男「人間失格とヤンデレ娘」 (4)
物心付いた頃から、世界が薄ら寒く感じていた。
善人が救われるのは童話の中だけだって知っていたし、
愛が架空の何かだということにもちゃんと気付いてしまっていた。
無理やり信じよう、信じ込ませようとしている大人達が滑稽で、ある意味気持ち悪くもあった。
そんな世界に流されて十六年生きてきたけど、やっぱり愛は架空のもので、善人は泣きを見るものだと思う。
男「つまんねぇ世界」
次に生まれ変わったら、もっと夢のある世界へ行こう。
こんな廃れた舞台裏はもう嫌だ。
廊下の向かいから三人の女の子が歩いてくる。
顔を輝かせ、楽しそうに話しながら歩いてくる。
楽しいかい? と心の中で尋ね、何事もなかったように僕は横をすぎる。
そのとき、たまたま右端のショートカットの小柄な娘と肩が触れた。
「ああ、ゴメンよ」と僕は言おうとしたが、言葉が出なかった。
彼女はどこか寂しげで、意味深長なものを瞳の中に飼っていた。
「ああ、この人も私と同じなんだ」
そう彼女が言った気がした。
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