不二咲「ご主人タマ?」セレス「フフフ」 (162)

セレス「不二咲君」

不二咲「なぁに? セレ……」

セレス「<●> <●>」

不二咲「あっ……な、なんでしょうか、ご主人タマ……」

セレス「フフフ、その調子ですわよ」

不二咲「……うぅ、恥ずかしいよぉ……」

セレス「あら? 恥ずかしがる必要が何処にありまして?」

不二咲「だ、だってぇ」

セレス「よろしいですか? 不二咲君」

セレス「あなたは今、このわたくし、セレスティア・ルーデンベルクのメイドなのですよ?」

セレス「もっと胸を張って頂かなければ困りますわ」

不二咲「そんなこと言ったってぇ……」

不二咲(うぅ、どうしてこんな事になっちゃったんだろう……)

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たえちゃんこわーい

サーバエラーで立てられなかったと思って放置してしまいました。
今日の深夜に更新します。

――事の始まりは数日前

不二咲(モノクマが気まぐれに解放してくれた図書室にあった、このノートパソコン)

不二咲(壊れてるみたいだけど、部屋の工具セットを使えばなんとか修理できるかも)

不二咲(このパソコンの中身が解析できれば、何か脱出の糸口が見つけられるかもしれない!)

不二咲(……でも、黒幕がわざわざ証拠品になりそうなものを置きっぱなしにするかなぁ……?)

不二咲(壊れてたから放置してたって考えれば、つじつまは会うけどぉ……)

不二咲(……うんうん、あんまり考えても仕方ないよ)

不二咲(ここに『あの子』を構築する事が出来れば、解析事態は難しくはないはず)

不二咲(普段迷惑ばっかり掛けてるんだ。こんな時くらい、みんなの役に立たないとぉ!)

ドンッ

不二咲「あっ」

セレス「きゃっ!」

ガシャーン!

不二咲「! ご、ごめんなさい!」

セレス「熱……ッ」

不二咲「あ、ふ、服に紅茶が……! ぼ、僕、何か拭くもの持ってくるよ!」

セレス「そうしていただけますか? ……はぁ、今日は厄日ですわね」

不二咲「うぅ……」

不二咲(意気込んですぐにこれじゃあ……自信、無くしちゃうよぉ……)

――

不二咲「ぅ……ぐすっ……」

ふきふき

セレス「……全く、何処を見て歩いてらっしゃいますの」

不二咲「ほ、本当にごめんなさい……考え事していて、前を見てなくてぇ……」

セレス「火傷を負わなかったのは幸いですが、あなたのお陰で貴重な一着がダメになってしまいましたわ」

セレス「どうしてくださいますの?」

不二咲「う、ううっ……ごめんなさい、僕……僕ぅ……」

セレス「……はぁ、そんなに泣かないで下さる?」

不二咲「ゴメン、ゴメンねぇ……」

セレス(まったく、これではわたくしが悪者みたいですわ)

セレス(仕事柄そういった役回りは慣れっこですけれど、こんな事で手間を取られるのは勘弁して欲しいですわね)

セレス(服もはやく着替えたいですし、さっさと部屋へ帰りたいですわ)

セレス(……そう、それです)

セレス(元はと言えば、わたくしが部屋から出て自分でお茶を淹れなければならないこの様な状況が可笑しいのです)

セレス(小間使いの一人でもいればこんな事には……あぁ、そういえば山田君がいましたわね)

セレス(あの様な汚らしい豚をわたくしの部屋に入れるのが嫌で、この案はすぐに除外しましたが)

セレス(それにしても、困りましたわ……。わたくしの小間使いになる栄誉を誰にお願いすればよろしいのでしょうか)

不二咲「あ、あの……お詫びになるか、わからないけど……僕、【セレスさんの言う事なんでもする】から……」

セレス(ん?)

セレス「今、なんと?」

不二咲「……ごめん、やっぱりダメだよね……」

不二咲「その服、セレスさんのお気に入りだったんでしょ?」

不二咲「そんな大切な服をダメにしちゃって……僕、どうすればいいか分からなくて」

不二咲「なんでもするって言ったけど、僕なんかが何かしたってセレスさんの気は晴れないよねぇ……」

不二咲「うっ……うぅ……!」

セレス(これは……)

セレス(……フフ。今日はラッキーデーの間違いだったかもしれませんわね)

セレス「……もういいですわ」

不二咲「ふぁっ……?」

セレス「不二咲さんも反省しているようですし、わたくしもちゃんと前を見ていませんでした」

セレス「今回の事は、お互いの不注意が招いた悲劇ということで水に流しましょう」

不二咲「で、でもぉ……」

セレス「服なら自室に戻れば代えがあります」

セレス「それにわたくし、この程度の事であなたに怒りを感じる程心の狭い人間ではありませんことよ」

不二咲「あ、ありがとぅ……。えへへっ、セレスさんは優しいんだねぇ」

セレス「……ですが」

不二咲「えっ?」

セレス「当然タダでと言うわけには参りません」

ゴソッ

不二咲(……モノクマメダル?)

セレス「メダルの裏か表か。不二咲さんがどちらかを当てたら、先程の件は不問に致しましょう」

不二咲「ぎゃ、ギャンブラーらしいねぇ。それ、もし外れたらどうなるのぉ……?」

セレス「オシオキ……と、言うほどのものではないですが、わたくしの願いをひとつ叶えて頂きますわ」

セレス「如何です?」

不二咲「で、でもでもぉ……それってギャンブラーのセレスさんにとってすごく有利な条件なんじゃ……」

セレス「あらあら不二咲さん。わたくしに意見するなんて、ご自分の立場をお忘れですか?」

不二咲「そ、そういうつもじゃないけどぉ……」

セレス「よろしいですか?」

セレス「メダルの表裏が別れる確率は一般的に五分と五分。これだけ考えれば、十分にフェアな条件ですよ?」

不二咲「うーん……」

不二咲(超高校級のギャンブラーであるセレスさんなら、きっとメダルの表と裏を当てるくらい造作も無いよねぇ)

不二咲(明らかにフェアな条件じゃないけどぉ……このままタダで許して貰うのは、僕もちょっと気が引けるなぁ……)

不二咲(……うん。ここはセレスさんの提案に乗って、セレスさんのお願いを叶えよう!)



セレス(……とでも考えているのでしょうね。不二咲さんの性格からして)

不二咲「わかった、僕やるよぉ」

セレス「フフフ、そう来なくては。では、参りますわよ?」

キーン

セレス「……さて、わたくしの手の甲にメダルが落ちました」

セレス「表か裏か。不二咲さん、あなたが先にベットしてください」

不二咲「えーとぉ……それじゃあ、【表】だよ」

セレス「となると、わたくしは【裏】ですわね。さて……あら」

不二咲「あっ……」

不二咲「うぅ……やっぱりぃ……」

セレス「フフフ、わたくしの勝ちですわね。いつか敗北を知りたいものです」

セレス「さて、不二咲さん? お約束通り、わたくしの願いを叶えて頂きますわよ?」

不二咲「で、出来れば、僕でも実現可能な範囲のものにして貰いたいなぁ……」

セレス「心配には及びませんわ。たったひとつの、とてもシンプルなお願いです」

不二咲「う、うん……。それで、僕は何をすればいいのぉ?」


セレス「わたくし専属のメイドになって頂きますわ」


不二咲「……え?」

セレス「聞こえませんでした? わたくしのメイドになれと言ったのです」

セレス「本来であれば執事(イケメン)がよいのですが、生憎男性陣にその様な方はおりませんし」

不二咲「と、十神くんとか、十分カッコ良いと思うけどぉ……?」

セレス「性格に難があり過ぎますわ」

不二咲「……いつも一緒にいる山田君は」

セレス「あなたは薄汚れた家畜を部屋に招き入れたいと思いますか?」(にっこり)

不二咲「……あ、苗木君は」

セレス「はて、そんな名前の小市民の方もいらしたような」

不二咲「ふえぇ……」

不二咲(逃げ場が無いよぉ……)

セレス「なのでわたくし、ここは不二咲さんがメイドとなって馬車馬のように働いて頂くことで我慢することにしましたの」

不二咲「そんなぁ……でも僕、『メイドなんてできないよぉ』……」


つ【セレスさんの言う事何でもする】バァンッ!

セレス「それは違いますわ」 論破!!


――BREAK!――


不二咲「えっ!?」

セレス「先程不二咲さんはこうおっしゃいました。【わたくしの為になんでもする】と」

不二咲「あ……ッ」

セレス「そもそも、このゲームも不二咲さんの同意の上で始めたものです」

セレス「負けたらわたくしの願いを聞くというデメリットも事前に承知して頂いておりました」

セレス「なので、不二咲さんの出来る出来ないという意見は、ここでは全くは関係ないのです」

セレス「わたくしはどんな手を使ってでも、不二咲さんにメイドを『やって』頂きます」

セレス「よろしいですね?」

不二咲「」

セレス「フフフ、嬉しくて声も出ないようですわね。でも、それは正しい反応です」

セレス「わたくしの美しさは人類の宝。それこそ、男性だけでなく、あなたのように可憐な女性までも虜にしてしまうほどの」

セレス「そんなわたくしのメイドになれるなんて、身に余る光栄でしょう」

セレス「嗚呼……わたくし、自分で自分の魅力が恐ろしくなってしまいますわ……」

不二咲(も、もうダメだ……セレスさん、僕の話を聞いてくれないよぉ……)

セレス「と、いうわけですので」

セレス「今日からよろしくお願いしますわね、不二咲さん」(にっこり)

不二咲「で、でも僕……」

セレス「あァン?」

不二咲「ひっ……!」

セレス「……フフ、『よろしくお願いしますわね?』」

不二咲「……うぅ…」

セレス「返事」

不二咲「は、はいっ! ……はぁ…」

ちーたん可愛い。ノンケだけどちーたんならヤれる

とりあえず今回はここまで。
謎な組み合わせですが、最後までどうかお付き合いください。

>>2-8
たくさんの期待コメありがとうございます。
その期待に添えるといいのですが。

――翌朝

不二咲(昨日は大変だったなぁ……)

不二咲(セレスさんはあの後、朝起こしに来るよう言ってすぐ部屋に帰っちゃうし)

不二咲(それにしても、メイドって……一体何をすれば良いんだろう?)

不二咲(やっぱり、身の回りのお世話とかをするのかなぁ?)

不二咲(僕なんかに、うまくできるのかなぁ……)

不二咲(……とりあえず、もうすぐ朝食会の時間だし、今はセレスさんを起こしに行こう)

――セレスの部屋前

ピンポーン

不二咲「セレスさん、朝だよぉ」

ピンポーン

不二咲「……セレスさん?」

10分後

不二咲「うぅ、全然起きて来てくれないよぉ……」

不二咲(呼びかけても完全防音だから、きっと部屋の中には聞こえてないだろうし……)

不二咲(あんまりインターホンを鳴らしすぎたら、もしセレスさんの目が覚めた時に嫌な気分になっちゃうよねぇ)

不二咲(どうしよう……もうすぐ朝食会が始まっちゃうよぉ……)

不二咲「セレスさん、起きてよぉ……」

モノクマ「そりゃ無理だよぉ」

不二咲「きゃっ!? も、モノクマ!」



モノクマ「だって、セレスティアなんとかさんは中で死んでるんだから」



不二咲「!? ……せ、セレスさんが死んでる……!?」

モノクマ「ん……? あ間違えた。『死んだ様に眠っている』だったね」

モノクマ「ぱっと見、寝てても死んでても同じだからね、仕方ないね」

不二咲「ぜ、全然違うよぉ!」

モノクマ「僕は思うんですよ、人間の言葉ってのは無駄に小難しいって」



不二咲(無視された……)

モノクマ「もっと殺し殺され喜怒哀楽って感じで、簡単にコミュニケーションを取れば良いのにさ!」

不二咲「それってつまり、コロシアイをしろってことぉ……?」

モノクマ「ピンポンピンポーン! 大正解!」

不二咲(全然うれしくないよぉ……)

モノクマ「うぷぷ。今日は機嫌がイイから、正解者の不二咲君に何処か好きな部屋の鍵を開ける権利を与えましょー!!」

不二咲「えっ、ホントに!?」

モノクマ「ええ、本当です。モノクマあんまり嘘つかない!」

不二咲「じゃ、じゃあ、セレスさんの部屋の鍵を開けて欲しいなぁ」

モノクマ「おやおや、愛しのご主人様のお部屋を指定するなんて、不二咲君はイケナイ子だねぇ」

モノクマ「主従百合ッスか? 主従百合って奴ッスか!」

モノクマ「やれやれ、先生の見ていない所で一体ナニをするつもりなんだか」

不二咲「ち、違うよぉ! これじゃあセレスさんを起こせないから、仕方なく」

不二咲(それに、なんでモノクマがセレスさんとのことを……)

モノクマ「わかってるわかってる。第一不二咲君は『可愛いくてか弱いみんなに守られるだけの女の子』だもんねぇ」

モノクマ「そんな弱虫毛虫のキミが、セレスさんに夜這いならぬ朝這いなんて、さすがの僕にだって考えられないよぉ」

不二咲「ッ……う、うん……そうだよ……」

モノクマ「うぷぷぷぷ。さぁて、それじゃあちょっと待っててね」

ゴソゴソ

モノクマ「ああ、あったあった。『モノクマ印のマスターキー』!」

不二咲「えっ、今何処から出したのぉ?」

モノクマ「まぁいいじゃない、そんな鮭の稚魚の様に小さい事は。モノクマだもの」

モノクマ「さて、これをこうして……」

ガチャリ

モノクマ「はい、開いたよ」

不二咲「わぁ、ありがとうモノクマ」

モノクマ「いえいえ。それにしても勿体無いなぁ」

不二咲「えっ?」

モノクマ「僕は『何処か好きな部屋』って言っただけで、『誰の部屋』とは指定してなかったんだよ?」

モノクマ「閉鎖されている部屋を解放すれば、脱出のヒントが見つかったかもしれないのにねぇ」

モノクマ「そんなビッグチャンスを、君は誰かを起こすためだけに使っちゃって」

不二咲「あっ……」

モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷ……! その絶望顏、イイねイイねェ! 最高だねェ!」

モノクマ「ま、不二咲君ならこう答えるんじゃないかなーって思って、あえてそう言ったんですけどね」

モノクマ「その調子でドンドン絶望して行ってください! じゃ、そゆことでー!」

ドロン

不二咲「…………」

不二咲(……セレスさんを起こそう)グスッ

――セレスの部屋

不二咲「お邪魔しまぁす……」

不二咲(……わぁ、オシャレな部屋だなぁ)

不二咲(僕の部屋とおんなじ間取りの筈なのに、全然印象が違うや。まるでお城の中みたいだよぉ)

不二咲(……って、見惚れてる場合じゃないや。はやくセレスさんを起こしてあげないと)

不二咲「セレスさん、不二咲だよぉ。まだ寝て……あれ……!?」

セレス「……すぅ……すぅ」※ドリル未装備

不二咲「えっ、えっ、えぇぇ……?」

不二咲(だ、誰ぇ?)

とりあえず今回はここまで。
あまり多くは無いですが、短いスパンで投下していきます。

>>27
ちーたんは天使だからね、仕方ないね

その他多くの応援コメントありがとうございます。

不二咲(……いや、セレスさんの部屋なんだから、セレスさんなんだろうけど……)

不二咲(だけど、何か足りない様な……?)


――閃きアナグラム 開始!――

か      な

    に     み
    
 み     が    が
 
   た

 か □ □ た 


不二咲(……か、かみ……髪……髪が……かみがた……)

不二咲(! ……そっか、わかったよ!)

セレス「ん、んん……」

不二咲「あっ」

セレス「ふぁぁ……まったく……誰ですの? このわたくしの貴重な眠りを妨げるのは……」

不二咲「え、ぇ……ぁ……ぇと……」

セレス「……あら? 不二咲さんではありませんか。何故ここに」

不二咲「あのぉ、僕……セレスさんに昨日……」

セレス「……あぁ、なるほど。昨日の言いつけ通り起こしに来てくれたのですね」

不二咲「う、うん」

セレス「ふむ、朝食会の始まる10分前といったところですわね……」

セレス「どうやって入ってきたのかはまぁいいとて」

不二咲(あ、そこ流すんだぁ……)

セレス「起こしに来て貰った時間は、とりあえず及第点といったところですわね」

セレス「本来であれば、わたくしの起床時間を考えてもっと遅めに……」

不二咲「あ、あのぉ……」

セレス「……主人の話の腰を折るなんて……」

セレス「まぁ、まだなりたてですし大目に見て差し上げます」

セレス「それで、何か? それとも、この部屋にどうやって入ってきたか聞いてほしいのですか?」

不二咲「そ、それはぁ……今はあんまり、聞いてほしくないかな……」

不二咲「僕が聞きたいのは、そのぅ……」

セレス「ハッキリおっしゃったらどうです? 誰も怒ったりしませんから」

不二咲「じゃあ、言うけど……セレスさん、だよねぇ……?」

セレス「は?(威圧)」

不二咲「うぅっ……」

不二咲(や、やっぱり怒らせちゃったよぉ……)

セレス「あなた、面白い事を仰いますね。ここはわたくしの部屋なのですから、当然でしょう?」

不二咲「でも、なんだか雰囲気がいつもと違うから……」

セレス「雰囲気……ああ、髪型の事ですか?」

セレス「普段はウィッグをつけていますから、雰囲気が違うのは当然ですわ。ほら」

不二咲(! コート掛けにセレスさんの髪が掛けられてる……)

不二咲(……なんだか、急に不気味な部屋に見えてきちゃったなぁ)

セレス「不二咲さん?」

不二咲「ひゃいっ!?」

セレス「何を惚けているのです……メイドの朝仕事はまだ残っていますわよ?」

不二咲「し、仕事って……?」

セレス「そこのクローゼットにわたくしの服が入っていますわ」

不二咲「? そ、そうなんだぁ」



セレス「……」

不二咲「……」



セレス「はやく着替えさせて頂けません? わたくし、食堂へ行きたいのですが」

不二咲「へ、ええぇっ!?」

セレス「……起き抜けにあまり大きな声を出さないでくださいますか? 頭に響きます…・」

不二咲「ご、ごめんなさい……じゃなくてぇ! む、無理だよぉ!」

セレス「何故ですの? 別に女の子同士なのですから、恥ずかしがる必要などないじゃありませんか」

不二咲「うっ……そ、それはそうだけどぉ……」

セレス「……はぁ、不二咲さん。あなた、まだ分かってらっしゃらなかったのですね」

セレス「わたくしはメイドのあなたに『命令』をしたのですよ?」

不二咲「で、でもぉ……」

セレス「いいからやれっつってんだろこのビチグソがァッ!!」

不二咲「はッ、ひぃぃ……!!」

セレス「……そこのクローゼットの三段目にドレス、二段目に靴下や下着類が入っていますので」(にっこり)

不二咲「……はぃ」

不二咲(もうやだよぉ……)

――

不二咲「も、持ってきたよぉ」

セレス「では、早速着替えさせてくださいな」

不二咲「う、うん……それじゃあ、脱がすねぇ……?」

不二咲(あんまり直視しない様にしよう……)

不二咲「あ、あれぇ? おかしいなぁ……ボタンが取れない……」

セレス「何を遊んでいるのです?」

不二咲「えっとぉ……あ、取れたよぉ!」

セレス「まったく、たかがボタンを外すのにどれだけ時間を掛ける気ですか?」

不二咲「ご、ゴメンねぇ……」

セレス「まったく、本当に手がかかるメイドですわ……」

スルスル……

不二咲「わ、わわっ!? ちょ、ちょっと待ってぇ!」

セレス「? どうされたのですか? 急に目など背けて」

不二咲「な、なんでもない! 何でもないから、はやく何か着てよぉ!」

セレス「……おかしな不二咲さん。それに着せるのはあなたの仕事でしょう」

不二咲「そ、そうだけど……!」

不二咲(あ、あぅ……せ、セレスさんの下着、見ちゃったよぉ……)

不二咲(や、やっぱり……大人っぽいのしてるんだなぁ……)

不二咲(それに、肌も白くて綺麗で……)

レス「不二咲さん? わたくしのあられもない姿に見とれるのは結構ですが」

不二咲「えっ!? み、見惚れてなんて無いよ! ほ、ホントだよぉ!?」

セレス(そこまでキッパリ言われるのも、それはそれで傷つきますわね)

セレス「わかりましたから、はやく服を着せてくださいません? 風邪を引いてしまいますわ」

不二咲「う、うん……」

――数分後

キュッ

不二咲「ふぅ……。お、終わったよぉ?」

セレス「大体10分前後と言ったところですか。最低でもあと5分は短縮してくださいね」

不二咲「で、でもぉ、この服結ぶところとかたくさんあってぇ……それに……」

不二咲(ドキドキし過ぎて、手が震えちゃうんだよぉ……)

セレス「まぁいいですわ。今後に期待しましょう」

不二咲「今後って……僕、いつまで続ければいいのぉ?」

セレス「当然一生ですわ」

不二咲「そ、そんなぁ!」

セレス「……というのは流石に可哀想ですし」

不二咲(ほっ)

セレス「この学園に閉じ込められている間ということで手を打ちましょう」

不二咲「まぁ、そのくらいなら……あれ? セレスさんって確か……」

セレス「ええ、一生をここで過ごすつもりですが」

不二咲「そ、それじゃあ一生と変わらないよぉ!」

セレス「それが嫌なら、ここから出ることですわ」

セレス「『誰かを殺して』」

不二咲「! ……そ」




セレス「あなたは次に、『そんなこと、出来ないよぉ』と言います」



不二咲「そんなこと、出来ないよぉ……ハッ!」

セレス「なんで分かったのかと言いたげな表情ですわね」

セレス「ギャンブルで読心術を使うのは基本中の基本ですわよ?」

セレス「何より、あなたの蚊の一匹殺せないような性格を見れば、自ずと答えは出てきますわ」

セレス「まぁ、諦めなさいな。何度も言っておりますが、適合することです」

セレス「この環境にも、不二咲さんが今置かれている境遇にも……」

セレス「よろしいですね?」

不二咲「……はい」

セレス「うふふ。素直は美徳ですわよ、不二咲さん」

セレス「さて、それでは次は不二咲さんに着替えて頂かないと」

不二咲「え? でも、僕もう着替えて……」

セレス「メイドにはメイドの正装があることをお忘れですか?」

不二咲「メイドの正装? そ、それって……!」

セレス「事前に言っておきますが、当然拒否権はあえりませんからね」

とりあえず、今回はここまで
ちーたんの口調難しすぎて泣ける

――食堂

セレス「皆さん、おはようございます」

石丸「む! セレス君! 君はまた遅刻――っふ、不二咲君!?」

桑田「ん? ……おお!」

大神「むっ……?」

舞園「わぁ!」

不二咲「…………っ」

大和田「ど、どうしたんだお前、その衣装は?」

苗木(大和田君の意見はもっともだった)

苗木(セレスさんと共に現れた不二咲さんは、いつもの彼女なら絶対に着ないであろう服を身に纏っている)

苗木(全身に大量のフリルがあしらわれたその服は、僕もテレビや雑誌で何度か目にした事があった)

苗木(それは紛れも無く、男のロマンのひとつ……メイド服だったんだ)

不二咲「え、えっとぉ……」

江ノ島「へぇー、似合ってんじゃん不二咲! ソッチ系の雑誌なら表紙飾れるって!」

不二咲「そ、ソッチ系って……?」

葉隠「だべ! それ程の容姿なら、然るべき店を開いて十分金取れるレベルだべ!」

不二咲「そ、そんなことしないよぉ……」

朝日奈「それでそれで、その格好どうしたの不二咲ちゃん!? すっごく可愛いけど!」

不二咲「その……倉庫にあったらしいんだけどぉ……」

セレス「はいはい、そこまでですわ」

不二咲「! セレスさん……」

セレス「そこから先はわたくしが説明致し」

山田「ウッヒョオオオオオオオオオオオオッ!! メイド服ちーたんktkr!!!」

セレス「……山田くん、少しお黙りなさい」

山田「フリルが大量にあしらわれた純白のエプロンドレスにメイドの象徴とも言えるカチューシャ!!」

山田「格好だけ見ればとても記号的で使い古された感のあるメイド服ッ、ですッ、がッ!!」

山田「それを清純派で通っているちーたんが着ているというのが重要なのです!!」

山田「記号的であるというのは、ある意味では王道でもあるということ!!」

山田「清純×純白のメイド服! この方程式が示す真実はただひとつ!!」

山田「ちーたんの萌え力は世界一ィィィィィイイイイイイイイイ!!!」

セレス「黙れっつってんのが聞こえねぇのかこのド低脳がアァァ――ッ!!」

山田「タコスッ!!」

……

セレス「コホン。では改めて説明させて頂きます」

苗木「た、頼むよ。セレスさん」

山田「ブクブク……」

桑田「オメーも懲りねぇのな……」

セレス「……と言っても、とくに説明するほど大した事ではありませんの」

葉隠「いやいやいや……あの不二咲っちがこんなもん着るなんて十分大したことだべ」

セレス「その意見はもっともかもしれませんが、葉隠君の発言なので無視させて頂きますわね」

葉隠「ちょ! 単に無視されるより酷いべ!!」

セレス「それで不二咲君のその格好なのですが」

葉隠「今度は完全無視!?」

セレス「黙れ」

葉隠「はい」

霧切「……話が先に進まないわ。端的に説明してもらってもいいかしら?」

セレス「わたくしのせいでは無いのですが、仕方ありませんわね」

セレス「まぁ、言うなればですね……」

ぎゅ

苗木(そういうと、セレスさんはいきなり不二咲さんを抱き寄せた)

不二咲「えっ……?」

セレス「今日から、不二咲さんは私のメイドになりましたの」

苗木「……は?」

セレス「なので皆さん、不二咲さんに御用があるときは主人であるわたくしを通して頂ますよう」

セレス「よろしくお願いしますわね」

苗木「……いや、ちょ、ちょっと待ってよ! いきなりそう言われても、何がなんだか」

山田「美少女ご主人様×美少女メイド……だと……!?」

桑田「うおっ!? 急に復活すんじゃねーよブーデー!」

山田「キ、キキキキキマシタワァァァ――ッ!!」

セレス「誰が復活して良いって言ったよこのビチグソがァッ!!」ガス

山田「ありがとうございますッ!!」

朝日奈「で、でもさ! それってつまり不二咲ちゃんを召使いみたいするってことでしょ!?」

朝日奈「そんなの、友達にするようなことじゃないよ!」

セレス「フフ、何か色々と勘違いをなされているようですね」

朝日奈「勘違い?」

セレス「ひとつ言えるのは、これは不二咲さんも同意の上で結んだ契約ということですわ」

朝日奈「え……そ、そうなの?」

セレス「ええ。ね、不二咲さん?」

不二咲「う、うん……」

セレス「ほら、聞きまして?」(にっこり)

江ノ島(嘘だね)

舞園(嘘ですね)

葉隠(嘘だべ)

苗木(それは違うよ)

セレス「苗木君、何か不満でも?」

苗木「え、僕だけ!? ……い、いや、なんでもないよ」

朝日奈「うぅーん、不二咲ちゃんがそう言うなら……」

石丸「本人たちの同意の上で行われているなら、これ以上僕達が口を挟むわけにも行かないな」

石丸「それに、普段規則正しい生活を送っている不二咲君がセレス君の世話をするのだろう?」

石丸「不二咲君に影響されて、セレス君も規則正しい生活が送れるようになるかもしれない!」

石丸「僕は二人の協力関係に賛成だ!」

霧切「……これは、協力関係と言えるのかしら」

大神「不二咲の性格からして、セレスの言いなりになるとしか思えんな」

大神「それが本人の合意の上ならば、我もこれ以上何か言うつもりは無いが」

大和田「おい不二咲。お前嫌なら嫌って言わねぇと、いつまでもセレスの尻に敷かれるぞ?」

不二咲「う、うん。でもぉ、セレスさんも色々手伝ってくれる人がいなくて困ってるみたいだったし」

不二咲「それに、こんな僕でも誰かの役に立てるって思ったら……それだけでがんばれちゃう気がするんだぁ」

大和田「……なら、これ以上俺が言う事はねぇ。余計な口出しだったな、スマン」

不二咲「うんうん、そんな事ないよぉ。心配してくれてありがとう、大和田君」ニコッ

山田(CMT<ちーたんマジ天使>)

桑田(女神)

大和田(結婚しよ)

セレス「さて、まだ他になにかありまして?」

葉隠「んじゃあ、これは単純に興味で聞くんだけんども」

セレス「くだらない質問だったら山田君と同じ末路が待っていますからそのつもりで」

葉隠「さっきから俺っちに対する扱い酷くねーか!?」

葉隠「え、えーとだな。やっぱり、セレスっちも不二咲っちに『ご主人様』とか言わせてるんか?」

セレス「……はぁ?」

葉隠「ひ、ひぃ……! や、やっぱ今の質問は無しってことでここは穏便に済ませるべ! 出来れば示談金とか無しの方向で……」

セレス「……いえ。葉隠君、お手柄ですわ」

葉隠「……はひ?」

セレス「わたくし、ずっと考えておりましたの」

セレス「不二咲さんはわたくしにこんなに尽くしてくれているのに、イマイチ忠誠心を感じられないと」

セレス「それは何故なのか……葉隠くんのお陰で、頭ではなく心で理解する事ができました」

苗木「それって……」

>【不二咲のセレスの呼び方】
【不二咲が本当は嫌がっている】
【不二咲は本当は逃げ出したいと思っている】

苗木「『不二咲さんのセレスさんの呼び方』が原因ってこと……?」

セレス「そういう事ですわ」

山田「あるあるあ……ねーよ」

セレス「あるよなァ?」

山田「その通りでございますッ!!」

山田の台詞無駄に多いな
いらん

セレス「という訳で、不二咲さんにはわたくしの呼び方を改めて頂きましょう」

不二咲「え、ええ!? い、今からぁ!?」

セレス「当然ですわ。さ、はやく」

不二咲「で、でもぉ、みんなが見てるよぉ……」

セレス「フフ、見せつけてやればいいのです……」

苗木(会話だけ聞くと随分アレな……いや、実際に十分アレか)

苗木(それにしてもセレスさん、随分楽しそうだな)

不二咲「………じゃ、じゃあ……」

不二咲「……ご」

セレス「聞こえませんわ。もっと大きな声で言って頂けます?」

不二咲「うぅ……ご、ご……」




不二咲「ご主人タマ……」


――BREAK!――





苗木(その日のことは、今でもよく覚えている)

苗木(あの日僕達の目の前に居たのは、間違いなく……)

苗木(――天使、だったんだ)

不二咲「ぁ、ぁ……は、恥ずかしいぃ……」

セレス「これは……なかなかいいですわね」

山田「……セレス殿」

セレス「なんです?」

山田「どうか、どうか一日だけ……ちーたんを私めに貸しては頂けませんか!?」

セレス「そうですわねぇ……山田くんにはいつもわたくしの為に働いて頂いていますし……」

山田「じゃ、じゃあ!」

セレス「だが断る」

山田「ですよねー」

―――

――回想終了

不二咲(それから、僕はセレスさんのメイドとして本格的に身の回りのお世話をするようになった)

不二咲(けど、それまではまだ、セレスさんが飽きたらそのうち僕を開放してくれんじゃないかと思っていた)

不二咲(――『一昨日』までは)

CMT

とりあえず今回はここまで

>>「ちーたん可愛い」等のコメント
本当に有難うございます。
ちーたんを可愛く書くことがこのSSの目的と言っても過言ではないので。

>>86
山田くんは会話を考えるのが簡単でついつい多くなってしまいます
次回からは当分でないのでご容赦を

>>91
CMT

――昨日

不二咲(ど、どうしよう……)

不二咲(モノクマに渡された『動機』の封筒、僕の秘密が書かれてるって言ってたけど……)



【不二咲千尋は幼い頃から男であることを隠している】



不二咲(……)

不二咲(どうして……誰にも、言わなかったのに……)

不二咲(あと20時間の間に殺人が起きなかったら、この事は外の世界に公開される……)

不二咲(秘密がバレるのも嫌だけどぉ……人を殺すのは、もっと、嫌だ……)

不二咲(……)

不二咲(…………)

不二咲(………………よし)



不二咲「大和田君、ちょっといいかな……?」

大和田「………」

不二咲「? 大和田君……?」

大和田「……お、おう不二咲。どうした?」

不二咲「ゴメンネ、考え事してるところに。……実は、ちょっと相談したいことがあって」

大和田「俺に相談したいこと?」

不二咲「うん……」

大和田「……俺なんかでいいのか? その様子だと、さっきの『動機』のことだろ?」

大和田「男の俺より、女の方がお前も……」

不二咲「うんうん、大和田君じゃなきゃダメなんだ!」

大和田「! ……分かった。そこまで言われちゃあな」

不二咲「あ、ありがとう大和田君!」

大和田「なに、気にすんな。俺も、少し誰かと話したいと思ってたとこだ」

不二咲「えへへ……。それじゃあ今日の夜時間、二階の更衣室前でいいかな?」

大和田「この前図書室と一緒に開放されたところか……分かった」

不二咲「それじゃあ、また後でね!」

大和田「ああ」

不二咲「絶対! 約束だからね!」

大和田(天使……)



不二咲(少し不安だけど、大和田君ならちゃんと話を聞いてくれるよね)

不二咲(……強くなるんだ。今日、ここで!)

……






セレス「…………<●><●>」







……

すみません、中途半端ですが今回はここまでで

――夜時間 倉庫

不二咲(ジャージと、タオルと、スポーツドリンク。準備はこんなところかな?)

不二咲(夜時間までもう時間がないよね。はやく大和田君のところに行かないと……)

不二咲「よぉし……」

セレス「こんな時間にどちらにお出掛けかしら?」

不二咲「!!」

セレス「わたくしのメイドでありながら、わたくしの言い出した夜時間の決まりを守らないなんて……」

セレス「フフ、不二咲さんは悪い子ですわね」

不二咲「せ、セレ……ご主人タマ……」

不二咲「ど、どうしてここにぃ……?」

セレス「不二咲さんがここに入るのが見えまして……」

セレス「ちょうど喉が渇いたので、夜時間の前にお茶を淹れてもらおうと思いまして」

不二咲「そ、そうなんだ……で、でも、ゴメンナサイ。これから……」

セレス「あら、わたくしの命令が聞けないのですか?」

不二咲「そ、そういうわけじゃないよ! 僕はただ……」

セレス「誰かと待ち合わせでも?」

不二咲「! し、知ってたのぉ……?」

セレス「いえ、なんとなくそんな気がしただけですわ」

不二咲「そ、そうだよねぇ……」

セレス「まぁ、誰かと待ち合わせと言うなら仕方ありませんわね」

不二咲「え?」

セレス「行ってきなさいな。わたくしのメイドが時間にルーズなどと思われたら、それこそ恥さらしですわ」

不二咲「う、うん! ありがとう、セレスさん!」

セレス「フフフ。ところで、不二咲さん?」

不二咲「ん? なぁに?」






セレス「昼間の封筒には、『あなたが男である』とでも書いてあったのでしょうか?」

不二咲「ッ!?」





バンッ!

不二咲「ひっ……!」

不二咲(か、壁に追い詰められて……逃げられないよぉ……)

セレス「フフ、どうやら図星のようですわね」

不二咲「な、なんで……それを……?」

セレス「着替えの時の不自然な態度を見た時からずっと気になっていたのです」

不二咲「そ、それだけ……?」

セレス「それだけではありません。普段の女性に対する態度や、細かい仕草……」

セレス「これだけのボロを見せておいて、このわたくしに嘘を吐き続けられると思って?」

不二咲「……ぼ、僕を……どうするの……?」

セレス「そうですわね、これをネタにあなたを脅してみましょうか?」

セレス「『この事を今すぐ全員に話す』……とか」

不二咲「! や、やめてよぉ……!」

セレス「フフフ……泣きそうになっている顔も素敵ですわよ?」

不二咲「う、うぅ……」

セレス「おそらく、このことをこれから大和田君に相談するつもりだったのでしょう?」

セレス「『自分より強い大和田君に相談することで、自分の弱さを克服してもらおう』と考えたのですね」

セレス「そうすれば、心の整理がつき話す勇気も出ると」

不二咲「う、うん……」

セレス「けれど、それは大きなミステイクですわよ」

不二咲「え……?」

セレス「あなたは気が付かなかったかも知れませんが、あの時の大和田君はとても動揺していました」

不二咲「で、でも、そんな風には……」

セレス「必死になって隠していたのでしょうね。しかし、汗や目の動きは動揺している人間のそれでしたわ」

セレス「きっと、あの封筒には彼の絶対に知られたくない秘密……言うなれば『弱さ』について書かれていたのでしょう」

不二咲「大和田君の……弱さ……」

セレス「そんな自分の弱さに悩んでいる大和田君に、自分の弱さと向き合っているあなたはどう映るでしょうね」

セレス「わたくしなら『弱い自分への当て付けか?』と思い、不愉快になること請け合いですわ」

不二咲「そんな……僕は、自分の事しか考えてなかったってこと……?」

セレス「人間とは往々にしてそういう生き物ですわ。ですから、恥じる事はありません」

不二咲「で、でも……僕は、僕は強くならなくちゃ……!」

セレス「そんなこと、誰が決めたのです?」

不二咲「え……?」

セレス「不二咲君が強くならなければいけないと、誰が言ったのです?」

不二咲「それは、自分で……だって、僕はみんなの役に立ってないから……」

セレス「役に立っていない。それも、誰かに言われた事なのですか?」

不二咲「……それは、違うけど……」

セレス「よろしいですか?」

セレス「世の中には『適材適所』という言葉があります」

セレス「強い人間は弱い人間を守り、弱い人間は強い人間に守られる」

セレス「人間には誰しも、そういった役割があるのです」

セレス「その役割を無理に脱却しようとしても、無理が祟って失敗するだけですわ」

不二咲「そんな……僕は、ただ……」

セレス「今のあなたは『弱い人間』なのです」

セレス「その役割を脱却するということは、現在続いている張り詰めた均衡状態を崩すということ」

セレス「つまり、誰かの殺人のきっかけを作りかねない愚行と言っても過言ではありません」

セレス「今回であれば……大和田君の」

不二咲「!!」

不二咲「……セレスさん……」

セレス「はい」

不二咲「僕は……どうすれば良かったの……?」ポロ

セレス「……」

不二咲「弱いままでいなくちゃいけないなら……守られるしかないなら……」

不二咲「僕は……うっ、ひっく……ずっとみんなの、お荷物のままでいないといけないのかなぁ……」ポロポロ

セレス「……そうですわね」

セレス「ですが、幸いあなたは役割をお持ちです」

不二咲「弱い人間、でしょ……?」

セレス「いいえ。『わたくしのメイド』です」

不二咲「どういう、こと……?」

セレス「わたくしのメイドである限り、わたくしはあなたをお荷物だとは思いませんし、役立たずとも思いません」

不二咲「!」

セレス「実際、ここ数日はあなたがいてくれてとても助かっていますわ」

セレス「手先は器用ですし、気立てはいいですし、淹れるお茶も性格が出ているのかとても繊細な味です」

セレス「正直、手放したくない逸材と言ってもいいですわね」

不二咲「ほ、本当?」

セレス「これは本当ですわ。ギャンブラーとしての人生を掛けてもいい」

セレス「これでお分かりになりましたか?」

セレス「あなたはわたくしのメイドである限り、役立たずでもただの弱者でもない」

セレス「『メイドの不二咲千尋』という、価値のある人間になれるのです」

不二咲「僕が……価値のある人間……」

セレス「そこで、どうでしょう。もう一度わたくしのメイドになりませんか?」

セレス「今度は、無期限契約で」

セレス「悪い話ではないでしょう?」(にっこり)

不二咲「……」

セレス「………」

不二咲「……ご主人タマ」

セレス「はい?」

不二咲「………」



不二咲「……よろしく、お願いします」

セレス「……ええ。改めて、よろしくお願い致しますわね」

セレス「不二咲『君』」


――こうして、僕は正式にセレスさんのメイドになった。

―――

不二咲「それにしても、ご主人タマのさっきの台詞」

セレス「はい?」

不二咲「なんだか、プロポーズみたいだったね」

セレス「は、はぁ? ……ちょ、調子に乗りすぎですわよ!」

不二咲「ご、ゴメンナサイ」

セレス「まったく……。本当にあなたの秘密をバラしてしまいますよ?」

不二咲「そ、それは嫌だけど……けど、どうせあと10時間後には……」

セレス「さて、それはどうでしょう?」

不二咲「? どういうこと……?」

セレス「さぁ、どういうことでしょうね」

―――

――深夜 寄宿舎

大和田(たく、不二咲のやつ……結局約束の時間になっても来なかったな……)

大和田(……まぁ、今の心持ちじゃあ誰かに当たっちまいそうだったし、調度良かったが……)

大和田「……はぁ」

石丸「む、兄弟? どうしたのだ、ため息など」

大和田「!? きょ、兄弟! お前、この時間は寝てるはずじゃ……!」

石丸「個室のトイレが壊れてしまってな。それより、兄弟こそ何をしているんだ?」

大和田「お、俺ァ……」

大和田「……」

石丸「兄弟……?」

大和田「なぁ、兄弟。少し時間いいか?」

石丸「むぅ。この時間はもう寝ている時間だが……」

石丸「盟友の頼みだ。問題ない!」

大和田「ありがとな。実は、ちょっと聞いてほしい話があるんだ」

大和田「大馬鹿野郎の、どうしようもない昔話をな」

とりあえず、今回はここまででCMT。
更新が滞ってしまい本当にすみません。

―――

不二咲(翌日)

不二咲(結果から言えば、僕の秘密がバレることはありませんでした)

不二咲(……正しくは、どうなったのか分からなかっただけなんだけど)

不二咲(モノクマは秘密を公開したって言ってたけど、結局外の様子も見せてもらえなかったし)

セレス「言ったでしょう? どうなるかは分からないと」

不二咲(セレスさんはこうなることが分かってたから、あんなに冷静だったのかなぁ?)

不二咲(……とにかく、また誰もコロシアイをすることなく、第二の動機はその効力を失ったんだ)

不二咲(それと大和田君。謝りに行ったらなんだか清々しい顔をしてたけど、なにかあったのかなぁ……?)

―――

第二の動機期限から更に翌朝

不二咲(みんな、こんな結末になって面食らってたけど、コロシアイが起きなくて本当に良かったなぁ)

不二咲(このままみんなで協力できれば、誰も死なずに外に出られるかも)

不二咲(そのために、今は僕に出来ることをしなくちゃ……!)

コンコン

不二咲「セレスさん、朝だよぉ」

不二咲「……」

コンコン

不二咲「………」

コンコンコンコン

不二咲「……………」

コンコンコンコンコンコン

不二咲「……うぅ…手が痛いよぉ……」

モノクマ「あーもー! 分かりました分かりました!!」

不二咲「きゃ!?」

モノクマ「まったくぅ! 開けて欲しいならそういえばいいでしょう! お母さんに教わらなかったの!?」

不二咲「ご、ごめんねぇ……でも、こんな朝に呼びつけるのも悪いと思ってぇ……」

モノクマ「はぁーあ、ホントキミってお人好しだよねぇ。だからセレスさんの良いようにされるんだよ」

不二咲「う……」

モノクマ「ま、キミをこれ以上いじめても仕方ないね。はいどーぞ」

ガチャ

不二咲「あ、ありがとう」

モノクマ「いいってことよ。悲しいけどボク、学園長なのよね」ピョーン

セレスの部屋

不二咲「さて……ご主人タマ、朝ですよぉ」ユサユサ

セレス「ん、んん……」

不二咲「起きてください、ご主人タマ」

セレス「不二咲君……? ふあぁぁ、もうそんな時間ですの……?」

不二咲「もうすぐ朝食の時間だよぉ。早く起きてぇ」

セレス「んー……! はぁ……モーニング・ティーが飲みたいですわね」

不二咲「じゃあ、食堂に行ったら入れてあげますねぇ」

セレス「お願いしますわ」

セレス「……それにしても」

不二咲「はい?」

セレス「朝の支度も随分手際よくなりましたわね。流石不二咲君ですわ」

不二咲「えへへぇ、そうかなぁ?」

セレス「ええ。着替えの時の手つきも、まるで別人ですわ」

不二咲「ありがとう、ご主人タマ!」

不二咲(着替えはあんまりセレスさんを見ないよう急いでたら、自然と早くなっちゃっただけなんだけどねぇ……)

セレス「数日でこれなら、一ヶ月もすれば立派なメイドになれますわよ」

不二咲「えへへ、頑張らないとだねぇ」

セレス(否定しなくなったところをみると、わたくしのメイドになる決意は確かなようですわね)

セレス(うふふ。ホント、いい拾いモノをしましたわ)

もおぉぉぉぉしわけございません!!!

今後の展開考えていたらいつの間にかこんなに日が……
また不定期でちょくちょく投下していきたいと思います。
早ければ次は明日の朝にでも。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月14日 (土) 06:07:28   ID: ifF_b19G

二台持ちの奴といい不二咲厨はキモいな、セレスと接点ねーだろ

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