妹「お兄ちゃんが」 (62)

妹「キャトられた……」

妹「朝から爽やかに『いってきまーす』って言って」

妹「駆け出したところを、全身持っていかれた」

妹「満面の笑みで一歩踏み出したポーズのまま」

妹「怪しい光に吸い込まれていった」

妹「……どうすんべ」

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幼馴染「あら、妹ちゃんおはよう」

妹「あ、幼馴染さん。おはようございます」

幼馴染「どうしたのこんなところで……兄くんは?」

妹「それが……キャトられました」

幼馴染「は?」

妹「キャトルミューティレーションされました」

幼馴染「……」

幼馴染「へぇ、大変ね」

妹「大変ね、って……いや、その通りなんですけど」

幼馴染「まぁでも、キャトられ顔してたもんね。兄くん」

妹「……キャトられ顔って何ですか?」

幼馴染「もう明らかにキャトられそうな顔してたもの」

幼馴染「あれで今までキャトられなかったのが、むしろ不思議なくらいだわ」

妹「はぁ……そうなんですか」

妹「それでどうすればいいでしょう……」

幼馴染「助けに行けばいいんじゃない?」

妹「でも、どうやって?」

幼馴染「キャトった奴らの基地とかに潜入して」

妹「潜入って……どこにいるかも分かりませんし」

幼馴染「調べれば分かるわよ」

妹「調べるって……どうやってですか?」

幼馴染「スマホで」

妹「スマホで、分かるんですか?」

幼馴染「そうよ。今、調べてあげるから待ってて」

妹「……スマホって便利ですね」

幼馴染「……あら、これ宇宙行ってるわ」

妹「あ、行っちゃってますか」

幼馴染「あーあ。もうあんな遠くに……」

妹「それじゃもう、無理っぽいですね」

幼馴染「仕方ないなぁ、あれ使うか」

妹「あれ?」

幼馴染「でもあれ、確か倉庫の一番奥だったんだよなぁ。使えるかな?」

幼馴染「ていうか、運転とかできるのか私」

妹「なんですか、あれって」

幼馴染「まぁいいや、行っちゃお」

妹「どこに行くんですか?」

幼馴染「妹ちゃんも一緒に来てね」

妹「いや、だからどこに……」

幼馴染「えっと、あああったあった。これこれ」

妹「……」

幼馴染「このスイッチを入れると地下へ……どうしたの、妹ちゃん?」

妹「いや、何かこれ凄くないですか?」

幼馴染「何が?」

妹「何かここら辺の機械とか、SFに出てきそうだし」

幼馴染「そう? ただの自動迎撃システムよ」

妹「迎撃って、一体何を迎撃するんですか?」

幼馴染「敵を?」

妹「敵がいるんですか?」

幼馴染「そりゃもう、十年も生きれば敵なんて、歳の数かける百種族くらいはできるわ」

妹「単位は種族なんですか……?」

幼馴染「まぁいいから、早く地下へ入りましょう」

妹「……幼馴染さん」

幼馴染「なに?」

妹「ここに並んでるエイリアンっぽい生物なんですか?」

幼馴染「エイリアンよ」

妹「なんかリトルグレイっぽいのもいるんですけど……」

幼馴染「リトルグレイよ」

妹「……あ、これは普通のタコですよね。昨日食べたんですよおいしかった」

妹「でもなんでエイリアンと同じ扱い?」

幼馴染「タコ型のエイリアンだからよ」

妹「……嘘ですよね? これどうみても普通のタコじゃ」

幼馴染「地球上に生息する約九十八パーセントのタコはタコ型の宇宙人よ」

幼馴染「特殊な生物でね。一見しんだように見えるタコやその触腕は」

幼馴染「胃の中で卵を産みつけ孵化させるの」

幼馴染「孵化した幼生は、しばらく胃の中に留まって入ってくる食物を食べ大きくなって」

幼馴染「夜、寝ているときに口から出て去っていくのよ」

幼馴染「まぁでも、体に直接的な害はないから安心して」

妹「……幼馴染さん。トイレあります?」

幼馴染「そこの角、曲がってすぐよ」

妹「ちょっと吐いてきます」ダッ

幼馴染「あ……冗談なんだけど」

妹「……出てこなかった。朝食のパンしか出てこなかった」

妹「……もしかして、まだいんの? お腹の中にまだいんの?」

妹「もう二度とタコなんて食べない……昨日、タコ食べたいって言ったの誰よ……」

妹「あ、私だ……いや、でもその前にお兄ちゃんが……あいつ殺そう」

妹「ていうかもう、ぶっちゃけキャトられたままでもいいんじゃ……」ブツブツ

幼馴染「妹ちゃん、いつまでもぶつぶつ言ってないで、行くわよ」

妹「……あい」

幼馴染「着いたわ」

妹「……なんですか、これ」

幼馴染「何ですか、って宇宙船よ」

幼馴染「どっちかって言うと、形はロケットに似てるかもしれないけど」

妹「あ、そうなんですか。なんていうか……大きいですね」

幼馴染「まぁ宇宙で何年も暮らせるように出来てるからね」

妹「ていうかこの形、これどう見ても、ちん――」

幼馴染「妹ちゃん」

妹「……はい」

幼馴染「宇宙船よ」

妹「……そうですね。宇宙船です」

幼馴染「どこからどう見ても、宇宙船よ」

妹「どこからどう見ても、宇宙船です」

幼馴染「それ以外の何物でもないわ」

妹「何物でもありませんね」

幼馴染「さ、乗りましょうか。宇宙船に」

妹「……はい。乗りますか。宇宙船に」

妹「あ、中はわりとまともですね」

幼馴染「外もまともよ?」

妹「……」

幼馴染「さてと、それじゃ行きますか。えっと、これを押して……あれ、違った?」

妹「あの、大丈夫ですか?」

幼馴染「大丈夫大丈夫、久しぶりだからちょっと忘れてるだけ」

幼馴染「えっと、これが脱出スイッチでしょ。これがワープ開始スイッチで、これは重力装置のスイッチ……」

妹「あの、本当に……」

幼馴染「大丈夫だから心配にしないで」

幼馴染「確か、これがトイレの紙を補充するやつで。これはトイレが詰まった時の自動きゅっぽんスイッチで……」

妹「……なんか、無駄なスイッチ多過ぎません?」

幼馴染「えっと、これ何だったかしら……押してみますか。えい」

ピピピ エネルギージュウテンカイシ 

妹「エネルギー充填? あの、それ何のスイッチですか?」

幼馴染「あ、これもしかして、惑星破壊レーザーのスイッチじゃ……」

妹「ちょ、ちょっと! それやばいんじゃ……」

幼馴染「……やばいわね」

エネルギージュウテン キュウジュウパーセント

妹「は、早く止めて!」

幼馴染「えっと、止めるには……わ、わからない!」

妹「ちょ、待って。そんな!」

エネルギージュウテン カンリョウ

妹「うわああ!」

トイレキュッポンヲ カイシシマス

妹「う、……は?」

幼馴染「あ、間違った。これトイレキュッポンのスイッチだわ。こっちがレーザーのスイッチだった」

妹「そんなん間違えるな!」

幼馴染「……分からないわ。やっぱり私じゃ駄目ね」

妹「もう無理ですよ。諦めましょう」

妹「家に帰りましょう。そしてお兄ちゃんの遺影にタコでもお供えしておきましょう」

幼馴染「妹ちゃん、ちょっとここ座ってみてくれる?」

妹「え? いや、私だって分からないですよ、そんなの」

幼馴染「いいからいいから、もう適当でいいから」

妹「適当って……またレーザーとか出たら困りますし」

幼馴染「大丈夫、レーザーのスイッチは分かってるから、これさえ押さなければ問題ないわ」

妹「いやでも……」

幼馴染「まぁまぁ、トイレをキュッポンする感じで。気楽にやってみて」

妹「どんな感じですか……まぁでも、危なくないなら」

妹「えっと、これ以外なら何でもいいんですよね」

幼馴染「ええ」

妹「……じゃあ、これで」ポチッ

ドウリョクサドウ ハッシャジュンビ カイシ

幼馴染「おおっ、出来たわね」

妹「出来たんですか?」

幼馴染「さすがね、信じてたわ」

妹「結構、適当だったんですけど……」

幼馴染「よし、それじゃそのまま出発しちゃいましょうか」

妹「いやいやいや、無理ですよ。適当に宇宙船動かせるわけないじゃないですか」

幼馴染「行ける行ける」

妹「行けませんよ、やっぱり降りましょう」

幼馴染「じゃ、第一ハッチ、及びドームゲート七番開放。それじゃ、レッツゴー」

妹「いや、レッツゴーって。無理でしょ……」

――宇宙

幼馴染「意外と行けたわね」

妹「行けましたね……」

幼馴染「さすがだわ。やっぱり操縦できるじゃない」

妹「出来るものですね、意外と……初めてのはずなんですけど」

幼馴染「まぁね、感覚はどう?」

妹「不思議と乗りなれた感じなんですよね……」

妹「なんか自転車乗ってるくらいの気分です。でもそれがむしろ気持ち悪いっていうか」

幼馴染「ふむふむ。まぁいいんじゃない、これで兄くん救出にいけるし」

妹「そう、ですね……」

妹「ところで幼馴染さん」

幼馴染「なに?」

妹「これ普通にベルトもなしで座ってますけど、無重力じゃないんですかね?」

幼馴染「重力コントロールあるからね、大丈夫よ」

妹「そんな便利なものが……一体、この宇宙船って何なんですか?」

幼馴染「何って言われても、宇宙船としか」

妹「ていうか、考えてみれば幼馴染さんって何者ですか?」

幼馴染「凄く今更な質問ね……」

妹「なんか、最初の衝撃が大き過ぎてむしろ冷静に何でも受け入れてきましたけど」

妹「今更ながら混乱してきましたよ」

幼馴染「まぁそのあたりはあとで説明するから、とりあえず兄くん助けに行きましょう」

妹「それで、お兄ちゃんどこにいるんでしょうね?」

幼馴染「えっと、今は……あら、火星だわ」

妹「火星?」

幼馴染「ええ。火星」

幼馴染「……これはちょっとマーズいわね」

妹「……」

幼馴染「いや、本当にマーズいわ」

妹「……」

幼馴染「……あのね、火星って英語にすると」

妹「あ、大丈夫です。分かってます」

幼馴染「……そう」

幼馴染「でも、本当に遠いわ。火星まで行くとなると、ワープくらいしないと駄目かも」

妹「ワープですか」

幼馴染「ええ。まぁでも、一回で済むでしょう。座標計算は……これ、太陽系内なら自動で出来るわね」

幼馴染「じゃ、さっさと行きましょうか」

妹「あ、待ってください。その前に地球見てみたいです」

幼馴染「え、地球? どうして?」

妹「だってこんな機会めったにあるものじゃありませんし」

妹「一回くらい宇宙から地球を見てみたいじゃないですか」

妹「地球は青かった、とか言ってみたいですし」

幼馴染「……でも、今は時間がないわ。火星にいるって事は、もう兄くんを連れ去った連中が」

幼馴染「前線基地についているのかもしれないし」

妹「でもちょっとくらい。もうチラッとでいいですから。一瞬だけ」

幼馴染「……仕方ないわね。じっくり見てる暇はないから、そこのモニターで見ましょうか」

妹「えー、それじゃテレビで見るのと変わりませんよ。やっぱり生が……」

幼馴染「時間がないの」

妹「でも……」

幼馴染「ほら映すわよ」

妹「……はーい」

妹「おおっ、地球青い……」

幼馴染「そうね。でもそれだけで、大した感動はないでしょ」

妹「いやいやそんな事ありませんよ。凄い、私たちってこんなところ住んでるんだ」

幼馴染「そうね」

妹「でも、何か所々雲に覆われてますね」

幼馴染「そりゃ雲くらい浮かんでるわよ」

妹「でもこれ大きいな……どこかで台風でも来てるのかな」

幼馴染「もういいでしょ、早く行かないと。兄くんがミンチにされちゃうかも」

妹「はいはい。それじゃ、行きますね。ワープ」

――火星 周辺地域

妹「あ、あれですかね火星。凄い、真っ赤だ」

幼馴染「そうね。えっと、兄くんがいるのは……この裏側ね」

妹「それじゃ、裏側に回りますね」

幼馴染「待って待って。普通に行ったら敵の迎撃砲に打ち落とされちゃうわ」

幼馴染「この宇宙船に乗ったまま正面突破するわけにも行かないし」

幼馴染「こちら側で降りて、気付かれないように侵入しましょう」

妹「え? でも宇宙服とか持ってないんですけど」

幼馴染「それくらい、あるわ。それと銃とナイフ。その他諸々役に立ちそうなものを持って」

幼馴染「ジープで移動しましょう」

妹「分かりました。それじゃ着陸させますね」

幼馴染「慎重にね」

妹「宇宙服って思ったよりも着心地いいですね。思ったより軽いし」

妹「テレビで見るみたいにごつごつしてないし」

妹「……だからこそちょっと不安ですけど」

幼馴染「大丈夫よ。この宇宙服、意外と頑丈だから」

妹「それで、どこから侵入するんですか?」

幼馴染「それなのよね……ここの基地、どういうタイプなのかな」

妹「タイプ?」

幼馴染「うん、二つパターンが考えられるんだけどね。片方のパターンなら侵入は楽勝なんだけど」

幼馴染「もう一方のパターンだとかなり厳しいわ」

妹「……良く分からないですけど、とりあえず楽な方から試してみればいいんじゃないですか?」

幼馴染「そうね。それじゃ、行って見ましょう」

幼馴染「たぶん、一番近いのはこの辺なんだけど……」

妹「何を探してるんですか?」

幼馴染「えっとね、ちょっと待って……あれどこだったかしら?」

幼馴染「だいぶ前だからなぁ。でもたぶんこの辺のはず……」

妹「……。あ、幼馴染さん、これなんですかね」

幼馴染「え? 何か見つけたの?」

妹「いえ、たぶん大したものじゃ……板かな?」

幼馴染「板?」

妹「ええ……あ、これたぶん何かの部品ですよ」

幼馴染「どれどれ……」

妹「あ、何か書いてある……『RX-867』。何でしょうね?」

幼馴染「……何かしらね?」

妹「まぁ大したものじゃなさそうですけど」

幼馴染「でも……だとしたらやっぱりこの辺に……」

幼馴染「あ、あった。あったわ妹ちゃん、ここよ」

妹「何ですか? この穴」

幼馴染「入口よ」

妹「何のですか?」

幼馴染「基地内部への入口……たぶんね」

妹「たぶんって……でも、これが入口ですか?」

妹「……意外とあっさり見つかりましたね」

幼馴染「ま、私にかかればこんなものよ」

妹「でもあらかじめ見当をつけていたように見えましたけど、どうして分かったんですか?」

幼馴染「基地の入口はね、大抵こういうところに作るものよ。その方がいろいろ便利なの」

幼馴染「でも、もう一つのパターンじゃなくて良かったわ。それだったら見つけるの大変だもの」

妹「そうなんですか……良く分かりませんけど」

幼馴染「さ、早く入りましょう」

妹「……ここすごく基地っぽいですね」

幼馴染「基地だもの」

妹「……防衛装置とか作動しませんかね?」

幼馴染「するかもね。だから気をつけて」

妹「したらどうなりますか?」

幼馴染「第一段階として隔壁が閉鎖されて、一区間百機以上設置された自動迎撃レーザーに撃ち殺されるわ」

妹「それ第一段階なんですか……? じゃあ、第二段階って」

幼馴染「第二段階はカメラによりクリアリング。第三段階で防衛部隊によるクリアリング」

幼馴染「第四段階で防衛態勢の解除と、隔壁の開放。第五段階は死体の処理よ」

幼馴染「ちなみに、もし第二段階でまだ敵が生き残っていたら」

幼馴染「戦闘用ナノマシーンによって体の内側から殺されるから注意して」

幼馴染「私は知らないけど、とんでもなく痛いらしいわよ。それこそしぬみたいに」

妹「……」

幼馴染「さてと、侵入したわいいけど、兄くんどこにいるのかしら?」

妹「分からないんですか?」

幼馴染「ここにいることは分かるけど、基地のどこかまでは……」

妹「探すしかないんですね」

幼馴染「そうね。とりあえず進んでみましょう」

妹「……大丈夫ですかね。防衛装置」

幼馴染「大丈夫よ。ここはまだね。もっと先にいったらどうか分からないけど」

妹「……やっぱり帰りません?」

幼馴染「ここまで来て何を。さ、行くわよ。何でもいいから手掛かりを見つけないと」

妹「……はい」

幼馴染「見つからないわね、手掛かり」

妹「そうですね……ていうか、こんな堂々と歩いているのに誰にも出会いませんし。本当にここでいいんですか?」

幼馴染「ええ。ここであってるはずよ」

妹「何かこの基地寂れてるていうか、よく見るとだいぶボロボロですし」

妹「放棄されたあと、みたいな気がするんですけど」

幼馴染「……あってるはずなんだけどねぇ」

妹「もしかして、間違いましたか?」

幼馴染「いえ、そんなはずはないわ。妹ちゃん手分けして探しましょう」

妹「ええ!? 嫌ですよ。私、宇宙とか慣れてませんし。幼馴染さんから離れたら不安です」

幼馴染「大丈夫よ。通信で会話できるし、ヘルメットの機能を使えば常に互いの位置が分かるわ」

幼馴染「いざとなったら銃も持ってるでしょ?」

妹「持ってきましたけど、使い方なんて分かりませんよ」

幼馴染「簡単よ。トリガーに一秒以上指をかけるだけで安全装置は解除されるわ」

幼馴染「そのまま引き金を引けばレーザーが出るから。反動も少ないし素人でも狙って撃てば当たるわよ」

妹「いや、でも……」

幼馴染「とにかく時間がないわ。早く兄くんを見つけないと」

幼馴染「私はあっちを捜索するから、妹ちゃんはそっちをお願いね」

妹「あ、幼馴染さん待って……行っちゃった」

妹「探せって言ったって、どこを探せば……」

妹「何か色々ドアあるし、部屋に入ればいいのかな? でも防衛装置作動したらいやだし」

妹「あ、ここは大丈夫なんだっけ? ……本当かな」

妹「まぁこのままあっちこっち彷徨い続けてもしょうがないし、入ってみるか」

妹「……ここのドアは、何だろう? 文字が書いてあるけど……L……b……」

妹「擦れてて読めないな。本当、廃墟みたい。とりあえずここに入ってみよう」

妹「えっと、どうやって入れば……ドアの横にあるボタン押せばいいのかな?」

ピピピ ニンショウ

妹「あ、開いた」

妹「よし、行こう」

妹「えっと……何かモニターとか色々あるけど、うかつに触れないなぁ」

妹「とりあえずお兄ちゃんはいないみたいだし他を……ん?」

妹「何だろうこれ。スマホ? 何でこんな所にスマホが……」

妹「でもこれ、見たこと無いタイプだな。宇宙人のスマホなのかな」

妹「これをいじれば手掛かりが見つかるかも……でも何かぼろぼろだし動くかな」

妹「どこで電源つけるんだろ……ここか?」

ピ ヴヴ ヴ ニン キ  ウ

妹「あ、動いた……でもやっぱ壊れてるっぽい」

『……情……端末……』

妹「うわ、凄い何か空中に画面が浮かんでる!」

妹「しかも日本語で表示されてるみたいだし。もしかして持ってる人の母国言語で表示されたりするのかな?」

妹「宇宙は広いしみんな統一言語で話してるわけでもないだろうしね」

妹「でも宇宙人すげー」

妹「えっと……でもこれどうやって操作するんだろ……こうかな?」

ヴヴ ヴ ジョ ホウ ヒョ ジ キョウ トウ トク ュ TXー00

妹「うわ全然駄目だ。途切れ途切れで何かいてるのかさっぱり分からない」

ジ オサ ジ セイ ゾク ゴウ キ YZ-105

妹「……うーん。色々いじってみたけど、やっぱり何かいてあるのか良く分からないな」

ピピピ

幼馴染『妹ちゃん。妹ちゃん? 聞こえる?』

妹「あ、幼馴染さん。何ですか?」

幼馴染『ちょっと来てくれるかしら』

妹「分かりました。今行きます」

幼馴染「あ、妹ちゃんこっちこっち」

妹「どうしたんですか?」

幼馴染「これ、このドア見て」

妹「ドア? ……これがどうかしたんですか?」

幼馴染「このドア、他のものと少し違う感じがしない?」

妹「……確かに、形とか大きさとか、なんとなく違いますね」

幼馴染「たぶんこの奥だわ。ここが基地への入口」

妹「基地への入口? ここはもう基地の中なんじゃ……」

幼馴染「ここは違うわね。妹ちゃんがさっき言ってた通り放棄されたものだわ」

幼馴染「でもその放棄された基地の一部を活用して、新しい基地にしたのよ」

幼馴染「ここはたぶん、その新しい基地に活用されなかったエリアね」

妹「それじゃ、ここが」

幼馴染「本当の基地の入口……でも困ったわ」

妹「何がですか?」

幼馴染「まず第一に、このドア他のものと違って簡単には開かないのよ」

妹「どうやったら開くんですか?」

幼馴染「たぶん、鍵がいるんだと思うわ。カードキーみたいなもの」

妹「カードキー、ですか」

幼馴染「ええ、それがないとここは開かない」

妹「じゃあ、カードキーを探せば」

幼馴染「基地内部へ入るための鍵が、そこら辺に落ちてるとは思えないわね」

妹「……確かに」

幼馴染「それと問題はもう一つ。ここから先の基地について情報が不足しているわ」

幼馴染「このドアを開けて、すぐレーザーに撃たれないとも限らないし」

幼馴染「たとえカードキーが手に入ったところで、うかつに開けるわけにはいかないわね」

妹「それじゃ、もう無理なんじゃ……」

幼馴染「諦めないで、他に方法があるはず。入口もここだけではないでしょうし」

幼馴染「とりあえず、ここを一度出て他の入口を探してみましょう」

妹「……そうですね」

幼馴染「外側から基地のある方へ回ってみたけど……」

妹「ドームみたいな建物は見つけたものの、どこから入っていいかわかりませんね」

幼馴染「これ以上近づいて見つかるわけにもいかないしね」

妹「どうしましょうか」

幼馴染「うーん。とりあえず偵察用の小型ロボットを飛ばしてみるわ」

妹「そんなのあるんですか?」

幼馴染「ええ。その星の重力などのデータがあれば、あとは自動で調節してくれるし」

幼馴染「レーダーなどにも引っかからないよう特殊なステルス素材で出来ている上に」

幼馴染「催眠レーザーみたいな、ちょっとした武器も付いているからとても便利よ」

幼馴染「その代わり操作性はよくないし、あまり離れた所までは飛ばせないけどね」

幼馴染「よし、偵察機一号発進」ピッ

妹「何の音も立てずに飛び立ちましたね」

幼馴染「偵察機だもの。さてと……入口を探しますか」

妹「この画面で見れるんですね」

幼馴染「そうよ。入口は……見つからないわね」

妹「あ、そこで何か動いてますよ」

幼馴染「これは……基地に駐屯する兵士かしら。二人組みね宇宙服を着ているわ」

妹「……何か、普通に人間みたいですね。腕も足も二本ずつですし。宇宙服までちゃんと着てますし」

妹「宇宙人だっていうから、もっとうねうねしたのとか、リトルグレイみたいのを想像してたんですけど」

幼馴染「そうね、割と形の近い種族ね。でもほら、背中の後ろに翼が付いているでしょう」

妹「あ、本当だ。何の飾りですかね?」

幼馴染「飾りじゃないわ。あの中に本物の翼が付いているのよ」

幼馴染「この羽はウェルジェン星人の特徴ね」

妹「へぇ。でも、その何でその、うぇ……星人がお兄ちゃんをさらったんですかね?」

幼馴染「さあ?」

妹「……」

幼馴染「とりあえず、あの兵士たちを追いかけてみましょう」

妹「そうですね」

妹「……あ、兵士たちが岩の前で立ち止まりましたよ」

幼馴染「そうね。あれが入口みたい」

妹「カモフラージュされてたんですね」

幼馴染「そうみたいね。あら、岩の前で兵士たちが何か操作してるわ」

妹「本当だ。これは……カード?」

幼馴染「ここもさっきの扉と同じくカードキーがいるみたいね」

妹「どうしましょうか」

幼馴染「大丈夫よ。こんなときにはね、えい」ポチッ

妹「あ、何かレーザーが……あの二人、動かなくなりましたね」

幼馴染「ええ。見た目では分からないでしょうけど、あの二人の頭の中は大変な事になってるわ」

幼馴染「それはもうぐちょぐちょのねちょねちょにかき回されて」

妹「……」

幼馴染「いや、夢の話よ? 撃ったのは催眠レーザーだから」

幼馴染「催眠レーザーで寝ると、なぜか悪夢をみるらしいのよね」

妹「……そうですか」

幼馴染「よし、それじゃあれを回収しましょう」

妹「そうですね……でもどうやって?」

幼馴染「小型偵察ロボットを使えば電気信号を操作して、意識の無い他人の体を操れるわ」

幼馴染「まぁ、動きがちょっと不自然になるし、簡単な事しかできないけど、ここまで持ってくるくらいはできるでしょう」

妹「……偵察ロボット、本当便利ですね」

幼馴染「さて、着替えも終わったし。あの二人組はちゃんと着替えに使った倉庫に手足縛って置いてきたし」

幼馴染「それじゃ、行きますか」

妹「ちょっと大きいですけど……ま、いっか」

幼馴染「それじゃカードを取り出して、あの岩に行くわよ」

妹「はい」

ヴ ヴヴ

幼馴染「開いたわ」

妹「中は……」

兵士「ぬあjぞひjkぁくぉいwh?」

妹「う、うわ。兵士だ。何言ってるかさっぱり分からない。 ぱ、パードゥン?」

幼馴染「ふんっ!」ドス

兵士「……」バタッ

妹「ちょ、いいんですか? いきなり倒しちゃって……見張りの人に通信取れなくなったら怪しまれるんじゃ」

幼馴染「大丈夫よ。一定時間内に適当な事を報告するプログラムの機械を付けて、ここに立たせておくわ」

幼馴染「しばらくはバレないはず」

妹「はぁそうなんですか……でもいきなり殴るのとかは」

幼馴染「躊躇したら、即座にミンチになるわよ。何も武器を持ってるのはこちらだけじゃないんだから」

妹「……バシバシ殴っちゃってください」

幼馴染「さて、侵入したのはいいけど……」

妹「お兄ちゃんはどこにいるんでしょうね」

幼馴染「基地も広いしね。これを全部探すのは大変だわ」

妹「あ、巡回が……」

幼馴染「そこを曲がって隠れましょう……大丈夫。監視カメラは無いみたい」

巡回兵士1「kらhjどhhkんwぱ?」

巡回兵士2「jzへういはいうh」

幼馴染「……行ったわ」

妹「これで侵入してから五度目ですね」

幼馴染「警備が思ったより厳しいわ。本当は手分けしたいんだけど……」

妹「無理ですよ。私、幼馴染さんと別れたら、五秒で見つかる自信あります」

幼馴染「……そうよね」

幼馴染「どうしようかしら」

妹「扉はたくさんありますけど、どれが何なのか分かりませんね」

妹「扉に文字は書いてあるみたいですけど……完全に地球の言語じゃありませんし」

妹「これ、幼馴染さん読めるんですか?」

幼馴染「……一応、何となくは読めるわ」

妹「え、読めるですか? じゃあ、ここの扉、何て書いてあるんですか?」

幼馴染「武器庫ね。ここら辺は倉庫やら武器庫やら、そんなのばかりよ」

幼馴染「兄くんが入っていそうな部屋はないわ」

妹「そうですか……」

幼馴染「探すにしても手掛かりが少な過ぎるわね……案内図くらいあればいいんだけど」

妹「さすがにそんな便利なものは無いと思います」

幼馴染「そうよね。仮にも軍事目的の基地だしね」

幼馴染「……あれ?」

妹「どうしたんですか?」

幼馴染「ここは……」

妹「ここが、どうかしましたか?」

幼馴染「いえ、その……ごめんね、ちょっと考えさせて」

妹「……?」

幼馴染「ここが……だとすると……だから……」

妹「あの、幼馴染さん?」

幼馴染「……うん、ものはためしよね。それじゃ、とりあえずこっちに行ってみましょう」

妹「え? 何が」

幼馴染「さ、急いで妹ちゃん」

妹「え、あ、はい」

幼馴染「ここを曲がって……こっちに行けば」

妹「……あの、どこへ向かってるんですか?」

幼馴染「兄くんがいる部屋かもしれない所よ」

妹「え? 分かったんですか」

幼馴染「あくまで、かも、だけどね。もうすぐよ、ここを右に曲がって……あった」

妹「……うわ、これ。何ですか? 銀行の金庫みたい」

幼馴染「そうね。おそらくこの基地でも最高の強度を誇る部屋よ」

幼馴染「この基地の中では一番安全だろうし、私が考えられる中で兄くんがいる可能性が一番高いわ」

妹「でも、これどうやって入るんですか? とても入れそうにないんですけど……」

幼馴染「大丈夫、裏技があるの。待っててね……例えプログラムが代えられても、これなら……」

ガチャ ギギギギ

幼馴染「あ、開いたわ……中に誰かいる!」

妹「お、お兄ちゃん?」

??「……」

妹「お、お兄ちゃん……じゃない!」

兵士1「はいううでゅいふlwz?」

兵士2「kしでゅふぁh!」

兵士3「っふいhzlふ!」

幼馴染「外れ!? しかも兵士がこんなに……!?」

妹「そんなの知りませんよ。とにかく逃げないと」

幼馴染「そ、そうね……まさか外れな上に、兵士に見つかるなんて」

兵士「hしzhjw!」

妹「こっちにも……!?」

幼馴染「流石にこのままでは逃げ切れないわ……妹ちゃんこっちに来て」

妹「お、幼馴染さん! 腕引っ張らないでください」

幼馴染「こっちよ、早く」

妹「一体、何が」

幼馴染「確か、ここら辺に……あった。ここよ」

妹「床に入口が……」

幼馴染「入って、私は兵士たちを引き付けるわ」

妹「え? でもそれじゃ幼馴染さんが……」

幼馴染「ごめんね、こんなことになったのは私のせいだけど言わせてもらうわ」

幼馴染「この状況であなたは足手まといよ」

妹「……」

幼馴染「あなたには、やってもらいたい事があるの。でもそれはまだ先だわ」

幼馴染「今はここでじっとしていて。すぐに合流するから」

妹「分かりました」

幼馴染「ここから出ないでね。そうすれば見つからないから。それじゃ、あとで」

バタン

妹「……幼馴染さん、大丈夫かな」

妹「待っててって言われてもな。何かすることないと、落ち着かないし……」

妹「というか、ここどこ? 何で幼馴染さんはここがある事を知ってたんだろ」

妹「暗くて周りがよく見えない。電気は……スイッチとかも見えないな。何でもいいから、明かりないかな」

妹「……そういえば、さっき放棄された基地で見つけた宇宙人のスマホがあったな」

妹「うん、意外とよく見える。ちょっと探索してみよう」

妹「……意外と広そうだな」

妹「扉があるけど、入っていいのかな」

妹「何かここも放棄された基地みたい。でもさっきのやつより綺麗かも」

妹「どこかに電気のスイッチは……見つからないや」

妹「とりあえず、どこかの扉を開けてみるか」

妹「それじゃ、ここでいいや。またボタン押せば開くかな」

ピピピ ニンショウ

妹「あ、開いた。よし、中に入ろう」

妹「ここは……なんだろ?」

妹「うーん……あった。これ電気のスイッチだよね」

ヴ ヴヴ

妹「あ、明かりが付いた。良かった」

妹「えっと、あるのは、金属製の机と椅子だけ。他には何も無いなぁ」

妹「誰かの個室だったのかな。でも、それにしたって棚もベッドもないし」

妹「……とりあえず、机を調べてみようかな」

妹「……あ、懐中電灯があった。持っていこう」

妹「他には何か……ファイル? 何だろう」

妹「P……読めないや。最初の文字はPに似てるけど、あとの文字は見た事無いなぁ」

妹「中身は……やっぱり読めない。宇宙語なのかな? それとも暗号?」

妹「……何かの手掛かりになるかもしれないし、一応持っていくか」

妹「他には何も無いな……よし次に行こう」

妹「色々回ったけど、同じようなの部屋ばかりで何も無いなぁ」

妹「……ここは、ちょっと様子が違うかも」

妹「よし、入ってみよう」

ピピピ

妹「……あれ、開かない?」

ピ サブ アクセス ニンショウ

妹「あ、開いた」

妹「どれどれ、何かあるかな……お、何かある」

妹「これは……パソコン、かな。デスクトップの本体みたいだけど、でもキーボードもマウスもモニターもないし」

妹「本体だけでどうやって動かすんだろう」

妹「どこかにスイッチは……これか?」ピッ

ヴ ヴヴ

妹「お、動いた……おおっ、空中に画面が出てきた! 何これホログラムっていうのかな。SFっぽい!」

『システム キドウ』

妹「おおっ、文字が。しかも日本語。親切設計!」

『ようこそ』

妹「お邪魔します」

妹「起動したはいいけど、どうすればいいのかわからない……」

妹「しかもパスワード要求されてるし……」

『パスワード:      』

妹「中身みるのは無理かなぁ……でも一応探してみるか」

妹「ここもやっぱり机が一つか。どれどれ」

妹「うーん、やっぱり大したものないなぁ。パスワードとか書かれた紙もない、し……ん?」

妹「これは、写真? 六人写ってるけど……」

妹「男の子と女の子。それから、それぞれの両親かな」

妹「でもこれ人間……いや違うか。ここの基地にいる連中も見た目は人間に似てたし」

妹「たぶん、この人たちも背中に翼とか生えてるんだろうな」

妹「宇宙人も、家族の写真とか持ってきたりするのかな……ちょっと親近感」

妹「見れば見るほど、人間に似てる種族だしな。うん……」

妹「……何でだろう、この写真どこかで見た気がする」

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