ン:::::/     /    o  o

梓「! 和先輩…!?」

律「!」

澪「どうしたんだ和。また律が何かやったのか?」

和「黙りなさい! あんたは澪じゃないでしょ!」

澪「!」

梓「ま、まさか…純!」

和「もう遅いわ! これを3回言えば元に戻る! お前は澪じゃない!」

澪「!!」

和「あと一回…!」

梓「くそ…やめろーーっ!!」

和「お前は澪じゃ…」

梓「…なーんてね」

ガシッ

和「むごっ!?」

和(く、口が…誰!?)

憂「ダメですよ和さん。練習の邪魔をしちゃ」

和(う、憂…!)

梓「残念でしたね。あとちょっとだったのに」

和「……!」ギリッ

梓「怖いからそんな睨まないでくださいよ」

梓「多分来るだろうなとは思っていました。純のところに行くことも」

和(読まれてたの…!)

梓「邪魔しないでくださいよ。これから軽音部はすばらしい部活になるんですから」

和(あ、あずさっ!)

梓「さあ、律先輩、和先輩も仲間にしちゃいましょう」

律「……」スクッ

和(り、律…)

梓「さようなら、和先輩。また会いましょう」

和(ここまでか…)

律「…ありがとよ、和」

和(へっ…?)

律「澪! おまえは澪じゃないっ!」

澪「!!!」

梓「なっ…律先輩…!?」

澪「…はっ! こ、ここは…私は…」

律「大丈夫か!? 澪!」

澪「律…りつーーっ!」ダキッ

律「ごめんな? ちょっと遅れちゃった」

和(これはいったい…?)

梓「律先輩…まさかあなたは…!」

律「へっ! 気付くのが遅すぎたな梓」

梓「元に戻っていたのか…!」

律「和も助けてやる! 憂ちゃん! お前は憂ちゃんじゃない!」

憂「!」

律「お前は憂ちゃんじゃない!」

憂「!!」

律「お前は憂ちゃんじゃない!」

憂「!!!」

憂「……」ドサッ

和「はあ…はあ…律、助かったわ」

律「こちらこそだぜ! 和が調べてくれなきゃ私も何もできなかったからな」

律「そう、お前は澪じゃない。山澪だ」

澪「!?」

澪「律! なんで乗っ取られてるふりしたんだよ!」

律「ああ、私と澪じゃ心細かったんでな。もし二人が乗っ取られるよりも一人は騙されてるふりしといたほうがいいだろ?」

澪「よくない! 私、怖かったんだからな!」

律「ごめんごめん。でもこうして助かったからいいじゃないか」

澪「もう…全然よくないよ…」

律「澪…」

澪「律…」

和「はいはい、あとでしてね」

律「うわっ! 和!…って他のみんなも早く戻さないと…」

和「もう戻しといたわ」

紬「うーん…私はいったい…?」

唯「あいす~」

憂「お姉ちゃん…そこはダメだよ…」

澪「ほっ…よかった…」

律「あとは…」

梓「ああ、ああ…」

和「梓…あなたは…!」

律「いいよ和。あとは私たちでやるから」

和「わ、わかった」

梓「私…私…」

律「おい梓」

梓「……」

律「今までお前がやってきたことはな…許されないことなんだよ」

梓「すみません…すみません…」

>>85
これはお見事

律「でもな! 私たちも悪い! 梓に一番大事なこと教えてなかったからな」

梓「律先輩…」

澪「律…」

律「よし! 唯! ムギ! こっちに来い!」

唯「ん~?なにー?」

紬「りっちゃん…どうしたの?」

律「今からやるぞ! 梓に私たちのこれまでを見せつけてやろう!」

澪「ああ!」

唯「なんだかよくわからないけど…わかった」

紬「うん!」

お仕置き時間(タイム)!お仕置き時間(タイム)!お仕置き時間(タイム)!お仕置き時間(タイム)!

梓「な、なにを…」

律「それじゃ行くぞ! 1234」カンカン

~~~♪

梓「……」

和「…見てみなさい、梓」

梓「……」

和「私は素人だけど…最近のあなたたちの演奏と今の演奏の違いが分かるでしょ?」

梓「…違う…全然違う…」

律「梓! これが本当のバンドってやつなんだよ!」

澪「ただ練習するだけじゃダメなんだ!」

紬「みんな、とても楽しそうでしょ?」

梓「はい…はい…」

唯「でも、あずにゃんがいないとさびしいんだよー!」

澪「だから…戻ってこい!」

梓「…はいっ!」

和「これで一件落着かな」

憂「和さん…ありがとうございました…」

和「いいのよ…私はこういう役回りだもの」

唯「あずにゃ~ん!」ダキッ

梓「はうっ!く、苦しいです…」

澪「まったく…もう一回やったら絶対に許さないからな」

梓「もう絶対しません…」

律「でも…やっぱり許せないな…」

梓「!」ビクッ

澪「お、おい律…」

唯「そうだねえ…」

紬「梓ちゃんにお仕置きしなきゃ…」

梓「ひいぃっ!?」

……


梓「先輩…もう許してください…」

唯「似合ってるよ、あずにゃん!」

紬「ええ! かわいらしいバニーさんだわ!」

律「あと一週間それな」

梓「うぅ…」

律「返事は!?」

梓「は、はいっ!」



純「これでよかったの?梓」

梓「うん。あんな風にやっても面白くないもん」

純「そう」

梓「それに…ドッペルゲンガーもこんなことに使うべきじゃないもの」

純「そうかな」

梓「そうだよ」

純「梓も変わったね…」

梓「でも…このペンダントってどうやって作られたの?ドッペルゲンガーもこれ使えば言うこと聞くし…」

純「内緒だよ。それはもういらないの?」

梓「うん。これはもう返すよ」

純「まいどー」

憂「梓ちゃん! お姉ちゃんが呼んでるよ!」

梓「うんわかった! じゃあね純!」

純「バイバイ」



律「はあ…疲れた~」

唯「とろける~」

梓「やっぱり練習しないじゃないですか」

澪「まあまあ、これも軽音部に必要なことだから…」

紬「はい、タイ焼き!」

梓「うまいです!」

唯「えへへっ!」

律「いやあ、それにしてもドッペルゲンガーってのは不思議だな」

梓「はい…まさかあんなことができるなんて…私もやるまで考え付きませんでした」

澪「でも、梓はドッペルゲンガーてどうやって呼びだしたんだ?」

梓「私もよくわからないんですけど…気が付いたらもうそこにいるみたいな感じです」

澪「こ、こわいな…」

律「ふーん、じゃああの時の唯も梓が呼びだしたやつか」

梓「あの時って…?」

律「ほら、唯が夜一人で歩いてた歩いてないって言い争ってた時の…」

梓「えっ…?私はその時にはまだ何もしてませんよ?」

律「えっ?」



おわり

乙!!

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