響「自分この間自転車買ってさあ」真「へえ」 (31)


真「へぇ……でも響って自転車のイメージあんまり無いよね」

響「ほら、自分ってさぁ、電車あんまり乗らないじゃん?」

真「うん、苦手とか言ってたっけ」

響「歩いて行けそうな距離なら大体は徒歩だったんだけどさ」

真「うん」

響「それだったら自転車の方が楽だし時間も掛からないかなって思って」

真「まあ、確かにその通りだろうね」

響「それでまぁ、思い切って買っちゃったんだけど」

真「なるほどね」

響「でもなー、実を言うとちょっとだけ後悔しちゃってるんだ……」

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真「後悔?なんで?」

響「ほらさー、最近はカワイイ自転車とか結構いっぱいあるじゃん?」

真「そうだねー、確かにたくさんあるよね」

響「後で思うんだよねー、『やっぱこれにしとけばよかったー!』って」

真「あー分かる分かる、そういうのって買った本人にしか分からないよね」

響「今自分が使ってる自転車だってカワイイんだけど……でもなー」

真「もっとじっくり選んで買っておけばよかった、って思ってるわけだ」

響「そう!そうなんだよ!でも自分、自転車のことなんてよく知らないし」

真「店員さんに勧められるがままに買っちゃったって感じ?」

響「うん、まさにそんな感じ!……うぅぅ、もっとじっくり選べばよかったぞ」


真「もうー!なんだよ響ってば水くさいなー!」

響「えぇっ……じ、自分がか?」

真「そういうことなら、いの一番にボクに相談して欲しかったよ!」

響「あー、確かに……真は自転車よく乗ってるもんなー」

真「そうそう、やっぱ自転車と言えばさ、ボクじゃん?」

響「そうだなー、なんせ曲のタイトルに使ってるくらいだし」

真「好きっだよー!心こめてー!」

響「いや、別に歌わなくていいから」

真「好きだーっ!!!」

響「うるさいよ」


真「まあ、そんなわけでボクと言えば、自転車じゃん?」

響「うん」

真「菊池真、イズ、自転車」

響「それは違うと思うぞ」

真「リピート、アフター、ミー」

響「なんでだよ」

真「菊池真、イズ、自転車……オッケー?」

響「そこは果たしてオッケーと返事していいものかどうか迷うぞ」

真「Do you understand?」

響「そこだけやたら発音いいな」


真「ボクが……自転車だ」

響「だからもう分かったってば……んんっ?」

真「ボクが、自転車だ!」

響「ちょっと唐突すぎて意味が分からないぞ」

真「ボクは……自転車には、なれない」

響「うん、なれるわけないよね……だから真、一体何言って」

真「もう一度、自転車になるチャンスを……」

響「いや、だから真」

真「ボクが……ボクたちが、自転車だ!」

響「話を聞けーっ!っていうか『たち』って何!?自分を巻き込むなーっ!」


真「まあそんなことはさて置き、何の話だったっけ?」

響「自転車を買うなら真に相談した方が良かったかなーって話だぞ」

真「あぁ、確かボクが自転車でプロデューサーを轢いた話だったね」

響「真は自分の話を全然聞いていないんだな……って、えぇぇっ!?」

真「どうしたんだよ響、急に驚いたりなんかしちゃって」

響「いや、そりゃ驚くだろ……真、プロデューサー轢いちゃったのか?」

真「うん、まあ不慮の事故だったんだけどね」

響「まあワザとだったら流石の自分でもちょっと引くよ」

真「プロデューサーの背後が隙だらけだったもんだから……つい」

響「ワザとじゃないか!」


真「でもまぁ、いかにも轢いて欲しそうな背中だったし……ねっ?」

響「ねっ?とか言われて同意を求められても困るよ」

真「えっ……それじゃあ響は轢かないっていうのかい?」

響「うん、轢くわけないよね」

真「……」

響「……えっ、何この沈黙」

真「なんでだよ!?おかしいだろっ!」

響「何で自分逆ギレされたの!?」

真「あんなに轢いて欲しそうな背中を見たら、轢かずにはいられないだろう!」

響「いやいやいや!そんな自分から自転車に轢かれたがる人なんているわけないよ!」


真「いや、でもプロデューサーだって満更でもなさそうだったよ?」

響「えっ」

真「結構悦んでるみたいだったけど」

響「えっ……えっ?」

真「笑顔でおかわり要求された時には流石のボクも戸惑っちゃったよ」

響「うぎゃー!ぷ、プロデューサーそんなのまるで変態じゃないかーっ!」

真「まあ、折角だからもう一回轢いといたけどねっ!」

響「爽やかな笑顔で言う台詞じゃないよね」

真「いやぁ、意外な一面見ちゃったよ……ホント、びっくりしちゃったよ」

響「うん、出来ればそんな事実は知りたくなかったぞ」


真「まあ冗談はこの辺にしておいて」

響「冗談だったのか……よかったぞ、冗談でホントによかったぞ…」

真「何か困ったことがあったら言ってよ、いつでも相談に乗るからさ」

響「おっ、頼もしいなー!だったら自分、思い切って改造とかしちゃおっかなー!」

真「改造かー!だったら時速120kmを超えるブースターとかどうだい?」

響「……はい?」

真「あとは何でも切り裂くブレードとか、ボクのオススメだよ!」

響「……」

真「……」

響「うん、真には多分相談することはなさそうだなー」


真「でもさ、真面目な話、自転車って結構盗まれがちだから気を付けた方がいいよ」

響「あっ……盗まれるで思い出した、実はこの間ちょっとイヤなことがあってさー」

真「ふむ……というと?」

響「休みの日にさ、自転車乗ろうと思ってふと見たらさ、あの鳴らすやつあるじゃん?」

真「うん、チリンチリンだね」

響「あれが無くなっててさー」

真「えっ……?」

響「自転車本体を盗むならともかく、あんなの盗んでどうするんだろうなーって思ってさー」

真「…………」

響「ねぇ、真もそう思うよね?……あれ、真どうしたんだ?急に黙っちゃって」


真「響……チリンチリン盗まれたの!?」

響「う、うん……」

真「大丈夫なの!?」

響「えっ、何が?」

真「だってチリンチリンだよ?……よりにもよってチリンチリンが盗まれたんだよ!?」

響「いや、何でそんなに大げさなの?」

真「響……無理はしない方がいい、一度帰った方がいいよ」

響「何で!?帰るようなことでもないよね?」

真「ちゃんと沖縄のご家族には報告したの!?」

響「するかーっ!何でそんなんで連絡しなきゃならないんだ!?」


真「響、そこはちゃんと言っておいた方がいいよ!」

響「いやいやいや!明らかに頭おかしい子だって思われちゃうよ!」

真「響……いったん落ち着こう、とりあえず座ろうか」

響「むしろ真が落ち着くべきだって思うぞ」

真「するとアレかい?」

響「んっ?」

真「響はチリンチリン盗まれたショックを隠して、アイドル活動してたっていうのかい?」

響「まぁ……そうかなぁ、別にショックでもなかったけど」

真「すごいよ響!なんてプロ根性だ、ボク……感動しちゃったよ!」

響「おかしい、色々おかしい」


真「響、本当に大丈夫かい?無理はいけないよ……」

響「いや、別に無理はしてないけど……」

真「ウソだっ!」

響「うぉぉいっ!?ビックリしたぁ……急に叫ばないでほしいぞ」

真「強がるなよ、響っ!」

響「別に強がってはないけど……なんで真はそんなに必死なんだ?」

真「自分に正直になれよ……っ!ウソつくなよっ!」

響「テンション高いなー……ちょっと暑苦しいぞ」

真「ボク、響の気持ちよく分かるよ!」

響「ちょ、近い近い!急に顔近づけてこないでよ!」


真「実はボクも……その昔、チリンチリンを盗まれた悲しい過去を背負っているんだ」

響「すっごい大げさな言い方だけど、割といると思うぞ、そういう人」

真「あれはボクがまだアイドルになりたての頃……」

響「聞いてもないのに語りだしちゃったぞ……」

真「当時まだ駆け出しだったボクはろくに仕事も無く、毎日暇をしていたんだ……」

響「ま、まぁ最初のうちはしょうがないよね」

真「主にプロデューサーがポンコツだったせいで」

響「真はアレか?プロデューサーが嫌いなのか?」

真「好きだーっ!」

響「だからうるさいよ」


真「まあそれでさ、自転車に乗って近所の本屋に行ったわけだよ」

響「うん」

真「そこでほんの4~5分ばかり立ち読みしたわけだけど……キャピキャピな雑誌を」

響「ほうほう」

真「キャピキャピな雑誌を」

響「うん、真がそういうの好きなのは分かってるから、わざわざ強調しなくていいから」

真「それでね、立ち読み終わって戻ってきたんだよ」

響「うん」

真「さぁ帰ろうと思って自転車に跨ったらね、なんか違和感があるんだよ」

響「へぇー」


真「おかしいなぁーと思いつつ、ボクは自転車を漕ぎ出したんだけど」

響「うん」

真「しばらくしてようやくその違和感の正体に気づいたんだ」

響「ふむふむ」

真「あっ……これ、サドル無いじゃん!って」

響「……へっ?」

真「サドルがね、無いんだよ!どこ探しても無いんだよ!」

響「いやいやいや!話の流れ的にそこはチリンチリンじゃないの!?」

真「へへっ、さっすが響だね!ナイスなツッコミありがとう!」

響「もうそういうのいいからさっさと話進めてよ……」


真「まあ本当のことを言うと、チリンチリンが盗まれてたわけなんだ」

響「そっかー……やっぱりどこにでもいるんだなぁ、そういう人って」

真「それでボクは必死になって、探したんだ」

響「そんなに必死になるようなことでもないと思うけど……」

真「周りの人にも聞いたよ、ボクのチリンチリン知りませんかっ!?って」

響「いやいやいや!それどう見ても不審者丸出しじゃないかーっ!」

真「ここにあったチリンチリン知りませんかーっ!?」

響「怖いよ!怖すぎるよ!怪しさ全開だよっ!」

真「でも世間は冷たいよ……こんなボクの話、誰一人耳を貸してくれやしない」

響「うん、当然だと思うぞ……自分だって関わりたくないもん」


真「心無い人が、ボクを殴ってきたりもした……」

響「うえぇぇっ!?そ、それはちょっと流石にマズイんじゃないか……」

真「勿論殴り返してやったけどね!」

響「こらーっ!それはダメだろーっ!」

真「まぁ、これは冗談だけどねっ!」

響「爽やかに言わないでほしいぞ……ちょっとイラってくるから」

真「ボク、あちこち探したんだよ……向かいのホーム」

響「いや、そんなとこにあるはずないだろ……」

真「路地裏の角、そんなとこにいるはずもないのに……どこにも、どこにも無いんだよ!」

響「知らないよ……っていうかそれいい加減諦めようよ」


真「それからと言うもの……ボクの生活は荒れたよ」

響「何で!?たかがチリンチリン無くなっただけじゃん!」

真「腹いせに共演相手の大御所さんを引っ叩いたりもしたよ!」

響「それは洒落にならないから!やっちゃダメなやつだからっ!」

真「その度にプロデューサーが何度も頭を下げて……」

響「プロデューサー完全にとばっちりじゃん!」

真「幾つもの番組で出禁を食らっちゃって……」

響「うん、自業自得だよね……」

真「腹いせにプロデューサーを自転車で轢いてやったさ!」

響「プロデューサーが不憫すぎるぞーっ!」


真「行きずりの女とも寝たよ!」

響「こらーっ!アイドルがそういう発言をするなーっ!」

真「じゃあ、行きずりの男とも寝たよ!」

響「もっとダメだからっ!それもっとダメなやつだから!」

真「行きずりの雪歩とも寝たよ!」

響「ゆ、雪歩と……?え、ええぇぇぇっ!?いや、ダメだって!雪歩もダメだから!」

真「ふざけるなっ!だったらボクはどうやってこの寂しさを紛らわせばいいんだ!」

響「知るかーっ!」

真「だったら響が寂しさを紛らわせてくれるのかい?響……響っ!」

響「ちょ、真!?な、なに言って……いやいや近い、近いからっ!ちょ」


真「な、なかなか良いビンタだったよ……」

響「本気で身の危険を感じたぞ……」

真「そんなわけで、何一つとしてチリンチリンの代わりにはならなかったよ」

響「当たり前だろ……」

真「チリンチリンの代わりを求めて世界中を巡ったよ!」

響「世界中って、何が真をそこまで動かすんだ」

真「でもボクより強いやつには一人として出会えやしなかった……」

響「強いやつ!?趣旨変わってるぞ、何しに行ったんだ……」

真「どこを探しても見つからなかった……失意のまま帰国さ」

響「いやいや、もう諦めようよ……諦めが悪いってレベルじゃないぞ」


真「こんなボクを笑ってくれよ響……こんな哀れなボクを」

響「笑えない、いろんな意味で笑えない」

真「だから響、ボクには響の気持ちがよくわかる……無理はしなくていいんだよ!」

響「別に無理はしてないってば」

真「ウソだっ!」

響「だから急に叫ばないでってば!ビックリするから」

真「もう自分を偽るなよ!ボクの前では素直になっていいんだ!」

響「うん、お願いだからあまり近寄らないでくれるかな?」

真「ボクたちは仲間だ……響、ボクたちは仲間なんだよ!」

響「こんなにも嬉しくない仲間アピールは初めてだぞ……」


真「安心してよ響っ!」

響「だから何が?」

真「これからは、ボクが響のチリンチリンになるよ」

響「どういうことだ!?」

真「チリンチリーン!チリンチリーン!」

響「ちょ、怖い怖い!真、普通に怖いよそれっ!」

真「チリンチリーン!こら、響!どうして逃げるんだ!」

響「逃げるに決まってるだろーっ!うぎゃー!追いかけてくるなー!」

真「よし、交代だ!今度は響がボクのチリンチリンになってくれ!」

響「なるかーっ!もういいよっ!」


―――――
――――
―――

響「…………」

真「…………」

P「という感じの漫才でお笑い界に進出してみようと思うんだが、どうだろう?」

響・真「「却下」」



おわり

こんな時間に俺何やってんだろ・・・

はい、というわけでお目汚し失礼しました

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